①安価で3つのお題を募り、それを基に8レス完結の物語を作成します。
②当スレはエロ・グロ要素を含みます。
③投稿は不定期です。別の作品執筆でパンクしそうな頭を鎮める目的で建てました。
前スレ(作風を掴んでいただければ幸いです)
安価で8レス物語
安価で8レス物語 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399244891/)
それでは、お題をよろしくお願いします。
>>2
>>3
>>4
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401885805
ジョジョ7部
未亡人
蕎麦
>>1に書いておくべきでしたが……補足です。
・二次創作系のお題は、「東方Project」くらいしか自信をもって書くことができません。
>>1が初見の作品は、申し訳ありませんが再安価します。
・連レス、あるいは荒しが安価を獲得した場合、再安価します。
けどジョジョは読んだこと有るので書いてみます。
ルーシー「日本風に言ったら三回忌」
#1#
「ご覧くださいマダム。夫様の記事でございますよ」
「まぁ……有難い限りですね」
XX年XX月XX日
夫スティーブン・スティールの死後二年の今日。
新聞1面記事には、彼の死と、彼の最大の偉業であるSBRを讃える内容がぎっしりと詰められていた。
――。
「新聞なんて明日には捨てられてしまうんだが…下のスミの方でいいんだ…すっごく小さな文字で…。
それだけでいいんだ…たったそれだけで…。その為にこのレースに全力を尽くそう…」
私は夫の言葉を思い出すと共に、この日記を書き記している。
夫と歩んできたこの半生は運命であり――まさに、苦楽を共にしたという表現が一番適切だと思う。
思えばいろいろな事があった……私は追憶する。
謎の男ジャイロ・ツェペリ
下半身不随のジョッキー、ジョニィ・ジョースター
レースをめぐる不穏な動き
失踪した大統領と、ディエゴ・ブランドーの関係
それらは皆、レース終了後に書かれたゴシップ本で散々考察が重ねられていることだろう。
なので私はこれから、レースの後に起きたひと騒動――つまり、私と夫が日本に渡った用事の件を記そう。
ところで……この日記を誰かが見たら、私の痴呆症が進み過ぎていると疑われるかもしれない。
確かに、夫を失ってから物忘れが激しい。
そういうモノなのだろう。
だから、この日記を覗き見た者は――。
――これが、一切の創作だと思って欲しい。
それがスティーブン・スティールのファンタジーなのだから……。
#2#
レース終了から10年、日本の港にて。
夫は両足を骨折して、車いすだった。
おかげさまで、フェリーを降りるのにも一苦労だ。
スティーブン「おいッ! あまり揺らすんじゃない」
ルーシー「はいはい」
スティーブン「おっ……おおおおおっ……全然揺れないなぁああ」
ある団体のエージェントたちが、合衆国から持ち出された「あるお方の遺体」を救い出すために動いていた。
その「あるお方」の所在を知るため。そして、それを盗んだ者と話をすべく、夫婦そろって日本まで来たわけだ。
……邪魔にならないことを条件にして、その団体との帯同を許されたのだ。
エージェント「では……ホテルを手配してありますので……邪魔しないでくださいよ」
途中寄港した場所で一度、夫がトイレについて文句を言ったっきり、ずっとこの態度だった。
スティーブン「フンッ……ルーシー。いいか……『遺体』を盗んだ輩を捕まえるのは私たちだ!」
#3#
エージェントと夫には――遺体を盗んだ人物の名前は言っていない。
ただ……謎の人物が遺体を盗んでアメリカを出て、どこかへ向かって移動しているだけ――。
遺体を盗んだ人物は――。
ジョニィ・ジョースター。
彼が遺体で何をしようとしているのか、分かった気がしたから。
ルーシー「お腹空きませんか? ほら、あそこに蕎麦屋がある……」
スティーブン「そんな暇があるのかね?」
ルーシー「昨日の朝から何も食べてないじゃないですか」
蕎麦屋に入る。
――あと何時間だろうか。
そして何十分の時間稼ぎができるのだろうか。
おそらくエージェントは、「私が遺体を盗んだ人物を知っている」ということに勘づいている。
座敷に案内され、座り、鏡を使い後ろを見る。
15mほど後方……あの建物の影に……見られていることに気が付いたか、エージェントは顔を潜めた。
他に数名のエージェントがいる。彼は、私を見張るために割かれた人員だろう。
『読唇術』……唇の動きで会話を読まれるといけない。
隠しても怪しまれる。
ただ、口元が隠れてしまう位置に移動するだけ――。
#4#
蕎麦屋「お品書きです」
スティーブン「どうも……なあルーシー。ソバっていうのは、スパゲッティの親戚って言ってたよな」
ルーシー「ええ」
スティーブン「向かいで食ってるヤツ、大きい器にスープが入ってて、スープの中のソバ食ってるぞ」
ルーシー「……シチューにもマカロニ入れるでしょ」
スティーブン「なるほど」
ルーシー「……ねえ何にする? この『ざるそば』とかどう?」
ズルッ!! ズルルルルッ!!
スティーブン「おい!! きたねえ音立てて食ってるんじゃあねえぞッ!!」
夫が向かいの客に吼える。
客は、蕎麦をすすっていた手を止めて怯えきった目をしている。
ルーシー「ちょっ、ちょっと……」
夫の性格は良く知っている。
異文化への許容が若干薄い。
夫の程度であれば、常人なら誰しもある感覚だ。
特にアジアの小国ともなれば、我々アメリカ人はその風俗の全てを侮蔑し、矮小なものであると断定しがちだ。
確かに蕎麦をすする文化を見るにつけ、日本を文化的後進国だと思った。
だが物事は円……。
受動者が円の向かい側に居れば、それだけで価値は反転する。
すなわち郷に入りては郷に従え。
私は夫をなだめるために立ち上がった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
店のバックヤードにて。
確かに騒ぎを起こしたが、出てきた店主がスティーブン・スティールの大ファンだったのだ。
迷惑半分、「お会いできて光栄です」半分といったところか。
蕎麦屋「あのォ……サイン……頂いてもよろしいですかァ?」
スティーブン「不快な気分にさせられたんだ。何か特別なソバを食べたいぞ」
蕎麦屋の突飛な発言に、夫の突飛な発言。
会話、噛み合っているのだか、噛み合っていないのだか。
#5#
フルーツざる蕎麦――。
蕎麦粉の割合を落とし、果肉を練り込んだ麺で、試作品らしい。
スティーブン「ふぅん……そんなに美味しくないな……」
蕎麦屋「さ、左様でございますか……」
スティーブン「それなら、蕎麦で作った団子で、フルーツポンチでも作りたまえ」
蕎麦屋「な、なるほど……」
スティーブン「で、フルーツはどこのものなんだ?」
蕎麦屋「『ふるうつ東方』でございます」
スティーブン「ヒガシカタだと……? ……なるほど。確かあの男は、ヒガシカタ家の女を娶っていたな……」
全て悟られた。
そろそろ潮時なのだろう。
スティーブン「おいお前。ヒガシカタ家の屋敷まで案内しろ」
#6#
「うあああっ!! あああああああ!!!」
「なんということだ……」
「おい、回収しろ!! どこにある!?」
「この期に及んでそれかよ! ジョニィを助けてやれ!!」
「見て分からないのかッ!? それより回収だ!!」
私の時間稼ぎは成功した。
スティーブンは蕎麦屋に屋敷の位置を聞き、エージェントはスティーブンを追って来た。
我々が到着する5分前。
ジョニィ・ジョースターは全ての目的を達し――。
――最小の犠牲で妻子を救ったのだ。
等価交換でしかないが、尋常の者に扱える交換でもない。
それは『正統なる交換』だった……。
#7#
「ルーシー様。記者がお見えです」
「分かりました。今行きますから……」
……。
「……ところでミセス。1901年ごろ、日本へ旅行なさっていますが……」
「……夫が珍しいものが見たいと。それだけです……」
合計4の新聞社が代わる代わるやってきて。
インタビューは60分程度で終わり――。
午後は墓参りだ。
#8#
夫が死んでから2年。
やはり創作の体を借りても、夫の名誉に泥を塗ることになるのだろう。
日記は燃やすことに決めた。
日記を燃やしながら、ルーシーは記憶を手繰り寄せていた。
サンディエゴでレースは始まり、ニューヨークにて終結した。
様々な犠牲を乗り越えなくては、到底不可能な旅だった。
そして犠牲が私を成長させた。
AV女優
午後の憂鬱
パズドラ
男「ゴミ屋敷じゃねえか」
#1#
2014年6月4日。
札幌市は33度を記録した。
そんな日の正午。
男「あっつ……」
男は周囲を見渡す。
左右の古いコンクリート建築の間に、コンクリートの道路。
変哲もなく、駅を降りてしばらくにある光景だ。
徒歩1分の位置に蜃気楼が見え、徒歩5分の位置はもう歪んで見えなかった。
今日は大学が午前だけで終わったので、久々に幼馴染の所を訪ねようとしているところだ。
最近、幼馴染の様子がおかしい。
今年度に入ってから一度も幼馴染を見かけていない。
男が経営学部。
幼馴染が文化学科。
学部が違うので会わないこともあろう。
だがそれにしても、もし仮に今年に入ってから1回も授業に出ていないのであれば、単位を全て落としているはずである。
男「あんのバカ……ちょっと抜けてるとこあるからな……」
大学に近くがいいという理由で親元を離れ、澄川駅近くに一人住んでいる幼馴染。
だが幼馴染は自己管理が苦手で、男が定期的に世話をしなければまともにやっていけない性分だった。
男は最近、恋人ができた。
幼馴染一人に構い続けることなどできまい。
男は自分に言って聞かせた。
――幼馴染の家がゴミ屋敷になっていようが、それは僕の責任ではない。
と。
#2#
幼馴染「あっつ……うぅ……」
ピンポーン。
幼馴染「ふぁい……誰だろ……」ガチャリ
男「よぉ。久しぶり……ひでぇな」
幼馴染「ご挨拶だね」
男「ゴミ屋敷じゃねえか」
幼馴染「そう思ってくれるなら、掃除していただけると嬉しいんだけど」
男「……ああ。アイス食う?」
幼馴染「ありがと」
男「まずはビニールゴミから片付けるかな……」
幼馴染の長袖シャツに違和感を覚えつつも片づけを開始する。
まず、ゴミがあまりにも多く、足の踏み場もない。
コンビニで購入したであろう菓子パンやおにぎりの包装ビニール。
アイスクリームの紙製容器。
弁当のトレー。
使用済みナプキン。
野菜の根や茎。
食べかけて干からびたジャンクフード。
踏まれて折れた少女漫画。
濡れたものを乾かしたであろうBL同人誌。
いくつかの求人雑誌。
スープが残ったまま放置されたカップ麺の容器。
大量の缶ビール。
睡眠薬の錠剤。
頭痛薬。
その他、使途不明の、黒ラベルの錠剤が3瓶。
流石にバイブとローター、それらを見た時男は引いた。
他にも、男に媚びるためと思しきレースの下着や、露出の激しい上着などなど。
気を取り直してゴミを踏みながら先へ進む。
男「痛っ……」
刃が剥き出しのカッターナイフ。
メンテナンス不足か、僅かに錆びた刃がこちらを向いていた。
#3#
数か月振りだが、この生ゴミの悪臭には慣れていた。
だが今回は何かが違う。
まず、男の足を傷つけたカッター。
露出の激しい服。
黒ラベルの薬瓶。
男「おい、手伝ってやってるんだぞ。お前も働けよ――」
幼馴染の方を見やる。
アイスを口に運ぶ、その右手に浮かぶ――夥しい量のリストカット痕。
長袖の理由が判明する。
幼馴染「ん。めんどくさいじゃん」
スマートフォンの画面に触れながら、事も無げにそう言った。
人に無償労働させておきながら、この言いぐさ。
これは変わらない。
それだけは彼女のままだった。
男「アイス食べてスマホやって……ゲームか何かか?」
幼馴染「パズドラだよ」
男「パズドラ? あー……聞いたことあるぞ」
幼馴染「2700万DL達成記念イベントが忙しいの」
男「……大学は?」
幼馴染「行ってないけど……ちょっと今、いいとこだから邪魔しないで」
何がいいとこだ。
お前はそのタイミングを逃しているのだぞ。
男「いくら課金した? いつから……」
幼馴染「パズドラは無課金でもけっこうイケるゲームなんだけどね……」
男「パズドラのイケ具合なぞ知らん。お前だ。お前はいくら課金した?」
幼馴染「……何万円か……」
男は、ただ冷やかな視線を送ることしかできなかった。
男は、作業途中でその家を出た。
男「ゴミ屋敷じゃねえか」
それはゴミが多くある家ではない。
ゴミの住まう家だ。
#4#
彼女の家の外、何か会社の営業のような恰好をしたスーツの男がいた。
彼は人のいい笑顔を浮かべ、こちらに歩み寄りつつ声をかけてきた。
スーツ「やあ、貴方、伊藤さんの家から出てきましたね」
男「え、ええ……」
スーツ「この3枚のDVDをお受取り下さい」
男「はぁ……?」
スーツ「これは貴方にとって必要なものだ」
スーツは男にDVDを押し付け、それだけ言うと軽く会釈をして立ち去った。
男の手には、ただ、白地で無題の、3枚のDVDのみが残されていた。
午後2時。
暑さはピークを僅かに過ぎたが、なお暑い。
シャツがぐっしょりと濡れていた。
早く帰りたいものだ。
DVDを見る時間だけではない。
とにかく、幼馴染の堕落っぷりについて考える時間が欲しい。
―――――――――――――――――――――――――。
札幌市内の安アパート。
男もやはり一人暮らしだった。
男も、幼馴染も、実家は函館市。
妙な緊張感を覚えながら、帰宅する。
女「遅かったね……コンビニか何かだと」
男「幼馴染の家に行ってきた」
女「へぇ……浮気なら事前に私に申請を出してくれ。まぁ受理されないと思うけど」
男「浮気ではない。向こうの親御さんから、定期的に掃除するよう言われてたんだ」
女「……カルピスでもどう? 冷蔵庫に入ってる」
男「『初恋の味』……」
女「なにか言った?」
男「なにも」
説明が遅れた。
この女は、男の恋人だ。
女「で、猫避け用にDVDを持ち歩いて来たんだね?」
そして勘の鋭い女だ。
男「あ、あぁ……それは……ええと……」
女「愚痴ってみればいい。私も暇つぶしがしたかったところだからね」
#5#
女「なるほど……で、件のDVD、見るのか?」
男「疑惑は疑惑だ。握りしめた拳を解き、握手の為に開きたい」
女「立派な心構えだ。だがお前、心を強く持てよ」
男「1枚目のディスクだ……」
――――――――――――――――――――――――。
インタビュアー「今の心境っていうのは――」
幼馴染「AVデビューが決まって、本当にうれしかったです」
インタビュアー「元々AV女優になりたかったの?」
幼馴染「いえ……けれど、初恋の人が私を女性として見てくれない。だから仕方ないんです」
インタビュアー「初恋の人?」
幼馴染「私の幼馴染です。物心ついた頃から一緒でしたが、お互いに良い友達止まりでした」
インタビュアー「そんな中、君だけが彼を好きになっちゃった」
幼馴染「そうなんです」
だから、私の魅力を、彼に教える必要があるんです。
――――――――――――――――――――――――。
女「馬鹿な……まかり通るのか? こんな理屈……」
男「まだ分からん。似てるだけで、同一人物かも……チャプターを進める。リモコンを貸してくれ」
女「止めておけ。傷口を広げることもないだろう……おい……」
――――――――――――――――――――――――。
幼馴染「あっ。んっ……あんっ。んっ、んっ……」
まるで獣の様に突き出された柔肌の背後で、毛深い尻が激しく振られる。
粘液同士の水音と、甘美な嬌声。
ベッドの揺れも激しさを増す。
男の視聴を制止した女が思う。手慣れたセックスには感心すら覚える、と。
幼馴染「ねえっ……私の初恋の人……見てるっ!? 私、綺麗でしょ……」
男に視聴されることを望んだ女が喘ぐ。
絶頂。
――――――――――――――――――――――――。
女「……顔色が悪いな。まぁ当然か」
男「……」
男はトイレに向って駆けだした。
無論、吐くために。
#6#
女「落ち着いた?」
男「あぁ……クソッ……頭が痛いし、胃がひっくり返りそうだが……」
女「……どうする?」
男「どうするっていうのは?」
女「……私は、もう、この件について深く踏み込まず……幼馴染の親御さんに事実だけ言うべきだと思う」
男「あいつを救ってやることは……」
女「無理よ」
男「なぜ断言できる!?」
女「DVDに刻まれた撮影時刻……」
確認するわよ。貴方と幼馴染は互いに20歳。
現在は2014年6月4日。
1本目が2011年に撮影。
2本目が2012年。
3本目が2014年。
――そして、3本目のインタビューで「AV女優デビューから400本目」との発言がある。
年100本ペース。
つまり、スーツの男から貰ったDVDは、彼女の出演作の、ごく一部でしかない。
出演ペースを考えれば、企画モノや他の女優との抱き合わせ、またはネット配信で小さな作品に出演し続けているってこと。
――。幼馴染「ねえっ……私の初恋の人……見てるっ!? 私、綺麗でしょ……」
これが、2011年のこと。
貴方の幼馴染は――高校2~3年生の頃、当時17歳ながら、恐らく年齢詐称してAVにデビューしてる。
女「貴方はその期間にも、幼馴染への無償の愛を捧げ続けた。にもかかわらず……」
男「た、ただ俺は、あいつに幸せになってほしくて……」
女「目を逸らすなッ!!」
男「!!」
女「いいか……ここらで現実を見るんだ……じゃなきゃ貴方は、これからも同じ理由で、悪い女に騙され続けることになる」
男「……」
女「……わが恋人よ……私の声に耳を傾けなさい……ヒツジは救われるべきだが――」
「迷えるヒツジにも、救い手を選ぶ権利があるのだから」
男「幼馴染は……俺を救い手と認めなかった……?」
女「腹の内は、当人にしか分からないものだよ」
そして……。
①幼馴染の父親に全て打ち明けた。
②幼馴染のことを忘れることにした。
③幼馴染の父には打ち明けず、『男』は1人で幼馴染を救おうとする。
安価。
「下1つ」
#7#
やはり、幼馴染の父親に全てを打ち明けることにした。
男に、1人暮らしする幼馴染の面倒を見させていたのは彼だ。
男は罪悪感を感じているが、それでも、父親との協力が絶対に必要だ。
女「けど……待って」
男「?」
女「なぜ彼女がAV女優を始めたのか……なぜ隠し続けられたのか……もう少し調べてから父親に報告しましょう」
男「……どうしてだ?」
女「父親に報告すれば、間違いなく幼馴染退学・帰省の形でこの件は終わる……けど、彼女が自発的に堕落したとは考えにくい」
――幼馴染を唆した者がいる。そこを叩かなければ、根本的な解決にはならない。
数か月間、証拠を念入りに集める。
・幼馴染の所属している事務所。
・高校で幼馴染にきっかけを作った人物。
・黒ラベルの薬瓶の出所。
……。
ある晩、女から電話があった。
走っているのか、息を切らしながらだった。
トンネルか何かを走り抜けているようで、音の反響が強い。
女≪あの黒ラベルの薬瓶だが、分かった……あれは、芥子が原料の薬品で、間違いない≫
男≪ケシ? 芥子ってつまりアヘンとかの……≫
女≪クソッ。追われてるんだ。四ツ峰トンネルだ、分かるか!?≫
男≪ええと……遠いな……! おい、大丈夫か!?≫
女≪あの子の父親に今すぐ伝えてくれ……借金を全て返し、芥子畑の地図を渡せ、と……頼む、伝えてくれ!≫
唐突だ。
話はあまりにも大きくなり過ぎていた。
早々に手を引くのが正解だったか。
……いや。当時の男に、そのような選択肢は存在しなかった。
どちらにせよ、根本的な解決など図ってはならなかった。
幼馴染の体は、犯罪組織たちの間でより深く繋がっていて……。
#∞#
男≪もしもし、夜分遅くに申し訳ありません。伊藤○○さん、幼馴染の○×です≫
幼馴染の父≪ああ……うちの娘はよくやっているかね?≫
男≪その件なんですが……≫
話すこと数分。
男は、捲し立てるように全ての真実を打ち明けた。
すると……幼馴染の父が呟くように言った。
幼馴染の父≪お前は知りすぎた。終らせようのない事態というのも存在するのに≫
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
2014年8月15日。正午。
北海道道1号線、定山渓レイクライン四ツ峰トンネルの入り口付近で、若い男女の遺体が発見された。
2人の遺体は、互いの手を繋ぐようにして結束バンドで結ばれており――。
多量の睡眠薬を服用して死んだものと思われる。
奇しくも終戦記念日の正午、黙とうの頃に発見されたため――。
この若い男女の心中事件は、何か因縁めいたものとして、オカルトファンたちの間で語り継がれることになる。
そして――。
「さっぽろ湖の上流に霊廟があり、その男女は古い神霊を祀るための贄となった」
だとか――。
「その男女は犯罪組織に繋がる何かを掴み、それが故に謀殺されたのだ」
などと――際限なく尾ひれはついて回る。
オカルトファンがその噂に飽きたころ――。
2016年。春。
引退したAV女優が、「心中死体のうち男性は、私の幼馴染だ」と表明。
翌日にそのAV女優が、それの父親によって撲殺される。
更に数日後、北海道に展開する複数の犯罪組織が、さる薬品についての覇権を巡り、大規模な抗争へと発展してゆく。
そのようにして、死と腐敗のらせんは吹き溜まりを知らない。
地球こそがゴミ屋敷だったのだ。
END
こんちくしょうめ
教会
風俗嬢
すみませんが、投稿の目途が立たないので、立て直します
このSSまとめへのコメント
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