オール安価でまどか☆マギカ 17 (1000)

このスレは、安価で決めた主人公・時系列・前提設定で進める長編多めの安価SSです。
各編で話につながりはありませんので、途中参加は大歓迎です。

【現行】杏子編  (15スレ目>>197から)
 マミの“先輩”な杏子のifストーリー。
 現在まどかやさやかと仲良くなり、マミと仲直りし、ほのぼのと進行中。
 ついに杏子たちの知らないところでワルプルギスの夜まで一週間を切った!

【完結した話】
さやか編  (1スレ目>>8から>>154まで)
・・・マミの死後、さやかが魔法少女になって張り切ったり悩んだりする話
・・・一番最初のやつなんでかなりあっさりしてます
中沢編   (1スレ目>>164から2スレ目>>150まで)
・・・中沢が安価の導きにより魔法少女たちと関わっていく話。
QB編   (2スレ目>>198から 4スレ目>>502まで)
・・・感情の芽生えたQBの話。
ユウリ編様 (5スレ目>>954から6スレ目>>792まで:BadEnd)
・・・契約したばかりのユウリが目的を達成するためにマミの後輩になる話。
恭介編   (6スレ目>>815から 7スレ目>>240:BadEnd+)
・・・恭介の病院での日々と、退院してからの話。
Charlotte編 (7スレ目>>264から>>285まで)
・・・チーズを求めるCharlotteの小話。
キリカ編  (7スレ目>>309から>>704まで,8スレ目>>475から9スレ目>>151まで)
・・・本編時間軸で織莉子が既にいない世界のキリカの話。話はほぼまどマギ本編寄り。
アマネ編  (7スレ目>>807から>>963まで,8スレ目>>130まで:GiveUp)
・・・抗争に破れて見滝原に来た最弱主人公の野望の話。  ※オリ主※
メガほむ編 (9スレ目>>181から12スレ目>>666まで)
・・・非情になれないほむらの4ループ目、織莉子たちとの戦い。
なぎさ編  (12スレ目>>717から14スレ目>>616まで)
・・・謎の神様によって魔女化から助けられたなぎさが見滝原で奮闘する話。


【未完結の話】
Homulilly編 (採用箇所4スレ目>>535から>>686まで)
・・・生まれたばかりの魔女Homulillyが時空を旅する話。
かずみ編  (4スレ目>>982から5スレ目>>879まで)
・・・ユウリのドジで見滝原に運ばれたかずみが織莉子とともに救世をめざす話。
キリカ編  (14スレ目>>719から15スレ目>>182まで)
・・・同主人公の1つめとは無関係。未契約キリカが黒猫と謎の少女に出会う話。
・・・現在ほむらは目的もわからないまま自殺。しかし、その目的を唯一知っている人物は……
・・・正体不明の“声”に導かれ、このままだとまどかの魔力の回復が間に合わず魔女になることを知って『まどかを人間に戻す』願いで契約した。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1483717207


【注意】
★無効安価は自己判断で安価下
★混んでる時以外は基本的に連投・連続有り ※ただし同じ内容で連投はダメ
★多数決は連続・連投無し
★多数決で同数に意見が割れた場合は指定内の最後のレス内容を採用
★主レスは安価先を指定する数字に含まない
★まどマギのほかに、無印おりマギ・かずマギ・漫画版まどマギ・TDS・PSP・劇場版のネタを含みます。
 逆に言えばそれ以外からのネタは出しません。
★「下2レス」と書いた時にはその1時間以内に2レス目がこなければ「下1レス」に変更します


・前スレ

『まどかマギカで安価練習』 :まどかマギカで安価練習 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369643424/)
『オール安価でまどか☆マギカ 2』:オール安価でまどか☆マギカ 2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370979872/)
『オール安価でまどか☆マギカ 3』:オール安価でまどか☆マギカ 3 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371835671/)
『オール安価でまどか☆マギカ 4』:オール安価でまどか☆マギカ 4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1372909496/)
『オール安価でまどか☆マギカ 5』:オール安価でまどか☆マギカ 5 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373645366/)
『オール安価でまどか☆マギカ 6』:オール安価でまどか☆マギカ 6 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1377690974/)
『オール安価でまどか☆マギカ 7』:オール安価でまどか☆マギカ 7 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385884667/)
『オール安価でまどか☆マギカ 8』:オール安価でまどか☆マギカ 8 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397729077/)
『オール安価でまどか☆マギカ 9』:オール安価でまどか☆マギカ 9 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409071003/)
『オール安価でまどか☆マギカ 10』:オール安価でまどか☆マギカ 10 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417014605/)
『オール安価でまどか☆マギカ 11』:オール安価でまどか☆マギカ 11 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424792933/)
『オール安価でまどか☆マギカ 12』:オール安価でまどか☆マギカ 12 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430323957/)
『オール安価でまどか☆マギカ 13』:オール安価でまどか☆マギカ 13 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439045180/)
『オール安価でまどか☆マギカ 14』:オール安価でまどか☆マギカ 14 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448012780/)
『オール安価でまどか☆マギカ 15』:オール安価でまどか☆マギカ 15 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1461427177/)
『オール安価でまどか☆マギカ 16』:オール安価でまどか☆マギカ 16 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475061935/)


杏子(……魔女の反応はこっちにの方向にあるんだ。それもそう遠くはない)

杏子(だったらとりあえずこの部屋に入るしかない……!)


 もう一度扉を開けて部屋の中に入る。

 中の様子はさっきと変わりがない。



杏子 魔力[98/100] 状態:正常
GS:17個
・薔薇園[84/100] ・鳥かご[100/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:使い魔×3 <-攻撃対象デフォルト

1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-15) 幻惑魔法により背後を取って攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-15/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-2*分身の数) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。現在の上限は2*20の40消費。

13引き返す
14自由安価

 下1レス


 とりあえず部屋内の使い魔を全て倒す。

 しかし結界はなくならない。


杏子(実はこいつらが魔女ってオチはないか)

 しかし邪魔な奴らがいなくなったおかげでゆっくり考えられる。

 今の状況をしっかりと考えてみる。

杏子(……こっちの方に魔女の魔力はあるんだ)

杏子(それも、そう遠くない場所に)

杏子(なら、ここまで来たのは合ってるってことだろ?)

 バッと周りを見渡す。

杏子(魔女はどこかに潜んでいる?)

杏子(見えないだけ……――いや、だとしたらさっき使い魔を倒してる最中にどっかでぶつかってもおかしくないな)


杏子 魔力[93/100] 状態:正常
GS:17個
・薔薇園[84/100] ・鳥かご[100/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]

装備:多節棍


1自由安価
2引き返す
3攻撃コマンド(A~L)(攻撃対象デフォルト:目の前)

A突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
B伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
C背中を襲う槍(魔力-15) 幻惑魔法により背後を取って攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
D飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
E打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
F鉄砕鞭(魔力-0) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
G鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
H断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
I最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
J縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
K幻惑魔法(魔力-15/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
Lロッソファンタズマ(魔力-2*分身の数) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。現在の上限は2*20の40消費。

 下2レス

2

同じ内容の連投なので安価下にしておきます
---------------------------------

 ここに居たら危ない気がする。

 見えないなんかが潜んでるにしてもなんにしても、ここでぼーっとしてたらやられちまう危険がある。

 一見何もないように見えて、この場所が安全だなんてことはきっとない。

 咄嗟の判断で引き返した。

杏子(……ここで仕留められないなら、足止め食らわせる意味がないからな)

杏子(なんか考えてからじゃないとまた入るのは危険かもしれない)


1自由安価
2もう一度入る
3結界から撤退

 下2レス

【悲報】キーボードこわれる
----------------------------------------

杏子(逃げるのも作戦のうち……だな)


 ここは諦めることにする。

 グリーフシードもそこまでないわけじゃない。命を失うよりはずっとマシだ。

 結界を抜けて山に戻ってきた。


―山


杏子「山にある店ってどれもこれも高いんだよな……」

杏子「あの魔女からも離れたいし、降りてから食うことにしよう」


 昼食はどうする?
1風見駅前
2見滝原駅前
3その辺のコンビニ
4その辺(自由安価)

 下2レス

---------------------------------------------
次回は14日(土)18時くらいからの予定です

―見滝原駅前


 山を下りると見滝原のほうに戻ってきた。

 あの魔女のことはひとまず放置することにしよう。

 被害がひどいようならまた考える必要があるが……


杏子(今日の待ち合わせの時にマミに相談しても良いが、そうしたらまた戦うことになるだろうな)

杏子(あいつが魔女をほっとけると思えないし)

杏子(……さてと、早いとこ飯食うか)


 駅前をぶらりと歩きながら財布を確認する。


杏子(……そろそろ少なくなってきたな)

杏子(今のあたしには金なんか手に入れる方法はいくらでもある……欲しい物を盗むのだって簡単だ)


 ――初めてやったときは驚いたっけ。

 魔法を使えば、ずっと金のことで悩まされてきたのが馬鹿らしく思えるくらいにあっけなく出来てしまうのだ。

 けど、同時にマミの顔が浮かぶ。


杏子(あんまりそういうことは避けたい……な)

杏子(これからは無駄遣いしすぎないようにするか……)


 ――――そこらで飯を買って昼を済ませた。

 マミとの約束の時間までどうするか……?



 昼過ぎ~夕方
1自由安価
2先に土手に行って自己鍛錬
3メール(マミ・まどか・さやか・仁美)
4教会に戻る

 下2レス


杏子「ゲーセンでも行くか」

 ふと立ち上がって繁華街へと足を延ばそうとする。

 最早こういう考えは癖のようになっていた。

杏子「……や、今までみたいにやたら金使うのはやめようって思ったばっかじゃねーか」

杏子「一旦教会戻ろう。んで、今日は金かからないことしよう」


 繁華街を通り抜けて教会のほうへ向かって歩いていく。

 ……教会の前に着くと、中に入る前に墓参りをする。

 しかしここらへんは思った以上に何もない。その分静かだから寝るにはちょうどいいかもしれないが……


杏子「午前中行ったのは風見野だけだし……見回りいくかぁー」


 行く場所
1公園
2通学路
3病院
4歩道橋
5土手
6鉄塔
7廃工場
8立体駐車場

 下1レス

―公園


 きゃっきゃと子供のはしゃぐ声が聞こえる。

 まだ学校も終わっていないこの時間、公園には親子連れが多いようだ。



下1レスコンマ判定
 0~20 使い魔
 21~40 魔女

+遭遇判定
 奇数 ??と??


杏子(……平和だな)

杏子(特になんの魔力も感じねえ)


 ……なんとなくその風景を眺めていると一組の親子に目がとまった。

 ここにいる大人が主婦たちばかりの中、父親と一緒なのはその子だけだ。


杏子(平日なのに父親と二人って珍しいな。たまたま仕事が休みなのかねー?)


 ふと自分の子供のころのことを思い出す。

 両親がまだ元気だった頃の記憶――お金はないけど、よく色んなところに連れていって遊んでくれたっけ。

 そんなことを考えていると、男の子が話しかけてきた。

「おねーちゃ、いっしょにあそぶー?」

杏子「は?」

 ……見すぎてたか? 別にあんまりここに留まる気もなかったんだけど。

「ああ、ごめんね。どうしてもとは言わないから」

 父親のほうも駆け寄ってきた。


杏子(謝られてもな……)


 ……なんて返そうか?
1悪いけどまだ用事があるから
2いや、いいよ。遊ぼうか
3自由安価

 下2レス


杏子「いや、いいよ。遊んでも」

 男の子と同じ目線にまで屈む。

杏子「あたしは佐倉杏子だ。ぼーず、名前はなんて言うんだ?」

タツヤ「タツヤ! かなめタツヤ」

杏子「そうか、よろしくな」

タツヤ「よろしくー!」

 タツヤの小さい手を握る。

 ……鹿目、か。そんなに聞かない名字だ。それに確か、まどかが小さい弟と専業主夫の親父が居るっつってたっけ。

 名前も聞いた気がする。さすがにそこまでは忘れかかっていたが……

「本当にありがとうね。タツヤ、優しいお姉さんでよかったね」

タツヤ「うん! キョーコ、こっち」

杏子「おう、何して遊びたい?」


 自己紹介を終えて広場のほうへと駆けていく。

 ……まあ、見回りも最近頻繁にやってるし、少し休みとしても良いだろう。


―――――――

―――――――


タツヤ「キョーコ、きょーはありあとー!」

「よくここに来るならまた遊んでくれると嬉しいな」

「この子のお姉さん、少し小さく見られることも多いけど、ちょうど君と同じくらいの歳なんだ」

「その子と二人で遊んでることもあるから、もし見かけたらお姉さんのほうとも仲良くしてくれると嬉しい」

杏子「あー、そうだな……」

 やっぱりまどかの事か。

 昨日、今度遊びに行きたいってまどかに連絡したが……

 ……まだメールの返信確認してないな。

杏子「ま、仲良くさせてもらうよ。そっちもまた会ったらよろしくな」


 こちらが手を振ると二人も振り返してくれた。

 公園を離れ、待ち合わせ場所の土手に向かうことにする。

 その途中で携帯を取り出す。


杏子(まどかと仁美、どっちも了承の返事が来てるな)

杏子(今度行く時はまたタツヤとも遊んでやるか)

―土手



マミ「おまたせ、佐倉さん」

杏子「お、やっと来たか」



 今日は……
1格闘訓練(現在Lv16 EXP:28/100)
2分身技の訓練
3風見野の魔女のことを相談してみる

 下2レス


杏子「いきなりで悪いが、今日はその前に相談したいことがあってな」

マミ「相談したい事?」

杏子「ああ。あたしさ、今日は午前中風見野のほうをパトロールしに行ってたんだよ」

杏子「そこで倒せなかった魔女が居てな……」

マミ「佐倉さんでも倒せなかった魔女……?」

杏子「戦って負けたっつーわけじゃねー。むしろ、奴はきっと“戦わずして勝つ”タイプだ」

杏子「敵がどこに居るのかすらわからなかったんだからな……」

杏子「カラクリさえ解けりゃなんとかなりそうなんだがなぁ」

杏子「ほら、考えることに関しちゃあんたのほうが頭はいいだろ? 優等生さんだしな」

マミ「なるほどね。まあ、そういう事なら放っておけないわ。私も戦いに行くわよ」

杏子「マミならそう言うと思ったよ」

杏子「風見野に行って帰ってくるとなると時間はかかるが……訓練はその後時間が残ってればだな」


 そうと決まったら早速出発だ。

 奴が居た場所は山……その時から移動していなければそこに居るはずだ。

 まずはそこに向かってみよう。


 下1レスコンマ判定
0~75 そこに居る

―山


 風見野の山に着く……が。


杏子「魔力がしねえ……移動してやがる」

マミ「仕方ないわ。別の場所を探しましょう」

 マミが何かを考える。

 お得意の考察だ。

マミ「……姿を見せずに隠れ潜む魔女なのよね。だったら、人気のない場所を好むのかしら?」

杏子「人気のない場所ったってなぁ……風見野の主要な場所を選択肢から外すとなると、ここ以外じゃわかんないぞ」

杏子「路地裏を片っ端から探してけってか? さすがに無理があるぞ」

マミ「それもそうだけど」



・行く場所(風見野)
1風見野駅周辺
2図書館
・山[現在地]
3病院
4学校
5畑
6教会

 下1レス

6


杏子「人気のない場所……」

杏子「マミ、少し引き返すぞ。人気のない場所っつったら、あたしの教会が危ないかもしれねえ」

 壊れかけた教会。

 ……自分で言うのもなんだが、あそこは暗い雰囲気もある。あの魔女が好む条件は満たしてるだろう。

 あの場所を魔女の居城なんかにされたくはない。

マミ「なるほど……その線はあるわね。向かいましょう」


 ――見滝原の方面に進み、風見野との境にある教会にたどり着く。

 すると、やはりその推測は正解だったようだ。

 教会の中から魔女の魔力がした――そういえばこの場所が魔女に狙われたことは前にもあった。嫌な記憶だ。


杏子「……マミ、奪い返すぞ」

マミ「ええ!」

 結界の中に再び侵入していった。


 一本道の道中を進み、扉の前に立つ。

 ……さて、ここからが問題だが……。


杏子「この奥には行き止まりの部屋がある」

杏子「それでどうやって倒すかだが……」

マミ「……ねえ、佐倉さんが来たのって午前中だったのよね?」

杏子「それどうかし…… あ」

杏子「これだけ時間が経ってるのに、使い魔が一匹もいないままってのはありえねえ」

杏子「誰かこの中に先客が……!」


 扉をあけ放つ。

 すると、見覚えのある魔法少女が変身の解けた状態で倒れていた。


杏子「どおりで魔力もしなかったわけだ……! おい、大丈夫か」

 見たところ傷はない。

 揺すると薄く目を開いた。

*「そと……に……、にげ…………」

*「どくのきりが…………」


 ……そう言うと再び気を失ってしまった。


杏子「……外に運び出すぞ!」

マミ「ええ!」

 こいつを担いで廊下に戻る。

 マミが治療をしているが、目を覚ます気配はない。


マミ「手当てはしたけど……」

杏子「とりあえず今はあたしたちで倒すしかないな……」


 マミと相談
1自由安価
2マミの考察に頼る

3突入

 下2レス

1
こいつに言っていた「どくきり」ってどう思う?
そのままなら「毒をもった霧だけど…そうだとしたらあたし達に対策はあるのかね?」という


杏子「毒の霧っつってたか? それって、あの部屋に居るだけでやられるってことかよ?」

杏子「悪いけどあたしには対策方法が思いつかねえ……マミはどう思うよ」

マミ「そうねえ……対策方法なら思いつけないこともないけど」

杏子「なんか思いついたか?」

マミ「呼吸から体内を蝕むのなら、マスクをつけたりすれば効果は薄まるでしょう。作れないことはないわ」

マミ「それと、あまり気は進まないけど、回復魔法をかけつづければ少なくともいきなり死ぬことはない……魔力が続く限りはね」

マミ「けど、倒す方法ってなるとね……」

杏子「相変わらず魔女の姿もわからないってのは変わらないからな……」


下1レスコンマ判定
 0~30何かに気づく

ごめん


杏子「……やっぱり倒すとしたら部屋の中に入るしかないってことだ」

杏子「部屋の中に入ったら全体を手当たり次第攻撃だ……そしたらいくらなんでも倒せるだろ」

杏子「それしか方法がねえ」

マミ「わかったわ。じゃあ、マスクを作るわね」


 マミが細いリボンを編んでマスクを作る。

 それを受け取って装着し、武器を構えて扉の前に立った。


杏子「突入するぞ!」

マミ「ええ!」


 出し惜しみなしに何もない空間に向かって攻撃を放っていく。

 ……すると、壁に罅が入って崩れていくのが見えた。


杏子「マミ、攻撃をやめろ!」

マミ「……! これは……」


 壁の奥にはさらに結界が続いていた。


杏子「……はっ、そういう事かよ。随分と手間かけさせやがって……」

マミ「ここで足止めして、その間に毒で殺す作戦ってこと……これは初戦じゃきついわね」

杏子「あたしなら使い魔なんかすぐ倒せたから考える時間もあったが、特に新人じゃ嵌るだろうな」


 魔力を回復し、奥の方に進んでいく。


杏子「ここから先は更に毒が濃くなるだろうな。出来ればさっさと見つけたいところだが……」

マミ「そうね……でも多分この気配なら遠くはないわよね」


 途中でまた大きく分岐点があったが、そこは大体魔力の強さで察しがつく。

 つくづく新人殺しの魔女だ。あいつには荷が重すぎた。


杏子「……いよいよ本体のお出ましか」

マミ「やっと倒せるのね。これ以上被害を出せるわけにはいかないわ」

杏子「よう、やっと会えたな」


Lark「.......」


 ふよふよと浮かぶ薄っぺらい布のような外見。

 まず様子見に槍を突き立ててやると、戦闘自体は実にあっけなく終わった。

 ……なるほど、確かに離れたところから毒霧を出すしか能のない魔女って感じだ。

 だからこそ嵌ると怖いところもあるが……

―教会



杏子「……ビビらせといて最後は随分あっけなかったな。拍子抜けしたぜ」

マミ「本当に色んな魔女がいるわね……」

杏子「力が強いだけでも勝てない魔女はいるってこったな」

杏子「まあでも、今回ばかりはマミが居てくれて助かったよ。じゃなきゃまだ魔女を探して歩き回ってたかもだしな」


 魔女は倒せたが、今回はほとんど利益にもならなかった。

 特にマミは死にかけた魔法少女の回復までしてやってたんだ。それを足せばむしろ大赤字だ。

 ……けど、別に後悔みたいなもんはしてない。


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:16個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[100/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]



杏子(死にかけ、か……)

杏子「こいつ、ずっと寝たまんまだが目を覚ますのか? このまま死んだりしないよな」

杏子「これ以上この場所で死ぬんじゃねえよ」

杏子「こいつには待ってる家族も居るってのに……」

マミ「やれるだけのことはやったから……後は待つしかないわね」

マミ「目を覚まさないようならとりあえず病院に送りましょう」


 ザア……と雨の音がしはじめる。


杏子「……雨が降ってきやがった。おい、こっち来い。そこじゃ濡れる」

マミ「困ったわね……私、傘持ってないわ」

杏子「教会に傘とか置いてたっけね……あー、ダメだ、壊れてやがる」

---------------------
ここまで
本当にどうでもいいんだけど魔女名のスペルミスってることに気づいた。正しくはLurkです。魔女名というより英語だけど。

次回は15日(日)18時くらいからの予定です


 暫く教会で雨宿りすることになった。

 せめてもう少し雨脚が弱まらないことにはここから出られないが、エイミーをずっと放っておくわけにもいかない。

 ずっと降り続けるようならマミに魔法で傘でも作らせるしかないか。


マミ「……予報にないわね、この雨」


 マミは携帯を弄っている。


杏子「夕立? ならすぐ止むといいんだが」

マミ「そうねぇ…………」

*「ん…………」

 小さく声が聞こえると、ハッとしたように起き上がる。

*「! ここは…………ッ!」

*「ってあんた、佐倉……」

杏子「……起きたか。あんたを治したのはそっちの奴だ。お礼はそっちに言いな」

マミ「無事でよかったわ。体調はどう? どこかおかしいところはない?」

*「あ、ありがとう。大丈夫だけど……」

*「……~~なんっていうか、あんた、本当に変わったのね。その人のおかげ?」

杏子「……うるせえ。とにかく助けてやったんだから、これで襲ったのとグリーフシード奪った事はチャラでいいな?」

*「お礼ならその人にって言ってなかった?」

*「……まあいいわ。で、ここで雨宿りしてるの? あたしは車で迎えに来てもらうけど」

 スマホを操作している。家に連絡しているようだ。

*「どうせだから、あんたたちも送っていってもいいわよ」

*「こんなボロくて陰気くさい教会なんかにずっと居たくもないでしょう」


杏子「っ! なんだと……!」

 思わず掴みかかろうとしたのをマミが止める。

マミ「佐倉さん、落ち着いて……」

 マミに止められてハッとする。

 別に悪気があるわけじゃねえ。ここで争ってもしょうがない……

 ……苦い顔で頭を掻いた。

*「な、なんなのよ……嫌なわけ?」

マミ「送っていってくれるのは嬉しいわ。でも…………」

 こいつもこいつで、あたしがいきなり怒ったのとマミの真剣な表情にたじろいだ様子だった。

 気まずい空気だが、ここは車が来るまで待つしかないか。


1自由安価
2……暇だから昔話でもしてやるよ。
3なにもしないで待つ

 下2レス


マミ「…………」

杏子「…………」

*「…………」


 雨の音が聞こえ続けている。

 それ以外の音はなかった。誰も話さないまま沈黙が続く。

 携帯をいじってたり、スマホをいじってたり、各々自分の世界に入ってるようだ。

 ……一緒に居るってのにそれも気に入らねえ。最近の奴らはそればっかりか。気まずいったらない。


杏子「……暇だから昔話でもしてやるよ」

杏子「昔、この教会にはある家族が住んでいたんだ」

杏子「話を聞きに来てくれる人は少なかったし金もなかったけど、父と母と娘二人……家族は幸せに暮らしてたはずだった」

マミ「……」

*「……は?」

杏子「……けど、その幸せを娘の願いが壊した」

杏子「ある日を境に爆発的に信者が増えた。だがそれでハッピーエンドってわけにはいかなかった」

杏子「そのカラクリを神父が知ってしまったからだ」

杏子「それから神父は娘を悪魔に惑わされた魔女と蔑み、家族の絆は壊れて最後には一家心中」

杏子「あんたがボロくて陰気臭いっつった今の有様はその結果だ」


 あたしが話を終えると再び沈黙し、再び雨の音だけが聞こえる。


*「……それって、あんたの事?」

杏子「さあな。ご想像にお任せするよ」

*「…………さっきは悪かったわよ」

杏子「…………ふん」


 外から雨の中を車が進む音が聞こえる。

 その音が途中で止まる。……迎えが来たようだ。


 ――頬杖をついて窓の外を眺めている。

 車に乗ってからも会話は少なかった。

 ……マミは予想外に高級車が来たことに驚いてどこかそわそわとしている様子だ。


マミ「まさかこんな高級そうな車がくるなんて思ってなかったわ……泥で汚れたりしてないといいんだけど」

「洗えばなんとかなるでしょ」

*「雨宿りのためにしかたなかったとはいえ、年頃の娘が遅い時間にこんな場所に長いこと居ては危険だ」

*「とにかく、みんな無事なようでよかったよ」

杏子「……送ってくれるのは感謝するよ」


杏子(なんだかこいつとはいっつも気まずい感じになるな)

杏子(どっか気にくわねえと思ってたのはあたしと同じ人のために願った奴だからか)

杏子(……まあ、そんなに頻繁に会うわけでもねえし)



※一般人が居るので魔法少女事情の話はテレパシーにします
1自由安価
2うたたね

 下2レス


杏子『……なあ、とりあえずさっきの魔女を倒した時の様子でも話しといてやるよ』

杏子『あの魔女の相手は新人にはきつい。経験の少ない新人には初見殺しってヤツだな』

杏子『だからあんたも負けた事を気にするな、しいていうなら様子がおかしいとか敵わないと思ったらすぐ逃げる事だ』

『……なによ、たまには先輩らしいことも言うのね』

杏子『これでもそこのマミはあたしの弟子だぜ?』

『そうなの? あんたのほうが弟子かと思った』

杏子『おまえなぁ……』


 ……相変わらずだ。

 今回の事でしおらしいところでも見せてくれりゃ少しは可愛いのに。

 まぁ、別に恩を着せる気もないが。


杏子『今回はあたしらが来た事で助かったがそのことはあんまり気にするな』

杏子『あたしらも恩を売る気はないから今生きてる事を感謝しとけ』

杏子『……っと、こんなことはあんたにゃ言う必要もなかった事かな』

『どういう意味よ。とりあえず、助けてくれたこととか治してくれたことは感謝してるわよ』

杏子『じゃあ、とりあえずあんたもマミと自己紹介くらいしたらどうだ?』

杏子『ついでに連絡先でも交換すんなら、たまにはあたしもあんたの面倒みてやってもいいぜ?』

『あんたにそこまでしてもらわなくていいわ』

杏子『遠慮すんなよ。それともあたしが師匠じゃ不満かよ?』

『あんた最近見滝原に居るんでしょ? 放課後の見回りもあるしやらなくちゃいけないこともあるし忙しいのよ』

『個人的にマミ……だっけ?あっちの人とは知り合いになっておいて損はないとは思うけどね』

杏子『……そうかよ』


 ……そうしているうちにマミのマンションが見えてくる。

 その1Fの駐車場で車から降りた。


マミ「送ってくれてありがとうございました」

「あんたもここなの?」

杏子「まあな」


 あれからマミとは少し話したようだ。

 会うことはそうそうないが、隣町の魔法少女同士仲良くしておくのは良い事だろう。

 別れる前にテレパシーで呼びかける。


杏子『おい、最後に一つ言っておいてやる』

杏子『あんたにはまだ帰りを待ってくれてる家族がいるんだ』

杏子『だから何が何でも生き残れよ? どんな状況になっても絶対にあきらめるんじゃねーぞ』

杏子『死んじまったらそれで終わりだからな』


『わかってるわよ!』


 ……そんな力強い返事が聞こえてきた。

 ああ、これもあいつには言うまでもなかったか。

―マミの家


マミ「ただいまー……今日は遅くなっちゃったわね。なにか簡単に済ませましょうか」

杏子「まあ仕方ないな、早く食いたいし。それよりエイミーにもご飯あげないとな」

杏子「セットしておいたのは昼の分だけだし、腹減っただろ」

エイミー「にゃー」

 エイミーは足元に寄って催促するように鳴いている。

 あたしがご飯の準備をしようとすると、とてとてとついてきた。


 マミも夕食の準備に向かい、すぐ食べられるものと簡単にサラダなんかを用意していた。



 食事中の話題/明日の予定/その他
1自由安価
2みんなの学校での様子について
3さっきの奴について、どう思う?

 下2レス


杏子「みんなの学校での様子はどうだったよ」

マミ「もう明日で上条君が遠くに行ってしまうでしょう? 美樹さんは落ち着かない感じだったわね……」

マミ「逆に、志筑さんは驚くほどなんともなさそうに振舞ってた」

マミ「本当はまったくなんともないってわけにもいかないと思うんだけどね」

杏子「そうか……まああいつも強い奴だからな。いつか踏ん切りつけてまた良い相手でも巡り合えると良いんだが」

マミ「でも、志筑さんちってお金持ちでしょう? だから、将来ちゃんと恋愛して結婚できるのかっていうのは不安みたい」

マミ「本当に好きになれる相手に出会えるのって、偶然でしかないものね……」

マミ「恋愛経験なしの私が言えたことじゃないけど」

杏子「まあでも、まだまだ先の話だろ? 何も今で一生が決まるわけじゃないし」

杏子「……あたしも恋愛経験はないけどな」


 あたしにはそんな日は一生こない気もする。

 ……マミはいつか結婚したりするんだろうか?そうしたら、あたしはどうしようか。


杏子(……いや、まだまだ先の話か)


 夕食を終えて食器を片づけ、寝る準備をする。

 マミが電気を消して布団に入った。


杏子「……そうだ、マミはあいつのことはどう思ってるよ。なんか話してたろ?」

マミ「良い人だと思うわよ。考え方も私と近いし」

杏子「あー、まあな。マミとは話が合うかもな」

マミ「なかなかそういう人っていなかったからね……」

マミ「魔法少女っていうだけじゃなくてたまに会えたらいいわね」

杏子「そうか。まあそういう相手が増えるのは良いことかもな」



―29日目終了―

   ワルプルギスの夜まで・・・・・・あと5日


★浄化しました


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:16個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[100/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]

―空港



杏子「空港もいろいろとうまそうなものがあるな」

マミ「その辺で何か買って朝食にしましょうか。……上条君はもう来てるかしら?」


 今日は上条が日本を発つ日だ。

 マミも今日くらいはと学校を休んで見送りに来ている。

 早くに出たからまだ朝食も食ってなかった。

 その辺の店で飯を買って、ベンチに座って食い始める。


杏子「そういや空港なんて来たことないなぁー」

杏子「マミは外国とか行ったことあんの?」

マミ「ええ、一応旅行くらいは」

杏子「飛行機とかも乗ったんだよな。どんな感じよ」

マミ「離陸と着陸の時は少しふわっとした感じはするけど、別に怖くはないわよ? トイレも綺麗だし結構快適よ」

杏子「へー」


「佐倉さん!」


 そんな話をしているとあたしを呼ぶ声がした。

 上条が手を振ってこちらに歩いてくる。


杏子「おう」

マミ「会うのは初めてだったわね。色々と佐倉さんから聞いていたわ。おはよう、上条君」

マミ「私は同じ見滝原中の三年で、佐倉さんの友達の巴マミ。よろしくね」

恭介「こちらこそよろしくおねがいします。あ、もしかして巴さんもさやかと一緒に募金活動とかしてくれてたんですか?」

マミ「ええ、手伝ったことはあるわね」

マミ「でもメインでやってたのは美樹さんだから。それに、鹿目さんもよく参加してたわね」

恭介「そうなんですか、ありがとうございます」


 ……と、良い雰囲気のところで悪いがちょっと蹴りをつけとかなきゃいけないこともある。

杏子「上条」

 名前を呼ぶと、今までマミのほうを向いていた上条があたしのほうを向く。

杏子「ちょっと歯ァ食いしばれ」

恭介「えっ?」


 上条はまだわかってなさそうな顔だ。

 あたしとしてはそこそこ手加減して、パシッと音を立ててひっ叩いた。


杏子「……さすがに親の前で叩きたかないし、一人でよかったよ」

杏子「これから家族やさやかにも会うかもしれないからこのくらいで勘弁してやる」

恭介「えっ……えっ?」

杏子「今のはさやかと仁美の心の痛みの分だと思っておけ。……あと、さやかの涙の分だ」

 まだよくわかってない様子だったが。

 そう言うと少しは考え込んだようだ。


 杖を拾ってやり、上条の手を引いてやる。

杏子「……おい、立てるか」

恭介「あ、うん……」

杏子「……まあなんだ。あんたもリハビリ頑張ったんだな。ここまで歩いてこれたのはすごいじゃないか」

恭介「それはまあ、みんなが頑張ってくれてる間、僕も僕に出来ることをしなきゃと思ったからね……」

恭介「それに移動中は車だったし、支えてくれたから」


 暫く再びベンチに戻って朝食を食っていると、上条の両親とさやかが来た。

 手にはサンドイッチ屋の袋を持っている。どうやら朝食を買いに行っていたらしい。


さやか「朝食買ってきたよー。 ……あ、杏子たちももう来てたんだ」

杏子「ああ、先にそっちと合流してたのか」

マミ「おはよう美樹さん。それに、上条君のご家族も」

*「お友達がこんなに来てくれるなんて嬉しいけど、大丈夫なのかしら?」

さやか「むしろ早乙女先生は『行ってこい』って言ってましたよ」


 さやかの様子はいつもと同じように明るく見える。

 ……これで上条と話せるのも最後か。何を話そうか。


・自由安価

 下2レス


杏子「……上条、さっきの一撃は謝らないからな?」

杏子「お前さんバイオリン一筋なのは良いが、もうちょい人間関係のことを学んだ方がいいぞ」

恭介「……みたいだね。二人から話を聞いた時、僕は本当にどう答えていいかわからなかったんだ」

恭介「それが情けない事だったんだって、さっきのでやっと気づけたよ」

恭介「…………だから、ありがとう」

杏子「外国行って色んな経験もするだろうしさ、それを糧として一回り成長してこいよ」

杏子「帰ってきて何も成長してなかったり、またさやかを泣かせたら今度は本気で殴るからな?」

恭介「うん、また会えるのがいつになるかわからないけど……その時は立派になってくるよ」

恭介「人としても……もちろんバイオリン奏者としても」

杏子「やっぱそっちがメインか」

恭介「い、いや……まあどっちもね」


 苦笑する。

 ……あぁ、こいつは多少成長しても一生変わらんかもしれないな。


 早くに食べていたあたしとマミは、あれからまた飲み物を買って飲んでいた。

 後から来た奴らも食事を終えて雑談をしている。

杏子「なあ、あとどんくらいでゲートのほう行くんだ?」

恭介「15分前にはセキュリティチェックに行きたいから、あと10分くらいかな」

恭介「そこでみんなとはお別れになるね……」


 もう時間はない。

 だというのにさっきからさやかは当たり障りのないような話しかしていなかった。

 それに焦れてさやかの肩を叩き、小声で話す。


杏子「さやか、上条に何か言いたい事があるんじゃないのか?」

杏子「これが今生の別れってわけじゃないにしたって、何か言いたい事があるならはっきり言った方がいいぞ」

さやか「へ? 何が?」

杏子「いや、だからさ…… 勇気を出して告白したっつったってあいつの鈍感さは筋金入りだぞ」

杏子「あいつにはもっと大胆にいくくらいでちょうどいいんだよ」

杏子「この場でも、はっきり返事を聞くのを待ってるぐらいは言っておけばいいんじゃねーか?」

さやか「あ……うーん……でも……」


 そうこうしている間に時間が経ってしまう。

*「恭介、そろそろ行ったほうがいいんじゃないか」

 上条の親父が腕時計を見て立ち上がる。

恭介「ああ、そうだね」

*「ほら、掴まって」


 杖をつき、親父の肩を借りて上条も立ち上がり、みんなで歩きはじめる。

 ――――時刻表の電子看板とセキュリティチェックが見えてくる。

 ここからは上条一人で行かなきゃいけない。


杏子「あっちでも頑張れよ。腕、治るといいな」

マミ「腕が動くようになってからだって、無理しちゃダメよ」

*「そうよ、恭介はバイオリンにのめり込みすぎると寝食を忘れる癖があるから」

*「退院してからもちゃんと規則正しく過ごすのよ」

*「そうだ、身体を一番に気づかうんだぞ」

恭介「うん!」


 ゆっくりと歩き出した上条にさやかが呼びかける。


さやか「……恭介!」

さやか「手紙とかちゃんと寄越してよ」

さやか「…………待ってるから……返事」


恭介「うん! みんな、行ってくるよ!」


杏子(手紙の返事ともとれるいい方だが…… でもまあ、言えただけよかった……か)


 上条はいつ、どんな人になって帰ってくるだろう。

 ……その後ろ姿に手を振って別れた。

---------------------
ここまで
次回は20日(金)20時くらいからの予定です


 ――空港で上条を見送った後、帰りはさやかや上条の家族とも一緒だった。

 ガタンゴトンと規則正しい電車の走る音が聞こえている。

 ……こんなに長い時間電車に乗る日はかなり久しぶりだっけか。


さやか「これで暫くお別れか……」

さやか「……なんか、想像もつかないな。今までずっと近くに居たから」

杏子「案外向こうもそう思ってたりしてな」

杏子「あいつに前に言ったが、いなくなってから傍にあったもののありがたみがわかるって事はよくあるもんだ」

マミ「時間をおけば、彼なりに答えも見つかるかもしれないしね」

さやか「……今まで、あたしのほうもずっと伝えるのを後回しに後回しにしてきちゃってた」

さやか「今の関係を失うのが怖いって思ってたけど、はっきりと答えが聞けないままなのもやっぱりもやもやするね」

さやか「もっと早くに伝えてれば違ったりしたのかな……」

杏子「ま、死に別れるわけじゃないんだから会おうと思えばいつか会えるだろ」

杏子「それにあの朴念仁がそんなに簡単に成長してくれるとも思えん」

杏子「とりあえず、結果はどうであれ伝えられただけよかったんじゃないか」


 見慣れた見滝原駅が近づいてくる。

 ……もう昼飯時だ。今日はこれからどうしようか。


 昼・これからの予定
1自由安価
2マミの家に戻って飯
3さやかを昼飯に誘う(家に呼ぶか、駅前で食べるか)

 下2レス


杏子「午前中見送りに来たんだから午後も学校行かなくていいだろ」

さやか「ま、今日くらいはね~」

杏子「マミ、このままさやかを誘って飯でも食っていこうぜ」

杏子「この間面白いメニュー出すラーメン屋みつけたからそこに行かないか?」

マミ「面白いメニュー?」

杏子「いいから、来てみればわかるって」


 見滝原で降りると、上条の両親と別れてさやかと一緒に昼飯に行くことにした。

 二人を例の繁華街のラーメン屋に誘ってみる。

 あえて言わなかったのはそのほうが衝撃があるだろうからだ。

 どんな反応をしてくれるか。そう思っていると、二人は予想通りの反応をした。


マミ「抹茶チョコレートラーメン……!?」


 例の店ののぼりを見ると、マミが驚愕の表情で足を止める。

 さやかのほうも『ウゲー』って顔だ。


杏子「ああ、それ意外とうまかったぜ?」

さやか「いやいやいや、ないっしょ! それ組み合わせちゃダメなやつだって!」

マミ「そうねぇ……、私は遠慮しておこうかしら……」

杏子「そう言いたくなる気持ちはわかるけど、あたしの舌を信じろよー」

杏子「ていうか、少なくともあたしのほかにも一人は『おいしい』って言ってたからな?」


 ちょうど昼時だけあって客も多い。例のものを食っている客はどのくらいいるだろうか。

 ……暫くして、マミが携帯の画面を眺めながら話し始める。


マミ「……高評価のレビューがあるわね」

マミ「『見た目はちょっとキモいけど、ふつーにうまかったからびっくり!』……ですって」

さやか「マジで!? 誰だよそいつ!信じていいんでしょうね」

マミ「えっと、濃厚なとんこつベースのこってり系……? 『太るかもしれないのは注意して』かぁ」


 あたしも覗き込んでみる。投稿時間はちょうどあいつと別れた少し後くらいだ。


杏子「……まずかったら酷評するつもりだったとは言ってたが、あの後書いてたのか?」

杏子「いや、どうだろ。あいつがこんな文章書くかねえ……」

マミ「さっき言ってた人? ネット上の人格なんてわからないわよ。むしろ本当はそっちのほうが素なのかもしれないし」

杏子「そういうもんかぁ?あたしはネットなんて使わないからわかんねーけど」

さやか「あたしはブログでもリア友多いから裏表ないけどね」

 そういやマミもなんかブログをやってたっけか。

 マミにはその『リア友』とやらはいないのか? あたしだったらポエムなんて恥ずかしくて絶対載せられないけどな……

マミ「抹茶チョコレートなのにこってり系なのね……おいしいのはわかったけど、どうしようかしら」

さやか「えーでもそこまで言われると気になるなぁ。おやつも兼ねてってことで……って甘くないのか?」


 悩んだ末に、二人とも例のものを食べることを決めたようだ。

 テーブル席に座り、三つ注文する。

 ……苔のような実物を見ると二人はさらに『うわぁ』というような声を出した。


さやか「確かに大分キモい……な」

さやか「話題性はあるかもねぇ。とりあえず写メっとこ」

マミ「ちょっと心配になってくるわねぇ…… とりあえず食べてみましょうか」

マミ「……あれ? おいしい」

さやか「マジですか!」

 麺をすすり、一口目でマミが絶賛する。

 続いてさやかも食いはじめると、躊躇していたのが嘘のように箸がを進んでいく。

さやか「マジじゃん! えー、すごいねこれ。さっそくブログに書こ」

杏子「なー、うまいだろー?」


 なにしろ意外性のあるもんだ。

 こうやって仲間内で色々と反応を見ながら食うのが一番楽しいんだろうな。

 なんて思いながら、あの時とは違うわいわいとした雰囲気で食っていた。



 食事中の話題/これからの予定/その他
1自由安価
2ブログについて聞いてみる
3口コミについて聞いてみる

 下2レス


杏子「さやか、ブログ書くのは食い終わってからにしろよ?」

さやか「ん、わかってるって! 伸びないうちに食べたいしさ」

杏子「それならよし」

杏子「……話題性のために作って不味かったらぶっ飛ばそうかと思ってたが、このラーメンの味は作り込まれてる」

杏子「店主の腕は本物だよ」

マミ「一見大事故を起こしそうな内容をここまで綺麗にまとめ上げるなんて、そうそう出来ることじゃないわよね」


 ラーメンを食い終えて箸をおく。

 食べごたえも十分だ。


杏子「――ふぃー、食った食った」

杏子「マミ、ちょっとさっき見てた口コミ見せてくれよ」

マミ「ええ、いいわよ?」

杏子「他にどんな店や食い物のレビューがあるのか興味あるな」


 ……やっぱあいつなのか?

 ユーザーのページから他の書き込みを辿ってみる。

 ユーザー情報は特に特徴のない情報しかない。ただ、このあたりの店はよく行っているようだった。


杏子(そもそもあいつのことよく知らんし、ユーザーページを見てもわからないな。ユーザー名やアイコンからわかるのは猫好きってことくらいだ)

杏子(まあ大体の住所がわかる書き込みをしてるんだから、特定できちゃうような情報を載せてるのも危なすぎるんだろうけど)

杏子(……でもそういやこの画像のぬいぐるみ、前に着けてるのを見たような気もするな)

86と93て連取りじゃないんですか?、ここ連投許してるんですか?

>>95 基本的に参加人数が少なめなので連投はオッケーとしています。注意事項の詳細は>>2をどうぞ
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杏子「……ん。マミ、家に戻る前にこの店でこれ買ってかねえ?」

杏子「見てたら別腹がすいてきた」

 ここの向かいの通りにあるケーキ屋だ。

 期間限定で枇杷のタルトが出ているらしい。

 『よく熟した甘い枇杷がたくさん載ってて贅沢!』……そんな内容になんとなく惹かれた。

マミ「あら、そこのケーキ屋なら私もよくいくけど……枇杷のタルト?そんなの期間限定で出てたのね」

マミ「珍しい。今日のおやつにしましょうか」

さやか「へー、いいなあ。店すぐそこじゃん。数量限定みたいだし、早く行かないとなくなっちゃうかな?」

マミ「この時間なら大丈夫かしら。美樹さんもうちに来る?」

さやか「行きます行きます! マミさんの淹れた紅茶と一緒に食べたらさらに美味しくなりそうですし!」

杏子「そうと決まったら急がないとな」


 次の行き先が決まり、会計を済まして店を出る。

 ……ケーキを買ってマミの家に戻ることにした。

―マミの家


エイミー「にゃ」

さやか「お邪魔しまーす。お、エイミーお出迎えなんてえらい!」

杏子「あたしに似て頭がいいからな」

マミ「あと佐倉さんに似て食い意地張ってるとこあるわよね」

さやか「あはは、そうなんですか?」

マミ「じゃ、紅茶淹れてくるから少し待ってて」


 マミはそう言うと早速キッチンのほうに行った。


さやか「まどかたちも誘ったほうがよかったかな」

杏子「数量がそんなになかったんだからしょうがない。また今度みんなでお茶会やろうぜ」

エイミー「にゃ」

杏子「ああ、そん時はお前のぶんのケーキもまた買ってやるよ」

さやか「すごい、会話してる……ていうか食い意地張ってるのホントなんだ」


 会話/これからの予定
1自由安価
2キュゥべえがあれから来てないか
3教室内のことについて
4ブログのことについて

 下2レス


マミ「紅茶が入ったわよ~」

杏子「待ってたぜ。さっそく食うか」

 ケーキの箱を開くと枇杷の香りが漂った。

 これは紅茶とも合いそうだ。

 皿に分けて食べ始める。

杏子「……お、今ちょうどBSでなんかホラー映画やってるたいだぜ」

 マミがテーブルの傍に置いた新聞の番組欄が目に入った。

マミ「お茶会のお供にホラーはちょっと……面白いようなら録画しておこうかしら?」

さやか「『魔女っ娘VS伽椰子』……もろにB級ですよねこれ。新人の美少女アイドルを前面に押し出した」

マミ「こういう子たちが悲鳴あげるの見て楽しむ人たちがいるわけね……ちょっと趣味悪いわ」

杏子「魔女っ娘ねぇ」


 “伽椰子”の文字があったから気になったのだが、どうやらそれをパロディとした映画らしい。

 見てみると、派手に着飾った美少女アイドルがCG満載の戦闘を繰り広げている。純粋なホラーともちょっと違いそうだ。

 ゾンビとか相手に銃で戦うのは鉄板だがそれを呪怨でやる必要があるのかとか、

 そもそも武器が銃なら魔法(?)の設定は必要があるのかとか、色々と突っ込みどころは満載だが……


杏子「どうする? 録画。これくらいなら今かかってても別に良いと思うけど」

杏子「この銃持った奴の髪型ちょっとマミに似てるじゃん。そういやマミ、最近銃を作れるようになったよな」

さやか「名前なんて“マイ”ですよ」

マミ「だ、だからなんだっていうのよ……こんなふうに銃メインで戦ったことはないわよ」

杏子「とりあえずマミ……じゃなかった。マイがこれからどうなるかだけ見てみようぜ」


さやか「枇杷とかあんまり食べたことないけどうまいねこれ!」

マミ「ケーキに使うのがまた珍しいわよね。季節も限定されるし」


 とりあえず横で流しておくことにしてタルトを口に運ぶ。

 なるほど、枇杷は十分に甘く、大ぶりなぷるんとした果肉の食感が良い。

 ほのかに香るレモンの風味が更に芳醇な香りを引き立て、絶妙な味わいとなっている。


杏子(やるな、あいつ。しかもマミよりも先に限定商品の情報を仕入れるとは)

杏子(というか文章が割と惹かれるんだよな。ラーメン屋の時も感想だけは多弁だったしな)


 ――そして映画はいつのまにか終盤に入る。

 しょせんB級とは思っていたが最後は割と緊迫した演出だった。


杏子「あー、マミ死んじゃった」

マミ「死んでないから! 私死んでないから!」

マミ「ていうか『キャー』で終わったんだから死んだとは決まってないじゃないの」

さやか「いやもう駄目ですよ。だって魔法使えなくなっちゃったし、死ぬしかないですって」

杏子「ソウルジェム奪われたようなもんだな」

マミ「なんでみんなそんなに私……じゃなくてマイに厳しいのよ。最後まで生き残ってたんだからすごい方じゃない」

杏子「ついに全滅かー。魔女っ娘だろうがふざけてようが、愛と勇気が勝つストーリーじゃなかったな」

さやか「まあこれ一応?ホラー映画だし、バッドエンドなのはお決まりみたいなもんでしょ」


 流していた程度だったが、なんだかんだで楽しめた。

 さっきの映画を話のネタにしてマミをいじりつつ、ケーキを食い終えた後ゆっくりと雑談をしていた。

------------------------
ここまで
次回は21日(土)18時くらいからの予定です


 ……マミが時計を見て言う。

マミ「あら、まだこんな時間なんだ。普段だったらこれから放課後って時間ね」

さやか「ホントだ。なんか今日は一日が長く感じるな」

杏子「今日は朝から忙しかったからな。上条はまだ飛行機の中か?」


 まだ明るい時間だ。

 まだみんなで話していてもいいが、これからどうしようか?


【15時】

 会話/これからの予定
1自由安価
2メール(まどか・仁美)
3キュゥべえがあれから来てないか
4教室内のことについて
5ブログのことについて
6今日も訓練するか
7パトロールに行ってこよう

 下2レス


 ま、せっかくだからもう少し話してるか。


杏子「最近学校のほうはどうよ、クラスの様子とか」

杏子「前まどかに聞いた時はみんな転校生を珍しがってたっつってたけど、あいつもそろそろ馴染んできたか?」

さやか「そうだねー、やっといつも通りの雰囲気が戻った感じかな」

さやか「そわそわと気にしてた人がいなくなった分、話しかける人も減ったみたいだけど……」

さやか「部活のほうはそれなりにやってるみたいだし、なんとかなってるんじゃないかな」

杏子「そうか」

さやか「あと最近早乙女先生が『どこかに素敵な人がいないかな』ってずっと言ってる……ってのはどうでもいいか」

杏子「あー……まあそれはどうでもいいな」

マミ「悪い人ではないけど、恋愛対象としてみると面倒くさいタイプなのかもね。早乙女先生」

さやか「確かにちょっと重そうではあるね……」


 話したことはないが、あたしもなんとなくどんな奴かわかってきた。

 ……クラスメイトも良い奴そうだし、そっちのことはまあ大丈夫だろう。

杏子(……これ以上あたしにはどうにもできないしな)


杏子「さやか、またスマホ弄ってるのか?」

さやか「ん、ちょっとブログチェックしてた。コメントきてないかなって」

 覗き込んでみると、やたらとキラキラとした水色のブログが映っていた。

 さっそくさっきのことを記事にしたらしい。

杏子「これさやかのか。……というか、すげーな。謎の記号だらけでよくわかんねえ。どうやって打ってんだ?」

さやか「教えてあげようか?」

杏子「いや、いい…… みんなブログとかなんとかよくやってんだな。あたしにはよくわかんないけど」

マミ「なにかしら、自分の思ったこととかをみんなに伝えて共感とかしてもらいたいのよ」

杏子「そんなもんなのか?」

マミ「まあ、佐倉さんはまず普通のメールから慣れないとって感じだけどね……」

杏子「べ、別にちゃんと打ててるだろ」


 ……二人が顔を見合わせて苦笑いをする。

 なんなんだ、まったく。


杏子「……そういやさっきの口コミさ、前に一緒に居た奴かもしれないっつったけど、さやかは見たことあるかもな」

杏子「コンビニで、落とした金を拾ってやった時多めにくれた人……覚えてないか?」

さやか「あー、うーん……? さすがにわかんないけど」

杏子「あたしのほうはあれからたまに繁華街でなんか食ってんの見かけるんだけどさ」

さやか「へー。まあその口コミだってなんか伝えたいことがあるからやってるんだと思うよ」


杏子(……その割にはフレンド0人だったけどな)


 会話/これからの予定
1自由安価
2メール(まどか・仁美)
3キュゥべえがあれから来てないか
4教室内のことについて(マミに話題を振ってみる)
5ブログのことについて(マミに話題を振ってみる)
6今日も訓練するか
7パトロールに行ってこよう

 下2レス


杏子「そういえばマミはどういうことを書いているんだ?」

杏子「あたし的にはイタ……ポエムをさらしてそうなアンタのブログの感想にはどうかかれているかが気になるけど」

さやか「ぽ、ポエム? ていうか今イタって……あ、ハイなんでもないです」

マミ「私の場合はそうね、料理の写真を載せたり、あとは心の整理ね……」

マミ「良いって言ってくれる人もいるわよ。よくポエムの交換とかもするんだけど……」

マミ「互いにそうやって元気をもらいながら、日々のエネルギーにするの」

マミ「とても楽しいわよ?」

杏子「へ、へえ……そうなんだ~」

マミ「見てみる? でも知り合いに見せるのはちょっと恥ずかしいわね」

さやか「あ、あはは……そーですねー」


 さやかはもろな愛想笑いをして流そうとしている。

 マミはそれに気づかない様子でノートパソコンをテーブルの上に置いた。

 ……まあ、本人が楽しいって言ってるんだからいいか。


さやか「パソコンで書いてるんですね」

マミ「ええ。……ほら」


 ポエムのカテゴリを開けば出てくる出てくる独特な文章。

 ……最初料理の写真を見て感心していたさやかもそろそろ引いてきている。


マミ「……どう?」

杏子「えっ」

マミ「その……感想よ」

さやか「あー……」


杏子(……ヤバい。こうくるとは思ってなかったぞ)


 書いてあることは正直あたしにはよくわかんない。

 どうしよう?


1適当に「いいんじゃないか」と言っておく
2「すごい!感動した!」と褒めちぎってみる
3素直に「よくわかんない」と言う
4素直に「痛い」と言う
5国語的に内容を真面目に添削をしてみる
6自由安価

 下2レス


杏子「……あたしなりに考えてみたんだが」

マミ「ええ」

杏子「使わなくていいところで漢字を使いすぎじゃないか?」

杏子「ほら、この『無い』とかさ、普通に書いたほうが読みやすいと思うんだ」

杏子「それに漢字の使い方が変っていうか……『会う』をわざわざ『逢う』にする必要はあるのか?」

杏子「『分かる』を『理解る』と書く必要はあるのか? 『言う』を『云う』にする必要はあるのか?」

マミ「えっとそれは……そのほうがかっこいいし」

杏子「あと、同じ表現を繰り返しすぎだな。そのせいでなんかこう……テンポが悪くなってるっつーの?さらっと読めないんだよ」

マミ「だってそれも……そのほうがかっこいいから?」

杏子「それに遠回しな表現が多すぎるっていうか、そのせいで全体的にわかりづらく……」

マミ「も、もうわかったわよ! でもね、これを良いって言ってくれる人だっているんだから!」

マミ「ほら、いつもコメントくれる†時雨†さんもルシファーさんも良い人なのよ!」

杏子(うわぁ)

マミ「ね! この話はもうやめにしましょうか!」


さやか「……」

杏子(……ありゃ、ご機嫌ななめか?)


 結果的に話が終わったのでよしとしようか。

 ちなみにそう言うマミのハンドルネームは『魔刃の輪舞曲』だった。


杏子(……魔法少女の力を遊びかなんかだと思ってなきゃいいんだが。それに関連した内容も多かったしな)


 ……片づけたらメールやらが終わると、外もそろそろ暗くなってきた。


マミ「これから夕飯の買い物をしに行こうと思うんだけど、何か買ってきてほしいものはある?」

杏子「そうだな…………」


1いいお菓子があったら買ってきて
2この漫画の最新刊があったら買ってきてほしいんだが…
3夕飯をまだ決めてないなら希望したいものがあるんだが(安価内容)
3……そういや、マミにはプリントとか届けてくれる人はいないのか?
4自由安価

 下2レス

すみません、一個飛ばしました 安価の前にこのレス挟んでください
-------------------------------------------------------------

さやか「じゃ、そろそろ帰ろうかな。まどかが今日の授業のプリント持ってきてくれるって言ってるし」

マミ「そうね。そういうのは早めにやったほうがいいわね」

杏子「じゃあ気を付けてな」

さやか「うん! じゃ、またね。紅茶ごちそうさまでした」

マミ「いえ。またこうやって話しましょうね」


 ……さやかが帰ってから、ふと思い出す。

 まどかか。そういやこの前家族らしい人に公園で会ったな。


杏子(タツヤがなんか言ってたか聞いてみるか)


 あたしも携帯を取り出してメールを打ちはじめる。

 マミは皿の片づけと洗い物をはじめたようだ。


杏子「マミ、ちょっと仁美に連絡しておいて欲しいんだけどさ」

マミ「ええ、何?」

杏子「仁美もあれから色々考えただろうし、そろそろどんな様子なのか知りたい」

杏子「明日辺りお茶会に誘っておいてくれないか?」

マミ「いいわよ。後でメールしておくわね」

安価番号までミスっとる…落ち着かなアカンな
---------------------------------------------

杏子「一緒に行くよ。居候の身だからな、荷物持ちくらいはするさ」

杏子「そういや今日は和食がいいなぁ、焼き魚とかどうだ?」

マミ「和食か、久しぶりね。なんの魚がいいかしら?」

杏子「見てから決めるよ。値段のこともあるだろうしな」


 マミと二人で買い物に行くことにした。

 ……最寄りのスーパーにつくと、ちょうどいろんなものが安くなり始める時間だった。


マミ「さかなさかな……っと」

マミ「あら、今日はサバが安いわね。それから何か良いものは……」


 スーパーを見て回るマミについていく。

 スーパーでも買い物が長いのは同じなようで、色んなものを手にとっては悩んでいた。


杏子(腹減ってきたな……)

マミ「…………よし、これでレジいきましょうか」

杏子「おう」


 レジを済ませて帰路につく。

 ……夕食が楽しみだ。


杏子「ただいまー。エイミーにもご飯をやらないとな」

エイミー「にゃ」

マミ「荷物持ちありがとう。早速夕食を作ってくるわね」


 マミがキッチンに向かっていく。

 あたしはいつもどおりエイミーと待つことにした。

 ……すると、携帯から音が鳴る。


杏子(お、まどかからメールが来てるな)


本文:そうだったんだ!

   たっくんに聞いてみたら、また遊びたいって言ってたよ。
   また見かけたら遊んであげてほしいな。

   そういえば今度うちに来たいって言ってたね
   杏子ちゃんがうちに来たらたっくんも喜ぶと思うよ



 返信/食事中の話題/その他
1自由安価
2まどかに安価内容で返信する
3仁美とのお茶会について(食事中の話題)

 下2レス


杏子「やっぱりまどかの家族だったか」

杏子「あ、そうそう、あたしのは塩かけないで焼いてくれ。あたしはわさび醤油派だからな」

マミ「ええ、わかったわ」


杏子(食う前にメール返しておくか)

杏子(今度おじゃまさせてもらうよ、エイミーもつれていっても大丈夫か……っと)


 ……メールを送信する頃には良い匂いがしていた。

 魚の匂いにエイミーもそわそわとしている。

 テーブルについて夕食を待つことにする。


マミ「夕飯出来たわよ」

杏子「お、待ってたぜ」

エイミー「にゃっ」

杏子「……塩ふってないから大丈夫か。ちょっとだけだぞ」

エイミー「にゃっ♪」

杏子「これ以上はダメ」

エイミー「にゃー」



 食事中の話題
1自由安価
2仁美とのお茶会について
3翌日へ

 下2レス


杏子「そういや仁美からの返信ってあったか?」

マミ「えーっと……来てたみたいね。明日オッケーですって」

杏子「明日もケーキとか作るのか?」

マミ「そうねぇ……明日は学校があるし、今日みたいに買っても良いと思うけど」

杏子「じゃ、例の口コミでも見るか?」

杏子「ついでにフレンドとやらにもなってやれよ。あたしはネットとかよくわかんないから無理だけど」

マミ「私はよく知らないしいきなり申請も気が引けるわ……それにアカウント作らなきゃでしょ?」

杏子「そうなのか? その辺のことはよくわからんけど」

マミ「まあ何かおすすめは見ておくわ。佐倉さん何か希望ある?」

杏子「希望なら明日の主役の仁美に聞いておいてくれ」

マミ「それもそうね」


 ――夕食を終えると、片づけと寝る準備をして布団に入る。

 まどかからは『もちろんだよ!』と返信が来ていた。

 ……明日は仁美との約束があるから、いつにしようかな。


 寝る前に
1自由安価
2翌日へ

 下2レス


杏子(明後日にしよう)



 まどかにメールを返してから眠りについた。




―30日目終了―

   ワルプルギスの夜まで・・・・・・あと4日



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:16個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[100/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]

-------------
ここまで
次回は25日(水)19時くらいからの予定です

―翌朝


 朝食が出来るまでの間にエイミーに飯をやり、

 それからマミと二人でテーブルを囲んで朝食を食う。


 ……今日は放課後に仁美が来る。

 その時にはここに戻らないといけないが、これからどうしようか?



 食事中の話題/これからの予定
1自由安価
2パトロール(見滝原)
3パトロール(風見野)
4自主訓練
5メール(まどか・さやか・仁美)

 下2レス

4


あと魔女案を出したら、次のストーリーに出てきたりするのかな?

>>134 安価募集の魔女は他のストーリーでも出しますよー
-----------------------------------------

 昨日は何もやってないし今日も放課後は仁美が来る。

 今のうちにパトロールに出てくるか。


 まずはどこに行こうか?


 行く場所
1公園
2通学路
3駅
4病院
4繁華街
5歩道橋
6土手
7鉄塔
8廃工場
9立体駐車場

 下1レス

―廃工場



 マンション前でマミと別れ、人の流れに逆行して工業地帯のほうに歩いていく。

 人も居なそうな廃工場が並ぶ寂しい景色。

 魔女の気配は……



下1レスコンマ判定
0~20 使い魔
21~40 魔女


杏子(人も魔女もいねーか)

杏子(他のとこ行くか)


 行く場所
1公園
2通学路
3駅
4病院
4繁華街
5歩道橋
6土手
7鉄塔
・廃工場[現在地]
8立体駐車場

 下1レス

―立体駐車場



 大きな立体駐車場が見えてくる。

 魔女を狩る以外の目的で立ち寄ったことのない場所だ。


杏子(さて、魔力は……)


下1レスコンマ判定
0~20 使い魔
21~40 魔女


杏子(ここもなし、か……)


 行く場所
1公園
2通学路
3駅
4病院
5繁華街
6歩道橋
7土手
8鉄塔
・立体駐車場[現在地]

 下1レス

―繁華街



杏子(で、結局人の多いほうに来てみたわけだが……)


 単純にも、今日は人が多いところに魔女も居たようだ。

 ……今日は、というか前もこんな時間に似たような場所で魔女に会ったな。


杏子(やーっと見つけた。間も空いたしどこかには居るだろうと思ってたが、毎度毎度歩き回るのは疲れるな)

杏子(さっさと終わらせて飯にしよう)



―砂の魔女結界



 ……結界に足を踏み入れると、ごみごみした繁華街から砂漠のような広大な景色が広がる。


杏子(道らしきものはない。珍しく迷路のないタイプか……?)

杏子(しかし、魔女はどこに……)


 辺りを見回しても延々と続く砂……そしてサボテン……

 ひとまず歩き出してみると、近くにあったサボテンから針が飛んできた。


杏子「――!」


 下1レスコンマ判定
0~55 回避


使い魔ChollaBoy「~~♪!♪!!」


 サボテンから胴体と手足が生えて走り回っている。

 まるでイタズラが成功した小僧のようだ。


杏子「てえなこら!」


 さっくりと使い魔を槍で斬り潰し、もう一度周囲を見渡す。


杏子(ったく……まあこのくらいなら治すまでもないか)

杏子(……で、サボテンが使い魔? なら魔女は……)

杏子「!!」


 目の前の砂が隆起し、波のようになって向かってくる――!


杏子(そのまま飲み込もうって魂胆か……!)

杏子「そう何回も不意打ちくらうかよ!」


 多節棍で砂を散らすが、散り散りになって再び目の前に砂の塊が現れる。

 ……シンプルだが厄介な奴だ。どう倒すか――



杏子 魔力[95/100] 状態:負傷(小)
GS:16個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[100/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:Saudnude <-攻撃対象デフォルト
  ChollaBoy×3

1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-15) 幻惑魔法により背後を取って攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-0) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-15/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-2*分身の数) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。現在の上限は2*20の40消費。

13自由安価

 下1レス

12×3体


 砂が再び地面の砂と同化するように散る


杏子(どこから来るかわからないってのに攻撃が集中するのもマズい)


 分身を作っておく。


杏子(――どこから来る?)


・敵の攻撃ターン
 下1レスコンマ判定
0~80 回避


 地面が隆起し、大きな棘のようなものが突き出す。

杏子(――! 来た)

 すかさず多節棍を振りかざすが、すぐに引っ込んでしまう。

杏子(本当に面倒くさい相手だな……)

杏子(攻撃がきた場所に居たのは幻惑だし被害はない――が、今のはあたしの反応を見るためか?)

杏子(あんまり受け身でいるのも嫌なんだがな)


 再び気を引き締めて周囲の様子を窺う。

 ……すると、ゴウッと辺りに砂嵐が舞い上がる。


杏子「くっ……」

 思わず腕で目を覆う。

杏子(目くらましか……!)


 反応の違いで本物を見分けたのか、砂嵐はあたしの足元を掬うように纏わりついて固まると、

 やがて全身を包み込むように動きを変える。


杏子(まずい――!)

杏子「――でりゃぁっ!」


 飲み込まれる前に多節棍で払う。

 砂が纏わりついていた場所からいやに乾いたような感覚がする。


杏子「っつ…… 負傷しているほうの足を重点的に狙ってくるとは、魔女にしちゃ頭がいいのか?」


 ――そう思って傷のある足を見ると、ある事に気づいた。


杏子(……血が出ていない?)

杏子(さっきの砂、身動きを取れなくするっつーより本当は血を吸うのが目的で……)

杏子(単に多く水分が取れそうなところに多くついたってだけか……だったら別に頭が良くもないじゃねーかよ)


 よく見ると砂の一部分が赤くなっている。

 ――魔女はそこだ。


杏子(ちっと足は痛むが治療は後だ、気合で乗り切る!)

杏子(場所さえわかってりゃあ……)


 変幻自在とはいえ実体がないわけじゃない。

 攻撃のためにはある程度まとまった形で出てこなくちゃならない。


杏子(次に姿を現した時が最後だ!そこで決着をつける!)



