アイドルマスター三国志 (545)

このスレは三国志をベースに、三国武将となったアイドル達が活躍するスレです。

また、≫1 は初スレ建て、初SSですので、
本SSには拙い文章、幼稚な言い回し、中2病的な表現が含まれます。

はっきり言って思いつきで書き出したので、話がどう転ぶかは分かりませんが、なんとか完結を目指します。

※史実が好きな人、また演義が好きな人、そして、アイドルマスターを好きな人は発狂モノのSSかもしれませんので、予防策として、そっ閉じをお勧めします。

では、まず、天下三分を目指して投下します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1365435865

「ねぇねぇ兄ちゃーん、いつまで歩くの?」

「・・・安宿が見つかるまで」

「真美、もー疲れたYO!」

「亜美も!もう歩けないーっ」

不満そうにしゃがみ込んだ姉を見て、倣う様に妹も地面に座り込む。

───まったく。困った奴らだな。

「はぁ・・・仕方無いだろ?争いが続いてるから安い宿はどこも閉まってるんだよ」

「じゃあ、そこの宿で良いじゃんか→」

姉が指差した先には、絢爛豪華な宿がそびえ建つ。
見るからに宿賃の高そうな店構え。

「そうだNE!そうしよう!」

目を輝かせ、妹が同調する。

「ば、馬鹿言うな!あんな所に泊まったら資金が無くなるだろ!」

争いの絶えない戦乱の渦の中。
混乱に乗じて、窃盗や、人攫いの被害が続発していた。

とある村に娘の悲鳴が響いた。

「おやめください!」

一人の娘に二人のごろつきがちょっかいをかけていた。

ごろつきA「おっと!ちょっと遊ぼうって言ってるだけじゃねーか!」

───見るからに小悪党だな。

辺りを見渡すと、村人達も心配そうに事の成り行きを見守っている。

だが誰一人、助けようとはしない。

───仕方無いか。

「ちょっと、失礼」

間に割って入る。

ごろつきA「あ?なんだてめぇ」

「その娘さんも嫌がってるし、放してあげたら?」

ごろつきB「あぁ?邪魔しようってのか?」

ごろつきに手斧を突きつけられる。

「いやいや、往来で乱暴は止しましょう」

ごろつきA「おちょくってんのか?」

───言っても無駄か。

腰に差した二本の刀を抜き、刀を交差させる様に構える。

ごろつき達も少し怯んだのか、後ずさる。

───よし。そのまま逃げてくれ。
心の中で懇願する。

ごろつきB「はっ。ビビるこたぁねぇ!やっちまえ!」

───駄目か。

ごろつき達が飛びかかってくる。

一人目の攻撃をなんとか受け流す。

だが、二人目の攻撃に簡単に左手の刀が弾き飛ばされた。

もともと、争いを嫌う性格から数えるほどしか刀を握らなかった自分を恨んだ。

ごろつきは少し笑うと手斧を振り上げる。

少し向こうに、悲鳴をあげながら逃げて行く娘が見えた。

───良かった。助けられた。

覚悟を決めて、目を強く閉じる。

ーーーっ!?

だが、いくら待てども攻撃される気配が無い。

いや、目を瞑った瞬間に気付く間も無く斬り殺されてるのかとすら思った。

うっすら目を開けると、目の前に二人の少女が立っていた。

───?

思考が追いつかない。

「───君・・・、達は?」

やっとそれだけを言うと、二人の少女は振り向いて悪戯っぽく、笑った。



「関羽真美!」「張飛亜美!」



髪の毛を頭の右側に束ねた少女が言う。

「兄ちゃん弱々っしょー☆」

その言葉に乗っかり、もう一人の少女がオーバーに嘆き天を仰ぐ。

「弱っちいのに揉め事に首突っ込んだら、いくつ命があっても足りないよ?」

その少女は頭の左側にお団子を乗せていた。

「───え?あ、いやいや、君達こそ、危ないよ!後ろに下がって───」

そう、言い終わる前にごろつきが二人の少女に斬りかかる。

ごろつきA「───邪魔すんなら、まずお前達からころ───」

そう言いながらごろつきは後ろに吹き飛んだ。

あまりにも突然過ぎて唖然としてると、風が頬を撫でる。

「ちょっと亜美っ!真美が横に居るのに、いきなりそんな長い槍、振り回したら危ないっしょ!?」

「槍じゃないYo!矛だYo!矛っ!」

先程亜美と名乗った少女の右手には、身体には似つかわしくない大きな矛が握られていた。

そして、理解する。
この、か細い少女がその矛でごろつきを吹き飛ばしたのだ───と。

ごろつきB「ひっ!ひぃっ!?───」

そう叫びながら逃げ去るごろつきを見送り、その場に尻餅をつく。

そのままの体制で見上げる様に二人に礼をする。

「助かった。本当にありがとう」

振り向いた二人の顔は───

「んっふっふー♪兄ちゃん?───」

「───感謝じゃお腹は膨れないよ?」

───清々しいほどまでに悪魔の笑顔だった。

??????????

真美「───隙ありっ!」

亜美「あ!亜美の唐揚げっ!?」

ぎゃいぎゃいと騒がしい二人の少女を見て、つい、笑ってしまう。

「ははは。さっきはホント助かったよ。ありがとう」

取っ組み合う二人はこちらを一瞥すると、お互いの姿を見比べて、ハっ。とした表情を浮かべ、すぐに居住まいを正した。

悪戯を咎められた子供の様にバツの悪そうな二人にまた笑ってしまう。

「ははは。俺は劉。───劉Pだ」

二人は、変わった名前だねー。と声を揃えて言った。

P「関羽さんと張飛さんは───」

真美「真美で良いよ?」

亜美「亜美で良いよ!」

P「じゃあ、亜美と真美はどこかの兵士なのか?」

真美「違うよ?」

亜美「亜美達は義賊だYo!」

P「義賊?」

真美「そう!困ってる人を助けるんだYo☆」

亜美「悪い奴をこらしめるんだYo☆」

亜美・真美「断然超悪だよ!」


────それだと諸悪の権化みたいだが。


P「勧善懲悪か?じゃあ沢山の人を助けてあげてるのか。ははは。凄いな」

───ん?二人はキョトンとしてる。

真美「兄ちゃんが記念すべき第一号だよ?」

───んん?

亜美「だって今日、思いついたんだもん」

真美「そしたら、兄ちゃんが絡まれてたから」

亜美「これは!ってね?」

真美「ラッキーだったね?」

そう言って顔を見合わせたい二人は悪戯っぽく笑う。

───まったく人が死にかけた時に。

二人に釣られて笑う。

P「なんだ、それ。ははは」

真美「あーっ!?助けられたくせにー?」

亜美「笑うなら助けるんじゃ無かったねー?」

P「ははは。いや、スマン」

真美「兄ちゃんは何してるの?」

亜美「はっ───!?真美!察してあげなよ?」

真美「はっ───!?そうか・・・こんな昼間に仕事もしないで、あんな所に居たんだもんね」

P「いやいや、確かに働いては無いけども」

真美「はっ───!?もしかして兄ちゃんは悪い兄ちゃんなのかも・・・」

亜美「はっ───!?現代社会に潜む心の闇ってやつ?」

───こらこら。

P「俺は、旅してるだけだよ」


、笑ってしまう。 「ははは。さっきはたよ。ありがとう」 取っ組み合う二人はこちらを一瞥すると、お互いの姿を見比べて、ハっ。とした表情を浮かべ、すぐに居住まいを正した。 悪戯を咎められた子供の様にバツの悪そうな二人にまた笑ってしまう。 「ははは。俺は劉。───劉Pだ」 二人は、変わった名前だねー。と声を揃えて言った。 P「関羽さんと張飛さんは───」 真美「真美で良いよ?」 亜美「亜美で良いよ!」 P「じゃあ、亜美と真美はどこかの兵士なのか?」 真美「違うよ?」 亜美「亜美達は義賊だYo!」 P「義賊?」 真美「そう!困ってる人を助けるんだYo☆」 亜美「悪い奴をこらしめるんだYo☆」 亜美・真美「断然超悪だよ!」 ────それだと諸悪の権化みたいだが。 P「勧善懲悪か?じゃあ沢山の人を助けてあげてるのか。ははは。凄いな」 ───ん?二人はキョトンとしてる。 真美「兄ちゃんが記念すべき第一号だよ?」 ───んん? 亜美「だって今日、思いついたんだもん」 真美「そしたら、兄ちゃんが絡まれてたから」 亜美「これは!ってね?」 真美「ラッキーだったね?」 そう言って顔を見合わせたい二人は悪戯っぽく笑う。 ───まったく人が死にかけた時に。 二人に釣られて笑う。 P「なんだ、それ。ははは」


真美「旅?じゃあ、危ないから本物の剣、持った方が良いよ?」

亜美「そうだね♪模造刀じゃ、身を守れないもんね」

───驚いた。一目で見抜いたのか。

P「ははは。俺は武芸の素質が無くてね。あの刀も抑止力ってやつだ」

亜美・真美「よくしりょく───?」

二人は頭を人差し指で押さえながらソラを見やる。



P「そう。俺は争いを好まない」

P「人が武器を持たなくて良い、そんな世界にしたい───」


《───人の手は、誰かを助ける為、誰かの手を握る為にあるべきだ》


そう言いながら亜美と真美の手を握る。

二人はキョトンとし、お互い顔を見合わせた。

───しまった。変なヤツだと思われたかな。

真美「亜美───」

亜美「───うん」

真美「決めた!真美達、兄ちゃんに着いていく♪」

亜美「うん!チョ→面白そうじゃん!けってー☆」

───お、おいおい。

真美「そうと決まれば───」

亜美「───腹ごしらえっしょ!」

真美「店員さーん!」

亜美「桃饅頭、三つ!」

───おいおい。勝手に注文するな。

誰の払いだと思ってるんだ。

運ばれてきた桃饅頭を二人は持ち上げて、何かを待っている素振りを見せた。

P「ん?食べないのか?」

真美「兄ちゃんは分かって無いねー」

亜美「そだよー。亜美達は待ってるんだよ?」

───少し考えて、二人が持つように桃饅頭を宙にかざす。


真美「われら三人!生まれた日は違うけど!」

亜美「死ぬ時は同じ日!同じ時が良いっしょ!」



──────
────
──

それからは、亜美と真美は山賊を改心させたり
アコギな商売に手を染め、金を貯め込んだ悪人から金を奪い、貧しい村人達に恵んだり
───たまに、喧嘩したりしながらたくさんの村や街を渡り歩いた。

そして現在に至る。


真美「───隙ありっ!」

亜美「あ!亜美の唐揚げっ!?」

真美「んっふっふっー♪戦場では隙を見せたやつから死んで行くんだYo!」

亜美「ぬぬぬ・・・」

真美「兄より優れた弟など、居ない!」

亜美「俺の名前を言ってみろっ!?」

「はい。ストップ!宿の中で武器を振り回すんじゃない」

───まったく。飯ぐらい静かに食べれないものか。

亜美「だって、兄ちゃん!真美が!」

P「じゃあ、俺の唐揚げやるから───」

真美「───あ!亜美だけずるい!」

P「元はと言えば真美が悪いんだろ?ほら、ごめんなさいしなさい」

亜美「・・・」

真美「・・・」

亜美・真美「ごめんなさい」

P「よしよし」

───仲良き事は美しきかな。


P「さて、今日のお仕事について説明しまーす」

真美「はーい」

亜美「今日はどこから、金品強奪するの?」

────こらこら、人聞きの悪い。

P「今日は強奪しません」

真美「どこの山賊をちめるの?」

P「シメません」

と、言っても、この辺の豪族、華族、士族からはあらかた金品を拝借し終えたし、山賊やごろつきなんかも改心させて仲間に引き込んだ。

平和を謳うには武力と金は必須条件。
武力は出来るだけ使わない。
争いを止める為の戦に武力を使っては、それこそ本末転倒だ。

P「狙うは、 洛陽北部尉、頓丘県令に着任した曹操達───」

亜美「おぉ?ぅ!ついに決戦だね?」

真美「血で血を洗うんだね?」

───なぜ二人共、握り拳を作ってワクワクしてるのか。

P「───の武器、鎧、装備全般と物資だ!」

盛大に転けた二人を見ない様にして、続ける。

P「この、曹操ってやつは中々頭が切れるやつらしい」

P「先見の明もあるようで、ゆっくりとだが、かなりの兵を動かしてるようだ」

二人を見ると人差し指を頭に当ててソラを仰いでる。

真美「うあうあ?だから、なんなの?」

亜美「もうちょっと簡単に言って欲しいよ?」


P「つまり、戦に備えてるって事」

P「その人達から武器とか奪ったら?」

真美「困るんじゃない?」

P「なんで?」

亜美「そりゃ、戦えなくな───
 

亜美・真美「───あっ!」



P「そう。つまり、戦争が出来ないだろ?」

真美「兄ちゃんチョ→策士じゃん!」

亜美「これで戦争が無くなるね!」

P「いやいや、たかが千、二千の装備を奪っても戦争は終わらないよ」

P「この大陸には何百万もの人が居るんだから」

P「装備を奪っても焼け石に水だ」



真美「じゃあ、なんで奪うの?」

P「この作戦は足掛かりさ」

亜美「ふーん?」



P「───この国を変える為の、な」

───洛陽。

黄河の中流にある巨大な外壁に覆われた街。

賑やかなその街の中。
二人の少女は所狭しと走り回る。

店先に並んだ砂糖菓子を見ては、ほーっと感嘆し、露店で足を止めては木で作られた玩具に目を輝かせる。

その少女達を遠目に見ながら、一人の男がゆったりと歩いて追いかける。


少女達は、楽しそうに、嬉しそうに街の中を歩き回る。

そして、たまに、少し離れた所を歩く男の方に振り返る。
男が少女達に笑いかけると、二人は笑顔を返してまた走り出す。

いくつかの店を覗いては、また、振り返る。
男がちゃんと自分達に付いてきてるかを確認する。
人混みの中に男の姿を見つけると少女達はまた走り出す。
そんな中、街の中心までたどり着いた二人は足を止め、連れの男が追いついて来るの待つ。


真美「洛陽って凄いね!」

亜美「うん!こんな街に住んだらめちゃ楽しそうだよ!」

そう嬉しそうに話し込む二人に追いついた男が会話に参加する。

P「ははは。今日からこの街に住むんだよ」

亜美・真美「えっ!?」

亜美「嘘っ!ドッキリじゃないよね?」

P「嘘じゃないよ」

亜美は、興奮を隠しきれない様子で、両手を高々と上げるとくるくる回る。
喜びを表現する時はいつもこんな感じだ。

真美を見ると嬉しい反面、何か寂しそうにしてる。

P「どうしたんだ、真美?」

真美「あー、うんと、此処に住んだらもう旅はしないんだよね?」

P「そんな事無いぞ?この国を変えるには、まだまだ色んな所を見て回らなきゃならん」

真美「───!そっか!じゃあ、良い!何でも無い♪んで、どこが家なの?」


P「そこ」

指差した先を釣られる様に見た二人は目を丸くする。




真美「いやいや、兄ちゃん?」

亜美「いくら亜美達でも冗談くらい見抜けるよ?」

真美「あんな、お城みたいな立派なお屋敷に住めるわけ無いじゃん」

亜美「だいたい、見るからにお店じゃん?看板あるし」


P「ふむ。良いか?人とも?」


P「三人で今日から────」





P「───武具屋を開きます!」





亜美・真美「っ!?・・・えーっ!!?」





亜美「でも、兄ちゃん?おちごとは、ここの兵隊さんから武器とか奪うって言ってたよね?」

真美「なんで武器を盗むのに武具屋なんかすんの?」



P「これも作戦の内だ───」


───かくして、三人は商売を始めた。


武器や鎧、着物など身に着けれる物はなんでも格安で売る。

二人の少女も馴れない仕事ながらも笑顔を絶やさず、店の看板娘を勤めた。

店の屋号は765。

店は大変繁盛し、ある日、一人の士官が店の暖簾をくぐった。



P「いらっしゃいませ」

士官「この店の主人に用があるのだが」

P「この店の主は私です。して、その用とは?」

士官「この街を治める曹操様から直々の御達しである」

───ついに来たか。

士官「自衛の為に武器を新調する。その数、二千程。何日かかる?」

P「二日で御用意致しましょう」

士官「ほう。では正式な契約の内容はこの書面で確認してくれ」



P「分かりました。では曹操様に御目通り叶いますか?」

士官「曹操様は県令に御着任後、何かと多忙な御身でおられる。おいそれと、あいまみえるだ等と思わぬ事だな」

P「かしこまりました。では、此方を御手土産にお持ち帰り下さい」

士官「曹操様は、その様な金子は受け取らぬ」

P「いえいえ、失礼とは存じますが士官様への礼物でございます」

士官「ほう。では頂戴しておこうか」

P「はい。曹操様にも宜しくお伝え下さい」

士官「分かった、分かった。765屋の主はなかなか商売上手である、と伝えておこう」

頭を下げ、士官を見送ると端で見て居た亜美と真美が走り寄って来た。


真美「やったね!兄ちゃん!」

亜美「これで、作戦の半分は成功したね!」

P「思ったより早かったな。外に待機してる仲間に連絡して段取り通り動いてもらおう───」


───さらに二日後。

三人は仲間と共にたくさんの木箱を荷車に乗せ県令廷に向かった。

道すがら仲間の話し声が聞こえる。

ごろつきA「それにしても兄貴達はすげぇや」

ごろつきB「あぁ、一目見たときからただ者じゃねぇとは思っていたけどな」


いつぞやの、町のごろつき達もあの後、また亜美と真美にシメられ、仲間になった。


P「亜美、真美」

亜美「ほいほい?」

真美「ナンジャラス?」

P「そろそろ県令廷に着くから、あの二人に静かにする様に伝えてくれ」

真美「はいはい。ゴロちゃんうるさいって兄ちゃんが言ってるYo」

亜美「ツキちゃんも黙って!」

ごろつきA・B「す、すいやせん兄貴達!」


───言葉使いもそのうち直して貰おう。



~~~~~~~~~~

兵士「では、武器の確認をしても宜しいですかな?」

P「はい、こちらの木箱の中に」

兵士「ほう。これは素晴らしい装飾の槍ですね」

兵士「刃の輝きも素晴らしい。さぞ、名のある名工が鍛え上げたのでしょうな」

P「はい。曹操様の軍で使って頂く武器となると、まず、なまくら物など納められませんからね」

兵士「ははは。良い心掛けですね」

P「ありがとうございます」

P「ただ、急な事でしたので槍を仕舞う為の箱の準備が間に合いませんでした」

兵士「そちらの木箱で十分ですが?」


P「いえいえ、こんな簡素な木箱を曹操様の武器庫に入れるなど出来ません」

P「なので、槍はいつでも使える様に、全て台に立て掛けて、空箱は私共で持ち帰ってよろしいですか?」

兵士「なるほど、それで結構ですよ」

P「重ねて失礼申し上げます。して、武器庫はどちらに?」

兵士「案内しましょう」

