八幡「無想転生…?」ラオウ「うむ…。」 (33)

雪ノ下「………」

由比ヶ浜「………」

ラオウ「………」

八幡(……部室内の空気が重い
    八幡大菩薩でも裸足で逃げ出しだすレベルだよ)

八幡(あれもこれもこの平塚先生がこの男を連れてきたからだよ
    どうしてこうなった…)

八幡(悪夢のはじまりは三十分前だったな…)

~三十分前~

平塚「入るぞ」

由比ヶ浜「あ、先生!」

平塚「おう!」

雪ノ下「先生、だからノックを…」

平塚「細かいことを気にするな!寿命が縮むぞ!」

八幡「…相変わらずですね先生、だから良い相手に逃げられ…」

セッカッッコー!

八幡「あべし!」

平塚「なに言ったか~?はちま~ん?」

八幡「イイエナンデモアリマセン」

由比ヶ浜「うわぁ~、ヒッキー大丈夫?」

雪ノ下「そこに転がっている虫けらはともかく、何か御用ですか?」

八幡「虫けらとはなんだ、虫けらとは…」

雪ノ下「あら?普段役に立たない貴方にはお似合いでしょ?
     それともそれ以下のゴミクズの方が良かったかしら?」

八幡「それ以上言うとしまいにゃ、泣くぞ…」

平塚「ああ、今回は友人を連れてきてな」

由比ヶ浜「友人…ですか?」

平塚「ああ、通っている道場で知り合った友人だ」
   
雪ノ下「道場…。」

平塚「おもいっきり人を殴るのはストレス解消にもなるしな!」

八幡「その鍛えた拳で生徒を殴らないでくださいよ・・・」

平塚「大丈夫だ、まだ秘孔は突ききっていないから
    ミンチになることもないさ!」

八幡(ミンチ!?今ミンチって言ったこの人?!)

雪ノ下「…その友人がどうして奉仕部に?」

平塚「実はな、彼にも解決して欲しい問題があるのだよ」

雪ノ下「それを解決しろとおっしゃるのですか?」

平塚「ご名答」

雪ノ下「…分りました、依頼をお受けしましょう」

平塚「では早速…おーい入ってくれ盟友!」

ラオウ「……(ヌゥ」

雪ノ下「」

由比ヶ浜「ひっ」

八幡「」

八幡(な、なんだこの有無をいわさぬ威圧感は…)

ラオウ「……(ガン」

八幡(…肩パットと兜が邪魔になっていて、入り口で挟まってやがる…)

八幡(その装備品を外しても入れなくて
    結局扉を外して入ってくるとか、なんちゅう規格外な漢だ)

平塚「紹介しよう、通っている道場で知り合ったラオウだ」

ラオウ「…拳王だというておろうが」

平塚「それだと呼びづらいだろ!こまけぇことはいいんだよ!」

ラオウ「ぬぅ…」

八幡(その大男と気さくに話し合ってる平塚先生も平塚先生だよ…
    女子力は親のお腹の中にでも置いてきたのかよ…)

雪ノ下「……せ、先生。この方の相談と言うのは…?」

平塚「ああ、それについてだが…細かいことはラオウに聞いてくれ」

雪ノ下「はい?」

平塚「じゃあ、私は仕事があるから!ではな!」

由比ヶ浜「え、そ、そんな…」

一同「……」

八幡(部室に肩パットを装備した大男が放置されてる身にもなってくれよ…)

ラオウ「うぬらが奉仕部か、平塚から聞いておる
     早速だが、相談させてもらうことはだな」

由比ヶ浜「はぁ…」

ラオウ「悲しみを背負うことだ」

八幡「はいぃ?」

ラオウ「北斗神拳奥義、無想転生を習得するには
     大きな悲しみを経験せねばならぬ」

雪ノ下「悲しみ?具体的にはどのようなものなのかしら…?」

ラオウ「うむ、例えば想い人の命を自らの手で断つことよ!
     過去の伝承者はこのような悲しみを背負ってきた」

由比ヶ浜「え!そ、そんな酷いことを…サイテーだよ?!」

ラオウ「…北斗神拳伝承者は何もかもを捨てぬといかぬのだ」

八幡「解っているならなんで相談を…」

ラオウ「このご時世で犠牲者を出すなとリュウケンに厳命されてな…」

八幡(さっきまで漫画っぽい話だったのに…急に現実に引き戻された感じだな)

ラオウ「その事を飲みに行った際に平塚に愚痴を吐いたら
     『ちょうど傷ついて、濁った目になった生徒が居る!』
     と言い出してな」

八幡「…それで俺にお鉢が回ってきたと」
   (釈然としないし、改めて言われると涙が出らぁ…)

ラオウ「そうだ、それでうぬの元へ拳王直々に頭を下げにきたのだ」

八幡(その拳王ってなんだよ、世紀末覇者かなんかですか…?)

