P「ミュージック」 (36)
SS2本目の挑戦です。お手柔らかにお願いします。
↓を先に観ておいた方がいいかも…?
https://www.youtube.com/watch?v=iVstp5Ozw2o
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407411060
なお、このスレは先日建てたものの「出直し」となります。よろしくお願いします。
先に主な内容を。
・アイマスSS
・Pが残業します
・アイドルは夜を過ごしています
以上。
_深夜の事務所
ガチャ
P「…………」スイッチパチッ
シーーーーーーーーーーン
P(誰もいないな)キョロキョロ
P(打ち合わせが長引いたからな…社長と音無さんも帰っちゃったか)
P(みんなは…さすがにもう家で寝てるかな)
P(さて…)スタスタ…イスニコシカケ
P(今日も一人で残業か)PCスイッチオン
カタカタカタカタカタ…
カタカタカタ…カタッ
P「ふぅ…」
P(音楽でも聴くか)
P(おっ…あんなところに)スタスタ
コンセントブスッ
(レッスン用のCDプレーヤー)
P(みんなの曲を聴くのもいいが…今日はこれにしよう)CDスチャ
P(おっと、このままだと近所迷惑だな…ヘッドホン装着っと)スッ
P「っし…もうひとふんばりだ」
ガチャ
P(♪ ♪ ♪ ♪)
カタカタカタカタ…
P(ちょっと音大きいかな)クルクル
夢を見ていた。
カタカタカタカタ…
みんなが私を見ている。
カタカタカタッ
ここがステージならみんなに手を振るだろう。
でも、ここはステージじゃないし、いつものリボンは付けてないし、何よりみんな私を応援しているようには見えない。
カタッカタッ
無表情で、微動だにせず、ただ私を見つめている。
怖くなった。私は逃げだした。そこで目が覚めた。
まだ真っ暗だ。喉が渇いた。
P(♪ ♪ ♪ ♪)チラッ
眠れなかった。
特に思い当たる節はない。ただ、なんとなく眠れなかったのだ。
こんなとき私は本を読む。
P(~♪)
いや、正確には本ではない。今度の新曲の楽譜だ。
音符一つ一つを読み、歌詞の一字一句を、ゆっくりと咀嚼する。
いつものソファに寝転がり、ランプの明かりをつけ、楽譜を読む。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
…誰かに見られている気がした。
そんなはずはない。この部屋は自分しか住んでいないのだから。
少し気味が悪くなった。今日はもう寝よう。眠れなくてもベッドに入っていればいい。
カタカタカタカタカタ…カタッ
ランプのスイッチに手を伸ばした。
カタカタカタカタカタ
目が覚めた。
カタカタカタカタカタ
ベッドではない。ソファの上だ。
カタカタカタカタカタカタ
目の前のテレビが行きかう人を映している。
カタカタカタカタカタカタカタ
少しずつ思い出す。独りでテレビを観ていたが途中で寝てしまったようだ。
カタカタカタカタカタカタカタカタ
亜美はもう寝たようだ。早くベッドに入って寝よう。でもその前に。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタ
目の前のテレビに歩みを進める。
カタカタカタカタカタカタ…カタッ
怖かった。
内緒で遅すぎるお風呂に入っていることだけではない。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
はっきり言って、自分は貧相などうしようもない、ただの一人の少女だ。
みんなが、プロデューサーが、両親が、家のお弟子さんたちが、
私を応援してくれていることは分かっている。
P(時間は…まだ大丈夫だな)チラッ
でも、そこにある期待が怖くて。応えられない気がして。
P(~♪)
どうすればいいか分からなかった。逃げるように、視線を上に向けた。
カタカタカタカタッ、カタカタッ
P(ふむ…)ポリポリ
許せなかった。
いつもと同じ、父さんとの口喧嘩。
堂々巡りの口論がイヤになって、外に飛び出した。
すぐに戻る気になれなくて、そのまま河川敷を走る。
P(~♪ ~♪ ~♪)
いつだって同じ口喧嘩。でも慣れなくて。
適当にあしらえばいいのに、部屋にでも篭ればいいのに。
P(~♪ ~♪)カタカタッ
また外に飛び出して。河川敷を走って。
その頃には、怒りはもう収まっていて。
また、家に帰っていく。
カタカタ
分からなかった。
もっとキラキラしたい。
おにぎりをたくさん食べたい。
イチゴババロアも捨てがたい。
もっとラクしてトップアイドルになりたい。
P(~♪ ~♪ ~♪ ~♪)
選びきれなくて。分からなくて。
どうでもよくなって、さっさとベッドに入って眠りに落ちる。
悩んでいたことなんて、眠ることで忘れてしまって。
P「ふぅ………」
P(………)
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
考えていた。
キーボードを叩き、考える。
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
言うまでもなく、仕事のことだ。
