従者「不老不死の呪い……ですか」女勇者「そうだ」(100)

 それは少し昔の話。勇者は魔王を討たんとし、やがて……

女勇者「……はあっ、はあっ」

魔王「……よくぞ、人の身でここまで……」

女勇者「……これで、やっと……!」

魔王「……その通りだ。見てわかるだろうが私はもう助からぬ。貴様の勝ちだ」

女勇者「みんな、仇は取ったぞ……!」

魔王「……さすが人々を救い、希望を与える勇者だ。仲間が倒れても諦めず、今ここで私を倒したこと。賞賛に値する」

女勇者「……それでなんだ。なにが言いたい」

魔王「私はここで倒れる。だが……」

女勇者「……!?」

魔王「ただでは倒れてやらんぞ……!」

女勇者「貴様っ……!?」

魔王「く、くくく……ふはははは!」

女勇者「な、なんだ!何をした!?」

魔王「勇者よ。決して絶望には負けず、希望を掴み続けた者よ」

女勇者「…………」

魔王「貴様は、必ず絶望することになる。永劫の時を歩む中でな」

女勇者「まさか……!?」

魔王「死ねず、子を成すことも出来ず、ただ一人で永遠に苦しみ続けろ!」

女勇者「貴様ァ!」

魔王「くはははは!貴様の顔が絶望に歪むのを!地獄で見届けていよう!」

女勇者「……死ね!」

魔王「……かはっ!……お前は……必ず……絶望……する」

女勇者「……………」

魔王「…………」

女勇者「……絶望なんて、するものか……!」

これってもしかしてなんかの続編?

