エイラ「Shall we フライ?」 (132)

エイラ「ウィッチというものは実に小難しい生き物ダ」

エイラ「『祖国を守りたい』『ただ銃を持って飛ぶのが好きだ』『ネウロイへの個人的な復讐』『あこがれのウィッチがいる』」

エイラ「そんな千差万別な理由があって、それでもウィッチの目的は『ネウロイを倒すこと』、ただそれだけ」

エイラ「でも、『私は大切な人を守りたいからウィッチになったンダ!』なんてこっ恥ずかしいキザなセリフを言える人は…まあいないダロ」

エイラ「…じゃあ、私はどうしてウィッチになったんだろう」



坂本「準備はできたか?」

エイラ「ああ、大丈夫ダ」

ニパ「…ホントに行っちゃうんだねイッル」

エイラ「心配すんなって!」

ニパ「心配だよぉ」

ハンナ「寂しくなったら、いつでもスオムスに帰って来ていいからね」

エイラ「ナンダヨー皆…私が一人じゃ何もできない奴だと思ってるのカヨ」

ニパ「そう言うわけじゃないけど…」

エイラ「言っとくけど、私は被弾率0%のエリートウィッチなんだ。501統合戦闘航空団に行ったってまたエリートさ」

ニパ「う~ん…心配だぁ」

ラウラ「……とにかくもう出発だ、つべこべ言ってる暇はもう無い」

坂本「よしエイラ乗り込め。…長い長い旅の始まりだ」

エイラ「そんじゃ、スオムスの平和はまかせたぞー」

ニパ「イッルぅ…」

坂本「よし!出発だ!!!」



ゴウンゴウン……



ハンナ「行っちゃった」

ニパ「イッル…」

ラウラ「直前になって『やっぱいきたくネーヨ』とか言い出すと思ってた」


ゴゴゴゴ…


ラウラ「…大丈夫さアイツは」

ニパ「イッルぅぅ! 聞こえてるかぁ! イッルは確かにエリートだ! 優秀だ! スオムスにはイッルのファンもいっぱいいる! でも…」

ラウラ「…でも?」

ニパ「イッルはどこか"間"が抜けてる! 調子に乗るクセもある! しかもうたれ弱い! だから私はいつもイッルのことが心配なんだぁぁ!!」

ラウラ「おい」



 
坂本「…いいのか?こんなにあっさり出発してしまって」

エイラ「…スオムスを離れるのは正直辛い」

坂本「そうか…」

エイラ「でも、私がこれから所属する第501統合戦闘航空団は、世界中から集められた優秀なウィッチたちダ。未だかつて見たこと無いウィッチに会えると思うと、ワクワクが止まらない」

