照「お菓子屋さんになりたい」 (51)

菫「んっどうしたんだ照、急に…」

照「私はお菓子屋さんになりたい…」

菫「そうか…なったら良いんじゃないか。お前ほどの才能がプロに行かないのはもったいないと思うが」

照「私はお菓子屋さんになる」ガタッ

菫「おっどうした照…部活中だぞ……ほら、早く座れ」

照「私はお菓子屋さんにならねばならない」プルプルプルプルプル

菫「こらこら興奮するな…ほら落ち着けって今お茶を入れるから、ほら座って、」

照「私はお菓子屋さんになる。だれにも止められない」ダッ

菫「ああああああああああ照が逃げたぞおおおおおおおおおお」

照「お菓子のチャンプになる…」ダダダダダ

菫「捕まえろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1462985672

照「私はお菓子屋さんになる…」

照「私はお菓子大好き…」

照「あっでも私お菓子作れない…」

照「どうしよう…お菓子作れないとお菓子屋さんじゃない…」

照「頑張ってここまで来たのに…」

照「私じゃお菓子屋さんになれない…」ジワッ

???「そんなことないぜお嬢さん」

照「あ、あなたたちは…」

ハギヨシ「我らがあなたの指示通り手足となって動きますゆえ…」

京太郎「だからそんなに…泣かないで下さいよ照さん!」

照「ありがとう知らない人たち…」

ハギヨシ「我々だけではありませんよ」

照「えっどういうこと…」

京太郎「実はお菓子業界は今や弘世コーポレーションに支配されてまして」

ハギヨシ「市場の独占により数多のお菓子屋さんがやぶれました」

照「話が大きくなってきた」

京太郎「だが照さんがいれば百人力だ!弘世の支配を終らせられる」

ハギヨシ「各地にもまだ様々な技を持ったパティシエたちも生き残っております」

京太郎「そういう力を集めて結集させれば…」

照「お菓子の暗黒時代が終わる…」

ハギヨシ「あなたが終わらせるのです」

京太郎「頼むぜ照さん」

照「分かった…お菓子チャンプを目指すものとして放ってはおけない…」

ハギヨシ「では!」

照「うん、私は…」



照「お菓子屋さんになる!!!」

ハギヨシ「では私はこれで…」

照「え、行っちゃうの?」

ハギヨシ「あなたの力となるものが一人でも多くなるよう、動かねばなりません」

京太郎「大丈夫だ照さん。俺もこう見えて師匠の弟子だ。」

京太郎「レパートリーは少ないが…腕ならそこら辺の奴には負けないぜ」

ハギヨシ「レパートリーを増やすには各地にいる実力者たちにレシピを学ぶといいでしょう」

ハギヨシ「もちろん私もメールなどでお教えできます」

京太郎「さあ行こうぜ照さん!」

照「うん!」

京太郎「まずはどうしようか」

照「なら私は↓1に行きたい」

阿知賀

ワハハ「ついたぞー」ワハハ

照「阿知賀にやってきた」

京太郎「奈良県ですか…」

照「何か気になるの?」

京太郎「奈良には和菓子を使う強大なお菓子屋があるそうなんですが」

照「お菓子!?行きたい!」

京太郎「最近そこが弘世の傘下に入ったという話が…って、照さん!?」

照「お菓子大好き」ダダダダダ

京太郎「そっち逆っす」

照「お菓子を出せ」

穏乃「いらっしゃーいって…」

照「ここにお菓子があるのはわかってる」

穏乃「お前は…宮永照!」

照「はやくはやく」

穏乃「…帰ってください。あなたに売るお菓子はありません」

照「なんで?」

穏乃「私は奈良を…阿知賀を守らなきゃならない」

穏乃「弘世と敵対するわけには、いかないんです」

照「…そう」

照「ならば力ずくでいただいていく」

照「そして私の夢の礎になってもらおう…」ゴッ

照「金髪の人」

京太郎「京太郎です」

照「あなたのお菓子でねじ伏せて」

京太郎「了解っす!指示をお願いします」


京太郎「俺のお菓子力は120!レパートリーはプリン、シュートケーキ、シュークリームだぜ」

