501基地 食堂
芳佳「みっちゃんは今年もあの神社のお祭りに行くのかなぁ」
美緒「どうした、宮藤。気になる日付でもあるのか?」
芳佳「あ、いえ。もうすぐ扶桑では夏祭りが行われる時期じゃないですか。それをふと思い出して」
美緒「少し早くないか?」
芳佳「えー。私は毎年この時期からソワソワしちゃいますよ」
美緒「はっはっはっは。子どもだな」
芳佳「子どもですから……」
美緒「そうむくれるな。私も扶桑にいるときはよく言ったものだ。懐かしいな」
芳佳「そうなんですか? 坂本さんは何をしてました? 私は金魚すくいとか、輪投げとか」
美緒「……」
芳佳「坂本さん?」
美緒「ふっ。思えば、私を大人にしてくれたのは縁日の夜店だったな……」
芳佳「坂本さん、縁日で何があったんですか……?」
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美緒「はぁ……」
芳佳「あの……」
ミーナ「あら、扶桑の者同士でなにしてるの?」
芳佳「ミーナ中佐。それが……あの……」
ミーナ「え?」
美緒「……」
ミーナ「坂本少佐?」
美緒「はぁ……」
ミーナ「どうにも元気がないみたいだけど、何かあったの?」
芳佳「それがよく分からないんです。さっきまで扶桑のお祭りの話をしていたんですけど、急に坂本さんが落ち込んでしまって」
ミーナ「そう。何か嫌な思い出でもあったんじゃないかしら?」
芳佳「そうなんですか、坂本さん?」
美緒「……」
芳佳「ミーナ中佐。きっとそうです」
ミーナ「ここまで落ち込んでいる坂本少佐は初めて見るわね……。余程のことがあったのでしょうね」
美緒「……」
ミーナ「坂本少佐、ほら、しゃきっとして。宮藤さんも心配しているわよ」
美緒「……悪いな。私としたことが少し感傷に浸ってしまった」
芳佳「何があったんですか?」
美緒「下らないことだ。気にするな」
芳佳「気になります!!」
美緒「語るまでもない。では、私は行く」
ミーナ「あ、ちょっと」
芳佳「坂本さん……」
ミーナ「仕方ないわね。何かあれば打ち明けてと言っているのに」
芳佳「私、心配です」
ミーナ「私も同じよ。でも、坂本少佐が何も話そうとしてくれない以上は詮索するのもね」
芳佳「そうですけど……」
ミーナ「宮藤さん、どんなことを話していたの? できれば詳しく教えてくれないかしら?」
芳佳「あ、はい。ええと……」
通路
バルクホルン「ほら。さっさと歩け」
エーリカ「まだ50分寝たりないんだけど」
バルクホルン「そんなに寝てどうする。瞼が開かなくなるぞ」
エーリカ「そんなわけないじゃん」
美緒「……」
バルクホルン「む? 少佐。こんなところで何をしているんだ?」
美緒「バルクホルンか……」
エーリカ「……なんか、落ち込んでない?」
美緒「いや。そんなことはない」
バルクホルン「そうなのか?」
美緒「少しだけ昔のことを思い出してしまっただけだ」
エーリカ「昔って扶桑にいたときのこと?」
美緒「……またあとでな」
バルクホルン「少佐……?」
格納庫
サーニャ「どう?」
エイラ「何も心配いらないって。この部品を交換したら十分だ」
サーニャ「よかった。ありがと、エイラ」
エイラ「気にスンナって。サーニャのためならいくらでもユニットぐらい見るから」
サーニャ「エイラ……」
エイラ「サーニャ……」
美緒「はぁ……」
サーニャ「坂本少佐」
エイラ「どうしたんだー?」
美緒「……はぁ……」
サーニャ「さ、坂本少佐……?」
エイラ「無視されたな」
サーニャ「あんな坂本少佐は初めて見たかもしれないわ」
エイラ「そーだな。なんかあったのか?」
滑走路
ルッキーニ「にゃはー!!!」ダダダッ
ペリーヌ「はぁ……はぁ……! もう、ルッキーニさんは無駄に元気ですわねぇ……」
