朝倉涼子「彼の下駄箱に手紙を入れたわ」 (67)

今日、彼の下駄箱にノートの切れ端を入れた。

『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』

紙にはただそれだけのことを書いた。

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わたしは今日、彼を教室に呼び出して殺す。

そこにあたしの意思は存在しない。

わたしを創った存在の希望に沿うだけ。

わたしとしては彼が来なくても構わない。

だからノートの切れ端に味気なく文を書き、それを彼の下駄箱に入れた。

もし、それでも彼が来たらその時は殺す。来なかったら来なかったで別にいい。

それがわたしの偽りのない気持ち。

そして放課後、彼は教室にやってきた。

彼が来ないので帰ろうと思った瞬間だった。

「遅いよ」

わたしは思ったことをそのまま言った。

彼はわたしが呼び出したことが心底意外だったのか、教室の入り口で引き戸に手をかけたまま固まっていた。

「入ったら?」

わたしは彼に入室をうながす。

それを受けて、彼は平静を装いながら入室してきた。

「お前か……」
「そ。意外でしょ」

平静を装う彼が可愛らしくてつい笑顔になってしまう。夕日が眩しかった。

「なんのようだ」

彼はわざとらしくぶっきらぼうに聞いてきた。

こらえきれずに笑い声が出てしまった。たぶん、あたしは彼のことが嫌いじゃない。

「用があることは確かなんだけどね。ちょっと訊きたいことがあるの」

なんとなく彼に興味が湧き、質問をしてみる。

「人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』って言うよね。これ、どう思う?」

暫くの間、意味のない問答を続けた。たぶん、あたしなりの時間稼ぎだったのだろう。

それでも限界がある。『彼女』にはまだ見つかっていないだろうが誰が見ているか解らない。

「じゃあ、死んで」

わたしは隠し持っていたナイフを一閃、彼がいた場所を薙ぐ。

もちろん当てる気はなかった。彼は無事にナイフを避け座り込んだ。

そして座り込んでいる彼と暫しの雑談。彼が立ち上がるのを待つ。

『彼女』はまだ来ない。そうこうしているうちに彼が弱々しく立ち上がる。

そして彼は脱兎の様に駆け出し教室から出ようとした。

逃がすわけには行かない。教室をコンクリートで囲む。

今のこの教室はすべてわたしの意のままに動くのだ。

引き戸が無くなり、部屋の全面がコンクリート製の壁になっていることに彼は驚いていた。

自棄になった彼はわたしにイスを投げつけた。わたしはその椅子を反転、横に飛ばす。

「無駄なの」

そう。わたしを止められるのは『彼女』だけ。

何者かがわたしの情報制御空間にアクセスしようとしていることが解った。

わたしにはそれが誰なのか解る。

それが出来て、しかもそれを行うのは『彼女』しかいないから。

『彼女』ならプログラムの甘さをすぐに見抜くだろう。

「最初からこうしておけばよかった」

あたしは何に対して言ったのだろうか?