 ――――再び地面が隆起する。

 魔力を込め、大きな棘のようなものを形どった砂の塊をすかさず真正面から槍で刺す。


 ……すると、刺した場所から砂が固まり、最後にはぱらぱらと崩れてグリーフシードだけが残って消えた。



杏子 魔力[100/100] 状態:負傷(中)
GS:17個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[64/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]



 再び景色はごみごみとした繁華街の路地裏に戻る。

 ソウルジェムを浄化して一息ついた。



杏子「うへー、なんかまだ砂っぽくて気持ち悪いな」

杏子「足も痛いしどうしようか……あんまりこのままにしておくのもな」



【昼】

1負傷回復(自) 【回復:C】
 魔力-15
2マミの家に戻って一旦手当て
3自由安価

 下2レス


 傷口にソウルジェムを翳す。

 ……傷を魔力で治してから路地裏を出た。


杏子 魔力[85/100] 状態:正常
GS:17個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[64/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]



杏子(昼の繁華街はいつもどおり賑わってるな)

杏子(……っと、もうあんまり金はかけてられないんだったな)


 早いところマミの家に戻って休憩したい。何か買って帰ろうか。


1普通に飯だけ買って帰ろう
2弁当と食材を買って帰ろう(夕食に食いたい料理用の材料)
3食材を買って帰ろう(たまには自分で料理でもしてみようか)
4弁当とエイミーのおやつでも買って帰ろう
5自由安価

 下2レス

―マミの家


 手頃な弁当とカレーの食材を買ってマミの家に戻った。

 玄関を開けるとエイミーが出迎えてくる。


エイミー「にゃ」

杏子「おう、ただいまー」

 ……エイミーはレジ袋を気にしているようだ。

杏子「いや、今日は別に何も良いものは買ってないぞー?」

エイミー「にゃー」

杏子「こらこら、玉ねぎ入ってるからあんまり近づくな。自分のもう食べただろ」


杏子(……相変わらず食い意地張ってるな)


 材料をしまい、テーブルについて弁当を食い始める。

 いつも二人で囲んでいたからか、一人だとこのテーブルもなんだか広く見えてくる。


杏子(マミはいつも色々と作ってくれるしな)

杏子(食い終わったらマミが帰ってくるまで休憩するか……)

---------------
ここまで
次回は27日(金)20時くらいからの予定です


 ……ソファで寝転がって休憩していると、玄関の扉の開く音がした。

 エイミーが鈴の音を鳴らしてとてとてと歩いていく。


マミ「ただいまー」

仁美「お邪魔します」

 起き上がって伸びをすると、あたしもそっちに行くことにした。

杏子「帰ってきたか。仁美も久しぶり」

仁美「ええ、お久しぶりですわ」

仁美「また誘っていただいてありがとうございます」

マミ「紅茶を淹れてくるわね、適当にかけてて」

 マミがケーキの箱をテーブルに置く。

杏子「で、今日は何を買ってきたんだ?」

仁美「フルーツのロールケーキを。これならみんなで分けやすいかと思いまして」

杏子「おー、そういうのもいいな!」


 ……確かにわんわん泣いてたさやかと違って、仁美は表面上にこやかで変わりはないように見える。

 踏み込んだ話に入るのはもう少し落ち着いてからのほうがいいかと、マミが準備している間になんでもないような雑談を始めることにした。


1自由安価
2学校でのことについて
3紅茶のことについて
4ホラー映画って好きか?

 下2レス


杏子「どうよ最近、学校は」

仁美「うちのクラスは一人加わって、一人居なくなって……短い間で色々と変わっちゃったなって思います」

仁美「でも暁美さんももうクラスの一員として馴染んだと思いますよ」

仁美「そういえば軽音のライブ、明日ですわね」

杏子「ああ、そうだったな」

仁美「佐倉さんも見に来るんですか?」

杏子「……まあ一応、離れたところから見る予定だよ」

杏子「部外者だし、なにしろあいつがあたしを見たら集中が乱れて失敗とかしそうだしな」

仁美「そうですか……」


 話しているとマミが紅茶とパン用のナイフをテーブルに運んでくる。


マミ「紅茶入ったわよ。お茶会、はじめましょうか」

杏子「おう!待ってたぜ」

仁美「ありがとうございます。ではさっそく……いただきます」


話題
1自由安価
2上条のことについて
3紅茶のことについて
4ホラー映画って好きか?

 下2レス


 ふんわりとしたロールケーキを口に運ぶ。

 たっぷりとしたクリーム、生地、フルーツが調和した優しい味だ。


 ……適当に食ってるあたしなんかとは違い、仁美は食べている姿も優雅だ。

 マミだって優雅っちゃあ優雅なんだが、やっぱり何か雰囲気が違う。

 ケーキも紅茶も、食器まで全部一級品に見えてくる。


杏子「それにしても、元気そうな姿が見られてよかったよ」

杏子「さやかの奴は大分落ち込んでたみたいだったからな」

仁美「あぁ、そうですわね…… 今は大分落ち着いたみたいですけど……」

杏子「まあでも、もし無理してるとこがあるなら、仁美も溜めこまずに発散することも大事だぞ?」

仁美「……諦めがついたんです」

仁美「もともと、私じゃ駄目なんだろうとは思ってましたから」

仁美「伝えられただけでもよかったっていうか」

杏子「……」

仁美「といっても、彼の答えはさすがに予想外でしたけど……」

杏子「あー……そうだな」

仁美「腑に落ちないところはどうしたってありますよ」

 仁美は少しだけ拗ねるように言った。

マミ「志筑さんならきっと、将来素敵な人が見つかるわよ」

マミ「そうやって前を向いていられるんですもの。ちゃんと自分の納得できる幸せが見つけられるわ」

仁美「そうですね。そのためにも今は目の前のことを頑張らないと」

マミ「今の時期だと、定期試験かしら?」


 ……この調子なら大丈夫そうか。


1自由安価
2紅茶のことについて
3試験について
4ホラー映画って好きか?

 下2レス


杏子「そういや仁美も紅茶好きなんだっけか?」

仁美「はい。といってもいつもあまり自分で淹れることはないので、こんなに上手に淹れられる巴さんは尊敬します」

マミ「ありがとう。私はこれ、お母さんから習ったのよね。気づいたら出来るようになってて」

仁美「そうそう、今日はお土産を持ってきたのでした。いつもお世話になってばかりじゃ悪いので……」

 仁美がそう言ってマミに小さな紙袋を手渡す。

仁美「これ。うちで使ってる茶葉なのですが、私のお気に入りなんです」

マミ「あら、こんな良さそうな茶葉……いただいちゃっていいの?」

仁美「はい。巴さんならきっと最高の味を引き出せると思いますわ」


 なるほど、二人はやっぱり気が合いそうだ。

 ……ケーキも食い終わり、外を見るとそろそろ日が暮れてくる。

 そろそろ晩御飯のことも考えないとだよな。直接聞く前にテレパシーでマミに相談する。


杏子『マミ、晩御飯用にカレーの材料買っておいたんだ』

杏子『仁美が大丈夫なら晩飯に誘おうと思うんだがいいか?』

マミ『ええ。お金後で渡しておくわね』

杏子『や、別に……あー、そうだな。頼む』


仁美「では私はそろそろ……」

杏子「まあ待て、予定が大丈夫なら晩飯も食っていかないか?」

杏子「今日はカレーなんだ。みんなで食うにはぴったりだろ?」

仁美「でも、そこまで……」

マミ「遠慮しなくていいのよ。私も食卓が賑やかなのは嬉しいから」

仁美「でしたら、お言葉に甘えて。家の者に連絡しておきますね」


 仁美が座りなおして携帯を取り出した。

 晩飯まではもう少し時間があるが、何かしようか?


雑談/何かやりたい事/その他
1自由安価
2試験について
3ホラー映画って好きか?
4仁美はブログとかやってんの?
5トランプでもやろうぜ

 下2レス


 エイミーはいつのまにかソファの上で丸まっている。

 寝てるんだか起きてるんだか、しっぽがたまにぱたぱたと動いているのが気になる。


杏子「そういや仁美はペット飼ったりしてるのか?」

仁美「観賞用の魚なんかはいますが……私は面倒を見たりといったことはしないので、自分のペットという感じはしないです」

杏子「そうか。なんか飼いたいとかないのか?」

仁美「ハムスターとかは……小学生の時友達が飼ってるのを見ていいなって思ったんですけど」

仁美「寿命が短いのが儚いですね……」

マミ「死んだときは悲しかったでしょうね」

仁美「はい……好きだった玩具と一緒にお庭にお墓を立てていましたよ、その子」


杏子(墓、か)

 子供心にそうやって死の重みや悲しみを理解していくんだろう。

 教会に建てた墓を思い出して、あたしたちの世界は重すぎるなとふと思った。


マミ「……なんかしんみりしちゃったわね。そろそろお夕飯作りはじめましょうか」

仁美「待ってるだけというのも悪いですし、私にも出来ることは手伝わせてくださいませんか?」

マミ「ええ、助かるわ」

杏子「またみんなでやるか」


杏子「さて、まずは何からすりゃいいんだ?」

マミ「まず手を洗いましょうね」

杏子「そうだったな」

 みんなでキッチンに移動すると、手を洗い、マミの指示で手伝いながら料理を始める。

マミ「材料はこれでよし……」

マミ「志筑さんはこっちのまな板で野菜を切ってくれるかしら?」

仁美「はい」

マミ「佐倉さんはじゃがいも剥いてくれる?」

杏子「おう……あれ?包丁じゃないのか?」

マミ「どっちでもいいけど、洗い物増えちゃうから……これもスーッとなぞるだけで簡単よ?」

杏子「へえ、便利だな」


 ……なんだか修学旅行みたいだ。

 あとは煮込むだけになってからは、マミに任せてリビングに戻ることにした。

 ソファから降りて近づいてきたエイミーを撫でる。


エイミー「にゃ~」

杏子「エイミーの飯も用意してやるか」


 良い匂いがしてきた。そろそろカレーもできそうだ。


食事中の話題/その他
1自由安価
2試験について
3ホラー映画って好きか?
4仁美はブログとかやってんの?
5メール(まどか・さやか)

 下2レス

---------------------
ここまで
次回は28日(土)18時くらいから、来てたら始めます

まどかに明日は何時頃行けばいいのか確認のメールを送る

そういえば明日まどかの家に遊びに行くことマミに言ったっけ?
寝る前にそのことをマミに伝えとかなきゃな


 エイミーのご飯を皿に盛って置いてやると、エイミーの興味がそっちに移った。

 今日も皿に頭を突っ込んでがつがつと食っている。

仁美「良い食べっぷりですわね」

杏子「な、見ていて気持ち良いだろ?」


 そろそろかとテーブルについて待つことにする。

 ……その間に、明日のことについてまどかにメールを送ってみる。

 放課後だから15,6時ごろに行けばいいか? まあそれも一応聞いておこう。

 あたしもなんか持っていった方がいいか…… まあ後で考えるとしよう。


マミ「出来たわよ。佐倉さんはいつも通り大盛りにしておくわね」

マミ「志筑さんは普通でいいかしら?」

仁美「はい、ありがとうございます」


 みんな揃ったところでいただきますの挨拶をして食い始める。

 ……そういや、昔は毎回食事前はみんなで祈りと挨拶をしてたっけ。こういうのも懐かしい。


食事中の話題/その他
1自由安価
2試験について
3ホラー映画って好きか?
4仁美はブログとかやってんの?

 下2レス


杏子「そういやさ」

杏子「明日の軽音のライブ、昼休みにやるって聞いたけど昼休みって何時からなんだ?」

仁美「お弁当の時間込で12時半から13時半ですよ」

仁美「準備や片づけなどを含めれば15分くらいから30分間くらいになるかと」

杏子「ふーん、まあ自分たちの食う時間もなくなるだろうしな」

仁美「……あら? 佐倉さんって去年まで見滝原に通われていたのでは?」

杏子「ああ!いやちょっと忘れっぽくってな!確かにそうだったなありがとう!」

仁美「はあ」


 ……ヤベエ、そんな設定があったのすっかり忘れてた。

 マミもどこかひやひやとした顔をしている。


杏子(大体の時間はなんとなく知ってたが、来たときに終わってても困るしな)

杏子(しかしそうか、そういやそんな設定があったんだったな……後でマミに色々と聞いておこう)


マミ「毎回、結構集まってるわよね。私はあんまり見に行ったことはなかったけど……」

仁美「明日は私たちも見に行きます? それとも、むしろ屋上からのほうがよく見えますかしら」

マミ「それもそうねぇ……」

仁美「でも、佐倉さんもせっかくなら後輩たちに会っていかれたらどうでしょう?きっと喜びますよ」

仁美「えっと……お二人はなんの部活をしていらしたんでしたっけ?」

杏子「いや、あんまり目立ってもアレだしな」

マミ「ひ、非公認だから……ね」


杏子『おい、この話題はまずいぞ…… マミ、なんか話題変えろ』

マミ『もう、そんな嘘をつくから……』

マミ「そうだったわ!志筑さん、ホラー映画はお好き?」

仁美「ホラー映画ですか?」

マミ「ええ、最近少しハマっててね。この前借りた映画がまだ手元にあるんだったわ。見る?」

仁美「映画? でも今からだと時間が……」

マミ「そうね、また今度にしましょうか」

仁美「はい。ちなみになんていう映画なんですか?」

マミ「えっとね……――」


杏子(この前といい、話題の変え方それしかないのかよ……)


 なんとかマミがごまかしたようだ。少々強引だが、二人は映画についての雑談をしている。


杏子「マミ、おかわりってあるか?」

マミ「ええ。志筑さんもいる? 多めに炊いてるし、遠慮しなくていいわよ」

杏子「ま、もし余ったらあたしが食うけどな」

仁美「では、少しだけ……」


 みんなでおかわりをすると、多めに炊いたご飯は綺麗になくなった。

 夕飯を終えるともう外は真っ暗だ。


杏子「今日も家の人迎えに来てくれるって?」

仁美「はい。今日は本当にありがとうございました。楽しかったです」

マミ「ええ、こちらこそありがとうね」


マミ「志筑さん、また明日」

杏子「また今度なー! また一緒に飯食おうぜ!」

仁美「はい、ごきげんよう!」


 仁美をエントランスまで送って別れて部屋に戻る。

 風呂からあがって携帯のチェックをすると、まどかから返信が来ていた。


 『16時には家に着いてると思うから、そのくらいの時間に来てほしい』とのことだ。

 了解の返事を出す。


マミ「メール、慣れてきたみたいね」

杏子「まあ、少しはな。メールと電話以外は慣れる気がしないけど」

マミ「ひとまずはちゃんと連絡が取れれば十分じゃないかしら?」


 部屋の電気を消して布団に入る。


杏子「そうだ、まだマミに言ってなかったよな」

杏子「明日、まどかの家に遊びにいくことになったんだ」

マミ「そうなの」

杏子「帰る時にはまた連絡するよ」

マミ「ええ」



―31日目終了―

   ワルプルギスの夜まで・・・・・・あと3日



杏子 魔力[85/100] 状態:正常
GS:17個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[64/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]

―翌朝


 朝食が出来るまでの間にエイミーに飯をやり、

 それからマミと二人でテーブルを囲んで朝食を食う。


 ……今日は昼には見滝原中に行くから、遠出はできないな。

 それまで何をして過ごそうか。



 食事中の話題/午前の予定
1自由安価
2パトロール(見滝原)
3自主訓練
4メール(まどか・さやか・仁美)

 下2レス


杏子「昨日はヤバかったな。あんな設定すっかり忘れてたからさ……」

杏子「学校の話題振られた時はマミもフォロー頼むよ」

マミ「それか、志筑さんにも嘘だって言う? 見滝原の卒業生じゃないって」

杏子「今更それもまたごまかすのが増えて厄介だな……魔法少女関連の話は出来る限りしたくない」

杏子「そういやマミって、制服の予備って持ってるんだっけ」

マミ「スカートとブラウスだけだけどね」

マミ「……今日、着てく?」

杏子「いや、どうせ見るのは校門の外からだし……」

杏子「ついでに仁美に見つかったら、なんで卒業したのに制服着てるのか疑問をもたれそうでヤバいぞ」

マミ「それもそうね」


 朝食を終えて立ち上がる。

 今日は久々にエイミーもつれてこう。


杏子「あ、そうだ。今日エイミーもまどかんちに連れてくことになったんだ」

マミ「そう、じゃあまた夜に」

杏子「ああ」

―土手



エイミー「にゃ」

杏子「お、なんか見つけたか? ……バッタだな」


 エイミーも室内にばかりいては退屈だろう。

 ここならエイミーを遊ばせるにも丁度良い。

 あたしも久々に自己鍛錬をしよう。



 何の訓練?
1幻惑魔法(魔力-25)
・・・幻惑魔法の消費魔力削減
2投擲の精度を上げる(魔力-10)
・・・[射撃Lv1]取得
3素振り
・・・こつこつと、長期的に(物語中にわかるほどの上達はしません)

 下2レス


杏子「はじめるか!」


 最近は幻惑魔法のほうも大分昔の調子を取り戻せてきた。戦いの中でも安定して使えている。

 また少し集中して練習をすればさらに良くなる気がする……


――――――

――――――


★魔力-25

★浄化しました

★技仕様変更
 背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。

 幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。

 ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・薔薇園[0/100] ・鳥かご[24/100]
・針[100/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


 ……変身を解いて伸びをする。

 以前と同じ――それ以上に使えている気がする。ここまで上達すれば十分だろう。


杏子(あれからこんだけ経ってんだ)

杏子(使い方の勘さえ取り戻せればこっちのもんだ。あれから色々と成長してるんだから)


杏子「さてとっ、その辺で飯でも買って行くか」

杏子「エイミー、行くぞ」

エイミー「にゃ」


――――コンビニで菓子パンを数個買って見滝原中に向かう。

 時計の針は12時半を少し過ぎたところを指している。

 授業が終わって、まだセット中みたいだ。校舎前の広場にせっせと機材を運ぶ姿が見える。

 その中にほむらの姿もあった。パンにかぶりつきながらそれを遠目に見る。


杏子(始まったら音でわかるだろう。じろじろ見てて見つかっても困るな)


 少し離れた場所に移動し、レジ袋にごそごそと手を突っ込んで2つ目のパンを取り出す。

 ――それからしばらくして、ジャン、とギターを鳴らす音が聞こえた。いつのまにか生徒たちが集まっている。

メガほむのベース・・・さてどうなるか


 ギターを提げた部長らしき人がマイクスタンドの前で喋りはじめる。

 ちょうど校門に背を向け、校舎側に向けている。

 あたしは校舎の外からほむらを含む部員たちの後姿を眺めることにした。


『えー、みなさん!お昼休憩楽しんでいるでしょうか。見滝原中学軽音部です!』

『今日は本年度に入って2回目の定例ライブです! 今回から新しいメンバーが加わりました!』

『ほむらちゃん!』

 ほむらが少し下を向いて恥ずかしそうにマイクスタンドの前に歩いてくる。

ほむら『あの……はじめまして。あ、暁美ほむらです』

ほむら『ベースを担当して……えっと』

 ほむらが手元に持った紙を見ている。

 そこに台詞を書いてきたんだろうか。

ほむら『クラスの人に誘っていただいて、あ、新しく、このバンドでベースを担当することになりました』

ほむら『よろしくおねがいします』

 ほむらが頭を下げると、わーっと歓声が上がる。

 ほむらは恥ずかしそうにもう一度おじぎをして元の位置に戻っていった。

『それでは、そろそろライブを始めたいと思います!一曲目はじめちゃうよ!“コネクト”!』


杏子(基本的にはコピーバンドか)

 聞き覚えのあるメロディとともに、さっき仕切ってた部長がそのままの位置でギターを弾きながら歌っている。

 ほむらはその後ろで楽譜と手元を真剣な表情で交互に見ながらベースを弾いている。

杏子(ふーん、弾けるようになってるんじゃないか)

杏子(見てるとそんなに速い動きはないようだが、始めてから短期間でまともに一曲弾けるようになってれば十分だろ)

杏子(続けりゃまたそこそこ上達するかもな)


 二曲目、三曲目と進んでいく。

 そして、最後の曲になるとほむらが位置を代わって前列に出てきた。


『最後はオリジナル曲です!ボーカルはひきつづきわたくしユイと、そしてほむほむが担当するよ!』

『ラップの歌詞は部員とほむほむで考えました!それではお聴きください!』


杏子(ついに来たか……)


 可愛らしいポップな曲調に、ボーカルの明るい歌声。内容的には応援ソングのようだ。観客たちも手を叩いてノっている。

 ……そして、サビが終わり間奏になると、曲調は一気に変化する。


ほむら『転入早々代わりに入部、戸惑い多くて正直ヘコんだ』

ほむら『うっとおしいって思うこともあった』

ほむら『でも今はちょっと楽しい、誘ってくれたの嬉しい、戸惑い多くても暇じゃなくなった』

ほむら『軽音メンバー』

ほむら『部長でギタボ、ユイたん! ドラムのりっちゃんおでこひろい! キーボのムギは、曲もつくれる!』

ほむら『ベースはわたくし眼鏡のほむほむ!』


杏子(メンバー紹介ラップってやつか……“ほむほむ”ね。親しみやすくていいんじゃないの)

杏子(なんとかなってるようだな)


 ラップが終わるとほむらは再びぺこりとおじぎをした。

 まだ恥ずかしそうにしながらしっかりとベースを弾いている。


『ここまで聴いてくれてありがとー!また次のライブで会おうねー!』

 メンバーが一言ずつマイクの前まで来てコメントを言っている。

 ……そして、最後にほむらがマイクに向かってしゃべりはじめた。

ほむら『なんか、なんか、まだ緊張してて……でも、なんとか出来てよかったです』

ほむら『ていうか、うっとおしいとか失礼ですみません……』

『いや、歌詞に入れさせたのわたしだし。色々突っ込んで聞いちゃったけど本音聞き出せたかなって思ったよ』

ほむら『なんか、ほんとすみません』

『謝るの禁止だって!』

ほむら『えっと、ありがとうございました……』


ほむら「――わっ!?」

 ……と、良い雰囲気で終わろうとしていたのだが、

 マイクから離れて歩く途中でほむらが下にあったコードに足をひっかけた。


杏子(っ!!)

 ほむらがずっこけると同時にビィンと爆音が鳴り響く。

 ……思わず顔をしかめたが、離れた場所に居てよかったかもしれない。

杏子(締まらないのもらしいっちゃらしいな……)


 ともかく、無事(?)ライブは終了する。

 ……腹ごしらえも終わったし、これからどうしようか。


 去る前に/去った後
1自由安価
2屋上のマミにテレパシー
3パトロール(見滝原)
4メール(マミ・まどか・さやか・仁美)
5教会で墓参り
6マミの家に戻って休憩

 下2レス


杏子『マミ、見てたか?』

マミ『ええ、なんとかやれてたじゃない。……最後は締まらなかったけど』

杏子『なんか、あたしが心配するまでもなさそうだな。周りに恵まれてるよ』


 屋上のマミとテレパシーで話してから学校を離れ、ほむらのアパートに寄った。


『ライブ見たよ、上手くやれてたじゃないか

 これからも続けていくのなら頑張れよ

 きっかけは誘われたからだとしても、そこはあんたが自分でみつけた居場所だ

 大切にするんだぞ』


 これ以上はあたしは関わるべきじゃない……

 だから、未練がましいけれど最後にこれだけ手紙に書いてポストに入れた。

 ……これでもう、終わりにしよう。



 ほむらのアパートを眺めて、そして、背を向けてそこから立ち去った。


杏子(……これ以上付きまとったって気持ち悪いだけだ。これでまた怖がらせちまったら悪いが)

杏子(もう終わりにするからこれくらいは許してくれ)

杏子(そういえばここってまどかの家の近くなんだよな) 

杏子(……まだ学校が終わるまで時間があるな)


 そういやまだ回収してもらってない使用済みのグリーフシードがあった。

 人通りのない場所でキュゥべえを呼ぶ。


QB「……――きゅっぷぃ」

QB「そういえば最近マミからの回収頻度が減ったね」

杏子「ああ……あいつは確かにな。グリーフシードよりパトロールが出来てるかばっかり重視してるから」

杏子「最近はあたしが代わりにやってるって面もあるしな」



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・鳥かご[24/100]・針[100/100]
・芸術家[100/100]・お菓子[100/100]
・忘却[125/125]・銀[100/100]
・玩具[100/100]・落書き[100/100]
・星[100/100]・暗闇[100/100]
・犬[85/100]・人形師[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]



1自由安価
2さっさと帰らせる

 下2レス


杏子「そういえばお前最近マミのとこに顔をださなくなったな」

QB「最近は君がいるじゃないか。君はどうやら僕のことをあまり良く思っていないようだし」

 ……心外とでもいうように言うのでイラッとくる。

杏子「なんで嫌われてるか、ちったぁ胸に手ェ当ててよく考えてみろよ」

QB「胸に手を当てる体勢は僕には少し難しいよ」

杏子「……まさかどこかの候補者の家に住み着いたりしてんじゃねーだろうな?」

杏子「お前はグリーフシードの回収くらいしか役に立たないんだ、候補者相手だと唯の無駄飯喰らいだぞ」

QB「住みつくほど注目すべき素質の娘は見つかってないけど、勧誘中の娘に食べ物をもらうことはたまにあるね」

QB「それはそれで無駄ではないよ。だって、仲良くなっておけば契約がとりやすくなるかもしれないじゃないか」

杏子「もし契約したら、そいつらも後で無駄だったと思うだろうけどな」

杏子「あ。あたしは別にいいんだ。マミの師匠だから師匠特権ってやつだな」

杏子「それにほら、最近自宅警備員ってのが流行ってるんだろ?マミの留守中家を守ってるから良いんだよ」

QB「それは世間的にはニートの通称だけどね」


 キュゥべえとそんなことを話していると、そろそろ良い時間になる。

 キュゥべえとまどかは会わしたくない。


杏子「ほら、あっち行った。あたしも暇じゃないんだ。エイミー、行くぞ」

エイミー「にゃ」

QB「君はこの時間は割と暇してるんじゃないかと思ったんだけどね」

杏子「うるせー」


 キュゥべえを放ってまどかの家のほうに歩きはじめた。

-----------------
ここまで
次回は1日(水)20時くらいからの予定です


 現在時刻は16時頃。

 携帯といえば連絡手段と思っていたが、時計代わりになるのもまた便利だ。

 それまでは街角にある時計でしか時間を見ていなかった。まあ、時間を気にすることもあまりなかったんだけど。


まどか『杏子ちゃん、いらっしゃい! ちょっと待っててね』

 インターホンを押すとすぐにまどかの声が聞こえた。

 それから数秒後、玄関からまどかが出てくる。

まどか「こんにちは!どうぞあがって」

杏子「おう、こんにちは。お邪魔するぞ」

まどか「パパ、たっくん!杏子ちゃん来たよ!」

タツヤ「キョーコ、こんにちはー!」

杏子「ああ、こんにちは」

「いらっしゃい。この前はありがとうね。まさかまどかの友達だったとは」

「その猫はペットなのかい? ずいぶん懐いてるんだね」

エイミー「にゃ」

杏子「自慢のペットだよ」

「かわいいね」

タツヤ「ねこかぁいい~!」

まどか「じゃあそろそろお部屋に行くね。杏子ちゃん、わたしの部屋はこっちだよ」


 まどかの後ろをついていく。……その後ろをエイミーも鈴の音を響かせながらついてきている。

 ――まどかの部屋はやはりイメージ通りの可愛らしい感じの部屋だった。ぬいぐるみがたくさん置いてある。


話題
1自由安価
2こういうぬいぐるみが好きなのか
3部屋に置いてある演歌のCDについて
4今日のライブについて
5あれからキュゥべえは来てないか

 下2レス

------------------------
あれ?今日じゃないっけ
休みがちょっと不規則だったから感覚がズレてた
臨時ですが少しだけやります!


杏子(……なんか、キュゥべえに似てるな)


 ……何も注意してなかったら危なかったかもしれないなあ、と思いつつ話題を振ってみる。


杏子「こういうぬいぐるみが好きなのか」

まどか「うんっ。可愛いでしょ?杏子ちゃんはこういうの、どう?」

杏子「ユーフォ―キャッチャーとかではよく見るが、それよりお菓子のほうがいいな」

杏子「取っておくスペースもないしな」

杏子「……そういやマミにぬいぐるみを取ってやったことはあったな」

まどか「そうなんだ!やっぱそういうの得意なんだね」

杏子「その頃はゲーセンもあんまり慣れてなかったけどな」

まどか「これとかね、自分で作ったのもあるんだよ」

杏子「へー、裁縫も出来るのか。上手くできてるじゃん」

まどか「一応かなぁ、部活でやってるけど掛け持ちだしあんまり出てないよ」

まどか「それも、部の人に教えてもらいながらなんとかって感じだよ」


 ……というか、部活してたのか。

 自分でもあまり出てないとは言ってたが、確かにあんまり行ってるイメージはなかった。


 ……――と話していると、部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 まどかのお父さんがお盆を持ってやってきた。


「飲み物とお菓子持ってきたよ」


杏子「ああ、ありがとう。わざわざ悪いね」

まどか「ありがとう、パパ」

「うん、それじゃゆっくりしてね」

杏子「はーい」



話題
1自由安価
2…キュゥべえも似たような外見だが見た目で騙されるなよ?
3部活は行かなくていいのか?
4部屋に置いてある演歌のCDについて
5今日のライブについて
6あれからキュゥべえは来てないか

 下2レス

--------------------
臨時投下はここまでにしておきます
次回は予定通り1日(水)20時くらいからです


杏子「じゃあ、いただくぞ」

まどか「うん」


 皿に入ったクッキーをつまみ、オレンジジュースを一口飲む。

 まどかは一旦立ち上がってさっき見せてくれた自作のぬいぐるみを棚の上に戻しにいった。


杏子(……ぬいぐるみかー、まあまどからしい可愛い趣味だよな)

杏子(そういやあのレビューの奴もぬいぐるみをユーザアイコンにまでしてたしな)

 ……そんなことを思いながらなんとなく部屋を見回す。

 すると今度は、パステルカラーでまとめられたそのふんわりとした雰囲気に似合わぬものを発見する。

 コンポの横に見えたCD……そのジャケットには着物を着た凛々しいおっさんの写真と筆で書かれたような字。

 タイトルはもろに演歌らしい。

杏子(演歌?こりゃまたしぶいな。……それとも親のか?)


杏子「まどか、そのCDは?」

まどか「CD? ああ、これ気になる?」

杏子「まあ気になるっちゃ気になるが」

まどか「流してみようか?」


 ……昔ながらの演歌独特の情緒溢れるメロディが聞こえてくる。

 あたしも聞き覚えがある気がするのは、昔親が口ずさんでいたからだろうか。


杏子「……へえー、演歌とか好きなのか」

まどか「うん。最初はママがよくカラオケで歌ってたから聴くようになったんだけど、これがまた深いんだよ!」


 可愛らしい趣味ばかりかと思えば、これはまたギャップがある。

 まどかは曲に合わせて鼻歌を歌っている。


 こぶしの効いた力強い演歌をBGMにぽつぽつとお菓子を食いながら雑談する。


杏子「そういや今日のライブってまどかも見てた?」

まどか「うん、屋上から見てたよ。いつもお昼はみんなで一緒に食べてるんだ」

まどか「ラップすごかったね。暁美さんがあんなにいっぱい喋ってるの初めて見たかも」

杏子「ああ、確かにそーだな」


 学校でもやっぱそうだったのか。

 そんなことを考えながら皿の中からチョコレートを取る。

 大皿の中に載ったお菓子ももうそろそろ少なくなってきていた。


杏子「そーいやさ、この前テレビで『魔女っ娘VS伽椰子』とかいう映画やってたんだけど」

まどか「魔女っ娘?子供向けの戦闘物なのか、それともホラーなのかよくわかんないタイトルだね……」

杏子「まあ一応ホラーなんじゃねえの。もろB級って感じだったけどラスト付近の演出はそこそこ緊迫感あったよ」

杏子「子供向けじゃないだろうけどな。コスプレした美少女アイドルがメインだったから、そういうのの好きな層がターゲットじゃないか」

杏子「巻き髪の奴がいたからみんなでマミって言ってからかってた」

まどか「へえ……でもVSってことは戦うの?幽霊さんと?」

杏子「CG満載だけどな。あたしから言わせりゃそりゃチャチいよ」

まどか「さすがに実際に戦ってる人が言うと違うね……」

杏子「録画してないから見せられないが、気になるならもし暇があったらどっかで借りて来たらどうだ?」

まどか「もとの映画がよくわかんないからちょっと……うーん、でも元の映画よりは怖くないかなぁ、それ」

杏子「ホラー苦手か」

まどか「うん……そういうのはちょっとね」

杏子「まあ『魔女っ娘』は怖さは半減してるよ。そういうの苦手なら無理には勧めないけど」


エイミー「にゃ…………」


 エイミーがあくびをして丸まった。

 演歌のCDが再生し終わり、曲のリズムに合わせて揺れていたしっぽの動きが止まる。


まどか「あ、この曲でラストか…… 杏子ちゃんはいつ頃までいる予定? そろそろ暗くなってきたけど」

まどか「夕飯も食べてく?」

杏子「いいのか?」

まどか「うん、この前はマミさんちでごちそうになったし。パパに言ってこようか?」


 ……そういや最近はマミの家で誰かを呼んで夕飯を食べることはあったが、

 誰かの家で食べるのってなかったな。


1お言葉に甘えて
2いや、今日は帰るよ

 下2レス


杏子「じゃあお言葉に甘えるとしようか」

まどか「パパに言ってくるね」

杏子「ああ。あたしもマミに連絡しないとな」


 まどかが下に行っている間に携帯を取り出してマミに連絡しておく。

 ……ちょうどメールを送り終えたくらいでまどかが戻ってきた。


まどか「オッケーだって!」

まどか「今日は唐揚げとポテトサラダって言ってたけど、大丈夫?」

杏子「あたしは食えるもんならなんでも大丈夫だけど、むしろ大好物だよ。今から楽しみだ」

まどか「よかった!」

杏子「あと、猫にあげられそうなものってあるか?」

まどか「何か探してみるって言ってたよ」

杏子「意外となんでも食うぞ、あいつも。玉ねぎとか食えないもの以外はな」

まどか「あはは、そうなんだ」



話題
1自由安価
2CDの感想について
3あれからキュゥべえは来てないか

 下2レス


杏子「図々しいお願いだがお土産も頼む」

杏子「マミに何か持って帰ってやりたいんだ、頼めるか?」

まどか「何かお菓子とかでいいかな? 何かあったかな……」

まどか「探してみるよ。マミさんにはいつもお世話になってるし」

杏子「ああ、ありがとうな」



話題
1自由安価
2CDの感想について
3あれからキュゥべえは来てないか
4学校でマミはどんな感じ?

 下2レス


杏子「そういやあれからキュゥべえは来てないか?」

まどか「そういえばこの間一回見たよ」

杏子「マジかよ、なんか変なこと言われてないか?」

まどか「うん、調子はどうかって聞いてきたくらいかな」

まどか「たいした話はしてない……っていうか、さすがに杏子ちゃんの話を聞いたら普通には話せなくなるよ」

杏子「そうだよな。まあ、あいつが来たら適当に無視しといてくれ。取り合ったっていいことないからな」


 まどかと話していると、部屋の扉が開いた。


「二人とも、ご飯できたよ。降りておいで」

まどか「はーい!いこっか」

杏子「ほら、エイミーも起きて……」

エイミー「にゃっ」

杏子「って、言うまでもなく起きたな」

「猫用のご飯も用意してあるよ」

杏子「それはありがたいな。よかったな、エイミー」

エイミー「にゃん」


 まどかに連れられ、リビングのほうへと向かう。

 テーブルの上にご馳走が並んでいる。マミの家で見るのにも引けを取らないうまそうな飯だ。

 タツヤももう着席している。


 エイミーはテーブルの横で食っている。

杏子「お母さんはまだ帰ってないのか」

「ああ、今日は遅くなるって連絡があってね」

まどか「また残業かな。飲んでるのかな」

タツヤ「みんな、たべよー!」

「うん、食べようか。いただきます」

まどか「いただきまーす!」

杏子「いただきます……おっ、これめっちゃうまい!」


 ……キャリアウーマンってやつなんだろうか。なんだか大変そうだ。

 とりあえずみんなでテーブルについて、先に食べることにする。


「そう言ってもらえてよかったよ」

まどか「わたしもパパの作る唐揚げが一番好きかも」

「はは、嬉しいことを言うなぁ」

杏子「いつも弁当もうまいんだろうな。そういやマミと一緒に食ってるんだよな。おかずの交換とかしたりすんの?」

まどか「うん、たまに。マミさんの弁当もおいしいんだよね。すっごくオシャレだし」


 ……毎朝早起きして作っているんだろう。

 あたしが起きてくる時にはもう鞄に入れた後だから、見たことはなかった。


杏子「学校でのマミってどんな感じ?」

まどか「マミさんは面倒見が良いお姉さんって感じだよ。勉強でわからないところも教えてくれるし」

杏子「へー」


杏子(……先輩のマミか)


 あたしのほうが魔法少女としては先輩だが、そういうのもなんとなくわかる気がする。

 年上らしく、どこかお姉ちゃんのような頼れる一面もあった。

 “お姉ちゃん”――その響きに思い出す。確かにそんなことを思った時があったっけ。


 今はそれともまた違う関係になった気がするが、あの時思った“家族のような存在”っていうのは変わっていない。


「最近よく話してくれる先輩か。いいね、学年が違っても仲良くするのは良いことだね」

まどか「うん。あ、ところで杏子ちゃんはそのマミさんと一緒に暮らしててね」

まどか「日頃のお礼にお土産持っていってあげたいんだけど、何かいいお菓子とかってあったかな」

「お土産か。じゃあ何かお菓子を詰めてラッピングしておくよ」

杏子「ありがとう、マミもきっと喜ぶよ」


 ……と、わいわい話しながら食べていると、インターホンが鳴る音がした。

まどか「あっ、ママだ」

 まどかが席を立って玄関のほうに歩いていく。


「まどかぁ~」

まどか「わー!ママふらふらだよ!大丈夫?」

「ムリ、ちょっと肩貸して~」

まどか「あ、靴脱いで……うわぁお酒臭い」


 ……そんな声が玄関のほうから聞こえてくる。


杏子「……なんか、お母さん大変みたいだね」

「あはは……たまにこういうことがあってね……」


 OLらしい格好の女性がまどかの肩につかまって歩いている。


「あーあのハゲまじでうざいし……いきなり期限短くすんなよ……こちとらなぁ……」

まどか「ママ! お友達きてるから!」

「お友達?」

 まどかのママが顔を上げる。……目が合った。

「……………あ、ども……」

杏子「……ど、どうも」


「大変だったね。今日もお疲れ様」


 途中でお父さんが代わりに宥めに行った。

 少しか見ていないが、この二人だから上手くやれてるんだなぁというのが伝わってくるようだった。


 まどかは再び席について夕飯の続きを食べはじめた。


まどか「なんかごめんね、見苦しいとこ見せちゃって……」

杏子「いや……それより大丈夫なのか?あれ」

まどか「うーん……多分。いつも次の朝には元気になってるし」

まどか「ああやって発散してるんだと思うよ」

杏子「そういうもんなのか」


 夕食を食い終えると、まどかのお父さんがお土産の袋を持たせてくれた。


「最後バタバタしちゃってごめんね。これ、マミさんへのお土産」

杏子「今日は色々とありがとう。あと、お酒はほどほどにしといたほうがいいって伝えといてください」

杏子「もし身体壊したりしたらみんな悲しむと思うんで」

「うん、そうだね……言っておくよ」

まどか「杏子ちゃん、エイミー、またね。気を付けてね」


 帰る前に何か
1自由安価
2さようなら

 下2レス


杏子「今日はありがとな。久しぶりに『家族の食事』ってのを実感できたよ」

杏子「また機会があったら、その時はマミも呼んでいいかな?」

まどか「うん!ぜひ!」

杏子「じゃ、また今度な」

エイミー「にゃっ」


 手を振って別れる。

 すっかり暗くなった空。風見野と比べると星はあまり見えないが、のどかな住宅地から見える夜空は澄んでいた。

 ……マミの家に帰ろう。本当の家族とは違うけど、あそこは今のあたしの居場所だ。

―マミの家


マミ「佐倉さん、おかえり」

杏子「ただいま。マミにもお土産があるぞ」

マミ「お土産?」

 マミに袋を渡す。

マミ「まあ! 私までいただいちゃっていいのかしら」

杏子「日頃の感謝だってさ。素直に受け取っておけば?」

マミ「明日鹿目さんにお礼言いましょう」

杏子「そっちは風呂から上がったところか」

マミ「ええ、佐倉さんも入ってきて」

杏子「おう。今日はいっぱい外に居たから、エイミーも身体洗うか」

エイミー「にゃ?」


 エイミーを抱き上げて風呂場に向かった。

 ……シャワーも少しは慣れてきただろうか。

 自分の身体を洗い終わると、黒いもふもふの毛を撫でてわしわしと洗ってやった。


 風呂から出て自分の髪とエイミーを乾かす。

 今日はマミはまだ起きていた。


杏子「まだ寝ないの?」

マミ「明日からまた休日がはじまるからね」

杏子「あー、そういや今日は金曜か……」


 今日、と言うには微妙な時間。

 ちょうど一日が変わったくらいの時間だ。


杏子「あたしももう歯磨いたら寝るぞ?」

杏子「マミも休みだからってあんまり夜更かしするなよ」

杏子「明日が短くなるからな」

マミ「それもそうね」


 寝る前/明日の予定
1自由安価
2翌日へ

 下2レス


杏子「今度はマミも一緒でいいみたいだぜ?」

杏子「まどかも『ぜひ!』って行ってたし次は一緒に行ってみないか?」

マミ「そうね、そういうのって久しぶりだし楽しそうだわ」

マミ「鹿目さんち、どんな感じだった?」

杏子「そうそう、まどかの親父さんの料理、専業主夫やってるだけあってかかなりのものだったぜ」

マミ「確かに鹿目さんのお弁当っていつも美味しそうだものね」

マミ「お母さんのほうは?」

杏子「おふくろさんの方は……うん、酔っ払ってたな」

マミ「あら……大変ね」

杏子「キャリアウーマンってのは苦労と心労が貯まりそうだな……」

杏子「……うしっ、乾いたな。ほら、エイミーもそこで寝るなよ。どうせだから一緒に寝ようぜ」

エイミー「にゃ……」


 エイミーの毛を乾かし終わり、寝る準備をする。

 ……明日から休日、か。今週の土日は何をして過ごそうか。



――――――そんなことを考えていた時は、これから起こることなんて想像もつかなかった。



―32日目終了―



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・鳥かご[24/100]・針[100/100]
・芸術家[100/100]・お菓子[100/100]
・忘却[125/125]・銀[100/100]
・玩具[100/100]・落書き[100/100]
・星[100/100]・暗闇[100/100]
・犬[85/100]・人形師[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]

--------------------
ここまで ワル夜戦も間近に迫りましたが、構想は大体できています
次回は4日(土)18時くらいからの予定です

―翌朝


エイミー「にゃ」

 顔にぺしぺしと当たるもふもふとした感触。

 顔にのっかる重さ……

 ……またエイミーが顔の上に載っているようだ。

杏子「んー? 朝か……」

 布団から出てエイミーを抱き上げてリビングに向かう。

 ちょうどマミがテーブルに朝食を並べていた。

マミ「おはよう」

杏子「はよー。おっ、飯できてるみたいだな」

マミ「ええ、ちょうどね」


 テーブルにつく。

 いつもよりも少し遅い時間。休日の朝はのんびりとした雰囲気で良いもんだ。


 食事中の話題/午前・これからの予定/その他
1自由安価
2パトロール(見滝原)
3パトロール(風見野)
4格闘訓練
5模擬戦
6マミに決めてもらう

 下2レス


杏子「最近色々とあって訓練してなかったから、この後は訓練にするか」

マミ「ええ、今日は何をするの?」

杏子「模擬戦だ。昔と違ってマミももうベテランだしな、基礎よりそっちを重視しよう」

杏子「食い終わったら準備するぞ」


―土手


 朝食を終えて着替えると、マミと二人でいつもの土手に向かった。

 少しストレッチでもして身体をほぐして、それから模擬戦に入る。


 ……マミと向かい合う。

 間合いは中距離。武器のリーチはマミの方が長いが、あたしの脚力で踏み込めばその差もほとんど関係ない。



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・鳥かご[24/100]・針[100/100]
・芸術家[100/100]・お菓子[100/100]
・忘却[125/125]・銀[100/100]
・玩具[100/100]・落書き[100/100]
・星[100/100]・暗闇[100/100]
・犬[85/100]・人形師[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]



相手:マミ

1突く:近接武器戦闘(魔力-0)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
6鉄砕鞭/鎖拘束(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける/多節棍で縛り付けて拘束
7断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
8縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
9幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
10ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
11マミの出方を見る

 下1レス


 ――マミは近接メインのオールラウンダー……その攻撃方法は多彩だ。

 まずは責めに行くよりマミがどう出てくるかを見るとしようか。


杏子(このままこっちに踏み込んでくるみたいだな……まずは近距離で責める気か)


 近距離まで接近すると、マミはらせん状の鋭いリボンの束を腕に巻きつけて振りかぶろうとする。


杏子(なおさらあたしが負けられないなッ!)


 ドリルを槍の柄で受け止めて力を流し、こちらも応戦する。


マミ「くっ……やっぱり強いわね」

杏子「そりゃな。でもこういう単純な勝負も悪くないって思うよ」


 マミは少しずつ後退していっている。

 単純な格闘術で敵わないことはマミもわかっているだろう。

 なら、それだけで終わらせるはずがない――


杏子「!」


 足元からリボンが展開される。

 いつのまにかリボン拘束の地雷を撒いて囲んでいたようだ。


杏子「なるほどな、いつもよりちょっと攻撃の手がぬるいとは思ってたんだ」

マミ「一回では引っ掛からなくても、これだけあれば動きは制限できるでしょ……!?」


杏子(……たしかに足元と目の前で同時に攻撃が来たのはちょっとひやっとしたかもな)


 そこで出来た隙にマミがリボンを伸ばして遠距離に退避する。

 そして、腕に巻きつかせていたリボンを射出しようとする。


マミ「トッカ・スピラーレ・フレッチャ」


 ……飛んできたリボンの矢を弾く。

 周りには拘束のトラップ。マミはまた遠距離から狙ってくるだろう。

 さあ、ここからどうしようか?



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・鳥かご[24/100]・針[100/100]
・芸術家[100/100]・お菓子[100/100]
・忘却[125/125]・銀[100/100]
・玩具[100/100]・落書き[100/100]
・星[100/100]・暗闇[100/100]
・犬[85/100]・人形師[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]



相手:マミ


1地雷原を避けながらマミに接近する
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
5鉄砕鞭/鎖拘束(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける/多節棍で縛り付けて拘束
6断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
7縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
8幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
9ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで

 下1レス


 普通の槍では攻撃をさばききれない。

 多節棍で攻撃をさばきつつ接近するしかないか――

 そう思って武器を変形させて走り出そうとすると、マミは大砲を出してきた。


マミ「ティロ――フィナーレ!」


杏子(!)


 大砲から放たれる大きな魔力エネルギー―――の代わりに風圧と紙ふぶき。

 ……なるほど、それはこの武器じゃ弾けない。


マミ「もしかして、これで勝ちでいいのかしら!?」

杏子「そーゆーことにしてやるよ。マミ、成長したな。ちゃんと新しい技も上手く組み込めてるじゃんか」


 変身を解き、頭にかかった紙ふぶきを手で払い落す。


杏子「未熟でもマミは考えて戦える奴だったからな」

杏子「もう技術も追いついてきたし、もっと磨けばもっと強くなるよ」

マミ「それは嬉しいわ!」

杏子「……けど、もっと上手くやればもっと早く決着をつけることもできたろうな」

杏子「どうせだからちょっと格闘のほうもじっくりと見てやるよ」

マミ「えー、勝ったのに……」

杏子「嫌なのかー?嫌ってことはないよな?」

マミ「それはありがたいけどね……じゃあ、よろしくおねがいします」

―マミの家


 模擬戦の後もう少し特訓してやってから家に戻る。

 動いた後は飯の時間だ。

 
杏子「あー、はらへったー」

マミ「お昼用意してくるわね」


 マミがパスタを茹でにいった。

 その間にさっきから足元について催促してくるエイミーに飯をやるとするか。



 昼食前の行動/食事中の話題/午後・これからの予定/その他
1自由安価
2メール(まどか・さやか・仁美)
3とりあえずマミが何やるか見るか

 下2レス

3


 ……キッチンから鼻歌が聞こえる。マミは機嫌が良さそうだ。


杏子(昼飯はパスタとして、夕飯は肉が食いたい気分だな……後で言ってみるか)

杏子(久しぶりにカツ丼とかいいな)

杏子(でも出前とかって高いよな……居候の身であんまり図々しいことも言えないし)

杏子(マミ、そういうのも作れるだろうか)


 もうすぐ正午だ。

 テレビをつけてみる。久しぶりにニュースでも見よう。


マミ「出来たわよ。今日はアラビアータ!」

杏子「辛いのか?」

マミ「加減してあるわ。佐倉さんは辛いのは苦手だったでしょ?」

杏子「おお、それはありがたい」


 テーブルについて食い始める。

 ニュースを見ながら今日の予定を話すことにした。


杏子「今日はこれからどうするかって決めてるか?」

マミ「試験の勉強と……できれば今日もパトロールには行きたいけど」

マミ「佐倉さんは何か考えてるの?」

杏子「そうだな……」


1パトロールには一緒に行くよ
2パトロールはあたしがやるから勉強に集中しとけ
3ならあたしは風見野にパトロールに行くとするか
4自由安価

 下2レス


杏子「パトロールはあたしがやるから勉強に集中しとけ」

杏子「学校の成績は落としたくないんだろ」

マミ「それはそうだけど……いいの?」

杏子「むしろあたしの仕事はそれしかないからな。マミは本当なら魔法少女なんかより学業のほうを優先すべきなんだ」

マミ「じゃあ今日はお言葉に甘えさせてもらうわね」


 昼食を終えると、マミはテレビを消して部屋に向かった。

 ……さて、勉強の邪魔をしては悪い。あたしも始めるとしようか。



 行く場所
1公園
2通学路
3駅
4病院
5繁華街
6歩道橋
7土手
8鉄塔
9廃工場
10立体駐車場

 下1レス + コンマ判定1ケタ0で出現確定

―廃工場


 マンションを出ると、工業地帯の寂れたほうに歩いていった。


杏子(こういう倉庫とかって、なんかヤバそうな気配はするけどなー)



下1レスコンマ判定
 0~20 使い魔
 21~40 魔女


杏子(……もしヤバいことが起きてたとしても、魔女絡みじゃないならほっとくしかないけどな)


 ……魔力は感じない。

 次の場所に向かうことにした。


 行く場所
1公園
2通学路
3駅
4病院
5繁華街
6歩道橋
7土手
8鉄塔
・廃工場[現在地]
9立体駐車場

 下1レス + コンマ判定1ケタ0で出現確定

―歩道橋



 駅周辺に向けて車の通りが増える歩道橋のほうに歩いていく。

 歩道橋の下から車の通る音がうるさく聞こえている。



下1レスコンマ判定
 0~20 使い魔
 21~40 魔女


 魔女の魔力がある。

杏子(……どこだ?)

 ……歩道橋の上を見て、下を見て、魔力の源をたどっていく。

 下の道路の脇に結界があった。



―穴掘りの魔女結界


 標識と見覚えのある道路工事中の看板がひらすら並ぶ結界。

 何の役割なのかよくわからない信号機が明滅している。


杏子(知らんで迷い込んだ一般人はさぞ混乱するだろうな。実際工事なんてしてなかったのに)

杏子(現実世界にまでいらんことやらかす前にさっさと片づけとくか)


 ぴかぴかと光る棒を振り回してくる使い魔を蹴散らして奥に進むと、最深部が見えてくる。

 ……穴がどっさりと掘られた足場の悪そうな場所だ。

 ショベルで穴を掘っていた魔女と使い魔がこちらを見る。


杏子 魔力[95/100] 状態:正常
GS:17個
・鳥かご[24/100]・針[100/100]
・芸術家[100/100]・お菓子[100/100]
・忘却[125/125]・銀[100/100]
・玩具[100/100]・落書き[100/100]
・星[100/100]・暗闇[100/100]
・犬[85/100]・人形師[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:Yumbo <-攻撃対象メインデフォルト
  作業員×5
  誘導員×3

1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで

 下1レス


 こういう足場の悪い場所はあたしみたいに格闘で戦うタイプにとっちゃ不利だ。

 それなら、まずはここから攻撃してみるとしようか――!




 コンマ判定 有効度
0~99
※1ケタ0でクリティカル


 放った槍が魔女の巨体に突き刺さる。

 気にしていない様子でどしどしと歩いてシャベルを振り回してくる。


杏子(避けたはいいが、地面に大穴があいたな)


 新しい槍を手中に生成し、ひとまず後ろに回り込む。


杏子 魔力[80/100] 状態:正常
GS:17個
・鳥かご[24/100]・針[100/100]
・芸術家[100/100]・お菓子[100/100]
・忘却[125/125]・銀[100/100]
・玩具[100/100]・落書き[100/100]
・星[100/100]・暗闇[100/100]
・犬[85/100]・人形師[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:Yumbo <-攻撃対象メインデフォルト
  作業員×5
  誘導員×3

1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで

 下1レス

もういっちょ4


 さっきの槍はまだ刺さったままだ。

 今度は背中目掛けてもう一発振りかぶる――!


 コンマ判定 有効度
0~99
※65以上で撃破
※1ケタ0でクリティカル


杏子(二本目……!)

 魔力を込めて投げた槍が魔女の背中に刺さる。

 ……魔女が前のめりに倒れる。その上に飛び乗ると、グリーフシードを残して結界ごと消えた。


杏子「なんとか倒せたか」


 車通りの多い道路の脇、けたたましいクラクションの音が聞こえる。

 魔女は倒しても車に轢かれて死んだらかなわない。こんな場所はさっさと退散することにしよう。


★浄化しました


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・鳥かご[0/100]・針[89/100]
・芸術家[100/100]・お菓子[100/100]
・忘却[125/125]・銀[100/100]
・玩具[100/100]・落書き[100/100]
・星[100/100]・暗闇[100/100]
・犬[85/100]・人形師[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]・穴掘り[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]



 行く場所
1公園
2通学路
3駅
4病院
5繁華街
・歩道橋[現在地]
6土手
7鉄塔
8立体駐車場

 下1レス + コンマ判定1ケタ0で出現確定

―公園



 そろそろ日が傾いてくる頃だろうか。

 公園につくと、今日もまだ元気に子供たちの遊ぶ姿があった。



下1レスコンマ判定
 0~20 使い魔
 21~40 魔女
 5の倍数 遭遇判定

---------------------------
ここまで
次回は5日(日)18時くらいからの予定です


 ……魔女の気配はない。

 そういや午後は雨降るってニュースとか言ってたな。そこそこ回れたし、もう帰るか。


―マミの家


 あたしが出て行った時からリビングに明かりはついていないままだった。

 部屋を見てみると、マミが机に向かっていた。


杏子「マミ、どうだ? 捗ってるか?」

マミ「ええ、なんとか」

 ……マミの膝の上にエイミーが乗っている。

エイミー「にゃ」

杏子「エイミー、邪魔しちゃダメだぞ」

マミ「こうしてるとあったかいわよ。ノートの上に乗ったりするのはちょっと困ったけど……」

杏子「まあ、構ってほしかったんだろうな…… エイミー、あたしと遊ぶか?」

エイミー「にゃっ!」

 エイミーが返事をするように鳴いてマミの膝から降りる。

 エイミーを抱き上げてリビングへと向かった。


杏子「土手行った時にねこじゃらしでも一本くらいとってくりゃよかったかね」

エイミー「にゃー」


 前に遊んだ時に使った紐やレーザーポインターを使ってみる。

 意外と振り方にもコツがあるのだ。

 本気で相手をするとこれでも結構疲れる。


杏子「……雨、降ってきてるな」


 窓の外を見てみる。

 もうざあざあと降りはじめていた。これが夜まで止まないらしい。

 明日以降の天気はどうだったか……


杏子「もっかいテレビでもつけてみるか」


 テレビをつけると、ドラマの再放送をやっていた。

 休日はそういうのが多いが、この時間ならニュースくらいやっているだろう。

 ニュースにチャンネルをまわして眺める。


杏子「……明日は晴れるみたいだな」

 ニュースは昼にも見たようなものが多い。

 暫くすると、グルメのコーナーになってしまった。

 ……腹が減る。食うのは好きだが、見ているだけじゃ腹は膨れない。テレビを消した。

 エイミーは遊びが終わるとソファで眠ってしまった。

杏子「あたしも一眠りでもするか……」

杏子「いや、その前に今のうちにマミに夕飯をリクエストしておこう」


 ……再び部屋を覗くと、マミは机に突っ伏して寝ていた。

 机の上にはどっさりと本が置いてある。


杏子「マミも寝てんのか」

杏子「ていうかこのノート、よく見たら二年って……」


 そういえばまどかたちに勉強教えてるって言ってたな。

 そのために二年のまで引っ張り出して見ているんだろう。

 相変わらず真面目というか……


マミ「……ん~っ、あれ? 佐倉さん、どうしたの?」

杏子「夕飯のリクエスト。あと、様子を見に来た」

杏子「二年のまで勉強してるのか。それ、まどかたちに教えるためだろ?」

マミ「ええ、自分の勉強が一通り済んだから」

杏子「そこまでしなくてもって思うけどなぁ……」

マミ「頼りにしてくれるのが嬉しいから、ちょっと張り切っちゃってるのよ」

マミ「部活もしてないからこういうのって初めてだし」

マミ「だから、出来るだけ完璧にしておきたいなって」

マミ「それで、夕飯は何が食べたい?」

杏子「肉が食いたい気分。カツ丼とかって作れるか?」

マミ「カツ丼かぁ……作れないことはないと思うわよ。レシピ探してみるわね」


 夕食前/食事中の話題/その他
1自由安価
2メール(まどか・さやか・仁美)
3一眠りしにいこう

 下2レス


 リビングに戻ってソファに腰掛ける。

 隣ではエイミーが丸まってすやすやと寝ている。


 ……ごろんとしながら携帯を手に取る。


 上条も今頃は向こうの病院に着いて新しい暮らしを始めたことだろう。

 何か連絡がきてないかさやかに聞いてみようか。


杏子(送信……と)


 メールを打ち終わると夕飯まで一眠りすることにした。

 ……――暫くして、着信の音で目を覚ます。さやかからの返信だ。


杏子(上条からはまだなにも来てない……か)

杏子(手術の前にまだ検査とかで忙しいのかね)


 携帯を見ていると、ちょうどマミがテーブルに料理を運んできた。


杏子「おお!できたのか!」

マミ「ええ、このレシピで作ってみたの」

 テーブルの端にノートパソコンが開いてある。

杏子「おお? 本当だ。こうやって本がなくても見られるのは便利なもんだな」

マミ「でしょう?」

マミ「さて、テーブルの上も片づけて…… 食べましょうか」


 食事時の話題/その他
1自由安価
2マミはなんでも作れるな
3疲れてんなら後で肩でも揉もうか?
4明日は晴れるってさ

 下2レス


杏子「ほんとマミは何でも作れるな」

マミ「ああやってレシピを公開してくれる人がいるからよ」

マミ「まあ私も、そういうのにあこがれて載せたりとかもしてるんだけどね」

杏子「へえ、やっぱすげーじゃん」

 褒めると、マミは少し気恥ずかしそうにしている。

杏子「リクエストにもこたえてくれて、こんなうまいのを作ってくれたんだから大満足だよ」

杏子「前にも言ったけど将来はそっち系を目指してもいいんじゃないのか?」

マミ「そうねえ……まだ将来のことを決めてるわけじゃないけど、それも考えてみるわ」

マミ「確かに料理は楽しいし、趣味を活かせるならそれに越したことはないものね」


 ……飯を食い終わった後もまだ雨の降る音がしている。

 あれから雨脚が強まったようだ。


杏子「ふう、うまかった!」

マミ「雨、朝には止むのかしら?」

杏子「一応、明日からは晴れるって言ってたぞ。晴れたらまた訓練でもするか?」

マミ「そうね。午前中に身体を動かして、午後からはまた勉強に当てようかしら」


 明日も休日だ。

 食後、ゆったりとテーブルを片づけて寝る準備に入る。


 寝る前
1自由安価
2翌日へ

 下2レス


 寝る準備をして部屋に移動して布団を敷く。

マミ「そういえば今日のパトロールはどうだった?」

杏子「魔女が一匹いたな。ああ、そういえば使用済みが一つできたんだった」

 寝る前にキュゥべえにグリーフシードの処理でもさせようか。

杏子「キュゥべえー……あー、いや、外雨降ってるし今呼んで濡れたままでこっちこられても困るな……」

マミ「それもそうね……」

QB「なんだい?」

杏子「うわっ!いきなり現れるなよ」

QB「僕を呼んだよね?」

杏子「……濡れてないな」

QB「壁抜けの応用だよ」

QB「それで、グリーフシードの回収だろう?」

マミ「ああ、私も昨日使い切った分があったんだったわ」


 二人で一つずつ使用済みをキュゥべえに投げ渡した。



―33日目終了―



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・針[89/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]・砂[100/100]
・穴掘り[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


・仲間

マミ
[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]

―翌朝



マミ「佐倉さん、起きて」

杏子「ん、なんだ? 飯か?」

マミ「朝食を作ろうとしてたんだけど、どうやらそれどころじゃないみたいなの」

杏子「ん……?」

 目をこすってリビングに向かうと、テレビで深刻そうなニュースをやっていた。

 全国放送のニュースに見滝原の様子が映っている。 ……暴風警報だそうだ。避難指示まで出ている。

 窓の外を見てみれば確かに風が強い。

杏子「……マジかよ。あたしらも早く行ったほうがいいか? あとちゃんと戸締りはしとけよ」

マミ「ええ……」

 マミは少し不安そうに返事をする。

 マミの不安の原因はあたしにもわかっていた。

杏子「やっぱりマミも感じてるな? この魔力、風と関係あんのかねえ」

マミ「……だとしたら、相当に厄介ね」

杏子「噂にしか聞いた事がないが」

杏子「結界を持たない魔女、『ワルプルギスの夜』…………ねぇ」

エイミー「にゃあ?」

 こちらを見上げながら鳴く。

 エイミーを抱き上げ、何を持って行ったらいいかを考える。

 ……とりあえずご飯は必要か。

マミ「ひとまず外に出るしかないわね。朝食の代わりに、何かすぐ食べられるものでも持っていきましょう」

杏子「乾パンと水も多めに持っていけよ」


『本日午前7時 突発的異常気象に伴う避難指示が発令されました。
 付近にお住まいの皆様は速やかに最寄の避難場所への移動をお願いします。
 こちらは見滝原市役所広報車です。本日午前7時……』

 避難指示の放送を流しながら車が横を通っていった。

 外に出てみれば、まるで世界の終わりとでもいうような景色だ。

 空はどんよりと分厚い雲に覆われ、宙に瓦礫が舞っている。

 風は更に強くなり、それに比例して辺りを覆う魔力も強くなっているように感じる。


杏子「マジでワルプルギスの夜だとしても魔女の姿が見えねえ。こんなのどうしろって言うんだ?」

マミ「そうね……とりあえず避難所を目指しましょう」

 暴風の中を歩いていく。

 避難所の近くになると、あたしたちと同じようにそこに向かう人の姿を多く見かける。

 その中に知っている姿を見た。

まどか「杏子ちゃん、マミさん!」

 まどかは家族と一緒だった。

 この前家に行った見た母親、それと父親とタツヤが居る。

タツヤ「キョーコ、こんにちは~!」

杏子「ああ、こんにちは」

詢子「友達かい? ……あ~、そういえばこの前うちに来てくれたよね。この前は色々と情けないとこ見せたね」

詢子「二人だけ?ご家族は一緒じゃないの?」

マミ「はい、家族のことは……少し事情がありまして」

知久「君がマミさんか。まどかから話を聞いているよ。確か二人は一緒に住んでるんだったね」

知久「みんなで一緒に居よう。二人だけじゃ心配だ」

杏子「その心遣いは嬉しいが……」

 ……この魔力のことが気がかりだ。

 しかし、今はどうしようもない。候補者でもあるまどかのことは心配だし、傍にいるのが一番か。

杏子「いや、そうだな。そうさせてもらうよ」

まどか「風すごいね……大丈夫かなぁ」

―避難所


タツヤ「きょうはおとまり~? キャンプなの?」

知久「ああそうだよ、今日はみんなで一緒にキャンプだ!」


 シートを敷いて寝床の準備をする。

 こんなことは初めてでまどかも不安そうだった。


まどか「風強くなってるみたいだね……」

杏子「…………」

マミ「…………」


 ……避難所につく頃には更に暴風は勢いを増し、辺りを覆う魔力も強くなっていた。

 外には車やら木の破片やらが宙に舞って浮かんでいる。……ただの暴風で済ませられるものじゃない。


1自由安価
2まどかの傍にいる
3さやかを探しに行く
4仁美を探しに行く
5ほむらを探しに行く

 下2レス

まどかにちょっとさやかを探してくるからエイミーを頼むな、と言ってマミと一緒にこの場を離れる
マミには仁美を探してもらいさやかと会えたあと、ちょっとほむらを探してみる


杏子「ちょっとさやかを探してくるからエイミーを頼むな」

まどか「あ、うん。いってらっしゃい」

杏子「マミ、そっちは仁美を探してくれないか?」

マミ「ええ」

 ホールの中を歩きながらさやかの姿を探す。

 ……さやかも家族で来ていたようだ。

杏子「さやか」

さやか「あっ、杏子!」

さやか「なんかヤバそうだねー、明日も学校休みになったりして」

 さやかは少し冗談めかしたように言っている。

 この魔力を知らないからまだ軽く考えているのだろう。

杏子(……そんだけで済めばいいんだがな)


1自由安価
2ほむらを探しに行く

 下2レス


杏子「向こうにまどか達がいるからよかったら顔を見せにいってくれないか?」

杏子「まどかのやつ、ちょっと不安そうだったしな、顔出せば喜ぶはずだ」

さやか「マジか……まどか、小さいころから雷とか怖がってたしなあ」

さやか「で、まどかはどの辺に居た?」

杏子「あっちのほうだ」

さやか「お母さん、あたしも退屈してたとこだしちょっと行ってくるよ」


 ……さやかはまどかのほうに行った。

 あとは……ほむらがちゃんと避難所に来てるかも確認してみるか。


杏子(あいつ一人暮らしだからな…… どこに居るんだろ)


 辺りを探していると、ホールの隅の方にほむらの姿があった。

 ぽつんと座って俯いている。


1自由安価
2マミと合流

 下2レス


杏子(……ま、あたしが話しかけてもまた怖がられるだけだろうしな)


 もしキュゥべえが来た時、誰かと一緒に居ればまだ異変に気付けるものの、一人では誰にも気づかれない。

 だが、マミやまどかに頼んでも来てはくれないだろう。

 ……大人と一緒なら大丈夫か? けど、なんて説明すれば……


杏子(とりあえず、一旦まどかのところに戻るついでにマミとも合流するか)


 まどかのほうに戻りつつマミの姿を探す。


マミ「佐倉さん、美樹さんとは会えた?」

杏子「ああ、会えたよ。まどかのところに行くって」

杏子「そっちも仁美と会えたか?」

マミ「ええ。少し話してきたわ」

マミ「そろそろ私たちも一旦戻る?」

杏子「あー、そうだな……」


マミ「――――!」

 マミが目を見開いて反応する。

 ……今まで辺りを覆っていた魔力の中に、その比じゃないほど強い魔力の塊のようなものが現れた。

杏子「……外がよく見える場所に移動してみるか」

マミ「……ええ」


 人の集まっているホールの中から離れ、廊下へと移動する。

 ガラス張りの壁から外を見ても、まだここからでは背の高い木に囲まれ何も見えない。

 木は激しく揺れ、轟々と殴りつけるような風の音が聞こえているだけだった。


マミ「佐倉さんも気づいてるわよね?」

マミ「魔力が……あっちにとても強い魔力が現れたの」

杏子「……ああ。やっと“ワルプルギスの夜”が姿を現したのかもしれねえな」

マミ「だったら私たちがここでこうしている場合じゃないわよね。外に……」


詢子「……おい、どこに行こうってんだ?」

 声に振り向くと、まどかの母親が立っていた。

詢子「さっき歩いてるのが見えたんだが、様子がおかしかったみたいだったからついてきたんだ」

詢子「こんな状況で外に行くなんて、死ににいくようなもんだぞ」

杏子「……あたしたちは死ににいく気はさらさらない」

杏子「それよりさ、もしまどかやさやかの様子がおかしかったりしたらこうやって気にかけてくれよ」

杏子「その時はちゃんと納得できるまで話をしてやってくれ」

詢子「どういうことか、あたしにもわかるように説明してくれないか」

杏子「……」


1自由安価
2信じてもらえないのは覚悟で魔法少女とワルプルギスの事をざっくり話す
3魔法少女とワルプルギスの事を話し、魔法を見せて信じてもらう
4キュゥべえと魔法少女の契約のことだけ話す
5話さずに外に行く

 下2レス


杏子「……信じてもらえないかもしれないけどさ、あたしたち、魔法が使えるんだ」

詢子「……は?」

杏子「まあ、『は?』ってなるよな」

杏子「キュゥべえっていう奴が居て、そいつと契約すると願い事を叶えてもらう代わりに魔法少女ってもんになる」

杏子「あたしの家族がいなくなっちまったのもそいつが原因…… まああんな願い事したのは自業自得なんだけどな」

杏子「そんで、手に入れた魔法で今度は魔女って化け物と戦うんだ」

杏子「まあ何が言いたいかっていうと、この台風も魔女の仕業なんだよ。だから倒しに行かなくちゃいけない」

詢子「……」

 ……どう声をかけたらいいか迷っているような表情だ。

詢子「……そんでその台風を起こしてるやつを倒しにいくってのか?」

詢子「そんな奴が本当にいるにしたっていないにしたって、外に行ったら無事じゃ帰ってこれないかもしれないんだぞ」

詢子「それとも、そいつを倒せるっつう“魔法”があるなら見せてほしいけどな……」

 頭ごなしに否定することはしなかった。

 けど、簡単には信じてもらえないか。

マミ「……倒せる保証はなくても、魔法ならあります」

マミ「佐倉さんの言ってることは本当なんです……」

 辺りを確認する。ここにはあたしたち以外人はいない。

 ……手の中にソウルジェムを指輪から具現させ、武器を作り出す。

詢子「!」

杏子「……あたしはこいつで戦うんだよ。マミはまた違う武器を持ってる」

杏子「信じてくれるか?」


詢子「……」

 まだ驚いた顔をしている。

 ……こんなの見せて、怖がられたってしょうがない。

 あたしの親父のように。ほむらのように。

 たとえ化け物だと恐れられたとしても信じてもらえないよりはずっといい。

 でも、全部を知っていて受け入れてくれたまどかの母親だから……少しだけ信じてみることにした。


詢子「……驚いたよ。まさか本当にそんなものがあるなんてね…………」

マミ「信じてくれるんですか?」

詢子「こんな状況でマジックやるような人たちじゃないだろ」

詢子「あたしだってまどかの友達のあんたたちを信じてるからな」

杏子「まどかとさやか、あとまどかの同級生の暁美ほむらってのも素質があってキュゥべえに目を付けられてる」

杏子「こんな時だからこそ不安を煽って契約を促す可能性が高い」

杏子「さやかの時もあたしの事情を知りながらそのことをダシにして契約を迫った」

杏子「あんたも二人の様子を見ていてほしいんだ」

詢子「……死ににいく気はないんだな?」

杏子「ああ、ない」

詢子「もし勝ち目がないなら逃げたっていい。死ぬな。まどかが悲しむからな」

杏子「……わかった。行ってくる」

マミ「行ってきます! 信じてくれてありがとうございました!」

杏子「あ、あと、ほむらはホールの隅のほうに一人で居るから声をかけてくれないか?」

杏子「ほむらのことはまどかが知ってるから」

詢子「まどかに聞いて探しておくよ」


 魔力の強いほうへと向かっていくと、空に浮かぶ影が見えた。

 ――――ワルプルギスの夜。噂にした聞いたことのない魔女。

 はっきりと姿が見えてくると、それはスカートから覗く巨大な歯車を上に向け、巫山戯たように逆さに浮かんでいた。


杏子「あれがワルプルギスの夜……か」

マミ「思っていたよりずっと禍々しいわね……」


 ここから先に行ったら相談している余裕もない。

 戦う前に何か考えておくことはないか……?


