上条「その幻想に」垣根「常識は通用しねえ」(559)

男「はっはっはっ―――!」

とある路地裏。アタッシュケースを抱えながら、男が走る
額には大粒の汗。髪はひどく乱れ、その顔に余裕は無い

男「はっはっはっは―――――!!」

ひたすら駆け抜ける。
まるで、なにかに怯えるかのように。
何かを、恐れるかのように。


やがて道が開けてきた。光が見える。

路地裏から抜け、走るのをやめる。
―――――もう大丈夫だ、助かった―――

男「はっはっ―――ここまでくれば」





垣根「ここまでくれば――なんだって?」

男「な」

―――天使の降臨。そう表現するのが適切だろうか。

白い翼をはためかせ、空に浮かぶその男――――――垣根帝督は、
軽く笑みをうかべながら、男の前へと降り立った。


天使に見えるその姿も、男からすれば悪魔のようにしか見えなかっただろうが。


垣根「さて、ゲームオーバーってとこだな。大人しく諦めな」

男「ク、クソがぁぁぁ!!」


バチバチッ!
男はそう叫ぶと体に電撃を纏う。

垣根「電撃使い―――レベル3から4ってとこか」

男から出る電撃によって壁は焦げ、飛んできた木の葉は一瞬で灰に変わる。

あの『超電磁砲』には格段に劣ってはいるであろうものの、威力としては十分なものだ。
人間を消し炭にするだけの力はあるだろう。


男「死ねええええ!!」

電撃が垣根に向かって放たれる。



しかし、


垣根「わりぃな。テメェごときならいつもは見逃してやるんだ、が――」


放たれた電撃に合わせて垣根が翼を振るう。
それだけで、全て終了だ。


男「ひっ、ひ、ぎゃぁああああ!!!」


垣根「少しばかり、おいたが過ぎたな」

―――――――――――

心理「お疲れ様、これで今日の仕事は終了ね」

ドレス姿の少女―――心理定規が垣根に声をかける。

垣根「まったく、こんな些細な事で俺を使うとはな。俺を嘗めてやがる」


不満を顔に出しながら垣根がつぶやく。
どちらかというと大人びた顔の垣根だが、この時にはまるで子供のような表情を浮かべる。

これだけを見たなら、垣根帝督が暗部組織のリーダーをしているなど思いもしないだろう。


心理「あら、いいじゃない。めんどくさい仕事よりも楽な方が」

垣根「ばーか。仕事ってのはな、やりがいがあるほど良いんだよ」

心理「ふうん。そんなものかしら」

と他愛もない話をしているところに下っ端のアシ役がやってきた。


下っ端「垣根さん、車の準備が出来ました」


垣根「了解だ。じゃあな」
心理「ええ、また今度」

とある住宅街。
一般学生には手の届かないような高級マンション。

その十階の一室に垣根の部屋はあった。

もっともこれは『スクール』の隠れ家の一つであり、垣根が私物化しているだけだが。



その一室で、垣根はグラスを片手にソファーにもたれていた。



―――まったく、無性にむしゃくしゃしやがる。

理由のわからぬ苛立ちを覚える。


グラスに入ったウィスキーを一気に飲み干し、垣根はふと考えてしまう。



今の、自分の境遇を。

VIPでここまで地の文があるのって、久しぶりに見た気がする

>>9 そのうち力尽きるんで安心してください。



―――いつからだろうか。これが当たり前になったのは。

暗部に身を堕とし、ヨゴレ仕事ばかりしてきた。

気がつけばもうこの有様で。もはやクズ以下だ。




俺は何故こんなことをしている?

俺は何故、



俺は何故、何の為に生きているのだろうか―――



―――バカか俺は。んな事考えててどうする。

考えて、考えて。

―――それで何が変わるってんだ。


そうだ、考えるだけじゃ、何も変わらない―――


まったく、これは悪酔いするな。少し頭を冷やすか。


と垣根が腰をあげた、その時。



ガタガタッ



外から、不審な音がした。

―――ベランダからみたいだな。一体なんだ?敵襲か?
ったく、人がむしゃくしゃしてる時に限って変なことが起きやがる。

いずれにせよ、ロクでもないことに違いはない。
さっさと片付けるか。



そう思った垣根はやれやれ、と言わんばかりに頭を振った。


そしてベランダへ向かい、




ガラガラッ!



一気に窓を開けた。

そこには――――――


「……お腹がすいたんだよ」


白い修道服をまとった、1人の少女がいた。

…おいおい、いくら俺に常識が通用しないとはいえ、こんな非常識は聞いてねえぞ。

なんだこいつは。ドッキリか?それとももう酔っ払って幻覚でも見始めたか?

などと垣根がいろいろ考えていると、


……ぐぎゅるるるる

インデックス「お腹がすいたんだよ」

目の前の物体Xがもう一度話しかけてきた


……そうだな、とにかくなんとかするしかないな


そう思った垣根は少女をひょい、と抱き上げ


インデックス「なにか食べさせてくれるのかな!?」


 ――そのまま玄関へ直行、ドアを開け少女を放り出し、カギをしめる
よし、これでOKだな

インデックス「むっきぃぃぃ!!いくら私でもこの扱いには怒るんだよ!」

 玄関のほうから変な声が聞こえるが気のせいだろう。大部疲れてるようだ。
少し休めばおさまるだろ――――――


インデックス「困ってる美しい少女を投げ捨てるなんて神罰がくだるんだよ!鬼なんだよ!悪魔なんだよ!」

……うん、幻聴じゃないなこれ。

無視だ無視。こういう時は何もかも忘れるに限る。


垣根はグラスに二杯目を注いでソファーに腰を下ろし、

そしてもう一度、グラスの中身を一気に飲み干した。

 十数分たっただろうか、
しかし、いまだ外からはギャーギャー声が聞こえる。


―――うるせぇな、オイ。
次第に苛立ちが募り始める垣根。

――いや、我慢だ。どうせそのうち諦めんだろ。
そう、こんなのにワザワザ構ってやる必要は―――


インデックス「鬼!悪魔!鬼畜!エセホスト!」



ピキッ、と音がした気がした。

―――ムカついた。このガキ、ちょっくら躾てやる

 垣根は玄関の鍵を開け、ドアを開ける。
目の前にはあのクソガキが一匹。

 さて、このクソガキをどう料理してやるか―――
と考えていたその時、


急に、目の前の少女がこちらに倒れた。



垣根「おい、どうした?」

目の前で倒れられて、垣根も流石に少し心配をしだす。
それに部屋の前で倒れられても迷惑だ。

が、


――――――ぐぎゅるるるるるるぴるぴるぴぴーーーーーー………

インデックス「…お腹がすいたんだよ……」
垣根「………結局腹かよ…」


拍子抜けするとともに、今まで垣根の中に溜まっていた感情が一気に抜けてゆく。

―――――結局、垣根の怒りはこの一言で完全に削がれてしまった。


垣根「ったく、なんか食わせてやるから中入れ」

インデックス「本当?!助かるんだよ!ありがとなんだよ!」

――俺も随分ヤキが回ったもんだ。
こんなガキに情をほだされるなんてな。


垣根はそう思いつつも、玄関を開いて少女を招き入れたのだった。

インデックス「ぷっはぁ!お腹いっぱいなんだよ!」

 自分の認識は間違いじゃなかったな。
 ―――こいつは物体Xで間違いない。


 インデックスの手によって部屋にあった食料をすべて食べ尽くされ、そう思わざるを得ない垣根であった。

インデックス「なかなかおいしい料理だったんだよ!ありがとうなんだよ!」

垣根「作ってくれるやつがいねえからな。自然と腕も上達するもんだ」

垣根「……しっかし、ブラックホールかテメエは。なにをどうしたらその腹に収まるんだ?」

インデックス「育ち盛りの女の子にとってこの程度は朝飯前なんだよ!」

 いや、それを威張られても。
と思う垣根であったが、そんなことよりもまず話を聞くことが先だろうと考える。

垣根「……で、お前は一体何者だ?なんでベランダにいた?」

インデックス「インデックスっていうんだよ!イギリス聖教の麗しきシスターなんだよ!」

どうみてもただのちんちくりんだろうが、と思いつつも話を進めるため口をつぐむ。

インデックス「で、なんでベランダにいたかってことなんだけど……落ちちゃったんだよ」

垣根「はあ?落ちた?」

インデックス「うん。飛び移ろうとして失敗しちゃったんだよ」

……飛び移る?どこから、どこへ?仮にもここは十階だぞ?

垣根「…俺の知らないうちに、世の中ではずいぶんファンシーな遊びが流行ってんだな」

インデックス「遊びなんかじゃないんだよ。追われてたから仕方無かったの」

垣根「……それまたファンシーな遊びを」

インデックス「だ・か・ら遊びじゃないんだよ!ホントに追われてるんだよ!」

垣根「はいはいわかったわかった」


軽くあしらう垣根に、インデックスはほほを膨らませる。

インデックス「……ばかにしてるね?」

 いやバカはお前の方じゃないのか?と思いつつも口には出さず質問を続ける。

垣根「してないしてない…で、このお嬢ちゃんは何に、何で追われてるって?」

インデックス「魔術結社に狙われてるんだよ」

 ……一体何を言っているのだろうか?魔術結社?

垣根「…あーどうも耳が悪くなったみたいだ……もう一回言ってくれるか?」

インデックス「だから魔術結社なんだよ、マジックキャバル。私の持ってる10万3000冊の魔道書を狙ってるみたい」


 ……なるほど、俺以上のメルヘンヤロウってのはこの世にいたんだな。

垣根「…おとぎ話をするなら近くにある保育所を紹介してやるが」
インデックス「まったく信じられてないんだよ!ひどいんだよ!」


垣根「ここは科学の街、学園都市だ。魔術結社だのなんだの、んなもん信じる方が少ねぇっての」

垣根「だいたい、10万3000冊の魔道書だ?んなもん何処にあるってんだ?」

インデックス「ちゃんと今全部持ってるんだよ」

 ……言ってる意味がわからねえ。今持ってる?10万3000冊を?
バカには見えない本ってか?それともこいつがバカなだけか?
何を言ってるんだコイツは?


 そう思った垣根は、


垣根「アアソウナンデスカースゴイデスネー」

 理解を放棄する方向に決定した。
 
インデックス「……やっぱりバカにしてるね?」

垣根「シテマセンヨ―オジョウサンー」

インデックス「……そこはかとなくバカにしてるね……?」

 そう言うやいなやインデックスが震えだす。

 なぜだか垣根の体に悪寒が走る。


 ―――なんだこれは。嫌な予感がする。
今からひどい目にあわされそうな。
具体的に言うと、鋭いもので皮膚を挟まれそうな―――――


垣根「……で、お前はこれからどうすんだ?流石にずっとここにいるつもりじゃねーだろ?」


 話題転換。


 インデックスの顔は相変わらず不満で一杯そうだったが、

インデックス「うん、これ以上迷惑はかけられないからね。近くの教会に匿ってもらうつもりなんだよ」

 とりあえず、垣根の思惑に乗っかるのであった。


垣根「教会ねえ……このあたりにあったっけか」

 頭の中の地図を展開するが、少なくともこの近くにあった覚えは無い。
 だいたいここは科学の都なのだ。宗教がらみの施設など皆無といってよいだろう。

……何故こんなことを思ったのか。
それは垣根自身にも良く分からなかった。

垣根「……なんなら送っていってやろうか」

インデックス「え?」

垣根「学園都市には来たばっかなんだろ?道案内位してやるよ」


……それはただの気まぐれか、それとも乗り掛かった船という言葉が適切か。

ただ、

なぜだか、このガキを放っておけなかった。


予想外だといわんばかりにインデックスが驚きの表情を浮かべる。

しかし、驚いた表情はすぐに微笑へと変わった。

インデックス「………アナタは優しいんだね」

垣根「そんなんじゃねえよ。ただの暇つぶしだ、暇つぶし」


インデックス「でも、遠慮しとく。迷惑になるから」

 その時のインデックスの表情は、優しい微笑みに満ちていた。
 垣根から見ても、それは聖母の微笑みと言っていい位のものだった。


 だが。

 ――――コイツは。


 職業柄、垣根は様々な人間の、様々な表情を見てきている。
 
 例えば、裏に打算を含めた顔。
 例えば、自分以外を信用していない人間の顔。
 例えば、絶望に打ちひしがれた顔。



 ―――例えば、諦めに満ちた微笑を。

しかし、

垣根「ああそうかい、そりゃ残念だ」

垣根はあえて突っ込むような真似はしなかった。

それはあくまでこのガキの中の問題だ。俺には関係ない。

まして俺に、人を助けるような筋合いは、無い。

インデックス「そういえば、あなたの名前聞いてなかったかも。教えてほしいんだよ」

ふと思いついたかのようにインデックスが尋ねる。

垣根「……別に教える義理もねぇだろうが」

インデックス「そんなこと言わずに教えてほしいんだよ」

それでもなお食い下がるインデックス。

やれやれめんどくさいやつだ。
垣根はそう思いつつも、


垣根「………垣根帝督。『みかど』に監督の『とく』で帝督だ」

結局教えることにした。

インデックス「カキネテイトク………いい名前なんだね」

垣根「別にそうでもねぇだろ。大した名じゃねえよ」

インデックス「それじゃお世話になったんだよ」

 インデックスが玄関から出ようとし、振り向く


インデックス「ありがとなんだよ、カキネ」

インデックス「カキネに神のご加護がありますように」

 そう言って、インデックスはマンションを後にした。



垣根「ありがとう……ね」

 最後に聞いたのはいつだったか。
 最後に言ってくれたのは誰だったか。
 そもそも、そんな言葉を言ってくれるようなやつはいたのだろうか。


 ―――――――俺にまだ、そんなことを言われる権利が残っているのだろうか。

 インデックスの言葉がチーズになりそうな位に頭の中をぐるぐるかけめぐり、

prr!prr!

