ジャイアン「進撃の巨人?」 (229)
お邪魔いたします。
進撃の巨人とドラえもんのクロスです。
糞つまらないですが、よろしければお付き合い下さい。
【注意】
・進撃の単行本2〜4巻のネタバレ有り
・進撃サイドの主要人物はあまり出てきません
・地の文があります
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1368621874
—練馬区 野比家—
ママ『ドラちゃ〜ん。武さんが来たわよぉ〜。』
ドラえもん「えっ? ジャイアンが? 何だろ? 上がってもらって〜。」
ママ『分かったわ〜』
タケシサンドウゾ
スイマセンオジャマシマァス
ドタドタドタッ
ガラッ
ジャイアン「よぉ!」
ドラえもん「ジャイアンいらっしゃい。どうしたの? のび太くんなら君とサッカーの練習するって言ってでかけたよ?」
ジャイアン「おぅ、アイツはいま空き地で待ってるよ。それよりさ、ドラえもん。パワー手袋とヒラリマント貸してくれよ。」
ドラえもん「パワー手袋とヒラリマント? 何に使うのさ?」
ジャイアン「PKの練習しようと思うんだけどよ、空き地の土管を積み上げてゴールを作るんだ。」
ドラえもん「その為にパワー手袋? そんな事しなくたって地面に線を書けば良いじゃないか。」
ジャイアン「いや、やっぱゴールポストとバーがなきゃ臨場感がねぇ。」
ドラえもん「なに、そのこだわり。」
ドラえもん「それで、ヒラリマントは?」
ジャイアン「おぅ。のび太がキーパーなんだけどよぉ、アイツ、俺がシュート打ってもビビって避けるばっかりで全然練習にならねぇんだ。」
ドラえもん「そりゃあ君の怪力シュートを前にしたら、避けるなって方が無茶だよ。」
ジャイアン「へへへっ。怪力なんて言われたら照れるじゃねぇか。」
ドラえもん(いや、別に誉めてるワケじゃ・・・)
ジャイアン「まぁ、それでだ、アイツにヒラリマントを持たせりゃビビる事もなくなるだろ? 少なくとも俺にとっては命中率を上げる練習になる。」
ドラえもん「なるほど。まぁ、悪さをするつもりじゃないんなら良いよ。」ゴソゴソ
ドラえもん「はい。」スッ
ジャイアン「ありがとよ。」
ドラえもん「土管はちゃんと元に戻すんだよ。」
ジャイアン「分かってるって。あっ、ついでに石ころ帽子も貸してくれよ。」
ドラえもん「サッカーに石ころ帽子が必要なの?」
ジャイアン「違う違う。また神成さん家に入っちまうかも知れねぇだろ? そん時は石ころ帽子でバレないようにボールを取りに行くんだよ。」
ドラえもん「それはダメ。人に迷惑をかけた時は素直に謝らなきゃ。」
ジャイアン「良いじゃねぇか。堅い事言うなよ。なっ?」
ドラえもん「ダメったらダメ。」
ジャイアン「頼む。今度どら焼き5コ買ってやるから。」
ドラえもん「!」ピクッ
ジャイアン「5コ。5コだぞ。」
ドラえもん「・・・・・・一口サイズのミニどら焼きじゃないよね?」
ジャイアン「当たり前だろ。普通のサイズのヤツを5コだ。」
ドラえもん「・・・・・・今回だけだよ。」ゴソゴソ
ドラえもん「・・・・・・はい。」スッ
ジャイアン「さすがだぜ心の友よ。じゃあな。」
ドラえもん「あっ、ジャイアン。」
ジャイアン「おぅ?」クルッ
ドラえもん「そのまま持って行ったらかさ張るでしょ? 四次元ポーチを貸してあげるからそれに入れて行きなよ。」
ジャイアン「お〜ぉ。気が利くじゃねぇか。ありがとよ。」
ドタドタドタッ
—道路—
ジャイアン「よ〜し。これで思う存分シュート練習ができるな。のび太、待ってろよぉ。」
駆け出したジャイアンが十字路を横切ろうとした、その時。
ビイィィィィィィィィ
ジャイアン「!!!?」ビクッ
けたたましいクラクションが響いた。
慌てて音のした方を向く。
右側の一方通行の峡路。
一台の車が迫っていた。
ジャイアン「なっ!!!?」
運転手は誰かが飛び出してくるワケがないとたかをくくっていたのであろう。
一目でそのブレーキが手遅れと分かるスピードが出ている。
視界がスローモーションの世界へと飲み込まれてゆく中、ジャイアンはホームルームで先生の言っていた言葉を思い出していた。
ここの十字路は事故が多いんだっけ。
キイィィィィィィィィッ
—???—
・・・しろ!!
おい!!
ジャイアン「・・・・・・。」
???「おい、君!! しっかりするんだ!! こんな場所にいたら危ない!!」
ジャイアン「・・・・・・んっ・・・」
???「あっ! 気が付いたみたいよ!」
???「さぁ、目を開けて!! 起きるんだ!! ここから逃げないと!!」ユサユサッ
ジャイアン「・・・にげ・・・る?」パチッ
???「良かった!! 目が覚めたんだね!?」
ジャイアン「・・・・・・ここは?」ムクッ
徐々に明瞭になる意識に引き上げられ、ジャイアンは上体を起こした。
目の前には見知らぬ男女が二人。
面長で長身の穏やかそうな男。
黒い髪を短く刈っている。
女の方はそばかすの浮いた顔に栗色の髪を後ろで束ねた、快活そうな印象を受ける少女だった。
共に見覚えのない衣服に身を包んでいる。
見回した周囲には石造りの建物。
舗装されていない砂地の道路。
視界の遥か向こうにそびえ立つ巨大な壁。
そして仄かに香る生臭い匂い。
頭上に広がる青空を除いて、ジャイアンの知る平成の東京の面影はどこにもなかった。
おびただしい数の疑問符が脳内に沸き上がる。
ここはどこだ?
???「きみ、名前は!?」
ジャイアン「えっ?」
???「名前。あなたの名前よ。私はハンナ。」
???「僕はフランツだ。君の名前を教えてくれ。」
ジャイアン「えっ・・・・・・あぁ・・・剛田武・・・」
ハンナ「タケシ? 変わった苗字ね。」
ジャイアン「あっ、いや・・・武は名前で・・・」
フランツ「ん? じゃあタケシ・ゴウダか?」
ジャイアン「あぁ・・・まぁ・・・」
二人は怪訝そうな表情で顔を見合わせた。
ハンナ「頭を打って混乱してるのかしら?」
フランツ「そうかも知れない。だが、今はとにかく彼を避難させる事が先決だ。こんな場所に一般市民がいちゃ危ない。」
二人の男女——フランツとハンナの交わす言葉はジャイアンの脳内の疑問符を更に増殖させた。
避難?
危ない?
フランツ「さぁ、辛いかも知れないが立って!」グイッ
ジャイアン「わっ!」
ハンナ「走れる?」
ジャイアン「ま、待ってくれよ! 危ないって何だよ? 何から逃げるってんだ? っていうか、ここは」
ズシンッ
三人「「「!!!?」」」ビクッ
背後から地鳴りがした。
三人は弾かれたようにその方向へと向き直る。
いま三人がいる地点から300メートルほど先にある交差点。
その陰から“それ”は現れた。
フランツ「くっ!! 見付かった!!」
ジャイアン「・・・・・・な、何だよアレ・・・」
ハンナ「に、逃げなきゃ!!」
それはまさに“巨大なヒト”だった。
手もある。
足もある。
肌や髪の色もヒトと遜色ない。
顔付きやふくよかな腹部は40代手前の肥満男性を彷彿とさせる。
その表情には微かに笑みさえ見て取れた。
7メートルを超す体躯と、一糸纏わぬ裸体の股間にあるべき物が存在しない点を除けば、まさにヒトそのものである。
巨大なヒト。
すなわち、巨人。
フランツ「くっ!!」ジャキンッ
ハンナ「フランツ!?」
フランツ「ハンナ!! タケシくんを連れて逃げるんだ!!」
ハンナ「でも、あなたは!?」
フランツ「奴を食い止める!!」
ハンナ「そんな・・・!!」
フランツ「大丈夫だ!! 死にはしない!! 十分に訓練は受けた!!」
ハンナ「無理よ!! たった一人で戦うなんて!!」
フランツ「良いから行くんだ!! 一般人を巻き込むワケにはいかない!!」
ハンナ「でも・・・!!」
フランツ「ハンナ!! 兵士の誇りを忘れるな!!」
ハンナ「・・・っ!!」
フランツ「僕を信じろ!! 絶対に死なない!!」
ハンナ「フランツ・・・・・・」
フランツ「行くんだ・・・・・・行けえぇ!!!!」
ハンナ「うっ・・・」ジワァ
ガシッ
ジャイアン「わっ!」
ハンナ「タケシくん!! 行くわよ!!」パシュッ
ジャイアン「えっ!? あっ! わっ!」グンッ
ハンナの腰に装着された装備からワイヤーが射出された。
先端に取り付けられたアンカーが家屋の外壁に突き刺さる。
それと同時に腰の装置からガスが噴射され、ワイヤーがすさまじい勢いで巻き取られた。
ハンナと、彼女に両脇を抱えられたジャイアンの体が急上昇する。
ジャイアン「わわわわわっ!!」グワンッ
その勢いのまま宙に放り出され、家屋の屋根へと着地する。
ハンナ「さぁ、走って!! 屋根伝いに進めば安全だから!!」
ジャイアン「あ、あぁ・・・・・・」
タタタタタッ
フランツ「・・・・・・」
ズシンッ ズシンッ
フランツ「・・・・・・愛してる。」ポツリ
ズシンッ ズシンッ
—トロスト区 家屋の屋根—
ジャイアン「ちょ、ちょっと!! アレは一体何なんだよ!?」タタタタタッ
ハンナ「何って・・・巨人に決まってるじゃない!!」タタタタタッ
ジャイアン「きょ、巨人!? アレ、やっぱり巨人なのか!?」
ハンナ「一体何を言ってるの? まさか巨人を知らないの?」
ジャイアン「知るワケねぇよ!! 俺はついさっきまで東京の練馬区にいたんだからよぉ!!」
ハンナ「と、トウキョウ? ネリマ区?」
ジャイアン「あぁ、もうワケが分かんねぇよ!! 車に轢かれたかと思えばいきなり知らない街で目が覚めて、しかもあんな化物と鉢合わせて!! 何がどうなってんだ!!」
ハンナ(・・・記憶の混乱? よほど強く頭を打ったのかしら?)
ジャイアン「なぁ、さっきの巨人って奴は一体何なんだ?」
ハンナ「な、何って言われても・・・巨人は巨人よ。見た目は大きな人間みたいだけど、理性はないし言葉も話せない。それに、人を食べる。」
ジャイアン「はっ!? た、食べる!?」
ハンナ「そうよ。」
ジャイアン「じ、じゃあさっきの男の人、フランツさんだっけ!? あの人・・・」
ハンナ「フランツは大丈夫よ。死なないわ。」
ジャイアン「いや、でも・・・」
ハンナ「私もフランツも兵士なの。巨人を倒すための訓練を受けてる。」
ジャイアン「だからって・・・」
ハンナ「大丈夫ったら大丈夫!」
ジャイアン「いや、あんなのに一人で立ち向かうなんて無理に決m」
ハンナ「大丈夫って言ってるでしょ!!!!!!!!!」
ジャイアン「!?」ビクッ
ハンナ「・・・・・・。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・ごめんなさい。大きな声出して。」
ジャイアン「・・・いや、良いけど・・・」
ハンナ「・・・・・・フランツは私の恋人なの。」
ジャイアン「えっ?」
ハンナ「だから、死なない。彼が私を残して死ぬなんて、あり得ない。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・見えてきたわ。」
ジャイアン「えっ?」
ハンナは前方を指差した。
100メートルほど先に巨大な壁がそびえ立ち、その足元に人だかりが形成されている。
ハンナ「ウォール・ローゼの扉よ。あの扉を通って壁の向こう側に避難すれば安全よ。」
ジャイアン「そ、そうなのか?」
ハンナ「えぇ。悪いんだけど、ここからは一人で行ってもらえる?」
ジャイアン「えっ?」
ハンナ「私はフランツのところに戻らなきゃ。」
ジャイアン「あっ・・・そ、そう・・・」
ハンナ「ごめんなさい。あなたの無事を祈ってるわ。この建物は屋根の清掃用の梯子が外壁に取り付けられてるから、それを使って下まで降りてもらえるかしら?」
ジャイアン「分かった。」
ジャイアンが下に降りるまで見送ると、ハンナは再び腰の装置からワイヤーを射出し、屋根から飛び降りた。
上弦の月のごとく下向きの弧を描きながら滑空し、そしてまた次のワイヤーを射出し、巻き取りながらガスを噴射して空中を進む。
その動作を繰り返し、ハンナはあっと言う間にジャイアンの視力が及ばない遥か遠くへと消えていった。
ジャイアン(すげぇ・・・スパイダーマンみたいだ。)
ざわざわざわ
市民A「お・・・おい・・・!! あんた達・・・」
市民B「今がどんな状況か分かってんのか!?」
ざわざわざわ
ジャイアン「???」
???「分かってるからこうなってんだよ!! てめぇらこそ壁を出たかったら手伝え!!」
市民C「ふざんじゃねぇよ!」
市民D「何考えてんだ! 人を通すのが先だろ!」
ジャイアン「なんだなんだ?」
飛び交う怒声。
ジャイアンは人だかりを掻き分け、その最前列へと進み出た。
見ると、市民の避難路である筈の扉が荷台によって封鎖されている。
そしてそれを懸命に後ろから押している男達。
明らかに通れないサイズの荷台を無理矢理通そうとしている。
その結果、集まった市民の通行が妨げられ、このような人だかりが形成されているのだ。
そして、その荷台の持ち主とおぼしき禿頭の男が、食ってかかる市民相手に啖呵を切っていた。
ジャイアン(おいおい・・・)
商会長「俺はここの商会のボスだぞっ! お前ら兵士がクソに変えたメシは誰の金で賄われた!?」
商会長「いいから押せ!! この積み荷はお前らのチンケな人生じゃ一生かかっても稼げねぇ代物だ! 協力すれば礼はする!!」
ジャイアン(ふ、ふざけんなよあのハゲ!! 早くここを通らなきゃみんな死んじまうんじゃねぇのかよ!!)
