こんばんは。続編の途中まで書いたので、一旦投下です。
諸注意です。
このSSでは、オリジナルキャラクターが登場します。
また、主人公はPではありません。
エンディングは欝気味になると思います。
ですが、救いのあるエンディングも用意するつもりです。
また不慣れな為、見苦しい部分が多々存在するかと思います。ご了承ください。
それでは、始めていきます!!
※このSSはシリーズものです。できれば、前作の【モバマス】僕「僕のお姉ちゃんがアイドルになった」をご一読ください。
※読んでいただいている方は、エンディングは一番最初の物が正史であると思っていただけると幸いです。
※また、このSSは『佐久間まゆという転校生』という他作者のSSの影響を受けて作成したものです。
とても面白い作品なので、こちらも是非お読みになってみてください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389611011
俺には、一人の友達がいた。名前は南条光。
初めて出会ったのはまだ小学生、それも低学年の時だ。
その時俺は、放課後、小学校で上級生に絡まれていた。
光「おいこら! そこでなにしてるんだ!」
夕焼けの赤色を背負って立つその姿。伸びる影は細い。
しかし、その目。
背負った赤い太陽と同じくらいにギラギラと輝くその瞳には、まるで歪みがない。
その立ち姿は、まるで特撮のヒーローのよう。
不思議な威圧感もあって、その低い背丈が何倍にも大きく見えた。
少年A「あぁ!? じょしひとりでちょーしにのってんじゃねーよ!」
少年B「じゃますんなよ、おれたちはいまからこいつであそぶんだ、よッ!!」ゲシッ
俺「お、ごっ……」
少年C「ひっひっひっひ! おご、だってよ!」ケタケタ
俺「く、くそっ、くそっ……」グスッ
「お、まえは、はやく、にげろ……」ゲホッゴホッ
光「にげろ、だって!? それはできないはなしってやつだ!」
「なんてったって、わたしはひーろーなんだからな!!」
俺「は、はぁ? ひーろー!? い、いてて……」
「うぐ、ばか、にげなきゃ、いたいめにあうんだぞ!」
光「ば、ばかだって!? ばかっていうほうがばかだって、しらないのか!?」
俺「そういうはなししてるんじゃないよ! このばかばかばか!」
光「ばっ、ばかってなんかいもいったな!? ばかばかばかばかばかばかばかばか!」
俺「じゃあそのばいがえし!」
光「それじゃあそのさんばい!」
俺「じゃあそのむげんばい!!」
光「じゃあそのむげんばいのむげんばい!!」
俺「そのいちおくさんぜんむげんちょうばい!」
光「むむむ~!」
「う~!! あったまきた! たすけてやるっていってんのに!」
俺「だれがいつたのんだ!?」
「なんがつなんにちちきゅうがなんかいまわったひ!?」
光「むっかー! もうおこったぞ! まずおまえをだまらせてやる!」
俺「いったな!? のぞむところだ!」
少年B「お、おい、おまえら! なにかってにやってやがる!」
少年C「おれたちをほうっておきやがって、いまどうなってるのかわかってんのか!?」
少年A「へへっ、こいつらどうせ、うらではらぶらぶなんだよ! ら~ぶ~ら~」
光・俺「だれがらぶらぶだっ!!」ガッ
少年A「ぶっ!!?」
「て、てめえら、やってくれやがって……」
少年B「やっちまえ!」
少年C「やぁあああってやるぜ!」ダッ
光「この! このこのこの!!」ポカポカポカ
俺「いて、いてて、くそーなんのー!!」ポカポカ
少年A「い、いってえ……べろかんだ……」プルプル
光・俺「じゃま!」バキッ
少年A「ごふっ!? く、ぢくしょう……うらぁあああああ!」
光「うわああああああああああ!!!」
俺「うおおおおおおおおおおお!!!」
ドタバタ ギャーギャー やいのやいの
この後、誰も彼もを巻き込んだ大喧嘩は、先生という名の第三勢力。
その介入によって、両者痛み分けで幕を下ろす。
こちらは被害者だったのだが、手を上げたことには変わらないとの先生のお言葉。
こっぴどく叱られてしまった俺たちであった。
光「もー……わたしはたすけにきたんだぞ!?」
「なんであいつらといっしょに、おせっきょーをうけなきゃいけないんだよ!」プンスコ
俺「だれもたのんでないのに、きゅうにからんできたからだろ!」
「しってるか、こーいうのを、えーっと……じごーじまん? とかいうんだぞ!」ドヤァ
光「それをいうならじごうじとくだっ!」
俺「え、えっ? そうだっけ」アワアワ
光「へっへーん、ばーか! かっこつけたくせにー!!」
俺「な、なにをー!?」
「ま、まだ、じごーじまんであってるかもしれないじゃん!」
光「いーや、ぜったいちがうね!」
俺「わかんねーだろ!?」
光「いやいやぜったいわたしでせいかい!」
俺「まだ、まだわかんないよ、かあさんにきいたらきっと……!」
光「」ニヤニヤ
俺「むー……!」
光「ふふーん……」ニヤニヤ
俺「おまえ、なんてなまえだ!」
光「は? なまえ? きゅうになんでそんなこと」
俺「おれがうちにかえったら、ことばのいみをしらべてくるから!」
「それを、おまえにおしえてやる!」
「そのために、おまえがだれかしっとかないとわからなくなるだろ!?」
「おれは○○! 3ねん4くみ12ばん! おまえは!?」
光「……」
「」ニカッ
「わたしは、なんじょうひかる! 3ねん2くみ19ばん!」
「これから、よろしくな!!」
こうして出会った俺たち二人。
その後言葉を調べた結果は……お察しのとおり。
光に盛大に笑われた時は、俺の顔も火のように熱くなったのを覚えている。
それからも、あいつと俺の縁は続いた。
呪いか腐れ縁というやつか、俺とあいつはそれから中学校まで同じクラスになり続け。
席が隣になったり、一年に一回同じ班になるなんてことはほぼ当たり前。
お互いの住所を教え合って遊びに行ったり。
趣味であるゲームを一緒にやったり(俺はこんな性格だけどパズルゲームが好きだ)。
ぷよぷ○をやった時は特に面白かった。
光「ん、う、うーん? この色が、ここに来て、それで、あああ!」ウガー
俺「ふふーん、こればっかりは俺の圧勝だなー!」
光「ば、馬鹿にしてー! この馬鹿馬鹿馬鹿!」ポカポカ
俺「あ、先に手出したなー! 暴力はんたーい!」
光「うるさいうるさい! 言葉の暴力って知らないのか!」
俺「なんであろうと、手出した方が負けだよーっと!」
光「むっかー!! おまえとはもう、絶交だー!!」ドタドタ
俺「へへー! ばいばいきーん!!」
この後、俺は少し後悔の念に浸っていたりしたのだが。
次の日からはもう一緒に遊ぶ仲に戻っていた。
それが俺たち。
それが、俺と光の関係。
事件の始まりは、中学2年生。
相も変わらずつるみ続けていた俺たち。
光はクラスの中心として体育祭やら文化祭やらを引っ張る委員長に。
俺は光の立てた穴だらけの計画を、針でつつくようなネチネチ副委員長になり。
そのコンビネーションから、周りから夫婦夫婦と煽られ続けていたりもした。
しかし俺たちはそんなことには動じない。
俺たちは恋愛なんて軟弱なものではなく、強い絆で結ばれている。
そうお互いに信じているからだ。
……光が、男よりも男らしいことがあるからかもしれないけど。
そんなある日。
テスト期間も終わり、世間は夏休み。
光「うーあー……やあっと夏休みだー……」グデン
俺「おうおう光様。盛大にとろけておりますな」
光「うるさーい。どうせ私はアホですよーだ」
俺「おまえなー。テスト期間中、どんだけ教えてやったと思ってんだ?」
光「身に覚えがありません、悪いのはお前の教え方ですー」
俺「……」グリグリ
光「あ、あだだ!? こめかみグリグリすんの痛い、痛いって!」
俺「まったく……お前も高校生近くなってきてんだし、ちゃんと勉強しろよ?」
光「高校生、大人、かー……なんか想像つかないなあ」
俺「そんなもんだろ。いつの間にか年食ってて、大人になってくんだ」
光「そんなもん、かぁ……」
俺「……なんだ。俺が言うのもなんだが、お前の様子変だぞ?」
「なんつーか、生気がない」
光「……」
「よし!」グッ
俺「!?」ビクッ
光「なあ、人助けしよう!!」
俺「は、はぁ!? 何急に言い出してんだ!?」
光「だーかーら、人助け!」
俺「それくらい分かるわ! なんでそんな事を言い出すんだってこと!」
光「理由なんて、別にいいだろっ!」
「人助けに、理由なんてない!」
「使命なんかも、必要ない!」
「私、南条光のヒーロー人生は、今! ここから始まるんだ!!」ビシッ
俺「……あのなあ。時期を考えろって時期を」ハァ
「俺だって、ヒーローごっこが楽しかった頃もあったさ」
「お前との必殺技の出し合いも面白かった」
「でも、今はもう中学生だぜ? そんなことやってたら笑われちまう」
光「……」
「そんなこと知らない!」ドヤァ
俺「」ポカン
光「……反応薄いな」
「なら逆に言うけど、人助けしてなんで笑われなくちゃいけないんだ!?」
俺「」ピクッ
「そ、それは……」
光「人を助けたら、胸張っていいだろ!?」
「助けた相手には、これから強くなれよって!」
「笑ってきた奴には、それじゃあ何かお前はしたのかって!」
「言ってやればいいんだ!」ニカッ
俺「……」ハァ
「何言っても、お前は聞かなそうだな」
光「当然! だって、ヒーローになれるチャンスだしな!」
俺「……それじゃあ、俺もやる」
光「ほんとか!?」パァァァァ
俺「かっ、勘違いすんな!」
「俺はただ、お前が無茶苦茶しないように…!」
光「そうか、そうか! ならさっそく出動だ!」
「XX中学校ヒーロー部、出動―!!」ダダダダダ
俺「ちょ、ちょっと待てって! あーもう、変なことすんなよー!」
「あと、ヒーロー部ってなんだその名前―っ!!」
光「いい名前だろ!? 今考えたんだー!!」
俺「んな訳あるか! 恥ずかしすぎるって!」
光「なにー!? 私の考えた名前を――――」クルッ
「あっ、そんな変な所で振り返ったら!!」
光「えっ、あだっ!?」コケ
そんなこんなで、街に繰り出した俺たち。
俺の5歩は先を行く光の走りは、意外と早くに止まる。
後ろを追いかけていた俺は危うく衝突しかけて、光の傍を通って減速した。
俺「ちょっ、危ないな! いきなり止まんなよ!」
光「……」
俺「……どうした? やけに真剣な顔をして」
光「匂う……匂うぞ……」
俺「……確かに、コロッケのいい匂いがするな」クンクン
「なんか、腹が減ってきたぜ」
光「何言ってんだよ、この食欲魔人」グゥゥゥゥ
「~ッ!!」カァァァァ
俺「やっぱ、お前も気づいてたんじゃん」ニヤニヤ
光「ちっ、ちげえよ!」
「匂いってのは、事件の匂い! この近くで何か起こってるのかもしれない!」
俺(コロッケの匂いもな、とか言ったら怒られそうだ)
俺「はぁ? そんな、軽々しく事件なんて……」
光「グダグダ言ってる暇はない! 私は先に行くかんな!」ダダダ
俺「あっ、……くそっ、こんな時だけはやる気まんまんになりやがって!」ダッ
光が駆け出すのにつられるように、俺は光の後ろを追って走りだした。
目指す先は……川?
