魔法少女は衰退しました (1000)




『魔法少女まどかマギカ』と『人類は衰退しました』のクロスオーバーです。

初めてのSSです。至らないところも多いと思いますが、よろしくお願いします。

キャラは最初の時間軸の状態。ただしほむらの性格がかなり変わっています。

妖精さん無双。

妖精さんが居るから鬱なんてあり得ない。

劇場版及び叛逆は見ていないので、そこで出てきた設定と矛盾があるかもしれません。


以上の設定の元、暴走させていただきます。
そう、妖精さんのように。





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389948070




えぴそーど いち 【妖精さんと、はじまりのおはなし】




幼い頃から身体が弱く、あまり外出出来ない私には、友達は殆ど居ませんでした。

その所為かは分からないけれど、昔の私は引っ込み思案で、何をやっても上手くいきませんでした。

上手く出来るになる前に諦めてしまう、そんな性格になっていました。



”彼等”に会うまでは。



それは昔、物置で見つけた小さな紙縒りが始まり。

あの紙縒りがなければ、私はきっと引っ込み思案のままだったでしょう。

自分に自信が持てず、自分では何も決められない……そんな人間になっていたでしょう。


だけど、今の私は違う。


心臓病で入院? 治ったら、今まで出来なかった事が出来るようになる。

通院の都合で転校? 新しい出会いがあると思えばとっても楽しみ。

一人暮らし? なんだか大人になった気分。



そう、世界は何時だって楽しい。彼らが何処でも生まれるのは、きっと世界が楽しく出来ているから。

私達がどうやって楽しいを見つけるか。それで世界は何処までも楽しくなる。

さぁ、扉を開けよう。今日は転校初日。最初の挨拶が肝心。

……改めて思うと、ちょっと緊張してきた。でも大丈夫。

心を外ではなく、内へと向けよう。それだけで、ほら、聞こえてくる。


――――わくわくしますなー
――――にんげんさんといっぱいおはなしできるです?
――――てんこうすると、にんげんさんがかこってくれるです
――――かちぐみやんけ
――――うれしさで、いまにもきぜつしそうです


彼等は何時だって、私の心の中に居る。

だから今日の私は最強だ。心の中の彼らと同じように。




和子「はい! あとそれから今日はみなさんに転校生を紹介します。暁美さん、いらっしゃい」

ほむら「は、はいっ」

ほむら「失礼します……」

和子「それじゃあ自己紹介、いってみようか」

ほむら「はい――――暁美ほむらです。これから、よろしくお願いします」

ほむら(今日から、ここが私のクラス……)

ピンク髪の子「…………」

ほむら(あ、後ろの席の子が笑いかけてくれた)

ほむら(友達になってくれるかな? なってくれたら、うれしいなぁ)

和子「それじゃあ、暁美さんの席は……」


……
………

クラスメートA「暁美さんって、転校前はどこの学校に通っていたの?」
クラスメートB「シャンプー、何使ってる?」
クラスメートC「趣味は何かな?」

ほむら「あ、あの、すみません」

ほむら「私、休み時間は薬を飲まないといけないので……保健室に行かないと……」

クラスメートC「あ、そうなの? ごめんね」

ほむら「いえ……あ、それで保健係の方は誰でしょうか……保健室の場所、まだ知らなくて……」

クラスメートA「それなら鹿目さんね……でも、保健室の場所なら私が案内しようか?」

ほむら「ありがとうございます。でも保健室は今後も色々お世話になると思うので、
    色々訊きたい事もあるので……」

クラスメートA「あー……そっか。なら素直に鹿目さんに任せよう」

クラスメートB「という訳で、おーい! 鹿目さーん!」

まどか「ん? なーにー?」

ほむら(あ、ホームルームの時に笑いかけてくれた子だ……)

