キョン「うぉら!!」 ハルヒ「へぶっ!!」 (106)
俺はハルヒの顔面に回し蹴りを決める。今日はなかなかいい手応えだ。
ハルヒはのけぞり、鼻か噴出した血を滴らせながら膝から崩れ落ち倒れ―――なかった。
ハルヒ「まったく―――何すんのよ、キョン」
ハルヒはまるで逆再生されたビデオのように首を正しスクッと立ち上がる。
キョン「くそっ!これでもダメかよ!!」
俺は急いでハルヒに背を向け、全速力で走りだす。
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キョン「ハァ―――ハァ―――」
俺はざっと500メートルを全力疾走し、無人のコンビニに駆け込んだ。
クーラーが体温を上げた俺の体を冷やしてくれる。
キョン「クソ、落ち着け―――。手応えは確かにあった。効いてない訳じゃない」
なら必要なのは必殺の一撃だ。アクションゲームならいい加減、武器系のアイテムが手に入ってもいい頃だろう。
キョン「―――一体、どうなってるんだ、畜生」
俺は何回目かも分からない言葉をまた、繰り返した。
こんな事になったのはいつからだっけ?えぇと―――そうだ、確か一週間前―――だったはずだ。
俺はいつものように学校に登校した。そこでいつものように気だるい授業を過ごし、さぁこれから我らハルヒ団長との団活と
いったところで、デカい地震が起きた。そこで俺は気絶していたようで、気付いたもう学校には誰もいなかった。
キョン「ぐっ―――。頭打ったのか」
ガンガンと痛む頭を押さえ、俺は学校を後にした。だが地震が起きたには不自然だった。
街には人影はなく、あれだけ大きな地震だというのにあちこちの店の商品は何一つ落ちていなかった。
「キョンさん!」
そこで、俺は一つの希望に出会った。
キョン「古泉!」
古泉「良かった、どうやらあなたは無事だったみたいですね」
古泉は珍しく息を荒げ、額に汗をかいていた。
キョン「あぁ、頭が痛むけどな―――。それより、どうなってるんだ、これは」
古泉「無駄話はしている暇がありません!こっちに!」
古泉は俺の腕を引っ張って走る。―――コイツ、こんな力強かったのか!?
俺と古泉は近くのビルに入り、息を整える。
古泉「―――落ち着いて聞いてください。今回は、今までの比じゃありません」
キョン「何?―――ていうことはまたハルヒか」
古泉「えぇ、恐らくは。しかし、今回はいくらか勝手が違います」
キョン「どういう―――ことだ?」
古泉は珍しく険しい目つき―――怯えているのか怒っているのか―――で俺を見つめた
古泉「―――今までは、涼宮さんは世界に改変こそすれ、人に危害を与えることはありませんでした」
古泉「しかし、今回は違いました」
古泉の口調は、少し震えていた。
古泉「僕は、気づいたら教室の中で倒れていました。僕はまず機関に連絡を、と思ったのですが、どういう訳か
携帯の電波は圏外だったんです」
俺はその一言で携帯の存在を思い出し、携帯を取り出してみた。確かに、電波は圏外となっていた。
古泉「そこで僕はあなたや長門さん、朝比奈さんと行動を共にした方がいいと判断して学校を探索したのですが、だれも見つかりませんでした」
キョン「だれも見つからなったって―――俺は廊下で気絶していたぞ?」
古泉「――――――続けます」
古泉「そこで、僕は学校を出て街に向かいました。そこで、偶然見つけたんです。涼宮さんと―――涼宮さんに攻撃をしている、森さんを」
