仁美「私…佐倉さんのこと、お慕いしてますの」 杏子「……は?」 (103)

――登校時


まどか「――でね、さやかちゃんは上条くんの腕を治すために魔法少女になったんだよっ」ニコニコ

杏子「へぇー…」

さやか「えへへ、まぁちゃんとあいつもヴァイオリン頑張ってるみたいだし?」

さやか「契約した甲斐があったってもんよ!」ドヤァ

杏子「男のために、ねぇ?」ニヤニヤ

さやか「な、何よ?その顔は…。そりゃあ…ちょっとは…下心も…あったような気がしないでもないような…うぅ…」

さやか「で、でも今はもうホント何にもないから!純粋にあいつのこと応援しようって決めたの!」

杏子「じゃあ…そいつのこと、もう…?」

さやか「うん…それに仁美ともうまくやってるみたいだし?それでいいかなって」ニコッ

杏子「ふーん…」

―――――――
――――――

早乙女「ではこれで帰りのHRを終わります」

早乙女「あぁ、あと佐倉さん、このあとちょっと残ってくださいね?」ニコッ

杏子「うげっ!……はい…」

さやか(ちょっ、呼出しとか)クスクス

まどか「アハハ…」

さやか「で、何だって?先生」ニヤニヤ

杏子「宿題サボりすぎの罰で…居残りだって…」

さやか「だから毎日ちゃんとやれって言ったのに!」

さやか「人の注意も聞かないでTV見てお菓子食べて、そんなんだからツケが回ってくんのよ」

さやか「ったく、小学生かってーの」ケラケラ

杏子「」イラッ

杏子「あーもう!居残りやる前からSAN値削られるようなこと言うなよな」

さやか「…!…SAN…値…?あたし…いや僕は…何か…」ゴゴゴゴゴッ

杏子「あぁ、そういうのいいから」

杏子「さやかは先帰って飯でも作っててくれ、んじゃ」

さやか「はぁ?何様だよあんた…」

まどか「ま、まぁまぁ。じゃあ私たち先に帰るね?」

杏子「おう」

まどか「あ!それとSAN値の使い方だけど、ちょっと違っ――」

さやか「まどか、もう帰ろ?こんなやつほっといて」

まどか「えっ、あ、うん、じゃあね」

杏子「……」

―――――――
――――――

杏子「はぁー、今日は災難だったぜ…」

杏子「十日分の宿題一気とか、マジ死ぬかと思った…」グッタリ

杏子「鬼だよ…ありゃ現世に顕現したる鬼だよ…」

杏子「早く帰ってさやかの飯でも…ん?あれって――」

――路地裏

仁美(はぁ…最近上条君がそっけない気がする…)

仁美(デートにお誘いしてもヴァイオリンヴァイオリンって…)

仁美(私のこと本当に好いていらっしゃるのでしょうか…)

仁美(い、いいえ、いけませんわ、恋人の気持ちを疑うようなこと…!)

仁美(んー…それでもやっぱり寂しいですわ――)

仁美「あっ、いたっ」ドン

不良A「あぁ?んだてめぇ!?」ギロッ

不良B「どこ見て歩いてんだコラァ!!」

仁美「あっ…あぁ…」

仁美「ご、ごめんなさい…!あのぉ…!」

不良A「ん?こいつ見滝原中の生徒か?」

不良B「へー…んじゃあお嬢様なのかなぁ!?」ニヤ

不良B「おい、ブス!大人しく金出せば無事に帰してやってもいいぜー?」

仁美「あっ…あああ」ガクブル

不良A「おい、聞いてんのかゴルァ?」ガシッ

仁美「いっ、嫌っ!触らないで…!」ジタバタ

不良B「ちっ、こいつ暴れやがって、一発ぶん殴ってやろうか?」

仁美「ひっ!…も、もうだめっ…」クラッ

???「何やってんだおめーら」

不良AB「!?」

仁美(だっ、だれか…が…――)

