男「だから冬は」(216)
滑る 寒い 乾燥する
いろいろ凍る バカがはしゃぐ
宿題が多い カップルが増える
そして―――アイツがやってくる
だから 冬は嫌いだ
男(うー寒い寒い、すっかり冬だな)
男(ってことは……そろそろ、かな)
ガチャ
男「ただいまー」
女「おっかえりー!!そんで久しぶりー!!」
男「うおっ!お前来てたのか…久しぶり……ってか、でかくなったな」
女「でしょー♪これで兄妹って間違われないね!」
男「いや、俺は間違えられてもいいんだけどな」
女「あー、ひっどーい!!せっかく男の為に成長したのにー」
男「冗談だよ」
女「わかってるよーだ、べーッ!」
男「…機嫌なおせよ、今日鍋にしてやるから」
女「ホント!?やったー!キムチね、キムチ!!」
男「わかってるよ」
女「いっただきまーす!!」
男「あ、こら、そんながっついたら…」
女「!あっつ!!熱い!!」
男「バカ……ホラ」
女「ん、ゴクッゴクッゴクッ………」
男「大丈夫か?」
女「うー、口がヒリヒリするー」
男「そりゃそうだろ、出来立てなんだから…」
女「だってキムチ鍋久々なんだもんっ」
男「家で作ればいいだろ?」
女「あんな山奥にスーパーあるわけないじゃん!」
男「いや、行った事無いから解らないんだけど」
女「あ、そっか」
男「まあ、もの凄く山奥ってことは解った」
女「うん、ホント何にも無いよ」
男「大変そうだな」
女「んー…大変ではないかな」
男「そうなのか」
女「だってめんどい仕事は友達と半分こしてるから」
男「めんどい仕事?」
女「薪割りとか荷物運びとか…あ、買物だけはまかせっきり」
男「今の暮らし、楽しいか?」
女「とっても!」
男「そうか…なら良かった」
男「あー……風呂どうする?」
女「入れる訳無いじゃん!溶けちゃうよ!!」
男「知ってる、言ってみただけ」
女「も~、男君ったらそんなに私の裸が見たいの~?フケツゥ~」
男「そうか、そんなに入りたいか」
男「よしこっち来い、投げ入れてやる」
女「やだ!ウソ!ウソだから!ふざけただけ!!」
男「……ったく」
女「さ、寝よ寝よー」
男「おい」
女「?」
男「そこ俺のベッドなんだけど」
女「知ってるよ?」
男「ならどけよ」
女「え~、いいじゃ~ん一緒に寝ようよ~」
男「……布団で寝る」
女「私も!」
男「………ならベッドで」
女「私も!!」
男「ハァ………もういい、ちょっと横寄れ」
女「♪」
男「…う…ん………」
(朝、か)
女「………スー………スー」
男(改めて見てみても、普通の人間と変わんないよなぁ)ソッ
(でも、冷たい……やっぱり『雪女』なんだな)
女「むぅ………?」
男「あ、起こしちゃったか」
女「んー………どうしたの?見惚れてたの?」
男「まぁ、そんなとこだ」
女「ウソウソ、怒んないで!」
女「……って、え?ホント!?」
男「嘘に決まってんだろ、バカ」
女「むっ!許さないよ!乙女心を弄んで!!」
男「あ、そうだ、今日買い物でも行くか?」
女「!行く!どこ行くの!?デート!!?」ガタッ
男(乙女心ちょろすぎるだろ)
女「おっ買い物~おっ買い物~♪」
男「こら、あんま離れんなよ」
女「フフッ、心配しなくても私は男から離れないよ~」
男「………」
女「?どーしたの?」
男「…なんでもないよ」
女「え~、怪しいな~」ジーッ
男「あ、アイスコーナー」
女「!あいす~~~!!」ダッ
男(……なら、ずっと………)
えー…すいません、休養で今日はここまでです
書き溜めがあまりにも早くなくなるので焦ってます
これは基本的に男と女がイチャイチャするだけのssです
不定期になると思いますができるだけハイペースで投下するよう心がけます
支援かな
>>12-14
やる気が出る素敵な俳句ありがとうございます
では、再開
男「やっぱり雪見大福だよな」
女「えー…私爽の方が好きなんだけど」
男「いや爽もおいしいけど雪見にはかなわんな」
女「じゃあ雪見大福のどこが好きなの?」
女「味はどっちもバニラで、量は爽が多いじゃん」
男「わかってないな、雪見大福はもちの部分がメインなんだぞ?」
女「もち?」
男「ああ、あのもちの食感がたまらないんだ」
女「もちもちってしてるのが好きなの?」
男「大好きだ」
女「じゃあ、ハイ」グイッ
男「……ん?」
女「触ってみて、ほっぺた」
男「ほっぺた…?」
女「早く、ほら」
男「………」ソッ
ムニッ
男「!………!!」モチモチ
女「ほお?もひもひえひょ?」グニグニ
男 ピタッ
女「ほえ?男?」
男「…ちょっとこっち来い」
女「?」スッ
男「よし」ギュッ
女「わ…!」
男「これくらい近い方が触りやすいからな」ムニムニ
女「うー……ほんあいほうははあうおは…///」ムニムニ
(こんなに効果があるとは…)
男「え?なんて?」グニグニ
女「あんえおあいー///」ムニュムニュ
女「男!起きて!!」ドタバタ
男「ん………何?」
女「見て見て、雪だよ!」
男「…おお、ホントだ」
女「初雪だよ!初雪!!」
男「いやお前の山はとっくに雪降ってるだろ」
女「そーじゃないよ、男と一緒に見る初雪が嬉しいの」ニコッ
男「う…そうか」
女「ホラ、早くしないと雪とけちゃうよ」
男「よし、久しぶりにやるか!」
女「そりゃっ」ポイッ
男「うおっ冷てっ…仕返しだ!」ブンッ
女「フッフッフー、雪女に雪が効くかっ!!」スウッ
男「おい!お前ずるいぞ!!」
女「やーいやーい!いつものお返しー!」
男「…くらえっ」ポイッ
女「うわっ!何コレ!?」ベチャッ
男「泥」
女「や、ちょ、汚い!」
男「毎年やってんのに何も対策してない訳ないだろ」ポイッポイッ
女 ムスッ
男「すいませんでした(棒」
女「許してやんない」
男「俺が悪かったです、やり過ぎました(棒」
女「ほんとだよ!やり過ぎにも程があるよ!!
何で雪合戦で泥まみれにならなきゃなんないの!?」
男「いやもーホントすいませんでした(棒」
女「まったく………本当に反省してる?」
男「ハイもう二度としません(嘘」
女「………まぁ反省もしてるようだし、しょうがないから許してあげる」
男「うーっし、昼飯にすっかー」
女「切り替え早すぎない!?」
男「ん~寒っ」ブルッ
女「え~?まだまだ冬はこれからだよ?」テクテク
男「そうだな……………女、今年は」テクテク
女「あ!着いたよ!」ダッ
男「あ、おい……」
女「は~や~く~!!」
男「まったく…」
女「懐かしー」ピョンピョン
男「一昨年だったか?」
女「うん!私と男のー思い出の場所ー♪」クルクル
男「ここは全然変わんないな」
女「だってまだ二年しか経ってないんだよ?」
男「ああ、そっか」
女「もうボケ始めてんの?」
男「うっせ」
男「いやー…」
男「…来てはみたもののすることが無いな」
女「じゃあ遊ぼうよ!せっかくだし」
男「いいけど、何するんだ?」
女「うー…ん」
男(何も考えてなかったんだな)
女 スイーッ
男 スイーッ
女 スイーッ
男「ちょっと待て」
女「?」
男「これは追いつけない」
女「何で?ほら、早く私を捕まえなきゃ」
男 スイーッ
女 スイーッ
男「なあ」スイーッ
女「なーに?」スイーッ
男「無限ループって知ってる?」スイーッ
女「?」スイーッ
女「ねえ」
男「ん」
女「同じ道でもね、行きと帰りだと違ってみえるよね」
男「…どんな風に?」
女「行きはワックワクしてキラキラー…って感じ」
男「ふむ」
女「帰りはズッッシリでショボーン…って感じ」
男「ほう」
女「わかる?」
男「ぼやーっとわかる」
女「ならよかった」
男「っていう事は今はズッッシリでショボーンなのか?」
女「んーん、違うよ」
男「え?だって帰り道は…」
女「男といるときはね、いつもワクワクドキドキするの!」ニコニコ
男「…ふーん」
女「……変?」
男「いや、全然」
男「俺も女といるとすごくドキドキするから」
女「そうなの?」
男「おう」
女「何かわかんないけど嬉しい!」
男「…俺もだ」
今日はここまでです
できるだけ毎日更新しようと思います
紫煙かな
期待かな
男「さぁーて…」
(何しようか…あの公園は昨日行ったし、ちょっと勇気出してデートでも…)
女「ね、ね」
男「ん?」
女「旅行行かない?」
男「旅行!?」
女「そう、旅行」
男「…何処に?」
女「私んち!!」
男「」
男「さて、一っ飛びでやって参りましたこちら極寒山」
女「あっというまー!」
男「寒さ厳しい日本の秘境」
女「私の故郷!」
男「妖怪が出ると言われている名所」
女「妖怪の里!」
男「ってか寒い!超寒い!!」ガタガタ
女「そりゃそーだよーあったかかったら困っちゃう」
男「うう~、しまった侮ってた」ガタブル
女「さて、まずは挨拶に行こうか」スタスタ
男「おい待て!置いてくな!」ガタガタ
長老「おや、もう帰って来たのかい?」
女「うん!ただいまー!」
長老「はいおかえり、む?そっちの子は…」
男「あ、えと、男っていいます、人間です」ガタガタ
女「私の友達だよ」
長老「男じゃと!!?」
男 女 ビクッ
長老「それは大変じゃ!皆を集めい!!」
男(おい、やばいぞ!やっぱまずかったんじゃないか!?)ヒソヒソ
女(え~大丈夫だと思ったんだけどな~)ヒソヒソ
ざわざわ
「おい何事だ?」
「どうした長老そんなに慌てて」
男(何か滅茶苦茶集まってきたぞ!?)ヒソヒソ
女(ホントだー、あ、女友ちゃんだー♪)キャッキャ
男(呑気にしとる場合か!!)ヒソヒソ
長老「男くんよ!!」
男「!ハ、ハイッ!!」ビクビクッ
長老「酒は好きか?」ニイッ
男「………え?」
ドンチャン ドンチャン
「飲め飲めー!!」
「こんな山奥に客なんてなあ!!」
「しかもあの男だぜー!?」
男「………凄いな」
女「大迫力だねー、皆いつもよりはしゃいでる」
男「それにしてもこんなに歓迎されるとは」
女「ね?来て良かったでしょ?」
男「ああ、良かったよホント」
男(皆気さくで良い人ばっかり…人間なんかよりよっぽど…)
女友「女ちゃーん、ひっさしぶりー!」
女「あー!女友ちゃーん!」
男「友達?」
女「そう!私がお世話になってる子」
女友「この人が噂の男くん?」
男「噂………になってるんですか?」
女「あわわわわわわ!!!!そ、その話は後でね!行こ、女友ちゃん!」ガシッ
女友「アーレー」ズザザザザザ
男「………行ってしまった」
「よお男、のんでっか?」ドスッ
男「?………ッ!」
雪男「ガッハッハ!そうビックリすんなや!!
