P「勇者様……俺が?」 (106)
Pの自宅
P「いやぁ、今日も一日疲れたなぁ……」
P「でも、泣き言を言ってはいられない!」
P「何といっても、次のオールスターライブまでは残り一か月!」
P「アイドルのみんなは、俺以上に頑張ってるんだからな!」
P「さてと! 明日も忙しくなりそうだし、今日は早めに寝るか!」
P「それじゃ、お休み……」
P「うーん、むにゃむにゃ……」
??「勇者様……」
P「くぅくぅ……ん?」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1414476100
??「どうか私達の、夢の世界をお救いください……」
P「誰だ、この声――」
ピカッ
P「うわっ!? な、何だこの光は!?」
ピカアアアア
P「ひ、光が、広がって……!? の、のわああああああっ!?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夢の世界 神殿
P「う、うーん……はっ!?」
??「お待ちしておりました」
P「誰だ……綺麗な女の人……? それより、ここはどこだ?」
??「ここは夢の世界の神殿。現実世界を生きる方々の夢を司る、神聖な場所……」
P「は?」
??「そして私は、この神殿を守る女神です」
P「……何だって? 夢の世界に……女神……?」
女神「勇者様を召喚したのは、他でもありません」
P「勇者様……俺が?」
女神「魔王ナイトメアを倒し、ドリームオーブを取り返してほしいのです」
P「……あの」
女神「何か?」
P「何が何だか、俺にはさっぱりなんですが」
女神「では、順を追って説明していきましょう。長いとダレるので、三行で」
P「は? 三行?」
女神「こっちの話です。コホン……では」
女神「良い夢、楽しい夢を生み出す神器、ドリームオーブが魔王に奪われました」
女神「あれが魔の力に染まれば、現実世界の人々は毎晩悪夢に苛まれる事となります」
女神「どうか魔王を倒し、ドリームオーブを取り返してください」
女神「以上です」
P「何だか星のカービィのような、ドラクエのような話だな……」
女神「引き受けていただけますね?」
P「一つ、疑問があります」
女神「何でしょう」
P「どうして俺なんですか?」
女神「あなたが、この世界を救ってくれる勇者様に他ならないからです」
P「いや……。俺、違うと思いますよ?」
女神「間違いありません。私にはわかります」
P「その根拠は?」
女神「ティンときましたので」
P「はい?」
女神「ですから、ティンときたのです」
P「…………」
女神「もう一度言いましょうか? ティンと」
P「わかりましたわかりましたわかりましたよ! ティンときたなら仕方ないです!」
女神「詮索はなさらないのですね?」
P「その言葉を言われたら、何を言ってもムダな気がしまして」
女神「賢明な判断です」
P「とは言っても……俺、本当にただのアイドルプロデューサーなんですよ」
女神「現実の世界での勇者様の身分は、もちろん存じております」
P「……ちなみに、身分以外の俺に関する情報、どこまで知ってます?」
女神「あとは何も知りません」
P「あれ、そうなんですか?」
女神「むやみにプライベートを調査するのは、失礼かと思いまして」
P「はあ……」
P「まあ、それはともかくですね」
女神「はい」
P「そんな俺が、魔王なんて大それたヤツを倒せるんでしょうか?」
女神「不安に思われるのは当然です」
P「ええ。心の底から不安です」
女神「では今から、私が編み出した、打倒魔王のプランを紹介しましょう」
P「プラン、ですか?」
女神「ええ。その前に、最初に言っておかねばならないことがあります」
P「何でしょうか?」
女神「勇者様が夢の世界に留まれるのは、一日当たり八時間です」
P「ふむ……。ちょうど俺の睡眠時間と同じですね」
女神「夜、現実世界で勇者様が眠りに就いている時でないと、召喚できませんので」
P「そうなのか……。実生活に影響が出ないのはありがたいですね」
女神「そして八時間のうち、七時間はレベルアップに励んでいただきます」
P「レベルアップですか。具体的にはどうすれば?」
女神「今から私の力で、勇者様をこの世界の南端にある、567平原にワープさせます」
P「567って、何て読むんですか?」
女神「コムナと読みます」
P「予想通りでした。そこで俺は、何をすればいいんでしょう?」
女神「はぐれマイクを倒してもらいます」
P「は? はぐれマイク?」
女神「ええ。567平原には、マイク形の金属製モンスターが大量に生息しています」
P「は、はあ。なんだか、ゲームみたいな話になってきたぞ……?」
女神「固いうえにHPが5もあるので、一人で倒すことは困難ですが」
P「HPって、ヒットポイント……?」
女神「物事をわかりやすく伝えるのは、重要だと思いませんか?」
P「……否定はしませんが」
女神「ともかく。もし倒せた場合は、莫大な経験値が手に入ります」
P「つまりドラクエでいう、はぐれメタル狩りをしろと?」
女神「理解が早くて助かります」
P「ははは……そいつはどーも」
女神「経験を積んでレベルアップすれば、魔王を倒すことも不可能ではないでしょう」
P「そうかなあ……。でも、俺がやるしかないんですよね?」
女神「ええ、ティンと来ましたので」
P「……やれるだけはやってみます」
女神「ありがとうございます」
女神「そうそう、大切な事を言い忘れていました」
P「何をでしょうか?」
女神「タイムリミットまでは、今日を入れて三日です」
P「……はい?」
女神「三日を過ぎれば、ドリームオーブの力は魔王に取り込まれてしまいます」
P「…………」
女神「そうなったが最後、何人たりとも魔王を倒すことはできなくなるでしょう」
P「えっと」
女神「ですので三日のうちにレベルアップを行い、魔王を倒してください」
P「無理じゃん?」
女神「やってみなければわかりません」
P「いや、でも」
女神「それではよろしくお願いします。567平原にワープ!」
ギュイーンギュイーン
P「うおぉぉぉぉ!? 体が空を飛んでいくぅぅ!?」
女神「七時間が経過したら呼び戻しますので。御武運を」
P「御武運を、じゃないだろおおぉぉぉぉ!?」
夢の世界 567平原
P「飛ばされてきちゃったよ」
P「やれやれ……えらい事に巻き込まれたな……」
P「意外に順応できてるのは、日頃の生活のたまものかな?」
P「とにかくまずは、そのはぐれマイクとやらを見つけないと……お!」
はぐれマイクが現れた!
