※元ネタは某エロゲ
僕の名前はアルミン・アルレルト。
最近早起きするのが日課になっている。
理由は2つ。一つは読書で知識を深めるためと、もうひとつ…
アニ「アルミンおはよう」
アニ「相変わらず朝早い…まだそれ読んでるんだね。お茶飲む?」
…僕の彼女と二人きりで会うためだ。
アルミン「あぁ、頼んでいいかなアニ」
アニ「ん、分かったよ。ちょっと待ってて」
表情を変えずに言う。こういうところは付き合いだしても変わらない。
陰では氷の女とか呼ばれているらしいけど…
アルミン(氷…かぁ)
※飲料の備品は食堂内に置いてあるという都合のいい設定
アルミン「………」ペラッ
アニ「…んっ…んっ…んうぅっ…」
棚の位置は結構高い。
この悩ましげな声を聴くのが最近の僕の密かな楽しみだ。
必死に手を伸ばす彼女は今、どんな顔をしているのだろうか。
無表情のままなのかな。
見てみたいが怒られそうなのでやめておく。
アルミン(椅子を踏み台にすればいいのに…)
アニ「ふぅ…やはりこの身長は不便…いやしかしアルミンが」ブツブツ
今日も無事取れたようだ。
しばらく横目で伺っているとこっちに歩いてくるのが見えた。
慌てて視線を本に戻す。
アルミン(付き合ってるのにこういう時にやましさを感じるのは何故だろう)
アニ「お待たせ。ほらどうぞ」
アルミン「うん。そこに置いておいて」ペラッ
アニ「わかった」
アルミン「………」ペラッ
アニ「………」
視線を感じる。それも下から。
目をやるとアニがしゃがんで僕の顔を覗き込んでいた。
アニの頭が近い。
アルミン「………」
アニ「………」
何か言いたげな目。理由は分かってるけどもう少し焦らす。
アニ「ねぇ、それ飲まないの?」
クールな表情のままだがどことなくソワソワしているのが見て取れる。
アルミン「あぁゴメン、夢中になり過ぎたかな。頂くよ」
カップに手を伸ばし口へ運ぶ。
一口飲んで離すとすかさず
アニ「どう?」
クールな表情のままだがものすごくソワソワしているのが見て取れる。
例えるなら犬が尻尾を振っているような、ご褒美を待っているような...
…アニの頭がさっきよりも近い気がする。
アルミン「うん。今日も美味しいよ。ありがとうアニ」ナデナデ
アニ「んっ…えへへへ♪」
氷が溶けていく。
僕だけが知っている時間。
僕だけがこの氷を溶かす事ができる優越感。
今日も一日頑張れそうだ。
ユミル「たまの早起きは気分が良いな…よっと」ガラッ
ユミル「お、これはこれはウブなカップル様が先客か」
アニ「………」
ああ、また凍ってしまった。
もう少し見ていたかったのに残念。
アルミン「やあユミル、おはよう」
ユミル「おーアルミン、こんな朝っぱらから読書のお時間とは優等生だねぇ」
アルミン「僕には座学しかないからね。やれる時にやっておかないと」
ユミル「とか言いつつ彼女とイチャコラしてただけなんじゃねえの?」
一瞬返事に詰まる。
アルミン「いや」
ユミル「おっと返事がワンテンポ遅かったな。ん~? 見たところお茶淹れて貰ってちょっと良いフンイキってところか」
ユミル「いやー初々しいこって。なあアニさんや」
アニ「うるさい。ツブすよ」
アニが立ち上がって吠える。
昔は僕にも似たような態度とってたっけ。懐かしいなぁ。
ユミル「おーおー、おっかねぇおっかねぇ。んじゃお邪魔虫は退散しますかね」
ユミル「さぁてクリスタも起こしてまた冷やかしに来てやろっかなぁ」
頭を掻きながら出ていくユミル。
…女子寮とは反対方向へ足音が向かっている。
アルミン(相変わらず気の利かせ方が下手過ぎるよユミル…)
二人きりにしてくれたのだろうか、思わず苦笑した。
アルミン「さて、また二人きりになったわけだけど」
アニ「その言い方、なんかいかがわしいこと考えてない?」
アルミン「考えてないよ……もう少し時間があれば考えるかもしれないけどね」
