老人「わしはピチピチギャルになりたいのう」(ネタバレ編2) (661)

前作
老人「わしはピチピチギャルになりたいのう」(ネタバレ編)
老人「わしはピチピチギャルになりたいのう」(ネタバレ編) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376997079/)

前々作
老人「わしはピチピチギャルになりたいのう」
老人「わしはピチピチギャルになりたいのう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1374833811/)




前作の続きです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391695656

ストーリーの流れを書いた方が初見さんも入り込みやすいし集まるんじゃない?ww
あくまで一意見ね

人集めが目的ならこんな視点を変えた補完話なんか書かんだろ

>>5
1002に並んでるのは単にスレが埋まった時
直近で立ったスレがいくつか並んでるだけと思ってるわ
「このスレは埋まったけどこんなスレも出来てますよ」的な案内とかね

あらすじ

世界に散らばるオーブ。全て集めるとどんな願いも叶えてくれるという噂を聞いた女(元老人)・剣士・賢者(ほとんどただの遊び人)は各々の思惑を持ち、仲良く旅に出ることに
しかし、オーブはそれぞれ恐ろしい怪物が守護しており、旅は難航する
勇者が魔王討伐の旅に出たと聞いた3人は、仲間に引き入れようと能天気に勇者を探し始める
その途中、向かった国は魔物に乗っ取られ魔王城と化していた
突如現れた魔王に剣士が呪われ、近くの村で静養するため離脱してしまう
剣士の呪いを解くために目的は魔王討伐へと変わっていく
女は勇者探しに砂漠の国へ、賢者は剣士のいる村が襲われる可能性を危惧し魔王城へそれぞれ旅立つ

一方、オーブの真の力、そして集めなければならない理由を知った勇者と東の勇者は協力者である従者・戦士・盗賊と共に手掛かりとなる怪物退治に 奮闘中
色々あって現在、砂漠の国にやって来た勇者は砂漠の姫が行方不明と知り、怪物退治を東の勇者たちに任せ、捜索を始める
その途中、情報屋と知り合うが情報を買う資金が足りず、行動を共にすることで手掛かりを得ようとする
勇者を残し怪物退治に向かった東の勇者一行はピラミッドで砂漠の怪物と対峙する
逃げる怪物を追い、地下へと辿り着いた東の勇者ですがどうなりますことやらって感じです

従者「お前……追ってきたのか」

盗賊「くそ!遅かったか」ガチャガチャ

従者「どうしたんだ?いきなり」

盗賊「おい東の勇者!聞こえるか!?」ガンガン

東の勇者『おう盗賊か。聞こえるぞ。ここまで来たのか?戦士はどうした?』

盗賊「それよりここは何か変だ!」

東の勇者『うむ。追うのに必死であまり気に留めていなかったが、気持ちのいい空間ではないな』

盗賊「嫌な予感がする……お前さん、魔法は使えるか?」

東の勇者『使えるも何もさっきお前の前で見せただろう。「すげえ……」なんて目を丸くしていたではないか。はっはっは』

盗賊「今の話だよ!さっきのやつ今使ってみてくれ!」

東の勇者『なに?仕方ないな……開錠呪文!』


シーン


東の勇者『……どういうことだ?魔法が発動しない』

従者「えっ!?」

盗賊「やっぱり……この地下では特殊能力が封じられているみたいだ」

東の勇者『なんだと?』

従者「そ、そんなことが」

盗賊「これもおそらく王家の呪い……」

従者「ということは……」

東の勇者『参ったな。これでは私も扉を開けられない』

従者「ひ、東の勇者様が出られなくなってしまった……」

盗賊「……」

東の勇者『さて、どうするか』

従者「東の勇者様、申し訳ありません……私が……」

東の勇者『お前のせいではない。本来なら私が気づかねばならなかった』

従者「いえ、私が不用意に捕まってしまったばかりに……」

東の勇者『ああ、それはお前のせいだな』

従者「!?」

東の勇者『なんて冗談だ。気にするな。はっはっは』

従者「……」

盗賊「まったく、こんなときにも能天気かよ」

東の勇者『まだ他に出口がないと決まったわけではない。奥に行って探してみるさ』

従者「それがなかったらあなたはもう出ることはできないのですよ!世界の英雄がこんな場所で一生を終えることになってしまうのですよ!」

盗賊「落ち着けよ。俺たちは俺たちでできることをやろう」

従者「私たちに何ができるというんだ。東の勇者様でさえどうしようもないのに」

盗賊「あいつと違って俺たちは自由に動けるだろ」

従者「だからといってこの扉を開けるなんて」

盗賊「ピラミッドには……魔法の鍵があるだろ」

従者「!!」

東の勇者『おお、その手があったな』

従者「そうか……しかし」

東の勇者『あの謎を解かなくてはならんぞ?できるか?』

盗賊「俺を誰だと思ってやがる。必ず盗ってきてやるさ」

東の勇者『はっはっは!そうか。ならばお前たちだけが頼りだ。任せたぞ』

盗賊「ああ。お前さんは無理しないで大人しくしていろ」

東の勇者『そうだな。魔法が使えないのでは無理するべきではないな』

盗賊「よし行くぞ。またあれを登っていくわけだが今度は二人だけだ。俺は罠や迷路に集中するから魔物の相手は任せるぜ」

従者「ぐ……私は…そんな役回りではないのに……仕方ない。東の勇者様、行ってきます」

東の勇者『おう、お前たちも無理するなよ』

東の勇者「……」

東の勇者「とは言ったものの……すまないな。私は行く」

東の勇者「ここまで追い詰めたのに怪物を逃がすわけにはいかん」

東の勇者「思っていたより遥かに強い相手だったが……ま、なんとかなるだろ」

東の勇者「……」テクテク

東の勇者「……勇者の辛いところだ」

テクテク

東の勇者「……」ピタッ

砂漠の怪物「……」

東の勇者「そうか……やはりここで行き止まりか」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「ここはもう閉鎖空間。逃げ道はない」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「お前を始末するぞ」

今日は終わります

>>7
それっぽく書こうとしたけど文章が下手すぎて臭ってきますね。辛いですね
鼻栓して読んで下さい

>>8
ただの偶然なんですね

ありがとうございました

乙です
視点が変わりすぎて読み直そうかと思ってたところであらすじが来たのもあってわかりやすかったです

──────

────

──


従者「急ぐぞ!」

盗賊「おいおい待てよ。そんな慌てなさんなって」

従者「東の勇者様が心配なんだ!」

盗賊「だろうけど、一日二日放っておいたって餓死するわけじゃあるまいし」

従者「そうじゃない。東の勇者様はきっと怪物を探しに行く」

盗賊「え?いやだって待っているって……」

従者「あの方はそういう人なんだ」

盗賊「もしそうだとしても怪物一匹に殺されるなんてことないと思うが」

従者「私だって東の勇者様が怪物にやられるとは考えられない。だが薬草も毒消し草も私たちが管理している。魔法も使えない今、一つの怪我が命取りになる」

盗賊「……」

従者「それでもあの人は行く。私が何を言っても無駄なんだ」

盗賊「……」

従者「あの人は……あの人たちはこんなことばかりやってきたんだ。いつ命を落とすかもわからない戦いを」

盗賊「あまり深刻に考えるなって。なんだかんだで生き残るさ。勇者なんだぜ」

従者「……その姿を私は見ている。平和のため、犠牲になった二人の勇者を」

盗賊「え……?」

従者「もうあんな悲劇が起こってはいけないんだ。もう私が足を引っ張っては……」

盗賊「……」

従者「だから───」

盗賊「わかった。お前さんの気持ちはよくわかった。だがこんなときだからこそ冷静にならなきゃいけないだろ」

従者「……」

盗賊「このペースで行ったら1階を攻略する前にバテちまう。魔物だっていることを忘れんな」

従者「ぐ……」

盗賊「あんな超人と一緒にいたら感覚がマヒしているかもしれねえが、勇者と違って俺たちは何でもできるわけじゃない」

従者「わかって……いる」

盗賊「俺にはチマチマ道具を使うことしかできない。ま、おかげであの状況でも冷静でいられたんだがな」

従者「お前……皮肉か。根に持っていたな」

盗賊「へへ、すっきりしたぜ」

従者「……悪かった。お前の言う通りだ」

盗賊「冷静になれたみたいだな」

従者「ああ、お前のような者に諭されたんだ。脳が驚いて思考を止めてくれた」

盗賊「……お前さんの皮肉もなかなかだよ」

──────

────

──

砂漠


ザッザッザッ

勇者「呪い?」

情報屋「うん。砂漠の国は呪いでピラミッドを守っているんだ」

勇者「砂漠の国の者が呪いを扱っているということか?」

情報屋「大昔の……ピラミッドを建てた時代の人はね。今はそんな力は衰退しているよ」

勇者「だが今でもそれは残っているのだろう?」

情報屋「墓を守るために大昔の人間は様々な術を使い、ピラミッド自身が力を持つようになっちゃったんだ」

勇者「なに?」

情報屋「そのため術者が死んでも解けることのない呪いの要塞ができたってわけ」

勇者「それでは……探索も一筋縄ではいかないな」

情報屋「ピラミッドは意思を持っている。ただ一つ、王家を守るという強い意思を」

勇者「……」

情報屋「だからまあ墓荒らしさえしなければある程度は大丈夫だと思うよ。呪いがなかったら単純な罠ばかりだし」

勇者「そうか……だったらいいが」

情報屋「あ、見えてきたね」

勇者「む、あれが……」

情報屋「目的地ピラミッド。大きいでしょ」

勇者「ああ、遠くからでもわかる。何もない砂漠にあれだけどっしりと佇まれると壮観だな」

情報屋「そうでしょ。ふふ、さあ行こうか」

──────

────

──

ピラミッド・1階


勇者「ここが……」

情報屋「よし、魔物もわんさか潜んでいるから頼むね」

勇者「ああ」

情報屋「こっちだよ。すぐそこに落とし穴があるから気をつけて」

勇者「む、わかった」

──────

────

──

ピラミッド・2階


情報屋「こっちだよ」

勇者「複雑な造りだ……」

情報屋「次はこっち」

勇者「……」

情報屋「で、次は……」

勇者「……地図があるわけでもないのによく迷わず道がわかるな。君はここに来たことがあるのか?」

情報屋「昔一回ね」

勇者「昔の記憶だけで進んでいるのか?」

情報屋「その通りといえばその通りだね。あ、階段あった」

勇者「……」

今日は終わります

>>20
視点が変わるのはもうどうしようもないので自棄になっています
本当はあらすじより読み直してくれた方が有り難いです

ありがとうございました

──────

────

──

ピラミッド・3階


情報屋「まんまるボタンは不思議なボタン♪」カチッ

情報屋「まんまるボタンで扉が開く♪」カチッ

情報屋「東の西から西の東へ♪」カチッ

情報屋「西の西から東の東♪」カチッ


ゴゴゴゴ


情報屋「はい。開いたよ」

勇者「これほどあっさり……」

情報屋「情報は武器だよ。ふふ」

勇者「それであの扉の向こうには何があるんだ?」

情報屋「魔法の鍵が置いてある。それを使えば色んな扉を開けることができるんだ」

勇者「……それが目的ならやることは墓荒らしではないのか?」

情報屋「うん。その通りだね」

勇者「聞いてないぞ。そのためにピラミッドに来たのか?」

情報屋「ゴメンゴメン。でもピラミッドに用事のある人なんて墓荒らしか、遺体を納めるかくらいしかないじゃない」

勇者「大体それでは君が先ほど言っていただろう。呪いに襲われると」

情報屋「呪いの効力は昔に比べて少し弱くなっているんだ。ここには行き届いていないから平気だよ。それに用事が終わったらまた返しに来るからね」

勇者「そういう問題ではない。返すことが前提であるとしても君は人の家のタンスや壷から勝手に物を持ち出すのか?」

情報屋「そんなことしないけど、いくらなんでもその例えは的外れだよ」

勇者「なんだと?」

情報屋「まずここで眠っている人たちはそれが迷惑なんて思っていないし」

勇者「なんでそんなことがわかる!そんなわけないだろう!」


タッタッタッ


盗賊「よっしゃ到着!どうだ。多少迷ったが前より断然早く来られたぜ」

従者「ああ、さすがだ」

盗賊「素直になったらなったで可愛くないのはなんでだろうな、お前さんは」

従者「別にお前に可愛がられようなんて思わない。それより問題はここから……え?」

勇者「む?」

従者「勇者様!?」

盗賊「なんでお前さんが……ってあの扉開いてんじゃねえかよ!俺の見せ場が……」

──────

────

──


勇者「そうか、そんなことが……」

情報屋「この短期間でピラミッドを二周もするなんて、さすが勇者の仲間だね」

従者「そちらの方は?」

勇者「情報屋だ。砂漠の姫の手掛かりを持っているため一緒に行動している。たまたま用事があったらしくピラミッドに来たんだ」

従者「なんという偶然……私は従者、そして話も聞かず早速扉の向こうに行ってしまった無礼者が盗賊です」

情報屋「どうも。それより地下か……どうするの?」

勇者「そういうことならば仕方ないだろう。鍵を借りていく」

情報屋「ふーん。利己のためにさっきまでの発言を撤回するんだ?」

勇者「それとこれとは話が別だ。人の命がかかっているのに利己も何もない」

情報屋「はは、冗談だよ。あなたがそんな人じゃないことくらいわかっているよ」




盗賊「お……おい!宝箱の中、空だぞ!」

情報屋「えっ!?」

勇者「なんだと?」

従者「どういうことだ……?」

情報屋「そんなバカな!ちゃんと確認した!?」

盗賊「蓋が開いたまんまだった。明らかに誰かに盗られた後だ」

情報屋「そ、そんな……」

従者「このままでは東の勇者様が……」

勇者「……」

盗賊「せっかくここまで来たのに……そんなのってねえよ……」

情報屋「どうしよう……どうしよう」

勇者「……一つ気になっていることがあるのだが」

従者「な、なんですか?鍵がどこにあるかわかったのですか?」

勇者「いや、先ほど君たちの話を聞いたときにだ」

従者「何かおかしな点が?」

勇者「たしか従者は怪物に拐われてピラミッドの頂上まで行ったのだったな?」

従者「は、はい……?」

勇者「頂上に行くまでに魔法の鍵の扉があったのだろう?それは誰が開けたんだ?」

従者「……」

盗賊「後から追って行った東の勇者が開けるわけないから最初から開いていたんじゃないか?」

勇者「それはおかしい。扉は放っておけば勝手に閉まるのだろう?」

盗賊「たしかに……」

勇者「従者、覚えていないか?」

従者「……あ、そういえば」

従者「私も必死だったのではっきり見たわけではないのですが……怪物が開けていたと思います」

盗賊「なんだって!?あいつもあの魔法が使えたのか!?」

従者「いや……地下の扉もあいつが開けたんだ。魔法の使えない地下で」

勇者「ということは……」

情報屋「決まりだね。鍵は怪物が持っている」

盗賊「なんてこった……」

今日は終わります

従者「こんなことに気がつかなかったなんて!早く東の勇者様に知らせねば」

情報屋「無事だといいけど」

盗賊「縁起でもないこと言わんでくれよ」

情報屋「ゴメン。でもあの場所はちょっと危険なんだ」

勇者「危険……?魔法が使えなくなる他にまだ何かあるのか?」

情報屋「あそこにはとても高価な財宝が眠っている。昔の人はそれだけは絶対盗まれたくなくて、財宝そのものにも呪いをかけたんだ」

勇者「なに?」

従者「い、一体どんな?」

情報屋「まさにあなたたちがこの上の階で経験したことが起こる」

盗賊「魔物を呼び寄せる……か」

情報屋「そう。その財宝に触れている限りずっとね」

従者「でもあの地下ならばそれほど多くの魔物が住み着いているとは思えないが……」

情報屋「いるんだよ。いっぱい」

従者「えっ?」

情報屋「地面の下にものすごい数の魔物が眠っている」

盗賊「地面の下って……なんでそんなところに潜んでんだ?いくら魔物でも居心地悪いだろ」

情報屋「潜んでいるというより埋められているんだよ」

勇者「どういうことだ?」

情報屋「ピラミッドに入ってから、あなたたちが見た包帯ぐるぐるの魔物いるでしょ?あれって元々人間だったんだよね」

盗賊「!?」

従者「え……」

勇者「あれが……人間……?」

情報屋「大昔にピラミッド造りに携わって死んだ人間はここの地面に埋葬されたんだ」

情報屋「表向きは栄誉を称えて王家と同じ場所に埋めたってことだけど、実際は死体となった後もピラミッドを守らせるため」

勇者「……」

情報屋「ここで死んだ人間は魔物になる。それがもう一つのピラミッドの呪い」

盗賊「……とんでもねえ執念だな」

勇者「人間が人間を魔物に変える……数多くある呪いでもここまで悪趣味なものは聞いたことがない」

情報屋「……だね」

従者「それよりまた魔物の群れを呼ばれたらいくら東の勇者様でも多勢に無勢ですよ!」

情報屋「かもね」

従者「急がねば」ダッ

盗賊「おい落ち着けって。どっちにしろ鍵がないと伝えようもないだろ」ガシッ

従者「うわ、引っ張るな」

カラーン

盗賊「ん?何か落ちたぞ?」

情報屋「!?」

従者「そんなすぐ落とすようなものなど私は管理して───」

情報屋「魔法の鍵だ!」

勇者「なに?」

情報屋「うん、間違いないよ。本物だ」ヒョイ

盗賊「な、なんでこんなところに……おい、お前さんずっと持っていたのかよ」

従者「知らない!私はそんなもの……だって鍵はあの怪物が……」

盗賊「そうだよな……」

勇者「……気づかれずに従者に忍ばせた、ということか」

盗賊「え?」

従者「な、なんでそんなこと……?」

情報屋「……」

勇者「わからない。が、怪物の目論見通り事は進んでいるような気がしてならない」

従者「や、やつは一体何を考えて……」

情報屋「とりあえず上に行ってみない?」

盗賊「え?」

情報屋「だってもう一人仲間がいるんでしょ?」

盗賊「あ、そうだった!」

情報屋「ちなみに二つある魔法の鍵の扉は、上の階で繋がっているからどちらから入っても同じだよ」

──────

────

──

ピラミッド・地下2階


カキィン

東の勇者「……今のは首を落とすつもりだったが……」グググ

砂漠の怪物「……」グググ

東の勇者「やはりやりおる」パッ

砂漠の怪物「……」

東の勇者「ならばくらえ!閃熱呪文!」

シーン

東の勇者「……」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「……というのは冗談で……」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「いい加減何か言え!私が外したみたいではないか!わ、わざとだ!い、今のはわざとに決まっているだろう!」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「おのれ……」

東の勇者「お前は剣だけで仕留める!」バッ

砂漠の怪物「!!」

東の勇者「これが私の本気だ。ついてこられるかな?」シュバッ

砂漠の怪物「ガアアア!」

東の勇者「!?」ビクッ

砂漠の怪物「ガアアア……」

東の勇者「お、雄叫びか。驚かせおって」

砂漠の怪物「ガアアア!」ブン

東の勇者「おっと一度くらった攻撃は通用───」ヒョイ

砂漠の怪物「ガアアア!」ビュルルル

東の勇者「鞭!?」

バチン

東の勇者「ぐあ!」ドサッ

砂漠の怪物「……」

東の勇者「連続攻撃か……厄介だな」

砂漠の怪物「……」ノソノソ

東の勇者「だがこの程度で私が負けるわけがない」

砂漠の怪物「ガアアア!」ビュルルル

東の勇者「まず鞭を避ける」ヒョイ

砂漠の怪物「ガアアア!」ブン

東の勇者「続く槍の攻撃を受ける」ガキィン

砂漠の怪物「!?」

東の勇者「これだけの至近距離ならば鞭が飛んでくる心配はない」グググ

砂漠の怪物「……」グググ

東の勇者「ただ、これでは私も攻撃できない」グググ

砂漠の怪物「……」グググ

東の勇者「なんてことはない!」ドガッ

砂漠の怪物「ガア!?」ズザアア

東の勇者「はっはっは!私は体術も得意なんだ。剣だけで仕留めると言ったが、すまんな。ありゃ嘘だ」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「私の回し蹴りをまともに受けてはしばらく起き上がれんだろう」

砂漠の怪物「……」ムクッ

東の勇者「!?」

砂漠の怪物「……」プラーン

東の勇者「片腕が……咄嗟にガードしたか。だがもう使い物になるまい」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「お前にもう勝ち目はない。最後のチャンスをやる」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「お前の目的はなんだ?お前が鍵を持っているであろうことまでは想像がつく」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「この地下での状況をあえて作ったのだろう?」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「何も喋らなければ始末するしかない」

砂漠の怪物「……」

東の勇者「……」

砂漠の怪物「……」ポワーン

東の勇者「ん?」

砂漠の怪物「……」ポワーン

東の勇者「なんだ?何を……?」

カッ

東の勇者「うお!」

東の勇者「……」

東の勇者「……一体何が?突然光り出し……」

東の勇者「……え?」

?「……」

東の勇者「……え?」

?「……」

今日は終わります
ありがとうございました


いいところで切るなあ…

──────

────

──

ピラミッド・5階


ゴゴゴゴ

ガタッ

戦士「……ふう」

戦士「あと一つか……」

魔物「「「ウ……ガアアア……」」」ノソノソ

戦士「なんだよ……こっちはもう限界だってのに……」

魔物「「「ウ……ガアアア……」」」ノソノソ

戦士「はあ……」

魔物「「「ウ……ガアアア……」」」ノソノソ

ズババッ

戦士「!?」

魔物「「「ウ……ガアアア……」」」バタッ

勇者「この者たちも元人間か……これで安らかに眠れるといいが……」

戦士「な……」

勇者「よく頑張ってくれたな、戦士」

戦士「なんであんたが……?」

盗賊「おお、すげえ。一人でここまで片付けちまったのか」

従者「お前が……一人で?東の勇者様も持ち上げられなかった棺の蓋を?」

戦士「……」

勇者「話は後にしよう。彼らがまた現れないうちに蓋を」

盗賊「おう、そうだった───」

情報屋「……」ジー

盗賊「おい?なに棺の中覗いてんだ?悪趣味だぜ」

情報屋「……」ジー

勇者「……?」

戦士「……あいつは何者だ?」

従者「情報屋らしい。砂漠の姫の手掛かりを持っていて、なぜかは知らないが勇者様と一緒にピラミッドに来たんだ」

情報屋「……」ジー

戦士「……」

情報屋「……」ジー

戦士「……そうか」

盗賊「おい、いい加減そこ退けって。魔物が現れちまう」

情報屋「……なるほどね」

勇者「どうした?」

情報屋「ううん。ゴメン、蓋をするんだったね。退くよ」サッ

勇者「では戦士は休んでいろ。後は私たちでやろう」

盗賊「げ、やっぱり俺も?」

従者「仕方あるまい。戦士は一人でやっていたんだぞ。文句は言えない」ガシッ

盗賊「はいはいわかってますよ」ガシッ

勇者「よし、いくぞ」ガシッ

盗賊「うおおおおお!」

従者「ふんぬううう!」

ゴゴゴゴ

ガタッ

勇者「よし」

盗賊「はあ……はあ……重すぎるだろこれ」

従者「はあ……はあ……ほとんど勇者様の力で動かしたな……」

勇者「これでもう大丈夫か……砂漠の王よ、眠りを妨げて申し訳なかった」

盗賊「やれやれ。もたついたけど魔物が現れてくれなくて助かったぜ」

勇者「そうだな。元人間と知ってしまった以上……む?」

盗賊「どうした?」

勇者「……情報屋がいない」

従者「えっ?」キョロキョロ

盗賊「あれ?本当だ。おい、お前さんあいつがどこ行ったか見ていなかったのか?」

戦士「……ああ、お前らの形相があまりにも滑稽で夢中になっていた。すまないな」

盗賊「なにを!?」

勇者「……」

盗賊「黙ってどこかへ行かれたら困るぜ。鍵はあいつが持っているんだからよ」

従者「……はっ!?」

盗賊「なんだよ急に大声出すなって」

従者「勇者様たちがピラミッドに来たのはあの魔法の鍵を得るためでしたよね?」

勇者「詳しいことは聞けなかったがおそらくそうだと思う」

従者「もしや目的は済んだから持ち逃げされたのでは!?」

盗賊「なに!?」

戦士「……」

盗賊「おいおい、どうなってんだよ」

勇者「うーむ……逃げられたのはこれで二回目だが、あのときは私が怪しかったであろうからな」

盗賊「何してたんだよ……」

勇者「持ち逃げするような人物ではないはずだ」

盗賊「わからねえぜそんなこと!登ってきた側の扉は閉まったままだ。上に行ったに違いな───」



バタン

盗賊「……ん?」

従者「今……上の方から扉が閉まったような音が……」

戦士「……」

盗賊「嫌な予感しかしない」

勇者「ここにいても仕方ない。とりあえず上に行ってみよう」

今日は終わります

>>49
お約束ですよね

ありがとうございました

──────

────

──

ピラミッド・5階


盗賊「くそ!本当に閉まってやがる!」ガチャガチャ

従者「やっぱり逃げられたのか」

勇者「何か考えがあってのことだろう。何か言えない事情が」

盗賊「お前さんは人が良すぎるんだよ」

戦士「……」

盗賊「どうするんだよ!俺たちも閉じ込められちまったぞ!」

従者「慌てるな。今は勇者様がいることを忘れるな」

盗賊「そ、そうか。お前さんも鍵開けの魔法が使えるんだな?」

勇者「いや、このまま脱出する。私に掴まっていろ」

盗賊「えっ?」

勇者「脱出呪文!」シュイーン

──────

────

──




シュタッ

勇者「ふう……外はもう明け方か。ピラミッドの中にいては時間の感覚も狂ってしまうな」

盗賊「び、びっくりした……こんなこともできたのか……」

戦士「……」

勇者「さて……」キョロキョロ

従者「あ、いた!まだ上ですよ!」

盗賊「あの野郎……このまま逃がすかよ」

──────

────

──

ピラミッド・頂上


ビュゥゥゥゥ

情報屋「あーあ、見つかっちゃったか」

情報屋「やっぱり勇者はすごいね。一人じゃとても逃げられない」

情報屋「でも……」スッ

情報屋「……」カッ

情報屋「……」

情報屋「……ふう」

情報屋「こんな身体でよく……」

情報屋「……すまなかった」

情報屋「早めに終わらせる」

ダッ

──────

────

──




従者「あ、降りてきた!」

盗賊「よし、飛んで火に入る夏の虫だ」

戦士「……」

勇者「む……」

従者「あ……あれ?」

盗賊「早っ!降りてくるってかあの斜面を走っている!?」

勇者「驚いた……なんて身体能力だ」

シュタッ

情報屋「……」ニヤリ

従者「わっ!もうここまで!?」

盗賊「や、やいてめえ!どの面下げて現れやがった!鍵をよこしやがれ!」

情報屋「残念だがそれはできない」

勇者「……」

盗賊「なんだとこの野郎!」バッ

情報屋「……」ヒョイ

盗賊「うがっ」ズサー

情報屋「ふふ……」

従者「わ、私たちでは捕まえられる気がしない……勇者様」

勇者「……一体何を考えている?」

情報屋「悪いな。鍵は借りていくぞ、色男」

勇者「なに……?」

情報屋「……」ダッ

タッタッタッ

勇者「……」

盗賊「あの野郎……喋り方まで変わって……あれが本性か」

勇者「……情報屋では……ない?」

従者「勇者様、何しているんですか!追いますよ!」

勇者「……ああ」

──────

────

──

ピラミッド・地下2階


東の勇者「お……お前は……」

?「やっと夜が明けたのね。長かった」

東の勇者「お前が砂漠の怪物……?本物なのか……?」

?「ええ……」

東の勇者「通りで私の攻撃が全て読まれていたわけだ……」

?「……」

東の勇者「なぜだ!?なぜお前が生きて……」

?「……」

東の勇者「なぜ何も知らせてくれなかった!?」

?「……ごめんなさい」

東の勇者「一体何があったのだ。教えてくれ……女勇者」

女勇者「……」

今日は終わります

>>50の5階は4階でした

東の勇者「あの日、お前たちは……」

東の勇者「魔王城の調査に行き、魔王と遭遇したのだったな」

女勇者「ええ……」

東の勇者「城に張られた結界に気づかず閉じ込められ」

女勇者「ええ……」

東の勇者「お前たちは二人で最後の力を使い、従者をその場から逃がした」

女勇者「ええ……」

東の勇者「それが従者から聞いた私たちの知るところだ」

女勇者「そう……ね」

東の勇者「魔王に殺されたとばかり思っていたんだ」

女勇者「私もそう。従者君を逃がした後、私は気を失ってしまったから」

女勇者「どれくらい眠っていたかはわからないけど目が覚めたとき、私は魔王城の中にいた」

女勇者「そして、目の前には───」

──────

────

──

回想・魔王城


?『う……うん……』パチリ

?『……』

?『私は……生きているの……?』

魔王『お目覚めか?』

?『魔王!』ガバッ

魔王『ククク、そう邪険にするな』

?『なにを……敵である私を殺さなかったのか。後悔させてやる』

魔王『後悔などするはずがない。強力な味方が生まれたんだ』

?『なに?』

魔王『そこに鏡がある。自分の姿をよく見てみろ』

?『……』チラッ

?『!?』

魔王『ククク……』

砂漠の怪物『この怪物は……私……?』

砂漠の怪物『私が……こんな姿に……』

魔王『愛らしい姿じゃないか。見違えたぞ、ククク』

砂漠の怪物『……お前の仕業か』キッ

魔王『ククク、つまらんな。もっと取り乱すかと思ったが。女であってもさすがは勇者か』

砂漠の怪物『ふん。呪いの類でしょう』

魔王『その通り。それは俺の呪いだ』

砂漠の怪物『だったらお前を亡き者にすれば解けるはず』

魔王『それもその通りだが、まあ待てよ。その呪いについて教授してやる』

魔王『その姿でいられるのは夜の間だけ。残念ながら昼間は人間の姿に戻っちまう』

砂漠の怪物『……』

魔王『しかし、見た目は人間でも魔物であることに変わりない。太陽が昇っていようが、俺のさじ加減でいつでもお前の姿を今の状態に変えることができる。逆もまたしかりだ』

砂漠の怪物『……』

魔王『そして魔物の姿でいる間は人間の言葉は喋れない。今、お前が話しているのは人間が聞いても理解できない言葉だ』

砂漠の怪物『!?』

魔王『ククク、自覚が足りないな。今のお前は完全な魔物なんだ』

砂漠の怪物『……』

魔王『そしてその結果───』

砂漠の怪物『もういい!』

砂漠の怪物『今お前を殺せば全て関係ない!』ダッ

魔王『……』ニヤッ

砂漠の怪物『結界に気づかなかったのは私のミスだが、あれさえなければお前とも───』

キュイーン

砂漠の怪物『!?』ピタッ

魔王『理解させる手間が省けた……ククク、実感できたかな?』

砂漠の怪物『な……なに……?頭が……』フラッ

魔王『俺は魔物の王だ。魔物の意識を操るなど容易いこと。つまり……』

砂漠の怪物『……ガアアア……』

魔王『俺には逆らえない』

──────

────

──


砂漠の怪物『はあ……はあ……私は一体……?』

魔王『ククク、ちょっと魔物としての本能を呼び起こしてやっただけだ』

砂漠の怪物『!?』

魔王『安心しろ。お前だけでなく他の魔物も同じように凶暴化するものだ。だが本能として俺の言うことはちゃぁんと聞いてくれる……』

砂漠の怪物『なんで……こんなこと』

魔王『この呪いはまだ実験段階だった』

砂漠の怪物『実験……?』

魔王『どうしても俺の配下に加えたい者がいる。そのためのモルモットだったんだ、お前は……ククク』

砂漠の怪物『な……!』

魔王『だが喜べ。ここまで出来上がるのには長時間要することが難点だが、実験は大成功と言える』

砂漠の怪物『……私をどうする気?』

魔王『とりあえずは俺の配下として働いてもらう』

砂漠の怪物『私を……人間を滅ぼすための駒にする気か!?』

魔王『さあな』

砂漠の怪物『な……ふざけないで!』

魔王『ふざけてなどいない。人間をどうするかは俺の決めるところではないからな』

砂漠の怪物『え……?』

魔王『おっと、これは知らなくてもいいことか……まあ当面は人間を滅ぼすということにはならんだろう』

砂漠の怪物『……』

魔王『それよりも物事を効率的に動かそうじゃないか。お前には素晴らしい進路を用意してやった……ククク』

砂漠の怪物『……どういうこと?』

魔王『そうだな……簡単に説明してやろう』

砂漠の怪物『……』

魔王『お前はこれから砂漠の国へ行ってもらう』

砂漠の怪物『砂漠の国……?』

魔王『そして恐怖の怪物として人間に印象を植え付けろ』

砂漠の怪物『私が……怪物として……?』

魔王『噂が広まり、国民が恐怖に怯え始めたところで……』

砂漠の怪物『……』

魔王『王族の人間を皆殺しにしろ』

結構胸糞になってきましたな
支援

砂漠の怪物『!?』

魔王『そこで怪物としてのお前の役目は終わりだ』

砂漠の怪物『え……?』

魔王『王族を殲滅させることができたら、しばらく人間の姿を留めておいてやる』

砂漠の怪物『な、なぜ……』

魔王『そこからはお前の昼の顔……女勇者として働いてもらうからだ』

砂漠の怪物『……?』

魔王『お前は何食わぬ顔で、怪物を退治したという報告をする』

魔王『でっち上げの名誉を得、民衆を味方につけ……』

砂漠の怪物『……』

魔王『砂漠の国の女王になってもらう』

砂漠の怪物『な……』

魔王『砂漠の国では厄介なことに女しか王になれないらしくてな。そこでお前に目をつけた。勇者であるお前なら誰も文句は言えんだろう』

砂漠の怪物『言っている意味がわからない……どうして私が……』

魔王『わからなくていい。俺の指示通り動けばな』

砂漠の怪物『……』

魔王『できないのであれば砂漠の国はこの国と同じ運命を辿るだけだが……ククク』

砂漠の怪物『くっ……!』

魔王『モルモットとしても、俺の僕としてもこれほど有能なやつはなかなか現れんぜ。誇りに思いな』

砂漠の怪物『……』

魔王『ククク、お前としても少し働いただけで一国の王に即位できるんだ。悪くないだろう?』

砂漠の怪物『……』

魔王『さて、やることは理解できたな?そこから先はその都度指示を送る』

砂漠の怪物『できるわけない!』

魔王『お前が何を思おうと関係ない。俺がやれと言ったらやればいいだけだ』キュイーン

砂漠の怪物『ガアアア……』フラッ

魔王『ククク……』

砂漠の怪物『はあ……はあ……』

魔王『行け。砂漠の国では使い魔に監視させる。逃げようとしても無駄だ……』

今日は終わります

>>76
ザ・悪役を書こうとすると胸糞系になっちゃうんですよね
苦手な人はごめんなさい

ありがとうございました

──────

────

──

ピラミッド・地下2階


女勇者「私は魔王に逆らえなかった……」

東の勇者「そんなふざけたことがあっていいのか……!魔王……!」

女勇者「……」

東の勇者「一緒に行ったあいつはどうしたんだ?」

女勇者「わからない。もし生きていたとしても……」

東の勇者「くそ……!」

女勇者「ごめんなさい……」

東の勇者「謝らないでくれ。お前のせいではない」

女勇者「……」

東の勇者「それでお前はなぜピラミッドに?」

女勇者「……」

──────

────

──

回想・砂漠の国


女勇者『結局何もできず、魔王の意のまま来てしまった……』

女勇者『魔王に従うしかない……逆らったら私の意識を奪い、人々を襲わせる』


ワイワイガヤガヤ


女勇者『こんなに平穏な暮らしをしている人々を……』

女勇者『私が女王になったとして、魔王はろくでもないことを考えているに違いないわ』

女勇者『……一体どうしたらいいの……』



『おい、聞いたか?ピラミッドの呪いのこと』

女勇者(呪い……?)