違ったらごめんなさい

気にしないで続けてください

~砦~

女勇者「この私に従者……か」

兵士「はっ!そうであります!今も尚、前線で戦い続ける勇者様に少しでも助けになるように、と」

女勇者「見張りの間違いじゃないか?誰の差し金だ。将軍か?王か?」

兵士「そ、そんなことは……!」

女勇者「少しからかっただけだ。で、その私の従者とやらはどこに居る?」

兵士「は、今すぐここへ来るようになっております」

女勇者「…………その通りのようだな」

従者「失礼します」

兵士「勇者様。こちらがあなた様に仕える従者となっております」

女勇者「ほう」

従者「勇者様、何卒よろしくお願いいたします!」

>>3
そんなことはまったくないので気軽に読んでー

女勇者「かわいそうにな。まだ若いのにこんな前線、しかも私の従者とは。何をやらかしたんだ?」

従者「いえ、志願をさせていただきました!」

女勇者「……お前、頭は大丈夫か?死ににくるようなものだぞ」

従者「私に死ぬつもりはありません。国の為に身を粉にして戦う所存です」

女勇者「…………」

兵士「……と、いうわけなので。勇者様、よろしくお願いします」

女勇者「……わかった」

兵士「じゃ、新入り。せいぜい頑張れよ」

従者「は、わかりました!」

兵士「では、失礼します」

女勇者「…………おい」

従者「なんでしょうか勇者様」

女勇者「貴様、どれほど使える?」

従者「少なくとも自分の身は守れるようにと叩きこまれております!」

女勇者「そうか。なら、行くぞ」

従者「どちらへ行かれるのですか?」

女勇者「私の仕事を果たしに行く」

従者「……魔物の討伐でしょうか?」

女勇者「そうだ。さっそくで悪いが戦ってもらう。死ぬな」

従者「は、わかりました……!」

~戦場~

従者「…………」

女勇者「……緊張しているな。初陣か」

従者「……はい」

女勇者「邪魔になるようなら容赦なく置いて行く。怖いのなら砦にこもっていろ」

従者「いえ、私は勇者様の従者なのでそういうわけにはいけません」

女勇者「……そうか。…………来たな」

魔物「ガアアアアアッ!」

従者「っ!」

女勇者「今日のは大したことがないな」

従者「……あれでですか?」

女勇者「ここは最前線だからな。魔物の質と量もそれ相応だ」

従者「…………」

兵士「ボサッとするな!死ぬぞ!」

従者「は、はい!」

女勇者「私が前に出る!」

従者「勇者様!?」

兵士「いいんだ、勇者様の強さは別格だ。俺達は勇者様の討ちもらした奴を倒していけばいいんだ!」

女勇者「ハァァァ!!」

魔物「グギャアアアアアアア!!?」

兵士「……わかったろ?勇者様は俺達とは別格なんだよ」

従者「……そう、ですか」

兵士「おら!こっちにも来たぞ!きばれ新入り!」

従者「はい!」

兵士「槍で突け突けぇ!近寄られるとおしまいだぞ!」

「オオオオッ!」

魔物「ガアアアアアッ!」

従者「くっ、てえぇぇぇい!」

兵士「突出するなよ!全員で翻弄しろぉ!」

「オオオオッ!!」

魔物「ガアアアアアッ!」

兵士「ちっ!しぶと……」

女勇者「ハァァァアッ!」

魔物「ガッ…………」

女勇者「……これで最後か」

兵士「……どうやらまたお手を煩わせてしまったようで」

女勇者「気にするな。貴様達の仕事は砦を壊されないように時間を稼ぐことだからな。時間稼ぎさえしていればいい」

兵士「……っ!…………そういってくださると幸いです」

女勇者「生き残ったか」

従者「はい」

女勇者「これからも死なないことだけを考えろ。敵は私が倒す」

従者「わかりました」

女勇者「では、帰るぞ」

従者「あの、魔物の死体は……」

女勇者「そんなもの兵士達に任せておけ。私の仕事は戦うことだけだ」

従者「そ、そうですか……」

女勇者「……なんだ、文句でもあるのか?」

従者「あ、いえ、そんなことは……ありません」

女勇者「そうか、貴様はどうする?兵士達の手伝いでもするか?」

従者「……私は従者、です、ので」

女勇者「……好きにしろ」

従者「え?」

女勇者「好きにしろ。お前が私に関係ないところで何をしようが関係ない」

従者「あ……」

兵士「……お強い勇者様は誰に対してもあんな態度さ」

従者「……兵士さん」

兵士「ま、気にしないことだな。で、魔物の死骸の片付けを手伝ってくれるのか?手伝ってくれると嬉しいんだが」

従者「手伝いますよ。私は大して役に立ちませんでしたし」

兵士「なあに。まともに動けただけましさ。時間稼ぎさえしていれば勇者様が全部片付けちまうしな」

従者「それにしても、勇者様は強かったですね」

兵士「まあな。なんか俺が産まれるより昔に魔王ってのを倒してるらしいしな」

従者「有名ですよねその話」

兵士「ああ。ま、あんだけ強いんだし本当なんだろうな」

従者「すごいですよね。伝説ですよ伝説」

兵士「だけどなぁ……、この話には続きがあるのは知ってるだろ?」

従者「……はい。魔王を倒しても魔物はいなくならなかった」

兵士「そのために魔王を倒したってのにな。しかもそのせいか勇者様は年を取らなくなったのさ」

従者「……見た目の年齢は確かに私たちと大して変わりませんよね」

兵士「しかも大怪我をしてもすぐに戻りやがったんだよ」

従者「……本当ですか?」

兵士「ああ、この芽でしっかりと見たよ。まあ勇者様は不老不死だと専らの噂だったしな。あの強さでしかも不老不死と来た。果たして勇者様は人間なのかね?」

従者「兵士さん、それ以上は……」

兵士「おっと悪い。……でもな、怖いんだよ」

従者「…………」

兵士「昔、世界を恐怖に陥れてた魔王を倒した力を俺達に振るわないという保証はどこにある?」

従者「……勇者様はそんなことはしないはずです」

兵士「……お前みたいに信じられる奴ばかりだった、俺もこんな心配はしちゃいないんだろうな」

従者「兵士さん?」

兵士「話はこれでおしまいだ!とっとと片づけるぞ!」

「了解!」

兵士「それじゃ、手伝ってもらうぞ」

従者「わかりました。でも、よかったら話の続きをいつかして下さい」

兵士「またいつか、な」

んじゃ、今日はこれでおしまい
のんびり書いてく

……あちゃー。
簡単に不死だと思ってください

1だけどこの話は生物学における不老不死ではなく
物語でよくある永遠に若く、不死身である不老不死です

~砦~

従者「勇者様、只今戻りました」

女勇者「別に戻らなくてもよかったんだが」

従者「そういう訳にはいけません。私は勇者様の従者なので」

女勇者「そうか」

従者「はい」

女勇者「…………」

従者「…………」

女勇者「…………」

従者(会話が続かない……!)

女勇者「おい」

従者「は、はい!なんですか?」

女勇者「貴様、確か私の従者に自分で志願したと言ったな?」

従者「はい、そうです」

女勇者「なぜだ?私の側に居るということは否応なく危険に巻き込まれる。それだけでも稀有であるのにこの化け物みたいな私に仕える?何が目的だ」

従者「えっと、それは……」

女勇者「名声か?それとも誰かの差し金か?吐け、今すぐに」

従者「っ!?」

女勇者「私が優しくしているうちに話せよ?ひとーつ……ふたーつ……」

従者「わ、私はそのような目的で勇者様に仕えているわけではありません!」

女勇者「……ならばなんだ?」

従者「……私の村は、勇者様によって救われたのです」

女勇者「…………」

従者「私がまだ幼い頃、勇者様が現れて村を狙う魔物を倒してくれました。直接勇者様と話したりしたわけでもありませんし、幼い頃だったので顔を覚えていたわけでもありません」

