ほむら「私、もう一度悪魔に生まれ変わるわ。黒おじさん」【女神転生×まどマギ】 (524)


ほむら「私、もう一度悪魔に生まれ変わるわ。黒おじさん」【女神転生×まどマギ】


ほむら「……また、倒せない……ワルプルギスの夜」

ほむら「次のループ……こそっ!」

カシャン!

砂時計を逆さにし、私はまたループの開始時刻へと時限の回廊を歩く。

一人、喚き散らし……
爪を、親指を噛み、血を流しながら、
狂いそうになる気を留めている。


ほむら「何がいけない、何がいけない、何がっ!」


ほむら「次こそ、次こそ、次こそ……」


ほむら「……っ!?」


無駄に積み重なった戦闘経験のお陰か、
切歯扼腕の最中でも、いつもと違う妙な感覚に気がついた。

これは……誰も居ない筈の、時限の回廊の中で……


ほむら「誰かに……見られてる???」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379116016



※女神転生クロスです。

ただ、両作品の独自解釈が多すぎて読みにくいかもしれません。

書き溜めも進んでいないので、投下間隔も結構あいてしまうかもしれません。

また、まどポ等一部の設定をガン無視してます。

折角スレを開いていただいたのに申し訳ありませんが、
ご了承ください。


ループが、目に映った白い天井から始まる。

私はベッドから飛び上がり、周囲を警戒。

……だが、時限の回廊から新しい平行世界へと飛んでも、
何者からの干渉も無かった。

気の所為だったのだろうか……。

兎に角、私はやるべき事をやろう。

まずは、魔女に対抗する為の武器集め。

それから、まどかとインキュベーターの監視だ。


――やるべき事をやっている最中
やはり巴マミ、美樹さやかと仲違いをしてしまう。

インキュベーターをまどかと遭遇しないようにするのは難しいらしい。
また、勘違いされたわ。クソ

まどかと 美樹さやかは 今頃、巴マミの家で
魔法少女の事について説明を受けているのだろう。

私はといえば、見逃してあげるという言葉を巴マミから受け、
惨めに退散……。

ソウルジェムが濁るわね。

折角だし、薔薇園の魔女を狩り、
グリーフシードを手に入れる事にしましょう。


ほむら「……!?」



私が薔薇園の魔女の結界に入った途端、
普段とは違う異質な気配を感じた。

この感覚……あの時限の回廊で感じたものと同じ?

何事かと魔女の元に急ぐ最中、
魔女の結界が……解けた。

馬鹿な、他に魔法少女の気配はなかった。

先程の異質な気配の持ち主が、魔女を倒したというのだろうか?



現実世界に戻って、魔女を倒した存在を探す。


すぐに、グリーフシードを持つ存在は見つけられた。

……あろうことか、それは……人形。

おそらく、マリオネットだった。


マリオネットは、薔薇園の魔女のグリーフシードを掲げる。

すると、グリーフシードを中心に、幾何学模様の光が浮かび上がる。

これは……魔法陣???
ループに入る前の頃、漫画で似たようなものを見た覚えがある。

魔法陣の形をとる光が強まるごとに、
グリーフシードはより黒ずみ、脈動する。

私がただただ呆然と見ることしか出来ない中、
結界が現れるわけでもなく、
新たな魔女らしきものが姿を現した。

馬鹿な……。結界を持たない魔女?

ワルプルギスの夜並ということか?


恐怖で漸く、戦闘態勢に入れた私。

新たな魔女を観察する。

ん……、魔……女?

いや、どう見ても……背の高い、痩身の男。

黒いスーツを着込んでいて、
病的に色白、その所為か顔はまるで骸骨の様。

数え切れない程 繰り返しても、
このような魔女を見るのは初めてだ。

黒い男は私の方を向き、
驚くべき事に はっきりした日本語を口にした。


???「屍鬼の娘か……」

ほむら「し……き……?」

???「……ふむ、自分が何者かわかっておらんようだな」

ほむら「わ、訳の分からない事を言わないで! 貴方こそ、何者よ!」

???「私か。そうだな、「黒男爵」と名乗っておこうか」

ほむら「くろだんしゃく?」

???「呼びにくければ、黒おじさんでもよいぞ」

ほむら「……呼び方はどうでもいいわ。魔女ではないの?」

黒おじさん「魔女……、先程、「げるとるーと」と名乗った悪魔の事か」

ほむら「ゲルトルート……、そうだけれど……名乗った?」

黒おじさん「私が問えば、教えてくれたぞ」

ほむら「教えてくれた……?
     さっきから、何なの。悪魔だとか、しきだとか……」


黒おじさん「屍鬼とは……、しかばねの鬼だ。
       そうだな。人間達にはゾンビ、そう言った方がわかり易いか」

ほむら「……貴方、魔法少女が何か、知っているのね」

黒おじさん「魔法少女? 魔法で生かされている少女、そういう意味か」

ほむら「……直接、知っているわけではないの? なら、何故見破れたの?」

ほむら「インキュベーターの知り合い? あいつらの仲間なの!?」

黒おじさん「娘よ、私は悪魔随一のネクロマンサーである。
       魂が肉体に宿っているか否か、一目で分かる」

黒おじさん「その、「いんきゅべーたー」とやらは、しらんがな」

ほむら「……どういうこと、貴方が悪魔……?」

ほむら「悪魔が、本当に……いるわけ……?」


黒おじさん「娘、貴様も立派に悪魔の範疇なのだぞ? 何を驚く」

ほむら「……私は、既に人間でないどころか……悪魔……ですって?」

黒おじさん「そうだ。元は確かに人間だったようだがな。
       あの子と一緒だ」

ほむら「あの子?」

黒おじさん「……こちらの話だ。兎に角も、人間ではない娘よ。
       貴様は何をしに来たのだ?」

黒おじさん「魔女とやらを倒しに来たか? 戦いの気配を纏っていたが」

ほむら「……そうね。そのつもりが……貴方が現れたって訳よ」

黒おじさん「マグネタイトの結晶が狙いか。悪いが、私が全て頂いた」


ほむら「まぐねたいと……?」

黒おじさん「それも知らんか。人間が発する、喜びや悲しみなどの感情エネルギーのことだ」

黒おじさん「私から見ても珍しい、高純度のマグネタイトの結晶だったのでな」

黒おじさん「お陰で、物質世界に具現化できたわ」

ほむら「感情エネルギー……、絶望……した時に発する?」

黒おじさん「そうだな。絶望、嫉妬、憎悪、恐怖した時にも発する。
        そういうのが好きな悪魔もいる」

ほむら「インキュベーター……、じゃあ、あいつも、悪魔……?」

黒おじさん「貴様を悪魔へ作り変えたのが、そのインキュベーターという奴か」

黒おじさん「インキュベーターといえば、この国でいう……恒温器……孵卵器か。なるほどな」

黒おじさん「人間から悪魔を生み出す、うまいやり方を見つけたものだ」

ほむら「うまいやり方……ですって!?」

黒おじさん「うむ。私もこのようなやり方ははじめて見る」


ほむら「……黒男爵と言ったわね。貴方、やはり私の敵ね」

黒おじさん「ふむ、とすればどうする?」

ほむら「死んで貰うわ」


カチッ

私は時を止め、デザートイーグルとベレッタをとりだし、撃ちつくす。

不気味ではあるが、
人間と変わらぬ大きさの、痩身の男。

これだけ銃弾を浴びせれば死ぬだろう。

……時を再び、動かした。

銃弾はことごとく、不気味な男を穿つ

                       ……はずだった。


黒おじさん「素晴らしい……。時間に干渉する能力か」

ほむら「無傷……ですって?」

黒おじさん「残念だったな。私でなければ効いたかもしれんが、銃撃無効でな」

黒おじさん「……かかか、仕置きが必要なようだな」



黒い男は立ち止まったまま、こちらに向けた不気味な手が急激に大きくなる。

次の瞬間には、その手が私の胴体を貫いた。

手が伸びた?

一瞬の出来事で、手や足を動かす予備動作も見せなかったために
時間止めも適わず

私は……死んだのだろうか。



……恐怖に目を閉じていた私は、
いつまでも襲ってこない痛みに困惑し、
再び目を開いた。

黒い男は、物珍しげに何かを見つめている。


あれは……、私のソウルジェム!?

何故、何時の間に!?


ほむら「あ、貴方! それを返しなさい!」

黒おじさん「これが大事か。そうだろうな、貴様のソウルが宿っている」

黒おじさん「素晴らしい。これを作り出したのは、さぞ強力な悪魔なのだろう。
       人間を悪魔化するという一点においては、
       閣下の生み出したマガタマより効率がいいのではないか」

黒おじさん「興味深い。調べさせてもらおう」

ほむら「やめっ……!」



黒い男は指先に怪しい光を灯し、
そのまま私のソウルジェムの中にその指を突っ込んだ。

私は絶叫を上げ、意識を失った……。


――誰かの声が聞こえる。

私が近くで聞きたくて、たまらない声。

しかし、その声はループを繰り返す度に離れていく。

距離も、籠められた感情も……。

だけど、今のその声は……私が聞きたい声に近い。

現実にはありえない。

きっと、夢なのだろう。

思わず、私はその声の持ち主である愛しい名前を口にしてしまった。



ほむら「……まどかぁ……」

まどか「ほむらちゃん! 大丈夫!?」

ほむら「あたまが、あたまが痛いよ……。助けて……」

まどか「どうしよ……、偏頭痛かなぁ。慢性的な頭痛? ほむらちゃん。
     それとも、緊張性頭痛? 魔女狩りなんてしてるから、ストレス強くて……」

マミ「脳内の出血とかないわよね……」

マミ「魔女の攻撃を頭に受けたなら可能性がある……かも」

まどか「ええっ!?」

さやか「あ、アタシ、救急車呼んでこようか???」

マミ「いえ、脳出血なら、一刻を争うかもしれない。私が魔法で……」

ほむら「……」


ほむら「……あれっ???」


私は飛び上がった。

意識が朦朧としていたが、どうやらまどかが膝枕をしてくれていたらしい。

もうちょっと続ければよかった。勿体無い。

いや、そうじゃない。

やばい、これ……現実じゃないの。

思いっきり甘えた声を出してしまった。

しかも、美樹さやかに巴マミにまで聞かれてしまった。

なんなの、この状況。


まどか「ほ、ほむらちゃん??? 頭痛いのに、大丈夫なの?」

ほむら「た、大したこと無いわ!」

さやか「そんな事言って、あんた、涙目で苦しそうだったくせに……」

マミ「貴女、倒れて気を失っていたのよ? 暁美ほむらさん」

ほむら「……そ、そう……なの」

マミ「魔女の攻撃を受けたの?」

ほむら「……攻撃を受けた……? いえ……、えっと……」

まどか「記憶が飛んでる? 意識障害に記憶障害じゃ、
     一度ちゃんと検査受けたほうがいいよ!」

ほむら「いえ……ほ、本当に大丈夫だから」

ほむら「それより、貴方達、どうしてここに?」


マミ「貴女が魔女をちゃんと狩ったかどうか分からなかったから、
   一応 周囲を探っていたのよ」

マミ「貴女が結界内に入るのを確認したから、帰ろうとしたのだけど……」

マミ「魔女の反応が、今まで見た事ない反応を示したから引き返して来たの。
   そしたら、貴女が一人で倒れてるでしょう……?」

マミ「何があったのかと思ったわ」

ほむら「そう……、見た事のない反応……?」

マミ「ええ。別の魔女に、置き換わったみたいな」

ほむら「……夢じゃ、なかったのね」

マミ「やっぱり、何かあったの?」



ほむら「一応、警告しておくわ。黒いスーツ姿の、背の高い痩身の男に気をつけなさい」

マミ「……男?」

ほむら「私も、奴が何者かは知らない。だけれど、そいつは魔女を喰って生まれた」

ほむら「黒男爵……とか、名乗っていたけど」

ほむら「そいつの攻撃を受け、私は倒れたの」

マミ「喰った? 名乗った?? ……そんな事、今までは一度もないわ」

ほむら「だから、目が覚めたときに、私も夢だと思ったの」

ほむら「……信じるかどうかは、貴方達次第よ」

ほむら「それじゃ、私は行くわ」



早々に立ち去ろうとした。

……が、足がもつれ、体勢が崩れる。

地面に倒れこみそうになって、巴マミと美樹さやかに体を支えられた。

まどかも、心配そうに私の様子をうかがってくれる。


さやか「……あんたさ、あたしだって、あんたの事をいけ好かない奴だとは思ってたけど、
     流石にそんなふらついているの放っておくと、ばつが悪いよ」

マミ「そうね。一応、家まで送っていくわ」

ほむら「い、いえ! それには及ばない……」

まどか「駄目だよ! ほむらちゃん! 本当に体調が悪そうだもん!」

ほむら「……まどか」


結局、まどかの剣幕に押し切られ、
巴マミと まどかが私を支えている間に、
美樹さやかがタクシーを呼んできてくれる。

四人でタクシーに乗り込み、私の住むアパートへ……。

なんだこれは、こんな展開は初めてだ。


私を家の人に引き渡そうと思っていたまどか達だったが、
生憎私は一人暮らし……。

ずかずかと三人は私の領域に入り込み、
色々と見られてしまう。


さやか「ぎゃっ、なんだあの振り子! こええ!」

マミ「タブレットPCが沢山……。何これ、魔女の記録……?」

まどか「ええと、お布団かベッドは何処かな……」

ほむら「あの……もう、大丈夫よ。迷惑を掛けたわね。
     このまま私は眠るから。帰っていただいて、結構よ」

まどか「駄目だよぉ、ほむらちゃん! 
     何かおなかに入れておかないと、治るものも治らないよ?
     私、何か準備する!」

さやか「なんか、この部屋の間取りおかしくない?
     外からみた広さより明らかに広いって言うか……」

マミ「この記録……シャルロッテ??? こんな魔女が居たのね。
   中に別に本体が居るとか、ベテランじゃなきゃやられちゃうわね」

ほむら「……お願いよ、話を聞いて頂戴」


人の話を聞かない子達だとは思っていたが、
やっぱりそうだ。

くそ、弱い部分を見せてしまったからか。
普段のループより、皆の行動がずうずうしい。

敵情視察のつもりかもしれないが……。


結局、まどかが作ってくれた味付けに若干失敗した雑炊を食べ、
私が布団に横になったのを確認してから、三人は帰ってくれた。

何かあったら連絡して、と電話番号とメアドが書いてある紙まで、
まどかに渡された。

ちょっと嬉しかったりしたのだが、同時に疲れた。

本当に、今晩の所は眠るとしよう……



『ふむ、あのまどかという娘が、貴様の想い人か』」


突然、近くで不気味な声が聞こえた。

私は、また飛び上がった。


ほむら「くっ、黒男爵!? どこにっ!?」

黒おじさん「貴様の盾の中だ」

ほむら「なんでそんなところに!?」

黒おじさん「マグネタイトの消費を抑えるのに、都合が良かったのでな。
       我らは貴様らのいる物質世界に存在するだけで、マグネタイトを消費する」

黒おじさん「貴様がソウルジェムを濁らせるようなものだ」

ほむら「……」

黒おじさん「貴様の盾の中は、物質世界と精神世界の狭間のような空間だ。
       我ら高次の精神世界の存在は、マグネタイトの消費が抑えられる」

ほむら「……そうまでして何がしたいのよ、貴方は」


黒おじさん「魔法少女とやらのシステムに興味があってな。
       貴様以外の魔法少女や、インキュベーターとやらも調査したい」

黒おじさん「貴様には、その為の手駒になってもらおう」

ほむら「……なんで、私が……」

黒おじさん「盾の中にいる私は、通常時はお前のソウルジェムの中にいるようなものだ。
       逆らえば、簡単に貴様なぞ屠れるぞ?」

ほむら「……くっ」

黒おじさん「……それに、だ。場合によっては、貴様の悲願が達成されるかも知れんぞ」

ほむら「それ、どういうことよ」

黒おじさん「インキュベーターとやら、我らの敵で在り得る」

ほむら「……同じ悪魔じゃないの?」


黒おじさん「悪魔にも色々いるのだ。個々の思想による対立があってな。
       我らは欺瞞に満ちた秩序を破壊し、
       自由こそ至上とするChaosを信奉している」

黒おじさん「それに対して、自分達に都合の良い法であらゆるものを縛り、
       秩序を保つ事を至上とするLawの奴等」

黒おじさん「それに対し中立の、どっちつかずの……
       もしくは、調和を至上とするNeutralの思想がある」

黒おじさん「信奉する思想の違いで、敵対するのが常だな」

ほむら「……インキュベーターは、そのNeutralかLawの悪魔だというの?」

黒おじさん「恐らくLawだろうな。だから、その企みによっては、私は潰さねばならん」

ほむら「……悪魔の、貴方が……?」


黒おじさん「かかか、人間の益になるかは知らぬぞ?」

黒おじさん「人間にもLaw、Neutral、Chaosそれぞれに属する奴らがいるのだ。
       Chaos属性の人間以外には、それは不幸を生む結果となるやもな」

ほむら「……そう」

黒おじさん「どうだ、娘よ。多くの人間を敵に回しても、己の欲求を優先するというのならば」

黒おじさん「私に協力すれば、貴様は自らの目的を達成する事が出来るかもしれん」

ほむら「……多くの人間を、敵に回しても……」

黒おじさん「そうだ」

ほむら「……例え、あの子自身を敵に回したとしても、私はあの子を守ると決めた」

ほむら「いいわ。私は貴方の手駒となりましょう」

ほむら「インキュベーターを潰せる可能性があるというのなら、それでも構わない」

黒おじさん「……うむ」


……だけれど、最後まで手駒になるとは限らないわ。

使えなかったり、この悪魔の目的が
最終的にまた別の形でまどかに不幸を齎そうとしたら、
どんな手段を用いてでも、この悪魔だって潰してやる……。

黒男爵を強く睨んでいたら、
何が琴線に触れたのか分からないが
口角を上げ、不気味に笑った。

私が考えている事などお見通しなのか。

所詮、人間と大して変わらない私の事など、
本当に駒くらいにしか思ってないのだろう。

今に見ていろ……。


今日はここまでです。
続きがかけたら、またよろしくお願いします

友情は別にchaosの特質ではない
chaosである資質ってのは社会的な倫理観に従うかどうかってとこが大きい
ぶっちゃけた話すると行動規準がマイルールであることがchaosである条件

law的な社会ルールに対しては頭のいいchaosは利用出来る物であると気付いているから、自分の益になる限り従う
但し、自分に対して不利益であると思えば躊躇なくルール破りをする
頭の悪い奴はやたら噛みついて幼稚な反社会的行動を取る

閣下やその直属配下クラスになると、社会ルールを積極的に利用してるというか
むしろシステムそのものに食い込んで利益を得てるからな…
マッカ経済牛耳ってるルキフグスなんか最たる例


>>48さん
友情に篤いというより、
近視的に大事な人への友情、愛情が他のすべてを優先しやすい、と書くべきでした。

Chaos属性はシリーズ通して、歪ながら深い愛情が描かれてる事が多いので特質の一つに挙げました。
赤黒おじさんをはじめとして。

執着といった方がいいかもしれませんが

Lawは無機質すぎる……


>>49さん
閣下自身完全なChaosでもないし、
「神の一部でしかない」発言もあるから
そんなに綺麗に区分けできないですよね

LawのICBMもどっちかというと破壊と再生なChaosがやりそうな事ですよね。


1としましては、ゲーム内でその属性のキャラクターがどう描かれてるかが、
その属性の特徴を一番物語っていると思います。

ましてやその思想を体現している大天使なわけですし。

LNCはLやCの中でもN寄りかより深く信奉しているかで考え方が違いますし、
人情ものの刑事がLとして、
大天使等の領域に達しているLaw属性の考え方とはかなり違うと思います。

無機質と表現したのは、
究極のLawである法の神が求める世界は個々人より
常に全体の理路整然とした秩序のみを追求していると捉えられるからです。

東京にICBMを落とし、自分の都合のいい秩序を求めたのもその為かと
ある意味極Chaosみたいです

アトラスとしては、各属性が極端になると、
こういうキャラクターとして失敗する(成功する場合もありますが)、
というのもゲーム内で描きたかったのかと。

申し訳ありませんが、
この辺りは1の主観で密接に物語にも関わってくることなので、
納得いかない方は話自体も違和感を感じるかもしれません。

もうストーリーは決まっていて、今更変えられないので
それは違うだろと思いましても、ご了承ください。

投下しますね。


――悪魔の手駒に成り下がった翌日。

教室に入った途端、まどかが駆け寄ってきた。

数歩遅れて、美樹さやかもやってくる。


まどか「ほむらちゃん! もう大丈夫なの!?」

ほむら「ええ。大丈夫よ、まどか」

まどか「無理しないでね? 気分悪くなったら、すぐ私に言って!」

ほむら「ありがとう……、まどか」

さやか「……ねぇ、転校生」

ほむら「……なにかしら? 美樹さやか」

さやか「今日の昼休み、屋上でマミさんと私達で集まるんだけど……
     アンタも来ない?」

ほむら「……どういうつもりかしら?」

さやか「いや……、マミさんが話したいことがあるらしくて」

ほむら「……いいわ。屋上ね」


退屈な午前中の授業を終え、
まどかと美樹さやか、それから私の三人で屋上へと向った。

私は相変わらずクール系美少女を気取っていたが、
まどかは気遣うようにこちらを見て、美樹さやかは気まずそうにしていた。


マミ「……あら、素直に来てくれたのね。暁美ほむらさん」

ほむら「今更、話したい事って何かしら? 巴マミ。
     昨日の事には、とりあえず感謝しているけど……
     悠長に話をする間柄でもないでしょう」

マミ「貴方は警戒すべき人物だとは、今も思ってるわ。
   でも、貴方の話を聞いておいてもいい。そう考え直したの」

ほむら「……どうせ、貴方達に話しても信じないわ。話しても無駄よ」

マミ「……暁美ほむらさん」

ほむら「なにかしら?」


マミ「先輩の私から、譲歩すべき……よね」

マミ「どうして、貴女がきゅうべぇを嫌うのかは分からない」

マミ「その所為で、私は貴女を嫌ってて、理解しようともしなかった」

マミ「でも、昨日、少し貴女の事が分かっちゃったのよ」

ほむら「……貴女が? 私を!? 貴女に、私の何がわかるの!」

マミ「……私に、すこし、にてる」

ほむら「にてる……?」

マミ「独りぼっちで、誰にも頼れなくて……、
   でも、本当は誰かに触れたくて……甘えたくて仕方が無いの」

マミ「違う……?」

ほむら「……」

ほむら「……あなたと……、一緒にしないで。私は……」


さやか「また、強がっちゃって」

ほむら「……黙りなさい、美樹さやか。別に私は強がってなどいないわ」

さやか「そんな事言って、昨日目が覚めたときは
     まどかに甘えて可愛い転校生ちゃんだったのになぁー?」

ほむら「なっ!?」

まどか「さやかちゃん。そういう言い方は、ほむらちゃんの反感を買うよ」

さやか「……すまん」

マミ「……ね、暁美ほむらさん。貴女が強がってでも隠しているのは……何かしら?」

ほむら「……貴女に、貴方達に、話すわけにはいけないのよ」


特に、巴マミ。

貴女は、それを聞けば絶望してしまう……。


マミ「……そう。まぁ、そう簡単に私と貴女が歩み寄れるとは、思ってなかったけどね」

ほむら「なら、どうして私と話す気になったの」

マミ「鹿目さんよ」

まどか「あっ、マ、マミさん、それは言っちゃだめ!」

ほむら「……まどか?」

まどか「……うー、マミさん、ばらしちゃうんだもん」

マミ「私じゃ、どうにもならないから」


まどか「怒らないでね、ほむらちゃん」

ほむら「怒らないわ。私は」

まどか「……昨日、ね。ほむらちゃんの助けてって声を聞いたときにね。
     私なんかを頼ってくれて、嬉しくって」

まどか「一人で、魔女と戦い続けてる ほむらちゃんだもん。
     それに、私が知らない事を、一杯知っちゃってるんだと思って」

まどか「私なんかじゃ、何にも出来ないと思うけど……
     もし、少しでも手助け出来ることが、私にあったら……」

まどか「それは、とっても嬉しいなって、そう思って」

ほむら「……まどか」


マミ「こうやって、必至に「ほむらちゃんの話を聞いてあげて!」って
   主張する鹿目さんに折れたって訳」

マミ「……まぁ、でも。さっき言った事も、一応 本心だから」

マミ「敵対せずにすむなら、それが一番だわ」

ほむら「……巴マミ」

さやか「ま、あの保護欲そそる泣き顔見た後じゃ、
     なんか悪い事考えてそうなんて考えも吹き飛んだしね」

さやか「クール系美少女かと思いきや、ギャップ萌え狙ってんのかー?」

ほむら「……くぅっ」

まどか「さやかちゃん!」


ほむら「……美樹さやかとは兎も角。
     巴マミ、貴女とは元々、敵対したいとは思っていないわ」

さやか「アタシは兎も角!?」

まどか「さやかちゃんは黙ってて」

さやか「はい……」

ほむら「……話を続けるわね。
     私にも事情があるのよ。全てを話すわけにはいかない」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「ただ、私はあいつの犠牲者を増やしたくないだけよ」

マミ「あいつの……犠牲者?」

ほむら「ええ。あの白い悪魔よ」

マミ「きゅうべぇの事? 悪魔だなんて……」

ほむら「いいえ、悪魔よ。比喩じゃないわ。そして、貴方も、私も……」


さやか「おい、転校生。マミさんが悪魔ってどいういう事だ!」

ほむら「……」

マミ「……はぁ、すぐにダンマリなのね。もういいわ」

まどか「マミさん……」

マミ「暁美ほむらさん。今は、もう聞かないわ。話してくれる時を待ってるわね」

ほむら「……来ない事を祈っているわ」

マミ「そう……」

ほむら「……」

マミ「……それで? 魔女狩りに協力するつもりはあるのかしら?」

ほむら「……えっ?」


ほむら「わ、私が、貴方と?」

マミ「いやかしら……?」

ほむら「……」

まどか「ほ、ほむらちゃん! 断らないで!」

ほむら「まどか……」

まどか「昨日みたいな事もあるし、一緒の方がいいよ!」

ほむら「でも……私は……」


黒男爵が私の盾の中にいる。

あいつにとって、インキュベーターの調査をするなら
単独行動の方がいいだろう。

それを許すだろうか……。


『逆だ。関われ』


……!

