侍「うおおおおおおおめっちゃ死にてぇぇえええええええ」 (33)

死にたがりの侍


侍が職を変えたり魔王に出会ったり

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侍「かっこよく死にたいから侍になったのに、いざなってみたら平和過ぎてつまらないで御座る」


殿様「俺らのご先祖様がようやっと掴みとった平和なんだから文句言うなよ」


侍「いやなんかこう~強い奴と『うおー』って戦って『バサー』って切られて死にたいんスよ」


殿様「無茶言うなよ……お前今までそれで豪傑全員倒しちゃったじゃん」


侍「はぁ~~~~~~~めっちゃ死にたい。それもかっこよく!!!」


殿様「切腹あるじゃん」


侍「あれだって自分で腹斬るじゃないっすか。しかも追い詰められたり悪いことしたりが理由で。自分的にそれめっちゃダサいってーか」


殿様「お前なぁ……」


侍「んー決めたっす。俺奉公辞めるッス」


殿様「は!?お前それダメに決まってんだろ!!一応英雄なんだぞお前!!」


侍「肩書きじゃかっこよく死ねないッスよ。んじゃあお世話になりました。殿様もお元気で!」


殿様「なッ!!!おい!待て!!!だ、誰かーーー!!!誰か侍を止めろ!!!」

元侍「そんなわけで侍をやめてきた。これからどうしよう」


元侍「あ、そういやバイトで山賊退治とかしたことあったな。金盗んだり人攫いして最後は戦って死んだりとかいんじゃね?」

元侍「そんなわけで侍をやめてきた。これからどうしよう」


元侍「あ、そういやバイトで山賊退治とかしたことあったな。金盗んだり人攫いして最後は戦って死んだりとかいんじゃね?」

すみません……連投してしまいました

続きます







元侍「そんなわけで野武士になった」


元侍「取り合えず近くの山賊襲ったらあっけなく勝ってしまった。これじゃあ強い奴が退治に来なくなってしまう」


元侍「俺が鍛えてやったほうがよさそうだな」





元侍「山賊が強くなったのは良いんだけどいつの間にか首領にされてしまった」


山賊「今の俺らが食っていけてんのはお頭が鍛えてくれたおかげなんですから当然じゃないですか」


元侍「死にたいから侍やめて山賊になったのに幕府の軍が全然使い物にならねぇ奴ばっかだったなぁ。仕事しろよ公務員」


山賊「なんでも最近外国から軍艦が攻めてきて大変らしいですよ」


元侍「え!?まじで!?」


元侍「祖国を守るために命を張って散るとかマジ俺かっこよくね?」


元侍「よし。山賊やめる」ポーイ


山賊「ちょ!?ええええ!?お頭いなくなったら俺らどうするんですか!!」


元侍「お前らなら俺がいなくたってやっていけるさ。皆体に気を付けて死ねよ?」


山賊「お、お頭ぁあああああああああああああ!!!!」

元侍「山賊から鞍替えして海賊になったぞ」


元侍「うむ。倭冠っというやつか」


