P「アイドル達の不思議な話」 (47)

少し不思議な程度の話のオムニバスです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418906579

真「喋る壁」

ボクの学校には昔から、ある噂が伝わってるんです。

なんでも、校舎のどこか一部の壁が、夜中に喋りだすんだとか。

それでですね、ボクこの前、その噂の真偽を確かめに行ったんです。

え? だって、気になるじゃないですか。

いやまあ、確かに危ないかもしれませんけど……。

分かりましたよ……もうしませんって。

まあ、それはともかく、夜中学校に忍び込んだんですよ。

それで校舎の周りを歩いていると、どこからか話し声が聞こえてきたんです。

その声を頼りに探すと、どうも校舎の一角の、なんの変哲もない壁から聞こえてきているみたいなんです。

近寄ってみたけど誰もいなくて、本当に壁から声が聞こえてました。

ちなみにその壁は音楽室の壁だから、中から聞こえてきている筈はないんですよ。

でも、怖いって感じより不思議な感じが強くて、しばらくそのまま聞いてたんですけど、突然……。

……説明するより、聞いてもらった方が早いですね。

これ、壁から出てた声を録音したものです。とりあえず聞いてみてください。

…………。

……分かりました?

やっぱり、プロデューサーさんもそう思います?


ボクの声にしか、聞こえませんよね?


でも、こんな会話をした覚えはありません……というより、そもそも相手の声に聞き覚えがないんです。

いったいあの壁はなんなんでしょうね?

やよい「家鳴りと壺と」

私の家、ちょっと前まで家鳴りがしてたんです。

それも決まって、ある一部屋だけで。

そんなにひどくはなかったから気にはしてなかったんですけど、毎晩、みしっ……みしっ……って鳴ってました。

そしたらある日、かすみが「夢であの部屋の床下に何かが埋まってるのを見た」って言い出したんです。

そこで、お父さんに頼んで床下を掘ってみたら、壺が出てきたんですよ。

開けると、中に白い粉みたいなのがいっぱい入ってたんですけど、何なのか確かめる前にそれを見たお父さんがすぐに壺を持ってっちゃいました。

結局あれが何だったのかは、お父さんが何も話してくれないので分かりません。

ただその晩、お父さんは家の裏の空き地でこっそりと何かしてたみたいなんです。

不思議ですよね。


……あっ、そういえば!

話は変わりますけど、プロデューサー、これどうぞ!

私の家の畑でとれた野菜なんですけど、今年は美味しい実がいっぱいなったのでおすそ分けです!

あずさ「神社と人形」

この間、お散歩した時のことなんですけど。

いつの間にか随分遠くまで歩いちゃってたみたいで、気づいたら神社の前に立ってたんです。

周りを見ても古いお家ばっかりで、まるでどこかの村にまで行っちゃった様な感じでした。

仕方がないので神社の近くをうろうろしてたら、女の子が何人かやって来て「遊ぼう」って言うんです。

もちろん了承して、一緒に遊びましたよ。
懐かしい遊びばかりで、子供の頃に戻った気分でした。

でも、しばらくしたら日が暮れてきたので、流石に帰らなくちゃって思って、女の子達にそう言ったんですよ。

そしたら、お人形をくれたんです。

「いいの?」って訊くと、「遊んでくれてありがとう」って言ってどこかへ行っちゃいました。

その後は普通に帰りましたよ。
いつの間にか家の近くにいたので、迷うこともありませんでしたし。

でも、家に帰ってから人形を見てみたら、おかしなことに気づいたんです。

手足が無いんですよ。両手両足全部。

貰った時には確かにあったのに……不思議ですよね~。

あ、そうそう、不思議と言えばその神社も不思議でしたよ。

敷地内のあちこちに、こけしが飾ってあったんです。

あと、あの女の子達が着物姿だったのも、不思議と言えば不思議でしたね。

本当に、不思議な一日でした~。

律子「ドアの向こう側」

ほらプロデューサー、手が止まってますよ。
もう少しなんですから、頑張ってください。

……え? 眠い? なんとかしてくれ?

そんなこと言われても……。

うーん、じゃあ、ちょっとそこのドアの前に立ってみてください。

ドアノブを握ってもらえますか? はい、握るだけです。

そのままドアをじっと見たままで、話を聞いてくださいね。


まず、ドアを開けた時のことを想像してください。

単に向こう側が見えるだけ? そうかもしれませんね。

でも、もしかしたら向こうに、誰かいるかもって、思いませんか?

ほら、想像してみてください。

ドアの向こうに、誰かが立っているのを。

あなたは、ゆっくりドアを開けていく。

少しずつ、ドアの隙間は大きくなっていく。

隙間からなにかが覗いてきませんか?