古泉「森さん―――!?な、何をしているんですか!」
それが失敗でした。
森「―――! 一樹!逃げなさ―――あ」
それまで一方的に涼宮さんを攻撃していた森さんは、僕の存在に気付いた事で隙が出来てしまったのでしょう。
涼宮さんは、まるでマリオネットのように体勢をを直し、森さんの―――心臓をえぐり出しました。
古泉「――――――!?」
涼宮さんは森さんの胸から腕を抜き、森さんは大量の血を噴き出しながら倒れこみました。
古泉「―――も、す―――え?」
そして涼宮さんは僕に気付いたのか。いつもの様に、僕に言ったんです。
ハルヒ「あら、古泉君じゃない。どうしたの、こんなところで」
――――――と。
気付けば、いつの間にか森さんが負わしていた傷も治っていました。
ですが、僕が一番恐怖したのはそこでは無いんです。涼宮さんの手で倒れていた森さんが、突如起き上ったんです。
―――涼宮さんの顔をして。
古泉「え―――?」
森さんと涼宮さんは、同じタイミング、同じトーンで言いました。
『どうしたの?古泉君』
―――恥ずかしい話です。僕は逃げ出してしまいました。
必死に逃げましたよ。殺されると思いましてね。
古泉「あなた以外にも何人かの機関の人間を見つけましたが、皆同じように涼宮さんに殺されて、涼宮さんになっていましました」
キョン「――――――どういうことだ?」
古泉「分かりません。ただ、言える事があるとすれば、今回は今までとは何から何まで違うという―――」
そこまで古泉が言うと、どこから見ていたのかハルヒが窓を突き破って現れた。三階だぞ、ここ―――!
もう自分でも何書いてるかわからんくなってきた
ハルヒ「あら?二人ともこんなところに居たの?」
古泉「逃げますよ!」
古泉は俺の腕をつかみ、立ち上げようとした。だが、
古泉「あっ」
立ち上がった瞬間、ハルヒの人間離れした跳躍で古泉は壁に叩きつけられた。
キョン「―――え?」
鉄のロッカーがベゴンと日常生活ではまず聞かない音をたてて凹む。
更にハルヒはガンガンと古泉の頭をロッカーにぶつける。ロッカーは最早ただの鉄くずだった。
あたりに古泉の血が散っていく。
キョン「―――ハ、ハル、ヒ――――――?」
俺の声が聞こえたのか、ハルヒは古泉をロッカーに叩きつけるのをやめ、俺の方に振り向いた。
ハルヒ「あら、キョン。なにしてるのこんなところで」
ハルヒはそう言うと古泉をまるでゴミ箱に放り投げるように、ポイと捨てた。
ハルヒにとってはそんなものなのだろうが、古泉は窓を破り重力に従い落下した。
ハルヒ「もう。心配したんだから」
ぞわりと鳥肌が立つ。全身の細胞が悲鳴をあげる。ここから逃げろと。もうコイツは―――コレはヒトではない。
ただの―――命の搾取者だ。
ハルヒ「ねぇ、キョン。どうしたの、そんなかおして。なにか、こわいことあったの?」
気付いた時には、俺はデスクに置いてあったノートパソコンをハルヒに向かって投げていた。
ハルヒの左目に当たったノートパソコンは「グチュリ」と何かを潰したような音を立てて地面に落ちる。
それが効いたのか、ハルヒは首を後ろに倒し、一歩のけ反る。
キョン「(今だ―――!!)」
俺は全速力でビルから抜け出した。
長くなりそうなんで今日はもう終わります。
ご朗読ありがとうございました。
ちなみに酉はアナグラムになっております。
アナグラム…?
