巴マミを喰ったあの魔女(シャルロッテ)を始末するとき、
どういうわけか巴マミのソウルジェムが消化不良で残っていたのを発見してしまった。
この時点の巴マミはソウルジェムの真実を知らなかった。
恐らく生きたまま肉体をぐちゃぐちゃにされた彼女の心は壊れてしまっているだろう。
でも宝石の輝きは失われていなかった。生きている。
だからだ。
一緒に爆破するのは忍びなく、盾の中に回収しておいた。
とくにそれで何をしようとか思った訳ではない。
でもそのあと、まどかが隙を突いて魔法少女化してしまい、
その存在をすっかり忘れてしまっていた。
マミの死に魔法少女になることを恐怖していたまどかがどうして契約を決心したのか?
皮肉なことに、ほむらがまどかを慰める機会を持ち、
その際に全てを話してしまったが故の結果であった。
まどかはほむらには何も言わず、全てを知った上で契約してしまった。
まどか『聞いちゃったから。もう後には引けないよ』
ほむら『どうして!?』
まどか『ほむらちゃんの言ったことは全部判ってる。
でも私は全部くつがえして見せるよ!』
そう豪語したまどかは今までで一番頼もしく見えた。
それなのに……。
結局、三樹さやかは魔女化、佐倉杏子はそれと心中。
ワルプルギスの夜にはまどかとほむらの二人で共闘したものの、
ぎりぎりまで追い詰められた状況でまどかが自分のソウルジェムを
魔女の中枢に撃ち込んで道連れ自爆。
とっさに守ったまどかの抜け殻とほむらだけが最後に残されてしまった。
結局運命は変えられなかったのだ。
ほむら「まどか。自分を犠牲にしないでってあれほど……」
ほむら「でも私は諦めない。今度こそあなたを救ってみせるから」
――そのとき。
そのとき思い出してしまったのだ。巴マミのソウルジェムが残っていたことを。
『ここに魂と肉体がワンセットあるじゃない』などと、
他人の生命を弄ぶような考えが浮かんでしまったのは悪魔の囁きだったに違いない。
ましては入れ物は自分が正に救おうと悪戦苦闘してきた相手の遺体なのだ。
巴マミのソウルジェムを取り出したほむらは、それを確認した。
ほむら「濁ってないわね」
これが、近々魔女化するような状態だったら迷わず砕いていただろう。
だが悪いことに、そう、これはおそらく『悪いこと』だ。
それは眠っているのか単に呆けているのか、
巴マミの魂は魔法を消費するような活動を止めているらしく格納した時点の輝きは保たれていた。
ほむら「動かせなくてもいいわ。あなたはまどかの身体を守っていて」
横たわるまどかの遺体の手にそれを持たせ、祈るように胸の前で両手に握らせた。
その魂が身体を欲していたからなのか単に条件反射的なものなのかわからないが、
ソウルジェムから何らかの力がまどかの身体に流れ込んていくのを確認した。
そのまま盾の中にまどかの身体を格納した。
この盾は女の子の身体一つ格納するくらいはわけない。
いつももっと重い銃火器をいくつも格納していたのだから。
ほむら「狭いけど少しだけ我慢してね」
肉体を失った魔保少女の魂と親友の遺体を合わせて旅路の道連れになんて、
正気の沙汰ではないだろう。
いや、何回も続けた繰り返しの中でほむらは正気というものを見失っていたのかもしれない。
ほむらは再び過去に跳んだ――。
なんだこの欝プロローグ。
構成失敗したかも。
すまん。他のスレ読んでた。
ここまではプロローグという名の独自設定の言い訳だから。
受け付けられなければスレ閉じてくれ。
目を覚ます。
ここは病院のベッドの上。
ほむら「……大丈夫。今度こそ上手くいくわ」
言い聞かせるようにそう呟き起き上がった。
巴マミのソウルジェムはまどかの身体をしっかりと維持していた。
肌のつやもよく、眠っているようで、誰がこれを見ても『遺体』とは呼ばないであろう。
ほむら「こうして動かなくても、きっとあなたの存在が私の励みになる。
あなたは繰り返してはいけない失敗の証だから」
こうして転校のその日まで、ほむらは昼はこの時間のまどかとQBとの接触を妨害するために外に出かけ、
夜はまどかの“亡骸”を抱いて眠った。
ほむら「まどか、明日は転校する日なの。やっとこの時間軸のあなたに会えるのよ……」
語りかけようと抱きしめようと“まどかの亡骸”がほむらに微笑むことはない。
にも関わらずほむらは毎晩、空しいと判っていながら『それ』にとりとめもなく話しかけていた。
そして登校初日。
気分が悪いからと前例に従って保険係りのまどかを誘った。
ほむら「あなた、このクラスの保険係りなのでしょう?」
まどか「え? う、うん……」
ほむら「保健室まで案内してくださらないかしら?」
『動いて、話しかけるまどか』に感極まったほむらは、
人気の少ない渡り廊下でまどかを思い切り抱きしめてしまった。
まどか「え? え!?」
ほむら「……っ」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「ぐすっ、……うっ……」
まどか「泣いてるの?」
ほむら「……」
まどか「辛いの? 保健室もうすこしだから。我慢して?」
まどかは体調が悪くて辛いと誤解したみたいだった。
まどか「先生にはわたしが言っておくからね?」
保険医の先生にあとを任せてまどかは教室に帰っていった。
結局そのあと、一回昼休みに抜け出し、
隠れてまどかを見張った以外は放課後まで保健室で寝ていた。
昼間、感情をコントロールできず、まどかに忠告を与えられなかったのは、
明らかに前の時間軸から持ってきた『まどかの身体』のせいだ。
だか自分で選択した以上、その分はQBの妨害を頑張るしかないだろう。
繁華街の裏路地でQBを追い詰めていた。
ほむら「……まずいわね」
このパターンだと、ビルの裏手、一般人立ち入り禁のスペースであいつはまどかと接触する。
前の時は一撃で肉片にしてやったが、一瞬で『次』が現れて結局まどかとの接触を許してしまった。
だから足を狙った。
QBの動きが鈍る。
時を止めて接近し、そのスキルを推測され難いようにタイミングを計って停止を解き、
その白い尻尾を捕らえた。
QB『たすけて!』
ほむら「無駄なあがきはやめなさい。私にも聞こえてるわよ」
QB『まどか! まどか!』
QBはほむらの言葉を無視してまどかを呼び続けていた。
ここで殺してしまうこともできた。
だがそうすればすぐにまた新しいQBが現れ、近くにいるであろうまどかと接触してしまうだろう。
QB『悪いやつに捕まってるんだ! 助けて!』
ほむらはQBの尻尾を掴み逆さ吊りにしたまま今来た方へと歩みを進めようとした。
進めようとしたのだが、
ほむら「!?」
魔力を帯びたリボンが一瞬でほむらの身体に幾重にも絡みつき身動きが取れなくなった。
ほむら(この技は……)
「QB、無事だった!?」
ほむら「……巴マミ!?」
マミ「あら、私の名前を知ってるの? 悪い魔法少女さん?」
ほむら「……」
マミ「QB……酷い……。ここで待っててねすぐに治してあげるから」
そういって巴マミはほむらのそばに転がった白い生き物を抱き上げて壁の近くに横たえた。
そして彼女はほむらに鋭い視線を向けた。
マミ「さて、私の大切なお友達をこんな目にあわせたあなたにはお仕置きが必要かしら?」
このタイミングで巴マミが出てくるなんて完全に想定外だった。
捕縛されている状態では時間停止しても捕縛されたままなので武器を出して反撃する
ことも出来ない。
これはほむらの時間停止魔法の欠点である。
もし、ここでやられたら全てが終わってしまう――。
ほむら「……私を殺すの?」
そう口にしたほむらは実は冷静だった。
今までの経験からこの場面で彼女が自分を殺すとは思えなかったからだ。
マミ「あなたの出合った他の魔法少女ならそうしたのかも知れないけれど、
そういうのは私の趣味じゃないわ。安心して。これ以上のことはしないから」
ほむら「ずいぶん甘いのね」
マミ「そうかしら? でもあなた、魔力はたいして強くないでしょ?」
確かに、ほむらの魔法は特殊だからこの状況ではそう判断されても仕方が無いだろう。
マミ「ここであなたを痛めつけたら弱いものいじめになってしまうわ」
そういうと巴マミはほむらをそのままにしてQBの治療を始めた。
巴マミはこの際どうでも良い。
ほむらには最優先的に気にしなければならない事柄があった。
まどか「あ、あれって……」
さやか「しっ、やばいって」
マミ「あら?」
さやか「わ、見つかった! 逃げるよ!」
まどか「で、でもわたしの名前呼んでたんだよ? 助けてって」
そう。まどかである。
案の定、彼女はQBのテレパシーに騙されてこの場に来てしまっていた。
さやか「いいから! こんなとこでコスプレパフォーマンスしてる奴らに関わったら
やばいに決まってる!」
ほむらはこのまま彼女の判断通りに、二人で逃げ去ってくれれば良いと思っていた。
だが、こんなときに限って悪いことが重なるものである。
というより今までの統計上予想されたことなのではあるが。
三樹さやかはまどかの手を引き走っていったが、恐らく間に合わないであろう。
周りの景色が一変し、汚れた極彩色をコラージュしたような酷く神経に障るオブジェクトが視界を覆っていった。
魔女の結界だ。
マミ「どうやらこんなことをしている場合じゃ無さそうね」
『こんなこと』とはほむらの捕縛のことのようだ。
巴マミはほむらの拘束を解いた。
マミ「この魔女はあなたに譲るわ。行きなさい。私はあの子達を助け行くから」
そう言い放って巴マミはQBを抱えたまま、まどかたちが去った方へ走っていった。
ここで彼女を追って手の中のQBを撃ち殺すことも出来る。
巴マミの手の中ならばあいつがいきなり再生して見せることも無かろう。
まどかとの接触を防ぐにはいいチャンスだ。
だが、それをすれば、逆上した巴マミに再び捕縛され、
直接手を下さないまでも放置されて魔女の生贄にされかねない。
むしろ先回りしてまどかの周りの使い魔を始末することを優先すべきか?
そう思い至ったと同時にほむらは時を止めた。
走る姿勢のまま静止した巴マミの横を抜け、
ほむらは異空間に恐怖し立ちすくむ静止したまどかと三樹さやかのところに辿りついた。
そして周りの使い魔たちに銃弾を次々と撃ち込んでいった。
静止した空間で銃弾は放たれた後、対象に到達しないで静止する。
そして時の静止を解いた。
と、同時に銃弾はターゲットに突き刺さり爆発を起こした。
それによって周りを囲んでいた使い魔たちは一匹残らず吹き飛んだ。
ほむら(これで魔女が逃げてくれればいいのだけど)
そう思いつつ、辺りを警戒する。
まどか「……ほ、ほむらちゃんだよね?」
さやか「どうなってるのよ?」
幸いなことに魔女は逃げた。
いや少し遅かった。
巴マミが来る前に元の空間に戻って欲しかったのだが、それは彼女が到着すると同時だった。
訂正:
私はあの子達を助け行くから」 ×
私はあの子達を助けに行くから」 〇
----------------
ここで彼女を追って手の中のQBを撃ち殺すことも出来る。
巴マミの手の中ならばあいつがいきなり再生して見せることも無かろう。
まどかとの接触を防ぐにはいいチャンスだ。
だが、それをすれば、逆上した巴マミに再び捕縛され、
直接手を下さないまでも放置されて魔女の生贄にされかねない。
むしろ先回りしてまどかの周りの使い魔を始末することを優先すべきか?
そう思い至ったと同時にほむらは時を止めた。
走る姿勢のまま静止した巴マミの横を抜け、
ほむらは異空間に恐怖し立ちすくむ静止したまどかと三樹さやかのところに辿りついた。
そして周りの使い魔たちに銃弾を次々と撃ち込んでいった。
静止した空間で銃弾は放たれた後、対象に到達しないで静止する。
そして時の静止を解いた。
と、同時に銃弾はターゲットに突き刺さり爆発を起こした。
それによって周りを囲んでいた使い魔たちは一匹残らず吹き飛んだ。
ほむら(これで魔女が逃げてくれればいいのだけど)
そう思いつつ、辺りを警戒する。
まどか「……ほ、ほむらちゃんだよね?」
さやか「どうなってるのよ?」
幸いなことに魔女は逃げた。
いや少し遅かった。
巴マミが来る前に元の空間に戻って欲しかったのだが、それは彼女が到着すると同時だった。
マミ「あなた、どういうつもり?」
ほむら「見ての通りよ」
マミ「……この子達と知り合いのようね?」
まどかが契約してしまう因子は少しでも排除したいところなのだが、
ここでQBを排除しようとして巴マミと一戦交えるのは得策ではないだろう。
彼女には捕縛されたら打つ手を持たないことを既に知られてしまっている。
先手を打てば勝てないことも無いが、
これ以上手の内を見せてまで敵対してしまうことはどう考えても後々の障害になるように思えた。
幸い今彼女はほむらを戦闘において「弱い」と認識している。
だから、この場はそのまま力量の差を認めた風を装ってここで堂々と見張っていれば良い。
マミ「あなたは結界に迷い込んだお友達は助けるのに、どうしてQBをいじめたりするのかしら?」
ほむら「この子たちに会わせないためよ。でももう手遅れになってしまったわ」
マミ「なるほど。そういうことね」
それらしく納得する巴マミだが間違いなく誤解しているであろう。
それを今すぐ解く気はないのだが。
マミ「これ以上何かする気なら私が相手になるけれど?」
ほむら「無駄な争いはしないわ。あなたには勝てる気がしないもの」
見張りを続行するためにそう言ったが、それは功を奏したようで巴マミは微妙に嬉しそうにこう言った。
マミ「あなたが賢明な子でよかったわ」
さやか「ちょっと転校生、それってコスプレ? というかさっきのアレはなんなのよ?」
マミ「私が説明するわ。さっきのは魔女の結界。
あなた達に襲い掛かっていたのは魔女の使い魔よ」
さやか「ま、魔女!?」
マミ「そして私は魔女を狩るもの、『魔法少女』なの」
絶句する二人。
無理も無い。
いきなり魔女の結界に使い魔、魔法少女。非常識のオンパレードだ。
さやか「えっとあなたは……?」
マミ「まずは自己紹介かしら? 私は巴マミ。見滝原中学の三年生よ。
その制服は同じ中学よね? 二年生?」
さやか「あ、はい。三樹さやかです」
まどか「鹿目まどかです」
マミ「さっきこの子の声が聞こえたって言ってたみたいだけど?」
まどか「は、はい。頭の中に直接響いたんです。『助けて』って」
マミ「そうだったの」
まどか「それでその子は大丈夫なんですか?」
QBはマミの手の中でぐったりしているが、ほむらがつけた傷はもう癒えているように見えた。
マミ「さっき少し治療したから。命に別状は無いと思うわ」
まどか「よかった」
会話の蚊帳の外と言った風で一歩離れて話を聞いていたほむらだが、
マミ「そういえばあなたの自己紹介がまだだけど?」
ようやく話を振られた。
ほむら「暁美ほむらよ」
まどか「ほむらちゃんはわたしと同じクラスの転校生なんです」
さやか「転校生もその魔法少女ってヤツよね?」
マミ「そのようね」
さやか「じゃあマミさんの仲間ってわけですか?」
ほむら「仲間では無いわ」
マミ「彼女とは今日が初対面なのよ」
さやか「そうなんだ?」
まどか「あの、さっきケンカしてるように見えたんですけど……」
マミ「そうね、その辺も含めてお話したいんだけど、このあと私の家に来ない?」
まどか「え?」
いつもは殺害するQBをそうせず、捕獲することを選択しただけなのだが、意外な展開になった。
マミ「あなたはどうする? この子達が気になるのでしょう?」
ほむら「私を排除しないの?」
マミ「そういうのは趣味じゃないといったわ」
なにが気に入ったのか、彼女はほむらに一緒に来いと言った。
マミの部屋。
ほむらはここに同席したことを後悔していた。
別にあそこで断っても監視する方法は既に用意してあったのだから。
ただ、ほむらが他人に頼ることを止めてから今まで巴マミと敵対しなかったことは一度も無かったからつい同意してしまったのだ。
魔法少女とは。魔女を倒さなくてはならない理由とは。
そして魔法少女になるときの願い事。
ほむらにとって、この話を聞くのは苦痛以外の何物でもなかった。
真実を覆い隠し少女を破滅へと誘う悪魔の誘惑。
なによりも回復したQBの得意げな物言いがほむらの神経を逆撫でた。
何度、話を割り込んで真実をぶちまけてしまおうと思ったことか。
だが、ここで無理に話をしても信じてもらえないことは明らかだった。
それに、
QB「暁美ほむら。キミはずいぶんイレギュラーな生い立ちの魔法少女のようだね」
ほむら「……何のことかしら?」
QB「まあいいよ。君が魔法少女であることには変わりがないからね」
ほむらはこの時間軸でもQBを散々追い回しているのだが『感情がない』という言葉通り、
彼(?)はそんなことはおくびにも出さず、平然とそんなことを言った。
――ほむらがここにいるのはこの場で契約なんてしないように見張るため。
ただそれだけの理由だ。
そう自分に言い聞かせ、ほむらはひたすら耐えた。
話が一通り終わってから、
マミ「あなたはどうする?」
またそう聞かれた。
今度はまどかたちの魔女退治見学に同行するか、ということだ。
マミ「転校してきたということはこの街に留まる気なのでしょう?」
ほむら「私はあなたが魔女を狩るのを邪魔をするつもりは無いし、
干渉する気も無いわ。
でも魔法少女でないまどかたちを連れて行くのは反対よ。
危険に晒すだけでそんなの意味が無い」
マミ「意見を聞きたいんじゃないの。同行するか、この街を出て行くか。
選ばせてあげると言ってるのよ」
自由にさせるつもりは無いようだ。
ほむらを誘ったのは配下に置くためだったのかもしれない。
マミ「あなた、魔法少女の損得に徹し切れてないようだし。
だったらしばらく一緒に行動した方があなたの為にもなると思うのよ」
ほむら「大きなお世話だわ」
まどか「ほむらちゃんこの街出て行っちゃうの?」
ほむら「……出て行かないわよ」
マミ「なら決まりでいいわね?」
流れに任せていいのだろうか?
今までに無いパターンで先が読めないのだ。
少なくとも巴マミがほむらを敵視して勝手に自滅するのは防げるだろう。
問題はその先だった。
キリが良いのでこの辺で。
続きはまた大体同じ時間帯に投下できると思います。
さんくす。
「三樹」×→「美樹」〇
予告より早いけど投下します。投下間隔は昨日より長めになります。
---------------
ほむら「今日は色々なことがあったわ。とうとうQBがこの世界のまどかに会ってしまったの」
家に帰ったほむらはベッドに横たわる“前回のまどか”の身体に話しかけていた。
ほむら「巴マミにも会ったわ。成り行きで一緒に行動することになったのだけど、
きっとあの人は調子に乗ってまた油断してしまう……」
ソウルジェム
前回の『遺品』である“マミの 魂 ”と“まどかの身体”は、
ここに来て十日ほど経った今もただ眠っているかのようで、その鮮度を保っていた。
ただ、魂・身体が揃っていてもそれは決して動き出すことはなかったが。
翌日の放課後。
昨日の約束どおり、魔女狩り体験コースにはほむらも参加していた。
マミ「……こうして昨日の魔女の残していった痕跡を辿るのよ」
さやか「意外と地味なんですね」
マミ「暁美さん、あなたにも手伝って欲しいのだけど?」
ほむら(まどろっこしい)
そう思ってほむらは言った。
ほむら「……こっちよ」
マミ「え?」
そのままある場所を目指して歩き出す。
ほむらは何回もの繰り返しの結果、
ワルプルギスの夜までの魔女の出現ポイントは殆んど把握していた。
さやか「ちょっと、転校生! 勝手してんじゃないわよ!」
マミ「待って、そっちでよさそうよ」
ほむら「……ここよ」
古びたコンクリート建ての建物の前でほむらは立ち止まった。
マミ「どうやら間違い無さそうね。暁美さんお手柄だわ」
ほむら「べつに」
そういって魔法少女に変身して時を止め、
ほむらはそのまま建物に入り、これから飛び降り自殺する『予定』の女を回収した。
女は建物の屋上に至る階段の途中で蹲っていたが、
そして建物から出る前に時を動かし、その女を背負ったまま戻った。
わざわざ時間停止をしたのは、行動の前にその理由を詮索されるのが面倒だったからだ。
まどか「あれ?」
さやか「いつの間に?」
マミ「その人は?」
ほむら「とり憑かれてるわ」
彼女の首には奇妙な形の痣があった。
マミ「魔女の接吻ね……」
すまん、文章直し途中のを投下してしまったのでここから。
-----------------------------
ほむら「……ここよ」
古びたコンクリート建ての建物の前でほむらは立ち止まった。
マミ「どうやら間違い無さそうね。暁美さんお手柄だわ」
ほむら「べつに」
そういって魔法少女に変身して時を止め、
ほむらはそのまま建物に入り、これから飛び降り自殺する『予定』の女を回収した。
女は建物の屋上に至る階段の途中で蹲っていたが、運ぶ途中で暴れられても困るので、時は止めたまま運んだ。
そして建物から出る直前に時を動かした。
最初から時間停止をしたのは、行動の前にその理由を詮索されるのが面倒だったからでもある。
まどか「あれ?」
さやか「いつの間に?」
マミ「その人は?」
ほむら「とり憑かれてるわ」
彼女の首には奇妙な形の痣があった。
マミ「魔女の接吻ね……」
まどか「だ、大丈夫なんですか?」
ほむら「気絶してるだけ。放っておくと結界に取り込まれてしまうから」
ほむらにとって本来どうでもいいことだったが、
途中で保護なんてことになったら巴マミはほむらにそれを任せるに決まっている。
だから先に回収したのだ。
マミ「……そうね」
巴マミのトーンが微妙に低い。勝手な行動が気に障ったか?
ほむら「余計なことだったかしら?」
マミ「いいえ、よくやってくれたわ。他には居なかったかしら?」
ほむら「多分いないわ」
マミ「結構。それじゃ魔女退治と行きましょうか?」
さやか「いよいよですね?」
まどか「ふぇぇ……」
巴マミを先頭に、さやか、まどかと続いてほむらは最後に魔女の結界の中に進入した。
QB「怖いかい?」
さやか「なんのこれしき!」
まどか「ちょっと怖いかも……」
QB「願い事さえ決めてくれたら、いつだってキミ達を魔法少女にしてあげられるからね」
ほむら「その必要はないわ」
特に話し合ったわけではないが、結界内では主戦力のマミが先頭を行き、
ほむらは最後尾で主に二人を守る役割を担った。
マミは恐らく役割について何か一言いうつもりだったのだろうが、
ほむらが当然のように列の最後に付いたことで、「この子は判ってる」と判断したのであろう。
それについては何も言わず、結界の中を深部に向かって進んでいった。
進むにつれて使い魔たちの数が多くなっていく。
さやか「きー、あっちいけ!」
さやかが持参のバットを振り回す。
これにはマミによって防御属性が付与されていた。
まどか「ひやぁぁ」
ほむらはまどかに近づく使い魔を片端から銃で吹き飛ばしていた。
さやか「って、転校生、ずいぶん物騒な武器つかうんだなあ……」
このくらいなら時間停止をするまでもない。
魔法で強化された身体で口径の大きい銃を撃てば十分対処できるのだ。
ほむら「魔法少女にルールはないわ」
と言っておいた。
変に勘ぐられないようにするためでもある。
やがて大きなホールのような所にたどり着いた。
QB「ここが結界の中心だよ」
中心には植物を模ったオブジェのような魔女。
マミ「じゃあ暁美さん、二人をお願いね」
ほむら「わかったわ」
さやか「いよいよ決戦だね!」
この魔女なら巴マミには余裕のはずだ。
だから特に心配はしていない。
大量のマスケット銃。
派手なアクション。
そして、途中反撃を食らった場面もあったが最後は、
マミ「ティロ・フィナーレ!」
さやか「やたー! マミさん格好いい!」
まどか「すごい……」
ほむら「……」
マミ「うふっ」
マミの戦闘は相変わらずだった。
得意げなその顔はやはり、初めての後輩や後輩候補に浮かれているのだろう。
結界が消えて元の空間に戻った。
巴マミが床に残された物体を拾い上げる。
まどか「それは?」
マミ「これはグリフシード。偶に魔女が持ち歩いているのよ」
さやか「グリフシード?」
マミ「そう。魔女の卵よ」
さやか「ええ!?」
QB「大丈夫。この状態なら安全だよ」
マミ「そうよ。むしろ有益なものなのよ」
そういってマミは自分のソウルジェムの汚れをグリフシードに吸収させて見せながら、これが魔女退治の報酬であると説明していた。
ほむらはそれを聞きながらなんとなく、
今この世界にはマミのソウルジェムが二つあるんだ、などと考えていた。
マミ「はい。まだ一回くらい使えるわよ」
ほむら「え?」
差し出されたグリフシードにほむらは思わず間抜けな声を出してしまった。
巴マミが敵対してない状況で少し気が緩んでいたようだ。
マミ「報酬がおこぼれじゃ不服かしら?」
ほむら「いいえ、頂いておくわ」
後衛を務めたことの報酬のつもりだろうか。
それを受けとってポケットにしまった。
マミ「それで、どうだったかしら?」
さやか「凄いです。なんかマミさんって正義の味方って感じで」
まどか「わたし、あこがれます」
マミ「ありがとう。今回は暁美さんもいたから比較的余裕だったのだけど、
危険なことをしているって事も忘れないでね」
さやか「はい!」
まどか「はい!」
ほむら「……無駄が多いわ。アクションが一々大げさだし装飾が多すぎる」
しかも今回の戦いではピンチを自演した疑いがある。
まあ、それでも余裕で勝てるだけの実力がある、とも言えるのだが。
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「率直な感想よ。あんな戦い方してたらあなたいつか死ぬわ」
さやか「こら転校生、先輩のマミさんに何てこと言うんだ」
マミ「いいのよ。同じ魔法少女からの忠告として受け取っておくわ」
ほむら「そうして」
ちょいと間開きます。
日付変わった頃再開予定。日付変わり用にトリップつけてます。
再開します。
今回ほむら自身の立ち位置がかつてないポジションであるということで、
巴マミに直接忠告できるのはありがたかった。
だが、未来を見透かしたような具体的な忠告は言っても信じてもらえないだろうし、
下手に信頼を失えばまた「同じこと」になりかねないので、楽観出来ないのも事実だった。
~~
ほむらが巴マミ達の魔女狩り体験コースに同行して数日が経過した。
まどか「ほむらちゃん、一緒に帰ろう!」
一緒に『体験コース』参加するってことで放課後は毎日まどかに帰りを誘われた。
この事態は巴マミと敵対しなかったから、ということなのだろうが、
そういうわけで放課後はまどか達のグループと行動を共にしている。
とはいっても、会話には参加せず、いつも一歩下がった位置で黙って付いて歩いていた。
仁美「では、私はここで失礼しますわ」
さやか「じゃあねー。また明日~」
まどかの友人の一人である志筑仁美が彼女の家の方向に別れた後、
美樹さやかが幼馴染の見舞いに行くというので、付き合って病院に寄った。
ほむら「私はここで良いわ」
その建物の入り口で、待合室で待つというまどかにほむらは自分は外で待つと告げた。
まどかが美樹さやかと一緒に院内に入っていくのを見届けた後、
ほむらは病院の建物の外周に注意しつつ来た道を戻り、程なく『それ』を発見した。
黒々とした球体に針のようなものが突き出た装飾的な外殻の物体。
魔女の卵、グリフシードである。
来るときは見つからなかったそれは建物の外壁に刺さるようにして存在していた。
魔女が落とすものと違い、汚れを吸収しきって孵化する寸前だ。
こんな物騒なものが何故こんな場所に現れるのかは目下のところ謎である。
判っているのは、これのせいで高確率で巴マミが死ぬことだけだ。
出来ればこのまま孵化するまでほむらだけで見張って、
現れた魔女を一人で倒してしまいたいのだが、
孵化を待たずにまどか達は戻ってきてしまうだろう。
まどか「ほむらちゃん。何をしているの? そこに何かあるの?」
ほむら「……」
まどかの問いには答えず、ほむらは黙ってグリフシードを監視し続けた。
QB「グリフシードだ! 孵化しかかってるよ!」
まどか「うそ!? なんでこんなところに?」
QB「不味いよ、早く逃げないと結界が出来上がる!」
さやか「結界ってあの迷路が……。ねえまどか! マミさんの携帯聞いてる?」
まどか「き。きいてないよ」
暁美ほむらという魔法少女がここにいるのに迷わず巴マミに連絡しようとするあたり、
美樹さやかはほむらをまるで信頼していない。
まあそれは良い。
ほむら「あなた達は逃げなさい。これは私がなんとかするから」
まどか「そんな。わたしほむらちゃんが心配だよ」
さやか「まどか、まどかが先行ってマミさん呼んできて。あたしはこいつを見張ってる」
ほむら「逃げなさいって言ってるのよ。
私は巴マミと違ってあなたを守りながらなんて戦わないわよ」
さやか「こんな所に結界ができたら大変なことになるでしょ。それに転校生、
あたしあんたを信用できないわ」
要するに、見張るのはほむらの方だと言いたいらしい。
ほむら「……死にたいなら勝手にしなさい」
まどか「やめてよこんなときに。さやかちゃんも、ほむらちゃんも……」
投下しつつ読み返してみて、
ほむほむはQBがまどかと一緒に居るのを間近で見ててストレス貯めてるな、って思った。
この先そういう描写ないから補足的に。
続けます。
QB「判ったよ」
QBがまどかの肩からひょいと飛び降り、さやかの足元に立った。
まどか「QB?」
QB「まどか、キミは行ってくれ。さやかにはボクが付いてるよ。
マミならここまでくればテレパシーでボクの居場所がわかるから」
さかや「ありがとうQB」
まどか「わたし、すぐマミさんを連れてくるから! ほむらちゃんも待ってて!」
そういってまどかはかばんを置いて走り去った。
まあ良い。巴マミより先に魔女を倒してしまえばよいのだ。
さかや「ねえ、転校生」
ほむら「なに?」
さかや「あんた、こいつ卵のうちにやっつけられないの?」
ほむら「無理よ」
QB「強力な魔法を使えばそれに感応して孵化が早まるだけよ。
それにそんなことをしたら急激に活性化してかえって被害が大きくなるだろうね」
さかや「そっか……。じゃあ待つしかないんだね」
ほむら「逃げるなら今のうちよ」
さやか「誰が」
程なくして、ほむらとさやか、そしてQBはグリフシードが吐き出す結界に飲み込まれた。
QB「怖いかい?」
さやか「そ、そりゃまあ……」
QB「願い事さえ決めてくれればボクは今ここでキミを魔法少女にしてあげることもできるんだけど」
ほむら「よしなさい」
さやか「転校生には言われたくないよ。でも今はやめておく。
私にとって大切なことだから、出来ることならいい加減な気持ちで決めたくない」
ほむら「……」
少し待って、まどかが巴マミと共に結界に入ったことをQBから告げられた。
考えてみれば巴マミはここで死んでも仕方がなかった。
彼女の戦い方は前にも言ったが、無駄が多い。
そんな彼女が命がけの魔女との戦いに非戦闘員である一般人を二人も連れてくるのだ。
魔女退治を舐めているとしか言いようがない。
前回同じ場面では、ほむらが駆けつけなければまどかの命だって危なかったのだ。
やがてグリフシードの周りの不穏な気配が膨張しだした。
QB「孵化するよ! 気をつけて!」
ほむらは魔法少女に変身した。
ほむら「あなたは私の後ろにいなさい」
さやか「あんたに仕切られたくないわ」
ほむら「気に入らないなら盾にしてるとでも思いなさい! とにかく下がって!」
QB「ここは従ったほうが良い。キミはまだ普通の人なんだから」
魔女が出てくる前に、まどかと巴マミはほむら達の所へ到着してしまった。
まどか「さやかちゃん!」
マミ「おまたせ」
さやか「あー、間に合った」
マミ「暁美さんもご苦労さま。あとは任せなさい。一気に決めてあげるわ!」
いつになくハイテンションな巴マミを制してほむらは言った。
ほむら「いいえ、この魔女は私が倒す」
マミ「どうしたの? 手柄が欲しくなったのかしら?」
ほむら「別にグリフシードはいらないわ」
マミ「じゃあどうして?」
ほむら「うわついてる今のあなたじゃこの魔女は倒せない」
さやか「転校生、あんたいい加減にしなさいよ!」
まどか「こんなときにケンカはやめてよ」
QB「気をつけて! 出てくるよ!」
やがて空間が視覚的にもダイナミックに変化して、この結界の主が現れた。
一見してかわいらしいマスコットやぬいぐるみのような姿であるが、これが魔女だ。
>格好付けたがりなのはマミさんの精神安定に必要だから
よく判ってらっしゃる。
--------------------------------
ほむらは出遅れた。
マミ「今日はどうしても譲れないのよ。だからあなたの実力を見るのはこの次にしてね?」
魔女に向かうのを巴マミが張ったバリアに阻まれてしまったのだ。
ほむら「待って! そいつは本当に駄目なのよ!」
まどか「ほむらちゃん?」
さやか「マミさんの実力に嫉妬してるのは判るけど大人しくしてなよ。
というかアンタに守ってもらわないと私らもやばいんだから、ちゃんと仕事してよね!」
まどか「さやかちゃん偉そうだよ? 守ってもらってるんだからもっと仲良くしてよ」
さやか「うーん判ってんだけどさ……」
このときばかりは美樹さやかにもまどかにもその認識の甘さに腹が立った。
まどか「ほ、ほむらちゃん!?」
ほむらは銃を取り出しバリアに向けて弾丸を放った。
さやか「ちょっ、何やってんのよ!!」
二人を無視して二発三発と魔法を込めて撃ちこんだ。
二人を構っている場合じゃないのだ。
ほむら(まに合うか?)
