苗木「ねぇ不二咲クン、クリエイターってどうやったらなれるのかな?」
不二咲「ええ? いきなりそんなどうしたのぉ……?」
苗木「いや、不二咲クンってプログラマーだからそういうの詳しいと思って……」
不二咲「うーん……そう、かなぁ?」
苗木「お願い! ボクは早急にクリエイターにならなきゃいけないんだ! だからどうしたらクリエイターになれるか教えてよ!」
不二咲「……ちょっと部屋で話そっか」
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不二咲「えっと、つまり霧切さんに見栄を張っちゃったんだね? 彼女が記憶喪失なのをいいことに」
苗木「うん……ボクは『超高校級のクリエイター』だ、なんて言っちゃったんだ……」
不二咲「どうしてそんなことを?」
苗木「だ、だって、『超高校級の幸運』だなんて役に立つのかわからない才能なんて……それに、この学園に入ってからは別に幸運でもなんでもないし!」
苗木「結局……ただの普通な人間なんじゃないかって、思ったら……せめてまだ何も知らない霧切さんには――」
不二咲「霧切さん、可愛いもんねぇ」
苗木「なっ、そ……そういうんじゃ……(ない、とは言い切れない。ああ、不二咲クンに軽蔑されちゃうかな……)」
不二咲「でもね、苗木君。現実の女の子にどうこう思われたって別にいいじゃない……」
苗木「え……不二咲……クン?」
不二咲「あ、ううん。なんでもないよぉ。それより本気なの? クリエイターになりたいって言うのは」
苗木「うん、本気なんだ。お願いします!」
不二咲「いやいや、そんな改まって頭も下げる必要なんてないよ。それで、苗木君は何が作りたいの?」
苗木「え? 別に作りたくは……クリエイターになりたいだけで」
不二咲「ただのクリエイターなんてものは存在しないんだよぉ。だいたい『超高校級のクリエイター』ってなに?」
不二咲「僕の『プログラマー』も山田君の『同人作家』も、腐川さんの『文学少女』だってクリエイターの一種なんだから!」
苗木「そ、そうなんだ……」
不二咲「そういうのを全部できるようになりたいの? 違うよね? だから、何を作りたいのかって聞いてるんだけど」
苗木「……クリエイターって肩書き付けばなんでもいいよ」
不二咲「ぐっ……! ま、まぁいいよ。じゃあ苗木君、君は何が得意なの?」
苗木「何って言うと?」
不二咲「絵を描くだとか、小説を書くだとか、音楽を作るだとか、そういうのだよぉ」
苗木「どれも……普通?」
不二咲「……」
苗木「不得意っていうわけじゃないけど、とても超高校級だなんて名乗れるものはないよ……」
不二咲「この際超高校級かどうかはいいよぉ。この学園にだって自称超高校級や、別の才能で入った人にあらゆる意味で負けてる人だっているんだし」
苗木「あ、あれ……不二咲クン、割と辛辣なことを言うんだね……」
苗木「……あ、ところでそれはなに? パソコンに女の子が映ってるみたいだけど」
不二咲「これ? これはね、今度作るAIの試作品だよぉ。ゲーム形式にしてプレイヤーに楽しんで学習させてもらえるようにしようと思ってるんだけど……」
苗木「ゲーム……? プログラマーってそんなことも出来るんだね、すごいなぁ」
不二咲「うーん、それが技術的なことはなんとかなるんだけど、他がちょっとイマイチなんだぁ」
苗木「『超高校級のプログラマー』でも、なんでも出来るってわけにはいかないんだね……」
不二咲「当たり前だよぉ。今度山田君に頼んでみようかなぁ、本当は『超高校級のゲームクリエイター』とかいればいいんだけど……」
苗木「ゲームクリエイター……? それだ!!」
苗木「不二咲クン! ボクと一緒にゲームクリエイターを目指そうよ!」
不二咲「あのね苗木君、ちゃんとしたゲームっていうのは専門の技術を持った職人がたくさん集まって、やっと作れるものなんだよ。素人には無理なんだ」
苗木「そこをなんとか」
不二咲「無理なものは無理だよぉ」
苗木「でも、不二咲クンだってさっき山田クンに頼んでゲームを作るって言ってたじゃない」
不二咲「それはあくまでみんなにAIを学習させてもらう為のゲームだからねぇ。とてもゲームとして出せるようなものではないよぉ」