坂本「まあ…確かにうちは個性派揃いだ」

エイラ「だから、私は501に転属することにはためらいはなかった…スオムスの平和はあいつらが守ってくれるからナ」

 
坂本「そうか…皆、固い友情で結ばれてたんだな」

エイラ「もちろんさ! …昨日の晩はみんな夜通しで祝福してくれた…楽しかったなぁ…」

坂本「…本当にすまない。友情を割くような真似をしてしまって…」

エイラ「いいんダ。…ここでヘタってちゃ、みんなに合わせる顔もないからナ」




 
ゴゴゴ……

坂本「zzzzzz」

エイラ「zzzzzz」

?「ラン…ララ…ラン…♪」

坂本「zzzzzz」

エイラ「zzzzzzz…んっ…」

?「ララ………ラン……ララ♪」

エイラ「フア~ア…よくねた」

?「ララ…ララ…」

エイラ「ン………んん?」

 
?「ララ…ラン………ラララン…♪」

エイラ「窓の外に…」

?「ラララ……ラン……ラン…♪」

エイラ「………ナンダあの娘は…」

?「ララ…ランラン………ラン♪」

エイラ「……………」

?「ラララ……ララ♪」

エイラ「…………………」

?「ラララ…♪」

 
エイラ「…………………」

?「ラ……♪」

エイラ「……………………う……うつくしい…」

坂本「zzzzz…んっ……ん~~~~」

エイラ「……………あの娘も501のメンバーなのかな……」

坂本「……ふあ~ぁ……ん……おっ!エイラ、もうそろそろ基地に着くぞ」

エイラ「…………」

坂本「……どうした?エイラ」

 
エイラ「…へっ!? いっいや、なんでもない」

坂本「そうか、基地についたらまずは部屋に案内する。広くて住み心地のイイ個室だ」

エイラ「へぇ…」

坂本「…そのかわり、言うまでもないが訓練はとても厳しい…スオムスでの訓練とは比べ物にならないほどかもしれない」

エイラ「大丈夫ダ…覚悟はしている…」

坂本「…もう夜中だから、メンバーの紹介は明日の朝しよう。今日はしっかり睡眠をとるように、いいな?」

エイラ「は、はい」

坂本「どうした急にかしこまって…」




 
エイラ「…よし!荷物はすべて運び込んだぞ」

エイラ「確かに良い部屋だ。海が一望できる」

エイラ「………それにしても、あの娘が気になって眠れナイ」

エイラ「…………」

エイラ「……う~ん……」

エイラ「…………」

 
エイラ「………なんだ……妙にそわそわしてきたぞ」

エイラ「……………」


?「ラン……ララ…♪」

エイラ「……あっ!またあの声ダ」

?「………」

エイラ「基地に向かってくる……やっぱり501のメンバーだったんダナ」

?「………」

エイラ「…………………」




 
翌日

エイラ「ふあぁぁ…」

坂本「どうした?昨日はあまり眠れなかったか」

エイラ「まあ…」

坂本「とにかく、メンバーはもう皆集まってる」

エイラ「緊張するなあ…」

坂本「落ち着いて話せばいい。訓練のときは皆厳しいが、心は優しい奴らばかりだ、エイラならすぐ馴染める」

エイラ「だといいんだけどナ…」

 
坂本「皆、またせてすまない! 今から第501統合戦闘航空団の新しいメンバーを紹介する!」

シャーリー「おおっ! 待ってました!」

バルク「言っておくが、訓練についてこれないようなやつはいらない」

ハルトマン「おーおー、トゥルーデは相変わらず堅物だねえ」

バルク「ハルトマン、われわれはネウロイから世界の平和を取り戻すという使命があるんだ! 軍の起立についてこれない奴はとてもじゃないがウィッチとしての資格はない!」

シャーリー「まあまあ、今だけはそういう堅い話はナシにしようぜ」

ハルトマン「きっと、この前ことまだ根に持ってるんだよ」

ミーナ「ほら皆! 静かにして!…ごめんなさいね、騒がしい連中ばっかりで」

 
エイラ「だ、大丈夫ダ」

坂本「じゃあエイラ、頼む」

エイラ「え、えっと…スオムス空軍飛行第24戦隊第3中隊からきました!…エイラ・イルマタル・ユーティライネン准尉…じゃなくて、少尉」

エイラ「自慢じゃないけど、被弾率0%のエリートだった、えっと…固有魔法は『未来予知』、ヨロシク…」

シャーリー「よろしくな! エイラ、もっと気楽にいこうぜ!」

バルク「おい、リベリアン!」

シャーリー「なんだよ」

坂本「それじゃあ、それぞれ簡単に自己紹介してもらおう」

 
ミーナ「私は、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケよ。所属はカールスラント空軍第3戦闘航空団。501の隊長を務めているの、よろしくね」

エイラ「ヨロシク…(優しそうな隊長で良かっタ)」

ペリーヌ「わたくしはぺリーヌ・クロステルマン。中佐や少佐と同じく501統合戦闘航空団結成時からのメンバーですわ」

エイラ「よ、ヨロシク…(なんか絡みにくそうなひとダナ…)」

バルク「私はゲルトルート・バルクホルンだ。階級は大尉、私も創設メンバーの一人だ」

エイラ「ヨロシク…(この人、気難しそうダナ)」

バルク「もう一度言っておくが、起立に従えない奴はウィッチとしての資格はない。命令無視の独断行動なんてもってのほかだ」

エイラ「はい…(うわぁ…)」

 
シャーリー「私はシャーロット・E・イェーガー! 階級とかはどうでもいい! シャーリーって呼び捨てで呼んでくれ!」

エイラ「ヨロシク(この人とは打ち解けそうダ…ていうか胸大きいナ)」

坂本「自己紹介は全員済んだな」

エイラ(ん?昨日のあの娘は…)

ミーナ「本当はもう一人いるんだけど…とても引っ込み思案なの。未だに皆と打ち解けていないというか…」

坂本「ああ、だから夜間哨戒に任命した。他人と関わる機会を出来るだけ減らそうと思ってな」

エイラ「てことは今は…」

ミーナ「まだ部屋で寝ているわ。いつも夜遅くまで頑張ってくれているもの」

 
坂本「アイツだけは特別だな…夜にもネウロイが襲ってくる危険は十分にある。それもまた欠かせない仕事だ」

エイラ「せめて名前だけでも…」

坂本「ああすまない、彼女の名前は"サーニャ・V・リトヴャク"、所属はオラーシャ帝国陸軍586戦闘機連隊で、階級は中尉」

ミーナ「あまりサーニャさんとは話せる機会も多くないけど、もし会ったら仲良くしてあげてね」

エイラ「は、はい…」




 
訓練開始



エイラ(ナンダ、あの娘はあまり他人と関わらない人なのカ)