向こう側に誰かが立ってませんか?

一度考え出すと、本当に誰かいるような気になりませんか?

ほら、もっとドアに近寄ってみてください。

周りの景色が見えなくなって、ドアの向こうの気配を強く感じるようになっていきませんか?

ドアを隔てて、すぐそこに、誰かが立っているんです。

今にも、ドアが叩かれるような気がしてきませんか?

してきますよね?

だって、本当に、いるんですから。


……ふふっ。

なーんて、冗談ですよ、プロデューサー。

眠気覚ましぐらいにはなりました? その様子だと、なったみたいですね。

さ、こっちに戻ってきて早く続きをしてください。


あ、待って。ドアを開けないでください。

なんでって言われても……。

……じゃあ、一つ訊きますけど。

プロデューサーが想像した向こうにいる誰かは、長い髪の女の人だったんじゃないですか?

もしそうだったなら……開けないほうが、いいんじゃないでしょうか。

真美「ジャンケンサマ」

んとね、これは、真美が子供の頃の話なんだけどね。

あ、今、今も子供だろって考えたでしょ。

……ほんとにー?

ま、いーけど。

えっと、子供の頃、ジャンケンサマが見えてたんだ。

ジャンケンサマってのはね、真美が勝手につけた名前なんだけど。

手なの。

うん、手。手首から先の部分だけが、壁から出てるの。

どこの壁って……いろいろだよ。いつも違う場所に出てたし。

あ、でもでも、家の中で見たことはないよ。

最初に見た時は怖くて逃げちゃったんだけど、だんだん慣れてきて、ある日じゃんけんを挑んでみたら、相手してくれたの。

だからジャンケンサマ。

ジャンケンサマって言うと、じゃんけん強そうなイメージだけどそんなことはなくて、いつも真美が勝ってたよ。

でも、ある日じゃんけん負けちゃったんだ。

そしたら、それから現れなくなっちゃった。

何か起きなかったのかって? 別に何も起きなかったよ。

たださー、この前、知らない子供が知らない家の塀に向かってじゃんけんしてたんだー。

きっと、まだいるんだね。

亜美「かけっこさん」

んとね、これは、亜美が子供の頃の話なんだけどね。

むむっ。兄ちゃん、今心の中で亜美を子供扱いしたね?

亜美、すごくせいちょーしてんだかんね? あと数年もしたらミキミキなんて追い抜いちゃうっしょ!

ま、それは置いといて。

亜美の子供の頃ね、学校でかけっこさんの噂が流行ってたんだー。

かけっこさんはね、足だけ、それも膝から下ぐらいまでしかないんだよ。

それでね、学校から帰る時、まっすぐな道を歩いてると出てくるの。

出てくるのは、決まって数メートル先。隣に立つと、急に走り出しちゃって、次の曲がり角までのかけっこが始まるんだよ。

だからかけっこさん。

かけっこさんに遭ったら、引き返したり曲がったりして違う道に行くといいんだよ。

かけっこしてもいいんだけど、負けちゃうと酷い目にあうんだってさ。

具体的には? さあね、知らない。

でもって亜美ね、いっぺん、かけっこさんに遭ったことがあるんだ。

その日はたまたま真美と別々に帰ってたから一人でさー。

ふと道の先を見たら、足があったの。噂通り、膝から下だけの。

そんでね、迷ったんだけど、結局かけっこしてみることにしたんだー。

スウェーデン食わねばなんとやらってやつだね。

え? 違う? 使い方も?
気にしない気にしない。

そんでね、隣に立つと、かけっこさんが本当に走り出したの。

亜美も同時に走り出したんだけど、かけっこさんが結構早くて負けそうになっちゃったんだ。

もう少しで曲がり角だったんだけど、ほんのちょっとだけ亜美が遅れてた。

だから亜美ね、ランドセルからリコーダー引き抜いて、思いっきりかけっこさんを殴ったの。

結果は亜美の勝ち。

かけっこさん、道路の真ん中でバタバタしてたんだけど、そのうち走ってきた車にひかれて消えちゃった。

それ以来、かけっこさんを見たって子が出なくなったんだよ。

亜美ってば、すごくない?