そう思いながら、壁際に張り付いている彼の体を動けなくした。

「じゃあ死んで」

死ぬのは誰なのだろうか?あたしはそう思いつつ、その言葉を吐いた。

そしてわたしの情報封鎖が破られた。

「天井部分の空間閉鎖も、情報封鎖も甘い。だからわたしに気づかれる。侵入を許す」

天井を破って現れた『彼女』はわたしにそう言った。

やはり『彼女』は優秀だ。
あたしの心に生まれたエラーが作った脆弱個所をあっさりと見破ったのだから。

もう彼を拘束している意味はなくなった。あたしは彼の金縛りを解き『彼女』と対峙する。

わたしは『彼女』に敵わない。

所詮、わたしはバックアップだからだ。

それでもあたしは全力で戦った。

わたしが有能であると認めてもらう為に。

わたしが再構成の機会を得るために。

あたしが消えてもわたしが再び彼に会えるように。

そしてわたしは『彼女』に負けた。

解り切っていたことだった。

何故ならわたしは『彼女』のバックアップなのだから。

ただ、『彼女』はわたしを認めてくれた。

目的は達したのだ。悔いはない。

あたしが消える前に彼に警告を与える。

「いつかまた、わたしみたいな急進派が来るかもしれない。それか、長門さんの操り主が意見を変えるかもしれない」

それはまたわたしかも知れないと思いつつも警句を与えた。
あるいは、あたしと同じく小さなエラーから大きなバグが生まれた『彼女』かもしれない。

彼はあたしの言葉をどう思ったのだろう?
消え去る敵の捨て台詞と感じたかも知れないが構わなかった。

「それまで、涼宮さんとお幸せに」

あたしは間もなく消えてしまう。だからこそ素直に彼の幸せを願うことができた。

あたしは消える。では再び出会うであろうわたしは?

もしも出会い方が違ったのならあたしは彼と違う関係になれたのかな?

次に出会うであろうわたしは彼とどうなるのであろうか。

一瞬自問自答を繰り返したが結論は同じだった。

だってわたしは『彼女』のバックアップなのだから。

諦観したあたしは自然と笑顔になった。

そしてあたしの笑顔も思考も存在も、今のわたしも砂となり、いずれその中に埋もれていくのを感じた

もしも消えなかったら………最後の想いを込めて伝えた。

「じゃあね」
















チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

キョンと国木田が付き合ってて、古泉に国木田が寝取られたキョンが八つ当たりで刺しまくって(性的な意味)ハルヒも刺されて満足、古泉はそれでとても満足なSSにするはずだったのにどうしてこうなった。