照「プリン食べたい」


京太郎「了解!くらえこれが本場仕込みのトロトロプリンd」

穏乃「三食団子!!」

京太郎「ぐああああああああああああああああああああああああああああ」

照「き、金髪の人っ」

京太郎「バカな…俺のトロトロ高級牛乳プリンが…三色団子ごときに…?」

照「牛乳プリンそんな好きじゃない」パクパクモグモグ

京太郎「し、しまった…」

穏乃「実戦不足だね…それに」

照「三色団子もそんなに…」パク

照「!!このおだんごすごくおいしい」

穏乃「実力不足だ」

京太郎「ぎゃあああああああああああああああ」



ドゴォォォォォォォン


京太郎「無念…」ガフッ





弘世コーポレーション奈良地区マスター



【和菓子王】高鴨穏乃



穏乃「私は全国12人のマスターの一人」

穏乃「お菓子力は30000だよ」

照「……!」

穏乃「悪いことは言わない…夢はあきらめて東京に帰るn」

照「いや」

穏乃「!…この実力差じゃどうにもならない」

照「私はお菓子屋さんになる」

照「邪魔するものは全部倒す」



穏乃「プッ」

照「!?」

穏乃「あははははははははなにそれー子供みたい!」

照「なんで笑うの…」

穏乃「だって子供みたいで…あははっ」

照「笑わないで」

穏乃「とにかく出直してきてください!」

穏乃「今のあなたじゃ私にも勝てない」

穏乃「力をつけないと」

照「…」

穏乃「これは独り言ですけど」

穏乃「今阿知賀には弘世に対する反対勢力があります」

照「…!」

穏乃「豊富な人材がそろっているはずです」

照「ありがとう」

穏乃「ただの独り言ですよ」

ワハハ「着いたぞー」ワハハ

照「ここが阿知賀女子」

憧「止まりなさい!」

照「!」

憧「何者か知らないけど、痛い目あいたくなかったらすぐに立ち去りなさい」

照「待って、私たちは和菓子屋さんに言われて」

憧「っ!尚更ここに入れさせるわけにはいかないわね」

灼「待って憧、あの人達は敵じゃないと思…」

憧「どうして?」

灼「あの角…あれが噂の宮永照だと思…」

憧「!あれが…じゃあ周りは噂の龍門渕の生き残りってとこかしら」

灼「たぶん…執事の姿は見えないけど、あの車は資料にあったはず」

憧「そう」

憧「いいわ!今門を開けるわよ」


ギイイイイイイイイイイ



灼「ようこそ阿知賀女子へ」

憧「それで、どういった御用かしら」

照「私はお菓子屋さんになりたい」

照「しかしお菓子を作ることができないため、おいしいお菓子を作れるお菓子屋さんを探してる」

照「下の和菓子屋さんを倒して和菓子を手に入れようとしたけどこっちには使えない金髪の人しかいなくて負けてしまった」

京太郎「須賀です」

照「ここにお菓子を作れる人がいると聞いて来た」

照「私にお菓子を作ってほしい」

憧「和菓子屋にね…嫌味かしら」

照「?」

灼「もともとここには3人のお菓子使いがいたけど誰も弘世には勝てなかった」

灼「そのうえ一番強かったうちのエースが弘世にスカウトされていってしまった」

憧「その裏切り者が下で和菓子屋やってる穏乃よ」

憧「ここに自分より強い奴がいないのを分かってて…」

照「そんな…」

憧「弘世に勝てるかもしれないのは穏乃だけだった」

灼「ほんとは他にも【おもちロード】っていうお菓子使いがいたんだけど…」

憧「まだ見ぬおもちを求めて…とか言ってどっか行っちゃったわ」

憧「信じてたのに…さっさと皆こんなとこ捨ててどっか行っちゃった」

灼「憧…それは違…」

憧「違わないでしょ!」

憧「おかげで最高の仲間が今じゃ最悪の敵ってわけ」

照「3人って言ってたけどあとは誰なの?」

憧「私よ…といっても二つ名もないお菓子力200の雑魚だけどね」

灼「憧…」

憧「だからここには弘世に勝てるような人材はいないのよ…分かったら…」

照「分からない」

