さやか「…遅いよ」(100)

昨日VIPでスレ立てしたのですが、途中で落ちてしまったのでこちらに…
ツナグ×まどマギクロスになります


「上条恭介さん、ですよね」

上条「!…はい。…まさか」

「はい。私が"ツナグ"です」

上条「…本当だったんだ」

「はい。皆さん確かに驚かれますね」

「…それで、会いたい人というのは」

上条「…」

上条「…美樹…さやか」

「美樹さやかさん…会いたい理由、お伺いしても?」

上条「…それは」




「ツナグ?…何それ?」「知らないの?一生の内で一回だけ、死んだ人と会えるんだって」「へぇー」「まぁ、ただの噂だけどね」

上条(…またその話題か)

上条(死んだ人に会える…か。なら、僕は…)

仁美「あの、どうかしましたか?」

上条「…いや、何でもないよ」


上条(…そうだ。"死んだ"なんて縁起でもない)

上条(さやかがいなくなって、もう3年…か)

上条「はぁ…」

上条(だからって、死んでるとは限らないじゃないか…)

上条(…でも)

上条「…ツナグ、か」

仁美「え?」

仁美「…ツナグって、あの?」

上条「仁美さん、知ってるの?」

仁美「え、えぇ…最近は皆さんそのお話しばかりですから」

仁美「めっ…珍しいですわね。恭介君がそんな噂を話題にあげるなんて」

上条「はは…うん」

上条(らしくない…けど)


上条(…もし、ただの噂じゃなかったら)


「…つまり、そのいなくなった美樹さんが生きているのか、それを確認する意味でのご依頼だったのですね」

上条「はい。…あの、すみません。こんな…」

「ははは。良いんですよ。そういう方も、少なくはないんですよ」

上条「…そう、なんですか」

「それで、もしお亡くなりになられていた場合は…」

上条「!もちろん会います…あ、さやかが、良いって言ってくれたらですけど」

上条「…さやか、いなくなる前…何か僕に言いたそうにしてた…それが何だったのか、聞いておきたいんです」

「分かりました。…では、お受け致しましょう」

「またこちらからご連絡します」



上条「…はい。お願いします」

数日後

仁美「…恭介君?」

仁美「最近、どこか上の空ですが…もしかして具合でも?」

上条「え?…あ、ううん…何でもないよ」

仁美「そう…ですか?」

上条「…」

ブーブー
上条「!」

"ツナグ"

上条「ごめん…ちょっと…」

仁美「え、えぇ…」

上条「はい。…はい…え?」

上条「…そうですか」

ピッ

上条「…」

上条「…さやか」

放課後

「お待たせ致しました。上条さん」

上条「…」

「…やはり、ショックですよね」

上条「そりゃあ…だって、それってつまり…」

「詳しくはお話しして頂けませんでした。ですが…確かに美樹さやかさんは、三年前に」

上条「…僕は、その理由を直接聞く事は、もう出来ないんですね…」

「お気を落とさないで下さい。彼女にとっても、これはたった一度のチャンスなんですから…」

上条「…僕以外に、会いたい人が」

「まぁ…よくある事ではあります。こちらとしても、非常に残念ではありますが」

上条「…会いたい人…。あの、それって誰か分かりませんか?」

「すみません…そこまでの事はこちらも…」

上条「…あ、すみません」

「まだ若い方ですからね…恋人がいれば、恋人か…親友、両親…色々憶測は出来ますけど」


上条「…」

次の日

恭介「…仁美さん」

仁美「え?はい…」

恭介「"ツナグ"の話しだけど…」

仁美「…またそのお話しですか?ふふっただの噂に過ぎませんわよ」

上条「噂じゃなかったら?」

仁美「…え?」

上条「本当にあったんだ…ツナグは、本当に…」

仁美「!」

仁美「だっ…誰に……誰にお会いしたんですか…?恭介君は」

上条「さやか…」

仁美「…っ!」

上条「さやかに…会いたかったんだ…」

上条「…会えなかったけど…」

仁美「嘘…」

仁美「そ…そんな、さやかさんが…まさか」

上条「…会いたい人が、他にいるみたいなんだ。…仁美さん、さやかの親友だったしもしかして仁美さんが…」

仁美「ちっ…違います!」

仁美「さ、さやかさんが…私に会いたいなんて…そ、そんな事あるはずありません!」


上条「…え?」

仁美「…あっ」ハッ

仁美「ごめんなさい…私。…さ、さやかさんと一番長い付き合いの恭介君でも会えないんですもの…私なんて…」

上条「…そんな事」

仁美「…っ」

上条「…」

仁美「…」



仁美「…さやかさん」

さやかマンション前


仁美「…」

仁美「…っ」

仁美(やっぱり止めておきましょう…こんな事言っても…)

「あら…?」

仁美「!」

さや母「仁美ちゃん?…やっぱり、仁美ちゃんよね?」


仁美「あ…ご、ご無沙汰しております」ペコ

さや母「…どうぞ、寛いでいってね?何もない所だけど」

仁美「…いえ。お構いなく」

さや母「…仁美ちゃん、本当綺麗になっちゃって。おばさん驚いちゃったわー」

仁美「…そんな」

さや母「仁美ちゃん、よく来てくれたわね…でもごめんなさい。さやかはまだ…」

仁美「…っ」


仁美「…あ…あのっ、さやかさんのお部屋、見せて貰っても構いませんか?」

さや母「さやかの?…えぇ」

さやルーム

仁美「…」

さや母「…あの子がね、いつ戻ってきても良いように…あの時のままにしてあるの」

仁美「…」

仁美(…あの写真)