まあ怖がられるのにはなれてっけどよ!!」
男「……ほえー……雪男……」
雪男「そりゃおめえ雪女がいんだから雪男もいんだろ!?」
男「あ、それもそうか」
雪男「ガッハッハ!おめーおもしれーな!!」
男「?そうですか?」
(なんか気に入られたっぽいな)
男「それにしてもコレすごいですね」スッ
雪男「あ?………おー!それおめー誰に貰ったんだ?」
男「長老さんからですけど、コレ持ってると全然寒くないんです」
雪男「だろうな!そりゃ長老の妖力がこもった護符だ!!」
男「護符………お守りみたいなもんですか?」
雪男「まーそんなとこだ!長老はいろんな妖術使えっからな
体温くらいどうにでもなんじゃねーか?」
男「へー……凄いな」
雪男「おめーそれを貰ったっつー事は相当長老に気に入られてんだな」
男「そうなんですか?」
雪男「そりゃおめー滅多に無いことだぞ?」
雪男「ソレ一個作んのにものスゲェ力使うんだからな」
男「マジですか!?…大事にしなきゃ」
男「でも何でこんな凄い物を俺にくれたんですかね?」
雪男「あ?そりゃおめー…アレだよ」
男「アレ?」
雪男「………」
男「…雪男さん?」
雪男「………」
男「おーい」
(もしかして…)
雪男「まぁアレだ!女に感謝しとけ、な!!」
男「え?…女に?」
男「それはどういう」
雪男「あっ!酒が切れちまった!!ちょっと取りに行ってくらぁ!!」ダッ
男「え、あっ………」
男(わからなかったんだな、きっと)
男「うー…」フラフラ
男(頭がボーっとする…普段飲まないからなー)
「おにーちゃん、おにーちゃん」
男(ん…なんだ?今誰かに呼ばれた気が…)
「おにーちゃん、おにーちゃん」
男(!やっぱり……こっちの方から)チラッ
「!!」バッ
男(…何かいた、まぁ十中八九妖怪なんだろうけど)
男(今呼ばれてたよな…ちょっと行ってみるか)
男(確かこっちに…)
「!あー、おにーちゃん!」
「来て…くれた……」
「よかったね~」
男「えーと…君達は?」
雪ん子1「ぼくたち雪ん子っていうんだよー!」
雪ん子2「私達…雪が…好き…」
雪ん子3「大きくなったら~女お姉ちゃんたちみたいになるの~」
男(なるほど…子供の雪女ってことか)
男(そういえば昔の女もこんな感じだったっけ)
男「それで、俺に何か用かな?」
雪ん子1「うんー!」
雪ん子2「私達…と…」
雪ん子3「あそんで~!」
男「え、遊ぶの?俺と?」
雪ん子1「そうだよー!」
雪ん子2「ダメ…ですか…」
男「ん、いいけど…じゃあ遊ぼうか」
今日はここまでです
おつ
この二人いつからの付き合いかな?
>>47-48
期待を裏切るようで申し訳ありませんが
幼馴染とはいえません
その辺の設定多少複雑なので…
最後辺りにチラッとでてきます
雪ん子1「やったー!」
雪ん子3「じゃあ~何して遊ぶ~?」
雪ん子2「雪…合戦…」
雪ん子3「さんせ~い」
雪ん子1「よーっし!じゃあ雪合戦ね!」
男(それは非常にマズイ気がする)
雪ん子2「チーム…分け…は…?」
雪ん子1「きまってるだろー!おにーちゃん対ぼくたちだよ!」
男「えっ!?いやちょっと」
雪ん子3「よ~い…ど~ん」グオッ
雪ん子1「それっ!」ゴッ
雪ん子2「…え…い…」ビュオオオオ
男「うっ、うわあっ!!」
雪ん子1「それそれそれー!!」ゴオオオ
雪ん子3「う~おに~ちゃんよわい~」ヒュウウウウ
雪ん子2「手加減…いりません…」ズオオオオオ
男(ちょ…雪…やば……息が……できな…)
「くぉらーーーー!!!!!」
雪ん子1「あっ!女友お姉ちゃんだ!!やっべー!」ダッ
雪ん子2「逃げ…なきゃ…」タッタッタ
雪ん子3「うわ~」タタタッ
男(うう…助かった…?)
女友「大丈夫!?」
男「ゲホッゲホッ…なんとか…」
女友「ごめんねーあの子達も悪気は無いと思うんだけど…後で懲らしめとくから」
男「いえ…俺の不注意ですんで」
女友「うーん」
女友「まあ君すごい噂になってるからねー、ちょっと興奮しちゃったんだろうね」
男(あ、そういえば俺噂になってるってさっき…)
男「……あの、俺何で噂になってるんですか?」
女友「あー……ちょっと長くなっちゃうんだけど」
男「いいですよ、教えてください」
女友「うん……あの子、女ね」
女友「生まれる前にいろいろあってお父さんが亡くなってて…
だからずっと片親だったんだけど」
男「…はい」
(…いきなりそんな重い話になるとは…)
女友「……お母さんも、二年前に亡くなってるの」
男「あ…それは、知ってます」
女友「…ふーん…知ってたんだ」
女友「………」
男「あの、女友さん?」
女友「あ、ゴメンゴメン、随分打ち解けてるんだなーと思って」
女友「えーと…それで、凄いお母さんっ子だったからかな
ショックで性格180度変わっちゃってさ」
女友「以前の明るさが嘘みたいに暗くなってて」
男「そう…ですね、初めて会った時は今ほど明るく無かったと思います」
女友「私達も何とかしようと頑張ってあれこれ試したんだよ?
だけど、何やっても無反応だったんだ」
女友「で、その年の冬のある日に急にいなくなっちゃって
村の皆総出で必死に探しても見つかんなかったの」
女友「あの時は大変だったんだー」
女友「『私がちゃんと見てなかったから』
『わしがあの子に構ってやれなかったから』
って言って皆自分のこと責めて」
女友「そしたらその次の日何も無かったみたいに帰って来るんだもん」
女友「それで『どこ行ってたの!?』って怒ったら
『男のとこー』って笑顔で言うんだよ?」
女友「もう信じられない」
男「………」
女友「………でも心の底から、無事で良かったって思った」
男(女友さん…本当に女のことを大事に思ってるんだな)
女友「それから女のやつ毎日毎日
『男がねー』とか『来年はねー』とか言うんだもん」
女友「それもとびっきりの笑顔で」
女友「そりゃ有名になるよ、長老なんか『村の宝を守った者』って言って
この村の英雄にしちゃったし」
男(あ、だから気に入られてたのか…)
女友「…実を言うと、私凄い悔しかった」
女友「あの子を一番見てたのは私だし、あの子の一番の親友も私なのにって」
女友「でもさ、私じゃダメなんだよ」
女友「あの子の笑顔を取り戻したのはアナタで、私じゃきっと無理だった」
男「………そんなこと」
女友「あるよ」
女友「あの子はアナタじゃなきゃだめなの、だから………あの子を頼んだわよ」
男「…わかりました、任せてください」
女友「よし!いい返事だ!!」
女友「あー、話しすぎてのど渇いちゃった」
男「あ、何か取ってきましょうか?」
女友「ほんと?じゃあ水お願い」
男「はい」タッタッタ
女友「………これからやってくる辛さを、どれだけ和らげる事ができるかは」
女友「あなた達二人しだいなんだよ」
翌日
雪ん子1「おにーちゃんもう帰っちゃうのー?」
雪ん子2「……がっ…かり…です…」
雪ん子3「また遊ぼうね~?絶対ね~?」
雪男「ガッハッハ!元気でな!!」
長老「男くんには感謝してもし切れん!!」
女友「女ー!ちゃんとやる事やるのよー!!」
男「……あっというまだったな」
女「そーだね、ちょっと寂しいかも」
女「んにゃー!ただいまーっ!!」ゴロン
男「帰って早々寝転ぶなよ」
女「あ~やっぱ家が一番だ~~っ」
男「お前の家はさっきまでいた所だろうが」
女「えー………私はコッチも我が家だと思ってるんだけどー」
男(意味解って言ってんのかコイツ)
女「むー……むー……むー……」ゴロゴロゴロ
男「おい、転がんな、危ない」
女「えへへ~止めてみろ~」ゴロゴロゴロゴロ
男 ギュッ
女「!………はうぅ………///」
男(やべ………つい勢いで……)ギュウウ
男「………ん………」パチッ
男(朝……そして俺の腕の中には女が……何故………!?)