皆の命が危険に晒されている中、周囲の迷惑も省みず私利私欲を優先する男。
その上、その行為に何ら罪悪感を覚えている様子もない。
ジャイアンは憤ると同時に呆れ返った。
ジャイアン(こんな状況で、もしあの巨人ってのが来たら・・・・・・)
ズシンッ
ジャイアン「!!!?」
地鳴りを伴う足音。
弾かれたように背後を振り返る。
不吉な予感は的中してしまった。
扉の前から街の中央へ向かって一直線に伸びる大通り。
その大通りの彼方からこちらを目指して、猛スピードでそれは駆けて来た。
ジャイアン「マジかよ!!!?」
うわあぁぁぁぁぁぁ
巨人だ!!
すぐそこまで来てるぞ!!
今すぐ荷台を引け!!
死にたくねぇ奴は荷台を押せ!!
やめて子供が・・・・・・
うわあぁぁぁぁぁぁ
ジャイアン「うわぁ!! ヤバいヤバいヤバい!!」
四方八方から悲鳴と怒号が乱れ飛ぶ。
絵に描いたような大パニックである。
それでも尚、商会の男達は荷台をどかせようとはしない。
商会長「さっさと押しやがれバカどもぉ!! 巨人が来ちまうだろうがぁ!!」
ジャイアン「くっ・・・!! この野郎おぉぉ!!」ガシッ
商会長「うっ!? な、何だクソガキ!! 離せ!!」
ジャイアン「うるせぇ!! こんなワケ分かんねぇ世界で死んでたまるかよぉ!! !!」
商会長「はぁっ!?」
ジャイアン「お前をブッ飛ばして道を開けさせてやるっ!!!!」
ジャイアンは右腕を大きく振りかぶった。
硬く握り締めた拳で鼻を狙う。
鼻血を噴きやがれ。
ズバッ
ジャイアン「!?」
ジャイアンの鉄拳が商会長の鼻を捉えるより早く、肉の裂ける鈍い音が響いた。
ドォ
ゴオオォォォォォォ
ジャイアン「なっ・・・」
全速力でこちらへと迫っていた巨人が前のめりに転倒した。
何かに躓(つまず)いたという感じではない。
電源が切れたかのように膝の力が抜け、そのまま崩れ落ちたのだ。
まだ突進の勢いが止まぬ巨人は、頬を地面に擦り付けたまま砂埃を上げてこちらへと滑ってくる。
そして、ジャイアン達の手前10メートルほどの場所で停止した。
ジャイアン「一体何が・・・・・・んっ?」
ジャイアンは気付いた。
うつ伏せに倒れた巨人の後頭部に誰かが乗っている。
黒のショートヘアに黒目勝ちな瞳、首には黒いマフラー。
その無表情かつ凛としたたたずまいと相まって“漆黒”という言葉が思い起こされる。
よくよく見ると女性のようだ。
両手に構えた剣と、フランツやハンナとまったく同じ服装をしている事から彼女もまた兵士なのだろうと推測される。
女兵士「!?」
女兵士の視線が集まった人々に向く。
次いで、通路を閉ざしている荷台に注がれた。
女兵士「は・・・?」
無表情だった女兵士の顔に、にわかに驚きの感情が浮かぶ。
だがそれも数秒の事。
すぐさま元の人形のような表情に立ち返ると、その洞窟のような黒い瞳で商会長を捉えた。
女兵士「何を・・・しているの?」
ゆっくりと、一歩ずつ近付いてくる。
自然と皆の視線は女兵士に集まる。
この圧倒的な強者と圧倒的な権力者の戦いを見守るべく。
女兵士「今、仲間が死んでいる・・・」
女兵士「住民の避難が完了しないから・・・巨人と戦って死んでいる・・・」
商会長「それは当然だ! 住民の命や財産を守るために心臓を捧げるのがお前らの務めだろうが!!」
商会長「タダメシ食らいが100年ぶりに役立ったからっていい気になるな!」
ジャイアン「こんの・・・!」カチン
心底腐ってやがる。
ジャイアンはそう思った。
最悪、この女兵士が言いくるめられたりしようものなら、今度こそ自分の手でブッ飛ばしてやろう。
そう決意し、再び右拳を力強く握る。
攻撃の準備は整った。
しかし
女兵士「・・・人が人のために死ぬのが当然だと思ってるのなら・・・」
ジャイアン「!!!?」ゾクッ
突如、女兵士の全身から凄まじい殺気が立ち昇った。
女兵士「きっと理解してもらえるだろう。あなたという一人の尊い命が多くの命を救うことがあることも。」
まっすぐ商会長を見つめ、歩み寄る。
商会長「・・・・・・!! やってみろ!! 俺はこの街の商会のボスだぞ!?」
商会長「お前の雇い主とも長い付き合いだ!! 下っ端の進退なんざ・・・冗談で決めるぞ!?」
女兵士「死体がどうやって喋るの?」
時が止まったように感じた。
その問いを発する女兵士の声に、一切の邪念や計算が感じられなかったからだ。
まるで子供が母親に鳥が空を飛ぶ理由を尋ねるかのような、曇りなき質問。
それは即ち、商会長を殺して道を開けさせると言った先程の言葉が脅しでも何でもなく、本気で彼を殺すつもりだった事を、そしてその選択に塵ほどの躊躇いも覚えていなかった事を意味する。
もはや彼女にとって彼は数秒後に死体となる事が確定していた。
だから彼の反論の意味が理解できなかったのだ。
側近「会長・・・」
商会長「・・・・・・ふっ・・・」
商会長「荷台を引け・・・」
・
・
・
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・
・
・
・
・
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・
・
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・
・
・
一時中断します。
次の投稿は11時か11時半頃に。
明日またみるわ
期待
なんでつまらんと思ってるのに書くの?
馬鹿なの?
>>38
うるさいうんこだ
再開の前にレスを。
>>36
ありがとうございます。
お待ちしてます。
>>37
ありがとうございます。
ご期待に沿えるよう頑張ります。
>>38
そう、馬鹿なんですorz
Fラン大出身ですので(´・ω・`)
>>39
まぁまぁまぁ。
うんこが出なきゃ人間は死んでしまいますから。
うんこの存在も馬鹿にできませんよ。
では、再開いたします。
解放された扉に人々は我先にと駆け寄り、辺りは戦争さながらの騒がしさに包まれていた。
商会の面々は苦虫を噛み潰したような表情でそれを睨み付けている。
さりとて、もはや彼らに主導権はない。
荷台の脇に寄り添い、ただただ自分達に通行の権利が回ってくるのを待つばかりである。
そんな悲喜こもごもの情景に背を向け、ジャイアンは女兵士が飛び去って行った方角をぼんやりと眺めていた。
人間のDNAの中に、おそらく太古の昔から眠り続けてきたであろう動物的直感。
それがジャイアンに告げていた。
彼女は強い。
圧倒的に強すぎる。
巨人を一撃で葬った戦闘力。
商会長に向けて放った殺気。
彼を殺す事に何のためらいも持たない冷酷なまでの正義。
そして何より、兵士然とした佇まい。
生まれて初めて目にした本物の強さに、ジャイアンは魅了されていた。
ジャイアン(すげぇ・・・・)
ジャイアン(・・・・・・でも・・・)
刹那、一つの疑問が首をもたげた。
ジャイアン(フランツさんとハンナさんは・・・)
あの女兵士が他の追随を許さぬほど圧倒的に強い事は疑いの余地がない。
だが、フランツとハンナはどうか?
あの二人が彼女と同等の強さを持っているとは到底思えなかった。
フランツはハンナに自分を信じろと言った。
絶対に死なないと。
だが、その表情には勝利を確信した余裕や落ち着きは微塵も見て取れなかった。
そこに浮かんでいたのはただ二つ。
恐怖と、絶望。
そしてそれはハンナも同様だ。
おそらくハンナは確信している。
フランツが無事ではない事を。
ジャイアンに向かって声を荒げた事が何よりの証拠だ。
あれはジャイアンの言い分を否定する為に発した言葉ではない。
このジャイアンは目的意識と自分を傷つければ巨人になれそうな雰囲気
フランツの死を拒絶する為の、悲痛な叫びだ。
ジャイアン(ハンナさん・・・・・・)
扉が解放され、数分が経過した。
依然として逃げ惑う人々の喧騒は続いているが、先ほどに比べるといくらか鎮まったように感じられる。
今なら押し寄せた人々に圧死させられる事もなく、穏便に扉をくぐる事ができるだろう。
いつまた巨人がやって来るか分からない。
早急に避難するのが賢明だ。
ジャイアンにもそれは分かっている。
だが、足が動かない。
後ろを振り返る事ができない。
まるで氷像のごとくジャイアンはその場に立ち尽くしていた。
ジャイアン(まだ・・・間に合うかも知れない・・・)
ハンナが立ち去ってからそう長く経ってはいない。
フランツと分かれた場所までは少し距離があるが、全力で走れば戻れなくはない。
ジャイアン(どうする・・・)
最愛の恋人との死別をも覚悟し、フランツは自分を逃がしてくれた。
ここで自分が戻ってはその意志が無駄になる。
それは重々承知していた。
しかし、もしも戻った先にハンナがいたなら。
無事でいたなら。
守りたいと思った。
命の恩人の最も大切な女性(ひと)を。
だが・・・
ジャイアン(ちくしょう・・・・・・怖ぇ・・・)
もしも途中で巨人と遭遇したら。
あの巨体が地響きを伴い、自分目掛けて駆け寄ってくる。
そしてその腕で鷲掴みにされ、生きたまま身体を食い千切られ、噛み砕かれる。
どれほど痛いだろう。
どれほど怖いだろう。
考えただけで足がすくむ。
無謀が過ぎる事は明白だった。
ジャイアン(情けねぇ・・・)
ジャイアンは己を呪った。
己の非力さを。
所詮は非力な子供である自分があの化物から人間一人を守りきるなど夢物語だ。
ジャイアン「・・・・・・ドラえもん・・・」
如何ともしがたい自己嫌悪に苛まれ、前を向いている事さえ辛くなってくる。
ジャイアンは堪らず視線を落とした。
その時
ジャイアン「!」
自らの腹部に巻き付けられている物に気付いた。
ジャイアン「・・・・・・四次元ポーチ!」
——パワー手袋とヒラリマント貸してくれよ
——あっ、ついでに
ジャイアン「・・・!!」
ジャイアンは四次元ポーチに手を差し込んだ。
その中に広がる四次元空間をまさぐり、目当ての物を探す。
それはすぐに見付かった。
急いでポーチから取り出す。
ジャイアン「これなら見付からずに済む!!」
ジャイアンは石ころ帽子を装着し、全速力で駆け出した。
側近「・・・か、会長・・・見ました?」
商会長「あっ、あぁ・・・・・・」
商会長「に、人間が・・・消えた・・・・・・」
>>44
音痴の巨人ですね分かります。
—トロスト区内—
ハァ ハァ ハァ
ジャイアンは必死で走った。
ハンナと共に避難して来た時には屋根伝いに走っていたが、途中で見えた街並みはまだ記憶に残っている。
目の前に赤いテントを張り出した屋台が見える。
ジャイアン(確かあの屋台の先の、右の角から出てきた筈だ。)
家屋の屋根から見下ろした景色が蘇る。
ジャイアンはその記憶を頼りに、屋台の先の角を右に入った。
ジャイアン(あとはここからまっすぐ行けば良い筈だ。)
ジャイアン(・・・!! いた!!)
