とある愛憎の一方通行 (494)
傷つき、歪み、しかし、それでも少年は前を向いて歩き出そうとする。
そんな男が最後に選択するものは愛か、それとも憎しみか
人は何故落ちる?―――それは這い上がる為だ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382618975
~前作紹介~
運命の歯車が入れ替わった世界で、
素晴らしき出会いと悲しき別れに
化け物は翻弄され、彷徨いながらも
人としての道を歩みだす
とある彷徨の一方通行
とある彷徨の一方通行 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363885856/)
残酷な世界で、ずっと望んできた
死の淵で少年が望んだものは復活だった。
とある復活の一方通行
とある復活の一方通行 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369923649/)
復活を果たし、悪党としてではなく
英雄として生きる少年に待ち受けるのは
熾烈な運命だった。
とある熾烈の一方通行
とある熾烈の一方通行 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373033126/)
【注意事項】
・キャラ崩壊(主に一方通行)
・全く原作に忠実じゃない
・一方通行は爆発しない
・一方通行嫌いな人は嫌な思いをする前にブラウザを閉じる様に
九月二日 午前一〇時 とある銀行支店
外部からのテロリストによる侵攻事件の後始末に一日中追われていた風紀委員達は
その働きに対するご褒美と体の休養の為にと一日だけの特別休暇を与えられた為
実の所あまり疲れを感じていない数人の風紀委員達はこの機に一日中遊んでいようと
月の初めに振り込まれる奨学金を引き出すために銀行にやってきている。
そして、昨日の作業で一番成果を出していた白井黒子もそうした人間の一人だった。
「はぁ……、全く昨日は本当に疲れましたの」
「御坂さんが気になって上の空だった人が言うセリフとは思えませんね」
「……私の記憶が正しければ、少なくともあなたよりは働いたはずなのですの」
「やだなー、私と白井さんじゃ能力に圧倒的な差があるじゃないですか。
となると、必然的にやるべき仕事の量も変わってくると思うんですよねー」
「………」
今すぐ目の前のナメくさきった主張ごとふざけた口を封じてしまおう。
そんな風に考えた白井黒子だったが、途端にその考えは打ち消される。
ダダダダダ!!! と鳴り響くサブマシンガンの銃声によって
「なっ!?」
「全員、頭を下げろ! さもなきゃ撃つぞ!!」
黒塗りの仮面をつけた五人の様々な銃を持った男たちが銀行に突然現れ
威嚇射撃を行ったと思われる先頭にいた男はそう怒号が飛ばしながら
入り口の傍に立っていた警備の人間をサブマシンガンで殴り飛ばした。
そして後ろに続く男たちの内、二人は中央に進むと客たちに銃を向け
残った二人の大きなボストンバックを肩に掛けた男たちは受付の台を飛び越え、
震えあがる銀行員に脅すように銃を突きつけ金庫を開ける様に要求する。
瞬く間に銀行内は制圧され、風紀委員達も強盗の数に怯えて強盗が去るのを祈るのみ。
そんな中、大能力の力を持つ故か白井黒子だけが状況を冷静に整理していた。
(敵の数は五人、拳銃を持った男が二人とサブマシンガンをもった男が三人。
これだけの犯行の手際の良さからすると、相当手馴れていますわね)
そうこう状況を整理している内にボストンバックを札束で満杯にした二人の男が
金庫室の扉を乱暴に開けると、再び受付を飛び越えるとロビーにいる三人に声を掛ける。
「よし、警備員の奴らが来る前にズラがるぞ!!」
(ッ! 今ここで逃がすわけにいきませんの!)
男の発言に焦った白井は、覚悟を決めると太腿のホルダーの金属矢に手を伸ばす。
刹那、彼女が触れた金属矢が空間移動され次々と男達の銃器に突き刺さった。
自らの武器が一瞬で封じられたことに慌てふためく男達に立ち塞がる様に
白井黒子は自身の体に空間移動を実行し、出口の一歩手前に躍り出る。
「あらあら、運が悪いですこと。私、風紀委員の白井黒子と申しますの」
白井がそう言い終えるや否や、先頭にいた男が銃を放り棄てると白井黒子に殴り掛かる。
自身の顔面に容赦なく迫りくる拳を白井黒子は体を小さく動かしあっさりと躱すと
そのまま男の懐に入り込み、彼の胸に自身の手をそっと優しく添えた。
瞬間、男の身体はその姿勢のまま彼の後ろにいた男の背後へと転移され
ゴッ!! と転移された男は仲間の後ろ首を殴り飛ばし気絶させてしまう。
「なっ!?」
「せめて警告ぐらいはさせてくださいな」
白井黒子は戸惑いを隠せない様子の男を学生鞄で容赦なく殴りとばす。
その攻撃が隙をつくかのように荷物を放り投げた男二人が白井黒子に襲い掛かるが
彼女は先頭の一人の腕と胸元を掴み取り体の向きを一八〇度回転させながら
そのまま肩越しに思いっきり投げもう一人の男に思いっきり叩きつけた。
四人の男が気絶したことを確認した白井黒子は、体勢を整えながら前を見る。
そこには、仲間が倒される様子で達観するように立ち尽くす男がいた。
「……あなたは攻撃してこないんですの?」
「馬鹿馬鹿しい、金にならない事はやりたくないんだ」
ふざけているかのような男の言葉に白井は一瞬戸惑ったが
すぐに冷静さを取り戻すと、自身の身体に空間転移を実行する。
転移先は男の背後、そして白井がそのまま男に体に触れようとした瞬間
男は勢いよく動き出すと、白井黒子の背後に回り込み彼女の頭を掴んだ。
「え?」
ガッ!!! と予想外の結果に驚いたような間抜けな声を上げる白井の頭を
男は近くにあった記入台の上に容赦なく叩きつけ、その辺に抛り捨てる。
そして、男は懐からグリップから弾倉が飛び出ている自動拳銃を取り出し
安全装置を外しスライドを引くと、ダンダン! と白井の肩に撃ちぬいた。
「ぁ……ぐ……!」
「白井さん!」
白井が呻き声を上げると、それまで縮こまっていた初春が勢いよく駆け出し
男を睨みつけたまま、白井の盾となるように彼女の身体に覆いかぶさる。
「う、撃つなら私を撃ってください!」
「いやいやいや、弾丸だってタダじゃないんだ。そう無駄遣いするかよ」
男は小さい子供を諭すような柔らかい口調でそう言うが、
仮面の隙間から窺えるその目は酷く冷徹なものだった。
そして、自動拳銃をセミオートからフルオートに切り替え
男は時計を見やりながら、馴れ馴れしく少女たちを話しかける。
「それに、お前達には感謝してるんだ。面倒な手間を省かせてくれたからな」
「面倒な手間?」
「こゆこと」
自身の言葉をオウム返しのように聞き返した初春に男はそう答え、
曲げていた腕を思いっきり真っ直ぐ伸ばし銃の引き金を引いた。
―――その銃口を気絶している仲間である男達に向けて
くぐもるような銃声が鳴り響き、四人の男たちの心臓が撃ちぬかれ
あっという間に男達が倒れている床に血だまりが形成される。
「ひっ……ど、どうして?」
「昨日、仕事をしくじってちまって儲かるどころか大損したんだ。
だから、用済みは殺して自分の分け前を増やさないといけない訳」
声なき悲鳴を上げながら呟くように問い質す少女に、男がそう答えた時
ガシャン! と一台の車が後ろ向きで銀行のガラスの扉を突き破り停止した。
「じゃあな、もう会わない事を願うぜ」
男は震える少女にそう告げると、車から降りてきた運転手を撃ち殺し
運転席に乗り込み、車を急発進させるとその場から逃走する。
警備員が現場に到着したのはそれから三分後の出来事だった
というわけで、中二っぽい前書きと初回投下でした。
7巻の再構成は一方通行のダークっぷりが多少ヤバいので悪しからず
その前にやって欲しいネタがあれば遠慮なく書き込んでください。
実現できるかどうかわかりませんが
それでは次回の投下で
レスありがとうございます。
そして、すいません。盛大にミスりました。
>>9の最後の部分
男は震える少女にそう告げると、車から降りてきた運転手を撃ち殺し
転がっている札束の詰まったボストンバックをトランクに放り込むと
運転席に乗り込み、車を急発進させるとその場から逃走する。
という脳内補完をお願いします。
決して、山手がドジキャラと言うわけではありませんので
どうも、>>1です。
投下の前に誤字修正を
>>7において、
×安全装置を解除してスライドを引くと
○スライドを引いて、安全装置を解除すると
学園都市製の銃って事で型番分からないから名前出せなかったけど
次回の投下の時にこういう感じの銃使ってますみたいな感じでまとめるから
良ければ、参考にしていただきたいと思います。
それでは投下
九月四日 午前八時 ランべス・ロンドン地区
朝の通勤ラッシュを迎えた築三〇〇年を超える建築物が立ち並ぶ古い街中を
赤い髪の神父、ステイル=マグネスはしかめっ面を浮かべながら歩いていた。
原因は彼の隣を歩く簡素なベージュに身を包んだ、見た目一八ぐらいの少女。
イギリス清教の最大主教であり、ステイルの直属の上司にあたる人物である。
そんな少女からステイルに告げられたのは、極めて重要な任務命令だ。
数多の魔術結社を単身で潰した実績を持つ彼にとってさほど珍しくない事だが
告げられた内容はそれらを軽く超える程難易度が高いものだった。
解決するべき事件は深刻な事態ではあるものの構造自体はシンプルなものだ。
二〇世紀において最高にして最低と言われた魔術師、アレイスター=クロウリー。
そんな男が書き上げた魔導書の中に『法の書』という世界で有名な一冊がある。
『人間に使えない天使の術式を記している』
『解読と共に十字教の時代は終わる』
というような学説が浮上しているが、どれも憶測であり未だ判然としていない。
内容を読み解こうにも、暗号解読の専門家でさえ匙を投げだす程の複雑な暗号なのだ。
しかし、その魔導書を書き記したアレイスターの魔術師としての凄まじい実力ゆえに
そのような物騒な憶測が絶えず、宗派を問わず世界中の魔術師から恐れられている。
しかし、そんな中ローマ正教の一人のシスターが解読法を見つけ出し
そして、あろう事か法の書と共に誘拐されたという事件が起きてしまう。
要するに、たった一人のシスターを誘拐犯から救出すればいいだけの話。
それだけの話のはずだったのだが、誘拐を実行した敵の正体が問題だった。
その正体は天草式十字凄教、以前に神裂が女教皇を務めていた十字教勢力だ。
そして、分かりやすいことに現在神裂との連絡が一切途絶えているという。
神裂が天草式の側に付き、ローマ正教と交戦しようという意思を見せた場合
間違いなく学園都市にいる超能力者第一位の少年が協力することは明らかだ。
また、獲物がいる事を嗅ぎ付けた彼のかつての仲間達が参戦するかもしれない。
かくして芋づる式のように、彼に課せられた任務はどんどん重くなっていく。
『……私一人で、神裂と死神部隊のサイコパス連中全員を相手にしろと?』
『場合が場合ならね』
物騒な言葉を発するステイルだが、その声は周囲のサラリーマンには聞こえない。
通信用の護符を使い、テレパシーのように思考のみで会話を成立させているからである。
『安心せまほし。禁書目録とその管理主を同行させば、一方通行を縛る事が可能なるのよ。
如何に優れし殺しの技術を持ちたらむと、彼らとて決して心を失ひし化け物ならず。
よりて人間としての弱点をつかば、掌握するは難しくはなしなのよ、ステイル』
そう不敵に笑うローラにステイルは思わず戦慄し、顔を引き攣らせた。
サイコパスと評されるほどの暗殺部隊さえもチェスの駒のように扱う度胸。
それこそ曲者揃いの必要悪の教会を束ねる者として相応しい実力だった。
『……ところで、そのふざけた日本語は私を挑発しているのですか?』
瞬間、冷酷な顔を浮かべていたローラの顔つきが途端にキョトンとしたものになり
僅かに体を動きを止めると、顔を真っ赤にして慌て始める。
『んな!? 私の日本語がふざけているにはべり? そ、そんなるはずはなきのよ。
色々と勉学を励みて、さらには本物の日本人にチェックをいれてもろうたのに……』
『はぁ、本物の日本人とは一体誰なんですか?』
『つ、土御門元春というヤツなのよ……』
『どっからどう考えても明らかなる人選ミスじゃないですか!?
あんな嘘つきに習うなら死神部隊の奴らの方がまだマシですよ!』
思わずステイルがツッコミを入れると、ローラは叱られた子供のようにしょんぼりとする。
部下の前なのだから荘厳として欲しいと願う彼に、彼女は項垂れながら言葉を贈る。
『私とて、さすべかりしのよ』
『既に実行済みだったんですか……、それで結果は?』
『訪ねに行ひせば、全員より銃で撃たれてしまひき』
『……でしょうね』
面倒臭い上司を持ち、面倒臭い任務を与えられ、面倒くさそうな溜息をついたステイルは
落ち込んでいるローラに先導される形でそれほど大きくない教会に入っていく。
その建物の名は聖ジョージ大聖堂。
魔女狩りと宗教裁判の暗い歴史が凝縮された負の空間。
そこで行われた会話は、外で行われたもの程甘くは無かった。
今回の投下はここまで
最近、低下傾向にあった投下速度をもとに戻したいところです。
11月後期にいろいろ忙しくなって、どうしても中断してしまうので
それでは、また近いうちに
どうも、>>1です。
まず、前回言ってた銃器一覧を
一方通行が普段使っている銃:Bretta 92FS(ただし、自分で改造済み)
一方通行が半殺し用に使う銃:Benelli M1 super 90
一方通行が海の家でミーシャ狙撃に使った銃
及び山手がインデックスや美琴の狙撃に使った銃:Blaser 93
銀行強盗で威嚇射撃に使われた銃:Ingram MAC-10
他の二人がサブマシンガンが持っていた銃:MP5 A3、IMI Uzi
残りの二人が持っていた拳銃:Glock 17.Betta 92fs
生き残った一人(山手)が取り出した二つ目の拳銃:Glock 17 (Converted to full-auto)
誰得情報だけど気になる人はググってみてください
(全部ダークナイトに出てくる銃だったりするけど)
レッツ投下
九月八日 午後二時 とある学生寮、七階の通路
「だからなー、二学期というの学生にとってかなり忙しい時期なのだぞー。
学生の時にしか経験できないドキドキ青春イベントがてんこ盛りだからなー。
その為の準備に誰もかれもが必死に頑張ってるから、仕方がないのだぞー」
メイド服を着た土御門舞夏はのんびりとした口調でそう言って、インデックスを宥めた。
そんな彼女は何故かドラム缶型の清掃用ロボットの上にちょこんと正座しており
プログラムによって前に進もうとする清掃ロボットをモップで動きを封じている。
そんな姿を何も知らない人間が見れば、さぞかし驚いたことだろうが
現在、寮にいるほとんどの学生が学校に行っている為その心配はない。
もっとも、それこそインデックスの機嫌が悪い原因なのだが
「それは分かるけど、でもやっぱり私は暇だよ退屈代つまんないんだよ。
ここ最近のとうまは全然遊んでくれないし構ってくれないし」
それでも、苛立ちを抑えきれないインデックスは舞夏に抗議する。
何しろ学園都市広しと言えども、彼女の話し相手は基本的に上条しかいないのだ。
それは、上条当麻が学生寮の一室にインデックスを監禁しているからではない。
学園都市は八割が学生の為、平日の昼時は郊外と表現しても差し仕えない程人気が無い。
よって、彼女が新しい話し相手を探しに散策したところで大した成果は得られない。
そんな中、土御門舞夏という人物はそんな常識に囚われなかった。
時間によって人の流れが極端に変化する学園都市の中で時間や場所を問わず、
インデックスは彼女が街の中を清掃ロボットに移動する進む姿を目撃している。
「上条当麻にも上条当麻なりの事情があるんだから迷惑はかけちゃ駄目なんだぞー。
それに決して上条当麻だって好きにほったらかしている訳じゃないんだからなー。
お前が思っている以上に、学校と言うのは色々と大変な場所なんだぞー」
むう、とあまりの正論にインデックスは口を膨らませながらも口をつぐんだ。
流石のインデックスも反論することは無く、話の内容を別の話題に切り替える。
「じゃあ、どうして舞夏は学校に縛られてないの?」
「ふふん、私は例外なのだよー。メイドさんの研修は実地が基本だからなー」
時間に縛られていない様に見える土御門舞夏が通っている学校の名は繚乱家政女学校。
道路のガム剥がしといった雑務から各国の首脳会議といった大仕事に至るまで、
あらゆる局面で主人を補佐出来るスペシャリスト育成を目指しているメイド養育施設だ。
そして、その見習いメイドの中で一定の試験を突破しある程度の実力を認められた
エリート生徒だけが『実地研修』という特別ステップに進むことが許される訳である。
当然、そんな汗と涙の混じった複雑な事情など全く考えないインデックスには
至極単純且つ理想的で夢のような都合のいい話にしか聞こえない。
「つまりメイドになれば、いつでもとうまに会いに行っていいんだね?」
単に先程の議論にメイドという新しい単語が追加されただけのように思えたが
滅私奉公の精神が強く染み付いている土御門舞夏は指摘しないことにした。
「中々に前衛的で柔軟な発想だが、メイドさんの道はかなり厳しいものなのだぞー。
毎日毎日、男に料理を作り置きして貰ってる家庭スキルゼロの女の子には特になー」
「そ、そんなことないんだよ! 最近は少し出来るようになったんだから!
これからもいっぱい美味しい料理をとうまに食べさせてあげるもん!」
「それだけじゃないぞー、ちゃんと洗濯とかも―――」
「じゃあとうまをメイドにする! そしてとうまに遊びにきてもらうかも」
「その切り替わりはあまりも素敵で感動的すぎて全米が泣いてしまうから
上条当麻の前では絶対にやらないのが優しさというものなだぞー」
体をせわしなく動かすインデックスに、舞夏が呆れながら軽くツッコミを入れた瞬間
ガッ! とインデックスの背後に忍び寄った何者かが彼女の後ろ首に手刀を叩き込んだ。
カクン、と人が切れた操り人形のようにインデックスの身体は崩れ落ち
突然の出来事に、舞夏は混乱と恐怖が入り混じった表情を浮かべる。
そんな舞夏に、平凡な作業服を身に纏い黒塗りの仮面をつけた襲撃者は
グリップから弾倉が飛び出ている拳銃を向けると、静かに告げた。
「今から俺のいう事を一言一句正確に覚えてその通りに行動しろ。
間違える度にこいつの関節に銃弾がぶち込まれるからそのつもりで」
今回の投下はここまで
次回の投下は三日以内を予定しています。
それでは、また
最近、日常のネタが全く思いつかないが故こうなりました。
あまりにも日本語がおかしいので今修正
>>27
×他の二人がサブマシンガンが持っていた銃
○他のサブマシンガンを持っている二人の銃
>>28
×退屈代つまんないんだよ
○退屈だしつまんないんだよ
>>31
×優しさというものなだぞー
○優しさというものなのだぞー
誤字脱字でシリアスの雰囲気台無しじゃないすか、すいません。
以後、二度とこんなことが無いように善処いたします
どうも、>>1です
SSとは関係のない痛々しい前書きと後書きがあったのにも拘わらず
ここまで読んでくださった方々、感謝をレスをくださった方々に感謝を
それでは投下
九月八日 午後三時 廃劇場『薄明座』
あれからインデックスを連れ去った作業服の男は黒塗りの仮面を外し
外部からの清掃業者に成り済まし見事に学園都市から抜け出すと
そのまま清掃業者が使う配達車で寂れた廃劇場に来ていた。
そして、気絶させられ深い眠りに陥っているインデックスの身体を放り込んだ
セキュルティ対策用の特殊迷彩が施された清掃用ビルメンカートの取っ手を掴むと
廃劇場という割に比較的綺麗な建物に入り、中を迷うことなく進んでいく。
そして、外から差し込む光を唯一の光源としている空虚な大ホールに入ると
何もない舞台の上でただ立ち尽くす男を見つけると、声をかけた。
「ご希望の品だ、そしてお前の望み通り無傷だ。気の小さいロリコンめ」
「心外だな、恐怖とは自分の身を守る為に必要なれっきとした人間の防衛本能だ。
君達のようなサイコパス連中に狙われていると分かっていて平然と出来るものか。
それに、僕の尊敬する女性はエリザベス一世で、好みのタイプは聖女マルタだ」
彼らの会話に『相手を理解しよう』というコミュニケーションの基本は無い。
お互いに牽制し合う様に殺気を放ち、懐にある自らの凶器に手を伸ばしている。
その姿は、さながら真剣勝負をする直前の武士同士の様子そのものだった。
「とにかく、俺は自分の仕事を果たした。当然それに見合う対価は払ってもらう」
「それについては心配しなくていい、必要手当としてイギリス清教が保証しよう」
死神部隊への任務の通達は他の暗部とは異なり極めて単純なものだった。
彼らに与えられる情報はたった二つしかない―――人物に関する情報と日付のみ。
そして、一つの例外もなくその日付にその人物が物言わぬ死体となって発見される。
殺害方法は多種多様で、その手段を選ばない残忍さからサイコパスと評されるまでに至った。
現在の彼らの行動要因は、『適当なそこら辺の魔術師に八つ当たりする』という事にある。
故に、もし仮に死神部隊が既に天草式によるシスター誘拐事件の事を嗅ぎ付けていた場合
彼らはまずインデックスを連れ出そうと学園都市に侵入したステイルの命を狙うだろう。
しかし、如何なる脅迫も交渉も通用しないようにも思える彼らだが一つだけ弱みがあった。
それは仲間だ、彼らは非情でありながらも自分たちの仲間には人間らしい一面を見せる。
―――かつて仲間を殺された一方通行が憎しみに駆られ修羅と化した時のように
だからこそ、唯一の例外として多額の報酬と引き換えにイギリス清教と繋がっている
死神部隊の男にステイルは学園都市からインデックスを連れ出すように依頼したのだ。
彼ならば、誰にも勘付かれずに一人の女の子を誘拐することなど造作ないはずだし
仮にばれても、魔術師との繋がりさえ隠し押せば、かつての仲間に殺されることはない。
と、ローラから言われたステイルはその言葉通りに事を運び、それは成功と言えた。
「金の亡者と便利な人間というのは同義だな、報酬さえ渡せば何でもいう事を―――」
ステイルの口から放たれる作業服を着た男への嘲りの言葉は突然そこで途切れる。
ガギリ、と音もなくステイルに近づいた作業服の男が拳銃を彼の口にねじ込んだからだ。
「勘違いするなよ、俺だってお前らの命令なんて蹴り飛ばしたいところだが
それでも目的の為に必死に我慢してんだよ、かつての仲間に頭まで下げてな」
人形のように無表情だった作業服の男の顔に、小さな『怒り』という名の歪みが生じる。
その僅かな表情の変化の裏に、灼熱の激情が渦巻いているのをステイルは感じ取っていた。
「後、言っておくが俺の目的は金じゃない、そんなものは俺にとって唯の通過点だ。
人間の行動の裏に隠れている真意が分からねえ様じゃ、お前は小物にしかなれない。
大物の掌に己の人生を捧げて涙を流すほど悔しがりながら死ぬのが目に見えている」
作業服の男は、ステイルの嘲りの言葉に言い返すように嘲りの言葉を送ると彼の口から
拳銃を抜き取り、清掃用ビルメンカートをその場に放置したまま出口に向かって歩き出す
ステイルはそんな作業服の男の背中を睨みつけながら、静かに口を開いた。
「ご忠告どうもありがとう、でも残念ながら僕の人生は既にある大物に捧げられているんだ。
でも、僕はその事を悔しがったことなど一度もないし、ましてや恥に思ったことも無い。
その大物の為に死ねるのならば、その時は心から幸せそうに大笑いしながら死んでやるさ」
「……まあ、せいぜい頑張れ」
まるで宣戦布告するかのようにそう嘲り返すステイルに作業服の男は
呆れかえったような表情をしながら小さくそう返すとその場から立ち去った。
今回の投下はここまで
そういえば、最近掌握通行やってない件について
7巻の内容が終わったら馴れ初め書くかもしれません
良くも悪くも原作に忠実なSSを一度も書かない俺ェ
次回の投下も3日以内の予定
それでは、また
どうも、>>1です。
平行スレが無事に完結出来て本当に良かった、うん。
返す刀でこっちもレッツ投下
九月八日 午後四時 とある歩道
どこにでもいる平凡な無能力者の一人の高校生、上条当麻と
学園都市に七人しかない超能力者の頂点に立つ高校生、一方通行。
それだけ聞くと、まるで正反対の世界にいるように思える彼らだが、
夕暮れの街を並んで歩く姿は下校中の親しい友人そのものだった。
「それで大覇星祭の準備で校庭で見物人用のテントを組み立てたのはいいんだけどさ
その直後に黄泉川先生にテントはいらないじゃんって苦笑いで両手を会わせられたり
片付けた途端に小萌先生にテントは必要なんですって怒られたりしたわけなんですよ。
いやー、今日も上条さんの不幸は暴走機関車の如く止まる事を忘れちゃってるなー」
「それを不幸の一言で済ませられるお前の心の広さはもはや聖人君子を超えるだろォな」
大覇星祭、それは一週間後に学園都市で執り行われる全学校参加の大規模な体育祭の事だ。
『能力者同士の大規模干渉データを収集する』という学園都市理事会の提唱によって
能力の全力使用が推奨されている為、漫画のような能力バトルが見ることが出来る。
上条は例の如く記憶喪失のせいで、一方通行はまともな学生生活を送ってこなかった為
二人とも大覇星祭の事を初めて知るようなものだが、あまりいい印象を抱いてはいなかった。
「いくら幻想殺しがあるっつても、わざわざ修羅場に突撃するのなー……」
「とか言ってウナギみてェにウネウネしながら全部打ち消すンだろォが」
「自分は立ってるだけで勝てるからって、他人事みたいに言いやがってこの野郎。
つかお前に勝てるやついねえだろ。俺みたいな能力者はそうそういないだろうし」
一方通行は『ありとあらゆるベクトルを操作する』という反則的な能力の持ち主で
例え火の玉や雷撃や真空刃が直撃しても、彼はそれを相手にそのまま返す事が出来る。
とはいっても、常盤台中学の制服を着た金髪の少女にリモコンのようなものでボコボコにされ
謎の大怪我による入院期間が一日引き延ばされた事から鑑みるに、完璧ではないようだが。
そんな喜劇を思い出しながら上条は軽くそう言ったが、一方通行の返答は予想外のものだった。
「……いや、俺は能力が強力すぎるのと人格の評価があまりにも悪ィから出る気はしねェな。
もっとも、今の俺は長点上機に停学処分を言い渡されてるから絶対に出れねェだろォが」
「は? 停学処分!? 何でそんな事になってんだよ!?」
「2ヶ月前ぐれェにムカつくババアを思いっきり殴ったンだが
どォやら長点上機に息子が在籍しているVIP様だったらしい」
「……あれー、おかしいな。何の擁護も出来ない」
とはいえ無駄な事はしない一方通行の事だ、きっと何か理由があるに違いない。
そんな風に自分自身を納得させた上条は深くは追及せず、話を違う話題に変える。
「てことは学校行ってないんだよな? となるとその大荷物は何だ?」
一方通行の肩には短期旅行に使えそうな程大きい黒のボストンバックが掛けられている。
上条は長点上機の学生鞄だと思っていたのだが、停学中というのだから違うのだろう。
「あァ、一週間前に何故か大怪我負った時に装備が一通りダメになっちまったンだ。
それでまとめてお買い上げっつゥ訳だ、もうすぐ『嵐』が来そうな気がするしな」
装備―――黒装束のような戦闘服に加えて小太刀や拳銃などの武器の事だ。
能力に使用制限がついてる彼にとっては必要不可欠なものだという事は理解できるが
上条は出来れば一方通行にそういった人殺しの道具を持ってほしくは無かった。
上条は一方通行の過去を知らないが、少なくとも明るいものではなかったことは分かる。
一方通行がどれだけ傷つけられ罪を背負い苦悩をしたのか上条には想像も出来ない。
それでも、否、だからこそ上条は一方通行がそうした武器を捨てる事を望んでいた。
仮に他人に言われて捨てたとしても、一方通行の生き方を変えることは出来ない。
一方通行が彼自身の意思で捨てた時こそ、一方通行が初めて救われる瞬間なのだ。
「オイ、上条。まさか記憶喪失が更新されて自分の家を忘れちまったンじゃねェだろォな?」
「えっ?」
一方通行の声に、思考の快適な一人旅から強制的に心を引き戻された上条は
体を小さく震わせると辺りを見渡し、目の前に自分の寮がある事に気付いた。
「ああ、悪い悪い。ちょっと疲れてたみたいだ」
「そりゃご苦労なこった。だが暴食シスターの世話も忘れンなよ」
「ハハッ、頭の痛覚が麻痺しない限り忘れねえって」
複雑な思いをとりあえず心の奥底にしまい込んだ上条はそう答えた時
不意に頭上から女の子と思われる声が上条と一方通行に投げかけられる。
「あー、かっ、かかかっかっ上条当麻ー。それに兎にそっくりなもやし男ー」
「流石の俺も頭上からケンカを売られたのは初めてなンだが」
「お、落ち着け。別に悪意があって言ってるわけじゃないんだ、大目に見てやってくれ」
「……もしそォだとすれば、そこが一番ムカつくポイントだけどな」
そんなやり取りをしながら、二人は顔を上げ声のした方向に視線を移す。
そこには七階通路の手すりから身を乗り出して手を振る土御門舞夏がいた。
清掃ロボットの上に正座している状態の為、バランスが危うく転落しそうに思えるが
当の本人は全く気にせず真っ青な顔でのんびりとした声を一生懸命張り上げる。
「き、きき緊急事態が起きたの。というかお前は携帯電話の電源切ってるだろー」
そう言われて上条はポケットから携帯電話を取り出すと電源が切れている事を確認し
とりあえずボタンを押して起動させた途端、大量の着信通知が画面に表示された。
舞夏の様子と行動に何か只ならぬものを感じた上条と一方通行は急いでエレベーターに乗る。
二人が七階に到着すると、舞夏は前へ進もうとする清掃ロボットを堰き止めていたモップを外し
解放された清掃ロボットが二人の前まで動くと、再びモップを前方の床に突き刺し動きを封じた。
その後ろでは飼い主と一緒にいるはずの三毛猫がしょんぼりと飼い主の〇円携帯を咥えている。
「大変だぞ。銀髪シスターが何者かに攫われちゃったー」
「は?」
「だから、誘拐だよ人攫い。通報したら人質の四肢を切断するって言われて
銃を向けられたから、何も出来なかったの。ごめんなー、上条当麻」
銀髪シスターという人物というのはインデックスの事を言っているのは間違いないだろう。
彼女が冗談を言っているとは思えない、現にインデックスが誘拐される理由などいくらでもある。
彼女は一〇万三〇〇〇冊もの魔導書を完全記憶能力によって脳内に保管している魔道図書館だ。
世界中の魔術師はその知識を欲しており、現に一度そうした人間による誘拐騒ぎまで起きている。
「ちょっと待って、何が起きたのか順番に教えてくれるか?」
そう言われた舞夏は段々と落ち着きを取り戻し、ぽつりぽつりと説明を話した。
今から二時間前、家政学校の研修で学生寮に訪れた舞夏は掃除をしていたところ
七階通路で暇そうにしていたインデックスに出会い、世間話をしていたという。
その時、黒塗りの仮面をつけた作業服の男がインデックスの後ろ首に手刀を叩き込み
一瞬で気絶させると舞夏に銃を向け、自らの指示を守る様に脅してきたらしい。
「それで、男の指示はここを動かずにお前たちを呼ぶ事とこの封筒を渡す事で……」
そう言って、舞夏は上条にダイレクトメールに使われるような横に細長い封筒を渡す。
恐怖以上に何も出来なかった負い目があるのか、その手は小刻みに震えていた。
「いや、銃を向けられていたんだから動かない方が却って良かったと思う。
闇雲に動いて犯人を刺激しちまったら何が起きるか分かったもんじゃねえからな」
上条はそんな舞夏に安心させる為の言葉を掛けながら、誘拐犯について考える。
話を聞く限り、魔術師というよりプロの殺し屋という印象が強かった。
だとすれば、何故魔術を使わないはずの人間がインデックスを狙ったのだろうか。
そんな疑問を抱きつつ、上条は誘拐犯が残したという封筒の中を調べた。
その中から出てきた便箋には、定規を使って書いたようなカクカクとした字で
『上条当麻 一方通行 彼女の命が惜しくば 今夜七時に 学園都市の外にある
廃劇場 薄明座 跡地まで 二人だけでやってこい』と書かれている。
「……小学生かよ」
恐らく定規を使って書くことで筆跡を誤魔化そうとしているのだろう。
だが、今日では個人特有の『指先の震え』を文字の溝から調べる鑑定方法があり
そもそも筆跡を消す為だけならそんな手間を掛けるよりプリンターを使った方が早い。
とは言っても、誘拐犯の犯行時の手際の良さと残忍さはプロそのものだ。
そんな人間が定規を使って一生懸命書いたと思うと滑稽にしか思えないが
「普通に考えれば、この馬鹿馬鹿しい脅迫状を書いた人間と誘拐したヤツは別人だろォな。
とりあえず、この文面からして暴食シスターじゃなくて俺達に用事があるって感じだ。
てことで、こンな馬鹿馬鹿しいものを真面目に書ける頭の悪いガキの面でも拝みにいくか」
「ああ、そうだな。ご丁寧に俺達の外出許可証と関連書類まで入ってやがる」
封筒からは脅迫状の他に、上条と一方通行が学園都市を出るのに必要な書類が全て入っていた。
上条はともかく一方通行の分までどうやって手に入れたのだろう、と二人は首をひねる。
超能力者である故に本人ですら申請しても手に入る可能性は限りなくゼロに近いはずなのに
小学生のイタズラと同レベルの脅迫状に、それに反比例して妙に手の込んだ下準備。
二人は呆れと疑問を抱きながら、舞夏に三毛猫を預け指定された場所に向かって歩き出した。
今回の投下はここまで
今回こそ誤字脱字はないはず……あったらすいません
それでは、また
どうも、>>1です
大分遅れましたが投下
九月八日 午後五時 廃劇場『薄明座』跡地
一時間以上の時間を費やして初めて目にする辞書を何度も引きながら一生懸命書いた脅迫状を
ボロクソにけなされた憐れな魔術師、ステイル=マグヌスは何もないステージの上にいた。
彼の隣には、目を覚ましたインデックスが女の子座りをしながら仏頂面をしている。
その反抗的な態度にはステイルに対するあからさまな非難が込められていた。
「卑怯者」
「返す言葉はないし、必要もないかな」
普段のインデックスからは考えれない敵意ある視線にステイルは一瞬怯みかけたが
彼はその感情を表に出さずに、咥え煙草を口から離すと昇華するように白い煙を吐いた。
そうして吹き出された白い煙が『禁煙』と書かれた表示板を撫でては儚く消えていく。
「大体状況は把握できたと思うから同じ説明を二度もする気はないよ。
君の記憶力を考えれば、それは非合理的で無駄な行為だろうからね」
「……イギリス清教の正式な勅命」
そう言われたインデックスはぽつりとそう呟きステイルから受けた説明を頭の中で整理する。
誰も解読できないと言われた『法の書』の解読法を発見した者が現れた。
その名はオルソラ=アクィナス、ローマ正教に属するシスターの一人だ。
『法の書』が解読されれば、十字教に属する者にとって凄まじい脅威となる。
その『法の書』とオルソラが日本に来たところ、何者かによって攫われたという。
犯人は多角宗教融合型十字教とも称される日本の十字教の一派、天草式十字凄教。
それを受け、ローマ正教が『法の書』とオルソラ奪還に向けて動き出した。
そして、天草式十字凄教の元女教皇だった神裂火織との連絡が途絶えている。
もし彼女がローマ正教と交戦した場合、間違いなく彼女と親しい一方通行は協力し
それに釣られる様に、元死神部隊が手当たり次第に魔術師を虐殺しに来るかもしれない。
よってイギリス清教は表向きはローマ正教の協力者として本件に関わり
彼らが行動を起こす前に可及的かつ速やかに問題にケリを付けるという事。
「その正式なお仕事に一般人のとうまとあくせられーたを巻き込む訳?」
「さあね、それを決めたのは僕ではないから何とも言えないね。
それに一方通行に関しては一般人ではなくれっきとした危険因子だ。
自らの信念が非常に希薄な彼は身内の為ならどんなことでもやるだろうし。
ま、今回の様にそれを上手く逆手に取れば味方にも出来るというわけさ」
それこそ上条当麻を巻き込む理由の一つであり、その為の誘拐。
現在、彼は一方通行と共に『インデックス』を助ける為にこちらに向かっている。
そこで『たまたま』法の書とオルソラを攫って逃走中の天草式と遭遇してしまい、
仲間であるインデックスを助けるためにやむなく戦う、というのが筋書だった。
学園都市とイギリス清教の間の取り決めによって、上条は禁書目録の管理主とされており
それ故に上条がインデックスの身を助けるのは自然であり、むしろ義務であるとも言える。
「大体話は分かったけど、やっぱり納得できないかも」
「そうかい?」
「こんな事しなくても、『助けて』って言うだけでとうまは助けてくれるんだよ。
例えどんなに危ない場所でも。だからこそ逆に言いづらい部分があるんだけど」
「……、そうかい」
ほんの一瞬、ステイルの無表情な顔が小さく動き微かな笑みを作り上げた。
その顔は、好きな男の子の事を楽しげに話す娘を見る父親のように見える。
「それと話を聞く限り死神部隊は既にイギリス清教に粛清及び解体された組織だよね?
いくら精鋭部隊と言ってもたかが数人程度の残党にちょっと大袈裟じゃないのかな?」
「そうだね、誰もがそう思うだろう―――実際に彼らと相対するまでは」
インデックスの疑問に対して、ステイルは苦々しい顔をしながらそう呟いた。
その顔には明らかな悔しさとその影に見え隠れする恐怖が渦巻いている。
「いざ蓋を開けてみれば待っていたのは一方的な虐殺ではなくまさしく戦争だった。
数にして二〇にも満たない彼らにイギリス清教の魔術師は惨殺されていったばかりか
恐怖を煽ることに長けている彼らに極限まで追い詰めら自殺、同士討ちも多くてね。
最終的には騎士派や軍隊まで出動して、双方合わせて一〇〇人以上の犠牲者が出されたよ。
それでも数人が隙をついて国外へ脱出した挙句学園都市に亡命してしまったけど」
だからね、とステイルは煙草の煙を吐きつつ一拍置いて
「死神部隊の力を数で考えた時から既に負け始めていると言っても過言ではない。
そうして出来てしまった心の隙に彼らは容赦なく入り込んでくるのだからね。
仲間こそ大切にするが、敵に対しては女だろうが子供だろうが切り刻む奴らだ」
だからこそステイルは死神部隊の男に自腹で高額な報酬を払い狂言誘拐を頼んだのだ。
最悪の場合、学園都市の中を歩いているだけでナイフで心臓を抉られるかもしれない。
自分だけならまだいい、しかし自身の隣にいる少女がそんな目に遭うのは
ステイルにとって何よりも耐え難く、絶対に避けるべき事態だった。
―――たった一度きりの自らの生涯を捧げた『大物』であるのだから
「……この事態の深刻さが良く分かったんだよ。でも、これからどうするの?
『法の書』とオルソラ=アクィナスを確保している天草式の本拠地まで行くの?」
瞬間、インデックスの目が普段の彼女からは考えられないような真剣味が宿る。
それは上条の負担を少しでも減らそうと情報を集めておきたいという気持ちからだろう。
当然と言えば当然だがそこにステイルへの配慮など全く無い、ほんの一欠片さえも
「いや、状況は少し変わった。一一分前にローマ正教と天草式が交戦したらしい」
オルソラ救出戦だね、と二時間前に作業服の男に言われた言葉を思い出しながら
機械のように平淡な声でそう告げ遠隔通信用の手段である煙草の煙を苦々しげに吐いた。
「それで成功していたら私はここにいる必要がないはずなんだけど」
「ご明察、でも完全に失敗したという訳でもないよ。が、状況はむしろ危うくなったね。
双方ともに死者こそ出なかったが、それが不思議なくらい派手な乱戦になったらしい。
『法の書』については不明だが、オルソラ=アクィナスはその隙をついて逃げ出したそうだ。
そして、彼女がローマ正教の元に戻っていない以上再び天草式の手に落ちる可能性は否めない」
「……、それはまずいかも」
誘拐犯には往々にして『人質が抵抗すれば暴力で黙らせる』という傾向が強く見られる。
ましてや一度逃亡した後に捕まれば、反抗心を削ぐ為に何をされるか分かったものではない。
そうなれば、彼らに二時間後で来るであろう上条達を待ち続ける余裕はないも同然だ。
この瞬間にも、ローマ正教と天草式の間で争奪戦が勃発しても不思議ではない、
「出来れば上条当麻と一方通行が来てから動きたかったんだけど、そうもいかないみたいだね」
ステイルがそう言った時、開けっ放しの出入り口に人影が現われる。
その人物は事件解決に派遣されたローマ正教の部隊のリーダーだった。
今回の投下はここまで
早く戦闘シーンが書きたいところです。
次回の投下は出来れば土日のどっちかにします。
それではまた
どうも、>>1です。
常にシリアスを目指しましたが頑張ってギャグ編を書いてみました。
レッツ投下
九月八日 午後六時 学園都市の『外』、外壁沿いの道
大覇星祭の準備の為に外部から多くの業者が頻繁に出入りするせいか
どことなくぞんざいになっているセキュルティチェックを終えた上条と一方通行は
コンビニの棚で色褪せていた観光ガイドの本を買って調べ目的地に向かう。
というはずだったのだが、上条にとって予期せぬ事態が発生する。
「……もうダメだ、これ以上歩けねェ」
「爺さんかテメェは!?」
コンビニを出てから歩き始めて二分程経ったとき、一方通行が音を上げてしまったのだ。
彼の足取りは生まれたての子羊のように頼りなく、その息は途切れ途切れに切れている。
誘拐犯に指定された地点、『薄明座』跡地に行くには一キロ程移動しなければならない。
今にも倒れそうな一方通行が歩いていくには、到底不可能と断言できる距離だろう。
「……お前ってイギリスのすげー特殊部隊の出身じゃなかったけ?」
「特殊すぎたンだよクソが……よし、丁度いい所に救世主が来たな」
「は?」
意味深な笑みを浮かべる一方通行の視線の先には清掃会社のロゴが入った一台の車。
そして、獲物を見つけた獣のような目をした彼はポケットから小型拳銃を取り出した。
「ちょっ、オイコラ! 待ってよ待ってください待ちやがれの三段活用!!」
「あァ? うるせェな、ちゃンとお前も乗せてやるから安心しろ」
「論点のベクトルがズレてる!? いいからとりあえず落ち着こう、な?」
今にも車に飛びかかりそうな一方通行を上条は必死に右手で抑え行動を制する。
その甲斐あってか清掃業者の車は無事に学園都市の方向へと走り去っていく。
ホッと安堵の息をつく上条だったが、一方通行は名残惜しそうに車の後姿を見つめ
しばらくすると何事もなかったのように平然とした顔で観光ガイドの本を開いた。
「全く、お前はもう少し平和に物事を考えるという事をだな―――」
「お、この先でバスが出てるンだとよ」
「聞けよ!!!」
そんな他愛もないやり取りをしながら上条と一方通行はバスの停留所にたどり着く。
その停留所は小さく老朽化したベンチが二つと所々が割れた雨除けの屋根があるのみ。
全体的に寂れた印象を与える停留所だったが、そこには既に先客がいた。
その姿は、おおよそ上条や一方通行と同じくらいの背丈の外国時らしき少女。
彼女はバスの時刻表にキスをするかの如く顔を近づけ食い入るように見つめている。
しかし肝心の読み方が分からないのか、体の動きは硬直していて微動だにしない。
そして彼女の服装は残暑にも拘わらず全身をすっぽりと覆う真っ黒な修道服だった。
よく見れば袖やスカートは着脱式になっているのだが、彼女は律儀にも外していない。
それに加えて両手に白い手袋を装着し頭全体をウィンプルでしっかりと覆っている。
そのせいで髪は見えないが、布一枚で隠せるという事はショートカットに違いないだろう。
「あのー……」
と、そんな彼女の様子を観察していた二人にシスターらしき少女が話しかけた。
これまで宗教関係者からことごとく酷い目に遭わせられてきている二人は警戒する。
「恐れ入りますが学園都市に向かう為にはこのバスに乗ればよいのでございましょうか?」
しかし、彼女の口から出てきたのは悪意が一欠片も感じられない丁寧で奇怪な言葉だった。
本当に困っている様子に思わず毒気を抜かれた二人は改めてシスターらしき少女の姿を見る。
顔以外の肌を全て覆い隠しているが、逆に盛り上がった胸やくびれた腰が強調され
修道女という事実が背徳感を想起させ扇情的な感情を駆り立てる不思議な人だった。
「いや、学園都市行のバスはねえよ」
「はい?」
「だから学園都市は外部との交通手段は完全に遮断しちまってんの。
乗り入れ契約してるタクシーがあるけど歩いた方が安上がりだぞ」
「そうでございますか、それであなた様達は徒歩で学園都市から出てきたのでございますね」
その言葉に引っ掛かった上条と一方通行は来た道を振り返ったが、ゲートは全く見えない。
顔に疑問を浮かべる彼らにシスターらしき少女は袖の中から古びたオペラグラスを取り出し
こちらで確認したのでございますよ、と何故か満面の笑みを浮かべてそう説明した。
丁度その時、寂れた停留所に相応しい古びたバスが向こうの道から現れ上条達の前に止まる。
路線図からバスの行先は薄明座の方向だと知った一方通行は上条にその事を告げると
じゃあな、とシスターらしき少女に一言だけそう言い冷房を求めてバスの中に入っていく。
「ちょっ、アイツめ……。とにかくバスに乗っても学園都市には行けねえから。
ここからだったら歩いても精々七,八分ぐらいでゲートに着くと思うけど」
「これはこれは、お忙しい中、ご助言いただき、どうもありがとうございました」
そう言ってにこにことした顔で頭を下げるシスターらしき少女に上条は反射的に頭を軽く下げ
彼女が頭を上げる前に背を向けると、一方通行を追いかける様にバスの中に入っていった。
―――
――
―
バスの中に入った上条は後部座席で燃え尽きた某ボクサーのようにだらしなく
窓に寄りかかっている一方通行の姿を見つけると、溜息を付きながらその隣に座った。
「やっと座れた……今度からは伸縮自在の杖でも常備するか」
「だから爺さんかテメェは!」
「まあまあ、落ち着くのでございますのよ」
束の間の沈黙、正確には無機質なバスの走行音だけが虚しく響き渡る中
上条と一方通行は顔を引き攣らせ、シスターらしき少女はにこにことしている。
「? はて、どうかなさったのでございますか?」
「お前だよ! バスに乗っちゃダメって五秒前に言ったよな俺!?」
「あ、はい。そうでございますね」
そう言ってシスターらしき少女はスカートの端を両手で撮んでバスの出口に向かう。
ちなみにバスが既に発信していて只今時速四〇キロメートルで絶賛走行中。
「死にてェのかお前は!? とりあえず戻れ! 話はそれからだ」
突飛な行動に見知らぬ人と話す事を極力避ける一方通行でさえも思わず声を上げ
はあ、とシスターらしき少女は不思議そうな表情を浮かべ頷きながら再び席に戻る。
ぽけーっと車内の様子を見渡すシスターらしき少女に上条は猛烈な不安を抱いた。
このまま彼女を放っておけば一〇分足らずで迷子になってしまうかもしれない。
が、当の彼女はそうした上条の心配など全く気付かず困ったような笑みを浮かべた。
「おや、何かイライラしてるようでございますね。飴玉などはいかがでしょうか?」
「いや別にイライラしてねーけど、折角だから有難く」
差し出されたオレンジ色の飴玉を受け取り上条は勢いよく口の中に放り込んだ。
瞬間、上条の顔が真っ青に染まり口元を押さえつけながら前の座席との間に顔を埋める。
「にっがぁ! オレンジだと思って舐めたからすげえにげぇ!!」
「渋柿キャンディというもので、喉が渇かなくなる効果がございますのよ。
詳しい話は分かりませんが、良薬口に苦しと言ったところでございましょうか」
顔を伏せたまま涙ぐむ上条にシスターらしき少女は笑顔でそう言い放った。
無論、そこに悪意など一%たりとも存在せず一〇〇%の善意の込められている。
「意味違うと思うンだがなァ……オイ、その手にあるもう一個の飴は何だ?