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:17個
・針[89/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]・虫[100/100]
・影[100/100]・アイドル[60/100]
・料理[100/100]・砂[100/100]
・穴掘り[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


マミ  魔力[100/100] 状態:正常
GS:4個
・[80/100]
・[100/100]
・[100/100]
・[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]


1自由安価
2突入!

 下2レス 


杏子「最近パトロールはあたしがやってたからな……渡しておくよ」

マミ「ええ。……キュゥべえってここに来てるかしら?」

マミ「少なくとも私たちよりはキュゥべえのほうがワルプルギスの夜について知ってるんじゃないかと思うけど……」


 ……話題をすればすぐに出てくることの多かったキュゥべえだが、出てくることはなかった。

 避難所のほうを見てるのか? それとももっと近いところで魔女を見てる?


杏子「……しょうがねえ、進むか。突入するぞ!」

マミ「ええ!」


 暴風の中心、魔力の塊に近づくにつれて魔力は濃くなっていく。

 このあたりになると使い魔らしきものも沸いてくる。

 まるで何かのパレードのように派手な、動物のような使い魔が練り歩いている。

 しかしこれはただの賑やかしのようなものだろう。

 そいつらは襲ってくる様子はなく、むしろ道を開けてあたしたちを暴風圏に迎え入れた。


マミ「なんて魔力……! なんてプレッシャーなの」

杏子「ここまで近づけたら後は――――」

杏子「とりあえず戦ってみるしかねえなッ!」


 傾きかけた電柱の上に跳び乗り、さらにそこから跳び上がる。

 ワルプルギスの夜の巨体へ向け、攻撃を繰り出す――!



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:11個
・針[89/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
13【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
14マミに安価内容で指示

 下1レス


杏子「いつ攻撃がくるかわからねえ、防御はしっかりやっとけよ!」

マミ「ええ……!」

杏子「……うらッ!」

 魔力を込めて槍を投擲する。

 続けてマミもリボンのドリルで攻撃を撃ち込む。


ワルプルギスの夜「ウフフフ.....」


 ……ワルプルギスの夜はまだ攻撃を気にするそぶりもない。

 手中に槍を生成し直す。


杏子(それなら続けて攻撃するまでだ……!)


杏子 魔力[85/100] 状態:正常
GS:11個
・針[89/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
13【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
14マミに安価内容で指示

 下1レス


杏子「マミ!連携技だ、でかいのぶち込むぞ!」

マミ「了解ッ!」


 マミがリボンから巨大な弓を作る。

 それに槍を番え…………―――


マミ「審判の矢よ、私たちに道を拓いて!」

マミ「“ジュディッツィオ・フレッチャ【審判の矢】”―――!!」


杏子(その恥ずかしい詠唱はやめろって言ったんだけどな……!)


 赤と金の光を纏って放たれた槍がワルプルギスの夜の巨体へと撃ちこまれる。

 ……少しは効いてくれたか?

 そう思った矢先、こちらを見たと思うと炎を噴いてきた。


マミ「っ―――!?」

杏子「避けろッ!」


 なんとか多節棍の鎖で絡め取って回避させる。


杏子「気を抜くなよ、今までの魔女とは違ってこいつは大技の一発や二発で倒せる相手じゃねえ」

マミ「そ、そうね……」

杏子「が、これでもどんだけ効いたかわかんねえとくるか……」


 ソウルジェムを浄化して体勢を整え直す。


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:11個
・針[24/100]・芸術家[100/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
13【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
14マミに安価内容で指示

 下1レス


 手を合わせ、分身を作り出す。

 ……纏わりつかせておけば少しは攪乱になるか?


杏子(攪乱……いや、手当たり次第に攻撃しているようにも見えるが……)


杏子「……マミ、もう一発行くぞ!」

マミ「ええ!」


 弓を作り、巨大な槍を番える。

 ……さすがに二度目はマミも詠唱やらを叫ぶことはなかった。


 槍が当たると、その衝撃にビル群に巨体がぶち当たる。その拍子に分身は散ってしまった。

 ガラス張りのビルがぐしゃりと潰れる音が響いたが、街の被害を気にしている場合でもない。


 ――――ワルプルギスの夜の下からぶわりと強風が吹き荒れる。

 崩れたビルの残骸がこちらに飛んでくる。

杏子「くっ……!」

マミ「すごい風……!」


 長く伸ばした多節棍を電柱に巻きつけて飛ばされないようにし、飛んでくるものを弾く。

 マミもリボンでなんとかやっているようだ。


 黒い影のようなものが弾けると、人型の使い魔が現れ周りを囲んだ。

 使い魔がこちらに向かってくる。


杏子(手はふさがってる、このまま囲まれたらまずいな……!)


 どう対処しようかと考えていると、黄金の魔力の閃光が目の前を横切り影を撃ちぬいた。

 見てみると、マミが弓を持っていた。


マミ「丁度良く遠距離の攻撃があって助かったわね……」

マミ「使い魔は私がなんとかするわ。すぐに追うから佐倉さんはワルプルギスの夜を追って!」

杏子「わかった!」


 地面から起き上がり再び宙に浮かぶ頃には少し距離があいてしまったようだ。

 ふわふわと空を浮かぶワルプルギスの夜を追う。

-------------------
ここまで
次回は7日(火)20時くらいからの予定です


 ビルとビルの間を跳んで走っていく。

 その途中にも炎やらなんやらで足場を潰していくんだから厄介だ。


 走りながら胸元のソウルジェムにグリーフシードを当てて浄化する。


杏子(こっちのはもう使い切ったか……)

杏子(あと10個……さすがに全部使うようなことにはならないといいがな……)


杏子「やっと追いついた!ヘラヘラしやがって!」


 ワルプルギスの夜はまた不気味に笑っている。

 敵と向かい合い槍を構える。


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:10個
・針[0/100]・芸術家[57/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-0) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-0) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
・断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
8最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
9縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
10幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
11ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
・【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
12マミにテレパシーで連絡

 下1レス


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:10個
・針[0/100]・芸術家[57/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


なんて連絡しよう?
1(安価内容)

コマンド
2突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
3伸縮変形(魔力-0) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
4背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
5飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
6打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
7鉄砕鞭(魔力-0) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
8鎖拘束(魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
・断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
・【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技

 下1レス

------------------------------
マミは使い魔と戦っています
とくにピンチでもないので安価↓


 跳びあがり、その巨体の歯車に向けて槍を突き立てる。

 ――激しく金属のぶつかる音が響く。

 強めに魔力を込めて突いているのにも関わらず巨体はビクともしない。表面に傷すら付くことはなかった。


ワルプルギスの夜「ウフフフフ....!」


 ふわふわと宙をさまようワルプルギスの夜を追いかけながら攻撃を続けていると、再び周りに竜巻が起きる。


杏子「……っ、く…………!」


 一旦下がって防御態勢をとり、看板やらを槍の柄で弾く。

 まきあがった小石やガラスの破片が頬を切り裂いていく。ひとまず弾けるものだけを弾く、が――――


杏子(真正面から受けてたらもたねえな……体力も、魔力も……!)


 ……目の前に壁を作り出す。

 小さいものも放っておいたらシャレにならない。


 風が一通り落ち着くのを待って再び奴の前に駆け出す。


マミ『佐倉さん! こっちは使い魔は片付いたわ、そっちは戦況は!?』

杏子『ああ、なんとかやってる!』

マミ『今向かってるところよ、もう少しだけ待っていて!』


 あっちはなんとかなったようだ。

 ……マミが来るまでにもう少し一人で踏ん張るとしようか。



杏子 魔力[75/100] 状態:正常 使用中魔法:【縛鎖結界】
GS:10個
・針[0/100]・芸術家[57/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
・伸縮変形(魔力-0) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
・背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
2飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
3打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
4鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
5鎖拘束(魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
・断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
6最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
7編込結界(魔力-0) :防護壁を攻撃に変形させる
8幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
9ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
・【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
10マミにテレパシーで連絡(安価内容)

 下1レス


杏子「でりゃあッ!」

 魔力を乗せてワルプルギスの夜へと突進し、重い一撃をお見舞いする。

 金属の巨体を蹴って足場に着地し、ソウルジェムを浄化しつつ敵の様子を窺う。

 ……気まぐれに街をぶっ壊しながら笑っている。

 相変わらず何を考えているのかわからない不規則な行動。


杏子(まだ仕掛けられそうか……?)


 足音が近づいてくる。マミも追いついたようだ。


マミ「おまたせ、佐倉さん!」

杏子「おう! じゃあ早速攻撃ぶちかますぞ!」



杏子 魔力[100/100] 状態:正常 使用中魔法:【縛鎖結界】
GS:10個
・針[0/100]・芸術家[2/100]
・お菓子[100/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
・伸縮変形(魔力-0) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
・背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
2飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
3打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
4鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
5鎖拘束(魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
・断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
6最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
7編込結界(魔力-0) :防護壁を攻撃に変形させる
8幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
9ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
10【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
11マミに安価内容で指示

 下1レス


杏子「あたしらの必殺技をな……!」

マミ「ええ!」


 巨大な弓と槍を組み合わせ、ワルプルギスの夜に向けて打ち出す。

 ――――巨体は再び後退したものの、まだ傷がついた様子もない。


杏子(……こいつ、ここまでしぶといのか…………!?)


杏子「マミ、すぐに魔力回復しとけよ!気を抜くな」

マミ「え、ええ……!」


 グリーフシードに穢れを吸わせる。

 ……あと何回撃てる? それだけ攻撃をすれば倒せるのか……?



杏子 魔力[100/100] 状態:正常 使用中魔法:【縛鎖結界】
GS:9個
・針[0/100]・芸術家[2/100]
・お菓子[50/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
・伸縮変形(魔力-0) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
・背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
2飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
3打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
4鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
5鎖拘束(魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
・断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
6最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
7編込結界(魔力-0) :防護壁を攻撃に変形させる
8幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
9ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
10【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
11マミに安価内容で指示

 下1レス


杏子「っ……マミ! もう一回だ!」


 ――――4度目の必殺技。

 はち切れんばかりの金属音を立てて歯車にぶつかったそれは、確かに巨体を後退させた。

 ……その直後に再びワルプルギスの夜を中心に発生する豪風……飛んでくる瓦礫、ガラスの破片。

 口から噴きだされる炎についに防護結界も破られ、その直後に瓦礫が飛んでくる。


杏子「これは…… きついな…………」

マミ「回復するわね……!」


 …………なにより、まだあいつは本気じゃない。

 奴はまだ、あたしたちを敵とすら思っていない。

 これだけ大変な思いをさせられているというのに、攻撃に全く殺意を感じないのだ。

 もう一度結界を張り直す。まだ防いで凌ぐことはできる。しかし……――


マミ「追いかけましょう!」

杏子「ああ……!」


 ソウルジェムを浄化して立ち上がる。

 マミの作った足場の上を走っていく。ワルプルギスの夜に向かって……


杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:8個
・針[0/100]・芸術家[2/100]
・お菓子[0/100]・忘却[125/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


敵:ワルプルギスの夜


1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
・伸縮変形(魔力-0) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
・背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
2飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
3打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
4鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
5鎖拘束(魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
・断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
6最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
7縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
8幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
9ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
10【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
11マミに安価内容で指示

 下1レス


杏子「!」


 再び黒い影がはじけ、使い魔がワルプルギスの夜の周りを囲む。


マミ「また使い魔……!」

杏子「ここから攻撃を仕掛ける! まとめて蹴散らす!」


 ある程度近づいたところで巨大な槍を生成して飛び乗る。

 膨大な魔力を込めて加速し、ワルプルギスの夜へと直進して突撃する――!


マミ「私もやってやるわ……!」


 マミもあたしの攻撃が当たるタイミングに合わせて大砲を撃つ。

 大砲の殻を捨ててマミがさらに走る。


マミ「――――フィナーレ!」


 そして、跳びあがって大剣を振るう。


マミ「はぁ…………っ、はぁ…………っ」

杏子「マミ、また風だっ!」

マミ「くっ…………」


 今度はマミがリボンの盾での防御を展開する。


 まだ防いで凌ぐことはできる。しかし……――

 凌ぐだけで精一杯だ。


杏子「っ……!」


 足場にしていた柱が炎で燃やされ、崩れる。

 咄嗟にその後ろのビルへと飛び退いたが、直後に飛んできた壊れた車が身体に当たる。

 足場ももう少ない…………


杏子「駄目だ! 撤退するぞ!」

マミ「なっ……諦めるっていうの!?」

杏子「……この街はもう駄目だ」


杏子「あたしたちじゃこのまま続けてたって勝ち目がない。 ……引き際が重要だっていつも言ってるじゃないか」

マミ「でも、まだ……!」

杏子「まどかのおふくろにも言われただろ…… 倒せる見込みもないまま死ぬまで戦い続けるだけが正義じゃないんだ」

杏子「そんなのは無謀なだけだ」

杏子「だってさ、下を見てみろよ」


 無残に荒らされ、アスファルトも剥げ瓦礫だらけになった地面がいっぱいに広がっている。

 ……遠目に見える街並みとははっきりと境界が出来ている。

 このままでは全て壊されるのは時間の問題だろう。


杏子「……ひどい景色だろ。人間が長い間かけて積み上げてきたものを、あいつはたったこれだけの時間で壊したんだ」

杏子「倒せたとしたって、避難所がやられちまったら結局何も守れないんだぞ」

杏子「……ここでちんたらしてたらみんな死んじまう」

マミ「そんな……」

杏子「だったら、本当に大事な奴を守るためにはあたしたちには他にできる事があるはずだろ」

マミ「……わかったわ。避難所に向かいましょう!」

マミ「ただ、それまで奴を食い止めておく必要はあるわね……!」

杏子「そうだな……」


 ここからは防戦だ。

 侵攻を食い止めるのにパワーはいるだろうが、持続力を考えると回復力の高いマミのほうが防戦には強い。

 なにより、足場を自力で作り出せるだけでもこいつの相手をするには一番適していると言えるだろう。


杏子「マミ、ここは任せるぞ。あたしはなんとか避難所に居る奴らを説得してくる」

マミ「わかったわ! 絶対にこいつを避難所には向かわせない!」

杏子「……いいか、無茶はするな! あたしが戻ってくるまで絶対に死ぬんじゃないぞ!」

マミ「ええ!」


 瓦礫を伝ってビルから飛び降りる。

 この場をマミに任せ、あたしは避難所へと戻ることにした。



杏子 魔力[100/100] 状態:正常
GS:8個
・針[0/100]・芸術家[2/100]
・お菓子[0/100]・忘却[75/125]
・銀[100/100]・玩具[100/100]
・落書き[100/100]・星[100/100]
・暗闇[100/100]・犬[85/100]
・人形師[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]

―避難所



 再び避難所へと戻ってくる。

 ……人々はここを出る前よりもざわめいた様子だった。


杏子(ここももう危ない。この街が駄目なら風見野だな……)


 せめて『風見野中学校』まで避難させるのが目標として……

 そのためには知り合いだけでも、なんとかここから移動しないと危ないことを説得しないといけない。


*「あー、電波繋がらねえ……携帯も使えないとかマジありえねー」

*「ラジオもダメとかどうなってんだよ」


杏子(電波塔がやられたか? せめてあっちの魔法少女に連絡が出来ればよかったんだがな)

杏子(出来ないもんはしょうがねえ……あたしたちだけでなんとかするしかないか)



1まどかのところに行く
2さやかの家族のところに行く
3仁美のところに行く
4放送室を借りて全体に向けて説得
5自由安価

 下2レス

----------------------------
この後はまとまった時間にやりたいのでここまで…次でひとまず杏子編完結かな?
次回は11日(土)18時くらいからの予定です


杏子(説得するにしても今ここにいる連中は不安にかられてる)

杏子(まどかのお袋さんみたいに信じてくれるとは思えないな……)


 まずはまどかたちのところに向かった。

 まどかとその家族、さやかもまだ一緒に居る。

 それと、エイミーもそこに預けたままだった。


杏子「よう、ちょっといいか? 話したいことがあるんだ」

まどか「……杏子ちゃん」

さやか「駄目だったの………?」


 話しかけると、二人は深刻そうにこちらを見上げた。

 ……あたしとマミが何をしに行ったか、もう聞いていたのか。


詢子「……二人には話したんだ。“魔法少女”の事、もう知っていたようだったから」

詢子「かえって不安にさせると思ってね」

詢子「駄目だったか。……まあ仕方ないよ、でもその様子ならまだ何もかも諦めたってわけじゃないんだろう?」

杏子「……ああ。ここに戻ってきたのはあたしたちが生き残るためだ」

杏子「それで、ほむらは?」

詢子「それが…… 声はかけたんだけどな。『契約はしないからほっといて』の一点張りでどうすることもできなくてね」

杏子「…………そうか」

杏子「とにかく、さやかの両親とか知り合いとか、みんな集めて話がしたい。呼んできてくれないか?」

さやか「うん、じゃあお母さんとお父さん呼んでくるよ」

さやか「あと仁美も呼ばないと……それから、クラスメイトも……みんなは無理かなぁ……」

まどか「手分けして出来るだけ誘ってみよう」

杏子「仁美はあたしが呼んでくるよ。ほむらも出来れば呼びたいところだが……」


 関わりたくないはずのあたしからの誘い。来てくれるだろうか。

 あたしじゃなくても、魔法少女絡みとわかればまた逃げられるのがオチだ。


杏子(もう関わらないって決めたが今回ばかりはそんなこと言ってられない。どの道話はしなくちゃいけない)

杏子(…………誘うのが無理なら先に説得するか?)


 みんなが知り合いを呼びに散っていく。

 ……まず前にほむらが居たホールの端に行ってみると、ほむらはやはりそこにぽつんと座っていた。


杏子(…………よし)


 心を決めて近づいていく。

 ほむらが顔を上げ、眼鏡の奥の視線がこちらに向けられる。


杏子「……会うのは久しぶりだな」

ほむら「……」

杏子「今から知り合いを集めて話をしようと思ってるんだが、来てくれるか?」

ほむら「……話?」

杏子「ああ」

ほむら「契約はしませんから……」

杏子「それもそうだが、その話じゃなくてな」


 ……ダメ元で提案してみるが、警戒するような表情のまま返事がない。

 せめて何の話かわからないと来てくれないだろう。単純にそこまでの信頼がない。

 来てくれないなら、この場で内容を話すしかないか。


1自由安価
2外の様子について話す
3ワルプルギスの夜について話す

 下2レス


杏子「これから話すのはあんたやここにいる人全員の命に関わる事なんだ、しっかり聞いてくれ」

杏子「今の外の状況はワルプルギスの夜っていう特大の魔女の仕業だ」

ほむら「魔女……? 魔女って……なんなの? 魔法を使うなら、魔法少女と何が違うんですか……」

杏子「……悪い魔法少女……というより化け物だ。普通の人間からしたら変わりないのかもしれないけどな」

杏子「いや、アレは魔女というより自然災害そのものだ」

杏子「それも、はっきりいって魔法少女が1人2人いたところで太刀打ちできる相手じゃないレベルのな」

杏子「実際の台風とか津波とかの自然災害に人が全く無力なようにな……実際あたしとマミでも全く歯が立たなかった」

杏子「この街はもう駄目だ。でもここにいる避難民たちは何としても助けたい」

杏子「今、マミが足止めしてるがそれが何時まで持つかわからない」

ほむら「……私にそんな話して……どうしろっていうんですか」

杏子「これからここにいるみんなに事情を話して風見野の方に避難するよう説得するつもりだ」

杏子「……あんたを怖がらせたあたしが今更何を言ってるのか、信じてくれなんてムシがいい話だと思うがあんたに死んで欲しくはないんだ」

杏子「頼む、一緒に避難してくれ」

 ……頭を下げる。

ほむら「い、いやです。外に出るのは怖い」

ほむら「今外なんかに出たらそれこそ死んでしまう……」

杏子「みんなあたしが守るよ」


 ……信じられないのか、ほむらは肩を竦めたまま返事を返さない。


ほむら「……そんなこと、信じられない」

ほむら「それに、ここに居いる人たちが本当にみんなそんなこと信じると思うんですか?」

ほむら「…………私はみんながここに居るならここに居ます。なにもわからないのにここを離れるなんて出来ません……」


 ――全員を救え、ってことか。

 確かに、何の関係もない一般人全員分の説得なんてのはきついかもしれないな。

 知らない人からしたら、ほむらと同じような気持ちかもしれない。

 集団から外れるのは怖い。きっと、わけのわからない少数を信じて動いてくれる人なんて少ない。


 けど……そうしないと動かないっていうなら。


杏子「…………わかった」


 なんとか全員に語りかけてみるしかない。


杏子「……でも、あんたに死んでほしくないってのは本当だから」

ほむら「わ、わかったから…… もうつきまとわないでください……」


杏子(嫌われたものだな)

杏子(……ああ、それも自業自得か)


 ――気持ちを切り替える。

 ほむらのもとをいったん離れ、仁美を探すことにした。


 仁美は家族や家政婦らしい人たちと一緒に居た。

 普段話している『家の者』というのはそういう肉親より少し離れた関係の人たちも含むのだろう。


まどか「杏子ちゃん!こっちはなんとかクラスメイトや知り合いは集め終わったよ!」

早乙女「なんだか、休みの日にこうやって集まるのは不思議な気分ね」

 同世代の子たちに囲まれている中、大人の人が混じっている。

 ……これが噂の早乙女先生か。

さやか「仁美もこんにちは。仁美の家の人たちがこんなに揃ってるの初めてみたかも」

仁美「はい、こんにちは。佐倉さんからは大事な話をすると聞きましたが……」

仁美「その様子だと何か深刻なことなんでしょうか?」

杏子「……ああ。集まってから話そう」


 ……まどかの家族のいたところに連れ、円を囲むように集まっている。

 魔法少女うんぬんという話をいきなりするのは突拍子なさすぎるか。

 まずはこの『台風』についての話から始める。


杏子「……集まってくれてありがとな」

杏子「聞いてるかもしれないが、あたしはまどかとさやかの知り合いの佐倉杏子ってもんだ」

杏子「みんなは今回の台風、どう思ってる?」

杏子「……朝はテレビで中継されてたけど、電波も届かなくなってるみたいだしきっと誰も今の外の様子を知る人はいない」

杏子「そうそう起きることのないような大災害なのは間違いないと思ってる」


 ……みんながざわざわとし始める。


杏子「……あたしさ、外見てきたんだよ」

*「えっ! この状況で!?」

 生徒の一人から声が上がる。

早乙女「ほ、本当に危ないですよ? 無事だったからよかったものの……」

杏子「ヤバかった。建物がぐちゃぐちゃに壊されて……街がなくなってたんだ」

杏子「だからさ……ここだって安全でいられる保障はないと思うんだよ」

*「じゃ、じゃあ……どうするの!?」

杏子「ここからみんなで逃げないか? とりあえず隣の風見野まで行けばここよりは安全だろう」

*「そ、そんな! でもここから出るのは!」


 ……この周りだけでもそこそこの人数が居る。

 知り合いの知り合いということで全く無関係の人間よりは信頼はあるだろうが、ほぼ知らない人たちも大勢いる中だ。

 魔法少女関係の話を信じて受け入れてくれる人ばかりではないだろう。

 とりあえず、パニックになるのは避けたいが……


まどか「……杏子ちゃん」

 隣でまどかが小声で話しかけてくる。


まどか「それって、ワルプルギスの夜っていう魔女のせい……なんだよね」

まどか「敵わなかったからわたしたちをここから遠ざけようっていう……」

杏子「……ああ」

さやか「げ……外そんなヤバいんだ」

杏子「避難の時にはあたしが風や障害物から守るよ」

杏子「ここならまだ風もそこまで激しくはないだろう……なんとかうまくやるつもりだ」


 ……まどかは少し考えてから、みんなに向けて呼びかける。


まどか「……みんな、落ち着いて!」

まどか「わたしは杏子ちゃんの判断に賛成するよ」

まどか「実際に外を見た人が言ってるんだもん……ここから離れていけば風も弱まるだろうし」

詢子「うちらはそうすることにするよ」

詢子「誰も状況を知らないなら、生き残るためには自分たちで考えて判断するしかない」

詢子「……あんたたちはどうする?」

さやか「お母さん、うちも行こう」

さやか「ちゃんと避難できるなら、今のうちに遠くに避難し直したほうが安全だよ」

早乙女「……一番いけないのはパニックに陥って勝手な行動をすることですよ」

早乙女「これでも避難誘導なら慣れてます。避難訓練の時みたいに落ち着いて避難すれば、集団でも安全に避難することができます」

早乙女「とりあえず、外に出るならヘルメットや防災ずきんが欲しいですね……どのくらいの在庫があるのかしら」


 家族や友人同士で話し合いはじめる。

 避難に賛成する人も出てきている。……が、全員ではない。

 避難した方がいいというのが確実じゃない以上、話し合った末に反対するというのならどうしようもないことだった。


まどか「杏子ちゃん、わたしたちだけじゃなくてみんなにも話そうよ」

まどか「放送室にマイクがあったはず……」

早乙女「待って、パニックが起こるかも…… 我先にと大勢で避難所を飛び出して駆けだしたら事故がおこりかねない」


 ……やっぱり、ワルプルギスの夜のことを知ってもらわないと駄目なのか?

 だが、そんなことを言えば大混乱だ。下手したら頭のおかしいガキの悪ふざけだと取り合ってもらえなくなるかもしれない。


まどか「杏子ちゃん……」

まどか「やっぱりわたし、自分たちだけじゃなくてみんなに助かってほしい」

まどか「……これって、わがままなのかな」

杏子「…………」


「――――そこで僕の出番だね」


 ――――足元からまんまるの赤い瞳がまどかを見つめていた。


まどか「キュゥ……べえ」

QB「やあ。久しぶり、まどか、さやか」

杏子「何が出番だ……お前は引っ込んでろ」

QB「君たちが契約して戦いにいったところでワルプルギスの夜を倒すことは出来ない」

QB「僕だって無駄死にさせるために契約はさせないさ」

QB「けど、みんなを助けることくらいならできるよ」

QB「まどか、君がみんなの無事を祈って契約すればいいんだ」

QB「どうだい? その願い……僕なら叶えられるよ」

QB「僕と契約して魔法少女になってよ!」


 ……キュゥべえの小さな頭を足で踏みつける。


杏子「あたしがなんとかすりゃいいんだろ……!」



1自由安価
2まどかと話し合う
3さやかと話し合う
4詢子さんと話し合う
5早乙女先生と話し合う
6キュゥべえと話し合う
7マイクを借りて全体を説得

 下2レス


杏子「……まどか、わかってるな? 契約はするなよ」

杏子「どんなに絶望的な状況だろうが、こいつの言葉に耳を傾けて契約だけはするな!」

杏子「それをしたらこいつの思う壺だ!」

まどか「うん……でも」

まどか「どうしよう……? なんとか、できるの……?」

杏子「…………色々考えて、出来るだけのことはやってみるよ。諦めるのはそれからだろ」


 ワルプルギスの夜の事、魔法少女の事などは大衆に向かっては言えない。

 外の状況を話してもパニックが起きないようにするにはどうしたらいい……?


杏子「……まずは自分が落ち着かないと駄目だな。焦りや恐怖ってのは人に伝染する」

杏子「でもそもそもあたしみたいなのが言ったところでみんなが信じてくれるか……?」

早乙女「……一人じゃないわ。私やみんなも居ますよ」

早乙女「……問題なのは、この人数が一斉には出られないこと……でも危険が迫っているならみんな自分が一番に出たがるのは当然よね」

早乙女「一斉じゃなくて、全体を分けて誘導すればなんとかなるはずなんだけど……」

杏子「説得自体を一斉にはせずに分けたほうがいいか?」

早乙女「そうね……避難賛成派の人みんなで分担して呼びかけていきましょうか」

詢子「子供たちにばかり任せておけないな! ある程度人数が集まったらあたしたち大人で避難誘導をしていこう!」


 みんなが少しずつ説得に動き出していく。

 ――ああ、なんかこういうのって、昔を思い出すな。

 話を聞いて欲しくて、正しいことを言ってるってわかってほしくて。

 …………結果はあんなことになっちゃったけど。


杏子(…………今度はちゃんと聞いてもらえるのか?)

杏子(これだけの人を導くことが……)


杏子(……守るっつったが、あたしもあの人数全員は守れない)

杏子(大半は大人の誘導に任せるしかないな……)


 ……少しずつ説得と誘導が進んでいく。

 しかし、話を聞いたからといってすぐに信用して行動してくれる人はさっき話した時よりも少ない。

 どこからの情報なのか。 情報自体がデマなんじゃないか。 それなら本当に出て大丈夫なのか。 ここに居たほうが安全じゃないか――

 色んな疑心暗鬼に包まれた人が残り、ホール内はざわめいていた。


 …………その中に、ほむらの姿もあった。


 おろおろとしながら周りを見ている。

 少しずつ人が動き始め、出た方がいいのか出ない方がいいのか迷っているのだろうか。


杏子「!」


――――そんな時、いきなりホールの電気が落ちた。

 どこからか悲鳴が上がり、ざわめきはピークになる。


杏子(……よくやったほうじゃないか。誰も彼も救うなんてできっこないって、とっくにわかってたはずだったんだ)

杏子(もうこれ以上は…………)


 ……暫くして予備電源に切り替わり、再び電気がつく。

 ――――あたしは放送室に走り出していた。

 鍵を魔力で開け、電源を入れてマイクに向けて叫ぶ。


杏子『落ち着ついてくれ!』

 ホールに声が響き渡った。

杏子『外を見てきたのはあたしだ!』

杏子『見滝原の街は“台風”のせいでどんどんなくなっていってる! ここに居たら危ないんだ!』


 放送室から出て2階の手すりから下に呼びかける。


杏子「どうか落ち着いて避難してくれ!」

杏子「みんな、あたしを信じて付いてきてくれないか?」

*「なくなっていってるだと? いくら暴風ったって大げさじゃないのか!?」

*「誰が言い始めたのかと思えば、こんなガキが言いだしたことあてになるかよ!」


 ……野次が聞こえる。

 あたしは、全体を見下ろしてもう一度呼びかけた。


杏子「頼むから信じてくれ!」


まどか「みんな、わたしからも!信じてください!」

さやか「信じてください!」


 まどかやさやか、本当の事情を何も知らない仁美まで叫び始める。

 ホールが再びざわめきはじめる。……しかし、今度は嫌なざわめきではなかった。


*「…………なんか、あそこまでいうならあの子たちを信じてみてもいいかなって気になってきたな」

*「……どうする?」

*「周りも避難するって決めてる人多くなってきたよ」

*「ここに残ってたら死ぬかも……」


 ……少しずつ避難賛成派が増えるにつれ、つられて賛成派に移り変わる人が増えていく。

 結局、集団から外れるのは怖いのだ。避難する人が増えれば残ることに不安を感じてくる。


 ホールの1階に降りてまどかたちと合流する。


まどか「杏子ちゃん、エイミーはわたしがちゃんと連れてくよ。もう少しだけ預からせて」

杏子「ああ、そうしてくれると助かる」

さやか「最後にもう一仕事だね!」

杏子「……ありがとな。みんな」


 …………あの時はとにかく必死だった。

 もし救えるなら、あの時大事な人たちを壊した『願いの力』でも良いと思っていた。


 ――あたしは、結局あの力を使ったのか? 普段の幻惑とは違うけど、一番願いの結果に近い形で。


 …………でも、信じてくれたのはみんなの後押しがあったおかげだと思っていたかった。


――――
――――

――――
――――



マミ「っ……!」


 リボンで作った網目状の足場を器用に渡りながら炎を避けていく。

 リボンがあるから足場は自分で作れる。

 しかし、一撃一撃の攻撃が読めない上に凄まじい威力だ。


マミ(油断したら死ぬわね……)

マミ(とにかく、敵の動きから目を離さずに対処していくしかない……!)


☆ターン 1/3


マミ  魔力[97/100] 状態:正常
GS:7個
・[0/100] ・[0/100]
・[0/100]・[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]・穴掘り[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]


敵:ワルプルギスの夜

1トッカ:近接武器戦闘(魔力-0) :リボンで切り裂く
2シャボラーレ(魔力-3) :リボンを刃に変化させて切り裂く
3ドラギナッサ・フィナーレ(魔力-30) :大剣のように変形させたリボンを振るう重近接型の必殺技
4トッカ・アクレアート(魔力-10)  :リボンを硬質化させた鋭い針をたくさん飛ばす遠距離攻撃
5トッカ・スピラーレ・フレッチャ(魔力-10) :螺旋状のリボンを射出する遠距離攻撃。弓に張ることもできる。
6トッカ・スピラーレ(魔力-5/1ターン) :リボンを螺旋状にしたドリルのような近接武器。
7トッカ・シャボラーレ(生成時のみ魔力-3) :リボンから作り出したサーベル。近接武器。
8ティロ・アルカーレ(魔力-3) :リボンから作り出した弓に魔力の矢を張って射る。遠距離武器。貫通性能有り。
 bティロ・アルカーレ・ヴァスタアリア(魔力-10) :弓に魔力の矢を複数張って射る。遠距離に固まった敵の一網打尽には鉄砲よりも向いている。
 cティロ・アルカーレ・ファッシナーレ(魔力-10):複数の矢を束ねて強化した矢で射る。
9ティロ・フチーレ(魔力-3):単発式の鉄砲。遠距離武器。一発ごとに使い捨てになるため弓より連射性能に劣るが、命中率と威力は上。
 bティロ・フィナーレ(魔力-45):単発式の鉄砲を巨大化させたもの。遠距離での必殺技として使える。
10ミナーレ(魔力-3) :敵が踏んだら爆発する攻撃用の地雷を設置する。
 bレガーレ・ミーナ(魔力-3) :敵が踏んだら展開するリボンの地雷を設置する。
11レガーレ(魔力-3) :単体拘束
 bレガーレ・ヴァスタアリア(魔力-5) :広範囲・大きい敵の拘束
12レーテ・スクード(魔力-10) :リボンを網目状に張って目の前に盾を作る
13ヴィカーリオ・アルター・エゴ(魔力-15) :リボンで分身を作る。近づいてきたら拘束する。
14マリオネッタ(魔力-3/1ターン) :分身を操る。戦わせるには今のマミの技量では難しい。
15紅茶(魔力-2) :紅茶を生成して飲む。意味は無い。
16安価内容でなにか生成(ものにより消費変動・マミがよく知らないものは作れない)
・自分の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】
・他人の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】
・【連携必殺技】ジュディッツィオ・フレッチャ(魔力-40) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技
17防御態勢

 下1レス


 無理に攻撃には転じない。

 牽制程度に手から出したリボンで鉄砲を作って撃ちこむ。

 ――適当に撃ってもどこかには当たる。

 大きな魔女よりも特別に大きいその巨体は、的にするなら狙いやすかった。


マミ(引きつけておく程度…… これで引きつけられているのかしら?)


マミ「っ!」


 影が一直線に伸びてきて足元のリボンを引き裂いた。

 弾けて出てきた使い魔がリボンを駆け上がってこちらに向かってくる。


マミ「離れて、って……――」

マミ「言ってるでしょ!」


 撃ち終ったあとの鉄砲で殴って横に叩き落とす。

 しかし、使い魔は下まで落ちていくわけではなく空中にとどまった。


マミ(足場を作りなおして……体勢を整える!)


☆ターン 2/3


マミ  魔力[94/100] 状態:正常
GS:7個
・[0/100] ・[0/100]
・[0/100]・[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]・穴掘り[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]


敵:ワルプルギスの夜
  影(格闘少女)×2
  影(魔砲少女)×3

1トッカ:近接武器戦闘(魔力-0) :リボンで切り裂く
2シャボラーレ(魔力-3) :リボンを刃に変化させて切り裂く
3ドラギナッサ・フィナーレ(魔力-30) :大剣のように変形させたリボンを振るう重近接型の必殺技
4トッカ・アクレアート(魔力-10)  :リボンを硬質化させた鋭い針をたくさん飛ばす遠距離攻撃
5トッカ・スピラーレ・フレッチャ(魔力-10) :螺旋状のリボンを射出する遠距離攻撃。弓に張ることもできる。
6トッカ・スピラーレ(魔力-5/1ターン) :リボンを螺旋状にしたドリルのような近接武器。
7トッカ・シャボラーレ(生成時のみ魔力-3) :リボンから作り出したサーベル。近接武器。
8ティロ・アルカーレ(魔力-3) :リボンから作り出した弓に魔力の矢を張って射る。遠距離武器。貫通性能有り。
 bティロ・アルカーレ・ヴァスタアリア(魔力-10) :弓に魔力の矢を複数張って射る。遠距離に固まった敵の一網打尽には鉄砲よりも向いている。
 cティロ・アルカーレ・ファッシナーレ(魔力-10):複数の矢を束ねて強化した矢で射る。
9ティロ・フチーレ(魔力-3):単発式の鉄砲。遠距離武器。一発ごとに使い捨てになるため弓より連射性能に劣るが、命中率と威力は上。
 bティロ・フィナーレ(魔力-45):単発式の鉄砲を巨大化させたもの。遠距離での必殺技として使える。
10ミナーレ(魔力-3) :敵が踏んだら爆発する攻撃用の地雷を設置する。
 bレガーレ・ミーナ(魔力-3) :敵が踏んだら展開するリボンの地雷を設置する。
11レガーレ(魔力-3) :単体拘束
 bレガーレ・ヴァスタアリア(魔力-5) :広範囲・大きい敵の拘束
12レーテ・スクード(魔力-10) :リボンを網目状に張って目の前に盾を作る
13ヴィカーリオ・アルター・エゴ(魔力-15) :リボンで分身を作る。近づいてきたら拘束する。
14マリオネッタ(魔力-3/1ターン) :分身を操る。戦わせるには今のマミの技量では難しい。
15紅茶(魔力-2) :紅茶を生成して飲む。意味は無い。
16安価内容でなにか生成(ものにより消費変動・マミがよく知らないものは作れない)
・自分の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】
・他人の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】
・【連携必殺技】ジュディッツィオ・フレッチャ(魔力-40) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技

 下1レス


マミ(離れたところにも使い魔……囲んでいるのは射撃の影ね)

マミ(こっちにも手間取ってはいられない!)


 向かってくる使い魔にリボンで応戦すると、今度は弓を作って遠くの使い魔に向けて射る。

 矢を複数本張った弓矢は、攻撃範囲を拡げるほかに足りない命中力を補うものでもあった。


マミ(……こういう遠距離から囲まれる状況って、昔から苦手だったのよね)

マミ(一気に距離をつめられるスピードはないし、単に遠距離用の攻撃に乏しかったからというのが理由だったけど――)

マミ(少しはマシに戦えるようになったかしら?)


 後ろから使い魔の放った影のような攻撃ものが飛んでくる。


マミ「くっ……」

射撃影「ウフフフフ!」

マミ(撃ち漏らし……いつのまに後ろに回ってたのかしら)

マミ(所詮はまだ慣れない弓での射撃攻撃。過信はできないわね)


 ワルプルギスの夜はふわふわと浮かんで離れていく。

 ……追ったほうがいいか、いっそ使い魔のほうに寄って一気に片をつけるか。


1使い魔に接近
2ワルプルギスの夜に接近

 下1レス

----------------------
ここまで エンディングまであと少し
次回は12日(日)18時くらいからの予定です


 ワルプルギスの夜の反対方向へと足元のリボンを伸ばして駆けだした。

 手から出したリボンで影を裂いて使い魔へと距離を詰めていく!


マミ(敢えてワルプルギスの夜は追わない……射撃の腕もまだ頼れるレベルじゃない)

マミ(得意な接近戦で一気に片をつけたほうがいい……!)



 接近戦での戦闘方法
1トッカ :基本形のリボン。
2スピラーレ :リボンを腕にまとわせたドリル。
3シャボラーレ :リボンから作り出したサーベル。

 下1レス


マミ(私の武器……なんだかんだで一番頼れるのはこのリボンね!)

 基本形そのままのリボン――近接武器として使える中では応用が多く、リーチが長い。

 ……その代わり、威力は劣る。

マミ「レガーレッ!」

 が、一発で決められなくても技巧でカバーできる。

 魔女を相手するには威力が足りないが、使い魔なら十分なはず。

 佐倉さんから教わった格闘や戦い方。自分で研究した成果……この1年分の経験がある。

 この調子で――――!


マミ(っ!?)


 遠くから竜巻が起きたと思うと、ビルが迫ってきていた。

 攻撃を止め、出来るだけ遠くに退避しようとする。

 どうせ使い魔ごと攻撃に巻き込まれる。飛来物への対処に切り替えて……!



 ビル飛来への対処
1ティロ・フィナーレ(魔力-45):ビルを攻撃して破壊する
2レーテ・スクード(魔力-30) :リボンを網目状に張って目の前に盾で防御(範囲向上版)
3とにかく逃げる
4自由安価

 下1レス + コンマ判定 0~99 ※1ケタ0クリティカル


 足場のリボンを纏めてしがみつき、リボンを縮めて向こう岸のビルの上に渡ろうとする。

 間に合えば――――


マミ(間に合わ――っ…………!)


 ……下の地面は割れたガラスが散乱する瓦礫の山。

 そこに叩き付けられたら落下の衝撃だけじゃ済まない。


マミ「くっ……――!」


 なんとかリボンを消さずにビルの上まで身体を運ぶ。


マミ(今ので使い魔はいなくなった……早く治療してワルプルギスの夜を追わなくちゃ……)


 ワルプルギスの夜はふわふわと宙を浮かび、更に遠くに行こうとしている……

 ……――遠く? 確かあっちの方向は……


マミ(……避難所の方向! そっちに向かわれるのはまずい!)



☆ターン 3/3


マミ  魔力[61/100] 状態:正常
GS:7個
・[0/100] ・[0/100]
・[0/100]・[100/100]
・虫[100/100]・影[100/100]
・アイドル[60/100]・料理[100/100]
・砂[100/100]・穴掘り[100/100]

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]


敵:ワルプルギスの夜


1ドラギナッサ・フィナーレ :大剣による重接近戦で食い止めを試みる。
2ティロ・フィナーレ :出来るだけ大砲の出力を強めて吹き飛ばしを試みる。
3レガーレ・ヴァスタアリア :リボンで拘束して動きを止める。
4フォレスト・ジュディッツィオ・フレッチャ :見た目は審判の矢に似たもの。巨大な弓と槍をマミ一人で賄ってみる。
5自由安価

 下1レス


マミ(……私の一人の攻撃じゃ食い止めるのも吹き飛ばすのも無謀……か)

マミ(だったら、これで出来るだけ動きを止めるしか…………!)


 ワルプルギスの夜の巨体を包み込めるほど広く、長く長くリボンを展開する。

 ギシ、と音を立ててリボンが軋む。こっちにかかる力は普段の比じゃない。

 じりじりと引っ張られていく……気を抜いたらこっちが振り回されてしまいそうだ。


 ずっと留めておくことは出来ない。

 いつちぎられてしまうかもわからない。


 けど、時間稼ぎくらいにはなる、はず…………!



マミ「っ……! もう少し、持って――――――!」



――――
――――

――――
――――


 風見野に向かっていくにつれて魔力の気配は薄くなり、

 それとともに激しい風と、空を覆う分厚い雲も薄まっていくのを感じた。


 ……本当は、今日は晴れるはずだったんだっけ。

 ワルプルギスの夜さえいなくなれば、雲一つない晴天が現れるのかもしれない。


―風見野中学校


杏子「これで全員か……」

まどか「杏子ちゃん、お疲れ様!」


 なんとか全員分の避難誘導を終えられたようだ。

 ここに入りきらなかった分はまた別の施設に移動することになるのだとか。


杏子「ああ、ひとまずこれで安心だな」


 後は、ここにあの魔力の気配が近づいてきたりしない限り……か。

 ……だが、あたしはまだもう一度見滝原に戻らなくちゃいけない。


杏子「わりい、もう少しだけエイミー預かっててくれ。あいつを……マミを迎えに行ってやらないと」

まどか「うん、気を付けてね!」


 体育館を出て、見滝原に向かう。

 ……あの時から被害は格段に増えている。

 魔力の大きくなるほうへと向かうと、街は瓦礫だらけだった。


 更に近づいていくと、かろうじて残っていた街の面影すらなっていく。

 上空にワルプルギスの夜の巨体が浮かぶ姿を見る。

 マミもそのすぐ傍に居た。


杏子「マミ!」

マミ「佐倉さん! 避難、終わったの!?」

杏子「ああ!全員分だ!」

マミ「よかった……! すごいじゃない!」

杏子「だから、生きて戻ってくるまで気を抜くなよ!」

マミ「え、ええ! そうね」


 ――――それから、暴風が吹き荒れる中を必死で走った。

 ワルプルギスの夜が気まぐれに起こす竜巻、そして飛来してくる瓦礫やビルから逃れ、時に破壊して凌いだ。


杏子「……ボロボロだな。魔力で傷は治せても、顔は煤けてるし珍しく髪もぐしゃぐしゃだ」

マミ「早くお風呂に入りたいわね……これから避難生活かぁ。お風呂とか入れるのかしら」

杏子「どうだろうな」

杏子「……よく頑張ったな。一人じゃ不安だっただろ」

マミ「でも絶対に戻ってきてくれるってわかってたから」

マミ「佐倉さんこそ、みんなを助けてくれてありがとう」

杏子「アンタに感謝されることじゃねーよ」


 街のみんなのため、正義のためと掲げて活動することを放棄し、馬鹿馬鹿しいと笑い――心の底ではもうそんな資格はないと諦めていた。

 でも、あの時はまぎれもなく思ったんだ。知り合いだけじゃない、みんなを『救いたい』って。

 だからといってあたしのしたことがチャラになるわけじゃない。

 けど――――


 それで救えたなら…………そういうのも悪くないなって、思い直すことにした。

―風見野中学校


 マミと風見野中に戻ってくると、

 まずはまどかやその家族のいるところに向かった。


杏子「よう、待たせたな」

エイミー「にゃ」

 エイミーがまどかの腕から降りて足元に駆け寄ってくる。

まどか「やっぱエイミーも飼い主さんが恋しかったんだねー」

まどか「杏子ちゃん、おかえり!マミさんもお疲れ様です!」

マミ「ええ、みんなが無事で嬉しいわ」

詢子「これでやっと全員避難完了か」

杏子「それにしても腹減ったなぁ……もう昼時か」

杏子「何か食料の配給とかはあったのか?」

詢子「一応ね。でも、予想以上に人が多くなって全員分とはいかなかったみたいで」

詢子「子供やお年寄りを優先に配っていたみたいだ」

杏子「ふーん……とりあえず、持ってきた乾パンでも食うか」

マミ「なかなか食べる機会ないけど、結構素朴で美味しいのよね」


1会話(安価内容)
2さやかのところに行く
3仁美のところに行く

 下2レス


 乾パンをつまみながらマミと話す。


杏子「とりあえず避難した人達は守ることが出来たが街は壊滅状態だ」

杏子「魔法少女としてそこそこ腕には自信があったんだがな……ワルプルギス相手にはろくに闘う事ができなかったな」

杏子「ちーとばっか自信なくすよ、まったく……」

マミ「私たち二人なら勝てると思ってたのにね」

マミ「そういえば、前にそんな話したわよね。……覚えてる?」

杏子「……ああ、そういや言ってたな」


 まだコンビを解消する前の話だ。

 二人でワルプルギスの夜を倒すのが目標だとか言っていたっけか。


杏子「目標は達成できなかったな」

マミ「相手が強すぎたのよ……それに、勝利に固執しないでよかったと思うわ」

杏子「……じゃ、あたしはちょっとさやかんとこ行ってくるわ」

マミ「私は志筑さんのところにでも行ってきましょうか」

まどか「あ、いってらっしゃい。確かさやかちゃんならあっちのほうだったと思うよ」

まどか「仁美ちゃんは……あ、あそこだ」

杏子「おう。エイミーは……」

エイミー「にゃ?」

杏子「連れてってやるか。なんか寂しそうだからな」


 ……今頃ワルプルギスの夜はまだ見滝原に留まって破壊の限りを尽くしているんだろう。

 こっちに向かってくるようならまた逃げることも考えないといけないが……


杏子(今のところこっちに魔力の気配はない)

杏子(完全にあっちが収まったと聞くまで気は抜けないか……?)


さやか「杏子!」

 さやかを探しに歩いていると、後ろから声がした。

杏子「お、ちょうどそっちに向かおうと思ってたんだよ」

さやか「あ、そうなの?あたしもちょっとクラスメイトとかと話してたところ」

杏子「そっか」


 さやかも元気そうだ。


1自由安価
2見滝原の情報って何か入ってきてるか?
3マミのこと

 下2レス


杏子「そういやここでは携帯使えるのか?」

さやか「使えるみたいだよ。小学校のほうに避難した友達から連絡あったし」

杏子「じゃあ、見滝原の情報って何か入ってきてるか?」

さやか「風見野に避難が完了したってことだけはテレビで流れてるみたい」

さやか「今の状況とかはまだみたいだね…… 風が落ち着いたら取材が来るんじゃないかなぁ」

杏子「そうか……上条に連絡取れるなら無事だと連絡しておいた方がいいんじゃないのか?」

さやか「あっちでもニュースとか出るかな?やっぱ」

杏子「これだけの大災害だし、出るだろうな」

さやか「じゃあ後でメールしておくかぁ……ところでマミさんは?」

杏子「あぁ、とりあえずマミも無事だ」

杏子「マミは仁美のところに行ってるよ。マミと話したいなら仁美のとこ行ってみてくれ」

杏子「あたしはちょっとトイレに行ってくる」

さやか「ん、いってらっしゃい。じゃああたしはマミさんと仁美のとこに突撃してこようかな~」


 ……トイレ前はすごい行列だった。

 特に女子トイレの列なんてどこから始まってるんだかわからない。


杏子「……よく並ぶな、みんな。もう外でした方が早いんじゃねえのかこれは」


 ……隅のほうでその行列をぼんやりと見ていると、エイミーが腕の中で鳴いた。

 その視線の先を見てみると、足元に白い猫のような兎のような姿の契約者が居た。

 ……驚いた。動物にはこいつの姿が見えるのか?


QB「並ばないのかい? 外でするのはやめておいたほうがいいよ」

QB「そういう人が増えると虫が沸くからね」

杏子「つけてきてるのはこの際構わないが、トイレにまではついてこようとするなよ?」

杏子「……そんなことより、ワルプルギスの夜はどうなった?」

QB「どうもなってないよ」

QB「僕に聞かれてもそれ以上はわからないな。もうあの街には誰もいない。わざわざ危険地帯に近づく意味もないからね」

杏子「そうか。お前はあたしらが勝つか負けるか、契約が取れるか取れないかしか興味ないんだもんな」

QB「そういうことだね」

杏子「そういうことだねじゃねーよ」


 キュゥべえの頭を軽く踏みつける。

 ……どうにもなっていない。どうにもしていない。

 人のいない街にワルプルギスの夜はいつまで留まるつもりだろうか。


 ……今はまだ、暫くはあそこへは戻れない。


 ――――……それから数日が経ってから再び見滝原を訪れた。


 被害の少ない地区はあるものの、ワルプルギスの夜が去った後のこの場所には瓦礫と更地ばかりが広がっていた。

 奇妙な色の雨でも降ったのか、地面が紫色に変色している。


マミ「ひどい景色ね……。戦ってた時はここにもまだ少しはビルも残ってたのに」

杏子「マミの家にも、もう戻れそうにないか」

杏子「あたしは結構気に入ってたんだけどな、あの場所は」

マミ「私もよ。……でも仕方ないわ、見滝原に戻るなら復興の早そうな駅前のほうか……住宅地のほうはどうかしら」

マミ「いっそ風見野に住み処を移すのもいいかもしれないわね」

杏子「マミも縄張りを掛け持ちするか? こっちは大分人が少なくなるだろうしな」

マミ「……まあ、どっちにしろすぐには無理ね」

杏子「その辺のホテルに忍び込むってのはどうだ?」

マミ「却下します」

杏子「相変わらずお堅いなぁ」


 まだ暫く避難所生活は続きそうだ。

 だが、それもちょっと楽しそうかもしれないと思っている。

 あの場所にはあたしが守ることの出来た大事な人がいっぱいいるのだから。




―END―


・主人公
 【佐倉杏子】(契約・生存)

ワルプルギスの夜編・BestEND


・最終ステータス

杏子 戦闘コマンド

1突く:近接武器戦闘(魔力-0)、もしくはbからはトドメかなんかとしても
 b中威力(魔力-10)
 c大威力(魔力-25)
 d必殺(魔力-45)
2伸縮変形(魔力-5) 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍(魔力-10) 幻惑魔法により確実に隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力(魔力-15)
5打突(魔力-5) :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力(魔力-15)
 c大威力(魔力-30)
 d必殺(魔力-50)
6鉄砕鞭(魔力-5) :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束(魔力-5/魔力-20) :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱(魔力-10) :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
 b断罪の礫柱(魔力-25) :地面から巨体をぶち破る大きな槍を突き出す。動く相手に当てるのはやや難しいが、手が空いてるので隙はできない。
9最後の審判(魔力-50):でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界(魔力-15) :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法(魔力-10/1ターン) :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ(魔力-15) :20体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。ただしフルでの継続は1ターン。
  bロッソファンタズマ(魔力-1*分身の数 /1ターン) :分身を継続可能な数に落とし、敵に延々付きまとわせる。7体まで
13【連携必殺技】審判の矢(魔力-50) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技

 「信じて」(魔力-50) :自分の言葉を信じさせる。本人曰く『できないことはないがあまり気は進まない使い方』

 ワルプルの避難時の最後の説得に関しては、これを使ったか使っていないかは『不明』としておきます。


◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv25]


マミ 戦闘コマンド

1トッカ :リボンで切り裂く
2シャボラーレ(魔力-3) :リボンを刃に変化させて切り裂く
3ドラギナッサ・フィナーレ(魔力-30) :大剣のように変形させたリボンを振るう重近接型の必殺技
4トッカ・アクレアート(魔力-10)  :リボンを硬質化させた鋭い針をたくさん飛ばす遠距離攻撃
5トッカ・スピラーレ・フレッチャ(魔力-10) :螺旋状のリボンを射出する遠距離攻撃。弓に張ることもできる。
6トッカ・スピラーレ(魔力-5/1ターン) :リボンを螺旋状にしたドリルのような近接武器。
7トッカ・シャボラーレ(生成時のみ魔力-3) :リボンから作り出したサーベル。近接武器。
8ティロ・アルカーレ(魔力-3) :リボンから作り出した弓に魔力の矢を張って射る。遠距離武器。貫通性能有り。
 bティロ・アルカーレ・ヴァスタアリア(魔力-10) :弓に魔力の矢を複数張って射る。遠距離に固まった敵の一網打尽には鉄砲よりも向いている。
 cティロ・アルカーレ・ファッシナーレ(魔力-10):複数の矢を束ねて強化した矢で射る。
9ティロ・フチーレ(魔力-3):単発式の鉄砲。遠距離武器。一発ごとに使い捨てになるため弓より連射性能に劣るが、命中率と威力は上。
 bティロ・フィナーレ(魔力-45):単発式の鉄砲を巨大化させたもの。遠距離での必殺技として使える。
10ミナーレ(魔力-3) :敵が踏んだら爆発する攻撃用の地雷を設置する。
 bレガーレ・ミーナ(魔力-3) :敵が踏んだら展開するリボンの地雷を設置する。
11レガーレ(魔力-3) :単体拘束
 bレガーレ・ヴァスタアリア(魔力-5) :広範囲・大きい敵の拘束
12レーテ・スクード(魔力-10) :リボンを網目状に張って目の前に盾を作る
13ヴィカーリオ・アルター・エゴ(魔力-15) :リボンで分身を作る。近づいてきたら拘束する。
14マリオネッタ(魔力-3/1ターン) :分身を操る。戦わせるには今のマミの技量では難しい。
15紅茶(魔力-2) :紅茶を生成して飲む。意味は無い。
16安価内容でなにか生成(ものにより消費変動・マミがよく知らないものは作れない)
・自分の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】
・他人の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】
17【連携必殺技】ジュディッツィオ・フレッチャ(魔力-40) :巨大な弓に槍を張って射る必殺技


◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv15] [射撃Lv2]


※解説
トッカ・アクレアートTocca Aculeato・・・鋭利なリボン
トッカ・スピラーレ・フレッチャ Tocca Spirale Freccia・・・らせん状のリボンの矢
レーテ・スクードRete Scudo・・・網目状の盾
(トッカTocca・)シャボラーレsciabolare・・・(リボンの)サーベルで斬りつける
ドラギナッサ・フィナーレDraghinassa Finale・・・終焉の大剣
ティロ・アルカーレTiro Arcare・・・弓での射撃
ティロ・フチーレTiro Fucile・・・鉄砲での射撃
ヴィカーリオ・アルター・エゴvicario alter ego・・・身代わりの分身
マリオネッタMarionetta・・・人形劇、操り人形
ミナーレminare・・・地雷を敷く
ミーナmina・・・地雷
ジュディッツィオ・フレッチャGiudizio Freccia・・・審判の矢、をマミ風にしてみたもの


◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv16] [射撃Lv3]

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マミのステータスレベルアップ反映前のデータを載っけてました。正しくは↑です
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 ※28日以前は前スレの最後にあります※


29日目 午前中は風見野パトロール、病院で掃除使い魔、山で毒魔女と交戦するが撤退。そろそろ残りの金が少なくなってきたので節約を考える。
    午後は公園で知久&タツヤに出会いタツヤと遊んであげた。その後マミに毒魔女のことを相談、一緒に風見野に倒しに行く。

30日目 上条出国日。空港に見送りに行った。その後昼食にみんなで例のラーメンを食べたり、さやかと一緒にお茶会したりした。

31日目 午前中にパトロール、繁華街で砂魔女と交戦。放課後は仁美と一緒にお茶会、その後夕飯まで一緒に居る。

32日目 昼休みにほむライブ、放課後はまどかの家に行った。

33日目 土曜。午前中は模擬戦、午後はパトロール。歩道橋で穴掘り魔女と交戦。

34日目 ワルプルギスの夜


○イベントとか○


エンディング一覧


BestEND 全員説得、避難成功

GoodEND 名前有の知り合い全員の説得を成功

NormalEND 一定好感度以上のキャラの説得を成功

BadEND 説得失敗。力ずくな方法で移動させようとするがパニックになり逆効果に。マミも持たず、最後には杏子が立ち向かうが全滅。

DeadEND 説得失敗、魔法を取り戻しきっていないかグリーフシードがなく魔力が50以下で魔法による説得を試みる……避難は成功するが魔女化。


小ネタ ちょい役で登場する人たちのその後とか。

・迷子さん
 夜の公園にて。テーマが重すぎるからここだけは安価でちゃんとやる。
 どちらかというとメインイベント寄り。

・孤独のグルメ
 繁華街や駅前にて。ただ買い食いして相席するだけ。重い話もないのでネタは非常に書きやすい。
 もう重い話には首を突っ込まずに普通に買い食いしてるのが一番幸せな気もする

・ほむらちゃんがけいおんでほむラップ
 まどかたちと深く関わらなかったほむらのその後。原作と全然違うことをする事に。

戦った魔女

・見滝原
銀、薔薇園、鳥かご、芸術家、落書き、お菓子、委員長、ハコ、暗闇、笛吹、影、アイドル、料理、砂、穴掘り

・風見野
針、忘却、銀(再孵)、玩具、星、人形師、虫、毒


○オリジナル魔女図鑑○

・完全オリジナル

星の魔女 ミリア/Myria
性質は後悔。
魔女と同じ見た目をした使い魔が無数にいる結界が特徴。
魔女を探し出すのが困難な反面、魔女も使い魔と同じくらいの強さしかもたない。
ターンごとにコンマで撃破率が上がっていく運試しのような魔女となっている。

生前は、友人の大切にしていた望遠鏡を壊してしまい、それを直すために契約した。
壊れた物を元に戻すのが能力。

かずみ編で風見野に登場したのが初出。
メガほむ編で風見野、なぎさ編ではあすみの居た都市の魔女として出ている。
そろそろ名前を決めてあげようということで、
「無数の」を意味するmyriad(ミリアド)から名づけたが杏子編で出した後に決めたしいつ出せるかはわからない。


毒の魔女 ラーク/Lurk
性質は孤独。
無味無臭透明な毒霧を出す。気づかれないままじわじわと身体を蝕み、最後には魂まで蝕んで侵入者を殺していく。
一本道の結界内を進むと行き止まりの部屋に出るが、実は深層はそこではなく使い魔しかいない。
実は本体は壁の奥の迷路を進んだところに居る。壁を壊して更に結界の中を進んで倒さないといけない。
攻撃方法は毒霧のみで紙防御。嵌ると恐ろしいが上手くいくとほとんど魔力を使わなくても倒せる初見殺しの魔女。
弱点は知られる事。この魔女の情報と攻略方法を知っている、もしくは生前の魔法少女をよく知っている人は迷うことなく魔女の居る場所へと到達できる。
(要するに、二回目の戦闘以降は色々と省略できます)

かずみ編が初出だけど戦ってはいない。オリ魔女は強くしない方針だったけどこいつだけは例外。
元は疑似SGとして優秀なものを作るために考え出された魔女だから攻撃方法が相当えげつない。
生前も陰湿で孤高の策略家のイメージそのままだろうなぁ。弱点が弱点だけに原作キャラが魔女化した姿とかにしても良さそうだけど。


虫の魔女
大きな蜘蛛のような魔女。攻撃方法は踏むか噛むかしかなくシンプル。
使い魔は魔女をそのまま小さくしたような感じ。じめじめとした洞窟のような結界に潜む。
結界内にはいたるところに糸が張ってある。

これも初出はかずみ編。メガほむ編では道中までで省略されている。恐らく登場する魔女としては弱い部類に入る。

○安価募集魔女図鑑○


操り人形師の魔女 マリット/Maritte

性質は支配。操り糸で人形を操りそいつで攻撃していく。
赤の蝶ネクタイとスーツを着ている。顔は真っ白。
人形に長く接触していると糸で操られてしまうが、糸で操られるのは1体だけ。複数で攻められると弱い。
結界内のイメージは舞台。人の侵入を感知した時にスポットライトが点灯し、それまで床に倒れていた使い魔が一斉に動き出す。

使い魔 ドール/Doll
魔女の操る人形。全て破壊してしまえば怖いものはない。
人形自体はただの傀儡なので、魔女がいない使い魔のみの結界の場合には動かない。


掃除の魔女 アレイラー/Aleiler
使い魔のみ登場。

使い魔 Maid
ひたすら結界内を掃除している小人。
一体一体は強くないが“ゴミ”を見つけると群がって排除に向かう。


料理の魔女 テックス/Tex
性質は向上心。
コック帽をかぶった大きな魔女。人間や魔法少女など結界内に迷い込んだものを料理する。
手に持っている包丁を振り下ろして攻撃するほか、最深部のキッチンには巨大な冷気を放つ冷蔵庫や、調味料などを攻撃に使ってくる。
魔女も使い魔も大きく、結界内もそれに合わせたサイズになっている。
魔女の料理は人間や魔法少女が食べると状態異常を引き起こす。魔女が目を離した間に料理に穴をあけたり汚したりすると慌てる。

 よく似ているので「料理人の魔女」はTexをベースにして統合。


笛吹の魔女 ハルメール/Halmeil
性質は導引。
笛を吹いて子供だけを結界内に攫って操る。
魔法少女でも年齢が低いと洗脳されてしまう。大人が迷い込むと過剰反応して排除しようとする。
ハーメルンの笛吹き男に非常に似た姿をしているが、面をかぶっておりその中身の顔は真っ白。
弱点は笛だが、壊れてもすぐに復元されるので続けて笛を壊していくか復元途中に本体を攻撃していくしかない。

使い魔 Kid
小さな子供の姿をした使い魔

鏡の魔女 ミラストレス/Mirrastrece
性質は本質。
ぴかぴかの鎧を纏い、その身体には鏡が埋められている。浮遊しながら移動する。
両手に持った大きな鏡を振り下ろして戦うほか、
鏡に映した人間の姿をコピーして混乱を招いたり、実体のない遠距離攻撃を反射することができる。
結界内は長方形の鏡が大量に浮いていて、魔女の自由に操れる。

使い魔 トゥインカー/Twinker
鋭い鏡の破片のような剣を持ち、小さく丸い姿をしている。
結界内の鏡の中を光の反射で自由に移動し、鏡から身体を出して鋭い鏡の破片で攻撃してくる。使い魔が居る鏡を壊すと倒せる。
先に近くの鏡を全て壊しておけば外に出てくるしかなくなるが、魔女が居る場合は新しく鏡を作ることもあるので注意しなければならない。


アイドルの魔女 モニカ/Monica
性質は異彩。
ふりふりのスカートを穿いたイマドキのアイドル。イメージカラーはピンク。
本体はアイドルステージのような結界の一番奥で歌っている。
魔女はめちゃくちゃ弱いが、魔女の歌が無数にいる使い魔たちに力を与え、魔法少女たちの接近を妨げる。
結界内に響き渡る大音量の音楽は集中を奪い、いつしか聴いているものの脳を完全に麻痺させてしまう。
……が、結界内のスピーカーを壊せば音楽は止み、使い魔も弱体化する。
スピーカーは魔女の左右に大きいのが二つ、後ろに小さめのが二つ。左右を破壊するだけでも大分音の効果を軽減できる。
魔女の直接攻撃は音符を実体化させた重さ攻撃のみ。名前の由来はイタリア人女優から。

使い魔 ガーディアン/Guardian
魔女の前で守る親衛隊。五人組。

使い魔 ドロータ/Dorota
有象無象。個性のない白い影のような姿をしている。
観客に囲まれ注目されることを夢見た魔女の妄想の具現化。
音楽がかかっている間は戦う意思はなく、飛び跳ねていたり踊っていたりとノリノリ。
しかし大群をなしており、魔女に近づく道を塞ぐ。


砂の魔女 サウドニュード/Saudnude
性質は無味乾燥。
砂で出来た変幻自在の魔女。捕まえるときなどは砂の塊の巨人のように変化することもある。
砂で針や武具を作って攻撃したり、砂の中に閉じ込める攻撃、砂嵐での目くらましや砂の津波など攻撃方法は多彩。
砂は非常に水分を吸収しやすく、生物は砂に取り込まれると急速に水分が奪われ最後にはゾンビになってしまう。
水分を吸収した分だけ回復するが、吸収しきれないほどの大量の水では硬く固まってしまう。セメントなどで固められるのも弱点。

使い魔 チョーヤボーイ/ChollaBoy
頭がサボテンで出来た小さな男の子のような姿の使い魔。
走り回り、侵入者に近づいて針を飛ばしたり頭突きをしたりして攻撃する。


穴掘りの魔女 ユンボ/Yumbo
性質は勤勉。工事現場のような結界に棲むヘルメットをかぶった大きな魔女。
魔女の居る最深部は穴だらけで足場が悪い。
腰に作業道具を提げており、ツルハシやショベル、ドリルなどを持ち替えて戦う。
敵がいないときはひらすら穴を掘っているが、その間は無防備。名前の由来はショベルカーの別名。

使い魔 作業員
魔女と一緒にショベルで穴を掘っている。どこか汗臭い。
侵入者を見つけるとショベルで襲いかかる。

使い魔 誘導員
ひらすら交通誘導用の光る棒を振っている。
侵入者を見つけると棒を振り回して叩いてくる。

○キャラごとの好感度・進展表

・マミ:【+10↑】パートナー/パートナー
物語スタート時から知り合い。年上の後輩。
6日目に一応の和解。7日目には一緒に魔女狩りにいくまでに関係がよくなった。
ほぼ一緒に住んでいる形となっている。

・まどか:【+10↑】友達/お友達!
未契約の候補者。一日目に結界内でQBと一緒に居るところを発見。
互いに自己紹介を済ませている。杏子にとって初めての、魔法少女だと知ってもフレンドリーに接してくれた相手。

・ほむら:【-7】未練/怖い
二日目に病院内で知り合う。
杏子は初日にほむらの名前を聞いたが、ほむらは相手のことを何も知らず怪しさとともになんか怖いなぁと感じていた。
6日目に魔法少女のことを話すと、更に恐怖が深まってしまう。
その後少しずつまどかやさやかたちの話を聞いて悪い人ではないんだろうな、とは思うもののやっぱり話しづらい印象は拭えず。

・さやか:【+10↑】応援したい/信頼できる!
フラグオン!
三日目にデパート内でまどかと一緒に居るのを見て、四日目に病院内で互いに自己紹介。
7日目、魔女に襲われて契約を迫られたところを助けてもらい好感度アップ。しかし、マミへの評価が……
11日目にてマミへの印象改善。その後は一緒に食事をしたり友人として接している。

・恭介:【+5】友達/大事な友達
四日目にてさやかがお見舞いに行ってる相手だと知る。
出来心でさやかとくっつける手助けをしようかと考えたことがある。
さやかが魔法少女に関わり、その願いを知ってからは契約の鍵となる人物だと認識。
九日目に会いに行った。それ以降もちょくちょく会いに行ってるが、あまり頻繁に会うのも変な噂が立つと自重。
三十日にアメリカの病院に入院し直すため旅立って行った。

・仁美:【+5】友人/信頼
三日目にデパート内でまとかと一緒に居るところを見て、7日目に会話。互いに自己紹介。
17日目に魔女から助け、悩みの相談に乗った。
その後もお茶会に誘ったり相談に乗ったりと交友を深めている。マミと随分仲良くなったらしい。


・巴マミ
佐倉杏子:パートナー
鹿目まどか:後輩
暁美ほむら:見たことがある
美樹さやか:後輩
上条恭介:知り合い
志筑仁美:友人

・鹿目まどか
佐倉杏子:お友達!
巴マミ:先輩
暁美ほむら:心配
美樹さやか:親友
上条恭介:幼馴染
志筑仁美:親友

・暁美ほむら
佐倉杏子:怖い
巴マミ:見たことがある
鹿目まどか:ちょっと怖い
美樹さやか:ちょっと怖い
上条恭介:---
志筑仁美:クラスメイト

・美樹さやか
佐倉杏子:信頼できる!
巴マミ:先輩
鹿目まどか:親友
暁美ほむら:クラスメイト
上条恭介:想い人
志筑仁美:親友

・上条恭介
佐倉杏子:大事な友達
巴マミ:知り合い
鹿目まどか:幼馴染
暁美ほむら:---
美樹さやか:幼馴染
志筑仁美:幼馴染

・志筑仁美
佐倉杏子:信頼
巴マミ:友人
鹿目まどか:親友
暁美ほむら:クラスメイト
美樹さやか:親友
上条恭介:友人


☆埋め恒例企画☆
ここから>>1000までに書かれた内容を今後の展開のどこかにいれるかも


 一周目準拠なので基本的に魔法少女を増やさない方針で進めていたり、
 整合性のためにおりこからは無印からしかネタを出さない予定なので、スピンオフキャラは大体が固有名詞を出さないゲストモブ扱いになっています。

 あすなろについては忘却の魔女戦とかですでに若干触れてるので多少はね?