砂漠の男A『ああ、また忍び込んだやつがいたらしいな』

砂漠の男B『まったくバカだよ。ピラミッドの呪いなんて昔話で有名なのに』

砂漠の男A『でも実際のところどうなんだろうな。昔話は昔話だし、本当に呪いなんてあると思うか?』

砂漠の男B『人を魔物に変えてしまうんだよな。どうだろ』


女勇者(……人間を!?)

砂漠の男A『今回逃げ延びたやつの証言だと……』

砂漠の男B『やっぱりありそうなんだよな』

トントン

砂漠の男A『えっ?』

女勇者『その話、詳しく教えて下さらないかしら?』

──────

────

──

酒場


砂漠の男A『最近なんだけど、ピラミッドに忍び込んだやつらがいたんだ』

女勇者『ピラミッドってたしか王家の墓よね?墓荒らしってこと?』

砂漠の男B『そう。そこは王家の財宝も多く納められているからそんな人間が後を断たない』

女勇者『それはそうかもね……』

砂漠の男A『国は何も対策をとっていないわけじゃない。様々な罠を仕掛けているから生きて帰った人は少ないんだ』

女勇者『呪いも罠の一つ……?』

砂漠の男B『国では公表していないけどそうだと思う』

女勇者『公表していないっていうのは倫理観の問題から?』

砂漠の男A『だろうね。表向きは華やかに見えるかもしれないけど、結構どす黒い部分もあるんだよこの国は』

砂漠の男B『そういうもの全部さらけ出したら王家も終わりかもな』

砂漠の男A『おいおい、そんなことになったら誰が王になるんだよ』

女勇者『……』

女勇者『それでその呪い、信憑性はあるの?』

砂漠の男A『うん、忍び込んだやつの証言だと……あったらしい』

女勇者『……』

砂漠の男B『何人かで一緒に行ったらしいんだけど、生き残ったのはそいつだけであとは全員魔物に殺された』

砂漠の男A『そいつはなんとか逃げたんだけどピラミッドの中で迷ってしまい、少し休憩をとっていたんだ』

砂漠の男B『で、あまりに疲れていたんでその場で眠ってしまった』

砂漠の男A『何か物音がして目覚めたとき、近づいてくる魔物の群れがいた。そいつを襲う寸前だったんだ』

砂漠の男A『至近距離まで近づかれて魔物の顔がはっきりと見えた。それは……』

砂漠の男B『さっきまで共に探検していた仲間たちだった』

女勇者『……』

砂漠の男A『ピラミッドの呪いは人間を魔物に変える。国に伝わる昔話と同じことが起こったんだ』

砂漠の男B『怖いよな。危うく仲間だったやつに食べられるところだったんだぜ』

女勇者『……』

砂漠の男A『あれ?怖くなかった?』

女勇者『いえ……』

砂漠の男B『だよねー』

女勇者『恐ろしいわ……魔物となってしまった人間が人間を……』

砂漠の男A『ゴメンゴメン。でも実際のところなんてわからないから。恐怖で見間違うことだってあるし』

砂漠の男B『怖がらせちゃったお詫びに飯おごるからさ。なんでも好きなもの頼んでよ』

女勇者『……ありがとう……』

砂漠の男A『お姉さん旅の人?こんな話に興味持つなんて変わってるね』

女勇者『ええ……そうね』

砂漠の男B『ほらほら遠慮しないで。何がいい?お酒飲める?』

女勇者『ごめんなさい……お酒は好きだけど、今はそんなに食欲もないの……』

砂漠の男A『まあ、あんな話聞かせちゃった後だしね』

女勇者『ええ……ごめんなさい』

砂漠の男B『でもこの猛暑を乗り切るには栄養摂らなきゃダメだよ。無理にでも食べないと』

女勇者『……そうね。じゃあちょっと頂こうかしら』

砂漠の男A『うん。じゃあ何食べたいか教えてよ。メニューはこれね』スッ

女勇者『食べたいもの……』

砂漠の男B『うんうん』

女勇者『私が食べたいものは……』

砂漠の男A『何?』

女勇者『……』ジー

砂漠の男B『え……?』

女勇者『……』

砂漠の男A『そんなに見つめられても……』

砂漠の男B『ひょっとして俺たちを食べたいって、そういうこと?』

女勇者『……』

砂漠の男A『いや参ったな。そんなつもりで酒場に誘ったわけでもあったりするけどははは』

砂漠の男B『まさかそっちから積極的に来てくれるなんてね』

女勇者『……』

砂漠の男A『じゃあどうする?この後……』

女勇者『ごめんなさい!これで失礼するわ。お話ありがとう』スッ

砂漠の男B『えっ?ちょっと待っ───』


ドヒューン


砂漠の男A『早……』

──────

────

──


女勇者『はあ……はあ……』

女勇者『何考えているの……なんで彼らを見てしまったの……』

女勇者『私は……』

女勇者『……』ブンブン

女勇者『……私は勇者。私の使命は人間を守ること』

女勇者『こんな呪いなんかに負けない!』

終わります

女勇者については本編の327辺りから会話の中で出ただけです
原作には出ていないです

ありがとうございました

お疲れ

女勇者の立場も辛いな…

ホラーになるかと思ってドキドキした

──────

────

──

商店


砂漠の商人『いらっしゃい』

女勇者『日持ちする食料をあるだけ下さい』

砂漠の商人『なんだって?』

女勇者『お金ならある。ここにあるものくらいなら買えるわよね』ジャラ

砂漠の商人『おう……たしかに買えるけど……』

女勇者『う、うわあ美味しそう!どれもこれも食べたくなっちゃうわ!』

砂漠の商人『そ、そうか?わかったよ。ちょっと待っていな』

女勇者『うんうん。私の大好物ばかり。本当に食べたいの。本当よ』

砂漠の商人『わかったって。もう』

女勇者『本当に……美味し……そう……』グスッ

砂漠の商人『そんなに食べたかったのか?ほら、少しサービスしとくから泣くなよ』ドサッ

女勇者『……ありがとう』

砂漠の商人『こんなにあんた一人で食うのか?遠くに旅でも行くのかい?』

女勇者『ええ……自分探しに』

砂漠の商人『?』

──────

────

──

ピラミッド


女勇者『着いた……これがピラミッド……』

女勇者(ここならもしかしたら呪いを解くヒントを得られるかもしれない)

女勇者(でものんびり探索なんかしていたら怪しまれるわよね)キョロキョロ

女勇者『監視の魔物、いるんでしょ?』

ヌッ

使い魔『……なんだ?』

女勇者『私はここを拠点とする。魔王様に伝えてちょうだい。怪物には相応しい根城だって』

使い魔『そうか。だが俺はお前から目を離さない。報告なら報告用の魔物がいる』

女勇者『(ちっ……)じゃあ、行くわよ!』テクテク

女勇者『……』

女勇者(ピラミッドに入れば魔王直属の魔物はいないはず。中でスキを見つけてこいつを殺るしかない)

女勇者(さっき買った食料も問題なく食べられた。当たり前よ!私は人間だもん!)

女勇者(……この量じゃ、もって一ヶ月ってところね)

女勇者(その間に手掛かりが見つからなかったらまた街へ買い出しに行く)

女勇者(行ったついでに嘘の噂を流していく。怪物が悪さしているって。それでしばらく乗り切るしかない)

女勇者(人々に恐怖を与えない程度に……かつ魔王にこの行動を怪しまれないように)

──────

────

──

ピラミッド・1階


女勇者『うう……やっと先に行けそうな階段見つけた……』ボロッ

女勇者『落とし穴には何度も落ちるし、落ちた先では魔法も使えないし……』

使い魔『散々だったな。俺だって後からわざわざついて行くんだ。あまり疲れさせないでくれ』

女勇者『……落ちたくて落ちているわけじゃないわよ』

使い魔『お前が拠点に選んだ場所なのに文句を言うな。先が思いやられる』

女勇者『うるさいわね。それにしてもここは魔物がいないのかしら?全く見ないけど』

使い魔『まだ人間のつもりでいるのかお前は?人間の匂いを嗅ぎつければ普通に現れるだろうが、その姿でも魔物なんだ。お前から一切人間の匂いはしない』

女勇者『ふん……魔物もお休み中ってわけね』

──────

────

──

ピラミッド・2階


女勇者『なにここ……まるで迷路じゃない……』

女勇者『どうしよう……』

女勇者『……』

女勇者『!』ピーン

使い魔『やれやれ。このピラミッドとかいう場所、あまり住み処には適してないな』

女勇者『……探索のし甲斐があるってもんじゃない。俄然燃えてきたわ』

使い魔『そんなものか?よくわからん考え方だ』

女勇者『よーし頑張るぞ。しっかりついてきてね』グッグッ

使い魔『ん?』

女勇者『……速度上昇呪文』ボソッ

ダッ

使い魔『な……ちょっと待て!』

ドヒューン

使い魔『……』

使い魔『……見失った』

──────

────

──


タッタッタッ

女勇者『あいつを殺したら殺したで魔王に怪しまれるに違いないものね』

女勇者『うん、我ながら名案だったわ』

女勇者『とても自然に撒けたわ』

女勇者『成り行き上仕方ないダッシュだったわ』

女勇者『あいつがいないうちに調査を進めておかないと』

終わります

>>99
これはまた鬱ですね!
>>100
ホラーなんて書けません

ありがとうございました

──────

────

──


女勇者『……階段発見』

女勇者『この階に呪いの手掛かりになるようなものはなかった』

女勇者『はあ……また上に行かなきゃ』

女勇者『ってそう簡単に見つかるわけないわよね』

女勇者『こういうものは大体ダンジョンの奥にあるものなのよ。そうに違いないわ』

女勇者『……行こ』

──────

────

──

ピラミッド・3階


砂漠の怪物『夜か……もう何度目の夜かしら。この姿も段々慣れてきた自分が怖い……』

砂漠の怪物『怪物の姿はあまり見られたくない。ここに人はいないことが唯一の救いね』

砂漠の怪物『それより探索の続きを急がなきゃ』

砂漠の怪物『うーん……』

砂漠の怪物『この扉をなんとかしたい。でも私は開錠呪文なんて使えないし……』コンコン

砂漠の怪物『扉……壊していっちゃおうかしら』


ヒタッヒタッ


砂漠の怪物『!?』


ヒタッヒタッ


砂漠の怪物『……誰?』

魔物『何を……している……?』ヒタッヒタッ

砂漠の怪物『ピラミッドの魔物か』シャキン

魔物『なぜ俺に獲物を向ける……?お前も魔物ではないのか……?』

砂漠の怪物『あ……そうだった……』

魔物『余所者か……』

砂漠の怪物『あら?』

魔物『なんだ……?』

砂漠の怪物『あなたはひょっとして、元人間……?』

砂漠の怪物『死んでから大分時間が経っているようね。元々どんな顔かはわからなくなっているけど、着ているものは砂漠の国の服だわ。呪いの噂は本当だったみたいね』

魔物『……わからない……』

砂漠の怪物『えっ?』

魔物『俺は何者か……なぜここにいるのか……』

砂漠の怪物『記憶がないの?』

魔物『俺はなんのために生きているのか……』

砂漠の怪物『……そう』

魔物『人間がいたら襲う……それだけが俺の本能として残っている……』

砂漠の怪物(魔物の気持ちなんて考えたことなかったけど、他の魔物もこんなもんなのかな?魔王の影響で動かされているだけ……?)

魔物『この場所にいるのは大抵人間だ……気配がしたので来てみたら……』

砂漠の怪物『……残念でした』

魔物『お前はなんのためにここにいる……?』

砂漠の怪物『この先に行きたいけど扉を開ける鍵がなくて困っているの』

魔物『この先は上に続く階段……上の階は玄室だ……』

砂漠の怪物『玄室?もしかして……』

魔物『人間の王の死体が置いてある場所でしかない……』

砂漠の怪物『そう……それでも行かなきゃ』

魔物『目的があるのか……?』

砂漠の怪物『ええ』

魔物『ならば壁にあるボタンを俺の言う順番通りに押せ……中央の扉が開き、そこに鍵が置いてある……』

砂漠の怪物『開け方を知っているの?』

魔物『ここに来た人間どものやり方を見て覚えた……』

砂漠の怪物『……その人たちはどうしたの?』

魔物『殺して……食した……』

砂漠の怪物『……』

──────

────

──


砂漠の怪物『あったわ。これが扉を開ける鍵ね。ありがとう』

魔物『礼を言われたのは……初めてだ……』

砂漠の怪物『……』

魔物『お前には生きる目的がある……俺とは違う……』

砂漠の怪物『……私の生きる目的は人間を守ること』

魔物『……』

砂漠の怪物『だからあなたをここで殺さなければならない』シャキン

魔物『……そうか……』

砂漠の怪物『何も思わないの?さっきまで親切にした魔物に殺されるのよ?』

魔物『それがお前の生きる目的なのだろう……俺には何もない……』

砂漠の怪物『……』

魔物『感情もない……死んだところで残るものもない……』

砂漠の怪物『……』

魔物『暗闇だ……歩むべき道もわからない……』

砂漠の怪物『……』

魔物『殺すなら殺してくれて構わない……』

砂漠の怪物『そう……』

魔物『お前の目的を果たせばいい……』

砂漠の怪物『……』スッ

魔物『なぜ……獲物を収める……?』

砂漠の怪物『あなたにはこうするべきなのかもしれない』

魔物『なに……』

砂漠の怪物『私があなたを導く。この光の彼方にあなたの道がある』

魔物『……』

砂漠の怪物『破邪呪文』カッ

魔物『これは……』

キュアアアア

魔物『……温かい……』

魔物『ああ……懐かしい気持ちだ……』

魔物『そうか……俺は……』

砂漠の怪物『……』

魔物『今わかったよ。この瞬間のために俺は生きていたんだな』

砂漠の怪物『……』

魔物『ありがとう。光を使うおかしな魔物よ』

フッ

砂漠の怪物『……成仏してね。親切な砂漠の民よ』

砂漠の怪物『……』

──────

────

──

ピラミッド・4階


砂漠の怪物『殺した相手にあんなこと言われるなんて……』

砂漠の怪物『最期は人間に戻れたのかな……』

砂漠の怪物『……』

砂漠の怪物『でも私自身に破邪呪文を使うことはできない。人間に戻るために死ぬなんて意味がない』

砂漠の怪物『私は生きる。生きて元に戻る方法を探さなきゃ』

砂漠の怪物『玄室って言っていたわよね。おそらくピラミッドの中枢』

砂漠の怪物『呪いの秘密を探るにはむしろもってこいの場所かも』

ガチャ

ギィィ

砂漠の怪物『お邪魔しまーす……』チラッ

砂漠の怪物『わ、石の棺。まさしくって感じ』

砂漠の怪物『ここに歴代の王が……』

砂漠の怪物『ごめんなさい。なるべく静かにするから少し調べさせてね』

砂漠の怪物『と言っても何をどう調べたらいいのかしら……』

砂漠の怪物『壁やら床やら台座にはよくわからない碑文が書かれている』

砂漠の怪物『これを解読できれば……』

砂漠の怪物『……』

砂漠の怪物『……』

砂漠の怪物『……』

砂漠の怪物『って読めるわけないじゃない!』

砂漠の怪物『やっちゃった!砂漠の国の古文書やら歴史書やら資料を持ってくるべきだったわ!』

砂漠の怪物『私のバカ!ちょっと考えれば必要になるってわかるじゃない!なんで食べ物ばかり買ってんのよ!』

砂漠の怪物『今から外に出たらそこら中にいる魔物に見つかっちゃう!』

砂漠の怪物『せっかく監視を撒いたのに!これが自由に動けるラストチャンスかもしれないのに!』

砂漠の怪物『ああもう!』

?『うるさいな!静かに調べるんじゃなかったのかよ!?』

砂漠の怪物『!?』

?『ふぁーあ……せっかく気持ちよく寝ていたのに』

砂漠の怪物『……隠れて見ていたの?悪趣味ね。いやらしさがその顔に滲み出ているわよ』

?『そっちが勝手に入ってきて独り言を言い出したんだろ』

砂漠の怪物『……』

?『見たことない魔物だな。余所の国から来たの?』

砂漠の怪物『ええ、あなたも多分人間だった魔物ね……って覚えていないんだっけ』

?『そうだ。僕は人間だったよ』

砂漠の怪物『えっ?』

?『でも今は君と同じ魔物だから安心してくれ』

砂漠の怪物『覚えて……いるの?』

?『よく覚えているよ。僕がどんな人間で、どんな生活をして、どんな家族がいて、どんな死に方をしたのかまでね』

砂漠の怪物『あなたは一体……?』

今日は終わります

女はたくましいです
鬱エンドは嫌ですね

ありがとうございました

?『僕は王配。人間の世界じゃ偉かったんだぞ』

砂漠の怪物『王配って女王の……』

王配『よく知っているね。そう、旦那だよ』

砂漠の怪物『へえ、意外な人だわ』

王配『これでも一応王族だから死んだ後ピラミッドに納められたんだ』

砂漠の怪物『なるほど。通りで他の魔物と違って綺麗な状態なわけね』

王配『ちょっと顔を隠していれば人間の世界でもまだまだ暮らせるかもね』

砂漠の怪物『それはさすがに……でもなんで記憶もはっきりしているのかしら』

王配『ピラミッドの呪いは王家を守るためのものだから、当然王族には効かないんだよ』

砂漠の怪物『え?でも魔物に……』

王配『僕には王家の血が流れていないからね。それでピラミッドも混乱したんじゃないかな。魔物だけど昔の記憶は残っている中途半端な状態にされちゃったのさ』

砂漠の怪物『そうだったの……あ、申し訳ありません。先程は失礼なことを……』

王配『何言ってんの?魔物なのに』

砂漠の怪物『いえ、私も元人間……いえ、まだ人間をやめたつもりはないですが、ええと……』

王配『なるほどね。君も他の魔物とは違うと思っていたんだ。嬉しいな。まともに話せる仲間がいてくれて』

砂漠の怪物『私はこの姿でいるつもりもここにずっと留まるつもりもなくて、ええと……』

王配『落ち着いてよ。畏まらなくていいって。今は一匹の魔物同士だ』

砂漠の怪物『そ、そういうわけには……』

王配『頑固だね君。そういえば何か調べていたよね。どうせ暇だし僕でよければ協力するよ』

砂漠の怪物『ほ、本当ですか!?』

王配『ただし敬語をやめてくれたらね』

砂漠の怪物『うぐ……わかり……わかったわ……』

王配『うん。じゃあ君のことも色々聞かせておくれよ』

砂漠の怪物『そうで……ね。まず自己紹介しま……するわ。私は勇者で……よ』

王配『勇者ってあの勇者?』

砂漠の怪物『ええ、おそらくその勇者でよ』

王配『へえ、女性の勇者か。勇者でも呪いにかかってしまうんだね』

砂漠の怪物『……情けないでよ』

王配(……敬語やめてくれたのかな?)