~~~~~~~~~~

P「はー、これは見事な物ですね」

通された武器庫には沢山の武具や鎧が並んでいる。


亜美「これは頂きがいがありま───」

慌てて亜美の口を塞ぐ。


兵士「?」


───セーフ。


兵士「では、あとは我らで運び込みますので───」

P「あ、いえ、大切な商品の面倒を最後まで見ない商人がどこに居ましょうか?」

P「手前勝手で申し訳ありませんが私共の方で運び入れますので」

兵士「確かにそれもそうですね、では最後に必ず錠をお願いします」



兵士を見送ると、三人は一斉に溜め息を吐いた。





真美「それにしても兄ちゃんって口が上手いよね?」

亜美「うんうん」


P「ははは。わらじを売り歩く民草のわらべだったからな」


そう言うと二人は、ふーん。とだけ言った。
亜美と真美にはいまいち伝わらなかった様だ。


P「じゃあ、運び込みますか───」



P「───空っぽの木箱を」




一番上の木箱にだけ武器を入れて後は全部空箱の荷車を仲間と運び入れる。

後はバレない様に武器庫の武器や鎧を入れて運び出す。



ごろつきA「兄貴!」

ごろつきB「粗方終わりました!」



───兄貴は勘弁してくれ。




みんなが出払ったのを見て、武器庫の錠を掛ける。


───あ、いけない、いけない。忘れる所だった。


扉の隙間に前もって用意していた文を差し込む。




外に出ると亜美と真美は荷車の上でイビキをかいていた───。




───時刻は夕方。

沈み行く太陽を追いかける様に黄昏が迫る。


昼間は空っぽだった木箱も今はぎっしりと中に武具が詰まってる。

運び入れると見せかけ運び出す作業はなかなかの労力だったが、なんとか無事に終わった。


亜美「こんな簡単に武器とか盗み出せるなんて兄ちゃん天才だYo♪」

真美「でも、兄ちゃん?こんなのすぐバレちゃうよね?」


───真美は時々、鋭い。


亜美は頭の上に疑問符を浮かべてる。


P「確かに、このままだとすぐバレて打ち首のうえ、晒し首だな───」


二人は揃って顔をしかめてる。





P「───だから、今から街のみんながびっくりする様な事件を起こす」



そう、言うと看板娘達は目を輝かせた。


真美「お?っ!ついに真美達の出番だね?」

亜美「もう、身体が錆びついちゃう所だったYo?」



───この二人にとって退屈とは毒なのかもしれない。



P「盗んだ武器はごろつき達に765屋の倉庫に運んでもらうとして───」

P「───亜美と真美は俺に付いて来てくれ」



P「今からある場所に手紙を届けてくる。そいつが家から出てきたら作戦決行だ───」


───少し小高い丘の上。

ぽつぽつと灯のともる夜の洛陽を見下ろす一人の少女。


───ようやくこの街も落ち着いたわね。


一人ごちて、遠くの山の向こう側から川の様に伸びた星の群れを見上げる。

そんな少女に一人の老紳士が話しかけた。


「こちらにおいででしたか、伊織お嬢様」



「───あら新堂、どうしたの?」


少女がそう返すと、新堂と呼ばれた老紳士は何か言いよどんでいる。



「兵は拙速を聞くが、未だ巧久を睹ず、よ?」



少女は澄まし顔でそう言うと表情を緩めて、にひひ。と笑った。


老紳士は感心し、頭を下げる。


「仰る通りでございます」

「実は───」


───時間は少し遡る。


大きな門の前で二人の兵士が立ち番をしていた。

そこに明らかに裕福そうな出で立ちの中年が声をかける。


「急用で門を通らねばならぬ。早く門を開けろ」



中年の横柄な態度に門番達は顔をしかめる。

門番の一人が突っ返した。


「何を言ってるんだ。この門は夜間何があっても開くことはまかりならん」

「そうだ。曹操様のお達しである。分かったらさっさと家に帰れ、おっさん」


そう言われた中年は両肩を震わせる。


「貴様ら、儂が誰か知らぬのか?儂は宦官蹇碩の叔父だぞ!儂の一声で貴様らの首なんか簡単に飛ばせるからな!」


そう、言われた二人の門番は顔を青ざめた。

だが、それでも命令に従順な門番達は頑なに門を開こうとはしない。

五分ほど、押し問答を続けた末に、業を煮やした中年が街中に響き渡らんばかりに叫んだ。


「曹操と言うやつをすぐに此処に呼べっ───」




「───うっさいわね」



中年がその声に振り返ると、一人の少女が立っていた。


見た目はどこかの華族の様な身なり。
長い髪を髪留めで押さえ、額が目立つ。

ウサギを模した小さな人形を小脇に抱えた少女はまるで見下す様に中年を見やる。


「なんだ、この口の悪い小娘は?」

「は?今、あんたが私を呼んだじゃない───」


合点の行かない様子の中年。

少女は左手を腰に添え、更に右手を自分の胸に当て、威風堂々と言い放つ。




「───私がその、曹操よ!」



中年「貴様の様な小娘が曹操だと───?」

伊織「そうよ」


伊織を睨み付ける中年。
門番達は事の成り行きを見守るだけで精一杯と云った構え。


中年「馬鹿も休み休み言え!貴様の様な小娘が県令になれるわけが無かろうが!」

伊織「はぁ~。何度も何度も小娘って、少し語彙が貧相じゃない?」


中年「~っ!?き、貴様、儂を誰だと思ってる?」


伊織「宦官蹇碩の叔父でしょ?さっき自分でそう言ってたじゃない」

門番達「ぷふっ」


中年「か~っ貴様!この儂をどこまで、愚弄する気だ!?」



顔を真っ赤にして向かってくる中年を伊織は微動だにせず見つめる。

殴りかからんとする中年が鼻先まで来た時。



伊織は腰に備えた剣を一瞬で抜くと、その切っ先を中年に向けた。



伊織「いい?あんたが誰かなんて、どうでも良いの」



伊織「この私がいる限り、この門は開けない。どうしても今すぐ開けたいのなら───」





伊織「───神様でも、連れて来るのね?」






中年「ぐぐっ・・・」




伊織「門番、こいつを引っ捕らえなさい」


門番「は、はい!」


中年「お、おい、儂をどうする気だ?───」


伊織「この、伊織ちゃんの定めた事に従わない奴は、その身を持って償いなさい」

伊織「明朝、私の手で死罪に処す」


中年「ば、馬鹿を言うな!だいたい、儂はまだ、門の外には出てないじゃ───」


伊織「うっさい。黙りなさい。今殺しとか無いとあんたみたいな奴がこの先も出ないとは限らないのよ」


伊織「門番、早く連れて行きなさい。牢屋にでも、ぶち込んどいて」




伊織は冷たくあしらうと、さっと身をひるがえしその場から立ち去る。



あとに残された門番の一人が呟く。


門番「いおりんマジ閻魔様・・・」


その一部始終を物陰から見つめてた三人は同時に溜め息を吐く。


P「あれが曹操か・・・」

真美「うあうあ~、あんなの怖すぎるっしょ→・・・」

亜美「・・・亜美のそーぞーをちょーえつしてたよ」



P「力で支配する。まさに恐怖政治だな」

真美「物盗んだら絶対チョ→怒るよね?」

亜美「亜美達まだ、ちにたくないよ?」



P「でも、平和のためだ───」


真美「───あとは任せたよ兄ちゃん!」


亜美「兄ちゃんは犠牲になったけど、姉妹二人でつつまちく生きて行こうね」


真美「亜美、兄ちゃんは真美達の心の中に生き続けるんだよ」


───勝手に殺すな。



亜美「ま、冗談はさて置き、これからどうすんの?」


────この二人なら本当に見捨てられかねん。


P「まずは───」


───────
────
──


場を治めた伊織は自分の住居でもある県令廷に帰ってきていた。


伊織「教えてくれてありがとう新堂」

新堂「いえいえ」


伊織「これからも夜間にあの門から出ようとしてる町民がいたら全て私に教えてね」

新堂「心得ております。それより、先程の男を本当に伊織お嬢様が自ら処罰するのでございますか?」



伊織「そうよ」



新堂「わたくしめに、御用命戴ければ───」

伊織「気遣いは無用よ。これは私の仕事」


新堂「かしこまりました。では、その様に準備を整えておきますので、これにて失礼します」



部屋を出て行く新堂を見送ると、伊織は、ひとつ大きな溜め息を吐いた。


窓辺に歩み寄り、窓の縁に腰掛ける。


すっかり暗くなった空を見上げると、細くうっすらとした月が見えた。


もう一度溜め息をひとつ。



───本当にこの私が人を殺せるの?



違う。



やれるのか、じゃない。

やらないといけないんだ。


少し震える右手を左手で力強く押さえる。



「全ては王に成る為。この国を守る為───」



そう呟いた時、新堂が慌てた様子で部屋に駆け込んで来た。


伊織「あら、どうしたの?」


新堂「申し訳ありません。どうやら先程の男に逃げられた様です」

伊織「は?牢の見張りは何してたのよ?」


新堂「それが、私が牢屋に行くと破られた牢屋の側で見張りは気絶していまして───」

伊織「牢屋に案内して頂戴」


それだけ、言うと伊織は自分の剣を乱暴に掴みとり駆け出した。

──────
────
──

中年が牢屋に入れられた直後。

松明の灯りだけがほの暗い牢屋を照らす。



中年「ここから出してくれ!頼む!」


牢屋の見張り番はずっとこの調子で叫び続ける中年を見て苦笑いをするしか無かった。


中年「よ、よし!じゃあここから出してくれるなら褒美をやるぞ!金か?身分か?」

見張り番「そんなもんいらねぇよ。おっさんを逃がしたら、こっちが殺されるんだよ。てめぇの命が一番大事さね」

中年「ぐ・・・頼む・・・頼む───」


それでも中年は、すがる様に懇願する。


見張り番「曹操様に言ってくれ」


そう言って見張り番は壁際の椅子に腰掛けると、力無くうなだれた中年を一瞥し、自分の持つ槍の穂先を磨く。


ふいに暗闇の中から声が聞こえた。

すいません。

今日はこの辺で終了します。

まず、もしここまで読んでくれた人が居るならありがとうございます。

前半はイマイチ感覚が掴めなかった為、読みづらさ全開でお届けしました。

読み難さにも耐えてここまで読み進めれた人は、まさに亜美真美マスター、もしくは三国志マスターの称号を得た人達なのでしょう。

そして、登場して無いキャストのクロスに悩んで居ますので、良かったら意見や、アドバイスをお願いします。

とりあえず弥生は黄巾の張角にするつもりです。

では、また、明日同じ様な時間に投下します。

ありがとうございました。




まず、みなさん、この様な初心者にレスありがとうございます。

モバマスのアイドル達は登場しません。

ネタバレかもしれませんが、出そうかとも考えたものの、登場人物増やすと、私の力量から、どうしても誰かに殉職してもらわないと山場が作れなくなりそうなので諦めました。

美希は、三国志の主役級のあの人ですよ!あの人!

三国志を勉強しながら書き出して、あぁ、恋姫武双というアニメがあるのか・・・と絶望しました。

見た事が無いのでネタかぶり、役かぶり、などあるかもしれませんが、生暖かい目で見守って戴ければ幸いです。

自分語りは、この辺で、投下開始。



───新堂に案内され、牢屋にたどり着いた伊織はあまりにも信じられない光景に困惑していた。


伊織「何よ、これ───」

伊織「───牢の鉄格子がスッパリ切断されてるじゃない・・・」


伊織「こんなの人間業じゃないわ」


そう言って、被りを振る。


伊織「新堂!そこに倒れてる見張り番を起こして」


新堂は見張り番を抱えると活を入れる。
見張り番はガハっと咳込むときょろきょろと辺りを見回した。


伊織「何があったのか説明しなさい」


見張り番「あ、え、あ!?曹操様っ!?すいません!ど、どうか命だけは───」


伊織の姿を見た見張り番は青ざめながらわめき散らす。


伊織「───良いから、説明しなさーいっ!」


突然声を張り上げた伊織に、見張り番は少し戸惑い、首を傾げながら思い出す様に説明しだした。



見張り番「それが・・・そこに突然少女が現れて」


と、見張り番が出入り口の暗がりを指差したので伊織もそちらを自然と向く。


見張り番「気付いたら、その・・・倒れてました」



伊織「は?」



見張り番「少女に後ろから殴らて」



伊織「は?あんた、女の子に殴られて気絶したの?情けない───」


伊織「───情けなさすぎて言葉も出ないわ」


伊織「それにしても、にわかには信じれないわ」

伊織「鉄格子を一刀両断出来る少女なんて、存在するならお目にかかりたいものね・・・」


───きっと仲間が居るんだわ。



見張り番「えーっと、それで、曹操様・・・私の処罰は・・・」


伊織「そうね。じゃあ、今すぐ選びなさい」



伊織「ここで、自決するか」



伊織「それとも、この私に一生尽くして生涯を終えるか」




見張り番(いおりんマジ菩薩様)



───場所は変わって、牢屋から少し離れた街の隅。

暗闇に紛れ二人の影が走り抜ける。


亜美「ちょっと、おっちゃん?もう少し早く走れないの?」

中年「お、おっちゃんとはなんだ!これでも精一杯走っておるわい!」


亜美「もう少し痩せた方が良いんじゃない?」

中年「貴様この私を誰だと───っ」

亜美「───あ!兄ちゃん!連れてきたよんっ☆」




P「おう、任務ご苦労さん!流石亜美だな」


亜美「でしょー?もっと褒めても良いんだよ?」


などと会話しながら亜美の頭を撫でると、亜美は照れた様に、はにかんだ。


中年「ぜぇ・・・ぜぇ・・・助けてもらった事には感謝する。貴君の名は?」


P「劉Pと申します」


中年「劉・・・?あぁ、あの武器屋の主か?」


P「まぁ、挨拶はこの辺りにしないと、そろそろ追っ手が───」

中年「───おぉ、そうじゃ!早くここから逃げんと・・・しかし、どうやって?」


三人の目の前には街をぐるりと囲む、巨大な壁がそびえ立つ。


真美「兄ちゃん!」


巨大な壁の上から真美が顔を覗かせた。


P「真美!首尾はどうだ?」

真美「準備ばっちりみたいだよ?」


P「OK。じゃあ、頼む!」



P「あ、少し離れて、耳を塞いだ方が良いですよ?」

中年「は?何故じゃ───」


中年がそう言い終わる前に、地面が揺れる程の轟音と共に巨大な壁の一部が吹き飛ぶ。


辺りは一体は煙りに包まれ、パラパラと壁の欠片が落ちてくる。



真美「じゃーん!大☆成☆功☆」


そう言って、壁に出来た大穴から真美が顔を出す。


P「ごほっ。ちゃんと火薬の量、調節した?」


真美「え?ちゃんと兄ちゃんに渡された分、全部使ったよ?」


───余分目に渡した俺がいけなかった。


亜美「けほっ。あれ?おっちゃんは?」


亜美達と見回すと少し離れた場所で中年が倒れていた。


───しまった。爆発に巻き込まれて吹き飛んだのか。


中年はぴくぴくしている。


真美「あ、生きてるね」




亜美「あ、死んだ」



───いや、生きてるし。



・・・生きてるよな?



───場所は戻って牢屋の外。


伊織「新堂っ!?今の轟音は何?」

新堂「火薬が爆発した音でございますね」


牢屋の中にまで響き渡る轟音に伊織達は慌てた様子で牢屋の外に出てきた。

音の出所を探るように見渡すと、街の隅に煙が上がっているのが見える。


伊織「新堂!今すぐ兵に連絡をして!」

伊織「煙のあがった方にとりあえず二百。残りはいつでも動けるように待機。馬も出来るだけ用意しといて」


伊織「脱獄の手引きをした者はかなりの手練れよ!」

伊織「兵は皆、武器庫から武器を出せと伝えて」


伊織が言い終わると、新堂はひとつ御辞儀をすると風の様に、伊織の目の前から走り去った。


伊織「この伊織ちゃんから逃げられる、だなんて思わない事ね───」


呟く様に伊織がそう言うとその言葉を否定するかの様な
、爆発音がまた街の中に響いた。


伊織「───な、な、何なのよ、一体っ!?」


煙の上がった方角には武器庫がある。

嫌な予感に、思わず走り出していた───。

──────
────
──



真美「───んっふっふー♪おっちゃんの顔チョ→真っ黒だYo!」

中年「うるさいっ!誰の所為でこうなったと思ってるんじゃ!」


なんとか立ち上がった中年の顔はススだらけになっていた。


P「すいません」


中年「あ?いやいや貴君が謝る事は無い───」


P「───いえ、あなたが、こうなったのは俺の所為です」


中年「は?いやいや何を───」


P「───あなたは禁止されているのにも関わらず、夜間外出を試みた」

※この場合の外出は街の外と言う意味です。


中年「あぁ、気付くと玄関に手紙が届いておってな」


P「ちなみに文の内容は?」


中年「朝廷に危機が迫っておると───」


P「はい。その手紙は俺が届けました」


中年「なんと!貴君には助けられてばっかりじゃな───」



P「───いえ。その手紙は俺が書きました」



中年「は?」






P「各地では反乱を企てる農族達が後を絶ちません」

P「このままでは、本当に大規模な反乱が起こってしまいます」


P「そして、膨れ上がった熱は、やがてこの国を焼き尽くし、戦は終わりを迎えるでしょう。しかし───」




P「───後に残った焦土と化した大地の上に咲く花などありましょうか?」




中年「───っ!」



中年「・・・貴君の考えは分かった」


中年「しかし、たかだか武具屋の主に何が出来る?」




P「この身を賭して、この大陸を救います」




中年「───!?」


中年「はっはっはっ!」

中年「民でも無く、この国でも無く、この大陸を救うと申すか!」


中年「面白い───」

中年「───実に愉快な戯れ言じゃ」


中年「だが───」


中年「───貴君の眼を見ていると、遠く無い未来の姿が浮かぶ」



中年「大地は潤い。民が笑う。豊かな大陸がな」





中年「よし。儂も腹を括ろう。儂に何をさせたいのじゃ?」


P「まずは────」

その時、大きな爆発音と共に煙りが上がる。

その場に居た四人は見上げる様に音のした方角を見る。


亜美「武器庫の方だね。真美がしたの?」

真美「いやいや、真美じゃないYo!真美ここに居たじゃん!?」


P「ごろつき達も上手くやってくれてる様だな」


亜美「え?ゴロちゃん達の仕業?」


P「あぁ。次は───」


みんなを壁の穴から街の外へと誘導する。


街の外に出ると中年は驚愕した。



中年「この大勢の男達は───」


松明を片手に馬に跨がる、数にして二百ほどの男達。


P「俺達の仲間です」




P「今から、彼等に盗っ人の振りをしてもらいます」




中年「は?盗っ人じゃと?」


P「実は今日、曹操達の武器を粗方奪ってうちの倉庫に隠しました」



中年「は?───は、はっはっはっ!まこと貴君は面白い!底が見えぬわ!」


中年「なるほど。バレてしまう前に先手を打った訳じゃな?」


P「はい。名付けて───」



P「追いかけて、逃げる振りをして、もっと追って私、盗賊作戦!」




真美(兄ちゃんって)

亜美(ネーミングセンス無いね)





武器庫に着いた伊織は、その現状にまたも困惑していた。

───何よ、これ?

武器庫の側面、その壁に大きな穴が空いている。

武器庫の見張り番は気絶して倒れている。


───牢屋と一緒・・・。



新堂「───お嬢様!」


伊織の元に新堂が駆けてくる。


伊織「ちょっと新堂!何よこれ!?」


新堂「それが・・・」

新堂「私が着いた時はすでにこの有様で」

新堂「扉に、この様な文が挟まっておりました」


新堂から文を受け取った伊織はワナワナと肩を震わせた。

文にはこう書かれていた。



───貴公の武器は我ら大義賊《双龍》が頂戴した────




伊織「馬鹿にするにも程があるわ!」

伊織「何よ双龍って!ムっきゃーっ!」


伊織は髪を振り乱し、地団駄を踏む。

そんな、伊織を諌めるように新堂が提案する。


新堂「盗賊を追うのに三百。街の警戒に二百で宜しいですか?」



伊織「盗賊に四百!新堂が指揮を執って追いなさい!」



伊織「盗賊はたくさんの武器を持って逃げてるはずだから必ず追いつけるわ!」



伊織「門も開けて構わない。急ぎなさいっ!」



新堂「はい。ではその様に」


そう、言って新堂は目の前から消える。


───何でこんなに間が悪いのかしら。

言い得ない不安が胸を絞めつける。


伊織は武器庫の見張り番をたたき起こして叫ぶ。


伊織「いつまで寝てるつもりっ!?ここに兵を集めなさいっ!───」



──────
────
──




騒がしく門を開け、馬に跨がった兵士達が飛び出してくる。

少し離れた丘の上に群がる様な松明の火を見つけた新堂。
兵士に指揮を送り、窃盗集団を追いかける。


兵士達を見送りながら門番の一人が欠伸をする。
それに釣られたのかもう一人の門番も大きく口を開けた。

門番達は競い合う様に欠伸した後、何気なく振り返ると二人の少女がニコニコしながら門番達を見上げていた。



「こんな時間に、子ども?」



「亜美だよ!」「真美だよ!」




門番達も例に漏れず、一瞬のうちに気を失った。


中年「いや、それにしてもお団子の方はこの目で見てたから腕が立つのは知っていたが」

中年「尻尾の方もなかなかのもんじゃな」


P「ははは。俺も二人に助けられたんですよ」


亜美「亜美がお団子?」

真美「じゃあ、真美が尻尾?え~~っ!?」



騒ぐ二人の頭にポンと手を置く。


P「よし。残りの仲間も門の中に入れてしまおう」


松明を振って、街の外に潜む仲間達に合図する。

茂みの中から、ぞろぞろと柄の悪そうな男達が出てきた。

元は山賊や、盗賊、町の悪人など、およそ八百人が門の前に集まる。


P「みんな来てくれてありがとう。あとに残るは曹操だけだ」


そう、言うと集団から歓声が上がるが、両手で収める。


P「いいか?俺達は兵士でも無いし、ましてや山賊や盗賊でも無い。義賊だ」

P「町民には絶対に危害を加えるな」


みんなが頷いたのを見て続ける。


P「ごろつき達が大多数の兵士達を惹きつけて逃げてくれてるおかげで街の警備は手薄」


P「ごろつき達を追う兵士達もまさか手ぶらの盗賊を追いかけてるとは思わないだろう」


P「だが、すぐに諦めて兵士達が帰ってくる可能性もある」

P「だから、帰ってくる前にケリを付けたい」

P「そして、街に残ってる兵士達もなるべく傷つけないで欲しい」

P「牽制しながら街の中央に追い詰めてくれ」



P「今、この時から俺達の手で歴史を動かすんだ───」


P「───いくぞ!」


男達は一際大きな歓声を上げ、我先にと街になだれ込む。


───完全に街を襲撃する盗賊だな。


まぁ、みんな上手くやってくれるだろう。


外に出て行った兵士達もいつまでごろつき達を追いかけてくれるか分からない。

帰ってきた兵士達を街に入らせない為に門を閉める。

門の端で気絶している兵士達を縛り、真美達と街の中央に向かう。


───さて、この作戦の総仕上げだ。



──────

────

──



伊織は三度、困惑していた。

たくさんの荷物を抱えた盗賊達など、すぐ捕まえられるとタカを括っていた。

だが、新堂達は一向に帰ってくる気配も無い。


───何かおかしい。


考えを巡らせていると、一人の兵士が慌てた様子で叫んだ。



「敵襲!────敵襲っ!!」




敵襲を知らせる鐘が鳴り響く。


───は?


脱獄騒ぎの次は盗賊騒ぎ。

盗賊騒ぎの次は夜襲ですって?


こんな非常事態にまた非常事態が重なるなんてありえない。



伊織「敵の数は?」


兵士「分かりません!ただ、正面門から街の中に押し寄せて来てます!」


伊織「あぁ、もうっ!門番達は何してるのよっ!?」



伊織「各員、戦闘に備えなさい!」


兵士「ですが、兵士達は軽装で武器を持ってる者は少数で・・・」


伊織「武器なら武器庫に────」


そう言いかけて、絶句する。


────武器は盗まれたんだった。


伊織「と、とりあえず民を守る事を最優先に───」



「───伝令!───伝令っ!!」



───ああっ、もう!今度は何よっ!


「賊達に押しこまれる形でほとんどの兵士達がこの、県令廷に───」




伊織「被害はどれくらいなの?」


「そ、それが、軽傷多数ですが、ほぼ無事です・・・」


───はぁ?


伊織「町民は?」


「賊に襲われた様子もありません」


───訳が分からない。


何が起こってるの?