風見野の魔法少女 >>995
 以前杏子に襲われた風見野の新人としてゲストモブ登場。後にさやかのことを聞いて募金しに来た。

コンビニで定番財布ぶちまけ >>996
 教訓的な話にして挿入。やや積極的に見えるのは、その場で話を完結させないと描写がややこしくなるから。

巴マミが触手の魔女に敗北、絶対絶命のピンチの中杏子ちゃんが颯爽と助けに入る >>997
 エッチな要素はありません。マミが顔まで触手の粘液まみれになってるだけでいたってKENZENです

かずみin見滝原 >>998
 繁華街を歩いてるのを目撃。ずっとゲストモブ扱いだったがついにしっかりと名前が出る。あすなろ編に続く……のか?

メガほむとの和解イベント >>999
 元々予定はしていたものの、実際に和解できるかは行動次第かと思います。
 いきなり好感度が上がるイベントはありませんが、今までに築いた友人関係がこっちも少しずついい方向に向けてくれるかも……

本編や外伝等の平行世界の映像が頭によぎる >>1000
 ほむらが契約してないので平行世界は存在しません。救われずに死んだり魔女になった仲間なんていなかったんや!(ミチルとユウリを除く)
 ちなみにキリカ編2のほうでそのような展開を予定しているので、見たい方はそちらのほうに期待してください。


新しい話は労力が大きいのと長いのとでちょっとそろそろモチベがあれなので、次は続編か未完結の続きでお願いします…
折角魔女も募集したしモチベが回復したらまた新主人公も募集する予定です
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○続編


1マミさんじゅうごさい:
 この世界の“その後”の小話。もはや少女ではない。
 イタリアンレストランの店長になったマミとその用心棒杏子、その他キャラの未来の小話。やっぱりほのぼの路線。
 本編から10年後を描いているが、例の作品とは無関係で設定も大分違います。

2あすなろ突入:
 ワルプルギスの夜の少し後の話。ユウリ様編リベンジのようなもの。
 杏子編本筋とは正反対の久しぶりのハードなシリアス路線……になる予定。
 杏子とマミがついに魔法少女の真実を知る事になる。例によって難易度は高く、味方キャラの生存が約束できない。

3安価
 誰か(杏子編に登場してて生きてるキャラ)と一緒に何かしたいとかいうのがあれば。
 ほのぼの系小話を予定。
 ※相手キャラの心が関わってくること(仲直りや恋愛成就など)だと実現が約束できなくなるので却下させていただきます。ご了承を。


○セーブデータ


【未完結】
・キリカ編2 【2日(土)朝 キリカ契約後翌日】
・かずみ編 【6日(水)朝 ヒュアデスの学校襲撃を翌日に予知】
・Homulilly編【二周目の世界】

【続編開始/指定場所からロード】
・ほむら編 【続編:After1後から再開。新展開】 [獲得補正:(料理)Lv2中級者 アルティメット炒め物]
・キリカ編1【続編:ワルプル後から再開。翌日へ】
・QB編【続編:ワルプル後から再開。翌日へ】  ※暫定END
・中沢編【続編:ワルプル後から再開。翌日へ】 [獲得補正:成績関係の結果+18]
・なぎさ編【続編:あすみ編後から再開。あすなろ編】


 下4レス中までで多数決

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モモ編っていうのも珍しいし面白そうですね。
モチベと時間がゆっくりとれるようになったら考えてみたいです。

暫く続編や未完結の消化かなぁ……
ちなみにキリカ編2とかは杏子編やりながら水面下でプロットつめたり書き溜めたりしてました。
むしろ連続で続けずにちょっと時間をいただけてよかったかもしれません。



それはそうと、早速『まみさんじゅうごさい』開始します
※タイトルに反してマミさんは25歳です

―繁華街


*「また助けてもらっちゃってありがとうね、杏子さん! これ、お礼に。うちの新作なの!」

杏子「ああ、また困ったことがあれば呼べよ。なにしろ日曜の昼間だ。人も多いしああいう無茶なこと言う輩も沸く」

杏子「こんな時こそこういう飲食店は頑張り時なんだろうけどな」

*「ええ!まだまだ頑張らなくちゃ!」


 ここに頻繁に来るようになったのは、あの事件のあった10年程前からだったか。

 相変わらず賑やかな繁華街だが、一度ワルプルギスの夜に壊れされてから景色はがらりと変わってしまった。


 ――――マミと別れてから3年。

 もうほとんど魔法少女として戦うことはないが、力が強いってのは意外と役立つもんだ。

 こうして繁華街をぶらぶらと歩きながら度々もめ事を解決するのが日課だった。

 そうしたら、いつのまにか今じゃ地元の有名人になっていた。

 定職はないが、そうして出来た人脈から臨時の用心棒やら力仕事やらを頼まれることも多く、今はそれで生活している。

 少々アウトローな奴らからも目をつけられることはあったが、まあそこはなんとかできている。

 そういうやつらとはあんまり派手に関わり合っても厄介だ。


 マミやまどか、さやか、仁美……見滝原中の生徒はみんな風見野中学校に転校になった。

 ほむらは東京の実家に帰ったらしく、あれからどうしているかはわからない。


 それからマミは、高校卒業後、本格的に料理人を目指して専門学校に入り調理師になった。

 そして、その後……日本で一年ほど働いてからマミは本場イタリアに修行しに行った。

 マミはあたしのことで悩んでいたようだったが、夢のためだ。あたしが枷になっちゃいけない。

 そう思ってあたしはマミの夢を優先させた。


 暫く離れることになる……でも、これで縁が切れるわけじゃない。

 更に腕を磨いて絶対にまた戻ってくる。夢である自分の店を持つということも叶えてみせる。

 ……マミはそう言って日本を旅立った。


杏子(もうあれから三年かあ……マミ、今頃立派にやってんのかな)

杏子(あたしももう24だ。でもあたしのほうは昔からほとんど変わらない)

杏子(この街で、この繁華街で、ぶらぶらとしながらなんとか生活している。……まあ別に不満はないが)


 さっきみたいに知り合いから色々ともらったりすることも多いし、金はちょこちょこと稼げてるから意外と何とかなる。

 住むとこだって、ネットカフェがあれば別に問題はない。おかげでこの三年でやっとネットや機械にも慣れたんだ。

 しかし夢……か。マミのような夢や目標は自分にはなかった。


杏子(……うまかったな。また今度伝えてやろう)


 ……腹ごしらえを終えて繁華街を歩いていると、なにやら揉めているような会話が聞こえてきた。

 どうやら女性が絡まれているようだ。


*「どうやって弁償すんだよ!」

「そ、そんなこと言われても……」


杏子(穏やかじゃなさそうだな。いっちょ助けに行ってやるか)

杏子(って、あいつは……)



・絡まれてる人(あすなろ勢を除く、杏子と顔見知り以上の関係のある女性キャラ)

 下2レス


杏子(……誰だ? 知ってる人かと思ったんだが)

杏子(いやでも、見覚えがあるような……)


 洒落た格好をした若い女性二人。

 友人同士で遊びにきていたのだろうか。


「……お、お金払えばいいんですか?」

*「で、いくらあるんだよ。……まさかはした金ちょっと渡して解決できるとは思ってないよなあ~?」

???「…………」


杏子(まあ知り合いだったとしてもそうじゃなくても、ほっとく理由にはならないな)


 近づこうとすると、黒髪の女性が喋った。


???「いい加減にしてください!」

???「クリーニング代は払います。それ以上払う義務はこちらにはないはずです」

*「なんだと? 慰謝料ってもんだよ慰謝料!知らねえのか!?ああ!?」

杏子「おい」

 声を荒げるチンピラの肩に手を置く。

杏子「その辺にしておきな。警察沙汰になりたくないだろ?」

*「なんだお前は!…………あっ」

*「たしかお前は……佐倉杏子!この辺で調子乗ってる女だ、名前は聞き覚えがあるぞ」


 ……その時黒髪の女が少し反応した気がした。

 あいつもあたしの名前を聞いたことがあるのか?


杏子「で、警察呼ばれるかぶっとばされるか……どっち?」

*「はん、調子乗りやがって!やってやるよ!女にビクビクしてられるか!そんなこと言って後で泣いても遅いんだからな!」

杏子「…………」


―――――――……

*「すみませんでした!」

杏子「で、なんだっけ? 慰謝料?」

*「そ、そんなこと言うはずないです!撤回します!」

杏子「調子のいいこと言うなぁ。……まあ見逃してやるよ。次はこっちがお前からいただくからな、『慰謝料』」

*「すみませんでしたー!」


 ちょこっとだけしめてやった。

 ……ああ、そういやさっきの女性二人はどうしたんだろう。


杏子(……なんか見覚えがあるような気はしたんだけどな)

杏子(勘違いか?)


 少し探しながら歩いていると、隅のベンチにその姿はあった。


「もー、すごいびっくりした! 見滝原ってこんなに怖いの?」

???「別に普通はそんなことはなかった……と、思うけど……」

「さすが見滝原に住んでただけあるね、ほむら。普段おっとりしてるのにやる時はやるじゃん!」

ほむら「別にそんなことはないわ。それに、ここに居たのだって少しだけよ……」


杏子(!)


杏子「お前、ほむらか!」

 下ろされた黒い長髪はストレート。眼鏡がない。

 さっきみたいにキリッとしていればクールにも見える雰囲気。

 ……それじゃ確かにわからなかったわけだ。だが確かに面影は残っている。

ほむら「…………佐倉杏子」

杏子(フルネームか)

ほむら「……さん」

 ……ほむらはあたしの顔を見ると、名前をフルネームで言った後、取ってつけたように敬称をつけるぎこちない呼び方をした。

 ……どことなく距離を感じる。もう10年は見ていないが、最後に聞いた言葉は覚えている。


――――『もうつきまとわないでください』


杏子(…………まあ、とんでもない別れ方だよな)


「ああ、さっきの…… 助けてくれてありがとうございます」

杏子「ああ、気にするな。ぶらぶらしてたついでだ」

「有名な人なんですね……もしかしてほむらも知ってる人?」

ほむら「えっ……あー……まあ…… そうね…………」

杏子「……友達か」

ほむら「大学院の友達です……今日は観光で来てて」

ほむら「夕方にはもう帰るので…………」

杏子「……そうか」


 ……大学院ってことはまだ学生なのか。

 大学ならともかく、大学院となるとなんだかイメージがわかない。


1自由安価
2大学院って何をやるんだ?
3たまにああいうのが居るから気をつけろよ

 下2レス


杏子「別にこの町だけの話じゃないが、ああいうのはたまにいるから気をつけろよ?」

杏子「ああ、それと……10年前のあの時は言えなかったが、言われた通りあの場所に居た全員救ってみせたぞ?」

杏子「まぁ、あたし1人だけじゃなくてまどかやさやかや仁美、みんなが手伝ってくれたおかげだがな」

ほむら「…………」

 気まずい雰囲気を察したか、隣でほむらの友人がおろおろとしだした。

杏子「……まだあたしのこと怖いか? 恨んだりしてるか?」

ほむら「……別に恨んではいません。すごいとは思いましたよ」

ほむら「誰かを傷つけるために“力”を振るうわけじゃないのももうわかりました」

ほむら「だたちょっと……“その異質さ”をすぐには受け入れられなかったし」

ほむら「その上ストーカーみたいだったから気持ち悪かったというか……怖かっただけよ」

杏子「…………そうだな。悪かった」

杏子「……じゃあな、もう今度こそ二度と会うことはないだろう」


 ……後ろから『えっ!?どういう関係なの!?』とか『なんか抗争とかに巻き込まれたことあるの!?』とか言ってるのが聞こえてくる。

 こうして遠くまで一緒に遊びに来られる友達もいて、あっちはあっちで全然別の世界にいる。

 今度こそ、これで……未練なく別れよう。

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ここまで ほのぼの系といいつつあんまりほのぼのしてないな、うん
次回は17日(金)20時くらいからの予定です


杏子(……あいつも10年で変わったもんだな。なんだか、変な感じだ)

杏子(そろそろ夕方か……)


「杏子ちゃん!」


 やることもないしネカフェにでも戻ろうか、なんて思いながら歩いていると、呼ぶ声が聞こえた。

 見てみれば、まどかと弟のタツヤが並んで歩いていた。

 10年経って、変わったヤツもいるが変わらないヤツもいる。

 ……まどかとはあの時からずっと同じように仲良くしていた。


タツヤ「こんにちは」

杏子「おお、二人とも一緒か。奇遇だな」

まどか「せっかくの休みだから二人で買い物に来てたの」

まどか「杏子ちゃんは?」

杏子「いつもどおりぶらぶらしてただけだよ」

まどか「じゃあ、もし暇だったらちょっと付き合ってくれないかな? 話したいこともあるし……」

まどか「ちょうどこの辺で夕飯も食べる予定だったんだ。また良さそうなところ教えてくれたら嬉しいな!」

杏子「お、そういうことならあっちにうまいラーメン屋ができたぞ」

杏子「店内も綺麗だしまどかも入りやすいと思うよ。行ってみるか?」

まどか「うん!タツヤもいい?」

タツヤ「もちろん。ラーメンなんてうちじゃあんまり食べることないから嬉しいよ」

―ラーメン屋


 まどかたちの買い物に少し付き合った後、ラーメン屋に来た。

 最近開店したこの店は、若い女の店長というのが話題になっている。チラシ配りを手伝ったこともあった。

 ……まるでファミリーレストランのような内装が初心者にもウケ、メニューもヘルシー嗜好のものが多くある。

 まどかはその中でも一番人気のラーメンを食べていた。


まどか「野菜ラーメンかぁ、こういうメニューがあるのは嬉しいね」

杏子「濃厚さやこってりさを求める時には少し物足りないけどな」

杏子「軽食にはちょうどいいくらいかな」

まどか「け、軽食なんだ……」


 あたしとタツヤは味噌だ。ギョーザとチャーハンもつけている。


杏子「ラーメンははしごするものだろ?」

杏子「……あ、食べ盛りの男子中学生には少し物足りなかったか?」

まどか「タツヤ、杏子ちゃんと一緒にはしごしてくる? わたしはこれで十分だけど……」

タツヤ「いえ、僕もこれだけつければ十分ですよ」


 タツヤももう中学生だ。見滝原中学の生徒になっている。

 『見滝原中学』といっても、リニューアル後は別物と言っていいほど外見がガラリと変わってしまっている。

 なぜか昔のほうが現代的……というよりむしろ近未来的だったというのはみんな言っているが……単に予算の問題だろうか。


杏子「しっかし、まどかが教師になるとはな」

杏子「タツヤも家に先生がいるのは助かってるんじゃねーの?」

タツヤ「英語はそうですね……」

まどか「数学とかはあんまり教えられないけどね……」


 そして、まどかは中学校の教師だ。担当科目は早乙女先生と同じ英語らしい。

 その早乙女先生は違う学校に行ったが、母親の友人ということもあり今でも連絡は取ってるんだとか。


杏子「でも生徒からの評判良いんだろ?」

タツヤ「親しみやすい先生だって友達が言ってたよ」

まどか「本当? それは嬉しいなぁ」


 まどかははじめて会った時から背も少ししか伸びてないし、体型も大して変わっていない。

 ……まあそんなことを言うと本人はしょげるかもしれないが、そんなところも生徒が親しみやすいところだろう。


杏子「そーいや話したいことってなんだったんだ?」

まどか「そうそう、この前仁美ちゃんがマミさんらしき人を見たって」

杏子「……本当なのか!?」

まどか「うん、わたしは見てないからわからないけど……」

杏子「どの辺で?」

まどか「駅のあたりって言ってたかな」

杏子「マジかよ……」


 …………マミが戻ってきている?

杏子(だとしたら、なんであたしに知らせてくれないんだよ)

 マミは今、何をしているんだろうか。


 会話/その他
1自由安価
2他には仁美は最近どうだって?
3仕事のほうは順調か?
4(タツヤに)学校はどうだ?
5さようなら

 下2レス

あげてほしかった

>>462
ちょっといつもと違う環境でやっててうっかりsage入れてた…ごめん
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杏子(……マミのやつ、戻ってきてるのが本当なら何で連絡をよこさないんだ?)

杏子(もしかしてこっそり帰ってきてあたしを驚かそうとか考えてるのか?)


 ……というより、せめてそうであってほしい。


杏子(…………一応後でメール送ってみよ)


 それだけ決めて、とりあえず気持ちを切り替えることにする。

 ……仁美か。親の事業を継いだとかであいつも最近忙しそうだったが……


杏子「他には仁美は最近どうだって?」

まどか「仁美ちゃん、前言ってた人と付き合い始めたんだって」

杏子「えっ、マジかよ。よかったじゃん」

まどか「親にも認めてもらえるようにしたいって言ってた」


 ……仁美は上条のことはすっぱり諦めて、また次の恋にいっている。

 けど、あいつは……さやかは――――


杏子「…………で、タツヤは学校はどうよ」

タツヤ「楽しいですよ。ただちょっと、授業は難しいですけど」


杏子「あー、たしかに見滝原はなんかよくわかんない難しそうなことやってそうだったからなぁ……」

まどか「わたしがいた頃ともまた結構変わってるんだけどね」

杏子「今のほうが難しいのか?」

まどか「どうだろう……英語は今のほうが難しいかも」

杏子「そういや今は小学生から英語やるんだったか……大変だなぁ。あたしは英語なんてさっぱりわかんねえよ」

タツヤ「でも部活じゃ趣味の合う友達ができましたし」

杏子「何部だったっけ?」

タツヤ「手芸部と園芸部の掛け持ちです。家でもパ……お父さんが園芸やってるから興味があって」

タツヤ「手芸部はお姉ちゃんが顧問だからちょっとたまーに顔を出す程度なんですけど」

まどか「……実はわたしと一緒なんだよね、それ。でも部活で女友達できてよかったって」

杏子「へえ~……隅に置けないな」

タツヤ「いや! そんなことは……ない、ともいえないですけど……」

まどか「えっ! どういうこと!? 好きな人でもできたの?」

タツヤ「え、いや…… まあ…………?」


 いつのまにか質問攻めになっていた。

 そんな二人を微笑ましい気持ちで見ていた。


 ……しかしやっぱりまだ食い足りないな。

 二人と別れた後にラーメン屋をはしごしてからネカフェに戻ることにした。


――――メールの画面を開く。

打ち込む文章を考えて数秒悩む。


そもそも、仁美もマミと話したわけではないらしい。

本当に見滝原に来てたのか、というのもまだわからない。


……結局、『元気か? そっちは今どんなだ?』とかそんな無難な文章を送ってメールを閉じた。


杏子(……今あっちは何時だろ。返信すぐ来るかな)


 『イタリア 時差』なんて検索窓に打ってみる。

 すると、ご丁寧に一番上に現在時刻が表示された。

 こっちは夜だが、むこうは昼らしい。


 ……少し待っていたが、返信はこない。

 布団を借りて寝ることにした。

 朝になったら返信がきているかもしれない、と思いながら。


 ――翌日の朝にメールをチェックしてみたが、マミから返信は来ていなかった。

 ネカフェの狭い個室から外に出て、また街をぶらぶらと歩く。


 マミがあっちに行ってからもたまにメールのやりとりはしていた。

 互いに今どうしてるかとか、そんなことを教えあったりして……


 ……最後にそんなメールを見たのはどのくらい前だったっけ。


杏子(……マジで驚かそうとしてたりしてな)

杏子(まあ返信くらいはよこすだろう……まだ一日経ったわけでもないし、気長に待ってみるか)


 午前から人でにぎわっていた昨日までとは違って、平日の繁華街は人通りが少なかった。

 一気にここが活気づくのは昼時だ。


杏子(……今日はあそこに行ってみるか)


 繁華街の一角にあるカフェに足を踏み入れる。

 店内はやはり混雑した様子だ。


ゆま「いらっしゃいませー……って、杏子! こんにちは」

杏子「おう、頑張ってるみたいだな。けど、学校は?」

ゆま「今日は1限だけだったから」

杏子「へー、そんなこともあるのか。大学って高校までとはずいぶん違うんだな」


 ゆまはあれから遠く離れた場所で祖父母と一緒に暮らしていたが、大学からは見滝原に戻ってきたようだ。

 ちょうど以前ほむらが住んでいたあたりのアパートで一人暮らしをはじめたらしい。

 学校に通いながらここでバイトをして、祖父母にも仕送りをしている頑張り屋だ。


ゆま「結構混んでるけど、どうする? 喫煙席でもいい?」

杏子「んー……そうだな……」


 店内を見回してみる。

 すると、見知った姿があった。やはり一人で食べている。


杏子「知り合いがいるから相席にするよ」

ゆま「そう、じゃあごゆっくりどうぞー」


 席のほうに近づいていく。

 ……が、何か作業しているらしくまだ気づく様子がない。


杏子「よう、相席いいか」

「ん」

 あたしが話しかけると、ノートパソコンの画面から目を離してこちらを見る。

 短い返事とともに手を振ってきた。


杏子「もう食べ終わったとこか?」

「ううん、まだ」


 以前から繁華街で見かけることの多かった奴だ。食べ歩きを趣味としているらしく、あれからも度々会っていた。

 最近は休日に一人でぶらついていたり、平日にはよく昼食を食いに来たりもしている。

 ……話していると、お盆を持ったゆまがやってくる。


ゆま「お待たせしました。フレンチトーストサラダ、抹茶パフェです」

杏子「相変わらず甘いものばっか食ってんのな……でもここのパフェってうまいよな」

ゆま「あれ? 杏子、この人と知り合いだったんだ。最近よく来てくれてますよね」

「ここのメニューは美味しいから」

杏子「おっ、さすがだな」

ゆま「杏子は注文決まってる?」

杏子「じゃあそうだな、カツサンドと苺のパンケーキとデラックスパフェと……あとチョコバナナパフェで!」

ゆま「かしこまりましたー」


「甘いものばっかり食べてるってのは君には言われたくないな……ていうか相変わらず昼から多いね」

杏子「食いたいものを食いたいだけ食う、これほど幸せなことはないからな」


 先に食べ終わったキリカは再びノートパソコンを開いて何かの作業をしている。

 ……たっぷりと砂糖の入ったコーヒーを一口すすり、カップを置くとこちらをじとーっと見た。


「なんでそんなに食べてるくせにスタイル良いの? 私だって好きなだけ甘いもの食べたいよー」

 似たようなセリフをマミにも何回か言われてるような……と思い出した。

杏子「スタイルって、痩せてりゃいいとは思わないけどなぁ。あたし結構筋肉ついてるしさ」

杏子「あんたのほうが羨ましいスタイルしてると思うけどな」

「えっ、そんなことないよ。結構お腹にも肉ついちゃってるし……足とか太くない?」


 キリカはそう言うと組んでいた足を戻して目線を下に向ける。

 黒いパンストに短めのタイトスカートと、もろにOLらしい格好だ。

 黒のスーツがよく似合っている。


杏子「肉はついてるかもしれんが、そのくらいのほうが色気はあるんじゃないかー?」

「色気ねえ……色気かぁ」

「それはいいかもしれないけどさ、無意味に手とか足とか触ってくるのはやめてほしいなぁ」

杏子「そんなことされてんの? あたしだったらとりあえず変なことされたら殴るけどな」

「無理だってば」


杏子「……つーか、飯時にまで仕事とか大変だな」

「そーなんだよ、大変なんだよもー」

「何も言わないと思ってなんでもかんでも押し付けてくるんだからさー、自分たちはだらだら喋ってるくせに!」

杏子「まあ、なんだかんだで信頼されてるんじゃねーの」

「真面目って損だよ。杏子のその適当なとこ羨ましいよ」

杏子「あんたも誰かと喋りながら適当にやってればいいんじゃね?」

「そういうのってあんまり好きじゃない……」


杏子(会社勤めといえば詢子さんが浮かぶが……確かにあれは大変そうだったな)


 いまだによく酒好きなのは変わらず、まどかもよく晩酌に付き合わされてるらしい。

 意外にもまどかのほうが強いらしく、やっぱりペースも早いおふくろさんがいつも先に潰れるらしいが……。


 ……こいつは前から慣れた相手にしか自分の意見をはっきりと言えないところはあった。

 まあ会社勤めが大変なのはわかるが、我慢しすぎないかは少し心配になるな。



1自由安価
2嫌なことはちゃんと言ったほうがいいんじゃないのか
3ちゃんとやってんの見てる人は見てるって

 下2レス


杏子「嫌なことはちゃんと言ったほうがいいんじゃないのか」

杏子「そうしないといつか溜まって体調とか崩すぞ」

「うーん、それはそうなんだけどね……」

「そうしたらそうしたで甘えてるみたいなこと言われるし、あんまり強くも言えなくて」

杏子「そこで簡単に下がるから言われるんだよきっと! とりあえず有無言わせず殴り飛ばす気概でいこうぜ!」

「いやいや、平和的な解決でお願いするよそこは!」

「……んーでもあんまり意地張るのもなんかね……心狭いとか面倒くさいヤツって思われるのもやだし」

「なんていうんだろ、もうキャラ? 雰囲気? とかが固まっちゃってるのかなぁ」

杏子「……まあ、そういうのは簡単には変えられないかもなぁ」

杏子「あたしでいいならストレス解消の相手になるぞ?」

「ありがとーね。じゃあまた今度の休みはまた繁華街で遊びまわろっか」

 ……こいつの遊びまわるって、大体食いまくるってことなんだけどな。


杏子「おう、あとちょっとずつでいいから社内にも味方はつけとけよ。うわべだけの友人じゃなくて、自分の味方と思える人な」

杏子「結局のところ、友人が多いってのが一番平和的に手に入れられる強さだからな」

「…………」

「私にとっては永遠の課題だね、それは」

杏子「まあそうだな……結局いつになっても、人間関係ってのはむずかしい問題だからな」


 ……キリカはそのうち昼休憩の時間も終わったらしく、バタバタと出て行った。


 ……あたしみたいに、気にいらねえヤツは殴り飛ばせるような環境なら楽だったんだろうが。

 気に入らないヤツとも付き合わなきゃいけないってのはまた神経をすり減らすんだろう。

 思えばまどかも仁美もゆまもマミも、みんなそんな環境なのか。

 あたしはたくさんの人に囲まれているようで、なんの集団に属することもなく普通の社会からも外れて一人でいる。

 もう戻りたくても戻ることなんてできないんだからしょうがない。


 もし、もう一度、仮にでも社会や集団の中に戻ることがあるとするなら…………


ゆま「ありがとうございましたー」

 レジを済ませると、ゆまがぺこりと挨拶をした。

ゆま「あ、そうそう。そういえば、この近くに新しいレストランができるらしいね」

 レストラン?

 それって、まさかマミの……?

杏子「詳しく聞かせてくれないか?」

ゆま「あぁ、私もちょっとバイト仲間との話で聞いただけなんだけど……」

ゆま「そこの角に小さなレストランがあるでしょ? そこが店を畳むとかで、もしかしたらイタリアンに変わるかもって話だけど」

ゆま「なんかでも、ちょっとトラブルが起きてるみたいでどうなるかわからないって」

杏子「トラブル……権利の問題かなにかか?」

ゆま「うーん、私も詳しいことはあんまりわからないけど」

*「千歳さーん、ちょっと手伝って」

ゆま「あ、はい!」

ゆま「ごめんね、またね杏子」

杏子「ああ」


 ゆまと別れて喫茶店を出た。


 ……とりあえず、そのレストランに行ってみるか。

 この近くの通りの角の小さなレストラン、か。

 見覚えはある。結構高めの店のようだったから、行ったことはないが……


「約束が違うわ!」

 例のレストランのほうから、女の声が聞こえた。


杏子(この声は……)


*「いやだから、書面にも書いてありましたよねぇ?」

*「話が変わったんですよ。そちらの契約はなしということになりました」

「そんないきなり……!」

*「長いこと日本にいなかったから知らないのかなぁ?」

*「見滝原は例の災害以降住民も大きく変わったし、再開発計画の途中なの」

*「もう近いうちに工事もはじめるんで」

*「そういうことで、早くあきらめてほかの場所を検討したらどうですかね?」


 ……何やら揉めた様子だった。

 少し離れたところから様子を見ていると、話が終わったらしく何か強面の奴らが出てくるのが見えた。


杏子「マミ!」

マミ「……佐倉さん」


 近づいてみると、やはりマミの姿があった。

 三年経って、服装やメイクは少し大人びたものになっている。けど、やっぱり別れたときと変わらない姿だ。


杏子「日本に戻ってたんだな」

マミ「ごめんなさい、手続きとかいろいろと忙しくって連絡もできなくて……」

マミ「もうちょっとちゃんとしたことが決まって落ち着いてから連絡しようって思ってたんだけど」

杏子「……なんかヤバいのか?」

マミ「店を始めるために必要な準備もひととおり終わって、やっとちゃんとはじめられそうって時だったんだけどね……」

マミ「いきなり再開発の計画があるから取り消しだって言われて、出て行くことになっちゃって……」

マミ「街が相手じゃ仕方ないのかしら」

杏子「でも、その土地?とかそこで営業するための権利みたいのはちゃんと手続き済んだんだろ?」

杏子「なんでそこでいきなり話が変わるんだよ」

マミ「ええ、もちろん前の権利者との取引は済んでたんだけど……」


 ……確かにあの災害――ワルプルギスの夜の襲来以降、こういう話はよく聞くようになった。

 あたしは法律なんてさっぱりわからない。

 こっちで何か雇うとしたって、当然相手だって弁護士様かなんかつけてくるだろう。

 こういうとき、何かあたしは力になってやることはできないのか……?

杏子(それこそ街が相手じゃどうしようもない……か)

杏子(再開発が法律で決まってるとなりゃ……)

杏子(いや、法律……で決まっているのか?)

 さっきマミと話していた面々を思い出す。

 たしかあいつら、どこかで見覚えがあったような……

杏子(……あいつら、斜太の奴らか?)

杏子(あんまりそういう“集団”と関わっても厄介だからとは思っていたが、見たことはある)

杏子(毎度毎度知り合いに無理言ってた奴らだ)

杏子(まともな行政が本当にそんな奴らを送るのか?)


 ……アウトロー同士の争いだったら、あたしでもなんとかしてやれるかもしれない。

 マミのためにも、そんな奴らに目をつけられたままにしておくわけにもいかない。


杏子「……マミ」

杏子「あんな奴らはひとまず気にしないでいい。今度来た時はあたしがなんとかしてやるよ」

マミ「え? でも……」

杏子「あいつらはあたしの知り合い……いや、そんなもんでもねえけど、“顔見知り”かもしれないからな」

マミ「そ、そうなの? あんな怖そうな人たちが……?」

杏子「そんなことより、久しぶりに会ったんだからいっぱい話したい気分だ」

杏子「こんなところで立ち話も目立つしさ……中、見てみてもいいか?」

マミ「ええ、どうぞ!」


 中に入ってみると、小さい店ながらマミらしい洒落た空間が広がっていた。

 装飾になにかイタリア語(分からないが多分そうだろう)で書いてある。


杏子「これなんて書いてあるんだ?」

マミ「Benvenuto……ようこそって意味よ」

杏子「へえ、なるほど」


1自由安価
2そういえば店の名前は何にするんだ?
3イタリアはどうだった?

 下2レス


杏子「そういえば店の名前は何にするんだ?」

マミ「『フィオリーレ』……開花とか、あとは月並みだけど栄えるっていう意味があって縁起がいいかなって思って」

マミ「ソウルジェムの形も花だしね」

杏子「へえ、いいじゃないか」

杏子「てっきりあたしは、また『ティロ・フィナーレ』とかいう名前でもつけるかと思ったぞ」

マミ「!!」

杏子「……おーい、マミー?」

マミ「い、いえ…………その話題はやめましょうっ、ねっ!」

マミ「生活スペースが上にあるわ。そっちも見ましょう」


 マミは少しあせった様子で階段を上がっていった。

 ……後ろから見える耳が赤い。


杏子(…………今になって恥ずかしくなったのか。やっと)


マミ「どうかしら?」

マミ「部屋は少し狭いかもしれないけど、あんまり贅沢もいってられないからね……」

杏子「生活するには十分じゃないか?」


 というか、今までネカフェで寝てたあたしにとっちゃ、足を伸ばして寝られるだけで贅沢だ。

 あんまりそういう話をすると心配されそうだからマミには言わないでおくけど。


マミ「そうね。私もあっちの寮ではもっと小さい部屋で共同生活だったし」

マミ「話したかしら? ちょうど同居人が佐倉さんみたいにすごい食べる人でね」

マミ「でもそのおかげで料理の練習もいっぱい出来たわね」

杏子「前話してたやつか。そいつも日本人でめちゃくちゃ料理うまいんだろ?」

杏子「まあ料理がうまいのはレストランの寮の人なら当たり前なのかもしれないが」

マミ「ええ、はじめのうちはその人によくイタリア語を教えてもらってたのよね」

マミ「今どうしてるかしら。そろそろ手紙も出さないとね」


 イタリアで良い思い出ができたみたいだ。

 料理の腕がどれだけあがったかも気になるな。


1自由安価
2エイミーもつれてきていいか?

 下2レス


杏子「エイミーもつれてきていいか?」

マミ「ええ、もちろん! そういえばエイミーは元気?」

杏子「前に比べると大人しくなったけど、まだ元気だよ」

杏子「今はまどかの家に預けてる。あっちの都合の良いときに引き取りにいこう」

マミ「鹿目さんかぁ、確か中学の教員になったのよね」

杏子「ああ。親しみやすい先生になってるんだってさ、タツヤが言ってた」

マミ「そういえばもうタツヤくんも中学生ね」

杏子「マミも一緒に会いに行こうぜ。まどかたちもマミに久しぶりに会えるのは喜ぶだろ」



 ――この日は久しぶりにマミといっぱい話して、マミの料理を食べて、久しぶりにちゃんとしたところで寝た。

 料理の腕は三年で更に成長していた。これなら店を開いたら、きっとその名前どおり繁盛することだろう。


 ……しかし、また翌日にあの男たちがここを訪ねてきた。


 ……朝からやかましい声が聞こえて目を覚ました。

 仕方なく下を見に行くと、やはり見知った奴らがそこにいた。


杏子「……おい、人んちの前でうるさいぞ」

*「あれー? まだ人いたんですかぁ?」

*「どうせ人もいないだろうし、もう工事に取り掛からせようかと思ってたとこなんですけどねぇ……――」

*「って、お前は!」


 あたしが奴らの目の前に立つと、驚愕する。

 奴らにとってもあたしは見知った相手だろう。それも、もうできれば関わりたくないはずの。


杏子「よう、この前は世話になったな」

*「出てけって言ってるのになんで増えてるんだよ?」

*「ここのお嬢さん、可愛い顔して本当に強情なんだから」

*「書面まで送って立ち退き命令出してるのにまだ出て行きやがらない。日本語忘れちゃったんですかね?」

*「お友達ならそろそろ大人しく聞いておかないと痛い思いするかもって伝えておいてくださいよ」

*「工事もはじまるってのにしつこく居座られると事故だって起こりかねないからねぇ」

杏子「……はん、随分とおっかねえ奴らが訪ねてくるもんだな」

杏子「今の時点で権利持ってるのはマミだろ? それがなんでお前らが勝手できることになってる?」

*「ここ見滝原は再開発計画があって、ここもその一角なの。あんたもここらへんの事情に詳しいなら聞いたことはあるだろ」

杏子「……真っ当な組織が相手ならしょうがないとも思えたんだけどな。どうも真っ当な奴らがこんなことするとも思えないんだよな」


杏子「……誰に命令された?」

*「誰も何も、もう決まってることなんだよ。それこそ無関係の人に教える筋合いもない」

杏子「……女相手に脅して土地も奪えませんでしたじゃメンツが立たない、だから強引な手段を使ってでも立ち退かせようとする」

杏子「メンツメンツって、そんなに大事かね? そんなもんのために大事な夢を壊させてたまるかよ」

杏子「お前らみたいなのって、いつもそうだろ? もしあたしがお前らをまとめて殴り飛ばしたら、どうする?」

*「殴る? あんまり調子乗ってると痛い目見るぞコラ!」

 ……男たちの一人がこちらに踏み込み、襟元を掴んで“殺意”的なものを込めて睨んでくる。

 だが、それでビビるようなあたしじゃない。

 やっぱり相手だって警察には駆け込めない奴らなんだ。それがわかるだけで十分だった。

杏子「そりゃあたしもあんたらみたいのと全面抗争とかはさすがにヤだったんだけどな」

杏子「今回ばかりは喧嘩売ってきたのはそっちだからな」


 ……近くに来ていた奴を一発殴り飛ばしたところでマミがこちらに来た。


マミ「ストーップ!ストップ!ストップ!」

マミ「ここ道端だから! 警察来ちゃうから!ね!」

 男どもはざわざわとしている。

 そりゃ、あの一発で身長190を超えるかというくらいの大男が数メートルも吹っ飛んだのだから。

杏子「あー、そうだな。警察が来たらあいつらも困るだろうしな……? まあもみ消すんだろうけど」

杏子「そーいうわけだから、立ち退きは拒否するし、あたしが居る限りお前らの強引なやり方にも一切応じない!」

杏子「お引取り願います」


 ……最後ににっこりと言うと、男たちはたじろいで去っていった。

 とりあえず、まずは一難去ったようだが…………


杏子「……マミ、悪い。敵増やしたかもしんねえ」

杏子「あたし頭とかよくないからさ、こういう立ち向かい方しかわかんねえんだよ」

マミ「いいのよ、ありがとうね……」

マミ「むしろああいう相手だと、正論だけじゃ通せないと思うから。きっと間違ってはいないわよ」

杏子「そうだな…………」


 しかし、これからここを空けておくのは問題がありそうだ。

 せめて誰か一人はついていないと、さっき言ってたみたいに誰も居ない間に工事を始められたりしたら堪らない。


杏子(……大元はどこのどいつなんだ?)

杏子(あいつらに聞いても『決まってることだ』の一点張り。まあさすがに言いたがらないよな……)

杏子(いっそ斜太興行にカチコミにでも行くか?)

杏子(いや、一組潰したなんてことになったら裏社会のほかの奴だって黙ってない。あそこと繋がりのある組織もまだあるしな)

杏子(なにより、この店やマミが目をつけられるのは避けたいことだ)


マミ「朝ごはんにしましょう」


 ……やっぱり考えていても仕方ない。

 中に戻って朝食をいただくことにした。


 エッグベネディクト、というのだろうか。喫茶店でしか見たことのないようなメニューが出てきた。

 マミらしいというか、欧米らしい朝食だ。暖かい飯が朝から食えるのはありがたい。


杏子「なあ、そろそろ開店しねえの? 結構準備万端に見えるんだけど」

マミ「それはそうなんだけど……でもまたあの人たちが来て変な問題起こされたらって思うと……」

杏子「そういう時のための用心棒だろ?」

杏子「さっきもはっきり言ってやったしな。あたしが居る限り立ち退きには応じないって!」

マミ「そうね……そうだったわね!」

マミ「なら、食材も仕入れてこなくちゃ。それに宣伝とかもしたいものね……」

杏子「暇そうな人呼んでチラシ配りでもやらせようか?」

マミ「ありがたいわ。じゃあ、朝食が終わったら早速出かけてこようかしら」

杏子「おう。留守は守っとくよ」


 会話/行動/その他
1自由安価
2ところでメニューはどんな感じなんだ?
3メール/電話/ネット

 下2レス


杏子「この店だけど、マミ1人で切り盛りするのか?」

マミ「ええ、最初はそのつもりよ。一応店内に張り紙とかして募集もするつもりだけど……」

マミ「やっぱり、一緒に働くなら私の料理を知っている人がいいなぁって思うから」

杏子「そっか、でもあたしは用心棒だし料理は食う専門だしなぁ……」

杏子「1人で負担になりそうなら誰か探してきてもいいぞ」

マミ「ありがとうね。佐倉さんの知り合いなら信頼できるわ」

杏子「ところでメニューはどんな感じなんだ?」

マミ「確かここに…… あった。これよ」


 ……メニューにはマミの得意料理が並んでいる。

 これを普段から食べたことがあるというのはどこか優越感がある。

 もちろん見たことのないもの……それどころか聞いたこともない料理もある。

 マミの解説を聞くと心が躍る。メインからデザートまで、あっちでまた新しい得意料理を身につけてきたみたいだ。


杏子「それじゃ、気をつけてな」

マミ「ええ、そっちも」


 ……マミを下まで見送って、二階のソファに腰掛けた。


杏子「アイツラがあそこまで大きく動いてるってことは、行政側にヤツらとつるんでるのが居るのか?」

杏子「街の行政とか詳しいのは……仁美か?」


 巻き込みたくはないが、大元をつぶさないとどうにもならないのは確かだ。

 ここいらの再開発について詳しいかどうか、詳しいやつを知ってるか連絡を取ってみるか。


 ……仁美にメールを送ってみると、少ししてから電話があった。


仁美『どうしました?』

杏子「仁美、今から話せるか?」

仁美『長くなるならまた夜に時間をとりますが……それともいますぐに話したほうが良さそうですか?』

杏子「……そっちは今どのくらい時間を取れる?」

仁美『そうですね……急用が入らないとも限りませんが……』

杏子「忙しそうか。そうだな……じゃあとりあえず用件だけ言っておくよ」

杏子「見滝原の繁華街の再開発計画について詳しく知らないか? もしくは、詳しい奴を知っているとかでもいい」

仁美『再開発計画ですか……聞いたことはあります。なにせ、あの大災害から街の状況がいろいろと変わってきてますからね』

仁美『なんでも、店主が行方不明のままになった店もあるとかで』

仁美『その事がなにか佐倉さんと関係が? また知り合いがなにかトラブルにでも……』

杏子「……まあそんなとこだ。じゃあ、詳しいことはまた夜話そうか」

仁美『はい。では夜21時に見滝原駅前で待ち合わせで大丈夫でしょうか?』

杏子「わかった」


 ……通話を終了した。

 そのくらいになったらマミも戻っているだろう。

 本当ならマミも連れて行ってやりたいが、どちらかは残ってないといけない。

 マミもいくらなんでもその時間には帰ってくるだろう。


―――

―――
―市場


マミ「ふう……いいものが買えたわね。料理するのが今から楽しみだわ」

マミ(いろいろあったけど、やっと店を開ける……これも佐倉さんのおかげね)

マミ(本当ならもっと早くに相談しておくべきだったのかも……)


 ――マミが人気のない路地に出たときだった。

 ジリ、と気配が近くなる。その瞬間、背後のごく近くから手が伸びた。


マミ「――!」

-------------------------
ここまで
次回はできれば24日(金)20時くらいからになります
できない場合は前日に連絡します

-------------------------
24日はできそうにないので、
次回は26日(日)15時くらいからの予定になります


 ――マミが伸ばされた手を掴んで引いた。

*「っ!? いででででで!」

マミ「またあなたたち!? こんな直接的な手段まで使うなんて信じられないわ……!」

*「なんなんだこいつらは!揃いもそろってゴリラかなんかか!」

*「ああ、そういやあパンチで人が吹っ飛んだときも時もぜんぜん驚いてなかったし……!」

マミ「妙齢の女性をゴリラ呼ばわりなんてひどいじゃないの!」


 そして、腕を掴んだままぐいっと引っ張って地面に投げた。

 ……マミは仮にも(元)魔法少女である。しかもその格闘技術は杏子から習ったもの。それを彼らは知る由もない。


マミ「そういえば最近運動不足だったのよね……久しぶりに格闘訓練の相手にならない?」

*「格闘訓練だと!?」

マミ「そうよ、男ならきっちり勝負をつけるべきだわ。私が勝ったらもう手を引いてくれる?」

*「お、俺が勝てば立ち退くんだな!? 負けた後で自分は女だからやっぱり勝負なんて関係ないとか言うなよ!」

マミ「あなたが勝ったらもう好きにしたらいいわ。もとよりそのつもりでしょうしね」

*「よし……!じゃあどっからでもこいよ!」

--------------------------
始めて早々すみませんが、
急用が入ったので数時間ほど抜けます

始まっていきなり中断っすか!?
慌てずに急用済ませてきてくださいな

それにしても『元』魔法少女かぁ・・・マミさんも年取ったんだなぁ(禁句
このマミさんならアラサーにはならない・・・のか??

ゴリラといったら森の聖人マウンテンゴリラを思い出すな
青竹握りつぶすぐらい握力あるけど


マミ  魔力[100/100] 状態:正常

◆ステータス

[魔力コントロールLv5] [格闘Lv20] [射撃Lv4]


チンピラ  魔力[0/0] 状態:正常

◆ステータス

[格闘Lv8] [射撃Lv2]


 変身はさすがにしない。けど、危なくなったら多少魔力は使う。

 そう決めていたのだが、結局魔法を使うことはなかった。

マミ「しっ!」

*「!」

 ……マミの格闘は、喧嘩というよりも獲物を『狩る』動きであった。

マミ「なにこれ……ナイフ?」

マミ「やっぱり卑怯なんだから!」


 マミがナイフを手から奪い、顔面をハイキックで足蹴にする。


マミ(ああ、やっぱり……)

マミ(――格闘って楽しいわね!)


 マミの優勢は変わらない。――が、そのとき、マミの足元から血が噴出した。


マミ(!? 銃……!?どこから)

マミ「っ!」

 なんとか体勢を立て直し、少しだけ魔力を込めて重めの一撃で少々強引にチンピラをノックアウトする。

 辺りを見回すと近くに車がとまっていた。元々は押さえ込んでどこかへ連れ去る予定だったのだろう。

 窓が閉まり、走っていく。

マミ「あいつね……!」


マミ(やっぱり……佐倉さんは“顔見知り”と言ってたけど、こんなの絶対フツウじゃない!)

マミ(……どこに向かうつもりなのかしら?)


 マミがソウルジェムを手中に具現し、小型の銃を作って車に撃ち込む。


マミ(……とりあえず、“お返し”に一発あげましょうか)


―――

―――


 時計を見る。

 昼から出て行ったのに、もう窓から見える景色は暗くなっている。

 そんなに遠くに行くとは聞いていなかったはずなんだけど……

杏子(……いやに遅いな)

杏子(仁美との待ち合わせが21時……駅前ならここから歩いて数分ほどの場所だが)

杏子(マミ、まさかなんかあったのか?)


 そんなことを考えていると、階段下のほうからマミの声がした。


マミ「ただいま。遅くなっちゃったわね」

杏子「マミ、無事だったか! あいつらになにかされたんじゃないかって心配だったんだぞ」

マミ「……襲われたわ」

杏子「なっ!」

マミ「けど、心配ないわ。これでも私だって元魔法少女だもの」

マミ「きっちりやり返してきたから」

 誇らしげに言うマミにホッとする。

 ……ああ、やっぱりあたしの弟子だ。

銃で撃たれた時点でもう警察沙汰だよね、これは


杏子「そうか、よかった」

マミ「……でも佐倉さん、顔見知りって言ってたわよね? 一体前にどこで会ったのよ」

マミ「だってあの人たち、どう考えても…………」

杏子「……ああ。前にも知り合いから相談されたことがあってな」

杏子「あん時もとんでもないこと言って困らせてたんだ」

杏子「で、ボコしたんなら何か聞き出せたりは?」

マミ「もう手を出さないでって約束した決闘は、一応勝ったのよ」

杏子「……じゃあもう大丈夫なのか?」

マミ「わからない…… 途中で横やりが入って、急いで伸しちゃったし」


 そう言ってマミが足に視線を移す。


杏子「ちょっ、おい! 大丈夫かそれ」

マミ「お気に入りのストッキングだったのにねえ」

杏子「いやいやそこじゃねえだろ」

マミ「完全にとはいかなかったけど、治しておいたわ。これからって時に動けなきゃこまるものね」


マミ「でも一応収穫はあったわよ。逃げて行った車を追跡してみたら、その車はある建物の前で止まったの」

マミ「遅くなったのは、そこを見張ってたからよ」


 そこまで話すと、マミは伸びをしてソファに深く腰掛けた。


マミ「格闘も魔法も久しぶりで疲れたぁー…… けど、一人で悩んでた時よりは楽かも」

杏子「……これから仁美と会う約束をしてるんだ。あいつならそういうの詳しいかもと思って」

杏子「仁美をここに連れてきてもいいか? 久しぶりに夕飯も一緒にどうかな」

マミ「ええ、それはもちろん大歓迎よ。久しぶりに会ってみたいし、協力してくれるならそのくらいのお礼はしたいわ」

杏子「じゃあ、待ち合わせの場所に行ってくるよ」


 ……そういや、帰ってきたマミを初めに見たのは仁美なんだっけ。

 マミを見たら仁美はどんな反応をしてくれるだろう。


 ネオンの光る繁華街を抜け、駅のほうに進んでいく。

 ……人がごった返す中、仁美の姿を探していると、声をかけられた。

仁美「佐倉さん、こんばんは」

杏子「おう、もう来てたか」

仁美「例の件については少し調べておきましたわ。詳しいことはどこかで食べながら話しましょうか?」

杏子「予約とかってもうしてあるのか?」

仁美「いえ、あまり高いお店って好まないでしょう? それに、当日だとなかなか空いているところがないかと思いまして」

 仁美は仕事帰りらしく、いつも以上にお上品に整った格好だ。

 いつもどおりパーカーにGパンのあたしが隣に並んでいるのは、傍から見ればすごいギャップだろう。

 前に高級そうな店にも連れて行ってもらったことはあったが、きっちりしすぎているというか、飯はうまいがどこか落ち着かなかった。

杏子「なら、いいレストランがある。連れて行ってやるよ」

杏子「まだ開店前だけどな」


―イタリアンレストラン『フィオリーレ』


杏子「ここだ」

仁美「あら、雰囲気の良さそうなお店。でも意外ですわね、佐倉さんが選ぶところにしては落ち着いた雰囲気というか……」

杏子「似合わねーってか? ま、“あいつ”の趣味だからな」


 『“あいつ”?』と聞き返したところでマミが降りてきた。

 その姿を見て、仁美が手を口に当てて驚く。


マミ「いらっしゃい」

仁美「巴さん! やっぱり帰ってきてたんですね! ということは、ここは……」

マミ「私のお店。まだ開店前だけど」

仁美「わあ、おめでとうございます!」

マミ「ええ、でもまだ手放しでは喜べない問題があって……」

杏子「……それが今日仁美に相談した件なんだ」

仁美「まあ……」

マミ「とりあえず、そこ座って? 折角だから、食べながら話しましょう」


仁美「驚きましたわ。いいレストランって、巴さんのお店だったなんて」

仁美「じゃあ、やっぱりこの前見たのも巴さんだったのね」

杏子「ああ、その話ならまどかから聞いたよ。あたしも昨日再会したばっかでさ、その時は驚いた」


 テーブルで話しながら待っていると、暫くしてマミがお盆を持ってやってくる。

 マミの料理もさすがに気合が入っている。


マミ「お待ちどうさま。さっ、食べましょうか」

仁美「わあっ、美味しそう。いただきます」

杏子「マミの料理、三年で更にうまくなったよな!」

マミ「そう言ってもらえてよかったわ」

マミ「志筑さんは雰囲気が変わったわね。大人っぽくなったっていうか……」

仁美「こういう格好をしているからですよ。それも最初はちょっと違和感がありましたが」

マミ「そうかしら? 似合ってるわよ」

仁美「巴さんも大人っぽくなったと思います」

マミ「それも格好のせいかしらね」


マミ「佐倉さんは雰囲気変わってないわよね」

杏子「まあそりゃなー……みんなみたいに身の回りの環境とかほとんど変わってないし」

杏子「洒落た格好もスーツとかも着ることねーもん。化粧もしねえし。ま、これが一番楽でいいんだけどな」

仁美「確かに佐倉さんがこういう格好してるのは……あまり想像できませんね」

マミ「でもむしろ、変わらないでいてくれてよかったかな」

マミ「なんていうか、安心したから」

杏子「マミだって大して変わってねえよ。だからあたしも安心した」


 まずは折角の再会だ。話したいこともたくさんあるだろう。

 楽しい話題に花を咲かせることにしていた。



1自由安価
2そういや仁美、彼氏できたらしいな?
3例の件の話に移る

 下2レス

↑+2
店の名前も洒落てるだろ?
アタシはてっきり『ティロ・フィナーレ』って名前かと思ってたんだけどな(ニヤニヤ


杏子「そういや仁美、彼氏できたらしいな?」

仁美「あら、もう聞いていたんですね」

マミ「えっ、そうなの? どんな人!?」

杏子「社内恋愛だよな~? あたしらは前から聞いてたんだが」

仁美「はい。立場でいえば部下になるんですけど、歳は同じなんですよ」

仁美「初めて見た時から気になってて。とても気配りの出来る人で」

マミ「へえ~、いいなぁ」

 さすがにマミはこういう話には食いつきがいい。

 けど、その割に昔からマミには浮いた話がないんだよな。

杏子「そう言うマミはどうなんだよ」

仁美「気になりますわね。イタリアの方はとても紳士と聞きますし」

マミ「彼氏? 一応居たわよ?」

杏子「どういうことだおい! 聞いてねえぞ!?」

マミ「佐倉さんはそういう話題は好きじゃないかなと思って」


杏子「いや……にしてもなあ」

マミ「初めから憧れてたのよね……付き合うなら外国人だろうって」

杏子「しかし、『一応』って言い方が気になるな」

マミ「最終的には夢を優先したいし、遠距離じゃ難しいかなっていうことになって」

マミ「まあお互いいい思い出にはなったから」

仁美「ひどいですわ、遊びだったのですね!」

杏子「心を弄んだんだな!?」

マミ「いやいやいや! ちょっと待って! 違うから!」


 ……やばい。

 なんか、知らないうちにマミがあたしを置いて大人の階段登ってる気がする……!


マミ「さあ! 今度は佐倉さんの番ね」

仁美「実は佐倉さんも爛れたお付き合いを!?」

杏子「えっ……あたし?」



1あるわけないだろ
2実は……
3自由安価

 下2レス


この話の杏子にはそういう相手というか出逢いがあったとは想像できないなぁ


杏子「あるわけないだろ」

杏子「あたしみたいなまるで野生児みたいな女がいっしょにいたら相手の奴も困るだけだろうし」

仁美「もったいないですわ。そんなに謙遜なさらなくていいのに……」

マミ「そうね……着飾ればなかなか、いや大分イイと思うわよ?」

杏子「あれだろ? 豚にも衣装ってやつだろ?」

仁美「それはなにか混ざってますわ…… じゃなくて、むしろ逆ですよ!元がいいからですって」

マミ「お化粧は私がやってあげるから! 服は私の服を貸しましょうか?」

杏子「いやだからマミのはサイズ合わねえって」

マミ「そうよね……佐倉さん細いものね。三年経っても変わらず。いいなぁ」

 ……この流れはつい昼にもあったような。

仁美「やっぱりここは私の行きつけのお店に連れていくしか」

杏子「そんなことしないでいいよ、結局この格好が一番だしさ。やっぱそういうのに金かけるより食い物に金かけたいね」

仁美「……そう言うわりに、いつも指輪はされてるんですよね」

仁美「色違いですけどお揃いですよね。綺麗だなって思ってました。やっぱり巴さんのプレゼントなんですか?」

マミ「ま、まあそんなところね……」


杏子(あたしらの周りで魔法少女が増えてないからいいが……)

杏子(ちょっとひやっとしたな)

杏子はカッコいいからなぁ
そのうえ面倒見がいい姉御タイプだから、同姓から惚れられてもおかしくはない
まぁ杏子自身その気があるとは思えないけど杏子も24、ちょっとは焦りが出始めてきててもおかしくはない


杏子(謙遜もなにも、事実だろ……外見だけ着飾ったって中身は変わらない)

杏子(……いや、それもそうだけど)

杏子(そもそもまともに結婚すらできないのにあたしなんかに惚れる奴がいたらかわいそうじゃんか)

杏子(…………この店は水までうまいな)


 ご飯を食べ終えて水を飲みながら考える。

 やっぱり色恋沙汰は他人のだけで十分だ。それで幸せだっていうならあたしもいい気分になれるから悪くない。

 けど、自分のこととなれば絶対に幸せな結末にはならない。今までどおりうまいものでも食って暮らしてるのが一番幸せだ。


仁美「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

マミ「それはよかったわ」

仁美「開店したらまた来ますね」

杏子「店の名前も洒落てるだろ?」

仁美「フィオリーレと書いてありましたっけ?」

マミ「ええ。イタリア語で開花とか栄えるとかそういった意味があるの」

仁美「いい名前ですね」

杏子「あたしはてっきり『ティロ・フィナーレ』って名前かと思ってたんだけどな」

仁美「ティロ・フィナーレ? いったいどういった意味でしょうか?」

 ……あたしのにやにや顔に仁美は気づく気配がない。

 しかし、マミは露骨に反応して冷や汗を流している。

マミ「えっ! さ、さあ、どんな意味だったかしらー……」

仁美「あら? 巴さん、額に汗が」

マミ「えっ?いや、なんか暑くなってきたわね。あははは」

杏子「まだ2月だぞ」


 ……『ちょっと!佐倉さん!』などと実に5,6年ぶりのテレパシーが聞こえたがあたしはなんのことかわからない。


仁美「またここに来るためにも……この件はなんとかしないといけませんね」


 仁美がバッグから何かの資料のようなものを取り出す。

 今までの楽しそうな表情から一変、真剣な表情になる。


仁美「そろそろ本題に入ろうと思うんですが……これが見滝原の再開発について調べたものです」

マミ「忙しい中ありがとう、志筑さん」

仁美「……『見滝原市の再開発』と一口に言っても、地区ごとに分かれているみたいで」

仁美「住宅地のほうなんかはクリーンにやってみるみたいなんですけどね」

杏子「やっぱ繁華街は真っ黒なのか?」

仁美「見滝原の繁華街は、昔からある暴力団の縄張りで……元々クリーンとはいえないところがありますからね」

仁美「今回の再開発でも当然黙ってはいないでしょう」

マミ「……これ、やっぱりおかしいわ」

 マミが資料を指して言う。
 
仁美「おかしい?」

マミ「ええ。今日あの車が行った先の……『犬枯建築』の名前がどこにも載っていないんだもの」


杏子「もろに怪しいな?」

仁美「……そこの悪評は聞いた事がありますわね」

仁美「確か暴力団がバックに居るという噂は聞いた事があります」

仁美「再開発事業に表立っては関わっていないとしても、どこからか一部の事業を委託されているということでしょうか……?」

マミ「こっそり、ね」

杏子「政府に悪い奴がいるのか、ここの補助団体のうちのどっかが悪いのかってところなのかな」

杏子「マミ、あとはなんかわかったことはあるか? この資料を見てでも、張ってた時にでも」

マミ「建物に入っていく人や、出てくる人の顔は見たわ……私には顔を見ただけじゃ誰とかはわからないけど」

マミ「やたらと良いスーツを着ている人は居たわね」

杏子「じゃあそいつが悪者だろ! そいつボコそうぜ!」

マミ「そんなことしたらこっちがお縄よ」

杏子「でも納得できるかよ? マミは襲われて拉致られそうになって、鉛玉までもらったってのに」

仁美「そんな……! 大丈夫だったんですか?」

マミ「ええ、なんとかね。私たちが格闘やってたの知ってるでしょ?それで撃退しちゃった」

仁美「でも、銃なんて!」

マミ「大丈夫。普通に歩けるし、傷も深くないから」

仁美「なら良いのですが……いいえ、良くはありませんわね……」

仁美「でも、それを訴えたところで、トカゲのしっぽ切りのように末端の人間が捕まるだけ……でしょうか」


 ……悪者ははっきりしてきたんだが、あと一歩、こっちに追い詰める決定打がない。

 今のところはこんなもん……か?


