ほむら「あなたと友達になれてよかった」(259)
たって
さやか「いやー、今日も楽勝って感じだったね!」
マミ「あんまり油断しては駄目よ美樹さん。足元をすくわれるわ」
さやか「分かってるって。でも私達4人なら大丈夫ですよ。ねえ杏子?」
杏子「あたしは別に一人でもやれるけどな」
さやか「そんな事言っちゃって。ホントはさやかちゃんと一緒に戦えて嬉しいくせにー」
杏子「ま、さやかでも囮くらいにはなるか」
さやか「ホント杏子は素直じゃないんだから。転校生だって、私と戦えて嬉しいわよね?」
ほむら「・・・そうね。あなたがもっと強くなって足を引っ張らないようになったらね」
さやか「うわ、二人とも私にきつくない?」
ここは、まどかの望んだ世界。
魔法少女が絶望せず、魔女の存在しない世界。
さやか「っと、もうこんな時間か。私ちょっと寄るところがあるから、先に行くね」
杏子「またボーヤのお見舞いか?」
さやか「ま、そんなとこかな」
マミ「相変わらず熱心ね。頑張ってね美樹さん」
さやか「へへ、じゃ行ってきます」
美樹さやかはよく上条恭介のところに通っている。
美樹さやかに聞いた(聞かされた)話だと、退院も近いそうだ。
まあ、美樹さやかは上条恭介の回復を願いに魔法少女になったのだから当然なのだけれど
杏子「頑張るよなーさやかの奴。せっかくの願いもあのボーヤの為に使っちまってよ。
本人はさやかのお陰でケガが治ったなんてわかりもしないのに。なんの得にもならねーよ」
マミ「美樹さんは別に恩人になりたくてケガを治したわけじゃないんでしょうね。
恋をすると、損得抜きで好きな人を助けたいと思うものよ」
杏子「ふーん、私には分かんねえな」
マミ「ふふっ、佐倉さんにもきっとそのうち分かる時がくるわよ」
ほむら「・・・」
巴マミと佐倉杏子の話を聞きながら、私はまどかの事を思い出していた
とても大切で、大好きな友達
私は今まで、何度も時間を繰り返してきた
彼女を救ために
まどかだけが私の全てだった
生きてる意味だった
そんなまどかが、自分の存在を懸けて願った祈り
全ての魔法少女を救いたいという彼女の想い
まどかの見守るこの世界を、私は絶対に守ってみせる
まどか『ほむらちゃん』
ほむら『まどか!』
まどか『私はね、ずっとほむらちゃんの事を見守っているよ』
まどか『いつでも、そばにいるからね』
ほむら『待ってまどか!行かないで!まどか!』
ほむら「まどか!」ガバッ!
飛び起きた私の目にうつるのは、見慣れた自分の部屋
まどかの姿はどこにもない
ほむら「・・・すごい汗」
私は布団から出ると、服を脱いでシャワーを浴びた
そしていつも通り制服を着て、いつも通り朝食を食べ、いつも通り1人で学校に向かう
楽しそうにおしゃべりしながら登校する生徒たちを横目に、私はただ黙々と歩く
別に寂しくなんてない
私にはやらなければいけないことがあるし、それにまどかだってどこかで私の事を見守ってくれている
さやか「よっ、転校生」
仁美「おはようございます、暁美さん」
私の後ろから走って近づいてきたのは美樹さやかと志筑仁美
いつも2人で一緒に登校してきている
そこが本来3人であったことを、彼女たちは知らない
ほむら「・・・おはよう」
さやか「朝から暗いなー転校生。もっと元気出していこうぜ」
ほむら「そういうあなたは朝からうるさいのね」
さやか「うるさいとはなによ!私みたいなのは明るくて元気な子って言うの!」
仁美「ごめんなさい暁美さん。さやかさんがご迷惑をかけて」
さやか「なんで謝ってんのさ!?」
ほむら「別に構わないわ。美樹さやかがうるさいのはいつもの事だもの」
さやか「あの、さすがの私もへこみそうなんだけど・・・」
さやか「でさー、そしたらあいつったらね・・・」
仁美「まあ、本当に?さやかさんはいつもそんな・・・」
ほむら「・・・」
朝に声をかけられて、流れで一緒に行くみたいな形になってしまったけど、私はこの2人と特に親しいわけではない
だから会話に入ることも出来ず、2人の一歩後ろを黙って歩く
思えば私は昔からいつもそうだった
引っ込み思案で口数も少なく、面白いことが言えるわけでもない
そんな私に友達なんてできるはずもなく、いつも孤立していた
友達が欲しいとは思っても、友達の作り方が分からなかった
そんな私がいくらクールぶってみたところで、結局根っこのところは変わっていない
さやか「ねえ、転校生はどう思う?」
ほむら「え!?ごめんなさい、聞いていなかったわ」
さやか「だから、目玉焼きは堅焼きか半熟かどっちがいいかって話」
ほむら「・・・別にどっちでもいいわ」
さやか「よくない!やっぱり目玉焼きは堅焼きが一番!半熟なんてドロドロが気持ち悪くて食べられたもんじゃないわ。
分かってないなー転校生は」
よくこんなどうでもいい話でそこまで盛り上がれるなと感心する
私は美樹さやかのテンションの高さは最初から少し苦手だった
友達のいない私が言うのもなんだけど、あまり友達にはなりたくないタイプだ
私はこの居づらい場所から離れたくなり、二人に言った
ほむら「私、学校に急ぐ用事があるのを思い出したから先に行くわ。さよなら」
さやか「え?あ、ちょっと転校生!」
我ながら少し苦しいと思う
居づらくて先に行ったのだというのがバレバレかもしれない
まあ、別に構わない
ここからいなくなれれば
あの2人だって、私がいない方が良かっただろう
そして私はまた1人、急いで学校に向かった
午前中の授業が終わり、私は昼食をとるために屋上に向かった
まどかはここでよく、お昼ご飯を食べていたっけ
さやか「ここにいたんだ転校生。探したよ」
私がお弁当を広げていると、なぜか美樹さやかがやってきた
ほむら「なにか用かしら」
さやか「一緒にお昼食べようと思って」
一緒にお昼?
美樹さやかが、私と?
ほむら「・・・あなたはいつも志筑仁美と食べていたでしょう」
さやか「まあたまにはいいじゃん。同じ魔法少女同士、親交を深めようではないか」
ほむら「・・・好きにすればいいわ」
美樹さやかがなにを考えているのかが分からない
なにか目的でもあるのだろうか
・・・そういえば、誰かとお昼を食べるのはずいぶんと久しぶりのような気がする
さやか「転校生っていつもお昼パンなの?」
ほむら「ええ」
さやか「毎日そんなコンビニのパンばっかだと栄養が片寄っちゃうよ?」
ほむら「別に気にしないわ。それに毎朝お弁当を作るなんてめんどうだし」
さやか「ふーん。ねえねえ、私のお弁当見てみなよ。美味しそうでしょ?」
ほむら「料理が上手なのね、あなたのお母さん」
さやか「お母さんじゃないよ!これ私が作ったの」
ほむら「・・・あなたが?意外にもほどかあるわね」
さやか「あのね、私だって一応女の子なんだから。人並みに料理くらいできるわよ」
私は出来ないわ。言わないけど
さやか「味だっていいんだから。ほら、あーん」
ほむら「・・・なによ」
さやか「美味しいから食べてみなって。あーん」
ほむら「い、いらない」
さやか「いいから開けろー!」
ほむら「ちょ、やめ、やめなさ○△※□」
そして美樹さやかは、嫌がる私の口に無理矢理お箸を入れてきた
本当に最悪
私は美樹さやかのこういうところが本当に苦手なのよ
ただ、口に入れられたハンバーグの味は、とても美味しかった
さやか「いい加減許してってばー」
ほむら「・・・最悪よ」
さやか「ごめんって。転校生とご飯食べるの初めてだからちょっとテンション上がっちゃってさー。
でもさっきの慌ててる転校生、ちょっと可愛かったぞ」
ほむら「・・・」カチャ
さやか「ちょ!タンマ!謝るから銃向けないで!てかなんでそんなの持ってんのよ!?」
ほむら「念のため、これだけは今でも持ち歩くようにしてるの」
さやか「な、なんかよくわかんないけど下ろしてって!」
ほむら「はぁ・・・。それで、結局なんの用なの?」
さやか「用って?」
ほむら「何か用があったからわざわざ私のところに来たのでしょう?」
さやか「だから言ったじゃん。あんたと親交を深めに来たんだってば」
ほむら「私は真面目に聞いているのだけど」
さやか「私だって真面目に言ってるっての」
そう言って美樹さやかは、すこし照れ臭そうに笑う。
さやか「私達は同じ敵と戦う魔法少女同士、仲間なんだからさ。やっぱり仲良くしたいじゃんか」
ほむら「仲間・・・」
美樹さやかの言うことに私は戸惑ってしまう
私が今まで繰り返してきた世界では、他の魔法少女達とうまくいっていた事はあまりなかった
特に美樹さやかとは一番折り合いが悪かったと思う
そんな彼女にこんな事を言われるとは思っても見なかった
・・・いや、きっと美樹さやかは、本来こういう人物なのだろう
元気で明るく、誰とでも仲良くなれて、やかましいのにどこか憎めない
この世界では、彼女はそんな普通の女の子なんだ
もしかしたら、この世界の美樹さやかとならうまくやっていけるのかもしれない
さやか「それに転校生っていつも1人で寂しさうな顔してるしね。どうせ友達もいないんでしょ?