この近くって言えば……!!
俺「おい、そっちは勝浦川だぞ! 雨が降って今はすっげー増水してる!」※
「危ないって、絶対危ない!!」
光「だからこそ、だろ!」
「危ないから、事故が起こってるのかもしれない!」
俺「……それもそうか」
光「とにかく、さっさと足動かせ! 足!」ダダダダ
俺「お、おう!」ダダダダ
※勝浦川…光の出身地である徳島の川。
走り続けて、俺たちは息も絶え絶え。勝浦川に辿り着く。
そこで俺たちが見たもの。
それは、男たちが川に向かって石を投げている所だった。
それだけならよかった。
俺たちは見た。不自然な白波が、川の中で起きている所を。
光「……」プルプル
俺「……おい、あれって」
光「……」プルプル
男たち「」ゲラゲラ
子犬「」ジャポジャポ
男の一人「おらっ」ポイ
子犬「キャイン!」
子犬「」ブクブク
子犬「」
光「」ピキッ
俺「おい、光……」
光「ちっくしょおおおおおおおおおおおおお!!!」ダッ
俺「くっ、クソッ! やっぱあいつ行きやがった!」
俺(何より心配なのは、あいつがそれほど泳ぎが得意じゃないこと)
(ひどい訳じゃないけど、人並みかと言われると首を捻るレベルだ)
(それが増水中の川に入ったらどうなるか?)
俺「待てっ!!」ガシッ
光「離せ!! 私はヒーローになりたいんだ!」
「人だけじゃない、どんな動物も助けるヒーローになりたいんだ!!」
「こんなところで、見捨ててたまるかッ!!」
俺「っざけんな! お前、泳ぐの苦手だろ!! こんな所に飛び込んだら……!」
光「黙れ、黙れ黙れ黙れ! 私はいく、いくんだっ!!」
「どんな逆境でも立ち向かって!」
「傷だらけになっても!」
「助けるのが、ヒーローなんだ!!」
俺「ッ!!」ガッ
俺(俺は光を乱暴に掴み、投げ飛ばした)
光「痛っ!? 何すんだよ!!」
俺「ちょっと、そこで黙って見てろ」ダッ ジャポン
光「あっ! ちょ、待て!!」
光(私はまだ子犬を助けたいと思っていた)
(でも、そこから私は動けなかった)
(あいつの目が、私の見たことのないくらい真剣なものだったからだ)
俺「ガポ!? ご、ごはっ! くそっ、あの犬はどこに……!」
俺(流れる水は砂が巻き上げられ汚く、まるで視界が確保できない)
(水の流れるスピードは言わずもがなだ)
(川幅が狭いのが救いだった。とにかく、川下に急ごう)
(犬より早く進めば、どこかできっと救い上げられる)
(……でも、正直に言って)
俺「」ザパザパ
~夜~
光「……まだかな」
光(あいつが川に言って、数時間が経った)
(私は馬鹿だ。でも、年齢だけは重ねてきてる)
(あの犬がどうなったかくらい、分かってしまっていた)
(ちなみに、石を投げていたあの男たちはもう帰ってしまっている)
(満足したのか、あいつが飛び込むと同時に笑いながらどこかに行ってしまった)
光「…………」ソワソワ
光(あ、影が……違った。別人だ)プイ
光「…………」ゴロン
光(遅い。遅すぎる)
光「もしかして、あいつも溺れちゃってんじゃないだろうな」アハハ
「」アハハ
「……」
「」サー
「さ、探さなきゃ!!」ガサッ
俺「……その必要はねえよ」ガシ
光「う、うわぁ!? で、出た!!」
俺「出た、ってお前な。俺は幽霊なんかじゃねえよ」
光「……それで、犬は」
俺「」ドチャ
犬だったもの「」
光「……」
俺「これが現実」
「ヒーローなんかに、俺たちはなれっこない」
「何かを助けようとしても、結局助けることができないことが多い」
「しかも助けている内にさらに多くのものを取りこぼしている」
光「……それでも。それでも助けたい、って思うのは、いけないことなのか?」
俺「助けたい、って思うことはいいことだ。間違いない」
「でも、俺が怒ったのは、お前が泳げないのに突っ込もうとしたからだ」
「ヒーローってのは、人を助けた結果、人からそう呼ばれるようになるんだ」
「人助けをする仕事をヒーローって言うんじゃない」
「それでも、できもしないことをしようとする奴は……只の馬鹿だ」
「頼むから、無茶はしないでくれ」
光「……」
俺「……」
俺「へっくち!」クシャミ
光「」
俺「あーくそっ、流石に濡れた服着たままはさみィや……」ガチガチ
光「」プルプル
「ぷっ、くふっ……アハハハハハハ!!!」
俺「」カァァァ
「わ、笑うな、笑うなー!!」
光「~ッ!! ~ッッ!!」ケタケタ
「へ、へっくち! へっくちって!!」バンバン
俺「……あーもう! 俺は帰るぞ!!」
光「あー、ちょっと待って」
俺「なんだよ、俺はもう寒いんだ……」
光「……この子を、埋めてあげよう?」
俺「あ……」
その後、土に犬を埋めてあげた。
周りに目印になるようなものがなく、埋めるだけとなってしまった。
しかし野ざらしよりはマシだ。そう自分に言い聞かせた。
その間、隣からは鼻をすする音がひっきりなしに続いていた。
俺は何も言わなかった。俺は、何も見ていない。
そして、帰り道。
俺「うー、寒……」
光「風引いたら厄介だかんな。早くお風呂に入れよ?」
俺「分かってら」
光「……」
俺「……」
光「お前、やっぱすごいな」
俺「な、なんだよ急に。恥ずかしいな」
光「今回で思い知ったよ。私は、まだ弱い」
「泳げないヒーローなんて、かっこわるいよな」ハハハ
「でも、お前はやり遂げた」
「騒いでた私でも、あの川は少し怖かった」
「でもお前は嫌がってたのに、私の代わりに飛び込んでくれた」
「犬を見つけ出してくれた」
「今日は、お前がヒーローだなっ!」ニカッ
俺「……そうでもないさ」
「光が言ってくれなきゃ、俺は何もしなかったしな」
「助けたのは俺かもしれない。でも一番強い意志があったのは、光だ」
「だから、お前もヒーローだって!」ニカッ
光「……」
「わ、私、もう家に帰る!!」ダッ
俺「お、おいちょっと待て! いきなりどうした!?」
「……って、あいつはえーな。もう聞こえてないのか?」
光「」クルッ
「おーい!!」
俺「うるさっ!? ……ごほん。なんだー!?!?」
光「私も、お前みたいなヒーローになってみせるから!」
「これからいろんなこと一杯練習したり、一杯人助けするから!」
「それじゃあなー!!」ブンブン
こうして、てんやわんやの一日が終わった。
光にヒーロー、と言われるのは、その、なんというか。
嬉しかった。
しかしそれも束の間、俺は体を冷やしてしまったのが原因なのだろう。
思いっきり風邪を引いて、寝込んでしまう。
明日が休日なのはちょうどよかった。
ゲホゴホ言いながら、俺はベッドで寝転びつつ、考えていた。
光は、お前みたいなヒーローになる、そう言った。
ヒーローである基準のピントを俺に合わせる、ということ。
漠然とした像ではなく、身近な誰かに夢を重ねる。
それは夢を目指しやすくなるということに繋がらないか?