──────

────

──


王配『……そうか。王族も大変だったけど、勇者っていうのもやっぱり苦労は絶えないんだね』

砂漠の怪物『……』

王配『それにしても魔王ね……そんなやつが存在していたのか』

砂漠の怪物『一番手っ取り早いのは魔王を倒すことですけれど私じゃ戦う以前の問題ですし、仲間に伝えようにも外は魔物ばかりだから勝手な行動も取れないおすし……』

王配『ふむ』

砂漠の怪物『それで魔物化を解くヒントがここにあるんじゃないかと思って来たのでよ』

王配『うーん、正直言うとピラミッドの呪いのことは僕にもよくわからない』

砂漠の怪物『え……』

王配『僕はわりと新しい方の死体なんだ。呪いが扱われていたのは遥か大昔のことらしいからね』

砂漠の怪物『……でもこの部屋に書いてある碑文は読めないどすか?何か手掛かりになるような……』

王配『一応読めるけど、碑文は魔物化とは関係ないことばかりだと思う』

砂漠の怪物『そんな……』

王配『まあ落ち着いて、ピラミッドをくまなく調べていこうよ』

砂漠の怪物『……』

王配『僕だって自分の国が魔王に乗っ取られるなんて嫌だからね。なんとかしてあげたいし』

砂漠の怪物『私には時間がないのです!少しの間なら誤魔化せるかもしれないけど、そのうち魔王に私の行動が伝わってしまう!』

王配『だったら誤魔化し続ければいいさ』

砂漠の怪物『え……?』


ガンガン


砂漠の怪物『!?』


『開けろ!ここにいるんだろ!?』ガンガン

砂漠の怪物『監視の魔物のようです……見つかってしまった』

王配『大丈夫。僕に任せなよ』

砂漠の怪物『任せるって……』

王配『扉を開けて』

砂漠の怪物『……?』

ガチャ

ギィィ

使い魔『はあ……はあ……勝手に一人で動き回りやがって……これから怪しい行動を取ったらすぐ魔王様に伝えるからな!』

砂漠の怪物『あらごめんなさい。でもそれはあなたがチンタラしているから悪いんじゃない?』

使い魔『この女……』ピキッ

砂漠の怪物『それにしてもよくこの場所にいるってわかったわね』

使い魔『……ここに住む魔物どもに吐かせた。お前の行く先を見ていたのが何匹かいたからな』

砂漠の怪物『そう……』

使い魔『なんの意思もない低級なやつらばかりだったが、居場所を伝える脳程度はあったらしい』

砂漠の怪物『……』

王配『……』

使い魔『ん?なんだそいつは』

砂漠の怪物『彼は……』

王配『我はピラミッドの主。ピラミッドの魔物を束ねる者なり』

砂漠の怪物『えっ』

使い魔『えっ』

砂漠の怪物『い、いえ……そのようね』

使い魔『……たしかにここに住む他の魔物とは違うみたいだな』

王配『この者からピラミッドを譲り受けたいとの申し出があった』

砂漠の怪物『……?』

使い魔『ほう、それで?』

王配『そろそろ我も後継者が欲しかったところだ。そしてこの者の実力ならば申し分ない。快諾した』

使い魔『へえ、さすが勇者様。人間の城の前に魔物の一城を手に入れちまったか』

王配『お主は魔王様の命によりこの者を監視しているのだったな』

使い魔『そうだ』

王配『これからは我がその役目を引き継ごう』

使い魔『なに?』

砂漠の怪物『……』

王配『どのみちピラミッドを受け渡した以上、我はしばらく目付役としてこの者の様子を窺わなくてはならない。監視は一人で十分だと思うが?』

使い魔『……』

王配『こ、この者はやたらと動くのが好きらしい。お主では手に余るであろう?』

使い魔『たしかにそうたが……』

王配『ピ、ピラミッドの中は複雑だ。我なら全てを把握している。先程のように監視を外れることもない!』

使い魔『うーむ……』

王配『その間お主は休暇がとれる。悪い話ではないだろ……な?』

使い魔『……』

王配『……』ドキドキ

砂漠の怪物『……』ドキドキ

使い魔『……そうだな。乗った』

王配『よかったぁ』グッ

使い魔『えっ?』

王配『なんでもない。僕の仕事は何かあったら報告用の魔物に伝えればいいだけだな?』

使い魔『お、おう……後でそいつに申し送りしとくぜ』

王配『よし、そっちの階段を上がっていけば外に出られる。見送ろう』グイグイ

使い魔『おい、わかったから押すなって』

砂漠の怪物『……』

──────

────

──


王配『どうだい?上手くいったろ』

砂漠の怪物『……かなり危なっかしかったわ』

王配『そうかな?結構自信があったんだけど』

砂漠の怪物『こう言っては申し訳ないけれど、あなたあまり指導者には向いていないみたい』

王配『ははは。だろうね。王じゃなくて良かったよ本当』

砂漠の怪物『……ふふ、でも助かった。ありがとう』

王配『どういたしまして』グッ

今日は終わります
ありがとうございました

──────

────

──


砂漠の怪物『そこにある宝箱は何が入っているの?』

王配『普通の副葬品だよ。価値があるものはほとんど盗まれてしまっているけどね』

砂漠の怪物『ちょっと中を見てもいいかしら。勿論調査のためよ』

王配『それはやめてくれ。宝箱や石棺を開けたら呪いが発動しちゃう』

砂漠の怪物『……そっか。守るための呪いだものね』

王配『こっちの呪いは僕でも完全に支配されてしまうんだ。意識は無くなってここにいる者を襲うことになる』

砂漠の怪物『そうなんだ……私でも操られるのかな』

王配『君は大丈夫じゃないかな。ピラミッドの呪いで魔物になったわけじゃないし』

砂漠の怪物『そう……わかった。やめておく』

王配『うん。そうしてくれ』

砂漠の怪物『ということはあなた操られた経験があるの?』

王配『いや、僕はないけど僕の先輩の王配に聞いたんだ。同じように魔物となった人にね』

砂漠の怪物『そっか、他にも王配はいるはずですものね。その方や他の王配はどこに……?』

王配『殺されたよ。墓荒らしに』

砂漠の怪物『……』

王配『ピラミッドの中を散策していたときに出くわしたんだ。驚き戸惑っている間に無抵抗のまま襲われた』

砂漠の怪物『……』

王配『僕は運よく逃げられた。生き残りは僕だけさ』

砂漠の怪物『……』

王配『でも仕方ないことだよね。人間にとって魔物は害悪なんだから』

砂漠の怪物『……』

王配『僕はそれを避けたくてこの部屋にずっといる。おかげでピラミッドのことは未だによくわからないままさ』

砂漠の怪物『……そっか』

王配『君が入ってきたときもちょっと怖かったんだ。何しろ何年もここに来た者はいなかったからね』

砂漠の怪物『何年もって……ずっとこんなところにいて気が変にならないの?』

王配『ほとんど寝ているからね。どうということはない』

砂漠の怪物『この先もそうやって過ごしていくつもり?』

王配『そうだね』

砂漠の怪物『わからない……なんで魔物になってもずっと生きていたいと思えるの?』

王配『一度死んだと思ったのにまた命を与えられたんだ。姿が魔物であってもそれは有り難いよ』

砂漠の怪物『……私には耐えられない。一生魔物として生きるくらいなら……』

王配『まあそれは人それぞれさ』

砂漠の怪物『……さっき私は呪いで魔物となった人と会って……殺してきた』

王配『そうか……それも仕方ないよ』

砂漠の怪物『その人は生きている意味がわからないと言っていた』

王配『記憶も無くしているんじゃそうだろうね』

砂漠の怪物『あなたの生きている意味って何……その人と何が違うの?』

王配『まさに今言った通りだ。人間の頃の記憶。それが全てさ』

砂漠の怪物『……』

──────

────

──


王配『やっぱりこの部屋に手掛かりになるようなものはなさそうだ』

砂漠の怪物『そうね……』

王配『せっかく時間もできたし他の場所を探してみようか』

砂漠の怪物『あなたもこの部屋から出るの?』

王配『君が一緒なら怖いものなしさ』

砂漠の怪物『私を利用して羽を伸ばそうと思っている?』

王配『ははは。いいじゃないか。君よりはある程度の知識がある。一緒に行った方が都合いいでしょ』

砂漠の怪物『ええ、それは助かるけど』

王配『頼りにしてるよ、勇者様』

──────

────

──

ピラミッド・3階


王配『この階も久々に来たな。前に来たのは何年前だっけ……』

砂漠の怪物『……』

王配『どうしたの?』

砂漠の怪物『魔物が……』

魔物1『……』ヒタッヒタッ

魔物2『……』ヒタッヒタッ

王配『本当だ。大昔に埋められた人はミイラになっているはず。あれは近年に死んだ墓荒らしだね。今は腐った死体か』

魔物1『見かけない魔物だ……』

魔物2『俺たちとは……違う……』

王配『やっぱり殺すの?』

砂漠の怪物『そうね……』

魔物1『俺たちを……殺す……?』

魔物2『なぜだ……?』

砂漠の怪物『あなたたちはこの先生きていても、何も満たされることはない』

魔物1『……』

魔物2『……たしかにな……俺たちは何をしたらいいのかわからない……』

砂漠の怪物『最期にあげる。この光を辿って』

王配『ん……?』

砂漠の怪物『破邪呪文!』カッ

キュアアアア

魔物1『おお……』

魔物2『あれ……?俺は……』

砂漠の怪物『……』

魔物1『そうか……俺たちは……』

魔物2『ああ……ああ……』

砂漠の怪物『……』

魔物1『……ありがとう』

魔物2『……』

フッ

砂漠の怪物『……』

王配『破邪呪文……比較的低級な魔物やアンデッド系の魔物を光の彼方に消し去る呪文か。そんなものが使えるなら彼らにとっては救いだよね』

砂漠の怪物『……』

王配『どうしたの?』

砂漠の怪物『わからないの……これが本当に最適な方法だったのか』

王配『なんで?行く当てのない暗闇を彷徨っていた彼らに光を示してあげたんだよ?お礼も言われたじゃない』

砂漠の怪物『最初に会った人もそうだった。記憶を取り戻したと思われる一瞬、表情が歪んだの』

王配『……』

砂漠の怪物『人間の記憶が戻ったことは喜んでいたかもしれない。でも、もし魔物の記憶も残っていたとしたら……』

王配『!』

砂漠の怪物『……』

王配『人間を襲ったという記憶か』

砂漠の怪物『人間を殺した時の光景、感触、叫び声、血の臭い、そして……その味……その感覚全てが……』

王配『でもそんなのは一瞬じゃないか。すぐ自分も消えることになるんだ』

砂漠の怪物『それでも、せっかく人間に戻れるならそんな気持ちのまま死んでほしくない!』

王配『……』

砂漠の怪物『わからない……本当に救えたって言えるのか』

王配『……』

砂漠の怪物『魔物のまま……何もわからないまま逝かせてあげた方がよかったんじゃないかって……』

王配『……やっぱりそれも人それぞれだよ。少なくともお礼を言ってくれた彼の最期の魂は救われたと思うよ』

砂漠の怪物『……また彼らみたいな魔物が現れたら私はどうすれば……』

王配『優しいね君は。自分のことで精一杯のはずなのに』

砂漠の怪物『……』

王配『……』

王配『……うんうん。思わず好きになっちゃいそうだ』

砂漠の怪物『なっ……!?』

王配『どうだい?もし人間に戻れなくなったら僕と一緒になる気はないかい?』

砂漠の怪物『な、何言っているの!?』

王配『何って愛の申し出さ』

砂漠の怪物『あなた奥さんも子供もいるんでしょう!?』

王配『僕は死んじゃったから問題ないよん』

砂漠の怪物『そういう問題なの……?』

王配『いいじゃないか。見た目は魔物だけど心は人間同士の二人、仲良くできそうじゃない』

砂漠の怪物『私は……あの……』

王配『あれ?照れてる?』

砂漠の怪物『そ、そんなわけないでしょ!』

王配『あ、他に好きな人がいるんだ』

砂漠の怪物『……』

王配『図星かあ』

砂漠の怪物『そうじゃなくて私は絶対元に戻るの!』

王配『そうか。残念だなぁ』

終わります

──────

────

──

ピラミッド・1階


砂漠の怪物『結局何もそれらしいものは見つからずに下まで来てしまったわ』

王配『そうだね。多分ここまで来たら何もない』

砂漠の怪物『そんな……何か隠し部屋みたいなものはないの?』

王配『僕が知る限りじゃ……あ、一つあったな』

砂漠の怪物『本当!?どこに?』

王配『この地下だよ』

砂漠の怪物『地下……もしかして魔法が使えなくなる場所?』

王配『よく知っているね。その通り』

砂漠の怪物『何度も落ちたからね……でもそれらしいところはなかった気がするけど』

王配『そのさらに下へ行く隠し階段があるんだ』

砂漠の怪物『へえ。さすがにそれは見つからなかったな』

王配『わかりにくいところにあるからね。僕も詳しい場所を覚えているか……』

砂漠の怪物『ちょっと……』

王配『まあまあ。今日はもう疲れたろう?十分休んでしっかり準備をしてから向かおう』

砂漠の怪物『仕方ないわね。何が起こるかわからないし、そうしよっか』

──────

────

──


砂漠の怪物『あ……』ポワーン

王配『うわ、身体が輝き出したよ』

砂漠の怪物『朝になったみたい。姿が変わるわ』ポワーン

王配『そうか。これからはそれで時間がわかるんだね。意外と便利じゃない』

砂漠の怪物『もう……』ポワーン

カッ

王配『おお……』

女勇者『……人を時計代わりにしないでくれる?』

王配『驚いた……本当に人間の姿に……』

女勇者『でも人間じゃないの。魔物の目から見て、ちっとも美味しそうじゃないでしょ』

王配『うーん残念だ。僕が人間だったら君をとても美味しそうに見えたのだろう』

女勇者『……はい?』

王配『人間のときはモテモテだったでしょ?』

女勇者『そんなことに気をとられている暇はなかった』

王配『本当に?勿体ない。好きな人とはどうなったの?』

女勇者『ちょっと……』

王配『人生の先輩として色々聞いてあげるよ。その辺に関しては僕の方が経験豊富だろうからね』

女勇者『なんでこんなところで恋愛相談しなくちゃいけないのよ!』

──────

────

──


女勇者『……でね。そいつはもう他の人と結婚していたんだ』

王配『切ないねえ……』グスッ

女勇者『しょうがないと思った。私なんて女としてどう生きたらいいかもわからないし……』

王配『そんなことないよ!そのままで十分魅力的だよ!君みたいな子を放っておく男はバカだね!こんなに一途で優しくて可愛い子を!』

女勇者『あ……ありがとう』

王配『決めた。僕は君を応援し続けるよ。君が幸せになるまでずっと』

女勇者『い、いいよ。そんなのいつになるかわからないし……』

王配『待つのは得意なんだ。10年でも20年でもそれ以上でも構わないさ』

女勇者『……ふふ、それじゃあ私もうおばさんじゃない』

王配『美しい心を持っていればいいんだよ。心にしわはできないもの』

女勇者『心にしわはできないか……いいこと言ってくれるわね』

王配『はは、魔物になったから言えることかもね』

──────

────

──


女勇者『さて、そろそろ行きましょうか』

王配『うん。薬草は大丈夫?食料に、鍵は持った?』

女勇者『心配しなくても持ったわよ。あなたこそ何も持っていないじゃない』

王配『僕は死体だから食べ物も薬草も必要ないし』

女勇者『死体でも魔物は人間を襲って食べるわよね』

王配『それが魔物の本能だもん。実際は何も食べなくても平気なんだよ』

女勇者『……今だけはあなたが羨ましいわ』

王配『僕にはこれがあれば十分なんだ』スッ

女勇者『指輪……綺麗ね』

王配『でしょ?エルフが作ったと云われている珍しい指輪だよ』

女勇者『へえ。もしかして結婚指輪?』

王配『いや、違うけどずっと大切に持っている』

女勇者『そっか。御守りみたいなものね。似合っているわ』

王配『本当?ありがとう』

女勇者『ええ。じゃあ行きましょうか』

王配『うん』

──────

────

──

ピラミッド・地下2階


ガシャン

ギィィ

女勇者『あんなところに隠し階段なんて知らなければ見つかるはずないわ』

王配『おまけに魔法の鍵がないとここまで来られないからね。これぞ隠し部屋って感じでしょ』

女勇者『そうね。何かわかるといいけど……』

王配『奥に何があるのかは僕も知らない』

女勇者『うん……慎重に進むわ』

テクテク

王配『うう……やっぱり薄気味悪いなあ』

女勇者『あなたねえ……一応魔物でしょ。ピラミッドの主が聞いて呆れるわ』

王配『そんなこと言ったってしょうがないじゃないか。それと今の主は君だからね』

女勇者『はいはい。その設定は魔王の僕がいるときにね』

王配『……そういえばここって閉鎖空間だね』

女勇者『私に何かするつもり?』

王配『殺気を向けないでよ!そんなことできないから!』

女勇者『冗談よ。それでどうしたの?』

王配『もう……ここなら鍵を閉めてしまえは魔王の僕も入って来られない。何かに利用できないかなって』

女勇者『何かって……例えば?』

王配『……ゴメン。思い付かないや』

女勇者『あなたねえ……』

テクテク

女勇者『……何かあるわ』

王配『あれは……棺?僕たちが入っていた棺よりも大きい』

女勇者『棺にも碑文が書かれているわね。読める?』

王配『うん、ちょっと待って……』

王配『……』

王配『……ふむ』

女勇者『わかった?』

王配『通りで豪勢なわけだ。ここには砂漠の国の創始者が眠っている』

今日は終わりです
ありがとうございました

懐かしい名言きた

乙乙
あ~そうだ思い出した
心にしわは~女王様のの言葉だったよね?
色んなとこで小ネタ挟んでくるから油断できんww

女勇者『創始者?』

王配『ピラミッドを造った人でもある伝説のファラオ王だ』

女勇者『ファラオ……もしかしてその人がピラミッドの呪いを……?』

王配『かもね。伝説だからどんな人かもわからないけど』

女勇者『他に何かわかること書いてない?』

王配『結構ボロボロだからね……えーと、かろうじて読めるのは……』

女勇者『……』

王配『……星……封印し……血……が天罰を……?これだけじゃさっぱりだ』

女勇者『そうね……』

王配『天罰って、嫌な予感がする。開けたらとんでもない呪いが降りかかるかもしれないよ』

女勇者『……』

王配『ここも諦めた方がいい。戻ろうか』

女勇者『……』

王配『おーい?』

女勇者『私……開けてみる』

王配『えっ?』

女勇者『だってこれが一番の手掛かりじゃない。ピラミッドに呪いを仕掛けたであろう人物が眠っているのよ』

王配『そうかもしれないけど……』

女勇者『あなたは外で待っていて。私が開けるから』

王配『いくら君でも危険だよ。やめた方がいいって』

女勇者『先に進まないと私の未来はないの!お願い……開けさせて』

王配『……』

女勇者『……』

王配『……わかったよ。ただし危険だと感じたらすぐ逃げてくれ』

女勇者『うん』

王配『じゃあ僕は外にいる。呪いで君を襲うなんてことになったら嫌だらね……絶対無事でいてよ』

女勇者『大丈夫。私は勇者なんだから』

──────

────

──


テクテク

王配『ああ心配だ……大丈夫かな』

王配『かといって僕には何もできないし……なんて無力なんだ僕は……』

王配『……いや、信じて待とう。それこそ僕ができることじゃないか』

王配『頑張れ。信じているからね』

王配『というわけでさっさとこの地下から出よう』

ガチャ

ギィィ

?『あ……』

王配『!?』

──────

────

──


女勇者『……そろそろ外に出たかしら』

女勇者『……』

女勇者『……開けるわよ』ゴクリ

女勇者『お願い、ファラオ王。私に力を貸して』ガシッ

ゴゴゴゴゴ

女勇者『……開いた』

女勇者『!?』

女勇者『こ、これは……』

女勇者『黄金でできた爪……綺麗』

女勇者『それと……何かしら?これ』ガシッ

女勇者『腕輪……?』

女勇者『すごく不思議な力を感じる腕輪だわ』

女勇者『……』

女勇者『ってこれだけ!?遺体すらないじゃない!』

女勇者『それに何も起こる気配がない……この二つの財宝を隠しておく場所だっただけなの……?』

女勇者『そんな……せっかく手掛かりを見つけたと思ったのに……』


『うわあああ!』


女勇者『王配の声!?』

女勇者『どうしたっていうの?まさか呪いに!?』ダッ

──────

────

──


王配『痛た……出会い頭に殴られた……墓荒らしか』

墓荒らしA『お?言葉を喋る魔物かよ。珍しいな』

墓荒らしB『ということはここにはさぞかし珍しいお宝が眠っているんだろう』

墓荒らしC『たまたま入った地下にこんな場所があったなんてな』

墓荒らしA『おい魔物、お宝がどこにあんのか教えてもらおうか』

王配『え、えーと……』

墓荒らしB『教える気はないか。まあいい。お前が出てきた扉の向こうに何か隠してんだろ』

王配『この先はダメだよ。危険なんだ』

墓荒らしC『ふはは、やっぱり行かせたくないか。とうとう当たりに辿り着いたみたいだ』

王配『君たちのために言っているんだよ』

墓荒らしA『うるせえよ魔物が!どけ!』バキッ

王配『がはっ!』ドサッ

墓荒らしB『目障りなんだよ魔物のくせに』

王配『うう……』

タッタッタッ

女勇者『待ちなさい!』ザッ

墓荒らしC『女……?』

女勇者『王配、大丈夫!?』

王配『君が来たらややこしいことになる……』

女勇者『だからってあなたを放っておけないじゃない』

墓荒らしA『おいおい姉ちゃん、なんで魔物なんかと馴れ合ってんだよ』

女勇者『この人は元人間よ。あなたたちも聞いたことがあるでしょ?ピラミッドの呪いを』

墓荒らしB『え……まさかあの昔話は本当だったのか?』

墓荒らしC『たしかによく見れば人間っぽいな……言葉も話すし』

女勇者『あなたたちも呪われたくなかったら早く帰りなさい』

墓荒らしA『どうする……?』

墓荒らしB『俺は魔物なんかになりたくねえぞ。お宝は諦めるか』

墓荒らしC『いや、待て』

墓荒らしA『どうした?』

墓荒らしC『その女が持っている腕輪……かなり値打ちがありそうだぞ』

女勇者『あっ、これは……』サッ

墓荒らしA『おっと今さら隠しても遅いぜ。さてはお前らも墓荒らしだな?そうでなきゃこんなところにいるはずないもんなあ?』

墓荒らしB『そうか。お宝を手に入れたから俺たちに見つかりたくなかったんだな』

王配『それは……もしかして棺の中にあったの?』

女勇者『……慌てて持ってきちゃったわ』

王配『開けたの?何も起こらなかった?』

女勇者『ええ、大丈夫みたい』

墓荒らしA『それを俺たちに渡しな』

女勇者『バカなこと言ってはいけないわ。これは持ち出してはいけないものなの』

墓荒らしB『うるせえ!よこしやがれ!』バッ

女勇者『強引な男は嫌われるわよ』ヒョイ

墓荒らしB『えっ?』

女勇者『えい!』ドスッ

墓荒らしB『ぐほっ!』

王配『おお……』

墓荒らしA『つ、強え……』

墓荒らしC『なんだあの女は……』

女勇者『本当はこんなことしたくなかったけど、あなたたちがこれ以上───』

墓荒らしB『』ドサッ

パリーン

ビシャッ

女勇者『きゃあ!』ジュワー

王配『えっ?どうしたの?』

女勇者『痛ぁ……何よ。こっちが聞きたいわ』ヨロッ

墓荒らしA『おい……何が起きた?』

墓荒らしC『あいつがやられて倒れた瞬間、あの瓶が落ちて割れたようだが……』

墓荒らしA『中身の水が女の足にかかって悶絶したよな』

墓荒らしC『あの瓶の中身ってたしか……』

墓荒らしA『……聖水だ』

女勇者『!?』

終わりです

>>166
>>167
名言です
小ネタというよりむしろ……

ありがとうございました

聖水が…!! これは盲点。
姿は人間でも、魔物って区分になるのか…

女勇者ちゃんに聖水ぶっかけたいお

墓荒らしA『そうか……あの女も魔物だったのか』

墓荒らしC『通りで強えわけだ。うまく化けやがって』

女勇者『わ、私は……』

墓荒らしA『だが弱点はわかった。ありったけ聖水をぶっかけてやれ!』ポイッポイッポイッ

墓荒らしC『うりゃ!』ポイッポイッポイッ

女勇者『くっ!』サッ

パリーン

ビシャッ

ジュワー

女勇者『あああ!』ドサッ

王配『そ、そんな……』

墓荒らしA『おおう、その足でよく避けたな』

墓荒らしC『だがあれだけの量を投げたんだ。飛沫を全身に浴びちまったようだ』

女勇者『はあ……はあ……』

墓荒らしA『もう両手両足も使えねえだろ。じっくり殺してやる』ジリジリ

女勇者『や……やめなさい……』

墓荒らしC『うへへ……』ジリジリ

王配『待って!腕輪は渡す!だから命までは取らないでほしい』

女勇者『な、何を……!?』

王配『仕方ないよ。このままじゃ殺されちゃう』

女勇者『でも、これはあなたたち王家の……!』