このさやかちゃんがあんたの友達第1号になってあげるわよ」
・・・前言撤回。やっぱり私は美樹さやかの事は苦手だ
ほむら「私は寂しそうになんてしていないし、友達だっているわ。とても大切な友達が」
さやか「え、マジ?なーんだ、じゃあ私は2号さんか」
ほむら「おかしな言い方はやめなさい。それにあなたと友達になるなんて一言も言ってないわ」
さやか「まあ細かい事はいいじゃん。で、その友達って?」
ほむら「・・・鹿目まどか。たった1人の、私の友達よ」
さやか「鹿目まどかねー。聞いたことないけど、もしかして前の学校の友達?」
ほむら「・・・」
まどかの事を覚えていないのは分かっていたことだ
なのに、どうしても胸が苦しくなる
まどかの親友だった美樹さやかのそんな反応に、まどかの存在事態を否定されたような気持ちになった
ほむら「違うわ。まどかはここの学校の生徒で、あなたも知っていた子よ」
だからついこんな言い方をしてしまった
少なくともこの世界の美樹さやかは、まどかと友達だったことはないのに
さやか「ええ!?うーん・・・そんな子いたかなあ・・・」
美樹さやかは必死に思い出そうとしているようだった
しかし当然思い出せるはずもない
さやか「ダメ、わかんない。ねえ教えてよ転校生。なんか私、そのまどかって子の話もっと聞きたいかも」
ほむら「・・・そう。いいわ、教えてあげる」
そして私はまどかの事を美樹さやかに話した
私がまどかを救うために時間を繰り返してきた事や、ここがまどかの願った世界なのだということも含めて全部
荒唐無稽な話だと自分で思う
信じろという方が難しいし、おかしな奴だと思われるかもしれない
それでも話したのは、まどかという少女が生きた軌跡を、まどかの存在を、
誰かに知っていてほしかったからなのかもしれない
ほむら「と、まあこんなところかしら」
さやか「・・・」
ほむら「信じられないのも無理はない。キュゥべえですら信じはしなかったし」
さやか「ううん、私は信じるよ。転校生の言うこと、私は信じる」
ほむら「・・・なぜ?自分で言うのもなんだけれど、とても信じられるような話ではないはず」
さやか「なぜって言われてもなー。なんとなく私にはわかるんだよね。あんたは嘘はついてないってこと」
ほむら「あなた・・・」
さやか「それにさ、友達を信じるのに理由なんていらないじゃん」
そういうと美樹さやかは突然私の事を抱きしめた
彼女の胸と腕で私の顔が包まれる。
ほむら「ちょっ、何を!」
さやか「ほむらは今までずっと1人でがんばってきたんだね。大変だったよね。辛かったよね。
でも大丈夫。ほむらはもう1人じゃないよ。まどかの願ったこの世界を、私達みんなで守っていこう」
ほむら「美樹・・・さやか・・・」
いつの間にか私の目から涙が溢れてきていた
抱き締められている状態ではぬぐうこともできず、そしてその涙を止める方法も分からない
だから私はせめて美樹さやかに見られないように、口から出そうになる嗚咽を押し殺して、
顔を美樹さやかの胸に押し付けた
その間美樹さやかは、なにも言わずにただ私の頭をなで続けてくれていた
ほむら「・・・そろそろ離してほしいのだけど」
さやか「あら、もういいの?」
ほむら「いいもなにも、あなたが勝手に抱き締めてきただけよ」
さやか「そうだっけ?ハハハ」
ほむら「あ・・・」
さやか「ん?あ・・・」
美樹さやかの胸元
さっきまで私が顔を押し付けていた場所に、水で濡れた跡が広がっていた
ほむら「・・・ご、ごめんなさい」
途端に顔が熱くなる
恥ずかしい
たぶん今私の顔は真っ赤になっているはず
さやか「いいってこんなの。ほっときゃ乾くよ」
ほむら「でも、もうすぐ次の授業が始まるわ・・・」
さやか「うーん、じゃあこのまま次の授業サボっちゃおうっかな。こんないい天気だし、1時間もすれば乾くでしょ」
ほむら「・・・本当にごめんなさい」
さやか「いいってば。それよりほむらは気にしないで授業受けてきなよ。
優等生のあんたがサボりなんてしたらみんなびっくりするよ」
ほむら「・・・いえ、私もサボるわ」
さやか「気にしなくていいってのに」
ほむら「・・・勘違いしないで。私がサボりたいからサボるだけよ」
さやか「・・・ツンデレ?」
ほむら「・・・」カチャ
さやか「だから銃は反則だって!」
ほむら「ねえ、美・・・さやか」
さやか「んー?なに?」
ほむら「・・・ありがとう」
さやか「へへ、どういたしまして」
まどか『ほむらちゃん』
ほむら『まどか!』
まどか『ほむらちゃん、いつもこの世界のために戦ってくれてありがとうね』
ほむら『そんなの!私はまどかの為ならどんな事だって出来るわ!』
ほむら『だからまどか、お願い。あなたに会いたい。なんでもするから・・・。寂しいよ、まどか・・・』
ほむら「行かないで・・・」
目が覚めると、私は自分の布団の上にいた
徐々に意識が覚醒してくる
そうか、またまどかの夢を見たんだ
この頃まどかの夢にうなされることが多くなった
そして起きたとき、決まって私の胸は締め付けられるような苦しみに襲われるんだ
ほむら「まどか・・・」
彼女の名前を呼ぶ
返事が返ってくるはずもなく、私の声はこの小さな暗い部屋に飲み込まれていく
ほむら「会いたいよ、まどか・・・」
そしてまた、誰に届く事もない言葉だけが、私の部屋を満たしていった
さやか「本日の授業も終了!帰ろ、ほむら」
ほむら「ええ」
さやか「仁美は今日はお稽古があるから先に帰るって」
ほむら「そう、わかったわ」
最近、私はさやか達と登下校する事が多くなった
最初はさやかに誘われて無理矢理連れ回されていたのが、いつの間にか一緒にいるのが自然になってしまっていた
さやか「いやー、今日も一日疲れたわ」
ほむら「ほとんど寝てただけのくせによく言うわね」
さやか「うっ・・・。そ、それはほら、昨日は魔獣退治で疲れてたから」
ほむら「そんなの私だって同じよ。むしろあなたのフォローをさせられてる分、
私の方がよっぽど疲れていると思うのだけど」
さやか「ハハハ・・・。ま、まあ何はともかく、この調子でどんどん魔獣を倒していこうよ。きっとまどかも喜んでるって」
ほむら「・・・そうね」
まどか・・・
さやか「それにしてもほむらってさ、よっぽどまどかの事が好きなんだね」
ほむら「え?」
さやか「だってさ、友達の事を命を懸けてまで助けようとするなんて、普通なかなか出来ることじゃないじゃん」
ほむら「・・・そうね。否定はしない。好きよ、まどかの事は」
さやか「もしかしてそれってさ、ライクじゃなくてラブなやつだったりするの?」
ほむら「さあ、どうかしらね」
さやか「えー、いいじゃん教えろよー」
ほむら「あんまりくっつかないでよ」
改変が完了した瞬間にさやかは死んでるんだが
さやか「ちぇっ。っと、じゃあ私そろそろ病院に行かなくちゃ」
ほむら「今日も上条恭介のお見舞い?あなたの方こそよくやるわね」
さやか「お見舞いっていうか、恭介今日で退院なんだって。だから一応おめでとうってね」
ほむら「そう。良かったわね」
さやか「うん。そだ、ほむらも一緒に行こうよ。恭介に紹介するから」
ほむら「やめておくわ。面識のない私が行っても仕方がないし。それに2人の邪魔なんて野暮なことはしたくないもの」
さやか「そ、そんなの気にしなくていいってば///」
>>55
一応さやかが生きてる設定でやってます
さやかと別れた私は、1人家までの道のりを歩く
さっきまで騒がしいのがいたせいで、1人がいつもより静かに感じる
ちょっと前まではこれが普通だったのに、おかしな話だ
私は今までまどかを救うために、ずっと1人で戦うことを選んできた
まどかを助けるためなら、どんな孤独にだって耐えられた
まどかが生きていてさえくれるなら、他には何もいらなかった
まどかのためなら私は・・・
ほむら「あ・・・れ」
だったら・・・今は?