すぐに手が届くと思って、無茶なことをしないだろうか?
形にならない不安が俺を包んでいた。
しかし熱に浮かされぼやけた頭では、それ以上考えることができず。
俺は意識の彼方へ、頭痛と一緒に旅立ってしまう。
あの事件から一夜明けて。
私こと南条光は、街へと繰り出していた。
昨日は犬を助けることはできなかったけど、勘は確かにはたらいていた。
だから、今度こそ誰かを助けられるはずなんだ。
……苦手なことじゃなかったら。
光(私も、昨日のあいつみたいなヒーローになるんだ!)グッ
光「でも、何したらいいかなあ……」ウーン
「とりあえず、いろんな人に聞いていってみよう!」
「そこのおばあちゃん! 困っていることはありませんかー!」
おばあちゃん「あらあら、元気ねえ」
光「ありがとう!」
「私ね、ヒーローになりたいんだ! だから、人助けをしたいって思って!」
おばあちゃん「あらあら、そうねえ」ウーン
「あらあら、荷物がちょっと重たいわ。運んでくれるかしら?」
光「(あらあらは口癖なのかな) それくらい、お安い御用だよ!」
横断歩道ワタルー
おばあちゃん「あらあら、ありがとうね。お礼にこれ……」
光「いやいやいいよ! 人助けは物を目当てにやることじゃないかんな!」
おばあちゃん「あらあら、なら遠慮なく。お嬢ちゃん、頑張ってね♪」
光「うん!」
おばあちゃん「あらあら……」
光(そのままおばあちゃんは歩いて行った)
(意外と荷物を持ったままでも、普通に歩けている)
(もしかしたら、私に仕事を作る為にわざわざ荷物を渡してくれたのかもしれない)
(歩くのをさぼりたいだけ、という風には見えなかったし)
光「まあ、いいや! とりあえず、一つ仕事達成! このまま、頑張るぞー!!」
そのまま私は、いろんな人に困ってないか聞いて回った。
相手の笑顔が見られて、私も嬉しかった。
迷惑そうな顔をする人もいたけど。
やっぱり人助けって、いいものだ。
現実を見ろ、だなんてあいつは言うけど。
私には、やっぱりこれが性に合ってる。
これからもどんどん、人助けするぞ!
男「ねえねえ、そこの君?」
光「何、おじさん! 困ってるの?」
男「うん、ちょっと困ってるんだ。だから、さ」
「ちょっと、向こうの建物に来てくれない? お金あげるからさ」
「フヒ、フヒヒ」ニタニタ
前半戦終了です。
この時点で一つ訂正です。
>>21で俺君が 犬を助けたのは俺だ~と言っていますが、助かってません。
探したのは俺だ、らへんに補完していただけると助かります。
後勝浦川についてですが、知識は台風による増水でやばかった程度しかありません。
違和感がある方もおられると思います。申し訳ありません。
また、今日中に次を投稿できるかは微妙です。
ちょっと降って湧いたリアルの問題が……すみません(ーー;)
それではまたいつか(o・・o)/~
わずかながら、今日に書いた分を投下。
書けば書くほど、あれやろうこれやろうで矛盾がww
締め付けられるような疼痛。
熱に浮かされ、勝手に拡散してしまう意識。
その真っ只中にいる俺を掬い上げたのは、携帯の震える音だった。
俺(……?)
もしかしたら、仕事の終わった母さんかも。
ゼリーか何かいるか、と聞いてくるのかもしれない。
プッチンとするプリンを思い浮かべながら画面を見ると、送り主は違っていた。
光だった。
遊びの誘いだとしたら、断らないと。
……そういえば、あいつとは最近遊んでいないな。
昨日光と出かけるまえも、部活帰りで偶然出会ったから喋ってただけ。
遊ばなくなったのは、中学校の頃くらいからだったか。
まあそれはいい。とにかく、中身を確認しないと。
携帯の画面を見ると、光らしくない長文がうだうだと書かれていた。
珍しいな……いや、これは違う。
位置情報だ。
遊ぶ為に、こんな面倒なことを光がするだろうか?
幸い、ここから近い所らしい。そこかどこだか、思い出してみよう。
俺(このデパート、んで路地が続いて)
(……えーっと……ッ!?)
俺「」サー
思い当たった瞬間、一瞬にして血の気が引いていく。
住所の示すそこは、俗に言う、ラブホテルというやつだった。
あいつはそういうことには無頓着どころか、男より興味がない。
つまり。
あいつは、人助けをしてしまったのだ。
弾かれるように立ち上がった俺は、パジャマのまま走り出す。
足がふらついた。階段から転げ落ちてしまう。視界に星が舞う。
顔を振って立ち上がると、同時に壁に赤い液体が飛び散った。
それでも素早く立ち上がって駆け出す。
靴を履く。変に慌ててサンダルを履くより、安定する靴で走った方が早い。
何か忘れたまま、家を飛び出す。
???「あはは! おにいちゃんすごーい!」キャッキャッ
???「おい、こら薫! 変にはしゃぐな……うぉおおっ!?」
俺「ッ!!」
横から近づくバイク。
俺はとっさに躱そうとするが、ここでようやく忘れたことを思い出す。
しっかり靴を履いたはいいが、靴紐を縛っていなかった。
熱でぼんやりしていて、肝心な部分を忘れていたのだ。
それを俺は思いっきり踏んでしまう。
結果、わずかに距離が足らず、かすめるようにして俺とバイクが接触する。
運転手の方も頑張ってくれたのだろう。
引っ掛けられるように転がされる程度で済んだ。
だが、全身に痛みが走ることに変わりはなかった。
???「うわっ、なんてこった……おい薫! お前も謝れ!」
薫「あわわわわ……ご、ごめんなさいー!!」アワワ
???「ったく、久々の旅行がなんだって騒ぎすぎだ!!」
「すみません、大丈夫ですか? ってそれ、鼻血が……!」
俺「ああ、ありがとう、ございます」ハァハァ
「はなじは、もとからです。あ、あとて、おかりします……って!?」ビクッ
俺(このひとかおこわっ!?)
(くみちょうってかいて、おやじとかおじきとかよむひとだよこれ!)ガタガタ
(いや、でも、このこわいろとか、たいどとか……たぶん、ほんとはやさしいひとで)
(……かおだけがこわいひとなんだ。たぶん。それなら)
俺「す、すいません」フラ
???「おっと、大丈夫ですか!?」
薫「おにいちゃん、ふらふらだよー?」
俺「おう、おれはだいじょうぶだよ」ニコッ
「それより、じこのだいしょうっていうとへんですが」
「ひとつ、おねがいを、きいていただけませんか」
???「……できることなら」アセタラリ
俺「へんなことはいいませんよ」ニコッ
「ただ、それにのせてほしいんです」スッ
???「……バイク、ですか?」
俺「はい」
「ともだちが、あぶないんです」
???「……」ピクッ
「」コクッ
俺「ありがとう、ございます」ニコッ
「たのんでなんですが、そんなふたつへんじでいいんですか?」
???「その様子。きっと何か、事情がおありなんでしょう?」
「そのお手伝いくらいなら、いくらでも」
「薫は取り敢えず、ここで待っててくれ」
薫「はーい!」
「おにいちゃん、あとそっちのおにいちゃんも、がんばってー!」
俺「おう。ありがとな」ニカッ
???「ふふふ」ニコニコ
「いまのおにいちゃん、ヒーローみたい!」
俺「!!」
「……そんなたいそうなもんじゃねえよ」
???「おいこら、急いでるんだから薫はさっさとあっち行け」
薫「はーい」テテテ
???「まったく……取り敢えず、ヘルメットはなしで」
「その分、しっかり掴まっててください」
「方向は、曲がる時にどちらかの腿を叩いてください」
「両方叩いたらゴール。大丈夫ですか?」
俺「」コク
???「」コク
「それじゃあ、前が見える程度に、死ぬ気で掴まっててくださいよ!!」ブルルン!