言っとくが俺は要らねェぞ、元々体内に水分が少ない場合は別だろォからな」
「まぁ。あなた様は水分が足りないのでございますか? でしたらお茶の用意がございますのよ」
「何で修道服の袖の中から魔法瓶が出てくるンだか……念の為聞くが中身は何だ?」
「おいしい麦茶でございますのよ」
「有難く貰う」
普段の一方通行であれば見ず知らずの他人から貰ったものは一切口にしないのだが
極度の疲労のせいか、それともシスターらしき少女の人当たりの良さからか
素直に喜び、彼女からカップとして魔法瓶の蓋を受け取り中身を一気に飲み干した。
瞬間、一方通行の白い顔が真っ赤に染まり絶叫を上げながら悶絶する。
「あっっっつゥゥゥ!? 熱っちっちち、熱ゥあ、熱ァァァ!!」
「熱い時に熱いものを、なるほどおばーちゃん的思考回路だな」
飴を噛み砕いたことで、口に苦みを残しながらも再起動を果たした上条は
にやにやと悪意の笑みを浮かべて熱湯の苦しみに悶える一方通行を見下ろす。
「そういえば、この方が不必要と申されたので飴がもう一個ございますのよ」
「えっ? あ、いやもう要らないというかなんというか……」
「あ……もしやお口に召さなかったのでございましょうか?」
「あはは、やだなー。そんな訳じゃないですかーほんの冗談ですよー」
心なしかしょんぼりとし始めたシスターらしき少女に罪悪感を覚えた上条は
それなりの善意が籠められた引き攣った笑みで慌てて取り繕う。
数秒後、上条は再び顔を真っ青にし口元を必死に抑えながら顔を埋めた。
「良かったじゃねェか、大好きな飴ちゃンが二個も貰えて」
今度は逆に顔を赤みを残しながらも再起動を果たした一方通行がそんな上条を見下ろす。
が、特に理由のない『純粋な善意』という名の暴力は等しく彼らに襲い掛かる。
「まぁ、まだ要り様でしたらお茶のお代わりはまだございますのよ?」
「えっ、いや俺は別に―――」
「あ……やはり冷たいものを用意するべきだったのでしょうか?」
「―――悪ィな、ただの悪い冗談だ」
数秒後、一歩通行は再び顔を赤く染め上げ絶叫しながら悶絶した。
迷惑がるバスの運転手や他の乗客など全くお構いなしに
救いようのないループは飴とお茶が無くなるまで続いていく。
今回の投下はここまで
バスの中でのマナーをきちんと守りましょう、オルソラさんのように
次回の投下は三日以内の予定です。
それでは、また
どうも、>>1です
大分遅くなりましたが投下
九月八日 午後六時五〇分 廃劇場『薄明座』跡地
ステイルとインデックスは大ホールを出るとチケット売り場らしきロビーを歩いていた。
その前には彼らを先導するように漆黒の修道服を着た小柄な少女が先導している。
彼女の名はアニェーゼ=サンクティスと言い、年はインデックスより多少幼く
背中までの赤毛をたくさんの鉛筆ぐらいの太さの細かい三つ編みに分けていた。
着ている修道服は袖の指先を隠すほど長いが、スカートは太腿が見えるほど短い。
よく見れば修道服の袖とスカートには着脱式にする為のファスナーがついており
暑さに耐えられないが両方外すのははしたないと感じ、片方だけ外したのだろう。
一見すると身長はインデックスと同じくらいに見えるが、ふと彼女の足元を見れば
チョピンと言われる三〇センチもの高さを誇るコルクの厚底サンダルが履かれている。
幼い子供のようにも見える彼女だが、その正体はローマ正教の一部隊のリーダーだった。
「状況はもう滅茶苦茶、様々な情報が錯綜していて何を信じればいいのやら。
オルソラも法の書もこちらの手元にない以上、かなりヤバめな状況ですよ」
うんざりとした顔を浮かべながらアニェーゼは背後を歩くステイル達にそう告げる。
この場に日本人はいないのにもかかわらず彼女は流暢な日本語で話を進めていく。
「オルソラを輸送している途中の天草式へ奇襲して誰かが彼女を救出したのはいいものの
そいつが本隊と合流する前に潜んでいやがった天草式にかっさらわれちまったんです。
それで彼女を取り戻すと天草式の別働隊にまた捕まって……、ってな感じの繰り返し。
迅速に救出するために索敵の包囲網を広範囲に渡って展開したのが仇んなりましたね。
総合的な人数は多くても、どうしても個々の部隊の人数が少なくなっちまてたんで、
それに付け込みやがった奴らに集中的に狙われてしまって一溜りもありませんでした。
そんなことで何度も何度もキャッチボールみてえに奪還・強奪を繰り返していたら
いつの間にか肝心のオルソラ=アクィナス嬢を完全に見失ちまったっつう訳ですよ」
本人は敬語を使っているつもりなのだが、アニェーゼの言葉には粗暴さが多々見られる。
もし仕事中に実地で覚えたとしたら、考えられる出所は刑事や探偵あたりだろうか
と、そんなことを考えていたステイルにアニェーゼはくるりと振り返る。
短いスカートがひらりと舞い、太腿が露わになるがステイルは気にも留めない。
「何か? ―――ああ、すいませんね。英国語も一応出来るんですが
イタリア語の訛りが残っちまうんで現地の人には聞かせたくないんですよ」
「いや、別に気にしてしないよ。何ならこちらがイタリア語に合わせても構わない」
「それは辞めてください、イギリス訛りの母国語なんて聞いただけで爆笑もんです。
こういう時はお互いに言葉遣いが変になる日本語を使うのは一番いんですよ」
「………」
確かに一理ある気もするが、果たして多少変な言葉遣いだけで他人を馬鹿にするものだろうか。
こういった所にですらローマ正教の異常なプライドの高さと歪んだ人間性が垣間見える気がする
と、表に出せば喧嘩確定の偏見に満ちた意見を決して口にすることなく心の中でそっと呟いた。
インデックスに至っては頬を膨らませたまま、一言も言葉を発しようとしない。
不機嫌を言葉ではなく顔全体で表現している彼女をステイルは横目で見ると
やりきれないと言いたげな溜息をつき、再びアニェーゼの方に視線を移す。
「それで、お宅から法の書とオルソラ=アクィナスを拝借したっていう
天草式だけど、君たちにとってそれほど脅威的な組織なのかな」
「そりゃに暗に『ローマ正教は世界最大宗派(笑)ですよね?』と告げてますね。
実を言っちまえば返す言葉はありませんよ。数や武装ならこっちの方が上なんですが
ここは奴らの庭、連中は地の利を生かした巧みな立ち回りで翻弄してきやがるんです。
数字の上では有利な状況で手傷を負わせられるというのは結構頭にきちまうんですけどね。
非常に悔しいですが総合的な人数ではなく個々だったら私達よりも奴らのほうが強いです」
「……、簡単に屈しないという訳か」
深刻そうな表情をするアニェーゼの報告にそう返すステイルの声は苦いものだった。
圧倒的な武力を見せつけて戦意を喪失させ言葉でねじ伏せるのが迅速かつ平和的な方法なのだが
相手がそれと互角に渡り合える程の実力を持っている場合、そうもいかないだろう。
となれば、必然と待ち構えているのはお互いが全力でぶつかる泥沼の戦いだ。
しかし、戦闘が長引くほど神裂や死神部隊が乱入する危険性が高まっていく。
よって早々に決着をつけなければ確実に流血騒ぎ程度では済まなくなるだろう。
ローマ正教の目的はあくまで法の書の奪還及びオルソラ=アクィナスの救出。
それさえ達成できれば、わざわざ手間をかけて天草式を殲滅する必要はない。
重要なのは如何にして天草式の戦意を喪失させるかということだ。
「さてと、どうしたものか……。天草式がどういう術式を使うか分かるかな?
日本の十字教史には疎いけど、探索や防御の為の陣や符を用意できるかもしれない」
ステイルは今まで元・天草式の女教皇である神裂火織と何度か行動を共にしていたが
彼女の術式を解析したことは一度もないし、してみようとする気にさえなれなかった。
世界で二〇人しかいない聖人が使う術式など解析したところで意味がないと思ったからだ。
「言いにくいんですが、こっちも正確には天草式の術式を解析できちゃいないんです。
天草式の根源はザビエルのイエズス会ですからローマ政教の派生と言ってもいいんですが
東洋系の影響を強く受けすぎてちまっていて、もはや影も形も残っちゃいません」
アニェーゼは申し訳なさそうにそう告げたがステイルは特に彼女を責めなかった。
むしろ昨日今日ぶつかっただけでそれだけ分かっているだけで褒められるべきだろう。
ステイルは予定通りといった感じで視線をアニェーゼからインデックスへ移す。
それこそ一〇万三〇〇〇冊の魔道書を脳内に保管している彼女の役目だ。
「天草式の特徴は『隠密性』、彼らの母体である隠れキリシタンは幕府の迫害から免れる為
徹底的に十字教を仏教や神道の中に紛れ込ませて、儀式と術式を日常動作の中に隠したの。
だから、天草式はあからさまな魔法陣や解析できる術式を決して使ったりなんかしない。
中途半端にやって幕府にばれたりなんかしたら、火炙りより残酷な刑を科せられるからね。
それでも信仰を守ろうとした人間の努力の結晶だから解析するのは諦めたほうがいいよ。
特に迫害してきた側に立ってきた私達にはそんな彼らの覚悟なんて分かりっこないんだから」
宗派は違えど同じ十字教を信じる者として天草式の待遇に思うところがあるのか
インデックスは非難めいたような、それでいて哀れむような感じでそう告げた。
そんな彼女に思わず溜息をつきつつステイルは煙草をゆっくりと上下させながら口を開く。
「となると偶像のスペシャリスト、近接格闘より遠距離狙撃が得意といったところかな。
その覚悟や努力の結晶とやらでグレゴリオの聖歌隊並の規模になっていなければいいけど」
「ううん、天草式は鎖国時にも危険を顧みず諸外国の文化を積極的に取り入れていて
洋の東西問わずありとあらゆる剣術を融合させた独創的な剣術を身につけているの。
彼らなら日本刀からトゥヴァイハンダーに至るまで何でも振り回せると思うよ」
「……文武両道か、死神部隊みたいな奴らだ」
「その組織はよく知らねえんですが、天草式に近いってんなら話をお聞かせください。
断言は出来ませんが、そこから奴らから攻略するヒントに繋がるかもしれねえんで」
忌々しげに呟かれたステイルの言葉に話の輪から除外されていたアニェーゼが反応した。
天草式に翻弄され歯噛みしている彼女にしてみれば藁をも掴む思いなのだろう。
「いや、彼らは魔術を絶対に使わないし常軌を逸しすぎているから参考にならないと思うよ。
銃器、爆弾、刃物といった人を殺せる道具なら何でも使えるし、敵に対して容赦は一切しない。
例え敵が降伏して泣きながら頭に手を置いたとしても殺しやすくなったとしか思わない連中だ。
ま、捜索隊が顔以外の全身の皮膚をピーラーで剥かれたというのなら参考にできると思うけど」
「……やっぱいいです、他の方法で奴らを追い詰めましょう」
内容が唐突に凄惨な内容へと変貌したので、アニェーゼは一方的に話を切り上げた。
そうなる事を予想していたステイルは気にも留めず話を切り替えていく。
「それじゃ法の書及びオルソラ=アクィナス捜索に僕達も参加するとしよう」
「あ、それはこちらで行ってんで大丈夫です」
今度は話の流れを予想できなかったのか、ステイルの表情が訝しげなものになる。
そんなステイルにアニェーゼは得意げな顔で柔和な笑みを浮かべつつ口を開く。
「人海戦術はうちの専売特許でね、今も二五二人体制でやっています。
という訳で、あなた方はウチらじゃ入れねえトコを調べてほしいんですよ」
「例えば? 日本で僕らの許可がいる場所といえばイギリス大使館ぐらいだろうけど」
「いいえ、学園都市ですよ。場所柄を考えればありえん話じゃないでしょ。
学園都市に逃げ込めば多少なりとも天草式には捕まりにくいでしょうし。
しかし、学園都市との繋がりを持たねえローマ正教としても同じ事。
ですから、繋がりのあるあなた達に連絡を入れてほしいっつう訳です」
だとすれば面倒な所へ駈け込まれたものだ、とステイルは心の中で呟いた。
可能性の話だが学園都市では死神部隊の残党が待ち構えている可能性がある。
彼らの存在をローマ正教に知られれば面倒な事になるのは容易に想像できた。
正確にいえば、魔術師殺しのエキスパートである彼らが学園都市に亡命している事が
「なるほど、一応するにはするけど今の学園都市は厳戒態勢らしいから時間がかかるかもね」
「とりあえず、確認だけでいいんで可及的かつ速やかに―――」
そこまで言いかけたアニェーゼの言葉が不意に途切れ、同時に彼女の体が動きを止まる。
それを不審に感じたステイルとインデックスは彼女の視線を追いかけ、体の動きを止めた。
彼らの視線の先にあるのは入場口の向こうに広がる元は駐車場と思しきアスファルトの広場。
そこからにこにことしたシスターらしき少女と妙に疲弊した二人の少年が彼らに向かっている。
「あ、とうまとあくせられーただ」
「お、オルソラ=アクィナス?」
インデックスとアニェーゼはそれぞれ見知った人物の名を口にした。
名を呼ばれた若者達は、まだ建物の中にいる彼らの存在に気づいていない。
今回の投下はここまで
新薬8巻買いました、インデックスの出番がありそうで俺歓喜。
ついでにSSも買いました、噂の駒場さんがやっと読める。
というわけで次回の投下は一週間以内。
それでは、また
どうも、>>1です
非常に短いですが投下
同時刻 『薄明座』駐車場跡地
上条達一向の乗ったバスが何故か渋滞に巻き込まれるという不幸が発生し
誘拐犯に指定された時刻に間に合わないであろう事を悟った上条と一方通行は
目を離したら一〇分足らずで迷子になりそうなシスターらしき少女に飴と茶のお礼という名の
数枚の紙幣を押し付けるとバスを降りると誘拐犯に指定された場所『薄明座』まで徒歩で移動し
地面に無造作に抛り棄てられた南京錠と鎖を跨ぎ、極端に小さい駐車場に入っていく。
「何とか指定時刻に間に合った訳なンだが、残された時間は一〇分もねェ。
つゥ訳で対策を練る余裕はねェから馬鹿正直に正面から入るとするか」
「ああ、ところで……お前本当に大丈夫か?」
そう言って上条は心の底から不安げに、それでいて何とも言えないような目で隣に見やる。
そこには肩で息をしながらヨロヨロと頼りない千鳥足で歩く一方通行の姿があった。
「うるせェ、これは演出だ。誘拐犯を油断させる為の……ゲホッゲホッ!」
「無理すんなって、お前が全力を使って普通に喋るぐらいなら呼吸に集中しとけ」
「そうでございますよ。一度ご休憩をなされてはいかがでございましょうか?」
束の間の沈黙、既視感を覚える状況に二人は思わず深いため息をつくが
当のシスターらしき少女はにこにこと光すら放ちそうな笑みを浮かべている。
「学園都市行きのタクシーはどこでしょうか?」
「第一声がそれかよ……一応確認するがお前は許可証持ってる訳?」
「許可証? それはどこで貰うものなのでしょうか?」
「持ってねえのかよ!」
一方通行の質問にきょとんとした顔でそう返したシスターらしき少女に
上条はツッコミを入れ、許可証は一般人には手に入らないことを告げる。
その途端、シスターらしき少女の顔から笑顔が失われ見るからに曇っていく。
その姿に上条は激しい罪悪感に駆られたが、残念な事に彼にできることは何もない。
「……つか、どォしてお前は学園都市に行きたい訳?」
「実は私、追われている身でございますのよ」
は? と思わず驚く二人にシスターらしき少女は自らの事情を説明する。
どうやら、彼女はいざこざに巻き込まれて教会勢力から逃亡中である為
教会勢力、つまり魔術師の手が及ばないであろう学園都市に行きたいという。
「なるほどな……つってもどーするかな」
『どうもする必要はないのよ』
上条が独り言のようにそう呟いた瞬間、野太い男の声が上条達の頭上から響きわたる。
音源は地面から七メートル程の高さ、そこにはソフトボール程の大きさの紙風船が浮いていた。
と、その光景を三人が視界に収めた瞬間、ゾフ! と鋭い音と共に三本の剣が地面から飛び出し
地面を真上を向いているシスターらしき少女を先端に一辺二メートルの正三角形に切り裂き
支えを失った彼女の体は切り抜かれたアスファルトごと暗い地下に呑み込まれていく。
上条と一方通行は慌てて意識を真上から真下へと移し、穴へと飛び込もうとしたが
その時、バシュ! と頭上の紙風船が不意に破裂し閃光と爆音が辺りにまき散らされる。
それによって数秒間視力と聴力を奪われた二人はその場を動くことが出来ず
視覚と聴覚が回復した時には穴の中には人の気配など微塵もなかった。
ありえないとおもうでしょうが、今日の投下はここまで
次はもっと増やします、多分
それでは、また
どうも、>>1です。
駒場さんのでかさに草不可避。
一体何を食べたらああなるのだろうか
それはそうと投下
九月八日 午後八時〇〇分 とある海岸
そこは観光客が訪れる海水浴場から数百メートル離れた岩場のような海岸だった。
そんな人工物で固められた海岸のすぐ先は一〇メートルもの高さの絶壁になっていて
テトラポッドという商品名である護岸用の消波根固ブロックが積み上げられている。
昼間は美しく明るい青色に染まっていた海は、太陽光が失われたことで
近づく者を誘い出して呑み込む闇を連想させる不気味な黒に染まっていた。
と、そんな闇の中から現れた亡者のように黒い海面から手が突き出される。
月明かりを受けて銀色に輝く手は人間の形こそしているが人間味など一切なく
テトラポッドを掴み海面を割って現れた姿も手と同様の印象だった。
だが、それは彼の生身の姿がそうだからではなく西洋の全身鎧を身に纏っているからである。
鎧の腕に刻まている文字はUnited Kingdm、イギリスという国家を一言で表せる言葉だ。
騎士、そんな彼の姿を表現するのにこれほど相応しい言葉はないだろう。
そして、上陸を果たした一人の騎士に続くように彼と同じ型の鎧を纏った
二〇人の騎士達が各々海面を突き破りテトラポッドの上に乗り上げていく。
彼らはイギリスからアフリカの喜望峰を回りインド洋を横断し日本に来た。
―――幼児が思い付く程単純で普通なら有り得ない『泳ぐ』という手段で
無茶苦茶で大胆な移動を可能にしたのは聖ブレイズの伝承を基にした海流操作魔術。
理論を省いて簡単に言うと地球一周で三日で行える高速潜行を実現できる術式だ。
それは騎士達が肉体一つで発動したものであり鎧に搭載された機能などではない。
そもそも騎士達自身の生身の性能が霊装としての追加効果が仇となる程高すぎる為
彼らが着用している重々しい鎧にはそういった術式は一切施されていなかった。
彼らの正体は騎士団、英国の命令系統三本柱の一つである『騎士派』が統括する組織だ。
その存在目的は「三派閥四文化という複雑な形態の国家を分裂させない」という事にある。
極端に言えばそれさえ達成できれば、英国以外の国が地図から消えても彼らは気にも留めない。
そして、彼らは三派閥の一つにあたる『清教派』を毛嫌いしていた。
全世界を支配下に置いたローマ正教に弁明する為の政治の道具として作られたにも拘わらず
『騎士派』と同レベルの力をつけてしまったことに騎士派の誰もが不満を感じているのだ。
故に、彼らはイギリス清教のトップである最大主教からの命令には
平然と手を抜くばかりか酷いときには突っぱねるケースが多々見られる。
今回の勅命である『法の書奪還及びオルソラ=アクィナス救出戦の援護』にしても
彼らの出した答えはそんな事情を抱える騎士派らしいとも言える単純なものだった。
天草式など皆殺しにすればいい、その過程で刃向う者がいれば始末するのみ。
彼らにとって最優先事項はイギリスの国益であってそれ以外に興味は一切ない。
と、そんな考えを抱きながらテトラポッドへと上陸を果たした騎士派の面々は
ガンゴン!! と何の脈絡もなくテトラポッドと共に勢いよく吹き飛ばされた。
騎士達は突然の出来事に驚き慌てかけたが瞬時に冷静を取り戻し、
空中に投げ出されながらも着地点を探すために地面に目を走らせる。
テトラポッドを吹き飛ばした爆心地には一人の女が立っていた。
後ろで束ねた黒い髪、しなやかな筋肉を覆う白い肌、絞ったTシャツに
片足だけ強引に断ち切ったジーンズに時代を感じるウェスタンブーツ。
何よりも特徴的なのは腰の革ベルトに収められている全長二メートルの日本刀。
彼女の名は神裂火織、最大主教が騎士派に告げた危険因子の最たる者。
彼女は無言のまま宙に浮いた騎士達の一人を踏みつけるように後ろ足で蹴り飛ばし
それによって発生した勢いを利用し、飛び石の如く新たなる標的を狩りに飛翔する。
回数にして二一回、時間にして一秒にも満たない圧倒的な暴力は
あらゆるスキルを身に着けた百戦錬磨の騎士達を容赦なく薙ぎ払う。
ある者は絶壁の中にめり込み、またある者はテトラポッドへと叩き付けられ
さらには海に吹き飛ばされた者は海水の上をアイスホッケーのように滑っていく。
総勢二十一人に及ぶ騎士達を叩きのめすと神裂は静かに地面に着地した。
「加減はしたつもりです、致命傷となる事はおろか後遺症が残る事もないでしょう。
そちらが頑丈な装備で身を固めていただいたおかげで、やりやすくて助かりました」
「き、さま……」
奇跡的に意識を取り留めた騎士の一人が独り言のように呟かれた彼女の言葉を侮辱と解釈し
怒りに震えながら立ち上がろうとしたが芯を完全に揺さぶられた体は全く言うことを聞かず
まともに動かせるのは指先と口のみ、その現状が騎士のプライドをさらに傷つける。
「分かって、いるのか? たった今、貴様が誰に牙を剥いて、しまったのかを。
この行為は、三つの約と四つの地を束ねた、連合国家を敵に回したのも同然だ」
「私もその一員です、騎士派とは異なる清教派ですが上の御方が何とかしてくれるでしょう」
悪足掻きとして放たれた威嚇するような言葉に神裂は律儀に返答したが、
声を放った騎士が気絶しているのに気付き、途中で言葉を切り上げた。
「そーんな心配そうな目じゃ迫力にかけるぜい?」
不意に耳に入った聞き慣れた声に神裂は初めて動揺を浮かべながら振り返る。
そこに立っていたのは金髪に青いサングラス、アロハシャツにハーフパンツといった
見るからに軽薄そうな服装で身を固めた少年、土御門元春が立っていた。
本来ならば彼女の敏感な感覚が近くにいる人の気配を見逃すことなど有り得ないのだが
何故か彼女は土御門を視界に収めた現在でも未だに土御門の気配を感じることができない。
「……私を止めに来ましたか」
瞬間、神裂の顔から一切の動揺が消えると同時に彼女の手が刀の柄へと手を伸ばす。
にも拘わらず、土御門のサングラスの奥からは余裕を感じられる笑みが垣間見えた。
「いいのか? テメェの信条は『誰も死なせない』っつうのが大前提だろうが。
そして、能力者のオレはテメェと戦うために魔術を使っただけで死にかねない。
だからこそこの勝負、どっちが勝とうか負けようがテメェは俺を殺すことになる。
さて、テメェは自分の中のルールを破れんのか? ―――やれるもんならやってみな」
神裂は如何なる場合でも人を死なせないために術式を繰り広げ戦う人間だ。
そんな彼女にとって犠牲が出ることが決まっている戦いなど最悪の展開だろう。
カチカチ、と力を込めたのか刀の柄に触れた神裂の指が小刻みに震える。
しかし、彼女は一時的な感情で自らの信念を捨てるほど弱い人間ではない。
その事がわかっている土御門は一転して子供のように邪気のない笑みに表情を切り替える。
「別に睨まんでもいいぜよ、俺はねーちん個人を止めるようには言われてない。
天草式とローマ正教がドンパチやってる間に法の書を掠めとらなきゃいけねえし」
「それは、イギリス清教と学園都市、どちらの命令ですか?」
「オイオイ、ねーちん。お前は禁書目録の一件で一体何を学んだんだ?
いい加減に自分の頭で考えねえと何もかもが手遅れになっちまうぜい」
土御門の警告するような言葉に神裂は返事をせずに黙り込んだ。
両者の間に流れる殺伐とした凍てつくような沈黙が周囲を包み込む。
薄気味悪い沈黙は数秒続いたが、神裂が諦めたようにそれを打ち破る。
「……私はもう行きます。上に報告したければご自由に」
「そうかい。あー、のびてる連中はこっちで回収しとくぜい。
警察なんかに拾われたら面倒な事になっちまうからな」
「恩に着ます」
そういって律儀にも土御門に対して頭を下げる神裂に
土御門は溜息を突きつつ、疑問を突き付けた。
「んでさ、結局ねーちんはイギリスから遥々何しに来たんだにゃー?」
その言葉に神裂の動きが頭を下げたままの状態でピタリと止まる。
そして、彼女は一〇秒間の時間をかけてゆっくりと顔を上げていく。
その顔は憤っているようにも泣き出しそうにも笑っているようにも見えた。
「さあ、全く何がしたいんでしょうかね。私は」
本日の投下はここまで
次回の投下は一週間以内の予定です。
それでは、また
凄い、こんな気持ち悪いssを初めて見た
もしあなたに少しは自分の気持ち悪さに対する自覚があるなら
今後はハーメルンに行くことをお勧めする
あそこはあなたみたいに非常に気持ち悪い人間達が集まってる場所だから
本当にこんな害悪なssを書いてる暇があったら首を吊って死んでください
馬鹿共がwwwwwwwwwwwwww
仲良く潰し合ってろwwwwwwwwwwwwww
グッバイ!また来るで~!
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: : : : : : :,! !: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ゜: : : : : : : : : : : : : : :
+ ' . '! '! ∧,,∧ みんな関西人にな~れ!
. o '、 .'、 (`・ω・)つ━☆ ・ * 。 , , 。 ゚
. , 丶. 丶 ⊂ ノ ・ ゚ +. , 。
.。 ヽ、 ヽ し'´J ノi * ・ °。 。
. .。 `'-、, `ー---‐'" ,ノ ゚ ・ ☆ ゚. , ,。
+ ゚ . + . . .゚ .゚。゚ 。 ,゚.。゚. ゚.。 .。
゚ . o ゚ 。 . , . .o 。 * .゚ + 。☆ ゚。。. .
。 。 *。, + 。. o ゚, 。*, o 。.
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。 ,ハ,,,ハ (ヽ_/) ∩w∩ ∧,,∧ γ''""ヽ ヘ⌒ヽフ
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ジョウダンヤナイデ カメヘンガナ
ナルカッチュウネン ドナイヤユウネン セヤナ エエンチャウ?
,ハ,,,ハ (ヽ_/) ∩w∩ ∧,,∧ γ''""ヽ ヘ⌒ヽフ
( ・ω・) (・ω・)( ・ω・)( ・ω・) U ・ω・U ・ω・)
( ∪∪ ( ∪∪( ∪∪ ( ∪ ∪ o(,,∪∪ つ と)
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どうも、>>1です。
投下
九月八日 七時三〇分 『薄明座』跡地
日は沈み、静かな夜が訪れるはずの廃劇場は喧噪へと包まれていた。
統一された黒い修道服を付けた集団が同じく服装のアニェーゼの指示に従い
ある集団は天草式によって正三角形に切り抜かれた地面の穴に飛び込み。
別の集団は羽ペンに赤インクをつけて広げた地図にラインを引いていく。
その様子を少し離れたところから観察していた上条と一方通行は
事件の概要についての説明をステイルとインデックスから受けていた。
「チッ、面倒臭ェな。つゥか、こンだけの人数がいて何で天草式の一人も捕えられねェ訳?
世界最大宗派つっても所詮都合のいい神様がいなきゃ何も出来ねェ無能どもの集まりか」
「価値観は自由だが子供のように周りに喚き散らして僕達に迷惑を掛けてないでほしいね。
それに君は確かに有能かもしれないけど、周りを見下すその傲慢な態度は最低だと思うよ。
そんな人間が学園都市最強の能力者だなんて科学の本質がよく分かるとは思わないかい?」
「別に見下してるつもりなンざねェけど、なンか今日のお前は不機嫌だな。
―――あァ、失恋したのか、柄じゃねェけど少しばかり慰めてやろォか?」
「寝言をほざくな、訳の分からない愚劣な妄想は夢の中でやってろ人格破綻者」
説明が終わると一方通行とステイルは悪意を籠った言葉と視線を互いにぶつけ合う。
容赦のない邪気の応酬はその場に流れる空気が凍てつかせ辺りに殺気が充満していく。
「はいはい、そこまで。お前ら子供じゃないんだから落ち着けっての」
険悪な雰囲気にオロオロするインデックスを見るに見かねた上条が喧嘩腰の二人を制する。
元々本気ではなかったのか二人は興味を失ったと言わんばかりに互いから視線を外す。
と、その時イタリア語で大勢のシスターに指示を出していた少女が彼らの元へ歩いてきた。
その姿に超能力者と魔術師の喧嘩を未然に防いだ男、上条当麻の内心はたじろいでいく。
中学校卒業英語レベルの語学力すら危うい彼にとって外国人とは未知なる生物に等しい。
この場にいるステイルやインデックスのように日本語で話してくれる外国人は少ないだろう。
パカパカ、と少女が履いている歩くのに差し支える程高い厚底サンダルから鳴り響く
馬の蹄のような音が死刑宣告のカウントダウンのように上条の耳を揺るがしていく。
とりあえず『how are you?』と聞かれたら『I`m fine.And you?』と返そうと
上条は心に決め、深呼吸をしながら自身の記憶史上初めての外国語での会話に身構える。
「え、えっと。えー、これから状況の説明を始めちまいたいんですが
そちら様方の準備はちきんと整っていますですのでござりますか?」
何故そうなった、と緊張していた上条はおろか一方通行でさえも言葉を失った。
見ればアニェーゼは顔を真っ赤にしてふらふらとおぼつかない姿勢で全身を震わせている。
そういえば、相手にとっても外国人との対話なんだな、と上条は妙な納得をした。
「ど、どうも本場の日本人の方に自分の拙い日本語を話すのは緊張しちまって……。
えっと他の言語は使えますか? 例えばヒエログリフとかアイヌ語とかラテン語とか」
「ンな語学オタクしかやらねェようなマイナー言語誰が使えンだよ」
早口で放った言葉を冷徹な眼差しの一方通行に否定されアニェーゼは思わず表情を強張らせた。
そんな彼女の様子を見かねたインデックスやステイルが英語で慰め何とか立ち直らせようとする。
その善行が功を為したのかアニェーゼは人間として最低限の落ち着きを取り戻すと
平坦な胸に手を当てて何回か深呼吸し、更にプロとしての冷静を取り戻そうと試みる。
緊張のせいで普段は履きなれている厚底サンダルに体のバランスを狂わせられながらも
仕事中という根っからの真面目意識からか彼女は天に突き出すように背を伸ばした。
「いや、すいません。では、改めて現在の状況と我々の行動指針を説明しま―――」
そこまで言いかけて無理に背を伸ばしていた彼女は体のバランスを決定的に崩し
ひゃあ!? と叫びながら藁をも掴む思いで近くにいた人物の腕を思いっきり掴む。
「……俺っすか?」
アニェーゼに腕をつかまれた人物、上条当麻は彼女の巻き添えをくらい地面に引きずり倒され
幸か不幸か彼の頭は一直線に先に倒れた彼女のスカート目がけて突撃する羽目となった。
上条は慌てて頭を引き抜こうとするがやや遅れて事態に気付いたアニェーゼが反射的に
両手でスカートを上から押さえつけ、逆に上条の頭をスカートの内部に固定してしまう。
その結果、何の罪もなくインデックスに罵られた挙句ステイルに蹴り飛ばされた不幸少年に
一方通行は呆れと憐れみが入り混じった表情を浮かべつつ手を差し出し立ち上がらせる。
騒動が沈着すると緊張が多少ほぐれたのかアニェーゼは再び話を再開させた。
「では今から先程述べた説明を始めちまいたいと思います」
「状況については既に把握してる、行動指針だけ教えろ」
悪意ある視線で見下すようにそう威圧的に言い放つ一方通行に怯えながらも
アニェーゼは話の内容を頭の中で組み立て自身を落ち着かせつつ言葉にしていく。
「前線は我々が行くのであなた方は基本的に後方支援に回ってもらう事になっちまいます。
万が一、法の書を使われた場合に備えて魔道書の専門家にはそちらに当たってほしいので。
まあ、それ以前に天草式が我々の包囲網に引っかかっちまうのも時間の問題でしょうがね」
「でも、包囲網を簡単に抜けられちゃう魔術を彼らは使えるよ?」
え? と思いがけない言葉に顔を引き攣らせるアニェーゼにインデックスは
『縮図巡礼』という江戸時代に測量家にして魔術師であった伊能忠敬が大日本沿海輿地全図に
書き込まれた『渦』から『渦』へと一瞬で移動できる移動魔術の内容を詳細に説明する。
「―――ちょっ、何でそんな大事な情報を今の今まで黙ってたですか!?
この瞬間にも奴らに渦とやらを飛ばれちまったら、もうどうにもならない!!」
「急ぐ必要はないよ、あれは日付制限解除にしか使えないから」
その説明を聞いた途端に青ざめた表情で叫びながら猛抗議するアニェーゼだったが
インデックスにさらりとそう返され打って変わって虚をつかれた表情となった。
「今は……星を見る限り七時半だからまだ四時間半ぐらいは余裕が残されているし、
それに加えて飛ぶための『渦』は動かせないしこの周辺では一つしかないんだよ。
―――もちろん未だ明かされていない『渦』があったら、話は別なんだけどね」
彼女は思い出したようにそう付け加えたが、その声に間違っている不安など一切ない。
この程度の知識は一〇万三〇〇〇冊の魔導書を記憶した禁書目録としては当たり前なのだろう。
上条には普段何気なく同居人として一緒に過ごしているはずの彼女が別人のように思えた。
「で、その渦っつうは一体どこにあるんだ?」
「とうま、地図が出るピコピコ持ってたよね? 貸して貸して」
「お前は機械系苦手だろォが、こっち使え」
インデックスが行った”地図が出るピコピコ”とは携帯電話のGPSの事なのだが
機械系を使えない彼女を考慮して一方通行が色あせた観光ガイドを彼女に手渡す。
こっちの方が使いやすいかも、と言いつつ彼女はパラパラとページを捲り
数秒間過ぎたところでその動作を止め白く細い一指し指先である一点を指した。
「ここだよ」
今回の投下はここまで
最近、忙しくて書く時間がとれないこの頃
ので、次回の投下も一週間以内の予定で
それでは、また
どうも>>1です
ちょっと書けたので投下
九月八日 午後八時 廃劇場『薄明座』跡地
インデックスが指し示した場所に偵察として斥候を派遣したところ
その周辺で天草式と思しき二人の不審者が確認されたという。
僅か一五分足らずでもたらされた情報は進展が停滞していた状況を覆し
アニェーゼ部隊並びにステイル達の行動指針が具体化されていく。
不審者を発見したものの天草式の本隊を確認した訳ではない為
彼らはインデックスが予測した方法で逃走するとは限らない。
よって、アニェーゼ部隊は包囲網の維持及び探索に必要な最低限の人員を割き
残った七四名、それに加えて上条達四人が指定区域に突入することになった。
そして、突撃組に抜擢されたアニェーゼを含めた七四人のシスターは武装や霊装の再編成に
三時間かかる為、オルソラ救出及び法の書奪還作戦の開始時間は午後一一時で決定する。
一方通行もまた能力に三分間という厳しい時間制限がある為、現代兵器で武装する必要があったが
上条とステイルとインデックスの三人は彼やアニェーゼ達のような事前の準備を必要としない為
アニェーゼ達に用意された食事を摂り作戦開始時間までの間テントで仮眠を取る事となった。
一方通行は体のラインに寸分の狂いもなく合わせられた戦闘服に銃器や刃物を手際よく仕込み、
それらの凶器を覆い隠すように黒いコートを身に纏うと用意された男性用のテントに入る。
そこには上条の姿はなくステイル一人が不機嫌そうに寝っ転がっていた。
一方通行はその様子を全く意に介さず用意された毛布に包まっていく。
「数時間後に戦いっつゥのによくもまァ呑気に寝られるもンだ」
「少しでも間があれば一〇分、二〇分でも小刻みに眠って体力を回復させるのが
長期戦の戦場の常識ってやつさ。暗部出身なら知ってると思っていたんだけど?」
「知るかよ、こンな面倒臭ェ長期戦になる前に終わらせるのがセオリーだったからな。
つか三時間も猶予あンのかよ、脆弱な人の精神なンて一〇分もありゃ簡単に砕けンぞ」
「……どうやら君の常識は世間一般のそれとは大分かけ離れているようだね」
「お互い様だろォが」
一方通行は装備を整えていた時、インデックスと一緒のテントに入る事を拒否されたステイルが
何やらブツブツと呟きながら彼女のテントにルーンを張り付けているところを目撃していた。
恐らく不機嫌な理由はそれだろうな、と毛布に包まった一方通行は心の中で適当に結論付ける。
「全くここの人間は幼稚というか能天気というか全体的に危機管理能力があまりにも低すぎるよ。
たった一冊の魔導書で右往左往しているなら少しは彼女の身の危険を考えてほしいものだね」
「まだ何も言ってねェよ、いつの間に読心術使えるようになったンだお前は」
珍しく顔を引き攣らせながらそう答える一方通行は知る由もない。
―――その時にステイルにロリコンというレッテルが貼られた事を
―――現在進行形でとある少年が同様の被害に合っていることを
―――そして、彼らと一緒にいた一方通行まで一括りにされている事に
「ところで、話を変えるけど天草式について何か知ってるかい?」
「昔の神裂が女教皇としてトップに立っていた組織ぐらいしか知らねェけど」
「それだけ分かれば十分だ、それで聞きたいんだけど君はどうするつもりかな?
このまま彼女が大切にしていたかつての仲間達を容赦なく殺すつもりなのかい?」
「もちろン、それがアイツの為になれンなら」
挑発するようなステイルの問いに一方通行は一瞬の迷いもなくそう答えた。
その眼に浮かぶ悪意は奥に潜む何かを隠しているようにも見える。
「色ンなものを諦め、壊し、捨ててきた。そンなクズでもこればっかりは譲れねェンだよ。
宗教や神なンざ信じねェが、誰かの為に必死に祈ろうとする人間の善意ぐれェは信じてる。
アイツのそンな想いを無視するのは天草式の連中の勝手だが、利用して踏みにじるよォなら
絶対に許さない、アイツの目の前だろォが見てねェ所だろォが跡形もなく粉砕するまでだ」
逆に、と一方通行は一泊置いて寝返りをうつとステイルを睨めつけ言葉をつづける。
「天草式の味方をすンのがアイツの為になるってンならそン時は俺はお前らの敵だ。
そォ決断しても俺は一々言わねェし突然後ろから襲うかもしンねェから気を付けろ」
「構わないさ、何を言ったところでそれを見越したうえでの覚悟は出来てると思うからね。
ただ取り返しがつかなくなる前に君の覚悟に見合った行動を僕は取らせてもらう」
「そォかい、そりゃ結構」
ステイルと一方通行は投げやりに言葉を掛けると示し合わせたように目を閉じた。
そして、彼らは互いに数時間後には敵対するかもしれない相手と最後に言葉を交わす。
「死ぬなよ」
「互いにな」
それだけ言うと二人は口を閉じ、そのまま眠気が来るのを待ち続けた。
今回の投下はここまで
次の次の投下では戦闘シーンに入れると思います、多分
どうでもいいけど、思いついたネタ
一方通行「俺は何者でもなかった、このチョーカーをつけるまで」
一方通行「最高のエンターテイメントを」上条「お見せしよう」
実現化するかどうかわからんけど
次回の投下も一週間以内、早ければ明日にでも
それでは、また
どうも、>>1です
投下
九月八日 午後一一時二〇分 百貨店の大きな駐車場
天草式が使うと予測される特殊移動法のポイントは大手製菓メーカー四社が共同で開発した
菓子専門の大規模なテーマパーク『パラレルスウィーツパーク』の中にあるという。
発電所程の広さを誇るその場所は当然ながら人を楽しませるように作られているのだが
照明が落とされ闇に黒く塗りつぶされたその姿はある種の恐怖を人に抱かせている。
その近くにある百貨店の駐車場に隠れるように何十人という人間達が集まっていた。
上空から見れば四人の男女を除いて全員黒い修道服を包んでいるのがわかるだろう。
周りから浮いているようにも見える四人の内の一人、一方通行はふと周りを見渡す。
インデックスは苛立ちを隠せない様子で人差し指で掌に何かを書いており
その後ろにステイルは彼女の姿を見ながら何食わぬ顔で煙草を吸っていた。
その横を見れば上条が顔を真っ青にしたかと思えば夜空を見上げて泣き出している。
何やら精神的に非常に不安定なようなので一方通行はそっとしておく事にした。
やがて部下であるシスター達への指示を終えたアニェーゼが上条達の方向へと歩いてくる。
その足取りは初めて会った時のようなふらふらとしたものではなくしっかりとしたものだった。
「あのパラレルスウィーツパークにて天草式本隊と思しき集団を発見したそうです。
しかし、残念ながらその中にオルソラ嬢と法の書までは確認できやしませんでした。
なので全てが陽動である可能性を否めねえんで、このまま交戦に入っちまいます」
既に決定していた事柄を確認するかのようにアニェーゼは告げ、作戦内容を話していく。
彼女の話を纏めるとアニェーゼ部隊の八割は陽動として天草式と正面から交戦し
残りの二割と上条達四人が遊撃隊としてオルソラと法の書の確保に当たるという。
それに加えて渦と呼ばれる特殊移動法のポイントを破壊する必要があるが
インデックスの話によると場所を探すのにかなり苦労するらしい。
一方通行自身はオルソラや法の書がどうなろうと大して興味はないのだが
神裂の為にも天草式の真意を確かめる必要があるので彼女らに協力して損はない。
そして沈黙を覚悟と受け取ったのかアニェーゼは静かに片手を上げた。
同時に背後のシスター達が各々の武器を担ぎ冷たい金属音が夜の静寂を壊していく。
彼女達の武器に正規の軍隊のような統一性はなく、剣や槍といった明白な武器もあれば
銀の杖や巨大な十字架のように激昂した素人が突発的な犯行に使いそうな武器や
背丈ほどの直系の歯車や松明といった使い道が想像できないものもある。
「……許せねえですよね、本来みんなを助ける為に広まっていったはずの十字教を
逆手にとって、こんなつまんねえことの為にあろうことか暴力として振るっちまうなんて。
それを止める為にこっちもつまんねえ暴力を振るわなくっちゃいけねえ羽目になって
取り返しがつかねえ事になるってどうして気づけないんでしょうかね、彼らは」
シスターの一人から銀の杖を手渡されたアニェーゼはそれを肩に担ぎ
闇に覆われたテーマパークを睨みつけながら独り言のようにそう呟いた。
「だから私は天草式に限らず魔術師という人種はあんまり好きじゃねえんです。
奴らは聖書を上から下までビッチリと読み直して、神様の言葉を必死に吟味して
神聖な教えを汚すような矛盾や抜け穴を探し出して、いやらしく甘い蜜をすする。
ルールを守ってパンをもらってる人間の列に堂々と横から割り込むようなもんですよ。
別にパンはもらってもかまいませんが皆が守ってるルールぐらいは守れって感じですね」
ゴチャゴチャとうるさい女だ、と一方通行は心の中でアニェーゼの言葉を一蹴する。
ちなみに魔術師であるステイルは悪口を軽く聞き流すような底意地の悪い笑みを浮かべ
インデックスは困った顔をし、その様子を見た上条もまた困った顔をしていた、
やがて、正面から突撃をかける本隊と探索を行う遊撃隊の分岐地点に差し掛かったので
上条、インデックス、一方通行、ステイルの四人はアニェーゼ達とは別の道を進んでいく。
「なあ、一つ聞きたいんだけど本当に時間内で全部の仕事を片付けられると思うか?