今の私は、なんなのだろうか
私はまどかが好きで、助けたくて、生きていてほしくて
それだけが私の生きてる意味で
だけど、まどかはもう・・・
ほむら「っ!違う!」
まどかはいる
いつでもどこでもこの世界を見守ってる
だから私はまどかのために
ほむら「・・・まどか」
まどか、いるんだよね?
どこかで私の事見ててくれてるんだよね?
だったらお願い、出てきてよ
夢なんかじゃない、本当のあなたに会いたい
そしたら私、またまどかの為に頑張れるから
じゃないと、私は・・・
私は、なんのために・・・
マミ「暁美さん!?どうしたの暁美さん!」
気が付くと、いつの間にか巴マミがそばにいた
心配そうに私の顔を覗き込んできている。
マミ「こんなところでうずくまってどうしたのよ!どこか具合でも悪いの?」
ほむら「・・・いえ、なんでもないわ。ちょっと、目眩がしただけ」
私は必死に平静を取り繕ってそう答える
大丈夫・・・少しずつ落ち着いてきた
マミ「本当に?」
ほむら「ええ、心配かけて悪かったわね」
マミ「そう?ならいいけど。あんまり心配かけさせないでね」
QB「それよりマミ、早くしないと」
ほむら「キュゥべえ、あなたもいたの」
マミ「そうね。暁美さん、あっちに魔獣の気配を感じたの。手伝ってくれないかしら?」
ほむら「魔獣・・・!」
まどかの為に魔獣を倒す
私はそれだけを考えていればいい
それだけが今の私の生きてる意味
余計なことは考えるな
ほむら「ええ、わかったわ」
マミ「佐倉さんももう向かってくれているわ。あとは三樹さんにも連絡をとりたいんだけど。
今日も病院にいるのかしら」
ほむら「・・・さやかはいいわ。私達3人で戦いましょう」
QB「意外だな。君がそんな事を言うなんて。魔獣は数が多いんだ。1人でも戦力は多い方がいいと思うんだけど」
ほむら「問題ないわ。私が2人分働けばいいだけよ。それより私達も急ぎましょう」
杏子「ふう。全部倒したか?」
マミ「ええ、みんなお疲れさま」
杏子「確かにちょっと疲れたかな。あいつら弱いくせに数ばっかいやがるし」
マミ「今日は3人だったから余計にね」
杏子「そういえばさやかはどうしたんだよ?」
ほむら「・・・さやかには連絡していない。時間もあまりなかったし」
杏子「ふーん、そうなのか」
マミ「ふふっ」
杏子「どうしたんだマミ?」
マミ「いえ、暁美さんって意外と優しいなって思って」
杏子「ん?どういうことだよ」
ほむら「別になんでもないわ。早く帰りましょう」
マミ「ふふっ、じゃあみんな帰りましょうか」
杏子「おいなんか気になるじゃねーかよ。なんなんだよー」
さやか「おはよう、ほむら」
仁美「おはようございます、暁美さん」
次の日の朝、いつもの場所で2人と合流して、今日も私達は学校に向かう
その途中、さやかの目がとある人物の方を見て止まった
さやか「あ、あれ・・・」
仁美「あら、上条君退院なさったんですの?」
さやか「うん、昨日ね。今日から学校にも来るって言ってたっけそういえば」
ほむら「行ってきてもいいわよ」
さやか「んー、今はいいよ。同じクラスなんだからいつでも話せるし」
そして教室
男子生徒1「上条、退院おめでとう」
男子生徒2「良かったな、手治って」
恭介「ありがとう、みんな」
男子生徒3「なあなあ、やっぱ美人のナースとかいっぱいいたか?」
男子生徒4「美人ナースに下の世話とかされたりしたんだろ?羨ましいぞこいつー」
仁美「相変わらす人気者ですね、上条君は」
さやか「だね。みんな普通に接してくれてるみたいでよかったよ」
仁美「話しかけますか?」
さやか「いいって。私は別に後ででも」
恭介「さやか」
さやか「きょ、恭介!」
恭介「おはよう」
さやか「お、おはよう///」
恭介「昨日はありがとう。いや、昨日だけじゃない。今まで何度もお見舞いに来てくれて。
ずっとお礼を言いたかったんだ」
さやか「な、なによいきなり。別にお礼言われるような事なんてしてないわよ」
恭介「そんなことない。僕が今ここにいられるのはさやかのおかげだよ。
医者にもう治らないって言われて自暴自棄になってたときも、さやかは言ってくれたよね。
奇跡も魔法もあるって。そしたらホントに奇跡みたいに手が治って。
僕はこの奇跡は、さやかが起こしてくれたんだって思ってるよ」
さやか「や、やめてよ。恥ずかしいなあ///」
男子生徒1「おい、上条と美樹がいい感じだぞー」
男子生徒2「ヒューヒュー」
中沢「チュウしろチュウ!」
仁美「・・・やっぱりさやかさんには敵いませんわね」
さやか「ちょ、ちょっとやめてよ///。私と恭介は別にそんなんじゃないから///」
恭介「アハハ///」
さやか「そ、そんなことより!恭介に紹介したい人がいるんだ。転校生の暁美ほむら・・・ってあれ?」
恭介「どうしたんだい?」
さやか「・・・ほむら?」
ところ変わって屋上
私は1人ベンチに座っていた
ああいう騒がしい雰囲気はやっぱり苦手
それになんか・・・変な感じ
よくわからないけど、とにかくあの場にいたくなかった私は、途中で教室を抜けて屋上に上がっていた
ここはまどかの好きな場所だったから
ほむら「まどか・・・」
何回も時間を繰り返してきたから私の感覚ではもうずいぶんと前の事だけれど、
まどかに初めて会った頃はよくここで一緒にご飯を食べた
他愛のない話をして過ごした
幸せだった。まどかといるといつも笑いが絶えなかった
ほむら「・・・そういえば私、もうずいぶんと笑ってない気がする」
またあなたと一緒にご飯を食べたい
笑い合いたい
あなたに、会いたい
ねえまどか、あなたは一体どこにいるの?