P「早速出たぞ――」
はぐれマイクは逃げ出した!
P「あ」
P「き、気を取り直して次に」
はぐれマイクが現れた!
P「よし、今度こそ! てぇりゃあ!」
Pの攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
はぐれマイクは逃げ出した!
P「……えっと」
P「確か女神様、HPは5あるって言ってたよな」
P「つまり、逃げられるまでに一人で五回殴れと」
P「…………」
P「ムリゲーじゃん?」
はぐれマイクが現れた!
はぐれマイクは逃げ出した!
P「あ、ちょ」
はぐれマイクが現れた!
はぐれマイクの攻撃! ミス! Pはダメージを受けない!
P「お!」
Pの攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
はぐれマイクは逃げ出した!
P「…………」
P「どうしよ、これ……」
七時間後 夢の世界 神殿
女神「成果はいかがでしたか?」
P「なんとか二匹倒せました」
女神「では、今のレベルは」
P「3です」
女神「…………」
P「…………」
女神「何という事でしょう」
P「だって、すぐ逃げるんですもん! そうそう五回も殴れないですよ!」
女神「弱りましたね。私の計算では、魔王を倒すには最低40レベルは必要なのです」
P「全然足りないじゃん!」
女神「まあ、終わったことを悔いても仕方がありません」
P「そりゃそうですけど……」
女神「では早速、魔王に挑んできてください」
P「……え?」
女神「プランでは七時間を修行に、残り一時間を魔王との決戦に使う事となっています」
P「でも、間違いなく勝てませんよね?」
女神「やってみなくてはわかりません」
P「わかりますよ! だってさっき、最低40レベル必要って言ったじゃないですか!」
女神「もしかすると、私の計算ミスかもしれません」
P「ミスってたとしても、適正レベルが3なわけないでしょーが!」
P「どう考えても無理でしょ! 3レベルで魔王倒すとか!」
女神「魔王はこの世界の北端にある675城で、オーブの力を得るための儀式を行ってます」
P「スルーですか」
女神「675はムナコと読みます」
P「ぶっちゃけ名前はどうでもいいです」
女神「せっかく私が親切心で……ぐすっ」
P「あ、ありがとうございます女神様! だから泣くのはやめて!」
女神「わかっていただければ結構です……ぐすん」
P「マジ泣きだったよ……ビックリした……」
女神「そうそう、また言い忘れる所でした」
P「切り替えがスピーディーですね……」
P「で、今度は何ですか?」
女神「勇者様が命の危険を感じたときは、私を呼んでください」
P「女神様を、呼ぶ?」
女神「ええ。私が魔法で、勇者様をこの神殿に呼び戻しますので」
P「じゃあ俺が判断を誤らなければ、死ぬことはないんですね?」
女神「ええ。ここは結界に守られていますので、ご心配なく」
P「今の一言で、一気に気が楽になりましたよ……。そうだ、疑問なんですが」
女神「何でしょう?」
P「それだけの魔力があるなら、女神様が自分で行けばいいんじゃ?」
女神「残念ながら、私では魔王は倒せません」
P「どうしてです?」
女神「私は、攻撃系の魔法や技を使うことができないのです」
P「あ、そうなんですか」
女神「役立たずで申し訳ありません……ぐすっ」
P「わわわわわ! だから泣かないでくださいって!」
女神「でも……」
P「わかります、わかりますよ! 誰にでも、向き不向きはありますって!」
女神「優しいんですね、勇者様は」
P「と、とりあえず! やるだけやってみますよ! ダメもとで!」
女神「では早速、675城へワープ!」
ギュイーンギュイーン
P「のわああああああっ!? またいきなりワープですかぁ!?」
女神「御武運を」
P「……ダメっぽいけどな……トホホ……」
夢の世界 675城
P(玉座に座る、細身で美形の銀髪の青年……)
P(全身から満ち溢れる殺気が、空間を振動させている)
P「お前が、魔王ナイトメアか……」
魔王「何者だ……? さしずめ、女神の差し金と言った所か……?」
P「ああ。ドリームオーブを返してもらう」
魔王「くくく……。できると思っているのか? 貴様一人で」
P「やってみなけりゃわからない!」
魔王「いいだろう、返り討ちにしてくれるわ!」
魔王ナイトメアが現れた!
P「行くぞ魔王、プロデューサーパーンチ!」
Pはプロデューサーパンチを放った! 魔王に3のダメージ!
魔王「……ん?」
P「…………」
魔王「お前……もしかして弱いな?」
P「う、うるさいうるさい! うるさーい!」
魔王「……ふ」
P「無理とわかっていても、男にはやらなければいけない時が――」
魔王「消え失せろ!」
魔王の攻撃! Pは40のダメージ! Pは力尽きた!
P「うおああああっ……!」
魔王「身の程知らずが……」
魔王「お前ごときに、この私を倒すことなどできんわ!」
P「や、やっぱりダメか……。そ、そりゃそうだよな……」
魔王「せいぜい逃げ帰り、ありのままの事実を女神に報告するのだな!」
P「うぐうっ……」
魔王「はーっはっはっは!」
P「く、くそおっ……! 女神様、お願いします……!」
ギュイーンギュイーン
夢の世界 神殿
女神「大丈夫ですか、勇者様? リフレッシュ!」
女神はリフレッシュの魔法を唱えた! Pの体力は全回復した!