再開します。
そこからは無我夢中で走り続けた。
途中でハルヒに見つからなかったのは、奇跡と言って差し支えないだろう。
そこで俺は偶然見つけたホテルに隠れて、震えながら過ごした。
ハルヒの気配を感じたら、また別のホテルや人様の家に隠れていた。
そんな事を三日四日と続けていれば、人間は不思議と根性が出てくる。
「あいつはハルヒじゃない―――あいつらはハルヒじゃない―――アレは―――ハルヒじゃあ、ない」
ハルヒじゃないなら―――俺は、殺せる。
とりあえず、最初に思いついたのはバッドだった。
今の核家族化の時代、金属バッドのある家を探し出すのはそう難しい事じゃなかった。
ついでにいくつかの硬球と工事用のヘルメットも頂戴した。
キョン「どんな生き物でも、頭を潰されちゃ生きていけねぇだろ」
俺はそれが楽観だという事を、この数時間後に知る事になった。
俺はハルヒを探した。
出来るだけ隠れる場所の多い所なら安全だろうと思い、普段はいかないような廃ビルや廃工場を重点的に探した。
そこで俺は一匹のハルヒを見つけた。
キョン「(いた―――!!)」
ハルヒはまるで誰かを探しているかのようにキョロキョロしながら廃工場の中を進んでいた。
俺は柱の陰に隠れ、息を殺し、ハルヒが来るのをじっと待っていた。
キョン「(来い―――来い―――来い―――)」
バットを強く握りしめ、耳を澄まし、コツコツという足音に意識を集中させた。
そして―――。
キョン「オオオォォラァァァ――――!!!!」
体を大きく捻り、柱の真横にいたハルヒの顔にこれでもかというフルスイングをかました。
ハルヒ「ばっ―――!!!」
ハルヒは柱に頭をぶつけ、ぐらりと体が傾いた。
―――が。
ハルヒ「―――もう。何するのよ」
ハルヒは右耳と右目、それに鼻から血を出しているのに―――まるで何のダメージもないように、そう言葉を返してきた。
キョン「――――――」
ダメだ。これじゃあ、ダメだ。これじゃあ、ハルヒは殺せない。
なら、次だ。俺はハルヒの鳩尾めがけて最大限の蹴りを入れた。
ハルヒ「おえっ―――」
ハルヒは唾液を飛ばしながら1メートルほど飛んだ。足が痛むが、どうでもよかった。
殺せないまでも、多少の時間は稼げるはずだ、と。
―――甘すぎた。今考えれば笑っちまう。
ハルヒは尻もちこそ着けど、まるで体操選手かのように立ちなおした。
ハルヒ「―――なんなのよ、キョン」
血と涎にまみれたハアルヒの顔。
そういう趣味の皆さんから見れば最高のシチュなんだろうが、生憎と俺の感性は一般人だ。俺はポケットに入れておいた硬球
を取り出し、ハルヒの顔面に向かって投げ飛ばした。
ハルヒ「がぁっ―――」
ノーコンと思ってたが、人間ここ一番は外さないらしい。上手い具合にハルヒの鼻っ柱に当たり、ハルヒが少しのけ反る。
その隙に今やお家芸になりつつあった俺の全力疾走の出番だった。俺は、あたりのドラム缶やアルミ缶などをハルヒに向かって飛ばしながら逃げ出した。
キョン「ハッ―――ハッ―――ハァッ―――ハァ」
俺は近くの家に入り込み、鍵を閉めてドアにもたりかかった。
脳に酸素を送り込む。体は汗を排出する。
キョン「クソ、しまった。バット置いてきちまっ―――いや、殺せないならいらねぇか」
殴打はダメだった。じゃあ次はなんだ。次は―――。
体は落ち着いていた。俺は立ち上がり、誰某さんの家を探索する。
とりあえず水を飲みたかったので俺は冷蔵庫を開け、入っていたミネラルウォーターを頂戴する。
キョン「――――――」
飲みながらも辺りを探索すると、俺はシンクの上に置かれていた包丁を見つけた。
キョン「―――包丁か」
―――殴打がダメなら次は刺殺か。
俺は包丁をゲームの主人公の様に見よう見まねで振ってみる。
包丁なんて家庭科の実習で触るぐらいだったが、案外軽いものだ。
しかもこれは家の母も愛用しているツヴァイなんたらとかいうブランドのものだ。
キョン「けどいかんせん、短いな」
金属バットよりは殺傷能力は高いかも知れんが、精々拳二つ分の大きさの包丁であのハルヒを殺すのは無理だ。