シャーリー「ペリーヌ。辛いなら負ぶってやろうか?」
ペリーヌ「余計なお世話ですわ。シャーリーさんこそ、わたくしに構うよりもご自分のペースで走ってはどうですの?」
シャーリー「あははは。一緒に走ったほうが楽しいだろ? ただでさえ退屈で地味な基礎訓練だしさ」
ペリーヌ「訓練に退屈もなにもないでしょうに」
ルッキーニ「あれ? ねーねー、あの隅っこで膝抱えてるの少佐じゃない?」
シャーリー「え? 少佐?」
ペリーヌ「ど、どこですの!? どこに坂本少佐が!?」
ルッキーニ「あそこー」
美緒「……」
シャーリー「ホントだ。膝抱えてるな……」
ペリーヌ「い、一体なにが……!? わたくしが話を……!!」
シャーリー「待て、ペリーヌ。どう考えても話しかけられる雰囲気じゃないだろ。様子を見るべきだ」
美緒「はぁ……」
ペリーヌ「しかし……!!」
ルッキーニ「減給とか?」
シャーリー「中佐とケンカとかじゃないか?」
ペリーヌ「今までもミーナ中佐とは幾度となく口論はしていましたわ。今日に限ってあのような状態になるなんて考えにくくないですか?」
シャーリー「それもそうか。だったら……」
エイラ「うわー。少佐、重症じゃないか」
サーニャ「うん……」
ルッキーニ「エイラ、サーニャ。何か知ってるの?」
エイラ「いや。私もさっき見かけたときに様子が変ダナーって思っただけだ」
サーニャ「シャーリーさんたちにも心当たりはないんですか?」
シャーリー「ないよ。あんなふうになっている少佐なんて初めてみたぐらいだしさ」
ルッキーニ「あたしもみたことない」
ペリーヌ「わ、わたくしだって!! これは事件ですわ!!」
美緒「はぁ……」
食堂
ミーナ「今の話だけだと、扶桑のお祭りに何かしらのトラウマがあると考えたほうが自然ね」
芳佳「そのトラウマってなんですか?」
ミーナ「それは坂本少佐本人から聞き出すしか……」
リーネ「あ、芳佳ちゃん、ここにいたんだ。食事の準備はどうする?」
芳佳「そっか。そろそろ始めないと。ミーナ中佐、また後ででいいですか?」
ミーナ「いいわよ。宮藤さん、リーネさん。食事のほうお願いね」
芳佳・リーネ「「はいっ!」」
ミーナ「……」
ミーナ(美緒、本当にどうしたのかしら……)
バルクホルン「ミーナ、ここにいたか」
エーリカ「ミーナぁ。大変だよ」
ミーナ「坂本少佐のことかしら?」
エーリカ「なーんだ。知ってたんだ」
バルクホルン「原因は分かっているのか?」
>>1
美緒「そうむくれるな。私も扶桑にいるときはよく言ったものだ。懐かしいな」
↓
美緒「そうむくれるな。私も扶桑にいるときはよく行ったものだ。懐かしいな」
ミーナ「原因と言えるのかはまだ分からないけれど、宮藤さんと扶桑のお祭りについて話しているときに様子が変化したらしいわ」
バルクホルン「扶桑の……?」
エーリカ「なんかあったんだね」
ミーナ「坂本少佐がきっとまだルッキーニさんぐらいの年齢のときと考えれば……」
バルクホルン「相当、子ども心に傷つくことでもあったのだろうな」
エーリカ「どうするの? 少佐、尋常じゃなかったけど
バルクホルン「そうだな。戦闘指揮官があれでは隊の士気に関わってくる」
ミーナ「早急にいつもの状態に戻ってもらわないとね」
リーネ「芳佳ちゃん、何かあったの?」
芳佳「うん、実はね……」
エーリカ「暫くそっとしておけば元に戻るような気もするけどね」
バルクホルン「しかし、少佐に精神的な弱点が露呈したことになる。万が一だ、戦闘中に発作が起こっては困る」
ミーナ「坂本少佐に限ってそんなことは……」
バルクホルン「ないとは限らない。そのような不安を抱えている者を空に上げることは反対だ」