元侍「っていうか波がきつくて気持ち悪い……死ねる……」


元侍「とりあえず軍艦に乗り込もう」


元侍「ここから入れるかな」


外国「し、侵入者だぁああああ!!」


元侍「こんにちはーーー!!!殺してくださーーーい!!!」クビチョンパ


外国「ぎゃあああああああああああ日本の海賊だあああああああ」パンパンパン

元侍「なんか勝ってしまった……だらしないなバテレン」


元侍「なんか殿様からリクグンブギョウ?っていう偉い人になれって手紙が来た。偉くなったら戦場で死ねないじゃん。馬鹿なの?」


元侍「そういや殿様どうしてっかなー」


元侍「まぁいっか。とりあえず奪った船でどっか行こう」


元侍「あ、嵐だ」


元侍「なんか船のあちこちが壊れてしまった。こりゃ沈むな」


元侍「俺もあっけなかったな。とりあえず死のう」

天女「あ、こいつなんか死にかけてる」


天女「確かこいつ一人で軍艦やっつけたとかいうイカレ野郎だったな」


天女「んーーーどうしよっかな。死にたがってたし殺してもいいんだけどなぁ」


天女「あ、そういや魔王の野郎が強い奴欲しいって行ってような。折角だし送ってやるか」ピッピッピ


天女「あーもしもし~?割と強そうな奴いるんだけど欲しい?あ、そう。じゃ今送るから」

元侍「なんか船が壊れて死んだなと思ったら異世界に連れてこられた。どういうことだってばよ」


魔王「ごめんね~?うちの軍も平和になってから腑抜け揃いになっちゃってさ」


元侍「いやいいっすよ。俺もかっこよく死にたかったので。何かそれっぽいのあります?」


魔王「実はさ~最近ここハンター業に力入れてるんだよね。ちょっと行ってきてくれない?」


元侍「はん??なんですかそれ?」


魔王「あああそっかごめん。要するに狩人をやってほしいんだけどいいかな?」


元侍「マジっすか。どんなのっすか?」


魔王「ドラゴン……つまり龍を狩って欲しいんだよね。死にたがりの君ならピッタリだと思って」


元侍「龍っすか!?それすげぇ!!死んだらめっちゃ様になるじゃないっすか!!やりますやります」


魔王「あ、そう?じゃあお願いねー」

元侍「そんなわけでドラゴンのいる渓谷へ来た」


元侍「うおッなんかここ高いな」


元侍「俺死にたがりだけど飛び降りは嫌なんだよね。怖いもん」


ドラ「ギャーーーーーーーーーー」


元侍「うおおおお!!すげぇ!!本物のドラゴンだ!!!」


ドラ「グワォオオオオオオオオオ」


元侍「なんかここに来る奴全員襲っているらしいな。お前すげぇ死にたがりだな!!気が合うな!」


ドラ「ブウウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


元侍「うお!すげぇ!炎吐いた!!うおおおおおおおおおおおおおお!!!死ぬぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ザワザワザワザワ


