胡桃「照!?」
塞「バスケ部部長が、同好会に何の用かな……?」
照「……決着をつけにきた」
エイスリン「ケッチャク?」
照「今日限りで、バスケ同好会などという遊びは終わりだ」
胡桃「遊びって、どういうこと!」
照「そのままの意味さ。……目障りなんだ、私たちにはね」
塞「くっ、自分勝手なやつ」
白望「……で、どうするつもり?」
照「体育館に来い」
豊音「ば、バスケで勝負したいのかなー?」
照「私たちが勝ったら、同好会は終わりだ」
胡桃「そんな勝手な……」
照「お前たちには、正式にバスケ部に所属してもらうよ」
塞「……か、勝てばいいんでしょ?」
照「ああ、……もちろん、ハンデはつけてやるから」
白望「……だるい」
豊音「こうなったら、受けて立つよー!」
―体育館―
塞「準備できたよ」
照「アップは?」
胡桃「もう終わってる」
照「そうか。ではルールの確認をしよう」
豊音「なにかあるのー?」
照「ハンデをつけると言ったろう? まあ、基本は大会ルールだが」
エイスリン「……」
照「そっちは五人しかいないから、チームファウルは無しとする」
白望「……それは、大きいなあ」
照「あとは体力面を考えて、1クオーター8分だ。インターバル2分、ハーフタイム5分」
胡桃「うーん、これはねえ」
塞「素直に喜べないかな」
照「さらに、私たちは一軍を使わない」
豊音「太っ腹だねー?」
照「そして、私がお前たちの監督をやってやる」
胡桃「えっ!?」
塞「……どういうつもり?」
照「安心して、スパイなんかじゃないよ」
エイスリン「……アヤシイ」
照「これはね、うちの二軍以下の練習も兼ねてるんだ」
胡桃「それはわかるけど……」
照「的確かつ正確な指示を出す。それでお前たちが勝つなら、それもいい」
豊音「疑ってもキリが無いので、信じるしかないかー」
塞「……正直、心強いけどね」
白望「……そういうこと、か」
エイスリン「シロ?」
白望「なんでも……」
照「なにか質問は?」
豊音「審判はどうするのー?」
照「部の監督とコーチがやってくれる」
塞「健夜先生と晴絵さんね」
照「ああ。他には?」
胡桃「うん、大丈夫!」
照「それじゃあ、早速始めるとしようか。……整列!」
―同好会チーム(白)―
1番・胡桃(ポイントガード)2番・エイスリン(シューティングガード)
3番・白望(スモールフォワード)
4番・塞(パワーフォワード)
5番・豊音(センター)
―バスケ部チーム(紅)―
1番・怜(pg)
2番・久(sg)
3番・華菜(sf)
4番・文堂(pf)
5番・純(c)
豊音(ジャンプボールは文堂さん。さては捨てたねー?)
文堂(で、でか……)
純「いいのか、俺がいかなくて」
怜「さすがのあんたでも、豊音には勝てへんやろ?」
純「ジャンプボールでは、な」
怜「ふふん、期待しとるで」
ピィーーー、フワッ
豊音「はあっ!」
文堂「ひいっ!?」
パシン
胡桃「ナイス!」パシッ
塞(私たちの先攻……、ってシロ!)
エイスリン「シロ、ハシル!」
白望「……わかった」
ダムッ、ダムッ
胡桃(相手のディフェンスはハーフコートマンツーマンか……)ダムッ、ダムッ
怜(このちっこいのがうちのマークか……)
胡桃「……」ダムッ、ダムッ
怜(……なんや、ボーッとしとる?)