「続けて、進言します!賊の頭領だと言う男が曹操様にお目通りを、と───」


伊織「───分かったわ。どんなヤツだった?」



「それが、見るからに優男で・・・とても賊の頭領には見えませんでした」



───はぁ?



~~~~~~~~~


県令廷の周りは混沌としていた。

入り口にはここを死守せんと兵士達が賊を牽制している。

だが、その賊はにじり寄るばかりで、一向に攻撃をしてこない。


伊織は、ひとつ息を吸い込むと高らかに名乗る。



「───控えなさいっ!我が名は曹操!曹操伊織!」



場は静まり返り、空気が張り詰める。



「賊の頭領はどいつかしら?」



県令廷に押し寄せた賊の集団の中から細身の男が出てくる。




「お初にお目にかかります」



「私、曹操様のお膝元、この洛陽で765屋と言う武具屋を勉めます───」



「───名は」






「劉P───と、申します」












ありがとうございます

今日もまったり投下して行きまーす

伊織「───765屋?」


伊織「あぁ、うちの士官に武器の調達を頼んだらアンタの所に注文したのよね」


P「えぇ、この度はまことにありがとうございました」

P「つきましては、鎧などのお召し物もどうでしょうか?」


伊織「はっ。こんな時も商売の話?アンタ面白いわね」


伊織「考えても良いわ───」



伊織「───ただし!あんたが、罪を認めたらね?」




P「はて?私の罪とは?」


伊織「惚けるんじゃないわよっ!」


自分の声の大きさに驚いた。


いつも、自制してきたはずなのに今日はおかしい。

立て続けに起きた出来事に心を乱されたから?


───いいえ。


この私をこいつはコケにした。
今もへらへらと受け流した。
それに心が乱されてる。

───コイツむかつくっ!

でも、こんな安い挑発に乱される自分の心根の弱さに、もっとむかつく!


───絶対に足下に這いつくばらしてやるわ。
 



伊織「こほん、とぼけないでもらえるかしら?」


伊織「今日は、何から何までおかしかったのよ」



伊織「今まで禁を犯す町民なんていなかった!」

伊織「それなのに今晩は外に出ようとする奴が居た!」


伊織「そして、そいつが脱走した!」


伊織「続いて、爆発騒ぎ」

伊織「それも二回もよ?」


伊織「武器庫が壊されて武器が盗まれた!」



伊織「そして、極めつけがアンタ達の夜襲よっ!」



伊織「この全ての事件は繋がって無いと逆におかしいの~~~~~っ!」


───はぁ、はぁ。


伊織「はぁ、あ、アンタの言い分は?」



P「曹操様は私が一連の首謀者だと仰られましたね?」



P「私共は、ただ曹操様にご進言致したくて参った次第でございます」

P「遅ればせながら、この様な夜分に失礼致しました」



P「しかし、事とは、いつも急を要すものなれば───」




P「曹操様のその御身を一番に案じた上での無礼と理解致しませよ!」





伊織「あ、あんた、この私に命令するつもりっ!?」


P「これは、失礼しました」


あっさりとそう言って、頭を下げた男の態度に肩透かしを食らう。


───なんなのよコイツはっ!?


伊織「わ、分かったわ。とりあえずアンタの進言とやらを聞いてあげるわ。感謝しなさい?」


P「恐悦至極に───」


伊織「───そんな前口上はいらないわ?」


P「では、失礼して、御進言申し上げます───」


いつの間にか県令廷の周りに、町民達も集まってきていた。


P「───まず、第一に」



P「ここに集まりました者達を、曹操様の配下に加えて頂きたく存じます」



───は?


伊織「あ、アンタ、何言ってんの?」


伊織「───っ!何を、いけしゃあしゃあとっ───」


───ここまでの騒動を起こして置きながら・・・

そう続けようとしたが、男が遮った。


P「第二に───」


P「曹操様には栄転と言う形で本拠地を移動して頂きたく存じます」


───は?


P「第三に───」


───まだあるのっ!?




P「いずれ来るその時に、一度だけ俺の願いを聞いてくれないか?」



───?

──────っ!?


急に口調を和らげ、優しく微笑んだ男。

なぜか、自分の鼓動が早くなる。


───何?何なの?何なのよっ!この男は!?



危ない。コイツは危険だわっ。

もう一人の自分が警鐘する。


コイツのペースに乱されてはダメ。
そうよ。冷静になるのよ。

まず、話を伸ばす。

新堂さえ、帰って来れば賊を挟撃出来るかもしれない。

少なくともコイツをなんとかすれば後はクモの子を散らす様に逃げるはず。


───いけるっ!



伊織「アンタの言い分は分かったわ」


伊織「でもね、アンタが連れて来たどこの馬の骨とも分からないヤツを私の配下になんか置けない」



伊織「それこそ獅子心中の虫。よ」



P「確かに。曹操様は、まこと御聡明であられます」


なんか、コイツの誉め方は馬鹿にされてるみたいで癇に障るわ。

まあ、良いわ。
とりあえず引き伸ばさないと。


伊織「二つ目も、それが出来るなら願ったり叶ったりだけど」



伊織「栄転なんて大金を積むか、相当の後ろ盾が無いと出来ないもんなのよ」


伊織「私がここまで、登り詰めるのにどれだけのお金を注ぎ込んだと思ってんのよ?」



伊織「アンタが一生遊んで暮らせる額よ?」



伊織「簡単に出世しろだなんて言わないで」


伊織「アンタが言う程、軽い道程じゃ無かったの」


伊織「分かった?」


P「えぇ、分かっておりますとも」


───何をニコニコと頷いてんのよ!?


伊織「三つ目に至ってはアンタなんかの、お願いを聞く理由も意味も無い」


伊織「どう?反論は?」

P「ふむ」


P「では、まず一つ目から」



P「曹操様の仰られる通り、この者達は、町のごろつきや、札付きの悪党───」


P「───果ては、山賊や盗賊など。人を殺めた事すら、あるやも知れません」


P「しかし、そんな者達だからこそ───」


P「───心からこの国の行く末を憂いております」


───はっ。詭弁もいいトコだわ。


P「詭弁と仰られますかな?」


伊織「そうね。他人を殺すような奴らに国が守れて?」


P「戦で兵士が人を殺すのと何が違いましょうか?」


伊織「それこそ詭弁よ」


P「兵士は民を守る為に殺し、彼等は自分を守る為に殺した?」


P「それこそ、思い違いです」



P「彼等はこの国を捨てたのです」




P「民に捨てられた国など誰がまつろいましょうか?」




P「新しい国を作る為に今、彼等は戦うのです」



P「彼等は必ず曹操様の覇業を支え、尽力を尽くす事でしょう」


伊織「───・・・二つ目は?」


P「お聞かせしましょう」


P「まず、栄転の件でございますが───」





中年「───ようやく、儂の出番じゃな?」



伊織「あ、あ、アンタ!脱獄して逃げたんじゃ───」

伊織「───と言うかどの面下げてこの伊織ちゃんの前に出て来てるのよっ!?」


P「まぁまぁ、落ち着いて」


伊織「───いやいや、そもそもやっぱりアンタが脱獄の手引きをしたんじゃないっ!」


P「はて?私はこの貴人が先程、街を徘徊してた所を見つけただけでございますが?」




P「脱獄とは?はて?」



───やっぱりコイツむかつくわ。


中年「続けて良いか?栄転の件じゃが───」



中年「───儂が朝廷に貴君を推挙しようじゃないか」



伊織「は?私は、アンタを殺そうとしたのよ?」


中年「はっはっはっ。過ぎた事では無いか」


伊織「いやいや、私の中ではまだ現在進行形よ!?」


伊織「いつどこからでも綺麗に殺せるんだからねっ!?」





P「曹操様・・・剣をお引き下さい」



中年「話を戻して良いかな?」


伊織「っ!勝手にしなさいよ」



中年「実は、先程この劉Pと言う男に諭されてな───」



中年「───曹操様は、いずれ一国の主となる器だ。と」



伊織「───っ!ま、まぁ、この伊織ちゃんだもの、当然よね!にひひっ♪」




亜美・真美(チョロい)


伊織「こ、コホン。それで三つ目は?」



P「ここで、先に言っておく」

P「盗賊を追い掛けた兵士達を待ってるみたいだけど」

P「門を閉めてるから入ってこれ無いぞ?」



────っ!?


何なのこの男!まるで、見透かされる様な───。

いえ、全てはコイツの手の中なのね。

やっぱり危険だわ。

今の内に殺しておこうかしら?



P「それを踏まえて聞く」



P「三つの願いを聞き届けてくれるか?」



───拒否権は最初から無い・・・か。


でも、私にも意地ってものがある。


伊織「分かったわ」


伊織「ひとつ勝負をしましょう」



伊織「アンタ、私と剣で戦いなさい!」


P「分かった」


短く了承した男は二対の剣を構えると、おもむろに言った。


P「さぁ、どこからでもかかって来い!」


───?


伊織「アンタ、私を馬鹿にしてるの?」


伊織「その剣、模造刀じゃない!」


P「バレたか・・・」


伊織「いやいや、アンタ、頭おかしいんじゃない!?」


伊織「そんな刀で一体、何を斬ろうってのよ?」





P「俺はこの二対の刀でこの国を斬り崩す!」







───うわぁ。


亜美・真美(うわぁ。すっごいドヤ顔)



伊織「と、とにかく、そんな剣じゃ勝負にならないわ」


───興醒めよ。まったく。

私のプライドも、その辺の野良犬にでも食べられちゃったみたいだわ。


P「そうか。じゃあ、この剣を預かっててくれ」



伊織「は?」




P「この刀は何も切れない」



P「だから俺は裏切りもしない」



P「その誓いをこの一対に込め、今ここに預ける」




伊織「え、あ、あの────」




伊織「───あ、ありが、とう」


───何よ。




ちょっと・・・格好良いじゃない。




伊織「わ、分かったわ」


伊織「そもそも、私に取って損になる話でも無いし」


伊織「アンタのお願いってのがちょっと引っかかるけど・・・」


伊織「まぁ、アンタならそんな変な願いもしないでしょうし」


伊織「アンタの了見、全部受けるわ」






伊織「この戦。アンタの勝ちよ」




一際大きな歓声が響く。

ようやく洛陽はその長い夜を越え、朝日が差し込む。

真新しい光を浴びて、街が彩度を増していく。



伊織「ねぇ、このためだけに武器を盗んだの?」


P「武器を盗んだ理由っていうならそうなるな」


P「まぁ、先行投資ってやつだ」


伊織「はぁ?」



P「必ずこの先、大きな争いがある」

P「その戦火はきっと大陸全土を飲み込むだろう」


P「それを止めたいと思ってる」


伊織「仲間になれって事かしら?」


P「無理にとは言わない」

P「俺はただ、民を守りたいだけだ」


伊織「───ぷっ。あはは!アンタ面白い奴ね」


伊織「まぁ、この伊織ちゃんに今、恩を売るってのは間違って無いわ!」


伊織「私は絶対にこの世界の覇者になるもの♪」


伊織「その審美眼だけは誉めてあげる」



───この男となら、共に覇道を歩めるだろうか?

そんな事をぼんやりと考えていた。



伊織「ねぇ、アンタ───」


───私のモノになりなさい。


そう、言いかけてやっぱり飲み込んだ。


風の様にひょうひょうと。

そんなもの、きっと手では掴めない気がした。

私が王になるまで我慢しといてあげるわ?


にひひっ♪

伊織「まさか───」


伊織「───僅か二日で栄転が決まるとは夢にも思わなかったわ・・・」


中年「はっはっはっ。全て儂の推挙のおかげじゃ」


伊織「うっさい!おっさんは黙りなさい!」


暖かな日差しの中、洛陽の門の前には伊織達を見送らんと沢山の町民が押しかけていた。

ある者は別れを惜しみ。
ある者は新たなる旅立ちを祝福する。



P「餞別だ。持って行ってくれ」

伊織「これって!?───」


伊織の目の前に沢山の木箱が並ぶ。


P「武具。数にして三千」


伊織「───驚いた。まさか二日で用意するなんて」


伊織「でも、結局アンタは私に付いて来ないのね───」


P「あぁ。あいつらを頼む」


伊織「───分かってる」


P「どうした?何か元気無いな?」


伊織「───っ。うっさい!」


P「変な奴だな。ははは───」


伊織「うるさいっ!伊織!伊織よっ!」


P「───はは、は?」


伊織「と、と、特別に伊織って呼び捨てで呼ぶ事を許可するわっ!だ、だから───」


P「───おう。また、必ず会おうな。伊織」


伊織「───っ!えぇ」

伊織「すぐに私の武勇をこの洛陽まで轟かせてやるんだからっ!にひひっ♪」


P「おっ。伊織は笑ってる方が可愛いな」


伊織「───ばっ、バッカじゃないの!?変態!ド変態っ!変態ターレンっ!」


P「ははは───」


出立の合図が鳴る。

銅鑼の音は徐々に大きくなり、旅立つ兵士達の未来が伸び広がる様に祈願する。


伊織「───ってる」

伊織の声を掻き消す様に、銅鑼のリズムは早くなりやがてクライマックスを迎えた。

P「───?」

シャン。と鐘の音が止まり、伊織は馬車に足をかける。


P「伊織?何て言ったんだ?───」


伊織「───にひひっ♪次に会った時に教えてあげるっ!じゃあね」

そう言って馬車に乗り込んだ伊織に手を振り見送る。
 



中年「では、儂もやることが山積みじゃし、そろそろ行こうかの」


P「お世話になりました。このご恩は必ず」


 
中年「はっはっはっ!かまわんかまわん」


中年「その代わり、儂が生きてる間に天下太平の世を見せてくれ」


P「えぇ。約束します!」


中年「では、置き土産代わりに人を紹介しよう」



中年「荊州に司馬徽と言う者がおる、彼の地を訪れた際は立ち寄られよ」


中年「必ず貴君の力になってくれるはずじゃ」


P「分かりました。ありがとうございます」



中年「では御武運を」

P「はい。御武運を」



中年を見送った後、ひとり765屋に帰る。


───あいつらが居ないだけで静かなもんだな。


ふと、一人で旅して居た頃を思い出す。

見聞を広げるという名目で父から多少の蓄えを貰い、気の向くまま旅をした。


───あの頃は、ひとりで居る事を孤独だとは思わなかったんだがな。

 
    《次回予告》

    たたたたん♪


「来週のアイドルマスター三国志は───」


♪ぱーぱーぱぱー
  ♪ぱっぱーぱぱー


やよい「えっと、そーてん、すでにしす。」

やよい「きて・・・?───こうてん?」

やよい「こう、てん、まさ───に、たつ、べし。」

やよい「うっうー!ちゃんと言えましたーっ♪」


今日の投下はこれで終了です。

ここまでありがとうございました。

まず、最初にすいませんでした。

当初予定していたのは伊織との邂逅。
武器を盗むだけで終わる予定でしたが、Pさんが勝手に動いたので、あんなラストになってしまいました。

ちなみに亜美真美が張飛と関羽なのはキャスティングの際、兄ちゃんと呼ぶのが亜美真美だけだったので。

その後、じゃあ、Pが劉備だな。
劉備・・・P・・・劉P!ティンと来た!
と、完全な見切り発車です。はい。すいません。

春香さんに合うキャスティングがまだ、見つかっていないため、このまま行くと春香さんが出てこない可能性すら有ります。

一抹の不安を残しつつ物語はたんたんと進行します。
果たしてわた春香さんの出番はあるのか・・・

レスありがとうございます。
一つでもレスがつくと頑張れます!

十人くらいは見てくれてるはずだと思って書いてます。

次回予告通りやよい編、投下して行きます。

この辺りから物語は動きを見せます。

───とある山中。

生い茂る森の中で山菜を摘む一人の少女が居た。

あらかた辺りに生えた山菜をカゴの中に入れると裾で額に滲む汗を拭う。


「今日もたくさんのおかずが採れました!」


誰に言うでも無くカゴを背負い、明るく元気に朗らかに笑う。saga



そんな彼女の家庭は極めて貧しく、日々を生きていくだけでも大変な苦労。
この時代では決して珍しい事では無いが、彼女の生活は下の下。

更にその下。

そんな最低辺の生活の中、それでも彼女は笑顔を絶やす事無く、生きていく。

沢山の兄弟が飢えながら彼女の帰りを待っている。

嬉しそうに、美味しそうに山菜を食べる兄弟達を想像する。
それだけで、両肩に背負ったぎっしりと山菜が詰まったカゴの重さも自然と苦にはならない。

足下に気をつけながら山道を下る。
半分ほど、下った所で不意に声を掛けられた。



「───もし、そこのお嬢さんや」


「はわっ!?私ですか?」


少女が驚き振り向くと、そこには長く伸びた白髭をこさえた老人が立っていた。


「うむ。人はわしを南華老仙と呼ぶ」

「ものは相談だがその肩に背負った山菜を少し分けて貰え無いかな?」


「えっ?駄目です!この山菜は兄弟の為に───」

「───それに、山菜ならたくさん生えてるからお爺さんも自分で採れば良いんじゃ・・・」


「そうしたいのもやまやまなんじゃが、儂は目が見えぬでな」

「もう、ここ数日、霞しか食べておらぬ故───」



「えぇっ!?お爺さん私の妹食べちゃったんですかっ!?」


「妹?」


「はい。私には、かすみという名前の妹が───」


───あれ?

自分でも可笑しな事に気づく。


───家を出るとき、かすみに見送られたのになぁ。

なんて思ってると老人は笑って答える。


「ほっほっほっ。何か勘違いしておるようだが、霞とは、空気のようなもの」


「えぇっ!?お爺さん空気しか食べて無いんですか?」

「それじゃあ、お腹ペコペコですよね!?───でも・・・」


───うぅ。

カゴをチラリと見る。
自分の分を我慢すれば足りなくは無い。


「じゃあ、これ少ないけど、どうぞ!」


「おぉ、すまんのぅ。しかし、兄弟の分が減ってしまったのぉ───」

「───そうじゃ、これを持ち帰りなさい」


老人がそう言って手を差し出したので反射的に手のひらで受け取る。
手のひらにはちょこんと小さな丸い物体。


───お豆、さん?


首を傾げる少女に老人が続けていう。



「それは、萌子。うちに帰って濡らした布の上に置いて置きなされ」

「しばらくすれば芽を出す。それは万病にも効く食べものじゃ」


そう言われて手のひらの萌子から視線を戻す。


「わぁっ!ありがとうござい───、ます?」


そこに居たはずの老人は、忽然と消えていた。


───あれ?

狐にでも化かされたかの様な出来事にまたも、首を傾げる。

立ち尽くす山の中に老人の声がこだまする。


───そなたの優しさは、まさにこの大陸を包む天にも似ておる。
天に代わりて宣化し、その優しさであまねく世人を救うべし───


ざわざわと木々は揺れ。

近くの沢からは水のせせらぎが。

手のひらの萌子を眺める。



「うっうー!良く分からないけど、ありがとうございましたーっ!」



──────
────
──



「ねぇねぇ兄ちゃーん、いつまで歩くの?」


「・・・安宿が見つかるまで」


「真美、もー疲れたYO!」

「亜美も!もう歩けないーっ」


不満そうにしゃがみ込んだ姉を見て、倣う様に妹も地面に座り込む。


───まったく。ホント困った奴らだな。


「はぁ・・・仕方無いだろ?争いが酷くなってきてるから安い宿はどこも閉まってるんだよ」


「じゃあ、そこの宿で良いじゃんか→」

姉が指差した先には、どこかで見たような絢爛豪華な宿がそびえ建つ。


────この流れはマズい。


「そうだNE!そうしよう!」

目を輝かせ、妹が同調する。


ひどい既視感に襲われ、ひとつ溜め息を吐く。


「分かった。分かったよ」


両手を上げて降参の構えを見せると姉妹は嬉しそうに飛び上がった。

それを見てまた溜め息をつく。


───だから、動けないんじゃなかったのか?


二人に引っ張られながら旅館の前まで来ると、外壁に大きな落書きを見つけた。


亜美「もえ、こ?」

真美「誰かの名前かな?」


二人が人差し指で額を押さえている。
二人のシンキングポーズに倣う。

うーん・・・と唸っている三人に宿の主が声を掛けた。


店主「もやし、と読むそうです」


P「もやし?」


店主「えぇ、何でも万病に効く良薬だとか」


P「へぇ。でも何でそんな落書きが?」


店主「あぁ。黄巾族の仕業ですよ。まったく困ったもんだよ」


亜美「こうきんぞく?」

真美「なにそれ?おいちいの?」


店主「何でも、張角と云う人物を奉った集まりで、目印は黄色い頭巾」


店主「蒼天已死、?天當立───」


店主「───祭在萌子、天下大吉。と民衆を煽り、朝廷への謀反を企てているとか」


P「それは何とも物騒な話ですね」


店主「えぇ、それで、注目を集める為に萌子と落書きして回ってるらしいです」


亜美「そーてんすでにしす?」

真美「兄ちゃんどーゆー意味?」


P「ふむ。考えるに───」


P「天の威厳は地に堕ち、黄巾が天に代わらんって事かな?」


亜美「うぁうぁ~~、兄ちゃん難しいよ?」

真美「つまり、どういう事だってばYo!?」




P「朝廷には任せて置けねぇ、おいちょっとそこ代われって事」




二人は興味をなくしたのか、ふーん。とだけ呟いて宿の中に入っていく。

二人の背中を追いながら考える。


───黄巾族・・・か。



ふむ。


店主「どちらのお部屋をご用意しましょうか?」


P「あぁ、一番安い───」


亜美・真美「───ゴージャスなスイートルームで!」


揃えた声で遮られ、また溜め息を吐く。

───金なんかいくら合っても足りないな・・・。



──────
────
──

真美「あ、真美の餃子が食べられたっ!?何故だっ!?」

亜美「んっふっふっ~♪坊やだからさ☆」


P「はいはい、ストップ」


真美「でも───」


P「はい、こうなると思って残しておいた俺の餃子あげるから」


亜美「んで、兄ちゃんこれからどうすんの?」


P「とりあえず、問屋で新しい着物を仕立てて貰う」


亜美「おー!バージョンアップするんだね!」


真美「もぐもぐ───んっ。でも何で?」


P「まぁ、これもこれからの為だな」


亜美・真美「?」



それから二日後。


───とある山の中腹。

どこかに向かってひた進む五百人程の集団。

老若男女を問わず、全ての人が黄色い装束でその身を包む。


その一団の中、同じ様に黄色く扮装した三人の姿があった。


亜美「この為に服を着替えたんだNE!」

真美「この服のお陰ですんなり潜入できましたな→」

P「はいはい、黙って歩く」


三人は今、黄巾賊の集団の中に居た。


そろそろ、日も沈もうかという頃。
集団の足が止まった。


亜美「ゴールかな?」

真美「どうなのかな?」

P「どうやらその様だな」


目の前には山肌を切り落として作られた要塞。
まさに総本山と言える建物を三人は見上げる。


P「ほー。見事なもんだな」

亜美「お城みたい」

真美「秘密のアジトって感じでワクワクすんね」


それぞれ感想を述べてると、集団が中に入っていく。

はぐれない様について行くと、薄暗い洞窟の様な通路の中。
松明の灯りを頼りに進む一行。

しばらく歩くと、だだっ広い空間にたどり着いた。


どこからか美味しそうな匂いが漂い、腹の虫が鳴る。

───ぐぅ。

横を見ると、姉妹も恥ずかしそうにお腹を押さえていた。


匂いの元を辿る様に見渡すと集団の輪の中心。
みんなにいそいそと料理を振る舞う少女を見つけた。



亜美「ここは先ず一番年下の亜美から!」

P「いや、年功序列と言う言葉があってだな!」

真美「いやいや、間を取って真美から!」



三人は押し退け合う様に我先にと輪の中に混ざる。

そんな三人の姿を見つけた少女はニッコリと微笑み、料理を盛ったお椀を手渡す。


少女「たぁ~くさん、食べて下さいね♪」






亜美・真美・P(天使や。天使は実在したんや)




──────
────
──


P「ふぅ。」


満たされたお腹をさすりながら辺りを見渡す。


笑顔で給仕を続ける少女に群がる輪の中に二杯目を貰う亜美と真美の姿を見つけた。


うん。育ち盛りだもん。

ちかたないよね。


苦笑いしてると身なりの良い老人に話し掛けられる。



老人「お腹は満たされましたかな?」


P「えぇ。美味しかったです」


老人「それはなにより」


P「ぜひ、張角様にお礼を申し上げたいのでお目通り願いたいのですが───」


老人「───それはそれは!きっと張角様もお喜びになられる」

老人「では私が取り計らいましょう」


P「ありがとうございます」

老人「ではこちらにおいで下され」


老人にそう促され、場を後にする。

横目に、また集団の中に入っていく亜美と真美が見えて
小さく溜め息を吐いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~


老人「ではこちらでお待ち下され。張角様をお連れしますでな」


P「はい。ありがとうございます」


通された部屋を見渡す。

家具と言えば真ん中に丸い卓袱台があるだけ。

だが所々に散らかった子供用の着物が生活感を滲ませていた。

観察に飽きた頃、扉が開いた。



「お待たせしましたー!」


入って来たのは先程の給仕の少女。


P「君はさっきの・・・ごちそう様。美味しかったよ」

少女「本当ですかー?ありがとうございます!うっうー!」


P「それで張角様とお話しがしたいんだけど・・・」

少女「はい!何ですか?」


P「いや、張角様に───」


少女「え?」



P「え?」


少女「あ!私が張角です!張角やよいですっ♪」



P「え?─────えぇぇぇぇっ!?君が張角様っ!?」



やよい「はわわっ!?す、すいませんっ!」


大きく頭を下げた少女に思わず笑ってしまう。


P「あはは。いや、失礼。お見逸れしました」

やよい「あ、気にしないで下さい。最初は皆さん、私を見て驚きますから!」


───そりゃ、驚くだろうな。

改めて張角と名乗った少女を見つめる。
年の頃は十、と言ったところか。
黄色い三角巾を頭に着け、頭の左右で髪を束ねてる。

こんな可愛らしい少女が教祖様とは、世も末だな。


───いや、実際もう末世なんだが。



やよい「あの・・・」

P「?」





やよい「そんなに、見つめられると・・・その、恥ずかしいです」


頬を赤らめて俯いた少女にまた、つい笑ってしまう。


P「あはは!すまんすまん───あ、いや、これは失礼しました」

やよい「あ、いえ。それに、そんなに丁寧な話し方しなくて良いかなーって」


P「そ、そう?」

やよい「はい!呼び方も、やよいで良いです!」


P「それじゃあ改めて、俺の名前は劉P」


P「旅を続ける根無し草だ」

P「旅を続けるからこそ分かった事がある」


P「各地では相次ぐ飢餓で人が次々と倒れていく」

P「そしてじりじりと燃え広がる戦火」

P「今、時代は混迷を極め、そして、やがて一つの時代は終わるだろう」



P「たくさんの民のその命を持ってして・・・だ」



P「どうだろう、助力願え無いか?」


やよい「え・・・と、あの、その」


P「ダメかな?」



やよい「いえ、その、もうちょっと簡単に言って貰え無いかなーって────」



P「───へ?」


やよい「む、難しい言葉が多すぎて───」


P「───ぷっ。は、はははっ!」


やよい「はわっ!?わ、笑わないで下さいっ」


P「ははは。すまんすまん。ところでやよいは何歳なんだ?」



やよい「今年で14歳になりましたっ!」



───お見逸れしました。



P「それは申し訳無い」

やよい「?」




P「いや、何でも無い。まぁ、さっきの話を纏めると力を貸してくれって事だ」


やよい「なるほど。わかりました」


P「分かってくれたか。それで返事は?」

やよい「分かりました」


P「え?」


やよい「え?」


P「あ、え?分かりましたって、OKって事?」

やよい「はいっ!」


P「え、そんな、簡単に決めて良いのかなーっ・・て」


やよい「・・・?」



やよい「困ってる人が居たら助けてあげなさいって、いつもお父さんとお母さんが言ってました!」



P「それはそれは、立派なご両親だな!」


こんな世の中でなかなか言えるもんじゃない。


やよい「はい、私の自慢です!」


P「うんうん。ご両親は?」


やよい「お父さんは徴兵されて───」

やよい「───それで、お母さんは都に出稼ぎに」


P「そうか。お父さん達が居ないと寂しくない?」



やよい「いえ!私には大切な妹や弟達がいますから平気ですっ!」


まだ、父や母に甘えても良い歳頃なのに弟達の面倒を見てるのか。
なんて強い子だろう。


P「やよいは偉いなぁ」


やよい「そんな事無いです・・・あぅ」


───また照れて俯いてしまった。


亜美と真美にも爪の垢を煎じて・・・。

あいつらはやよいの髪の毛を食べさすくらいじゃないと治りそうも無いな。


P「それで、話の続きなんだけど───


そう言いかけた時、先程の老人が慌てた様子で部屋に駆け込んで来た。


老人「張角様っ!!───ぜぇ、ぜぇ」


やよい「はわっ!どうしたんですかっ?」


老人「それが、董卓軍の使いと言う者が現れて───」

老人「我ら黄巾賊の男達全員、董卓軍の配下になれと出兵の令を・・・」

老人「今は、武器を持った二人の少女が兵の侵入を食い止めてくれてますが・・・いつまで持つか・・・」