P「おお……! 魔王にやられた傷が、一瞬で治ったぞ!」
女神「今のケガを見る限り、戦況は芳しくなかったようですね」
P「すみません、倒せませんでした……」
女神「過ぎたことを言っても始まりません。明日に向かって歩いていきましょう」
P「でも、やっぱり無理です! 断言しますが、俺一人じゃ絶対に無理です!」
女神「気合で何とか」
P「なりません!」
P「そもそもはぐれマイクを倒せる可能性、メッチャ低いですし!」
女神「確かにその点はネックですね」
P「それに! 運よくレベルアップできたとしても、一人であんな魔王倒せませんよ!」
女神「別に二人でも構いませんが」
P「へ? 二人でも?」
女神「ええ。勇者様は、仲間を連れて夢の世界を訪れることが可能なのです」
P「……そーなんですか?」
女神「そーなんです」
P「仲間……。ちなみに、どうすればこの世界に連れてこれるんです?」
女神「気になるようですね? では、条件をお教えしましょう」
女神「現実世界で親しい方と、夜に同じ空間で眠ること。それだけです」
P「地味に難易度が高いぞ……それ」
女神「さあ、そろそろ夜明けですね」
P「え?」
女神「目覚めの時です、勇者様」
ピカッ
P「うわ、まぶしっ!?」
女神「それではまた明日の夜、お会いしましょう」
ピカアアアア
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
現実世界 Pの自宅
P「はっ!?」
P「ここは……俺の部屋だ」
P「夢か……」
P「いや、本当にただの夢なのか?」
P「夢にしては、ずいぶんリアリティがあった気がするぞ……」
P「もしさっきのが、ただの夢じゃなかったら」
P「そして俺が、明日までに魔王を倒せなかったとしたら」
P「世界中の人が、毎晩悪夢にうなされることになるのか……?」
P「…………」
P「二人でも構わない、か……」
現実世界 765プロ 事務所
P「うーむ……誰に頼もうか……」
P「常識では受け入れられない事態を、すんなり受け止めてくれそうな人……」
P「うん、やっぱりあの人で決まりだな!」
ガチャ
小鳥「あ、プロデューサーさん。おはようございます!」
P「すみません、音無さん!」
小鳥「はい?」
P「いきなりですが、今夜俺と寝てください」
小鳥「え?」
P「お願いです! 一生のお願いですから、俺と寝てください!」
小鳥「え、え、ええええええええええっ!?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
その夜 夢の世界 神殿
女神「よく戻られました、勇者様」
P「ここは、昨日の……」
女神「ええ。夢の世界を救うため、本日も召喚させていただきました」
P「やっぱり、ただの夢じゃなかったのか……」
小鳥「プロデューサーさんの話、ウソじゃなかったんですね……」
P「ははは……。俺もたった今、確信したんですけどね」
小鳥「もう! 私、本当にビックリしたんですよ!」
P「す、すみません……」
P「でも、いかんせん非常事態で――」
小鳥「プロデューサーさんの部屋に入るなり、いきなりベッドに放り込まれて!」
P「で、ですからそれは――」
小鳥「一刻も早く寝ましょうとか、これから俺について来てくださいとか言って!」
P「た、確かに誤解を招くような言い方をした気もしますが――」
小鳥「本当ですよ、全く! 乙女心をもてあそぶのは、今回限りにしてください!」
P「……はい。大変申し訳ありませんでした……」
女神「コホン。勇者様、隣にいる方がお仲間ですか?」
P「え、ええ。その通りです」
小鳥「はじめまして、音無小鳥と申します!」
小鳥「よろしくお願いしますね!」
女神「こちらこそ。勇者様と力を合わせ、魔王ナイトメアを倒してください」
小鳥「はい! どこまでやれるかわかりませんが、精一杯頑張っちゃいます!」
女神「それでは時間が惜しいので、567平原にワープ!」
小鳥「え、ワープって」
ギュイーンギュイーン
小鳥「きゃあああああ!?」
P「すぐに慣れますよ、きっと……」
夢の世界 567平原
小鳥「ふぅ、ビックリしたぁ……」
P「ここに出現するはぐれマイクを倒せば、レベルアップできるんですが……」
小鳥「本当に妄想の……じゃない! ゲームの中の世界みたいですね――」
はぐれマイクが現れた!
小鳥「わわわ、出たぁ!?」
P「大丈夫です音無さん! こいつ、攻撃力は全然ありませんから!」
小鳥「そ、そうなんですか?」
P「ええ! 五回叩けば倒せますんで、早く攻撃を!」
小鳥「わ、わかりました!」
小鳥「えいっ!」
小鳥の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
P「でやっ!」
Pの攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
はぐれマイクの攻撃! ミス! 小鳥はダメージを受けない!
小鳥「……本当、全然痛くないわ! それなら!」
小鳥の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
P「お、いけるか!? とあっ!」
Pの攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
はぐれマイクの攻撃! ミス! Pはダメージを受けない!
P「よし、もらった!」
P「でやああっ!」
Pの攻撃! はぐれマイクをやっつけた!
パーティーのレベルが4に上がった!
小鳥「やったぁ! 勝ちましたね、プロデューサーさん!」
P「ええ、やりました!」
小鳥「私、お役に立ててますか?」
P「間違いなく! 一人と二人じゃ全然違いますよ! 手数が倍ですもん!」
小鳥「あ、プロデューサーさん! 来ますよ!」
はぐれマイクが現れた!
P「よし、これならいける――」
はぐれマイクは逃げ出した!
P「……あら」
小鳥「逃げられちゃいましたね――」
はぐれマイクが現れた!
P「お、また! 今度こそ――」
はぐれマイクは逃げ出した!
P「……前言撤回します。やっぱり二人でもキビしそうです」
小鳥「プロデューサーさん。あきらめたら、そこで終了じゃないんですか?」
P「でも、現実的に考えて――」
小鳥「プロデューサーさんはこの世界を救う、勇者様なんでしょ?」
P「……そうですね。そうでした! 一匹でも多く倒して、レベルを上げないと!」
小鳥「その意気です! 一緒に頑張りましょう!」
はぐれマイクが現れた!
P「また来たな!」
はぐれマイクは逃げ出した!
P「ぬぅ……」
はぐれマイクが現れた!
小鳥「プロデューサーさん、こっちです!」
はぐれマイクは逃げ出した!
小鳥「ああん! もう!」
はぐれマイクが現れた!
はぐれマイクは逃げ出した!
はぐれマイクが現れた!
はぐれマイクは逃げ出した!