ミーナ「それじゃあ早速、ストライカーユニットを装着して飛んでもらいたいんだけど…いけるかしら?」

エイラ(今日の晩も窓眺めてたら会えるかな…)

ミーナ「エイラさん?…エイラさん!」

エイラ「はっ!はいっ!」

ミーナ「…聞いてた?」

エイラ「は、はい! えっと、スオムスで愛用していたユニットはBW-364号機で…」

ミーナ「そんなこと知らないわ。このストライカーユニットを装着して飛んでほしいって言ってるの」

 
エイラ「は、はいっ…」

ブウウウウン…

エイラ「よ、よし」

ミーナ「………」

エイラ「うわ……わわわわ!」

ガッシャアアア!

ミーナ「あらあら…」

エイラ「いてててて…」

ミーナ「やっぱりね…」

エイラ「な、なんでダ…?」

 
ミーナ「エイラさん、一つ聞きたいんだけど…スオムスで使用していたユニットはBW-364号機だけなの?」

エイラ「ソウダ…」

ミーナ「…たまにいるのよ、ユニットが変わっただけでまったく実力が出せない人が…」

エイラ「そ、そんな…! でも私はスオムス空軍のエースで…!」

ミーナ「エイラさん、スオムスでの活躍は知らないわ。とにかく、501で活躍するためにはこのユニットを使用してもらわないと困るの」

エイラ「………そんな…」

 
ミーナ「大丈夫、練習すればきっとうまくなるわ。スオムスでも、たくさん練習して、何度も失敗して、やっと一人前のウィッチになれたんでしょう?」

エイラ「はい…」

ミーナ「だったら絶対へこたれないこと。スオムスの仲間は、きっとあなたを応援しているわ」

エイラ「は、はい!」

ブウウウウウウウン…

エイラ「来い…! 来い…!」

ミーナ「頑張って!エイラさん!」

エイラ「今ダ!」

ブオオオオオオ…

エイラ「ヨシ!いったぞ!」

ミーナ「あっ!」

ガッシャアアアア!!