従者「ですが、勇者様の行いには心が震えました!人々のために戦う英雄……それに憧れて、勇者様の従者に頑張って目指したんです」

女勇者「……嘘はついてないようだな」

従者「当然です!」

女勇者「見張りか何かだと思ったが、見当違いだったか。許せ」

従者「いえ、気にしません。……ですが勇者様は何をそんなに警戒なされたのですか?」

女勇者「…………」

従者「っ!すみません、余計なことを……!」

女勇者「……別にいい。だが、少し考えればわかるだろう?」

従者「えっと……」

女勇者「……あまりそっち方面では優秀ではなかったようだな」

従者「……申し訳ありません」

女勇者「私の従者になるなら少しは自分で考えろ」

従者「わかりました!」

女勇者「……端的にいうと、私は警戒されているのだ」

従者「……魔物にですか?」

女勇者「…………」

従者「えっ、違いました……?」

女勇者「……はぁ。私は権力者達に警戒されているのだ」

従者「なんで勇者様が警戒されているんですか?」

女勇者「…………。もっと優秀な従者がよかったな」

従者「す、すみません……」

女勇者「……それは私の化け物じみたの力を恐れているからだ」

従者「……確かに勇者様はお強いですけど、その力は人々のために……!」

女勇者「とりあえず話は最後まで聞け」

従者「はい……」

女勇者「そうした化け物じみた力を持っている上に私は……」

従者「不老不死、なんでしたよね……」

女勇者「なんだ、もう知っていたのか。まあそこそこ有名だからな。魔王が最後に私にかけたこの呪いは」

従者「……呪い」

女勇者「そうだ、私はこの呪いがある限り老いることも、死ぬことも無い」

従者「……でも魔王は勇者様の敵だったのですよね。なのになぜ勇者様にそんな真似を?」

女勇者「……いずれお前もわかるだろう。この呪いの意味が」

従者「はあ、……そうですか」

女勇者「つまり、それらのせいで権力者達は私を恐れているのだ」

従者「……さっきも言いかけましたけど勇者様は魔王を人々のために倒してくださったのでしょう?」

女勇者「そうだ」

従者「なら勇者様はそんなことするわけが無いとわかるじゃないですか!」

女勇者「……貴様は怖くないのか?」

従者「勇者様……?」

女勇者「圧倒的強者が、いつでも自分を殺せる者が側に居るんだぞ?」

従者「ゆ、勇者様?」

女勇者「強すぎる力を持ったものは恐怖される排他される。それが当たり前なのだ」

従者「…………」

女勇者「他人に命を握られている気分はどうだ?ただ殺気を受けただけで動けないのか」

従者「…………!」

女勇者「いい気概だ。だがな、感じただろう?恐怖を。恐ろしかっただろう?私が。どうだ、理解できたか?」

従者「わ、わわかりま、した」

女勇者「……話は以上で終わりだ」

従者「……わかりました。ですが……」

女勇者「なんだ?」

従者「勇者様は私の憧れには変わりませんので」

女勇者「…………」

従者「では、失礼します」

~食堂~

兵士「よっ、しけた面してるな」

従者「兵士殿……」

兵士「仕事中じゃねえのに堅苦しい奴だな。そんで、なんかあったのか?聞くだけ聞いてやるぜ?」

従者「……実は勇者様が自分は恐れられている、と」

兵士「はあ?そんなもん当たり前だろうが」

従者「っ!……そう、なのか」

兵士「そうなんだよ。アホみてえな力を持つ上に死なねえんだぜ?化け物じゃねえか」

従者「……そう、か」

兵士「そりゃあ英雄視しているところもあるけどよ。だんだんみんな怖くなっちまったんだよ。みんなが恐れてた魔王っつう化け物を最後は単身で倒しちまった勇者様によ」

従者「…………」

兵士「ショックか?まあお前は勇者様に憧れてた口だからな」

従者「……勇者様は、人々に疎まれているのか」

兵士「そうだ。なんで英雄のはずの勇者様がこんな最前線に居るかわかるか?」

従者「それは人々に害を成す魔物を少しでも倒すために……」

兵士「違えよ。権力者達が少しでも勇者様を国から遠ざけようとしたのさ。少しくらい考えればわかるだろ?」

従者「……それは」

兵士「そうやって魔物に目を向けさせて自分達が安心するためにな」

従者「……嘘だ」

兵士「嘘じゃねえよ。ちょっと詳しい奴ならだいたい知ってる話さ」

従者「……」

兵士「なんだお前。勇者様に同情してるのか?」

従者「……していたら、おかしいですか?」

兵士「ああ。勇者様はな、俺達とは違うんだよ、違う生き物さ。そんなのないちいち同情してたら身が持たないぜ?」

従者「そんなことは……!」

兵士「お前も勇者様が戦う様を見ただろ?真似出来るのか?」

従者「それは……」

兵士「その身は誰よりも疾く、その一撃は魔物を一撃で仕留めるほど重い。あれは人間なのか?人間に出来ることなのか?」

従者「…………」

兵士「……ま、そう深く考えんなよ。ハゲるぞ?」

従者「なっ!?」

兵士「……とりあえずそういうもんもあるってだけだ。深く考えるな。しんどくなるだけだぞ」

従者「……私は」

兵士「ま、そういうこった。それより別の話しようぜ?お前は彼女とかいるのか?」

従者「い、いきなりなんですか!?」

兵士「いいじゃねえかよ。辛気くさい話ばかりじゃ気が滅入っちまう」

従者「……居ませんよ。家族ならいますけど」

兵士「そうかそうか!俺には妻と娘がいてな!最近娘が本当に可愛いんだよ!」

従者「へえ、そうなんですか」

兵士「もう可愛くて可愛くてな!こっちに来る時にも「パパ、行っちゃいや!」ってなかなか手を離してくれなくてなあ!」

従者「はあ」

兵士「くりくりのおめめをうるうるさせるもんだから、つい俺も貰い泣きしちまったよ!」

従者(……長くなりそうだ)