杏子「はぁー、女一人に男が二人がかりかよ…」

不良A「な、なんだ、ただのガキじゃねえか」ホッ

不良B「おめぇもゴチャゴチャ言ってっとこのブスのように――」

杏子「えいっ」ポカリ

不良B「」ドサッ

不良A「ん!?な、何だ今のは!およそ軽妙で可愛らしいオノマトペからは想像もつかないような重い一撃がBの体を――」

杏子「それっ」アクエリアス

不良A「アァンコレモマタイッキョウ///」バタリ

杏子「わりぃ、最後まで聞いてる暇ねぇから」

杏子「それとそこのお前大丈…ってこいつは!」

―――――――
――――――

仁美「」

仁美(……ん…私…)パチッ

仁美「ここは……」

杏子「よぉ、目ぇ覚めたか?」

仁美「佐倉さん…どうしてここに?というかここは……公園…?」

杏子「あ、あぁ、いやお前が気ぃ失っちまってたみたいだから連れてきたんだ」アセアセ

仁美「わ、私…!そうでした、さっき…」

仁美「では、佐倉さんが先ほどの暴漢たちから助けてくださったのですね…何とお礼を言ったらいいか…」

仁美「本当にありがとうございました」ペコリ

杏子「いや、そんなかしこまって礼言われるほどのことでも…」

杏子「それより気ぃ付いたんならさっさと帰ろうぜ」

仁美「へっ…あっ、もうこんな時間…!」

仁美「こ、こんなに遅くまで付き合わせてしまっていたなんて…申し訳ないですわ…」

杏子「ぁん?別にそれはいいけど。女一人ほったらかして置いていくわけにはいかねぇだろ」

杏子「ほら、立てるか?」

仁美「は、はい」

仁美(佐倉さん…ずっと付き添ってくれていたのですね…)

仁美(ぶっきらぼうで怖い人かと思っていたけれど、見かけによらず結構いい人なのかも…///)

杏子「家、どこらへんだ?」

仁美「へ?」

杏子「送ってってやるよ」

仁美「し、しかしもう夜遅いですし、これ以上ご迷惑をおかけするわけには…」

杏子「ばーか。遅いから送っていくんだろーが、危ねぇし。また変なのに絡まれたらどうすんだ」

仁美「///」キュン

杏子「どうした?」

仁美「い、いえ、ではお言葉に甘えて…」

仁美(……)

仁美(佐倉さん…)

―――――――
――――――

杏子「ただいまー、あぁー疲れた疲れた!さやかー今日の晩飯何――」

さやか「ちょっとあんたこんな時間までどこほっつき歩いてたのよ!」

杏子「あぁ?な、何だよ……ちょっと寄り道してきただけだし、何怒ってんだ?」

さやか「はぁ…またゲーセンか何か?…あんたさぁ…居残りくらった直後によくそんなことできるわよね」アキレ

杏子「さやかには関係ねーし。それにちゃんと帰ってきたんだしいいじゃん…んなことより飯はー?」

さやか「メシメシって……ちょっと何その態度…何か言うことあるよね?」イライラ

杏子「あーもううっせー!別にいいだろ何したって!」

さやか「なっ!大体ねぇ、連絡の一つぐらい入れたらどうなの!待たされるこっちの身にもなれってーの!」

杏子「あーはいはい、悪うございました!ったくお前はあたしのかーちゃんかよ、さやかあちゃんかよ」

さやか「かぁっ…!?……あーもういい、もういいわ。あったま来た!」

さやか「もう知らないから!あんたがそんな態度取るってんなら明日のお弁当も作ってあげないからね!?」

杏子「はぁ!?べ、弁当はかんけーねーだろ弁当は!」

さやか「フン、今謝るなら許してやってもいいけど?」ニヤニヤ

さやか(どうせこいつのことだし食べ物が絡めばすぐに折れるに決まってる)

杏子「…ぃ」ボソッ

さやか「?」

杏子「いい、いらねぇ…」

さやか「は?」

杏子「あたしは勝手にするからあんたも勝手にすればいい…」

杏子「もう寝るから…晩飯もいい…」

さやか「ちょっ…!」

バタン!