 ポケットの中で鳴り響く着信音にかき消された。

垣根「ったく………」
 
 ポケットの携帯電話を握りしめる。着信相手は……見なくてもわかる。

垣根「やっぱり、俺には似合わねえな」

 バカは俺の方だったか。

 非常識な事に出会って、心を乱された。

 一瞬だけ、光を探しちまった。

 ――――――俺は垣根帝督、『スクール』のリーダー。

 そんな言葉はいらない。俺に、光は必要ない。


 そうして垣根は、『現実』へと引き戻された。

 血の匂いのする、闇の世界へ。

上条と馬を藤間って下の名前で呼ぶんだから普通テイトクだろ

>>42 それもそうだったorz

――――――
 
 結局、その日の仕事が終わったのは夕方になってからだった。

 ―――――――あーあ、めんどくさい仕事だった。さて、さっさと帰って一杯やるかな。

 そう思う垣根だったが、ふと空を見上げ―――気が変わる。


下っ端「垣根さん。車の準備が」

垣根「いや、今日はいい」

下っ端「え?で、でも」

垣根「今日は歩いて帰りてぇ気分なんだよ。のんびり雲が泳いでるしな」
下っ端「は?」

垣根「いや、なんでもねぇよ」

 学園都市を散歩する、なんていうのは初めてかもしれねえな。

 歩きながら、垣根はそう思って周りを見渡す


 学校終わりだろうか、多くの学生が帰宅の途についているようだった。

 暇なので、その中の何人かを観察してみる。


 大勢で笑いあう者。
 数人で話し合う者。
 仲のよさそうなカップル。

 いかにも青春を謳歌しているような奴らばかりだ。

 これもまた、学園都市のひとつの顔であることは間違いない。

 しかしそれがあくまで学園都市の『ひとつ』でしかないことも間違いない。

 ―――こいつらは知らない。学園都市の『裏』の顔を、
 学園都市の『真』の顔を。

 まあ一生知らないままだろうし、知らない方が幸せなのも間違いないな。


 などとどうでもいい事を考えながら歩いていたその時。


 ドンッ
 
 なにかがぶつかってきた。

 何だ?と思い確認する。


上条「はっ!すいません!お怪我はありませんか?」

 そこにいたのは、ツンツン頭の少年。

 すぐ後ろを見ると、制服を着た少女もこちらを見て立っている。

美琴「ちょっとなにやってんのよアンタ。人の迷惑考えなさいよ」

 呆れた顔で少年の方を見る少女。よく見るとあの常盤台の制服を着ている。

上条「いや、ホントにゴメンナサイ……て、元はと言えばそっちが追っかけ回してきたからじゃねーか!」

美琴「アンタが逃げるからじゃない、大人しくしてれば別に追い掛け回すつもりなんか―――」


垣根「……あーあー、痴話喧嘩はそこらでいいか?」 

 長くなりそうだと思い、垣根が横やりをいれる。

美琴「ちょ、ちょっと痴話喧嘩って」

 耐性が無いのか、少女の顔が赤みがかってくる。

 ―――これはおもしれえ。

垣根「なんだよ、チガウのか?端からみりゃ夫婦漫才に見えんぜ」

美琴「め、め、夫婦って。別にそんなんじゃ、」

 さらに少女の顔の赤さが増す。
 
 もう一息行くか。垣根がそう思ったその時、

上条「そうですよ。上条さんとコイツとは全然、まったく、これっぽっちもそんなんじゃないですって」

 少年の方から、冷静な一言が刺さった。

美琴「………………」

上条「あれ?なんで若干不機嫌になってるんでせうか……?」

 少女の顔が苦虫をつぶしたようになったかと思うと、体から電流があふれ出てくる。

上条「み、ミサカサン?すこ―し落ち着いた方が…」

美琴「……言われなくてもわかってるわよ」

 おもしれえ奴らだなー。

 と思っていた垣根だが、女の方を見てふと気がつく。


 ―――――常盤台の制服。発電能力者。ミサカ。

 となるともしや、


垣根「……超電磁砲か?」

美琴「あら、よくわかったわね」

垣根「有名だからな。レベル5の中じゃ露出も高いしな」

垣根「第三位、超電磁砲の御坂美琴。常盤台のお嬢様ってか」


上条「まあお嬢様というよりはただのビリビリですけどね」

美琴「……だ・れ・がビリビリですって~?」

 上条の一言で、体に流れていた電流が一気に威力を増す。

上条「イヤ、あの美琴さん?これは言葉の綾というか」
美琴「問答無用よ!」

 そう言うや否や、御坂美琴は上条へと電流を放った。


 バシュウウウウウ………!!

上条「あ、あっぶねえ!」

 電流は上条のギリギリ足元へと落下した。


 ――――流石は第三位。遊びのそれでこの前の雑魚のよりも威力を持っている。
 だてに『超電磁砲』を名乗るだけはあるようだな。


 ……て、それをこの少年に放っていいのか?

 などと垣根が考えていると、


上条「と、とにかくすいませんでした!それじゃ!」

 上条は垣根に一礼した後、
 そのまま背を向け、一気に走りだした。

美琴「あ、コラ待ちなさい!」

 後を追う超電磁砲。その表情は修羅か羅刹か、といった所か。
 

 ヤレヤレ、これは当分追い回されるんだろうな。
 頑張れ、少年。


 垣根は心の中で、少年に黙祷を捧げるのであった。

 十数分後。帰り道。


 ――――どうも、ここ数日は常識外にばかり会う日みたいだな。

 垣根は歩きながらそう思っていた。

 ――――変なシスターに超電磁砲。
 もしかすりゃあ、ホントに魔術師とやらとも出会えそうだ。


 まあ、まさかな。

 自分で思った冗談で、思わず笑いそうになる。

 ―――魔術師と出会う?バカバカしい。
 それならまだUFOがやってくるとか、火星人が襲来してくるって言った方が現実的だぜ。

 第一、もう人っ子一人外にはいねえみたいだし―――――

 そう思った瞬間。


 不思議な感覚が、体を通り抜けた。

 その感覚を感じた方向を見上げる。

垣根「(どっかの学生寮か。今度は一体なんだ?まさか本当に――――――)」



 いくら人がいないとはいえ、能力をそう簡単に使うのもマズイ。

 そう考えた垣根は寮の入口まで行くと、階段を一気に駆け上がり、気配の下へと走った。


 ―――ここだ

 気配のする階に着いたその時。


 ―――――ざわっ…


 激しい胸騒ぎに襲われる。


 嫌な予感がする、ここから先には行くべきじゃない。

 今すぐ引き返せ。今ならまだ間に合う。

 引き返せ。引き返せ。引き返せ。



ヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセ
ヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセ
ヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセヒキカエセ――――――――――!!!

垣根「――――五月蠅え。黙れ」

 その一言で自分への警告を振り切り、歩みを進める。


 頭の中を駆け巡る警告音がMAXになる。間違いなくここが最終ラインだ。

 いつもなら、こんなめんどくさそうなことは放っておくに違いないのに。

 それでも、垣根は自らの歩みを止めなかった。



 そしてたどりついた先にいたのは――――――

 煙草をくわえた、長身で赤髪の男と。


 ――――――白い修道服を朱に染めた少女だった。

申し訳ないけど、ここで一旦休憩入れさせてください。

10~20分以内には戻ってくる予定です。

面白いね
支援

すいません、お待たせしました。
それでは再開します。

ステイル「……ここにはもう誰もいないと思っていたんだけどね」

 ステイルが値踏みをするかのように垣根を見据える。
 
ステイル「やれやれ、これは面倒なことになってしまった」


インデックス「テイ………トク………なんでここに………」

 血まみれのインデックスが垣根に話しかける。

インデックス「早く………逃げ……………て……」

 そう言い終わるとインデックスの体から力が抜ける。
 意識を失ったらしい。

垣根「……それはテメエがやったのか?」

 垣根が念のために、目の前の男に尋ねる。
 
ステイル「正確には僕の仲間が、だね」

 悪びれる様子もなくステイルが話しだす。

ステイル「彼女の着ている服は『歩く教会』と呼ばれる霊装でね。一切の攻撃が通用しない代物だったはずなんだが――――何の因果か砕けてしまっているようだ」

垣根「しっかし、よってたかってこんなガキを追い回すたぁテメエらあれか?ロリコンか?」

ステイル「……なかなかヒドイ事を言ってくれるじゃないか」

ステイル「これは外に出回っちゃいけない、大変危険なものだからね。すぐに『回収』する必要があるのさ」

ステイル「正確に言えば、危険なのは彼女の持つ10万3000冊の魔道書の方なんだけどね」


 ――――――だから魔術結社なんだよ、マジックキャバル。
私の持ってる10万3000冊の魔道書を狙ってるみたい――――――


 あの時の会話が脳裏に浮かぶ。

垣根「……ならこんなガキに構ってねえで、その10万3000冊とやらを直接回収すりゃいいじゃねえか」


ステイル「それは残念ながら不可能なんだよねぇ。だってその10万3000冊は、」



ステイル「―――――彼女の頭の中にあるのだから」

ステイル「完全記憶能力者……というものをご存知かな。つまりはそういう訳だ」

なるほど、そういう訳ならこいつが言ってた事も納得できる。

頭の中。そりゃ、バカじゃなくったって見えねえ訳だ。


垣根「……ったく。説明するならしっかりやれっての」

ステイル「……っと、少し余計なことまで喋ってしまったようだ」

ステイルが口にくわえた煙草を手にし、垣根の方を向く。

ステイル「……さて、これは君とはまったく関係のない事なんだ。今すぐ立ち去って、忘れてはもらえないかな?」

提案のような脅し。有無を言わせぬ警告。

この魔術師は、言外に「消えろ」といっているわけだ。

叩かれようが何言われようがどうでもいいけど
ちゃんと終わらせてね
支援

垣根「………そうだな。俺とはまったく関係ねぇしな」

 このガキがどうなろうと、このガキがどういう運命を歩むのだとしても俺には関係ない。

 だいたい、コイツとは昨日あったばかりな訳だし、むしろ一度助けてやった側だ。

 これ以上訳のわからん連中と関わって面倒を起こす必要は、無い。



 ――――――――ありがとなんだよ、カキネ
カキネに神のご加護がありますように―――――――――――


 ――――――それでも。


垣根「だから、個人的にテメェをぶちのめす」


垣根「―――――――ムカつくんだよ、お前」

ステイル「…やれやれ、それじゃ仕方ないね」

 やれやれ、と言わんばかりにステイルがかぶりをふる。

ステイル「¬¬¬―――『Fortis931』」

 ステイルがそうつぶやくと、ガラリと雰囲気が変わる。

 
 垣根のよく知る空気。
 死の気配、血の匂い。


ステイル「これは魔法名といってね。昔は相手に名前を知られてはいけないなんて言い伝えがあったそうだが……まあそれはどうでもいいか」

ステイル「そうそう、僕の本当の名はステイル・マグヌスというんだ。覚えておくといい」



ステイル「――――――自分を殺す相手の名前位はね」

 ステイルの手からタバコが落ちる。

ステイル「――――炎よ」

 するとその言葉に呼応するかのように煙草の炎は、ステイルの右手の上で渦を作る。
 その炎は徐々に増大していき、今やステイル以上の大きさになっている。

ステイル「これが魔術ってやつさ。天国へのいい土産話になるだろう?」

 ニヤリ、とステイルが笑う。

垣根「ああそうだな、話のつなぎ位にはなりそうだ」

 それでもなお、垣根は余裕を崩さない。


 ステイルがその手を大きく振りかぶる。

ステイル「巨人に苦痛の贈り物を!」

 その手の上で渦巻く炎は、

 そのまま、垣根を飲み込んだ。

ステイル「やれやれ」

 そう呟きながらステイルが髪をかきあげる。

 まったく無駄な戦いをしてしまった。
 インデックスを回収して、早く帰らねば――――――



 ―――――――――ゾクリ。


 急に、


 背筋が凍りついた。
 
 おぞましい気配のもとを確かめるべくステイルが振り向く。


 そこには―――――――――


垣根「なるほどな。魔術ってのはこんなもんか」

 六枚の白い翼を展開した、垣根帝督の姿があった

垣根「なかなか大した威力じゃねーか。土産話には勿体ない位だ」


垣根「――――ただ、相手が悪かったな」

 口元には笑み、動作は緩慢。

 だが、その眼はまるで相手を射殺すかのような光をたたえていた。



ステイル「な………その羽は一体…………?」

 呆然とするステイル。だがすぐに意識を戻す。

 ―――ステイルの全身に緊張が走る。


 この男は、只者ではない。
 全力を出さねば、こちらが殺られる―――――――!!