雪歩「父のかまくら」

あ……雪、降ってきましたね。

はい、好きです。

たくさん積もった年は、よく雪だるまとか雪うさぎとか作ったりしてましたよ。

でも、やっぱり私はかまくらが好きですね。

自分で作ったことはないんですけど……子供の頃、お父さんが作業場で除雪された雪を集めて作ってくれたのを覚えてます。

私、その日はお父さんの仕事が終わるのを待たないといけなかったので、その中で待つことにしたんです。

お弟子さんがお餅を持ってきてくれたりして、楽しかったです。

それでしばらく中で遊んでたんですけど、途中で、眠くなってうとうとしてきたんですよ。

そしたら、突然ものすごい音が聞こえてきたんです。

驚いた私が、おそるおそるかまくらから出た瞬間、かまくらが崩れ落ちました。

見ると、クレーン車が倒れてかまくらを潰してたんです。

私、びっくりして泣いちゃって……そしたらお父さんがすぐに駆けつけて来て……その後は、あんまり覚えてません。

目撃してたお弟子さんの話では、かまくらはクレーンが倒れてきた時は全く壊れなくて、私が出てきた瞬間、まるでそれを待ってたかのように崩れたんだそうです。

私、なんとなく、お父さんが守ってくれたような気がするんです。

千早「雪だるまと──」

おはようございます、プロデューサー。

……はい、分かってます。

しばらくの間、連絡もしないまま休んですみませんでした。

いえ、病気とか、そういうわけではなかったのですが……。

はい、以後気をつけます。

……やっぱり今日は、仕事、ないんですね。

……え? 私が、嬉しそう……ですか?

いえ、そんなことは……。


それにしても、最近は本当に寒いですよね。

昨晩は特に冷え込みが強くて……私、雪だるま作りながら、凍えてました。

え?

……やっぱり、私が雪だるまを作るのは変でしょうか?

大丈夫です、自分でも分かってますから。

……ええ。久しぶりで、楽しかったです。

でも、少し、大変でした。

作ってから家の中まで運ぶんですけど、小さいので、作っても作ってもすぐに室温で溶けちゃって……。

それでも、やっぱり喜んでもらいたかったので……。

誰にって……それは──


あ、電話。


すみませんプロデューサー、呼ばれてるので、今日はもう家に帰りますね。

え? 電話の相手……ですか?

ふふっ。

この前、帰ってきてくれたんです。

私の──

響「かえる場所」

ねえねえプロデューサー。

ん? 今日は直帰の自分が、なんで事務所に来たのかって?

それがさー、聞いてよー。

最近、親からよく電話がかかってくるんだけど、帰ってこいってうるさいんだぞ。

それとなく断り続けてるんだけど、なかなか諦めてくれないんだ。

でね、昨日もかかってきたんだけど、いい加減うんざりしてたから「絶対に嫌!!」って怒鳴っちゃったんだ。

そしたら、「じゃあ迎えにいく」って言ってきれたの。

それでね、さっき家に帰ってみたら、部屋中びしょ濡れで海の匂いがぷんぷんしてたんだ。

だからさ、今日、プロデューサーの家に泊めて?

え? うん、親……あ、違う。そっちじゃない。

うん、そっち。

だからお願い……泊めて?

って言うか、助けて?

伊織「納得できない」

……あ。

あんたが不思議な話聞かせてなんて言うから、嫌なこと思い出しちゃったじゃない。

……まあいいわ。

じゃあ、ちょっと聞いてくれる?


小学生の頃の話なんだけどね。

学校で、こっくりさんってやつが流行ってたのよ。

はあ? この伊織ちゃんが、そんなばかばかしいものやるわけないでしょ?

でもね、クラスのみんなはだいぶハマってたみたいで、毎日のようにしてたみたいよ。

そんなある日、私ね、学校に忘れ物したことに気づいて取りに戻ったのよ。

そして自分の教室の前に着いた時、様子がおかしいことに気づいたの。

教室の中が、真っ暗だったのよ。

外はまだまだ明るくて、例えカーテンを閉めていてもそんな風には絶対にならない筈なのに。

流石に少しためらったけど、忘れた物が、どうしてもその日必要なものだったから思いきってドアを開けたわ。

そしたら、意外に教室の中はなんともなかったの。

ただ、真ん中で机を囲んでいた四人のクラスメートはボロボロ泣いてたわ。

話を聞いてみると、なんでもこっくりさんを帰すのに失敗したらしくて、教室は暗くなるわ、こっくりさんはだんだん怒っていくわで、すごく怖かったらしいのよ。

そこに私が現れて、ドアを開けたと同時に教室に明かりが戻って、こっくりさんも帰ってくれたらしいわ。


それでね、ついたあだ名が『退魔鏡』。


絶対おかしいわよねぇ!?

貴音「とある女の話」

はて、不思議な話……ですか。

そうですね、それでは、こういう話はいかがでしょうか。


ある日、とある病院に一人の女がやって来て、とある医師がその女を診察することになりました。

その医師は、女に胃かめらを飲ませました。

するとどうでしょう、確かに女の胃の中にあるはずのかめらが、世にも奇妙な光景を映しているではありませんか。

驚いた医師は、すぐさまかめらを取り出し、女に様々な検査を受けさせます。

されど、れんとげんであろうと、しーてぃーすきゃんであろうと、異常は見つけられません。

不思議に思った医師は、再び女にかめらを飲ませました。

しかし、かめらは胃を映すだけ……。

結局、最初に胃かめらを入れていた数分間、かめらはどこの何を映していたのか?