空を見上げてみる
そこには雲ひとつない青空が広がっていた
ずっと遠く、この世界の果てまで
そして、この広い空の下、ここにいるのは私だけ
私1人だけが、この広い世界に取り残されているように感じた
さやか「ほむらみーっけ」
そんな世界に乱入者が現れる
その乱入者は私の方に向かって歩いてくると、私のとなりに腰を落とした
ほむら「・・・あなた、なんでこんなところにいるの?」
さやか「それはこっちの台詞だっつーの。ほむら急にいなくなるんだもん。探しちゃったわよ」
ほむら「意外ね。上条恭介と話すのに夢中で、私がいなくなったことなんて気が付かないと思っていたけど」
さやか「なにそれ。嫌な言い方」
ほむら「・・・ごめんなさい。今の言い方はなかったわ」
さやか「・・・ほむらは何してたの?なにか考え事?」
ほむら「・・・まどかの事を考えていたの」
さやか「ハハ。ほむらの頭の中はまどかの事でいっぱいだね」
ほむら「ええ、だってそれが私の全てだもの」
さやか「全て・・・かあ」
そこで一旦会話が止まった
お互い無言で、聞こえてくるのは風の音だけ
そんな時間が流れたあと、またさやかが口を開く
さやか「ほむら、あんまり思い詰めちゃダメだよ。あんたが何考えてるのかは分からないけど、
悩みでもあるなら話くらい聞くからさ。私馬鹿だから、それこそ聞くくらいしか出来ないかもしれないけど」
ほむら「・・・ねえ、さやか」
さやか「ん?」
ほむら「あなたはどうして、そんなに私なんかを構うの?私といたって、面白くなんかないでしょうに」
さやか「なんでだろね。私もわかんない。だけど、あんたってなんでかほっとけないんだよね」
ほむら「・・・そう」
さやか「そろそろ教室に戻ろっか。1時間目の授業が始まっちゃうよ」
ほむら「・・・そうね」
屋上の扉から出る前に最後に一度振りかえる
この広い屋上には、私達以外だれもいない
ほむら「ここにはいないのね・・・」
さやか「ん?何か言った?」
ほむら「なんでもないわ。戻りましょう」
そして私達は屋上を後にした
この時には私の心は、自分でも気付かないうちに、少しずつ壊れ始めていたのかもしない
まどか『ほむらちゃん』
ほむら『まどか!お願い!どこにも行かないで!ずっと私の傍にいて』
まどか『私はいつでもほむらちゃんの傍にいるよ』
ほむら『そんなのじゃない!私はあなたに会いたい!あなたとおしゃべりしたい!あなたに触りたい!
私はあなたに、生きていて欲しかった!あなたがいないんだったら、こんな世界どうだっていい!』
ほむら『お願い・・・私を1人にしないで・・・。もうイヤ・・・。まどかのいない世界なんて耐えられない・・・』
まどか『・・・ごめんね、ほむらちゃん。でも、ほむらちゃんは1人じゃないよ』
ほむら『まどか!待って!まどかあああ!』
今にも雨が降りだしそうな曇り空の下、私は今日もフラフラと行く宛もなく歩いていた
最近は学校にも行かず、ずっとこんなことをしている
まどかに会いたい
ただそれだけを考えて、私は足を動かす
ここは、まどかが私を助けてくれた場所
私とまどかが仲良くなるきっかけだった場所
ここで魔法少女のまどかに助けられていなかったら、私とまどかが友達になることは無かったのかもしれない
だけど、周りを見渡してみても、ここにはまどかはいなかった
ここは、私とまどかが初めて一緒に魔女と戦った場所
戦いなれていない私をまどかと巴マミがフォローしてくれた
そして魔女を倒した時、まどかは自分の事のように喜んでくれていた
だけど、ここにもまどかはいない
ここは、まどかの家
まどかが大好きな家族と暮らし、数多くの思い出がつまっているであろう場所
だけど、その家の表札にまどかの名前はない
以前まどかが使っていた部屋も、どうやら物置として使われているようだ
やっぱりここにもまどかの姿はない
ここにも、ここにも、ここにも、まどかの存在どころか、まどかが生きていた痕跡すら何もない
気付けばいつの間に雨が降りだしてきていた
私は雨に濡れることも気にせず、ただ呆然とその場に立ち尽くす
ほむら「まどか・・・」
・・・本当は、とっくの昔に分かっていたんだ
ただそれを認めたくなかっただけ
だってそれを認めてしまったら、私には何も無くなってしまうから
まどかは、もういない
どんな奇跡や魔法があったとしても、もうまどかに会えることは絶対にない
ほむら「まどかぁ・・・」
まどかがこの世界を見守っている?
まどかの願った世界を守る?
そんなのはただの現実逃避
まどかを救えなかった私の罪の意識を無くすための言い訳
そう、私はまどかを救えなかったんだ
約束したのに
必ず守るって言ったのに
?「ちょっと!君大丈夫!?」
?「こんな雨なのに傘もささないで。家出でもした?」
誰かの声が聞こえる
だけど、なにを言っているのかがわからない
?「とにかくどこか雨宿り出来るところに入らないと。そうだ、あそこに入ろうか。あそこならシャワーも浴びれるし」
?「大丈夫、変なことはしないから。さ、早く行こう」
誰かが私の腕を捕み、その手を引っ張って歩き出す
誰?どこに行くの?
いや、いいか
誰でも、何処でも
もう、どうでもいいや
?「ほむらを離せえええ!」
?「うわ!」
声
また誰かの声が聞こえる
聞き覚えのある声
この声、誰だっけ
?「ほむらから離れろ!」
?「危な!傘を振り回すな!分かったって!もう行くから!」
遠ざかっていく足音
そして近づいてくる足音
私の両肩を掴む手
?「ほむら!ほむらってば!」
私の名前を必死に読んでいる
そうだ、この声
この声は・・・
ほむら「さ・・・やか?」
さやか「あんたこんな所でなにしてんのよ!ここ数日学校にも来ないし、メールしても返事しないし!
あんたの家に行ってもいないし!どんだけ心配させんのよあんたは!」
ほむら「さやか・・・」
モノクロの世界に色が戻る
空っぽだった心に、何かが溢れてくる
ほむら「さやか・・・さやか!」
気が付くと私はさやかの胸に飛び込んでいた
馬鹿みたいに大声をあげて泣き叫ぶ。
さやか「ほむら!?どうしたのよホントに」
ほむら「まどかが・・・まどかがいないの!何処にもいないのよ!」
さやか「ほむら・・・」
ほむら「私は・・・まどかを助けたくて・・・。ただまどかと一緒にいたくて・・・。
約束したのに!なのに私はまどかを助けられなくて!私のせいでまどかは!」
さやか「違う!」
さやかが私の事を抱き締める
とても強く、痛いくらいに
さやか「ほむらは頑張ったじゃん!ずっと1人で、ボロボロになりながら、まどかを助ける為に頑張ったんだよ!
ほむらは悪くない!ほむらを悪く言う奴がいたら、そんな奴私がぶっとばす!だから、もういいんだよ。
ほむらはもう、頑張らなくてもいいの」
ほむら「だけど!まどかはもういないの!まどかがいなかったら、私もう、何の為に生きたらいいのか分からない・・・」
さやか「だったら私が、ほむらの生きる意味になるよ!だからお願い、ほむら。私の為に生きてよ」
ほむら「さやか・・・。ぅ・・・ぅぅ、うあああああ!」
激しく降る雨の音が、他の全ての音を覆い隠す
私はさやかの胸の中で、涙が枯れるまで、大声をあげて泣き続けた
さやか「遠慮しないで入って。今うち誰もいないから」
ほむら「・・・お邪魔します」
さやか「ちょっと待ってね。今タオル持ってくるから」
そう言ってさやかは中に入っていき、タオルを持って戻ってきた
ここはさやかの家
あの後私達は、濡れた体をどうにかするために、近くにあるというさやかの家に来た
さやか「お風呂もう沸いてるからほむら入ってきなよ」
ほむら「私は大丈夫。あなたが先に入りなさい」
さやか「大丈夫なわけないでしょ。あんな雨の中ずっと外にいたんだから」
ほむら「それはあなたも同じでしょう」
さやか「私はほむらみたいに体弱くないからいいの。だから先入りなって」
ほむら「ここはあなたの家なんだから、あなたが先に入るべきよ」
さやか「私は大丈夫だって!」
ほむら「私の体だってもう弱くはないわ!」
・・・・・・・・・
さやか「・・・じ、じゃあ、一緒に入る・・・?」
ほむら「えっ!」
さやかと一緒にお風呂!?
