父「あいつは未だに働こうとしないのか」母「はい……」 (469)

< 家 >

父「…………」

母「…………」

父「あいつは自分の部屋にいるのか?」

母「はい……」

父「あいつは未だに働こうとしないのか」

母「はい……」

父「困ったものだ……どこで育て方をまちがえたのだろうか」

父「毎日毎日、部屋にひきこもって同じことを繰り返す日々とは、しょうがない奴だ」

父「しかし、よくもまあこんな生活に飽きないもんだな」

父「このエネルギーを仕事に向けられればいいのだがな」

母「ええ……」

父「ハァ……」

父「ところで部屋の外には、まったく出てこないのか?」

母「いえ、そんなことは……」

母「時折、出かけることもあるんです」

父「なにをしに出かけてるんだ?」

母「さぁ……」

母「私にはなにも話してくれないので」

父「ふ~む」

父「なにか高額な商品を買ったりってことはないだろうな?」

父「いきなり何十万円の請求、とかがきても困るぞ」

母「そういうことはありませんが……」

父「FXだかなんだか知らんが、そんな訳のわからんもんで仕事した気になって」

父「世間体ってもんがあるだろうに」

母「はい…」

母「ただ……」

父「ただ?」

母「パソコンでなにかやっているようで……」

母「時折、妙な粉を通信販売で購入しています」

父「粉?」

父「今流行ってるらしい、合法ドラッグとかの類じゃないだろうな」

母「私には……分からないです」

父「働かない上に麻薬中毒にでもなられたら、大変だぞ」

父「ふ~む、仕方あるまい」

父「こうなれば、話し合ってみよう」

父「あいつももう26だ」

父「せめてアルバイトでもいいからやらせんと……話にならんだろう」

母「ええ、だけど気をつけて下さいね」

母「あの子を刺激したら、どんなことになるか分かりませんから」

父「ああ、なるべく穏便に話し合ってみるつもりだ」

父「あいつの部屋に行ってみる」スッ

< ニートの部屋の前 >

コンコン

父「オイ、話がある」

ニート「!」ビクッ

父「開けなさい」

ニート「…………」

父「開けないのなら、俺が開けるぞ」

ガチャッ……

┌┴┐┌┴┐┌┴┐ -┼-  ̄Tフ ̄Tフ __ / /

  _ノ   _ノ   _ノ ヽ/|    ノ    ノ       。。
       /\___/ヽ
    /ノヽ       ヽ、
    / ⌒''ヽ,,,)ii(,,,r'''''' :::ヘ
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< ニートの部屋 >

父「久しぶりだな……」

ニート「うぅ……お、お父さん……」

父「相変わらず引きこもって、筋トレばかりやってるのか」

父「しかも、また大きくなったようだな……身長も体重も」

ニート「うん……身長は205cm、体重は180kgになったよ」ムキッ…

父「体脂肪率は?」

ニート「5%を切ったかな……」

父「そうか……」

父(昔買ってやったダンベルだけで、ここまでになるとは……)

