プルルルル…!
サンバンセンニマイリマスデンシャハ…
毎朝毎朝同じ電車に乗って、仕事に行く。
時々、線路に飛び込みたくなる時がある。
そういう時はいつも、あの声が聞こえてくる。
保険屋「死にたいのおじさん? えーとちょっと待ってね、計算するから」
俺にしか見えないらしい女は、カタカタと計算機を叩く。
保険屋「えーと、今のプランだと、生命保険が一千万。受取人は奥さんだったよね」
保険屋「でもね、大事なこと忘れてる」
保険屋「自殺じゃ、保険金はおりないから。飛び込みなんてやめときなよ、折角毎月払ってるのに、一円も返ってこないよ?」
電車がホームに突進してくる。俺は最期の一歩を、踏み出さなかった。
男「ああ、今日もやめておくよ」
今日も同じ電車に乗って、仕事に行く。
保険屋「いってらっしゃい」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406121995
営業先から直帰する途中、スマートフォンに着信があった。
聞いたことも無い名前の病院からだった。
「 」さんの旦那さんでいらっしゃいますか、という事務的な質問。
男「交通事故…?」
タクシーに乗り込み、聞いたばかりの病院の名前を運転手に言う。
保険屋「じゃあプランの確認をしまーす」
いつの間にか、後部座席の隣に女はいた。
保険屋「被扶養者に怪我や病気があった場合、入院一日あたり最大3万円を保証。手術は100万円まで」
保険屋「おっと残念、おじさんの選んだプランだと、被扶養者が死亡した時の保証はないね」
保険屋「死んでないといいね。葬式にもお金がかかるし」
男「少し、黙っててくれないか?」
保険屋「ご機嫌斜めだね。もしかして、お腹にいる赤ちゃんの方が心配?」
男「何だと」
保険屋「睨まないでよ。気付いてないかもしれないけど、おじさんの目って怖いよ」
保険屋「まるで、死にかけの犬みたい」
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