さやか「ちょっ、手榴弾って!?」
まどか「え? え?」
ピンを抜いてバリアの前方の壁に投げ、まどかを抱えるようにしてバリアの後方の壁に向かって跳び、
振り返って左手の盾を構え魔法で爆発の衝撃に備えた。
美樹さやかは自力で逃げて隣でバリアに張り付いていた。
直後に爆発。
こんな閉空間で手榴弾なんてイカれてるとほむらも思うのだが、
そんなことは言ってられないほど今は切迫した状況なのだ。
今ので二人の耳が多少やられたかも知れないが、
魔法である程度防御したので後遺症が出るほどではない筈だ。
バリアが砕けるのと巴マミが「ティロ・フィナーレ」と叫ぶのはほぼ同時だった。
捕縛されたマスコットの口から、彼女を何回も葬ったアレが顔を出す。
マミ「!?」
ほむら(速い!?)
前回に見たよりも何倍も速くそいつは巴マミの頭を飲み込んだ。
その高速化は孵化時にほむらがそばにいた影響だったのかもしれない。
とっさに時間停止をしたが、巴マミの首はヤツの凶悪な牙にがっちりと挟まれてしまっていた。
間違えた。
これ、即興で加筆しようと投稿欄にコピペして止めたやつだ。
↓こっちが正。
バリアが砕けるのと巴マミが「ティロ・フィナーレ」と叫ぶのはほぼ同時だった。
捕縛されたマスコットの口から、彼女を何回も葬ったアレが顔を出す。
マミ「!?」
ほむら(速い!?)
前回に見たよりも何倍も速くそいつは巴マミの頭を飲み込んだ。
その高速化は孵化時にほむらがそばにいた影響だったのかもしれない。
とっさに時間停止をしたが、巴マミの首はヤツの凶悪な牙にがっちりと挟まれてしまっていた。
ほむら「くっ……」
時を止めたまま、魔女の顎をこじ開け、なんとかマミの身体を救出した。
ほむら「はあっ、はあっ……、どうしてあなたはいつもこうなの?」
言っても仕方がないことなのに、思わず口をついていた。
このまま時間を動かせば彼女の頚動脈から血が噴き出すであろう。
魔法少女はこのくらいでは死なないが、
『それ』を知らない彼女は恐怖して自ら心を壊してしまうかもしれない。
なるべく彼女が動揺しないように皮一枚で繋がった首に布を巻いて繋ぎとめ、
止血してるように見せかけた。今はこれが精一杯だ。
そしてそのまま彼女を離れたところに横たえ、魔女に爆弾を設置して時を動かす。
やはり再生が異常に速くなっている。
これでは油断していなくても巴マミは瞬殺だったであろう。
しかし時を止めることが基本戦略のほむらにはあまり関係がなかった。
別の時間軸でもそうしたように、淡々と魔女を始末した。
さやか「マミさん!」
まどか「マミさんっ!!」
結界が消えて周りはもとの病院の敷地に戻っていた。
ほむら「動かさないで。出血が酷くなってしまうから」
とはいっても、もう辺りは血の海という程の酷い有様だった。
まどか「マミさん、死なないで! マミさん!」
さやか「マミさん! マミさん!」
マミ(痛い……痛い!、死にたくないよう……)
巴マミの声(テレパシー)が聞こえてきた。
まどか「ねえ助けてよ、ほむらちゃん。マミさんを助けて!」
ほむら「静かにして。大丈夫だから」
まどかをなだめながら変身を解き、横たわるマミのそばにしゃがんで、
自分のソウルジェムを髪飾りになっているマミのソウルジェムに近づけた。
ほむら(巴マミ、落ち着きなさい。ソウルジェムが無事ならあなたは死なないわ)
テレパシーでそう呼びかけた。
マミ(誰!? 暁美さんなの!? 助けて! 身体の感覚がないの!
私死にたくない! 死にたくないのよ!)
ほむら(魔法で身体を修復するのよ。私も手伝うから落ち着いて)
何回か落ち着くように話しかけ、
やがて彼女の魔力が身体の修復に向かうのが確認できた。
そして傷が致命的ではない程度に修復出来た段階で、巴マミに変身を解くように促した。
医者「た、大変だ!」
窓からこちらを覗いた病院のスタッフが叫んでいる。
まどかたちが泣き叫んでいるのが聞こえたのだ。
傷は残っているがあとは病院に任せてよいだろう。
直後、十人近い白衣を着た人達が出てきて仰々しく巴マミを院内に運び込んでいった。
まどか「マミさん……」
ほむらは震えるまどかの肩を抱いていた。
ほむら「目に焼き付けておきなさい。これが魔法少女になるってことよ」
さかや「……」
美樹さやかはストレッチャーで運ばれる彼女を唖然と見送っていた。
結局、巴マミは通り魔に刺されたことになった。
ほむらもまどかやさやかと一緒に警察から事情聴取を受けたが、
犯人は巴マミだけを刺して逃亡し、一瞬のことで三人は犯人の顔はおろか、
何が起きたかさえ判らなかった、ということで話は終わっていた。
怪我の方も肉体的には決して楽観できるものではなく、
失血死寸前、奇跡的に助かったというのが医者の見解だった。
ここまでです。
続きはまた今日の夕方以降に。
Q.ストレッチャーって何?
A.ググれ。
Q.「先に警告しておいて欲しかった」って思うような展開はある?
A.あってもTV本編(~10話)程度です。
もう少ししたら投下始めます。
翌日の昼休み、
まどかとさやかが屋上に上がっていったのでほむらもそれに同行した。
まどかとさやかの二人は真ん中のベンチに座り、
ほむらはその近くでフェンスに寄りかかってそれを見ていた。
二人の前にはQBがいる。
さやか「……転校生、なにか言いたそうだけど」
ほむら「別に」
昨日のことで思い知ったのなら別に言うべき言葉はない。
まどか「……ほむらちゃんは平気だったの? 死ぬかもしれないんだよ?」
ほむら「平気じゃないわ。でも仕方が無いこと」
まどか「仕方が無いの?」
ほむら「そうよ。一つの願い事と引き換えに受け入れた、
それが魔法少女になったものの運命だもの」
まどか「わたし、マミさんが、もしかしたら一歩間違ってたら死んでたのかもしれないって思ったら……」
さやか「まどか……」
まどか「マミさんがあんなことになったからって、『やっぱりやめる』なんてずるいって判ってるよ。
でもいつか自分もああなるって考えたら……怖くて……」
泣き崩れるまどかを美樹さやかは抱きとめるようにして支えていた。
QB「……キミ達の考えは判ったよ。とても残念だけどね」
まどか「ごめんね。QB……」
QB「仕方が無いよ。ボクも無理強いは出来ないからね。
でももし気が変わって契約する気になったら言ってくれ。
ボクの方は何時だって準備が出来てるからね」
まどか「うん」
QB「それじゃ、ここまでだね。
ボクは他の願い事を必要としてる子を探しに行くことにするよ」
ほむら「……」
巴マミの入院先の病室。
一日たった今も巴マミは意識を回復していなかった。
さやか「じゃあ、あたしちょっと行ってくるから」
まどか「上条君のお見舞いだよね」
さやか「う、うん……」
巴マミの病室から出て行く美樹さやかの後姿ははいつもの覇気が感じられなかった。
よほどショックだったのであろう。それはまどかも同じだ。
まどか「ほむらちゃんは冷静なんだね」
昨日は泣き明かしたのだろうか、まどかの目が腫れぼったい。
ほむら「薄情なだけよ」
まどか「そんなことないよ。マミさんを助けてくれたよ。
ほむらちゃんは何回も警告してくれてたよね?
なのにわたし全然判ってなくてマミさんに格好いいとか憧れてるとか、
そんなことばっかり言って浮かれてて」
ほむら「巴マミが油断したのはあなただけのせいじゃないわ。
それにあの魔女と彼女の戦い方の相性も悪かったのよ」
油断していたにしてもそれは事実だった。
まどか「だからあまり自分を責めないで」
まどか「うん……」
昨日のことがショックだった人間はもう一人いる。
まどかを家まで送ってからほむらは病院に戻ってきた。
面会時間は過ぎていたのでほむらは巴マミの病室に忍び込んだ。
ほむら(巴マミ)
マミ(……)
本当に昏睡していると遠くからでは反応しない可能性があったので、
ここまでやってきたのだが、
ほむら(聞こえているんでしょ?)
マミ(……なにか用?)
やはり、意識はあった。
ほむら(単刀直入に言うわ。まどかを魔女退治に付きあわせるのはもう止めて)
マミ(わざわざそれを言いにきたの?)
ほむら(そうよ)
マミ(私が力不足だってこと?)
ほむら(今回思い知ったでしょう?
一般人を結界の中に連れて行くこと自体がナンセンスだってことも)
マミ(そ、そうね……)
マミ(でもあなた本当にあの子達を魔法少女にしたくないだけなのね)
ほむら(そう言ったわ)
マミ(わかったわ。魔女狩り体験コースは中止する)
ほむら(素直で助かるわ)
用事はそれだけである。
巴マミはその気になれば魔法で傷の残りを修復して明日にでも退院できる筈だが、
まだ退院する気がないように思えた。
ほむら(まどかたちに顔あわせづらくていつまでも意識不明の振りしてても、
私は別に何かいうつもりはないから)
マミ(!)
ほむら(それじゃ)
そう言って出て行こうとしたほむらの背を呼び止める声がした。
マミ(ま、待って!)
テレパシーだが。
ほむら(なあに?)
マミ(あなたにはお見通しなのね……)
ほむら(何のことかしら?)
マミ(その、ごめんなさい)
ほむら(それは何に対しての言葉かしら?)
マミ(今まで先輩風吹かせてあなたに色々失礼なことを言ったわ)
ほむら(別に良いわ)
マミ(あなたの方が全然上だったのに。実力も経験も。傲慢だったことを反省してるのよ)
ほむら(大げさよ。今回のことは相性の問題もあったし、誰でも油断することはあるわ)
『反省する』とかちょっと気持ち悪かったのでそう答えておいたのだが、
マミ(その、お願いがあるんだけど……)
その巴マミらしからぬ甘えたような口調にほむらは『いやな予感』がした。
ほむら(なに、かしら?)
マミ(私と魔女退治、一緒にしてくれないかな?)
ほむら(……さよなら)
ほむらはその場を去ろうとしたが、
マミ「ま、待って! 判ってるのよ。一緒にいてあなたにメリットは無いって。
でもお願いっ!」
ベッドから起き上がったマミに服を掴まれた。
もう完治していたようだ。
ほむら「……なんなの?」
マミ「迷惑だって判ってる。でもあなたしかいないのよ」
彼女は懇願するように潤んだ目で上目遣いにほむらを見つめていた。
ほむら(なにこの巴マミ……)
マミ「怖いのよ……怖いの……ぐすっ」
どうやら、彼女は心は壊れなかったものの、
魔法少女としてのプライドは折れてしまったようだ。
一瞬、前回からこの時間軸に持ち込んだ巴マミのソウルジェムの影響か?
とも思ったが、考えてみれば彼女は元々メンタルが弱かった。
マミ「判ってたはずなのに、いつかあんなことになるかも知れないって。
もう後戻りできないのに、戦い続けるしかないのに……」
不本意だし慰めの言葉なんて持たないほむらだが、
彼女が落ち着くまで話の聞き役を務めざるを得なかった。
マミ「もう一人はいやなの……」
ほむら(はぁ……)
本当に不本意ではあるのだが、
ほむら「あなたはまだ動揺してるのよ。
しばらく魔女退治を休んで時間を置いてよく考えてみたらいいわ」
マミ「え……」
ほむら「その上でまだあなたにその気があるのならそのとき考えるわ」
マミ「その間、私の代わりに魔女退治してくれる?」
ほむら「……見つけたら狩るわよ」
マミ「よかった」
変な約束をしてしまった。
だがグリフシードを集めることも必要だし、
もとよりまどかのいるこの街で狩るものが居ないまま魔女を放置するつもりは無かった。
数日後。
あれだけ出血しておいてこんなに早く治るなんて普通の人間ならありえない事なのだが、
『治してしまった』ものは仕方が無い。
医師が首をかしげつつ綿密な検査を行ったが、結局『問題なし』ってことで巴マミは退院し、
自宅療養となったそうだ。
退院の知らせはまどかが受けたのだが、知らせのあった日の放課後、
ほむらとまどか、そして美樹さやかは早速、退院祝いと称して巴マミの部屋に集合した。
巴マミは病院へ見舞いに行った時はずっと(医者さえ騙して)昏睡した振りをしていたので、
まどかたちと話をするのは、あの魔女狩り以来始めてである。
マミ「魔女狩り体験コースは中止よ。怖い思いさせてしまってごめんなさいね。
あと、心配もかけてしまって。本当に私、何やってるのかしら……」
巴マミのメンタルは後輩相手に『良きお姉さん』を演じるくらいには回復していた。
まどか「いえ……、でも治って本当に良かったです」
マミ「さやかさんも、憧れてた先輩がこんなでごめんなさい申し訳ないわ」
さやか「いえ、そんなことないです。
危険を顧みず戦うマミさんは格好いいです!
私の中でマミさんはいつでも格好いい正義の味方ですよ!」
マミ「ありがとう。嬉しいわ。でも本当に今回のことで自分の力不足を思い知ったわ」
さやか「そんなことないです。早く回復して復活してくださいね」
マミ「ええ、そのつもりよ。前よりも強くならなくちゃね」
さやか「そうですよ。マミさんは試練を乗り越えて進化するんです!」
まどか「あはは……」
マミ「それで、私の休業中は魔女退治をほむらさんにお任せすることにしたのだけど、
もう聞いてたかしら?」
いつのまにか呼び名が名前になっている。それだけ気を許したということだろうか?
とりあえずまどかは魔法少女になることを諦めたと言った。
退院祝いの間中まどかは元気が無かったのだが、それはこのせいだった。
ちなみに美樹さやかは『保留』である。
まどか「あの、これからも、お友達でいていいですか?」
マミ「もちろんよ。いつでも遊びに来てね」
さやか「はい。マミさんのファンは絶対止めませんから!」
マミ「ありがとう」
そしてマミの部屋からの帰り道で。
まどか「ほむらちゃん。マミさんのことお願いね」
ほむら「それはあなたが気にすることではないわ」
まどか「でも、わたし、マミさんにもほむらちゃんにも会えなくなっちゃうなんて嫌だよ」
ほむら「……今回は運がよかっただけ。魔法少女の最期なんてあっけないものよ」
まどか「そんなこと言わないでよ。どうしてほむらちゃんはそんなに冷たいの?」
ほむら「そうね。ずっと見てきたからかしら」
まどか「見てきたって何を?」
ほむら「魔法少女の運命を」
今日はここまで。
この先はちょっと推敲したくなったので、
明日の夕方以降の投下になります。
Q.さっきのQ&Aの答えで、
『あってもTV本編(~10話)程度』ってちっとも安心できないんですけど。
A.はい。容赦しません。
死の運命から救ったものの大怪我させてしまったことは、
結果的にまどかの魔法少女への憧れを絶つ結果となり、巴マミには悪いが幸いな結果となった。
それに彼女の生存はこれからの展開に大きな意味をもつだろう。
それから数日ほむらには、まどかの周辺を警戒しつつ、
巴マミのテリトリーで魔女狩りをする毎日が続いたが、そんなある日のこと。
一つ魔女を片付けて、グリフシードを拾おうと屈んだときのことだ。
ほむら「……」
杏子「おいおい、無視してくれちゃって。気付いてんだろ?」
ほむら「何の用かしら?」
彼女は近くの別のエリアの魔法少女だ。
杏子「マミのやつが下手うって隠居してるって聞いたからさ。様子を見に来たのさ」
ほむら「それは殊勝なことで」
杏子「すましてんじゃねえよ。おまえこの隙にマミの縄張り掠め取ろうって魂胆だろ?」
ほむら「その言葉はそのままあなたにお返しするわ」
そういえばそろそろ佐倉杏子が現れるタイミングだった。
現時点で美樹さやかが魔法少女になっていないこの時間軸では、
ほむらが相手をすることになるようだ。
杏子「判ってんなら、やりあうしかないよな?」
槍を構え、相手はすでに臨戦体制だった。
ほむらは時を停止して杏子の背後に立った。
ほむら「不要な争いはしたくないのだけど?」
杏子「!? てめぇ!」
再び停止して間合いの外に移動する。
ほむら「巴マミは死んだわけじゃないのよ? 私は彼女がいない間の中継ぎにすぎないわ」
杏子「はん、てめぇはそんなタマじゃねだろう? イレギュラーさんよぉ?」
ほむら「あら、誰に聞いたのかしら?」
杏子「言えないね!」
おそらくQBであろう。
多節棍と化した杏子の槍の先端がほむら目がけて飛んできた。
みたび時を止め、今度は彼女の正面、至近距離に立った。
ほむら「できれば手荒な真似はしたくないのだけど……」
そういって彼女の胸のソウルジェムを握り、顔を寄せ、
ほむら「……佐倉杏子」
彼女の名前を言った。
杏子「うぇ……」
反応できなかった彼女は妙なうめき声を上げ、槍を取り落とした。
別に何もしていない。脅しただけだ。
また時を止め、間合いの外へ。というか面倒になった。
このまま帰ってしまおう。
結局彼女の視界の外に移動してから時間停止を戻した。
翌日、学校へ向かう途中。
杏子(おい、暁美ほむら)
佐倉杏子がテレパシーで話しかけてきた。
場所は……意外と近くに居た。
すぐ近くの路地裏からだ。
おそらく話すだけでなく直接手を出す気でいるのだろう。
ほむら(私の名前を知ってたのね)
杏子(お互い様だろ)
ほむら(自己紹介が省けて良かったわね)
杏子(あいかわらずすましてやがる)
ほむら(何の用かしら? 私はあなたと違って暇じゃないのよ)
杏子(うるせえ、てめぇ、アタシと勝負しろ!)
ほむら(まだ懲りてなかったの?)
杏子(途中で逃げやがったくせに何いってんだ!)
ほむら(勝ち負けなんで別にどうでもいいのだけど。魔女を狩りたいのならどうぞ。
私は学校に行ってるからその間なら誰も邪魔しないわ)
杏子(その上から目線が気に入らねぇんだよ! 今ここでやりあったっていいんだぜ?)
このように面倒くさい女なのだ。
彼女は。
赤毛の腰まで届くポニーテールに黒いリボン、きつめな印象を受ける鋭い目付きと八重歯が特徴の魔法少女。
佐倉杏子は巴マミとは違ったタイプのベテランの魔法少女である。
性格はほむらに言わせると……。
ほむら(……わかったわ)
杏子(そうこなくちゃ)
ほむら(あなたが馬鹿だってことよ)
杏子「なんだと!」
ほむらは振り返って言った。
ほむら「場所をかえましょ」
杏子「うわっ、てめっ、気付いてたのか!?」
ほむら「やっぱり馬鹿だわ……」
彼女はテレパシー会話の途中で路地から出てきてしまっていた。
休憩。
また日付が変わってから再開します。
再開します。
ここが通学路であることを考えれば、想定された事態であるが、
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「まどか……」
鹿目まどかは、ほむらの傍で立ち止まって不安そうな表情で言った。
まどか「その人だれ? ケンカは良くないよ?」
杏子「なんだこいつ」
ほむら「あなたには関係ないわ。行きましょ」
まどか「ねえ、どこ行くの?学校始まっちゃうよ」
ほむら「まどか、私は遅刻するわ。先生に言っておいてもらえるかしら」
まどか「え、で、でも……ケンカしに行くんでしょ? 勝負とか言ってたし。だめだよ。
ちゃんと話し合って仲良くしないと」
杏子「って、てめえなんでテレパシーで話してたこと知ってるんだ?
まさかお前も魔法少女なのか?」
まどか「え? テレパシーだったの? ほむらちゃん、もしかしてこの子、魔法少女なの?」
ほむら「そうよ。それより何で話が聞こえたの?」
まどか「え、えっと多分マミさんが……」
巴マミが魔法でなにかしてたのか? あの女は余計なことばかりする。
ほむら「……この子はもう関係ないのよ」
杏子「まあ魔法少女じゃないってんなら手は出さないけどさ」
まどか「ねえ、どうして? なんで同じ魔法少女なのにケンカするの?」
ほむら「あなたにはもう関係ないでしょう?」
まどか「関係あるよ。ほむらちゃんは友達なんだよ?」
ああもう、どうしてこうも首を突っ込んでくるのか。
杏子「魔法少女に人間の友達ね。マミもずいぶん変なヤツだったけどアンタも相当だな」
ほむら「……面倒だわ」
そういいながら、
ほむらは魔法少女に変身するためにソウルジェムを具現化させた。
時を止めて佐倉杏子と共に別の場所に移動するつもりだったのだ。
油断してた。
本当にどうかしてた。
まどか「ほむらちゃん、ごめん!」
ほむら「あ! ちょっ!」
まどかにソウルジェムを奪われるなんて。
ほむらはまどかを追おうとしたが、
杏子「待ちな。アンタの相手はアタシだろ?」
いつの間にか接近してた杏子が首に腕を回してきた。
ほむら「やっ、離して……! まどかも返して!」
まどか「だめだよ! ケンカ止めるまで返さない!」
ほむら「待って! それは……!!」
やられた――。
魔法で強化してたとはいえ、単純な腕力では佐倉杏子に勝てない。
杏子「あー、行っちまったな」
ほむら「まどか! 戻って……!」
60m、70m、80m……。
ほむらはまどかが走り去っていくのを見ながら、
妙に冷静にその距離を目測しつつ、徐々に意識が遠ざかるのを感じていた……。
杏子「なんてな、ソウルジェムがなきゃ変身できないよな。なに、ちょっとした仕返しさ。
ちゃんと全力で勝負しなきゃ面白くないし――っておい!
どうしたん――……」
この先の加筆部分が書き上がってないので、
一旦ここで切ります。
推敲しつつ投下してると色々直したくなって大変です。
最初、適当にあしらわれて「こ、殺す!」とか思ってたけど、
友達にソウルジェムを奪われる間抜けっぷり見て「なんだ、たいしたこと無いじゃん」と認識を改めて、からかってやろうと思ったあんこちゃん。
まどか「ほむらちゃんごめん!」グシャッ
ほむら「」
VIPのssスレかと思って普通にあげてた^q^
続き。
ほむらが気が付いたのは、どこかのホテルの一室のようだった。
ほむら「ここは……?」
まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃん! ごめんね! ごめんねぇ……」
まどかが泣いていた。
杏子「はあ……、安心しな。もうアンタとやりあう気はないよ」
どこか疲弊した表情の杏子がいた。
どうやらここは杏子のねぐららしい。おそらく不法占拠であろう。
ほむら「……なにかあった、というより知ったようね」
杏子「あんた、死んでたんだよ。ってか知ってたのかい?」
ほむら「ええ」
あのあと杏子はほむらがいきなり死んだ(ように見えた)のには、
それこそ人工呼吸か救急車かとかなりうろたえたらしい。
何処で見ていたのかそこにQBが現れて、それで杏子は真相を知ったそうだ。
まどか「こんなのって酷いよ……」
真実を知った杏子は人目につく場所から一旦ほむらの身体をねじろに運び、
そのあと学校に乗り込んでまどかを捕まえて来たのだそうだ。
ほむら「助けてくれたのね。礼を言うわ」
杏子「べ、べつに。勝負とか言ってる場合じゃねえし。
それにアタシは無抵抗の相手をヤルほど落ちぶれちゃいねえよ」
本当に危ないところだった。油断するな、なんて人の事は言えない。
美樹さやかの時のように投げ捨てられていたらそこで終わっていたところだった。
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん?」
何か引っかかることがあった。
杏子「おい、これってマミも知ってることなのか?」
ほむら「知らないと思うわ。今なら言えば信じると思うけれど」
前に瀕死の時に『ソウルジェムが無事なら死なない』と言ってある。
あの状況を経験している彼女ならば理解も早いであろう。
それよりも。
ほむら「まどか、美樹さやかはどうしてる?」
先ほど引っかかったのは美樹さやかである。
まどか「え? さやかちゃんは今日お休みだって聞いたけど……」
いやな予感がした。
他の子を探すといっていたQBが簡単に現れたことも気になる。
【CAUTION】
仮定法で選択・分岐を示唆する記述があったらそれが警報です。
耐性のない人は警報があったら至急高台に避難してください。
車での移動は危険です。車は置いて徒歩でなるべく高いところへ避難して次のループが始まるまで戻らないでください。
高台とは: 安全なハッピーエンドSSのこと
と、不/謹/慎な警告をだしておきます。
佐倉杏子はせっかく来たんだからしばらくこの辺りに居ると言っていた。
あとで、巴マミにも挨拶に来るそうだ。
彼女のいう『挨拶』が物騒な意味でないことを祈りたい。
あのあと、まどかは学校に戻ったが、
ほむらは学校へは行かないで、気になった美樹さやかを確認に行った。
だが、彼女は風邪でも引いたようで普通に休んでいた。
気にしすぎだろうか?
~~
そして夕方になって。
まどか「あ、ほむらちゃん」
ほむら「今、帰り?」
まどか「うん。マミさんのところ行ってたの。もうすぐ通学始めるって」
ほむら「そう」
まどか「ほむらちゃんもマミさんに会いに行こうよ。会いたがってたよ?」
ほむら「必要ないわ」
ほむらの答えにまどかがしゅんとなる。
成り行きでこうはなってはいるが、『敵対していない』というだけで十分だった。
いまさら巴マミと馴れ合うつもりは無い。
まどか「……今日も、魔女探し?」
ほむら「ええ。そうよ」
まどか「ほむらちゃんもこの街のために戦ってるんだよね」
ほむら「街のため、というわけではないわ。結果的にそうなっているけれど」
まどか「危険な戦いをしてるってこと、街のみんなは何も知らないなんて。
マミさんだってあんなことに……」
まどかは表情を曇らせていた。
ほむら「そういう契約で私たちはこの力を手に入れたのよ。
魔法少女は誰のためでもない。自分自身の祈りの為に戦い続けるの。
誰にも気付かれなくても、忘れ去られても。
それはしかたの無いことだわ」
まどか「わたしは知ってるよ? そんな身体になって戦ってるってことも。
絶対忘れない。 ほむらちゃんのことも、マミさんのことも!」
ほむら(まどか……)
抱きついてしまいたい衝動を押さえつけて、ほむらは言った。
ほむら「……あなたは優しすぎる」
まどか「え?」
ほむら「忘れないで。その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」
そう言って、ほむらは歩き出したが、まどかは付いてきた。
ほむら「付いてこなくてもいいわ」
まどか「わたしの家、こっちだから」
まどかがわざわざ遠回りをしている事は判っていたが、
魔女狩りはまだ出現を待っている段階なので好きにさせていた。
街中を歩いているうちに日はすっかり暮れて、街灯には明かりがともっていた。
そんな中、
まどか「あれ? 仁美ちゃん?」
まどかが志筑仁美を見つけて、駆けて行きながら声をかけた。
まどか「仁美ちゃーん! 今日はお稽古ごとは?」
ほむら(あれは……)
ほむらは魔女の気配に気付いていた。
まどか「仁美ちゃん! ねえ、仁美ちゃんてば!」
まどかも志筑仁美の首に魔女の接吻を見つけたようだ。
仁美「あら、鹿目さん。ごきげんよう」
まどか「どうしちゃったの? ねえ、どこ行こうとしてたの?」
仁美「何処ってそれは……、ここよりずっと良い場所、ですわ」
まどか「ひ、仁美ちゃん」
仁美「ああ、そうだわ。鹿目さんも是非ご一緒に。ええ、そうですわ。それが素晴らしいですわ!」
ほむら「……まどか。あなたはもう帰りなさい」
仁美「あら暁美さん。あなたもいかがですか? さあ!」
一度ほむらの方へ振り返ってそう言った志筑仁美は、
くるっと向きを変え、また誘われるようにして向かっていた方向へと歩き始めた。
まどか「で、でも……仁美ちゃんが」
ほむら「危険だから、彼女は私に任せて」
まどか「わたしに出来ること、無いかな?」
ほむら「無いわ。早く行って!」
まどか「う、うん気をつけてね……」
ふらふらと歩く志筑仁美をほむらは黙って追いかけていた。
やがて、魔女に取り付かれた人達が同じ方向へ歩いていくのに出くわした。
ほむら(あそこね……)
魔女が居ると思しき場所を確認後、
志筑仁美に追いつき有無を言わさず鳩尾に魔法を込めた拳を入れた。
彼女は意識を失いほむらにもたれるように崩れ落ちた。
『任せて』と言った手前、こうした訳だが彼女をどうするか?
まだ日が暮れたばかりとはいえ、下手に放置すると魔女以外の危険に晒しかねない。
一瞬、まどかを帰すのは早すぎたか、とも思ったが、
魔女を倒す前に彼女が目を覚ませばどの道危険なので、まどかは先に帰らせて正解であろう。
結局ほむらは気絶した彼女を近くの茂みに隠し、魔女の居場所へと向かった。
倉庫のような建物の中に、魔女に操られた人々が集まっていた。
ほむらは魔女の魔力をより強く感じる方へと向かった。
魔女との相性が悪かったとしかいいようが無い。
この魔女は別の時間軸で一度倒しているが、
その時は攻撃を受ける前に爆破してしまったからどういう性質の魔女か判っていなかった。
ヤツは精神攻撃を仕掛けてきたのだ。
記憶の狭間を見透かされる。
それはほむらの意思なんて関係なく、ただ垂れ流すように。
不細工なハコにあの連れてきた『物言わぬまどか』が映し出される。
――ひとりは寂しいから。
違う。
――嫌われるのが怖いから屍体でよかった。
そうじゃない。
――物言わぬまどかの身体を抱きしめるほむら。
体臭、いや死臭に近いそれにドキドキする倒錯。
やめて。
――必要もないのに彼女の服を脱がせ身体を拭き、また服を着せてみた。
そのとき感じた気持ちの高ぶり。
一度淀みに嵌ると、それに感応するかのようにそんな記憶ばかりが映し出される。
やがて衝撃が走り、叩き落される感覚があって、
その直後、暗闇に放り出された。
魔女が攻撃の矛先を変え、どこかに行ってしまったように感じた。
だけどまだ起き上がれない。
さっきの精神攻撃の余韻が続いていた。
――別の時間軸でまどかに怖がられた記憶。
心が折れそうになる程の痛み。
ああ、まどか。
――力及ばず、まどかは契約してしまった。最悪の魔女になったまどか。
――誰にも頼らないと決めて一人で戦ったあの日々。
――過去の自分をお願いと言ったまどかのソウルジェムを撃ったあの瞬間。
――誰も未来を信じない。誰も信じてくれなかったあの日。
――魔法少女が魔女を生み出すと知った時の衝撃。
――何も知らなかった私。
初めて魔女を倒して、まどかに抱きしめられたあの時、
ただ嬉しかった――――。
そうだ、魔女を倒さなきゃ……。
一時間くらい離れます。
再開。
視界が開ける。一瞬眩しかったが、すぐに薄暗い天井が見えた。
さやか「……なにやってんの転校生」
ほむら「え?」
そこは倉庫のような建物の中。
周りには魔女に引き寄せられた人たちが累々と横たわっていた。
ほむらはその中で一緒に倒れていたのだ。
さやか「あんたなにやられてんのよ? 魔女はあたしが倒しといたわよ」
騎士礼装のような衣装。手にはサーベルに似た剣。
ほむら「美樹さやか、あなたは……!」
美樹さやかは魔法少女になっていた。
まどか「さやかちゃん……」
さやか「いやあ。ごめんごめん。危機一髪ってとこだったよね?」
まどかは結局追ってきて結界に巻き込まれてたらしい。
帰れといったのになぜ言うことを聞かないのか……。
まどか「その格好……」
さやか「あはは、まあ、なに? 心境の変化というのかなぁ?」
まどか「……」
さやか「大丈夫だって、初めてにしちゃ上手くやったでしょ、あたし」
まどか「でも……」
二重の意味でなんたる失態。
さやか「なにも泣くことないでしょ? まどかとはずっと友達だよ?」
まどか「ちがうの、そうじゃないの……」
さやか「?」
美樹さやかの所へは一度は見に行っているだけに、そのタイミングの悪さが悔やまれる。
後、もう少しだけ待ってくれれば、
契約前にまどかからソウルジェムの真実を聞く機会さえあれば、
思いとどまってくれたかもしれないのに。
さやか「転校生」
ほむら「……」
ほむらは既に立ち上がり、傍らで二人の会話を聞いていた。
さやか「あんたに言っておくことがある。マミさんの留守はあんたなんかに任せられないから」
このあと、さやかが真実を知れば彼女の破滅は促進されるだろう。
それによって巴マミがもう一つの真実を知ったなら絶望するだろう。
絶望の連鎖が始まってしまう……。
さやか「これからマミさんのところへ報告に行くんだ。まどかも来なよ」
まどか「う、うん」
ほむら「美樹さやか、わたしからも言っておくことがあるわ」
まどか「や、やめてよほむらちゃん」
ほむら「真実を知るのは早いほうがいいわ。遅かれ早かれ判ることだし」
さやか「何の話してるのか知らないけど、別にあんたは来なくてもいいわよ」
ほむら「あなたも関係することなのよ」
まどか「ほむらちゃん……」
懇願するようにまどかが不安そうな瞳をほむらに向けていた。
ほむら「……わかったわ。まとめて話した方が手間にならないものね」
話すタイミングはこれで良かったのだろうか?