苗木「そこをなんとか!」
不二咲「だいたいね、女の子に見栄を張りたいとかそんなことで、とても続けていけるわけがないと思うんだ……」
苗木「そんなことはないよ! それに、霧切さんのことだけじゃない。ボクは将来が不安なんだ! 学園始まって以来、初の成功しなかった卒業生……なんてことになるんじゃないかって」
不二咲「他のことを目指した方がいいと思うよぉ」
苗木「それは違うよ!」
苗木「とにかく今! きっかけはどうであれ、できることはやりたいんだ!」
不二咲「……本気なんだねぇ」
苗木「もちろんだよ! ボクは本気だ!」
不二咲「なら、たったひとつだけ、苗木君でもゲームクリエイターになれる方法があるよ……」
不二咲「でもそれは、きっと苦痛と後悔と絶望に塗れた茨の道だよ。それを苗木君みたいな普通の人じゃ――」
苗木「どんなことでもやって見せるよ!」
不二咲「本当に? 途中でやーめたなんていうのはなしだよぉ?」
苗木「うん! ボクは諦めたりしない、投げたりしない、辞めたりしない! 絶望なんかしない!! だって、人よりちょっとだけ前向きなのが、ボクの唯一の取り柄なんだから」
不二咲「……わかったよ、そこまで言うなら一緒にやろう。僕が本当に作りたかったゲームを……」
不二咲「いい? 苗木君。今のゲーム業界は大きくなりすぎたんだ。美麗なムービー、計算されたシステム、練られたシナリオ、とても素人には手が出せない。ファミコンの時代とは違うんだ」
不二咲「でも、さっきも言ったように方法はあるんだ。予算もない、技術もない、時間もない、人数もいない、そんな人達でも通用する方法が。数十枚のCGがあって、キャラクターとシナリオさえあれば、今のゲーム業界でも通用するジャンルがあるんだよぉ」
苗木「そ、そのジャンルって……?」
不二咲「プログラムは僕がやるとして、音楽はフリー素材がいくらでもある。CGは僕も多少は描けるけど、山田君に頼んだらもっといいかな。あとは……苗木君には、シナリオを書いてもらうよ」
苗木「(シナリオ? ド○クエとかF○みたいなのをでっち上げればいいのかな?)」
苗木「うん、ゲームのシナリオぐらいならなんとかなりそうだよ。それでそのゲームのジャンルって?」
不二咲「期待してるよ苗木君! CGとシナリオさえ良ければ口コミで広がって、きっと売れるよ。それでゆくゆくは商業デビュー、会社だって作れるかもしれない!」
苗木「え、会社? そんな凄いんだ……それで、そのゲームのジャンルは?」
不二咲「頑張ろうね苗木君!」
苗木「う、うん……」
不二咲「ここまで聞いたからには後戻りは許さないよ?」
苗木「も、もちろんだよ」
不二咲「じゃあ握手しようか! 僕達は仲間だ、運命共同体だ」
苗木「うん」
不二咲「未来のクリエイターに乾杯!」
苗木「乾杯! それで、そのゲームのジャンルは……?」
不二咲「エロゲーだよ!」
不二咲「それで資料だけど、これとこれと……あとこれは全シリーズやっとくべきかなぁ。あ、あとこれも忘れちゃいけない!」
不二咲「とりあえず僕の選んだベスト10だけだけど、この中からいくつかプレイしてみてねぇ」
苗木「ま、待ってよ不二咲クン! エ、エロゲーって……そんなの」
不二咲「そんなのぉ?」
苗木「だ、だいいち霧切さんに言えないよ。かえって軽蔑されちゃうんじゃ」
不二咲「……ねぇ、苗木君。苗木君はエロゲーをやったことあるのぉ?」
苗木「い、いや、ないけど……」
不二咲「言い方が気に入らないなら、美少女ゲームでもいいよ。R18ゲームでもいいし。とにかくエロいゲームだよ、18歳未満者購入・使用禁止のゲーム」
不二咲「エロゲーこそが究極にして至高のゲーム、僕達に残された唯一の道なんだよぉ。エロゲーでビックリエイターになろう、エロゲーで超高校級のみんなを見返してやろう、エロゲーで将来安泰だよ、エロゲーで世界に希望を!!」
苗木「で、でも……僕達の年齢じゃそういうのダメな」
不二咲「この物語の登場人物は、みーんな18歳以上だよ☆」
人より前向きなボクが、早くも逃げ出したくなっていた……誰か、助けて。
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