初志貫徹で真面目に書こう。

ここからは基本的に当初の予定通りのSSです。

今日、彼の下駄箱にノートの切れ端を入れた。

『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』

紙にはただそれだけのことを書いた。

わたしは今日、彼を教室に呼び出して殺す。

そこにあたしの意思は存在しない。

わたしを創った存在の希望に沿うだけ。

わたしとしては彼が来なくても構わない。

だからノートの切れ端に味気なく文を書き、それを彼の下駄箱に入れた。

もし、それでも彼が来たらその時は殺す。来なかったら来なかったで別にいい。

それがわたしの偽りのない気持ち。

そして放課後、彼は教室にこなかった。

夕闇に沈んだ教室で一人、安堵の溜息をついた。

わたしは来ても来なくてもどちらでも良かった。

だけど、あたしは違ったようだった。溜息と共に自覚する。

あたしは大きく伸びをして教室を出た。

灯り一つない廊下はすっかり暗くなっていた。

翌日の教室。相変わらず、彼はぼんやりと退屈そうにしていた。

そしてその後ろ、わたし達の観察対象は退屈を通り越して不機嫌になっていた。

週が明けてから一貫して不機嫌なのは退屈だからというだけではないだろう。

彼と一緒に探索が出来なかったこともその原因の一つだと思う。

人間はよく解らない。

彼は昼食ごとに中学からの同級生と高校で新たに知り合った男子生徒と合流する。

中学時代の三年間を通じて彼はあの同級生と常に一緒にいた。
塾へ女学生と共に向かう時を除いて。

摂食なんて一人で行った方が早いのに人間は解らない。

彼とあの同級生は高校に進学しても一緒にいる。

それは彼らが男女交際ならぬ男々交際の関係にあるからだ。

告白があったわけではないし、お互いに愛を確認し合った訳でもない。

だけど観察の結論としては間違いなく付き合っている。

その同級生に至っては、憧れの先輩と同じ高校に進学するとの名目で彼と同じ高校を選んだほどだ。

生殖活動に付き合う必要なんてないのに、人間って不合理。
まして男同士じゃ子孫を残せないのになんで二人は付き合っているのかしら?
意味が解らない。

そんな二人の関係に変化が訪れつつあった。

観察対象の不機嫌な理由として二人の関係が影響しているからだ。

そしてその結果として幾つかの影響が出た。

一つ、例の観察対象が彼を連れ回し、よって二人の時間が阻まれつつあること。

二つ、観察対象と行動を共にしている男子生徒が彼の同級生に接近を始めたこと。

特に二つ目が大きかった。

ある日の昼休み、その男子生徒が教室にやってきた。

微笑みと共に目配せをし、無言で彼の同級生を連れ去ってしまったのだ。

彼は明らかに狼狽していた。

そんな日が一週間ほど続いたある日の放課後のことだった。

「おい!いったいどういうつもりなんだよ!!」

体育館の裏で彼が件の同級生に喰ってかかったのだ。

「どう…ってなにが?」

同級生の方は素っ気なく答える。

「なんで俺を避けるんだ?」

「避けるっていうか、僕は気づいちゃったんだよ」

「気付いた?」

「キョンには僕よりももっと相応しい人が居ることにね」

「な、何を言っているんだ?」

「それにキョンよりも僕を必要としていて、僕を大事にしてくれる人が居るってことにも」

「俺と別れるってことか?」

「そもそも僕たちは一度も相手の感情を確認したわけじゃないから付き合ってたかどうかも疑問だけど」

「………言わなくて解るだろ?」

「言葉にしないと解らないことだってあるんだよ。キョンは一度でも僕に愛を囁いたことがあったかい?」

「………」

それっきり、彼は俯いたままで一言も言葉を発しなかった。

「僕たちは健全な男子生徒同士の関係、友達になるだけだから。じゃあね」

同級生は溜息とともにそう言うと彼に背中を向けて歩いて行った。