怜「隙ありや!」ヒュン
胡桃「塞!」
塞「ナイスパス!」パシッ
文堂「い、いかせません!」
塞「シロ!」ヒュッ
白望「……」パシッ
華菜「おっと、お前のマークはあたしだし!」キュッキュッ
白望(……むう、中には入れそうもないか。シュート? いや……)クイッ
怜「華菜、豊音がハイポスト上がったで!」
豊音「シロ、パース!」
純「させるか!」
華菜「パスは出させないし!」
白望「……エイスリン」ヒュッ
華菜「なっ」
エイスリン「オッケー!」パシッ
怜「あかん、スクリーンプレイでフリーや!」
久「くっ、止めてみせる」タンッ
エイスリン「ウツ!」シューッ
白望(……あ、これは入ったかなあ)
豊音(エイちゃんのシュートは、自分の理想のループを描くよー)
パシュッ
エイスリン「ハイッタ!」
(白)3―0(紅)
怜「パス」
久「はい」
怜「エイスリン、要注意やで」ダムッ、ダムッ
久「ええ、わかってるわ」
怜(さて、向こうもハーフのマンツーか……)ダムッ、ダムッ
怜(塞と文堂のミスマッチを狙う? や、抑えられとるな)ダムッ、ダムッ
怜「なら……、華菜」ヒュッ
華菜「オッケーだし。お返しするし!」キュッキュッ
白望(……だるいなあ)
華菜「小細工無用、行くし!」ダンッ
白望「……!」
白望(直線で抜かれた……)
華菜「シュート!」シュッ
豊音「あまいよーっ」バチン
華菜「んなっ、でかすぎるし!」
純「俺がフリーだったろ、バカ」
白望「……」
白望(……踏み出しがすごく速いんだなあ)
豊音「カウンター!」
怜「エイスリン走っとるで、久!」
久「任せてっ」
豊音「速攻はダメっぽいねー。胡桃っ」パシッ
胡桃「うん」ダムッ、ダムッ
胡桃「……」ダムッ、ダムッ
怜(……こいつ、えらいポーカーフェイスやな)
怜(パスする時も全然緊張が読み取れへん。ヘタなフェイクより厄介やで)
怜(……せやけど)
胡桃「シロ」パシュッ
怜「お見通しや!」バチン
胡桃「えっ、うそ!」
怜「速攻!」ダムッ、ダムッ
胡桃「くっ、追いつけない」
怜「ほいっ」シュウ
胡桃「ああっ」
(白)3―2(紅)
塞「胡桃、怜にポーカーフェイスは通じないよ」
胡桃「みたいだね、なんでだろ」ダムッ、ダムッ
塞「未来が見えるとか……。よっぽど勘が鋭いんだろうね」
胡桃「警戒しとく。エイちゃん」ヒュッ
エイスリン「ウン」パシッ
白望「」
白望「……エイスリン、パス」
エイスリン「ハイッ」シュッ
白望「さて……」パシッ
華菜(さあ、次はどうくる?)キュッキュッ
白望(パス、ドリブル、シュート……)
華菜(早くしないと3秒過ぎるぞ!)キュッキュッ
白望「……決めた」シュウ
華菜「シュート!? 外もいけるのかっ」
パスッ
白望「……ふう」
(白)5-2(紅)
怜「シロ、……悩んだ時は必ず最善手をだす、か」ハァハァ
久「大丈夫?」ダムッ、ダムッ
怜「1qくらい保たせたる」ハァハァ
久「ディフェンス集中でいいわよ」ダムッ、ダムッ
怜「オフェンスは?」
久「私が組み立てるわ」ダムッ、ダムッ
怜「そか。ほな頼むで」
久「ええ」ダムッ、ダムッ
久「……」ダムッ、ダムッ
エイスリン「……」キュッキュッ
久「純!」シュッ
純「おうっ」パシッ
豊音(純さん。この人、かなり上手い。とくにポジショニングは一級品だねー?)
純(豊音。でかいし威圧感あるけど、それだけだな)
豊音(ハイポストで止めるよー!)
純「いかねーよ。文堂!」ダンッ
豊音「ローポストっ」
塞「読んでた!」パシッ
純「ちっ!」
怜(塞……、あんまり目立たへんけど、堅実な守備や)
怜(こういうやつが一人おるだけで、やりにくくなるもんやなあ)
胡桃「ていっ」シュウ
シュパッ
(白)7-2(紅)
照「第1q、残り5分か。ここまでは予想どおりだな」
照(豊音がゴール下に入るとどうしても警戒してしまう)
照(結果、他の選手が活きている)
照「……友引、か」
久(とりあえず、かき回してみましょうか)ダムッ、ダムッ
エイスリン「ムッ……、クッ……」キュッキュッ
久(この子、ディフェンスは苦手みたいね。なら……)
久「ドリブルで抜く!」ダンッ!
塞「カバー!」キュッ
久「華菜っ」ヒュッ
華菜「今度こそやってやるし!」パシッ、ダンッ!