ステイル「やれやれ、いきなりこいつを使う事になるなんてね――――!」

 ステイルの周りに再度炎が集まる。
 今度は、先ほどの比ではない。

ステイル「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ
 それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり
 その名は炎、その役は剣
 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ――――――!!」



 ステイルの詠唱が終わると同時に、その場に巨大な炎の巨人が姿をあらわす。
 真紅に燃え盛る炎、圧倒的な質量をもつ炎の塊。

 その3000℃の炎の塊は周りの壁やドアノブを溶かし始める。


ステイル「魔女狩りの王イノケンティウス―――意味は『必ず殺す』さ」

垣根「…っは。これがテメエの切り札か」

 垣根がそう呟くと同時に、イノケンティウスが手の十字架を振りかぶる。

垣根「邪魔だ、デクの坊が」

 しかしその暇は与えない。

 翼を一気にはばたかせ、それによって引き起こした風と翼そのものをイノケンティウスに向けて放つ。

 イノケンティウスがハリケーンのような強風にあおられる。

 だがさすがと言うべきか、その風を受けてもなおイノケンティウスは原形を保っていた。
 しかしそれも、翼の直撃を受けかき消える。

垣根「さて、これで終わりか……?!」

 だがすぐに、垣根は驚きに目を見開く事になる。
 吹き飛ばしたはずのイノケンティウスがすぐに再生を始めたのだ。

垣根「なるほどな。メンドクサイやつだ――――!」

 イノケンティウスが垣根へ肉薄する。
 それを、翼を用いて前へ押し返そうとする垣根。まさにおしくらまんじゅうだ。

ステイル「僕もいることを忘れないほうがいいよ?」


ステイル「――――灰は灰に。塵は塵に。」

 ステイルの両手に炎があらわれ、

ステイル「吸血殺しの紅十字!」

 それを、垣根の背後へと放つ。

垣根「ちっ」

 ステイルの放ったそれを残りの翼で打ち消す。
 その炎が垣根自身へ届く事は無く、ダメージはゼロ。

 しかし。


垣根「ぐっ」

 その隙をつき、さらに前へと進もうとするイノケンティウス。
 このままでは、どちらかから押し破られるのは明らかだ。


垣根「挟み撃ち………ってか」


 前方の虎、後門の狼。
 絶体絶命、危機一髪。

>>ステイル「…やれやれ、それじゃ仕方ないね」

>> やれやれ、と言わんばかりにステイルがかぶりをふる。


やれやれって言ってるじゃねーかwwww

>>111 Oh……… 死にたい


 だが、

垣根「甘えよ」


 もう一度、垣根はその翼でイノケンティウスをかき消した。

ステイル「はっはっは!無駄だよ、そいつはいくら消そうが消えることはない!」

 だが、それにもかかわらず垣根はイノケンティウスを攻撃し続ける。

 消されてすぐイノケンティウスは再生し、そしてその直後にかき消し、また再生する。
 かき消し、再生。かき消し、再生。かき消し、再生。かき消し、再生――――――


 しかし、何度やろうと、イノケンティウスが消えることはない。

 それは自然の摂理。無駄な抵抗。覆ることのない現実―――――

支援

 ―――――――――――そのはずだった。


 だが、ステイルが違和感を感じ取ったのはすぐだった。



 ―――――――イノケンティウスが、小さくなっている?

 そんなばかな。ありえるはずがない。
 イノケンティウスは、ルーンの刻印がなくなるまで決して消えることはない―――――

 
 焦燥感に駆られる。


 なにかわからない。だが、早くこいつを倒してしまうべきだ――――――

 ステイル「吸血殺しの………紅十字!」

 もう一度ステイルが炎を放つ。

 しかし、


ステイル「な、なに?!」


 ステイルが放った炎は、明らかに威力が半減していた。
 いや、半減どころではない。もはやボヤ程度のものだ。


ステイル「貴様、一体何をした!!」

垣根「バカかテメエは。自分から種をバラすような奴なんかいるかよ」

 ―――――『未元物質』の能力は、この世に存在しない素粒子を作り出し、物理法則を塗り替えるというものだ。

 その能力をもってすれば、この世の法則も、自然の理も全ては垣根の思いのまま。無意味と化す。


 『火の燃焼』


 それもまた、物理法則に従うものにすぎない。

 ならば―――


垣根「まあ、一言だけ言ってやるなら―――――」

垣根「悪いな」




     「俺の『未元物質』に常識は通用しねえ」


ステイル「く、くそっ!イノケンティウス!イノケンティウス!?」

 もはやイノケンティウスはステイルよりも小さくなり、


垣根「じゃあな、デク人形」

 翼に押しくるめられるや否や、完全に姿を消した。


ステイル「くっ!何故だ?!一体何が起こっている?!」


 魔術は確実に発動しているはずなのに、

 ステイルが炎の魔術を行使しようとしても、炎が発生することはなかった。

 にじり寄る垣根に後ずさりするステイル。

 もはや逃げ道はない。
 勝敗は決した。


垣根「絶望しろ、クソヤロウ」



 ――――――――強い気配。

 ズガガガガガッ!

 それに気づいた垣根がよけるのと、衝撃が来るのはほぼ同時であった。

 床、手すり、壁全体に激しい亀裂が走る。



神裂「…まったく、一体何をしているのですか?ステイル」

 隣の棟の屋上。そこに神裂火織はいた。

ステイル「神裂か………すまない、助かったよ」

垣根「おーおー、ようやくボスの登場ってか」


 軽口を叩きながらも、垣根は神裂から目を離さなかった。


 ――――――今の気迫。こいつは只者じゃねえな。


 神裂のほうもまた、一目で垣根の実力を見抜く。

 一瞬の膠着。

垣根「で、どうする?二人がかりでも俺は構わねえが」

 先に話しかけたのは垣根のほうだった。

 もっとも本音を言えば、なんの準備もしていない今、神裂と戦う事が得策でない事位はわかっていた。


 ――――だが、こういう時は引いたほうが負けだ。

 余裕の表情は崩さず。しかし神裂から決して目を逸らすこともせず。

 互いの目線がぶつかりあう。

神裂「そうですね……インデックスの回収は最優先事項。今すぐにでも何とかしなければなりません」


神裂「…ですが、今は少々分が悪い。至極残念ですが、ここは撤退させていただきます」


 神裂のほうもまた、垣根と戦うのは得策ではないと考えていた。

 あのステイルが敗れた相手だ。うかつに手を出すべきではない。

 それに――――――インデックスの傷をそのままにする訳にもいかない。


神裂「いずれ会うでしょう。それまで、インデックスは預けておきます」

神裂「では、また」

 そういうや否や神裂は姿を消していた。

 振り向くとステイルの姿もない。


 ――――――やれやれ、何をしてんだかな俺は。
 厄介事に首を突っ込んじまった。

 だが、反省も後悔も後だ。まずはこのガキをなんとかしねえと―――


 垣根はそう思い、インデックスの方へと向かった。

傷はなかなか深いようだ。
早く治療しなければマズイ。

このあたりに病院は――――――いやまて、こいつを学園都市の人間に見せて大丈夫なのか?

となると、『裏』の人間に任せるべきか――――それもマズい。

どうすりゃいい――――――?


垣根がいろいろと思考を巡らす。

 その時。


 ――――――――ジャリ


 ……それより先にやらなきゃいけねえ事が増えたみたいだな。


 背後に気配を感じる。

 ―――――まさかこの時期に、俺以外にこんなところに来るやつがいるとはな。


 また面倒くさくなりそうな雰囲気を感じ取りながらも―――――振り向く。



上条「―――なにやってんだよ、お前」

 そこには、ツンツン頭の少年。
 よく見れば、つい先ほど見た顔だ。


上条「インデックスから離れろ」

 怪しい男1人に、血まみれの少女1人。

 なるほど、この状況を見りゃ勘違いすんのもわからなくもないな。

 話しても聞いてもらえそうにはないな―――――それに、メンドくせえ。


 垣根がちらっとインデックスの方を見る。出血はひどく、長くは持たないだろう。


 ―――時間もねえし、さっさと黙らせて終わりにするか。
 
 垣根がもう一度、六つの翼を展開する

垣根「安心しろ、峰打ちですませてやる」

 翼が上条の体を打ち付けようと大きく展開し、そして一気に襲いかかる。
 上下左右全方向からの攻撃

 それはまさに、不可避の一撃であり、一撃必殺。

 もはや逃れることは出来ない。
 


――――相手が、常人ならば。


上条「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 全方位に展開された翼に対して上条が取った行動。

 それはただの突撃。

 上条が、垣根の方へ一気に駆け出す

 ―――――なんだこいつは。死ぬ気か?

 自分の体以上ある翼に対し突っ込むなど、狂気の沙汰にしか見えない。
 まさに自殺行為だ。
 特攻とすら呼べまい。


 だがしかし、まさに翼が襲いかかるその瞬間。

 上条が、右手を前にかざした。


 ――――――パキィ


 展開された翼が粒子状に消え去る。


垣根「なっ!」

 ――――俺の未元物質が打ち消された?
 
 こいつ一体なにを――――――

 少なからぬ動揺。それは、相手の接近を許すには十分な時間だった

上条「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 ――――目の前には既に、拳を振りかざす上条の姿。

 完全に間合いを取られた。


垣根「くっ!」


 先程未元物質は破られた。
 回避する余裕は、ない――――――

インデックス「お止めください」

 それを止めたのは、無機質な声だった。


 振り下ろされた拳が垣根に当たる前に止まる。

上条「インデックス?!……だよな?」

インデックス「はい、私はイギリス清教内、第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔道図書館です。正式名称はIndex- Librorum―――」