1自由安価
2さようなら

 下2レス


杏子「いや、でもなぁ……発砲事件だぞ。襲われたってだけでも激ヤバなのに」

杏子「なんか、警察の中に信頼できる人とかいないの?」

マミ「……でも」


 マミが少し言いにくそうに何かを言い返す。

 ……それからテレパシーが来た。

マミ『魔法で治しちゃったから、傷口を見せたりしたらちょっと不自然に思われるかも……』

杏子『……なるほどな。じゃあ誰か銃声とか聞いてないのか?』

マミ『サイレンサーが付いていたんでしょう……銃声はごく小さなものだったから』


仁美「なにせ、長い間暴力団と共存していた街ですから」

仁美「警察といっても組織ですし、一人だけではどうにもならないかと……」

杏子「……とりあえず、その犬枯建築だっけ?そこに入っていった身なりの良い奴の正体を暴きたいな」

杏子「行政に関わって奴で連中とつるんている奴がいそうだからな」

杏子「そういえばマミ、ここの前の持ち主って今どこにいるんだ?」

杏子「その人から契約の事とか何か話聞けないのか?」

マミ「地方に行くとかって話だったけど、連絡の手段はあるわね」

マミ「そっちと少し連絡を取ってみましょうか」


 ひとまずそう答えを出して、仁美とは解散となった。

 ――――事件のことも考えつつ、マミは開店のための準備を進めていた。

 自分の夢を追っているマミはいきいきとしているようだ。

-----------------
ここまで ほのぼの(大嘘)

次回は27日(月)20時くらいからの予定です

――――それから、ついに開店の日。


マミ「佐倉さん、そっちのテーブル持ってってあげて」

杏子「はいよっ!」


 ゆまから暇そうな人を紹介してもらってビラを配ってもらったりと、宣伝にも少しは力を入れている。

 そのおかげか、一番忙しいだろうディナーの時間にもなると、店内はそこそこ客が増えてきていた。

 ……あたしも店内で簡単な手伝いをしつつ、様子を見ている。


杏子(……今のところ変な奴は来てないようだが)

杏子(おっと、あいつは……)


 カラン、と扉が開くのを知らせる音がする。



・知り合い誰か
 ※あすなろ勢とほむらを除く

 下2レス


マミ「いらっしゃいませー」

杏子「ようっ」

 知り合いに合うとは思ってなかったからか硬い表情をしていた。

 あたしが迎えに出ていくと、キリカは目を丸くした。

キリカ「あ……奇遇だね」

杏子「何名様?」

キリカ「へっ? 一人だけど……何? バイトでもしてんの?」

杏子「いや? 正社員だ」

杏子「……よな?」

 ……マミに確認を取る。

マミ「ええ」

 マミがにっこりとしながら言う。キリカは更に目を丸くしていた。

 ……そして、きゅっと両手を掴んでくる。

キリカ「杏子……おめでとう! いつもなんか適当に暮らしてるみたいだったけど、就職先見つかったんだね!」

杏子「いやまあ、前からちょっと約束はしてて、決まってたことなんだって。大げさに言うなよ」


杏子「ほら、テーブルかカウンターか。一人ならカウンターでいいか?」

杏子「あと折角だからマミともしゃべっていけよ」

マミ「見たことはあるけどあまり喋ったことはなかったわよね。よろしく」

キリカ「あ、うん。どうも……」

 ……相変わらずあまりしゃべったことない人相手だと緊張するんだろうか。

 さらに手に力が入ったのがわかる。しょうがないので掴まれたまま案内していくことにする。

 しかしこの手、外から来たからしょうがないとはいえ結構冷たい。

キリカ「……なんか君、いつでも手あったかいね。寒い時には丁度いい」

杏子「カイロ替わりじゃないぞ。これで暑い時には鬱陶しがるんだからひどいよな」

マミ「メニューはそこにあるわ。決まったら声をかけて」

キリカ「はーい。 何にしようかな……」

マミ「開店初日なので少しお安くなっております」


杏子(マミの営業スマイル……イタリアで身に着けたのか?)

杏子(キリカはメニュー見ててマミのほう全然見てなかったのが若干虚しいが)


 会話/その他
1自由安価
2おすすめ品について
3最近どうよ?

 下2レス


杏子「あたし的におすすめなのはあれだな、昨日の昼食ったやつ。貝の」

マミ「ペスカトーレ?」

キリカ「ペスカトーレ……! おいしそうかも。あとは、サイドメニューは……」

キリカ「デザートにティラミスも欲しいかなぁ」

杏子「しかしあれだな。一番のおすすめは、やっぱ紅茶だ」

キリカ「あ、開店セールで一杯無料ってやつ」

杏子「それ提案したのあたしなんだよ。一度飲んでもらえば絶対リピーターつくと思って」

杏子「デザートのお供にもぴったりだろ?」

キリカ「紅茶の美味しいイタリアンかあ」


 ……メニューが決まったようだ。

 いつも三人になってもあまりマミとは話そうとしなかったが、やっぱり食事関係だと自然に話が弾みやすい。

*「すいませーん」

マミ「はーい」

 それからまたもう一つ注文が入り、マミは調理に忙しそうにしている。

 ……こっちは少し暇になったので、待つ間キリカの隣に座るとする。


杏子「最近どうよ?」

キリカ「忙しいのは相変わらずなんだけど……少しはマシになったかなぁ」

キリカ「一応、言ってみたんだよね…………触らないでって」

杏子「おお! 一歩前進したんじゃないか?」

キリカ「うーん、だといーんだけど」

キリカ「その分当たりが強くなった気がする今日この頃……」

杏子「腐ってんな……」

杏子「あとは……この寒い時期だしもうちっと長いスカートにしても良いとは思うけどな」

杏子「案外別嬪さんだからみんな目のやり場に困ってるんじゃね?」

キリカ「その冗談はやめて。ていうか別嬪て、一体あんたはいくつだ……」


 ……適当に話していると、マミがカウンターに料理を運んでくる。


マミ「はい、おまちどうさま」

キリカ「わあ、すごい」

マミ「あ、あっちのお客様の皿下げてきてあげて」

杏子「はいよー」

杏子「キリカ、この後もうちょっと時間あるか?」

キリカ「うーん、少しなら」

杏子「あたしもこれでも“勤務中”だからな。せっかくだから後でもうちょっとゆっくり話そう」


 ……覚えたての言葉を使うような誇らしさと気恥ずかしさ。

 そうか。あたし、これから一応正社員なのか。


 ……ピークの時間を過ぎると大分落ち着いてきた。

 テーブルの片づけを終えてカウンターのキリカの隣に戻る。


キリカ「紅茶美味しいね……今まで飲んだ中で一番かも」

マミ「そう言ってもらえると嬉しいわ」

キリカ「それに、料理もすごく美味しかった。ごちそうさま」

杏子「さて、もう大分すいてるし話すか」

マミ「二階行ってくる? あとは多分一人でも大丈夫そうだから」

杏子「じゃあそうするか」


 ……会計を済ませて二階に上がった。


キリカ「あ、二階はこんな感じなんだ」

杏子「意外とふつうの部屋だろ?」

キリカ「もしかして住み込み?」

杏子「まあそうだな」

キリカ「じゃあ就職と同時にネカフェ難民も卒業できたんだね!良いとこに就職先が見つかったみたいでお母さん嬉しいよ」

杏子「誰がお母さんだ誰が……」

杏子「……ただまあ、ちょっと今問題はあるんだよなぁ」

キリカ「問題?」


杏子「なんか怪しい奴らが喧嘩ふっかけてきてる」

キリカ「……それこそ君がいつも言ってるみたいに殴り飛ばしてしまえばいいんじゃ?」

杏子「どうもそういうわけにもいかなくてなあ」

杏子「再開発とか言って行政名乗って土地奪おうとしてるんだ。こっちでちゃんと契約が済んだ後だってのに」

キリカ「大変だね……どうするの?」

杏子「そりゃマミのためにも泣き寝入りはしたくない。一番悪い奴見つけて最終的に叩きのめす」

キリカ「らしい答えだね……」



 会話/その他
1自由安価
2誰かにつけられたりしてないか
3一応聞くけど、再開発や行政に詳しい知り合いはいるか?

 下2レス


杏子「でさ……まあ、もちろん今話した件がキッチリ片付いてからの話なんだけど」

杏子「もし今の職場がイヤで転職したいとかいう考えがあるなら、ここで一緒に働けないかなって」

キリカ「えっ? いや、でも……」

杏子「多分マミに頼めばなんとかなると思うんだよ。あいつだって一人じゃきついだろうし」

杏子「配膳係も意外と何とかなるもんだぞ? あたしでも出来るくらいだしな」

キリカ「バイトとかは雇えないの?」

杏子「いやまあ、そうだな……配膳だけならそうかもしれない」

杏子「けど材料の仕入れとか、あとは裏方のほうの難しい仕事が出来る人がいたらマミも助かるかもしれないしさ!」

キリカ「……気持ちは嬉しいけど私はいいよ」

キリカ「まだ入社してからも短いし、今の会社も何十回も失敗してやっと決まったとこなんだ」

キリカ「忙しいし大変だけど、全部が苦しいだけなわけじゃないから」

杏子「……そっか」

キリカ「……大変そうだけど、頑張ってね。まずは悪い奴叩きのめさないと」

杏子「そうだ、一応聞くけど、再開発や行政に詳しい知り合いはいるか?」

キリカ「いや……私はちょっとそういうのはわからないな」

杏子「だろうな。……あんまり遅くなるのも明日に響くよな。気をつけて帰ってくれ」

キリカ「うん。じゃあまたね」


 ……階段の途中でキリカが何かを思い出したように振り返った。


キリカ「あっ、今度の休みって無理そう?」

杏子「日曜が休みって言ってたな」

キリカ「わかった! じゃあまた日曜日ね」


 ……すいた店内を通っていく。


マミ「あら、帰るところ? またおいでね」

キリカ「あ、うん! また」


 来たときと同じように、カランと扉が音を鳴らした。

 ――初日の一日ももうそろそろ終わろうとしている。

------------------
ここまで
次回は5日(日)15時くらいからの予定です


 ……営業時間が終わり、表の札をCLOSEに変える。

 なんとか無事に今日を終えることができたようだ。


杏子「お疲れー。儲かった?売り上げはどんな感じ?」

マミ「えーっと、ちょっと待ってね……」

 そう言うと、マミはレジの機械を操作しはじめた。

 あたしが手伝うのは配膳と片づけくらいだ。ほとんどのことはマミが一人でやっている。

杏子「……マミ、一人じゃ大変じゃないか?」

マミ「少しね……まだ軌道に乗るまではメインの調理や裏方の仕事は一人でやることになるかな」

マミ「あまりお給料も出せないもの」

杏子「ほー……じゃあ、今のところはしばらくあたしが一人だけの“正社員”ってわけだな?」

マミ「そうね。小さいお店だし、あんまり人件費は掛けられない……」

マミ「まだ安定性があるとはいえないし、募集しても来てくれる人もいないかも」

杏子「そっか、難しいんだな。さっきも声かけてみたんだけどさ、仕事っていうと“安定”は大事か」

杏子「あたしは正直働いてるっていうかお手伝い的な感覚だったし、家と飯を用意してくれるだけで十分すぎるほど感謝してるんだ」

杏子「だから……別に軌道に乗らないうちは無理はしなくていいぞ? あたしは生活できれば十分だからさ」

マミ「ええ、ありがとうね」


 ……暫くしてマミの手が止まる。


マミ「初日だし宣伝も頑張っただけあって、なかなかね!」

杏子「おおっ! もっと儲かったら、店をでかくしたりとかは?」

マミ「うーん……いつかそういうことも出来るのかしら」

マミ「でも、まだうちのお店は小さいけど、今日一日でこういう距離感も割といいかもって思ったわ」

マミ「イタリアに居た頃みたいな大きなお店も憧れるけど、こんなに客の反応を近い距離で見られなかったから」

杏子「そっか。前から自分の作った料理やポエムに反応があると嬉しいって言ってたもんな」

マミ「――ゲホッゲホッ!」


 ……マミが噴き出した。

 ポエムも黒歴史か。今ブログはどうなってるんだろう。


杏子「……どうした? いきなり咽せて」

マミ「いえちょっと喉の調子が……」

杏子「飴ちゃんやろうか?」

マミ「もらっておくわ」

マミ「……とりあえず、まずは接客やレジのお手伝いとかしてくれる人を見つけてきてくれると嬉しいかな」

杏子「ああ。それならまたゆまに頼んで、前にビラ配ってくれた人たちに声かけてもらうか」


 ――明日の準備やら掃除やらを終えると、マミは寝る前にPCをいじっていた。

 そろっと近づいて話しかけてみる。


杏子「……仕事のこと? それともまたブログでも書いてんのか?」

 ……ブログという言葉に反応してか、マミが十センチほど跳ねた。

マミ「し、仕事のことよっ!? 一応」

杏子「ほかの店のサイト? てきじょーしさつか?」

マミ「……いや、うちもなにかちゃんとした公式サイトとか作りたいなぁって思って」

マミ「デザイナーに頼むのは高いし、自分でやれるのが一番なんだろうけど……」

マミ「私、パソコンもせいぜいweb閲覧くらいしか使えないし。どうしたらいいかさっぱりで」

杏子「前書いてたブログは自分で作ったんじゃないのか」

マミ「ぶ、ブログのことはもういいからっ。……あれは内容さえ入力すればいい簡単なサイトがあるのよ」

マミ「まあ、そういう簡単なのがあれば使ってもいいかもしれないけどね……」

杏子「ふーん……そうか」


 あたしもやっと機械に慣れたといってもマミに劣るレベルだろう。見るならともかく作るなんてさっぱりだ。

 かといってそんなことができそうな知り合いも……


杏子「ま、なんかそういうのはすぐじゃなくてもいいんじゃないのか?」

マミ「そうね。まずはちゃんと営業していけることを一番に考えなきゃね」


1自由安価
2前にここにいた人との連絡はどうなった?
3翌日へ

 下2レス


マミ「それにしても、開店初日から偶然知り合いが来たのは驚いたわね」

杏子「あいつは割と新しい店とかチェックしてるからな」

杏子「そういやまどかとさやかに開店のことは連絡したのか?」

マミ「鹿目さんには連絡したわよ。都合のつく日に来るって」

杏子「エイミーのことはどうする? その時でいいのか?」

マミ「営業中だとペットを連れて入店はね……」

杏子「あー、じゃあさ、あたしは日曜遊びに行くことになってるから、その時は? マミは暇?」

マミ「暇とはいえないけど、時間はあるわ。その時でいいかしら」

マミ「それと、美樹さんにはまだだったわね……」

杏子「……あっちからは連絡ないのか」

マミ「その話しぶりだと佐倉さんも?」

杏子「ああ。まああいつは、呼ぶにしてもな……」


 ……マミがPCの電源を落として席を立つ。


マミ「……遅くまで見てるのも身体に悪いわね。そろそろ寝ましょう」

杏子「ん、ああ。そうだな」

杏子「開店くらいは伝えてもいいんじゃないのか。連絡のきっかけにもなるんだし」

マミ「……そうね。明日連絡してみるわ」

――――翌日


 早めの昼食を食べて、開店前にマミの紅茶で一息つく。

 これで開店二日目だ。


杏子「……そういやマミ、さやかには連絡した? 返事は?」

マミ「返事はまだよ。連絡したばかりだし、気長に待ちましょう」

杏子「そうだな」

杏子「ところで、前にここにいた人との連絡はどうなった? 」

マミ「ええ、それもこの間からメールで連絡してみてる」

マミ「ここに居た人……老夫婦なんだけど、若い時から二人でここでお店やってたのね」

マミ「でも、子供や孫も跡を継ぐ気がないみたいだから、あとは地元に戻ってゆっくり老後を過ごすって」

杏子「ほう……それで、なんか重要そうなことは聞けたか?」

マミ「契約の内容やその時の担当なんかはわかったわよ」

マミ「ただ、結構前のことなのよね……それ」

杏子「マミに譲る前に何か脅されてたとかは?」

マミ「いえ…… でも」

マミ「ちょっと今までになかったような雰囲気の人たちが来ていろいろと聞かれたって」

マミ「お店畳むって話を聞いて、最初から目はつけられていたのかも……」

杏子「なるほどな」

杏子「そいつら相手にはここまで強引にはしなくても、大方次が若い女って知ってなんとかできると思ったんだろう」

マミ「……また何かわかったら話すわね」

杏子「ああ」


 ――表の札をOPENに変える。


 昼時が近づくにつれ、少しずつ人が入るようになる。

 ここにもちらほらと客がやってきていた。


杏子「ご注文は?」

*「えっと、アラビアータと……」


*「こんな店があったんだね」

*「紅茶美味しい」

*「オープンしたてだっけ」


 ……夜ほどではないとはいえ、昼も飯時となると繁華街の飲食店はどこも混雑している。

 小さい店となると回転率重視でさっさと食って帰るような店も多いが、ここはゆったりとした雰囲気だ。

 テーブル席のほうからは食後のデザートを食べながら談笑する女性たちの声が聞こえてくる。


杏子(……ふう、二日目だが接客も少しは慣れてきたか)

杏子(マミには最初、『失礼のないようにね』って念を押されたが……)

杏子(言葉遣いはなぁ……敬語とかほとんど使ったことないし)

杏子(乱暴とかガサツとかいわれるかもしれんが、この話し方がもう染みついてきちゃってるんだよな)

 ……これでも一番荒れてた一時期よりはマシになったと思うんだけど。

 今更矯正するのもなんだか恥ずかしい気がした。


杏子(あとは、できればそろそろマミの負担を軽減するためにも手伝いを増やしたいところだが……)


マミ「ありがとうございましたー」


 客が去った後のテーブルを片付ける。

 ……店の時計はそろそろ14時を指すころだ。


杏子「……飯時からも外れて、もう大分落ち着いたな」

マミ「ええ。佐倉さんもいったん休憩してきていいわよ」

杏子「あー……そうだな」


 皿をカウンターまで運び、テーブルを拭きながら返事をする。

 これからどうするかと考えていると、来店を知らせる音が鳴った。


ゆま「すいませーん」

マミ「あら、いらっしゃい」

杏子「お、ゆま? 学校はサボりか?」

ゆま「違うよッ! 今日は3限と4限が空きなの!」

杏子「そうか、すまんすまん」

マミ「私も大学のシステムはよくわからないけど……まあそうよね。ゆまちゃんに限ってサボりはないでしょう」

マミ「これからまた学校に行くの? 大変ね」

ゆま「うん、まあ…… それで、こっちは友達だよ」

*「よろしくお願いします!」

マミ「そんなに緊張しないでいいわよ。何か食べる?」

*「あ、今日は食べに来たわけじゃないんです。バイトを募集してるって聞いて」

マミ「そう。それは大歓迎なんだけど、まずは私の料理を知ってもらいたいから、ちょっとそこに腰かけてみて?」

マミ「お昼もう食べたならデザートがいいかしらね」

マミ「あ、働いて返してくれるならお代は気にしないでいいわ」

*「ありがとうございます!」


杏子(お、さっそく応募が来たか)


 会話/行動
1自由安価
2様子を見ている
3外に出る

 下2レス


 カウンターの椅子に腰かける。

 あたしもとりあえず様子を見ていることにした。

杏子(あたしにはどういえばいいのかわかねぇが、マミが特に言わないならいてもいいだろう)

杏子(ていうか、これからうわさに聞く“メンセツ”とやらをやるのか……?)


 最初は中学も卒業が近づいてきたという時……それから高校卒業、そしてシューカツ。

 毎度毎度魔物にでも立ち向かうようにみんながこぞって恐れていたものだ。

 まどかは毎回頭が真っ白になったとかわたわたと報告していたし、キリカは何次面接で落とされたと涙目になっていた。

 ……そして今、マミがその魔物になる時がこようとは。


杏子(……マミがどうするか少し気になるしな)


 マミがテーブルにポットとアイスを運んでくる。

 そして、アイスにポットの紅茶を注ぐ。


マミ「……どうぞ。どうかしら?」

*「とても美味しいです! 濃い紅茶の風味がアイスと溶け合ってマッチしていて!」

*「こんな食べ方もあるんですね…… あっ、勉強不足ですみません……」

マミ「いいえ、いいのよ。メニューなんてまだ減ったり増えたりするし、これから覚えれば」

マミ「これはアフォガートっていうイタリアのスイーツなの」

マミ「日本ではコーヒーをかけるのが主流だけど、うちではコーヒーか紅茶か選べるようにしているわ」

*「紅茶にはこだわりがあるんでしたっけ……伝わってくるようです」

マミ「ところで、履歴書は持ってきているかしら?」

*「あ、はい!どうぞ!」

マミ「ふむふむ…… それで、いつから働けそう?」

*「あ、それなら今日はもう授業もないのですぐにでも!」

マミ「じゃあ、夕方からは人が来ると思うからお願いね」

*「はい!」


 ……固唾を飲んで見守っていたものの、思ったよりいつも通りの柔らかい雰囲気だったので力が抜けた。

杏子(……なんだ、割とあっさりしてるじゃないか)

杏子(知り合いの知り合いだし単に人手不足だからっていうのもあるんだろうけど)


杏子「へー、よかったな」

杏子「でもそんなにあっさりだとブラックって思われたりするんじゃね?」

マミ「あっ、ブラックじゃないから安心してね! もともと二人でやってたものだし、ちゃんと学校を優先していいから!」

*「は、はい!」

マミ「……ていうか佐倉さん? どこでそんな知識拾ったのよ?」

杏子「前にゆまが言ってた」

マミ「そ、そう」

ゆま「いや、マミなら大丈夫だってわかってるから! よかったね」

*「うん!」

*「……あっ、ところで制服とかはあるんですか?」

マミ「あー、制服かぁ……今のところないわね」

杏子「あたしもこんな格好だしな」

マミ「いつか用意したほうがいいかもしれないわね。でも今のところは私服で大丈夫よ」

*「わかりました」


杏子(とりあえず今のところはもう少し休憩時間だな……ゆまもまだ時間があるらしいし)

杏子(何して過ごそうかね?)



 会話/行動
1自由安価
2上で休んでるか

 下2レス


杏子「それにしても制服ねぇ……」

杏子「作るとしたらこっ恥ずかしいものにはしないでほしいけどな」

杏子「こういうのもなんだが、ジロジロ見てくる客もいるだろうし」

マミ「こっ恥ずかしいって……うちは喫茶店じゃないし、コスプレちっくなのにはしないわよ?」

マミ「私も恥ずかしいし、そもそもこの年でそれは……」

杏子「年とかいうなよ生々しい……あーでも実感わかないな。もう大人か」

マミ「今度みんなで飲みにでもいく?」

杏子「いや、そういうことでもないっつうか……ていうかあたし酒よりジュースのほうが好きなんだよなぁ」

杏子「もっと言うなら飲むより食うほうが好きだ」

マミ「ふふっ、佐倉さんって昔から子供舌よね。苦いのとか辛いのとか苦手だし」

杏子「うっせ」

ゆま「いいなあ、私もあともう少しか」

*「飲み会に行っても私たちはジュースだけだもんね」

杏子「どうせすぐだよ。年月なんて勝手に流れてっちゃうもんなんだから」


 ポンと若い二人の肩に手をやった。


ゆま「やだ、杏子ってば年寄みたい」

杏子「子供舌って言われたり年寄って言われたり忙しいなぁ、もー」


 ……酒の匂いは嫌なことを思い出す。

 まだどっかで苦手に思ってるのか。周りのやつに付き合っても、自分が飲むことはほとんどなかった。


 階段を上っていく。


杏子「じゃ、あたしは少し上で休んでるよ」


杏子「あー、ガーッと動くんならまだしも立ちっぱで接客配膳は疲れるなやっぱ」


 ソファに横になる。

 そして、ため息をついて目をつむった。


杏子(つーか、酒もたばこもしないなんてあたしって意外と真面目なんじゃないの)

杏子(よく繁華街にいる不良たちは15,6でそんなん普通にやってたぞ)

 下手すればシンナーやら危険薬物やら。

 何度かそういうバカを伸した覚えがある。それも例の連中が横流しでもしてるのか。

 ずっと前、繁華街に入り浸るようになってから気付いた。表向きに賑やかなこの場所は、あまり治安の良いほうではないらしい。

杏子(それでもまともな奴もいるし、賑わう時間にはオフィス街の会社員たちも流れてきてる)

杏子(昼は普通の学生なんかも遊べる場所なんだけどな)


 ……今のところは変なやつも来てない。

 さっそく一人仲間が増えたことだし、夕方からも頑張るか……そう思っていつのまにか浅い眠りについた。


 ――――ソファの上で目を覚ます。

 寝た時と同じ格好だが、上に薄い毛布がかかっていた。


マミ「おはよう、佐倉さん」

杏子「おう、これマミがかけてくれたのか?」

マミ「ええ。やっと3月に入ったばかりよ、まだまだ寒いんだからあったかくしなきゃ」

マミ「今風邪ひかれたら困るしね」

杏子「はは、そうだな。まああたしは風邪なんかずっと引いたことないんだけどな」

杏子「もうそろそろ下行ったほうがいいか?」

マミ「もう少し時間はあると思うけど」

杏子「そうか。じゃあ少し外の空気を吸ってくるよ」

マミ「ええ、いってらっしゃい」


 店から出て、少し外をぶらっと歩く。

 そういえば最近はこういうこともめっきり減ったな、なんて思いながら歩いていると、見知った姿を見つける。


杏子「あっ……!」

さやか「あーっ! 杏子!? やっべ見つかった!」

杏子「やっぱさやかか。……っておいなんだよ見つかったって」

「さやか、驚かせようとしてたんだよ」

「近いうちに日本で公演があるからこっちに来る用事があってさ」

「そんな時にちょうど巴さんからメールをもらって、何も言わずに行って驚かせようって」


 背の高い男がさやかの隣で穏やかに話す。

 聞いたことのない低い声。しかし、この顔立ち、薄い茶色の髪……そしてなにより、公演と言ったか。


杏子「上条恭介……か」

恭介「お久しぶり、佐倉さん」


 ……10年前にアメリカに行ったきり、上条は結局日本に戻ってこなかった。

 なんでもあっちのすごい人に才能を見込まれ、弟子にならないかと誘われたらしい。

 そりゃアメリカのほうがバイオリンは本格的にできるかもしれないが、
 ずっと待ってるさやかはどうなるんだとあたしはずっと憤っていた。


杏子「ここであったが百年目……ちょっと表出な……な・ぐ・ら・せ・ろ」

恭介「!?」

さやか「だーっ、もういいから! 大丈夫だからっ!」


 ……ずっと隣に居た幼馴染が、もうテレビや雑誌でしか見ることのできない人になってしまった。

 さやかは寂しかったんだろう。

 結局、それで焦れてさやかは高校卒業後、地元を離れてまで上条を追いにいったんだ。

 自分の人生もかかるようなことだ。さやかからすれば一大決心だったはずだ。


杏子「なんでさやかもずっと連絡よこさないんだよ。何かあったのかと思っただろ」

さやか「むしろ本当になにもないからだよ」

杏子「しかし、それで驚かせるって……相変わらずだなぁ」

さやか「あはは……まあね」

杏子「じゃ、来るか? あたしが急にお前らを連れて来たらマミもさぞびっくりするだろーよ」

さやか「いこっかー。ちょうどおなかもすいてたもんね」

恭介「そ、そうだね……」



1自由安価
2さやかは今なにしてんの?
3上条……言っておくが、あたしは許してないからな

 下2レス


杏子「ずっと音楽にかまけていたのか、上条は?」

恭介「まあ、そうなるかな」

杏子「なんでちょっと誇らしげなんだまったく……」

さやか「まあ、そのためにアメリカで暮らすことを決めたわけだし……知ってる?今すごいんだよ」

さやか「でっかいコンサートホールで演奏して、いろんな国に行ったりして」

さやか「あたしも……ずっとそういうの間近で聴いてられるなら悪くないなって思ったり……」

恭介「さやかは僕のファン一号だからね」


杏子(こいつら、マジで変わってねえ……)

杏子(いや、あたしも人のことは言えないが……)


杏子「ここ曲がったらすぐだぞ……――」

外国人「※※★♪△■<メ※?」

杏子「!?」

 ――と、二人を店まで案内していると、いきなりでかい野郎が話しかけてきた。

 顔立ちや振る舞いですぐわかる。外国人らしい。

杏子(なんだこれは……絡まれてんのか? なんて言ってんのか全然わかんねー)

杏子「あー……? あはー?」

杏子「イエスイエスアイムファイン」

外国人「???」

杏子「に、日本語でオッケー……」

さやか「※♪窶窶�Ж? £而y※※」 ←杏子にはこう聞こえる

恭介「※★*△※」

杏子(おお……二人がさっと前に出て話してるが何言ってるかわかんねえ……)

杏子(……一番変わったのは言語力だな)


外国人「Thank you!」

杏子「うぇ、うぇるかむ!」


 ……外国人はにこやかに去って行った。


杏子「いやー、最後お礼言ってたっぽいのだけはかろうじてわかったが……」

杏子「上条はともかくさやかが英語ペラペラって違和感やべーな!」

さやか「なんでよー!」

杏子「英語のテスト赤点とってたじゃんよ」

さやか「いやだって、アメリカ行って約5年だよ? そりゃ身に付くって」

さやか「さやかちゃん積極性だけは負けませんし」

杏子「で、上条の前だとその積極性はどこに消えるんだ?」

さやか「なっ、えっ?」

恭介「僕がどうかした?」

杏子「サヤカイズベリーフーリッシュ」

さやか「�ユ△�||」

杏子「だーっ、わけわかんねーこと言うなもう!」


 ……そんなアホみたいな会話をかわしながら店に到着する。

 カランと扉の飾りが音を鳴らすと、カウンターの奥のマミと目が合った。


*「いらっしゃいませー」

マミ「!」


マミ「……美樹さん? と、そっちの彼は……もしかして!」

さやか「Yes, I am!」チッチッ

恭介「上条恭介です。巴さん、お久しぶり」

マミ「まあ、本当に久しぶり! 10年以来かしら?」

恭介「そうですね」

マミ「上条君の活躍は度々目にするわ。すごいわね」

さやか「この前も取材とかあったよね」

恭介「はい。交通事故に遭っても諦めずに回復してプロになったバイオリニストって……」

恭介「実力じゃなくそういうドキュメンタリーみたいな方面であんまり持ち上げられるのもどうかとは思うんですが」

恭介「さやかやみんなの思いがこれだけ世界に認められてるんだって思うと、悪い気はしないかな」

さやか「実はあたしにもセットで取材とか来たりするんですよね」

杏子「へえ……そうなのか」


*「知り合いなんですか? ……あ、そういえばどこかで見たことがある」

マミ「ええ、中学の時の後輩」

さやか「恭介はすごい人だぞー」

恭介「あはは……やめてよ、照れるよ」

*「それじゃわたしは初仕事をがんばりますから、佐倉さんたちは二人との会話を楽しんでください!」

*「あ、これがメニューです」

恭介「どうも」

さやか「おー、どれにしようかな」


 まだ一番混み合う時間じゃないし、お言葉に甘えていろいろ話すことにするか。

 あたしも二人の隣の席に腰かける。



1自由安価
2いつまでこっちに居るんだ?
3さやかは今なにしてんの?

 下2レス


杏子「今度日本で公演があるって言ってたな。いつまでこっちに居るんだ?」

恭介「二週間くらいかな」

マミ「公演ってこの近くなの? 私たちも見に行ってもいいかしら?」

恭介「近くってほどでもないですが……ここに来たのはそのチケットを渡す目的もあったんですよ」

恭介「是非来てください!」

マミ「ありがとう、見に行くわ」

 上条から受け取ったチケットに書かれている日付や場所を確認する。

 ……あたしでも名前を聞いたことのあるような有名な会場だった。

杏子「さやかからさんざんビデオは見せられたが、生で見るのは初めてだな」

マミ「そうね……しかもこれ、結構大きなホールでしょう?」

さやか「これより大きいホールでもやることありますよ!」

マミ「へえ、さすがね」

 ……さやかは自分のことのように誇らしげだ。

 それに対して上条のほうは少し照れた様子だった。

杏子「そういやさやかは今なにしてんの?」

さやか「えっ? んー…………なんだろ。ニート?」

杏子「えっ」


杏子「……マジ?」

さやか「うん、まあなにもしてない」

杏子「衝撃の事実が発覚したぞ。ちなみにあたしはつい昨日までフリーター的なアレだった」

杏子「しかし今や立派な“正社員”――社会人の仲間入りをした……そんなあたしにも衝撃の事実だ」

さやか「遠回しに自慢したいのはわかった」

恭介「遠回しかなー?」

マミ「や、やっぱり大変よね……異国の地で仕事につくって」

マミ「……でも生活は大丈夫なの?」

恭介「いや、さやかはちゃんと働いてますよ。別に外で働く必要もないし」

杏子「ん? いや、それってまさか!」

さやか「恭介はほっとくとバイオリン以外なにもしないから悲惨なことになるんだよ」

さやか「だから、あたしがやることにしたの」

恭介「家賃も一緒で済むしお互い良いことが多いんですよ」

恭介「僕ものめりこみすぎるのは自覚してるから……やっぱさやかがいないと駄目かな」

さやか「やだもー恭介ったら!」


 ……傍目に見ればバカップル。

 だが、あれだけの朴念仁だったこいつのことだ。まったくそんなことは考えもせず素で言ってる可能性もある。


杏子「それって……もしかしなくても専業主婦でいいんじゃないのか?」

さやか「いや、主婦じゃないし!」

杏子「じゃあなんだよ……」

さやか「……ニート?」

マミ「あなたそれでいいの!?」


恭介「あ、つい話し込んでしまいましたね。メニューはこれで」

さやか「あたしはこれとー、これで!」

マミ「え、ええ……わかったわ」


 注文を受けてマミがカウンターの奥に行く。


杏子「おい、さやか、さやか……ちょっと」

さやか「ん?」

恭介「?」

杏子「女同士の話だよ、ちょっと借りてくぞ」


 そこで、あたしはさやかをちょいと連れ出すことにした。


杏子「……正直なところ上条との今の関係は?」

さやか「……いや、さっきもさ……“なにもない”って言ったじゃん?」

さやか「つまり報告するようなことがね……なにもおきてないってことなんだよ……」

杏子「付き合ってすらいないのか!? あれで!?」

さやか「うん…………」

杏子「いや、でも、それはむしろ卑怯なんじゃないか……さやかはあいつの母親じゃないんだぞ?」

杏子「そこまでしてもらって、ていのいいお手伝いさん状態なんてさぁ……」

さやか「うん、まあ……どう思ってるのかはわからないけど」

さやか「母親やお手伝いとは思われたくないね……」


 ……がっくりときた。

 なんでここまできて進展しないのか。


1自由安価
2それで、結局あの時の返事って聞けたのかよ?
3席に戻る

 下2レス


杏子「もうさ……ここまできたらお前から結婚してくれ! って言った方が良くないか?」

杏子「あの時の返事を待ってるより、お前から動かなきゃずっと今のままだぞ?」

さやか「いやでも、いきなり結婚は……」

杏子「いや今と変わらないだろあんまり! なにもすっ飛ばしてねーよ!」

さやか「はあ」


杏子(なんだよそのため息みたいな微妙な返事は)

杏子(一緒に暮らしてて鈍感がうつったのか……!?)


杏子「……それかさ、一旦離れてみたらどうだよ」

さやか「離れる?」

杏子「あいつはさっき、さやかがいないと駄目だって言ってた」

杏子「つまり、なんかの形で依存してるところはあるんだよ」

杏子「それがマジで甘ったれたガキみてーな依存の仕方だったらさ、もうさやかのほうから捨てたほうがいいだろ」

さやか「でも……それはやだよ。それに、ここまでしたのにもし永遠に離れることになったら……」

杏子「もしそれで追ってこないならもうそれまでだろ」

杏子「今のうちに新しい人生考え直すこともできるんじゃないの」

さやか「…………」


「さやかー、料理がきたよ!」

 カウンターのほうから恭介の声がした。

杏子「今いくよ!」

----------------------
ここまで
次回は6日(月)20時くらいからの予定です


 カウンターのほうに戻ると、さやかは何事もなかったようにしていた。


さやか「うんまーい! さすがマミさん、昔よりさらに料理上手になってますね!」

恭介「小さな店でこのクオリティってなかなかないですよ。隠れた名店なんじゃないですか?」

マミ「もう、そんなに褒められると照れるわよ」

さやか「あっちだとついジャンクフードとか食べること多くなっちゃうし、繊細な味のものっていいわぁ」

杏子「でも上条って普段からいいもの食ってたりしそうだよな」

マミ「美樹さんの手料理?」

恭介「レストランで食べる機会は割とあるほうかもしれませんね」

恭介「でもさやかの料理もそこらの店で食べるよりずっと美味しいんですよ」

マミ「そうなの! よかったわね、美樹さんが一緒に居てくれて」

恭介「はい。まあ、最初のうちは慣れてない感じでしたけどね……」


さやか「……」

 さやかは何か言い返すでもなく少し言葉を詰まらせていた。

 照れているという様子でもない。さっき言ったことを考えているのか。


さやか「ねえ、恭介はさ……もしあたしがいなくなったらどうする?」

恭介「さやかがいなくなったら? それは困るなぁ」

恭介「どうしてもさやかがまだこっちに居たいというなら、しょうがないことかもしれないけど……」

さやか「しょうがない、か」

マミ「……えっ? どうしたの?急に」


 なにか不穏そうな気配を察してか、マミは少し焦ったような様子だ。


さやか「……あたしさ、どうしても会いたかったからアメリカまで恭介を追いかけてきたんだよ」

さやか「恭介はあたしがいなくなったら困るだけなの?」

恭介「えっ……いや、えっと」

さやか「…………いやぁ、すんません! おいしいごはんの時間に変な雰囲気にしてっ」

さやか「味わって食べよ、せっかくの料理だよ!」


 上条が言いよどむと、さやかはころっと調子を切り替えて笑顔を作った。

 それから、またなんともなかったように食べている。


 ……マミがあたしのほうに目配せをしてくる。


マミ『ねえ、これ修羅場……!修羅場よ! 大丈夫なのかしら!?』

杏子『……ていうか、上条はさやかが自分を追ってきたってことにすら気づいてなかったんじゃないかと見るね』

杏子『いくら朴念仁でも鈍感でも、ここまで言われてこのままって事はないだろ……』


マミ『私、さっき少し上条君と話をしたのよ』

マミ『上条君や美樹さんが出てた雑誌は私も読んだことがあったから、そのことについて』

マミ『……あの二人、世間的には恋人と見られてたのよ』

杏子『……普通に見ればそうだろうな、まあ』

マミ『でも、その関係について聞かれた時、彼は“幼馴染だ”としか答えず恋人というのは否定していたのよね』

マミ『結局今も恥ずかしがって隠してるだけって解釈されてるみたいだけど……』

杏子『マスコミにとっちゃ恋愛話なんて美味しいものだろうし、不確定でも尾ひれつけて拡散したがるもんだろうな』

杏子『けど、あれはいくらなんでもなぁ』

マミ『……それで、さっき、聞いてみたのよね。本当のところ美樹さんの事はどう思ってるのかって』

マミ『“わからない”だそうよ』

杏子『…………結局、10年も経ってまーだ答えが出せてないと?』

マミ『どうなのかしらね……。私的にはね……気づいてないだけな気もするのよねぇ』

マミ『だってその時、前のように“大切な友達です”とは言わなかったんだもの』

杏子『……そりゃでもあたしらにはわかんねえよ。あいつの自身の気持ちなんだから』

マミ『そうね。でも同じくらい、自分の本当の気持ちというのも気づきにくいものよ』


さやか「ごちそうさまでした!」

恭介「ご馳走様でした。また機会があったら来ますね!」

マミ「ええ、ありがとう」


 会話/行動
1自由安価
2さようなら

 下2レス


杏子「さやかはこの後は?」

さやか「あー、あたしは別にやることはないよ?」

恭介「僕はちょっとバイオリンの練習がしたいけど……」

杏子「まどかに会っていったらどうかと思って」

杏子「お前もバイオリンばっかじゃなくて、せっかく見滝原に帰ってきたんだから知り合いには会ってけよ」

さやか「あたしは会いに行こうかな。恭介は練習したいならしてなよ、公演も近いんだしさ」

さやか「こっちでは実家もあるし別にあたしが一緒に居る必要ないよね?」

恭介「いや……僕もやっぱ行くよ。久しぶりに知り合いと話したいっていう気持ちはあるからさ」


 ……さやかは珍しく厳しく突き放すような口調だ。

 あたしの言ったことを実践しようとしてるのか? それとも、さっきのことを怒ってるのか?


*「シェフ、注文来ました!」

マミ「はーい! ごめんね、これからは混み合う時間だから」

杏子「……あたしも新人の“部下”一人に任せるのも悪いからな」

*「会計こちらです」

恭介「このカード使えます?」

*「えーと」

マミ「大丈夫よ」

さやか「あ、じゃあ二人とも頑張ってください!」

恭介「では、また」


 扉が音を鳴らす。


 ……二人がどうなるかはわからない。あたしにはこれ以上のアドバイスもわからない。

 あたしらは外から見守ってるしかないんだろう。


マミ「……なんか、拗れさせちゃったかなぁ」

杏子「実際さぁ……どう思うよ? あの二人は」

杏子「そりゃ上手くいくことに越したことはないけど、
   仁美みたいにさっさと忘れて次の恋見つけてたほうが幸せだったんじゃないかとも思えてくるんだよ」

マミ「そうね……もしかしたら、そうできてたら良かったのかもしれないけど」

マミ「ここまで来たら、後は彼がどうしたいかだと思うわ」


 マミがカウンターの奥に行く。

 あたしもひとまずカウンターの上の食器を片づけることにした。

 すると、また次の客がやってきた。

 マミや部下が頑張っているのだから、あたしも切り替えて仕事しなきゃいけないな。


――――……
――――…………


杏子「ありがとうございましたー」


 本日最後の客を見送って、閉店となる。


*「お疲れ様でした」

杏子「おう、お疲れ。まだ片付けが残ってるからな」

*「はい! しっかりやります!」


 皿を手分けして片付けてテーブルを拭く。

 あたしにとって初めての部下で、数日の差とはいえ後輩だ。

 あたしでも初日からできた手伝いということもあって特に教えることはなかったが、しっかりと働いてくれていた。



 会話/行動/ほか
1自由安価
2そういやバイトの名前知らなかったな(安価内容かおまかせで仮名をつける)
3翌日へ

 下2レス

--------------------
ここまで
次回は8日(水)20時くらいからの予定です


杏子(……って、そういや名前知らなかったな)


 荷物を取って帰りの支度を進めているバイトを呼び止める。


杏子「帰る前にいいか?」

*「はい?」

杏子「あたしの名前はマミから聞いてるか?」

*「はい。……あっ、そういえばわたし名乗ってませんでしたね」

鳴海「幹久鳴海です」

杏子「みきひさ? 男みたいな名前だな」

鳴海「あぁ、よく言われるんですようそれ」

マミ「もう、そういうことはっきり言っちゃうんだから……」

杏子「一応あたしからも直接名乗っとく。佐倉杏子だ、よろしくな」

鳴海「よろしくおねがいします!」

 あいさつ代わりに飴を渡すと、鳴海はうれしそうに受け取ってポケットにしまった。

 なかなか真面目で快活そうな奴だ。

マミ「家はこの近くだったわね。気を付けて帰ってね」

鳴海「はい!また明日ー」

杏子「おう、また明日なー」 


マミ「……飴ちゃんいつも持ち歩いてるの?」

杏子「まあな。安いしうまいしなにかと便利だからな」

マミ「便利、ねえ…… あぁ、なんだか子供を宥めている姿が目に浮かんだわ」

杏子「はは、そういうこともあるな」


 二階に上がると、ひとまずどっかりとソファに腰かけた。


杏子「あー疲れたぁ」

マミ「お疲れ様。お風呂沸かすわね」

杏子「へーい」

 その間に大体の寝る支度なんかをすませておく。

 ……その途中で、マミの携帯が鳴った。

杏子「マミ、メールだ。上条からみたいだぞ」

マミ「メール? なんて?」

杏子「見ていいのか?」

 どうせお礼や挨拶かなんかかと思って見てみたが、

 どうやら相談に乗ってほしいという内容だった。

杏子(こんな時間にかよ)

 そう思ったが、考えてみれば今日……いや、日付が変わったから昨日は金曜だ。

 まあ、この店は土曜も休みじゃないんだが……。

杏子「……上条が相談に乗ってほしいんだとさ」

マミ「えっ、今から?」

杏子「さあ。明日の朝でもいいんじゃね? あいつはどうせ明日は予定ないんだろ」

マミ「じゃあ、開店前に来てくれるように返信しておくわ」


 ……大方、さやかに拗ねられてどうしたらいいかわからなくなったとかそんな感じだろう。

 少し狭めの風呂に入って、明日に向けてさっさと寝ることにした。

――翌日になって、上条が店にやってきた。

……上条の相談したいことというのは、やっぱり予想した通りだった。



マミ「いらっしゃーい。適当にかけて」

恭介「はい……」

杏子「昨日はまどかに会ってどうだったよ?」

恭介「みんなで晩酌に付き合わされたよ」

杏子「あー、そりゃ大変だな。金曜の夜は特にヤバいらしいから」

マミ「二日酔いとか大丈夫? お水飲む?」

恭介「あ、大丈夫です」

マミ「それで、相談の内容は?」

恭介「なんか、さやかを怒らせちゃったみたいで……やっぱ昨日のことだと思うんですけど、どうしたらいいのかなって」

恭介「さやかに嫌われちゃったんですかね……僕」

マミ「いなくなったらどうするかって話のこと?」

マミ「実際、どうなのよ」

恭介「実際……?」

マミ「嫌われたくはないんでしょう? もし離れていくとしたら、追う意思はあるの?」

恭介「そ、そりゃあ、でも最後はさやかの意思を尊重すべきですし」

マミ「……美樹さんは、追ってきてもらいたいって思ってたから怒ったのでしょうけどね」


 ……上条の横で頬杖をつく。

 ああ、なんか面倒なヤツだなぁ。こいつがちゃんとビシッとやってくれれば全部解決するだろうに。

 そんなことを思いながら聞いていた。


 会話/行動
1自由安価
2…どんな話になるか聞いてるか

 下2レス


恭介「…………さやかは本当は僕を追ってきてたんですよね」

恭介「偶然会ったような感じの再会だったけど、よく考えればそんな偶然なんてない」

恭介「アメリカに来て、特にやりたいことも言っていなかったし」

恭介「そう考えたら……僕には自分の夢ややりたいことを捨ててまでさやかを優先することは、出来ないのかもなって思って」

マミ「……そう」

杏子「……じゃあもうこのまま離れろよ」


 思わず厳しい言葉が口をついた。

 上条の煮え切らない態度やそんな言葉を聞いたら、無性にイライラしてきていた。


杏子「さやかがお前のこと嫌ったんなら、もうそのほうがいいんじゃないかと思うね」

杏子「お前さ……10年前に空港で別れ際に言ったこと、なにもわかってねえよ」

杏子「バイオリンの腕は成長したかもしれないが、ほかはなんにも成長してない!」

杏子「女と一つ屋根の下に住んでんだぞ! 下心とかそういうの全くわかないとかおかしいだろ!」

恭介「しっ、下心っ?」

マミ「……」

 マミは静かな表情で見守ったまま、止める様子もない。

 勢いにまかせて、さらに上条に怒鳴りつけた。

杏子「ここまで言ってまだわからないのなら、お前はさやかの想いに気づこうともしない、アイツの人生を台無しにする駄目人間だ!」

杏子「いや、バイオリンを弾くだけの、すぐそばにいる女の想いにすら気づかない人間味のないただの機械だよ!」


恭介「…………」


 静まり返る。上条本人も言い返す様子がない。

 舌打ちをして座りなおした。

 もともとぶん殴る予定だったんだ。この程度じゃまだ足りない気分だった。


杏子「……どうせさやかのこと、都合のいい人間だと思ってるんだろ?」

杏子「こんなやつにも愛想尽かさず何年もずっと好きだっつってそばにいて、面倒見てやってたんだもんな」

杏子「あたしにはまったくわからないね……あたしだったらもっと優しくて包容力があって大切にしてくれる人を探すのに」

杏子「まああたしには無理だけどな。ジョークみたいなもんだ」

 笑えないジョークを言って、ずしりと心に重いものが響いた気がした。

 偉そうに説教しても、あたしだって所詮そういうのはさっぱりわかんないし、興味も持ったこともない。

 でも、さやかは……さやかにはちゃんと普通に幸せになってほしかったから。

杏子「でもちょっとだけ、ほんのたまにはふと普通の女っていうのを夢見ることはあるんだ。柄じゃないけど、な」

マミ「佐倉さん……」

 カウンターの上で、ぐっとこぶしを握る。

 その手が震えていた。

杏子「……あいつはきっとバカなんだ。このままじゃ、あのバカは幸せになんてなれない」


 ……本当は、上条にはさやかをただのバカで終わらせてほしくはなかった。


恭介「そ、それはどういうことだい? 君はなんでそんな……」

杏子「あたしのことはいいだろ」

マミ「……上条君」

マミ「私もイタリアで付き合ってた人はいたのよ。結局、ここで店を開くという夢を優先して別れたけれどね」

マミ「それほど一番に優先すべき夢があるのは、誇れることだと私は思うわ」

マミ「それ以外を蔑ろにしすぎのはいただけないけれどね」

恭介「でも、僕とさやかは……」

マミ「付き合ってるわけじゃない?」

マミ「けどここまでずっと、すぐ近くで一緒に居たんでしょう?」

恭介「……はい、それは」

マミ「美樹さんは、何もかも捨てて一番にしてほしいと思っているわけじゃないわ」

マミ「上条君にとって一番大切な夢を応援して支えてくれる人よ」

マミ「だからあの時上条君の腕が治るように募金を企画したし、遠くまで追っかけてきたんでしょう」

恭介「でも、それじゃ僕はさやかに同じものを返せない」

マミ「佐倉さんの言ってた下心……っていうのも確かにそうなんだけど」

マミ「あなたたちにはあなたたちの付き合い方があるはずでしょう? それで二人が幸せなら、まずはそれでいいから」

マミ「どうしても嫌われたくない、つなぎとめておきたいって思うのなら……」

マミ「そろそろ10年前の返事に答えてあげたらどうかしら?」

恭介「10年前の…………返事」

-----------------
ここまで
次回は10日(金)20時くらいからの予定です

こんな事、裏で起こってたらいいな…
一方、そのころさやかは…昨夜見た夢で悩んでいた!!
恭介「さやか、僕は決めたよ。この子と結婚する!」
恭介「バイオリンの『オクタビア』ちゃんさ。」
恭介「アメリカには実際に自分の愛車と結婚した人もいるからいけると思うんだよね。」
恭介「ねぇ、さやかなら祝福してくれるよね。」ニコッ


マミ「まさか忘れてたとは言わないわよね? 美樹さんがどれだけ待ってるかわかっているの?」


 ……考え込む上条に、マミが静かな笑顔を湛えたままわずかに語気を強めて言った。

 やべえ、マミのこういうのは怒鳴るよりも怖いかもしれない。

 あたしもじっと睨むように上条を見る。


恭介「いやっ! えっと…………」

恭介「確かに、バイオリンにのめり込んでて考えなくなってきてたっていうのはそうなんです」

恭介「まさか、また会えるなんて思ってなかったし……」

杏子「……じゃあ、フッたつもりだったのか? アメリカに留まるって連絡した時点で」

恭介「うーん……そこまで考えてなかったけど、まあ必然的にそうなるかな、とは…………」

恭介「……でも、さやかは追いかけてきた。……それにも僕は気づかなかったけど」

恭介「それは、とても嬉しいことだったんだ」

恭介「さやかも気にしてないようだったし、それからは昔と同じように話したりして過ごしてたんだけど……」

恭介「……巴さんはあの記事を見たなら知ってますよね」

恭介「僕が返事を返す前から、周りの人たちは事あるごとに当然のように僕たちを恋人として見てて、囃し立ててきて」

恭介「――――そのうちになんかもう、よくわかんなくなってきちゃったんだ」

恭介「『恋人』っていうのがなんなのか……好きっていう気持ちも」

恭介「…………僕にとって大切な人ってことに変わりはないけど、昔からさやかはさやかだし」

恭介「かといって別にほかの人にも『恋』とかしたことはない……と思うし」

恭介「『下心』っていうのが恋なのか? でも、それだけじゃ……なんかもうわからないよ」

杏子「あ、あたしに振るなよ……でも、どうだったんだよ。結局」

杏子「いやらしいっていうか、邪? っていうか…… いや、ドキドキ的な……? そりゃあたしはわかんないけどさ」

杏子「お、男は普通あるもんじゃないのか!?」


 ……自分から言っておいてなんだが、思わぬ方向に話題が流れてきて焦った。

 ほとんど勢いで言っちまったもんだから、細かく考えると恥ずかしくなってくる。


恭介「一緒に暮らしてる以上、そういうのはちょっと……」

マミ「むしろ考えないようにしてきた?」

恭介「まあ……」

マミ「まあそうね。好きじゃなくてもそういう気持ちを抱くことはあるでしょうし、それだけじゃないっていうのはそうでしょう」

マミ「元々幼馴染だし、大切にしてたからこそ安易に考えないようにしてた……ってこともあるかもしれない」

マミ「だから、あんまり難しく考える必要はないのよ?」

マミ「いきなりはっきりさせようとしたってもっとわからなくなっちゃうかもしれないし、周りの言うことを気にすることもない」

マミ「美樹さんの気持ちは知っているわけだし、これだけ一緒に居て……もう答えは出てるはずだから。一つだけ考えればいいのよ」

マミ「……でも、美樹さんが『気にしてないようだった』って、気にしてないわけがないじゃないの」

マミ「美樹さんは返事をずっと待ってたのよ。そこはどっちにしてもちゃんと謝りなさいね?」

恭介「は、はい……」

マミ「――で、上条君はこれから先の人生で、美樹さんと離れたいの? 離れたくないの?」

恭介「…………」


――――扉の飾りが音を鳴らす。


マミ「こっちに居る間にももう一回くらいいらっしゃいね」

 上条は振り返ってもう一度だけ会釈をすると、足早に去って行った。

マミ「……ふう。手がかかる後輩ね」

マミ「上条君の鈍感さには呆れちゃうけど、そこを今更責めたってしょうがないかなぁ」

マミ「美樹さんも、もうちょっと積極的に仕掛けちゃってもよかったんじゃないかなぁとは思うけど……」

杏子「男なら積極的にエスコートしてやるもんだろ。なのに返事にすらどんだけ時間かけてんだ」

杏子「二人して遠慮してどうするんだよ」

マミ「あら、佐倉さんはそういう人が好み?」

杏子「はぁっ!? ななな、なんでそうなる!?」

杏子「……っていうか、アレで本当に上条はさやかのこと好きなのかよ?」

杏子「はっきりさせないままってのもマズイんじゃ……やっぱなんか納得いかねえ」

マミ「難しいわね、恋って」

マミ「でも、長いこと二人で上手くやれてたんだもの。なんとかなるでしょう」

マミ「全員に同じ気持ちが当てはまるものでもないから、関係のあり方も色々あってもいいんじゃないかしら?」

杏子「……そういうもんかあ?」

マミ「それより………… ふふっ、さっきは良いこと聞いちゃったわね」

杏子「な、なんだよ」


 マミがくすくすと笑っている。

 ……だいたい、こういう表情の時はよからぬことを企んでいる時だ。


マミ「やっぱり佐倉さんも、そういうことに興味がないわけじゃなかったのね!」

杏子「なっ……! ほ、ほんの、たまに考えただけだって言っただろ!普段は興味もないって!」

マミ「でも考えることはあるんでしょう? 恋に恋した乙女のままで終わるのはもったいないわ!まだ若いんだから!」

マミ「ほーら、さっそくオシャレしちゃいましょうよ!接客業なら出会いはあるわ!私がコーディネートしてあげるから!」

杏子「それは関係ないだろー!」

杏子「ていうかっ……だから……」

杏子「たとえあたしが恋したってどうせ悲しい結末になるのが決まってるじゃないか」

杏子「だってあたしは……結婚すらできないんだぞ。誰からも認められることはないんだ」

杏子「だから、上条には大分キツいこと言ったけど、さやかにはあたしにできないことを……」

杏子「――普通に恋とかして、結婚して家族を持つような幸せな人生を送ってほしいって思ってたんだよ。ずっと!」


マミ「だからって、最初から自分の幸せをあきらめるのは違うわよ」

杏子「……あたしは、今のままでも十分幸せなんだ。マミも帰ってきてくれたしな。友達もいる」

マミ「でも、佐倉さんが思う普通の幸せな人生には恋が含まれているんでしょう?」


 ……言い返せなくなって、頭をかくように手をやった。

 なんとも落ち着かない気分だ。


マミ「いつか、興味が持てる時がきたらでいいから」

マミ「最初から興味がないとか無理だなんて思い込まないでちょうだい」

杏子「…………わかったよ」

杏子「……いつになるかはわからないけどな」

マミ「ええ、応援してるわ」


 ……開店の時間も近づいてきている。

 マミはどこかご機嫌そうな様子で昼食を作りにキッチンのほうへと消えていった。


――早めの昼食を終えて少しすると、鳴海が店にやってきた。

そして、今日も開店の時間になる。

世間では休日だけあって、昼からこれまでの比じゃない混み具合だった。


マミ「えっと、こっちの料理があちらのお客様で、これはそっちに」

鳴海「はい!」

杏子「おう!」

*「すいませーん、注文いいですか?」

マミ「あ、はい! どうぞ!」


杏子(接客があたし一人だったら大変だったな)

杏子(こいつが来てくれてよかったよ……ホント)


 マミやバイトと分担し、みんなてきぱきと動いている。

 欲を言えばもう一人くらいは欲しいところだが、何人まで募集するつもりだろう。

 このくらい客が来ているなら、もう一人か二人くらいは大丈夫だろうか?


杏子「いらっしゃい……って、おう、まどかじゃないか」

まどか「こんにちは。忙しいときに来ちゃったかな?」

杏子「あーいや、いいけど。一人だよな? カウンターでいいか?」

まどか「うん。マミさんが調理してるとこ見たいし」


 このラッシュが終わるまではしばらくまともに話せない。

 ひとまず普通にご飯を食べてもらって、それから、飯時を過ぎてからやっと話せるようになった。


 ……今はひとまず休憩としてある。


マミ「待たせてしまってごめんなさいね」

まどか「いえ、混み合う時間だったししょうがないです。わたしが話したかったから待ってたんですし」

まどか「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」

まどか「それにすごいオシャレで……なかなかこういうところで食べることってないから感動しちゃいました」

マミ「ふふ、そこまで言ってもらえるとうれしいわね」

まどか「久しぶりにマミさんに会えてよかったです!」

まどか「あ、でも、まだ何か良くない問題があるんでしたっけ……?」

マミ「あ……ちょっとね。でも開店してから数日だけど、一応ここまでちゃんとやってこれてるから」

杏子「変なのが来たらあたしがぶっとばしてやるよ。そのための用心棒だからな」

杏子「……にしても、奴らあれからおとなしいな」

マミ「勝負の条件を飲んでくれたのだったらいいんだけど」

杏子「それはどうかね……」

杏子「あたしに加えてマミまで想定外に腕の立つ奴だったから、どう手を出したものが迷ってるってとこかもな」

杏子「そのまま諦めてくれるにこしたことはないんだが」

まどか「なんか、怖い話になってるの……? 大丈夫なんだよね? ……気を付けてね?」

杏子「まあ、まどかは気にすんなよ」

マミ「ええ、私たちなら大丈夫よ。何が来たって負けたりしないわ」

まどか「それならいいんですけど……」



1自由安価
2どうだ、この店なかなか良い雰囲気だろ
3昨日はさやかたちが来たんだろ? どうだった?

 下2レス


杏子「どうだ?なかなかいい店だろ?」

杏子「洒落てるしマミの作る飯も美味い!」

杏子「ま、店の名前が『ジュディッツィオ・フレッチャ』なんてのが玉に疵だがな」

マミ「さっ、佐倉さぁーん!」

杏子「うおっ」

 いつも通りにやつきながらからかっていると、マミが飛びついてきた。

 その様子をまどかは頭にハテナを浮かべながら、なぜだか微笑ましそうに見ていた。

 ……当時は後になってここまで自分に苦しめられることになるとは思っていなかったんだろう。

まどか「仲良いですねー」

マミ「いや、店の名前は『フィオリーレ』っていうのよ!? さっき聞いたことは忘れなさい」

マミ「何も聞かなかった……いいわね?」

杏子「審判の矢よ、私たちに道を拓いて」

マミ「佐倉さぁーん!」


 ……なんで当時はあんなに恥ずかしげもなく出来ていたのかが疑問だ。

 まあ、それも年を取ったということか。


杏子「そういや、昨日さやか達が来たんだろ?」

杏子「さやかの様子はどうだった?」

まどか「……よりによって、来たのが金曜の夜だったから」

杏子「……あー、みんなで恒例の晩酌タイムに付き合わされたんだろ?」

まどか「うん……飲んだくれてたね」


 ……そういうときのほうが素直に感情が出やすいのか?

 あたしは酔うほど飲んだことはないが。


まどか「さやかちゃんは良い飲みっぷりだったね……」

まどか「初めて一緒に飲んだけど、いつもああなのかなぁ?」

杏子「どうだろうなぁ……」

杏子「なんか言ってなかったか? 違和感っつーか、無理してる感じとか」

まどか「上条君と喧嘩したみたいで、露骨に目を合わせようとしなかったよ」

まどか「せっかくの再会で、二人で来てくれたのにね」

まどか「さやかちゃん、それでイライラしてたのかなぁ……飲みすぎてそのまま寝ちゃって」

まどか「さっきまでうちにお泊りだったの」

杏子「そうか……大変だったな」


まどか「上条君はむしろ、あんまり飲んでなかったね。うちのママにぐいぐい勧められてたけど」

まどか「ママも途中で酔いつぶれちゃったし、それから上条君はすぐに帰っちゃった」


 上条は居た堪れなくなってそそくさと帰ったのか。

 それからあのメールにつながったらしい。


まどか「でも、さっきも来たよ。上条君」

まどか「で、連れてっちゃった」

まどか「だからわたしもそろそろお昼でも食べに行こうかなって思って、こっちに来たの」

マミ「……じゃあ、どうなったのかは鹿目さんも知らないのね?」

まどか「喧嘩のことですか?」

マミ「まあ、そうなんだけど……」

まどか「……ところで、ちょっと相談に乗ってもらえるかな?」

マミ「何?」

まどか「恋の悩み」

杏子「あんたもか! ……えっ?そういやまどかからそういう話聞くのってはじめてだよな」

まどか「あぁ、わたしじゃないの。タツヤのことなんだけど……」


マミ「でもそれって、あんまり家族が介入しすぎるのもどうなのかしら?」

マミ「心配なのはわかるけどそっと見守ってあげたほうが……」

まどか「うーん……そうも言ってられなくてね」

まどか「杏子ちゃんはわかると思うけど……その子、わたしが顧問をやってる手芸部の子なんだよね」

まどか「だから見たり話したりする機会はあるんだ」

まどか「……でも、その子……指輪をしてたんだよ」

まどか「杏子ちゃんとマミさんがしているのに似た、色違いのソウルジェム」

杏子「……マジか」

まどか「あ、忙しいのに困るよね……こんな相談」

杏子「いや、聞かないままよりいいだろ。タツヤの好きな女ってんなら尚更死なせられないし」

杏子「今度会ってやるよ。放課後くらいの時間ならこの店もほとんど客はこねえ」

杏子「マミ……いいよな?」

マミ「ええ」

まどか「ありがとう。じゃあ伝えておくね」


 ……現役を退いてからも、日ごろから年ごろの少年少女と接しているまどかからこうした相談を受けることは度々あった。

 そのたびに、まだ未契約なら説得をしてみたり、

 そうでないなら直接会って相談に乗ったり、たまに稽古をつけてやったりしていた。


 それでも、いきなり行方不明になる者はゼロではなかった。


1自由安価
2さようなら
3ところでその子の名は(安価内容かおまかせで仮名をつける)

 下2レス


杏子「ところでそいつの名前は?」

まどか「神名あすみちゃん。タツヤと同じ一年生だよ」

杏子「そうか。今度会ったらよろしく伝えてといてくれ」

まどか「うん。じゃあ、わたしはそろそろ帰るね。この前の小テストの採点と、あと授業で使うプリントもつくらなきゃ……」

杏子「相変わらず忙しそうだなぁ……ま、頑張れよ」

まどか「二人も頑張ってね!」

マミ「今日は来てくれてありがとうね」


 扉の飾りの音を鳴らし、まどかが帰っていく。

 ……休憩が終わって暗くなってきたら、また夜のラッシュが待っている。

 今日は激しい戦いになりそうだ。


杏子(まあ、まどかや他の奴らも頑張ってるんだしな……マミと鳴海もいる)

杏子(あたしも今日は踏ん張るか!)

-----------------
ここまで
あすみはそのままの設定にすると話がとんでもない方向に転覆させられそう
すでにほのぼのがなんなのかがわからないレベルだけど

次回は11日(土)18時くらいからの予定です


――――……
――――…………


杏子「やっと今日が終わった……」

鳴海「休日ってやっぱ、すごいんですね……」

マミ「お疲れ様……これで明日は休みよ」


 表の札をCLOSEに変えて、客のいなくなった店内で三人で一息つく。

 一週間の中で一番大変な日がやっと終わったのだった。


杏子「しかし、休みが週一ってキツくねえ?」

マミ「開店したてのうちはしょうがないわ……曜日別の売上を見て、軌道に乗ってきたら休みを考えるつもり」

鳴海「わ、わたしもがんばりますね!」

マミ「でも幹久さんは学校を一番に優先していいからね? テスト期間とかちゃんと知らせるのよ」

鳴海「はい! あぁ、そういえばそろそろ近かったです……」

鳴海「最終課題のレポートもまだ残ったままだ、明日は頑張らないと……」

杏子「休みってのに大変だな…… あぁ、でもマミもまた休みのうちにやることとかあるのか」

マミ「そうね」


 最後の片づけを終えると、鳴海が帰宅の準備を済ませて鞄を取った。


鳴海「では失礼します。お疲れ様でした」

マミ「気を付けてね」

杏子「おう、またなー」


 この数日で聞きなれた音が響く。

 ……と、それからすぐ入れ替わるように再び扉が開いた。


杏子「ん? 忘れ物か?」


「いやーすっかり遅くなった!」


 どこか騒々しい聞きなれた声に、扉の奥から見える姿。

 ……昨日も見た二人組が転がり込んできた。


さやか「あ、どうも! まだやってます?」

マミ「こんばんは……ちょうどさっきお店を閉めたところよ」

さやか「あちゃー、やっぱ遅く来すぎたか」

マミ「特別に何か作りましょうか?」

恭介「じゃあ、紅茶を。夕飯は食べてきたので」

さやか「というか、今日はあんまりがっつり食べる気分じゃなかったんですよねー……」

マミ「二日酔い? 鹿目さんちでいっぱい飲んでたらしいわね」

さやか「あ、聞いてましたか。はい、そんなところです」

さやか「まあでも、恭介がそばで看病してくれてましたし! おかげで元気がふっかつですよ!」


 ……いつのまにか昨日と同じ二人に戻っている。

 いや、同じではないのか?