巴マミの部屋でほむらはソウルジェムの秘密について語っていた。
さやか「はぁ? QBが嘘いってるっていうの?」
ほむら「嘘ではなくてあいつは『聞かれなかったから』と言うでしょうね」
まどか「本当なんだよ。わたしほむらちゃんが動かなくなっちゃったの見たんだよ?」
さやか「あたしがこのソウルジェム? それで身体は抜け殻……そんな馬鹿な」
マミ「ほむらさん。あなたは最初から知っていたのよね? だからあの時……」
『ソウルジェムが無事ならあなたは死なない』と、そう言った。
伏線が役立ってか巴マミはすぐに理解できたようだった。
さやか「ま、マミさん?」
マミ「どうやら本当のことようね」
さやか「そんな……!」
ほむら「私を疑うならQBに聞いてみなさい。あいつは聞けば答えるわ」
まどか「ほむらちゃん、だからわたしたちが魔法少女になること反対してたんだ」
マミ「でも、どうして最初からそういわなかったの?」
ほむら「最初からそう言って信じてくれた人は一人もいなかったわ」
一応、巴マミも美樹さやかも信じたようだった。
だが、美樹さやかはまだこのままでは駄目だ。
彼女は放っておくと回りに多大な影響を及ぼしながら破滅に向かって突き進んでしまう。
巴マミはどうだろう?
今から彼女だけにでもその先の真実を話してまおうか?
もしこのタイミングで信じてくれて、その真実を受け止めることが出来たなら、
これから高確率で起こるであろう美樹さやかの破滅を阻止する力になる気がする。
マミ「まどかさん、ほむらさん」
まどか「はい?」
ほむら「……」
マミ「あなたたちは先に帰ってもらえるかしら? 私はさやかさんにお話があるから」
ほむら「わかったわ。まどか、行きましょう」
まどか「う、うん」
ほむらはまどかを家に送った後、すぐにマミの部屋に舞い戻った。
戻ったといっても部屋には入らず、その近くから会話だけを聞いていた。
当初から用意してて、今まで使われずに来た仕掛けがよくやく役に立った。
巴マミと美樹さやかの動向はこのあとの展開を大きく左右するファクターだ。
だから、ほむらは無視するわけには行かなかった。
さやか「……あたし、恭介の手が治るんなら、
それと引き換えに戦いの運命を背負っても後悔しないって思ってたのに」
マミ「決心が揺らいだの?」
さやか「わかりません。でも一瞬、『そんなことならやっぱり』って思っちゃって」
マミ「そう。それだけ?」
さやか「だけって、ちっとも『だけ』じゃないですよ。あたし一人で舞い上がって、
全然判ってなかったのかもって」
マミ「なら大丈夫よ。気付けて良かったじゃない。
そんなものあなたの決心で塗りつぶしてしまえばいいわ。
舞い上がって上等でしょう?」
もうすこし話は続いた。
ほむらには、この相談の効果があったかどうか判断つかないが、
それでも、美樹さやかに巴マミという頼るべき人物がいることがプラスに働くことを祈った。
さて。土曜か。
4時5時くらいまで余裕なんだが、この先アレだしどうしようかな。
じゃあ続投。
さやかが帰ってから、ほむらは巴マミの部屋の呼び鈴を押した。
マミ「待ってたのよ」
ほむら「べつに来るとは言ってなかったわ」
マミ「そうじゃなくて、ずっと魔女退治の報告に来てくれないかなって思ってたのに、
今まで一度も来てくれなかったじゃない」
ほむら「必要ないわ」
マミ「それで、やっと顔を見せてくれたのが、
さやかさんのお披露目会ってどういうことなの?」
ほむら「何を甘えているの?」
マミ「でもうれしいわ。わざわざこうして一人で会いに来てくれるなんて」
ほむら(話を聞いてないし)
マミ「さやかさんが魔法少女になったのだし、そろそろ私も復活しないといけないわよね」
ほむら「……あなたはさっきの話がショックではなかったの?」
マミ「驚いたわ。でも今更って気もするから。私は魔法少女になってなかったら
今頃生きてなかった。それと比べたらたいしたこと無いわ。
『魂がソウルジェム』って言われてかえって納得したくらいなのよ」
もともと完全を期待してはいなかったということか?
ほむら「あなたに話があってきたのよ」
マミ「気なら変わってないわ。今もあなたに一緒に戦って欲しいと思っている」
ほむら「その話なら良いわ」
マミ「いいの?」
まどかは目下のところ魔法少女になる気はないのだし、
そのきっかけになるような問題が発生するとしたら一般人であるまどか周辺よりも魔法少女サイドだから、
現時点で巴マミと行動を共にすることは問題ないと考えていた。
それに美樹さやかは当然共闘するだろうし、
やりようによっては佐倉杏子も仲間に引き込める可能性があった。
ワルプルギスの夜に向けての戦力確保という点においては、好ましいことなのだ。
だか、巴マミのあまりに嬉しそうな表情にほむらは一瞬『後悔』した。
ほむら「い、良いわよ。美樹さやかは良い顔しないでしょうけれど」
マミ「ううん。私が説得するから。ほむらさん、これからよろしくね」
ほむら「いいかしら? もう一つ大事な話があるのだけど……」
マミ「いいわよ」
にこにこと嬉しそうな巴マミであるが、
これから話すことは下手をすればそれを絶望のどん底に落とすような内容である。
だからこれは賭けなのだ。
巴マミがほむらを友好的に受け入れている今の状況なら、
あの残酷な真実に耐えられるかもしれない、という。
ほむら「……」
どう切り出そうか考えたが、結局、
ほむら「ソウルジェムが汚れ切ったら、魔法少女は魔女になるわ」
まずは飾らずにストレートにそう言ってみた。
マミ「……」
ほむら「巴マミ、聞いてる?」
マミ「……」
ほむら「……」
マミ「……」
巴マミは指輪のある手をテーブルに置いた。
ほむら「?」
そしてソウルジェムを具現化させ、テーブルの上に置き、
マミ「……」
立ち上がったかと思うと、何処からか重そうなガラスの置物を持ってきて、
ほむら「どうしたの?」
それを両手で振り上げた。
ほむら「ちょっ!?」
ほむらは慌てて魔法少女化して時を止めて、
置物の落下地点にある彼女のソウルジェムを回収した。
そしてマミの背後に移動して彼女を背中から羽交い絞めにしてから時を戻した。
マミ「放してっ!」
ほむら「やめなさい!」
ガラスの置物が絨毯に転がって鈍い音を立てた。
マミ「魔法少女が魔女を生むなら、私たち、死ぬしかないじゃない!!」
ほむら「いいから、いったん落ちついて!!」
マミ「うわぁぁぁぁぁぁん……!!」
ほむら(……失敗した。巴マミはもう駄目だわ)
まさか一言で錯乱するとは思わなかった。
言葉だけでは信用さえしてもらえないと思っていたのだ。
そして、そこから話を進めていくつもりだったのに全くの想定外だ。
あるいは、ベテランといわれた巴マミのこと、
『魔法少女が魔女になる』と言われて全て説明が付くような出来事を、
過去にいくつも経験していたのかもしれない。
いままで「まさか」と思って否定していたことが、
ほむらの言葉で一気に決壊したのだと考えればこの豹変振りも説明がつくだろう。
だかそんな探求も、もはや意味をなさない。
ほむら「やっぱりあなたは真実に耐えられないのね」
マミ「もう殺して……」
泣き崩れる巴マミ。彼女のソウルジェムはほむらの手の中にあった。
ほむら「そのつもりよ」
マミ「……ひどい」
ほむら「私に何を期待しているの? 慰めて欲しいのなら他を当たりなさい」
マミ「冷たいのね」
拗ねた顔をしてそんなことをいう。
どうやら他人に愚痴を言うくらいの余裕は出てきたようだ。
少なくとも近くの魔法少女全員と心中しようとした時よりはマシと言える。
だがどのみち駄目ならほむらが手をかけることになる。
最初からその覚悟でこの『賭け』に臨んだのだ。
ほむらは、ソウルジェムをマミに返して言った。
ほむら「私はあなたを慰めたり励ます言葉をもっていないわ。
受け止められないのならあなたは邪魔にしかならない」
マミ「だったら殺して。あなたの手にかかるのなら本望だわ」
ほむらは盾の中から銃を取り出した。
マミ「一度はQBに助けられた命。そして二度目はあなたに救われたわ」
胸に抱いているソウルジェムに狙いをつけて銃を構える。
マミ「あのときあんなふうに助けてくれて嬉しかったの」
手が震える。
マミ「あのときから憧れてたのよ。あなたに」
ほむら(そんなこといわないで)
マミ「会うのが待ち遠しかった」
ほむら(やめて。私は私の都合であなたを助けただけ)
マミ「魔女になってみんなに迷惑をかけるくらいなら死んだ方がいいの」
ほむら(なんて身勝手な。なにもかも私に背負わせてあなたは舞台から降りてしまう)
既に、巴マミの目には狂気の色が宿っていた。
涙が溢れる。
でもまどかを救うため。
暴走を始める前に巴マミを今ここで終わらせなければ……。
このとき、
このとき仮に、だ。
「だったらあなたの命は私が預かる。勝手に死ぬなんて許さない」と言葉を紡ぐことが出来れば、
違った結末があったのかもしれない。
だが、ほむらには彼女の命を自分に繋ぎとめ、背負っていくだけの覚悟も余裕もなかった。
この『賭け』には、そういう『覚悟』こそが必要だと知るには、
ほむらの精神はまだ幼すぎたのだ。
ほむらは引金に指を這わせた……
【避難勧告】仮定法入りましたー【逃げろ】
「転校生ーーーーっ!!」
ガラスを蹴破って蒼い影が飛び込んできた。
ほむらはそのまま突き飛ばされて壁に激突した。
「あんた、マミさんに何をした!!」
ほむら「……美樹さやか」
二人の間に割って入って来たのは魔法少女に変身した美樹さやかであった。
さやか「最初会ったときから何か企んでるって思ってたけど、とうとう本性現したわね!」
剣を向けられたまま、ほむらはゆっくり立ち上がり、服の乱れを払ってから言った。
ほむら「だた真実を教えてあげただけよ」
さやか「嘘だ! 変なこと吹き込んでマミさんをどうにかしようとしてるんでしょ!」
ほむら「あなた一体どうしたの?」
多少疑われてはいたが、こんな酷くは無かった気がする。
マミ「さやかさん……」
さやか「マミさん、何を言われたの? 大丈夫だからね。マミさんはあたしが守るから!」
いや、この状況なら無理もないか。
巴マミは泣いていてほむらはそれに銃を突きつけていたのだから。
ほむら「それならそれで良いわ。
巴マミが死のうとあなたが魔女になろうともう勝手にすれば良い」
さやか「はあ? 何言ってるのよ? 戯言いうのもいい加減にしてよね!」
ほむら「だけど、まどかを苦しめることだけは許さない!」
さやか「だったらどうするっていうの!」
ほむら「どの道あなたの破滅は防げない。だったらあなたもここで終わりにするわ」
そして時間を停止した。
でも殺せなかった。
美樹さやかも巴マミも、居なくなってしまえばまどかが苦しむ結果になる。
ほむら(どうしてなの? こんなことの為に時間を何度も繰り返してきたんじゃないのに)
結局、時間を動かしてさやかを挑発し、ベランダに移動した。
さやか「くそっ!」
そして時間停止を繰り返しながらさやかの剣を避け続け、そのまま屋上に誘導。
ほむら(こんなことしてても、何の解決にもならないのに、私はまだ希望を捨てられずにいる……)
さやか「はぁ、はぁ、はぁ……馬鹿にしてぇ!」
彼女が消耗するまでそれを続けていた。
ほむら「……」
さやか「いいよ。次で決めてやる」
巴マミの真似だろうか?
さやかのマントから多数の剣が現れて、それが空中に浮かび、
全ての切っ先がほむらの方を向いていた。
さやか「うぉぉぉぉぉぉーーーーっ!!」
さやかのうなり声とともにその凶悪な切っ先の奔流がほむらになだれ込んできた。
だが、ほむらが回避の為の時間停止をする直前、
多節棍――これは杏子の武器だ――が、ほむらの身体に巻きついた。
ほむら「!?」
ほむらは捕縛されたままさやかの攻撃ポイントから強引に移動させられた。
杏子「ばっきゃろーっ!! てめえら何やってやがるんだ!!」
鎖のように杏子の武器は給水塔の梯子に引っかかって、ほむらは吊り下がっていた。
反対の端は杏子が握っている。
さやか「……」
杏子「おまえら仲間じゃないのかよ?」
さやか「あんた誰?」
杏子「ああ? 初対面だったな。あたしは佐倉杏子。見ての通り魔法少女さ」
さやか「ふうん。あんたもマミさんの敵ってわけだ?」
杏子「はあ? 何言ってるんだよ」
さやか「ああ、ごめんね。でもわかっちゃった。
転校生とあんたでマミさんを落としいれようとしてたって」
ほむら「それは違うわ!」
さやか「あんた黙っててくれない?」
そう言ってさやかは束縛されてなす術のないほむらに向けて剣を放った。
ほむら(避けられない!)
身体を貫かれる恐怖に身を強張らせ、きつく目を閉じたが、
カキンと硬質な音をたてて杏子が投げた多節棍のもう一方の端ががそれを弾いていた。
杏子「てめえ!」
さやか「やっぱり」
杏子「なにがやっぱりだ。抵抗できないやつに剣を向けるなんて最低のヤツだな」
ほむら(抵抗できなくしてるのはあなたよ……)
さやか「先に卑怯なことしたのはあんた達でしょ?」
杏子「なんのことだ?」
さやか「もういいわ。魔女だろうが魔法少女だろうがマミさんの敵はあたしが倒す!」
そう言うとさやかは剣を構えた。
杏子「はん! そうだな。ごちゃごちゃリクツ述べるよりその方があたしら向きだ!」
さやか「あんたなんかと一緒にしないで!」
杏子「だったら来な。決着つけてやるからさ!」
ほむらを捕縛してるのとは別にもう一つ槍を出して杏子はさやかを挑発した。
ほむら「やめて! 二人ともここで争っても意味が無いわ!」
杏子「そこで大人しく見てな。ちょっとこのわからずやを黙らせるからさ」
だめだ。
これではさやかの魔女化を促進するだけになってしまう――。
ほむら(だれか、あの二人を止めて……!)
見ている前で杏子の先制にさやかが突き飛ばされた。
まどか「さやかちゃん!!」
ほむら「まどか!? どうしてあなたが!?」
杏子「ちぃッ!」
杏子はまどかの前にバリアを張った。
まどか「ほむらちゃん!?」
まどかが見上げてる。
ほむら「佐倉杏子、あなたが連れてきたの!?」
まどか「違うよ、わたしが杏子ちゃんに頼んだんだよ!」
ほむら「あなたが?」
まどか「QBが教えてくれたの。ほむらちゃんとさやかちゃんがケンカしてるって。
でもわたしじゃ魔法少女のケンカなんて止められないから、
QBにお願いして杏子ちゃんを呼んでもらったの」
何故QBが?
魔法少女に成り立てのさやかを失うのを嫌ってのことか?
杏子に頼んだのはどう考えても失敗だ。このままではさやかが無事では済まない。
下手をすると殺し合いに発展してしまうだろう。
杏子は頭に血が上りやすい一方、さやかは力ずくでは絶対に譲らないからだ。
まどか「さやかちゃん! 杏子ちゃんも、もうやめて!」
杏子「おまえ、もうぼろぼろだろ? 何で立ち上がるんだよ?」
さやか「うるさい!」
杏子「いい加減降参しろ。勝てないって判ってる癖に無理すんじゃねえよ」
さやか「黙れ! お前の言う事なんか死んでも聞くもんか!」
杏子「判ったよ。ならそうしてやるよ」
まどか「だ、だめっ!」
ほむら「止めて!!」
杏子「死にな!」
何が起こったのか。
そのとき、パンパンと銃声が鳴り響き、
さやかに一撃を加えようとした杏子が力なく崩れ落ちた。
さやかが倒れたのもほぼ同時だった。
ほむらは何が起こったのかを自分を捕縛していた得物が消滅したことで理解した。
杏子とさやかのソウルジェムが砕かれたのだ。
マミ「駄目よ? 魔法少女同士でケンカなんて」
まどか「ま、マミさ……ん?」
いつ上がってきたのか、屋上の端で魔法少女に変身した巴マミが微笑んでいた。
ほむら「巴マミ、あなた一体……」
マミ「あら、ほむらさんよかった。ここに居たのね」
ほむら「どうしてあの子たちを殺したの?」
マミ「どうして? だって魔法少女は成長すると魔女になるのでしょ?
だったらその前に殺してあげないと」
ほむら「っ……!」
そうだった。もうあの瞬間からこの人は駄目だったのだ。
ほむらは銃口を巴マミに向けた。
まどか「ほむらちゃん! どうして? なんでマミさんにそんなの向けるの?」
ほむら「……」
『どうして?』
それはほむらが叫びたかった。
ほむらはこの状況を何とかしたくて足掻いていただけなのに、
引金を引くのを躊躇するたびに最悪の状況になっていく。
マミ「ほむらさん。大好きよ。私、あなたを好きになれてよかったわ……」
まどか「止めてよぉ。こんなのいやだよぉ」
とうとうまどかの目の前でこの始末だ。
このもうこれ以上ないって程の最悪の状況の中、巴マミの手にマスケット銃が現れた。
ほむら「!!」
バァンと銃声が響く。
ほむらは咄嗟に引金を引いていた。
まどか「マミさん!!」
巴マミの銃口がまどかの方を向いていたのだ。
ほむら「……」
マミのソウルジェムは砕け散り、彼女は崩れ落ちた。
まどか「っ、……うっ……ひっく、こんなのいやだよぉ……」
…………
……
こんな時間ですが、ここで落ちると呪われそうなので
もう少し続けます。
メルトダウン
ほむほむがマミさんの冷却系停止したまま放置したから>液状化
ズレたorz
メルトダウン
>液状化
この時間軸は狂っている。
ほむらは自室でうなだれていた。
いや。
最初から狂っていたのはほむらの方だったのかもしれない。
ほむらはそこに寝かせてあるものの方に視線を向けた。
一つ前の違う時間軸の鹿目まどかの遺体と巴マミのソウルジェム。
なまじこんな物があったから、他人に期待してしまったのだ。
ほむらはこの物言わぬ人形に話しかけ安らぎを求めた。
だが、得られぬ故に人に期待した。
ほむら「そうなのね。あなたの呪いだったのね?」
魔女とは違う。でもある意味『呪い』だった。
呪われたのはほむら自身だ。
そして、その呪いはまだ終わっていなかった。
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「え?」
まどか「その子、だれなの? どうして、わたしそっくりなの?」
ほむら「どうしてここに……」
まどか「ほむらちゃん今日学校休んだから、プリント届けてって先生に……」
どうやら鍵を閉め忘れていたようだ。
すまん。自重する>不/謹/慎
まどかは呼んでも返事がないので、
ドアの鍵が開いていたのでつい入ってきてしまったと言った。
まどか「ご、ごめんね」
ほむら「……別に良いわ」
まどか「……」
ほむら「……」
痛い沈黙が続いた。
まどか「あの……」
ほむら「そうね何かお話をしましょうか」
まどか「お話?」
ほむら「まどか、私の魔法が何か判る?」
まどか「え? 判らないよ」
ほむら「時を止めるのよ」
まどか「時を?」
ほむら「そうよ。私はあんまり魔力が無いのだけど、
時を止める魔法が使えるから色々有利に戦えたのよ」
まどか「そう、なんだ……」
眠いので巻いていきます。間隔短縮!
ほむら「あの時巴マミを止められなかったのはね」
まどか「え?」
ほむら「考えてたでしょ?」
まどか「う、うん……」
ほむら「束縛されてると時を止めても束縛されたままだから何も出来ないのよ。
抱きつかれてもだめね」
まどか「……もういいよ。ほむらちゃん辛そうだよ」
ほむら「そう。じゃあ違う話。私ねもう一つ魔法が使えるのよ」
まどか「え?」
ほむら「過去にもどってやり直せるの」
まどか「……過去に?」
ほむら「そうよ」
一つ前に経験した時間軸と同じことになるぞと、ほむらの心の奥が警告を発していた。
でも止められなかった。
溜め込んだものが多すぎて、もう飽和していて吐き出さずにはいられなかったのだ。
まどか「……じゃあ、この子は一つ前にほむらちゃんがいた未来のわたしなの?」
ほむら「そうね。それは今のあなたの未来じゃなくて、違う経験を辿ったまどかなのよ」
まどか「でも死んじゃったんだ……」
ほむら「私の運命も変えて見せるって。そういってくれた。それでも駄目だった」
まどか「ほむらちゃんはずっとそんな辛い目にあってきたの?」
ほむら「そうね。みんな死んだわ。何回も何回も何回も……」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「見て」
まどか「あ、ソウルジェム? でもそれって」
ほむら「判る? これは違う時間軸の巴マミよ」
まどか「マミさん!?」
ほむら「残念ながら、この巴マミは魔女に負けて身体を食われてしまったの。
心が壊れてしまってもう何も反応しないわ。
ただこのまどかの身体を維持するためだけに存在している」
まどか「……」
ほむら「軽蔑して良いわよ。酷いことしてるって。死者の魂と身体を弄んでいるんですもの」
まどか「ほむらちゃん寂しかったんだよね?」
ほむら「そうかもね」
まどか「わたしほむらちゃんの気持ち全部はわからないけど、
わたしがそんなことになったらきっと耐えられない……。
だって、今だってもう……」
ほむら「あなたが泣くことはないのよ」
まどか「でもね」
そういってまどかはほむらの手を握った。
まどか「誰かが一緒なら少しは大丈夫だと思うんだ」
ほむら「無理だったわ。誰に頼っても最悪の結果しか待っていなかった」
まどか「ううん、そうじゃなくて」
ほむら「そうじゃない?」
まどか「うん。だって過去に戻ってやり直すわたしって今の私じゃないんでしょ」
ほむら「……そ、そうよ」
過去に戻ればほむら以外の人間は全てリセットされる。
まどか「ほむらちゃんが過去に戻っちゃったら私はほむらちゃんとお別れなんでしょ?」
ほむら「それは……」
まどか「そんなの嫌だよ? だからね、一緒に行けばいいんだよ」
ほむら「え?」
まどか「わたしほむらちゃんと一緒だったら大丈夫だと思う。
ほむらちゃんもそれなら寂しくないよね」
ほむら「む、無理よ。そんなこと。それに私はそんなこと望んでない」
まどか「嘘。ほむらちゃんはもうしてるよ。
だって一つ前のわたしの身体とマミさんの魂をもってこれたんでしょ?」
ほむら「あ……」
まどか「だからね。もし、また戻るんだったらわたしを連れて行って。
わたし、ほむらちゃんの力になりたい」
ほむら「だめよ。出来るけれどそれは駄目」
まどか「どうして?」
ほむら「あなたに孤独な運命を強いてしまうわ」
まどか「え?」
ほむら「判らないの? 一つ前のあなたの身体があそこにあって、
それとは別にあなたがいるじゃない。
同じ方法であなたを連れて行けば同じことが起こるわ。
そこにあなたの帰る場所は無い」
まどか「そっか……」
それはいずれ魔女になる運命とどちらが楽なのだろうか?
まどか「ねえ、ほむらちゃん。この子のお墓作ってあげようよ」
ほむら「そうね。まどかがそうしたいのなら……」
いずれにしろ、どうにかするつもりだった。
『これ』を持って来たのは間違いだったのだ。
ただこの時、違う時間軸の自分自身を見つめたまどかが何を考えていたのか、
ほむらには知る由も無かった。
―――――――
―――――
結局、ワルプルギスの夜は『通り過ぎた』。
ほむらは一人で戦った。
だが勝てなかった。魔女はほむらを殺しもしなかった。いやほむらが途中で逃げたのだ。
魔女の性質は「災害」。
ただ多大な災害を撒き散らし、まどかの周りの世界を全て破壊しつくして通り過ぎていった。
まどかは生き残れた。
戦闘中、大きなダメージを食らったほむらは、残った魔力を振り絞ってまどかを守ることに専念したからだ。
災害からも、QBからも。
そして気がつくと街の廃墟でまどかと二人。
ほむらは、この期に及んで性懲りも無くまどかを誘惑するQBを撃ち抜いた。
ほむら「もう出てこないで。まどかにその気は無いわ」
QB「それは本当に残念だよ。まあ、まどかがそういことなら今は仕方が無いかな?
だったら他に魔法少女になってくれそうな子を探して地道にやっていくことにするよ」
もはや隠そうともせず即復活したQBはそう言い残して何処かへ消えた。
そして手元に残った最後のグリフシードでソウルジェムを浄化し、
ほむらが時間遡行の準備を終えたとき、まどかは言った。
まどか「ほむらちゃん。わたしいいんだよ?
過去のわたしがいてわたしに帰る家がなくたって、もう何も変わらないよ。
ここにだってわたしの帰る家はもう無いんだよ?
それでもほむらちゃんはわたしを置いて行っちゃうの?」
それは、最期まで戦わず、街を見捨てたほむらに課せられた十字架のようであった。
こんな展開にお付き合いただき恐縮です。
って、もう誰も居ないかな。
とりあえず、スレタイと同名の書き溜めファイル分終了。
次は“まどか「ここは?」ほむら「私の転校前の入院先よ」.txt”の分になります。
まだ書きかけなので、次回投下まで間あくと思います。
>虚淵みたいに筆が進むほどバッドエンド構想になるタイプ
本編まとめて見て虚淵分溜め込んでから書き下ろしたもので。
この先は虚淵成分抜けてくと思います。
まどか『ほむらちゃんはわたしのために、ずっと苦しんできたんでしょ?』
まどか『ほむらちゃんがまた戻って戦ってるって知りながら、
この先ほむらちゃんの居ない世界で生きてくなんて無理だよ』
まどか『今までほむらちゃんが救おうとしてくれた沢山のわたしの分、
わたしはほむらちゃんを助けたいんだ――』
―――――
―――
目を覚ます。
よく知った病室の天井が見える。
ベッドから降りてすぐ、ほむらは魔法少女に変身した。
そして盾のある左腕を前に上げ、格納してたものを吐き出させた。
「きゃん!」
ほむら「あ、ごめんなさい……」
まどか「あれ? ここは?」
ほむら「私が転校する一週間前の病院よ」
まどか「本当に戻ったの?」
ほむら「そうよ」
まどか「すごーい」
結局まどかを連れて過去に戻った。
あの時間軸では確かにまどかの魔法少女化を阻止しできた。
これは快挙と言っていい。
だが、代わりにあの街の全てを失ってしまった上に、
ワルプルギスの夜を倒せず取り逃がしてしまったのだ。
ましては、一旦は引いたQBは『今は仕方ない』と言っていた。
後からまどかを狙ってくることは明らかだ。
ほとんど天涯孤独となってしまったまどかをそんな世界に置き去りには出来なかった。
いや、二人で残ってその世界で生きるという選択肢もあった筈だ。
だが、まどかの『やり直せる可能性がある限り諦められない』という言葉に、
ほむらは逆らえなかった。
TV放送最終回を見たらモチベーションを全部持ってかれそうな気がするので、
小出しにして続ける為の足枷にしておこうと思った。
ほむら「あなたはこの世界に本来存在しない人間なのだから行動には注意して」
まどか「判ってるよ」
ほむら「特に、知り合いに会ってしまうと、この時間軸のまどかが困ったことになるから」
まどか「判ってるって、ほむらちゃんは心配性だなー」
本当に判っているのだろうか? ほむらは心配だった。
とりあえず退院手続きの間はどこかに隠れててもらって、
あとで合流して一緒に帰ることにした。
だけどこの子は早速やってくれた。
さやか「ま、まどか? 何事なの?」
まどか「うぁぁぁぁん、さやかちゃん、さやかちゃん!」
おそらく幼馴染のお見舞いに来た美樹さやか。
それに思いきり抱きついていたのだ。
ほむら(なにやってるのよ!
今私が出て行ったらもっと面倒なことになるというのに……)
さやか「よしよし、どうどう!」
まどか「うっ、ひっく……」
さやか「なにがあったか言ってごらん。
あんたの親友のさやか様が何でも聞いてあげるから」
まどか「え……? えーっと……」
ほむら「……」
まどかはほむらの視線に気付いたようだ。
さやか「うんうん?」
まどか「な、なんでもないよ?」
さやか「ズコーーッ! 何でもないわけあるかい!」
まどか「さやかちゃん、口で『ズコーーッ』って言うの変だよ?」
さやか「何だと! どの口が言うかな? この口か?」
まどか「はやひゃひゃうはひゃひひぇ」
そろそろほむらは苛立ってきた。
さやか「結局なんなだったのよ」
まどか「ちょっとふざけてみたくなっただけだよ。いまマイブームなの」
さやか「どんなブームよ? まあいいや。
でも本当に何かあったら相談してよねあたしまどかの親友なんだからさ」
まどか「わかってるよ。さやかちゃんありがとね」
さやか「え? いや、うん。まかせな!」
そしてまどかが先に帰るといって、美樹さやかとは別れた。
ほむら「あなた、言った事忘れたの?」
まどか「ほむらちゃん怖いよ」
ほむら「一つのイレギュラーな行動で、この先何がどう変わるか判らないのよ。
お願いだからもっと慎重に行動して」
まどか「うん。判ってるよ。でも生きてるさやかちゃん見たら我慢できなくて……」
ほむら「そういうことなら、まどかには盾の中に入っててもらった方がいいのかしら?」
まどか「ひ、ひどいよ。そんなのってないよ」
ほむら「だったら!」
まどか「これから気をつけるから、ね?」
ほむら「はぁ……」
目前で親しい友人の死を目撃し、その後、更になす術も無く周りの全てを失ったまどかである。
気丈に振舞ってはいるが、状況的にまともな精神状態であるはずがない。
だが、ほむらがそのことを忘れてしまいそうになるほど彼女は元気で、その表情は明るかった。
とりあえず、今日はここまで。
メガネのほむほむにまどかが無反応だと
>>216
>>208の後に
まどか「……」
ほむら「なあに?」
まどか「退院前のほむらちゃんってこんなだったんだ?」
ここで起きるときは髪が三つ編みになってる。目も悪いままなので、“まどかを出した”後すぐ眼鏡をかけていた。
ほむら「そうよ。変でしょ」
入院痩せして元々貧相だった顔が更にやつれているのだし。
まどか「変じゃないよ、眼鏡と三つ編み可愛いし。なんか別人みたい」
ほむら「よして」
QBが最初にまどかと接触する日、その夜のこと。
ほむら「これから、QBを阻止しに行くから」
まどか「あ、わたしも行く!」
ほむら「あなたが来てどうするの。この時間軸のあなたに会いに行くのよ」
まどか「うん。何も知らない過去のわたしにわたしから言ってあげないと」
ほむら「いきなり自分と同じ顔の子が現れたら怪しく思うでしょ?」
まどか「それは同じだよ」
ほむら「同じって?」
まどか「ほむらちゃんだってあの時すごく怪しかったよ?」
ほむら「そりゃ……」
まどか「わたしだったら知らない人より知ってる人の方が安心すると思うな」
ほむら「知ってるって、自分と同じ顔じゃおかしいでしょ!」
まどか「大丈夫だよ。ちゃんと未来から来たまどかだって言うから」
ほむら「だ、駄目に決まってるでしょ!」
まどか「どうして?」
ほむら「信じるわけ無いわ」
まどか「信じるよ」
ほむら「どうしてそんなに自信がありそうに言うの?」
まどか「だってわたしなんだよ。わたしのことはわたしが一番わかるもん」
ほむら(はあ……)
心の中で、ほむらはため息をついた。
つまるところ、何を言われようと付いて来る気だ。
ほむら「……判ったわ。じゃあ連れて行くから」
まどか「やった!」
ほむらは変身して盾のある左手を差し出した。
ほむら「あなたはここよ」
まどか「え」
ほむら「あなたの存在をなるべくQBに知られたくないの。使えるカードは
残しておきたいから」
まどか「……わ、わかったよ」
まどかの部屋の窓の外でQBを待ち伏せし、進入する前に葬った。
初回は想定外の事態だからなのか、どの時間軸でもQBはすぐには復活しない。
まどか『ほむらちゃん!』
ほむら「……まどかは出てこないで」
まどか『それってずるいよ、わたしにもお話させて!』
ほむら「静かにして。こちらのまどかに気付かれるわ」
「だれ?」
ほむら「ほら見なさい」
まどか『お話しするんでしょ? 出してよ』
「誰なの?」
まどか『あ、わたしわたし!」
ほむら「あ、こらっ!」
まどかは強引に収納空間から這い出してきてしまった。
ほむら(しょうがないわね……)
ほむらは窓辺に立って、部屋の中のまどかに向かって言った。
ほむら「……鹿目まどか。あなたに奇跡を約束して取り入ろうとするものが現れても、
決して言いなりになってはだめ」
「え……?」
まどか「そんな言い方じゃだめだよ。怖がってるよ?」
ほむら「あなたは黙ってて。もう行くわよ」
「あ、あの?」
まどか「怖がらせちゃってごめんねー」
「き、奇跡とか言いなりとか、何の話なの?」
まどか「わたしはまどか。未来の世界からあなたに大事なことを教えに来たの!」
「み、みらい!?」
ほむらがあの瞬間『あちゃー』と思ったのは言うまでもない。
いきなりドタバタと現れて訳のわからないことを言った上に、
図々しくも中に入れてと要求する二人を、
クッション
こちらのまどかはあろうことか受け入れて座布団まで用意した。
これには無防備すぎるとほむらの方が心配になったのだが。
もちろん中に入れてと言ったのは未来から来た方のまどかだ。
「暁美さん?」
まどか「そうだよ。それでわたしがまどかだよ」
ほむら「ちょっと、せめて名前を変えるとか、もっとやりようは無いの?」
まどか「うーん、じゃあ考える」
まどか「まどかさん?」
まどか「そうだよ」
まどか「わたし、なんだよね?」
まどか「うん」
まどか「じゃあ同じ鹿目まどか?」
まどか「えーと、じゃあ『まどまど』」
まどか「え」
まどまど「まどまど、だよ?」
まどか「呼びにくいよ。『まどかさん』じゃダメ?」
まどまど「うーん。まあそれでも良いけど」
まどか「わたしもまどかだよ」
まどまど「そうだね、まどかちゃん」
ほむら「やめなさい。紛らわしい」
まどまど「えー」
ほむら「名前はもう良いわ。どうせもう会うこともないでしょうし」
まどまど「あー、それずるいよ。ほむらちゃん学校で会えるんでしょ?