垣根「細けえことはどうでもいい。テメエはあのガキなんだろ?」

インデックス「はい。その認識で間違いありません」


インデックス「彼は敵ではありません。むしろ私を守ってくれました」

上条「………え?」

 呆然とした表情を浮かべる上条。

垣根「そういうことだ。お前、頭に血が上ってたからな。話しても聞かないと思ってこーするしかなかったんだよ」

 まあ説明しようと思えばできたのだが、めんどくさくなって荒業にでたということは秘密である。

垣根「とにかく話は後だ、まずはそのガキのキズを何とかすんのが先だろ?」

上条「そ、そうだ!でもいったいどうしたら―――」

インデックス「私の所蔵する魔道書の中に治療法が存在します。ただ、超能力開発を受けた人間では、それを実行することは不可能です」

 インデックスが唯一残された道を提示する。

 だが、



垣根「おいおい、この街の学生は一人残らず超能力開発を受けてんだぜ?」

 そう、ここは学園都市。学生の街だ。

 超能力開発を受けたものが魔術を使えないというのなら、
 この街の学生では誰一人魔術を使うことはできないのだ。


上条「学生は魔術を使えない………そうか!なら!」

――――――――――――――

垣根「なるほど、確かに教師なら超能力開発は受けてねえな。いい考えだ」

上条「じゃあ早くいこう!じゃないとインデックスが!」


垣根「そう焦んな。急いては事を仕損じるってな」

上条「で、でも!」

 上条が焦る。
 インデックスが今にも息絶えそうだというのだから、当然のことではあろう。

垣根「他にもよ、急がば回れとも言うだろ?」

 しかしそれでも、あくまで自分のペースを崩さない垣根。

垣根「昔の人間の教えってのは大切にしないといけねえもんだぜ?」

垣根はそういうとインデックスを左手で抱きかかえ、



垣根「だが、善は急げとも言うよな」

そのまま翼を展開し、右手で上条の襟元をつかんだ。

上条「は、はい?!いったい何して」

垣根「静かにしてろ。あとさっきの変な力は使うなよ、墜落する」

 次にインデックスに呼び掛ける。

垣根「おいクソガキ。俺の左手にしっかり捕まってろよ」

 左手にしがみついたインデックスを胸元に引き寄せ


 ―――――――一気に飛翔した。


上条「ぎゃあああああ!!!怖い怖いよ怖いんです三段活用―――――!!!」

垣根「うっせえ、舌噛むぞ。それよりさっさとその教師の家までナビゲートしろ―――――」

 ――――――とある高校の教師、月詠小萌は後にこう語る。


「あれは夜のことなのですよ」

「仕事も終わってさて、疲れを癒す一杯でも―――そう思った時なのです」

「窓の方から変な音がして―――――最初は小鳥さんが飛んできたのかな、ともおもったのですけど」

「あまりに何度もこつこつ、こつこつ、って音がするから、正体を確かめようと思って、窓を開けたのです」

「そうしたら――――――」





「………窓に、上条ちゃんの顔が押し付けられていたのですよ………!」

垣根「いやー悪かった。両手とも塞がってるから窓をたたくモンがなくてな」

上条「………普通に玄関から入ればよかったのではないでせうか……?」

垣根「まあとにかく早く着いてよかったよかった!うんうん。あの教師も話せばわかるやつだったしな!」

 上条の疑問を完全にスルーする垣根であった。

 実は、これには先ほどの憂さ晴らしも含まれていたりする。


上条「………はあ、不幸だ」

 小萌先生の家からの帰り道。垣根と上条は、今までの事情を説明しあった。

 ベランダに引っかかっていたこと。
 飯を食わせてやったこと。

 ――――魔術師の襲撃を受けていたこと。


上条「……悪かった。てっきりあんたがインデックスを傷つけたのかと……」

垣根「気にしてねえよ、あの場面なら誰だって勘違いする。それより――――」



垣根「お前、何者だ?」

垣根「さっき俺の攻撃を防いだだろ。ありゃ一体なんだ?」

垣根「それに、超電磁砲とも仲が良いみたいだしな。まさかレベル5か?」

 レベル5は7人しかいない事は知っている。それでも、そう問わざるを得ない。


上条「いやいや、上条さんはただの無能力者ですよ」


垣根「……おちょくってんのか?あんな事が出来てただのレベル0な訳が――」

上条「俺の右手には異能の力を打ち消す力があるんですよ」

垣根「異能の力を、打ち消す?」

 垣根が思わず聞き返す。

上条「ただ、システムスキャンしてもレベル0扱いなんですけどね…」

 たはは、上条が髪をかく。

垣根「……にわかには信じられねーな。実際、身を以て味わった訳だが」



 ………とはいったが、実は一度話に聞いたことがある。


 ―――――幻想殺し。アレイスターのお気に入り。第一位に並びうる、プランの中心

垣根「まさかこんな形で出会うとはな」
上条「はい?」

垣根「独り言だ、なんでもねぇ」


垣根「しかし今日は非常識なやつばかりに出会う日だ。まったく、不幸だな」

垣根「ところでお前はこれからどうするつもりだ?」

 垣根が上条に質問する。


上条「………インデックスの傷が癒えるのを待って、それからインデックスのもとに戻ろうかな、と。やっぱり心配だし……」

垣根「ほお。もしかしてお前、あのガキに惚れてんのか?」

上条「はっ?」

思わぬ質問に上条が動転する。

垣根「あのガキに、超電磁砲に。まったく、もてる男はつらいってか?」

上条「いえいえそんなんじゃありませんよ?!大体、御坂のほうは俺のこと目の敵にしてるくらいだし……」

垣根「じゃあなんでだ?どうしてわざわざこんなことに首を突っ込んでんだ?」


 垣根が当然のように質問を口にする。


 あの少女は魔術師達から命を狙われている。
下手に関わればこちらも巻き込まれるのは明白だ。
昨日今日で出会ったようなヤツに命をかけるようなやつは普通いない。

 ―――――そもそも、他人のために命を賭けること自体間違っているのだ
例え家族だろうが、恋人だろうが、そんなものはどうでもいい。
大切なのは己ただ一人だ。


 むしろ人は、他人の命を蹴落として生きて行くのがデフォルトだ。
他人を助けるなんて、ありえない話でしかない――――――

 だが、


上条「上条さんの性分なんですよ。困ってるやつがほっとけないっていうか、自分が助けられるんならやらなきゃいけないと思うっていうか」

 目の前の男は、それをいともあっさりと否定した。

垣根「………っは、英雄(ヒーロー)気取りってか。なかなかカッコいいこって」

上条「別にそんなつもりじゃねーよ。だいたいお前だって、インデックスのこと助けたいと思ったんだろ?」

垣根「(―――――――俺は)」

垣根「………そんなんじゃねえよ。ただの気まぐれだ」

上条「気まぐれって………」

 そういうと、垣根は上条に背を向けて歩き出す。

上条「垣根?」

垣根「……俺は帰る。あのガキのことについてはお前がなんとかしてやれよ」

 垣根は上条のほうを見ようともせず、そのまま歩き続ける。

上条「おい、垣根!」

 上条が呼びとめるが、立ち止まるどころか後ろを向く気配すらない。


上条「―――――――インデックスが待ってると思うから!だから会いに来てくれよ!」

 上条は、ただそう言う事しかできなかった。

 そして垣根は、上条の問いに背を向けたまま立ち去るだけであった。

もう………頭が限界だ………

申し訳けど寝させてもらいます、見てくれた人達ホントにありがとうございます。


もしもスレが残っていたら、お昼頃に再開します。

追いついたか

支援

>>174
垣根「しかし今日は非常識なやつばかりに出会う日だ。まったく、不幸だな」

非常識の筆頭がなにをおっしゃる(笑)

 「俺の『未元物質』に常識は通用しねえ」

>垣根「バカかテメエは。自分から種をバラすような奴なんかいるかよ」
何万ベクトルだのどうのこうのを得意げに一方通行に解説してたのはどこのどいつだよ!

まさか残ってるとは……ありがとうございます。

あと少ししたら再開したいと思います

 次の日の朝、上条はインデックスの様子を見に行くため、小萌先生の家へと向かった。

 ピンポーン
 
小萌「はいはーい。今行くから待ちやがれなのですよー」

 ガチャ

小萌「上条ちゃん!待っていたのですよ!」

上条「先生、インデックスは―――――――――「トウマーーーーーーー!!!」
上条「ぐふぉっ!?」

 まるでミサイルのように上条につっこむインデックス。
 顔には喜びの表情。

 だが、

インデックス「あれ?テイトクは?」

 インデックスの問いに、思わず声がつまる。

 どうすればいいのか。
 真実を打ち明けるべきか、それとも――――――



上条「あー……あいつ用事があるらしくてしばらく忙しいって………あはは」

 上条がそう言うと、インデックスが上条の目をじっと見つめた。


 ―――――それは、不満そうなジト目でも、怒りの表情でもなく。

 そう、いうなれば真顔というのが正解だろうか。

 インデックスは、ただ、ただ上条の目を見つめ続けた。

上条「う……あ………その………」

上条「も、もしかしたらその用事がすぐ終わるかもしれないし!すぐ会いに来るかも―――――――」

インデックス「トウマ」

上条「ははハイ?!」

 インデックスの呼びかけに上条は体をこわばらせる。
 だが、上条の予想に反し、

インデックス「――――――そっか用事があるなら仕方ないんだよ。代わりにトウマで我慢するんだよ」

 インデックスはそう笑顔で言ったのだった。

上条「はは……って俺で我慢するってワタクシの扱いがひどくないでせうか?!」

インデックス「いーの、トウマだもん」

 そのあとはインデックスと他愛もない話をして、時間が過ぎて行った。

 小萌先生も、深くは追求してこなかった。
 事情を察してくれたのか、本当に助かった。


上条「じゃあ、俺出かけてくるわ」

インデックス「ええ~?!どっかいっちゃうの?」

上条「たぶんすぐ戻るから!」

インデックス「ほんとなのかなぁ……」

上条「とにかく、また後で!」

 う言ってドアをあけ、外に出て、



上条「…………ばっかやろうが……」

 上条は、そうつぶやいた。

私怨

>>208
× う言ってドアを→ ○ そう言ってドアを

変なミスが多くて申し訳ない

インデックスは確かに笑顔だった。

だけど、だけど。


―――――あんなに悲しそうな笑顔を見たのは初めてだ。

あんなに悲しそうな目を見たのも、初めてだ――――


上条「ばかやろうだよ………インデックスも、垣根も!」

しかし上条は、ただ拳を握りしめ、
小萌先生の家を後にすることしか出来なかった。

ただ、あてどもなく街をぶらつく。

インデックスにはああ言ったが、実際のところ目的は無い。

ただ、

偶然にでも、垣根を見つけることができたら―――――――


甘い考えではあった。

だが、なんとなくではあるが、また会えるような気がしていたのも事実だった。


上条「……そういえば、あいつの能力とか聞いてなかったな………」

 信号が青になり、交差点を渡ったその時、

 妙な違和感を感じ、足を止める。

上条「(なんだろう、この違和感は。一体なにが――――)」

上条「――――――一人が、いない?」



神裂「人払いのルーンを刻んでいるだけですよ」

 突然背後から声がした。
 
 振り返るとそこには、
 奇妙な服装をし、刀をもった女がいた。

上条「あんたが…………魔術師?」

神裂「ええ、神裂火織と申します――――――――」

―――――――――

 その十数分後、上条は地面に倒れていた。

 いかに『幻想殺し』を所有していようと、肉体派である神裂には手も足も出ず。
 上条は、ただ一方的にやられるのみであった。



ステイル「………もういいかな」

 近くで見ていたステイルが神裂に確認をとる。

神裂「ええ」

ステイル「……しかし、この少年にインデックスの事を話してやる必要はあったのかい?別にその必要性は―――――――――」

神裂「………かつては我々がこの少年の位置にいた。この少年の気持ちも、わかりますから」

ステイル「………そうだね」

 ステイルが人払いのルーンを解除しようとした
 その時、


ステイル「…………羽?」

 2人の頭上から白い羽が降り注ぐ。
 一体なんだ?鳥か――――

 いやまて。人払いのルーンは人間以外にも作用するはずだ。
 ならこれは―――――


 2人が同時に空を見上げる。



垣根「面白そうじゃねえか。俺も混ぜろよ」

 垣根がゆっくりと2人の前に降り立つ。

ステイル「………人払いはまだ解いてないはずなんだけれど」

垣根「最近テメエらとよく会うせいか変な空気を感知するのに慣れちまってな。まあそんなことより、」

垣根「俺を差し置いてなかなか楽しそうじゃねえかよ。次は俺の番だろ?」

 ステイルが神裂のほうを見て、尋ねる。

ステイル「………やれやれ、それじゃあ敗者は邪魔にならないよう観戦させてもらうよ。それでいいだろう?神裂」


神裂「ええ、かまいません」

 そういって神裂は垣根と相対した。

神裂「………また会いましたね」

垣根「俺は会うつもりはなかったんだがな」

神裂「出来れば、貴方と戦いたくは無かったのですが」

垣根「つれねえこというなよ。モテねえぞ」

神裂「………冗談を言いに来ただけなら帰って欲しいのですが」

垣根「ジョークの通じねえ奴だな。……ったくしょうがねえ」


垣根「じゃあさっさと始めようか。楽しい楽しい―――――――」


垣根「――――――――――殺し合いの時間だ」


神裂「――――――――ええ」

神裂「……七閃」

 神裂がそう言うと、七つの斬撃が垣根へと襲いかかる。
 それは地を抉り、空を斬り、垣根を切り刻まんとする。


垣根「はっ!そんなんじゃ傷一つつきやしねぇよ!」

 垣根はそれをよけようともしない。
 それどころか右手で空をつかむかのような動きを見せると――――――


 神裂の放ったワイヤー全てを、その指で絡め捕った。

神裂「な!?」

垣根「おいおい、こんなもんじゃねえだろ、アンタ。さっさと本気を見せてくれよ」

 そう、神裂はまだ魔法名を名乗ってはいなかった。それはけして驕りによるものではない。彼女の性格が故である。

 だが

垣根「あまり勿体づけんなよ。俺の実力はわかってんだろ?」

 目の前の男は、強い。
 ともすれば自分と同等か――――――


神裂「出来れば言いたくはなかったのですが………貴方相手では仕方ありませんね」

 そういうと、神裂がその刀―――――『七天七刀』に手をかけ、

神裂「………『Salvare000』」

 抜刀と同時に、姿が消えた。

 ――――――――否、消えたのではない。
 あまりのスピードに、人間の目ではついていけないのだ――――――

神裂「唯閃!!!」

 神裂の切り札、『唯閃』が垣根へと襲いかかる――――――

垣根「早っ……!」

 ぎりぎりで反応する。だが少なくとも避ける時間はなく、

垣根「(――――受けきるしかねえ!)」

 お得意の翼を展開し、それを盾にする。


 そして『七天七刀』が垣根の翼とぶつかり、


 あたり一面に衝撃波が走った。

羽便利すなあ



神裂「……見事ですね。この一撃を止めてみせるとは」

 結果として言えば、神裂の『唯閃』が垣根の体に届く事はなかった。


垣根「未元物質はこの世に存在しない物質を作り出す能力だ。
 簡単にいえばダイヤモンドより硬くすることだって出来るってのに―――――――」


 垣根の目の前僅か数ミリ。
 ほんの僅かに残った『未元物質』を挟んでそこに、神裂の『七天七刀』は佇んでいた。

 もし、未元物質の強度が後少しでも弱かったら。
 もし、神裂が後少しでも力を込めていたら。

垣根「なんつーバカ力だよおい。いや、この場合力よりも剣を扱う技術が凄えのか?」


神裂「『唯閃』は体捌き、バランス、術式からなにに至るまで完全に計算された、いわば『完成した魔術』と言えるものです。
 それを止めた貴方には感嘆の念を禁じえませんね」