アニ「あんまり変なコト言うとツブすよ」
ユミルに向けた時よりだいぶ可愛いニュアンスの『ツブす』だ。
アルミン「はは。久しぶりに僕に向けて言ったねソレ」
前は僕も散々罵倒されたものだ。
改めて考えると、こんな女性とよくお付き合いまで漕ぎ着けた物だと我ながら驚く
アニが気になりだしたキッカケは…忘れてしまったけど。
アニ「そうだっけ。まぁ、アルミンはもう線の内側だからね」
アルミン「線?」
アニ「私は今までもずっと線引きをしてきたんだ。自分と、他人との間で」
アニ「私は強くならなくてはいけなかったから」
アニ「自分で線を引いて、外側の物を遠ざけて、それで強くなれると思ってた」
アルミン「………」
沈黙が流れる。
どことなく悲痛な目をしているような。
初日から眉間にシワ寄せて誰彼構わず噛みついていたのはそれが理由か。
…いや、誰彼構わずじゃないな。
アルミン「ライナーとべルトルトは?」
アニ「え?」
アルミン「ライナーとべルトルト。あの二人とは最初の頃から喋ってたように見えたけど」
アニ「私のことよく見てるね」
アルミン「誤魔化さないでよ。ライナーもよくアニに話しかけてるよね」
僕以外の男と何故親しかったのか、気になった。
アニ「あの二人は………………………うん、幼馴染なんだよ」
アニ「同じ村で育ってね。顔見知りだから話してるだけさ」
アニ「それだけだよ。他には何もない」
アルミン「…へぇ、そうなんだ」
一瞬アニの視線が泳いだように見えたけど気のせいかな。
いや今はどうでもいいか、それよりも聞きたいことがある。
アルミン「あの二人は、内側なの?」
アニ「聞きたかったのはそこかい?」
バレてたか、恥ずかしい。
男の嫉妬はみっともないな、自分で言うのも何だけど。
アニ「まあ外側ではないね。腐れ縁とはいえ付き合い長いし」
アルミン「そっか」
自分以外の男が内側に居ると知って、胸がチクリと痛む。
アニ「でも内側でもない」
アルミン「え」
アニ「あの二人は、そうだね…ちょうど線の上あたりかな」
アニ「幼馴染とはいえそこまで特別な付き合いがあったわけでもないし」
アニは小さく咳払いすると僕の目を真っ直ぐ見て言った。
アニ「コホン…だから、内側に居るのはアルミンだけだよ」
アニ「あんたは内側の…私の傍にいる」
アニ「私と一緒に中心にいるんだ。もっと胸を張っていいよ」
相変わらずの無表情。
だけどほんのり頬が赤くなっている。
こういうところが堪らなく愛おしい。
アルミン「…アニ、ちょっといいかい」
椅子から立ち上がりアニの方へ向き直す。
アニ「何?」
ギュッ
思い切り抱きしめてみた。
アルミン「………」ナデナデ
アニ「…いきなり何を」
アルミン「………」ナデナデ
アニ「ちょっと黙ってないで何か言いなよ」
アルミン「………」ナデナデ
アニ「そんなに嬉しかったの?」
アルミン「………」ナデナデ
アニ「髪が解けちゃうんだけど」
アルミン「………」ナデナデ
アニ「ねぇってば」
アルミン「………」ナデナデ
アニ「………」
アニ「えへへへ♪」
ユミル「さ~て朝飯のお時間だぞっと」
アニの体が硬直した。
クリスタ「わたしもうお腹ペコペコだよユミル~」
ミカサ「エレン早く食べよう」
エレン「おう、席はいつものとこでいいな」
ライナー「今日は絶好のトレーニング日和だなベルトルト」
ベルトルト「そうだね、少しでも筋力と体力をつけないと」
ミーナ「ふわぁ…眠いよ~訓練やだよ~」
サシャ「晩御飯の為となれば訓練も致し方なしですよミーナ」
コニー「晩飯の為にそこまで頑張れるのはお前だけだろサシャ」
ジャン「今日の立体機動訓練でより磨きが掛かった動きを見せてやるぜ!」
マルコ「ジャンの動きはいつも参考にさせて貰ってるからね、助かるよ」
その他訓練生がぞろぞろと。
…タイミングが良すぎないかな?