兵士「妻と二人で頑張って引き剥がしたんだよ。あの後泣き疲れて眠っちまったんだろうなあ」

従者「可愛い娘さんですね」

兵士「だろう!?お前なかなか話がわかるな、よし!とことん語ってやろう!」

従者「え」

ノシ

今日は無しで
感想が一つもつかない。何がいけないんだろ……

~翌日~

従者「娘さんを可愛がってるのはわかったけど兵士さんの話長かったな……」

女勇者「む……」

従者「あ、勇者様おはようございます」

女勇者「……おはよう」

従者「勇者様もこれから朝食ですか?」

女勇者「そうだ。お前もしっかり食べておけ。いつそれが最後の食事になるかわからないのだからな」

従者「驚かさないでください。……冗談ですよね?」

女勇者「冗談ではない。戦う以上、命を落とす可能性はどこまでもついてくる」

従者「…………」

女勇者「戦うのならば覚悟はしておけ」

従者「はい!……あの、すみません勇者様」

女勇者「なんだ?」

従者「その、無礼を承知で尋ねますが勇者様はなぜ戦うのですか?」

女勇者「…………なぜそんなことを聞く?」

従者「いえ、あの!憧れである勇者様の志を聞きたかっただけでして……」

女勇者「……そうか」

従者「はい……」

女勇者「私が戦う理由、それは」

従者「…………」

女勇者「惰性だ」

従者「惰性、ですか?」

女勇者「そうだ、良くも悪くも私は戦うことしか知らない。魔王を倒した後も権力者達は私を持て余した」

従者「…………」

女勇者「やることが、やりたいことが何も無いのだ。おだてられ、もてはやされ、魔王を倒すためだけに生きてきた私にはな」

従者「…………」

女勇者「がっかりしたか?」

従者「い、いえ!そんなことは……!」

女勇者「国の為、人の為。人々の平和を乱す魔物が許せない……そういったことが聞きたかったのだろう?」

従者「それは…………」

女勇者「別にそういうのも悪くないだろう、だがな……」

従者「…………」

女勇者「そういったモノを私に押し付けることは許さない……わかったか?」

従者「……わかり、ました」

女勇者「……ならばいい。朝食を取ろう」

従者「……はい」

~訓練所~

ビュンッ!ビュンッ!

従者「…………はあ」

兵士「よう。精がでるな」

従者「……兵士さん」

兵士「まーた落ち込んでるのか。今度はどうしたっていうんだ。ええ?」

従者「……兵士さんは何のために戦ってるんですか?」

兵士「なんだよ急に?」

従者「教えていただけませんか?」

兵士「まあいいけどよ。だいたい察しがつくだろうが家族のためさ」

従者「…………」

兵士「俺は腕っ節くらいしか取り柄がねえしな。砦に来るまでに町があったろ?ちょっと大きいのがよ」

従者「はい、ありました」

兵士「そこに家族がいるんだよ。俺にとっちゃあ、戦うのはおぜぜを稼ぐのと魔物を町に行かせないためだな」

従者「そうなんですか……」

兵士「で、それがお前が落ち込んでるのとどう繋がるんだ?」

従者「……勇者様になぜ戦っているのか聞いたんです」

兵士「へー、やっぱりお前は物好きだな。で?」

従者「……惰性だそうです」

兵士「へー、勇者様は惰性で戦っておっしゃるのかよ」

従者「そうみたいです……」

兵士「で、勇者様に憧れてたお前はそれにショックを受けた、と」

従者「有り体にいえばそうです」

兵士「んー、俺はいまいちピンと来ねえな。勇者様の戦う理由がどうだろうが俺には関係ねえしよ。悪いな力になれなくて」

従者「いえ、話を聞いてくださっただけでも十分です」

兵士「つうかお前は昨日も言ったがいろいろ考えすぎだろ」

従者「ははは……」

兵士「やれることからやって行けばいいんだよ。考えんのはその後でいい」

従者「そ、それもどうかと……」

兵士「別になんとかなるぞ」

従者「あ、あははは……」

兵士「ま、自分で決めることだしな。俺はこれ以上は口を出さねえよ。今やっとかなきゃいけないことをやろうぜ」

従者「そうですね」

兵士「そんじゃ訓練の続きをやりますか。これはやっとかねえと後でしんどいからな。お前もそう思うだろ?」

従者「ええ、皆に遅れを取らぬよう頑張ります」

兵士「死なねえためにも頑張れよ」

従者「はい!」

~砦~

従者「……訓練きつかったな。やっぱり皆さんの方がベテランだな……」

女勇者「……む」

従者「……あ」

女勇者「……訓練帰りか?」

従者「そ、そうです。勇者様は……」

女勇者「……魔法について少し調べていた」

従者「勇者様は魔法も使えるのですか?」

勇者「不得手だがな」

従者「いったいどんな魔法を?勇者様には剣術だけで十分かと思うのですが……」

女勇者「…………不老不死の呪いについてだ」

従者「あ……」

女勇者「もういいか?」

従者「は、はい!」

カツカツカツ……

従者「…………」

従者「勇者様は呪いを解きたいのだろうな……」

従者「勇者様ですらいまだに解呪ができないとはどれだけ強力な呪いなのか……」

従者「……不老不死とはいったいどんな気分なのか」

従者「……少なくともいいものではないか」

カンッカンッカンッ!