────二人の少女?


P「まずいっ!」


やよい「え?あ、危ないですよ!?」


P「本当に危ないのは、その使いの方だよっ!」


やよい「え?あ、あぅ・・・行っちゃいました────」


───表に出ると十人ほどの兵士達に羽交い締めにされてる亜美と真美が見えた。



亜美「はっ、なっ、せぇっ!」

真美「あ、ちょ、どこ触ってるのっ!?」



───危ないっ!

そう言いかけた時、暴れた亜美の左拳が羽交い締めする兵士の顎にクリーンヒットした。


続いて真美が暴れた拍子に兵士の股間を蹴り上げた。

二人の兵士が倒れ込むと他の兵士達が警戒して距離を取る。

亜美・真美「あ、ごめんね、おっちゃん」


亜美の一撃を食らった兵士が顎を押さえながらよろよろと立ち上がる。


兵士「き、き、貴様!我が輩は彼の董卓様の大使なるぞっ!?」

兵士「これは、董卓様への反逆と捉えたり!」


泣きっ面の兵士は馬に飛び乗ると一目散に逃げ出す。

それを見て他の兵士達も慌てて馬に跨がり逃げて行く。



───はぁ。遅かったか。



盛大な溜め息を吐く。

困ったな。

 





やよい「あのぉ・・・一体何がどうなったんですか?」



遅れて出て来たやよいはポカンとしていた。


P「やよい、すまん」



P「二、三日もしないうちに董卓と言う奴が大軍率いて仕返しに来るかもしれん・・・」



やよい「そうなんですかー」






やよい「えぇ~~~~~~~~~~~っ!?」






ζ*'ヮ')ζ「とりあえず今日はこの辺で終わりかなーって」


ここまで見て下さった方ありがとうございます。

そして生レスありがとうございました!


物語は動き始めました!

亜美と真美の活躍によって!



亜美と真美の活躍によって!


ζ*'ヮ')ζ「週末に向けて盛り上がる展開を用意出来れば良いかなーって」

では、皆様ありがとうございました。

レスありがとうございます。

皆様から勇気を貰って今日も少しですが投下開始します。

亜美「と、とりあえず何か作戦を考えようYo!?」

真美「な、なんなら、真美達がサクッと、やっちゃうよ?」


そう言って手振りをした真美達を睨み付ける。



亜美・真美「・・・ごめんなさい」


しゅんとした二人の頭をポンと叩く。


P「まったく、困った妹達だな」



P「しかし、ここは兄の威厳を見せて然るべきだな!」



そう言って胸を張ると、二人は目を潤ませた。


亜美・真美「兄ちゃん・・・!」


しかし、本当に困ったもんだな。

董卓とやらが、もしプライドの固まりの様な奴ならまず2日もかからず攻めてくるだろう。


軽く溜め息を吐いてやよいに向き直る。


───まずは状況の確認だな。


P「やよい、質問して良いか?」


やよい「は、はいっ!私が分かる事ならなんでも聞いて下さい」


P「今、黄巾の人達はみんなで何人くらい居るんだ?」


やよい「えっと、たくさんってのは分かるんですけど・・・数えた事が無いです」


老人「───私が代わりにお答えしても宜しいですかな?」


先程の老人が間を取り持ってくれる。


P「お願いします」


老人「 ここ、冀州の山に本拠地を構えておりますが、各地にも張角様の教えは広がっております」


老人「ここに二千ほど」

老人「各地の拠点の信者の数は計じて一万五千は下らないかと」


驚いた。


───萌子恐るべし。


P「ふむ。この場にいる全員」

P「ここに籠城するとして、食糧はどれくらい持ちそうですか?」


老人「余分に見積もっても六日は持つかと思います」


P「ちなみに、この要塞の正面口以外に外に通じる出入り口はありますか?」


老人「ございますよ。少し細く、足下も悪いですが丁度この山の裏手に出れる通路が」


───ふむ。


P「じゃあ、やよい。すまないが、人手を借りたいんだけど大丈夫かな?」


やよい「はい!みんな、とーっても優しいからきっと助けてくれますよーっ♪」


P「すまん。そうそう、謝りついでにもう一つ、無礼を言っても良いか?」


やよい「なんですか?」


P「蒼天已死───ってのは誰が考えたんだ?」


やよい「このおじいさんです!とーっても字がうまいんですよー!」


やよいは老人のそばに行き腕を掴んだ。


P「ははは。まるで、本当の親子みたいだな」


やよい「はい!おじいさんはいつも私が寂しくならないように話し掛けてくれるんですっ!」


P「おじいさん好きか?」



やよい「もちろんですっ♪それに───」


やよい「───ここにいるみんなもいつも優しくて」



やよい「胸がぽかぽかーって、なります!」



P「そうか。・・・それじゃあ───」





P「───やよいは黄巾の人達が盗賊まがいの行いをしてるのを、知ったうえで黙認してるのか?」





やよい「───えっ?・・・」


P「いや、はっきり言って盗賊だ」

P「役所や官廷を襲っては金品や食糧を奪っているらしい」


やよい「えっ・・・そんなの・・・私、知りません」


P「そうだろうな。やよいはただ教祖として奉り上げられただけ」




P「指示しているのはあなたですよね?───」



そう言いながら老人を見る。

老人は目を反らすでも無く、睨むでも無く。

ただ、まっすぐこちらを見返していた。


やよい「───えっ、どういうことですか?」


P「そもそも、一万七千もの人達の食事を用意するのにどれほどのお金がかかると思う?」

P「そしてそのお金はどこから出てると思う?」


やよい「それはお金持ちの人がお金を分けてくれてるって───」


P「───まぁ、萌子欲しさに、そんな出資もあると思う」


P「でも二万近くの食事を無償で用意し続けたら一週間で小さな国が傾くよ」


やよい「・・・」



P「そもそも、 蒼天已死───この意味が分かるか?」


やよい「えーっと、おじいさんからは───」



やよい「───みんな仲良く。って意味だって教えて貰いました」



P「蒼天已死、黄天當立───これの意味は」



P「みんなで反乱を起こして邪魔な漢王朝をみんなで滅ぼしてしまおうって事だ」


やよい「え、そんな事、私考えてませんっ!」


P「でも黄巾のみんなは、やよいが時の皇帝」

P「霊帝を討ってくれるって思ってるから集まって来てるんだよ」


やよい「そんな・・・うぅ。私はただ・・・」


そう、言いながらこちらと老人を見比べる様に視線を揺らす。


P「分かってる。やよいはただ困ってる人を助けたかっただけだろ?」


やよい「はい・・・」


P「やよいはみんなを助ける。だから───」



P「───俺がみんなの代わりに、やよいを助けたい」



やよい「───っ!!」



P「今ならまだ俺でも助けられる」


P「やよいを助けたい。良いか?」










やよい「たす、けて・・・くださ・・・い」






やよいは、それだけを言うとポロポロと大きな涙を流した。


優しく肩を抱く。

知らなかったとは言え、こんなにか弱く震える両肩に一体どれだけの渇望を背負ったのだろうか。


しばらく抱きしめて、少し落ち着いた頃。

亜美と真美にやよいを任して、老人に向き直る。



P「こんな優しい子を騙す様に奉り上げて───」


P「───あなたの心は痛まないのですかっ!?」







老人「えぇ。・・・痛みますとも」






老人「この心の痛みは万病に効くと言われた萌子でさえも抑える事はなりませんでした」






P「今ならまだ、反乱を止めれます」


老人「では、黄巾賊も、すぐに解散させましょう───」



「───そんなのダメですっ!」


急に大声を上げたやよいに亜美も真美も目を点にしていた。

やよいの目からは、また涙が流れ出す。




やよい「うぅ。きっと、今止めたらみんなもっと困りますっ!」


なんて強い子だろうか。
信頼してた人達に裏切らてなお、その慈愛を惜しみなく向ける。


P「そうです。それに今この組織を解体すると、それこそ反乱の火種になってしまいます」


P「まず大事なのは母体の安定。各地に散っている人も全て集めて下さい」

P「そして今持つ食糧だけでこれから七日間ほど耐えて下さい」



P「私が黄巾の進むべき道を開きます」


老人「分かりました。全てお任せします」

老人「何卒、より良い未来を」


そう言って頭を深々と下げた老人を見て、やよいも勢い良く頭を下げる。


反対側に振り上げた両手はまるで蒼天を羽ばたく鳥の様。


黄色い鳥が自由に羽ばたける、そんな太平の世。

少しは近づいているのだろうか?



───いかんいかん。

まず目先の問題を何とかしないとな。


そんな事を考えているとやよいがすっと横に来た。


やよい「あっ!あ、あの、もしかして、なんですけど」

やよい「さっき二人きりの時、たくさんの難しい言葉を使ってたのは───」


やよい「───私が難しい言葉を分かるかどうかを確かめたんですか?」


───ふむ。

思っていたよりもなかなか聡い子だ。


P「そうだよ。試す用な真似をしてごめんな」


やよい「あ、い、いえ!それより───」




やよい「───ちゃーんと助けて下さいね?」




そう言って悪戯っぽく笑ったやよいが逃げる様に駆け出す。


亜美「おやおや~?」

真美「兄ちゃんもなかなか隅におけませぬな~☆」


何だ居たのか。とは言わないで置こう。



さて、これからが本番だ───。

レスありがとうございます。

こんな時間からの投下になりますが開始します。

───場所は変わって洛陽近郊。


砂煙を上げながら進む、ひとつの群れ。

その先頭。

まるで山が動いてるのかと見間違えるほどの雄大な姿。

巨大な体躯、足の一本一本がまるで大木の様。
荒れた地面をものともせずに四本の足が力強く大地を踏み慣らしていく。

口元から伸びた白い二本の牙は天を貫かんばかりに上を向いている。
その攻撃的な牙とは対象的に、大地に届かんばかりに長く伸びた長い鼻。


なんとも愛くるしい。

陸の王者、象。

その背中には一人の少女の姿が。

太陽の光を真っ直ぐに吸い込む濡羽色の髪。
後ろに束ねられ、尻尾の様にふわふわと揺れる。

翠色の大きな瞳。
きりりと上がった眉毛からは天真爛漫な印象が見て取れた。


なんとも愛くるしい。

いや、失礼。

少女は少し大げさに前方を指差した。

「象姫!あそこに大きな街が見える!次はあの街を攻めるぞ!───」



───更に場所は変わって、とある武族の屋敷。

少し薄暗い室内の中。

ふたつの人影が向き合ってる。

そのうち、ひとつの影が少し大人びた口調で言う。 


「それで、お父様お話とは?」


父と呼ばれた男は、窓の外を見ながら話し出す。



「洛陽付近で、金髪青眼の呂布というやつが暴れ回ってるらしく」

「そいつに殴られた仕官様が直ちに捕まえろと命令してきた」


男の端的な命を受けると影はその身を翻す。


「分かりました。必ずや、吉報を持ち帰る事を約束しましょう」


それだけを言い、表に出る。


外の光を浴びてキラキラと輝く銀髪。
長く伸びた銀色の髪先は緩く波打つ。

その見事な銀髪の持ち主の女性は、まっすぐ遠い空を見つめた。

光を写したその瞳は紫羅藍に煌めき、どこか神秘的な魅力を感じさせる。

女性は青く広がる空の中に鈍く輝く星を見つけ、眉をひそめる。


「まだ日盛りの頃だというのに、面妖な───」




────三度、場所は変わり洛陽の中心部。

765屋の店先を掃除しようと表に出た番頭が奇妙なものを見つけた。

綺麗で長い金色の絹糸の様なモノが地面いっぱいに広がっている。

金色の絹糸のその先に繋がる着物を見て少女が倒れているのだと気づいて慌てて声を掛け抱き起こす。



番頭A「あ、あんた、大丈夫かいっ?」


少女はうっすらと目を開けるが、またすぐ目を閉じ、うなだれた。

酷く憔悴している様に見える。

店の奥からもう一人の番頭が声を掛けながら出てきた。



番頭B「どうしたっ?」

番頭A「いや、店先に娘っ子が倒れてたんだが・・・」


番頭B「───っ!こりゃちょっと不味いな・・・」

番頭A「あぁ・・・異人さんだ」


番頭B「どうする?ほっときゃ県令廷にしょっぴかれちまうぞ」


番頭A「あぁ、このままじゃ、ちと不味いな。とりあえず匿おう」


番頭B「お前っ!そんな事したら俺達はおろか、この店まで───」

番頭A「───馬鹿野郎っ!俺たちゃあ義賊!困ってる奴は助けろって言われてるだろうが!」


番頭B「・・・そうだったな。それなら誰も見て無いうちに!」


番頭A「おう、店の中に連れて行こう」

番頭B「手伝うぜっ」




──────
────
──



少女を布団に寝かせると番頭の一人が苦笑した。
その様子にもう一人が訝しむ。

番頭A「いったいどうしたんだ?」


番頭B「いや、町のごろつきだった俺達がだぜ?」

番頭B「義賊になって、今は番頭を任されて」

番頭B「更には、異人の娘っ子の心配をしてるってんだから」


番頭B「人生ってもんは分からねぇもんだな」


番頭A「ははは、違い無いな」


そう苦笑いを返すと布団の中の少女が、むくっと起き上がった。

番頭A「お、すまねぇ、うるさかったか?」


番頭達を見比べて少女は怪訝な表情。


少女「おじさん達、誰?」


番頭B「おま、おじさんって俺達ぁまだ25──」

番頭A「───まぁまぁ、俺達はこの765屋を任されてる番頭だ」


少女「ふーん」

番頭B「けっ。おめぇさんが店先で倒れてたからここで寝かしたんだよ!」


少女「え、変な事してないよね?」

番頭B「してねぇよ!そりゃ昔はして───」

番頭A「わぁぁぁぁっ!?───と、所で娘っ子は、なんであんな所に倒れてたんだい?」


少女「んー。旅してたんだけど、食べるモノ無くて、お腹空きすぎてかな?」


番頭B「けっ。そんなとこだと思ってたぜ!」

番頭A「こらこら、これ食べるかい?」


そう言って握り飯を差し出すと少女は目を輝かせた。



少女「え、このおにぎり食べて良いの?」

番頭B「こんなお・じ・さ・ん!の俺が作ったもんが食えるならなっ!」


少女「ありがとうなの」


番頭B「な、なんでぇ。変なもん入ってるだとか言わねぇのかっ!?」

少女「あはっ☆何それ?」

そう笑った少女は握り飯を手で掴むと勢い良い頬張った。



番頭B「う、うめぇ、か?」


少女「むぐ。っすっごく美味しいの!ありがとうお兄さん☆」


番頭B「な、な、な、なんでぇ!気持ちわりぃやつだなっ!?」

番頭B「礼なら兄貴達に言ってくれっ!」


番頭A(お前のツンデレの方が気持ちわりぃよ)


少女「兄貴?あはっ☆」

少女「その人達はどこに居るの?」


番頭A「あ、あぁ、兄貴達はおめぇさんみたいに旅にでてるから今居ねぇんだよ」


少女「そうなの?ざーんねん、なの」


番頭A「まぁ、おめぇさんも旅を続けるならそのうち会えるかもな───」


番頭がそう言いかけた時、まるで怒号の様な音と共に店がぐらぐらと揺れた。



番頭B「───な、な、なんでぇっ!?」

番頭A「地震かっ!?」


少女「なんか、外も騒がしいよ?」


三人が慌てて外に出ると確かに人々があっちにこっちに逃げ惑っていた。

怒号にも似た音も徐々に近付いて来てる様な気がする。

そんな三人を見た町人が声を掛けた。


町人「あ、765屋の!早く逃げた方が良いぜっ!?」

番頭B「なんでぇ?そんなに慌てて?それにこの音は・・・?」


町人「そりゃ慌てるってもんだ!この街に蛮族が入って来たんだよっ!」


番頭A「蛮族?しかし洛陽には曹操様がこしらえた大きな門があるだろ?」


町人「いやいや、すぐにぶち破られちまったよ!」


町人「なんせ、蛮族は山の様に大きな象に乗ってるんだからよ!?」


番頭B「ぞう?ぞうって何でぇ?」

番頭A「馬鹿、象ってのは大きくて鼻が長くて───」


その時、一際大きな音と共に向かいの店が砂煙を巻き上げ上げながらへしゃげる様に潰れた。



番頭A「────あれだよあれ」


砂煙の中から出て来た巨大な象を前に呆然とする。


少女は、はっとして店の中に入り、再びすぐに出て来た。

その少女の手には店で扱ってる長い槍が。


番頭B「おい、そりゃ店の・・・だいたいそれは馬に乗って突撃してくる奴を相手にする時の槍だぞ・・・?」


少女「あはっ☆この武器借りてくの!」


そう行って少女は象に向かって走り出す。


番頭B「馬鹿野郎っ!危ねぇぞっ!?」


少女はそう言った番頭に振り返りながら言った。


少女「バカじゃ無い、の!ミキはミキだよ?」

番頭B「ば、馬鹿野郎っ!?前を向け!前を!」


番頭が叫ぶと少女は番頭を見たまま首を傾げる。


番頭B「馬鹿っ!象が!前っ!象っ!?」


少女を踏み潰さんと巨大な象は両方の前足を大きく上げた。

揃えた前足が無慈悲に振り下ろされる。


その瞬間、もう駄目だと番頭は強く目をつぶった。


ずしん。と地なりの様な音が響き渡り、砂煙は舞い上がり番頭達を飲み込む。

少し前の少女がまぶたの裏に浮かぶ。



番頭B「馬鹿野郎ーーっ!!?」


砂煙に包まれたまま番頭は叫んだ。

やがて、砂煙が晴れてくると目の前にうっすらと人影が見えた。




美希「───けほっ、だから、ミキはミキなのっ!」





番頭B「おまえ・・・なんで───?」


少女の後ろには巨大な象が横たわってばたばと、もがいていた。


番頭B「───え・・・どうなって・・・え?」

番頭A「驚いた!お前さんが倒したのか?」


美希「そうだよ?後ろ足を振り払ったの」

美希「この槍で。あれ?」


そう言って振り上げた槍は見事に真ん中から折れていた。


美希「ごめんなさい、壊しちゃったの」


番頭A「ははは・・・ははっ、はははははは!」


番頭B「ギャハハハハハ!おめぇすげぇーな!ハハハ!」


美希「むー?」


番頭A「ははは。槍の一本くらい気にするな。なに、ここは洛陽一の武具屋。武器ならまだまだある」

番頭B「あー、ちげぇ無ぇ。おめぇにゃ助けられたな。兄貴達に任されたこの店が潰れちまうとこだったぜ───」


そう笑った番頭達の顔が途端に青ざめた。



ずしん。ずしん。とゆっくり山が近付いてくる。

それが目の前に来た時、その山は陽の光を遮り三人は影の中に居た。

山の頂上から叫ぶ少女がうっすら見えた。


「うぎゃあぁぁぁぁっ!?誰にやられたんだ象四郎っ!」

美希「象・・・四郎?」


山の頂上からいそいそと少女が降りてくる。
少女が地上に辿り着くと美希が声を掛けた。


美希「───ねぇ、そこの人、象に名前付けてるの?」

少女「ん?あ、そ、そうだぞ!だって象四郎は自分の家族だからなっ!」


番頭B「か、家族って事はお前が蛮族の頭なのか?」

少女「カシラ・・・?あぁ、群れのリーダーって事か?」

少女「それなら、そうだぞ」




少女「自分、南蛮大国から来た孟獲!」



少女「孟獲響だぞっ!」ジャーン(銅鑼の音)






美希「ふーん」

響「な、な、何でそんな冷めた反応なんだよっ!」

美希「いや、興味無いって感じ・・・?」

響「うぎゃあぁぁぁぁ!?ちょっとくらい興味を持ってよ!」


響「こんなでっかい象に乗ってるんだぞうっ!?」

美希「象だけに?───ぷっ」


響「むぎゃぁぁっ!何か、お前ムカつくぞっ!?」

美希「お前じゃないの!ミキはミキなのっ!───」


響「───あ、お前、頭悪そうな喋り方だな!ぷくく」

美希「むかっ!」


美希「ふふん。響の方こそ頭、悪そうなのっ!」

響「何だとっ!?」

美希「何なのっ!?」


響・美希「がるるるる───っ!」


まさに竜虎相搏つ。

竜と虎が睨み合ってると象が───いや、例えじゃ無く本物の象が、小さくオォーンと鳴いた。


響「あ、象四郎っ!誰にやられたんだ?」

響「なになに?・・・ふむふむ。金髪の?女?」


美希(え?象と、話してる・・・の?)


響「お前が象四郎をイジメたのかっ!?」


美希「イジメてないの!街を壊してたから懲らしめたの!」


響「ぬぬぬぬ───」


響「───よくも自分の大切な家族をっ!だぞっ!」


そう言って斬り掛かって来た響をひらりと避ける。


美希「ちょ、ちょっと待って!なの!ミキ武器持って無いのにっ!?」

響「えぇいっ!問答無用だぞっ!」


響の攻撃をなんとか紙一重でかわしていく美希だったが、避けるばかりでやがて追い詰められてしまう。

振りかぶられた響の剣に覚悟を決めた瞬間。

凛々しい声に美希は救われる。


「───お待ちなさいっ!」


響と共に声のした方を向く。

そこには馬に跨がった銀髪の女性が居た。


「この様な往来で殺生など、この錦馬超と謳われた」

「馬超貴音の目が黒いうちは、まかり通るなどと思わないで下さいましっ!」


響(目、黒く無いぞ?)

美希(紫色なの。でも助かったの)


響「───じゃなくて、邪魔するな!邪魔するならまずはお前から───」


そう、言いながら近付いてくる響に銀髪の女性は槍の先を向け紫羅藍色の瞳で睨みつける。

蛇に見込まれた蛙の様にぐぐっと、歯を噛み締め後ずさる響を見て、美希が声を出す。

美希「そこの人!助かったの!ありがとーなの☆」

貴音「いえ、弱者を守るのも強者の務め故───」


そう言いかけて美希を見つめる。


貴音「───はて?金髪。青眼。もし、そこの人?」

美希「何かな?」


貴音「失礼ですがお名前は?」

美希「ミキはミキだよ?」




美希「呂布美希なの♪あはっ☆」




貴音「なんと───」


貴音はそう呟くと、すっ、と馬から降りた。

ゆっくりと貴音は美希の端に行き、右手を振り上げる。

貴音「───この、不届き者っ!」


そう、言いながら放った貴音の攻撃を美希は間一髪でかわす。


美希「きゃっ!?いきなり攻撃してくるなんてヒドいのっ!」

貴音「えぇい、問答無用!」


続け様に繰り出される攻撃をまたも紙一重でかわす。


貴音「いい!加減に!大人しく!なさりなさい!」

美希「そん!なの!ヤ!───なのっ!」




響(なんで自分放置されてるんだ・・・?)

番頭B「娘っ子これ使え!」


番頭が振る奇妙な形の武器をちらりと見た美希は貴音の攻撃をすんでの所で回避しながら高く跳ねる様に後方に飛んだ。



美希「この武器何なの?形が変なの♪あはっ☆」



番頭から武器を受け取るとくるくると回す。


番頭B「その武器は方天画戟!」

番頭B「まだ誰も使いこなした事の無ぇ武器だが象を倒したおめぇならきっと使える!」


番頭A「三日月状の『月牙』と呼ばれる横刃が槍の刃の片方に付いている!」

番頭A「普通の槍と勝手は違うがお前なら使いこなせるはずだっ!」


美希「解説、乙、なの!───」



美希「───反撃開始なのっ!!」

美希の攻撃を貴音は槍で綺麗に捌く。

だが、手に取って間もない武器を美希はすでに使いこなしつつあった。

次第に押され始める貴音に対し美希は容赦無く攻めたてる。

二十合ほど打ち合わせた時、美希は貴音の構えた槍を横合いから月牙の下側に引っ掛けた。


一瞬の硬直の後、そのまま方天画戟を前に突き出す。



だがそこに貴音は居なかった。


貴音が持っていたはずの槍は仕えるその主を失い、かたんと地面に落ちる。

先ほど美希が見せた様な跳躍を真似るが如く、貴音は遥か後方に飛んだ。


それはそれは見事な跳躍でその場に居た人全てが感嘆した。






だが、少しばかり着地点が悪かった。



見事過ぎる跳躍の終わりは先ほど美希が倒した象四郎の丁度あばらの上だった。


象四郎は短くパオーンと悲鳴をあげる。


辺りには象四郎の悲鳴がこだました。


貴音「なんとっ!?」



響「象四郎─────っ!?」



美希(って、いうか───)


番頭A・B(───まだ、倒れてたんかい)




響「うぎゃぁぁ!よくも自分の大事な家族をっ!?」


響「絶対に許さないぞっ────!」




───かくして事態は更に混迷を増し三つ巴の戦いへと発展する事となった。


───場所は変わってとある山の中。

黙々と行進する兵士達のその中心。
背中にカゴを背負い、煌びやかに装飾された象がいる。

そしてカゴの中には一人の男の影があった。

カゴの中に居るせいか、男の顔はよく見えない。
男はカゴの中から誰に言うでも無く、不満を述べた。


「えぇい、まだ黄巾賊の本拠地には着かんのか?」


周りの兵士およそ、一万人の中から一人の影が象の足元に近寄る。


「もう少しでございます。董卓様」


董卓「ウィ?その声は陳宮か?」


陳宮「はい。今しばらくお待ち下さい」

董卓「その言葉は聞き飽きた」


陳宮「これは失礼しました」


董卓「この私は、王である。そうだな?」

陳宮「はい。然り」


董卓「王は待つ事など有り得ん!」

陳宮「はい。それが王のあるべき御姿であると存じます」


董卓「フン。分かっているなら良い。下がれ」


董卓がそう言った時、兵士達の足が止まる。


董卓「フン。ようやく着いたか」


一人の兵士が慌てた様子で董卓の元に駆けてくる。


兵士「お、恐れ多くも、申し上げます・・・」


董卓「なんだ?」

兵士「そ、それが・・・」


董卓「えぇい!早く言わんか!この私は待たされるのが苦痛でしかたない!」


兵士「は、はい!黄巾賊の本拠地に着きました!」

董卓「ウィ。ならば早く攻め落とせ」

兵士「そ、それが、入り口から侵入しようにも・・・」



董卓「ウィ?」


兵士「入り口のある場所が高すぎて攻め込めないのです!」


董卓「はぁ?貴様は何を言ってるのだ?」


兵士「それが・・・どうも奴らは───」



兵士「───この山を削り崩したようです」



董卓「なぁぁにぃっ!?」


董卓は部下に象を引かせ黄巾賊の本拠地の目の前まで行く。


まるで壁の様に切り立った崖の途中にポツンと洞窟みたいな入り口が見える。
董卓はわなわなと肩を振るわせるとオーバー気味に両腕を曲げる。


董卓「一体何だこれはぁぁぁぁぁっ!?」



断崖絶壁の途中。
洞窟の様な入り口から董卓を見下ろす三人の影。


亜美「ぷぷっ♪めっちゃ叫んでるよ!」

真美「んっふっふっー♪絶望に打ち震えるが良い!」


P「あいつが董卓か?二日はかかると踏んでたがまさか、一日半で来るとは・・・」


亜美「間に合って良かったね!」

真美「みんなでチョ→頑張ったもんね!」


およそ、二千人、正確には2016人で山を切り崩した。

入り口のある場所から地面を掘り下げる。

最後は縄ばしごで登り、縄ばしごを回収すれば誰も入れない無敵の要塞の出来上がり。

ひどくシンプルだが当然、この本拠地を捨てる覚悟じゃないとこんな事はなかなか出来ない。


P「じゃあ初めるか!名づけて!」



亜美「ハシゴが欲しいと思ってる?」

真美「やっぱアンタには高嶺の花ね! 」

P「作戦!」



亜美・真美(今回の作戦名はまだマシかな?)



董卓「───ム!?そこに居るの誰だっ!」



P「お初に御目にかかります。私、劉Pと申します」

P「見下げる様な形での御挨拶、申しわけありません」

P「貴方様が董卓様ですか?」


董卓「ウィ。私が、董卓崇男だが、貴様みたいなゴミムシに用は無い」


董卓「私をコケにした張角とやらを出したまえ」


P「いくら董卓様の願意であろうとそれはまかり成りません」

董卓「何ぃっ?」



P「俺が守ると誓った。だからお前にはここから退いてもらう!」



董卓「ククク。王たる私が退く事など有り得ない!」


董卓「良いだろう。必ず貴様をそこから引きずり出して八つ裂きにすると誓おう」


董卓「我が兵は屈強揃い。そんな崖を登るなど造作も無い事」


董卓「行けっ!お前達っ!」


董卓がさっと手を振ると兵士達は雄叫びを上げながら一斉に崖に向けて走り出した。


しかし、一万人が崖の前に並べる筈も無く崖に手を掛けたのは精々、二百人程度。

二百人は入り口を目指して登ってくる。
第二陣が崖に手を掛ける。

何人もずり落ちて後に続く兵士もろともスタート地点に戻ってしまう。

そんな中、それでも何人かはぐんぐん登る。


亜美「お~~っ!案外登れるもんなんだね」

真美「二十人くらいは辿り着けそうだね」



P「俺は絶対に無理だ!」



亜美・真美「兄ちゃん貧弱だもんね───」

P「───さて、用意してたあれを取ってくるかぁー」



そうこうしてる内に一人の兵士が入り口に手を掛ける。


亜美「兄ちゃん来たよ!」

P「あいよ!」


手に持ったのはお湯を沸かした鍋。

それをザバっと兵士達目掛けてかける。

先頭で登ってきた兵士はたまらずに手で払うと、他の兵士を巻き込んであっと言う間に振り出しに戻った。


真美「うわぁ、凄い効き目だね」

亜美「でも、火傷するほど熱くは無いんだよね?」

真美「なんであんなに熱がってんの?」


P「そりゃ、急にお湯かけられたら過敏に反応してしまうもんさ」


亜美「そんなもんかな?」


P「お風呂入る時に何も考えずに足入れてさ?」

P「熱っ!てなったけどゆっくり入ったらそんなに熱く無かった現象だよ」


真美「あーあるある」

亜美「冬とかありすぎて困るよNE☆」

真美「んでも、棒とかでつついたら良いんじゃないの?」


P「掴まれたら恐いじゃん」

亜美「あーあるあ・・・無いYo!」

真美「恐いって思うの兄ちゃんだけだよ?」


P「さて、そろそろ董卓も動く頃だから亜美隊員と真美隊員は用意しておいてくれたまえ!」

亜美「了解であります!」

真美「ラジャーであります!」



P「ここは俺に任せとけ!」

P「せいっ!せいやっ!」



亜美(うわぁ、満面の笑みでお湯撒いてるよ)

真美(ストレスかな?大人って大変なんだね)