はぐれ――
七時間後 夢の世界 神殿
女神「本日の成果はいかがですか?」
P「十匹、でしょうか……」
小鳥「あ! そういえば私、回復魔法が使えるようになりました!」
女神「さすがは、勇者様が見込んだ方ですね」
P「と、言いますと?」
女神「この世界では、『資質』のある者は新たな技や魔法を取得できるのです」
小鳥「じゃあ私には、その『資質』とやらがあったんですね!」
P「あれ? でも俺、今まで何も覚えてませんよ?」
女神「それは『資質』がないからでしょう」
P「え」
P「何でですか!? 俺、勇者なんですよね!?」
女神「勇者であることと『資質』があることに、因果関係は一切ありません」
P「えー……」
小鳥「プ、プロデューサーさん! そんなに気を落とさないで!」
P「い、いや、だって、不公平な気が……」
女神「話を戻しましょうか。勇者様、今のレベルは?」
P「あ、ああ……。えーっと、13です」
女神「13ですか。やはり厳しいですね」
小鳥「ごめんなさい……。もっとたくさん倒せればよかったんですが……」
女神「いえ、謝る必要はありませんよ?」
女神「無理をさせてしまっているのは、こちらの方ですから」
P「すみません、ちょっといいですか」
女神「何でしょう?」
P「俺と音無さんとで、ずいぶん対応が違いませんか?」
女神「TPOはわきまえておりますので。お客人には礼を尽くすよう、心掛けております」
P「俺には?」
女神「勇者様に対して、TPOは必要ないかと」
P「どうして!?」
女神「気心知れた仲ではありませんか」
P「まだ出会ってから、二日しか経ってないんですけど」
女神「今は細かい事で、言い争いをしている場合ではありません」
P「細かいって……。そりゃ、細かいかもしれないけど……ぶつぶつ」
女神「それでは決戦タイムに参りましょう」
小鳥「勝てるんでしょうか……今の私達で」
P「いや……正直、今回も無理っぽい気がしますが……」
女神「勝負は時の運、という言葉もあります」
P「絶対的な力量差は、運だけではどうにもならないと思いませんか?」
女神「あ、そうそう。一応、ご参考までに伝えておきますが」
P「サラッとスルーですか」
女神「勇者様達のHPはレベルの4倍、MPはレベルの2倍となっております」
小鳥「つまり、現時点でのHPは52、MPは26ってことですね?」
女神「ええ。煩雑さ防止のため、勇者様もお仲間の方も同じ数値です」
P「はあ……。魔王に挑むとか、そんなレベルの数字じゃない気が――」
女神「行ってみましょう。675城へワープ!」
ギュイーンギュイーン
小鳥「やるしかないんですね……」
P「やるしかないんです……」
夢の世界 675城
P「魔王ナイトメア……」
魔王「ふん……。昨日の今日でまたやって来るとは、馬鹿な男よ!」
小鳥「プロデューサーさん……。この人が、魔王……なんですか?」
P「ええ……」
魔王「む? そこの女は、お前の仲間か?」
P「ああ! 俺の大切な人だ!」
小鳥「プ、プロデューサーさん!? 大切だなんて、またそんなことを――」
魔王「はっはっはっはっは!」
P「何だ! 何がおかしい!」
魔王「そんなか弱い女が一人増えただけで、この私を倒せると思っているのか?」
小鳥「やってみないとわかりませんよ!」
P「行くぞ、魔王!」
魔王ナイトメアが現れた!
P「音無さん、回復役をお願いします!」
小鳥「わかりました、お任せを!」
P「だありゃあ! プロデューサーパーンチ!」
Pはプロデューサーパンチを放った! 魔王に13のダメージ!
P「よし、昨日より効いてるぞ! レベルアップの成果だな!」
魔王「だが、所詮はスズメの涙よ!」
魔王「くらえぃ!」
魔王の攻撃! プロデューサーに40のダメージ!
P「くはっ!?」
小鳥「危ない! どうか負けないで……回復魔法『光』!」
小鳥は光を唱えた! Pの体力は全回復した!
P「おお、体の痛みが消えていくぞ!」
小鳥「プロデューサーさん、大丈夫ですか?」
P「すごい! 助かりましたよ音無さん!」
魔王「ほう、回復魔法を使うとはな。少々侮っていたか……」
P「よし! これなら、持久戦に持ち込めばあるいは――」
小鳥「いえ、無理です……」
P「え?」
P「どうしてです?」
小鳥「今の魔法、MPを15使うんです」
P「ということは……もしかして」
小鳥「はい。今ので打ち止めです」
P「……マジですか」
小鳥「ご、ごめんなさい……」
魔王「ふははははは! こいつは笑わせる! たった一度きりの手品とはな!」
小鳥「く……」
魔王「ふんっ!」
魔王の攻撃! Pは40のダメージ!
P「ぐはあっ!?」
小鳥「プ、プロデューサーさん!?」
P「ぐ、ぐぐっ……」
小鳥「……お願い! 『光』よ!」
小鳥は光を唱えた! しかしMPが足りない!
P「あ、あうあうあう……」
小鳥「すみません、やっぱりダメでした……」
P「ちくしょう、あきらめてたまるか! うおおおっ! プロデューサーパーンチ!」
Pはプロデューサーパンチを放った! 魔王に13のダメージ!
魔王「それがどうした?」
P「く、くそうっ……」
魔王「さて、終わりにするとしようか! せあっ!」
魔王の攻撃! Pに40のダメージ! Pは力尽きた!
P「気合だけじゃ、どうにも……ならないか……きゅう」
小鳥「プ、プロデューサーさぁん!」
魔王「お前達ごときが何度来ようが、相手にならんわ! とっとと逃げ帰るのだな!」
小鳥「プロデューサーさん、退却しましょう!」
P「ですね……お願い、女神様」
ギュイーンギュイーン
夢の世界 神殿
女神「今回もダメでしたか。リフレッシュ!」
女神はリフレッシュの魔法を唱えた! Pの体力は全回復した!