垣根「そいつはどーも。謹まずお受けするぜ」

 垣根が一度間合いを取る。そして再度『未元物質』の再構成を図る。

神裂「させません」

 そこへ肉薄する神裂
 何時の間に回収したのか、その手には『七閃』。

垣根「ちっ!しつこい女は嫌われるぜ!!」

神裂「誰がしつこい女ですか!!」

 七閃をかわし、翼の再構成を終えた垣根が空中へと飛び立つ。
 だが、持ち前の身体能力を使い、神裂もそれにくらいつく。

 歩道橋やビルを飛び回り、空を飛ぶ垣根へと攻撃を仕掛ける。
 魔術を使用し、空から引きずり降ろそうとする。

 当然垣根も黙って攻撃を受けている訳ではない。

 翼を用い、神裂を叩き伏せようと試みる。
 翼から衝撃波を生み出し、それを神裂へ向かって放つ。
 翼を羽に分解し、マシンガンのように発射する。


 だが、人外の速さで動く神裂を捉えきることはできず。
 また、捉えても『七天七刀』で弾き返される。


 まさに、一進一退の攻防。
 行ったり来たりの千日手。

垣根「ちっ。いい加減諦めたらどうだ」

神裂「それはこちらの台詞です」

 垣根と神裂の戦いはあれからこう着したままであった。

 神裂が魔術を使えば垣根は『未元物質』で応戦し、
 垣根が物理法則を超えた動きをすれば、神裂が人間を超えた動きで対応する。

 つまるところ、どちらも有効打を見出せないでいる状況。
 このままではずるずると長引くだけ。



 だが、垣根は『理解』していた。


垣根「終わりにしようぜ。もう飽きた」

 この戦いが無意味な事を。

神裂「ええ、だから終わりにしてあげようと―――――」

垣根「そういう意味じゃねえよ」



垣根「―――――テメェ、本気じゃねえだろ」

神裂「…何をいってるのですか?私は、あなた相手に力を出し惜しみするほどでは―――――」

垣根「なら言い換えてやる」

垣根「テメェからは人を殺す気配が感じられねえ」

神裂「………」

垣根「そんなやつと戦ったって面白くねえよ。ていうかよ、テメェらはあのガキを連れて行こうとする悪党なんだろうが。悪党は悪党らしくしたらどうだ」

 垣根がそう言うと、神裂がわずかに顔をうつむかせる。

神裂「………私は」

神裂「私は、やりたくてこんな悪党じみた真似をしてる訳じゃありませんよ……!」

垣根「……ああ?」

神裂「………それは」


ステイル「話してやりなよ、神裂」

 今まで傍観していたステイルが口を入れる。
 
ステイルもまた、このままではきりがないことを感じていた。

 なら、事情を話してしまったほうがスムーズにいくかもしれない。
 そう考えたのだ。


神裂「ステイル………」

ステイル「一時休戦ってやつだよ。このままじゃお互い無意味な時間を過ごすだけだろう?」

ステイル「それに事情を話せば、彼も手を引いてくれるかもしれないしね」

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     ミ____        \  |.  .| /        ____彡
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        /   /   |〕   帝凍庫クン   .||   ´\   \
       /    │   ..|              ||    |     \
     /    /│    |___________j|    |\.     \
     彡   /  │  ./..|   -―- 、__,        |ト、  | ´\    ミ
      彡/   │ ../ |   '叨¨ヽ   `ー-、  || \ |    \ ミ

            │ / ..|〕   ` ー    /叨¨)  ..||   \|     
    r、       |/   !         ヽ,     || \  \      ,、
     ) `ー''"´ ̄ ̄   / |    `ヽ.___´,      j.| ミ \   ̄` ー‐'´ (_
  とニ二ゝソ____/ 彡..|       `ニ´      i|  ミ |\____(、,二つ
             |  彡...|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i| ミ |
             \彡 |               .|| ミ/
                       |〕 常識は通用しねぇ  ||
                  |             ..||
                  |___________j|
支援

垣根「やれやれ、めんどくさい展開になってるみたいだな」

神裂「………」

垣根「話せよ。聞くだけは聞いてやる」

 そう言って垣根は『未元物質』をひっこめ、近くのポールにもたれかかる。


神裂「……私たちが所属する組織の名はネセサリウス」

神裂「――――――あの子と同じ組織です」

 垣根が首をかしげる動作をする。

垣根「ますます意味がわかんねえな。なら何故あのガキを狙ってんだ?」

 一瞬のためらいの後、神裂は続ける。

神裂「彼女を連れ戻さなければ…………彼女が死んでしまうから」


垣根「………なんだと?」

神裂「あの子が完全記憶能力の持ち主だということは御存じですよね?」

垣根「ああ、そこの神父から聞いた。で、そいつがどうした」


神裂「……人間は普段、いらない記憶を消しながら生きています。そうしなければ、脳がパンクしてしまうからです」

神裂「……ですが。彼女は例えどんな些細なことであっても忘れることはできない。
 その上、10万3000冊もの魔道書を記憶しています―――――――頭の85%を使って」

垣根「……………」

神裂「残りの15%など、彼女からすればあまりに少ない。すぐに脳の容量がなくなってしまう」

神裂「だから、私たちが彼女の記憶を1年ごとに消しているんです。
 ―――――――――彼女の命を守る為に」


垣根「……………」

ていとくんて一応学園で2番目に頭がいいんだよな

神裂「ですから、私たちはこうして―――――――――」

 神裂がさらに話を続けようとする。
 
 だが、


垣根「………………………ク」

垣根「クク………ククッ………」




垣根「―――――――――ッハッハッハッハ!!!アハハハハハハ………」

 突然だった。
 垣根が顔を醜くゆがませたその瞬間、腹を抱えて笑いだした。

ステイル「な…………?!」

神裂「なにが可笑しい!!!」

 激しい怒号と共に神裂が垣根に詰め寄る。
 だが、それにも関らず垣根はいまだ笑い続けている。

垣根「アッハッハッハ…………あー死ぬかと思った」

bそういった後、垣根は神裂とステイルのほうを見ながら話しだした。


垣根「パーかよお前ら。あれか?魔術師ってのはこんなに学のないやつらばかりなのか?」

神裂「な!?!?」

ステイル「どういうことだ!?」

 垣根が続ける。

垣根「俺に常識は通用しねえが別に常識知らずって訳じゃねえ」

垣根「記憶のしすぎで脳がパンクする?85%?―――ククッ、笑い殺す気かよ。
 人間の脳ってのは、そんなちゃちな出来方はしちゃいねえ。ゆうに140年分の記憶は可能なんだよ。」

垣根「そもそも『経験』と『知識』の記憶ってのは別物だ。
 『知識』のせいで圧迫されてパンク、なんざ普通有り得た話じゃねえのさ」


ステイル「なん………だと……?」

 魔術師たちの顔が驚愕に歪む。

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   l;;!               / :            ,./ '" ./
.‐!、 ゝ             /                 /
  ヽ   \           /      ,..;;二´       ノ゛-
..i'´ "   : ;:;:\      :        "  ._..―¬''''''''―- ..,, .″        /|
 !  │  :;:;:;:.ヽ              /   . ___      /    \_WW/ |WWWWWW/
 | , │  .;:;:;:;;;:.l               ,广゙ ̄ ̄´;: ̄ ゙゙゙̄'' /      ≫            ≪
< ゙'"  !   ;:;:;:;;;..l,             / ;;:::;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:::;:;:./     ≫  何が可笑しい!! ≪
../、  .│   ;:;:;;;;;.ヽ            !;:;;;:;;;;;;;;   ;;;;;;;;;;;;;;/      ≫             ≪
″`l!./ │    ;:;;;;;:.ヽ        l;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;...;;;;;;;;;;;;;/        /MMMMMMMMM、\
  ./゙.ヽ .!      ;:;:;:ヽ       l;::: ::;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;;; |
../    ! \      .;:;;;;:ヽ      .|. --ー¬'''''''''''''''ー .,!
,|-―‐、 !  :.\     ;:;:: !      ヽ,,,,,,,,....,,,,,,,............,,,,ハ,
!    .".!  ;:;:: \        .、                  l
     .!  :;::::::;:;;`'-、    :;:ヽ、  ._,, -      '''┐'゙
、、    l   ;;;;:;:;;;;;;;、.\     ;:;: ̄´゛;:             │
' `´  ./    ;;;;;;;;;;;;;;;゙'ゝ.ヽ                     ヽ
    ノ     ;;;:;:;;..;;;;.;;;;;;.;;:゛                 ノ

な なんだってー

垣根「ああそうそう、少し余談にはなるが『レインマン』って映画知ってるか?俺の好きな映画でな」


垣根「レインマンの主人公はレイモンドって言ってな、そいつは完全記憶能力者なんだ。あのクソガキと一緒だな。
 野球選手のカードに書かれた記録から、過去の飛行機事故のデータまで全て覚えてるっていうようなやつだ」


垣根「――――で、そのレイモンドのモデルとなった男にキム・ピークってやつがいる。そいつもまた完全記憶能力者なんだが、」



垣根「――――――そいつ、なんと驚くことに50歳以上まで生きてんだな。
 おかしいと思わねぇか?お前らの話が正しいなら、完全記憶能力者は1年で脳の15%を使うはずだろ?」

垣根「なのにそのガキみたいに頭がパンクする、なんて事は一切なかったわけだ」

垣根「わかるか?そんなことで人間はくたばらねぇんだよ」

神裂「でも!!現にインデックスは一年周期で苦しんでいるのですよ?!それは記憶を消さない限り治る事は無かった!!」


垣根「簡単な話だろ。1年周期で記憶を消さないと生きられない――――――そいつはつまり、あのガキはテメエらの下でないと生きられねえ、って事だ」

垣根「それで、一番利益を得るのは誰だ?」



垣根「―――――決まってる。テメエらだろうが」



神裂「まさか」
ステイル「―――上の人間の仕業か!」

神裂「私たちは………今までずっと騙されていたというのですか……」

 神裂の体が力なく崩れ落ちる。

垣根「そういうこった。御愁傷様だな」

ステイル「そんな………僕たちがしてきたことは一体……」


 うなだれる魔術師たち。その目は、絶望と後悔で濁りきっていた。

 それはそうだろう。今まで自分たちが愚かだったせいで、何度インデックスの記憶を奪ってきた。
 何度もインデックスを傷付けた。

 その罪の意識の重さは、計り知れない。

 . .... ..: : :: :: ::: :::::: ::::::::::: * 。+ ゚ + ・

        ∧ ∧.  _::::。・._、_ ゚ ・    ドンマイ!
       /:彡ミ゛ヽ;)(m,_)‐-(<_,` )-、 *
      / :::/:: ヽ、ヽ、 ::iー-、     .i ゚ +
      / :::/;;:   ヽ ヽ ::l  ゝ ,n _i  l
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄E_ )__ノ