ミーナ「トゥルーデ、そんな言い方しなくても……」
エーリカ「私もトゥルーデの意見には賛成かなー」
ミーナ「そんな……」
エーリカ「何が原因か調べて、少佐にはトラウマを克服してもらったほうがいいんじゃない?」
ミーナ「だけど、扶桑の祭りで起こったことなのよ? ここでは克服のしようがないでしょう?」
エーリカ「うーん……」
バルクホルン「……」
リーネ「そんなことがあったんだ。大丈夫かな、坂本少佐」
芳佳「私も心配なんだ。何か悲しいことでもあったのかなぁ」
リーネ「お祭りなら悲しいことなんて起こらないと思うけど」
芳佳「私もそう思うよ。あ、扶桑のお祭りって色々なお店があるんだけど、もしかしたら立ち寄ったお店で何かあったのかも」
リーネ「お店? 食べ物とか飲み物を売っているだけじゃないの?」
芳佳「違うよ。金魚すくいとか輪投げとか型抜きとか色々遊ぶところも多いの」
リーネ「金魚をすくってどうするの?」
芳佳「飼うの」
リーネ「飼うの!?」
芳佳「一匹も掬えなくても「お嬢ちゃんは可愛いから一匹あげる」なんて言われてもらったこともあったなぁ」
リーネ「へぇ。扶桑って不思議なお店があるんだね」
芳佳「ブリタニアにはないの?」
リーネ「そんな風にペットを買うようなことはないよぉ」
芳佳「そっかぁ」
バルクホルン「宮藤」
芳佳「なんですか?」
バルクホルン「その金魚すくいとは昔からあるものなのか?」
芳佳「多分、そうだと思いますけど」
バルクホルン「ミーナ。少佐は金魚を死なせてしまった過去があるのではないか?」
ミーナ「え? あるかもしれないけれど、それであそこまで落ち込むかしら?」
エーリカ「ねーねー、宮藤。他にはどんな店があるの?」
芳佳「えーと、射的とかヨーヨーすくいとか」
リーネ「ヨーヨーまで……!?」
バルクホルン「そのヨーヨーが壊れたということも考えられるか」
エイラ「あれはマズイって。中佐に相談したほうがいいな」
シャーリー「そうだな。何が少佐をあそこまで落ち込ませたのかは気になるし」
ルッキーニ「今朝、納豆あったよね?」
サーニャ「うん。あったと思うけど」
ペリーヌ「少佐……わたくしの力でなんとか元気になってほしいですわ……」
ミーナ「買ったばかりの綿飴を落としてしまった可能性は?」
エーリカ「それなら射的でお金を全部使っちゃったとかのほうがまだ分かるけど」
バルクホルン「やはり金魚を死なせたのではないか? それで祭りには苦い思い出が……」
シャーリー「何話してんだ?」
バルクホルン「少佐のことだ」
ペリーヌ「大尉たちも少佐の異変にはお気づきに!?」
エーリカ「あんなの嫌でも気が付くよ」
エイラ「だな。で、原因はなんだ?」
ルッキーニ「よしかー!! ごはんはー!?」
芳佳「もうちょっとまってねー」
サーニャ「――扶桑のお祭りが原因なんですか?」
ミーナ「ええ。ただ、そのお祭りで何があったのかまでは分からないから、それを話あっていたの」
シャーリー「お? この輪投げってやつ、リベリオンにもあるな。こっちでは蹄鉄投げっていうけど」
ルッキーニ「お面とかも売ってるー。これ、ロマーニャでもあるぅ」
エイラ「射的ってあれか、銃で売って景品落とすやつか」
ルッキーニ「それも知ってるー」
サーニャ「射的はしたことがないわ。面白い?」
ルッキーニ「面白いよ! あたしがやったときは景品全部落として店を潰したこともある!」
エイラ「ルッキーニ、やるなぁ。私は景品が当たるくじ引きで店を潰したことがあるぞ」
ルッキーニ「どうやって潰すの?」
エイラ「当たりくじが入ってないぞって訴えてやったんだ。その店はすぐに潰れたな」
ルッキーニ「おぉぉー!! エイラ、かっちょいー」
エイラ「だろぉ? 私の未来予知ならくじをもったときにハズレか当たりかはすぐに分かるからなぁ」