それ以来、彼は暗くなった。

それと合わせる様に観察対象の活動も低調となった。

情報爆発がほとんど観察されないのだ。

このままでは良くないことになるのは明らかだった。

それにも関わらず、上の方は動こうとしないし、『彼女』からの指示もない。

だから、あたしは独断で動くことにした。

再び、彼の下駄箱に手紙を入れたのだ。

今度はきちんと封筒に入れて、名前も書いた。

そして放課後。彼はやってきた。

「………何の用だ?」

彼は開口一番、暗く沈みがちな口調で私に用事を聞いてきた。

「用があることは確かなんだけどね。ちょっと訊きたいことがあるの」

彼を観察し続けた結果、出てきた疑問をぶつけてみる。

「人間はさあ、よく『やらないか』って言うよね。これ、どう思う?」

「よく言うかどうかは知らないが、肉欲に流されるのは獣の所業だろうよ」

「じゃあさあ、たとえ話なんだけど、童貞が知ったような口で肉欲とか言うんだけど、その童貞が同性愛者のとき。あなたならどうする?」

「なんだそりゃ?エロ漫画の話か?」

彼は質問に質問で返してきた。そんな彼を無視して続ける。

「とりあえず女の良さを教えようと思うんじゃない。どうせ今のままでは何も変わらないんだし」

「まぁエロ漫画ならそうかもしれん」

「でしょ?」

彼にも理解してもらったようだ。

こうなったら話は速い。

いつしかあたしの観測対象は涼宮さんから彼に移っていた。

彼は妹や母親はもとより父親や飼っている猫に至るまで性的な目で見るようになっていた。

学校でもわたしの耳に届く。

「なんだか目つきがいやらしいよね」

「そうそう。おっぱいとかお尻を目で追っててね。本人は気づかれていないつもりかも知れないけど、女子の方が鋭いって言うのよねー」

「今度、涼宮さんだけで満足していろ!って言ってやろうかしから?」

「変態には関わらない方がいいって!」

「ねー」

笑い声の混じった談笑だった。

残念だけど彼女たちは見過ごしてる。

彼は女子以上に男子生徒のお尻を熱心に追っているのだ。

そんなある日のことだった。

あたしはいつもの様に彼の観察を続けていた。

彼は風呂場で溜息をついた。

おそらく性欲が限界に達したのだろう。

虚ろな目をした彼は風呂場にかかっていた亀の子たわしを手に取った。

それが一本の針金を蹄鉄状に曲げて作られているのを確認すると、中を一生懸命に広げ始めた。

たわしがドーナッツ状になったのを確認すると彼は満足気に頷く。

そして何を思ったのか彼はその穴に膨張した陰茎を突込み激しくしごき始めたのだ。

「----ッ---ウウッ……」

余りの激痛に彼は涙をこぼす。

それと合わせる様にすり切れた陰茎から一滴、また一滴と血が零れる。

血は浴室の床の水と混じり、一滴ごとに赤い花を咲かせる。

そして床はいつしか一面赤くなっていた。
そして一塊の白濁物がまるで白バラの様に落ちていた。

彼は力なく萎れた陰茎を赤く染まったたわしから抜いた。

そしてシャワーの蛇口を捻りたわしを洗う。

続いて陰部に湯をあてる。

激痛に顔を歪めるがその表情はまるで憑き物が落ちた様にスッキリしていた。

それから彼は変わった。

翌日の彼らの会話。

「なんだか随分と雰囲気が変わったわね」

「そうか?」

「最近のあんたは随分と暗かったからね」

「まぁ、今の気分は『穴があったら入れたい』って感じだな」

「それを言うなら『穴があったら入りたい』でしょ。ホント、あんたってバカね。もっとも恥じ入る気持ちを持つことは大事だわ。今度から気を付けて周りを暗くしないでよね」

彼は実際に『穴があったら入れたい』気分だったのだろう。

要するに性に対して奔放になったのだ。

そうは言っても実際に動き始めるのは怪我が癒えはじめた一週間後からだったのだけれども。

あれから一週間経ったある日の放課後のことだった。