誰かと一緒にお風呂に入った経験なんてほとんどないのに、そんなの無理に決まっている
ほむら「い、いやよ!何言ってるのよ!」
さやか「だ、だってしょうがないじゃんか!どっちも先に入らないって言うんだもん」
ほむら「だからって・・・イヤよ。恥ずかしいし・・・」
さやか「お、女同士なんだし恥ずかしがることないって。さ、行くよ」
ほむら「ま、待って!イヤ!ホントに無理なの!ちょっと!」
ポチャン
さやか「・・・」
ほむら「・・・」
さやか「・・・」
ほむら「・・・あ、あんまり見ないでよ・・・」
さやか「ご、ごめん・・・」
ほむら「・・・」
さやか「・・・」
さやか「それにしても、明日が休みでよかったわー。学校あったら制服乾かないとこだったよ」
ほむら「・・・ねえ、さやか」
さやか「なに?」
ほむら「もう少し小さい着替えはないのかしら」
さやか「そのサイズしかないなー。昔のは捨てちゃったし。まあ我慢してよ」
ほむら「・・・胸のところがぶかぶかだわ」
さやか「え?なにか言った?」
ほむら「いいえ、なにも」
さやか「ほむら、この野菜切っといてくれる?」
ほむら「分かったわ」
さやか「ってちょっと待った!どんな切り方しようとしてるのよ!あんた包丁もちゃんと使えないの?」
ほむら「馬鹿にしないで。それくらい出来るわよ」
さやか「危ない危ない!や、やっぱそれはいいわ。その代わりこの卵割っといてくれる?」
ほむら「任せて」グシャ
ほむら「・・・」
さやか「・・・あっちでテレビでも見てて」
さやか「いただきます」
ほむら「いただきます」
さやか「どう?さやかちゃんの手料理の味は?美味しいでしょ?」
ほむら「まあまあね」
さやか「隠し味は愛情だよ」
ほむら「・・・」
さやか「ちょ、ちょっと!突っ込んでくんなきゃ恥ずかしいじゃんか!」
ほむら「・・・これ、美味しいわ、とても」
さやか「そ、そう?ありがと」
さやか「じゃあ、そろそろ寝ようか」
ほむら「そうね」
さやか「私床で寝るから、ほむらがベッド使っていいよ」
ほむら「いえ、私は床でいいわ。あなたがベッドを使いなさい」
さやか「こういう時は普通お客さんに使わせるものなんだって」
ほむら「あなたのベッドなんだからあなたが使うべきでしょう」
さやか「ほむらが(ry」
ほむら「さやかが(ry」
・・・・・・・・・
ほむら「・・・くっつかないでよ」
さやか「しょうがないでしょ狭いんだから」
ほむら「もっと壁際に行けないの?」
さやか「これが限界なの」
ほむら「・・・」
さやか「・・・」
ほむら「・・・さやか、起きてる?」
さやか「・・・起きてるよ」
ほむら「・・・今日はごめんなさい。恥ずかしいところを見られたわね」
さやか「・・・もう大丈夫なの?」
ほむら「ええ、多分もう大丈夫。あれだけ泣いたらスッキリしたわ」
さやか「そっか。なら良かったよ」
ほむら「・・・私には今まで、本当にまどかだけだった。まどかを救う事だけを考えてずっと生きてきたわ」
ほむら「だから、もうまどかはいないんだって思ったらどうしようもなく悲しくなって、生きる意味をなくした気がした」
さやか「ほむら・・・」
ほむら「だけど、さやかは言ってくれた。生きる意味になるって。私のために生きてって」
さやか「!!あ、あれは、その・・・///」
ほむら「すごい救われた気分になったわ。私にも生きてる意味があるんだって思えた」
ほむら「本当にありがとう。私、あなたと友達になれてよかった」
さやか「ど、どうしたのよ。あんたってそんなキャラだっけ?」
ほむら「ふふっ、たまにはキャラじゃない事を言いたくなるときだってあるわ」
さやか「あ・・・」
ほむら「どうしたの?」
さやか「ほむらが笑ってるの、初めて見た気がする」
ほむら「・・・そうだったかしら。・・・そうかも」
さやか「可愛いじゃん」
ほむら「・・・馬鹿。もう寝るわ。お休みなさい」
さやか「照れちゃって。おやすみー」
ほむら「zzz」
さやか「・・・ほむら、もう寝た?」
ほむら「zzz」
さやか「寝たんだ」
ほむら「・・・さやか」
さやか「あれ、起きてる?」
ほむら「zzz」
さやか「なんだ、寝言か」
さやか(眠れない・・・)
さやか(私なんでこんなにドキドキしてるんだろ)
ほむら「zzz」
さやか「いつもブスッとしてるくせに、笑顔と寝顔は可愛いんだから」
さやか(私、なんであんなこと言ったのかな)
さやか(ただ、あんなほむらは見たくなかった。ほむらを絶対に1人にしたくないって思った)
さやか(そう思ったら、いつの間にかあんなこと言ってた)
さやか(よく考えたらなんかあれって告白みたいじゃね?ほむらは気にしてないみたいだったけど)
さやか(私は恭介が好き・・・なんだよね?)
さやか(それとも、もしかしてほむらの事を?)
さやか(私は・・・)
チュンチュン
ほむら「・・・ん」
窓から射し込む暖かい太陽の光で、私は目をさます
布団から体を起こして、思いっきり伸びをした
ずいぶんよく寝た気がする
最近は夢にうなされて安眠出 来る日が少なくなっていたが、今日は久しぶりにスッキリした目覚めだ
そこでようやく、見慣れない部屋にいることに気付いた
ほむら「・・・そういえばさやかの家に泊まったんだったわ」
だけど、隣で寝ていたはずのさやかの姿は既になかった
私は布団から起きて、リビングへと向かう
そこには、既に着替えを終え、台所で何かを作っているさやかがいた
さやか「あ、おはようほむら。よく眠れた?」
ほむら「おはよう。お陰さまでよく眠れたわ。何を作っているの?」
さやか「んー、朝食。っていっても目玉焼きと味噌汁だけの簡単なものだけどね」
ほむら「・・・あなたって本当に家庭的なのね。イメージと違いすぎる」
さやか「なんでよ。お弁当も私が作ってるって言ったじゃん」
ほむら「正直半信半疑だったわ」
さやか「ひどっ!そういうほむらは全然家庭的じゃないよね。イメージと全然・・・いや、イメージ通りか」
ほむら「私はいいのよ。必要ないもの」
さやか「あーあ、将来ほむらの旦那さんになる人はかわいそうだなー。
ま、まあ相手が家庭的な人だったら問題ないかもしれないけどね」
ほむら「・・・さやかちょっと顔が赤いわよ?大丈夫?」
さやか「な、なんでもないわよ!それよりほら、テーブルにお皿運んで」
さやか「ごちそうさま」
ほむら「ごちそうさま」
さやか「ふぅ・・・。この後どうしよっか」
ほむら「あんまり長居するのも悪いし、そろそろ御暇するわ」
さやか「え、もう帰るの?うちの両親明日の夜まで帰ってこないから今日も泊まってきなよ」
ほむら「明日も学校があるのだから、そんなわけにはいかないでしょ」
さやか「でも、どうやって帰るつもり?制服、多分まだ乾いてないよ?」
ほむら「あ・・・」
さやか「考えてないんだ・・・。夜までには乾くようにしとくからさ、それまではここにいなよ」
ほむら「・・・そうね。そうさせてもらうわ」
さやか「よし、じゃあどうせ外にも出れないし、ゲームでもしよっか」
ほむら「私、やったことない」
さやか「やってるうちに覚えるから大丈夫だって。ふふ、でも私が初心者相手に手加減すると思ったら大間違いだからね。
徹底的にボコボコにしてあげるから覚悟しなさい!」
一時間後、そこには私に徹底的にボコボコにされているさやかの姿があった
ほむら「ゲームって意外と楽しいのね」
さやか「なんでだー!」
そして夜
制服も乾いて時間も遅くなってきたので、そろそろ帰ることにした
ほむら「いろいろありがとう。とても楽しかったわ」
さやか「私も。またいつでも遊びに来なよ」
ほむら「ええ、それじゃあね」
さやか「また明日学校でね」
帰り道、私は昨日今日の事を考える
本当に楽しかった
まどかを救うために頑張ってた時は、何かを楽しむ余裕なんて全くなかったから
だから、こんな気分になったのは本当に久しぶり
ほむら「私の為に生きて・・・か」
さやかが昨日私に言ってくれた言葉
なんだか告白みたいね
もちろん、そんな意味じゃないことは分かってる
傷ついた私を助けるために、咄嗟に言ってくれただけだろう
これくらいで変な勘違いをするような私じゃない
第一さやかは上条恭介の事が好きなんだし
ほむら「・・・」
なんでだろう、胸が痛い
さやかと上条恭介の事を考えると、胸のチクチクが止まらなくなる
なんだろうこれ
ほむら「・・・変なことを考えるのはやめましょう」
私は無理矢理考えるのをやめて、帰宅を急いだ
止まらない胸の苦しみに気づかないふりをして
空け忘れた