それは、分からず仕舞いでした。


……いかがでしょうか?

え? その女の名前……ですか?

ふふっ。

それは、とっぷしぃくれっとです。

美希「ミキミキ」

ねえ、ミキ、ちゃんとキラキラできてるよね?

……だよね。

うん、ありがとうなの。

え? ……んー。

そうだね、プロデューサー……ううん、ハニーにだけは、教えてあげてもいいかな。

ミキの、キラキラの秘密。


ミキね、二人のミキのキラキラを集めてキラキラしてるんだよ。

なんて言えば分かるかな……えっと、とにかく、ミキは二人いるの。

ミキが寝るとね、ミキは、もう一人のミキと入れ替わるの。

向こうのミキは、全然キラキラしてないんだよ。

こっちのミキと比べて、全然ダメダメな子で、何をやってもうまくできないの。

でもそれは、向こうのミキの分までこっちのミキがキラキラしてるからなの。

なんで分かるのかって?

だって、最初は一緒だったもん。

昔は、寝てても起きててもたいして変わらなかったの。

でもね? だんだんこっちのミキはキラキラしだして、逆に向こうのミキは酷い目にあうようになっていったの。

特に最近、向こうはつらいの。ミキは寝てる時だけだからまだいいけど、あっちのミキは本当に大変なの。

だからね、ハニー。

ミキの寝言に返事しちゃ、絶対にヤだよ?

美希には悪いけど、ミキはやっぱりこっちがいいの。

……でも、もし今度ミキが寝てるのを見かけたら、そっと撫でてあげて?

少しだけ、しばらくの間だけでも、幸せな夢を見させてあげてほしいの。

春香「少し、不思議」

不思議な話ですか?

えっと……何かあったかなぁ。

んー。

……大した不思議じゃありませんけど、いいですか?

えっと、この前電車に乗ってた時のことなんですけど。

突然お尻を触られたんですよ。

最初は、当たっちゃってるのかなーなんて考えてたんですけど、次第に触り方が大胆になってきて……。

とうとうパンツの中に侵入しようとしたあたりで、我慢できなくなって振り向いたんです。

そしたら、そこには誰もいなくて、ただドアが外の景色を映しているだけでした。

そこで私は思うんです。

あの手は、何のために私を触ったんでしょうか?

幽霊とかでも、痴漢して興奮したりするんでしょうか?

少し、不思議ですよね。

終わり

以下おまけ

真「トイレの怪」

プロデューサー、怖い話聞きたくないですか?

え? ボクの話はいつも怖くない?

だっ、大丈夫です! 今日という今日は、本当に怖い話ですから!

覚悟してくださいね! 今日こそプロデューサーを怖がらせてみせますよ!


えっとですね、この前、男子トイレに入った時の話なんですけど──

え? あ、いや違っ……違います!

別に男っぽいって言われて辛いわけじゃないですから! 悩んだりなんかしてませんから!!

だから、仕方なかったんですって。また色々事情があったんですよ。

もう……話を戻しますよ。

えっと、だから、仕方なく入ることになって、ドアを開けたんですよ。

そして、ドアを閉めたその瞬間……。

なんと! トイレ中の便器が一斉に水を流しだしたんです!

ちょうどドアを閉めた瞬間に、こう、ジャーって──

え? 清潔に保つための自動洗浄?

へえ、そうなんですか……。

……しょうがないじゃないですか、殆ど入ったことないんですし。

別に? スネてませんよ?

大体、トイレメーカーが悪いんですよ、全部。

ちゃんと女子トイレにもその機能をつけてれば、ボクが恥をかくこともなかったんですから!

小鳥「御神籤」

不思議な話、ですか?

じゃあ、とっておきのをひとつ。

おみくじってあるじゃないですか。

そう。神社とかで売ってるあれです。

私あれを引くのが好きで、神社に行ったりした時は絶対引くんですよ。

運勢とか書いてあることもその時によってバラバラで、楽しいですしね。

でも、何故か、どういうわけか、全てのおみくじに──

『恋愛 諦めなさい』

って書いてあるんですよ。

不思議ですよねぇ……。

うふふ……うふふふふああははははははははははははははははは。

おまけ終わり

ついでに似たような過去作紹介

P「きっかい」
P「ふかしぎ」
P「不思議な話」

お付き合いいただきありがとうございました

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