王配『君が助かるなら安いものだよ』

女勇者『……』

王配『渡して』

女勇者『……ごめんなさい。私のせいで……』スッ

王配『君が来てくれなかったら僕が殺されていた』ガシッ

女勇者『……』

墓荒らしA『ふん、いいだろう。よこしな』

王配『はい』スッ

墓荒らしA『おお、なんだかすげえな。絶対高値で売れるぜこりゃあ』ガシッ

墓荒らしC『こんな楽にお宝が手に入るなんて思ってなかったぜ』

女勇者『くっ……!』

王配『もういいだろう。帰ってくれ』

墓荒らしA『ん?お前もいいもん持ってんな』

王配『!?』

墓荒らしC『ほう、指輪か。そこそこの値打ちはありそうだ』

王配『こ、これだけは勘弁して……その腕輪に比べたら全然値打ちもないし』

墓荒らしA『魔物より俺たちが持っていた方が有意義だと思うがな』

王配『これは……僕の……宝なんだ』

女勇者『王配……』

墓荒らしC『知ったこっちゃねえよ。よこせ』

王配『お願いだ。これだけは……』

墓荒らしA『……』

墓荒らしC『……ちっ、わかったよ』

王配『え……?』

墓荒らしA『せっかく命だけは助けてやろうと思ったのにな』

王配『!?』

墓荒らしC『もうお前面倒臭えや。殺して奪えばいいんだ』バキッ

王配『ぐあ……!』ドサッ

女勇者『王配!』

王配『う……』

墓荒らしA『おら!くたばれ!』バキッ

王配『ぐはっ……』

墓荒らしC『魔物に宝の価値なんかねえだろうが!』ドカッ

王配『うう……』

女勇者『早く渡しなさい!死んじゃうわ!』

王配『こ……れ……だけは……』

女勇者『なんでなの!?命に勝る宝なんてないはずよ!』

墓荒らしA『もう渡そうが渡すまいが関係ねえよ!』バキッ

墓荒らしC『お前らは殺した方が人間のためだもんなあ!』ドカッ

王配『ぐああ……』

女勇者『やめて!』

墓荒らしA『おら!』バキッ

王配『うああ……』

女勇者『やめて……』

墓荒らしC『はっはっは!死ね!』ドカッ

王配『……』

女勇者『や……めて……』

墓荒らしA『死ね!死ね!』バキッ

王配『』

墓荒らしC『……ん?反応しなくなったな。死んだか』

女勇者『!?』

墓荒らしA『よっしゃ頂くぜ』

墓荒らしC『バカなやつだ。たかが指輪一つのために』

王配『』





女勇者『……』ブチッ

女勇者『うわああああああ!』

墓荒らしA『!?』ビクッ

墓荒らしC『なんだ!?驚かせんな。動けないくせ……』

女勇者『ああああああ……!』ムクッ

墓荒らしC『に……?』

女勇者『がああああ……!』ヨタッ

墓荒らしA『お、おい!起き上がったぞ!』

墓荒らしC『早く聖水を……ってさっき全部使っちまったか!』

女勇者『ガアアア……!』

墓荒らしA『やばい!さっきまでと様子が違う!』

女勇者『ガアアア!』

カッ

墓荒らしC『うお!?』

墓荒らしA『光った……ん?』

墓荒らしC『!?』

墓荒らしA『か……か……』

墓荒らしC『か……か……』

墓荒らしA『怪……』

墓荒らしC『物……』






砂漠の怪物『ガアアア……』

終わりです

>>180
そのつもりでした
なかなかうまく表現できないです

>>181
ぶっかけたお

ありがとうございました

次は女勇者ちゃんの聖水ぶっかけられたいんだお^^

墓荒らしA『あ、あれがあいつの正体……?』

墓荒らしC『まずいぜ。逃げ───』

砂漠の怪物『ガアアア!』バッ

墓荒らしC『!?』

バコォン

墓荒らしC『ごふっ』ヒューン

ガラガラガシャーン

墓荒らしA『な……』


墓荒らしC『』ピクピク


砂漠の怪物『ガアアア……』

墓荒らしA『なんて……化物だ……』ヘナヘナ

砂漠の怪物『ガアアア……』ヨタッヨタッ

墓荒らしA『ひっ……く、来るな!殺さないでくれ!』

砂漠の怪物『ガアアア……』ガシッ

墓荒らしA『ぐえっ!』

メリメリ

墓荒らしA『く……苦し……』メリメリ

砂漠の怪物『ガアアア!』

墓荒らしA『あ……あが……』メリメリ

王配『やめるんだ!』

砂漠の怪物『!』

王配『それ以上は……死んじゃうよ』

砂漠の怪物『……』

墓荒らしA『あ……が……』

王配『君が人間を殺してはいけない』

砂漠の怪物『……』

墓荒らしA『……が……』

王配『君は……勇者なんだろ?』

砂漠の怪物『……』

砂漠の怪物『……』パッ

ドサッ

墓荒らしA『げほっ……』バタッ

王配『……よかった。僕の声が届いてくれて』

砂漠の怪物『王配……生きていたのね』

王配『人間の身体だったら即死だったろうね』

砂漠の怪物『よかった……本当に』ポワーン

王配『ん?』

カッ

女勇者『あ……』

王配『正気に戻ったら姿も戻ったのか』

女勇者『……』

王配『なんだったんだろうね、あれは』

女勇者『私……一体何を……』

王配『……』

女勇者『墓荒らしを……私が……』

王配『君のせいじゃない。君は何も悪くないんだ』

女勇者『でも……私は勇者なのに……』

王配『大丈夫だよ。全員気を失っているだけだ。ちょっと懲らしめてやっただけじゃないか』

女勇者『……』

王配『ね?』

女勇者『……うん』

王配『……』ニコッ

女勇者『ありがとう』

王配『お礼を言うのは僕の方さ』

女勇者『ううん。王配がいなかったら私───』

グラグラグラ

女勇者『なに!?』

王配『地震!?』

女勇者『大きいわ!いけない、崩れたら生き埋めになっちゃう!』

王配『なんでこんなときに……』

女勇者『魔法は使えないから急いで脱出しましょう。走れる?』

王配『ちょっと厳しいかも』

女勇者『肩を貸すわ。私に掴まって』

王配『面目ないねえ。君だってかなりやられたのに』

女勇者『怪物の姿になったら回復も早かったみたい。おかげで助かった───』ピタッ

墓荒らしA『』

墓荒らしB『』

墓荒らしC『』

女勇者『……』

──────

────

──




女勇者『あーもう、なんでこんなときに寝てんのよ!』

ドサッドサッドサッ

墓荒らし×3『』

王配『君が……いや、なんでもない。それより僕を含めて四人もよく運べたね……』

女勇者『大したことではないわ』

王配『でも思ったより時間かかったよ。殺されそうになった相手を助けているんだもん』

女勇者『……私に見捨てるという選択肢はなかったの』

王配『そうか。やっぱり君は勇者だよ』

女勇者『……』

王配『勇者でいるときの顔が一番好きだ』

女勇者『そう……ありがとう』

王配『うん……』


グラグラグラ


女勇者『地震が大きくなった!』

王配『あれ……?なんかあの辺おかしい』

女勇者『砂漠が……動いている……?』


ズズズズズズ

女勇者『隆起している……下から何か出てくるわ』

王配『何かって……かなり大きいよ』

女勇者『あれが地震の正体ね』


ズズズズズズ


女勇者『ひょっとして……棺に書いてあった呪い……?』

王配『天罰を下す者か』

女勇者『ピラミッドの外に埋まっていたの……?』

王配『そりゃあんなのが中にいたらピラミッドごと壊されちゃうしね』

女勇者『そうか。私が棺を開けた瞬間から天罰は始まっていたんだわ。長年眠っていたから寝起きが悪かったみたいね』

王配『いや……僕にはわかる。あれもきっと僕らと同じゾンビだ。朽ちていた身体を動かせるようになるまで時間がかかっていたんだ』

女勇者『あなたと同じ……?あの巨体が元人間だっていうの?』

ザアアアアァ


女勇者『あ……出てきた』

王配『なにあれ……』

?『グルルルル……』ギギギギ

女勇者『骨だけ……?それもあの形は……魔物?』

王配『魔物!?ピラミッドは魔物もゾンビにしたっていうのか!?』

女勇者『あれって……もしかして……』

?『グルルルル……』ギギギギ

女勇者『ドラゴン……?』

終わりです

>>195
忘れるお^^

ありがとうございました

王配『ドラゴンだって!?なんでそんな魔物が?この世界に存在していたの!?』

女勇者『わからないけれどあれが天罰を下そうとしているのは間違いなさそうね。さしずめドラゴンゾンビってところかしら』

王配『初めて見たドラゴンがまさかこんな形でなんて』

?『グルル……』

女勇者『話が通じる相手かしら……?』

王配『危険な香りがプンプンするよ』

?『我はピラミッドの守護者……』

女勇者『喋った!』

守護者『ファラオ王の財宝を荒らす者は誰だ……』

王配『でもやっぱり怒っているよ』

女勇者『ピラミッドの守護者よ!ファラオ王の棺を開けたのは私だ!どうか話を聞いてほしい!』

守護者『……』

女勇者『私はある者の呪いで魔物となった人間だ!ファラオ王はピラミッドに呪いをかけた人物だと伺った!』

守護者『……』

女勇者『人間を魔物に変える呪いがあるのなら───』

王配『待って!』

女勇者『ちょっと!いいところで切らないでよ!』

王配『ここでそれ以上言うのはまずい。見て』チラッ

女勇者『……?』チラッ


魔物の群れ『『『……』』』ゾロゾロ

魔物A『なんだありゃあ……見たことない魔物だ』

魔物B『近くにいるのは女勇者か。魔王様の命令で砂漠の国に来たっていう……』

魔物C『あっちのでかい魔物に何か話していたぞ。呪いがどうとか……』

魔物数十匹『『『ワーワーギャーギャー』』』ゾロゾロ


女勇者『あ……』

王配『ここはピラミッドの中とは違い、行動が全部筒抜けになってしまう。周りにいる魔物なんか全て把握できないよ』

女勇者『なんて野次馬根性……物珍しそうにどんどん集まってきているわ……』

王配『守護者に話しかけるのは止めた方がいい』

女勇者『そんな……!』

守護者『財宝を……返せ』シャアアアア

女勇者『吹雪!?』

王配『まずい!やっぱりこうなるか!』

女勇者『冷熱防御呪文!』シュウィーン

シャアアアア

守護者『ぬう……』

女勇者『もう!危ないわね!』

王配『おお、すごい』

女勇者『離れていて。私と一緒にいたら巻き添えを食らっちゃうわ』

王配『う、うん』

守護者『財宝を返せ!』バッ

女勇者『……』ガシッ

守護者『!?』

女勇者『ちょっといきなり過ぎるわよあなた』ググググ


王配『すごい……あの巨体の攻撃を受け止めた……』

守護者『な……!』ググググ

女勇者『腕っ節には自信があるようね。でも私だって負けないんだから!』グイッ

守護者『ウオオッ!?』

女勇者『大人しくしてて!』バコォッ

守護者『グアアア!』バキィン

ボロボロボロ


王配『うええ……一発であんなにボロボロに……』

女勇者『私は他の勇者とは違ってそれほど魔法が得意じゃないの。でもその分……』ビュルルルル

バチィィン

守護者『グアアア!』ボロボロ


王配『鞭!?』


女勇者『武器の扱いと……』ギュインギュイン

ズババッ

守護者『グアアア!』ボロボロ


王配『ブーメラン!?』


女勇者『力なら誰にも負けない!』バコォッボコォッ

守護者『ガハア!』メキメキ

女勇者『はああああ!』バキィッドカァッ

バキバキ

ボロボロボロ

王配『拳が一番強いじゃん……怪物になったときの力は素だったんだね……』

魔物A『あれが女勇者……すげえ』

魔物B『たしかにすげえけど、なんであいつら戦ってんだ?』

魔物C『お前さっき女勇者といたよな。何者だ?』

王配『ぼ、僕はピラミッドの主だ。それであれは……そ、そう。試練なんだ』

魔物A『なに?お前がその試練とやらを出したのか?』

王配『そ、そう。ピラミッドの主に相応しいか見ているんだ。あの僕の使いを倒せたらピラミッドを譲ろうと思っている』

魔物B『そうだったのか。でももう倒しちまったぜ』

王配『うむ、見事だった。晴れて女勇者を主と認めよう』

魔物A『おお、よくわからんが女勇者が認められたぞ』

魔物B『なかなかイカすぜ女勇者』

魔物C『もうピラミッドと言わず、砂漠の主でもいいんじゃないか?』

王配『そうだね。じゃあ彼女は今日から砂漠の主だ。ははは』

魔物たち『『『ゆーうしゃ!ゆーうしゃ!』』』

女勇者『何よあいつら……勝手に盛り上がって』

守護者『……』カタカタ

女勇者『ごめんね。あなた聞く耳持たないんだもん』

守護者『……』カタカタ

女勇者『首だけになっちゃったけどゾンビならまだ生きているわよね?後で聞いてほしいことが───』

守護者『財宝を……返せ』ギン

女勇者『えっ?』

守護者『カアアア!』ゴオオオォ

女勇者『きゃあ!』


王配『女勇者!』

女勇者『しまった……痺れて身体が……』

守護者『お前じゃない……財宝を盗んだ者……』ヒューン

女勇者『く、首だけで飛んで……腕輪を探しているの……?』

守護者『誰だ……財宝を盗んだ者……』ヒューン

女勇者『待って!私よ!棺を開けて持ち出したのは私!』

守護者『……見つけた』


墓荒らしA『』キラーン


女勇者『いけない!』

守護者『財宝を荒らす者に死を……』ヒューン

女勇者『ま、待って!』

女勇者『やめて……!』

守護者『財宝を……』ヒューン

女勇者『お願い!動いて!』

守護者『返せ……』ヒューン

女勇者『動け!私の身体!』

ポワーン

女勇者『え……』ポワーン

カッ


王配『あ……』

魔物A『なんだありゃ』

魔物B『すげえ強そうな魔物に変身したぞ』


砂漠の怪物『な……なんで……またこの姿に……?』

守護者『盗み人に……』ヒューン


砂漠の怪物『くっ……!』ダッ


守護者『……死を!』シャアアアア

タッタッタッ

砂漠の怪物『強制転移呪文!』

墓荒らしA『』ギュイーン

墓荒らしB『』ギュイーン

墓荒らしC『』ギュイーン

守護者『!?』

砂漠の怪物『間に合った……ふう……』

守護者『財宝は……どこだ』キョロキョロ

砂漠の怪物『残念……盗まれちゃったわね』

終わります
ありがとうございました

王配『間に合った……さすが女勇者だ』

魔物A『おい、あいつ今人間を助けなかったか?』

王配『え、えーと……』

魔物B『そう見えたな。どうなってんだ?』

王配『や、やつらは生き証人だ』

魔物C『なんだそれ』

王配『や、やつらは先ほど女勇者がこてんぱんにした人間だ。魔王様の命により恐怖の噂を広めてもらうため生きていなくては困るのだ』

魔物A『へえ、そこまで考えていたのか』

魔物B『さすが砂漠の主だ。戦いの中でも余裕を見せやがる』

魔物C『格好いいな』

王配『ほっ……』

魔物たち『『『ゆーうしゃ!ゆーうしゃ!』』』

砂漠の怪物『だからなんなのよあれは……』

ポワーン

砂漠の怪物『あ……また』ポワーン

カッ

女勇者『こっちも本当になんなのよ……』

守護者『……』

女勇者『……お願い。私の話を聞いて』

女勇者『あなたの敵になりたくないの。財宝はいつか必ず返すから』

カタカタカタ

女勇者『ん?』

守護者『ファラオ王の財宝はどこだ!』ヒューン

ヒューン

ヒューン

女勇者『バラバラになったパーツが飛んできた!?』

ヒューン

女勇者『わっ!』サッ

バキィ

女勇者『痛……!後ろからも!?』クルッ

ヒューンヒューンヒューン

バキィバキィバキィッ

女勇者『ああ……!』ドサッ

ヒューンヒューンヒューン

女勇者『冗談じゃないわよ……骨の一本一本に意思があるの?』

ヒューン

女勇者『くっ……!』ビュルルルル

バチィィンバチィィン

ボトッボトッ

ヒューンヒューン

女勇者『鞭で叩き落としてもすぐ復活しちゃう!どうすればいいのよ!』

ヒューン

女勇者『……あれ?私から遠ざかっちゃった』

ヒューンヒューンヒューン

女勇者『ってあっちは!?』

王配『まずいことになっているね……』

魔物A『おい、もう試練は終わったんだろ?あいつ止めろよ』

王配『そ、そうだね……えーと……』

ヒューンヒューン

守護者『財宝は……どこだ』ヒューン

王配『こっちに来た!?』

守護者『どこに隠した』シャアアアア

魔物たち『『『ぎゃああああ!』』』

王配『ああ……なんてこった』

魔物A『俺たちの仲間がやられちまったぞ!早く何とかしろ!』

王配『え、えーと……暴走しちゃっているみたいで僕にはどうすることもできないんだ』

魔物B『頼りにならねえな!』

王配『……自覚しています』

ヒューンヒューンヒューン

魔物A『うお!骨の雨が!』

王配『あんなに!?避けられない!』

ギュインギュイン

ズハバッ

王配『え……』

魔物A『なんか飛んできて骨を叩き落としたぞ』

魔物B『女勇者だ!ブーメランを投げたんだ!』

魔物C『さすが頼りになるぜ!』

ギュインギュイン

女勇者『怪我はない?』パシッ

王配『はは……君には助けられてばかりだ』

魔物A『助かったぜ。女勇者』

魔物B『まだ大半は無事だが』

魔物C『すでにやられちまったやつらもいる』

女勇者『……なんであんたたちの心配もしなくちゃいけないのよ』

女勇者『どうしよう……このままじゃやられるのは時間の問題だわ』ビュルルルル

バチィィンバチィィン

女勇者『広範囲で一気に粉々にすることができたら……』ギュインギュイン

ズハバッ

王配『鞭とブーメランであの数を迎撃している……人間業じゃないよ』

女勇者『そんなの魔法じゃなきゃ無理だし、かといって私はそんな強力な魔法使えない……』ビュルルルル

魔物A『どうすんだ?このままじゃやられるぞ』

女勇者『わかっているわよ』ギュインギュイン

魔物B『ま、まさか俺たちを守るため苦戦しているのか?』

女勇者『なわけないでしょ』ビュルルルル

魔物C『俺たちに協力できることはないか?』

女勇者『あるわけ……協力……?』

王配『僕たちも戦う。今は全員君の味方だよ』

女勇者『……』

ヒューン

魔物A『はっ!?危ない!とう!』バッ

バキィ

魔物A『ぎゃあ!』ドサッ

女勇者『……』

魔物B『女勇者を守るために盾になるとは……見事な最期だった』

魔物A『へへ……まだ死んでねえけどな』

女勇者『……』

王配『見た?君のために犠牲になったんだよ』

魔物A『へへ……死んでねえぜ』

魔物B『俺たち全員こいつと同じ気持ちだ』

魔物C『砂漠の主をこんなところで死なすわけにはいかないのさ』

女勇者『砂漠の主?』

王配『あ、いや……そ、それよりこの状況を何とかしなきゃ!』

女勇者『そうね……』スッ

魔物A『ん?』

女勇者『回復呪文!』キュイィン

魔物A『お?おお!助かった!サンキュー!』ムクッ

女勇者『……』

女勇者『……あなたたち、魔法は使える?』

『え?ああ、一応……』

『強力な攻撃魔法とかは無理だ』

『簡単な補助魔法なら』

『俺も……』

『俺も……』

王配『ゴメン、僕は使えない』

女勇者『そう……わかった。全員手を繋いで』

『え?なんでだ?』

『そんなことしている場合か?』

『俺、手がハサミだけど……』

女勇者『うるさいわね!死にたくなかったら言うこと聞きなさい!』

──────

────

──


女勇者『全員繋いだわね?行くわよ!』

王配『行くって……』

女勇者『瞬間移動呪文!』ギュイーン

王配『え……』ギュイーン

魔物数十匹『『『え……』』』ギュイーン

終わりです

女勇者が強いのは肉弾戦というイメージです
人には向き不向きがありますので

ありがとうございました

>>「俺、手がハサミだけど…」軍隊○ニさんですか?www
なんか和んだ

──────

────

──

ピラミッド・頂上


シュタッ

女勇者『ふう……これだけの数を運ぶのはきついけど、近くだったから何とかなったわね』

王配『ここは……ピラミッドの頂上じゃないか』

女勇者『ええ、いい眺めね。私たちを見失ってあたふたする骨がよく見えるわ』

魔物A『俺、ピラミッドに上ったの初めてだ。迷うしここの魔物なんか気持ち悪いし』

魔物B『俺もだ。でもこんな近くに逃げただけじゃすぐ見つかっちまうぜ』

女勇者『逃げたわけじゃない。あれを放っておいたらおちおち眠れないわよ』

王配『ここから攻撃するの?ブーメランでも届かないよ』

女勇者『広範囲に攻撃する魔法を使うわ』

王配『そんなすごい魔法も使えたの?』

女勇者『正確に言えば私だけじゃできない。私がここにいる皆の魔法力を集めて放つの』

王配『魔法力を集める?』

女勇者『なんとなくだけどできそうな気がする。やってみる。だから皆の魔法力を貸してちょうだい』

『貸すっつっても大した量ないぞ』

『俺も』

『俺も』

女勇者『いいの。これだけ数がいれば十分』

王配『僕は魔法が……』

女勇者『あなたはいいのよ。無理しないで休んでいて。さっきまで死にそうだったんだから』

王配『うん……』

女勇者『じゃあやるわよ』スッ

シュウウウ

魔物A『おお!なんか吸いとられていくのがわかるぞ!』

女勇者『……』

魔物B『でも時間かかっているな』

女勇者『……』

魔物C『おい、まだか?』

女勇者『……』

王配『女勇者……?』

女勇者『……肝心の私の魔法力が足りなくなっちゃった。これじゃあ発動しないわ』

魔物A『なんだと!?』

女勇者『あれと戦っているとき、補助や回復魔法でかなりの魔法力を消費していたの……』

魔物B『マジか』

女勇者『おまけにこの数の移動でしょ。私だって元々魔法力が多い方じゃないの……てへ』

魔物A『……』

魔物B『……』

魔物C『おい!骨のやつに気づかれたぞ!』


守護者『財宝を……返せ』ヒューン

王配『……』

女勇者『何とか別の方法で……』

魔物A『別の方法なんかあるのかよ!?』

女勇者『……』

王配『……これを指にはめて祈ってくれ。魔法力が回復するはずだよ』スッ

女勇者『それってあなたの……そんなすごい効果があったの?』

王配『うん……』

女勇者『いいの?そんな大切なもの私なんかに……』

王配『時間がない。急いでくれ』

女勇者『わかった。借りるわ』ガシッ

女勇者『後でちゃんと返すからね』ギュッ

王配『……』

女勇者『指輪よ、お願い。私に魔法力を……』

王配『……』

パアァ

女勇者『ん?』

王配『……』

女勇者『すごい!本当に回復したみたい!』

王配『ほっ……』

女勇者『さてピラミッドの守護者よ。待たせて悪かったわね』


守護者『財宝を……』ヒューン


女勇者『お詫びに特大のをかましてあげるわ』


守護者『返せ……』ヒューン


女勇者『……』スッ

魔物A『今度こそ来る!今まで感じたことのない大きな力だ……』ゴクリ

魔物B『化け物め、女勇者に牙を向いたのが運の尽きだぜ』

魔物C『俺たちの力を思いしれ』

王配『行けえ!』

女勇者『雷撃呪文!』カッ




守護者『!?』

バリバリドゴオォン

女勇者『……』

王配『……』

魔物たち『……』


プスプス


女勇者『……やった』

魔物A『お……おお……』

魔物B『あんなすごい魔法初めて見た……』

魔物C『辺り一面消し飛んじまった……っつっても元々砂しかなかったけど』

王配『はあ……やっぱり君はすごいね』

女勇者『私一人じゃないわ。全員力を合わせた結果よ』

王配『……そうだね』

女勇者『指輪ありがとう』スッ

王配『一度プレゼントした指輪を返されるのは僕の主義じゃないんだけどな』

女勇者『何言っているの。私は借りただけでしょ。大事なものならしっかり持っていなさい』

王配『……うん』

魔物A『よくぞ俺たちを守ってくれた。感謝する』

女勇者『別に。魔法力が欲しかったから利用しただけよ』

魔物Bか『照れ隠しか』

女勇者『本心よ。あなたたちを助ける義理もないし』

魔物C『またまたー』

女勇者『……』

王配『ん?あれ、頭だけまだ残っているよ』

女勇者『本当だわ……動いているわね』

王配『どうする?』

女勇者『様子を見てくる。危ないからあなたたちは絶対来ないで』ダッ

タッタッタッ

魔物A『ほら、やっぱり俺たちの心配してくれて』

スタッ

女勇者『すごい生命力ね……いえ、生きていないのよね。呪いで生かされているだけ……』

守護者『財……宝を……返……せ……』ギギギギ

女勇者『……ごめんなさい。いつか必ず取り戻すから』

守護者『……』ギギギギ

女勇者『それより魔物化の呪いについて教えてほしい』

守護者『ファ……ラオ……』ギギギギ

女勇者『そう。ファラオ王の呪いのことが知りたいの』

守護者『ファラオ様……申し訳……あり……ませ……ん』ギギギギ

女勇者『え……?』

守護者『』シュワー

女勇者『……』

終わりです

>>239
砂漠のトラウマ、じごくのハ◯ミさんのつもりでした

ありがとうございました

お疲れ様です

そうだ、じごくのハ○ミさんでしたね
スクルトスクルト

ミナデイン!