エイラ「………いてて…」

ミーナ「エイラさん!大丈夫!?」

エイラ「…大丈夫ダ……」

ペリーヌ「あらあら、スオムスのエースとはよく言ったものですわね」

 
エイラ「な、ナンダ貴様は!」

ペリーヌ「まあ、"貴様"なんて下品な言葉使いですこと。スオムス空軍とはこれほどまでレベルの低い集団だったなんて、驚きですわ~」

エイラ「ペリーヌぅ…!」

ペリーヌ「あなたに呼び捨てにされる覚えはありません」

エイラ「ナンダト!?」

ペリーヌ「それではわたくしは坂本少佐とのグループ訓練に参加しないといけませんので、これで」

ブウウウウン…

エイラ「あんのツンツンメガネ~」

 
ミーナ「ごめんなさいね、後で私からキツく言っておくわ」

エイラ「ぐう……もう一度、もう一度ダ!今日は飛べるまでずっと練習するぞー!」

ミーナ「そう!その気よ! 頑張って!」

バルク「…いつまで持つだろうな」

ミーナ「お前は…! えっと…」

バルク「バルクホルンだ! 全く…スオムス空軍一のエリートだと聞いていたが、正直がっかりだ」

エイラ「ナンダト!?」

 
バルク「お前もまた、自分の感情に任せて独断行動をするやつだ」

エイラ「な、なにっ!」

バルク「いいか?私達の足を引っ張るようなことだけはするな」

エイラ「わ、わかってる!」

バルク「フン」

ミーナ「ちょっとトゥルーデ!」

バルク「すまないミーナ、ただちょっとこいつの態度が気に触ったからな」

エイラ「こ、このおおお…」

バルク「おっと、訓練に遅れてしまう」

ブウウウウウン…

 
エイラ「…だろうナ」

ミーナ「でもね、その分"ネウロイから世界を守りたい"って気持ちも、人一倍強いから…だからあういう言葉を他人に浴びせてしまうの」

エイラ「はあ」

ミーナ「大尉なりの愛情だから…そこはわかってあげてね」

エイラ「はい…」

 
ミーナ「トゥルーデ…いえ、バルクホルン大尉は人一倍後輩に厳しいの…」

エイラ「…だろうナ」

ミーナ「でもね、その分"ネウロイから世界を守りたい"って気持ちも、人一倍強いから…だからあういう言葉を他人に浴びせてしまうの」

エイラ「はあ」

ミーナ「大尉なりの愛情だから…そこはわかってあげてね」

エイラ「はい…」

 
ミーナ「さあ!特訓再開よ!」

エイラ「と、とっくん…?」

ミーナ「ほら、エリートウィッチが弱音なんて吐くんじゃないの!」

エイラ「は、はい!」




 
エイラ「はあ…はあ…だめダ…」

ミーナ「どうしたものかしらね…あら?サーニャさん、もう訓練参加できるの?」

エイラ「!!!!!!」

サーニャ「はい…」

ミーナ「それじゃあ、バルクホルン大尉のグループに参加してくれる?」

サーニャ「はい…」

 
エイラ「ァ………ァ………サ……サーニャ………」

サーニャ「?」

ミーナ「あ、サーニャさん、彼女は"エイラ・イルマタル・ユーティライネン"さんよ」

サーニャ「…」

ミーナ「スオムス空軍からやってきてくれたの。今日から501のメンバーになったから、よろしくね」

サーニャ「はい……えっと…」

ミーナ「あ、もうサーニャさんの紹介は済んでるわ」

サーニャ「…」

 
エイラ「えっと……よ、ヨロシク!!」

サーニャ「……」

エイラ「スオムス空軍准尉…じゃなくて少尉! エイラ・イルマタル・ユーティライネン! えっと、固有魔法は『未来予知』で…趣味はタロット占いで…スオムスではイッルって愛称で呼ばれてて…それから…」

サーニャ「…」

エイラ「…と、とにかくヨロシクナ!」

サーニャ「…」

エイラ「…」ニコニコ

サーニャ「………あと何人くらい……増えるんですか?」

エイラ「へっ!?」

 
ミーナ「そうねぇ…あと2~3人てとこかしら、少なくても10人は必要ね…」

サーニャ「そうですか…」

ミーナ「じゃ、サーニャさん、本日の訓練もよろしくね」

サーニャ「よろしくお願いします……」

ミーナ「毎度言ってるけど、夜間哨戒のために体力は温存させておいてね」

サーニャ「はい………わかってます……」

ブウウウウウウン…

 
エイラ「へええ……」ボー

ミーナ「エイラさん!」

エイラ「はっ!」

ミーナ「どうしたの?サーニャさんに見とれちゃって」

エイラ「い、いや、何でもナイ…」ボー

ミーナ「…?」




 
坂本「みんな!集合しろ!」

バルク
ハルトマン
ミーナ
ペリーヌ     「はい!!!」
サーニャ
シャーリー

エイラ「は、はいっ!」




坂本「シャーリー、相変わらず速度を出しすぎだ。あれでは仲間に対してあらぬ被害が出かねない」

シャーリー「はーい」

バルク「ふざけているのかリベリアン!」

 
坂本「バルクホルンもだ! 真面目なのはいいが、今日は少し他人への口出しが多すぎた…自分の訓練が疎かになっているな」

バルク「す、すまない少佐」

坂本「私からは以上だ…ミーナは?」

ミーナ「いえ、私からは何も」

坂本「よし! 今日の訓練はこれにて終了だ! 皆しっかり休息するように!」

 
風呂

エイラ「なんだろう…私今日一日ずっと変だったナ」

エイラ「………」

エイラ「結局、新しいユニットでは、数秒浮くのが限界だ…」

エイラ「……………ハァ…」

エイラ「私、本当はエリートでも何でもない…ただの平凡なウィッチだったのカ…?」

エイラ「……………」

シャーリー「どうした新人! 浮かない顔して!」

エイラ「うわびっくりした」

 
シャーリー「環境が変わればいつもの調子が出ないってか!」

エイラ「はあ…まあナ」

シャーリー「気にすんなって!あたしも最初は苦労したものだ」

エイラ「そうカ」

シャーリー「あたしがウィッチになったきっかけって…何だと思う?」

エイラ「えっ…さぁ…」

シャーリー「あたしオートバイが趣味でさ、人類史上最速を目指してたんだよ」

 
エイラ「へえ」

シャーリー「そこでストライカーユニットなる物を知ってさ…『これならあたしはマッハすらも超えられる!』て直感的に思ったんだよ」

エイラ「へえ」

シャーリー「バカみたいだろ。『人類を救うんだ』とか『祖国は私の手で守る!』とか、そんなのあたし全く考えてなかったんだ…ただ、スピードを求めるだけにウィッチになったんだ」

エイラ「そうだったのカ」

シャーリー「そんな変な理由でウィッチになったあたしでも、こうして一人前になれたんだ…エイラにはもっと立派な"たたかう理由"があるんだろ?」

エイラ「あ、ああ」

シャーリー「だったら落ち込むこともないさ。あたしなんかよりもっと優秀なウィッチになれる。スオムスどころか、世界中にエイラをリスペクトする奴が表れるに違いないさ!」

エイラ「…ありがとう」

 
バルク「リベリアン、いつまで入ってるんだ」

シャーリー「うわっでた…」

バルク「なんだその態度は! お前は場所をとるんだ!早く出ろ!」

シャーリー「はいはい…じゃあな!エイラ」

エイラ「え、ああ…」

エイラ(ウィッチとしてたたかう理由かぁ…)

エイラ(………)

 
エイラ(『スオムスは私が守る!』ってか? 『姉の影響です』ってか?)