視界の遥か彼方に“二人”の姿を捉えた。
あと数メートルという場所まで迫ったところで、ジャイアンは石ころ帽子を外した。
ハンナ「心臓マッサージ20回!!」ドンッ ドンッ ドンッ
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「人口呼吸2回!!」スー ハー スー ハー
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「フランツ!! フランツ!!」ユサユサッ
ジャイアン「・・・・・・ハンナさん。」
ハンナ「・・・っ!? タケシくん!?」
ジャイアン「・・・ごめん。ハンナさんの事が・・・心配で・・・」
ジャイアン「それより、フラン」
ハンナ「タケシくん!! 助けて!!」
ジャイアン「えっ?」
ハンナ「フランツが息をしていないの!!」
ジャイアン「・・・・・・ハンナさん・・・」
ハンナ「さっきから何度も・・・何度も蘇生術を繰り返してるのに!!」
ジャイアン「ハンナさん・・・ここは危険だから早く屋根の上に」
ハンナ「フランツをこのままにできないでしょ!!」
ジャイアン「違うんだ・・・フランツさんは・・・」
フランツは下半身を失っていた。
食い千切られた腹部からどす黒い血が溢れ、辺り一面に鮮血の円陣を作り出している。
ハンナはその円陣の中央にひざまづき、フランツに延々と心肺蘇生術を繰り返していた。
まるで黒魔術の狂信者が魔方陣の中で行う儀式のように。
ハンナ「フランツ!! 起きて!! ねぇ、フランツ!!」
ジャイアン「・・・ハンナ・・・さん」ジワァ
ズシンッ
ジャイアン・ハンナ「「!!」」
再び、不吉な地響きが聞こえた。
ジャイアン達のいる場所から200メートル先。
ジャイアン「アイツは・・・」
ジャイアンが最初に遭遇した巨人と同一の個体だった。
肥満体の巨人。
おそらくはフランツの命を奪った張本人。
ハンナ「フランツ!! 巨人よ!! 巨人が来たわ!!」
ジャイアン「ハンナさん!!」
ハンナ「早く!! 早く起きて!! 一緒に逃げるのよ!!」
ジャイアン「ハンナさん!! もう止せ!! フランツさんは」
ハンナ「起きてええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
ジャイアン「・・・っ!! クソ・・・ッ!!」ギリッ
巨人はゆったりとした足取りでこちらへ近付いてくる。
表情は依然として微笑みを湛えたままだ。
ジャイアンはその微笑みを見るにつけ、怖いと思った。
それと同時に、気持ち悪いとも思った。
“怖い”と“気持ち悪い”が同じ沸点で融合した際に生まれる感情。
ジャイアンは生まれて初めて知る事となる。
それこそがまさに“不気味”なのである、と。
だが、その“不気味”という感情を受け入れつつも、また一方で彼の中に沸々と沸き上がる別の感情があった。
そしてそれは“不気味”以上に極めて原始的で手に負えない物でもあった。
ジャイアン「バカにしたような顔しやがって・・・」
ジャイアン「フランツさんを殺して・・・ハンナさんをこんなに悲しませて・・・それがそんなに嬉しいかよ!!!!」
それは“怒り”である。
巨人に対し、不気味と思う気持ちが消え去ったワケではない。
だが、にわかに沸き立ち出した怒りが、そのテリトリーを徐々に浸食し始めていた。
ジャイアン「ギッタギタの、メッタメタにしてやる!!!!」
ジャイアンの眼に、今までにない程の鋭い眼光が宿る。
もちろんその切っ先はただ一点。
目の前の巨人へと向けられていた。
ハンナ「タケシくん・・・何をする気?」
ジャイアンは四次元ポーチからパワー手袋とヒラリマントを取り出した。
まず、パワー手袋を両手に装着する。
次いでその手にヒラリマントを構え、真っ直ぐに巨人と対峙した。
ジャイアン「かかって来い!!!!」
ハンナ「な、何言ってるの!? やめなさい!! 早く・・・逃げて!!!!」
巨人は獲物に逃げる意志がない事を悟ったのか、にわかに歩調を早め出した。
姿勢が徐々に前傾へと移行する。
人間で言えば小走り、あるいはジョギング程度の動作だが、如何せん歩幅が違う。
ジャイアンとの距離は目に見えて縮まってゆく。
ハンナ「タケシくん!!!!!!」
獲物が射程圏内に入った。
巨人は上体を屈め腕を前に突き出す。
そして右足を蹴りだし、ヘッドスライディングの体勢を取った。
一秒でも早く目の前の餌にむしゃぶりつきたいという本能が為せる業だ。
巨人の丸太のごとき五指がジャイアンの両脇をすり抜ける。
そして、視界の全てを遮らんばかりの重厚な掌が迫り来る。
ジャイアンの全身が巨人の手の中へとすっぽり収まった。
後はその両手が握り締められ、指の間から鮮血が滴り落ちるのを待つのみ。
そして、掌の中で無惨に変形した少年が巨人の口へと運ばれるのだ。
数秒後に訪れるであろう悪夢のような光景を想像し、ハンナは強い吐き気を覚えた。
だが、次の瞬間。
砂埃を巻き上げながら、巨人の両手が真上に打ち上がった。
ハンナ「!!!?」
先ほどまで巨人の両手があった場所には、両腕を天高く掲げたジャイアンが立っていた。
その手に握られた赤い布は、英雄の凱旋を告げる戦旗のごとく風にはためいている。
だが、巨人の突進の勢いがそれで止まったワケではない。
両手を跳ね上げられ、エビ反りの状態のまま腹這いにジャイアンへと突っ込んで来る。
このままでは下敷きになり磨り潰されてしまうだろう。
しかしジャイアンは怯まない。
あえて自ら一歩踏み出し、反り返った巨人の胸板の真下へ滑り込んだ。
そして、再度その巨体にヒラリマントを押し当てる。
7メートルを超える巨体が大きく宙を舞った。
ハンナ「なっ・・・」
ヘッドスライディングの勢いそのままに宙へと投げ出された巨人はジャイアンの、更にはハンナの頭上すら飛び越え、大きく弧を描きながら落下してくる。
ジャイアンは後ろを振り返り、今まさに地上へ帰還しようとしている怪物を睨み付けた。
素早くヒラリマントを左手に巻き付けると、猛然と巨人に向かって突進を開始する。
ジャイアン「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
怒りと、それに伴うアドレナリンの力を借りたジャイアンの疾走はまさに光の矢のようだった。
ハンナの側を駆け抜けた直後、その体が巻き起こす一陣の風が彼女の頬を打った。
巨人は頭から落下してきている。
その頭頂と地面の間の距離はもはや1メートルもない。
だがその両者が衝突を迎えるよりも先に、ジャイアンの右拳が巨人の後頭部を打った。
普段のび太やスネ夫に行使している悪ふざけのパンチではない。
生まれて初めて抱く、殺意が込められた全身全霊の一撃。
そしてその破壊力をパワー手袋が何百倍にも増幅させる。
ジャイアン「食らええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
ドゴオォォォッ
ビリビリビリッ
ハンナ「きゃっ!!」
その拳の威力はあまりに凄まじく、周囲の空気が弾き飛ばされ強烈な突風、いや、爆風を生み出した。
通りの両脇を固める建物が爆風に煽られ、ドアや窓ガラスがガタガタと音を立てている。
巨人の頭部はその衝撃に耐えきる事ができず、頭頂からうなじに到るまでの部位がバラバラに砕けて千切れ飛んだ。
頭蓋や脳、眼球といった当該部位の中身が辺り一面に散乱する。
辛うじて四散を免れた胴体も大きく回転し、血を撒き散らしながら通りの遥か向こうへと吹き飛んで行った。
さながらクラッシュしたレーシングカーのように。
ジャイアン「ざまぁ見ろ!」
ハンナ「・・・あっ・・・あっ・・・」
ハンナは目の前の光景に言葉を失った。
通りや周囲の建物の外壁一面に巨人の血肉が散乱、付着し、死臭の漂う凄惨な花道と化している。
そしてその花道の入り口に立ちつくす少年。
その背をハンナはただただ凝視する事しかできなかった。
これをすべて彼がやったというの?
答えの分かりきった疑問が頭を支配する。
事の一部始終は自分の目でしかと目撃した。
だが、それでも信じられなかった。
巨人を投げ飛ばし、素手でその身体を粉砕し、葬る。
そんな事が人間にできる筈がない。
できる筈がない・・・のに・・・。
ハンナ「・・・た、タケシくん・・・・・・」
ジャイアン「んっ?」クルッ
ハンナ「あ、あなた・・・」
ジャイアン「???」
ハンナ「・・・何者なの?」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・人間・・・なの?」
ジャイアン「・・・・・・ちょっと安全な場所に移ろう。話すよ、俺の事。信じてもらえるか分かんねぇけど。」
ハンナ「・・・・・・。」
ジャイアン「その代わり、そっちも聞かせてくれ。この世界は何なのか。それと巨人の事も、もっと詳しく。」
ジャイアンかっけー!
>>65
映画仕様のきれいなジャイアンですwww
—トロスト区 家屋の屋根—
ハンナ「・・・・・・別の世界・・・未来の技術で作られた道具・・・」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・・・・ちょっと、頭がおかしくなりそう・・・」
ジャイアン「・・・嘘だって思わないのか?」
ハンナ「信じる事はできない。でも、それぐらい現実離れした理由がないと、さっきの出来事の説明がつかないわ。」
ジャイアン「そっか。」
ハンナ「・・・・・・。」
ジャイアン「・・・これからどうするんだ?」
ハンナ「・・・分からない。」
ジャイアン「いや、『分からない』って・・・。避難するとか、他の巨人を倒すとか」
ハンナ「無理よ。立体機動装置がガス切れだもの。」
ジャイアン「その腰に付いてる機械か。」
ハンナ「これは噴射したガスの推進力を利用しているの。これのお陰で私達は高速で移動したり、高い場所まで一瞬で登ったりできる。けど、さっきこの屋根に登る為に使ったのを最後にガスが底をついてしまった。」
ジャイアン「ガスが無くなったらもうおしまいなのか?」
ハンナ「そうね。そうなってしまったら、もう私達はただの人間。巨人を倒すどころか、壁を乗り越えて避難する事さえできないわ。」
ジャイアン「なぁ。さっきから一つ気になってるんだけどよぉ、壁には扉が付いてるんだろ? 兵士が避難する為にその扉を開けてもらったりできないのかよ?」
ハンナ「それは無理ね。扉を解放すれば巨人がウォールローゼ内に侵入する危険性が高まる。一般人の避難ならまだしも、私たち兵士にはあの扉をくぐる権利は認められないわ。」
ジャイアン「なんでだよ? 兵士ったって人間は人間だろ? こんな状況なんだから、生きる権利が」
ハンナ「こんな状況だからこそ、生きる権利が認められないの。」
ジャイアン「・・・っ!」
ハンナ「市民の為に心臓を捧げる義務はあっても、市民を危険に曝してまで保身に走る事は許されないわ。」
ジャイアン「・・・そんな・・・」
ハンナ「だから、立体機動装置が使えない今、私にできる事はもう何もないの。巨人とも戦えない。避難もできない。このまま巨人を駆逐できずにこの地区が見捨てられたら、私はただこの屋根の上で餓死するのを待つだけ。」
ジャイアン「そ、そんなんで良いのかよ!?」
ハンナ「・・・ほんのついさっきまでだったら、全力で生き残ろうとしたわ。でも、今はもうそんな気も起きない。」
ジャイアン「それって・・・・・・」
ハンナ「・・・・・・フランツは私の全てだったから。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナのすぐ隣に横たわるフランツの亡骸に目を移す。
変わり果てた恋人の頭部をハンナは優しく撫で続けていた。
きっと生前、何度となくそうしてきたであろう動作を延々と繰り返す。
もう出血はしていない。
血という血が全て抜け切ってしまったからだ。
静かに目を閉じたその顔の色は、もはや蒼白とさえ言い難い。
強いて何かの色に例えるならば、アイボリーが最も近いと言える。
ジャイアン「・・・・・・ごめん。」
ハンナ「・・・・・・。」
ジャイアン「・・・・・・俺を守ってくれたばっかりに・・・」
ハンナ「・・・・・・。」
ジャイアン「俺があの時・・・逃げずに最初から戦ってたら・・・」
ハンナ「・・・あなたのせいじゃないわ。」
ジャイアン「でも・・・」
ハンナ「お願いだから謝らないで。」
ジャイアンの俺つえぇぇ!!
が見れるスレはここですか?
ジャイアン「えっ・・・?」
ハンナ「フランツは兵士の使命を全うしたから死んだ。当然の事。誰のせいでもない。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・・・・そう、思わせて。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・・・・誰か責任者がいたりしたら、私はその人を殺してしまう。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・・・・だからどうか、責任を感じないで。お願い。」
ジャイアン「・・・・・・分かった。」
ハンナ「・・・ごめんなさい。」
ジャイアン「・・・・・・。」
>>73
そうです。
ようこそお越しくださいました。
ハンナ「・・・・・・。」
ジャイアン「・・・ガスの補給は?」
ハンナ「えっ?」
ジャイアン「できないのかよ? その機械は使い捨て?」
ハンナ「いえ。補給はできるよう作られているわ。でも・・・」
ジャイアン「でも?」
ハンナ「あれを見て。」スッ
ジャイアン「???」
ハンナの指差した先に目を向ける。
街の中央。
他の建物より一際高い、石造りの城のような物が見える。
そしてその城に、大小様々な20体近くの巨人が群がっていた。
ジャイアン「なんだ、ありゃ?」
ハンナ「兵団本部よ。そして、ガスの補給室はあの中。」
ジャイアン「マジか・・・・・・」
ハンナ「私達は実戦の場面では主に戦闘班とガスや物資の補給班に分かれるの。ところが、補給班のみんなが戦意を喪失。そして本部に立て籠ってしまってあの有り様よ。」
ジャイアン「なんだよ、それ・・・」
ハンナ「ひどい話よね・・・・・・気持ちは分かるけど・・・」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「あの様子じゃ、きっと補給室にも3〜4メートル級が侵入してるでしょうね。奇跡的に外の巨人達を掻い潜ったとしても、補給室で囲まれておしまいだわ。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「ね、タケシくん。分かったでしょ? 私にはもう助かる余地がないの。だから、私の事は放っておいて。あなたはまた屋根伝いに移動して壁の扉から避」
ジャイアン「立体機動装置のワイヤーを引っ張り出す事はできないのか?」
ハンナ「えっ?」
ジャイアン「ガスがなきゃ高速移動ができないのは分かった。けど、ワイヤーを掃除機のコードみたいに手で引っ張り出す事はできないのかよ?」
ハンナ「そうじき? ん〜、それが何なのか分からないけど、引っ張り出すだけならできるわよ。」
ジャイアン「よし。じゃあ、ワイヤーを下まで垂らしてくれ。俺がそれに掴まって下に降りる。」
ハンナ「・・・? 何をする気?」
ジャイアン「俺がガスを取ってくる。」
今日はこの辺で切り上げます。
お付き合い下さった皆様、どうもありがとうございました。
明日もよろしくお願いいたします。
では、おやすみなさい。
おつ
乙!!楽しみに待ってます
ちょっとジャイアンが大人すぎ
小5の思考回路じゃねえぞ
>>83
映画仕様だからいいんだよ
>>84
映画でも急に大人びてやしません
いいねェ
これは気になる
乙
ジャイアンぱねぇww
>>83
そんなん気にしてたら楽しめねーぞ
だす
Fランゴミクズ>>1が糞つまらないSSを書いて原作レイプするスレはここですか?