怪我の癒えた彼は甲陽園駅近くの喫茶店の前で佇んでいた。

メニューを見つめる彼に声をかける少女がいた。

「久しぶりじゃないか。こんな所でどうしたんだい?」

近所の高校の制服を着ている少女は彼と同じ中学出身だ。

「佐々木か……久しぶりだな。たまには違う喫茶店でも行ってみようと思ってな」

彼はぶっきらぼうにそう答える。

「食べ歩きにでも目覚めたのかい」

「いや、まぁそんなもんでもないのだがな」

「キミはたまに妙なことをするよね」

「そうか?そんなつもりは毛頭ないのだが………こんな場所で立ち話もなんだ。店の中で話さないか?」

「………まさかナンパのつもりかい?」

「いや、一人で喫茶店というのもつまらなそうだからな」

「くっくっ……いいよ。付き合うよ」

二人はそう言って喫茶店の中に消えていった。

二人は他愛無い世間話をし、近況を語り合っていた。

女生徒の方はアイスコーヒー、彼はブラックのアメリカンにプレーンドーナッツ。

彼はドーナッツを気に入ったのかお土産に一つ注文した。

「よっぽど美味しかったのかい?」

女生徒が彼に質問をする。

「妹にお土産でもと思ってな」

彼は店員から袋を受け取りながら照れくさそうに笑う。

「それじゃあ、僕も今度来た時にはドーナッツを頼んでみるよ」

「ああ、それもいいかもしれないな」

「誰と…とは聞かないのかい?」

「そりゃ友達とだろう」

「くっくっくっ、そうだね」

かなわないといった感じで女生徒が笑う。

そして彼が席を立つ。

「次の予定は?」

女生徒の質問に対して彼はドーナッツの入った袋を軽く振り、
「これがあるからな」
そう答えた。

「そうか、そうだったね」

女生徒はどことなく残念そうに見えたが、すぐに「また今度」と言って二人は別れた。

彼はドーナッツの入った袋を片手にうろついた。

そして寂れた公園を見つける。

彼はそこに入り辺りを見渡す。

周囲に人が居ないのを確認すると公園の奥の繁みに分け入った。

そしてズボンのジッパーを開ける。

それと同時に一物が飛び出る。

彼の一物は怒張していたのだ。

続いて袋からドーナッツを取り出す。

ドーナッツを暫し眺め、それが終わるとその穴に一物を突っ込む。

わたしの属性変換によってその穴にも彼の一物はジャストフィットした。

彼は満足気に腰を前後に振る。合わせてドーナッツを握った右手を激しく上下させた。

「ドーナッツ!!ドーナッツ!!ドーナッツっっ!!」

彼は切なげに声を出し、射精した。

彼は幾度も射精した。

満足した彼は気だるげに一物をしまう。

そしてアイシングドーナッツに見えるものを咥え、何事もなかったかのように公園を後にした。

その夜、彼は風呂場でも射精した。

ヘチマたわしの穴に興味をもったのだ。

「これ…入るのか?」

独り言を言いながらペニスを突っ込む。

「くっ!締まりやがるぜ。イイ声で鳴けよ」

彼はそう言いながらペニスをしごく。

もちろんわたしのおかげでジャストフィットしている。

そして射精したのだ。

「なかなか良かったぞ」

彼は優しくヘチマたわしに声をかけると後始末をして風呂場を後にした。

翌日の学校。体育の時間に彼はこっそりと教室にやってきた。

トイレと偽ってやってきたのだ。

教室に誰もいないのを確認すると国木田くんの机に向かう。

そして鞄の中を漁る。そして弁当箱を見つけるとそれを開けた。

「焼き魚にきんぴら、卵焼き。ピーマンの肉詰め……惜しいが少し違うな」

彼は独り言を呟きながら中身を確認する。

そして見つけたのだ。

「これだ!」

彼が興奮を押さえながら手に取ったのは、ちくわを甘辛く炒めたものだった。

彼はちくわの穴に自分の分身を刺し込み激しく擦る。

ちくわに収まり切らなかった先端部分が国木田くんのお弁当を激しくかき混ぜながら。