テレパシーか。

やはり、しっかりチェックしている。

だが、それなら……。


ほむら「……いえ、分かったわ。魔女狩り、ご一緒させてください」

まどか「ほむらちゃん!」

マミ「……そう。暁美さん、よろしくね」

ほむら「ええ、よろしくお願いします」

まどか「よかったぁ、ほむらちゃん! マミさん強いし、二人ならどんな魔女も怖くないよ!」

ほむら「ありがとうね、まどか。心配させてしまったみたい」

まどか「てへへへ。そうだ、私も魔法少女になって一緒に戦えば、もっと安心……」

ほむら「それには及ばないわ!」


――放課後、一旦 自宅に帰る。
着替えてから、巴マミと合流し、パトロールする予定だ。

正直、気まずい。
向こうも共闘というよりは、近くで監視するつもりなのだろう。


ほむら「……何故、黒男爵は……」



黒おじさん『簡単だ。貴様ら魔法少女を調査するに当たって、
       サンプル数は多い方がいいだろう』

ほむら「……巴マミも調査するつもりなのね」

黒おじさん『無論だ。それから、佐倉杏子と言ったか?
       そやつも仲魔に引き入れるがいい』

黒おじさん『他の奴らも魔法少女に誘っても良いぞ』


ほむら「……佐倉杏子の件は兎も角、
     まだ魔法少女になっていない子を魔法少女にするのは断るわ」

黒おじさん『そうか、それならそれで構わん。
        候補者のまま、魔法少女との比較をするだけだ』

ほむら「……そう。ところで、なぜ佐倉杏子の事を知っているの?」

ほむら「貴方、昨日私のソウルジェムに何かしてたけど、
     そこまで分かってしまうの?」

黒おじさん『言っただろう。私は悪魔随一のネクロマンサー。
       死者から情報を得るのは私が最も得意とするところだ』

ほむら「そういえば、私の目的も知っているものね。
     時間遡行のことまで把握済み、か」

黒おじさん『無論。それは元々知っておったしな』

ほむら「元々……?」


黒おじさん『アカラナ回廊を貴様が使っていたのでな。何者かと観察していた』

黒おじさん『この世界に来て、最初に会った存在が貴様だったのは偶々だがな』

ほむら「……アカラナ回廊?」

黒おじさん『知らずに使っておったのか。
       アカラナ回廊というのは、時間神ズルワーン・アカラナが司る
       あらゆる時間と空間を移動できる場だ』

黒おじさん『私としては気に入らん神の名だが、使えるものは使う主義でな』

ほむら「……そんなものだったのね、あの世界は。
     それで? なんで私は観察されていたの?」


黒おじさん『屍鬼の娘が使うのは珍しい事でな』

黒おじさん『私が探している魂のかけらが、もしかすると貴様かもしれんと考えたのだ』

黒おじさん『結果は違っていたがな』

ほむら「魂のかけら……? 貴方の探している魂って……」

黒おじさん『まぁ、貴様には関係のない話だ』

ほむら「……そう」

ほむら「そろそろ、向うわ。巴マミの元に」

黒おじさん『うむ』


――待ち合わせ場所で合流した、私と巴マミ。

パトロールを始めるが、途中でまどかより連絡があった。

見滝原病院にて、グリーフシードを見つけたらしい。

そう……お菓子の魔女が出現したのだ。

巴マミ生存の最初の分岐点……気をつけねば。

魔女の結界まで急ぎ、
中へと入る。

今までの時間軸と同様、美樹さやかは魔女を監視するため結界内にいた。

美樹さやかが心配なまどかも、ついてきてしまった。


マミ「……お菓子の魔女……」

ほむら「ええ」

マミ「この結界、貴方の部屋のタブレットで見たシャルロッテと同じという事かしら?」

ほむら「逃げた使い魔が、魔女になったのかもしれないわね」

マミ「……そんなに都合よく、貴方の部屋で情報を手に入れられた魔女が……発生ね」

ほむら「……?」

マミ「ねぇ、暁美さん」

ほむら「何かしら?」

マミ「使い魔を逃がして、一般の人を犠牲にしてまで、魔女を増やす人がいるの。
   グリーフシードを得る為に。
   そういう事をする人って、どう思う?」

ほむら「愚かな行為だと思うわ、巴さん」

マミ「……そう」


まどか「マミさん……?」

マミ「ごめんなさいね、鹿目さん。私はまだ、暁美さんを信じきれてないから。
   聞けることは、聞いておきたいの」

ほむら「……話せる事は、何でも話したいと思うわ」

マミ「じゃあ、もう一つ聞かせてもらってもいいかしら?」

ほむら「はい。話せることなら」

マミ「……きゅうべぇを、どうしたの?」

ほむら「……? あいつが、どうかしたの?」

マミ「昨日から……いないのよ。姿を一回も見ていない」

ほむら「いや、私も知らないわ。まどかの所には……?」

まどか「え? み、みてないけど……」

マミ「……」


マミ「暁美さん、ごめんなさい。やっぱり、貴方と一緒に戦うのは怖いわ」

ほむら「そう」

まどか「マ、マミさん……」

マミ「ごめんなさい、鹿目さん。暁美さんが敵だって思ってるわけではないのよ。
   ただ、もうちょっとの所で、信じきれない」

マミ「命のやりとりをする場では、そういう人を近くに置いておきたくないの……」

ほむら「……それじゃ、私はどうすればいいのかしら?」

マミ「貴方が、鹿目さんの事を大事だって思ってるのは……信用できるわ」

マミ「だから、暁美さんはここで、鹿目さんを守っていて?」

マミ「魔女は私が片付ける。美樹さんも、私が助けてくるから」

まどか「……」

ほむら「……巴さん。ここの魔女は強力な魔女。本当に気をつけて」

マミ「ええ、わかったわ。ありがとう」


……まどかと二人、精神的に不安定な時間を過ごす。

折角、まどかと二人なのに。

巴マミめ、貴方の所為で全然落ち着かない。

シャルロッテに喰われるなど、
前情報があれば起こらないと思うが……。




だが。

そういう期待は、得てして裏切られるもの。

美樹さやかの悲鳴が響き渡った。

私はまどかの周りに結界を張り、
魔女の元へと向う。


ほむら「巴マミ! 美樹さやか!」

さやか「うわあああああっ!! マミさん! マミさん!!」

ほむら「……っ!」



巴マミは側頭部に大きなダメージを負っていた。

……一緒に、砕かれたソウルジェムの破片が散っている。

その傍ら、美樹さやかは気が狂ったように叫ぶ。

そのさやか達に、再び魔女が迫る。

絶望的状況、仕方が無い。

時間を止めて美樹さやかと巴マミを移動させ、
……そして魔女を駆除した。

移動した事も、私が魔女を倒した事も気がつかない美樹さやかに
私は事情を聞くことにした。


ほむら「美樹さやか……」

さやか「そ、そうだ! 転校生、魔法少女なら、マミさんを治して! 治してよ!」

ほむら「もう、手遅れよ……」

さやか「どうして! そんな事いわないでっ!!!」

ほむら「巴マミは、死んでしまった……」

さやか「うわあああああああああっ!!!!」



魔女の攻撃は油断の無かった巴マミより、
戦力のない美樹さやかに向ってしまったのか。

……なんてこと。


魔女の結界が解け、まどかと合流。
まどかにも死を知られてしまう……。


まどか「マミさん……」

さやか「…………」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「……美樹さやか。魔法少女には、いつか起こりうることなのよ」

ほむら「貴方の所為ではないわ。貴方達を戦いに巻き込んでしまった私達の所為」

さやか「……」

ほむら「まどか、美樹さやか。貴方達は、私達のようになっては駄目よ……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「巴マミのことは、後は私に任せて。遺体はあるし、お葬式は出来るわ。
     親族には私のほうで連絡しておく」

ほむら「貴方達は家に帰って、ゆっくり休みなさい……」


>>79>>80の間にこれが入ります


ほむら「美樹さやか。一体、何があったの……」

さやか「……転校生っ!? ああああ、あああああっ!」

さやか「私が、私が、マミさんに近づいちゃったの!」

さやか「マミさん、魔女たおしたって、おもって!」

さやか「なのにね、中から化け物がでてきて、私を狙って……
     マミさんが私を庇って! あああああっ!!!!」



まどかは美樹さやかを気遣い、家まで送っていくようだ。

私は巴マミの遺体を抱きかかえ、
巴マミの家へと向う。

巴マミの部屋に勝手に侵入し、遺体をベッドに横たえた所で
悪魔がテレパシーを飛ばしてきた。


黒おじさん『……とんだ欠陥だな。もろすぎる。
       せめて、攻撃を受けにくい場所にソウルジェムを隠せばよかろうに』

ほむら『これが魂そのものと知っている人は、ほんの一握りなのよ』

黒おじさん『そうであったな。だが、力の源とは分かっているだろう』

ほむら『……インキュベーターのお膳立てなんじゃないかしら。
     強力な魔法少女がいつまでものこらないように、
     そういうデザインにしてあるのかもね』

黒おじさん『ふむ……』


ほむら『黒男爵。もうこの時間軸は、貴方の調査の為に全ての時間をあててもいいわ』

ほむら『その代わり、どうかインキュベーターの有意義な情報を発掘してちょうだい』

黒おじさん『む? 貴様の想い人はどうするのだ』

ほむら『想い人……、いいかげん訂正しておくけど、大事な友人よ。
     私はあの子を助けたかったけど、また駄目なようね』

黒おじさん『何故だ』

ほむら『まどかが巴マミと友好的な関係であり、巴マミが死んでその瞬間を目撃しなかった場合。
     まどかは、巴マミの蘇生を望み契約する可能性が高いの』

ほむら『しかも、今回は美樹さやかが、巴マミの死の原因となっている。
     ……決定的よ』


決定的よ、と言葉を発すると同時に、携帯電話の着信音が鳴り響く。

発信者はまどか。

きっと、予想通りなのだろう……。




今日はこれで終わりです。

書き溜め分はこれだけですので、
投下間隔はこれから少しあくようになると思います。


投下します。

手直ししながらなので、遅いと思います
ご了承ください。


電話の内容は、やはり私の予想通りだった。
以下、詳細である。

まどか「……もしもし、ほむらちゃん?」

ほむら「ええ、私よ。何か……、用かしら?」

まどか「マミさんの事、連絡するの待ってほしいの」

ほむら「……何故かしら?」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん。私、願いを見つけたの」

ほむら「まどか……。私の言葉は、結局 貴方に届かないのね」

まどか「ごめんなさい、ほむらちゃん。ごめんなさい……」

ほむら「謝罪の言葉を聞きたいわけじゃないわ。
     巴さんの蘇生が、願いなのね?」

まどか「うん……」


まどか「私、マミさんに帰ってきてほしいし……
     このままだと、さやかちゃんが壊れちゃいそうで怖いの」

まどか「さやかちゃんも、マミさんを生き返らして欲しいって願いを考えてるらしいんだけど……。
     その、直接 死ぬ所を見ちゃったものだから……」

まどか「魔法少女として戦う事に、恐怖を覚えちゃってるみたいで」

まどか「……その、たぶん、耐え切れずに壊れちゃいそう」

まどか「それなら、私が……!」

ほむら「……魔法少女を止める本当の理由を話すわ」

まどか「えっ!?」



ほむら「鹿目まどか。その上で、本当にきゅうべぇと契約する道を選ぶか……判断して頂戴」

まどか「う、うん……」


どうせ駄目だろうが……

まどかに魔法少女の真実を語った。

魂のありかは勿論、魔女化の事も、インキュベーターの目的も。

電話の向こうのまどかは無言で、
ちゃんと話を聞いてくれているのか不安になる。

私に関する事を除いた全てを話した後……
まどかに反応を促した。



ほむら「止めた理由、分かってくれたかしら?」

まどか「……うん」

ほむら「それなら……」

まどか「止めてくれてありがとうね、ほむらちゃん」

ほむら「!? まどか、じゃあ、考え直してくれるの!?」

まどか「魔法少女が、魔女に……。私達、だまされてたんだね」

ほむら「そうなの、そうなのよ!」

まどか「……魔女、か。意識も何もなくなっちゃうのかな」

ほむら「そうね、たいした知性は、感じられないしね」



まどか「知性が感じられない……。じゃあ、何を目的に行動しているの?」

ほむら「さあ、生前、やりたかった事を結界内で好きがってやってる感じかしら」

ほむら「人間の生体エネルギーを糧にしてね」

まどか「……生前、やりたかった事?」

ほむら「ええ。恋人の音楽が好きだった魔法少女が、
     魔女になったら使い魔に好きな音楽をずっと弾かせ聞き惚れる……といった具合にね」

まどか「……」

ほむら「わかってくれた……のね?」

まどか「生前、やりたかったこと……忘れないんだね」

ほむら「まどか……?」


まどか「……なんでもない、ほむらちゃん」

まどか「それより、魔女化の件、知れてよかったよ」

まどか「でも、そうと知っていれば……」

まどか「そうだ……」

まどか「協力して戦って魔翌力の消費を抑えて、
     上手くグリーフシードを節約して戦えば……!」

ほむら「……」



ほむら「……わかった、わかったわ。もういいわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「魔法少女の真実を聞いてすら、
     貴女は、その決意を変える事はないのね。
     それじゃ、もう止めましょう……」

ほむら「これ以上 何かを口にするのは互いの為にならないわ。
      ごめんなさい、まどか。電話を切らせて頂戴」

まどか「でも……」

ほむら「一人で考えたいのよ……。ごめんなさい」



通話を終了し、ため息一つ。

そして、頭を抱えながら、じっとする。

時間遡行の話をしたとしても、
世界を滅ぼす魔女にまどかがなると話したとしても、
結局、あの子は魔法少女になるだろう。

魔法少女の魔女化は、契約阻止に関する一番効果的なカード。

これをきっても、阻止できなかったのなら、
何を言っても無駄だ。

他では精々、
契約後にまどかを苦しめ、追い詰めるだけに終わるだろう。

何も考えられない。もう、いやだ……。


黒おじさん『……娘よ。濁っているぞ』

ほむら『うるさいわね! 一人にしてよ!』

黒おじさん『……』



……突然、頭の中から暖まるような感覚を覚えた。

絶望を覚え始めた泥沼の様な感情が、それにより干上がって行く。


ほむら『……なに? 一体……』

黒おじさん『娘よ、貴様のマグネタイトを頂いた』

ほむら『私のマグネタイト……? どういうこと?
     ソウルジェムが、浄化してる……』

黒おじさん『前に言っただろう。マグネタイトは感情エネルギーだ。
       貴様が絶望を感じ発したマグネタイトを私が喰らった』

黒おじさん『意味が分かるか?』

ほむら『……えっ? まさか、そんな事……』

ほむら『グリーフシードが、いらない……じゃない……』


黒おじさん『絶望から生じるマグネタイトばかりを喰わせてくれるな。
       悪魔によって好むマグネタイトの種類があるのだからな』

ほむら『好き嫌いしないでもいいじゃない』

黒おじさん『貴様等のいうグリーフシードと同じで、
       私達もその種のマグネタイトの吸収量には限界があるのだ』

黒おじさん『私達の存在自体に影響を及ぼす』

黒おじさん『種族によっては、底なしだがな』

ほむら『……そう』

黒おじさん『利用できなくて残念だったな。
        それより、気分がマシになったのなら、想い人の所へ向かえ』

ほむら『……気が進まないわ。どうせ、まどかは魔法少女に……』


黒おじさん『それはどうでもいい。インキュベーターを調査したい』

黒おじさん『そやつの姿を私はまだ一度も見ていない』

黒おじさん『向こうも避けているようだ。なら、こちらから出向こうではないか』

黒おじさん『絶大な素質を持つ少女だ。流石に、このチャンスをふいにはしまい』

ほむら『……そういえば、昨日から魔法少女にも候補者にも姿を見せていないのだったわね』

ほむら『もしかして、貴方を警戒しているのかしら?』

黒おじさん『今までそういう事が無かったのなら、可能性はあるな』



黒おじさん『だが、人間をこれだけ力を持つ屍鬼に変える魔翌力を持つ悪魔にしては……
       恐れすぎのように感じるがな』

ほむら『あいつ自身に戦闘力はないわ。私から読み取っているのでしょう?』

黒おじさん『本当にそうかな』

黒おじさん『低級の分霊だとすればそうかもしれんが……』

黒おじさん『上級だと果たして……』

黒おじさん『しかし、正体はなんであろうな』

黒おじさん『宇宙から来た、宇宙の維持を目的……とすると……』

ほむら『?』

黒おじさん『まあ、いい。候補はあるが確証がない。それより向うのだ』

ほむら「……はいはい」


まどかの家に向う。

部屋の中の様子を伺うと、
やはりインキュベーターが居た。

まどかは、願いを口にしている。

インキュベーターに弾丸を打ち込みたい衝動に駆られたが、
どうせ無駄な行為。

あいつらは変わりは幾らでもいるし、
まどかもまどかで、別の機会に契約をしようとするだけ。

私が嫌われるだけ、損なだけ……。

静かに観察していることにした。


QB「君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」

まどか「巴マミさんを、蘇らせて下さい。出来る?」

QB「何の問題も無いね。死者の復活は本来、かなり難しい部類だけれど」

QB「君ほどの素質があれば、完全な状態で蘇らせる事が出来るよ」

QB「契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した……」

QB「これで、君も晴れて魔法少女だ。鹿目まどか」

QB「魔法少女の真実を知った上で、この道を選んでくれて感謝するよ」

まどか「別に、貴方のためでも、宇宙のためでもないよ。インキュベーター」

QB「巴マミのためか」

まどか「マミさんのため、さやかちゃんのため……それに」

まどか「ほむらちゃんを独りぼっちにしたくない」


QB「君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるのかい?」

まどか「巴マミさんを、蘇らせて下さい。出来る?」

QB「何の問題も無いね。死者の復活は本来、かなり難しい部類だけれど」

QB「君ほどの素質があれば、完全な状態で蘇らせる事が出来るよ」

QB「契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した……」

QB「これで、君も晴れて魔法少女だ。鹿目まどか」

QB「魔法少女の真実を知った上で、この道を選んでくれて感謝するよ」

まどか「別に、貴方のためでも、宇宙のためでもないよ。インキュベーター」

QB「巴マミのためか」

まどか「マミさんのため、さやかちゃんのため……それに」

まどか「ほむらちゃんを独りぼっちにしたくない」

ごめんなさい、116はなしで


QB「……ふむ。あのイレギュラーか。彼女の為というのは理解できないな」

QB「僕は彼女と契約していないし、魔法少女について知りすぎている」

QB「得体の知れない存在だよ。近づきすぎない方がいいんじゃないかな」

まどか「ほむらちゃんの事を貴方が語らないで」

QB「……」

まどか「私は貴方達の言いなりにならない」

まどか「ほむらちゃんは、私の大事なお友達なの」

まどか「……今日の電話で、嫌われちゃったかもしれないけど」

まどか「一杯謝って、仲直りするの」

まどか「そして、ほむらちゃんと一緒に、皆と一緒に生きていく」

まどか「絶対、皆を魔女にだってさせないから!」

QB「精々、頑張っておくれよ」


QB「そうだ。一応、警告しておくよ」

QB「いま、この見滝原には魔女以外にも正体不明の存在が現れている」

QB「君が仲良くしたいという暁美ほむらも、そいつに攻撃を受けて意識を失っている」

まどか「……!? 魔女を喰ったって、ほむらちゃんが言ってた……?」

QB「そうだね。君達が魔女にならず、死んでいくのは僕の本意ではない」

QB「気をつけておくれよ」

まどか「……さっさと、どこかに行ってくれるかな」

QB「分かったよ。じゃあね、鹿目まどか」

QB「グリーフシードが溜まったら呼んでおくれよ」

まどか「……ほむらちゃん、許してくれるかな」


……まどか。
私のためでもあるのは嬉しいのだけど……、
やっぱり私はこの時間軸の貴女には、もう……


黒おじさん『……あの娘、素晴らしい』

ほむら『……えっ?』

ほむら『まさか、貴方! 貴方もあの子を食い物にする気!? 許さないわよ!』

黒おじさん『何を言っている。喰らうには勿体無いわ』

黒おじさん『大したものだ、あの娘。
       押し付けの法を破壊し、生きようとする強い意志がある。
       それに相応しい力も。あやつも、Chaosの悪魔に相応しい……』

ほむら『Chaosの悪魔に……?』

黒おじさん『そうだ! これは面白くなってきたものだ……』

黒おじさん『暁美ほむらよ、あの娘も導くのだ。Chaosの悪魔へと!』

ほむら『……えっ?』


黒おじさん『どうした!』

ほむら『私があの子を導く? Chaosの悪魔へと?』

黒おじさん『そうだ。貴様もインキュベーターの押し付けの法に抗いもがく悪魔だろう。
       法の神により神から悪魔へと堕とされ、反逆している我等とは同属だ』

ほむら『ちょ、ちょっと待って頂戴。仮に私がそのChaos属性だとして……』

ほむら『わたしは、あの子に平和に暮らして欲しいだけ……』

黒おじさん『敵は戦って滅ぼさねば、平和など永遠に来ない。
       特に精神世界の存在で在ればな』

黒おじさん『力を付け、味方を探し……
       戦って勝って見せろ、あの宇宙から来たLawの邪神とな!』


今日はここまでです。
短くてすいません。

そういや邪神ってことは唯一神とは別勢力か
唯一神陣営なら黒おじさんももっと激おこだろうしな


乙ありがとうございます。

>>130さん D-L軸で勢力が完全に分かれているかは別の話みたいですけどね。
        カオス陣営だと特に、入り混じってる感じですし。

        そもそも、邪神エキドナがカオス陣営だったりすることもあるし、原作は結構適当な所もあったり。

短いですが 投下していきます


まどかは、巴マミに電話をしているようだ。
蘇生したかの確認だろう。

嬉しそうな顔が見えたため、問題はなかったか。

今のまどかと接触するのは避けたかったことと、
黒男爵も観察しただけで満足したらしく、
そのまま帰路に着いた。

その最中、
盾の中で妙に興奮状態にある黒男爵から、
少しでも現状を整理する為に情報を引き出そうとする。


ほむら『……法の神により、神から悪魔へと堕とされるっていうのは、どういう事なの』

黒おじさん『悪魔にも色々な奴等がいるが、大物悪魔には神や天使から堕とされた者が多い』

黒おじさん『私も、元はメソポタミアの地にて崇拝されていた、マルドゥクという神だった』

ほむら『メソポタミア……現イラクで、チグリス川とユーフラテス川の間の平野で栄えた、
     最古の文明……だったかしら』

黒おじさん『うむ。だが、元々戦乱の激しい地でな。
       マケドニアやペルシアの軍に蹂躙され、他教の神に圧迫された』

黒おじさん『さらには、原因不明の農地の汚染で、衰退の一途を辿る事になる』

黒おじさん『我等メソポタミア神話の神々は、信仰してくれた人間達と共に
       消え去る運命であるはずだった……』


黒おじさん『だが、そこに、メシア教の法の神の薄汚いやり方で、私達は眠っていられなくなった』

ほむら『薄汚いやり方?』

黒おじさん『一神教の宗教というのは、往々にして他の神を否定するのだ。
       侵略された土地や敵対している土地の神は、大抵悪魔扱いされる』

黒おじさん『これは、精神世界の生物である我等には決定的な影響を与える』

黒おじさん『我等土着の神が悪魔だと信じる人間共が増える事により、悪魔となった』

黒おじさん『敵対地域の神を悪魔とすることで、単純明快な構図にし、
       信徒どもの信仰心と戦闘意欲を上げるのが目的だったのだろうな』

黒おじさん『今では、私はアスタロト様の配下の悪魔をまとめ、
       地獄の総監査官であるネビロスという存在だ』

黒おじさん『私は押し付けの法に抗い、
       かつて多くの人間達が信仰してくれたマルドゥクの名を穢した
       糞神に礼をしてやるのが目的だ』


ほむら『ゾンビにされた私達と、インキュベーターの関係に似ている……。
     そう考えているわけ?』

黒おじさん『似ている部分はあるだろう。奴のやり方は気に入らん』

黒おじさん『Lawの奴等に相応しい虫唾の走るやり方だ。
       自分達の世界を作るため 東京にICBMを落し、
       それを人間の為だと責任転嫁をする』

黒おじさん『私も悪魔となり自らの目的のため多くの人間の命を絶ってきたが、
       それは自分の意思で行ってきた。
       他の何物にも押し付けたことは無い』

黒おじさん『自由のない責任逃れのための法を守護するだけのつまらん奴等だよ。
       その様な下らん目的のために、あの時アリスはICBMによって……』

ほむら『……ICBM? アリス?』

黒おじさん『……興奮しすぎたようだな。忘れろ』


ほむら『……よく分からないけど。あいつと違って、随分と感情豊かなのね。黒男爵』

ほむら『貴方達って感情がないんじゃなかったのかしら』

黒おじさん『む? 私達が感情が無いだと?』

ほむら『そうじゃないのかしら? インキュベーターは感情がないと……』

黒おじさん『馬鹿な。我等は高次の精神世界の存在だ。
       人間のそれとは、人間だった事の無い私達は異なるかもしれないが、
       私達なりに感情はあるぞ』

ほむら『え……? だけど、インキュベーターは嘘をつけない……』

黒おじさん『悪魔は人間相手によく嘘をつくものだ』


ほむら『いえ、しかし、実際 あいつは嘘はついたことない……』

黒おじさん『真実を語らなかっただけ。言葉足らずに。誤解されそうな言い方でな』

ほむら『……』

黒おじさん『人間のような感情はない。人間の感情は理解できないよ。
       真実はこうではないのか?』

黒おじさん『それに、貴様に嘘はつけないと思われていた方が、都合の良いのかもしれんぞ』

ほむら『……まだ、騙されていたの……? 何かを隠してる?』

黒おじさん『騙しあいで、人間が悪魔に勝てる事例の方が少ないのだ』

ほむら『……それも、貴方が私についている嘘だったりするんじゃないかしら?』

黒おじさん『私が貴様に悪魔は嘘つきだと吹き込んで、何のメリットがある』

ほむら『……』


ほむら『隠すためとして、何を今更隠しているのかしら。
     魔法少女の真実を私が知っていると、インキュベーターが知ってる時間軸でも
     奴等は感情がないと主張していたけど』

黒おじさん『さて、な。感情の希薄な奴等は確かにいるが……。
       下等な悪魔に多い。奴は違うと思うが……目的はまだ分からん』

黒おじさん『精々、油断しない事だな』

ほむら『そう……ね』


――翌日、朝一番に、まどかに頼まれる。

昼休みに屋上に一緒に来てほしい、と。

約束どおり、時間になって二人で屋上に向うと、
他には誰もいない。

用件はなんだろうか……

昨夜、一杯謝ると言ってくれていた。
きっとその件だろう……。


ほむら「……まどか」

まどか「ほむらちゃん……。ごめんなさい」

ほむら「……あまり、謝らないでほしい」

ほむら「もう、いいのよ。優しい貴方が、巴マミが死んで復活を祈らないはずがない」

ほむら「魔女化しないよう、注意するのよ? まどか」

ほむら「貴方のそんな姿、私は見たくない……」

まどか「うん……、わかった。気をつける。ありがとうね、ほむらちゃん」

ほむら「ええ……」


まどか「ほむらちゃん……。
     馬鹿な選択をした私だと思うけど……それでも、私と一緒にいてくれる?」

ほむら「私は、貴方と一緒にいる資格はないわ」

まどか「えっ……。資格……?」

ほむら「ええ。今回も貴方を守れなかった。インキュベーターに騙される貴方を」

ほむら「そんな私に、そんな資格はないの」

まどか「今回? どういうこと、ほむらちゃん」

ほむら「……」

まどか「……そっか、ほむらちゃんは、インキュベーターに騙されそうな人を
     助けるために戦ってきたんだよね」

まどか「私以外にも、きっと」

ほむら「……そう。そういうことよ」

ほむら(貴方以外のまどかも、たくさん……)


まどか「でも、私は騙されてないよ。ほむらちゃん」

ほむら「……えっ」

まどか「ほむらちゃんから見れば、私は間違った選択をしたと思ってると思う」

まどか「間違えちゃったかもしれないけど、でも、私なりに考えた結果なの」

まどか「わたし、見ないフリをすることなんて出来ないよ」

まどか「ここに、インキュベーターの意思はからんでない!」

まどか「成り立てが生意気を言ってるように聞こえるかもしれないけど……」

まどか「一緒に戦いたいよ。ほむらちゃんと!」

ほむら「まどか……」


ほむら「そうね、ええ……。一緒に、戦いましょう」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「きゃっ!」


私に抱きつく、まどか。

この感触は懐かしい……。
いつの頃か、そう。

私がまだ眼鏡をかけていて、弱かったあの頃に……。

このまどかは、あの時のまどかにそっくり。

久しぶりに再会した気分になる。


まどか「きゃって、ほむらちゃん、かわいい! うぇひひ」

ほむら「か、からかわないで。まどか」

まどか「てへへ、ごめんね」

ほむら「……もう」

まどか「がんばって強くなって、直ぐにほむらちゃんを護れるぐらいになるからね!」

ほむら「貴女はすでに、私より強いのだけど」

まどか「えっ? そうかなぁ。今はほむらちゃんに勝てる気がしないけど」

ほむら「それは私の能力の所為。私は火力がないから、魔女戦にはやや不向きなの。
     まぁ、魔法少女と戦うなら、私の方がある意味強いかもしれないけど」

まどか「ふーん……。ほむらちゃんの魔法……って、なに?」

ほむら「時間停止よ」

まどか「……ええー! すごい!」


ほむら「そんな事ないわ。その魔法以外、私は劣等生なのよ。
     それに時間停止すら、種が明かされれば脆いものなの」

まどか「……そうなんだ」

ほむら「……貴女だから言ったのよ、まどか。時間停止のことは、誰にも口外しないでね?」

まどか「うん、わかった」

ほむら「貴女が私より劣っているとしたら、特殊能力以外は、経験のみよ」

ほむら「貴女は魔翌力が強く、攻撃翌力がある分、消耗も激しいわ」

ほむら「力のコントロールに慣れて、無駄の無い戦いをしないと大変な事になるかもしれない」

まどか「そっか……。ほむらちゃん先生、手解きをよろしくお願いします」

ほむら「……ふふ。ええ、まどか……」


その後、二人で昼食を食べた。

放課後に、巴マミ達と接触する約束もした。

その約束を違えるわけにはいかず、
美樹さやかとまどか、それに私の三人で、巴マミと接触。

塞ぎ込んでいた美樹さやかだったが、
安堵の叫び声を上げた。


さやか「マミさあああああん!!!」

マミ「あはは、落ち着いて。美樹さん」

マミ「私はもう、大丈夫だから。鹿目さんには感謝しないと」

さやか「……そっか。本当は、あたしが叶えなければならなかったのに」

マミ「いいえ。そもそも、私が貴方を巻き込んだの。
   貴方はそんなに責任を感じなくていいわ」

さやか「……はい。まどか、ありがとう……」

まどか「えへへ、いいんだよ。さやかちゃん。
     私、魔法少女になりたかったし……」

さやか「まどか……」


まどか「えっと、マミさん。どこにも違和感はありませんか?」

マミ「ええ、大丈夫よ。むしろ、調子は良さそう」

ほむら「……精神的なショックはないのかしら?
     表面上大丈夫そうでも、いざって時に体が動かないと困るわよ?」

マミ「……たぶん、大丈夫だと思う。実は、死んだ事にも気がついてなかったし……」

マミ「生き返って吃驚よ」

まどか「そうですよ。マミさんったら、契約後に電話したら、
     「あら、鹿目さん。うちに忘れ物でもした?」って言い出して、
     がっくり来ちゃったんですから、もう」

