妹「せっかくだしイヤラシイコトしない?」(27)


兄「いやらしいことって……どんな?」

妹「もうっ……言わせないでよ///」

兄「……ごめん」

妹「ホントっ! お兄ちゃんはそんなんだから彼女ができないんだよ?」

兄「うん……そうかも」

妹「ご、ごめんね? そんなにガッカリしないでね」


兄「大丈夫だよ。それに、自分でもわかってるから」

妹「ほんとに?」

兄「うん」

妹「じゃあ彼女ができないお兄ちゃんの代わりに……」

兄「ん?」

妹「わ、私がお兄ちゃんを……き、気持ちよくさせてあげるから///」

兄「じゃあ……しよっか?」

妹「うん……///」





 僕と妹が行為を始めてから、どれぐらい時間が経っただろう。


「そろそろ……入れる?」

「うん、いいよ」


 妹が聞いてきので、僕はうなずいた。
 ベッドに横たわる僕に、妹がまたがる気配がする。

「お兄ちゃんって毎回エッチするときに、目を閉じてるよね?」


 妹の言うとおりだった。僕は彼女と行為に及ぶ際は、必ず目を閉じた。
 理由はわかっている。行為の相手が妹だからだ。


「そんなことはいいから。早くしてよ」

「もう……急かさなくても大丈夫だよ。私は逃げないから」


 こんなことはやめろという理性の訴えも、性欲には勝てなかったらしい。
 僕の分身は屹立して、妹がまたがるのを今か今かと待ち構えていた。


「あっ……」


 妹の口から間の抜けた声が漏れる。 
 僕のものは、たしかに妹の中に入った。自分がイヤになった。
 包まれるような感覚に伴って、悪寒にも似たなにかが背筋に走る。


「また入っちゃった。何回目だろうね?」


 嬉しそうな声。僕は質問に答えたくなかったので、目と一緒に口も閉じた。


「照れてるの? ……まあいっか」


 妹も僕がなにも答えないとわかっているのだ。妹がゆっくりと動き出す。
 結合部から卑猥な音がした。
 遅れて快感が自分のものを通して伝わってくる。


「んっ……ぁぁ…………」


 甘い矯正。妹の腰の動きがじょじょに早くなっていく。でも、僕は身じろぎひとつしない。
 寄せては返す波のような快楽に、僕は無意識に息を漏らした。



「……あっ……んんっ……」


 熱を孕んだ甘い吐息が、小さな部屋を満たしていく。
 彼女の腰の動きがさらにはやくなる。腹部の圧迫感が増して、僕は少しだけ気分が悪くなった。


「ねえ……気持ちいい?」


 僕はなにも言わなかった。ただ首を縦にふった。
 不意に腰の動きが止まる。妹が僕のからだに倒れこんでくる。
 彼女の中から自分が抜け出たのがわかった。汗ばんだ肌と肌が密着して、僕の気分はさらに悪くなる。


 このまま永遠に離れることができないのでは、と奇妙な恐怖を覚えた。


「はぁはぁ……」


 妹の吐息が僕の耳朶を、ねっとりとなめる。


「……お兄ちゃん……私、疲れちゃったよ……」

「いいよ、少し休憩しよう」

「じゃあ……このままの体勢がいい」

「わかった」



「たまにはお兄ちゃんが、攻めてくれてもいいんだよ?」


 少し呼吸が整ったのだろう、妹の声に余裕が戻ってきた。
 どんな表情をしているのかは知らない。僕はいまだに目を閉じ続けている。
 妹の吐息が耳の穴に入ってくる。首が無意識に動いてしまった。


「知ってるでしょ? 僕、体力ないし下手だから」


 事実だった。騎乗位以外の体位だと、腰を動かすのに集中しすぎて、快楽を貪ることなどできなかった。
 まして、それでは目を開けなければならなくなる。
 目を開けると僕は、僕の現実と向き合わなければならない。


 妹と性行為をしている、という。


「……バックだったら、まだなんとかなるかも」


 僕は言った。正常位に比べれば、まだあっちの体勢のほうが動ける。
 それに目を開けても、見えるのは彼女の背中だけなので幾分かマシだろう。


「……私、あの体勢は嫌い。全然気持ちよくないんだもん」


 目を閉じていても、妹がどんな表情をしているかがまぶたの裏に浮かんでくる。
 無駄な足掻きだと思いつつも、僕はさらにまぶたをきつく閉じた。


「そっか。じゃあこのままでいこっか」

「仕方ないなあ。お兄ちゃんの根性なし」

「ごめんな」

「いいよ……お兄ちゃんの代わりに私ががんばるから」

「ありがと」



「でも、ちょっとこのままだと味気ないよね?」


 不意に唇を塞がれた。彼女の鼻息が僕の鼻の下をくすぐる。
 思わず目を開けそうになるのを、なんとかこらえた。
 甲高い音が、口の中で響く。舌を思いっきり吸い上げられたのだ。
 からだの中のものを全部引っこ抜かれるような錯覚に、つま先がピンと伸びる。