――寝室

杏子(あぁー…なんでつまんねぇ意地張っちまったんだあたし…)

杏子(なんか今日はスゲーイライラしちまうし…)

杏子(……)

杏子(さやか、飯食ってなかった…あたしを待っててくれたのかな…?)

杏子「うぅ…」グー

杏子「はぁ…腹減った…もう寝よ…」

――風呂場

さやか「ふぁぁー生き返るわー!」

さやか「って今のはさすがにオヤジくさいな…気をつけようあたし!」

さやか「……」ブクブク

さやか「はぁー…」

さやか「んーさっきはちょっと言い過ぎたかも…」

さやか「あいつがご飯食べないなんてよっぽどだし…」

さやか「ちゃんと話聞いてあげればよかったかな…」

さやか「何でいつもこうなっちゃうんだろう…私ってホント…」

――寝室

ギィー…

さやか(もう寝てるよね…)ソー

杏子「Zzz…」

さやか「……」

さやか(おやすみ…)

―――――――
――――――

モブA「あー終わった終わった!早く飯食おうぜー」

モブB「おう」

さやか(あぁ…とうとうお昼になっちゃった…)

さやか(結局朝も気まずいままだったし…)

さやか(一応お弁当作ってきたけど…昨日あんな啖呵切っちゃった手前こっちから渡すのは何かなぁ…)

まどか「さやかちゃん?」ヒョコ

さやか「へっ?あ、な、何?」

まどか「ボーっとして大丈夫?」

さやか「あぁうん全然!」アハハ

まどか「そっか。じゃあ早く屋上行かないと場所取られ――」

さやか「!」

まどか「?」

仁美「佐倉さん、今日お弁当作ってきましたの。良かったらご一緒にいかがですか?」ニコッ

杏子「えっ、マジで?何で!?」

仁美「ええ、昨日のお礼にと思いまして」

杏子「うおおお!スゲー助かる!今日弁当…っ…その、そう、忘れちまってさ…」アハハ

仁美「そうなんですの?ちょうどよかったですわ!」パァァ

さやか「……」ジー

まどか「……」

まどか(そういえば朝からさやかちゃんと杏子ちゃん全然しゃべってない…)

まどか(ケンカでもしたのかな…?)

まどか「さやかちゃん、杏子ちゃんたちイイの?」

さやか「へ?いやでも…」

まどか(もー世話が焼けるなぁ)スタスタ

まどか「あの!あたしたちも一緒にいいかな?」

さやか「ちょ、まどか!?」

仁美「?ええ、もちろん」

杏子「あっ」

さやか「っ……」

―――――――
――――――

ほむら『で、何故私たちまで…』

マミ『まぁまぁ暁美さん。ご飯はみんなで一緒に食べたほうがおいしいわよ?』

ほむら(にしても…)

ほむら(空気重すぎるわ!!)

杏子「……」モグモグ

仁美「……」ニコニコ

さやか「……」

まどか「……」

ほむら「……」パクパク

マミ「……」バクバク

まどか「そ、そうだ!ほら、さやかちゃんも杏子ちゃんの分のお弁当、作ってきたんだよね?」

杏子「えっ」

さやか「え?あ、うんまぁ、その…」

杏子「さやか…」

さやか「あっ、ちがっ、これはいつものクセで二人分作っちゃっただけでそのっ別に…!」

さやか「うぅ……えと…ほら、あんたの分…///」グイッ  

杏子「おぅ、あり、がと…///」

ほむら(何なのこいつら)イライラ

まどか(よかったね、さやかちゃん)ニコニコ

仁美「……」ピキピキ

仁美「佐倉さん、まだたくさんありますから遠慮なさらないで、ね?」ニコッ

杏子「お、おう」

仁美「そうですわ、デザートに杏仁豆腐も作ってまいりましたの!」

さやか「!?」

まどか「!」

まどか(杏仁…だと…?)