憧「!」

照「私はお菓子が食べたい」

照「しかし私はお菓子を作ることができない」

照「あなたはお菓子を作ることができる」

照「ならなぜあなたはお菓子を作ろうとしないの?」

憧「私が怖気づいてるって言いたいの?」

照「そんなこといってない…ただあなたがお菓子を作ろうともしないことを疑問に思っているだけ」

憧「私は穏乃とは違う!私じゃ弘世には勝てないって言ってるのよ!」

照「今菫の話なんかしてない…あなたに聞いてるの」

憧「分からない奴ね!今のお菓子業界で弱い奴になんて意味ないのよ」

照「あなたこそ私の話を分かってない」

照「私はただあなたにお菓子を作ってほしいだけ」グイッ

憧「ちょっちょっと何…」

ガシィ

憧「ふきゅっ」

照「お願い…(お腹すいてるから)私にお菓子を作って」

憧「ち、近い近い!」

憧「分かったわよ!作る!作るから!」

照「ありがとう」

憧「いくわよ…これが私のお菓子…デカ盛りパフェよ!」

灼「いきなり必殺技…!」

憧「バナナ!イチゴ!サクランボ!ミルクセーキ!」

灼「風評被害が加速する…!」

憧「食らいなさいアコちゃん特性!スペシャル☆ジャンボスイーツ(笑)~世界一位風~よ」

照「あまくておいしい」

憧「そう…?ありがとう」

照「でも下の和菓子屋さんほどじゃない」

憧「!…何よそれ…頼んどいて文句とかふざけてるわけ?」

照「ふざけてるのはあなた」

憧「っこの!」

灼「憧やめて!」

憧「はなしてよ!」

照「和菓子屋さんのお菓子には力強さがあった」

憧「強さ…」

照「和菓子屋さんの見せた穏やかで雄大な気配」

照「まさに深山幽谷の化身」

照「それを支えるのは阿知賀の風景、そこに住む人々の笑顔」

照「そしてそれらが私を包むように迎えてくれる」

照「一言でいうなら…」



照「和」

憧「!」

照「そんな『和』があの子のお菓子の強さを作っている」

照「あなたのお菓子は甘いだけ」

憧「~~~~~~ッ!!!!!」ダッ

灼「あ…待って!」タタタッ

照「いっちゃった」

京太郎「言い過ぎっすよ~十分おいしいじゃないすかー」

ワハハ「あれは大分こじれたな」ワハハ

照「私は本当のことをいっただけ」

京太郎「でもあれじゃ仲間になってくれないっすよーほんと何してんすか」

ワハハ「今はひとりでも味方がほしい時なのになー」ワハハ

照「なんで私のことみんなで責めるの…」ジワッ

京太郎「やべっ」

照「うう…」グスッ


「コラーーーーー女の子泣かしたのはどこのどいつじゃい!」


ワハハ「そいつです」

京太郎「違っ」

「問答無用…レジェンドツモ!」

京太郎「ぐああああああああああああああああああああああああああああ」

照「あなたは…?」

「なーに名乗るほどのもんじゃアないさ…」

「ただ人は私を阿知賀のレジェンドと呼ぶ」

「私を呼びたきゃそうよびな」



ガララ

灼「あ、ハルちゃんこっち来てたの」

晴絵「あっ馬鹿…いま名乗りの途中…」

晴絵「とにかくはレジェンド!よろしくね!」

灼「わずらわし…」

晴絵「改めまして赤土晴絵、レジェンドよ。よろしく」

照「宮永照、お菓子屋さんです。こちらこそ」

晴絵「お菓子屋さん…ホントになるつもりなんだ」

照「私の夢です」

晴絵「それで憧にお菓子作りをねー」

照「あの子の様子は…」

晴絵「大分こたえてたわねー」

照「…傷つけてしまったなら、申し訳ありません」

晴絵「いいのいいの、あなたが言わなければ私が言ってた」

晴絵「なまじ器用なだけにどうにも小手先だけで作ろうとしちゃうのよねー」

晴絵「穏乃たちがいなくなってからは特にそれが目立っていた」

晴絵「あの子自身も分かってはいるんだと思うけど…」

灼「…」

晴絵「とにかく今日は悪いけど出直してきてくれるかな」

照「分かりました」

晴絵「知り合いがやってる旅館があるからそこに泊まっていくといい」