さや母「あぁ、懐かしいでしょう?中学校の体育祭の時の。さやかと…ほら、隣に仁美ちゃん!ふふっ。本当、仲良しだったのねぇ」

仁美「…はい」

さや母「…もう三年も経つのね…あの子も、本当は今頃仁美ちゃんと同じ……っ」

仁美「おばさま…」

さや母「ごめんなさ…っ…ごめんね。仁美ちゃん…」

仁美「…」



仁美(…やっぱり、私からは)

仁美「…お邪魔しました」

さや母「…ごめんなさいね。仁美ちゃん、良かったらまた来てね」

仁美「はい。…ありがとうございます」


テクテク
仁美(…さやかさんのご両親は、まださやかさんがどこかで生きていると信じてる)

仁美(…なら、ツナグの事は…)


「…仁美さん」

仁美「!…恭介…君?」

上条「…もしかして、さやかの家に?」

仁美「…はい」

上条「…ツナグの事は…」

仁美「…」フルフル

上条「そっか…じゃあ」


仁美「恭介君?…どちらへ」

上条「やっぱり、ちゃんと話しておかないと…」

仁美「え…まっ、待って下さい!」ガシッ

上条「仁美さん…?」

仁美「その事は…まだお話しにならない方が…」

上条「…どうしてだい?さやかの会いたい人、もしかしたら…」

仁美「ち、違うと…思います!」

仁美「さやかさんのご両親は、まださやかさんがどこかで生きていると…そう信じてるんです!」

上条「だったらなおのこと…」

仁美「ご両親が悲しむような事、さやかさんが望むとお思いですか!?」

上条「…!」

仁美「…さやかさんがお会いしたいのは、きっと別にいらっしゃるはずです…っ!…だから、この事はさやかさんのご両親には…」

仁美「…っ…ごめっ…ごめんなさい…っ私…」

上条「…仁美さん?」



上条「…少しは落ちついたかな」

仁美「…はい。ごめんなさい。私、取り乱してしまって…」

上条「…」

上条「…仁美さんの、言う通りかもしれない」

仁美「…?」

上条「さやかの両親に話すのは、今は止めておくよ」

仁美「…!恭介君」

上条「…あのさ、仁美さん」

仁美「…はい」



上条「少し、協力してくれるかい?」

次の日


「…珍しいわね。あなたが私と話したいなんて」

仁美「…」

「中学依頼よね…確か。当時も殆ど話した記憶はないけれど」

仁美「突然お呼びだてしてすみません…」


仁美「…暁美さん」


ほむら「…」ファサツ

ほむら「それで、用件は何かしら?あなたが私に聞くような事、覚えがないけれど」

仁美「…あの」


仁美「美樹さやかさん…覚えてらっしゃいますよね」

ほむら「…」

ほむら「…そう。美樹さやかと親しかった人物、ね」

仁美「はい。さやかさん、あの頃はよく暁美さんと話していたのを思い出しまして…」

ほむら「でも、あなたの方が付き合いは長いはずよね。どうしてわざわざ私に…?」

仁美「…親友だったからといって、その方の全てを知っているという訳じゃありませんわ。…それに、暁美さんなら何となく…私の知らないさやかさんを知っている気がしたので」