ほむら「ほぅ…」

ほむら(やるわね、佐倉杏子を落とすための策としてまず餌付けをチョイスしたり…甘味も抜かりなしで…この女なかなか…!)

マミ「磯部揚げうめぇ」ムシャムシャ

杏子「お、おおおぉぉ!こんなのまで作れるのか!?すげぇな!!フルーツごろごろ入ってるタイプの奴だし!!」

仁美「いえ、それほどでも///」

さやか「……」ムッ

まどか(杏ぉぉぉ子ちゃぁぁぁああああああん!?)

ほむら(あー、この子全然わかってないわ杏仁に込められた真の意味を…)

ほむら(というか杏仁豆腐に食いつきすぎでしょどんだけ甘いものに目がないのよ志筑仁美大勝利じゃんいやどうでもいいけど)

まどか(このままじゃ…!な、何か…そうだ!)

まどか「さやかちゃん、その天ぷら…」

さやか「え?あ、これ?きぬさやの天ぷらだけど…それがどうか――」

まどか「はいきた、きぬさやきたー!きぬさやの天ぷらおいしいよね!あたし大好きだよ、きぬさや!」ドヤァ

さやか「え?うん…た、食べる?」

ほむら(ヘンなところで張り合っちゃうまどかわいいいいいいい!)

ほむら(うんわかってる私はわかってるわ、きぬさやときょうさやをかけてみたのよね?)

ほむら(でもこのバカにはまどかのハイレベルなシャレは理解できなかったみたいいや私はちゃんとわかってるけど)

ほむら(うわぁ…まどかのドヤ顔まどかのドヤ顔どやかのマド顔煽り抜きで心の壁紙にしてぇ…)

マミ「暁美さんその唐揚げ食わへんのやったらもろてええかな?」モッシャモッシャ

――夜

さやか「……」パクパク

杏子「……」モグモグ

さやか(まどかのおかげでなし崩し的に和解したかのように見えたけど…)

さやか(やっぱりちゃんと謝ってないし…気まずいな…)

さやか「あ、あぁー、そうだ杏子、ご飯おかわりする?」

杏子「え?うん、じゃあ、頼む…」

さやか「うん!」

さやか「……よしっと…はい、どうぞ!」

杏子「おう、ありがと」

さやか「うん……」パクパク

杏子「……」モグモグ

さやか「……」パクパク

杏子「……」モグモグ

さやか(だらしゃあああああぁ!ダメだ気まずい!話題!何か共通の話題を…!あっそうだ!)

さやか「あ、あのさぁ…杏子って仁美とあんなに仲良かったっけ?」

杏子「え?」

さやか「いや、い、いつのまにお弁当なんか作ってきてもらう仲になったのかなーって」アセアセ

さやか「全く、杏子も隅に置けませんなぁ!」アハハ

杏子「別に、そんなんじゃねぇし」ムッ

杏子「…あのさ…」

さやか「ん?な、何?」

杏子「いや、やっぱ…なんでもない」

杏子「ごちそう様…先風呂入るわ」ガタッ

さやか「?うん…どーぞどーぞっ」

バタン

さやか「……」

――風呂場

杏子(あぁ、ちゃんと謝らなきゃいけないのに…)

杏子(それに弁当のことも…あんなケンカした後なのに作ってくれてたし…)

杏子(何でいつもこうなっちまうんだ…)

杏子(分かってんのに…何で…もっと素直に…)

杏子「ヴぁああああああああもうっ!あたしのバカ野郎!」

――次の日 放課後

さやか(ったくあいつ、HR終わるなりどっか行っちゃうし…)

さやか(今日は一緒に帰ろうと思ってたのに…)