わたしももっとまどかちゃんに会いたいよ」
ほむら「必要ないでしょ」
まどまど「あるよ」
ほむら「話をややこしくしないで」
まどか「仲良いんですね」
ほむら「え」
この時間軸のまどかはなにやら笑っていた。
すまん改正する
ほむらが前の時間軸から連れてきたまどか=“まどか。”
この時間軸のまどか=“まどか”
まどか。「じゃあ親睦も深めたことだし。お話、しよっか?」
ほむら「……そうね」
といっても、どこまで話して良いものか。
あまり沢山話してもついてこれないであろうし。
まどか「……魔法少女?」
まどか。「そうだよ。ほむらちゃんはそうなんだよ」
とりあえず、重要なキーワードについて説明をした。
願い事、QB、魔法少女、そして魔女。
魔女は呪いを撒き散らす存在で、それを倒すことが出来るのは魔法少女しかいないということ。
一つの願い事と引き換えにQBと契約して魔法少女の力と魔女との戦いの運命を得るのだと。
などだ。
いずれQBが勧誘に来るであろうことも話しておいた。
まどか「わたしもなれるんだよね? その魔法少女に」
まどか。「だめだめ。上手い話には必ず裏があるんだよ」
ほむら「あなたの口からそんな台詞が聞けるなんてね」
まどか。「ほむらちゃん話の腰折らないでよ」
ほむら「だって、あなたは何回私の忠告を無視したと思っているの?」
まどか。「それってわたしじゃないでしょ? わたしは契約しなかったよ」
ほむら「そ、そうだったわね」
まどか「あの?」
まどか。「ごめんね。何処までお話したっけ?」
まどか「ええと『裏がある』ってところ」
まどか。「そうだった。えーと、ほむらちゃん?」
ほむら「なあに?」
まどか。「ソウルジェム見せて」
ほむら「いいわよ」
ほむらは指輪状のソウルジェムを手のひらで宝石形態に変化させた。
まどか。「これがほむらちゃんのソウルジェム」
まどか「きれい……」
まどか。「これが魔法少女になった女の子が契約によって生み出す魔法の力の源、
って説明なんだけど……」
まどか。「実はここに込められてるのは魔法の力じゃなくって、
ほむらちゃんの魂そのものなの」
まどか「えぇ!?」
まどか。「酷いよね。QBは契約のときそんなこと教えてくれないんだよ?」
まどか「本当、なんですか?」
まどか。「そうだよ。身体は、なんだっけ外付けの……?」
ほむら「『ハードウェア』でしょ」
まどか。「あ、そうそれ。だから、例えばわたしがこのソウルジェム奪っちゃっうと……」
ほむら「あっ!」
いきなり、ほむらの手からソウルジェムが手から奪われた。
まどか。「こっちが本当のほむらちゃんなの」
ほむら「ちょっと、やめて」
まどか。「それで、身体から遠くにやっちゃうと、ほむらちゃん動けなくなっちゃうんだよ」
ほむら「嫌なこと思い出すから返して!」
そう言ってソウルジェムを取り返した。
前の時間軸でほむらからソウルジェムを奪い逃走したのも『このまどか』なのだ。
まどか。「ごめんごめん」
まどか「……」
自分で書いといてあれだけど、台詞冗長だ。
なんか原作ストックが足りなくてシーン引き伸ばしてるアニメ見てる気分になってきた。
ほむら「私はあなたに魔法少女にならないで欲しいの」
まどか。「いきなりこんな話、わからないよね?」
ほむら「……突然来てこんな突拍子も無いことを話してる私たちのことを、
あなたは信じられないかもしれないけれど、
これからあなたに降りかかる事の真実の一部なのよ。覚えておいて」
まどか(この時間軸)はかなり面食らった顔をしていた。
だが話した通りこれはまだ全部ではない。
その時、部屋の外から声が聞こえた。
マドカパパ
鹿目知久「まどか、誰か来てるのかい?」
ほむら「今日はここまでのようね」
まどか。「そうだね。じゃ、また来るからね」
まどか「あっ……」
ほむらは早々に時間を停止して、
ほむらが連れてきた方のまどかを盾の収納空間に回収し、部屋から脱出した。
まどか。「わたしもついていかせて」
ほむら「危険だから駄目よ」
まどか。「埋め合わせするっていったもん」
先日、この時間軸のまどかに説明に行った時の話。
帰りにほむらは断り無くこのまどかを収納空間に詰め込んだのだが、
そのことについて彼女がご立腹で、
『あとで埋め合わせするから』とほむらは謝っていた。
その『埋め合わせ』を盾にまどかが我侭を言い出したのだ。
『ついていく』とは魔女狩りの話。
学校へ行く日までの約一週間。この期間は、QBの行動阻止もあるが、
魔女狩りをしてグリフシードを確保しておく必要もあった。
最終回を見たら
1 モチベ全部持っていかれて書けなくなる
2 斜め上を行かれて別の話が書きたくなる
どっちも駄目じゃん
ほむら「この中でいいのなら良いわよ。でもそうじゃなかったら連れて行けないわ」
変身してからそう言って左手の盾を見せた。
まどかは基本的に収納されることを嫌がる。
だから、これは遠まわしに「連れて行かない」と言ったつもりなのだが、
まどか。「え、良いの?」
ほむら「え」
まどか。「やった!」
ほむら「ちょっと、そんな……」
まどか。「えー、嘘ついたの?」
ほむら「危険だって言ってるでしょ?」
まどか。「だからだよ。ほむらちゃんのことが心配なの。だめかな?」
ほむら(そんな上目遣いで見つめられても……)
まどか。「邪魔はしないから。ね?」
ほむら「……勝手に出てこないって約束してくれる?」
まどか。「するよ。そばにいて応援してるだけで良いから」
ほむら「はぁ……。判ったわ」
格納空間で比較的安全とはいえまどかを連れているので、
あまりてこずる魔女には当たりたくなかった。
ほむらはこの時期に発生してる魔女は大体把握している。
だから、違う時間軸でも倒したことのある、
なるべく問題の無いヤツを選んだつもりだったのに。
マミ「あら、先を越されちゃったわね」
ほむら「……」
巴マミと遭遇してしまった。
この時間軸では遭遇したのは初めてだ。
まどか。『ま、マミさん!?』
ほむら(大人しくしてなさい)
まどかが騒ぐので静かにするように嗜める。
マミ「そんなに警戒しないで。別にあなたが今拾った物を奪う気はないわ」
ほむら「そう。なら、これで失礼するわ」
前回のことを忘れたわけじゃない。
あの壊れた巴マミの様子がオーバーラップする。
ほむらは彼女の姿を見ないようにして立ち去ろうとした。
今はまだ巴マミとの接触は避けたかったのだ。
でも彼女はほむらの背中に声をかけた。
マミ「待って」
ほむら「なに?」
マミ「あなた変わってるのね」
ほむら「何のこと?」
マミ「普通こういう時は争いになるものよ」
ほむら「あなたは私と戦いたいの?」
マミ「いいえ」
ほむら「なら良いじゃない」
マミ「縄張りを奪いに来たんじゃないんだ?」
ほむら「あなたにやる気がないのなら、事を構える気はないわ」
マミ「だったら、あなたとは仲良く出来そうだわ。どうかしら? この後お茶でも」
まどか『いかなきゃ駄目だよ! マミさんと仲良くして!』
ほむら(静かにして!)
マミ「?」
ほむら(はぁ……)
どうも調子を崩されっぱなしなほむらであった。
ほむら「今日はまだやる事があるの。またの機会にしてくださらない?」
マミ「そう。残念だわ。ところでもしかして、やる事って他の魔女を狩ることかしら?」
ほむら「だったらどうするの?]
マミ「付いていっていい?」
ほむら「何で?」
マミ「あなたに興味が沸いたわ」
ほむら「……」
マミ「何で、ってことなら、あなたが良く判らないの。あなただって魔法少女なのだから、
魔法少女同士でグリフシードを巡って競争になる事くらい判ってるでしょう?」
ほむら「ええ。知ってるわ」
マミ「なのにあなたは初対面の私を警戒もせずに淡々と魔女狩りを続けようとしてるんですもの。
何故なのかしら?」
ほむら「無駄な争いが嫌いなだけよ。あなたが邪魔しないのならかまう必要もないわ」
マミ「ふうん。あなたみたいな魔法少女は珍しいわね。よほど実力に自信があるのかしら?」
ほむら「もう行っていいかしら?」
マミ「あら、ごめんなさい。引き止めてしまって。でももう一つだけ」
ほむら「……私は守りたいものがあるから戦っているのよ」
マミ「え?」
ほむら「これが聞きたかったのでしょう?」
敵になるか味方になるか。
おそらく巴マミはそれを確認したかったのであろう。
だから、ほむらはあれを言えば引き下がるだろうと思ったのだがそれは甘かった。
マミ「♪」
ほむら(結局ついてきたわ)
まどか。『マミさんマミさん!!』
ほむら(まどかが騒がしいし。早めに終わらせましょう)
程なくして事前に目星をつけていた魔女の結界の場所に到着し、その中に進入した。
使い魔は無視。
突っかかってきたら、時を止めてやり過ごし先へ進む。
マミ「ちょっ!?」
勿論、巴マミは放置だ。守ってやる義理も必要さえ無い。
結界の最深部で、魔女の本体を確認。
攻撃を仕掛けてくる前に接近して時間停止。
必要なだけ爆弾を仕掛けて戻り、時間を動かす。
以上で魔女狩り終了。
結界が消えもとの空間に戻ったところで、魔女の残したグリフシードを拾い上げる。
なにやら巴マミが固まっているが、一応声をかけてみる。
ほむら「終わったわよ」
マミ「え? ええ」
ほむら「それじゃ」
マミ「……」
今夜はここまで。
誤爆やっちまった。
よりによってあっちもWまどかネタだったよorz
>>モチベ全部持っていかれて書けなくなる
良作過ぎると本編に満足して書き溜め中に書く気失せるとか。特にネタがかぶった場合がヤバイ。
いや、投下し始めたのは何があっても書ききるつもりだけど。
あれから、
QBが来たら撃退するため、この時間軸のまどかの周辺の監視は続けていたのだが、
まどか「暁美さん?」
ほむら「……ほむらで良いわ」
部屋の窓の外で様子を伺っていたのが見つかってしまったのだ。
まどか「あの、何をしてるの?」
ほむら「気にしないで」
まどか「無理だよ。気になるよ」
ほむら「……」
まどか「昨日も来てたよね?」
別の時間軸でもまどかは気配を感じてたのかもしれない。
今回はネタを既にばらしてしまったのでまどかが怖がらず、窓を開けて確認したってところか。
ほむらの方も、既に面識があるってことで気が緩んでいたことは否めない。
まどか「もしかして、わたしを魔法少女にしたくないってことと関係あるの?」
ほむら「……そうよ」
まどか「話、聞いてもいいよね?」
ちなみに、今日はもう一人のまどかは連れていない。
どうしてこうなった。
ほむらはまどかの部屋で紅茶をすすっていた。
まどか「……それじゃ、わたしが騙されないようにわたしのところに来るそのQBを追い払ってたんだ」
ほむら「そういうことになるわね」
まどか「どうしてそこまでしてくれるの?」
ほむら「そうね……」
幸いQBはここには居ない。
まどかだけに話すのなら大丈夫であろう。
ほむら「時が来るまで絶対に他言しないと約束してくれるなら、
もう一つ魔法少女の真実を教えてあげる」
ここでこれを話しておくことはまどかを魔法少女にしないための大きな抑止力になる。
まどか「……え?」
ほむら「これから話すことを、この先、たとえ相手が私以外の魔法少女だったとしても、
決してみだりに話さないって、それを約束してくれる?」
まどか「それが、わたしを魔法少女にしたくない理由なんだよね?」
ほむら「そうよ」
まどか「わかった。約束する」
ほむら「魔法少女が魔女を狩り続けなければいけない理由を覚えてるかしら?」
まどか「えっと、魔法を使うとソウルジェムが濁るから……」
ほむら「そうね。それから魔女狩りをしてなくても少しずつ濁のよ。
それを浄化して魔力を回復するために魔女が落とすグリフシードが必要。
じゃあ浄化しないとどうなるかは?」
まどか「魔法が使えなくなっちゃう?」
ほむら「そうね。普通、魔法少女はそう思ってるわ」
まどか「……違うの?」
ほむら「違うわ。前に話したわよね。ソウルジェムには魔法少女の魂が宿っているって。
そのソウルジェムが汚れ切るのよ。
魔法が使えなくなるだけですむと思う?」
まどか「し、死んじゃうの?」
ほむら「いいえ、もっと酷いことになるわ。
汚れ切ったソウルジェムは魔女を生み出す。魔法少女は魔女になってしまうの」
まどか「……え!? 魔女って、……魔女だよね?」
ほむら「そうよ。魔法少女が戦う相手の魔女よ」
まどか「それじゃ……、え? でも……」
ほむら「全部じゃないわ。魔女の使い魔が魔女になることもあるから」
まどか「それじゃあ、魔法少女はいつか必ず魔女になっちゃうってこと?」
ほむら「そう。それは避けられない運命よ」
まどか「暁美さ……ほむら、ちゃんも?」
ほむら「ええ」
まどか「QBはそれを知ってて、女の子を魔法少女にしてるの?」
ほむら「そうよ。でもQBはこのことは契約するとき絶対に話さないわ。
それはそう。一つの願い事と引き換えに完全な破滅への道が待ってるなんて、
判ったら誰も契約なんてしないでしょうし」
まどか「あの、QBはどうしてそんな酷いことするの?」
ほむら「エネルギーを回収するためって言ってたわ。
それが宇宙の寿命を延ばすことになるんですって」
まどか「う、宇宙??」
ほむら「魔法少女の願いによって生まれる希望という感情を、
絶望に転じるのが一番効率が良いエネルギーの回収方法って言ってたわ。
魔女っていうのは絶望した魔法少女の呪いなのよ」
ほむら「多分、殆んどの魔法少女はそのことを知らずに魔女と戦っている」
ほむら「それについて彼らは『酷い』なんて欠片も思っていないわ。
彼らにとっては宇宙の為になるんだから『良いこと』なの。
人間の良識とか常識っていうのが全く通用しない、そういう連中なの」
まどか「……」
ほむら「判ってくれたかしら?」
まどか「よく判らないよ。ううん言葉は理解は出来てると思う。でも……」
ほむら「それで良いわ。いっぺんに色々なこと話して混乱したかもしれないけれど、
今は知識として覚えておいて」
そして初登校の前夜、
まどか――これは前の時間軸から連れて来たまどかであるが――と、こんな会話があった。
まどか。「ねえほむらちゃん。わたしもっと役に立ちたい」
ほむら「別にいらないわよ」
まどか。「一緒にいるだけで、励みになるって言ってくれたのは嬉しいよ?
でも、付いて行く時はいつも盾の中で出られないのってちょっと……」
ほむらは毎日この時間軸のまどかの監視活動をしているわけだが、
その中で何回かは、いつかのように彼女を伴って出かけていた。
ほむら「あなたの気持ちはわかるけど、危険なことはさせられないわ」
まどか。「何か無いのかな?」
『無いのかな』と聞かれれば、
それはほむらだって魔法による攻撃力が殆んど無いから、
一般の武器弾薬で補っているわけで、そういう意味で言ったら『無いことはない』のだ。
けれど彼女にそれらが上手く扱えるかといったら甚だ疑問であるし、
もし扱えたとしても、ほむらは彼女にそのようなものを持たせたくなかった。
ほむら「じゃあ、今度、QBを追い詰めるのを手伝ってみる?」
まどか。「本当?」
結界に入るわけでないし、立ち回るだけのおとり役ならばそうそう危険も無いであろう。
考えようによってはまどかと接触を計ろうとするQBをかく乱するにこれほどの適任者は他にない。
要は使い方である。
使わなければどんなカードも無いも同然だ。
この辺でこのカードは使い始めても良いのかもしれない。
そして初登校の日。
ほむら「じゃあ、放課後に合流しましょ」
まどか。「うん」
まどかは「付いて行きたい」と言ったが、
学校では長時間まどかを収納空間に閉じ込めることになってしまう。
だから、まどかには家で待機してもらって、
放課後の時間までに変装して学校まで来るように言った。
――――
――
朝の自己紹介は、まどかと目が合って向こうから愛想笑いしてきたくらいで、
特に変わったことも無かった。
さやか「ねえまどか、あの転校生、知り合い?」
まどか「う、うん。ちょっとね……」
そして今は最初の休み時間。
美樹さやかと話しているのは、もちろんこの時間軸の鹿目まどかだ。
ほむらは興味津々と集まったクラスメイトの輪から抜け出してまどかの席に向かった。
ほむら「鹿目まどかさん。ちょっと良いかしら?」
さやか「なに? 転校生、まどかに何の用?」
ほむら「保健室に案内して欲しいのだけど。あなた、保険係りなのでしょう?」
まどか「あ、うん。判ったよ。じゃ、さやかちゃん、ちょっと行ってくるね?」
並んで廊下を歩いていく。
まどか「えっと、同じクラスだね」
ほむら「そうね」
まどか「なんか嬉しいよ」
ほむら「そう」
まどかからすれば、『いきなり押しかけて訳のわからない話をした変な人達』のはずだが、
嫌われていないようで少し安心した。
まどか「……」
その時、まどかがなにやら言いたそうにしていることに気付いた。
ほむら「どうしたの?」
まどか「……あのまどかさんって、本当に未来の私なのかなって」
ほむら「信じなくても良いから今は知識として知っておいてって言ったわ」
まどか「そうじゃなくってお話の内容は……、まだよく判らないんだけど、
あの『まどかさん』って、未来のわたしっていう実感がわかなくって。
なんか、『わたし』みたいなんだけど、
私とそっくりな『別の人』って感じもして……」
本当に“他人で騙そうとしてる”なんて思っていたらこんな言い方はしないだろう。
『真実と仮定した上での疑問』といったところか。
ほむら「それは、あなとは違う経験をしているからだと思うわ」
まどか「わたしもあんな風になれるのかな?」
ほむら「あんな風?」
まどか「なんか明るくて積極的で、
顔は同じなのに地味でダメダメなわたしと違って魅力的な女の子って感じがしたから」
ほむら(そうだったかしら?)
実はほむらはあまり違いを感じていなかった。
違っていても『今は元気が無い』・『今日は張り切ってる』程度の差で、
まどか自体に対する認識が変わるわけでは無かったから。
ほむら「今のままでもあなたは十分魅力的よ」
まどか「あはは。ありがとう。お世辞でもうれしいよ」
ほむら「お世辞じゃないわ。あなたは魔法なんて無くたって大丈夫。
そのことを絶対忘れないで」
まどか「う、うん……」
いったん終了。
日付が変わってからもう少し投下します。
放課後になって、まどかが友人達と帰ったのを確認してから、
ほむらも教室を出た。
このあとまどかと合流する予定である。
もちろん“一つ前の別の時間軸から連れてきたまどか”だ。
ほむら「待ったかしら?」
まどか。「今来たところだよ」
まどかは髪は下ろし、深めの帽子に伊達眼鏡というステロタイプな変装をしていた。
ほむら「また知り合いに抱きついたりしてないでしょうね?」
まどか。「してないよ。そんなこと」
ほむら「ならいいわ。急ぎましょ」
まどか。「QBをいじめにいくの?」
ほむら「いじめって、あなた、QBが何をしているのかわかっているでしょ?」
まどか。「わかってるけど、でもなんとか仲良く出来ないかなーって考えちゃうよ」
ほむら「無理よ。人の価値観が全く通用しない生物相手に相互理解なんてありえないわ」
まどか。「お話できるのに判り合えないなんてよくわかんないよ……」
ほむら「たとえ可能性があったとしても、ものすごく時間がかかるでしょうね。
私たちにはそんな余裕はないわ。さ、行きましょ」
まどか。「うん……」
早速だがQBを追っていた。
まどか。「こ、殺しちゃうの?」
ほむら「殺したら次のが現れるわ。動きを止めるのよ!」
まどか。「捕まえればいいんだね?」
ほむら「そうよ!」
まどか。「わたし向こうに回るね!」
ほむら「無茶はしないで!」
まどか。「わかってる!」
~~
QB「キミは、鹿目まどかじゃないか?」
まどか。「残念。わたしはまどまだよ!」
QB「言っていることが判らないよ。どうしてキミがあの子と一緒にいたんだい?」
まどか。「さぁ、どうしてでしょう?」
QB「ボクは君にお願いがあって来たんだけどな」
ほむら「そこまでよ」
時間停止を利用して近づいたほむらはQBを捕獲した。
まどか。「ほむらちゃん、その持ち方は酷いと思う」
ほむらは前回と同じように尻尾を掴んで持ち上げていた。
ほむら「これで十分よ」
QB「……キミはボクにこの仕打ちの説明をしてくれるのかい?」
ほむら「絶望的なほど価値観の違うあなたに、説明は無意味だわ」
QB「君は魔法少女だよね。だったらボクの立場も理解しているはずなんだけど、
キミも認識の相違からくる判断ミスを他者のせいにして憎悪をもった人間なのかい?」
ほむら「黙りなさい」
そう言って銃口をそいつの口らしきところに押し付けた。
まどか。「ほむらちゃん……」
ほむら「まどか、あなたの役目はもう終わったわ」
まどか。「え?」
ほむら「面倒なことになる前に帰って」
まどか。「でも面倒なことって?」
まどかがそう発言したと同時、
一瞬にして、ほむらとまどかは一緒にリボンでぐるぐる巻きに拘束され、身動きが取れなくなってっしまった。
ほむら「だから言ったのに……」
まどか。「言うの遅いよほむらちゃん」
マミ「私のお友達をいじめるなんていけない子達ね?」
暗い廊下の奥から現れたのは金髪縦ロールが特徴的な魔法少女、巴マミだ。
まどか。「あ! マミさん!」
マミ「あら? あなたどこかで会ったかしら?」
ほむら(まどか、話がややこしくなるからあなたは喋らないで)
まどか。(えー)
マミ「なあに? 内緒話かしら?」
ほむら「……」
マミ「最近QBを追い回してるっていうのはあなた達?」
ちなみに捕縛されたときにほむらの手から拳銃とQBの尻尾は離れてしまている。
QB「いつもボクを追いかけていたのは髪の長い子の方だよ」
マミ「あら? そうなの?」
まどか。「あ、あの……」
ほむら(黙って!)
QB「ボクが判らないのは鹿目まどか、キミがこの子と一緒にいることさ」
マミ「あら、鹿目さんっていったら……」
QB「ほむらと言ったね?
キミはボクが鹿目まどかに会うのを邪魔してたんじゃないのかい?」
ほむら「その通りよ」
マミ「じゃあ、こっちの子がQBが見つけたといってた?」
QB「そうなんだ。鹿目まどか。キミは魔法少女になれる資質を持った人間だ。
ボクと契約して魔法少女になってよ!」
まどか。「お断りだよ!」
ほむら「縛り付けたままだなんて、とても人にものをお願いする態度には見えないわね」
マミ「あら? それは失礼したわ」
そういって巴マミは捕縛を解いた。変身を解かないのはほむらを警戒しているのだろう。
QB「鹿目まどか。いきなり断るなんて、この子に何か言われたのかい?
断る前に、ボクの話も一度聞いてみて欲しいな。
考えるのはそれからでも遅くないと思わないかい?」
まどか。「無駄だよ。わたしは簡単には騙されないんだから!」
QB「やれやれ。ボクには『騙す』という概念が判らないんだけどね」
マミ「……ほむらさんだったかしら? 会うのは二度目よね?」
ほむら「暁美ほむらよ。あなたに下の名前で呼ばれたくないわ」
マミ「じゃあ暁美さん。名前を頂いたから一応名乗るわね。私は巴マミ」
前回は妙に馴れ馴れしい感じだった巴マミだが、今度は険悪なムードである。
マミ「あなた、この子の契約の邪魔をしてたってことだけど、
そんなに新たな魔法少女が誕生するのが嫌なのかしら?」
ほむら「……」
マミ「守りたいものがあるって嘘だったの?
鹿目さんに直接取り入って魔法少女になりたくなくなるように、
いったい何って言い聞かせたの?」
根本的なところを誤解しているようだ。
いずれにしてもこのまま話を続ければややこしいことになることは目に見えていた。
ほむらは、まどかの手を握り、
ほむら「行くわよ。まどか」
まどか。「う、うん」
マミ「待ちなさ……」
巴マミの言葉が終わる前に時を止めた。
時を静止させた世界でほむらは、マミの傍にいるQBに銃を向けたが、
まどかが繋いだ手を強く握り締めてきた。
まどか。「だめだよ。かわいそう」
ほむら「こいつが死なないことも、これから何をするかも判って言ってるの?」
まどか。「うん。判ってる。でもだめ」
まどかは迷い無くそう断言した。悲しい顔をして。
ここでQBを死体にして巴マミにこいつの異常性を教える伏線にしたかったのだが、
ここはまどかに従ったほうがいいような気がした。
ほむら「わかったわ。じゃあ行くわよ」
まどか。「うん……」
前回、別の時間軸では、ここでQBのテレパシーによって鹿目まどかが呼び寄せられ、
美樹さやかと二人で魔女の結界に巻き込まれ巴マミと遭遇、
ということになったのだが、今回はそのイベント自体が回避されたようだった。
この後は、まどかの家に行って、QBが来ないか監視する。
今夜はここまで。
まどまどが喋るなっていっても喋ってる件
契約するなって言ってもしちゃうより良いか
何故こんなにうざくなるんだろう
この立ち位置だとほむほむの仕事を奪うことしか出来ないからか?
今、書き溜めてあった次のシーンの前に書き足し中
今日は投下出来ないと思う
さて。
翌日の放課後。
今日も二人でQBを追っていた。
基本的に捕獲の方針は変えず、
QBが二人を引き離した上でまどかだけと話をしようとするのでそれを利用した。
まどか。「わたしはまどかじゃなくてまどまどだよ!」
QB「きみが何を言っているのか判らないよ」
まどか。「おとなしくお縄を頂戴するんだよっ!」
QB「参ったな。キミとは暁美ほむら抜きに一度話をしたいんだが……」
基本、まどかがQBを追い回し、ほむらは先回りしたり横から現れたりと、
変なところに逃げ込まないようにコントロールしていた。
一方QBの方も、ほむらの位置を気にしながら、まどかと話が出来る距離を保とうとしている。
狭い路地裏を右へ左へと、一見、遊んでいるようでもあるが、
QBがこのまどかを“この時間軸のまどか”だと思っているうちは有効な作戦だった。
要はこの時間軸のまどかに近づけなければ良いのだから。
ほむらが一人でQBを妨害していた時は、
何匹再生しようが『まどかに近づけば殺す』しか選択肢がなかった。
特にこの時期になるとQBも対策してるらしく“次の”が現れるのが異様に早くなる為、
殺してしまうと“次の”への切り替わりで接触を許してしまうリスクがあった。
だから、今回は“追いかけっこ”で時間稼ぎをすることを選択したのだ。
もちろん、そんなまどろっこしいことをせずとも、
ほむらが時間停止を使えば、簡単に捕獲でも束縛でも出来てしまうのだが、
QBの前で魔法を多用してスキルを悟られたくなかったし、
生きたまま近くに留めてQBにほむら自身や別の時間軸のまどかをじっくり観察されるのも避けたかった。
もし時間を遡行してきたことまで悟られてQBに対策されたら、
手詰まりになる可能性だってある。
結局、追いかけっこの状態が一番良いのだ。
だが、こんな状態も長くは続かなかった。
QB「……」
QB「そうか。きみは……」
ある程度の時間追いかけていたら、QBが急に逃げる方向を変え、
このまどかを無視して走りだした。
ねたばれありやなしや?
ほむら「まずいわ、追うわよ!」
まどか。「どうしうたの!?」
ほむら「まどかよ」
まどか。「え? わたし?」
ほむら「じゃなくて、この時間軸の!」
おそらく、まどかがすぐ近くにいる。
昨日はやり過ごせたから、QBは近くに居る方のまどかしか認識できないのかと思っていたが、
そうではないらしい。
となると、今日の作戦はもう使えないってことだ。
しかし一度は騙し通せたのだ。
今後、このまどかにどう役に立ってもらうかは、
QBが“このまどか”と“あのまどか”をどの程度区別出来るのかによってくるだろう。
>>290
11・12話のってことなら見る前に書いてる分だから当面はない
あるとしても伏線レベルで判るような取り込み方はしないと思う
というか今夜投下分にはない
追いかけっこ作戦は終了だ。
まどか。「ほむらちゃんっ、駄目っ!」
ほむらはQBに向かって弾丸を放った。
が、掠っただけで動きを止められなかった。
まどかが遅れているが、ほむらは急いで追いかけた。
そして『そこ』に至った時、
まどか「え? ほむらちゃん……?」
ちょうど(この時間軸の)まどかがQBを抱き上げたところだった。
ゆっくりと歩み寄りながら、不安そうに見つめる“まどか”に暫しほむらの思考が停止する――。
が、すぐに彼女が『それ』をQBとは知らないことを思い出した。
ほむら「まどか、そいつがky……」
“キュウべぇ”、と全部言えなかった。
横から現れた美樹さやかが消火器をぶっ放したからだ。
まどか。「うわわ!?」
消火剤の煙を、ほむらは咄嗟に魔法で防御したが、
“ちょうど後ろから追いついたまどか”はもろに被ってしまった。
さやか「まどか! 逃げるよ!」
まどか「え? でもっ……」
さやか「早く!」
ほむらは咄嗟に魔法で風を起こし消火剤を払った。
まどか。「うぇ、げほっ、ごほっ……」
ほむら「大丈夫?」
まどか。「あんまし大丈夫じゃない……」
×ほむらは咄嗟に魔法で風を起こし消火剤を払った。
〇ほむらは魔法で風を起こし消火剤を払った。
咄嗟にしすぎorz
ほむら「追うわよ」
まどか。「うん!」
その直後、周りの景色が歪んだ。
ほむら「!?、こんな時に……」
魔女の結界である。
ほむら達二人は結界に取り込まれてしまった。
まどか。「どうしよう?」
ほむら「下手に動かない方が良いわ」
まどか。「さやかちゃんとまどかちゃん、助けないと!」
ほむら「……まどか、離れないで」
使い魔が沸いた。
周りを取り囲まれたが、なにやら騒いでいるだけでまだ襲ってこない。
だが、ほむらは魔女や使い魔に襲われるよりも厄介なことを恐れていた。
そして、それはすぐに来た。
ほむら「……巴マミ、出しすぎでしょ」
上空を覆う、大量かつ高密度のマスケット銃。
ほむら「伏せて!」
まどか。「え?」
明らかにオーバーキルな範囲攻撃である。しかも巴マミの攻撃は無駄に貫通力がある。
狭い迷路の中で何処へ逃げればいいのだ。
咄嗟に時を止めたが、逃げ込める死角など無かった。
さすが巴マミ。良い仕事をする。
こういう時くらい出し惜しみをしろというものだ。
ほむらは、まどかを盾の中に格納した。
そして、それを守るため、攻撃が来る方向を背にして盾を胸に抱くようにして蹲った。
普段なら盾を中心に発生するバリアで身を守るのだが、
逆に身体を張ってまどかを格納した盾を守る形になる。
魔法の銃弾の雨が止んで。
まどか。「どうしてそんな無茶するの?」
ほむら「あなたは普通の人間なのよ。私は魔法少女だから大丈夫よ」
ほむらは着弾の余波を受けて煤けてはいるが、結局、直撃は一発も無かった。
着弾の様子からして巴マミが意図的に外したようだ。
まどか。「そういう問題じゃなくって」
自力で格納空間から這い出したまどかが、
ほむらが何をしたかを理解して泣きながら怒っていた。
結界内でしかも魔法少女の攻撃を受けたのでは、
普通の人間のまどかにはなす術も無いことは十分理解しているだろう。
だが納得いかない、
いや、まどかが結局ほむらの負担になってしまったことが悔しいのかもしれない。
もっとも、ほむらは『負担』だなんて思っていない。
むしろ、傍に居てくれるだけで良かったのに、“この時間のまどか”に対する説明など、
彼女のおかげで、ほむら一人では出来なかったことを成し遂げることができて、
感謝している位なのだ。
マミ「あら? 内輪揉め?」
巴マミは有無を言わさず二人を拘束した。
先日と似たような場所でQBを追いかけている時点で、
同じような結果になることは予想できたはずだ。
マミ「……さて、弁解を聞こうかしら?」
ほむらと変装したまどかは、
また同じように巴マミの魔法でぐるぐる巻きにされていた。
ほむら「弁解? 何を弁解したらいいのかしら?」
マミ「性懲りも無く、またQBをいじめてたでしょう?」
ほむら「いじめてた? 私はそこの子たちに会う前にそいつを撃ち殺そうとしてたのだけど?」
まどか。「ほむらちゃん、そんな言い方しちゃだめだよ……」
巴マミは厳しい表情になって言った。
マミ「あなたたちを逃がすわけには行かなくなったわね。少しここで反省してなさい」
休憩
一時間ほど
再開
さやか「えっと、ちょっと展開についていけないんですけど……」
まどか「……」
巴マミのそばには、
美樹さやかと鹿目まどか――この時間軸のまどかだ――がいた。
さらに傍にはQBも。
先日回避した分のイベントが一気に訪れたような状況だ。
ほむら(さてと……)
まどか。(どうして変身を解いちゃうの?)