多少傷は増えたが、このままなら徒歩よりは早く着けそうだ。
初めてのバイクに多少の恐怖感はあったが。
風を切る感覚は熱冷ましにはちょうどよかった。
しかしそんな感覚に浸っているゆとりはない。
ただ俺は、光のことだけを、歪む意識の中でぼんやりと考えていた。
一旦ここまでで。
朝に更新できるかどうか、ってところです。
それではお休みなさい……
数分も経たない内に、問題の住所に辿り着く。
その強面な表情とは裏腹に男の人の運転は丁寧の一言。全く気分が悪くなることはなかった。
時々こちらを配慮する素振りさえあった。
一番最初、ここがどこか分かった時男の人は首をかしげていたが。
意味を飲み込んだ瞬間、友達が危ないという意味も把握したのだろう。
目つきを細め、拳を握る姿には、猛獣を幻視するレベルのオーラのようなものが見えた。
……やっぱり、怖い。
???「やっと合点がいった」
「あんたがそんなにふらつきながら、鼻血も出しながら、それでも動く理由が」
「……久々だぜ、ここまでキレちまったのは」
俺「……」
???「大丈夫か?」
俺「」コク
???「じゃあ、行くか」
店員「いらっしゃいませ……ああ」台帳ペラリ
俺「……」フラフラ
「……ふぅ」カウンターモタレ
???「……お前がどんな誤解をしたかはしらんが、それはいい」
「ここに、こいつと同じくらいの女子が、誰かに連れられて来なかったか?」
店員「あー、それなんすけど」
「俺たちにも一応、守秘義務ってもんが……」
???「」バン!
店員「!?」
???「……そうだな。あいつは俺の妹なんだ」
「あいつは騙されやすいからな。本心でやってるなら張っ倒さなきゃならんが」
「だからよ……手を煩わせないでくれんか?」ニタァ
店員「」ビクッ
店員「そ、そう言われましても、俺たちからは……」
???「……そううまくいく訳もないか」イライラ
俺(すみません)コゴエ
???(なんだ?)コゴエ
俺(だいちょう、のぞきこみました。あいつのへやばんごうがわかったんです)
(だから、じかんをかせいでいただけませんか?)
???(おぉ……いつの間に)
(そんなくらい、お安い御用さ)
俺「……すみません」
店員「なっ、なんでしょう!」
俺(あ、このあわてようは、このひとびびってるな)
(いまなら、なにいったってうたがわれなさそうだ)
俺「その……はきそうなんで」ウプ
「といれのばしょをおしえていただけませんか」ハァハァ
店員「トイレですか! とりあえずここの道を行ってもらって……」
俺(それなら、このひとのしかくのにはいれそうだな)
俺「ありがとう、ございます……うっ」ウプ
「……いそぎます」ダッ
店員「あっ」
???「逃がさんぞ、言いたいことが山ほどある」
店員「」ヒッ!
俺(いまもまだ、あのひとはじかんをかせいでくれている)
俺「いそがなきゃ」フラフラ
階段を登り、明らかに騒ぎの起きている一室を発見する。
その部屋番号は、台帳で見たものと一致していた。
俺は半ば倒れこむように走り、扉を開け放った。
再開します。
見てくれている方がいるかわかりませんが……
再開します。
見てくれている方がいるかは、わかりませんが。
変に連投しちゃった(ーー;)
すみません…
そこには、探していた顔が確かにあった。
しかし、その表情は恐怖と涙によって大きく歪み、ぐしゃぐしゃになっていた。
格好も乱れ、上の服はまくり上げられ、ズボンも膝まで下ろされている。
もたれかかる男は、息を乱して、取り憑かれたように光に襲いかかっていた。
その股間の部分が盛り上がっているのを見て。
俺の中の何かが切れた。
霞む意識の中に一本の芯が入る。
こいつは、ころす。
しかしその思考を、哀れな程に取り乱している男の姿と。
光の涙が制止する。
俺の熱くなった脳内が、冷水をかけられたように鎮静化される。
握られた拳を開いた。
男「フヒッ!? な、なんでここが……!」
俺「」ガシッ
男「がっ!?」
俺「」グググググ
男「う、うぐぐ……!」ズリズリ
俺(これで、ひかりからははなれた)
俺「」チラ
光「」ガタガタ
俺「110番、押せ」ギロ
光「あ、あぁ」ボーゼン
男「て、てめえ……ガキのくせに!」ガッ
俺「……」ダラン
光「あ、あぁ……!」
男「へ、へへ」フヒッ
「なんだ、お前よえーじゃん」ガッ
俺「ッ……」
男「あ、あひゃ、あはひゃ」ガッ ゴッ
俺「」
光「ぉ、ぉぃ……」
俺「」ギロ
光「」ビクッ
「え、えっと」ピポパ
男「フヒヒ、フヒヒヒ……!」ガッ ガッ ガッ ゴッ
俺「」
光「えぐ、うぅっ……」ポロポロ
そのまま、男が警察に取り押さえられるまで、俺への殴打は続いた。
光のすすり泣きはどうにも慣れないな、と痛みの向こうでぼんやりと思っていた。
男を引き剥がしてからは全く腕を上げなかった為、警察から罰が下ることもなく。
男が連行され、俺たちも事情聴取を受けた後、俺たちはすぐに解放された。
……あの男の人も事情聴取に合っていた。悪いことしたなあ。
こうして事件は一件落着。
こうなると、店側から営業妨害と言われないか、と心配になった。
しかしどうやら、あの店は別件の容疑がかかっていたらしく。
これに乗じた警察の調査によって、責任者が検挙された。
結果として、俺たちへの被害はなかった。
そして諸々の作業が終わり、俺はようやく光と二人で帰路をたどっていた。
俺・光「……………………」
俺「……なあ」
光「……なんだ」
俺「おの、いいづらいんだが……その、ささえて、くれねえか?」フラ
光「あ、ああ、ごめん! 気がつかなくて」ササエ
俺・光「……」
俺「」ゴクリ
「なあ」
光「ん?」
俺「……どうして、あんなことをしたんだ」
光「……」
俺(じじょうちょうしゅのときにいっているかもしれないけど)
(べっしつのおれにはしるよしもない)
光「……私は」
「私が、ヒーローになりたかったから」
俺「うそ」
光「なっ!? なんでわかった!?」
俺「いま、おまえがおどろいたから」
光「……つ、つまり、だましたってことか!」
俺「ばーか、ひっかかりやがって」ケタケタ
「それじゃあ、おしえてくれよ」
光「むむむ……」
「…………ヤダ」カァァ
俺「はぁ?」
光「だって、恥ずかしいし」
俺「」ポカーン
光「なんだよ! そんなに私が恥ずかしがるのがおかしいか!?」
俺「いやでも、未だに必殺技の名前を叫ぶような奴だし……」
光「な……それはいいだろ! もう……」
俺「……ぷっ、くくく」ケタケタ
光「なんだよ、なんかおかしかったか!?」
俺「いーや、やっと、おまえが、もとにもどったってな」
「ずっとくらいかお、してんのは、おまえらしくねー」
「……いや、ごめん。いまのはちょっとおかしかったな」
光「???」
俺「そういうかおをさせたのは、おれなんだよな」
「もうちょっとでいいから、はやくおまえのとこにいけたら」
「ホントに、ごめんな」ショボン
光「……」
光「お前、ホントすごいな」
俺「?」
光「……ホントのこと、お前に話すよ」
「私はな、おまえに憧れてたんだ」
俺「お、おれに?」
光「ああ」ニカッ
「犬の時も……助けてはやれなかったけど、おまえはちゃんと見つけてきてくれた」
「その結果、お前は熱を出した」
「今も、こうなってるしな」グイ
俺「うっ」
光「でも、そんな逆境でも、お前は私を助けてくれた」
「あの時相手を殴ってたら変にこじれてたかもしれない」
「あいつ、なんかどっかおかしかったしな」
「そしてお前は、こんなにボロボロになりながらも耐えた」
「鼻血、打撲……骨折が無かったのは奇跡だって言ってたし」
「そんだけ痛い目にあいながら、でもお前は私にごめんって言った」
「恨んでも仕方がないくらいなのに、それでもお前は謝った」
「やっぱお前は、私のヒーローだ」ニカッ
すみません。書き溜めがぶっ飛びました(滝汗)
とにかく書きますが、スピードは(察し)
光「……でも、多分嫉妬もあったんだと思う」
「最近、おまえはすっごい頑張ってた」
「部活、勉強、私のわがままにも付き合ってくれる」
「その中で私は気付いたんだ」
「私は一応委員長だけど、ただの置物」
「クラスで頼られるのは、いつもおまえだった」
「いろんな人に頼られるヒーローは、おまえだったんだ」
俺「それは」
俺(ちがう、といいたかった)
(でもそのまえに、ひかるがことばをつづけてしまう)
光「でもそんなことより私の中で大きかったのは」
「お前にかけっこで負けたこと!」
俺「」コケ
「か、かけっこぉ?」
光「うん」
「なんでも負けちまってる私だけど、お前に運動で負けることはないって思ってた」
「覚えてるか? お前、最初は私よりちっちゃかったんだ」
「でもいつの間にか背は抜かされて、足でも抜かされた」
「背の順でも、なんでも、お前の背中はどんどん遠くなって」
「一つ、気付いたんだ。思い出した、って言ってもいいかな?」
「私は女で、お前は男だったってこと」
俺「……」
光「どう頑張っても、運動でも負けっぱが続いた」
「ヒーローは体が資本だろ?」
「ヒーローが弱かったら、足が遅かったら、誰も助けられない」
「お前はこんなに大きくて、でも私はこんなにちっちゃい」
「私はお前との間に、大きな壁ができたみたいに感じた」
「……今回も、私は弱かったしな」
光「なあ。いっこ、いいか?」
「ヒーローは男にしかなれないのかな」
「やっぱり女じゃ、ヒーローになれないのかなぁ?」グスッ
そうだ。
ひかりはいつでもそうだった。
じぶんがくるしいときではなく、たにんがくるしむときになく。
たにんをたすけられないとき、じぶんのむりょくさになくのだ。
……おれなんかより、よっぽどヒーローにむいている。
しかし、ひかるのようすには、もうよゆうがないようにみえた。
いつもとしんこくさがまるでちがっていた。
ヒーローのこころが、おれかかってる。
そんなかよわい、おんなのこをみたおれは――――
おれは。
なにも、いえなかった。
ひかるは、ヒーローでありたいといった。
だからおれのことばは、なぐさめにならない。
かりにもヒーローとなっているおれからのことばは、それをめざすひかるにとっては、ただのいやみにしかならない。
だからなにもいわない。
これはひかるのためなんだ。
ひとりでたちあがってこそ、つよくなってこそ、ひかるのおもいえがくヒーローにちかづくはずなんだ。
だから、こらえろ……。
違う! お前は、間違っている――――!!