松実館

カポーン

照「良いお湯…」

ワハハ「しかしどうするんだー?正直ここにいても弘世に勝てる人材は得られないと思うけど」ワハハ

照「…」

宥「お役に立てなくてごめんなさい…」

ワハハ「まさか噂の和菓子屋がすでに敵方とはなーまいったまいった」ワハハ

宥「玄ちゃんがいればもっと助けてあげられたんだけど」

照「ところであなただれ」

ワハハ「ワハッ!?」

宥「あ、ごめんなさい私ここの旅館の娘で松実宥です」

照「そうよろしく(お風呂の妖精さんかと思った)」

宥「そう…憧ちゃんと…」

宥「お菓子はどうだった?」

照「おいしかったけどまだまだあまい…」

宥「そっか…」

ワハハ「玄って子がいれば良かったんだけどなー」

宥「私は憧ちゃんのお菓子すきなんだけどな」

照「…?」

宥「玄ちゃんのも穏乃ちゃんのもおいしくて好きなんだけど…」

宥「むかし一回ね私のためにお菓子作ってくれたことがあったんだぁ」

宥「そのときはとってもあったか~な気持ちになれたんだけど…」

照「…」

ワハハ「今使えなきゃしょうがないんだけどな」ワハハ

宥「うん…」

宥「そうだ!」

ワハハ「どうしたんだー?」

宥「あのね…今止まってるお客さんにちょっと変わった人がいてね…」

宥「なんでも強いお菓子使いを探して各地を旅してるんだって」

宥「もしかしたら力になってくれるかも…」

ワハハ「おーそれはぜひ会ってみたいな」

照「うん。それじゃあお風呂あがったらすぐに…」

「その必要はない」

照「え…」

チリーン

宥「あっ新免さん…」

那岐「変な客で悪かったね」

宥「あのそれはそういう意味じゃなくて…」

ワハハ「いやー充分変わってると思うぞー」

那岐「ひぅっ!?」

照「普通お風呂で鉢巻しない」

ワハハ「それより刀のほうが…錆びないのかー?」

那岐「名刀だから大丈夫…」

那岐「鉢巻もお風呂でも気合を無くさないため」

那岐「変じゃない」

照「…へん」

那岐「その角のほうが変」

照「…」

那岐「…」

宥「い、いったんお風呂でよっか」

宥「えっとそれじゃ」

那岐「新免那岐です…二つ名は【桃武蔵】、お菓子力は8000です」

照「宮永照、お菓子屋さんです」

ワハハ「8000!?すごいな」

那岐「ここにはかつて敗れた宿敵【おもちロード】に会いに来たんだけど…」

宥「ごめんね…いまどこにいるのか分からなくて」

那岐「いいよ…松実玄より強いって言う弘世のマスター」

那岐「そいつを斬ってなんとなく過去の自分をごまかす事にする」

ワハハ「でもそいつはお菓子力30000っていってたぞー」

那岐「格上に挑むための技術、それが武だよ」

那岐「ただものじゃないのは分かってる」

那岐「この地に入ってからずっとなにかに見られてる気配がする」

那岐「山のように大きな何かに…ここはもう奴のテリトリーって事だろう」

那岐「それよりも…」

照「?」

那岐「そこの虎さんはやらないの?お菓子」

照「私は食べるのが仕事」

那岐「ただならぬ気配を感じたんだけど、そうか」

ワハハ「ところで私たちに力を貸して欲しいって話だけど」

那岐「悪いけど諸国放浪の修行中だから。仕官の話は全部断ってる」

照「残念」

那岐「それじゃあ明日早いから」

照「まって」

那岐「?」

照「せめてお菓子の一つくらいつくっていって」

那岐「悪いけどそれも…私は勝負でしかお菓子は作らない」

那岐「だれか戦ってくれる人はいるの?」

照「えっと」キョロキョロ

照「…今いない」

那岐「それっじゃ悪いけど」

照「そんな」

那岐「じゃあ代わりにハイ」

照「これ…」

那岐「岡山名物黍団子、それじゃお休み」

照「うんお休み」モグモグ

憧「…」

照『あなたのお菓子は甘いだけ』

憧「ホント何なのよ」

望「憧」

憧「…なに」

望「明日穏乃が闘うんだって、相手は流浪のお菓子使い」

憧「!…知らない」