ほとんど同じ性格だと難しそう

──────

────

──

ピラミッド・玄室


王配『ファラオ様?そう言ったの?』

女勇者『うん』

王配『それが本当なら……』

女勇者『……あの守護者はあなたと同じように自分の意思が残っていて、その上で財宝を守っていたようね』

王配『魔物なのに人間の王に仕えていたってことか』

女勇者『もう死んじゃったから何も聞き出せず終いだわ』

王配『……』

女勇者『一体どうなっているのかしら……』

王配『……多分だけど、大昔は人間と魔物が共存していたんじゃないかな』

女勇者『え……』

女勇者『それは魔王が現れてから変わったってこと?』

王配『いつからこうなったのかはわからない。でも今日の魔物たちを見ていたら共存は可能かもしれないって思っちゃったよ』

女勇者『……あれは私たちが魔物だから協力してくれただけじゃない』

王配『でも君も魔物の言葉がわかるようになってどう?人間と言うほど変わらないと思わない?』

女勇者『それは……』

王配『たしかに魔物は人間を襲って食べる。でも理性さえあれば人間と同じ食事でも生きていけるって君が証明しているよね』

女勇者『……』

王配『実際僕は人間の方が怖かった』

女勇者『……』

王配『いや、だからといって君の使命を否定しているわけじゃないんだ』

女勇者『わかっている……人間にだってあんな連中がいるってことくらいわかっている』

王配『そうだよね。君は僕よりも広い世界を見てきていたんだもんね』

女勇者『でも、やっぱり魔物は罪のない人間を襲う。それを守れるのが勇者なの』

王配『……うん』

女勇者『魔物の考えがどうであれ魔王が存在している以上、人間の敵であることに変わりはない。お互いを理解して話し合いなんかしている余裕もないの』

王配『ゴメン、そうだね。僕の言ったことは忘れてくれ』

女勇者『……』

──────

────

──


女勇者『明日、街に行ってこようと思う』

王配『え?まだ食料に余裕あるよね』

女勇者『盗まれた腕輪を取り返してこなきゃ』

王配『そっか……そういえば墓荒らしはどこに飛ばしたの?』

女勇者『強制転移呪文はその対象が帰る場所に強制的に送る呪文なの。だから正確に言えばわからない』

王配『それじゃあ……』

女勇者『でもあいつらピラミッドの昔話も知っていたでしょ?砂漠の国の人間であることは間違いないと思うの』

王配『なるほど。街に行けばいる可能性があるのか』

女勇者『そういうこと』

女勇者『あの腕輪を売り飛ばそうとしていたから道具屋の近辺をくまなく探してみるわ』

王配『君は連中に顔が割れている。街中では魔物だって騒がれないようにね』

女勇者『大丈夫よ。日除けの服で顔も隠せるし、見つけたら有無を言わせずとっちめて帰ってくるから』

王配『あまり大事にしない方が……』

女勇者『だってあいつらをボコボコにしたとき私、意識がなかったの。もうちょっとお灸を据えてやらなきゃ気が済まないわ』

王配『はは……君は敵に回したくないね』

女勇者『……』

女勇者『私……どうなっちゃうのかな』

王配『ん……』

女勇者『なんで昼間なのに変身しちゃったんだろう』

王配『……そうだね』

女勇者『最初の変身はあなたが殺されたと思って……怒りからだった』

王配『……』

女勇者『でも次は人間を守らなきゃと強く思ってからだった』

王配『……そうか』

女勇者『……感情の高ぶりによって、どんどん不安定になっていく』

王配『……』

女勇者『どんどん私が消えていく』

王配『……』

女勇者『そんな気がして怖いの……』

王配『君は君だよ。二回目の変身のときはしっかり自我を保っていたじゃないか』

女勇者『そんな軽い言葉で終わらせないで!私は常に自分の中の怪物と戦っているの!この恐怖はどうせあなたにはわからない!』

王配『……』

女勇者『……ごめんなさい』

王配『……』

王配『……僕の方こそゴメン』

女勇者『あなたが謝ることじゃない。あなたは何も悪くない』

王配『君の気持ちをわかってあげられなかった』

女勇者『そんなことない!あなたは私のことを思って言ってくれている。それくらいわかっていたはずなのに』

王配『こんなに苦しんでいる君の気持ちをわかっていたら、嘘なんか吐くべきじゃなかった』

女勇者『嘘……?』

王配『ここの部屋にある碑文……呪いに関しては何も書かれていないと僕は言った』

女勇者『……まさか』

王配『書かれているよ。おそらく君の呪いが解けるであろう方法も』

終わりです

>>252
そうです
>>253
そうです
>>254
そうですね

ありがとうございました

女勇者『なんで……なんでそんな嘘を?』

王配『この方法を行えば君の呪いは解ける。でも、リスクもある』

女勇者『リスク?なんなの一体』

王配『その方法とは……』

女勇者『……』

王配『ピラミッドの呪いにかかること』

女勇者『!?』

王配『今の呪いの上からピラミッドの呪いにかかる。そうすればその魔王の呪いは効力を失うはずなんだ』

女勇者『……』

王配『どんな呪いも無効化すると、碑文にはそう書かれている』

女勇者『それって……』

王配『うん……魔王の呪いが解けても君が魔物でいることに変わりはない』

女勇者『そんなの……』

王配『ただ、生きたまま魔物化すれば他のゾンビとは違い、自我は保てる』

女勇者『そんなの意味がないじゃない!』

ポワーン

王配『あ……』

女勇者『!?』ポワーン

カッ

砂漠の怪物『……』

王配『……』

砂漠の怪物『また……』ガタガタ

王配『違うよ、夜になったんだ』

砂漠の怪物『もう嫌……怖い……』ガタガタ

王配『……』

王配『……ピラミッドの呪いにかかれば怪物の姿からは逃れられる。つまり君の中の怪物は消え、自我を奪われることはなくなる』

砂漠の怪物『……』

王配『君がどれだけそれに恐怖しているか僕はわからなかった。だからこれはずっと言うつもりもなかった』

砂漠の怪物『……』

王配『だって今の呪いは魔王を倒せば解ける。対してピラミッドの呪いは解けるかどうかがわからない』

砂漠の怪物『……』

王配『君は一生魔物として生きるくらいなら死ぬ覚悟があったんだろ?』

砂漠の怪物『……』

王配『ゴメン。解く方法があるなんて希望を持たせるような言い方しちゃったけど、どちらにせよ先が明るい方法じゃないんだ』

砂漠の怪物『……』

王配『気持ちの整理がつくまで焦ることはない。他にもっといい方法が見つかるかもしれないしね』

砂漠の怪物『……』

王配『今日はもう寝よう。色々あって疲れたでしょ。明日に備えないと』

砂漠の怪物『……』

──────

────

──

砂漠の国・城下町


女勇者『人間の姿でいられる時間は限られている。なんとしても夜になる前に探し出さないと』

女勇者『魔物には監視されていないようね』キョロキョロ

女勇者『私は砂漠の主らしいから信用されているってのもあるんでしょうね……はあ……』

女勇者『……』

女勇者『今なら仲間に全てを話せるのに……』

女勇者『……オルテガ……』

女勇者『……私を助けてよ』

女勇者『……』

女勇者『……』

女勇者『……今はやることだけやらなきゃ』

ガタゴトガタゴト


女勇者『ん……?荷馬車か。端に避けていないと』ササッ


ガタゴトガタゴト

女勇者『……』

ガタゴトガタゴト

女勇者『……』

ガタゴトガタゴト

女勇者『……』


『助けて……』


女勇者『!?』

ガタゴトガタゴト

女勇者『ちょっとその馬車待ちなさい!』バッ

馬車従者『うわ!急に飛び出すんじゃねえよ!』

女勇者『……その荷台には何が入っているの?』

馬車従者『いきなりなんなんだ?』

女勇者『助けを呼ぶ子供の声が聞こえた。もしかして奴隷商人かしら?』

馬車従者『そんなわけねえだろ!もしそうだとしてもお前には関係ねえだろ!』

女勇者『ごめんなさいね。私、悪いことは見逃せないの。この国では奴隷の売買は禁止されているわよね』

ザワザワ

馬車従者『人聞きの悪いこと言うな!人が集まってくるだろうが!』

女勇者『ちょっと拝見するわ』バサッ

馬車従者『おい!勝手に入るな!』

女勇者『ほら、やっぱり4人も───』


魔物の子『助けて……』ガタガタ


女勇者『え……?』

終わります

馬車従者『……こういうことだよ。積んでいるのは人間じゃねえ、魔物だ』

女勇者『魔物……』

馬車従者『だから子供の声なんか聞こえるわけねえんだよ』

女勇者『な……なんで魔物を……?』

馬車従者『それは……』


ザワザワ

『奴隷?あの馬車奴隷を乗せていたの?しかも子供ですって?』

『よく見る馬車だよな。てっきり物資を運んでいるとばかり……』

馬車従者『いや皆さん、お騒がせしました。どうやらこの方が勘違いしたようで』

女勇者『……』

馬車従者『ほら、お前も弁解しろ。魔物のことは黙っていろ』ヒソヒソ

女勇者『え……ええ。ごめんなさい。声が聞こえたのは私の勘違いだったみたい』


ザワザワ

『なんだ。やっぱりただの荷馬車だったのか』

『奴隷なんて売買しているわけないものね』


女勇者『……』

──────

────

──


女勇者『……どういうことか教えてくれる?いくら拘束しているからって、生きた魔物を街の中に入れるなんて騒ぎになるどころじゃないわよ』

馬車従者『仕方ないな。教えてやるから馬車に乗りな。だから今見たことは黙っていてくれ』

女勇者『乗れって言われても……』

馬車従者『残念だが荷台しか空いているスペースはない』

女勇者『……わね』

馬車従者『魔物どもは動けないから安心しろ』

女勇者『……』

──────

────

──

馬車内


ガタゴトガタゴト

女勇者『……』

魔物の子A『……ねえ、あなた女勇者だよね?砂漠の主の』

女勇者『……』

魔物の子B『僕たち四匹で遊んでいたら人間にいきなり捕まえられちゃったんだ。何されるかわからないよ』

女勇者『……』

魔物の子C『僕たちの言葉、わかるはずだよね?だから助けにきてくれたんでしょ?』

女勇者『……』

魔物の子D『なんで黙っているの?私たちの仲間なんでしょ?』

女勇者『……』

ガタゴトガタゴト

ガタゴトガタゴト

女勇者『……』

──────

────

──

砂漠の街・地下2階


女勇者『ここは……?』

馬車従者『地下格闘場。まあ賭博場と言った方がわかりやすいかな』

女勇者『賭博場……』

馬車従者『地下の情事だ。街中でもここじゃ魔物なんか珍しくもなんともねえ。何しろ色んな大陸から魔物を連れ込んできている』

女勇者『魔物同士を……戦わせているの?』

馬車従者『強力な薬を打って混乱させているんだ。魔法が効かないやつも結構いるからな』

女勇者『そんなにたくさんの……?』

馬車従者『ああ、色んな魔物を見られるから客には受けがいいぜ』

馬車従者『ただ、国ではまだ認められていないからこうやってこそこそ行ってんだ』

女勇者『当たり前じゃない!どれだけ危険なことしているかわかっているの!?』

馬車従者『世の中には色んな人間がいるんだよ。己の欲を満たす、自己満足に浸る、それは時に平穏よりも序列が上になる』

女勇者『な……』

馬車従者『それを顕著に表したのがこの国の地下世界だ』

女勇者『バカなことを……!』

馬車従者『まあ俺もこの仕事は給料がいいからやっているクチだけどな。そんなもんだよ人間なんて。お前だって大金を目の前にしたら逆らえなくなるはずさ』

女勇者『そんなことない!』

馬車従者『へ、まあいいや。地下じゃ格闘場の他にも色んな黒い仕事がある。それこそ死と隣り合わせのような、な』

女勇者『……』

馬車従者『本当なら一般人が来られるところじゃないんだ』

女勇者『……』

馬車従者『でもな、この格闘場だけは国も認め始めている』

女勇者『え……?』

馬車従者『周りを見てみろよ。すごい盛り上がり方だろ?』

女勇者『う……』

馬車従者『普段は魔物に襲われる立場なのに、ここじゃ魔物はゲームの駒。しかもそれでどんどん殺されていくんだ。いいストレス発散になっているぜ』

女勇者『……』

馬車従者『そこに目をつけたんだ。利用料金をリーズナブルにして一般化させる計画は前々からあったみたいだ』

女勇者『な……』

馬車従者『多少危険ではあっても国が活性化する道を選んだんだ。この国は』

女勇者『なんてことを……』

馬車従者『わかったか?正義面して言いたいことはあるんだろうが、国も所詮人がつくるものだ。黒い部分は同じなんだよ』

女勇者『……』

馬車従者『お、見ろよ。さっき運んできたやつらだ。もう出番になったか』

女勇者『!』


魔物の子ABCD『『『グギャアアア!』』』


女勇者『あ……』

馬車従者『へへ、ありゃ俺が捕まえたんだ。弱っちかったから楽だったぜ』

女勇者『当たり前よ……まだ子供だったじゃない……』

馬車従者『そうなのか?ま、どうでもいいやそんなこと』

女勇者『……』

馬車従者『でも今の様子だと俺じゃあ勝てる気がしねえ。薬を打たれて凶暴化しちまったからな。もはやただの殺戮マシンだ』


魔物の子A『グギャアアア!』ズシャア

魔物の子B『ガウウウ!』ガブッ

魔物の子C『ガアアア!』ズバァ

魔物の子D『グギャアアア!』グシャア


女勇者『……』

馬車従者『魔物が何を思おうが関係ない。ここじゃあ殺し合いの見世物として存在するだけだ』


───『お前が何を思おうと関係ない。俺がやれと言ったらやればいいだけだ』


女勇者『……』

馬車従者『お、残ったのはあの二匹か。さあ、どっちが勝つかな』


魔物の子C『』

魔物の子D『』


女勇者『……』


魔物の子A『グギャアアア!』ガブッ

魔物の子B『ガ……ガ……』


『よーし、そのまま食いちぎれ!殺せ!』

『バカ野郎!腕の一本二本くらいくれてやれ!首だけになっても俺のために勝て!』


馬車従者『おうおう、人間様も負けず劣らず狂気に満ちてんな。お前も一回やってみるか?ああなっちまう可能性も……』クルッ

シーン

馬車従者『あれ?いなくなっちまった』キョロキョロ

──────

────

──

地上


女勇者『……』テクテク

女勇者『……』テクテク

女勇者『……』テクテク

女勇者『……』テクテク

女勇者『……うっ……』グスッ

女勇者『うっ……うっ……』テクテク

終わります


格闘場でここまで悲観的になるとは思いもしなかったわ
面白い

相手側を知ると殺せなくなるよね…

──────

────

──

ピラミッド・3階


墓荒らし『う、うわああ!』

魔物『ウ……ガアアア……』ヒタッヒタッ

墓荒らし『くそ、くらえ化物!』ズバッ

魔物『ウ……ガアアア……』ヒタッヒタッ

墓荒らし『ひいい、効いてねえ』ポロッ

カラーン

魔物『ウ……ガアアア……』ヒタッヒタッ

墓荒らし『く、来るな!うわああ!』


テクテク

女勇者『……』

墓荒らし『え……女……?』

女勇者『……』

墓荒らし『丁度よかった!助けてくれ!』

女勇者『……』

魔物『お前は……人間ではない……』

女勇者『……』ガシッ

墓荒らし『あ、俺が落とした槍……』

魔物『退け……その人間を食す……俺の唯一の生きる意味……』

女勇者『……』ズバッ

墓荒らし『!?』

魔物『ガアアア……!』バタッ

墓荒らし『え……』

魔物『』

墓荒らし『す……すげえ!一撃で倒しちまった!あんた何者だ?』

女勇者『……帰りなさい』

墓荒らし『そんな冷たいこと言うなよ。俺さ、お宝を探しに来たんだけどまだ何も見つかんなくて』

女勇者『……いいから帰って』

墓荒らし『あんたもそうなんだろ?俺と一緒に───』

砂漠の怪物『帰れ!』

墓荒らし『!?』ビクッ

女勇者『……』

墓荒らし『い……今一瞬変な化物が……』ゴシゴシ

女勇者『……』スッ

バコォン

墓荒らし『!?』

パラパラ

女勇者『いい加減にしないと……あなたもこの壁のようになる』

墓荒らし『ひっ……』

女勇者『街に帰ったら広めておきなさい……ピラミッドには恐ろしい怪物がいると』

墓荒らし『ま、まさかあんた魔物……?』

女勇者『二度とピラミッドに入ろうと思わないで!』バコォン

墓荒らし『ひいぃ!』

パラパラ

墓荒らし『た、助けてええ!』タッタッタッ

女勇者『……』

──────

────

──

ピラミッド・玄室


女勇者『……』

王配『あ、おかえり。今下ですごい音がしたけど、もしかして君が?』

女勇者『ごめんなさい……』

王配『……泣いているの?』

女勇者『……』タッタッタッ

ギュッ

女勇者『……』

王配『……積極的だね』

女勇者『……』

王配『……』

女勇者『私……わからない……もう』

王配『……何があったの?』

女勇者『……』

王配『言いたくない?』

女勇者『……』

王配『……』

女勇者『あなたに……こんなこと言えない』

王配『言ってみて。僕に遠慮しているなら砂漠の国のことだよね?』

女勇者『……』

王配『大丈夫だよ。僕は王族といっても元々他国の余所者だからさ。それほど思い入れもない』

女勇者『……』

──────

────

──


王配『……そうか』

女勇者『……』

王配『……』

女勇者『助けを求める子供……ただ純粋に私を味方だと信じて……』

王配『……』

女勇者『命を玩具のように扱う人間……平穏を脅かさんとする国……』

王配『……』

女勇者『これじゃあ人間と魔王の何が違うっていうの?』

王配『……』

王配『難しい問題だよ。一晩二晩考えたところで答えは出ないかもしれない』

女勇者『こんなことなら……』

王配『もう今日は休んだ方がいい。疲れたろ?』

女勇者『こんなことなら私!』

王配『……』

女勇者『……』

王配『……』

女勇者『……』

王配『……魔王の言う通り、君が新しい砂漠の女王になるかい?』

女勇者『……』

王配『わかっている?国を変えるって簡単なことじゃないんだよ?』

女勇者『でも……』

王配『そして魔王の計略に加担するということ。君は人間の敵になるということ』

女勇者『違う!私は皆の未来のために……』

王配『王族を……人間を殺さなくちゃいけないんだよ。できるの?』

女勇者『……』

王配『……』

女勇者『あれが国の進む道なら───』

王配『勇者であることも捨てる気?』

女勇者『……』

終わります

>>287
>>288
ちょっと油断すると胸糞系に走ってしまうのは自分の性根が腐っているからだと思います

ありがとうございました


闇堕ち展開は嫌いじゃないけどね

どっちも、人間社会や魔物社会の一部分なんだけどな…

女勇者『……』

王配『……だったら僕は君を止めなければならない』

女勇者『あなた……魔物の味方になっていたじゃない』

王配『僕は争い事が嫌いだ。そんな結末は望んでいない』

女勇者『……』

王配『何より……』

女勇者『……』

王配『今の王女は僕の娘なんだ』

女勇者『え……』

王配『砂漠の国に思い入れはないけれど、娘が不幸になる結末だけは阻止する』

女勇者『……』

王配『魔物になってまで生きようと思ったのは娘のため』

女勇者『……』

王配『僕が人間としての死を迎えたのはまだ娘が幼い頃だったから、彼女は僕のことなんて覚えていないかもしれない。それでも……』

女勇者『……』

王配『僕は娘を守る』

王配『でもね、君を止めようと思った理由はそれだけじゃないんだよ』

女勇者『……』

王配『止めなくちゃいけない理由を考えたとき、最初に過ったのは君の顔だった』

女勇者『……』

王配『辛そうな……苦しそうな顔』

女勇者『……』

王配『君がやろうとしていること……君の本心は望んでいないはずだもの』

女勇者『……』

王配『だから今の顔を見るのは辛いんだ』

女勇者『……うっ……うっ……』

王配『やっぱり勇者でいるときの顔が一番好きだから』

女勇者『わかっていた……私なんかが国を動かすなんてできっこないことも』

王配『……』

女勇者『……もし、王になったとしても魔王の言いなりになるしかない。思い通りにいくはずないことも』

王配『……』

女勇者『……ただ、現実から逃げたかっただけ』

王配『わかっているよ……』

女勇者『でもやっぱり私───』

王配『うっ』ヨロッ

女勇者『王配……?』

王配『はあ……はあ……』

女勇者『どうしたの……?』

王配『……』

女勇者『なんで急に……』

王配『……頑張ってみたけど』

女勇者『……?』

王配『……そろそろ限界みたいだ……』

女勇者『な、何言っているの?限界って……』

王配『あのとき……地下で君が怪物に変身したとき』

女勇者『え?』

王配『……僕はすでに死んでいた……あのとき墓荒らしに殺されていたんだ』

女勇者『!?』

王配『一度死んでいたから感覚でわかったよ……ああ、僕はもう生きていないんだなって……』

女勇者『そんな……!』

王配『なんで今までこうやって動いたり……君と話せたり……元々ゾンビだったからそれほど不思議じゃないか……はは』

女勇者『嫌……』

王配『呪いの力なのか……はたまたここにいる僕は僕が見ている夢なのかもしれない』

女勇者『ダメよ……しっかりして……』

王配『一つだけ言えるのは……君のことを想ったら……立ち上がることができた』

王配『君が勇者でなくならずにすんだ……短い延命期間だったけど……意味はあったよね』

女勇者『王配……』グスッ

王配『信じて諦めなければ……こんな奇跡だって起こるんだよ……だから君も……』

女勇者『……』

王配『あ……』フラッ

ガシッ

女勇者『……』

王配『ありがとう……もう立っているのもしんどいんだ……』

女勇者『そんな身体で私を止めようと……無茶もいいとこよ……』

王配『はは……だね』

女勇者『もう……』グスッ

王配『復讐なんて考えないで……これは僕と墓荒らしによる問題じゃない……人間と魔物の問題なんだ……』

女勇者『……わかっている』

王配『それでこそ勇者だ……それから……生きたままピラミッドの呪いにかかる方法だけど……』

女勇者『いい……私はピラミッドの呪いにはかからない』

王配『え……』

女勇者『今の呪いと戦う。自分を信じて……絶対諦めないから』

王配『うん……』

女勇者『あなたみたいに大切なものを守るために戦い続ける』

王配『うん……』

女勇者『あなたの大切なものも……』

王配『……』

女勇者『あなたの代わりに───』

王配『君は君のやることを全うしてくれ……』

女勇者『でも……』

王配『その代わり……』スッ

女勇者『これは……』

王配『この指輪を……受け取ってほしい』

女勇者『え……』

王配『これは僕が故郷を出るときに……親からもらった指輪だ……』

女勇者『そんな大切なもの……』

王配『一番大切な人に贈るよう言われたよ……』

女勇者『もしかして王女に渡すつもりだったんじゃ……?』

王配『お下がりみたいで……不満かい?』

女勇者『そんなこと……』

王配『君にも大切な人が現れたらこれを……』

女勇者『……』

王配『……贈ってあげて』

女勇者『うん……』ガシッ

王配『君はいい匂いがするんだ……』

女勇者『何よこんなときに……私あまりお風呂に……』

王配『変な意味じゃないよ……懐かしい……もしかしたら昔、どこかで会ったような……』

女勇者『え……』

王配『君の腕の中……故郷に帰ってきたようだ……』

女勇者『……』

王配『ありが……とう』

女勇者『王配……』

王配『……幸せに……』

女勇者『ええ……』

王配『』

女勇者『……』

王配『 』

女勇者『私の方こそ……ありがとう』

終わります

>>300
>>301
どうしてこうなったって感じです

ありがとうございました

──────

────

──

数ヶ月後・ピラミッド玄室


女勇者『見つからない……呪いを解く方法』

女勇者『それに腕輪も……』

女勇者『はあ……』

女勇者『あれからどれくらいたったのかな……』

女勇者『あれから怪物に意識を奪われることはなくなった』

女勇者『毎日同じことの繰り返しで、心を動かされる出来事がなかったからだろうけど……』

女勇者『……』

女勇者『これだけ何もしていなかったら、そろそろ魔王に怪しまれる頃合いかも』

女勇者『なんとかしないと……』

魔物『砂漠の主、いるか?』ヌッ

女勇者『それやめてくれる?あと勝手に入ってこないで』

魔物『だったら扉の鍵閉めておけよ』

女勇者『……』

女勇者『……何の用?』

魔物『魔王様から伝言だ』

女勇者『!?』

魔物『どうした?そんなに驚くようなことか?』

女勇者『……とうとう痺れを切らしたのね』

魔物『何言ってんだ?』

女勇者『……』

魔物『砂漠の国に勇者一行が来ているらしいぞ』

女勇者『!?』

魔物『しかもピラミッドに来るらしい。始末しておくようにと命令だ』

女勇者『……』

魔物『その姿ならやつらはお前に攻撃しないはず。余裕だろう』

女勇者『……』

魔物『昔の仲間だか知らんが情は見せるなよ』

女勇者『……』

魔物『まあ、今となっちゃピラミッドの中はあんたを慕って普通の魔物も住んでいるから、そんな心配もないか』

女勇者『……』

魔物『見張りの魔物……王配とかいったか?あいつがいなくなってから、砂漠に住む魔物全員があんたの見張りだ』

女勇者『……』

魔物『裏切る素振りを見せたら即、魔王様に報告しなきゃなんねえ。それだけはやめてくれよ』

──────

────

──


女勇者『皆がここへ……』

女勇者『どうしよう……』

女勇者『オルテガも……』

女勇者『……』

女勇者『全部打ち明けたい。話したところで私の状況は変わらないけど……』

女勇者『……それでもこのチャンスを逃したくない』

女勇者『このままじゃ彼らと戦うことになってしまう。なんとか魔物が周りにいない閉鎖された空間を作れたら……』

女勇者『……閉鎖空間……』


───『ここって閉鎖空間だね』

───『ここなら鍵を閉めてしまえば魔王の僕も入って来られない。何かに利用できないかなって』


女勇者『……』

女勇者『……そうか』

女勇者『ありがとう王配。うまくいくかわからないけど……』

女勇者『ううん。絶対成功させる』

女勇者『だから……見守っていてね』

──────

────

──

ピラミッド・地下2階


女勇者「……」

東の勇者「……それが全てか」

女勇者「ええ……」

回想終了したところで今日は終わります
ありがとうございました

おお…なんかオルテガさん久しぶりだな

お疲れ様です

東の勇者「すまなかった。お前一人に苦しみを背負わせてしまって」

女勇者「ずっと一人だったら今、私はここにいることはなかった」

東の勇者「……今、お前の気持ちはどう変わったのだ?」

女勇者「私……」

東の勇者「……」

女勇者「……今まで通り魔物を殺していくことはできない」

東の勇者「……」

女勇者「これじゃ勇者失格よね」

東の勇者「わかった。お前は十分頑張ってくれたさ」

女勇者「ごめんなさい。でも……」

東の勇者「……」

女勇者「魔王を許せない。この気持ちだけは変わらない」

東の勇者「そうか……」

女勇者「でも私にはどうすることもできないってわかっている……」

東の勇者「ああ、私たちに任せてくれ。きっと魔王を滅ぼし、お前の呪いを解いてみせる」

女勇者「ありがとう……」

東の勇者「この先私たちは多くの魔物を殺していくことになる。それは止めんでくれよ」

女勇者「ええ……わかっている」

東の勇者「お前の算段では、私がこの地下で砂漠の怪物を倒したという形でいいのか?」

女勇者「ええ、私はここで死んだ。それがうまく魔物の間に伝われば」

東の勇者「うむ、盛大に私の武勇伝として語り継いでやる」

女勇者「ふふ……あなたなら得意そうね」

東の勇者「それで魔王を滅ぼすまでの間、お前が生きていると知られないようにどうするつもりだ?」

女勇者「……ここにいるわ」

東の勇者「なに?」

女勇者「この地下なら魔物も入ってこられないもの。見つかりっこない」

東の勇者「しかし……」

女勇者「私なら大丈夫よ。今までと比べたら大したことじゃない」

東の勇者「そうか……だがこんな明かりもないところに女一人残しておくのはさすがに忍びない。なるべく早く片付けてしまわないとな」

女勇者「でも無理して焦らないで。あなたたちに万が一のことがあったら……」

東の勇者「はっはっは、わかっている。私たちのことは心配するな」

女勇者「うん……」

東の勇者「あとは魔物に知られずにどうやってオルテガたちに知らせるかだが……あいつらもここに呼び寄せるしかないか」

女勇者「それはいい。彼らには砂漠の怪物が私だってことも知らせないで」

東の勇者「なに?」

女勇者「お願い。このことを知っているのはあなただけでいい」

東の勇者「しかしお前が生きていたことを知れば喜ぶぞ」

女勇者「あなたたちが魔王を滅ぼしてくれたら……いつか会いに行くわ」

東の勇者「なぜだ?なぜそんな面倒な道を……」

女勇者「それは……」




「鈍いな。これだから男というものは」

終わります

>>324
ごめんなさい。多分サイモンさんです
ありがとうございました

女勇者「!?」シャキン

東の勇者「誰だ!?」シャキン


テクテク


情報屋「いや、勇者という生き物自体が鈍いのかな」テクテク

女勇者「あなたは……?」

東の勇者「人間……か?」

情報屋「初めまして。まず私に向けた得物を収めてくれないか。東の勇者、それと女勇者」

女勇者「私たちのことを知っているの?」

東の勇者「敵ではなさそうだ。ここに入ってきたということは鍵を持っているのか?」

情報屋「ああ、女勇者が従者とやらに忍ばせたものを拝借してね」

女勇者「え……」

東の勇者「なに?従者に鍵を渡していたのか?」

女勇者「ええ……気づかれないように」

情報屋「やつに鍵を持たせたのは万が一己の意識が怪物に奪われた時を危惧してのものだろう?」

東の勇者「そうか。そうなった場合、私との戦いで死んでしまったら鍵を見つけることが難しくなるから」

女勇者「……ええ。幸いにも意識はずっと残されていたけど」

情報屋「つまりいつかは従者が気づくと想定してのこと。結局ピラミッドの頂上まで行ったところで気づいたわけだが」

女勇者「じゃあ彼らもここに……?」

情報屋「心配なさんな。私は全てを知りここに来た。他に誰も入れちゃいないさ」

女勇者「……?」

東の勇者「全てとはどういうことだ?」

情報屋「ここに来る直前、玄室に寄ってきた。そこで何があったのか聞いてきた」

女勇者「聞いてきたって……あそこには誰もいないはず」

情報屋「たしかに生きている者はいない。だが、あそこに眠る魂は全てを見ていた」

女勇者「え……」

情報屋「玄室はただ王族の遺体を保存しておくだけじゃない。魂の記憶を保存しているのさ」

東の勇者「魂の記憶を聞いただと……?どうやって……?」

情報屋「簡単だよ。私も元々魂だけの存在だからな」

東の勇者「なんだと?」

女勇者「あなたは一体何者なの?」

情報屋「私が何者か知りたいか……本来なら大金をせびるところだが、まあいい。お前には外の世界に出してもらった恩もある」

女勇者「……?」

情報屋「私の名はファラオ。そこの棺に納められた者で在り、砂漠の国の創始者だ」

女勇者「!?」

東の勇者「ファラオといえばお前たちが探していたという……?」

女勇者「ええ……」

情報屋「正確にいえば、この情報屋という者の身体を拝借している魂だがな」

女勇者「あなたが……」

あ、終わります

更新ペース伸びてきたね
忙しいのかな1?

気長にまちませう

東の勇者「もしかしてこいつの呪いを解きに来てくれたのか?」

情報屋「残念ながら魂だけの私にはそのような力はない。あったとしてもその呪いは強力過ぎる。私の手には負えない」

女勇者「だったらなぜ……?」

情報屋「偶然だ」

女勇者「はい?」

情報屋「この身体の主、情報屋の都合でピラミッドに来ただけだ。だから用事を済ませたらすぐ帰るつもりだった」

女勇者「用事……?」

情報屋「ああ……」キラッ

女勇者「あっ!その腕輪は……!」

情報屋「ふふ、お前のおかげで現世を堪能している。感謝するぞ」

女勇者「なんであなたがそれを……?」

情報屋「大昔……私が死んだ後、魂はこの星降る腕輪に封印され、以来ずっと眠ったままだった」

女勇者「星降る腕輪……」

情報屋「お前が棺から取り出し、墓荒らしへ渡り、また様々な経緯を辿り、この情報屋の手に渡った。そして運良く使用者となってくれた」

東の勇者「使用とは?」

情報屋「この者が星降る腕輪をはめることで、私はこうして身体を借りることができたんだ」

東の勇者「なんと……」

情報屋「そこの棺には元々こう書いてあった。『ファラオ王の魂は星降る腕輪に封印した。王家の血筋あらず者解いた時、守護者が天罰を下すだろう』と」

女勇者「そうだ。私守護者を……」

情報屋「みたいだな。あいつを倒すやつがいるなんて思いもしなかったよ」

女勇者「ごめんなさい」

情報屋「いいさ。あいつも長い間守り続けてきたんだ。そろそろ眠らせてやってよかった」

女勇者「あの守護者はあなたの……」

情報屋「まあ、家族のようなものだ」

女勇者「……やっぱり昔は魔物と共存していたのね」

情報屋「そういうことだ」

情報屋「さてと、私はあれを取りに来たんだ」

女勇者「あれって?」

情報屋「そこの棺、開けてくれないか?」

女勇者「棺を……?」

東の勇者「開けろったって、玄室にあったものより重そうだぞ」

女勇者「そうね」

情報屋「私は力仕事をしたくないのだ」

東の勇者「……仕方ないな。私も一緒に……」

女勇者「一人で大丈夫」ガシッ

ゴゴゴゴ

東の勇者「……おお」

情報屋「さすがだな。本来なら10人いて動かすものなのだが」

女勇者「開けたわよ。どうするの?」

情報屋「うむ……」ガシッ

女勇者「それはもう一つの財宝……?」

情報屋「黄金の爪。この輝きは永遠に変わらぬものだな」キラーン

女勇者「それを……どうするの?」

情報屋「これ以上はお前たちが知らなくていいことだ。元々これは私のもの。持っていっても問題あるまい」

女勇者「……」

情報屋「納得いかないか。そうだな……では少しお前に有益な情報を与えてやる」

女勇者「え?」

情報屋「この腕輪と爪は元々一つだった」

女勇者「?」

情報屋「正確に言えば一つの防具の一部だった」

女勇者「一つの……?」

情報屋「その力があまりに強力過ぎるため、今はバラバラに分かれているようだ。まあ、たとえ一つに戻ったところで扱える人間などいないがな」

東の勇者「ほう。興味あるな」

情報屋「バラバラに分かれたその一つに、魔物化に関する道具があった」

女勇者「え?」

情報屋「それがどこにあるかはわからないが、探してみるのも面白いのではないか?」

東の勇者「おお、そうだな」

女勇者「でも……」

東の勇者「なーに。どうせ私たちは世界中を回っているんだ」

女勇者「……」

東の勇者「ついでとなってしまうかもしれんが、そいつの情報も探ってみる」

女勇者「……あなたの旅に支障がなければ」

東の勇者「うむ」

東の勇者「まあさっさと魔王を倒してしまえば関係なくなるがな。はっはっは」

情報屋「ふっ、自信家だな」

東の勇者「はっはっは。自信がなければ勇者などやっていられんぞ」

情報屋「そういうタイプは決まって長生きできないものだ。私のようにな」

東の勇者「おいおい縁起でもないこと言わんでくれ。死者に言われると説得力があるぞ」

情報屋「おっとすまない。どうも思ったことは口にしてしまう質でな」

東の勇者「それよりその道具はどんな形状のものなのだ?」

情報屋「……この星降る腕輪と対をなす、もう一つの腕輪」

女勇者「腕輪……」

東の勇者「わかった。恩にきる。希望はそこら中に転がっているものだな。はっはっは!」

終わります

>>339
>>340
忙しかった時期もあったけど今はそこまででもないです。サボり癖がついてしまっただけです
ごめんなさい

ありがとうございました

待ってました!
モチベ維持はとっても大変
休むのも必要だね

色んなキャラとそこから出てくる世界観や本編で語られなかったストーリー…いいなあ…ごちそうさまです
スピード倍なんで腕輪にはお世話になりましたよ

情報屋「ん……そろそろか」

東の勇者「何がだ?」

情報屋「長時間身体を借りていると持ち主に支障をきたしてしまう。私がこうしていられるのは一日一時間程度しかない」

女勇者「……」

東の勇者「そうか。元気でな……というのはおかしな話か」

情報屋「ふっ、まあお前たちと話せなくなるだけで腕輪の中に私は存在しているのでな」

女勇者「……待って。最後に教えて。なんであなたはこんな呪いを……」

情報屋「……」

女勇者「魔物となった人たちをどう思っているの?」

情報屋「……知ってどうする?お前には関係ないだろう」

女勇者「そうだけど……」

東の勇者「……」

情報屋「やつらはピラミッドに近づきさえしなければ人間に危害を加えることはない」

女勇者「……」

情報屋「勇者であろうと国の内情に首を突っ込むな」

女勇者「……」

東の勇者「そうかもしれんな……たしかにそれは私たちの出る幕ではない」

女勇者「……じゃあこれだけ教えて。王族の記憶がピラミッドに残されているということはもしかして……」

情報屋「ああ、私がここに来て主な情報を得たのは……」

女勇者「……」

情報屋「お前と行動を共にしていた王配の魂の記憶だ」

女勇者「!」

東の勇者「そうだったか。お前が一人になってからもちゃんと見守ってくれていたみたいだな」

女勇者「……ええ」

情報屋「王家の血筋ではないが、なかなか見所のある男だった」

女勇者「当たり前よ」

情報屋「やつから預かった指輪……失くすんじゃないぞ」

女勇者「ええ、もちろん」

情報屋「お前が生きていれば、私たちはいずれまた会うことになるだろう」

女勇者「え?」

情報屋「楽しみにしているぞ……」

女勇者「どういうこと?」

情報屋「……」

女勇者「ちょっと……」

情報屋「……」

東の勇者「おい、どうした?」

情報屋「……あ、解けたか」

東の勇者「なに?」

情報屋「ええと、僕は初めましてだね。ファラオ王に身体を貸していた情報屋だ」

東の勇者「消えたのか。意味深な台詞を残しおって」

情報屋「あの人、結構意地悪だからね」

東の勇者「うむ……当然ながら先ほどとは随分と雰囲気が違うものだな」

情報屋「はは。あんな性格じゃ王族でなければ生きていくのは難しいだろうね」

東の勇者「はっはっは、本当にな……ってファラオ王の性格を把握できるのか?」

情報屋「身体を貸している間も僕の意識はずっとここにあるんだ。今まで何があったのかもわかっているよ」

女勇者「……」

東の勇者「どうした?」

女勇者「いえ……あなたは一人で来たの?」

情報屋「あ、そうそう。僕は勇者と一緒に来たんだよ。途中で逃げてきたから今どこにいるかわからないけど」

女勇者「え……」

東の勇者「なに!?オルテガもピラミッドに!?」

情報屋「ここには誰も入れさせていないから安心してよ。そのために勇者たちには鍵泥棒だと思われて、追われてきたんだけどね」

女勇者「……」

東の勇者「そういえば、お前はなぜオルテガに会おうとしないのだ?」

女勇者「……」

終わります

>>350
腕輪は必須ですね。ここではまた妄想で変な使い方しています
ありがとうございました

情報屋「……どこに魔物が潜んでいるかわからないから、外では女勇者が生きていることを話せない」

東の勇者「ん?ああ、その通りだが」

情報屋「話せる安全な場所といったらここくらいだ」

東の勇者「それで私を誘導したのだものな」

女勇者「……」

情報屋「でも勇者を呼び寄せたら、ここには女勇者がいる」

東の勇者「むしろ好都合ではないか。当人から話した方が納得もしやすいだろう」

情報屋「彼女は勇者と会ってしまったら、感情が高ぶり変身してしまう可能性がある」

女勇者「……」

東の勇者「いや、私と会っても普通の状態でいるではないか」

情報屋「だってそれは……」

女勇者「……」

東の勇者「?」

女勇者「……」

情報屋「惚れた相手に魔物となった……変わり果てた自分を見られたくない。相手がどう思おうと、女心ってそういうものでしょ?」

東の勇者「惚れた……?なんのことだ?」

女勇者「……」

情報屋「……好きなんだよね?勇者が」

東の勇者「なに!?」

女勇者「……」

東の勇者「だってあいつには女房も子供も……お前もよく知っている人だろう」

女勇者「……」

情報屋「考え方によっては惚れた相手がたまたま別の人と結ばれただけ。それだけのことなんだ」

東の勇者「いや、しかしあいつが結婚したのだって随分と前の話だぞ」

女勇者「……」

情報屋「うん……それでも、ずっと好きでいられるってすごいことだと思う」

東の勇者「ずっと……」

女勇者「……」

東の勇者「はー……初耳だ」

女勇者「……」

東の勇者「はっはっは。お前も女らしいところがあったのだな。ただの戦闘バカだと───」

女勇者「……」ギロッ

東の勇者「う……す、すまん」

情報屋「はは。そればかりはどうしようもないよ。だって好きになっちゃったんだもん。気持ちに嘘はつけない」

女勇者「……よくそこまでわかるのね」

情報屋「ある程度の情報があれば、少し考えただけでわかるもんだよ」

女勇者「あーあ、バレちゃったか」

東の勇者「なるほどな。そんな理由が」

女勇者「最初はピラミッドに勇者一行が来ると、魔物から聞いた。だからオルテガもいるものだと思って、玄室の棺に隠れて様子を伺っていたの」

東の勇者「そうだったのか。都合よくあいつがいなくてよかったな」

女勇者「オルテガには絶対言わないでよね」ギロッ

東の勇者「う、うむ。わかっているが、お前はどうするつもりなのだ?」

女勇者「……」

東の勇者「諦めきれるのか?それとも……」

女勇者「わからないよ。平和になったらよく考えてみる」

情報屋「……」

東の勇者「……そうだな。まずはそこからだったな」

情報屋「さて、そろそろ行かないと。外では勇者たちが怒っているだろうから一緒に弁解してくれる?」

東の勇者「ああ。任せておけ」

情報屋「あなたのことは言わないから安心して待っていて。それからこの黄金の爪と魔法の鍵を返しにくる時、一緒に食料や生活用品も持ってくるよ」

女勇者「ありがとう」

情報屋「ううん。これくらいはさせてほしい」

女勇者「あなたみたいな人が近くにいてくれたら、もっと楽に生きていけたのかもしれないわ」

情報屋「……そうだね。僕もあなたとならいい友達になれそうな気がするよ」

女勇者「うん……それじゃあ後のことはお願いね。大変だけど、絶対死なないで」

東の勇者「おう」

終わります
ありがとうございました

──────

────

──


ガチャ

ギィ

東の勇者「おお、本当に開いた。便利な鍵だ……お?」

従者「あ、東の勇者様!よかった無事だったんですね!」

盗賊「ほらな。そう簡単にくたばるやつじゃないんだよ」

勇者「ああ」

戦士「……」

東の勇者「おお、扉の反対側にいたのか。心配かけたな」

勇者「む……」

ヒョコッ

情報屋「砂漠の怪物なら彼が倒してくれたよ」

東の勇者「うむ。私の敵ではなかったな。はっはっは」

盗賊「この泥棒野郎!やっぱりお前もここにいたのか!」

情報屋「えーと……ごめんなさい」

東の勇者「はっはっは。いいではないか。こうして無事だったんだ。この情報屋も多少は役に立ってくれたぞ」

盗賊「だけどよ……」

勇者「ああ、無事ならそれでいい」

従者「くっ……勇者様がそう言うなら……」

情報屋「ほっ……」

勇者「……」

勇者「苦労を負わせてすまなかったな」

東の勇者「なーに、大したことではない」

勇者「オーブはあったのか?」

東の勇者「いや。やはり全く関係ない怪物だった」

勇者「そうか……」

盗賊「くそ、やっぱりオーブもねえし無駄足にしか思えねえよ」

情報屋「オーブ……?ひょっとしてオーブを探しているの?」

東の勇者「知っているのか?」

情報屋「前に聞いたことがある。たしか東の国のラーの洞窟という場所で見たって」

東の勇者「東の国だと!?」

従者「ラーの洞窟?わかりますか?」

東の勇者「ああ、昔行ったことが……そうか!どこかでオーブを見たと思ったが、あれがそうだったのか!」

従者「では次に向かう場所は東の国ですね」

東の勇者「故郷か……魔王を滅ぼすまで帰らないつもりだったが……」

従者「東の勇者様……」

勇者「……」

戦士「家に帰らなければいいだけだろう」

東の勇者「雰囲気出しているんだから水差すようなこと言うな!ニュアンスで感じ取れ!」

勇者「今回はやけにすんなり教えてくれたな」

情報屋「まあちょっと迷惑かけちゃったし、お詫びということで」

勇者「ありがとう。助かったよ」

盗賊「そもそも俺らは世界を救うためにやってんだから金を取ろうとすんなよ……」ブツブツ

従者「どうしましょう。このまま向かいますか?」

勇者「……すまないが私はまだやらなければならないことがある」

東の勇者「ああそうか。だったらまた別行動だな。東の国へは私たちだけで行こう」

従者「しかしオーブを取りにいくならまた怪物が……」

東の勇者「東の国に怪物なんて聞いたことがないぞ。私が昔見たときもいなかったしな」

盗賊「俺もそんな情報は聞いたことねえ。おそらく魔物に見つからないよう人間が隠しているんじゃないか?」

東の勇者「そうかもな」

戦士「……」

東の勇者「というわけで私たちはさっさと取りに行ってくる。お前の方はいつ終わるかわからないから……そうだな、西の国で落ち合おう」

従者「そうですね。西の国なら船を何日でも停泊できますし」

勇者「すまないな……またお前たちにばかり」

東の勇者「なーに、構わんさ。お前はこれからが大変だろうからな」

勇者「なに?」

東の勇者「修羅場か……お前の戦いは終わりが見えんな。はっはっは!」

勇者「……?」

盗賊「あ、俺はまた別行動をとらせてもらう」

従者「なに?」

東の勇者「なんだ。お前も一緒に来ればいいのに」

盗賊「わざわざ俺が行かなくても、東の国はお前さんの庭だろ?」

東の勇者「まあな」

従者「それはそうだが……」

盗賊「ん?俺がいないと寂しいのか?」

従者「ち、違う!三人より四人の方が野営もしやすいし、荷物だって軽くなるし、それから……」

盗賊「俺はまた他のオーブの情報を集めてくるよ。その方が一緒にいるよりかは効率的だ」

従者「……」

盗賊「……お前さんたちの役に立ちたいんだ」

東の勇者「お前から率先してそんなことを言い出すとは……」

盗賊「別に変じゃないだろ?俺だって協力者なんだ」

従者「……」

戦士「……」

勇者「……そうだな」

東の勇者「ああ、助かるよ」

盗賊「俺がいなくても今日みたいにヘマしたりして、死ぬんじゃねえぞ」

東の勇者「はっはっは、心配するな。私はまだ死ぬわけにはいかないからな」

情報屋「じゃあ僕たちはアジトへ帰ろう。取るものも取ったし」キラーン

勇者「その爪が……君がここに来た目的か?」

情報屋「うん。そろそろ疲れたよ。帰りは魔法でよろしく」

勇者「……わかった」

東の勇者「では、また会おう」

勇者「ああ、気をつけて……決して無理はしないでくれ」

終わります
ありがとうございました


最近読み直してきて一気読みのが読み安い

過去スレで復習してきたよ
長く続いてなによりだ

──────

────

──

魔盗賊・小魔物の住み処



魔盗賊「……」パチリ

魔盗賊「ふぁーあ……よく寝た」

魔盗賊「んー……相も変わらずいい天気だね。たまには雨でも降らせてくれよ」

魔盗賊「へへ、神に祈るあたり人間っぽいよな、俺」


ピィ、ピィ


魔盗賊「お」

小魔物「ピィ、ピィ」ヒョコ

魔盗賊「なんだ小魔物。起きていたのか」

小魔物『おはよう魔盗っちゃん』

魔盗賊「おう、おはよう」

小魔物『魔盗っちゃん魔盗っちゃん、僕魔盗っちゃんに内緒でつまみ食いしようとしたんだよ』

魔盗賊「いきなりだなお前」

小魔物『でもね、ろくなものがなかったからやめたんだ』

魔盗賊「マジか……買い足すの忘れてた……げっ、水もほとんどねえじゃねえか」

小魔物『街へ買い出しに行こうよ。僕パンが食べたい』

魔盗賊「そうだな。久しぶりに行くか」

小魔物『わーい、お出かけだー』

──────

────

──

砂漠


バサッバサッ

魔王「着いたか……砂漠の国」

魔王「……女勇者はピラミッドにいるはずだったな」

魔王「勇者一行もそこに向かったはず」

魔王「ククク、元仲間同士の殺し合いはどちらが勝つかな?」

魔王「勇者に元仲間が殺せるはずもないか、ククク」

魔王「女勇者の方は人間の世界で恐怖の噂となり、砂漠の魔物どもからも信頼が厚いと聞いた」

魔王「順調に魔物をやっているじゃないか、ククク」

魔王「とはいえ元仲間相手では甘さを見せるかもしれん」

魔王「だが俺の命令には逆らえないこともわかっている」

魔王「ククク……どう転ぶか見ものだな」

魔物「ま、魔王様ー!」

魔王「あん?」

魔物「た、大変です!女勇者が敗れたようです!」

魔王「なんだと?」

魔物「相手は東の勇者のようでした!」

魔王「元仲間を殺した……?勇者が……?」

魔物「そう仲間に説明しているところを聞きました。女勇者の行方は不明なので間違いないかと……」

魔王「……」

魔物「そして我々が襲いかかったら、『砂漠の怪物を倒した私に勝てると思ったのか?』『はっはっは、砂漠の怪物に比べたら大したことないな』と大声で喋りながら返り討ちにしてきました」

魔王「……怪物の姿の時にやられ、元仲間とは気づかなかったということか」

魔物「お、おそらく……」

魔王「……」

魔物「い、いかがいたしましょう……?」

魔王「ふん……まあいい」

魔物「えっ?」

魔王「気がつかなかった勇者も、やられた女勇者も所詮はその程度ということだ」

魔物「し、しかしこのままでは砂漠の国を乗っ取る計画が……」

魔王「俺がいいと言っているんだ」ギロッ

魔物「も、申し訳ありません!」ビクッ

魔王「……」

魔王(……国の乗っ取りなどもはや俺の知ったことじゃない)

魔王(むしろ今そんなことされても、それがカバの功績になっちまうからな)

魔王(それよりも勇者を殺し、骨を奪う。その方が俺にとっては重要だ)

