兄「いやらしいことって……どんな?」
妹「もうっ……言わせないでよ///」
兄「……ごめん」
妹「ホントっ! お兄ちゃんはそんなんだから彼女ができないんだよ?」
兄「うん……そうかも」
妹「ご、ごめんね? そんなにガッカリしないでね」
兄「大丈夫だよ。それに、自分でもわかってるから」
妹「ほんとに?」
兄「うん」
妹「じゃあ彼女ができないお兄ちゃんの代わりに……」
兄「ん?」
妹「わ、私がお兄ちゃんを……き、気持ちよくさせてあげるから///」
兄「じゃあ……しよっか?」
妹「うん……///」
◆
僕と妹が行為を始めてから、どれぐらい時間が経っただろう。
「そろそろ……入れる?」
「うん、いいよ」
妹が聞いてきので、僕はうなずいた。
ベッドに横たわる僕に、妹がまたがる気配がする。
「お兄ちゃんって毎回エッチするときに、目を閉じてるよね?」
妹の言うとおりだった。僕は彼女と行為に及ぶ際は、必ず目を閉じた。
理由はわかっている。行為の相手が妹だからだ。
「そんなことはいいから。早くしてよ」
「もう……急かさなくても大丈夫だよ。私は逃げないから」
こんなことはやめろという理性の訴えも、性欲には勝てなかったらしい。
僕の分身は屹立して、妹がまたがるのを今か今かと待ち構えていた。
「あっ……」
妹の口から間の抜けた声が漏れる。
僕のものは、たしかに妹の中に入った。自分がイヤになった。
包まれるような感覚に伴って、悪寒にも似たなにかが背筋に走る。
「また入っちゃった。何回目だろうね?」
嬉しそうな声。僕は質問に答えたくなかったので、目と一緒に口も閉じた。
「照れてるの? ……まあいっか」
妹も僕がなにも答えないとわかっているのだ。妹がゆっくりと動き出す。
結合部から卑猥な音がした。
遅れて快感が自分のものを通して伝わってくる。
「んっ……ぁぁ…………」
甘い矯正。妹の腰の動きがじょじょに早くなっていく。でも、僕は身じろぎひとつしない。
寄せては返す波のような快楽に、僕は無意識に息を漏らした。
「……あっ……んんっ……」
熱を孕んだ甘い吐息が、小さな部屋を満たしていく。
彼女の腰の動きがさらにはやくなる。腹部の圧迫感が増して、僕は少しだけ気分が悪くなった。
「ねえ……気持ちいい?」
僕はなにも言わなかった。ただ首を縦にふった。
不意に腰の動きが止まる。妹が僕のからだに倒れこんでくる。
彼女の中から自分が抜け出たのがわかった。汗ばんだ肌と肌が密着して、僕の気分はさらに悪くなる。
このまま永遠に離れることができないのでは、と奇妙な恐怖を覚えた。
「はぁはぁ……」
妹の吐息が僕の耳朶を、ねっとりとなめる。
「……お兄ちゃん……私、疲れちゃったよ……」
「いいよ、少し休憩しよう」
「じゃあ……このままの体勢がいい」
「わかった」
「たまにはお兄ちゃんが、攻めてくれてもいいんだよ?」
少し呼吸が整ったのだろう、妹の声に余裕が戻ってきた。
どんな表情をしているのかは知らない。僕はいまだに目を閉じ続けている。
妹の吐息が耳の穴に入ってくる。首が無意識に動いてしまった。
「知ってるでしょ? 僕、体力ないし下手だから」
事実だった。騎乗位以外の体位だと、腰を動かすのに集中しすぎて、快楽を貪ることなどできなかった。
まして、それでは目を開けなければならなくなる。
目を開けると僕は、僕の現実と向き合わなければならない。
妹と性行為をしている、という。
「……バックだったら、まだなんとかなるかも」
僕は言った。正常位に比べれば、まだあっちの体勢のほうが動ける。
それに目を開けても、見えるのは彼女の背中だけなので幾分かマシだろう。
「……私、あの体勢は嫌い。全然気持ちよくないんだもん」
目を閉じていても、妹がどんな表情をしているかがまぶたの裏に浮かんでくる。
無駄な足掻きだと思いつつも、僕はさらにまぶたをきつく閉じた。
「そっか。じゃあこのままでいこっか」
「仕方ないなあ。お兄ちゃんの根性なし」
「ごめんな」
「いいよ……お兄ちゃんの代わりに私ががんばるから」
「ありがと」
「でも、ちょっとこのままだと味気ないよね?」
不意に唇を塞がれた。彼女の鼻息が僕の鼻の下をくすぐる。