白望「くっ、速い……っ」
豊音「カバーするよー!」キュッ
華菜「くっ」クイッ
豊音(これはフェイント! 本命は……)ピタッ
華菜「にゃーっ、純!」クイッ
豊音「パスっ、てあれ?」スカッ
華菜「シュウッ!」シュンッ
ガコンッ
華菜「な、慣れないことするんじゃなかったし……」
胡桃「よし、一本!」
怜(さらにペースを下げるか。そらそうやろな、控えがおらんのやし)ハァハァ
怜(こっちも回復できて助かるわ)スゥーッ
胡桃(この人との勝負は避けたいね)
胡桃「エイちゃんっ」ポイッ
エイスリン「ウン!」キュッ
久「怜、スイッチ」
怜「了解やっ」
エイスリン「シュート!」シュウッ
怜「たあっ!」チッ
エイスリン「!?」
怜「かすった、リバンー!」
豊音(くっ、スクリーンアウト、押し負ける……)ジリジリ
純(非力だなー)ジリジリ
ガコンッ
純「もらった……」ダンッ
豊音「上からぁーっ」ダンッ
純「なっ!?」
豊音「てやっ!」パシッ
純(タップシュートを俺の後ろからだと!? あの体勢で、ファウルギリギリじゃねーか)
ガンッ、シュッ
(白)9―2(紅)
久「うーん、なにかイヤな感じねえ」
純「流れが悪いな。様子見してた俺たちも悪いが」
久「流れ、か……」
純「ほらよ、頼んだぜ」ポンッ
久「はいはい……」パシッ
久「……」ダムッ、ダムッ
エイスリン「……」キュッキュッ
久(さっきので、ドライブを意識してるようね。今ならいける)
久「……」クイッ、ダッダッ
エイスリン「!」ピクッ
久「えいっ」シュウッ
ファサッ
塞「あちゃー、ここで決めるかー」
胡桃「久って、流れが悪いときほど得点率が高いんだっけ?」
白望「……クラッチシューター?」
エイスリン「?」
(白)9―5(紅)
怜「久、あと二分や」
久「ええ」
怜「全力でやるから、合わせてや」
久「楽しそうね」
純「俺にもこいよな」
怜「頼もしいやつらやで、ほんま」
ダムッ、ダムッ
怜(どこにパスを通せばアシストになるか)
胡桃(……なにか仕掛けてくるつもりかな)
怜(先を見る……。久が逆サイドに回って、文堂がスクリーン)
怜「……ここや!」ビュンッ
胡桃「っ!」
文堂「ナイスパスです!」パシッ
白望(スイッチした瞬間を突かれた……)
文堂「やあっ」シュウッ
パシュッ
(白)9―7(紅)
塞「文堂がスクリーンから開いた先にギリギリ届くようなパス……」
胡桃「と、止められるかな……」
豊音「カバーは任せて!」
白望「……」ダムッ、ダムッ
華菜「さあ来いっ」キュッキュッ
白望「……」ダッダッ、ダムッ
華菜(くう、食らいついてみせる!)キュッキュッ
怜「こっちや!」パシーン
白望「スティール……!?」
怜「もらったっ」シュウッ
パシュッ
(白)9-9(紅)
胡桃「追いつかれちゃったかー」
白望「もうブザーが鳴る……」
塞「そうね、あと一分弱」
豊音「食らいついてみせるよー」
エイスリン「ウンッ!」
………
……
…
ピィー
健夜「プッシング、紅5番!」
純「悪い、大丈夫か?」
豊音「平気だよー」
菫「紅チーム、メンバーチェンジだ」
純「メンバーチェンジ? このタイミングで?」
怜「ちゅーことは……」ゼェゼェ
菫「2番・久に変わって、7番・衣」
衣「ふっふっふ、時は満ちたぞ!」
久「マーク、2番ね」
衣「うん!」
白望「残り20秒でマイボール……」
塞「ちょうどいいね。フルに使っていこう」
胡桃「とは言っても、相手はオールコートでくるだろうね」
豊音「私が上がって中継するよー」
エイスリン「トヨネ、ガンバレ!」
怜「……と、向こうは考えとるはずや」
衣「返り討ちにしてしまえばいい」
怜「衣、あんたは自分が一番得意な位置で待機しとき」
健夜「スローインね」
胡桃「よーし……」
怜(パスは出させたる。せやけど、そこで終いや)
胡桃「とよ――」
怜「豊音や!」
胡桃「――えっ!?」ヒュン
純「ダブルチームだ!」キュッキュッ
文堂「止めます!」キュッキュッ
豊音「くっ……」パシッ
白望「……豊音、こっち」
豊音「おねがいっ」ヒュン
華菜「バレバレだし!」パシッ
豊音「ああっ」
華菜「怜!」ヒュン
怜「……」パシッ
胡桃「いかせない!」キュッキュッ
怜「……」ダムッ、ダムッ
塞「残り3秒っ」
怜「……衣!」ヒュン
胡桃(逆サイド……っ)
衣「終わりの鐘は絶望を告げる……」パシッ
エイスリン「ッ!」