男(あ、昨日あのまま寝たからか)
女「……ん……んー…」パチッ
男「お、起きたか?」
女「むにゃ………おは…よ……」ギュウウウウウウッ
男「おう…おはよう」
男(あーやばい、めちゃくちゃ可愛い)
男(………ずっと、このままだったらいいのにな……)ギュッ
女「………スー……スー……」ギュウウ
今日はここまでです
今回は少し重たい話になってしまいましたね
あと、前述したように二人の過去編は最後の方で出す予定です
明日からはいちゃラブの日々に戻るので、ご心配無く
乙
>>64乙ありがとうございます
では再開
女「♪~♪~」
男「ずいぶん機嫌良いんだな」
女「うん!だってデートだよデート!!」
男「そっか、まあ前のはスーパー行っただけだったもんな」
女「あれはあれで楽しかったけどやっぱり本格的なデートの方がいいね!!」
男「そうだな………あ、どっか行きたいとこあるか?」
女「えーとねー………映画館!!」
男「ん、定番だな」
男(おお………これ…凄く良い話だ)
男(余命一年の主人公と、それを知ったヒロインの純愛ラブストーリー…)
男(女はどんなこと考えてんだろ)チラッ
女 ギンギン
男(おおう……思った以上に見入ってる、半端ない集中力だ……)
女 ギンギン
男(…疲れないのかな?まあ何にせよ楽しんでくれてるみたいだからよかったけど)
女「……グスッ……ヒック……」
男「そんな泣くなよ」
女「だって……グスッ…主人公死んじゃったじゃん!」
男「あー………」
女「二人は引き裂かれちゃダメなんだよぉ……グスッ」
男「………」
女「………ヒッグ……どしたの?……グスッ」
男「いや、何でもない」
女「うう……いっぱい泣いたからお腹空いちゃった」
男「よし、飯行って元気出すか!」
女「おー!!」
女「男ー」
男「なんだ?」
女「男って初恋したことあるー?」
男「え?初恋?」
女「初恋」
男「急にどうし…」
男(…ああ、こないだの映画に影響されたな)
男(確か主人公とヒロインがお互い初恋の相手だったし)
女「ねーどうなのー?」
男「…ああ、あるよ、初恋」
女「!!!!」
男「どうした?誰だってそれくらいあるだろ」
女「………」プルプル
男「女?お前もしかして初恋したことないのか?」
女「っ…もう知らない!ばーか!!」ダッ
男「………あれ?」
女「クーリスマスが今年もやーって来るー」
男「楽しっかった出来事をっ」
女「消し去るようにー………ダメじゃん!!」
男「間違えちった」
女「もーしっかりしてよねーせっかくノリノリなんだから~♪」ルンルン
男「んー………ホントに家でよかったのか?」
女「?」
男「いや、やっぱりクリスマスなんだしさ」
男「どっかレストランとか行ったほうが……」
女「いーの!レストランもいいけど家でのんびりする方が好きだから」
女「…それに私は男と一緒にいれたらどこでもいいの」
男「そう、か」
女「ね、男は?」
男「?」
女「男はレストランとかの方が好き?」
男「あー…お、俺もお前と一緒だったらそれでいい…いや、それがいいな///」
女「えへへ~///」ニヤニヤ
女「……スー……スー……」
男「寝るの早いな…ま、あんだけ騒いだら疲れるよな」
男「!………そうだ」
男 ゴソゴソ チラッ
女「………スー………」
男 ソッ
男「これでよし…おやすみ」
女「うー……ん…朝、か…」パチッ
女「…まだねむた……い……!!!!!?」
男「ん………おはよ、………どした?」
女「え!あ!ちょ、コレ!!見て!?」バッ
男「おー……指輪……」
女「うわああああ!!!すごい!!すごい!!」
女「クリスマスプレゼントだ!!!サンタさんかな!!?」
男「あーそうだな、お前が良い子にしてたからだなきっと」
女「なーんて…ウソ」
男「え?」
女「男ありがとぉ!!!」ガバッ
男「うわっ」ドサッ
女「すっっっっっごく嬉しい!!一生大切にする!!!」ギュウウウ
男「………おう」
(ばれてたか、去年まで上手くいってたんだけどな)
女「男っ!」
男「ん?…………!!?」
女「………ん………」チュウウウ
男「~~~~プハッ………お前、急に」
男(俺ファーストキスだったのに………ってかコイツもか、多分)
女「私からのクリスマスプレゼントだよ!!///」ニコッ
男「う……///ありがと、嬉しいよ」
女「えへへ~」
女「………ん!………ん!」
男「?」
女「お返しちょうだい!お返し!」
男「はぁ?……お前お返しって……」
(上目遣いで目瞑ってるってことは…さっきの…だよ、な)
女「いーから!早く~!それとも、私とするの……イヤ?」
男「あ~………いや、全然……」チュッ
女「……あうぅ……/////」
男(……コイツどんどん積極的になってないか?)
女「えへへ~もーいっかーい///」トローン
女「あけましておめでとーございます!!」
男「あけましておめでとう……ってこんなとこで大声だすなよ」
女「うー…こんな時間なのにスゴイ人混みだね」
男「初詣だからな………ほら」スッ
女「ん、お守り?」
男「そう、さっき買って来た」
女「縁結び…どういう意味?」
男「良いご縁が有りますようにってこと」
女「へー…あー…でももう男と出会ってるしなぁ」
男「知り合いだったらより強い絆をもてるようになるんだと」
女「ほうほう!あ、男も買ってるよね!?」
男「ん、おそろいだぞ」
女「ホント!?嬉しい~!」ギュッ
男「……うぅ///」
(…抱きつかれるのは嬉しいけど…周囲からの視線が痛い…)
女「♪」
女「おっみっくじ♪おっみっくじ♪」
男「お、大吉だ」
女「どれどれー………あ!私も大吉だ!!」
男「いっしょか」
女「今年も良い一年になりそうだ!」
男「そうだな」
男「…さて、帰るか」
女「そだねー」
男「あ、そういえば何てお願いしたんだ?」
女「!………男とずっと一緒に居られますように…だよ」
女「………」
男「女?どうした?」
女「!な、なんでもない!そうだ、男は何てお願いしたの?」
男「女とずっと一緒にいたい…だけど」
女「これもおそろいだ!」
男「ああ………叶うかな」
女「ん~………叶うと、いいね」
男(………なんか、おかしいな、女らしくないって言うか…)
男「あーやっぱり正月はコタツにミカンだな」ムキムキ
女「私はコタツの良さわかんないけどね」ムキムキ
デデデーン エンドウ・ハマダ アウトー!!