「んふっ…………んちゅっ……ぷはっ!」


 一瞬唇が離れる。僕は大きく口を開いて、空気を吸う。
 でもやはりまぶたはキツく閉じたまま。


「もっとしよっか……んちゅっ……!」


 再び妹の唇がぼくのそれを塞ぐ。閉じようとした口の中に、彼女の舌が割って入ってくる。
 妹の唾液が、吐息が、僕の口内を満たしていく。
 妹の呼吸がどんどん浅くなっていく。

 もうなにも考えないほうがいい。僕が思考を手放そうとしたときだった。



 妹の冷たい指先が僕のものに触れる。
 僕のそれは痛々しいまでに勃起していた。

 今のキスで僕は興奮したのだろうか。だとしたら――また自分がイヤになる。


「あぅっ……は、入ったよ……」

「……動いて」


 それでも僕はそんなことを口走っていた。
 自分という生き物が理解できない。そして、またイヤになる。


「ぅん……んああぁっ…………」


 再び僕と妹はひとつになった。
 股間に感じる快楽よりも、下腹部の圧迫感の方が強く感じる。そのことが救いのように思えた。



 快感。
 圧迫感。
 妹の切迫した喘ぎ声。
 
 そして、僕のわずかに漏れ出る吐息。
 それだけが今の自分にとっての全てだった。それ以外、考えたくなかった。なのに。



 どうしてこんなことをしているのだろう。



 そんなことを考えてしまう。考えたくないのに。目を閉じているのに。浮かんでしまう。



「はあうっ……ああんっ……!」


 切迫した喘ぎ声が、そのまま僕の中に響いてくる。
 彼女の冷たい両手が僕の胸に置かれる。冷えた感触が、胸を締め付ける。
 もうやめてくれ。そんな言葉が出かけたが、それより先に瞼の裏でなにかが爆ぜた。


「……っ!」


 わずかな快楽に、ぼくは小さなうめき声を漏らした。
 妹の腕をつかむ。腰の動きが少し遅れて止まる。
 再び妹が僕の胴体に倒れこんでくる。


「はぁはぁ…………もう、お兄ちゃん早すぎ」

「……そう?」

「うん……あと少しだけ、粘ってよ」



 熱に浮かされた思考が、急速に冷めていく。虚脱感が全身を襲った。
 妹とセックスしようとした自分は、実は別人なのではないかと思った。
 いや、思いたかっただけか。

 引き潮のように熱が遠のいていくと、今度は現実が襲ってくる。
 どんなにまぶたを閉じても。
 耳をふさいでも。
 僕が妹とセックスしたという現実からは逃れられない。

 自分の胸で未だに喘いでいる妹。その存在が僕を追い詰める。


「……ごめん、どいてくれ」

「うん……」


 妹が自分から離れる。すでに股間のそれは萎えていて、妹の中から抜かれてもなにも感じなかった。
 僕は知らないうちに唾液まみれになった口を拭っていた。


 ゆっくりと目を開ける。

 暗闇が一瞬で現実にとってかわる。まぶたが熱くなって、視界がにじんだ。


「どうしちゃったのお兄ちゃん? 涙目になってるよ?」

「気のせいだよ」

「そう? まあいっか」


 僕は妹を見た。ぼやけた視界の中で、彼女だけが不思議なことに鮮明に映る。
 
 現実がそこにはあった。

 僕は血のつながった妹とセックスをしているという、その事実自体にはなにも思わない。
 道徳観念だとか、そんなことはいちいち考えていない。
 そんなことはどうでもいい。


 そんなことで悩めるのなら、僕たちは裸になんてなってない。
 それに、肌を重ねる合わせることもなかっただろう。


 僕は妹の唾液にまみれた口の中で呟いた。


「ブサイクだなあ」


 どうして自分はこんなブスな女としか、セックスできないのだろう。
 現実とはなんて残酷なのだろう。

 どうして僕はこんなブスとセックスをしているのだろう?
 現実は意味不明だ。でも、自分はもっと意味不明だ。


「またしようね、お兄ちゃん」


 妹が僕を見て、ニッコリと笑った。
 ぼくはなにも言わなかった。


 
 代わりに首を振った――縦に。

おわり

ここまで読んでくれた人ありがとうございます

よかったら今書いている後輩「オトコってなんですか?」男「え?」ってスレも覗きに来てください

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