さやか「どこ行っ――ん?あれは杏子と…仁美!?」



杏子「で、話ってなんだ?」

仁美「単刀直入に申し上げます」

仁美「私…佐倉さんのこと、お慕いしてますの」キリッ

杏子「……は?」

杏子「えぇと…それはつまり…?」

仁美「好き、ということですわ」

杏子「」

杏子「はああああああああああ!?」

杏子「な、ななな何でそうなる!?」

仁美「佐倉さん、先日暴漢から助けてくださいましたよね」
   
仁美「それに倒れた私をずっとそばで介抱してくださった」

杏子「いやあんなん別に普通のことだし――」

仁美「いえ、あなたが危険を顧みず助けてくださったという事実、それが嬉しいのです」

仁美「普通の方においそれと出来ることではありませんわ」

仁美「それと…颯爽と窮地に駆けつける姿…!まるで正義のヒーローみたいで///」

杏子「」

仁美「惚れぼれしてしまいましたわ///」ポッ

仁美「その時気づきましたの、この人しかいないと!」ギュッ

杏子(いやいやいやいや)

仁美「私、本気ですから!」

杏子「いや、あいつは…上条はどうすんだよ…?」

仁美「っ…彼は…きっと私のことなんてなんとも思っていないんですわ…!」

仁美「本当に付き合っていると言える関係かも怪しいですし…」

杏子「んなこたねぇだろ、ちゃんと話し合ってさぁ――」

仁美「とにかく!私の気持ちは変わりませんわ!」

仁美「後日お返事、聞かせてください。では」スタスタ

杏子「……」

さやか(う、うわー、ど、どうしよう)

さやか(何かすごいところ見てしまった…!)

さやか(というか何であたしがこんなに動揺してんのよ…!)

さやか(ん?でも…杏子が仁美を助けたって……あ、あの晩帰りが遅かったのはもしや…!)

さやか(あぁ~もう!何やってんだ、あたし…)

さやか「はぁー…」

さやか(今日は一人で帰ろ…何か杏子と顔、合わせづらいし…)

―――――――
――――――

杏子(やべぇ…何だってこんなことに…)

杏子「はぁー…」

ほむら「佐倉杏子」

杏子「う、うわっ!何だよいきなり出てきて!」ビクビク

ほむら「?」

ほむら「ちょっと付き合って欲しいのだけれど」

杏子「つ、付き合う!?お、お前までそんな…!!」

ほむら「は?…何を勘違いしているか知らないけど…いいから来て頂戴」

杏子「えっ?」

ほむら(やっぱり…佐倉杏子が一番おかしい…)

―――――――
――――――

杏子「どういうことだ…?これ…」

杏子「何で見滝原から出れねぇんだ!?」

ほむら「さぁ…でも、今は下手に動かないほうがいい」

ほむら「このことはまだ誰にも言ってはダメよ」

杏子「でもっ……」

ほむら「……」

杏子「分かった…」

ほむら「じゃあそういうことで」スタスタ

杏子「……」

―――――――
――――――

杏子「ただいまー…」

さやか「おかえり…!お、遅かったね…?」

杏子「ん?あぁー、ちょっとな…」

さやか「あ、ご飯出来てるけど、先食べる?」

杏子「うん…」

さやか(うぅ…あんなん見ちゃった後にどんな風に接すればいいのよ)

さやか(というか杏子、やけに元気がないような…?)

??「閉鎖空間です」

―――――――
――――――

さやか「じゃあ電気消すよ?」

杏子「うん…」

さやか「おやすみ」

杏子「…おやすみ」

さやか「……」

杏子「……」

さやか(仁美の…返事どうするのかな…?)

さやか(うぅ…気になる…)

さやか(……)

さやか(あたしは…あたしは杏子のこと…)

――深夜

杏子「うぅ…ぅ……」


   『あんたみたいなやつがいるから――…』

       『絶対に――お前だけは絶対に――許さない――…』

          『あたしは負けないし――恨んだりも――…』

    『他の誰かを呪わずには――…』  

      『あたしって――…』
 

杏子「はあっ!!」ビクッ

杏子「ハァ…ハァ…!」

杏子「な、何だ、今の…夢…か!?」

杏子(いや、夢……なんかじゃねぇ…)

杏子(あれは、確かに……じゃあ、今のこの世界って…?)