ペリーヌ「不正をしていた店とはいえ、エイラさんに目をつけられたことは気の毒に思いますわ」
リーネ「ごはんできましたよー」
>>16
エイラ「射的ってあれか、銃で売って景品落とすやつか」
↓
エイラ「射的ってあれか、銃で景品を撃って落とすやつか」
芳佳「どうぞ、シャーリーさん」
シャーリー「ありがと。ともかく、少佐が落ち込んでるのは扶桑の祭りが原因なんだろ? なら、解決したも同然だな。あとは少佐に話を聞いてみればいい」
バルクホルン「何を言っているんだ、シャーリー。少佐から話を聞くだけで取り除けるものでもないぞ」
シャーリー「……」
バルクホルン「なんだ、その目は?」
シャーリー「いや、別に」
バルクホルン「ふんっ」
エーリカ「何かいい方法はないかな、サーにゃん?」
サーニャ「え? い、いえ……見当もつきません……」
ルッキーニ「お祭りしちゃうっていうのはどう!?」
芳佳「え?」
ミーナ「お祭りを?」
ルッキーニ「扶桑のお祭りをみーんなでして、少佐を楽しませるの!! そしたら昔あったことも忘れるんじゃない!?」
ペリーヌ「何をバカなことを。そんなことで元気になるなら――」
バルクホルン「悪くない」
ペリーヌ「え!?」
バルクホルン「どうした?」
ペリーヌ「い、いえ……あの……」
バルクホルン「扶桑の祭りを再現し、少佐には心から楽しんでもらう。そうすることで過去との因縁にもケリをつけられる可能性はある」
ペリーヌ「し、しかし……」
リーネ「あのぉ……」
バルクホルン「なんだ、リーネ?」
ペリーヌ「リーネちゃん、ちゃんと反対意見を……」
リーネ「扶桑のことをよく知るのは芳佳ちゃんだけですけど、私たちで再現なんて難しくないですか?」
ペリーヌ「なぁ……!? ちょっと!! リーネさん!!」
バルクホルン「問題はない。宮藤の指示の下で私たちが動けばいい」
芳佳「えぇぇ!? 私が指示を!?」
バルクホルン「頼むぞ」
エイラ「待ってて。大尉の言いたいことは分かるけど、わざわざ祭りを再現する必要なんてあるのか?」
ペリーヌ「そ、そうですわ。わたくしもそれが疑問でしたの!!」
>>19
ペリーヌ「リーネちゃん、ちゃんと反対意見を……」
↓
ペリーヌ「リーネさん、ちゃんと反対意見を……」
ミーナ「坂本少佐のトラウマとなったお店を再現するだけではダメなの?」
ペリーヌ「そうですわ。そんなお祭りごと再現することもありませんわ」
エーリカ「いーじゃん、楽しいし」
ペリーヌ「ここは軍事施設ですのよ。そんなお祭りをするなんて不謹慎ですわ」
バルクホルン「あの少佐が自ら心の弱い部分を私たちに教えてくれるとも思わないが?」
ミーナ「それは……」
芳佳「確かに教えてはくれませんでしたけど」
バルクホルン「なれば、できる限り祭り全体を再現をし、少佐のトラウマは何が原因なのか虱潰しに探るほかあるまい」
ミーナ「うーん……」
ペリーヌ「しかし!! 坂本少佐はそんなこと絶対に許可してくれませんわよ!?」
バルクホルン「だろうな。だが、ミーナが許可を出し、少佐には秘密裏に進めれば問題はない」
ペリーヌ「でも……。中佐、できませんよね?」
ミーナ「……」
エーリカ「扶桑の祭り、やろーよー」
ルッキーニ「あたしもお祭りしたーい」
エイラ「サーニャはどうだ?」
サーニャ「芳佳ちゃんの故郷のお祭りなら、興味あるな」
エイラ「そうか。なら、私も興味あるぞ。やる」
リーネ「わ、私も扶桑のお祭りは見てみたいです」
エイラ「で、宮藤。どんな露店があるんだ? なぁ? サルミアッキとか売るか?」
芳佳「ええと……」
シャーリー「私はバーベキュー屋でもやるか」
サーニャ「お肉とか野菜とか焼いて売るんですか?」
