まどか「ほむらちゃんがグレた」 (56)

杏子「もうこっちには慣れた? とはいってもアメリカに行く前は見滝原にいたんだよね」

まどか「うん。でもこの辺もだいぶ変わってるね」

杏子「三年だもんな。迷子になっちゃうな」

まどか「そこまでしないよ~」

まどか「……でも、他にもちょっと戸惑うかな……」

杏子「ああ…」

まどか「ああいうのってさ」

杏子「うん、別にこっちで流行ってるわけじゃないからね」

まどか「そうなんだ…… あ、あとね」

杏子「おおぅ」

まどか「前にいた時に好きだった漫画とか、いくつか終わっちゃってるね」

杏子「向こうでは読んでなかったの?」

まどか「売ってるお店もあったみたい。でもそこまでしなかったかな」

まどか「かといって、小学校の頃読んでたのを今更ねって」

杏子「確かになぁ。そうだ、帰りに本屋寄ってこうよ」

杏子「あたしも欲しいのあるし、どんなのが流行ってるか教えてあげるよ」

まどか「いいの? ありがとう」

——本屋——

杏子「…売ってないなぁ」

まどか「学校の図書館で借りられないの?」

杏子「いつも貸し出し中なんだよ。だからいっそ買っちゃおうかなと思ったんだよ」

まどか「そういうことってあるよね…」

杏子「それにあたし、読むの遅いからさ。途中で期限来ちゃうし」

杏子「ちょっとお店の人に聞いてみよう」

店員「検索したところ、風見野の店舗に在庫が一冊だけありました」

杏子「おお~ ありがとうございます!」

店員「お取り寄せいたしますと明日には届きます」

杏子「いいですよ。これから買いに行くから」


杏子「というわけで行くよ!」

まどか「今から?」

杏子「もうちょっとで手に入ると思うと、すぐ読みたくなってきた」

杏子「それにあたし、前は向こうにいたんだ。おいしいラーメン屋あるから食べてこうよ」

まどか「いいねぇ~」

——風見野の本屋——

杏子「お店の人が連絡しといてくれたみたい。とっといてくれてたよ」

まどか「よかったじゃない」

杏子「よ~し、ラーメン食べて帰ろう」

まどか「うん! ……あれ?」

杏子「どしたの?」

まどか「…ほむらちゃんだ」

杏子「どこ?」

まどか「ほら、あそこ。雑誌のコーナー」

杏子「ホントだ。なんでこんなとこまで来てるんだろ」

まどか「あのコーナー、何の雑誌があるの?」

杏子「あそこはな……」

杏子(あ、一冊手にとったぞ)

まどか「あれ買うのかな」

『小悪魔ageha』

杏子「グッ…」プルプル

まどか「きょ、杏子ちゃん大丈夫?」

杏子「シーッ! ちょっと静かにしてて」

杏子「ほむらにバレちゃうだろ」

まどか「うん…… バレちゃいけないの?」

杏子「あの雑誌買いに来てるって、たぶんほむらは内緒にしたいだろうから…」

まどか「え… えっと、そういう雑誌…… なのかな……?」

杏子「いや、まどかが今思い浮かべてるのとはちょっと違うと思う」

まどか(ほむらちゃん、ちょっと大人っぽいから、えっちな本とか読むのかな…)

 ストン
まどか「棚に戻しちゃった」

杏子「ふぅ……」

まどか「買わないのかな」

杏子「思い留まったか……」

まどか「ねぇあれどんな」

杏子「と、とりあえず行こう。後で説明するから」

杏子(早くこの場を離れないとまた吹き出しちゃいそうだし)

——翌日——

さやか「久しぶりだね。まどかが遊びにくるなんて」

まどか「ホントだね~」

杏子「アメリカへ行く前から仲良かったんだな」

さやか「そうそう。だから中学も一緒になれて嬉しいよ」

杏子「まどかも、おかげでこっち来てすぐなじめたし良かったなぁ」

まどか「うん… なじめてる…… のかなぁ」

さやか「ごめんね、ほむら最近ちょっと…」

まどか「ほむらちゃんって前からあんなだったの?」

さやか「そうでもなかったように思うね」

まどか「やっぱりイメチェンして… あ」

杏子(アカン)

さやか「なに? ほむらが何してたって?」

まどか「えっと…」チラッ

杏子「しょうがないか。いいよ話して」

まどか「あのね、昨日杏子ちゃんの本買いに行ったら、ほむらちゃんがいて」

まどか「なんだかそれっぽい雑誌買おうとしてたから… やっぱりなぁって」

さやか「ほぉ~ あいつも色気付いてくるもんだねぇ」

さやか「で、どんなの読んでたの?」

杏子「……わりと本気で知らない方がいいと思うぞ……」

さやか「いいから教えなって。気になるじゃない」

杏子「…小悪魔ageha」

さやか「」


・ 【おしらせ】
・ さやかちゃんが正気に戻るまで
・ しばらくお待ちください

さやか「は~ 苦しかった…」

まどか「さやかちゃん、落ち着いた?」

杏子「お前なぁ、いくら何でもそこまで笑う事ないだろ!」

さやか「だって… ほむらが… ウプッ  小悪m」ヒクヒク

まどか「またぶり返しそうだよ」

杏子「しかもわざわざ風見野の本屋来てた」

さやか「」ブフッ!!