杏子(……)

杏子(あたしは……どうすれば…)

――次の日 教室

杏子「んー…」ボー

さやか「…」チラッ

さやか(昨日帰ってきてからずっとボーっとしてるし、やっぱり仁美の…?)

さやか(い、いやいや、その手のことで悩むようなタマじゃないでしょ杏子は……でも…うーん)

さやか(ん…?ちょっと待て、ちょっと待てよ!)

さやか(な、悩んでいるということは告白を受ける可能性もあるということなのか!?)ハッ

さやか(断るつもりなら最初から悩む必要ないよね!?)

さやか(何となく断るものだと思ってたけどよく考えたらそんなのわかんないし…!)

さやか(うおおおおおおおおおおー!)ジタバタ

まどか(さやかちゃん朝から様子が変だよ…メダパニでも食らってるのかな?)

――夜 寝室

さやか(どうしよう…結局聞けないまま寝る時間になっちゃった…)

さやか(き、聞いちゃおうかな?いやでも、なんて切り出せば…)

さやか(ええと――)

杏子「さやか」

さやか「ふぇっ!?あ、な、何?」アセアセ

杏子「ちょっと話、いいかな?」

さやか「う、うん…」ゴクリ

杏子「あー…いや、でも、こんなことさやかに言うのもな…」

さやか「なになに?さやかちゃんに言ってごらん?」

杏子「えと…さ…この前、志筑仁美に告られた…」

さやか(うぉふ、ど直球ktkr!)

さやか「そ、ソーナンダー(棒)」

杏子「うん…それで、告白受けようかなって…」

さやか「へ、へぇー…受けるのかぁ…受け――へっ!?」

さやか「えええっ!?いや、え、な、何で!?」

杏子「何でって…、まぁそういうのもいいかなって」

杏子「好きって言ってくれてるんだし」ボソッ

さやか「や、でも…!」

杏子「あぁ―…あとさ、この家も出ていくから、そういうことで」

さやか「…は?」

さやか「な、何で急にそんな話になるの!?」

杏子「あぁー!もういいだろ!うっせぇな」

さやか「ちょっと!勝手にそういうこと決め――」

杏子「もうやめろよそういうの!!」

さやか「っ!?」ビクッ

杏子「全部…全部思い出したんだよ…!」

さやか「!」

杏子「お前とあたしが殺し合う仲だったこととか…」

杏子「お前があたしのこと大嫌いだったこととか…全部…」

さやか「…っ!」

杏子「バカみてぇだよな…何をどう間違ってこんな友達ごっこみたいなことしてんのか分かんねぇけど」

杏子「何もかも都合よく忘れてさ…一緒に暮らしていい気になって…お前だって迷惑してたんだろ?」

杏子「だからもうやめにしようぜ?こんなの」

さやか「……」

杏子「それに、あたしと志筑がくっつけばお前にもチャンスが巡ってくるかもしれないだろ?上条と――」

さやか「…かっ」

杏子「?」

さやか「ばかっ!!何でそんなこと言うの!?あたしが…あたしが好きなのは杏子なのにっ!!」

杏子「……へ?」

さやか「あたしは…いろんな杏子を見てきたよ…」

さやか「どの世界でもあんたはあたしのこと助けようとしてくれた…」

さやか「友達だって言ってくれた…」

さやか「だから…だから…!…ぅう…そんなあんただから好きになったのに…」ポロポロ

さやか「そんなこと…言わないでよ…」グスッ

杏子「……っ」

さやか「ずっと…杏子にお礼言わなきゃって思ってたのに…あんた、今までのこと全部忘れてるし…!」

さやか「あたしがどんな気持ちで今まで過ごしてきたと思ってんのよ…!…うぅ…」グスッ

杏子「…え、ええと…」オロオロ

杏子(ど、どういうことだおい…上条が好きなんじゃなかったのか…?)

杏子(というか何であたし今怒られてるんだ…?)