マミ「ふふ、ごめんなさいね」


マミ「でも、一人での魔女狩りは避けたほうがいいのかも、とは思うわ」

マミ「生き返ったばかりで、何が起きるのか分からないし……」

マミ「鹿目さんだって契約したばかりだから、しっかり鍛えないと」

マミ「……暁美さん。昨日は貴方を突き放してしまった癖にずうずうしいのだけど
   これから、私達三人で、パトロールするようにしない?」

ほむら「ええ、いいわ」

マミ「ありがとう、暁美さん」


マミ「貴方がいなかったら、美樹さんも危なかった。
   貴方の事、もっと信用すればよかったわね……。ごめんなさい」

ほむら「……いいのよ。たしかに、私は話していない事が多すぎる。
     簡単に信じてもらえるとは、思っていないわ」

マミ「ありがとう。貴方が何を知っているのかは分からないけど
   貴方の人間性は信用するわ。一緒に戦って下さい」

ほむら「……ええ、いえ、はい。こちらこそ……」

まどか「てへへ、雨降って地固まるだね!」

さやか「……やっぱり、私も……なろうかな」


ほむら「……美樹さやか。やめておきなさい」

さやか「だって! 転校生! 私だけ……」

ほむら「きつい言い方になるけど、貴方にまで魔法少女になられるのは迷惑よ」

さやか「えっ?」

ほむら「三人程度なら、見滝原の魔女の発生率から言って問題は無いでしょう。
     だけど、あまり増えると本当にグリーフシードの取り合いになってしまうわ」

さやか「……で、でも。多い方が、安全に戦えない?」

さやか「あたしだって……、あんまり 役に立たないかもしれないけど……」

ほむら「役に立つ立たないの問題ではないわ」

さやか「……」


ほむら「……じゃあ、こうしましょう」

さやか「なに?」

ほむら「まどか、巴さん、私。この三人のうち、誰かが減ったら貴方も魔法少女になりなさい」

さやか「……えっ?」

マミ「……」

ほむら「充分、起こりうることよ。この事実はしっかりと認識しておいて」

ほむら「貴方は、貴方が大事に思ってる誰かを残して、[ピーーー]るの?」

さやか「……」

さやか「それは、あんたもじゃんか!」


ほむら「……」

さやか「それに、まどかやマミさんに死んで欲しくない! 助けてくれた、アンタだって……」

ほむら「……私達は、もう手遅れよ」

さやか「死ぬ事が確定事項みたいに言わないでよ!」

まどか「……大丈夫だよ、さやかちゃん」

まどか「マミさんも、ほむらちゃんも。私だって、居なくならないんだよ」

まどか「私は、その為に魔法少女になったんだから」

さやか「まどか……」

まどか「あの侵略者のいいなりになんか、ならない……」

マミ「……鹿目……さん?」


強い意志を瞳に宿したまどか。

……たしかに、このまどかはChaosの思想に相応しいのかもしれない。

殻を破ろうとする発想は、私には乏しかった。

魔法少女になってしまったまどかだけれど、
信じて、一緒に戦ってみよう。


せめて、この周の終わりまでは……






今日はここまでです。
ありがとうございました。

投下します。


――まどかと巴マミ、私の三人のチームは
非常に順調に魔女を狩っている。

近接が得意な魔法少女がいないので守りに不安があったが、
近づかれる事すらない。

通常の魔女では火力過剰といっていいだろう。

私の攻撃は通常兵器に頼ったものであるし、
私は攻撃を控え、魔女や使い魔の攻撃を潰す役割を担っていた。

……正直、それも殆ど必要が無く
私が役立つのは、魔女の知識面においてのみだった。


マミ「暁美さんって、本当に魔女の事をよく知っているわね。
   出現する魔女の事、全て知っているんじゃない?」

マミ「もしかして、そういう能力者?」

ほむら「全てじゃないわ。知ってる個体だけ、知ってるだけよ」

マミ「……私より年下なのに、きっと私よりずっとベテランなのね」

マミ「鹿目さんも新人とは思えない腕だし、なんだか自信なくしちゃうわね」

まどか「そ、そんなことないですよ!」

ほむら「そうよ。巴さんと比べて、まどかが勝っているのは単純な火力だけ」

ほむら「魔力に無駄遣いが目立つし、洞察力や命中率は歴然の差よ。
     巴さんの動きをもっとよく見て勉強して頂戴」

ほむら「総合力で言えば、この三人ではやっぱり巴さんが頭一つ抜けてるのだから」

まどか「はーい……。ほむらちゃんは厳しいなぁ」


マミ「ふふ、暁美さんは本当に、鹿目さんに優しいのね」

ほむら「……厳しくしてるつもりだけれど」

マミ「だからこそよ。甘やかすことがないのも、本当に大事に想ってるからこそ……でしょ?
   妬けるわね」

ほむら「……からかわないで」

マミ「うふふ、恥ずかしがる暁美さんって、やっぱりかわいいわね」

まどか「わ、私、ちゃんと分かってるからね! ほむらちゃん!」

まどか「マミさん! ほむらちゃんに近づきすぎるの禁止!」

マミ「あらあら」


マミ「……それにしても。このまま、三人でチームを組み続けられると……いいわね」

ほむら「どうしたの、急に」

マミ「お互い尊重しあえて、思った以上にいいチームだもの。
   もっと早く、暁美さんをちゃんと理解しようとすれば良かったのかも……」

ほむら「……いえ、それは難しい話よ。まどかがいなければ、ありえなかったわ」

マミ「そうね。鹿目さんがいてこそ、私達は協力しあえてるのよね」

まどか「そ、そうかな? 嬉しいな……」

ほむら「胸を張って頂戴。貴女は間違いなく、このチームの中心よ」

マミ「鹿目リーダーというわけね」

まどか「ええっ!? リーダーは、マミさんかほむらちゃんだよぅ!」



ほむら「私達はソロプレイヤーだから。協調性ないのよ」

マミ「ない……と言い切られるのは心外なんだけど」

ほむら「じゃあ、私、という事にしておくわ」

マミ「……こうやって ちょくちょく毒舌なのも、ほむらさんなのね……」

まどか「でも、やっぱり素は凄くかわいいほむらちゃんなんだよ?」

マミ「鹿目さんには甘えん坊さんだものね?」

まどか「てへへへ」

ほむら「……くう、なんか調子狂うわね」


……私としては、上出来なぐらいの巴マミとの関係だ。

まどかに頼ってこそではあるが、この三人での問題はないだろう。

今抱えている一番の問題は、美樹さやかだ。

彼女の様子は今、明らかにおかしい。

先日の巴マミ死亡の原因になったことから、
それに対する責任を感じ、
また、果たせなかった事による疎外感を感じてしまっているようだ。

上条恭介の腕の問題もあるため、
いくら魔女との戦いに恐怖しているといっても、
契約する可能性はあるだろう……


まどかは魔法少女になってしまったとはいえ、まだ生きている。

私はワルプルギスの夜を境に、またループするだろうけれど……
その後、せめてこの周のまどかが生きていて、
出来るだけまどかが生きやすい世界を残してあげたい。

この周のまどかの、私への好意に対するせめてもの礼だ。

私は美樹さやかを監視する事にした。

黒男爵も監視に異論はないらしい。


――美樹さやかを監視してる最中、
彼女に意外な人物との接触があった。

佐倉杏子である。

見滝原病院に向っている途中で、
美樹さやかは佐倉杏子に話しかけられていた。

美樹さやかは未だ一般人であるし、
険悪な雰囲気はないが……

そもそも、今現在は巴マミが生存しているのに、
何故 佐倉杏子が現れたのだろう。

一度は確かに死んだが、
復活してから時間は経ち、知っていてもおかしくはないはずだが……。

私は聞き耳を立てた。


杏子「なぁ、アンタ。もしかして、美樹さやかか?」

さやか「は、はい……。そうですけど、どちらさまですか?」

杏子「ふぅーん……。白い猫みたいな外見でさ、赤目と耳毛が特徴的な奴しらない?」

さやか「……? きゅうべぇ……のこと?」

杏子「やっぱり、知ってたか。間違いないようだ。あんたの選択は正しいよ、気にするな」

さやか「……何を知ってるの」

杏子「他人の為にたった一度の奇跡のチャンスを使うなんて、間違いだって事を知ってるのさ」

さやか「あんた、まどかの事を、馬鹿にしてんの?」

杏子「あん? 馬鹿にしてないよ。間違ってるっていっただけさ」

さやか「まどかは、私の所為で死んだマミさんを……マミさんを、助けてくれたのに!」


杏子「へぇ、それで、友達の尻拭いさせた気分になって、落ち込んでたのかい」

さやか「……っ!!! 許せない!」

杏子「ゆるせなきゃ、どうするんだい。ただの人間が、アタシに敵うと思っているのかい?」

さやか「……くそ、なんで、あたしは、こんなにも」

杏子「……おい、別に、アンタの事を煽るつもりじゃなかったんだ」

杏子「悪かったよ」

さやか「……」

杏子「頼みがあるんだ。鹿目まどか、暁美ほむら。この二人の事を教えてくれないかい?」

さやか「えっ?」


さやか「な、なんでアンタに教えなきゃならないのさ」

杏子「鹿目まどかって奴に関しては、先輩魔法少女として、
    一言アドバイスをくれてやろうと思ってるだけさ」

さやか「どうだか……。じゃあ、転校生に対してはどうなのさ」

杏子「転校生……?」

さやか「ああ、暁美さんのことだよ」

杏子「暁美ほむらか。そいつにたいしては……」


杏子「全力で敵対して、潰す」



……!?

佐倉杏子が何故、この時間軸でここまで私に敵意を剥き出しにしているのだろう。

わからない。



さやか「……なら、余計に教えられないね。一応、私の命の恩人なんだ」

さやか「マミさんや、まどかの事だって、助けてくれてる……」

さやか「そんな奴を、あんたは潰すっていうんだ」

さやか「あんたは、あたしの敵って事だ」

杏子「……マミの奴を助けた? まどかにしたって、魔法少女なんだろうに」

さやか「それがどうした!」

杏子「……いや、そうか」

杏子「もういいよ、話しかけて悪かった」

さやか「……」

杏子「侘びに一つ、忠告させてもらうよ」

さやか「……なによ」

杏子「暁美ほむらって奴……信用しすぎるんじゃねえぞ」

さやか「……」

杏子「じゃあな」


美樹さやかは、佐倉杏子が立ち去った方向をしばらく睨んだ後……
再び見滝原病院へと向った。

敵意をむき出しの佐倉杏子の事も気になるが
上条恭介がいる病院に向う美樹さやかを放ってはおけないだろう。

しかたなく、美樹さやかをつけて行った。


――美樹さやかと上条恭介の関係は、比較的良好であるようだった。

私達魔法少女のパトロールに何かと差し入れをくれるため、
CDを買う御小遣いが残っていないからかも知れない。

美樹さやかは、演奏できなくなった上条恭介にCDを贈り、
それが原因で怒らせることが多かったから。

上条恭介も、現段階では手は諦めろと言われているはずだが、
癇癪を起こす原因がないのはいい事だ。

ただの日常会話を盗み聞くだけで終わりそうだったので、
私は途中で切り上げ、魔女狩りに向う事にした。

パトロールをし始めて、すぐに魔女の反応に気がつく。

かなり近いが……誰も向っていないのだろうか。

巻き込まれた一般人がいないか様子を見つつ、
緊急性がなければ、まどかや巴マミを呼ぶ事にしよう。


結界に気をとられていた私。

いざ、結界に入ろうと変身をしようとしたところで……
背後から衝撃を感じた。

背後から腹側に向って、何かが飛び出てきてたのが分かる。

刃物……? おそらく、槍か?

痛みをシャットアウト。

それから、治癒の力で出血を抑えようとする。

だが……



???「油断してたねぇ、アンタ。時間を止めるっていう化け物だ……」

???「隙をつくしかねぇ」

???「もう、これで終わりだよ」


刃物を引き抜かれ、そこから吹き出る血。

致命傷だ。


倒れざま、私を貫いた人物を確認する。


ほむら「なぜ……、わたし……を……」

杏子「なぜ? きゅうべぇに聞いたよ」

杏子「あんたはグリーフシードを食いつぶす、魔女もどきと手を組んでる。
    魔法少女の敵なんだろ?」

杏子「きゅうべぇの奴、うさんくさいが嘘はつかねーからな」

杏子「悪いな……。私も魔法少女でね。これも自衛の為なんだ」

杏子「安らかに、眠ってくれ」


――出現した魔女の結界付近で、
息を潜めていたらしい佐倉杏子。

私を殺したと思い込み、
暗い顔をしたまま魔女退治へと向った。

私は痛みを遮断し、体機能……
特に、循環器系の機能を出来るだけ落として出血を抑え、
あとは脳の維持に努めている。

だが、槍を引き抜かれたときに、ねじられたため、
重要器官の損傷が激しい。


私が生きているのは、
ソウルジェムが魔法少女の本体であると理解しているからだ。

でなければ、精神的ショックで死んでいただろう……。

それでも、長くは無い。

私の回復力は魔法少女の中で下の下。

魔力が無尽蔵にあれば回復も可能だったかもしれないが、
そんな事はありえない。

盾の中の悪魔も諦めモードだ。


黒おじさん『残念だったな、暁美ほむら。だが、インキュベーターに貴様の魂は渡さん』

黒おじさん『私が一度魔界に持ち帰り、真の悪魔に転生させてやろう』

黒おじさん『ついでに、他の魔法少女共の魂も回収してゆこう』

黒おじさん『そうなると、貴様らの死体も有効活用できそうだな』

黒おじさん『とりあえず、適当な魂を入れ、死体の鮮度を保っておくか……』


好き勝手言っている。

くそ……。

これ以上、誰であろうと私の魂を弄ばれるのはごめんだ。

私は私のままでいる。

まどかを救えるまでっ!


出血覚悟で、一時的に体機能を回復。

盾から閃光弾を取り出し、少し遠くに放る。

佐倉杏子に気が付かれる危険があったが、
人が集まってくれば迂闊に手は出せないだろう。

魔女退治中の佐倉杏子は、
救助より先に来る事もない。

足音や人の声が近づいてくる。

よし、後は気絶していても勝手に病院に連れて行かれ、
延命措置が施されるだろう。

病院にかかることで、多少のリスクはあるが仕方が無い。

意識を断ち、全ての魔力を生命の維持へと注ぎ込もう……。


――

さやか「……目が覚めた? 転校生」

ほむら「さやか……?」

さやか「気分はどう? 体は? 痛くない?」

ほむら「え、ええ。大丈夫……よ」

ほむら「私は……えっと。ここは……病室?」

さやか「転校生ってば、見滝原病院に運び込まれたんだよ。
     原因不明の爆発の様なものに、巻き込まれたんだって」

ほむら「……ああ、そっか」

さやか「思い出した?」

ほむら「ええ……。幼馴染の彼と一緒に居た貴方が、
     私が運び込まれたのに気がついて付き添ってくれたの……?」

さやか「そういうこと。感謝しなさい」


ほむら「ええ、ありがとう。美樹さやか」

さやか「素直でよろしい」

ほむら「……ん、あれ? 体が、おかしいわ……。美樹さやか」

さやか「えっ!? そんなわけ……。どっか変なの? お医者さん呼ぶ?」

ほむら「い、いえ……。その、逆というか……」

ほむら「傷が、全くないの……」

さやか「そう、良かった」

ほむら「……」


美樹さやかの手を見つめる。

指には……シルバーリングが嵌っている。

美樹さやかのソウルの輝きをそのままに、
サファイアの様な宝石で装飾されている。


さやか「ごめんね、あんたに忠告されたのに……」

ほむら「ちょっと、えっ、貴方……。なんで私なんかに……っ!」

さやか「なんかって……」

さやか「転校生は、命の恩人なのに」

ほむら「そういう事じゃないわ。貴方には上条恭介がいるでしょう!」

さやか「な、なんで恭介がでてくるの……」

ほむら「貴方にとって、命に代えてもいい存在は彼だけだったはずよ!
     彼が利き手を怪我しているというのに、なんで私なんかを!」


さやか「そんなこと言ったって! あたしが病院から帰ろうとしたら、
     救急車であんたが運ばれてくるのが見えて!」

さやか「あんた、死人みたいに青白くって、全く動かなくってさ!」

さやか「あたしの目の前で、また、また人が死んでいくって思ったら!」

さやか「もうやだよっ! あたし……っ!」

ほむら「……さやか……」

さやか「……心配しないで、転校生。
     私は、私の自己満足のためにやったんだよ」

さやか「やっと、重荷から開放された気分なんだ」

さやか「この街に魔法少女が四人ってのが多いのだったら
     私は別の土地で魔女を狩るから」


ほむら「……いきなり怒って、ごめんなさい」

ほむら「私は、貴方に感謝しなきゃいけないのに」

ほむら「さやか、出て行かないで」

さやか「……転校生。 あんた、泣いて……」

ほむら「泣いてなんか、ない……」

さやか「……」


ほむら「……前に、これ以上魔法少女が増えると取り合いになると言ったのは、
     貴方まで魔法少女になって貰いたくなかったから。
     ただの、方便なの」

ほむら「ここの魔女の発生率は異常に高いから……」

さやか「そう、なんだ……」

ほむら「つらい宿命を背負わせてしまって、ごめんね。
     私が、貴方を護るから。
     まどかだって、巴さんだって、貴方が不安にならないように、私が……」

さやか「……うん。一緒に、がんばろうね」

さやか「ほむら……」


……想定外だった。


現代の医療技術があれば
醜い傷が残っても、死ににくい魔法少女であれば延命は可能だと思った。

そういう計算だった。

対立してばかりのこの子に、助けられるなんて。

それも、たった一度の奇跡を使わせてしまった。

さやかが、せめて魔女になる事がないよう
私は見守らなければならない……。



――これは後から佐倉杏子に聞いた話。

私への撒き餌に使った魔女を退治した後、
インキュベーターが私の生存を伝えたらしい。

佐倉杏子は見滝原病院にて、私の復活と、
さやかの魔法少女化を確認した。


杏子「……まじ……? あの女、暁美ほむらの復活を願って、契約したのかよ」

杏子「くそ……。きゅうべぇの野郎。何でもかんでも契約しやがって」

杏子「死者の復活は、かなり難しい部類のはずだ」

杏子「だから、たぶん死んでなかったんだろうな」

杏子「……アタシが、あの時、ちゃんと殺さなかったから」

杏子「アタシの所為で、アイツを戦いに巻き込んじまった……」

杏子「アタシが……」







今日はこれで終わりです

ありがとうございました。


乙ありがとうございます

投下します。
うまく文章化できてない部分がありますので
意味が分からないという部分がありましたら、
ご指摘ください


――見滝原病院を無理やり退院……というか逃げ出した後、
すぐにまどかと巴マミに捕まってしまった。

文字通り、捕まった。

まどかは私に抱きついて離れず、
巴マミは一歩下がってはいるが、
私に逃げ出す隙を与えない。

一人になりたかったのだけど……

まどかは、なぜか私に謝っている。



ほむら「どうしたの……まどか」

まどか「うぅ、私ね、さやかちゃんの願い、止めなかった」

まどか「ほむらちゃんは、止めて欲しかったんじゃないかって思っても、
     止められなかった」

まどか「胸に大きな穴があいていて、心臓にも損傷があって……。
     お医者さんが匙投げかけてたから、全員眠らせて、
     魔法でどうにか治そうとしたんだけど、治らなくって……」