ほむら「…」

ほむら「心当たりがない訳ではないけれど…」

仁美「!」

ほむら「ただ、私もその子とは半年程連絡は取れていないわ」

仁美「…そう、なんですか」

ほむら「がっかりさせてしまったようね」

仁美「…いえ」

仁美「……暁美さん、何もお聞きにならないんですね」

ほむら「?」

仁美「三年も経って、今更そんな事を聞いてきた私に、何も疑問はお持ちになりませんの?」

ほむら「そうね…。聞いた所で教えてくれるようには思えないけれど」

仁美「…すみません。今はまだ」


仁美「あ、あの…それでその方のお名前、お伺いしても…?」



ほむら「…」

ほむら「…佐倉、杏子」

ちょっと時系列分かりづらいかもなんで補足として
本編さやか円環から三年後、叛逆が起こらなかったもしものお話しになりますので、悪しからず…




上条「サクラキョウコさん…さやかからは聞いた事ないな」

仁美「…」

上条「暁美さんと仲が良かったっていうのも知らなかったよ。…僕は、幼馴染の癖にさやかの事何も知らなかったなんて…」

仁美「…恭介君…。そ、それをいうなら、私もですわ…!親友でしたのに…私…」

上条「…」

仁美「…でも、これで一歩前進です。…サクラキョウコさん、絶対に見つけ出しましょう!」


上条「うん…そうだね」

数日後


仁美「見つかりませんわね。…サクラキョウコさん」ハァ

上条「…やっぱり情報が少な過ぎる」

仁美「家の者を使えばすぐに見つかると思うのですが…」

上条「それじゃ駄目だよ。そんな事をして、万が一さやかの両親の耳に入ったら…」

仁美「えぇ。分かってますわ…」


上条「…さやか…っ」

ブーブー

仁美「!…すみません。ちょっと失礼します」

仁美「…?知らない番号……はい」


『あ…あの、志筑仁美さんの携帯で合ってます?』

仁美「…は、はい。そうですけれど、あの…」

『あ、ごめんなさい。暁美ほむらさんから番号を聞いて…私』



マミ『巴マミっていいます』

カフェ

仁美「…巴マミさん?」

マミ「…」ニコッ


上条「…会って早々失礼ですが、あなたはさやかとどういう関係が?」

マミ「…美樹さやかさん、それに佐倉杏子さん」

上条「!…サクラキョウコ」ボソ

マミ「彼女達は、私の後輩なの」

仁美「後輩…?」

マミ「えぇ。校外活動というか…まぁ、一種のボランティアみたいな事をやっていて。それのね」

上条「さやかがそんな事してたなんて、聞いた事ありませんけど…」

マミ「…ちょっと特殊な事情があるの」

上条「…特殊?」

上条「特殊ってどういう意味ですか?まさか危ない事させてたんじゃ…」

マミ「…」

仁美「恭介君…っ」

上条「…ハッ…す、すみません」

マミ「ううん、良いの…。でもごめんなさい。詳しい事は…」

上条「…巴さん、僕達は何も知らないんです。さやかがどうしていなくなってしまったのか…三年前、何を考えて、何をしていたのかも…何も」

上条「佐倉杏子さんって、一体どんな人物なんですか?…聞けば、学校にも通ってなければ、住所も持たない…。さやか、そんな子とつるんで一体何を…」

マミ「佐倉さんの事、あまり悪く言わないで頂戴。確かに素行の良くない所もあるけど…悪い子じゃないわ」


上条「…」

仁美「きょ、恭介君…。人にはそれぞれ事情がありますわ」

マミ「…佐倉さんが、美樹さんの失踪に関係していると思う?」

仁美「…失礼ながら、気になる所ではあります。現にその佐倉杏子さんですら行方不明とあっては…」

マミ「…」

仁美「事件、事故。どちらにしたって、お二人の失踪には何かしらの関係がある…そう勘繰ってしまう事は、当然かと思いませんか?」

マミ「…そう」

仁美「ですが…」

マミ「?」

仁美「私達は、別に犯人探しをしている訳ではありませんから」

仁美「…ただ、"さやかさんと親しかった方"。真っ先に名前の上がった佐倉杏子さんに、どうしてもお会いしたいんです…」

マミ「…理由は、話して貰えないのかしら」

仁美「…それは」

マミ「…」

マミ「良いわ」

仁美「…え?」

マミ「人には、それぞれ事情がある。…でしょ?」

マミ「…会わせてあげる。佐倉さん」

仁美上条「「!」」

マミ「とはいっても、私も連絡が取れるようになったのは、つい最近なんだけどね」クス


マミ「……それと、ごめんなさい。あなた達の出方を少し様子見していたの。もし、佐倉さんと会ってどうこうするつもりなら、このまま知らないフリをして会わせないつもりだったわ」

上条「…」

マミ「試すような事をしてしまってごめんなさい。でも、私にとっては大切な後輩だから…」

上条「…いえ。こちらこそ、先程は失礼な態度を取ってしまって…。すみません」

マミ「…」フルフル

マミ「気持ちは分かるもの…」


マミ「じゃあ、着いて来て」ガタ

上条「…あの、ありがとうございます。巴さん」

マミ「クスッお礼なら暁美さんに」

仁美「暁美さん?」

マミ「暁美さんから、あなた達が佐倉さんを探してるって聞いて…。何か深い事情があるようだけど、無理には聞くなとも言っていたわね」

仁美「暁美さんが…そう、なんですか」

マミ「えぇ……ここよ」


上条「教会…跡?」

マミ「昔、佐倉さんのお父様がここで神父を務めていたの」

仁美「…ここに、佐倉杏子さんが」ゴク

マミ「…よいっしょ」

ギイイィ


コツ…
マミ「…久しぶりね。佐倉さん?」

杏子「…」

杏子「…」

杏子「…で、何だよ?こんな所で話したいなんて」

マミ「用があるのは…」

杏子「見りゃ分かるよ…そっちの坊やと嬢ちゃんだろ?だからあんたらに聞いてんだ」ジロッ

仁美「…」ビクッ

上条「…」サッ

マミ「そんな喧嘩腰にならないで頂戴。佐倉さん」

杏子「…」フンッ

仁美(…この人が)