衣「遅い!」シュウッ
ブーッ、シュパッ
豊音「なな、なっ……」
白望「……ブザービーター、だね」
第1q終了
(白)9-12(紅)
ファウル数
(白)
豊音……1
塞……1
(紅)
純……1
華菜……1
―インターバル―
(白)
照「まあ、こんなものかな」
胡桃「悔しいー! 最後はやられっぱなしだったよっ」
照「大丈夫。怜はもうガス欠だろうからね」
塞「あの場面で衣が出てきたのは、どういうこと?」
照「衣はブザービーターの達人なんだ。それに試合後半から調子を上げるタイプ」
エイスリン「シリアガリ?」
照「うん。今はまだ警戒しなくていい」
白望「……指示は?」
照「そうだね。今回は外からが多かったから」
塞「次は中から?」
照「いや、次も外から攻めよう。エイスリンが軸だ」
豊音「私もいけるよー?」
照「後半からいってくれ。今はリバウンドに集中だ」
豊音「りょーかい!」
照「シロ、お前は好きにしてくれていいよ。最善手を選んでくれ」
白望「……りょーかい」
―インターバル―
(紅)
菫「メンバー、変えていくぞ」
純「俺は変わらないからなっ」
怜「うちは少し、休ませてもらうで……」ハァハァ
竜華「ほら、膝貸したるよ」
菫「……華菜、洋榎と交代だ。怜は咲と、文堂は霞と、衣は久と」
咲「わわっ、がんばります」
霞「文堂さん、お疲れ様。後は任せてね」
菫「よし、第2qもがんばってくれ」
―第2q―
咲「……」ダムッ、ダムッ
胡桃(照の妹、見たところ大したことなさそうだけど……)
咲「……」シュウ
胡桃「えっ、シュート!?」
白望「ちがう、これは……」
ガタンッ
塞「パスだ!」
咲「純さんっ」
純「ナイス!」パッ、パン
シュパッ
豊音「わざとボードに当てて……」
胡桃「跳ね返ったのを、タップシュート……?」
(白)9―14(紅)
胡桃「人間業じゃないでしょ、それ」ダムッ、ダムッ
咲「まぐれですよ」キュッキュッ
胡桃(さて、エイちゃんを起点にすると言っても、基本は中から外への出し入れだよね)ダムッ、ダムッ
咲「……」キュッキュッ
胡桃「……」ダムッ、ダムッ
咲(……この人)
胡桃「塞!」ビュンッ
咲「くっ」
塞「……」パシッ
霞(うふふ、私もディフェンスは得意分野なのよね)
塞(……さっき豊音が動いてた。今なら)
塞「エイスリン、パス!」ヒュン
エイスリン「……」パシッ
久(左コーナー、ここから打つ自信はあるかしら?)
エイスリン「……キメル!」シュウッ
久「……あら」
ガタンッ
純「リバウンドーっ」パシッ
豊音(くっ、ジャンプが速い)
純「咲ぃっ!」ビュンッ
豊音「ロングパス!?」
白望「咲が走ってる……」
咲「……」パシッ、シュウ
ガタン、シュパ
(白)9-16(紅)
胡桃「むむ、まずいなあ」
塞「向こうも本気ってわけだね」
白望(……この人)ダムッ、ダムッ
洋榎「どやっ、抜けへんやろー?」キュッキュッ
白望(……うるさいなあ)ダンッ
洋榎「おっと、そっちは袋小路やで!」
白望「くっ、……あ」
ピィー
健夜「ラインクロス、紅ボール」
………
……
…
―第2q・3分経過―
(白)11-25(紅)
白チーム、タイムアウト
照「どうした、得点が止まってるよ」
胡桃「そうは言っても、咲のパスは予測できないし」
塞「霞のディフェンスで攻められないし」
白望「洋榎、わざと抜かせて追いつめるのが上手い……」
豊音「純はボールの流れが読めてるみたいに、ポジショニングが上手いんだよねー」
エイスリン「カテルヨウソ、ナシ」ウンウン
照「そこで、豊音」
豊音「私?」
照「チップアウトだ。無理にリバウンドで競わなくていい」
胡桃「チップアウトって?」
塞「リバウンドの時に、ボールを手で弾いたりタップしたりして味方に渡すこと」
豊音「わ、私にできるかなー」
照「お前の友引ならできるはずだ。これで更にアウトサイドが活きる」
豊音「うーん、がんばってみるよー」
………
……
…
洋榎「打てるもんなら打ってみー」キュッキュッ
白望「……」シュウッ
ガタンッ
純(リバウンド――)ダッ
豊音「ここだっ」ダッ
純「んなっ」
豊音「エイスリンさん!」バチン
エイスリン「ナイス、トヨネ」パシッ
霞「まずい、ノーマークっ」
エイスリン「シュート!」シュウッ
パシュッ
(白)14-25(紅)
豊音「やったー」
純(あんなピンポイントにチップアウトだと? まぐれか……?)
