雪歩「月見」 (28)
雪歩「真ちゃん、準備出来たよ」
真「うん、こっちも大丈夫!」
雪歩「じゃあ縁側に座って……っと」
真「横、失礼しまーす」
雪歩「えへへ、いらっしゃ~い」
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真「お月見なんて何年ぶりだろう」
雪歩「そうなの? ウチでは毎年やってるんだけど……」
真「うん、ウチは父さんも母さんも忙しかったりであんまりね」
雪歩「そうなんだぁ」
真「だからさ、雪歩にお月見しようって誘われて、結構ワクワクしてたんだよね」
雪歩「えへへ、ただお月様を見ながらお茶をするだけだけどね」
真「それでもさ。こう、雰囲気を楽しむっていうのかな? 凄く純日本的でいいと思う」
雪歩「私達日本人だよ?」
真「いや、そうなんだけどさ……」
雪歩「ふふふっ」
真「ん~っと、だから……って、雪歩。分かってて言ってるでしょ!?」
雪歩「あははは。すごく真剣に悩んでるから、ちょっといじわるしたくなっちゃって」
真「もぅ……」
雪歩「ごめんね真ちゃん。ほら、お団子食べよう?」
真「そうやって誤魔化そうったって…」
雪歩「今日の朝から一所懸命作ったんだぁ~」
真「そうはいかな…」
雪歩「真ちゃんのお口に合うといいんだけど……」
真「いっ…………ただきます」
雪歩「えへへ」
ひょい、ぱくっ
真「あむっ……んむっ……んっく……」
雪歩「どう、かな?」
真「うん、すごく美味しいよ」
雪歩「えへへ、良かったぁ」
真「この中の、あんこが……んむっ……おいひい」
雪歩「ちゃんと小豆から作ったんだよ?」
真「そうなんだ! 凄いなぁ……」
雪歩「そんなこと無いよ、意外と簡単だよ?」
真「でも、あの硬い小豆がどうやったらこんなに柔らかくなるのか……」
雪歩「茹でたら柔らかくなるよ」
真「あ、そっか茹でるのか」
雪歩「うん、それで砂糖と混ぜるだけ」
真「そうなんだ……。知らなかったよ」
雪歩「今度一緒に作ってみる?」
真「え、いいの?」
雪歩「もちろん! お団子作って事務所に持って行こうよ」
真「うん! みんな喜んでくれるといいな~」
雪歩「真ちゃんが作るんだもん、きっと喜んでくれるよ」
真「ボクだけじゃなくて、雪歩もでしょ?」
雪歩「うぅぅ、で、でも……私が作ったって言うより、真ちゃんの手作りだよって言ったほうが
みんな喜ぶんじゃないかな……?」
真「そんな事あるわけないだろ? 二人で作りましたって言えばいいし、みんな喜んでくれるって」
雪歩「うぅ~、だといいんだけど……」
真「っていうか、雪歩が一緒に作ろうって言ったのにどうしてボクが雪歩の事を励ましてるのさ?」
雪歩「ふぇ? ど、どうしてだろう……?」
真「ぷっ……あははは! 変なの~!」
雪歩「ふふふっ。そうだねぇ~」
真「はぁ~、笑った笑った」
雪歩「楽しいね」
真「うん!」
雪歩「あ、そういえば全然お月様見てないね」
真「確かに! 雪歩とお団子しか見てなかった」
雪歩「私も真ちゃんとお団子しか見てなかったよ」
真「お揃いだ」
雪歩「ふふっ、そうだね。でも折角真ちゃんがすすきとか取ってきてくれたんだから
ちゃんとお月見しよう?」
真「お月見にちゃんとしたのがあるのか分からないけど、そうしよう」
雪歩「まん丸だねぇ……」
真「うん、薄く雲がかかってて何かいいね」
雪歩「月明かりがぼやけて広がって、少し青みがかってて」
真「そうだ!」
雪歩「?」
真「へへっ。ほら、お団子ってまん丸でしょ? だからコレをこうやってお月様に重ねて……はむっ」
雪歩「食べちゃった」
真「んぐ……んむ……ぷぁ~。お月様を食べちゃった気分に!」
雪歩「ふふっ、あははは、面白いね! あはははっ」
真「雪歩もやってみなよ」
雪歩「う、うん。ふふっ。えっと、お団子をお月様に重ねて……あむっ」
真「どう?」
雪歩「はむ……んく……ぷぁ……うん、何かホントにお月様を食べちゃった気分になるね」
真「でしょ!?」
雪歩「うん」
真「へへっ。765プロの中でもボクと雪歩だけだよ、お月様を食べたのは」
雪歩「四条さんに言ったら驚きそうだね」
真「あぁ、確かに! まぁ、流石に分かるだろうけど」
雪歩「ふふっ」
真「貴音は良く月を見上げてるからね」
雪歩「凄く画になるんだよねぇ」
真「うんうん」
雪歩「四条さんの持ってるミステリアスな雰囲気と、お月様の静かな光が四条さんの銀色の髪と相まって
厳かで神々しさすら…」
真「ゆ、雪歩……?」
雪歩「はっ!」
真「どうしちゃったの、雪歩?」
雪歩「い、いや、これは……」
真「何か貴音について凄く語ってたけど」
雪歩「はぅ~~。こ、こんな恥ずかしい私は……穴掘って埋まってます~~!!!」
真「え、えぇぇぇ!? ちょ、ちょっと雪歩!?」
ずががががががががが!!!!!