だす
こんばんは。
>>81
>>82
>>84
>>86
>>87
>>88
>>89
>>91
ご支援ありがとうございます。
頑張ります。
>>83
>>85
ちょっと美化しすぎたかも知れませんね。
すいません。
>>90
そうです。
ようこそお越しくださいました。
投下しま〜す。
—兵団本部から少し離れた場所—
ジャイアン「・・・。」チラッ
ジャイアンは石ころ帽子を被ったまま、物陰から本部の様子を伺い見ていた。
先ほどの屋根から見た時と状況は一切変わっておらず、依然として多くの巨人が群がっている。
トロスト区内の巨人の大多数があそこに集結してくれたお陰か、ここに来るまでの道中、巨人と遭遇する事は一切なかった。
それは先ほどハンナの救出に向かった時も同様である。
それ自体は幸運だったと言えるが、一方で逆に一つ、大きな不安が残ってしまった。
石ころ帽子は巨人に効果があるのか。
ここから本部までの距離は約300メートル。
巨人達はまだジャイアンに気付いた様子はない。
だが、それが果たして距離のお陰なのか石ころ帽子の恩恵なのか。
それが分からなかった。
ジャイアン(もし効果がなけりゃ一巻の終わりだ。)
これならむしろ一体ぐらい遭遇しておいた方が良かったかも知れない。
とは言え、ハンナの話によると巨人達は五感以外に何かしら人間の存在を関知する力を持っているという。
それに対し、石ころ帽子は相手の識別能力の中から自分の存在を抹消する道具。
言わば相手から全く気にされなくなる道具だ。
巨人が五感以外の何かを使って人間を関知しているというのなら、そもそもの識別能力に干渉する石ころ帽子はまさに打ってつけの対応策と言えるだろう。
少なくとも単に姿を隠すだけの透明マントよりは頼りになる。
大丈夫。
絶対大丈夫だ。
ジャイアンは自分に言い聞かせた。
ジャイアン「はぁ〜・・・・・・よし。行くか。」
ジャイアンは意を決して物陰から大通りへと歩み出た。
ゆっくり、慎重に歩を進める。
一直線に伸びる大通りの遥か向こうにそびえ立つ兵団本部。
遠目から見る限りでも巨大な建物であるが故に、少々歩いた程度ではなかなか近付いている実感が得られない。
そして、この大通りもまた、地獄絵図の様相を呈していた。
ジャイアン(・・・・・・死体だらけだ。)
大通りのそこかしこに身体を食い千切られた無惨な死体が散乱していた。
兵士、一般人、老人、そして子供。
腐臭が鼻を突く。
ジャイアン(・・・・・・ひでぇ。)
涙が出そうだった。
怖い。
だが、それ以上に悲しい。
あの人たち一人一人には名前がある。
親が決めたのか祖父母が決めたのか。
それは分からないが、いずれにせよ意味があり、幸せを願う愛が込められているに違いない。
そんな祝福された名前を背負い、あの人達はどんな人生を送ってきたのだろうか。
恋人がいたかも知れない。
守りたい家族がいたかも知れない。
叶えたい夢があったかも知れない。
みんな、幸せになりたかったに違いない。
その全てから、無慈悲に引き離す。
誰にそんな権利が認められるのだろうか。
ジャイアン(許せねぇよ・・・こんなの・・・)
思わず足が止まる。
下唇を噛む顎に力が入る。
そして鼻で深呼吸。
1回。
2回。
3回目は下唇を離し、口から一気に吸い込んだ。
やり切れない思いを呼吸に変えて吐き出す。
そして真っ直ぐ前を向き、再び力強く歩き始めた。
ハンナが待っている。
今は目の前の悲しみに埋没している場合ではない。
ジャイアン(だいぶ近付いてきたな。)
本部までの距離はもはや50メートルを切っている。
もういい加減、巨人に見付かっても良い距離だ。
人間を関知する能力がどうのこうのと言う以前に、この距離ならもはや肉眼でも難なく捕捉されてしまう。
だが、依然として巨人達は本部の外壁に貼り付くばかりで、誰一人としてジャイアンの方を見ようとしない。
ジャイアン(・・・いけるか?)
見る見るうちに縮まる巨人との距離。
汗が吹き出す。
鼓動が高鳴る。
そしてついに、一体の巨人の踵(かかと)に手が届く距離まで接近した。
そこで一度、歩みを止めてみる。
ジャイアン(・・・・・・どうだ!?)
恐る恐る周囲を見渡してみる。
目の前にいる巨人。
その隣で本部の建物を物欲しそうに眺める巨人。
割れた窓に手を差し入れて中の人間を掴もうとしている巨人。
どの個体も皆一様に本部の建物にのみ視線を向けている。
誰もジャイアンを見ていない。
見るべき物があるとも思っていない。
あれほど焦がれた餌が足下にいるなどと、誰も思っていない。
ジャイアン(これは・・・っ!)
成功だ。
石ころ帽子は巨人の目をも欺く力を持っている。
ジャイアン(よしっ!!)
そうと分かれば何の躊躇もいらない。
ジャイアンは身体を前に傾け、力一杯に右足を踏み出した。
巨人達の足の森をすり抜け、一直線に入り口を目指す。
すでに扉は破られ、入り口はぽっかりとその口を開け放っている。
砕かれた木製扉の破片を踏みつけ、ジャイアンは本部への潜入に成功した。
ジャイアン(確か、補給室は地下だったな。)キョロキョロ
事前にハンナから地下へはリフトで降りる旨を聞かされている。
そしてそのリフトへ至る経路も。
情報と目の前の内装を照らし合わせ、それとおぼしき方向へ向かってジャイアンは走った。
途中で何度も3〜4メートル級の巨人とすれ違ったが、やはり彼らは一様にジャイアンの存在に気付いていないようだった。
ラクショー。
そんな言葉が口を突いて出る。
そうこうしている内に、お目当てのリフトの前へと辿り着いた。
急いで搭乗し、地下を目指す。
—地下 補給室—
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
野太い音を立てながらリフトは地下の補給室へと到達した。
リフトから下車し、お目当てのガスボンベを探す。
もっている道具は三個だけだけどなんとなかなるレベルのものだし(四個目は運びよう)
ここもやはり巨人達の侵入を許してしまっていた。
3〜4級が7体。
何をするでもなくただ室内をウロウロと歩き回っている。
存在を認識されない以上もはや何の心配もいらないが、念のために体がぶつからないよう慎重に移動する。
ジャイアン(さてと。ガスボンベ、ガスボンベ・・・)キョロキョロ
ジャイアン(あれか?)
プロパンガスを思わせる巨大なガスボンベが目に入った。
20本ほどがまとめて一ヶ所に置かれており、そしてまたそこから通路を1本挟んで20本ほどが同様の配列で置かれている。
それらの頭頂からはホースが伸びており、そしてその先端は銃のような物に接続されていた。
おそらく、ガスの注入器であろう。
よく見るとそれらのガスボンベの足下に、更に小さなボンベがたくさん転がっていた。
その小さなボンベには見覚えがあった。
ハンナの立体機動装置に同じ物が付いていた。
ジャイアン(これを持って帰れば良いんだな・・・・・・って、あれ? そう言えば・・・)
ここでジャイアンは1つミスに気付く。
一体どれぐらいのガスを持って帰れば良いのか。
その事をハンナに訊くのを忘れていた。
ハンナの立体機動装置にはあの小さいガスボンベが左右に1本ずつ付いていた。
ならば2本で良さそうな気もするが、例えば一度に装備できるのが1本ずつで、常に付け替え用のボンベを3〜4本持ち歩いているという可能性も考えられなくはない。
ジャイアン(まさかあのデカイ奴が1本必要って事はねぇよな・・・)
パワー手袋がある以上、重量は問題にならない。
しかし、2本しかない腕で持ち運べる数には限りがある。
あまりに大量に持ち運びすぎてフットワークが鈍ったりしてはもしもの時に命取りとなる。
かと言って少なければ論外だ。
しばし思考を巡らせる。
が、答えは簡単に出た。
ジャイアン「って、四次元ポーチにいくらでも入るじゃねぇか!」
巨人との戦闘を考慮しすぎるあまり、つい四次元ポーチをただの入れ物のように考えてしまっていた。
これとて立派な秘密道具だ。
もしもボックスでさえ収納できるのだから、大型ボンベの1本や2本どうって事はない。
ジャイアン(よしっ! じゃあ小さい奴10本と、念のためにデカい奴も1本持って帰ろう!)
大小合わせて11本のボンベを四次元ポーチに収め、ジャイアンは足早に補給室を後にした。
—兵団本部前—
外に出ると、相変わらず巨人達が屯(たむろ)していた。
その数は先程よりも増えたように思う。
ビンの中の餌を取ろうと躍起になる猿のごとく、建物に手を出し入れして人間を狙っている。
ジャイアン「・・・・・・。」
このまま安全にハンナの元へ帰る事に抵抗を覚えた。
あの中にはまだ人がいる。
身の毛も弥立つ恐怖に曝されている。
仲間を見捨てて籠城に及んだ事自体はいただけないが、万死に値するなどとは到底言い難い。
少なくとも部外者である自分からしてみれば。
この世界に迷い込んで数時間。
あまりに多くの死を見すぎた。
この世界は死が多すぎる。
知り合いとそうでないとに関わらず、もう誰にも死んで欲しくない。
ジャイアン(けど・・・)
そうかと言って、自分にこの巨人たち全員を葬り、全ての兵士を助け出す力などない。
巨人はうなじを損壊させる事でしか倒せないとハンナから聞いた。
ここにいる巨人たち1体1体の弱点を、パワー手袋でピンポイントに狙うのはあまりに難しい。
ヒラリマントをジャイアントスイングのように振り回したところで殺傷には至らない。
館内にいる兵士全員を逃がすなど不可能だ。
ジャイアン(クソ・・・クソォ・・・っ!)
ジャイアンはまたも深い自己嫌悪に陥った。
確実に救える一人を救うか、全滅を覚悟で不特定多数の救出に挑むか。
そのどちらかしか選べない自分に嫌気が差した。
答えの出ない煩悶が頭を苛む。
だが数分間の自問自答の末、ジャイアンは確実な道を選んだ。
ジャイアン(ごめん・・・ごめん・・・)
自分は正しいと言い聞かせた。
それと同時に正しくないと糾弾もした。
震えが止まらない。
歯を食いしばり、兵団本部に背を向ける。
一気に駆け出そうと体重を前に傾けた。
その時
ビュワアァァァァッ
ジャイアン「うっ・・・!!」
突風が吹いた。
ジャイアンのシャツが大きくはためく。
巻き上げられた砂利が頬を打つ。
堪らず目を塞いだ。
ジャイアン「うぅ・・・・・・あれっ?」
ふと、頭部に違和感を覚えた。
いや、厳密には頭部を覆っていた違和感が取り除かれた。
ジャイアン「まさか・・・っ!!」
慌てて頭に手を当てる。
掌と髪が触れ合った。
その間にあるべき遮蔽物がない。
ポサッ
ジャイアン「!!!?」
乾いた音がした。
何かが地面に落下する音だ。
弾かれるように音のした方に目を向ける。
灰色の半球体が地面に横たわっていた。
ジャイアン(石ころ帽子が脱げた!!!!)
そして次の瞬間に思い出した。
見るべき方は“下”ではない。
“上”だ。
ジャイアンは頭上を仰ぎ見た。
巨人達「・・・・・・。」
ジャイアン「・・・・・・。」
20体以上の巨人。
40個以上の眼球。
その全てと目が合った。
この場にいる全ての巨人が自分を見ている。
存在を認識している。
餌の存在を。
ジャイアン「あっ・・・あっ・・・」ガクガク
言葉を失い尻を地に下ろす。
見上げた視界に写るべき空の青は、巨大な肌色によって大部分が覆い隠されていた。
万事休す、絶体絶命、四面楚歌。
それらを全て足しても余りある絶望的な状況。
にも関わらず、不思議と頭は明瞭だった。
自分は死ぬ。
その考えだけが浮かんでいた。
それ以外の考えが浮かぶような余地はなかった。
どこからどう見ても、助からない。
ジャイアン(終わった・・・・・・)
ジャイアンの右斜め前に立っていた15メートル級の巨人が手を伸ばしてくる。
痩せている。
髪の毛がカールしている。
意外にもそんな事に気が付く余裕があった。
思考が働かない分、かえって脳に余裕ができたのかも知れない。
圧倒的不可避な死を前にして、動物としての生存本能すら機能を停止してしまったらしい。
巨人の手によって作り出された陰がジャイアンを包む。
太陽が覆い隠される。
もう、ダメだ・・・
グシャッ
ジャイアンの身体におびただしい量の鮮血が降り注ぐ。
太陽を覆い隠していた巨大な手が、一瞬で視界から消えた。
ズドオォォォォォォォンッ
ジャイアンに手を伸ばしていたカールヘアの巨人が地面に叩き付けられる。
もとい、カールヘア“だった”巨人が。
頭部を失った巨体のうなじを、雷のごとき踏み付けが襲う。
ジャイアン「・・・・・・。」
ジャイアンは滴り落ちるよだれも気にかけず、その踏み付けた足の持ち主を仰ぎ見た。
そこには右手を紅く染めた巨人が立っていた。
顎下にまで垂れ下がる振り乱した黒髪。
こめかみの付近まで開かれた口。
体長は先ほどのカールヘアの巨人と大差ない15メートル級だが、痩せ型だった先ほどの個体と違い、全体的に筋肉質で引き締まった身体をしている。
そして何より、猛禽類のように鋭い眼光が印象的だった。
個体によって表情の違いはあれど、総じて不気味という印象が先立つ巨人達の中にあって、この個体は比較的精悍な顔立ちと言える。
ジャイアン(な、なんだコイツ・・・・・・巨人のクセに・・・巨人を殺した?)
ハンナから聞いた話を思い出す。
巨人らしからぬ行動を取る個体を“奇行種”と呼ぶらしい。
では、この精悍な顔立ちの巨人はその奇行種という事だろうか?
そんな考えを巡らせていると、奇行種とおぼしき巨人が左足を一歩踏み出した。
それと同時に右足を宙に浮かせ、身体を前に倒す。
体重の乗せられた左足周辺の地面が30センチほど沈下したのが見て取れた。
ジャイアン(・・・蹴り?)
次の瞬間、後ろへ振り上げられていた右足が振り子のように前へと降下し始めた。
左足に預けられていた体重が徐々に後傾へと移行する。
それに比例し、右足が凄まじい勢いで加速してゆく。
マッハの域へと達した右足はジャイアンの真横を通過。
その背後に群がっていた3メートル級の巨人3体を一瞬で肉片に変えた。
だがまだその勢いは止まらない。
上向きの軌道へと移った蹴撃は7メートル級の巨人の頭部を打ち砕き、引きちぎった。
ジャイアン(こいつ、まさか・・・)
今の蹴り。
単にジャイアンの背後にいた3体を葬るだけなら、真っ直ぐに蹴り出してジャイアンを巻き添えにした方が早かったと言える。
だが奇行種はあえて身体をひねり、ジャイアンを迂回するような形で3体を狙った。
そして更に、ジャイアンに手を伸ばしていた7メートル級もそのままの勢いで排除した。
そこから推考される目的は一つ。
ジャイアン(俺を・・・・・・助けてくれた?)