まどか「杏子ちゃん! さやかちゃんいじめちゃダメじゃない!」

杏子「ゴメン、つい……」

——ほむ部屋——

ほむら「目当ての雑誌を買えなかったわ」

ほむら「ネット通販で買うとしましょう」カタカタ

QB「小悪魔ageha公式サイトがあるんだね」

ほむら「雑誌の特集に掲載された商品を買えるようになっているのよ」

QB「でも君は魔法でコスチュームくらい作れるじゃないか」

ほむら「……お手本にするのよ」

——学校——

ほむら「まどかの分もお弁当を作ってきたわ」

まどか「ああ… ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「一緒に食べましょう」

まどか「さやかちゃんたちも呼んでいい?」

さやか「呼ばれてなくても行っちゃうよ~!」

杏子「ほむらが作ったの? 見せてよ」

ほむら「フッ いいわよ。普段は仲良くしましょう」

杏子「…あんたさ、近頃その変なキャラ設定にハマってるけど、似合ってないって」

さやか『だって、ほら』

杏子「ん?」

さやか『小悪魔だし』

杏子「クッ…」プルプル

まどか「杏子ちゃん、大丈夫? どこか痛いの?」

杏子『なんだよさやか! テレパシーで笑わすなよ!』

さやか『昨日のお返しだよ!』

ほむら「おかしな子ね… さぁ行きましょう。いい場所をとられてしまうわ」

さやか「急がなくても、あそこ人いないよね」

杏子「マミもう来てるかな」

——屋上——

まどか「マミさんってお料理上手なんですね~」

マミ「ありがとう。もっと作ってくればよかったかしら」

杏子「マミはお菓子もうまいんだぞ。今度タカりに行こうよ!」

さやか「また勝手なこと言って……」

マミ「いいのよ。いつでもいらっしゃい」

まどか「楽しみにしてますね」

マミ(……こうして一緒にお弁当を食べるお友達が増えたのは嬉しいけど)

マミ『鹿目さんも、魔法少女の素質があるのかしら…』 ←ほむさやあんこ向けのテレパシー

ほむら『まどかをそんな役目になんて巻き込まないわ!』

さやか『ほむらはまどか大好きだな~』

杏子『でも、いずれ魔法少女の秘密を知ることになるかもな……』

マミ『…あ、秘密といえば』 ←さやか&杏子あてのテレパシー

マミ『さっき教室で話してた、悪魔がどうとかっていうのはなに? 内緒話かしら』

さやあん「」ブフォッ!!

まどか「今度は二人とも!?」

ほむら「汚いわね…」

まどか(思い出し笑いって、きっと昨日話してた本のことだよね……)

まどか(よっぽどおかしいのかな)チラッ

ほむら「なぁに、まどか?」ニコニコ

まどか「う、ううん… なんでもないの…」

まどか(ほむらちゃんって一見ちょっと怖いけど)

まどか(そのほむらちゃんで二人がこんなに笑うなんて……)

さやか『でもまぁ、昨夜は魔獣との戦いよりも死にかけたわ』

杏子『おいよせってもう』

マミ『そんなにおかしなことがあったの?』

さやか『いいじゃん、もうこうなったらマミさんも道連れだ!』

マミ『あらいいわよ。私だけ知らないなんて、気になるもの』

杏子『知らねーぞ、どうなっても…』

さやか『ほむら、最近なんだか変わったと思いません?』

マミ『ええ、まぁ……』

さやか『小悪魔ageha読んでたんですよ』

マミ「ご、ごめんなさい、急用が!」ダダッ!

まどか「マミさん!?」

ほむら「お弁当残してるわよ」

まどか「どうしたのかな、マミさん…… なんか思い詰めた顔してたような」

杏子「生理だよ生理。あんま気にするとうつるよ」

さやか「うん… あれうつったら厄介だよね……」




マミ(ここなら誰もいないわよね…)

マミ(いい? 落ち着くのよ… ブリージングで落ち着くのよ!)

 スーハースーハースー

マミ(……あのパラソルも小悪魔agehaの通販で買ったのかしら)

マミ「クッ… こんなので…」

 ガタッ

マミ「!? だ、誰かいるの?」

上条「あ… すいません、おどかしちゃって」

マミ「あなたは… ああ、上条くんね」

上条「三年の巴さんですよね。さやかからよく聞いてますよ」

マミ「こんなところで何をしてたの?」

上条「ちょっと… お昼休みくらい一人になりたくて……」

マミ「ある程度は聞いてるけど、なんだか複雑な事情がありそうね…」




上条「……ということがあってから、もう学校でもずっと付きっきりなんですよ」

マミ「あら、そんなに好きになってもらえるなんて、滅多にないことよ」

上条「そうかもしれませんね……」

マミ「しかも相手は志築さんでしょう?」

マミ「あんなに可愛い子が好きになってくれるなんて、男の子からすれば夢のようじゃない」

上条「まぁ、限度を越えれば悪夢ですよね…」

仁美「それは大変ですわね」

中沢「ちょっと志築さん! そっち行っちゃダ……   あ」

仁美「悪夢だなんてどういうことですか!」

上条「それは…」

仁美「私が悪魔とでも言いたいんですの!?」キリキリキリ

上条「いや、まぁ… いい意味で…… そう、小悪魔的な」

マミ「」クッ

仁美&上条「!?」

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