恭介「さやかもよく僕が体調崩した時に看病してくれたからね」

恭介「さやかみたいにお粥とか上手く作れないから、そういうのはお母さん任せになっちゃったけど」

さやか「ああいう時はそばに居てくれるだけでも嬉しいの。あ、でもお粥ってそんなに難しいものじゃないよ?」

恭介「料理っていうのも奥が深いよね。ちゃんとやってみたら面白そうではあるんだけど」

さやか「恭介は一度始めるとめちゃくちゃ凝りそうだからなぁ……いつのまにかあたしよりずっと上手くなってたら悔しいよ」

恭介「でもやっぱバイオリンのほうに集中したいや。料理はさやかがいるから」

杏子「いや……おい」

さやか「まあね。適材適所ってやつ?」

恭介「さやかの料理はおいしいからね」

杏子「おーい」

さやか「ん?」

恭介「なんだい?」


杏子「お前ら何があったのか詳しく説明してくれ!」

杏子「こうなってるからには、付き合ってるんだよな!?」


さやか「えっ…………まあ」

恭介「…………はい」


マミ「お、おめでとう?」

杏子「返事が微妙すぎて祝福の言葉まで微妙になったぞ…… はぁー、まあおめでとうな」

さやか「ま、まあうん……昨日から心配かけちゃったかと思ったから来たんだけど」

さやか「いざ来てみると言うタイミングを逃しそうになったね……報告するのも勇気がいるってことか」

恭介「僕は普通にさやかとの話が盛り上がってつい」

杏子「とりあえずお前はのめり込むと周りが見えなくなる癖を直せ」

恭介「いやぁごめん……」

マミ「お湯が沸くまでの時間、それまでのことを詳しく!詳しく!」


 ……見つめ合う二人。


さやか「……どっちが話すの?」

恭介「さぁ……」

杏子「なにいつまでも二人で見つめ合ってんだよ!話すのがイヤならさっさとキスでもしちまえ!」

さやか「なっ、なに言ってんのよー!」


―――

―――
鹿目家 午前



まどか「大丈夫? さやかちゃん」

さやか「悪いね…………飲みすぎて翌日までまどかの家に世話になるなんて」

さやか「カッコ悪……いやぁ、あたしってほんとバカ」

まどか「しょうがないよ…… 上条君と喧嘩したんでしょ?」

さやか「んー……、ところであいつは? もう帰った?」

まどか「あ、昨日の夜あれから帰ったけど……」

さやか「……そっか」

さやか「…………もしかしたら、もう会うことはないのかもな」

まどか「さ、さやかちゃん? どうして、そこまで」

さやか「だって、アメリカ行ったのだってあたしが勝手に行動しただけなんだから」

さやか「単なる世話焼きの幼馴染としか思ってないんでしょ……」

さやか「家事をやってもらうついでって形で家に置いてもらって、ただそれだけの関係で……」

さやか「恭介はあたしのそばに居たいだとか、一緒に居てほしいだとか、望んでるわけじゃないんだよ」

まどか「そ、そんなことないよ……」

さやか「なんでまどかがそう言えるんだよー。そもそもあいつはバイオリン弾くためにあっちに留まってんだから」

さやか「バイオリンさえ弾ければよくて、あたしはそのついでなんだから」


 さやかが頭を押さえる。


まどか「だ、大丈夫……?」

さやか「あーいたたたた……ヒートアップしすぎた」

まどか「とにかく休もう? 身体が元気にならないと心も前向きになれないよ」

さやか「…………うん、そうする」


 それから眠りに入ったさやかだったら、少しして目が覚めた。

 胸のあたりまで伸びた髪に手を適当にかきあげ、頭をかく。

 少し寝癖がついていた。


さやか(……変な夢見た)

さやか(いくら恭介でもバイオリンと結婚するとかないわー)

さやか(でも、いつもの様子を見てると完全に否定できないのがなんとも)


 廊下から足音がして、部屋のドアが開いた。

 近づいてくる姿に顔を上げると、さやかはまどかの隣にいる予想外の姿に驚きの表情を浮かべた。


まどか「さやかちゃん……、上条君が来たよ」

さやか「えっ! ていうか連れてきてから言われても!」

まどか「先に伝えると拒絶するかなぁって思ったから」


 慌てて手櫛で髪を整えようとする……――その手を途中で手を止めた。


さやか「……な、何の用よ」

恭介「さやか……うちに来てくれないか」

さやか「へ?」

恭介「話したいことがあるんだ」

さやか「やだ、動きたくない……」

恭介「だからってずっとここに居るわけにもいかないだろう?」

まどか「あっ、うん……! そうだね」

恭介「あぁ、辛いようならさやかは動かなくてもいいからさ」


 そう言うと、恭介はさやかを抱き上げた。

 そして、そのまま去ろうとする。


恭介「お邪魔しました」

まどか「あはは……うん、またね」

さやか「いやいやマジで何やってんのよ! ちょっとー! 下してー!」

―上条家



さやか「まったく…… 恭介って時々とんでもないことやるよね」

恭介「そうかな?」

さやか「それに意外と力あるし……」

恭介「バイオリン以外にもビオラやチェロも弾くことがあるからね」

恭介「バイオリンより弓が重いし、楽器自体も大きい。チェロのケースって結構重くて……」

さやか「話が脱線してない? それが話したいことなの?」

恭介「あっ、や、ごめん」

恭介「休んでたところ悪いね……横になってていいから」

さやか「……うん」

恭介「二日酔いだよね……濡れタオルでも持ってくる? 何かツボとかあるんだっけ?」

さやか「別にいいから」

恭介「とりあえず水を持ってくるよ」


 ……さやかは恭介の持ってきた水を一口飲んで、ため息をついた。


さやか「はぁ……なんなのさ、いったい」

恭介「あのさ……僕はこれからもさやかと一緒に居たいと思うよ」

さやか「……は?」

恭介「再会出来て、これまで一緒に居て、嬉しかったから」

恭介「さやかと離れたくないと思う」

さやか「…………そう……」


 さやかはひとまずそれだけしか言えなかった。

 今までのことがあって、素直にありがとうとも返せなかった。

 本心なのはわかる。それは嬉しいと思った。でも鈍感さは痛いほど知っているから、どういう意図か図りかねた。


恭介「さやかは、もう僕には愛想尽かしちゃった?」

恭介「これからも僕と離れないでいてくれるかい?」

恭介「10年前の返事がこんなに遅れてごめん…………僕と付き合ってほしい」

さやか「…………遅すぎるわよ、バカ」


 さやかの頬に涙が伝っていく。

 恭介は慌ててハンカチを渡し、傍に寄り添った……―――


―――


マミ「そしてそっと頭をなでると、抱きしめてキスをしました……と?」

さやか「……してないですよ?」

マミ「ロマンチックが足りないわ。やり直しよ、上条君」

恭介「え? どこが駄目だったんですか?」

恭介「あんまりそういうのわからないので……とりあえずそうすればよかったんですか?」

さやか「……恭介、それはせめて帰ってから二人きりの時にしてね」

杏子「マミの入れ知恵はきっとすごいぞ。なにせ愛と情熱の国イタリア仕立てだからな」

マミ「ふふふ」

さやか「いや……でも、恭介は恭介らしくていいと思います」

さやか「ずっとこんな感じだったから、急にはちょっとあたしも恥ずかしいし落ち着かなくなっちゃうから」

さやか「これだけでもすっごい進展ですよ!」


 沸いた湯を注いだティーポットが良い頃合いになったところで、

 マミがカップに紅茶を注いでいく。


マミ「じゃ、次は結婚に向けて考えてね。あんまり遅くならないうちに」

さやか「……待ってるよ」

恭介「別に僕はこれからすぐにでも構わないけど」

さやか「えっ?」

恭介「だって、さやかはオッケーしてくれるんだろう? このままだとまたタイミングを失いそうだし」

恭介「今度の公演が終わったら結婚しよう」

さやか「……は、はい」


杏子「めでたいんだけどさ……死亡フラグみたいに言わないでくれ」

マミ「いやね……バイオリンで人が死ぬわけないじゃない」


 鈍感なのに直球というか、こういうところは迷いがない。

 こういうのを天然たらしって言うんだろうな。

 呆れつつそう思った。


会話/行動
1自由安価
2さやかのことちゃんと大切にしろよ
3式には呼べよ

 下2レス


杏子「ま、なんにせよ今回のことでやっとスタートラインに立ったって感じだよなー」

杏子「はっきりいって、これからのほうが心配だし」

杏子「上条、さやかのことちゃんと大切にしろよ」

恭介「うん……そうだね、頑張るよ」

杏子「で、式はどこでやるんだ? パスポート持ってないから海外はキツいな」

恭介「そっか……どうせなら家族も居る日本でやったほうがいいかもね」

さやか「そのほうが知り合いを呼びやすいね」

杏子「式には呼べよ」


 ……やっとここまでたどり着いたが、それで終わりじゃない。

 本当に、これからだ。

 
 とりあえず、これからさやかが幸せになれることを祈ろうと思った。


マミ「もう遅いから気を付けてね」

さやか「はい!」

恭介「紅茶ごちそうさまでした」


 話し終わるころにはもう夜も更けた時間だった。

 二人の背を見送って一息つくと、今日はもう寝ることにした。


――――翌日の日曜は、マミが店はじめてから最初の休日だ。

マミのいない三年間、休日平日なんて概念はとっくに自分とは無関係のものになっていた。

しかし……メリハリがあれば休みの日は貴重なものになる。

その感覚を共有して誰かと同じ時間を過ごすというのは悪くないかもしれない。


キリカ「やあ」


 駅前で待っていると、その相手が来た。

 今マミは買い出しに出かけている。その帰りにまどかの家にエイミーを迎えに寄っていくと言っていた。

 あたしが帰るころにはエイミーも家に居るのだろう。


杏子「おう、さっそくいくか」

杏子「――――戦場に」

--------------------------------------
杏子「あたしたちの戦いはこれからだ!」

ご愛読ありがとうございました。>>1先生の次回作をご期待ください(嘘)


杏子「うおおお、早く行くぞ!」


 最初に決めていたのは、駅のデパートに出来たスイーツの食い放題の店だった。

 人も混むこの時間は、まさに戦場! 早く食わないとなくなってしまう!


キリカ「待て待て待て、勇みすぎだろ! なにしに行く気だ!?」

杏子「なにって、スイーツを食いまくるんだろ?」

キリカ「そうだよ……何を急いでるんだい?」

杏子「なくなるかもしれないだろ」

キリカ「いや、食べ放題だよ……? さすがにこの時間になくならないって。ていうか途中で追加もするでしょ?」

キリカ「むしろ君が食べ尽くさないかってことのほうが心配だよ」

杏子「食べ放題なんだろ?」

キリカ「出禁にならないくらいで頼むよ」


 ……結局普通に早足で歩くことにしたのだが、それでも速いと文句が出てキリカに合わせて歩く。

 世の中のオシャレな靴は機能性が低すぎるのがいけない。

-------------------------
思ったより長くなってるけど、まだ決着ついてないからね…あとあすみのこともあるし
ということで物語変更などは安価下でお願いします

それと、>>429にも書いたけど、新主人公の募集はしばらくお休みしてます
でも外伝以外でやってない人はいますよ、マミさんとか


 店に着くと、さっそくスイーツを取りに行くことにした。

 皿に『うまそう』と思ったケーキやプリンなんかを次々に載せていく。


杏子「なんだ、まだいっぱいあるじゃないか」

キリカ「だから言ったじゃん……ていうか……いきなりその量ってなに?」

杏子「一枚に載りきらなかったからな」

キリカ「そろそろテーブルに戻ろうよ……」

杏子「そうだな、食うか! なくならないならまた後で取りに来られるからな!」


 一旦テーブルに戻って食い始めることにした。


杏子「これだけ色んな味を楽しめるのはいいな!」

キリカ「質より量かと思ったけど、質も悪くないね」

キリカ「しあわせ……♪ 今日はいっぱい食べちゃおう」


 そういえば、元々今日はストレス解消という目的があったんだったか。

 あの時はまだ、ここまでの数日があれだけ濃いものになるとは思ってなかった。


 会話
1自由安価
2最近のことについて

 下2レス


杏子「最近仕事はどうよ」

キリカ「んー、前に話した時からあんまり変わってはないけどね……」

キリカ「あんまり残業とかないだけマシかな? そっちはどうなの? 店員二人で飲食業ってきつくない?」

杏子「まあそうだなぁ……昼と夕方の食事時以外はほぼ休めるが、普通の会社員と比べると夜は大分遅いだろうな」

杏子「特に昨日の忙しさはヤバかった」

キリカ「休日か……混むだろうね」


 なんだが不思議な感じだ。

 仕事の話を聞くことはあっても、自分のことを話すことははじめてだった。


杏子「でも、もう二人じゃないんだ。バイトが入ったからな」

キリカ「おお、よかったね!」

杏子「……しっかし、今は仕方ないにしろいつまでも仕事ばっかってのもな」

杏子「マミもそろそろ良い男見つけて幸せになれば良いのにな」

キリカ「人のこと心配してる余裕があるの? 君からそういう話聞いたことないけど……」

杏子「……いや、そうだな」


 ……興味が持てる時がきたら、か。


杏子「お、パスタが出来たてだって!どうせマミのにはかなわないだろうが食っておくか!」

杏子「それからスイーツもおかわりにいかないと!」

キリカ「…………花より団子か」


 時間ギリギリまで食いまくっていたが、これでも話しながらで手加減はしていた。

 店を出ると、それからデパートを回って、カラオケに来た。


 ……とはいっても、歌ってるのはキリカばかりだった。


 熱唱しているキリカの横でポテトをつまむ。

 食べたら消費もしなきゃと言っていたが、結局また食っている。


キリカ「……あーっ、やっぱり気晴らしといえばこれだよね!」

杏子「楽しそうだなぁ……。その割に歌ってたのは失恋ソングだったみたいだけど」

杏子「あ、失恋でもしたの? それで気晴らしで酔って忘れようって?」

キリカ「……そういうこと、普通直球で言う?」

杏子「……え、マジでしたのか」

キリカ「してないよ」

杏子「なんだよ」


 ストローを吸うと、コーラの入っていたコップが氷だけになってズズ、と音を立てた。

 キリカのは味も見た目もジュースと変わらなそうなカクテルだ。

 そういえば、ビールとか飲んでるところを見たことがない。

 だったら酒より安いジュースでいいじゃんと思うのは無粋なんだろうか。


杏子「……なあ、愛ってなんなんだろうな」

キリカ「私の歌聞いてなかったの?」

杏子「それは作詞の人の受け売りだろ」

キリカ「……いや、私に聞くなよ」

キリカ「別に明確な答えなんてなくていいんじゃない?」

キリカ「人それぞれあるだろうけどね…… 『こうだ』って長々と語る人のほうがわかってない気がする」

杏子「人それぞれ、かぁー」

キリカ「なに? 食べすぎた?」

杏子「いや、ちょっとあたしの友達がいろいろあってな……」


 ……それにしたって、他を探せばさやかをもっと幸せにしてくれる人だって居たんじゃないかとは思うが。

 でも、結局さやかが望んだから今の形になっているのだ。

 さやかが愛想を尽かさなかったのなら…………本人の気持ちを一番に尊重すべきなんだろう。

 まあ、不安は残るがあれで上条もさやかのことを大切にしていないわけじゃない。それは一応見ていてわかる。



1自由安価
2で、あんたも人の心配してる場合じゃないよな?
3サイトの作り方って知ってる?

 下2レス

2のあと3


杏子「まっ、あたしには縁がない話だろーけどな――」


 ぼそりと言うと、キリカは納得のいかなそうな表情であたしを見ていた。


キリカ「……自分だけそうやってまったく関係ない興味ないみたいにしてるのって、ずるいと思うよ」

キリカ「人のことになると心配するのに」

杏子「それは……」


 ああ、そういやこいつもそうだったっけ?

 結局、それから話しかけられないとか進展しなかったとかで終わったことは何度かあったみたいだったが。


杏子「まあそうだな。マミとも約束しちまったから……」

杏子「もし誰か好きな人が出来たら今度はあんたも相談乗ってくれ」

杏子「その時は……ちゃんとアタックして玉砕してやるよ」

キリカ「はいはい、最初から玉砕する気なのはどうかと思うけどねー」


杏子「ところで、マミが店のサイトを作りたいって言ってるんだけどさ、作り方って知らない?」

杏子「会社ではたらいてるなら、少なくともマミやあたしよりは詳しいだろ?」

キリカ「サイトの作り方?」



 下1レスコンマ判定1ケタ
1~3 ふわっと知ってる程度
4~7 なんとなく想像がつく程度
8~9 専門職
0 一晩でやってくれました

ほい


キリカ「えーっと……htmlとかcssとか?」

杏子「はあ、なんだそれ」

キリカ「ぶわーってした英数字と記号の羅列みたいのでできてるんだよ」

杏子「キリカは物知りだな! 作れるのか?」

キリカ「私は無理だよ、やったことないし」

キリカ「webデザイナーとかじゃないと、会社でパソコン触ってるだけじゃわかんないと思うよ」

杏子「なんだ……残念」

キリカ「タグの意味とかわかれば組み合わせ方もわかるんじゃない?」

キリカ「本とか売ってるから見てみたら? あとはネットでも作り方出てるよ」

杏子「本か。後で本屋でちょっと見てみるか」

キリカ「それより、なんか歌ってよそろそろ!」

杏子「えー、あたし最近の曲知らないし」

キリカ「最近の曲じゃなくてもいいからさ」

杏子「そこまで言うならな……じゃあ、笑うなよ?」



1自由安価
2おなじみ「コネクト」
3教科書にも載ってる感じの有名な歌謡曲
4ここはあえて童謡で笑いを取りに行く

 下2レス

まどかの影響で演歌、一曲歌ったら乗ってきて何曲か歌う

美○ひ○り『川の流れのように』
森○一『冬のリヴィエラ』
冠○郎『炎』
石○さ○り『津軽海峡・冬景色』


杏子「あ~あぁ~ 川の流れのように~♪」


 最近の歌じゃなかったら、知ってるのはまどかに聞かされた演歌くらいだった。

 小さいころ教会で歌った歌とはだいぶ違うが、歌ってみるとこういうのも悪くなかった。


キリカ「……確かに最近の曲じゃなかった」

杏子「腹から声出すとスッキリするな!」

杏子「よし、もう一曲歌うか!」

キリカ「お、何かのスイッチが入った」


 もう一曲、といいつつまた何曲か続けて演歌を歌っていた。

 キリカはいつしかさっきのあたしのように、飲み物を追加して飲みながら聞くのに徹していた。


杏子「どうだ! あたしの津軽海峡!」

キリカ「よっしゃー乗ってきた!どーせだからデュエットしよー!」

杏子「ちょっ、勝手に入れんなよ」

キリカ「知らないの?」

杏子「いや聞き覚えはあるが」

キリカ「ならば問題ないねっ」


キリカ「飲みすぎたのは~あなたのせいよ~♪」

杏子「弱い女の……って結構低いなこれ」


 ……どことなくこれ以上はマズそうな予感を感じたが、ちょうどそろそろ時間の終わるころだ。

 飲むくせに強くないんだ、こいつ。

 味も香りもジュースと変わらないから飲みすぎるんだろう。……別にあたしのせいではない。


――――……

------------------
ここまで
次回は19日(日)15時くらいからの予定です

乙です

今夜は久々に長丁場でしたな
そういえばスレ主はマギアレコードはやるんですかね?
まだ配信前ですがマギアレコードの新キャラ達も登場させて欲しいですね

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まどオンががっかりだったから今回のは期待したい…

でも別都市だしまたかなりイレギュラーな話なので、普通にしてたら出ない(考慮しない)話になるかと
あと矛盾出たり途中でイメージが変わったりということがあるので、話を最後まで見ないうちには書きたくないっていうのが
出るとしたらだいぶ先の話になりますね


キリカ「えーもう時間? 延長しよう延長!」

杏子「このくらいにしておこうぜ。明日からも仕事なんだから」

キリカ「あぁまた一週間がはじまってしまう! もう駄目ださよなら私!」

杏子「何を言ってるんだ何を」

キリカ「だって、次の休みまで五日も出なきゃいけないんだよ?」

杏子「あたしなんて六日だぞ」

キリカ「だからぁ、今日くらいぎりぎりまで遊んでいたいなぁって思うじゃないかー!」

杏子「絶対明日後悔するからなそれ」


 ……あぁ、面倒くさい感じのキャラになってしまった。

 酔うほど飲んだことのないあたしにとっては、つくづく酒って面倒だなぁと思う。

 普段冷静な奴がこうなると困る。振り回される側というのは慣れない。


杏子「じゃあこれから本見るけど一緒に来るか?」

キリカ「行く!」


 今度はデパートの本屋に入る。さっき言ってた本を見てみようと思ったのだった。

 それらしい本を探して手に取ってみる。


杏子(たしかにさっき聞いたえいちてぃーえむえる?とかいう言葉が書いてあるな……)


キリカ「なんかいい本あった? ……って、杏子が難しそうなの見てる!?」

杏子「これ、サルでもわかるらしいぞ? このタイトルはバカにしてるな。随分頭のいいサルがいたもんだよなぁ」

キリカ「……あー、サイト設計の本かぁ。まあがんばって!」

杏子「えらい適当に言うなぁ」


 ……とりあえず、タグとやらの意味を理解して組み合わせればいいというのはその通りらしい。

 見ているとわかるようなわからないような気がしてきた。


杏子(へー、『意外と簡単』……ねぇ)

杏子(あたしにも出来るかな……そろそろ何か格闘以外の特技を身につけたいしな)


 たとえ駄目だったとしても後々マミが必要とするかもしれない。

 買っておいて損はないかもとレジに持っていくことにした。

 キリカも先に何か雑誌や小説を数冊買ってたようだ。


 ――デパートの外に出ると、少しひんやりとした空気が心地よく感じた。

 ちょうど日が沈みかけているくらいの時間だ。


杏子「……で、ちょっとは落ち着いてきたか」

キリカ「どちらかというと早く寝たい気分」

杏子「送ってくか?」

キリカ「んー……」

杏子「別に駅からそんなに離れてないだろ?」


 そう言いつつ、手を引いて早足で歩きはじめる。


キリカ「ちょっ……だから早いってば」

杏子「いいから」

キリカ「何がいいんだよ。謎身体能力兼万年スニーカーの君と違って私は――」

杏子「……なんかさっきから視線を感じたんだ」

キリカ「えっ」

杏子「まあ……なんつうの? 勘みたいなものだ。多分また“あいつら”だろ」

キリカ「……ヤバい人?」

キリカ「考えすぎじゃないの? 視線っていったって、ここには知り合いも多いんだし変なものじゃないかもよ」

杏子「そりゃそういう可能性もあるかもしれないけどさー……」

杏子「楽観的だな。 状況が状況だからあたしだって一応用心はしてんだよ」

キリカ「いやでも……」

杏子「?」

キリカ「あー……なんだっけ、なんて言おうとしたか忘れた」

杏子「まったく、酔っ払いはあてにならんな」



1自由安価
2さようなら

 下2レス


杏子(……とりあえず、何か揉め事があった場合キリカを巻き込むわけには行かないな)

 ……大通りのほうに出てからタクシーを呼び止めた。

キリカ「えっ?」

杏子「金は出すから今日はこれで帰っとけ」

キリカ「いやでも、そこまでしなくていいよ。君そんなにお金余裕ないでしょ」

杏子「いいっつってんだから素直に乗っとけよ!」

キリカ「じゃあせめてお金は出すから」

*「……どこまでですか?」

キリカ「この通りをまっすぐ行って……郵便局のあたりでいいです」

杏子「じゃ、また今度な」

キリカ「あぁ、うん……またね」


 ……ちょっと納得のいかないような様子だったが、ようやく帰すことが出来た。

 あたしも帰ることにしよう。


 ……用心して歩いてはいたものの、特にそれからは何事もなく帰宅できた。

 途中で視線も消えていた。本当にキリカの言うように変な視線じゃなかったならいいんだが。


杏子(さっさと出てくりゃぶっ飛ばせるんだけどな)

杏子(……まあ、一緒に居るときに狙われなかっただけよしとするか)


 生活スペースの二階に上がると、聞きなれた鈴の音とともにエイミーが出迎えてくる。

 まどかの家にもちょくちょく遊びに行って見ていたが、それでも週一回も見ていたわけじゃない。

 マミにとっては三年ぶりだから、本当に久しぶりだろう。


杏子「まどか、寂しがってなかったか?」

マミ「三年も一緒に居たんだものね」

マミ「鹿目さんには会いたくなったら遊びに来てって言っておいたわ」

杏子「渡した時の逆だな」

エイミー「にゃ」


 マミがいて、エイミーがいる。

 これでやっと全員揃った感じがした。


1自由安価
2パソコン借りていいか?

 下2レス


杏子「ところでマミ、パソコン借りていいか?」

マミ「どうぞ」

杏子「えーっと……どうやったらつくんだ?」

マミ「電源はここよ」

杏子「あー、そういや電源ボタンって操作したことがなかったんだな……」

マミ「で、でも、大丈夫なの……? 佐倉さん、使えるようになったの? 機械」

杏子「はっ、バカにすんなよ! 今からこれですげーサイト作ってやるんだから!」


 押してみると、真っ黒だった画面にパッと映った。


マミ「……サルでもわかる? これでサイトが作れるの?」

杏子「ああ。サイトってのはな、実はごちゃごちゃした文字のタグっていうのの羅列で出来てるんだよ」

マミ「な、なんかものすごく物知りになったわね……! いつのまにそんなの勉強したの?」

杏子「いや、勉強はこれからだ」


 ……なんとかの更新とかいうのが出てきた。

 使えるようになるまでもう少し時間がかかるらしい。

 その間にエイミーとちょっと遊びつつマミと話すことにする。


エイミー「にゃー」


 喉のあたりを撫でてやると、ごろごろと喉を鳴らす。

 エイミーは初めて会った時からおとなしかったが、年を取ってさらにおとなしくなった気がする。


杏子「そういえばキリカもエイミーを可愛がってたなー」

杏子「大人しくて撫でさせてくれるとか、くろまるとか何とか言って」

マミ「あぁ、よく丸まってるから」

杏子「ま、マミの店にいるってメールしておけば会いに来るだろ」


 キリカも今頃はもう家についてるだろうか。


杏子「……そういや、今日視線を感じたんだがそっちは何かなかったか?」

杏子「まぁ、何もなかったからキリカが言ってたように変な視線じゃなかったのかもしれないけどさ」

マミ「別にこっちは何もなかったけど……そうね、変な視線じゃないといいわね」

杏子「で、そっちはまどかのとこ行ってどうだったよ? さやかのことで何か言ってたか?」

マミ「近くに居たのに長い道のりだった、って。たぶん、上条君を除けばみんなが思ってることだけどね」

杏子「そうだな……」

杏子「あと例の神名あすみってやつのことで連絡は?」

マミ「明日その神名さんが大丈夫だったら連絡するって」

マミ「ちなみに、佐倉さんは大丈夫よね?」

杏子「ああ、あたしは大体大丈夫」


 更新とやらのゲージが100%まで埋まり、真っ暗になったと思ったらすぐにまた最初の画面が出た。

 使えるようになってから、さっそく本の内容を実践してみることにする。


マミ「じゃあ、私はそろそろ夕飯の支度をしてくるわね」

杏子「おうー」


 さて、ここからはマミも知らない。本だけが頼りだ。

 ……まず『メモ帳』を作ってみる。

 書いてある通りにファイルの名前を変えて、中身を打って……


杏子「できた!あたしのオリジナルページ!」


↓メモ帳
=========================
<head>
<title>test</title>
</head>
<body>
test
</body>
=========================

↓ブラウザ
________________
 test ×|+
________________
←| file:///c:/Desktop/test.html
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
test

________________


杏子「……って、こんなんサイトじゃねええええ」

マミ「これでよし、ご飯が炊けるまでテレビでも……ってどうしたの? あら?何それ?……テスト?」

杏子「まあなにそれってなるよな……簡素にもほどがあるだろ」

杏子「どうしてあんなにいっぱい打ったのがこれだけになるんだよ……」


 ここまでの作業のあと『サイトができましたね!簡単でしょう?』なんて書いてある本が憎らしく思えてきた。

 騙された気がする。

 たとえ駄目だったとしてもとは思ったが、早くも折れてきた。


杏子「いや……詳しくはこの本あげるから見てくれ」

杏子「こいつは嘘つきだが、もしかしたらマミならいつか役立てられる時が来るかもしれないから」

マミ「はあ……」

杏子「よし、そんなことより飯だ!」

マミ「今日はトマトシチューよ」

杏子「やった!」



 ……ちなみにその後すぐに本棚にしまわれた。

 そのあとはまたエイミーと遊んで、飯を食って、明日に備えてと眠りについただけだ。

 これからいつ日の目を見るかはわからない。



 ―――……それから、まどかから連絡があったのは翌日の昼頃だった。

 あすみも今日は予定はないそうだ。

 昼のラッシュが終わって一息ついた午後、そのメールを確認して返信を返した。


杏子「――じゃ、行ってくるよ。夕方の混み合う時間までには帰ってくるから」

マミ「ええ、行ってらっしゃい」



 約束の土手に行くと、思ってたよりやや小柄な銀髪の少女が居た。



杏子「よっ。まどかから聞いてると思うが、あたしが元魔法少女の佐倉杏子だ」

あすみ「神名あすみです」

杏子「一年生だったな。ってーと、13歳?」

杏子「あたしも契約したのはそのくらいだったよ」

あすみ「あ、まだ誕生日が来てないので12ですけど……」

杏子「早生まれか。ってことはもうすぐ誕生日だな」

あすみ「あ、はい……」

杏子「……まあ硬くなるなよ。あたしのことは近所のねーちゃんとでも思っとけ」

あすみ「えっと、今日は……指導をしてくれるの?」

杏子「あぁ、そうだな。でもその前に……ちょっと話でもするか」



会話
1自由安価
2契約してからどのくらいだ?
3人のために契約するのってどう思う?
4何のために魔女と戦ってる?

 下2レス


杏子「まず、そうだな……契約してからどのくらいだ?」

あすみ「もうすぐ一か月くらいかなぁ……」

杏子「割と最近だな」

あすみ「はい……」

杏子「当然もう魔女も倒してるよな」

あすみ「あ、はい。基礎的なことはわかってます」

杏子「だったら、何のために魔女と戦ってる?」

あすみ「そういう信念みたいのって……必要なんですか?」

杏子「どうだろうな。 何のためにやってんだかわからなくなったら辛くなることもあるかもしれないし」

杏子「かといって、信念に振り回されるってこともあるだろ?」

杏子「……わかんないんなら無理に探さなくてもいいんじゃね?」


 そう言うと、あすみは少しだけ考えこんで、

 わかったようなわからないような顔でわずかにうつむいた。


あすみ「…………うち、お母さんしかいなくて」

あすみ「あ、でもだからって不幸ってわけじゃないの。 とっても優しいし幸せなの!」

あすみ「でもいつもいっぱい働いててて、大変そうで…… この前も過労で倒れたって聞いて心配だったんだ」

あすみ「だから、ちょっとでも楽になるようにって思って」

あすみ「『お母さんが幸せになりますように』って……キュゥべえにお願いしたの」

杏子「……優しい願いだ」


 ――だが、甘いと言わざるを得ない。

 そういう漠然とした願いは、どこまで効果が出るかが予測できない。

 幸運に助けられることはあるかもしれないが、幸運だけではなんともならないこともあるだろう。


杏子「ちなみに、それから何か良いことはあったか?」

あすみ「たまに良いことがあるくらいかな……」

あすみ「自販機で飲み物を買ったらおまけがついてきたり」

あすみ「それに、この前は帰り道に四つ葉のクローバーを見つけたって、押し花の栞を作ってくれたの!」

あすみ「『あすみも幸せになりますように』って……願ったのは私のほうなのに」

杏子「ささやかだな…… 宝くじでも当たれば大分楽になるんだけどな」

あすみ「それはそれで、今とは何かが変わっちゃいそうで怖いかな……」

あすみ「貧しくても幸せだから、今の雰囲気は失いたくないんです」

杏子「そうか、そうだな」

あすみ「だから、何のために戦うかって言われれば、多分お母さんとか街の人のため……」

あすみ「でも、自分のためでもあるのかも。みんながひどい目に遭ったら私も辛くなるから」


 まっすぐに笑うあすみに、昔のあたしを重ねた。

 ……同時に、こいつにはあたしみたいにスレてほしくないな、と思った。


 最初は委縮した様子だったあすみも、話しているうちに少しずつ打ち解けてきたようだ。

 『そろそろ訓練するか』と言うと、あすみは何か言いたそうにこちらを見た。


杏子「……ん?」

あすみ「訓練って、身体を動かすやつ……ですか?」

杏子「あすみの武器が近距離向けならあたしも面倒は見やすいな」

杏子「まあ、射撃でも面倒を見られないことはないよ」

あすみ「魔力の使い方とかも教えてほしいです」

杏子「わかった。魔力のほうはあたしも現役と比べると勘は鈍ってると思うが、見てみるよ」

杏子「それに、これからも都合がいい時に連絡くれれば訓練してやるよ。先に連絡先交換しとくか」

あすみ「はい!」


 連絡先を交換して訓練に入る。

 一応マミの連絡先も教えておいた。

 ……魔力の繊細なコントロールはあっちのほうが上かもしれないしな。


あすみ「変身しましたよ!」

杏子「じゃあ、まずは素振りからだ!」


 ……そう思いながら実際に武器を見てみれば、

 あすみが手に持つのはフレイル――柄と鉄球が鎖でつながった形の、モーニングスター。

 どう見ても近距離から中距離といったところだ。

 あたしの多節棍にも似たタイプの武器で、それを更に重く破壊力を強くしたような感じだ。これなら教えやすい。


杏子「……見たところ命中率と身のこなしはなんとかしてかないとって感じだな」

杏子「武器に振り回されないように重心を制御しないとな」


 身体を動かす訓練があまり好きじゃないのかと思って運動神経に自信がないのかとも思ったが、

 武器からしてあたしと同じかそれ以上に腕力も強いタイプなはずだ。


 ……ただ、契約前はあまり運動神経のあるほうじゃなかった……というか、

 あまり運動をする方じゃなかったというのは、本当にそうらしかった。

あすみんが杏子の弟子2号になるのか…なぎさ編だとあすみんはパワータイプだったような
魔力制御の上手いマミが『技の1号』、あすみんが『力の2号』?


あすみ「――――つかれたぁ……」

杏子「じゃ、そろそろ魔力のコントロールの練習もするか」

杏子「あー、ってもどういう方法でやるか?」

杏子「あすみが使える魔法はなんだ?」

あすみ「えっ……? うーん、傷を治すのはできないことはないけど……得意なほうじゃないかも」

あすみ「あとは……フレイルの応用でもよければ、鎖を張って防護結界を作る技があります」


 ……なんとなくあたしの『縛鎖結界』を想像させる技だ。


杏子「……だけか」

あすみ「うん……」


 身体再生の魔法の得意・不得意は、多分願いの内容で決まるんだろう。

 あたしもあすみも直接誰かを治したいとか願ったわけじゃないから、それはしょうがない。

 マミが願ったのは自分の命をつなぐことだった。そう考えればそういうのがあたしより得意なのは当然か。

 だが、契約したてからマミよりもずっと上手に使えてたヤツもいた。


杏子「だったら、武器と絡めて攻撃用に使える魔力の応用を強化したほうがよさそうだな」

杏子「あたしとあすみの武器はちょっと似てるんだ」

杏子「あたしの槍みたいにもっと変形ができるかもしれないし、威力の調節もしやすくなる」

あすみ「え……?」


 その特性から考えて提案したのだが、あすみは少し落胆したように見えた。


杏子「……なんだ、不満か? そういう使い方は」

あすみ「い、いや、そんなことはないよ!」

杏子「そうか?」

杏子「……まあそうだな、戦うため、傷つけるための力ばかり強化するために魔法少女になったわけじゃないもんな」

あすみ「傷つけるための力……か」

杏子「けど、その力がないと自分も助けたいヤツも助けられない」

杏子「生きるためのテクニックと思っておけばいいよ」

あすみ「……うん、別にイヤなわけじゃないから! やりましょう!」

杏子「ま、それって結局またほとんど“身体を使うほうの訓練”と近くなるんだけどな?」


 ……にやりとそう言うと、あすみはたじろいだような苦笑いをした。


 日が暮れてくる。

あすみ「本当につかれた……」

杏子「お疲れさん、今日はこのくらいにしておくか」

あすみ「あ、じゃあ明日も……」

杏子「ああ。そういや部活やってるんだったな、そっちの予定は?」

あすみ「あ…… スケジュールが決まってるわけではないので、しばらくは魔法少女の活動に専念しようかと……」


 ……そしたらタツヤは寂しがるかな。

 そんなことを考えたのが半分、あと半分は青春をそればかりに使うのもどうかってことだった。


杏子「学校でしかできないことは優先したほうがいいと思うけどな」

あすみ「……自分の経験からですか?」

杏子「ああ、あたしができなかったからな」

あすみ「…………」

 自分のことでもないのに、あすみは悲しそうに俯いた。

 どう捉えたんだろうか。さすがに、その真相までは予想もできないだろう。

杏子「もう少しで二年だし、受験勉強だってあるし、卒業だってあっという間なんだからな!」

杏子「ていうかその前にあと少しで春休みだろ? そしたらまたいっぱい訓練もできるだろ」

あすみ「はい……ありがとうございます」



1自由安価
2じゃあまたな

 下2レス


杏子「あすみ、ところでお母さんはどんな仕事をしてるんだ?」

杏子「過労で倒れたってくらいだから、よっぽどキツい仕事なのか?」

あすみ「パートをいくつか掛け持ちしてるみたい……」

あすみ「技術もないしブランクがあるから、あんまりいいところで雇ってもらえないんだって」

杏子「パートか……」


 マミの店では正社員を雇えるような人件費はないと言っていた。

 料理の腕は普通の主婦くらいとして、技術がないってことは資格とかも使えそうなものはないんだろう。

 となると、あたしや鳴海のように接客のほうになるか。


杏子(“いくつか”のうちの一つでも、マミの店でなんとかできないかな)

杏子(とりあえず、要相談、か……)


杏子「……まだ時間はあるか?」

あすみ「うん。まだお母さんも帰ってくる時間じゃないし……」

杏子「うちに来ないか? さっき話したマミって奴の店なんだけどさ」

杏子「どうせなら来いよ。家で一人でいるよりはいいだろ?」

あすみ「お店……人がいっぱいいるの?」

杏子「これから来始めるけど、まだ忙しい時間じゃないよ」

あすみ「……ごめんなさい、また今度時間があるときにします」

あすみ「これから忙しくなるなら、邪魔しちゃ悪いし」

杏子「そうか? じゃ、メールで場所送っとくよ。いつでも来ていいから」

あすみ「はい」


 あすみと別れて土手から店へと歩いていく。

 上の電線からカラスの鳴き声が聞こえた。


杏子「カラスが鳴くから帰りましょー……っと」


杏子(……にしても、やっぱ勘落ちてるんだな)

杏子(魔力の扱い方も、魔力の察知も……そういやもう何年も魔女結界の魔力なんて感じてねえ)


 偶然通りかかって倒すことはあったし、これでもいざというときのグリーフシードは足りている。

 ……そういやソウルジェムの濁り方も昔に比べて年々少なくなっている。

 今手にしている2つのストックを、もう一年は前から持っている気がする。

 なにをやっても消費が少ない分、威力のほうも落ちている印象だ。


杏子(……そういやマミはどうなんだろうな)

杏子(イタリアにだって魔女くらい居ただろうが、どのくらい倒してたのか)

杏子(…………イタリアの魔女か……イタリアのキュゥべえってのも居たのか?)

杏子(なにせ、あいつは死んでも死なないゴキブリのような奴だからな)


 そんなことを考えながら、グリーフシードを処理しなくなったから

 キュゥべえのことを呼ぶことも見ることもめっきり減ったと思い出した。


杏子「キュゥべえ、おーい」


 ……久しぶりに呼んでみたが、その姿は現れなかった。

――イタリアンレストラン『フィオリーレ』



マミ「佐倉さん、おかえり。どうだった?」

杏子「なかなか教えがいのありそうなヤツだったよ。武器も系統もあたしと似てるし」

マミ「へえ。新しい弟子ができたってところね」

杏子「そうだな。まあ、一番は部活とか学校生活のほうを優先させるつもりだけどな」

杏子「タツヤのためにもな」

マミ「そうね。“魔法少女”ばっかりじゃタツヤ君が寂しがるわね」


 ……けど、何か違和感があった気がするのは気のせいだろうか。

 別に変な意味ではないんだが、なにか引っかかるような…………


杏子(……まあいいか、まだ初日だ。これから見ていけばいいんだしな)


杏子「それとさ、あすみの親のことなんだけど」

杏子「あすみの家、母親しかいなくて一人でパート掛け持ちして大変なんだってさ」

杏子「もう一人くらい雇えそうなら、そのパートのうちの一つだけでもここでなんとかならないかと思って」

マミ「うーん、そうねぇ……」

杏子「ここのことはあすみに教えておいたから、来た時には話してみてくれよ」

マミ「じゃあ、考えておくわ」


 ……話にちょうど一段落ついたところで、カランと扉の音が鳴った。


マミ「いらっしゃい……って、幹久さんか」

鳴海「はい! 幹久鳴海、入ります!」

マミ「ええ、これから頑張りましょうね」

杏子「おう! これからが勝負時だからな!」


――――――
――――――


 ……今日の営業も終え、寝る準備をしながらメールをチェックする。

 まどかからあすみについてのメールが来ていた。

 まあ、内容は『どうだったか』とかそんな感じだ。


杏子(……あー、最近部活に来てなかったのか)


 最近、というとやっぱり契約した一か月前くらいからなのだろう。

 今日ああ言ったから、明日は部活にも顔を出してくれるだろうか。


 あたしもまどかも夜更かしの得意なほうじゃない。

 まどかといくらかメールのやりとりをしてから、遅くならないうちに寝ることにした。


 ――――……その翌日、昼時も終わり、少しずつ夕方になろうとしている時間にまどかから連絡があった。

 あすみが部活に来ていないらしい。


杏子(まあ他に予定があるんなら仕方ないけどな……)

杏子(……予定か。なんか嫌なことが起きたんじゃないといいが)


 あすみから連絡は来ていない。

 今日も訓練ができるというようだったから、あの時点では予定なんてなかったんだろう。

 なのに部活にも顔を出さないのは……


杏子(まさか母親絡みで何か……)


 あすみに電話をかけてみる。


あすみ「あっ……もしもし?」

杏子「あすみ、今どこにいるんだ?」

あすみ「どこって……学校だけど……」

杏子「学校? 部活には行ってないんだろ?」

あすみ「え? ぶ、部活には行ってないけどちょっと用事があって!」

杏子「……嘘だろ?」

あすみ「えっ! なんで!?」

杏子「部活、行きたくないのか?」

杏子「なんか嫌なことがあったんなら一応相談に乗ってやるぞ」

あすみ「うーーーん…………」

杏子「で、今どこだ?」

あすみ「昨日の土手……」

杏子「……マミ、ちょっと外出てていいか?」

マミ「ええ、構わないけど」

杏子「今から向かうよ」


 店から出て、今日も再び土手に向かう。

 ……すると、今日も隅のほうでちょこんと座ったあすみの姿があった。


杏子「あすみ」

あすみ「……ごめんなさい、嘘ばっかで」

杏子「聞かせてもらおうか、部活に行きたくない理由」

あすみ「部活がイヤってわけじゃないんだけど…………」

杏子「喧嘩でもしたか」

あすみ「…………」


 あすみはそれ以上答えなかった。


あすみ「……折角だから今日も訓練してほしいな」

杏子「……わかったよ」


 昨日と同じように、まず『動き』重視で、それから『魔力のコントロール』を重視して訓練をする。

 急に上達はしないにしても、コツを教えるだけでも少しずつ吸収して良くなっていっている。

 最初のあたふたとした大ぶりな動きに比べれば、昨日からの訓練でマシになってきただろう。


 ……いや、訓練はいつでもできるんだ。

 まだこれからいくらでも経験を積めば上達はする。あたしはそのちょっとした手助け程度だ。

 学校のことで悩んでいるなら、まずはまどかに相談すべきだろうか。


 ――今日の訓練を終えようとしたところで、あすみが遠慮がちに聞いてきた。


あすみ「……ねえ、あの」

杏子「ん?」

あすみ「杏子さんは…………知ってるの?」

杏子「……何を?」

あすみ「…………ううん、なんでもない!」

杏子「今日の訓練は終わりだけど、別になんでも聞いていいからな」

あすみ「あ、うん」


 あすみは黒くなったソウルジェムを浄化して、残りをポケットにしまった。

 ……もっと信頼してもらうには、まだ時間がかかるのだろうか。



1自由安価
2…とりあえずまどかに連絡するか
3明日も訓練するか?

 下2レス


杏子「明日も訓練するか?」

あすみ「うん!」

あすみ「あ、明日はここに集合じゃなくて、お店のほうに行ってからでもいい?」

杏子「ああ、マミも喜ぶぞ」

あすみ「うん、ありがとう……」


 少しだけ持ち直した様子だ。

 しかし、何も根本的には解決していない。こっちからも、また帰り際に一言聞いてみることにした。


杏子「……もしかしてキュゥべえから何か聞いたのか?」

あすみ「!」


 ……あすみの表情が変わる。

 図星と言っているようなものだった。


あすみ「…………」

杏子「まあなんだ、あいつの言うことなんか気にすんな」

杏子「……って思えるようなことじゃないのかもしれないけど、とにかく相談してくれるのは待ってるからな」

杏子「じゃないと、言ってくれなきゃあたしも何に悩んでるんだかわからないからな」

あすみ「……そうだね…………ごめん」

杏子「何謝ってるんだよ」



 キュゥべえの言うことは、碌でもないことばっかでも大体まるきり嘘ってことはない。

 いつでも、あいつはこっちの状況を正確に捉えて、一番嫌な事実をグサリと言いに来るんだ。

 ……あすみは謝りつつも、結局この場ではそれ以上喋ってくれることはなかった。


杏子(……とりあえずまどかに連絡するか)


 ――――デジタル時計のディスプレイに映る時間は23時を超えている。


 夕方から夜の時間を乗り切り、まどかに電話をかけた。

 あたしのわかっている事情を大体話した。


杏子「……まどかはなんか気づいたこととかってないか?」

まどか『わたしはあすみちゃんとは部活でしか会わないから……』

まどか『明日からは空き時間には積極的に見てみるようにするよ』

杏子「ああ、頼むよ」

まどか『なにかあったのかな……わたしがちゃんと見てればなぁ』

杏子「しょうがないよ。契約したところで見た目にはそうそう変わらない」

杏子「そう、だな……本当は何も変わらないんだよな。力はともかくとして、少なくとも中身はさ」

杏子「手元の小さい指輪なんて注意してないと気づかないだろ」

まどか『それはそうなんだけど、悩んでたってことくらい気づいてあげられればって』

杏子「あんたが気に病みすぎてたら相談に乗るどころじゃないだろ」

まどか『……そうだね。うん、とにかく明日ちょっと話してみることにするよ』


 ……まどかは相変わらずだ。


1自由安価
2今度エイミーにも会いに来いよ

 下2レス

2
それとタツヤとあすみの母親の事を聞く

まどかはあすみの母親ってどんな人か知ってるか?
あすみの担任は会った事があると思うからどんな人か聞いてみてくれ
そういや最近タツヤの様子はどうだ?


杏子「まどかはあすみの母親ってどんな人か知ってるか?」

まどか『ううん……明日聞いてみようか?』

杏子「ああ、まああすみに聞けたらそれでもいいかもしれないけど」

杏子「あすみの担任とかだったら会ったこともあるんじゃねーの? なんか聞いてきてくれよ」

まどか『うん、じゃあそれも聞いてみるよ』

杏子「そういや最近タツヤの様子はどうだ?」

まどか『……あすみちゃんが来なくなってから、実は最近タツヤもあんまり手芸部に顔を出してないんだよね』

まどか『もともとタツヤはわたしが居るからって理由で来てたようなものだし』

まどか『そこまで熱心にやってるようなタイプではなかったんだけど……』

杏子「そうか……」

まどか『それ以外では割と元気してるよ』

杏子「またタツヤも一緒にどっか食いに行こうな」

杏子「ていうか、今度エイミーに会いに来いよ」

まどか『うん!また今度の休みね!』

杏子「おう」

まどか『じゃ、おやすみ、杏子ちゃん』

杏子「おやすみ」


 通話を終了する。


マミ「お話終わった? 電気消していいかしら?」

杏子「わざわざ待ってくれてたのか」

マミ「おやすみ、佐倉さん」

杏子「……ああ、おやすみ」


 パチッと小さな音が鳴って、照明が消える。

 ぼんやりと薄いオレンジ色の明かりだけが光る中、目を閉じて色んなことを考えながら明日を待つ。

-----------------
ここまで
次回は20日(月)15時くらいからの予定です


――――翌日、営業時間が始まり、昼時を乗り越えて、あすみが来るのを待つ。

今日も鳴海は学校だから、この時間はマミと二人だ。


杏子「――……お、あすみ学校終わったってさ」

マミ「もうすぐ来るのね。紅茶の準備でもしておきましょうか」


 メールをチェックしながらカウンターの椅子に腰かけていたところだった。

 いくつか溜まった未開封のメールを見てみると、まどかからも連絡があった。

 昼休みには会えなかったが、授業の間の小休憩の時間にあすみと少し話せたらしい。


 その時はなんともなさそうに見えたが、あすみの担任に聞いたところ、
 最近は少し様子がおかしいらしく、クラスでも一人でいることが多いんだとか。


 ……母親については、やはり忙しそうだと言っていた。

 面談もなかなか都合がつかなくて大変だったそうだが、素朴で真面目そうな人というのが話した印象らしい。


杏子「おっ」


 外を見てみると、店の前のあたりで携帯を見ながらうろうろしている姿が見えた。

 あすみだ。


 扉を出て声をかけようとすると、あすみがこっちに気づいた。


あすみ「あっ、杏子さん!」

杏子「おう、よく来たな。ここだ」

あすみ「かっこいいお店なんですね」

杏子「ほら中入って。今マミが紅茶の準備してるから」


 扉の飾りが再び音を立て、マミがこっちに気づいて歩いてくる。


マミ「いらっしゃい! ようこそ、あすみちゃん」

あすみ「あっ、お邪魔します!」

マミ「いいのよ、かしこまらなくて」

マミ「私は巴マミ。よろしくね」

あすみ「あ、はいっ。 神名あすみです、よろしくおねがいします」


 自己紹介が済んだところで、あすみを連れて再びカウンターの前に座った。

 ……マミがカップをテーブルに置くと、あすみはまだ熱い紅茶をふーふーとしながら飲みはじめる。


マミ「どうかしら?」

あすみ「あ、美味しいです」

あすみ「えっ……と、マミさんも元魔法少女なんですよね……?」

マミ「ええ。」

あすみ「マミさんはどんな魔法を使ってたんですか?」

マミ「私の場合はリボンかな」

マミ「リボンをそのまま武器にしたり、リボンから武器を作り出したりして戦うの」

あすみ「へえ……」

マミ「今度、休みの日は私も訓練に参加しようかしら」

あすみ「はい、それは嬉しいです!マミさんは魔力のコントロールがすごく上手だって、聞きました」

マミ「あら、そんなこと言ってくれてたんだ。ふふふふ」

マミ「まあ、それも昔の話だから今はわからないけどね」

杏子「そうだなぁ……あたしも久しぶりに自分の衰えを実感したよ」



1自由安価
2今度お母さんと一緒に来られそうな日ってあるか?
3二階に猫いるけど触るか?

 下2レス

2と3


杏子「今度お母さんと一緒に来られそうな日ってあるか?」

あすみ「今度の土曜……は、お仕事って言ってたから、日曜日とかなら大丈夫かな……」

あすみ「えっと……」

マミ「お母さん、大変なんでしょう?」

マミ「うちもちょうどあと一人くらいは人手が欲しいと思っていたから、どうかと思って」

マミ「今やってるのとどっちの方が条件がいいかはわからないけど、うちならそこまで体力的にきついバイトではないし」

マミ「もし重労働をされているなら、一つでも代わりにできないかと思って」

あすみ「ありがとうございます……そこまで考えてもらって。相談してきます」


 そろそろ紅茶もちょうど良い温度になる。

 ……それから、みんながカップの中身を飲み終えた頃に立ち上がった。


マミ「そういえば今日は迷わなかった? うちの店ってまだ出来たばかりだし、地図にも載ってないでしょう」

あすみ「いっぱいお店があるから少し迷ったけど……地図は住所で検索したらなんとか」

あすみ「繁華街のほうってあまり来ないけど、このくらいの時間なら思ったより人がいなくてよかったです」

杏子「マミ、今って何時だ?」

マミ「今は16時前くらいかしら? そろそろ訓練に行く?」

杏子「んー、そうだな……その前にあすみって猫は好きか?」

あすみ「猫……いるんですか?」

杏子「ああ。二階にいるから折角だから少し触っていけよ」

あすみ「あ、じゃあ少し会ってみようかな……」


 そう言ってみんなで二階に行こうとしたところで、扉の音が鳴った。

 振り返ってみると、そこにいたのは……


マミ「いらっしゃー……あら?」

キリカ「ど、どうも」

あすみ「……どうも?」

お、キリカもエイミーに会いに来たのかな?


杏子「おー、仕事は?」

キリカ「メール送ったはずだけど……」


 そういえばメールチェックの途中だったことを思い出す。

 見てみると、確かにもう一つ未開封のメールがあった。


杏子(『仕事を昼までで終わらせてエイミーに会いに行く』……か)

杏子(……よっぽど猫が待ち遠しかったんだな)


杏子「……今見た。けど、昼までじゃなかったのか? なんでこんな時間に」

キリカ「半休のつもりが色々やってたら少し遅れちゃって」

杏子「そうか……ちょうど二階に行こうとしてたんだ。キリカも来るか」

キリカ「やった」


 結局みんなで二階に行くことになった。

 見たことのない顔が居たからだろうか、エイミーがとてとてとあすみのほうに歩いてくる。

 ……キリカはちょっと残念そうにしていた。


あすみ「わー、かわいい!」

杏子「子猫の時から一緒に居るんだ。おとなしいいい子だろ」

マミ「佐倉さんに似てちょっと食いしん坊だけどね」

キリカ「そう思って、近くの店でおやつ買ってきたんだよ」

杏子「そう思って、か」

マミ「よかったわね、エイミー」

エイミー「にゃ」

あすみ「あ、私、神名あすみっていいます!」

あすみ「杏子さんと知り合いの、中学生です」

キリカ「ああ、うん、よろしく。 私は呉キリカ……私も二人の友達なんだ」


 ……あすみからテレパシーが来た。


あすみ『キリカさんも魔法少女?』

杏子『や、あいつはただの友達』

杏子『魔法少女関連の話題はNGだからな』

あすみ『了解です』


あすみ『あ……そろそろ訓練に行ったほうがいいかな?』

杏子『あー、そうだな。まあ別に優先したい方を優先すればいいんだけどさ』

あすみ『じゃあ……また今度会うことにします』


杏子「じゃああたしたちはそろそろ行ってくるよ」

杏子「キリカはまだマミと一緒に居るか?」

キリカ「うん」

キリカ「……そういえば、結局あれからはなんともなかったんだよね?」

杏子「ああ、何も起きてないよ」

キリカ「なんだ。それならよかったんだけど」

杏子「じゃ、行くか」


 ……あすみは少しの間立ち止ったままだった。


杏子「おーい、行くんじゃないのか」

あすみ「あ、うん! お邪魔しました!」

マミ「ええ、また来てね」


 訓練場所にしている土手に向かう途中で、あすみが聞いてきた。


あすみ「……ちゃんと上達できてるのかな」

杏子「なんでもすぐには無理だ」

杏子「ま、最初よりはマシになってればいいんじゃないの?」


 今日で三日目だ。

 あすみの特徴や癖なんかも少しずつ見えてきている。


杏子「あれから魔女は倒してるのか?」

あすみ「うん、訓練の帰りとか、時間があるときは回るようにしてるし」

杏子「……そういやさ、別になんて答えたからいけないとか咎めるとかってことはないんだけど」

杏子「あすみは、使い魔まで倒すのってどう思うよ」

あすみ「いいことだとは思います」

あすみ「……でもそんな余裕ないです」

杏子「そうか。そうだな、それなら仕方ない」

あすみ「……はい」


 土手について、軽く身体を慣らしてからいつもどおり格闘訓練に入る。

 ……珍しく、今日は身体の『動き』のほうの訓練を重視したいと言ってきた。


 上達がわかりやすいのは、やっぱり純粋な格闘技術のほうだとあたしも思った。

 力の差を除けば、それ自体は魔法少女じゃない一般人となんら変わらない技術だ。

 魔法の力は衰えても、そっちはまだ衰えない。


杏子「――――お疲れさん」

あすみ「はいっ、ありがとうございました」


 ……訓練が終わると、何か考え込んでいる様子だ。


あすみ「…………」

杏子「何考え込んでんだ?」

あすみ「……これからの訓練について?」

杏子「また一丁前に」

あすみ「結局私、どういう魔法少女になれればいいのかなぁって」

あすみ「たしかに強いってことは大事なんだけど、それだけだとあまりにも……」

杏子「強さ以外の訓練か。なかなか難しいことを言うな」


 そりゃ確かに、経験を積めば多分格闘だって上手くなっていく。

 あたしはその手助けをしているだけだ。


1自由安価
2マミの例を出してみる
3自分の例を出してみる
4なら魔法少女以外のことを優先してもいいんじゃないのか

 下2レス

3のあとあすみが訓練を優先する考えが強いと感じたら4

とりあえず自分が駆け出しの時の事とか思い出してみるか
あすみの訓練の指針に使えるだろうしな


杏子「……じゃあ、まずはあたしの例を話してみようか」

杏子「あたしは、街の人を魔女や使い魔から助ける『正義のヒーロー』になりたかった」

杏子「そのために『強さ』にはあこがれた。……でも、確かにそれだけじゃなかっただろうな。あの時は」

あすみ「……」

杏子「強さってのは手段だろ。誰かを助けるため、生きるため……とかな」

杏子「それがなんのためか、っていったら、あたしもあすみと同じように『家族のため』っていうのが一番にあったんだろう」


 過去に否定した、あたしの駆け出しの頃のことを思い出してみた。

 結局、あの時一番大事だったものは失ってしまったけど……


あすみ「……なんか、ごめんなさい。変なこと聞いちゃいましたよね」

杏子「何謝ってるんだよ?」

あすみ「私は……正義のヒーローは無理でも、最初に願った通り、大事な人を……お母さんを『幸せ』にできればいいと思ってます」

あすみ「そのためには、助けられる力はないといけないし、死なないためにも頑張らないとですよね」

杏子「……それは、やっぱり今までどおりの訓練を優先したいってことか?」

あすみ「まぁ、そうですね……」

杏子「そっか。まあでも、それだったら重く考えすぎなくてもいいだろ?」

杏子「家族や周りの人のことを一番に大事にするならさ」

杏子「『力』をつける訓練はほどほどに、魔法少女以外のことも優先してもいいんじゃないのか」

あすみ「…………」


あすみ「杏子さんは、こうやってずっと生き残ってるんだもんね……」

あすみ「でも私は、やっぱり下手くそだし上手くいかないことだらけだから」

あすみ「なんかもう、生きるだけでも大変です」

杏子「……そうか。まあ、だったら不安がなくなるまでは特訓を頑張るか?」

あすみ「……はい」


 ……そろそろ解散にしようとして、さっきあすみの言ったことが引っかかっていた。

 あすみは運動の好きなほうじゃなかったとしても、センスは悪くないと思っていた。

 ここまで見てきて指導している分では、動きは別段悪くない。


杏子(今度魔女退治にでもついていって実戦を見てみるか?)

杏子(魔女を目の前にするとビビって上手く戦えないとか、こいつならあってもおかしくないしな)

杏子(けどその時は、あたしが足を引っ張らないようにしないとな……最近戦ってないから強敵相手はまずい)


あすみ「ありがとうございました」

杏子「おう、気を付けてな」


 ……店のほうに歩きはじめて少しして、ポケットから着信音が鳴る。

 キリカからの電話だった。


杏子「はいよ」

キリカ『そろそろ帰ろうと思って電話したんだけどさ』

杏子「あたしもちょうどそろそろ帰るってとこだったんだけどな」

杏子「まあでも、これから忙しくなり始める時間かー」

キリカ『うん、それもあるしね。下に人が来ないうちに退散しようかと』

杏子「いくらなんでも一人と一匹で待ち続けるのは退屈か。で、堪能できたか?」

キリカ『うん、また来るよ!』


 人……か。

 そういやあすみもやたらと“人”を気にしていた気がする。


キリカ『あ、ところでさっき言いそびれたけど、この前の人とは会ってないの?』

杏子「この前の人って誰だよ?」

キリカ『あの本屋で会った……なんか名前は聞いてないけど、杏子の知り合いって言ってる人がいたよ。さっき思い出したんだ』

杏子「は?」

キリカ『その時はあんまり気にしてなかったけど、杏子の知り合いなら私じゃなくて君に話せばいいのにね』

杏子「……はあ、その通りだな」



1自由安価
2何を話したんだ?
3どんな奴だ?

 下2レス

2+3のあと考える

なんだこの違和感は?キリカのやつ何の話をしてるんだ?
…まてよ?キリカもあの時『忘れた』とか言ってたよな
それにあの時感じた視線…まさか魔法少女に魔法をかけられたのか!?

今この街にいる魔法少女はアタシとマミとあすみだ
あすみのやたら『人』を気にする態度…あすみは何かこの違和感に関係あるのか?

スレ主に要望なんですが今日みたいに早い時間帯から始める時は中断時間を設けて欲しいかと
その間に飯作ったり食べたりしたいので
個人的な要望何で無視してくれても結構ですが


杏子「何を話したんだ?」

キリカ「えーと……あー、どんなことだったっけな。あの時結構酔ってたから」

キリカ「なんか君のこと話してたと思うよ」

杏子「……で、どんな奴なんだよ」


 その話を聞いて怪しいという感想しか出ない。

 こいつもそう思わなかったのかとは考えたが、

 今までの連中のようにもろに『ヤバい』ような『ゴツい』ようないでたちはしてなかったということだろう。


キリカ「えーと……君よりちょっと年下くらいの人かな?」

杏子「……年下? ゆまじゃないんだよな」

キリカ「私は見たことない人だね」

杏子「鳴海だったら普通に声かけてくるだろうしな……」

杏子「……まあよくわからんが考えてみることにするよ、じゃあな」


 通話を終えて、考える。


杏子(なんだこの違和感は? キリカのやつ何の話をしてるんだ?)

杏子(キリカもあの時『忘れた』とか言ってたよな)

杏子(単純に考えれば酒のせいとかになるのかもしれないが、魔法少女の魔法って線はないのか)


 あの時感じた視線っていうのもそいつか……?

 今この街にいる魔法少女はあたしとマミとあすみだ。

 あすみのやたら『人』を気にする態度。あすみは何かこの違和感に関係あるのか?

 確証はないがまさかあれはあすみが何か関わってるのか――?

 さっきあすみが立ち止まったのだってあの時の話を


――――思考はそこで、強制的に中断させられた。


「はぁー、面倒くさい友人をお持ちですねェ」

---------------------
ここまで
>>750 すみませんが、エンジンのかかりが遅い上に遅筆なので中断時間というのは難しいかもです
次回は24日(金)20時くらいからの予定です

乙です

うーん、新たな敵登場?
いったい誰なんだ…


 ――後ろから振りかぶられた何かがあたしを叩き潰す前になんとか対応できたのは、警戒状態にあったからなんだろう。

 あとは、魔力察知の勘は鈍っても格闘だけはまだ鈍ってなかったからか。


 間一髪で避けた、というよりは致命傷を避けたといったところだ。

 地面に手をついたまま向き直り、すかさず体勢を整えて敵の姿を捉える。


 見た目は童顔で小柄、確かにあたしよりはやや年下に見える。だが少女というには少々無理がある。

 そんな、年甲斐もなくこっ恥ずかしいピエロのような衣装を着た女が居た。


「電話終わるまで待ってあげたんだから感謝してほしいですね」

「だって、いきなり話が途切れたら何が起きたのかって心配しちゃうじゃないですかぁ」

「この私が戦場を忘れて平和ボケしたババァに手こずることはないにしても、巴マミにまで駆けつけられても面倒です」

「あ、ご心配なさらずに。あなたがさっさと死んでくれれば巴マミには危害を加えるはないとお約束しますよ♪」

「ちゃーんと、すべてを納得したうえであの場所から退いてもらいますから。ねェ?」


杏子「お前、魔法少女……いや、“少女”って年じゃねえな」

杏子「いきなりおっかねえモノ振り回してきたと思ったらぺらぺら喋りやがって。 何のマネだ?」

杏子「つーか、あの土地をかけた勝負ならとっくについてんだよ。今更しゃしゃり出んな」

「あぁ、馬鹿が勝手になんか約束したとか言ってましたっけ」

「そんな雑魚どうでもいいから名前も憶えてねえけど、そいつなら今頃臓器引きずり出されて死んでるんじゃないですか?」

「死人に口なしですよぉ? 口約束なんて片方くたばった時点で意味ないんですよ?」

杏子「お前も組のもんなのか?」

「あんなのと一緒にしないで下さいよ。私はああいう馬鹿を利用する側の人間なんですから」

「ああいう世界の奴らって、ちょっとイジってやれば思い通りになる直情的な馬鹿が多くて使いやすいんですってば」

「同じ魔法少女ならもっと賢く生きないと♪ この選ばれた才能を衰えさせるなんてもったいなさすぎですからっ!」


 再び振りかぶられた杖のような武器が地面を抉る。

 まだ人気のない歩道橋の上での戦い――下に通る車の音がその喧騒を掻き消している。

 ……舌打ちして、あたしも久しぶりに年甲斐のねー格好を身にまとう。

 こんなとこ誰かに見られたらマジで最悪どころの話じゃない。


杏子「才能? はっ、ナメんじゃねえよ」

杏子「“才能”にかまけて訓練怠ってたんじゃねえのか? その程度の動き、不意打ちじゃなきゃ余裕で見切れるんだよ!」

「よく躱しますねェ、ちょこまかとうざいうざい」

「でも、それだけでしょ? 所詮退役した魔法少女じゃ私には勝てませんよ」


「努力なんて必要ありません。私は利用する側の人間ですから♪」


杏子「――……っ!?」


 ――――車の通る音も、外の風の温度も、一瞬にして消えた。

 いつのまにか、あたしの周りを魔女結界が包んでいた。



―人食いの魔女結界



杏子「なんだよこれ……! あの野郎は!?」

 姿を探そうとしたところで、結界の中に張り巡らされたツタの花から何かが飛び出した。

 種らしきもの――それが植えられた地面から更にツタが伸び、あたしの足をからめ取ろうとする。

杏子「チッ!」

 それを槍で切り潰してなんとか脱出する。

 しかし、更に花からツタは増殖してくる。

「くふふふふふっ、どーしたんだよ! さっさと来てくださいよ間抜けがぁ!」


杏子(魔女は……アレか)

杏子(魔女だけならなんとかやれないことはないが、もう一人いるのが問題だな)

杏子(だが“数”なら…………こっちだって対抗はできる!)


 一つ脱出すると同時に、分身で攪乱する。

 久しぶりに使った幻惑魔法は、思ったより集中は必要だがまだなんとか形を保てている。

 この隙に、ボス――人食い植物の繁殖元に向けて全力で槍を振りかぶる。


杏子(まずは魔女をさっさとぶっ飛ば――――)


 ――――しかし、その前に別の何かが立ちはだかった。

 目の前のまるでマジシャンのような格好をした巨体。

 そのシルクハットの中から、大きなトランプが飛び出して来る。

杏子「ッ!? ぐぁっ…………!」


「操れる魔女が一匹だけなんて誰が言ったんですー?」

「私はまだまだいけますけど、そっちは魔女二体で限界みたいですねぇ」


 さっきのトランプで後ろに吹っ飛ばされ、結界の壁に打ち付けられた。

 その途端にまたツタが絡んでくる。よく見れば、花の中には細かい歯のようなものがびっしりと生えている。


杏子(……こんなところで食われて死ぬのは嫌だな)


 攻撃を受けたことで、さっきの13体の分身はすでに消えている。

 この魔女を操る力が相手の能力か。いや、さっきの口ぶりだと、洗脳のようなものかもしれない。

 どこの魔法少女かは知らないが、まだ現役を譲る気はないらしい。あたしほど力も衰えてはなさそうだ。


杏子(厄介なことになったな……クソ)

杏子(こんなことで折角手に入れた幸せを壊されてたまるかよ!)