特殊移動ポイントの破壊と法の書の探索とオルソラの救出、これら全てだ」
「ンなもン無理に決まってンだろ、オルソラも法の書もどこにあンのか分かンねェし。
全てやンのは諦めて仕事の優先順位決めて上から順にやってくのが一番現実的だろォな」
「そうだね、ただでさえ作戦は破綻寸前なのに不確定要素があまりにも多すぎる。
とりあえず僕達は法の書が解読される事を防ぐ事を第一目的にして行動しよう」
一方通行はステイルは作戦がうまく行かないことを前提に行動指針を決めていく。
そんな戦闘に慣れた様子の彼らに上条は蚊帳の外にいる気分になりながらも口を開いた。
「だったら、最優先はオルソラ救出で良いか?」
「僕は別に構わないさ、彼女がいなければ法の書が解読される事は有り得ないだろうし。
それに法の書の知識自体は既にその子の頭に入っていて法の書の持ち主はローマ正教だ。
天草式の連中がやけになって拠点に持ち逃げしたところでイギリス清教はどこも痛まない」
「私もそれでいいと思うよ、どうせダメって言ってもとうまは突っ走っちゃうでしょ?
ただでさえ人数が少ないんだから、そうなるぐらいならみんなで一つにならないとね」
「一つに絞れンなら何でもいい、だがそォなると更に急がねェといけねェ訳だが」
インデックスとステイルと一方通行の三人は特に悩みもせずに上条の意見に賛同した事に
上条は笑顔を浮かべかけたが一方通行の言葉が違和感として心に残り表情の変化を阻害する。
「……どういうことだ?」
「オルソラを発見しても天草式の連中に奪い返されるかもしれねェだろ?
その可能性を可及的かつ速やかに安全かつ確実に叩き潰す手段が一つある」
いくら何でもその話は都合が良すぎじゃないだろうか、と上条は驚きよりも違和感を感じた。
そんな怪訝そうな顔を浮かべる上条に一方通行は冷たい眼差しで薄く笑いながら告げる。
「簡単な話だ、オルソラとやらを見つけ次第その場で殺せばいい。
そォすりゃ法の書が解読される事は絶対にあり得―――」
一方通行が言葉を言い終える前に上条は彼の胸ぐらを掴み上げ言葉を中断させた。
まるでこれ以上聞きたくないと言わんばかりに嫌悪感と憤怒で表情を埋め尽くしながら
「そんな事が許されると思ってんのか、テメェ!!!」
「俺ならそォするってンじゃねェよ、奴らならやりかねねェつってンだ」
「奴ら……? もしかしてアニェーゼ達の事を言っているのか?」
信じられないといった口調で上条は一方通行の胸ぐらを掴んだまま問い詰める。
対する一方通行は自身の足が地から離れている事など気にも留めず言葉を続けていく。
「それ以外に誰がいるンだよ、本当に奴らが一列に並ンでパンをもらってきた人間だと?
そりゃ悪ィ冗談だ、少なくとも奴らがこれまで生きてきたのはそンな生温い世界ねェ。
善悪なンてお構いなしに単純な強弱でパンを貰う列の順番が決まる裏路地みてェな世界だ。
そして奴らは単なる被害者の枠に収まる弱者じゃなく強者の座を勝ち取った人間だ」
「……何を根拠にそこまで言えるんだ?」
「大したことはねェ、細かい仕草や特徴を観察すりゃ大抵の事は分かンだよ」
上条の疑問に一方通行はさも当然と言うように世間話のような気軽な口調でそう返した。
同年代でありながら生きてきた世界の違いに戦慄しながらも上条は一方通行の服から手を放す。
それと同時に彼らを達観していたステイルが呆れた表情を浮かべながら口を開いた。
「気は済んだかい? まったく……突撃する前から仲間同士で分裂してどうする。
君達の青春の一ページのせいで陽動開始まで時間がない、さっさと行くぞ」
その台詞を合図に彼らはそれ以上言葉を交わすことなく戦場へと歩き出していく。
今回の投下はここまでです。
申し訳ないのですが多忙につき2~3週間程間を空けます。
落ち着いてきたら投下速度を一気に上げるのでご了承ください
それでは、また
どうも、>>1です
微妙に時間が空いてちょっとだけできたので投下
九月八日 午後一一時半 『パラレルスウィーツパーク』職員用出入り口
上条達がそこに着いた瞬間、一般用出入り口の方向からドン!! と派手な爆発音が鳴り響いた。
天に向かって聳え立つ塔のように轟々と燃え上がる火柱を見て上条は茫然と口を開く。
「なあ、あれって本当にただの陽動か?」
「あれぐらいじゃないと押し負けちゃうって事だよ。油断しないで、とうま」
「もしくは単純に俺達が邪魔だから主力部隊から切り離したってとこだろ。
自分を高める為の誇りと周りを見下す自惚れの違いも分からねェ馬鹿だし」
「いや、術式の特徴にローマ正教の癖というか訛りが感じられない。
―――認めるのは癪だけどあれは天草式の仕業に間違いないだろう」
紛れもなく非日常的な光景に上条以外の三人は各々の感想を述べながら
金網フェンスを登り始めたので上条も慌ててそれに続いていく。
園内への侵入を果たした上条達がしばらく経ってたどり着いたのは円形のコースだった。
円形の水堀を囲うように外周のコースにカウンターしかない簡易な屋台が展開されている。
一見楽しそうに見える造りだが営業時間が過ぎた園内は照明を全て落とされている為
暗闇に包まれており、そうした造りは作られた意図とは逆の雰囲気を放っていた。
「とうま、時間がないんだよ。オルソラを捜すならもっと急がないと」
「そうだな、天草式が特殊移動法を使えるようになるまで残り三〇分ってトコか。
随分とハードスケジュールだな。連中やオルソラがどこにいンのか分かンねェのに」
「それだけじゃなく法の書の保管場所と渦の発生場所ですらも未だ不明のままだ。
待ち伏せが出来ないとなるとかなり厳しいね。急ぐぞ、グズグズしている暇はない」
爆発が起きた方向から人の怒号や絶叫に加えて何かを壊す音や爆発音が響き渡る。
普通に生きていれば聞かないであろう不穏な音が上条の鼓膜を揺るがしていく。
「あ、ああ。分かった」
戦いが始まったことを物理的に体感した事で戦慄しながらも上条はそう短く返す。
その瞬間、ガン、と戦場の騒音とは違う金属音が彼の真上から比較的小さく鳴った。
遠くから聞こえる先頭音とは違う意味で不自然な音に反応した彼はふと頭上を見上げる。
そこには月明かりを受けて妖しく光る西洋剣を手に握った四人の男女が宙を舞っていた。
先頭を切る一人の少年が刃をまっすぐインデックスに向かって容赦なく振り落す。
「インデックス!」
上条は咄嗟にインデックスの胸を突き飛ばし、彼女が思わずバランスを崩しかけたところを
まるで示し合わせたようにステイルが彼女の襟首を掴んで強引に手元に引き寄せる。
瞬間、先程までインデックスが立っていた地面を鋭利な刃が雷光のように叩きつけられた。
それに続いて残りの三人の少女が四人を能力者と魔術師を分断させるように地面に着地する。
彼らの服装は奇抜な修道服ではなく街中を歩いているごく普通の若者のようだが
どこか独創的なデザインの西洋剣が見るものに強烈な違和感を与えていた。
「君にやる、死にたくなければ肌身離さず持っていろ!」
ステイルはルーンのカードを辺りにばら撒き炎剣を生み出しながら
懐から取り出した銀で出来た十字架のネックレスを上条に投げつける。
上条が慌ててそれを受け取り訳が分からないと言いたげな怪訝そうな顔を浮かべたその時、
二人の少女が体当たりするようにステイルとインデックスの体を刺し貫いた。
上条はその光景に絶望に似たものを感じたが、よく見れば血は一滴も垂れていない。
二人の体はそのまま煙のように消え、突き出された刃は何もない虚空をすり抜けていく。
「クソッタレが……、行け。こいつらの足止めなら任せておけ」
「……分かった、その代り俺は必ずオルソラを探し出す」
一方通行は舌打ちしながら懐から小太刀を引き抜き四人の刺客へと襲い掛かる。
刃と刃が衝突する危機感を感じる金属音を尻目に上条は全速力で走り出す。
自らに出来る事を成し遂げる為に彼らはそれぞれ自分の意志で行動を開始していく。
短いですが今回の投下はここまで
次回こそはやっと戦闘メインになると思います。
とりあえず一方通行がアハギャハモードになるとだけ告知
次回の投下は二週間以内
それでは、また
どうも、>>1です
前回告知した内容は先延ばしになりました、すいません
とりあえず投下
九月八日 午後一一時三一分 パラレルスウィーツパーク、観覧コース
突如現れた天草式の刺客達に向けて脱兎の如く駆け出した一方通行は
一瞬の逡巡もなく懐から小太刀を引き抜くと薙ぎ払うように横一線に振るう。
だが、彼らはその一撃を軽々と躱し散開すると一方通行を取り囲むように
布陣を整え一斉に西洋剣の鋭利な刃先を一方通行に突きつけた。
「動くな、武器を捨てて両手を頭を手に付けるんだ」
「そうすりゃ命は助けてやるってかァ? 涙溢れるセリフだな」
そう言って一方通行は小太刀を自身の元に足元に落とし足で軽く蹴飛ばす。
申し訳程度に地面を転がっていく凶器に刺客達が僅かに視線を投げかけた瞬間
音もなく動き出した一方通行が正面に立っていた刺客の喉を右手の指で突き立てた。
仲間の呻き声に事態を察した刺客達が慌てたように一斉に襲い掛かる。
腕を引きもどした一方通行はそれらの攻撃を擦り抜けるように躱すと一歩下がり
一人の懐に入ると足を思いっきり振り上げ踵で刺客の親指を思いっきり踏みつぶした。
瞬間、ジャキ! という金属音と共に一方通行の靴底からナイフが飛び出し
一方通行は刃物の生えた足でもう一人の刺客の脇腹を容赦なく蹴り上げる。
そして、一方通行は足を引き戻すと親指を踏んだ刺客の耳を肘で殴打し
脇腹を刺され倒れかけた刺客の顎を引き戻しかけた足の膝で蹴り飛ばした。
「……あァ?」
三人の刺客を一〇秒足らずで行動不能にした一方通行はそこで動きを止め辺りを見渡す。
屋台の天井から降下してきた刺客は四人、対して地面に蹲っている刺客は三人しかない。
「チッ、一人逃がしたか」
一方通行は忌々しげにそう呟き刺客の注意を引き付ける為に落とした小太刀を拾い
自身が走ってきた方向、つまり上条が逃げた方向へ走り出そうと体の向きを変える。
直後、弾丸のような何かが凄まじい勢いで空を切る音が後ろから小さく鳴り響いた。
一方通行が振り返ろうとした瞬間、それは一方通行の足首に一瞬の内に巻き付いていく。
一方通行がそれが何なのかを考える前に彼の足は引っ張られバランスを失い
彼の華奢な体は急な坂道を下るスケートボードのように引きずられていった。
―――
――
―
同時刻 パラレルスウィーツ、店舗間の細い隙間
天草式の刺客から逃げる際中、上条当麻はその場で派手に転倒した。
原因は無造作におかれた工具箱、塗装業者が置き忘れていったものだろう。
(くそっ、使い終わったんならちゃんと片付けろっつーの!)
心の中でそう悪態をつきながら上条は工具箱の中身を漁ろうと鍵に手をかける。
現在の彼は丸腰の為、何か護身用の武器になりそうなものが欲しかったからだ。
と、そこで隙間の入り口から一人の少女が靴底で地面を蹴って上条に接近する。
その手に貴族が使うような金銀財宝で豪華に彩られたドレスソードを携えながら
(やっべ! 一人こっちに来やがった!!)
獲物を見つけた鳥のような速度で迫りくる刺客に非日常的な恐怖を感じながらも
上条は緊張で小刻みに震える体を何とか動かし咄嗟に工具箱を少女に投げつけた。
それに対して少女は反射的に工具箱を横一閃に切り飛ばし、その中身が周囲に撒き散らされていく。
上条はその中から歯磨き粉のチューブのようなものを掴み、辺りに散乱する工具を避けるようと
壁にぶつかる覚悟で横合いに飛び、手にしたチューブを工具箱と同様に少女へと投げつける。
少女は手首を軽く捻ってドレスソードの向きを変え縦一閃にチューブを斬り裂いた。
そして、くるりと体を一回転させると上条に向かって横一閃に容赦なく斬りかかる。
対して上条は籠手どころか衣服さえない左腕で我が身を守ろうとを構える。
無謀とも素人らしいとも評価できる防御をドレスソードが容赦なく襲い掛かり
がつっ! と聞くだけで痛みを連想できそうな鈍い音が辺りに鳴り響く。
が、何かを切り裂くような不快な音はいつまで経ってもなる事はない。
上条が投げた歯磨き粉のチューブのようなものには機械に使うグリスが詰まっていた。
チューブを切り裂いた事で少女のドレスソードの表面には粘着質な液体がこびりつき
脂肪と血液がこびりついた刀のように切れ味が圧倒的に鈍らされてしまっていたのだ。
もしも少女が日本刀のように重量のある剣を使っていれば上条の腕を折ることが出来たが
剣としては軽い部類に入るドレスソードでは、そんな芸当など出来ようがない。
上条は一瞬の隙もなく素早く右手で切れ味を失った剣を握りしめると
左手の裏拳で驚きの表情を浮かべる少女の頬を思いっきりひっぱ叩いた。
突然の反撃に少女が怯み、握りしめていたドレスソードから思わず手を離した瞬間
上条はドレスソードを横合いに捨て、右手で少女の顔を思いっきり殴り飛ばす。
少女の体は地面を勢いよく転がっていき、起き上がることは無かった。
その事と少女が怪我をしていないのを確認すると上条はその場でへたれ込む。
上条はその場で息を整えつつこれからの行動指針を考え始めた。
(他の奴らは大丈夫か? どっちかっつーと天草式の連中の方が心配だけど。
さて、今から急いで合流するのが先かこのまま一人でオルソラを探すべきか)
息を整え終えた上条は念の為に横合いに投げ捨てたドレスソードを拾い上げると
思考を継続しつつドレスソードを引きずるようにして観覧コースへと戻っていく。
そうして上条が店と店の隙間から抜け出した瞬間、
店の陰から現れた何者かが彼に体当たりを仕掛けた。
―――
――
―
九月八日 午後一一時三二分 パラレルスウィーツパーク、観覧コース
「クソッタレが!」
足首に巻き付いた何かによって円形の観覧コースを引きずられていた一方通行は
屋台の壁を掴み体の動きを強引に止めると片方の手で懐から素早く拳銃を引き抜き
何かに引っ張られている自身の足の先に広がる地面に向けて続けざまに発砲した。
手当たり次第に何発か撃ったところで、バチッと何かが切れる音が小さく鳴り響き
一方通行の足を引っ張っていた力が消え、その余力で彼の体は勢いよく地面を転がっていく。
一方通行はその場で迅速に体制を整えつつ、先程自らが拳銃で撃ち抜いた地面を見る。
彼の足に巻き付いたものの正体は鋼糸、銃弾の熱で焼き切られた先端が微かに赤く光っていた。
「……そォいや神裂もこンなの使ってたな、材質はかなり劣化してるみてェだが」
「女教皇様をご存じなのでしょうか?」
一方通行は独り言のつもりでそう呟いたが不意にそれに答える声が彼の耳に届く。
それと同時に海軍用船上槍を携えた二重まぶたが印象的な少女が店と店の隙間から現れた。
「まァな、さて一応尋ねてやろォか。今回の事件を引き起こした理由は何だ?」
一方通行は少女の問いに軽く答えそう問い質すと拳銃を彼女へと向ける。
殺気がぎらつく赤い瞳は暗に"下らない理由だったら撃ち殺す"と告げていた。
「女教皇様が我々の元から去ってしまったのは私達の未熟さえ故です。
だから私達は強くなければなりません、あの方に居場所を返す為に」
この言葉を聞いたのがもし上条当麻だったのならば平和的に解決しただろう。
数々のトラブルに見舞われながらも区切りを忘れず普通の生活を送ってきた彼ならば
「そォかいそりゃ結構―――」
だが、一方通行はそんな彼とは違って一線を越え闇との区切りをつけることが出来なかった。
だからこそ人の言葉に隠れる悪意は敏感に感じ取れても、善意を読み取ることは出来ない。
「―――とりあえず手始めに臨死っとけ」
闘いが始まる、上手くいけば共闘できる可能性もあっただろう二人同士の。
救いようのない戦いを止められるヒーローは今はまだ現れない。
今回の投下はここまで
次回はより派手な戦闘メインになれるかな
次回の投下は早くて明日、遅くて一週間以内の予定です。
それでは、また
どうも、>>1です
投下
同時刻 パラレルスウィーツ、観覧コース(上条サイド)
「むぐー。むがむごむぐむむむー」
「……あー、ビックリした。近い内に禿げるぞ俺」
体当たりをされながらも地面を転がる直前に剣を咄嗟に横合いに捨て受け身を取り
相手に馬乗りになられる事を防ぐために拳を握りしめた上条の目に映ったのは
新たな刺客ではなく不気味な文字が書かれた布で口を覆われたオルソラだった。
安堵のあまり全身から力が抜けるのを感じながら上条はオルソラの唇に右手を伸ばす。
そして得体のしれない布に触れた瞬間、それは自然に剥がれ落ちていった。
「あ、ありがとうございます。でも、一体どうやって……」
「細けえ話は後だ! とりあえず隠れよう」
そう言って上条は驚いた顔をするオルソラの腕を掴んで店と店の隙間に飛び込み
そこで倒れている少女を見て悲鳴を上げかけるオルソラの口を押えつけながら
細い隙間を勢いよく駆け抜け店の裏側の壁に同化するかのように張り付いた。
直後、表の通路から不穏さが滲み出た複数の足音が響き渡り過ぎ去っていく。
僅かに耳に入った彼らの話の内容から察するに侵入者を排除するというより
逃亡したオルソラを捜索しているのだろう、と上条は息を潜めながら軽く推測した。
しばらくして足音が遠のいていき、やがて完全に上条の耳には届かなくなる。
「……行ったみたいだな、とりあえずしばらくここに隠れ―――」
上条が安堵の溜息をつきながら、驚いた顔のままのオルソラにそう言いかけた瞬間
耳をつんざくような銃声と爆発するような少年の笑い声が遠くの方から鳴り響いた。
「―――次から次へと厄介事が増えてくる、不幸だ」
上条はそのまま地面へと座り込み項垂れ、そんな様子を不思議そうにみながら
オルソラもそれにならって彼の隣に気品が感じられる上品な仕草で座り込んだ。
―――
――
―
九月八日 一一時三三分 パラレルスウィーツ、観覧コース(一方通行サイド)
立ち並ぶ菓子店などには目もくれず天草式の少女はただひたらすらに観覧コースを駆け抜ける。
その背中を拳銃の照準を合わせながら獲物を狩る肉食獣のように一方通行が追いかけていく。
「アッハギャハハハッハハハハ!! ンだァ、その素人みてェな逃げ腰は!?
ヒャッハッハハ! 愉快に素敵にケツ振り回して誘ってンのかァ! あァ!」
獰猛に笑い罵声を上げながら一方通行は少女の背中に容赦なく銃を乱射する。
ヒュンヒュン、と自身の横を音速で突き抜ける弾丸に危険を感じた天草式の少女は
狙いを攪乱させる為にジグザグに走り横合いにある店と店の隙間に飛び込んだ。
「はっはァ!また驚かせてくれンだよなァ? そうでもしなきゃ生けてねェぞ!!」
一方通行は走りながら素早い動きで空になった弾倉を二秒足らずで差し替えし
少女が飛び込んだ店と店の隙間の前で足を止め、その場に銃を向けて引き金を引く。
だが、それと同時に天草式の少女が細い隙間から飛び出し手にした槍で一方通行の腕を弾いた
銃口から放たれた弾丸は見当違いの方向に飛び、拳銃は一方通行の後ろの地面を転がっていく。
「ハハッ、いいねェいいねェ最っ高だねェ! やっぱ直接殺さねェと気が済まねェよ!!」
奇襲をかけられ銃を失ったのにも拘わらず一方通行は一切の動揺を見せず
後ろ腰の鞘から小太刀を引き抜き、天草式の少女の横合いの追撃を軽く受け流す。
その直後、一方通行は天草式の少女の首に向かって逆手に持った小太刀を繰り出した。
少女はそれを槍の先端で受け止めるとそのまま反対側の先端で一方通行の脇腹を狙う。
一方通行は体をくるりと一回転させ完全に隙を付かれたはずの一撃を難なく防ぎ
そのまま槍を弾き体を深く鎮めると天草式の少女の鳩尾に向かって突撃する。
そして、少女の目の前へと踏み込んだ一方通行の肩が少女の鳩尾に突き刺さったように見えたが
その直前で少女が一方通行の腹を蹴り飛ばし、彼の華奢な体は軽く宙に浮いて地面に激突した。
「クックカヒャハハハ! さすがに雑魚ばかりの集団じゃねェか」
空中を一回転し仰向けに倒されながら一方通行は尚も微塵の狼狽を見せずに少女に話しかける。
少女はそれを無視して、飛び上がるとそのまま手にした槍を一方通行目掛けて突き出した。
槍が地面に突き刺される直前、一方通行は地面を転がり間一髪でそれを回避する。
そして、起き上がると再び少女の首を斬り落そうと逆手に持った小太刀を横一閃に振るう。
だが少女はその攻撃を見切ったかのように躱しそのまま一方通行の背後に回り
その背中を思いっきり蹴り飛ばし、一方通行がようやく振り返ったところで
彼の首を握りつぶすかのように掴み、そのまま屋台の壁へと激突させる。
直後に少女はさらなる追撃をかけようとしたが、それより先に一方通行が少女の手を払いのけ
その手で少女の後ろ首を掴み手前に引き寄せるのと同時に少女の額に頭突きを喰らわせた。
突然の反撃に怯む少女の首に向けて一方通行は容赦なく小太刀を振るうが
少女は槍を捨てると彼の手首を掴み、致命傷となりうる一撃を難なく防ぐ。
そして、そのまま背負い投げの要領で少女は一方通行のカウンターの上に叩き付けた。
和菓子の店の為木で出来ていたカウンターは衝撃に耐えられずあっけなく砕け散っていく。
少女は槍を蹴り上げて片手で拾い上げるともう片方の手で一方通行の首を締め上げた。
このまま、六秒程度の時間で一方通行の意識は途絶える―――はずだった。
ガギン、と一方通行の首を絞めていた彼女の左手が突然捻じ曲げられる。
まるで首を握りしめていた手の内側から強い力が瞬間的に加わったように
「ただ殴り合ってるだけじゃダメなンだ、勝負ってのには切り札がねェとな」
そう言って一方通行は余裕の笑みを浮かべながら地面に手を付き少女を蹴り飛ばす。
たったそれだけで少女は向かい側の屋台に派手に激突し店の造りを破壊していった。
「俺のはあらゆるベクトルを操作するっつゥ能力なンだが、お前はどォなンだ?」
手に持った小太刀を手慣れた手つきでくるくると回しながら少女が激突した店に近づく。
ゆっくりと、命だけでなく魂までを奪おうとする死神のような不気味さを放ちながら
そして、全体的にひしゃげた屋台まで来た時、瓦礫から少女が飛び出してきた。
その少女は両手でしっかりと槍を握りながら、ただ一方通行を見据えている。
その様子にさすがに驚いた一方通行だったが、しばらく考え答えを導き出した。
「……即席の回復魔術か、プラナリアかっつゥの!」
一方通行は叫びながら小太刀を逆手に構えなおすと天草式の少女に肉薄する。
楽しげに笑いながら、それでも目だけは白熱した殺意をぎらつかせながら
天草式の少女はすかさず槍を自由自在に回しその攻撃を難なく受け止めるが、
一瞬の間もおかず一方通行は小太刀を左手に持ち替え全く別の一撃を放った。
その一撃も少女は防いだが、それを見越していたかのように一方通行は
右手に持ち替えたばかりでなく逆手ではなく順手に構えさらに別の一撃を放つ。
少女が攻撃を防ぐたびに一方通行は小太刀を素早く持ち替えていき
ビュンバンヒュン! と恐るべき速さで次々と軌道を変える小太刀は
うねる蛇のように少女の急所に食いちぎらんばかりに襲い掛かっていく。
そして、スパン! と皮膚が金属によって擦り切れる不快な音が響いた。
―――少女からではなくあろうことか攻撃を放った一方通行の左手首から
「なっ!?」
「何だ! その!! しかめっ面は!!!」
思わず声をあげる少女に一方通行は攻撃性が如実に現れた獰猛な笑みを浮かべて
右手で持っていた小太刀を横合いに捨てるとハンマー投げのように左腕を大きく振り回し
手首から噴き出る血を驚愕によって見開かれた少女の目へと浴びせ掛ける。
「あぐっ!?」
目に液体が入った痛みに耐えられず少女は思わず槍から右手を離し拭ってしまった。
瞬間、一方通行が少女の槍を鉄棒を回るように両手で掴み彼女の腹を容赦なく蹴り飛ばす。
片手で持っている上、目に走る激痛で力が入っていない少女は耐えられるはずもなく
槍から手を放したばかりか立っていることさえ出来ずに冷たい地面を軽く転がっていく。
「チェックメイト、だよなァ?」
ようやく目に入った血を拭い去った少女の目に移ったのは、自身の槍を後ろに放り投げ
パチン、と折り畳み式のジャックナイフを開きながらゆっくりと歩く一方通行の姿だった。
「口が裂けるほど笑わせてやるよ」
そして、少女にたどり着くまで後一歩の所まで一方通行が差し迫ったとき
こちらに向かってくるような複数の足音が響き渡り二人の周囲でピタリと止んだ。
見れば一方通行を包囲した天草式の者達が得体の知れない剣や斧を彼に向けていた。
彼らの顔には静かな怒りがあり、前髪がゆらりと墓場に咲く花のように揺れている。
「アハ、本当に救われねェなお前らって」
瞬間、轟!!! と静かな夜風が風速五〇メートルの旋風と化し
突然現れた天草式の面々を紙吹雪のように吹き飛ばした。
いとも簡単に薙ぎ払われる仲間達を見て表情を凍り付かせる少女の首を掴み
一方通行はジャックナイフを握った手を空へと向かって振り上げる。
近い内に訪れるであろう痛みに少女は思わず目を瞑り残酷な現実を見えないようにした。
が、いつまで立っても予想した惨劇が少女を襲うことはない。
やがて恐怖よりも疑問の感情が勝った少女はある事に気付いた。
―――首を掴む腕が自分自身よりも遥かに震えだしていることに
驚きに目を開けて見上げると一方通行の顔には最早笑みなど無かった。
狂熱を帯びた殺意がぎらついた目には戸惑いや焦燥が入り混じっている。
そして、その顔は今にも泣きだしそうな子供のようにも見えた。
しかし、それらは一瞬の内に終わり一方通行の顔から表情が消え
震えていた腕が何かに抑えつけられたかのように強引に振動を止んだ。
だが、その直後、何の比喩もなく誰かが一方通行の腕を掴みあげた。
その姿を見て一方通行だけでなく少女までもが目を見開いて驚きを露わにする。
「何してんだよ、お前」
そこには、上条当麻が立っていた。
味方である一方通行から敵である少女を守る為に
今回の投下はここまで
久しぶりに結構投下できた気がする。
この調子で投下速度もあげていきたいです。
それでは、また
どうも、>>1です
投下
九月八日 午後一一時三七分 パラレルスウィーツ、観覧コース
「何してんだよ、お前」
一方通行の手に握られたジャックナイフは少女に振り下ろされる直前で止まっていた。
―――何の前触れもなく現れた少年、上条当麻が彼の腕を掴んだことによって
「……見りゃ分かンだろ、ここは戦場だ」
「そうか」
何かを抑え込んだ表情で突き放すように言い捨てる一方通行に上条はそう返す。
そして、一方通行の右腕を掴む右手に何かを握りつぶすかのように力を加えていく。
唐突に腕を駆け抜けていく痛みに耐えきれず、一方通行は呻き声を上げながらナイフを落とした。
瞬間、上条は右手を離すと握りしめ腰を握りしめ一方通行の顔面目掛けて正拳突きを放つ。
「歯ぁ食いしばれ一方通行ぁぁぁアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ゴン! と鈍い衝撃音と共に一方通行の華奢な体が宙を舞い派手に地面を転がった。
そして、地面に座り込む少女の盾となるように上条は前に進み一方通行を睨み付ける。
「ふざけんじゃねえぞテメェ! 何も殺さなくたっていいだろうが!!」
「……黙れ」
地面にひれ伏しながらも一方通行は低く唸るようにそう呟くと
地獄から這い出る亡者のような動きでゆっくりと立ち上がっていく。
「お前に何が分かる!? このクズ共は神裂の信念を踏み躙ったンだ!!
ふざけた事にこンな馬鹿げた茶番劇の責任はアイツにあると抜かしやがる
―――冗談じゃねェ!! アイツにそンな舐めたセリフは聞かせられるか!!
だから、邪魔をするな!! アイツには俺が暴走したとでも言えばいい!!!」
一方通行はそう叫び、地面を蹴ると弾丸のような速度で上条に肉薄する。
触れただけで人を殺せる悪魔のような右手を前へと突き出しながら
「舐めた口を叩くのもイイ加減にしろ!!!」
そんな毒手を右手で掴み取り、そのまま左手で一方通行の腕を掴むと
餅つきのように彼の体を軽く持ち上げ思いっきり地面に叩き付けた。
ごふ、と口から酸素の塊を吐きながらも諦めずに立ち上がろうとする
一方通行の胸倉を掴み、彼の華奢な体を持ち上げながら上条は叫ぶ。
「人の命を一体何だと思ってやがる! 自分のやろうとしてる事の意味が分かってんのか!
もっと他に方法があるだろ!! 頭いい癖にどうしてそんな事しか思いつかねえんだよ!!」
「ソイツは残念だったな、期待したお前には悪ィが俺は元々そォいう類の人間だ
暴力的で身勝手で、反吐が出そォな程の世界中の誰よりも醜いクソ野郎なンだよ!」
一方通行は懐から小太刀を引き抜き峰で上条の後ろ首に向けて横一閃に振るう。
だがその攻撃が届く直前、上条は小太刀をあろうことか左手で掴んで防いだ
さすがの一方通行もこれには驚いたのか、そのまま体の動きを止めてしまう。
「人伝だけどお前がやった事を少しは知ってる、だからお前の言う通りかもしれない」
ポタポタ、と右手から血を流しながら上条は静かに語り掛ける。
ともすれば絶叫しそうになる程壮絶な痛みが襲っているにも拘らず
「でも、お前がそのままでいいと思っているならそんなセリフは出てこない。
変わりたいんだろ? 誇れる事が何一つなく蔑む事しかできない自分自身から」
言葉で言い表せない鬼気迫るその姿に動揺した一方通行は思わず小太刀から手を離した。
瞬間、上条は一方通行から目を離さず自身の血で汚れた小太刀を横合いに抛り棄てる。
「お前が何を言おうが俺は信じてる、自分とは関係ないと切り捨てる事も出来たのに
妹達を助ける為に命まで懸けたお前ならその魂をきっとどこかに残してる!!!」
そう叫ぶや否や上条は半ば放心状態に見える一方通行を横合いに蹴り飛ばし
屋台に衝突したところで彼の顔に本気の右ストレートを叩き込んだ。
「折角の出来の良い頭なんだからよく冷やして考えろ、馬鹿野郎」
左手の痛みに顔をしかめながら上条が呆れたようにそう言い捨てたが
一方通行はその声に答えることなく糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。
今回の投下はここまで
勘違いとはどうにも恐ろしいものです。
語彙は豊富にしときましょう、古美門先生みたいに
それでは、また
どうも、>>1です
時と場所を選ばない新たな説法「そげぶ」
はい、なんかすいません。
投下
九月八日 午後一一時四〇分 店の裏手のエリア
自身の内から湧き上がる感情にに従って一方通行を倒した上条だったが
その直後にここが戦場と化している事とたった今助けた少女が敵である事を思い出し
少女が茫然自失としている隙に一方通行を担ぐと急いでその場から離れた。
何も戦闘不能にするんじゃなかった、と一方通行を気絶させた事を本気で後悔しつつ
上条は元いた場所、周囲から死角となっている店と店の隙間へと帰還する。
「あら、そちらの方も昼間お会いした方でございますよね?」
「あー、……天草式に倒されちまったみたいだから拾ってきた」
そこで上品に座り込んだまま待っていたオルソラに上条はそう誤魔化し
ぐったりと動く気配など微塵もない一方通行の体を地面に下ろした。
地面に仰向けで寝かされた一方通行を不思議そうに見ていたオルソラだったが
ふと彼女の表情が見過ごせない何かを見つけたかのようなものに切り替わる。
彼女は、失礼します、と言うと一方通行の胸元に手をゆっくりと入れて何かを取り出す。
オルソラの手に握られ、取り出されたのは銀で出来た十字架のネックレスだった。
「おや、あなた様方はイギリス清教に所属しているのでございますか?
私はてっきり学園都市から来た方々と思っていたのでございますけど」
「ん? いやいやお前の思った通り俺と一方通行はれっきとした学園都市の住民だ。
イギリス清教には協力してるだけ、ってかそれだけ見てイギリス清教を連想できんのか」
「ええ、一口に十字架といってもラテン十字やケルト十字といったように
様々な形や種類のものがあって、宗派によって違うのでございますのよ」
「ふーん、そんなもんか。それにしても何でこいつが十字架なんか持ってんだろ?
昔イギリス清教にはいたらしいけど―――そういえば俺も同じやつもらったな」
信仰心があるとは思えない一方通行が十字架のネックレスをつけていた事に疑問を感じた上条だが
ふとステイルから投げ渡された十字架を思い出し、それを何気なくポケットから取り出した。
「うーん、貰ったはいいけど俺ネックレスとかつけねえんだけどな……あ、そうだ。
本職の人間が持っていたほうがいいと思うし、よかったら預かっててくれないか?」
「あら、よろしいのでございますか!?」
上条としては単なる思い付きとして大して何も考えずにした提案だったのだが
予想外にもオルソラは飛び上がりそうになるほど喜び両手で上条の拳を握りしめる。
「一つだけ、お願いがあるのでございます」
「な、何だ?」
「あなた様の手で私の首に掛けて貰えないでしょうか?」
「え? まあ、別に構わねえけど」
予想以上に柔らかい感触に声を裏返しながら上条がそう答えると
オルソラはネックレスを掛けやすくする為に瞳を閉じて顎を挙げた。
突然目の前に広がった絶景に上条は焦りながらも上条がネックレスの連結部を外し
彼女の喉に巻きつけた時、ポタポタ、と上条の左手から赤い液体が静かに零れ落ちた。
その音に反応し瞳を開いたオルソラの表情が驚愕と心配に染め上げられていく。
「だ、大丈夫でございますか?」
「あー、まあこう見えて傷は浅いから大丈夫だと思うけど」
「いけません、とりあえず応急処置だけでもしておかないと」
そう言ってオルソラはハンカチを取り出して上条の左手にしっかりと巻きつけた。
その間に冷静さを取り戻した上条は止血を終え再び瞳を閉じて顎を突き出す彼女の後ろに
回りネックレスを彼女の喉に巻き付け後ろ首で連結部を繋げ、安堵の溜息をつく。
オルソラは目を開けると胸元の十字架を見ると満足そうにそれを何度か撫でた。
上条はその動きを何気なく見たが途中から彼の視線は大きな膨らみへと移行していく。
ふと我に返った上条は慌てて目を逸らし、沈黙に耐えられないといった感じで口を開いた。
「そういえば、お前って『法の書』の読み方がわかるんだっけ?」
「ええ、読み方というより暗号文の解読方法ですけど……」
オルソラはのんびりとした様子でそこまで言いかけて不意に身を固める。
恐らく上条が法の書の知識を欲しているように思えたのだろう。
「あー、違う違う。別に解読方法を教えてくれとかいう意味じゃなくて
どうして解読したのか少し気になってな、あれって結構危ない本なんだろ?」
「……力が欲しかった、という事に間違いはないのでございますが」
オルソラは僅かに警戒が含まれた険しい視線で上条の顔を見つめていたが
やがて力を抜いたかのように表情を緩めゆっくりと語り始めた。
「あなた様は原典はどんな方法を使っても破壊できないと話をご存知でしょうか?」
「ああ、人伝だけど一応な。本そのものが魔法陣になっちまうんだっけ?」
「ええ、干渉を察知しただけで実行犯に迎撃術式を発動させてしまうのでございます。
処分しようにも迂闊に手が出せないから、せいぜい誰も読めないように封印する程度。
そして、そんな原典の力に魅了されてしまう人間も少なからずいるのでございますのよ」
そうのんびりと語るオルソラだが、彼女の表情はひどく曇っていた。
その目には憎しみではなく、哀しんでいるような憂いが湛えられている。
「私はこれ以上たった一冊の本で変わってしまう人々を見たくないのでございます。
だから私は今の技術では破壊できない魔道書を壊す為に仕組みを調べたのでございます」
覚悟を決めたような顔をするオルソラを見て上条は思わず顔を綻ばせた。
オルソラは法の書の力を求めようと躍起になっているわけではない。
法の書がもたらす災厄を断つために解読法を調べていただけだった。
その事実が上条を包み込んでいた戦場での恐怖が和ら彼を安堵させる。
「……話し声? そこに誰かいますか?」
突然、女性らしき声と共に何者かが上条達が隠れていた場所に入り込んだ。
槍を片手に現れた姿は紛れもなく一方通行に殺されかけた少女だった。
今回の投下はここまで
今回出てきた少女は言うまでもなくおしぼりの人です。
本当に言うまでもないけど
それでは、また
どうも、>>1です
だいぶ遅れましたが投下
九月八日 午後一一時四五分 店の裏手のエリア
彼女を見て上条は安堵から一転して恐怖を思い出し一気に背筋を凍らせる。
助けた義理があるといっても敵同士でありここが戦場である事に変わりはない。
だが身構える上条の心配を他所に少女は攻撃する事無く礼儀正しく頭を下げた。
上条はおろかオルソラでさえも呆然とする中、その少女は口を開きだす。
「天草式の五和と申します、少しお話ししたい事が―――」
五和と名乗った少女がそう言いかけて勢いよく頭を上げようとした直前
ゴン!! と鈍い音が店の向かいにある円形の観覧コースから鳴り響き
直後、夜空を舞った何かが彼女の体を押し潰すかのように地面に激突した。
それは人間のように見えたが着地に失敗している所を見ると受動的に飛ばされてきたのだろう。
地面を転がっていくその人物は所々が切り裂かれた黒い修道服を身に纏い肌を血で滲ませていた。
「ステ、イル?」
「く、そ……上条当麻か。何をしている、早く逃げろ!!」
呆然と落下してきた人物の名を呟いた上条にステイルが怒号を飛ばした瞬間
上条が背中を預けている店の二つ横の壁が膨れ上がった風船のように破裂する。
困惑する上条を余所に崩壊していく店から何者かが飛び出した。
雨のように降り注ぐ瓦礫を背に、危険を楽しむような笑みを浮かべながら
その人物はわざわざ黒く染めた黒髪をツンツンに固めたクワガタのような髪型で
斜めの赤十字が染め抜かれたぶかぶかの白地のTシャツにだぼだぼのジーンズ、
1メートル程もの長さの靴紐、首には革紐のようなネックレスに小型の扇風機を
いくつかぶら下げているという他の天草式とは明らかに異なる奇抜な格好をしていた。
その手にあるのは全長一八〇センチの長さを誇る一七世紀の両手剣、フランベルジュ。
それを片手で軽々と振り上げ刃先をステイルに誇示するように突きつけながら男は笑う。
「くっく、情けないのよなイギリス清教の神父様。大した戦略と魔術だが所詮は三流。
英国紳士の誇りだけでもこの建宮斎字に見せてみろ。そんなんじゃ女の一人も守れんぞ」
嘲りの言葉に対してステイルは忌々しげに舌打ちしながらルーンのカードを取り出す。
その眼は建宮と名乗る男ではなく壊れた店舗の向こうにいるインデックスを見ていた。
「お前、まさか―――」
「余計な事は、考えるな」
何かを言おうとした上条をステイルは血でも吐きそうな声で制しながら
身構えているインデックスから一旦目を逸らすと辺りを隈なく見渡していく。
「……よし、一方通行が戦闘不能になっているようだけどオルソラは確保できているね。
後は隙を作って奴から逃げ切るだけだ、……無理にあれを倒す必要性は、全くない」
状況を把握したステイルはそう言ったが上手く力が入らないのか立ち上がることが出来ずにいる。
建宮はその様子を愉快げに眺めていたが、やがて視線をオルソラへと移すと深い溜息をついた。
「それでなぁ、一体全体どうしてお前さんとこんなとこで鉢合わせにゃならんのよ?
何度も説明したはずだ、オルソラ=アクィナス。我々はあなたに危害を加える気はない」
言葉自体は安心を抱かせるようなものだが、その声は心が全く籠められていない。
言外にオルソラを逃がした部下に対する失望さえ感じられる薄っぺらいものだった。
対する彼女は壊れた店と傷ついたステイルを見て大剣を握る建宮をにらみつける。
「確かに、あなた様の言葉は希望に満ちていたものと申し上げますが。
私は何かを破壊しながら訴える平和など求めてないのでございますよ」
「そうかい、お前さんが求めてる平和がどこにあんのか是非知りたいものだ」
否定の言葉にも建宮は一切動じず、肩の調子を確かめるようにフランベルジュを軽々と振り回す。
その様子に思わず震え上がるオルソラを庇うように上条は何も持たずに彼女の前に立ち塞がった。
「これといった武術の構えもなければ霊装もなし、衣服の中に隠された魔術記号もなければ
服の厚さからして銃やナイフといった類の暗器もなし―――あらゆる意味で丸腰、か。
まさかこの局面で素人と出会うとはな、かといって見逃す訳にもいかんようじゃねえの」
上条の顔を呆れた顔で見ていた建宮だったが、彼の近くで倒れている少女を見ると
途端に険しい顔つきを変えていき、生命の危機さえ感じられる寒気を伴った殺気を放つ。
「そんな舐めた体制でよく五和を倒せたもんだな」
いや、テメェがやったんだろ。と上条は言いかけたがその言葉を途中で呑み込んだ。
誤解こそあるが、部下の為を思って怒るその姿は確かに怖いが人間らしさが感じられた。
「今ここでテメェが誰かの為に戦っているんだったら剣を引いてくんねえか?
俺は出来ればそんな人間とは戦いたくないし、勝ちたくも負けたくもない」
「そうしてやりたいのはこちらも山々なんだがなぁ、ここまで来た以上そうはいかねえのよ。
まあ、素人のお前さんに限ってはこの場で膝をついて降参すれば見逃してもいいんだがな」
建宮はそう笑いながら言って威嚇するようにフランベルジュの刃先を突きつける。
しかし、上条は膝をつくどころかドレスソードを横合いに蹴飛ばし一歩前へ踏み出した
「何で俺が引かなきゃいけねえんだ、ナメてんのかテメェは」
上条は怒りを無理やり抑え込んだような低い声でそう呟き右拳を固く握りしめ建宮を睨み付ける。
その光景を見ていた建宮は心の底から残念そうな深いため息をつき、刃先を上条から逸らした
「なんてイイ目ぇしてやがるんだ、全く哀しくなっちまうじゃねえの。
覚悟は決めたはずなのに、思わず躊躇っちまいそうになるってものなのよ」
建宮はフランベルジュを持つ右手で思いっきり横合いに引き延ばす。
その目には口調とは裏腹に言葉では言い表せないような異様な光が灯っていた。
「けどまあ、やるってんなら仕方ねえ―――覚悟しろ、生存者ゼロだ!」
瞬間、ゴッ!! と建宮は靴底で思いっきり地面を蹴りつけ勢いよく上条へと肉薄する。
上条が緊張で凍っている間に、建宮は最初の一歩を踏み込み次の一歩を踏み込もうとしていた。
(やっ、べ! このままじゃ……死ぬ!!)
上条は恐怖で震える体を無理やり動かし、ようやく最初の一歩を踏み出す。
逃れようと後ろに下がるでもなく、避けようと横合いに跳ぶでもなく、前へと。
僅かに右斜め方向に突撃する上条に建宮は僅かに怪訝そうな顔をしながらも
フタンベルジュを軽々と振り上げ、そのまま上条の胴体目がけて振り落とす。
上条は思わず息を呑みながらも雷光のような一撃を全身全霊をかけて横合いに跳んで躱した。
が、慣性を無視した動きが安定するはずがなくバランスを崩した体は店の壁に激突する。
建宮は手首を捻りフランベルジュの向きを変えると体を回転させるように動き
店の壁を背を預けている上条に容赦なく横一閃にフランベルジュを振るった。
だが、上条はその一撃を身を屈め頭上スレスレでやり過ごし建宮の懐へと踏み込む。
髪の先端が切断される音に戦慄しながらも上条は正拳突きを建宮の顔面へと繰り出す。
大剣を渾身の力で横合いに振るった後に訪れる隙を狙った完璧なはずの一撃。
しかし、その拳が建宮の顔面を捉える直前、彼の姿が煙のように忽然と消える。
「なっ!?」
渾身の一撃を空ぶらせた上条が見たのは一メートル後方に下がった建宮の姿だった。
そして、真横に振るい切った直後のフランベルジュは真上へと振り上げられている。
「く、っそ!」
増幅した緊張と恐怖に耐えながら、上条は何も考えずに反射的に横合いへと転がった。
直後、轟!!! とその一撃は薄っぺらい紙を引き裂くように地面を抉り取っていく。
あまりの摩擦のせいか地面はマグマのようなオレンジ色の輝きを放っている。
(くそっ、魔術か!)