その前に古泉の時の様に殺されるのがオチだ。せめてもっと長いモノが欲しい。
キョン「―――まぁ、一応持っとくか」
流石に生身では危ないので、ペットボトルを切って作った即席の鞘に包丁を入れ、ベルトとズボンの間に入れる。
キョン「他に何かあればいいんだが」
流石にゲームみたいに日本刀なんかが出てきても扱えないだろうが、出来るだけ遠くから殺せる手段が欲しいな。
気がつくと、もう日が暮れかけていた。
キョン「今日はここで休むか」
俺は誰某さんがきっと昼飯用に買い揃えていたであろうカップラーメンを食うためにヤカンを探したが見つからなかったので、代わりに水を鍋に入れて火にかけた。
こんな状況なのにライフラインが止まっていないのは素直に嬉しいが、なぜ止まっていないのか不思議ではある。
数分後、グツグツと鍋が煮えてきた。
―――特に理由もなしに鍋をじっと見つめていると、鍋の底にできた気泡が、何故か気になる。
ポツポツと出来上がっていくそれは、次第に数を増やしていく。しまいにいは、数えるのが億劫になるほどに。
そんな気泡達を尚も見続けていると段々と、それが一つの小さな『目』に見えてくる。
『目』は尚も数を増やし、まるで俺が見ているのではなく、俺が『目』に見られているかの様な錯覚すら覚える。
その一つつひとつがまるでハルヒの目であり、俺はもう逃げられないんだと囁いているような―――。
キョン「―――クソッタレ!!!」
俺は近くのゴミ箱を蹴り飛ばす。
キョン「―――そんな訳があるか。そんな訳はない」
俺は火を止めカップ面にお湯を注ぐ。残り湯は、全て捨てた。
すみません、明日朝早いので今日はここいらで終わります。
ご朗読ありがとうございます。
女子サッカー勝利おめでとう
クロスチャンネル移植おめでとう
再開します。
キョン「―――ごちそうさま」
スープまで飲みきり、箸を置く。時刻は19時過ぎだった。
こんな状況でも寝るにはまだ早すぎる。しかしこの家で調べらるところは粗方探したつもりだったが―――。
キョン「――――――あ」
いや、まだだ。まだ一つだけ探していないトコロがあった。
火や水といったライフラインが生きているなら、当然―――電気も生きているはずだ。
俺は試しにリビングの電気のスイッチを押してみた。僅かな間のあと、ビビ、という音を鳴らして明るい光が部屋を照らした。
キョン「よし、それなら―――」
俺はすぐさま誰某さんのリビングに置いてあったパソコンを起動する。
これで少なくとも、現状の把握ぐらいはできるはずだ―――。
幸いなことにこの誰某さんはパスワードの設定をしていなかった。
俺はすぐさまブラウザを起動して、某大手掲示板を開く。
キョン「えぇと―――ニュース速報?これか」
俺は一番それらしい文字をクリックし、スレッドを一つ一つ確認していく。
だが――――――。
キョン「なんで―――誰もこの状況に触れていないんだ―――?」
どのスレッドにも女子高生に人が襲われる、などといった様な事は書かれていなかった。
それどころか、全く関係のない話題ばかり溢れている。
キョン「どういう―――ことだ―――?」
俺はモニターの前で考える。
誰もこの状況の事を触れていない。という事は、ハルヒが何かしら願望を望んだときに全ての人間が消えたのか、或いは
その状況がごく一般的な事だと認識を変えられたのか、それとも他の何かなのか。
キョン「―――少なくとも、森さんと古泉はこの状況でも存在していた」
なら、全ての人間が消えた訳じゃあない。
キョン「―――しかも森さんは、あのハルヒが異常だという事も知っていた事になる」
なら、全ての人間の認識が変わった訳でもない。
キョン「ハルヒに近しい人間は、影響を受けていない―――?」
今の状況じゃあそれぐらいしか思いつかない。
キョン「ハルヒに近しい人物、といえば―――」
キョン「――――――クッ」
キョン「――――――クックック」
キョン「――――――ハッハッハッハッハッハ!!!!」
―――いるじゃないか!気付かなかった俺は馬鹿か!?