 ――そう心の中で叫んだ瞬間、鎖が伸びる音が響いた。


 鉄球がツタの塊をぶちぶちと引き裂いて突き破った。

 それから、駆け出して女のほうへとモーニングスターを振りかぶる。


「……何してくれちゃってるんですか?」

あすみ「私は魔女退治中のここの縄張りの魔法少女だよ!」

あすみ「出ていくべきはそっちだ、おばさん!」


 ……しかしそれは、使い魔を盾にして防がれた。


「魔女退治、ねェ。ていうかおばさん呼ばわりとかやめてもらえます?そんな年じゃないですし!」

あすみ「あなたも魔女の仲間で杏子さんを狙うのなら退治するから!」

「コレは私の駒ですし、仲間だなんても言い方やめてくれません?」


 さっき考えたこととか、聞きたいことはあるが今は後だ。

 いつまでも寝ているわけにはいかない。蔦が消え、起き上がってあすみの隣に歩いていく。

 景色はいつのまにか大きなトランプの浮かんだ別の魔女結界に変わっている。


杏子「……これで2対2に戻ったな?」

「2対2? 私はさっき『まだまだだ』って言ったはずですけど、ねェ!」

あすみ「!」


 あすみがすかさず上から降ってくる巨大な刀を弾いて鎖で固める。

 素早い対応に企みが外れたのか、ピエロ女はその黙ってれば可愛らしいはずの幼い顔つきを醜く怒りに歪めた。


あすみ「杏子さん、こっちは私が相手します!」

杏子「わかった! こいつ一人ならあたしだけでも十分だ!」



 あすみは刀の魔女を拘束したまま床に縛り付け、マジシャンの魔女に向かっている。

 ……あたしも目の前の女に槍を向ける。



敵:???


杏子 戦闘コマンド
※魔力の残量は考えなくていいとしますが、威力が大きい技ほど攻撃後の隙も大きくなっています

1突く:近接武器戦闘
 b中威力
 c大威力
2伸縮変形 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍 幻惑魔法により隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力
5打突 :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力
 c大威力
6鉄砕鞭 :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束 :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱 :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
9最後の審判:でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界 :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法 :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ :13体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。
13自由安価

 下1レス


 相手の足元を狙って魔力を集中させる。

 そこから特大の槍を生成し突き出させる!


「っ!」


杏子(まずは体勢を崩させる!)

杏子(そしたら、次は……――)



敵:???(状態:スタン)


杏子 戦闘コマンド
※魔力の残量は考えなくていいとしますが、威力が大きい技ほど攻撃後の隙も大きくなっています

1突く:近接武器戦闘
 b中威力
 c大威力
2伸縮変形 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍 幻惑魔法により隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力
5打突 :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力
 c大威力
6鉄砕鞭 :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束 :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱 :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
9最後の審判:でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界 :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法 :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ :13体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。
13自由安価

 下1レス


 槍を多節棍に変形させ、身体をからめ捕るように振りかぶる。


あすみ「! 杏子さん、来ます!」


 ――しかし、あすみがそう呼びかけたのは、

 攻撃を展開した直後、相手がこちらを見たと思ったのとほぼ同時だった。


杏子「!」


 また新しく魔女が放たれる。魔法少女相手に狙いを定めていた拘束はその巨体に弾かれてしまう。

 立ちはだかった怪獣のような魔女が腕を振るうのを見て、一度距離を取る。

 魔法少女相手ならともかく、大きく頑強な魔女を相手するには少し難しい。


あすみ「あとちょっとで向かうから、耐えてください! 大きい攻撃の後は隙ができるので……!」

「チィッ、このクソガキさっきから邪魔しやがって!」


 女は再び醜悪に怒りの表情を浮かべたが、しかし、そのまま口角を上げて意地の悪い笑みを作った。


「……未来を予知する能力ですか?」

「まあ別になんでもいいんですよ。さすがに正面からやりあうのは少々キツいかなぁとは思いますが……」

「さっきから妙に燃費悪そうだなぁとは感じてたんですよぉ、ずっと使いっぱなしだったら実は結構魔力ヤバいんじゃないですかぁ?」

あすみ「……!」

「図星ですかぁ!ここまででまだ魔力回復してませんよねぇ!」

「向かわせるもんかよ! そろそろ遊びは終わりだ!出し惜しみなしで一気に解放してやる!」

「魔法使えなくなったらただのゴミですねぇ、せいぜい魔力が尽きるまで逃げててくださいよ!」


 一度に複数個現れた魔女結界の景色がぐちゃぐちゃと混ざり合う。

 ピエロ女は一気に魔女を数体解放してあすみに向かわせた。


杏子「あすみ……!」

杏子「っ!」


 ……ドシンと地面を揺らすほど大きな足音が響く。

 大きな魔女に乗ってこちらを見下ろす魔法少女は、さながら日曜の戦隊ものの悪役だ。


「人のこと気にしてる場合ですかぁ?」


杏子(どうする……? 一気にあいつ目掛けて槍を投げて撃ち落とすか……)

杏子(……射撃は得意じゃない。動く的を狙うのは厳しいな)

杏子(体勢を崩せれば、とは思うがこれだけの巨体となるとそれも大苦労だ)



敵:??? on 怪獣の魔女


杏子 戦闘コマンド
※魔力の残量は考えなくていいとしますが、威力が大きい技ほど攻撃後の隙も大きくなっています

1突く:近接武器戦闘
 b中威力
 c大威力
2伸縮変形 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍 幻惑魔法により隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力
5打突 :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力
 c大威力
6鉄砕鞭 :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束 :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱 :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
9最後の審判:でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界 :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法 :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ :13体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。
13自由安価

 下1レス


 怪獣が足をこちらに踏み出した。


「ジ・エンドです」


 魔法少女は、標的を踏みつぶしたのを確認してご満悦そうにそう言った。

 ――――その頃、あたしは怪獣の後ろを回り込んでその巨体に這い上がろうとしていた。


杏子(だからって、簡単にやられてやってたまるかよ!)

杏子(魔女を倒すには威力が必要だが、あたしの幻惑は魔法少女相手なら文字通り必殺だ)


 巨体の上の魔法少女を目掛け、鎖を長く伸ばした多節棍を振るう。



 下1レスコンマ判定 有効度
0~99


杏子「っ! く……!」


 ――が、怪獣が動き出した振動で狙いが外れる。


杏子(クソっ、もう一度……!)


 そう思った時に魔法少女が振り返った。

 思っていたより気づかれるのが早いのは、衰えのせいか、相手も同系統に近い魔法を持っているせいか――


「って、そんなに大人しくやられてはくれませんよねぇ……――」

「こんなところまで這い上がってきてくれやがって……振り落せェえ!」



1多節棍を巻き付けてしがみつく
2このまま攻撃を試みる
3一旦飛び降りる
4自由安価

下1レス


 多節棍を巻き付けてしがみつく……

 ――――という幻惑を作り出して一旦飛び降りる。


「このっ!」


杏子(死角に移動しようにも暴れてるうちは無理だ……止まるまで持つか?)

杏子(けど、それまで保てる保障はないな。さっきも幻惑は破られてるし、過信はできない)

杏子(ここから槍を投げれば当てられるか……?)



1飛槍(+コンマ判定命中:0~25)
2多節棍で怪獣を拘束
3自由安価

 下1レス


杏子(ていうか、あっちは大丈夫なのか? あいつの魔法なんて聞いてなかったが……)

杏子(そうだ、せめてあすみと合流すれば……――)


杏子(――――!)


 ――――あすみのことに気を回していた時だった。

 頭の斜め上から影が覆う。いつのまにか、怪獣の足が迫っていた。


杏子(まずい……――!)


 その身体の重みだけでも人くらいなら十分に潰して殺せる攻撃になる。

 とっさに身を引くことが出来たから上半身は無傷だ。致命傷を避けられたのは幸いだった。

 しかし、引っかかった脚をその重みが無慈悲に踏み抜いていた。


 致命傷じゃなくとも、そんな重みが一部にでも乗れば確実に『破壊』される。


 周りの動きのすべてゆっくりになった気がした。


 まだ致命傷じゃない。――しかし、おそらく数秒と経たないうちに、紛れもなく死が迫っていた。




1やり直す(>>769
2自由安価

 下3レス中多数決

==============
やり直し >>769
==============

杏子「あすみ……!」

杏子「っ!」


 ……ドシンと地面を揺らすほど大きな足音が響く。

 大きな魔女に乗ってこちらを見下ろす魔法少女は、さながら日曜の戦隊ものの悪役だ。


「人のこと気にしてる場合ですかぁ?」


杏子(どうする……? 一気にあいつ目掛けて槍を投げて撃ち落とすか……)

杏子(……射撃は得意じゃない。動く的を狙うのは厳しいな)

杏子(体勢を崩せれば、とは思うがこれだけの巨体となるとそれも大苦労だ)



敵:??? on 怪獣の魔女


杏子 戦闘コマンド
※魔力の残量は考えなくていいとしますが、威力が大きい技ほど攻撃後の隙も大きくなっています

1突く:近接武器戦闘
 b中威力
 c大威力
2伸縮変形 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍 幻惑魔法により隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力
5打突 :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力
 c大威力
6鉄砕鞭 :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束 :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
8断罪の礫柱 :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
9最後の審判:でっかい槍に乗って突撃
10縛鎖結界 :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
11幻惑魔法 :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
12ロッソファンタズマ :13体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。
13自由安価

 下1レス


 怪獣が足をこちらに踏み出した。


「ジ・エンドです」


 魔法少女は、標的を踏みつぶしたのを確認してご満悦そうにそう言った。

 ――――その頃、あたしは怪獣の後ろを回り込んでその巨体に這い上がろうとしていた。


杏子(だからって、簡単にやられてやってたまるかよ!)

杏子(魔女を倒すには威力が必要だが、あたしの幻惑は魔法少女相手なら文字通り必殺だ)


 巨体の上の魔法少女を目掛け、鎖を長く伸ばした多節棍を振るう。



 下1レスコンマ判定 有効度
0~99


「っ! ったく、油断も隙もありませんねぇ!」


 ――しかし、直前でとっさに弾かれる。

 鎖が巻きついたのは手にしていた杖だった。それを投げ捨ててピエロ女は忌々しそうに言う。

 ……気づかれたのは衰えのせいか、相手も同系統に近い魔法を持っているせいか。


「まぁ、そんなに大人しくやられてくれるとは思ってはいませんでしたけどね……」

「振り落とせェッ!」

杏子「そんなことしたら、お前だって危ないんじゃないか?」


 あたしはその間にも駆け上がり距離を詰めていた。

 必殺とまではいかなくとも、怪獣の上での接近戦に変わった。

 それだけでも不利な状況になったのは相手も悟ったようだった。




敵:??? on 怪獣の魔女


杏子 戦闘コマンド
※魔力の残量は考えなくていいとしますが、威力が大きい技ほど攻撃後の隙も大きくなっています

1突く:近接武器戦闘
 b中威力
 c大威力
2伸縮変形 柄を更に伸ばし、中~遠距離の敵を突く。
3背中を襲う槍 幻惑魔法により隙をつく攻撃。突くb~dとも組み合わせられる。
4飛槍 :槍を投げつける。装備は余裕が出来たときに自動で生成し直します。
 b大威力
5打突 :槍を構えて魔力により加速し突撃する
 b中威力
 c大威力
6鉄砕鞭 :槍を多節棍に変形させて広範囲に打ち付ける
7鎖拘束 :多節棍の鎖を伸ばして縛り付けて拘束、可能であればそのまま潰す
・断罪の礫柱 :地面からでっかい槍を突き出す。手が空いてるので攻撃中にも続けて連撃可能。
8最後の審判:でっかい槍に乗って突撃
9縛鎖結界 :防護壁を作り出す。派生追加攻撃有り
10幻惑魔法 :幻惑で攪乱して回避率を大幅に上げる。他のコマンドと組み合わせられる。
11ロッソファンタズマ :13体までの分身を作り出す幻惑魔法の必殺技。敵を攪乱し、一斉攻撃を繰り出す。
12自由安価

 下1レス


 多節棍にバラけさせていた槍を元に戻して構える。


杏子「さっきのお返しだッ!」


 足元から魔力を込めて突撃する。

 体勢を崩したところにすかさず追撃を仕掛け、追い詰める。


「ぐふっ……!」

「わ、わかりましたッ! わかりましたよう!降参です!」

杏子「……降参だと?」

「互いにもうここまでにしましょう」

「私を倒しても、私の制御がなくなったら魔女はまだ襲いますから」

「私が操ってた魔女にはまたグリーフシードに戻ってもらいます」

「そのためにも、まずはここから降りないと……」

杏子「……わかった。まだお前には聞かなきゃいけないこともあるからな」

杏子「けど、拘束はさせてもらう」

杏子「あと信用ならないからソウルジェムは渡せ!」


「――――なんて言うわけねえだろうがあああああああ!」



 怪獣が突然頭を激しく振り、二人を地面に落とした。


杏子「っ……! チッ、面倒臭いやつだな!」

「何この程度で勝った気になってんですかーぁ?」

「調子に乗ってんじゃねえよ! 潰せッ!潰せェ!」


 怪獣が足を上げて踏みつぶしにかかってくる。

 咄嗟に体勢を整えようと地面に足をついて力を入れようとしたときに、足首が痛んだ。


杏子(ッ、落下の衝撃で脚をくじいて……)


 その身体の重みだけでも人くらいなら十分に潰して殺せる攻撃になる。

 致命傷じゃなくとも、そんな重みが一部にでも乗れば確実に『破壊』される。


杏子(これは……まずいな――)


 ―――その時、怪獣の足が振り下ろされる前に空中で動きを止めた。

 鎖の巻きついた足を強い力でその巨体ごと振り倒した。


あすみ「おらぁぁぁあああ!!」

「なッ……!」

------------------
ここまで
次回は25日(土)17時くらいからの予定です


「――……んて、言うわけないじゃないですか!」

「ちょっとしたジョークです!茶目っ気ですって!」

「いやだって、私だって落下の衝撃でダメージ食らってますし」

杏子「ふざけんな! こちとら殺されかかったんだぞ!」


 足に鎖が絡みひっくり返ったまま、怪獣はまだ起き上がる様子はない。


杏子「おい、まだ魔女隠し持ってんのか? 隙あらば出し抜こうとか考えてんじゃねえだろうなぁおい!」

「いやいやいや、全然! なんならそっちの彼女に聞いてくださいよ!」

あすみ「……本当にもう持ってないみたいだよ」

「そ、そうですよ! 参りましたねー、再起不能ですよー」

「ていうか私、雇われてるだけですし……強情張って命まで落とすくらいなら持ってる情報全部喋りますよ」

杏子「……呆れた奴だ。外道だらけの裏社会の中でもプロ根性すら持ってないなんてな」

あすみ「……『魔女のほうは一度体勢を崩すと二度と起き上がれなくなる』」

あすみ「『ちょっと時間稼いで使い魔を産ませて囲んで不意をつくか』」

あすみ「『でも、佐倉杏子だけならまだしもこのガキが居ると厄介だな。また予知で妨害してきそうだし』」

「!?」

あすみ「……私が魔女を倒せたのは、弱点をすべてあなたが教えてくれたからだよ」

あすみ「手駒の特徴くらいはちゃんと知ってるみたいでよかった」


杏子「……心を読む能力、か」

あすみ「……隠しててごめんなさい。嫌われるかと思ったから」

あすみ「まだ制御ができなくて、ずっと周りの人の心の声が聞こえてて……おかげで魔力もどんどん減るし」

あすみ「でも、今日は一番役に立ったと思います」

あすみ「もうこいつに嘘はつかせないし、不意打ちも悪巧みもさせません!」


 ―――『人がいっぱいいるの?』『思ったより人がいなくてよかったです』

 あすみの言っていた言葉を思い出した。

 訴いてもいない本心が聞こえてくるというのはどんな感じだろう。
 
 もしそれが話していることと全く違ったら……


 怪獣魔女をグリーフシードに戻させてから没収すると、歩道橋の隅で正座させる。


杏子「……まずはお前のことを聞かせてもらおうか?」

沙々「えー、私はまず優木沙々といいまして、今から10年ほど前に契約してですね……」

沙々「まぁこの能力なら魔女を倒すのも割と楽でしたし? 数年はグリーフシードを増やしながら悠々自適に生活してたわけなんですが」

杏子「普通に、ねぇ」

あすみ「……洗脳した魔女に人を襲わせて増殖させたんだよね」

あすみ「で、稼いだグリーフシードで小ずるい犯罪とかやらかしながら生きてきたと」


沙々「まぁそうですね……そのうち所謂裏社会的な世界に入りましてですね」

沙々「まあ魔法とか持ってる人もそうそういませんし、この洗脳の力もあるし、大体のことは思い通りにいったので」

沙々「まさに私にとってはピッタリな業界だったんですね」

沙々「それで今はこうしてブローカーだとか、時には殺し屋だとかも生業にしてまして今に至るわけですね」

杏子「おい外道」

沙々「あ、はい」

杏子「それで、雇われたとか言ってたっけか? その件について知ってること全部話してもらおうか」

杏子「まあ任務を失敗した挙句ゲロったなんてのが奴らにバレたとしても、あんたにはご自慢の魔法があるんだもんな」

沙々「はい! なんならあいつらを完全に黙らせることもできますし!」

あすみ「……雇われたって言ってるけど、本当は全部知ってて出てきたんだよね?」

あすみ「元々例の組の人とは仲良くやってて、計画のことも全部知ってて周りの人を利用しようとしてた」

あすみ「で、今回その組たちが杏子さんとマミさんと争いになった時の状況を聞いて」

あすみ「同じ魔法少女だと判断して自ら出ていって手を下そうとした……」

あすみ「…… ってことで合ってる? 私はあまり詳しい事情を知らないからとりあえずざっくりとまとめてみたけど」

沙々「……まあ、はい」

杏子「救いようのないやつだな……」


 ……ここまでくると、怒るよりまず一番に呆れた。

 しかし、過去の話を聞いた時、どこかこいつとあたしは被るものがあった。

 あたしはここまで根性ねじ曲がってるわけじゃないが……到底良いとはいえない行いをしてきたのは事実だった。


杏子(……あたしはこうならなくてよかったな)

杏子(あたしがそこまで堕ちなかったのは、きっとマミのおかげだ)

杏子(こいつに同情する気なんかさらさらないが、哀れな奴だとは思うよ)

杏子(ここまで誰にも信頼できる人に出会えず、人を利用して出し抜くことしか考えられなかったんだからな)


 会話/質問/行動など
1自由安価
2マミに連絡
3こいつの処遇を考えようか

 下2レス

どっちも利用して出し抜くことしか考えてないから即仲間割れしそう
-----------------------------------------------


杏子「とりあえずマミに連絡だな。こいつから例の計画の件を洗いざらい聞き出してやる」

杏子「事務所に入っていった例の身なりのいい奴のこととか」

沙々「…」

杏子「洗いざらい……な」

沙々「あー、えーとその人のことでしたら」

杏子「あー、待て。録音するから」

杏子「お前の処遇をどうするかはマミが来てから考えることにしてやるよ」

杏子「あとあすみが居るから悪巧みはできないとは思うが、一応ソウルジェムも没収だ」

沙々「……か、返してくれるんですよね!?」

あすみ「相当魔法に依存しきった生活してたみたいだね。ものすごく焦ってる」

杏子「お前の処遇はマミが来てから決めるって言っただろ」

沙々「はぁーい……」


 マミに電話で連絡してから録音の準備をする。


杏子「……ほら、喋っていいぞ」


沙々「……その身なりの良い方っていうのは、多分再開発計画事業協会の一人です」

杏子「とりあえず持ってる名刺とかあるならまとめて見せてもらおうか?」

あすみ「荷物はここだね」

沙々「あー、はい……この人かな」


 ……と、指をさして読み上げられた名前はありふれた名前だ。

 録音していてよかったと思う。


杏子「鈴木……ありふれた名前だな」

杏子「しっかし、金有り余ってそうな市役所の職員なんかがよくそんなリスキーなことやるもんだな」

沙々「どこぞの議員が改竄だの不祥事やらかしたなんてニュースよくあるでしょう?」

沙々「みーんな、結局楽して自分が得をしたいものなんですよ」

沙々「それに何もその方だけじゃありません。見て見ぬふりをしていた人なんていっぱいいますよ」

沙々「ちょっとつついてやれば目がくらむものですよ? そりゃ、私もそのお手伝いをすることはありますけど」

沙々「見滝原の繁華街っていうと昔から暴力団との癒着がありましたし、大丈夫だと思ったっていうのもあるんでしょう」

沙々「まあ、察しがつくとおり、一部事業を任せてもらう代わりに『お礼』をするというお話ですね」

杏子「とりあえず、関係者の名前は全部言う、書く」

杏子「あんまり記憶力の良いほうじゃないんでな。ちゃんと記録に残しておかないと忘れちまうんだ」

沙々「……わかりましたよ」


――――
――――なんとか洗いざらい話させて、名刺なんかもすべて没収しておいた。

いくらあっちが法の抜け道を探して仕掛けてきてたって、市の出している書類との矛盾はこれ以上うやむやにはできないはずだ。

この記録をすべて提出すれば、真っ黒な繁華街も少しは浄化されるだろうか。

再開発をするなら、真っ先にそういうところを綺麗にすることを考えてほしいものだ。


杏子「……これ以上はあたしたちのやれることじゃないな」

杏子「ほら、営業を中断してまで来させたんだ。お前も謝る!」

沙々「すみません、許してください」

マミ「まさか、魔法少女まで噛んでいたなんてね……」

マミ「でも、そんな便利な魔法があるなら、みんなまとめて洗脳すれば戦う必要もなかったんじゃないの?」

沙々「……人にかけるのは魔女よりも繊細なんですよ」

沙々「それに、杏子さんが幻惑という同系統に似た魔法をお持ちなのは調べてましたので」


 優木は、さっきの悪事を話す時よりも

 自分の魔法のことを言う時のほうが渋っているような様子だった。


あすみ「攻撃を受けると解けてしまう」

あすみ「それに、二人をいっぺんにかけるのは無理……ってところね」


マミ「……あなたはまだその魔法を使って悪巧みしようとしてるの?」

沙々「いやそんなことは――」

あすみ「そりゃもちろん」

あすみ「本心は隠せないよ。それにもう今更でしょ?」

マミ「残念ながら、あなたもこれから警察行きよ」

マミ「多分もう日の目を見ることはないでしょう。ソウルジェムだって当然没収されるでしょうしね」

沙々「……それはどうでしょうね」

沙々「あなたたちは当然のように信じてくれましたが、私が優木沙々である証拠はどこにあるんですか?」

沙々「ちなみに先ほど見せた名刺、あれは私のものも数枚混じってましたよ?」

沙々「戸籍なんてとうの昔に売ってしまいましたから」

杏子「……」

マミ「……そう。なら二度と私たちの前に姿を見せないで」

マミ「出来れば私たちは、あなたみたいな人にはもう関わりたくはないの」

マミ「私はもう魔法少女じゃない。正義のヒーローでもなければ、直接誰かを裁くこともできない」

マミ「そうしたら、私も結局はそちら側と同じ世界の人ということになってしまうから」


沙々「……ソウルジェム、返してくれるんですか!?」

マミ「あなたのものでしょう。これがないと生きられないというのなら返すわ」

マミ「でも、これから使い方はちゃんと考えることね。もっと痛い目を見ないうちにね」

杏子「いいのかよマミ。甘すぎじゃないの?」


 ……しかし、優木は差し出されたソウルジェムを受け取らなかった。


沙々「………………やっぱりもう要りません。煮るなり焼くなり壊すなり、好きにしてください」

マミ「……いいの?」

沙々「もういいです」

杏子「……なら、さっさと警察署のほうに向かうとするか」

杏子「あすみはもう帰りな。遅くなるとお母さんが心配するだろ」

杏子「仕事から帰ってきた時にあすみが出迎えてくれたら、きっとお母さんも幸せだよ」

あすみ「わかりました……それじゃ、また明日」

杏子「ああ」

ソウルジェムを受け取らないって…これは


 優木を連れて警察署に向かい、証拠をすべて提出した。

 優木はこれから事の詳細を尋問されるとともに、詳しく身元を調査されることになる。

 戸籍不明の上に魔法ありきの犯罪となれば、恐らく身元の調査はすぐには終わらないだろう。


 しかし、それはもうあたしたちが考えることではない。

 あたしたちがこれから考えなければいけないことは、まだまだあった。

 仕事のこと――これからの、未来のことだ。


杏子「やっと終わったなぁ……面倒くさい厄介事、全部片付いたんだよな?」

杏子「これでちゃんと、マミの夢を続けていけるんだ」

マミ「ええ! 諦めたりしないで本当によかった……佐倉さんがいてくれたおかげよ」


 帰り道を歩いていると、ガードレールの上に、よく見慣れた白い姿があった。

 目が合うと、柵からぴょんと飛び降りた。


杏子「久しぶりだな」

QB「やあ。久しぶりだね」


 ……なんでこいつとこんなフツーの挨拶しなきゃならないんだ。

 そう思ってから、マミが怪訝そうにきょろきょろと視線を動かしているのに気づく。


杏子「……なあ、まさか、マミは見えてないのか?」

マミ「キュゥべえがそこに居るの?」

QB「僕は今までも近くに居たよ、杏子」

QB「君が気づかなかったんだ」


杏子「……どういうことだよ」

QB「それから、伝えておかなければいけないことがあった」

QB「君もそろそろ、魔法少女じゃなくなるよ」

杏子「はぁ? じゃあどうなるんだよ」

QB「どうにもならないけど、更に魔法の力も弱るしいつか僕のことも完全に見えなくなる」

QB「契約が満了したと思えばいい」

QB「マミももう大人になって、魔法少女以外の自分の人生を生きている」

QB「変わらないなんて思わないで、自分の人生を生きればいい」

QB「もうそれが出来るんだろう?」

杏子「……お前にそんなこと言われるのは、なんか違和感があるな」

QB「もう最後かもしれないからせめてもだよ」

QB「これから深い悲しみを味わうことなく平和に暮らせるといいね」


 ――――そう言って、キュゥべえは空気に溶けるようにどこかへ消えていった。


杏子(……なんだよそれ。どういう意味だよ)

杏子(回りくどい言い方しやがって。普通に『幸せになれ』って言えないのか?)


 本当に似合わないけれど、その言葉を不器用な好意だと受け取っておくことにした。

 そうでなければ負け惜しみか、忠告かなにかか。


杏子「……なあ、マミはいつから見えなくなってたんだ?」

マミ「そうねえ……高校生の時はまだ魔女も倒してたし訓練もしてたわよね」

マミ「でも段々忙しくなって、あんまりそういうこと考えてる暇がなくなって……」

マミ「イタリアに行く頃には、もうそんなことからは完全に離れてた」

マミ「見知らぬ土地だからっていうのもあったのかもしれないけどね」


 マミはもうあたしよりもずっと先に魔法少女でなくなっていた。

 優木がまだ衰えずに現役を続けていられたのは、きっと契約した時から十分に成長しきれなかったからだろう。

 ずっと魔法少女としての力に縛られ、そしてあんな年になるまで“少女”で居続けた。


 あたしもどこかでずっと、まだ過去に縛られていたのかもしれない。

 でもそれももうこれまでだ。仕方なくじゃなく、あたしはあたしの意思でこの生き方を選びたい。

 あたしがずっと前に想像したこの未来も、きっとあたしの夢といえるはずだから。


 ……魔法少女になって、正義のために戦って――守りたいものを失って。


 なんとかマミやまどかたちのおかげで真っ当に立ち直れたけれど、

 なんとなく、やっぱり自分は魔女と戦い続けてそのうち死ぬんだろうと思ってた。

 ぶらぶらと適当に過ごしながら、それまで大事なものを守りながら生きればいいと。


杏子(……そんなことももう過去の話か)

杏子(いつからか、やっぱり今は何があっても死にたくないって思ってる)


杏子「なあ、マミ」

マミ「何?」

杏子「……あたしさ」

杏子「マミと一緒に、ずっと生きていきたい」

マミ「……えっ!? それ、もしかしてプロポーズ?」

杏子「茶化すな。 ……まあでも、それに近いものかもしれないな」

杏子「……あたしさ、前からずっと、マミのことは家族みたいだと思ってたんだよ」

杏子「照れくさくてずっと言えなかったから、これが告白ってことにする」

マミ「まあ! だったら今から『お姉ちゃん』って呼んでくれてもいいのよ?」

杏子「しねえよ!」

マミ「でもね、実は私も、佐倉さんの事を家族みたいだと思っていたの」

マミ「妹みたいって思うことも多かったけど、お姉さんみたいって思うこともあったかな」

杏子「……はは、なんだこんなふうに告白しあって! 恥ずかしいな!」

杏子「じゃあこれで両思いだな」

マミ「ずっと前から両思いよ」


 マミと笑いあいながら帰り道を歩く。

 賑やかな繁華街の中の、あたしたちの店へ。


――――それから翌日、また土手であすみと話していた。

今日は訓練というより、ただ話すのが目的みたいなものだった。

昨日くじいた足首には湿布が貼ってある。激しい動きはできそうにない。


あすみ「あの、私が治しましょうか? それ」

杏子「いいよ。無駄な魔力は使うな。人間生きてりゃこの程度の怪我はするもんだ」

杏子「何事も魔法にばっか頼りすぎるな。昨日のおばさんみたいになっちゃうぞ」

あすみ「あはは…… そうだね」

杏子「……まだ魔法の制御はできなさそうか?」

あすみ「私、ずっと疑問だったの。どうしてよりによってこんな力を手にしちゃったのかなって」

あすみ「人には覗かれたくない部分があるのは当然で、覗いたら嫌なものを見ることだってある」

あすみ「自分は隠すことができるのに、私だけそれを勝手に見ちゃうのは卑怯だし」

あすみ「……気遣うことは上手くなったかもしれないけど、その分私が辛い思いするのはおかしいとも思ってた」

杏子「……そうだったんだな」


あすみ「この魔法って、使い方次第で、人を幸せにもできるし不幸に落とすこともできるんだ」

あすみ「……というより、杏子さんが話してくれた通り、魔法少女の力は全部そうなのかもしれない」

あすみ「本当は、昨日キリカさんが来た時に優木沙々のことが少し聞こえたの」

あすみ「杏子さんの知り合いって名乗る人のこと……その時はよくわからなかったけど、おかしいなって思ってた」

あすみ「それで、杏子さんと別れた後に引き返して追ってみたら、魔女の魔力をたくさん発見して……」

あすみ「杏子さんの“声”が聞こえたんだ」

杏子「あたしはなんて言ってた?」

あすみ「『こんなことで幸せを壊されてたまるかよ』……だったかな」


 ああ、確かに心の中でそう叫んだ覚えはある。

 あれをあすみは聞いてくれていたのか。

 そう思うと、あの時あすみのことを疑ったのを少し申し訳なく思った。


あすみ「それでね……前にも話したけど、私が契約する前、お母さん過労で倒れたんだ」

あすみ「その時ももしかしたら、心の中では『助けてほしい』って思ってたのかもしれない」

あすみ「今度は無理をする前にそれに気づいてあげたい」

あすみ「この魔法で、心の中を暴いて傷つけることもできる」

あすみ「でもきっとこの魔法は、言葉に出せない『助けて』っていう声を聞きとめるための魔法なんだ」

杏子「それなら、焦る必要はないんじゃないか?」

杏子「そうやって前向きに受け止められれば、きっといつかは必要な声だけを聞けるようになるさ」

あすみ「うん!」

エンドかな?


杏子「……あ」

あすみ「え? !」


 あたしがそれを思い浮かべてからすぐに、あすみは顔を赤くして驚いた。

 心が読めるというのも大変だ。

 しかし、とりあえず声に出してちゃんと言うことにする。


杏子「……心の声が聞こえるってことは、タツヤのことにももう気づいてたのか?」

あすみ「えっと! それは…… はい」

杏子「で、どう思ったんだ?」

杏子「あたしの心を読んだんだから、あすみの心も正直に話すこと」

あすみ「あぅ……えっと、ちょっと突然でびっくりしちゃって」

あすみ「でも、うん……鹿目君のことは嫌いじゃなかったし、嬉しかった……かな……」

杏子「明日は部活にも行ってやれよ! ……あ、今はタツヤもあんまり部活にも顔出してないんだったか」

杏子「とにかく会ってこい! その気持ちを伝えてやれよ」

あすみ「わ、わかった……明日、話してみます」


 きっとこの様子なら大丈夫だ。


―――それからまた日が経つ。

学校は春休みへと突入した。休み明けにはもうあすみもタツヤも二年生だ。

あすみもやっと13歳になった。そのパーティをマミの店でやったのが少し前だったか。

あすみの母親も、鳴海と比べるとシフトは少ないものの、その時にはもう新しく店員として入っていた。

準備はあすみの母親も手伝っていた。


杏子「……おい、見てみろよ」

杏子「あの鈴木ってやつとその周り……あと繋がってた暴力団の一部も検挙だってさ」

マミ「これで少しはここも治安がよくなるといいんだけど」


 優木は……取り調べの前に突然死したとのことだった。

 これ以上の情報を吐き出す前に暗殺されたという見方が強かったが、実際のところはわからない。


あすみ「…………」

―――

―――


あすみ『……ねえおばさん』

沙々『だからおばさんじゃありませんし名前で呼べクソガキ』

あすみ『そんな態度取っていいの? 言いつけるよ』

沙々『……で、なんですか? わざわざテレパシーで』

あすみ『マミさんがああ言ったし、私もあなたをどうこうする気はないけど、これだけは言わせてほしいことがあるんだ』

あすみ『私はあなたほど心の汚い人を見たことがない』

沙々『そんなことわざわざ言われなくても自覚してますから。別にそんなの痛くも痒くもないし』

あすみ『その力をこれからも誰かを貶めるために使うなら、“何を”してるかくらい知っておいてよ』

あすみ『さっきあなたは、魔力が使えなくなれば魔法の使えないゴミになると言ったけど』

沙々『それがどうしたんです?』

あすみ『あなたの手駒はそのゴミだよ……? あなたは自分たちのなれの果てを駒にして弄んでるんだ』

あすみ『そんな事実も知らないでその魔法を使うな』

あすみ『……それを知っても、その駒を利用し続けるの……?』





沙々「………………やっぱりもう要りません。煮るなり焼くなり壊すなり、好きにしてください」

―――


杏子「あすみ?」

あすみ「え? なに?」

杏子「なんかぼーっとしてなかったか?」

あすみ「別になんでもないよ?」

杏子「本当か?」

あすみ「うん。強いて言えば、ただぼーっとしてただけ、かな」

杏子「そうか」


あすみ(……このことはもう黙っておこう)

あすみ(優木のことは一番心が汚いと思ったけど、インキュベーターはまたそれとも違う恐ろしい心を持っていた)

あすみ(感情がない心……それに全く気付かずに契約して、私はずっとショックを受けてた……)

あすみ(…………みんなが知らないなら、ずっと嘘をつくことを許して)


杏子「……しっかし、タツヤもこんなに早く恋が成就するとはな」

まどか「おめでとう!」

タツヤ「う、うん! ありがとう!」

あすみ「す、少し照れるねっ。改めて言われると」

まどか「休みなんだし、いっぱいお出かけもできるね」

マミ「このあたりのデートスポット、調べておきましょうか?」


 若いカップルを微笑ましく眺めていると、店の扉が勢いよく開いた。

 成就したといえばこっちもだ。


さやか「こーんにちはー!」

マミ「あら、いらっしゃい」

恭介「公演の前に寄っておこうかと思いまして」

杏子「そういや明日か!」

マミ「ところで、式については何か準備は進んでるの?」


恭介「……式?」


杏子「おい!なんだその今の今まで忘れてたみたいな返事は!」

マミ「なんか、わかってはいたけど急に心配になってきたわ……わかってはいたけど」

恭介「いや、忘れてたわけじゃないんだ!ていうか、気持ちの切り替え……的な……」

杏子「やめろ、もうそれ以上傷を広げるな」


さやか「本当に、なんでこんなの好きになったんだろうねえ」

恭介「いやほんとごめん。愛想尽かしたかい……?」

さやか「冗談だよ。こんなだから好きになったっていう面もきっとあるんだ」

さやか「そのバイオリンに一途なとことかも……傍で応援したいって思うから」

マミ「もう少し美樹さんに一途になってもいいと思うんだけどねぇ」

恭介「いや、これでもさやかのことは一番に好きなんだよ人としては。ただ、バイオリンとはまた全然違うところにあるってだけで」

杏子「本当もう頼むから喋るな……」


 こっちはこっちで、やっと成就したと思ったらまだ問題はありそうだが。


マミ「話に来ただけ? とりあえず紅茶くらい淹れましょうか?」

ゆま「あ、じゃあこっちおかわり頼みます!」


 春休みといえば大学生組もだ。

 ゆまも、特に鳴海が居る時にはよくこの時間に来ていた。


さやか「じゃああたしも! やっぱここに来たからには紅茶ですね!」

鳴海「折角これだけ知り合いがそろってるんですし、何かこう、ケーキとかあったらいいと思うんですが」

杏子「そういやメニューにケーキがないのはもったいないな。マミ、どうよ? 新メニューは」

マミ「そうねえ……検討してみようかしら」



 会話/行動
(この場に名前が出てない人も、見滝原に居る人相手なら話せるかも)
1自由安価
2(上条)明日の公演が終わったら式まではバイオリンは忘れろよ
3(さやか)こうなったら結婚式は目一杯着飾って上条を惚れ直させてやれ
4(まどか)学校が休みの間はどんな感じよ
5(あすみ)猫と会話ができる特技について
6(マミ)久しぶりにピーチパイが食いたい

 下2レス


杏子「ターツヤ」

タツヤ「?」

 そろっとタツヤのそばに寄って、こっそりと話しかけてみる。

杏子「あすみのどこに惚れたんだ? 一目惚れか?」

タツヤ「最初に手芸部を覗いた時だったんだ……ぬいぐるみとか小物とかを作ってる人が多い中で、あすみちゃんは鞄を作ってた」

タツヤ「結構本格的なのを作ってるなって思って、話してみたら、お母さんにプレゼントするんだって言ってた」

タツヤ「それで、優しいなぁって思って」

タツヤ「手先もすごく器用なんですよ。こう、ちまちまコツコツと頑張ってる姿がまたいじらしいし」

杏子「ほうほう」

杏子「完全に惚気だな。ごちそうさまでした」

タツヤ「何言ってるんですかー」


 ……手を合わせてあすみのほうを見やると、案の定あっちのほうを向いて照れていた。


あすみ『何話してるんですかー! めちゃくちゃ声聞こえてるんだから!』

杏子『よかったじゃないか』


 また扉の飾りの音が鳴る。

 ……今度は仁美だ。


マミ「いらっしゃい」

さやか「おー、仁美」

仁美「ご機嫌麗しゅう」


 またいつもどおりの普段聞きなれない挨拶をしてやってきた。


仁美「これは……みなさんお揃いで」

鳴海「なんか今日はすごいですね! 春休み効果でしょうか?」

ゆま「わたしたちは長期休暇だけど、大人の人たちにはそれは関係ないんじゃ……?」

恭介「志筑さん、久しぶり」

仁美「お久しぶりです。お二人のことは伺っていますわ」

仁美「おめでとうございます」

さやか「なんか、不思議な感じだね。仁美にそう言われると」

仁美「はい。でも、私は私で幸せをつかみましたから」


 仁美のほうも誇らしげだ。


恭介「そうだね。志筑さんは僕なんかにはもったいないと思うよ」

さやか「え? それ、あたしなら十分ってことはどういうことになんの?」

恭介「いや!そういう意味じゃなくてね!」

マミ「さっきから墓穴掘りすぎよ……」

杏子「それより、そういやあすみは猫と会話ができる特技があるんだよな」

杏子「二階から降りてこない奴もいるし、ちょっとあっちに行ってみようぜ」

恭介「猫と会話?」

さやか「え? なにそれすごい!」


キリカ「……お」


 みんなで二階に行くと、一人まったりとエイミーを撫でている姿。

 キリカがこちらを見た。


キリカ「あれ? いつのまにか増えてる」

キリカ「こんにちは」

あすみ「こんにちは」


 二人はエイミー繋がりで鉢合わせることもあり、そこそこ打ち解けているみたいだ。

 互いに穏やかなタイプは緊張しなくていいらしい。


あすみ「私もエイミーを触りに来たんです」

さやか「あたしはそれを見にきたんです」

恭介「僕も」

タツヤ「みんなであすみちゃんとエイミーを見に来たんです」

キリカ「……どういう状況?」


杏子「見れば早いって。ほら、あすみの特技を見せてやれ」


あすみ「……」

エイミー「……にゃ?」


 両者の目が合う。

 それから、あすみが鳴いた。


あすみ「にゃ、にゃー……」

エイミー「にゃー?」

タツヤ「何話してるの?」

あすみ「最初のは『どうしたの』って」

さやか「あ、それはなんとなくわかったけど」

あすみ「次のは、『みんな集まってるけど何か美味しいものくれるのかな』って」

杏子「ぷっ、らしいな」

あすみ「にゃ、にゃー」

エイミー「にゃにゃ」

エイミー「うにゃー」

あすみ「ご飯のにおいがしないからしょんぼりしてる」

あすみ「豆あじの煮干しが食べたいそうです」

さやか「細かいな」


まどか「でも豆あじの煮干しなんてそうそう都合よく持ってないよ」

マミ「この前買ったやつのことを言ってるのね……気に入ったの?」

エイミー「にゃ」

あすみ「うんって」

さやか「いやうんそれはわかるけど」

杏子「しょうがないなぁ、持ってきてやるよ」

エイミー「にゃ!」

さやか「今のはやった!って言ったね」

恭介「それは誰でもわかるね……でも豆あじはわからないよ」

キリカ「その煮干しのこと、話したの……?」

マミ「いえ、買ってきたのはつい昨日よ」


 ……エイミーは大きめの煮干しをはぐはぐと食べている。

 みんな、そのエイミーとあすみを興味深そうに見ていた。

 まあ、魔法の効果に他ならないのだが、こういう使い方ならみんな感心するだろう。


キリカ「それ、私にも教えて!」

あすみ「えー、それは難しいかと思いますけど……」

キリカ「にゃ、にゃー」

エイミー「にゃ?」

キリカ「にゃー、にゃー」

エイミー「にゃー」

さやか「え、でもすごい! 話してるじゃん!」

キリカ「なんか言うと反応はする……けど」

キリカ「……全然わかんないよ!」


 がっくりと項垂れるキリカをよそに、みんなそろってにゃーにゃー言い始めた。

 ……なんだろう、この光景は。


杏子「……あすみ」

あすみ「はい」

杏子「まだ大丈夫か? 結構人が集まってるけど」


あすみ「……」


 あすみが指輪状態のソウルジェムに視線を落とす。

 銀色の指輪の中に嵌った銀色の宝石。

 近くに人が居るだけで自動使用される魔法は、魔力を削っていくだけでなく、

 絶え間なく本音の声が聞こえ続けるというのがやっぱりなかなか堪えるものらしい。


あすみ「みんな知らない人じゃないですし、これでも最近少しマシになってきたので」

あすみ「意識してないものから勝手に雑念を読み取ることもなくなったし」

杏子「そうか? それならいいけど」


 ひっそりと話していると、キリカもこちらに気づいて話しかけてきた。


キリカ「あ、大丈夫? 気分悪くなってない?」

あすみ「あ、はい。なんとか」


 キリカはあすみのことは普通に人が苦手だというふうに捉えているようだった。


キリカ「きっと、感受性が高いから色んなことを気にしちゃうんだよ」

キリカ「でも多分それって、悪いことじゃないよ。それだけ優しいってことだろうし」

あすみ「……そうですね。疑うことがあっても、汚いものを見ることがあっても、人を嫌いにはなりたくない」

あすみ「優しくありたいです」

キリカ「うん……」


――下のほうから扉の鳴る音がした。


マミ「あっ、お客さんが来たわ」

杏子「そうか、そろそろ飯時が近づいてきてるもんな」

さやか「そんな時間かー、そろそろ帰って明日のために準備したほうがいいかな?」

恭介「そうだな……もうちょっといようよ」

さやか「珍しいね。恭介がこういうときにバイオリンを優先しないの」

恭介「え? そうかな」

恭介「バイオリンはいつでも弾けるけど、みんなと一緒に居る時間は貴重だし」

恭介「それに、今日までこれだけ練習してきたんだから」

マミ「あら、少しは成長したってことかしら?」

杏子「ほんの少しだけどな」


杏子「今日も頑張るか!」

マミ「ええ!」

マミ「あ、そうそう。前に話した制服の件だけど、一応シンプルなエプロンだけでも作ることにしたから!」

鳴海「ついにですか!」

杏子「へえ、本格的にそれらしくなったな」

マミ「後で楽しみにしててね」


 階段を下りてお客さんの元に向かう。

 そして、三人で一斉に言った。


「いらっしゃいませ!」


―END―

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とりあえずこれで完結です。
以下資料なんかはまた次回、26日(日)17時くらいから。

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某DMMゲーに感化されて今まで書いたことのないジャンルに手を出してみた結果、
ほのぼの(大嘘)な展開になった。

そしてラスボスとしてもろに悪役にしても大丈夫そうな人を考えた結果、
あの人しかいなかった。


あと、最後あたりとか安価が少なかったのを猛反省。
折角全員大集合させたんだから、急ぎすぎずもう一個くらい安価出せばよかったかな…

聞きたいこと、会話させたい内容展開なんかがあれば次回開始までに多分なんか追加で書きます。

ではおやすみです。

ほむらはもう手遅れな気が…本編中盤あたりだったらまだ狙えたかも?
無駄に設定もあるのでちょっとしたおまけを投下。
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*おまけ短編*

①『暁美ほむらの夢』


――東京 某大学・大学院棟内研究室


ほむら「ふぁ……」


 草木も眠る深夜。

 研究室で、ほむらは重く下がってくる瞼をこすってあくびをした。

 その様子を友人が心配そうに見ている。


「もう明日にしようよ。ほむらは体力もないんだから寝ないと持たないよ?」

ほむら「まだ書き終わってないわ。このレポートだけでも今日中に仕上げておきたいの……」

「もう今日中じゃないよ……わたしはもう寝るよ」

ほむら「ええ……おやすみなさい」


 研究室で仮眠に入る友人。

 この前の休み以来、また忙しい日々を送っている。

 年度末というのは慌ただしい。これさえ終わればとなんとか踏ん張るしかない。


ほむら「こんな感じでいいか……私ももう寝よう」


 実験の邪魔にならないようにと後ろに一つにまとめていた髪をほどく。

 長いこと二つに分けていたからか、いまだに綺麗にまとまらずに左右に分かれる癖がついている。


 目をつむるとすぐに眠りの世界に引き込まれた。

 瞼の裏に映る景色は……おそらく人生の中で一番非現実的な体験をした、中学時代だった。


 ――足場の悪い地面を歩き、空を見上げた。

 あの時聞いた話が本当ならば、この街を壊したのは魔女なるものらしい。

 それも、普通の魔女とは違う破格のもの……といっても、ほむらは『普通』の魔女のことすら知らなかった。


 もう少しでこの場所ともお別れすることになる。

 今回の災害で、また東京の実家に帰ることになった。

 しかし、最後にこの街を見てみようと思って訪ねたらこのありさまだ。


ほむら(ニュースでもさんざん映っていたけど、あれを見滝原だなんて思えるわけがなかった)

ほむら(たしかに見滝原に来たはずなのに、違う世界に来てしまったようだわ)


ほむら「!」


 「ひどい景色ね……。戦ってた時はここにもまだ少しはビルも残ってたのに」

 「マミの家にも、もう戻れそうにないか」


 誰もいない荒廃した都市の中で、覚えのある二人が居た。

 その声が聞こえた途端、ほむらは咄嗟に隠れてしまう。

 見つかりたくはない。話したくもない。……けど、どうしてここに来たんだろう?


ほむら(……勝てなかったとはいえ、ここで戦っていたんだよね)

ほむら(どんな感じなんだろう、あの二人の見ている世界は)

ほむら(きっと私とは全然違う世界に居るんだろうな)


 痛そう。怖そう。

 とてもじゃないけど自分にはできなくて、関わりたくもない世界。

 ――――怖い。あの佐倉杏子、と名乗った人物に抱いた感情もそうだった。


 でも、自分や避難所の人たちが助かったのがあの人たちのおかげだというのも事実だった。

 違う世界にいる人が人を救えるのだろうか。


ほむら(……もう行こう。この景色に見覚えはない)

ほむら(次来るときにはどうなっているんだろう。街が復興したら、違うものになっちゃうのかな)

ほむら(次がいつになるかはわからないけど……)


 また舗装のはがれた足場の悪い地面を歩いて、戻ることにする。

 風見野の――街のあるほうへ。

 しばらくしたら両親が車で迎えにくる。そうしたら、完全にこの場所とはお別れだ。


ほむら(せっかく仲良くなってきた人たちともお別れか。それは嫌だな)

ほむら(そういえばあの人もこの前のライブ、見に来てたんだっけ)

ほむら(いきなり家のポストに手紙が入ってた時はびっくりしたけど……)


 さすがに実家に戻ったらもう追ってくることもないだろう。

 ……本当に不思議な人だった。不思議なのは魔法少女だとかあの周り全部そうだ。

 けど、初めてその“力”を見たとき感じた種類の“怖さ”は今では薄れていた。

 ほむらの中で最後までその不思議さは良い方向に捉えられることがなかったものの、
 悪い人ではないんだろうというのはわかった。

 私を……誰かを救おうとはしていたのだから。


 キュゥべえはどうなんだろう?

 ……もう姿を見ることはなくなるだろうか。

 見たとしても、対応は決まっている。

 私には無理だ。あの二人のように戦うことなんてできない。


ほむら(私が生きる世界は……私がする生き道は、違う)

ほむら(東京に戻って、また学校に通って……そんな普通の日常でいい)

ほむら(私がずっと夢見た普通の日常を、少しでも幸せに送ることができたら……)


 また新しい環境で一からスタートすると思うと不安になった。

 なんだかんだで見滝原中学校には良い人が多かったから。

 けど、退院して見滝原に転入する時と比べたら少しだけ前向きな気持ちだった。

 あの時大丈夫だったんだから、きっと今度だって大丈夫だ。


ほむら(帰ろう。久しぶりの東京に……私の家に)


―――


ほむら「!」


 ――――耳元から聞こえた音楽にビクリと身体を揺らして起床した。

 前に知り合いから勧められたバンドの曲を着信音にしていた。

 ……ちょうど電話の相手がその知り合いだった。


ほむら「……何?」

 まだ眠気のとれない声で電話に出ると、呑気な声が聞こえてきた。

『おはよう!今日とか練習どう?やっぱほむほむのベースとラップがないと締まらないよ!』

ほむら「無理。年度末は忙しいのよ」

ほむら「まだ起きる予定だった時間じゃないのに……」


 恨めしそうに文句をぶつける。

 率直にこんなことを言えるのは、相手がこんな調子の人だからだろうか。


 元々半ば強引な形で勧誘されて始めた軽音。

 結局あれからずっと部活動はしなかったものの、
 なんだかんだで自分の特技を増やしてくれた軽音部のことは、いつのまにか良い思い出になっていた。

 大学で『けいおん』なんてサークルに惹かれたのも、まだどこかで未練があったんだろう。


『ホントほむほむも言うようになったなー』

『頑張ってね』

ほむら「……ええ。一段落ついたら一緒に練習しましょう」


 その仲間と今でもこうしてバンドをやっていたりするが、その知り合いもほとんどはもう社会人だ。

 ……自分がまだ学生でいることを選んだのは、就職のためというのもあるが、

 一番は今まであまり楽しめなかった学校生活を取り戻そうという思いがあったからだった。


 電話を終えて、まだ寝ている友人の顔を見る。


ほむら(私も寝なおそうっと)

ほむら(……時間はかかったけど、これも夢が叶ったっていえるのかしら?)

ほむら(忙しいけど、こういう日常は悪くないわ)



―END―

②『鹿目一家と若いカップル』


――某日 鹿目家前


あすみ(……気持ちを落ち着かせるのよ、私)


 表札に彫られた名前は見知った苗字。

 立派な一軒家のインターホンの前で、あすみは深呼吸をした。


知久「あれ? あっ、もしかして君が噂のあすみちゃんかな?」

あすみ「あ、ははは、はいっ!」


 友達の家に遊びに行く約束。それ自体は初めてじゃない。

 けど、『彼氏』の家に行くとなると心持は大分違った。


あすみ(うわぁ、いきなり外に居たなんて!)

あすみ(最近前より制御できるようになって、聞ける声が少なくなってきてたから……不意をつかれた気分……)

あすみ(って、別に今は戦闘でもないんだから。こういう不意は別につかれたって……)


 鹿目君のお父さんは、手にトマトを持っている。

 そういえばお父さんが園芸やってるって言ってたな……なんて思い出した。


知久「緊張しなくていいよ。さ、上がって。今日はみんな居るから」

あすみ「あ、はい……お邪魔します」


あすみ(そっちのほうが緊張するんですけど……)


 廊下をきょろきょろと見回す。

 自宅の狭いアパートとは何もかも違って見えた。

 こんなことで身分違いと言うのも大げさだけど、着ている服とか大丈夫かななんて心配になった。


タツヤ「あすみちゃん!ようこそ!」

詢子「いらっしゃい。よく来たね」

まどか「いらっしゃーい。学校以外で見るのは初めてだね」

あすみ「そうですね。なんか、不思議な気分です……」

タツヤ「あすみちゃん」

あすみ「なに? ……な…………」


 ……鹿目君がその言葉を言う前に赤くなったのを、気づかれてはいないだろうか。


タツヤ「初めて見たけど、私服も似合ってるね」

あすみ「……」


 心の中に聞こえた声は『その服可愛いね』だった。

 そんなほんの少しの違いにも気づいてしまえるのは幸か不幸か。


あすみ「うん……ありがとう」


あすみ(……でも、ちょっと勇気を出して心の声のほうを言ってほしかったかな)


知久「仲良くしてくれてありがとうね」

詢子「タツヤー? 十分上出来だけど、素直に可愛いって言ってやったらもっとよかったのにな」

タツヤ「えっ!? う、うん……可愛いよ、あすみちゃん」

あすみ「あ、ありがとう」


 ……魔法がなくても心を読めることがあるんだな、なんて思った。


あすみ「ていうか、家族にももう言ってたんだね……なんか照れるな」

まどか「うちは割と隠し事なしなスタイルだから」

まどか「そっちは、お母さんと話してないの?」

あすみ「ちょ、ちょっと話してます」

何か別の話が投下されてるけど誤爆やろか
混ざるとちょっとわかりにくくなりますね…

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タツヤ「今度あすみちゃんの家にも遊びにいきたいな」

あすみ「でも、うちは狭いしなにもないよ」

タツヤ「それでもいいんだ」

詢子「親御さんに挨拶に行くならビシッといいとこ見せないとな」

知久「行く時には言ってくれたら何か用意するよ」

あすみ「え、いいですよ。そんな気を遣わなくても……」

あすみ「私も何も用意とかしてませんし」

詢子「そういや、もう少し前にはうちに猫とかも居たんだけどね」

あすみ「あ、エイミーですよね」

あすみ「元々マミさんの家に居たのを預かってたって」

あすみ「たまに会いに行ったりしてますよ」

詢子「そっか。まどかも休みの日はたまに会いに行ってるよな」

まどか「じゃあ、今度ばったり会うかもね」

まどか「あの店はいろんな人が集まるから」

タツヤ「でも、うちも何か飼ったりしたいな……猫もいいけど犬とかどうかな」

まどか「えー、犬はちょっと……」

知久「ああ、まどかはまだ犬が怖いんだっけ」


 ……鹿目君の家は、うちとは何もかも違う。

 うちだとお母さんと二人で、こんなふうに大人数で話すことはない。

 でも、こういうのも楽しそうだと思った。なにより、暖かい気持ちになる。


あすみ(きっと、こういう家で育ったから鹿目君はこういうふうに育ったんだろうな)


詢子「まあうちにも大したものはないけど、ゆっくりしていきなよ」

詢子「ここはちょっと二人きりにさせておくほうが気が利いてるかね?」

あすみ「え、ええと……」

まどか「あ、そっか。あんまりみんなで囲んでると緊張しちゃうかな?」

まどか「タツヤの部屋はあっちだよ」

タツヤ「行こっか」

あすみ「……うん」


 二階の部屋のほうに通されてからも、

 下のほうからはまだ明るい声が聞こえていた。


あすみ「いつもあんな感じなんだ」

タツヤ「うん。うちはお父さんが専業主夫でさ」

タツヤ「ちょっと変わってるって言われること多いけど、賑やかで楽しいよ」

あすみ「そうだね。楽しそうだなって思ったよ。お母さんもカッコいいし」

タツヤ「あ、ぜひ夕飯も食べていってよ。パパは料理もすごく上手だから!」

あすみ「うん……じゃあ、今日はお言葉に甘えようかな」


 いつもお父さんって呼んでるけど心の中では『パパ』って呼んでて、

 最後はついに素の呼び方が出ちゃったのが少しだけおかしく思えた。


 今度はうちにも誘おう。

 そしたら、鹿目君もうちを気に入ってくれるといいな。


―END―


③『ドルチェ・ジョルニ・メモーリア』


――イタリアンレストラン『フィオリーレ』


杏子「ありがとうございましたー」


 お客さんを見送って、手分けしてテーブルの上を片づける。

 飯時にはまだ早い時間だが、そろそろ気を抜けない。なにせ、今日は一番忙しい“土曜日”なのだ。


さやか「おー、手際いい」

杏子「だろ? あたしも慣れてきたからな」

鳴海「私も慣れてきました。けど、杏子さんにはかないません」

マミ「佐倉さんはすっごい同時に運ぶことが出来るのよね……あれは多分常人には真似できないわ」

ゆま「意外なところに才能があったんだね……運動神経のおかげかな」

キリカ「それなら確かに納得かな……」


 テーブルの上を拭き終え、次の客が来るまでまた少しだけ話に戻る。


杏子「で、さやか」

杏子「子供はいつ、何人ぐらい欲しいんだ?産まれたらあたしが名付け親になってやるよ」

さやか「おおお!? き、気が早いよ!?」


杏子「なんなら結婚と同時にサプライズだって良いんだぜ?」

杏子「ちゃんと希望はぶつけないと、あいつのことだ」

杏子「いつのまにかジジババになってたみたいなことになりかねないだろ!」

さやか「あー、それは確かにないとはいえないのが……」

恭介「あはは……いつかは考えるよ」

マミ「美樹さん、上条君のいつかは信用できないからね」

マミ「アピールしていいのよ、アピール」

さやか「あはは……」


 二人して笑ってごまかしているのがなんだかおかしい。

 ……さっきから思いっきり本人のいる前で言っているが、こいつにはもう露骨なくらいで十分だ。



・多分最後の自由安価。何か話題があれば。

 下2レス


 ……と、来店を知らせる音が鳴る。

 ビシッと雰囲気を変えて接客に行く。


杏子「いらっしゃいませ! ……ってお前か」

「客をお前呼ばわりとは、随分とマナーがなってない店ね?」

鳴海「も、もうしわけございませんでしたー! ……って、知り合いですか?」

マミ「いらっしゃい。あなたは……」

「もう忘れた? あたしよあたし。チラシを見て来たの」

杏子「気をつけろ!あたしあたし詐欺だ!」

小巻「目の前に出てきてどうやって詐欺するのよ!あたしよ、浅古小巻!」

マミ「……本当に久しぶりね。高校の時以来だったかしら?」

小巻「そうだったかもね」


 ……風見野の魔法少女。

 あたしがキュゥべえからその契約理由を聞きつけて、ちょっかいかけてやろうと襲ったのがきっかけだった。

 第一印象は最悪だろう。

 けど、なんだかんだあって和解して、あのワルプルギスの夜以降に見滝原に戻ってからもたまーに会っていた。


マミ「それで、ご注文は?」

小巻「この店で一番おすすめのセットを頼むわ」


 この不遜な言い方。まあ、それでこそなんだが……。

 ……ほとんど“魔法少女”という点以外で交流はなかった。

 こいつだって一応お嬢様だ。同じ元魔法少女でも、普段は住む世界の違うところに居るのだろう。


杏子(まあ、それでも仁美とは仲良くやれてるしな)


 マミがおすすめのメニューの解説を詳しく話して、それからキッチンの奥に行った。

 ……みんなのいるテーブルをちらりと見てみれば、知らない人の登場にざわめいている。


まどか「えっ、誰?」

さやか「値段も見ないで頼んでるあたり、結構な金持ちと見た」

まどか「仁美ちゃん、知ってる?」

仁美「金持ちというだけで話を振らないでください……」

杏子「あいつは……昔ちょっと同じ仕事をしてたことがあったんだ」


 この言い方に二人は感づいたようだった。

 あとの人は、意外だというような態度でさらにざわめいている。


杏子「そんなことより、ゆまは休みのうちに実家に帰ったりしないの?」

杏子「おじいちゃんとおばあちゃんは元気か?」

ゆま「うん、電話はよくするよ。近いうちにこっちにも一度来るって言ってた」

ゆま「その時に一度一緒に帰ろうかなって思ってる」

杏子「へえ」


 と、話していると、小巻に呼び止められた。


小巻「……ねえ、佐倉。久しぶりに会ったんだから、なんか面白い話してよ」

杏子「なんだ急にその雑な振り方は」

小巻「マミは今料理中だし」

小巻「ここはあんたたちのホームでしょ? あたしの知らない人もたくさんいるし」

小巻「緊張を和らげるために積極的に話そうという気遣いくらいしてくれたっていいでしょ」

杏子「いや、あんた緊張とかしないだろ」

小巻「いいから」



1自由安価
2近況報告
3とりあえずみんなを紹介する

 下2レス


杏子「はぁ、じゃあ紹介してやるよ」

杏子「ほら、みんな注目」

杏子「こいつは浅古小巻、見ての通りいいとこ育ちのお嬢様だ」

杏子「最初に会ったのは……スレてた頃のあたしと喧嘩したときだな」

杏子「お嬢様だけあってなかなか強かったが……最後はあたしの技が決まってKO勝ちだったな」

小巻「こ、こらっ。余計なこと言わないでいいの!」

杏子「それからなんだかんだあったが今では和解してる。たまに一緒に行動して仕事したりしたしな」

仁美「格闘技仲間ということですね!」

杏子「仁美はなんでそういう話題に興味津々なんだよ」

仁美「強敵と書いて友と読む、素晴らしいと思いますわよ」


 ……こいつ、良い子ちゃんのお嬢様に見えて結構俗っぽいもの好きだよな。


仁美「あ、申し遅れました。志筑仁美です。よろしくおねがいいたしますわ」

小巻「ええ、よろしく」


まどか「わたしは鹿目まどかっていいます。よろしくお願いします」

恭介「上条恭介です。普段はバイオリンとか弾いてます」

杏子「ついでにこっちの子がその妻の上条さやかです」

さやか「いやまだ結婚はしてないし苗字は美樹だけど」

杏子「そろそろするんだから同じようなもんだ」

小巻「ああ、あんたか」

恭介「……? あ、バイオリン弾いてて雑誌とかテレビにも出てるから知ってるのかな」

さやか「…………あ」

 話してると、さやかが何かを思いついたようだ。

 思いついた、というか思い出したというか。

 ……そういや、募金の時に一度会ってるんだよな。さやかは。

小巻「腕が治ってよかったわね」

さやか「あの時の人か! めっちゃ募金してくれた!」

恭介「えっ? そ、それはありがとうございます!」

小巻「ついでにおめでとう」

さやか「あ、はいっ!」


 ……全員分の挨拶が終わると、それだけでもそこそこ時間が経った。

 そろそろマミの料理も仕上げに入る頃だ。


小巻「……まさかあんた、これだけの人全員と知り合いだったとはね」

小巻「しかも中学生二人まで」

まどか「わたしの弟と教え子だから」

杏子「ついでに彼女だから」

小巻「さっきから囃し立てるわねあんたは……」


 一通り自己紹介が終わっても、この人数に一人増えただけでわずかに委縮しはじめてるヤツがいた。


キリカ「……喧嘩とかいってたけど、こう見えて元ヤン?」

杏子「ほら、キリカはお前と違って繊細なんだよ。あんまりズケズケ言って困らすなよ」

小巻「いやそれはおかしいから!」

小巻「ヤンキーでもないし病んでもないっての。ていうかそれはむしろ佐倉のほうでしょ」

小巻「あっちがいきなり突っかかってきたの。わかった?」

キリカ「そ、そう」

小巻「その繊細な人が佐倉と付き合えることのほうが意外だわ」

杏子「うるせーあたしだって意外と繊細だ!」

キリカ「……それは繊細な人のセリフではないけどね」


 そんなことを言っているうちに仕上げも終わったようだ。

 マミが皿を置いた。


マミ「お待たせ。何の話?」


杏子「とりあえずみんなで自己紹介してた」

キリカ「杏子が意外と繊細だという話。ありえない」

杏子「おい」

マミ「そうねえ……意外と繊細なところはあるかもしれないわね」

小巻「不思議とマミが言うと説得力が増すわね……」

小巻「……あ、このサラダおいしい!」

杏子「サラダから行くのかおのれは。草食動物か」

マミ「佐倉さんはほっとくと野菜を食べないじゃないの」

小巻「あたしはあんたと違って繊細な女性だから栄養管理もこだわってるの」

キリカ「……ここのサラダが美味しいのは同意する。全部美味しいけど」


 ……マミも調理が終わって、また一息つく。


杏子「今日はこれからが本番って感じだが、明日は休みだな」

マミ「そうね……なにかやりたいことはある?」

杏子「久しぶりにピーチパイ食べたい」

マミ「じゃあ作ってみようかしら」

杏子「そういや、イタリアに居た時もケーキ作りとかやってたのか?」

マミ「ええ、休日には。同室の人にも好評でね」

マミ「彼女も料理上手だったけど、ケーキだけは私の担当でよく振る舞ってたわ」

杏子「へえー」

マミ「確か、最初に作ったのもピーチパイだったわ。すっごい褒めてくれて、打ち解けたの」

さやか「イタリアに居た頃の話かぁ、聞いてみたいです!」

仁美「確かに気になりますわね」


 みんなが近くに寄って耳を傾ける。

 マミの思い出話がはじまった。


―――――
―――

…………三年前、初めてイタリアに行って、戸惑うことばかりだった。

日本とは全く違う建物。見たことのない景色に心が躍る。

でも、どこか自分の知らない世界に来てしまったような不安感があった。

本で学んできただけのイタリア語はまだ心細く、伝わらないこともあった。


寮生活というのも初めてだった。同じ職場で働くの人との共同生活。

同じくらいの年。それに、名前からして日本人らしいのが救いだった。


マミ「チャオ…」

「Ciao!」

マミ「Il mio nome è Mami Tomoe.(私は巴マミといいます)」

マミ「Piacere(よろしくおねがいします)」


 ……個性も何もない、教科書の一番最初に出てくる会話例のような会話だと自分でも思った。

 彼女はそんな少し硬い空気をほぐすように元気に言う。


「ピアチェーレ……――って、日本人だよね? 日本語でも大丈夫だよ」

マミ「えっ、ああ、そうね! 改めまして、私は巴マミ。よろしく」

「やっぱ、使い慣れた言葉じゃないとちゃんと言った気がしないよね」

マミ「いっぱい使って慣れないととは思うんだけどね……えーと、昴さんっていったかしら」

かずみ「ん。昴かずみだよ、よろしくね」

マミ「……昴さんはずっとこっちに住んでるの?」

マミ「昼に見かけた時とても上手に話してたから、むしろ日本語が通じるかが不安になっちゃって」

かずみ「あー、そっかー」

かずみ「わたしはグランマがイタリア人だし元々帰国子女だったから小さい頃からイタリア語も喋れたんだ」

かずみ「わからないことがあったら教えてあげるよ」

マミ「ええ、ありがとう」

>>878
杏子編は杏子とマミの立場が逆転してるから、あすなろ組と面識があるのは杏子の方だよ


 一緒に暮らし始めてわかったことは、

 とっても料理が上手ということと、とっても食べるのが好きということだった。


マミ「ちょっと……どうしたのその量は」

かずみ「え? おなかすいたから。それに練習だよ」

マミ「……食べきれるの?」

かずみ「失礼な、食べきれないものを作らないよ!」

マミ「そ、そう。でもすごくおいしそうね」

かずみ「マミもたんと食べていいからね! 足りなかったら追加で作るから!」

マミ「ええ、いただきます。でも多分足りるわ」


マミ(……いちごのリゾット。優しい味ね)

マミ(料理のレパートリーは昴さんのほうが多いのかも)


マミ「これ、今度教えてくれないかしら」

かずみ「いいよ。じゃあマミも何か教えて」

かずみ「マミの得意料理は?」

マミ「パスタとかはよく作ってたわね。ビーフシチューも好評だったわ」

かずみ「家族に?」

マミ「……ええ。そんなところね」


 夕食の後にはイタリア語の勉強に付き合ってもらっていた。


かずみ「……いやでも熱心だね。ノートまで作ってるなんて」

マミ「料理の腕以前に、会話っていうのは基本だもの」

マミ「そこは早くにもっと上手くやれるようにしなくちゃって思って」


 こういうのはやっぱり足りない部分を補っていって慣れていくしかない。

 聞き取れなかったところ、どう表現すればいいかわからなかった言葉なんかを

 書き留めておいたりして聞くことにしていた。


マミ(そういえば、魔法少女の訓練用のノートっていうのも作ってたわね……)


 ……熱心に書き留めていたノート。

 熱心すぎて、血迷ったことを書いていたのを思い出して、すぐに頭から掻き消した。


マミ(あ、あれはもう忘れるのよ!)