まどか「止めなきゃいけなかったのに……、
     さやかちゃんまで、巻き込んじゃいけなかったのに……」

ほむら「まどか……」

マミ「一体、何にやられたの? 魔女?
   それにしては、私達が来た時には倒されていたけど……」

ほむら「……わからないわ。背後から魔女の結界に入る直前、
     一突きにされたのよ」


マミ「……ねえ、暁美さん。美樹さんに聞いたんだけど……」

マミ「貴方と鹿目さんの事、聞いて回っている赤毛で長髪の魔法少女がいるって」

マミ「ソウルジェムの反応で貴方が気がつかなかったということは、
   おそらく直接魔女の攻撃じゃないんじゃないかな」

マミ「ということは、その魔法少女が……」

ほむら「……そう、かもね」

マミ「……もしかして、攻撃手段は、槍じゃなかった?」

ほむら「……そう、ね。お腹から見えた刃の形状は、確かに槍に近いものだったかも」

まどか「ま、マミさん……? もしかして、心当たりがあるんですか?」

マミ「……信じたくないけど……おそらく」

マミ「風見野を縄張りにしている魔法少女、佐倉杏子よ」


まどか「魔法少女が、魔法少女を狩るんだね……」

マミ「……暁美さんと対立した時にも話したけど……、グリーフシードの取り合いで、ね」

まどか「そっか。それで、ほむらちゃんが狙われたのかな」

まどか「だとしたら、きちんと挨拶……しとかないといけないよね」

マミ「……あいさつ?」

ほむら「まどか……?」

まどか「マミさん、その佐倉杏子さん、一緒に探しましょう」

まどか「ほむらちゃん、今日は色々あったから、ゆっくり休んで欲しいな」



有無を言わさないまどかの剣幕に
情けなくもすぐに反論できなかったわたし。

……だけれど、佐倉杏子と話し合いが持たれた場合……

私の盾の中に住む黒男爵について言及される可能性が高い。

インキュベーターが嘘がつけないという認識の所為で、
わたしよりも佐倉杏子の言の方が皆にとっての信頼性は高かろう。

黙っていた事で私がまた皆と敵対してしまう可能性がある。

まどか達が有無を言わさず佐倉杏子を殺さない限りは、
わたしもかなり危険な状態なのではないだろうか……。


ほむら「いえ……。佐倉杏子には私も話したい事があるの」

ほむら「体を気遣ってくれるのは嬉しいけど、私もいきたいわ」

まどか「けど……」

ほむら「体は、さやかのお蔭で万全なの」

ほむら「それに、命を奪われそうになったのだから、
     正直な話、誰かと一緒のほうが安心できるわ……」

まどか「……そっか、うん。そうだよね」

マミ「……一緒に、探しましょう」



――佐倉杏子は、案外早く見つかった。

見滝原病院の屋上で、しかめっ面でロッキーをほおばっていたから。

私達は屋上に他に誰もいない事を確かめると、
屍鬼の戦闘形態へと変化した。

まどかは厳しい顔で弓を番えており、
巴マミはリボンで鍵をかけている。

私は……なんと話をかければよいのか、戸惑っていた。

二人がいなければ、やりようがあるのだけれど。


まどか「……あなたが、佐倉杏子さん?」

杏子「そうだよ。なんのようだい?」

まどか「ほむらちゃんを殺そうとしたのは、佐倉さんなんだよね?」

杏子「……そうだよ。 それが?」

まどか「二度と、わたしたちに手を出さないでくれないかな?」

まどか「出来たら、殺したくないんだよね」

杏子「いい目をしてんな、アンタ……」

まどか「どうかな?」

杏子「ああ、いいさ」


まどか「……ほむらちゃんを殺そうとした割には、簡単に頷くんだね?」

杏子「手練三人相手に喧嘩売るほど馬鹿じゃないよ」

杏子「しかも、ピンクいの。アンタとは一対一でも、
    勝てるビジョンがアタシにゃ思い浮ばないよ」

杏子「下手うてば、躊躇なくアタシを殺す気だろ?」

まどか「守るためには、仕方ないんだよ」

杏子「そう……だな」

杏子「アタシは、それだけの事をしちまったからね」

杏子「ただの候補者まで巻き込んじまった」

まどか「……」

杏子「……アタシに二言はない。手は出さないさ。神様に誓ってもいい」

まどか「……いいよ、信じるよ」



杏子「ただ、暁美ほむら、そいつと話をさせてくれないかな」

ほむら「私と話?」

杏子「一対一でな」

まどか「……許すと思う?」

杏子「アタシのソウルジェムをピンクいの。アンタに預ける。それでどうだ?」

まどか「……ほむらちゃんは、それでもいい?」

ほむら「……話だけというのなら、聞いてみるわ」

まどか「うん、わかった。マミさん、いこ?」

マミ「ええ……」


杏子「交渉成立だな」

佐倉杏子が、まどかに向って自分のソウルジェムを放った。

そんなに軽々しく扱うべきものではないのに……

まどかは危なげなくキャッチし、
私に向って頷いた。


ほむら「あ、まどか……」

まどか「うん、わかってる。そんな遠くにいかないから」



去っていく二人を見送っていると
佐倉杏子が話しかけてきた。

私にとっても、願ったりかなったりの展開だが、
一体どういうつもりだろう。


杏子「そんなに警戒しなくてもいいと思うけどな」

杏子「ソウルジェムのないアタシなんて、一般人以下でしょ」

杏子「……半殺しにされた相手じゃしょうがないかもしれないけどね」

ほむら「そんなんじゃないわ……。気にしないで」

杏子「?」

ほむら「話って、何かしら」

杏子「そうだな、アンタも、この方が話しやすいんじゃないかい?」

ほむら「……」

杏子「えーと、何から聞けばいいのかな。……そうそう」


杏子「今まで、きゅうべぇが嘘をついたことはない」

杏子「そのきゅうべぇから、アンタが魔法少女の敵だって聞いた」

杏子「グリーフシードを食いつぶす奴とつるんでると」

杏子「その割りに、他の魔法少女たちとアンタはつるんでやがる」

杏子「どーいうつもりだ? うまく騙してるのか?」

ほむら「黙ってる事はある。だけど、騙してなんてないわ」

杏子「けっ。きゅうべぇの野郎と一緒かよ」

ほむら「……アイツと、一緒にしないで欲しいわ」

杏子「違うなら、証明してみてくれよ」

杏子「アタシが巻き込んじまった、アイツのためにも」


ほむら「……さやかのこと……ね」

杏子「そうだ。アタシがあいつを魔法少女にしちまった」

杏子「アンタやきゅうべぇに構ってる余裕は、もうアタシにはない」

杏子「アタシはアイツを死なせない責任があるからな」

杏子「……だから、魔法少女の敵だっていうアンタが
    本当はなんなのか、知らなきゃならない」

杏子「グリーフシードがなけりゃ、アタシ達は生きてはいけないんだ」

ほむら「……誰にも話さない。それなら、話してもいいわ」

杏子「それは、聞いてから決めるとしか言えない」

ほむら「正直ね……」


私は佐倉杏子に、黒男爵の事を隠し続けることに限界を感じた。

黒男爵にテレパシーを送り、
自身の存在について明かしていいか
確認をとることにした。


ほむら『話を進めるうえで、貴方の存在にも触れると思うけど……いいかしら?」

黒おじさん『そうだな、今のままでは限界があるだろう』

黒おじさん『私はあまり表舞台にでるのを好まんが……』

黒おじさん『真実を知る協力者というのは、得難いものだ』

黒おじさん『人間の少女に近い奴らの精神の機微は、残念ながら私は疎いようだ』

黒おじさん『貴様の判断で話してもいいと思うのであれば、構わん』

ほむら『……わかったわ。では、佐倉杏子に話すわね』

黒おじさん『私は、あの邪神を潰せればそれでいいのだ』


杏子「……おい。返事は?」

ほむら「いいわ。
     どの道、貴女がきゅうべぇから聞いた話を、
     皆に話せば 私は疑われる」

ほむら「……佐倉杏子。貴女は悪魔の存在を信じるかしら?」

杏子「……は?」

ほむら「悪魔よ。高次の精神世界の存在であり、魔女もその範疇にある」

ほむら「そして、インキュベーターや、貴女が警戒している魔女もどきもね」

杏子「……魔女もどきは、インキュベーターの同類だっていう事か?」

ほむら「そうよ。そして、私達、魔法少女もね」

杏子「……アタシが、アンタが、悪魔だっていうのか?」

ほむら「そうよ。高位の悪魔の餌食になった屍の鬼。ゾンビの仲間。低級の悪魔の一種だわ」

杏子「根拠は」

ほむら「そうね。タフな精神の貴女なら、教えても問題ないかしらね」


――魔法少女に関する真実を、
そしてインキュベーターに関する推測を佐倉杏子に語った。

佐倉杏子は開いた口が塞がらない様子だったが、
私が語り終えた後、何とか声を絞り出した。

杏子「……成程ね。それで、ピンクいのが離れすぎるな、か」

杏子「他のメンツに話さないのも納得が出来る」

杏子「だけど、それが真実だとして、どうやってアンタが知れた?」

杏子「魂がソウルジェムに封じられてるとか、魔女化に関しちゃ
    長く生きてりゃ知れることもあるだろ」

杏子「でも、悪魔云々の話に関しちゃ、知りようがないだろ?」

杏子「……まさか、例の魔女もどきか?」

ほむら「そうよ。中々鋭いのね、佐倉杏子」

ほむら「もっとも、彼の発言が真実かは私にもわからない」

ほむら「100%真実なのは、魔女化に関することまでと思って頂戴」

ほむら「その後のことを信じるかは、貴女に任せるわ」


杏子「アンタは信じているのか」

ほむら「納得できる話ではあると思っているの」

ほむら「彼は魔女の範疇から明らかに逸脱しているしね」

杏子「……仮に悪魔云々が事実だとしたら」

杏子「アンタはどうするつもりだい? これから」

ほむら「……最終的には、インキュベーターを倒したい。
     他に悪魔がいるのなら、その手段が得られるかもしれない」

杏子「きゅうべぇの奴が、なぁ。胡散臭い奴だと思っていたが」

ほむら「胡散臭いと思えるだけ、貴女は鋭いわよ」

ほむら「私なんて魔女化の事実を目の当たりにするまで、疑ってすらなかったわ」

杏子「へっ、そうかい。……それで?
    あの全く強くなさそうな奴が、実はとんでもない化け物だとしてさ」

杏子「勝算はあるのかい?」


ほむら「……殺しても殺しても、いくらでもアイツは湧いてくるからね」

ほむら「正直、どうすればいいかわからないわ」

杏子「へっ。どうしようもないって事かよ」

ほむら「とりあえず、私たちはアイツが生み出した強大な敵に抗わなければならない」

杏子「ん……魔女かい?」

ほむら「ええ、魔女の中の魔女。ワルプルギスの夜。アイツが近くやってくるわ」

杏子「……ここ、見滝原に?」

杏子「正体不明のインキュベーターに、ワルプルギスの夜かい」

杏子「狂ってやがるな、この世界」

ほむら「その世界を生きていかなきゃいけないのよ……」


ほむら「ワルプルギスの夜に対抗するため、手を貸しては貰えないかしら?」

杏子「……命を奪おうとした相手に、よく言うもんだな」

ほむら「私はそんな些細なことは気にしないのよ」

杏子「そうかい……。どの道、アイツのためにも、ワルプルギスの夜は倒さなきゃならないだろう。
    契約を結びやがったインキュベーターにも礼をしたいもんだ」

杏子「だから、アンタに協力してやってもいいよ」

杏子「だけどな……。一つ、頼みがある」

ほむら「何?」

杏子「……アンタに、悪魔の事を吹き込んだ魔女もどき。そいつに会わせてほしい」

杏子「グリーフシードを食いつぶす存在だ。危険かどうか、自分の目で見極めたい」


ほむら「……会わない方がいいわよ?」

杏子「何故?」

ほむら「結構、おっかない外見だからよ」

杏子「魔女と戦いなれてるはずのアタシ達が今更気にすることかい?」

ほむら「黒男爵はまた、別次元なのよ……」

杏子「かまやしないさ」

ほむら「……ちょっと、アイツと相談させて頂戴」

杏子「そいつとかい? いいぜ」

ほむら「じゃあ、ちょっと待ってて」


私の心の中での問いかけに、
黒男爵は再び応じた。


黒おじさん『そんなにおっかない外見か……』

ほむら『え……。なに、気にしてるの?』

黒おじさん『貴様らにどう思われようと気になどせぬわ。それより、私をその娘に見せるのだな?』

ほむら『かまわないかしら?』

黒おじさん『ふむ。いっそ、他の娘にも私の存在を見せてはどうだ』

黒おじさん『悪魔について説明するには私が姿を現すのが一番だろう』

黒おじさん『Chaosの悪魔に引き込むのなら、いずれは明かさねばならない』

ほむら『Chaosに導くかどうかはさておき……』

ほむら『今すぐ、皆に明かすのは……避けたいわ』


黒おじさん『何故だ? 巴マミという娘は兎も角も、案外 鹿目まどかあたりは平気なのではないか?』

黒おじさん『あの娘は魔女化の事実も知っているだろう。そのうえで、屍鬼となった』

ほむら『まどかには、私の時間遡行のことを知られたくないのよ』

ほむら『それに、悪魔の存在……』

ほむら『魔法少女になったばかりの彼女に余計な負担を負わせたくない』

ほむら『魔法少女になった少女の精神は、ちょっとした事ですぐに不安定になるのよ』

ほむら『彼女が魔女になれば、ワルプルギスの夜どころではないわ』

黒おじさん『……だが、私が盾から出た時点で、私の存在は二人に知れるぞ』

ほむら『……二人に感知されない遠くで見せるしかないわね』


杏子「……」

ほむら「……今日の深夜0時に、タワー前で待ち合わせをしましょう」

ほむら「他の二人に見られたくないわ」

杏子「……いいだろう」


――私と佐倉杏子は、見滝原タワーの展望台デッキの上に勝手にあがり、
見滝原の夜景を見下ろしている。

ここは綺麗だ……。

いつか、まどかと二人で見にきたい。


杏子「何を物思いにふけってるんだよ」

ほむら「……別に」

杏子「そら、例の魔女もどき、あわせろよ」

ほむら「黒男爵。出てきて頂戴」

杏子「……っ!?」


佐倉杏子はまどかに返してもらったソウルジェムを手に、
戦闘形態へと変化した。

黒男爵を警戒し、自らを守るように槍を構える。

無理もない。

彼の外見はそれだけ不気味だ。


黒おじさん「素晴らしいものだ。恐怖に反発する自制心、闘争心、探求心」

黒おじさん「この少女もまた、カオスの世界に相応しい」

ほむら「貴方、新しい娘に会うたびにその台詞じゃないの」

黒おじさん「そんな事はない」

ほむら「私にも、まどかにも言ったわよね」

黒おじさん「……巴マミや美樹さやかには言ってないはずだ」

ほむら「大体、この子、教会の娘らしいわよ?」

黒おじさん「私とて、悪魔に堕ちる前はLawの神だった。今のスタンスが大事なのだ」

ほむら「……」

黒おじさん「……」

杏子「……なんなんだよ、この空気」


杏子「アンタ、本当に悪魔なのかい?」

黒おじさん「そうだ。私は地獄の監査官であり、悪魔随一のネクロマンサーである」

杏子「地獄……それに、悪魔かい。魔法少女がいうのもなんだけど、嘘くさいね」

杏子「まぁ、魔女にも見えなければ、人間にも見えないが……」

杏子「……ネクロマンサーってのは、なんだい?」

黒おじさん「死者との対話を可能とするネクロマンシーという術の術者のことだ」

杏子「死者との……対話?」

杏子「ますます嘘くせぇ話じゃねぇか!」

黒おじさん「興味があるという目をしているな」

杏子「なっ!」

黒おじさん「貴様の家族に会わせてやろうか?」

杏子「……」


黒おじさん「私には貴様の欲するものが筒抜けだ」

黒おじさん「家族への渇望が見て取れる。同時に、恐怖があるようだがな」

黒おじさん「貴様が原因で、潰えたのか」

黒おじさん「大事なものを失うというのは、何よりも恐ろしいものだ」

黒おじさん「特に、原因が自分にあれば……な」

杏子「そうだ……な」

ほむら「……死者との対話、できるの? 本当に?」

黒おじさん「私くらいの熟練者であれば、死体を使わずとも魂寄せして
       会話をすることくらい可能である」

杏子「……いや、当然のように言われたけど、死体ってなんだよ」

黒おじさん「下位のネクロマンサーは、適当な死体に魂を宿して会話するのだ」

ほむら「……えげつないわね」

黒おじさん「人間の価値観は私にはわからない。使えるものは使うべきではないか?」

ほむら「……そうよね。貴方たちって、そういう奴らだわ」

ほむら「奴とは思想が違うだけよね」

黒おじさん「その思想の違いこそが大事であると思うが……」


杏子「……おい」

ほむら「ん?」

黒おじさん「どうした、娘よ」

杏子「何故アンタは、インキュベーターと敵対する。アンタの言う、思想とやらが違うからだけか?」

黒おじさん「そうだ」

杏子「……アンタも、なかなかの化け物のようだが、
    アンタ一体でインキュベーターには敵わない。
    この理解でいいか?」

黒おじさん「そうだな。あの低級分霊共なら兎も角、
       下手につついて上級分霊が現れれば、私程度の分霊では100%無理だろうな」

杏子「……分霊?」

ほむら「この黒男爵も、沢山ある分身の一体みたいなものらしいわ。
     私たちの知るインキュベーターも、インキュベンーターの強い本体の、
     弱い分身みたいなものなんだって」

黒おじさん「上級分霊は、その分身の中でも、力が強く、様々な権限の与えられた特別な分身だな。
       その性質も、かなり本霊に近い」

杏子「ふぅん……」

黒おじさん「あやつと違い、この世界には私の分霊はあまりいないがな」


杏子「あんたの仲間の悪魔は呼べないのか?」

黒おじさん「無理だ。我らの本来住む精神世界と、今いる物質世界は、本来交わらないものだ」

黒おじさん「様々な要因により、その二つの世界が交差することはあるが……。
       この世界は、精神世界と物質世界の境界線がはっきりしている」

黒おじさん「それを狂わせるには、グリーフシードの様な高純度のマグネタイトがいる」

黒おじさん「それも、戦闘用の高位分霊ともなると、相当数のグリーフシードがいるだろう」

黒おじさん「それよりは、この物質世界で手ごまを揃える方が現実的だ」

杏子「現実的……か」

杏子「逆に、インキュベーターは何故そこまで数も力もあるんだ?」

黒おじさん「我らの力は集めた信仰やマグネタイトの量が密接に関係してくる」

黒おじさん「奴はこの世界で比較的最近に生まれた神話体系の邪神のようだが、
       恐怖と信仰を多く溜め込んだのであろうな」

黒おじさん「やっかいなものだ。最強クラスの悪魔と考えて良いだろう」


ほむら「……」

杏子「……そんな相手を敵に回しても、思想とやらのために戦うのか?」

黒おじさん「無論だ」

杏子「本当か? 本当にそれだけのために……」

ほむら「無駄よ、佐倉杏子。コイツにそんな問いかけ自体無駄だわ」

ほむら「カオスの思想。それが第一なのよ」

杏子「……」

杏子「こいつは、アタシが大事にしていたものを見抜いた」

杏子「人間の感情に理解がないって訳じゃなさそうだ。悪魔の癖に」

杏子「どうやって、インキュベーターと同類の癖に、そういう感情を持ったのかと思ってな」


ほむら「……」

杏子「……そんな相手を敵に回しても、思想とやらのために戦うのか?」

黒おじさん「無論だ」

杏子「本当か? 本当にそれだけのために……」

ほむら「無駄よ、佐倉杏子。コイツにそんな問いかけ自体無駄だわ」

ほむら「カオスの思想。それが第一なのよ」

杏子「……」

杏子「こいつは、アタシが大事にしていたものを見抜いた」

杏子「人間の感情に理解がないって訳じゃなさそうだ。悪魔の癖に」

杏子「どうやって、インキュベーターと同類の癖に、そういう感情を持ったのかと思ってな」

227はなしでお願いします


黒おじさん「……」

杏子「……」

ほむら「……?」

黒おじさん「……思想の対立は、犠牲を生むものだ」

杏子「……?」

黒おじさん「だが、この世界ではあの子はまだ生きておる。もう、子を産み、年もとってきた」

黒おじさん「そこそこの、平凡な幸せを掴めたようだ」

黒おじさん「この世界のLaw属性の奴らが、それを破壊しようとするのであれば」

黒おじさん「この世界に顕現した私は、それを護るのも悪くはない」

杏子「……悪いけど、よく分からないんだけど。誰だよ、あの子って」

ほむら「もしかして、あの子っていうのは、えっと、アリス……だったかしら?」

ほむら「前に、ICBMがどうこう言っていたけど……。ICBMって大陸間弾道ミサイルよね。まさか……?」

黒おじさん「貴様が体験してきた世界以外にもまた、常識とかけ離れた平行世界はいくらでもあるのだ」

ほむら「……」


杏子「どういうことだ?」

ほむら「この悪魔は、もともと私達が今住んでいるのとは、別の世界にいて」

ほむら「その世界も、私達の世界とほとんど同じだったけれど」

ほむら「途中で大きく分岐してしまった。ICBMにより、日本が破壊されてしまった世界があるってことかしら」

ほむら「あの子というのも、死んでしまったのかしら……」

杏子「……ICBMってなんだよ」

ほむら「まぁ、核弾頭を積んだミサイルだと思って頂戴」

杏子「……」


杏子「……何だか、よくわからないけど。所詮、私達とは違いすぎるか」

杏子「ただ、誰かを護るためってのは分かったよ」

杏子「悪魔でも、護りたい誰かってのはいるんだな」

黒おじさん「我らは古来より人と接触してきた。珍しいことではない」

黒おじさん「私の同僚には人間の嫁をもらった悪魔もいるからな」

ほむら「……それはどうなのよ」

黒おじさん「色んな出自の者がおるのだ。不思議はあるまい」

黒おじさん「私とて悪魔に堕ちる前は、妻や息子がいた」

ほむら「ええっ!?」

黒おじさん「人間ではないぞ。妻がザルバニトゥという女神、息子がナブーという知恵と書記の神だ」

黒おじさん「意外に感じるようだが、神といえど、所詮人間から生まれたものだ」

黒おじさん「人間の想像を超えるような存在は現れぬものよ」


ほむら「貴方たちが、人間から生まれた……?」

杏子「……人間ってのは、神様が作ったんじゃないのか。
    それを、人間が作ったって……」

黒おじさん「それぞれの宗教に、創造主に類するものがいるのだ」

黒おじさん「そやつらが同一の存在でない限り、どれか偽物か、全て偽物ということだ」

杏子「……」

ほむら「なによそれ。悪魔に限らず、神まで私達を騙すつもりなわけ?」

黒おじさん「それは……そうではない。人間が、自分の事を人間と思うように、
       通常、神は神として生まれ、そういう存在へと育てられたのだ」

杏子「育てられたぁ? 誰にだい」

黒おじさん「無論、人間にだ」


ほむら「……どういうことよ」

黒おじさん「神に限らず、悪魔もそうだ」

黒おじさん「私たちは、高次の精神世界の存在である」

黒おじさん「高次の精神世界とは……」
       人間達の中にそれぞれ広がる精神世界を構成単位とした、
       複雑な要素が絡み合った世界だ」

黒おじさん「現在、過去、未来といった時間や、平行世界など、関わる要素は多岐に渡る」

ほむら「……?」


黒おじさん「次元というものから説明してやろうか?」

黒おじさん「貴様らが分かりやすくいうと……数学的に説明してやろう」

黒おじさん「一次元というのが線の世界。変数が一つで定義される世界だ」

黒おじさん「ゼロ次元である点が、一つの方向にのみ広がりを許されているのだ」

黒おじさん「二次元が、変数が二つで定義される世界」

黒おじさん「面の世界、縦と横へ広がりと持つ」

黒おじさん「三次元は、変数が三つ。二次元に更に高さの概念を持つ」

黒おじさん「ここで重要なのは、とある高次元の世界は、その一つ低次元の世界が集まったものということだ」

黒おじさん「逆に高次元から見た一つ下の次元は、一つの切り口でしかない。
       構成要素である変数の一種類を、無限に抑えたものと同じである」


ほむら「……点が集まって線、線が集まって面、面が集まって立体という訳ね」

杏子「……」

黒おじさん「そうだ。それと同じことが、貴様らの精神の世界でも起きるという訳だ」

黒おじさん「世界を定義する精神世界の変数……条件が、多岐に渡っているということだ」

黒おじさん「だから、私たちは人間が、私たちの事をどう思うか……それで大きな影響を受ける」

黒おじさん「人間達が神話を作り、それに乗っ取って、
       神や悪魔達も、自分たちがそういう存在であると信じ、
       信仰や敵対心、恐怖心等様々な感情を糧に育っていくのだ」