豊音(……不思議と、みんなのいる位置がわかるんだよねー)
咲「……」ダムッ、ダムッ、ダンッ
胡桃(ペネトレイトっ)
豊音「カバーするよー!」
咲「……ボール、持ってませんよ?」
豊音「あれっ?」
久「ナイスパスね、咲」シュウッ
パシュッ
(白)14-27(紅)
豊音「い、いつの間に?」
胡桃「わかんない……」
塞「ほらっ、切り替えて!」
白望「……」
………
……
…
―残り1分―
(白)27-33(紅)
菫「久、衣と交替だ」
エイスリン「マタキタ」
胡桃「追い上げムードだし、衣は要注意だね」
豊音「ブザービーターだよねー?」
白望「……だるい」
胡桃(でも、これでエイちゃんのとこはミスマッチだ)ヒュン
エイスリン「シュート――」
衣「残念だな!」バチン
エイスリン「!?」
胡桃「さっきより反応が速い!」ダッ
衣「ああ、さっきの衣は忘れてくれ」ダムッ、ダムッ、キュッ
胡桃(止まった――)
衣「えいっ!」シュウッ
パシュッ
(白)27-35(紅)
塞「時間がないっ、パス!」
霞「あらあら、通さないわよ」
白望「じゃあこっち」
洋榎「おっと、逃がさへんでー」
豊音「私が――」
純「俺を忘れてもらっちゃ困る!」
胡桃「あわわわ」
エイスリン「クルミ!」
胡桃「頼んだ!」ヒュン
咲「……」バチンッ
胡桃「あー!」
咲「衣ちゃ、衣さん!」ビュンッ
衣「さあ、二回目の鐘が鳴り響くぞ!」シュウッ
ブーッ、シュパッ
豊音「ま、またブザービーターだよー」
白望「……ちょっと、厳しいかなあ」
塞「なーに、まだまだ時間はあるよ」
胡桃「うん、切り替えていこう」
エイスリン「ガンバロウ」
第1q終了
(白)27-38(紅)
ファウル数
(白)
豊音……1
塞……2
(紅)
純……1
華菜……1
霞……1
―ハーフタイム―
(白)
照「おそらく、第3qからは衣がくると思う」
胡桃「え、どうするの?」
照「マークを帰る。塞、お前が衣につくんだ」
塞「すると、エイスリンが霞に?」
照「うん。霞は攻めが苦手だから、何とかなるだろうね。豊音もフォローしてくれ」
豊音「任せてー」
照「さて、攻撃だが……」
豊音「私、いけるよー?」
照「いや、豊音は最後だ。最後まで温存しておく」
白望「……ん、やるよ」
照「いける?」
白望「いくしかないでしょ……」
照「よし、じゃあ頼むよ。第3qはお前が起点だ」
胡桃「咲ちゃんを抑えられる気がしないんだけど」
照「私の妹だからね。仕方ない」
エイスリン「シスコン?」
照「咲はシュートよりアシストを重んじる。パス警戒で行ってくれ」
胡桃「ラジャー!」
―第3q―
白望「……」ダムッ、ダムッ
洋榎「またひっかけたるでー」
白望(もう読めてるよ……)
白望(……だるいなあ。楽しく遊びたいだけなのに)
白望(……でも、まあ)
白望(たまには、……期待されるのも、悪くない)
白望「……」ダッ
洋榎「っと!」キュッキュッ
白望「……っ」クイッ、ダン
洋榎「んな、レッグスルー!?」
白望(抜いた。……パスか、シュートか)」
純「シュートはさせねえ!」
白望「……!」シュウッ
純「なっ……」トン
ガタッ、パシュ
(白)29-38(紅)
ピィーッ
健夜「ファウル、紅5番。ワンスロー」
胡桃「おお、バスケットカウント!」
エイスリン「シロ、ナイス」
白望「フリースロー、苦手なんだよなあ……」シュウ
ガタンッ
霞「リバウンド!」
豊音「負けないよーっ、エイスリンさん!」バチン
エイスリン「シロ!」パシッ、ヒュン
白望「……ん」パシッ
洋榎「そう何度もっ――」
白望「――遅い」ダッ!