シャーリー「そうそう。ハンバーガーなんかもいいな」
ペリーヌ「ちょっと皆さん!! もっと真面目に考えなさい!!」
エーリカ「ミーナぁ、ダメぇ?」
ミーナ「ダメというか……隊長としては許可を出しにくいというか……」
バルクホルン「いいのか、ミーナ。少佐をあのままにしておくというのなら、私はなんとしても出撃を止めるぞ」
ミーナ「トゥルーデ……」
バルクホルン「私は本気だ」
サーニャ「ヨーヨーつりってどんなの?」
芳佳「ヨーヨーを釣るんだよ」
サーニャ「どうして?」
芳佳「ど、どうしてって言われても……」
ペリーヌ「ここは少佐にきちんと話を聞くべきですわ!!」
ミーナ「そうねぇ……」
バルクホルン「ミーナ。少佐があのままでいいのか?」
ミーナ「……わかったわ。やりましょう」
ペリーヌ「えぇぇ!?」
バルクホルン「よし!! 宮藤!! 早速準備に取り掛かるぞ!!」
芳佳「い、今からですか!?」
バルクホルン「今晩に間に合わせる!!」
エーリカ「それはいくらなんでも無理だよ。食材もないし」
バルクホルン「それもそうか……」
シャーリー「……」
ミーナ「まずはどんなお店を出すのか決めないといけないわね」
エイラ「はいはいはい」
ミーナ「はい、エイラさん」
エイラ「サーニャがステージで歌って踊るだけの店なんてどうだ?」
サーニャ「やめて」
エイラ「私も一緒に躍るから」
サーニャ「そういうことじゃないの」
シャーリー「少佐のトラウマを取り除くためにやるんだから、自分の欲望は抑えないとダメだろ」
エイラ「うぅ……」
シャーリー「ハンバーガーとバーベキューはやってもいいよな?」
エーリカ「おかしお店は絶対だよね!!」
ルッキーニ「パスタのお店もー!!」
芳佳「焼き鳥とか焼きそばとか……それから……」
リーネ「金魚すくいやってみたいです」
ペリーヌ「こんなやりかた間違っていますわ……絶対……」
>>24
エーリカ「おかしお店は絶対だよね!!」
↓
エーリカ「おかしのお店は絶対だよね!!」
芳佳「そーだ!! 花火もいります!!」
ミーナ「花火?」
芳佳「お祭りといえば花火ですよ」
バルクホルン「祝砲みたいなものか」
シャーリー「それならバルクホルンとハルトマンの出番だな」
エーリカ「扶桑の花火と火薬を一緒にされても困るけど」
バルクホルン「宮藤、扶桑の花火とはどのようなものなんだ?」
芳佳「えーとですね、こうヒューって上がって、バーンッ!ってなります」
ルッキーニ「ぜんぜん、わかんない」
芳佳「うっ……ごめんね……」
ミーナ「花火についてはあとで資料を集めてみるわ」
バルクホルン「そうしてくれ」
エイラ「今はお店だな。それじゃあ、サーニャの寝顔写真館とかどうだ? きっと盛り上がるぞ」
リーネ「わぁ、それいいですね。見てみたいかも」
サーニャ「恥ずかしい……」
シャーリー「店の意見は大体出揃ったけど、あとはどうやって再現するかだな」
ミーナ「材料も多いわね」
エーリカ「金魚すくいはやめてさ、魚すくいにしちゃえば?」
芳佳「魚すくいですか?」
エーリカ「魚なら海に腐るほどいるし」
芳佳「集められるんですか? 結構、数が必要になりますよ?」
エーリカ「50匹ぐらいいればいい?」
芳佳「それぐらないなら」
エーリカ「なら、エーリカ・ハルトマンに任せてよ」
芳佳「おぉー」
バルクホルン「店も組み立てないとな」
シャーリー「木材か。中佐、どっかにありましたっけ?」
ミーナ「森から調達してくるしかないと思うけれど」
リーネ「ほかにも何かあるかな?」
芳佳「お祭りといえば……」
滑走路
美緒「はぁ……」
美緒(いつまでもこうしているわけにもいかんな)
美緒「よし!! 気合を入れなおすか!!」
美緒「ふんっ!!」パンッパンッ!!!
