幼馴染「ほら、素直になりなよー？　本当は私のこと大好きだったりするんでしょー？」

幼馴染「全く、このシャイボーイったら！」

男「…………」

幼馴染「ほらほら、カモーン！　男の方からこっちにくれば、もしかしたら近づけるかもしれないよ！？」

男「俺、宿題あるから」ｽﾀｽﾀ

幼馴染「あ、待ってよ！」

男「何、近づけないんじゃなかったのかよ？」

幼馴染「い、いや、１メートルまでなら、おっけーだから！」

男「…………」

男「呪いなんて、ないんだろ？」

幼馴染「えっ」

男「呪い、嘘なんだろ」

幼馴染「違うよ！　男は大事な幼馴染がうそつきだとでも言うつもり！？」

男「というか高校生にもなって呪いって……」ｹﾗｹﾗ

幼馴染「あ、あるよ、呪い！　あるもん！」

男「じゃあ証拠は？」

幼馴染「えっ」

男「証拠は？」

幼馴染「えーっとねえ……」

男「そもそも、誰が、何のために幼馴染に呪いなんてかけるんだよ？」

幼馴染「そ、それはっ……」

男「何の得があるっていうんだよ？」

幼馴染「ひねくれた男子高生を成敗し、心美しき女子高生を救えるという大きな得が……」

男「…………」

幼馴染「あーもう！　得なんて知らない！　呪いをかけた張本人に聞いて！」

男「呪いをかけた張本人って誰だよ」ｹﾗｹﾗ

幼馴染「う……ちょっと待って！　連れて来るから！」

幼馴染「よろしく頼んだよ？　打ち合わせの通りにお願いね」ﾋｿﾋｿ

後輩「え？　え？　あの、先輩、これは……？」

幼馴染「とりあえず、よろしく！」

幼馴染「ほら、男、連れて来たよ！　呪いをかけた張本人！」

後輩「あの……どうも」ﾍﾟｺﾍﾟｺ

男「後輩ちゃんが呪いを？」

幼馴染「そ、そうだよ！　後輩ちゃん、実は悪い子だったんだから！」

後輩「えっと、はい、実は悪い子でした！」

男「…………」

男「幼馴染、もうやめろよ。後輩ちゃん困ってるだろ？」

幼馴染「え、後輩ちゃん困ってるの！？」

後輩「こ、困ってないです！」

幼馴染「ほら、本人が違うって言ってるよ！」

男「…………」

男「あのな……」

幼馴染「後輩ちゃん、後輩ちゃん、ほら、段階２お願い！」

後輩「分かりました！」

後輩「わたしは！　幼馴染さん憎しのあまり！　先祖代々伝わる古文書を紐解き！　呪いをかけたのです！」

幼馴染「うっわー、後輩ちゃんもひどいことするねえー！」

後輩「ごめんなさい！」

後輩「でも、男さんが幼馴染さんとスキンシップをすれば、呪いは解けます！
　　　男さんからなら近づける仕様なので！」

男（ふたりとも、カンペを読んでるの、隠すとかすればいいのに……）

幼馴染「ほら、男！　後輩ちゃんもこう言ってるんだし、嘘じゃないってわかったでしょ？」

後輩「そうです！　嘘じゃないです！」

後輩「呪いですよ！　呪い！？　男さん、ここはひとつ！　ここはひとつ！」

男（……後輩ちゃん、頑張るなぁ）

男「というか、後輩ちゃんは確か今日、図書委員の当番の日じゃなかった？」

後輩「あっ……」

後輩「そ、それでは！」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

幼馴染「あー、後輩ちゃん行っちゃった」

男「そもそも幼馴染が引っ張ってきたから、委員のこと忘れたんだと思うけど」

幼馴染「あはは！　まぁそんなこともあるよ！」ﾃﾍﾍﾟﾛ

男「…………」

男「幼馴染、いい加減嘘をつくのはやめたらどうだ？」

幼馴染「えっ」

男「後輩ちゃん、危うく仕事を忘れるところだったんだし、俺はともかく他人に迷惑を掛ける嘘は感心しない」

幼馴染「う、嘘じゃないもん！」

男「……幼馴染がそんな嘘つきだとは思わなかったんだけどな」

幼馴染「だ、だから……」

男「俺だって幼馴染が嘘つきって言いたくなかった。でも、事実だしなぁ……」

幼馴染「うう……」

男「幼馴染はバカだけど、それでもまっすぐな人間だから好きだったんだが……もう、嫌いになるしかないな」

幼馴染「うううう……」

幼馴染「う、うわーん！」

幼馴染「ごめんなさい！　嘘つきでした！」

幼馴染「だ、だって、男、最近冷たいから、かまって、ほしかった、うう……」

男（ちょろっ）

幼馴染「昔は、今みたいにつっけんどんな感じじゃなかったのにっ」

幼馴染「うわーん！」

男「…………」

男「……そんなに、つっけんどんしてるか？」

幼馴染「うん」

男「えー……」

男（そうなのか）

男「じゃあ、これから気をつけるからさ、突拍子もない妄言はやめてくれないか？」

幼馴染「も、妄言……なんか知らないけどばかにしてるでしょ！」

幼馴染「うわーん！」

男「あ」

男「い、今のは無し。妄言じゃない」

幼馴染「じゃあ何？」

男「そ、そうだなぁ、妄言じゃないとすると、もう限界？」

幼馴染「え！？」

男「いやいや、なんでもない」

男（俺の方が妄言言ってどうすんだ）

幼馴染「もういい！　男なんか嫌いだー！」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

男「あー」

男（やらかした）

男「はぁ、はぁ、お、幼馴染」

男（足はや……）

幼馴染「なんですか、口ひんまがり男さん」

男「…………」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

