女「頭痛が痛い……」(16)
男「お前それ重言だぞ」
女「なにそれ?」
男「……そんなことも知らないのか?」
女「あー! あんたまた私をバカにしたわね!」
男「バカだから仕方ないだろ?」
女「バカじゃないわよ! で、重言が何か教えなさいよ」
男「同じ意味の言葉を重ねるのは二重表現になっておかしいってこと。頭痛には痛いって意味が含まれてるから、『頭が痛い』とか『頭痛がする』でいいんだよ」
女「……伝わればいいでしょ?」
男「そうなんだけど世間は厳しいわけで。間違ったまま恥かくより今ここで矯正しておいた方がいいだろ? これでもお前のことを思って指摘してるんだぞ?」
女「そうなんだ……まぁ情けは人の為ならずって言うものね」
男「それもここで使うのは間違ってるけど……それにしてもお前ってバカすぎるんだよ……」
女「なっ! わ、私が本気出せば期末テストの順位、ダントツで一位取れるんだからね!」
男「そんな見え見えの嘘はいいから」
女「あーもう! いつもいつもバカにして……もう怒ったわ! 勝負よ!」
男「またか。今度なんだ? テストの順位で勝負か?」
女「そ、その方法だと面白くないから……今日の放課後ちょっと付き合いなさい!」
男「おーう。いつも通り適当に勝負内容は女に任せた」
女「ふん、そんな余裕な態度とって! 後で後悔しても知らないんだからね!」
男「また重言だぞ」
女「さぁ放課後よ! 汚名挽回させてもらうわ!」
男「これまた典型的な間違いを……で、どうするんだ?」
女「ふっ、この勝負はいつかしようと予め予定していたの!」
男「かなり先行き不安なんだが……」
女「この勝負ならあんたには負けないって、はっきり断言できるわ!」
男「あー、もういいや。で、勝負内容は?」
女「この商店街の激辛カレーの早食いで勝負よ!」
男「いやいやいや、俺が辛いの無理なの知ってるだろ? 流石にこの条件は飲めないって。というか女は激辛食べられるのか?」
女「私は辛党だから多分大丈夫!」
男「お前、未成年なんだから酒なんて飲むなよ」
女「飲まないわよ?」
男「辛党は酒好きな人って意味だぞ?」
女「そんなの過半数を超える人が辛い物好きって思ってるわよ!」
男「そんなことを俺に言われても……」
男「というか女、今朝頭痛がするって言ってたんだから、激辛とか食わない方がよくないか?」
女「確かに朝は体調壊してたけど、もう大丈夫よ」
男「体調は壊れるもんじゃないんだが……まぁいいや。でもやっぱり顔色悪そうに見えるんだよな……」
女「暑いからそのせいよ。というかこの炎天下の下でよくそんな涼しい顔してられるわね」
男「暑いのは好きだからなー」
男「適当にブラブラしながら何か勝負できそうなもの探すかー」
女「それってなんというか……デートみたいね」
男「……まぁ女じゃ役不足だけどね」
女「私じゃ役不足っていうの!?」
男「え、なんで怒ってるの!?」
女「あ、そういえば昨日のお笑い番組見た?」
男「見た見た。失笑したよ」
女「えー、そうなんだ。私はあんたと違って一人で大爆笑しちゃったわよ」
男「一人じゃ爆笑できないぞ? というか俺も笑ったんだって」
女「いやいや、あんた失笑したんじゃないの?」
男「そうだよ」
女「ん?」
女「ねえ男。風の噂で聞いたわよ」
男「風は噂しないぞ?」
女「あんた隣のクラスの子振ったらしいわね?」
男「情報早いな……」
女「『あんなに優しくして気のある素振りしてたのに振るなんて酷い!』みたいな話になってたわよ」
男「そんな風に接したつもりなかったんだけどなぁ……」
女「いつも皆に愛想振りまいてるからそうなるのよ。というかあんた、好きな人がいるって言って断ったらしいけど、ホントにいるの?」
男「…………」チラッ
女「ん? 何よ」
男「いや、なんでもない。……好きな人は、いるよ」
女「へー、誰々? どんな人なの?」
男「えーっと……バカで何かと突っかかってきていつもテンション高くて明るくて一緒にいて飽きないやつかな……」
女「え……」
男「……そうだよ、俺はお前が――」
女「そんな人近くにいたっけ? というかそんなバカな奴が好きとかあんたの趣味って変わってるわねー」
男「はぁ……言葉で一番重要なのは相手にちゃんと伝わることなんだろうな……」
女「ん? どういう意味?」
男「いや……なんつーかお前と喋ってると頭痛が痛いって思ってな」
女「ふふん、それ重言よ!」
おわりです。
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