クラスメートB「暁美さん、まだ保健室の場所分からないんだって。色々聞きたい事もあるらしいから、
        鹿目さんに案内をお願いしてもいい?」

まどか「うん! 任せて!」

ほむら「あ、は、はじめまして……えと、よろしくお願いします」

まどか「はじめまして。私は鹿目まどか。まどかって呼んでね!」

まどか「それじゃ、いこっか」

ほむら「はい」


―廊下―


まどか「それにしても、ほむらちゃんってかっこいい名前だね」

ほむら「ありがとうございます……まぁ、最近はあまり呼ばれないんですけどね」

まどか「そうなの?」

ほむら「ええ。見滝原に引っ越す前までは呼ばれていましたけど……」

ほむら「今は両親は仕事で今は一緒に暮らしていませんし、今も付き合いがある一番の友達も……愛称で呼ぶので」

まどか「そっか……じゃあ、私が今までの分までいっぱい呼んじゃおうかな?」

ほむら「ふふ。ありがとうございます……そういえば鹿目さん」

まどか「あ、駄目だよ!」

ほむら「?」

まどか「鹿目さんって言った。まどかって呼んでって言ったのに」

ほむら「あ、すみません」

ほむら「でも私、呼び捨てにするのって苦手でして……」

まどか「うーん……出来たら呼び捨てにしてほしいけど……無理強いは駄目だね」

まどか「わかった。ほむらちゃんの好きなように呼んで!」

ほむら「はい、鹿目さん」

まどか「うんっ! ……あ、そういえば、さっき何か訊こうとしていたよね? 何かな?」

ほむら「あ、そうです」

ほむら「あの……この辺りで電波の届かない場所ってありませんか?」

まどか「電波? うーん、学校だと図書室が携帯の電波が届かないって聞くけど……」

ほむら「そうですか……」

まどか「ごめんね。役に立てなくて」

ほむら「あ、いえそんな! 変な事を聞いてすみません!」

まどか「良かったら、理由を教えてくれる?」

ほむら「……友達と会う為、ですかね。その子、電波が苦手なので」

まどか(電波が苦手? ……ペースメーカーを付けている子とかなのかな? 病院の知り合いとか?)

まどか(……そういう事なら役に立ちたいなぁ)

まどか「うん! 分かった!」

ほむら「え?」

まどか「知り合いに頼んで、電波が出来るだけ届かない場所を調べてもらうよ!」

ほむら「そ、そんな! そんなの悪いですよ!」

まどか「遠慮しないでいいよ! その子、頼んでくれると結構なんでもやってくれるし!」

まどか「すっごく頼れるから、安心して待っててね!」

ほむら「えと……じゃ、じゃあ……お願いします……」

まどか「うんっ……あ、今度は私から質問していい?」

ほむら「? え、ええ」

まどか「その腕に着けているブレスレットは何? アクセサリー……なのかな?」

まどか(私には、草で作った物にしか見えないけど……)

ほむら「あ、これですか? これは、まぁ、お守りですね」

まどか「お守り?」

ほむら「ええ。私が知る限り、これに勝るお守りはありません!」

ほむら「家内安全、学業成就、無病息災! なんでもござれです!」

まどか「……ほむらちゃんって、結構占いとか、オカルトとか好き?」

ほむら「? いえ、そうでもないと思いますけど……」

まどか「あ、そうなんだ」

まどか(何か、思い出があるブレスレットなのかな)

ほむら(”あの子”たちの超科学を見ていたら、今更オカルトなんて、ねぇ……)

まどか「あ、保健室に着いたよ」

ほむら「え? あ、ありがとうございます」

ほむら「あの、それでですね、少し聞きたい事が……」



……
………



―教室―

ほむら(ふー……色々ありましたが、ようやく放課後です)

ほむら(……体育は本気で死ぬかと思いました……あんなに身体が弱っていたとは……)

ほむら(……筋力増強マシーン的なものでも作ってもらって……いや、流石にボディビルダーは嫌だし……)

青い髪の子「やぁ、転校生! もう学校には慣れたかい?」

ほむら「ほびゃっ!?」

青い髪の子「ほびゃっ!?」

ほむら「あ、えと、す、すみません……ちょっとぼーっとしていて、驚いてしまって」

ほむら「美樹さん、でしたよね?」

美樹さやか「あ、ああ、うん。正解!」

ほむら「ほっ……えっと、何かご用でしょうか?」

さやか「あ、うん。えっとね、どうかな。もう放課後を迎えた訳だけど、学校には慣れた?」

ほむら「皆さんとても親切で助かっています。まだ慣れたとは言えませんけど……」

さやか「ふむふむ。やはりな」

さやか「という訳で! ここは親睦を深めるのも兼ねて私と一緒にCDショップ行かないかい?」

ほむら「CDショップ、ですか?」

さやか「うん。まどかと仁美……あ、あそこにいる二人ね? あの二人も誘うつもりだから、四人で、って事になるかな」

ほむら「えっと、邪魔でなければ……」

さやか「じゃあ決定! おーい! まどかー! 仁美ーっ!」

ほむら(美樹さん、鹿目さん達に向って手を振って呼んでる)

ほむら(私と違って凄く活発な人)

ほむら(それに、私がちゃんとクラスに溶け込めているか気にかけてくれた。優しい人だなぁ……)

ほむら(あ、鹿目さんと……えっと、志筑さんだったかな……こっちに来た)

まどか「どうかしたの、さやかちゃん」

仁美「何かありました?」

さやか「いや、大した事じゃないよ。ただ、今日ほむらと一緒に――――」

クラスメート「鹿目さん、三年生の人が呼んでるよー?」



まどか「三年生……」

まどか「ごめん、ちょっと行ってくるね」

さやか「あ、うん。分かった」

ほむら(鹿目さん、駆け足で教室の入り口に……あ、あの金髪の人が三年生なのかな)

ほむら(……向こうに行く前の鹿目さん、表情が少し変わった。なんと言うか……緊迫感のある感じ)

ほむら(あの三年生の人と関係あるのかな……)