仁美「…は、はじめまして。佐倉杏子さん。さやかさんの友人の、志筑仁美です」ペコ


仁美「お会い出来て、光栄ですわ」

仁美「そ、それであの…お話しというのは」チラ

マミ「…!」

杏子「…」

杏子「マミ、あんたもう帰って良いよ」

マミ「でも…」

杏子「…別に取って食おうなんて思っちゃいないからさ。安心しなよ」

マミ「…その言葉、信じるわよ?」

仁美「巴さん…大丈夫です。ここまで連れてきて頂いて感謝致します」

マミ「志筑さん…」


マミ「…じゃあ二人共、何かあったら私に連絡してね」

コツ…コツコツ…バタン



杏子「…ったく、ちったぁ信用しろっての」ボソ

杏子「それで?一体なんなのさ、あんた達」フワ~ア

杏子「志筑仁美に…あんた、上条恭介って言ったっけ?」

上条「!…どうして僕の名前…」

杏子「…さやかだよ。あんたの事、よく話してたから…。ヴァイオリン、まだやってんの?」

上条「…続けてますけど…さやかはそんな話しまであなたに…?」

杏子「まぁね…」ポリ


杏子「さて」

杏子「そろそろ本題に移らない?」

仁美「佐倉さん…」

仁美「……」

仁美「さやかさんに、お会いしたいと思いませんか?」

杏子「!」

杏子「…何言ってんの?さやかは三年前に……三年前"から"行方不明だろ?」

仁美「…やっぱり佐倉さん、さやかさんの事気付いて…いえ、存じてましたのね」

杏子「…」

杏子「…何の話しだ」フイッ

仁美「…」

仁美「"ツナグ"って、ご存知ですか?」


杏子「…ツナグ?」

仁美「…たった一度だけ、生者と死者を引き会わせてくれる案内人。それが…"ツナグ"ですわ」

杏子「…!」

仁美「死者と会えるのは、生涯にただ一度、一人だけ。死者も同じく、生者と会えるのは一度だけ…」

杏子「…」

杏子「…笑えねぇな。冗談ならやめてくれる?そういうの」

仁美「っいいえ、冗談なんかでは…」

杏子「考えてもみなよ。ほとんど初対面のあんたらのその胡散臭いオカルト話し、はいそーですかって信じる方が無理あるんじゃない?」

仁美「…っ」

仁美「そ、それは…」

杏子「なら、話しはこれで終わりだ。暗くなる前にさっさと帰んな。お じ ょ う さ ま」

仁美「…っ」

上条「仁美さん…」

仁美「…さ」

仁美「…さやか…さんは…っ」


仁美「さやかさんはもうお亡くなりになられてます…っ」

杏子「…っ!」

上条「ひ、仁美さん…?」

仁美「認めたら如何ですか?先程の反応…あなたもご存知だったのですよね?」

杏子「…っ」

杏子「………だから何」

仁美「…」

杏子「あたしが認めたら、それが何だってんだよ。それ使ってさやかに会えって?はっ!馬鹿馬鹿しい…!」ガタッ

仁美「!」

上条「なっ…」

杏子「良いからもう帰ってくんねぇ?あんたらの顔、これ以上見たくねぇ」

杏子「…イラつくんだよ」ギロ

仁美「…」ゾク

上条「帰ろう、仁美さん…。これ以上は…」

仁美「いや…です…」

上条「!」

杏子「はっ?」

仁美「…このまま、さやかさんの為に何も出来ないまま引き下がるなんて嫌です…!…っ私は…」


仁美「さやかさんの……親友ですから」

仁美「さやかさんには、本当に会いたい人に会って頂きたいんです…」

仁美「だから、だからどうかお願いです…さやかさんに会ってあげて下さい!…お願いします」

杏子「…何であたしなんだよ」ボソ

杏子「それがあたしだっていう根拠はなんなのさ?…会いたい奴なんてそれこそ、親友のあんたやそこにいる坊やかもしれねぇだろ」

上条「…僕は、さやかに会えなかったから」

杏子「…!」

上条「死者からツナグへの依頼は出来ない…。だから、こうしてさやかが本当に会いたい人を、僕達は探しているんです」

上条「…そして、佐倉杏子さん…あなたに辿り着いた」

杏子「…」

仁美「根拠といえるものは何もお出しする事が出来ません…。ですが」

仁美「やはりあなたで正解だと思います」

杏子「だからなんで…

仁美「分かります」


仁美「さやかさんの事大切に思って下さる方、見ていれば分かります」

仁美「あなたなら…さやかさんもきっと」



次の日

杏子「…ここ最近色んな奴が会いに来るが」ハァ

杏子「あんたがあたしに用なんて珍しいじゃん?…ほむら」

ほむら「…」

ほむら「…志筑仁美に会ったのね」

杏子「あたしの事、あの子らに話したのはあんたか?」

ほむら「…」ファサ

杏子「…ったく、余計な事しやがって」

ほむら「…」

ほむら「私は志筑仁美に、美樹さやかと親しかった人物の一人としてあなたの名前をあげただけ」

杏子「…の割には必死こいてあたしを探し回ったそうじゃねぇか。マミの奴まで使ってさ」ハァ

ほむら「気まぐれよ」

杏子「あんたのその気まぐれのせいであたしは……いや、良いやもう」



杏子「なぁ、ほむら」

杏子「"ツナグ"って知ってるか?」

ほむら「"ツナグ"…って、あの?」

杏子「知ってるのか」

ほむら「…えぇ」

杏子「…ふーん」

ほむら「…」

ほむら「唐突ね…志筑仁美の用件ってまさか」

杏子「…」



杏子「…さやかに会ってくれないかって頼まれた」

ほむら「!」

ほむら「…どうするつもり?」

杏子「…」

杏子「……会えるのは一人だけ、なんだよな」

ほむら「…?」

ほむら「…あぁ、あなた…そうだったわね」

杏子「…っ」

ほむら「…」

ほむら「…たとえ一人だけでも、会いたい人ともう一度会えるだけ恵まれてるわ。あなた」

杏子「…え?」


ほむら「…それで会えるものなら、私なら二つ返事だわ」

杏子「それって…」

ほむら「えぇ。…鹿目まどか」

ほむら「もちろん、そんなもので会えるような存在ではないけれど…。あの子にはもう、死とか生とか、そういう概念がないのだから…」

杏子「…またその話しか」

ほむら「…」

杏子「…」

杏子「さやかはさ…本当にあたしに会いたがってくれてんのかな」

ほむら「……さぁね」ファサ