垣根「さて、どうするよアンタら」

 垣根がうなだれる魔術師達へと語りかける。

垣根「問題点は発見できた訳だ。こっから先、ただ絶望に打ちひしがれてんのも、
 とりあえず行動を起こすのもテメエらの勝手だ」


神裂「………あなたは」

垣根「あ?」

神裂「あなたはどうするのですか?」

 神裂が垣根に問いかける。
 この男はあれ以来インデックスと接触をしていない。
 どういう意図で動いているのか、把握出来なかった。

垣根「……なんもしねえよ。これはテメエらが主役の、テメエらの話なんだ。
 テメエらが勝手にやりゃあいい、俺には関係ねえ」

 そういってその場を立ち去ろうとし―――――倒れている上条を見て、立ち止まる。


垣根「こいつ、預かっていくぞ」

―――――――――――

 トウマの帰りが遅い。
 インデックスはそう思っていた。

 一体何があったのだろうか。もしかして、魔術師達に――――――
 不安がよぎる。


 ピンポーン


 インターホンが鳴る。

 一体だれだろうか。
 トウマか、それとももしかすると―――――

 インデックスが身構える。
 無視してしまおうか。


 悩んだ結果、結局ドアを開けることにした。

 ガチャリ。

 そーっとドアを開け外を確認しようとし、
 外からドアが一気に開けられた。

インデックス「わわわっ!!」


垣根「………なにやってんだテメエは」

インデックス「………テイトク!!」

 目の前の男が垣根であることに気付き驚きの声をあげる。
 インデックスの表情は、喜んでいるようであり、怒っているようでもあった。

インデックス「テイトク!心配したん………」

 そう言いかけて、垣根の背中にあるものを気付く。

インデックス「トウマ?!酷いケガなんだよ!なんで………」

垣根「気絶してるだけだから気にしなくていい。とにかく、まずはこいつを寝かせてやれ」

 そういって垣根は中に入り、そこに敷いてあった布団の上に上条を寝かせた。

インデックス「トウマ………まさかあの魔術師達に……」

 自分の責任だと思っているのだろうか、インデックスが沈痛な面持ちになる。


垣根「その魔術師だが………近日中にここに来るはずだ」

インデックス「そんな!このままじゃ………」

 あたふたするインデックスに垣根が鋭くつっこむ。

垣根「人の話は最後まで聞けって教わんなかったか?
 いいか、そいつらが来たら………まず話を聞いてやれ」

インデックス「え?」

 インデックスが驚きの表情を浮かべる。

 当たり前だ。『敵』である魔術師達がたかだか話をする為だけに来る筈がない。
 そう思うのが普通なのだから。


垣根「その話をきいて……そっからはテメエで判断しろ。いいな」

 それだけ言うと、垣根は玄関のほうへと歩いて行く。

インデックス「テイトク………また行っちゃうの?」

垣根「ああ、ついでに言えばもう二度と来ねえよ」

 そう言って垣根が立ち去ろうとする。


 インデックスは、その背中を見つめていた。

 ――――インデックスは思うのだ。


 テイトクのその背中は、
 テイトクのその瞳は。


インデックス「――――――テイトク!」

 インデックスがおもわず垣根を呼びとめる。



 ――――テイトクに、言いたいことがある。
 伝えなきゃいけない事がある。

 きっとこれを言わなければ、テイトクはこのままだ。

 テイトクに、言わなければ―――――――――――――

ちなみにインデックスはひらがな呼びでは…
とーま とか ていとくみたいな

 しかし、

インデックス「いや………なんでもないんだよ」

 それを、インデックスは言う事が出来なかった。

 ――――恐らく今それを言っても、無意味な事だと思うから。
私から言っても、駄目だと思うから。


インデックス「………体に気をつけてね。また会いに来て欲しいんだよ」

 垣根を思いやり、また来て欲しいと言うインデックスに対し、

垣根「………」

 垣根は、無言のまま部屋を後にした。

>>271 そういえばそうでした。
 でももうここまでやっちゃったのでこのままで許してください。

――――――――――

 上条が気付いた時には、小萌先生の家にいた。

 一体なにがあったのか。
 確か、あの魔術師に負けて気絶して―――――

 そう考えていたときに、その魔術師達が部屋に入ってきた。

 絶体絶命だ。
 上条がそう思ったその時。



 魔術師達が、深々と頭を下げたのだ。

 まったく状況が理解できず、頭が混乱する。

 誰か説明をしてくれ、今すぐに。

 そう思っていると、とうの魔術師達が説明を始めた。

神裂「実は―――――――」

 話を終え、魔術師達が退室していく。


 まったく実感がわかなかった。だが、はっきりとわかったことは2つ。


 インデックスを、助けてやれるかもしれない。
 インデックスの記憶を、消さなくても済むかもしれない。

 それと―――――――――

インデックス「トウマ、大丈夫?」

 インデックスが起きたばかりの上条を心配して話しかける。
 
上条「ああ、もう大丈夫みたいだ。丸一日寝ちまったみたいだな」

インデックス「………一日じゃないよ。三日なんだよ」

 それを聞いて上条の表情が驚きに変わる。


 三日―――――今日が期限の日―――――――


上条「……あいつらから話は聞いたのか」

インデックス「うん」

上条「原因はわかったのか?」

インデックス「ううん。カオリが私の体を見てくれたけど、それといったものはなかったって」

上条「そんな…………」

 それでも上条は諦めない。

上条「でも、俺の『幻想殺し』ならもしかすれば!」

 しかしそれに対してもインデックスはかぶりをふる。

インデックス「トウマはもう私に何度も触ったことがあるんだよ。それでも効いてないってことは………」


上条「でも………!」

インデックス「トウマ」

 名前を呼び掛け、上条の話を止める。
 そのインデックスの顔は、いつになく真剣なものだった。


インデックス「一つだけ、トウマにお願いがあるんだよ」

 インデックスからの願い。
 もしかすれば、最後になってしまうかもしれない願い。

 それは、絶対に叶えてやりたい。



 だがその願いは


インデックス「……テイトクのこと、助けてあげてほしいんだよ」

インデックス自身のことではなかった。

インデックス「テイトクの目、凄い悲しそうだったんだよ。多分、苦しんで、悩んでるんだと思う」

インデックス「ほんとはきっと優しい人なのに……自分を殺しているようにも見えたんだよ」

インデックス「私じゃ、きっとテイトクのこと助けてあげられないから。だから、お願い」

 インデックスが頭を下げる。


 自分の体が大変なことになっているというのに。

 今日で記憶がなくなってしまうかもしれないのに。
 


 インデックスは、あくまでシスタ―であった。

上条「――――わかった。垣根は、俺が助けてやる。だから安心してくれ」


 ―――――ああ、わかってる。
垣根が悩んでることも、垣根が苦しんでることも。
だから――――――――――


 そして上条はその体を起こして玄関へ向い、

 途中インデックスのほうを振りかえる。


上条「………垣根だけじゃない。俺はお前も助け出してみせる!だから……待っててくれ」

 そういって、そのまま街へと走り出した。

――――――――――

 何故か無性にイライラしていた。
 何故か、自分の感情をコントロールできなかった。


 垣根の目の前にいる連中は格段に劣っている連中。
 普段なら歯牙にもかけず、放っておくようなやつばかり。


 だが、今日の垣根は違っていた。


男A「わ、悪かった!許してくれ!」

 命乞いをする男Aをそのまま蹴り倒し、一気に地面へ押し倒す。

男A「へぁっ!!あぎぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 ぎりぎり、と肉の軋む音を出し、そしてついに

 ぷちっ

 と小気味良い音を出した。

男B「ぎ、ぎゃあああああああ!!」

垣根「……………」

 (お腹がすいたんだよ)

 何故か思い出されるあの少女の声。

男C「助けっ……があぁぁぁぁ!!」

 (困ってるやつがほっとけないっていうか、自分が助けられるんならやらなきゃいけないと思うっていうか)

 何故か頭に浮かぶ、あの少年の信念。
 
 そして、

男D「あ……あ……」



垣根「……………」

 
 (ありがとなんだよ、テイトク)

ちょっくら飯食ってきます。

30分後位に再開予定です、何度も申し訳ない。

物語ももう後半に突入しているので、どうか最後までお付き合いいただけたら幸いです。

戻りました、それでは再開します。

心理「……随分荒れてるみたいね?」

 心理定規が垣根に声をかける。
 なんとなく、からかうような口調だ。

垣根「あ?うっせえよ。テメェも死にたいのか?」

心理「あらあら怖い怖い」

 心理定規がわざとらしく体を震わせる。

心理「うーん。今日は出番も無さそうだし、先に退散させてもらうわね」

垣根「ああそうしろ。今日は、巻き込まない自信はねえからな」

心理「それじゃ、後は任せたわね。よろしく~」

 心理定規がそういって立ち去ろうとし、


心理「……ああ、どうでもいい話ではあるのだけど」

 ふと思いついたかのように話し出す。

心理「………知ってる?あなたが荒れてる時って、だいたい『どうしていいのかわからない』っていうような時なのよね」

心理「いつもは自分に絶対の自信をもって行動してるのに………カワイイ人」

垣根「…それがどうした。余計なお喋りはそれで終わりか?」



心理「――――もう少し、自分に素直になってもいいんじゃないかしら」

心理「自分のやりたいよう、好きなようにやっても構わないと思うわよ」



心理「…という心のエキスパートからのアドバイス、って話」


垣根「……はっ。言いたいことはそれだけか?ならさっさと失せろ」

 垣根が吐き捨てる。
 だが、心理定規はその態度には特に触れず、その場を立ち去った

 結局、垣根はこの日も歩いて帰っていた。

 一人でいたかった。
 
 もし誰かと一緒にいると、殺してしまいそうだったから。
 自分を、抑えられそうになかったから。


 一体このいらつきはどうすれば止まるのか。
 そもそも、俺は何故こんなにもいらついているのか?


 ―――――――――俺は何にいらついてるんだ?、


垣根「………くそが」


 イライラが、最高点に達しようとしていた。

 ――――そういう時に限って、こういう事が起こるもんだ。



 もっとも見たくない顔の内の1つが、目の前にいた。



上条「垣根…………」
 
 奇しくもそこは、2人の最初の出会いの場でもあった。

垣根「……なんのようだ?悪いが、今の俺は機嫌が良くないんでな。出来ればさっさと帰ってくれ」

 出来るだけ平静を装い、上条に対応する。


上条「インデックスが、お前のこと凄い心配してた」

垣根「他人の心配より自分の心配をしろとでも言っとけ」

上条「お前、俺を助けてくれたんだってな」

垣根「もののついでだ。他意はねえよ」

 上条の質問に無関心を装う。

 俺とはもう関係のない事だ。気にする必要はない――――――



上条「でもよ」



上条「ほんとにただの気まぐれだったんなら………なら、なんであの魔術師と戦った?」

 上条の言葉1つ1つが、垣根の脆くなった心を揺さぶる。

上条「人払いがされてたんだから、違和感に気付いたらすぐ立ち去ることだって出来たはずだ。
 そもそも、俺のことだってわざわざ運ぶ必要もなかったはずだろ?」


垣根「………………」


上条「―――――本当は、インデックスのことが心配なんじゃないのか?
 インデックスのこと、助けてやりたいと思ってるんじゃないのか?
 だから気まぐれっていいながらまだ助けてくれてる」

垣根「―――――――五月蠅え、黙れよ」

上条「インデックスが言ってた。お前は本当は優しいやつなんだって。
 お前は、ただ自分に嘘をついてるだけだって―――――――」

垣根「――――――黙れっつてんだろ」

上条「――――――――なあ垣根。お前本当は、インデックスを助けたいんじゃ――――」




垣根「――――――――うるせぇって言ってんだよ三下が!!黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!!」


 そして、ついに爆発した。

垣根「テメエらは知らねえんだよ!俺がどんな人間か!今までどんなことをやってきたのか!!

 俺はテメェらの及びもしない闇の世界で、俺は一流のクズとして生き抜いてきた!!

 何人もの人間を貶めてきたし、数えきれない位の『悪』を重ねて生きてんだ!!

 それが俺だ!!それが『垣根帝督』なんだよ!!



 それで今さら『誰かを救う』?



 ―――――っは!そんなのはおこがましいだけなんだよ!!


 俺はただの悪党だ。俺はただのクズヤローだ。


 ―――――――――――それで十分だ。


 テメエみたいなヒーロー気取りのように、人を救う権利なんざもともと存在しねぇんだ!!!」

 それは心からの悲痛な叫びだった。


 学園都市の暗部に堕ちた以上、
 もはや、光を見ることは許されない。

 
 そんなことは分かっていた。覚悟していた――――はずだった。



 それを簡単にゆすぶられた。 
 上条当麻に、インデックスに。


 誰かを、助けたいと思ってしまった。
 助けられると、そう思ってしまった。


 それは、今までの自分を否定することと同じだ。

 故に、認める訳にはいかない。
 ただの気まぐれだったと、そう思い込むしかない。



 ――――――垣根帝督が、垣根帝督であるために。

 長い沈黙。



上条「―――――――ふざけるなよ」

 それを破ったのは上条当麻だった。

上条「俺はお前がどんな人間かは知らない。
 お前が、どんなことをしてきたのかだって俺にはわからない。

 もしかしたら本当に俺の想像もつかない世界で生きてるのかもしれないし、
本当の悪党と言えるようなやつなのかもしれない!



 ――――――でもインデックスを助けたいって、少しでもそう思ったんだろ?!
インデックスのこと、救ってやりたいと、そう思ったんだろ!?


 お前にインデックスを助けてやりたいって気持ちがあったことくらい俺にもわかる!!
それは気まぐれなんかじゃない!暇つぶしなんかじゃない!
間違いなく!お前の本心で!!」


 

さすが説教やで

上条「それを『自分は悪党だから?』

『自分に人を救う権利なんてないから?』



 ―――――そんなこと言って逃げてるだけじゃねえか!!


 ただ自分を見つめなおすのが怖くて。本当の自分に気づくのが怖くて。自分の過去を背負うのが怖くて!!


―――――光の世界を見るのが怖くて、すべてから目をそむけてるだけじゃねえか!!



 悪党だとか、クズだとか――――――そんなの関係ない。

 どんなクズだって、どんな悪党だって。

 何かを成し遂げようと思う気持ちがあるなら。

―――――――誰かを救いたいという気持ちがあるなら!


 そいつはいつだって、誰かの英雄(ヒーロー)になれるんだよ!!!」

上条「いいぜ。てめえが英雄(ヒーロー)になる資格がない、なんて言うんだったら――――――――」





       「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」

はいそげぶいただきましたー

                      ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧  
                     /  /

                 (^o^)/ てめえが何でも
                /(  )    思い通りに出来るってなら
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /

 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち殺す

>>317少しは改変しる

                   ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                     |∧  
                  /  /

                (^o^)/ てめえが英雄(ヒーロー)になる資格がない
               /(  )    なんて言うんだったら
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)   < \ 三 
 ( /

 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち殺す

垣根「―――――っは。おもしれえ、やってみせろよ」

 そういって垣根は『未元物質』を展開する。

 その顔に遊びは一切ない。垣根帝督の、本気の顔だ。


垣根「いっとくが今回は本気でやるぞ。死んで恨め」

上条「俺は死なない。お前も、インデックスも助けて見せる」



垣根「―――――――――なめたこと言ってんじゃねえぞゴラァ!!」



 そうして、今。

 ヒーローであろうとする『善』と、

 ヒーローでありたかった『悪』の戦いが、


 ここに幕を開けた。

 垣根の翼が上条を叩きつぶそうとする。

 上条はそれを右手で防ぎ、垣根のもとへ走りだす――――


垣根「テメエの能力がわかってて近づけるバカがいるかよ!」


 上条が到達する前に垣根は空高く飛翔する。

垣根「空中戦ならこっちのもんだ、残念だったな」

上条「な!卑怯だろそいつは!」

垣根「勝負に卑怯なんてあるかよ。あるのは―――」


垣根「勝つか死ぬかだ」

垣根「太陽はまだ出てるな――――なら、おもしれえもん見せてやるよ」

 垣根はそう言って、空中で大きく羽を広げる。

 一体何をするつもりなのか。


 翼を通った光が上条へと焦点を合わせる。


上条「―――――ッッ!!!」
 
 嫌な予感がしてとっさに右手を前に出した。

 垣根の翼からくる光が右手に触れ―――――
 右手で守りきれなかった光が、上条の服を焼き焦がした。

上条「んなっ!?」

垣根「正解、だ。少しでもくらえば焼け切れるぜ」

上条「なんでもありだな、アンタは――――――!!!」

太陽光は幻想殺しで消せるのか?