幼馴染「な、何、さわらないでよっ」

男「これで呪い、解けたか？」

幼馴染「……う、うん！」

幼馴染「えへへ」

男（本当に子供だなぁ）

――後日

幼馴染「大変！　今度は男の半径１メートル以内にいないと死んじゃう呪いを掛けられちゃったよ！」

男「…………」

男（俺がこうして相手にするからだめなんだな……）

END

以上で終わりです
ここまで読んでくださってありがとうございました

>>20
ありがとうございます

明日の夜辺りにちょろっと続きを書く予定です

すいません
２１時くらいを想定していたのですが、折角なので急いで完成させてきます

マジか？！
>>1すごいね

でも無理はしないようにね

>>24
ありがとうございます

では今から投下していきます

男「半径１メートル以内にいないと死んじゃう呪いって……トイレのときはどうするんだよ」

幼馴染「えっ」

男「まぁ半径１メートル、一緒にトイレにINってことはギリギリ避けられるかもしれないけど、それでも相当めんどくさいぞ？」

幼馴染「い、いや……」

男「何、俺と一緒にトイレに行きたいの？　さすがにそういう趣味は無いんだが」

幼馴染「私も無いよ！」

幼馴染「いいじゃん！　軽い冗談に付き合ってくれたって！　けち！」

男（開き直った）

男「でも、もっと愉快な冗談がいい」

幼馴染「十分愉快な冗談じゃん！」

男「…………」

男「……どこが？」

幼馴染「え、真顔でどこがって訊かれても……」

幼馴染「もう、なんかフィーリングで感じ取っちゃってよ！」

男「ハードル高すぎだろ……」

男「あのな、幼馴染、もっと大人になろうぜ？」

男「さすがに高校生にもなって、それはないだろ？」

幼馴染「やだ！　私はこうしているのが楽しいんだから！」

男「…………」

幼馴染「ひどいよ男！　昔はいっつも付き合ってくれてたのに！」

男「昔って……」

幼馴染「うるさい！　もう知らない！　男なんて嫌いだ！」ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

男（デジャヴ……）

後輩「あの、男さん、どうしたんですか？」ｽﾀｽﾀ

男「後輩……」

後輩「幼馴染さん、なんか色々叫んでましたけど」

男「いや……いつもの通りだよ」

後輩「あはは、おふたりは本当に仲が良いんですね」

男「…………」

男（なんというか、今ここでその常套句を言われると、ちょっと複雑な気分だ）

男「……俺はもうあいつについていける気がしない」

後輩「え、ど、どうしたんですか急に！」

男「俺って、自分で言うのもなんだけど、テンション低い方だろ？」

男「だけど、幼馴染はあんな感じだし……」

男「あまりの温度差に、もう、だめかもしれない……」

男「テンションが高ければ、まだ笑って付き合えるんだろうけど、そうもいかないし……」

男「はぁ……」

男（まずい。ガチ凹みだ）

後輩「……要するに、おふたりの相性は最悪ということなんですね」

男「あ、結構ばっさり行くんだな」

後輩「でも、別に相性が悪くったっていいじゃないですか。空気を吸うようなものですよ」

男「え？」

男（空気？）

後輩「我々が普段自然に行っている呼吸……そこには相性なんて関係ありません。
　　　　幼馴染さんとの関係も、いずれはその境地に達するはずです」

後輩「そしていつしか、無くてはならないものになり、この芳醇な大地をさらに潤してくれることでしょう……」

後輩「ああ、なんて美……」

男「…………」

後輩「ということで、頑張ってください男さん！　わたしは陰ながら応援してます！」ﾄﾀﾄﾀ

男「ど、どうも」

男（なんかどうでもよくなってきた）

男（えっと幼馴染は……あ、いたいた）

男「おーい幼馴染ー」

幼馴染「…………」ﾌﾟｲｯ

男「…………」

男「ほら、幼馴染の好きなジュース買って来たぞ」

幼馴染「物で釣るなんて最低です」

男「だよな」

男（俺も思った）

男「あのな、俺と幼馴染は相性が悪いんだ」

幼馴染「え？」

男「でも、空気を吸うように……」

幼馴染「意味が分からないんだけど」

男「だよな」

男「まぁ、とにかく、相性は悪いけど、上手い落としどころをこれから探していこう、うん」

幼馴染「男、絶対めんどくさくなってきたから適当に話を終わらせようと思ってるでしょ」

幼馴染「でも、そうだね。私も最近男とは合わないなって思ってた。
　　　　　　だけど男と離れるのは嫌だし……良い落としどころ、見つけていこうね」

男「ああ」

幼馴染「……あとさ、男」

男「うん」

幼馴染「男が嫌いなんて、嘘、だからね？　その……ごめんなさい」

男「いや、いいんだよいいんだよ。俺も突っぱねすぎたしな」

幼馴染「うん、男は冷たすぎたね」

男「え、で、でもさ、それもこれも幼馴染が妙なこと言い出すから……」

幼馴染「あれは異星間交流だよ！　必要なこと！」

男「い、異星間交流！？」

幼馴染「男はもう違う星の人だもん！　ひねくれ星の人になっちゃったんだから！」

男「そんなわけないだろ！？」

ぎゃーぎゃーわーわー

男（ま、またデジャブが……まぁいいか）

ＥＮＤ

以上で今度こそ終わりです
ご期待に添えたかは分かりませんが、ありがとうございました

まだ続こう

>>37
非常にありがたいのですが、今書いてるSSが長くなる予定なので、そちらに集中したいと思います
すいません