ほむら「けど」



ほむら「"さやかが一番会いたいと思う人物"…そう聞いてしっくりくるの…」

ほむら「あなただわ」

杏子「…」

ほむら「あなたにとってもあの子にとっても、これはたった一度きりのチャンス…まだ迷いがあるなら、よく考えると良いわ」

杏子「…あぁ」

ほむら「…だけど」

ほむら「だけどもし…さやかに会ったらこの言葉、伝えてくれないかしら」

杏子「?…あんたが、さやかに?」

ほむら「正確には、さやかにではないけれど…」



ほむら「 」



数日後・教会

ガチャ…ギイイィ
マミ「…あら?」

仁美「!…巴さん」

仁美「あ、すみません…私そろそろ」ガタ

マミ「別に遠慮する事なんてないわよ?」

仁美「いえ、お稽古事がありますので、そろそろお暇しようと思っていた所でしたから…」

杏子「…毎日大変だな。おじょーさまも」

仁美「…出来ればその呼び方はやめて頂きたいのですが」クス


仁美「あっ、ではごきげんよう」パタパタ…

マミ「…あの子、よく来るの?ここへ」

杏子「んー…まぁな」

マミ「そう…おかしな事教えたりしてないでしょうね?」コツン

杏子「しねーよ。あんたはあたしのオカンか」

杏子「…」


杏子「さやかのな」

杏子「…さやかの話し、してくんだよ。あいつ」

マミ「美樹さんの…?」

杏子「あぁ…」

杏子「さやかがこんな事言ってたとか、昔はこんなんだったとか…。帰るまでずっと」

マミ「…その為だけにわざわざ?」

マミ「ねぇ、あの子は一体どうして佐倉さんに?…まさか、美樹さんのそんな昔話をする為だけに佐倉さんを探していた訳ではないでしょう?」

杏子「…」フイッ

マミ「…話してはくれない訳ね」

マミ「心配なのよ、私は…。あなた、美樹さんの事になるとたまに周りが見えなくなる時もあったし、思い詰めると何するか…」

杏子「…別に、何もしねぇよ」

マミ「じゃあどうして半年も連絡さえしてくれなかったの!?」

杏子「!!」

マミ「…私の知らない所で…あなたまで消えちゃうんじゃないかって…凄く…凄く怖かったんだから!!」

杏子「…っ」

マミ「…」グスッ

杏子「…っ…ご」

杏子「ごめんなさい…」


マミ「…え?」

杏子「…っ///」

マミ「…」

マミ「……クスッ…ふふっ…あなたが素直に謝るんて…」クスクス


杏子「なっ…///…悪いと思ってたんだよ…。ほんとはずっと」ポリ

マミ「…佐倉さん」

マミ「帰って来てくれてありがとう」

杏子「…マミ」



杏子「…実はさ」



仁美「その時さやかさんったら」

杏子「その話し、三回目だよ」アフ…

仁美「ぁっ…で、でしたら!体育祭でさやかさん」

杏子「ぶっちぎり一位…それも聞き飽きた」

仁美「ぅっ…」

杏子「なぁ、あんた言う程思い出ないんじゃねぇの?」

仁美「そんな事…っ!……ない…かと…」ゴニョゴニョ

仁美「……思えばお稽古事ばかりで、さやかさんと遊びに出かけた事なんて数える程しか…。さやかさんはさやかさんで、私以外にもご友人がたくさんいましたから…それに」

杏子「…?」

仁美「二年生の…いつからだったかさやかさん、放課後は忙しそうにしていましたから…。あの、一緒にボランティア活動をしていたとか」

杏子「ボランティア?」

仁美「?…巴さんから、そうお伺いしたのですが」

杏子(…そういう事か)

杏子「あ、あぁ…まぁ。さやかとはそこで会ったんだよ」

仁美「…」

仁美「私…本当にさやかさんの事何も…」

杏子「…」

仁美「あの、佐倉さん…佐倉さんからも、何かお話しして下さいませんか?」

杏子「話し?」

仁美「あなたの知っている、さやかさんのお話しを…」

杏子「…」

杏子「…なぁ、聞いても良いか?」

仁美「はい?」

杏子「あんたさ…何でさやかの話しする時、いつもそんな辛そうな顔してんだよ」

仁美「…え」

仁美「し…してません」

杏子「いや、してる。いつも何か思い詰めた顔してるぜ?あんた」

仁美「…」

杏子「…さやかの親友なんだろ?友達の事話すのに、なんでそんな」

仁美「……はい」

仁美「…私、さやかかさんの親友です」

仁美「……ずるくて…卑怯で……とても最低な…」

杏子「おい、それどういう」

仁美「…っ」ガタガタ

仁美「…めんなさい…っ…私…さやかさんに…ひ…酷い事……っ」

杏子「…お、おい!」

仁美「…っ」


杏子「…」ハァ

杏子「…ちょっと来なよ」ガタ

仁美「…?」

懺悔室


仁美「…」

杏子「こうすりゃお互い顔見えないし、話しやすいんじゃない?」ドカッ

杏子「あんたさ、何かつっかえたモンがあるんだろ?…ここにはあたしとあんたしかいないし、もちろん聞いた事は他言しない…いっそぶちまけてみれば?」

仁美「…っ」

杏子「…まっ、無理にとは言わないけどさ」


仁美「…」

杏子「…」

仁美「…」


仁美「は…話し…ます。私の……」

杏子「…」


仁美「罪の告白を…」

杏子「…!」

仁美「私……私…っ」


仁美「さやかさんの事も……"ツナグ"の事も…本当はとっくに…」



仁美「知っていました」

仁美「…私が、ツナグを知ったのは、二年前…さやかさんがいなくなって一年後の事です」

仁美「最初は…最初にツナグに依頼したのは、さやかさんの生死を確認したかったからでした。…一年も経っていましたから、心のどこかで、もしかしてという思いがあったんです」

杏子「…」

仁美「…やっぱりさやかさん……」

仁美「…」

仁美「…私、さやかさんが亡くなっているって分かった時…ツナグの存在が本当だったと分かった時……」

仁美「…"恭介君が、さやかさんに会ってしまったらどうしよう"って、思ってしまったんです」

仁美「さやかさん…恭介君の事をずっと…」

仁美「きっと、きっとさやかさんが恭介君に会ったら、さやかさんは自分の気持ちを話すでしょう…。そうしたら…恭介君、さやかさんを…きっとずっと忘れられなくなる…っ…それが…それが怖くて……私…っ私は…」