幻想殺しって一部に触れたら他の部分も消せるんだよね

>>324 描写の仕方がまずかったですね。

太陽光で焼いてるのではなく、『未元物質』で殺人光線に変質させたものだと思ってください。

なので、右手で触れればただの太陽光に戻る、と。

>>329 『竜王の殺息』と同じで、光の粒子の質がそれぞれバラバラであり、

よって触れたからといってすべてが消えるわけではない、という解釈にしてます。

垣根「さて、お次はこいつだ」

 翼が大きく動き、烈風を巻き起こす。

垣根「こいつもおまけだ、とっとけ」

 それと同時に翼から衝撃波が放たれる。

上条「クソっ!!」

 それらを右手で防いでいく。
 だが完全に防ぎきれた訳でもなく、体はボロボロになっていく。


 いかに『幻想殺し』を持つ上条とはいえど、
 近づけない相手と戦う術は無いのだ。

垣根「さっさと諦めろ。機嫌が悪いとはいえ、今なら許してやる」

 垣根が最後通牒を発する。

 事実、垣根の能力による攻撃は防げているものの、
上条は垣根に手も足も出ておらず、一方的にやられているだけだった。
このままでは、犬死するのは時間の問題である事は間違いない。


 それでも、


上条「インデックスと………インデックスと約束したんだ!!お前を救いだすってな!!!」


 上条当麻はどこまでも人を助けることを第1に考える。

 例え、どんなに自分が傷ついたとしても。

 そんな姿が――――――――垣根の逆鱗に触れた。


 空から一気に急降下して上条の前に降り立つと同時に、垣根が上条の首を右手でつかむ。
 
 そしてそのまま、上条を持ちあげた。

上条「グっ………ガハッ………ぁ………」

 上条がじたばたともがく。
 だが、垣根の手は決して緩まない。

 むしろ垣根は右手の力を徐々に強めていく。

上条「が………あ…………」

垣根「あーあ。こんなヒーローごっこなんざしなければ、もっと長生き出来たかもしれねえのにな」

 苦しそうにもがく上条を冷たい視線でにらみ続ける。

垣根「世の中にはな、変えられねえもんてのがあんだよ。死ぬ前にいい勉強になったな?」

上条「ぐぅぁ…………か……き、ね………」

 そして右手に一気に力をこめる。


垣根「じゃあな、上条。死―――――――――」








インデックス「―――――――――――――テイトク?」

垣根「な、んで」

 いるハズのないその姿に垣根の心が揺さぶられる。


 ――――――なんでテメエがここにいる。なんでテメエがここに来た。


 ――――――なんで俺はこんなに動揺している?


 なんで動揺する必要がある。こいつと俺とはなんの関係もない。
そうだ、俺とは何も――――――――


インデックス「―――――テイトク」




インデックス「もう、いいんだよ。自分を責めなくて」

垣根「な、にを、言って」

インデックス「テイトクは、自分の好きな通りにすればいいんだよ」

インデックス「もう、自分に嘘をつかなくていいんだよ」


 (自分のやりたいよう、好きなようにやっても―――――――――)


 いろいろな思いが頭を駆け巡る。
 いろいろな思い出が頭を駆け巡る。


 何をいってんだ、こいつらは。
 
 俺はただの悪党だ。
 (あなたは優しい人)


 俺には闇の世界が似合ってる。
 (光の世界を見るのが怖くて――――)


 俺には、人を救う権利なんて、無い―――――――――!!


 (そいつはいつだって、誰かの英雄(ヒーロー)になれるんだよ!!!)

上条「目ぇ―――――――」

 垣根がはっとして上条のほうを向く。

 思わず緩んだ右手から脱出した上条が、右の拳を振り上げて――――

上条「覚ましやがれ!!」

 あの時は止められた拳が、今度は垣根の顔に叩きこまれた。




 ―――――――――――――あの時に拳を止めた原因が、今度は拳が届く理由になるとは。
一体、何の因果と言うべきなのか。


垣根が体を吹き飛ばされ、地面に転がる。

垣根「かはっ………ごほっ」

 なんと無様な事だろうか。

 そこにいるのはもはや『学園都市第2位』でもなく、
 暗部組織、『スクール』のリーダーでもない。

 ただ、自分を見失った男の姿だった。



インデックス「大丈夫?!テイトク?!」

イ ンデックスが垣根のもとへ駆け寄る。



 ――――――人の心配してる場合かよ。テメェのほうが苦しそうじゃねえか。

 息も上がって、顔だって真っ赤で。

 それに俺はさっき、そいつを殺そうとしてたんだぞ?



 それで、

 なんで俺なんかの心配してんだよ。

垣根「………何しに来やがった、クソガキ」

 インデックスが垣根の問いに対し、一瞬ビクッとする。
 だがそれもすぐに、インデックスの顔は温かい微笑へと変わる。


インデックス「……私はシスターだから」

インデックス「だから、迷える魂を救う使命があるんだよ」

インデックス「だから………」


 しかし、インデックスはそれを言い終える事無く崩れ落ちた。

 崩れ落ちるインデックスを垣根が支える。

垣根「おい?インデックス?インデックス!」

インデックス「……テイ……ト……………」

 インデックスがそう呟くと、インデックスは意識を失った。

垣根「……どいつもこいつも、勝手に話を進めやがって」




垣根「あーあ、ムカついた」


 垣根がそっとインデックスをおぶる。

垣根「――――――行くぞ。何処まで連れて行きゃいい?」

上条「垣根………」

垣根「勘違いすんじゃねえぞ、ただの気まぐれだ。そう、ただの―――――――」

上条「……お前がそう言うなら、そういうことにしといてやるよ」

垣根「……っと。その前に」

上条「?」


垣根「―――ふんっ!」
上条「ぐぼぁ!」

 上条のみぞおちに、垣根は見事なまでのボディーブローを叩き込んだ。

上条「ぐ………おおおぉ……」

 突然の事に反応できなかった上条がその場にうずくまる。

垣根「さっきのお返しだ。釣りはいらねぇよ」

 
 

上条「おぅふ………おぉぉ……」

 よほどの激痛なのか、上条がまるで芋虫のように地面を転がる。

上条「………うすうす気付いてたけどよ……お前って結構子供っぽいよな………」

 強烈な痛みに耐えながら上条が呟く。

 
 そう上条に嫌味を言われた垣根は、



垣根「安心しろ、自覚はある」

 笑いながら、そう口にするのだった。

 小萌先生の家へもどると、そこには魔術師の2人がいた。

神裂「上条当麻!!インデックスが………」

 言い終わる前に、上条の背中にいるインデックスを確認する。
 ―――その横に垣根がいることも。

神裂「あなたは………」

垣根「今度は気が向いたんだよ。仕方ねえから力を貸してやる」

 神裂の表情が僅かに驚きに染まり、

神裂「ええ、ありがとうございます」

 すぐにキリっとした表情に戻る。


神裂「なんとなく、でしたが。結局の所、あなたは来てくれると思っていましたよ」

垣根「はぁ?何言ってんだテメエは。適当こいてんじゃねぇぞ」

神裂「ちゃんと根拠はありますよ。だって………」



神裂「………インデックスが心を許した人間ですから」

 そのまま部屋へ入り、インデックスを寝かしつける。

 その表情は、幾分か先ほどよりも穏やかになったいる。

垣根「でだ、何が原因だったのかは分かったのか?」

上条「いや、まだだ。一応インデックスの体をこの右手で触ってみたけど……なんの反応もなかった」

 そう、インデックスの体に『幻想殺し』は触れているはずである。

 それにも関わらず今まで何の変化も起きていないのだ。

垣根「おいおい、まだやってねえところがあんだろ」

 上条の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

 神裂にも見てもらったが、インデックスの体にそれらしきものは何もなかったはずだ。

上条「まさかインデックスの体に見えないケーブルがつながっていて、そこに本体があるとか――――――――」

垣根「………バカかテメェは。簡単だろうが」



垣根「――――体の内側だよ」


上条「そうか!体の外を触れただけじゃ、中には効果がないのか!」


垣根「そういうこった。さて、とりあえずまずは上からだな。いや、お前がやりたいってなら下半身からでも構わねえが……」

上条「ぶふぉ!!ななななにいってんだ垣根!!」

垣根「冗談だから落ち着け。テメエは小学生の男子か」

 顔を順番に調べていく。

 耳の穴、鼻を調べたが特には何もない。



上条「あとは……」

垣根「口内か……まあ一番妥当な線だろうな」


 上条がインデックスの口を開け、中を覗き込む。

 そこには、黒く浮かび上がった謎の紋章。

上条「これは………もしかして」

 上条がインデックスの口の中へ右手をいれる。

 口に指を突っ込まれ、苦しそうな顔をするインデックス。

上条「(すまん、インデックス。もうちょい我慢してくれ―――――)」

 その紋章まであと少し、もう少し―――――

 そしてそれに触れた瞬間。


 バチィィィ!!!

上条「うわあ!!」

 上条が思いっきり吹き飛ばされる。

上条「いてててて…………?」


 顔を上げた上条が、驚きに目を見開く。

 そこにいたのはいつものインデックスではなく、あまりに異常なものだったから。

 突然起きたインデックスの体には黒い霧のようなものがかかっており、目には赤い魔法陣。

 一体何が起こっているのか、2人は把握出来ていない。

 だが、明らかに言えることは1つ。
 

 それが決して友好的なものではないことだ。


垣根「お姫様がラスボスね………なかなか斬新なゲームじゃねえか」

 そう軽口を叩くも垣根の顔つきは、いつになく真剣なものになった


 すると突然インデックスの周りが青白く光りだし――――――


垣根「来るぞ!上条!」


 爆発を起こし、部屋のドアを吹き飛ばした。

 爆音を聞き、異変に気付いた神裂たちが部屋にやってきて
――――思わず絶句する。

ステイル「…………こいつは一体………」


インデックス「警告――――――第1から第3までの全結界の貫通を確認。再生開始――――失敗。
 現状10万3000冊の書庫の保護のため、侵入者の迎撃を開始します」

インデックス「侵入者に対して、もっとも有効な魔術の組み合わせに成功しました。
 これより『聖ジョージの聖域』を発動し、侵入者を破壊します」

 インデックスの体から赤い魔法陣が発生し、空間に亀裂が入る。

神裂「バカな!あの子は魔術を使えないはず………」

ステイル「それすらも嘘だったって訳か………!」

インデックスが大きく目を見開く。

すると、インデックスから溢れ出る光はさらに輝きを増し始める。


――――魔術師である神裂とステイルは理解した。


それは、どんな魔術師であっても恐れ、おののく、悪魔のような魔術―――――――――


ステイル「まずい!逃げるんだ!!!」


『竜王の殺息』が、発射された。

垣根は、頭でなく本能で感じ取る。

―――こいつは本気でやばい。俺の『未元物質』でどうにかなるものじゃねえ。

かわせない。防ぎきれない。くらえば確実に助からない―――――

既に『竜王の殺息』は発射され、垣根の目の前へと迫りくる―――――――――




垣根「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


知ったことか。そうだ、俺には関係ねえ。


俺の『未元物質』に常識は通用しねえ―――――――!!!

垣根の展開した翼と『竜王の殺息』がぶつかりあう。

一瞬の均衡。目に見えぬ綱引き。


だがそれはほんの刹那。


垣根の理解しえない『魔術』であったこと。
圧倒的質量差。


垣根に勝てる要素はなかった。


『未元物質』の翼があっという間に消失し、垣根に迫り―――――

垣根「(ここまで――――――か)」

そして、一気に垣根を飲みこむ。

 ――――――かに思えたその時。


上条「くっ!!」

 上条が右手を前へ出す。

 右手は光の柱とぶつかりあい、『竜王の殺息』を止めた。


 まさにぎりぎりのタイミング。

 後少し遅ければ

 もし、こいつの右手がなかったら。



垣根「借りを作っちまった……か」

 今頃、魚のエサ状態でもおかしくはあるまい。

上条「ぐっあぁぁああああああ!!!」

 しかし、いかに異能の力を押し切る『幻想殺し』の力でも物量作戦には敵わないのか、徐々に押されていく。

上条「ぐううううぅぅぅぅ!!!」

 上条が耐えようとする。

 だが、もはや限界はすぐそこ。


 『竜王の殺息』が上条の右手を押し切る―――――――――!!!


神裂「………『Salvare000』」

 神裂がワイヤーを部屋中に張り巡らせ、インデックスの足元を攻撃する。

 足場を崩され、態勢を崩す。
 それと同時に『竜王の殺息』の軌道が上条の右手から逸れ、天井を貫いた。

垣根「はっ!いい仕事してるじゃねえかよ!」


 ――――――間違いなくチャンスは今だ。

 ここで、全てを終わらせる―――――――!



垣根「行くぞ。覚悟は出来たかよ、英雄(ヒーロー)」



上条「バカ言うな――――――――――」




上条「んなもん、とっくの昔に終わってる―――――――――!!!」

インデックスが体勢を立て直し、もう一度2人へ光の柱が襲いかかる――――!

垣根「なめんじゃねえええええええ!!!」

翼と光が再度ぶつかりあう。


先ほどの接触である程度の『解析』は出来てる。

一瞬で破られるようなマネはしない。


だが、

まだだ、まだ足りない。

『竜王の殺息』はあまりに強力だ。

いかに学園都市第2位の実力を持つ垣根とはいえ、本来ならまったく太刀打ちできるものでは、ない。

それでも、ああそれでも――――――――――



演算を組み直せ。
世界を再構築しろ。
あるとあらゆる全てを理解しろ。


ここは俺の世界だ。
俺の、『未元物質』の。



―――――――ああ、何度でも言ってやる。


俺に、

俺の『未元物質』に――――――――!!