美緒「はっはっはっはっは!! さて、訓練を始めるか!!!」
シャーリー「バルクホルン、早くしろよ」
バルクホルン「分かっている」
美緒「おーい、なにをやっているんだー?」
シャーリー「お、少佐ー! なんでもないんで気にしないでくださーい」
美緒「どこに行くんだー?」
バルクホルン「すぐに戻る!! 気にしないでくれ!!」
美緒「そうかー!! 気をつけろよー!!」
シャーリー「りょうかーい」
美緒「心なしか楽しそうだったな。二人で遊びにでも出かけるのか?」
海岸
美緒「ふっ……ふっ……」タタタッ
ルッキーニ「ワクワクー」
美緒(ん? ルッキーニのやつ、あんなところで何を……)
ルッキーニ「お! 見えてきた!!」
エーリカ「ぷはぁ!!!」ザパァ
ルッキーニ「おぉ!!」
エーリカ「じゃーん!! 今度はこんなに大きいのが捕れたよ」
ルッキーニ「すごーい!! 大漁だぁ!!」
エーリカ「あと45匹だね。行って来る」ドボンッ
ルッキーニ「がんばれー!」
美緒「おい」
ルッキーニ「ぅにゃ!?」
美緒「何をしている?」
ルッキーニ「これはー……あのー……」
美緒「漁をしているのか?」
ルッキーニ「ま、まぁ……そんな感じです……ね……」
美緒「今晩の食材か?」
ルッキーニ「そ、そうそう。そんな感じですぅ……」
美緒「ルッキーニ、私の目を見ろ」
ルッキーニ「みてるけどぉ……?」
美緒「全然、見ていないぞ」
エーリカ「ぷはぁ!! またまたゲットぉ」
美緒「ハルトマン中尉」
エーリカ「少佐。なにしてるの?」
美緒「それはこちらのセリフだ。何のために二人で漁をしている?」
エーリカ「これは今晩の食事に出すやつ。ルッキーニがどうしても魚料理がいいっていうから」
美緒「そうなのか?」
ルッキーニ「うんうん!! お、お魚、たべたーい!! にゃはははは!!!」
美緒「……」
エーリカ「ほら、こっちのことは気にしないで少佐はトレーニング中じゃないの?」
美緒「あ、ああ。そうだな。戻るとするか」
ルッキーニ「がんばってー」
美緒「ふむ……」
エーリカ「じゃ、もう一回いこっと」
ルッキーニ「中尉ー。あたしと代わろー」
エーリカ「なんでさ?」
ルッキーニ「だってぇ……また少佐に見られたらぁ……」
エーリカ「気にしない、気にしない。遊んでるだけって言っておけばいいよ」
ルッキーニ「そうなの?」
エーリカ「そうそう」
ルッキーニ「じゃあ、いいけどぉ」
美緒「ふむ」
美緒(何か隠しているな……)
格納庫
美緒「ふぅ……。ん?」
芳佳「リーネちゃん、焼きそばって知ってる?」
リーネ「知らないよ。どういう食べ物なの?」
芳佳「扶桑ではおやつによく食べるの。すごく美味しいんだよ。あとエビセンベイとかもあるよ」
リーネ「そうなんだ。さっぱり分からないけど」
芳佳「うーん。分からないの置いてもリーネちゃんたちが困るよね。どうしようか……」
リーネ「ケーキとかじゃダメかな?」
芳佳「ケーキは縁日の露店に合わないような……。あ、でもカステラは置いてあるかな」
リーネ「カステラならできるね」
芳佳「ベビーカステラだからな専用の機械がいるけどシャーリーさんが作ってくれるかなぁ」
リーネ「手作りじゃ無理なんだ……」
