モバP「例え見えなくても」 (29)

SS速報では初スレ立てです
なにかローカルルールとかで間違いがありましたら教えてください

では投下します

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1386699874

あれは大学生活も終わりに差し掛かる4年の秋だった
周りが続々と就職を決めているなか、中々決められなかった俺は焦りと不安で頭がいっぱいだった
その時、道端で声をかけられた
「ティンときた!キミィ!アイドルのプロデューサーをやってみないかね?」
そんな感じで俺はアイドルのプロデューサーになった

設立したての会社だったため右も左も分からなかったが社長と事務員のちひろさんと3人で頑張った
アイドルの勧誘から始まり、テレビ局へ売り込みに行ったり、レッスンでアイドルを育てたり・・・
忙しかったが俺には楽しくてたまらなかった

入社して4年がたった26歳のこと
いつものように仕事に追われていた
家に帰る日など月に1回程度、まともに6時間以上寝た日など思い出せないくらいであった
もちろんキツい毎日だったが心は充実していた
だが体がそれを許してくれなかった

そしてそれは起こった

その日は確か拓海と一緒にテレビ局へグラビアの撮影に向かっていたと思う

突然頭が割れるような頭痛と眼球をえぐられるような痛み

そして視界が赤く染まっていく中俺は倒れてしまった

最後に見たのは拓海の泣きそうな顔と俺を呼ぶ声だった




3日ぶりに目が覚めた時、俺の視力は無くなっていた

医者の話によると仕事のし過ぎによるストレスと疲れが原因だった

このまま一生治らないかもとまで言われた

仕事に一生を捧げていた俺にとってそれは死を宣告されたようなものだった

目が見えない自分に仕事などできるはずもない

その日のうちに社長に仕事を辞めると告げた

しかしアイドルたち全員から辞めないでくれと言われ

社長からも君に合う仕事を探すからと引き止められてしまった

嬉しかった反面、迷惑をかけてしまうと不安になったが黙っておくことにした

れから退院まで必死に点字を勉強した

暇を見つけては見舞いに来てくれるアイドルたちと一緒に覚えた

また退院してからすぐに社長が事務所のすぐ近くにバリアフリーの家を探してきてくれた

そこでアイドルやちひろさんに看病してもらいながらなんとか生活できるまでに回復した

家事から炊事から洗濯までほぼやってもらった

幸いアイドルには家事が得意なアイドルも多くまずい飯も食わなくて済んだ

一部のアイドルを除いてだが・・・

朝7時に鳴る目覚まし。それを俺は手探りで探して止める

そして壁に手を添えてゆっくりと洗面台まで行き顔を洗い歯を磨く

それが終わると部屋でテレビをつけ耳を傾ける

今日は何日か。天気はどうなのか。なにかニュースがあったか

耳から入る情報は限られるため夢中になって聞かなければならない

そうこうしてる間に誰かが迎えに来る

それはちひろさんだったり、事務所に来るアイドルだったり・・・

今日は誰がくるのかな。そう考えるのが毎朝の楽しみであった

チャイムが鳴り誰かがおはよ。プロデューサーと言いながら入ってくる

声を聞き誰かを当てる

今日は凛だった

俺は声のする方に行きおはようと言いながら手を差し出し声の主を探す

するとアイドルは俺の手を掴んでくれる

そして俺は手を握りそこから肩、首と伝って頭を撫でる

これが毎日の俺の挨拶だった

最初は凛だって恥ずかしがってか手を差し出してくれなかったが今ではちゃんと差し伸べてくれる

今でも顔が見えないので恥ずかしいのかどうかはわからないが

そうして杖をつき、凛と歩きながらゆっくりと事務所に向かう

仕事はプロデューサーからアイドルの話を聞く相談役となった

ついでに肩書はプロデューサーからプロデューサー兼相談員となった

今まで忙しかった毎日とはうってかわってアイドルとお話するだけになってしまったがそれでもまぁ楽しかった

今日は杏がきて仕事したくな~いと言いながら俺に愚痴を言っていただけだった

仕事ばかりと言っていたが唯一の趣味があった

お酒である

この事務所のアイドル達にはお酒好きが何人かいてその人達と酒を飲みながら話すのが好きだった

大体メンツは楓さんや志乃さんに早苗さんは絶対いた

それに礼子さんがいたりあいさんがいたり・・・

年少組や学生組と違った大人組とのアダルトの話も乙なものであった

体を壊してからは医者と相談し月に1回お酒は三杯タバコは3本までとなった

そう言うとみんな俺に付き合ってくれ3杯で後はジュースで乾杯となった

そして帰りはアイドルが家まで付き合ってくれる、周りから見たらなんとも望ましい状況となった

倒れてから1年ほど立ち、視力も少しは戻っていった

と言っても物体の輪郭がぼんやりと見える程度である

色彩はバラバラ、物は5重にも6重にもみえ遠近の判別もつかなかった

そして最近ある思いが浮かんでいた

俺が倒れて以降、新しいアイドルはあまりとらないようにしていた

そして今いるアイドルもどんどん仕事が増え忙しさが増している

俺はこの娘たちが自分から離れていくのがとても怖かった

彼女らも今は毎日甲斐甲斐しく世話をしてくれるが彼女らにもプライベートな時間はある

そして大人になっていくに連れそれはどんどんと増えていくだろう

こんな目も見えない自分などいつか忘れられていく

そう思うのが本当に怖かった

そして今現在

今も生活は変わっていない

俺の目は今後良くなるかもしれないし一生このままかもしれない

いろいろな思いが頭を駆け巡る

未来のことなんて誰にもわからない

でも最後まで希望を失いたくはない

たとえ目が見えなくても・・・

自分にはとても大きな楽しみがある

それはいつか目が見えたとき、大人になったみんなの顔を見ることだ


終わり

だらだらと散文的になってしまいました
Pの思いは昔自分がこうなったときに感じていたものです
周りが世話してくれてた時いつまでしてくれるのかなんて漠然とした不安があった時期などを文にしてみました
今はもう治りました。若干見えづらいですが・・・

夜だし誰も見てなかったかもだけどありがとうございました

みなさんありがとうございます
Pは自分のことを思い出しながらだと書けるんですがアイドルは難しいですね・・・
もうHTML化のお願いだしたのでまたかけましたらスレ立てようと思います

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