そう思って右拳を握りしめた瞬間、まるで氷の上を滑るような不自然な動きで
上条へと肉薄した建宮が彼の脇腹を容赦なくつま先で蹴り飛ばした。
上条の体が冷たい地面を勢いよく転がった末に仰向けになった瞬間
ドス!! と真上から降り注いだ透明な氷の塊が彼の腹にめり込んだ。
サッカーボール程の大きさの氷の塊が消えるのと同時に上条は口から血を吐き出した。
それでも彼は立ち上がろうとするが、肉体が限界を迎えたのか指先しか動かせない。
「本当に残念だが仕方ねえ、今日がお前さんの命日だ」
「とうま!」
様子を伺ってたインデックスが思わず上条に向かって走り出しだが
店と店の隙間を通ろうとした時、何者かが彼女の肩を掴み制した。
「ここで大人しく待ってろ」
え? とインデックスが聞き返す前にその人物は弾丸めいた速度で飛び出し
仰向けに倒れている上条を見下ろしながら剣を振り上げた建宮へと突撃する。
「!?」
刺客の気配を敏感に感じ取った建宮は勢いよく振り返り咄嗟に剣に振るった瞬間
ガキィン!! と金属同士が衝突しあう不穏な音が夜空に響き渡っていく。
建宮に襲い掛かった人物は受け身をとる事無く倒れている上条の近くへと着地する。
その肌は漂白したかのように白く、その服装は墨にでも浸したように黒かった。
「……一方、通行?」
上条はほとんど動かない唇を必死に動かしその人物の名前を弱弱しく呟く。
白い少年、一方通行はその様子を一瞬だけ見ると視線をインデックスに向ける。
「やられたらやり返す、倍返しだ」
「……は?」
刹那、一方通行がシュートを放つかのように容赦なく上条の脇腹を蹴り飛ばした。
上条の体は大きく吹き飛び、放物線を描いてインデックスの足元の地面へと激突する。
困惑するインデックスを他所にここが戦場であることも忘れて上条は叫んだ。
「っざけんなテメェ!! いきなり何しや―――」
そこまで言いかけて上条は気づく――自分の体を普通に動かせられる事に
そして地面に激突するまで蹴られた痛みを全く感じていなかった事を思い出した。
上条は改めて一方通行を見たが、彼はは全く気にしていない様子で建宮と向き合っている。
「俺が言うのもなんだがちょっと可哀想なんじゃねえの?」
「お前がな、折角のゲームが始まる前に終わっちまうなンてな」
「……お遊びって訳じゃねえのよ、ナメてんのかテメェは」
一方通行と建宮はお互いの手に握られた武器を手慣れた万年筆のように扱いながら
最善の型で構えると、ゴッ!! と同時に磁石に引き寄せられるように飛び出した。
今回の投下はここまで
一方通行の応急処置が上条さんの右手の影響受けなかったのは
能力を直接使ったのではなく衝撃をいい感じに加えたからです。
正直、大雑把に考えたんで大雑把に流して結構です。
次からはちゃんと考えます、すいません
それでは、また
乙
さんすくみになるんこれ?
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
>>178
このSSでは一方通行は敵と認識した者には強いけど身内には弱いです。
割とガチギレしてても上条、神裂、食蜂辺りには絶対に勝てません。
例えるならば幼ない子供が母親に駄々を捏ねているようなもの。
何という情けない第一位、これはエイワスに幼稚だと言われてもしょうがない
だが、そこがいい
新年そうそうの異様なテンションの中で投下
九月八日 午後一一時四八分 パラレルスウィーツパーク、観覧コース
ガキィン!! とフランベルジュと小太刀が衝突する音が響き渡り
同時に建宮斎字と一方通行の両社は刃越しに互いを睨み付ける。
「……お前に何が分かる? 俺達は―――」
「うるせェ黙って死ね」
刹那、一方通行が小太刀を構えた手首を軽く動かしてフランベルジュを僅かに弾き
小太刀を逆手に構え直すのと同時に軽く飛び跳ね体を時計回りに一回転させて
フランベルジュを避けるように建宮の首筋目掛けて小太刀を横一閃に振るった。
が、その直前で建宮はまるで氷の上を滑るように足を地につけたまま滑らかに後退し
常人なら不可避のはずの一撃を躱すとフランベルジュを軽々と真上に振り上げる。
(よし、もらった! さっきと同じ要領で叩きのめしてやろうじゃねえのよ!!)
あまりにも見覚えがある状況に建宮が血に飢えた貪欲な笑みを浮かべた瞬間
ゴキッ! と一方通行の腕が不自然に捻じ曲がり横薙ぎの一撃が突きへと変化した。
「な……、馬鹿な!?」
勝利を確信していた建宮だが、予想外の事態に焦った彼は空へと跳躍し
突撃してきた一方通行の体を飛び越えるようにしてその一撃を躱す。
ヒュン!!! と数瞬前まで建宮が立っていた場所を小太刀の刃が恐るべき速度で
駆け抜けていく音に戦慄しながら建宮は勢いよく後ろを振り返り横薙ぎの一撃を放つ。
同時にサッカーボール程の大きさの透明な氷の塊が空中に幾つも形成され
思いっきり投げられた野球ボールのように一方通行の背中へと襲い掛かる。
瞬間、一方通行は勢いよく振り返ると同時に服の内側から手榴弾を取り出し
あろうことか安全レバーを握っていない状態で口でピンを引き抜いた。
(チッ、自爆か!? 戦闘前から張ってある対衝撃術式だけでは心細いのよな)
一方通行の異常な行動にも建宮は取り乱すことなく対策を導き出す。。
洗練された『何気ない行い』がより強化された対衝撃術式を構築していく。
(よし、組み立て完了! これで向こうが爆発するのを待つのみ!)
そう建宮が再び勝利を確信した時、一方通行の手に握られた手榴弾が爆破した。
しかし、一方通行の華奢な体を貫くはずの無数の破片は飛び散ることなく
レーザーポインターの光のように一筋に集約して建宮へと襲い掛かっていく。
(なっ! ウソだろ!?)
建宮が想定していた以上の圧倒的な暴力が彼の対衝撃術式と真正面から衝突し
その負荷に耐えきれず彼の体は壊れた店舗の先の観覧コースに吹き飛んだ。
(が、ば……ッ!? 一体何が……?)
幸いにも軽傷で済んだものの目の前に起きた現象に混乱する建宮の目の前に
人間の脚力では有り得ない高さまで跳躍した一方通行が滑らかに着地する。
その体は無傷であるばかりか、身に纏っている服にさえ煤一つついていなかった。
「……何なのよお前さん、魔術的記号は一切ないはずなのに何故……」
「一々うるせェおっさンだ、こっちが律儀に答えると思ってンのか」
直後、弾丸めいた速度で飛び出した一方通行が建宮へと凶悪な瞬発力を秘めた飛び蹴りを放つ。
建宮が慌ててその一撃を交わした所を一方通行が振り返るのと同時に横一閃に小太刀を振るう。
正確に頸動脈を狙ったその一撃を建宮は膝を折り曲げ体を大きく仰け反るようにして躱すと
体を半回転させると同時に跳躍し一方通行の脳天目がけてフランベルジュを振り落とす。
が、その一撃が一方通行の体を真っ二つにする前に一方通行が左手で懐から小太刀を取り出し
二本の刃を交差するように受け止め、その下を潜るように建宮の胸元に頭突きを繰り出した。
体の芯を揺さぶる衝撃に建宮が怯んだ瞬間、一方通行は左手の小太刀を放り棄てると
フランベルジュの表面の波に出来ている僅かな隙間に小太刀を突き入れ振り上げた。
ヒュン、と建宮の手からすっぽ抜けたフランベルジュを月が明るく輝く夜空を舞い
その光景に建宮が気を取られた瞬間、一方通行が彼の体を容赦なく蹴り飛ばした。
ガン!! とまるで磁石に引き寄せられるかのように建宮の体が店の壁へと叩き付けられ
その光景をつまらなさそうに見ながら一方通行は落ちてきたフランベルジュを掴んだ。
「チェックメイト、だよなァ?」
「く、そ……我らはこんなところで……」
「私語は慎めェ!」
建宮が何かを言いかけたところで一方通行は思いっきり彼の方向にフランベルジュを投げつけた。
徐々に向かってくる己の大剣に死を感じた建宮は全てを受け入れるかのように目をつむる。
そして、ザシュ! と直線上を飛んでいったフランベルジュは何かに突き刺さって動きを止めた。
―――建宮の顔のすぐ横、彼のすぐ後ろにある店の壁へと
「……え?」
不穏な音と同時に訪れない激痛に建宮は驚きに染まった表情で目をあける。
刹那、建宮へと肉薄した一方通行が振り上げた足で彼の顎を容赦なく蹴り飛ばす。
そして、建宮は突き刺さったフランベルジュとは逆方向に倒れ、そのまま意識を失った。
今回の投下はここまで
ステイルさんの見せ場はまた次の機会に持ち越しです、すいません
(実は建宮戦がノープランだったなんて口が裂けても言えない)
それでは、今年もよろしくお願いします。
それでは、また
どうも、>>1です。
書いていたのが一回うっかりで消えてしまったので少々時間がかかりました。
それでは投下
九月八日 午後一一時五五分 パラレルスウィーツパーク、観覧コース
建宮斎字という司令塔を失った事で天草式の統制が一気に崩れたせいなのか
ほんの数分前まで断続的に鳴り響いていた戦闘音や怒号は徐々に収まっていき
夜の闇に包まれたテーマパークは本来あるべき静けさを取り戻し始めている。
当の建宮は手足・胸元・背中・額にルーンのカードを張り付けた状態で座らせていた。
それ自体に拘束する機能はないが少しでも動けば全身が火だるまになる仕組みだ。
それを仕掛けたステイルはローマ正教が勝利した事を上条に告げると
オルソラを連れてアニェーゼ達の元に向かった為、ここにはいない。
一方通行も『確かめたい事がある』とだけ告げて彼に着いていった為
この場には上条とインデックスと建宮の三人しか残っていなかった。
「とうま、とうま! 大丈夫、怪我とか痛いところとかない!?」
「ああ、特にはないぞ。別に動けないわけじゃないし」
「良かった、―――なら新しい傷を作るんだよ三下!!!」
尋常でない様子で心配するインデックスに照れ臭くなった上条は顔を逸らしたが
その隙を突くようにしてインデックスは猛獣のように上条の頭に喰らいかかる。
「ぐあああああああ!? お、落ち着けインデックス。とりあえず話し合おう。
話し合えばきっと分かり合え―――ぎゃあああああああああああああ!!!!」
「Don`t you know how much I worried!? son of the bitch!!」
「いや、日本語でお願いしまァァァあああああああああああああ!!!」
一通り制裁し終えた事で気が晴れたのかインデックスは上条から身を退いた。
未だ追撃に構える上条とは対照的に彼女は耳を澄ませるように夜空を見上げる。
「静かだね、あれだけ人が暴れていたのが嘘みたいかも」
「……そうだな」
突撃前と変わらずテーマパークは静寂に包まれていたが今は安らぎを感じられた。
そう思えるようになったのは戦いが終わった後だからだろうか、と上条は考える。
「おい」
その時、不意に座らせられている建宮が焦燥を帯びた声で紙状に話しかけた。
上条は驚いて思わず体全体を震わせ息を呑みながらゆっくりと振り返ったが、
それより先にインデックスが彼の盾になるように両手を広げて立ちふさがる。
「一個だけ聞かせろや、お前さん達は本当にオルソラを助けに来たのか?」
「はぁ? ナニ言ってんだお前、それ以外の理由がある訳ねえだろ」
「そうか、だったら悪いが今すぐにこいつを解いちゃくれんかな?」
「……馬鹿かお前。この状況で一番ヤバい人間をみすみす逃が―――」
「馬鹿はお前さんだ! このまま本当にローマ正教に引き渡すつもりか?
その後、彼女がどういう扱いを受けるか分かってやがるんだろうな!?」
必死に何かを訴えるような声を絞り出す建宮に上条は気圧されたが
インデックスは上条の前に立ちふさがったまま建宮を睨み付けた。
「無視していいよ、とうま。この人は今言葉を武器に闘っているだけ。
如何にも尤もらしく聞こえてもそれは巧妙な罠、絶対に騙されちゃダメ」
「もう既に騙されている事にいい加減気付け!!!」
インデックスを言葉を跳ね返すように建宮は喉が傷がつきそうな勢いで叫んだ。
あまりの気迫にインデックスだけでなく、彼女に背後にいる上条まで怯んでしまう。
「よく考えろ! 何のために我らが法の書なんて盗まなきゃならんのよ?
それにローマ正教が展示用にわざわざ本物の原典を持ち出すと思うか?
魔術をまだ知らない一般人への見世物ってんなら写本で十分だろうが!」
その時、どこか遠くの方で尋常ではない大きさの轟音が鳴り響いた。
だが、そんな壮絶な音の中には人間の女性特有のソプラノが含まれており
恐怖、苦痛、絶望といった人間のあらゆる負の感情が泥の様に凝縮されている。
あまりにも非日常的すぎる突然の大音響に動揺する上条とインデックスに
建宮は立つ事すら出来ないことに歯噛みしながら切羽詰まった声で叫んだ。
「時間がない、この際だ。我らを信用するかしないかなんてどうでもいい!
お望みならここで死んでやる! その代わり彼女を必ず救い出すと約束しろ!!」
演技、と切り捨てるには彼の眼は純粋な真剣さで満ち溢れていた。
上条やインデックスが信じてきた事件の構造を揺るがすほどに
と、その時カツンと取り戻された夜の静寂を壊すかのような足音が響き渡る。
反射的に上条が音のした方向を振り返ると二人の背が離れた黒いシスターが歩いてきた。
背が高いほうは小さな丸テーブルを軽く超す大きさの木製の車輪を担ぎ
背の低いほうは何も手に持っていないが腰に皮の袋を四つほどぶら下げている。
ソフトボール程の大きさのその袋には硬貨でも入っているのだろうか
彼女が一歩進むたびにジャラジャラと熊よけの鈴のような音を立てている。
随分と重量のある財布だな、と上条はスリのような目つきで硬貨袋を見ていると
背の高いほうのシスターが袂から時代を感じさせるような古びた手帳を取り出し
手慣れた手つきでページを捲ると何かを確認するように頷き上条に近づいた。
「外部協力者の御方ですね。異端の首謀者を捕らえたという報告があったので
その身柄を引き取りに参上いたしました。それで神の敵は……そちらですか?」
彼女の言葉に呼応するように背の低いシスターが煩わしささえ感じる金属音を立てながら
ルーンのカードによって身動きが取れなくなっている建宮へ向かって小さく走り出す。
「あ、おい! ちょっと待ってくれ!」
上条は大声で制止したが、背の低いシスターは聞こえていないかのような素振りで
建宮の周囲を衛星のように回りながら張り付けられたルーンのカードを観察していく。
彼女の代わりと言わんばかりに背の高いシスターが顔を少し動かして上条の方を見る。
その表情に人間らしい感情は見えず、その眼は見下すような侮蔑感が込められていた。
「何か?」
「あ、ああ。ちょっとオルソラと話をしたいんだがいいか?」
「残念ですが、ご辞退願いします。シスター・オルソラの身柄は無事に確保できましたが
未だ敵戦力の全体図を把握していない現段階において安全と断定するには時期尚早です。
よって我々の規則に従って彼女をローマ内に保護し、その上で招待状を送りますので」
納得されてしまうには充分すぎるくらい完璧な回答。
だが、上条にはそれだけでは引き下がれない証拠があった。
「いや、ダメだ。さっきの悲鳴、俺にはオルソラの声に聞こえたんだ。
ただの勘違いかもしれねえけど本当にアイツが無事かどうか確かめたい。
そんなに時間をかけるつもりはない、別れの挨拶を一言二言述べるだけだ」
「しかし、規則では……」
「あーもう! さっきから規則規則ってうるせえな、ちょっとは自分の頭で考えてくれよ。
もういい、アニェーゼはあっちにいるのか? こうなったらアイツに直接聞いてきてやる」
痺れを切らした上条は背の高いシスターの肩を掴むと横にどけ前へ進もうとする。
背の高いシスターは取り返しが付かない事が起きたような深い溜息をつきながら
ゆっくりとした動作で背に預けていた車輪を自分の手前に楯のように地面に降ろす。
瞬間、ゴッ!! と車輪が爆発し、数百もの鋭い破片が辺り一帯にまき散らされた。
「………ッッ!!」
上条は反射的に両手で頭や胸を抑えたが、衝撃を抑えきれず勢いよく吹き飛ばされる。
浮遊感を伴った激痛を感じながら上条はダン!! と5メートル離れた地面に激突した。
インデックスが思わず小さな悲鳴を上げ、建宮は咄嗟に立ち上がろうとしたが
彼の髪の毛をルーンの炎が数本焼いた事がそれが出来ないことを思い知らせる。
建宮は鎖に繋がれ身動きの取れない猛獣のように歯を剥き出しにしながら
背の高いシスターを睨み付けるが生憎と彼にはそれ以上の事が出来ない。
「し、シスター・ルチア……? え、えと、そんな事をしてよろしいんですか……?
確かシスター・アニェーゼはゲストとの不用意な接触は極力避けるようにと……」
「黙りなさい、シスター・アンジュレネ! なんて日だ、くそ、くそ、くそ!
アニェーゼの奴め。そんな温い事を言っているから私が、私がこんな目に」
背の高いシスターは突然の出来事に慌てる背の低いシスターを一喝して黙らせると
まるでフルマラソンを完走したかのような荒い息を吐きながら口の中で呟き始めた。
感情が何もなかった彼女の顔は今や憤怒を表すかのような小皺がいくつも刻み込まれ
まるで汚物を見るかのような嫌悪感と侮蔑感が混在した目で上条を睨みつけている。
「何故いちいち悲鳴など変に勘繰った!? くそ、くそ、くそ!!
そのせいで異教の者の、爛れた手が、私の肩に、肩に、肩に!!」
背の高いシスターは錯乱したかのように独り言のように言葉を紡いでいく。
やがて体を不自然に震わせながら喉を押さえつけたような平坦な声を出した。
「全く次から次へと厄介事を……、もう本当にどうしましょうか。
そこの天草式が抵抗した事にしましょうか、それが一番楽みたいです。
あなた方全員がここで死ねば、我々の証言だけが真実となるのですから」
誰かに伝える為でなく思考を纏める為の言葉を吐き出しながらシスターはもう一度溜息をつく。
もはや騙すつもりさえない悪意の籠った不穏な言葉にも上条は何一つ言い返すことが出来ない。
そして、ぐちゅり、と上条の体に突き刺さった木片が独りでに蠢きだし傷を掻き回した。
「がぁあああああああああああ!!!!」
木片が突き刺さった以上の激痛に絶叫しながらのたうち回る上条の体から木片が引き抜かれる。
直後、ブワッ、とそれまで木片がせき止めていた血が上条の手足や腹から一気に噴き出した。
一つ一つの規模の大きさは擦り傷程度のものだが、その数があまりにも大きいため
上条の体を電流のような寒気が一気に駆け巡り、彼の意識を揺らがせていく。
そんな中、血がこびり付いた無数の木片はビデオの映像を巻き戻すかのように
背の高いシスターの手元にへ帰っていき、再び元の木製の車輪へと直った。
「とうま、とうま!!」
今にも気を失いそうな上条にインデックスは思わず駆け寄ろうとするが
彼女が動き出す直前で背の高いシスターの悪意ある視線が彼女を捉えた。
「シスター・アンジュレネ」
「は、はぁい」
背の高いシスターの冷たい声に背の低いシスターは舌っ足らずに答えると
腰のベルトを引きちぎり、四つの効果袋を頭上へと思いっきり放り投げる。
投げた勢いと重力が釣り合い、放り出された袋が空中で完全に静止した瞬間
バサッ! と色とりどりに輝く刃物のように鋭い六枚の翼が袋の口から飛び出した。
「来たれ、十二使徒のひとつ、徴税史にして魔術師を打ち滅ぼす卑賤なる僕よ!」
背の低いシスターがコンサートで拍手喝采を浴びた歌手のように両手を頭上に向けた瞬間
宙に浮いていた袋の一つが突然動き、銃弾のような速度でインデックスの足元に激突する。
固い地面に木の根のように細かい亀裂を走らせながら硬貨袋は地面にめり込むと
落下の衝撃で解けた紐がイソギンチャクのように動き彼女の足首を絡めとった。
足首を縛られた事によって地面に派手に転んだインデックスは追撃から逃れるべく
拘束を解こうと足首に巻き付いた紐を睨みつけながら必死に抜け出そうとするが
その隙をつくかのように残り三つの硬貨袋が音もなく静かに天高く上昇していく。
「ッ! インデックス!!」
戦慄せずにはいられない光景に上条は急いで痛む手足に力をこめようとする。
が、動き出すか否かの直前で背の高いシスターが上条の顔の前に車輪を降ろした。
その瞬間、上条の頭が彼の意志とは関係なく手足や腹の激痛を想起させ
こめかみに銃を突きつけるような恐怖が上条の体の動きを止めていく。
「諦めなさい、異教の徒に救いの道はないのですから」
声と同時、上昇していた硬貨袋が一斉にインデックス目がけて凄まじい速度で降下した。
恐怖と焦燥がより一層刻み込まれる上条の顔を背の高いシスターは恍惚とした表情で見る。
「死ね、そして終わることのない煉獄の中で共に苦しみなさい」
ピシリ、と車輪に亀裂が入っていき空気を入れすぎた風船のように内側から膨らんでいく。
たった一瞬の出来事のはずなのだが何故か上条の目にはスローモーションのように映えた。
「く、っそおおおおおおおおおおおお!!!」
想像、という名の化け物が上条の心の中で暴れまわり激痛と恐怖を増幅させていく。
それでも上条はそれらを打ち消すかのように咆哮を上げ、右拳を固く握りしめた。
しかし、いざ右拳を突き出す直前、車輪が不気味な甲高い音を響かせ
―――ガゴン!! と真横に弾かれ、何度もバウンドしながら暗闇の中へと消えていく。
突然の出来事とその原因に上条だけでなく背の高いシスターまでもが驚いた。
彼らの近くに落ちてきたのは大小様々な異国のコインと全体的に破れた袋。
それだけ見れば先ほどの一瞬に何が起きたのか想像に難しくないだろう。
「シスター・アンジュレネ! 貴様は―――」
「ち、違います。私じゃ」
「C T R T T O P A O<<残る三対を一点に集約、一つの塊となれ>>」
声だけで人を殺せそうな程の怒号に背の低いシスターは震えながら弁明するが
そんな彼女の声を掻き消すかのようにインデックスの透き通る声が割り込んだ。
直後、インデックスの足首を縛っていた紐が溶けるようにいとも容易く解かれ
残り二つの硬貨袋と共に壮絶な速度で背の低いシスターの顔面に飛び出した。
が、三つの袋は彼女の鼻先で激突しあい、圧力によって一つの金属塊となって地面に落ちる。
圧倒的な力を見せつけられた背の低いシスターは乾いた笑みを浮かべながら地面に座り込んだ。
「術式が杜撰だから安定させるのに手一杯で詠唱が長くて暗号化もおざなり。
無様だね、世界最大宗教に入っていてもあなた達の弱さは変わらないんだよ」
「異教徒が、……汚らわしい人並み以下のクズの分際で偉そうに……ッ!」
淡々と告げられたインデックスの静かな怒りとあからさまな侮蔑の籠った酷評に
背の高いシスターは苛立ちを隠せない様子でゆっくりと十字を切りながら身構える。
と、その時、ヒュイイイイイイイイ! と鳥の鳴き声のような音が辺りに響き渡った。
背の高いシスターは親の仇を見るかのような目で夜空を見上げながら口を開く。
「……退却命令ですか。シスター・アンジュレネ!」
「え、え? でも、まだ撃ち漏らして……」
「退きます、細かい厄介事は全てイギリス清教に押し付ければいいでしょう。
そんな事よりも我々のせいで本隊の行動予定が狂ってしまう方が問題です」
背の高いシスターが暗闇へと走り去ると背の低いシスターも慌ててその後を追いかける。
思わず茫然とする上条に建宮は身動きが取れないまま苦々しい声で話しかけた。
「分かったか? あれが世界最大宗派・ローマ正教の本質よ」
今回の投下はここまで
今回は正直いって原作とあまり変わりなかったですが
次回は今までにないくらいマジギレした一方通行でお送りします。
それでは、また
どうも、>>1です。
短いながらも区切りがいいので投下
九月九日 午前〇時五分 パラレルスウィーツパーク、中央広場
「丁度、縮図巡礼の渦が閉じた頃か。ここで俺達がしくじっていたら天草式は逃げ切れた訳だ。
そンな立派な技がある組織がわざわざローマ正教から法の書をパクるか? それだけじゃねェ。
真相に気づく鍵なンざいくらでもあった、全く……少し考えればすぐに分かったのになァ」
屋台で品物を買った客が飲食用に使う椅子に腰かけた一方通行は独り言のようにそう呟いた。
そして、おもむろに立ち上がると向かい側に座っている少女へとゆっくりと近づいていく。
だが、テーブルの上に寝かされている彼女の手は手錠によって繋がれており
捕虜のように顔全体を大きめの帽子のような黒い布袋によって覆われていた。
「つってもこのまま大人しく尻尾巻いて元の居場所に帰る理由にはならねェンだけどな。
そこンとこ正しく理解してンのか? 誘拐されても誰も気づいてくれないボッチちゃン?」
そう言って一方通行は笑いながら少女の顔から黒い布袋を剥ぎ取りテーブルの上に置いた。
あまり目立たない顔だちをした少女は突然鮮明になった視界に混乱しつつ一方通行を睨み付ける。
そんな彼女に対して攻撃性をたっぷりと含んだ笑みを浮かべながら一方通行は口を開く。
「さて、一つだけ質問しようか―――オルソラ=アクィナスはどこにいる?」
「……正直に答えると思って」
直後、ズドン!! と一方通行が少女の手の甲に小太刀を思いっきり突き立て
彼女の髪を掴みあげ激痛に歪んだ顔を小太刀の柄に容赦なく叩き付けた。
「あ……ぐ……ッ!」
「おっと悪ィ悪ィ、手が滑っちまった。お詫びにゲームでもするか」
一方通行は苦痛と屈辱が入り混じった少女の顔に再び黒い布をかぶせると
懐から回転式拳銃を取り出し一旦弾を全て抜いてから一発だけ装填する。
そして、弾倉を軽く指先で回転させるとシリンダーに戻し
銃口を布越しに少女のこめかみへと押しつけ撃鉄を下ろした。
「運試しだ、三つ数えた後に撃つ。それまで必死に神様とやらに祈ってろ。
どォしてもやりたくねェってンなら、さっきの質問に答えるだけでいい」
そして、一方通行は熱に浮かされたかのような荒い息を吐きながら
新年のカウントダウンを楽しむかのようにゆっくりと数字を言い始める。
しかし、少女は震えながらも一向に痛みを訴えることさえせずに無言を貫く。
―――暗に殺したければ好きにすればいいと一方通行に強く宣言するように
「ゼロ」
一方通行はそう告げると少女を見下しながら引き金を何の躊躇もなく引いた。
しかし、カチッと小さな音が鳴るのみで銃口が火を噴きだすことはない。
(……やった!!!)
瞬間、少女は人生が係った試験に合格したかのように思わず顔を綻ばせた。
それは極度に高まった恐怖が弱まった事によって緊張が薄れたせいだろうか。
だが、黒い布袋によって視界を奪われてしまった彼女は気づかない。
―――自身の様子を窺う一方通行が彼女と同じように笑っている事に
「もう一回やるか」
(………え)
興奮気味に放たれた言葉に少女のの表情がみるみる凍り付いていく。
拘束を解こうと暴れだそうとするが小太刀が深く突き刺さった右手が
爆発的な痛みを発し彼女の体に電流が流れたかのように止まってしまう。
そして、今度のカウントは先程のような間延びしたものではない。
「スリーツーワンゼロ!!」
あまりにも理不尽なカウントと共に一方通行の指が引き金を引く直前
精神的に追い詰められた少女に与えられた選択肢は一つしかなかった。
今回の投下はここまで
ロシアンルーレットって実際に行われた例は少なかったようです
映画とかで有名になってからプレイ人口が増えちゃったみたいですね
次回は上条さんサイドと拷問の解説の予定
それでは、また
どうも、>>1です
投下
九月九日 午前〇時一〇分 パラレルスウィーツパーク、中央広場
「奴らがいるのはオルソラ教会だ、そこで一夜を明かしてからローマの本拠地に帰るらしい。
叩き潰すなら今しかねェ、お前らが来るかは来ないかは自由だが邪魔するようなら殺す」
一方通行は上条に電話を掛けるや否や一方的にそう告げ携帯の電源を切り
椅子の上に座らせている少女の頭に被せられている黒い布袋を剥ぎ取った。
その顔は精神的に追い詰められた事による疲労と仲間の情報を喋ってしまった罪悪感に
染め上げられていたが、一方通行の顔を見た途端、そこに怒りの表情が混じっていく。
「本気で勝てると思ってるのか?」
「あァ?」
「今この街に集まっているだけでも我々の仲間は二五〇人近く、世界には二十億人。
それにわざわざ自分から喧嘩を売るなんてどう考えてもマトモじゃない。
かっこいいヒーローにでもなったつもりか!? それがお前の信念か!?」
「……俺は信念はこォだ、自分の力で死を乗り越えた人間は―――」
少女の脅迫めいた言葉に一方通行は悪意ある眼に引き攣った笑いを浮かべながら
そう答えながらテーブルの上へと飛び乗り回転式拳銃の銃口を真下に向けた。
「―――ヒーローにはなれない」
少女が疑問を思い浮かべるより先に一方通行は引き金を一瞬の逡巡もなく引いた。
ダン! と放たれた銃弾は少女の指の隙間に入り込むようにテーブルを突き抜けていく。
ひっ、と日常生活でまず感じることはない銃弾の威力を至近距離で見せつけられた
少女は体全体を大きく震わせた直後、プツリと糸が切れるかのように気を失った。
―――
――
―
同時刻 とある歩道
シスターからの襲撃の後、上条とインデックスはオルソラを引き渡したステイルと合流し
パラレルスウィーツパークから脱出すると建宮を交えつつ情報交換をしていたのだが
情報交換をしていたのだが一方通行からの突然の連絡によって状況が一変していく。
「オルソラ教会にいるって……どうしてアイツがそんなことを?」
「なるほどね、いつの間にかどこかに消えていたと思ったらこういうことだった訳だ。
恐らく二五二人もいるローマ正教のシスターの一人を攫って口を割らせたんだろう」
「口を割らせたって……」
のんびりげに放たれたステイルの言葉に上条は呆然としたように聞き返した。
脳裏に思い浮かぶのは御使堕し事件の際に日野に対する容赦ない暴虐の数々。
まさか、あれをやったのだろうか。と上条は戦慄を含んだ疑問を浮かべたが
そんな彼とは対照的に建宮は愉快気な顔を浮かべながら小さく口笛を吹いた。
「さて、これからどうするよ? イギリス清教の神父様と修道女様。
とは言ってもこれ以上の三文芝居は無意味ってものなのよなぁ」
え? と建宮のおどけたような言葉に上条は自身の耳を思わず疑った。
ステイルは建宮を睨み付けたが、やがて諦めたかのように上条の顔を見る。
「まあ確かに一方通行が動いてしまったから説得材料が消えてしまったからね。
……正直に言おう、上条当麻。僕たちは天草式と結託してオルソラを救出する。
それで君はどうする? 個人的には大人しく帰ってほしいけど、割と切実に」
結論から言うとステイルの願いは叶うことはなかった。
普通の高校生である上条当麻には戦う一つ理由など何一つない。
しかし、そんな垣根を越えて戦いたい理由ならいくらでもあった。
―――
――
―
一〇分後 とある交差点
(アイツ等が信じるって事は正解だったのか)
上条達四人の移動経路を予測し先回りして待ち伏せていた一方通行は
彼らに気づかれないように一定の距離を保ったまま、その跡を付けていく。
誘拐した少女はあくまでシスターであって対拷問用の訓練を受けた軍人ではないが
それでも一応は暗部には属しているので単純な肉体への苦痛には耐えられただろう。
それこそ、日野のように全身の皮膚という皮膚を切り裂いてもダメだったかもしれない。
だからこそ、一方的なロシアンルーレットを行ったのだ。
死の恐怖、ではなく六分の一の確率で死ぬ"かもしれない"という恐怖。
助かる"かもしれない"、という希望が更に逆に彼女の心を追い詰めていく。
そうして精神的に窮地に立たせてから全く別方向からのショックを与える。
その為に敢えて弾丸が二発目に発射されるように弾倉を回転させたのだ。
人間は現在の苦痛には耐えることが出来る、しかし過去の苦痛には耐えられない。
―――火を見つけた時から、火がなければ生きていけなくなったように
―――最近になって作られた携帯電話が生活必需品となったように
恐怖に引き戻された彼女は一度得た安心感を必死に取り戻そうとする。
最早そこに拷問を受ける前に備わっていた正常な判断力などあるはずがない。
(さて、次はどォやって二五一人をどォするか……)
一方通行は第一位と評される程の頭脳を働かせ最も有効打を与えられる戦略を練っていく。
とは言っても彼は上条のように捕らわれたオルソラの為に戦いたいと思った訳ではない。
彼女を助けようとした天草式のメンバーを自らの手で殺しかけた。
その事実を再確認した一方通行は自身の奥底でドス黒い『それ』が噴き出すのを感じた。
怒り、憎しみ、狂気―――それらの言葉では到底言い表せそうにない『それ』は
それらの言葉で現れる感情を統制し、その全ての一方通行の動力に変えていく。
そんな自分に著しい嫌悪感を抱きつつ、一方通行は静かに口を開いた。
「……潰す」
もはや一方通行を止める枷など何もない。
奪った者はその意味を正しく知るべきだ。
今回の投下はここまで
上条さんサイドの描写が雑で、すいません。
書き溜めがまた消えたから適当にやったとかそんなんじゃないです、決して
それでは、また
どうも、>>1です
投下
九月九日 午前〇時三二分 オルソラ教会
そう名付けられた教会は完成すれば日本国内最大規模の大聖堂となる予定なのが
建設途中であるが故にただ何もない空間が広がる現状は寂しさしか見いだせない。
しかし、その空間は今や空虚とは方向性の異なる不気味さが立ち込めていた。
その根源では柔らかいものを潰すような音と人の押し殺すような悲鳴が鳴り響く。
「ったく、面倒かけないでくださいよ。私含めて皆さん忙しいんです。
あなたの遊びに付き合―――って聞いてんなら返事ぐらいしろこら!」
アニェーゼは一方的な罵声を浴びせかけオルソラの腹を無造作にけりつける。
それに呼応するかの如くオルソラの口から魂が削られたかのような絶叫が轟いた。
その周りにいるのは総勢二〇〇名以上にも及ぶローマ正教のシスターの面々。
だが、誰もオルソラに暴力を振るうアニェーゼを止めようとはしなかった。
それは圧力をかけられている訳でも集団心理が働いている訳でもない。
一人一人が強制されることなく自分の意思で選択した結果がこの光景なのだ。
やがて雲が晴れ、ステンドグラスを嵌め込む予定の窓から月明かりが差し込む。
そうして薄らと形成された一筋の光が映し出したのは、床で倒れているオルソラの姿。
その目に生気はなく、まるで馬に引きずられたかように衣服の至る所が破けている。
それは暗にアニェーゼ一人でなくシスター全員から暴行を受けた事を示していた。
孟子が唱えた性善説を真っ向から否定するような悪意の塊が支配する異様な空間の中、
アニェーゼは恍惚とした表情を浮かべオルソラの腹を踏みつけ徐々に力を加えていく。
「あ……ぐっ……」
「まあ、確かにあなたの末路を知る者としたら逃げ出したい気持ちは分かりますけど。
それでも小汚い国の見知らぬ東洋人どもに縋るってのはさすがにダメですって。
ちょっと手懐けたらほいほい獲物を持ってくるような馬鹿な連中なんですから!」
「……手なずけ、た?」
アニェーゼのその言葉にオルソラはようやく人間らしい言葉を発した。
そして口の中に立ち込める粘り気のある赤い液体に阻害されながらも
「あの、方たちは、協力……した、のでなく、騙……され、て?」
「そんなんどうでもいいでしょう、あなたが今捕まっている事に変わりはないんですから。
……あーそうそう愉快な事に奴らはあなたの身柄を最優先に行動してたみたいですね。
くっく、あっはははは! その結果がこの様だなんて、最高の喜劇ってもんですよ!!」
瞬間、オルソラの顔から苦痛や恐怖といった負の感情が一掃される。
その顔はどこか清々しく、それでいて何かを諦めたような笑みに見えた。
「……ナニ笑ってんですか?」
「私たちの、本質を……思い知らされた気が、したのでございますよ」
「あ?」
「彼らは……信じる事が、出来ます―――人を、想いを、その気持ちを。
だから、何の、迷いもなく、誰かの為に立ち上がれるのでございましょう。
それに、引き換え……私達は……人を、騙すことでしか、動こうとしない。
だから、……常に、他人を……疑わなければ、……怖くて何もできない」
それこそオルソラがローマ正教だけでなく天草式からも逃げ出した理由。
成り行きで天草式に助けを求めたものの、結局のところ信じ切れなかったのだ。
そんな自分を嘲るようにオルソラは少しも面白味のない表情で笑う。
「私は……この先逃げることが叶わず……処刑されるので、ございましょう。
―――しかし……私は、もう……それで、いいので……ございます……。
私は……これ以上、彼らのような人を、裏切りたくないのでございますよ。
もう二度と、……あなたの同類などと、思いたくないので、ございます。」
「……何ですかその台詞? 殉教者にでもなったつもりですか?」
悪意など微塵もない侮蔑の言葉に静かに憤ったアニェーゼは
足元に転がった空き缶を踏みつぶすように蹴り飛ばしていく。
「せっかく死ぬ覚悟を決めちまった所悪いんですが、そう簡単には死なせませんよ?
何も考えずに我々を信じた馬鹿どもを死ぬまで恨む権利ぐらいは差し上げますが」
「……何故、恨まなければならないのでございましょう?」
「な、に? 貴様まだそんな事を……ッ!」
助かった助からなかったと言った結果などオルソラにはどうでもよかった。
彼は救ってくれたのだ、原典の力によって人の心に生み出された悪意の恐怖から
魔導書を壊す為に解読した結果、その行為が罪とされてしまった時の絶望感から
例えこのまま死を迎えたとしても、人の根底には善意がある事を信じることが出来る。
それだけで満足だ、とオルソラが神様に感謝を捧げるように静かに目を閉じた瞬間
バン!! と何かが砕ける音ともに教会を包んでいた結界を吹き飛ばした。
「なっ……一体何が? ……まさか、オイ! アエギディウスの加護の再確認!
それと周辺の探索! くそ、このタイミングで一体どこの組織が攻撃を……?」
アニェーゼは突然の事態に動揺しながらも矢継早に指示を出していく。
だが、彼女の部下たちが慌ただしく動き出しそれを実行しようとした時
何もないぽっかりと穴の開いた二階の窓から暗闇を薙ぎ払うかのような光が差し込み
アニェーゼ達から見て横合いの壁が大型車両が突撃したかのように木端微塵に砕け散り
協会の正面入口である樫で出来た城門のように大きな両開きの扉が勢いよく開かれた。
そして、窓枠から剣を手にした赤い髪の神父が説教壇の前に静かに飛び降り
崩れた壁の粉塵から大剣を握る大男と平凡そうな服装の何十人の男女が現れ
開け放たれた扉からツンツン頭の少年と白い修道服を着た少女が踏み込んだ。
「馬鹿な……小汚い東洋人のクズ共はさておき何故イギリス清教までここ!?
これは立派な内政干渉だ! せっかく見逃してやってるのが分かんねえんですか!?」
「ああ、残念ながらそれは適用されない。ほら、オルソラ=アクィナスの首を見ろ。
馬鹿騒ぎしてて気付かなかったかもしれないけど、それはイギリス清教の十字架だ。
まあ仮にも神父でね、仲間となった人間を見捨てるのは神の教えに反してしまう」
「そ、そんな詭弁が通じると思って―――」
にやにやと道理の分からない人間をいたぶるような底意地の悪い笑みを浮かべるステイルに
アニェーゼはあまりの怒りに顔を真っ赤にして体全体を小刻みに震わせて反論しかけた途端
ダン! と風船を叩き潰したような音と共にアニェーゼの膝から血飛沫が舞い散った。
「あ……痛っ……」
「よォ、最高のエンターテイメントを提供しに来たぜ」
燃え上がるように駆け抜ける激痛に思わず座り込んだアニェーゼが見たのは
ツンツン頭の少年を押しのけるように前を進む黒い服装の白い肌をもつ少年。
その手には拳銃が握られており、その銃口からは白い硝煙が立ち込めていた。
「……ッ!! 殺せ!!!」
突如、乱入してきた者達を見てアニェーゼは爆発するように叫んだ。
瞬間、暗い眼をした数百ものシスター達が一斉に侵入者に襲い掛かる。
「まァ、とりあえず落ち着けって」
そう言って白い少年は拳銃を持った手で自身のコートの内側を見せびらかすように捲り上げる。
神父の炎剣に照らし出され、見えたのはキーホルダーのように括り付けられた幾つもの手榴弾。
その全てにおいてワイヤーが安全ピンの間を通っておりその先端はもう一方の指に巻かれていた。
「折角頑張って作った神のお家が吹き飛ンちまうぜ?―――ついでに俺達もな」
敵味方関係なしにその場にいた全員を戦慄させた少年は溜息を付きながらオルソラを顎で指した。
彼が言わんとする事に気付いたのか後ろにいたツンツン頭の少年がオルソラを抱き抱えると
来た道を帰っていき、突入してきた者たちもそれに合わせるかのように撤退していく。
そして全員がいなくなった事を確認すると少年も後ろ足で正面入口へと歩き始める。
その途中で背の高い猫目のシスターが顔に怒りと憎しみを露わにしながら叫んだ。
「こんな事をして無事に逃げおおせるとでも?」
「さァな」
「……いいでしょう、あなたに対しては一〇〇人の人員を割いてあげます!
あなたに救いなど無い。死ななかったときは私がいたぶるのですから」
「ゴチャゴチャと騒がしい女だ、まァイイ楽しみにしておいてやるよ」
何百もの殺気の灯った視線を愉しむような歪な笑いを浮かべながら
白い少年は入口の扉を後ろ足で蹴り飛ばし、闇の中へと消えていった。
今回の投下はここまで
新約8巻の途中まで読んだけど一方通行がもうモブだなこりゃ……
そして、垣根がまた負けてたし
一応聖人より数少ないのにね、超能力者
次回の投下は都合によりいつできるかわかりません
とりあえず2週間以内という予定でいきます。
それでは、また
どうも、>>1です
みなさん知っての通り今回は教会が舞台なのですが
実はこの>>1、生まれてこの方教会にいった事が一度もありません。
というわけで途中で「ここはホグワーツじゃねえんだよ」みたいなツッコミを
入れたくなるような気がするでしょうがそういった場合は遠慮なくどうぞ
投下
九月九日 午後〇時三五分 オルソラ教会(上条サイド)
七つもの聖堂で構成された広大な面積を誇るその教会の敷地内を
上条はオルソラを抱きかかえたまま全速力で駆け抜けていく。
しかし、不意に彼らの前方から何十という足音が響き渡った。
(やっべ!)
上条は咄嗟に柱の陰に隠れ、オルソラを抱き寄せながら息を必死に押し殺す。
直後、何十人というローマ正教のシスターが目の前の通路を通り過ぎていく。
心臓の鼓動を速めていく恐怖に上条は不安ではなく激しい怒りを覚えた。
(くそっ、大の男が立ち向かえない程の大人数で寄ってたかって……ッ!!!)
しかし、その直後、上条の中に怒りを打ち消すような戦慄が走り抜ける。
彼は見た。自分自身を冷たい視線で射抜くローマ正教のシスター達の姿を
反射的に上条は柱から飛び出し、Uターンするように曲がり角に逃げ込んだが
上条達を見過ごしかけていたシスターの集団が一斉に上条の方向に振り返り
一斉に先端を怪しげな色とりどりに彩られた宗教的な武器を彼らに向けた。
瞬間、シスターの武器の先端に灯っていた極彩色の光は質量を持って
銃弾のように上条に襲い掛かり、教会の外壁を容赦なく破壊していく。
上条はオルソラを抱き寄せるようにして光の嵐をやり過ごしながら
石で出来た廊下を突き進み、地面を蹴って横に続く通路に飛び込んだ。
拳銃のように宗教的な武器を構えていたシスター達は一斉に武器に下ろすと
巣に向かうこうもりの群れのように上条が駆け込んだ通路まで急いで向かう。
だが、そんな不気味なシスター達の隊列が曲がり角へと差し掛かった時
彼女達からは死角となるように物陰に潜んでいた天草式の面々が飛び出し
上条達の狙撃に使われていた武器を薪を割るかの如く一刀両断すると
最前列にいる武器を失ったシスター達の無防備な腹を蹴り飛ばした。
倒れた仲間を避けながら後続のシスターが流れるように彼らを取り囲もうとするが
天草式の少女が手にした槍を地面に突き刺した瞬間、虚空から煙幕が舞い上がっていく。
辺り一帯に立ち込めた煙によって数秒の間、視界を取り戻したシスター達が
目にしたのは自分たち以外誰もいない石畳の廊下だった。
―――
――
―
同時刻 オルソラ教会(一方通行サイド)
本当に惨めなものだ、と一方通行は自らの人生を振り返り、そう酷評した。
上条当麻のように誰かを手を差し伸べるでもなく
ステイルのようにたった一人の人間の為に戦うでもなく
天草式のように迫害を受けてもなお信仰を守る為でなく
ただ人を殺すために次元の低い強さを極め続けた自分自身を
映画や小説の登場人物だったらそれでいいのかもしれない。
正義の主人公を引き立てる悪役をやらせるには打ってつけだろう。
だが、現実にそんな人間がいたとしたら周りの人間が大迷惑だ。
人に対して躊躇なく銃口を向ける人間など受け入れられるはずがない。
人を殺す覚悟が出来るより、人を殺さない覚悟が出来るほうが尊敬できる。
誰かを傷つけるより、誰かの為に拳だけで立ち上がれる人間の方が素晴らしい。
拳銃の引き金をひかなくても、ナイフの握り方などろくに分からなくても
誰かを守る方法はいくらでもあるし、誇りを持って生きることが出来る。
だからこそ、一方通行は自分自身が他の誰よりも最下層にいるように思えた。
どんなに優れた才能を持っていたとしても、彼にはそれを誇ることが出来ない。
と、その時、敵地に突入する特殊部隊のような不穏な足音が響き渡る。
「……来たか」
直後、一方通行の表情が、目が、思考が一瞬で切り替えられていく。
―――少年から世界が燃え上がる様を見て楽しむ悍ましい化け物へと
短いですが今日の投下はここまで
恋愛ほのぼのでも見て掌握通行か上黒の参考にするかと思って
某アニメを見たら全然ほのぼのでなく昼ドラで最後スプラッターだったなう
鉈と包丁の白熱する戦闘シーンがあるから見てみ、といった友人を俺は許さない
というわけで7巻の後にやる予定だったのですがしばらく延期になります
それでは、また
どうも、>>1です
投下
九月九日 午前〇時三六分 オルソラ教会
閑静なはずの教会の中を一〇〇人ものシスターが急ぎ足で駆け抜けていく。
現在、彼女たちが追っているのはオルソラや天草式ではなく一方通行だった。
普通に考えれば一人に対して一〇〇人の人員を割くというのは非効率的だが
彼女たちのリーダーであるアニェーゼが一方通行に足を撃たれた事もあってか
激昂したルチアの命令に対して不満が出るどころか、士気が上がっているようだ。
と、そんな殺伐とした彼女たちが通っている通路の突き当りを一方通行が横切った。
漆黒のシスター達はその光景を見た途端、無言のまま互いの気持ちを確認すると
人間らしい感情が抜け落ちた顔を歪んだ破壊欲で塗りつぶしながら走り出す。
そして、異様な空気に包まれた彼女たちが一斉に通路から飛び出た瞬間
カラン、と金属製の物が落ちるような音が彼女たちの背後から鳴り響いた。
甲高い金属音に素早く反応した全員が勢いよく背後に振り替えり武器を構える。
そんな彼女たちの視界に入ったのは月明かりを受けて輝く大きな十字架だった。
刹那、彼女たちがその光景について何かを考えるより先に
黒板を爪で引っ掻き回したような絶叫が辺り一帯に炸裂した。
彼女たちは慌てて武器を構えつつ、突如木霊した悲鳴の音源を探ろうとしたが
ぴちゃぴちゃ、と数人の顔に何かヌルヌルとした粘り気のある液体が零れ落ちた。
「ッ!?」
頬が触れた数人は驚きで全身を大きく震わせながら手で液体を拭い取る。
そして、不快な感触が纏わりついた手を空に輝く月明りが紅く照らした。
「これは……?」
直後、グシャリと何かを潰すような音が彼女たちの近くで鈍く響く。
おそるおそるといった感じで彼女たちが音源に目をやると
そこには自分たちと同じ服装の漆黒のシスターが倒れていた。
ただし、全身を己の血で真っ赤に濡らしながら
その光景に戦慄を走らせながらも、彼女たちは辺り一帯を隈なく警戒していく。
心の底から湧き出る恐怖を仲間を殺された怒りで殺していくかのように
だが、その時死体だと思っていた少女から小さく呻き声が鳴った。
よく見てみれば、胸は規則正しく上下していて指先は微かに震えている。
彼女は生きていた、だがそれに対して素直に喜べる者など誰もいなかった。
それ程に彼女の傷は酷く、軽く見るだけで怪我をしたような錯覚を覚え
いっそ殺してしまったほうが彼女の為になるんじゃないか、と思うまでに
瞬間、バン!!! と何かを壊すような不気味な轟音が鳴り響く。
敏感になっていた彼女たちは反射的に振り返り武器を向ける。
その先では大きな聖堂の扉が誰かに蹴り破られたかのように開いていた。
そして、留め具が外れてしまった扉が契約を迫る悪魔のように揺れていく。
普段の彼女たちならば、そんなあからさまな罠など無視しただろう。
しかし、現在の彼女たちは精神的にかなり追い詰められつつあった。
だからこそ、敵の思う壺だと思っても行かずにはいられない。
傷つけられたプライドが合理的な逃走を断じて許さなかった。
そして、彼女たちは何かに追われるように一斉に聖堂へとなだれ込んでいく。
しかし、そこには何もない広い空間が寂しく広がるのみで誰もいなかった。
圧迫するような静寂の中、彼女たちは少しでも落ち着こうと試みたが
その瞬間、鮫が海から飛び出したかのように床が木っ端微塵に砕け散り
その中から亡者のように這い出た細い腕が一人のシスターを引きずり込んだ。
そして、持ち主を失った宗教的な武器が床に落ちると同時に
言葉では形容し難いあらゆる負の感情が圧縮された咆哮が響き渡る。
残された者たちは震えながらも武器を構え全方位を警戒していく。
感情的判断による行動を後悔している暇はない。
夜はまだ始まったばかりだ。
今日の投下はここまで
Q、五和がいつの間に消えてたんだけど?