さやか「あーあ。今日はまどかと一緒には帰れないかな」

ほむら「え? どういう事ですか?」

仁美「まどかさん、最近あの三年生の人と一緒に帰る事が多いんです。毎日ではありませんが……」

仁美「教室まで来て直接呼ばれる場合は、間違いなく一緒に帰りますわね」

ほむら「へぇ……ん? なら、三年生の方と一緒に帰ればいいのでは……?」

ほむら「えと、一年生と一緒ではちょっと気まずいかも知れませんけど……」

さやか「んー、ほむらの意見も尤もだけど……」

さやか「一度一緒に帰らないってまどかに訊いてみたら、大切な用があるからって言われて断られちゃったんだ」

ほむら「……それは、大丈夫なのでしょうか……人には言えない何かこう……」

ほむら「……あ、いえ、その……あの、私、疑り深い性格なもので……失礼な事を言いました。すみません……」

仁美「気持ちは分かりますわ」

仁美「三年生の方は巴マミさんと言って、責任感のある立派な人だとは聞いています」

仁美「けど、やはり何かあるのではと勘繰ってしまいますわね」

さやか「何回か話した感じじゃ悪い人じゃないと思うし、まどかも嫌々一緒に帰ってる様子じゃないんだけど……」

仁美「でも、何も知らないと不安は残ってしまいますね」

ほむら「…………あの、私から一つ提案があるのですけど」

さやか「? 何かな?」

ほむら「CDショップにお誘いをしてくれた手前、少し言い辛いのですが……」




ほむら「鹿目さん達を尾行、してみるとかどうでしょうか?」







さやか「さて、まどか達を追い駆ける事になり早一時間」

さやか「仁美は習い事で来られなかったから転校生と二人で尾行したけど……」

さやか「病院まで来たところで、見失ったかぁ」

ほむら「うう……すみません……私がすぐに疲れてしまい、何度も立ち止まる事になったばかりに……」

さやか「いや、仕方ないよ。退院したばかりなんだしさ」

さやか「……でも意外だなぁ」

ほむら「? 何が、ですか?」

さやか「転校生って、なんというか、引っ込み思案で臆病で、自分から行動しないタイプだと思ってた」

さやか「まさか尾行なんて大胆なアイディアが出てくるなんてね」

ほむら「それは……」

さやか「……あ、ご、ごめん! 今の酷い言い方だったね。あたしって思った事そのまま話しちゃう癖があって……」

ほむら「くす……いえ、気にしていません。それに、事実ですから」

さやか「え?」

ほむら「ある友達のお陰で今はこんな感じの私ですけど、昔はそれこそ引っ込み思案で臆病で、
    自分から行動しない……いいえ、行動できない人間でしたから」

ほむら「美樹さんの感想は、正解です。それが私という人間の本質ですよ」

さやか「……ごめん……」

ほむら「そんなに謝らないでもいいですから」

さやか「……うん」

ほむら「さて、これからどうしましょうか」

さやか「あー、そうだそうだ。まどか達は見失っちゃったからねぇ」

ほむら「尾行は中止ですね……時間的にも、CDショップに立ち寄るには少し遅くなりましたし」

ほむら「……でも、ますますまどかさん達が何をしているのか不思議です」

さやか「そうだねぇ。こんな遅くまで、何してんだろう」

ほむら「えーっと、尾行して分かった事は……」

さやか「まるで虱潰しをするかのように道を行ったり来たりして」

ほむら「時折二手に分かれたらまた合流して」

さやか「合流したら何かを話し合って」

ほむら「やたらと廃ビルや病院の近くを通ったような……」

さやか「……あの二人、本当に何してんだ?」

ほむら「変な事はしていないようですけど……怪しいですね」

さやか「怪しいけど、変な事はしていないんだよねぇ」

ほむさや「……………」

ほむら「ま、まぁ、また今度尾行してみましょう! それで分からなかったら、直接対決です!
    尾行していた事を正直に打ち明けて、問い詰めちゃいましょう!」

さやか(え? まだ諦めてないの?)

ほむら「ではそろそろ帰るとしましょうか――――」

衰退組は妖精さんだけかな?
なんともいい雰囲気で気に入った



――――わーにん、わーにん



ほむら「え?」

さやか「? 転校生、どうかした?」

ほむら「……なんか声が聞こえて……」

さやか「声?」

ほむら(美樹さんには全然聞こえていないみたい。でも私にはハッキリと聞こえた)

ほむら(それにあの気の抜けた、緊張感のない声……間違いない)

ほむら「……どうやら私の気のせいみたいです。お騒がせしてすみません」

さやか「あはは。そんなに気にしなくていいって」

ほむら「いえ、今日はなんだか色々迷惑を掛けてしまいました」

ほむら「それで、あの……お詫びと言ったら難ですが……我が家に代々伝わるお守りを差し上げたいのです」

さやか「お守り?」

ほむら「はい。とは言っても、手作りなのでちょっと歪ですが……」

さやか(これは……草で作ったブレスレット、か?)