美緒「宮藤、リーネ。菓子作りの話か?」
リーネ「きゃっ!? さ、坂本少佐!?」
芳佳「な、なんでもないですから!! いこっ!! リーネちゃん!!」
>>33
芳佳「ベビーカステラだからな専用の機械がいるけどシャーリーさんが作ってくれるかなぁ」
↓
芳佳「ベビーカステラだから専用の機械がいるけどシャーリーさんが作ってくれるかなぁ」
美緒「お、おい」
芳佳「またあとで!!」
リーネ「し、失礼します!!」
美緒「む……」
美緒(やはり何か隠しているな……。しかし、私に対して秘密にすることとはなんだ……?)
美緒「うーむ……」
エイラ「サーニャ、たのむってー」
サーニャ「できない」
エイラ「ちゃんとステージも作るからさ」
サーニャ「無理だから」
エイラ「一生のお願いだ」
サーニャ「でも……」
美緒「エイラ、サーニャ」
エイラ「うぇ!? しょ、少佐!? サ、サーニャ、行くぞ」グイッ
サーニャ「え、ええ。行きましょう」
美緒「……」
美緒(今のはどちらかというと避けられているような……)
美緒(バカな。私はこれまでもやつらと間違った接し方をしてきたつもりはない。それに今まであんなにも露骨な避けられかたはしていなかった)
美緒(急に態度が変わるなどあり得ない。そうだ。やはり何かを隠していると考えたほうが妥当だ)
美緒「えーと……」
ミーナ「大きさはこの程度でどうかしら?」
ペリーヌ「はぁ……。いいと思いますが……」
美緒「ミーナ、ペリーヌ」
ペリーヌ「しょ、少佐!?」
ミーナ「あら、坂本少佐。トレーニングは終わったの?」
美緒「ああ。お前たちは何をしている?」
ペリーヌ「あ、あの……」
ミーナ「行きましょう。ペリーヌさん」
ペリーヌ「は、はい……。坂本少佐……その……またのちほど……」
美緒「な……。ペリーヌまで……?」
滑走路
シャーリー「いい木がいっぱいあってよかったなぁ」
バルクホルン「本当にこんなにも必要なのか?」
シャーリー「しっかり運んでくれよ。お前にしかできないことだからな」
バルクホルン「分かっているが少しぐらい持ったらどうだ?」
シャーリー「私、スプーンより重たいものをもったことがないんだ」
バルクホルン「お前は……!!」
シャーリー「あれ? お、おい。あれ少佐じゃないか?」
バルクホルン「なに?」
美緒「はぁ……」
シャーリー「また滑走路の端で膝抱えてるぞ」
バルクホルン「先ほどは活力を取り戻しているようにみえたがな」
シャーリー「再発したのか。急がないとな」
バルクホルン「そうだな。行くぞ、シャーリー」
シャーリー「了解っ。待っていてくださいよ、少佐。絶対に元気にしますからね」
格納庫
エーリカ「これだけあればヨユーじゃない?」
芳佳「なんだか、大きな魚までいますね」
エーリカ「……ダメなの?」
芳佳「そ、そんな!! とんでもないです!!! これぐらい大きな魚のほうが掬い甲斐がありますよ!!!」
エーリカ「はぁー、よかったぁ」
芳佳「はぁ……怖かった……」
ルッキーニ「次、なにすればいいのー?」
バルクホルン「屋台を作る。手の開いている者は木を切ってくれ」
ルッキーニ「えー? 大尉だけでいいじゃん」
バルクホルン「切るぐらいのことはやれ」