深夜に事務所でやるとプロデューサー殿に追い出されてしまう。
なので、少し家に持ち帰っている。
『カワハナガレル』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
しかし、思うように進まない。
営業、衣装、演出、レッスン…
あの人のように、上手くいかない。
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
諦めた。今日はもう寝てしまおう。
明日また考えればいいのだから。
『マダミエテナイ マダミエテナイ』
諦めたことが悔しくて、
諦めきれなくて、
また、PCに向かってしまう。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
見えなかった。
朝起きて、朝ご飯食べて、いっしょに事務所に行って。
『消えた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
別々の仕事に行って、歌って踊って、レッスンもして。
帰ってきて、晩ご飯食べて、お風呂に入って、寝る。
『カワハナガレル』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
『消えた』
そんな日常は、いつまで続くのだろう。
やることは分かっているつもりだった。でもその先がまだ見えない。
P(♪ ♪ ♪ ♪)
先が見えないことが、どこか怖かった。
『マダミエテナイ マダミエテナイカラ』
P「ふーーー…」ノビー
P(コーヒーでも淹れるか)
コポコポコポコポコポ…
疲れていた。
ズズ…
P(打ち間違いは無いかな…)ズイッ
バスルームから出て、身体を拭く。
手がおぼつかなくて、あちこち濡れたままだ。
髪を乾かす気力もない。
いつもならいぬ美たちに構ってやれるが、今日は勘弁してほしい。
ベッドに倒れこむ。
意識が薄れる中で、投げっぱなしの洗濯物が最後に見えた。
イヤになった。
相変わらず子ども扱いして。
コト…
自分のすごさを認めようとしなくて。認められなくて。
勢いに任せてベッドに飛び込む。
カタカタッ カタッカタッ カタカタッ
そばにシャルルがいなかった。でも今日はそんなことはどうでもよかった。
見るとなぜか向こう側に投げられている。まるで、
P(♪ ♪ ♪ ♪)
こんな自分を見ていたかのように。そこにいた。
P「あー…肩いてぇ…」モミモミ コキッ コキッ
P「うわ…もうこんな時間か」
P(早いところ終わらせないと…)
ピロリンッ
P(メール…?こんな時間に?)
スッスッ
P(あずささん…まだ起きてたんですか)
P(………)
P「早く寝ないと明日に響きますよ…っと」スッスッ
P(って…それは俺も同じか)
P(あともう少し…)
ピロリンッ
P「返信はやっ!」
P「…あ、違う。生っすかのディレクターさんか」
スッスッ
不安になった。
アイドルのお仕事が忙しくなって、家事仕事を手伝う機会が減った。
今は長介やかすみ、浩太郎に浩司まで、総出で家事を手伝っている。
スッスッ スッスッ
P フム…
アイドルのお仕事に専念できるように、助けてくれていることは嬉しい。
でも、ときどき、今みたいに不安になる。
このままでは、自分は家での立ち位置を失ってしまうのではないかと。
スッスッ スッスッ カチッ
頭を振る。そんなことはない。大丈夫だ。
不安を振り払うように、布団にもぐりこんだ。
寂しかった。
P(よいしょっと…)コシカケナオシテ
目が冴えてしまって。誰かと関わりあいたくなって。
(~♪)(~♪)P「ふぁ……」
なんとなくメールをした。
返信の中身は、自分を労ってくれる言葉だった。
嬉しかった。温かみを感じた。
いい具合にまどろんできた。いい夢が見られるかもしれない。
『触れた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
眺めていた。
今宵は綺麗な月明かりだ。
『触れた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
頬に当たる心地よい風もこの雰囲気に一役買っている。
こんな夜はいつ以来だろうか。
『ヨルハナガレル』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
暗闇を照らす月明かりは、自らの秘密をも顕にしてしまいそうだ。
でも、今宵だけなら…月になら、その秘密を明かしてもいいかもしれない。
『触れた』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
……………ふふっ。
『ナイテハイナイ ナイテハイナイ』
『触れた』
P(……………)
夢があった。
13人の少女たちを、トップアイドルに導く。
道端で突然、初老の男にスカウトされて、みんなに出会ってからの、夢。
『触れた』
P(……………)
必死になって営業をこなして、
嬉しいことがあったらいっしょに喜んで、
悲しいことがあったらいっしょに泣いて、
『ヨルハナガレル』
なんでそこまで頑張れるのかって?