魔王「やつらの行方は?」

魔物「勇者は砂漠の街に、東の勇者は東の国に向かいました」

魔王「東の国か。狙いはオーブだな……ならばアイツに伝えておけ」

魔物「アイツ……ああ、あの方ですか」

魔王「オーブはどうでもいい。東の勇者抹殺を優先しろと」

魔物「なるほど。あの方なら東の勇者相手でも……」

魔王「俺はもう一匹を消してやる」

魔王「さて……」

魔王「探すのも面倒だ……街に魔物を放ち、あぶり出すとするか」

魔王「辺り一帯に生息している魔物の意識を操り……勇者を探す」

魔王「……」スッ

魔王「魔物ども、俺のために動け。勇者を探せ」

キュイーン


「ガ……ガルルル……」

「グギャアアア……」

魔王「……ふう。この広範囲を操るとなると、さすがに俺も疲れる」

魔王「俺はここで休んでいる。街から勇者を誘き寄せてこい」


「「「グギャアアア!」」」

ドドドドドド


魔王「ククク……早く出てこい、勇者」

──────

────

──


小魔物『街まで遠いね』

魔盗賊「そうだな……街の中に住めたら楽なんだけどな」

小魔物『僕喉が乾いちゃった。お水ちょうだい』

魔盗賊「ああ、ちょっと待ってろ」ゴソゴソ


ドドドドドド


魔盗賊「ん?」


「「「グギャアアア!」」」ドドドドドド


魔盗賊「魔物の群れじゃねえか。珍しいな」

小魔物『様子が変じゃない?』

魔盗賊「何かあったのかな?聞いてみるか。おーいお前ら、何をそんなに慌てて……」


「「「グギャアアア!」」」ドドドドドド


魔盗賊「……聞こえていない?」

小魔物『僕たちのこと気にもしていないよ』

魔盗賊「正気じゃないみたいだ。こっちに来る!」


ドドドドドド

ドカッ

魔盗賊「うわっ!」ドサッ

ビチャ

小魔物『ぎゃっ!お水が!』

魔盗賊「痛た……魔物の群れに轢かれたのなんて初めてだ……」

小魔物『そんなことよりお水が……』

魔盗賊「酷え……」

小魔物『酷いねあいつらー!』

魔盗賊「俺より水の心配をするお前がだよ!」

小魔物『どうしよう。街まで我慢できないよ』

魔盗賊「頼むから少しは俺の心配もしてくれ……」

小魔物『……はっ!?大丈夫?魔盗っちゃん』

魔盗賊「……もういいよ」

魔盗賊「魔物たちに何があったのかも気になるところだが、とりあえずはどこかで水を確保しなくちゃな」

小魔物『うわーん!喉が渇いたよ!』

魔盗賊「騒ぐと余計渇くぞ。あー、どっかに都合よく旅人でもいねえかな……」

小魔物『そんな都合よく……いたよ魔盗っちゃん!あっちにキャラバンだよ!』

魔盗賊「おお、ありがてえ。早速人間のふりして分けてもらいに行こう」

小魔物『早く、早く』

魔盗賊「慌てんなって。お前は道具袋から出てくるんじゃ───」


キュイーン


魔盗賊「う……」クラッ

小魔物『魔盗っちゃん?』

魔盗賊「あ……頭が……意識が薄れていく……」

小魔物『大丈夫!?あ……僕も……』クラッ

終わります

>>376
>>377
また飛び飛びになりそうなので復習して下さい
ありがとうございました

──────

────

──

砂漠の城下町入り口


勇者「ここに戻って来るのはとても懐かしく感じる」

情報屋「はは……そうだね。そんなに時間も経っていないのに……」

勇者「どうした?顔色が悪いようだぞ」

情報屋「ちょっと疲れたみたい……早くアジトに入ろう」

勇者「……うむ」

情報屋「え……?」

勇者「どうした?」

情報屋「それ本当?」

勇者「……?」

情報屋「大変だよ……魔物の群れが街に向かって来ているらしい」

勇者「なに?」

情報屋「どうしよう……百匹はいるみたい……」

勇者「……なぜわかる?」

情報屋「説明している暇はないけど、これは本当のことだよ」

勇者「……」

情報屋「街に入って来られたりしたら……」

勇者「……今からでは住民を避難させる時間も手段もない」

情報屋「うーん……」

勇者「百匹以上いるとなると、私が食い止めるにしても何匹かは逃してしまう可能性がある。せめて魔物を遠くまで連れ出すことができれば……」

情報屋「え……?そうか、でも……」

勇者「どうした?何か方法があるのか?」

情報屋「……でも、あなたに危険が及ぶ」

勇者「そんなことを言っている場合ではない」

情報屋「……」

勇者「教えてくれ」

情報屋「……この黄金の爪を持っていれば魔物はあなたに引き寄せられる」スッ

勇者「!?」

情報屋「これを持って街から離れてくれれば……」

勇者「……それでは……やはり」

情報屋「あなた一人にこんなことを任せるのは気が引けるけど……」

勇者「……そうか」

情報屋「今はあなたに頼るしかない」

勇者「……わかった」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」


ドドドドドド


勇者「……本当に来たか。なるほど。百匹以上はいそうだな」

情報屋「大丈夫……?」

勇者「うむ。では魔物ども、ついてこい!」タッタッタッ

ドドドドドド

「ユウシャ……ドコダ……」

「ホネヲ……サガセ」

ドドドドドド

「ア、アレ……?カラダガカッテニ……」

「オイ、ドコヘイク……アレ……?オレモ……」

ドドドドドド

「ウググ……ユウシャヲサガサナケレバナラナイノニ……ヒキヨセラレル……」

「クソ……ドンドンマチカラハナレル……ン?」

「アレハ……ユウシャ!?」

「シメタ!ヒキヨセラレルホウコウニユウシャガイルゾ!」

ドドドドドド

タッタッタッ

勇者「やはり私……というより船乗りの骨を狙っていたか」

勇者「単体では何度かあっても、街にあんな大群が押し寄せることなど今までなかった」

勇者「魔王側に何か動きがあったのか……?」

勇者「……今は考えている余裕はないな」

勇者「全部一塊に集めてから、魔法で一気に片付ける」

──────

────

──


ドドドドドド


勇者「……集まったな」


ドドドドドド


勇者「いくぞ!真空呪文!」シュルルルルル


「「「グギャアアア!」」」ドドドドドド

──────

────

──

砂漠の城下町入り口


勇者「……」テクテク

情報屋「あ……おかえり……もう終わったの?」

勇者「ああ」

情報屋「さすが勇者だ……うまくいった?」

勇者「ああ、黄金の爪のおかげだ」スッ

情報屋「そう……役に立ってよかった」ガシッ

勇者「……」

情報屋「何があったんだろうね……」

勇者「やつらの狙いは私だった。黄金の爪の呪いとは関係ないようだ」

情報屋「そう……」

勇者「また同じことが起こるとも限らん……ここにあまり長居はできんな」

情報屋「え、そんな……せめて仕事が終わるまでは……」

勇者「……ああ。わかっている」

情報屋「ありがとう……なるべく急がないとね」

勇者「……」

終わります


すごい長編
魔盗っちゃんとかやっと出てきたし読み直してこなかったら忘れてたwwww

──────

────

──

アジト


下っ端「あ、おかえりなさい」

猫「にゃーん」

情報屋「ただいま……」

リーダー「お、それが黄金の爪か。見事なもんだ。墓荒らしは成功したみたいだな」

情報屋「人聞きの悪いこと言わないでよ……それより僕はもう休む。作戦会議は明日でいいかな……?」

下っ端「え……あ」

リーダー「ああ、ゆっくり休んでくれ」

勇者「本当に大丈夫か?」

情報屋「うん……おやすみ……」ガチャ

バタン

下っ端「……ちょっと私様子見てきます。食事くらいとらないと」

リーダー「ん……じゃあ頼む」

勇者「……」

リーダー「大変だったか?」

勇者「いや、任務自体は……」

リーダー「そうか。でも、あんたがいてくれて助かったよ」

勇者「……そろそろ教えてくれないか。作戦とはなんだ?私たちは何のために黄金の爪を……?」

リーダー「んー……まあ教えとかないとな」

勇者「……」

リーダー「この国の地下のことは知っているか?」

勇者「ああ、たしか最初に情報屋と会った場所だな」

リーダー「そのさらに下、もう一つの地下のことは?」

勇者「いや……さらに下?」

リーダー「そこには砂漠の国の真の闇がある」

勇者「闇……?」

リーダー「地下は法律なんて関係ない、裏の顔の連中が好き勝手やっている場所だ」

勇者「そのような雰囲気は感じ取れた」

リーダー「あんた、あいつと会ったのは情報を買うためだったろ?」

勇者「ああ、とても買えるような値段ではなかったが」

リーダー「地下ではそんな連中がごろごろいる。その救済措置として、もう一つの地下で金を稼げるんだ」

勇者「……まともな方法ではないのだろうな」

リーダー「闇のクエストやら臓器の提供、法外な掛け金のギャンブルなんてものだな。当然のごとく死人も出る」

勇者「……そうか」

リーダー「あまり驚かないな。予測していたのか?」

勇者「おそらくどこの国でも同じような闇の部分はある。それで生活や経済のバランスを保っている国もあるほどだ」

リーダー「そうだな。しかしそれは確実に不幸になる人間がいるってことだぜ?」

勇者「……わかっている」

リーダー「あんたにこんなこと言ってもしょうがないな」

勇者「……」

リーダー「あんたの敵は人間じゃなく、魔物なんだから」

勇者「……」

リーダー「で、その魔物なんだが……」

勇者「……」

リーダー「この街の地下には数多く生息しているんだ」

勇者「なに?」

リーダー「さっき言ったギャンブルとは……魔物同士を戦わせて、生き残りを当てるゲーム」

勇者「!?」

リーダー「そのために地下では魔物が飼われている」

勇者「バカな……人間が魔物を飼うだと……?」

リーダー「一応システム上は安全と判断されている。現に何年も前から地下は存在しているんだ」

勇者「……」

リーダー「さすがにこれは予測できなかったよな……」

勇者「……私の役目はその魔物どもの殲滅か?」

リーダー「そう思うよな……」

勇者「違うのか?」

リーダー「……あんたにやってほしいことは魔物退治じゃない。魔物を助けてほしいんだ」

勇者「!?」

リーダー「わかっている。勇者をバカにしたような言い分だってことも、ただ……」

勇者「……残念だがそれはできない。それが目的なら私はここにいるべきではない」

リーダー「待ってくれ!俺の話を───」

バタン

下っ端「ゆ、勇者様!」

勇者「どうした?」

下っ端「助けて下さい、あの……あの……」

終わります

>>401
本当にこんなに長くなるとはです
もうちょっとだけ続くんです

ありがとうございました

──────

────

──

情報屋の部屋


情報屋「はあ……はあ……」

勇者「これは……!」

リーダー「おい!しっかりしろ!?」

情報屋「うう……」

下っ端「こんな大きな怪我……ずっと隠していたみたいで……」

勇者「まさか宿屋でやられたときのものか?」

情報屋「はあ……はあ……」

勇者「あれからずっと……?」

情報屋「なんで……言っちゃうんだよ……」

下っ端「すみません。でも……」

リーダー「……」

勇者「彼女は悪くない。このまま放っておいたら君が死ぬ」

情報屋「なんで……くそ……」

下っ端「うう……すみません」

リーダー「……頼む。助けてやってくれ」

勇者「無論だ」スッ

下っ端「ま、待って下さい」

勇者「なんだ?そんなゆとりはないぞ」

下っ端「身体に触れずに治療はできませんか……?」

勇者「有能な僧侶なら可能かもしれんが私には無理だ」

情報屋「……」

リーダー「……」

下っ端「そうですか……」

勇者「それだけか?ならば始めるぞ」

リーダー「ああ、頼む」

勇者「……」スッ

情報屋「……」


ムニュ


勇者「……む?」

情報屋「……」

下っ端「……」

リーダー「……」

勇者「……」

──────

────

──


下っ端「落ち着いたみたいです……あれから着替えた後、すぐ眠ってしまいました」

勇者「そうか……」

下っ端「本当にありがとうございました」

勇者「いや……」

リーダー「まったく、俺たちにくらい教えとけばよかったのによ。薬草なんか気休め程度にしかならねえだろ」

下っ端「きっと……私たちに止められて、計画が台無しになると思ったんじゃないでしょうか」

勇者「……」

リーダー「わかっているけどよ、結局勇者にも知られちまったんだぜ」

勇者「……」

リーダー「……驚いたよな?」

勇者「……」

リーダー「まあ日除けの服と帽子で顔も隠していたからわからなかっただろうがよ」

勇者「……」

リーダー「あいつが女だってこと」

勇者「……」

リーダー「とにかく今離脱するのは勘弁してくれ。あいつが回復するまでは……」

勇者「……わかった」

リーダー「よかった。すまないな」

勇者「……」

リーダー「じゃあそれまであんたも休んでいてくれ」

勇者「……少し外の風に当たってくる」

リーダー「え?」

勇者「大丈夫だ。このまま去ったりはしない」

──────

────

──




勇者「……」

勇者「……」

勇者「……」

猫「にゃーん」

勇者「……お前も来たのか」

猫「にゃーん」

勇者「……私はどうしたらいいのだ」

猫「にゃーん?」

勇者「……」

情報屋「猫に聞いてどうすんのさ」

勇者「む……」

情報屋「また助けられちゃったね」

勇者「……大丈夫なのか?」

情報屋「うん。心配かけてゴメン。命拾いしたよ」

勇者「……そうか」

猫「にゃーん」ヒョコヒョコ

情報屋「こんなに早く治っちゃうなんて、さすが勇者だね」ヒョイ

猫「にゃーん」スリスリ

勇者「……」

情報屋「本当に勇者がいなかったら危なかった。ありがとう」

勇者「私でなくとも教会に行けば、回復呪文に長けた神父がいるはずだが」

情報屋「……」

勇者「……」

情報屋「……教会は苦手なんだ」

勇者「神の前で嘘はつけないからか?」

情報屋「……」

勇者「……正体がばれたら騒ぎになることを恐れてか?」

情報屋「え……」

勇者「当然か。いきなり一国の王女が傷を負って現れたらそれは大事件だ」

情報屋「!?」

勇者「……」

情報屋「な……なんで……」

勇者「見つけましたよ……姫」

終わります
ありがとうございました

情報屋「なんで……」

勇者「あなたと共に行動して、色々と腑に落ちない点があった」

情報屋「そんな……そんなミスを……?」

勇者「それらを繋ぎ合わせて、先程身体に触れたとき……確信した」

情報屋「……いつから?」

勇者「まず最初にあなたと出会ったとき……」

勇者「私は姫のことを調べていたが、その行動は噂になるほどじゃないとあなたは言った」

勇者「しかし、私たちを見た兵士は何らかの噂を知っていた」

情報屋「……」

勇者「兵士の言っていた噂とは私のことではなく、おそらく姫が平民に紛れ、城下町に潜伏しているというものだったのだろう」

情報屋「……」

勇者「つまり疑いをかけられ、あの後兵士に追われたのはあなたの方だった」

情報屋「……」

勇者「あなたが兵士から私を逃がしてくれたのは、私が捕まったら自分に不利な情報を吐いてしまうと思ったのだろう」

情報屋「……」

勇者「常識的に払えない金額を振ったのも、元々情報を売る気がなかったから」

情報屋「……」

勇者「姫が戦っているという意味は、あなたが私という得体の知れない男に付きまとわれての揶揄」

情報屋「……」

勇者「そして宿屋であなたは言った『もしあなたが今まで漏らした情報を売っていれば僕の秘密とも交換できたね』と」

勇者「姫の秘密でも、僕の持っている秘密でもなく……僕の秘密と」

勇者「あのときはただの言い間違いかと思ったが、魔物が去り、気を抜いて口を滑らせただけだったようだ」

情報屋「……」

勇者「仕事を手伝えば姫に近づけるという意味は、おそらく今のやっていることが終われば城に戻るつもりだから」

情報屋「……」

勇者「ピラミッドの内部にやたら詳しかったのもそうだ。おそらく城で何度も地図を見て覚えたのだろう」

情報屋「……」

勇者「昔一度入ったことがあると言ったのは、親族の葬儀かな」

情報屋「……」

勇者「私の例え話を的外れと評したのもピラミッドは自身の家系のものだから」

情報屋「……」

勇者「そして自身の家の持ち物ならば、持ち出しても迷惑と思われないのも当然だ」

情報屋「……」

勇者「ここまではただの違和感でしかなかったが、はっきり疑惑として感じたのが……」

情報屋「……」

勇者「黄金の爪の存在」

情報屋「……」

勇者「地下にあった呪われた財宝とは黄金の爪のこと」

勇者「あなたは、あれに触れている限り魔物をずっと呼び寄せる呪いにかかると教えてくれた」

勇者「それは私も体験したから本当のことだとわかる」

情報屋「……」

勇者「先程起きた大群の街への襲撃は、私を狙っていただけで呪いとは関係ない」

勇者「それを差し引いて、あなたが触れている間は魔物が現れる気配が一切なかった」

情報屋「……」

勇者「なぜなら……」

情報屋「……」

勇者「ピラミッドは王家を守るもの。王族はピラミッドの呪いにかからない」

情報屋「……」

情報屋「……通りで墓荒らしをしたはずなのに、あなたに何も咎められなかったわけだ」

勇者「……」

情報屋「参ったね。鈍いと思っていたのに、ここまで観察されていたなんて」

勇者「……」

情報屋「そう。僕が砂漠の姫。あなたの目的だ」

勇者「……」

情報屋「僕らは初めからお互いを探し合っていたんだよ」

勇者「……」

終わります
ありがとうございました

情報屋「騙していたことは本当に悪かったと思っている。でも、今城に戻るわけにはいかないんだ」

勇者「それは今までの計画のためですか?」

情報屋「……うん。だからこのことは目を瞑っていてほしい」

勇者「……」

情報屋「そして計画にはあなたの力がいる」

勇者「次期女王だという自覚はおありか?」

情報屋「わかっている」

勇者「死んでしまっていたかもしれないのですよ」

情報屋「わかっている」

勇者「……」

情報屋「それがどれだけ多くの人に迷惑をかけるか……どれだけ他国の信用に関わるか」

勇者「……」

情報屋「わかった上でお願いする。これを達成できなければ一生後悔する」

勇者「……」

情報屋「勇者」

勇者「……私は女王様に依頼されたという理由だけで動いているわけではありません。姫の身を案じてのこと」

情報屋「……あなたはそういう人だよね」

勇者「姫を危険にさらす可能性があるならば、それは当然受け入れ難い」

情報屋「そんな……」

勇者「ましてや魔物を助け出す計画など……」

情報屋「……リーダーから聞いたんだね」

勇者「……」

情報屋「うう……そうだよね……でも───」

勇者「しかし」

情報屋「え……」

勇者「……あなたの覚悟を見せられてしまった。それは私の想像以上でした」

情報屋「……」

勇者「何があろうと成し遂げようとする覚悟」

情報屋「……」

勇者「今……私の覚悟も固まった」

情報屋「……」

勇者「私も協力させてもらいます」

情報屋「!?」

勇者「……」

情報屋「ほ、本当に?」

勇者「はい」

情報屋「そっか……ありがとう。苦しい選択をしてくれて」

勇者「ただし危険なことは私が受け持ちます。あなたはこれ以上何もしないでほしい」

情報屋「でも……」

勇者「これでも妥協しているのです」

情報屋「……わかったよ。じゃあこちらからも一つ条件を」

勇者「む?」

情報屋「今は情報屋として接してほしい。あなたに敬語を使われるとなんだかむず痒いよ」

勇者「そういうわけにはいきません」

情報屋「勇者って生き物は頑固だね。だったらこの先敬語を使ったら……」

情報屋「城に戻ったらあなたに拐われたって言いふらしてやる」

勇者「なに!?」

情報屋「いいの?」

勇者「うぐ……!わかり……わかった」

情報屋「はは。よろしい。じゃあ僕のことは姫じゃなくて今まで通り情報屋って呼んでよね」

勇者「……わかった」

情報屋「うん。その方があなたも楽でしょ?」

勇者「……」

情報屋「あー、少しスッキリしたよ」

勇者「……ところで女王様のことだが」

情報屋「あ、うん。実際のところお母様は僕が自主的に消えたってわかっていると思うよ」

勇者「……」

情報屋「今さら敬語はダメだよ。わかったって言ったんだからね」

勇者「……わかっている」

勇者「……やはり女王様はどういうことか知っていたのか」

情報屋「僕が城を抜け出たのはこれが初めてじゃないから、「またか……」程度に思っていたんじゃないかな」

勇者「……そうか」

情報屋「あなたに僕の捜索を依頼したのはそうしないと家臣の手前、示しがつかなかったんだよ」

勇者「そんなことだろうとは思っていた」

情報屋「でも城の皆もわかっているんだけどね。あまり騒ぎになっていなかったでしょ?」

勇者「しかしなぜ城を抜ける必要が?」

情報屋「それは……」

勇者「……」

情報屋「……お父様の死因を知りたかったから」

勇者「なに?」

情報屋「急に亡くなったんだ。病気を患わっていたということもなかったのに……」

勇者「……お父上は他界されていたのか」

情報屋「うん。あ、ピラミッドに行ったことがあるというのもお父様の葬儀でさ」

勇者「……話し辛い内容ならば構わないが」

情報屋「亡くなったのはもうずっと昔のことだから大丈夫だよ」

勇者「……そうか」

情報屋「全然王族っぽくない人だったな……元々他国の平民出身だって言っていたし」

勇者「……」

情報屋「あ、この喋り方も実はお父様の真似しているんだ。街に溶け込むために真似していたらこっちの方が楽になっちゃってね」

勇者「……そうか」

勇者「……それで、女王様はなんと?」

情報屋「病気の一点張り。他の人に聞いてもさ」

勇者「……」

情報屋「お母様って嘘がつけない人だからすぐわかったよ。何か秘密を抱えているって」

勇者「……」

情報屋「僕が王位を授かる頃には秘密も明かされるかもしれない。でも、そうならなかったり……」

勇者「……」

情報屋「その秘密がとても受け入れ難いものだったら……」

勇者「……」

情報屋「その前に探り当てて、解決したい。できなくても納得できる理由と時間が欲しかった」

勇者「……」

情報屋「まあ、言ってしまえばただの子供のわがままだよ」

勇者「……あまり私が関与できる問題ではないな。余所者が聞いてはならない話だ」

情報屋「はは。それだけあなたを信用しているんだよ」

情報屋「それを調べるに街に出てきて情報屋をやっていたリーダーと出会い、仲良くなった」

勇者「なるほど……」

情報屋「それで一緒に調べていたんだけど、うっかり兵士に見つかっちゃって、そのときは連れ戻されちゃったんだ」

勇者「……」

情報屋「それからは警備も厳重になって、なかなか抜け出すチャンスがなかった」

勇者「当然だろう。姫が城を抜け出すなんて聞いたことがない。本来あってはならないことだ」

情報屋「はは。さしずめおてんば姫ってとこかな」

勇者「……自分のことだ。笑い事ではない」

情報屋「ゴメン。それでしばらくしてから城にあるものが届けられた。それがこの……」スッ

勇者「む?」

情報屋「星降る腕輪」

終わります
ありがとうございました

勇者「星降る腕輪……」

情報屋「本来はピラミッドに納められているものなんだけど、三人組の墓荒らしに盗まれたらしいんだ。その墓荒らしたちが街で捕まって、城に返されてきたってわけ」

勇者「一体それは……?」

情報屋「うん。さっきのあなたの推理を一つ訂正させてもらうと、ピラミッドの内部に詳しかったのは僕じゃない」

勇者「む?」

情報屋「その場でルートを教えてくれた人がいるんだ。あなたは一度会っているはずだよ」

勇者「もしやピラミッドの頂上から降りてきたとき……」

情報屋「その通り。この星降る腕輪を着けることで僕の身体はファラオ王のものとなる」

勇者「ファラオ王……?」

情報屋「そう。砂漠の国の創始者で、僕のご先祖様」

勇者「創始者だと?魂だけで存在しているというのか?」

情報屋「そういうこと。普段は腕輪に封印されている」

勇者「……」

情報屋「王族の血をひく者が装備すると憑依できるみたいでね。最初はそれを知らずに興味本意で着けてみたら、急に腕輪に話しかけられて驚いたよ」

勇者「なるほど……やはりあれは君ではなかったか」

情報屋「うん。見ていたからわかると思うけど、この人すごい身体能力だから色々助けられている」

勇者「それで城からも簡単に抜け出せたわけか」

情報屋「一日一時間程度しか憑依できないからそれなりに計画だって練ったんだよ」

情報屋「今は腕輪に封印されている状態だけど声は聞こえている。魔物の襲撃を教えてくれたのもファラオ王さ」

勇者「……魂だけとはとても信じられん。ほぼ不自由なく、普通に人間と同じようではないか」

情報屋「本当だよね。封印されているくせにすごく遠くのことを見たり聞いたりできるみたいだから、情報屋の仕事ができるのもファラオ王のおかげなんだ」

勇者「なるほどな……」

情報屋「まあ気まぐれな人だし、寝ていることもしょっちゅうだし、憑依中も気を失ったらすぐ戻っちゃうから万能ってわけじゃないんだけどね」

勇者「ならばそれでお父上の死因も探ってもらえばいいのではないか?」

情報屋「それなら実はもうわかっている」

勇者「なに?」

情報屋「ある程度の情報は元々ファラオ王が知っていたんだ」

勇者「なんだと?」

情報屋「その情報の確信を得るためにピラミッドに行った」

勇者「……ピラミッド?」

情報屋「ピラミッドの玄室には王族の魂の記憶が残っているんだ。あそこに行ったとき、ファラオ王が直接お父様から確かめてくれた」

勇者「私たちが棺の蓋を閉める前か」

情報屋「うん。だからそれもピラミッドに行った理由の一つだった」

勇者「……ではなぜまだこんなことをやっているのだ?」

情報屋「その秘密を教えてもらう代わりにファラオ王と約束しちゃったんだ。その約束のためだよ」

勇者「約束とは……地下の魔物を救い出すことか?」

情報屋「そうだよ。この計画は全てファラオ王のために動いている」

勇者「なぜ魔物など……」

情報屋「少し思い入れがあるみたい。昔の人の考えはわからないよ」

勇者「……」

──────

────

──

砂漠


魔王「……遅い」

魔王「何をやっていやがる……役立たず共が」

魔王「もしや勇者に全て片付けられたのか……?」

魔王「……」

魔王「……チッ、我慢の限界だ。俺自ら行ってやる」

終わります
ありがとうございました

ファラオとかいうオリジナルキャラと思いきや
http://i.imgur.com/5dvMr8b.jpg

──────

────

──

城下町


魔王「……」

魔王「……人間の目に入らんよう動くか」

魔王「こんな街などすぐに壊滅できるが、俺の仕業だと大魔王様の耳に入っちまったら言い逃れができん」

魔王「そうなると、どうやって勇者をあぶり出すかだが……」

魔王「……ん?」

魔盗賊「今度はこの店で聞き込みをしよう」

小魔物『わーい。パン買ってよ。甘いの』

魔盗賊「あのなあ……買い物よりも勇者ってやつを探さなきゃなんねえんだ」

小魔物『パン!パン!パン!』

魔盗賊「……わかったよ。あまり騒ぐな。お前が人間に見つかっちまったら殺されちまうぞ」

魔王「……」

魔王「魔物か……だが見たことのない魔物だ」

魔王「勇者を探しているってことは、さっき砂漠で洗脳したやつらのうちの一匹か……?」

魔王「意識は正常に保っているようだが……」

魔王「ふん……まあいい」

魔王「あいつが出てきたら暴れさせて勇者を誘き出すか」

──────

────

──


魔盗賊「うーん、成果なし。本当にいるのか?結構有名人みたいだが……」

小魔物『ふう、よっこいせ』ヌッ

魔盗賊「おっと顔出すんじゃねえよ。隠れていろって」

小魔物『ゴメンよお腹が……』

魔盗賊「腹減ったのか?待ってろ……ほら半分こだ」

小魔物『わーい』モグモグ

魔盗賊「しかし参ったな……このままじゃすぐ夜になっちまう。あの女に合わせる顔がねえぞ。地下の情報屋にでも当たってみるか」モグモグ

小魔物『あの女の人、いい人だったね』

魔盗賊「え?お前、あの女が気に入ったのか?」

小魔物『うんー』

魔盗賊「そうだな。俺が魔物だと知りながらあんな風に接してくれる人間は初めてだったな。口は悪いがいいやつだってわかる」

小魔物『そうだね』

魔盗賊「それに心が浄化されるような感覚も……何者なんだろうな、あいつ」

小魔物『魔盗っちゃん、恋しちゃったの?』

魔盗賊「バ、バカ言うんじゃねえよ!そんなんじゃ───」

魔王「こいつは妙な光景を見たな」

魔盗賊「グア!?」フラッ

小魔物『なに?ぎゃっ!無理矢理押し込めないで!』サッ

魔盗賊「……急にまた意識が……」

魔王「少しお前の行動を見させてもらった。魔物が人間と馴れ合っていたとはな……」

魔盗賊「な、なんだお前……まさか、この頭がおかしくなるような感覚はお前の仕業か!?」

魔王「俺を知らないのか?」

魔盗賊「何者だ!」

魔王「知る必要はない」

魔盗賊「なに……?どういう……」

魔王「こういうことだ」ザクッ

魔盗賊「グアア……」バタッ

魔王「さて、勇者はここに来ているようだな……おそらく骨を持っているはずだ。さっさともらいに行くか……」

魔盗賊「」

魔王「そのためにこれからお前に働いてもらう」

魔盗賊「」

魔王「たった今、お前に呪いをかけた。お前の意思など関係なく、目が覚めたら凶暴化する」

魔盗賊「」

魔王「有り難く思え。意識が残っていたらその傷の痛みに耐えられんはずだからな……ククク」

バッ

魔物「魔王様!」

魔王「どうした……?」

魔物「うわっ!?この魔物の残骸は?見たことがない魔物のようですが……?」

魔盗賊「」

魔王「どうしたと聞いている」

魔物「ハッ……!も、申し訳ありません!猫に憑依した魔物がすでに勇者を発見していたようです!」

魔王「ほう、見つけたか」

魔物「し、しかし……勇者は例の骨を所持していないようなのです!」

魔王「なに……話が違うじゃねえか」ギリッ

魔物「も……申し訳ありません」ビクッ

魔王「チッ、勇者の始末だけでも行くか……骨をどこに隠したのか吐かせてやる」

魔物「そ、それから……我らの城の近くまで向かっている人間がいるようなのですが」

魔王(……城など今の俺には関係ない)