エーリカ「トゥルーデは手刀で切れるんだから、私たちがやらなくてもいいじゃーん」
バルクホルン「できるかぁ!!!」
シャーリー「中佐。さっき少佐がまた膝抱えてましたよ」
ミーナ「深刻な傷なのかしら……。なんとかしてあげたいわね」
滑走路
美緒「……いや。何かの間違いだ。あいつらが私のことを避ける理由が、ない」
美緒「恐れることは何もない。私はウィッチとして恥じることの無い生き方をしてきたはずだ」
美緒「胸を張れ、坂本美緒!! 何も恐れることはない!!」
美緒「そう!! ウィッチに不可能はない!! はっはっはっは!!」
美緒「行くぞ!!」
美緒「……」ソーッ
バルクホルン「ふっ!!」ギコギコ
シャーリー「これぐらいの長さでいいのか?」
芳佳「はい。大体、それぐらいです」
シャーリー「よし。ルッキーニ、釘を頼む」
ルッキーニ「あいっ」
バルクホルン「ふぅ……。中々の重労働だな」
エーリカ「トゥルーデ、汗が流れて大変だし、タオルを頭に巻くといいんじゃない?」
バルクホルン「それはいい考えだな。そうしてみるか。……よしっ!」ギュッ!!
美緒(何かを作っているのか……?)
美緒「おい!! 何をしている!!」
シャーリー「少佐? 気にしなくてもいいですよ」
美緒「それはできない相談だな。何を制作しているんだ?」
バルクホルン「何も作っていない」
美緒「では、その木材はなんだ?」
バルクホルン「私が木を切ってはいけないのか?」
美緒「そんなことはないが」
ミーナ「坂本少佐」
美緒「ミーナ、お前からも説明をしてくれ」
ミーナ「私たちは何もしていないわ。坂本少佐はどうぞ自室で休んでいてください」
美緒「ミーナ!! なんの冗談だ!!」
ミーナ「これは隊長としての命令です」
美緒「……」
ミーナ「いいですね?」
エーリカ「ミーナ。もっと言い方なかったの?」
ミーナ「いけなかったかしら?」
バルクホルン「いや。少佐に言葉を多くして言い訳すれば感付かれるだけだ。ミーナは正しい」
エーリカ「そーかなぁ」
シャーリー「少佐、滑走路の端で寝そべってるな」
ルッキーニ「泣いてないよね?」
エイラ「それはないだろ」
サーニャ「でも、少し心配ね」
芳佳「坂本さん……」
リーネ「芳佳ちゃーん。この布でいいかな?」
芳佳「あ、うん!! ありがとう!! これでいいよ!!」
リーネ「それじゃ、早速作ろうよ」
芳佳「うん!!」
ペリーヌ「……わたくし、もう我慢できませんわ!!」
バルクホルン「何をするつもりだ!?」
美緒「……」
ペリーヌ「あの!! 坂本少佐!!」
美緒「ペリーヌか。どうした?」
ペリーヌ「少佐、聞いてください。私たちは……」
美緒「話さなくてもいい」
ペリーヌ「え?」
美緒「私には秘密なのだろう?」
ペリーヌ「まぁ、その……そうなのですが……」
美緒「ならば気にするな。お前たちはお前たちのやりたいようにしろ。私は何も問わないし、訊ねもしない」
ペリーヌ「少佐、いいのですか?」
美緒「構わん。勝手にしてくれ」
ペリーヌ「坂本少佐……」
美緒「行け、ペリーヌ」
ペリーヌ「は、はい。失礼いたしました」
美緒「はぁ……。夕日が綺麗だな」
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