思わず目を開けそうになるのを、なんとかこらえた。
甲高い音が、口の中で響く。舌を思いっきり吸い上げられたのだ。
からだの中のものを全部引っこ抜かれるような錯覚に、つま先がピンと伸びる。
「んふっ…………んちゅっ……ぷはっ!」
一瞬唇が離れる。僕は大きく口を開いて、空気を吸う。
でもやはりまぶたはキツく閉じたまま。
「もっとしよっか……んちゅっ……!」
再び妹の唇がぼくのそれを塞ぐ。閉じようとした口の中に、彼女の舌が割って入ってくる。
妹の唾液が、吐息が、僕の口内を満たしていく。
妹の呼吸がどんどん浅くなっていく。
もうなにも考えないほうがいい。僕が思考を手放そうとしたときだった。
妹の冷たい指先が僕のものに触れる。
僕のそれは痛々しいまでに勃起していた。
今のキスで僕は興奮したのだろうか。だとしたら――また自分がイヤになる。
「あぅっ……は、入ったよ……」
「……動いて」
それでも僕はそんなことを口走っていた。
自分という生き物が理解できない。そして、またイヤになる。
「ぅん……んああぁっ…………」
再び僕と妹はひとつになった。
股間に感じる快楽よりも、下腹部の圧迫感の方が強く感じる。そのことが救いのように思えた。
快感。
圧迫感。
妹の切迫した喘ぎ声。
そして、僕のわずかに漏れ出る吐息。
それだけが今の自分にとっての全てだった。それ以外、考えたくなかった。なのに。
どうしてこんなことをしているのだろう。
そんなことを考えてしまう。考えたくないのに。目を閉じているのに。浮かんでしまう。
「はあうっ……ああんっ……!」
切迫した喘ぎ声が、そのまま僕の中に響いてくる。
彼女の冷たい両手が僕の胸に置かれる。冷えた感触が、胸を締め付ける。
もうやめてくれ。そんな言葉が出かけたが、それより先に瞼の裏でなにかが爆ぜた。
「……っ!」
わずかな快楽に、ぼくは小さなうめき声を漏らした。
妹の腕をつかむ。腰の動きが少し遅れて止まる。
再び妹が僕の胴体に倒れこんでくる。
「はぁはぁ…………もう、お兄ちゃん早すぎ」
「……そう?」
「うん……あと少しだけ、粘ってよ」
熱に浮かされた思考が、急速に冷めていく。虚脱感が全身を襲った。
妹とセックスしようとした自分は、実は別人なのではないかと思った。
いや、思いたかっただけか。
引き潮のように熱が遠のいていくと、今度は現実が襲ってくる。
どんなにまぶたを閉じても。
耳をふさいでも。
僕が妹とセックスしたという現実からは逃れられない。
自分の胸で未だに喘いでいる妹。その存在が僕を追い詰める。
「……ごめん、どいてくれ」
「うん……」
妹が自分から離れる。すでに股間のそれは萎えていて、妹の中から抜かれてもなにも感じなかった。
僕は知らないうちに唾液まみれになった口を拭っていた。
ゆっくりと目を開ける。
暗闇が一瞬で現実にとってかわる。まぶたが熱くなって、視界がにじんだ。
「どうしちゃったのお兄ちゃん? 涙目になってるよ?」
「気のせいだよ」
「そう? まあいっか」
僕は妹を見た。ぼやけた視界の中で、彼女だけが不思議なことに鮮明に映る。
現実がそこにはあった。
僕は血のつながった妹とセックスをしているという、その事実自体にはなにも思わない。
道徳観念だとか、そんなことはいちいち考えていない。
そんなことはどうでもいい。
そんなことで悩めるのなら、僕たちは裸になんてなってない。
それに、肌を重ねる合わせることもなかっただろう。
僕は妹の唾液にまみれた口の中で呟いた。
「ブサイクだなあ」
どうして自分はこんなブスな女としか、セックスできないのだろう。
現実とはなんて残酷なのだろう。
どうして僕はこんなブスとセックスをしているのだろう?
現実は意味不明だ。でも、自分はもっと意味不明だ。
「またしようね、お兄ちゃん」
妹が僕を見て、ニッコリと笑った。
ぼくはなにも言わなかった。
代わりに首を振った――縦に。
おわり
ここまで読んでくれた人ありがとうございます
よかったら今書いている後輩「オトコってなんですか?」男「え?」ってスレも覗きに来てください
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