それからしばらくは、何もない平穏な時間が流れた
さやかと学校に行って授業をうけて、帰りにはどこか寄り道をして、そしてたまに魔獣を退治する
さやかはいいって言ってくれたけど、まどかの事がなくたって魔獣退治は
魔法少女の使命なのだからそういうわけにはいかない
そしてある日の放課後
さやか「ほむらー、早く帰ろ」
ほむら「ええ、ちょっと待って」
恭介「さやか」
帰り支度をしている私達のところにやってきた上条恭介がさやかに話しかける
さやか「恭介。なに?」
恭介「ちょっとさやかに話したい事があるんだけど、少しいいかい?」
さやか「話?別にいいけど」
恭介「ここじゃちょっと言いづらい事なんだ。ちょっと場所を変えたい」
ほむら「・・・私、昇降口のところで待っているわ」
さやか「え、あ、うん。待っててね。すぐ行くから」
そして、私は昇降口でさやかが来るのを待つ
たぶん、私には上条恭介の話の内容が分かった
さやかは気付いてないみたいだったけど、あんな雰囲気であんな事を言っていれば普通わかる
でも私は、その予想が外れていてほしいと思っていた
理由は分からないけれど
私は友達の幸せを願えないほどの小さな人間だったのだろうかと自己嫌悪する
さやか「お、お待たせほむら」
そんな事を考えていると、さやかがやってきた
心なしか顔が少し赤いような気がする
ほむら「それじゃあ、帰りましょうか」
さやか「う、うん」
ほむら「・・・」
さやか「・・・」
ほむら「・・・」
さやか「・・・」
ほむら「・・・ずいぶんと口数が少ないのね」
さやか「え、あ、ごめん・・・」
ほむら「別に謝る事では無いけれど、どうかしたの?」
さやか「うん、ちょっと・・・」
ほむら「話してはくれないのね」
さやか「ち、違う!そうじゃなくて・・・。あ、あのね・・・」
ほむら「・・・」
さやか「私さっき、恭介に告白されちゃった・・・」
どうやら私の予想は当たってしまったようだ
ショックだった
すごく動揺した
だけど、そんな内心を悟られたくなくて、努めて冷静に答える
ほむら「そう、良かったわね」
さやか「・・・」
ほむら「おめでとう。これであなたと上条恭介は恋人同士に」
さやか「待ってって言った」
ほむら「え?」
さやか「考えさせてほしいって」
意外な言葉だった
さやかの事だから二つ返事でOKすると思っていた
ほむら「どうして?あなたは上条恭介の事が好きなのでしょう?」
さやか「ほ、ほら、私達まだ中学生だし、そういうのはまだ早いかなーなんて」
ほむら「さやか・・・?」
さやか「それに、今はほむらと遊んでる方が楽しいし。
ほ、ほむらだって私が彼氏作って恭介とばっか遊んでたら嫌でしょ?だ、だから」
ほむら「駄目よ」
さやか「え?」
ほむら「断るなんて駄目。あなたは上条恭介と付き合うべきよ」
気が付いたら私はそんな事を言っていた
本当は付き合ってほしくない
断ってほしい
なのに私の口からはそれとは反対の言葉が出てくる
さやか「ど、どうしてよ」
ほむら「私は今まで何回も世界を繰り返してきたって言ったわよね?これは言っていなかったことなのだけど、
その世界のほとんどで、あなたの想いが報われる事はなかったわ」
ほむら「だから、このチャンスを絶対に棒にふっちゃダメ。あなたの想いが、やっと報われる時がきたのよ」
さやか「そ、そんなの私は別にもう・・・。ほむらは、私が恭介と付き合うことになってもいいのかよ」
ほむら「・・・あなたの問題よ。私は関係無いでしょう」
さやか「!!あっそう!」
私の言い方が気に触ったのか、突然さやかが声を荒らげる
さやか「ええそうでしょうね!私がどうしようがあんたには関係無いわよね!
あんたの頭の中はまどかの事でいっぱいだもんね!ばっかみたい」
ほむら「な、なにを怒ってるのよ。私はただ」
さやか「知らない馬鹿!もういい!」
ほむら「さやか!」
さやかはそう言うと走って行ってしまった
わけがわからない
なんでこんなことになったんだろう・・・
私はただ、さやかの為に・・・
さやかの為にはこう言わなきゃいけないって思って・・・
ほむら「さやか・・・」
去り際のさやかの涙声が頭から離れない
ねえさやか、私はなんて言えばよかったの?
あなたは私に、なんて言ってほしかったのよ
その晩、明日の朝は集まらずに行くとさやかに言われたと志筑仁美からメールが来た
何かあったのかと心配されたけど、なんでもないと返信しておいた
明日、さやかに謝ろう
きっとさやかの事だから、一晩寝たらもう怒ってないに決まっている
そしたらまた、いつも通りに戻れるはずだから
ごめん、10分くらい消える
私って、ホント馬鹿だ
一緒にいるうちに1人で勝手に盛り上がって
あいつも私の事が好きなんじゃないかって思ってた
まどかの代わりにになれたんじゃないかって
そんな訳ないのにね
あいつは私の事なんか、ただの友達としか思っていないのに
次の日、1人で学校に向かった私は、先に来ていたさやかに話しかけた
ほむら「お、おはよう、さやか」
さやか「・・・」
ほむら「さやか?」
さやか「・・・何?」
ほむら「昨日はごめんなさい。私きっと、何かあなたの気に触る事を言ったのだと思う」
さやか「別に。どうでもいいし」
ほむら「あ、あの、さやか。私は」
さやか「あ、そうだ。あんたの言う通り、私恭介と付き合うことにしたから」
ほむら「!」
さやかが上条恭介と付き合う
そうだ、私がそう言ったんだ
そうした方がいいって
なのになんでこんなに私は傷ついているの?
ほむら「そ、そう。良かったわ」
さやか「っ!そういうことだから。これからは登下校も恭介とするし。用事ないならあっち行って」
ほむら「ねえさやか、怒らないで。私は別にあなたとケンカしたいわけじゃ」
さやか「うるさいな!あっち行ってったら!」
ほむら「!」
さやかの大声に、クラス中の視線が集まる
囁き声で何事かと話している生徒の声も聞こえた
ほむら「ご、ごめんなさい。私、席に戻るわね?」
さやか「・・・」
みんなに見られながら、私は席に戻る
本当になんでこんな事に・・・。
恭介「・・・」
私はずっと、ほむらが話しかけてきても冷たくあしらい続けた
だって、もう無理だから
私はほむらの事が好きなのに、ほむらは私の事を友達としか思っていない
そんな状態で、今まで通り一緒にはいられない
この気持ちを知られたら、きっとほむらに嫌われる
そんなの私、耐えられるわけがない
ほむらは、いつしか私に話しかけて来なくなった
あれから一ヶ月が過ぎた
私は今日も1人、学校から家へと帰る
私はさやかに完全に嫌われてしまったようだ
いくら話しかけても相手にしてもらえない
私はまた1人になった
別にいい。以前もそうだったんだから
ただ戻っただけ
私は自分にそう言い聞かせる。
QB「ほむら」
そこに突然キュゥべえが現れた
ほむら「キュゥべえ。なんの用?」
QB「濃い障気の発生を2ヵ所確認した。マミと杏子はすでに片方の場所に向かっている。
君にはもう片方に向かってほしいんだ」
魔獣か。このモヤモヤした気持ちを晴らすには丁度いいかもしれない。
ほむら「分かった」
QB「気を付けた方がいい。今回の魔獣は単独だけど、いつもとは少し違うみたいだ。急いでさやかにも」
ほむら「さやかはいいわ」
さやかはきっと今ごろ上条恭介と帰っているはず
邪魔はしたくない
QB「またかい?ほむら、君とさやかが仲違いをしているのは知っているけれど今回はマズイ。
少しでも戦力を増やさないと」
ほむら「問題ない。私1人でなんとかなる」
QB「・・・そうか。君がそういうならいいさ。1人でなんとか頑張ってくれ」
ほむら「ええ、それじゃあ行くわ」
QB「・・・」
さやか(ほむらのやつ、今ごろなにしてんのかなー)
?「・・・か」
さやか(1人で寂しく帰ってるんだろーな。だいたい諦めるのが早すぎなのよ。少し冷たくされたからってさ)
?「・・・やか」
さやか(・・・怒りすぎたかなー。でも今更仲直りしたいなんて私から言えないし。
それにやっぱり一緒にいたら辛くなりそうだし・・・)
恭介「さやか、聞いてるかい?」
さやか「え!?ごめん恭介。なんの話だっけ?」
恭介「・・・さやかは、あんまり僕といても楽しそうじゃないよね」
さやか「そ、そんなことないって!なに言ってんのよ」
恭介「本当かい?さやかは僕の事が好き?」
さやか「う、うん。好き・・・だよ」
恭介「だったら、いいよね?」
恭介はそう言うと、自分の顔をゆっくりと私に近づけてくる
さやか(え!?ちょっと待って!そんないきなり!わ、私・・・!)