父「ところで、母さんの話じゃたまに出かけるらしいが、何をしてるんだ?」

ニート「インターネットを通じて格闘家仲間と交流して、野試合をやってる……」

父「野試合?」

ニート「リングの上とかじゃなく、路上で格闘技戦をやることだよ」

ニート「もちろんルールなし、でね」

父「勝敗は?」

ニート「今のところ……1628勝0敗、かな……」

父「そうか……」

父「ところで……」

父「通信販売でなにか粉、を買っているそうだが……」

ニート「え、ああ……」

ニート「あれはね……プロテイン」

ニート「筋トレ後や就寝前に飲むと、筋トレの効果が増すんだ」

ニート「ただのタンパク質だから、危ないものじゃないよ」

父「そうか……」

父「お前の筋トレや格闘技への情熱はよく分かった」

父「だがな……」

父「本来、お前の年齢なら、せめて自分のプロテイン代や野試合の交通費ぐらいは」

父「自分で稼がなきゃならない」

父「それは分かるよな?」

ニート「!」ギクッ

ニート「う、うん……」

ニート「分かってる……」

父「それに、せっかく鍛え上げた筋肉も──」

父「社会のために役立てなければ、宝の持ち腐れだ」

父「もう20歳を過ぎたのに」

父「筋肉のハリやツヤはまるで10代の少年のようだ」

父「自信を持て!」

父「お前は絶対に社会や人様の役に立てる人間だ!」

ニート「お、お父さん……!」グスッ

ニート「分かったよ!」ムキッ

ニート「ボク、働くよ」ムキムキッ

ニート「ニート生活で鍛え上げたこの筋肉で、社会の役に立ってみせるよ!」ムキキッ

ニート「ありがとう、お父さん!」ムッキン

父「分かってくれて、俺も嬉しいよ」

ニート「よぉ~し、やるぞ!」ズシンッ

父「お前の腕力なら、引っ越し業者とかが向いてるんじゃないか?」

\ ⊂[J( 'ー`)し
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< 引っ越し屋 >

先輩「オ~イ、新入り!」

ニート「はいっ!」

先輩「このタンス、一人で運べるか!?」

ニート「任せて下さい!」

ニート「よいしょ」ヒョイッ

先輩「おいおい、あんなでかいタンスを軽々と……すげえ新入りが入ったもんだ」

客「すごい力持ちですなぁ」

ニート「そんなぁ~……照れますよ」ギュウ…

メキメキメキメキ……

バキバキバキバキ……!

ニート「あぁっ! しまった!」

先輩(タンスが新入りの両腕に抱き締められて、砂時計みたいな形に……!)

客「あわわわわ……」ジョボボ…

ニート「うわぁ~~~~~ん!」

ニート「ボクのせいでタンスがぁ~!」

< 家 >

父「そうか……」

父「お客さんのタンスを破壊して、お客さんを失禁させて」

父「一日でクビになったか……」

ニート「ごめんなさい……」

父「いや、いいんだ。仕事に失敗はつきものだ」

父「これに懲りず、次の職場で頑張れ!」

ニート「うん!」

< 工事現場 >

監督「今日はこの道路を掘り起こす!」

監督「新入り! おめえはあっちに立って、人や車が来ないようにしろ!」

ニート「はいっ!」



ニート「…………」

ニート「人も車も通りがからない……」

ニート「ヒマだなぁ……」

ニート「そうだ!」

ニート「ボクもちょっと地面を掘ってみよう!」ホリホリ…

ニート「向こうのドリルより、ボクの方がずっと早く掘れてるぞ!」ホリホリ…

ニート「ん?」

ブラジル人「不法入国デース」

ニート「しまった! ブラジルに着いちゃった!」

< 家 >

父「そうか……」

父「勝手に地面を掘った上に、ブラジルに不法入国して一日でクビになったか……」

ニート「うん……」シュン…

父「だったらいっそ、ちゃんとした格闘技界でデビューするか!」

父「俺のコネで、いきなりチャンピオンと試合をさせてやろう!」

ニート「本当!?」

ニート「ありがとう、お父さん!」

ニート「ボク、絶対世界チャンピオンになるよ!」

< リング >

カァーン!

実況『試合開始です!』

ニート(お客さんが大勢いて、緊張するなぁ)ドキドキ…

ニート(普段やってる野試合とは、全然ちがうや)ドキドキ…

チャンプ「てやっ! でやっ! とうっ!」ペチッ ドカッ パキッ

ニート(やっぱりボク……こんな大舞台は耐えられないよ……)ドキドキ…

チャンプ「だりゃっ! せいっ! うりゃ!」バシッ ビシッ ベチッ

ニート(お父さんには悪いけど……帰ろう!)ダッ

死人がでるな…

ドゴンッ!!!

チャンプ「ぎゃんっ!?」

実況『お~っと、突然走りだした挑戦者に、チャンプがハネ飛ばされた!』

ズガァンッ!!!

実況『チャンプの全身が天井にめり込んだ!』

ニート「ごめんなさいっ!」ダダダッ

実況『挑戦者、逃げてしまったぁっ!』

解説『これは悪質なひき逃げ事件ですねぇ』

< 家 >

父「そうか……」

父「満員の観客の前で緊張してしまったか……」

父「ちなみに試合は無効試合となり、チャンピオンは全治六ヶ月の重傷だそうだ」

ニート「ごめんなさい……」

ニート「やっぱり人前だとどうしてもあがっちゃって……」

父「う~む……」

父「だったら……某国の大統領警護でもやってみるか?」

< 某国 >

ニート「よろしくお願いします、大統領」

大統領「ミーはユーには期待してますヨー」

バババッ!

テロリスト「死ねっ! 大統領っ!」チャッ

大統領「ワオ!?」

ニート「むっ!」ササッ

パンッ! パンッ! パンッ!

ニート「ボクに拳銃なんか効かないぞ!」ムキッ

キンッ! キンッ! キンッ!

テロリスト「ゲェッ!?」

ニート「大統領は向こうへ逃げて下さい!」ガシッ

大統領「オ~、パワフル!」

ニート「えいっ!」ブオンッ

大統領「オ~、ミーはフライングしてマース!」ギュウゥゥゥン…

ドゴォンッ!