A、気が付いたら建宮がぼこられてたからビビッて逃げて捕まった。
決して喋り方とかがおぼろげだったとかそんな訳ではない。
それでは、また
どうも、久しぶりの>>1です。
投下
九月九日 午後〇時四〇分 オルソラ教会(一方通行サイド)
照明が一切ない暗闇に包まれた聖堂で、一方通行は息をひそめていた。
その目の先では立つどころか指先一つ動けない程の重傷を負った十数人のシスターと
小刻みに震える手で宗教的武器を握りながら四方八方を警戒する数十人のシスターがいる。
(さて、このまま同士討ちするトコまで持っていきたかったが……
馬鹿な事に能力を使いすぎたせいで一〇秒ぐれェしか残ってねェな)
恐怖を利用し、正常な判断力を殺す一方通行の作戦は滞りなく進んでいたが
それはあくまで能力によって得た戦闘機にも勝る機動力があって成り立つものだ。
瞬発力を活かした近接戦闘は多少できるが、さすがに八〇人を相手取れる代物ではなく
仮に互角に渡り合えたとしても体力が極端にない彼では全員を倒すことは出来ないだろう。
(残る武器は拳銃が2丁に弾丸が四四発、弾が五発入った回転式拳銃。
後は脅しに使った手榴弾が五個に小太刀が一本とジャックナイフが数本か)
いくら最強の能力者といっても、その状態で八〇人を相手取るのは自殺行為のようなものだ。
逃げる、とまでは行かなくても体制を整えなおす為に撤退するべきなのは目に見えている。
そんな絶望的な状況を一瞬で理解した一方通行はしばらく次の戦略を考えて
物陰から躊躇なく飛び出し拳銃を真上に向けて引き金を引いた。
風船を叩き割ったような破裂音に反応したシスター達が揃って一方通行に武器を向ける。
だが、圧倒的な優位に立ったはずのシスター達の動きはそこで止まってしまう。
「ほら、俺はここだ。ビビッてねェで早く撃てよ!」
ダンダン!! とろくに狙いもつけず聖堂の壁や地面に拳銃を闇雲に乱射しながら
一方通行は興奮を抑えつけたような声で挑発しながらゆっくりとシスター達に近づいていく。
だが、それでも彼女達が一向に動けないのは彼の能力や拳銃のせいではない。
迫りくる一方通行に対して、シスターたちは共通してある一つのことを考えていた。
―――生き物とは、顔の筋肉をどんな風に動かしたら
―――人間とは、一体どんな風な感情を抱いたら
あんなに気持ち悪くて悍ましい笑顔が浮かべられるのだろうか、と
「……殺せ、お前らの武器は何の為にあるンだ!? あァ!!!」
弾倉に込められていた弾丸を全て撃ち尽くし拳銃をホールドアップを起こしても
一方通行は一切の狼狽を見せず、不気味さと凄烈さを兼ね備えた笑みで吠える。
「殺せェェェえええええええええええええええええええ!!!!!」
刹那、少年の絶叫とシスター達の悲鳴と共にに聖堂が極彩色に包まれ
一方通行の華奢な体に質量を得た光の羽が容赦なく襲い掛かった。
今回の投下はここまで
最近、更新と展開が亀になってきますが
次回は一気に進めていきたいところです。
それでは、また
どうも、>>1です
一方通行の真意は今回の投下にて明らかになります
投下
同時刻 オルソラ教会(上条サイド)
(とりあえず奴らから隠れねえとな……)
歩くこともままならないオルソラを抱えたままの上条はシスター達の狙撃から逃れる為に
まず鉢合わせにならないであろう屋根へと向かうべく建設工事用の鉄パイプの足場を
追っ手の追撃を防ぐ為に途中の梯子を後ろ足で蹴り飛ばしながら駆けあがっていく。
だが、蹴落とされた梯子は当然の如く地面ではなく鉄パイプの足場へと落下し
夜の静寂を打ち消すには十分すぎる派手な金属音を辺り一帯へと撒き散らした。
理屈的にも本能的にも危機感を察した上条は咄嗟に走り出すが
息を合わせたかのように同時に重厚に重なり合う足音が響き渡り
直後、上条達がいる空間がコンサート会場のように極彩色に包まれる。
(やっべ!)
瞬間、莫大な量の光の羽が巨大な嵐となって鉄パイプの足場に容赦なく襲い掛かり
その衝撃によって鉄板を繋ぎ合わせていた金具が次々と凄まじい勢いで外れていく。
そうして、鉄パイプと金具だけで出来た足場は徐々に輪郭が歪んでいき
突然、ガクン、と蛇のように唸り上条達のいる足場が上へと押し上げられた。
「う、ァァァあああああああああああああああ!!!」
まるで離陸中の飛行機からパラシュート無しで蹴り落とされたような恐怖に
錯乱しかけた上条は意味もなく叫び、無駄だと分かっていながら全力で跳んだ。
しかし、宙を彷徨うはずの彼の足は一秒も立たないうちに地についた。
「……おろ?」
予想外の出来事に上条は錯乱することも忘れ、周りをきょろきょろと見渡す。
彼は気づいていなかったかもしれないが、斜めに傾いた鉄パイプの先端は
本来届かないはずの一階上の高さにある教会の屋根にまで到達していたのだ。
(死ぬかと思った……とりあえずオルソラを休ませねえとな)
地上のシスター達から隠れる為に上条は建物の中央に移動しオルソラを降ろす。
「だ、大丈夫でございますか?」
「ああ、大丈夫だ。問題ない」
オルソラの不安そうな声に、上条が安心させるようにそう答えた瞬間
ダン!!! と地上から跳躍した三人のシスターが屋根へと飛びかかる。
それに素早く反応した上条は反射的に振り返ると勢いよく駆け出し
三人のシスターが着地すると同時に一人のシスターを蹴り飛ばした。
残った二人のシスターは落ちた仲間を無視して咄嗟に上条との間合いを取り
それぞれ手にある根元近くに包帯を巻いた大時計の長針と短針を構える。
それぞれの先端が輝いた瞬間、上条は長針を持ったシスターの懐に入り込み
自身の腕を絡めるように両腕で彼女の腕を掴み、軽く下へと降ろした。
そして、長針から放たれた光の羽が短針を持つシスターの足に直撃し
不意に体をバランスを大きく崩された彼女は誰にも聞き取れない悲鳴を上げ
光の羽を見当違いの方向に放ちながらビー玉のように屋根から転げ落ちていく。
「シスター・アガター!!!」
長針を持つシスターが思わず落ちていった仲間の名を叫ぶが
上条は容赦なく彼女の顎に左肘を叩き込んで僅かに離れると
大きく振りかぶって、バキッ! と彼女の顔面を右拳で殴り飛ばした。
(さて、どうしたものか……)
これからどう行動するのかを考えながら周りを見渡した上条は見た。
―――大勢のシスターが見えざる力で薙ぎ払われるように吹き飛ばされるのを
「どうなってんだありゃ……」
―――
――
―
同時刻 オルソラ教会(インデックスサイド)
中庭を走るインデックスに、虚ろな目をしたローマ正教のシスター達が襲い掛かる。
瞬間、迫りくる脅威を前に彼女は立ち止まると周囲に味方が誰にもいないことを確認し
天に祈りを捧げるように静かに目を閉じて手をしっかりと組み歌うように何かを囁く。
たったそれだけの事が行われただけなのだが彼女を包囲していたローマ正教のシスター達は
黒板を爪で引っ掻く音をゼロ距離で聞かされたかのように一斉に苦しみ、徐々に錯乱していき
中には足の筋肉をズタズタに引き裂きながら無理やり跳躍してでも逃げ出す者まで現れた。
摩滅の声<<シェオールフィア>>
一〇万三〇〇〇冊の魔導書の知識からローマ正教を糾弾する為の材料をかき集め
凝縮された『ささやき』はシスター達の人格をパズルのように崩していく。
「たまげたもんだなぁ、てっきりあの子は戦闘力は皆無だと思っていたが」
「魔力がなくても魔道書を使いこなす、これが魔道図書館と呼ばれる所以さ」
数十メートル離れた場所からその様子を見ていた建宮とステイルはそう言いながらも
連携して仲間が薙ぎ払われる光景に茫然としているシスター達を気絶させていった。
―――
――
―
九月九日 午前〇時四五分 オルソラ教会(ルチアサイド)
(あれが禁書目録……。今といいあの時といい本当に厄介なものですね)
ローマ正教のシスターの一人であるルチアは護衛のように三人のシスターを引き連れ
足を怪我したアニェーゼが手当を受けている聖堂を離れ教会の中を進んでいた。
その目的はただ一つ―――インデックスの『摩滅の声』を無効化する事だ。
(聞いただけで錯乱してしまうというのなら聞こえなければいい話でしょう。
今のところあのシスターは声を媒介とした魔術しか使えないようですし……)
「シスター・ルチア」
禁書目録の対策を考えていたルチアだったが、不意に名前を呼ばれた事でその思考は途切れる。
改めて前方に注意を向けると細長い寝袋を数人がかりで運んでいるシスター達が見えた。
「どうしました?」
「シスター・アニェーゼを撃った罪人を殺害しました。確認されますか?」
「……ええ、是非」
ルチアがそう答えると寝袋を運んでいたシスター達は横合いの台座にそれを置く。
彼女と護衛のシスターはゆっくりとその寝袋に近づき先端を思いっきり剥いだ。
そうして外気に晒されたのは死体独特の生気が失われた目が閉ざされた少年の顔。
その顔は見間違えるはずもなくルチアが直接啖呵を切った男のものだった。
「死にましたか……ご苦労様です、死体はそこらへんに埋めときなさい」
ルチアは興味を失ったかのようにそう言いその場を立ち去ろうとする。
それに伴って三人のシスターも慌ててそのあとを追おうとした。
だが、寝袋を運んでいたシスターはその場から動かない。
「―――生きてたらァ?」
小さく、それでいてはっきりと響き渡る声にルチアは勢いよく振り返った瞬間
ダン!!! と台座から上体だけを起こした一方通行がその顔にナイフを突きつけた。
ルチアの後に続くシスターが咄嗟に武器を構えようとしたが、動作が完了する前に
一方通行を運んでいたシスターが彼女たちの首に武器を突き付け、その動きを止める。
「ッ! 貴様、一体何をした!?」
「そンな事より俺が化け物になった時の事を教えてやるよ」
ルチアの言葉を無視して一方通行は彼女の顔を手前に引き寄せ
耳元で囁くようにそう言うと、顔の位置を元に戻し右上を向いた。
「俺の母親はとても美人だった、おまけに性格も良くてな。だが、男を選ぶ目は無かった」
一方通行はルチアの頬をナイフの表面で撫でながら左上を向き
「その男は―――お前らと同じで―――つまり、熱狂的なローマ正教の信者だった。
そして、ある日の夜、家に帰ってきたそいつは血走った目で俺の事を指さして
”そいつは悪魔の子だ、今すぐ殺せ”といってナイフで俺に向けたンだ」
また右上に戻したりと、視線を左右に彷徨わせながら
「夕飯の支度をしていたお袋は驚いて思わず奴に包丁を向けちまった。
奴はそれが気に入らなかった―――ほんの、少しも、まるっきり」
そして、怒りと悲しみが入り混じった震える声で
「それで、奴は……俺の目の前で手に持ったナイフでお袋を刺した。
”さすが悪魔だ、早速人を殺した”って言いながら何度も何度も」
苦しんでいるような表情を潰すように笑みに歪ませながら
「それで、俺はお袋が落とした包丁でそいつの脇腹を掻っ切った。
そしたら面白ェぐれェに血をたっぷりと吹き出しながら倒れてな。
その姿があまりにも可哀想だから俺はこンな風に言葉を書けてやった」
ダイエット明けにアイスクリームを食べるような喜びに満ちた目をしながら
「”何だ! その!! しかめっ面は!!!”そして落ちていてたナイフを拾い上げると
奴の口に刃を差し込んで、”口が裂けるほど笑わせてやるよ!!!”それから―――」
そこまで言いかけて一方通行はふと喜怒哀楽といった全ての表情を顔から消し去り、
左右に揺らしていた視線を仲間によって動きを封じられているシスターの一人へと向けた。
「何だそのしかめっ面は?」
刹那、何気なく放たれたその言葉にルチアを含めたシスター達の喉が干上がった。
まだ、何をされていないのに、重傷どころか軽傷でさえ負っていないのに
想像という名の怪物はシスター達の精神を容赦なく食いつぶしていく。
今回の投下はこれにて終了
それはそうと一つ訂正
書けてやった→かけてやった、で
それでは、また
どうも、>>1です
シェオールフィアって何だよ、正しくはシエオールフィアです
投下
九月九日 午前〇時五〇分 オルソラ教会(一方通行サイド)
「こンなものか」
人並みの嗅覚があれば吐き気さえ覚える濃厚な鉄の匂いが充満する血溜りの中
一方通行は弱弱しい呼吸を吐き出すシスター達の上を跨ぎながら歩いていく。
実のところ一方通行はシスターの魔術攻撃をまともに受けたわけではない。
一〇分前、彼が誘い込んだ聖堂で恐怖に呑まれたシスターが一斉に攻撃する直前
一方通行は体に巻き付けたままにしてあった手榴弾のピンを全て引き抜いていた。
その直後、本来ならば自身の体をズタズタに引き裂くはずの破片のベクトルを
体の表面を覆うように操作し、ある一種の防御壁を作り上げていたのだ。
流石に八〇人の一斉攻撃を完全に相殺する事は出来ず重傷を負いこそしたが気絶はしなかった。
そして、彼は生死の確認の為に自らの体に触れたシスターの生体電気を操って洗脳したのだ。
だが、一連の行動によって能力使用可能時間は残り二秒しかない。
しかし、それでも一方通行には立ち止まる意思など微塵もなかった。
(流石に飽きた……遊びはここまでにするか)
そして、暗い目をした一方通行はしっかりと地面を踏みしめる。
―――
――
―
(やっと立ち去ってくれた……)
徐々に小さくなっていく突き刺さるような足音を注意深く聞きながら
ローマ正教のシスターの一人、アンジュレネはゆっくりと起き上った。
一方通行がその場にいたシスター達に無差別に襲い掛かった瞬間
彼女は血だらけになりながら倒れていく仲間に紛れ、難を逃れたのだ。
(早くアニェーゼ様にこの事をお知らせしないと……)
「息を潜めていれば、見逃してもらえると思ったか?」
瞬間、アンジュレネは喉を干上がらせながら恐る恐るといった感じで背後を振り返る。
そこにはジャックナイフをペン回しのように手の中でくるくると回している一方通行がいた。
細い体から滲み出る血で傷だらけの黒服を真っ赤に濡らしながらも
その男は体と同じように傷と血で濡れた顔で薄ら笑いを浮かべている。
「……あ、あなたは一体何なんですか!?」
「悪意の使者だ、お前らに恐怖と苦痛を与えに来た」
震える声で言葉を紡ぐアンジュレネに一方通行はゆっくりと近づいていき
懐から何かを取り出すと、彼女に目線を合わせるかのように腰を屈めた。
「安心しろ、殺しはしねェよ―――生きて、絶望しろ」
瞬間、一方通行はアンジュレネの膝にジャックナイフを一瞬の逡巡もなく突き刺す。
突然の激痛に彼女は思わず悲鳴を上げたが、すぐにその口は筒状の何かに塞がれた。
思わず顔を驚愕の色で塗りつぶす彼女に一方通行は歪な笑みを浮かべその場から跳躍する。
直後、パキンという音が鳴り響き、筒状の物体から小さな金属片が勢いよく飛び出していく。
瞬くうちに闇に消えたそれはついさっき見た兵器の安全装置のように見えた。
(まさか……)
冷静を失っていくアンジュレネの思考が最悪の結論を導き出しかけた瞬間
聖堂の扉が思いっきり開かれ、何十人というシスターが雪崩れ込んだ。
「無事ですか、シスター・アンジュレネ! 一体何があった!?」
本来ならば喜ぶべきのはずの増援にアンジュレネは思わず絶句する。
人間らしい思考が崩れ、感情が失われ、視覚が明滅し、聴覚が鈍っていく。
気づけば彼女は顎の筋肉に力を入れることさえ忘れてしまっていた。
ポトリ、とアニェーゼの口から館スプレー程の大きさの筒状の物体が零れ落ち
カチリ、と側面に取り付けてあった小さなレバーが弾かれるように外れる。
「あ……」
そこまできて、アニェーゼはようやく冷静を取り戻したがもう遅い。
絶対的な二重の安全装置を解除された現代兵器は無情にも起動を果たし
バシュゥ! と辺りに濃霧のような白い煙を撒き散らした。
「なっ……!?」
突然、視界を奪われた事によって聖堂に突入したシスター達がその顔に動揺の色を濃くしていく。
そして、見えない恐怖に体を震わせながら辺りを警戒する彼女たちに追い撃ちをかけるかのように
バン! と乾いた銃声が鳴り響き、一人のシスターの悲鳴と彼女が床に倒れる音が空しく響いた。
シスター達は音のした方向に魔術攻撃を放とうとしたが、即座に思いとどまる。
視界がはっきりとしないこの状況では仲間にあたる可能性が高いからだ。
だが、頭の中ではそう分かっていても彼女達の武器の持つ手がカタカタと震える。
心に燻る恐怖と焦燥が獣のように暴れ、行動を起こしたいという欲求を加速させていく。
そして、再び銃声が鳴り響き今度は続けて二、三発放たれた。
普通の状況ならば天井に向かって撃っただけの威嚇射撃だとすぐに分かっただろう。
しかし、視界と冷静さを奪われ恐怖に呑まれた彼女たちにはもう耐えられない。
刹那、白に染まっていた空間が極彩色に輝き、生臭い鉄の匂いが辺りに充満した。
今回の投下はここまで
Q、武器って手榴弾と銃とナイフしかないんじゃ……
A、発煙筒という名のアクセサリーです(白目
それでは、また
携帯より1です
前回の投下で最後アニェーゼが出てきましたがアンジュレネの間違いです
というわけで脳内補完お願いします
ではまた
ダークナイトで見たようなネタ……
どうも、>>1です
>>263
おお、ダークナイトネタ分かる人いて嬉しい。
最狂スレでこのネタ使ってなかったからこっちで使おうかなという魂胆です。
それ以外に結構度々ダークナイトネタは登場しているのですが
死神部隊の元ネタは影の同盟ですしおすし
それはそうと投下
九月九日 午前一時〇〇分 オルソラ教会
ナイフで刺されたアンジュレネの叫びに呼び寄せられたシスターを
粗方片づけた一方通行は聖堂から出て、教会内を進んでいく。
しばらく進むと、気を失って床に倒れている無数の黒いシスターと
その上を跨ぎながら歩くステイルと建宮とインデックスと出くわした。
「やあ、よく生きてたね。てっきり死んだのかと思ったよ」
「お前がな、まァこの様子だとめでたく完全制圧っつゥ訳か」
「いや、それがそうでもないんだよ。むしろ最悪と言っていいかも」
は? と一方通行はインデックスの言葉に思わず怪訝そうな顔をする。
だが、インデックスはそれ以上言葉を発することなく一方通行を睨みつけた。
その様子を見るに見かねた建宮が溜息を付きながら彼女の代わりに口を開く。
「どこを探してもアニェーゼと数名のシスターが見つからないのよ。
ついでに、上条当麻とかいう少年とオルソラ=アクィナスもな」
―――
――
―
同時刻 東京 某所
上条とオルソラは聖堂の屋根でなくトラックの車内に横たわっていた。
アニェーゼを含めた八人のシスターに宗教的武器を構えられながら
「全く……まさか本当に追い詰められるなんて思いませんでしたよ。
ですが、オルソラを神明裁判に掛けて処刑しまえばこっちのもんです」
「テメェ……ッ! そんな事が許されると思って―――ッ!!」
「うるさいなぁ、ご立腹なのは分かりますが静かにしてくださいって。
まあ安心しちまってください、煉獄で二人きりじゃ寂しいでしょうから
あなたに賛同しあなたの為に戦ったお友達も全員すぐに送ってあげますよ」
その言葉に奥歯を噛みしめる上条と自責の念にかられるオルソラを
アニェーゼは恍惚とした表情でで舌なめずりしながら真上から見下す。
「まさかとは思いますが無事に逃げられると思ったんですか?
馬鹿な……このクソッタレな世界がそんな都合よく動―――」
悪意が滲み出るような彼女の言葉は最後まで続かなかった。
スパン!! とトラックの車両が真っ二つに引き裂かれたからだ。
前後に分断された車両は反発しあう強力な磁石のように距離を離し
後ろ半分は道路で、前半分はガードレールに激突して動きを止めた。
「一体何が……?」
「気にする必要はない」
前方と後方の断面から飛び出した数名のシスターに一人の少年が近づく。
奇妙な事に黒を基調とした質素な服装をした一七歳ぐらいのその少年は
腰につけられた機械とケーブルで繋がれた金属製のゴーグルを頭につけていた。
「死ぬ前だ、今為すべきことは神とやらに祈る事だろう?」
言葉と同時、少年は顔色一つ変えずシスター達に向かって突撃していく。
虚しさと凄烈さを兼ね備えたその目から異様な威圧感を放ちながら
シスター達はその尋常ならざる少年の様子に気圧されながらも
ある者は近接武器を、ある者は飛び道具を構え迎え撃とうとする。
「惰弱な」
だが、彼女たちが一瞬の迎撃準備を整え攻撃に転じるするより先に
少年は前方と後方の二組のシスターの中央で止まり腕を横合いに振った。
瞬間、少年の手の平面上にあるシスターの体と宗教的武器が真っ二つに切り裂かれ
使い物にならなくなった武器が地面に落ちるのと同時に辺りが血に染め上げられていく。
「どうした!? 一体何が―――ッ!!」
金属と人肉が落ちる音に反応したアニェーゼは銀の杖を手にして車内から飛び出したが
血と臓器が散乱し、吐き気を催す腐臭を放つ地面に思わず敵を前に止まってしまう。
しかし、頭にゴーグルをつけた男は顔色一つ変えずにアニェーゼに視線を移す。
「暗部といっても所詮は子供といったところか。まさか気づかなかったのか?
いくら強くてもいつまでも勝者ではいられない、闇の世界はそう出来ている」
「ッ! 知った風な口を叩くな!! 異教のクソ猿風情が!!!」
アニェーゼは胸の内から湧き上がる生理的嫌悪感を払拭するかのように絶叫すると
先端が開花する直前のような蓮の花のような形状の銀の杖を構えようとしたが
ゴトリ、と彼女が手にしっかりと握っていたはずの杖が地面に落ちた。
(な、に……? まさかこの私が恐怖で武器を落とした……?)
動揺した彼女は思わず顔に手を当てようとしたが―――出来なかった。
思わず目を見開いた彼女は見た―――杖を未だしっかりと握っている手を
(ま、さか……)
そして、恐る恐ると全身から尋常ではない汗と震えを発しながら彼女は確かめる。
―――手首から先を消失し、栓を閉め損ねた蛇口のように血を流す自身の腕を
「あ、うァァァあああああああああああああああああああああ!?」
たっぷりと一〇秒もかけて、戦慄の真実にたどり着いたアニェーゼは錯乱し、叫んだ。
ゴーグルの少年はその様子を顔色一つに変えずに眺めながらアニェーゼの元へと歩いた。
「悪いな。俺は戦いに来た訳じゃない、殺しに来たんだ」
そして、ゴーグルの少年は腕の断面を膝で抑えているアニェーゼの近くで足を止めると
死を宣告された者に大鎌を振り上げる死神のように右手をゆっくりと彼女へと伸ばす。
だが、横合いから飛び出した少年がその腕を掴みアニェーゼと引き離した。
「おい、やめろよ! 何もそこまでする必要ねえだろ!」
「……上条当麻、か。悪いが言ってる意味が理解できない」
瞬間、ゴーグルの少年は上条に掴まれた腕を強引に振り上げると
上条の顎に打ち付け、腰を捻り怯んだところを容赦なく蹴り飛ばす。
「俺は殺しに来たんだ、それ以上でもそれ以下でもない」
「ふざけるな! 確かに今回の事件ではアニェーゼがたまたま悪者だった!!
でも、だからってこの先ずっと悪くあり続けなきゃいけない理由がどこにある!?
どんな理由を並べても尊い命を、素晴らしい人生を奪う権利は誰にもない!!!」
「なるほど、立派な考えだ」
闇を揺るがす上条の叫びにゴーグルの少年は感心したかのように一歩下がる。
そして、ダン!!! と靴底で地面を思いっきり蹴りつけ上条へと肉薄した。
「なら、まずは俺からその女を守ってみろ」
「なっ……? クソッ!」
獣のような勢いで突撃するゴーグルの少年を上条は右拳を迎え撃とうとするが
ゴーグルの少年は身を翻して鮮やかにそれを避けると上条の耳に肘を叩き込んだ。
三半規管を麻痺させられ体がふらつく中、それでも上条は右拳を握るが
ゴーグルの少年は体を小さく動かして躱すと上条の頬を蹴り飛ばす。
そして、バランスを崩し仰向けに地面に転がった上条の顔面を
無表情で見下しながら空き缶を潰すような勢いで踏みつける。
「たとえ相対的にはどんなに間違っていても、各々の立場で各々の正義が存在する。
口先だけでは何も守ることは出来ない。現に俺がいなければお前らに明日はなかった」
「あっ、が……」
「まあいい、お前には借りがある。俺はここで退く事にしよう」
ゴーグルの少年は上条の顔から足を外すと、上条のポケットから携帯を取り出し
数回ボタンを押して何かを確かめると、ホーム画面に戻して上条の腹の上に置く。
「では、一方通行によろしく」
そして、ゴーグルの少年は何事もなかったのように静かに立ち去った。
アンジェレネだろ
という訳で今回の投下はここまでです
不鮮明な点は次回の投下で明らかにします、多分
>>270
>>262を参照、今回はアニェーゼで合ってます。
名前すら間違えて本当に恥ずかしい限り
そういえば最近ピクシブで禁書とサイレンNTのクロス書き始めたんで
良かったらそっちのほうもよろしくお願いします(ステマ
それでは、また
違う アンジュレネって書いてるのが間違ってる アンジェレネだ
>>272
このたびの誤字に関して遺憾の意を表明します
ェとョの違いに本気で気づいてませんでした。
アニェーゼをアネーゼって書かなかったぜやっほーって
調子乗ってる場合じゃなかった、次回以降気を付けます
ここんとこ特にコレジャナイ感が凄まじいぞ
>>1は原作読んでんだよな?
支部にあるのは何?
どうも、>>1です
最近何かイベントがあった気がしましたが多分気のせいでしょう
>>277
読んだ
>>278
http://pixiv.me/nasitomomonorakuenn
投下
九月十日 午後五時 とある病室
「起きましたか、早速ですが歯を食いしばりなさい」
慣れないうちは鼻を塞ぎたくなるほどの消毒液の匂いが充満する病室の中で
うっすらと目を覚ました一方通行が聞いたのは静かな神裂のその言葉だった。
その直後、バシバシッ!! と神裂は一方通行の頬に往復ビンタを叩き込んだ。
「土御門はあなたが本領を発揮したと言いましたが私はそうは思いません。
あなたは一時的な感情に囚われ、己の破滅しか目に見えなかっただけです」
起き抜け特有の微睡みを激痛によって薙ぎ払われ、珍しく狼狽を見せる一方通行に
神裂は修羅の如き凄まじい表情を見せながらも今にも泣き出しそうな目で睨み付ける。
しかし、その目に宿る感情は憎しみとは似ても似つかないものだった。
「何故あなたはいつも一人で抱え込んで間違った方向に突っ走るのですか!?
人が屈辱を味わうのは憎しみに駆られる為でなく、他人の痛みを知る為です。
そして、闇に落ちるのはそこで生き抜く為でなく、這い上がる事を学ぶ為です」
「……もう遅い、俺は一線を越えちまったンだ。お前も知ってるだろォが」
そう、何をどんな言葉を並べたところでその真実が揺るぐ事はない。
仲間を守る事ではなく敵を壊すことを目的に戦い、血まみれの勝利を手にした。
そんな過去の自分を正当化する気も環境や周囲の人間に責任を転換する気もない。
全ては自分自身で選んだ道であり、そんな現状を変えようとしなかったのだから。
と、そんな事を溜息混じりにぼんやりと考えていた一方通行だったが
不意に、じんわり、と彼の手を人肌特有の穏やかな温かさが伝わっていく。
ふと視線を向ければ、一方通行の細い手を神裂が力強く包み込んでいた。
「知ってるか? 俺は触れた相手を一秒足らずで殺せるンだぜ」
「脅しですか? 屈しませんよ。私はあなたより強いですから」
投げやりだが普通の人間が聞いたら身震いしてもおかしくない言葉に
神裂は幼い子供を宥めようとする母親のように微笑みながら返事を返す。
「過去のあなたについて口出しする事は何もありません。
ただ、あなたの未来については大いに期待していますので」
「まだ見放さないのか?」
「決して」
―――
――
―
同時刻 別の病室
"たとえ相対的にはどんなに間違っていても、各々の立場で各々の正義が存在する。
口先だけでは何も守ることは出来ない。現に俺がいなければお前らに明日はなかった"
暴虐によって無残にも潰された命の上でゴーグルの少年から言われた言葉。
それが上条の心にカビのように、べっとりとこびりついて離れなかった。
それが顔にも表れたのか、サイドテーブルに置かれた高級そうなお菓子を
猛烈な勢いで食べていたインデックスがふと口を休め彼の顔を覗き込んだ。
「何でそんな浮かない表情なの? 皆、助かったんだよ?」
「ああ、それは神裂から聞いたよ。そうなんだけどさ……」
「……何かあったの? 無理にとは言わないけど、話してほしいんだよ」
上条はしばらく逡巡したが、やがて堰を切ったかのように全てを話し始めた。
―――アニェーゼを含めた八人のシスターに連行され、何も出来なかった事。
―――突然現れた少年がトラックを破壊し、出てきたシスター達を惨殺した事。
―――アニェーゼを殺そうとした所を止めようとして返り討ちにあった事。
―――そして、その少年に言われた言葉を
「そんな事が……、でも確かに武器を持った八人のシスターに囲まれた状態から
とうまがたった一人でどうにか出来るなんておかしいと思ったんだよ」
「そう、そこなんだ。俺が気にしているのは」
え? とインデックスは思わず驚きの表情を見せるが
上条の辛そうな顔を見ると、すぐにそれを打ち消した。
「俺には何もできなかったが、奴には現状を打破する事が出来た。
躊躇も同情も一切なく、ただ無慈悲に相手を潰すことで……」
「それはとうまがしたい事なのかな?」
瞬間、心から絞り出すように上条の口から吐き出される言葉をインデックスは遮る。
その目に宿る普段の彼女からは考えられない真剣さは上条を黙らせるには十分だった。
「違うよね? とうまがしたいのは目の前で困っている人を助けることでしょ?
忘れないで、どんなに素晴らしい目的でも残虐な手段を正当化できないんだよ」
「でも、俺の力じゃどうしようもない時は―――」
「私が助けるんだよ」
きっぱり、とインデックスは上条の悩みを一刀両断するかのように宣言する。
上条は驚きのあまり思わず目を細めるが、彼女はそれに構わず言葉を続けた。
「私だけじゃない、人はどこかで誰かと繋がってるんだもん、必ず。
だから、何でも一人で背負い込む必要なんてこれぽっちもないんだよ」
インデックスは笑ってそう断言し。上条もそれにつられて小さく笑う。
カビは綺麗さっぱりなくなった、もう悩む理由はどこにもない。
今回の投下はここまで
7巻の内容、やっと大方終わりましたねはい
次からはもっとはやめたいところです
それでは、また
久しぶりにきたら直ってるようで何より
投下
同時刻 ランベス・ロンドン地区
突然降り出した夕立の雨粒が昆虫の羽音のような弱弱しい音を立てる中
こうもりのような黒い傘をさしたステイルは心の底からうんざりそうに
紅茶のカップのような華やかな傘をさしたローラは楽しそうに歩いていた。
しかし、彼らの傘は一般で手に入るものは仕様が異なり
電話ボックスのように互いの声を傘の振動を媒介して伝え
同時に傘という枠の外に決して声が漏れないように出来ている。
「インデックスの検証によるとオルソラの解読法は誤りだったようです。
この報告を受けてかどうかは不明ですがローマ正教側は今回の件について
アニェーゼ=サンクティス以下二五〇名で構成させる武装派閥による暴走、
つまり、彼女達の独断であり自分達の真意ではないと弁明したいそうです」
「内の部下の手綱を掴みきらぬば腹を斬るべきなんだけどね」
ローラは苦笑しながらおもむろに自身の長い金髪を指先でいじり始めた。
艶のあるその髪には荘厳と言うべき芸術的な美しさが秘められている。
「それについては我々も同じでしょう。何故、死神部隊に情報を漏らしたんですか?
よりにもよってシェリー=クロムウェルの両手首を叩き潰して送り付けたあの男に」
「彼女に禁書目録を殺されかけきあなたとしては、良かりしかば?」
ローラは首を傾げながらニヤリと海賊のような野蛮な笑みをステイルに向けた。
人形のような端正な顔が人間らしい悪意に歪む様に彼は思わず声を詰まらせかける。
「そういう問題ではありません、今のアレは科学サイドに属する能力者です。
彼が数名のシスターを惨殺したという事は戦争の原因には充分すぎます」
「案ずるなかれ、既にその問題は片付けきなのよ」
は? とローラが何気なくといった感じに言った言葉に思わず耳を疑った瞬間
ギィン、と軽い頭痛と耳鳴りと共に彼の脳裏に鮮明な映像が浮かび上がっていく。
―――
――
―
transmission date of aggressor from "UNDER_LINE"
ドン!!! と夜の静寂が訪れたはずの街の一角が爆炎で包み込まれる。
その直後、三人の修道士が暗闇から姿を現し燃え上がる炎を尻目に歩き出す。
「よし、これで一人死んだ。後は一方通行を始末して帰還するだけだ」
「ああ、だがあまりにも楽勝過ぎないか? 最大主教直々の命令とは思えん」
「所詮、奴らも唯の人間。手の込んだ小細工をしなければ何も出来ないクズだ」
それもそうだな、と残りの二人がその言葉に同意するように笑い声を上げた瞬間
ダン!!! と彼らの背後に忍び寄った何者かが二人の首を掴み建物の壁に押し付けた。
「学園都市に来てからもう会えないと思ったんスけど―――」
現れたのは、土星の輪のように頭全体を覆うゴーグルが特徴的な少年。
黒を基調とした質素な服は全体的に黒焦げ、顔や腕の皮膚が一部爛れているが
その男は化石のように表情の乾いた顔でろくに声色さえ変えず告げる。
「―――そちらから来てくれるとはありがたい」
言葉と同時、ドサッと二人の頭が怯えるような表情のまま落下し
頭部を失った胴体が断面を失った首から血を噴出しながら崩れ落ちた。
「こ、の………ッ!!」
残った一人が懐からルーンカードを取り出そうとしたがが
それより先に少年が血塗れた手で修道士の顔を鷲掴みにする。
パラパラ、と男の懐から数枚のルーンカードが空しく地面に落ち
怯えた表情で震える男を少年は無機質な瞳で静かに睨み付けた。
「お、落ち着け。俺が悪かった、だから―――」
「いや、こちらこそ」
そして、グシャリ! と何かが潰れる音が夜の街に人知れず鳴り響いた。
―
――
―――
「この男は殺人の前科七犯でたった一四歳にして終身刑を言い渡されし連続刺殺魔。
殺害動機も未だ不明。ま、強者ではなく弱者に隙を突かれて殺されるタイプね」
「あの……それよりもこの映像は、一体?」
「悪いけれど質問をしたるのは後にするのよ、ステイル」
―――
――
―
transmission date of aggressor from "UNDER_LINE"
夜の帳が訪れた博物館の中、不気味さと虚しさを兼ね備えた長い廊下で
”臨時清掃員 山手”と書かれたネームプレートを胸につけた作業服の少年が
作業員用の最小限の無機質な灯りの下、モップを手に黙々と清掃作業に励んでいた。
ふと少年が洗剤を補充しようと清掃用カートにモップを立て掛け、中に手を入れるのと同時
物陰に潜んでいた三人の黒い修道服を着た男達が西洋剣を手に音もなく彼の背中に肉薄する。
徐々に作業服の少年との距離を詰める三人の刺客は余裕を含んだ笑みを浮かべるが
彼らに背を向けている少年もまた彼らと同じ類を浮かべている事には気付けなかった。
刹那、作業服の少年が清掃用カートからサブマシンガンを取り出し
勢いよく振り返ると、腕を横薙ぎに振るいながら引き金を引く。
ダダダ! と軽く弾けるような銃声と共に大雑把に放たれたはずの三発の弾丸は
修道服を着た三人の刺客の心臓を正確に貫き、一瞬にて彼らの命を奪い去った。
―
――
―――
「この男は並々ならぬ守銭奴にして過去数十件もの銀行に対する武装強盗の主犯たる疑いありき。
誰に教わりしなのか射撃の腕は神業の域。されど、何でもないところであっさりと死ぬタイプね」
「凄い観察力ですね、やはり長生きしていると人間の本質が分かるのですか?」
「……この男に払った金をこちらで負担する話は無しでよきなの?」
「ごめんなさい、許してください」
―――
――
―
transmission date of aggressor from "UNDER_LINE"
インクを派手にぶちまけたかのように黒く染まった夜が訪れた街の歩道を
街灯の寂しい灯りを頼りに歩く細身の体を固い筋肉でまんべんなく覆った女性に
先端が鋭い槍を持った三人の黒い修道服を着た男たちが三方向から襲い掛かった。
「……くだらん事に、手間をかけさせるな」
だが、彼女は一切動じることなく正面にいた男の腹に蹴りを叩き込み
横合いから肉薄する二人の槍を身を僅かに逸らしただけで軽々と躱し
両手でそれぞれの槍を掴んで奪い取ると、お互いの腹に突き刺した。
腹に蹴りを入れられ蹲っていた男が苦し紛れに女に突きを放つが
彼女はそれを軽々と躱すばかりか男の背後に一瞬のうちに回り込み
首と顎を掴み、ゴギン!! と男の頭を一八〇度反対に折り曲げた。
―
――
―――
「天塩恵末。彼女に近接格闘で勝てる者がいるはずがなしなのよ」
「……だったら何で遠距離型の魔術師を派遣しないんですか」
―――
――
―
transmission date of aggressor from "UNDER_LINE"
色とりどりのビニールシートに夜空を隠された路地裏を
図体の大きい三人の修道服を着た男たちが進んでいく。
「おい、標的はどこにいるんだ? ここではないのか?」
「いや、合ってるはずだ。多分、他はもう終わってるだろうがな」
「まったく嫌なものだな。我々だけ仕事が遅れて残業というのも」
やれやれと愚痴を零しながら同意を示すかのよう首を横に振ったが彼らは気づいていない。
厳つい筋肉を安物のジャケットで覆う、ゴリラのような大男がその様子を見ていることを
「それなら……休ませてやろうか?」
不意にその人物の口からコピー用紙を吐き出すような陰鬱そうな声が響く。
瞬間、ズン! と建設途中のビルから飛び降りた男が一人の神父を踏み潰した。
「驚くなよ……こちらだって真面目にやるさ」
「貴様……ッ! クズの分際でよくも!!」
「それ相応の死をくれてやる!!」
並々ならぬ憎しみと殺気が圧縮された二人の神父の咆哮と同時に
ミシミシッ! と骨が軋む音に二人の体が一回り大きく膨らんでいく。
だが、ゴリラのような大男は目の前の異常な現象に驚きもせず
あまつさえ余裕をたっぷりと含んだ笑みさえ浮かべていた。
「仲間の死に怒る、と。……涙が出るな」
二人の神父はそれ以上何も言わず巨大化した肉体を唸らせ
大男に向かって鉄球を思わせるような凶悪な正拳突きを放つ。
瞬間、ゴリラを思わせるような大男が突如として消えた。
「な……」
何もない空を突き抜けた己の拳を二人の神父が驚愕の目で見つめた直後
ドスブスガスッ!!! と二人の足を飛来した四角柱の鉄棒が刺し貫いた。
「あ……が……」
「真面目にやると……言ったはずだ」
激痛のあまり膝をついた二人の前に一瞬で姿を現した大男は
二人の首を掴み自分の体ぐらいの大きさの巨体を軽々と持ち上げ
ボギン!! と二人の首を握りつぶすようにへし折った。
―
――
―――
「駒場利徳、武装以前に常人を超越する肉体が殺人的な武器となりうる。
されど、何故に無駄な争いを好まざるはずの彼が路地裏の不良なんぞに?」
「知りませんよ、というより何故そんなのんびりしていられるんですか!?
ドヤ顔で片づけたと言った癖にものの見事に全員失敗してるじゃないですか!」
「私としては、あれでいいのよ。向こうには既に話をつけたるから」
どういう意味ですか? と思わず眉をひそめるステイルだったが
不意に何かを悟ったかのように顔を強張らせながら口を噤んだ。
「そう、必要悪の教会は弱者が居られる程ぬるい組織に非ずなのよ。ステイル」
にっこりと無邪気に微笑むローラにステイルはゾッとした寒気に襲われた。
改めて目の前の少女がイギリス清教のトップであるという事を思い知らされる。
「されど、一番気になるのが、これらの映像を如何に撮影したのか?
結論次第では学園都市の認識を変える必要があれど……また今度ね」
ドン、とステイルの肩が通行人とぶつかり、彼の体が小さく揺れた瞬間
傘に掛けられていた通信術式が途切れ、同時にローラの姿も忽然と消えた。
「……あの女狐め」
底の見えない暗闇を見せつけられたような寒気を感じながら、ステイルは考える。
先程の会話だけ聞けば、ローラは自分の部下を容赦なく切り捨てる悪人に思えるが
彼女は今回の件に関わりのある天草式とオルソラをイギリス清教に受け入れていた。
天草式を受け入れたのは神裂火織を抑える為と考えれば納得が出来る。
しかし、オルソラを助けた打算的な理由が何一つ思い浮かべられない。
そして、死神部隊の残党を始末しようとしてローラの思惑通り返り討ちにあった魔術師達。
彼らは『禁書目録は危険だから殺してしまった方が安全だ』と頑なに主張していた連中だった。
あの映像を見せたのは、"次はお前だ"という脅迫だったのか
それとも、インデックスの身は助けるという懐柔だったのか
果たして彼女は善人なのか、悪人なのか
そこがローラの難しい所で彼女は悪と善を同時にこなすのだ。
―――まるで、運命を公平に定めていく神のように
結果としてステイルはどんなに時間をかけて考えてもどちらとも判断がつかないまま
表立って離反出来ないどころか出し抜く気すら起きずにイギリス清教で働く羽目になる。
それが狙いかもしれないな、とルーンの魔術師は間に合わせの結論を出すと
忌々しげに舌打ちすると、霧雨の街を行き交う人ごみの中に消えていく。
今回の投下はここまで
Q、キャラ捏造がひどすぎないっスか?
A、多分気のせいでしょう(白目
次の投下は2,3週間後辺りを予定しています。
それでは、また
ゴミスレ発見
駆除せな(使命感)
(´・ω●)夏侯惇
伊達政宗(●ω・`)
(´・ω●)人(●ω・`)フュージョン!
_,,-''" ̄ ̄ ̄ `ヽ、
,r'" `ヽ.