霞「いかせないわっ」
白望(エイスリンは……)
エイスリン「シロ、ライトコーナー!」
白望「……そこだと思った」ヒュン
エイスリン「……!」パシッ、シュウッ
パスンッ
白望「ん、……いい音」
(白)32-38(紅)
洋榎(シロ……、ノールックパスにレッグスルーとは、小技もいけるんやな)
咲「連続ゴール……」ダムッ、ダムッ
衣「咲、衣にパスをくれっ」
咲「ん、どうぞ」ヒュン
衣「よーし」パシッ
塞(さあ来い……)
衣「……?」キュッ、クイッ
塞「……」キュッキュッ
衣(むう。第3qだというのに、思ったほど調子が出ないな)
塞「……今だっ」パシッ
衣「あっ、ボールが!」
塞「いける!」シュウッ
ガタッ、パシュッ
(白)34-38(紅)
衣「……これは」
塞「……」キュッキュッ
衣(調子が出ないのは、このプレッシャーのせい、か)
咲「衣ちゃ、さん」
衣「任せた」ヒュン
咲「さて、と」クイッ
胡桃「……左! って、ボールは右?」キュッ
咲「……」ダッ
胡桃(背中の裏からパスを通したのね!)
洋榎「とっ、咲!」ビュンッ
胡桃(しまった、リターンパス!)
咲「ナイスパスです、洋榎さん」パシッ、シュウ
ガンッ、パシュッ
(白)34-40(紅)
胡桃「そっか、自分でゴールを決めないってわけじゃないんだ……」
塞「今のところ、一番手強い相手だね」
………
……
…
―第3q・5分経過―
(白)41-46(紅)
純「ちっ」
豊音「んー?」
純(今んとこ6ゴール。こんなんじゃダメだ)
純(一軍も見てるんだ。もっと目立たないと……)
純「咲、パース!」
咲「……」ヒュン
純「しゃあっ」パシッ
豊音(おっと。今追い上げムードなので、負けないよー?)
純(くっ、長いリーチだなこいつ)クイッ
豊音「……」キュッキュッ
衣「……純、ボール持ちすぎだ!」
ピィーッ
健夜「5秒バイオレーション。白ボールだね」
純「……っ」
豊音(なにかわからないけど、ラッキーだよー)
衣「……純」
………
……
…
―第3q・残り1分―
(白)45-48(紅)
洋榎「……霞、スクリーンやっ」
霞「スイッチ!」
塞「豊音!」ヒュン
豊音「わっ、ちょっと高いよ――」タンッ
純「――うっ、おおー!」ダッ、バチン
豊音「いっ、たい……」
ピィーッ!
健夜「ファウル、紅5番!」
咲「あ、三回目……」
衣「熱くなりすぎだ、バカめ……」
洋榎「ドンマイや、ドンマイ!」
純「あ、ああ、悪い。……豊音、大丈夫か?」
豊音「大丈夫だよー、手が当たっただけだしねー」
純「……」
衣「純、切り替えるんだぞ」
純「……ん、わかった!」
咲「……」
胡桃「残り40秒。衣のブザービーターだけは阻止したいね」
塞「わかってる。任せて」
白望「……ふう」ダムッ、ダムッ
洋榎「あんた、わかりやすくため息つくなー」キュッ、キュッ
豊音(あれ、マークが緩くなった……?)
純「……」
白望「……豊音」クイッ、ヒュン
豊音「うんっ」パシッ
純「……」
豊音(さっきのファウルで萎縮してる? 何にせよチャンス!)ダンッ
純「……くっ」タッ
豊音「ほいっ」シュウッ
ガコッ、パスッ
(白)47-48(紅)
胡桃「来るよ、塞」
塞「止める!」キュッ、キュッ
衣(ふむ、これは次まで大人しくするしかなさそうだな)
咲「私がいくよ」
衣「頼んだ」ヒュン
咲「……」
胡桃(どう動く……?)
咲「……」ダンッ!