男「うわーケツ痛そう」
女「男ー、ハイ、あーん」スッ
男「ん、あー…ん」モグモグ
女「次私ね」
男「ハイハイ、ほれ」
女「あーん」パクッ
男(…なんか良いな…こういうの)
女「…はー………」ゴローン
女「男ー」ゴロゴロ
男「んー?」
女「私ねー……何かねー………スゴく幸せだー……」
男「俺もだ」
女「あー…またおそろいだねー…えへへ」
男「そうだなー…」
女「……んー…私ー……」
男「………何だよ」
女「………やっぱなんでもない」
男「………そうか」
男 女「「あー」」
男「暇だ」
女「暇だね」
男「いやー正月気分が抜けないっていうかなー」
女「ねー」
男「何か面白いことねーかなー」
女「うー…」
男(とは言ったものの、最近こんな毎日が良いなって思い始めてんだよな)
男(何をする訳でもなく、ただ女とくだらない事話して)
男(ごろごろして、ただそれだけなんだけど)
男(それが良いっていうか…うーん…俺何か変だな)
女友「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん」
男 女「「!!!!??」」
女友「さーて…おっ、上手い事いった!成功だ!!」
男「…え、えーと…確か」
女「…女友ちゃん…!?」
女友「いえっす!!」
今日はここまでです
このペースだと後1~2回で終わりそうです
それまでお付き合いいただけると嬉しいです
ええな
和む
…なんか寂しいけど
すごい癒されるから個人的には続けて欲しいけど…
終わるなら頼むから二人を幸せにしてやってくれ
女「なんで!?なんで来たの!!?」
女友「えー…そんなに嫌がらなくてもー」ショボン
女「嫌がってないよー?ただ驚いただけー」
女友「……ほんと?」
女「ホントホント!私が女友ちゃんを嫌がるはず無いじゃん」
女友「女ぁ……グスッ…一生友達でいようね」ウルウル
女「親友、ね!」ガシッ
男「なんだこれ」
女「それはそうと、何しに来たの?」
女友「あ、そうだった」
女友 ジーッ
男「?」
女友「えーっと…ちょっとガールズトークするから、男君は―」
男「…ああ、出てけばいいんですか?」
女友「いやー悪いねー」
男「いえ、じゃあ終わったら呼んでください」ガラッ
女「ごめんねー」
女友「さて、本題に入ろうか」
女「本題?」
女友「アンタ、男君にあの事言ってないでしょ」
女「!………あの事って?」
女友「誤魔化そうとしてもダメだよ」
女友「アンタの事は何でもわかるんだから」
女「…さすが女友ちゃん」
女友「で、どうすんの?先延ばしにしても余計に―」
女「わかってるよ、早く言った方が良い事くらい…」
女「…でも…」
女友「考えたくないんでしょ?」
女「!」
女友「これからの事を考えると、怖くて、寂しくて、だから」
女「……さすが…女友、ちゃん」
女友「言ったじゃん、何でもわかるんだよ、私は」
女「………」
女友「だからアンタのこの判断が間違ってるって事もわかる」
女「…そうだね、いつだって女友ちゃんは正しかった」
女「きっと今回もそうなんだろうね」
女友「なら…」
女「でもダメだよ、男には最後まで言わない」
女友「!…どうして」
女「女友ちゃんは私の事は何でもわかるかもしれないけど」
女「男の事は何もわからないよね」
女友「ッ…」
女「私には、わかるよ」
女「もし私が男に言っちゃったら」
女「たとえ危険な事や無茶な事をしてでも」
女「男はきっと何とかしようとするよ」
女「私は、男にそんな事させたくないの」
女友「女…」
女「だから、ね?」
女友「………わかった、アンタに任せる」
女友「ただ、絶対に後悔しないようにしなよ」
女友「キツイ言い方かもしれないけど…」
女友「…もう、最後…なんだから」
女「…うん…ありがとう」
女友「…よし、男君!もういいよー!」ガラッ
男「……あ、終わっ―」
男「―何で二人とも泣いてるんだ?」
女 女友「「なんでもないよ!!」」
男「……そうか」
(詳しくは聞かないほうがいいかな)
女「えへへ~」
女友「うふふ~」
女友「たっだいまー」
雪男「おう!お帰り!!」
長老「お帰り」
長老「…して、女ちゃんは何と?」
女友「んーと、ダメでしたー」
雪男「ダメっておめえ」
女友「説得できませんでした!最後まで彼には言わないそうでっす」
長老「むぅ…女友ちゃんでダメなら、わし等でも無理じゃろうのう」
女友「すいませんっ」
長老「いや、いいんじゃよ、あの子が自分で決めた事なんじゃろ?」
女友「はい、あの子は私の予想以上に男君の事を想っていました」
長老「そうじゃったか…」
長老「…なら辛さも我々の予想以上…じゃな」
女友「はい、きっと」
長老「ふむ……」
長老「………」
雪男「おめえ…大丈夫か?」
女友「…へ?私?」
雪男「おお、すげえ暗い顔してっぞ」
女友「うーん…」
女友「…気付いちゃったからかな」
雪男「お?」
女友「私は女の事を何でもわかるから」
女友「辛いだろうなって事ももちろんわかるけど」
女友「私ではその辛さをどうにもできないんだ…って」
雪男「…おぉ」
長老「……女友ちゃんや」
女友「はい?」
長老「ちょっとその事について話があるんじゃが―――」
男「女ー」
女「なーに?」
男「今日の晩飯何がいい?」
女「鍋!鍋がいい!!」
男「鍋かー…何鍋?」
女「キムチ!」
男「やっぱりか」
女「キムチ鍋大好きだもんっ」
男「そういえばお前の山じゃ作れないんだっけ?」
女「そうだよー」
男「女友さんに買ってきて貰えば?」
女「だっていつも迷惑かけてるのに『キムチ買ってきて』」
女「なーんて言えるわけないじゃん」
女「…あと――」
男「あと?」
女「――こっちは…何があるかわかんないし」
男「?言うほど危険か?」
女「危険だよ」
女「…とっても」ボソッ
男「まあ最近は何かと物騒だからな」
女「そうだね」
男「女、キムチ持って帰るか?」
女「ホント!?いいの!!?」
男「ああ、別にキムチくらい」
女「やったー♪これで山でもキムチ鍋が作れ、るー…」
女「………」
男「女?どうかしたか?」
女「ううん…なんでもない」
男「…そうか」
男(でも、あからさまにテンション下がったよな…)
女「………」
女(帰りたく…ないよ)
では、再開
――――
――
女「ねえ、男…」
男「うるさい」
女「…もう帰らなきゃ」
男「…そんなこと、わかっ――…ら、ない」
女「時間、きちゃった…男…楽しかったよ」
男「いやだ」
女「私だって、イヤだよ」
男「なら、帰るなよ!…離れたくない…もっとお前と一緒にいたいんだよ!」
女「…男に、話してなかった秘密があるんだ」
男「………秘密?」
女「うん、私ね、生まれつき体弱いの」
女「私達雪女は熱が弱点なんだけど」
女「私はこの弱い体のせいか暑さに特に弱くてさ」
女「だから、寒くなる冬にしか降りて来られなかったんだ」
男「…そう、だったのか…だから…帰らなくちゃ……そうか…」
女「………」
男「…なら、しょうがないか…」
男「そりゃ…出来ればずっと一緒に居たいけど、体の方が大事だしな」
女「………」
男「一年、我慢すればいいんだもんな…うん、たった一年だ」
女「………」
男「…女?」
女「男!…私も、離れたくないよ…!!」ギュッ
男「わっ…お、おい!急にどうしたんだ?」ヨロッ
男「また来年会えるだろ?」
男「だからそのときまで」
女「違う…!違うのっ……!!」
男「え…?違うって…」
女「私は、もう降りて来られないの!!」
男「…は?え?…ウソ…だろ…なんで……?」
女「雪女の…成長の早さ知ってるでしょ?」
男「…ああ、成人するまではもの凄く早くて、その後はピタッと止まるんだろ?」
女「そう、私、来年成人しちゃうんだ」
女「そうしたら、もう降りて来られないのっ…」
男「っ…だから、なんで…!」
女「私も、詳しくは解らないけど…」
女「…私の…お父さんも、私と同じで体弱かったんだって」
女「お父さん、成人してからずっと山降りてなくて
ある日村の代表で人間の街に降りなきゃならなくなったの」
女「皆体質の事知ってたけど子供の時は平気だったし大丈夫だろうって」
男「………」
女「お父さんも、たまには街に下りてみたいって言って」
女「……それで行って、それっきり帰って来なかったんだって」
男「っ…で、でも、それは帰って来てないってだけで…」
男「死んだかどうなんて解らないだろ!?」
女「雪の一族は死んだ後は雪になるんだ、だから、体が無いのは当たり前なの」
男「!………で、でもそれとこれとは………」
男「……ま、まさか…!お前の父親が…ってことは…お前も!?」
女「うん…多分ね、この弱い体は遺伝だから」
女「大人になったら私も来れなくなるんだと思う」
男「そんな…!何でもっと早く―――」
女「私だって、言いたくなかったんだもん!」
女「言ったら、余計悲しくなるって思って」
女「それに…言ったら男きっと無茶したでしょ!!」
女「だからっ…!!」
男「―――っ」
女「…ずっと、男と居たかった…」ギュウ
女「もっといろんな事したかった…!」ギュウウ
男「女…」
男「俺も…もっとお前と、ずっと…!」スウッ
男「………え?…触れ……」スカッ
女「!」
男「くそっ!なんで……!ここに居るのに!!」ブンブン
男「なんで触れないんだよっ…!!」
女「…そっか」
女「もう、お別れなんだね…」
男「…うっ…うぅ…」
女「男…泣かないで」
男「うう…女!女ぁっ……!!」
女「…大好きだよ、男」
女「ずっとずっと愛してる」
男「!女、俺もだよ!俺も大好きなんだ!!」
男「俺も…愛してる!!」
男「いつまでもお前の事っ!だからっ…!!」
女「男…ごめんね…私は、もう…」
女「…………バイバイ……―――」スゥッ
男「女!待て!待ってくれ!!」
男「…っ」
男「…ぅ…うわああああああああ!!!!!」
去年までは こんなに辛くなかったんだ
きっと
胸が熱くなって
心が苦しくなって
彼女と過ごす時間が永遠に続けばいい
ずっとずっと
いつまでもいつまでも
一緒にいたいと願う
この気持ちを
恋だと気づいていなかったからだろう
『大丈夫、もとの生活に―――』
『いつか、またアイツに―――』
そんな思ってもいないことを自分に言い聞かせ
平常心を保とうとする
そして 気付いた
俺の心にはいつも彼女がいた
俺にとって彼女はそれだけ大きな存在だったんだ
会いたい
会いたい
彼女が 愛おしい
でも 無理なんだ
いくら涙を流しても
彼女は帰って来てくれないし
いくら愛を叫んでも
もう彼女は答えてくれない
こうして俺の
たった一冬の初恋は終わった
滑る 寒い 乾燥する
いろいろ凍る バカがはしゃぐ
宿題が多い カップルが増える
そして―――アイツが居なくなる
だから 冬は大嫌いだ
おしまい
おつ
乙~
寂しさが身に染みるエンドだね
初ですと……
待ってる…
二年前 冬
先生「えー…であるからして―――」
男 カリカリカリ
先生「―――となります」
男(……ふう、もうすぐ受験だし気を引き締めないと)
男(父さんにこれ以上負担かけるわけにはいかないからな)
prprprprpr
ガチャ
先生「はい、三年一組です……はい、男君ですか?…はい」
男「?」
先生「男、今すぐ職員室に行きなさい」
男「…はい」
(職員室?…何でだ?)