/::. ..::::....::::::. ヽ
. /::. ,、、,_ ,、、, ヽ
|:: ´ .._`ー ‐''"... `. i
.|:. _,-====:;、____.,r====-、. |
r"i,__l' 、'iユ= ::i==f;; r'iユ=、 |=r、妹は泣きながら言ったが
! | ! ´ ̄` / .i `"´ i' l`i ぼくは便器を舐め続けた
| i" ::!、____彡.:i i:.ヽ、___丿'i }
. ゙i .l , ,r'´ゝ=、__rュ,.ソヾ、 ! ,i
. |_i::.. i { _,. - 、, ...、_ ,,) i .i_ノ。
.|:: `ヽヽエエニヲ,ソ" ´ ,::i
/`、:. ゙;: ヽ二二ン. , .:ノ、
/ . \.::、゙l;: ,,/ .:;r' ヽ
(´・ω●)夏侯惇
伊達政宗(●ω・`)
(´・ω●)人(●ω・`)フュージョン!
_,,-''" ̄ ̄ ̄ `ヽ、
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γ⌒/^^/^-
,ゝ`/~ /~ /~ /⌒
_ 〈(_| | |~ |~ /^ )
(/~ /~ /~ /~ ~ /~ /^\
へ^〈,|,,、,,|,,、,,,,,|~,,,,、〈~,, 〈~ /⌒|)\
|::::::: ゛ ゛ ,,,,;;::'''''ヽ
|:::::::: ,,,,;;::::::::::::::: __ ヽ
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┌―. - '"-ゞ,●> ::::::... |
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ヽ.\{_ ( ○ ,:○) |
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\_ヽ. __,-'ニニニヽ . |
.. ヽ. ヾニ二ン" /
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l `ー-::、_ ,,..'|ヽ.
:人 `ー――''''' / ヽ
_/ `ー-、 ,.-'" \ー-、
,.-'" \: \ .,.-''" |
/. \ ~>、,.-''" |
,,..-‐'''"" ヾ ,.-''"| /――――、/
,=‐-ミ、ii , -‐-ミ‘, がブがブがブがブルじゃらなの!?
〃 ● ∨ ヾ` がブがブルじゃらなの!?
{{:: || }} ルじゃがブがブルじゃらなの!?
ヽ 人 ● .丿 ルじゃががブルじゃらなの!?
`ー=彡'_` -= 彡 ブルじゃらなの!?
∧∧ ∧∧ ががブルじゃらなの!?
二二二二二二二 らなの!?
/ /'>_<'\ l
( / ㌧゙元゙_,ノ`ヽ、 ノ
\/,、-'ニニニニニ'ー-!'
__ イ く● _) .、〈.く●_)、_
/ / ( `ー一' .'、'ー‐' ヽ)ヽ、
/ ( / ー-' ヽ. ヾ ) ヽ
/ ゞ ( ::.| ト‐=‐ァ' |.:.ノ.ノ ',
j ゝ、、ゝ.\`二´'/ ノソ t
. __rュイK o_)Lナ`ー:. 、
_〈_( o_ノ☆'.....i ....ヽ.............\
ぐ,n(_乂..!.::::::i:::|::::i:::|:::::::i:::ヽ:::ヽ
尤o う::::;;|斗イ::ハ斗亠',斗ト、:i::::::}
r―-(乂):::::| ,ィzz\ ,イ芯ヾレ!::::::!
| ノ☆::::!{弋zリ ¨´≠彡'リー一 ー- 、
| \:::ハ::{ ≠ ' } /
. ! ヽ::トミゝ {ニニニィ ,!-、_/ /
',. `、リ ∨ } ,イ / /
'、 ヽ 个:.、 ゙こ三/ / _/ / /
`、 フ `T - イノ ´′ ′ /
`、 ヽ ′/ / /
ヽ \ ` ー ′ ' /
. \ , {
i  ̄` ′ !
', , i
ヽ } ハ
\ ′` \
\ 、 ′ `ー- 、
ヽ、 ! ヽ
\ ヽ ',
>、 / |
ノ 、rー―-‐‐┐ |
/ .| 禁 則 ! |
/ | | !
/ |_事__項」 .l
./ / | |
. -‐――- . 、
,. : :´ : : /. : : : : : : |: : 丶、
/.:::::. : :/ |: : i ね………… 抱かせて
i:::::::::: ... : |
|::::::::::.... .......::::.....:::::: : | ねっ
| ;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. |
| ::::: .イ ̄「 ̄「`ヽ::::::::::::::| 抱かせて 赤ちゃん 抱かせて
| ::: / , ‐vーv ‐v-、,ハ::::: |
(⌒ヽ 人 ::::i^{_|_|_|_}^i:::::. .::| ぜったいかじらないから
(⌒ヽ〃 /=、:「`Y⌒Y⌒Y⌒ソ.::,∠.. L.. __ かじらないからぜったい
> ノ ノ 八,人_,人_,人ィ.::::::{__,) `て⌒)
(__ .イ ノ_,_,ハ ヾ=====彡 { ( 厂
とソ´ ト、\l___j_/jヽ. / (⌒) 抱かせて
! ` ‐---,---=イ 、_ (⌒)
\ / \ ヽ__) 抱かせて
{`ー'7′ ヽ }
ー'′ しノ
/ R /\ > ふぅおほほほっ!!<
/ /\ \  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
/ \ | / /=ヽ \ | /\
\ ⊂) .|/ (゚) (゚) \| (つ /
(彡.o_\ ── ゝ── ノ/ホ ゚ミ)
|\.六 !\____/ !サソ゚/ |
\ `ー◆ ◇ー´ /
 ̄| ∵ ∴ | _人人人人人人人人_
| ∴ ∴ | > ふぅおほほほっ!<
ジョボ ______  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
ジョボ| / = ヽ |
| ( ゚) (゚) | _ _
,-―――●―――-、 .__|_|__|_|__
 ̄|;;;;;;;;;トェェェィ;;;;;;;;;| ̄ |_______|
ヽ;;;;;しww/ノ;;;;;/
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゚ 。 \ヽ./ R /\ ゚
- ・。 / /\ \ @ 。
, ゚ 0 ─ | / /=ヽ \ | / 。 ,'´ ̄ ̄`',
゚ ,,、,r-'⌒l/ (゚)..(゚)\|。゚ / o ,! ハ ハ !
ヾヽ、_,,,、-、/ミ, ヽ __ノ / -、\ ∠ ハ ッ j
jヽjvi、人ノl__ = ^ | / = ヽ ̄jヽ、 〃ヾ ゚ 。ヽ フ /
) ハ 7 | ( ゚) (゚){ミ,_  ̄`'''-ヽヾ ` ̄ ̄
) フ て ,-―――●――― ̄i'-、_,,ン ノ _ _
7 ッ (  ̄|;;;;;;;;;トェェェィ;;;;;;;;;| ̄- ニ .__|_|__|_|__
) !! ( ___ヽ;;;;;しww/ノ;;;;;/__,-=-,_ |_______|
', ;l: ll kr'´ ィイィ彳彳彳彳
ヾ州ィイイィ彳彳彡彡彡
_ __ ,′ ``ヾミミミ
,. '´;:.:.:.:.::::::::.:.:.``ヽ ,′ -‐ミミヽ/ミミミミミ
,. '´..:.:.:,. -─‐‐- 、;;;:;:.:ヽ〈 ,′ミミミミヽ
/ .:.:.:.:.:.く ``ヾ「ヽヽヾミニ二二ミヽ `ヾミミミ
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/ .:.:.:.:::::::::::::::/ -='ぐ / l ||¨´ ̄`` . :; そんなことを言うのは
/ .:.:.:.::::::::::::::::/ '''´ ̄` / `Y´ . ;..:
,′.:.:.:.:::::::::::::〈 ヽ____ノ', .;: .;: この口かっ……んっ
',.:.:.:.:/´ ̄`ヽ;;;', .;;;' ``ヾミヽ j! ,. ′.;: .;:. :
',.:.:.:ヽ い( ミj! )ミミj 、 、 ', ., 、:, 、 .; :.
',;;;:;:;:入 _ ..:;.;:.:;..:`Y ミj! 、 、 ', ., 、:, 、
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Lノ´ ̄ , ィ´ .:; .:; . ;:. ;:. ;: .;: .; :. ;:. ;} 、 、 ', ., 、:,,.: '´
ノノ ____\ ;.: .;: . :;. :;. :;. :; .;: .;: .;人 _; :; :; ィ´`ヾ
`、^“ナナTTT“¨¨“ー-。、_ . 、
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.・ナナナ?-=‐、_ `ー。_ ._。.-ー・T^¨´ _、-・´
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人:::::::.. ゙、::::::::.......___,,ゝ、:::.. ヽ
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`ー─一'" `ー─一'゙ `ー-一'" `ー─一'゙
|゙〕 l'j/'i、 .r‐―――i、 |゙〕 ,-、 l'',! .,,-,、 .l''i、 .|゙| .,-,,、 .|゙|____、 .,-、 l'',!
| | .!┴"  ̄〕 厂 ̄` r‐―┘――┐ .| | .| | ゙'-,`'i、 ,、、.| | .| .| `'-,゙'i、 ,、、 .l゙.r‐---i、| .| | .| |
| ゙¬-,,、 .r‐-┘―---i、  ̄ ゙̄| .|゙゙, ̄` | | .| | 、 `" ,l゙.,i´.| | .| .| `'" 丿,i´ ,l゙丿 l゙ | | | .| | 、
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:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\ :..:..ヽ. ーー r‐':..:..:../ ./:i:i:i:i:i:i:i:i{
:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i{ }:iト、 :..:..ヽ ー、___,,r‐' ー'´/:../ ./:i:i:∧:i:i:i:i
:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i∧ハ V} \ :..:.ヽ.__' ` _/:..:/ ,, ノ:i:i:i/ ヽ:i:i}
し! _ -── ‐- 、 , -─-、 -‐─_ノ
ア ギ // ̄> ´  ̄  ̄ `ヽ Y , ´ ). ア ギ
ア ャ L_ / / ヽ ア ャ
ア ア / ' ' i ア ア
ア ア / / く ア ア
ア ア l ,ィ/! / /l/!,l /厶, !! ア
ア ア i ,.lrH‐|'| /‐!-Lハ_ l /-!'|/l /`'メ、_iヽ
ア ア l | |_|_|_|/| / /__!__ |/!トi i/-- 、 レ!/ / ,-- レ、⌒Y⌒ヽ
ア ア _ゝ|/'/⌒ヽ ヽト、|/ '/ ̄`ヾ 、ヽト、N'/⌒ヾ (●) ,イ ̄`ヾ,ノ!
ア ア 「 l (●)(●) (●) ′ | | |(●)L! (●)(●) リ
ア ヽ | ヽ__(●) (●)、ヽ シ(●)! ! |ヽ_、ソ, (●)(●)(●)_ノ _ノ
-┐ ,√ ! (●)(●)(●)(●) リ l !  ̄ (●)(●)  ̄ 7/
レ'⌒ヽ/ ! | (●)〈(●)(●) _人__人ノ_ i(●)く(●)(●)(●) //!
人_,、ノL_,iノ! /! ヽ(●)r─‐- 、 「 L_ヽ r─‐- 、(●)u(●)/
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ア ギ { / ヽ,ト、ヽ/!`hノ ) ャ |/! 「ヽ, `ー /) _ ‐'
ア ャ ヽ/ r-、‐' // / |-‐ く ア > / / `'//-‐、 /
ア ア > /\\// / /ヽ_ ! ア ( / / // / `ァ-‐ '
ア ア / /! ヽ(●) レ'/ ノ ア >●)∠-‐  ̄ノヽ /
{ i l !(●)●/ フ ア / (●)-‐ / ̄/〉 〈 \ /i
/""'''丶、 _ _ ,, .. -
/ `ヽ--' ' ' ' " " /
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く / ,,.へ/ `ヽ、
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i / /_,、‐' _,、‐'__,、‐'"ノ | /
i / ,/_ ... ""/,、‐'"__,, / i
i / /●::.ヽ :、 "" .::" ヽ i
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/ /i ヽ、:;;;ノ /●ソ /
| /ヽ-ヽ ヾ;;. ::: .. ヽ i.;;; /ヽ /
\ \ \| ;; ::: ノ i ノ
/ \ \;; i\:: ⊿ / i /
/ \__,ヽ i, ```ー-,,._/ .i/ でゅっひひひ
.i | i,_...,,,,,、 □□ i
i | :::..、 \( i
i | \ ;;;;;;ヽ□/.i i
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| / ! `''-''i \ i
i / ヽ i
. __rュイK o_)Lナ`ー:. 、 おりもので下着が汚れたりして
_〈_( o_ノ☆'.....i ....ヽ.............\ 不快な人は70%もいるよ
ぐ,n(_乂..!.::::::i:::|::::i:::|:::::::i:::ヽ:::ヽ そこで、サラサーティSoLaLa!
尤o う::::;;|斗イ::ハ斗亠',斗ト、:i::::::} 薄いのにおりものをちゃんと吸収
7(乂):::::| ,ィzz\ ,イ芯ヾレ!::::::! さらっさら~のサラサ~ティ♪
|:{ノ☆::::!{弋zリ ¨´≠彡'リ
|::::::::::ハ::{ ≠ ' } /',⌒:l SoLaLa
∠::::::::::::トミゝ {ニニニィ ,!/ ノ i
彡ノリ ∨ } ,イ /ヽ i
リ j/ー个:.、 ゙こ三/ /、./ ! l
l ノV ヽ`T - イノリ;:。:;i /之ツ
ヽ t │;。 .¦ ''´ ヾミ
ヽ .ヽ \: . :;l 、__
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"Y' : : _,ヾlツ '‐-‐¬丁 ::/
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ゲソー /| ,,-: |: : ::--‐、`ヽ ゴク | | /,.-'__
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レ :| メ | リ \ 絡まってきます / ¶ ¶ ¶ ,:=・=:、 ,:=・=:、≡¶¶ ¶ ¶
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¶ ¶ ¶ 〈(・)〉《|〈(・)〉|¶ ¶ < ち ィ > ¶¶¶¶ ¶ ¶ ..L_」≡/
¶ ¶ ¶  ̄ ̄ |≡≡|¶ ¶ < 感 ゃ │ > ¶¶¶ ¶ | .┗━┛ |
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八 ノ
..... __| イ_、:. ......
..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く
ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- )
( '(:::::':,\ トV::./ ,ォ ≠ミ ヽ.::∨/,.::'::/ /
\ \ :':, 八Ⅳ. {_ヒri}゙ jハ:::l, :':::::, ′ /
\ \:l:ハ|  ̄´ ハ:|::::/ ,.イ
ヽ \ム {ニニニィ ,'ノ / /
\ ヽゝ. ∨ } イ/ /
ヽ `=≧r゙こ三/´ /
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( ( ヽ:::::: :::.. ノ ) ) サテンサーン
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,' ,ォ ≠ミ ィ≠ミ丶⌒o⌒ l .l ヽ. 表 示 価 格 よ り , ' l.
/ |〃yr=ミ:、 !/行ミt .( 人 ) | .l ,. -' __ __ `丶、 l
`'-.,jイ {_ヒri}゙ ゙ ヒrリ.》 | l く <ヽ |│ ノ> r‐' └‐lニ,ニニ! / .!
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(__ __) / ヽ (_ `ヽ、○○ _|^ヽ_ /^ヽ (⌒ヽ /⌒ヽ「 ̄ ̄ /
| (ニ) (ニ) | | 二二 | ( `ヽ、ノ (__ _) / / ヽ ヽ / / | /
| (ニ) (ニ) | l ―― l ヽ、 ヽ ヽ ヽ { { } } ( 〈 ,.ィ
{二二二 ̄l _フ レ^ヽ /⌒) 〉 (⌒ヽ (⌒ヽ_<_) ヽ V^ヽ / / ヽ ヽ、
{――― l (__ノl__ノ(_ノ(__ハ、 ) ヽ、 ) ヽ、_ノ (_ノ ヽ、 )
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γ⌒/^^/^-
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〈(_| | |~ |~ /^ )
(/~ /~ /~ /~ ~ /~ /^\
へ^〈,|,,、,,|,,、,,,,,|~,,,,、〈~,, 〈~ /⌒|)\
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iiiiiiiiiiiiii!./∴,,゙・;;\../∴,,゙・,;\`!iii!iiiiiiiiiiii,
iiiiiiiiiiiiii!.|;,'“●●・∵|.「∴●●.゜,;」`!i!iiiiiiiiii
iiiiiiiiiii!!..|:,..;●●゙;;.;ノ.i,.;:,,●●;;.,..,i !!iiiiiiiii
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iiiiiiiiiii'i、ヽ 匚匚匚匚匚匚匚i / ,!iiiiiiiiiii!
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iiiiiiiiiiiiiiil\ \匚匚匚匚匚l/ /llliiiiiiiiiii!
iiiiiiiiiiiiiiiillllii\:.. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/lllllllliiiiiiiiiiiii!
iiiiiiiiiiiiiiiillii;;;:: `ー-..............-‐´illlllllllllliiiiiiiiiiii!
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/ ´ ̄了  ̄`ヽ:::::l:::::::K´ ̄ 「  ̄\
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イイ事したわ(達成感)
,,从.ノ巛ミ 彡ミ彡)ミ彡ミ彡ミ彡)ミ彡)''"
人ノ゙ ⌒ヽ 彡ミ彡)ミ彡)ミ彡)''"
∧_∧ ,,..、;;:~''"゙゙ ) 从 ミ彡ミ彡)ミ彡,,)
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(__)_) ゙⌒`゙"''~-、,, ,,彡⌒''~''"人 ヽノ,,ミ 人 ヽノ 熱いよ~悪か・
"⌒''~"し(__) し(__)"''~し(__)
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| >>1を火葬します!!
ウルセーッ!ヴォケ!士ね!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
どうも久しぶりに>>1です
レッツ投下
九月五日 午後九時 某所
とある騒乱のせいで全身に大火傷を負ったゴーグルの少年であったが
彼が向かったのは病院ではなく、一見何の変哲もない高層ビルだった。
そして、エレベーターに乗り込むと一つではなくいくつものボタンを変則的に押していく。
すると押されたボタンに点されたはずの光が全て消え、エレベーターがゆっくりと動き出す。
そして、普通の方法では絶対に入れない場所に辿り着いた訳だが
「ちーッス、遅れまし……ええっ!? なんスかコレ敵襲っすか!?」
扉が開いた先にゴーグルの少年が見たのは戦争が起きたかのような悲惨な光景。
防弾性能が高かったはずのガラスは例外なく粉々となって床に散乱し
高級家具や家電製品、観賞用の植物がゴミのように辺りに転がるばかりか
床や壁のいたるところに蜘蛛の巣のような深い亀裂が刻まれていた。
「違う違う、彼が暴れたの。危うく私まで巻き込まれるところだったわ」
ゴーグルの少年の声に反応したのは比較的無事なソファに座り込むドレスの少女。
彼に視線を向けることなく淡泊に答える彼女の奥には同じように彼に背を向けるように
不機嫌さを殺気で表現している超能力者、垣根帝督が壊れかけのベンチに座っていた。
「今日、大覇星祭の運営委員から開会式の選手宣誓をしてくれっていう依頼があってね」
―――
――
―
「はあ? ふざけんな、あんなの努力や希望を信じてるガキの遊びだろうが!」
「だからさ、そーいうお子様にウケるビジュアルの能力じゃないか(笑)」
―
――
―――
「―――って」
「ぶはっ!」
予想を斜め上ばかりか遥かに上回る事の顛末にゴーグルの少年は噴出したが、
同時に垣根の背中がより一層の殺気が噴き出し、ゆっくりと少年に振り替える。
「今笑ったか? 一生何されても笑えるようになりてえと見える」
氷柱のように冷たさと鋭さを兼ね備えた威圧感のある表情と声に
ゴーグルの少年は顔面蒼白で言葉もなく首を数回ほど横に振った。
「まあ冗談で済ましてやるけどよ、お前なんで全身焼けてんの?」
「あら本当、あなたは敵襲にあったようね。で、ちゃんと始末したの?」
垣根の言葉にようやく少年の怪我に気づいた少女だったが心配の言葉はない。
彼女にとっては、それよりも敵の残党が自分を狙う事の方が心配なのだろう。
「もちろんッス、まあ心配しなくても彼らの狙いは俺だけッスよ」
「ふーん、ってかお前珍しくテンション高くね? そういう趣味?」
「違うッスよ! まあ一言でいうならイイものが見れたからッスかね」
声こそ抑揚はあるものの表情を微動だにしないゴーグルの少年だったが
その一瞬、目だけが歪な愉悦を表すかのような威圧感のある笑みへと変わる。
二人の少年少女がその様子に僅かに驚くがそれは一瞬の内に消えていき
存在自体が嘘であったかのように彼の顔は元の無表情へと戻っていった。
「ったく何考えてんだが……ああ、そうそうお前宛に荷物来てたぞ」
話題を逸らすように垣根はそう告げ、ゴーグルの少年にA4サイズの黒い封筒を投げ渡す。
何スか? とゴーグルの少年によって封筒の中から取り出されたのはタブレット端末だった。
同時刻 とある博物館
スキルアウトによる強盗計画を止めるよう依頼を受けた山手は
標的の建物に清掃員として潜り込み、強盗を皆殺しにした上で
金目の物を奪い、その罪を彼らに着せようとしていたのだが
「何だこいつら、魔術師じゃねえか」
物言わぬ死体と貸した三人の男たちの服装を見て山手は盛大に舌打ちした。
学園都市在住のスキルアウトと違って、魔術師には書類上の身分がないのだ。
つまり彼らに罪を被せようとしても、彼らがやったという証拠が残せない。
つまり疑いの目はどう足掻いても必然的に清掃員の山手へと向く事になる。
一応『ブロック』という暗部に所属している為、警備員に捕まる事はないはずだが
その代り、普通に刑務所で暮らした方がマシだと思える制裁を受けることになるだろう。
「しゃーない、今回は大人しく引き下がるしかねえな」
そうぼやきながら、山手は床に倒れている魔術師の懐を物色し財布を探すが
瞬間、ボチャッと清掃用のビルメンカートに何かが投げ込まれる音が鳴り響いた。
「新手か!」
山手は咄嗟にサブマシンガンを音のした方向に向けるが誰もいない。
やがて彼は辺りを隈なく警戒しながらも清掃カートへと近づくが
刹那、何者かが三体の死体の近くに何者かが現れるのを感じ取った。
一瞬の間もおかず山手は銃口をその方向に向けたが、またしても誰もいない。
そればかりか死体や血痕さえも消え、そこにはただ静寂の闇が広がるばかり。
「……ナメやがって、クソ共が」
すっかり調子を狂わされた山手は呆れながら清掃カートの中身を見る。
そこに入っていたのは防水ビニールに包まれた黒い封筒だった。
九月五日 午後九時半 とある歩道
一目見ただけで他殺だと分かる三人の死体の上で、悠然と立ち尽くす手塩に
運動してもパソコンのキーを叩いてもサマになるような好青年が近づいた。
「噂には聞いてましたが……さすがですね」
「プロの行動に、奇抜な能力や、一発芸は、必要ない。
ただ、基本的な戦術の、積み重ねが、合理的に叩き潰す」
そう言って天塩は鬼のような殺気を放ちながら臨戦態勢に入るが
そうですか、と青年は彼女の言葉を軽く聞き流し黒い封筒を差し出す。
「ですが、非常に幸運な事に自分の仕事はあなたと戦う事ではありません。
死体の始末などの証拠の隠滅はこちらでやっておきますので、速やかな帰宅を」
天塩はしばらく警戒していたが、青年に敵意がない事を悟ると
黒い封筒を受け取り、墨を流したような夜の闇の中へと消えていく。
―――
――
―
九月五日 午後九時四五分 とある路地裏
土御門元春は猛獣を思わせるような大柄な男達の死体を避けながら
彼らよりもさらに一回り大きな破壊の権化のような男に近づいた。
「大した機動力だが、スキルアウトであるお前が能力者であるはずがない。
となると服の内側に『発条包帯』を仕込んでいる事になるが……正気か?」
「……ふん。身体的プロテクトのことか」
「そいつは駆動鎧の運動性能部分だけを抜き取って独立化させたものだ。
そんな安全装置のない欠陥品を使い続ければどうなるかぐらい分かるだろ」
「その程度の覚悟は決まっている……闇に沈んだ身に未練など、あるはずがない」
そうかい、と土御門は一方的に会話を切断すると手に持っていた黒い封筒を
コピー用紙をそのまま吐き出しているような陰鬱な口調の大男に差し出す。
「稼ぎ口だ、使うかどうかはお前次第だがな」
大男は、地面に倒れている三人の死体と周りに潜んでいる人間を一瞥すると
何かを察したよう小さく笑うと、パン! と土御門の手から封筒をもぎ取った。
今回の投下はここまで
新約9巻の表紙がアレで本屋で買いにくい件について
こんなに悩むぐらいならアマゾンさんに頼むしかないのか
次回の投下は花粉が収まった辺りになると思います
それでは、また
どうも、>>1です
ようやく花粉のピークが過ぎました、うれしい限りです
投下
九月一九日 午前七時半 風紀委員一七七支部
九月一九日から二五日の七日間に渡って学園都市で執り行われる大覇星祭。
街で行われる全ての学校が参加する体育祭であるその行事の開会式に向けて
初春飾利、白井黒子の二名の風紀委員は着々と準備を進めているところだ。
「じゃあもう行きますけど……怪我はもういいんですか? 白井さん」
「ええ、それよりも取り逃がしたあの男をどうにかしないと」
「……白井さんを撃って逃走した銀行強盗犯の事ですね」
容赦なく仲間を射殺する男の姿を思い出したのか初春は暗い声でそう答える。
そんな彼女を気にかけつつ白井はいつにもない深刻な表情で話を切り出した。
「初春、その日その男は『昨日の仕事がしくじった』と言ったんですわよね?」
「はい、でも仕事って一体何をやっているんですかね?」
「どうせろくでもない裏稼業だと思いますの―――例えば、お姉さまの殺害未遂とか」
なっ!? と初春は唐突な白井の推論に思わず息を呑む。
誰もその二つの事件に関連性があるなど思いつきさえもしなかったからだ。
「でも、その事件の犯人って自殺したんじゃないんですか?」
「あの男は銀行強盗の際に自分の仲間を分け前を増やす為だけに殺してます。
ですから自分の罪を被せる為だけに人を殺す可能性は高いと思いますの」
「素晴らしい推理だ、概ねそれで合ってるぜ」
突然声割り込んできた声に三人の少女たちは勢いよく振り返る。
そこには作業服を身に纏い黒塗りの仮面をつけた少年が立っていた。
いつの日かの状況を再現するかのように拳銃を片手に持った男が
「何故!? ここには厳重なロックがかけているはずです!」
「犯罪者を分かってねえな、お嬢さん」
嘲笑を上げる少年の背後から男と同じ仮面をつけた三人の男たちが現れる。
その全員が拳銃を持っており、うち一人が大きなボストンバックを抱えていた。
「この世広しといえども善悪があるのは人間だけだ、物や技術にはない。
衛星監視網ができれば、路地裏にはビニールシートが貼られるし
監視ロボットができれば、地面に釘を大量に打ち込んで追い返す。
優れたセキュルティ技術があれば、それを破る方法を作り出す」
白井黒子は隙を伺いつつ、太もものホルダーの金属矢に意識を集中させるが
作業服の男が突然その動きを制するかのようにパン! と天井に向けて銃を撃つ。
「何を企んでんのか知らねえけど、その前に俺は確実に銃の引き金を引く。
やれよガキ。お前の行動で誰かが死ぬ、その事を肝に銘じてかかってこい」
「ッ!」
軽薄な口調とは真逆の凍てつくような殺気に白井は喉を干上がらせる。
作業服の男はそんな彼女の表情を無視して初春に視線と銃を向けた。
「まあ無駄話はここまでにして、本題の取引に入ろうか」
「取引? 残念ですがここにお金はありませんよ」
「ならお前の特技はなんだ、守護神<<ゴールキーパー>>」
恐怖で引き攣っていた初春の表情がその一言でぴたりと止まる。
今まであらゆる腕の立つハッカー達を撃退させた凄腕のハッキング技術。
目の前の彼らはそれを一体どんな犯罪に使わせるつもりなのだろうか。
「データ上の金に興味はない、どうせ細工されんのがオチだからな」
「……だったら何をしろっていうんですか?」
「簡単な事さ、学園都市中の監視カメラにアクセスしてその映像を見せてほしい」
「一体何の目的で? こんなことして逃げられると思って―――」
パン、と豆を炒るような乾いた銃声が初春の言葉を鳴り響く。
だが、風紀委員の面々には致命傷どころか傷一つついていない。
やがて、命を失った肉体が一本の枯れ木のようにたわいなく倒れる。
―――拳銃を持った男の一人が頭から血を吹き出しながら
「いいからさっさとやれ、時間がねえんだよ」
「テメェ! 何フザけた事してんだよ!!」
突然すぎる作業服の男の凶行に彼の左右にいた男達は激昂し、銃口を同時に彼に向けるが
引き金が引かれる直前、作業服の男は一切動じず自身の拳銃を思いっきり真上へ放り投げると
右にいた男の拳銃を持った手首を裏拳で打ち、左にいた男の拳銃を持った手を掴み下に向ける。
パンパン! と重なり合うように二つの銃声が連続して鳴り響き
放たれた二つの銃弾は男の作業服を掠めるように彼の体を通り過ぎ
右にいた男の肩と左にいた男の右足を肉が裂ける音と共に貫いた。
「早くしろ、それとも無能力者の命に価値はないってか?」
「うわぁぁぁあああああああああ!!!」
肩を撃たれた男が恐怖に耐えきれず絶叫しながら逃げようとするが
パン、と作業服の男は振り返りすらせずに彼を容赦なく撃ち殺した。
そして、作業服の男は一言も発しないまま銃口を
血まみれの足を抑えて蹲っている男に向ける。
「ま、待ってくれ……頼む。まだ死にたくない、助けてくれ……」
「どうせくだらない人生だろ? いっぺん死んでやり直してこい」
ぐぐっ、と作業服の男は引き金に掛ける指に力を込めていく。
このまま何もしなければ目の前の男は撃ち殺されてしまう。
犯罪者といえども風紀委員としての使命感がそれを許さない。
それを防ぐための手段、それもまた風紀委員の指名に反するものだ。
相反する二つの葛藤、だが悩んでいるだけの時間は彼女には無かった。
「待ってください!」
「あ?」
初春はそう叫んで今この瞬間にも男を殺そうとする作業服の男の行動を制すると
パソコンを一通り操作し、やがて複数のモニタに街中の映像を映し出していく。
「……学園都市中の監視カメラの映像です、ご希望なら学区を絞ることも」
「さすがだな、別にこのままでいい。自分だけ楽する気はないさ」
そう言って作業服の男は次々と表示される監視カメラの映像を目で追っていく。
そして一〇分後、男は何かを目に焼き付けるかのようにゆっくりと目を閉じた。
「よし、欲しいものは手に入った。その男は煮るなり焼くなり好きにしろ」
作業服の男はそう一方的に告げると、少女たちと男に背を向けて歩こうとする。
誰もが早く過ぎ去る事を祈ってる中、ただ一人男の背中をにらみつける少女がいた。
(今ですの!)
その少女―――白井黒子は作業服の男が歩き出すより先に
太もものホルダーに仕込んだ金属矢に空間移動を実行。
狙いは男の右肩、金属矢が撃ち込まれた激痛で体制を崩したところで
男の拳銃を奪い取り、そのまま捻じ伏せて確保する―――はずだった。
しかし、作業服の男はまるで彼女の攻撃を事前に知っていたかのように
上半身を軽く反らしてあっさりと躱し、空間移動された金属矢を掴む。
瞬間、白井は今まで経験したことない悪寒が体を駆け巡るのを感じた。
自分が取り返しのつかない事をしてしまった罪悪感が象徴化されたように
「や、やめ……」
「肝に銘じろつったろクソボケ」
刹那、作業服の男はズブリ! と金属矢を足を押さえている男の後頭部に突き刺す。
痛みと恐怖に涙を流していた男から表情が一瞬の内に取り払われ同時に体が動きを止める。
そして、後悔にも似た表情を浮かべている白井に向けて死体を蹴り飛ばすと
作業服の男は何事もなかったかのようにその場から立ち去っていく。
それを止められる者はもうその場には誰もいなかった。
今回はここまで
次回も若干遅めになると思います
どうも、>>1です
今回も短いですが投下していきます
九月一九日 午前八時〇〇分 風紀委員一七七支部
仮面の男達の襲撃の三〇分後、初春飾利と白井黒子の二人は
事件の当事者として警備員と共に現場検証に当たっていた。
そんな中、犯人がボストンバックの中に積み込まれた精密機械のような
機材の解析をしていた初春が不意に手を止めてゆっくりと顔を上げた。
「どうやらログを使われたようですね」
「ログ? 記録のことですの?」
「はい、通常あの手のセキュルティには外部犯だけでなく内部犯の危険を考慮して
『いつ誰に解除されたのか』という記録が詳細に残るようになっているんですけど
犯人達はそれを逆手にとり、ログに残っている認証情報を扉に認識させたようです」
なるほど、と白井は冷めた感心を持ちながら机の上に並べられた遺留品に目を向ける。
ビニール袋に包まれて並べられているのは拳銃やナイフといった物騒なものばかり
白井はそんな武器などには一切目もくれず、ある物を静かに睨み付けていた。
彼女の視線の先にあるのは、ちりゴミのようにくしゃくしゃに丸められた三枚の一万円札。
ビニール袋のタグを見ればどのお札も死んだ三人の男のポケットに入っていたものらしい。
恐らく風紀委員支部襲撃を決行する前に作業服の男から前払い金として貰ったものだろう。
「ふざけてますの……人の命を一体何だと思って……」
作業服の男にとって、彼らの命はそれだけの価値しかないのだろうか。
見れば見るほど、考えれば考えるほど、底知れぬ怒りが湧き上がる。
道端の雑草を引き抜くように仲間を次々に殺した作業服の男に
そんな人間が今も平然とした顔で街を悠々と歩いていることに
目の前で起きたその凶行を見殺しにしたばかりか加担した自分に
「あの男を捕まえましょう、白井さん」
そんな白井の気持ちを察したのか初春は宣言するようにそう言う。
その眼は普段からは考えられないほど、鋭く真剣そのものだった。
「それだけが今の私たちに出来ることですから」
「もちろんですの、その為に私たち風紀委員がいるのですから」
はい! と初春は力強く頷きながら慣れた手つきでパソコンを一通り操作すると
作業服の男に見せた監視カメラの映像と同じ映像を寸分たがわず表示させた。
「犯人は恐らく学園都市中の監視カメラを使って何かを探そうとしていました。
それさえ分かれば、次に彼がどこで何をしようとしてるのか分かるはずです」
「しかし、一体どうやって犯人が捜していた何かを突き止めますの?
あの男が馬鹿正直に見つけた瞬間に引き上げたとは思えませんの」
「ええ、だからこっそりパソコンのカメラも起動して犯人の目の動きを見ました。
犯人は本当に何かを見つけた瞬間、きっと何かしらの形で目に現われるはずです」
そう話しながら初春はキーボードをまるで壊すかのような勢いで目もむけずに叩くと
もう一方のモニタに作業服の男の目の映像を映し出し、監視カメラの映像と連動させる。
そして約七分後、初春は二つの映像を同時に止め口を開いた。
「ここです、この瞬間犯人の目が一瞬だけですが大きく見開いています。
そして、視線の向きから考えるに恐らくこの人が標的だと思われます」
そう言って初春が指差したのは作業服を着崩した金髪の女の後姿だった。
―――
――
―
同時刻
(………あら?)
脇に白い布で覆われた看板を抱えた作業服を着崩している金髪の女はふと足を止めた。
彼女が今歩いているのは人のいない小道だったのだが、路地裏から人の声が聞こえたからだ。
それも赤ん坊の泣き声、何かを訴えるかのような声は止む気配もなく響き続ける。
(何故、こんなところで……まさか置き去り!?)
そう思った金髪の女は急いで路地裏に入り込み音源へと辿り着く。
しかし、そこに赤ん坊などおらず小型の音楽プレイヤーがあるのみ。
金髪の女が怪訝そうな顔をしながら、何気なくそれを拾おうと腰を屈めた瞬間
彼女の背後に音もなく現れた作業服の男が彼女の頭に向けて消音銃の引き金を引いた。
「これで終わりか、相変わらずあっけねえな」
地面に倒れる女を見て、作業服の男はつまらなさそうにそう呟くが
その瞬間、女の体がホログラムのように消えていき一枚の紙切れと化す。
単語帳の一ページ程のその紙には黄色い文字で『Soil Symbol』と書かれている。
男は呆然とそれを見ていたが、何かに気付いたかのように消音銃を背後に向けた。
だが、引き金を引く前に背後にいた何者かが彼の手首に蹴りを入れ
消音銃は男の背後を転がっていき、室外機の下へと滑り込んだ。
「いきなりバックで発射なんて女性に対して失礼だと思わないのかしら?」
そこにいたのは、頭を撃たれたはずの作業着を着崩した金髪の女。
だが、先程とは違いその手には単語帳のようなものが握られている。
作業服の男は慌てて懐からコンバットナイフを引き抜き金髪の女に肉薄するが
同時に金髪の女は単語帳の一ページを口に咥え紙を千切る形でリングから切り離す。
その瞬間、勝負はあっさりとついた。
非常に短いですが、今回の投下はここまで
次回の投下はもっと増やしたいと思う所存です。
区切りがよくなったら短くても投下しますけどね
それでは、また
どうも、>>1です
投下ですの
九月一九日 午後一〇時三九分 とある高校
(さて、ついに初戦か……なんか緊張するな)
長きに亘る開会式を終えて第一種目の会場である自身の高校に
足を踏み入れた上条当麻はそんなことを考えながら校門を潜る。
小学校から学園都市にいるのだから毎年参加していなくてはおかしいのだが
彼はとある事情から記憶喪失に陥っている為、今回が初めてのようなものだ。
持ち前の説得力で土御門舞花から半額で譲ってもらった和風弁当を
インデックスに押し付けると、選手用入口から控室に向かっていく。
まるで入学する時のような期待と不安を胸に抱えながら
しかし―――
「うっだー……、働きたくないでござるー……」
彼のクラスメイトの一人、青髪ピアスのその一言がそんな気持ちを雲散させる。
急いで辺りを見渡せば、他のクラスメイトも大体同じような状態に陥っていた。
(そ、そそそんな馬鹿な。こ、このクラスなら絶対気合入ってると思ったのに……)
ちーん、と仏壇でなるような虚しい音が真っ白になっている上条の心に響き渡る。
そして、今朝の出来事が彼の脳内で走馬灯のように鮮やかに再生されていく。
―――
――
-
美琴「ねえねえ、結局あんたって赤組と白組のどっちなの?」
上条「あん? 赤だけど。それがどうかしたのか?」
美琴「そ、そう。私も赤組なのよ」
上条「おお、そっかー。じゃあお互いに頑張ろうなー」
美琴「じゃ、じゃあ赤組で合同の競技とかあったら一緒に―――」
上条「なーんちゃってね! 実は白でしたーっ!!」
美琴「……」イラッ
上条「なははははーっ! この清く正しく美しき純白のはちまきが目に入らぬかー!
合同? なにそれおいしいの? そんなふざけた幻想なんて一捻りだバーカ!!」
美琴「野郎、ぶっ殺してやらぁぁぁあああああああああああああ!!!」
上条「上等! もし負けたら罰ゲームとして何でも言うこと聞いてやるよ」
美琴「うん? 今何でも言うこと聞くって言ったわね? ようし乗ったわ!!」
上条「はっは、それでこそ常盤台のエース! だが条件はテメェも同じだからな!!」
美琴「なっ、あんた私に一体何をやらせ……」
上条「あらー? さっそく揺らいじゃったな御坂さーん。ねえねえ今どんな気持ち?」
美琴「……良いわよ。やってわるわよ、後で泣いても容赦しないわよ!!」
上条「そっかそっか、でもそのセリフで負けフラグ成立だな、うはははー」
―
――
―――
「テメェ等死ぬ気でやれぇぇええええ! じゃねえと俺がここでぶっ殺すぞ!!」
「まあまあ落ち着くにゃー。別に負けたって超電磁砲の雨が降るわけじゃあるまいし」
そう言ったのは土御門元春、科学にも魔術にも精通する多角スパイの一面を持つ少年だ。
そのせいか彼のその言葉で今朝の出来事もどこかで見られているような錯覚を覚えてしまう。
「落ち着いて。どんなに派手なものだとしても。学校の競技なんて。所詮そんなもの。
だから。結果のみにこだわるより。過程に重きを置いたほうが。より楽しめるはず」
「所詮とか言うんじゃありません! でもクラスに溶け込めてるようで何よりだ姫神!」
姫神と呼ばれたのは、上条から少し離れた場所に立っている色白で長い黒髪の少女。
吸血殺しという希少価値の高い能力を持っているが、自身で制御することができないため
その力を封印する為に体操服の胸の中に隠すようにイギリス清教の十字架を提げている。
「だ、だが、あの開会式の後なら相手だって疲れているはず!」
「公立とは一線を画した私立のエリートスポーツ校だとしてもかにゃー?」
「お、終わった……俺の人生、大覇星祭と共に終わった……」
どさっ、と全ての希望を失った上条が糸が切れた操り人形のように地面に倒れた。
何も考えられないはずなのに、罰ゲームによる地獄絵図だけは簡単に想像できる。
「……な、何なの? この無気力感は!」
と、そこへ運営委員のパーカーを羽織ったクラスの女子生徒の一人が遅れて到着した。
彼女の名は吹寄制理、日本人女性にしては背が高くスタイルのいい少女だ。
「ハッ! 上条当麻、また貴様が無暗にだらけるから皆にまでそれが伝染したのか!?」
「問答無用で俺のせい!? いやいやいや俺が来たときは既にこうなっていて……」
「なるほど、つまり貴様が遅刻したせいでみんなのやる気がなくなったと」
「是が非でも俺のせいにするつもりか!? 頼むからもう放っておいてくれよ!
上条さんは刻一刻と確実に迫りくる不幸を前にもうなす術がない状態なんです!!」
「何が不幸よ! どうせ軽はずみな行動が招いた自業自得でしょ!」
「ああ痛い痛い! 耳が超痛い!!」
何故か痛いところを的確に指摘してくる吹寄の説教はその後もしばらく続き
身も心も崩壊寸前の上条は燃え尽きたかのように力なく体育館の壁に寄り掛かる。
すると、体育館の陰で言い争っているのか男女の話し声が聞こえてきた。
上条は怪訝そうな顔をしながら体育館の端から首を出して様子を窺ってみる。
そこにいる二人のうち一人は上条のクラスの担任である月詠小萌で
彼女と向き合ってるのはスーツをしっかりと着込んだ知らない男性だった。
こんな日当たりの悪い体育館裏で何を言い争っているのだろうか、と上条は耳を澄ませる。
当の二人は聞き耳を立てている上条の存在に全く気付かないまま言い争いを続けていく。
そして、上条は内容を少し聞いただけで嘲る男に小萌が食い下がっている構図だとすぐに気付いた
「ですから! ウチの設備や授業内容に不備があることは認めるのです!
でも、それは私達のせいであって生徒さん達は何も悪くないんですーっ!」
「設備の不備はお宅の生徒の質を鑑みる限り、妥当だと私は思いますがねえ?
あなた方の学校は才能がないクズを収容する為のスケープゴートなんですから。
私としても感謝してもしきれません。失敗作の処理なんかを引き受けてくれて」
「生徒さんには成功も失敗もないんですーっ! あるのはそれぞれの個性だけなのですよ!
みんなだって結果を出そうと一生懸命頑張ってるのに……それをクズだなんてーっ!!」
「おっと失礼、それは申し訳なかった。しかし、是非とも現実に目を向けてみてください。
私の育成したエリートクラスに勝てますかねえ? クズみたいな落ちこぼれ達の集まりが」
それでは競技の後でお会いしましょう、と下劣な笑みを浮かべながら男は立ち去っていく。
対戦相手の学校の教師だったのか、と彼らのやり取りを見ていた上条は大雑把な感想を抱いた。
無能力者である上条としては男性教師の言葉は取るに足らないものだったのだが
「……違いますよね」
そう思っていた矢先、子萌先生がぽつりとそう呟いた。
誰に聞かせるでもなく、何かをこらえるように空を見上げ
「みんなは、落ちこぼれじゃなんかありませんよね……?」
身長一三五センチしかない小さな体を寒さに耐えるように震わせながら
応援用のものと思われるチアリーダーの衣装にそぐわない悲しげな表情で
今の罵倒は、生徒ではなく自分に向けられたものだと告げるように
「さてと―――」
上条は顔を引き戻し、深呼吸しながらクラスメイト達のほうへと向き直った。
そこには既に疲れ切った素振りをする者はおらず、ただ全員が無言で立っている。
「―――行くぞ」
その簡潔な一言とともに全員は野次の一つもなく競技場へと入っていく。
やるべき事は見えている、かける言葉などそれだけで充分だった。
―――
――
―
九月一九日 午前一〇時四五分 学生用応援席
「お腹減った……」
修道服を着た銀髪碧眼の少女は箸をグーで握りしめたままそう呟いた。
うつぶせに倒れた彼女の目の前には空っぽになった弁当箱が虚しく置いてある。
上条から貰ったものなのだが、彼女の空腹を満たすには至らなかったようだ。
「今ここで弁当食ったばっかじゃないのアンタ!?」
と、いつの間にか隣に座っていた茶髪の少女が反射的にそう叫ぶ。
うん? と叫び声に反応したインデックスがゆっくりと顔を上げると
少女からスポーツドリンク飲料を差し出されたので、それを一気に飲み込んだ。
「あ、ありがとごきゅ! ……飲み物でお腹を満たすのはちょっと荒業かも……」
「アンタ、本当にお腹が空いていただけなのね……」
熱中症だと思っていたのか茶髪の少女は呆れたように溜息をつく。
するとインデックスの腹と地面の隙間から飼い猫であるスフィンクスが出てきて
『なんか変な感じがするぞ?』と言いたげに周りをキョロキョロと見渡し始めた。
一体どうしたのだろう? とインデックスが疑問に思う間もなく茶髪の少女が口を開いた。
「ねえアンタ、今日アイツと会った? 何か変わった様子は?」
「ん? アイツって、とうまの事? 別にいつも通りなんだよ」
インデックスは特に変なことをいったつもりはなかったのだが
茶髪の少女は突然ブンブンブン! と首を激しく左右に振り始める。
何がしたいんだろう? と思いながらもインデックスは追及しなかった。
「お腹減った……」
「結局そこに戻るんかい」
校内放送をつかったアナウンスで第一種目の選手入場の合図がかかるが
絶望感を伴った空腹に襲われているインデックスにそれを聞く余裕はない。
その姿を可哀想だと思ったのだが、茶髪の少女がクッキーを差し出してくれたので
一気に平らげず小さな口をゆっくりと動かしながらハムスターのように食べ始める。
空腹が少し紛れ余裕ができたインデックスはふと校庭へと向けた。
そこでは上条達の対戦相手なのか上条のとは違った体操服をきた集団が
専門的な匂いを感じさせる柔軟体操をしながら余裕の笑みを浮かべている。
とうま達勝てるかなー、と思いながら上条達のほうに視線を向けた瞬間
本物の戦士たちの姿をインデックスは目撃することと相成った。
(こ、これは……)
その一団は野次一つ起こさず、圧倒的な威圧感を放ったまま横一列に並んでいる。
まるで全員が全員、辞世の句を書き上げた後のような表情で対戦相手を睨む。
(きたぁぁぁあああああああああ! これが噂のジャパニーズいくさ!!