垣根「俺の『幻想』に、常識は通用しねえ――――――――――!!!」

冷蔵庫まじメルヘン

ステイル「羽が、大きく―――――――」


神裂「――――――――天使」


 垣根の翼がさらに大きくなる。もはや部屋中を覆い尽くすほどに

垣根「今行くぜ、囚われの姫君サマよ」

 翼が光を押し込み始める。

 この限界の状況において、さらなる力をつけた垣根。

 もはや、あの『第1位』を超えたと言っても過言ではは無い。

 垣根の翼が、さらに大きく、輝きを増していく。


垣根「英雄(ヒーロー)の御到着だ―――――――」

 翼が『竜王の殺息』を押し込める。

 最後の抵抗とでもいうように、それは翼とぶつかり、まばゆい光を生み出す。


垣根「残念だが、今度こそチェックメイトだよ。ラスボスさんよ」


垣根「―――――もう一人の英雄(ヒーロー)も御到着だぜ?」


上条「――――――――――――うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 ―――――そう。垣根の翼はただ『竜王の殺息』を防ぐためだけのものではない。

 翼に『どんなレーダーでも感知できない』特性を付与することで、上条の接近を探索されないためのもの―――――――――

 いわば天狗の隠れ蓑――――――!!

能力もいい具合に邪気眼ぽい

>>220の超禁書砲のスレタイ教えて

インデックス「警告――――首輪…… 致命的な………破壊……再生…不可」

 倒れこむインデックスを上条が支える。



 全てが終わった。

 そう、思っていた。


 上を見上げると、『未元物質』ではない羽が混じっている。

 それは、美しく、幻想的な羽。

>>398
美琴「あなた、病室間違えてない?」禁書「……、っ」

メンヘラが記憶喪失かよwwwwwwwwww

神裂「その羽に触れてはいけません!!それに触ってしまえば……大変なことに!!!」



 ―――――その羽が、今まさに上条の頭上へと降り注ごうとしていた。

垣根「上じょ―――」

 まだ間に合う。
 未元物質を展開し、上条の頭上を守りさえすれば、羽を防ぐことは出来る。



 ―――――――――上条だけならば。

 気付いていた。
 上条だけではない。

 自分の頭上にもまた、大量の羽が舞っている事も。


 その一つが。もう、すぐそばに来ている事も。

ステイル「危ない!」
ドサッ
上条「えっ」
垣根「あっ」
ステイル「うっ…」
ドサッ
END

 ――――――二者択一、取捨選択。

(―――は。やっぱり俺に、ヒーロー役は似合わなかったな)

 垣根が自嘲気味に笑う。

(やはり慣れないことはするもんじゃねえ。そんなことするから、こうなる)



(でも)

(そうだ、それでも)



(最後くらい、自分の心に素直になるべきなんだろうよ――――――そうだろ?)



 そして垣根は、

 ――――――最後に、英雄であることを選んだ。

・エピローグ


 目が覚めてはじめに見たものは見知らぬ天井だった。

 何故こんなところにいるのか思いだそうとして――――――――

 ―――――何も思い出せない事に気づく。


冥土帰し「おや、目が覚めたようだね」

 どうやらずっと横にいたのか、カエル顔の男がそばに座っていた。

 話を聞くとこの男は医者で、俺はここに担ぎ込まれたらしい。

 ―――――記憶喪失。

 正確には記憶破壊だけどね、とカエル顔は言っていた。

 つまり、失われた記憶はもう、二度と、戻らない。


 カエル顔からいろいろと説明を受けた後、

冥土帰し「そうそう、君宛にこんな手紙がきているよ」

 長々と書かれた手紙を渡された。

 差出人の名前にはステイル、神裂と書かれている。


 内容は、俺が上条当麻とかいうやつと一緒にインデックスとかいうやつを助けたとか、
魔術がどうとかいうものでとても信じられるものではなかった。


 だが、長々と書かれたその文章は、やけにすんなりと頭の中へ入っていった。

メルヘンは犠牲になったのだ……

―――――――――


インデックス「失礼するんだよ………」

垣根が病室に戻ってすぐ、一人の少女がやってきた。
純白の修道服をきた、異国の少女。

垣根「……どちらさまだ?部屋、間違えてねえか?」

そう話しかけるとその少女は体をびくっと震わせ、垣根の目を見つめた。
その目は友好的なものではなく、不審がる様子だった。

インデックス「………テイトク。私の事、覚えてない?」

垣根「うんにゃさっぱり。知らねえ顔だな」

はっきりと少女へ吐き捨てる。

インデックス「覚えてない?テイトク、私のために料理を作ってくれたんだよ」

インデックス「覚えてない?初対面の私を、テイトクは気づかってくれたんだよ」


インデックス「―――――――覚えてない?私、テイトクとトウマのおかげで助けられたんだよ?」


少女が藁にもすがるように垣根へと語りかける。

―――嘘であってほしい、夢であってほしい。
そう願うかのように。


垣根「悪いな。全部忘れちまったよ」

だが、この一言で、垣根は希望を打ち砕く。

 ――――――ここで、優しい言葉をかけることも出来たのだろう。

 嘘をついて、温かく迎えてやることも出来たのだろう。


 でも、きっとそうしないほうがいい。

 このガキの事は、『上条当麻』とやらが何とかしてくれる。

 記憶を無くした俺が出しゃばって、事を難しくする必要はない。

 それがいいハズだ。

 俺のためにも、このガキの為にも。

垣根「話はそれだけか?なら失礼するぜ」

 そう言った後、垣根は病室を出ようとしてドアノブに手をかけ――――――――


インデックス「――――――全部忘れたって!」

 インデックスが叫ぶ。

インデックス「テイトクが全部忘れたって、私が覚えてるから!!」

インデックス「テイトクの代わりに、絶対に、ぜーーーったいに!!忘れないから!!」



インデックス「だから―――――――――」



インデックス「―――――――ありがとなんだよ、テイトク」

 そしてインデックスは、垣根の背中に向け深々とお辞儀をした。


 だが垣根は何も言うことなく―――――いや、何も言えずに、そのまま部屋を出て行った。

冥土帰し「どこかに出かけるのかい?」


垣根「ちょっくら散歩に行ってくる。すぐ戻るさ」

 そういって病院を後にする。

 リハビリ代わりの散歩ってのも、いいもんだろう。
 

 そして病院をすこし出たところで―――――1人の男と出会った。

上条「……垣根」


垣根「なんで俺の名前を……ああ、お前が上条当麻、か」

 
上条当麻。どうも、俺と一緒にさっきのガキを助けたやつらしい。

垣根「……インデックスなら俺の病室に来てるぞ。まだいるはずだ」

上条「……今日は、お前に言いたいことがあってきたんだ」


上条「お前は覚えてないと思うし、きっと思い出すこともないんだと思う」


上条「――――――それでも、言わせてくれ」


そう言って少年は――――――――深々と頭を下げた。


上条「ありがとう、垣根」
上条「すまなかった、垣根」

垣根「……ったく、テメエらはそんなに謝るのが好きか?」

 そういいながら髪をかき、

垣根「礼も詫びも要らねぇよ。俺が何を考えて、何をしたかは知らねぇが」

垣根「そいつは間違いなく、俺が選んだ道なんだ。なら、何も気にしねえよ」

 垣根はそう言うのだった。



 そしてそのまま通り過ぎようとし―――――立ち止まる。

垣根「…………一つだけ聞いていいか?」

垣根「記憶を無くす前の俺は――――――どんなやつだった?」


 どうしても聞いておきたかった。

 『俺』は、一体どんなやつだったのか。

 どんな生き方をしていた人間だったのか

上条「――――――お前とは知り合ったばっかだったし、よくわからなかったけど」

 1つ1つ言葉を選ぶように、上条が話す。


上条「ひねくれてて、アウトロー気取りで、冷たいところもあって、メルヘンヤロウで―――――――」





上条「―――――――――でも、これだけは言える。お前は、間違いなく良いやつだったよ」

 上条は最後に、確信を持ってそう言い切ったのだった。

垣根「……そうか」

よくはわからない。けれど、


垣根「じゃあな、また縁があったら会おうぜ」

垣根の心には、不思議な満足感があった。

きっとこれから苦労することもあるだろう。

でも、大丈夫だ。きっとやっていける。


上条「ああ、インデックスも待ってると思うから。だからまた、いつか」

垣根は歩き出し、上条を通り過ぎる。

そして、振り返る。

垣根「ああ、また、いつか―――――――――」


空には、のんびりと雲が泳いでいるのだった。



終 わ り?

とりあえずここで終わりです。見てくれた人ありがとうございますホントに。

一方×インデックスの人に触発されて、ついうっかりやってしまった次第です。

はっきり言って反省と後悔しかない……なんであんなに上手く書けるんだ……orz


実はあと少しだけオマケがあるので、暇な方だけどうぞ。

・オマケ

冥土帰し「で、君のこれからなんだが……どうするつもりだい?」

垣根「これから………ね。なんにも考えちゃいねぇよ」

冥土帰し「ふむ………なら僕にいい考えがある」

冥土帰し「患者のアフターケアも、医者の仕事だからね」
 そう言って冥土帰しは垣根に資料を渡す。

冥土帰し「僕のつてに面倒見のいい先生がいてね。彼女の学校に編入させてもらうことにしようか」

垣根「はあ?編入?」

冥土帰し「編入なら『以前の知り合い』に会って困る事もそうそうなさそうだし、ね」

垣根「『以前の知り合い』?どういう事だ?別にそいつとあっても問題はねえと思うが――――」

冥土帰し「まあ、念のためだよ。気まずくなるのも嫌だろう?」

冥土帰し「それにそこなら寮に入る事も出来るしね。人間関係も衣食住も問題無しって訳だね」

垣根「……でここが、俺が今日から住む場所か」

 高校編入に先立って寮の部屋を決めてくれたらしい。

 ―――――あのカエル顔のジーさん、一体何者なんだ?

 などと考えていたが、部屋の前までたどり着いた時、変なことに気がつく。

垣根「………ん?なんでドアノブがすこし溶けてんだ?」

垣根「壁も手すりも傷だらけだし……ま、いいか」

―――――――――――

 部屋に荷物を搬入し終わり、やる事がなくなる。

 さてどうしようか。このままだらだらしててもいいが、時間がもったいない。
 

 ……こういう場合、周りの人間に挨拶にでも行ったほうがいいのか?

垣根「めんどくせえが、お隣に挨拶に行っとくか………」

 体を起こし隣の部屋の玄関まで行く。

ピンポーン

 チャイムを鳴らす、だが反応は無い。

ピンポーン

 もう一度押すが、やはり反応は無い。

 ――――留守みたいだな。

 そう思って帰ろうとし――――――

「ああ、今日はそこのやついませんよ」

 階段からやってきた住人に声をかけられた

垣根「そうか、そいつはどうも………」

 そう言われて帰ろうとし―――――思わず声の主を二度見する。

垣上「「………ん??」」



垣根「………上条、だったか?」

上条「垣根?!」

 お互いの顔が驚きの表情に変わる。

上条「お前、なんでここに―――――?」

垣根「……ここの高校に編入するんで、寮に入ることになったんだよ。それよりなんでテメエが―――――」

 そう言おうとしたところで、

インデックス「トウマうるさいんだよ!TVが聞こえないんだよ!って…………テイトク?」

 一番奥の部屋から、あの少女が現れた。

インデックス「………テイトクーーーーーーーーー!!!」

 
 ――――もうこうなったら笑うしかなさそうだ。
 あまりにも出来すぎてんだろ、これ。

垣根「やってくれるぜ、カエル顔のジーさんよ」

 これから、騒がしくなりそうだ。


 これからの自分の未来と、巻き起こるであろう騒動を考えて溜息をつき、

 そうして、こっそりとつぶやくのだった。

「まったく、不幸だ」



TO BE CONTINUE?

短いオマケですが、これで本当に終わりです。ありがとうございました。

頭の中と書くのはやっぱり違いますね……
構想だけなら二部三部まで行けるのに、書くとなるとこれでもう限界だ……

もうこれに懲りる事にします。
見てくれた人ホントにお疲れ様です、おやすみなさい。

禁書「シャケ弁おいしいんだよ」麦野「あ⁉テメッ」
とか

青髪「ロリっ子シスター!?」
とか

>>486
麦野とかステイルが蒸発しちゃうよ
心理掌握なら昔の記憶復帰とかも可能なのだろうか?

>>487
いいかげんステイルがかわいそうになってきた


LV5がみんな仲良しとかいいな

>>494
それじゃこれだろ。

美琴「ベクトル操作ってなに?」
ttp://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-1918.html

>>502
http://beeimg.mydns.jp/i/azuYl9e4Aww.jpg
これか

いなかった事にされてるあの人と思えば・・・

一方禁書って一方さんが演算で興奮しすぎて絶頂しちゃうやつだっけ?

>>521
そう、魔術解析出来た快感で射精したやつ

           ミ\                      /彡
           ミ  \                   /  彡
            ミ  \               /  彡

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     ミ____        \  |.  .| /        ____彡
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        /   /   |〕   帝凍庫クン   .||   ´\   \
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      彡/   │ ../ |   '叨¨ヽ   `ー-、  || \ |    \ ミ

            │ / ..|〕   ` ー    /叨¨)  ..||   \|     
    r、       |/   !         ヽ,     || \  \      ,、
     ) `ー''"´ ̄ ̄   / |    `ヽ.___´,      j.| ミ \   ̄` ー‐'´ (_
  とニ二ゝソ____/ 彡..|       `ニ´      i|  ミ |\____(、,二つ
             |  彡...|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i| ミ |
             \彡 |               .|| ミ/
                       |〕 常識は通用しねぇ  ||
                  |             ..||
                  |___________j|

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