~~~~~~~~~~~~~

董卓「えぇい!何をやってるんだっ!弓を用意しろ!」


兵士達は慌てて弓を構える。
その数、千ほど。


董卓「狙いはあの劉Pという男!撃てえぇい!」


一斉に向かってくる千本の矢。


亜美「まったく、亜美達は兄ちゃんの便利屋じゃ無いかんね?」

真美「んっふっふっー♪今度、馬でも買って貰おうか!」


双子はそう言いながら互いの武器を回す様に振る。
五振りほどで千本の矢は全て地面に落ちた。


P「ホント助かる。馬ぐらいお安い御用」


真美「兄ちゃん下がって!」

亜美「さっきよりも多いのが来る!」


P「あ、はい」


次は三千本以上の矢が飛んでくる。

それでも、まだ二人には足りない様子。



董卓「おのれぇ!ちびっ子共めっ!もっと、もっとだっ!」


五千人の弓を持った兵士達が一斉に弓を射る。
それを事も無げに二人は撃ち落としていく。


亜美「二回目とあんまり変わんないね?」

真美「なんでかな?兄ちゃん解説よろ?」


P「そりゃ、こんな洞穴みたいな狭い場所に向かって撃ったら矢同士がぶつかるからな」


亜美「なるほろ」

真美「って言うか、下に居た人にも当たってるよ?」



P「それは考えて無かった」


P「敵とはいえ、なるべく死人は出したく無いんだがな」

P「仕方無い。だいぶ怪我で戦線離脱した兵士も居るみたいだし、これより第二作戦に移る!」


亜美・真美「了解!」


────舞台は再び洛陽へ。


番頭B「すげぇ───あいつらバケモンか・・・?」

番頭A「あぁ、もう二時間は戦ってるぞ・・・」


貴音の攻撃を美希が受けた隙に響が貴音を攻撃する。

響の攻撃を貴音が受ければそこをついて美希が響を攻撃する。

まさに攻守一転。

目まぐるしいまでの攻防の果て、三人の戦いは洛陽の中心部から、街の西端まで場所を移していた。

洛陽全域を囲む、巨大な外壁を前にして、三人は対峙する。

貴音の攻撃により、壁際に追い込まれた響を見て美希が更に仕掛ける。

響の足元めがけて方天画戟を振る。

地面を薙ぐほどの勢いで方天画戟を振るが目標の響をすり抜けた様に巨大な外壁に月牙が突き刺さる。


美希「あれ?」


美希「───なんで居ないの?」


そう、言った美希に影が差す。

訝しんで空を見上げると大人の身の丈ほど飛び上がった響が小さなカラダで太陽を隠していた。


美希「うえっ!?」


美希の驚きをよそに、貴音が更に空中に浮かぶ響に槍を突き上げる。
空中で動け無くなった響を容赦無く襲う一突き。


貴音は完全に捉えたと思ったが手応えが無い。

今度は美希の横に居た貴音の顔に影が落ちる。


貴音「なんとっ!?」


美希「壁を歩いた────のっ!?」


響は重力に逆らう様に、二歩、三歩と壁を横向に歩き、四歩目で力強く壁を蹴り放ち、少し離れた地面に着地する。


今度は壁際に追い込まれる形となった美希と貴音に相対する響が怒鳴った。



響「二人がかりなんて!卑怯!だぞ!」



美希「え、そ、そっちの方が卑怯なのっ!」

貴音「まさか、壁を駆けるとは───」

美希「何なのなの!?こんなのおかしいのっ!?」

貴音「───まこと、面妖な」



響「へへっ。自分、完璧だからな!」


美希「やっぱりバカなの!ありえないのっ!」


響「うぎゃぁ!バカってゆーなっ!」


響がそう叫んだ時、それに乗じて貴音が美希に攻撃を仕掛けた。

まっすぐ心臓に向かってくる槍の穂先を何とか方天画戟の持ち手の端でいなす。


美希「もうっ!話してる時に卑怯なのっ!」

貴音「ふふっ。隙だらけだったものでつい」


美希「敵の敵はやっぱり敵なのっ!」


鍔迫り合いから美希は後方に飛ぶ。

それを見て貴音と響も互いに距離を取った。
力のバランスは完全な均衡を保ち、三人の技量はほぼ同等。



丁度、三角形の三竦み。


────先に動けばやられる。


各々が辿り着いた同じ結論。


張り詰めた緊張感の中、額にイヤな汗が滲む。

じりじりと互いに必殺の間合いへと距離を詰めていく。


その時、一匹の象が三人目掛けて突撃してきた。


響は振り向きながら慌てて駆け出し象の牙を押さえようとする。


響「どうしたんだ!?象八郎!」


響の呼びかけにも象はその突進を止めない。
凄い勢いでずりずりと押される。
象の身に起こった異変に美希が気付いて叫ぶ。


美希「そのぞうさん目を怪我してるのっ!」


象の右目からは血が涙の様に流れ出ていた。


貴音「このままでは外壁に激突してしまいます!」

美希「───っ!?そんなのかわいそうなのっ!」


そう言って方天画戟を放り出して象に向かって走る美希の後を貴音も追う。


響「止まれ!止まるんだぞっ!象八郎!?」


響「このままじゃ・・・壁にっ!───」


そう言った時、牙を持つ手にかかっていた力が弱まる。


牙を握る響。
その響の手の他に二組の手が牙を握っている。

美希と貴音の手だった。


響「お前たち・・・なんで───」


美希「そんなの今は良いのっ!」

貴音「えぇ!まずはこの子を止めるのが先決です!」


そう言ってる間にも壁が背中に迫ってくる。



美希「力を!」

貴音「合わせるのです!」

響「せぇぇぇぇぇのっ!」





三人「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」







砂煙が巻き起こる中、三人と象はぴたりと止まる。

三人の背中は、ぴったりと壁に付いていた。


響「象八郎大丈夫かっ!?あぁ、そんなに深い傷じゃないみたいだな!・・・良かった」


響「ごめんな・・・自分がちゃんとお前達を見て無かったから───」


そう言って涙ぐむ響の顔を象八郎の鼻が撫でた。


美希「───気にするな。って言ってるの!」

貴音「えぇ。確かにそう聞こえた気がします」


響「───っ!二人共ありがとう!二人が居なかったら象八郎はきっと・・・」



美希「二人じゃないの、ミキはミキなの」

貴音「わたくしは貴音です。ふふっ」


響「二人共・・・グスっ」

響「自分は響!美希、貴音───」



響「───にふぇーでぇーびるっ!」


美希「にふぇー・・・」

貴音「・・・でーびる?」



響「あ、自分の故郷の言葉でありがとう!って意味さー」


貴音「響、故郷とは?」


響「自分、南蛮王国からさらわれた象六郎の子供を探しに来たんだ!」


美希「さらわれた?」

貴音「そうだったのですか・・・」


響「貴音は何でこの街にきたんだ?」


貴音「───は!すっかり、忘れていました!」

貴音「美希!なぜ仕官様を殴ったりしたのですか?」


美希「え?仕官さま?───あっ!あのおじさん?」


貴音「私は、命令により美希を捕まえなくてはならないのです」

響「捕まえてどうすんの?」


貴音「最悪、死罪も───」

響「───えぇぇっ!?な、何とかならないのかっ!?」

貴音「だから───だから、こそ私も理由が知りたいのです!」


美希「んーと。あのおじさんにお尻触られたからつい手が出ちゃたの・・・ごめんなさい」


貴音「なんと───!では暴れたりはしてないのですね!?」

美希「暴れる?おじさん叩いたら気絶したから、暴れてなんかないよ?」


響「なるほど・・・その仕官ってやつが殴られた腹いせに美希を捕まえようとしたんだな!」


貴音「なんと!」

美希「響・・・意外と賢い、の?」


響「意外とって何だっ!?───まぁ、自分こう見えて完璧だからな!」


貴音「全ては仕官の企みだったのですね・・・」

貴音「美希!問答無用で斬りつけてすいませんでした・・・せめてちゃんとこの私が───」


美希「んー。別に良いの。許すの!ミキもみんなに攻撃したし」

響「自分も、みんなに攻撃しちゃってごめんなさい」


貴音「ふふっ。では参りましょうか」

響「どこに?」


貴音「もちろん仕官の所です。私、自らの手で懲らしめてやらないと気が済みま───」

美希「えーっ?そんなの良いの!面倒くさいし」


響「ダメだぞ!放って置いたらまた、また貴音みたいなのが来るかも知れないし───」

貴音「───まこと、申し訳ありませんでした・・・」


響「───じゃなくて、第二、第三の被害者が出るかもしれないしっ!」


美希「なるほどなの」

貴音「響はまこと明晰ですね」


響「えへへ。じゃあ、行くぞ!」


美希「でもミキ眠いの・・・もう疲れたし。明日にしない?」

響「じゃあ、自分の家族の背中で寝てれば良いさ!」


美希「あ!象四郎にも謝らないと!」

貴音「もし、響?その、私も響の家族に乗せてもらう事は出来ませんか?」


響「良いぞ!みんなは、もう家族みたいなものだからな♪」


貴音「では、参りましょうか」

響「おーっ!」

美希「ふあぁぁ。あふぅ」



象達を引き連れて三人は洛陽を後にする。









番頭B「行っちまいやがったな・・・」

番頭A「この破壊し尽くされた街どうすんの?」

番頭B「俺に聞くなよ・・・」



三人が去った後に残ったのは大量の瓦礫の山。

こうして、伊織の置き土産とも言える鉄壁を誇った洛陽は陥落した───。

レスありがとうございます!