友「お前なにやらかしたんだよ」ニヤニヤ
男「うっせ、何もやってねえし」
ガラッ
男「失礼しまーす」
教頭「あ、男君!早く××病院に――!!」
男「―――え?」
――――
――
男「そう…ですか、今夜が…やま」
ベッドに横たわっている父の周りには、たくさんの機械が置かれている。
男「父さん…なんで……」
男「俺、頑張ってんだよ…父さんに恩返ししなきゃって」
男「今まで迷惑かけてばっかだったからさ…」
男「…なのに…なんでだよ…!」
ピーッ ピーッ ピーッ ピーッ
男「!!!っ………な、ナースコールッ」バッ
男「頼む…死なないで…」
「どうしました!?こ、これはっ!!」
男「もっと…話したいこといっぱいあるんだよ…」
男「約束しただろっ…もう少ししたら二人で飲みに行こうって」
男「俺が一人前になるまでは死なないって!」
「脈拍が…!電気ショックだ!!」
男「…な!死ぬな!!お願いだからっ!!」
「…血圧が…もう…見守ることしか…!」
男「そんな!頼むよっ!!神様!仏様!!誰でもいいから!助けてっ…」
ピーーーーーーーーッ
男「ッ……………」
――――
――
男「…本日はお集まりいただき―――」
男「父もきっと天国で―――」
――――
――
「男君大丈夫?」
男「あ、おばさん…何から何まで手伝って貰っちゃって…」
「いいのよ、辛い時はいつでも甘えなさいね」
男「おばさん…」
「そうだぞ、お前はまだ高校生なんだから、大人に頼っていいんだ」
「男君、これから大変だろうけど、アイツの分までしっかり生きてくれ」
男「……皆さん……グスッ」
「ほら、後片付けはわしらにまかせて、もう寝なさい」
男「……ありがとう……お言葉に甘えます」ガラッ
男(父さん…父さんはもう帰って来ないんだ)ボフッ
男(…いや、俺がくよくよしてたら父さんも安心して逝けないよな)
男(きっと大丈夫だ、皆良い人ばっかりだし)
男(俺を引き取るのも嫌がってない)
男(…頑張るから、父さん)
男(見守っててくれよ)
――――
――
男「…スー…スー…」
男「……………ん…」パチッ
男(目ぇ覚めた………おい、まだ夜中じゃないか…)
男(……何でこんな時間に…)
男(……いっぱい泣いたからかな…何か喉渇いた)
男「…水のもう」ムクッ
男(あ、居間がまだ電気ついてる…声も…皆まだ起きてるのか)ソーッ
「だからあの子を引き取るのは家だって!!」
「何言ってんの!この葬式の準備やら家事やら全部アタシが手伝ったんだよ!!
一体何の為にこんなめんどくさいことしたと思ってんの!?」
「知るかよ!俺の家はここから一番近いんだ!!アイツもうちが気に入るさ!!」
「いや家だ、一番関係が近いんだぞ!なんせ兄の子だからな、
残念だったな遺産目当ての屑ども!!」
男(な……なんだよ……こんな…嘘だ…)
「な!どうせアンタも金だろ!!」
「そうよ!あんな子遺産以外使い道ないじゃない!!」
「うっせーよ皆金だよ金!んなことわかってんじゃねーか!!」
バアアァァン!!!
「「「「「!!!!!」」」」」
男「………」
「あ……男…君」
「き、聞いてたの…!?や、やーねぇ盗み聞きなんか」
「…なあ男君違うんだ」
男「…もういいです!」
男「父の死を悲しめないあなた達のところになんか行きません!!」
「そんな、聞いてくれ」
「そうよ…誤解よ」
「僕らは君の為を思って」
男「っ…ふざけんな!!」ダッ
「あっ…」
「!どこ行くの!?待ちなさい!!」
「なんだまったく…こっちが下手にでていれば…」
男(皆、父さんの遺産目当てだったのか…!酷い…最悪だ……なんで…)
俺は心の中でありったけの非難の言葉を大人達に浴びせながら、
あてもなく夜道を走る。
走って
走って
走り疲れて、ふと近くにあった公園のブランコに腰掛ける。
男(くそ……大人は汚い…)
俺は絶望した。
信じていた大人達に裏切られ、これからどうするかなんて何も考えられない。
男「……はぁ…」
深いため息をついた、その時
キィ……
ブランコが揺れ、軋む音がした。
馬鹿な、誰も居ないはず―――そう思って音がした方へ顔を向ける。
男「………」
「………」
これは一体どういう事なんだろうか。
俺の隣にはおかっぱ頭で色白の幼い女の子がいた。
少女は俯きながら控えめにブランコを漕いでいる。
不思議な点がいくつも…というか不思議な点しかない。
この少女に俺は今の今まで全く気づかなかったし、
もう一月中旬だというのにフリルのついたワンピースを着ている。
そしてもっとも、こんな時間に、こんなに小さい子が、こんな所に一人でいるというのもおかしい。
色々な憶測を交わした後、
俺は勇気を出して話しかけてみることにした。
男「…ねえ」
「……………なに?」
男「君いくつかな」
「………3さい」
男「3歳ぃ!?」
「!!」ビクッ
男「あ、ゴメン…つい」
3歳の筈がない、
どう見ても小学校中学年程だ。
男「……嘘ついちゃダメだよ」
「む……ウソじゃない」
少女は顔を上げ、俺をみつめる。
くりくりとした目、高い鼻、淡いピンク色をした薄い唇、透き通るような肌、
まさに美少女といった顔立ちをしている。
男「いや……だから……」
俺はこれ以上の追求をしないことにした。
俺がどんなに強く迫っても、この少女はきっと認めない。
そう思わせる程、この子は強くまっすぐな瞳をしていた。
男「じゃあ、名前は?」
女「………女」
男「女ちゃんか、俺は男、よろしく」スッ
女「………ん」ギュッ
彼女は俺が差し出した手を恐る恐る握る。
驚くほど冷たい手だった。
男「女ちゃん、寒くない?」
女「………全然」
男「嘘」
女「ホント」
男「そうか……ま、いいや」
男「本当に寒くなったら言うんだよ」
女「大丈夫」
俺は一先ず心を落ち着かせ、頭の中を整理した。
その結果、この子はひどい虐待を受けているんじゃないかと考えた。
そうだとすればこの子がこんな状態なのも納得できる。
そこで、質問をする。
男「女ちゃん、お父さんかお母さんは?」
女「…お父さん、私が生まれる前からいない」
女「お母さん、も………もう…いな、い…」
男「!……ご、ごめん…」
予想外の返答に、この選択をした事を後悔した。
女「………平気」
全く平気そうには見えなかった。
顔を真っ赤にして涙目になりながら震えている。
この子は、随分過酷な人生を歩んで来たようだった。
俺なんかよりずっと。
両親を失う苦しみは痛いほどわかっている。
高校生の自分ですら逃げ出したくなる…実際には逃げ出してしまったような辛さ。
それをこんなに小さい子が受けている。
俺はブランコから降りて、彼女を抱きしめた。
女「!?」
男「…うん、わかるよ」
男「俺も両親がいないんだ、だから」
女「!…」
男「辛かったな、今まで堪えてきたんだろ?」
女「…」
男「大丈夫、もう我慢しなくていい」
男「泣きたいときは思いっきり泣け」
そう言って彼女の頭を撫でる。
女「ぅ……グス……グスッ…」
女「うわああああああん!!!!!」
彼女は俺の胸に顔を埋め、大きな声で泣いた。
次から次へと流れる涙。
その悲痛な叫びと止め処なく溢れ出る雫は、今まで交わしたどの言葉よりも強く彼女の心を表していた。
本当に、心が押し潰されそうなほど苦しかったんだろう。
女「うえぇっ……うえっ……グスッ…」ギュウッ
プルプルと小刻みに震えながら、俺の服の袖を力いっぱい握り締める。
そんな彼女に何もしてやれない自分がはがゆかった。
――――
――
雪女?この円らな瞳で俺を見つめている少女が?
まあ、寒さに強いところや白く透き通ったような肌は確かにその特徴と一致している。
それに、いろいろな疑問も彼女が妖怪だと思えば解決する…と思う。
男「…ってことは」
女「?」
男「本当に雪女で、本当に三年でそこまで成長して…ってこと?」
女「そう」
やはり信じられない。
そもそも妖怪って実在するのか?この子が本当にそうならいるんだろうけど…
なんてことを考えているうちに、彼女はまたブランコをこぎだしたので俺も隣に座る。
女「…信じてないの?」
男「え、あ、いや…う~ん」
(ここは信じてるって言った方がいいのか…?)