まだ、俺にはいる。こんな時に頼れる、最高の仲間が。
キョン「待ってろよ、長門―――」
俺は準備もそこそこに誰某さんの自宅を飛び出した。
目指すは長門のマンションだ。あそこにいけば、きっと―――。
三十分ノンストップで走り続けた。こんなに走れるなんて自分でもびっくりだ。
さっきのラーメンを戻しそうになるのを必死に堪えて、マンションの前にやってきた。
しかし――――――。
キョン「なんだ、これ―――」
マンションの正面入り口が、まるで切り取られたかのようにポッカリと穴を開いていた。
脳裏に嫌な考えがちらついた。
キョン「―――長門」
キョン「―――長門!!」
俺はすぐに長門の部屋の前に着いた。
だが、そこまで来て扉に手をかけるを躊躇ってしまう。
キョン「(―――もし、もしも、長門に何かあったとしたら―――)」
それはほとんど、詰んでいる。
まるで毎回のように、俺が古泉にゲームで追い込んでいるような―――そんな状況だ。
そうなれば、もう―――
キョン「―――長門!」
俺はそんな雑念を振り払って、扉を開けた。
今日は寝ます。
ご朗読ありがとうございました。
再開します。
部屋に入った途端、嫌な空気が俺の体にまとわりつく。
おまけに、何か妙な臭いもする。
キョン「――――――」
恐る恐る、照明のスイッチを入れる。
一瞬間が入り、部屋は暖かい光に包まれた。
キョン「――――――」
――――――結論から言うと。
長門はいつか俺が初めて長門の部屋に来た時の様に、静かに佇んでいた。
キョン「――――――長門」
ただ一つ、あのときと違うとすれば―――。
それは、長門の腹からどっぷりと大量の血が出ている事だ。
キョン「――――――長門!!」
俺は長門の傍に駆け寄り、肩をゆすった。
キョン「長門!!おい長門!!」
長門はまるで、日曜日の昼寝から目覚めたような瞳で俺を見る。
そして、掠れた言葉でこう言った。
長門「―――おはよう」
キョン「長門!大丈夫か!?」
そんな訳がない。俺は馬鹿か。あの長門が、こんなに血を出している。
こんなの、大丈夫な訳がない。
長門「―――大丈夫」
長門は、今度ははっきりとした声で。確かな瞳で。
長門「―――涼宮ハルヒについて、報告」
キョン「馬鹿、今はそんな事よりお前の―――」
長門「―――大事な話。だから、聞いて」
長門はじっと俺の目を見つめてくる。
それは、長門の数少ない『お願い』だった。
キョン「―――分かった」
長門「今から149時間20分17秒前、涼宮ハルヒによるもと思われる情報爆発を確認」
長門「同時に環境情報の改変も測定された。その結果、涼宮ハルヒを中心とする一定範囲内で大規模な時空断裂が発生。
その後、自然発生した涼宮ハルヒの個体が一般人を襲撃。その一部が情報を改ざんし、涼宮ハルヒのソースに変更。
現在までに殆どの人類と呼べる存在は、既に涼宮ハルヒになっている」
長門「あなた以外の残りの人類も残り80時間後には全て涼宮ハルヒに変わると思われる」
長門「涼宮ハルヒは夜間は行動しない。涼宮ハルヒは姿を視認しなければ襲ってこない」
長門「涼宮ハルヒは新しい個体が生まれる度に知性が剥離する」
長門「涼宮ハルヒは、自律進化そのものと思われる」
最期に長門は、口元から血を一筋垂らして、こう言った。
長門「涼宮ハルヒの狙いは、あなた」
そこまで言うと長門は、電池の切れたおもちゃのように、何もしゃべらなくなった。
キョン「――――――」
俺は長門の部屋に布団を敷き、長門を抱きあげ、そっと寝かせた。
キョン「おやすみ、長門―――」
俺は長門の髪を撫で、俺は長門の家を出た。時刻は十一時前。
虫の声も聞こえない道路を一人歩いた。
向かったのは俺の家。誰の歩幅に合わせることもなく、何のルールに縛られる必要もないせか、すぐに家に着いた。
キョン「―――ただいま」
キョンくんおかえりー。そんな妹の声も、今や記憶の彼方だ。
母も父もいない。まったく白状な家族だ。
俺は玄関の鍵を閉め、ソファーに横たわる。そしてそのまま、眠りに着いた。
翌日の朝。目が覚めてから時計を確認すると、なんと7時であった。