到底有り得ない能天気な解釈かも知れない。
だが、そう思えてならなかった。
ジャイアン(何にせよ、助かった。)
巨人達の注意は突如現れた同胞殺しに集中し、完全にジャイアンから逸れている。
次々と奇行種に襲いかかるが、片っ端から殴られ、蹴られ、投げ飛ばされる。
我が身から死の危険が多少なりとも遠退いた事に安心感を得て、ジャイアンの心にも少し冷静さが戻りつつあった。
視線を巨人達の足下に移し、その周囲を見回す。
先ほどとほぼ変わらない場所に石ころ帽子は転がっていた。
ジャイアン(早く取り戻さねぇと・・・!!)
そう思った次の瞬間、頭上から声が響いた。
???「た、大変だコニー! 一般人がいる!」
ジャイアン「!?」
見上げると、三人の兵士が立体機動で空中を移動しているところだった。
坊主頭の兵士と、彼の脇に抱えられた金髪おかっぱ頭の兵士。
そして、もう一人。
ジャイアン(あの女兵士だ!)
もしかしてこの三人が奇行種を連れてきたのか?
そんな思いがよぎった。
坊主頭の兵士「ミカサ、頼む!! 俺はアルミンを抱えるので手一杯だ!!」
女兵士「任せて!」
ミカサ。
坊主頭は女兵士をそう呼んだ。
ミカサっていうのか。
となると“抱える”という言い方から察するにあの金髪の兵士がアルミン。
あとは消去法で坊主頭がコニーだろう。
ミカサ「くっ・・・!」
ミカサは身体をひねり、方向を変える為にワイヤーの射出先を探す。
おそらく立体機動で地面スレスレにまで滑空し、ジャイアンを抱きかかえて空中へと逃げるつもりだ。
だが、そうされるとかえって都合が悪い。
石ころ帽子をあのままにはできない。
何より、石ころ帽子さえ回収できればジャイアンの安全は確保される。
わざわざ危険を侵してもらったところで、お互い何も得がない。
やめさせないと。
ジャイアンは精一杯の思いを込めてミカサの目を見つめた。
ジャイアン「来るな!!!!」
ミカサ「えっ?」ピクンッ
ミカサの表情にわずかばかり戸惑いが浮かんだ。
通じたか?
いや、もうこの際、通じたと仮定して次の行動に移るしかない。
ジャイアンは頭からダイブするような格好で石ころ帽子めがけて身体を投げ出した。
腹から着地し、両手でしっかりと掴む。
鳩尾(みぞおち)を強打したせいで胃の中身がせり上がって来そうだが、今はそれどころではない。
大急ぎで石ころ帽子を装着する。
ミカサ・アルミン・コニー「「「!?」」」
突如、3人の視界から少年が消えた。
ついさっきまでそこにいた筈なのに。
何の形跡も残さず、煙のように消えてしまった。
ミカサ「・・・。」
コニー「な、何が・・・・・・」
アルミン「・・・!! こ、コニー!! 前、前!!」
コニー「えっ?」クルッ
アルミンに注意を促され、コニーは前方へ目を向ける。
本部の窓ガラスが目と鼻の先にまで接近していた。
コニー「うわっ!」
アルミン「もう仕方ない! このまま突っ込もう! ミカサも良いよね!?」
ミカサ「・・・えぇ。」
ガシャアァァァァァンッ
三人の兵士は窓ガラスを破り、本部へと飛び込んでいった。
ジャイアンはそれを地上から眺めていた。
>>103
スモールライトやもしもボックスはチートすぎるので、この4点に絞りました。
中断します。
また11時前後に再開します。
おもろい
戻りました。
>>127
ありがとうございます。
そう言ってもらえると本当に嬉しい。
再開しま〜す。
ジャイアン(ガスの補給? それとも仲間を助けに来たのか?)
グシャアァァッ
ズドオォォォォォォッ
ジャイアン「うぉっ!!」
なおも奇行種と巨人達の戦いは続いていた。
強烈な地響きと砂埃を伴い、巨人達が次々と倒れてゆく。
このままここにいては危険だ。
いつ踏み潰されるか分からない。
ジャイアンは踵を返し、元来た大通りへと駆け出した。
多くの人々を残して立ち去る事に罪悪感が募る。
だが、先ほどと比べるとそれは遥かに軽くなっていた。
とどのつまり、その罪悪感とは本部の中の兵士達を見殺しにする事に起因している。
だが、今は状況が違う。
あの最強の女兵士・ミカサと、巨人殺しの奇行種がいる。
ともすれば一人の死者も出さずに全員が脱出できるかも知れない。
他力本願で情けないが、誰も死なないに越したことはない。
ならば自分も戻ろう。
確実に救える一人を救いに。
—トロスト区 家屋の屋根—
ハンナ「し、信じられない・・・本当に取ってきたんだ・・・」
ジャイアン「おぅ。当たり前だよ。石ころ帽子は巨人にも効果があるらしい。」
ハンナ「一体・・・どんな原理でそんな事が・・・」
ジャイアン「さぁ。それは俺も知らねぇよ。俺はただドラえもんから借りてるだけだから。」
ハンナ「そうなの。」
ジャイアン「ボンベだけど、どれぐらいあれば良いか分かんなかったから、とりあえず小さいのを10本とデカいのを1本持って来た。」
ハンナ「小さいボンベ2本で充分よ。」
ジャイアン「そうなのか? まぁ、良いや。四次元ポーチならいくらでも入るから、もし途中で切れたりした時は言ってくれよな。」
ハンナ「ありがとう。本当に助かったわ。本部の中はどんな様子だった?」
ジャイアン「巨人だらけだ。3〜4メートル級だっけか? あの小さい奴らがウジャウジャと。」
ハンナ「やっぱり・・・」
ジャイアン「けど、きっと全員生きて脱出できると思うぜ。」
ハンナ「どうして?」
ジャイアン「巨人を殺す奇行種が出たんだ。」
ハンナ「巨人を殺す?」
ジャイアン「おぅ。」
ジャイアンは先ほどの奇行種の事を話した。
巨人を殺す事。
そして、意図的に自分を助けてくれた可能性がある事。
ハンナ「そんな奇行種がいるなんて・・・聞いた事がないわ・・・」
ジャイアン「それとミカサって人、ハンナさんの仲間だよな?」
ハンナ「ミカサ? えぇ。私の同期よ。訓練兵史上最高の成績を収めた稀代の天才兵士。」
ジャイアン「やっぱりか。どうりで強いワケだ。」
ハンナ「ミカサに会ったの?」
ジャイアン「ん〜、会ったと言えば会った。」
ハンナ「???」
ジャイアン「とにかくさ、そのミカサって人が仲間連れて本部に乗り込んだんだ。外には巨人を殺す奇行種がいて、中にはその人がいる。これなら全員生き延びる事も夢じゃないだろ?」
ハンナ「そうね・・・確かにミカサがいれば勝率は一気に跳ね上がるわ。」
ジャイアン「だろ?」
ハンナ「ところで・・・ミカサの傍にエレンはいた?」
ジャイアン「エレン?」
ハンナ「仲間の兵士よ。ミカサと同じぐらいの背丈の男の子。黒い髪で、ネコみたいに大きなつり目をしてるんだけど・・・」
ジャイアン「いや、それは知らねぇよ。見たのはアルミンって人と、コニーって人だけだ。」
ハンナ「そう。あの二人は無事なのね・・・一先ずそれだけでも喜ぶべきかしら・・・」
ジャイアン「どうしたんだよ?」
ハンナ「エレンはミカサの家族なの。血は繋がってないって話だけど、昔から一緒に住んでて、訓練中もよく一緒にいるのを目にしたわ。」
ジャイアン「そうなのか。」
ハンナ「そのエレンが・・・・・・死んだって情報が飛び交ってるの。」
ジャイアン「えっ?」
ハンナ「こんな状況だから誤報の可能性もあるけど・・・・・・ミカサは今、どんな気持ちかしら・・・」
ハンナは目を伏せた。
最愛の恋人を失った自分の悲しみをミカサに投影し、胸を痛めているのだろう。
ジャイアン「・・・・・・加勢に行くか?」
ハンナ「・・・いえ、それはできないわ。」
ジャイアン「なんで?」
ハンナ「私にはあなたを安全な場所に避難させる義務があるから。」
ジャイアン「俺は心配いらねぇよ。」
ハンナ「そういうワケにはいかないわ。あなたがいくら強くても一般人は一般人。特別扱いなんてできない。頼りないかも知れないけど、私はあなたを守らないと。」
ジャイアン「そっか・・・」
ハンナ「行きましょう。さっき撤退命令の鐘が鳴ったから、もう扉は閉ざされてるわ。立体機動で壁を登らないといけないの。さすがのタケシくんでも、素手であの壁を登るのは無理でしょ?」
ジャイアン「そうだな。それじゃあ・・・」
ジャイアンはおもむろに立ち上がり、フランツの亡骸を抱き起こした。
彼の両手を自分の肩に回して背負う。
手っ取り早く搬送するならば、四次元ポーチに入れるという選択肢もあったかも知れない。
だが、ジャイアンはそうはしなかった。
例え命が尽き果てていたとしても、彼は物じゃない。
人間だ。
命の恩人だ。
むしろ自ら背負う事を当然のように感じた。
死体に触る事などもちろん生まれて初めてだが、何の抵抗もない。
ただ、その身体はあまりに軽い。
その軽さを両肩に感じ、再び悲しみが胸を満たす。
ハンナ「・・・行きましょう。」
ジャイアン「おぅ・・・」
—トロスト区 ウォールローゼ壁面—
ハンナ「ふっ・・・! ぐぅ・・・!」ギシギシッ
ジャイアン「ハンナさん・・・大丈夫かよ?」
大空へ向かってまっすぐそびえ立つウォールローゼ。
巨人から人類を守る守護神。
その壁面に、立体機動装置を用いて壁を登る三人の姿があった。
ハンナの脱いだジャケットでフランツをジャイアンの胴体に固定している。
そして、フランツを背負ったジャイアンがハンナの背中にしがみつく形だ。
ただでさえ立体機動は身体に大きな負担をかける。
そこへ更に1.5人分の体重。
ハンナの全身の筋肉は悲鳴を上げ、今にもはち切れそうだった。
ハンナ「だ、大丈夫・・・!」フゥッ フゥッ
ジャイアン「大丈夫じゃねぇだろ・・・」
既に体力は限界を超えていた。
意識が朦朧とする。
ハンナ「ふんっ!」ビュッ
新たなワイヤーを射出し、アンカーを打ち込む。
身体の上昇が始まった途端、狂わんばかりの苦痛が再び全身を襲った。
吐きそうだ。
だが、絶対に諦めない。
全てを捧げても良いとさえ思えた恋人と、その彼が命を投げ打って守った少年。
この二人は何としても自分の手で避難させる。
この二人だけは。
それは兵士としての使命感などではない。
一人の人間として、心からそうしたいと思うからだ。
ハンナ「あと・・・・・・少し・・・」ビュッ
最後のワイヤーが打ち出された。
壁の頂点スレスレの位置にアンカーが刺さる。
その音に気付いたのか、壁の上から二つの顔が覗いた。
駐屯兵だ。
駐屯兵A「んっ? 誰か登ってくるぞ。」
駐屯兵B「訓練兵か。おぉい、君! 大丈夫か!?」
ハンナ「は、はい・・・大丈夫です! すぐに登り切ります!」
ワイヤーを巻き取り、ガスを一気に噴射した。
全身の筋肉が軋むが、この苦痛もこれが最後だ。
壁の淵へと到達したところで、二人の駐屯兵の腕がハンナ達を迎え入れる。
駐屯兵A「さぁ、掴まれ!」
駐屯兵B「一気に引き上げるぞ! せぇのっ!」
力強く両手を引かれ、三人は無事、ウォールローゼ登頂を果たした。
ハンナ「はぁ・・・はぁ・・・ありがどうございばず・・・」バタッ
ジャイアン「ハンナさん! しっかり!」
ハンナ「だ、大丈夫・・・大丈夫だから・・・」ぜぇ ぜぇ
駐屯兵A「むごいな・・・巨人にやられたのか・・・」
駐屯兵Aはフランツの亡骸を見つめ、顔を歪ませた。
と、その時。
???「むぅ? どうかしたんかのぅ?」
一人の老人が歩み寄って来た。
口髭を生やしたスキンヘッドの男性だ。
その男性を見た途端、兵士達に一気に緊張が走る。
駐屯兵A「えっ!?」
駐屯兵B「ぴ、ピクシス司令!?」
ハンナ「なっ・・・!?」
ドット・ピクシス。
トロスト区を含む南側領土を束ねる最高責任者であり、人類の最重要区防衛の全権を託された人物。
そして・・・
ピクシス「なぁにをそんなに驚いとるんじゃ?」
駐屯兵A「し、司令・・・なぜこのような場所に!?」
駐屯兵B「しかも護衛の者さえ連れずにお一人で・・・」
ピクシス「散歩じゃよ、散歩。」
駐屯兵A「はっ・・・?」
駐屯兵B「散歩・・・?」
ハンナ「・・・。」
ピクシス「まぁ、それとアレじゃ。超絶美女の巨人はおらんものかと、こうやって壁の上を巡るのが昔からの趣味でな。はっはっはっ。」
駐屯兵A(変人・・・)
駐屯兵B(変人・・・)
生来の変人としても知られている。
ピクシス「ところで、その娘は・・・」
ハンナ「ぴ、ピクシス司令! 私は・・・」ググッ
上官の前で寝そべる事など許されない。
ハンナは敬礼と自らの名を名乗る為、鉛のように重くなった身体を起こそうとした。
だがピクシスは腰を屈め、ハンナの肩に手を置いてぐっと押さえ付けた。
ピクシス「そのままで良ぇ。消耗し切っとるのは見りゃ分かる。寝とれ。」
ハンナ「ですが・・・」
ピクシス「良ぇから寝とれ。命令じゃ。逆らうな。そのまま報告をすりゃぁ良ぇ。」
ハンナ「・・・・・・すみません。第104期訓練兵ハンナ・某。一般市民のタケシ・ゴウダくんを保護し、こちらへ護送いたしました。」
ピクシス「さようか。ご苦労。」チラッ
ピクシス「ゴウダくんとやら。」
ジャイアン「えっ? あ、はい。」
ピクシス「お主が市街地に取り残されているにも関わらず扉を閉鎖してしもうた事、深くお詫びする。すまんかった。」
ジャイアン「いや、別に・・・こんな状況だし、全員が避難できたかどうかの確認なんて無理だろうから・・・」
ピクシス「お気遣い痛み入る。ところで・・・・・・」