元侍「ん?なんか小さいのが動いている」


元侍「あれは……子供かな?」


ドラ「キュウウウウウ」


元侍「あ、お前あれか。こいつらの親?」


ドラ「コクリ」


元侍「なるほど狩人達からこいつらを守っていたわけだ」


ドラ「キュウウウン……」


元侍「なーんだ。じゃあ全然死にたがりじゃないじゃん。つまんね」


ドラ「???」


元侍「俺帰るわ。元気でなー」

元侍「すいません。失敗しました」


魔王「あんだとごらあああああああ!!」


元侍「いやだってあんなのに殺されてもつまんないじゃないっすか」


元侍「なんか子供守ってただけみたいだし」


魔王「馬鹿やろうッ!!子供が高く売れるんじゃねぇか!!資源が少ない我が国の貴重な財産なんだよ!!忌々しい勇者の国に屈しているのもそのせいだ!!!」


元侍「あーそういうのっすか」


魔王「てめぇ……我が国に命を懸けてもいいみたいな事いってたじゃねぇか。いつか勇者の国を見返してやりてぇんだよ俺は!!」


元侍「俺かっこよく死にたくて侍辞めたんすよ。それが出来ないなら元いた殿様のとこで働いてた方がましっす。にしても復讐とかつまらない事考えてるっすよね」


魔王「……もういい!!!てめぇは死刑だ!!!」ゴゴゴゴゴゴ


元侍「マジっすか……まぁ魔王と戦って死ぬのもかっこいいっすよね」チャキ










ドラ「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


子ドラ「グワァアアアアアアアアアアアアアア」


魔王「!?な、なんだこいつら!!??」


元侍「うおー?どうしたのよ?」


魔王「や、やめろ何をす……うわああああああ」


元侍「あ、そいつらすげぇ炎吐くんで気を……遅かったっすね」


ドラ「キュイイイ」


子ドラ「「「「「キュイキュイ」」」」」


元侍「えー……」

元侍「なんか魔王を倒した異国の戦士って事で勇者の国にスカウトされた」


元侍「どうせなら魔王の軍が敵討ちに来てくれればよかったのにそんな事もなかった。皆平和の方が好きなんだね」


元侍「はぁ……死にたいなぁもう」


ドラ「キューイ」


子ドラ「「「「「キュー」」」」」


元侍「なんかこいつらまでついてきちゃったし。食費が大変よ全く。意外と勇者の給料って少ないのね……餓死とか狙ってみるか」


勇姫「こんにちは」


元侍「え、誰?」


勇姫「も、申し訳ございません!名前も言わずに……私は勇者の国の姫です」


元侍「あ、これはこれはご丁寧に」


勇姫「随分と可愛がってらっしゃるんですねこの子達」


元侍「いやそんなことないっすよ本当に」


勇姫「私もなんです」


元侍「はい?」


勇姫「死にたいんです。すごく」


勇姫「生まれた時から姫として生活を強いられたので……息苦しいのです」


元侍「はぁ」


勇姫「貴方なら殺してくださるのかしら?」


元侍「いや俺暗殺仕事はあんま。なんか一方的に殺すのは嫌なんすよ。殺してほしかったら多少強くなってからにして欲しいっす」


勇姫「……フフッ あははははは///」


元侍「?」


勇姫「貴方変な人って言われません?」


元侍「どうすかね」


勇姫「前までどんな仕事を?」


元侍「最初侍って……まぁ軍人やってて。その後山賊、海賊、狩人、んで今勇者っすね。大体どれもならず者みたいな仕事でしたね」


勇姫「侍……海賊……ああ、知らない言葉……でもなんて美しい響きなの!!」


元侍「そうすか?侍以外は年収酷かったっすよ?」


勇姫「ねぇ?あなたの話もっと聞きたいわ。今夜お部屋にいらして?」


元侍「は、はぁ」








元侍「それからというものの姫が俺に絡んでくる。変な人だ」


元侍「特に俺の死に底なった恥ずかしいエピソードなんかがお気に入りで、毎晩毎晩俺を呼んでは何か話をするようせがむ」


元侍「そして偶に凄く機嫌がいいと……そのなんだ」


元侍「寝具の上で俺を身体を激しく求めるようになった」




>>16 ミス

元侍「それからというものの昼間暇を見つけては姫が俺に絡んでくる。変な人だ」


元侍「特に俺の死に底なった恥ずかしいエピソードなんかがお気に入りで、毎晩毎晩俺を呼んでは何か話をするようせがむ」


元侍「そして偶に凄く機嫌がいいと……そのなんだ」


元侍「寝具の上で俺を身体を激しく求めるようになった」

勇者「皆、聞いてくれ。あいつが……元侍が姫様を夜な夜な無理やり襲っているという証言を得た!」


勇者「これから俺は奴を殺す!!そして以前の可憐な姫様を取り戻すのだ!」


勇者「皆俺についてこい!」


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


元侍「姫と絡むのが気に障ったのか勇者の皆が俺を今夜殺すらしい」


元侍「やっと心の底から燃えるような死に方が出来るわけだ」


元侍「姫には感謝しないとな」

勇姫「あら?貴方から感謝の言葉なんて……珍しいこともあるものね」


元侍「侍は基本礼儀正しいんすよ。気性がちょっと荒いだけで」


勇姫「ふふふ。ねぇ死ぬのはまだ早いんじゃなくて?」


元侍「え、寧ろ最高のタイミングじゃないすか?」


勇姫「まだ私を殺していない」


元侍「いやだから」


勇姫「聞きなさい」


元侍「えー……」

勇姫「あの方々はね。私自身が生きていようが生きていまいが問題ないのです。肝心なのはこの国の『姫』なの。それは勇者である彼らの拠り所だから。魔王の国が滅んだ今となっては