ニート「あっ……」

ニート(しまった、大統領を約200メートル投げ飛ばしちゃった!)

< 家 >

父「そうか……」

父「テロリストは退治したが、大統領に大怪我を負わせて」

父「やはり一日でクビ、か……」

ニート「うん……」

ニート「せっかくお父さんが紹介してくれた仕事なのに、ごめんなさい……」

父「いや……気にするな」

父「人間には向き不向きがあるからな」

父(う~む)

父(並みの仕事では、息子は筋肉を持て余してしまうようだ)

父(せっかく恵まれた肉体があるのに、もったいない)

父(なにか、息子に見合った仕事はないものだろうか)

父(こればかりは、ハローワークに頼んだところでどうにもならんだろうな……)

すると──

テレビ『突然ですが、ニュースです!』

テレビ『高さ数千メートルの巨大な波が、日本に迫っているという情報が入りました!』

テレビ『皆さん、避難して下さい!』

テレビ『避難して下さい!』

ニート「ええっ!?」

父「なんだとぉ!?」

父(高さ数千メートルの波など、どうしようもないじゃないか!)

感動した>>1
寝る

父「息子よ!」

父「母さんを連れて逃げるぞ!」

父「少しでも内陸に避難するんだ!」

ニート「…………」

ニート「いや……ボクが波を食い止めるよ!」

父「なにぃ!?」

父「いくらお前でもそれは無茶だ! 津波は本当に恐ろしい自然災害──」

ニート「だけど……ボクがやらなきゃだれがやるんだよ! お父さん!」

父(た、たしかに……)

< 沿岸部の町 >

ゴォォォォォ……!

町長「波がすぐそばまで迫っておる……」

町長「もうダメじゃ……この町は終わりじゃ!」

町民「あんな山のような波……逃げ切れるわけがない!」

女「全て滅んでしまうのね……」

子供「うわぁ~~~~~ん!」

自衛隊員「くそっ……俺は己の無力さを呪うぞ!」ガンッ

町長「子野町は終わりじゃ」
父「たしかに」
ニート「僕には無理じゃ」

ニート「でやあああっ!」ダダダッ

町長「あれはだれじゃ!?」

町民「波に立ち向かうようです!」

女「ムチャよ! すぐ波に押し潰されて終わりだわ!」

子供「だめぇぇぇっ!」

自衛隊員「引き返すんだ! 命はないぞ!」

ニート(いや……ボクは確信している)ダダダッ

ニート(この波を止めることができるのは……ボクしかないと!)ダダダッ

ザバァァァァァ……!

ニート「うおおおおおおおおおっ!!!」バッ

ガシィッ!

グググ……!

町長「なんじゃと!?」

町民「すごい、両腕だけで巨大な波を押さえている!」

女「なんて力なの!?」

子供「すごぉ~い!」

自衛隊員「まさか……波を腕力で食い止めるなんて……!」

ニート「これが──」

ニート「お父さんのお金とお母さんのご飯で作った……」

ニート「ボクの筋肉だァァァァァ!!!」

グンッ!

バシュゥゥゥゥゥ……!!!

町長「な、波が……」

町民「消えた……」

女「信じられないわ……!」

子供「すごいや、すごいや! スーパーマンだ!」

自衛隊員「敬礼!」ビシッ

ニート「や、やったぁ……」ドサッ…

町長「なんという若者じゃ……」

町民「ありがとう! 本当にありがとう!」

女「私たち、生きてるのね……彼のおかげで……」

子供「ボクもお兄さんみたいなスーパーマンを目指すよ!」

自衛隊員「君はこの町の──いや日本の英雄だ!」



ニート(お父さん、お母さん、ありがとう……)

数日後──

総理大臣「先日の功績を称え、ニート君を我が国公式の“守護神”に任命する」

総理大臣「これからも頑張ってくれたまえ」

ニート「ありがとうございます!」

ニート「ボクは守護神として、色々な災害から日本の人々を守ります!」



母「あの子ったら、すっかり立派になって……」ウルッ…

父(波を食い止めたことで、息子に責任感が生まれ、いい仕事にも恵まれた……)

父(そうか……)

父(これが本当の“波浪ワーク”だったというわけか)





おわり

クッソワロタwwwww
けどセンスは…
>>1

< 父 >

父「…………」

父「…………」

父「あいつは自分の部屋にいるのか?」

父「はい……」

父「あいつは未だに働こうとしないのか」

父「はい……」

父「困ったものだ……どこで育て方をまちがえたのだろうか」

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