焼き魚の小骨が彼の亀頭を刺激し、彼の射精を早める。

「国木田!国木田!ちくわ大明神!!国木田っ!!」

誰?とにかく彼はそう言って精を放った。

彼はちくわを弁当箱に放り込むと、まるで食べかけのビビンバの様になったお弁当に憐みの視線を寄越す。

そして静かに弁当箱に蓋をし、何事もなかったかのように鞄に戻した。

その後、トイレが長かったことを冷やかされながらも授業に戻っていた。

学校の帰り道、彼はコンビニエンスストアに寄り道した。

店内で鞄からカップ状の容器に入ったスナック菓子を取り出す。

それを一旦棚に置き、動画の撮影を開始した。

店の商品風にそれを取りあげるとズボンのジッパーを開け、既に膨張していたペニスに菓子上面の紙をあてる。

そして一気にカップを引き落とす。乾いた音と共に菓子の紙が破れた。

「じゃ○りこ、じゃ○りこ、じゃ○りこ」

ゆっくり味わうようにカップを上下させる。

「じゃ○りこじゃ○りこじゃ○りこ」

今度早口でも言っている激しく振る。

それを繰り返し、カップ内を蹂躙し終わった彼は満足気に射精をした。

今度は飲料コーナーに行き、鞄から取り出したペットボトルを万引きした風に撮影をしていた。

それを持ち帰り、今度は自室において、ペットボトルのキャップを回した。

ペットボトルの口を愛しげに舐めるとやおら下着を脱いだ。

ペニスは天を仰いでいた。

彼はペットボトルを床に立てるとそれに覆いかぶさるようにして、性器を挿入した。

『ちゃぽんちゃぽん』とボトル内の液体が跳ねる音が室内に響く。

「どうした?びちゃびちゃじゃないか?無理やりなのに感じてるのか?」

彼はペットボトルに対して煽るように声をかける。

「くっそ!!ちゃぽちゃぽとイイ声で鳴きやがるぜ!」

感極まった彼は堪え切れずに射精をした。

夜になり、彼は一連の動画をネット上にアップした。

『彼女』に気が付かれると問題なので、わたしがすぐに消去したんだけれども。

自分の行為に興奮したのか彼は欲情した目つきで家を出た。

時刻は午前二時四八分。彼は真っ暗になった住宅街を夜風に吹かれながら獲物を探すように見て回る。

そして彼は獲物を見つけた。

馬のエンブレムが付いたスポーツカーだった。

彼は車の背後に回り穴を確認する。

「こんな時間に穴を晒してるお前が悪いんだぜ」

彼は三文小説の悪訳の様な台詞を言うとズボンと共に下着を脱いだ。

その勢いで道路に膝たちとなり、マフラーに性器を突っ込む。

そして激しく腰を前後させた。後部バンパーに腹をぶつけながら呻く。

「うぁっ!!いくぞ!!孕め!!孕んでしまえ!!」

彼はそう言うと中に射精した。

彼が腰を離すとマフラーからドロリと彼の精液が漏れた。

それを侮蔑の籠った目で満足気に見ると彼は足早にそこから立ち去った。

わたしは満足していた。

この調子なら遠からず、彼は押し倒すだろう。

そうすれば大きな情報爆発が観測できるはず。

どれくらい時間が経てば目的を達せられるか計算する為に、彼が凌辱し手籠めにしたのを整理する。


たわし二個、ドーナッツ一個、国木田くんのお弁当、スナック菓子一袋、ペットボトル(ドリンク入り)一本、車一台。


わたしは気が付いてしまった。

「もしかして、初体験があたしだったから有機生命体だとダメになっちゃった!?」

つい声をあげてしまった。彼は無意識にわたしがインターフェースであることに気が付いていたのかもしれない。

このことを『彼女』に知られたてしまったらわたしは消されるだろう。

二度と再構成されないように情報ごと消すに違いない。

あたしの覚悟は決まった。


「うん。逃げよう」

翌日、クラスにあたしの姿はなかった。

「あー、朝倉くんだがー、お父さんの仕事の都合で、急なことだと先生も思う、転校することになった。いや、先生も今朝聞いて驚いた。なんでも外国に行くらしく、昨日のうちに出立したそうだ」