魔王「城には結界がある。どうせ入れないだろうが」

魔物「その人間……オーブを持っているそうなのです」

魔王「……なに?」

魔物「シルバーオーブだそうです。それも強力な呪文使いで、奪おうにもその区域の魔物では歯が立たず……」

魔王「……」

魔王「……」ニヤッ

魔物「え?」

魔王「ククク……そうか。あの賢者がのこのこ戻ってきたか」

魔物「魔王様……?」

魔王「ククク……なるほど。あいつを利用すれば……ククク」

魔物「あの……一体?」

魔王「ご苦労」スパッ

魔物「ガッ……!」バタッ

魔物「」

魔王「……勇者なんざいつでも狩れる。後回しだ」

魔王「感謝しろ。人間ども」

魔王「俺が地上の支配者を引き籠らせてやるからよぉ」

魔王「ククク……」

魔王「……しかし妙なのはこの魔物……」

魔盗賊「」

魔王「俺の洗脳の効きが悪かった……わざわざ呪いをかける羽目になるとは……」

魔盗賊「」

魔王「破邪か……オーブを持つ者がこの近くにもいるということか……?」

魔王「……まあ今はそんなことどうでもいい。目が覚めたら勝手に暴れていろ。ククク」バッ

バサッバサッ

終わります

>>453
わざわざありがとうございます
ファラオみたいに原作に名前だけ出てくる人も含めればオリジナルキャラはほとんどいません

ありがとうございました

──────

────

──


魔盗賊「……」パチリ

魔盗賊「……行ったか……」

魔盗賊「くそ……痛え……」 ズキズキ

魔盗賊「あいつ……簡単に仲間を殺しやがったな……」チラッ

魔物「」

魔盗賊「酷えことしやがる……あれが魔王か……」

魔盗賊「まさかこんな街中にいるなんて誰も思わねえよ…… 」

魔盗賊「あいつのせいで俺の頭が魔物化していたのか……くそ」

魔盗賊「呪いをかけたとか言っていたな……俺は一体どうなっちまうんだ……?」

魔盗賊「……だがそれより」

魔盗賊「魔王も勇者ってやつを探している……あの女に教えねえと……勇者を探したら危険な目に遭うってこと」

ピィー……

魔盗賊「あっ……小魔物……大丈夫だったか?」

小魔物『うん、魔盗っちゃんが咄嗟に隠してくれたから……』ヌッ

魔盗賊「よかった……悪かったな。無理矢理袋の中に押し込んじまって……うっ」

小魔物『怪我しているよ!大丈夫!?』

魔盗賊「……結構やばい……」

小魔物『あわわ大変だ!回復呪文!』キュイイン

魔盗賊「ありがとよ……だが傷が深い……お前の回復呪文でも……」

小魔物『そんな……』

魔盗賊「頼む。俺は住み処に向かう……お前は後であの女を連れてきてくれないか……?」

小魔物『そんなことより怪我をなんとかしないと!』



「うわああ!魔物だあ!」

魔盗賊「!?」

小魔物『に、人間!?』


「誰か来てくれ!魔物に人が襲われているぞ!」


小魔物『え?』

魔盗賊「しまった……!早く行ってくれ!」

小魔物『魔盗っちゃんを放っておけないよ!』

魔盗賊「今の人間は俺がお前に襲われていると思ったんだろう。俺は人間のふりしてりゃ切り抜けられる。だがお前がいたら殺されちまうぞ」

小魔物『そんな状態で切り抜けるなんて無理だよー!』


「こっちだ!早く!」


魔盗賊「俺を信じろ!行け!」

小魔物『うう……あの女の人連れてくる!あの人になんとかしてもらうから!』ダッ

魔盗賊「……頼んだぜ……小魔物」

──────

────

──

宿屋前


小魔物『はあ……はあ……たしかこの宿屋に泊まっているはず』

小魔物『どうやって入ろう……』

小魔物『せめてどの部屋かわかれば……よおし』

ピョーン

ガシッ

小魔物『こうして壁によじ登って一部屋ずつ覗いていこう』

──────

────

──


ヨジヨジ

チラッ

小魔物『……いない』

ヨジヨジ

チラッ

小魔物『……いない』

ヨジヨジ

チラッ

小魔物『……いた!あの人だ!』

小魔物『ってもう寝ているよ!早いよ!起きてよー!』コンコン

小魔物『誰も来ないって思っていたのかな……』コンコン

小魔物『僕らが来るって約束していたじゃん……信用されてないな。主に魔盗っちゃん……』コンコン

小魔物『……』

小魔物『起きてよー!』ガンガン

小魔物『わーん!』ガンガン

小魔物『窓を壊したいけど僕の力じゃ無理だよー!』ガンガン

小魔物『はあ……はあ……』

小魔物『こうなったら仕方ない……』

小魔物『ゴメンよ魔盗っちゃん、夜が明けるまで待っていてね』

小魔物『zzz』

終わります


小魔物のせいで緊迫感がww
>>453は全く記憶になかった
よっぽどドラクエ好きじゃないと覚えてないだろww

──────

────

──


情報屋「下っ端は本当は城に仕えている侍女なんだ」

勇者「なに?」

情報屋「僕が城を抜け出て、リーダーと再び調査を始めていたときに街でたまたま会ったんだ」

勇者「……なぜ侍女である彼女が街中に?」

情報屋「僕を見つけるまで帰ってこないようお母様に言われていたみたい」

勇者「城の侍女を……しかもたった一人でだと?」

情報屋「うん。城の中で僕と一番仲がよかったって理由で街に出されたんだ。可哀想に一人で彷徨っていた。居たたまれなくなって話しかけてしまったよ」

勇者「……」

情報屋「それからその話を聞いて、どうしようもないから無理矢理仲間に引き入れちゃったんだ」

勇者「そうだったのか……」

情報屋「まあ彼女は情報屋のスキルも知識もないからほとんど雑用しかやらせていないけどね」

情報屋「お母様はこうなることを予期していたのかもしれない」

勇者「……」

情報屋「でなきゃあまりに不自然だよ。でも下っ端には監視も付いていないってファラオ王が確認済みだし……何を考えているのやら」

勇者「……」

情報屋「僕がなんで城を出たかは知らないはずだし……」

勇者「……君の支えになるよう仕向けていたのではないか?」

情報屋「え?」

勇者「親とは子の考えが全てわからなくとも、それを影から応援するものだ」

情報屋「……」

勇者「女王様は君のことを信用しているのだろう」

情報屋「……はは。あなたに言われたら信じるしかないね」

勇者「ところでリーダーはなぜこの一筋縄ではいかない計画……ファラオ王に協力しているのだ?」

情報屋「ああ、最初はただの興味本位で付き合ってくれていたんだ」

勇者「……最初は?」

情報屋「でも、僕がファラオ王を味方につけてからは興味本位じゃ済まなくなったみたい」

勇者「なに?」

情報屋「リーダーもファラオ王に教えてもらいたい情報があったからここまで協力してくれている」

勇者「そうなのか……彼自身も魔物に対して思うことがあったようだが」

情報屋「うん。リーダーにもまた事情はあるんだよ」

勇者「……む?」

情報屋「どうしたの……?あっ」


魔盗賊「はあ……はあ……」ヨロヨロ


情報屋「あれは……」


魔盗賊「し、しまった……!こんなところに人が……」


勇者「人間……?いや違う。あれは───」

情報屋「待って。彼は……」タッタッタッ

魔盗賊「お、お前は……地下の情報屋……?」

情報屋「魔盗っちゃんじゃないか。どうしたの?」

勇者「なに?」

魔盗賊「う……」フラッ

バタッ

魔盗賊「」

情報屋「ちょっと……うわ、怪我しているじゃないか!」

勇者「何をしている……?そいつは魔物ではないのか?」

情報屋「彼は普通の魔物とは違うんだ」

勇者「なんだと?」

情報屋「人間のふりをして、人間と共存しようとしている。悪い魔物じゃないんだ」

勇者「そんな話が……」

猫「にゃーん」ヒョコヒョコ

勇者「む?」

魔盗賊「」

猫「にゃーん」スリスリ

魔盗賊「」

勇者「……」

情報屋「はは。こいつにはわかっているんだよ。彼が悪いやつじゃないってこと」

勇者「……」

情報屋「詳しいことは後で話す。誰かに見られたらまずいからとりあえずアジトに連れて帰ろう」

勇者「……」

終わります

>>472
なぜか印象的だったので覚えていました
そこまでマニアではないです

ありがとうございました

──────

────

──

アジト


リーダー「お、おい!そいつは……!」

魔盗賊「」

情報屋「外で会ったんだ。怪我していてすぐ気を失っちゃったけど」

魔盗賊「」

リーダー「なんでこんなことに……」

勇者「……」

リーダー「……すまねえな。魔物を連れて帰るなんて勇者にとっちゃ苦痛だったろう」

勇者「説明してくれ。そうでないと魔物の治療などできんぞ」

リーダー「……」

情報屋「僕らは彼を寝室に連れていく。行こう」

下っ端「あ……はい」

勇者「情報屋の正体も目的も聞いた。聞いた上で私は協力すると決めた。もう何も隠すことはないだろう」

リーダー「……わかった」

勇者「……」

リーダー「……あいつは魔物じゃないんだ」

勇者「なに?」

リーダー「元々人間で……俺の弟だ」

勇者「!?」

リーダー「だがあいつは人間だった頃を何も覚えていない。魔物となったことで記憶もなくなっちまったらしい」

勇者「……」

リーダー「それでも人間の心だけはそのままなんだ。人間に扮して、馴染もうと街にもしょっちゅう現れる」

勇者「……」

リーダー「俺たちは……今は情報屋と客の関係で顔見知りということになっている」

勇者「……なぜ魔物に?」

リーダー「ピラミッドの呪いだよ」

勇者「!?」

リーダー「俺はそれを解きたいと思っている」

勇者「しかしあの場所で魔物となったならば……」

リーダー「……」

勇者「命を落としたということではないのか?呪いを解いてしまえば……」

リーダー「……あいつは生きたまま魔物になったんだ」

勇者「な……」

リーダー「他の魔物化した人間をピラミッドで見てきたろ?あいつとは何もかも違うはずだ」

勇者「……一体何があったのだ?」

リーダー「昔、俺たちは兄弟二人で暮らしていた。情報屋でもなんでもない一般人だった」

リーダー「あの頃は生活に苦労して、周りに借金をつくってばかりだった」

リーダー「もうどうしようもないくらいに首が回らなくなったとき、弟は地下の闇のクエストを受けた」

リーダー「……俺はそれを知らなかった」

勇者「……クエストの内容は?」

リーダー「地下の格闘場で必要となる魔物は世界各地から毎日大量に捕獲されている。ただそれには莫大な資金がかかり、何より危険が伴う」

勇者「まさか魔物の捕獲を?」

リーダー「いや……地下の組織は効率よく魔物を集めるために……」

勇者「……」

リーダー「人間を魔物に改造する計画を立てた」

勇者「!?」

リーダー「それはピラミッドの呪いを利用するというもの」

勇者「人の手によって……魔物にされたのか?」

リーダー「ああ」

勇者「愚かな……」

リーダー「人間の底を舐めない方がいいぜ」

勇者「……魔物同士を戦わせるまではわかる。見世物にするのも魔物に対して恨みがある者たちには必要な処置なのかもしれない」

リーダー「……」

勇者「だがそのために人間を魔物にする?どういう理屈だ!」

リーダー「……」

勇者「そんなことまでして行う格闘場などというものに、一体何の意味があるというのだ……!」

リーダー「理屈も意味もねえよ。欲望のまま人間がとった行動。それを積み重ねた結果だ」

勇者「……」

リーダー「人間を生きたまま魔物にする方法は王家の秘法として存在していた」

リーダー「それを知った連中は、早速弟を実験体にした」

リーダー「詳しいやり方はわからないが、その人間が丁度入る大きさの棺桶に入れ、そのままピラミッドの人柱として埋めるとかなんとか……」

リーダー「だが実験は……結果を待たずして、それを行ったやつらがピラミッドの魔物に殺された」

リーダー「危険性が高いと判断され、結局その計画自体闇に葬り去られた」

リーダー「弟は一人……暗闇の中取り残され、何日も過ごした……」

リーダー「俺が知ったのはそのかなり後でだ。情報屋になり、あいつの行方を探していた時だ」

リーダー「幸か不幸か実験は成功していた。あいつは魔物として目覚め、それらしい生活を送っていた」

リーダー「街にもよく現れるから見つけるのは簡単だった。人間に扮しているのは本能で人間に戻りたいと思っているんだ」

勇者「……」

勇者「……事情はわかった。しかし呪いを解くなど可能なのか?」

リーダー「俺はどんな手を使ってでも弟を元に戻す。方法が見つからなかったら魔法使いにでも転職して、強力な魔法でピラミッドを破壊するなんて夢みたいなことも考えた」

勇者「……」

リーダー「でもそんな真似しなくて済みそうだ」

勇者「……」

リーダー「ファラオ王がいる。ファラオ王ならピラミッドの呪いを解いてくれると思ったんだ」

勇者「……」

リーダー「そのために計画に協力している。それが俺の全てだ」

勇者「……」

終わります
待ってくれている人
ありがとうございました


エジプト神話思い出した

リーダー「俺の部屋にあったベッドは弟のものだった」

リーダー「俺が情報屋になってこのアジトに住み始めた時、弟の私物も全部運んだ。いつ、あいつが人間に戻ってもいいように」

勇者「……」

リーダー「これ以上辛い思いをさせたくないんだ」

勇者「……」

リーダー「だから頼む。あいつの怪我を治してやってくれねえか」

勇者「……」

──────

────

──

リーダーの部屋


魔盗賊「……」パチリ

魔盗賊「ここは……?」

魔盗賊「痛っ……!」ズキッ

魔盗賊「そうか……俺はたしか街でやられて……どうしたんだっけ?」

情報屋「おはよう。魔盗っちゃん」

魔盗賊「!?」ビクッ

下っ端「ご無事のようで良かったです」

猫「にゃーん」

魔盗賊「情報屋……?そうか、ここはお前らのアジトか」

情報屋「そうだよ。僕ら以外の人をここに入れるなんて滅多にないんだから感謝してよね」

魔盗賊「そ、そうなのか。すまねえ……って人!?」

情報屋「なに?」

魔盗賊「い、いや。なんでもない……」

魔盗賊(危ねえ……俺が魔物だってバレてなかったか。そりゃそうだよな。んなことバレてたら助けてくれるわけねえし……)

魔盗賊(しかしボロっちいベッドなのにやけに寝心地がいいな)

ガチャ

リーダー「お、起きていたか」

魔盗賊「……リーダーか。悪かったな。赤の他人である俺をお前らのアジトにまで連れてきてもらっちまって」

情報屋「……」

下っ端「……」

リーダー「いいってことよ。それより怪我してんだよな?この人が治してくれるってよ」

勇者「……」

魔盗賊「誰だ?見ない顔だな」

リーダー「回復呪文の得意な俺の知り合いだ」

勇者「……」

魔盗賊「へえ、そうなのか。かなり厳ついが人は見かけによらないもんだな」

リーダー「ああ……まったくな」

魔盗賊「じゃあすまねえがよろしく……」

猫「!?」ビクッ

下っ端「猫ちゃん?」

猫「フシュー!フシュー!」

情報屋「どうしたの?」

下っ端「わかりません……急にいきり立って……」

猫「にゃー!」バッ

下っ端「あっ」

魔盗賊「……」

猫「にゃー!」ガリッ

魔盗賊「……」ツー

リーダー「おい!?何してんだ!?」

下っ端「さっきまで大人しかったのに……申し訳ありません。ただでさえ重傷なのに」

魔盗賊「……」

リーダー「悪いけどそいつは部屋の外に出しといてくれねえか?」

下っ端「は、はい……行こう、猫ちゃん」

猫「フシュー!フシュー!」

下っ端「怖い……」

魔盗賊「ハア……ハア……」

情報屋「魔盗っちゃん、痛むの?」

猫「フシュー!フシュー!」

魔盗賊「ガ……ガアア……」

勇者「……なに?」

リーダー「どうしたんだ?今のが効いたのか?」

勇者「違う!離れろ!」

魔盗賊「ガアアアア!」バッ

勇者「くっ!」カキィン

リーダー「え……」

情報屋「な……」

猫「フシュー!」

情報屋「なんで……どうしちゃったのさ!?」

魔盗賊「ガアアアア……」

勇者「わからん……が、さっきまでの様子とは明らかに違う」

リーダー「お、おい……しっかりしろって。お前はそんな野蛮なことできるやつじゃ……」

勇者「聞こえていない。おそらく無意識で動いている」

魔盗賊「ガアアアア!」バッ

下っ端「きゃあ!」

情報屋「下っ端、危ない!」

勇者「いかん、標的を変えたか!」

猫「にゃー!」バッ

ガリッ

魔盗賊「ガアッ!」ジリ

猫「フシュー!フシュー!」

情報屋「ほっ……」

下っ端「あ、ありがとう猫ちゃん……あなたは異変に気づいていたのね」

猫「にゃー!」

勇者「よく守ってくれた」

猫「にゃー!」

魔盗賊「ガアアアア……」

勇者「だがどうする……この狭い場所で暴れられては今のようにどうしようもない」

情報屋「なんで……え?うん……そうか」

下っ端「もしかしてファラオ王様ですか?」

情報屋「うん。多分それは、呪いのせいだって」

リーダー「呪いだって!?」

魔盗賊「ガアアアア……」

勇者「……」

情報屋「ピラミッドのものとは違う……その傷口から強力な邪気を感じるって」

魔盗賊「ガアアアア……」

リーダー「じゃあ何者かに傷つけられた挙げ句……呪いまでかけられたってのかよ……!」

魔盗賊「ガアアアア……」ジリ

勇者「とにかくここにいては危険だ。黄金の爪を貸してくれ。街の外まで誘き出す」

情報屋「ピラミッドへ行ったときの通路を使って!」ポイッ

勇者「わかった」ガシッ

魔盗賊「ガアアアア!」

リーダー「頼む、そいつは殺さないでくれ!」

勇者「……ああ」ダッ

終わります

>>494
ちょっとだけモチーフにしています
詳しくないのでちょっとだけです

ありがとうございました

──────

────

──

街の外


タッタッタッ

魔盗賊「ガアアアア!」

勇者「ここまで来ればいいだろう。黄金の爪を放さなければ他の魔物が寄ってきてしまう」ポイッ

ドサッ

勇者「さて……」

魔盗賊「ガアアアア……」

勇者「どうする」

魔盗賊「ガ……うう……」ヨロッ

勇者「む?」

魔盗賊「うぐ……はあ……はあ……俺は……一体?」

勇者「正気に戻ったのか」

魔盗賊「……これが……あいつの言っていた……呪いか……」

勇者「なに?」

魔盗賊「まだかけられたばかりだから……意識が残っているのか……?でも段々自分が自分でなくなる感覚が……」

勇者「あいつとは何者だ?」

魔盗賊「……ああ……あんたはたしかリーダーの知り合いの……すまなかったな……被害はなかったか……?」

勇者「質問に答えてくれ。その問題を解決しなければまた同じことが起こりうる。人間を襲うようなことになれば、今度はお前を斬らなくてはならない」

魔盗賊「はは……そうか……俺が魔物だってバレちまったか……」

勇者「……」

魔盗賊「情報屋の連中……いいやつらだったのにな……もう会うこともできねえや……」

勇者「……そんなことはない」

魔盗賊「もう解決できるわけねえんだ……」

勇者「なぜだ?」

魔盗賊「俺は……魔王に呪いをかけられたんだ」

勇者「!?」

勇者「まさか魔王がこの近くに……?」

魔盗賊「勇者ってやつを探していたらしいが……別の用件が入ったらしくて……帰っちまったがな」

勇者「……そうか」

魔盗賊「俺を街で暴れさせて……勇者を誘き出そうとしやがったんだ……」

勇者「……」

魔盗賊「なのに俺のことは放っておいて帰ったんだ……ちくしょう……どこまでもバカにしやがって……!」

勇者「……」

魔盗賊「俺はもう……助からない……ただの野獣になるんだ」

勇者「……私が呪いを解いてみせる」

魔盗賊「気持ちだけ有り難く受け取っておくよ……いくらすごい回復呪文の使い手でも……魔王の呪いなんか解けやしないだろ……」

勇者「私は勇者だ」

魔盗賊「!?」

勇者「私の使命は魔王を滅ぼすこと」

魔盗賊「ゆ……勇者だと……?あ……あんたが……」

勇者「それが達成されれば呪いは解けるはずだ」

魔盗賊「そうか……そうだったのか」

勇者「おそらくその呪いは近くに人間がいることで真価を発揮する。だから、魔王討伐までは人間との接触は避けてほしい」

魔盗賊「ああ……当然だろうな」

魔盗賊「ってことは……あんたの仕事は……魔物も殺すってことだろ」

勇者「……」

魔盗賊「なんで俺を殺さない?なんで俺を助けようと……?」

勇者「……リーダーに頼まれた」

魔盗賊「なっ……あいつ、俺が魔物だって知ってもか?」

勇者「ああ」

魔盗賊「なんで……さっぱりわからねえよ」

勇者「それはお前がそれまで生きて、直接問いただせばいい」

魔盗賊「魔王は……とてつもなく危険だ」

勇者「わかっている」

魔盗賊「俺は魔物だが……どうしても勇者であるあんたに……頼みたいことがある」

勇者「……なんだ?」

魔盗賊「ある女があんたを探している……あんたに会うために旅をしている」

勇者「……」

魔盗賊「いいやつなんだ……もし会うことになってもそいつを……危険な目に遭わせないでやってほしい」

勇者「……ああ」

魔盗賊「へへ……ありがとよ……あんたになら任せられそうだ」

勇者「また急がねばならない理由ができたな」

魔盗賊「もう……砂漠の国を離れるのか……?」

勇者「約束があるのでな。ここでの用事が終われば明日にでも西の国へ向かう」

魔盗賊「そうか……あいつにも教えてやらねえと……」

勇者「人のことを気にかける前にまずその怪我だ。治療せねば」

魔盗賊「ああ……助かるよ」

勇者「回復呪文!」キュイーン

魔盗賊「ふう……うっ」

勇者「む?」

魔盗賊「ガアアアア……」

勇者「!?」

魔盗賊「ガアア……くそ……」

勇者「くっ、また効果が現れたか」

魔盗賊「ガアアアア!」バッ

勇者「振り払われた……まずいな。来るか」

魔盗賊「ガアア!」タッタッタッ

勇者「なに?」


タッタッタッ

勇者「逃げただと……?私に襲いかからずに」

勇者「……僅かに理性が残っていたのか」

勇者「……」

勇者「……無事を祈る」

勇者「……」

勇者「……魔王か」

勇者「リーダーの性格上、何をしでかすかわからない」

勇者「魔王の仕業とは教えるべきではないな」

終わります
ありがとうございました

──────

────

──

アジト


勇者「……」ガチャ

下っ端「あ……」

情報屋「おかえり……どうなった?」

勇者「……逃げられて行方不明となった。治療も完全にはできなかった。すまない」

リーダー「……そうか」

勇者「……」

情報屋「街の様子を少し探ってきたんだけど、どうやら騒ぎになっているみたい」

情報屋「街中で魔物が首を切られて死んでいたらしい。あと一緒にいた小さな魔物が逃げたって」

勇者「……」

情報屋「その近くには人がいて、その人もいつの間にかいなくなっていたらしいんだけど、多分それが……」

勇者「……逃げ延びた先で私たちと遭遇したわけか」

リーダー「くそ!一体誰の仕業なんだ!」ガン

勇者「……」

リーダー「いくら相手が魔物でもあそこまでする必要あるのかよ!」ガン

勇者「……」

理樹・佳奈多「「メル友?」」真人・葉留佳「「おう(うん)」」

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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410004413/)

理樹(バスの事故から3ヶ月、

もう雪が降る季節だ。

僕らは悪夢のような出来事から目を覚まし、

今をこうして悠々と過ごしている)

日常系リトバスSSです!

亀更新ですがよろしくお願いします。

情報屋「ファラオ王の話だと、ピラミッドの呪いにかかっている者は他の呪いにかからないはずなんだ」

勇者「……」

情報屋「前にも言ったけど、ピラミッドの呪いは昔に比べて効き目が弱くなっている。でも、その理由以上に強力な呪いのせいなのかもしれない」

勇者「……」

情報屋「何者の仕業かわかる?」

勇者「……わからない。すまない」

情報屋「……そっか」

下っ端「で、でもそのおかげで意識が残されていたんですよね」

リーダー「冗談じゃねえよ。魔物にさえなっていなかったらあんな目に遭わなかったんだ!おかげだなんて言うなよ!」

下っ端「うう……すみません」

情報屋「リーダー、ちょっと落ち着いてよ」

リーダー「……悪い」

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今をこうして悠々と過ごしている)

日常系リトバスSSです!