エイラ(……………だとしたら私はなんでこんなところにいるんダ)

ハルトマン「おーおー、おちこんでるねえ」

エイラ「…中尉?」

ハルトマン「ハルトマンって呼んでよ」

エイラ「…なんか用カ?」

ハルトマン「私きづいちゃった。エイラ、さーにゃんのことすごく気になってるでしょ」

 
エイラ「なぁっ!! そ、そんなことネーヨ!!」

ハルトマン「はははっ! エイラはごまかすのが下手だなあ!」

エイラ「ナ、ナンダヨ~」

ハルトマン「さーにゃんはさ、人付き合いが苦手で、しかもナイトウィッチだから私達とは会話する機会も多くないけど…実は内心は皆と仲良くなりたいって思ってるんだよ」

エイラ「そうなのカ!」

ハルトマン「うん、だから変に距離置いて接するより、もっとぐいぐい攻めたほうがいいよ」

エイラ「なるほど、ありがとうナ中尉!」

ハルトマン「だから名前で………まぁいいや」



・ 

 
エイラ「もっとサーニャのことが知りたい」

エイラ「わたしのことも、もっと知ってほしい」

エイラ「どうしたら私に心を開いてくれるだろうカ…」

エイラ「そうだ、今度の訓練のとき誘ってみよう」

エイラ「『私と飛ばないカ?』…チガウナ………」

エイラ「『サーニャ、訓練が終わったら少し話しよう』…これもちょっとチガウナ」

 
エイラ「…いや、とにかく、今はストライカーユニットに慣れることダナ」

エイラ「私はスオムスのエースだ。飛ぶことさえできれば、大尉もあのつんつんメガネもあっと驚かせられるに違いナイ」

エイラ「……今に見とけヨ~」



サーニャ「ラン……ランラン…♪」

エイラ「あ…この声…」

サーニャ「ランラン…ラ…♪」

エイラ「夜間哨戒から帰ってきたのカ…」

 
サーニャ「……ラン…ララ…♪」

エイラ「なんだろう…気のせいカナ」

エイラ「……とても寂しそうな表情ダ」

サーニャ「ラン……ララ…♪」

エイラ「…………」




 
ミーナ「さあ、エイラさん、今日も私とワンツーマンレッスンよ」

エイラ「はい!」

ミーナ「…新しいユニットに少しは慣れたかしら?」

エイラ「う~ん…どうダロ」

ミーナ「大丈夫、あなたならすぐに501でもエースになれるわ」

エイラ「なんでそう言いきれるんダ?」

 
ミーナ「昨日一日エイラさんを見てわかったんだけど、あなたに足りないのは技術じゃなくて『意志』なのよ」

エイラ「意志…?」

ミーナ「ええ、エイラさんは何のためにウィッチになろうって思ったの?」

エイラ「それは………ネウロイを倒すため…」

ミーナ「…そう、じゃあネウロイがこの世から消えたら、あなたはすぐにウィッチを辞めるのね?」

エイラ「………えっと……」

ミーナ「……ほら、自分ではわからないでしょ?」

エイラ「………」

 
ミーナ「目的がないのは悪いことじゃないの。問題は『目的を作ろうとしないこと』」

エイラ「…?」

ミーナ「スオムスでね、エイラさんがウィッチの訓練を始めた時、おそらくだけどとても厚い壁にぶち当たったと思うの」

エイラ「……」

ミーナ「そんなとき、あなたは諦めなかった。誰よりも強いウィッチになるんだって、強い意志を持って、ウィッチとしての技術と知識を身につけた」

エイラ「……」

ミーナ「なんて言ったらいいかしら…初めてストライカーユニットで空を飛んで、大地を見下ろした時の気持ちを思い出してみて」

エイラ「……」

 
ミーナ「いい?あなたはスオムスでエースになったのよ?」

エイラ「……」

ミーナ「だから、今は『目的を作る』ということが大事」

エイラ「……」

ミーナ「どうして私は空を飛ぶんだろうって、何でエースまで登り詰めたんだろうって、ね」

エイラ「…目的かあ」

ミーナ「後付でもかまわないわ。何があってもへこたれないためには、『目的』が必要よ」

エイラ「……」

 
 