従者「ッ!魔物か?これだけの頻度で来るとは本当に激戦区だな……」

休憩

~戦場~

兵士「うっし、お前ら!偵察の結果によると魔物達はもうすぐここへ来る!気を抜くなよ!」

「オオオォォー!」

従者「あの、勇者様」

女勇者「……なんだ?」

従者「なんというか、その……頑張ってください」

女勇者「私の心配より自分の心配を先にしろ」

従者「そ、そうですよね」

女勇者「……それだけか?」

従者「は、はい」

女勇者「……ならばこれ以上は話しかけるな。戦場で、とくにお前のような新入りこそ死にやすいのだからな」

従者「は、わかりました!」

誤字脱字ごめんねorz

「魔物が来たぞー!」

女勇者「……突貫する……!」

兵士「よし!槍でこちらへ近づかせるなよ!それと必ず多対一で攻めろ!」

「応!」

従者「はい!」

魔物「キシャアァアアアア!」

兵士「今日もおいでなすったな!突けええええ!!」

「オオオオォォ!」

魔物「キシャァァア!?」

兵士「このまま続けろ!」

魔物「キ…………」

従者「?」

魔物「キッシャアアアアアアアアアアアア!!!」

兵士「っ!やべえ!」

ゾロゾロ……

魔物「シャアア……」

魔物「シュルルルル……」

兵士「くそっ!仲間を呼び寄せやがったな!?」

「ど、どうしましょう!?」

兵士「狼狽えるんじゃねえ!班を分けて多対一に持ち込むんだ!乱戦になったらそれこそ勝ち目がねえ!」

「了解……うわああああ!?」

兵士「くそが!何ボサッとしてやがる!とっとと言われた通りに分かれろ!」

魔物「シャアアァァァ!」

兵士「くそっ!魔物のクセしやがって余裕振りやがって!……死んでたまるかよ!」

魔物「キシャァァア!」

従者「……自分が前に出ます!その間に態勢を立て直してください!」

兵士「おい!」

魔物「シャアアァァァ!」

従者(時間稼ぎくらいなら……!)

魔物「キシャアァアアアア!」

従者「はやっ……!?」

ザン!

従者「あ…………」

兵士「あの……馬鹿やろうが……。なにしてやがる!今のうちに立て直せ!」

「応!」

魔物「シャルルル……」

従者(もう、おしまいか)

魔物「シャアア!」

従者「……勇者……様」

魔物「キシャアァアアアア!」

ザシュ

魔物「キ、キルル?」

ドサッ

女勇者「……だから言っただろう」

従者「……勇者様」

女勇者「お前のような新入りか死にやすいのだと」

魔物「シャ、シャルル!?」

兵士「よし!相手が混乱し始めた!この隙を逃すな!突いて突いて突きまくれぇぇぇ!」

「オオオオオ!!」

従者「……今回も私たちの勝ちですね」

女勇者「……そんなことより自分の心配でもしていろ」

従者「はい……」

女勇者「残りを始末してくる」

従者「頑張って、ください」

女勇者「……馬鹿が」タタタッ

従者「…………勇者様、速いなあ……」

兵士「よし!もう少しだ!踏ん張れ!」

「オオオオオ!!」

魔物「キシャアァアアアア!?」

兵士「へっ、人間様がそう簡単にやられるわけねえだろうが」

ザン!