こwうwがwいw

そのキャスティング誰得ですかねー?

書きためが思うように進まなかったので遅れましたが今から投下します。

予告見て待っててくれた人がいたら遅くなってすいませんでした

─────場所は戻って黄巾の本拠地。

陳宮「───ん?董卓様、きゃつら中に入っていきますぞ?」

董卓「よし、使えなくなった兵士は邪魔だからどかせ!侵入して追い込め!」


董卓「絶対に殺せ!───いや、生きてここに連れて来い!この私自ら息の根を止めてやる!」


──────
────
──

亜美「ね~~兄ちゃん?亜美達考えてたんだけどさ?」


要塞の奥に向かって歩きながら亜美と真美が話しかけてくる。


真美「董卓のおっちゃんが攻めて来る前に逃げちゃえば良かったんじゃないの?ぴゅぴゅ→んって」


P「うーん・・・多分逃げ切れないだろうな」

亜美「何で?昨日のうちに逃げておけば大丈夫じゃん?しゅしゅ→んって」


P「こっちは歩きで、向こうには馬がいるじゃないか。必ず追いつかれるよ」



P「平地で囲まれたら、それこそゲームセットだろ?」


P「それにここには老人や子供も居るからな。安全に逃げる為には一旦追い返さないと」


真美「でも奥には、やよいっちが居るんだよ?」

亜美「それに一気に攻め込まれたらいくら亜美達でもヤバいよ?」

真美「たぜーにぶぜーだよ?」


P「大丈夫!地の利は我に有り。────だ!」


亜美「血ノリ?」

真美「煮アリ?」


そんな事を話してるとやよい達が待つ広場に着く。

やよい「あ、みなさん!ケガはありませんか?」


P「あぁ。それよりすまない。敵軍に死者が出そうだったからその前に引いてきた」


やよい「あ、いえ!私もそっちの方が良いかなーって!」

やよい「例え敵でも、その人達にも家族がいると思うから・・・死んで欲しく無いです!」



P「やよいは優しいなぁ」

亜美「やよいっちは優しいなぁ」

真美「やよ───」

P「───あ、そろそろ敵が入って来るから準備しないとな!」


真美「もうっ!真美にも言わしてよ!?」


──────
────
──





黄巾族が作った本拠地の入り口に一人の兵士がたどり着く。
入り口からは奥の様子まで伺い知れない。
ひとつ舌打ちをして腰に差した刀を抜く。

警戒を強めると同時に唾を飲み込む。
右手で刀を持ち左手を壁に這わす。

一歩一歩足元を確かめる様に暗闇を進むと左手に壁の感触が無くなった。

広場の様な場所に出たんだと気付いた時には首の後ろに強い衝撃を受けて意識がぷっつりと切れた。



亜美「はい、お一人様ご案内!」





真美「案外見えないもんなんだね」

P「これぞ、明るい所から急に暗い所に行ったら何も見えなくなる現象」


亜美「亜美達は結構見えてるのにね」

真美「ふちぎだね?」


P「夜寝る前に明かり消したら何も見えなくなるけど」

P「寝てる時に便所行きたくなって起きたら割と見えるもんなんだよなー」


亜美「それにみんな刀しか持って無いから倒すのも楽だね?」

真美「あー、槍とか抱えて登って来れないもんね?」


P「ふっふっふっ!それも作戦の───」

亜美「───あ、次くるよ!」

真美「次は二人っぽいね!」


ゆっくりと腰を下げて入って来た二人に容赦無く亜美と真美が襲いかかる。

それを見ながらすでに殴り倒された兵士をそっと縄で縛り上げた。


──────
────
──



陽はだいぶ傾き、夜戦の準備に備えた崖の前には沢山の松明が置かれている。


董卓「んん?もう千人位は中に入ったのでは無いのか?」

陳宮「正確には千と八人だと存じます」


董卓「えぇぇい!なら何故誰も出て来ないのだっ!?」


陳宮「少々お待ち下さい」


そう言って陳宮は手を二回程叩く。
一人の兵士が近づいて陳宮といくつかの言葉交わす。

陳宮「暗闇の中で襲われてるらしいです」

董卓「暗闇?」


陳宮「はい。洞窟内には明かりの類いがございません」

董卓「ならば、松明を持てば良いでは無いか!何故そんな事も分からぬのだ!」


陳宮「苦言と承知の上で進言致しますれば───」


陳宮「───松明を持って、あの絶壁を登るのは不可能かと」


董卓「・・・ウィ」


陳宮「ここは一旦引いてはどうかと」

董卓「王が引く事など有り得ん!」


陳宮「しかし、このまま消耗戦になればこちらもそれなりの被害を───」


董卓「えぇぇい!口を慎め!」

陳宮「しかし───」


その時、洞窟に入っていったはずの数人の兵士達が押し出されるように崖からずり落ちた。


董卓「ウィ?」


洞窟から出て来た亜美と真美が騒ぐ。



亜美・真美「つるぺたばんざ→い☆」



董卓「くっ、貴様───っ!」


P「まだやりますか?」


董卓「えぇぇい!黙れ!まだ、数を考えれば圧倒的に我が軍が有利では無いかっ!」



P「そう思いますか?」

董卓「フン。貴様達が立て籠もっているそこには二千人程しか居ないのは前以て知っている」


P「流石、董卓様です」

董卓「貴様、この私を愚弄するつもりかっ!?」


P「では黄巾族が各地に拠点を持ってるのは知っておいでですか?」


董卓「当然だ。およそ一万五千。だからこそ我が軍門に下る様にと伝令を送ったのだ!」



P「なるほど」


P「ではその一万五千が援軍に向かってるとは思いませんか?」


董卓「何ぃ!?」



P「どうやら間に合ったようですよ?」



そう言って、手に持っていた銅鑼を鳴らす。

───二度。

──────三度。

その音に返す様に山の中から銅鑼の音が聞こえる。

すると、暗くなった山の頂上より少し下の木々の中に、ぽつ、ぽつと松明が灯る。

ぽつ、ぽつ、ぽつとどんどん松明が灯って行く。


気付くと董卓軍を囲む様に三千ほどの松明が灯っていた。


董卓「ぐっ!───まさか本当に援軍が・・・?」



P「えぇ、今までのはただの時間稼ぎです」


陳宮「と、董卓様!灯りの数から見て、最低でも八千くらいは集まってるかと・・・」



董卓「ぐぐ・・・おのれ・・・この私が計られたというのか!!?」

董卓「・・・くそっ!仕方無い、退却するっ!」


陳宮「ふ、負傷した兵士はどうなさりますか?」

董卓「役立たず共は捨て置けっ!」


そう叫ぶと、董卓は乗ってきた象に向かう。


董卓「この屈辱・・・この恨み忘れぬぞ!───」


董卓「───必ず貴様を地獄に送ってやる。覚悟しておくが良い!!!」


そう言い残して董卓が引くと兵士達も波の様に退却していった。

後に残ったのはたくさんの槍や松明、そして動けなくなった三千程の兵士達。


P「ここに取り残された兵士達よ!」

P「今すぐ武器を捨てて降伏しろ」

P「俺の仲間になるなら今すぐ傷の手当てをしよう」


一人の兵士が刀を捨てると、それに倣うように次々と兵士達は武器を捨てた。

P「よし!みんな出て来て良いですよー」


その言葉を待ってましたとばかりに木々の隙間から一人の男の子が飛び出てくる。

手には松明がしっかりと握られている。

男の子に続く様にぞろぞろと沢山の人が出てくる。
みんな手に松明を持っている。

子供は一つ。
大人は両手に。

黄巾の本拠地で生活していた約二千人。
やよいを除いた黄巾の人々が歓声を上げる。
松明を捨てるとそれぞれ手を取り、抱き締め合い、共に勝利を喜ぶ。


そのうちの一人の男の子が崖の穴を指差し叫ぶ。

「あ!姉ちゃんだ!」


やよい「みなさんお疲れ様でした!」



やよい「うっうー!今日は萌子祭を開催しまぁ~す♪」



やよいの声にまた歓声が上がる。

鳴り止まない歓声の中やよいは後ろに居る三人に話し掛けた。


やよい「ありがとうございました!みなさんのおかげで黄巾の人達を守れました!」


P「ははは。いやいや、黄巾の人達が頑張って山を切り開いてくれたおかげだよ」


真美「そーそー!真美達はちょびっと働いただけだよ♪」

亜美「それより早く萌子祭しよ→Yo!」



やよい「はい♪たぁ~っくさん食べて下さいね!」



なんか今まで入れなかったんですけど、何かあったんですかね?