 
サーニャ「………おはようございます…」


ミーナ「あらおはよう、サーニャさん」

エイラ「!!!!」

ミーナ「じゃあ、今日も一日ヨロシクね」

サーニャ「よろしくお願いします……」

ブオオオオオン…

 
エイラ「………」

ミーナ「ごめんなさい。さ、訓練を再開…」

エイラ「…………」

ミーナ「……エイラさん?」

エイラ「少佐……『目的』っていうのは、どんなにくだらなくても…いいのカ?」

ミーナ「ええ」

エイラ「聞いた人は笑いそうな…ことでもカ?」

ミーナ「もちろんよ」

 
エイラ「………決めた……私がウィッチになる目的…」

ミーナ「?」

エイラ「…大切な人ができたんだ………まだ仲良くはないけど…とても大事な大事な、命に変えても守りたい人が…」

ミーナ「素敵な理由じゃないの…ちっとも恥ずかしくはないわ」

エイラ「だから…だから私はウィッチになったんだああああ!!!!」

ブオオオオオオ…

ミーナ「!!!」

ゴオオオオオオオ!!!

 
エイラ「うおおおおおおおお!!!!」

ミーナ「と、飛んだわ!」

ゴオオオオオオオ!!!

ミーナ「す、すごい…」

坂本「おい!ミーナ!なんだあれは!」

ミーナ「あれがエイラさんの本当の実力よ」

坂本「……やはりスオムスのエースは伊達じゃなかったか」

ミーナ「そうね」




 
坂本「今日は皆一生懸命訓練に取り組んでくれた…私から言うことは何もない」

ミーナ「私も特に………エイラさん、今日は頑張ったわね」

エイラ「ハイ!」

坂本「明日からエイラも我々と同じ訓練内容だ。とても厳しいが、ついてこれるか?」

エイラ「もちろんダ!」

 
ペリーヌ「…どうしましたの急に」ヒソヒソ

シャーリー「昨日までとはまるで別人だ…」ヒソヒソ

坂本「よし!今日はこれにて訓練終了!各自解散だ!」

ミーナ
エイラ
シャーリー
ペリーヌ     「ありがとうございました!」
ハルトマン
バルク
サーニャ


エイラ「えっと……あ!サーニャ!」

サーニャ「!」ビクッ

 
エイラ「このあと一緒に部屋でお茶でもしないカ?」

サーニャ「…いえ、それはちょっと…」

エイラ「…………お茶は嫌いカ?」

サーニャ「そういう訳じゃ……」

エイラ「じゃあ遠慮するなって! サーニャのこともっと知りたいんだ私ハ!」

サーニャ「………」




 
エイラ「ささ、遠慮せずに…」

サーニャ「…」

エイラ「お菓子もあるぞー」

サーニャ「…」

エイラ「スオムスの定番スウィ~ツ、サルミアッキだ!」

サーニャ「…」

エイラ「ほら、好きなだけ食べていいからなー」

 
サーニャ「…あの」

エイラ「なんダ?」

サーニャ「…なんで私を?」

エイラ「へ?」

サーニャ「…シャーリーさんとか…ハルトマンさんとか…私なんかより明るくて楽しい人はいっぱいいるのに…」

エイラ「それは…!その…」

サーニャ「私苦手なんです…会話とか…その…他人と関わるのが…」

 
エイラ「…」

サーニャ「…ごめんなさい」

エイラ「サーニャが謝る必要なんて…」

サーニャ「…」

エイラ「…とっ、とにかく! 私はサーニャについてもっと知りたい!」

サーニャ「…」

エイラ「…だからいろいろ教えてくれ」

 
サーニャ「たとえば?」

エイラ「えっと…なんでウィッチになったのかとか、501に来るきっかけとか」

サーニャ「………憧れだったの」

エイラ「あこがれ?」

サーニャ「うん…祖国にね、すごく有名なウィッチがいたの。強くてかっこよくて…わたしもこんな人になりたいって…ずっと思ってた」

エイラ「へええ…」

サーニャ「でも、その時はただの憧れでしかなかったの…私がウィッチになるなんて思ってもいなかった…」

エイラ「…」

サーニャ「そしたらじきに私の国にもネウロイが侵入してきて…」

エイラ「…!」

 
サーニャ「私達の平和は一瞬で消えた…私は迷わずウィッチに志願したわ…」

エイラ「そんな…」

サーニャ「まだ幼かったけど覚えてるの…親はもちろん反対したわ…でも…現実は厳しかった」

エイラ「……」

サーニャ「親には会えない…大好きだったピアノも練習できない…何のためにウィッチになったのかわからなくなった…後悔した…辞めたいって思った…親を想って毎晩泣いた…」