女勇者「少し手間取った」

兵士「……いえ、犠牲も出ましたが今回も勇者様のおかげで勝てました」

女勇者「…………そうか」

~砦~

兵士「うーっす、大丈夫かー?」

従者「あ、兵士さん。大丈夫では、ないですね」

兵士「そりゃあそうだろうな。ま、胸を張れよ。名誉ある負傷なんだからよ」

従者「あははは……。っつう!」

兵士「おっと悪い。……なあ?」

従者「なんですか?」

兵士「なんでお前、飛び出したんだ?言っちゃあ悪いが俺たちのために命をかけたとかいうのならただの馬鹿だ」

従者「…………」

兵士「ただ気になっただけだ。言いたくねえのならそれでいい」

従者「……勇者様に戦う理由を聞いた時、勇者様は惰性だと言いましたが、本当は国のため、人々のためだと言って欲しかったんです」

兵士「……自分の憧れに理想を抱いてるっつうのはよくある話だな」

従者「勇者様はそれがわかっていたんです。私にそれを自分に押し付けるなと言いましたよ」

兵士「……それで?」

従者「勇者様は余りいい顔をしませんでしたけど、国のため人々のために戦うのは素晴らしいことだと私は思っています」

兵士「……で、その自分の理想を貫くために体を張ったと」

従者「……そうなりますね」

兵士「はぁ……」

従者「兵士さん?」

兵士「お前、馬鹿だ」

従者「え?」

兵士「本当にこういう奴っているんだな。……早死にするぞ?」

従者「それでも、誰かを助けたいんです。昔、私を救ってくれた勇者様のように」

兵士「大して強くもねえひよっこが何言ってんだか」

従者「そうですよね……」

兵士「ま、好きにしろよ。お客さんも来たみたいだし俺は退散するわ」

従者「お客さんですか?」

兵士「おう。じゃあな、お大事に」

従者「お見舞いありがとうございました」

兵士「あいよ。とっとと治しちまいな」

従者「はい」

休憩

女勇者「…………む」

兵士「これはこれは勇者様、お見舞いですか」

女勇者「一応だが私の従者だからな」

兵士「それはそうでしたね。では、私はこのへんで」

女勇者「ああ」

カツカツカツ……

女勇者「…………」

従者「……勇者様、お見舞いありがとうございます」

女勇者「……気が向いて顔を見にきただけだ」

従者「それでもありがとうございます」

女勇者「……それにしてもなぜわざわざ自分の身を危険にさらした?少なくとも前に出なければお前はそんな怪我をしなかっただろう」

従者「…………」

女勇者「私相手にだんまりを決め込むつもりか?えらくわがままな従者も居たものだな」

従者「……助けたかったんです」

女勇者「……なに?」

従者「あのままじゃ誰かが死んでいたかもしれなかったんです」

女勇者「……そんなことでわざわざそんな大怪我までしたのか?」

従者「私にとっては大事なことなんです」

女勇者「……くだらないな。英雄気取りか?自惚れるな」

従者「…………」

女勇者「そんなことをしても割に合わない。感謝されるのはその一瞬だけ。命をかけた見返りなぞかえってこない」

従者「見返りが欲しいんじゃないんです」

女勇者「……ならばなんだ」

従者「昔、自分を助けてくれた人のようになりたいんです。まだ何もかもが遠いのですけど」

女勇者「……くだらない」

従者「勇者様……」

女勇者「くだらないくだらない!そんなものを大事にしている貴様が気に食わない!」

従者「…………」

女勇者「そんなものを目指しても何にもなりはしない!」

従者「それでも、いいんです。決めたから」

女勇者「……貴様は本当に馬鹿だ」

従者「別の人にも言われてしまいました」

女勇者「……そうだろうな」

従者「でも止めません。突き進んで、いつか本当に……勇者様みたいになるんです」

女勇者「…………」

従者「…………」

女勇者「……そんな大怪我をしておいてよくもそこまで大きな口が叩けるものだ」

従者「……未熟なのはわかっています。まだ何もかもが足らないことなんてことは」

女勇者「……今回のことではっきりとした。私は貴様が気に食わない」

従者「……すみません」

女勇者「……だから教えてやろう。その先に進んでも貴様が望むものなんて何も無いということを」

従者「……え?」

女勇者「……お前が行き着く途中でくたばらないようにはしてやる。……やる気があるのならばな」

従者「それは、私に稽古をつけてくれるということですか……?」

女勇者「……貴様が望むのならな」

従者「ぜ、ぜひよろしくお願いします!」

女勇者「……なら早くその怪我を治せ」

従者「わかりました!」

女勇者「……嬉しいのか?」

従者「はい。嬉しくないはずがありません」

女勇者「…………」

従者「勇者様、私が何かお気に障ることでも……」

女勇者「黙れ」

従者「…………」

女勇者「……話はこれだけだ。失礼する」

従者「……ありがとうございました」

~訓練所~

従者「ていっ!」

ブゥン!