少しだけ貯金(書き溜め)が出来たので良かった。


さて投下していきます。

───洛陽からやや北西に位置する、とある街の中。

件(くだん)の仕官に詰め寄る貴音の姿があった。



仕官「と、突然現れて槍を突きつけるとは、何だ貴様は!?」

貴音「月は、いつでも人の行いを見ているのです」


仕官「はぁ?」


貴音「しらを切るつもりですか?この下郎が!」

仕官「ひぃっ!ま、まて、落ち着け!この私に何の恨みがある?」


貴音「恨み?まぁ騙された恨みも無いとは言えません、が、そんなものは些細な事」


貴音「不埒な行いを認め、謝罪しなさい!」

仕官「だから何の事だっ!?」


貴音「なんと往生際の悪い・・よろしいでしょう。美希おいで下さい」


美希「はいなの」

仕官「あ、お前はっ!あの時の!」


貴音「自分の罪を思い出されましたか?」


仕官「ま、待て!話せば分かる!そ、そうだ金か?金なら───」


貴音「───この痴れ者が!乙女の柔肌に触れておきながら言うに事を欠き、お金で解決しようとは不届き千万」


貴音「今すぐ天に送って差し上げましょう───」



貴音「────そこで、己の罪を月に懺悔し続けなさいっ!」



仕官「ひ、ひぃっ!」


響「───ちょ、ちょっと貴音ぇ!?何も殺す事なんか無いさ!」

美希「そ、そうなの!もう、美希気にしてないから・・・ね?」


貴音「いいえ、それでは私の気が済みません。勘違いとは言え、無実である美希に刃を向けてしまったのです」

貴音「どうか、止めないで下さいまし!」


美希「んー?あのね?美希思うんだけど」


貴音「?」

美希「美希が殴っちゃったのも悪いと思うの」


貴音「それは・・・この者の破廉恥な行いの所為では有りませんか」


美希「うん。でもこのおじさんのおかげで貴音とも会えたし」


美希「貴音が居たから象八郎を助けれたの」


響「そ、そうだぞっ!」

貴音「しかし───」


響「分かった。じゃあ、自分がやる」


貴音「!?」


響「貴音は自分の家族を助けてくれた。だから貴音が誰かを殺して手を汚す位なら───」


響「───自分が代わりに、手を汚すさー。へへっ」


貴音「響・・・」


貴音「二人共、取り乱してすいませんでした」


貴音「私は、美希の為にと言っておきながら美希に刃を向けたその罪を濯ぐ為に殺生を行おうとしていたのかも知れません・・・」


貴音「二人のお陰で留まれました。まこと感謝のしようもありません」


美希「あはっ☆」

響「へへっ♪」


貴音「それは、それとして・・・」


仕官「ひぃっ!」


貴音「美希と響に救われましたね?どうかその罪を悔いてこの様な事は二度と誓われませ?」


仕官「は、はひぃっ!も、もちろんです」


貴音「月はいつでもあなたの行いを見ています」



貴音「それを努々、忘れなさりませぬように。ふふっ」



──────
────
──


月明かりの下。
三人と象の群れは歩いていた。


貴音「まこと、二人にはお世話になってしまいました」

美希「あはっ☆こちらこそ、なの!」

響「へへっ♪こちらこそ、だぞ!」


貴音「ふふっ。もしよろしければ、二人にご馳走したいので私の住む町に来ませんか?」

響「貴音の住んでる町?」


貴音「えぇ、何かと情報も入って来ますので、もしかしたら響の家族の行方も分かるやもしれませんし」


響「本当かっ!?行く!自分行くぞ!美希も行くよねっ?」


美希「んー?響の家族も心配だけどミキは止めとくの・・・」


響「えっ!?なんで?一緒に行こうよ!?」




美希「ミキね?キラキラ出来る場所を探してる途中なの」



美希「生きてるうちに色んな場所を見て、キラキラしたいの」

美希「だから二人とは一緒に行けない。ごめんなさい」


響「美希・・・」


貴音「では、ここでお別れですね」

響「・・・」

貴音「響?何を悲しむ事が有りましょうか」


貴音「出会いがあれば別れがある───」




貴音「───されど、この別れが今生のものになるかどうかは、お互いを想い合う強さが決めるのです」




貴音「この別れを悔やむのでは無く───」


貴音「───再び出会えた刻、共に喜ぶ為に笑って見送りましょう」


響「貴音・・・グス。───そうだな!」


美希「あのね、ミキ、キラキラ出来る場所見つけたら───」


美希「───ううん。旅の途中でも響達を見つけたらすぐ会いに行くの!」


響「うん!絶対見つけてよ?」


美希「それは大丈夫なの!だって───」



美希「───響ってば、あんなに大きな象さんに乗ってるんだもん」


美希「見つけられない訳が無いと思うな♪あはっ☆」


響「あはは!そうだなっ!」


貴音「美希、旅をするなら馬が必要でしょう?私の馬を・・・いえ、戦友を一緒に連れて行って下さいまし」


美希「えぇっ!?そんなのダメなのっ!」


貴音「また、会えた時に私に返して頂ければ良いのです」

貴音「私の友は我が一族の中でも一、二を争う俊足駿馬。必ずや、あなたの旅の力になってくれるはずです」


美希「ありがとう!この子の名前は?」

貴音「絶影と申します。可愛がって上げて下さい」

美希「もちろんなの!」


貴音「響、頼み事があるのですが」

響「なんだ?」

貴音「絶影に別れの挨拶をしたいのです」


響「ん?あ、あぁ分かったぞ!」


貴音は絶影の首をすっと撫でると抱き締める様に包んだ。


貴音「絶影。美希を頼みます」


すると絶影は鼻をブルっと鳴らした。


美希「任せとけって言ったの♪」

響「うん。任せとけってさ♪」

貴音「えぇ。私にも聞こえました。ふふっ」


貴音「種族の壁など些細な事なのやもしれませんね」


月明かりの中、三人は再会を誓う。

貴音と響は美希と絶影のその姿が見えなくなるまで手を振った。

いつかまた、再会するために三人は別の道を歩む。
その行方を見守る様にそっと月が照らしていた───。



─────洛陽北部。

一頭の象を囲む様に進む一団。
その中心で董卓は苛立っていた。

董卓「陳宮!陳宮はおらぬか!?」

陳宮「はい、御側に控えております」


董卓「私は生まれた時から王である」

陳宮「はい。勿論でございます」


董卓「負けた事などただの一度たりとも無かった」

陳宮「王たる所以でござります」


董卓「その私が何故負けたのだっ!?」

陳宮「進言さすりますればあの御三人様が居なかったからでは?」


董卓「くそっ!あいつらに袁紹の始末を任せたのは早まったか・・・」


董卓「あぁぁっ!あの忌々しい劉Pを何とかする策は無いのか?」


陳宮「さすれば、この陳宮めに少しばかり董卓様の兵をお貸し頂ければ」


董卓「ウィ?聞かせてみろ?」


~~~~~~~~~~~~


董卓「ククク・・・。面白い!好きにするが良い!」

その言葉を聞いて、陳宮は闇夜に溶け込む様に姿を消した。


董卓「ククク・・・劉Pよ。貴様の命もあと僅か」


董卓「この私に逆らった事を死の間際で後悔するが良いっ───フハハハハハハ───!!!」



────陽が昇り始め、夜が終わりを迎える頃。

貴音に案内され、響は貴音の故郷にたどり着いた。


響「ここが貴音の育った所か?のどかで良い所だな!」

貴音「ふふっ。牧羊くらいしか生活の糧が無い、へんぴな土地でお恥ずかしいです」


響「そんな事無いぞ?」

響「自然も多いし、何よりここに居る動物達も幸せそうだし!」 


────自分の王国に少し似てる。



響「自分も住みたいくらいだぞ!」

貴音「ふふっ。ありがとうございます」


────貴音ってお姉さんって感じ。

自分にもねぇねが居たらこんな感じなのかな?

そんな事をぼんやり考えながらのんびり歩いてると町人が貴音に話し掛けた。


町人「おっ?姫様おかえり!」

貴音「ふふっ。只今戻りました」


───ん?


響「え?貴音ってお姫様だったのか!?」


貴音「いえ、私はこの集落を束ねる長の娘」

貴音「皆、面白がって言うだけです」


そう言って優しく笑う貴音を見て何だかくすぐったくなる。


響「そ、そっか。でも自分より似合ってるね?」

貴音「はて?もしや、響はお姫様なのですか?」


───あれ?貴音には言って無かったかな?


響「そうだぞ!自分、南蛮大国の長だぞ?」


貴音「なんと!」


貴音は大袈裟に口に手を当てて驚く。


───自分ってそんなに、意外な感じに見えるのかな?


貴音「知らぬ事とはいえ、数々の非礼お許し下さい」

響「わわっ!?そんな急に改まらなくても良いよっ!?」


貴音「何を仰りますか───」


響「わぁぁっ!?自分達友達じゃないか!」


貴音「しかし────」


響「────あぁっ、もうっ!はいさい、この話は、やめやめ!」

貴音「ふふっ。ふふふ───」


───んん?


響「もしかして自分からかわれたのか?」

貴音「ふふっ。すいません。慌てる響が可愛かったのでつい・・・」


響「・・・んもぅっ!貴音の意地悪っ」


そう良いながら頬を膨らませると貴音はまた笑った。

貴音の笑い方は心に染み込んでくるようで心地良かったけど、気恥ずかしくてむくれた振りを決め込んだ。


その時、町の奥から、慌てた様子で一人の青年が駆けてくる。


「貴音様─────っ!」


貴音「これ馬岱、客人の前ですよ?」


青年の顔は青ざめ、緊急事態だとすぐに分かった。


貴音「こちらは馬岱。私の従弟です」

響「あ、ども。自分、響だぞ───じゃなくて、何かあったんじゃないのかっ?」


貴音「そうなのですか馬岱?」


馬岱「さ、先程、親方様の朝のお世話に参ったのですが・・・お、親方様が・・・」


貴音「お父様がどうかしましたか?」


馬岱「刀で背中を斬られて・・・先程気付いた時にはもう・・・」


そう言いながら馬岱は首を横に振る。


貴音「そ、そんな────っ!」


呼び止める間も無く走り出した貴音の後を追いかける。

貴音に追いついたのは大きな屋敷の中の一室。

至る所に立派な調度品が並び、この屋敷の主人がそれなりの地位を持っている、いや、持っていたのだと分かる。

黄色い絨毯の上に一人の男が倒れている。
きっとこの家の主人だろう。

その周りには赤黒い地だまりが広がっていた。


貴音は部屋の中に座り込み、口を押さえて震えている。
焦点の合わない瞳で何かぶつぶつと呟いていたが聞き取れなかった。

慌てて貴音の肩を揺する。



響「貴音っ!?しっかりするんだ!」



何度かガクガクと揺するとピントの合った瞳が一気に潤んだ。

こぼれそうになる涙を貴音は自分でさっと拭って立ち上がる。


貴音「馬岱!お父様は誰にやられたのですっ!?」


馬岱「昨日の夜、顔見知りの客人達が来るから、と、親方様自ら迎えてましたのでそいつらかと・・・」


貴音「その者達の名は!?」


馬岱「分かりません。この部屋にも近寄るなと言われて居たので・・・」

馬岱「でも、部屋に入って行く時、客人は黄色い服を着ていたのが遠目に見えました」


響「なに・・・これ?」


部屋の壁に血で書かれた文字を見つけた。



そこにはこう書かれていた。





《蒼天已死、黄天當立》──────。






馬岱「これは・・・」

貴音「蒼天、すでに死す?」

馬岱「これは、黄巾賊の掲げる喊声文・・・」


貴音「黄巾賊とは?」

馬岱「最近流行りの新興宗教です。何でも秘術で病を治してくれるとか」

貴音「なんとも胡散らしい話ですね」


馬岱「なんでも黄色い頭巾や服を着て・・・───っ!」

貴音「どうやら、その黄巾賊の手の者の仕業の様ですね」


そう言って部屋を出て行こうとした貴音の背中に慌てて声をかけた。


響「た、貴音?」

貴音「まこと、すいません」


貴音「私は馬(超)一族に仇をなす不届き者を討ちに参らなければなりません」

貴音「もてなす事が出来なくなって申し訳ありません」

響「貴音・・・」


貴音「またどこかで、お会いしましょう」


響「自分・・・自分も、貴音と一緒に行くぞ!」

貴音「しかし、響は家族を探さな───」


響「────貴音は大切な友達。だから手伝うぞ」


貴音「響・・・────」


馬岱「───む?誰か来た様ですね。見て参ります」


耳を澄ますと確かに人を呼ぶ男の声が聞こえた。
玄関から馬岱に招かれ入って来た男は貴音の姿を見ると両腕を顔の前に揃えて挨拶をする。


────なんか、ずる賢そうな顔してるな。

貴音のたーりーの知り合いかな?



貴音「───おや?これは陳宮殿?こんな早朝にどうされましたか?」


陳宮「これはお嬢様。なに、近くに寄りましたのでお父上様に挨拶を、と───」

陳宮「───それでお父様は?」


貴音「っ・・・父は亡くなりました」

陳宮「それはそれは・・・先日お会いした時は変わらず御壮健で居られるとお見受けしましたが───」

陳宮「───何か病を患っておいででしたか?」


貴音「いえ、どうやら黄巾という賊に・・・」

陳宮「黄巾ですとっ!?」


陳宮「何と言う事だ・・・」


貴音「陳宮殿?」

陳宮「いえ、実はこうして参ったのには訳がありまして───」


陳宮「───我が主君の董卓様も黄巾賊に襲われましてな」

貴音「なんと!」


陳宮「何とか退けたものの、また襲われては適わぬので、父上であられる馬騰様に助力を願いに参ったのです」

貴音「はて?董卓様には五万の兵が居られるのでは?」


陳宮「はい。しかし、只今四万の軍は袁紹軍と戦っております」


陳宮「その手薄な所を狙われましてな────」


響「───卑怯な奴らだな!」


───あ、思わず声が出ちゃった・・・。


陳宮「えぇ・・・おや?失礼ですが、こちらの方は?」

貴音「こちらは私の大事なお客人。南蛮の王───」


響「自分、響だぞ!」

陳宮「おぉ、彼方、南蛮王の武勇は私共の耳にも届いております」


響「お?ま、まぁ自分完璧だからな!」


───へへっ。なんだ、結構良い人じゃないか。


陳宮「それにしても、まさか馬騰様が襲われるとは・・・そう言えば────」

陳宮「───この村の近くで黄色い着物を纏う不審な男を見たのですが・・・はっ!?」

貴音「どうされました?」


陳宮殿「そいつの顔をどこかで見た事があると思っていたのですが今思い出しました───なんと言う事だ・・・」


陳宮「合い見えた者の名は劉P」


貴音「・・・劉P?」


陳宮「えぇ、知略に長ける奴でしてな。黄巾の者達を煽動し、朝廷の滅亡を図っているとか」

陳宮「きっと、その者が馬騰様を・・・」


貴音「陳宮殿のお陰で討つべき者を知れました。ありがとうございます」

陳宮「いえ、私共、董卓軍も微力ながら、お力添えしましょう」


響「自分も助けるぞ。悪い奴は放って置け無いし、なっ!」


貴音「重ねて礼を申します」




貴音「劉P、待って居なさい。その悪行───」




貴音「───まるで月が照らすが如く明るみに出たようですね」




見上げる空には遠く青い月。

まるで歴史が移り行く様を嘲笑うようにその姿を白み掛かった空に溶かして行った。

レスありがとうございます。

赤兎馬は勿論出てきますよ!
ただ、董卓が絡むかはまだ未定です。

北斗の拳に出てくる黒王号とタメを張る馬離れした赤兎馬さん。
人間に捕まえられるのか検証中ですので暫しお待ちを。


一気読みありがとうございます。
第一幕で亜美が言ってました。

亜美「もっと褒めても良いんだよ?」と。

では投下して行きます!

────まだ、夜も明け切らぬ頃、朝露を踏みながら二人の男が示し合わした様に欠伸をする。


番頭A「ふわぁ~。それにしてもどうしたもんかなー?」

番頭B「ふわぁ~。こりゃひでぇ。寝て起きたら1日で元通りって訳には行かねぇもんだな」

番頭A「ははは。なんだそりゃ?」


二人は話ながら街の中心へと歩いて行く。


洛陽は商業も盛んで、新鮮で安い食べ物から、高価で珍しい工芸品など何でも手に入った。

いつもの朝は、すでにこの時間から商いの準備に勤しむ人達で賑わっていた。
そんな昨日までの平和が遠い日の事の様に思える。

目の前に広がるのは、未だ現実味が無い光景。
瓦解した建物。
瓦礫の山の向こうに地平線が見える。

高台に居る訳でも無いのに街の全容が見える事に眩暈すら覚える。


番頭B「まぁ、あれだ。この街はごちゃごちゃしてたし、逆にスッキリした、ってもんだ」


番頭A「お前、それ他の人に言ったら殺されるぞ?」


洛陽で残ってるのは隅に位置した一部の家屋と765屋だけだった。


番頭B「おっとっと。つい口が滑っちまった。さて、いっちょ人様のお役に立ちますか!」


番頭A「そうだな!みんな困って────何だありゃ?」


番頭の一人がそう言って眉をひそめる。
それを見てもう一人は遠くを見る様に手を目の前にかざす。

一塊の集団が街の中心へと向かって来る。
先頭の馬には寄り添うような人影が見えた。

馬の手綱を握る者は大層立派な鎧を着ている。
その後ろには抱きつく様に前の者に腕を回してる影。


番頭B「ん?旗に呉って書いてあんな?」


番頭A「呉といやぁ、孫堅ってお人が仕切ってる所だな───っと、こっちにおいでなさったぞ?」


馬に乗った二人が番頭達の前まで来る。

陽の光に照らされ、顔がはっきりと見えた。


馴れた手つきで手綱を握る少女は漆黒の髪。
それを写し移したかの様な曇り一つ無い黒い瞳。
しっかりして快活そうな印象。

後ろに相乗りしている少女は柔らかい茶褐色の髪。
何かに怯える様な瞳は弱々しくも艶のある金茶色。
番頭達の姿を見ると、ヒッと小さな悲鳴を上げて隠れる様に身を小さくした。


前に乗っていた手綱を握っていた少女が華麗に馬から降りると後ろに乗っていた少女に手を貸す。


「おはようございます!僕は孫堅の娘」


「孫策!───孫策真です!」


「この街の復興を手伝いに来ましたっ!」


ニコッと笑った口元には白い歯が爽やかに光る。


真「ほら、隠れて無いで雪歩も挨拶しないと?」


促される様に、押し出される様にもう一人の少女も挨拶する。


「ひっ、お、お、おはようございますぅ」


「しゅっ、周喩雪歩ですぅっ!?」


叫ぶ様にそれだけを言うとまた、真の背中に隠れてしまった。


真「まったく、雪歩の男嫌いには困っちゃうな。あはは」

雪歩「あぅぅ。男の人は苦手ですぅ」


苦笑いする真の背中から消え入りそうな雪歩の声が聞こえた。


番頭A「手前、この街で武具屋を任されている番頭共です。以後お見知り置きを」

番頭B「あんた達、手伝いに来てくれたのかい?そりゃ助かる───」


番頭A「───こ、こら!あんた達って何だ!もう少し丁寧に喋れ無いのか?」



真「───あはは!そんなの気にしないで気軽に真って呼んで下さい!」


番頭A「そうかい?真さんは腕もかなり立ちそうだ。力仕事も頼めるかい?」

真「はい!僕に出来る事なら何でも言って下さい!」


番頭B「後ろのお嬢さんは・・・」


真「あ、雪歩はこう見えて穴を掘るのが上手んですよ!ね?」

真「それに僕に負け無いくらい短刀の使い手です!」


番頭B「へぇ。人は見かけによらねぇもんだなぁ」

雪歩「わ、私なんて・・・ひんそーでちんちくりんで・・・こんな私は穴掘って埋まっときますぅ───」


番頭A「───あ、丁度良い!井戸が潰れて困ってたんだ!」

番頭B「そうそう!顔も洗え無ぇからいっちょ頼まぁ」


真「やったね雪歩!ぴったりの仕事じゃないか!」

雪歩「が、頑張りますぅ」


真「じゃあ、頑張って復興しましょう!おーっ!」

番頭A・B「おうとも!」

雪歩「お、おぉーっ・・・」


──────
────
──


真達、呉の民達の手助けにより、洛陽に復興の兆しが見え始めた頃。

荒れた高野を一人の少女が馬と共に駆ける。

瑠璃色の長い髪が風と戯れる。
淡い鈍色の瞳は真っ直ぐと先を見据え、はっきりとした意志の強さが見える。

そんな少女の行く先。
困った様に何かを引きずって歩く一頭の馬が見えた。


───こんな所に鞍を背負った馬?

───飼い主と、はぐれたのかしら?


少女は手綱を引いて速度を落とし、馬の側に行くと自分の馬から降りた。


「あなたは迷子?あなたの主人はどこに居るの?」


そう言いながら馬の首を優しく撫でる。
困り顔の馬の鼻に指を添わすと馬は鼻を鳴らし顔を振った。


少女は軽く悲鳴を上げ、馬から離れる。
その時、馬の足元に転がる人影を見つけた。


「あっ・・・あなた!大丈夫!?」


声を掛けながら慌てて抱き起こすと少し驚いた。
倒れて居たのは自分と同じくらいの少女。

意識を失っているようで反応は無い。
だが、目立った外傷も無いのでそこまで危険な状態では無さそう。

ほっと小さな胸を撫で下ろす。

耳を澄ますとまるで寝息の様な吐息が聞こえる。


───もしかして、寝てるのかしら?

まさかね・・・?

っと、こんな陽の当たる所に居たら危ないわね───。


きょろきょろと見渡し木陰を探すと、少し向こうに大きな木を見つけた。

少女を背負い、木の下に行こうとするとピンと何かが張って足を止められる。


不思議に思って原因を探る。
背中におぶった少女の手には、しっかりと手綱が握られていた。


───よっぽどこの馬が大事なのね。ふふっ。


「あなたの主人を向こうの木陰に連れて行きたいからあなたも付いて来てくれる?」


試しに馬に言って見ると理解した様に、のそのそと歩き出した。


「あなた、良い子ね。ふふっ」


木陰に少女を寝かし、その横に自分も腰を落ちつける。

少女の馬は心配そうに少女を見つめていた。


「大丈夫よ。きっと、すぐに良くなるわ」


そう声を掛けると、馬もゆっくりと少女の側で屈んだ。


──────
────
──


少し時間は遡る。


高野をのんびり闊歩する、馬に跨がった金髪の少女。


美希「むー・・・まだ街が見えない」

美希「絶影も疲れたよね?」

絶影「ブルンっ」

美希「ごめんね」

絶影「ブルルっ」

美希「あはっ☆ありがとうなの」


美希「でもミキ、空腹と睡魔のダブルパンチなの・・・あふぅ」


絶影「ブルっ」


美希「ごめんなさいなの。ミキ、もうゴールしても良いよね───」


そう言いながら美希の意識は深い眠りの中に落ちて行く。


背中からは美希の寝息が聞こえた。

絶影は鼻をひとつ鳴らして、足を止めた。


空にはトンビが鳴いていた。


少し考えながらまたゆっくりと歩き出す。

その時、どさり。と美希が背中から落ちた。
しっかりと手綱は握っているが、起きる様子は無い。

絶影は困った様に鼻先を動かし手綱を引っ張った。

起きない。

今度は少し引きずってみるが、やはり起きない。

そうこうしてると、一人の少女が近寄って来た。


「あなたは迷子?あなたの主人はどこに居るの?」


──────
────
──


美希「───あふぅ・・・あれ?ミキなんでこんな所にいるの?」

美希「絶影が連れて来てくれたの?」

絶影「ブルっ」


美希「違う?んーっ?」


腕を組んで考え込むが、すぐに飽きて立ち上がる。
その時、青い髪の少女が近寄ってきた。


少女「良かった!気が付いたのね!」

美希「気が付いた・・・?あなたは?」



少女「私は千早。張遼、千早」


美希「千早さんがミキをここに連れて来てくれたの?」

千早「えぇ。だって気を失って倒れてたから───」


美希「───気を失って?───あっ!」

美希「あのね千早さん?それ、ミキ違うって思うな☆」


美希「だってミキお腹空いたけど食べる物も無いから寝てただけだもん♪あはっ☆」


千早「・・・」

美希「ち・・・はやさん?」


千早はぷるぷると肩を震わせている。
かと、思うと一気に溜め込んでいた空気を吐き出した。


千早「・・・ぷっ───あはははははは───」


美希「千早さん?」

千早「あはは───ごっ、ごめんなさい!」

千早「で、でも、まさかホントに・・・ぐっ!寝てた、だけだ、なんて───ぷっ」


千早「あははははは────ひぃーっ・・・ふふふ」

千早「ごっ、ごめん・・・なさ、い。ぐふっ!?あははははははははは────」


腹を抱えて笑い転げる千早を横目に絶影と見合わせる。


───もはや処置無し、なの。

────美希達から少し離れた場所。

互いに押し合う様に、ぶつかり合う集団。

片方の旗は紫。
もう片方は黒。

山に囲まれた盆地はまるでコロッセオの様に戦場と化していた。

戦況を見るに紫の旗の方が若干、圧され、旗色が悪く見える。

一人の青年が周りの黒旗を掲げた兵達を鼓舞した。


「お前ら!数は負けてるが向こうは雑兵ばかりだ!押し切れ!」


その言葉に兵達の士気も上がる。
百ほどの兵士を引き連れて攻め上がる。

戦場を駆けていくと目の前に一人の武将が立ち塞がった。


青年「あんた・・・袁紹軍の。名前は───何だっけ?」

武将「我が名は顔───」

青年「───まぁ、良いや。どうせアンタの武勇もここまでだからな」


武将「貴様っ!?」


僅か一合の斬り合いで立ち塞がった武将が血を流し倒れ込む。



青年「アンタ、生かしといてやるよ。精々、この悪鬼羅刹の名を広めてくれよ────」



「───華雄冬馬、乱世にありってな!」



──────
────
──


場所は戻り、ようやく落ち着いた様子の千早に美希が話し掛けた。


美希「千早さんは何でこんな所に居るの?」


千早「あっ!そうよ!私、ある人から援軍を頼まれてたんだったわ!」


───千早さんってば、しっかりしてそうなのに・・・。


美希「意外と、うっかりさん?」


千早「くっ。あなた───えっと・・・」

美希「ミキ?ミキはミキなの」


千早「じゃあ美希は、もう一人でも大丈夫?」

美希「うん」

千早「じゃあ、私もう行くわね!あ、良かったらこれ食べて」

美希「?」


差し出された包みを取ると、少し不格好な握り飯が二つ。


千早「その・・・形は変だけど味は大丈夫・・・だと思うわ」

美希「わぁ~♪ありがとう!」


千早「じゃあ、今度こそこれで」


美希「あっ、千早さんっ!」


さっと身を翻した千早に声を掛ける。


千早「美希?悪いけど私急いでる───」

美希「───千早さん今から戦いに行くんだよね?」


千早「えっ?えぇ、そうだけど・・・」


美希「じゃあ、ミキも行くの!一宿一飯の礼?ってやつなの☆」

千早「えぇっ!?何言ってるのっ?危ないわ!」


美希「大丈夫!───」



美希「───ミキにお任せあれ、なの☆」



────戦場を駆ける黒い固まり。

戦場の中心部で袁紹軍の兵士は絶望していた。
次々に味方の兵士を切り裂き、鬼が迫ってくる。

まさに悪鬼羅刹。


兵士「化けモンじゃねぇか・・・」


武器を捨てて降伏しても殺されない保証はどこにも無い。
槍を捨て刀を抜く。

http://m.youtube.com/#/watch?v

ttp://m.youtube.com/#/watch?v

BGM指定したいけどダメだ

ツベからBGM貼れ無い・・・

ちょっと調べるので投下、休憩します

誰か貼ってくれないかな

arcadiaなんだけど・・・


黒い風はすぐそこまで来ている。
やがて来る、終わりに備える様に刀を構えた。

全てを飲み込む黒い風。
その黒い風が鼻先に触れた時、追い風が吹いた。

激しく剣と剣のぶつかる音が聞こえる。

悪鬼は、ほくそ笑んだ。


冬馬「フン。やっと骨のありそうな奴が出て来やがったか」

冬馬「おい、アンタ。この俺の剣を止めたんだ───」






冬馬「───特別に名乗って良いぜ?」



悪鬼の剣を止めた青い風。



千早「張遼、千早、参ります───」






言うよりも早く、千早は冬馬に斬り掛かった。

振りかざした剣に光が反射し地を照らす。

あの黒い風と互角に渡り合う青い風。

その姿に兵士は一縷の希望を見た。
もしかしたら形勢を覆せるかも知れないと。


夢の様に淡く儚い希望。


それでも夢見ずには、いれなかった。

鳥の翼の様にひらひらと舞う剣。
戦場という空を羽ばたいていく。


小さな青い風は少しずつ戦場を巻き込んで行く。
巨大なうねりと共に悪鬼と打ち合う千早の声が響く。



千早「袁紹軍よ聞きなさい!」


千早「天に祈るのはその心が折れた時だけ!」


千早「心とは己の剣!まだ折れては無い!」




「その心で大事なモノを守り抜きなさい!」





戦場いっぱいに袁紹軍の雄叫びが響く。

それに怯んだ黒い旗を少しずつ押し返して行く。

少し離れた場所で美希も次々と兵士を倒す。