エイラ「…」

サーニャ「素質はあったらしいの…『この娘は素晴らしいウィッチになるぞ!』なんて、何度言われたか…」

エイラ「…」

サーニャ「でもね、嬉しいと思ったことは一度もないの。優秀なウィッチになるより、私は親と静かに幸せに暮らしたかった…」

エイラ「…」

 
サーニャ「やがて私はオラーシャのウィッチの中で最も優秀になった」

エイラ「…」

サーニャ「そして私は501に所属になった」

エイラ「…そっか、大変だったんダナ」

サーニャ「…ごめんなさい…」

エイラ「あ、謝るなって! 変な質問した私が謝りたいくらいダ」

サーニャ「……エイラさんはどうしてウィッチに?」

 
エイラ「えっと…」

サーニャ「…?」

エイラ「『助けたい人』がいるんダ」

サーニャ「助けたい人?」

エイラ「うん、綺麗で、美しくって、まるで空から舞い降りた天使のような人…でも、いつも悲しい表情をしてるんだその娘は」

サーニャ「そうなの」

エイラ「まるで深い傷を負ったような瞳…その顔を見てると私まで悲しくなってくる…だから私はその娘を助けてあげたいんだ」

サーニャ「…」

 
エイラ「そのために、私はウィッチとして戦う。その娘のためなら私はなんでもする…そう決めたんだ」

サーニャ「…素敵」

エイラ「ま、まあ…ちょっとキザな気もするけどナ…」

サーニャ「……かっこいいわエイラさん」

エイラ「えっ!? 今なんて?」

サーニャ「『かっこいい』って………なんで顔赤くなってるの?」

エイラ「な、ナンデモナイ!// さ、そろそろ夕食ダ!」

サーニャ「そうね」

エイラ「あ、あと私はさん付けしなくていいぞ! "エイラ"って呼び捨てにしてもらって結構だ! それじゃ!」




 
 
エイラ「もう行くのカ?」


サーニャ「ええ、夜間哨戒は私の大事な仕事なの…」

エイラ「無理はするなヨ、あと寂しくなったらいつでも私の部屋に来いヨ!」

サーニャ「…大丈夫…もう慣れたものよ」

エイラ「そっか…じゃあ気をつけてナ」

サーニャ「うん」

ブオオオオオオ…

エイラ「…………」

 
数日後


ルッキーニ「わずか12歳にして天才的な才能と実力を兼ね備えたロマーニャが生んだ実力派ウィッチ、フランチェスカ~~~ルッキ~~~~ニ少尉!!!! 見参!」

シャーリー「だっはっは!! なんだこいつは!」

ペリーヌ「まだ子供じゃありませんの!」

バルク「とても実力があるようには見えない…いや、ウィッチにすら見えない」

シャーリー「気に入ったぞルッキーニ!私はシャーロット・E・イェーガー、長ったらしいから"シャーリー"って呼んでくれ!」

ルッキーニ「シャ~~~~リ~~~~!!!」

シャーリー「ルッキ~~~~ニ!!!」

エイラ「あほダ…」

ペリーヌ「坂本少佐!この娘が射撃も魔法力も名人級って、本当ですの!?」

 
ルッキーニ「うるさい!つんつんメガネ~!」

ペリーヌ「な、なんですってぇ!」

シャーリー「だはははは!!!」

エイラ「プフッ…」

坂本「ああ、実力はたしかに申し分ない」

ミーナ「だけどね…」

バルク「だけど…?」

坂本「まあ、見ての通り問題児だ」

 
ミーナ「ロマーニャ空軍の人も手を焼いたらしいわ…ユニットの破壊、乱射の繰り返し…挙句の果てには部隊を抜けだして勝手に帰宅…」

バルク「…なぜそんなやつを501に入隊させた」

坂本「実力はあるからな、ここで訓練すれば戦力になると考えた」

ミーナ「…(本当は無理やり送り込まれたのよ)」

坂本「というわけで、誰かルッキーニの世話係になって欲しいんだが…」

ルッキーニ「シャーリーがいい! 絶対絶対シャーリー!!」

ペリーヌ「あなた! ふざけるのもいい加減にしなさい!!」

 
ルッキーニ「べええええ!」

ペリーヌ「…!!」

ミーナ「しょうがないわねえ…シャーリーさん、暫くの間訓練はルッキーニさんと一緒でいいかしら?」

シャーリー「もちろん」




エイラ(やかましい奴が来たと思ったけど…ナンダ、これなら私とサーニャの仲は邪魔されそうにないナ」

サーニャ「………うらやましい」

エイラ「ええ!?」

 
サーニャ「…いつでも明るく振る舞って…初対面の人ともすぐ仲良くなれて………」

エイラ「…サーニャ?」

サーニャ「……私には無理…」

エイラ「…」

サーニャ「…」

エイラ「……そんなこと無いぞ!!」ガタッ

サーニャ「!!」

シャーリー「うわ、びっくりした!!」

坂本「急にどうしたんだエイラ!」

エイラ「い、いや…なんでもナイ」

 
坂本「そうか…ならいいんだが」

ミーナ「じゃあ早速、今日の訓練を開始しましょうか」

坂本「よし!じゃあ皆!ユニットを装着した状態で海岸に集合してくれ!10分後には皆揃ってるように!」

ミーナ「あ、そうそう、シャーリーさんとルッキーニさんとエイラさんは基地に残っててね」

エイラ「はい…って、ええっ!」

坂本「おまえたち3人はちょっと特殊な訓練をする」

ルッキーニ「にゃはっ! あたしたち特殊だって!」

エイラ(そんな…サーニャぁぁぁ…)