亀更新ですがよろしくお願いします。

勇者「少しの間だが、外では意識を取り戻していた。最終的には私に襲いかかることなく逃げた。おそらく人間を襲うということはないと思う」

リーダー「……そうか」

勇者「……この件は私に任せてくれ。術者はおそらく君たちの太刀打ちできる相手ではない」

リーダー「ということはやっぱり魔物の仕業なのか?」

勇者「ああ、きっと私が仕留めてみせる」

下っ端「こうなってしまうと、勇者様にお願いするしかありませんね」

リーダー「……そうだな」

勇者「そういうわけで、君たちの計画が終わり次第旅立つことにする」

リーダー「ああ……余計な足止めになっちまってすまないな」

勇者「余計などとは思っていない」

情報屋「あなたはそう思っていても旅の邪魔しているのは事実なんだ。リーダー、早く計画のことちゃんと話しておこうよ」

リーダー「そうだったな。計画は明日実行する」

勇者「うむ」

リーダー「助け出す魔物はある一匹」

勇者「一匹……?」

リーダー「ああ、それがファラオ王からの条件だった」

勇者「……」

終わります
ありがとうございました


荒らしはどこでも湧いてるから気にしないでいいよ

リーダー「魔物は普段檻に入れられている。そこから出られる唯一の機会が試合のために格闘場に現れたとき」

情報屋「そいつの出番になったら僕たちも動く」

勇者「具体的に私は何をしたらいい?」

情報屋「その魔物を誘き寄せるために黄金の爪をピラミッドから持ってきたんだ。そのときになるまで僕が持ち、タイミングを見てあなたに渡す」

リーダー「黄金の爪でその魔物を街の外まで誘導してほしいんだ」

勇者「地下には人が大勢いるのだろう?パニックになるのではないか?」

リーダー「その前に俺が煙幕を撒くから魔物が逃げ出したなんて気づかれないさ。煙幕によるパニックは仕方ない」

勇者「……しかし地下を切り抜けたとしても、街の外に出るには街中を通る必要がある。必ず見つかるぞ」

情報屋「大丈夫。格闘場がある大部屋から出ると長い廊下がある。廊下のある地点に僕ら以外誰も知らない隠し通路があるから、そこから連れ出してほしい」

勇者「隠し通路だと?そんなものまで用意してあるのか」

情報屋「そこを通れば街の外まで簡単に行ける」

勇者「地下から街の外まで……?」

情報屋「そうそう井戸からアジトに来るまでの道のりに左右に別れた道があったでしょ?」

勇者「まさか……」

情報屋「片側の扉の向こうがその隠し通路になっているんだよ」

勇者「……それであのとき開けてはならないと言ったのか」

情報屋「隠し通路からあの分かれ道まで行く。そしたら今度は逆の扉からピラミッドに向かった道を使ってくれれば簡単に外まで行けるってわけ」

勇者「驚いた……アジトと格闘場の地下は繋がっていたのか」

情報屋「うん。階数にすると井戸が地下1階、このアジトが地下2階だからね」

勇者「ここまで徹底していたとは」

情報屋「魔盗っちゃんには悪いけど、黄金の爪を使ったいい予行練習になったよね」

リーダー「……そうだな。あの通りに、あの道から外に出てくれたら大丈夫だ」

勇者「しかしまだ問題がある」

リーダー「ん?」

勇者「この作戦ではターゲット以外の魔物も連れ出してしまうのではないか?」

情報屋「ああ……」

勇者「黄金の爪の呪いは周りの魔物を全て呼び寄せるのだろう?多数の魔物を連れ出すとなると、人を巻き込む恐れがある」

情報屋「心配ないよ。格闘場にはターゲットしかいなくなるから」

勇者「なに?」

情報屋「試合が終われば残っているのはそいつだけになる」

勇者「……つまり、勝ち残っているということか?」

情報屋「そう」

勇者「なぜわかる?」

情報屋「簡単だよ。そいつが圧倒的な強さだからさ。今まで負けたことがないんだ」

勇者「……」

情報屋「あ、でもあなたなら多分追いつかれることなく誘導できると思う」

勇者「……尽力する」

リーダー「頼むぜ。あんたしかこの役割をこなせる人がいないんだ」

勇者「それで、その魔物を外に連れ出したらどうすればいいのだ?」

情報屋「……」

リーダー「……」

下っ端「……」

勇者「……」

情報屋「……そのまま野に放してやってほしい」

勇者「……」

終わります

>>527
はい気にしません

ありがとうございました

──────

────

──


リーダー「作戦の概要をまとめておく」



1.リーダーと情報屋はいつも通り地下1階で情報屋の仕事をする。下っ端と猫はやることがないので参加しない。アジトで待機。

2.ターゲットの試合近くになったら何食わぬ顔で地下2階の格闘場へ移動する。

3.隠し通路から勇者も合流する。

4.ターゲットの試合が終わったらリーダーは煙幕を撒き、情報屋は勇者に黄金の爪を渡す。

5.ターゲットが勇者を追い、隠し通路に入ったら二人はその入口を閉め、何食わぬ顔で地下1階に戻る。

6.勇者はそのまま地下道を通り、ターゲットを誘導する。

7.外に出る直前に呪いから解放されるために黄金の爪を放す。

8.ターゲットを外に出したらそのまま野に放つ。

リーダー「以上だ」

情報屋「必ず成功させよう」

下っ端「頑張ってくださいね」

猫「にゃーん」

リーダー「頼むぜ、勇者」

勇者「……ああ、わかった」

これだけです
終わりです
ありがとうございました

──────

────

──

次の日


下っ端「ではお気をつけて」

猫「にゃーん」

情報屋「うん。留守番よろしく」

下っ端「これが終わったら……」

情報屋「わかっているよ。城に戻る」

下っ端「……この生活ともお別れですね」

情報屋「ちょっと寂しいね」

下っ端「……はい」

情報屋「……え?」

勇者「む?」

情報屋「……うん。わかった」

勇者「ファラオ王か?」

情報屋「うん。あなたに星降る腕輪を渡してほしいそうだよ」

勇者「腕輪を?」

情報屋「あなたと話がしたいみたい」スッ

勇者「着ければいいのか?」ガシッ

情報屋「うん」

勇者「……」スッ


『……ふむ。なかなか似合っているぞ』


勇者「!?」

情報屋「聞こえた?」

勇者「ああ、姿は見えないが直接脳内に……これがファラオ王か」

ファラオ『お前と話すのは二度目だな』

勇者「はい。一度ピラミッドでお会いして以来」

ファラオ『ふふ。私はずっとお前をここから見ていたがな』

勇者「そのようで……」

ファラオ『随分畏まっているな。他の勇者とは違うようだ』

勇者「他の?」

ファラオ『いや、なんでもない(まずあの二人は私の存在など眉唾物だったろうからな)』

勇者「なぜ私にこの腕輪を?」

ファラオ『少し力を貸してやろうと思ってな』

勇者「力を?」

ファラオ『無償で働いてもらうからにはこれくらいはな。身体に異変は感じないか?』

勇者「はい……軽くなったような」

ファラオ『お前に憑依することはできないが、星降る腕輪にはちょっとしたおまけの特殊効果がある』

勇者「なるほど。素早さが……」

ファラオ『今までのおよそ2倍は素早く動けるだろう』

勇者「2倍……」

ファラオ『あいつ相手ではお前でも苦労しそうなのでな』

勇者「やはり、その魔物を知っているのですね」

ファラオ『……お前はこう考えているな。格闘場で無敵を誇る魔物を野に帰して大丈夫だろうか、と』

勇者「……はい」

ファラオ『心配するな。私がなんとかしてみせる』

勇者「なんとかと言われましても幽体のあなたでは……」

ファラオ『心配するな』

勇者「……」

情報屋「話は終わり?」

勇者「あ、ああ……」

情報屋「腕輪の効果、どう?」

勇者「素晴らしい力だ」

情報屋「それなら間違いなくうまくいくよね」

勇者「ああ。ファラオ王の身体能力はこの腕輪の力もあったのだな」

情報屋「気に入った?」

勇者「勿論だ。有り難く使わせてもらう」

情報屋「……うん」

リーダー「じゃあ俺たちは先に行っている。なるべく普段通りにしていたいからな」

勇者「ああ、私も後から行く。現地で会おう」

終わります


最近更新が多くて嬉しい

──────

────

──

宿屋前


小魔物『わーん、寝坊しちゃったよー!』

小魔物『起きたらもうあの人いなくなってるよー!』

小魔物『魔盗っちゃんごめんよー!』

小魔物『嘆いている場合じゃないよー!』

小魔物『急いで探しに行かないと!』バッ

キョロキョロ

サッ

小魔物『ふう……』

キョロキョロ

サッ

小魔物『ふう……』

小魔物『人の目から隠れて探すの大変だよー!』

小魔物『街の中じゃ広すぎて探しようがないよー!』


ザワザワ

「見ろよあの女。踊り子か?それとも立派な剣を背負っているところを見ると旅人か?」

「そうだろうな。砂漠の国には初めて来たんだろう。街の中だと思ってここの日差しを舐めていたな」

「それにしたってあの格好は……ありがたや、ありがたや」

「しかも行儀悪くジュース飲みながら歩いて……あ、こぼした」

「そして喚き出した。見て下さいと言わんばかりに目立ってんな」

小魔物『……』

小魔物『いたよー!』

小魔物『なんて格好だよ!でもおかげで見つけられたよ!ラッキー!』

小魔物『ここじゃ目立つけど……これ以上魔盗っちゃんを待たせたくない!行こう!』

小魔物『……と思ったけど怪しい男と建物の中に入って行ったよ!』

小魔物『どうしよう……』

ガシッ

小魔物『えっ!?』

「おいおい、魔物が一匹逃げ出してやがるじゃねえか」

「す、すみません……でもこんな魔物捕まえていたっけな……?」

小魔物『やばい!見つかっちゃった!殺される!』ジタバタ

「暴れんな。これから楽しい所へ連れて行ってやるからよ」

小魔物『えっ?』

「今度は逃げられるんじゃねえぞ」

「は、はい!」

小魔物『楽しい所?わーい』

まだやってたのかこのスレ

──────

────

──

建物内


小魔物『……じゃないよ!こんなことしている場合じゃないんだよ!』

小魔物『わーん、建物の中の地下に連れてこられたよー!』

小魔物『そしたら檻の中に入れられちゃったよー』ガンガン

小魔物『殺されなかっただけありがたく思うよー!』ガンガン

?『うるさいぞガキ!』

小魔物『ごめんなさい!』

?『……素直だな』

小魔物『あの……あなたは?』

?『俺は大魔物だ……ここの主みたいなもんだ』

小魔物『主……?あ、よく見たらこのやけに広い檻の中には沢山魔物がいる……』キョロキョロ

大魔物『ここだけじゃない。同じような檻がいくつもある』

小魔物『ええ?なんで檻の中に?』

大魔物『ここにいるやつらは皆人間に飼われている』

小魔物『ここにいるやつらは皆人間に飼われているんですか!?』

大魔物『お、おう……』

小魔物『いつからそんなに魔物と人間が仲良くなったんですか!?』

大魔物『……仲良くしているように見えるか?』

小魔物『わーい、魔盗っちゃんに教えてあげたらきっと喜ぶぞー』

大魔物『聞けよ!』

小魔物『はっ!?魔盗っちゃん忘れてた!だからこんなことしている場合じゃないんだよー!』ガンガン

ガシッ

小魔物『!?』

大魔物『優しく教えてあげているんだから話はちゃんと聞こうな……?』ギュウウ

小魔物『ぐええ……聞きます……放して……』

大魔物『飼われているということは決して共存しているというわけではない』ギュウウ

小魔物『ぐええ……』

大魔物『一匹ずつ鎖で繋がれているのは見えるだろう?』ギュウウ

小魔物『ぐええ……』

大魔物『お前のように弱っちい魔物だけは鎖も必要なく、牢の中で自由に動けるから羨ましい限りだな』ギュウウ

小魔物『話さなくていいから……放して……』ガクッ

大魔物『そういうことか……すまんすまん』パッ

──────

────

──

同建物内・地下1階


情報屋「よし、仕事も一区切りついたしそろそろ行こうか」

リーダー「おう……あ、待て。また客が来た」

情報屋「もう、こんなときに。一人くらい放っておいてよくない?ご縁がありませんでしたってことで」

リーダー「ダメだ。俺たちは普段通りにしてアリバイを作らなきゃならないんだ」

情報屋「そうだけど……」

リーダー「この作戦が成功しても、その後バレたら打ち首だ。お前だって立場がまずくなるだろ」

情報屋「そうだね……じゃああのお客が終わったら行こう」

リーダー「あれは女の子か。すげえ格好だな」

情報屋「なに見とれてんのさ。リーダーより大分年下じゃん」

リーダー「み、見とれてなんかいねえって」

情報屋「はあ……こういうときのリーダーは信用できない。僕が行くよ」

リーダー「見とれてねえぞー!」

情報屋(これで……)テクテク

情報屋(情報屋の最後の仕事か……)テクテク

情報屋「……」ピタッ

情報屋「何か知りたいのかい?」

女「おお、本当に来よった」

終わります

>>547
言っているそばからサボり気味でごめんなさい
>>552
長いですね。このスレ内でもきっと完結しないです

ありがとうございました

本編は良く出来ててエキサイティングだったと思うよ

──────

────

──


リーダー「……驚いたな。まさか勇者を探していたなんて」

情報屋「うん……さすがにあの地下まで教えたのはまずかったかな?」

リーダー「あんな若い子じゃすぐ諦めて帰るだろうから心配ないと思うがね」

情報屋「だよね。でもなんで勇者なんか……」

リーダー「さあな。興味本位じゃねえか?」

情報屋「大金払ってまで?それに、魔盗っちゃんの事件も知りたがっていたよ」

リーダー「たしかに気にはなる……が、余計なこと考えていたら作戦に支障が出ちまうからこの辺にしとこうぜ」

情報屋「そうだね……行かなきゃね」

リーダー「……」コクッ

情報屋「……」コクッ

リーダー「……さ、さあて!ちょっと休憩するかな!」

情報屋「こ、この場所を離れるけどご飯食べに行くだけだもんね!」

リーダー「そ、そうだぜ!腹減ったな!い、行こうぜ!」

情報屋(……ナイス演技)グッ

リーダー(これでアリバイは完璧だ)グッ

──────

────

──

地下牢


小魔物『げほっげほっ……安全な場所かと思いきや、この世で一番の危険地帯だった……絶対わざととぼけてたよあいつ……』

大魔物『あいつ?』ギロッ

小魔物『嘘ですごめんなさい!やられたことは忘れます!絞められたことは忘れます!何もしていないのに絞められたことは水に流しますから!』

大魔物『……仕方ないだろう。お前ムカつくから』

小魔物『酷いや!初対面だよ!』

大魔物『ここで長く生きていきたいなら俺の言うことは聞いておいた方がいい……』

小魔物『わあ、主っぽい!』

大魔物『ふ……そうか?』

小魔物『新入りには毎回同じ台詞を言っているんですか!?』

大魔物『え?あ、その……なんだ、まあ……うん……』

小魔物『いちいちよくやりますね!』

大魔物『ああああああああ!』ギュウウ

小魔物『ぐええ……』

小魔物『』 ガクッ

?『はっはっは!あんたがそこまでペースを狂わされるところなんて初めて見たぜ!』

大魔物『ふん……』

?『おい、大丈夫か?起きろ』

小魔物『ぜえ……ぜえ……』

?『せっかく拾った命を何度も捨てようとするなよ』

小魔物『あ、ありがとう……』

?『新入りなのにいきなり牢で殺されたら可哀想だしな。俺は中魔物だ』

小魔物『わーい、優しい魔物がいてよかったー!てっきり大魔物さんみたいな魔物ばかりだと思ったよ!』

大魔物『この野郎!』

小魔物『ごめんなさい!』

中魔物『はっはっは!そうそう、そうやって謝っておけば許してくれるからよ』

大魔物『絶対許さない……』ガルル

小魔物『ここはどういうところなの?』

中魔物『んー、そうだな……ここは世界各地から集められた魔物が暮らしているんだ』

小魔物『へえー、面白そう。皆よろしくね!僕は小魔物!』

凶魔物『あ?』ギロッ

小魔物『ぴぎゃあ!』ビクッ

中魔物『はっはっは!でも気性の荒い魔物がほとんどだ』

小魔物『は、早く言ってよ!やっぱりあんなのばっかりじゃん!』

大魔物『あんなのって言うな!』

中魔物『お前の行動が破天荒なんだって。ここにいる魔物でお前みたいに仲良くやっていこうなんて思うやつはいない』

小魔物『なんで?仲良くやった方が楽しいのに』

中魔物『……ここで暮らしていればいずれわかるよ』

小魔物『僕は行かなきゃいけないところがあるんだ。ずっとここにはいられないんだよ』

中魔物『皆そう思っている。でもここから出ることは許されない』

小魔物『えー、困るよ……こうしている間にも魔盗っちゃんが……』

中魔物『誰かが待っているのか?』

小魔物『うん、友達だよ。でも死んじゃいそうな怪我しているんだ。友達だから助けてあげなきゃ』

中魔物『そうか……』

凶魔物『ぎゃっはっは!何が友達だ!バカらしい!』

小魔物『なんだと!?許せねえ!』

凶魔物『やんのかコラァ!』

小魔物『やんねえよ怖ぁ!』

中魔物『やめとけ……え?ああ、やめとけ……』

小魔物『どうしよう……どうやったら出られるのかな?ねえ、大魔物さん』

大魔物『……』

小魔物『うわ、無視とか……』

中魔物『自分の話は聞いてもらえなかったから拗ねてんだよ』

小魔物『うわ、萌えねえ……』

大魔物『うがああああ!』

小魔物『ごめんなさい!』

大魔物『……ちっ』

終わります

>>561
あっちはあっちで一つの物語として読んでもらえたら幸いです
こっちでは書きたいこと山のようにあるので冗長になりがちです

ありがとうございました

中魔物『ああ見えて優しいんだぜ。主がいるから皆まだ生きていられる』

大魔物『……』

小魔物『どういうこと?』

中魔物『ここには気性の荒い魔物ばかりだと言ったろ?そんな連中は脱走して暴動を起こしたこともあるらしい』

小魔物『そうかー、大人しくしている必要ないもんね。暴動しようよ!』

中魔物『レジャーにでも行くつもりか?結果その連中は皆殺し。この街どころか地下からも出られなかったらしいが……やるか?』

小魔物『ぴゃあ……』フルフル

中魔物『友達のことは諦めた方がいい』

小魔物『嫌だよ!魔盗っちゃんに会いたいよ!』

中魔物『……だったら別の方法を考えな。何にしてもここを脱走することは死を意味するが』

小魔物『うう……あう……』

中魔物『主はそんな悲劇が二度と起こらないように魔物を統率してくれているのさ』

小魔物『ん?するってえとあれかい?大魔物さんはその暴動に参加していたってこと?』

中魔物『当然ながら経験しているからできることだ』

小魔物『さっき全滅したって……なんでここにいるの?幽霊!?ぴぎゃああ!』

中魔物『魔物が幽霊にビビるなよ……そもそも生きているから安心しろ』

小魔物『じゃあなんで生きているの?』

中魔物『……一番人気があるから』

小魔物『嘘だー』

大魔物『があああああ!うおおおおお!』

小魔物『ごめんなさい!』

大魔物『はあ……はあ……』

中魔物『遊んでやるな。そろそろ可哀想だろ』

小魔物『人気って誰から?』

中魔物『それは……』

大魔物『……』

凶魔物『人間様に決まってんだろ。大事なお客様だ』

小魔物『人間……?客……?』

凶魔物『俺たちは人間を楽しませるためだけに生かされてんだよ!こんな地獄があるか?』

中魔物『おい、落ち着け』

凶魔物『俺はもう我慢が限界まできてんだ!暴動?面白えじゃねえか!なんだったら起こしてみせようか!?』

小魔物『え……ダメだよ。殺されるんでしょ?』

凶魔物『ふん!俺はこんな場所に居続けるくらいなら殺されても構わねえ』

ザワザワ

中魔物『落ち着けって』

凶魔物『そうなる前に人間に一泡吹かせてやる』

ザワザワ

中魔物『おい……!』

凶魔物『皆もそうだろ?どうだ、派手に暴れてやらねえか!?』







大魔物『黙れ』

凶魔物『!』ビクッ

小魔物『!』ビクッ

中魔物『!』ビクッ

魔物たち『『『!』』』ビクッ

大魔物『……』

凶魔物『ちっ……!』タラー

中魔物『……あれが主だ。普段は優しいけど、ああやって俺たちを守ってくれている。本気で怒ると怖いんだぞ』

大魔物『……ふん』

中魔物『まあ鎖で繋がれているから現実的に暴動なんて起こしようもないが……』

小魔物『あ……あわ……あわ……』

中魔物『え?』

小魔物『』ガクッ

中魔物『……』

小魔物『』

中魔物『……そこまでビビるなよ!』

終わります
ありがとうございました

コツコツコツ


中魔物『あ……』

大魔物『……来たか』

ガチャ

牢番「うるせえな。何騒いでやがる」

魔物たち『『『……』』』ビクッ

牢番「大人しくしてねえともっと強い薬を打ってもらうことになるぜ」

魔物たち『『『……』』』ビクビク

牢番「ええと……次は……凶魔物か」

凶魔物『!?』

牢番「あれか……ったく、魔物なんて見分けがつかねえな。それだけいくらでも替えがきくってことだが」

凶魔物『てめえ!』

牢番「何暴れようとしてんだよ。鎖に繋がれている分際でよ」

凶魔物『くそ!』ジャラ

牢番「ほら、大人しくしてろ」プスッ

凶魔物『く……そ……』ガクッ

凶魔物『』

牢番「……寝たか。じゃあ鎖を外して……」ガチャ

凶魔物『』 ズルズル

牢番「次は───」

──────

────

──


小魔物『うーん……』パチリ

中魔物『やっと起きたか』

小魔物『……お腹すいた。パンちょうだい』

中魔物『ねえよ』

小魔物『あれ?魔盗っちゃんじゃない!誰!?』

中魔物『俺は中魔物だ。初めまして』

小魔物『…………あ。やだなあ、冗談だよ』

中魔物『思い出すのに時間がかかったな』

小魔物『わ、忘れるわけないじゃん友達を!』

中魔物『……友達……?』

小魔物『そうだよ。僕らは友達さ!ハハッ』

中魔物『……』

小魔物『心配しなくていいよ♪もう悲しまないで♪大好きな友達だからー♪』

中魔物『やめろ……』

小魔物『さあ笑顔を───』

中魔物『やめるんだ!』

小魔物『えっ』ビクッ

中魔物『……』

小魔物『……』

中魔物『……すまん』

大魔物『……』

小魔物『僕悪いことしたのかな……?』

大魔物『……歌以外は気にするな』

小魔物『でも……あれ?さっき僕を苛めた魔物がいないよ?』

大魔物『……』

小魔物『ねえねえいないよ?』


ズルズル

小魔物『おや?』

ガチャ

牢番「運のいい野郎だ。気性が荒いだけあって勝ち残りやがったか」ギィ

ズルズル

凶魔物『う……ぐぐ……』

小魔物『あっ!』

牢番「次に呼ばれるまでには元気になっておけよ。くっくっく」ガシャン

小魔物『な……なんでこんなボロボロに……?』

牢番「ええと……次は……あいつか」

テクテク

プスッ

ガシャン

ズルズル

小魔物『な、何やってるだよ……!』

牢番「さて行くか」

魔物『』ズルズル

小魔物『どこ連れて行くんだよ!そいつもボロボロにしようってのか!?』ピョーン

牢番「なんだ?こんなやつリストにいたか?」

小魔物『この野郎!放してやれよ!』ガブッ

牢番「邪魔すんな!」バキッ

小魔物『うげぎゃあおえっ!』バタッ

牢番「鎖に繋がれていないってことは最下級クラスか。しかしリストには載っていない……間違えて入れられたか」

小魔物『』ピクピク

牢番「……ならば問題ない。殺すか」

大魔物『!?』

牢番「どんなに小さくとも危険分子は早めに処分しておくべきだからな」スチャ

大魔物『ぐおおおおお!』

牢番「うわ!どうした!?」ビクッ

大魔物『小魔物から離れろ!』

牢番「お前の出番はまだだって、興奮するなよ……どうせ鎖で動けねえんだ」

大魔物『ぐっ……!』ジャラ

牢番「さっさと始末して行かないと」

小魔物『』ピクピク

大魔物『やめろ!』

牢番「死ね」


メリメリメリ


牢番「……ん?」

バチィン

中魔物『があああああ!』バチィン

牢番「く、鎖を引きちぎった!?」

中魔物『はあ……はあ……』

大魔物『お、お前……』

終わります

牢番「な、なんなんだよお前ら!お、落ち着け……そうか、このチビの心配してんのか。わかったよ、こいつには手を出さねえから」

中魔物『はあ……はあ……』ギロッ

牢番「は、離れるからそんなに警戒するなって、ほら」ササッ

中魔物『……おい小魔物、しっかりしろ!』

小魔物『』ピクピク

中魔物『生きているか……よかった』

牢番「……」ソロォ

大魔物『!?』

牢番「……隙ありだ」

大魔物『後ろだ!中魔物!』

中魔物『……ありがとな、主』

大魔物『なっ……!』

プスッ

中魔物「ガアアア……」

バタッ

牢番「危ねえ……暴れられる前に眠らせられたか」

中魔物「ガウウウ……」

大魔物「グギャアアア」

牢番「へっ、魔物のくせに友情ごっこか」

中魔物「ガウウウ……」

牢番「だが鎖を引きちぎるほどのパワーは予想外だったな。よし、お前はこのまま二つ上のランクに参加させてやる。大穴としてな」

中魔物「ガウウ……」ガクッ

大魔物「……」

中魔物『』

牢番「……よし、寝たか」

中魔物『』ズルズル

大魔物『……』ギロッ

牢番「わ、わかってるよ。チビには手を出さねえからそんなに睨むなって」

大魔物『……』

牢番「ふう……薬よりも設備を強化してもらわないとな」

中魔物『』ズルズル

ガシャン

──────

────

──


小魔物『うーん……』パチリ

大魔物『……』

小魔物『パンまだあ?』

大魔物『……それはもう諦めろ』

小魔物『ひっ!誰…………大魔物さん!』

大魔物『覚えていてもらえて光栄だ』

小魔物『……僕、人間にのされちゃったんだ』

大魔物『見ていたよ』

小魔物『一体なんであんなこと……あっ、今度は中魔物がいない!』

大魔物『……』

小魔物『どこへ連れて行かれたの?』

凶魔物『……うう……』

小魔物『あっ!』

凶魔物『』ガクッ

小魔物『いけない!回復呪文!』キュイイン

凶魔物『』

小魔物『ふう、命は無事だよ。あとは、覚醒呪文!』キュイイン

凶魔物『……』パチリ

大魔物『そんなことができたのか……しかし無理に起こすことはなかったろう。寝かせておいてやればよかったものを』

小魔物『うぎゃ、ゴメン……僕必死で……』

凶魔物『……』

大魔物『まあ怪我を治してもらっただけ良しとするんだな。礼でも言っておけよ』

凶魔物『……』

小魔物『そんなのいいよ。それより随分酷いことするよね。人間がやったの?』

凶魔物『……格闘場だ』

小魔物『えっ?』

凶魔物『ここは人間が作り出した格闘場。それも人間が直接俺たち魔物とやり合うわけじゃない。魔物同士が戦う場だ』

小魔物『なんだよそれ……なんでそんなこと』

凶魔物『人間の娯楽のため。それだけだ』

小魔物『そんなことのためになんで僕たちがボロボロにならなくちゃいけないの?』

凶魔物『お前も身に染みてわかっているだろ。抵抗したら殺される』

小魔物『うん……』ブルブル

凶魔物『順番が来たら妙な薬を打たれ、強制的に眠らされる』

小魔物『ゾワッ……』

凶魔物『目が覚めたら極度の興奮状態に陥り……』

小魔物『ゴクリ……』

凶魔物『その場にいる者を殺し、勝ち残らない限り生きる選択肢はない』

小魔物『!?』

凶魔物『さっきまで俺は格闘場で戦ってきた……同じ場所にいた魔物を皆殺しにしてきたんだ』

小魔物『そんな……』

凶魔物『ボロボロになるだけならまだ運がいい方だ。同じ力量の魔物同士を戦わせるため、ずっと勝ち続ける保証はない』

小魔物『……』

凶魔物『いつ死ぬかも、それも誰に殺されるかもわからない。ここで友達なんてつくるのはバカのやることだ』

大魔物『……』

小魔物『それで中魔物もあんなに……』

大魔物『……中魔物も昔はお前と同じような目をしていたよ。力量を問わず、どんな魔物とも仲良くなろうとした』

小魔物『中魔物ならそうするはずだよ』

大魔物『仲良くなれた者もいた。しかし』

小魔物『しかし?』

大魔物『運悪く中魔物とそいつとは同じクラスだった。そしてやつらは戦った』

小魔物『!?』

大魔物『結果は……中魔物が生き残っていた事実が全てだ』

小魔物『そんな……僕そんなこと知らなくて……』

大魔物『仕方ないことだ。あいつだってわかっていた』

小魔物『……中魔物は!?』

大魔物『お前が寝ている間に連れて行かれた』

小魔物『そんな……殺されちゃうかもしれないよ!』

大魔物『あいつも覚悟ができているはずだ。どうしようもない』

小魔物『嫌だよ!友達なのに放っておけないよ!』

大魔物『友達……?』

小魔物『皆友達だよ!』

大魔物『……お前だって殺されるかもしれないんだぞ。そんな小さな身体で何ができる?』

小魔物『わかんない、そんなこと考えられない。中魔物を助けたいとしか思えないんだ』

凶魔物『……』

大魔物『……』

凶魔物『……これだから平和ボケしたガキは』

大魔物『……平和ボケか。まるで自分たちのことを言っているみたいだな』

凶魔物『……』

大魔物『他の者のためにそこまで思うことなど普通はできない。少なくとも俺たちよりは勇気があるようだ』

凶魔物『……』

大魔物『……やってみるか』

小魔物『えっ?』

大魔物『偉そうにここの連中を守るなんて仕事をやってきたつもりだったが……結局俺は何一つ守れなかった』

小魔物『そんなことないよとも言い切れないけど……』

大魔物『おい』

小魔物『大魔物さんにはきっと皆感謝しているよ』

大魔物『……』

凶魔物『照れてんのか?』

大魔物『……ふん。感謝で命が救えるのか』

凶魔物『やっぱり素直じゃねえな』

大魔物『うるさい』

終わります
ありがとうございました

小魔物『でも、うまくいく当てなんてないでしょ……?』

大魔物『小魔物がいれば脱出できるかもしれん』

小魔物『僕?』

大魔物『人間が打つ注射……あれは俺には効かない』

小魔物『えっ?』

大魔物『正確には普通の魔物のように自我を失うほど興奮状態にはならない。ただ、その場で眠くなるだけだ』

凶魔物『な……そうだったのかよ!普通の状態で今まで余裕で勝ってきたのかよ』

小魔物『だったらこれまでも逃走しようと思えばできたんじゃ?』

大魔物『そんな眠気が襲っている状態では無理だ。しかも牢から出たところで、さらに催眠ガスがあちこちで撒かれているような設備だぞ』

小魔物『じゃあどうしようもないじゃん!』

凶魔物『そうか……それでチビを』

小魔物『え?どういうこと?』

凶魔物『あのなあ……お前、俺に使った魔法あるだろ』

小魔物『あ、覚醒呪文で大魔物さんの眠気を消すんだね!』

大魔物『そうだ。俺と一緒にいて魔法をかけ続けろ』

小魔物『でも、催眠ガスがあるなら僕が簡単に眠っちゃうよ。僕こう見えても……お昼寝大好きなんだ……』

凶魔物『……どう見たところで予測可能だな』

大魔物『ここに隠れていればいい』

小魔物『どこ?』

大魔物『……』アーン

小魔物『げっ!口の中かよ』

大魔物『げって言うな!他にないんだからしょうがないだろ!』

コツコツコツ

小魔物『あっ、人間が来たよ!』

ガチャ

ギィ

牢番「ええと次は……メインイベント、大魔物か」

大魔物『!?』

凶魔物『お、おい……』

小魔物『中魔物を連れて帰ってきていない……ってことは……』

大魔物『……殺された……』

小魔物『うわーん!やだよー!せっかく友達になったのに!助けに行こうと思ったのにー!』

大魔物『くそ!』

小魔物『ううっ……うっ……中魔物……』

大魔物『……』チラッ

凶魔物『……』コクッ

大魔物『……作戦は実行する』

小魔物『でも……でも中魔物は……』グスッ

大魔物『この作戦の本質は俺たちが勝つことだ。そして勝つことは俺たちが生きること』

小魔物『僕たちが……生きる』グスッ

大魔物『中魔物からお前に伝言がある』

──────

────

──

少し前


牢番「……隙ありだ」

大魔物『後ろだ!中魔物!』

中魔物『……ありがとな、主』

大魔物『なっ……!』

プスッ

中魔物『ぐうっ……!』

バタッ

牢番「危ねえ……暴れられる前に眠らせられたか」

中魔物『はは……やっぱりこの注射はよく効くな……』

大魔物『お前、なんで……』

中魔物『……わかっているさ……俺なんかが一匹抵抗したところで……ただ皆に迷惑かけちまうだけだって……』

大魔物『……』

中魔物『あんたには色々世話になったからな……そんなことはできない』

大魔物『……バカが。あんな力があったなら最初から……』

中魔物『へへ……世話ついでに最後の頼みを聞いてくれ』

大魔物『……言え』

中魔物『小魔物に伝えてくれ……』






友達になってくれてありがとう……外の友達に会えるといいな……

──────

────

──

現在


小魔物『!?』

大魔物『まるでお前がここから出ることを……俺たちが協力することをわかっていたような言葉だな』

小魔物『そっか……やっぱり中魔物だって本心は……』

大魔物『俺たちに遺志を託したんだ』

小魔物『中魔物……』

凶魔物『へっ、あの野郎……一番大変な仕事を俺たちに押し付けやがって』

大魔物『こうなったらもう俺たち次第ってことだ』

終わります
ありがとうございました

牢番「ぎゃーぎゃーうるせえぞ。お前らの番は終わったんだから大人しくしていろ」

大魔物『……』

牢番「さて大魔物よ、出番だぜ……つってもお前の試合は今やエキシビションと化しているが」

大魔物『……』

牢番「倍率は1.0倍。お前の試合に賭ける客なんて大穴に夢見るやつらばかりだしな」

プスッ

大魔物『ぐ……』バタッ

大魔物『zzz』

牢番「……眠ったか。じゃあ鎖を外して……」ガチャ

凶魔物『今だ!チビ!』

小魔物『……』ヒョコヒョコ

牢番「ん?」

小魔物『覚醒呪文!』キュイイン

牢番「なんだ?こいつ何を……」

大魔物『……』ムクッ

牢番「……え?」

大魔物『死ね』

牢番「あ───」



グシャ

小魔物『……やっぱり殺すんだね』

大魔物『人間と仲良くなりたかったようだが、そんなくだらん考えは捨てろ』

小魔物『……』

大魔物『それよりこいつが持っていた鍵だ。皆を解放してやれ』

小魔物『……』

大魔物『早くしろ。怪しんで人間が来るぞ』

小魔物『う……うん』

ガチャ

凶魔物『ふう……久々の自由だ』

小魔物『……』

凶魔物『さて、これからどうする?』

大魔物『とりあえずこの牢の魔物を解放する。余裕があれば他の牢の魔物も解放したいところだが……』

凶魔物『そうだな。おいチビ、さっさと動け』

小魔物『うん……』

大魔物『氷結系の魔法が使える魔物はいるか?催眠ガスの装置を凍らせ───』


黒服「なんだこりゃあ!?」


小魔物『!?』

凶魔物『ちっ、もう見つかったか!』

大魔物『……余裕はなくなったな』ノソッ

黒服「大魔物!?」

大魔物『はあ!』ゴォオオオオ

黒服「ひ……」

ゴォオオオオ

黒服「」 ドサッ

凶魔物『……恐ろしいね。あんな炎で焼かれたら俺たちでも一瞬であの世行きだ』

大魔物『早くしろ。同じような黒い服の人間はわんさかいるぞ』

凶魔物『お前らは先に行け。俺はここのやつらを解放していく』

小魔物『でも……』

凶魔物『お前らが先陣を切って俺たちに道を示すんだよ!』

大魔物『お前……』

凶魔物『鍵をよこせ!』

小魔物『わかったよ。後から来てね』スッ

大魔物『……』

凶魔物『ああ』ガシッ

大魔物『……先に行く』

凶魔物『頼んだぜ、主』

大魔物『任せておけ』ダッ

黒服「緊急事態だ!魔物が脱走した!」

凶魔物『さすがに行動が早いな。俺たちを恐れすぎなんじゃねえのか?』

黒服「うわ!く、来るな!」

凶魔物『今までありがとよ』

黒服「ひ……」

グシャ

黒服「」

凶魔物『……へへ。さあ皆、暴れてやろうぜ!』

魔物たち『『『』うおおおおお!』』

黒服「ガスを撒け!」

黒服たち「「「うおおおおお!」」」




凶魔物『そうそう……魔物と人間の殺し合い……これが本来あるべき姿だ』

黒服「かかれー!」

凶魔物『これが俺たちの誇りだ』

黒服たち「「「うおおおおお!」」」

凶魔物『じゃあな……小魔物』

終わります

──────

────

──

格闘場


リーダー「お、勇者も来たな」

勇者「ああ、ようやく合流できた。これほど大きな施設だったとは。ファラオ王がいなければ迷っていたかもしれん」

リーダー「……相変わらずそのマントマスクの変装なんだな」

勇者「ここにいる誰にも顔を覚えられてはまずいだろう。気に入っているからという理由だけではない」

リーダー「(気に入っていたのか……)ともかくこれで後はターゲットの試合を待つだけだ」

情報屋(やっぱりさっきの女の子気になるな……)

リーダー「次の次がターゲットの試合だぞ」

情報屋(勇者に教えた方がいいのかな……)

リーダー「おい、聞いてんのか?」

情報屋「え?ゴメン。何?」

リーダー「おいおい、こんなときにボーッとしてんなよ。今までの苦労が無駄になるぞ」

情報屋(そうだ。今は余計なこと考えていちゃダメだ。作戦に集中しなきゃ)

──────

────

──


ワーワー


魔物A「グギャアアア!」ズシャ

魔物B「アギャアア……」バタッ


ワーワー


勇者「……」

情報屋「終わった。次だね」

勇者「……」

リーダー「……やっぱり魔物同士の殺し合いでも気分のいいものじゃないか?」

勇者「……周りの人間も魔物からうつされたように狂気染みている。これでは……」

リーダー「言いたいことはわかるが、ここは地上とは別世界のアングラなんだ。割り切って作戦を成功させることだけ考えていてくれ」

勇者「ああ、わかっている」

ファラオ『ふむ……』

勇者「ファラオ王?」

ファラオ『……これは面白いことになっているな』

勇者「どうしました?」

ファラオ『ターゲットが脱走したようだ』

勇者「な……!」

ファラオ『檻から出て暴れ回っているな』

勇者「いかん、被害が拡大する前に止めなければ」

ファラオ『殺さずに逃がす約束を忘れるな』

勇者「そんなことを言っている場合ですか。事態が事態です」

ファラオ『やれやれ、私は勇者というものを過大評価していたかな』

勇者「なに?」

ファラオ『この程度の事態なら軽く解決してみせろと言っているんだ』

勇者「……」

情報屋「おかしいな……試合が始まらないよ」

リーダー「完璧なはずの俺の作戦にズレがあるはずないんだがなあ……」

勇者「緊急事態だ。ターゲットが脱走した」

情報屋「え?」

リーダー「は?どういうことだよ」

勇者「詳しいことはわからん。ファラオ王の見分だ」

情報屋「脱走なんてできたの……?」

リーダー「よりによってこんなときに……」

情報屋「どうする?」

勇者「黄金の爪を貸してくれ。私はターゲットを誘き寄せに行く」

情報屋「え、大丈夫?こんな状況で作戦続けられるの?」

勇者「なんとかする。君は作戦通り上に戻ってくれ。リーダーは私がここに戻ってくる際に煙幕を頼む。それで抜け道に入る」

リーダー「お、おう」

情報屋「わかった。あなたに任せるよ。気をつけて」スッ

勇者「ああ」ガシッ

──────

────

──


ワーワー

黒服「なんだあいつ!?催眠ガスが効いていないぞ!」

大魔物『広いな……出口はどこだ』バコォン

黒服「ぐふっ」バタッ

ワーワー

大魔物『ちっ、数が多いな……ならば』

黒服「来るぞ!炎だ!」

大魔物『くらえ……』ボゥ

小魔物『ぎゃああああ!熱ぃいいいい!』ピョーン

大魔物『あ、しまった。口の中にいたんだった』

小魔物『あちいいいい!水!水!』ピョンピョン

大魔物『おい待て!どこへ行く!?』

──────

────

──


小魔物『熱い熱い……酷いや大魔物さん……またわざとじゃないのかよ』

小魔物『回復呪文!』キュイーン

小魔物『ふう……それよりはぐれちゃった。どこだろう?ここ』キョロキョロ


タッタッタッ


小魔物『おや?』


黒服「はあ……はあ……」タッタッタッ


小魔物『まずい!見つかっちゃう!』


タッタッタッ


小魔物『……』ブルブル


タッタッタッ


小魔物『……あれ?』


バタン


小魔物『スルーして奥の部屋に入っちゃった』

終わります
ありがとうございました

──────

────

──

奥の部屋


バタン

黒服「大変です!魔物が脱走しました!」

闇商人「なに!?」

あらくれ「なんでこんなときに!?」


小魔物『……』ソロー

小魔物『……』チラッ

小魔物『あっ!?』


女「うう……」


小魔物『あそこで寝ている人!間違いない!あの人だ!』

小魔物『魔盗っちゃんを助けてもらわなくちゃ!』バッ

あらくれ「げっ!ここまで来やがった……ってこんな小さいのかよ」

闇商人「驚かせやがって。俺でも仕留められそうだ」

黒服「そんなものじゃありません!もっと凶暴なやつです!ここも危険です!すぐに避難を!」

闇商人「な、なんだとぉ!?」

小魔物『起きてよ!げっ、酒くさっ!酔っぱらってんのかよ!?』

女「……小魔物……?」

小魔物『そうだ!解毒呪文!覚醒呪文!』シュワァァ

女「……これは解毒呪文……それに覚醒呪文か……?」

小魔物『よかった。一緒に来て!魔盗っちゃんが危ないんだ!』

女「お主にそのようなことができたとは……助かったぞ」ムクッ

あらくれ「嘘だろ……なんで魔物が助けるんだよ!」

闇商人「そんなことより逃げた方がよさそうだ」

黒服「あ……来た」

ドガアァァン

黒服「ぎゃあああ!」ドサッ

女「なに!?」

黒服「」

大魔物『こんなところにいたのか小魔物!早くこっちに来い!殺されるぞ!』ドガアァァン

小魔物『大魔物さん!』

あらくれ「うわ!」ドサッ

闇商人「ひいい……」ドサッ

女「何が起こっておる?なぜ魔物がこんな場所に……?」

あらくれ「腰が抜けて……動けねえ……」

闇商人「く、食われちまう……助けてくれえ……」

女「ふん、知ったことではない。わしの服を台無しにしおって」

あらくれ「そんな……」

女「とは言ったものの、あの魔物を倒さんとわしも帰れそうにない」

大魔物『人間め……くそ、催眠ガスが効いてきやがった……小魔物、早く来い!』

小魔物『この人は悪い人じゃないんだ……この人がいないと魔盗っちゃんが……』

大魔物『なんだと……?』

女「とりあえず破れた服でも隠すところは隠しておかんとな」ギュッギュッ

小魔物『お願いだよ。この人は殺さないで』

大魔物『……』

女「お主はわしの服が落ちないよう中で隠れつつ抑えていてくれ」

小魔物『うわ、胸の中に……苦しい……』ムギュ

大魔物『くそ!』

あらくれ「ひいいいい!」

闇商人「助けてえええ!」

女「やれやれ、わしがいたことに感謝しろよ」

──────

────

──


大魔物『くそ……眠気が……』バタン

小魔物『大魔物さん……』

大魔物『……その人間と一緒にいれば……お前は助かるんだな?』

小魔物『……うん』

大魔物『だったら行け……』

小魔物『でも大魔物さんが!』

大魔物『一番人気の俺が殺されることはない……心配するな』

小魔物『……』

大魔物『お前が生き延びれば……』

小魔物『……』

大魔物『俺たちの大勝利だ』

小魔物『大魔物さん……』

大魔物『……』

小魔物『……』

大魔物『行け』

小魔物『本当に……ありがとう』

──────

────

──


タッタッタッ

勇者「ここも……さらに先まで被害は拡大している」

ファラオ『派手に暴れてくれたな』

勇者「やられていた人間はなんとか全員回復させてきたが……私がいなかったら死んでいた」

ファラオ『あとはここの連中に任せればいいだろう』

勇者「……本当にこのような惨状を引き起こした魔物を外に逃がしても?」

ファラオ『しつこいぞ。私がなんとかすると言ったらするんだ』

勇者「……」

勇者「しかしおかしい。黄金の爪を持っているのに一向に私の元へ来る気配がない」

ファラオ『そうだろうな。やつは眠っているようだ』

勇者「捕らえられたのですか?」

ファラオ『ああ。やつはあの奥の部屋にいる』

勇者「どうしましょうか」

ファラオ『今のお前なら大丈夫だ。気にせず入れ』

勇者「……?」

──────

────

──

奥の部屋


ガチャ

勇者「む……」

大魔物『』

勇者「あれが……ターゲットの魔物……」

闇商人「ひっ!」

勇者「いきなりで悪いのだがその魔物───」

闇商人「デ、デスストーカーだぁ!脱走してきやがった!」

勇者「なに!?」クルッ


シーン


勇者「……驚かせるな。何もいないではないか」

ファラオ『……お前のことだよ』

勇者「!?」

闇商人「一難去ったと思ったらまた一難かよぉ!」

ファラオ『お前の格好はその辺の魔物だそうだ』

勇者「バカな……私が魔物と間違えられるなどと……」

ファラオ『だから丁度いい。魔物を拐っていっても何も違和感あるまい』

勇者「……そういうことか」

闇商人「な、なんで対魔物用の催眠ガスが効いてねえんだ!?この部屋にも充満しているはずなのに!」

勇者「申し訳ないが君が眠っていてくれ。催眠呪文」

闇商人「う……」クラッ

ドサッ

勇者「……まるで強盗だな」

ファラオ『気にするな。それよりかなり重量があるが運べるか?』

勇者「ええ、この程度なら」

ファラオ『さすがだな』

大魔物『』

ファラオ『……こいつも子供のままでよかった。成長しきっていたらさすがに大きすぎる』

勇者「このサイズで……子供……?」

終わります
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