アニ「ユミルあんたまさか…」
アルミン「………」ナデナデ
撫でられながらユミルの方を向くアニ。
なんというか凄くシュールな絵面だ。
ユミル「いやいやぁフフッ、どうせならフフッ、みんな一斉にフフフッ、の方が面白いと思ってフフフフッ」
アルミン(さっき反対方向に歩いて行ったのはそれでか)
ミカサ「気にすることはないアニ、あなた達が恋仲なのは前から皆知っているし、私たちは居ないものとして扱ってくれて構わない」
ミカサ「だから、いつも通りのあなた達を過ごすといい」
エレン「俺たちもいつも通り過ごすからさ。ユミルにそう言われたし」
クリスタ「ゆ、ユミルっ! 早く朝ご飯食べようよ! いつも通り!」
ライナー「うむ、クリスタは可愛いないつも通り」
ベルトルト「朝から煩悩にまみれてるねライナー、いつも通り」
ライナー「いつも通りじゃないだろ!」
ミーナ「ほんと眠いよ~いつも通り」
サシャ「いつも通りのパァンの味で幸せです」
コニー「俺がバカなのもいつも通りだしな」
ジャン「いつも通りの俺のテクニックが光るぜぇ!今日の訓練はよぉ!」
マルコ「はは、いつも通り参考にさせて貰うよジャン」
アルミン「………」ナデナデ
ユミル「つーわけでフフッ、どうぞ遠慮せずブフッ、続けてくれ」
アニ「…ツブす。ツブしてやるよ」
アルミン「………」ナデナデ
真っ赤な顔でユミルを睨み付けているアニがすごく可愛い。
ユミル「い、いやでもフフッ、抱きしめられてアタマ撫でられながら言ってもフフッ、全然怖く無いっていうかフフフッ」
アニ「アルm…あんたもいつまで撫でてるのさ、そろそろ離してよ」
アルミン「ここまでされたら、もう開き直った方が良いと思ってね」
なんだかんだで自分からは離れようとしないアニが可愛い。
アニ「…あんたもツブされ」
ユミル「おい、おいアニ。あれ!あれ見ろよフククッ!」
ユミルが笑いを堪えながら部屋の隅を指差す。
そこにはフランツとハンナが
フランツ「………」ナデナデ
ハンナ「えへへへ♪」
ユミル「ダーッハッハッハwwwひーwひーwふぅーww」
アニ「っ………つ、ツブしてやるッ!」
僕の腕を解いてユミルに飛び掛かっていった。
ムキになっちゃうアニが可愛い。
ユミル「やるのかコラァ!こいつ…んぐぐ」
アニ「ん…くそっ…あんた…いい加減にっ…ぐぐ」
サシャ「あーぁ、また始まりましたね。ユミルは愛情表現が遠回しすぎるんですよ」
コニー「最近いつもああだよなあいつら」
マルコ「エレンとジャンに代わって104期の恒例行事になりつつあるね」
ユミル「おあえが、こんあとこおえ、いひゃついへるのがフガフガ」
アニ「あんたが、いつおいつお、ちょっかいらして、くるのがフガフガ」
ミーナ「いいぞ~!やれやれぇ~!」
マルコ「二人とも凄い顔になってるけど大丈夫かな…」
サシャ「お互いの口に指突っ込むなんて仲良くないとできませんよね」モグモグ
アルミン(これが俗にいうキャットファイトってやつかな)
氷の女があんな顔してる所はなかなか見られないよ。
貴重な一面を見せてくれてありがとうユミル。
エレン「おいアルミン、お前らの分も持ってきたぞ」
ミカサ「あの二人はああなったら長い。放っておいて食べよう」
アルミン「ん、そうだね。先に僕も頂こうかな」チラッ
パンッ
格闘訓練で聞き慣れたローキックの音。
視界の端で、倒れるユミルと駆け寄るクリスタが見えた。
アルミン(食堂で本気だしちゃダメだよアニ)
アニ「ハァ…ハァ…待って………先に、食べちゃダメだって」
アルミン「ユミルとはもういいのかい?」
アニ「意地悪だねあんた……私も、一緒に食べるよ」
アルミン「僕と一緒に食べたいの?」
アニ「いつも一緒に食べてるでしょ…あんたと、ご飯食べたいの」
言いながら僕の隣に腰を下ろす。
アニの頭が近い。
アルミン「………」ナデナデ
アニ「んっ…手どけてよ」
一瞬蕩けた顔を見せたけど直ぐに手を払われた。
みんなの前だと素直じゃないなぁ本当に。
ミカサ「…エレン、私もアニのように撫でて欲しい」
エレン「は? なんでだよ」
ミカサ「私は訓練をとても頑張っている。なのでエレンは私にご褒美を与える義務がある」
エレン「頑張ってんのは俺もだぞ…まあ撫でるくらいなら良いけど」ナデナデ
ミカサ「んぅ………とても嬉しい。私はいま、すごく幸せ」
アニ「………」
チラチラとミカサの方を見ている。
最近はアニが何を言いたいのか大分読めるようになってきた。
彼氏として誇っていいことなのかな、これは。
アルミン「また御褒美欲しくなった?」
アニ「なんのこと?」
アルミン「さっきたくさん御褒美あげたと思うんだけどなあ」
アニ「だから何の話? 私は何も言ってないけど」
アルミン「そっか、じゃあもう要らないよね」
アニ「………」
アニ「………今日の立体機動」
アルミン「うん」
アニ「頑張るから」
アルミン「うん」
アニ「頑張るから」
アルミン「うんうん」
アニ「ミカサより、頑張るから」
アルミン「うん。頑張ろうね」ナデナデ
アニ「………ぇへへ♪」
アニ「どちらかというと頑張るのは私よりアルミンの方だけどね」
アルミン「せっかく良い雰囲気だったのに言うかなぁそれ」
終わりっす
とにかく無表情→デレの流れが書きたかった
初投稿なんでレスくれた人にはお礼にケツの穴を捧げてもいいです
ちなみに元ネタは『つよきす』の椰子なごみって女の子です
あの子の「えへへ♪」の破壊力はヤヴァイ
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