紳士「時間を売りませんか?」(20)

いつものように起き
いつものようにご飯を食べ
いつものようにpcをやり
いつものように寝る

高校で虐めにあい、引きこもりの生活を続けていた

男「つまんねぇなぁ……」

男「……そろそろかな」

「おーい!」

男「……」

「早く顔出しなよー!」

「……また明日来るからねー!」

男「……はぁ、何か緊張した」

不登校になってから、隣家の幼馴染が毎日声をかけてくれる

それが男の些細な楽しみでもあった

男「いつもいつも来てくれて、健気だねぇ」

男「しかしホント暇だな」

男「……学校にでも行こうかな」

ーおいきめぇんだよ
ーお前が盗んだんだろ変態?
ーくっさ! 近寄るな豚!

男「……別に太ってないんだけどな……」

男「盗んでもないし毎日風呂入ってるし……」

男「何でこうなったんだろ……」

男「暇だな……」

ふと背中に気配を感じた
この部屋には男1人
嫌な妄想をしながら振り向いた

するとそこには老紳士が立っていた

男「うわぁっ!」

紳士「おや、これは失礼」

綺麗なお辞儀をし、諭すように話し掛けてきた

紳士「少々お時間よろしいですかな?」

男「……」

男「あ、あんたは……」

紳士「私は人々に時間を売ったり買ったりしてる者です」

男「……は?」

紳士「口で説明してもわかりませんな」

紳士「今から2時間をお売りいただけませんか?」

男「……」

紳士「百聞は一見に如かず、それにお売り頂く方には何もデメリットもございません」

紳士「強いて言えば……あなたの2時間失う、という形です」

男「その……2時間は?」

紳士「失われたあなたの2時間は、あなたの一番大切なものにその時間だけ苦痛を与えます」

男「大切なもの……?」

紳士「物でも、人でも」

紳士「あなたが一番大切にしている事です」

男「……売るっていうことは金が手に入るのか?」

紳士「えぇ、お売りいただいた分、お支払いします」

紳士「と言っても私が出すのではないのですがね、ふふふ」

男「……何で俺のとこに?」

紳士「時間を持て余していたので」

男「……本当に俺に害はないんだな?」

紳士「えぇ」

男「…………わかった、2時間売る」

紳士「ありがとうございます」

回りが暗くなり、そしてすぐ明るくなる

時間はきっちり2時間進んでいた

辺りを見渡すと、老紳士の姿はなく
机の上には暑い札束が置いてあった

男「……マジかよ」

男「…………」

男「一番大切なものが……2時間か、2時間苦痛を……」

男「……母さんはもういないし、親父は……」

男「……いや、カチャカチャ聞こえるから大丈夫か」

男「他に大切な……」

男「hd?」

男「…………問題ない」

男「……ま、いいか」

男「その内気付くだろうし、今は欲しいゲームでもポチろう」

ごめん、少しずつやってくとえらい長くなるから今は我慢してくれ

翌日

男「うおっ、このゲーム神だ!」

男「……はぁ? 何でフリーズすんの? クソゲーだな」

男「……んー……」

男「そろそろかな」

男「……」

男「……」

男「……」

男「あれ?」

男「幼馴染……今日来ないのかな」

男「まぁいいか、あいつも忙しいんだろう」

2時間後

幼馴染「おーい」

男「今ごろ来たのか」

幼馴染「出ておい……」

男「ん?」

幼馴染「っ……出ておいでー!」

幼馴染「出て来ないなら夜中までいるぞー!」

男「……」

幼馴染「……全く」

男「……行ったかな」

男「今更会わす顔なんてないよ」

男「風呂入ってこよ」

深夜

男「はぁ、金があったっつっても10万だもんな」

男「欲しいもの買ったら足りないぐらいだわ」

男「……また売ろうかな」

紳士「いいですよ」

男「おおぅ!」

紳士「おっと、これは失礼」

紳士「次はどれ程お時間を売りますか?」

男「……そうだな、朝までだから、4時間」

紳士「ほっほっほ」

男「何かおかしいか?」

紳士「いえいえ、心配なだけですよ」

男「?……じゃあ頼んだ」

紳士「ありがとうございます」

また明日

翌日

男「……ん」

男「おぉ……」

男「1、2、3……」

男「15万……」

男「2時間で10万、4時間で15万?」

男「まぁいいか」

男「さて……久々に外で遊ぶかな」

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