望「ふーんならいいけど」

憧「…」

那岐「ん…いい朝だ」

憧「早起きなのね…ちょっといい?」

那岐「…あなたは?」

憧「私は新子憧、あなた穏乃と戦うんだって?」

那岐「新子…思い出したよ、阿知賀の三番目だ」

憧「そう…それで悪いんだけどその前に私と戦ってくれないかな」

憧「不意打ちみたいで悪いけど、今この場で…」


那岐「水菓子二刀流桃斬樫船盛」チャキッ

憧「…!」

那岐「…おそいね」


那岐「私は武に生きる者、元より勝負を逃げる気はない」スッ

那岐「いつでもどこでも寝てる時でも挑んできてくれて構わない」

那岐「ただ」ギロッ

那岐「戦いたいというなら帯刀ぐらいしてきてほしい」

憧「普通刀なんて差さないわよ…」

那岐「闘気がないものとは戦えないってこと」

憧「…あたしが本気じゃ無いって言いたいわけ?」

那岐「あなたは感じない?彼女の闘気を…」

憧「彼女っって…」

那岐「日が昇ったころからか…私としたことがあてられて目が覚めてしまった」

那岐「本気で戦いたくなったらいつでもいいから」ザッ

憧「…」

憧「…」

憧「…なんなのよ」

穏乃「おっ来たね」

那岐「またせた?」

穏乃「そうでもないよ、じゃあ始めよっか」

那岐「その前に改めて名前を聞いてもいいかな」

穏乃「高鴨穏乃。和菓子屋さんだよ」

那岐「ありがとう。私は新免那岐…おかしの道を極めるため修行中の身だ」

那岐「…あなたは私に何を見る…?」

穏乃「う~ん鋭くとがった峰…かな」

穏乃「一見するとおっかないけど…」

穏乃「本来そういう自然の厳しさって長い年月の中で出来上がっていくものだからね」

穏乃「木々の死んだ山は死んでしまう…今にも崩れそうなあなたは危なっかしくみえるよ」

那岐「…深く刺さるね…だけどもとより私が目指すのは森林限界のその先…」

那岐「花すら咲かぬ頂だけだ」

穏乃「そういうあなたは何か見えているのかな」

那岐「先ほどから山しか見えないよ…遠くからははっきりみえていたのに」

那岐「こうしてる今もあなたを見失ってしまいそうだ」

那岐「深い…濃い…大きい…こういう強さもあるんだね…」



穏乃「うん…じゃあ、いくよ」

那岐「…来いっ」

憧「…」

晴絵「始まったね」

憧「ハルエも見に来たんだ」

晴絵「解説がいるんじゃないかって思ってね」


那岐「いくぞ…水菓子二刀流!」シュパパパパ


憧「出た…!あれは…」

晴絵「新免那岐、桃武蔵、水菓子使い!そのメインスタイルはフルーツ!」

晴絵「目にもとまらぬカッティング技術はまさに剣豪!」


穏乃「こっちもいくよ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


晴絵「対する穏乃は和菓子…恐らくは小豆系!」

憧「こんなの穏乃が勝でしょ、水菓子なら系統としては和菓子だろうし」

憧「和菓子で穏乃が負けるはずがない」

晴絵「それはどうかな」


那岐「焼菓子二刀流…太流刀!」


憧「あれは…タルトっ!?和菓子使いなんじゃ…」

晴絵「新免那岐は水菓子を中心に五つのスタイルを持つ…あれは実戦的な火の方…焼き菓子だ!」

憧「五つのスタイルですって…!?」

憧(本気ですらなかったってわけ…)

晴絵「彼女の格好は地元である岡山のアピールも含まれる」

晴絵「厳しいお土産お菓子業界、様々な技術を取り入れたスタイルは珍しくない…」

晴絵「すべては売れるため!」

穏乃「まだまだいくよ…玄さんもうならせたこのおもち…」シュッ

玄『私が間違ってましたのだ…大きさだけじゃない…フニフニとしたこの弾力!この柔らかさ!』

玄『最初はこんな薄っぺらいのおもちじゃないと思ってたけど、最高ですのだ!この』

穏乃「生八つ橋!」バシィ

那岐「くっ」ガギィン

穏乃「まだまだあげてくよっ」

那岐(いけどもいけども山の中…すべて越えねば戦いにすらならない)