ほむら(まどか。あなたは話がめんどくさくなるから、余計なことは喋らないで)
まどか。(う、うん)
巴マミとQBが、さやかとこの時間軸のまどかに自己紹介をしていたが、
そのまどかはQBの名を聞いて「えっ?」と甲高い声をあげて驚いていた。
そのあと彼女は拘束されているほむらの方へしきりに目配せをしていたが、
以前ほむらが話したことを口にすることは無く、黙ってマミやQBの話を聞いていた。
そして一通り話が終った後、
彼女らの関心はほむら達に向いた。
QB「暁美ほむら。これはキミの魔法かい?
それがどういうものか判らないけど流石のボクも騙されたよ」
確かに『ほむらの魔法』で間違いない。だがその内容までは判らないようだ。
つまり、QBには『別の時間軸』とか『未来の』とかを直接検出する術はないということになる。
ほむら「……鹿目まどかを魔法少女にしない為だったら私はなんだってするわ」
マミ「困ったわね。そこまで開き直られると私もどうしたら良いものか」
威嚇のつもりか、マミはマスケット銃を一つ出して担いでいた。
まどか「あ、あの、ちゃんと話し合って仲良く出来ないのかな……って……」
さやか「まどか、聞いたよね、こいつらQBを殺そうとしてたんだよ?」
まどか「でも……」
マミ「変身を解いたってことは負けを認めたと取っていいのかしら?」
ほむら「好きに解釈すればいいわ」
巴マミは弱者に甘い。これは前回の時間軸で学んだことだ。
マミ「でも、このあいだのあなたの魔女狩りは凄かったわよ?」
ほむら「……あなたの魔法とは相性が悪いのよ」
ここで『巴マミには適わない』宣言。
実際、巴マミ得意のバインドはもとより、
さっきのように結界に捕まった状態であのヤケクソのような範囲攻撃をされたらひとたまりも無い。
マミ「あら、そうなの?」
微妙に嬉しそうな巴マミ。
マミ「いつまでもあなた達の相手はしてられないわね。
この子たちに魔法少女について教えてあげなければいけないし」
そういいつつ、マミはようやくほむら達の束縛を解いた。
マミ「行っていいわ。でも次は無いと思いなさい」
ほむら「いきましょ」
まどか。「う、うん……」
まどかとQBの接触を許してしまうと、QBはまどかに付きまとうようになる。
なので以降のほむらの行動は追撃・排除から監視に移行するのだが……。
ほむら「一つ幸いなことに、この時間軸のまどかには予備知識を与えることが出来ているわ」
まどか。「うん。でもQBの話聞いちゃったら判らなくなるかも」
ほむら「QBは重要なことを話さないでミスリードを誘うようなことはあっても、
どういうわけか明確に事実に反することを言ったことはないのよ」
まどか。「そうなの?」
ほむら「ええ。『魔女にならない』とは言わないの。多分、真実かどうか聞いたら、
それには直接答えずに情報元の信憑性を疑わせるように仕向けると思うわ」
まどか。「それって心配だよ。わたし馬鹿だから騙されちゃうかも」
ほむら「そうね。あの子がQBに余計なこと話さないでいてくれれば良いのだけど。
半信半疑のまま話してしまうと逆にそこにつけこまれてしまうわ」
だが、その心配は杞憂に終わった。
先ほど拘束から開放された後、
ほむら達は巴マミの部屋から百数十メートル離れたビルの屋上に来ていた。
さやか『めっちゃうまっすよ!』
マミ『ありがとう』
さやか『まどかも遠慮してないで食べなよ。あたしだけがっついてるみたいじゃない』
まどか『う、うん……』
小型のラジオのような受信機に繋がったイヤホンから巴マミ達の会話が聞こえている。
まどか。「ほむらちゃん、それ、止めようよ」
ほむら「運命を変えるためなら手段は選ばないのよ」
まどか。「でも、お友達にそんなの向けちゃだめだよ」
スナイパーライフル
狙撃銃 が巴マミの部屋に向けられて、まどかが不安がるのは、
前回のことを思い出すからであろう。
魔女退治の時は流石に言わないが、まどかはほむらに銃器を使って欲しくないようだった。
Q B
ほむら「狙ってるのはあいつだから」
ほむらは狙撃銃のスコープを通して中を伺っていた。
ただし、これは『最悪』に対する備えであって、実際に使う確率は低かった。
マミ『QBに選ばれた以上、あなた達にとっても他人事じゃないものね。
ある程度の説明は必要かと思って――』
今、巴マミの部屋では、美樹さやかとこの時間軸のまどかに対して、
魔法少女のなんたるかの説明がなされているところだ。
さやか『うん、うん。何でも聞いてくれたまへ?』
まどか『さやかちゃん……』
スコープ越しに、まどかがテーブルの上に座るQBにびくびくしているのが見える。
さやか『どうしたの? まどか。さっきからおかしいよ』
まどか『う、ううん。なんでもな……いっ!』
QBが尻尾を振った瞬間まどかが震え上がった。
マミ『QBは怖くないわよ? もしかして動物、苦手だった?』
まどか『い、いえその……ひっ!』
QBか首をかしげたのを見てまどかはとうとう美樹さやかにしがみ付いてしまった。
さやか『まどか、この手の可愛いもの好きじゃなかったっけか?』
マミ『QB、こちらに来て。なんか鹿目さん苦手みたいだから』
まどか『ご、ごめんなさい……』
ほむらが与えた“知識”の為であろう、この時間軸のまどかはQBを怖がっていた。
マミ『これがソウルジェム。QBに選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ』
そう言って巴マミは自分のソウルジェムを手のひらに乗せて見せていた。
まどかの目が見開かれる。
美樹さやかも目を見開いたがそれが純粋に感動の目であるのに対して、
まどかそれは不安の色を帯びていた。
マミ『……魔力の源であり、魔法少女である証でもあるの』
さやか『契約って?』
QB『ボクは、キミ達の願いを何でも一つ叶えてあげる』
さやか『ええ? 本当?』
まどか『ね、願い事って……』
QB『なんだって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ』
さやか『おぉ、金銀財宝とか、不老不死とか、万漢全席とか?』
さやかのボケには反応せず、まどかの視線は巴マミの方を向いていた。
QB『でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。
“この石”を手にしたものは、“魔女”と戦う使命を課されるんだ』
まどか『魔女……』
不安そうなまどかの目に僅かに真剣さが宿る。
さやか『魔女って? 魔法少女と違うの?』
QB『“願い”から生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は“呪い”から生まれた存在なんだ。
魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を撒き散らす。
しかもその姿は普通の人間には見えないからたちが悪い。
不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ』
マミ『理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ
“形の無い悪意”となって人間を内側から蝕んでいくの』
さやか『そんなヤバイやつらがいるのに、どうして誰も気付かないの?』
QB『魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さないからね。
さっきキミ達が迷い込んだ迷路のような場所がそうだよ』
マミ『結構、危ないところだったのよ。あれに飲み込まれた人間は普通は生きて帰れないから』
まどか『あの、魔女ってそんな……怖いものなんですか?』
マミ『そう。命がけよ。だからあなた達は慎重に選んだ方が良い。
QBに選ばれたあなた達にはどんな願いでも叶えられるチャンスがある。
でもそれは、“死”と隣りあわせなの』
まどかの視線は始終、巴マミの手元、ソウルジェムに向けられていたが、
その目からやがて涙が溢れ出した。
まどか『……っ、……ひっく……ぐすっ』
さやか『え、ちょっとまどか?』
まどか『……っ、ごめん……』
マミ『怖い話だった? ごめんなさいね。
でもこれは本当のこと。魔法少女になるっていうのは、そういうことなのよ』
さやか『まどか、悩むなら判るけど、泣くような要素あった?』
まどか『……うっ、……ぐすっ』
マミ『ええと、二人に提案があったんだけど、ちょっと難しいかしら?』
さやか『提案?』
マミ『そう。私の魔女退治にしばらく付き合ってみたらどうかなって。
魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてほしいの。
その上で危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、
じっくり考えてみるべきだと思うわ』
どうやらこの巴マミの話は、
まどかが事前に聞いていた知識を裏付けさせる結果になったようだった。
さやか『あの、転校生も、その、魔法少女なの? マミさんと同じ』
マミ『そうよ。前にも一度、いいえ彼女と会ったのは今日で三回目ね。
かなり強い力を持った子よ』
さやか『でも、それなら、魔女をやっつける正義の味方なんだよね?
同じ敵と戦ってるはずだよね?
それが何で、QBを襲ったり、「まどかを魔法少女にしない」とか言っちゃったりするわけ?
仲間は多いほうが良いんじゃないの?』
マミ『それが、そうでもないのよ、むしろ競争になることの方が多いのよね』
さやか『え? どうして?』
マミ『魔女を倒せばそれなりの見返りがあるの。
だから時と場合によっては手柄の取り合いになってぶつかる事もあるの』
さやか『つまりあいつは、ライバルを増やしたくなくて、ああいうことをしてるって訳?』
マミ『そうかもしれない。でもあの子のことは良く判らないのよ。
一緒に居る鹿目さんによく似た子のことも』
その日の夜中のこと。
ほむら「断わればいいわ」
まどか「でもさやかちゃんは行くから、わたし心配で」
ここはまどかの家である。
ほむら達はまどか(この時間軸)の帰宅を待って、また彼女の部屋に上がりこんでいた。
巴マミの魔女狩りに付いて行くかどうかの話をしているのだ。
ほむら「魔女の結界の中なんて普通の人が行くところじゃないのよ」
まどか「うん。怖いけど、マミさんは守ってくれるって言ってるし」
まどか。「行くんだ?」
まどか「うん」
結局のところまどかは魔女狩り体験コースに参加するつもりらしい。
ほむらは当然反対なのだが、もう行く決心をしているまどかと、
ダブル
行って魔女や魔法少女についてよく理解すべきだと言うまどかの“ W まどか”に、
ほむらは強く言うことが出来なかった。
まどか。「わたしとほむらちゃんも近くで見てるから安心してね」
ほむら「わざわざ言わなくてもいいわよ」
まどか。「マミさんたちには内緒だよ?」
まどか「……」
ちなみに、まどかが怖がったためQBは今まどかに付きまとっていない。
巴マミのところに居るそうだ。
今夜はここまでです
トリップがおかしい。
今夜は投下できるのが少ないです
翌日、学校で美樹さやかが突っかかってきた。
さやか「転校生。話があるから。ちょっと付き合って」
ほむら「なにかしら?」
休み時間に屋上に呼び出されたのだ。
屋上には美樹さやかとほむらの二人だけだった。
さやか「あんた、まどかに何言ったの?」
ほむら「なんのことかしら?」
さやか「しらばっくれないでよね!
昨日まどかQBのこと凄く怖がったり、
マミさんの話聞いて泣き出しちゃったりして大変だったんだから!」
ほむら「それがなに?」
さやか「まどかに聞いたわ。あんたに話を聞いたって。
どういう話かまでは聞けなかったけどさ、あんたどういうつもりなの?」
ほむら「鹿目まどかは魔法少女にさせない。それだけよ。あなたも聞いてたわよね」
まどかが美樹さやかに話をしていないのは正解である。
まだ信じてもらえるタイミングではない。
かとって、美樹さやかが契約してしまってからでは遅い。
なるべく早く何らかのアプローチを仕掛ける必要はあるだろう。
さやか「ふうん、やっぱりあんたはこの街の魔女独り占めしたいんだ?
報酬のためならどんな汚い手でも使うようなやつなんだ?」
ほむら「魔法少女でないあなたにそれを口にする資格は無いわ」
さやか「まどかに近づかないで!
これ以上まどかに変なことするようならあたしが絶対許さないんだから!」
魔法少女を相手に威勢のいいこと夥しい。
ほむら「どう許さないのかしら?」
さやか「あたしが魔法少女になったら真っ先にあんたを潰す!」
ほむら「あなたにも言っておくわ。あなたがどんな願い事を考えたとしても、
魔法少女になることはその代償として釣り合うものではないわ」
さやか「なんのことよ?」
ほむら「そのうち……」
さやか「?」
ほむら「あなたにも判る時が来ることを祈ってるわ」
そう言い捨てて、ほむらは屋上を後にした。
さやか「訳わかんないわ……」
――――――
――――
あれから、巴マミたちの魔女狩り体験コースは何回か行われた。
ほむら達は、先日まどかに言ったように、基本干渉はせず、それを監視していて、
数日は何事も無かったのだが、
まどか。「大丈夫だよ」
まどか「本当にいいの?」
まどか。「だって怖いんでしょ?」
まどか「うん……」
まどか。「わたしたちの責任もあるからね」
怖いQB。
結界という異空間。
巴マミでさえ知らない真実を内に秘めているという重圧。
ついでに、微妙に敵視されてるほむら達と密かに通じていることの後ろめたさ。
これらの四重苦にまどか――当然この時間軸のまどかであるが――は、とうとう音を上げた。
まどか「逃げちゃうのってずるいって判ってるの。でも怖くてどうしたらいいか判らなくなっちゃて……」
ほむら「ずるくないわよ。あなたが泣く必要はないわ。私の責任よ」
早く巴マミや美樹さやかにも真実を伝えてしまえば問題の半分は解決するのだが、タイミングが難しかった。
信じて貰えなければ、ほむらだけでなくこの時間軸のまどかにも被害が及んでしまう可能性がある。
まどか。「だから、明日の魔女狩りはわたしに任せて」
まどか「ごめんね」
普通にまどかは欠席してもよかった。
だが、明日は別のいくつもの時間軸で巴マミを葬ってきたあの魔女が出現する日だった。
だから前の時間軸で一回経験しているまどかが入れ替わることには意義があった。
計画は単純である。
グリフシードに気がつかなければ良いのだ。
『元々』の流れでは、病院の帰りに、まどかが壁のグリフシードを発見して、
そこから美樹さやかがそこで待ち、まどかが巴マミを呼びに行くことになる。
であるならば、
入れ替わったまどかは壁にあるグリフシードを見てみぬ振りして通り過ぎ、
美樹さやかと一緒に巴マミとの待ち合わせ場所に行けば良い。
そうすれば三人はそのまま他の魔女を探しに行くだろう。
後はほむらが病院で魔女の孵化を待ち、倒してしまえばよい。
これが理想的なパターンだ。
だが、もし美樹さやかが気付いてしまったら?
それならば、ほむらが出て行って危険を理由にして二人を帰らせてしまえばいい。
例え巴マミを伴って戻ってきたとしても、
彼女はほむらが先に手をつけた魔女狩りの機会を横から奪うような真似はしないであろう。
また、最悪のケースで、美樹さやかがグリフシードの前に強引に居座って、
一つ前の時間軸の時のようになったとしても、
ほむらが魔女の居る場所に最初から居合わせることが出来るので対応は可能であろう。
少なくとも『前回』のようにはしない。
今夜はここまでです
本編完結を受けてこの先どう動かすか見直してます
投下開始
このシーン終わったらしばらく少し間開きます。
当日の学校の帰り。
美樹さやかが病院に幼馴染のお見舞いに行き、
それに付き合ったまどかが待合所で待っている時間に、まどかは入れ替わった。
そして、ほむらはまどか――この時間軸のまどかである――を伴って、
病院の壁に刺さっている孵化直前のグリフシードを監視できる場所まで移動した。
ほむら「あなたは家に帰って」
まどか「でも、あれって……」
ほむら「私はここから見張っているから。あなたは早く行って」
まどか「う、うん」
まどかを帰した後、しばらくして二人が病院から出てきた。
そしてその二人、まどか――今度は別の時間軸のまどか――と美樹さやかが一緒に、
件のグリフシードの前を通りかかった。
その時、
QB「あそこを見て! グリフシードだよ! しかも孵化しかかってる!」
さやか「え!? QB、あんたマミさんの所じゃなかったの?」
ほむら(!?)
いきなりのQBの登場に、ほむらも吃驚した。
QBはさやかの肩に駆け上り言った。
QB「それより、不味いよ、早く逃げないと結界が出来上がる!」
さやか「結界って、あの迷路がこんな所に……」
いきなりここに現れるとはどういうことだろう?
まさか、QBがこのグリフシードを植えたとか?
さやか「ねえまどか、マミさんの携帯聞いてる?」
まどか。「え? きいてないよ」
さやか「まどか、まどかが先行ってマミさん呼んできて。あたしはこいつを見張ってる」
QB「無茶だよ。中の魔女が出てくるにはまだ時間があるけど、結界が閉じたら
キミは外に出られなくなる。マミの助けが間に合うがどうか」
さやか「あの迷路ができたらこいつの居場所も判らなくなっちゃうんでしょ?
そんなの放っておけないよ」
そして、別の時間軸でもそうだったように、QBとさやかがそこに残り、
まどかが巴マミを呼びに行ってしまった。
ほむら「あの子、機転を利かせたりなんて出来ないわよね……」
想定外とはいえまだ計画は生きている。
巴マミを呼びに行ったまどかが、巴マミを足止めしてくれればいいのだ。
だが、計画にはそういう話は含まれていない。
多分あの子は素直に巴マミを呼んできてしまうだろう。
だから、ほむらは急いで彼女を追って、計画の変更を伝えなければならなかった。
ところが。
まどか。「こっちです。早く!」
巴マミ「本当なの? 孵化前のグリフシードなんて」
まどか「本当なんです。今、ほむらちゃんが外から見張ってて」
ほむら(なんであの子まで、戻ってきてるのよ?)
あっという間に戻ってきたまどかは、どういう訳か巴マミともう一人のまどかを伴っていた。
計画は破綻した。
>>視点、“この時間軸のまどか”寄りに
ほむらに『帰れ』と言われて病院の敷地を出てすぐのこと。
まどか「あれ?」
マミ「あら、鹿目さん。美樹さんは?」
まどか「い、いえ。待ち合わせ場所はここじゃないですよね?」
マミ「今日は早く終わったから。病院に寄るって聞いてたから魔女探しがてら来てみたのだけど、
QBがそっちに行かなかったかしら?」
まどか「え、えっと……」
まどか。「マミさん!」
マミ「あら?」
まどか。「さやかちゃんとQBがグリフシード見張ってて、急がないと魔女が出てきちゃうんです!」
マミ「ちょっと、ちょっと?」
まどか。「急いで来てください!」
マミ「待ちなさい! その前に、あなたたち、どっちが偽者さんなの?」
まどか「あ」
まどか。「あ」
>>視点、もどす
マミ「……ここね。暁美さんは何処にいるのかしら?」
まどか「え? えっと」
まどかが、ほむらが隠れている方へ目配せする。
マミ「そう。暁美さん?」
巴マミはまどかが目配せした方向を向いて言った。
マミ「聞こえていると思うけれど、余計な手出しをするようなら容赦しないから!」
ほむらは気配を殺して様子をうかがっていた。
今、出るわけにはいかない。
マミ「……いくわよ」
まどか。「はい」
まどか「……」
まどか(この時間軸)は不安げにもう一人のまどかにしがみ付くようにしていた。
巴マミはその様子に何を思ったのか、
マミ「……」
まどか「?」
まどか。「?」
マミ「もういいわ。二人で来なさい」
そう言って、結局三人そろって結界の中へと入ってしまった。
こうなってしまったら、巴マミに捕まらないように注意深く後を追うしか無いだろう。
ほむらは注意深く結界に侵入した。
だが、巴マミに気付かれて即、声を上げる間もなくマミの魔法で拘束されてしまった。
ほむら「こんなことしている場合じゃないでしょ!」
マミ「警告はしておいたわよね? あなた、この子を使って何を企んでるの?」
ほむら「この魔女は今までやつらと違うのよ! 死にたくなかったら……」
マミ「あなたは自分の命の心配をするべきだわ」
まどか「……」
まどか。「ほむらちゃん……」
マミ「ここで大人しくしてれば、帰りに解いてあげるから」
ほむら「待って!」
まどか。「マミさん!」
マミ「なあに?」
まどか。「ほむらちゃんと一緒に戦ってください!」
マミ「あなたも私が魔女に負けると思っているの?」
まどか。「そうです!」
まどか「まどかさん」
マミ「残念だけどあなたは信用できないわ」
まどか。「そんな……」
マミ「でも偽者さんは普通の人みたいだから、結界内での安全は保証してあげる。
これが最大限の譲歩よ」
ほむら「そういう問題じゃないのよ!」
マミ「二人とも付いて来なさい」
偽者と判ってて連れて行ったのは人質でも取ったつもりなのだろうか。
巴マミは二人のまどを連れて行ってしまった。
>>視点、まどか。寄りに
マミ「あなたたち、仲がよかったのね?」
まどか。「え?」
マミ「そっちが偽者さん?」
まどか。「は、はい」
マミ「どういう魔法なのかしら? 普通にしてると区別がつかないのよ。反応が違うからかろうじて判るのだけど」
マミは『一般人の協力者を何らかの魔法でまどかのように偽装してる』という風に思っているようだった。
マミ「あなたはどうしてあの子に協力しているの?」
まどか。「えっと、ほむらちゃんは、わたしを助けてくれたんです」
マミ「あなたは悪い子に見えないのに……」
まどか。「ほむらちゃんも悪い子じゃないですよ?」
マミ「そうね。あなたにとってはそうかもしれない。
でも利害が一致しなければ魔法少女同士でも争いは避けられないものなのよ。
何か信念があって行動しているのならなおさらのこと。
残念だけど今あの子を信用するわけにはいかないわ」
まどか。「話し合うとか出来ないんですか?」
マミ「あの子にその姿勢があるならね。これが終わってからそうしてみるわ」
まどか。(どうしよう。このままじゃマミさんが……)
>>視点、まどか。寄りここまで
すみません、今夜はここまでです。
間あくのは今日以降です
もう少しあります
てかネタだけでなく投下時期まで被るってどうなってるの?
――――――
――――
どれくらい待っただろう。
ほむらは、巴マミがまどかを二人とも結界の深部へと連れていってしまったことに憤りを覚えていた。
いや巴マミにではなく、同じようなシチュエーションを何回も経験してるというのに、
上手く立ち回れなかった自分に対してだ。
やがて絶望の成就を告げるが如く、
ほむらを束縛していたリボンが朽ち果てるかのように消滅していった。
ほむら「巴マミ……」
巴マミの死を確信したほむらは、しかしこの瞬間にも、
QBがまどかと美樹さやかに契約を迫っているだろうことを思い出し、
時を止めて、結界の奥、魔女の居場所へと急いだ。
ふわりと広がったひらひらのスカート。
淡い色のドレスをまとい、両側で二つに縛った髪には大きなリボン。
弓を引き、魔女に矢を放つ魔法少女。
それが、変身した鹿目まどかの姿だと気付くのにそう時間はかからなかった。
ほむら「な……なんで……」
まどか?「ほむらちゃん!」
手前で待機してるまどかは“一人”。
どちらが契約し、変身したのだろう?
さやか「転校生!? あんた何しに来たのよ!」
愕然と立ちすくんでいたほむらは美樹さやかの声で我に返った。
考えてるヒマはない。こいつを倒すのが先決である。
矢を放つ魔法少女は撃たれては再生を繰り返す魔女に対して
飛び回って逃げながら攻撃を繰り返しているが、倒しきれていない。
今ひとつ慣れない手つきで弓を引いている割に、彼女の攻撃は威力が高い。
一回だけ、危なかった時リボンのようなもので相手を拘束して、
巨大に開かれた口に噛み付かれるのを避けていたのが見えたが、
器用なのか不器用なのか判断に苦しむところだ。
まあ、戦闘手段が多いのは良いことだ。だが彼女は苦戦していた。
倒しても倒してもきりがないのだ。
ほむらは飛び出して魔女の『本体』を目指した。
途中で軌道が交叉する。
まどか?「ほむらちゃん!」
ほむら「そのまま攻撃を続けて! いま元を絶つから!」
まどか?「わ、わかった!」
彼女に攻撃の続行を指示しつつ、
ほむらは、その空間の中でもひときわ高い椅子に鎮座した一見地味なぬいぐるみを目指した。
実はこれが魔女の本体だ。
ほむらはそれを踏み潰した。
その後、最期に魔法の矢に貫かれた魔女はもはや再生せず、爆散して消滅した。
ほむら「巴マミ、あなた生きていたの?」
結界が解け、元の病院の裏の景色に戻った時、巴マミが転がっていた。
どうやら負傷しているようだが、命に別状はなかったようだ。
さやか「失礼な! マミさんは生きてるわよっ!」
マミ「……ええ、お陰さまでね」
早速駆け寄った美樹さやかに助け起こされていた。
結界の中で、ほむらを拘束した時の威勢はすっかり無くなっていたものの、
話す元気もあり、見た感じ『戦闘不能』ってことは無さそうだ。
つまり戦闘中に見たリボンの拘束は地上からの巴マミによる支援だったようだ。
やはり、まどかがそんなに器用なはずが無い。
そう。
それよりも問題は『まどか』だ。
ほむらは“淡い黄色”の魔法装束を身に纏ったまどかに向かって厳しい視線を向けた。
ほむら「まどか。魔法少女になることがどういうことか判ってた筈よね?」
それがどちらの『まどか』であろうとも言う事は同じだ。
まどか。「ほむらちゃん怖いよ」
聞いたような調子で、以前も聞いた台詞。
どうやら、ほむらが連れてきたまどかの方だったようだ。
ほむら「あなた、どうして契約なんか!」
まどか。「してないよ?」
ほむら「え?」
まどか。「契約、してないよ?」
ほむら「何を言ってるの?」
まどか。「だから、わたしQBと契約なんかしてないんだよ?」
ほむら「どういうことなの?」
QB「それはこっちが聞きたいくらいだ。こんなことは可能性すら考えたことが無かったよ。
暁美ほむら。キミはいったいどんな魔法を使ったんだい?」
QBかそう言うってことは、本当に契約していないのだろう。
何か異常な事態が起きていることだけは理解した。
ほむら「あなたに説明する義理はないわ」
ほむらにも判らない事態だが、QBの前で話を聞く必要もない。
ほむらは、まだ魔法装束のままのまどかの手を掴んだ。
ほむら「行くわよ」
まどか。「う、うん。じゃあ、まどかちゃん、またね? さやかちゃんとマミさんも」
まだ座り込んでいる巴マミに寄り添うようにしている、まどかと美樹さやか。
さやか「マミさん立てます?」
マミ「ええ大丈夫よ」
こんな会話を背中に聞きながら、ほむらはこっちのまどかとその場を後にした。
ほむら「いい加減に変身を解きなさい」
こんな格好で街を歩いていたら注目を浴びてしまう。
まどか。「あ、そうか。もういいよ」
ほむら「?」
誰に向かって言ったのか、まどかがそう口にすると、
白と黄色の魔法装束が光と消えて、もとの制服姿に戻った。
まどか。「ありがとう。助かったよ」
そのまどかの言葉が向けられたその手のひらで輝く物体を見て、ほむらは目を剥いた。
ほむら「まどか!? あなたそれ!!」
まどか。「うん。ソウルジェムだよ」
契約していないのにソウルジェム。しかもまどかは普通にその名前を口にした。
つまりこれは彼女にとってはイレギュラーでもなんでもなく、
“用意されていたカード”だったということだ。
まどか。「マミさんだよ。ここともわたしが居た時間とも違う世界のマミさん」
黄色く輝くソウルジェムはまさしく巴マミのそれだ。
まどか。「“わたし”のお墓作ったときに、取っておいたんだ」
ほむらが経験した二つ前の時間軸。
あのとき身体を失って、ほむらと一緒に時間を遡行し、
一つ前の時間軸をほむらと共に過ごしたマミの魂だ。
それは、この時間軸に遡行するまえに、
鹿目まどか――これはこの巴マミの魂と同じ時間軸に由来する――の遺体と共に、
荼毘に付した筈だった。
『生きてるのに残酷』などどいうなかれ。
ソウルジェム
それはもはや意識もなく、ただ魂の牢獄に捕らえられ、
ただ魔女になる日を待つだけの存在だったのだから。
ほむら「危険だって思わなかったの? 濁りきって魔女が生まれるかもしれないのに」
まどか。「でもマミさんなんだよ? 生きてるんだよ?」
その通りだった。
そもそも最初に無事なソウルジェムを発見して保護したのはほむら自身だった。
予想されてしまいマミた
だが、これは判るまい。
つまり、『まどか。』の『。』はソウルジェム。
>>387
何だってー
ほむら「変身できるって判ってたの?
というかどうして変身できたのかがそもそも疑問だわ」
まどか。「どうして、っていうのはわたしも判らないよ。
でもマミさんにお願いしたの。力を貸してって」
ほむら「そうしたら出来たの?」
まどか。「うん」
つまり、まどかが変身したというより、
彼女がまどかに力を貸し与えて変身させた、ということなのか?
魔法装束は、いつか見たまどかのとデザインは同じでも色違いだった。
武器もマスケット銃でなく弓矢。
形こそ違うが、攻撃の性質は貫通力が高く、巴マミにのそれに似ていたと思う。
基本的魔力は巴マミで、アレンジがまどかといったところか。
訂正
×攻撃の性質は貫通力が高く、巴マミにのそれに似ていたと思う。
〇攻撃の性質は貫通力が高く、巴マミのそれに似ていたと思う。
ミミ:::;,! u `゙"~´ ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ ゞヾ ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/  ゙̄`ー-.、 u ;,,; j ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\ ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/ J ゙`ー、 " ;, ;;; ,;; ゙ u ヾi ,,./ , ,、ヾヾ | '-- 、..,,ヽ j ! | Nヾ|
'" _,,.. -─ゝ.、 ;, " ;; _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ | 、 .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
j / ,.- 、 ヾヽ、 ;; ;; _,-< //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─-- エィ' (. 7 /
: ' ・丿  ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、 i u ヾ``ー' イ
\_ _,,......:: ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... ' u ゙l´.i・j.冫,イ゙l / ``-、..- ノ :u l
u  ̄ ̄ 彡" 、ヾ ̄``ミ::.l u j i、`ー' .i / /、._ `'y /
u `ヽ ゙:l ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_  ̄ ー/ u /
_,,..,,_ ,.ィ、 / | /__ ``- 、_ l l ``ーt、_ / /
゙ u ,./´ " ``- 、_J r'´ u 丿 .l,... `ー一''/ ノ ト 、,,_____ ゙/ /
./__ ー7 /、 l '゙ ヽ/ ,. '" \`ー--- ",.::く、
/;;;''"  ̄ ̄ ───/ ゙ ,::' \ヾニ==='"/ `- 、 ゙ー┬ '´ / \..,,__
、 .i:⌒`─-、_,.... l / `ー┬一' ヽ :l / , ' `ソヽ
ヾヽ l ` `ヽ、 l ./ ヽ l ) ,; / ,' '^i
>>391-392
おまいら驚き杉だwww
魔法少女の魂が、
他人のしかも『抜け殻』でなく『生きた人間』の身体を通して魔法が使えたという事実、
もしくは、生身の人間が魔法少女の魂が発する魔法の力を使えたという事実。
いずれにしてもこの事態は予想外だった。
もし、この目で見る前に『それが可能か』と聞かれたならば、
ほむらは『出来るわけない』と答えたであろう。
ほむら「あなたはその“巴マミ”と対話できるの?」
まどか。「ううん。でも心を感じるから」
大体判るんだそうだ。『心配してる』だとか、『力を貸したがってる』とか。
まどか。「ほむらちゃんのことも心配してたよ?」
心が壊れて巴マミのパーソナルは完全に失われていたと思っていたが、
まだ残っていたということなのか?