妹がいた時はいつも妹に起こされていというのに、と自嘲してしまう。
俺は手短に風呂に入り、夜食用に買い置きしていたカップラーメンを作る。ヤカンがあったのを幸福に感じざるを得なかった。
そして重い朝食を食べた後、俺はまたハルヒを探していた。
ハルヒを、殺す為に。
―――それで現在、俺はこうしてコンビニスイーツを貪りながら体力回復をしている。
キョン「―――あぁ、そういえば包丁とかも持ってたんだっけ」
甘いシュークリームをコーヒーで流し込む。
キョン「よし、今度はダメ元で包丁いってみるか」
俺はコーヒーを飲み干し、家を出た。
すみません、友人に麻雀のお誘いがあったので今日はこの辺で。
ご朗読ありがとうございました。
再開します。
>>61の訂正
×俺はコーヒーを飲み干し、家を出た。
○俺はコーヒーを飲み干し、コンビニを出た。
コンビニを出るとアスファルトからの熱ですぐにまた体温が上がる。
まったく、せめて季節は春にてもらいたかったものだ。
キョン「さて―――」
俺はコンビニから拝借した炭酸飲料を良く振ってポケットに仕舞いこんだ。
ぐっしょりと嫌な感じはするが、それは我慢だ。
キョン「今度はどの方面に行くかな」
携帯の地図で現在地と進む方向を考える。
キョン「久しぶりに北高方面に行くか?いうあけど、駅方面もまだ行ってなかったな―――」
さて、どうするか。
思案した結果、目指したのは図書館だった。
長門と初めて来た時の事を思い出しながら俺は道路を歩く。
どこから迫られともいいようと、いつの間にか道路の中心を歩くのが癖になっていた。
速足駆け足で向かったせいなのか、はたま只の偶然なのか。ハルヒには一匹も遭遇しなかった。
キョン「―――今日の発見は一匹だけか」
ツイてるのかツイてないんだか。
図書館に入ると、また冷たい空気が体を包み込んでくれる。
少し腰かけたい気持ちはあったが、そうなるとハルヒに襲われた時に逃げるのが遅れてしまう。
俺は我慢をしつつ、図書館に来た第二の目的を探していた。
キョン「剣―――剣道―――剣術―――居合い―――抜刀―――」
驚いた。まさかこの図書館がこんなに剣に関連した図書があるとは思わなんだ。
キョン「―――お、『素人にでもできる簡単片手剣講座』」
そんなのもあるのか。俺は手に取り、パラパラと読んでみる。
キョン「ほぉ。案外分かりやすい。しかも思ってたより簡単なのか」
しばらく本を見ながら練習を重ねていた成果が出たのか、まだまだ甘い部分はあるものの、それなりに形は出来上がってきた。
キョン「忘れないうちに練習しておきたいが―――おっ」
俺は本棚の陰に隠れ、窓の向こう側に目を凝らした。
キョン「ナイスタイミングだ、ハルヒ」
俺は包丁を握りしめて静かにハルヒを注視する。
ハルヒがしばらく辺りをうかがっていたが、俺には気づかずそのまま街の方に向かっていった。
俺は図書館を出てから気付かれ無いようにその後をつけていった。
俺はそんなハルヒを見失わない用に、少しずつ歩くスピードを速めながら、けれど慎重に後を追っていく。
ハルヒは時折辺りを伺うが、そのたびに俺も出来るだけ気配を消しているつもりだ。
ハルヒとの距離は―――もう6メートルといったところか。
キョン「(距離的には申し分ないんだが―――)」
いかんせん場所が悪い。いつの間にか路地裏に入り込んでしまっている。
ぎりぎり隠れる場所はあるものの、ハルヒと俺の位置はほぼ直線状だ。
キョン「(もう少し広い所に出られれば、勝負するか―――)」
――――――と。
唐突に、ハルヒ足がピタリと止まった。
キョン「(? なんだ―――?)」
ハルヒを注意深く観察する。
―――まずいな。もしここで追いかけられたら圧倒的に不利だ。
隠れる場所の多さが、一転して障害物に変わる。そうなれば、九分九厘俺は死ぬ。
キョン「(落ち着け―――落ち着いてよく見るんだ―――)」
昔占ってもらった友人は、守護霊は自分の墓を引っこ抜いた人と言われたそうです。
麻雀は鳴きまくるものだと思ってます。
何が言いたいかというともおう寝ます。
ご朗読ありがとうございました。
これは バグ ですか?
