モバP「まゆはどこかズレている」 (29)
佐久間まゆ(16)
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まゆ「ああ、やっぱり。このままでいいわね?」
まゆ「……これ以上はあなたが聞く必要はないもの」
まゆ「さぁ、終わりにしましょう……?」
まゆ「……」
まゆ「……」プルプル
監督「はいオッケーでーす! 休憩はいりまーす」
まゆ「ぷはぁ」
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P「まゆ、お疲れ様」
まゆ「Pさん……うふふ、お疲れ様です」
P「今日の撮影、どうだった? 感想は」
まゆ「うまくいった……と思っていますけれど。Pさんはどう見えましたかぁ……?」
P「うん。最初はドラマの役にしたってかなりイメージが違うし難しいと思ってたけど……」
まゆ「……けど?」
P「よかった。まゆ、こういうのも似合うんだなぁ」
まゆ「似合う……うふふ、そうですかぁ? 嬉しいです」
P「ああ、意外な一面って感じでさ」
まゆ「意外な一面……」
P「……まゆ?」
まゆ「いえ、なるほど。わかりましたぁ……うふっ」
― 翌日 ―
まゆ「おはようございます」
P「ああ、まゆ。おはよう」
まゆ「プロデューサーさん。今日の予定は?」
P「え? あー……午前はダンスレッスン。午後はクイズ番組の撮影、だな」
まゆ「クイズ……そうですか。わかりました、では」
P「どこ行くんだ?」
まゆ「トレーナーさんが来るまではもうしばらく時間があるとは思いますが。その前に身体を動かしておこうと思います」
P「そ、そうか……」
P(……どうも様子が変だな?)
まゆ「……もう、いいですか?」
P「あ、ああ。呼び止めてすまない」
まゆ「いえ。それでは」
ガチャッ バタンッ
P「……なんだアレ?」
ちひろ「どうしました? プロデューサーさん」
P「うおぉっ!? ち、ちひろさん」
ちひろ「はーい、あなたのアシスタント。千川ちひろですよー」
P「……いつからいたんです?」
ちひろ「ずっといましたよ、失礼な。まゆちゃん、もうレッスン室いっちゃったんですね……」
P「ええ、まぁ」
ちひろ「お茶、淹れてきたんですけれど……飲みます?」
P「どうも。いただきます」
ちひろ「しかしまゆちゃん、珍しいこともありますね」
P「そうですね。普段は……まぁ、なかなか大変ですから」
ちひろ「知ってますよ。自覚はあるんですね」
P「それはまぁ……ね」
ちひろ「で、今回は何を?」
P「特にまずった覚えはないんですけれど。強いて言えば……昨日、演技でクール系を演じてたのを褒めたとか」
ちひろ「それじゃないですか」
P「これですか。しまったな……」
ちひろ「まぁ、いつだったかに比べたらマシですが」
P「いつだったかって?」
ちひろ「まゆちゃんが事務所に来てすぐのことですよ。『子供ってかわいいよな』とか言ったじゃないですか」
P「……ああ、あれは……そうですね」
――――
――
千枝「今日は一緒のお仕事、楽しかったですっ。ありがとうございました!」
まゆ「うふ、また今度一緒に編み物のお話しましょうね?」
千枝「はいっ!」
P「まゆ、お疲れ様」
まゆ「Pさん、うふふ……まゆは元気ですよ?」
P「そうか? ならよかった」
まゆ「はい♪」
P「……しかし、今回の共演の……佐々木千枝ちゃん、か」
まゆ「千枝ちゃんがどうかしましたか?」
P「いや。うちの事務所は結構大人びた子が多くて……ああいう子はいないからさ」
まゆ「そうですねぇ……」
P「まぁ、それはそれで苦労もあるんだろうとは思うけれど。子供ってのもカワイイよななんて思うこともあるんだよ」
まゆ「子供……可愛い……」
P「まゆ?」
まゆ「……なんですかぁ?」
P「いや、今何か……」
まゆ「なにもありませんよぉ」
P「……そう、か?」
まゆ「はい♪」
― 翌日 ―
まゆ「おはようございまーすっ」
P「おう、おはようま……ゆ……」
まゆ「はい、まゆですっ。えへっ」
P「……それは?」
まゆ「どれですかぁ?」
P「えーっと……まず帽子」
まゆ「黄色くてかわいいですよねぇ、基本だって聞きました」
P「背中」
まゆ「真っ赤な、真紅のランドセル……」
P「ぴっかぴかだなぁ」
まゆ「えへへっ」
P「笑い方まで違う」
まゆ「ランドセルって、意外とお値段がするんですよねぇ。6年も使うから当たり前なのかしら……」
P「そうか……」
まゆ「あと、防犯ブザーです。知らない人には近づきませんよ」
P「俺は?」
まゆ「Pさんのことは……もっと知りたいから近づきます」
P「そうか……」
まゆ「えへっ。お兄ちゃん、こういうまゆは嫌いですかぁ?」
P「うーん……怖い」
まゆ「こわい」
P「いつも通りのほうがいいかな……確かに子供は可愛いけどさ……」
まゆ「ふぇぇ……」
P「そういうのもちょっと……」
まゆ「はい」
まゆ「こういうのはダメなんですかぁ……」
P「いやぁ、突然すぎて面喰ったというかな……」
まゆ「……なるほど」
P「わかってくれたか?」
まゆ「はい。驚かせてしまってごめんなさい……気を付けますから」
P「はは、まあ新しい一面を探すっていうのはいいことだから……」
まゆ「はい。がんばりますねぇ……」
P「さて、今日の予定だけれど……」
まゆ「はい」
P「……まずそのランドセルおろそう」
まゆ「はい」
――
――――
P「……ありましたね」
ちひろ「その翌日から、普段通りの恰好に戻ったと思ったら……」
P「よく見たら手首のリボンに防犯ブザーがくっついてたり」
ちひろ「レッスン靴が真っ白な体育館シューズになってたり」
P「『黄色がダメなら赤はまゆの色ですよね』と赤白帽子をかぶって来たり……」
ちひろ「……アクティブですよねぇ」
P「可愛らしいんですけれどね……」
ちひろ「知ってます? 今でもハンドバッグの横にミニランドセルのキーホルダーぶら下げてるんですよ」
P「ええ、わかってます。気に入ったんですかね……」
ちひろ「……プロデューサーさんが褒めてくれた、って言ってましたけれど?」
P「……器用だな、と感心した覚えはありますけれど」
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