あるいは、前の時間軸では、ほむらが毎晩話しかけていたが、
その過程で再び形成されていたのかもしれない。
なんとも奇妙な形で魔法少女に変身してしまったまどかだが、
ほむら「変身するなとは言わないわ。でも身を守ることを最優先にして。
あなたの魂はちゃんとあなたの身体の中にあるのだから」
まどか。「わかったよ。それにマミさんが協力してくれないと魔法使えないし」
ほむら「ええ。あなたは戦力に数えていないわ」
まどか。「それはそれでなんか寂しいんだけど……」
他の魔法少女と違って肉体に致命傷を受ければ簡単に死んでしまうのだ。
そんな彼女を前線で戦わせるわけには行かない。
ようやく一段落~
予告通りしばらく開きます
ではまた
.,-'''''~~~ ̄ ̄~~''' - 、
\ ,へ.人ゝ __,,.--──--.、_/ _,,..-一" ̄
\ £. CO/ ̄ \ _,,..-" ̄ __,,,...--
∫ / ,、.,、 |,,-¬ ̄ _...-¬ ̄
乙 イ / / ._//ノ \丿 ..|__,,..-¬ ̄ __,.-一
.人 | / ../-" ̄ || | 丿 / ). _,,..-─" ̄ ._,,,
マ .ゝ∨ / || " 丿/ノ--冖 ̄ __,,,,....-─¬ ̄
( \∨| " t-¬,,...-一" ̄ __--¬ ̄
ミ ⊂-)\_)` -一二 ̄,,..=¬厂~~ (_,,/")
.⊂--一'''''""|=|( 干. |=| |_ (/
/ ( / ∪.冫 干∪ 人 ` 、 `
/ ) ノ '`--一`ヽ 冫
く.. /
. ト─-----イ |
∪ ∪
シャルロッテ戦マミサイド。なんで「転がって」いたのかの理由とか
マミ「ティロ・フィナーレ!」
巴マミは油断していた。
暁美ほむらがあんな警告をしてたので、気を引き締めてかかったのに、
結局手ごたえがなかったからだ。
そして、華麗にフィニッシュを決めたと自画自賛しつつ、
『彼女のいう事は当てにあらないわね』と、
暁美ほむらという人間の評価に付け加えた矢先のことだった。
まどか。「マミさん! 逃げて!!」
鹿目まどかの声が響いたが、マミはその時何が起こったのか理解していなかった。
ただ、視界を覆った牙のある巨大な口の中に深い闇を見ていた。
その漆黒がマミの全身を覆う程に広がり
彼女が『絶望』に飲み込まれること覚悟した瞬間、
まどか。「マミさん――!!」
その闇を切り裂く矢の閃光と共にマミはなにか柔らかいものに突き飛ばされた。
崩れ落ちるスポンジケーキの山と共にマミは転がり落ちていた。
そしてケーキの雪崩が収まった時、
マミ「鹿目……さん?」
視界には淡い黄色の魔法少女が先ほどマミに噛り付こうとしていた化け物と、
交戦しているのが見えていた。
彼女が矢で化け物の顔を射抜いた直後、その口から同じ形をした化け物が這い出して来て、
マミの時と同じように大口を開けて彼女を飲み込もうとした。
マミは咄嗟にリボンを放ち化け物の動きを封じたが、
直後、足場のスポンジが再び崩れ、
マミは大量の崩れたスポンジケーキに埋まってしまったのだ。
その気になれば、魔法でケーキを吹き飛ばすことも出来たはずだが、
プライド
一度崩された自信はすぐには回復しなかった。
彼女は身体を丸め、暗闇と死の恐怖に耐えていた。
そして周りの変化に気がついた時、
結界と共に彼女を埋めていたものは既に消滅していた。
スレ主逃亡を疑われる前に
三レス更新
ほむら(巴マミ、話があるわ)
ほむらは学校でテレパシーを使って巴マミを呼び出した。
マミ(あら、あなたから話しかけて来るなんて)
ほむら(昼休み、屋上で)
マミ(丁度よかったわ。あなたにも聞きたいことがあるし)
というわけで昼休み。
ほむら「早速だけど、話というのは……」
マミ「その前に、いくつか聞いていいかしら?」
ほむら「……ええ。でも言えないことは『言えない』って言うわ」
マミ「それでいいわよ」
巴マミを呼び出したのは対話のため。
今後に向けて関係を良好にしておきたかった。
今がその時期であろうという、ほむらの判断があったのだ。
だから、マミの話が先でも一向に構わなかった。
マミ「じゃあ。まず一つ。あなたどうしてあの魔女が強いって知っていたの?」
ほむら「それは言えない」
マミ「そう。それじゃ、あの子のことは?
QBが言ってたわ。確かに契約してない普通の女の子だったって。
なのに魔法少女に変身した。何故?」
ほむら「どうして変身できたのかは私にも判らない。私も驚いたのよ。
ただ、特殊な状況だったことは確かよ」
マミ「特殊な状況? どういうこと?」
ほむら「今はあなたに話せないわ」
マミ「言えないことばかりなのね?」
ほむら「……」
小出しで申し訳ない
別の終わりが決まってるのを先に終わらせるから
こっちは先が長いんだ
ヒント:ID
マミ「助けてくれたことは感謝してるのよ。悔しいけどあなた達の実力も認めるわ。
でも、あなたは達は何者なの? どうして私を助けてくれたの?
グリフシードが目的ならわざわざ助けないで見殺しにしても良かったはずよね?」
巴マミの方からこう聞いてきたのは、ある意味幸いである。
ほむら「“なぜ助けたか”には答えられるわ。戦力を確保しておきたかったのよ」
マミ「戦力? どういうこと?」
ほむら「……この街にワルプルギスの夜がやってくる」
マミ「ワルプルギスの……どうして判るの?」
ほむら「それは言えない。でも確実よ」
マミ「そうね、そんな嘘ついてもあなたにメリットはなさそう」
ほむら「一人では勝てないの。協力して」
マミ「他人のテリトリーに来てまであなたが戦う理由は?」
ほむら「言ったはずよ。守りたいものがあるの」
ほむらの真意を計るかのように、巴マミはほむらの目をしばし見つめた。
マミ「……判ったわ。この街に来るってことなら、むしろ私からお願いしたい位だから。
協力の件は了解よ」
ほむら「感謝するわ」
マミ「でも、だとするとあの子たちを魔法少女にしたくないのは何故なの?
あなたの話からすると、魔法少女が増えれば戦力になるのだから、
あなたにとって好ましいことの筈よ?」
ほむら「これ以上、魔法少女の運命に縛られた人間を増やしたくないの」
まどかの周りに、である。
マミ「それもあなたが守りたいものを守ることになるってわけ?」
ほむら「そうね。そう思ってくれて良いわ」
マミ「そう……。話というのはそれだけかしら?」
ほむら「いいえ。もう一つ。まだ魔女狩りにあの二人を連れて行くつもり?」
マミ「あなたがあの子たちを魔法少女にしたくないのは判ったわ。
でも魔法少女なるかどうか決めるのは本人の意思でしょう?
私はその手助けをしているだけ。
魔法少女になるということがどういう事なのか知らないまま契約なんてして欲しくないのよ」
ほむら「あなたのせいで美樹さやかが魔法少女に憧れを持ってしまった。
それなのに、あなたはそれを正そうとしていない」
マミ「そ、それは……」
ほむら「憧れるようなものじゃないこと位、あなたは判ってるのでしょう?
それはあの子たちの意思を尊重していることになるのかしら?」
マミ「……そこの認識の間違いは確かに私の責任だわ。
どういうものか見てもらう筈だったのに、いつの間にか見世物的に見られてしまっていた。
私も判ってて容認しているところがあった。それは認めるわ」
ほむら「そう。それは良かったわ。
昨日のことでまだ思い知ってないなら、
救いようの無い愚者だと思っていたけれど、そこまでじゃ無かったようね」
マミ「あ、暁美さん?
私も一応、あなたから話があるって聞いて、
あなたとは歩み寄れるかもって期待して来たのだけど」
ほむら「それは奇遇ね。私もそう思っていたのだけれど」
マミ「なら、あえて言わせてもらうと、その憎まれ口のような言い方は何とかなら無いの?」
ほむら「気に障ったのならごめんなさい。
どうしてもあなたにはこういう言い方になってしまうのよ」
マミ「私、あなたにそこまで恨まれるようなことしたのかしら?」
ほむら「別にあなたを恨んだりはしてないわ」
マミ「はぁ……。
あなたの話はわかったわ。
あの子たちの魔女狩り体験コースはもうやらない。それでいいかしら?」
ほむら「ええ。聞き入れてもらえて良かったわ」
マミ「じゃあ、その代わりといっては何だけど、
今日から一緒に魔女狩りしてくれないかしら?」
ほむら「今から共闘する理由がないわ」
マミ「あるわよ。ワルプルギスの夜に一緒に戦うのに連携が取れてた方が良いでしょ?」
ほむら「……判ったわ」
思わず恨み言が漏れてしまうのは、一つ前に経験した時間軸のことも大きい。
正直巴マミには近づきたくないのがほむらの本音だった。
だかそうも言ってられない。
ワルプルギスの夜に対して巴マミが共闘した位で勝てるとは思っていない。
まだ戦力は足りないのだ。
書き溜めたのを小出し中
今日はここまで
まどかの究極契約無しでワルプルギスをどうやって倒すか。
ゴルゴに依頼する
上条さん(ゲイに人気の方)を連れて来る
獣魔クーヨンとか対魔法特化の攻撃手段を用意する
町を消し飛ばしてでも倒す(手段と目的が逆転)
ワルプルギスなんか無視してまどかとほむほむする
HR終了後、まどかがほむらの席まで寄ってきた。
まどか「ほむらちゃん。今日これからマミさんの家に行くんだけど」
ほむら「それが何?」
まどか「えっと、一緒に行かない?」
ほむら「ごめんなさい。今日は行くところがあるの」
まどか「ほむらちゃんて、マミさんとその……」
「……魔女退治に行くんだよね?」(小さい声)
ほむら「そうよ。巴マミから聞いたのかしら?」
まどか「う、うん。さっきテレパシーで」
テレパシーはQBが仲介しているはず。
学校では見かけないので、ほむらを避けているようだが、
QBは今も巴マミに張り付いているのだろう。
ほむら「外で落ち合うことになってるのよ」
まどか「そうなんだ」
ほむら「巴マミのところへは美樹さやかも行くのでしょう?」
まどか「うん。行くけど……」
ほむら「そう。それなら良いの」
実は美樹さやかが行くことを確認したのには意味があった。
先日、マミの死亡回避が出来たので、
次の重要なイベントである美樹さやか契約の回避の方策を
こちらのまどかと話し合っていた時のことだ。
まどか。『もう少しわたしを信頼して欲しいよ』
ほむら『大丈夫なの? 私はあなたも心配なのよ』
まどかが、この時間軸のまどかの面倒を見るから
その間に美樹さやかの契約阻止に動けばどうか、と言いだしたのだ。
まどか。『わたしは契約なんて絶対しないよ。だってマミさんがついてるし』
ほむら『そうね。それならいいのだけれど』
学校にいる間は、ほむらはまどかの傍に居られる。
だから、付いてもらうとしたら、それ以外の放課後から家に帰り
そして朝まで彼女にはまどかに張り付いてもらうことになるのだが。
ほむら『大丈夫なの?』
まどか。『平気だよ。わたしの家だし。もしママに見つかっても一人なら誤魔化せるよ』
実のところ『誤魔化せるよ』はまどかの認識が甘かった訳だが、
それはともかく、こんな会話があったのだった。
ここは学校の前。
下ろしたピンクの髪に深めの帽子。顔には赤い縁の伊達メガネ。
前の時間軸のまどかが、いつかの変装スタイルで、
この時間軸のまどかが通りかかるのを待ちかまえていた。
まどか。「あっ」
ほむら「丁度よかったわ」
まどかを見つけて、ほむらは話しかけた。
まどか。「なあに?」
ほむら「あの子と一緒にいることで、色々聞かれると思うけれど、何も答えては駄目よ」
まどか。「え? なんで?」
ほむら「QBに伝わってしまうから。その場に居なくても、
魔法少女やQBが目をつけた子のそばで話すと聞かれてしまうかもしれないのよ」
まどか。「そうなんだ」
ほむら「無用に手の内を明かしては駄目よ」
まどか。「わかったよ。
それで、ほむらちゃんは、さやかちゃんの所へ行くの?」
ほむら「いいえ。私は先に上条恭介の所へ行ってくるから」
まどか。「え? 上条君なの?」
ほむら「ええ。今までじっくり情報収集したことがなかったから」
そう言ってほむらは学校の前を去った。
[一時的にまどか。視点に移ります]
やがて、まどかが通りかかった。
まどか。「まどかちゃん」
まどか「あっ」
まどか。「えへへ。今日はね……」
マミ「あら?」
さやか「あ、あんたは!」
まどか。「えっ?」
まどかと一緒にマミ、さやかが居た。
まどか「えっと、これからマミさんの家にいくんだけど……」
マミ「丁度よかったわ。あなた、この後時間あるかしら? それとも誰かと待ち合わせ?」
まどか。「い、いえ……」
まどか。「……時間ならありますけど。まどかちゃんを待っていたので」
マミ「あら? なにか用事があったのかしら?」
まどか。「いえ、特に決まった用があったわけでは」
マミ「だったら一緒にいらっしゃい。良いでしょ?」
もともと、(この時間軸の)まどかに張り付くつもりだったので、
問題ないと言えば問題ないのだが。
さやか「そうね。あんたには聞きたいことがあるし」
まどか。(ほむらちゃんの『色々と聞かれると思う』ってこういうことだったの?)
マミ「そんなに緊張しないで。この間のお礼をしたいだけだから」
まどか。「え」
マミ「助けてくれたでしょう?
本当は暁美さんも招待したかったのだけど、先に帰ってしまったみたいなのよ」
[一方のほむほむ]
ほむらは上条恭介の病室の前に来ていた。
ほむら(どうしよう……)
今日が統計上高確率で『さやかが契約してしまう日』であることは間違いないのだが、
実のところ、知っているのは、さやかの願いであった彼の腕の状態くらいで、
具体的にどんなきっかけがあって、契約を決心したかまでは知らなかった。
それを探りにきたのだ。
ほむら(とりあえず本人に聞いてみようかしら?)
意を決して、ほむらは扉を空けて病室に入り、黙ってベッドのそばに立った。
上条恭介はベッドに横になって向こうを向いていた。
と、予告編的に次のシーンの頭を投下したところで、今日はここまでまた明日。
恭介「……さやかかい?」
どうやら美樹さやかと間違えている様子。
ほむら「……」
恭介「今日は早いんだ……ね……って、きみは?」
身体を起こしながら、上条は傍らに立つのが幼馴染でないことに気付いた。
ほむら「こんにちわ」
恭介「ええと、さやかの友達かな?」
ほむら「あなたのクラスメイトよ」
恭介「え? ごめん、キミみたいな子、居たかな?」
ほむら「仕方が無いわ。転校してきたのはあなたが入院した後だから」
恭介「そうだったんだ。じゃあはじめましてだね? 僕は上条恭介」
ほむら「知ってるわ」
恭介「あー、そうだよね。ここに来る位だから知らないはず無いか。
それで、さやかは一緒じゃないのかい?」
ほむら「いいえ。彼女はまだ来ないわ」
美樹さやかは巴マミの部屋に行った。だからまだしばらく姿を見せないであろう。
恭介「……」
ほむら「……」
話題が途切れてしまった。
恭介「……えっと、」
ほむら「その……、腕はどう?」
恭介「え?」
同年代の異性と全く話しをしたことが無く、要領を得ないほむらである。
恭介「どうって……、きみはここに何をしに来たの?」
急に雰囲気が悪くなった。上条恭介の言葉にトゲを感じる。
失言だったようだ。
だが、仲良く歓談しに来たわけではないのだから構わない。
ほむら「お見舞い………違うわね」
恭介「だったら何?」
ほむら「あなたの気持ちを確認しに来たのよ」
恭介「気持ち?」
ほむら「そうよ」
恭介「君は知ってるのかい? 僕の腕のこと」
ほむら「ええ。知ってるわ」
恭介「僕の指が二度と動かないってことも」
ほむら「ええ」
恭介「僕は今日聞かされたよ。
この腕は、どんなにリハビリしたって二度とバイオリンは弾けないんだ」
ほむら「そのようね」
恭介「僕を馬鹿にしに来たんなら帰ってくれないか?」
ほむら「どうして私があなたを馬鹿にするの?」
恭介「バイオリンを弾けなくなった僕にはもう何の価値も無いんだよ。
そうやってみんなから見放された惨めな僕を、君は見下して楽しんでるんだろ?
そうさ、さやかだって……」
ほむら「それは悪趣味ね。質問は撤回するわ。あなたは馬鹿にする価値も無い」
恭介「もう出て行ってくれよ」
自分はもう駄目だと卑下する上条恭介の態度に、
『何のとりえも無いダメダメな』と自己評価をするまどかがダブった。
ほむらは上条恭介に近づいて、彼の左手を持ち上げて言った。
ほむら「あなたは、あなたの幼馴染があなたのバイオリンの腕だけのために、
毎日ここに通っているとでも思っていたの?」
さらに、ほむらは両手で上条の手を握り、顔を近づけて言った。
ほむら「あなたは彼女が大切じゃなかったの?
あなたにとって彼女の価値は、あなたのバイオリンを褒めることだけだったの?」
恭介「それは……」
ほむら「馬鹿にしないで! そうよ、馬鹿にしてるのはあなたの方よ。
あなたを大切に思っている人がバイオリンが弾ける弾けないだけで、
あなたの価値を計ってるなんて、あなたはどうして思えるの?
本当にあなたの価値はバイオリンだけだったの?」
恭介「……」
ほむら(はっ……、私なにを熱くなってるの?)
黙り込む上条恭介の手を離して、
気恥ずかしくなったのが悟られないように、ほむらはゆっくり彼から離れた。
そして努めて冷静に、
ほむら「……よく考えることね。
そしてもし判ったのなら、その気持ちを彼女に伝えてあげて。
出来るだけ早く」
そう言い放って、ほむらは病室を出た。
病室から出て一息。
ほむら(はあ……、緊張した)
美樹さやかに対する上条恭介の心積もりを聞きだすつもりだったのに
何をやっているのやら。
この後、美樹さやかが来る。
折角まどかの事をあの子に任せたのだからちゃんと監視しなければ。
ここまで
ほむらが部屋を出てしばらくして、美樹さやかが病室にやってきた。
タイミング的にどうやらマミの部屋でのお茶会は途中退出してきたようだ。
上条恭介の病室の入り口からは死角となる廊下の待合用のソファで、
ほむらは盗聴器からの音声を拾っていた。
恭介『さやかはさ、僕がバイオリンを弾けなくなったらどうする?』
さやか『え? 何言ってるの? 大丈夫だよ、頑張ってリハビリしようよ。
あたし応援してるからさ』
恭介『どんなにリハビリしたって僕の指は二度と動かないよ』
さやか『そんなことないよ、諦めちゃ駄目だよ』
恭介『今日医者に言われたんだ。諦めろってさ』
さやか『え?』
恭介『奇跡か魔法でも無い限り無理だって言われたんだ』
さやか『そんな……』
恭介『僕はもう二度とバイオリンは弾けないんだよ……』
さやか『……あ、あるよ』
恭介『?』
さやか『奇跡も、魔法もあるんだよ!』
美樹さやかが言ったキーワードにピンと来たほむらは素早く変身して時を止めた。
そして病室に入ると案の定、窓辺にQBが現れていた。
ほむら(排除ね)
貫通力より衝撃力の高い弾丸をQBに向かって撃ち込んでおいた。
これでヤツは吹き飛ぶはずだ。
そして部屋を出て来る時開いたドアも閉め、ソファに戻って時を動かした。
恭介『……それがさやかの答えかい?』
さやか『え?』
恭介『さやかはやっぱりバイオリンが弾ける僕にしか興味が無いのかな』
さやか『そ、そんなこと……』
恭介『あの子の言ってたことは嘘だったみたいだ』
さやか『』
恭介『……でも一つだけ』
さやか『き、恭介、あの子って誰?』
恭介『……僕はさやかに言っておかなければならないことがあるんだ』
さやか『え? な、なに?』
恭介『たとえ、さやかがそうだしても、さやかは僕の大切な幼馴染には変わりないからね』
さやか『』
恭介『さやか……』
さやか『恭介……』
これでよかったのだろうか?
ほむらには判断が付かなかった。
いずれにしても上条恭介の前で契約することはないだろうし、
なにやら聞いてられなくなってきたので、ここでイヤホンを外した。
その後、
ほむらは三樹さやかが病室を出るのを待って、ひそかに家まで後を付けた。
家までの道中は特に何事も無かったが、
彼女が部屋に入ってすぐQBの接触があった。
ほむらは思わず強制排除に出そうになったが、
どうやら彼女に契約する気は無いらしく、
美樹さやか曰く『それどころじゃない』の台詞にQBは何処へと消えた。
事前にほむらが上条恭介に接触した影響だろう。
とにかく一つ現象を変えることが出来たようだ。
相変わらず美樹さやかは魔法少女の運命を甘く見ているだろうから、
引き続き監視は必要であろうが、これで今日のところはもう大丈夫と判断し、
ほむらは約束してあったマミとの魔女退治に向かうことにした。
今日はここまで
[まどか。サイド]
マミ部屋での会話の断片。
まどか。「いえ、わたしから多くを語るわけには……ティヒ」
まどか「えーっと……」
それは、マミの部屋にノコノコと付いていって質問攻めにあわない訳がないわけで。
さやか「っていうか、あんた、笑い方もそっくりなのね」
QB「まあ、暁美ほむらの魔法が何っだったのか、予想はついてるんだけどね」
マミ「あら。QBはそれは私たちに教えてくれるのかしら?」
QB「どういうわけだか、彼女はその辺慎重になっているようだから
僕も予想を君たちに話すのは慎重にならざるを得ないんだよ」
さやか「よく判らないんだけど」
QB「暁美ほむらの出方を予測できない以上、
僕がどこまで情報を掴んでいるのか余り教えるわけにはいかないってことさ」
まどか。「わたしに、ってことかな?」
QB「その通りだよ。でも一つだけ。ボクの予想通りなら、
キミも『まどかの偽者』などではなく、
正真正銘、鹿目まどかだってことかな?」
さやか「え」
マミ「え」
まどか「……」
まどか。(あらら)
さやか「どういうことよ?」
QB「これが、暁美ほむらの魔法の結果だってボクは予想しているよ。
とりあえず今、言えるのはこのくらいだね」
さやか「転校生の魔法?」
QB「……」
さやか「だんまりか」
マミ「これ以上は本人に聞くしかなさそうね」
と、言ってマミは視線をまどか達に向ける。
さやかもそれにつられて視線を向けていた。
さやか「なんか、あたしの知らない間にあんたら仲良くなっててちょっと悔しいわ」
まどか。「えーっと、なんて答えたら良いのか」
ちなみにこの時間軸のまどかの方はまだQBが怖くてQBから逃げるように、
もう一人のまどかの陰に隠れるようにしていた。
さやか「あー! そういや、いつか病院で抱きついてきたのあんたでしょ?」
まどか。「え? う、うん。っていうか今気づいたんだ……」
さやか「やっぱりそうか。
次の日まどかには知らないって言われるし、
仁美には寝ぼけてるとか言われて散々だったんだからね」
まどか。「あ、あれは嬉しくてつい……」
さやか「嬉しくて?」
まどか「あ、いやその」(目をそらす
さやか「ふーん……」(じーっと疑いの目
さやか「まあ、その辺り、今度じっくり追求してあげるから覚悟してなさい」
そういってさやかは席を立った。
マミ「あら、もう行くの?」
さやか「はい。途中ですみません」
マミ「いいえ。用事があったのにわざわざ来てくれたのだし」
さやか「いやあ、マミさんが転校生と共闘って聞いたから……。
でも結局、転校生こなかったし」
マミ「また誘ったら来てくれるかしら?」
さやか「ええ、喜んで。
これでマミさんと接点が無くなっちゃうなんて寂しいですから」
と、こんな感じで、さやかは帰って行った。
このお茶会の趣旨は魔法少女体験コース終了のお知らせだったのだ。
「とりあえず今、投下できるのはこのくらいだね」
ではまた
恭介はしばらく、先ほどの余韻に浸るように呆けていたが、
やがて、幼馴染の美樹さやかが病室にやってきた。
彼女は早速今日の収穫物である音楽CDを取り出して、
あれやこれやと喋りながら甲斐甲斐しくCDプレーヤーをセットしてくれた。
話は聞けるように片側イヤホンで音楽を聴きながら、恭介はさやかに問いかけた。
「さやかはさ、僕がバイオリンを弾けなくなったらどうする?」
「え? 何言ってるの? 大丈夫だよ、頑張ってリハビリしようよ。あたし応援してるからさ」
彼女はいつも通りの元気な顔でそんなことをいう。
だか恭介は自分にとって残酷な決定事項を伝えなければならなかった。
「どんなにリハビリしたって僕の指は二度と動かないよ」
「そんなことないよ、諦めちゃ駄目だよ」
「今日医者に言われたんだ。諦めろってさ」
「え?」
「奇跡か魔法でも無い限り無理だって言われたんだ」
「そんな……」
彼女の表情が曇る。
やはり彼女は『バイオリンを弾く恭介』が大事なのだろうか?
そんな考えが頭をもたげる。
「僕はもう二度とバイオリンは弾けないよ……」
「……あ、あるよ」
「奇跡も、魔法もあるんだよ!」
恭介はがっかりした。
「……それがさやかの答えかい?」
彼女は『恭介が二度と弾けない』という事実を否定したのだ。
「え?」
「さやかはやっぱりバイオリンが弾ける僕にしか興味が無いのかな」
「そ、そんなこと……」
「あの子の言ってたことは嘘だったみたいだ」
さやかは恭介の言うことをよく理解出来ないようだった。
でも、それでも構わなかった。
あの子が気付かせてくれたことがあったから。
「き、恭介、あの子って誰?」
今日初対面だが『恭介の恩人』といっても良いだろう。
「……僕はさやかに言っておかなければならないことがあるんだ」
恭介は真剣になって言った。
「え? な、なに?」
「たとえ、さやかがそうだしても、さやかは僕の“大切な幼馴染”には変わりないからね」
――転校生さん、これでいいんだよね?
恭介は無意識に微笑んでいた。
なにやらさやかが熱っぽい顔しているが風邪でも引いたのだろうか?
心配である。彼女は『大切な幼馴染』なのだから。
「あ、そういえば」
恭介は彼女の制服を見て思い出した。
「ん?」
「僕が入院してる間に転校してきた子っているかな?」
「転校生? 居るけど転校生がどうしたの?」
「それって、綺麗な黒髪の長い子で……すごい美人で素敵な子かな?」
さやかが表情を変えた。どうしたのだろう?
「た、多分そうよ……美人かどうかはともかく」
「そうなんだ……夢じゃなかったんだ」
本当に夢を見てたかと思ったのだ。
だが現実と確認できてよかった。
彼女には現実に会うことが出来るのだ。
「き、恭介……?」
「名前はなんていうのかな? 聞きそびれちゃって。あ、やっぱりいいや直接聞きたいからさ」
彼女に直接礼を言いたい。名前もその時に彼女の口から聞きたいと思ったのだ。
「……転校生、来たの?」
「来たというか……。とにかくリハビリは頑張るよ。
指は動かなくても早く歩けるようにならなきゃね」
退院だけだったら真面目に歩く練習をすればすぐだと聞いている。
「はぁ……。はやく退院したいなぁ」
恭介は無意識にそう呟いていた。
《ある日目覚めると病室にすっごい美人がいた》糸冬
今日は以上。
さやかだと「失恋しちゃったなハハハ・・・」にはなっても嫉妬で[ピーーー]までは行かなさそう。
負の思考が魔女を惹き付け仁美と一緒にハコの魔女の結界に掛かりそうな感じがする。
さやか「恭介取られちゃったよ・・・うっうっうっ」
ハコの魔女「・・・(絡んでこないでよ)」
さやか「ちょっと、聞いているのーーー」
ハコの魔女「・・・(誰か助けて)」
何故か気が済むまで絡んでスッキリして結界から出るさやかと、絡まれてグッタリするエリーが浮かんだ。
>>579 の続き
--------
マミ「鹿目さんも、そろそろどうしてそんなにQBを怖がってるのか教えてくれないかしら?
美樹さんに聞いたけど、あなた動物が苦手って訳ではないのでしょう?」
まどか「ええと、はい。でもまだ……時期がこないと話しちゃいけないって……」
マミ「それはもしかして、暁美さんが言ったのかしら?」
まどか「……」(チラッともう一人のまどかに視線
それを見てマミはため息を一つ。
マミ「……気づかなかったわ。あなたたち二人とも暁美さん側の人だったのね?」
まどか。「側(サイド)ってそんな……」
マミ「まあ、なにか訳ありみたいだからこれ以上言わないけれど」
まどか「……」
まどか。「……」
マミ「そんなに怯えないで。あなたたちをどうこうするつもりは無いのよ。
隠し事されてるのは悲しいけれど、だからって怒ってる訳でもないの。
今日は暁美さんから歩み寄ってくれたんだから」
まどか。「ほむらちゃんが?」
マミ「ええ。私の疑問にはあまり答えてくれなかったのだけど、
言えないことは、誤摩化さずにはっきり『それは言えない』と言ってくれて、
彼女なりに信用を得ようとしてるって判ったわ」
マミ「だからこそ、一緒に戦うことにしたのだし」
マミ「さて。私もそろそろ出かけないといけないから」
まどか「あ、はい」
マミ「あなたは、鹿目さんを守る役割なのよね?」
まどか。「え? は、はい」
マミ「魔法少女の素質があると、
本人が望まなくても使い魔や魔女が寄ってくることがあるから
気をつけるのよ」
まどか。「それはもう」
マミ「それはそうと、あなたの変身どういう仕組みなのかすごく興味があるのだけど」
まどか。「それは勘弁してください。ほむらちゃんに怒られちゃう」
マミ「まあ、暁美さんもよく判らないって話だったから今は良いわ
あの子の言う『時期』が来るのを待つことにするから」
まどか。「は、はい」
一緒に部屋を出て、途中までは方向が同じなので、
三人で歩いていた。
まどか「あれ? 仁美ちゃん?」
まどか。「本当だ」
まどか「お稽古事、どうしたんだろう?」
まどか。「って、まさか」
と、前回の記憶がある方のまどかは一人で先に仁美に駆け寄った。
まどか「あ、まどかさん?」
マミ「どうしたの?」
後からマミともう一方のまどかも追いついてきた。
まどか。「マミさん! 仁美ちゃんの首見て!」
マミ「!! これは!?」
魔女の接吻だ。
仁美「あら? まどかさんが二人いますわ。どうしたことかしら?」
まどか「ねえ、仁美ちゃん、どうしちゃったの?」
仁美「でもそれはすばらしいことかも知れませんわ。
さあお二人とも一緒に行きましょう!」
マミ「魔女に操られてるわ」
まどか「え!?」
まどか。「マミさん、なんとかできないですか?」
マミ「魔女を倒してしまうのが一番良いのだけど」
まどか「仁美ちゃんは?」
マミ「ちょっと待ってね」
マミはふらふらと何処かへ行こうとしている仁美に近寄って首筋に手を当てた。
まどか「あ! 仁美ちゃん!?」
仁美は急に糸が切れた操り人形のように倒れかけ、マミがそれを支えた。
マミ「この子をお願い。魔女を倒せば気がつくはずだから」
まどか「は、はい」
マミ「あなたもよ。二人でこの子を見ててあげて。お友達なのでしょう?」
まどか。「はい」
[ほむらサイドに移ります]
ほむら「巴マミ」
マミ「あら暁美さん。早かったわね」
ほむら「魔女の気配を感じたら、あなたもここに向かってるようだったから」
ほむらは今日魔女が出現する場所を知っていたので、
マミとの待ち合わせ場所はその近くに設定していた。
だから、マミが直接魔女の場所に向かっているのをすぐに察知できたのだ。
マミ「それなら話は早いわ。早速魔女退治よ」
ほむら「ええ」
この時間軸で巴マミとほむらの共闘一回目である。
だがこのとき、二人なら楽勝と思って油断したのは巴マミだけでなかった。
結界に入ってすぐ、使い魔のがさつな攻撃でなく、
魔女の直接攻撃に遭うことも予想できない事態ではなかったかったのに。
マミ「……え? この前の魔女?」
それは、銃を構える何者かの視点で、
魔女の顎の結合部に銃弾を何発も打ち込んでいるシーンが
古くさい箱形のTVの画面に映し出されていた。
ほむら「な、なんで!?」
マミ「……わたし?」
画面には首を挟まれた巴マミ。
視点の主は、魔女の顎をこじ開けようと奮闘している。
勿論、これはほむらの記憶だ。
それをこの使い魔は本人ではなく巴マミに見せつけているのだ。
ほとんど千切れかけている首の映像。
切断面が露になっていてかなりグロい。
巴マミの視線はそれに釘付けになっている。
マミ「この手、暁美さんよね?」
ほむら「こ、これは、精神攻撃よ! 真に受けては駄目!」
マミ「止まっている? 時間操作……?」
取れかかった首を支えつつマミを寝かせて、
頭を定位置に直し、首に布を巻いている。
比較的『最近』のことで、
記憶にも鮮明に残っている衝撃的な場面だったため、
ほむらも魔女を倒すのを忘れて見入ってしまっていた。
場面が変わる。
QB『壊れやすい体のままで魔女と戦ってくれなんてとてもお願いできないよ』
マミ「え?」
ほむら「だ、だめ! 聞いては駄目よ!」
ようやく、それが魔女の幻惑であることを思い出したが、
見入ってしまった時点で時既に遅く、ほむらもいつの間にか幻惑に取り込まれてしまっていた。
実際は画面に映っているのだが、
巴マミと二人で自分の過去のシーンの中に立っているような感じもする。
感覚がどこか夢の中のように曖昧なのだ。
それでいて見ている映像は鮮明だった。
現実の身体は別の時間軸の時のようにどこかに倒れているのだろうか?