胡桃(抜きにきた、いやっ)
咲「……」ピトッ
胡桃「シュート!」タッ
咲「パスです」ビュンッ
洋榎「っと」パシッ
白望「……通さない」
洋榎「……霞!」ヒュン
霞「仕方ないわねえ」パシッ
エイスリン「……」キュッ
霞(苦手分野、いかせてもらおうかしら)シュウッ
エイスリン「!」
ガコンッ、スパッ
霞「あらあら、入っちゃった」
ブーーッ
第3q終了
(白)47-50(紅)
ファウル数
(白)
豊音……1
塞……3
エイスリン……1
(紅)
純……3
華菜……1
霞……1
―インターバル―
(白)
照「さて、最終qだが」
豊音「私だよねー?」
照「うん。今まで温存していた分、積極的に行ってくれ」
豊音「りょーかい!」
照「プライドの高い純のことだ、ファウルを気にしてプレイも消極的になるだろうね」
塞「狙い通り?」
照「ふふ、さあね」
胡桃「あとは、衣と咲だね」
照「衣はおそらく止められないだろう」
白望「どうするの……?」
照「必要ならダブルチームであたってくれ。咲や洋榎より衣の方が厄介だ」
エイスリン「ワカッタ」
照「白望を起点に、豊音とエイスリンで攻める。いいね?」
豊音「よーし、がんばるよー!」
照「……塞」
塞「ん?」
照「どうしても衣を止められそうにないときは、フェイスガードでいっていいよ」
塞「衣一人に集中ってことね。りょーかい!」
―インターバル―
(紅)
菫「言わなくてもわかっているだろう?」
衣「蹂躙してしまえばいい」
霞「塞ちゃんを抑えればいいのかしら」
洋榎「かき回せばええんやろー」
咲「アシストなら任せてください」
菫「……純」
純「わかってる。……豊音を止めるよ」
―最終q―
衣「……時、月、力が満ちた」ダムッ、ダムッ
塞「……?」
衣「あがいて見せろ。衣の足下でな!」ゴゴゴッ
塞(まずいっ!)
――ダンッ!
塞「えっ……?」
衣「……」ダッ、ダッ
塞(……反応できなかった。速すぎる!)
エイスリン「カバー!」キュッ
衣「邪魔だ」クイッ、ダンッ
エイスリン「!?」
衣「……」タンッ
豊音「シュートはさせない!」タンッ
衣「……」フワッ、シュウッ
豊音「ダブルクラッチ!?」
パシュッ
衣「……いくらお前の背が高かろうと、月には届かない」キリッ
豊音(かっこいい。……あとでサインもらっとこー)キュン
(白)47-52(紅)
塞「……胡桃」
胡桃「あれ、ダブルチームでも止められそうにないよ……」
塞「私がフェイスガードするよ」
胡桃「お願い」ダムッ、ダムッ
胡桃「豊音、ゴール下!」ヒュン
豊音「おっけー!」パシッ、シュウ
ガタッ、パシュッ
純「……く」
(白)49-52(紅)
咲「……衣ちゃ、さん!」ビュンッ
衣「もうちゃん付けでいいよ!」パシッ、シュウッ
塞(モーションが速い!)
パシュッ
(白)49-55(紅)
白望「ここで離されるのはまずいなあ……」
胡桃「そうは言っても、今は豊音に頼るしかないよ」
白望「……」
エイスリン「……」クイッ
衣「シュートは打たせないっ」キュッ
エイスリン「トヨネ!」ヒュン
豊音「よーし……」パシッ
純(……負けられない。いや、違うな)
純(負けたくない。……それだけだ!)
純「これ以上、ゴール下で好き勝手させねえ!」キュッ、キュッ
豊音「わわわ……」
胡桃「まずい……。豊音、こっち」
豊音「お、おねがいっ」ヒュン
咲「……」バシン
豊音「あー!」
洋榎「咲、前やー!」タッタッ
咲「はい!」ヒュン
洋榎「よっしゃー」パシッ、シュウ
シュパッ
(白)49-57(紅)
胡桃「あちゃー、純が息を吹き返したみたいだね」
塞「……大ピンチかも」
………
……
…
―最終q・残り4分―
(白)53-66(紅)
白望「エイスリン……」
エイスリン「ウン」
白望「……そろそろイメージ、できたんじゃない?」
エイスリン「……パス、チョウダイ」
白望「……わかった」
エイスリン「……」ダムッ、ダムッ
衣(なんだ、なぜか体が重く感じるな……)
エイスリン「……」ピトッ
衣(……止まった? パスか?)