おれのなかのなにかがさけぶが、それもとちゅうでたちきられる。
あたまをはげしくゆさぶられるようなさっかくをうけて、おれはしこうをていししてしまった。
うだるいしきとひろうが、おれをむいしきへとさそっている。
まともなていこうもできず、しかいがかってにおちていく……
光「お、おい! 大丈夫か――――」
そんなひかるのことばも、もうどこかとおいせかいのはなしのようだ。
おれは、いしきをてばなしてしまった。
そこに。
「テ ィ ン と き た !!」
無自覚の、無遠慮な、しかし無悪意で、愚直な程真っ直ぐな、魔の手が迫る。
その後俺は、光が読んだ母さんの車によって回収されたらしい。
熱も下がり、傷も回復の兆しを見せ始めた頃に、俺は部活に復帰。
光を守ったヒーローとして部員に盛大に迎えられたり(暴力混じり)しつつ、
俺は日常への帰化を始めていた。
それが、あの事件から数日後の朝。
その日の夕方のことである。
家に帰った俺に、とんでもない知らせが舞い込んだ。
それは、光が東京へ単身引っ越すということだった。
俺「」ポカーン
母「びっくりよねー、なんか、アイドルにスカウトされちゃったらしくて!」
俺「あ、アイドルぅ!?」
「あいつが、あいつがか!?」
母「まあ、光ちゃん可愛いしね~。お母さんも応援するわ♪」
俺「あ、いつ、俺には、なにも」
母「それはそうよ。寝込んでいる間に決まったことだもの」
俺「」ワナワナ
ピンポーン
母「あ、光ちゃんだわ。最後に挨拶に来るって」
俺「」ダッ
母「あらあら、早いわね~。朝起きるときも、あれくらい早かったらいいのに」
ガチャ
俺「おいこら、一体どういうことだ!!」
光「うわっ、びっくりさせんなよ!」
俺「俺はその数倍びっくりしたわッ!!」
「それで、なんだ? アイドルだと?」
光「ああ!」
「プロデューサーさんが、教えてくれたんだ!」
「お前が車で運ばれた後、急にスカウトされたんだけど」
「テレビに出て有名になれば、簡単にヒーローになれるって言われて!」
「そりゃそうだ、って納得したんだ!」
俺「そ、そりゃそうかもしれねえけど!」
光「だから、私頑張ってくる!」
「ヒーローになって、皆を笑顔にする!」
「お前みたいなヒーローに、私はなるッ!!」ニカッ
俺「……」ボーゼン
「………………」ジー
「」プイ
「………………それなら、いいよ、お前が、決めたことなら」
「せいぜい、なってこいよ。お前の目指すヒーローってのに」
光「なっ、せいぜいって、なんだよその言い方!! まるで私が」
俺「煩い」
「今まで、楽しかったよ。お前とのバカ騒ぎ」
「失敗も一杯して」
「その代わり助け合って、成功も一杯したあの日々」
「……今なら言える。それは間違いなく、俺の一生の宝物だ」
「でも、今のお前は」
光「な、なんだよ! 私はヒーローになる近道を見つけたんだ!」
「だから、このチャンスは逃さないッ!!」ギラギラ
俺「……」
「」バタン
光「っ!?」
「――――ッ!! ――――ッ!」
俺はあいつのドアを叩く音を無視して、ドアを離れた。
勝手だとは分かっていた。
でも悲しくて、辛くて、空虚な気持ちになって。
辛かった。俺は泣いていたのだ。
光はこう言った。
ヒーローになる近道、と。
誰よりもヒーローを愛するあいつが、そんなことを言うだなんて信じられなくて。
俺は、悲しかった。
お前のヒーローってのは、そんなちゃちなものだったのか?
考えても、考えても、あいつの胸の内が読める訳もない。
そして俺の胸をいっそう締め付けたのは、あいつの目だった。
炎が吹き上がるような、熱い眼差し。
その先には、あいつの目には、もう、誰も映っていない。
誰かを助けようと言って、その気持ちが強すぎて、助ける対象を見失っていた。
聞けなかったけれど、こう聞いたらあいつは言葉を詰まらせただろう。
お前は、誰を助けたいんだ?
ヒーローは、誰かを助けたらなれるもの。なるものではないのだ。
もう、あいつとは、お別れになるだろう。
ヒーローになれると思ったあいつは、どこまでも努力する。
きっと、願いを叶えるだろう。
だからこんな俺があいつに会う機会はもうない。
そして、話すこともない。
俺はただひたすら泣いた。
俺の英雄は、奪われたのだ。
確かにここで。死んだのだ。
あいつを乗せた車が走り出す音を聞いた後。
俺があいつに関係する出来事に触れたのは、何年も後のこと。
近くで行われるヒーローショーの司会として、あいつが出演するんだとか。
あいつは確かに、夢への道を歩んでいるらしい。
俺はというと、何もしていなかった。
燃え尽きた、という表現が正しいのか、燃料を抜かれたという方が正しいかもしれない。
あの後から、飯をかきこんで、ぼんやりと日々を過ごす毎日を送っていた。
普通に進学して、就職して、働く毎日。
そこには波乱などなく、ただ平穏な時間が流れていく。
こうして俺は大人になっていく。
時は過ぎる。
年を食って、皺ができてて、でも頭の毛はわずかに減っていて。
他人に頭を下げて、汗水たらして、酒を流し込んで寝て、また起きて、それで、それで?
俺は、その果てに何かを見出すことはできるのだろうか?
この行為に意味を見いだせるのだろうか? この日々に、この人生に意味は?
……いや、こうして思考すること自体が、無意味なのだ。
そう気付くと、日々はさらに色を失っていった。
ある日、なんとはなしにテレビをつけていると、聞いたことのある声を聞く。
???「悪が栄えることは、この私がいる限り許さない!」
「私が仮面ライダー、Lだっ!!!」
Lは、ライトのLなんだとか。主演の女優さんが、それにちなんだ名前をしているらしい。
ライト、光?
はて、誰のことだったか。聞いたことがあるような気もする。
そう考えて、気づかない内に、俺は液晶に手を伸ばしていた。
手に触れることができそうだ。しかし、この薄い壁がそれを阻む。
俺と、お前。もう、こんなに遠くなっちまったな――――
あれ、お前って、誰だっけ?
エンド1 英雄を失った少年
ようやくエンド1、正史となる英雄を失った少年エンドです。
何よりミスが多かったのが、悔しい所です(´;ω;`)
40さんのご指摘、ごもっともでございます。
ひかる、ということは知っていました。ですが変換すると光るになるため、いつもひかりと打っていたんです。
それがミスに繋がった……と言い訳させてください(汗
しかし一人称については、弁解のしようもございません。自分の無知が招いたことです。
申し訳ありません。
エンド2、分岐はしっかり作りましたが、できるのはまた後になります。
それではお休みなさい。
ひらがな表現、「僕」の時は心が弱いとか自分を責めてぶっ倒れるとかでいいと思ったけど
この「俺」でやられても正直読みづらいだけでアンバランスな気がする
たぶん好みなんだろうけど
本当にお待たせしました!(待っている方がいないかもというのはなしで)
ようやく終わりが見えた為、投稿していきます。
一つ、光の一人称については、途中で変わるというのもなんなので、私で通そうと思います。
それではいきます
ひかるのかおをみたおれは……
俺「おい、あそぶぞ」
光「……は?」ポカン
俺「だから、あそぶんだよ」
光「あ、あのなあ……自分の体調考えろよ?」
「いや、やりたいなら付き合うけどさ……運ぶの私なんだぞ?」
俺「なら、いよっと……」パッ
光「お、おい、支えなくて大丈夫なのか?」
俺「ああ、大丈夫だ。ほら、いくぜ」フラフラ
光「お、おう……」
俺「」コケ
「っつつ……くそっ」ムク
光「……はぁ」ササエ
「べ、別に嫌とは言ってないかんな。ほら、行くぞ」
~自宅~
俺「」フラ
「はぁ、はぁ……」
光(私から離れ、あいつが這いながら向かっていく先は、おそらくあいつの部屋)
(なんでまた、急にあんなことを言い出したんだ……?)