担任が皆に説明している。カナダに転校したことにした。

勿論、実際にはカナダになんかには行っていない。

そんな馬鹿正直なことをしたら、すぐ『彼女』に見つかってしまうから。

実際にはシベリアに引っ越した。

ここから彼を観察しているのだ。

今、あたしはジャガイモが溶けてやや濁ったおでんを煮込みながらクラスを観察している。

ふと窓の外に目をやる。シベリアの空は薄く蒼く、そしてどこまでも澄んでいた。

わたしがシベリアに引っ越してきてから二週間程度経った。

相変わらず彼は物にご執心だ。

そろそろ引っ越さないと『彼女』に見つかってしまう。

そんなことを考えていたら彼が『彼女』に接触した。

放課後の部室。そこには彼と『彼女』しかいなかった。

無言で読書を続ける『彼女』に彼が熱い視線を送っていた。

「………」

彼は暫し見つめ続け、生唾を飲み込むと意を決したかのように切り出した。

「なぁ、すけべしようや」

「………」

彼女は本から顔を上げ、無言で彼を直視した。

「ダメか?」

「………」

『彼女』は暫しの間、彼を凝視すると無視して読書に戻った。

彼は『彼女』に無視されて手持無沙汰になったのか部室を見て回る。

部にある穴という穴はほとんど犯した彼は思い出深そうに湯呑を見たり、メイド服の袖口を見つめていた。

そして彼は未だに犯していない穴に気が付いた。

『団長』と書かれた腕章を手に取ると、ズボンと下着を脱ぎ捨てペニスに巻き付ける。

「ハルヒのリボンもいいと思わんか?」

「………」

彼は『彼女』に同意を求めながら、自慰行為----彼の中では性行為----を始めた。

その時、部屋のドアが開いた。

「ちわーー-----」

元気よく挨拶した声の主は彼を見るなり固まり、慌ててドアを閉めた。

そして何処かに走り去っていった。

「なぁ、ハルヒの奴はどうしたんだ?」

ことを終えた彼が『彼女』に対して不思議そうに聞いた。

「………」

『彼女』は本を閉じ、彼を無言で見つめる。

「………」

そして無言のまま席を立ち、黙って部屋を出て行った。

『彼女』の帰り道、彼は『彼女』について回った。

「なぁ、さっきの話だけど………」

「なに」

「いや、だからすけべしないかって」

「………」

「一回だけでいいんだ!この通りだ!頼む!」

彼は『彼女』を拝みながら頼み込む。

ここまで執着するのは『彼女』がインターフェイスだからだろう。

もしかしたら頼まれるのは、あたしだったかも知れないと思うと何とも複雑な気持ちになった。

彼はそのまま『彼女』の部屋の前にまでやってきた。

「先っちょだけでもいいんだ!」

ドアの前で彼が土下座をした。

『彼女』はそれを無視して部屋の中に消えていった。

それから数分。彼はまだ土下座を続けていた。

突如ドアが開く。彼は捨てられた子犬の様に顔を上げる。

「これ」

『彼女』は何かを彼に渡す。

「なんだ、これは?」

「オナホール。そこにいられると迷惑。それを渡すから帰って欲しい」

『彼女』は問いかけに対してそう答えると部屋の中に消えた。

ドアは再び開くことは無かった。

彼はその後も一時間以上土下座を続けたが、やがては諦めた。

痺れた足を引きずりながら家に帰ったのだ。

そして夜。彼は貰ったオナホールを使って満足した。

わたしには解る。あれは只のオナホールではない。

わたしがした細工を取り除くための装置だ。

一週間もしたら彼は正気を取り戻すだろう。

それまでに彼が涼宮さんを押し倒さないとわたしがやったことが全部無駄になってしまう。

どのみち期待できなかったのだけれども。

「あ~あ、あたし何であんなことをしちゃんたんだろう………」

独りぼやく。そしてすぐに気持ちを入れ替えた。

細工がバレタ以上は『彼女』は本気になるだろう。

明日中にはここを出た方がいいだろう。

そう考えていたら、彼が消滅した。

涼宮さんも消えていた。

わたしはすぐに理解した。二人は二人だけの世界に旅だったのだ。

なんとも言えない気持ちになり外に出た。

夏のシベリアは熱い。その為に雪が解けて、一帯は沼地であった。

本来なら悩まされる大量の蚊もわたしには関係がない。

昼に比べて十度は低く、寒いくらいの夜風に当たり空を見上げる。

澄んだ空に数えきれない星が瞬いていた。

そして一際明るい月。

「妙に外が明るいと思ったら満月だったのね」

あたしは誰に言うでもなく呟いた。

そういえば、あたしが彼に迫った時も満月だった。

あれから一ヶ月近く経ったことになる。

その彼が今は涼宮さんと一緒にいる。

柄にもない感情が沸き起こった。

それを打ち消すように今の彼と涼宮さんを想像する。

彼のことだから地面に穴を掘って腰を振っているかもしれない。

もちろん涼宮さんがそんなのを許すはずがないから………やっぱりわたしとやることは同じね。

頬が緩んでいることに気が付いた。

そうすると彼の性器が絶品なんてことを望むはずがないから、わたしの細工は『彼女』に関係なく打ち消されてしまう。

少々面白くないけど仕方が無い事だろう。

時を忘れて、あの時と同じ月を眺め続けた。

どれほどの間、月を眺めていたのだろう?

彼と涼宮さんが再び現れた。

わたしもぼんやりとはしていられない。

そう思った時、声をかけられた。

「情報封鎖が甘い。だからわたしに気付かれる。接近を許す」

『彼女』だった。今日のうちに見つかるとは思っていなかった。

「そうかしら?わたしにしては頑張った方だと思うわよ。彼への細工も中々ばれなかったし」

「………」

あたしの強がりを『彼女』は無言で流す。

もしかしたら『彼女』は知って放置していたのかもしれない。
だってわたしは『彼女』のバックアップなのだから。

ただこれだけは解る。あたしは消されるし、わたしが再構成されることもないだろう。


あたしは消えゆく意識の中で最後の景色を目に留める。

あの時と同じ月は、あの時よりも遥かに明るかった。







チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

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