仁美「さやかさんに自分が会ってしまえば、恭介君はさやかさんにもう会えなくなる」


仁美「…そう思ったんです」

仁美「だから、私はツナグに正式に依頼しました。さやかさんにお会いしたいと…」

杏子「…」

仁美「…親友…だったのに…親友と言いながら……私…私はなんて…最低な事を……」

仁美「…っ…」

仁美「…けれど、さやかさんには私の醜い考えなどきっと全部お見通しだったんですね……。会う事は叶いませんでしたから」

仁美「でも、正直少し…安心したんです」

杏子「…」

仁美「…恭介君がさやかさんに会えなかったと聞いた時は驚きました。さやかさんの会いたい人は、彼だと思っていたので…」

仁美「だから…だから私は…見つけてあげたかったんです。さやかさんが、本当に会いたいと思っている方を…」



仁美「私の罪が…少しでも軽くなればと、あなたの事まで利用しようと…っ」

仁美「…っ…ごめっ…なさい……っ」


杏子「…っ」

杏子「…」

杏子「……では、悔い改めの祈りをしましょう」


仁美「……え?」

杏子「これで、あなたの罪は許されるでしょう」

仁美「!」

杏子「…なんて、死んだ親父の真似事だけどさ」ポリ

仁美「…ぁ…っ………っ」

仁美「……さ…い…ごめんなさいっごめんなさい…っ!」




仁美「……っ…ありがとう…ございます…っ」

仁美「…いつか、恭介君にも自分から話そうと思います」

杏子「…そっか」

杏子「つーかよ、さやかは多分そんな事で怒ってねぇと思うぜ?」

仁美「…え?」

杏子「そもそもさ、さやかはそんな深読み出来る程賢くねぇだろ」ハァ

仁美「…」

仁美「……」

仁美「…ですわね」クス

仁美「単純ですけど、とても真っ直ぐな方でした……さやかさん」


杏子「…」

杏子「いーよ」

仁美「?」



杏子「…会うよ。さやかに」

仁美「…!」




仁美「あの…でも、本当によろしいんでしょうか?」

杏子「はぁ?あんた自分であんなに必死に頼んどいて今更?」

仁美「そ、それは…そうですけど、でも…お父様、お亡くなりになられているのでしょう…?」

杏子「…」

杏子「良いんだよ…あたしは」

杏子「久しぶりにあの単純で無邪気な顔、拝みたくなったからさ…」フッ


コツ
「…佐倉杏子さんですね」

杏子「!」


「はじめまして。ツナグです」

『ヒック…っヒック』

ああ…また泣いてる。

『…違う…あたしは魔女なんかじゃないよ。父さん』

知ってるよ。

『……ヒック…父…さん…』

もう、良い加減…

『良い加減泣き止みなよ?杏子!』
『ねっ!』ニコ


杏子「さや…か…」ハッ

杏子「……夢」


コンコン
マミ「佐倉さん、もう起きてる?」

マミルーム


マミ「おはよう。佐倉さん、朝ご飯出来てるわよ」ニコ

杏子「ん…あぁ」

マミ「…もしかして眠れなかった?目が真っ赤よ?」

杏子「!…っなんでもねぇよ。顔洗ってくる」

マミ「…」

マミ「いよいよ…今夜なのね」

杏子「…」

マミ「美樹さん、元気にしていると良いんだけど」クスッ


杏子「……あぁ」



マミ「本当に良いの?夜まで私の部屋を使って貰って構わないんだけど」

杏子「良いんだって。マミは今日学校だろ?家主がいないのに自由に出来ねぇよ」

マミ「そう…。佐倉さん、気遣いが出来るようになったのね」

杏子「なっ!その言い方、まるで今まで出来てなかったみてぇじゃねぇか」

マミ「クスクス…冗談よ。じゃあ、夜は絶対に遅れないようにしてね。後で私もホテルに向かうから」

杏子「へーへー。わーってるよ」

マミ「それじゃあ、また夜に」



杏子「…」

杏子「さて、あたしも行くか…」

杏子「つってもなぁ、特に行く宛てはないんだよなぁ…」フワ~ア

杏子「さやかに街の様子教えてやろうと思ったけど、三年じゃあ大して変わんねぇし…」

杏子「…」ハァ

杏子「しゃあねぇ…」


教会

杏子「ま。結局はここに収まる、か」ドカッ

杏子「…」

杏子「…ごめんな。父さん、母さん…モモ」ウト

杏子「あんたらに会うのは…もうちょっと…待って…て」スウ…

『…ヒック……っ』

…また泣いてる。今度は誰だよ

『…きょ…こ…』

さやか…?何泣いてんだよ…

『…っ……杏子』

『心配すんなよさやか。一人ぼっちは…寂しいもんな』
『いいよ、一緒にいてやるよ』

さやか…
あれ?…何だっけ。このセリフ…前に…

『…うん』
『ごめんね…私、いかないと』

どこ行くんだよ。待ってよ…

杏子「さやか…っ!」ハッ

杏子「ったく……なんつう夢だよ」

杏子「朝といい、今日は変な夢ばっか見やがる…」チッ

杏子(緊張してんのか?…らしくねぇ)

杏子「…っと、やべっもうこんな時間か」

タッタッタッ…

杏子(もうすぐ会えるんだな…さやか)

「やぁ、杏子。丁度良い所に会ったね」ピョンッ

杏子「!…なんだよキュゥべえ、丁度良い所って」

QB「…もうすぐこの辺一帯に魔獣の結界が出来上がる。今日は瘴気が特に濃いからね、早く倒さないと厄介な事になるよ」

杏子「なっ!…ったく何でこんな時に…悪いけど他……」

キュゥべえ「?戦わない気かい?」

杏子「いや、とっとと片付ける…」


杏子「ここは…さやかが守ろうとした街だからな!」パアァッ

ホテル前

上条「仁美さん…」

仁美「恭介君…いらしてたんですね」

上条「うん…やっぱり気になって。仁美さんが佐倉さんを説得してくれたんだってね。ありがとう」

仁美「いえ…説得なんてそんな…。決められたのは、佐倉さんご自身です」

仁美「恭介君…私…」


仁美「恭介君に、お話ししたい事がありますの」キッ



恭介「え?」




上条「…そんな事を」

仁美「…っ」
マミ「!…上条君っ、志筑さん!」

仁美「!巴さん…?」

マミ「あなた達、佐倉さんに会わなかった?」


仁美「!」

上条「え?」

杏子「…っ…何なんだよ!さっきからうじゃうじゃと…っキリがねぇ…っ!!」

杏子(時間がねぇってのに…っ)

杏子「…っ!!」

杏子「しまっ…!」


杏子(…っ…さやか…!)

バシュッバシュッ

杏子「!?」


ほむら「…何してるのよ。あなた」ファサッ

ほむら「美樹さやかに会うんでしょう?こんな所で油売ってる暇はないはずよ」

杏子「チッ…好きでんな事するかっての」

ほむら「ここは私に任せてあなたは行きなさい!」

杏子「はぁ!?この数の魔獣、あんた一人じゃ無茶だ!」

ほむら「…っ…あなたが美樹さやかに会えなくなるのは、私にとっても都合が悪いの。あの言葉、しっかり伝えて貰わないと…!」

バシュッ

ガキン…ッ

杏子「…へっ!会えなくなるだぁ?あたしはね、さやかを諦めた訳じゃねぇ…」

杏子「こんな魔獣共さっさと蹴散らして、あたしはさやかに会いに行く…!」

ほむら「…杏子」


杏子「ここであんたを置いてったら、それこそさやかに合わす顔がねぇよ…」シュンッ




仁美「…佐倉さん、まだいらっしゃらないんですか?」

上条「…まさか、怖じ気づいたんじゃ」

仁美「…っ」

パシン…

上条「…!」

仁美「…佐倉さんは、そんな方じゃありませんわ。…私と、さやかさんに会うと約束して下さいました!」

上条「仁美…さん」


マミ「…志筑さん」


マミ「…」

マミ(佐倉さん…何してるのよ)

ほむら「…っく」

杏子「ほむらっ!」キン…ッ

ほむら「…全く、なんなのよ。今日に限って…」バシュッ

杏子「…お喋りしてる余裕はねぇぜ?」

ほむら「…えぇ!」

ほむら「…っ!杏子!後ろ!」

杏子「!?」

杏子(…っ!避けきれな…)


シュルッ…バシュッ

杏子「!」

マミ「本当、どこまでも手の掛かる後輩ね」

杏子「…マミ!」


マミ「…さて、大事な後輩二人の感動の再開を邪魔してくれた落とし前、きっちり付けて貰わないとね」キッ

カッチ…カッチ…カッチ


上条「…」

仁美「…さやかさん…」ギュッ

カッチ…
チュンチュン…チチチ


コツ…
杏子「…」


仁美「…!佐倉さん」

杏子「…よお」

仁美「…さやかさんは」


杏子「…あぁ」

杏子「今、帰ってった…」

仁美「…っ!…ぁ…ありがとう…ございます…っ」

杏子「…おいおい、何であんたが…」

仁美「…さやかさんに、最後に会って下さって…っ本当に……っ」

杏子「…」ポリ



杏子「…ギリギリ、だったけどな」

深夜


コンコン…


ガチャッ


さやか「…」

杏子「…っ」


さやか「遅いよ…」

杏子「…」ポリ

さやか「…入って」

杏子「…あぁ」


さやか「…」

杏子「…あ、あのさ」

さやか「…うん?」

杏子「…ほ、ほむら!ほむらの奴から、伝言…預かってる」

さやか「え?ほむらが…?」


杏子「"待ってる"」

杏子「…それだけ言えば、伝わるはずだからって、それだけ」

さやか「…」

さやか「あー…うん。うん…!伝わったよ」ニコ

杏子「…そっか」フッ

さやか「…」

杏子「…」

杏子「…さやか」

さやか「!…なぁに?」

杏子「…さやか、なんだな」

さやか「…うん。そうだよ…杏子」


杏子「…っ」

杏子「ははっ…まだ、信じらんねぇな」

さやか「…」

さやか「…っ…なにそれ?たった三年で人の顔忘れちゃった?」

杏子「…っ…忘れる訳、ねぇじゃん」ボソ

さやか「…えっ」

杏子「…んなあほヅラ、忘れたくっても忘れらんねぇっつの!」

さやか「!…なっ」

さやか「っ今は感動の再会でしょ!…空気読めってのー!!」

杏子「…くっ…ははっ」

さやか「…ふっ」

さやか「…」

さやか「…変わってないね」


杏子「…あぁ」

杏子「つーかさぁ、良かった訳?たった一度のチャンスをこんな…」ハァ

さやか「…」

さやか「…お父さん、お母さん…仁美に、恭介にマミさん。…それから、うん、ほむらもかな…」

杏子「…」

さやか「会いたい人は、そりゃいっぱいいたけど、何でだろう…。"一番会いたい人"って言われたら、真っ先にあんたの顔が浮かんだんだよね」フフ

杏子「…っ」



さやか「…会いたかったよ。杏子」




さやか「…杏子」

杏子「ん?」

さやか「杏子さ、背伸びたね…」

杏子「…なんだよいきなり。…そうか?」

さやか「…うん。前は、私の方が高かった。…あーあ、とうとう抜かれちゃったかぁ」ハァ

杏子「…三年だしな。あれから」


さやか「…うん」

さやか「…髪もさ」

杏子「髪?」

さやか「いつもおろしてるの?今みたいに」

杏子「ん?あぁ、そうだな」

さやか「ポニーテール、似合ってたのに」クスクス

杏子「あ…あんなのガキくせぇだけじゃんかっ」フイッ

さやか「えー、何大人ぶってんのよ」プッ

さやか「…ふぅん」ニヤニヤ

杏子「な、なんだよ。気味悪りぃな…」

さやか「ふふふっ」

さやか「…そりゃっ!」グワシッ

杏子「なっ!?///ちょっお、おいさやか!」

さやか「おっ?いくら大人ぶってても、こっちは全然変化なしかぁ?」モミモミ

杏子「やめっ…どこ触って……やめろバカっ///」ゴン

さやか「…ぃっっ…普通グーで殴る!?」

杏子「やめねぇからだろ///…ったく、中坊かって…ハッ」

さやか「…」

さやか「…うん。中学生だよ?私は…」クス

杏子「…っ」

さやか「三年かぁ…。ふふっなんか悔しいなぁ…置いてかれちゃったみたいで」

杏子「…」

杏子「…先に置いてったのはどっちだよ」ボソッ

さやか「…」

杏子「さやか…」

さやか「!」

杏子「…あんたが、さやかが泣いてる夢を見た」


さやか「…え」

杏子「…なぁさやか、そっちで寂しい思いはしてねぇか?…泣いたり、してねぇか?」

さやか「…」

さやか「…うん。割と忙しいんだ…!そんな暇…ないくらいに」

杏子「…そっか」ハハ

さやか「…っ」

さやか「…」ゴシゴシ





さやか「…あのさ、杏子」

さやか「最後に面倒事、引き受けてくれないかな…?」





さやか「…」

杏子「…いくのか?」

さやか「うん…あはは。もうすぐ時間だから」

杏子「…そうか」

さやか「ありがとね。杏子」

杏子「…っ」ガタッ

さやか「…杏子?」

杏子「あたし、もう帰るよ」

杏子「あんたが消えちまうとこ、見たくねぇ…」

さやか「…」

さやか「うん…うん。そっか」

さやか「…ねぇ、杏子」

杏子「…」

さやか「私はさ…あんたが知らないあんたの事もよーく知ってるんだよ」

さやか「…だから、なんていうかその…。こうして最後に、会っておきたかったんだよね」ハハハ

杏子「…っ…何だよ。それ…」ボソ

さやか「…ありがとう。会いにきてくれて」

杏子「…っ……あぁ。じゃあ」

さやか「…うん」


スタスタ

さやか「………っ」

ガタッ

杏子「!」


さやか「…行かないで……っ行かないでよ…杏子!」ギュッ

さやか「…っ最後までいて…」

杏子「…っ」

さやか「約束…したじゃん…っ一緒にいてくれるって…」

杏子「!…っ」

杏子「…知らねぇよ…っんな約束」

さやか「…っ」

杏子「でも」

杏子「…一人ぼっちは…寂しいもんな」

さやか「…!…っ」



杏子「良いよ…一緒にいてやるよ。さやか」

さやか「…っ…杏子…杏子!杏子…っ……ありがと」



さやか「置いていっちゃって…ごめんね」

チュンチュン…



杏子「さやか」

杏子「…なぁ、さやか」

杏子「…」


杏子「……さやか」



ロビー

マミ「伝言?…美樹さんから?」

杏子「あぁ…」

杏子「コホン…志筑仁美」

仁美「は、はい…」

『仁美!』

仁美「…えっ?」

上条「!…さやか…?」

マミ「佐倉さん…その声…」

マミ(幻惑魔法の一種…?いつの間にこんな能力…)

『恭介の事、本当はちょっと…すっごく悔しいけど…』
『幸せに…なってね』

仁美「…っさやか…さん」

『それから恭介!仁美の事、ちゃんと守ってあげなさいよ?泣かせたりしたらぶっ飛ばすから!』
『あたしの…親友なんだからさ』

上条「…うん。もちろん」

仁美「!……っ…」


『マミさん』

マミ「!は、はい」

『マミさんのお茶とケーキが恋しいです』
『それから…』

杏子「…」

マミ「…?」

杏子「あんまりケーキばっかばくばく食ってると太るぞ…」

マミ「!?…なっ、佐倉さん!美樹さんがそんな事言う訳ないでしょう!」

杏子「~~っ」

マミ「本当は何なの?」


昨夜

杏子「…なぁ、本当に言うのか?」

さやか「ちゃんと伝えてね」

さやか「マミさんに"杏子をよろしくお願いします"って」

杏子「あたしがか?」

さやか「しかいないじゃん」



杏子「…」

マミ「白状なさい!佐倉さん!」

杏子「…だぁー!ぜってぇ言わねえ!!」


杏子「あっ…ほむら!」

ほむら「…?」

杏子「"頑張って"…だとさ」

ほむら「!……えぇ」フッ


ほむら「……まどか」


マミ「佐倉さん、私の話しはまだ…」
杏子「…っけね!悪りぃ皆、あたし行くわ」

マミ「えっ、佐倉さん?」


パタパタ

さやかマンション前

杏子「…」

ピーンポーン

《…はい》

杏子「…っ」

《…?どちら様?》

杏子「……」

『…っ…勝手にいなくなって…ごめんなさい』
『お母さん』

《!!…さやか…っさやかなの!?》


杏子「…っ」
ダッ



杏子「…」

杏子「…これで良かったんだろ?さやか…」



「さやかちゃん」

さやか「…まどか」

まどか「お帰り」

まどか「どうだった?杏子ちゃん…」

さやか「…っ…ん…うん…」

さやか「背、伸びてた!」

まどか「…うぇひひ。そっか」

さやか「あ、そうだまどか…ほむらから伝言」

まどか「うぇひっ!ほむらちゃん?」

さやか「…待ってる」ファサッ

さやか「…ってさ」

まどか「…!」


まどか「うん…待っててね。ほむらちゃん」

さやか「…」フッ

さやか「さ、仕事しなきゃね!まどか!」

まどか「うぇひひ。うん…さ、行こっか」



さやか「さて…女神様の鞄持ちも、楽じゃないわー!!」


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