恭介の唇があと数センチというところまで迫ってきて、私は・・・
さやか「や、やだ!」
私は恭介を押し飛ばしていた。
さやか「あ!ごめん恭介!私そんなつもりじゃ・・・」
恭介「・・・さやかが何を考えてるのか、当ててあげようか?」
さやか「え?」
恭介「暁美さんの事だよね?」
さやか「な、なんで私があいつの事なんか!」
恭介「さやかを見てれば分かるよ。さやかってホント分かりやすいよね」
さやか「・・・」
恭介「暁美さんの事が好きなんだろ?」
さやか「・・・でも、あいつは私の事なんか・・・」
恭介「そうかな?僕にはそうは見えなかったけど」
さやか「無責任な事言わないでよ」
恭介「もしそうだったとしても、さやかは相手が自分の事を好きじゃないくらいのことで諦めるのかい?
自分を好きにさせてやろうとは思わないの?」
さやか「そんなの・・・」
恭介「少なくとも僕は、さやかが暁美さんの事を好きなくらいじゃ、さやかの事を諦めたりはしないよ」
さやか「恭介・・・」
恭介「行ってきなよ、暁美さんの所へ。自分の気持ちを正直に伝えにさ」
さやか「・・・う、うん!ありがとう、恭介!私、ちょっと行ってくる!」
恭介「行っちゃったか。本当に馬鹿だよな、僕も・・・」
ほむら・・・
ほむら!
ほむら!!
あいつ今どこにいんのかな
携帯に連絡してみる?
今更何って思われるかも
ううん、気にしない
伝えるんだ、あいつに
私の気持ちを
QB「さやか」
さやか「キュゥべえ?ごめん、今あんたに構ってられないの」
QB「そうか。それは残念だ。せっかくほむらの居場所を教えてあげようと思ったのだけど」
さやか「マジ!?どこにいるの?」
QB「君は現金だね。別にいいけれど」
ほむら「クッ!」
何こいつ、強い
今までの奴とはレベルが違う
こっちの攻撃が全然効いていない
だけど、負けるわけにはいかない
私は急いで立ち上がると魔獣に向かって連続で矢を放つ
矢は確かに命中したが、魔獣は怯むことなくすぐに私に反撃をしてきた
ほむら「キャッ!」
私はそのまま吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる
駄目だ、体が動かない
ダメージの回復にはかなりの時間がかかりそう
それを魔獣が待ってくれるはずもない
そして魔獣は止めを差そうと、私に向かって振りかぶった手をおろす
ほむら「さやか・・・」
さやかを呼ばなくて良かった
きっとさやかがいたとしても、お互い無事ではすまないだろう
この魔獣は、きっと巴マミと佐倉杏子が倒してくれる
だからよかった
さやかが無事で、本当によかった
しかし、私に向かって降り下ろされた手が、突然誰かの攻撃によって横にそれた
そして私の目の前に、1人の魔法少女が姿を見せる
それは、今一番会いたくなくて、一番会いたかった人の姿
ほむら「さやか!」
さやか「魔法少女さやかちゃん!ただいま参上ってね!」
ほむら「あなた・・・どうしてここに・・・」
さやか「キュゥべえがほむらはここにいるって教えてくれたからね」
ほむら「キュゥべえ、お前!」
QB「ひどいなあ、僕は君を助けてあげたのに」
ほむら「そんなの頼んでないわ!」
私は今度はさやかにむかって言う。
ほむら「駄目よ、さやか!そいつは強い!あなたじゃ絶対に勝てないわ。だからお願い、逃げて!」
さやか「イヤよ。あんた置いて逃げられるわけないでしょ」
QB「だけど、君じゃ勝てないというのも事実だ。だからさやか、君は時間を稼ぐんだ
マミたちからもう片方の魔獣は倒したと連絡があった。今こっちに向かっている」
さやか「わかった!」
さやかは得意の素早い動きで、魔獣の注意を自分に引き付ける
そして、隙あらば魔獣に攻撃していく
さやか「痛っ!なにこいつ固すぎ!」
しかし、徐々に魔獣の攻撃がさやかに近づいていく
さやかが遅いんじゃない。魔獣の反応速度がどんどんあがっている
さやか「危なっ!じゃあこれならどうよ!」
今度はさやかは距離をとると、魔獣に向かって次々に剣を投げていく
しかし、その攻撃も魔獣にダメージをない
次第にさやかは追い詰められていき、そしてついに、魔獣の攻撃がさやかをとらえた
さやか「うわあ!」
ほむら「さやか!」
攻撃をうけたさやかは壁に激突して倒れる
ほむら「さやか!さやか!」
さやか「だ、大丈夫・・・。これくらいすぐ回復するし」
しかし、さやかの姿はとても大丈夫そうには見えなかった
いくら回復能力の高いさやかでも、すぐには回復しきれていないようだ
QB「マズイね、時間稼ぎも限界だ。このままじゃ2人とも・・・」
ほむら「さやか!お願い逃げて!もういいから!」
さやか「イヤだ!」
さやかはそういうとゆっくりと立ち上がる
傷ついた体にムチをいれ、毅然と敵の前に立ってみせる
さやか「安心して、ほむら」
ほむら「さやか?」
さやか「ほむらは絶対、私が守ってみせるから!」
彼女はそう言うと、自分の剣に力を込める
すると彼女の剣は、とても巨大な大きさへと変化していった
これは、巴マミや佐倉杏子のと同じ!
でも、これは・・・
その剣から感じる力が、他の二人とは全然違う
QB「やめるんださやか!そんなことをしたら君が!」
ほむら「キュゥべえ!さやかはなにをしているの!?」
QB「さやかは、自分の全魔力をあの刀に注ぎ込んでいるんだ。そんな事をすれば、もちろん彼女もただでは済まない」
ほむら「そんな!さやか!お願いやめて!」
さやか「ほむら」
さやかが私の方を振り返る
さやか「ごめんね、今まであんたのこと無視して。最悪だったよね、私」
ほむら「いい!そんなのいいから!さやか!」
さやか「あのね、最期に聞いてほしいの。私ね、ほむらの事」
ほむら「さやか、やめて!」
さやか「ほむらの事、好きだったよ」
さやかはそういうと魔獣に向き直り、全力で跳んだ
そしてそのまま、渾身の一撃をみまう
さやか「くらえええええええ!」
ほむら「さやかああああああ!」
マミ「暁美さん!美樹さん!」
杏子「おい、大丈夫か!?」
2人が到着した時には既に魔獣の姿はなく、目に写ったのは、泣き叫ぶ私の姿と、倒れたまま動かないさやかの姿だった
ほむら「さやか!さやか!」
さやかの横に転がっているソウルジェムは、もうどうしようもないくらいに濁りきっていて、すぐにでも消えてしまいそうだった
私は自分の持っているグリーフシードを全て出して、さやかのソウルジェムに近づける
ほむら「なんで!なんで移らないのよ!」
だけど、さやかのソウルジェムの濁りはグリーフシードには移ってくれない
マミ「美樹さん!暁美さん、私のグリーフシードも使って!」
杏子「私のも使え!」
QB「無駄だよ。そこまで濁りきったソウルジェムを救う方法はない。さやかはもう助からない。
あとはもう、円環の理に導かれて消える運命さ」
ほむら「黙りなさい!お願い、移って!」
しかし、無情にもさやかの体は、ゆっくりと消えていく
ほむら「イヤ!さやか!さやか!」
私はさやかの体に抱きつく
消えないように
連れていかれないように
ほむら「あなた言ったじゃない!私の生きる意味になるって!私のために生きてって!