小鳥「私にもっと、MPがあれば……」
P「いえ、音無さんのせいじゃないです。俺も、技や魔法が使えれば……」
女神「勇者様、無いものねだりは無意味です」
P「つ、冷たいですね……」
女神「ともかくこれで、残された時間はあと一日となってしまいました」
P「むうぅ……」
女神「何としても明日に魔王を倒し、オーブを取り戻さなければなりません」
P「音無さん。一緒に、冷静に考えてみましょう」
小鳥「はい」
P「俺達の今のレベルはいくつでしょう?」
小鳥「13レベルです」
P「今日俺達、何レベル上がりましたっけ?」
小鳥「10レベルでした」
P「このまま行くと、明日の決戦前には何レベルになりますか?」
小鳥「おそらく23、4レベルではないかと」
P「魔王を倒すのに必要なレベル、40レベルなんですよ」
小鳥「ええっと……」
P「…………」
小鳥「どうしましょう……」
P「女神様やっぱり不可能! どう考えても俺達二人じゃ不可能という結論に!」
女神「別に、二人でなくとも構いませんよ?」
小鳥「えっ?」
P「……は?」
女神「昨日も言いましたが、仲間を連れて夢の世界を訪れることは可能です」
P「ええ、それは知ってますが」
女神「ですので六名ぐらいのパーティを結成できれば、勝率は格段にアップ――」
P「なぬ!? 待った待った! ちょい待った!」
P「仲間って、何人も連れてこれるんですか!?」
女神「そうですが」
P「昨日と言ってることが違うじゃないですか!」
女神「そんなはずはありません」
P「だって昨日、二人『でも』構わないって――」
女神「確かに言いました。ですが二人『まで』などと、伝えた覚えは一度もありません」
P「……え?」
女神「疑うのならば、もう一度上のレスを読み返してみるとよいでしょう」
女神「具体的には、>>29あたりを」
小鳥「どれどれ……」
P「あ、本当だ……」
女神「ね?」
P「だ、だったら! だったら!」
女神「勇者様、そんなに興奮なさらずに」
P「昨日の段階で、二人『以上』でも大丈夫って言ってくれれば!」
女神「今さらそんな事を申されましても」
P「くそっ、何てこった! 完全に勘違いしてた! ちくしょうちくしょう俺のバカ!」
小鳥「ま、まあまあプロデューサーさん……。少し落ち着きましょう?」
P「は、はい……。取り乱してすみませんでした……」
小鳥「でも……」
P「……ええ」
小鳥「打開策、見つかったんじゃないですか?」
P「ですね。そうとわかったなら……」
女神「さて、勇者様。そろそろ夜明けが近づいてきたようです」
ピカッ
小鳥「きゃっ!?」
P「時間切れか……」
女神「運命の時は、刻一刻と近づいております」
ピカアアアア
女神「また明日の夜、お会いしましょう。それでは……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
運命の日 現実世界 765プロ 社長室
P「おはようございます、社長」
社長「おお、おはよう! 今日も元気そうで何よりだ!」
P「早速ですが、お願いがあります。聞いていただけますか?」
社長「うむ、言ってみたまえ」
P「今、夢の世界が危機に瀕しています」
社長「夢の……世界?」
P「…………」
社長「……その眼、冗談を言ってるわけではないようだね」
P「はい。俺は本気です」
社長「私はキミのために、何をすればいいのかね?」
P「今晩アイドル達を、事務所に泊めたいんです。許可をいただけませんか?」
社長「うむ。ご家族への連絡は、私が行おう。どの子の外泊許可が必要かね?」
P「では、できれば――」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夢の世界 神殿
女神「よく戻られました、勇者様」
P「まあ、戻らないわけにはいきませんよ」
小鳥「プロデューサーさん、勇者様ですもんね!」
P「ははは……」
女神「さて。わかっているとは思いますが、本日がタイムリミットです」
女神「今日ドリームオーブを取り戻せなければ、夢の世界は悪夢に包まれ――」
P「大丈夫ですよ、女神様!」
女神「……?」
小鳥「ええ! 私達は勝ちます!」
P「今日は、最強の助っ人軍団がいますから! さあ、出てこいみんな!」
??「はいっ、プロデューサーさん!」
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
女神「……え?」
春香「天海春香、夢の世界に参上です!」
千早「夢の世界……本当に、こんな世界が存在するなんて……」
雪歩「はわわ……信じられないですぅ……」
やよい「でもこれ、ただの夢じゃないんですよね?」
律子「そうみたいね。……認めたくはないけど」
あずさ「プロデューサーさん、この世界では勇者様なんですよね~?」
伊織「全く、ふざけた話よね。しょうがないから、手伝ってあげるけど!」
真「夢の世界を支配する魔王か……。へへっ、腕がなるな!」
亜美「お、まこちん! やる気マンマンだねぇ!」
真美「真美だって、まこちんに負けないぐらい活躍しちゃうかんねー!」
美希「楽しい夢が見られなくなっちゃうなんて、絶対にヤ! なの!」
貴音「わたくし達の力で、皆の夢を守りましょう」
響「よぉし、やってやるぞー! 自分達に任せればなんくるないさー!」
女神「え、ちょ、多い」
小鳥「うふふ! 驚きましたか、女神様!?」
女神「こ、この方々は……?」
P「俺の大切な仲間、765プロのアイドル達です!」
小鳥「今日はみーんな、事務所でプロデューサーさんと一緒にお泊りなんですよ!」
P「まさか、全員から許可がもらえるとは思いませんでしたけどね。さすが社長です!」
小鳥「それじゃあプロデューサーさん、まずはレベルアップですね!」
P「女神様、567平原にお願いします!」
女神「ま、待って! ちょっと待ってください!」
P「どうしてですか!? 何を慌ててるんです、時間がないんでしょう!?」
女神「こ、この場にいる全員で、戦いに挑むと?」
P「もちろんですよ!」
小鳥「何か問題があるんですか?」
女神「あ、RPGのパーティは、四名から六名が普通です!」
P「は!?」
女神「じゅ、15人同時戦闘のRPGなど、私は聞いたことがありません!」
小鳥「あら。私、13人までなら同時戦闘できるRPG知ってますけど?」
女神「で、ですが私は、ここまでの大人数は想定していません! よって無理です!」
P「無理!? 無理って、何がですか!?」
女神「こ、これだけの人数を一度にワープさせるには、少々魔力の消費量が厳しく――」
P「女神様、覚えていますか?」
女神「え?」
P「俺が召喚された、最初の日のことです」
女神「な、何を……」
P「女神様は俺にこう告げました。三日のうちにレベルアップして、魔王を倒せと」
女神「た、確かに言いましたが――」
P「俺は無理だと返しました。そしたら女神様は、こう答えました」
女神「う……」
P「やってみなければわかりません、と!」
女神「そ、それはそうですが――」
P「さあ、女神様もやってみましょう! ハリー! ハリーハリー! ハリー!」
女神「わ、わかりましたわかりました! わかりましたよぅ!」
P「では申し訳ありませんが、よろしくお願いします!」
女神「うう……」
女神「コ、567平原へワープ!」
ギュイーンギュイーン
女神「ご、御武運を……」
小鳥「……プロデューサーさん。女神様、大丈夫でしょうか?」
P「きっと大丈夫です! 何だかんだでメンタル強そうだし! それに……」
小鳥「それに?」
P「真面目な話、時間がありません。人数は多ければ多いほど、有利になるはずです」
小鳥「それは……確かに。七時間で、最低40レベルまで上げないと……」
P「力を合わせて、何とかしましょう! さあ、行くぞみんな!」
春香「はいっ! 765プロー……」
全員「ファイトー!」
夢の世界 567平原
P「よしみんな、準備はいいな?」
小鳥「出現したはぐれマイクを、片っ端からやっつけましょう!」
はぐれマイクが現れた!