まさかこんなところで見られるなんて夢にも思わなかったんだよ!!)
インデックスのテンションが盛り上がりを見せる中、試合開始の合図が告げられ
上条達の殺気に思わず余裕の笑みをひきつらせる敵軍の元に彼らは一斉に襲い掛かる。
同時刻 とある路地裏
「すいません、少し、よろしいでしょうか?」
作業服を着崩した金髪の女はその一言で歩みを止め、後ろを振り返る。
そこには黒を基調とした正規装備に身を固めた女性の警備員が立っていた。
「何か?」
「この辺りに、産業スパイが、潜んでいます。失礼ですが、許可証を、見せて貰っても?」
「……ええ、構いませんよ」
一言一言を丁寧に区切る特徴的な口調の警備員の声に彼女はそう返しながら
片手に掲げらた白い布で覆われている看板のようなものを壁に立てかけ
今にも脱げそうズボンのポケットから単語帳のような物を取り出した。
「……その、単語帳は?」
「あら、ごめんなさい。間違えちゃったわ」
金髪の女はおどけたようにそう言ってもう一方のポケットに手を入れ
女性警備員の足元に落ちている何かを見ながら話しかける。
「一つ聞いてもいいかしら?」
「何を、ですか?」
「どうして、あなたは手錠持ってないのかしら?」
金髪の女が見ていたのは偶然落ちていた窓ガラスの破片。
それを見て女性警備員の背後にある装備を確認したのだ。
そして、彼女たちはお互いを探るように静かに睨み合いあることを考えていた。
金髪の女は、どうして産業スパイを追っている警備員が手錠が持っていないのかと
女性警備員は、どうして金髪の女が自分が手錠を持っていない事を知ったのかと
沈黙は一瞬、それだけの時間で彼女たちは互いを敵だという結論を導き出す。
先に動いたのは金髪の女、彼女は単語帳の一ページを口に咥え引き抜いた。
しかし、その瞬間、彼女の頬に女性警備員が容赦なく回し蹴りを叩き込んだ。
あまりの威力に耐え切れず金髪の女は厚紙を吐き出しながら後ろに吹き飛ばされるが
転がり終えるより前に彼女の体が小型の竜巻に吹き上げられ一気に屋上へと辿り着いた。
(角度をずらされちゃったから、思ったのとは違うものが出ちゃったわ……。
一応逃げ切れたけど荷物も相手に渡っちゃったし、これからどうしようかしら)
そう思いながら金髪の女が屋上を歩き出した瞬間、ドンガン! という轟音の後に
タン、と屋上にそれらとは一線を画した何者かが降り立つ着地音が小さく鳴り響く。
金髪の女が勢いよく振り返ると、そこには先程の女性警備員が立っていた。
彼女は超能力を使ったわけでも、ましてや魔術を使ってわけでもない。
室外機などを足場にしてまるで階段を上がるように屋上に登ったのだ。
「素敵ね、お姉さんはそういう強さが大好きよ……っ!?」
彼女が軽口を叩いた瞬間、警備員は走り出し一瞬にして金髪の女との間合いを詰め
彼女の頭に向かって全長六〇センチ程の大きさの警棒を何の躊躇いもなく振り落とす。
金髪の女が間一髪で拍手をするように両手で警棒を防ぐが
警備員はその隙を見逃さず、彼女の腹に鋭い蹴りを叩き込んだ。
スパン、と金髪の女の体が飛ばされると同時に警棒の表面が抜け
太陽の光を反射し銀色に美しく輝く鋭い日本刀が姿を現した。
そして、警備員は金髪の女が起き上がるのを待たずに破竹の勢いで彼女に肉薄する。
慌てて立ち上がった金髪の女はそれを逆手に取り警備員に足をかけて転ばせようとするが
ダン! と警備員その場で跳躍し足かけを躱すとそのまま金髪の女の胸に飛び膝蹴りを叩き込む。
ふらふらと千鳥足で後退した金髪の女は屋上の縁へと追い詰められフェンスに背中を合わせる。
だが、彼女はそれを逆手に取りフェンスで体制を整えると単語帳のページを噛み千切る。
しかし、ザン!!! と宙に浮いた単語帳の一ページを警備員は難なく切り裂いた。
さらに、一歩踏み込み日本刀を真上に振り上げ彼女の脳天めがけて一気に振り落とす。
「さすがね―――」
迫りくる鋭利な刃を前に金髪の女は薄ら笑いを浮かべていた。
皮肉や嘲りでもなく小さな、そして強がりや諦めでもない笑みを
「―――でも、もう二枚目は見えなかったようね」
瞬間、ゴン!! という爆発音と共に警備員の体が吹き飛ばされ元いた路地裏に落ちていく。
金髪の女が追い詰められた時、彼女が引きちぎった厚紙は一枚ではなく二枚だったのだ。
そして、それに気づかなかった警備員はまんまと二枚目を踏んでしまったというわけである。
「人間の注意力って、ほんと致命的なものね」
やがて、空高く舞い上がった日本刀が落下し戦いの終わりを告げるような金属音を鳴らす。
それを見た金髪の女は満足げな表情を浮かべながら、その場から立ち去った。
今回の投下はここまで
人間って頑張れば割と何でも出来そうな気がします、たぶん
それでは、また
どうも、>>1です
こんなにも間が空いてるのに
投下量が少なくなってますが投下
午前一一時半 とある競技場外
「魔術師が侵入した」
土御門から放たれた感情の込められていない無機質な言葉。
その一言は紆余曲折あってインデックスに噛みつかれかけたり
突然現れた美琴に拉致られたりと様々な不幸に見舞われつつも
大覇星祭を楽しんでいた上条の意識を一瞬で狂わせた。
「今の学園都市は一般来場客を招く為に警備を甘くしているだろう?」
その隙をついたのさ、と土御門の言葉にそう付け加えたのはステイル=マグヌス。
イギリス清教の対魔術師組織、必要悪の教会に所属している魔術師だ。
「でも、一体何の為に? まさかインデックスを狙って!?」
「結論を急ぐな、上条当麻。今回の敵の狙いは彼女ではない。
向こうとしても、むやみにリスクを増やす真似はしないはずだ」
「? どういう意味だ?」
「そっちは後で答えるとして、まずは主題から話を進めていこうぜ。
あ、ステイルは魔術的な痕跡が残されてないか調べてくれにゃー」
土御門はそう言ってステイルを送り出すと、現在の状況を話し始めた。
侵入したのは二人の魔術師、リトヴィア=ロレンツェッティとオリアナ=トムソン。
彼女たちは魔術サイドと科学サイドの双方から干渉を受けにくい学園都市において
リトヴィアの所属しているローマ正教に伝わる霊装の取引を行おうとしている。
その名は『刺突杭剣<<スタブソード>>』
神の子の処刑と刺殺の宗教的意味を抽出し極限まで強化した霊装だ。
普通の人間には何の効果もないが、神の子に非常によく似た性質をもつ人間
つまり、神の子の力を受け継いだ聖人を刃先を向けただけで殺す効果を持つ。
魔術サイドにおいて核兵器に等しい存在である聖人の死は争いの引き金となり、
様々な思惑が交錯した結果、世界を巻き込む戦争が起きる可能性が高い。
必要悪の教会としては、この事態を見過ごすわけにいかないのだが
学園都市という科学サイドの総本山に大量の人員を割いてしまえば
何を考えているか分からない他の組織も便乗して要請を出してくる。
これを断る事自体は科学サイドの長である学園都市にとっては簡単なのだが
そうすれば、他の大きな魔術組織に揚げ足をとる形で言いがかりをつけられてしまう。
その上にそうした連中がインデックスの周辺に魔力のレーダーと張っている。
今まで上条の周りで数多くの魔術的事件が起きたが、彼の名は知られていない。
よって、魔術師達は上条ではなく彼の近くにいて尚且つ魔術界で名の知れている人物
すなわちインデックスの周りで事件が起きていると認識してしまっているのだ。
彼女から離れた場所での魔術戦なら見逃される可能性が高いが
逆に彼女を事件の核心近くに招けば一気に踏み込まれてしまう。
そうした事態を防ぐべく上条当麻の知り合いである魔術師だけを送り込み
彼を訪ねたことにして水面下で事態を収拾しようという訳である。
「それと、面倒な事に今回この件に関して動くのは俺達だけじゃない」
「え? おいおい、さっき言った事と矛盾してんじゃねえか。
俺はお前ら以外に知り合いの魔術師なんていないっての」
「ほら、いるだろ? ねーちんを殺そうものならマジギレしそうな奴が」
そこまで言われて上条はようやく思い出す。
―――朝から連絡が一向につかない友人のことを
「まさか一方通行が? でもあいつは科学サイドになっちゃんじゃないか?」
「ところがどっこい、最近あのもやしはイギリス清教に戻ってきたんだにゃー」
戻ってきた? としばらく土御門の言葉を訝しむ上条だったが
やがて何かを思い出したかのようにハッと目を見開いた。
「そう、死神部隊だ。一方通行を含めて計五人、どいつも腕が立つ奴ばかりだ」
「? でもだったら、味方が増えるって事だろ? いい事なんじゃないのか?」
「おいおい上やん、『法の書』争奪戦の最後の惨劇をもう忘れたのかにゃー」
そこまで言われて上条は何かを恐れるかのように息を詰まらせる。
頭全体をゴーグルで覆った少年の事を鮮明に思い出しながら
「気を付けろ上やん、奴らは今までお前が倒してきた悪党とは根本的に違うんだよ。
戦闘能力が高いのは勿論、他人や自分の命を目的達成の駒としかみていない奴もいる。
現に奴らの一人がオリアナを探る為に風紀委員の支部を襲撃して三人を殺している」
「は? 何で風紀委員なんかに? しかも三人も殺した? まさか一方通行が!?」
「落ち着け上やん、奴が関係のない一般人に手を出すわけはないだろ」
土御門は作り笑いを浮かべながらそう言って上条を宥めると
今日の朝に風紀委員一七七支部で起きた事件の概要を全て話した。
「仲間を殺したのは風紀委員に手を出すと相手が強情になると考えたんだろう。
しかし、何もしなければ風紀委員としての正義感に揺さぶりを掛けることは出来ない。
だから自分の仲間を殺して、彼女達の怒りではなく情に訴えかけようとしたんだ。
顔を見られないようにと覆面をしていた事もその手助けとなったに違いない」
何だそれは、と上条は呆れにも似た怒りを覚えながらもそう呟いた。
計算され緻密に練られた、まるで人の良心を弄ぶかのような残虐な手口。
そんな卑劣な行為が許されていいのか、と上条は拳を静かに握りしめる。
その様子を見て、純粋で小さな笑みを浮かべながら土御門は言う。
「スキルアウトが死んだのは問題じゃないが、そこから足がついてしまった。
奴の目的を知った彼女たちはオリアナを守るか奴を逮捕しようとするだろう。
ま、それはこっちが何とかしておくから上やんはこれを見てくれにゃー」
土御門は真面目な口調から一転していきなりふざけた口調に変えると
体操着のポケットから四枚の顔写真を取り出すと上条に手渡した。
「? 何だこれ?」
「一方通行以外で今の時点でオリアナの首を狙っている死神部隊のメンバーだ。
いいかよく聞け。 こいつらには絶対に関わるな、見かけたらすぐに逃げろ」
「な!? 風紀委員を襲撃するような奴を放っておけって言うのかよ!」
「異能の力無しで魔術師と渡り合えるような奴らだ、幻想殺しは通じない。
それでいて倫理観が決定的に欠如しているから、理屈も成り立たない。
気持ちは分かるが俺たちは神じゃない、出来ないことだってあるんだ」
その言葉に上条は何かを言い返そうとしたが何も言えずうなだれてしまう。
そんな上条を励ますかのように土御門は彼の肩にぽんと軽く手を置いた。
「っつーわけで、俺はこれから学園都市のセキュルティをチェックしてくるから。
そっちは上やんはそれまでインデックスと定期的にあって誤魔化すぜよ。
やばくなったら、お菓子を事件の核心とは違う方向に投げるにゃーっ!」
「お前……、インデックスに聞かれたら命無えな」
バシバシと肩を叩いて立ち去る土御門に上条は苦笑いしながら歩き出す。
土御門はその後姿を首だけを振り返せると口の中で小さくつぶやいた。
「……悪いな、上やん」
―――
――
―
同時刻 とあるファミレスの厨房
一五分前に路地裏で目を覚ました山手はそこに移動していた。
電子キーを銃弾で破壊してまで侵入した理由はただ一つ。
(最近の冷凍食品ってクオリティ上がったよな……)
空腹を満たすためだ。
魔術攻撃により昏倒させられていたせいか腹が減ってしまい
あまりの空腹に耐えきれなかった為、出稼ぎ中の店に侵入し
冷蔵庫にあった食料を勝手に調理して食べることにしたのである。
一セット分の料理を食べた彼は満足したのか箸を置くと
これからの行動指針を頭の中で素早く組み立てていく。
(守護神がどうやって監視カメラの映像を引き出したのかは覚えている。
後はパソコンさえあれば……確かこのファミレス監視カメラあったよな)
よし、と明確な目的を設定した彼は事務室へ向かおうとしたが
ガチャ、と彼が先ほど侵入に使った扉が開かれる音が響いた。
山手は首だけその方向に動かすと嘲るように小さく笑いながら全身を振り返らせる。
視線の方向には常盤台中学の制服に風紀委員の腕章をつけた少女が立っていた。
「おいおい、こんなとこに何の用だ?」
「風紀委員の白井黒子と申しますの。あなたを逮捕します。
殺人、盗難、器物破損、不法侵入、公務執行妨害の罪で」
「おー怖い怖い」
威圧するような白井の言葉に山手はわざと怯えるように肩を竦めながら
不自然さを感じさせない動作で作業服の内側から拳銃を引き抜き笑う。
「今なら見なかった事にしてやるけど、どうする?」
バン! と返答の代わりに白井は扉を壊すような勢いで思いっきり閉めた。
その轟音はまるで白井の怒りを伝えるように山手の鼓膜を揺るがしていく。
山手は聞き分けのない子供に呆れるかのように深いため息をつき
刹那、抜刀術のように拳銃を素早く白井に向けると同時に引き金を引いた。
今回の投下はここまで
借り物競争の下りは書いたらグッタリが酷くなったのですっ飛ばしました
こんな感じで要所要所をすっ飛ばす事がありますがご容赦を、今さらですが
それでは、また
どうも、>>1です
今回も短いですが投下です
午後一一時三五分 とあるファミレスの厨房
パン、と山手の持つ拳銃が勢いよく火を噴きだし
放たれた銃弾は白井の体目掛けて一直線に突き進む。
しかし、銃弾は彼女に当たることなくその先の食器棚に被弾した。
彼が撃ち外したわけではない、立っていたはずの彼女が突然消えたのだ。
「だから、その手は効かねえって!」
食器棚のガラスが割れるのと同時に山手はくるりと反対側を振り返る。
そこには、空間転移を終え背を向けて自身に立っている白井がいた。
互いの距離は非常に近く、男が手を伸ばせば届きそうなぐらいのものでしかない。
山手は多少の疑問を抱いたが躊躇わずに拳銃を背中に押し付け引き金を引く。
しかし、その直前、ぐるり! と白井はその場で一回転し銃口を逸らした。
バキン、と銃弾が調理台の上に置いてあった食器を粉々に砕く音が響くのと同時に
彼女は山手の拳銃を持っている腕の手首をつかみ、空間転移を実行しようとする。
しかし、空間転移の演算を終えたのにも拘わらず彼の体は虚空へと消えていかない。
白井は一瞬パニックに陥りかけたが、山手が行動を起こす前に冷静さを取り戻し
山手の手首を掴んでいるほうとは別の手で拳銃を握っている拳にそっと添え
ガッ! と押さえつけるように圧力を加え持ち方を一気に崩し拳銃を振り落す。
そして、拳銃を振り落した手で作業服の襟を掴み上げ背負い投げを掛けようとしたが
それを山手が黙って見過ごすはずがなく、彼は白井のように彼女の袖と襟を掴んだ。
「大した腕だ、だが俺と戦うのは辞めたほうがいいな」
「はっ、拳銃を失って弱腰になっているんですの? この汚らわしい悪党が!
あれだけの人間を私の目の前で殺しといて、逃げ切れると思いますの!?」
「うるせぇな、別にいいだろ。人間つっても金に換算する価値すらないクズどもだ。
はっきり言って死んで当然の奴らなんだよ、悲しむ人間なんてどこにもいない」
山手の表情に後悔や反省の色どころか狼狽や動揺すらない。
白井の言葉をつまらない冗談を聞くのように薄ら笑いを浮かべている。
「ふざけるなですの……」
瞬間、彼女の中で怒りが嵐のように渦巻き、ぷつりと何かが音を立ててキレた。
ぐぐっ、と山手の作業服をつかむ細い手に万力のような力が込められていく。
中学生とは思えない憎しみに歪んだ顔から、歯ぎしりの音が辺り一帯に鳴り響いた。
「人の、命を―――」
狂いそうになる程の負の感情を抱えた心を押さえつけ
頭の中で演算式を何度も失敗しながら必死に組み立てる。
「―――笑うなぁぁぁああああああああああああああ!!!」
刹那、男が掴んでいた部分の袖と襟に空間転移を実行し空中に飛ばし
掴む物が何も無くなった山手に背を向けるようにして懐に一気に潜り込むと
ガッ! と山手の足首に素早く足払いをかけ容赦なく床にたたきつける。
しかし、山手はかろうじて受け身をとり致命傷だけは避けると
床に寝たまま足を思いっきり振り上げ白井の腰に叩き込んだ。
そして、衝撃に耐えきれず白井が思わず数歩動いた隙に
山手は一気に起き上がり、一瞬の間もおかずに体制を整えた。
「良いな、それでこそ治安維持に携わる者のあるべき姿だ」
「……あなたという人間はどこまで人を愚弄すれば気が済みますの!?
人の命の価値を自分の都合で見定めて神にでもなったおつもりですの!?」
「いいや、俺だって馬鹿じゃない。自分が人の事言えた身じゃないってのは理解できる。
でもだからこそ、俺は自分の命を計画に組み込み危険に晒すことが当たり前にできる」
体制を整えた山手はおもむろに駆け出し激昂する白井へと肉薄する。
迅速に反応した白井はすかさず太もものホルダーにしまってある金属矢を
山手の進路上に次々と転移するが、彼はそれら全て躱し白井の元に辿り着いた。
「善人と悪人の違いを教えてやるよ、死んだときに悲しんでくれる人間がいるかいないかだ。
家族は? 友達は? どんな形であれ、心の底から笑う事が出来る場所がお前にはあるだろ?」
語り掛けるように話しながら、山手は拳を握りしめ大振りのフックを放つ。
白井は敢えてそれを躱さずにカウンター気味に正拳突きを彼の鳩尾に放つ。
二人の拳が空中に交わり、そして相手の体めがけて加速していく。
「―――ぶち壊してやろうか?」
「………っ!?」
突然、別人かと思うほどの冷たく透き通る声に白井は思わず体を動きを止めてしまう。
そして、ゴッ!!! と山手の本気の拳が白井の頬に突き刺さり彼女の体がふらふらと揺れる。
「だから、やめとけつったんだ。お前のように善人には失うものがあまりにも多すぎる」
山手はいつもの軽口に戻しながら飛び上がり彼女の耳に回し蹴りを叩き込んだ。
強力な衝撃に三半規管を狂わされた白井はそのまま床に倒れこみ動かなくなった。
その様子をつまらなさそうに見ながら山手は振り落された拳銃を拾い上げる。
「犯人を逮捕するなんて建前で俺が殺したいほど憎いから痛めつけに来たんだろ?
それなのに、くだらない正義観や倫理観なんかに惑わされるからそんな風に犬死だ」
「確かに殺したいほど憎いですわよ、人の命を目の前で弄んだクソ野郎を。
でも、わたくしは風紀委員であり白井黒子ですの。だから私はあなたとは違う。
あなたみたいに人の命を軽く扱うような三下には死んでも成りたくありませんの!」
「やっぱかっこいいなお前……そのまま華やかに散れ」
そう言って山手は床に倒れた白井に拳銃を向け、一呼吸と同時に引き金を引いた。
しかし、またしても銃弾は彼女にあたることはなかった。
今回も彼が外したわけではなく、また彼女が空間移動した訳でもない。
原因は単純、横合いから現れた誰かが山手の腕をつかんでいたからだ。
山手は退廃的な目で、白井は驚愕に満ちた目でその人物を見る。
「テメェか、何の関係もない人たちを傷つけてオリアナを追っているのは」
そこには、体操服を着たツンツン頭の少年―――上条当麻がそこに立っていた。
今回の投下はここまで
新約10巻のインフレが超やべえですの
次回の投下は今回よりかなり空きます
それでは、また
どうも、お久しぶりです、>>1でし
投下
午後一一時四五分 とあるファミレスの厨房
ドス! と上条は山手の鳩尾に固く握りしめた右拳を突き刺し
山手が怯んだ隙をついて拳銃を奪い取り乱雑に抛り棄てる。
武器を奪われた山手は即座に反撃をしようと足を振り上げたが
上条は左腕を盾にするようにして防ぎ、軽く弾き返すと
渾身の力を込めて山手の顔面を容赦なく殴り飛ばした。
ガン! と勢いよく宙を舞った山手は調理台に背中が激突し
死にかけた獣のような呻き声を上げながら地面に崩れ落ちていく。
上条は倒れて動けない白井を見やると山手を鋭く睨み付けた。
「どこまで腐ってんだテメェ! どうして白井を殺そうとした!?」
「上条当麻、か。逆に聞くが、生かして俺に何の得があるんだ?」
激しい怒りを含んだ疑問に返されたのは軽薄な嘲笑と悪趣味な皮肉。
この期に及んで、自分の行いはただの作業に過ぎないと主張するように
ぷつり、と上条は自分の中で何かが音を立てて切れたような気がした。
内臓が震える程の激しい怒りを注ぎ込まれた拳が小刻みに震えだす。
「……上等だ、テメェのふざけた幻想はここでぶち殺す!」
上条は殺気だった歩みで仰向けに倒れている山手に近づくと、彼の体の上に跨り
腰を低く屈めて拳を限界まで振り上げ、山手の顔面目がけて放とうとしたが
それより先に山手は下半身を起こし、両足を交差させるように上条の首を挟んだ。
ぎぎっ、と骨の軋む嫌な音が響き上条の体から徐々に力が抜けていく。
それでも、上条は必死に力を振り絞り山手の両足を両手で抱きしめ
溢れ出る酸素への欲求を耐え忍びながら、後ろへと引き下がる。
その先にあるのは先ほど山手の銃弾によって砕け散った食器棚のガラス片。
靴を履いて歩くならともかく、背中を擦られれば一たまりもないだろう。
そんな上条の狙いにいち早く気付いた山手は素早く足を振りほどき
上条の体が僅かに揺らいだ瞬間に全身を起き上がらせ体制を整えた。
「っ……どう、して?」
呼吸の自由を取り戻したばかりの上条は震える声でそうつぶやく。
白井黒子は何も問題が無ければ、大覇星祭を楽しんでいただろう。
それなのに、どうしてこんな所で人知れず傷つけられてしまうのか。
スキルアウトだって、何か事情や背景があったのかもしれない。
ふとした何かがきっかけで更生できた可能性もあっただろう。
「人の未来を潰して……テメェは何とも思わねえのかよ!?」
「愚問だな、お前は牛や豚に思いを馳せた事はあるのか」
「本当に何も……反省する気は無いんだな?」
「する必要性がどこにある? 死んだ奴は生き返らない」
山手は攻撃的な笑みを浮かべながら上条へと肉薄し鋭い蹴りを放った。
上条は素早く左腕を盾にして、首筋を狙った必殺の一撃を防ぐが
山手は足を滑らせるように動かし上条の腹に蹴りを叩き込んだ。
内臓の奥に突き刺さるような一撃に悶絶する上条を見下ろすと
僅かに笑みを浮かべ友人のような気軽さで上条に話しかける。
「一度しかないたった三万日の人生だ。俺は自分の為に生きる。
そもそも、人は一人で生まれ、一人で生き、一人で死ぬもんだ。
くだらない馴れ合いに縛られて終わる人生なんて俺は絶対に嫌だ」
そう言って腕を広げる男が上条には山のように見えた。
どれだけ足掻こうとも絶対に越えられない壁が感じる。
体が、脳が、『逃げろ』と叫んでいるようにさえ思えた。
「さて、お前にラストチャンスだ。見逃してやるから失せろ」
目の前に立っている男に勝つことは到底出来そうにもない。
だから、二人まとめて死ぬよりは一人でも逃げたほうがいいだろう。
そうしたところで、誰も上条を責めたりはしない。
悪いのは全て目の前の男であり、自分ではないのだから。
一度沸き上がった安全への欲求は風船のように膨らんでいき
怒りが、心が、価値観が、ゆっくりと確実に歪められていく。
そして、上条は心を決めた。
「……そうやって生きてテメェに何が残んだよ」
その口から出た言葉は自分に言い聞かせるように。
そして、怒りに満ちた表情は自分に向けるように。
上条は自らの内から溢れ出る熾烈な感情だけを頼りに
右拳を固く握りしめ涙を堪えるように目を閉じた。
「他人を犠牲にして、自分だけが幸せになる事に一体何の価値があるんだ。
俺は不幸だが、お前みたいに他人に犠牲にしても幸せにはなれない」
やがて上条は眼を開く。その眼は歴戦の戦士のように信念が宿っていた。
その様子にわずかに狼狽する山手を、上条は親の仇を見るように睨み付ける。
「グチャグチャ言ってねえで来いよ三下、俺の幸せを壊そうとするんじゃねえ!」
天に向かって吠えるように放たれた宣戦布告、それが合図となった。
山手は勢いよく駆け出すと体を回転させながら回転蹴りを放つが
上条はそれを屈んで避け、山手の腹を右手と左手で交互に殴り
怯んだところで腰を低く沈め、大ぶりの右ストレートを放つ。
しかし、山手は間一髪で重い一撃を避け上条の右手首を掴むと
左手で上条の右腕を封じ、彼の親指を踏みつぶそうとしたが
それより先に上条が素早く山手の腹に鋭い蹴りを放った。
予想外の反撃に動揺を隠す事が出来ずに数歩後退しながらも
山手は手の形を平にすると上条の喉仏へと一直線に突き出した。
まともに受ければ大の男でも崩れ落ちてしまう会心の一撃。
だが、上条はそれを難無く避けてその手をつかんだ。
「なっ……!?」
「残念だが、その技は友達に一回食らわされてんだよ!」
そして、回り込むように山手の懐に入ると右肘を顔面に叩き込む。
その一撃に体の芯を揺さぶられた山手は苦し紛れに右拳を放つが
上条は首を軽く動かして避けると、山手の顎を右拳で突き上げた。
骨が割れるような嫌な音と同時に山手の体が宙を舞い地面に叩き付けられる。
充分な手応えに勝利を確信した上条は白井の様子を確認しようと背を向けた。
瞬間、チャキ、という聞き覚えのある金属音が小さく鳴り響く。
振り返れば、山手が小型拳銃を両手で握りしめ上条に向けていた。
「クソッ!」
「世の中皮肉さ、真面目に生きるなんて馬鹿のすることだ」
上条は慌てて駆け出すが、それより先に銃声が鳴り響く。
そして、力を奪われた肉体が重力に屈して地面に倒れる。
上条は痛みではなく驚きに満ちた表情で見た。
―――右肩に出来た赤黒い染みを抑える山手を
「ごっ、がァァァああああああああああああああああああああ!!!」
「詰めが甘いですの三下、私を忘れるなんて馬鹿のすることですわね」
撃ったのは山手ではなく地面に倒れていたはずの白井黒子。
その手に握られているのは先ほど上条が振り落した拳銃だった。
突きつけられた銃口を睨むが、山手にはもうそれ以上は出来ない。
やがて観念したかのように調理台に背中を預け項垂れた。
今回の投下はここまで
それでは、また
どうも、>>1です
確か8巻に風紀委員は拳銃の訓練受けるって書いてあったと思うんで
マグナムは使えないにしても一般的な自動拳銃なら使えると思います
そもそも日本で拳銃が普通に手に入ってしまうことがおかしいのですが
投下
「結論から言ってしまえば、あなたはさほど強い人間ではありませんわ。
だから、あなたはそれを補うために言葉で相手の精神を揺さぶってきた。
あなたの術中にまんまと嵌った私は本来の力量もろくに出せずに負け
逆にそれが通じなかった上条さんは難なく勝てたというわけですの」
「背負い投げが痛かっただけだよバーカ」
露骨に舌打ちしながら、白井の考察にそう言い返す山手だったが
深いため息をつきながら上条と白井の方を見やり口を開いた。
「クズ殺す時は絶対に失敗しないのに一般人殺そうとするとこれだ。
やっぱり、この世界を動かしている神ってのは存在するのかね?」
「……この期に及んでまだ、反省する気はないんだな?」
「それが俺の生き方だ、死ぬまで変えるつもりはない」
上条の静かな怒りに満ちた顔にに山手は薄ら笑いを返しながら
拳銃を床に置いて、腕時計を見つめドアの方へと顔を向けた。
「つっても、俺にはもうお前達を殺す事なんて到底不可能だ。
だから、俺よりも殴り合いが得意な連中に任せる事にするよ」
その言葉に上条と白井が顔に困惑の色を浮かべた瞬間
カチャ、という音と同時に複数の足音が雪崩れ込んだ。
不穏な音に説明しようのない悪寒に襲われた上条は
白井を抱きかかえるようにして調理台を盾に身を隠す。
その直後、ドンガン! と銃声がオーケストラのように轟き
パキッガシャッ! と食器棚の皿を次々と破壊していった。
銀色に輝く食器棚の収納に写ったのは四人の男たち。
顔はよく見えないが服装は山手が来ている作業服と同じだ。
何らかの手段で増援を呼んだのだろう、と白井は推測した。
そして、銃声が止むと同時に再び足音がこだました瞬間
白井は勢いよく調理台から乗り出し拳銃の引き金を引く。
狙いは人ではなく、冷蔵庫の横に高く積まれた小麦粉の袋。
放たれた数発の銃弾によって破れた袋から小麦粉が飛び出し
厨房一帯に白い粉が充満し、視界を白く濁らせていった。
「逃げますの、はやく!」
「お、おう」
白井はそう焦りの籠った声で叫びながら客席へと続く扉を押し開け
突然の銃声に縮み上がっていた上条は一歩遅れて白井の後を追う。
そんな無防備な背中にチャキ、と4つの銃口が狙いを定める。
「やめろ! 粉塵爆発も知らねえのか!?」
山手の叫びに四人の男たちは慌てて拳銃を下ろす。
その内の一人が訝しげな顔をしながら口を開いた。
「何者です?」
「風紀委員だ。多少訓練されてるけど、まあ四人なら楽勝だろ。
俺は傷を治療しねえといけねえから殺しと死体処理よろしく」
「……終わったら飯奢ってくださいよ」
「はいはい」
山手が適当に返事をすると四人の男達は一斉に上条達を追う。
それを見送りながら山手は従業員用のドアから厨房を立ち去った。
―――
――
―
道路に出た上条と白井は曲がり角に比較的近い方へと走る途中
複数の銃器が向けられる無機質な金属音が彼らの背後に鳴り響いた。
反撃する手段を何一つ持たない上条は無視して振り返らずに走り出そうとしたが
それに対して、拳銃を持っている白井は首を僅かに振り返らせ銃口を向け返す。
しかし、牽制すべく動いたその行動が仇となった。
ぐちゅり、と肉が裂ける鈍い音が銃声の中に交わって鳴り響く。
カシャン、と何が起こったのか理解できず白井は拳銃を手放し
赤黒く染まった自分の腹を信じらない目で呆然と見つめた。
熱した鉄を捻じ込まれたような激痛に我を忘れて叫びそうになったが
何故か声を出すことが出来ず夢が覚めるように視界がぐらりと揺れる。
そして、そんな白井に男達は容赦なく銃口を向けた。
「白井ィィいいいいいいいいいいいいい!!」
彼女の異変に気付いた上条は慌てて足を止めて引き換えし
躓きそうになりながらも彼女を抱きかかえ路地裏へと飛び込んだ。
銃撃を避けるために横道に曲がったところで彼女の体がガクンと崩れた。
彼女の顔は今まで見たことない程蒼白く到底歩けそうには見えない。
路地裏の先は遠く、人間一人を背負っては抜け切るのに時間がかかるだろう。
死神のような足音が迫る中、白井は震える声で血を吐き出しながら唇を動かす。
「わた、くしは……もう、駄目、です……の。上、条さん……だけ、でも」
「馬鹿野郎! お前には俺がそんな事できる人間に思えんのかよ!!」
白井が言葉を言い終わらせる前に、上条は彼女の言葉を遮り
地面に落ちていた親指ぐらいの太さの鉄パイプを拾い上げた。
そして、曲がり角から拳銃を持った男が姿を現すと同時に
上条は鉄パイプを振り上げ先頭にいた男を力任せに殴り飛ばし
曲がり角から勢いよく飛び出し後ろにいる男目がけて振り落す。
が、その直前、上条の背後に立っていた男が上条の膝裏に蹴りを入れ
体制を崩され思わず跪いた上条の腹に正面の男が拳を叩き込み
咳き込みながら倒れた上条の首を起き上った男が足で抑え込んだ。
「さて、死んでもらいますか」
男はそれだけ言うと銃口を上条の眉間へと合わせ、撃鉄を下ろし引き金に指をかける。
上条は必死に抵抗をするが、足は振りほどけずはおろか射線から逃れる事さえ出来ない。
(クソッ……こんな、ところで……何一つ出来ずに……っ!)
上条は迫りくる死に耐え切れず目を閉じ、男は引き金に力を加えていき―――
「Fortis931(我が名が最強である理由をここに証明する)!」
聞き覚えのある声に上条がはっと目を見開いた。
気づけば、自分を押さえつけていた足の感触がない。
首を横に動かしてみれば、吹き飛ばされた男達の姿が見えた。
彼らは落としてしまった拳銃を拾おうとしているようだったが
拳銃に触れた瞬間、呻き声を上げながら手を引っ込めている。
「熱伝導って知ってるかい?」
反対側に回すと見覚えのある赤い髪の神父が立っていた。
―――その手にめらめらと燃え盛る炎剣を携えながら
「ステイル、お前……」
「後にしろ上条当麻、見ての通り今忙しい」
ステイルはそう言うと上条をわざと踏みつけ男達へとゆっくりと近づく。
そして、四人の男の内先頭にいる男との距離が一メートルを切った瞬間
彼は懐からジャックブレードを取り出しステイルの腹へと突き刺した。
「ステイル!」
上条がそう叫んだ瞬間、ステイルの姿がゆらりと虚空に消え
男の背後に姿を現したステイルが男の首に炎剣を突き付ける。
同じくジャックブレードを取り出した三人の男達を目で牽制しながら
じりじりと皮膚を焼かれる感触に目を白黒させる男にステイルは言い放つ。
「何の罪もない素人相手に武器を使い、こんな目に遭わせることが
君たちにとって、命を賭けてまでやる価値のあるものなのかい?」
口調は冷静に、それでいて静かな怒りと燃えるような殺気に満ちた言葉。
カキン、と炎剣を突き付けられた男はジャックブレードを放り棄て
残りの三人もそれにつられるように一斉に武器を地面に捨てた。
「失せろ」
命令と同時、ステイルは炎剣を男の首から離し雲散させる。
刹那、男達は脱兎の如く逃げだし、その場から立ち去った。
それを見送った後にステイルは警戒を解くと上条へと視線を向ける。
「君は本当に面倒事に巻き込まれるのが好きみたいだね。
ところで、さっさと救急車を呼ばなくていいかな?」
その言葉に上条ははっとすると急いで携帯を取り出し救急車を呼んだ。
そんな彼の様子をステイルは鼻で笑いながら何も言わず立ち去ろうとする。
「待てよ、その……ありがとう」
「勘違いするなよ、僕個人としては君がどうなろうとどうでもいい。
だが、そのせいであの子が涙を流すのはどんな理由があろうと許せない。
次からは気を付けろよ上条当麻、もうあの子の記憶が消えることは無いんだ」
そう言い残し、ステイルは今度こそ上条達の前から姿を消した。
それが彼の性格であり、彼の生き方であった。
―――
――
―
同時刻 路地裏
ぐらり、と左右に揺れる体を動かしながら山手は路地裏を歩るく。
白井黒子と上条当麻による度重なる打撃に加えて右肩への銃撃。
それらの攻撃は山手の体にかなり深刻なダメージを与えていた。
「おいおい、そんなんで大丈夫かよ暗殺者」
「!?」
突然、背後から聞こえた男の声に山手はすかさず振り返り拳銃を向ける。
しかし、声の持ち主の顔を確認すると溜息をつきながら銃口を下した。
「それで、俺に何か用か? 土御門」
「折角助けに来てやったのにその態度は失礼だな」
土御門元春、魔術サイドと科学サイドを飛び回る多角スパイ。
もっとも、山手は魔術サイドとしての側面しか知らないのだが
「それはありがたい、急所を外れているとはいえ止血しねえとな」
「全くだ、出血死もそうだが感染症にかかるリスクもある」
そう言いながら土御門は山手のもとへと駆け寄っていく。
山手も安堵したように笑いながら土御門の方へと歩み寄る。
彼を写真でしか見たことのない山手は気付けなかった。
―――彼は普段こんな重い喋り方をする人間では無いということを
「そんな生ぬるい死に方なんて、俺も納得できないからな」
至近距離で放たれた言葉、そこまできて山手はようやく事態を察した。
山手は小型拳銃を握りしめた左手を振り上げようとしたが、
それより先に土御門は左手首を捻り拳銃のスライド部分を掴み
バキッ! と山手の急所、厳密に言えば股間に当たる部分を蹴りつぶした。
筆舌に尽くし難い程の生々しい呻き声をあげて山手はよろよろと数歩下がる。
土御門はそんな彼から銃をもぎ取ると、背後に回り後頭部に肘を叩き込んだ。
後頭部打撃、ブレインシェイカーと評されるほどの一撃を受けた山手は
立つことすら出来ず、仕留められた獣のように地面に崩れ落ちる。
その姿を無機質な瞳で見つめながら、土御門は銃口を向けた。
引き金を引く度に豆を煎る様な銃声と共に断末魔のような絶叫が鳴り響き
折れた鋸や鉄パイプが転がっている路地裏を赤い液体で染め上げていく。
しかし、撃たれた箇所はどこも急所を避けており、致命傷は一つもない。
「……ぁ……ぐ……」
「これは、魔術サイドの事件に科学サイドの人間を巻き込んだご褒美だ。
それに俺の個人的な感情をいくらか付加すればもっとやりたいところだが
生憎と俺は忙しいときた、そんな訳だからお前はそこでゆっくりと死んでおけ」
酷く感情を押し殺した声でそう言い放つと土御門はその場から立ち去った。
山手は必死に動こうとするが、その度に傷口から血が流れ彼の意識を削っていく。
と、そんな虫の息の彼に三台のドラム缶型の清掃ロボットが近づいた。
流れる血を汚れと見做した清掃ロボが山手にがっつんがっつんと体当たりする。
まるで山手の傷を抉り、血を一滴残さず絞り出そうとするかのように
「……ぐ、そ……ぁ……」
己の為だけに生きた男は、一人、死へと向かって突き進んでいく。
それを引き止める者はおろか嘆く者さえ誰もいなかった。
今回の投下はここまで
ついに伝説のねぼしネタが出来て俺は満足です
まあ、摂氏3000℃だったらいけるんじゃないでしょうか
よくわかりませんが
それでは、また
ごめんない、冒頭にこの内容の脳内補完お願いします
―――
――
―
午後一一時五二分 とあるファミレスの厨房
「武器を捨て、地面に手をつけなさい!」
撃たれた肩の痛みに顔全体をしかめる山手に白井は拳銃を突きつける。
しかし、肘を抑えていた山手はそんな彼女を見てふと笑みをこぼした。
「腕が震えてるぞ風紀委員、そんなんじゃ跳弾で死ぬかもしれないぜ」
「もうその手は通じませんわよ三下」
は? と山手の悪意の濃縮された笑みが白井の言葉に僅かに揺らぐ。
そんな男に、白井は狼狽を微塵も感じさせない顔で静かに告げる。
「考えてみましたの、私を倒したあなたがどうして上条さんに負けたのか。
訓練を受けた風紀委員が適わない相手に一介の高校生が勝てた理由を」
「ほう、聞こうか」
どうも、>>1です
投下
午後一二時〇三分 とある路地裏
文字通り穴だらけの体を三台の清掃ロボットに体当たりされながらも
山手は刻一刻と赤黒い液体が流れ出る腕で機関拳銃を取り出した。
(こんな話聞いてねえぞ……)
実は山手には刺突杭剣の取引の阻止とは別にもう一つ任務が与えられていた。
それは、『幻想殺しを持つ上条当麻と戦ってわざと負けろ』というものだ。
山手には、そうする事で依頼主に何の得があるのか見当もつかなかった。
しかし、あまりにも法外な報酬を提示されたので何も言わず引き受けたのだ。
その上で、依頼主が彼に提示した成功条件は『上条にその事を悟られない事』
彼の行動は全てその事を達成した上で二つの任務を達成する為にあったのだ。
まず上条の性格を聞いた山手は、上条と自分が戦わざるを得ない状況を作るために
オリアナの位置情報を探るのにわざわざ風紀委員を襲撃するという手段をとった。
そして、わざと監視カメラが設置されている道を通ってファミレスの厨房に侵入し
上条の元に送った金で雇ったサクラに他愛のない会話でここに自分がいる事を示唆し
戦う場所を用意したとは思わせないように食い逃げしながら待ち伏せていた。
極め付けは、一見強力に見えて簡単にカウンターの取れる攻撃を放ち
白井に銃を撃たれるとわかっていながら、上条に銃を向けたのだ。
一方的な八百長に現実味を持たせる為の計算され尽くした悪意。
行動の裏に隠れる真意に誰一人として気づくことは出来なかった。
(で、俺は……用済みに、なった……という、わけか)
依頼主からは依頼を達成した後は上条を始末しろと言われていたので
狂言だとばれないように事前に呼んでおいた下部組織に任せたのだが
成功の連絡がない限り、何らかの理由で失敗したのだろう。
(俺、が……そうする……のは、予想、済み……って訳か……)
ガシャ、と串刺しからを肉を引き抜くように口でスライドを引き
ちょうど射線上にあった一台の清掃ロボットに向けて銃を連射する。
それなりの耐久性を持つ清掃ロボの装甲があっさりと砕け散るが
中の部品は部分的に破壊されており、無傷な所さえあった。
山手はそれを見て僅かに笑うと、意識を闇の中に落としていく。
―――
――
―
同時刻 とあるアーケード商店街
大覇星祭の熱気に包まれている学園都市だが、この通りにその気配はない。
日光や天候から通りを守り、通行を惹きつけていたアーチ形のアーケードも
この暗い空気では日当たりを悪くしているようにしか見えないだろう。
立ち並ぶのは小規模なテナントばかりで客を歓迎している雰囲気さえ無い。
そればかりかまだ昼前だというのに全ての店のシャッターが閉ざされていた。
恐らくここよりも集客率の高い競技場近く等で仮店舗を展開しているのだろう。
そんな場所に一人、オリアナ=トムソンは右脇に携えながら佇んでいた。
女性警備員に与えられたダメージに、ふらりと体を不自然に揺らしながら
(学園都市も教会諸勢力も今の街中じゃ手が出しづらいとは聞いたけど
やはり指を咥えて見逃してくれるほど甘くは出来ていないわね……)
オリアナはそう顔をしかめながら、ポケットから単語帳を取り出し
一ページを焼き鳥を食べるように咥えたところで、ふと動きを止めた。
そして、溜息をつきながら背後に視線と共に意識を向ける。
そこには黒を基調とした服装に筒袋を携えた少年が立っていた。
学園都市最強の超能力者、一方通行と呼ばれる白い少年が
日本人の特徴として相応しくない白い髪に紅い眼、少女のように華奢な体。
人混みを歩けば必ず目立つその外見は裏稼業に向いていないように見えるが
人形のように端正な顔立ちを歪める殺気立った表情は表稼業にすら向いてない。
「これで三人目、お姉さんって怖い人にモテる性質なのかしら?」
「呑気な女だ、誰ェ敵に回したのか分かってンのかオマエ」
そう言って一方通行は筒袋を投げ捨てると同時に中身を取り出した。
姿を現したのはモップ程の長さを誇る室内制圧用のショットガン。
ジャキ、とスライドを引くと同時に銃口をオリアナに突き付ける。
互いの距離は三メートル、訓練を受けた人間ならば拳銃でも外さない距離。
オリアナは不敵に笑いながら単語帳からページを噛み千切って吐き捨てる。
瞬間、一方通行とオリアナを遮るように氷の壁が道路一面に広がっていく。
ひらひらと舞い落ちる紙切れには緑色で『Wind Symbol』と書かれていた。
「やめときなさい、早漏の坊やじゃお姉さんの相手は務まらないわ。
お姉さんはどんなプレイでも死体を作らないように頑張ってきた。
殺しなんてしかやってこなかった坊や達相手じゃ満足できないわ」
挑発的な言葉に言い返す声は無い。
そして会話の終了が戦いの始まりとなった。
ズガン! と重々しい銃声と共に二〇発もの散弾がオリアナに襲い掛かる。
しかし、それらがオリアナの血肉が弾け飛び凄惨な死体が出来ることはなかった。
バギン、と五〇センチもの厚さを誇る氷の壁が一撃で粉砕される。
続けて一方通行は引き金を引こうとしたがその先にオリアナはいない。
(氷の役目は、盾じゃなくて光の屈折か)
簡単に結論付けながら一方通行は視線を左右に走らせると
単語帳の新たな一ページを噛み千切るオリアナを見つけた。
瞬間、刃物のように鋭利な氷の散弾が一方通行に襲い掛かる。
しかし、一方通行は銃口を向けることすらせずにただ笑う。
そして、氷の散弾は真っ直ぐ進み―――、一方通行の横を通過した。
「な……っ!?」
「余所見すンじゃねェよ、俺はここだ」
狼狽の色を露わにするオリアナに一方通行は頬を引き裂かんばかりの笑みを浮かべ
ショットガンを手前の地面に捨てると、オリアナを挑発するように両手を広げる。
オリアナはすかさず単語帳のページを切り離し不可視の刃を一方通行めがけて放つ。
しかし、やはりそれは一方通行にあたる事無く周囲の建造物を次々と破壊していく。
「悪ィが前戯は終わりだ、待ちに待った本番といこォか」
冗談めいた内容とは裏腹に死刑宣告のように冷徹に放たれた言葉。
刹那、景色全体がぐにゃりと粘土を捏ね回しているかのように歪んだ。
(嘘でしょ……!?)