女「どっち?」
男「えーと………信じて、る…かな?」
女「…うそ」
男「い、いやいや!信じてるって!」
女「………」ジーッ
彼女は俺を完全に疑っている。
俺はこれ以上彼女に迫られないために、話題を変えることにした。
男「あ、女ちゃんは帰らなくていいのか?」
男「皆心配してるんじゃ―」
女「!すっかり忘れてた!もう帰らなきゃ!!」
そう言うと彼女はブランコを強くこぎ、少し勢いがついたところでピョンと飛び降りた。
女「男は帰らなくていいの?」
振り返りながら言った。
男「…そうだ、俺も…帰らなきゃ…」
帰りたくないのが本音だが、こんなに小さい子が頑張っているのに俺が逃げ出すわけにはいかない。
男「…女はいつもここにいるのか?」
女「んー、今日だけだよ」
男「あ…じゃあ、もう会えないのか…」
俺はあからさまにガッカリしする。
無意識の行動だった。
自分はロリコンなのか…?と少しショックを受けた。
そんな俺に気をつかってか彼女はこんな提案をした。
女「大丈夫、また次の冬には会えるよ?」
男「!また来るのか?」
女「うん!あ、じゃあ次に来たとき私がもっとおっきくなってたら雪女って信じてくれる?」
今の彼女は見たところ12~13歳、で三年生きてるんだから単純計算で一年に4歳ほど年をとる事になる。
小学生の少女が一年で高校生になるのだからもしそうなれば信じるしかないだろう。
男「ああ、信じる」
女「ほんと!?えへへ~楽しみだなぁ~♪」
彼女の初めて見せた笑顔は、天使のように穢れなく輝いていた。
女「じゃ、またね!」
男「ん、またな」
俺達はそれぞれ反対方向へ進んだ。
公園の出口に差し掛かった時、少し気になり、ふと振り返る。
しかし、彼女はもうどこにもいなかった。
男「…本当に、雪女なのかな」
そう呟き、また歩みを進める。
あの不思議な少女は、俺に強さと希望を与えてくれた。
もしも本当に彼女がまたやって来るならその時は何をしよう。
美味しい鍋を振舞おうか、雪合戦でもして遊ぼうか。
そんな事を考えながら歩く俺の足取りもまた
不思議と少し前とは比べ物にならない程軽かった。
おしまい
これで番外編1終了です
これは男と女の出会った時の事です
ちょっと頑張って地の文的なものを入れてみました
読みにくかったでしょうか、感想やアドバイス頂けると嬉しいです。
番外編2は今書いてて、明日に間に合うようにします
乙
温めてた設定とやらが気になる
男 ムクッ ポリポリ
あいつが帰って一週間が経つ。
なのに、俺はまだ立ち直れていなかった。
男「……はぁ……」
深くため息をつく。
男 グウウウウッ
こんな時でも腹は減る。
何か食べなくてはと思い、俺は冷蔵庫をあさった。
男「………!」ガサガサ
男「…ったく、あいつキムチ持って帰ってねえじゃねえか」
そう呟いたところで、ハッと我にかえる。
またこれだ。
俺は俺なりにあいつを忘れようと努力した。
好きなゲームをしてみたり、外へ出てみたり、
しかし何をしても何処へ行っても女の事ばかり考えてしまっていた。
ピンポーン
男「………はい」ガチャ
友「よっ」
男「…おう、久しぶりだな」
友「ああ、お前今まで何して………ってか痩せた?」
男「…そうか?」
友「痩せたっつーかやつれたっつーか」
男「…まあここんとこまともに飯食ってないから」
友「は!?お前どうしたんだよ、何かあったのか?」
男「………」
友「まーいいや、ちょっと待ってろ」ガサガサ
男「あ…おう」
友「ほら、食え」コト
男「…サンキュ」パク
友「でもホントにどうしたんだよ、何かあったのか?」
男「…まぁ」
友「ふーん」
友「女か?…ってそんなわけ」
男「そうだよ」
友「え?…マジ!?」
男「…そんなに驚く事ないだろ」
友「いやだってお前全然女に興味無かったじゃねえか」
友「どんなに合コン誘っても来なかったし、告られても即答でフってたし」
友「そんなやつが女がらみの悩み持ってるなんて思わねえだろ」
男「……それは…」
友「…いやー…そうかー……そっかそっか」
男「…友?」
友「よし!」ニヤッ
友「早く食え!んで着替えろ!あ、後風呂も入っとけよ!!」
男「え?ちょ、まっ…」
友「じゃ、ちょっと行ってくるから!用意しとけよ!!」バタン
男「…何なんだアイツは」
俺は食べ終わった後、風呂へ入り、しばらくの間そのままだった服も着替えた。
男「…まあこんなもんか」
友「おっす準備オッケー?」ガチャ
男「友…OKって言ったって一体何を」
友「うし!じゃあ出発!!」グイッ
男「わっ!っとっと…」ヨロヨロ
俺達は友の車に乗り、『目的地』へ向かった。
しばらくして車が止まる。
友「ん、降りろ」
友「えー…っと……いたいた」タッ
男「あっ、友?」
友「ゴメンゴメン、お待たせー」
「もー遅いよー」
「すっごい寒かったんだからねー?」
「まあまあ、で?いきなり飲みいっちゃう?」
友「とりあえず中入ろう!ホラホラ」
男「…おい友、これは?」
友「女を忘れるには女が一番!って事で合コンをセッティングしてみましたー!!」
男「いや俺は「ねー何やってんの?」
「早く入っちゃおうよ」
友「ん、じゃあ行こうか…お前も」グイッ
男「…友ちょっと……ハァ」
こうして友の粋な計らいにより
男2:女4という何ともバランスの悪い合コンが始まった。
「「「「「カンパーイ!!!!!」」」」」
友「それじゃーまず自己紹介を…女性陣からっ!!」
ギャルA「ウチギャルAっていいまーす、よく益若つばさに似てるって言われまーす」
ギャルB「アタシはギャルBです、料理がすっごい得意です」
ギャルC「私Cちゃんで~す、Cは~スイーツが大好きなの~」
清楚「わ、私清楚といいます、大学で医学を勉強しています」
友「じゃ、次俺ね、俺友っていいます、皆さんご存知の通りのイケメンです!」
男「…あ、えー…と、男です、よろしく」
――――
――
友「王様だーれ!」
B「あ、アタシだー!」
B「じゃあ4番が1番にチュー!!」
清楚「!」
(い、いきなりキス!?よかった~私じゃなくて)
C「Cは3だよ~?」
友「いいねーいいねー」
男「…俺か」
A「ウチ4だ!えーと、男君?」
男「…はい」
B「いっちゃえいっちゃえー!」
A「じゃーいくね?」
男「………友」
友「いーからやっとけって!な!!」
男「………」
(…したくない…けど………早く、忘れなくちゃな)
清楚 ドキドキ
A「…」ソーッ
男「………」
『女「………ん………」チュウウウ』
男「!!」バッ
A「キャッ!」ドテッ
B「………え?」
C「どーしたの?」
清楚「…?」
A「いてて…」スリスリ
友「………男」
男「…ごめん」
男(今の…何だよ)
友「…あ、あーゴメンねーコイツ恥かしがりやだからさ、いきなりキスはちょっと」
A「もー、なら最初からそう言ってよねー」
B「あーアタシがちょっとやりすぎちゃったかー」
C「気をとりなおしてもう一回~」
C「王様だーれ?」
A「ウチー!」
A「じゃーねぇ…3番が4番のほっぺギューッ」
B「えー何それー!」
友「随分ソフトだな」
男「…また俺、一体どうなってるんだ」
清楚(うぅ…痛くしないでほしいな…)
友「…男、どうだ?」ヒソヒソ
男「………大丈夫」
清楚「…ぅ………///」
A「さすがに今度はいけるっしょ」
B「ほっぺくらいならねー」
男(………大丈夫)ソーッ
『女「触ってみて、ほっぺた」』
男「!」ピタッ
清楚「……ぇ?……男君?」
『女「ほお?もひもひえひょ?」グニグニ』
『女「ほんあいほうははあうおは…///」ムニムニ』
男「………っ」
男(また、だ…女…やっぱり、俺…)
友「男?男!おい!!」
A「…もうマジありえないんだけど、何なの?さっきから」
男「…ごめん」
B「何しに来たの?超シラけちゃったんだけど」
C「…ハァ、もーいいや、馬鹿らし、帰ろ」グイッ
清楚「あっ…」
男「………」
――――
――
男「…ごめんな、友」
友「いや、謝るのはこっちの方だ」
友「俺お前の気持ち全然考えてなかったな」
友「すまん」
男「…いいんだ、俺がもっとしっかりしなくちゃな」
友「違う、お前は―――」
男「ここでいいよ、降ろしてくれ」
友「は?お前の家まだ先じゃねえか」
男「歩いて帰りたいんだ」
友「…そうか」キッ
男「…ありがと」ガチャ
友「男」
男「?」
友「自殺なんてすんなよ」
男「…はは、するわけねえだろそんなこと」
男「じゃあな」バタン
友「…ならそんな顔してんじゃねえよ…クソッ」
――――
――
男 フラフラ
俺は、あてもなく夜道を歩いていた。
もう家に帰りたくなかった。
あそこは、思い出が多すぎる。
何時間もさまよって、辿り着いた。
男「…ハァ………俺は何をやってるんだ」
そこは、あの公園。
よりにもよって二人の思い出が一番ある所。
男「………っと」ギィッ
ブランコに腰掛ける。
思い出したくない筈なのに、つい体が動いてしまう。
すっかり深夜になり
雪も降り出した。
全てがあの時と同じになった。
ただ一つ、隣にあいつが居ない事を除いては。
俺はきっと、心の何処かで願っているんだろう。
こうしていればあいつが現れるかもしれない、
俺の気づかない内に、ひょっこり隣に座っているかもしれない、と。
あいつはもう、帰って来ない。
頭では解ってる、だけど、あいつを思い出す事をやめられない。
男「…俺は本当、どうしようもない奴だ…」
考えれば考えるほど、思い出せば思い出すほど
心が痛い。
あいつを、想えば想うほど
涙が止まらない。
おしまい
>>152-153
乙ありがとうございます
設定は…
カッコよく言うと命の価値観の違いで葛藤する話
簡単に言うと純愛ラブストーリーです
今回はちょっと短め、男のその後でした
最後は女のその後です
ただ、まだ書けていないので少し投下が遅れます
乙
最後に期待する、二人は幸せになるんだよな、な!