さやか(ほむらも腕に付けているし、確かに手作りみたいだね)

さやか(……結構可愛いかも……)

さやか「……うん! 気に入った! ありがたく頂くよ!」

ほむら「あ、ありがとうございます

ほむら「えと、出来たら水に濡らさないようにしてくださいね?」

ほむら「元に戻……解れて大変な事になってしまうので。汚れたり臭いが気になったら、私に返していただければ
    新しいのを渡しますので。欲しいなら、ですけど……」

さやか「了解~」

ほむら「では、そろそろ帰るとしましょうか。帰り道は……」

ほむら「あ、あれ? どっちに行けば……」

さやか「……迷ったのか?」

ほむら「す、すみません。病院にはいましたけど、ずっと入院していたので地理に疎く……」

さやか「いや、謝らないで。そういう事ならあたしが学校まで案内してあげる」

さやか「えっと、学校は……ん?」

ほむら「どうしました?」

さやか「……………ど忘れかな……病院の敷地内に、こんな所あったっけ?」

ほむら「え?」

さやか「ちょ、ちょっと待って! 今思い出すから……」

さやか「!?」

ほむら(何!? 突然景色が歪んで……!?)

さやか「な、なんだこれぇ!?」


――――景色の歪みは唐突に起こりました。

唐突な歪みは、これまた唐突に戻りました。ですが、そこはもう私達の知る『世界』ではありません。


溢れんばかりのお菓子の山。


あちこちに散らばる薬瓶。


剥き出しの注射針に、不気味な人形。


そんな、統一感のない光景が私達の前に広がりました。

無機質な建物も通行人の姿もない、ファンシーだけど残酷さを隠しきれていない空間に私達は何時の間にか居たのです。

当然ながら私達三人はただの女子中学生。私は勿論、美樹さんも、この異常事態に戸惑いを隠しきれない様子です。


私達は、この不思議な世界に迷い込んでしまったのでしょうか。

それとも、”招かれた”のでしょうか。

そもそも迷い込んだり招かれたり出来る世界なのでしょうか?


無論、そんな事は分かりません。これから分かるとも限りません。

ですがきっと、現実ではあり得ない、突拍子もない事が起こる予感がします。


そう、例えば人食いの怪物が現れたりするかも。


だから私の身体は振るえました。

美樹さんも、身体を震わせていました。

美樹さんと私に違いがあるとすれば、ただ一点。

私は、興奮のあまりにやけていた事ぐらいでしょうね――――


今日はここまで!

なんだか期待されて胸がドキドキ(野郎の発言)
完結まで時間がかかると思いますが、よろしくお願いします。

>>13
衰退組は一応妖精さんのみです。

あと、今更ながらオリジナルの妖精さんアイテムが出てきますのでご容赦を。

ヒャッハー! 早速誤字だァ――――ッ!

>>12
ほむら「……でも、ますますまどかさん達が何をしているのか不思議です」

ほむら「……でも、ますます鹿目さん達が何をしているのか不思議です」

>>15
当然ながら私達三人はただの女子中学生。私は勿論、美樹さんも、この異常事態に戸惑いを隠しきれない様子です。

当然ながら私達二人はただの女子中学生。私は勿論、美樹さんも、この異常事態に戸惑いを隠しきれない様子です。


下書き段階では+仁美さんの三人で行動していた時の名残です。


さらに注意書きに、


妖精さんに対し独自解釈あり。

オリキャラ……みたいなものが出てきます。たぶんオリキャラの範疇。


この二つを追加で。
もうね、初めてだからって不手際多すぎですよね……


でも、なんだか想像以上に反応があってオラわくわくしてきたぞ!

書き貯めがちょっぴりあるので今日も投下していきます。



えぴそーど に 【妖精さんと、しゃるろってさん】


―お菓子の魔女の結界―


さやか「な、なにこれ!?何がどうなってんの!?」

さやか「なんかやばいよね!? に、にげ、逃げないと……逃げないと……!」

ほむら「落ち着いてください!」

さやか「へう?!」

ほむら「まずは落ち着いてください。はい深呼吸!」

さやか「え、あ、はい」

さやか「すー……はー……すー……はー……」

ほむら「落ち着きましたか?」

さやか「……うん。ありがとう。少し、冷静になれた」

ほむら「どういたしまして」

ほむら(とは言え、これからどうしたものでしょうか……)

ほむら(辺りを見渡してもお菓子の山と薬瓶の山と変な人形ばかり。ちょっとやそっとで帰れる雰囲気じゃないですね……)

ほむら「そうだ。携帯は?」

さやか「あ! そうだね……いや、駄目だ。アンテナが立ってない」

さやか「そりゃそうか……こんな不思議な場所まで電波が来ていたら、そっちが吃驚だわ」

ほむら「まぁ、確かに基地局は建ってないでしょうからねー」

さやか「……つーか、転校生、やけに冷静だね」

ほむら「専門家ってわけじゃありませんけど、こういうヘンテコ展開には結構慣れているんです」

ほむら「とはいえ、これからどうしたものですかね。電波がこない以上こちらから外に連絡する手段は……」

ほむら(……ん? 電波?)

ほむら「あ、なんだ。帰れるじゃん」

さやか「え?」

ほむら「そっか、そうだよね。あの子たちを呼べばいいんだ。うん、そうしよう」

さやか「て、転校生? 帰れるって、どういう事? 此処が何処か知ってるの?」

ほむら「いえ、全然全くサッパリ知りません」

さやか「なら!?」

ほむら「でもあの子たちなら、きっと何とかしてくれますから」

ほむら「すー……」

さやか(ほむらが、深く息を吸ってる? 何をする気なんだ……?)