 
坂本「じゃあミーナ、あとはよろしく頼んだ」

ミーナ「ええ、行ってらっしゃい」

ブウウウウウン…

シャーリー「特殊な訓練ってなんだ?」

ミーナ「普段の練習を見ていたらね、シャーリーさんとエイラさんの2人は少し"クセ"があるのよ」

シャーリー「くせ?」

 
ミーナ「ネウロイと戦う上で、その"クセ"は直してもらわないと困るの」

エイラ「はあ…」

ミーナ「…ということで、本日訓練初日のルッキーニさんを交えて、2人のクセを直す特殊訓練を始めます。とりあえず3人ともユニットを装着してくれるかしら?」

ルッキーニ「りょーかいいいい!」

エイラ「なんなんだ"クセ"って…」  

ミーナ「えっと…皆装着できたわね、じゃあ50cmくらいの高さまで浮いてくれるかしら?」

エイラ「よっと」

シャーリー「こんな感じか?」

 
ミーナ「ええ、皆できてるわね。じゃあそのままゆっくりと、1mの高さまで浮いてくれる?」

ルッキーニ「あらよっと!」

ミーナ「……皆できてるわね」

シャーリー「…ちょっと待ってくれ! 今更そんな基本中の基本をやってもだな」

エイラ「私達はみんなウィッチのエースだぞ」

ミーナ「とにかく、今は私の言うとおりにやってちょうだい」

シャーリー「はーい…」

ミーナ「素直でよろしい、じゃあ今やったことを繰り返してくれる? "1m→50cm→1m→50cm"って感じに」

 
ブウン ブウン ブウン ブウン…

ミーナ「…徐々にスピードを早くしていくわよ」

ブン ブン ブン ブン…

ミーナ「ハイ! もっとはやく!」

ブンブンブンブンブンブンブン…

ミーナ「はい!そこまで!」

シャーリー「うはあああっ! これ以外と疲れるなあ!」

ルッキーニ「うじゅうううぁぁ!」

エイラ「……」ゼエゼエ

 
ミーナ「ほら、まだ訓練は序の口よ、そんなことでバテてるんじゃないの」

シャーリー「そんなこと…言ってもだな…」ゼエゼエ

ミーナ「ほら!皆もう一度50cmまで浮いて!」

シャーリー「はっはい!」

ミーナ「…じゃあ次はこれをやってほしいの」

エイラ「?」

ミーナ「まず足を前後に大きく開けた状態で停止して。右足が前、左足が後ろ」

シャーリー「こうか?」

 
ルッキーニ「ほいっ!」

エイラ「おおっ…ちょっとバランスが」フラッ

ミーナ「そう。そしてその状態から、足の位置はそのままに…"素早くまわれ左"! ハイ!」

シャーリー「ぅわぁ!」

エイラ「おあっ!」

ルッキーニ「うにゃあ!」

ガシャア! ガシャア! ガシャア!

 
エイラ「いててて…」

ルッキーニ「ううううう~」

シャーリー「こ、これは…」

ミーナ「あらあら」

ルッキーニ「こんなのできるわけないよ~~~!」

エイラ「腰が…」

ミーナ「やっぱり皆出来ないわね」

エイラ「当たり前ダ…!」

ミーナ「でもね、これも凄く大切な訓練なのよ」

 
ルッキーニ「なんで~?」

ミーナ「今まであなた達は、おそらく『バランスを崩したらすぐ元の体勢にもどれ!』って教えられてきたでしょう?」

シャーリー「ああ」

ミーナ「でも、501においては少し違うわ。より完璧な飛行を目指すためには、『バランスを崩すことも許されない』って思って欲しいの」

エイラ「なっ!」

ミーナ「そうじゃないと、その一瞬のシールドが弱まったスキにネウロイに攻撃される…なんてことが起こりかねないわ」

シャーリー「なるほど」

ミーナ「だから、501統合戦闘航空団の一員である以上、一瞬のバランス崩れも許されない…わかるわね?」

シャーリー「はい…」

エイラ「ハイ…」

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