もしかしたら使い魔が運搬している最中なのかもしれない。
非常にヤバい状態である。
ほむらが焦っている間に、映像の中のQBは、
魂がソウルジェムに封じられていることのメリットを解説しきってしまった。
QB『……魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね。
君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなのさ』
マミ「……効率のいい身体? ……肉体は外付けのハードウェア?」
マミの視線は使い魔の画面に向いたままだ。
場面が変わる。
さやか『あのさあ、キュウべえがそんな嘘ついて、一体何の得があるわけ?』
マミ「美樹さんが魔法少女になってるわ……鹿目さんも?」
ほむら「!! これは駄目よ!」
ほむらは慌てて巴マミの方へ向かおうとしたが、思うように動けなかった。
完全に魔女の精神世界に取り込まれている。
すぐに殺されないのは、こいつが精神的にいたぶって自滅に追い込む性質だからだろうか。
ぱたぱたと、ほむらにとって印象の強かったシーンが切り替わって行き、
とうとう決定的な場面が映し出された。
杏子『さやか……。ちくしょう……、こんなことって……」
まどか『ひどいよ……こんなのあんまりだよ……』
杏子のソウルジェムが目の前で打ち抜かれる。
そのときのほむらの視線そのままに、巴マミが視界に入る。
マミ『ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!』
マミ「ソウルジェムが……魔女に……!?」
ほむら「しっかりして! これは魔女が作り出した幻想よ!」
マミ『あなたも! 私もっ!!』
マミ「でも、暁美さんの記憶なんでしょ? いくら精神攻撃でも無いものは見せられないはずよ!」
ようやくほむらの方に振り返ったマミの表情は画面に映った『あのマミ』と同じだった。
映像の巴マミに感情移入してしまったようだ。
ほむら「げ、現実はまどかも美樹さやかも魔法少女じゃないわっ!」
マミ「そうか。あなたの魔法って時間操作なのね。
過去に戻ってやり直したいなんて願えば確かに……」
そこまでを確信させるに十分な映像を見られてしまったようだ。
ほむら「巴マミ……」
もう巴マミは駄目かもしれない。
こんな形で真実が伝わってしまうなんて。
魔女は余程ほむらの記憶が気に入ったのか画面が増えて様々な時間軸の場面が同時並行して映し出されていた。
ほむら「……私にそれを見せても無駄よ」
それは単に戦い続けた記憶だ。今さら改めて見てもどうということはない。
と、思っていたのだが。
魔法少女になって初めて巴マミの指導を受けた場面。
そして、共闘して初めて自分の手で魔女を倒した記憶が映し出された。
まどか『やったぁ、すごい、すごいよほむらちゃん!』
ほむら(まずいわ。ここで心を動かしたら……)
感情の揺れにつけ込まれてしまう。
だが、次の瞬間、積み上がったTVが一斉に吹き飛ばされ、
二人が居た空間が割れるようにして消滅した。
「情けねーな。魔法少女二人がかりで何やってるんだ?」
ほむら「……」
マミ「え?」
ここまで
今日は時間切り
気がつくと二人は折り重なるようにして床に倒れていた。
ほむら「……佐倉杏子」
杏子「あん? おまえ、どこかで会ったか?」
あたりを見回すと結界は消えていた。
助けてくれた、というより、魔女を倒した結果として助けた形になっただけのようだ。
マミ「あなたは……」
巴マミはまだ心ここに在らずといった感じで現状がよく判っていない風に見える。
ほむら「……悪いけど、今は引いてくれないかしら?」
佐倉杏子はほむらとマミが戦闘どころじゃない有様なのを見て言った。
杏子「ま、面白いモン見れたし、マミに貸し一つってもの悪かないな」
『面白いもの』というのはマミが魔女に無様に敗北してたことを言っているのだろう。
杏子「じゃあ、この辺の魔女、勝手に狩るけど、いいよな?」
ほむら「好きにしなさい。後で挨拶にいくから」
マミ「ま、待って、勝手なこと言わないで」
ほむら「一旦引きましょ。今のあなたじゃあの子の相手は無理よ」
杏子「あんたにも貸し一つだからな」
ほむら「判ってるわ」
杏子「じゃあな。楽しみにしとくよ。挨拶とやらを」
杏子が去った後、
ほむら「……」
マミ「……どうしたの? 急に付き合いが良くなったわね?」
ほむらは家に向かう巴マミの後ろを黙って付いて歩いていた。
ほむら「そんな気分なのよ」
マミ「そう……」
ほむら「……」
マミ「佐倉杏子に助けられるなんて」
ほむら「あっちはそのつもりは無かったみたいだけど」
マミ「そうね」
その後、マミの家に着くまで互いに無言だった。
マミの部屋。
マミ「なにか話があるのでしょう?」
巴マミはほむらの分まで紅茶を用意してからリビングに落ち着いた。
その様子を見ていたほむらは思わずこう言ってしまった。
ほむら「余裕なのね。意外だわ」
マミ「あら、どういう意味かしら?」
ほむら「結界の中で見たでしょう?」
マミ「じゃあ私から聞くわ。
あれはあなたがいままで経験したことで間違いないのかしら?」
もう覚悟を決めるしか無いだろう。
ほむら「……そうよ」
マミ「何か、緊張しているのね」
ほむら「ええ。しているわ」
マミ「私が『ああ』なると思っているの?」
ほむら「思ってるわ。巴マミは魔法少女が魔女になると知って冷静で居た試しが無い」
巴マミの表情が硬くなったのを感じた。
マミ「そう。あなたは私がああなるのを何回も見たのね?」
ほむら「見たわ。あなたは私の目の前で死んでいった。数えきれないくらい何回も。
先を知っているからなんとかしようとも思ったわ。
でも駄目だった。何回繰り返してもあなたは、あるときは自分勝手に、
またあるときは私にすべてを押し付けて舞台から降りてしまう。
私が手にかけたこともあったわ」
マミ「……それで、あなたは今まで私にあんな態度だったのね?」
ほむら「そうよ。今ならわかるでしょ?
でももう良いの。
ここに来たのはせめて今後に悪影響が無いようにするためだから」
マミ「確かに、私に銃を向けている場面もあったわね」
ほむら「あなたはどういう訳か魔法少女の運命に絶望しただけでは魔女にならないから」
マミ「え……そうなの?」
ほむら(あれ、反応が?)
巴マミはなにやら『心底意外だ』という表情をした。
ほむら「そ、そうよ。魔法少女のまま錯乱して近くの他の魔法少女を皆殺しにしようとするから」
マミ「そ、それは……酷いわね」
ほむら「あなたみたいな強力な魔法少女がそんな暴れかたしたら射殺するしかないでしょ」
マミ「……」
ほむら「だから、そういうことなのよ」
マミ「そ、そういうことなのね」
彼女はほむらの言葉で『そうなった巴マミ』がいかに酷い有様か
改めて認識したようだった。
マミ「夕飯食べるでしょう?」
ほむら「どうしてそうなるの?」
マミ「だって今日は泊まっていくのでしょう?」
ほむら「馴れ合うつもりは無いわ」
マミ「じゃあ、なんで家に上がったの? あなたなら外から見張ることだってできたはずよ」
ほむら「バスルームとか外から見えない所もあるわ」
マミ「あら。じゃあ一緒にお風呂にも入ってくれるんだ?」
ほむら「何を言っているの?」
マミ「一人でシャワー浴びてるうちに何かあるかもしれないわよ。
そのためって言ったわよね?」
ほむら「それは……」
これは『余裕』と見るべきか。
だが、巴マミは今、自分の錯乱を盾にほむらに甘えてきている。
統計的に見てこれは『良くない予兆』であろう。
マミ「……嬉しいわ。一緒に台所に立ってくれるなんて」
ほむら「必要だからよ」
毒を盛って心中なんてされたらたまらない。
もちろん一般の毒くらいで魔法少女は死なないが、
使う毒によってはしばらく行動不能にはなるくらいはあり得るのだ。
ほむらは本気でそう危惧していたのだが……。
マミ「判るわよ」
ほむら「何の話?」
マミ「馴れ合わないっていうのは、情がわいてしまうと、
いざというとき躊躇ってしまうからでしょ?」
ほむら「……そうよ」
マミ「でも、もう既に迷っている」
ほむら「……」
マミ「……ごめんなさいね」
ほむら「どうして謝るの?」
マミ「正直、あなたが来てくれて助かったと思ってるの」
ほむら「私はあなたを殺しにきたのよ」
マミ「でもああならないことを期待もしている。そうでしょ?」
ほむら「そうね。夢くらい見ても良いでしょ?」
マミ「夢か……ずいぶん薄い期待なのね」
ほむら「今の状況で私はあなたがどんな顔して微笑んでも安心なんて出来ないのよ」
マミ「……別の世界で私はあなたに沢山迷惑かけたようね」
ほむら「……」
マミ「でも、そのほんの少しの期待が私には希望になるわ。
正直不安なのよ。
私は魔法少女を殺して歩くようになってしまうかもしれないから」
ほむら「自覚は在るのね」
マミ「あなたは言ったわ。
私は魔法少女の運命に絶望しただけでは魔女にならないって」
ほむら「経験上そうだったってだけで何も確証はないのだけど」
マミ「それは多分、私の願い事が『助けて』だったからだわ」
ほむら「……?」
マミ「『助けて』すなわち『私の命を助けて』。
いままで余り考えたことは無かったのだけど、
私の魔法少女としての希望は生きることそのものなんだわ」
ほむら「生存本能ってこと?」
マミ「そうよ。これは私の想像だけど、あなたの記憶の中の私は
ショックの余り魔法少女と魔女を同一視してしまったんだと思うの」
マミ「それで魔法少女は死ぬしかないと結論した。なのに魔女にならなかった。
つまり表面では絶望してても本能でそれでも生き続けたいと願っていたのよ」
ほむら「魔法少女は死ななければならない、殺さなければならないから、
その為に『生きる』ってこと?」
マミ「言われてみて判ったわ。
そうなってしまっても私、絶対自殺なんて出来ない、
生きる目的がどんなに歪んでも生き続けてしまうだろうって」
ほむら「興味深いわね。あなたの自己分析が聞けるなんて」
マミ「ありがとう。興味を持ってもらえて嬉しいわ」
ほむら「それで?」
マミ「その前に、夕飯にしましょう? もう出来るから」
キッチンから再びリビングに移動して。
マミ「結局、一緒に居てくれるのね。それもこんなに近くで」
ほむらはマミの隣に座っていた。
ほむら「別にあなたの為じゃないわ。
さっきも言った通り今後に悪影響を残さない為に
最良だと思う選択をしているだけよ」
マミ「それでも良いわ」
今ここでほむらが見捨てれば巴マミは錯乱するのを押さえられないだろう。
ほむらには判っていた。
彼女が今の所、こうして誰かと話をすることで精神を保っていることを。
実際、今日の巴マミは饒舌だ。
ほむらが聞きたいかなんて関係なく料理の味とか紅茶の入れ方とか、
とにかく、いつ食べているのかと思うくらいにしゃべり続けていた。
ほむら(今回も巴マミは駄目なの?)
そんな不安を抱えつつ、
『もうこうなったら見極めるまでつき合うしかない』とほむらは腹をくくっていた。
食後も、ほむらは巴マミにつきまとうようにしていた。
マミの方はそれに慣れたのか、
ほむらに色々手伝いを頼むようになっていた。
相変わらず喋り続けているのだが。
そして、少し時間を飛ばして
ここは風呂場。
マミ「髪を洗ってあげるわよ」
ほむら「いらないわ」
マミ「えー、あなたの髪さらさらで触り心地よさそうなのに」
ほむら「だったら後で気の済むまで触らせてあげるから大人しく暖まってなさい」
マミ「もう。じゃ、あとで約束よ?」
ほむら「……」
そして、ほむらが身体を洗い終わって。
マミ「さあ、いらっしゃい」
浴槽に足を伸ばして浸かり、手を広げてそんなことを言う。
マミの上に乗りだっこされる形で入れというのだ。
ほむら「私はあなたと一緒に居るつもりだけれど、
何でも言うことを聞くと思ったら間違いよ」
マミ「えー」
ほむら「横を開けなさい。私が入れないでしょ」
マミ「でも一緒に入るんだ」
ほむら「見極めるまでつき合うと言ったわ」
それは夕食が終わってからマミに向かってそう宣言していた。
マミ「うふふ……」
風呂を上がって。
ほむら「……」
マミ「どうしたの?」
ほむら「そういえば髪を巻いていないあなたを見るのは初めてだったわ」
マミ「あら。どうかしら?」
ほむら「新鮮だわ」
癖っ毛ではあるが湿って癖が伸びていて、マミは普通に下ろした髪型をしている。
結構な長さである。
マミ「新鮮、か」
ほむら「え、ええ」
目をそらす。
湯上がりで上気した顔。湿気を帯びた癖のある髪。
正直、『可愛い』とか思ってしまったのだ。
ほむら(不覚だわ。風呂場でも裸でべたべた寄ってくるのは『気持ち悪い』と感じてたのに)
マミ「なあに?」
ほむら「別になんでもないわ」
マミ「それはそうと」
ほむら「なにかしら?」
マミはドライヤーとヘアブラシを持って、
何やら期待の眼差しをほむらに向けていた。
マミ「約束よ?」
ほむら「ハァ……判ったわ。お願いするわ」
マミ「♪」
ほむら(背後に立たせるのは不安なのだけど……)
嬉々としてほむらの髪にドライヤーを当てる巴マミに、
ほむらが危惧してるような気配はなかった。
マミ「……当然のように一緒の布団に入ったわね」
ほむら「私は本気よ」
マミ「もしかして私、貞操の危機かしら?」
ほむら「それはないわ」
マミ「冗談よ。真顔で即答しなくてもいいのに……」
ほむら「あなたがどっちに転ぶかまだ判らないから」
マミ「見極めるって話?」
ほむら「そうよ。黙って私の目の届かない所へ行って
魔法少女を殺し始めたりしないって保証はないもの」
マミ「私はむしろ暁美さんを見極めたいわ」
ほむら「何のことかしら」
マミ「私はあなたを封じる方法を知ってるわよ」
ほむら「そうだったわね」
マミ「なのに、無防備にこんな近くで寝そべってて良いの?」
ほむら「……」
マミ「いざとなれば私を殺さないといけないのでしょう?」
ほむら「……」
マミ「もう、そんなつもりはないのではなくて?」
ほむら「それは……」
自分でもよく判らなかった。
情を押し殺し、巴マミを『終わらせる』覚悟でここに来た筈だった。
なのにマミの指摘通り、ただ近くに居るってだけで、
目的を遂行しずらい状況に身を置いてしまっている。
だが、今最悪の結果を回避する為に『なるべく傍に居る』という選択は正しいはずだ。
すくなくともこうして、ほむらが話し相手になることで彼女は平静を保っているのだから。
マミ「もう十分よ。私は『ああ』はならない」
ほむら「そう断言できる?」
マミ「全て知っていても尚、誰かの為にずっと戦ってきたあなたがいるわ。
そうなんでしょう?」
あの魔女が出した映像でそこまで把握していたのか。
マミ「最後は魔女になるからといって、死ぬことを結論にするのは間違いだって、
あなたは身をもって教えてくれたのよ」
ほむら「別に教えるつもりはなかったわ」
マミ「そんなあなたが、もしかしたら、おかしくなった私に殺されるかもしれないのに、
私を気遣ってこうしてそばに居てくれる」
ほむら「そんな大層なものじゃないわよ」
マミ「ううん。今と違う世界でも私がああならないように頑張ってくれたのでしょう?」
ほむら「それは……」
マミ「そこまでしてくれたあなたなのに、私は誤解して酷い事して……」
ほむら「やめて」
マミ「謝るくらいじゃ償いきれないことをしてしまったわ」
ほむら「違うの。そうじゃない。
あなたを諦めて見殺しにしたことも数えきれない位あったわ……」
マミ「でも、同じくらい、いえそれ以上に助けようと頑張ってくれたのでしょう?」
ほむら「あなたに謝られたり感謝されるような事は何もないわ。
私は私の為に行動してきただけなのよ。
都合が悪ければ見捨てるし、助けたのも偶々私の目的に合っただけ」
マミ「じゃあ、今は?
打算だけでここに居てくれたの?
私の事はどうでも良いの? 生きてても死んでても関係ないの?」
ほむら「……ゎ」
マミ「なあに? 聞こえないわ」
ほむら「……生きててくれる方が、良いに決まってるじゃない」
ほむら「あなたは見たかどうか判らないけれど、
初めてあった時、まどかと一緒に私を助けてくれた。
私が魔法少女になったばかりの頃、
あなたは戦い方を教えてくれたのよ……」
ほむら「助けられるものなら助けたい。
いつでも……そう思っていたわ」
マミ「暁美さん」
ほむら「なに」
マミ「ありがとう」
そういって巴マミはほむらを抱きしめた。
ほむら「……」(あれ、涙が……)
マミ「私はあなたに誓うわ。
運命に抗える可能性が少しでも残っているなら、
私はその魔法少女を決して殺したりはしない。
もしこれを破るようなら私を撃ち殺してくれてたってかまわない」
ほむら(やっぱりここの部分は私が背負うしかないのね……)
よし
ここまで
時間はけっこう遡って、
仁美が意識を取り戻し、魔女が無事倒されたことが判ったまどか達。
仁美「あら? 鹿目さん?」
まどか「よかった。仁美ちゃん、大丈夫? 気分悪くない?」
もう一人のまどかは、ややこしくならないように隠れている。
仁美「え、ええ。でもどうして鹿目さんが?」
まどか「え? えっと……」
仁美「あら。ここは……どうして私こんなところに?」
まどか「覚えてないの?」
仁美「ええ。私、どうしたのかしら? 夢遊病?」
まどか「は、早く家に帰った方が良いと思うよ」
仁美「そうですわね。鹿目さんにもなにかご迷惑をかけてしまったみたいですわ」
まどか「そんなことないよ。でも心配だから家まで送ろうか?」
仁美「それには及びませんわ。家のものを呼びますから」
まどか「そっか」
仁美は家に電話をした。
仁美「あの、迎えが来るまで一緒に居てくれませんか? 私不安で……」
まどか「そんなのお安い御用だよ」
仁美「ごめんなさいね。家までお送らせますから」
まどか「それは良いよ。ここから家まで近いし。別に危ない道じゃないから」
仁美「そうですか?」
まどか「うん」
そして、程なくして志筑家の車が到着し、仁美は帰って行った。
鹿目家の前で。
まどか「どうする?」
まどか。「窓から忍び込むよ」
今夜はずっと一緒にいるということは、もう言ってあった。
もちろん親には内緒だ。
まどか「そういえば夕ご飯、どうする?」
まどか。「あ、そうか。今から買って……お金無いや」
まどか「遅くなってから夜食作って食べる?」
まどか。「いいの?」
まどか「うん。でも多分パパ起きてると思うから」
まどか。「おなかすいちゃたって言って誤摩化せばいいかな?」
まどか「うん。多分」
鹿目一家の夕食タイム後、まどかの部屋。
色々話すうちに話題は魔法少女になるのを阻止してる理由にさしかかっていた。
まどか「……わたしって魔法少女になったら、死んじゃうの?」
まどか。「死ぬか魔女になるか。あの大きな魔女が来たら必ずどっちかになっちゃうんだって」
まどか「じゃあ、ほむらちゃんってわたしを助けるために?」
まどか。「そうだよ」
まどか「……ほむらちゃん」
まどか。「わかんないよね。私もほむらちゃんの気持ち、まだ全部は判らないから」
まどか「……」(じっと見つめてる
まどか。「……なあに?」
まどか「じゃあさ、まどかさんは?」
まどか。「え?」
まどか「まどかさんは生き残ってるじゃない。もう叶っちゃってるんじゃないの?」
まどか。「……そうなの?」
まどか「だって、この時間に二人で仲良く戻ってきたんでしょ?」
まどか。「そういえば」
まどか「じゃあ、わたしは?
わたしと出会うはずのほむらちゃんは何処にいっちゃったの?」
まどか。「え? 出会ったでしょ?」
まどか「もうまどかさんと出会って仲良くなってるじゃない。
なんかずるい。私もほむらちゃんともっと仲良くなりたいよ」
まどか。「なれば良いじゃない。わたしはそのためにほむらちゃんについてきたんだよ」
まどか「え?」
まどか。「わたしのことはもういいの。
わたしは“わたし”の未来を作るために来たんだよ」
まどか。「わたしの世界は無くなっちゃったから。ほむらちゃん以外全部死んじゃったから。
そんなことにしないために来たんだから」
まどか「死んじゃった……?」
未来から来たまどかの話を聞いて、この時間のまどかは泣いてしまった。
まどか。「ごめんね。まどかちゃんは気にしなくて良いよ。
まどかちゃんはこの世界で幸せになればいいんだから。
わたしにはそのお手伝いをさせて?」
まどか「まどかさんは良いの?
わたしは違う時間のわたしにも幸せになって欲しいよ」
まどか。「うーん。先の事はわかんないな。
でも今はほむらちゃんの為に働くって決めてるから」
まどか「……」
まどか。「ちょっと、トイレいってくるね。おなかも限界。ついでになにか食べてくる」
まどか「う、うん。そろそろママも帰ってると思うから気をつけて」
まどか。「まどかちゃんもね。わたしが部屋の外に出ている時は絶対に出てきちゃ駄目だよ」
まどか「うん。わかってる」
前にも書いたから判ってると思うけど呼称。
まどか→まどか。 まどかさん
まどか。→まどか まどかちゃん
というわけで
ここまで
まどか。「まどかちゃんもね。わたしが部屋の外に出ている時は絶対に出てきちゃ駄目だよ」
まどか「うん。わかってる」
――――――
――――
用を足した後、「夜食、夜食♪」と鼻歌まじりにリビング入って詢子(まどかママ)に出くわした。
まどか「あ、……ママ、おかえり」
パパはお部屋かな? などど思いつつ。
詢子「おー、まどか。今日はまだ寝ないのか?」
まどか。「んー。ちょっとおなか空いちゃったから」
まどかはそのままキッチンへ。
詢子「夜食はお肌の大敵だぞ?」
まどか。「ウェヒヒ、育ち盛りだから大丈夫」
詢子「そっか。頑張って育ちな。そのままじゃアタシも心配だからね」
まどか。「これからだもーん」
まどか。(大丈夫、大丈夫。上手くやれてるよ)
一応、ご飯を確認。残ってた。ママのお夜食用?
冷蔵庫に残り物の具材も発見。
ここは無難にチャーハンでも……と思ったそのとき。
手元が影になる。
まどか。「え?」
真上に詢子の顔が。
まどか。「ちょっ……」
腕を捻り上げられたらしい、としか判らないまま、
気がつくと身体が宙に浮いて次の瞬間、
まどかはダーンと床に叩き付けられていた。
詢子「ふん!」(ファイティングポーズ
まどか。(な、何?)
痛い、というか衝撃で息が出来ない。
知久「なんだい今の音……まどか!?」
部屋から知久(まどかパパ)が飛び出してきた。
詢子「いや、まどかが虐められたそうな顔してたからさ」
知久「詢子さん酔ってますね」
まどか。「……っ、はぁっ、はぁっ」
知久「まどか、大丈夫かい?」
まどか。「う、うん……」
息が止まる程びっくりしたが、ダメージは大した事無かった。
手加減して‘上手く’投げたみたいだ。
詢子「まどか。ちょっと来な」
まどか。「え?」
知久「詢子さん」
詢子「ちょっと二人にしておくれ。ああ、それと、まどかが夜食食べたいって」
知久「そう、それなら何か作るよ。軽いもので良いよね」
詢子「腹にたまるものがいいな。あたしの分もよろしく」
知久「はいはい」
テーブルを挟んで向かい合う。
詢子「さて」
まどか。「……」
詢子「何をやらかした?」
まどか。「」ビクッ
詢子「あたしにも、知久にも目を合わせられなんて相当なもんだね」
まどか。「……」
自分の時間軸で家族や街の人を結果的に見殺しにしてしまったことが、
まどかの心に深く影を落としていた。
『知っていた』という点で、まどかは紛れも無く当事者だった。
でも、ただ流されるままで何もしなかった、何も出来なかったのだ。
明るく振るまう演技をしていても、まともに目などあわせられるはずが無かった。
詢子「何があったんだ? 昨日はこんなじゃなかっただろ?」
まどか。「」
駄目だ。何か言ったら溢れてしまう。
詢子「別に一つや二つ秘密があったって構いはしないさ。
親を頼らなくなるのも大いに結構だよ」
『パパーなにか食べるものないー?』
いつもならそう言っただろう。だが、今、まどかは迷わず自分で作ろうとした。
詢子「けどな。自分の娘が何か大罪を犯したような顔してたら話は別だろ!」
まどか。「」ビクッ
詢子「責めてるんじゃないよ。背負いきれないんなら頼れよ! おまえアタシの娘だろ!」
知久「詢子さんそのくらいにして。出来ましたよ」
知久がチャーハンを二皿持ってきて二人のそれぞれ前に置いた。
夜食なので小盛りだが、スープもついてる。
詢子「……」
まどか。「」
意地になってるのでも、拒絶しているのでもない。
ただ、溢れ出しそうになる感情に耐えていた。
詢子「食いな。お腹減ってんだろ?」
まどかは黙って頷いで、ゆっくりとチャーハンを口に運んだ。
昼からずっと食べていないせいで、精神状態と裏腹に、食は思いのほか進んだ。
詢子「ほら、アタシのもいいから」
詢子は自分の皿もまどかの方に差し出した。
まどか。「……ぐふっ」
むせる。
詢子「ほら。慌てない。スープ飲んで」
まどか。「」(スープで飲み干す
詢子「大丈夫かい?」
まどか。「っ……うぇ……」
嗚咽が漏れる。
詢子「おいしいだろ?」
まどか。「……うんっ……ぐすっ」
結局、泣きながら二皿平らげた。
久しぶりに食べたパパの料理は少ししょっぱかった。
結局、食べ終わった後は何も言われず、
まどかは無事に部屋に戻る事が出来た。
まどか「えっと、すごい音がしたけど大丈夫だった?」
まどか。「ウェヘヘ、ママに投げられちゃった」
まどか「ええ!?」
まどか。「ちょっと明日の言い訳が大変かも」
まどか「な、何をしたの?」
まどか。「お夜食、ママの分まで食べちゃった。ティヒヒ」
まどか「??」
その晩はもう一ラウンドあった。
ベッドに二人で寝そべって話していたが、
まどか「ちょっとトイレ」
まどか。「いってらっしゃーい」
今度はこの時間軸のまどか。
廊下に差し掛かったところで。
詢子「まどか」
まどか「あ、ママ」
詢子「ん?」(マジマジとまどかの顔を見る
まどか「なあに?」
詢子「??」(首を傾げる
まどか「?」
詢子「まあ、いいや。いっといで」
頭上にはてなマークを飛ばしながらまどかは用を足しに向かった。
戻ってくると、まだいた。
詢子「なんか、すっきりしないから一応言っておくわ」
まどか「?」
詢子「まどかが何をしてどうなっていようと、あたしはあんたの母親なんだ。それを忘れるなよ?」
まどか「う、うん」
詢子「言いたいのはそれだけだ。じゃ、おやすみ」
まどか「うん、おやすみなさい」
詢子「あ、待ちな」
まどか「え、なあに?」
詢子「夜食の感想聞きわすれた」
まどか「え? なあに?」
詢子「なあにじゃないだろ。折角あたしが腕を振るったのに」
まどか「え? う、うん。おいしかったよ。パパのには敵わないけどね」
詢子「……」
まどか「?」
詢子「じゃ、早く寝な」
まどか「う、うん」
まどかの部屋。
まどか。「どうしたの?」
まどか「なんか感動したよ。ティヒ」
まどか。「なんの話?」
まどか「あ、でもまどかさんへの言葉だよね。だから言っておくね」
まどか。「ママ?」
まどか「そう。えっと、
『まどかが何をしてどうなっても、あたしはあんたの母親だ。それを忘れるなよ!』
だって。ちょっと違ったかな?」
まどか。「結構似てるね。85点。ティヒヒ」
まどか「もう。まどかさんったら……あれ」
まどか。「……ん」(枕を抱いて顔を埋めてる
まどか「……感動した?」
まどか。「うん、泣けちゃった」
まどか「そっか」
おやすみ
夜食を作ったのはパパ
それに対してのこの流れ・・・
>詢子「なあにじゃないだろ。折角あたしが腕を振るったのに」
>まどか「え? う、うん。おいしかったよ。パパのには敵わないけどね」
>詢子「……」
なんたる策士 wktk
翌朝。
まどか「ねえ起きて」ユサユサ
まどか。「えー、夢オチぃ?」
まどか「夢じゃないよ。パパもう起きてるから早くしないと」
まどか。「あー、おはよう」
まどか「うん。おはよう。っていうか、もうママ起こしに行くから、こっそり帰ってね」
まどか。「りょうかい~」
そして少し後。
まどか「まだ居たんだ?」
まどか。「ママ起きた?」(着替えてる
まどか「うん。今日は手強かった」
まどか。「ああ、昨日飲んでたみたい」
まどか「そうだと思ったよ」(制服に着替え始めた
まどか。「でも、べろんべろんじゃなかったよ」
まどか「あ、そういえば、昨日ママがお夜食作ってくれたでしょ?」
まどか。「え? 作ったのパパだよ」
まどか「うそ!?」
まどか。「ママ自分で夜食なんて作らないよ。前ママが料理したのいつだっけ?」
(と、いいつつ、まどかの髪をツインテールに結ってあげる)
まどか「あ、ありがと。でも、ママが腕を振るったって……」
まどか。「ママがパパに腹にたまるものが良いって言って、
それでパパがチャーハン作ってくれたんだよ?
本当にママそういったの?」
まどか「うん。でも……あ」
まどか。「なに?」
まどか「わたし、ママが作ったと思って『おいしかったよ』って答えちゃった」
まどか。「え?」
まどか「変に思われちゃったかも」
まどか。「そ、それって」
まどか「え? なに」
まどか。「えーっと、何って言うんだっけ、……かける?」
まどか「お布団?」
詢子(……一人漫才?)(ドアの外
まどか。「違うよ。ほら、おとり捜査みたいな?」
まどか「え?」
まどか。「『なんとかをかける』っていうじゃない?」
まどか「えーと、もしかして『かま』?」
まどか。「そうそれっ!」
詢子(解離性人格分裂症? ……いや、ないない。まどかだぞ)
まどか「それで?」
まどか。「ええと、かまをかける」
まそか「ママが?」
まどか。「うん」
まどか「わたしが二人いるかもって?」
まどか。「たぶん」
詢子(あれだ。二重人格ごっこ。このくらいの年頃によくあるあれか)
詢子(でも、昨日の様子からして、放っておくと本気でそういう病気に
なりかねない……のか?)
詢子(とりあえず、止めさせるか)
まどか「ど、どうしよ」
まどか。「ええと」
詢子「まどか、朝っぱらから妄想も大概にし……」ガチャ
まどか。「」
まどか「」
詢子「」
詢子「……」バタン(無言でドアを閉める
まどか(は、早く出て行って! 窓から!)
まどか。(わ、判った!)
……
まどか「……」(そーっとドアを開けてみる
もう誰もいなかった。
食卓にて。
知久「ねえ、まどか」
まどか「なに?」
知久「ママ、朝ご飯食べないで会社に行っちゃったんだけど、何かあったのかな?」
まどか「さ、さあ? 判んないよ」
知久が思い切り心配していた。
[ほむらサイドにもどる]
時間はすこしだけ前後する。
ほむら「学校にいかなくてはいけないのだけど」
マミ「あ、学校の支度……」
ほむら「そうよ。一旦家に帰らないと」
マミ「いいわよ。心配してくれるのね?」
ほむら「あなたの精神状態は私の死活問題なのよ」
マミ「大丈夫よ? もう少し信頼して欲しいのだけど……」
ほむら「……」
マミ「本当よ。だってもう暁美さんったら、
昨日からずっと私だけの為にそばに居てくれたでしょ?
これってもうある意味ラヴ・コールじゃない?」
ほむら(ラヴいうな。っていうかどうしてそうなるの)
昨日のあれはほむらが幾多のループの末辿り着いた、
『ゼロ距離監視』とでもいうべき対巴マミ戦略だった。
だがこれは効果が高い反面、
マミにあらぬ誤解をされる可能性を秘めた諸刃の剣でもあった。
マミ「信頼してもらえないってことは、それに答えられてないってことよね?」
ほむら「まあ、ある意味そうね」
マミ「私、暁美さんの信頼を勝ちとれるように頑張るわ」
ほむら「そ、そう?
なら、私が期待しているのが私への依存じゃないってこと、
判ってくれるかしら?」
マミ「もちろんよ。うふふ、よろしくね?」
ほむら(魔法少女の秘密を全て知って錯乱してないマミというのは、
とても貴重なのだけど……少し重たいわ)
ほむらは、マミが当面は安定しているだろうと判断し、
「私を失望させないでね」と言い残して、学校へ行く用意の為に家へ向かった。
朝は、まどかも帰ってくることになっていたが、
結局まどかには会えなかった。
ほむらは、それならこの時間軸のまどかの方に
どんな感じだったか聞いてみようか、などと思いつつ登校したのだが。
教室につくと、何故か美樹さやかに夜叉のような顔で睨まれた。
ほむら(……なんで?)
今日はここまで
このスレで終わらない予感
さやかはほむほむがどんな相手なのか調べて、見境無しの両刀の誑しと判断しそうだな。
仁美「師匠と呼ばせてください(ほむほむの手を握って力強く迫る)」
さやか「騙されないで、アイツは可愛ければ男女どっちだって良い変態よ」
休み時間。
授業中もずっと視線を感じていたのだが、
まどかの様子を見ようと振り返るとやはり美樹さやかが睨んでいた。
まどか「さやかちゃん? どうしたの?」
さやか「ん、なんでもないよ」
まどか「でも……あ、どこいくの?」
さやか「ちょっとね」
意を決したように立ち上がりこちらに向かってきた。
さやか「……転校生、話がある」
ほむら「なに?」
寝不足だろうか? 目にくまが出来てる。
例によって場所を変え、立ち話。
さやか「あんたさ、昨日恭介のとこ行ったでしょ?」
ほむら「……ええ、行ったわ」
さやか「そんな警戒しないでよ。恭介を励ましてくれたんだって?」
ほむら「そ、そうね。そんな感じだったかしら?」
もの凄く睨んでいたので、恨み言でも言われるかと身構えていたのだが。
さやか「恭介がさ、あんたにお礼を言いたいんだって」
ほむら「別に礼をいわれるような事はしてないわ」
さやか「そうじゃなくて!」
ほむら「!?」
がしっと肩をつかまれた。
さやか「あたしも感謝してんのよ!