ほむら「妖精さぁーーーーーーーんっ! でっておいでーっ!」




「はーい!」「およばれしたー?」「でばんだっしゃい」「とーじょー」

さやか「ほむらの耳からなんか出てきたぁーっ!?」


――――私が呼ぶのと共に、四人の小さな人たちが私の耳から飛び出しました。

出てきた彼等は体長10センチぐらい。二等身で、とっても愛くるしいボディの持ち主。
可愛らしい顔に浮かべる表情は何時だって喜怒哀楽の真ん中二文字がない、のーてんきなもの。

彼等は人間ではありません。だけど私のとっても大切で、私に世界を教えてくれた素敵なお友達。

妖精さんなのです。


ほむら「ひー、ふー、みー、よー……四人か。あれ? もっと、十倍ぐらいの数が居たような気が……」

妖精さんA「ほかのはにんげんさんのきおくにとけました」
妖精さんB「ぼくら、よばれたらでてくるかかりだからー」
妖精さんC「ひつようさいていげんのじんざい」
妖精さんD「じんけんひさくげんごっこちゅー」

ほむら「うーん。相変わらず何を言ってるかさっぱりな人達ですね」

さやか「な、なんなのコイツら!?」

ほむら「あ、大丈夫ですよ。この子たちは妖精さん――――私の大切なお友達です!」

さやか「よ、妖精ぃ……? 確かに、そう見えなくはないけど……」

ほむら「敵意とか悪意とか、そういうのと無縁な種族なので安心してください。と言うか……」

妖精さんA「なんじゃこのおかしのやまはーっ!?」
妖精さんB「たからのやままやー!」
妖精さんC「おお、かしがみえる」
妖精さんD「こ、これ、たべていいです? たべるです?」
妖精さんE「ほんのうたいむとつにゅー!」
妖精さん達「ぴーーーーーーっ!」

ほむら「今はお菓子に夢中みたいですしねぇ……」

さやか「うわ……一心不乱に食べてる……」

さやか「?」

さやか(なんか違和感が……気のせい、かな?)

ほむら「ところで、ここのお菓子って食べて平気なのですか?」

妖精さんB「え」
妖精さんD「たべられないおかしなんて」
妖精さんC「でもぼくら、なんでもへいきですからなぁ」
妖精さんE「どくみします?」

ほむら「お願いします」

さやか「え、ちょ、ほむら!?ど、毒見って……」

ほむら「あ、この子たちの事でしたら心配なく。この子たち、基本的に何があっても死なないので」

さやか「……え? 死なないの?」

ほむら「ええ。溺死や餓死もしないそうですし」

ほむら(でも消えるとかは言うから、死の概念が違うだけかも知れませんけど)

さやか「……死なないのかー……ま、まぁ、妖精だしな、うん……」


妖精さんD「まいうー」
妖精さんA「でもこれはにんげんさんにはたべられませんなー」
妖精さんE「ぼくらでどくせん?」
妖精さんB「どくせんきんしほーいはん?」
妖精さんC「たいほされるかも」
妖精さんA「にんげんさんにれんこうされるの、たのしみですー」

ほむら「あ、食べられないんだ……何か盛られているのですか?」

妖精さんC「てーてーえっくすかと」

さやか「てーてーえっくす?」

ほむら「恐らくTTX。テトロドトキシン。フグ毒ですね」

さやか「げぇーっ! 猛毒!? た、食べて平気なのアンタ達!?」

妖精さんE「ぼくら、どくきかないので」
妖精さんD「からだぴりぴりするの、たのしめます?」

さやか「」

さやか「と、とりあえず、私達は口にしない方が良」

ほむら「では妖精さん。ここにあるお菓子の毒を一通り取り除いてください」

ほむら「そのお菓子を使って、お茶会を開きましょう」

さやか「転校生ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

ほむら「ひゃっ?! なんですか、いきなり叫んで……」

さやか「アンタこの子たちの話聞いてないの!? フグ毒よフグ毒! 食べたら死ぬのよ!」

ほむら「ええ。だから毒抜きを頼んだのですが」

さやか「出来る訳無いでしょ! 仮に出来たとしても、そういうのって多分大規模な機械とか薬品が必要で」

妖精さんA「できましたー」

さやか「」

さやか(ほむらと問答していたら、何時の間にか豪華なテーブルと二人分の椅子、皿に乗せられたケーキ、
    そしてティーセットが現れていた)

さやか(催眠術や超スピードじゃない、もっと恐ろしい物の片鱗を味わうさやかちゃんでした……)

ほむら「さ、美樹さん。お座りください」

ほむら「妖精さんとのお茶会、一緒に楽しむとしましょう?」


~お茶会及び説明会~


さやか「……つまり、こういう事?」

さやか「その子達は妖精さん。ほむらの大親友」

さやか「見た目はちんちくりんで言葉遣いも子供っぽいけど、超常的科学技術を持ち合わせた存在」

さやか「そして人間と楽しい事が大好き、と」

ほむら「はい。あ、あと甘いお菓子も大好きですよ」ケーキモグモグ

さやか(毒抜きしたとはいえ、毒入りだったケーキを平気で食べてる……妖精達を信頼しているんだなぁ)