真「あっという間に埋まっちゃった……って助けなきゃ! 雪歩!」
雪歩「いいんです~、こんなダメダメな私は埋まってた方が良いんです~!
ほっといてください~!」
真「出来るわけ無いだろ!? ほら雪歩」
雪歩「うぅぅ、真ちゃん……」
真「別に雪歩はダメなんかじゃないよ。それに、友達の事をあんな風に熱く語れるなんてボクは良い事だと思うよ」
雪歩「そ、そうかな……?」
真「うん」
雪歩「そ、そっか……えへへ」
真「さ、早くこっちに」
雪歩「うん……あ」
真「え?」
雪歩「あのね、真ちゃん。穴の中からだと、街灯とかの明かりに邪魔されないからお月様が凄く綺麗に見えるんだね」
真「え、そうなの?」
雪歩「うん! ……真ちゃんも来る?」
真「え? あ~、じゃあ」
雪歩「ちょっと狭いかもしれないけど」
真「ん、大丈夫みたい」
雪歩「良かったぁ」
真「わぁ……!」
雪歩「綺麗だよね」
真「凄いね、縁側で見てたよりも月明かりがくっきりと感じられるね」
雪歩「うん、そうだねぇ」
真「本当に、月が綺麗だ……」
雪歩「あ……」
真「ん?」
雪歩「ふふふっ、月が綺麗ですねって」
真「ん、あぁ、夏目漱石だっけ」
雪歩「うん」
真「いつかステキな王子様に言われてみたいなぁ」
雪歩「最近は月が綺麗ですねだけがひとり歩きしちゃってるけど、本当は貴女と居るとっていう言葉が入るんだよ」
真「え、そうなんだ」
雪歩「うん、貴女と一緒に見るから綺麗なんだって」
真「それが I Love You なんだね」
雪歩「凄く綺麗な言葉だよね」
真「うん、そうだね……ところでさ、雪歩」
雪歩「なぁに、真ちゃん?」
真「ボクも勢いで穴の中に入っちゃったけど、どうやって出ようか……?」
雪歩「あ……」
真「流石にこの深さだと雪歩をおぶってとかは無理だよ……?」
雪歩「ど、どうしよう……!?」
真「電話とか持ってないの?」
雪歩「お部屋に置いてきちゃった……」
真「ボクも雪歩の部屋に置いて来ちゃったなぁ……」
雪歩「だ、誰か~! 誰かいませんか~!?」
真「わっ! 穴の中だと響くなぁ」
雪歩「真ちゃんも手伝ってぇ!」
真「分かった。誰か~! 助けてくださ~い!」
――――――
――――
――
真「――――って事があってさ。大変だったよ」
貴音「なるほど、苦労したのですね」
雪歩「はぅ~、ごめんなさい……」
貴音「それで、どのようにして穴の中から出たのですか?」
真「雪歩の家のお弟子さん達が数人がかりで助けだしてくれてさ、二人して怒られちゃったよ……」
雪歩「私はその後お父さんにも怒られました……」
貴音「そうでしたか。しかし、皆二人の身を案じて叱ってくれたのでしょう、その事を忘れてはなりません」
雪歩「はい……」
貴音「それはそうと、気になったのですが」
真「はい?」
貴音「二人が食べてしまったのです、もしや今宵は月が昇らないのでしょうか……?」
二人「…………え?」
貴音「……はて?」
おしまい
終わりです。
少し遅いですがお月見してる二人ののほほんとしたのが書きたかったんです。
穴の中からだと月が綺麗に見えるかどうかは知りません、適当です。
少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
それではお目汚し失礼しました。
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