女騎士「え?」
オーク「そのチョコに何を入れたと聞いている」
女騎士「何を言っているのだオーク、これはただのチョコだぞ」
オーク「……手作り、だよな」
女騎士「当たり前だろう、今日を何の日だと思っている」
オーク「じゃあやっぱり何か入れただろ」
女騎士「何故そういう話になるのだ」
オーク「そりゃお前、日頃の行いってもんが……」
女騎士「こんな日ぐらい素直になったらどうだ」
女騎士「怪しい物など入っていないぞ、安心して受け取れ」
オーク「……」ジー
女騎士「どこまで怪しむつもりだ」
オーク「なあ」
女騎士「なんだ」
オーク「好きな人と両想いになるおまじないとやらで」
オーク「チョコに爪とか混ぜるヤツがいるそうじゃないか」
女騎士「ああ、そういうことを気にしていたのか」
オーク「そりゃ気にもなるさ」
オーク「どうして女はそんな怖いことを考えるのか……」
女騎士「あれにも色々バージョンがあってな」
女騎士「髪の毛や唾液、血液なども有効と教えている場合もあるぞ」
オーク「おまじないっていうか、もう呪いじゃないか!」
女騎士「まじないも漢字で書けば『呪』の字であろう?」
女騎士「感染呪術は魔術の基礎だからな、いつの世でも残るものさ」
オーク「それでこれは……」
女騎士「だから安心しろと言っているではないか」
オーク「開けていいか?」
女騎士「いいぞ」
オーク「うむ」ガサガサ
オーク「臭いは普通のチョコレートに……ブランデーか?」クンクン
女騎士「ちょっぴり大人の風味だぞ」
オーク「酒気の強さで他の臭いを隠しているとか」
女騎士「なぜそこまで疑うのだ」
オーク「あわよくば、このチョコで酔った勢いに任せて襲おうとか考えてない?」
女騎士「製菓用の香り付け程度でお前が酔っぱらうワケなかろう」
オーク「そう言われれば確かにそうなのだが……」
オーク「それじゃ睡眠薬入りで俺を眠らせた間に襲うとか」
女騎士「今ここで食べると決まったわけではなかろう」
女騎士「仮にそういうことを考えていたとして」
女騎士「私がそんな杜撰な計画を立てると思うのか?」
オーク「そう言われると説得力があるような無い様な……」
オーク「まあ睡眠薬ではないとしても」
オーク「媚薬とか精力剤とかぐらいなら混入していてもおかしくないな」
女騎士「またそうやって疑いを深めるのか」
オーク「仕方ないだろう、俺だって自分の身の安全が第一なんだから」
女騎士「いいだろう、そこまで言うのならちょっと貸してみろ」
オーク「あ、ああ」
女騎士「うむ」パキッ
オーク「あれ、俺にくれたんじゃなかったの!?」
女騎士「貴様がいつまでたっても疑うのを止めぬからだろ」モグモグ
女騎士「ほれ、私の体に何か異変があったか?」
オーク「特に何もない……ようだが」
女騎士「送り手に毒見までさせるとは貴様も大した男だよ」
オーク「それはお前が自発的にやったんだろうが」
女騎士「やらねばならぬほど追い込んでおいて何を言うか」
女騎士「まあいい、ほれ」
女騎士「安全が確認されたんだからお前もちゃんと食え」
オーク「今ここで?」
女騎士「やっぱり怪しいとか言って捨てられては敵わんからな」
女騎士「今までの流れではちゃんと見届けなければ信用できん」
オーク「わ、分かったよ」
オーク「俺も過剰に疑って悪かった」
女騎士「謝罪など必要ない、ただチョコを食べてくれればそれでいいのだよ」
オーク「ああ、それじゃいただきます」パクッ
女騎士「そういえば同じチョコを齧ったということは間接キスだな」
オーク「いちいち言わんでいい」モグモグ
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