さやか「嘘つき…」ボソッ

杏子「!?」

さやか「一緒にいてやるって、言ってくれたじゃん…あれは嘘だったの…?」ジッ

杏子「!!」

杏子「あ、あたし…そう、だった…何でこんな大事なこと…」

杏子「ごめん…ごめんさやか」ギュ

杏子「嘘じゃない…ホントはさやかと一緒にいたい…」

杏子「だから…だから、さやかの側にいてもいいかな?」

さやか「うん…あたしも、杏子と一緒にいたいよ…」

さやか「だから…絶対、離さないでね?」ギュウ

杏子「あぁ、約束する…」


このあと滅茶苦茶セックスした……りすることもなく普通に寝た

悲しいかな現実とは往々にしてそういう物なのである

――次の日 屋上

杏子「――だから、付き合えない、ごめんな」

仁美「そう、ですか…」

杏子「いやぁ…あたしが言うのもなんだけどさ…これって一過性のものなんじゃねえかな」

杏子「あたしらぐらいの年の奴は何か劇的なことがあると恋だの何だのと勘違いしちまうっつーか…」

杏子「……」

杏子「ほんとはあいつのことまだ好きなんだろ?」

仁美「…!」

仁美「でも…私は――」

バタン!

上条「志筑さん!」

杏子(噂をすれば…)

仁美「か、上条君…!」

上条「ごめん…僕…自分のことにいっぱいいっぱいで、志筑さんとちゃんと向き合ってなかった…」

上条「だから…だから、もう一度ちゃんと…僕と付き合ってほしいんだ!」

上条「よろしくお願いします!」

仁美「上条…君…」

仁美「でも…私は、あなたを裏切って…」

上条「いや、僕のせいだ、僕がかまってあげられなかったから寂しい思いをさせて……君は悪くないよ!」

仁美「私…」

杏子「あ、あぁー、ええと、お邪魔みたいだからあたしはこの辺で…」

上条「あっ、佐倉さん、その――」

杏子「あーいいからいいから、どうぞ続けて」

杏子「あっ、そうだ。ちゃんと言葉で『好き』って言ってやんねーと、伝わんねーぞ?」ニヤリ

杏子「じゃぁーな」スタスタ

―――――――
――――――

杏子「ったく、世話の焼けるやつらだぜ…」

さやか「きょーこっ!」ヒョコ

杏子「うおっ!?み、見てたのかよ…」

さやか「まぁーね。だって杏子押しに弱い所あるからさぁ…ね?」

杏子「ね、ねーよ!ちゃんと断れるし!」

さやか「ふーん。あ、杏子が呼んでたんだ…恭介」

杏子「まぁな、本人同士に話させたほうが手っ取り早いだろ」

杏子「このあとどうするかはあいつら次第だし」

さやか「そだね」

杏子「…」

さやか「…」

さやか「ねぇ…」

杏子「ぁん?」

さやか「あたしまだ言ってもらってないんだけど『好き』って」

杏子「ぶほぉ!?」ゲホゲホ

杏子「な、何だよいきなり!」

さやか「あれー?『ちゃんと言葉で言ってやんねーと伝わらない』んじゃなかったっけー?」

杏子「…!くそっ…///」カァァ

さやか「んー?」ニヤニヤ

杏子「だぁー!調子くるうよなぁホント!」

杏子「あ、あぁ…さやか!」

さやか「うん…」

杏子「す…好きだ……だから、これからも宜しくな」ガシッ

さやか「ふぇ?」


チュ



杏子「こ、これで満足か?///」

さやか「う、うん…///」

さやか(不意打ちとか…ずるいよ、ヘタレのくせに…///)

全てが偽りの、いつ壊れるかもわからないこの世界にも、確かなものはきっとある。

それさえ見失わなければどこでだって生きて行ける。そう――

杏子「さやかと」

さやか「杏子と」

杏さや「「一緒なら!」」




終わり

ほむら「おい見滝原から出られないの解決してないぞどうするんだ」(ドンドン)

マミ「1000円分の唐揚げ下さい」

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