なのに!あなたも私を1人にするの!?」
このままではさやかは消える
いなくなってしまう
まどかと同じように
イヤ!そんなの絶対に!
そして私は叫ぶ
もういないはずの彼女に向かって
ほむら「お願いまどか!さやかを連れていかないで!もう2度と、大切な人をなくしたくないの!」
ほむら「だからお願い!助けて、まどか!」
気が付くと、私は不思議な場所にいた
上も下も右も左もない
生き物も物質も時間さえもない
そんな場所に、彼女はいた
まどか「ほむらちゃん」
ほむら「まどか!あなたまどかなの!?」
まどか「そうだよ、ほむらちゃん。ごめんね、1人にして。私も、ほむらちゃんにずっと会いたかったよ」
ほむら「まどか・・・私も会いたかった」
しかし、今は再会を喜んでいる場合ではない
ほむら「まどか!お願いがあるの!さやかを助けて!」
まどか「・・・」
ほむら「お願いよ!まどか!」
まどか「・・・ごめんねほむらちゃん。私もさやかちゃんを助けてあげたいけど、私には出来ないの。
私ができるのは魔女になりそうな魔法少女を導く事だけ」
ほむら「そ・・・んな」
そんな事って・・・
じゃあもうさやかは・・・
まどか「だけどね、ほむらちゃんなら出来るよ」
ほむら「え?」
まどか「私には出来ないことでも、ほむらちゃんにならきっと出来る。
だって魔法少女は、どんな奇跡だって起こせるんだから」
ほむら「・・・まどか」
まどか「ねぇほむらちゃん、1つだけ聞かせて。ほむらちゃんは、さやかちゃんの事が好き?」
ほむら「私は・・・」
今までの事を思い出す
さやかは1人だった私の友達になってくれた
私が悲しい時は抱きしめてくれた
私が困っている時は助けに来てくれた
私はそんなさやかが・・・
ほむら「・・・ええ、好きよ。私はさやかの事が大好き」
まどか「・・・そっか。あーあ、さやかちゃんにほむらちゃんを取られちゃったか」
ほむら「ま、まどか。私・・・」
まどか「なんてね」
そう言って、まどかは笑う。
まどか「ほむらちゃんに、私の力を少しあげる。だからお願い、さやかちゃんを助けてあげて」
ほむら「約束するわ。さやかは必ず私が助ける!」
マミ「美樹さん!」
杏子「さやか!いくなよ!さやか!」
そして私は戻ってきた
目の前には今にも消えてしまいそうなさやかの体
絶対に消させはしない
今度こそ、私は約束を破らない
ほむら「さやか・・・」
私はさやかにキスをした
初めてだからやり方なんてわからない
ただ唇同士を触れ合わせるだけのつたないキス
だけど精一杯の気持ちを込めて
突然彼女のグリーフシードが光出す
強く濁りきっていたそれは、とても強く輝きながら、本来の綺麗な青を取り戻してく
それに合わせて、消えかけていたさやかの体も元に戻る
さやか「ん・・・あれ?私・・・」
そしてさやかが意識を取り戻した
眠そうにしながら上半身を起こす
さやか「あれ?私なんでこんなところで寝てるんだっけ?」
>>227
ミス。グリーフシードじゃなくてソウルジェムだ
この2つややこしいんだよ・・・
ほむら「さやか!」
さやか「うわっ!」
私はさやかに飛び付く
それを受け止めきれなかったさやかは、私に押し倒される形でまた倒れた
さやか「ちょっと!なにすんのよほむら」
ほむら「さやか!さやか!さやか!」
さやか「ほむらまた泣いてんの?どんだけ泣き虫なのよあんたは」
さやかはそういいながらも 、私を抱き返して頭を撫でてくれた
杏子「よがっだあ・・・。よがっだなあさやがあ・・・」
QB「有り得ないよ。あんな状態から復活するなんて、そんなこと今まで1度も前例がない。
いったい何が起こったのか・・・」
マミ「ふふ、キュゥべえったら野暮な事は考えないの。美樹さんが助かった理由なんて1つしかないじゃない」
QB「マミ、君には分かるっていうのかい?」
マミ「ええ、もちろん。それはね」
QB「それは?」
マミは抱き合う2人を微笑みながら見つめて、言った
マミ「愛の奇跡、よ」
さやか「ねえ、ほむら」
ほむら「なに、さやか」
さやか「私さ、夢を見たんだ」
ほむら「夢?」
さやか「うん。夢のなかにピンク色の髪をした女の子が出てきてさ、ほむらの事をお願いって言われちゃった」
ほむら「・・・そう」
さやか「なんか見たことあるような気がするんだよなー、あの子」
ほむら「・・・それで、どうするの?」
さやか「どうって?」
ほむら「私の事、お願いされたのでしょう?」
さやか「そんなの、お願いされるまでもないっつの」
ほむら「ふふ、なら良かったわ」
そして
さやか「ほむらー」
ほむら「あら、さやか」
さやか「ここにいたんだ」
ほむら「ええ」
さやか「またまどかの事考えてたの?」
ほむら「いいえ、あなたの事を考えていたのよ」
さやか「私?」
ほむら「あなたと友達になったのも、この場所だったわね」
さやか「そうだっけ?」
ほむら「ねえさやか、今更だけど、本当にいいの?
あなたは上条恭介の事を、魔法少女になってでも助けたいくらいに好きだったのに」
さやか「ホントに今更だね。それにほむらがそれを言う?私がこうなっちゃったのはほむらのせいなんだけどなー」
ほむら「・・・ごめんなさい」
さやか「ってもう、謝んないでよ。冗談に決まってるじゃん。いいんだよ。私は恭介以上に、ほむらの事が好きなんだから」
ほむら「でも・・・」
さやか「それにね、私魔法少女になったことも全然後悔なんてしてないよ。私は恭介の引くヴァイオリンが好きだからね。
またあれが聴けるなら、魔法少女になるくらい安いもんよ。それになにより・・・」
さやか「魔法少女になってなかったら、きっとほむらと愛し合えることもなかったしね」
ほむら「なっ!」
さやか「いやー、昨日のほむらは凄かったわ。ほむらってば見かけによらず意外と激しくて」
ほむら「それ以上言ったらあなたの頭を吹き飛ばす!」
さやか「怖い怖い!ほむら目がマジになってるって!」
さやか「ねえほむら。いつかさ、2人で一緒に恭介のヴァイオリンを聴きにいこう?
ほむらにも聴いてほしいんだ。あいつ、ヴァイオリンだけは本当にすごいんだから」
ほむら「いいわね」
さやか「そんで、いつか一緒に住む時は私が家事担当ね。我が家の家計はあんたの働きぶりにかかってるよ」
ほむら「イヤよ、私だって家事の方がいいわ」
さやか「あんたに任せたら家庭が崩壊するっての」
さやか「大人になったら子供をもらって、おばちゃんになったら最近の若い奴はって文句を言い合って、
おばあちゃんになったら縁側で一緒にお茶を飲む」
ほむら「ずいぶんと気の長い話ね」
さやか「そりゃ、ずっと先まで一緒にいるつもりだからね。・・・いや?」
ほむら「・・・そんなわけないでしょ」
さやか「へへ。じゃあ約束ね」
ほむら「ええ、約束するわ」
私は隣に座るさやかの手を握る
さやかも私の手を握り返してくる
私達は魔法少女
この先、どんな辛い運命が待っているかもわからない
だけど私はもう、絶対に約束を破らない
どんな運命も、私達は絶対に乗り越えてみせる
だから、これからも
私達は、いつまでも一緒に
終わり
やっと終わった
少ないだろうけど、付き合ってくれた方はありがとうございます
もっと上手い文書が書けるようになりたい
感想とか書いてくれたら俺が喜びます
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません