-浴槽-
男 「いつからなんだろうな」
幼 「うん、いつからなんだろうね」
男 「こうしてさ、二人で狭い湯船に浸かって裸の付き合いをするようになったのは」
幼 「うん、傍から見るとおかしい話だよね」
男 「今さらそれをいうか?」アハハ
幼 「もう今さらだよね、本当」フフフ
幼 「じゃ、そういうことでちょっと昔を思い出してみる?」
男 「あー、それもいいかもな」
-幼稚園のころ-
幼 「あー気持ちぃー」
男 「風呂だからって油断してるな! 水鉄砲だ!」
幼 「ひゃっ! やったな男、仕返しだー!」
ワイワイガヤガヤ
-小学生のころ-
男 「なあ幼」
幼 「ね、男」
男 「ん?」
幼 「え?」
男 「あ、幼からでいいぞ?」 アタフタ
幼 「ううん、男からでいいよ?」
男 「そ、そうか、じゃあ相談」
幼 「うん」
男 「俺……男友に恋したみたいなんだ……」
幼 「えっ」
男 「まあ流石に引くよな、同性を好きになるなんて……」
幼 「……凄い偶然」
男 「……まさか幼も」
幼 「同じクラスの女ちゃんが可愛くて可愛くて」
幼 「あっちの意味で食べちゃいたいななんて思っちゃうわたしはなんなんだろうって」
幼 「男に相談したかったの」
男 「……そうか、幼もだったのか」
幼 「……類は友を呼ぶんだね……」
男 「……これってまずいよな」
幼 「うーん、男はほかの女の子についてどう考えてる?」ポチャン
男 「幼以外の女は視界に入れるのもつらい」
男 「女なんざいらない、男のあの筋肉だけを見ていたい」
幼 「それはわたしが困るよ、男以外の男はちょっと受け付けないし」
幼 「女の子のあのむっちり感をずっと堪能してたいのに」
男 「……似てるな」
幼 「……似てるね」
男 「幼は女の子って感じがしないからそう思えるんだろうか?」
幼 「ええー? よく女の子からは女の子っぽくて可愛いって言われるよ?」 ムッ
幼 「男共からそんなこと言われたら吐きそうになるけど」
幼 「胸だってクラスのほかの子ぐらいはあるし」
男 「……慣れなのか?」
幼 「そうなのかな?」
幼 「そういえば男も、あんまり男の子って感じがしないよね」
男 「俺もよくカッコいい、男らしいって言われるぞ? 悲しいがな女共からな」
幼 「……慣れなのかな」
男 「慣れなんだろうな」
-中学生のころ-
男 「……ついにアレがバレたな」ポチャン
幼 「うん、バレちゃった」
男 「ドン引きされたよな、お互い」
幼 「迂闊だったね、お互いに」
男 「いや、あの男友の引き締まった肉体を見て興奮しないほうがおかしいだろ」
幼 「そんなこといいだしたらあの女ちゃんのむちむちな胸や汚れのないあれは」
幼 「わたしに触ってくれ、揉んでくれって言ってるようなもんでしょ?」
男 「だよな、無防備なのが悪いんだよな!」
幼 「だよね、そうだよね!」
ハハハハハ
男 「……恐るべし、修学旅行風呂」
幼 「明日からが怖いね……」 ポチャン
男 「怖いな……、もうすぐ卒業とはいえ」
幼 「でも、卒業前に女ちゃんに嫌われちゃったよ」
幼 「……泣いていい?」
男 「俺も泣きたいよ……」
男 「でも泣くなら胸ぐらい貸すぞ?」
幼 「うん、ありがとう」 ピチャピチャ ギュ
幼 「……ううっ……」 ウワーン
男 「……よしよし」 ナデナデ
男 「……ちょっとは落ち着いたか?」ポンポン
幼 「うん、ありがと」 グスッ
幼 「……男って意外と筋肉あるんだね」
男 「まあ、鍛えてるからな、いざという時のために」
男 「幼だって胸、また膨らんできたんじゃないのか?」
幼 「うん、みたいだね」 モミ
幼 「男たちが鼻伸ばしてるぐらいだし、ああ気持ち悪い」 ブル
男 「わかるぞ、その気持ち……」
男 「女共が隙あらば見つめてくるんだよ、この腹筋を」 ブルブル
幼 「あー、本命じゃないのに見つめてこられても寒いだけだよね……」
男 「……俺たちの行動も相手にこれと似たような嫌悪感を抱かせてたんじゃ?」
幼 「……相手はわたし達の同類じゃないし、そうなのかも」
幼 「親にもこれ、知られちゃったよね……」
男 「あー、そういえばあからさまに視線が冷たくなってたな……」
幼 「うん、わたしも」
幼 「嫌われちゃったよお母さんに……」
男 「親父なんて目も合わせてくれないんだぜ……」
幼 「困ったね……」
男 「ああ、どうする、これから……」
幼 「それはそうとして、大変そうだね」
男 「ああ、これはまさに修羅の道」
男 「だがこのままでは、俺たちの居場所がなくなってしまう」
幼 「そうだよね、これは生き残りをかけた戦いなんだよね」
男 「ああ、やるかやられるか」
男 「敗北はそのまま俺たちの死を意味する」
幼 「……」ゴクリ
男 「付き合ってくれるな、幼」 メラメラ
幼 「もちろん」 メラメラ
それから男と幼は受験勉強の合間に手分けして、性感帯から雰囲気作り、催眠術まで、
ネットや書籍でありとあらゆる性の知識を手に入れていった
時に家族に、時にクラスメイトに、時に教師や成績という壁が立ちはだかりながらも
二人はただただ自分達の理想郷を作り上げるために、生き残るために、熱心に性の知識を詰め込んでいった
そして人形や脳内で何度もシミュレーションを重ねて、ついに二人はそれぞれの初恋の相手を自分達の世界に引きずりこむことに成功する
これに味をしめた二人は、隙を見計らっては次々にクラスメイト達を自分達の世界に引きずり込んでいった
そして気付けば、その中学校において異性に恋をする人間こそが悪という雰囲気が作り出されていた
二人はついに、この凄まじい生存戦争の勝者となったのだ
そして……
-高校生のころ-
男 「ヤレばできるもんだな、まったく」
幼 「うん、こっちから攻めたら意外とみんなこっち側に引きずり込めたね」
男 「快楽には敵わないってことか?」
幼 「きっと、そういうことなんだろうね」
男 「しっかし、中学の時はどうなることかと思ったが……」
男 「まあ、これはこれでよかったのかもしれないな」
幼 「うん、これは神様が与えてくれた試練だったんだよ、きっと」
男 「多分、そういうことなんだろうな」
男 「で、今じゃ高校で出会ったほかの男とも片っ端からヤレる日々」
男 「あの男友とも仲直りできたしな」
幼 「男友……腹筋の硬さがよかったんだっけ?」
男 「ああ、だがそれだけじゃない」
男 「俺の手によって雄々しい雄叫びを上げるアレを眺めたり受け止めたり」
男 「そこから溢れ出る熱いソレを触れたり飲み込んだりあれしたりこれしたり……」 ムクムク
男 「普段は中々男らしい奴だが、俺の手にかかればまた違った一面が露わになってな……」 ハアハア
幼 「うん、なんとなくわかったけどアレをここで解放してお湯を汚したりしないでね」
男 「……俺のしたことが、トイレ行ってくる」 バシャン
幼 「いってらっしゃいー」
幼 「……わたしだって女ちゃんの胸やあそこを弄ったりいじったりして」
幼 「そのたびにあの子ったら赤くなっちゃって」
幼 「普段の真面目っぷりからは想像もできないような甘い声を出して」
幼 「あぁぁ……思い出すだけでもう……」 ハアハア
男 「ふぅ…………ただいま」
幼 「……」 ポワワーン
男 「幼、おい幼、のぼせたのか?」 ユサユサ
幼 「え? あ、男、お帰り」 ボー
男 「なんにしても、あの出来事を思うと色々と過ごしやすくなったと思わないか? 幼」
幼 「うん、言われてみればそうだね」
幼 「わたしは男たちに色目を向けられることがなくなったし」
男 「俺は女どもに声を掛けられることがなくなったわけだ」
幼 「まあ男たちははみんな男が食べちゃうしね」
男 「まあな、でも女どもだって幼が全部手なずけてるだろ」
幼 「バレた?」
男 「バレバレだ」
幼 「でも、そのおかげで住み心地のいい環境が作り出せてるからすごいね」
男 「だな、いっそ大学も二人そろって同じところにするか?」
幼 「うん、そのほうがいいよね、きっと」
男 「で、二人でより多くのノーマルをこっち側に引きずりこむと」
幼 「うん、きっとわたし達みたいな人にとって住み心地のいい環境になるよ」