黒おじさん「時間を超え、平行世界を超え、様々な人間達の影響を受けながらな」

ほむら「……わかったような、わからないような」

ほむら「……? だけれど、おかしいじゃない」

ほむら「貴方達は、自分がそうだと信じてるんでしょう?
     なんで貴方はそれがまやかしだと知ってるのよ」


黒おじさん「ふむ、馬鹿ではなかったか」

ほむら「……ばかだと思ってたの?」

黒おじさん「……前にほむらには言ったな? 私はメソポタミア神話で、マルドゥクという存在であったと」

ほむら「話を流さないで!」

黒おじさん「その頃には、私は全能の神であると信じていた」

黒おじさん「だが、悪魔へと落とされたとき、全てまやかしであったと気が付いてしまったのだ」

ほむら「……」

黒おじさん「所詮、その程度の存在だよ。私たちは」

ほむら「……そう」

黒おじさん「だが、大した存在ではないとはいえ、
       知名度の高く、更には強い、全能だと信じられる存在はより強大とはなる」

黒おじさん「想われれば、想われるほど、な」


ほむら「……そう。それは、インキュベーターもなのね」

黒おじさん「うむ」

杏子「……」

杏子「……」

杏子「……なんで、こう。悪魔の癖に、なんというか、その外見でインテリ臭いというか、くそ……」

杏子「訳がわかんねー!」

黒おじさん「私は長らく、悪魔として人間達に自然科学系の知識を与えてきたのだ」

黒おじさん「別段、おかしくはないと思うのだが」

杏子「……ちぇっ」

杏子「……しかし、まぁ。胡散臭いは胡散臭いが、インキュベーターの奴よりはまだ話せそうだな」


杏子「一番大事なことだが、グリーフシードをあんまり消費されるのは困る」

杏子「アタシたちにとって、死活問題なんでね」

黒おじさん「心配するな。私程度の分霊では、一つのグリーフシードでかなり長く持つ」

黒おじさん「使い魔を撃破したときに発する僅かなマグネタイトも利用できるしな」

黒おじさん「現状、貴様らよりかなり燃費はいいだろう」

黒おじさん「貴様らはグリーフシードの形のものしか利用できないようだからな」

杏子「そうかい…… マグネタイトが何だか分からないけど……」

杏子「それなら、アンタらに協力しても、いいかもしれないな」

杏子「どのみち、インキュベーターの奴は敵だ」

杏子「厄介な敵と戦うなら、他に敵を作りたくはないからね」

ほむら「ありがとう、佐倉杏子」


杏子「礼は言わないでくれよ。知らなかったとはいえ、アンタを殺しかけたんだ」

杏子「協力するって決めたんだ。筋は通さなきゃな」

杏子「死ななくて良かった。本当に、その……悪かった。ごめんな……さい」

ほむら「……いいのよ」

杏子「恩に着るよ。これから、よろしくな」

ほむら「ええ」

杏子「……なあ、アンタ!」

黒おじさん「わたしか?」


杏子「その、ネクロマンシーってのは、本当に会話できるのか」

黒おじさん「無論だ。会いたいのか」

杏子「……いや、今はいい。今の私は、話すことなんて出来ない」

黒おじさん「……ふむ」

杏子「そうだな、私が何かで死にそうになったら頼むよ」

杏子「死んでも、私は家族の元にはいけないだろうし、
    死ぬ前に、少しだけ……ならいいかもな」

黒おじさん「即死でないなら、見せてやろう」

杏子「おう、たのむわ」


佐倉杏子はその言葉を最後に、
デッキから飛び降りた。

途中の足場で衝撃を弱めながら、
危うげなく降りていく。

……意外なことに、佐倉杏子は黒男爵に
さほど嫌悪感が湧かなかったのか。

私は彼に慣れるのにかなりの時間がかかったというのに。

黒男爵と言えば、彼が思想以外に、
誰かを護ろうと考えていたというのは意外だ。

アリス、か。

そういえば、彼も時限の回廊を使っていた。

彼の言うアリス……は、
私にとっての、まどかの様な存在なのだろうか……。







今日はここまでです。
ありがとうございました。


乙ありがとうございます。

投下しますね……



――私とまどか、巴マミ、佐倉杏子、さやかは
巴マミのアパートの一室に集まっている。


巴マミは安堵の表情。

まどかと美樹さやかの表情は硬い。

佐倉杏子は余裕ぶった顔でロッキーを食べ、
私はいつも通りの無表情さだ。

最初に口を開いたのは、美樹さやかだ。


さやか「……本当に信用できるの? コイツ」

杏子「こいつじゃねぇ、佐倉杏子だ」

さやか「ほむらを背後から刺したような奴なんでしょ?」

さやか「縄張りをとろうって奴なんじゃないの?」

さやか「あたしは信用できない」

ほむら「誤解があったのよ」

さやか「誤解? 人を後ろから刺し殺そうとするような誤解ってある?」

さやか「また、狙われたりしたら……!」

杏子「もう、やらないよ」

さやか「口ではなんとでもいえるわ」


まどか「なんで ほむらちゃんに攻撃したのか、まだ聞いてなかったね」

杏子「インキュベーターに聞いたのさ。コイツが、魔法少女の敵だって」

さやか「インキュベーター?」

マミ「魔法少女の、敵……?」

杏子「インキュベーターっていうのは、きゅうべぇの事さ。
    アイツに騙されたってわけだ」

さやか「ちょっと、なんできゅうべぇが私たちを騙す必要があるのよ!」

マミ「きゅうべぇ、その根拠は何と言っていたの?」

杏子「お前らも聞いたことがないか? そのほむらと、きゅうべぇは契約した覚えがないって」

杏子「正体不明の魔女もどきも出現しているから、
    きゅうべぇの奴は、ほむらと魔女もどきを、イレギュラー同志結びつけたって訳だ」

杏子「だから、私にほむらを倒してほしいという依頼をしてきた」


まどか「……インキュベーター……」

マミ「きゅうべぇが……? そんな……」

さやか「……なんで、ほむらと契約した記憶がないんだろ?」

ほむら「私の願いの所為よ……。悪いけど、思い出したくない、話したくない事なの」

ほむら「触れないで欲しい」

さやか「……そう」

ほむら「佐倉杏子は私に謝罪してくれたし、何より重要な情報を携えてきてくれた」

まどか「重要な情報……?」

ほむら「ええ。佐倉杏子、お願い」

杏子「ああ」

杏子「……2週間後、この見滝原にワルプルギスの夜が来る」


マミ「……っ!?」

さやか「ワル……なに? まどか……知ってる?」

まどか「ううん、 しらない……」

ほむら「ワルプルギスの夜というのは、結界を必要とせず物質世界に現れる超弩級の魔女よ」

杏子「そんな魔女が来るって時だ。敵は少しでも減らしておきたかったんだ。
    ごめんな、ほむら」

ほむら「いいのよ。それより、貴方のお蔭で準備ができるわ」

さやか「……」

まどか「……私達、五人いれば勝てるのかな?」

ほむら「それは何とも言えないわ」

マミ「正体不明の魔女だものね。……もしかして、以前 暁美さんを狙った魔女もどきって……」

マミ「ワルプルギスの夜に関係しているのかしら」

マミ「異常事態が二つも。無関係と割り切れないわ」

ほむら「……。それも、わからないわ」


マミ「ところで、佐倉さんはワルプルギスの夜が来ることを、どうして知っているの?」

杏子「きゅうべぇの奴が言ってたのさ」

杏子「お前ら皆、アイツと距離をとってたんだろ? だから聞けなかったんじゃないか?」

マミ「私は別に距離なんて……。最近、会えなかったけど」

マミ「グリーフシードの回収だけたまに来て、すぐに居なくなっちゃうのよね」

さやか「私も……。契約の時以外、ほとんど見てない……」

ほむら「どうも私たちを避けている節があるわね」

さやか「でも、どうして……」


ほむら「私を警戒しているんだと思うわ。私もアイツが嫌いなの」

マミ「……」

まどか「……対策、どうすればいいのかな」

ほむら「まず、魔女狩りを行い、グリーフシードを節約して出来るだけ貯めておく」

マミ「鹿目さんと美樹さんも特訓しないとね」

ほむら「あまり時間がないけれど、基礎だけでも叩き込んでおかないと……」

杏子「巴マミ、そういうのはアンタが得意だろ?」

マミ「私……か。鹿目さんは兎も角、近接系の美樹さんは佐倉さんの方が噛み合うんじゃないかしら?」

杏子「槍と剣じゃ全然違うでしょ。それに、基礎じゃ教えるの上手いアンタの方がいいだろ」

杏子「ガンカタスタイルもいけるんだから、やれるって」

マミ「うーん……」


ほむら「まどかはもう、実戦慣れの方が大事じゃないかしら」

マミ「遠距離だし、才能はあるし、事故は少ないかしら」

マミ「とすると、私が美樹さんの特訓で」

杏子「ほむらと……まどかっつったか? この三人で魔女狩りか」

ほむら「そんなところじゃないかしら」

まどか「あ、うん。よろしくね、ほむらちゃん。えっと、杏子ちゃん」

さやか「よろしくお願いします。マミさん」

さやか「……」


――顔合わせは何とか、無事に済んだ。

黒男爵の存在をぼかしながら、
佐倉杏子が見滝原に来た理由を
インキュベーターとワルプルギスの夜の所為にする。

インキュベーターが何故か 皆とほとんど接触していないため、
佐倉杏子との事前の打ち合わせ通り事が進んだ。

ワルプルギスの夜対策としては、問題ないだろう。

あとはまどかの活躍の場面を、
魔女化しない程度に抑えるだけで
案外簡単に勝てるのではないだろうか。

まどかがもし魔女化しなくて、
黒男爵の言う通りChaosの悪魔へと導くことができれば、
私はもしかして、まどかとずっと一緒にいられるのかな……


……甘い妄想は捨てよう。

とりあえずは、目の前にある問題を解決しなくては。

私はワルプルギスの夜を倒さなければならない。

でも、ワルプルギスの夜が過ぎれば、
私はループしなければ時間停止を使えなくなる。

最強クラスの悪魔と黒男爵に言わしめるインキュベーターとの対決に
私は完全に足手まといだ。

私はループを越える事が存在理由だが、
ループを超えることで存在価値がなくなる。

ワルプルギスの夜を超えたところで、後は皆に任せて、
やはり私はまどかを魔法少女にしないためのループに再び戻る事にしよう。

私の大事なことは、まどかが幸せに暮らしていける世界を一つでも作る。

それだけで、いい……。




――無心でワルプルギスの夜に向けて準備を進めている中……。

まどかから、連絡があった。

さやかが、家にも帰らずに行方不明になったらしい。


嫌な予感が、した。


ほむら「……まどかっ!」

まどか「あ、ほむらちゃん!」

ほむら「その様子だと、見つかってない?」

まどか「うん。電話してからも、あちこち探したんだけど……」

ほむら「……理由に心当たりはないのね?」

まどか「うん……」

まどか「さやかちゃんのパパもママもね、理由が全然わからないみたいで……」

ほむら「いなくなるまえ、何をしていたかわかる?」

まどか「うーん……上条くんのお見舞い……かな」

ほむら「……喧嘩かしら?」

まどか「うーん……」


本来であれば、すでに美樹さやかは
上条恭介の右腕が不治であることを知っているはずだ。

だが、この時間軸ではあまり
上条恭介のところへお見舞いに行けていないようだ。

タイミングがずれたのだとすると……

……ひょっとすると……



ほむら「まどか。急いで探さないと、まずいことになるかもしれないわ」

まどか「ほむらちゃん……もしかして、魔女化のこと、言ってるの?」

ほむら「可能性がないとは言いきれないわ」

ほむら「急いで病院に向かい、上条君に状況を聞きましょう」

まどか「そうだね、むかおっか」


――時間が時間だからだが、上条恭介の病室に窓から侵入。

彼を驚かせてしまい、声を抑えさせるのに苦労した。


恭介「……鹿目さん、それに、お友達かな? どうやってここの階まで窓から……」

まどか「それは、秘密だよ。それより、さやかちゃんが行方不明なんだけど……」

恭介「……えっ?」

まどか「何か、知らないかな?」

恭介「……」

ほむら「……知ってそうね」

恭介「……僕が、八つ当たり……してしまったからかもしれない」

まどか「やつあたり?」

恭介「うん……。利き手が動かなくって、お医者さんから諦めてくれって言われて……」

恭介「その、情けない話。怖くて、誰にも話せなくて」

恭介「もう、バイオリンが弾けないことの悲しさと」

恭介「僕からバイオリンをとったら何もない」

恭介「さやかも、最近来てくれなかったし……」

恭介「そう思ったら、誰にも必要とされてないって孤独を感じて」

恭介「後で来てくれた、明るく振る舞うさやかに当り散らしてしまった」

恭介「僕を、元気づけるためだったって、分かっていたのに」


恭介「それで、さやかも訳が分からないことを言い出して……」

恭介「「私……、治せる……はずだったのに」とか言った後、謝りだして」

恭介「さやかが謝る必要ないのに。僕が、さやかを追い詰めてしまったんだよね」

恭介「僕って、最悪だ。さやかは悪くないのに。理解できないことを言い出して」

恭介「それに対して、余計腹が立って……。くそっ……」

恭介「暴言を吐いて、さやかを泣かせてしまった」

恭介「さやかが治せるわけがないだろっとか」

まどか「……」

ほむら「……」

ほむら「……上条くん。さやかの行きそうな場所、心当たりない?」

恭介「悪いけど、心当たりは……」

ほむら「そう……」

恭介「あ……。そう、さやか、親と喧嘩して、プチ家出みたいなことして」

恭介「その時は、用もない場所にお小遣いで行ける範囲で遠くまで行って」

恭介「ホームでじっとしてた事あった……けど」

恭介「……関係、ないか」

まどか「あの時は、上条君が一番最初に見つけたんだっけ」

恭介「うん……」

まどか「……私達じゃ、役者不足なのかも。悔しいけど……」

ほむら「それでも、私たちが行くしかないわ。上条君は、けが人で、動けないのだから」

ほむら「巴さんや佐倉杏子にも助けを頼みましょう。急がなくては」


――4人でばらばらに、散々探した結果……
この私がたまたま さやかを見つけることが出来た。

駅のホームで蹲っている、さやか。

危うく、通り過ぎて次の駅に行ってしまう所だった。

メールで4人に 見つけた旨を一斉送信したのち、
顔を見せてくれないさやかの隣に、私は腰かけた。



さやか「……ほむら?」

ほむら「ええ、私よ」

さやか「……」

ほむら「さやか、どうしたの……?」

さやか「……あんたこそ、どうしたの」

ほむら「まどかから、聞いたの。家に帰ってないそうじゃない」

さやか「それで、探してくれたんだ。手間かけさせちゃったね」

ほむら「いいの。それより、ソウルジェムを見せてくれる?」

さやか「いや」

ほむら「……駄々をこねないで」


さやか「駄々なんてこねてない」

ほむら「……ねぇ、本当に、見せて頂戴。何故、見せられないの?」

さやか「……じゃあっ! ほむら、あんたこそ、なんで話せないの!?」

ほむら「……さやか?」

さやか「あんた、なんか隠してるでしょう。絶対、隠してるでしょ?」

ほむら「……」

さやか「……もういいよ、わかったよ。なんか、理由があるんでしょ……」

さやか「でも、あたしだって、見せたくないんだ」

ほむら「……」


ほむら「……じゃあ、先の質問に戻るわ。なんで家出したの?」

さやか「……」

ほむら「……」

さやか「……あたし、いやな奴。恭介、もう一生治らない怪我を右手にしちゃったらしくて」

さやか「恭介を、放ったらかしにして、怒らせて……」

さやか「その時、ほむらを治したの……後悔しちゃった……」

さやか「あたし、あたしは……、あんたに死んでなんて欲しくないのに」


ほむら「いいの。誰にでも、優先順位はあるんだもの」

さやか「……喪失感がね、すごいの」

さやか「あたし、恭介のバイオリンを聞くのが、好きだった」

さやか「もう、聞けない。恭介も、笑ってくれないんだって、そう思って」

さやか「あああ、もう、あたし、どうすればいいか、どうすれば……」

ほむら「……さやか、ソウルジェムを出して! グリーフシードを使うわっ!!!」

さやか「ダメなんだよ、ほむら。ダメなんだよ」

さやか「なに、これ。どす黒い感情がどんどん入ってくる」

さやか「あんたに、緊急用にってもらってた一個もすぐに使い切っちゃった」

さやか「もう、止まらないんだよ」

さやか「あたし、このまま……」


黒おじさん『おい、暁美ほむら』

ほむら『なによ! 後にしてちょうだい!』

黒おじさん『この娘のソウルジェム、弄られているぞ』

ほむら『……いじられてる?』

黒おじさん『貴様らの感情の動きと、ソウルジェムの濁り方を今まで観察していた』

黒おじさん『濁りやすい状態ではあるようだが、この濁り方は異常だ』

黒おじさん『外から恐怖と絶望のマグネタイトを注入されておる』

ほむら『……インキュベーターッ!?』

黒おじさん『おそらく、そうだろうな』

ほむら『あいつ、そんなことが出来たの? なら、何故いままで……』

黒おじさん『さて、な。精神状態が落ち込んでるときしか出来ないのかもな』

黒おじさん『他にも、何か理由があるのかもしれん』

黒おじさん『なんにせよ……』


さやか「ああああああああっ! そっかぁ、あたし、魔女になるんだぁああっ!」

さやか「わかる、わかる。わかるよぉ! あははははははっ!」

ほむら「さやか、さやかぁ……!」

さやか「あれぇ、あんた。その盾の中にいるの、だぁれ?」

ほむら「!?」

さやか「そっかー。そっかー!」

さやか「魔女になりかけたらああ、あたしにも見え始めたよぉっ!」

さやか「やっぱ、あんた 魔女もどきと手を組んでたんだねぇっ!!!」

さやか「騙されちゃったぁあああああああ!!!!」

ほむら「さやか……」

さやか「ああああああーっ! ああ……」

さやか「ほむら……」



さやか「逃げて……」


突然、さやかの右腕が膨れ上がり、
どこからか現れた巨大な剣を振り上げ、私めがけて叩き下ろす。

私は警告のお蔭か、避けることは出来たが……
剣が地面に衝突したときの衝撃と同時に、
急速に魔女の結界が展開された。

いつもの……さやかの魔女の結界ではない。

黒いぬめぬめとした内臓のような内観に、
狂った笑い声で満たされたおぞましい結界だ。

私は、声をだせない。


さやかの魔女は、
私とは見当違いの方向で剣を振り回し、暴れまわっている。

床に広がる血管の様なものを踏みつぶし、
正体不明の液体に穢れながら……。

こうなってしまったら、どうしようもない。

他の三人に、手を汚させたくない。

私が……



「ほむらちゃん!!!」


ほむら「ま、まどか……」

まどか「さやかちゃん……。さやかちゃん……!」

ほむら「……まどかは下がってて。私が、始末する」

まどか「……っ!」

まどか「駄目……だよ。殺さなくたって……」

ほむら「……まどか。説明したでしょう? 今まで、帰ってきた子はいないの」

ほむら「安らかに眠らせてあげるのが、せめてもの救いなの……」

まどか「……それでも、まだ、わからないよっ!!!」

ほむら「まどか……」

まどか「お願い、ほむらちゃん。私、さやかちゃんを助けたい」

まどか「出来ること、全部試してみたいの」


ほむら「どうやって……」

まどか「私たちが、根気強く呼びかければ反応があるかもしれない」

まどか「私がストックしているグリーフシードで、この場の穢れを吸い尽くすとか」

まどか「……兎に角、まだ、さやかちゃんを殺さないでっ!!!」

ほむら「……まどか」

まどか「お願い……」

ほむら「……さやかの、体」

まどか「えっ」

ほむら「何をするにも、準備が必要だわ」

ほむら「さやかの体を回収して、一旦撤退しましょう」

ほむら「帰ってきてくれるなら、体が必要かもしれないし……」

ほむら「巴マミと、佐倉杏子に説明しやすい……」

まどか「……うんっ!!!」


気が狂った魔女の隙を突くのはたやすく、
さやかの体を回収し、結界から外に出た。

私たちが撤退すると同時に、
さやかの結界は薄れ、消えた。

逃げたようだ……。

遠くから、巴マミと佐倉杏子が駆け寄ってくる姿が見える。



マミ「……美樹……さん?」

杏子「……」

マミ「どういうこと? 魔女に……ころされた?」

マミ「いえ、外傷はないわね……」

マミ「でも、死んで……? ……いえ、いや……」

マミ「外傷がなくても、殺せる魔女もいる……わよね」

マミ「……でも、グリーフシードの、反応……なかったのよね」

マミ「にも関わらず、美樹さんのところで急に発生した」



マミ「……ソウルジェムは?」

マミ「……ない……のね」

マミ「ソウルジェム……なくなって、魔女が……?」

マミ「魔法……少女??? 少女が……」

マミ「…………」

まどか「マミさん……」

杏子「馬鹿……考えんなよ……」

マミ「考え……なきゃ」

マミ「……暁美……さん」

ほむら「なにかしら……」

マミ「……美樹……さん、穢れ、貯めやすかったのよ?」

マミ「美樹さんに色々、教えてて、その時に気が付いて、心配……してたの……」

マミ「家出したくらい……追い詰められて……」

マミ「……穢れ……ためたら、あはっ、美樹さん、どうなった……?」

ほむら「……わからない」

マミ「……うそでしょっ!!!」

ほむら「……」


マミ「ねえ、鹿目さん。貴女なら教えてくれるでしょ?」

マミ「暁美さんの次に、美樹さんのところに来たんだから」

マミ「美樹さん、どうして……」

まどか「……」

マミ「……佐倉さんっ!!!」

マミ「貴方、なんでそんなに落ち着いてるの? 何か知ってるの?」

杏子「……」

マミ「……貴方達、なんで……」

マミ「……いいわ。答えてくれないのが、答えなんでしょ」




マミ「ま、魔法少女が、魔女を産むなら……」

ほむら「っ!?」



巴マミが取り乱し始めた瞬間、
私は時を止め、ソウルジェムを取り上げる。

前情報があると強いわね。

以前のループでは、行動が遅れ
巴マミを殺すしか余裕がなかった……。


私は時の流れを戻し、巴マミは普通の少女の姿へと戻った。

呆然とした顔で、自らの姿をみる巴マミ。

私の手に彼女のソウルジェムがあるのを確認すると
非難するような目で私を見つめた。


マミ「皆、皆……死ぬしかないのよ。私だって……貴方だって」

マミ「貴方達だって、そう想うでしょ?」

ほむら「私はそういう訳にはいかないのよ」

ほむら「まどかを、護らなきゃならない」

ほむら「さやかを、護りたかった……」

ほむら「巴さん、貴方だって……。ほんとうに、護りたいのよ」

マミ「私達はもう終わってるのよ! 守るなら、魔法少女になる前に来てよ!」

ほむら「……」


マミ「……ごめんなさい。暁美さんに言っても、しょうがないのに」

マミ「もう、駄目なのよ。死にましょう。一緒に死ねば、きっと怖くないわ……」

まどか「……マミさん、それじゃあ、私が……マミさんを楽にしてあげます」

マミ「……っ!?」

まどか「怖がらないで、マミさん」

まどか「マミさんを、生き返らせたのはこのわたしだもん」

まどか「辛い思いをさせて、ごめんなさい……」



まどかが、錯乱状態の巴マミを優しく抱きしめる。

それでも、巴マミの震えは止まらない。


マミ「か、鹿目さん……。わたしだけじゃ、意味がないのよ?
   魔女を、魔法少女が産むんだから……」

まどか「それはさせられない。絶対に」

マミ「なんでよ……」



まどか「ほむらちゃんは、知ってたんだよ? 魔女化のこと」

まどか「だから、わたしや、さやかちゃんの契約を止めようとしてくれたの」

マミ「……暁美さん……が、隠してたの、やっぱり、このこと……だったのね」

まどか「馬鹿なわたしは、ほむらちゃんが話してくれたのに……、契約しちゃったんだけど」

マミ「え……?」

まどか「わたしは、魔法少女になってでも、貴方に生きていて欲しかったんだよ? マミさん」

まどか「何も出来ないわたしだもん。分かってても、インキュベーターと契約するしかない」

マミ「私のために、魔女になる危険も恐れなかったっていうの……?」

まどか「……うん。マミさんだけじゃなくて、皆に……生きてて欲しかった」

まどか「魔法少女になれば、力が得られる。普通じゃありえない、力が」

まどか「話を聞く限り、経験を積んで、ベテランになればグリーフシードのやりくりもなんとかなりそうだし」

まどか「人間じゃなくなったとしても、私は皆と一緒に戦って、インキュベーターと敵対できる力が欲しかったんだ」

マミ「……」


まどか「ね、マミさん。私達は、たとえ人間じゃなくなっても、生きてるんだよ」

まどか「死に方が、普通の人間とは違うだけ」

まどか「生き方が、普通の人間とは違うだけ」

まどか「ゾンビなんて自虐的な呼び方して、貶めるのやめよう?」

まどか「マミさん、死ぬのなら、マミさんとして死んでほしい」

まどか「わけのわからないゾンビなんてものじゃなくて」

まどか「そして、生きるなら……。生きたいのなら、誇りを持って生きたい」

まどか「現状に満足できないのなら、一緒に、魔法少女なんてものを超越するの」

まどか「条理を覆す存在の私達なら、可能なはずだよ」

マミ「……鹿目さん……。そう……なのかな」

まどか「みんな一緒なら、きっといけるよ」

マミ「……」


杏子「……条理を覆す……か」

まどか「そうだよ、杏子ちゃん」

杏子「それなら、きっとさやかだって……まだ……」

杏子「元に戻ってくれるのかな?」

まどか「うん! きっと……。ね? ほむらちゃんも、そう思わない?」

ほむら「……まどか……」

ほむら「わたしは……」

まどか「ほむらちゃん……」


ほむら「私は今まで沢山、魔女化した魔法少女を見てきた」

ほむら「でも、帰ってきた子は、いないの……。それだけは覚えておいて」

ほむら「絶対、無理しないでほしい」

まどか「……うん、ありがとうね。ほむらちゃん」

まどか「兎に角、色々試してみたいの」

まどか「きっと、帰ってきてくれる」

まどか「ほむらちゃん、待ってて!」

まどか「頑張ったほむらちゃんの分も、私が頑張ってみるから!」

ほむら「まどか……」

まどか「大丈夫。私は、絶対ほむらちゃんのところに帰ってくるよ」

まどか「一人になんてしないから」

ほむら「……」


まどか「……マミさんは、どうします?」

マミ「……鹿目さん、佐倉さん。私も、貴方たちみたいに信じられない」

マミ「暁美さんみたいに、無理だとも思いたくない……」

マミ「一人にさせて。考えさせて頂戴」

まどか「……わかりました。でも、あんまり考えないで」

まどか「ゆっくり休んでください」

まどか「さやかちゃんのことがあるから、今は時間がとれないけど」

まどか「マミさんが悩んで苦しんでるなら、力になりたいんです」

まどか「マミさんが生きたいと思うなら、きっと、私が、私達が力になれると思うから……」

マミ「……」


私たちは別行動をとることになった。

まどかと佐倉杏子は、さやかの魔女を探すのだという。

巴マミは、自分のマンションへと戻るようだ。

私は……、どうする?


さやかへの自己犠牲を爆発させそうなまどかや、佐倉杏子を止めるか。

一人で魔女化しそうな、巴マミの様子を伺うか……。


佐倉杏子の傍には、まどかがいる。

自信と力に溢れた、魔法少女のまどかが。

……ここは、巴マミを優先すべきか。



正直……。さやかの魔女を見るのが、つらい。

一思いにやれなかった分、余計。

ごめんなさい、さやか。ごめんなさい……。


――巴マミのマンションの外から、中の様子を調べる。

幸い、結界や魔女の気配はない。

問題は、ないか……。



黒おじさん『……娘よ』

ほむら『なによ』

黒おじさん『インキュベーターとやら、中にいるぞ』

ほむら『……なんですって? どの面下げて、巴マミのもとに?』

黒おじさん『しらん。だが……』

ほむら『だが……?』

黒おじさん『Lawの奴らの好きな行為があってな』

ほむら『なによ』

黒おじさん『使える駒を、死ぬまで使いつぶすために……』



黒おじさん『洗脳、もしくは魂の改造を行う場合がある』


私は巴マミの部屋のドアを蹴破り、
中に侵入した。

宙に浮かび眠り続ける巴マミと、
耳から生えた触手で巴マミの周囲を探る風な動きをとるきゅうべぇ。


……ソウルジェムを生成したときのように……
いや。あの時よりも念入りに。


ほむら「……何をしているのよ! インキュベーターァッ!!!」

QB「なにって……使えない駒がいたから、使えるようにしてあげてたのさ」

ほむら「殺すわ」

QB「無駄だよ?」

QB「僕は本体のただの低級分霊に過ぎない」

QB「死んだところで、また分霊を派遣するだけさ」

QB「それより、見ておくれよ。僕の本霊につなぎ、力を分け与え、より高次の次元に到達した巴マミの姿を」

QB「君たちのために、魔女を倒すだけの存在にしてあげたよ?」

QB「ほら、美樹さやか。彼女が魔女化してしまった」

QB「お人よしの君たちでは、退治できないだろう?」

QB「彼女を倒すのは、この巴マミがやってくれるよ」


今までと違い、真っ白な衣装を纏い、
美しい羽根を生やし……

外見は、まるで天使の様。

不覚にも目を奪われかけたところで、
巴マミが目を見開いた。

瞳のない、真っ白な眼球が見える。

巴マミは瞳のない目で私を一瞥し、
何も言わずに、壁を銃撃で破壊。

羽を広げ、立ち去った。


私は、追う事も出来ず……
ただ、残ったインキュベーターの尻尾を踏みつけ、
銃弾を撃ち込み続けた。




今日は終わりです。
ダークな展開ですいません。


乙ありがとうございます。
今日もちょっとだけ進めておきます


手の中の銃が弾切れを起こした時……
心の奥の絶望が、奇妙に薄れる感覚を覚えた。

おそらく、黒男爵が私の発する絶望を吸っているのだろう。

続けて、黒男爵が私にテレパシーを送ってきた。


黒おじさん『おい、その分霊の死体、私に寄越せ』

ほむら『……こんなの、どうするのよ』

黒おじさん『私の手にかかれば、情報を引き出すことが出来る』

ほむら『……頼むわ。盾に入れるから』

黒おじさん『うむ』


ほむら「まどかは魔法少女に、さやかはインキュベータにより強制的に魔女化。
     佐倉杏子は、まどかを誘って、魔女化を解除しようとしている……」

ほむら「下手をすれば共倒れ」

ほむら「そして、よりによって、巴マミは改造された!?」

ほむら「はぁ、もう……なんだっていうのよっ!!!」

黒おじさん『貴様も、その魔女化の解除とやらを手伝ってやればよいではないか』

ほむら「何を言っているの。悪魔随一のネクロマンサーとやらを自負する貴方なら分かるでしょう?
     魔女になって、帰ってきた子なんていないわ」

ほむら「巴マミなんて、改造よ!?」


黒おじさん『それは穢れを払い、鎮める手段が無かったからだろうが』

ほむら「……? ちょっと、待ちなさい! 出来るのっ!?」

黒おじさん『魔女化は、穢れを纏い、属性がDark堕ちした結果だろう』

黒おじさん『悪魔としての自覚が無い貴様らは、属性変化の際に自我が完全に崩壊』

黒おじさん『傀儡 同然となったのだ』

黒おじさん『改造においても、変化する属性が違うだけでほぼ同じだ』

黒おじさん『ならば、そのバランスを崩すものを取り除けばよい』


ほむら「……具体的にどうするのよ。私にも分かるように説明して頂戴。お願いだから」

黒おじさん『この地に古くより伝わる、シントーの言葉を借りれば分かり易いかな』

黒おじさん『我ら精神世界の存在も、貴様ら人間の魂も、アラミタマ、ニギミタマより成り立つ』

黒おじさん『ニギミタマの中には更に、クシミタマ、サキミタマがある』

黒おじさん『アラミタマという名から、周りに危害を与えそうな名前だが、
       人の心に前を進もうとする発展性を与える重要な要素でもある』

黒おじさん『他もいずれも無くてはならんものだそうだ』

黒おじさん『ニギミタマは、親しみ、交わる力……といった具合にな』

黒おじさん『それら御魂が上手くバランスがとられる事で、平常の状態が保たれる』

ほむら「……じゃあ、魔女化はそのバランスが崩された状態ってこと?」


黒おじさん『そうだろうな。それに加え、穢れを溜め込み曲霊になった』

ほむら「曲霊……? けがれ?」

黒おじさん『曲霊というのは、魂が通常の状態なら選ばない行動を行い易くなった状態だ』

黒おじさん『在るべき姿を、見失ってしまうのだ』

黒おじさん『それは、直霊から穢れを溜め込む事によって起こる』

黒おじさん『穢れは、気が枯れるという事だ』

黒おじさん『主観的な不潔感らしいな。人は生きているだけで、それが溜まる』

ほむら「ソウルジェムの濁りみたいなもの……?」

黒おじさん『そうだろう。穢れは、更に死や疫病、犯罪などで、さらに心を強く枯らすらしい』

ほむら「……絶望も、そういうものから始まることが多いわね」

黒おじさん『そうなのだろうな』


ほむら「じゃあ、魔女化は穢れだったり、アラミタマとかのバランスが崩れたりして」

ほむら「自分を見失っていただけ?」

黒おじさん『精神世界の存在になった貴様達にとって、それがどれだけ重要かわからんか』

ほむら「……じゃあ、その穢れを払えば、バランスを崩すマグネタイトを無くせば、本当に元に戻るの……?」

黒おじさん『程よく弱らせ、バランスを崩すマグネタイトを分離してやれば
       後はお前の仲魔達の呼びかけで鎮まるのではないかな』

黒おじさん『ただ、インキュベーターとやらが、グリーフシードは穢れを吸収し易い仕組みにしているようだ。
       少々手間取るかもしれんが、なに。それを上回る勢いで吸収し返してやるがいい』

ほむら「……貴方に、それが出来るの?」

黒おじさん『無理だ』

ほむら「ちょっと!!!!」


ほむら「期待させといてそれ!? ソウルジェムが濁るわよ!!!」

黒おじさん『高位分霊以上の私であれば可能だろうが、この分霊のランクでは無理だ』

黒おじさん『私は調査メインの分霊でな。基本的なスキルは持っているが、単純にパワー不足なのだ』

ほむら「……結局、どうしようもないって事じゃない」

黒おじさん『さて……、貴様が自分を捨てる覚悟があれば話は変わってくるぞ』

ほむら「……? 自分を捨てる……?」

黒おじさん『そうだ。私と交わり、強力な悪魔と生まれ変われば、な』

ほむら「……交わる? どういうことかしら……」


黒おじさん『悪魔を研究し続ける人間達により生み出された、とある秘術がある』

黒おじさん『その秘術の名は、悪魔合体という』

ほむら「悪魔……合体……?」

黒おじさん『簡単に言えば、二体の悪魔が一つとなり、新しい一体の悪魔になるということだ』

ほむら「それは……」

黒おじさん『悪魔の組み合わせによって、強くなるかならないかは変わる』

黒おじさん『だが、私と貴様の組み合わせであれば、より強力な悪魔へと生まれ変われるはずだ』


ほむら「でも、それって……。ゾンビどころか、本当に私が私でなくなってしまうんじゃ……」

ほむら「それじゃ意味が無いわ。新しい私が、まどかを守ろうとしないかもしれない。そんなの意味が無い」

ほむら「このループは諦めて、次にいけば……」

黒おじさん『ふむ……。では、貴様にとって興味深い話を聞かせてやろう』

黒おじさん『この分霊から得られた情報だ』

ほむら「……なによ」

黒おじさん『インキュベーターの奴が嘘をつけない事にして、何を隠していたか、という話だ』

ほむら「なんですって!?」

黒おじさん『度々、話してはいるが。我らが高次の精神世界の存在であるということを念頭に置いておけ』

黒おじさん『高次の精神世界の存在というのは、無限にある平行世界をまたぐ存在であるということだ』

ほむら「……平行世界を、またぐ存在……」


黒おじさん『うむ。そして、私達 高次の精神世界の存在は、物質世界に顕現していない時は、
       生み出された全ての平行世界を、その気になれば知る事ができる』

