お題ください、ショートショートします (33)
>>2>>3>>4で頑張ります
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かずみマギカ
心臓
変態宴会芸
「か、かずみマギカ!!」
水を打ったように静まり返った場とは反対に、私の心臓はこれ以上ないくらい早鐘を打った。
皆の頭にはてなが浮かんでいるのがやけにはっきりと見えた。
頭はそれ以上思考することを拒むかのように同じワードを周回させる。
ざわ、ざわと少しずつ聞こえ始めたざわめきを聞き、私は他人事のようにぼうっとしていた。
やっちまった。
終りだ。
修復不能。
The end。
そんな不吉な言葉たちがぐるぐると頭を渦巻いて、もうどうしようもなく私を赤面させた。
死にたいと思ったが、死んでも恥は消えないのでやっぱり死にたくない。
こんな事ならもっと下ネタに走るべきだった。
もっと変態チックな、チープな、分かりやすいものにするべきだった。
自分の知っているもので勝負するべきだったのだ。
「何か変態宴会芸とか持ってないのかよ」
ああ、私の様ないかにも裏方の人間が何故、今日に限ってその申し出を受けてしまったのだろうか。
魔法少女まどか☆マギカの妹、かずみ☆マギカ。
そんな訳の分からない設定で衣装もなしに訳の分からないポーズをすれば、当然こうなる事は分かっていたはずなのに。
私の一世一代の一発芸は散った。
私など居ないかのように再び話に熱が入ってきた酒の場に、野となる事も山となる事も出来なかった私はぽつりと独りきりだった。
静まり返った心の中で、やはり心臓の音だけが大きく聞こえていた。
以上です。お題くれた方ありがとうございました
かずみマギカがよく分からなかったのですが、魔法少女的なそれでしょうか
乙
スレ何回も立てるよりはこのスレで何個かやった方がいいんじゃない?
ドリル
時計塔
お題
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ジョルダン
街で一番高いその時計塔はいくつもあった。
本当に何本も何本も地下茎みたいに地面から生えてきていて、どれがどれなのかもう分からなくなってしまった。
余計な事を考えている暇はない。
僕は汗まみれの額を拭ってまた、時計塔の下を掘り返し始めた。
足で踏みつけると、ドリルの心地よい振動が身体を揺らす。
もう何時間繰り返しただろうか。
三時間ごとに古ぼけた音で喧しいメロディを鳴らす「と言われている」そいつは、僕の心をそこはかとなく不安にさせる。
気の遠くなるような同じ作業に、頭がぼうっとする。
「おぉおーーーーイッ!!倒れるぞォオオーーーーッ!!」
「! 了解!!」
丁度今、隣の奴が掘り返していた時計塔が倒れようとしていた。
名前は何といったか、屈強そうな印象を受けた初対面で、笑いながら僕の肩をバシバシ叩いてきた奴だ。
めきめきと音を立てながら人家をなぎ倒し、時計塔はゆっくりと横になった。
一番家についている大きな時計盤は、最後にカチ……と小さな断末魔を上げて止まった。
「止まってるか?」
「ああ大丈夫だ、ちゃんと時間内に倒せてる」
「お前の方大変そうだな、手伝おうか?」
「いやいい、ありがとう。こうしている間にも他の時計塔の時間がなくなるかもしれない」
「ああ、そうだな。頑張れよ」
「お前もな」
そうして僕はまた時計塔を掘り起し、奴は別の塔へと駆けていく。
持ち運ぶドリルは相当に重いが、そうも言っていられなかった。
今頭の中は、掘って倒して駆ける事でたくさんなのだ。
酸素が欲しい。
身体を休める場所が欲しい。
それすら贅沢に思えるほど今、余裕がなかった。
これら全てを制限時間内に掘り起こさなければ僕たちは、中に詰まっている時限爆弾で木端微塵になるのだ。
そんな試練を、何度も何度も繰り返してきた。
奴はこれをゲームのお題だと言った。
でも僕たちの中には、誰一人としてこの状況を諦める者も、楽しむ者も居なかったのである。
ゲーム感覚の奴も諦めた奴も、とうの昔に死んだ。
飽き貯めきれなかった奴だけが生き残ってきた。
「終わったァアア――――ッ!!終わったぞォオオ―――――ッ!!」
そしてとうとう全ての塔が倒れた。
最後の塔の時計は残り五分をきっちりと示したまま、静かに横たわっていた。
「終わった……」
「ああ、皆よくやった」
「俺たちはまた、生き残ったんだ」
「しかも今回死傷者ゼロだぜ……上出来だ……」
それぞれがドリルを投げ出す音が乱暴に響く。
≪ピンポンパンポン♪ 【土】のステージクリアです≫
そしてこの安っぽいアナウンス。
皆の間に安堵と不安が広がっていく。
終わればまた、お題。
この疲弊しきった俺たちに、これ以上……
≪【水】のステージ、開始です≫
何をやらせるというんだ。
あ、嘘でした、二個目も違います
そんな事はなかった。
彼は空っぽだった。
空っぽのままの彼は空気より軽くて、浮いていくのが嫌で縋ったものは他人の手柄だった。
匿名の世界では、誰が何をしたかなんてわかりっこない。
そうやって自分に言い聞かせながら、彼は今日もまた「お題」のスレが立つのを待っていた。
自分では何もしないまま、じっとじっと。
儀式
徳川家康
クリオネ
徳川家康にとってそれは、何でもない事だったに違いない。
「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」
かの名将は待って待って待ち続けて、200年と言う泰平の世を手にしたのだった。
彼の築いた栄光が終わり時代が流れ、平成になると人は待てなくなった。
信号機には待ち時間の残りが表示され、電車が数分前後するだけで辺りは大混乱。
かつて家康公が望んだ世の中ではないだろう、時間にがんじがらめに縛られた生活が1億3000万人を苦しめていた。
泰平もほどほどに自らに鞭打って、まだ日も出ないうちから起き出して仕事に精を出す。
さえずりすら聞こえない機械音の中、茶を飲む暇もない。
息苦しい平成だ。
そんな折、暇を見つけて博物館へ足を運んだ。
何を思ったか一現代人は、ゆっくりとした時間を欲しがったらしかった。
中はクーラーも効いて涼しい。
特集だなんだと言って「期間限定」で飾られていた家康公は、そのクリオネみたいな真っ黒い袖をゆったりと脇息に預けてそこに描かれていた。
あー昔は良かったなぁ、なんて、生まれても居ない時代を想う。
今となっては彼の生きた時代は完全に過去のものになってしまった。
儀式のように信号機の色が変わるのを待っては、行きたくもない会社へ時間通りに行く。
明日からもそんな毎日だと思うとなんだが家康公にもムカついてきて、ホトトギスの鳴かない現代に生きる私はたまらず博物館を飛び出した。
家康公と同じ真っ黒な袖の付いたスーツが、走るのに合わせて腕の中で上下していた。
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