冬馬「フン。あんた少しはやる様だな。本気でやらせてもらう。おい!」


冬馬の下に二人の兵士が走ってくる。
手に持つ剣は人の身の丈ほどはあろうかと言う大物。

まさに悪鬼の暴剣。

冬馬はそれを片手で受け取る。


千早「そんな重そうな剣、戦場で使うなんて馬鹿げてるわね」



冬馬「そうか?アンタのその胸みたいな小さな物差しじゃ計れねぇかもな───」



そう言った冬馬は一瞬で距離を詰めると凶悪な一振りを見舞う。
とっさに剣で受けた千早の脚が大地にめり込む。


千早「───っ!?くっ!?」


冬馬「驚いた。この一撃を受け止めた奴は初めてだぜ?」


冬馬「だが、次は無ぇっ!」


千早の持つ剣の刃は欠け、真ん中辺りに亀裂が見える。
次の一撃で確実に折れ、千早の身体にその暴剣は食い込むだろう。

振り下ろされた刃を半身でかわし、距離を取る。


受ければ死ぬ。
避けきれなければ死ぬ。


ならば、───誰よりも速く。


剣よりも疾く────。



まるで暴風の様に繰り出される剣を全てぎりぎりで避ける。
意識よりも早く身体が命令する。



翔べ────。


山よりも高く。


行け────。


炎よりも熱い熱を帯び、氷よりも鋭さを増して────。



冬馬の大きな一振りを避けた時、千早が誘う様に構えた。


冬馬「面白ぇ。差し違えるつもりか?止めとけよ?アンタの間合いじゃ届かねぇよ」

千早「・・・」

冬馬「チッ。まぁ良い。これで終わりだ」


慈悲も無く振り下ろした剣。


重力が乗った暴剣はこれまでの、どの一撃よりも早かった。
その切っ先が触れるか触れないかの一瞬。


千早は叫んだ。







     あぁぁぁぁぁぁっ────!!







千早を捉えた筈の暴剣は空振った様に空を斬る。


冬馬「・・・あ、ありえ、無ぇ・・・その折れかけの剣で───」

暴剣のその刀身は千早の遥か後方の地面に突き刺さった。

冬馬「───俺の剣を叩き折った・・・のか?」




千早「心は剣、剣は心───」




「───私の心はそんな簡単には折れたりしません」




───まだ私はこの戦場で輝ける。





美希「千早さん・・・凄い────」



美希「───凄くキラキラしてるの・・・」


美希「ミキ、見つけた───」


美希「───ここがキラキラ出来る場所なの」


冬馬「俺が負けた・・・?」


がっくりと膝をついた冬馬に二人の青年が駆け寄る。


「もーっ冬馬君ってば独断専行が過ぎるよー」

そうぼやいたのは少年と言っても良いほどの背格好の青年。
その姿に似つかわしく無い、巨大な戦斧を後ろ手に抱え頬を膨らませている。


「まぁまぁ。それも冬馬の魅力の一つさ☆」

そう続いた青年は戦場の中でも一際、目に付く背の高さ。
斧を持った青年を諌める様に肩を叩く。

冬馬「俺が負けた・・・?」

がっくりと膝をついた冬馬に二人の青年が駆け寄る。


「もーっ冬馬君ってば独断専行が過ぎるよー」

そうぼやいたのは少年と言っても良いほどの背格好の青年。
その姿に似つかわしく無い、巨大な戦斧を後ろ手に抱え頬を膨らませている。


「まぁまぁ。それも冬馬の魅力の一つさ☆」

そう続いた青年は戦場の中でも一際、目に付く背の高さ。
斧を持った青年を諌める様に肩を叩く。


冬馬「翔太・・・北斗・・・すまねぇ」

翔太「もっと僕達を頼って欲しいなー?」

北斗「それは一理あるね」


翔太「まぁ、お説教はこれくらいにして一旦退却かな?」

北斗「そうだな」



冬馬「っ!まだだ!俺はまだ負けて無ぇ───」

翔太「───冬馬君・・・」


冬馬「まだ戦えるんだよっ───」



北斗「───ダメだ」


冬馬「っ!?まだ俺の心は折れちゃいねぇ!」

北斗「それは分かってる。でも───」


北斗「───袁紹の姿が見当たらない」

冬馬「びびって逃げたんじゃねぇのか?」

翔太「もしかして陽動作戦・・・?」


北斗「あぁ。その可能性もある。袁紹と言えばなかなかの策略家らしいからね」

冬馬「・・・分かった」


冬馬「おい、張遼と言ったか?ここは一旦引いてやる」


千早「・・・逃がすとでも思ってるのかしら?」


立ち塞がる様に剣を構えた千早。
その千早にゆっくりと北斗と翔太が近付く。


翔太「冬馬君の暴剣を折っちゃうなんて、お姉さん結構やるね?」

北斗「翔太、ここは俺が───」

翔太「───そう言うと思った」


苦笑いし肩をすくめる翔太から、北斗は視線を千早に移す。


北斗「キミにそんな物騒な物は似合わ無いよ」

千早「くっ───」


───この男、武器ひとつ持って無いのに嫌な感じがする。

構えた剣に思わず力が入る。


───隙が見つからない・・・。


するすると近付いてくる北斗に思わず後退りする。
目の前まで来た北斗の喉元に切っ先が触れた。


北斗「キミに似合うのは───」

とん───と、軽く千早の剣を叩く。

北斗「────剣よりも花じゃないかな?エンジェルちゃん☆」


北斗がゆっくりと千早に背を向けた時。

千早の剣は、音も無く折れた。


千早「───っ!?軽く触れただけで・・・そんな・・・?」


美希「千早さんっ───」


美希は千早の元に駆け寄り、明確な敵意を冬馬達に向けた。

方天画戟と共に。


翔太「まったく。北斗君は綺麗なお姉さんに甘いよね?」


そう言って無防備に背中を向けた翔太に狙いを定め方天画戟を突き出す。


美希「───っ!?」


翔太に突き刺さるはずの方天画戟はいとも簡単に弾かれた。


翔太「そんなんじゃ僕には届かないよ?」


そう言いながら振り向いた翔太はにこりと笑う。


美希「後ろ向きのままでっ───!?」


翔太「じゃあね?お姉さん達────!」


おもむろに振りかぶった戦斧が地面に叩きつけられた。
その大地を砕かんばかりの一撃が旋風と共に砂煙を巻き上げる。

襲いかかってくる様な砂煙に思わず腕で目を庇う。

砂煙が晴れた時、そこに冬馬達三人の姿は無かった。

董卓軍もいつの間にか居なくなっていた。


美希「終わっちゃった・・・の───?」


悔しそうに唇を噛み締め、肩を震わせる美希に千早は恐る恐る手を伸ばす。


千早「───美希?」


美希「ミキまだ何もして無いのっ!────」


一粒、美希の瞳から零れ落ちた涙。
その涙の筋をなぞる様に、すーっと涙が流れる。



美希「───キラキラ出来無かったのっ!」



袁紹軍の兵士達が勝利を喜ぶ中。

美希の言葉のその意味を計り損ねた千早はただ立ち尽くすしか無かった。

うなだれる様に折れた剣を下ろす。

千早の剣は鈍く光を反射した──────。



────袁紹軍が勝利を祝うその頃。

洛陽には少しずつ活気が戻り始めていた。

真達の働きによって瓦礫の撤去作業はスムーズに進む。
洛陽に住む民達も希望を胸に宿した。

一段落着いた真が土に埋まってしまった井戸の中を覗き込む。


真「雪歩ーっ?そっちの調子はー?」

雪歩「も、もうすぐ、終わります~」


雪歩は井戸の底から天を見上げつつ腕で額の汗を拭う。


───ふぅ。

もう少し。

ファイト、雪歩。

よし───。


自分で自分に活を入れ掘削作業を再開する。

スコップを力いっぱい地面に差し込むと何か硬い物に当たった感触が手に伝った。


────石とかじゃ無いみたい、何かな?


土の中に手を入れて探ってみる。
指先に触れた塊を見失わない様に掴み上げた。


────わっ。綺麗ですぅ。


掌の上には竜が象られた金細工。

何気無く裏返して見ると竜の腹に印の様な文字列が見えた。

着物の胸元にしっかりと仕舞い、掘り進めると地面からじわっと水が溢れた。


それを見てほっ、と胸をなで下ろし、縄バシゴを登る。

井戸から出ると先程の置物を早速、真に見せてみた。


真「んー?何だろこれ?カッコ良いね!」


雪歩から受け取った物を空にかざしていると、それを見た真の父が寄って来た。


「それは・・・?」


真「あ、父さん、これ何か分かる?」


真父「むむむ・・・?これはもしかしたら───」



真父「───伝国の玉璽かも知れないな」



真「でんこくのぎょくじ?────」

真父「───あぁ」


真父「父さんも初めて見るが古い書物にあった絵にそっくりだ」

雪歩「それって───?」


真父「皇帝だけが持つ事を許された印だな」

真「え~~!?雪歩凄いっ!お手柄だね!」


雪歩「え、えぇっ?で、でも、何でこんな所に?」


真父「歴史が動く時、必ずその動乱の中で所在が分からなくなるらしい」

真父「そして───」





真父「───手に入れた者は歴史に名を刻む覇者になれる」




雪歩「えぇーっ!?ど、どうしよう真ちゃん・・・」

真「これは・・・雪歩が覇者になるしか無いねっ!」


雪歩「ふぇぇっ!?こ、これ、真ちゃんにあげる!」

真「えぇーっ!?雪歩が見つけたんだから雪歩が持っときなよ?」

雪歩「わ、私なんかが、覇者になるなんておこがましいですぅ───」


雪歩「───あ、もう一回埋めちゃえば良いんだよ」

真「えぇ~そんなの持ったい無いよ!」

雪歩「離して真ちゃん!こんな、争いの火種にしかならない様な物・・・私が───」


などと騒いでると一人の女性が話し掛けて来た。


「───あの~すいませ~ん。ここは何処なんでしょうか?」


肩に届かないくらい短めな藍色の髪。
頬に添えた手がおっとりとした印象を際立たせる。


真「どこ・・・って────」

真「───あ、建物とか殆ど壊れてるから分からないんですよね!」


雪歩「ここは洛陽です」


女性「あらあら~。困ったわねぇ~・・・」


真「どうしたんですか?」

女性「いえ、それが・・・」


女性「どうやら、道に迷ってしまったようで」

真「道に?」


女性「いつの間にかこんな所まで・・・」


真父「どうやら、お困りの様ですな?」

女性「えっ?・・・えぇ」


真父「女性一人では何かと不安でしょう?真、送って差し上げなさい」

真「僕も女性なんだけど・・・まぁ、良いや」


女性「ええっ?そんなのなんだか悪いです───」

真「───あはは!困った人は放って置けない質なんで気にしないで下さい!」


真「僕の名前は真!こっちは雪歩!」

雪歩「ですぅ」

真「お姉さんの名前は?」



女性「私はあずさ。袁紹あずさです───」

この辺りで一旦投下終了です。

この先はおそらく当分バトルは無いと思います。
描写に疲れますし。はい。
冬馬の噛ませ犬感が拭えませんね。


翔太「冬馬君を倒したくらいでいい気にならないでね?」

北斗「冬馬は我ら董卓四天王の中でも最弱・・・」


この後、誰得の冬馬復活はあるのか?

楽しみにしておいて下さい。

ではここまで、ありがとうございました。

なんかスパムちゃんぷるー食らった・・・

さて、投下して行きます

───場所は変わって洛陽より北東に位置する并州の中心部の街。

賑やかな街並みを満足気に一人の少女は歩く。
丁度、宿屋の前に差し掛かった時その足を止めた。

宿屋の外壁を睨む様に目を細めて見つめる少女。
壁には墨で《萌子》と大きく書かれていた。


伊織「新堂、あの落書きは何?」

新堂「最近流行りの新興宗教、黄巾賊の仕業かと」

伊織「黄巾賊・・・?この私が統治してる街だと知っての狼藉かしら?」


───良い度胸じゃない。

その度胸だけは誉めてあげるわ。


伊織「目障りだからその落書きはすぐに消して頂戴」

新堂「はい。その様に」


伊織「───あ、それと・・・」

伊織「私の街に淫祠邪教は必要無い───」


伊織「───黄巾賊ってのを見つけたらすぐに捕まえて頂戴」


新堂「かしこまりました」


そう頭を下げた新堂はすっ、と姿を消した。
それを確認すると壁の落書きを睨み付ける。


伊織「この私の街で好き勝手出来るだなんて思わない事ね───」

新堂「伊織お嬢様」

伊織「───きゃっ!?あ、あら、新堂?何?」


新堂「それが───」

伊織「?」





新堂「───見回りの兵が黄巾賊をすでに捕まえておりました」



伊織「───はぁ?」


──────
────
──


特別に伊織って呼び捨てで呼ぶ事を許可するわ───。


───再会の約束をした。


すぐに私の武勇をこの洛陽まで轟かせてやるんだから───。


気恥ずかしくてごまかした。


───そしたら笑ってる方が良いだなんてキザじゃない?


キザもキザ、大キザよ。


ははは───。


アンタの笑ってる姿を見たらこれから言う言葉が凄く恥ずかしい事の様な気がして。


そんな心の中を悟られない様に隠す様に言った。


──────待ってる。


きっとあの時の私の顔は真っ赤だったと思う。
今思い出しても赤面モノよ。

次に会う時はもっと対等に渡り合える自分であろう。






そう、心に決めた────。







伊織「───なのに、何で!アンタは!牢屋の中に居るのよおぉっ!?」




P「えっ?あ、スマン・・・?」


伊織「過去に戻ってあの時の私を殺せるなら迷わず殺すっ!八つ裂きにしてやるわ!」

P「い、伊織?何て物騒な事を言ってるんだ?」


にひひっ♪次に会った時に教えてあげるっ───。


伊織「───っじゃないわよぉっ!?あぁぁっ!」


やよい「はわっ!?」

亜美「兄ちゃん・・・何したの?」

P「知らん!ってか亜美も真美もそのジト目を止めてくれないか?」

真美「いおりん、ご立腹だYo?───」


伊織「───いおりん言うなっ!」


伊織「で、そっちの子は誰?」

P「あ、この子は───」

やよい「はじめましてぇ!私は、やよいです!」


伊織「ふぅん?私は伊織───」

やよい「───じゃあ伊織ちゃんだねっ!私もやよいって呼んで下さい!」

伊織「う・・・あ・・・え、えぇ」


亜美「おぅふ」

真美「やよいっちの純粋さに気圧されておられる」

P「ははは」


伊織「って言うか、アンタ!」

P「?」

伊織「誘拐は立派な犯罪よ?」

P「は?」

伊織「牢屋の見張り番はどこ?」

P「いやいや───」

伊織「なんでやよいまで一緒に牢屋に入れてるのよ?」

やよい「?」


P「いや、ちょっと違───」

伊織「黙りなさい、このロリコン!」

やよい「ろり・・・こん?」


P「ちょ───」

亜美「あ、やっぱりそうなんだ」

真美「きっと真美達の事もやらち→目で見てたんだね」

P「いや、お前達は勝手に付いて来たんじゃないか!?あとジト目やめてマジで」


やよい「ねー亜美、ろりこんってなに?」

亜美「んっふっふ~☆それ聞いちゃうのかい?」

真美「おっと、やよいっちには、まだ早いぜ?」


やよい「もー!すぐ私の事を子供扱いするー!私の方がお姉さんなのに!」

伊織「え?やよいっていくつなの?」

やよい「14歳だよ?」


伊織「そ、そう・・・」

伊織(三歳は下だと思ってた、だなんて言えないわね───)

亜美・真美(───って、思ってるんだろうなー)


P「えぇいっ!話が進まないじゃないか!やよいは仲間だよ」

伊織「え?そうなの?」

やよい「はい!そうなんですっ♪」


伊織「なんで捕まったの?」

P「ちょっと黄巾賊と関わりを持ってさ───」

伊織「ふぅん・・・?それで?」


P「───伊織の所で黄巾賊の面倒見てくれないかなーって」


伊織「なるほど───は?」


亜美「いおりんの所で黄巾賊の───」

真美「───面倒見てくれないかなーって」


伊織「はぁぁぁっ?何言ってんの!?あと、いおりんゆーなっ!」

P「ダメか?」


伊織「ダメよ!却下!ド却下よっ!」


やよい「あぅぅ・・・」

伊織「あ、え?」


P「そうか」

伊織「淫祠邪教は禁止したの!」

伊織「だいたい賊なんでしょ?面倒見る義理も無いし義務も無いわよ!」


やよい「そう、ですよね・・・」

伊織「え?なんでやよいが落ち込むの?」

P「そうか───」


P「───じゃあ、ここからは交渉だ」


伊織「・・・は?」


───やっぱりコイツはただの馬鹿だったわ。


伊織「あんた何言ってんの交渉の余地なんて───」


P「───ある」

伊織「はぁ?」



新堂「───伊織お嬢様」

伊織「あら?どうしたの?」


新堂「この街に大勢の人が押し寄せて来ております」


伊織「───もしかしてアンタの仕業なの?」

P「まぁ、俺がここに呼んだ」

伊織「な、なんで?」


P「黄巾の人達を伊織が助けてくれるから」


伊織「だから助けたりなんかしないって言って───」


P「伊織は飢えて困ってる民を平気で見捨てるのか?」

伊織「───っ!?」


P「それで王になるってまだ言うつもりか?」


伊織「き、危険因子は排除しないと国が成りたたないわ」

伊織「その選別をするのが王の役目だと思わない?」


P「ふむ」

P「じゃあ、危険じゃなきゃ良いんだよな?」

伊織「そ、そうよ」


P「じゃあ、ここで黄巾賊は解散する」


伊織「はぁ?」


P「これで、危険じゃなくなっただろ?」

伊織「いやいや、それで丸く収まる訳無いじゃない?」


P「ふむ」

伊織「ふむ、じゃないわよ」


P「伊織は国が潤うには何が必要だと思う?」

伊織「そりゃ、潤沢な資金と土地じゃない?」


P「違う」


P「民が国を潤わすんだよ」


伊織「・・・確かにそれは正論よ」

伊織「でもそれは暴論と一緒。民が生きるにはお金がいるの」


P「うん。だから、この荒れた土地で農業をするんだよ」

伊織「こんなカラカラの土地でどうやって?」


P「黄河から水を引いてくる。それに必要なのは?」

伊織「・・・人」


P「はい。そこで黄巾の人達が活躍してくれる訳だ」

伊織「ちなみに数は?」


P「ここに移動しながら五万人集めた」

伊織「五万っ!?アンタ何考えてるの?」


P「ここで最初に戻る」


P「伊織が見捨てたら五万人はどうなると思う?」


伊織「───っ!?アンタそれは卑怯よ!」


P「そして黄巾賊も解散させない」


伊織「・・・今度は脅す気?」

P「違う。このままじゃ本当に暴動が起きかね無い」


P「太平の世を築く為には黄巾賊が必要なんだよ」


P「民が安定した生活を送るために」


P「誰かが農地改革をしないといけない」

P「伊織なら、そのリーダーにぴったりだと思った」

P「頼む」


伊織「───それは前に言ってた『お願い』ってやつ?」

P「違う。これはただの進言さ」

伊織「───はぁ?」


P「王に必要なモノは何だと思う?」

伊織「・・・冷徹な判断と選別」

P「違う」



P「器の大きさだよ」



伊織「────っ!?」


P「この農地改革が成功すれば王に近付けると思わないか?」


P「それに、この作戦は伊織にしか成し得ないんだよ」


伊織「・・・資金の問題ね?」


P「そう。伊織なら王朝の財源から引っ張ってこれるだろ?」

P「『反乱を止める為にも』って口実も使えるし」

伊織「それは───」


伊織「でも、こんな大掛かりな作業じゃ年単位の話よ?」


P「だから黄巾賊が必要になるんだよ」

P「この大陸には、まだまだ飢えて苦しんでる人がいる」

P「黄巾賊ならネームバリューもある」

P「どんどん人が集まって来るよ」


伊織「なるほど・・・でも、その後はどうするの?」


伊織「農地を切り開いた後、黄巾賊の食い扶持は?」


P「無償で農地を分け与えれば良い」


伊織「はぁ?アンタ何言ってんの?」

P「いや、この広い大陸を切り開けばどうせ持て余すだろ?」

伊織「それは確かにそうだけど・・・」


P「誰かがやらないといけないなら───」




P「───それをやるのが王の役目だ」




伊織「言いたい放題言ってくれるわね・・・はぁ───」


伊織「───なんでこんな変な奴に目を付けられたのかしら・・・」


伊織「でも────」


伊織「───アンタの目は節穴じゃ無いとは思うわ?」


P「伊織・・・ありがとう」


伊織「この伊織ちゃんが指揮を執るからには一年なんて言わないわ」



伊織「見てなさい?3カ月できっちりモノにしてやるんだから!」


P「ははは。その意気だ」


やよい「わーっ!ありがとう伊織ちゃん!」

伊織「ありがとうって・・・やよいも黄巾賊なの?」

P「そうだけど?」


伊織「そうだけどって・・・アンタ、こんな子供にも賊とかやらしてるの?」

P「いや、やらしてると言うか・・・」

やよい「子供・・・あうぅ」


伊織「アンタには大人としての責任ってモノが無いの?だいたい───」

P「いや、やよいが教祖様なんだけど」

伊織「───亜美も真美もまだ子供だってのに連れま・・・は?」


───耳がおかしくなったのかしら?


亜美「やよいっち」

真美「黄巾賊」

P「教祖」


伊織「はは・・・何言ってんのよ、ねぇやよい?」

やよい「はい!私が教祖さん?───ですっ!」


伊織「えぇぇぇぇ──────っ!?」


──────
────
──

───洛陽の少し北、并州との境。

荒野を進む三人の姿があった。


真「へーあずささんって袁家の生まれなんですか?」

あずさ「はい~。でも私は一族の中ではあまり優秀な方では無いので父に怒られてばかりで・・・」

真「あーっ・・・僕の父も結構スパルタで困ってます」


あずさ「あらあら~お互い大変ねぇ~?」


真「父は『江東の虎』なんて呼ばれてるもんだから僕には『江東の小覇王』になれ!」

真「───って押し付けてくるんですよ!」


あずさ「うふふ───でも、真ちゃんのお父さんはきっと真ちゃんの事を想って、厳しくしてるんだと思うわ」

真「僕の───ため?」

あずさ「強く無いと生き残れない時代だもの」


あずさ「真ちゃんの事が大切だから強くなって欲しいんだと思うわ」


真「そっか・・・僕の為、か・・・」

真「そうですよね!ありがとうございます!」

あずさ「うふふ。いえいえ~」


あずさ「雪歩ちゃんのお家はどんなお家なのかしら?」

雪歩「・・・・・」

あずさ「あ、あらあら??」


真「ちょっと雪歩?いつまで玉璽見つめてるの?」

雪歩「───ふぇっ?」

雪歩「え?あれ?真ちゃん?」


真「真ちゃん?じゃないよ!まったく・・・」

雪歩「ご、ごめんなさい───」

雪歩「これ見てるとなんだか落ち着くと言うか───」


雪歩「───心が奥に沈んで行く様な気持ちになって・・・」


雪歩「それで・・・────」



雪歩「───・・・」


真「雪歩?」

雪歩「大丈夫だよ。真ちゃん───ふふっ」


真「・・・本当に?」


雪歩「本当だよ~?ふふっ」

真「それなら良いけど───ってあれ?」


真「ここどこだろ?いつの間にか并州に入っちゃってる・・・?」


あずさ「あらあら~まあまあ~うふふ」

遅れましたがレスありがとうございました。

他スレの更新ラッシュに押し流されて
だいぶこのスレが下がってたので
探すのに苦労しました。
自分のスレくらいはブクマするべきでしたね。はい。

そして悲しいお知らせです。

500レスを超えた所で物語の進行度が40パーセントも行ってません。
確実に2スレ目に突入しますので気長に完結までお付き合い下さい。

あと需要があるか分からないのですが明日辺りに全キャラのキャスティング解説などを5レスくらい投下しようか考えてます。

では、ここまで見てくれた方、本日もありがとうございました。

レスありがとうございます。

PC持って無くてスマホからの投下なのですが
専ブラのアプリとかありますか?

今からほんの少しだけ、投下して行きまーす!


洛陽よりやや南東。

豫州の中、皇帝の直近『何進』が治める土地。

───頴川。

石畳の上、蹄鉄をカツカツと鳴らしながら二頭の馬が並び歩く。
少し蹄を気にする素振りを見せたが何とも無しに尻尾をさっと振った。

馬の闊歩に合わせて瑠璃色と金色の後ろ髪が馬上で揺れる。


千早「本当に何進様に会いに行くの?」

美希「そうだよ?ミキ早くキラキラしたいもん」

千早「キラキラ、って・・・?」


美希「千早さんは、その何進さん?───って人に命令されたから戦いに行ったんでしょ?」

千早「『何進様』、ね」

美希「だから何進さんにミキ命令してもらうの!」


千早「はぁ…戦いの中に身を置いても虚しいだけよ?」

美希「そんな事、無い!じゃあ何で千早さんは戦うの?」


千早「私は・・・私には剣しか無いから」


美希「じゃあ、ミキも剣に命を賭けるの!」


千早「・・・いつか必ず後悔する日がくるわよ?」

美希「そんなのアリエナイ?って思うな!」



千早「・・・分かったわ」


───頴川太守廷。

木目の詰まった長い廊下を進んで行くと、二人の宦官の大きな声が聞こえてきた。
袖で口を覆っているが隠すつもりは毛頭無いらしい。


宦官A「それにしても肉屋風情が…のぅ?」

宦官B「上手く取り入ったもんじゃのぅ?」



美希に裾を引っ張られ、足を止めると耳打ちされた。

───あの人達、何で男の人なのにナヨナヨしてるの?

小声で宦官はみんなあんな感じ。と、だけ説明する。
美希は何か考える素振りをして真剣な表情で言った。


───もしかしてオカマさんなの?


否定も肯定もせずに歩き出す。
宦官の横を通り過ぎる時に頭を下げると、美希も真似して頭を下げた。

宦官達は美希を見て訝しげな顔をしたが、すぐにまた大きなひそひそ話に戻った。


宦官A「それにしても肉屋風情がのぅ?」

宦官B「少しは憚れば良いものを…のぅ?───」


何進の部屋の前に着く頃には宦官達の声も聞こえ無くなってた。

部屋に入ると何進が明るく出迎えてくれた。


何進「オー!千早!見事、董卓軍を退けたらしいですネ!」

千早「いえ、向こうが勝手に引いてくれただけです」

何進「ノノノン!千早のお陰デス!おや?そちらのお嬢サンは?」


美希「ミキはミキなの♪」

千早「一緒に董卓軍と戦ってくれたんです」

何進「オー!そうデシタか!それはありがとございマース!」


千早「ところで袁紹様にお会いしてから帰って来ようと思ったのですが、その姿が見当たら無くて…」

何進「オー…またデスか」

美希「また?」


何進「もともと温厚で優しい性格のせいでしょうか」

何進「戦いを嫌ってるのかもしれまセン」


千早「それでどこかに行ってしまう…と?」


何進「ワザとかどうかは分かりまセンが」

千早「そうですか…」

何進「それでも、これからも彼女を助けて上げてクダサイ。おねがいしマース」


千早「分かりました」

美希「ミキも助けるの!」

何進「オー!それは助かりマス!」


美希「それで─────」




美希「────次はいつ戦えるのかな?あはっ☆」




───はぁ・・・。

満面の笑みに思わず溜め息がこぼれた。


何進「と、とりあえず彼女を探してあげて下サーイ」

何進「袁紹軍のリーダーともなるとドコで命を狙われるか分かりまセン!」

千早「分かりました。ではこれで失礼します」


何進「いってらしゃーイ!」

美希「いってらっしゃいなの♪」

千早「・・・」


美希「ちょっ…千早さん?い、痛いの!ミキ、腕はそっち側には曲がらない、って思うなっ!?ご、ごめんなさいなの!ちゃんと歩くから─────」

千早「何進様、失礼します」

何進「が、頑張ってくだサーイ・・・」

とりあえず今日はここまでっス!

ありがとうございました。

美希[呂布]

天下無双。
方天画戟を武器に、戦場を駆ける様は飛翔軍と称えられました。

金髪青目。そしてアニマスの無双感。
美希を呂布にしない場合、無条件でPが死ぬまでありえます。
覚醒する日は来るのか?


千早[張遼]

呂布の配下として名を馳せ、呂布の死後は自決を選ぶも曹操に止められ、魏に下ります。

これは美希呂布の流れから、アニマスでも美希が動く理由が千早なので。
本当は公孫サンにしよう(趙雲とも関係性があるので)と思ったんですけど白馬陣が地味なので没。
「破れる物なら破ってみなさい!我が鉄壁の白馬陣!くっ」とか言わせたかったです。はい。


真[孫策]

江東の虎と呼ばれた孫堅の第一子。孫権、孫尚香のお兄ちゃん。
あまり活躍出来ないまま病に伏せ、一線から退きます。

三国志(物理)ではかなり強い設定ですが、ちゃんと活躍の場を作って上げれるかが心配でなりません。


冬馬[華雄]

董卓軍のリーダー。
華やかな雄。冬馬君ですよね?

北斗[閻行]

作中では武将名が出て来てませんが閻行である事にこの先意味があります。

翔太[徐栄]

こちらも作中で(ry

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