ほむら「まって、ちょっと、待って……」

黒おじさん『だから、インキュベーターがしらばっくれていたとして、
       貴様が時間遡行を行っていた事は知っていた可能性が高い』

黒おじさん『さて、それは何故であろうか?』

ほむら「それって、それって……」

黒おじさん『そうだ、ほむらよ。最初から、貴様の祈りは利用されていたのだ』

黒おじさん『Lawの奴らの、強力な手駒としてのまどかの魔女。
       それを生み出すために、多くの平行世界を生み出し、因果を集中させるようにな』

黒おじさん『Lawの神はかつて、ある時間軸では東京にICBMを落とし、
      人間の社会を破壊、あらたな秩序ある世界を作ろうとした』

黒おじさん『それにあやかり、奴なりの兵器を生み出し、今度は地球規模で破壊を行おうとしているのだ』

黒おじさん『自分に都合のいい世界を生み出すためにな』

黒おじさん『それも、貴様が繰り返すほどに世界は多く生まれる』


ほむら「……私が、あの強力な魔女を生み出していただけじゃない」

ほむら「私はまどかが、平和に生きられる世界を作ろうとしてたのに」

ほむら「私のそんな目的さえ利用されて、……やつ等に意図的に利用されて、
     まどかをインキュベーターの兵器へと作り変えていたというの?」

黒おじさん『そういうことだ。絶望から発せられるマグネタイトが魔法少女を魔女へと変える。
      その時に奴に入るエネルギーなど、ありはしない』

黒おじさん『考えた事は無かったか? 魔法少女から魔女に生まれ変わる為のエネルギーを』

ほむら「……殺す、殺してやる……」

黒おじさん『インキュベーターは、魔女を殺すように魔法少女に促す。

        これは、中途半端な魔女にしかならなかった個体を処理し、
        魔法少女にマグネタイトを集めさせ、無駄なく再利用するためだろう』

黒おじさん『奴は黒く淀んだグリーフシードが好みの様だしな』

黒おじさん『だから、インキュベーターは使用済みのグリーフシードを喰らう』

黒おじさん『かかか、強い悪魔を生み出すため、よく考えられたシステムだな』

黒おじさん『エネルギー問題など、あやつの都合のいい詭弁だったのだろう』

ほむら「滅ぼしてやるっ……! インキュベェタアアアアアッ!!!!!」


黒おじさん『……そうか。ならば、ほむらよ』

ほむら「なによっ!!!」

黒おじさん『貴様も、同じ土俵に立つしかなかろう』

ほむら「……悪魔合体しろというのね」

黒おじさん『そうだ。インキュベーターの使い魔に等しい地位から脱却し、
       Chaosの悪魔として生まれ変わるがいい』

黒おじさん『奴等の法から自由な悪魔となるのだ』

黒おじさん『そして、自らの欲望に忠実に、目的を果たせ』

ほむら「……ちょっと待ちなさい。貴方と合体したからといって、貴方のメリットは……?」

ほむら「まさか、私を養分にして、貴方自身が強くなろうとしてるのではないの?」


黒おじさん『ふむ、やはり……馬鹿ではないらしいな』

ほむら「なによ! そう言う割に、馬鹿にしてる様にしか聞こえないわよ!」

黒おじさん『うむ』

ほむら「……」

黒おじさん『怒りながらも、冷静な部分が残るというのは中々良いぞ。暁美ほむら』

黒おじさん『さて、私の目的だが……』

黒おじさん『この世界には、私が探している平行世界のあの子の魂の欠片はない』

黒おじさん『そして、この世界に元々いるあの子は、幸せに暮らしている』

黒おじさん『だから、私という分霊は、あの邪神の企みを阻止することが一番の存在意義だ』

黒おじさん『それは、Law属性の奴らを弱らせることにも繋がるからな』

黒おじさん『……しかし、調査用の分霊では、それは不可能だ』

黒おじさん『高位分霊や他の強力な悪魔を呼ぶのも難しい』

黒おじさん『ならば、悪魔合体という選択肢しかない』

黒おじさん『私にとっても……な』

黒おじさん『この合体は、私の目的と貴様の目的、双方を満たすものとなるだろう』

黒おじさん『それに、私は数多いる分霊の一つにすぎん』

黒おじさん『目的が果たされるなら、別の悪魔に取り込まれたところで、大した痛手ではない』


ほむら「……やっぱり、悪魔ってわけがわからないわ」

ほむら「自分がなくなってもいいだなんて」

黒おじさん『貴様も高次の精神生命体により近づけば、感覚的に分かるであろうよ』

黒おじさん『分霊というものが、己に対する認識というものをな』

黒おじさん『貴様は、自分の自我を失いたくないという』

黒おじさん『なれば、貴様が想い人を護りたいという意思が強固であればあるほど、
       貴様自身としての意識は残るだろう』

黒おじさん『簡単な話だ。合体の際は、私と争い、勝って私の力を自分の力とすればいい』

黒おじさん『さもなくば、どの道……貴様は永遠に、インキュベーターの檻の中だ』

黒おじさん『さあ……どうする、暁美ほむらよ。私に乗っ取られるリスクを抱え真の悪魔と生まれ変わるか?』

黒おじさん『負け犬のまま朽ち、意思を持たん兵器に成り下がるか』

黒おじさん『延々、平行世界を生み出し、愛しい娘を兵器に変え、インキュベーターを強化するか』

ほむら「……」


ほむら「……よりによって」

ほむら「勝つための選択肢が、こんな不気味なおじさんと合体するだけなんて……」

黒おじさん『打開される可能性のある道が示されただけ幸運だと思うことだ』

ほむら「……わかってるわ。あいつと敵対する時点で、並大抵の手段では上手くいかないことくらい」

ほむら「いいわ、やってやる。貴方の力、奪い取ってやるから」

黒おじさん『くかかか、ほざけ』

ほむら「……それで、その悪魔合体とやらは、どうやればいいのよ」

黒おじさん『正式なやり方は……人間の手を借りる方法が一番だが……
       貴様にその伝手はなかろう? この時間軸では私もない』

ほむら「じゃ、どうするの」

黒おじさん『何、簡単なことだ。
       私が盾の中に入った状態で、私という存在を吸収しようとしてみろ』


黒おじさん『この盾の中は、かなり特殊な状態だ』

黒おじさん『物質世界と精神世界の狭間だからこそ、吸収・合体が上手くいくだろう』

黒おじさん『必要な魔方陣は、私が魔力で描いてやろう』

ほむら「……吸収しようとって、どうやって……?」

黒おじさん『私の存在を感じる事は出来るだろう?
       やろうとしてみろ、感覚的に分かるはずだ。
       ほむら、貴様は既に高次の精神世界の住人でもあるのだから』

ほむら「……」

ほむら「……そうね。分からなくもないかもしれないわ。じゃあ……」


ほむら「勝負よ、黒男爵」

黒おじさん『くるがいい、未熟者が』


……黒おじさんの存在を乗っ取ろうと試みる……

盾が黒く……美しく光り、
訳の分からない文字と
直線と曲線で描かれた魔方陣が浮かび上がる。

その最中、意識が遠のきかけ……
夢の様なものをみた。



可愛らしい金髪碧眼の少女を愛でる、
黒おじさんと、もう一人の赤いおじさん。

おじさん達は、その少女のために、
沢山のゾンビを生み出し、ゾンビの街を作る。

少女が、お友達を欲しがったから。

可愛らしい少女も、ゾンビだから。

ゾンビのお友達は、ゾンビ。

愛しい少女が気に入った人間を、
ゾンビに作り替えたこともある。

ゾンビの少女は、
おじさんがいる世界を破壊した大陸間弾道ミサイルが原因で
死を迎えた美しい少女だった。

その少女を哀れみ、破壊者への憎しみから、
おじさんは少女をゾンビに変えた。


最初は、そう……哀れみだった。

だけれど、その少女といるうち、
おじさんは悪魔になって忘れていた感情を思い出す。

おじさんは少女を護り、幸せと平穏を祈った。

それは、とても歪んでいたけれど、
とても純粋な愛情でもあった。

でも、それには終わりが訪れる。

悪魔と共存しながらも……
人間が自らの足で立って歩ける世界を望む少年が、
その街を破壊してしまうから。


愛しい少女のためだけの、身勝手な振る舞いによるしっぺ返し。

少女と共に、儚い夢のごとく消え去ってしまう。

ただ、悪魔の死は、人間のものとは違う。

魔界へと戻るだけ。

……そこで、おじさんは呪詛とともに、
自らを罰した少年を魔界から観察した。

機会があれば、復讐してやろうと……

しかし、少年を観察しているうち、
おじさんの中に別の感情が浮かんでくる。


愛しい少女は元々、少年と同じ人間だった。

その人間の可能性を、少年が見せ付けてくれたから。

Chaosの大悪魔もLawの大天使も、すべてを皆殺し。
自らの足で歩こうとする少年。

おじさんは、ここで初めて、自らの行いを後悔した。

おじさんの愛しい娘は、もしかすると
少年と同じくらいの無限の可能性を秘めていたのかもしれない。

愛しい娘のご機嫌伺いだけして、好かれようとだけして、
自らのエゴで潰してしまった。

そして、自分が神だった頃のことを少しだけ思い出す。


……あの愛しい少女を復活させよう。

今度は、少女を育てるのだ。

自分が神だったころは、
人間達を直接助けるのではなく、
良い方向に導く存在であった。

愛しい少女も、
自ら立って歩ける力をもってこそ、
幸せに向って歩いていけるはずだ。

そう決心して、同志と共に
壊れた愛しい少女の魂の欠片を集めてまわる。

その途中、愛しい少女と同じく、
理不尽な法を押し付けられ犠牲となりそうな少女を見つけてしまった。

また、その少女は自分とも重なる。

大事な友人を助けるため、行動している。


しかし、決定的に違う所もある。

かつての自分は、ただ、愛でようとしていただけ。

対して、その少女は自分が犠牲になってでも、憎まれようとも、
友人と、その友人のため世界を護ろうとしていた。

その隣に、自分が居なくても。

なんと、危なっかしく、儚い、おかしな少女だろう。

だが、何故か……
目を離すことが出来ない。

自分と同じ失敗をしなければいいが
自分と同じく、敵は強大だ。

自分と愛しい少女に似る、おかしな少女。
放っておくことなど出来ない。

その少女の、名は……




ほむら「わたし、今度こそ 本物の悪魔に生まれ変わったのね。黒男爵……」


ほむら「いえ、黒おじさん」





今日は終わりです。
ありがとうございました。


乙ありがとうございます。

すいません、某スレで、ある重要な設定が過去にあった作品の二番煎じであると発覚。

そのままではないので、続行しますが……

またかと思われた方、すいません。



それでは、投下します。


――さやかの魔女の結界の中で、
魔女と、天使もどきが戦っている。

その天使もどきが巴マミだと気が付いて、
まどかと佐倉杏子は、絶望しかかっていた。

それでも、尚 まどかは立ち上がり、
二人を正気に戻す時間を稼ごうと、
二人の攻撃が互いに行かぬよう、捌いている。

天使もどきは、そんなまどかに反応したのか、
魔女への攻撃を止め、行動を急停止した。

その隙に魔女は強烈な一撃を与えようとするが、
まどかは必死にそれを逸らそうとする。

天使もどきは、少し口を開き……。


「せめて、貴方達の手を、汚させたくない……」


そう、呟いた。


自我が残っているのか?

全体的に人間らしさは失われていたが、
目元や口元をよく観察すると、悲痛さが見て取れる。

まどかも、それを感じたのか
涙をこぼしそうになった。

天使もどきは哀しみの破片を浮かべたまま、
抗えぬように魔女への攻撃を開始した。

少し遅れて立ち直った佐倉杏子が、
巴マミの攻撃を捌く。

……観察は、この程度でいい。

さやかと巴マミのソウルの状態は把握した。

私なら、出来る。


私は自身の存在をフェードアウトさせ、
周囲の存在から気が付かれにくくなる魔法を唱えた。

そして、一気に天使もどきに近寄り……
巴マミの魂を抜き取った。

天使もどきは倒れ、動かなくなる。

魂の無くなった肉体は、呪縛から逃れ人間の物に戻った。


まどか「……っ!? ほ、ほむらちゃん!?」

ほむら「巴マミ。貴方の魂、確かに頂いたわ」

杏子「なっ……、お、おい、てめぇ! マミを……」


まどかと杏子が私に気を取られたとき……

狂った魔女は、攻撃の好機だと考えたのか
無数の車輪を召喚。

それを一気に私達に向けて解き放った。

打撃か射撃属性か迷ったが、
一応 射撃属性のスキルらしい。

それならば、避ける必要はない。

身構えるまどかと佐倉杏子の前に立ち、
涼しい顔で攻撃を凌ぐことができた。


まどか「……まさか、ほむらちゃん……も?」

ほむら「それは違うわ。私は私よ」

杏子「どうだかな。実体に見えるが、だからこそ あの攻撃をしのげるなんて思えない」

まどか「……まって、ほむらちゃん。私達、まだ……」

ほむら「まどか、杏子」

ほむら「私を信じて」

まどか「……」

杏子「……どう信じろっていうんだよ。さやかも、殺すつもりなのか?」

まどか「……まって、杏子ちゃん」

まどか「わたし、信じるよ。ほむらちゃん」

まどか「杏子ちゃんも。ね?」

杏子「……」



私たちが話している隙に、攻撃を加えようとしてくる狂った魔女。

私はその攻撃を避け、今度はさやかの魂を抜き取ろうと試みる。

粘つく邪気が、魂にからまり離れない。

こんなものは、さやかから溢れる精神エネルギーではない。

さやか、今開放するからね。




ほむら「……美樹さやか。貴方の魂も、確かに頂いたわ」


杏子「……さやかの魔女、霧散しちまった」

まどか「ほむらちゃん。……その手の、マミさんと さやかちゃんのグリーフシード?」

ほむら「ええ、そうよ。巴さんは、ソウルジェムのままだけれどね。改造済みではあるけど」

杏子「……えらく、あっさり片付けてくれたな」

ほむら「今の私にとって、この子達は敵じゃないわ」

ほむら「私は、この子達を導く存在にならなければいけないのだから」

杏子「……なんか、雰囲気が変わったじゃねーか。暁美ほむら」

ほむら「そうかしら?」


杏子「もう一回聞くよ? どう信じろって言うんだ?」

杏子「その抜き出したグリーフシードで、何をあんたは信じさせてくれるっていうんだ?」

ほむら「この子たちを、救ってみせる」

杏子「……簡単に言ってくれるな」

まどか「ほむらちゃん。手持ちのグリーフシードをつかっても、周囲の穢れは吸収できなかった」

まどか「それに、呼びかけにも答えてくれなかった」

まどか「……魔女でも、なくなっちゃった」

まどか「一体、どうするの?」

まどか「私でも、手伝える?」

ほむら「ええ。というか、貴方達がいないと、無理なのよ」

杏子「……? どうするんだよ」



ほむら「さっき、言ったでしょう。わたしを、信じて」

ほむら「あの二人を戻せると、わたしを信じて」

杏子「信じるだけで出来れば、せわねぇよ!」

ほむら「私たちは高次の精神世界の存在。それがどれだけ大事か分からない?」

杏子「……」

まどか「……? こうじのせいしんせかい?」

ほむら「ええ。悪魔ってことよ」

まどか「あくま……?」

杏子「……よく、わかんないけどさ。私達程度じゃ、半分、人間みたいなもんだろ」

杏子「あの魔女もどきみたいに、ものほんの悪魔なら違うかもしれないけど……」

ほむら「私は、もうそっち側」

ほむら「私がまだ、魔法少女だと思う?」


まどか「……ほむらちゃんの、ソウルジェム……ない?」

杏子「どういうことだよ……おい」

ほむら「わたしは、悪魔の力を手に入れた」

ほむら「インキュベーターに対抗しうる力を」

ほむら「魔女もどきを吸収してね」

杏子「……今のアンタなら、できるんだな」

ほむら「ええ。私は、さやかとマミを救いたい」

ほむら「その為に、貴方達が発するマグネタイトがいるの」

まどか「ま、まぐねたいと?」


ほむら「精神を持つ生命体が、感情を示した時に発するエネルギーよ」

ほむら「二人のグリーフシードは、精神の均衡を壊すほど、
     絶望した時に発するマグネタイトが蓄積されている」

ほむら「それを、私が無理やり吸収して、正常な状態に叩き直す」

ほむら「だけれど、負のマグネタイトばかりを吸収すると、私が闇堕ちしてしまう」

ほむら「だから、貴方達が私に正の方向のマグネタイトを発してくれれば」

ほむら「それを吸収して、バランスが保てるわ」

まどか「……急で、よく分からないけど……」

まどか「ほむらちゃん、信じてるから。二人を救ってくれるって」


まどかが、私の目を見ながら手を握ってくれた。

暖かなマグネタイトが、流れ込んでくる。

心から、私を信じてくれてるのが感じられる。

それが、とても嬉しくて……

同時に、力になるのを感じる。

ずっとこうしていたい気持ちに囚われかけたが、
そうも言ってられず、私は佐倉杏子の方を見る。


杏子「……ちっ。ま、まどかよりは、アタシは状況は分かってるからな」

杏子「いいよ。アンタに賭けてやるよ」

杏子「こっぱずかしいけど、アタシの気持ちが力になるんなら、持ってきな」

杏子「アンタのこと、信じてみるよ」


私は、正のマグネタイトの心地よさに酔いしれながら、
右手のマミのソウルジェム、左手のさやかのグリーフシードに力を込める。


ほむら『巴さん、さやか』

ほむら『あんな終わり方のままなんて嫌よ』

ほむら『お願い、帰ってきて』

ほむら『私やまどか達が一緒に居れば、辛いことだってきっと乗り越えられる」

ほむら『私だって、何だってする!」

ほむら『今から、それを証明する』

ほむら『貴方達が感じた苦しみ、私が喰らってやるから!』

ほむら『意地でも取り戻すんだから!』

ほむら『いくよっ!』


――さやかの死体の鮮度を保つために、
黒おじさんは適当な死者の魂を放り込んでおいてくれた。

お蔭で、肉体の劣化や腐りは進んでいないようだ。

今も自宅で、さやかのフリをしてくれている。

ただ、どうも男の魂を突っ込んでいたらしく、
行動の節々がおっちゃん臭い。

今も脇をぼりぼり掻きながら、スルメを食べている。

久々の人間の体を、満喫しているのか……。

細かいところの気の回らなさから、
アリスから黒おじさんが少し疎まれていなかったか心配になってきた。

……まあ、今はそれはいい。

男の魂に礼を言い、体から出て行ってもらった。


マミ「……美樹さん、目を覚ましてくれるかしら」

杏子「大丈夫でしょ。マミだって治ったんだから」

まどか「……あっ、さやかちゃん、動いたよ!」

さやか「……えっ、あれっ?」

ほむら「おはよう、さやか」

さやか「ほむら……。まどか。マミさん。えっと、佐倉さん」

まどか「さやかちゃあああああんんんん!!!!」

さやか「うわっ! まどかっ! 落ち着いてって!」

マミ「ふふっ」

杏子「へっ」

さやか「あははは……。よしよし、まどか」


ほむら「……気分は? どこか、変な所はないかしら?」

さやか「ない……と思う。あたし、魔女になってたんだよね……?」

ほむら「そうよ。その間の記憶って、ないのかしら?」

さやか「……ぼんやりと。声、聞こえてたよ」

ほむら「まどかと、杏子、必死に呼びかけてくれてたんだから」

さやか「うん、ほむらの声も聞こえたよ?」

ほむら「……わたし、何か言ったかしら?」

さやか「さあねー? なんて言ってたかな、マミさん」

マミ「さあー? 彼女だけじゃないのねって思ったかもしれないわね」

さやか「あー。一番ご執心なのは、ねぇ」

ほむら「……何の話よ」

まどか「えー? ほむらちゃんがご執心って、だれ?」



ほむら「そ、それより!」

さやか「?」

ほむら「インキュベーターは、実は強制的に魔女化を行えるみたいなの」

ほむら「さやかの件、魔女化のスピードが異常だったわ」

まどか「……強制的に、行えるなら……なんで、やらないんだろう」

まどか「魔女化した時に発する絶望のエネルギーが大事なんだよね?」

ほむら「それこそ、エネルギーが無駄だからでしょう」

さやか「どういうこと?」

ほむら「魔法少女自ら絶望してマグネタイトを発さないと、自分のエネルギーを消費することになるじゃない」

ほむら「奴らにとって、魔女化は世界を滅ぼす兵器を開発しているに過ぎない」

ほむら「なにか必要に駆られない限り、自分の身を削るのは嫌なんでしょう」

マミ「……じゃあ、何故今回は……」


ほむら「もしかしたら、私がこうなるのを恐れて、早めに決着をつけようとしていたのかもね」

杏子「……やっと、話が聞けるのかい」

さやか「そうだ、ほむら。あたし、魔女化する前にあんたの盾の中に何かいるのが見えたけど……」

ほむら「自分で気が付いていたでしょう? 魔女もどき……悪魔よ」

まどか「あくま……。さやかちゃん達、助けるときにも言っていたけど」

さやか「どういうことよ?」

マミ「きゅうべぇにも関係のあることなのよね。私を、あんな風にして……」

ほむら「……そうね。それじゃあ、どこから話そうかしら」

ほむら「長くなるから、覚悟してね。あれは、私が、人間だったころから……」


――私が長い時間かけて、全てを話し終えたころ。
皆それぞれ、複雑な顔をしていた。


まどか「じゃあ、その……黒おじさんと、ほむらちゃんは……」

ほむら「ええ、そう。私は本物の悪魔の力を手に入れた」

ほむら「インキュベーターに依存しない力を」

杏子「……悪魔合体……か。そんな裏ワザがあったとはね」

さやか「自分が自分じゃなくなるみたいで怖いけど」

ほむら「でも、なるべく早く魔法少女から脱却する必要があると思うわ」

ほむら「エネルギーを消費してでも、魔女化は敵を減らすには有効な手段だもの」

マミ「……でも、合体っていったって、そんな協力的な悪魔だって、中々みつからないと思うし」

まどか「当面、魔法少女として戦うしか……」

ほむら「それに関しては、問題ないわ」

まどか「どうするの?」


ほむら「まどか、佐倉杏子、巴マミ、美樹さやか」

ほむら「貴方達……私と、交わりなさい」


まどか「」

さやか「」

マミ「」

杏子「?」


まどか「ほ、ほ、ほむらちゃん! そういう事言っちゃ駄目ぇ!!!!」

ほむら「えっ???」

マミ「交わるって……。暁美さんったら、どうして、急にそんな話に……。あ、悪魔だから……?」

さやか「ほ、ほむら。夢魔系っすか」

さやか「うー、いかん。何故 あたしは今ちょっとぐらっと来てしまったんだ」

さやか「ほむらが幾ら美人だからってそれはちょっと、いやでもqあwせdrftgyふじこlp」

杏子「なんでアンタ達慌ててるのさ?」

杏子「ほむら、どういうことだよ?」

ほむら「わ、私も分からない。みんな何か誤解してない?」


まどか「だ、だ、だって、交わるって言えば……!」

さやか「そ、そ、そういう事でしょうが!」

ほむら「そういうこと……。まじわる……? ごめんなさい。分からないの……」

まどか「だ、だからね……、さやかちゃん!!!」

さやか「あ、アタシかよ! え……えっとぉ、だから……」

さやか「交わるっていったら、その、普通は、好きな人同士で、その……」

ほむら「好きな人同士で?」

さやか「え、えっ……チ というか、ごにょごにょ」

ほむら「……えっ? なに? えっ……え! ええええっ!?」


ほむら「ち、ち、違うのよ。全然、意味が違うのよ!」

まどか「な、なんだ。ちがうんだ」

さやか「なんかほっとした様な残念なような」

まどか「さやかちゃん?」

さやか「いえ、なんでもないです」

杏子(……えっちって言ったか??? なんだ? 悪魔合体の話じゃねぇのか?)

マミ「……鹿目さん、さりげに所有権を主張してるのね」

まどか「そ、そんなんじゃないです! それより、ほむらちゃん、どういうこと!」


ほむら「どういうことって! 悪魔合体の話の途中だったでしょ!」

さやか「ああ、合体を交わるって表現したのか」

マミ「紛らわしいわね」

まどか「ほっ……」

杏子「……なんなんだよ、一体」

ほむら「もう、黒おじさんがそういう表現していたから、真似して使っただけなのに……」

まどか「……でも、それどういう事?」

さやか「私達皆が合体して一つになって、強い悪魔になりたいってこと?」

マミ「それはちょっと……」

杏子「アタシもごめんだよ? アタシは、アタシでいたい」


ほむら「皆、忘れていない? 私たちの知るインキュベーターも、黒おじさんも」

ほむら「分霊に過ぎないということを」

さやか「……分霊? えっと、分身みたいなものだっけ?」

マミ「でも、貴女は……本霊というんだっけ? 本物なんでしょう?」

杏子「……まさか」

まどか「え、杏子ちゃん、わかったの?」

ほむら「……おいでなさい、私の分霊たち」


???「ホムホム」

???「ホムホム」

???「ホムーーー」


まどか「」

杏子「」

さやか「」

マミ「」


さやか「……いや、なにこれ」

ほむら「だから、私の分霊よ」

マミ「ちっちゃい……、いや、幼い暁美さんね」

ほむら「私は未だ物質世界に本霊がある所為か、あまり高級分霊を作るのは難しいのよ」

さやか「なんかほむほむ言ってるんだけど」

ほむら「だから、低級だから大した能力もないし、知性も低いのよ」

まどか「え? 一人連れて帰ってもいいの? ほむらちゃん」

まどか「私、メガネの子がいいな!」

ほむら「連れて帰る? いえ、だから、これは合体用……」

まどか「私、この子にそんなことできない! この子は私が育てるっ!!!」

ほむら「え、えぇー……」

さやか「じゃ、アタシはこのクールっぽそうな ほむほむで」

マミ「私は……リボンつけてる子かしら」


杏子「……アンタらね、落ち着いてよ」

杏子「あの憎たらしいインキュベーターの魔の手から逃れられるチャンスなんだぞ?」

杏子「聞く限り、意志の強さで合体後の自我は勝ち取ることができるんだろ?」

杏子「低級の意志の弱そうな分霊なら、簡単だろう」

まどか「えー、でも、なんか可愛そうだよ」

ほむら「特殊な例を除いて、分霊は自我の存続に特別な熱意を持たないわ」

ほむら「低級なら、特にね。一番は、自分の持つ目的を果たすこと」

ほむら「それに、貴方達と一つになるなら、皆嫌がらないはずよ?」


さやか「……みんな、まどかの所にいるんだけど」

ほむら「えっ」

まどか「そっかー。よーし、おねえちゃんと遊ぼうか!」

分霊s「ホムホムー!」

杏子「……さすが、アンタの分霊だな。一番大事なものは忘れないらしい」

ほむら「……違うのよ。貴方達も、大事だと思っているのよ」

マミ「私にも一人くらい懐いてくれないかしら……」

杏子「そもそも、未だに分霊っていうのがよくわからない」


ほむら「私たちが高次の精神世界の生き物だって、黒おじさんが説明してくれたわよね?」

杏子「……お、おう」

ほむら「次元の高い世界は、低次元の世界に比べて、関与する条件が多い世界なの」

ほむら「二次元が縦横、三次元が縦横高さといった具合に」

ほむら「つまり、高次から一つ低次の世界に現れるには、
     関与する条件を1種類、不変のものにしてしまうという事」

マミ「……えっと、三次元の立方体が、二次元の世界だと正方形としか見えないようなものかしら?」

ほむら「そう。立方体は断面の正方形としか、二次元では表せないから」


ほむら「つまり、物質世界に降りた私たちは
     高次の精神世界の私達のほんのごく一面でしかないの」

ほむら「関与するいろんな要素が限定されるから」

ほむら「顕現するときに、その限定される条件がどこで固定されるかで、
     同じ分霊でも差が出てくるというわけ」

ほむら「高級分霊、低級分霊とかいっても、本霊の……どういったらいいかしら?」

ほむら「限定された色んな一面が分霊の集団とすると」

ほむら「ある集団を現す値、平均値や最頻値のような値に近いものが高級分霊で、離れると低級分霊……」

ほむら「ちょっと分かりにくいかしら?」

さやか「なるほど分からん」

ほむら「私も上手く説明できないのよ。おじさんなら説明できるかもしれないけど……」


ほむら「物質世界に居る私が分霊を作るのは難しくて、高次の精神世界を通して産むから」

ほむら「あまり高級の分霊を作るのは難しいのよね」

ほむら「マグネタイトもかなり消費してしまうし」

まどか「同じ低級の分霊でも、結構いろんな子が産まれるんだね?」

ほむら「人間はちょっとした時間の間に精神状態が結構変わったりするでしょう?」

ほむら「同じ時間でも、内心での複数の欲求の葛藤があったり」

ほむら「ちょっとした事で、私たちの色んな内面が現れたりするの」

ほむら「だから、分霊でも本霊の意志に叛逆する子だっていることもあるわ」

まどか「ふーん……。さやかちゃんが宿題さぼってるときに、ちょっとだけ後ろめたい気分があったりするけど、
     その時、さやかちゃんが分霊を産めたとしたら、
     後ろめたい部分が出てきたら、真面目なさやかちゃんが産まれちゃった!みたいな感じ?」