那岐「越えて見せるさ…我が剣で!」


憧「それでもお菓子力では穏乃が圧倒してるわよ!?」

晴絵「いや…新免那岐のお菓子力は五つのスタイルの平均値、五つすべてでほぼ同じお菓子力をキープしてる」

憧「なによそれ…五つで同じって、8000の五倍なら合計で40000?!穏乃より強いって事!?」

晴絵「五つのスタイルは互いを支えあい一つの流儀を作るもので単純な足し算ではないけど」

晴絵「そのお菓子力をそのままとらえないほうがいい」

晴絵「それにしても8000か、鍛え上げたもんだね…玄と戦った時は2000ほどだったからね」


那岐「地産二刀流!黍団子、黒甘納豆!奥義無二星!」


憧「はやいっ」

晴絵「どこまでも実戦的!とにかく早く提供して回転率を上げるため…!」

晴絵「カットするだけのフルーツを中心にあらかじめ焼いてあるタルト…」

晴絵「そして日持ちする携帯食の数々…いつでもどこでも素早くお菓子を供する事ができる」



穏乃「早い…!私と同じ和菓子で、私よりもずっと早い!」

那岐「悠長に作ってる暇なんかなくてね」

那岐「捉えた…!そこがあなたの本体だ!」

ズギャアァッ

穏乃「っくぅ!」

那岐「懐へ入ったぞ…蔵王権現…」

穏乃「っまだまだ…」

那岐「奈良阿知賀風二刀流」

穏乃「!?」

那岐「吉野山柿の葉斬り」

穏乃「ぐあぁっ!」


憧「あれは!?」

晴絵「地の型が地元、水の型は水菓子、そして火の型は焼き菓子…もとい予め持っておく加工品」

晴絵「そして風の型は他流儀!実戦の中で作られる型無き型…!」


那岐「これで終わりだ」

那岐「空腹二刀流奥義…仙香桃源郷」

穏乃「桃のいい香りが…」


晴絵「最後は食の本質…空腹を煽る香の技」

晴絵「これが新免那岐…岡山最強のお菓子使い!」


那岐「さあ桃を乗せて完成だ…」

那岐「一連の型を総じて…古都風桃源郷太流刀と名付けよう」

穏乃「ぐああああああああああああああああああああああああああああ」

憧「しずーーーーーーーーーーー」

憧「しずっしずぅ…!」

穏乃「あ、あこ…?見に来てくれてたんだ」

憧「そんなしずが、負けるなんて」

晴絵「よもや新免那岐がこれほどとはね…」

那岐「ありがとう高鴨穏乃…おかげでまた一つ、私は強くなれた」

憧「そんな…しず…」


「まだ終わってない」

「「「!?」」」


照「まだ和菓子屋さんのお菓子が出ていない…そうでしょ?」

憧「あんた…宮永照!?」

那岐「どういうこと?高鴨穏乃はすでに倒れた…この勝負は私の勝ちで終わったはず」

照「そんなことは知らない」モグモグ

那岐「!?」

照「私はお菓子が食べたい」

照「彼女はお菓子屋さん」

照「そしてお菓子を作っていた」

照「ならばお菓子を出すべき…そう言ってるだけ」

憧「やめてよっ!しずはもう…」

那岐「そうだ…!深く斬り込んだ、これ以上戦えない…!」

照「お菓子屋さんはお菓子を出すべき」

照「それに…」

穏乃「…」ググッ

那岐「!?」

照「彼女の火はまだ消えてない」

穏乃「ありがとう…宮永さん…」

穏乃「今お菓子を出すから…」

憧「しずっ無理しないで!」

那岐「もう勝負はついた!」

晴絵「穏乃…つらいなら立つ必要はないよ」

晴絵「相手に何もさせないのも立派な戦略」

晴絵「残念だけどこれも勝負。たとえ穏乃のお菓子のほうが強くても負けることもある」

穏乃「ありがとうございます赤土先生…」

穏乃「でも私は途中で投げ出す訳にはいきません」

穏乃「待っててくれるお客さんがいる…!」

照「私は同業者」

穏乃「私はなんどだって立ち上がれる…私は…私は!」

穏乃「お菓子屋さんだっ」

晴絵「そうだったね…それが私にはない穏乃の強さだったね」

那岐「もう勝負はついたのに…!倒したのに…こんなのおかしい」

照「昨日から勝負とか倒したとか何言ってるの?」

照「あとほかにもいろいろ持ってたのにきびだんごしかくれなかった」

照「おかしいのはあなた」

照「おかしをなんだとおもってるの?」

那岐「そんなの決まっている…お菓子は闘いだ!」

那岐「弱いものは消えていく…だから強くならなきゃならない!」

照「どうやら本当にわかってないらしい」

照「私はお菓子が好き」

照「お菓子を食べると幸せな気持ちになれる」

照「お菓子で一番大事なのは…そこでしょ?」

那岐「そんなのは甘いだけの戯言だっ」

照「違う」

那岐「どのみち彼女にこれ以上なにができるっていうの」

憧「たしかに…しずの体力はもう…」

晴絵「おそらく最初に出すつもりだったのは一口サイズの和菓子をいくつか盛り付けたもの」

晴絵「だけど今あるのは八ッ橋だけ…あれ一品じゃ弱い!」

憧「今から作るしかないけど…」

晴絵「出せて一品…どうする穏乃!」


穏乃(今使える武器は…餡子と寒天、桜の塩漬け…お皿も無事だ)

穏乃(大丈夫、新免さんに勝てなくても宮永さんに一品出すぐらいなら)

穏乃(…いや違うだろ穏乃!)

