貴音「はて……くっくどぅーどぅるどぅーとは……?」(37)

響「鶏の鳴き声だぞ?」

貴音「響、それはコケコッコーですよ」

響「ああ、違う違う」

響「日本ではコケコッコーだけど、英語圏ではクックドゥードゥルドゥーなんだよ」

貴音「なんと、そうなのですね」

響「うんうん」

貴音「海外の鶏ともなれば、やはり英語も堪能なのですね……」

響「うん?」

響「違うよ?」

貴音「はて?違うのですか?」

響「うん」

貴音「なるほど、英語というのはやはり難しいものですからね……一握りの鶏にしか発音出来ないのでしょう……」

響「……うん?」

貴音「はて?」

貴音「違うのですか?」

響「違うぞ?」

貴音「それでは、一体くっくどぅーどぅるどぅーとは……?」

響「だから、鶏の鳴き声なんだけど……」

貴音「ええ、選ばれし鶏にしか発音できない、ねいてぃぶこっこが……」

響「いや、だから、ちょっと待って」

貴音「何でしょう?」

響「あの、何ていうか、その……」

響「鶏の鳴き声は、一緒なんだよ」

貴音「一緒」

響「うん」

貴音「……何がでしょう?」

響「……うん、何ていえばいいんだろ……」

響「だから、えーっと……」

響「コケコッコーと」

貴音「はい」

響「クックドゥードゥルドゥーは」

貴音「はい」

響「一緒なんだよ」

貴音「はい」

響「はい」

貴音「……はい?」

響「分かんないか」

貴音「ええ、よく分かりません」

貴音「コケコッコーとくっくどぅーどぅるどぅーは別のものではないのですか?」

響「……」

貴音「……」

響「……りんご、があるじゃん?」

貴音「響、話を逸らせてはいけませんよ?」

響「いや、ちょっと聞いてよ」

響「りんごってさ、英語でなんて言う?」

貴音「それは……あっぷるでは?」

響「うん、そうなんだ」

響「りんごは、日本語でりんご、英語でアップル」

響「それと同じで」

響「鶏の鳴き声は、日本語でコケコッコー、英語でクックドゥードゥルドゥー」

響「そういうことだぞ」

響「分かった?」

貴音「……響」

響「何?」

貴音「……嘘はいけませんよ?」

響「えっ?」

貴音「つまり、響はこういいたいのですね?」

貴音「鶏の鳴き声の、コケコッコーを英語にするとくっくどぅーどぅるどぅー」

響「うん」

貴音「『an apple is red』は」

貴音「『りんごは赤い』であるように」

貴音「『the こっこ is くっくどぅーどぅるどぅー』は」

貴音「『鶏はコケコッコーである』と」

響「……まあ、ニュアンスはな、そういうことだな」

貴音「そんな訳は無いでしょう!」

響「え?何で?」

貴音「コケコッコーとくっくどぅーどぅるどぅーとでは!」

貴音「似ても似つかないではありませんか!」

響「えー、そうかな?」

貴音「全くの別物です!」

響「んー、でもさ、そんなこと言ったら」

響「りんごとアップルだって全然違う言葉だぞ?」

貴音「それは当然です!」

響「どうして」

貴音「だって、りんごにはもともと名前が無いではありませんか!」

貴音「それにそれぞれが、便利なように名前を付けるでしょう」

貴音「わたくしたちはりんご、メリケン様はあっぷると」

響「うん、だから、鶏も……」

貴音「しかし!」

響「うん」

貴音「コケコッコーはコケコッコーなのです!」

響「あー、そこが譲れないのか、貴音は」

貴音「何故ならば、何故ならば!」

響「りんごには名前が無いけど、コケコッコーにはコケコッコーがあるもんな」

貴音「そうなのです!」

貴音「りんごはりんごー!とも、あっぽぅ!とも鳴きません!」

貴音「しかし、鶏はコケコッコーと鳴くのですよ!響!」

響「良かった、やっと話が見えてきたぞ……」

響「そうかー、そこが気に入らないのか、貴音は」

貴音「はい!」

響「まあ、じゃあ聞いてみようか、実際に」

貴音「ええ、コケ麿をここに……」

響「いや、ネットでいいじゃん……」

響「んーっと、『鶏 鳴き声』と……」