……もはや存在意義が失われたも同然。滅ぶのも時間の問題です」


元侍「つまり……どうすれば?」


勇姫「私を連れてって下さる?」


元侍「あんたを慕う奴らを置いてですか?そりゃちょっと良心が痛むっすよ」


勇姫「この国は生まれ変わるの。勇者の為の国でも姫の為の国でもない。民が自分で切り開いていく未来……貴方の、侍の話を聞いて思ったの」


勇姫「貴方のせいでこんな考えになったのよ?だから責任とって下さいまし」


元侍「理屈が無茶苦茶で理不尽っすなぁ……世の姫って皆そうなんすか?」


勇姫「そうよ?」

勇姫「お姫様は傲慢で欲張りで我儘で寂しがり屋で気分屋で」


勇姫「政治よりも恋が好きなの」


元侍「そして恋よりも性交が好きと……」


勇姫「」ギュウウウウウウ


元侍「いでででで」


勇姫「あ、いい事思いついたわ」


元侍「え、何をっすか?」


勇姫「貴方の死因よ……」コショコショ







勇者「姫!!姫がいない!!己ぇええええええ元侍ぃいいいいいいいいいい!!!!すぐに捜索隊を編成するんだ!!」

ドラ「キュイー」


子ドラ「キュイキュイ」


元侍「あーあ、どうしよっかなー」


元姫「情けないことを言わない」


元侍「だって金は無いですし行くあては無いですしついでに職もないですしここ異世界ですし」


元姫「でもすっごい自由よ?はぁ~~~~~~ドラゴンに乗るのって気分がいいわ。最高ね!」


元侍「そりゃどうも……ん?」


天女「んー?あーーーーーーー!!!!!!あんた侍!!」


元侍「え?誰ぇ????」


元姫「」ムスー


天女「よかったぁああああ!!魔王が死んで連絡が取れなくなってきたから心配だったの!!本当ごめんね!!」


元侍「え、ああいやいやいいっすよ別に」


天女「貴方が望めば今すぐに元の世界に帰せるけど……どうする??」


元侍「えええ!?マジっすか!!!!」


元姫「」ギュッ


元侍「……。じゃあっすねぇ~……」



………

……

殿様「2年も一体どこほっつき歩いていたんだ馬鹿野郎ぉおおおお!!!!」


元侍「あっははー!」


殿様「笑うな!!!」


元侍「いややっぱ殿様に飼い殺されるのも悪くないかと思って♪」


殿様「上手いこと言ったつもりか!!殺すぞ貴様ぁああ!!!」


元侍「あ、この人俺の嫁さん」


元姫「お初にお目にかかります……元姫です」


殿様「あぁ……これはこれは、拙者は殿様です……ってお前所帯持ち!!??」


元侍「そうなんすよー♪」


殿様「信じられん……死にたがりの侍たるお前が。ってそんなことはいい。どうして戻ってきた」


元侍「お金なくて」


殿様「お前そこは忠誠心とか嘘でもいいから……まぁいい。だが奉行の話はないぞ。既に有能な奴がいるからな。お前はまた平からやってもらう」


元侍「あざーーーーーーーっす!!!!マジ助かりやす!!!!事務でもなんでもやりやすよ!」









殿様「今度は事務ではない。戦争だ」

元侍「!!??」


元姫「主人は戦場へ?」


殿様「……そういうことになる。幕府に反旗を翻した連中がいる。おそらく今年中には大きな戦闘が起こるだろう……奥方には申し訳ないと」


元姫「やったわね!!!」


元侍「うおおおおおおおおお!!!!!戦争だぁあああああああああああ!!!」


殿様「あ、あれ……」


元姫「貴方最近刀も槍もご無沙汰なんでしょう?大丈夫?」


元侍「まぁその内勘取り戻すっすよ!それに」

ドラ「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


子ドラ「「「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」」」」」


孫ドラ「「「「「ピヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」」」」」


殿様「おわあああああああああああああ!!!!!!????」


元侍「こいつらもいやすからッ!」


殿様「た、頼もしい奴らだな……。だがな侍」


侍「……はい」


殿様「この国を揺るがす戦だ。本当に死ぬかもしれんぞ?」


侍「へっへー!まぁ頑張りやす!」


殿様「??? いつもの死にたがりはどうした?」


侍「いやぁそれがっすね」


殿様「?」

………

……




元侍「俺の死因っすか?」


勇姫「ええ。……貴方は私が殺してあげる。それも溺れるくらいに愛されて。尽くすために生きて、殺されるために生きるの。私のようないい女の為にね」


元侍「それはまた……尻に敷かれた死に様っすね」


勇姫「そうね……これから何十年もかけて貴方を殺すの。朝は唇から生気を奪って夜は……ココから生気を搾り取るの。幸せすぎて情けない顔を私だけに晒して惨めに死んでいくの。そ

うやって貴方が死んだ後、この世の絶望を味わった私は貴方のいない生き地獄を味わって一人で死ぬ。これって素敵だと思わない?」


元侍「……………………悪くないっすね」


………

……

侍「ちょっと楽しみな死に方を見つけましたんで……それ以外で死ぬのはもう退屈なんすよ」


侍「俺は死にたがるために生きるっす」


侍「生きるために殺すっす」


侍「殺すために死にたがるんす」








侍なんてのは概ね皆死にたがりなんすよ。


~死にたがりの侍 完~

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