さむら「……このケーキの毒抜きとかテーブルを用意したのも、魔法とかじゃなくて……科学なの?」

ほむら「勿論です。大体、魔法なんてある訳ないじゃないですか」

妖精さんB「そのとおりですな」
妖精さんD「ひかがくてきですな」
妖精さんA「おかるとですな」

さやか(それ、妖精が言うべき台詞じゃないよね……)

ほむら「仮にあったとしても、魔法なんかよりもこの子たちの方がずっと凄いですしね!」

ほむら「この前も適当に作った宇宙船でグリーゼ581cに行って宇宙鯨と――――ん?」

さやか「あのー、今さらりととんでもない事言わなかった?」

ほむら「何か、地鳴りが聞えませんか?」

さやか「いやいや、地鳴りとかどうでもいいから。今確かにグリーゼって言」


――――その時、私達は大切な事を失念していたのを思い出しました。

――――此処は不思議な不思議な、そしてとっても不気味な世界。
――――何時、何処から、何が出てくるか分からない世界。

――――そう、例えば……お菓子の山を吹き飛ばし、突如巨大な化け物が出てくる事もある世界である、と――――


さやか「え? うわあああああああああっ!?」

ほむら(お菓子の山を吹き飛ばして、なんか現れた! すごく大きい……蛇? みたいな姿してる……)

ほむら(それに人なんか簡単に飲み込んじゃいそうなぐらい大きい口! 正に人食いの怪物!)

化け物「ギシャアアアアアアアアアアアアアア!」

さやか「に、逃げよう!」

ほむら「待ってください!」

さやか「……!?」

ほむら「……確かに見た目は怪物です。食べられてしまうかも知れません」

ほむら「ですが先日グリーゼに行った時に出会った知的生命体さんもグロテスクな姿をしていました」

ほむら「ならこの子も、もしかすると知的な生き物かもしれません」

さやか「な、何言ってんだ! こんな怪物が頭いいなんてあり得ないだろ!」

さやか「万が一そうだったとしても、どうやって話を……」

ほむら「問題ありません」

さやか(ほむらの奴、自分の眼鏡に手を伸ばして一体何を――――)

ほむら「翻訳眼鏡、スイッチおん!」

怪物「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」

さやか「ほ、ほむら!? 危な――――」



ほむら「はいストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉプっ!」




化け物「!?」

さやか(ほ、ほむらの声で化け物の動きが止まった!?)

ほむら「いきなり大声を出して、すみません。私の名前は暁美ほむらと言います」

ほむら「あなたのお名前を教えていただけませんか?」

化け物「…………」クチヲパクパク

ほむら「あ、シャルロッテさんと言うのですか。可愛いお名前ですね」

さやか「え!? まさか本当にこの怪物とお話を?」

ほむら「はい! この眼鏡は妖精さんの発明品、翻訳眼鏡というものでして!」

ほむら「それなりに意思があるのなら、動物だけでなく虫とか髪の毛とかともお話が出来るんですよ!」

さやか「えー……」

さやか(と言うか、髪の毛って意思があるの?)

ほむら「む。その反応は信じていませんね」

ほむら「妖精さん。美樹さんの分もお作りくださいな」

妖精さんE「そのようなこともあろうかと、すでにつくておきました」

ほむら「流石です」

さやか「えっと、では……装着……」

さやか「!?」

シャル【うわぁ……話が出来る人間って初めてだ……人の言葉なんて今までよく分からなかったのに……】

シャル【だけどそんなのは小さな問題】

シャル【ああ、健康な身体が憎い憎い憎い憎い……】

さやか「……………」

さやか「転校生や?」

ほむら「はい?」

さやか「あの人、なんか憎いと言ってますが?」

ほむら「言ってますねぇ。健康な身体が、という事は病弱な方なのでしょうか? 私もその気持ちはよく分かりますよ」

さやか「そうじゃないでしょーが!? 敵意満載だよアイツ!?」

ほむら「些細な問題です。私達と怪物の仲が悪いなら、和解するしかないじゃない!」

さやか「なんでそんなに乗り気なの!? なんでそんなに無茶したがるの!?」

ほむら「そんなの簡単な事です」

ほむら「みんなで仲良くした方が、楽しいに決まってますから!」

さやか「た、楽しいって、そんな事で――――」

ほむら「さぁ、シャルロッテさん! あなたのお願いを聞かせてくださいな!」

シャル【私の願い?】

シャル【……チーズ、食べたい】



ほむら「チーズですか?」

シャル【私はどんなお菓子でも作れる。でも、チーズだけは作れない】

シャル【だから今すぐチーズを作れ! 作れないなら、お前達を食ってやる!】

さやか「ひぃ!? そんな、急にチーズなんて言われても……」

ほむら「妖精さん。チーズをください」

妖精さんC「ごよういしたー」

さやシャル「え?】

ほむら「ありがとうございます」

さやか「ちょ、ちょっとほむら!? そのチーズ何処から……」

ほむら「さぁ? 用意したのは妖精さんですし……それに、出所は知らない方がいいかと」

さやか「え゛」

シャル【え、そんなの私に食べさせる気なの?】

ほむら「そのつもりですが……別にいいじゃないですか。お菓子に使われている赤色の着色料だって、
    原料はカイガラムシですよ? あれの収穫って大変らしいですね。虫を潰さないように削ぎ落して」