いいえ 仕様 です。
だからもう直せないとこまで来たって言ったんだよ
再開します。
すまんこ。もう少し待ってけろ
素まんこよりスパッツ越しの方が好みです
ハルヒは何かを探しているかのように、キョロキョロと辺りを伺っていた。
キョン「(―――まずいな。バレたか?)」
俺は包丁に手をかけながら、ハルヒの一挙一動を凝視する。
ハルヒはその後しばらく辺りを訝しげに辺りを見回すと、どこか納得のいかない顔でまた歩き始めた。
キョン「(バレちゃあ、いないようだ―――。
けど何か怪しんでいるみたいだし、今日は深追いしないほうがいいな)」
俺はハルヒが角を曲ったのを確認すると、その場から逃げだそうとした。
―――が。
キョン「――――――え?」
俺は突然の出来事に、思わず呆けてしまった。
落ち着け。落ち着け。落ち着け。
確認だ。何があったのかを確認しろ。
俺はハルヒの後をつけてここにきた。
オーケー。
そして隙あらば包丁で殺そうとした。
オーケー。
そしてこの裏路地まで尾行してきた。
オーケー。
そしてハルヒに妙なな行動があった。
オーケー。
そして俺はここから逃げようとした。
オーケー。
そしてハルヒは俺に気付かず離れた。
オーケー。
そしてハルヒは壁に叩きつけられた。
誤字とか死ねるわ―まじ死ねるわ―。
キョン(あぁだめだ意味わかんねぇ)」
ハルヒは頭から血を垂れ流しながら、壁に背を預けなんとか立っている状態だった。
ハルヒ「くっ…・・・ゲホッ。やって―――くれるじゃない」
ハルヒは壁に叩きつけられた何者かを見据えている。
キョン「(誰だ―――?あのハルヒに、あそこまで傷を負わすなんて―――!)」
ハルヒ「全く―――さっきから、変な感じはしてたけど。物陰からの不意打ちなんて、随分と汚いわね」
「そう?こんなの、見抜けない方が悪いと思うけど?」
ハルヒ「さっすが―――性格の悪さは一級品ね」
「あなただって変わらないでしょう?」
ハルヒ「あんたよりは、マシな、つもり、よ―――ゲホッ、オェエ!」
「まぁ、どっちでもいいけどね。あなたが死ぬのは変わらないし」
「ねぇ?―――わたし」
キョン「(ハルヒが二人。それには驚かない。その事については長門に聞かされていたからな)」
キョン「(だが、長門。何故―――)」
キョン「(何故そのハルヒ達が争っているんだ―――?)」
ハルヒA「死ぬ?私が?―――生憎ね。この程度じゃ、まだまだ死ねないわね」
ハルヒB「あら、そうなの?なら、これならなどう?」
ハルヒはそう言うや否や、ハルヒの顎を蹴り上げた
ハルヒA「―――がっ」
ハルヒB「―――どう?きいた?」
ハルヒB「どう?頭の中が掻き回される気分は?」
ハルヒA「―――ゲェッ―――ェェ」
ハルヒB「耐えられない?まぁ、そうよね。それを耐えたら我ながら賞賛するわよ」
ハルヒB「けど、そうやって吐しゃ物見せられるのも気持ちの良い物じゃないから、もう死んで頂戴」
ハルヒは地面に跪いているハルヒの頭に足を乗せ、何度も何度もハルヒの頭を地面に叩きつけた。
やがて、ゴギュと聞いた事のない音を鳴らして、ハルヒは完全に動かなくなった。
トゥービーコンティニュード。
>>83は後で先生のところに来るように
再開するど
ハルヒA「――――――」
ハルヒB「―――ふぅ。やっと死んだのね」
新しく現れたハルヒ―――ハルヒBは、うっすらと額に汗を浮かべ、まるで一仕事終えたかのようなすっきりとした顔をしていた。