そうだな…アイドルがアイドルをする理由に似ているのかもしれない。
『君が』
…なんで、そう見えたんだろうな。
『ナイテイタ ナイテイタカラ』
アイドルになりたい。
自分を変えたい。
もっと可愛くなりたい。
『振り返った 季節に立って』
カタカタカタカタカタカタ
この場所には、たくさんの願いが詰まっている。
たくさんの願いが、ここで叶った。
その記憶は、もう数え切れない。
『思い出せなくて 嫌になって』
カタカタカタカタッ カタッ カタカタッ
でも、願いの為に、苦しんだことも、泣いたこともあった。
その度に、みんなで乗り越えてきた。
『流れ流れてた 鳥だって』
カタカタカタカタカタカタ
いや、だとしても、どんなに乗り越えても、
まだ、俺の見えない所で、
少女たちは、泣いているのかもしれない。
『街で鳴いてたろ』
カタカタッ
P(あとちょっと…)ウデマクリ
『鳴いてたろ』
カタカタッ
カタカタカタカタカタカタ
『過ぎ去った 季節を待って』
ちっぽけな願いを持って、この場所の門を叩いたあの日。
あの日だけは、鮮明に覚えている。
ポリポリ
『思い出せなくて 嫌になって』
カタカタカタカタカタカタ
叶った夢、叶わなかった夢。
叶わなかったことに、何度泣いたのだろう。
でも、ただ「願う」だけだった自分を
カタカタカタカタカタカタ
『離ればなれから 飛びたって』
カタカタカタッ カタカタッ カタッ カタッ
「叶えたい」って思わせてくれたのは
他でもない、「あなた」なんですよ。
『鳥も鳴いてたろ』
P(『鳴いてたろ』♪)
_プロデューサーさん!
_プロデューサー。
『いつだって僕らを待ってる』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
_兄ちゃん!
_プロデューサー!
_へへっ、プロデューサー!
『疲れた痛みや傷だって』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
_ハニー!
_プロデューサー殿!
_兄ちゃん!
『変わらないままの夜だって』
P(♪ ♪ ♪ ♪)
_はいさーい!プロデューサー!
_プロデューサー!にひひっ♪
『歌い続けるよ』
_うっうー!プロデューサー!
_プロデューサーさ~ん
_あなた様。
『続けるよ』
『いつだって僕らを待ってる』
P(~♪)
ここから先の未来。
それは、誰にも分からない。
何度も泣くことが、あるかもしれない。
『まだ見えないまま ただ待ってる』
P(~♪~♪)
でも、それと同じくらい、
笑っていけるかもしれない。
なら、これから先、みんなで笑いあう為に、
『だらしなくて弱い僕だって』
誰かがひっそりと泣いていることにも気づけない俺でも、
俺であったとしても。
『歌い続けるよ』
『続けるよ』
P「ふぅ……やっと終わった…」ノビー
P「ふぁ~ぁ…いま何時だ…?」チラッ
時計<A.M. 3:40>
P(うわぁ…もう夜明け前じゃないか…)
P(……………)
何も、変わっていない。
投げっぱなしの俺のスマホ。
付けっ放しの電気。
丸めたクシャクシャの書類。
電源の落ちたパソコン。
そして…目の前の俺のデスクと椅子。
いろんなことがあって、いろんなことが変わった。
でも、この場所は変わっていない。
P(このまま寝てしまおうかな…気休め程度だろうけど)
眩しかった。
いつもの朝が今日もやってきた。
顔を洗って、朝ごはんを食べて、
身支度をして。
今日も、あの場所に行く。
自分の「願い」を叶えるために、あの場所へ行く。
みんなと楽しく過ごすために。
自分の歌を極めるために。
楽しいことを見つけるために。
自分を変えるために。
もっと可愛くなるために。
もっとキラキラするために。
憧れの人に追いつくために。
イマをもっと楽しむために。
カンペキになるために。
見返すために。
みんなの助けになるために。
運命の人を見つけるために。
それはトップシークレットですよ。
さあ、今日も前に進もう。
悲しいことも、辛いことも、きっと乗り越えられる。
きっと、みんなと笑いあえる。
新しい一日が、始まる。
P「すぅ…」Zzz
終わりです。ありがとうございました。
最後に最初に貼り付けたものをもう一回。
この曲が題材となっております。
サカナクション「ミュージック」MUSIC VIDEO
https://www.youtube.com/watch?v=iVstp5Ozw2o
こちらは初めてのSSです。よかったらどうぞ。
千早「プラネタリウム」
千早「プラネタリウム」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405873251/)
先ほども書きました通り、このSSは建て直したものです。手違いが重なって収拾がつかなくなってしまい…
建て直し前から見てくださっていた皆様、今日見てくださった皆様に心からの感謝を。ありがとうございました。
書くかどうか分かりませんが、
「春香×アイデンティティ」とか妄想してます。鬱エンドの予感しかしなくて困ってます。
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