ピクシスはジャイアンの肩に目を向けた。
厳密にはジャイアンの肩から見え隠れするフランツの頭に。
ピクシス「其奴を降ろしてやっても良ぇかいの?」
ジャイアン「あ・・・はい・・・」
ピクシスはジャイアンの背後に回ると、胴体に巻き付けられているジャケットを解いた。
最高責任者自らフランツの両脇に手を差し込み、優しく抱きかかえてそっと地に降ろす。
そして、二度と開かれる事のないその目を見つめて声をかけた。
ピクシス「・・・・・・。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・・・・。」
ピクシス「・・・・・・心臓を捧げおったか。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「・・・・・・。」
ピクシス「・・・・・・可哀想にのぉ。」
ジャイアン「・・・?」
ハンナ「えっ?」
ピクシス「怖かったじゃろうて・・・・・・」
ジャイアン「・・・・・・」
ハンナ「・・・・・・」
ピクシス「死にとうなかったわなぁ、もちろん・・・・・・」
ジャイアン「・・・・・・」ジワァ
ハンナ「うっ・・・」グスン
ピクシス「よく頑張ったのぉ。本当に、よく頑張ってくれた。わしゃお前さんを誇りに思うぞ。お前さんは兵士の鑑じゃ。」
ピクシスは冷たくなったフランツの手を握り、噛み締めるように労いの言葉をかけた。
そして、ゆっくりとジャイアンへ向き直る。
ピクシス「お主がずっと背負ってくれとったのか?」
ジャイアン「・・・・・・フランツさんは俺を助けて死んだんだ。俺が・・・・・・担がなきゃいけないって思った・・・」
ピクシス「さようか・・・」
ジャイアン「・・・。」
ピクシス「ゴウダくん。」
ジャイアン「・・・。」
ピクシス「かたじけない。わしらの仲間をここまで連れてきてくれた事、心から感謝する。」
ジャイアン「ぐっ・・・」ジワァ
そして、ハンナにも向き直る。
ピクシス「ハンナ訓練兵、お前さんもな。よく生きて戻ってくれた。仲間が目の前で生きてくれとる事が、わしゃ何より嬉しいよ。」
ハンナ「うっ・・・ひっく・・・」ポロポロ
うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ジャイアンとハンナの両目から大粒の涙が溢れ出した。
喉が張り裂けそうなほど声を上げて泣きじゃくる。
怖かった。
悲しかった。
気が狂いそうだった。
ジャイアンはもとより、ハンナとてまだまだ年端のゆかぬ子供だ。
今日この街を襲った惨劇は、あまりにショックが大きすぎた。
しかしジャイアンはハンナを、ハンナはジャイアンを、お互いに相手を守らねばならないという責任を感じ、それだけを糧に地獄を耐え抜いてきた。
精神はとうの昔に限界を迎えていた。
泣く事を許して欲しかった。
そして、もう頑張らなくて良いと誰かに言って欲しかった。
ピクシスの言葉は、二人の心が欲していた物を全て満たしてくれた。
失った物は多く、刻まれた悲しみはあまりにも深い。
その痛みを少しでも洗い清めようとするかのように、涙は留まる事を知らず瀧のように流れ落ちる。
快晴の青空の下、ジャイアンとハンナの打ち鳴らす命の叫びは、いつまでもいつまでも鳴り響いていた。
※上官が部下を下の名前で呼ぶのは本来おかしい事なのかも知れませんが、
単行本3巻でピクシスは「エレン訓練兵」「アルミン訓練兵」と呼んでますので、それに倣いました。
それと、トロスト区の天気はアニメでは雨のようですが、当方は単行本に準拠してますので晴となっております。
ご了承下さい。
—1週間後 カラネス区の避難所—
ジャイアン(今日もまた飯少なかったなぁ。)
ジャイアン(食糧難だって話だし仕方ねぇんだろうけど、ホント生かさず殺さずも良いとこの量だぜ。)
子供「パパぁ。ねぇ、ママはぁ?」
父親「あぁ・・・ママはな・・・」
子供「ママはどこぉ? ずっとお出かけしたままだよねぇ。」
父親「そうだな・・・」
子供「いつ帰ってくるのぉ?」
父親「違うんだ・・・ママは・・・ママは・・・・・・うぐっ・・・」ワナワナ
ジャイアン「・・・・・・。」
ジャイアン(その上、避難所のあちこちで毎日こんな会話の繰り返しだ。)
ジャイアン「・・・・・・頭がどうにかなりそうだぜ。」
トロスト区の巨人襲撃から1週間が経過した。
ここはトロスト区からやってきた住民達の避難所。
住み慣れた街と愛する者を奪われた人々が身を寄せ合う、いわば負の感情の集積所である。
この世界に迷い込んでから早7日間。
ジャイアンはこの避難所で寝泊まりをしていた。
あの日以来ハンナとは会っていない。
あの日、ジャイアンをこの避難所へ送り届けてすぐ、再び招集がかかった。
巨人に占拠されたトロスト区を奪還する、その作戦の為である。
ジャイアン(ハンナさん・・・無事かな・・・)
トロスト区の奪還。
それはすなわち、あの地獄へ再び身を投じる事を意味する。
公式の発表によると一昼夜に渡る攻防の末、その作戦は成功したらしい。
そしてこれは非公式の情報だが、その作戦には巨人の協力があったと聞く。
となれば、きっとあの巨人殺しの奇行種だろう。
立て直された体制の下、ミカサを含めた全兵士と奇行種がその戦力を振るう。
それは確かに期待が持てる作戦ではある。
だが、死人が出る事は避けられないだろう。
一体どれほどの人数が死んだのか。
そしてハンナは・・・。
気が気でなかった。
自分が最も憂慮すべきは元の世界へ戻る方法だ。
それは分かっている。
だが、頭に浮かぶのはハンナの事ばかりだった。
ジャイアン「はぁ・・・」
ジャイアンは気分を入れ替える為に中庭へ出てみた。
5年前のウォールマリア陥落を教訓として、各区内には避難所がいくつも設けられていた。
ここもその中の一つである。
5年前にもあんな事があったのか。
悪夢のような出来事を思い出し、身震いを覚える。
だが、そんな過酷な状況下にあっても、中庭には無邪気な笑い声を響かせて走り回る子供達の姿があった。
もちろん、全ての子供がそこで遊んでいるワケではない。
彼らは皆、一人の家族も失う事なく逃げる事のできた幸運の持ち主達だ。
ただ、ほんの一部であれ、そこに笑顔があるとないとでは気持ちの面で大きく違ってくる。
彼らの笑顔に触発され、少しずつ気力を取り戻してゆく大人達が少なからずいた。
コロコロコロッ
ジャイアン「んっ?」
少年A「お兄ちゃぁん。ボール取ってぇ。」
ジャイアン「ボール?」
見ると、足下に歪な形をしたボールが転がっていた。
不要な布切れを固めて、それを麻縄で幾重にも巻いて丸めた即席のボールだった。
拾い上げて少年達を見やる。
先ほどジャイアンに声をかけた少年と、もう一人、手に鉄パイプを握った少年が立っていた。
ボールと、棒。
ジャイアン「野球やってんのか?」
少年A「やきゅー?」
ジャイアン「その鉄パイプでボールを打ってるんじゃねぇのかよ?」
少年A「うん。そうだよ。」
少年B「さっき思い付いたんだ。楽しいよ。」
ジャイアンはしばし手の中でボールを弄っていた。
やがてそれを少年Aに投げ返すと、少年Bに声をかけた。
ジャイアン「ちょっとその鉄パイプ貸してみな。」
少年B「良いよ。」
鉄パイプを受け取り、少年Aに向き直る。
ジャイアン「投げてみろ。場外ホームランを見せてやるぜ。」
少年A「じょーがいほーむらん? よく分かんないや。」
ジャイアン「まぁ、良いから投げろよ。思いっきりな。」
少年A「分かったぁ。いくよぉ!」
少年Aはアンダースロウのフォームでボールを放った。
ボールはゆるい放物線を描き、ゆっくりとジャイアンへと接近してくる。
止まって見えるようだった。
ジャイアンは鉄パイプをしっかりと握りしめ、渾身の力を込めて振るった。
スパアァァァンッ
少年A・B「「・・・・・・」」
打ち出されたボールは避難所の屋上さえ超える高度にまで上昇し、大きな弧を描いた。
布と麻縄で作られているため、その重量は極めて軽く、落下にも少々の時間を要した。
数秒の後、ポスッという乾いた音が響いた。
避難所の庭の片隅。
通用門の一歩手前だった。
ジャイアン「ん〜、惜しい。本気で場外狙ったんだけどなぁ。」
少年A「す・・・」
少年B「す・・・」
すげえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
ジャイアン「へへへっ。」
少年A「すげぇ!! なに今の!? 魔法!? ねぇ、魔法!?」
ジャイアン「バァカ。魔法じゃねぇよ。実力だ。」
少年B「どうやったの!? 教えて!! 教えて!!」
ジャイアン「良いか? バットはただブン回せば良いってモンじゃねぇんだよ。こう、腰の捻りをだなぁ」
少年達にスイングの指導をしながら、先ほど打ち上げたボールに目を向けた。
その時、ボールのすぐ先の通用門に佇む女性の姿が目に止まった。
栗色の髪を後ろで束ねたソバカス顔の兵士。
ジャイアンはにわかに気持ちが高揚するのを感じた。
ジャイアン「・・・・・・悪い、お前ら。ホームラン講座は一時中断だ。」
少年A「え〜? なんでぇ?」
少年B「最後まで教えてよぉ!」
ジャイアン「分かってる。後でちゃんと教えに戻ってくるから。今はちょっと待ってくれ。」
少年A「え〜? ホントにぃ?」
少年B「約束だかんね〜?」
ジャイアン「おぅよ! 男に二言はねぇ! また後でな!」
少年達をその場に残し、ジャイアンは中庭の通用門へと走った。
自然と足が速まってゆく。
ジャイアン「ハンナさん!」
ハンナ「人気者ね。」
ジャイアン「えっ? あぁ。野球・・・って、この世界は野球がないんだったな。俺の世界で大人気のスポーツを教えてたんだ。」
ハンナ「ふふっ。優しいお兄さんって感じだったわよ。」
ジャイアン「そんなんじゃねぇよ。ただ、毎日すすり泣きしか聞こえてこないんじゃ気が滅入るからな。ああやって無邪気に笑ってられる奴らの相手してる方が落ち着くんだよ。」
ハンナ「そうね。子供の笑顔は復興の一番の活力になるわ。」
ジャイアン「そうだな。それより・・・・・・無事だったんだ。」
ハンナ「どうにかね。運が良かったわ。死んでいった仲間も・・・たくさんいるのに。」
ジャイアン「そうか・・・」
ハンナ「・・・・・・場所を変えて話さない?」
ジャイアン「分かった。」
—カラネス区 広場—
ハンナに案内され、ジャイアンはカラネス区の中央にある噴水の広場へとやって来た。
噴水の周囲にいくつもベンチが設置されている。
二人が到着すると同時に、その中の一脚に腰掛けていた老婦人が立ち上がった。
入れ替わりに二人はそこへ腰をおろした。
ハンナ「今日はね、報告に来たの。」
ジャイアン「報告?」
ハンナ「どこから説明すれば良いかしら・・・この1週間でこの世界の事、誰かから詳しく聞いたりした?」
ジャイアン「ん〜、直接聞いたりはしてねぇよ。けど、回りの会話を聞いてる内に少しは分かるようになってきたな。」
ハンナ「そう。じゃあ、〇〇兵団って言葉は分かる?」
ジャイアン「何となくな。調査兵団と駐屯兵団と・・・あと何だっけ?」
ハンナ「憲兵団ね。」
ジャイアン「そう、それだ。」
ハンナ「なら話が早いわね。私たち新米兵士は訓練の過程を終えたらその中のいずれかに志願しないといけないの。」
ジャイアン「確かその憲兵団ってのが一番人気なんだろ?」
ハンナ「えぇ。でも、憲兵団は訓練成績の上位10名しか志願できないの。私はその10名に入れなかったから、後の二つしか選べない。」
ジャイアン「そうなのか。」
ハンナ「私ね、調査兵団に入ろうと思うの。」
ジャイアン「それって何をするトコなんだ?」
ハンナ「壁の外を探索して巨人の生態なんかを調べるのが主な任務よ。」
ジャイアン「えっ? でもそれって・・・」
ハンナ「巨人と戦闘になる事が多い一番危険な兵科よ。入団した新兵の9割が4年以内に死亡するらしいわ。」
ジャイアンは言葉を失った。
回りの喧騒や噴水の水飛沫の音がパタリと聞こえなくなる。
時間が止まったようだ。
ジャイアン「・・・。」
ハンナ「・・・。」
ジャイアン「・・・なん、で・・・」
ハンナ「・・・。」
ジャイアン「なんでわざわざそっちに・・・なんで駐屯兵団にしないんだよ?そっちの方が安全なんだろ?」
ハンナ「そうよ。」
ジャイアン「『そうよ』じゃねぇよ!! 意味わか・・・・・・まさか」
ハンナ「“フランツの後を追う気か”でしょ?」
ジャイアン「あ、あぁ・・・」
ハンナ「違うわ。確かに一瞬、自暴自棄になってこのまま巨人の口に飛び込んでやろうかって思った事もあったけど、今はまったくそんな事考えてない。」
ジャイアン「じゃあ・・・」
ハンナ「・・・・・・少し、私の話をしても良い?」
ジャイアン「・・・う、うん。」
ハンナ「私もフランツもね、訓練兵時代はそんなに真面目なタイプじゃなかったの。元々、お互いに家が内地の中だった事もあって、5年前も一切被害を受けなかった。だから、シガンシナ区の人達には悪いけど、どこか他人事だったのよね。」
ハンナ「訓練兵になったのも単なる世間体。5年も平和が続いたんならもう大型巨人なんて来ないんじゃないかって、割りと本気で思ってて。」