乙乙
男が不憫でならない
もとは物置だった部屋に畳を敷いただけの、簡素な部屋。
その部屋は、ここが良いから、と私が親友のお母さんに頼み込んで用意して貰った物だった。
元々明るい部屋ではなかったが、今の私には何もかもが暗く、冷たく見えた。
そして、私はあの時のように部屋の隅でただうずくまっていた。
するとふすまが開けられ、私のたった一人の親友が入ってきた。
女友「…おはよう」
彼女の挨拶に返事をしなくなって、もう六日が経っていた。
六日前、そう、私の人生で一番辛くて、一番忘れられない出来事があった日だ。
女友「…朝ご飯できてるよ、一緒に食べよう?」
「うん」
そのたった一言が言えない。言うのが苦しい。
女友「じゃあ、ここに置いておくね」
彼女は悲しそうな笑みを浮かべて、部屋を出ていった。
親友のそんな表情は見たくなかったし、その原因にもなりたくなかった。
私が元気を出せばいい。
ただそれだけの事だったが、それができる程私は強くなかった。
彼と離れて、会えなくなってからずっとこんな調子だ。
心にぽっかりと穴が開いたような、そんな気分だった。
―――こんな時、男がいてくれたら―――
なんて、ありえない事をずっと思い続ける。
―――きっと男は、まず私を抱きしめて、次に頭を撫でてくれて―――
―――それから思いっきりキスをしてくれる―――
私は心の中で彼と愛し合いながら、延々と泣いた。
雪男「…どうだ、調子は」
女友「私の?女の?」
雪男「女だ」
女友「ずっと塞ぎ込んでる、まるで二年前に戻っちゃったみたい」
雪男「…どうにかなんねぇのか」
女友「ッ!私だって一生懸命やってるわよ!!」
女友「毎日毎日話しかけて!でも無視されて!」
女友「私が目を放した隙にどっか行っちゃう気がして夜も眠れないし!」
女友「もう…!どうすればいいかわからないのよ!!」
雪男「………」
女友「!…ご、ごめん…私っ…」
雪男「…ガッハッハ、いいんだ、俺は何も考えてねぇからよ」
雪男「何言われても落ち込んだりしねえよ!だからもっと俺にぶつかってきていいんだぜ!!」
女友「雪男…ありがとう」
雪男「ガッハッハ!」
雪ん子1「おねえちゃーん!」タッタッタ
女友「皆…どうしたの、そんな慌てて」
雪ん子2「…お爺ちゃんが…!」
雪ん子3「呼んで~る~!」
女友「長老様が?」
雪ん子1「早くー!願いの祠だよー!!」
女友「願いの祠って…一体どうしてそんな所に」
雪ん子2「…わかんないけど…来て…」グイッ
女友「わっ…ちょ、ちょっと行ってくるね!」タッ
雪男「おお!何かしんねーけど頑張って来いよ!!」
雪ん子3「違う~雪男さんも~!」グイッ
雪男「おお!?」ヨロッ
―――とっても素敵な夢を見た。
花が咲き乱れた野原で、彼と二人で寝転がって、
春の良い香りがして、雲一つ無い綺麗な青空で、
ぽかぽかした太陽がとっても眩しくて、
でもそれ以上に、彼が眩しかった―――
――――
――
頬が濡れている。
私は眠りながら泣いていたんだろうか。
あんなに素敵な夢だったのに、なんでだろう、と疑問に思う。
そこでもう一度さっきの夢を思い返すと、すぐに理解できた。
今の私には、もうありえない事ばかりだからだ。
花が咲き乱れた野原に行く事も、彼と二人で寝転がる事も
春の良い香りを嗅ぐ事も、雲一つ無い綺麗な青空を見る事も
ぽかぽかした太陽の光を浴びる事も
そして、優しくて、かっこ良くて、素敵で、眩しくて、そんな彼に照らされる事も。
私が見た夢はとても素敵で、だけど私にとっては最悪な夢だった。
女友「ちょ、長老ー?」チョウロー…チョウロー…チョウロー…
シー…ン
女友「うう…行くしか…ないか」
雪男「お?先行くぞ」スッ
女友「おお!頼もしい!!」
雪男「怖ぇもんなんか何もいねえよ」
女友「だってここ祠っていうか洞窟じゃん」
女友「暗いし、じめじめしてるし、もう最悪」
雪男「しゃーねえだろ、爺が呼んでんだからよ」
女友「うー…わかってるけど…」
女友「でも何で長老様はこんな所に私達を呼んだんだろうね」
雪男「さーな…まあ爺のこった、何か大事な用があんだろ」
女友「…そうだね」
長老「…よく来てくれた、女友ちゃん、雪男」
雪男「おお、何の用だ爺」
長老「うむ…以前話した事、覚えておるか?」
女友「以前…?」
>長老「……女友ちゃんや」
>女友「…はい」
>長老「ちょっとその事について話があるんじゃが―――」
女友「…あ、もしかして」
長老「うむ、女友ちゃん、雪男」
長老「力を…貸してくれるかい?」
女友「はい!」
雪男「おうっ!」
―――泣きつかれた。
今の私は、きっと酷い顔をしている。
もうすっかり夜だ、またこうして、何もしないで一日が終わっていく。
一体こんな生活がいつまで続くんだろう。
続けば続くほど皆も苦しむ。
だから早く立ち直らなくちゃ。
そうわかってはいながら、また私は彼を思いながら眠りに落ちて
素敵な悪夢を見てしまう―――
――――
――
女「………」ムクッ
朝になった…何かがおかしかった。
そう、私の親友が起こしに来ていないのだ。
いつもどおりならとっくにここへ来ている筈だった。
二つ、不安な事があった。
一つは、彼女になにかあったのではないか、という事。
もう一つは、とうとう見捨てられてしまったのではないか、という事だった。
今日でちょうど一週間、それだけの間ずっとうじうじして
彼女を無視していたのだから十分ありえる。
最愛の人に続き、一番の親友も失ってしまった、
そう悪い方に考えてしまう自分が嫌だった。
しばらく自己嫌悪に陥っていたが、次の瞬間、勢いよくふすまが開けられた。
そこに立っていたのは親友ではなく、小さな雪ん子達だった。
女「…?」
何故、彼女等がここにいるのか全く理解できなかった。
しかし、息を切らし、額に汗を滲ませている様子から急ぎの用なんだという事だけはわかった。
雪ん子1「おねーちゃん!行こう!!」グイッ
女「っ」ヨロッ
急に袖を引っ張られ、ふらふらとよろける。
そんな事はお構いなし、といわんばかりに力を強める雪ん子達。
女「なっ…ちょっと、何やって…!」
私の制止もきかず、とうとう外へ連れ出されてしまった。
一週間ぶりの外は、私の心を表すかのように酷く曇っていた。
女友「…ッハァ……ウッ…」グタッ
雪男「…う、おぉお…!!」グググッ
長老「…ぬぅぅ……はあっ!!!」パキンッ
女友「…終わった…の?」
長老「うむ…これで一先ず、完成じゃ」ニコッ
女友「…そう…よ、かった…ハァ…」ホッ
雪男「うがあぁ…大した事、なかったぜ」ヨロヨロ
女友「嘘付き…ふらふらじゃない」
雪男「がっは…っは…笑うのも辛えや」
長老「二人とも、よく頑張ってくれた」
長老「これで後は…」
女友「運任せ…ね」
長老「そうじゃ…条件を満たせれば良いが…」
雪男「まあ…本人に聞くのが一番早えや」
雪ん子3「こっち~こっち~」タッタッタ
雪ん子2「お姉ちゃん…頑張って…」グイッ
女「ハァ…ハァ…何でこんな所に…?」フラフラ
女「っ!女友ちゃん…雪男さん…と、お爺ちゃんも?」
女友「うふふ…久しぶりに話できたね」
女「女友ちゃん…どうしたの?何でこんな…」
雪男「お前ぇの為だよ」グッタリ
女「雪男さんも…私の、為?」
長老「うむ、皆、女ちゃんを思っての行動じゃよ」
女「お爺ちゃん、どういう事?」
長老「女ちゃんが、男君のもとへ行く方法がたった一つだけ存在するんじゃ」
女「!!」
長老「それにはたくさん妖力が必要だったのでな、手助けをして貰ったのじゃよ」
女「え…男の所へ…?それに、皆こんなになるまで…でももう…ああっ訳わかんないよ…」
女友「あはは…混乱しちゃってるね」
雪男「がっはっは…無い頭使うからだ」
長老「ふむ…順番に、話そうか」
女「…うん」
長老「女ちゃんは成人したらもう人間の街へは行けなくなるじゃろ?」
女「うん、私のお父さんがそうだったって」
長老「それは子供の方が大人より体温が高く、街の気温にも耐えられるからじゃ」
女「…へー、知らなかった」
長老「まあ普通の雪女なら成人しても大丈夫なんじゃが…女ちゃんは」
女「この体が弱いせいでしょ?」
長老「…うむ、そこでじゃ」
女「?」
長老「女ちゃんの体温を変わらないようにするんじゃ」
女「体温を…」
長老「そう、そうすれば女ちゃんは男君のもとへ行っても平気じゃろ?」
