町──
男(う~ん、次の取引先に行くまではまだちょっと時間があるな……)
男(今日はまだ、なにも胃に入れてないし、メシにするか……?)
男(だけど、次の取引先で会う担当の人は体育会系の人らしいし、遅れたらマズイ)
男(メシにするにしても、手っ取り早く済ませるようにしないと……)
男(そうだ! ファーストフードにしよう!)
男(ハンバーガーを一つ食べて、腹ごしらえしよう!)
ファーストフード店──
店員「いらっしゃいませー!」
男「えぇと、注文は──」
店員「ハンバーガーですね?」
男「え!? あ、は、はい! そうですが──」
店員「もうできてます」スッ
男(は、早い……ッ!)
男(しかも、このハンバーガー、明らかに出来たてほやほや……ッ!)
男(作り置きしていたわけではない……ッ!)
店員「お会計150円になります」
男「ああ、すぐ払──」
店員「いいえ、結構です」
男「へ?」
店員「すでにお客様の財布から、抜き取っております。 ……150円」チャリン…
男「なっ、何ィ~~~~~!?」バッ
男(ホントに150円減ってる……! バカなッ! い、いつの間に……ッ!)
男「じゃ、じゃあ……ハンバーガーをもらうよ」スッ…
ギュンッ!
男「なっ!? 逃げた!?」
シャシャシャシャシャッ!
男(怪奇ッ! ハンバーガーが勝手に店内を飛び回っている……ッ!)
シャシャシャシャシャッ!
店員「ごゆっくりどうぞ……。おっと、失礼。お早めにどうぞ……」ニッコリ
男(早くハンバーガーを捕まえないと、永久に食べられないというわけかッ!)
シャシャシャシャシャッ!
男(速い……! とても肉眼では追い切れん!)
シャシャシャシャシャッ!
男(時速700……800……いや、1000kmは出ているだろう!)
シャシャシャシャシャッ!
男(どうする!? どうやって捕える……ッ!?)
シャシャシャシャシャッ!
シャシャシャシャシャッ!
男(スピードに惑わされるな……)
シャシャシャシャシャッ!
男(目を閉じ……目ではなく、心の目で捉えるんだッ!)スッ…
シャシャシャシャシャッ!
男(ハンバーガーの軌道が分かったッ!)
シャシャシャシャシャッ!
男(──ここだァッ!)シュッ
バッシィィィッ!
男「ゲェェェットォォォ!」
店員「おみごとです」
男「これでもう食っていいんだよな!? いただきま──」
店員「しかし、先ほども申し上げましたが……お早めに食べた方がよろしいかと」
男「?」
男「ん……?」ボロッ…
男「な、なんだとォ~~~~~~~~~~!?」ボロボロ…
男「ハンバーガーが……どんどん腐って……崩れていくッ!」ボロボロ…
男「なんて腐食スピードだ……ッ!」ボロボロ…
男「は、早く食べないと……ッ! 150円が無駄になってしまうッ!」ボロボロッ…
男「150円あれば……ジュース一本ッ! ATM手数料ッ! うまい棒ゥッ!」ガブッ
男「うおおおおおおおおおおォォォォォ~~~~~~~~~~~ッッッ!」モグモグ…
男「!?」ギュルル…
男(便意!?)ギュルル…
男(まさか……ッ! もう“大便”になったというのかッ!?)ギュルル…
男(は、早い……ッ! 全てにおいて早すぎるッ!)ギュルル…
男「こ、これが……ッ!」ギュルル…
男「これが……ッ! ファーストフードか……ッ!」ギュルル…
──
────
──────
ジャ~……!
男「ふぅ……どうにか間に合った」ホッ…
男「ファーストフード……まさに聞きしに勝る“早さ”と“速さ”だった……ッ!」
男「ごちそうさま!」
店員「……」ニヤ…
腹ごしらえを済ませた男は、意気揚々と取引先へ向かう!
しかし、男がファーストフードの『真の恐ろしさ』を味わうのはここからであったッ!
取引先──
男「いやぁ~、スポーツをやられているとうかがっていたのですが」
男「がっしりした体格をしておられますね。うらやましいです」
担当者「ハッハッハ、そうですか? ありがとうございます」
男「ちなみになんのスポーツを?」
担当者「『野球』をやっておりましてね……」ゴゴゴゴゴ…
男「野球ですか。私はもっぱら見る方専門──」
男「!」ハッ
男(ま、まさか……ッ! まさかァァァァァッ!?)
男「ハァ……ハァ……」ゴクッ…
男「ポ……ポジ……ポ、ポ……ポジショ……ポ……ポ……」
男「……ポジション、は……?」
担当者「ファーストです」ニヤッ
男「ファーストフード恐るべしィィィィィィィィィィィッッッ!」
─ 完 ─
久々にマクドナルドに寄ったらふとこんな妄想をしたので書いてみました
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