穏乃(お客さんを満足させる…ライバル店にも勝つ)

穏乃(両方やるのがお菓子屋さんだ!)

穏乃(でもどうすれば)

憧「しずっ」

穏乃(憧…そうだ、憧なら…)

穏乃(そして宮永さんなら…咲のお姉さんなら!)

穏乃「やるしかない!」

穏乃「いくぞっあんこに寒天、桜が咲いて、嶺上開花!」

照「!」

穏乃「桜羊羹だっ!」

晴絵「さすが!…と言いたいところだけど」

那岐「本来の十分の一の実力も出てない」

憧「っていうか、あれ?」

憧「なんか大きくない?」

晴絵「あれじゃまるでケーキ…ハッまさか!」

穏乃「そしてこの…」スッ

穏乃「おやつに持ってきた食パンです」

穏乃「生クリームもあります」

那岐「し、正気?!」

穏乃「八ッ橋を並べて…」

憧「うそでしょ!?」

那岐「バカげてる…!」

晴絵「だがそこが良い」


穏乃「完成です」ゴッ

照「それは…」

穏乃「ケーキです」ゴッ

照「ほんとにケーキ…?」

穏乃「ケーキだよ~」

照「…」

那岐「あなたも観光地お菓子に携わる者なら分かってるはずだ」

那岐「そんなおもしろアイディアでは勝負に勝てないと…」

穏乃「あ、ちなみに宮永さん…」

穏乃「それ」

穏乃「その大きい奴」

穏乃「自由に好きなだけとって食べていいですよ」

那岐(!?殺気ッ?!)クルッ

照「…」ギギギー

那岐「~~~~~~ッッ!!!??」

照「コークスクリュー」ドゴォ

那岐「ぐっ!?」

穏乃「もらった…」

那岐「こんなのおかしい…」ドサッ

照「もぐもぐ」モグモグ

穏乃「っ!」ガクッ

憧「しず、大丈夫!?」

晴絵「両者戦闘不能…この勝負、なしとする!」

那岐「ふざけるな!私はちゃんと倒して…」

晴絵「たしかにお菓子勝負ではあなたの勝ちよ新免さん」

晴絵「お菓子使い同士の決闘としてはね」

晴絵「でも穏乃は立ってしまった…しかもお菓子を作った」

那岐「それは」

晴絵「これはルールのある公式の試合じゃなくいわば何でもありの戦」

晴絵「だからこそあなたも勝機があると踏んだんだろうけど」

晴絵「この場合相手が戦闘の意志をみせるなら勝負続行が古くからの習い」

晴絵「そしてあなたは今動けない…完全に治すには一晩はかかるわ」

晴絵「そして教育者としてこれ以上の私闘は認められない」

那岐「勝ったのに…やっと勝ったのに!」

照「まだそんなこと言ってる」



照「あなたの目的は勝ことだけなの?」

那岐「決まってる!勝つそのために強くなるそのために道を…あれ?」

照「何のためにここに来たの?」

那岐「そうだ、高鴨穏乃に…彼女に勝つために…あれ違う、私は松実玄にリベンジを…ちがうそうじゃなくて」

照「なんで勝負にこだわるの?」

那岐「それは…松実玄にまけたから…?ちがう負けたのは弱いからで…弱いと負けて…」

照「なんであなたはお菓子を作るの」

那岐「私は強くなりたくて…弱い自分を変えたくて…」

照「強さってなに」

那岐「弱いとだめだから…私は岡山のために…強くないと…」

那岐「弱いとなくなっちゃう…強くならないと…」

照「あなたはそれでいいの?」

照「本当にそれが…」



ゴオォォォォォォ





照     魔     鏡



照「あなたの本質なら」





照「そんなのは間違ってる…」

照「そんなのは麻雀だけで十分」


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