ハルヒB「全く、あと何回殺せばいいのかしら。いくらキョンの為とはいっても、面倒すぎるわ」
キョン「(俺の―――為?おいハルヒ、それはどういう意味なんだ?)」
今すぐ飛び出して聞き出したい。
だがもしそんな事をして殺されでもしてみろ。何のために生き延びたのかわからんぞ。
俺は必死に飛び出していきそうな体を押さえ、ハルヒの静かな独白を聞き続ける。
ハルヒB「ま、しょうがないわよね。なんていっても、キョンの為なんだから。
―――ふふ。あぁ、まっててね、キョン。すぐに、二人だけの世界にしてあげるから―――♪」
―――だからハルヒ。教えてくれ。その言葉の意味を、俺に。教えてくれよ。
ハルヒBは満面の笑みを浮かべたまま、路地裏から出て行った。
幸か不幸か、いや恐らく幸福なのだろうが、俺の事には気づかまかったらしい。
キョン「どういう事なんだ、ハルヒ」
―――お前がそうなっちまったのは、俺のせいなのか―――?
俺はその場を後にした。
動かなくなったハルヒAを弔おうと考えたが、こんなコンクリートジャングルではそれも無理だった。
ハルヒの原形をとどめていない顔を1秒か、1分か、1時間か。
ただ眺めて、俺もその場を後にした。
気付けば辺りはほんのり暗くなっていた。
適当な家に入り、食えそうなモノを食った。だが、どうしてもあのさっきの光景が目に焼き付いて離れない。
俺は食事もそこそこに、ソファに身をゆだねた。
さっきから、何度も何度も同じ光景が壊れたビデモみたいに頭の中でループする。
寝ようと思い瞼を閉じても、より一層鮮明になるだけで、繰り返しが終わらない。
キョン「―――どうしちまったんだ、ハルヒ」
思えば、根本的なソレの原因が分からない。
いや、いつもハルヒは突拍子もない発言にまみれていたが、それでも原因はわかりやすい。
だが、今回に限れば、全く分からない。何かしらのゾンビ映画に影響されてゾンビが街を徘徊する。
それならまだ理屈が通るが、それならハルヒはそのゾンビを撃退したりする『英雄』的な立場であって、
無関係な一般人の村人Aに襲いかかるような『悪魔』ボジションではない筈だ。
キョン「何がったんだ?あの地震の時に、何が―――」
キョン「―――もしかして」
原因はあの時にあるのか?いや、もしくはあの場所?あそこいた人物?物?
ハルヒがああなったのは―――学校で、何かがあったからなのか?
時間は20時を指していた。俺は何も持たずにこの家を飛び出した。
キョン「ハァ―――ハァ―――オエッ」
全力疾走で二時間。自分の足の遅さと根性に涙が出そうだ。
校門の前でゼェハァと汗と二酸化炭素を排出し、痛む脇腹を押えながら学校に入っていく。
学校の鍵は俺が出てきたときから変わらず開きっぱなしだった。
それは幸いしたが、電気のない学校はどうしようもなく不気味だ。しかし電気をつけて大量のハルヒがここに集まってくる方
が、俺にはもっとおぞましい。
宿直室から懐中電灯を拝借し、誰もいない―――恐らく、だれもいない―――学校の階段を登っていく。
今回はここまで?
時間があれば後ほど。ご朗読ありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
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