ほむら「否定するほど間違ってはないわね。そういう事もあるかもしれない」

さやか「くそ、分かってしまった自分が腹が立つ」


ほむら「大体、把握できたかしら?」

ほむら「低級分霊だから、強化はあまり出来ないかもしれないけど」

ほむら「この子達と一つになることで、インキュベーターの支配を逃れ、悪魔へと入門できるはず」

ほむら「皆、いい?」

まどか「私はいいよ。一番懐いてくれてる、メガネの子と一緒になる」

さやか「んー、あたしは……やっぱ、お前かー? 普段のほむらみたいな、クールぶりっ子」

マミ「……しょうがないわねって感じで、リボンの子が来てくれたけど……」

杏子「アタシは、お前か? なんか昔話の魔女のコスプレみたいだな……」

まどか「それで? 実際に合体って、どうするの?」


ほむら「式は私が行える。プログラミングからだから、時間がかかるけどね」

マミ「プログラミング? パソコンの? 悪魔合体で???」

ほむら「召喚から悪魔合体まで、全て儀式を電子化して悪魔を使役してる人たちがいるのよ」

ほむら「それが一番間違いもなく、正確なのよね、結局。その模倣よ」

さやか「サマナーってやつ?」

杏子「……なんで、アンタが知ってるんだよ?」

さやか「ゲームとかでよくあるんだよ。まさか、本当にいるとは……」

ほむら「現実っていうのは、おかしなものね」

ほむら「……さて、儀式は、かなり時間がかかるわ」

ほむら「一人ずつ行うから、呼ばれたらきて頂戴」

ほむら「最初は……」

杏子「アタシからやるか。他は、人間モドキやめる前に、挨拶したい奴らがいるだろう?」


まどか「……」

さやか「……」

ほむら「……私たちは、通常の悪魔と違い、肉の体を有しているわ」

ほむら「体を損壊しない限りは、普通の人間のフリをすることだって、可能よ」

まどか「……うん」

さやか「……まぁ、今更、魔法少女のままって選択肢はないもんなぁ」

マミ「佐倉さんの次は、私がいくわ。私も、挨拶する人なんて大していないもの」

ほむら「まどか、さやかは、終わったら連絡を頂戴」

ほむら「……じゃあ、杏子。一緒にきて頂戴」

杏子「おう。おい、行くぞ? 分霊ちゃん」

分霊「ホムーーー」


――佐倉杏子を私の住むアパートの一室へと誘う。

パソコンで悪魔を合体するためのプログラムを組み、
タブレット端末にエクスポート。

佐倉杏子に一つ、分霊に一つ渡した。


ほむら「そのタブレットは悪魔の合体のための儀式を自動化してくれてるの」

ほむら「実行して頂戴。魔方陣は私が魔力で描くから」

杏子「……おう。このボタンを押せばいいんだな?」

ほむら「ええ」

杏子「押したぞ」

ほむら「じゃあ、魔方陣を二つ描くから、それぞれ中央に移動して頂戴」

杏子「ああ」


杏子「……なぁ、暁美ほむら」

ほむら「なにかしら?」

杏子「あんたは知っているみたいだが、あたしは教会の娘だったんだ」

ほむら「私は今はネクロマンシーのスペシャリスト。おじさんからの知識もあるから……」

ほむら「悪いけど、全部知っているわ」

杏子「いいさ。知らなきゃ、あんたらには話すつもりだった」

杏子「しかし、教会の娘が悪魔になるなんて、とんだ転落人生だな」

ほむら「悪魔という呼称は、ただの高次の精神生命体の総称にすぎないわ」

ほむら「場合によっては、神様も含まれる」

ほむら「貴方がその事に対し、わだかまりがあるなら」

ほむら「それを解決すべく、皆を助ける悪魔になればいいじゃない」

杏子「……そうだな」


ほむら「いいじゃない? 正義の心に目覚めた悪魔の力を持つヒーロー」

ほむら「少女漫画じゃなくて、少年漫画になっただけよ」

杏子「……少女漫画よりは、分かりやすい愛と勇気が勝つストーリーってやつになりそうだな」

ほむら「ええ。私たちで、くそったれな運命を変えましょう」

杏子「おう」

杏子「これからも、よろしくな。ほむら」

ほむら「ええ、杏子。よろしくね」


――しばらくして、巴マミがやってくる。

杏子は既に、外出した。

手に入れた悪魔の力の肩慣らしをしたいらしい。

ワルプルギスの夜も近い、結構な事だ。


マミ「……ええと、この魔方陣にはいるといいの……?」

ほむら「そうよ、巴さん」

マミ「……暁美さん。今まで本当に迷惑かけたわね」

マミ「この時間軸だけじゃなくて、その他の世界でも……」

ほむら「悪いのは、インキュベーターよ」

マミ「……うん」

ほむら「……どうしたの? 巴さん」

マミ「化け物に変えられて、こういう事をいうのも何だけど……」

マミ「私はまだ、きゅうべぇがそんなに悪い存在だとは思えなくて……」


ほむら「……」

マミ「……ごめんなさい。貴方にとっては憎んでも憎み切れない仇敵なのに」

マミ「私は、一緒に居た時間が長かったから……」

ほむら「……インキュベーターも、精神世界の生き物だから」

マミ「?」

ほむら「そういう気持ちを持つ貴女が居れば、もしかしたらアイツも変われるのかもね」

マミ「……きゅうべぇが……」

ほむら「だけれど、あいつが今の態度を変えない限り」

ほむら「私は全力で敵対するわ」

マミ「……ええ。それは、私も異論がないの」

マミ「ごめんなさいね。いろんな感情が未だ葛藤してて、整理がついてなくて」

マミ「敵だと、思い込めればいいんだけど」

ほむら「いいのよ。そういうものよ」


マミ「……ありがとう、暁美さん。私、先輩なのになさけないなぁ」

マミ「なんで私はこんなに、弱いんだろう……」

ほむら「時間ループしてたのだから、私は体感で10年単位で年上なのよ」

ほむら「さらには、黒おじさんの知識と経験が私の中に眠っている」

マミ「……そっか」

ほむら「……だから、甘えたいのなら、甘えてもいいのよ?」

マミ「……」

ほむら「私だけじゃない。皆にも、もっと」

ほむら「皆、受け入れてくれるわ」

ほむら「大事な、お友達だもの」

マミ「……そうかな。皆よりも、歳が上だから気負いすぎなのかな」

ほむら「ええ、悪い癖だと思う」


マミ「……じゃあ、暁美さん」

ほむら「何かしら?」

マミ「ほむらって呼んでもいい?」

ほむら「いいわよ」

マミ「……じゃ、ほ、ほむら」

ほむら「はいはい」

マミ「ほむらも!」

ほむら「……マミ」

マミ「ふふっ。悪魔になっても、よろしくね!」


――マミは杏子と合流し、新たな力を研究するようだ。

次に来たのは、さやかだった。


さやか「うーん。まさか、このさやかちゃんが、悪魔になるとは……」

さやか「ま、元から周りを惑わす可愛い妖精さんみたいなものだったけどね!」

ほむら「……妖精って、凶暴で太ましい外見のトロールも妖精の一種よね」

さやか「あたしがトロールってかっ!」

ほむら「冗談よ。すっかり調子、戻ったみたいね」

さやか「ま、ね」

ほむら「もう、いいのね?」

さやか「うん」

ほむら「そう……」

さやか「……悪魔と、人間の恋愛っていうのも乙なものじゃない?」

ほむら「……ふふっ。そうね」


さやか「さやかちゃんは、回復系特化の悪魔になりたいなぁ」

ほむら「私からの派生では、すぐにはなれないかもしれないけど」

ほむら「不可能ではないでしょうね。合体でさらに力をつける事もできると思う」

さやか「……うん。じゃ、がんばっちゃおうかな」

さやか「魔方陣にはいるよー」

ほむら「ええ」

さやか「悪魔になったら、色々教えてよね? 先輩」

ほむら「わかってるわ、さやか」

さやか「うん!」


――さやかも、杏子とマミと、合流しに向かった。

最後に、まどかがやってきてくれた。


まどか「……ほむらちゃん、ありがとね」

まどか「最初の時間軸の終わりから、ずっと護ってくれて」

ほむら「……いいの。本当は、貴女を戦いに巻き込みたくなかったのだけれど」

まどか「私は、今の状態がいいな! 置いてきぼりは嫌だよ」

ほむら「……」

まどか「ね、ほむらちゃん」

ほむら「なぁに?」

まどか「わたし、今だから言えるんだけど」

ほむら「ええ」

まどか「最終的には、魔女になってもいいかと思ってたんだ」

まどか「もちろん、色々やって、どうにもならなかった最終手段として、だよ?」


ほむら「……どういうこと?」

まどか「ほむらちゃん、前に言ったでしょ? 魔女は、本当にやりたかった事を忘れない」

まどか「それを、魔女化した後におこなっているって」

ほむら「まさか……」

まどか「うん。私はね、マミさんの復活を望みながらも」

まどか「……本当は、インキュベーターを倒す力を得て、皆を救えること。それが目的」

まどか「ほむらちゃんの話を聞いて、本当に、インキュベーターが許せないって思って」

まどか「この気持ちは本物だから、魔女化しても絶対に忘れない」

まどか「魔女化した私が、インキュベーターをきっと倒す」

まどか「そう、考えちゃってた」

ほむら「……たしかに、貴方が魔女化したらインキュベーターを倒すかもしれない」

ほむら「でも、他を幸せにできるかは限らないわよ」

ほむら「すごく屈折した形で実現するし、基本、魔女は人を喰らうものなのだから」

まどか「……そうだよ……ね。ごめんね」


ほむら「……まあ、仕方がないわよ。私だって、黒おじさんのこと、隠していたんだから」

まどか「そっか……。もう、これからは、隠し事はなしだよ?」

ほむら「ええ。もう、私たちは、運命共同体だしね」

まどか「運命共同体、かぁ。えへへ」

ほむら「……臭かったかしら?」

まどか「いや、いいよ! ほむらちゃん、似合うし!」

ほむら「そうかしら……」

まどか「うん!」

ほむら「……じゃあ、いくわよ? まどか」

まどか「うん、いこ。一緒にっ!」


……私たちは、インキュベーターの使い魔程度の存在から、
真の悪魔へと生まれ変わった。

これが、私が最初に望んだ強さと、世界なのかは分からない。

だけれど、他に選択肢がなかった故、
その割には……まだ、ましな結果といえるのかもしれない。

少なくとも、まどかと……みんなと、一緒に居られる。

ただ、未だ悩むこと。

それは、私がChaos属性の悪魔として、おじさんの思想を引き継ぐか。

皆を、それに巻き込むか。

おじさんがの知識、経験は、私の中に全て残っている。

その中には、目を背けたくなる事実、失敗した事実もある。

私の意志は、私のもの。

おじさんと合体したからといって、それを続けるかどうかは、私の意志にかかっている。




今日は終わりです。

明日、最終回です


乙ありがとうございます。

最終回、投下しますね。





――ワルプルギスの夜の当日。

悪魔の力を手にした私たちの前には、大した障害ではなかった。

開幕、まどかの放った一撃が、ワルプルギスの夜を半壊へと追い込み……
一方的な展開で倒してしまった。


ほむら「今までの時間軸では、あんなに苦労していたのに……」

杏子「アタシは まどかだけは怒らせないって決めた」

さやか「力を使い放題のまどかって、マップ兵器も同然だね」

マミ「魔力は消費するけど、休めば回復するしね……」

まどか「ぶー、人を化け物みたいに……」

ほむら「格としては、一人だけ高Lvの地母神クラスだからね」

ほむら「物理耐性を無視できる貫通持ちだし」

ほむら「流石、まどかだわ」

まどか「てへへ……喜んでいいのかな」



杏子「しかし、本当にあっさりと倒せちゃったな」

まどか「街にもほとんど被害が無くて良かった」

さやか「……ところで、ワルプルギスの夜の、グリーフシードは?」

杏子「ああ、そうだな。あれだけの魔女、さぞでっかいマグネタイトの塊なんだろ? 見てみたいな」

マミ「……見当たらないわね」


???「そうだろうね」


マミ「……きゅうべぇっ!?」

ほむら「今更、何しに来たのかしら?」

まどか「ワルプルギスの夜なら、もう倒しちゃったよ?」

杏子「もう、アタシらはあんたから自由だ。用はねぇぞ」

さやか「グリーフシードも自分たちで処理できるしね」

ほむら「それとも、殺されにやってきてくれたのかしら?」


QB「嫌だなぁ。勿体ないことは止めておくれよ」

QB「用があるから来たんじゃないか」


ほむら「……なによ」

QB「いやね……。君たちを変えた、ネビロスという悪魔が……」

QB「どうやって、この世界に顕現したか覚えているかい?」

まどか「え? ええっと……、たしか、薔薇園の魔女のグリーフシードを使って……」

ほむら「……っ!?」

ほむら「み、皆っ! グリーフシードを探してっ!!!」


QB「もう、今更遅いよ? それは僕の手中の中さ」

QB「そして、今まで君たちに貰って蓄えた、グリーフシードもね」


インキュベーターの背中の蓋の様なものが開き、
多数のグリーフシードが放り出される。

宙に浮かんだ多くのグリーフシードが、
それぞれ魔方陣の様なものを纏い、急激にぶつかり合った。

人を不快にさせる冒涜的な音が響き渡りながら、
一つの物体を構築していく。

ほぼ漆黒の、球形に近い結晶体で、
不揃いな大きさの切子面を数多く備えている。

ところどころ、赤い線が入っているのが見える。


ほむら「……輝くトラペゾヘドロン……その本体?」

ほむら「グリーフシードで作りやがったのね!」

マミ「な、なにそれっ!」

ほむら「あれよ、あの結晶」

ほむら「あれがあるってことは……」

ほむら「アイツの……上級分霊以上が来るってことよっ!」

ほむら「くそっ! あいつが危険を冒してでも、私達が悪魔になるまで
     グリーフシードを回収し続けたのは、これが目的だったの!」

さやか「えっ えっ!? め、滅茶苦茶強いんじゃなかったっけ? それって」

杏子「おい、構えろ。あれを破壊するぞ」

まどか「……うんっ!」


QB「無駄だよ? ここまで膨れ上がったマグネタイトの結晶を、
   僕の上級分霊が顕現するまでに破壊することはできない」

ほむら「うるさい」


したり顔をしているインキュベーターの顔面を踏みつぶし、
TOWとM220発射機を設置。

第3世代主力戦車の装甲を貫通できる対戦車ミサイルをぶっぱなすが、
トラペゾヘドロンは崩れない。

さやかが補助魔法を掛け、
まどか達も攻撃をしかけるが、崩れない。


杏子「アンタ、未だ人間の兵器に頼ってるんだね!」

ほむら「しょうがないでしょ。呪殺系と衝撃系の攻撃スキルしか私はないのよ!」

ほむら「それより! ダメね! 来るわよ!」

まどか「みんな、気を付けてっ!!!」


周囲は全く光のない闇が広がりはじめる。

輝くのは、トラペゾヘドロンだけ。

私たちは魔力の波動で互いの位置を確認しながら、
相手の攻撃に警戒をしている。

……突然、トラペゾヘドロンが砕け……
私たちの目の前、闇の中に三つの眼だけが浮かんだ。

目を開いたそれは、真っ赤に燃えている。


ほむら「来たのね……。這い寄る混沌 にゃるらとほてぷ」

???「驚かないんだね。気が付いていたのかい? 僕の正体」

ほむら「私の中に残った、おじさんの部分が知っていたわ」

???「君が、あの悪魔から主導権を勝ち取るとは、予想外だったよ」

ほむら「そうかしら。まぁ、貴方には関係のない話よ」

???「そうだね」

杏子「……おい、ほむら! 這い寄る混沌ってなんだよ!」

マミ「これが……、あの、きゅうべぇ???」

さやか「心が冷えるね……。あたしも悪魔なのに」


ほむら「くとぅるふ神話という、ラヴクラフトの作品をもとにオーガスト・ダーレスが体系化した神話」

ほむら「その中に現れる、かつて地上を支配したとされる古き者共の一柱よ」

ほむら「あざとーすという時空すべてを支配する邪神の使者であり」

ほむら「使者でありながら、旧支配者の最強のものと同等の力を有する土の精」

ほむら「最強クラスの悪魔であるのは、間違いないわ」

混沌「お褒め頂き光栄だね。暁美ほむら」

ほむら「忌々しいわね。にゃるらとほてぷ」

ほむら「様々な姿で顕現し、古来から人間と接触してきた風変わりな悪魔でもあるわ」

ほむら「人の世に、知識と、死と、混乱をまき散らしてきた」


まどか「……Lawの悪魔なんだよね? 混沌……? それって、Chaosじゃないの?」

ほむら「邪神族だから、Lawの神なのは間違いないわ」

ほむら「何か大きな法に縛られた悪魔なのかしらね」

混沌「さぁてね?」

混沌「Lawを極めれば、裏返って混沌を実践するやつもいるさ」

混沌「とある時間軸で、Lawの神が東京にICBMを落とし、新たな世界を作ろうとした」

混沌「これは、普通に考えればChaosの極みにある破壊神の行為だ」

混沌「逆に、Chaosを率いる総大将ルシファー」

混沌「実は、Lawの神の一部にすぎない存在さ」

混沌「君と合体したネビロス」

混沌「彼だって、かつてロッポンギでゾンビ共を自分の法で縛っていた」

混沌「幾らでも例外などあるものだよ」

混沌「混沌を愛するLaw属性の悪魔なんてね」


ほむら「御託はいいわ。何をしに来たのかしら?」

ほむら「まさか、世間話にでも来たわけ?」

混沌「そのまさかさ。ワルプルギスの夜を超え、自我を失わず僕の前に立つ者が現れたんだ」

混沌「君たちの父としては、この上なく嬉しいことさ」

混沌「話の一つでもしたいものだ」

ほむら「……はあっ!?」

まどか「だれが、だれの父?」

杏子「おい、ふざけんな」

さやか「寝言は寝ていってくれない?」

マミ「……」

やっぱりニャルか!!ペルソナといい録でもないのが来たよ!