響「はい、出てきたぞ」

 コケコッコー

貴音「ほら、響!聞きましたか!」

貴音「この鳴き声の!一体どこが!」

貴音「くっくどぅーどぅるどぅーだと言うのですか!」

響「うーん、これは時間がかかりそうだぞ……」

貴音「どう聞いても、『どぅ』とは言っておりません!」

響「なあ、貴音」

貴音「何でしょう」

響「取りあえずご飯食べようよ、冷めちゃうよ?」

貴音「……ですが」

響「大丈夫だよ、クックドゥードゥルドゥーは逃げたりしないよ」

貴音「……」

響「お腹すいたでしょ?ね?」

貴音「……分かりました」

いぬ美「ばうっ!」

響「はいはい、今ご飯作るから待っててね」

響「ほらほら、貴音も手伝うんだぞー」

貴音「ええ」

貴音「さ、いぬ美、よく噛んで食べるのですよ」

いぬ美「ばうっ」

貴音「……」

いぬ美「……」ガツガツ

響「いぬ美、ちゃーんと噛まないと飲み込めないぞー?」

貴音「……」

貴音「……響」

響「なに?」

貴音「つかぬ事を聞きますが」

響「うん」

貴音「わんわん、は英語で何というのでしょう……?」

響「……ばうわう、かな」

貴音「ばうわう……」

響「……」

貴音「……ばうわう」

貴「……成程、そうですか」

響「……良かった、ちゃんと飲み込めたな」

響「よし!それじゃあ自分たちも食べるぞー!」

貴音「ええ、頂くとしましょう」

響「今日のご飯は、響ちゃん特製完璧オムライスさー!」

貴音「ええ、真、完璧なオムライスですね」

響「でしょでしょー?」

響「へへっ、頂きまーす!」

貴音「頂きます」

響「……」モグモグ

貴音「……」モグモグ

響「……」モグモグ

貴音「……えっぐ」

響「……」

貴音「……らいす」モグモグ

響「……貴音」

貴音「……おにおん」

響「……」モグモグ

貴音「……けちゃっぷ」

響「……」

貴音「……とめいとぅ、けちゃっぷ……」

響「……」ジッ

貴音「……はて、何か?」

響「……美味しい?」

貴音「?ええ、とても」

響「うん、なら良かったぞ……」

貴音「……こっここけっこ、こけこっこー」

響「……」

貴音「えっぐ is こけっこー……」

貴音「ふろむ、コケコッコー、ふぉー、ちきんらいす、ふぉー、でぃなー」

貴音「いん、くっきんぐ……」

貴音「……くっくどぅーどぅるどぅー for くっきんぐ」

響「あの、貴音さ……」

貴音「くっくどぅーどぅるどぅー is コケコッコー……」

響「たか……」

貴音「響」

響「うん」

貴音「やはり納得いきません」

響「……うん、そっか」

響「貴音の脳内は、何ていうか、自由だよね……」

貴音「そうでしょうか」

響「うん……」

貴音「どうしてあの鳴き声が、くっくどぅーどぅるどぅーなのでしょうか……?」

ねこ吉「にゃー」

貴音「……ちなみにねこ吉は英語ではなんと?」

響「……メウ、かな」

貴音「めう、ですか……」

響「……大丈夫?」

貴音「ええ、めう、は理解が及びます」

響「良かったぞ……」

貴音「ばうわう、めう、くっくどぅーどぅるどぅー……」

貴音「……何故なのでしょうか」

響「ホントにな、なんでなんだろうな」

貴音「コケコッコーがくっくどぅーどぅるどぅーでさえなければ、響をこんなに困らせることもないでしょうに」

響「自覚あるのか……」

貴音「しかし!わたくしはどうしても納得がいかないのです!」ガタッ

響「わっ」

貴音「ここにわたくしは断固抗議したいのです!」

貴音「コケコッコーはのっとくっくどぅーどぅるどぅーであると!」

響「一体何が貴音をここまで駆り立てるんだろ……」

貴音「大体、英語というものはおかしいのです!」

貴音「くっくどぅーどぅるどぅーだけに限った話ではありません!」

貴音「きーらーきーらーひーかーるー♪」

貴音「が、何故ゆえ!」

貴音「Twinkle, twinkle, little star♪」

貴音「なのでしょうか!?」

響「それ、むしろ英語が先だぞ?」