女「うん…そうだけど、どうやって?」
長老「これじゃ」スッ
女「それは…護符?」
長老「うむ、まあこれはただの護符じゃが…さっき皆で集めた妖力とある物があれば」
長老「女ちゃんの体を守る事のできる強力な護符ができるんじゃ」
女「それで皆…でもある物って?」
長老「むう…これはぼんやりとしか解らないんじゃが…」
長老「何か…強い願いが込められた物、だそうじゃ」
女「え?…何それ…」
長老「わしにも全く解らんのじゃ、これは女ちゃんにしか…」
女「強い願いって…ぼんやりすぎるよ!」
長老「むうぅ…」
女友「ね、思い出してみて?男君との生活の中で…なにかなかった?」
女「…あ!これは?」スッ
長老「む?…指輪…か」
女「うん!男から貰ったの!きっと強い願いが込められてるはず!!」
長老「…これではダメじゃ…」
女「なんで!?私…」
長老「願いの種類が違うのじゃ」
女「願いの種類…」
長老「これは『嬉しい』とか『綺麗』とかじゃろ?」
長老「必要なのは…むう…何と言えばよいか」
女友「『男大好きー』とか『ずっと一緒にいたいー』とかだよ」
女友「その願いは=人間界にいたいっていう願いだからね」
長老「おお!ないすじゃ女友ちゃん!!」
女「………」
女友「どう?その願いが強く込められた物、持ってる?」
女「………ッ!」ダッ
長老「!…女ちゃん…!?」
女友「あった…みたいね」
雪ん子1「ねーなんの話してんのー?」グリグリ
雪ん子3「あはは~雪男さんの顔おもしろ~い」グニグニ
雪ん子2「…ふふ…もっと…」イジイジ
雪男「うう…後で覚えてやがれクソがきども…」グッタリ
急に走ったものだからすぐに息が切れ、体が重くなる。
いや、そうでなくても元々この弱い体のせいで運動は得意ではなかった。
女「…ハァ…ハァ…」
運悪く、辺りには雪が降り積もっていた。
この時程雪をうっとうしく思ったことは無い。
もう息をするのも辛い。
だんだん足が上がらなくなる。
体勢を保っていられなくなり、前のめりで走り続ける。
女「…ハァ……あっ…!」ドシャア
地面に敷き詰められた雪から顔を出した、小さな石ころにつまずいて
雪の上に強く体が叩きつけられた。
立ち上がる力が残っていない。
女「…うっ……うぅっ…」ドシャッ
何度も何度も起き上がろうとして、その度に無様な格好になる。
でも、私に立ち止まるという選択肢はなかった。
女(…女ちゃんや雪男さんはもっと苦しかったはず…)
女(それに…もう少しで…男に会えるんだ…!!)
そう思ったとき、まず手が動いて、次に腰に力が入って、
そして足が地面を強く蹴った。
女(大丈夫…まだ走れる…!)
私の重かった体は、次第に楽になってきた。
女「…ハァ……ッ着いた!」ガラッ
そう言うと同時に勢い良く戸を開けた。
アレをしまっている所は忘れるわけが無い。
それ程大事な物だった。
女「…あった…」
そして息つく暇も無く、また駆け出した。
――――
――
長老「女ちゃん…遅いのう…」
女友「大丈夫、きっと………ほら」
女「っ…ハァ…ハァ………あったよ!」バッ
長老「おお!これは…お守りかな?」
女「うん…男と…一緒に買って…一緒のお願い事して…」フラッ
雪男「おっと…」ガシッ
長老「うむ!これなら大丈夫じゃ!!」
女「ホント!?…良かった…」ホッ
長老「安心して…休んで良いぞ」ブワッ
女友「っ…すご…何、この光…」
雪男「おお…キレーだな」
雪ん子1「うっわーうっわー!」ピョンピョン
雪ん子2「………はー」ポーッ
雪ん子3「すっご~い!なにこれ~!!」ドキドキ
女「………」クタッ
私は、温かい光に包まれながら気を失った。
――――
――
何時間もさまよって、辿り着いた。
男「…ハァ………俺は何をやってるんだ」
そこは、あの公園。
よりにもよって二人の思い出が一番ある所。
男「………っと」ギィッ
ブランコに腰掛ける。
思い出したくない筈なのに、つい体が動いてしまう。
すっかり深夜になり
雪も降り出した。
全てがあの時と同じになった。
ただ一つ、隣にあいつが居ない事を除いては。
俺はきっと、心の何処かで願っているんだろう。
こうしていればあいつが現れるかもしれない、
俺の気づかない内に、ひょっこり隣に座っているかもしれない、と。
あいつはもう、帰って来ない。
頭では解ってる、だけど、あいつを思い出す事をやめられない。
男「…俺は本当、どうしようもない奴だ…」
考えれば考えるほど、思い出せば思い出すほど
心が痛い。
あいつを、想えば想うほど
涙が止まらない。
男「…ハァ」グズッ
ため息をつき、それと同時に鼻をすする。
もう、帰ろう。
ここに居ても余計辛いだけだ。
そう思って、ブランコから降りる。
そして一歩踏み出した、その時
キィ…
男「!!」
この音には聞き覚えがある。
そう、あの時、ここで、ほぼ同じ時刻に聞いたものだ。
男「…っ……」
振り向く事ができない。
もしこれであいつが居なかったら…
そう思うと、怖かった。
もう二度と立ち直れない気がした。
男「……ハァ…ハァ…」ドクン
そんな俺の心とは裏腹に、
鼓動が早くなり、息も荒くなる。
あいつはいない、そう解っている筈なのにどうしようもなく期待してしまっている自分がいた。
男「…ハァハァハァッ」ドクン ドクン ドクン
どんどん体が熱くなる。
体中の血液がとてつもない速さで流れているようだった。
どくん どくん どくん
どくん どくん どくん
どくん どくん どくん
ただ座っているだけなのに、俺の体は限界を迎える。
そして―――
「男」
男「!!!!」
あいつの声だ。
もう二度と聞く事ができないと思っていた…。
男「っ」グッ
震える足にぐっと力を入れる。
怖い、底なしの恐怖が俺を襲った。
でもこの機会を逃すと一生後悔する、そんな気がした。
そして、振り返る。
女「男…久しぶりだね」
そこには涙で顔をぐしゃぐしゃにした彼女が居た。
きっと今の俺も、彼女と同じ酷い顔をしているんだろう。
男「あ…え……女…っ」
辛うじて彼女の名前を呼ぶことができた。
女「うん…うん……」
彼女も上手く喋る事ができない様子だった。
男「…な……ゆ、め…?」
俺の率直な感想だった。
女「…違うよ……ホラ」スッ
男「!!」
もう一生再会する事はないと思っていた。
そんな彼女がそこにいた。
夢なんかじゃなく、現実に。
男「うっ…ううっ…」ギュッ
きつく抱きしめた。
女「………っ」ギュウ
彼女も、抱きしめ返してきた。
あの時、触れる事ができなかった分を取り戻すように
強く強く抱き合った。
次に、彼女の頭を撫でた。
彼女は甘えるように俺の胸に顔を埋めてきた。
男「………」スッ
女「…あっ…」
俺が彼女の頭を上げさせると、名残惜しそうな声を発した。
そんな彼女が愛おしくてたまらなくなって、キスをした。
女「………ん」
彼女の上擦ったような、甘えたような声が聞こえた。
俺は目を閉じていた事に気づいて、目を開けた。
彼女は俺を見つめていた。
頬を火照らせ、潤んだ瞳で俺を見つめる彼女。
俺はどうしても一言言いたくなって、唇を離した。
女「…?」
何故俺がキスを止めたのか解らず、不思議そうな表情をする彼女を見て
俺の思いはより一層強くなった。
男「…もう、二度と…お前を放さない」
そう言うと同時に、もう一度彼女の薄く開いた唇を俺の口で塞いだ。
彼女もそれに答えるように、強く俺を求めた。
キスはいつまでも、いつまでも続いた。
―――とっても素敵な一時だ
花が咲き乱れた野原で、彼と二人で寝転がって
春の良い香りがして、雲一つ無い綺麗な青空で
ぽかぽかした太陽がとっても眩しくて
でもそれ以上に、彼が眩しすぎて
私はどうしようもなく彼に甘える―――
男「っと…」
彼は困ったような、それでいて嬉しそうな顔をして笑う。
そんな所も愛おしくて、大好きだった。
私にとって初めての春。
それはとってもとっても素敵で、まるで夢のようだった。
女「ねぇ…」
男「ん?」
女「今年の冬は、色々あったね」
男「ああ、信じられないくらいな」
女「うん」
男「お前がやって来て、いなくなって、またやって来て」
男「本当大変だった」
男「でも…」
女「でも?」
男「だから冬は―――大好きなんだ」
おしまい
乙 乙
乙ー!
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