オリアナは必死に目を凝らすが、非日常的な変化は止まることを知らない。
それどころか徐々に加速していき、コーヒーにミルクを入れたときのように
ぐにゃぐにゃと寂れた商店街の風景は混沌とした世界に書き換えられていく。
(な、にが……起こっ、て……)
急激な視界の変化に平衡感覚を狂わされオリアナは地面に倒れこむ。
胸の奥からこみあげる吐き気が彼女に頭を上げる権利を奪う。
そんな彼女の頭に一方通行は拾ったショットガンを突きつける。
彼の視界はぶれることなく、寂れた商店街とオリアナを映していた。
(光学操作……思ったよりも使えるな)
一方通行はベクトルを操る能力者であって、世界を変える能力はない。
彼が操ったのは光、自分自身に当たっている光を全て捻じ曲げたのだ。
当然、そんな事をしてしまえば一方通行の視界もその影響を受けてしまう。
しかし、光の操作を捻じ曲げたのは他の誰でもない一方通行自身だ。
彼は視界から得た視覚情報を脳内で能力で使った演算式を略算するようにして
元の視界情報を導き出す事で、通常の視界を得ることに成功していた。
「さて、最後の審判だ。イエスかノーで選ぶンじゃねェ、生きるか死ぬかで選べ」
有無を言わせない声色で一方通行はただ告げる。
まるで、死を一方的に宣告をする死神のように
「お前の上司、リトヴィア=ロレンツェッティの居場所を吐け。
そうすりゃお前は見逃してやる、傭兵にしちゃイイ条件だろ?」
ぴくり、とその言葉にオリアナは僅かに、しかし確実に反応した。
枯れかかった花が水を浴び、再び咲き誇るかのように
「Basis104!」
唐突に彼女は立ち上がりショットガンの銃身を蹴り飛ばした。
突然の反撃に一方通行は対処できずに銃を振り払われてしまう。
「舐めないでくれる? 確かにお姉さんは雇われの身だけど
甘い誘惑に負けるほど、弱い気持ちで引き受けたわけじゃないの」
「そォかい、そりゃ結構」
想定外の出来事に驚きながらも、一方通行の予備の拳銃を引き抜くが
オリアナは体を半回転させその手首に踵を叩き込み、拳銃を振り落した。
大きく後退した一方通行はオリアナの顔を見て僅かに目を見開く。
オリアナは目を閉じたままの状態で自分のほうを向いていたからだ。
「お姉さんはね、目隠しプレイにも慣れてるのよん♪」
鼻歌交じりにそう言いながらオリアナは単語帳の一ページを噛もうとしたが
それより先に一方通行が懐から小太刀を取り出し突き刺すような一撃を放つ。
カキン、と金属と金属を擦りあわせるような硬く澄んだ音が響いた。
狙いはオリアナではなく、彼女の持っている単語帳のリング。
「じゃあ、このプレイも体験済みなのかァ?」
獰猛な笑みを浮かべながら一方通行は小太刀を横合いに振るい
単語帳を投げ飛ばすと返す刀でオリアナに横一閃の斬撃を放つ。
オリアナは咄嗟に体を後退させて避けきれず頬に刃が軽く触れた。
ザクッ、と皮膚が切れる音と共に目元の下辺りに切り傷が浮かび上がる。
頬を伝う血の感触にオリアナは痛がるどころか不敵に笑う。
「うふふ、坊やとならこういうプレイもいいかもね」
言葉と同時、オリアナは単語帳には目もむけず自ら一方通行へと肉薄した。
意表をつく行動だったが、一方通行は臆せずに小太刀を首めがけて振るう。
しかし、彼女はそれを避けようとすらせずに刃目がけて膝蹴りを放つ。
普通なら考えられない攻撃、受けた方にとっては逆にチャンスとなるだろう。
だが、一方通行は傷一つ与えられずに手首を抑えながら大きく後退してしまう。
オリアナは余裕の笑みを濃くしながら、一方通行の手を引っ張り
後ろを向かせ背中から抱きしめるように一気に首を締め上げた。
「ぐ……ぎ……っ」
「テクニックは素晴らしいのだけれど、スタミナや耐久力は素人以下ね」
一方通行はしばらく抵抗したが、やがてぐったりと手足を乱暴に投げ出した。
オリアナは満足そうな笑みを浮かべながら、一方通行を乱暴に横たわらせ
目を開け景色が元に戻っていることが満足すると、その場から立ち去った。
今回の投下はここまで
それでは、また
どうも、>>1です
遅くなりましたが投下
午後一二時一〇分 とある表通り
白井を乗せた救急車を見送り、上条は歩道をゆっくりと歩き出す。
その歩調は周りより遥かに重く、更には顔まで同じように曇っていたので
周囲の人間が訝しげに見るが、特に気にも留めず何も言わず過ぎ去っていく。
大方、大覇星祭の競技に負けてしまったが故に落ち込んでいると思っているのだろう。
しかし、上条はそんな事を考えている訳ではない。否、考える余裕が無かった。
(あいつ……本気で人を傷つける事を何とも思ってなかった……)
通りがかりの学生の噂話を頼りに向かった場所で出会った男。
人に銃を向けているのにも関わらず、その眼には何もなかった。
―――躊躇いや罪悪感はおろか、驕りや嘲りさえも
手慣れた清掃員が高層ビルの窓拭きをしているような
仕事に慣れ始めたウェイトレスが客の注文を聞くような
若者が電車の中で携帯電話を眺めているような
ただ、流れ作業の如く人を殺そうとする姿に上条は悪寒さえ覚えた。
―――人とは、あそこまで醜くなれるものなのか
―――誰のためにでもなく、ただ己の為だけに
自分は今怒っているのか、それとも恐れているのか。
それすら分からず、思考は止まることを知らず加速していく。
忘れかけていた忌々しい記憶が走馬灯のように鮮明に蘇る。
―――唐突に始まりを告げた凄惨な暴虐
―――怒りや憎しみとは違った静寂の狂気
―――見せつけられた絶対的な力の差
この世界では、心の底から悪に染まった人間だといないと信じていた。
どんな悪人に見えても何かしらのそうせざるを得ない理由があるのだと
心の奥底では、きっと自分の行いが間違っていることに気づいているだろうと
しかし、彼らは違った。
目を背けたくなるほどの残虐性を持ちながらも
どこか理性的で、自分と同じ人間にしか見えなかった。
分かりやすい悪ではなく、自分と同じ普通の高校生に
遠い世界の存在だと思ってきた狂気が眼前に迫り
重力のように上条の心を徐々に殺していく。
「上条当麻、か」
と、負の方向に思考を走らせる上条に誰かが話しかける。
呆けていた上条は数秒遅れて話しかけられた事に反応した瞬間
ガッ! と上条の顎を話し手が抱き寄せるようにして容赦なく締め上げた。
同時刻 路地裏
目を覚ました一方通行は人目を避けるべく薄れた路地裏にいた。
大覇星祭の最中、誰にも見つからず身を隠せたのに、その顔に安堵はない。
むしろ、どこか焦燥しているかのような顔で全身から力を抜いていた。
(何やってンだかな、ったく……)
はは、と自らをあざ笑うかのように力なく笑う。
光学操作でオリアナの目と周囲の監視カメラを潰したのは良かったものの
不慣れな光波ベクトルの大規模演算の影響で、反射が使えなかった。
そのせいでオリアナが目を瞑ってしまったが為に
彼女の動きを予測する事が全く出来なかった。
自らの虚弱体質を十二分に理解しながらも、
彼女の蹴りを受け流さず、押し止めうとした。
普段なら考えられない敗因の数々が今更になって次々と思い浮かび
ショットガンの反動に疲弊した肩がズキズキと限界を主張する。
「……クソッ!」
意味もなく大声を出し、手にあったショットガンを壁にたたきつけた。
ガシャン、と精密機械が全体的に壊されるような音と共に
大型銃器が粉々に砕け散り、スプリングや弾丸が地面に散らばっていく。
何故自分はこんなにイラついているのだろう、と一方通行はぼんやりと思う。
今まで同じような状況に陥った事が何度かあるが、こんな気持ちになった事はない。
前後の心理状態がどうであれ、その時はとても楽しめたはずだ。
武器を使い、知恵を使い、そしてこの手で潰す感覚が気持ちよかった。
ショットガンの反動や敵の反撃による痛みなど忘れてしまえるぐらいに
しかし、今はとてもつまらなく、気持ち悪さに吐き気さえ感じる。
容赦なく引けた引き金は鉛のように重たく、一呼吸を必要とした。
『あなたの未来については大いに期待してますので』
そこまで考えて、ふと一方通行は神裂の言葉を思い出した。
ギリ、と焦燥が漂っていた顔が拷問を受けているかのような苦痛に歪み
飢えた獣を思わせる血のような赤い目に怒りが湧き上がっていく。
「今思い出すことじゃねェだろうが……似合わねェンだよクソ野郎!
笑えよ、笑って何もかも血に染め上げる事しかできねェだろうがァ!!」
ガン!!! と一方通行は凄まじい速度で拳を壁に叩き付けた。
強化コンクリートの壁は湾曲し、衝撃で窓ガラスが砕け散っていく。
それでも、一方通行の感情が落ち着くことはなかった。
それは成長というべきか、それとも弱くなったというべきか。
「……殺そう、そォしなきゃ何も始まらねェ」
それが分からないまま、一方通行は静かに立ち上がる。
迷いを振り切れず、『最強』を失ったまま彼は歩き出す。
一二時一五分 とある表通り
「皆の応援サボってどこほっつき歩いてるのよ、この学校の裏切者が!」
「うぐあ!? ちょっと吹寄さん! ギブ! ギブギブギブ!!」
いつの間にか上条の背後に回っていた吹寄は上条の首を腕を回し
脇の下に彼の頭を挟み込むようにして、一気に締め上げた。
断絶された酸素への欲求と、頬に伝わる形容しがたい弾力が
上条の肉体と精神を猛烈な勢いでごっそりと削っていく。
「ま、待て……応援行く……行くから離して……」
「よろしい」
掠れた声を何とか絞り出し、降伏を必死に約束すると
吹寄はやれやれと言いたげな溜息交じりに上条を解放した。
ごほごほと喉を抑えて咳き込みながら、上条は安堵の表情を浮かべようとしたが
そうする暇もなく、吹寄は上条の襟首を掴みキャリーバックのように引きずり始める。
「ぐえ!? 別に逃げたりしないから襟首つかむのはやめてくれ!」
「それでは、手」
上条の抗議に襟首から手を離した吹寄は小さな手を上条に差し出した。
やけに柔らかそうに見えるのはハンドクリームが塗られているからだろうか。
「え、……じゃあ失礼して」
良さそうな通販の健康商品をつい買ってしまう彼女の一面を思い出しながら
上条は差し出された彼女の手を恐る恐るといった感じで取った。
一見冷たそうに見えた手だったが、予想に反して安心さえ覚える温かさがあった。
特に驚くような事でもないが、上条は足をすくわれたように胸が高鳴った。
「歩くの遅い」
と、そんな事を考えていた上条を吹寄がずるずると引っ張り始める。
厳然たる不機嫌さが顔に滲み出ている吹寄に上条は思わず溜息をつく。
(どうしたもんかな……)
インデックスと別れた辺りから、結構な時間と距離が開いているだろう。
応援に行くとは言ったが、彼女と会って事件から遠ざける必要がある。
それに土御門かステイルから連絡が入れば、動かなければならない。
こうしてる間にも、山手のような人間がオリアナを狙っているのだろうか。
一方通行も『法の書』事件のようにオリアナを容赦なく叩き潰すのだろうか。
「ねえ上条、大覇星祭ってつまんない?」
唐突に、手を引きずっている吹寄がそんな事をいった。
思考の旅から現実に引き戻された上条が眉をひそめると
「どうも貴様は他の事が気になってならないように見える」
妙に核心をついた言葉に上条はギクリと背筋を凍らせる。
吹寄はそんな上条の顔を見て、やれやれと小さく溜息をついた。
「ま、絶対に大覇星祭に集中しなきゃいけないという訳じゃないし
リタイヤするといっても私には止める権利なんて無いんだけどさ」
言葉から察するに吹寄は大覇星祭の裏で起きている事件ではなく
単に上条の大覇星祭に対する態度に対して疑問を抱いているようだ。
その事に少しだけ安心する上条だったが、いつものトゲトゲがない言葉に
また違った意味での不安を覚えてしまい、浮かない表情を浮かべてしまう。
「やっぱり企画を立てた身としては、たとえ我儘だとしても皆に参加してもらって
大げさだけど一生忘れないような楽しい思い出を皆に共有してもらいたいと思うの。
それで皆が笑ってくれるなら、私の大覇星祭は成功したって胸を張れるのだけれど
上条が今日つまんないと感じたというのなら、そうする事も出来ないし……。
となると、準備を進めてきた私には不足があったという訳だから、何ともね」
突然語られた吹寄の本音に上条は思わず度肝を抜かれた。
責任感の強いやつだな、と感想を述べようとした。
つまらないと感じていない、と否定しようとした。
しかし
「は、はは、あっはははははは!!!」
「なっ……!?」
上条の口から洩れたのは、致死性のない毒キノコを食べたかのような笑いだった。
吹寄が親の仇を見るような眼で上条の事を睨み付けるが彼は気にも留めない。
吹寄がどういった理由で大覇星祭の実行委員に立候補したか上条は知らない。
放課後遅くまで残り、他の友人と一緒に過ごす時間を削ってまで頑張った理由を。
それは決して誰かに押し付けれたものではなく、彼女が自分で考えて得たものだろう。
上条はその事が素直に嬉しかった。
確かに、平気な顔をして他人を傷つけ、他人の犠牲を自らの喜びを変える人間がいる。
だがその一方で、他人の為に努力して、他人の喜びを自らの喜びに変えられる人間もいる。
何を一人で悩んでいたのだろう、と上条は少し前の自分を鼻で笑った、
冷静に考えてみれば当たり前の事で悩む必要など微塵も無かったのだ。
壊れかけた心の傷が癒え、以前よりも輝きを増していく。
頑張らなければ、と上条は心の中で静かに誓った。
吹寄だけではない、他の運営員会も何かしらの理由で頑張っているだろう。
街を歩いている生徒達や観客達だって楽しい思い出を作りたいに決まっている。
「人の本音を馬鹿にするな、上条当麻!!!」
そんな上条の心情を知らない吹寄が握り拳を作って真上に振り上げた。
鬼のような形相に笑みを完全に打ち消した上条が慌てて頭を両手で覆う。
しかし、上条の予測に反して衝撃が駆け抜けたのは頭を覆った手ではなく無防備な腹。
そして、思わず上条が腹を抑えたところで後頭部にスパァン! と掌が叩き込まれる。
容赦のないフェイントを交えた連続攻撃に上条はうめき声を上げながら前に倒れこむ。
瞬間、ぼふっと彼の頭に覚えのある形容しがたい柔らかいものがぶつかってきた。
ぶわっと冷や汗を流しながら、前方を見るとそれは女性の胸だった。
今度はどんな暴力が降りかかるのだろうと身構える上条だったが
当の女性は、少し驚いただけであまり気にしていないようだった。
ぶつかってきたのは、地味な作業服を着た十八か一九くらいの女性だった。
西洋人らしい色の強い金髪やモデルのような青い瞳に、モデルのようなスタイル。
たったそれだけの特徴でも、アイドルのように周囲の注目を集めそうなものだが
第二ボタン以外留めてない作業服と緩く履かれたズボンがそれを助長している。
単純な体つきの良さだけでなく、見えない妖艶さを放つその女性は塗装業者なのか
服の所々に乾いたペンキがこびりついていて、脇に白い布で覆われた看板を抱えていた。
「あー、ごめんね。こんな人混みにはあんまり慣れてなくてね。
どこか痛いところとか無いかしら? あら、頭の後ろが痛いの?」
「……何でだろう涙出てきた。女の人ってこんな優しかったっけ?」
ゴン、と吹寄は先ほどより重い一撃を上条の後頭部に叩き込む。
その拍子に、上条の頭がもう一度作業服の女性に突っ込んでいくが
彼女は悲鳴を上げる事無く、片手でゆっくりと上条の体を引き剥がした。
「よいしょっと、折角楽しい行事なんだから喧嘩ばかりしてはダ・メ・よ。
しかめっ面で過ごすより笑顔で過ごしたほうが素敵な思い出になるわよ」
「器が広すぎる……これまで出会った女の幼稚さがよく分かる!」
ドン、と吹寄は合気道のような投げ技で上条を路面にたたきつける。
ぐえ、と肺から酸素を吐き出しながら上条は気づいた。
作業服の女性の顔に小さな切り傷がある事を
「大丈夫ですか? これ」
「え……ああ、これ。仕事の都合でちょっとね」
何気なく頬の辺りを指さしながらそう言うと、作業服の女性はそう言った。
たったそれだけのはずなのに、何か彼女からは余裕が消えたように見えた。
「まあ、もう大丈夫よね? それだけ動けるなら」
次に荒い息を吐きながら立ち上がる二人に彼女は苦笑交じりにそう言って
看板を抱えていない方の手を上条に向けて握手を求めるように差し出した。
「ぶつかってしまったお詫びに、ね。日本では頭を下げるみたいだけど
こっちではこういう触れ合うやり方の方が一般的なのよね」
「はぁ……そういうものなの?」
「キスもあるのよ?」
ぶっ! と唐突な爆弾発言に思わず上条は吹き出しそうになった。
上条は少し考えたが、これ以上親から授かった体を痛めたくないので
大人しく、握手に応じようと差し出された右手を右手で握り返す。
瞬間、バギン! と何かが砕ける音が小さく響き渡った。
「は?」
それを見ていた吹寄はきょとんした顔で間抜けな声を出した。
しかし、当事者である二人は黙ったまま探り合うように互いを見る。
「っとっとっと」
作業服の女性はそうおどけながら、困ったような苦笑いを浮かべようとする。
だが、その動作はわざとらしく、その顔には笑みを浮かべる余裕など微塵もない。
「そろそろ、仕事に戻らないといけないから。行ってもいいかしら?」
返事を求めるような言葉だったが、彼女は上条達の返事を待たずに立ち去った。
先程とは別人のような余裕がまるで無い雰囲気に吹寄は首を傾げていたが
その時、彼女の携帯電話が着信メロディを鳴らし、彼女の意識を奪う。
実行委員の連絡なのか、事務的な言葉で何度か言い合った内に
上条に次の競技に遅れないように注意すると、どこかへと立ち去った。
その後姿を眺めながら、上条は先ほどの出来事について考える。
(俺が打ち消したのは、魔術か超能力か……まあ超能力はねえか)
学園都市にいる能力者は、それさえ除けば普通の学生だ。
大覇星祭が開かれているのなら、普通はそちらに参加するだろう。
例外は、土御門舞花のような売り子もしくは死神部隊。
しかし、彼女の作業服はメーカーのロゴからして外部の業者である。
土御門から見せられた死神部隊の顔写真は全員アジア系の顔立ちだった。
そして、上条が指摘した彼女の目の下にあった切り傷。
根拠は無いが、上条の頭には一方通行の小刀が思い浮かんだ。
(となると……)
上条は周囲を見渡し、吹寄の不在と作業服の女性の位置を確認すると
携帯電話で土御門と連絡を取り、先程の出来事を簡潔に話した。
しばらくすると、上条の疑問が確信へと変わった。
作業服の女性、彼女こそがオリアナ=トムソンだと
『カミやん、今どこにいる?』
「え? ああ、一財銀行の前だけど……」
『そこで待っていろ』
土御門のその言葉が聞こえた途端、通話はいきなり途絶えた。
その余裕の無さが、事件の深刻さを上条にひしひしと伝える。
上条は少し迷った末、土御門に自分の携帯のGPSコードをメールで送り
彼が自分の居場所を把握できるようした上で作業服の女性を追い始めた。
ここで言われたとおりに土御門を待っていては確実に見逃してしまう。
何かが起きる気がした、とてつもなく恐ろしい何かが
―――
――
―
一二時二二分 とある表通り
作業服の女性、オリアナ=トムソンは人混みの間を縫って歩いていく。
周囲の雰囲気に溶け込もうとするが、予想外の出来事に感情が対処しきれない。
彼女自身そう自覚しているのだから、周りから見ても彼女は浮いて見えていた。
オリアナは適当に履いたズボンから単語帳を取り出すと
一ページを噛み破って、貝殻のように耳に当てた。
「グッドアフタヌーン、リトヴィア=ロレンツェッティ。
通信が届いているのなら、返事をしてもらえると助かるわん」
『本名は慎むように。あなたの肉声その物は周りに伝わってる故
そこから正体を看破されると厄介な事態になる恐れがありますので』
単語帳の一ページには黄色い文字で『Water Symbol』と書かれていた。
そこからオリアナの脳内に直接響いたのは折り目正しい声だった。
「もう既に少々トラブルに巻き込まれてるの。お姉さんとしては
アドリブ満載の方が燃えるのだけれど、そちらは萎えてしまうのね?」
『卑猥な表現は慎むように、こちらの信仰上の理由で―――』
「まーまー、それより三人もお姉さんの元に刺客が送り込まれちゃった。
どの子も人を殺すのに躊躇いがなくて明らかな社会不適合者だったのよん」
『………』
「濡れた?」
『……あの術式は使わなかったのですか?』
あの術式、使い捨てるように付けられた名は『表裏の騒静』<<サイレントコイン>>
人払いを応用した術式で、向き合って話をしている時は何の効力もないが
背を向けた途端、その背中に声をかける気力を自然な形で無くす効果を持つ。
「さすがにやばいと思って使ったんだけど、壊されちゃったわ」
『直接的な原因は?』
「分からないわ」
『では、これからの対応策は?』
「分からない?」
『……、では健闘を祈ります』
「ああっ、切らないで! お姉さんはこういう放置プレイは好きではないんだから」
『では、これからどのような策に出るのか代案を』
「そうね」
オリアナは小さく笑いながら、周囲をさらりと見渡して
上条当麻、そして、ある集団を確認すると前を向く。
「怖い人に追いかけられた時、あなたはどうするかしら?」
一二時三〇分 とある表通り
上条の見ている先で、作業服の女性は人混みの中を縫って歩いていく。
今のところ両者の距離は一定を保っているが、上条は妙な胸騒ぎを覚えていた。
(気づいてない……のか?)
オリアナは魔術師であると同時に運び屋であると土御門は言っていた。
そんな人間が、上条みたいな素人の尾行に気づかないものなのだろうか。
しかし、ここで自分を泳がせていくメリットが上条には思いつかなかった。
とすると、慣れない学園都市の土地でいつもの実力が発揮できていないのだろうか。
と、そんなことを考えていた上条の肩を何者かが叩いた。
振り返ると、そこには土御門とステイルが立っていた。
横の小道から現れた所を見ると、GPSの情報をただ見るのではなく
上条の位置情報と進行方向から行先を予測し、近道を通ったのだろう。
「どれだ、カミやん。大きな看板を持った奴ってのは?」
「あそこだ、あの作業服を来ている金髪の女」
上条が指差すと、ステイルと土御門が上条にそれ以上何も言わずに走り出す。
それと同時に、作業服の女性もタイミングを合わせたかのように走り出した。
(このタイミングで!? あの女、一体何を企んでいるんだ?)
上条はますます疑惑を深めたが、三者はそれを待ってはくれない。
上条は、それについて考えることも伝えることもせず、彼らを追い駆ける。
―――
――
―
一二時三〇分 無人バスターミナル
上条達がオリアナを追ってたどり着いたのは一面アスファルトの空間だった。
周囲を完全にビルに囲まれた平面には大型バスが所狭しと並べられている。
運転手がいないところを見ると、どれも自立ユニットを組まれたバスだろう。
即ち、ここはそういったバスのメンテナンスの為の整備場ということになる。
『回送』と表示された無人バスが静かに上条達の横を通って整備場へと入っていく。
その後ろに付き添うように土御門が歩き出し、上条とステイルもその後に続こうとする。
刹那、轟!! と青白い爆炎が土御門目がけて銃弾の如く放たれた。
「クソ、トラップでこっちの足をつぶす気か! 伏せろカミやん!!」
「何を言っている、この男はいつ使う? 今だろう?」
土御門はとっさに後ろに跳んで、上条を押し倒そうとしたが
その直前にステイルは彼の首を掴み前へと突き飛ばした。
目標を失って倒れこむ土御門と入れ替わるようにして前に躍り出た上条に
自然に生まれたとは到底思えない炎の柱がギロチンのように振り下ろされる。
「ふっざけんなァァあああああ!!!」
上条は絶叫しながら慌てて拳を真上に振り上げて炎柱を受け止める。
瞬間、青白い炎は花火のように四散し跡形もなく綺麗に消えた。
ステイルと土御門は停めてあるバスを盾にするようにそれぞれ左右に飛んでいる。
普通の高校生ではあるが、人並みの心を持っている上条は迷わず土御門の方についた。
「ステイル、お前はここでルーンのカードを張り付けて待機してくれにゃー。
ついでに人払いの術式も使ってくれ、こっちは奥に進んで運び屋を抑える」
「了解した」
土御門の言葉に迅速に反応したステイルが周囲のルーンカードを貼り付け
文章ではなく、規則性の分からないアルファベットの羅列を言いあげた。
ステイルの人払いだろうか、と上条は適当に予測した。
「あれ、何で全員で追わないんだ?」
「カミやん、こんだけ遮蔽物が多いと行き違いになるのも考えられるんですたい。
三人だけでも可能な限り、出口を閉鎖するのが追撃戦のセオリーなんだにゃー」
それだけ言うと土御門はバスの陰から整備用通路の奥をのぞき込む。
上条は少し考え、土御門と一緒に前を進もうと彼の後につく。
その時、バタバタバタ! という複数の足音が上条達を取り囲んだ。
「全員動くな!」
「なっ……」
前方と後方から現れたのは漆黒の装備に身を包んだ五人の警備員。
大覇星祭期間中なので、体裁を良くする為にヘルメットこそしてないが
上条達に向けて構えているアサルトライフルが台無しにしてしまっている。
(おい、これは一体どういうことだよ!?)
突きつけられた銃口に息を呑みながら、上条は小言で土御門に問いかけた。
対する土御門は苛立ったように舌打ちしながら同じく小言で返事をする。
(恐らく、今朝の風紀委員襲撃事件の現場検証にいた警備員達だにゃー。
上層部が頑張って情報規制を掛けても、現場にいた人間までは届かない。
風紀委員経由でオリアナの情報を知った彼らはオリアナを保護しようとした。
が、きっと魔術サイド関連の事情を心得ている上層部に止められるに決まってる。
そこで、困った彼らはオリアナと接触しようとした奴を捕まえる事にしたんだろう)
なんてことだ、と上条も心の中で盛大な舌打ちをした。
目の前の警備員達はオリアナの素性をまったく知らないのだろう。
彼らはオリアナを『犯罪者から狙われている外部の人間』と認識している。
そして、彼らはそんな彼女を守るべく動いているのだ。
一切の疑念もなく、自分達に出来る最善を尽くして
(ステイル、いけるか?)
(……無理だね、今の時点でルーンは人払いの分までしか貼っていない。
炎剣や蜃気楼程度なら貼るのは一瞬だが、その前に撃たれてしまうだろう)
打開策もないまま警備員の一人が銃を下ろし手錠を取り出した。
手錠を掛けられる瞬間を狙うにしても、相手は銃を持った五人の人間。
しかも、ただの素人ではなく訓練を受けた警備員だ。勝機は薄い。
それでも、やろうと三人が言葉を交わさず覚悟を決めた瞬間
コツン、と場の空気を壊すかのような足音がはっきりと響いた。
全員がその方向を見ると、そこにいたのは季節を無視した黒装束で身に纏った少年。
覆いフードを目深に被り、口元も黒い布で覆われているので顔ははっきりと見えない。
警備員達は目線だけでやり取りすると、警備員のうち一人が
黒装束の男にアサルトライフルの銃口を突きつけた。
「何者だ? 布を取って顔をよく見せろ!」
チャキ、と返答の代わりに黒装束の男は警備員に拳銃の銃口を突きつける。
警備員は大声を上げるが、黒装束の男はそれを無視して引き金に指をかけた。
瞬間、経験則で撃たれる事を確信した警備員は引き金を反射的に引いた。
バン! と鼓膜が破れそうなかと思うぐらいの重い金属音が鳴り響く。
放たれた銃弾は空間を切り裂きながら黒装束の男の肩へと駆け抜ける。
しかし、対する男は撃ちかえすどころか拳銃をその辺に放り棄て
その場で跳躍すると銃弾をサッカーボールのように蹴り飛ばした。
男の細い足を貫くはずの銃弾は向きを変え、撃った本人の銃に当たると
地面やバスの表面をビリヤードのように飛び跳ね、警備員達の銃に被弾する。
着弾衝撃に耐えきれず、警備員達全員が銃を振り落した瞬間
ガシ、と黒装束の男は自分の元に帰ってきた銃弾を掴み取った。
何が起きたのかわからずに警備員達どころか上条達さえ呆然とする中
黒装束の男は、手の中に収められた銃弾をコインのように真上に弾いた。
「!?」
突然の挙動に警備員達が身構え、放り投げられた銃弾を注意を向けた時には
黒装束の男はすでに一番近くに立っていた警備員の目と鼻の先まで迫っていた。
男は慌てて予備の拳銃を引き抜くが、その直後に黒装束の男がその手首を掴み
薙ぎ払うように足を盛大に引っかけ、真横に大きく転んだ所を蹴り飛ばした。
まるでアクション映画のように、警備員の体がすべるように吹き飛ばされる。
そして、進行方向に立っていた警備員に激突すると、ようやく動きを止めた。
黒装束の男は間髪入れずに跳躍し、巻き込まれて転倒した警備員の胸に着地した。
ごっがァァァ!! と肺の空気を全て吐き出すかのように絶叫して男は意識を失う。
蹴り飛ばされた男も何も反応がない所を見る限り、気絶してしまったようだ。
更に、予備の拳銃を引き抜いた二人の警備員は黒装束の男に銃口を突きつけるが
黒装束の男は拳銃を握っている二つの腕に素早く拳を叩き込み、狙いをそらす。
パンパン! と乾いた銃声がなるが、銃弾は男の体を掠めるように過ぎ去っていく。
警備員達はもう一度撃とうとするが、それより先に黒装束の男はその手首を掴み
引き寄せて交差させると、ガッ! と振り下ろすと同時に膝を叩き込んだ。
カシャ、と警備員達が握り拳を開き二挺の拳銃が地面に落とすと同時に
ガン! と黒装束の男は二人の頭を掴みシンバルのように叩き合わせた。
ドサ、と二人の男達が体力が尽きた馬のように地面に倒れこむ。
「この……っ!」
一人距離を取っていた警備員は振り落されたアサルトライフルを広い
跳弾の事など一切考えずフルオートで黒装束の男目がけて連射する。
だが、黒装束の男は残像すら残す程の速さで左右に動き
五メートルという距離にも関わらず銃弾を全て振り切った。
そして、距離を詰めた黒装束の男はアサルトライフルを殴り飛ばし
警備員が慌てて予備の拳銃を構えた所で、裏拳で拳銃を振り落とし
懐に入り込むと、足を思いっきり振り上げ後頭部に爪先を叩き込む。
視覚外の一撃に脳の処理が追いつかず、警備員はふらふらと体を揺らす。
黒装束の男はその場で跳躍すると彼の顎を容赦なく横合いに蹴り飛ばした。
瞬間、最後の警備員が一本の枯れ木のように力なく倒れる。
一方的な虐殺、今起きた出来事を的確に表す言葉がそれだった。
―――
――
―
(……肉体強化系の能力者か?)
上条は身構えながら、黒装束の男の正体を考えていた。
銃弾を躱すとなると、相当レベルの高い能力者だろう。
そんな人間が自分達を助けた理由が上条には分らなかった。
対して土御門は笑いながら、目の前の男に気軽に話しかける、
「いやー助かったにゃー、さすがツンデレ第一位」
「その愉快なグラサン油まみれにすンぞコラ」
黒装束の男はそう言うと、フードと口元の布を剥ぎ取っていく。
現れたのは白髪に赤い目、見間違える事のない友人の顔だった。
「一方通行!? でも、どうしてあんな回りくどい方法なんか?」
「馬鹿正直にチカラ使うと、『一方通行』だってばれンだろォが」
つまりは、そういう事だ。
ここで派手に力を使えば、一方通行だと断定され後々面倒な事になる。
だからこそ、力を敢えて抑えることで、特定されることを防いだのだ。
「後の処理は自分でやれ、それも出来ねェようなら豚箱で幸せになるこったな」
「問題ない、言われなくてもそれぐらいは自分で何とかやるさ」
「ならイイ」
それだけ言うと、一方通行はその場から立ち去ろうとする。
しかし、上条は駆け足で先回りし彼の進行方向に立ちふさがった。
「……何だよ?」
「人不足だ。頼む、俺たちに協力してくれ」
「断る、俺のやり方はお前たちとはそりが合わない」
「なら俺達に合わせろ」
なに? と無表情だった一方通行の眉が僅かに吊り上がる。
土御門とステイルは口を挟むことなく彼らのやり取りを静観していた。
「お前のやり方は間違っている」
「……調子に乗ンなよ三下」
ジャキ、と一方通行は懐から引き抜いた小太刀を上条の首に突き付ける。
いつもに比べて短気になっているのは精神状態が不安定だからだろう。
「間違っているから何だ、この世は正しい事だけがまかり通る程優しく無ェンだ。
俺は善人じゃない、そンな俺が何かを守ろうとするなら何かを壊すしかねェだろ」
「またそれか、例えお前が悪人だとしても、それは免罪符にはならないぞ」
超能力者と無能力者、光の中を生きてきた者と闇の中を生きてきた者。
両者はそんな次元など超えて、互いに同じ土俵に立っていた。
「どんな悪人でも、誰かを命がけで守る心がある事を俺はお前に教わったんだ。
今度は俺がお前に教えてやる、お前が悪人であり続ける必要性は無いってな」
すっと、刃を向けられているのにも拘わらず上条は手を差し出した。
その眼には、筆舌に尽くしがたいほどの力強さが込められている。
「今、お前に必要なのは俺に刃を向けてまで大切な者を守る強さじゃない。
つまらないプライドや生き方なんか捨てて、俺達に手を差し出す勇気だ」
何も殺さずとも、上条を気絶させればここを立ち去ることができるだろう。
傍にいる土御門やステイルには自分を引き留める気など無いのだから。
一方通行自身がさっき言った通り、彼は善人ではない。
呼吸するように人を殺す殺人鬼ではないが、条件さえ整えば
誰だって切り裂くし、時には殺さずに痛めつけて高笑いをする。
そんな人間が善人と一緒に誰かを守ろうとするなどあり得ない。
普通に考えれば、彼もまたヒーローに倒されるべき悪党なのだから。
だからこそ、差し出された手を拒否するべきだと考え
小太刀を横合いに抛り棄てて上条の手を握り返した。
「よろしくな!」
「……あァ」
満面の笑みを浮かべる上条に対して、一方通行は重い溜息をつく。
頭の中で考えた事と実際に起こした行動が一致していない。
そんな自分に失望したかのように深く、深く。
しかし、心の中に燻っていた苛立ちはいつの間にか消えていた。
本当に自分はどうしてしまったのだろう、と一方通行は思う。
「別に君が加わる必要性はなぐあ!?」
空気の読めない神父を親友と一緒に蹴り飛ばしながら
今回はここまで
それでは、また
どうも、久しぶりです
投下
十二時三十五分 無人バスターミナル
「何やってンだがなァ……」
オリアナの手がかりを探す上条達といったん離れ
一方通行は自身が倒した警備員の処理をしていた。
そもそも放っておけば良かったのに何故助けたのだろうか。
相手は暗部ではなく警備員だ、殺されることはまずあり得ない。
(この展開を期待していた……? 面倒臭ェガキか俺は)
自立ユニットが組み込まれたバスが行き交う空間の死角となる場所で
一方通行は気絶させた警備員達から銃等の武器となりうる装備を奪い
その上で手足を彼らが持っていた手錠で固定し、口に猿轡をかける。
本当はこんな事せずにベクトル操作で記憶を消去して放置したかったのだが
度重なる能力使用によって残時間が一秒あるか無いかにまでになってしまっていた。
その程度なら初めから無いものだと思って行動した方が賢明だ。
リスクの高い強大な力の誘惑に負ける怖さを彼はよく知っている。
(俺が疑われる事は無ェしなァ……、後は土御門が何とかすンだろ)
やれる事は全てやった、これ以上は何もすることはない。
そう判断した一方通行が立ち上がり上条達と合流しようとした時、
カツッ、とわざとらしい足音がその場に小さく響き渡った。
「お久しぶりッス、一方通行」
「お前……っ!」
そこにいたのは、長点上機学園の体操着を来た平凡そうな一人の少年。
一見何の特徴もない少年だが、上条が見ればすぐにその正体を気付いただろう。
―――どこかの暗部に属している頭を覆うようなゴーグルをつけた少年だと
「久しぶりついでに、少し付き合ってもらおう」
ふと顔から死体のように全ての表情を消し、がらりと別人のように雰囲気を変えると
体操着のポケットからジャックナイフを取り出すと、間髪入れずに一方通行に肉薄する。
そして、そのままナイフを一方通行の首へと突き出したが
刃が届く前に一方通行がその手を掴み手前に引き寄せる。
不意に付加された勢いに負けてゼロ距離にまで迫った少年の体を
一方通行は一歩横に引いて避けると、その後ろ首に裏拳を叩き込む。
トントン、と少年が押し出された勢いで数歩前進せざるを得なくなる。
予想外の反撃にに目を細めながら、ゆっくりと後ろを振り返ると
既に一方通行は体制を整えたばかりではなく小太刀を構えていた。
「あンまり時間無ェンだけどなァ……」
「御託はいい、俺を焦らすな」
ビュン! といい終えるや否や少年はナイフを一方通行目掛けて投擲する。
一方通行は素早く反応し、飛んできたナイフを小太刀で弾き返したが
その隙に距離を詰めた少年の足が、ガラ空きになった脇腹に突き刺さった。
体の内側を駆け抜ける衝撃に一方通行は端正な顔を苦痛に歪ませる。
そんな彼の腹を少年は顔色一つ変えずに容赦なく腹に蹴りを入れ
跳躍すると、ガン! と一方通行の顎を容赦なく蹴り飛ばした。
体の芯を揺さぶられ、バスの車体に力なく背中を合わせる一方通行を
バク宙のように鮮やかに着地した少年が無機質な瞳で見つめる。
「弱いな、自分の中に確立した信念がないから何をしても迷いが生じる。
今のお前は周りに流される道化だ。身に余っているな、そのチカラ」
「言ってくれるじゃねェか」
一方通行は口の中に溜まった血反吐を横合いに吐き捨て
体を軽くほぐすと、手に持っていた小太刀を放り投げた。
ろくに狙いも定められずに放たれた刃は空を彷徨い
カン、とバスの車体にぶつかり小さな金属音を鳴らす。
それが合図となった。
二人に同時に地を蹴り、一メートルも無かった距離を一瞬で詰める。
少年は素早く拳を握りしめ一方通行の顔面に正拳突きを放つ。
バキ! と人を不快にさせるには十分な人肉を打つ音が鈍く響き
一方通行の顔がゆがみ、首が取れそうに見えるほど勢いよく曲がる。
しかし、少年の拳にはそれに相応しい感触は返ってこなかった。
「……自分で曲げたのか?」
「ベクトル操作は得意なンだよ」
殴られた勢いに任せるように一方通行は顔面にかかる衝撃を受け流すと
そのまま踊るように体を回転させ、すかさず少年の脛に向けて踵を放つ。
しかし、少年は狙われた足を素早く振り上げて急所への攻撃を回避し
そのまま空に浮いた足を勢いを殺さずにハイキックを繰り出す。
一方通行は僅かに屈み、頭上スレスレで少年の足をやり過ごし
地についている唯一の足を引っかけ、地面にころがせる。
「道化に負ける気分はどォだよ、悟り世代」
「気が早いぞ、早漏」
自身の体に馬乗りになろうとした一方通行を寝たまま蹴り飛ばし
その勢いを利用するように少年は後転し、一瞬で起き上がった。
「「……………」」
血のように赤い目と光を失ったような黒い眼が交差する。
これ以上、口で語ることは何もないと確認しあうように
ゴッ! と少年が鞭でたたかれた馬のように勢いよく走り出す。
対する一方通行は彫像のようにその場から一歩も動かない。
それどころか、体制を整えるどこか拳の一つさえ握らない。
(堕落したな一方通行、同じ手は二度も通じない)
表情には出さないものの心の中で失望を呟きながら
固く握りしめた拳を一方通行の顔面目がけて放つ。
顔を回して衝撃を防いだ所で蹴りを入れようと少年は足に神経を集中させる。
しかし、その拳が当たる前に一方通行はその手首を平手で横合いに弾いた。
「なっ……!?」
「オマエ今俺の事馬鹿にしたな?」
隙をついて蹴ることしか頭に無かった少年の体制が一気に崩れる。
その瞬間、一方通行は平たく伸ばした手で少年の喉に突き刺した。
少年の無表情な顔が初めて苦痛に染まり、よろよろと後ろに下がる。
一方通行はそんな少年に肉薄し、彼の耳に向けて裏拳を繰り出す。
だが、少年は二度も怯まずに一方通行の手を頭突きで弾き返し
一方通行の細い体を蹴り飛ばし、強引に彼との距離を作った。
「やはり、お前と戦うのは面白いな」
対峙した時は、不安定な心に惑わされている子供だった。
超能力があるならまだしも、それが無いなら敵ではない。
しかし、今は違う。
自らの弱点を敵に優越感を与えるために利用し
罠だと気づかずに誘い込まれた獲物を屠る狩人だ。
こちらの心理を先読みして、油断させてくる。
誘導させられているとは気づかないほど、心の奥底まで
注目するべきなのは、常人には考えられない精神的な成長速度だ。
きっと一方通行はここでは止まらない、さらに進化を重ねていく。
誰の手にも負えないほど、世界さえも叩き潰すほどに
正真正銘の怪物、少年は殻を破る手助けをした事を自覚していた。
しかし、無表情の下に隠れる少年の心に恐怖など微塵も無かった。
興味。
たったそれだけの純粋な感情が少年を突き動かしていた。
「さて、続きをやろうか」
低く腰を沈め、ゴッ!!! と一気に一方通行に突進する。
対する一方通行は少年の動きを予測しながら身構える。
「ごっ、がァあああああああああああああああ――――っ!?」
しかし、唐突に辺り一帯の空間に反響した悲鳴が両者の動きを止める。
続いて、べきべきごきごき! と何かを砕くような音が鳴り響く。
「……今日はここまでにしよう」
完全に集中力を無くした一方通行に少年は溜息交じりでそういった。
少年は一方通行の成長が見たいのであって、叩き潰したい訳ではない。
従って戦意が失われた一方通行と戦うことは彼にとって何の意味もない。
「手間取らせた詫びにこいつらの処理はやっておこう、行け」
「……恩に着る」
少年の言葉に一方通行は短く返事をすると上条達のいる方向へと走り出す。
その背中が完全に消えるのを見届けながら、床に寝ている警備員を小突いた。
「むー、むーむー」
「他人に獲物を取られたくないから、雇ったのにこの様は何だ?」
目を覚ました警備員は目の前の少年に何かを訴えようとしたが
凄烈さと冷徹さを兼ね備えた目に睨まれ何も言えなくなってしまう。
ぞわり、と震えと同時に滝のような汗が全身からあふれ出る。
「まあ、あいつは手練れだ。並大抵の人間が敵う相手ではない」
が、予想に反して寛容な言葉に警備員の服を着た男は僅かに安堵する。
よく見てみれば、少年の目は一見恐ろしいが殺意が一切ない。
暗部の人間が情けないな、と溜息をつこうとして―――
「あ、が……」
―――まるで栓を閉めたかのように、息が詰まった。
何が起きたのか全く分からない、思考を張り巡らせようとしたところで
ボタボタと自分が座らされている傍から聞こえる水温がやけに頭に響いた。
いくら何でも汗を書きすぎだろう、と目を音源に動かした男の動きが止まる。
透明だと思っていた液体は赤黒く、生き物のように粘々と広がり続けていく。
そこまで見て、男はようやく自らの身に何が起きているか正確に理解した。
自分では見えないところで、目の前の少年が自分の喉に何をしているかを
そう気づいたところで窯で熱した鉄を押し付けられるような激痛が喉を駆け巡る。
さらに叫べない苦痛と死への恐怖が男の精神をシュレッダーのように引き裂いていく。
「言いたいことはあるか?」
言葉と同時、口にはめられていた猿轡が取り外される。
しかし、男の呼吸が自由になることはなかった。
「な……ぜ……」
穴の開いた風船のような呼吸音と共に男は疑問を放つ。
現状は理解できるのに、どうしても納得ができない。
目の前の少年からは未だ殺気が微塵も感じられない。
「さあな、俺が知りたいぐらいだ」
抑揚の無い声でそう答えると、少年は手を軽く横に動かした。
瞬間、男は重度の風邪にかかったようにせき込みながら地面に倒れこむ。
彼はしばらく陸に打ち上げられた魚のように喉を両手で押さえつけながら
体全体を激しく動かしたが、徐々に動きが鈍り、ついには動かなくなった。
「さて」
男の最期を見届けた少年は視線を横へと走らせる。
獲物は四体、その全員が死んだように眠っている。
一〇分―――それが彼らに残された最後のひと時だった。
今回の投下はここまで
それでは、また
どうも、>>1です
諸事情ありまして、筆がまったく進みまでいません
このままでは一か月ルールに抵触してしまう可能性があり
生存報告やらなんやらで存続しても書ける可能性は低く
スレが落ちているのと同意義になる可能性も否めません
というわけで、このスレは落とす事にして続きはpixivでやることにしました
ちなみにpixivでの>>1のページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=7702436
というわけで、このスレのHTML依頼を出してきます。
こんな>>1ですが、これからもよろしくお願いします
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