貴音「どうして、きらきらの4字を歌う間に、英語ではとぅいんくるとぅいんくるなどと!」

貴音「子音をふんだんに詰め込めてしまうのですか!」

響「なあ、貴音、なんか話の方向性がさ……」

貴音「'cause this is the thriller, thriller night♪」

貴音「どうしてサビの一番の盛り上がりで!」

貴音「thの音を連発し、平気な顔をしていられるのですか!?」

響「いや、それはマイケルが……」

貴音「phoneが、ふぉん!」

貴音「 psychologyが、さいころじー!」

貴音「ghotiが!」

貴音「フイッシュなどと!」

響「違う、最後のは違うやつだぞ」

貴音「まだあります!」

響「うん」

貴音「夜はナイト!けーが頭に着けば騎士!」

貴音「極めつけは!」

貴音「rhythm」

貴音「これは一体どういうことなのですか!」

響「ていうか、結構英語に詳しいんじゃんか……」

貴音「はあ、はあ……」

響「あー、今日もしかしたら徹夜かなーこれ」

貴音「つまり、わたくした何を言いたいのかというと」

響「うんうん」

貴音「わたくしも英語が喋ってみたい!」

貴音「そういうことなのです!」

響「……そっか、勉強したんだね……」

貴音「はい!」

響「それで、よく分からなかったんだね……」

貴音「はい!」

響「マイケル、どうだった?」

貴音「素晴らしかったです!」

響「でもさ、それならなおさらしょうがないじゃないか」

響「クックドゥードゥルドゥーはクックドゥードゥルドゥーなんだ」

響「コケコッコーでも、くいどぅるるるでもない」

響「だってそれが言葉としてあるんだもん、意地張ったって仕方ないよ」

響「受け入れて、こっちが理解しようとしてあげなきゃ」

響「ね?貴音ならわかるでしょ?」

貴音「……はい」

響「ね、ほら、言ってみてよ」

響「クックドゥードゥルドゥーってさ」

貴音「……」

貴音「く、く……」

貴音「Cock-a-doodle-doo!!」

響「……」ニコッ

貴音「……」ニコッ

貴音「今、分かりました……」

貴音「これが、異文化コミュニケーションなのですね……」

響「うん?」

貴音「これが語学、留学なのですね……」

響「うーん……?」

貴音「ということは、わたくしは今、バイリンガルとなったのですね……!」

響「……?」

響「うん、その通りだぞ!」

響・貴音「あははははは!」

響「さーて、一件落着!」

響「明日も早いんだから、早く寝ようよ!」

貴音「響、申し訳ありませんでした、折角のお泊りだというのに……」

響「ぜーんぜん!自分は楽しかったよ!」

貴音「響……!」

響「皆も、貴音が来てくれて嬉しいって!ね、皆!」

いぬ美「ばうっ」

ねこ吉「にゃー」

ハム蔵「じゅっ」

ブタ太「ぶひっ」

響「ね?」

貴音「……」

貴音「……」

響「ん?どうしたの?貴音」

貴音「あの」

貴音「ブタ太は、英語では何鳴くのでしょうか……?」

響「ブタ太?ブタ太は確か……」

響「オインクオインクじゃないかな?」

貴音「なんと!」

響「変わってるよねー」

貴音「おいんくおいんくとは、きっと日本とは品種の違うブタなのでしょうね……」

響「へ?」

響「……ん?貴音?」

貴音「何でしょう?」

響「ブーブーとオインクオインクは、一緒だぞ?」

貴音「……響、ウソは良くありません」

貴音「コケコッコーとクックドゥードゥルドゥーはまだ分かります」

貴音「ですが、ぶーぶーとおいんくおいんくが一緒なわけはないでしょう!」

響「え」

貴音「本当のことを正直に話すのです!」

響「ね、ねえ貴音、ちょっと……」

貴音「さあ、響!れっつとーく!わたくしが飲み込むまでは寝かせませんよ!」

響「……うぎゃー!貴音ってめんどくさいよー!」

               おわり

はい、ありがとうございました

30レスピッタリだぜ

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