男 「だな」
男 「……人はこれを戦友っていうのかもな」
幼 「そうなの?」
男 「ああ、だってある意味これは戦いだろ?」
幼 「まあ……言われてみればそうだね」
幼 「ちょっと前まではずっとそのつもりで来てたし」
男 「ああ、そういうことだ」
男 「じゃ、そういうわけで改めてよろしくな、戦友よ」ニコ
幼 「承知! なんちゃって」 ニコ
男 「で、お互い同じ大学の大学生になって卒業をまじかに控える今に至るわけか」
男 「部屋もなんだかんだで同じ部屋を借りてるんだよな」
幼 「だねー、でもバイトも含めて休みの日はお互い出かけて」
男 「お互いに性欲を満たしてくるからあまり一緒にいたりはしない」
幼 「至っていつも通りだね」
幼 「そのせいかな、もう落とすことにかけては手慣れたものだよね、お互いに」
男 「ああ、今なら幾らでも男を落とせそうだ」
幼 「奇遇だね、わたしも女の子をみんな虜にする自信があるよ」
男 「……けど、どれだけほかの男を虜にしたって、もう男友が帰ってくることはないのか」
幼 「そういえば、事故で死んじゃったんだっけ……」
男 「幼の恋してた女も、病気で死んだっけか……」
幼 「……うん、こんなところまで似てるなんて、笑っちゃうよね」
男 「ああ、本当に」
アハハ……
男 「……男友、なんで俺より先に逝っちゃうんだよ……!」ドン
幼 「うう、女ちゃん、なんで……」 グスッ
男 「あいつは俺にはないものを沢山持ち合わせてたのに」
幼 「女ちゃんは真面目だけど本当はすっごく優しいところがあるのに」
男 「俺よりも長く生きててもいいはずだろ、あいつは……!」
幼 「女ちゃんはわたし達よりもずっと真っ直ぐに生きてたはずなのに、どうして……!」
男 「……恋人に先立たれるって、嫌な感じだな」
幼 「うん、つい最近のことだったからなおさら……」
男 「本当、どうしてこうなったんだろうな」
幼 「わからないよ、わたしには……」
男 「卒業したらしたらで内定貰った仕事に就いて働かなきゃいけない……」
幼 「そっか、もうそんな時期なんだっけ……」
男 「でも、今の状態で一人で臨んでも、まともに仕事ができるはずがない」
幼 「……わたしも」
男 「だから、さ」
幼 「だから、ね」
男「俺が新しい相手を見つけるまで、今まで通り、二人で支え合わないか?」
幼「わたしが女ちゃんの死を乗り越えられるまで、いつも通り一緒に暮らそう?」
男 「……考えることは、同じだな」
幼 「だね、男は男友から乗り換える気満々みたいだけど」
男 「まあな、いつまでも後ろを向いてるわけにはいかない……」
幼 「わたしもそれぐらい、割り切るべきなのかな?」
男 「さあ、それを考えるのは幼自身だろ?」
幼 「……まあ、そうだね」
男 「どんな壁も困難も、二人で乗り越えてきたんだ」
幼 「わたし達の性癖がバレた前後からだっけ?」
男 「いや、もっと前から、俺たちはずっと戦友だったろ」
幼 「そうだっけ」
男 「ああ、だから恋人がもうこの世にいなくても、二人が揃えばこの壁だってきっと乗り越えられる」
幼 「そういわれると、ちょっとは勇気が湧いてくるね」
幼 「確かに前向きに前向きに、今できることをしないとね」
男 「俺は男にしか反応しない、所謂ホモって奴で」
幼 「わたしは女の子しか好きになれない、所謂レズ」
男 「でもこんな変わり者同士だからこそ、分かり合えることだってあるし」
男 「だからこそこんな風に一緒にいても、嫌悪感を抱かないんだと思う」
幼 「うん、でもそれは性別や愛じゃなくて」
幼 「もっと固くて目に見えないもので結ばれてるからじゃないかな」
男 「そう、そしてそれをあえて言葉に表すとするなら……」
男 「幼、これからも戦友でいてくれるか?」
幼 「もちろん」
fin
至って普通の幼馴染ssでしたが、最後まで読んでいただけたなら感謝感激です
ss自体は一応これにて完結とします、それでは
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