真「おっ、コイツですね! たあぁ!」
響「行くぞぉ! とりゃあ!」
美希「やあっ、なの!」
亜美「チェストォ!」
真美「ちぇいやー!」
真の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
響の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
美希の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
亜美の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
真美の攻撃! はぐれマイクをやっつけた!
パーティーのレベルが14に上がった!
春香「やったぁ! 一匹倒せましたね!」
伊織「何よ、思ったより簡単にやっつけられるじゃない!」
小鳥「……プロデューサーさん、これはいけます!」
P「ええ! 俺達の団結力にかかれば、ざっとこんなもんですよ!」
はぐれマイクが現れた!
小鳥「みんな、また来たわよ!」
やよい「はいっ!」
貴音「お任せを!」
貴音「はあっ!」
千早「ふっ!」
雪歩「えいやあっ!」
律子「せえいっ!」
やよい「えええいっ!」
貴音の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
千早の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
雪歩の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
律子の攻撃! はぐれマイクに1のダメージ!
やよいの攻撃! はぐれマイクをやっつけた!
パーティーのレベルが15に上がった!
P「おっしゃあ! レベルアップ!」
小鳥「この調子でガンガンやっつけましょう、プロデューサーさん!」
P「ええ! みんなも頼むぞ!」
全員「オーッ!」
七時間後 夢の世界 神殿
女神「せ、成果はいかがですか……?」
小鳥「あの……。女神様、平気ですか?」
P「すみません、無理をさせてしまって」
女神「し、心配には及びません。それより、お仲間の姿が見えませんが……?」
P「ああ、みんなは神殿の外で待たせています」
小鳥「決戦前の、最後の調整ってヤツですね」
女神「そうですか……。ところで、レベルはいくつに――」
P「83です」
女神「な」
P「レベル83まで成長しました」
小鳥「みんな、魔法と技をたくさん覚えたんですよ!」
P「俺以外は、ですけどね……トホホ」
小鳥「プ、プロデューサーさんは、司令塔として頑張ってたじゃありませんか?」
P「勇者が司令塔って、何だかなあ……」
女神「勇者様」
P「何でしょう?」
女神「この勝負、勝ちましたね」
P「……おそらく。油断さえしなければ、ですけど」
女神「ところで勇者様。そのレベルならば、もはや全員で挑む必要はないでしょう」
P「ん? どういう意味です?」
女神「私の魔力消費を抑えるためにも、ここは少数精鋭で――」
P「いえ、全員で戦います」
女神「えー!?」
P「えー!? じゃないですよ! 俺は、確実に勝ちたいんです!」
女神「だって……」
P「だって?」
女神「15人も同時にワープさせるの、正直ツラいんです! キツいのです!」
P「女神様ぁ! この世界の平和がかかってるんでしょーが!」
女神「ですが、ですがぁ!」
P「あーもう! お願いしますよ! これ、あげますから!」
女神「……これは? 何かの紙片のようですが」
P「765プロの、次のオールスターライブのチケットです! タダですよタダ!」
小鳥「ちょーっと待ったあ! プロデューサーさん、何でそれ持ってるんですか!?」
P「色々お世話になったんで、せっかくだから渡しておこうと思いまして」
女神「は、はあ……」
P「あ、サイリウムもあげます! コレ振って応援すると、盛り上がるんですよ!」
女神「で、では……ありがたくいただいておきましょう」
小鳥「……プロデューサーさん。女神様って、私達の世界に来られるんですか?」
P「文字通り、運命の女神様が悪戯してくれるかもしれません!」
小鳥「うーん……。うまい事を言ってるような、そうでもないような……?」
P「ともかく! 俺達765プロは、全員で一つなんです! だから!」
女神「はぅ……。わかりました、何とかします……」
P「お! 本当ですか!」
小鳥「ありがとうございます!」
女神「ただし! もう一度皆さん全員をワープさせるとなると……」
P「なると?」
女神「私は、今残った魔力のほとんどを使い果たすことになります」
小鳥「…………」
女神「もう、勇者様達をここに呼び戻すのは不可能でしょう」
P「……なるほど」
女神「ですから今、この時が、今生の別れとなります」
小鳥「そう、なんですね……」
P「では、今のうちに聞かなければならない事があります」
女神「ドリームオーブの処置について、ですか?」
P「はい。魔王を倒した後、オーブはどうすれば?」
女神「ご安心を。魔王の闇の波動を解き放てば、自然と元ある場所……すなわち」
小鳥「女神様の手に、戻ってくると?」
女神「そういう事です。ですから勇者様は、魔王を倒す事だけに集中してください」
P「了解しました。後の事は、よろしくお願いします」
女神「……失礼ですが、勇者様」
P「はい、何でしょうか?」