俺「ほら、つったって、ないで、あがれ」
光「あ、あぁ」
「お邪魔しますっ!」
俺「りちぎだな……おれんちなんか、もうもいっこのいえみたいなもんだろ」
「よし、じゃ、いくか」ムク
~自室~
光(あいつの部屋は、最後に見た時と変わっていなかった)
(妙に小奇麗で、というか物自体が少なくて、生活感があんまりない)
(開かれたままの教科書のページが、生活していることの数少ない証拠だ)
光「それで? 何するんだ?」
俺「これ」ズイ
光(そう言って見せてくるのは、少し前に発売されたゲーム)
(私がこいつと最後に遊んだ時あたりに、遊んでいたゲームだ)
(協力プレイができるアクションもの)
(しかしこいつ、これめちゃくちゃ下手なんだが……大丈夫なのか?)
俺「なめんなよ、おまえとあそば、なくなって、から」
「ひっしになって、れんしゅうしたんだぜ?」ニヘラ
光「ならいいけどさ……」
光(やっていく内に、こいつは本当に練習したんだって分かった)
(むしろ気を抜きながらピコピコやってた私のがミスが多くて)
(悔しくなった私は、どんどん熱中していった)
――――――――――――――――
俺「ここはいくしかない!!」
光「あっバカ突っ込んだら!」
俺「」デデーン
光「あーもう! なんでいっつも前出るんだよー!」
俺「う、うるせー! あそこ、とっぱしたら、らくになるだろ!?」
光「ばーか! 死んだらどうにもならないだろー! ばーかばーか!」
俺「ぬぐぐ……」ハァハァ
―――――――――――――――――――――
光「全く、お前のせいで何回コンティニューさせられてんだ……」
俺「……」
「」グイグイ
光「あ、ちょっ、まて押すな!!」
「あっ、あっあっ、やばいやばいって死ぬ死ぬ(デデーン)うわあああああああああ!!」
俺「くっ、くくっ……うわーって……」プルプル
光「お、お前っ! 何してくれてんだよっ!」
俺「くくっ、ふふ……」バンバン
光「くっそー! 次は私もやるかんな! 覚悟しろよ!?」
――――――――――――
パーパー パパラパー
スタッフローール
光「くそっ……このゲームに、どんだけ時間、かけんだよ……」
俺「は、はは……」
「あーくそ、もうむりー……」ドサー
光「おいおい、自分で暴れおいてそれはないだろー」
「ほら起きて……ってあれ? おい、どうした?」
俺「」ドサー
光「」
光「お、おーい! しっかりしろー!?」グイグイ
「だ、駄目だ、全く反応しない!」
光(あーくそっ、取り敢えずあれか、冷えピタとおかゆか!?)
(えーっと救急キット、確かあそこに置いてあったっけ)ドタバタ
(お米の場所も、うっすら覚えてる。お鍋もオーケー)
ガサゴソ ザー コトコト
光「おっけ。取り敢えず用意はできたな」
「……変な味しないかな」
「いやいいか! まあ、おかゆだしな!」
「んじゃ、持ってくぞー!」
~自室~
光「おーい、色々持ってきたぞー」
俺「……」
光(布団が変に乱れているが、先まで寝転がってたあいつはベッドに収まっていた)
(多分無理やり体をねじ込んだんだろう)
光「取り敢えず布団直すぞ」バサ
「冷えピタ貼るからな。動くなよー」
「ほい」ペター
俺「……ぅ」
「ぅ、ぁー……きくわー……」
光「お、起きた」
「よう、気分はどうだ?」
俺「……さいあくだよ」
光「だろうな」
「あと、おかゆも作ってきたぞ……って、今は厳しいか」
俺「ぃや、くうよ」ムク
「あーあたまいてー」
光「おいおい、無理しなくていいんだぞ?」
俺「せっかくの、てりょうり……さますのは、もったいねぇからな」
「ほら、はや、く、わたしてくれ」
光「それじゃあ、はい」
俺「ありがと。んじゃ、いただきまーっす……」パク
「うぉ、しょっぱ!?」
「~っ、あーくそ、さけぶと、あたまにひびく……」
光「だ、大丈夫か?」
俺「い、いや、だいじょうだ、けどさ。どうしてこんなしょっぱいんだ?」
「いったいどんだ、け、しおいれたんだ?」
光「い、いやー、病人って汗かかなきゃいけないじゃん?」
「だから一杯塩いれた!」
俺「だからって、こんないれんじゃねえ……くえんだろ」
光「」ガーン
「ご、ごめん、それ私が食べる!」
俺「……」パクパク
「くえんとは、いったけど、くわんとはいってねえ」モゴモゴ
「」パクパク
光「……ごめんな」
俺「なにあやまって、んだ。つくって、くれたら、くうのはとうぜんだろ」
~完食~
俺「……」ドサー
光「……」
俺「ありがとな。うまかった」
光「強がんなって。さっきまずいっつったくせに」
俺「ははは……」
光「……」
俺「……」
「なあ、これじゃ、だめなのか?」
光「だめ、ってなにがさ?」
俺「ヒーロー、ヒーローっておまえは、いうよな」
「なら、おれを、かんびょうしてくれる、おまえはヒーローじゃないのか?」
光「……」
「まさかお前、それを言う為に」
俺「んなことどうでもいい」
「おれはずっと、おまえにききたいことがあった」
「おまえのい、う、ヒーローってのはなんだ?」
「なにす、れば、ヒーローなんだ? どうすればヒーローになれるんだ?」
光「」ビクッ
「そ、そりゃ、誰かを助けて、笑顔にさせるのがヒーローの役目だ!」
俺「なら、これでおまえ、は、おれのヒーローだ。ちがうか?」
光「……で、でも」
俺「なっとくできないか?」
「なら、しつもんだ。おまえはきょう、なんかい、ひとをたすけた?」
光「え、え? いきなりそんなこと」
俺「まず、おれのかんびょう。おれのげーむのあいぼう。おれをはこんでくれもしたな」
「ぷらす、きょうおまえ、のたすけたひとのか、ずだ」
「じゃあきくぞ。おまえの、たすけたひとのかず」
「おれのたすけたひとのかず」
「どっちのが、おおい?」
光「」
俺「おれは、おまえしかたすけてない」
「たいして、おまえはなんにんたすけた?」
光「……」
俺「おまえはいったな、ひとをたすけるのが、ヒーローって」
「なら、きょうのおまえは、ヒーローじゃない、のか?」
「それでもおまえが、じぶんがヒー、ローじゃないと」
「ヒーローになりたいとさわ、ぐなら」
「おまえは、たすけたひとを、なかったことにすんのか?」
光「それ、は」
俺「ならいってやる」
「なんどだって、おまえがなっとくするまで、おまえがききあきたっていってもいってやる」
「おまえはもう、おれの。みんなの、ヒーローなんだよ」
光「」ビクッ
「わ、わたしは」
「わだしは……」ブワッ
「うぅ……うぅぅぅうえええええ」
俺「」ニコ
「でもな、たすけるひと、はえらべよ?」
「これからは、もう、たすけられ、な」
「……」
光「……」グスッ
「お休み」
「私は、わかっていなかったんだな。ヒーローが、なんなのか」
「お前がいっつも言ってたのにな。人を助けたらヒーローなんだって」
「特撮みたくバトルなんかしなくても」
「アニメみたく熱いドラマなんかなくたって」
「そこで、誰かが笑っていれば、それでいいんだよな」
「私も、ヒーロー、か」ニカ
俺母「ただいまって、あら? 光ちゃんじゃない!」
光「ああ、おばさん! こんばんは!」
俺母「うふふ、光ちゃんは元気ね」ウフ
「光ちゃんの笑顔を見るだけで、私も笑顔になっちゃう」
光「えへへ……」
「あ、ええっと、今日はいろいろありまして」
「こいつの看病をしてたんです。それじゃあ、これで失礼しますね」
俺母「あら、ずっと看ててくれたの? ありがとね。あの子迷惑かけなかった?」
光「いえ」ニカ
「逆に、私が助けられました」
俺母「???」
光「それじゃあ、これで! お邪魔しましたー!」ガチャ
俺母「あらあら、もう行っちゃった。早いわねぇ」
「……あの子も、やるようになったのかしら? ふふふ♪」
光「はぁ、はぁ」タッタッ
「へ、へへ、へへへっ」
P「ん?」
「おお、あの笑顔、ティンと来た!」
「そうと決まれば、スカウトしてみようッ!」
「おーい、そこの君!」
光「ん、誰?」
P「そう、振り返ったそこの君!」
「君の笑顔にティン、と来たんだ!」
「自分と一緒にアイドル、目指してみないかい!?」
光「」シラー
P「あ、あれ? なんでそんな白い目?」
光「いや……」
「ま、いいや。おじさん、今日は遅いしまたでいい?」
P「お、おじさん!?」ガーン
「い、いやそこじゃない……それは置いておいて」ジー
「ごめんな、ちょっと分かったようなことを言うけど」
「君、なんか辛いこと、あった?」
光「……ん、否定はしないよ。ちょっと、ね」
「でも、それと比べたらおつりがくるくらい、いいことがあった!」
「だから、辛くないよっ!」ニカ
P「…………」ピクッ
「ますます、ティンと来たぁッ!」
「こっ、これ、自分の名刺!」
光「……ん? CGプロダクション、聞いたことあるな……」
P「渋谷凛、島村卯月、本田未央のニュージェネレーション」
「このユニット、聞いたことないかな?」
光「ああ、ニュージェネレーション! 思い出した!」
「おじさん、そんな所で働いてるんだ!」
P「お、おじ……って、そりゃいいんだ」
「一応、俺はそのプロデュースを担当してる」
「まだ信用されるか分からないから、話はまた明日にするけど」
「俺は君の笑顔に惚れた! きっとその笑顔は、他の誰かを笑顔にできる!」
「そうだな……うん! 君はどこか、特撮のヒーローっぽいんだ!」
光「ッ、ヒーローに?」
P「ああ、しっくり来た! ヒーロー……うん!」
「凛とも卯月とも、未央ともどこか違う、爛漫な笑顔!」
「見た人皆を笑顔にするそれが、暖かい気持ちにさせるそれが」
「子供たちを喜ばせる、ヒーローっぽいっていうか!」
「とにかく、それをここで眠らせる訳にはいかない。俺は絶対、君をスカウトしてみせる!」
光「……」
「私も、誰かを笑顔に……」
「へへっ」ニカ
俺はその後熱を悪化させて、しばらくの間部活を休んでいた。
光は次の日にはもうすっかり元気になっていた。……やけにニコニコしてるのは何故なんだろう?