エイスリン「……シュート!」シュウッ
衣「なにっ!?」
シュパッ
(白)56-66(紅)
衣「バカな、あんな遠くから決めただと……」
咲「……3pラインより1メートルほど後ろ」
衣「それって、まさか……」
咲「nbaの、3pラインの位置ですね」
衣「狙って、やったのか……?」
白望(これが、エイスリンの描く理想のループ……)
エイスリン「モットウツ!」
胡桃「エイちゃんにボール集めよう!」
豊音「わかったよーっ」
塞「5ゴール差、正念場だね……」
照「これがエイスリンの実力か……」
照(……さあ豊音、あとはお前だけだよ)
………
……
…
―最終q・残り1分―
(白)71-72(紅)
衣(不調だな……。塞のプレッシャーかと思っていたが、どうやら違うようだ)
衣(何を考えている?)
衣「――咲」
咲「……」ダムッ、ダムッ
洋榎「咲、こっちや」
咲「はいっ」ヒュン
洋榎「……シュートや!」パシッ、シュウ
ガタンッ
純「くっ、霞!」バチン
霞「……」パシッ
エイスリン「トメル!」キュッ、キュッ
霞「……衣ちゃん!」ヒュン
衣「……」パシッ
塞「……」キュッ
衣(……試してみるか)シュウッ
ガタンッ
衣(……)
豊音「よし、胡桃!」バチン
胡桃「一本じっくり!」
白望(おそらくこれが最後の攻撃……)
塞(エイスリンは大分警戒されてる。だったら……)
エイスリン(……トヨネ)
胡桃「……塞」ヒュン
塞「豊音!」パシッ、ヒュン
豊音(もう時間がないので、ここで決めるよー!)パシッ
純「食い止める!」キュッ
豊音(力で勝てないのはわかってる……)
純「……」キュッ、キュッ
豊音(でも、ゴール下の闘いはパワーだけじゃない!)フワッ
純「なっ!?」ガクッ
豊音「これで、終わり!」シュウッ
純(――フックシュートだと!?)
シュパッ
(白)73-72(紅)
照「……ディフェンスに背中を見せるほどの体勢から繰り出されるフックシュート――」
照「――“背向”の豊音!」
純「くそっ、負け……」
霞「まだよ!」
白望「……まずいっ」
霞「衣ちゃん!」ヒュン
衣「……」パシッ
胡桃(ダメだ、間に合わない)
塞(決められる……)
衣「……衣たちの、負けだな」シュウッ
ブーーーッ、ガタンッ
健夜「試合終了!」
―試合結果―
(白)73-72(紅)
(白)
胡桃……8得点
エイスリン……33得点
白望……14得点
塞……4得点
豊音……14得点
(紅)
怜……4得点
久……7得点
衣……28得点
華菜……0得点
洋榎……8得点
文堂……2得点
霞……4得点
純……14得点
咲……5得点、15アシスト
豊音「やった、買ったよー!」
胡桃「辛勝ってかんじだけどね……」
エイスリン「ツカレタ……」キュウ
白望「……もう動かない。絶対に」
塞「こらこら」
照「おめでとう。二軍相手とはいえ、まさか本当に勝つとはね」
豊音「照の指示のおかげだよー?」
白望「……あとは、妹さんのね」
胡桃「えっ?」
照「ふふ、こっちとしても貴重な経験になったよ」
豊音「同好会は認めてくれるんだよねー?」
照「ああ、その話なら大丈夫だ。もともと私たちにそんな権力はないし」
エイスリン「!?」
胡桃「よくないよ、そういうの!」
照「お前たちに、バスケ部に入ってほしいのは本音さ」
塞「見事にやられたね……」
白望「……だるい」
照「また練習試合をしようね」
エイスリン「ヤダ!」プンプン
照「今度は一軍で挑ませてもらうよ」
胡桃「絶対やだ!」プンプン
豊音「ま、楽しかったからいっかー」
塞「たまには本気でやるのも、悪くないかもね」
白望「……絶対、やだ」ガクッ
………
……
…
照「……咲、お疲れさま」
咲「お姉ちゃん」
照「あの結果は、どう受け止めればいい?」
咲「……そのままだよ」
照「そうか……」
咲「衣ちゃんの支配は、私がある程度封じてた」
照「あの試合が咲に支配されていたなら、同点になっていたはずだね」
咲「そうだね」
照「咲の支配を打ち破ったのは、誰……?」
咲「……強いて言うなら、全員かな」
照「チームの絆というやつか……」
咲「それが、うちのチームの課題?」
照「うん。二軍も各々、欠点を見つけたみたいだし、有意義だったね」
咲「よかった。……今年のインターハイは――」
照「――私たち、姉妹率いるチームが頂く!」
おわり
ちなみに一軍
pg咲(兼二軍リーダー)
sg菫
sf照
pfダヴァン
cドム
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