ハンナ「だから訓練を終えたら駐屯兵団でダラダラ過ごして、後は適当なタイミングでフランツと結婚して引退すれば良いや〜、それでフランツが憲兵に昇格にでもなれば御の字〜、なんてね。それぐらいにしか考えてなかったの。」
ハンナ「当然、二人とも調査兵団になるつもりなんて更々なかったわ。調査兵団を目指してる人を見て立派だって思う反面、ちょっと熱血すぎて付いてけないって冷めた目で見てたの。」
ハンナ「でも、先週のトロスト区の一件で考えが変わった。それはね、タケシくん。あなたのお陰でもあるの。」
ジャイアン「俺?」
ハンナ「えぇ。フランツは命懸けであなたを守った。あの消極的だったフランツが『兵士の誇り』なんて言葉まで口にしてね。」
ハンナ「単に仕事や任務って理由だけじゃ、人間あそこまでできないわ。心の底から目の前の命を守りたいっていう想いがなければ。そしていつの間にか、その想いは私の中にも湧いちゃってたみたいなのよね。」
ハンナ「あなたを守りたいって私も思った。そして、トロスト区奪還作戦で仲間が次々と死んでいくのを見て、もう誰も死んで欲しくない、この仲間たちを一人でも多く守りたいって思った。」
ハンナ「私みたいな思いをする人をこれ以上増やしたくない、って。」
ハンナ「単に辛い思いをしすぎて麻痺しちゃっただけかも知れないけどね。けど、それでも良いの。私はもう逃げない。」
ジャイアン「それで、自分が死ぬかも知れなくても?」
ハンナ「もちろん死にたいとは思わないわ。でも、誰かがやらなきゃいけない。そうしないと、いつまで経っても巨人を倒せない。」
ハンナ「少なくとも我が身のかわいさから駐屯兵団に逃げ込んで、悲しみを調査兵団に押し付けるのは間違ってる。フランツが生きてたら、きっとそう言うわ。」
そこまで言い終わって、ハンナは言葉を切った。
深い溜め息を一つつき、大きく伸びをしながら頭上を仰ぎ見る。
今日の空も快晴だった。
晴れやかな表情で大空を見つめるハンナ。
その顔付きは1週間前よりも少し大人びた雰囲気を漂わせているようにジャイアンは感じた。
今まで彼女は壁に命を守られ、そしてフランツに心を守られていた。
トロスト区での出来事はその両方を奪った。
だがそれと同時に、彼女は守るべき物を見付けた。
平和と、そして仲間である。
その事が彼女の容姿にも変化をもたらしたのだろう。
ジャイアン「・・・・・・その事を報告する為に・・・来たのか?」
ハンナ「そうよ。明日の朝、私たちはそれぞれの兵科へ入団するの。一度調査兵団となってしまったら、いつ死んでもおかしくない。だからまだ訓練兵でいられる今日の内に、あなたに伝えたかった。」
ジャイアン「そっか・・・」
ハンナ「うん。」
ジャイアン「・・・・・・。」
ハンナ「ふふっ。そう言えばタケシくん。ずっと言い忘れてた事があったわ。」
ジャイアン「えっ?」
ハンナ「危ないところを2回も助けてくれて、本当にありがとう。」
ジャイアン「はっ?」
ハンナ「あなたが巨人を倒した時と、ガスボンベを取ってきてくれた時よ。」
ジャイアン「あぁ。」
ハンナ「あの時はいっぱいいっぱいでお礼を言う余裕もなかったから、今日会った時に言わなきゃって思ってたの。」
ジャイアン「別に良いのに、そんなの。」
ハンナ「いいえ、良くないわ。本当にどうもありがとう。」
ジャイアン「や、やめてくれよ。」アセアセ
ハンナ「ふふふっ。」
ジャイアン「ったくぅ。」
会話が途切れた。
人々の話し声や噴水の水飛沫、行き来する荷台の車輪の音などが混ざり合い、喧騒という名の静寂となって二人を包む。
何か二の句をつぐべきか否か、ジャイアンは迷った。
もしかしたら、本当にこれでハンナと言葉を交わすのは最後になるかも知れない。
だが、殊更に当たり障りのない話をするのは無粋に思われた。
全てを受け入れ、新な決意を胸に彼女は旅立つ。
そんな彼女にこれ以上かけるような言葉を、ジャイアンは持ち合わせていなかった。
心地よい陽気の中に浮かぶ沈黙。
それを破ったのはハンナだった。
ハンナ「さてと。そろそろ行こうかな。」
ジャイアン「帰るのか?」
ハンナ「えぇ。兵科が決まったら今いる訓練宿舎を出なきゃいけないから。今日の内に荷物の整理をしたいの。」
ジャイアン「そっか・・・。」
ハンナ「タケシくん。最後に・・・」ゴソゴソ
ジャイアン「???」
ハンナ「・・・・・・これ。」スッ
ハンナの差し出した手の平には、銀色に光る指輪が乗っていた。
ジャイアン「これは?」
ハンナ「フランツの指輪。」
ジャイアン「えっ? これを、俺に?」
ハンナ「えぇ。」
ジャイアン「も、もらえねぇよ!」
ハンナ「良いの。」
ジャイアン「良くねぇよ! フランツさんの形見じゃねぇか! ハンナさんが持ってるべきだろ!」
ハンナ「大丈夫。昔お揃いで買った物だから。私には私の分がある。そして、フランツとの思い出は一生私の心に残り続ける。」
ジャイアン「だけど・・・」
ハンナ「でも、あなたはいつか、こことは違う別の世界へ帰ってしまう。私たちを知ってる人が誰もいない世界へ。」
ジャイアン「・・・っ。」
ハンナ「だからせめて、あなたと私とフランツが同じ時間を過ごしたという証拠を持っていて欲しいの。」
ジャイアン「ハンナさん・・・」
ハンナ「私達の間に、確かに絆が存在しているという、その証拠を。」
ジャイアン「・・・分かった。」
ハンナ「ありがとう。」
ジャイアン「いや・・・こちらこそ。」
ハンナ「私、タケシくんと会えて良かったわ。」
ジャイアン「うん。俺もだ。」
ハンナ「あなたが元の世界へ戻れる方法を一緒に探してあげたかったけど・・・」
ジャイアン「大丈夫だ。どうにかなる。心配いらねぇよ。」
ハンナ「ふふふっ・・・・・・それじゃ、行くわね。」
ジャイアン「・・・うん。」
ハンナ「元気で。」
ジャイアン「おぅ。そっちこそ死ぬなよ。」
ハンナ「分かってるわ。ありがとう。」
ジャイアン「じゃあな。」
ハンナ「さよなら。」
ハンナはベンチから立ち上がり、颯爽と歩き出した。
とても力強く、そして軽やかな足取りだった。
ピンッと背筋の伸びた背中。
戦士の背中。
ジャイアンはその背中をじっと見つめ、ただ黙って見送った。
やがて、ハンナの姿が雑踏の向こう側へと消えていった。
強く握りしめた手の平に指輪の感触が伝わる。
後に残った喧騒と暖かな日差しが、ジャイアンを街並みの一部へと変えていった。
>>173の訂正です。
×→一度調査兵団となって
○→一度調査兵となって
今日はここまでにいたします。
残りわずかなので、明日には完結となるでしょう。
もしかしたら朝の通勤の電車の中から投下して完結させてしまうかも知れません。
では、本日もお付き合い下さった皆様、どうもありがとうございました。
おやすみなさい。
ボエ〜が聞きたい
乙!
そんな焦らなくてもいいんやで
ジャイアンの歌なら巨人倒せるんじゃね
おはようございます。
>>183
お気遣いありがとうございます。
でも、大丈夫です。
僕はSS投下する時はいつもこんな感じなので。
これぐらいのペースが合ってるんですよ(`・ω・´)b
>>182
>>184
歌は出すか出さないか迷いましたよホントwww
本部前で石ころ帽子が飛ばされた時に歌で蹴散らすみたいな展開も考えてたんですけど、
なんかそんなので巨人に勝たれたら死んでった兵士の立つ瀬がねぇじゃんと思いましてwww
さて、それでは投下します。
—その夜 カラネス区の避難所—
ジャイアン「・・・・・・。」
時刻は深夜3時。
当然ながら避難所は消灯時間を迎え、暗闇に包まれている。
だが、ジャイアンは寝付けないでいた。
目蓋は眠気を訴えているが、神経が眠りに就くことを拒否している。
昼間会ったハンナの姿が、声が脳裏に焼き付いて離れない。
これが恋という物なのだろうか?
さっきからずっとそう考えてはいるが、どうにも合点がいかなかった。
ジャイアン(あぁ、モヤモヤする・・・)ムクッ
ジャイアンは静かに簡易ベッドから起き上がった。
そして、回りの避難民たちを起こさないよう、足音を忍ばせて中庭へ出る。
昔から寝付きは良い方であったため、こうも眠れないというのは初めての経験だ。
故に、どうして良いか分からず、とりあえず外へ出てみたという次第である。
ジャイアン(満月か・・・)
銀色の光に照らされて、足下に生える雑草の一本一本までが確認できるほどに明るい。
月明かりって案外眩しいモンなんだな。
素朴な発見だった。
人工の光に溢れる現代の日本ではなかなか気が付きにくい。
ジャイアン(日本・・・・・・帰れるのかなぁ・・・)
そもそもどうやってこの世界に来たのか、その理由が分からない。
となれば、帰る方法など分かる筈もない。
冷静に考えればとてつもなく不安で恐ろしい状況である。
しかし、ジャイアンは心のどこかで信じていた。
今頃、ドラえもんが行方不明になった自分を探して動いてくれているのではないかと。
実際、今までにもドラえもん達と共に宇宙や海底、果ては魔界まで行き、無事に帰ってきた。
なまじ各所で冒険を経験しすぎたがゆえに、ジャイアンはこうした異世界に対する抵抗が少し薄れてしまっていた。
とは言え
ジャイアン(帰りてぇなぁ・・・・・・)
家族はどれだけ心配しているだろう。
厳しくも優しい両親と兄想いの妹。
その顔を思い浮かべると、胸が締め付けられた。
ジャイアン(ダメだダメだ。暗い考えは持っちゃいけねぇ。)
ジャイアンは足下に落ちていた鉄パイプを拾い上げた。
昼間の少年達が持っていた物だ。
両親でしっかり握りしめ、バットのようにして素振りを始めた。
暗い気持ちを追い払うならこれが一番だ。
ジャイアン(30! 31! 32!)ブンッ ブンッ ブンッ
・
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ジャイアン(297! 298! 299!)ブンッ ブンッ ブンッ
ジャイアン(300!!)ブワンッ
ジャイアン「はぁ〜」ぜぇ ぜぇ
肩で大きく息をする。
額や首筋など、あらゆる汗腺から汗が滲み出た。
ジャイアンは鉄パイプを元の位置へ戻した。
少しすっきりした気分だ。
先ほどよぎった不安は思考の奥の間へと引っ込んでくれらしい。
ジャイアン「寝るか。」
この疲労感に身を委ねれば、今宵の頑固な神経も眠らざるを得ないだろう。
ジャイアンは踵を返して避難所の建物へと向き直った。
月に背を向けて一歩ずつ歩を進める。
月明かりを遮るひさしの作り出した陰に右足を踏み入れた。
次の瞬間。
ブ・・・ブンッ ジジジ・・・
ジャイアン「???」
ハエの羽ばたきのような耳障りな音が聞こえてきた。
それとともに、にわかに風がざわめき、木々や草花を揺らす。
尚も怪音は鳴り続けている。
ジャイアン「・・・な、なんだ!?」
まさかまた巨人がやって来る、その予兆か?
一瞬そう思った。
だがそれはなさそうだ。
壁が破られたのならその轟音を聞き逃す筈はないし、非常事態を知らせる鐘の音もない。
ただの耳鳴りか?
そう思った刹那、突如中庭が凄まじい光に包まれた。
ジャイアン「!!!?」
突き刺すような光。
中庭はまるで真夏の校庭のようだ。
あまりの明るさによって、目の奥に軽い痛みすら感じる。
たまらず目を閉じた。
閉ざされた目蓋さえ貫通して白い光が眼球を侵す。
そして数秒の後。
微かに光が弱まったのを感じ、ジャイアンはうっすらと目を開けた。
その目に飛び込んで来たのは、あまりにこの世界の光景とは不釣り合いな“乗り物”だった。
だが、ジャイアンはその乗り物の事をよく知っていた。
少なくともその乗組員たちは自分の敵ではない。
それだけはハッキリと分かる。
ジャイアン「・・・・・・タイムパトロール。」
時間を自在に行き来する技術が確立されている未来にあって、時間に関わる犯罪やトラブルに対処する警察機構。
ジャイアン自身、過去に何度か接触した事がある。
そして命を助けられた。
そのタイムパトロールが目の前に現れた事が何を意味するか。
それはすぐに分かった。
自分を迎えに来たのだ。
帰れるんだ。
元の世界に。
カシャッ ウィーン
パトロール艇の側面に設けられたハッチが開く。
新幹線の先頭車両と飛行機を組み合わせたようなフォルムの機体から、見慣れた水色の制服を着た男が降り立つ。
タイムパトロール(以下TP)「剛田武くんだね?」
ジャイアン「は、はい。」
TP「私はタイムパトロール東京署の者だ。君の救出に来た。」
予想していた言葉だ。
だが、実際にその耳で聞いた瞬間、えもいわれぬ安らぎが込み上げた。
ジャイアン「・・・帰れるんだ・・・家に。」
TP「あぁ。もう大丈夫だ。安心したまえ。」
深い安堵に包まれ、大きな溜め息がこぼれる。
膝から崩れ落ちそうになった。
だが、それと同時に疑問が湧いた。
タイムパトロールが来たという事は・・・
ジャイアン「ここは・・・地球なのか?」
異世界であればさしものタイムパトロールとて干渉はできないだろう。
だが、現にこうして彼らは現れた。
それはすなわち今いるこの世界がジャイアンの住む世界、地球の歴史の1ページを担っている事を意味する。
だとしたら、ここは“いつ”だ?