兵士「おっす、久しぶりだな」

従者「あ、兵士さん」

兵士「怪我の調子はどうだ?」

従者「もう大丈夫です。最前線なだけあって怪我の治療もちゃんとしてくれましたし」

兵士「まあ逆を言えば怪我をしてもほとんど休めないってことだけどな!」

従者「ははは、そうですね」

兵士「それにしてもお前は本当に変わり者だな。勇者様に教えを受けてんだろ?命がいくつあっても足りねえだろ」

従者「そんなことないですよ」

兵士「そうかいそうかい。俺としてはまだ魔物の相手のほうがマシだね」

従者「いえ、ちゃんと教えてもらってます。……だめ出しばかりですけど」

兵士「そりゃそうだろ。あんなのが比較対象じゃ誰も勝てねえって」

従者「でもいつかは勇者様に認めてもらえるような立派な従者になりたいんです」

兵士「頑張るねえ。俺からはなんとも言えないわ。ていうか勇者様はそんな立派かねえ?」

従者「……勇者様が考えていることは私にはよくわかりません。ですがいつかきっと分かり合えると思っています」

兵士「熱いねえ。それに青臭い」

従者「……いけませんか?」

兵士「いんや?そこらへんは個人の勝手だろ。別に俺の考えを押し付けたりはしねえよ」

従者「…………」

兵士「ま、せいぜい愛しの勇者様に嫌われないようにな」

従者「そ、そんなんじゃ無い!」

兵士「あっははは!そうかいそうかい!」

休憩

従者「からかわないでくださいよ!」

兵士「はっはっはっ!悪い悪い……お、勇者様……」

従者「えっ!?」

兵士「……は居ないなあー」

従者「兵士さん!」

兵士「はっはっはっ!じゃあな!」

従者「本当にもう……!」

従者「……なんだかんだでいい人なんだよな。新入りの私も気にしてくれいるんだから」

従者「……頑張ろう」

数ヶ月後

女勇者「……貴様も少しは見れるようになってきたな」

従者「本当ですか!?」

女勇者「実戦に勝る経験は無いからな。周りの兵士達の足を引っ張ることはなくなるだろう」

従者「そうですか……!」

女勇者「……おい」

従者「なんですか?」

女勇者「貴様は後悔はしていないのか?こんな最前線へのこのこやって来て、戦っては傷つきその繰り返しだ」

従者「……後悔なんかしていません。苦しいし、つらいけど自分で選んだことですから」

女勇者「……貴様はこれからも私の側で戦うのか?」

従者「はい。私は勇者様の従者ですから」

女勇者「……馬鹿で、出来の悪いを忘れているぞ」

従者「……精進します」

女勇者「もっと頑張るんだな。……私の従者よ」

従者「……!はい!頑張ります!」

女勇者「私が目標なのだろう?簡単に追いつけると思うな」

従者「それでも諦めませんから」

女勇者「なら、訓練と実戦を怠るな。目標は努力しても到達できるかはわからないが努力しなければ到達できないのだから」

従者「はい」

女勇者「それでは私は用があるのでな」

従者「……呪いの研究ですか?」

女勇者「そうだ」

従者「……解けそうですか?」

女勇者「まだまだ遠いな。どういう呪いかは理解しているのだが解くとなると難しくなる」

従者「そうですか……」

女勇者「解く手がかりはまだみつかってないが気長にやるさ」

従者「頑張ってください」

女勇者「そんなことよりも貴様は自分の理想を叶えるために訓練でもしていろ。私が貴様くらいの年には普通に一人で魔物を倒せていたぞ?」

従者「…………」

女勇者「わかったなら早く行け」

従者「……はい」

女勇者「……頑張るんだな」

従者「はい!」

タタタタ……

女勇者「…………私を見て現実にすると決めた理想、か。……お前は私と同じように……か?」

~訓練所~

兵士「また来てやったぞ」

従者「……兵士さんって暇なんですか?」

兵士「違うぞ!?お前とは仕事があんまりかぶらないからそう思うだけだよ」

従者「………」

兵士「本当だって!」

従者「冗談ですよ。いつもやられっぱなしじゃなんですからね」

兵士「こりゃ一本取られたな。それにしてもいつもより張り切ってんじゃねえか。何かあったのか?」

従者「わかりますか?」

兵士「わかるっつうの。お前が来てから結構経ってんだからよ」

従者「実は一応ですけど勇者様に従者だと認められたんですよ!」

兵士「……へえ。よかったじゃねえか。お前の目標なんだろ?」

従者「はい!これだけでもここへ来た甲斐がありました。私の夢へ一歩近付きましたよ」

兵士「最終的には勇者様のように困っている人たちを助けたいんだっけか?」

従者「はい。勇者様は私の憧れですから」

兵士「本当に一途だねえ。……で、少しは進んだのか?」

従者「……何がですか」

兵士「いや、あんなのでも勇者様は女だろ?お前ら結構二人っきりになるし。それで男と女が二人になったならやることは一つしかねえだろ?」

従者「わ、私たちはただの主従です!そんなのではありません!」

兵士「またまたー、そんなこと言って本当はヤりてえんだろ?まだ若いんだしさ」

従者「…………」

兵士「……もしかして本当に何もねえのか?」

従者「そうだと言ってるじゃないですか……!」

兵士「なーんだ、つまんねえの」

従者「人で遊ばないでくださいよ!」

兵士「まあ、勇者様は一番お前に心開いてるから何かあると思ったんだよ」

従者「そう、ですか?」

兵士「そうさ。例えば……笑顔見せてくれたりとかねえのか?」

従者「……少しなら」

兵士「な!そんだけお前に心を許してるってことだ。俺は勇者様の笑顔なんて見たことないぞ?いつも仏頂面さ」

従者「……勇者様、私をちゃんと従者だと認めてくれてますかね?」

兵士「認めてるだろうさ。それともお前にほの字かもしんねえぞ?」

従者「それは無いです。有り得ないです」

兵士「そう頑なに否定すんなよ。今まで心を許せる相手がいなかったんだろうから案外コロッといくかもしんねえぞ?」

従者「……兵士さんはいったい私をどうしたいんですか……」

兵士「……いや、なんつうかよ。勇者様は一人な訳だろ?」

従者「従者ならここにいますよ」

兵士「わかってるって。そりゃあ勇者様は怖いし、そんな好きでもないけどさ。お前みたいな馬鹿が一人くらい支えてやるのもいいんじゃねえかなって思うわけよ」

従者「…………」

兵士「お前が来てからほんの少ーーしわかるかわからないくらい態度が軟らかくなってるしな」

従者「そう、ですか?」

兵士「おう。だから焚き付けてんだよ。勇者様と言っても女だしな」

従者「でも、急にそんなことをいわれても……」

兵士「別に無理して恋人にならなくてもいいさ。ただ支えるだけでいい」

従者「……兵士さん」

兵士「戦場では勇者様に助けてもらってるからな。ただそれだけだよ」

従者「……少し、考えてみますね」

兵士「おう。これはあくまで俺の考えだからな。自分できちんと考えろ」

従者「ありがとうございます」

兵士「別に礼なんていらねえよ」

従者「ですが……」

兵士「どうしてもっていうなら仕方ねえな。俺の妻の話なんだがな!」

従者「……ええ」(兵士さんにはそういえばこれがあったなあ)

兵士「これがよ!俺になんかもったいないくらいの妻でな!料理が上手いんだよ!」

従者「そうなんですか……」

兵士「おう!特に妻はシチューが得意だったんだがある日娘も手伝ったらしくてな!その日のシチューは本当に上手かったね!」

従者「いいご家族をお持ちですね」

兵士「だろう?シチューの中のいびつなにんじんも娘が切ったかと思うととても愛おしくてな!」

従者「ははは……」

休憩

~砦~

従者「……はあ。毎回兵士さんの話は長いけどそれだけ家族を愛してるんだろうな」

従者「…………」

従者(勇者様を支える、か。兵士さんも突飛なことを考えるよ)

従者(……私のほうが支えてもらっているというのに)