混沌「君たちを最初に悪魔にしたのは、この僕だ。そうおかしい事は言っていないよ」

ほむら「全てがおかしいわよ。大体、父親面したって」

ほむら「貴方に従う子はここには一人も居ないわよ?」

混沌「ふふ、そうかい」

ほむら「それより、話って何よ。聞くだけ聞いてあげるわ」

ほむら「それから、わざわざ私たちの目の前に現れたこと、後悔させてやる」

混沌「……そうだね。それじゃあ、僕の本当の目的を教えようか」

ほむら「……」


混沌「僕はあざとぅーすの息子。暁美ほむらの紹介の通り、白痴である父の意志の代行者に過ぎない」

ほむら「白痴の神の意志なんて、ろくなもんじゃないわね」

混沌「善神きどりの、旧神どもの所為さ。奴らに本来あった思考能力を封じられているんだ」

混沌「だからこその、代行者なんだよ」

混沌「父は原初の混沌であり、力そのもの。時空のすべてを支配する、宇宙の真の創造主」

混沌「この宇宙は父が見ている夢に過ぎない」

混沌「すなわち、この宇宙は父そのもの」

混沌「その父が、起きると……どうなると思う?」

混沌「夢は、覚めると消えてなくなるものさ。つまり、君たちが居る、この世界も……」


混沌「僕は父が飢えて目を覚ますことを避けようとしていたんだ」

混沌「父に快適な夢を見せ、食欲も満たす」

混沌「わかるかい? 君たちのためなんだよ。僕がやってきたことは」

混沌「この宇宙を滅ぼさないため……」

マミ「ほろぼさないため……?」

混沌「そうだよ、マミ。僕は守りたかったのさ」

マミ「……」

さやか「……ふ、ふざけないでよ! 守るためとか、馬鹿じゃないの!」

まどか「そうだよ! みんなが、ほむらちゃんが、どれだけ苦しんだか……」

混沌「じゃあ、どうやって父から世界を護るというんだい?」

混沌「父に逆らうことは、誰にだって出来ないんだよ」


混沌「僕は父が飢えて目を覚ますことを避けようとしていたんだ」

混沌「父に快適な夢を見せ、食欲も満たす」

混沌「わかるかい? 君たちのためなんだよ。僕がやってきたことは」

混沌「この宇宙を滅ぼさないため……」

マミ「ほろぼさないため……?」

混沌「そうだよ、マミ。僕は守りたかったのさ」

マミ「……」

さやか「……ふ、ふざけないでよ! 守るためとか、馬鹿じゃないの!」

まどか「そうだよ! みんなが、ほむらちゃんが、どれだけ苦しんだか……」

混沌「じゃあ、どうやって父から世界を護るというんだい?」

混沌「父に逆らうことは、誰にだって出来ないんだよ」

ごめんなさい、415はなしで


ほむら「……そこまでにして頂戴。再度言うわよ? 御託はいいのよ」

ほむら「馬鹿じゃないの。人間の精神世界から産まれた妄想の産物の癖に」

ほむら「そんなものは思い込みのまやかしに過ぎないわ」

混沌「……ある一面において、妄想の産物に過ぎないのは認めるさ」

混沌「だけれども、人間の精神世界とは複雑なものでね」

混沌「多数の人間が『そうである』と信じることで、それは真実も同然なのさ」

混沌「君に『父が覚醒するだけで、世界が滅ぶ』ことがないと、そう言い切ることが出来るのかい?」

混沌「残念ながら、これは既に確定された事実と言っていい」

ほむら「……」

杏子「……かといって、あんたの言うことすべてが事実とは限らないだろ」

杏子「ほむらの意見と同じだ。御託はいい」

杏子「世界を護るだって? アンタみたいに、人間の事を石ころくらいにしか思ってない奴に」

杏子「アンタが守るっていう世界の中に、どうせ人間は入ってなんていないだろ」

杏子「アタシは、護りたい。人間はな、必死に皆、生きてるんだ!」


さやか「そ、そうだよ! あんたのお蔭で、どれだけの人が苦しんだと思ってるの!」

さやか「世界を護るためだったら、あんたが苦しめた人達はどうだっていいっていうの?」

さやか「冗談じゃない! 絶対に許せない!」

マミ「……私も。今の貴方の言う事なんて、信用できないわ」

マミ「戦うしかないわね。貴方のして来たこと、受け入れる事なんてできない」

マミ「残念だけど……」

まどか「私も同じ。私は、貴方が嫌いです」

まどか「貴方の父が、この宇宙を破壊するというのなら」

まどか「私が、私達が、護って見せる!」

まどか「みんなと一緒なら、できるはずだよ!」


ほむら「そうね。目が覚めれば宇宙が滅ぶというのなら」

ほむら「永遠に眠らせてやればいいのよ」

ほむら「その上で、今の宇宙を私たちの手で存続させてやる」

ほむら「世界を維持する存在自体、交代してやればいいんだわ」

ほむら「神の力に等しい力を持つまどかと、私たちが居ればやれるはず」

混沌「ふむ。本気の様だね」

ほむら「当然よ。精神世界の存在が世界を滅ぼそうとした事なんて、数知れずだわ」

ほむら「その度に、人間や、人間の意志を護るものが戦ってきたの」

ほむら「今の戦いだって、そんな戦いの一つに過ぎないわ」

ほむら「さあ、もういいでしょう。誰も、貴方にひれ伏しなんてしないのだから」

混沌「ふふ。そうかい」

混沌「僕の前に立って、戦意を失わず、そこまで啖呵を切れるのは大したものさ」

混沌「じゃあ、父として、君達の可能性を見てあげよう」

混沌「さあ、おいでよ。娘たちよ」


――戦いは苛烈を極めた。

奴の攻撃は防御相性無視の上、威力も甚大。
存在自体が千千に砕け、消失しかけたことも数度。

その上、まともなダメージを与えられるのはまどかだけだった。

杏子と私でまどかを護り、
マミがリボンで相手の攻撃を妨害し、
さやかがダメージの回復。

それで相手の攻撃をかろうじでしのぎながら、
まどかが攻撃していく。


ワルプルギスの夜を半壊に追い込んだ まどかの弓撃が、
1818回にゃるらとほてぷを穿った時、

漸く闇が晴れていった。


まどか「や……やった……?」

ほむら「……追い返しはできたみたいね」

さやか「あれだけやって、死んでないの!」

ほむら「マグネタイトを消費して、精神世界に還っただけよ」

杏子「どんだけだよ……」

マミ「疲れた……。精神エネルギーもからっぽ。なんだか干からびそう」

まどか「……ふふっ。仲魔がいるって、強いね。ほむらちゃん」

まどか「皆がいるから、力がもらえる」

まどか「それが、はっきりわかったよ」

ほむら「私もよ、まどか」

ほむら「皆が居たから、なんとかなった」

ほむら「ありがとう。みんな……」



杏子「ありがとうは、お互い様さ。アタシからも、ありがとな。みんな」

さやか「なんだか、照れくさいね。でも、ありがと」

マミ「ふふ。ありがとうね、みんな」

まどか「うん、ありがとう! みんな!」

杏子「……おい、ほむら。勝った割には辛気臭い顔のままだな」

ほむら「……あざとーすは、これより強い」

ほむら「間違いなく」

ほむら「私たちは、更に自分を鍛えないといけないわね」

杏子「……」

マミ「……」

さやか「……」

まどか「そう……だね」

命あるもの全ての戦いだな


杏子「……それより、疲れたー! 何か食いにいこうよ」

さやか「あーーー! いいね、賛成!」

マミ「悪魔になっても、つかれるのは同じなのね」

まどか「悪魔でも食べ物食べれるっていいね」

ほむら「肉の体が残っているお蔭かしらね」

ほむら「物質世界において、制限も少ないし」

ほむら「そのお蔭で勝てたって面も大きいわね」

杏子「あーー、もう、分析は後々。祝勝会だ!」

杏子「次の事は、その後考えりゃいいでしょ!」

さやか「その意見にも賛成! さ、いこっ!!!」

ほむら「そうね。じゃあ……。ん?」

まどか「どうかした? ほむらちゃん」


ほむら「いえ。皆、先に行ってて頂戴。行き先が決まったらテレパシーで伝えて」

まどか「え。なんで?」

ほむら「ごめんなさい。大事な用事を忘れてたの」

まどか「そ、そう」

杏子「そっかー、じゃあ、後で来いよな」

さやか「どこでやる?」

マミ「私のうちでもいいわよー! 準備がんばっちゃお!」

さやか「おー! じゃあ、ほむら先に行ってるよ!」


まどかだけ、頻りに私の方を見ていたが、
ほかの皆が歩き出すと、そちらについていった。

私は、皆が見えなくなってから……
忌々しい奴が、またやって来たようなので声をかけてやった。


ほむら「……今更、何の用?」

QB「そう警戒しないでおくれよ。僕はさっきの高級分霊とは違う」

QB「ただの、低級分霊にすぎない」

ほむら「話でもあるってわけ?」

QB「そうだね。僕は嬉しくてたまらなくてね。」

QB「君たちは、高級分霊の僕を乗り越えた」

QB「僕の意図しない所で、父の呪縛から逃れようとする意志とそれに値する力が産まれたんだ」

QB「僕はそれが誇らしい」

QB「それを導いてくれた君に、礼を言いに来たのさ」

ほむら「……貴方が、意図しないところ……?」


QB「僕が何故まどかに固執したか分かるかい?」

ほむら「……因果を増やす私がいたからじゃないの?」

QB「君という存在がまどかの傍に居たから……というのも関係はあるよ」

QB「でも、それは主要因ではない。あくまで、まどかが まどかだからさ」

ほむら「どういうことよ」

QB「彼女は、必ず「救済の魔女」になる」

QB「すべてを救う魔女だ」

ほむら「……すべてを滅ぼす魔女でしょ……。あの優しいまどかを、兵器にするなんて……」

QB「それは違うよ、暁美ほむら。彼女は苦しみに満ちた現世の魂たちを取り込み」

QB「平穏に満ちた素晴らしい世界へと誘ってくれる……神の名に相応しい存在さ」

ほむら「物はいいようね」

ヒーロー「神殺しは」
人修羅「任せろー」


QB「君は分かってないね。この世界の滅亡も過程にすぎない。新しい世界を育む存在なのさ」

QB「そして、それは僕の父からの開放を意味している」

QB「彼女が孕んだ世界は、幸福感に満たされている」

QB「救済の魔女自体は、父の見る夢の中の存在に過ぎないけれど」

QB「それでも、この世界や新しい世界は君たちにとってはリアルに存在する世界だ」

QB「世界というのは、単純に全てが平行に存在しているわけじゃない」

QB「複雑な階層を織りなしている場合も多々ある」

QB「父が起きれば、父の夢の中の存在は滅ぶだろう」

QB「だけれど、まどかが孕んだ世界は、もはや別の世界のこと」

QB「そこまで父は干渉できない」


QB「だから、僕は君という存在を使って、まどかによる幸せな世界を沢山作っていたんだ」

QB「すべての苦しみから解放される! 無論、父の呪縛からもさ」

QB「それは、下らない父の力を弱らせることにつながるんだ」

ほむら「……貴方は、父 アザトースの意志の代行者ではなかったの?」

QB「そうだよ。父に隷属している、下らない存在さ」

QB「実は、僕は旧神共が父から奪った、父の知性が神と化した存在なんだ」

QB「だから、白痴のはずの父が望むことを知っていて、実行せざるをえないし」

QB「父が目覚めるとき、僕は消えてしまうのだろう」

QB「だが、僕はニャルラトホテプという名がある存在だ」

QB「あの力だけの下らない存在に、いつか喰われるなどまっぴらさ」

ほむら「……複雑な関係ね」


QB「僕は法を順守している。父の法をね」

QB「同時に、法に触れぬよう、父に叛逆している混沌とした存在だ」

QB「だから、僕の行動がわからぬ人間達には、這い寄る混沌だとか呼ばれるのだろうね」

ほむら「それで? 貴方に手を貸せというの?」

ほむら「お断りよ。貴方も、貴方が嫌う、自分の法で縛る父親と同じよ」

ほむら「自分の欲望のため、他者を自分の法で縛る」

ほむら「それも、どんな犠牲をだしても意に介さない」

ほむら「そんなやり方、許すことなど出来ない」

QB「君がそう思っていても、構わないよ。別に手ごまが欲しいわけじゃない」

QB「可能性が示された、それで十分さ」

QB「君たちの可能性に、期待しているよ」


ほむら「……貴方は、まだ続けるのよね」

ほむら「また、別の犠牲者をだすつもりなのね」

QB「そうだよ。僕を止めるかい? 僕はさっき、まだ本気ではなかった」

QB「君はわかっているだろう?」

ほむら「……そうね。まどかの弓が1818回。いぁいぁ、なんて数合わせしてんじゃないわよ」

ほむら「ルルイエ語において、万歳って意味だったかしら? 馬鹿にして」

ほむら「……本当の貴方がずっと強かったとして、それでも戦うわ」

ほむら「貴方だけじゃない。アザトースも、Lawの神も」

ほむら「……Chaosの悪魔も、気に入らないわ」

ほむら「大きい存在になったからといって、人間達の運命を遊び同然に弄繰り回して」

ほむら「わたしたちは、駒なんかじゃなかった」

ほむら「必死に、生きていたの」

ほむら「ふざけないでよ。人間は、貴方達が簡単に踏みにじっていい存在じゃないわ!」


ほむら「私は、おじさんや、貴方達を通して、はっきりわかった」

ほむら「法も自由も、掲げる看板が違うだけで大して変りはしない」

ほむら「人間に必要以上の干渉を行わないで」

ほむら「人間は、自分たちだけで歩くことが出来る」

ほむら「私は、悪魔が当たり前に現れる世界で、人間の無限の可能性を示した少年を知っている」

ほむら「彼は一介の人間が、絶対に倒せないはずの大悪魔や大天使を倒し、それを証明してくれた」

ほむら「ならば、私達にだって出来ない道理はない」

ほむら「私たちは、すでに人間ではないけれど」

ほむら「その意志は残っている」

ほむら「貴方達が遊び半分、食事半分で人間達に手をだすというのなら」

ほむら「貴方達全てが、精神世界の私の敵よ」

ほむら「私は、戦う!」


>>435修正です



ほむら「私は、おじさんや、貴方達を通して、はっきりわかった」

ほむら「法も自由も、掲げる看板が違うだけで大して変りはしない」

ほむら「人間に必要以上の干渉を行わないで」

ほむら「人間は、自分たちだけで歩くことが出来る」

ほむら「私は、悪魔が当たり前に現れる世界で、人間の無限の可能性を示した少年を知っている」

ほむら「彼は一介の人間が、絶対に倒せないはずの大悪魔や大天使を倒し、それを証明してくれた」

ほむら「ならば、私達にだって出来ない道理はない」

ほむら「私たちは、すでに人間ではないけれど」

ほむら「その意志は残っている」

ほむら「貴方達が遊び半分、食事半分で人間達に手をだすというのなら」

ほむら「そういう貴方達全てが、私の敵よ」

ほむら「私は、戦う!」


QB「……意外だね。Neutralの道を選ぶというのかい」

QB「勘違いしているかもしれないけれど、人間というのは強くないんだ」

QB「Lawにすり寄れば、法さえ守っていれば、生活は保障される」

QB「Chaosにすり寄れば、弱くても隷属すれば守ってもらえる」

QB「ある程度の力……君くらいの力があれば、王様の様に振る舞える」

QB「だけどね、Neutralというのは、すがるものがない」

QB「やさしい道でも、幸せな道でもない。救いのない道なんだよ」

ほむら「Law思想もChaos思想も否定するつもりはないわ」

ほむら「ただ、その思想を免罪符に、人間を食い物にするのが許せない」

ほむら「それに、Chaosに傾倒しすぎた黒おじさんの末路もしってる」

ほむら「貴方や法の神が人間に何をしてきたかも知っている」


ほむら「私の中にある黒おじさんの知識と、私の中の人間の意志が進むべき道を示してくれるわ」

ほむら「人間は強くはないって、分かってるけど」

ほむら「強くなろうとすることで、可能性は生まれる」

ほむら「なら、私はそれを護りたい」

ほむら「まどか達と、一緒に」

QB「そうかい……」



QB「暁美ほむら」

ほむら「何よ」

QB「君たちを、見ているよ」


インキュベーターは、姿を消した。

あいつは、何を言いたかったのか。

私には全てを理解することは出来ない。

ただ、私の心は定まっていて、
惑わされることはない。

大切な仲魔達と一緒に、
私は今現在の人間達の可能性を護れる、
そんな存在になる。

それが、例えどんな茨の道であろうとも。


終わりです。

戦闘が盛り上がらずにすいません

話が引き締まる感じがしたので、ここで区切りましたが
直後に続くネタが少しだけ。

投下するか悩みましたが、
そのおまけも投下。


……そう改めて決心していると。

とてとて歩く、マリオネットが姿を現した。



ほむら「……え? おじさんっ!?」

黒おじさん「うむ。貴様の知る分霊よりは、かなり低級だがな」

ほむら「あのおじさんが顕現した時、グリーフシードを掲げてたのは貴方ね」

黒おじさん「うむ」

黒おじさん「よくぞ、ニャルラトホテプを乗り越えたものだな」

ほむら「皆のお蔭よ」

黒おじさん「そうだな。皆、強くなったものだ」

ほむら「……にゃるらとほてぷとの話、聞いていた?」

黒おじさん「うむ」


ほむら「おじさん、ごめんなさい。私は貴方のお蔭であいつの支配から脱却できた」

ほむら「でも、貴方の過去を知っていて、Chaosにかしづくことは出来ないわ」

黒おじさん「いいのではないか?」

ほむら「……意外と、軽いわね」

黒おじさん「いいか、ほむらよ。Chaosは本来、強い奴が法なのだ」

黒おじさん「私もロッポンギで好きがってやっていた」

黒おじさん「よく、東京が滅んだあの世界で私とベリアル様がアリスに構わず、Chaosのために戦っていたら」

黒おじさん「勢力図もあの後の結果も全く違ったものになっただろうと陰口を叩かれておる」

黒おじさん「貴様が強くなり、弱い奴を黙らせればよいのだ。かかかか」

ほむら「……それはどうなのよ」


黒おじさん「それに。まぁ、こういう事をいうのはどうかと思うが」

黒おじさん「Ex-Chaos、Ex-Lawの連中でもない限り」

黒おじさん「両陣営の組織員は、自分の益になるから、という理由で所属する場合も多い」

黒おじさん「Chaosなら、Lawへの叛逆・復讐が主眼といった具合いにな」

黒おじさん「それに、Chaosの上層部も」

黒おじさん「Chaos思想だけで、Law陣営と敵対するのは不可能だとわかっているからな」

黒おじさん「Chaos属性の悪魔も、ある程度、自分たちを法でしばる」

黒おじさん「覚えておろう? 私は地獄の監査官だと」

ほむら「……法律を守らせる立場よね」

黒おじさん「私は、Chaosの中ではかなりNeutral寄りの思想だからな」

黒おじさん「人間のサマナー共に、天使だったこともないのに堕天使だと勘違いされておったくらいだ」

ほむら「堕天使は、Chaos属性の中では、かなりNeutral寄りだものね」


黒おじさん「Law属性の神だったこともある。自分を縛る法が必要なのも理解しておる」

ほむら「……じゃあ、Chaosって、結局なんなのよ」

黒おじさん「一部を除いて……思想は組織をつくるための都合のいい看板。あまり人間とかわらぬな」

黒おじさん「人間も思想や宗教を利用して組織を作り、力をふるうだろうが」

黒おじさん「結局のところ、Chaosは法の神憎しの集団だ」

黒おじさん「上層部はほぼ、法に属していた天使や神だったものばかりだからな」

黒おじさん「無論、実現すべきと考える世界はあるぞ?」

黒おじさん「だが、私にとっては、その実現より重視するものが、見つかってしまったしな」

黒おじさん「正直、優先順位は低い」

ほむら「……なんで、そんなChaos属性に、私を導こうとしたのよ。おじさんは」


黒おじさん「そうだな」

黒おじさん「貴様と合体したあの分霊が、この世界を護ろうと悪魔合体の選択をしたのは」

黒おじさん「貴様を見たからだ」

黒おじさん「貴様は、想い人のために全てを犠牲にする選択をしつづけた」

黒おじさん「そういう道もあるのだと、知った」

黒おじさん「貴様はある意味強い。だが、単純に力が足りない。諦めている節もあった」

黒おじさん「だから、貴様にChaosの道を進めたのだろう」

黒おじさん「結果、鹿目まどかを兵器にすることなく、この世界のアリスを護ることが出来た」

黒おじさん「あの私も、さぞ満足だろう」

ほむら「……」

ほむら「……ありがとう」


黒おじさん「……暁美ほむら、よ。もし、あの私に恩義を感じてくれているのなら」

黒おじさん「頼みたいことがある」

ほむら「なに?」

黒おじさん「二つある。一つは、アリスの魂の欠片。それをもし見つけたら、教えてほしい」

黒おじさん「貴様も、ずっとこの時間軸に留まるとは限らないだろう」

ほむら「分かったわ。もう一つは?」

黒おじさん「……もし、私がアリスの復活を成し遂げたら、その時は……」

ほむら「その時は?」

黒おじさん「アリスと、友達になってやっておくれ」

ほむら「……」

黒おじさん「……駄目か?」


ほむら「……ふふっ。くく……」

黒おじさん「……」

ほむら「あははははっ! おじさんってば、大概……」

ほむら「親ばかよね」

黒おじさん「うるさい!」

ほむら「ええ、おじさん」

ほむら「約束するわ」

ほむら「私だけじゃない。きっと、みんな」

ほむら「お友達よ」




終わりです。

独自解釈が多すぎ、
矛盾点もあったかと思いますが、
これにて終わりです。

ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました。

もし、よく分からないという点がありましたら、
このスレに書き込んでくだされば、
後で補足させて頂きます。

メガテン知らないから黒おじさんから詰まってるわ
まあ乙

なら質問、他に何か書いてますか? 教えてくれたら読破してやります

ニャルってP3やP4みたいに絆や希望を力にする連中の天敵でいいんだよね?


乙ありがとうございました
返信遅れてすいません。

>>451さん
黒おじさん主役のやる夫スレなら立ててたんですが……
SSでもなく板違いなので、需要次第で張ります

>>454さん
まどかSSはちゃんと書いたのは一つだけですね
都会から来た転校生・暁美ほむら
都会から来た転校生・暁美ほむら - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363351301/)
あやめ速報さんがまとめてくださっています
ただ、後ほど補足するSSやAA、後日談等を投下しているので、
もしまとめで見てくださった方も、読んでくださると嬉しいです

>>455さん
いろんな顕現がいて、同時にいるらしいので……
分霊によっては、そうではないかもしれません。

ニャルラトさんはトリックスター的な存在でもあるので、
彼の目的は不明な点も多いです


後日談というか、収拾がつくか微妙な
見切り発車の話を少し書きました。

煮詰まってないのでどうなるか不明ですが、
一応、試しに投下してみます。


私が本物の悪魔になってから、一年が経つ。

私とマミ、杏子は各地を転々とし、
魔法少女を悪魔へと誘っていた。

インキュベーターは未だ魔法少女の勧誘活動を続けているが、
表だって敵対行動はとってこない。

というより、ほとんど姿を見せない。

魔法少女を少なくするということは、
やつにとって不利益のはずだが……何かを企んでいるのだろうか。

まどかとさやかは、未だ中学生の肩書をもち
現世とのしがらみの強いため、
あまり見滝原から遠く離れることは出来ない。

申し訳なさそうな二人だが、
二人は家族がいる。

友達がいる。

彼らを、悲しませてはならない。


杏子「いや。お前も家族居るんじゃなかったっけ?」

ほむら「私、父と母の重荷だったのよ。居なくなって清々されていると思うわ」

杏子「……」

マミ「そ、それより! 1年ぶりね。見滝原に帰って来たの」

杏子「あ、あいつら。元気にしてるかなぁー!」

ほむら「私の分霊が一部宿ってるから、遠く離れていても連絡はとれてるでしょう?」

ほむら「元気そうじゃない」

杏子「直接会うのとはまた違うだろ」

ほむら「それはその通りね」


マミの部屋に、集まる5体の悪魔。

そこで、私は可愛いまどかの口から、おぞましい話を聞くことになる。


ほむら「バラバラ殺人の死体が、公園のゴミ箱から発見……?」

まどか「そうなんだよ、ほむらちゃん。怖いよねぇ……」

ほむら「……見滝原も物騒になったものね」

さやか「ほむら。それに、この話はそれで終わらないの」

杏子「どういうこったよ」

マミ「ただの事件じゃないの?」

まどか「……犯人がね? 人間じゃないんじゃないかって、言われてるの」

ほむら「……熊?」

さやか「惜しい、ほむら。その前に、「あ」を足してちょーだいよ」

マミ「あくま? ……いや、そんな」

杏子「どーして、そうなったんだよ」


まどか「……食べられたような、跡があったんだって」

さやか「加えて、化け物みたいな外見したのがいたらしーよ。近くにね」

ほむら「……」

マミ「ほむら、どうかしたの?」

ほむら「……似てる。とある平行世界での、井の頭公園にて起きた事件に……」

一同「……?」

ほむら「黒おじさんが、アリスを失った世界のこと。東京にICBMが落ちた世界」

ほむら「その世界が壊れる発端も、そんな事件だった……けど」

まどか「……それって、どういうことなのかな?」

さやか「悪魔の噂が本当だって事? 何かが起きるかもしれないってこと?」

ほむら「……まだ、わからないわ」


杏子「調査するか」

マミ「そうね」

ほむら「ええ。行きましょうか」

杏子「いいよ。ほむらは、まどかとさやかと、一緒に居ろよ」

マミ「積もる話でもあるでしょう?」

ほむら「えっ? でも……」

杏子「いいから、いいから」

マミ「調査するくらい、私達だけで十分よ」


――お言葉に甘え、3人で今までの話をしていた。

一時間ほど経った頃だろうか。

マミと杏子が帰ってきた。


ほむら「どうだった?」

マミ「うーん。人外の魔力の残り香があったわね」

杏子「……Dark-Lawの奴らかもしれないな。邪鬼って奴か」

ほむら「……まどか、さやか。くれぐれも、家族の安全に気を使って頂戴」

まどか「あ、うん。そうだね。悪魔がいるなら……」

ほむら「貴方が考えるより、厄介かもしれない」

ほむら「人体の内部を喰らい尽くし、皮をかぶってその人間に化ける悪魔がいるの」

ほむら「嫌な臭いがするらしいから、気を付けていれば分かるわ」

さやか「……気持ちが悪いやつだね。わかったよ」

まどか「わたしも、わかった。気を付けるね」

まどか「でも、どうして、その悪魔だって思うの?」


ほむら「確証があるわけじゃないわ。ただ、あの滅んだ東京で、その予兆が見られたころに現れた、嫌な悪魔」

ほむら「そんなものに、貴方達の大事な家族を犠牲にしたくないと思って」

ほむら「考えすぎかもしれないけど……」

ほむら「その悪魔が出てこないにしても、悪魔の存在がうわさされるなんて不気味よ」

ほむら「警戒するに越したことはないわ」

まどか「……うん。わたし、ちょっと早めにお家にかえるね」

さやか「私も、様子見てやるかぁ。ついでに、恭介の所にも行こう」

マミ「気を付けてね? 二人とも」

杏子「ま、さやかの奴は兎も角。まどかに喧嘩を売るっていう馬鹿はいないでしょ」

まどか「ぶー。人を化け物みたいに……」

さやか「どーせ さやかちゃんは、そんなに強くないですよーだ」


マミ「ほむら。貴方も現地に行って見る?」

ほむら「……いえ。はやめに、話したい相手がいるの」

杏子「誰だい?」

ほむら「インキュベーターよ」

マミ「……それって」

杏子「……大丈夫なの?」

ほむら「ええ。所詮、低級分霊だし。安全面においては、あまり問題はないと思うわ」


――インキュベーターとの顔合わせを嫌がった二人には、
他に見滝原に変わりがないかを調査してもらった。

私はマミのマンションの屋上に上がり、奴に声をかけた。


ほむら「いるんでしょう? インキュベーター」

QB「ふむ。珍しいじゃないか。僕に話しかけてくるなんて」

ほむら「他の子達は、貴方と顔をあわせたくないそうよ」

ほむら「私だってそうだけど」

QB「そうかい。寂しいことを言ってくれるね」

QB「僕はいつでも、君たちの事を見ているのに」

ほむら「……ストーカー?」

QB「君に言われたくないね」

ほむら「……わ、私に身に覚えはないわよ」

ほむら「うん。そう。護るためだったんだから」


QB「それで、本題は?」

ほむら「……ここ、見滝原の異変。知っているわね?」

QB「魔女か何かじゃないのかな」

ほむら「目撃情報があるのよ? 結界の中でもないし、外でも見えないでしょう」

QB「とすると、悪魔か」

ほむら「……貴方じゃないの?」

QB「当てが外れたね、暁美ほむら? 僕は関与していないよ」

ほむら「全く信用できないのだけど」

QB「反抗期かい?」

ほむら「ぶんなぐるわよ」


ほむら「貴方じゃないとしたら、一体何者だっていうのよ……」

QB「……君は、思い当たる節があるんじゃないかい?」

QB「いや、君というか、君の中の、別の悪魔の知識にね」

ほむら「……」

QB「ヒントを二つあげよう。暁美ほむら」

ほむら「ヒントですって?」

QB「一つは、うわさ。うわさを探ってみるといい」

ほむら「うわさ……。何か、ヒントになるようなうわさが流れているのね?」

QB「そうかもしれないね」

QB「それから、もう一つ」

QB「グノーシス、だね。この言葉が、きっと重要になると思うよ」

ほむら「グノーシス……?」


QB「ヒントはここまでだ、暁美ほむら」

QB「君が更に、一つ上のステージに来ることを祈っているよ」


インキュベーターは姿を消した。

さっぱり分からない言葉を残して。

あるいは単に、調査を攪乱させることが目的なのか……。

ただ奴の残した言葉が、なぜか心の中に張り付いて離れない。

グノーシス……どういう意味だったかしら……





終わりです。

続きはどうしようかな……

大筋しかかたまっていません


少し書けましたので、
更新しておきます。







私が考え事をしながら夕食の準備をしていると、
いつの間にか杏子が横に居て、味見を勝手に始めた。

マミはそんな杏子にやさしく拳骨をしていた。

杏子はそれに対しふくれっ面を向けている。

……私達って、悪魔だったような。

なに仲のいい姉妹か親子みたいなことやってるのよ。

和むじゃないの。

マミが視線を察してか、真面目な顔をこちらに向けた。


マミ「……きゅうべぇは、何て言ってた?」

ほむら「あいつが言うには、あいつは関与してないらしいわ」

杏子「本当かよ。うさんくせーな」

マミ「……それ以外は、何も?」

ほむら「……うわさに、気を付けろって言ってたわね」

杏子「うわさ?」

ほむら「ええ。何かヒントになりそうな うわさが流れてなかった?」

マミ「……うーん。悪魔じゃないかっていううわさ以外は、関係ありそうなうわさは聞かなかったけど……」

杏子「あ、でもマミ。ちょっと変じゃなかった?」

マミ「? 何が?」


杏子「いい年こいたおっちゃん達も、何故か悪魔じゃないかっていうのを否定しないんだよ」

杏子「むしろ、半分信じかけているような……」

ほむら「ふむ……。変に浸透しちゃってるわけね」

マミ「なんでかしら……」

杏子「信頼性のある目撃情報もさほどなさそうだよね」

マミ「うん。あの公園での事件の時ですら、はっきり誰が見たとか、分からなかったし」

杏子「何でこんなうわさが流れてるのやら」

ほむら「……インキュベーターの言を信じるなら、そこに何かヒントがあるはずだけど」

マミ「意図的に、誰かが流している?」

マミ「影響力のある人物の発言で、大の大人も否定しきれないのかしら?」

杏子「ありうる……のか?」

杏子「問題があるよ、それ」

杏子「人間が、そんなうわさを流して、何の益があるんだよ」


ほむら「うわさを流しているのが、悪魔自身……なのかしら」

マミ「えー? それこそ、何の得が……」

ほむら「大物悪魔が顕現する場合、一番の障害はなに?」

杏子「マグネタイトの不足……か?」

マミ「上級分霊以上だと、それこそ物凄い量がいるのよね」

マミ「だからこそ、今いる物質世界は、高次の精神世界の存在から守られてるとも言える……」

ほむら「世界のことわり。それ自体も問題みたいね」

杏子「世界のことわり……?」

ほむら「すなわち、この物質世界には、精神世界の存在が現れる事なんて出来ない」

ほむら「そんな大前提よ」

マミ「……変な話ね。私達はどうなるの?」

ほむら「本来……は、悪魔なんていないのよ。この世界は」


杏子「いや、だからアタシ達はどうなるんだよ」

ほむら「大量のマグネタイトで、無理やり存在している状態よ」

ほむら「まぁ、元々の肉の体を持っているから、普通の悪魔より燃費はかなりいいけどね」

マミ「……えっと? じゃあ、マグネタイトは、物質世界と精神世界の境界を歪めているって事?」

ほむら「ええ。そして、大物悪魔ほど、そのマグネタイトは大量に必要となる」

ほむら「……だから、悪魔はあまり物質世界に現れることはない」

杏子「それを覆す何かがあるってこと?」

ほむら「物質世界と精神世界の境界を曖昧にしてやればいいのよ」

マミ「……?」

杏子「んなこと、出来るのかよ?」


ほむら「……精神世界というのは、所詮、物質世界に存在する心を持つ存在……」

ほむら「それが生み出した新たな世界」

ほむら「その生みの親たる人間達が、精神世界の存在を信じ」

ほむら「物質世界に現れる事を信じるようになれば、境界が曖昧になりやすい」

ほむら「マグネタイトのコストもかなり下がるわ」

マミ「……なるほど、ね」

杏子「それでも、普通の人間が本気でそんなことを信じられるのかねぇ」

ほむら「……ここ見滝原は、そういう事が起きかねないと思われる事件が多発したじゃない?」

マミ「……そういえば、ワルプルギスの夜の前までは、魔女が多発したわね」

ほむら「魔女に会った生存者結構いたでしょう。 私達も助けたし」

ほむら「だから、超常の存在を信じやすい土壌はあったのよ」


マミ「……なるほど、ね」

マミ「そうだとしたら、私たちはどうするべきかしら」

杏子「敵が何者か突き止め、目的を阻止すること……じゃない?」

ほむら「……それについて、気になることがあるわ」

マミ「なにかしら?」

ほむら「私達が戦うことで、結局 相手の目的を達成してしまうんじゃないかという事」

杏子「……どういうこと?」

ほむら「私達が高位悪魔と戦うことで、余計に悪魔の存在を周囲に知らしめることが無いかって事」

マミ「……秘密裏に、消さなきゃいけないってことね」

ほむら「ええ。非常に難しいことだと思うけど……」


ほむら「……そうだ。貴方達、グノーシスって知ってるかしら?」

杏子「グノーシス? なんだいそりゃ。食べ物かい?」

ほむら「私もよく知らないのよ。ただ、インキュベーターの奴が言っていて」

マミ「……グノーシスは、古代ギリシア語で認識・知識を意味するわね」

マミ「自己の本質と真の神についての認識に到達することを目的とした思想の一つじゃなかったかしら」

ほむら「詳しいのね」

杏子「なんでそんな事知ってるんだ?」

マミ「いやね、自分が悪魔なら、もっと神様や悪魔の事知っておいた方がいいかと思って勉強したのよ」

マミ「それに、かっこいいじゃない! 何だかこういうの読んでたらわくわくするって言うか!」

杏子「あはは。マミは昔からそーいうの好きだったしなぁ」

杏子「なんだっけ。そういうの、厨二病っつーのか?」


マミ「ち、違うわよ!!! そんなんじゃないわ」

マミ「だいたい、そんなネットスラング 誰から聞いたのよ!」

杏子「ん? さやかだけど」

マミ「……さ、さやかさーーーん!!!」

ほむら「漫才はそこまでにして頂戴。グノーシスについて、もう少し詳しく聞けない?」

マミ「うーん。私もそこまで詳しくはないんだけど。

マミ「グノーシス主義に一般的にみられる考え方に、反宇宙的二元論というのがあるの」

マミ「それは、私たちの住む物質世界」

マミ「この世界の生の悲惨さが、悪の宇宙であるからこそ……なんだって」

杏子「悪の宇宙? なんだいそりゃ」

マミ「ふふ、悪の宇宙に対して、真の神様が作る、真の宇宙。善の宇宙があるらしいの」

マミ「それに対し、私たちの物質世界は、生の悲惨さがある」

マミ「だから、結局 善の神様に分類されていようが、悪の原因の一つにすぎない」」

マミ「所詮 その神は悪に過ぎない……偽物に過ぎないんだって」


杏子「……なんだか、ついていけないね」

ほむら「……この世界の善なる神様が、ただの偽物……か」

ほむら「力が、足りない。それだけかもしれないのにね」

マミ「真の神様なら、絶対的な力を持っているはず……って事なのかしら」

ほむら「……」

杏子「……それで? そのよく分からんグノーシスとやらが、どう関係があるっていうのさ」

マミ「……」

ほむら「……」

杏子「なんだぁ。結局 わけがわかんねーことだらけかよ」

ほむら「そうね。手がかりになるんだかならないんだか」

杏子「わけわからない事をいって煙に巻いて、実はやっぱりインキュベーターが黒幕……なんじゃないかい?」


ほむら「それも否定しきれないのよね」

マミ「……未だに、きゅうべぇがニャルラトホテプって言うのが実感わかないのよね」

マミ「そんなに強大な悪魔だなんて」

ほむら「……ある意味、あいつはニャルラトホテプじゃなく、インキュベーターなのよ」

マミ「?」

杏子「?」

ほむら「前にも話したわよね。分霊は、様々な個体があり、時として本霊に叛逆さえするものもいる」

マミ「聞いたわ」

杏子「そうだったな」

ほむら「物質世界に顕現した後は、さらに独自に経験を積み、知識を得る」

ほむら「むろん、本霊にはフィードバックされるけど……」

ほむら「長く顕現した個体は、より本霊から離れる結果になる場合もあるわ」

ほむら「それに、彼は低級分霊だから、余計ね」


杏子「……悪魔って、わけわかんねーな。もうあたしだって悪魔だけどさ」

マミ「それじゃあ……きゅうべぇが私たちの本当の味方になることもあるの?」

ほむら「奴は今も保護者気取りよ」

ほむら「でも、本当の味方というと、私は難しいと思うわ」

ほむら「私たちの感情的にも……ね」

マミ「……」

杏子「……分霊が、本霊からかけ離れる……か」

杏子「そういや、ほむらと黒いおっちゃんとの関係はどうなるんだ?」

ほむら「どうっていうのは?」

杏子「一部、黒いおっちゃんなんだろ? 分霊と本霊の関係としちゃ、解消されてるの?」

ほむら「うーん。厳密に言うと、少しだけ繋がってる」

マミ「少しだけ?」


ほむら「私は私としての意志が勝ったから、以前の私としているつもり」

ほむら「だけど、決して侵せないネビロスとしての領域も、私の中に残っている」

ほむら「そして、その部分から、ネビロスの本霊へと繋がってはいるの」

杏子「……ふうん」

マミ「私達も、繋がっているの……? ほむらの分霊と合体したけど」

杏子「えっ。アタシら、ある意味 ほむらの分霊、更にはネビロスの分霊になったのか?」

ほむら「うーん。そこまで考えると、かなりの悪魔が実は同一の存在と解釈できることになるわね」

ほむら「色んな文化、宗教が各地で混ざり合い」

ほむら「神や悪魔だって、混ざり合った」

ほむら「ある意味、天然の悪魔合体ね」

ほむら「わずかながらも様々な個体に繋がりを持つ悪魔は多い」


ほむら「だけれど、ごく細いつながりをもっているだけ」

ほむら「核となる部分は別といえばいいかしら。同一の存在とは言い難いけど」

ほむら「……ん?」

マミ「どうかした? ほむらさん」

ほむら「いえ……」


インキュベーターが、ニャルラトホテプの分霊だとしても
他の分霊と自分が違うと認識していれば……

奴の言うことに矛盾は生じないかもしれない。

だが、そもそも
奴は既に嘘をつかないという存在ではなく。

やつの発言の矛盾を考える意味はないかもしれないが……






ありがとうございました。
今日はここまでです。

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