女神「昨日までとは、雰囲気が違いますね。まるで、別人のようです」
P「ははは……。そりゃまあ、70レベルも上がりましたからね」
女神「いえ、レベルの問題ではありません」
P「え、違うんですか?」
女神「はい。絶対的な自信が、体中に満ち溢れているように感じます」
P「それはきっと、アイドル達みんなのおかげですよ」
女神「お仲間の……?」
P「ええ。あの子達はいつでも、俺に無限の力を与えてくれるんです」
小鳥「プロデューサーさん……」
P「俺の、誇りですから」
女神「…………」
女神「……私がティンと来た理由、今ならわかる気がします」
P「…………」
女神「勇者様……いえ、プロデューサー様!」
P「……はい」
女神「どうか、どうかこの夢の世界をお救いください!」
P「お任せを!」
女神「さようなら! 675城へワープ!」
ギュイーンギュイーン
P「ありがとうございました……女神様」
小鳥「いよいよ、最後の決戦ですね……」
P「ええ。無理をして送り出してくれた女神様のためにも、負けるわけにはいかない!」
小鳥「大丈夫ですよ、プロデューサーさん。今の私達なら!」
P「勝ちますよ、音無さん!」
小鳥「はい! 絶対に、絶対に勝ちましょう!」
夢の世界 675城
魔王「ふふふふ……。もうすぐ、このドリームオーブは闇に染まる……」
魔王「全ての夢が黒く塗りつぶされるまで、あとわずか……」
魔王「もはや誰にも、止めることなどできん」
魔王「くくくく……はーっははははは!」
P「それはどうかな!」
魔王「む、誰だ!?」
P「俺だ!」
魔王「またお前か!?」
P「ああ、三度目の正直ってヤツだ!」
P「倒させてもらうぞ、魔王!」
小鳥「ドリームオーブ、女神様に返してもらいます!」
魔王「懲りないやつらだ! いいだろう、相手になってやる!」
魔王ナイトメアが現れた!
魔王「何度やっても同じ事よ! お前達二人で何ができるというのだ?」
小鳥「二人じゃないわ!」
P「ああ! 今の俺には、頼もしい仲間がいる!」
魔王「ふん、仲間だと? 今さら一人や二人増えた所で――」
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
魔王「……ん?」
律子「あら? 一人や二人だなんて、誰が言ったのかしら?」
伊織「勝手に人数を決めないでほしいわね!」
やよい「765プロオールスターズ、ただ今参上です!」
貴音「この世界を救いに、現世から推参いたしました。……お覚悟を」
あずさ「この人が、魔王……。邪悪なオーラが、ビリビリ溢れてますね……」
響「でも! 自分達の力を合わせれば、勝てない相手じゃないはずだ!」
真「相手にとって不足無し、だね!」
真美「んっふっふー! ネングの納め時だよ、マオー君!」
亜美「おとなしく、亜美達にセーバイされるのだ!」
雪歩「夢はみんなの宝物……。絶対に、守ってみせますぅ!」
美希「ミキ、わかるの! ミキ達なら、必ずそこの人に勝てるって!」
千早「美希、甘くみてはダメよ! やりましょう、春香!」
春香「うん! アイツを倒して、私達の夢を守るんだ!」
魔王「な、な、何だと……!?」
魔王「な、何なのだ、この数は――」
P「みんな、全力でいくぞ! 一斉攻撃だ!」
真美「オッケイ兄ちゃん! アーユーレディー! スタートスター!」
空からの星つぶてが敵を撃ち抜く! 魔王に156のダメージ!
亜美「花となり散りる! スモーキースリルでどうだー!」
具現化した剣が敵を切り刻む! 魔王に156のダメージ!
響「スタンダップ、ドレスアップ、ライタップ、トライアルダンス!」
響の目にも止まらぬ足技! 魔王に166のダメージ!
雪歩「全て燃えて灰になれぇ! インフェルノオォォォ!」
地獄の業火が敵を焼き尽くす! 魔王に162のダメージ!
貴音「光の外へ想いは向かう……風花!」
溢れる光が敵を射抜く! 魔王に180のダメージ!
千早「ヒュルラリラ……アルカディアぁ!」
吹きすさぶ風が敵を切り裂く! 魔王に144のダメージ!
あずさ「どんな出来事も超えてゆける強さを、私に! 七彩ボタン!」
七色の光弾が敵を貫く! 魔王に184のダメージ!
美希「グッバイメモリー! デイオブザフューチャー!」
未来をつかむ輝く拳が敵の顔面にヒット! 魔王に172のダメージ!
真「届かないメッセージ、不可視なラビリンス……迷走マインド!」
真の言霊が敵の精神を蝕む! 魔王に150のダメージ!
やよい「ホップステップジャーンプ! キラメキラリィ!」
オーラを纏ったやよいの飛び蹴り! 魔王に148のダメージ!
律子「生きていたい、願いが叶うまで! ライヴ!」
永遠の果てから作られた闇が敵を襲う! 魔王に170のダメージ!
春香「そこに跪いて! アイウォント!」
春香のカカト落とし! 魔王に166のダメージ!
伊織「終わらない……終わらせないわ、この夢の世界を! マイソング!」
聖なる波動が敵を包む! 魔王に154のダメージ!
魔王「うお、うおおおおおおおおおっ!?」
P「よし、効いている! あと一息だぞ!」
魔王「ば、馬鹿な……!? こ、こんな、こんなはずでは……!?」
小鳥「一気に決めましょう、プロデューサーさん!」
P「ええ! トドメだ、魔王ナイトメア!」
魔王「おのれ……! おのれおのれおのれおのれおのれぇ……!」
小鳥「繋ぐレインボー! 『空』!」
虹色のカクテル光線が敵に降り注ぐ! 魔王に200のダメージ!