学校にいかないのに何故様子が分かるのか、というと、光があの後からもちょくちょく看病に来てくれていたからだ。
おかゆのことは反省したらしく、次作ってくれた時には普通なものに戻っていた。
部活帰りに買ってきてくれたアイスを食べつつ、熱冷ましに使いながら、一緒にゲームをして遊んだ。
なんだか昔に戻ったようだったが、どこか違和感も覚えていた。
光が、焦っているような。
多分気のせいだろう、そう思いながら、俺はひたすら色々なゲームで遊んだ。
マリオ○ーティでボコボコにしてやった時は爽快の一言だった。あいつはほんと悔しそうだった。
……その後、いた○トで俺が負けた時のあいつの顔は本当に嬉しそうだったが。
そして俺が完治した時、光がいつもの笑顔を潜めて、俺に報告があると言った。
夕焼けが眩しい、でもどこかデジャヴを覚える景色の中で、あいつが言う。
光「私、アイドルになることにしたんだ」
俺「」
俺「あー、えっと、もう一回言ってくれねえか?」
光「だからアイドルに「あーもう分かった」……お前が言えって言ったくせに」
俺「……一応聞くが、なんで?」
光「えっとな、私、スカウトされたんだ」
俺「はぁ? お前がぁ?」
光「お前がってどういう意味だ」ペシッ
俺「いてっ……どういうも何も、全くイメージがない」
「お前がキャッピキャピの衣装着てフリフリしながら踊るとこが、まったく思いつかねえんだよ」
光「お前な、別にそういうのだけがアイドルじゃないんだぞ?」
「……まぁ、そういうのもあるかもだけど」
俺「ふーん……おぇっ」
光「おい何想像してんだ」パコッ
俺「いでっ、さっきよりいってえ」
光「当然だろ、同じことしてたら罰も重くなる」
俺「へーい。……んで、どうしてお前は受けたんだ?」
光「スカウトは、あの日の帰りだったよ」
「その時、プロデューサーは言ったんだ。お前の笑顔は、どっかヒーローっぽいって」
俺「まさか、そんだけで受けたのか?」
光「それこそまさか! そこまで私はバカじゃないぞ」
「その後、色々聞いたんだ。アイドルっていう仕事のこと」
「汚いことも色々ある。でもそれだけ、明るい部分が映える仕事」
「私の夢のヒーローにも、きっと一歩近づくはずなんだ!」
「あ、一応言っとくけど、信用できる相手のとこだぞ? 確か、CGプロダクションって」
俺「し、CGプロダクション!? すっげえとこじゃねえか!」
光「ん、なんだ。知ってるのか?」
俺「知ってるも何も、ファンなんだよ! あそこのアイドルは皆可愛い!」
「最近になって有名になってきたとこだよな。特に高垣楓さん!」
「綺麗で、でもどっか憂いがあって……最近家族に事件が起きたみたいだけど、活動を続けてくれて嬉しいぜ!」
光「……」ゲシッ
俺「いて、なんで蹴る!?」
光「うるさい」ギロ
俺「なんかすいません」
俺「……で、だ」
「本題っていうかなんつーかだけどさ。一応、一個聞くぞ」
「お前は誰を助けて、ヒーローになるつもりなんだ?」
光「私は……」
「私は、多分、これからは誰も助けられないんだと思う」
「アイドルってのは、きっと蹴落とす仕事なんだ」
「他のアイドルの人を蹴落として、自分だけが明るいテレビの画面に映る」
「そういう仕事だって、プロデューサーから聞いた」
俺「それはヒーローじゃない、そう思わないのか?」
光「考えたんだ、自分なりに。ヒーローってのはなんなのか、って」
「それで私は一つの答えに行き着いた」
「私は、できる限り多くの人を助けたい。でもその明確な形が見えてなかった」
「だから、助けるというより、笑顔にしたい。こっちの方向で考えたんだ」
「凹んでる人を元気づける、それも一つのヒーローの形だって思った」
「それが漫才みたいなネタ方面であっても、喜ばせる方面であっても、誰かを笑顔にしたい」
「きっかけは……お前のお母さんに、私の笑顔は見るだけで笑顔になれるって言われたこと」
「あとその後に、プロデューサーに笑顔がーって言われたことかな」
俺「……」ジー
「ふーん。ま、いいんじゃね?」
「最低でもお前は……なんつーか、見つけたみたいだしな」
「昔みたく誰でもかんでも助けるっつって目的を見失ってる訳でもなく、でもその夢が潰れた訳でもなく」
「正しく、お前は全員を助ける道を見つけたんだろ」
光「」コク
俺「って、俺が偉そうに言うのもなんだな」ハハ
「お前はこれからやりたいことを、夢をしっかり持ってる」
「でも俺は、まるで将来を見てない……」
光「別にいいだろお前は! 頭もよくてなんだかんだでスポーツもできて!」
俺「将来が仮に明るいとしても、それだけじゃダメなんだよ」
「何も見えてなかったら、それは真っ暗なんだ」
「やりたいこと、やりたいこと、うーん……」
光「……」
俺「ああ、すまん。変な所で考え事しちまって」
「それで? お前はいつ出発するんだ?」
光「それが……もう明日なんだ」
俺「は?」
光「いやその、なかなか言い出しにくかったっていうか」
「お前が倒れてる時に言うのもなんだな、って思ったっていうか」
「その、ごめん」
俺「」
その後、あいつは逃げるようにして帰っていった。
俺はそれを茫然と見送った後、ベッドに転がって考えていた。
CGプロダクションは東京にある。当然、あいつはその女子寮にでも入るのだろう。
あいつは、ここからいなくなってしまうのだ。
俺はどこか、別世界の出来事のような錯覚を覚えていた。
あまりに現実味がなかった。
明日にはもう、あいつは行ってしまう。
確かに輪郭を持った夢を追いかけて、夢を持たない俺を置いて。
晩御飯を食べている間も、まるで空に浮いているような感覚だった。
母さんも、気を利かせてくれたのか話しかけてくることはなかった。
ただ、懐かしむような。慈しむようにも見える視線を送ってきていた。
歯磨き、風呂、色々な身支度をさっさと終えて、俺は再びベッドに寝転がる。
時間が異常に早く経っているような気がする。既に、短針は12時を刺そうとしていた。
とにかく、あいつの出発する時間を聞いてみよう。
俺は携帯を取り出しチャットを起動する。
返事はすぐに来た。
光『朝早く 6時とかそんくらい』
俺(こういう時に限って早起きしやがる……そりゃそうか。夢への切符を掴んだんだ)
とにかく、考えなければ。あいつが行く前に。
……あれ。
何を考えるんだ? と俺は思い至る。
俺は何を悩んでいるのだろう。俺は光を送り出す。それだけじゃないのか?