シャル【すみません。それ以上は止めて。お願いします】

ほむら「よろしい。では改めて……どーぞ♪」

シャル【……ではいただきます】

シャル【もぐもぐ】

シャル【……………】

ほむら「どうですか?」

シャル【……美味しい。そこそこ】

ほむら「よかったぁ!」

シャル【おかわり、ある?】

ほむら「どうですか、妖精さん?」

妖精さんA「やまもりてんこもりー」

ほむら「たくさんあるみたいですよ!」

シャル【……ありがと】

ほむら「いえいえー」

さやか(あ、なんか打ち解けてるっぽい)

ほむら「それで、あなたはどんな種族なんですか? 異星生命体とかでしょうか?」

シャル【……………】

ほむら「?」

さやか(あれ、なんか言い辛そうにしてるっぽい?)

さやか(もしかしてこの話題って地雷?)


シャル【……魔法少女って、知ってる?】


ほむら「魔法少女ですか? 妖精さんが昔作ってくれたレイジングなんちゃらという道具で、ごっこ遊びをした事はありますが」

さやか「うん、あたしは何も聞かなかった。白い悪魔の相方なんて聞えなかった」

さやか「そしてあたしもそんなのはアニメの話でしか知らないよ」

シャル【……私はね、元々はただの病弱な人間だったの】

シャル【でもある日、キュゥべえって言う猫みたいな奴に唆されて、魔法少女になったの】

さやか「きゅーべー?」

シャル【そう、キュゥべえ。どんな願いでも叶える代わりに、魔法少女になってほしいと言ってくる悪魔】

さやか「どんな願いでも……」

ほむら「胡散臭い話ですね」

妖精さんA「ですなですなー」
妖精さんB「あくとくしょーほーなよかん」
妖精さんC「くーりんぐおふすべきでは?」

シャル【ええ、本当に。今思うと、なんで騙されちゃったかと思うぐらい胡散臭い話】

シャル【まぁ、それでも私は契約したと思うけど】

さやか「え?」

シャル【私ね、末期癌だったの。余命幾ばくもない、まともに身体も動かせないぐらいの末期】

シャル【それで、契約してくれたら癌なんて治せるって言われたのよ。代わりに異形の化け物……
    魔女と命懸けで戦えって言われたけど】

さやか「酷い……そんなの、契約するしかないじゃん!」

ほむら「全くです!」

シャル【アイツはそういう奴よ。普通に頼んでも契約しそうになかったら、契約せざるをえない状態で唆す】

シャル【ま、それでもまだ良かった。死ぬよりかはマシだと思っていたし、魔女……人を襲う怪物との戦いは、
    正義の味方っぽくて嫌いじゃなかった】

シャル【でもね、ある時知ったの――――魔女の正体を】

さやか「正体?」

シャル【魔女はね、元々魔法少女なの】

ほむら「え……じゃ、じゃあシャルロッテさんは……」

シャル【そう、私は元々魔法少女……元々人間だったけど、今はなんなのかも分からない怪物よ】



さやか「な、なにそれ! キュゥべえって奴が全ての元凶って訳!?」

ほむら「そんな酷い事、許せません!」

ほむら「待ってください! 妖精さんの道具『探し物アンテナ』で奴等の巣を探し出し、
    『ブラックホール缶詰』を開放して発生源ごと宇宙の塵に」

さやか「うん、それは待とう。嫌な予感しかしないから」

さやか(そんでもって、妖精ってそんな出鱈目そうなもんまで作れんのかい……)

