男「もう恋なんてしない」(8)

男「しないんだから!」

女「あんた、それ15回目だけど。…いや、16回目か…?」

男「振られた」

女「際ですか」

男「ギャルゲーの選択肢は間違えないのに」

女「現実見ろよ」

男「何で毎回振られるの?俺だって一度は振った側になりたいよ」

女「束縛するし、女々しいから」

男「は?まっ、どうでもいいわ。振った女が悪い!」

女「まぁ、そういう所が嫌われる原因かな」

男「別れ話のエピソード聞く?」

女「うーん……正直、別に聞きたくな」

男「あれは残酷だった」

男「俺の誕生日の日、珍しく彼女が自分から電話を寄越してくれたんだ」

女「うん…」

男「『今からぁ、男君の誕生日パーティー始めるからぁん、私の家に来て欲しいのぉ』って、言われてさ」

男「もう、超絶その声が可愛くて可愛くて、聞いただけで勃起した」

女「そ、そう…」

女(そんな言い方をする人は現実にはいないと思うんだけどな…)

男「俺は嬉しかったよ。いつもツンツンしてる彼女にようやくデレ期が来たんだなって思った」

男「でも、それはとんだ間違いだったんだよ」

女「とは?」

男「別れ話持ち込まれた」

女「あぁ…」

男「それで、俺がキレたら一応お祝いはしてくれるつもりだったのか、用意してたケーキを顔に思いっきり投げ付けられた」

男「お陰で顔中クリームだらけのまま家まで帰る羽目になって、おまけに不審者と間違われたし」

男「信じてたのにマジでキチガイ女だったぜ!くそやろうっ」

女「心当たりは?」

男「何の?」

女「振られた」

男「知らん、俺なんもしてねーし」

男「ただ、ちょっとだけ毎朝好きって書いた紙をポストに入れておいたりだとか、浮気チェックの為に携帯を一時期没収したりとか」

女「……」

男「後、毎日絶対5回はキスするルール作ったりとか、あいつが他の男と喋らないようにちょっとした噂流したりとか」

女「あんたがキチガイ」

男「は?」

女「元カノさんが凄く気の毒なんだけど」

男「別に悪い事してないじゃん」

女「いや、別にあんたのその自分勝手さに縛られてもいいって人には好きにしたらいいけどさ」

女「それ、絶対元カノさん嫌がってたよね?気付かなかったの?」

男「嫌とか言わなかったもん、あいつ」

女「言えなかったんでしょ。あんたが怖くて」

男「……」

女「元カノさん、別れ話切り出した時どんな感じだったの?声色はどうだった?」

男「震えてた」

女「それが証拠よ」

男「怒りに」

女「どう考えても恐怖からの震えに決まってるでしょうが!!」

男「俺はいつだって優しくしてたし、怖がられる理由がねーだろうが!!」

女「あのねぇ…!」

女「優しい、優しくない、の問題じゃないの!!」

男「じゃあどういう問題だよ!!」

女「ちゃんと彼女の様子ぐらい把握しなさい、って言ってんの!」

男「してた」

女「してないから、今の状況があるんでしょ」

男「チッ…」

女「はぁ……」

女(…こんなのが彼氏でよく3年も耐えられたものね。今度の元カノさんは随分と気が弱かったと見る)

男「とにかく、俺はもう恋なんてしないの」

女「まっ、そっちの方が犠牲もなくなるしいいんじゃない?」

男「死ね」

女「ばーか」

数日後





男「好きな人が出来た」

女「反省してる?」

男「してる、してる」

男「って、事でアドバイス頂戴!この間は悪かったからさ!」

男「おねがい~」

女「嫌」

男「……」

女「……」

男「…何でだよ」

女「あんた、ぜぇったい!反省してないもん!」

男「してるってば」

女「してない」

男「何でお前にそんな事決めつけられなきゃならないの?本人が反省してる、ってんじゃん!」

女「……」

男「……」

女「……」

男「……」

女「はあぁぁ………」

女「……っもう!分かったわよ!!」

男「ありがと、今日奢る」

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