恭介あんなに一生懸命練習してたのに指が動かなっちゃって、
医者には諦めろっていわれてさ……」
ほむら「美樹さやか……?」
さやか「あたしもう、どうやって励ましたらいいか判らなくなっちゃって。
でも、もう平気だって。まだ立ち直れてないけど、大丈夫って恭介がいうんだ。
それ転校生、あんたのおかげなんだってさ」
ほむら「……」
さやか「だから。恭介を頼む」
ほむら「え」
さやか「あたしじゃ駄目なの。あたしが落ち込んでると恭介が心配する。
幼馴染みで付き合いが長いからさ、元気な振りしてても恭介には判っちゃうのよ。
大変なことになってるのに、あたし、恭介の負担にしかなれないの。
あんたならきっと恭介を支えられるわ」
ほむら(ええと、美樹さやかはいったい何を?)
さやか「べつに恋人になれなんて言わない。ううん、なったって構わないからさ」
ほむら(構わないって……、ええ!?)
つづく
さやか「恭介ってわりとイケメンでしょ? お買い得だよ?」
ほむら「ちょっ、そ、そんな事いわれても……」
さやか「一時的でも良いからさ。恭介が立ち直るまででもかまわないよ。だから……」
意表をつかれてしまい、ほむらもつい動揺してしまったが、
美樹さやかは自分で何を言っているか判ってないのではないだろうか?
なにやら、思い詰めて訳が分からなくなっている気がする。
ほむらは、一息深呼吸をしてから言った。
ほむら「……それは『一時的の方が良い、立ち直るまでにして欲しい』の
間違いじゃないのかしら?」
さやか「え!?」
声がひっくり返った。
ほむら「あなたの手に負えない間、私にケアを頼んで、
立ち直ったらもとの鞘に戻りたいって聞こえるのだけど」
さやか「も、元のサヤってなによ。恭介とあたしはただの幼馴染なんだからべつに」
ほむら(反応するの、そこなの? 私は『男の子が好き』とかよく判らないけど……)
さやか「そ、そりゃ、『大切な』って言ってくれたけど、べつにあれは……」
ほむら(……たぶんこういえば)
ほむら「『好き』なんでしょ?」
さやか「」
赤くなった。
ほむら「上条恭介を守るためなら私でも利用しようって、そういうことかしら?」
さやか「……わ、悪い?」
ほむら(あ、開き直った)
さやか「そうよ。あたしは恭介が好き」
ほむら「だったらどうして私なんかに頼むの?
あなたらしくないわ」
さやか「……だって」
ほむら「?」
さやか「あんたは、女のあたしから見ても美人だし、成績も優秀だし、スポーツも万能だし」
ほむら「……」
さやか「あたしで敵う訳ないじゃない!」
ほむら(こっちが本音なのかしら?)
さやか「あんたはあたしに出来ない事を恭介にしてくれたのよ。
だからこれからも恭介を支えてあげてよ」
そう言い放つ美樹さやかだが、表情は暗い。
ほむら「はぁ……」
さやか「なによ」
ほむら「私には無理よ」
さやか「どうして? じゃあ、なんで恭介に会ったの?」
ほむら「私が上条恭介に会ったのは美樹さやか、あなたに契約させないためよ」
さやか「あたし……?」
ほむら「あなたは上条恭介の腕の治療を願って契約する可能性が高かった」
さやか「なに? それだけの理由で?」
ほむら「そうよ」
さやか「じゃあ、あんたは、ライバルを増やしたくないってだけの理由で、
恭介の心をもてあそんだっていうの?」
ほむら「ま、待って誤解よ」
さやか「誤解ってなによ!」
ほむら「私はあなたが後悔するって判っているのに契約なんてして欲しくなかったのよ。
上条恭介に会ったのは、どうすれば契約しなくて済むか探る為で……」
さやか「なに? じゃあ、あたしの為だって言いたいの?」
ほむら「そうよ。私は魔法少女同士の競争なんて興味ない。
グリフシードに困っている訳ではないわ」
さやか「それこそ大きなお世話よ。なんであんたがそんなこと気にするのよ。
あたしにはあんたがあたしのこと心配しているようには見えないんだけど」
ほむら「それは……」
さやか「というよりむしろ、あたしのことなんてどうでも良いけど、
なにか必要があって仕方なく関わってる気がするわ」
ほむら「……」
ほむら「……そう。やっぱりあなたには判ってしまうのね」
ほむら「そうよ。その通り。あなたが魔法少女になると、
結果的にまどかをが苦むことになる。
それが許せないのよ」
さやか「なんで、まどかが出てくるのよ……」
ほむら「私はまどかだけが幸せになれればそれで良いの。
他はどうでも良い。
でもあの子は優しすぎて周りの人たちの不幸に心を痛めてしまう。
だからよ」
さやか「……訳判んないわ」
ほむら「別にあなたは理解してくれなくて良いわ」
さやか「本気なの?」
ほむら「ええ」
さやか「まどかのため?」
ほむら「そうよ」
さやか「なんか」
ほむら「なに?」
さやか「あんたなら恭介を任せられるとか思ったんだけど」
ほむら「任せられても困るわ」
さやか「こんなとんでもない馬鹿だったなんて」
ほむら「どういう意味かしら?」
さやか「まどか馬鹿?」
ほむら「否定はしないわ」
さやか「真顔でいうのね」
ほむら「本当の事だもの」
さやか「……どうしてあんたがそんなにまどかに入れ込んでるのか判んないけど、
なんかそう考えると色々思い当たるわ。
QBを虐めてたのもそれ?」
ほむら「そうよ」
さやか「まどかが二人いるのも、あんたの仕業らしいけど、
もしかしてまどか二人にして喜んでるんじゃないの?」
ほむら「それは……違うわ。
異常な運命に巻き込んでしまったことを今でも後悔してる」
さやか「本当? なんか、二人ともあんたに懐いてるよね?」
ほむら「私はいつまでもまどかのそばにいる事は出来ないわ。
だから、あなたは魔法少女になんかならずにずっと
まどかの親友でいて欲しいの」
さやか「なにそれ」
ほむら「あなたが魔法少女になればまどかが悲しむだけでない。
もっと多くの周りの人に不幸を振りまく事になってしまうわ。
魔法少女っていうのはそういう存在なのよ」
さやか「あんただって魔法少女じゃない」
ほむら「そうよ。だから、まどかに近づいてはいけないの」
さやか「あんた一緒に居るじゃない。あのまどかと」
ほむら「あの子も、いつか幸せになれる場所を見つけてあげたら、
私は離れるわ」
さやか「……」
ほむら「なに?」
さやか「気に入らないわ。なんなのよあんた」
ほむら「私の生き方のことを言っているのなら、
あなたにどうこう言われる筋合いはないわ」
さやか「……まあ、いいわ。あんたがまどかにしか興味がないとしても。
責任は取ってもらうから」
ほむら「責任? 何の事?」
さやか「……」
なにやら恨めしそうに睨まれた。
ほむら「?」
さやか「ああもう! なんであたしがこんな事言わなきゃならないのよ。
恭介はね、あんたに憧れちゃってるのよ!」
ほむら「えっ!?」
さやか「いままでずっと頑張って来たのに『腕はもう動かない』って
主治医の先生に宣言されちゃったのよ?
そんな時にあんたが病室に現れて、励ましてくれたのよ?
あたしも恭介があんなに惚れっぽいとは思わなかったけどさ……」
ほむら「ちょっと待ちなさい。だから私はそんなつもりは……」
さやか「だったら、どうしてくれるのよ?」
ほむら「つまり、はっきり『その気はない』と伝えて、
二度と会わなければ良いのかしら?」
さやか「駄目に決まってるでしょ! そんなの!」
ほむら(えー)
ほむら「どうして?」
さやか「ああもう。あんたが励ましてくれたおかげで持ち直してるってのに、
あんた恭介の絶望に追い討ちをかけるつもり?」
ほむら「結局、あなたはどうして欲しいの?」
さやか「恭介とつき合って」
ほむら(結局そこに戻るのね?)
ほむら「……」
さやか「返事は?」
ほむら「一つ聞いていいかしら?」
さやか「なによ」
ほむら「あなた、QBと契約しようとは思わないの?」
さやか「あんた、あたしに魔法少女になって欲しくなかったんじゃないの?」
ほむら「そうよ。さっき言ったでしょ」
さやか「ああ。そもそも恭介に会ったのってあたしの契約を阻止する為だったわね」
ほむら「ええ」
さやか「だったら、成功してるわよ。それ」
ほむら「どういうこと?」
さやか「どうもこうもないわ。あたしはあんたに引きずり下ろされたのよ」
ほむら「引きずり下ろされた?」
さやか「そうよ。
あたしは恭介の腕が直るなら、この命捧げても良いって思ってた……」
ほむら(それは知ってたわ)
さやか「好きな人の為に命捧げるなんて、崇高な感じがしてちょっと格好いいじゃない」
ほむら「冗談じゃないわ。そんなことで契約するのは自己満足以外の何者でもない。
そんなの周りの人の事を考えられない愚か者のすることだわ」
さやか「ふうん。あんたらしいわね。
そうよ。自己満足。それで良かったのよ。
なのに、あんたが恭介にちょっかい出したせいで、
恭介が良くなればあとは何も要らないって思えなくなっちゃったのよ!」
さやか「恭介はあたしのことを『大切』って言ってくれたわ。
それで転校生のこと相談されてさ、
こんな相談出来るのあたしだけだっていわれて」
ほむら「……」
さやか「そりゃ、あんたに恭介をとられちゃったら嫌だって思ったよ。
でもさ、こんな関係でも良いかなとも思っちゃったんだ。
そうしたら、どうしてかなぁ……、
あたしが魔法少女になるのと引き換えに恭介の腕を治すことが
全然良い事に思えなくなったのよ。むしろ怖くなったわ」
ほむら(そういうことか)
さやか「悔しいけどあんたの思惑通りよ。
あたしは今、命をかけてまで魔法少女になりないなんて思わない」
ほむら「それは良かったわ」
おそらく『これ』だけでないだろう。
巴マミの生存やまどかの事も含めた今回の状況が、
美樹さやかの中の天秤のバランスを変えたのだ。
さやか「だ か ら !」
ほむら「なに?」
さやか「ちゃんと最後まで責任持ちさいよね」
ほむら「それで上条恭介とつき合えというの?」
さやか「そうよ」
ほむら「上条恭介が立ち直るまで?」
さやか「……そ、それは、限定しないわ」
ほむら(でも魔法少女になりたくないってことは
『幼馴染みポジション』は失いたくないってことよね)
ほむら「そんな他力本願であなたは良いの?」
さやか「あんたが先に手を出したんでしょ?」
ほむら「それはそうだけど。
あなた、私を信用出来ないのではなかったかしら?
私が上条恭介になにか酷い事をするとは思わないの?」
さやか「だって励ましてくれたじゃん」
ほむら「それは成り行きで……」
さやか「じゃあ逆に聞くけど、あんた恭介になにか悪さするようなやつなの?」
ほむら「彼はあなたを魔法少女にする原因になる存在だわ。
でも、だからといって彼に恨みとか憎しみとか
そういう感情を向けても意味が無い。
良くも悪くも上条恭介をどうにかしようなんて思ってなかったわ」
さやか「でしょ? あんた、思ってた程悪いやつじゃないわ」
ほむら「顔合わせるたびに威嚇してきたあなたとは思えない言葉ね」
さやか「恭介にはなにか思惑があって近づいてくる人が多かったわ。
だからそういうのに敏感なの。
そんな恭介があれだけ気に入ったんだから
成り行きとしても、ちゃんと真剣に励ましてくれんだと思うわ」
ほむら「……そう。あなたなりに私のことを評価してくれた上での結論なのね」
さやか「そうよ」(ドヤ顔
ほむら「はぁ……よくわかったわ」
さやか「じゃあ、恭介とつき合ってくれる?」
ほむら「それもお断りよ」
さやか「投げ出すつもり? それで恭介がどうかなっちゃったら、
あたし契約しちゃうかもしれないよ?」
ほむら「その気もないのにやたらな事を口走るのは止めなさい。
そうじゃなくって、前提から考え直しましょ」
さやか「考え直すって?」
ほむら「私につき合えといいつつ、あなた上条恭介のことを諦めるつもりは無いんでしょ?」
さやか「え? そ、それは……ぶっちゃければ、そうよ」
ほむら(正直ね。こういう所だけは美樹さやかの長所だわ)
ほむら「とりあえず、あなたのやりたい事は、判ったから」
さやか「え?」
ほむら「そうね。一緒にお見舞いに行くというのはどうかしら?」
さやか「えー。それだけ?」
ほむら「あなたの話からすると、私と上条恭介が個人的につき合う必要は
ない気がするのだけど」
さやか「……」
不満そうだ。
ほむら「私の出来る範囲であなたの幼馴染が立ち直るお手伝いをするわ。
それで許してくれないかしら?」
さやか「う、うーん……まあ、しょうがないかな。
じゃあ、最初はそういう形からってことで良いわ」
ほむら(……諦めてないのね)
とりあえず、ここまで
HDDとびますた
書き貯めが全滅orz
まあ完結まで書いてないしまた書けばいいんだが
トリップの元文字列がランダムな文字列で忘れてしまったから
IDが変わらないうちに新しいトリップ貼っておく。
美樹さやかには先に教室に戻ってもらった。
なぜならば、
ほむら『巴マミ』(テレパシー
マミ『あら』
向かいの校舎の屋上に巴マミがいた。
ほむら『何をしているの?』
マミ『暁美さんを見かけたから』
「見かけた」というか、フェンスに張り付いてガン見していたのだが。
ほむら『今朝、私の言ったこと覚えてるのかしら?』
マミ『とりあえずそっち行くわね』
いきなり変身。
ほむら『ちょっ、話を聞いて――』
制止する隙もなく、こちらの校舎に跳んで来た。
マミ「これで話ができるわね」
ほむら「誰かに見られたらどうするのよ」
マミ「大丈夫よ。それより美樹さんは大丈夫?」
ほむら「話、聞いてたのでしょう?」
マミ「ええ。でも安心できないわ」
ほむら「そうかしら?」
マミ「美樹さんはQBが見えなくなったわけではないのでしょう?」
ほむら「そうだったわね」
ほむらが上条恭介に会った後、彼女が家に帰って落ち着くまで監視していたが、
少なくともその時は確かに見えていた。
マミ「美樹さんにあの話をしないの?」
ほむら「あの話?」
マミ「魔法少女になってはいけない本当の理由よ」
ほむら「私から話して信じてくれるかどうか。
それに、せっかく魔法少女から興味を失いつつあるのに
わざわざまたそんな重い話をするのは考えものなのだけど」
マミ「でも、あなたが他人の色恋沙汰に深く関わるのを私は感心できないわ。
話をすれば、暁美さんがそんなことしなくても良くなるんじゃなくて?」
ほむら「それは判らないわ」
彼女は思い込み次第で「命と引き換えに」とか考えてしまう人間なのだ。
すべてを知っても契約する可能性はゼロにはならないだろう。
マミ「美樹さんには私が魔法少女になるような方向で勧めてしまったから、
責任を感じてるのよ。完全じゃないとしても抑止力にはなるでしょう?」
ほむら「それで?」
マミ「私も一緒に話をするわ。その方が信用してもらい易いんじゃないかしら?」
ほむら「そういうこと?
判ったわ。それなら早めに機会を設けるわ」
マミ「ええ。お願いね」
やっと立ち話おわった。
もう少しいこうか
時間はちょっとさかのぼって朝。
「いってきます」と家を出たまどかは、
家の前でさっき出て行った筈の‘まどか’に出くわした。
まどか「あれ? 帰ったんじゃなかったの?」
まどか。「一応、学校に着くまではわたしの担当だから」
まどか「そうなんだ」
鹿目家から慌てて逃げ出した“まどか。”だったが。
脱出してすぐ、何故か早くに家から出て来た詢子を目撃し、
遭遇する危険を避けて家の近くに隠れていた。
ちなみに“まどか。”は私服。
髪は下ろして頭は深い帽子のいつもの変装だ。
まどか「あ、朝ご飯食べてないよね? 先に言ってくれてたら何か持って来たのに」
まどか。「いいよ。帰ってから食べるから気にしないで」
まどか「そう?」
まどか。「うん」
という訳で、さやかと合流するまでは一緒に歩く。
まどか「というか、家、帰ったら一人だよね?」
まどか。「え? うん、そうだけど?」
まどか「ほむらちゃんが学校行ってる間ずっと?」
まどか。「そうだね」
まどか「その、寂しくないの?」
まどか。「うーん、それは……」
まどか「寂しいよね? わたしだもん」
まどか。「でもほら、ほむらちゃんについて来たらこうなること判ってたし、
それに、生きてるみんなが見られたから、わたし、結構幸せだよ?」
まどか「でも……」
まどか。「前も言ったよね? わたしはみんなの未来を作るために来たって。
寂しがってる暇なんてないから」
まどか「……」(悲しそうな顔してる
まどか「とりあえず、ほむらちゃんが学校行ってる間も
お掃除したり洗濯したりご飯の支度とかあるし」
まどか「……」(今度は複雑そうな顔してる
まどか。「? どうしたの?」
まどか「まどかさん、ほむらちゃんの『お嫁さん』みたいだよ?」
まどか。「え ////」
「ちょっと憧れちゃう」と、そんな台詞が聞こえたところで、さやかの姿が目に入り、
二人は分かれた。
続く
埋まる前に次スレ立てて誘導すべきか悩む。
まあ、ここはそんなに速くないしまだだと思うけど。
次スレは『まどか「ここは?」ほむら「私の転校前の入院先よ」』で立てる予定
書き溜まってからじゃないと立て逃げみたいになるのでまだです。
朝は結局入れ違いでほむらに会えなかった‘まどか。’である。
時間は飛んで今は午後。
まどかは夕食の買い出しに出かけていた。
今朝‘まどか’に「お嫁さんみたい」と指摘されてしまったが、
実際、家では掃除・洗濯・食事の用意と主婦のような生活をしているのだ。
まどか。「ん、そろそろスーパーに行かないと」
と、特売の時間を気にしつつ街を歩いている時だった。
??「ちょっと、そこのあんた?」
まどか。「え? わたし?」
振り返って、後悔した。
??「やっぱり、まどかだ」
一目散に逃げた。
詢子「あ、こら逃げんなっ!」
まどか。(なんでママが居るの!?)
詢子は思い切り追いかけて来た。
まどか。(お仕事は? 会社に戻らなくていいの?)
詢子「ちぃ、ちょっと体力落ちてんな……」
などとぼやきつつも、しつこく追ってくる。
まどか。(まっすぐ逃げちゃ駄目だ……)
人通りもまだ少なく、馬鹿正直に大通りを逃げていたらすぐ捕まってしまう。
なので適当な路地に入った。
そして二つほど角を曲がったところで、壁に張り付いて身を隠した。
詢子「まーどーかー」
まどか。(怖っ……)
カツカツと靴音が近づいて来る。
詢子「居ることは判ってるんだ。大人しく出て来な」
まどか。(まっすぐここに向かってる!?)
脅しじゃなく、本気で判ってるのだろうか?
上手く隠れたつもりだったが、恐怖に我慢できなくなったまどかは
足音をたてて走り出した。
詢子「そこか!」
まどか。(この先は行ったことないのに……)
とにかくまっすぐは不味いってことで角を曲がったら案の定行き止まりだった。
そこは少し広くなっていて三方が壁に囲まれた広場のようだった。
詢子「ふっ、追いつめたぞ?」
まどか。(どうしよう、変装してるし、誤摩化せ……ないよ。
ママ相手にそんなの無理)
詢子「……まどかだよな?」
まどか。「……」
ちなみに、まどかはいつもの帽子と眼鏡の変装ぷらす、
補導されないように‘中学生に見えないであろう地味な服装’をしている。
詢子「学校はどうした」
まどか。「え、えーっと、ちゃんと行ってると思うよ?」
詢子「ふーん、そうかい……」
まどか。(怖いよぅ……)
詢子「あたしゃあんたのせいで病人扱いさ。
同僚はともかく上司にまで今日は休んでくれとお願いされちまったよ」
まどか。「ええと」(なんて答えればいいのか困惑
詢子「んなこたぁどうでも良いんだよ」
一応、説明してくれたようだ。
その時、
。『……』
胸にさげていた“ソウルジェム”が何かを言った。
まどか。(え? 危ないって?)
詢子「ん? なんだ?」
詢子も何か気配に気づいた様子だが、
まどかには、詢子の背後で景色が変わっていくのが見えていた。
??「ぶぅーーーーん!!」
奇怪な声を立てて、ふざけた容姿をした‘何か’が飛び回る
まどか。(魔女? ううん、たぶん使い魔! ママが危ない!)
詢子「まどかっ! 動くな!」
まどか。「え!? ちょっと」
詢子がまどかを庇うように抱きついて来た。
使い魔が何か攻撃らしきものを放っていたのだ。
詢子「くっ……」
その攻撃は直撃ではなかったものの詢子の肩をかすめていた。
まどか。(マミさんお願い!)
緊急事態と悟ったまどかはそのまま変身し、詢子の腕の中から飛び出した。
詢子「え? まど……か?」
迷わず弓を構え、飛びまわる使い魔に向かって一度に複数の矢を放った。
まどか。「ああっ、動きが速い……」
沢山放ったのに、全部かわされてしまった。
使い魔「ーーーーーーー」
まどか「えっと……」
これは魔法。ただの射的じゃないのだ。強く念じればきっと当たる。
再び弓を引く。
まどか。「今度は逃がさないよ!」
矢は一本だけ。
でもさっきとは違って強く、速く。
だが、それが使い魔に届こうかというところで、
こんどは横から飛んで来た槍に弾かれてしまう。
??「ちょっとちょっと、何やってんのさ、あんた」
まどか。「あ! 杏子ちゃん!」
杏子「あん? おまえ何処かで会ったか?」
まどか。「え、えっと」
杏子「まあ、いいや。あんた何やってんの?
ありゃ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」
まどか。「え? 何のこと?」
杏子「だからさ、使い魔ってのはさ4~5人ばかり食えば魔女になるんだからさ」
そうすりゃちゃんとグリフシード落とすだろ?」
まどか。「そんな、四、五人って……」
杏子「知らなかったのか? だったら今度から気をつけんだな」
杏子「弱い人間を魔女が食う、その魔女をアタシたちが食う。
そういう強さの順番なのさ。
使い魔なんていちいち相手にしてたらやってけないぜ?」
まどかはツカツカと杏子の前に近づき、
杏子「なんだよ」
そしてパンと杏子の頬をはたく。
杏子「何しやがる!」
まどか。「きゃっ!」
杏子はまどかを突き飛ばした。
まどかはよろけて数歩後退したがすぐに杏子を睨み返した。
まどか。「そんなこと言っちゃだめだよ!」
そんなまどかの後ろには心配そうにこちらを伺っている詢子が見える。
杏子「……ふうん。そういうことかい。
人助けなんてくだらないことに魔法使っちゃってるわけだ」
まどか。「どうしてそんなこと言うの?
杏子ちゃんはそんな子じゃないよ」
杏子「るせえ! あたしの何を知ってるってんだ!
そもそもお前何もんだ? なんであたしの名前を知ってる?」
まどか。「そ、それは……」
杏子「まあ、いいさ。教えてやるよ。
魔法少女ってのはな、徹頭徹尾てめえの為に力を使うもんだ。
違うってんなら、」
まどか。「杏子ちゃん……」
杏子「力づくで来な!」
まどか。「!!」
杏子が槍を振る。
寸止めで頬をかすめるくらいのつもりだったが、
まどかの危険を察知した‘ソウルジェム’がバリアを展開し、
槍は盛大に弾かれてしまう。
杏子「自動防御か。おもしれえ魔法使うな?」
まどか。「や、やめてよ」
杏子「そこの一般人」
詢子「!?」
杏子「死にたくなかったらとっとと失せな。
ここは修羅場になるぜ」
詢子「……」(神妙な顔をするが動かない
杏子「まあ、いいけどよ」
まどか。「杏子ちゃん?」
杏子「言ったろ? 止めさせたかったらねじ伏せなって」
そう言いつつ、軸線を変えるように杏子は横に移動。
そして、
まどか。「」
まどかは悲鳴を上げる暇も与えてもらえなかった。
杏子が人にあり得ない速度でまどかに接近。
こんどはバリアごと吹っ飛ばされて、背後の壁に叩き付けられた。
詢子「まどかっ!!」
まどか。「くぅっ……」
バラバラとまどかがめり込んだ穴の周りから壁の破片が崩れ落ちる。
詢子「だ、大丈夫……なのか!?」
破片を払ってまどかが出て来たので詢子が驚いている。
煤けている程度で、大事は無い。
が、ダメージはあったようで、まどかはそこで膝と手をついてしまう。
杏子「……おい。何のつもりだ?」
詢子「……」
まどか。「や、やめて」
杏子「一般人がでしゃばってんじゃねえよ」
詢子はどこに持っていたのか伸縮式警棒を手に構え、
まどかを背にして杏子に対峙していた。
詢子「あたしはね、こんな場面で何もしないで黙ってるような
冷たい女じゃないんだよ」
杏子(なんだこいつ?)
まどか。「ま、ママ、だめっ!」
杏子(ママだぁ?)
詢子「そうさ。あたしは鹿目まどかの母親なんだ!」
杏子「……うぜえ」
杏子「超うぜえ」
杏子は構えていた槍を肩に担ぎあげた。
杏子「興ざめだよ」
まどか。「杏子ちゃん?」
杏子「乳離れできてねえお子様が
魔法少女の真似事なんかやってんじゃねえよ!」
そう言い放って、杏子はジャンプして壁を蹴りながら上方へ跳び去ってしまった。
ここまで
980超えてしまった
やっぱり立てるか
次スレ立てました
まどか「ここは?」ほむら「私の転校前の入院先よ」
まどか「ここは?」ほむら「私の転校前の入院先よ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1326644606/)
///////////////////埋めネタ:QB「僕らは取り残されたんだよ」///////////////////
ほむら「私の戦場はここじゃないわ」
QB「暁美ほむら、きみは……」
カシャン! ギュイーン!
ほむら「……」
QB「……」
ほむら「え」
QB「え」
ほむら「魔法が発動しない? まさかそんな!?」
QB「……ああ、なるほど」
ほむら「何なの? 何をした!?」
QB「何もしてないさ。君の、いや、暁美ほむらの魔法はやはり時間跳躍だったようだね」
ほむら「何……を?」
QB「自分の姿をよく見てみるが良いさ」
ほむら「変身が、解けている!?」
QB「なにを言ってるんだい、変身どころか君は魔法少女ですらないじゃないか」
///////////////////埋めネタ:QB「僕らは取り残されたんだよ」///////////////////
ほむら「ソウルジェムがない……、そんな……どうして」
QB「時間遡行者暁美ほむらの記憶を丸ごともらっている君のことだ」
ほむら「え」
QB「もう何が起こったか薄々判ってるんじゃないかい?」
ほむら「それじゃあ、私は……」
QB「そうさ。君は正真正銘、僕とは契約していない『この時間軸の暁美ほむら』さ」
ほむら「なんてこと? 上書きされて一つの存在になっていた訳じゃなかったの?」
QB「そうなるね。かなり特殊な魔法だったようだ」
ほむら「じゃあ毎回私のように取り残された存在がいたのね」
QB「それはどうかな?」
ほむら「?」
QB「身体の中にある魂が、毎回激しい魔女との戦闘に耐えられたとは思えないよ。
大抵は途中で逝ってしまったんじゃないかな?」
ほむら「そう。……私は運が良かったのね」
QB「まあ、この状況だから、それもどうかと思うけどね」
ほむら「……そうだったわね」(見上げる
///////////////////埋めネタ:QB「僕らは取り残されたんだよ」///////////////////
ほむら「……動かないわね。10日くらいで地球が滅ぶのじゃなかったかしら?」
QB「期間はエネルギーの規模から推定したにすぎないんだ。
実際の魔女の行動は予想がつかないよ」
ほむら「そう……」
QB「ところで暁美ほむら、君は黙って死ぬつもりかい?」
ほむら「何の話かしら? この期に及んで私に選択肢があるような言い方ね」
QB「その通りさ。判ってるだろう? 君はまだ『契約してない』んだ」
ほむら「この星から立ち去るのじゃなかったの?」
QB「最後に契約して君の願いくらいは、叶えてあげようと思ってね」
ほむら「どういう風の吹き回しかしら?
おまえは目的のために合理的行動しかしないのじゃなかったかしら?」
QB「その合理的行動さ。君は気づいていないだろうけど、
君の魔法的素質がここにきて跳ね上がっているんだ」
ほむら「私の素質?」
QB「そうさ。これは今まで魔法少女である同質の魂と同化していたのが原因か、
それとも現時点で地球の滅亡を知る唯一の存在であるがゆえの因果が作用
しているのか、あるいはその両方なのか、
理由はどうあれ君の持つ魔法係数があり得ないほどの数値に
なっているんだ」
ほむら「……あり得ないといっても、まどか程じゃないのでしょう?」
///////////////////埋めネタ:QB「僕らは取り残されたんだよ」///////////////////
QB「まどかは別格だよ。
君の素質は……そうだね、どんなくだらない願い事で契約しても
素で魔力が巴マミを楽々凌駕する位といえば判りやすいかな?」
ほむら「その魔力でどうしろと? その程度では『あれ』に勝てないのでしょう?」
QB「残念ながらね。
あり得ないとは言ったが君の規模の魔力係数は前例が無かったわけじゃない。
でも逃げることくらいなら出来るかもしれないよ?」
ほむら「意味が無いわ。まどかが魔女になってしまったこの世界はもう……」
QB「諦めるのかい?」
ほむら「いいえ。過去に行った『私』は諦めてないわ」
QB「この世界を捨ててね」
ほむら「そうよ。残された私はこの時間軸の運命を受け入れるしか無いのよ」
QB「それで良いのかい?」
ほむら「お前は、私から得られるエネルギーが欲しいみたいだけど、
私には何のメリットも無いわ」
QB「本当にそうかな?」
ほむら「私は『まどかだったもの』に取り込まれて消えるのよ。邪魔をしないで」
QB「確かに君は今、戦い続ける運命に捕われていない。
繰り返しの戦いの記憶をもつ君がその選択をするのも判らなくはないさ」
ほむら「何が言いたいの?」
QB「でも君は勘違いしてはいないか?
君は別に戦いの運命から解放された訳ではない。
いや、君は戦いを始めてすらいないじゃないか。
それは過去へ跳んだあの暁美ほむらの記憶だ。
君の経験ではない」
ほむら「……」
///////////////////埋めネタ:QB「僕らは取り残されたんだよ」///////////////////
QB「君は勝手に身体を乗っ取っとられて、
君の世界がこんな結末にされてしまったことが、
悔しくはないのかい?」
ほむら「それをおまえの口から言うの?」
QB「それも含めてだよ。君自身は何もしていないじゃないか。
何も出来ないまま終わってしまっていいのかい?」
ほむら「それは……」
QB「諦めたらそれまでだ。でも君なら運命を変えられるよ」
QB「避けようのない運命なんて君が覆せばいい」
QB「そのための力が、君には備わっているんだから」
ほむら「私が覆したい運命は、おまえの力が及ばない所にあるのよ?」
QB「高い確率でそういう願いをするだろうね。判ってるさ」
ほむら「じゃあなんで?」
QB「これだけの素質を持った子が目の前にいて
契約をすすめないなんてありえないよ」
ほむら「エネルギー回収の見込みがないとしても?」
QB「可能性はゼロじゃないさ」
ほむら「合理的判断ってわけ?」
QB「その通りだよ」
ほむら(こいつの言うことは道理が通っている。
魔力係数の話もおそらくミスリードを誘うような詭弁ではない。
だとすると……)
QB「だから……」
ほむら「……」
QB「……僕と契約して、魔法少女になってよ!」
ほむら「手元に銃が無いことが悔やまれるわ……」
埋めネタへのレスは次スレに書いてもいいけどほどほどにね
///////////////////埋めネタ:QB「僕らは取り残されたんだよ」///////////////////
QB「……それは契約した後にでもすることだね」
ほむら「風が吹いて来たわ」
QB「魔女が活動を始めたようだね」
ほむら(まどかが「行くなら早く行け」と言ってるようだわ)
ほむら「……ひとつ聞いて良いかしら?」
QB「なんだい?」
ほむら「私が契約したらワルプルギスの夜には勝てるのかしら?」
QB「それは君次第じゃないかな?
願い事で力を望んだとしても、
単純な力比べでは勝負にならないだろう。
まどかに一撃で倒されたとはいえ、あれでも特殊な魔女だからね。
でも戦い方に相性があるように、工夫次第では良い線行くと思うよ」
ほむら「工夫次第で拮抗できる位の力はつくってことよね?」
QB「そうさ。まあ、願い事が過去に戻ることで確定なら、
どこまで行けるか判らないけど、
さっき過去に跳んだ暁美ほむらよりは格段に強くなれるだろうね」
ほむら「……判ったわ。契約する」
QB「そうか。じゃあ、教えてごらん。君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」
ほむら「私は――――」
――――
――
(1000なら続かない)
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