 でもやっぱり、一生懸命辞書を引いて、最初に覚えたイタリア語は必殺技に使ってた名前だった。

 こうやって勉強しはじめると、最初知ってたのがあれだけというのがまたなんとも恥ずかしかった。


かずみ「んー、でももうちょい力抜いてもいいと思うんだけどね」

かずみ「マミの言うとおり会話っていうのは基本だから、自然と覚えるんだよ」

かずみ「文法とか単語きっちり覚えるよりも、伝えよう!わかろう!って気持ちがあればきっと大丈夫」

マミ「そっか……そうなのかもしれないわね」

かずみ「うん!」


マミ(イタリア語を調べようと思ったきっかけは、正直かっこつけだった)

マミ(リボンだとか矢だとか射撃だとか……そんなのなかなか日常生活で使う機会ないんだもの)

マミ(佐倉さんも『わけわかんない』って散々言ってたし)

マミ(……それだけじゃ会話できないわけだわ)

マミ(伝えるため、わかるための言葉って思えばまた違うものに思えてくるんでしょうね)


かずみ「――――……それじゃ、勉強はここまでにしてそろそろ寝よっか」

かずみ「今度休みはどっかお出かけにいこ」

マミ「ええ! 楽しみだわ」


かずみ「Buonanotte」

マミ「……ええ、おやすみ」

-------------
ここまで
次回は27日(月)20時くらいからの予定です


――――広いホール。忙しなく人が動き回るキッチン。

最初はウェイターからやってたけど、やっぱり料理をしている時間が楽しかった。

最初のうちはまかないしか作れなかったけど、少しずつ認められていったから嬉しかったな。


*「※訳(これ美味しいわね!)」

*「(なかなか優秀な新人が入ったな)」

かずみ「(ね。マミめっちゃ腕いいよね!?)」


かずみ「大丈夫だよ、これならすぐに認めてもらえるよ!」

かずみ「だって、普通にお客さんに出してもおかしくないレベルだもん」

マミ「そうかしら…… 嬉しいわね」

かずみ「午後からも頑張っていこう!」

マミ「ええ!」


――――昴さんは誰とでも楽しそうに話している。

困っている時には、こっそりと助けられることも多かった。

こうして見知らぬ地ですぐに馴染んでいけたのは、昴さんのおかげでもあった。



かずみ「お疲れさまぁーっ。休みに行きたいとこは決まってる?」

マミ「そうね……」


 雑誌をぺらぺらとめくる。

 いくつかマークしてあるのは有名な観光地。

 ……前に行った時には私、いくつだったっけ。あのころはお父さんもお母さんも元気だった。


かずみ「お、やっぱこっちに来たからにはそういうとこ気になるよね」

かずみ「ローマの休日とか好きなの?」

マミ「好きっていうか……あこがれるわよね」

マミ「でも、気になるところって考えるといっぱいになっちゃうわね」

かずみ「気になったとこは行こうよ。せっかくなんだから!」

かずみ「だったら明日はこことここと……」

かずみ「ここのジェラートは美味しいから行っておいたほうがいいし……」

マミ「そんなに回れるの?」

かずみ「大丈夫大丈夫!」

―――


マミ「休みの日はかたっぱしから気になっていた場所に出かけたっけ」

マミ「あれは楽しかったなぁ。休みのほうがむしろへとへとになったけど」

あすみ「いいなぁ。私は日本から出たことないから……」

さやか「まだ行くチャンスなんていっぱいあるっしょ!」

さやか「あたしも中学の頃はアメリカ行くなんてさっぱり考えてなかったし」

恭介「僕も募金のことがなかったら行かなかっただろうな……」

杏子「あたしもここから出ることはないだろうな」

恭介「そういえば、パスポートないって言ってたっけ」

杏子「……ああ、まあな」

杏子「だから、こういう話を聞けるのは面白いよ」

マミ「ふふ、ありがとう」


―――



 ……結構な距離を歩き回って、帰ってきてからはすぐにぐっすりだった。

 改めて色々と話をしたのは翌日だ。


マミ「おかげさまで昨日は楽しかったわ」

かずみ「わたしも改めて回ってみると楽しかった!」

マミ「途中から食べ歩きになってたわね」


 本当、こうしていると佐倉さんを思い出すのよね。

 ……ああ、そうだ。そろそろ手紙も書かないと。


マミ(あっちは元気にしてるかな)

マミ(食べ物とかも……ちゃんと栄養気遣ってればいいけど)


かずみ「日本もいいけど、ここも良いところでしょ?」

マミ「ええ。建物も綺麗だし、人柄もいいわ」

マミ「それに……カッコいい人もいっぱいいるし」

かずみ「ほうほう」


かずみ「マミはこれからずっとこっちに居る予定?」

マミ「いえ…… 私はもともと、自分の店を持つのが夢だったから」


 ……ずっと前から、憧れはあった。

 付き合うなら外国人って決めていたし。

 なんかこう、日本にはないキラキラした感じのものがある気がして。

 実際に行ってみて、まだ日は浅いけど素敵な場所だと思った。


 でも、やっぱり……


マミ「……いつかは帰ることになるかな。ちゃんと、自分がここで成長できたって思ったらね」

マミ「約束もしたから」

かずみ「そっか……」

かずみ「応援するよ。マミならできるって!」

マミ「ええ、ありがとう」

マミ「……そうだ。 そろそろティータイムにしましょうよ」

マミ「何か作ってくるわ」

かずみ「お、ドルチェ?」

マミ「ええ。……多分、私が一番自信のある料理を」


 紅茶と特製のピーチパイをテーブルに運ぶ。

 佐倉さんと出会った時に作ったもの。


 ……自分で作った料理を誰かに振る舞ったのはこれが初めてだった。

 教えてもらったりお手伝いをしたりはしてたけど、

 まだお母さんが居た頃にはそこまで料理を作ることもなかったから。


かずみ「すごい! おいしそう~!」

マミ「おまたせ」

かずみ「へー、ケーキ作りも得意なんだ!」

かずみ「それに、こんな美味しい紅茶飲んだことないよ」

マミ「いつもこうしてよくティータイムにしてたのよ」

マミ「私の近くにも、昴さんみたいによく食べる人が居てね」

マミ「その人は料理はしようとしなかったけど」

かずみ「えー? それはもったいないね」

かずみ「自分で作れれば自分の食べたいものを好きなだけ食べられるのに」

マミ「食べたいものは全部マミが作ってくれるから、だそうよ」

かずみ「じゃあ今食べたいもの食べられてないよ、その人」

マミ「あ、そうね…… 今度手紙に書いておこうかしらね」


 紅茶の香りがふわりと鼻腔をくすぐり、ピーチと混ざる。

 このピーチパイもきっと、最初に作った時よりまた上手になっている。


マミ(……こっちでもやっていけそうな気がするわ)

マミ(いつか、自分が成長したと思えるようになったら)

マミ(また会うときは胸を張って、新しい自分を見せよう)


 ……帰ったらまた作ろうかな。

 やっぱりあの子は、私がいないとダメそうだ。


――――……
――――――



杏子「……で、実際帰ってきてみたら」

杏子「やっぱりあたしがいないとダメだっただろ?」

マミ「…………はい」

マミ「本当はね……もうちょっとかっこいい再会をする予定だったのよ」

マミ「なんだか情けないわ」

杏子「成長しても、マミはマミだからな」

杏子「それに、マミが完璧超人になっちまったらあたしの役目がなくなる」

小巻「支え合う仲ってことでいいんじゃない?」

小巻「それがあんたたちらしいわよ」


マミ「それで、佐倉さんは私がいない間はどうだったの?」

ゆま「わたしのバイト先の喫茶店にはよく来てくれてたよ」

ゆま「でも、確かに野菜とかあんまり食べてなかった印象だなぁ」

キリカ「……ネカフェ難民だった」

杏子「だあああそれは言うなってばもおおお!」

マミ「おかしいわね、『ちゃんとやれてる』って聞いてたんだけど……」

杏子「ほら、こいつが心配するから!」

杏子「あんたは母親か! マミさんならぬママさんか!」

小巻「ぷっ、なにそれママさんだって!」

杏子「とにかく、明日のピーチパイは楽しみにしてるからな」

キリカ「……いいなぁ」ボソッ


キリカ「いいなぁ……」ボソ

キリカ「……いいなあ」

杏子「聞こえてるから!」

杏子「全然さりげなくはないぞ!? かなり露骨なアピールだからなそれ!」

マミ「……上条君の公演が終わったら、また明日もみんなで集まりましょうか」

まどか「わぁ、そういうの久しぶりだから楽しみです!」

さやか「ピーチパイのためにも明日はがんばんないとね? 恭介」

恭介「そうだね」

小巻「こいつ絶対繊細じゃないわ……」

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短いですが区切りがいいのでここまで
次回は2日(日)17時くらいからになります

たいしたものではありませんよ。
一つはスタート時に自分の性別が男姓に変わってたネタで題して男の娘ほむらちゃん
イレギュラーがさらにイレギュラーに!
まあ、本人はいたって真面目に動いてるのに周りが恋愛脳な所為で拗れて行くのがみたいだけです。
目指せハーレム!ぉぃ。
もう一つはさやか主人公のショートで恭介が入院中にリャナンシーという魔物に取り付かれてしまう話です。
この魔物、取り付かれた相手にしか見えないらしいので病んでる感じが出るかなぁと
あ、呼び名は某ゲームのキャラと同じリャノーンでシナリオさんもきっとこの魔物のイメージで指定したんだと思う。多分
以上、こんな感じです。

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>>906
ものすごい発想を持ってると思うからあなたが書いたほうがいいと思う…
俺の力ではその設定を活かせる気がしないw

ちなみに、一応ラブい路線だと
無駄にオリキャラ作成時の安価案で男性主人公ギャルゲ路線が新たに用意されてます


――――翌日、東京の方の大きなコンサートホールで上条の公演が行われた。


あたしなんかが普通足を踏み入れることのないような場所。

周りの人はみんなきちっとお上品な格好をしていて、正直始まるまでは落ち着かなかった。


しかし、公演が始まってその音を聴いた時には、そんなことは吹き飛んでいた。

音楽なんて碌に聴いた事もないようなあたしですら『すごい』と思ったのだから、その腕は本物なんだろう。

うっとりと目を輝かせるさやかの横顔を見て、バイオリンに――あいつに惚れたさやかの気持ちが少しだけわかった気がした。



さやか「すごい、今までで最高だったよ! 練習量はいつもより少なかったのに」

杏子「その感想は本人に言ってやりな。ようはあれだろ、今回の事でちょっとは成長したから表現の幅とかが増したんじゃねえの?」

杏子「楽譜通りに弾けばいいなんてのは、それこそ機械だからな」

マミ「手厳しい。でもそうね、演奏って結構その時の感情が現れそうだから」

マミ「じゃあ今まで上条君は何を思って弾いていたのかしら」

さやか「普通は、その曲が作られた背景とかじゃないかと思うけど」

まどか「そうはいっても、やっぱりそれも自分や身近のことから感情移入すると思うから」

まどか「さやかちゃんへの気持ちだってきっと入ってるよ」

さやか「そうかなぁ……」

仁美「さやかさんは上条君に会ってきてください。私たちは先にロビーのほうで待ってます」

杏子「それじゃ、また後でな」


 ……さやかを上条の方に送り出して、ロビーの椅子にどかりと座る。

 演奏が終わると、今までの世界が戻ってきたみたいだ。


杏子「ふぁ~、疲れた」

マミ「こら、足開いて座らないの……ってああ、目もこすらない! お化粧崩れるから!」

仁美「ふふふ、本当にママさんですわね……」


 今日着ている服はさやかからの借り物だ。

 一応ラフすぎる格好じゃいけないってことでこうなったが、これがまた落ち着かなかった。

 ああ、いけない。改めて思えばぶらぶらと過ごしてきた約10年間でいろいろと捨てすぎている気がする。


マミ「ところで今日の演目について調べてきてたんだけどね?」

マミ「最後の曲、作曲者が相手の父親に婚約を認めてもらうきっかけになった曲なんですって」

まどか「へえ……ロマンチックですね」

マミ「上条君がそれを知ってたら、何を思いながら弾いていたのかしら」

マミ「美樹さんのご両親は反対はしないでしょうけど、是非聴かせてあげてほしいわね」

杏子「……なんか、いいな」

杏子「あたしもそろそろ彼氏とか欲しいわー……」

仁美「!?」

マミ「佐倉さん! い、今」

まどか「……わたしだって欲しいよ、うん」


 ……そんなことを話していると、後ろから二人が近づいてきた。


恭介「やあ、お待たせ」

さやか「ん、何話してんの?」

マミ「あっ、美樹さん美樹さん今ねえ」

杏子「はいはいこの話は終わり! まったく、みんなしてそんな反応するから嫌なんだってんだ」

さやか「えーなによー! 気になるじゃん!」

まどか「さやかちゃんたちは幸せだからいいの」

マミ「……まあそうね。強いて言うなら、先輩として必要な時がきたらフォローしてくれればね」

さやか「先輩?」

杏子「そんなことより、早く帰ってお茶会やろうぜ!」

杏子「あんだけ大人数に増えたんだから、ピーチパイ2つはないと足りないだろうからな」


 ……歩き始めて、マミがポンと肩に手を置いてきた。


マミ「……佐倉さん、わかってると思うけど本気なら今のまま好かれるのを待ってるだけじゃ駄目よ」

マミ「せいぜい増えるのはお友達か舎弟くらいだからね」

杏子「わ、わかってるよ。ああでもやっぱそう考えると面倒だな……ていうか舎弟ってなんだ」

 まどかまで反対の肩に手を置いてきた。

まどか「わたしたちはまだ仲間……がんばっていこうね」

杏子「あんたは普通にさっさとなんか見つけろよ……」

マミ「佐倉さん……前から思ってたけど……人の事言えないからね……?」


 これだけ幸せな奴ら見てたからふと羨ましくなっちゃったんだろう。

 もう過去に縛られるのはやめることにした。今から“普通”に戻れるんだろうか?

 ……でも、あたしにはまだ色々と難しいことが多そうだ。


 ――家に戻ると、朝から一緒に居た6人で先にお茶会の準備をすることにした。

 店のキッチンでも6人は入れない。料理のできる奴らが率先して手伝って、後の3人は待っていた。

 それから、焼き上がる頃になるとわらわらと人が来はじめる。

 今日は大規模なパーティになりそうだ。


キリカ「こんにちは。もうできてる?」

杏子「第一声がそれか……今切り分けてるからあとちょっと待ってろって」

マミ「あと来てないのは?」

杏子「えーっと……」

ゆま「おまたせー! ちょっとおじいちゃんとおばあちゃんに挨拶してたら遅くなっちゃった」

マミ「いらっしゃい。……ってことは、この後すぐに実家に帰っちゃうの?」

ゆま「うん……まあでも、少しの間だから!」

ゆま「この街には嫌な思い出もあるけど、マミや杏子たちが居るから好きなんだ」

マミ「……これでよし、と。 幹久さん、これみんなに運んで」

鳴海「了解です!」



 ――――10年前に一度壊滅した街、見滝原。

 ずっと前から続いている良くない繋がりをやっと少しだけ断って、まだ再生の途中にある。


 その中で、賑やかすぎる繁華街の一角にある小さな店は、なぜか休日のはずの今日が一番賑わっていた。


ゆま「おいしい!」

鳴海「これメニュー化しましょうよ!」

あすみ「いいですね、そしたらきっと大人気になりますよ」

キリカ「……なんか無理言っちゃったみたいになってごめんね。でも美味しい」

小巻「そのおかげでこうして集まってるんだから、ありがたいっちゃありがたいけどね」

タツヤ「はい、集まれるだけでも楽しいです。ピーチパイもおいしいし」


 ……途中でマミが席を立ち、何かを用意してパンと手を叩いた。


マミ「はい! 突然ですが、注目!」

杏子「ん?」

マミ「せっかくこんなに集まってるんだから記念写真よ! ほら、撮るわよー」

ゆま「待って待って! 杏子、口の横に食べかすついてる!」

杏子「えっ、ちょっと取って!」

ゆま「もー、しょうがないなぁ……」

さやか「杏子でも食べかすついたまま写真撮られるのは恥ずかしいのね……」

杏子「でもってなんだよ。あたしはこれでもなぁ……」

マミ「……大丈夫?」

ゆま「オッケー!」



 シャッターを押すと、マミが急いでテーブルに戻る。

 ……料理でみんなの笑顔を見るという目的は達成してるんだから、まあこういうのもありだろう。



 …………パーティが終わって店内が静まると、マミが2階で机に向かっていた。


杏子「何してるんだ?」

マミ「手紙を書こうと思って。昨日話した友人に」

杏子「そっか」

マミ「さっきの写真も一緒に入れてね」

杏子「ああ、そのための写真か」

マミ「記念っていうのが一番ではあるんだけどね」

マミ「あっちでもいっぱい写真とか撮ったから。ほら、観光地巡りした時とか、後は最後に私の居たお店でも」

杏子「…………――」

マミ「……佐倉さん?」

杏子「……いや、なんでもない」

杏子「ただ…………少し昔の事を思い出しただけだ」



 ――……なんとなく外に出て、夜の町外れを歩いていた。

 繁華街の喧騒とは正反対の静かな場所。しかし、元々は長いこと寂れた教会しかなかったこの場所にも、すでに小さな家が何軒か建っていた。


 暖かくなってきた草原から虫の音が聞こえる。


杏子(……あたしはなんでここに来たんだろうな)


 ……名前も違う。顔だって、ずっと前の事だ。それこそ“面影”なんて曖昧なものでしかわからない。

 マミから聞いた彼女はここからずっと離れたイタリアで暮らしていて、パスポートもないあたしが会うとしたらずっと先だ。

 でも、もし、写真の中のあたしを見て何か反応があったら?


杏子(いや、ここに来たのはそれとは別件だ)

杏子(もうここも昔とは変わってなくなってしまったけど、誰からも忘れ去られるのは嫌だから)

杏子(せめてたまにこうやってここに来て、二人のことも、みんなのことも思い出すことにしてるんだ)


 暫く虫の音を聞いて、それから戻ることにした。

 明日からまた一週間がはじまる。

 もう過去には縛られない。でも、あの日々の記憶はずっと胸にしまっておこう。


 これからあたしが夢見た幸せな未来を歩くために。



―END―

--------------------------
全部まとめようとしたら結構長くなった…
これで杏子編は完結となります。多分一番みんなが幸せな貴重な世界かもしれない。
最初に書いてた設定資料はほとんど出せたので今更出す予定もないかな

色々と忙しくてじっくりと練れる時間もないので新しい話はまだお休みさせていただいてます。
やるとしたら夏以降になるかな……?

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【未完結】
・キリカ編2 【2日(土)朝 キリカ契約後翌日】
・かずみ編 【6日(水)朝 ヒュアデスの学校襲撃を翌日に予知】
・Homulilly編【二周目の世界】

【続編開始/指定場所からロード】
・ほむら編 【続編:After1後から再開。新展開】 [獲得補正:(料理)Lv2中級者 アルティメット炒め物]
・キリカ編1【続編:ワルプル後から再開。翌日へ】
・QB編【続編:ワルプル後から再開。不安要素を片づけられるか…?】
・中沢編【続編:ワルプル後から再開。残った問題は魔法使用不可とかの解消?】 [獲得補正:成績関係の結果+18]
・なぎさ編【続編:あすみ編後から再開。あすなろ編】
・杏子編【続編:パラレルあすなろ編か安価】


 下4レスまでで多数決


ではキリカ編2続きからやります。


---------開始前にざっくり確認。-----------

契約者:キリカ・マミ・さやか
未契約者:まどか
死亡者:ほむら


○キャラごとの好感度・進展表

・ほむら(死亡)
冒頭に声をかけられたが逃走、その後放課後に再会してまともに会話する。
18日にはいきなり拉致られて不信感を抱き、その後も謎のある人という認識だった。
24日に“声”から気になることを聞かされるが、“通り魔”に襲われたまどかを謎の方法で救った。
その後、25日に自殺。その正体は一旦謎のままで終わってしまう。
関係:謎の少女/???

・まどか
物語開始時点から一応顔見知り。17日にてコンビニで遭遇、18日にて魔女から助けてもらった。
関係:友達/友達

・マミ
18日にて魔女から助けてもらった。同学年の友達。
関係:友達/友達

・さやか
28日にて、素質があるまどかの友達として顔を合わせる。
その後も未契約者同士たまに話していたが、30日の夜についに契約。
関係:後輩+/先輩+


好感度相関:

・暁美ほむら
不明

・巴マミ
呉キリカ:友達
鹿目まどか:パートナー
暁美ほむら:名前だけ聞いた
美樹さやか:後輩+
美国織莉子:---
佐倉杏子:未練

・鹿目まどか
呉キリカ:友達
巴マミ:尊敬
暁美ほむら:心配
美樹さやか:親友
美国織莉子:---
佐倉杏子:---

・美樹さやか
呉キリカ:先輩+
鹿目まどか:親友
巴マミ:先輩+
暁美ほむら:---
美国織莉子:---
佐倉杏子:---

・美国織莉子
呉キリカ:まどか無力化への駒・敵
鹿目まどか:脅威
巴マミ:敵
暁美ほむら:……
美樹さやか:敵
佐倉杏子:---



 経験済みEND:devotionエンド直結(契約後、まどかに自ら魔女化のことを話す)


----------------------------------------


キリカ 魔力[130/130] 状態:正常
GS:0

◆ステータス
なし


キリカ 戦闘コマンド

1刻む :近接武器戦闘(魔力-0) ※[格闘Lv]+マイナス補正20 デフォルトで二刀流。
2小刀投げ :中~遠距離武器戦闘(魔力-1) :小さめの刀を出して投げつける
3スパークエッジ・デュエル【Lv1】(魔力-30×2) :魔力を込めて全力で斬りつける必殺技。ほぼさやかと同じやつの二刀流版。
 bスパークエッジ(魔力-30) :一刀流版。威力は半分より少し上。
 cスパークエッジ(魔力-60) :二刀流分の魔力を一つに込めた一刀流版。装備が欠けた時とか用。
4シューティングスティンガー(魔力-10) :刀身を魔力の刃に変えて射出する
5スプラッシュスティンガー(魔力-5×5) :小刀をたくさん出して魔力の刃を射出。安価指定があれば射出後に残しておく。
6【習得予定】(魔力-30) :???
7【習得予定】 :???
8【習得予定】(魔力-7/1ターン) :???
 b(魔力-10/1ターン) :???
 【習得予定】(魔力-30・準備ターン1) :???
9【習得予定】 :???
・自分の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】
・他人の負傷を回復(部位・範囲によって消費変動) 【回復:B】


・キリカの戦闘能力について

一応近接型なのに、契約初期はメガほむみたいにビビッてあまり前に出て戦えないので、基本的に小刀投げで控え目に戦闘に参加している。
格闘より射撃のほうが伸びやすいへんてこな近接型。格闘レベルの伸びが極端に悪いのは性格のせい。
実は武器を変えてもいいという安価を出したのも、この事情があるから思い切って原作と全然違う遠距離武器にしてもいいかなと思ったため。

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 人はあまり好きじゃなかった。

 無遠慮な人たちに迷惑をかけられるのも嫌だし、誰かに迷惑をかけてしまわないようにと気を使うのも嫌だった。


 誰かを信じて行動して、そのたびに裏切られるのは辛い。

 一度の失敗でそれを学んだ私は、自分の世界に閉じこもっていった。


 ――中学生になると、みんな新しい環境で友達を作ろうと必死だった。

 その中で私は、一歩引いたまま結局誰とも話せないでいた。

 最初は心配して話に来てくれていた人も、心の底で信じることができずに曖昧に接していたら、そのうち離れていった。

 ……なんとなく察していたのかもしれない。 心の中で相手を疑っているような人を信じてくれるわけがない。

 そうしているうちに、完全に関わる人はいなくなった。

 聞こえてくる会話は、よく聞けばどれも大した内容じゃない。

 友達がいなくても、人と話さなくても特に困ることはなかった。


 どうしてそんなことにみんな必死になっているんだろう?

 一人じゃ駄目だとか、四六時中誰かと繋がってないと不安だとか、そんなことに囚われるほうが馬鹿らしい。

 次第にそんなふうに周囲を冷めた目で見下すようになり、誰とも関係を作らないまま三年に上がり、変わらない日々を過ごしていた。


 ……でも本当は、自分から関わらないんじゃなくて関われないだけだ。所詮逃げてるだけだ。

 それに気づいた時には手遅れなほどに人と話すのが怖くなっていて、本当に遅いけど、やっと、今のままじゃいけないと思った。


 ―――――――そんな中学三年生の春、たくさんの奇妙な出会いをして、

 誰かのために、人生をかける決断をした。


 それが良い事だったのかどうかは、この時にはまだわからなかった。

――――――――

キリカ「契約したいって言われたら……どんな願いでも拒否権はないんでしょ」

キリカ「まどかを……人間に戻して」


 ……言った。ついに契約してしまった。

 不安と同時に、これでまどかは魔女にならなくて済むんだと安心した。



 ――――青紫色のソウルジェムが浮かびあがる。

 ……これが……私の――――魂。



QB「契約は成立だ」



キリカ「…………」


 見慣れた自分の部屋の中、光る石を見つめたまま俯いている。

 できれば誰とも話したくない気分だった。

 特にキュゥべえとはこれ以上一緒にはいたくない。


QB「じゃ、僕はそろそろいかせてもらうよ」


 しかし、キュゥべえはこちらが何を言うまでもなく、

 淡白にそう告げると用事は終わったとばかりにふわりと窓から出て行った。



 ――――――日の暮れてきた住宅街の屋根の上を、キュゥべえはその小さな脚で軽やかに散歩している。



QB「そうか、僕の知らないうちにそんな動きをしている魔法少女が居たなんて」

QB「魔女化の真実を知っている。まどかが“何になって、何をするか”を知っている――未来を識っている」

QB「まどかを排除しようとしたのもそういうことだったんだね」

QB「察しはついた。そんな魔法少女は限られる。僕に知られようがまどかを人間に戻せれば良いと思っていたのかもしれないけど……」

QB「……全く無駄なことだ。この事実を知ればまどかの契約を再び取るのは容易いことだ」

QB「彼女には消えてもらうことにしよう」




――――――――

―*月2日


――――翌日は複雑な気持ちで登校した。

話さないわけにはいかない。けど、まどかに会うのが恐かった。

ああしないわけにはいかなかった。けど、後ろめたい気持ちはあったんだと思う。

どうして契約したのか、詰め寄られるのが恐かった。


しかし、さすがにまどかも気づいていないなんてことはなく、
昼休みが始まってすぐの時間にまどかが私の教室に来た。


まどか「あの……聞きたいことがあるんですけど」

まどか「キリカさん、もしかして…………」

キリカ「…………ごめんね」

 今はそれしか言えなかった。

 マミだけが状況がわからずにきょとんとしている。

マミ「なにかあったの?」

キリカ「……ほ、放課後に話すから」

まどか「わかりました……じゃあ、放課後、昨日と同じ屋上で待ってます」



 まどかが教室を去った後マミが話しはじめる。


マミ「そうそう、私もみんなに伝えなきゃいけないことがあるのよ」

マミ「呉さんはもうキュゥべえから聞いてる?」

キリカ「…………え?」


 キュゥべえの名前が出てきて、嫌な汗をかいた。
 昨日のやり取り、魔女化のことを思い出して気持ちが焦っていく。


マミ「鹿目さんを襲った通り魔の事件、進展があったの。犯人の目星がついたって」

マミ「昨日キュゥべえが教えてくれたの」

キリカ「あ…… そうなんだ」


キリカ(魔女化のことじゃなかったみたいでよかったけど……)

キリカ(なんでこのタイミングで……?)


マミ「詳しいことはまた放課後に屋上で話しましょうか」

キリカ「うん……」


1自由安価
2他にQBから何か聞いてないか確かめる

 下2レス


キリカ「他にはキュゥべえから何か聞いてない?」

マミ「ええ、それだけだけど」


キリカ(特に変わった様子は見られない……まだ知らないままか)

キリカ(…………よかった)

キリカ(でも、マミはあんなにキュゥべえの事信頼してるのに……)


 もし知ったら深く傷つくだろうことは簡単に予想できた。
 みんなこのままずっと知らないままでいい。

 もうまどかは魔女化しないのだから。

 このまま無事に暮らせれば知る機会なんてきっと来ない。 ……そうだよね?


キリカ(大丈夫…… マミだってずっと無事に魔法少女を続けられてるんだから)


 自分に言い聞かせて再び出てきた不安を抑え込んだ。

―放課後 屋上


 放課後、授業が終わると昨日と同じように先にマミと二人で屋上に向かった。


マミ「風が気持ちいいわね。最近は暖かくなってきたから過ごしやすいわ」

キリカ「………… うん」


 無意識に手元を隠す。
 返事はしたけれど、本当は屋上に吹く風の温度も気にしている余裕なんてなかった。


 やがて、扉が開く音がして振り返る。

 まどかとさやかの二人が立っていた。


まどか「……キリカさん、マミさん」

さやか「まどか、話ってなんなの? なんか今日一日中そわそわしてたけど……」

さやか「まさかまたどっか壊しちゃった?」

まどか「…………」

まどか「わたし、魔法少女じゃなくなっちゃいました」


さやか「……はぁ!?」

マミ「それはどういうこと?」


 二人がそれぞれ反応する中、私だけが何も言えなかった。

 ……ゆっくりと覆っていた手をどける。


キリカ「…………私が契約した」


 そう言って指輪のついた手を見せると、一斉にこちらに視線が集まった。


マミ「えっ? ……どうして?」

まどか「そうです、わたしはそれが知りたいんです」

まどか「わたしのためにしてくれたんだろうってことはわかります」

まどか「でもわたし、前わたしたちの代わりになるような願いはやめてって言ったのに……」

キリカ「…………ごめん」

キリカ「でも……嫌われてもいいから、それでも契約したかったんだ」

キリカ「全然……うまく説明できてないけど………」

キリカ「でも…………」


 本当の理由なんて言えるわけない。これからも言わなくていい。

 言葉に詰まってしまった私をまどかはなだめた。


まどか「……わたしこそごめんなさい、責めてるみたいになっちゃって」

まどか「わたしのこと思ってくれてるのに、嫌ったりなんかできるはずないです」



 まどかはそう言ってくれたけど、やっぱり納得していない様子だった。


マミ「驚いたわ。美樹さんも契約したばかりで急すぎて……」

マミ「呉さんからはあれから願いも聞いてなかったから」

マミ「でも思えばきっと、前から悩んでたのよね? 気づいてあげられなくてごめんなさい」

マミ「それでも、考えて出した答えなのよね?」

キリカ「…………」

マミ「なんにせよ、契約してしまったものは仕方がないわ」

マミ「改めてこれからよろしくね、呉さん」

さやか「あたしもびっくりしたけど、これからは仲間ですもんね。よろしくおねがいします」

キリカ「…………うん」


QB「やあ、みんな揃っているようだね」

 まどかの後ろ、足元の辺りからキュゥべえが現れる。

マミ「キュゥべえ」

 キュゥべえはすたすたと歩いていくと、軽い動作でフェンスの上に登った。

まどか「えっと、今日は大事な話があるんだよね」

さやか「これだけ全員集合して話すってことは、なんかヤバいこと?」

QB「『ヤバい』という表現はいろんな意味に使われていて難しいね」

QB「けど、危機的状況という意味ならばそれはむしろ逆だよ」

まどか「じゃあ、チャンスってこと?」


キリカ(……?)


マミ「その通り! 私はもう聞いたんだけどね、ついに前に鹿目さんを襲った犯人の目星がついたのよ」

さやか「本当ですか!」

マミ「ええ、まだ近くに居るそうよ」


 そこからはキュゥべえに任せるという風にマミが目で合図する。


QB「美国織莉子。僕が二週間ほど前に契約した魔法少女だ」

マミ「でも同じ街に居ながら、互いに会ったことはなかった」

マミ「未来を予知する力のおかげで、
   縄張りを持たずともどこの魔法少女ともトラブルになることがなく活動することができたのよね?」

QB「ああ、そうだ」

まどか「そんな……言ってくれれば、そんなことしないでもちゃんと仲間になることもできたのに……」

さやか「ていうか、ちゃんと活動できてるんなら、わざわざこっちにちょっかい出してくる必要なんてないじゃん!」

さやか「なんなんだよそいつ!」

マミ「グリーフシードを独占したかったのではないかしら?」

マミ「やっぱり行動は制限されるわけだし、私たちが邪魔だったんでしょうね……」

マミ「とにかく、これから美樹さんと呉さんにも直接関係することだから気を付けて」

さやか「一度まどかがそいつに殺されかけたんですよね……
    でも、魔法少女じゃなくなったまどかはもう大丈夫か。それはよかったかな」

マミ「どうかしら、そうとも限らないわよ」

マミ「魔力を持たないにしても、これだけ強い素質を持つ候補者……まだ狙いから外れたとは言い切れないわ」

キリカ「私が契約したんだから、できるだけ守れるようにはするよ。家も近いし」

さやか「あたしも! 新人でも、2人もいれば相手も手出しにくいっしょ?」


 そのあと、住所や行動範囲についても聞いていたようでみんなで話し合ったけれど、

 予知がある限りこちらから奇襲をかけるのは難しいとのことだった。


QB「いままでまどかの存在が抑止力になっていたといってもいい。これからはどう出てくるかわからない」

QB「みんな、十分に気を付けてくれ」

マミ「ええ。キュゥべえも気を付けるのよ」

さやか「返り討ちにしたるよそんな奴!」


 ……二人が意気込む中、私はその場の雰囲気に少し違和感を覚えていた。

 今の話、本当に信じていいのかな?

 なにしろ急すぎるし、キュゥべえには昨日のことではっきりと不信感を抱いている。


キリカ「…………」


 キュゥべえがフェンスから降りて足を止める。


QB「じゃあ僕はまた見回りに行くけど……」

まどか「……待って」

QB「どうしたんだい? まどか」

 ……まどかはなかなかその次を言わなかった。

QB「君が契約した理由を話してあげたらどうだい? キリカ」

QB「気になっているのはその事だろう」

キリカ「……」


 私だって本当は完全に納得できているわけじゃない。

 まどかが理由を知ればきっと私以上に納得できなくなる。

 ……まどかに魔女化のことを知られたら、それこそまどかの契約の理由になってしまうんじゃないか?


キリカ「……ごめん。でも、話すわけにはいかない…………」


 消え入りそうになる語尾とともに、強く心の中で言い放った。

 『あんたの思い通りになんてならないから』

 ――思えば、これが私が初めて使った魔法らしい魔法だった。


まどか「わかりました。そう言うならキリカさんの口から聞くまではキュゥべえからも聞きません」


 そんなことは知らずにまどかは優しくそう言った。

 ……キュゥべえのほうも、まるで無反応だ。


QB「そうか。本人が話したくないならしょうがないね」

QB「まあ、ここで僕が教えるまでもなくどの道いつか知ることになるよ」


 キュゥべえはそんな不気味な言葉を残して消えて行った。

 それから少ししてチャイムが鳴る。……今のは部活動開始のチャイムだ。


さやか「今日はこれからどうしますか? 昨日はまさか仲間が増えるなんて思ってなかったけど」

さやか「キリカさんも早く自分の魔法とか見てみたいっすよね? それとももう見てます?」

キリカ「ううん、まだだけど」



1マミに訓練をお願いする
2パトロールに行こう
3今日はもう帰りたい

 下2レス


キリカ「じゃあ頼むね。 私も一緒に行くよ」

マミ「ええ、わかったわ」

まどか「わ、わたしも着いてっていいですか?」

さやか「もちろん! この鉄壁の魔法少女軍団の傍にいれば一番安全だし」

キリカ「……それに、少なくとも私たちよりは経験あるんだし、一緒にいてくれれば頼りになるよ」

さやか「ね、いいですよね? マミさん」

マミ「そうね。私一人じゃ指導が回らないところはお願いするわ」

まどか「はい。じゃあ、よろしくお願いしますね」


 ……以前は見ていただけだった訓練。

 ついに自分もあれに参加することになるんだな、なんて思うと少し不安に感じた。

 けど、契約したてなのは私一人じゃない。これから契約したからには、まどかやみんなのことも守れるようにならないと……


キリカ(……がんばろう)

---------------------
ここまで
次回は3日(月)20時くらいからの予定です


――――見滝原大橋が崩壊して、新しく訓練に使えそうな場所を提案しあってみんなで回ってここにきた。

土手の下のほう……ここなら道のほうからは見えにくいだろう。


さやか「ふう、探し回るだけで疲れちゃいましたね」

マミ「ごめんなさいね、段取り悪くて」

さやか「なんでマミさんのせいになるんですか。それより、はじめましょうよ!」

マミ「美樹さんはもう魔女とも戦ったんだっけ?」

まどか「はい。さやかちゃん、わたしを助けてくれたんですよ!」

さやか「カッコいいだろー。 惚れちゃってもいいのよ? まどかはあたしの嫁なんだからな!」

まどか「……まずは変身してみよっか」

さやか「無視するなよー!」


 なんだか微笑ましいな、なんて思って穏やかな気持ちになる。


 ……二人そろって変身すると、まずはお互いの衣装をきょろきょろと確かめ合った。

 美樹さんのは凛々しい青色の衣装。白いマントはどこか剣士のような雰囲気を感じる。


 私のは……黒をベースにしたモノトーンの衣装。

 他の人と比べると華やかじゃないのが少し落胆した。視界を半分覆っているのは眼帯だろうか?


さやか「い、いやでも似合ってますよ! かっこいいですし、ほら……大人っぽい……かなー?」

まどか「スカートとかセクシーですよほら!」

キリカ「そ、そうだね……ありがとう……」


キリカ(なんでみんなにフォローされてるんだろ……)

 ……けど、やっぱりまどかみたいなもろに“魔法少女”って格好も恥ずかしいし、

 私には似合わないだろうから、私にはこれで合ってるのかもしれない。


 武器を見せ合うと、似たような種類の武器ということで少し親近感がわいて盛り上がった。

 サーベルと小太刀。洋と和。

 私と美樹さん、根っこのほうでは似たところでもあるんだろうか。

 だとしたら、私が今みたいに傷つき歪む前か……――


さやか「これなら一緒に訓練もしやすいし、技術交換もしていけますね!」

キリカ「あー、うん。そうだね……」

キリカ「でも美樹さんの方がすぐ追い抜いちゃうかも」

さやか「そんなことないっすよ! ていうか、そろそろその『美樹さん』ってのやめにしません?」

キリカ「え?」

さやか「さやかでいいですから!」

キリカ「……わかった。じゃあそうするよ」


 ……私からすると、美樹さんは眩しい。

 私はいつからそうなれなくなっちゃったんだろう?


 わかりきった問いを思い浮かべて、すぐに心から掻き消した。


まどか「二人とも格闘のほうかー…… マミさんって、そういうのも出来るんでしたっけ?」

マミ「一応ね。近接の弟子が居たこともあったから」

マミ「大丈夫よ、ちゃんと見ていけるわ」

マミ「ちょうど二人だし組手ってこともできるけど、まずは基礎を固めてからね。ということで素振りから!」

さやか「了解です! とうっ!」

キリカ(これでいいのかな……)


 素振りというか、適当に刀を振り回してるだけ。

 でもこれ、振り回すだけでも意外と重い。特に両方片手ずつ持つことになるから、その重量を更に感じてバランスがとりづらい。

 実戦ではこれを使って戦わなきゃいけないのか。


マミ「姿勢を正すことを意識して、たとえ素振りっていっても一発一発丁寧にやるのよ?」

さやか「はい!」

キリカ(丁寧に……この二の腕についたお肉もなくせると思えば)

キリカ「はっ! とうっ!」

さやか「お、熱心ですねっ」

爪はいも思うと使いやすかったんだろうな
というかこのキリカの固有魔法なんだっけ?原作と同じ?


 ――――訓練が終わると、まどかが水を持ってきてくれた。

 運動系の部活なんて入ろうと思ったこともなかったけど、もしやってたらこんな感じなのかなぁなんて少し思った。

 仲間と一緒に汗を流す。そんな青春を自分が送るなんて想像もしていなかった。


まどか「お疲れ様ですっ!」

マミ「お疲れ様ー。今日一日訓練してみてどうだった?」

キリカ「腕が疲れた……でも、少しはフォームがまともになったかな?」

マミ「ええ、そう思うわよ。美樹さんもね」

さやか「あたしも昨日はむちゃくちゃ適当にやってたからなぁ……」

まどか「そうだね……さやかちゃん、勇敢なのはいいんだけど、考えなしに突っ込んでいく癖は直したほうがいいよ?」

さやか「うわあ、耳がいたい」

さやか「……でもやっぱ、なかなか実戦で意識してやるのって難しそうですけどねー」

マミ「慣れよ。これからも訓練を続けていけば上達するわ」

さやか「そうっすかね? ま、とにかく練習あるのみですね!」

さやか「ぷはー、まどかもありがとうね。じゃ、そろそろ今日は帰りますか」

マミ「二人とも、何かあったらすぐに連絡するのよ?」

さやか「はい。まどかも、帰りはあたしとキリカさんがついてるけど、もし一人の時何かあったらすぐ連絡してよ?」

さやか「ていうか、一人でふらふら出歩くの禁止だからね! あたしらを頼ってよ、すぐ駆けつけるからさ」

まどか「うん、心配かけちゃってごめんね……」

さやか「何言ってんの!悪いのは全部その織莉子って奴だよ!まどかは悪くないんだから!」


 こうして見てるとさやかは面倒見の良いお姉さんのようだ。

 でも、家ではまどかもお姉さんなんだっけ?



1自由安価
2「本当にその人が犯人なのかな?」
3「さやか、無理しないでよ」

 下2レス


キリカ「美樹さ……あ、えっと、さやか」

さやか「はい?」

キリカ「それはいいんだけど、無理しないでよ。なんか、危なっかしそうだから」

さやか「キリカさんまでそういうこと言うー。大丈夫ですって」

マミ「危なっかしそうっていうのはそうね……くれぐれも無理はしないこと」

さやか「わ、わかりましたよ」


キリカ(……未来を予知する魔法、か)

キリカ(キュゥべえの言ってることが本当としても、それってどういうものなんだろ?)


 そんな魔法使ってる人、周りでは誰もいないみたいだし。

 いまいちイメージがわかなかった。魔法少女なら誰でも使えるようなものじゃないんだろうけど。


マミ「それじゃ、また明日。気を付けてね」

まどか「はい、また明日ー!」

さやか「今日はありがとうございましたー!」

キリカ「あ、うん…… えっと、一番気をつけなきゃいけないのは契約したての私たちなんだけど、マミも気を付けてね」

マミ「ええ」


 ……穏やかな笑顔で手を振るマミに、手を振り返す。

 それから、三人で帰り道を歩いていく。

 土手から離れると、人気のない場所は通らずに賑わった通りを歩くようにしていた。


さやか「しっかし織莉子ってヤツ……未来予知ってことは、実際に戦ったら行動を読まれたりするんですかね?」

さやか「だって、漫画でもそういう能力は強敵ですよ! 大体」

まどか「漫画を引き合いに出されても……」

キリカ「それくらいありえないことが現実にあるんだから、しかたないと思うよ」

キリカ「本当にそれくらいしか参考に出来るものがないんだから」

キリカ「私も本ならともかく、そういうのはあまり読まないけど……」

さやか「お、じゃあ今度みんなでうちにある漫画で研究します? おすすめの作品が何冊かありますよ!」


 ……それはどうなんだろう。

 遊んでるのか真面目に対策を立ててるのかわからない感じになりそうだけど。


さやか「ま、でもあたしにできる一番の方法といえば、予知しても関係ないほどに速く制する、これっきゃない!」

まどか「考えもなしに突っ込んでったら相手の思うツボかもよ……?」

まどか「こっちの行動を見越して罠とか戦略を立ててくるかもしれないんだから」

さやか「うー、やっぱ考えるのは苦手だわ」


 ……でも、なんかやっぱり違和感がある。

 返り討ちにするのはいいけど、もしこっちから襲って人違いだったらシャレにならないし。

 キュゥべえは私たちに何をさせようとしてるのか。


キリカ(……考えすぎかな。でもあいつの情報じゃ、信用できないしな)

さやか「……! ねえ二人とも、これ!」

キリカ「ん……?」


 ……見てみると、さやかの手の中でソウルジェムが光っていた。


まどか「光ってる! 近くに魔女か使い魔が…… どっちだろう」

まどか「……本当にわたし、魔力にも気づけなくなっちゃったんだ」

さやか「どっちでもいいよ! ね、キリカさん、行きましょう!」

キリカ「あ、うん!」


 裏通りの方へと魔力の源を探して歩いていく。

 あまり気は進まないけど、魔女がいるのならしょうがない。魔法少女の使命は魔女を倒すことなんだから。

 ……そう思って進んでいった先の狭い路地裏には、一匹の使い魔の走り回る結界があった。


さやか「逃がすか!」


 さやかが変身し、懐から出した剣を投げつけていく。しかし使い魔はその剣をひらりと避けていった。

 ……こんな時、マミが居たら。何の問題もなくまどかが戦えたら。

 そう思っても、今は私たちだけでなんとかするしかない。


 ――――しかし、やっと剣が届きそうだという時に、なにか鞭のようなものに弾かれた。

 ……鞭が変形して元の一直線を描く形に戻り、槍となって目の前に現れた人物の手中におさめられた。


「ちょっとちょっと、アンタ達何やってんのー?」


「見てわかんない? これ使い魔だよ? グリーフシード持ってるわけないじゃん?」

「4,5日経てばグリーフシード孕むんだからそれまで待てっての。卵産む前の鶏シメてどうすんのさ」


 さやかが剣を構えて戦闘態勢に入る。

 ……私もまどかの前に出て、刀をしっかりと握り込んで構えた。


キリカ「まどか、下がって……!」

さやか「お前が美国織莉子……!?」

「あ……? あたしはそんな奴にここの縄張りを好きにさせる気もねえよ」

さやか「あんたも縄張りが目的なの!? グリーフシードを独占するために!?」

さやか「なんでマミさんやまどか以外こんな奴ばっかなんだよ!」

さやか「あんたたちみたいの全員いなくなればいいんだ……!」

「ウッゼーなぁ、超ウゼェ。そんな頭に血のぼらせんなよ」


 ……今にも戦いが始まりそうな雰囲気。

 2対1ということを考えても、相手はまだ余裕があるんだろう。

 わざとさやかを挑発するような態度をとっていた。


「今マミっつったか。あいつの弟子ってみんなそうなのか? 相変わらず正義の味方ごっこ続けておめでたい奴だな」

「そんなんだからナメられてほいほい縄張り狙われんだよ」

さやか「あんたみたいなのがマミさんを悪く言うな!」


 ――――そしてついに、金属のぶつかり合う音が響いた。


さやか「……!」


 ……しかし、さやかが全力を込めても相手を少しも動かすことすらできない。


キリカ「さやかも下がって!」

さやか「ッ、うぁ!」


 鎖に絡め取られ、壁に叩き付けられる。

 駆け寄ろうとすると、その前にさやかの足元から青い魔方陣のようなものが浮かび上がった。


さやか「キリカさんは、まどかを守って……!」

さやか「あたしはまだ大丈夫だから!」

「……おかしいな。なんで動けんの? 全治三か月ってくらいにはかましてやったはずなんだけど」


 さやかの傷が治っていく。あれがさやかの魔法なんだろうか――。


さやか「あたしは、こんなとこでアンタ達みたいのにやられるわけにいかないんだよ!」


 再びさやかはがむしゃらに目の前の敵に斬りかかっていく。

 しかし、さやかのほうが押し負けているのは一目見ればわかった。

 目の前の戦いを見て、まどかを見て、心を決める。

 ――戦わなきゃ。


まどか「さやかちゃん!」


 しかし、その時には目の前に障壁のようなものができていた。

 ……戦うことすらできないのは嫌だ。今まで私は何をしていたんだろう? さやかが戦っているというのに。

 壁に吹き飛ばされるさやかを壁越しに見て、相手を見上げる。


キリカ「あんたも私たちを殺して縄張りを奪う気……!?」

「そうだなぁ? 言って聞かせてわからねー、殴ってもわからない馬鹿となりゃ」

「あとは殺しちゃうしかないかもな」

さやか「っ……!」


 コツンと硬い靴の音が響く。

 敵の後ろから、マミが銃を向けていた。


マミ「――何をやっているの?」

マミ「その人たちは私の大切な人たちなの」

マミ「人の縄張りに土足で踏み込まないでくれる? 行儀が悪いわよ、佐倉さん」

「……ふん、お久しぶりだな、マミ“先輩”?」

キリカ「……知り合い?」


 マミを“先輩”と呼んだこと。

 そして、手にしている武器で気づく。……もしかして、この人が……。


マミ「まさか今日のうちに呼び出されるとは思ってなかったけど、あなたが来たっていうのが一番予想外よ」

マミ「今はただでさえ気が立ってるの」

マミ「それとも、本気で私たちを殺す気? それなら私も容赦しないけどね……」


 ……数秒、二人が睨み合う。

 最後には、佐倉と呼ばれてた人が舌打ちをして去っていった。

 力が抜けてへたりこむ。


まどか「さやかちゃん……大丈夫?」

さやか「あたしはヘーキだって! なんか、回復魔法っていうの? 得意みたいだからさ」

さやか「でも、いつの間に連絡を?」

キリカ「……私が戦いが始まる前にまどかに連絡させといた」

さやか「はは……さすがです。あたしはどうにかしてやっつけようっていうことしか頭になかったから」

キリカ「いや……臆病なだけだよ、多分」

キリカ「さやかとは対極に、自分でなんとかしようっていう度胸がなかったから」

マミ「それなら良いコンビになれそうね。美樹さんだけじゃ心配だし」

さやか「ええ? なんでですかー」

さやか「いやまあでも、マミさんが来てくれて助かりました……」


 ……破裂した水道管から水が地面にこぼれる音が聞こえている。

 結局使い魔には逃げられてしまった。けど、なんとか無事に済んだだけよかった……か。



1自由安価
2佐倉って人また来るのかな?
3ああいう人ってやっぱり結構いるの?

 下2レス


キリカ「……ああいう人ってやっぱり結構いるの?」

マミ「そうね……自分の腕にそれだけの自信があれば、だけど」

マミ「元から居た魔法少女を排除して縄張りを奪うっていう発想自体は珍しいことじゃないから」

マミ「彼女ももうベテランだし、二人だけじゃ厳しい相手だったでしょうね」

キリカ「……あの人、また来るのかな」

マミ「でも安心して」

マミ「あの子だって私と正面から戦いたくはないだろうし、もしまた何かしてくるようならまたすぐに駆けつけるから」

マミ「これ以上こちらを踏み荒らしに来るようなら、私だって……」


 マミは真剣な表情をしている。

 覚悟を決めるような表情だ。……でもやっぱり、気が進まないような様子だった。

 この前の犯人の時とはまた事情は違う。けど、タイミングが悪すぎる。


まどか「……その佐倉さんって人のこと、聞かせてください」

まどか「訓練の時に言ってた昔の弟子って、その人なんですよね……?」

マミ「…………そうね。少し長くなるけど、いいかしら?」


マミ「――――……私が佐倉さんと知り合ったのは、一年くらい前だったかしらね」

マミ「今はあんなふうになっちゃったけど、最初は家族のために契約した優しい子だったのよ?」

マミ「出会った時も、初めて私の目標に――街の平和ために戦うってことに共感してくれて、慕ってくれて……」

マミ「弟子になりたいって言ってきたの」

さやか「え……? あれが?」

まどか「じゃあどうして……」

マミ「その願いを一番救いたかったはずの人に否定されて、その人たちを壊してしまったからよ」

マミ「それから佐倉さんは私の元から離れて行った。……今じゃ、色々とあくどい事をやってるみたいね」

マミ「それでも、さっき直接会うまでは、まさかって思ってたんだけどね……」


 ……その言い方に、マミが以前言っていたことを思い出した。

 そっか。やっぱり、それもあの人のことだったんだ。


マミ「……だからね、誰かための願いで契約するってことを私が手放しで勧められないのは、そのことを知ってるからなの」


 そう言うと、マミは強い目で私とさやかを見た。


マミ「今の話を聞いて、可哀想って思った? 同情した?」

マミ「あなたたちだって、他人事じゃないのよ」


さやか「あ、あたしは……」

さやか「あたしは大丈夫です! 何があっても後悔しないし、マミさんのもとを離れていったりもしませんから!」

さやか「あたしがやりたくてやったことで、後悔なんてあるわけないし……」

さやか「あんなに喜んでくれてたから、それを見られただけで十分なんだ」

マミ「それならいいんだけどね……」

キリカ「……」


 ……まどかを見て、視線を外した。目が合ったけど、まどかも何か言うことはなかった。

 私には何も言えない。けど、私だって…………


マミ「随分遅くなっちゃったわね……いつまでもこんなところに居るのもよくないわ」

マミ「帰りましょうか」


 立ち上がる。

 薄暗く閉じた路地裏から出て、元の賑やかな通りに戻って再び帰路に着くことにした。


QB「やあ、さっきは大変だったね」

QB「上手くいけば、君たちに協力してくれるかもって思ったんだけど……」


 ……小さな白い影がひょこりと顔を出した。

 もしかして、佐倉さんを呼んだのもこいつか。


キリカ「……佐倉さんになんて言ったのさ?」

QB「少しこの街で起きている事情を話しただけだよ。まさか、ああなるとは思っていなかったけど」

さやか「もう、協力どころか殺されそうになったんだからね!」

QB「そうだね……マミとは確執があるし、彼女は少々荒っぽいところがあるから。僕のミスだよ。君たちが無事でなによりだ」

まどか「……でも、だったらなんで来たのかな」

まどか「さっきは戦いになっちゃったけど、本当は縄張りを奪おうとはしてなかったんじゃないのかな……」

QB「真意はわからないけど、様子を見に来たってところだろう」

QB「仲直りできるといいんだけどね」

さやか「それはまあそうだけど……あっちが考え方を直してくれたらかな」

さやか「事情は分かった。でも、使い魔を見逃してグリーフシード欲しさに犠牲を出す考え方は認められないよ」

さやか「マミさんだって、そう言うんじゃないかな。だから離れたんでしょ?」

QB「……まあ、そうだね。僕としても杏子には昔のように戻ってくれたらとは思うんだけど」

キリカ「……」


 ……そこまでして私たちに倒してもらいたいんだ。

 私たちを案じるような言葉の裏側の無機質さを知ってるから、そんなふうにしか捉えられなかった。

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ここまで
次回は5日(水)20時くらいからの予定です

次スレ:『オール安価でまどか☆マギカ 18』:
オール安価でまどか☆マギカ 18 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491232637/)


――――翌日、いつも通り昼休みの時間にマミと一緒に昼食をとる。

……昨日はあれからは何事もなかった。

この間の犯人のこともまだ考えなくちゃいけないけど、マミは佐倉さんとのことはどうするつもりなんだろう?



マミ「昨日はごめんなさいね、私の事情であなたたちにまで迷惑をかけちゃって」

キリカ「え? いやいや、気にしなくていいよ。マミの事情ってことはこの街全体の事情だし」

キリカ「……ていうか、私結局何もしてないし」

マミ「私を呼んでくれたじゃない」

マミ「戦うだけが勇気じゃないのよ。むしろ、美樹さんは少し無謀なところがあるでしょう?」

キリカ「それはまあね……」



1自由安価
2今日の放課後のことについて
3佐倉さんと仲直りする気はあるの?

 下2レス


キリカ「ところで……キュゥべえは仲直りしてほしいって言ってたけど」

キリカ「佐倉さんと仲直りする気はあるの?」

マミ「……それは、出来たらそうしたいわよ」

マミ「好き好んで争いなんてしたくないし、同じ魔法少女同士、協力できる仲間は多いに越したことはないものね」

マミ「……でも」

キリカ「……そんな簡単には出来ないよね。 ごめん、何も知らないのに」

マミ「いいえ。キュゥべえも、あの子なりに私たちを心配してくれてたんでしょう」

マミ「もし佐倉さんが昔のように戻ってくれる気があるのなら、私も勿論受け入れられるんだけどね」

マミ「あっちはそういうわけにはいかないだろうから」

キリカ「キュゥべえは…………」

マミ「え?」


 ……食べ終わった弁当を片づける。

 そろそろ昼休みも終わりが近づいていた。


キリカ「……なんでもないよ。そういえば、今日の放課後は?」

マミ「今日はまた少し昨日の土手で練習をした後、そろそろ実戦をやってもらおうかと思って」


キリカ「えーと、実戦っていうと」

マミ「心配しないで。私も美樹さんも居るんだから。三人なら怖くないわ」

キリカ「うん……そうだよね。 それに、契約したんだから戦うのは使命だもんね」

マミ「……」

キリカ「……あ、えっと、別に戦うのが嫌なわけじゃなくて……! 人助けのために戦うのはすごいって思うし」

キリカ「まどかの代わりにはなれなくても、頑張るよ」

マミ「……ええ」


 マミが鞄を整理して立ち上がる。


キリカ「午後も頑張ってね」

マミ「そちらも」


 ……一人になってから、机の上に突っ伏した。


キリカ(なんかなぁ……)

キリカ(……もっとちゃんとしないと)


 ――――帰りのチャイムが鳴り、みんなで昨日の土手に向かって歩いている。

 今日も少し訓練をして、それから出発前にはみんなでちょっとした気合いを入れようと言っていた。


 土手に着くと、さやかが鞄を放って草原に寝転んだ。


さやか「はー、やっと今日も一日学校が終わった」

マミ「ええ、でも私たちの一日はこれからよ?」

さやか「はい! これから見滝原の平和をガンガン守りまくっちゃいましょう!」

まどか「その前に肩慣らしだよ」


 さやかが立ち上がって服についた草をはたくと、変身する。

 私も同じように変身してみる。武器を出すと、両手にしっかりと重みを感じた。今日もまずは素振りからだ。


 ……もうさやかは一度魔女と戦ったことがあるって言ってたけど、怖くなかったのかな。



マミ「――――…………それじゃ、このくらいにしましょうか」

マミ「みんなでパトロールしに行きましょ」

さやか「はい!」

マミ「さっきまでのは訓練だけど、これからは魔法少女の仕事よ」

マミ「私もついてるけど、気を抜かないように」

さやか「わかってますって。マミさんに迷惑はかけられませんし」

マミ「じゃあちょっと、こっちに来て集まってくれる?」 

キリカ「え?」

さやか「なんですか?」

マミ「鹿目さんも」


 マミが手を上に挙げて、みんなを呼ぶように手招きする。

 ……四人が一か所に集まると、マミが肩に手を回してきた。


キリカ「えっ? えっ? 何?」

さやか「あ。 あたしはわかりました!こうですね」

まどか「え、これって!」

マミ「ええ! 円陣よ、円陣!」

マミ「ふふ、やってみたかったのよ一回! 四人も居るからできることね」

まどか「でもわたし戦えないのに……」

マミ「何を言ってるのよ。鹿目さんも私たちの大事な仲間よ?」

まどか「はい!」


マミ「呉さんは初陣だし、美樹さんもまだ新人」

マミ「最初は不安かもしれない、上手くいかないことがあるかもしれない」

マミ「でも、一人じゃないんだもの。 これから私たちは支え合って成長できる!」

マミ「気合い入れていきましょう!」


『オー!』


 ……通りからは見えない土手の奥で、みんなの声が響いた。



 土手から離れて街を回り始める。

 一応、ルートを決めていくことにしていた。


キリカ(……マミ、意外とああいうの好きだったんだなぁ)

キリカ(まあ、悪くないか。ちょっとだけ緊張もほぐれたかもだし)



 マミは気配でわかるようだけど、一応自分のソウルジェムも具現して明滅を見ている。


 最初に目指すのは工業地帯のほうだ。

 特に用があることもないのであまり寄ることもなかったけど、あまり人気の多そうな場所ではない。

 こういうところって、魔女が出やすかったりするのかな?



 下1レスコンマ判定
0~20 使い魔
21~40 魔女


キリカ「!」

キリカ(魔力の反応!)


さやか「マミさん、これどっちすか!?」

マミ「これは魔女の魔力ね」

マミ「あなたたちも、少ししたらわかるようになってくるわよ」

まどか「わたしも一週間ちょっとで魔力があるかないかっていうのはわかるようになってきたから」

さやか「さすが“元”でも先輩だなぁー」



―落書きの魔女結界



 結界のマークの中に飛び込むと、この前路地裏で見た使い魔の結界が周りに広がっていた。

 ……周りには素早く跳び回る落書きのような使い魔。

 それをさやかがあの時のように剣を投げて狙い、外しては悔しそうにしている。


さやか「くっそー、当たらない! マミさん、なんか投擲のコツってあります?」

マミ「私は銃だから少し違うけど……動きを予測することは必要ね」

マミ「あとは数で押し切ってみたり、直接斬りかかっていけるならそのほうがいいこともあるんじゃないかしら?」

さやか「そうっすね! せっかくの剣ですし、投げることにこだわらなくてもいいか!」


 さやかが青い閃光を散らして走る。

 ……まるで瞬間移動だ。


マミ「美樹さん、あまり使い魔に魔力を使いすぎないようにねー?」

マミ「今回は使い魔は私も相手できるから」

さやか「はい!」


キリカ「えいっ……あ、当たった」


 私も何かやれないかと、小さめの刀を作り出して細々と狙っているけれど、マミの射撃には敵わない。

 道中の使い魔は大体マミが片づけてくれた。


 そしてとうとう最深部。

 ……でも、魔女がいない?


さやか「あれ?」

マミ「とりあえず使い魔は私が対処しておくわ」

さやか「は、はい!」

キリカ「でもこれどういうことなのさ……?」

まどか「あっ、あそこ!」


 ……結界内に置かれた物の陰に隠れていたらしい。

 見つかると魔女が逃げるように飛び出してきた。


Albertine「ニャハハハッ」


さやか「居た!」


 さやかが剣を構えて突進する。

 ――――しかし、魔女に攻撃が当たった瞬間、魔女がはち切れんばかりの声を上げて泣き出した。


さやか「っ、なんなのさ!」


 ……さやかが下がった。

 すぐに突っ込んでいくさやからしくなく、そのままたじろいでいる。


マミ「……何?」

キリカ「さ、さやか?」

さやか「え!? えーっと!」


 ……さやかは何を慌ててるんだろう?

 とりあえず、このまま近くにいたらやられちゃう。

 私も何かしないと……!




キリカ 魔力[125/130] 状態:??
GS:なし


◆ステータス

[魔力コントロールLv0] [格闘Lv0] [射撃Lv0]


敵:Albertine

1刻む :近接武器戦闘(魔力-0) ※[格闘Lv]+マイナス補正20 デフォルトで二刀流。
2小刀投げ :中~遠距離武器戦闘(魔力-1) :小さめの刀を出して投げつける
3スパークエッジ・デュエル【Lv1】(魔力-30×2) :魔力を込めて全力で斬りつける必殺技。ほぼさやかと同じやつの二刀流版。
 bスパークエッジ(魔力-30) :一刀流版。威力は半分より少し上。
 cスパークエッジ(魔力-60) :二刀流分の魔力を一つに込めた一刀流版。装備が欠けた時とか用。
4シューティングスティンガー(魔力-10) :刀身を魔力の刃に変えて射出する
5スプラッシュスティンガー(魔力-5×5) :小刀をたくさん出して魔力の刃を射出。安価指定があれば射出後に残しておく。
6自由安価

 下1レス


 ……さっきまでの道中と同じように狙いを定めて、投げる。


キリカ(え、えいっ!)


キリカ「――あ、当たった!?」

さやか「泣き止んだ……!」


 続けて、さやかがトドメの一撃を与えて終了となる。

 ……にしてもなんだか、腑に落ちないような気分だった。

 あれが当たったことに、私が一番驚いていたのだから。


さやか「いやー助かりました!」

さやか「なんか急に動けなくなっちゃって。闘争心が削がれるっていうか。あの泣き声のせいだったんですかね?」

キリカ「あー、うん……そうかもね……」


 ……ていうか、そもそも投げて倒す、というイメージが出来てなかったんだ。

 魔女相手にためらってる場合じゃないけど、別に私の心が弱いわけじゃなくて、さやかもそうで……

 それでも当たったのは。


マミ「……今回はむしろ、慣れてない人だったから上手くいったのかもね」

マミ「だって呉さん、自分の攻撃が当たったのにきょとんとしてたんだもの」

マミ「本当はあれ、自分の思った通りにはいってなかったんじゃないの?」

キリカ「まあ……うん……」


 私の投擲がヘタクソだったからか。

 そう思うとなんか複雑な気分だった。


マミ「はいこれ、戦利品よ」

キリカ「あ、ありがとう」



 …………まあ、倒せたんだから、いっか。



★射撃Lv0→射撃Lv1


キリカ 魔力[124/130] 状態:正常
GS:1個
・落書き[100/100]


◆ステータス

[魔力コントロールLv0] [格闘Lv0] [射撃Lv1]

キリカの魔力が130なのは素質が高いってことですか?


まどか「お疲れ様でした! 次はこっちのほうですね」

さやか「あー、このあたりってやっぱ人気ないよね」

マミ「魔女が人の負の感情を好むと考えると、人気のないところか、逆に人気の多い場所に居るって推測してるわ」

マミ「だからまずは人気のない場所を巡って、それから人が集まり出す時間帯には賑わった場所に行こうと思ってるの」

さやか「そこまで考えてるなんてさっすがマミさん!」


 人気のない道を歩く。その中に高い鉄塔が見えてきた。


 ……人の負の感情か。

 ソウルジェムの真実はマミも知らない。

 本当は、魔法少女が居る限り魔女もいなくなることはないんだろう。


 下1レスコンマ判定
0~20 使い魔
21~40 魔女

今回は>>1000まで何か募集したりしないの?

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続きは次スレに
以下適当にコメントとか埋めとか

>>991
(ここでは)素質が高いっていうのはそうですねー

乙です
うめ

展開安価はこの前もキリカ編でやったしなぁ…
新技案とかあれば採用するかも あとちょっとだけど

>>1000ならキリカはえりかと仲が元に戻る

>>1000なら杏子を追いかけてきた小巻参戦

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