P「りゃああああああっ! プロデューサーパーンチ!」
Pはプロデューサーパンチを放った! 魔王に83のダメージ!
魔王「ぬぐおおおおおおあああああああっ!」
小鳥「ど、どうですかっ!」
P「これが俺達みんなの、絆の力だ!」
魔王「み、認めん……このような、結末……は……」
小鳥「あ……」
P「魔王の体が、崩れていくぞ……!」
魔王「私は認めんぞ……ぐ、ぐあああああああああああああああ!」
魔王ナイトメアをやっつけた!
小鳥「ほ、本当に、倒せたのかしら……?」
あずさ「さっきまで感じた邪悪なオーラは、完全に消えたみたいです……」
伊織「ってことは……私達、勝ったのよね?」
貴音「ええ、間違いなく勝ちましたよ。わたくし達の、完全勝利です!」
雪歩「やったぁ……! やったああああ!」
やよい「うっうー! 夢の世界を守れましたー!」
真「やーりぃ! でも、思ったより手ごたえがなかったなぁ……」
真美「何か、全然大したことなかったよねー!」
美希「まあミキ達にかかれば、楽勝ってカンジ?」
亜美「そーそー! はっきり言って、敵じゃなかったNE!」
律子「こらこらあんた達、あんまり調子に乗らないの!」
千早「そうね。もし、最後のプロデューサーの攻撃で倒せてなかったら……」
響「だな。反撃されて、ピンチになってたかもしれないぞ!」
春香「みんなと一緒だから勝てたんだよ! そうですよね、プロデューサーさん?」
P「ああ、その通りだとも!」
P「みんな! 力を貸してくれて、本当にありがとう!」
ピカッ
小鳥「あ、光が……」
P「おそらく、夜が明けるんでしょう」
小鳥「……そっか。私達、間に合ったんですね」
P「ええ。ドリームオーブのことは、女神様に任せましょう」
小鳥「……そうですね。あの女神様がいれば、きっと大丈夫ですよね!」
P「間違いないですよ! さあみんな! 俺達は、俺達の世界に帰ろう!」
全員「オーッ!」
『ありがとうございました……プロデューサー様』
P「……どういたしまして」
小鳥「ん? プロデューサーさん、何か言いましたか?」
P「ただの独り言ですよ、ただの――」
ピカアアアア
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一か月後 765プロオールスターライブ会場
ワーワー ガヤガヤ ワイワイ ハヤクハジマンナイカナー
P「うひゃあ、にぎわってるなー! ええと、俺の席は……っと」
小鳥「あ、プロデューサーさん! こっちですよ! こっち!」
P「おっと、そっちでしたか! すみません、音無さん」
小鳥「いえいえ! 観客席で観戦なんて、珍しいですね?」
P「いやあ。たまには俺も、ファンの気持ちを味わってみたくなりまして!」
小鳥「うふふ! きっと楽しめると思いますよ!」
P「それにしても俺達、定期的に大規模なライブが開けるようになったんだなあ……」
小鳥「感慨深いですねぇ……」
P「俺がプロデューサーに成り立ての頃からは、考えられません。夢みたいですよ!」
小鳥「うふふ、そうですね! 本当、夢みたい……」
P「あ、そうだ! 音無さん」
小鳥「はい?」
P「夢といえば。『あの時』から悪夢を見た覚えって、あります?」
小鳥「いえ、ないです。楽しい夢なら、毎晩のように見てますけど!」
P「これってやっぱり、『あの人』のおかげなんでしょうか?」
小鳥「ええ! ドリームオーブの力で、私達の幸せな時間を守ってくれてるんですよ!」
P「夢の世界に勇者として召喚され、みんなと力を合わせて魔王を倒した、か……」
小鳥「まるで、おとぎ話みたいですね……」
P「ま、こんなことを他人に話しても、誰も信じちゃくれないでしょうけど」
小鳥「でも社長、信じてくれましたよね?」
P「い、いや……。あの人は、色々と特別なんじゃないかと――」
メールダヨー メールダヨー
P「うおっ、ビックリした!」
小鳥「すみません、私の携帯ですね。あら、噂をすれば社長だわ」
P「あ。そういえば今日のライブ、社長も観客席で見るんでしたね」
小鳥「ええと、会場が広すぎて迷子になってしまった、とのことです」
P「な、なるほど。まあ確かに、この会場広いからなあ……」
小鳥「プロデューサーさん。私、社長を迎えに行ってきます!」
P「了解しました。よろしくお願いします」
小鳥「はい!」
小鳥「それじゃ、一旦失礼しますね! また後で!」
スタスタスタスタスタ
P(ま、始まるまでは三十分ぐらいはあるし、十分間に合うはずだな)
P(さて……と。一人でどうやって時間を潰したもんか――)
女性「あの」
P「え?」
女性「隣の席、よろしいですか?」
P「あ、ああ。どうぞどうぞ」
女性「それでは失礼します」
P(綺麗な女の人だな……ん?)
P「すみません、ちょっとお尋ねしたいんですが」
女性「何か?」
P「いや……どこかでお会いしたこと、ありません?」
女性「……いいえ」
P「でも俺、何か見覚えが――」
女性「気のせいだと思います」
P「そ、そうですか。し、失礼しました」
女性「いえ、お気になさらず」
P(本当に、気のせいなのか……?)
P「……うーん……」
女性「あの」
P「は、はいっ!? 何でしょう!?」
女性「これは、どうやって使うのでしょうか?」
P「ああ、サイリウムですね?」
女性「事前に教わってなかったもので。ごめんなさい」
P「い、いえいえ! そんなに謝らないでくださいよ!」
P「俺でよければ、喜んで教えますから!」
女性「ありがとうございます……」
P「それじゃ、これの使い方ですけど――」
女性「あの時も」
P「え?」
女性「何でもありません。よろしくお願いします」
P「は、はぁ……わかりました。えーっと、まず最初にですね――」
ワーワー ギャーギャー ワイワイ ガヤガヤ
おしまい
以上になります。
アイマスキャラのRPG、やってみたいと思うのは自分だけでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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