TP「そうだ。史実では君はあの日・・・君の中の時間軸で言う1週間前、あの場所で交通事故に遭う事になっていた。だが車と接触する刹那、突如発生した時空乱流に飲み込まれ、この時代に飛ばされたのだ。」
時空乱流。
時の流れの中に突然発生する落とし穴のような物だと、ドラえもんから聞いた事がある。
そこに人が飲み込まれると今の住んでいる世界から消え、永久に亜空間を漂う事になる。
ただ、運が良ければどこか別の時代に出られる事もあるらしい。
という事は、自分は運が良かった方なのだ。
TP「1週間、時空乱流の発生と少年がそれに巻き込まれたとの報告を受けて、我々もすぐ捜査に乗り出した。だが、時空乱流はいつどこで発生するか分からない、謂わば天災のよいな物だからね。どうしても捜査の体制が整うまでに時間を要するんだ。」
ジャイアン「はぁ・・・」
※時空乱流の設定はドラえもんの映画「のび太の日本誕生」に準拠してます。
TP「よしんば100年や200年ほどの近接した時代に飛ばされていれば、もう少し早く発見して救出に来られたんだが、2000年も先の未来となると探し出すだけでも難しい。」
ジャイアン「はっ!?」
TP「その結果、君を1週間もこの世界に放置する事となってしまった。本当に申しわ」
ジャイアン「ま、待った!! 2000年先だって!?」
TP「んっ? そうだが?」
ジャイアン「こ、ここは、未来なのかよ!?」
鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。
ここが地球の歴史上の世界というだけでも信じがたいが、更には過去ではなく未来。
ジャイアン「そ、そんな・・・だ、だってこの世界には電気もねぇし、車もケータイも・・・秘密道具も、何もねぇじゃねぇか!! 一体、何がどうなってこんな事になったんだよ!?」
TP「すまない。実はこの時代の事は、我々もよく分からないんだ。」
ジャイアン「はぁ!?」
TP「ここは我々タイムパトロールが拠点を置く22世紀よりも、もっと遥か先の時代だ。今日ここに来る事ができたのは、あくまでも君を救出するという任務があったからだ。過去の人物の救助以外の目的で我々が未来へ渡航する事は、法律で固く禁じられている。地球規模で歴史を改変しかねない情報を知るのを防ぐためにね。」
ジャイアン「そんな・・・」
TP「故に、我々はここにあまり長くいる事もできない。悪いが剛田くん。今すぐパトロール艇に乗ってもらえるかな?」
ジャイアン「い、いや! 待っ」
TP「待てない。今すぐだ。もし抵抗すれば、強制送還させてもらわなければならない。我々もできればそんな真似はしたくないんだ。理解してもらえないだろうか?」
ジャイアン「うっ・・・」タジッ
ジャイアンは戸惑った。
今すぐ帰りたい気持ちはもちろんある。
だが、こんな変わり果てた未来を目の当たりにし、大人しく帰る事に抵抗を感じた。
何故こうなったのか。
防ぐ手立てはないのか。
巨人とは一体何なのか。
知りたいと思った。
それは単なる好奇心ではなく、嫌というほど目にした流血を、死を、防ぐ手立てがあるなら知らなければならないという使命感に近い物だった。
何故ならハンナは、そして兵士達は、明日もこの死と隣り合わせの世界で戦い続けるのだから。
さりとて、法的権力を持ったタイムパトロールに逆らう事などできない。
ジャイアンに選択の余地はなかった。
ジャイアン「・・・・・・分かった。」
TP「無理言ってすまない。さぁ、行こう。」
タイムパトロールに促されて、ジャイアンはパトロール艇へと乗り込んだ。
エンジンがかかり、パトロール艇は静かに地を離れる。
多くの血と涙が染み込んだ、未来の地を。
やがて先ほどと同様の眩い光が中庭を包んだ。
そしてその光の中にぽっかりと空いたタイムホールにパトロール艇は吸い込まれてゆく。
さようなら。
窓から見える景色を眺めながら、ジャイアンは小さく呟いた。
—練馬区の病院—
・・・し
・・・けし
ジャイアン「・・・ん・・・」パチッ
母ちゃん「武!」
ジャイアン「・・・母・・・ちゃん?」
母ちゃん「気が付いたかい!?」
ジャイアン「ここは・・・病院?」
ジャイ子「兄ちゃん、大丈夫?」
ジャイアン「ジャイ子・・・」
ドラえもん「どこか痛いところはない?」
ジャイアン「ドラえもん? どうして・・・」
母ちゃん「覚えてないのかい? アンタ、のび太くん家の近くで車にはねられたんだよ。」
ジャイアン「車・・・? あぁ、そう言えば・・・」
母ちゃん「それで、その音を聞き付けたドラえもんが救急車を呼んでくれたんだよ。」
ジャイアン「そうだったのか・・・ドラえもん、ありがとな。」
ドラえもん「ううん、良いよそんなの。当然じゃないか。」
ジャイアンは視線をゆっくりと天井へ移した。
真っ白なモルタルの天板に引かれた四角い模様が歪んで見える。
微かに頭痛も感じた。
頭を打ったのかも知れない。
脳は霞がかったようにボンヤリとしており、思考回路が働かない。
何とかその霞を払いのけて、思い出せる限りの記憶を整理しようと試みる。
ドラえもんに道具を借りに行った。
借りたのはパワー手袋にヒラリマント、石ころ帽子、四次元ポーチ。
それを携え、のび太の家を後にした。
その矢先に事故に遭った。
それから
ジャイアン「!!!!」
堰を切ったように記憶が溢れ出した。
ハンナ。
フランツ。
巨人。
壁に囲まれた街。
変わり果てた未来で過ごした1週間。
ジャイアン「きょ、巨人は・・・!」ガバッ
ジャイアン「うっ・・・!!」クラッ
咄嗟に立ち上がった瞬間、強い目眩に襲われた。
母ちゃん「これ、急に起きるんじゃないよ! アンタ、頭打ってるんだからね!」
ジャイ子「兄ちゃん。今日は巨人の試合はないよ。」
ジャイアン「違う! 人を食う化物だよ! 壁は!? 壁は無事なのか!?」
母ちゃん「・・・。」
ジャイ子「・・・。」
ドラえもん「・・・。」
ジャイアン「・・・・・・えっ?」
母ちゃん「よっぽど強く頭を打ったのかねぇ? もう一度CTを撮ってもらおうか?」
ドラえもん「大丈夫ですよ、お母さん。きっと起き抜けで記憶が混乱してるだけですから。」
ジャイアン「えっ? えっ?」
母ちゃん「まぁ、それもそうだね。お医者さんも脳に異常はないって言ってたし。」
ジャイアン「きょ、巨人は・・・」
ドラえもん「ジャイアン、何か怖い夢でも見てたの?」
ジャイアン「・・・っ!」
夢。
その言葉がジャイアンの脳内に反響した。
夢だったのだろうか?
そう思って、もう一度記憶の一つ一つを精査してみる。
今までにも現実と見まごうほどリアルな夢を見た事はある。
だが、そういった夢は起床後によくよく思い返してみると、世界観の設定や登場人物の台詞など色々な部分が破綻しており、やはり夢だったのだと再認識させられるものである。
ジャイアン「・・・・・・。」
いや、夢じゃない。
夢だとは到底思えない。
巨人を殴り飛ばした感触も、フランツを背負った時の重みも、ハンナの声も、全ての記憶が体に深く刻まれている。
夢だというにはあまりに記憶が鮮明すぎる。
やはり自分は本当にあの時代に行っていたのだ。
そして、タイムパトロールによって元の時代へと送り返され今に至る。
それは間違いない。
後は、何かそれを裏付ける物でもあれば100%の得心がゆくのだが・・・
母ちゃん「どうしたんだい武? そんなに黙りこくって。 気分でも悪いのかい?」
ジャイアン「いや、大丈夫・・・・・・んっ?」
その時ふと、自分が薄い水色の浴衣を着せられている事に気が付いた。
病院から支給される入院患者用の寝間着だ。
自分は確か、いつものオレンジのロングTシャツと黒いデニムを着ていた筈。
そしてそれらは向こうでも身に付けていた。
ならば
ジャイアン「母ちゃん。俺の服は?」
母ちゃん「あぁ、ここに入ってるよ。」
母はテレビ台の下に置かれたバスケットを指差した。
母ちゃん「泥だらけだからね。帰って洗わないと。」
ジャイアン「悪いんだけど、ズボンの右ポケットを探ってくんねぇか?」
母ちゃん「右ポケット? 大事な物でも入れてたのかい? ちょっと待ちなよ。」ゴソゴソ
ジャイアン「・・・。」
母ちゃん「ん? 何だい、これは?」ゴソゴソ
母の手がポケットから引き抜かれる。
その親指と人差し指に挟まれる形で、それは姿を現した。
母ちゃん「おや、まぁ。武、アンタ指輪なんてする趣味あったのかい?」
—夕刻 練馬区の病院—
ジャイアンは一人、病院の屋上にあるベンチに腰掛けていた。
頭こそ強打したものの脳に異常はなく、骨折等もしていない。
念のため今日1日だけ入院し、何事もなければ明日退院できるという。
母は笑っていた。
我が子ながら呆れた丈夫さだよ、まったく。
乙
読みやすくて良いな
いつもながらの憎まれ口。
しかし、その母は剛田雑貨店の前掛けを巻いたままだった。
事故の一報を受け、店から大慌てで駆け付けてくれたのだろう。
その優しさをジャイアンは嬉しく感じていた。
自分を愛してくれる家族と、大切な友人。
戻ってきたんだ。
ようやくその実感が湧いてきた。
飽きるほどに見慣れた街並みも、今は愛しく感じる。
コンクリートの高層ビル。
舗装されたアスファルトの道路。
もちろん、それらの周囲に壁などない。
血の臭いもしない。
あの世界とこの世界に何か共通する物を挙げるとすれば、それは空がある事ぐらいだろう。
>>212
嬉しいお言葉をありがとうございます。
もう少しで終わります。
ジャイアン「だけど、あれは夢じゃない。」
指輪を強く握りしめる。
あくまで握りしめるだけ。
指には通さない。
自分にその資格はない。
この指輪に指を通して良いのはフランツだけだ。
あの勇敢な兵士だけだ。
だから自分は、握りしめる。
ジャイアン「・・・・・・。」
見上げた空は紅く染まっていた。
間もなく夜が訪れる。
そして朝がくる。
その後にはまた夕暮れ。
それを何度も何度も、気が遠くなるほど繰り返した先にあの未来が待っている。
死のと距離が驚くほど近い、残酷な世界。
その世界で、ハンナは今も戦っている。
今日明日にも死に飲み込まれるかも知れない。
だが、彼女にもう迷いはない。
大切な人達を守る為。
もうこれ以上、奪われる人を増やさない為。
勇敢にその剣を振るい続けるのだろう。
ジャイアン(ハンナさんなら大丈夫だ。)
ふとそう思った瞬間、ずっとジャイアンの中で燻っていた2つの疑問の答えが出た。
1つ目は、自分がハンナに対して抱いていた想いが何なのかという事だ。
恋なのだろうかと疑いながらも、今一つしっくりこなかった不思議な感情。
それに冠せられる名前。
それは“絆”だった。
たった1日とは言え、共に死線を潜り抜け、互いに守り合った。
心が通い合った。
そこに生まれたのが絆だ。
それはあの地で戦う兵士たち全員の間でも共有されている事だろう。
そして2つ目。
未来の世界で戦い続けるハンナの為に、いま自分にできる事は何かないかと、ジャイアンはずっと考えていた。
そしてそれは、絆を大切に生きてゆく事だと気が付いた。
自分にはドラえもん、のび太、スネ夫、しずかというかけがえのない親友達がいる。
彼らとの間にも絆がある。
そして、これから先の人生で出会うありとあらゆる人々との間にもそれは築かれるだろう。
それら一つ一つを大切に抱え、生きてゆく。
絆の炎を絶やさぬように。
その炎がずっと受け継がれてゆけば、いつの日かあの未来へ届く。
傷付いた人々を照らし、その身体を暖める。
その火種の一つが自分に託されているのなら、それを精一杯守る事が使命だ。
自分の戦いだ。
ジャイアン「ハンナさん。俺も自分にできる戦いってヤツを、やってみるよ。」
ジャイアンはフランツの指輪を頭上に掲げた。
その円の向こう側に見える空をただじっと見つめる。
この空の二千年後の君へ。
俺はこの世界で、君の為に戦い続ける。
いつかこの体が死んでも、地球上に連綿と刻まれ続ける絆の一つとなって未来を照らし、君を守る。
だから、いつかまた会おう。
ジャイアン「心の友よ。」
fin
以上です。
どうもありがとうございました。
タイトルからギャグ物かなと思ったらいい話過ぎて良かったwwwwww
他になにか書いてる?
改めまして、お付き合い下さった方々、本当にありがとうございました。
本当はジャイアンとエレンの友情とか書きたかったけど、
エレン達と絡ませちゃうとどこで終われば良いか分からなくなりそうだったので、ハンナをメインにしてみました。
では、失礼いたします。
>>221
暇つぶしに掲載していただいた分です。
管理人さんがこのSSの末尾に僕の他のSS一覧を作って下さいました。
http://minnanohimatubushi.m.2chblog.jp/article/1838699?guid=ON
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