何を悩む必要があるのだ。
しかし、胸のモヤが収まらない。
きっと俺には見えていない、俺の悩みがあるのだ。
それを突き止めなければ。
そしてあわよくば、その答えを。
そう考える内に時は過ぎ、締めなかったカーテンから覗く景色が色を変える。
夜闇は消えて、いつの間にか朝日が登り、空が青く色づけられる。
あいつが旅立つ時が迫っている。
その様を、ベッドから起き上がった俺は椅子に座って眺めていた。
結局一睡も出来なかった。
その果て、見つけ出した答えもあやふやだ。
でも俺は声に出さなければならない。
あいつも不安なはずなんだ。
一人で、芸能界なんていう不透明な世界に飛び込んでいくんだから。
心に灯した願いの火も、きっとゆらゆら、不安定に揺れているはずなんだ。
だから俺は言わなければならない。
あいつの出した不安定な願いと同じくらい、おぼつかない俺の思いを。
俺は寝静まった家を出る。
靴紐を結んで、あいつの家に向かって駆け出した。
あいつはもう、車に乗り込もうとしていた。
時間も考えず、俺は叫ぶ。
俺「光ッ!!」
光「お前、来てくれた……のか……」
俺「ん? どうした?」
光「ぷっ、アハハハハ!」
俺「なっ、なんだよ急に!」
光「その顔! どうしたんだ、クマががっつり……」プルプル
俺「こっ、これでも、お前のこと心配して……あーくそっ! 損した気分だよ!」
光「くくっ……でも、ありがとな。そんだけ考えてくれて」ニコ
「私、頑張るから。お前の心配なんか杞憂になっちまうくらい有名になってやるから!」
「だから、お前はTVの前でサインもらっときゃよかったとかでも考えとけよな!」
俺「あー、それなんだけど、さ」
光「???」
俺「あの後からずっと、お前のこともだけど、俺のことも考えてたんだ」
「将来、俺が何をしたいのかって」
「それで、曖昧なものだけど、一つ分かったことがあるんだ」
光「わかった、こと?」
俺「おう」コク
「俺は、お前がこけないように見張ってなきゃいけねえんだ!」
光「は、はぁ?」ポカン
俺「こけるだけじゃねえ。前みたいに悪い奴に引っかかってねえかとか」
「体の調子は大丈夫か、とか」
「食生活も気になるな……あ、そうだ。あそこの人がプロデューサーだよな?」
光「あ、ああ、そうだけど」
俺「おっけ」タタタ
「はじめまして、あいつの友達の○○って言います!」
P「こちらこそ! Pと申します」名刺パース
俺「ああ、本物だったんだ! また今度、楓さんのサインを光に渡しておいて」
光「いい加減にしろ」パコ
俺「あだ」
「……こほん。えっと、Pさん。こいつのこと、よろしくお願いしますね」
P「当然。負担をかけないことが、プロデューサーの仕事だからな」
俺「特に食生活! こいつほっといたら、おまけ付きのチョコとか買ってるんで!」
光「なっ!? 今はもうそんな……」
俺「……○○スーパー」
光「」ギクッ
俺「そこで買ってんのみたから。……こんな感じの奴なんで、ちゃんと首輪つけておいてくださいね」
P「はは。了解した」
光「もう、プロデューサーまで!」
俺「……まあ、ふざけるのはここまでにして」
「俺はな、何をしたいかを考えて、逆に今俺は何をしてるか、に考えついたんだ」
「それで、最初に言った気付いたことに辿り着く」
「最近はほとんど、お前の為にしか動いてないってことに」
「俺はいつの間にか、お前の手伝いをすることが楽しくて、生きがいみたいに思ってたんだ」
光「……」
「だから、な。将来お前がアイドルで大成する頃に、俺が迎えに行く」
「お前に恥じないくらいに立派になってな」
「それが俺の思い描いたビジョン。具体的なことは……秘密にしとく」
「でも絶対、お前の隣へ、迎えに行ってやる」
「だって」
「俺たちは二人で、ヒーロー部だろ?」
光「……」
「そうだな」ニカッ
「なあ、次はどんな形で会うかは分からないけど、しばらくは会わないようにしよう」
俺「だな」
「次会う時は、ヒーロー部再結成の時だ」
光「」スッ
俺「」スッ
ガシッ
俺「絶対、諦めんなよ。お前の絶望した顔なんか見たくない」
光「バカ言うな。そっちこそ、私に会えないからって泣くんじゃないぞ?」
俺「それこそないな。むしろしばらく悩みの種が消える」
光「あ、ひどいぞそれ」
俺「ちゃんと勉強しろよ?」
光「……ドリョクシマス」
俺「目を見て言え目を」
光「」プイー
俺「まったく……」
俺・光「ぶっ、アハハハハ!!」ゲラゲラ
P「そろそろ、時間だ。もういいか?」
俺「ああすいませんお時間を取って……んじゃ、光」
光「おう。ちっとの間、別れだな」
俺「……」
光「……」
俺「さっさと、行け」プイ
光「……ああ」ニコ
あいつの乗った車が離れていく。
それを見る俺の中で、新しく炎が宿ったのが分かった。
きっとこの炎はあいつがアイドルになって、俺と会うまでは消えないはずだ。
今日この日から、俺を動かす原動力となり続けるはずだ。
……だから。
その境の今くらいは、泣いてもいいよな?
時が流れて、俺は大人になった。
あの日から俺は努力を重ねて、一つ夢を叶えていた。
体を鍛えながら、しかし勉強もするというのはよくある話ながら大変で。
時には心が折れそうになった。
特にルックスを気にするなんて言うのは生まれて初めてで、母さんに頼りっきりになったっけ。
しかしあいつとの約束を果たすべく、確かに俺は夢を叶えた。
あいつも大変だったらしい。
最初は渋谷先輩が怖いと言って泣きついてきた。
ただ無愛想なだけで、本当は優しいと分かってからはずっとつきまとっているようだが。
またライバルアイドルからの陰湿な嫌がらせ。大手会社からの圧力。
ドラマで聞くような話が実際に起こったらしいから驚きだ。
しかしそれでも戦い続けた。
結果、あいつも夢を叶えた。
そして、俺たちは再会する。
ヒーロー部が再結成される。
光「この世に私がある限り、光の元、悪が栄えるのは許さない!」ビシッ!
俺「この世に俺がいる限り、夜の闇、悪が蔓延るのは許さない!」ビシッ!
光「私たちが!」
俺「俺たちが!」
光・俺「仮面ライダーL&Nだっ!!!」
あいつが皆を照らし、笑顔にさせるなら、俺はその闇になろう。
あいつが涙を流して、顔を曇らせるなら、俺はその敵を討とう。
これが俺の選んだ道だった。
あいつを支え続けるにはどうすればいいか。隣に立てばいい。
ならどうやれば立てるか。アイドルと同じ土俵、芸能界に行けばいい。
将来が心配だ。だから勉強は続けなきゃならない。
全ての兎を追うのは辛かった。でもあいつの、襲われた時の泣き顔を思い出して、別れの時の笑顔を思い出して。
俺はがむしゃらに走った。
そして、俺の名前が夜に関係していたことも幸運だったのだろう。
俺は仮面ライダーライトの相棒、仮面ライダーナイトとしての出演を決めたのだ。
これからもこいつを支えていく。
仮面ライダーナイトとして。
親友として。
そして、同じヒーロー部の人間として。
俺「俺の友達がアイドルになった」
「その割には、フリフリした衣装はまだ」
光「うるさい」バキッ
俺「うおっ強烈……お前大人になって容赦がなくなったな」
光「レッスンの成果だよ! それに、わ、私だって、少しくらい成長を……」
俺「それは俺じゃなくて、プロデューサーに見せろよ」
光「なっ、てめ、こらーッ!!」
エンディング2 隣に立つ
これにて、俺の友達がアイドルになったは終了です。
最後の光は、どういう意味で怒ったのかはご想像にお任せします。
凄い眠いので、返信、依頼などは朝にします。
それではお休みなさい……
おはようございます。
反省諸々は一個目のエンドで散々しましたので簡潔にいこうと思います。
次は、薫のSS読みふけります。
また、きっちり書き溜めを作ってからにしようと思います。
さて、次の話ですが、上記のとおり、薫SSになると思います。
後、エンディングを二つ、作るのが自分なりの決まりみたいになってるんですが、次はおそらく無理だと思います。
時間とかじゃなく、自分の頭ではできませんでした……。諸々は次のあとがきに書くことになるかと思います。
っていうか、途中に薫が出しましたが、出身地近いんですねこの二人。
勝浦川がどこにあるかでバイクの移動距離が気になりますが、まあいいですよね(棒
くり返すようですが、このシリーズは一つ目のエンディングが正史です。
事件どっち? と言われていましたが、一つ目、つまりスカイダイビングが正史となります。
次回は結構遅くなると思います。それでは失礼します。
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