女勇者「……む、貴様か」

従者「あ、勇者様」

女勇者「こんなところで何をやっている。訓練はもう済んだのか?」

従者「はい、今は休憩しているところです」

女勇者「そうか。そういえば偵察部隊から魔物の情報が入った」

従者「っ!どうでしたか?」

女勇者「今回はなかなかの軍勢だそうだ。気を引き締めていけ」

従者「はい!わかりました!……あの、勇者様」

女勇者「なんだ?」

従者「……勇者様に私は必要ですか?」

女勇者「……いったい何を吹き込まれた?」

従者「いえ!その……勇者様はお強いです」

女勇者「……貴様よりはな」

従者「私は従者として勇者様にお仕えしているのに逆に支えられていて、迷惑ではないのか、自分は勇者様の役に立っているのかと……」

女勇者「……今更だな」

従者「はい、確かに今更なんですが……」

女勇者「……安心しろ、貴様は努力もしている。私の従者として誇りを持っている。……貴様は私の従者だ」

従者「……勇者様。……一生ついて行きます!」

女勇者「……一生か?」

従者「はい!何があっても私は勇者様の従者であり続けます!」

女勇者「……ずっと従者のままか?」

従者「はい!」

女勇者「…………」

従者「勇者様、どうかなされましたか?」

女勇者「……貴様はもう少し思慮深くなれ」

従者「な、何かしましたか!?」

女勇者「……貴様はわからんだろうな」

従者「お、教えてくれませんか?すぐに直しますので」

女勇者「……だから貴様は馬鹿なのだ」

従者「そ、そんな……」

~戦場~

兵士「今回の魔物はいつもよりも多く群れをなしている。いつも以上に厳しい戦いになる!覚悟はいいか!?」

「オオオオー!!」

兵士「魔物を絶対に後ろへ通らせるな!それが俺達の仕事だからな!」

従者「はい!」

女勇者「……貴様も慣れてきたな」

従者「そうですか?」

女勇者「ああ。……死ぬなよ」

従者「わかっています」

女勇者「……私の従者なら約束を違えるなよ」

従者「はっ!」

「魔物が見えて来たぞ!」

兵士「矢を構えろ!射程に入ったら撃ちまくれ!その後槍が突っ込む!」

従者「……ご武運を」

女勇者「自分の心配だけ……それは貴様には無理な話か」

従者「ええ、そうです」

女勇者「ふん」

兵士「まだ撃つなよ………………てぇー!」

シュババババ!

女勇者「では、行くぞ!」

兵士「突っ込めえええ!」

「オオオオー!!」



従者「はあっ、はあっ。……いったいどれだけいるんだ!?」

魔物「ガアアアア!」

兵士「ちっ!消耗が激しい!他の部隊はどうなってる!?」

「他の部隊も死者、重傷者多数です!このままでは!」

兵士「マジかよ!時間稼ぎもいい加減きついぞ!」

魔物「キシャアアアア!」

兵士「!?」

「新手です!」

兵士「もうお腹いっぱいだってのによ!」

従者「くっ、こいつら、強い……!」

魔物「ガアアアア!!」

従者(あ……死)

ザシュ

兵士「うぐぁ!」

従者「兵士殿!?」

兵士「……大丈夫かよ?」

従者「重傷です!しゃべらないでください!」

兵士「……当たり所が悪かったな。もう、助からねえよ。痛みも感じねえ」

従者「家族がいるんでしょう!?」

兵士「いねえよ」

従者「え……」

兵士「もう死んじまってるよ。……俺が守れなかったから」

従者「兵士……さん?」

兵士「ずっと死に場所を探してた。……お前みたいな馬鹿のために死ぬなら悪くない……な」

従者「兵士さん!兵士さん!?」

兵士「久しぶり……の……再開なんだ……邪魔すんな……よ」

従者「あ、ああ……ああああああ!!?」

魔物「キシャアアアア!」

従者「よ……くも。よくもよくもよくも!」

魔物「キシャアアアア!!!」

従者「死ねええええ!」

「ダメだ!もう持たな……!?」



女勇者「……おい、意識はあるか?」

従者「……勇……者様?」

女勇者「……ようやく終わった。……ほとんどの者が死んだがな」

従者「…………」

女勇者「……私も万能ではない。いつもあれだけの大口を叩いておきながらこの様だ」

従者「そ……んな……ことは……ごほっ」

女勇者「……無理にしゃべらなくともいい。今のお前は治癒魔法でかろうじて命をつないでいるにすぎない」

従者「……こひゅー……こひゅー……」

女勇者「……このままではお前は死ぬ」

従者「そう……ですか」

女勇者「……悔しいか?」

従者「…………」

女勇者「結局はほとんどのものを助けられず、貴様はくたばり損なっている」

従者「…………」

女勇者「もう一度聞く。貴様は悔しいか?」

従者「……悔しい……この……ままじゃ……死ねない……!」

女勇者「一つだけ方法がある。貴様が生き残る術が」

従者「なん……ですか?」

女勇者「貴様も私と同じように、不老不死になることだ」

従者「……!?」

女勇者「私が調べて調べて調べ尽くして……解く方法ではなくかける方法しかわからなかったが、ここで役に立つとはな」

従者「…………」 

女勇者「あの時と同じように死者の気がこの辺りに満ちている。これならできるはずだ」

従者「…………ごほっ!」

女勇者「……時間がないな。貴様はどうする?化け物になり永劫の時の中を歩まねればいけないと知っても……死にたくないか?」

従者「…………」

女勇者「答えろ」

従者「……なります……このままじゃ……死ねないから……!」

女勇者「…………そうか。ならば歓迎しよう。同じ不死者として、そして貴様の主として……」

女勇者「永遠に貴様の側にいてやろう。貴様の理想が時の流れと共に朽ちたとしても……」



おしまい

読んでくれた人ありがとう
できれば感想ください。ノシ

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