雪ノ下「つまり、比企谷くんのトラウマを蒸し返すだけで人助けが出来ると
     皆が幸せになる素敵なことだと思うわ」

八幡「ひ、ひでぇ…せめて皆でトラウマを公開しあうとかじゃないと死ぬっつーの」

雪ノ下「あら?売るほど嫌な思い出があるぐらいが、貴方の特技なのに…」

八幡「俺は検索してはいけない単語まとめか何かかよ…」

雪ノ下「では、皆で一つづつ言い合う形でいいかしら?」

ラオウ「うぬらの協力が心地よい…」

雪ノ下「では私から…、中学校の頃にいじめを受けていたの」

八幡「確か帰国子女だった事に目をつけられたんだっけか?」

雪ノ下「そうね、お陰で物を隠される、トイレで水を掛けられると散々だったわ…」

由比ヶ浜「うわー…酷い事ばかり…」

雪ノ下「それらのは慣れてきたけど、上履きを燃やされた事は衝撃だったわ
     あの不快な臭いは忘れられない…」

ラオウ「ゴフォぁ!」

八幡(拳王が血を吐いた!メンタル弱すぎるだろ!)

由比ヶ浜「キャア!だ、大丈夫ですか?!」

ラオウ「ぬっうぅ…心地よき痛みというべきか…
     うぬも深い悲しみを背負っていたのか…」

雪ノ下「もう慣れたわ…」

ラオウ(目に生気が宿っておらぬわ…恐ろしき女よ…)

由比ヶ浜「ラオウさん次は私の番だけど大丈夫?」

ラオウ「俺に後退はない!! あるのは前進勝利のみ!!」

八幡(目が座ってるぞ…大丈夫か…?)

由比ヶ浜「じゃあ、言っちゃうね…私は小さい頃に好きな男の子がいたんだ」

由比ヶ浜「だけど、ある日その男の子が立ち話が耳に入ってきて…
       
        『由比ヶ浜とか好きじゃねぇし!嫌いだし!』

        …からかいに対しての強がりだったのだろうけど、ショックだったなぁ…」

雪ノ下「小さい子供は時に残酷ね…」

ラオウ「」

八幡(白目向いてやがる…)

雪ノ下「さて、真打ちの登場ね。トラウマ発生器さん?」

八幡「否定出来ないのが辛い所だが…拳王さん大丈夫ですか?」

ラオウ「いま…すべてが終わる。永かった…。」

八幡(oh…うわ言をブツブツ呟いとる…)

八幡「…落し物を届けようとしたら、泥棒と勘違いされ説教」

ラオウ「グフゥ!」

八幡「教師から『目が死んでるなぁ』と言われ、一週間は笑いの種にされる」

ラオウ「ゲフゥ!」

八幡「教室で本を読んでるだけで「アレラノベじゃないキモ!」と難癖つけられる」

ラオウ「俺の…心に傷を…」

雪ノ下、由比ヶ浜(バスケのボールみたいにビクンビクンと跳ねている…)

八幡(やべぇ…言い過ぎたか…?)

八幡「拳王さーん…大丈夫ですか…?」

ラオウ「…拳王は決して膝など地につかぬ!!」

八幡(生まれたての子鹿みたいなってるんですが…)

ラオウ「!…俺も悲しみを背負うことが出来たわ…!」

八幡「拳王の目が変わった…?!」

由比ヶ浜「ラオウさんの身体が分裂してるよ!何これヒッキー?!」

雪ノ下「…これで依頼は達成ね」

ラオウ「フゥー…我の学生時代のトラウマまで思い出した時には
     どうなるかと…」

八幡「拳王さんも、ボッチか何かだったのかよ…まぁそんな強面じゃな」

ラオウ「言うな…」

ラオウ「このラオウ、ここまで苦戦するとは思わなんだ…
     この奉仕部を精神修行の場と検討したわ…」

八幡「旗から見て、急に図体が大きくなったり小さくなったりで
    心臓に悪いのでこれっきりでお願いします!本当に!」

こうして、奇妙な依頼は解消されたとさ

おわり

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