シャル【え、えっと……そ、そんな訳で、今じゃこんな怪物の形をしているけど元々人間なの】

シャル【人間の女の子として扱ってくれると嬉しいわね】

さやか「そうなんだ……ごめん、そうとは知らず化け物呼ばわりしちゃって……」

シャル【いや、気にしないで。実際化け物だしさ】

シャル【まぁ人間に戻りたいとは思うけど、出来ない事を言っても仕方ないしね】

ほむら「あ。なら、代わりの肉体を用意しましょうか?」

さやか「……………」
シャル【……………】

さやか「え? あれ? 今、なんか奇妙な発言が飛び出しませんでしたか」

ほむら「妖精さん、出来ますよね?」

妖精さんB「おちゃのこさいさーい」
妖精さんC「おーだーはいりましたー」
妖精さんE「しばしおまたせ」

さやか「あ、妖精たちが散っていった……」

シャル【え、あの……代わりの肉体って……】

ほむら「しばしお待ちを。多分、二十秒かそこらで用意してくれると思うので」

さやか「……あ、本当だ。もう妖精たちが戻ってきて……」

さやか「って、なんか女の子を台車に乗せて運んできたーっ!?」

さやか「ちょっとちょっと!? 一体どこからこの子を連れてきて……」

妖精さんA「がんばってつくた」

さやか「はぁ!? いくらなんでもそれは……」

さやか「…………」

さやか「ねぇ、ほむら?」

ほむら「はい?」

さやか「あの、妖精さんが運んできた女の子……何から何までほむらと瓜二つな容姿なのは何故でしょうか?」



ほむら「何故でしょうね。妖精さん?」

妖精さんD「くろーん」

ほむら「ああ、私のクローンでしたか。納得です」

さやか「納得出来るかあああああああああっ!?」

さやか「可笑しいから!? 何から何まで可笑しいから!」

さやか「大体倫理的に可笑しいでしょ!? そのクローンにだって意識はある筈で」

妖精さんJ「このにんげんさん、たましいなしですが?」

さやか「え?」

妖精さんE「たましいないので、ぬけがらどーぜん」
妖精さんB「だしはとれません」
妖精さんC「そうるてきなものはさいしょからいれずに」
妖精さんA「ただのにくかいやー」
妖精さんD「ひとのかたちしているだけです?」

さやか「た、魂? え、あの、そんな魔法的な……」

妖精さんC「たましいは、かがくですが?」

さやか「えー……………」

ほむら「ともあれ、この身体は空っぽです。妖精さんのテクノロジーで魂を移し替えれば、晴れてあなたはこの身体を物に出来ます」

ほむら「どうでしょう? よろしければ今すぐにでも作業は出来ると思いますが」

シャル【……………】

ほむら「シャルロッテさん?」

シャル【え? あ、ご、ごめん。突然の事に動揺して……いきなり身体と言われても……】

さやか(そりゃそうだ……)

ほむら「私そっくりな身体はお気に召しませんか? でしたら人間だった頃のお姿の通りに成形しますが……」

妖精さんC「のーみそのいめーじをぷりんとあうとしまっせ?」

さやか(いや、そういう事じゃないでしょ、多分)

シャル【……いや、そんな事ないよ。ただ、いきなり人間に……元々の姿とは違っていても戻れるって知って、戸惑っただけ】

シャル【でも人間に戻れるのなら、戻りたい】

シャル【だから、私にその身体をください!】



ほむら「はい! 分かりました!」

ほむら「では妖精さん、お願いします。いい仕事をしたら、クッキー焼いてあげますよ!」

妖精さんA「なんとー!?」
妖精さんE「たよってもらえておかしももらえる」
妖精さんD「しあわせですー」
妖精さんC「ではではこちらにー」

さやか「妖精さんとシャルちゃんが物陰に……」

さやか「……上手くいくかな」

ほむら「いきますよ、きっと」

シャル「上手くいきましたー!」

さやか「早い!? 早過ぎるよ!? 心配する暇すらねぇ!」

シャル「ついに私は人間の肉体を取り戻したーっ! やったー! ひゃはははははほーいっ!」

さやか(うわぁ……ほむらと同じ顔が、物凄くハイになってはしゃいでる……)

さやか(でも……まぁ、幸せそうだからいいか。うん)

ほむら「良かった……気に入ってくれたようですね」

シャル「ひゃっほーい! ……あれ?」

ほむら「? どうかしましたか? 何か不具合でも……」

シャル「あ、いや、そう言う事じゃなくて……」

シャル「……ただ、なんで結界が消えてないのかなって思って」



ほむら「結界?」

さやか「もしかして、このお菓子だらけの場所の事?」

シャル「ええ。魔女は確かに凄まじい力を持っているけど、無敵って訳じゃないわ。
    むしろ普通の銃器でも致命傷を受けてしまう程度の存在」

シャル「だから普段は結界に身を隠して、こそこそと人間を襲うの。中には例外も居るけど」

シャル「……で、魔女の力で作っている空間だから、魔女が消滅すれば結界も消える」

シャル「私は人間に戻った訳だから、結果的にはこの空間から魔女は消えた事になる筈」

シャル「なのに、なんで結界が残ったままなの?」

さやか「あー、成程」

ほむら「どういう事なのでしょうか?」

妖精さんD「それはー」

ほむら「それは?」

妖精さんD「まじょさんは、たましいはまじょさんですので」
妖精さんC「ずのうはまじょさん、からだはにんげんさん?」
妖精さんA「まじょのちからがつかえます、とくべつしようですし」
妖精さんB「ふだんとかわりませぬ」

ほむら「ふむふむ」

ほむら「つまり身体は人間に戻りましたが、魔女の力は使えるように設計した、という事のようです」

シャル「……つくづく思うけど、これ、本当に科学なの?」

ほむら「魔法なんてありませんよ。ファンタジーやメルヘンじゃないんですから」

さやシャル(妖精さんはファンタジーやメルヘンじゃないんかい……)

シャル「うん、まぁ、力が使えて困る事はないし……精々使わせてもらいましょう」

シャル「それに、あなた達もそろそろお家に帰さないとね」

さやか「あ、そっか……」

ほむら「何時の間にか、もう五時を過ぎてますね」ケイタイデンワチェック

シャル「じゃあ結界を解いて……っ!?」

ほむら「? どうかしましたか?」

シャル「……結界に、誰か入ってきた。それも二人」

さやか「え? あたしらみたいに迷い込んできた人が?」

シャル「……違う。誤って入ってきたのなら、結界に驚いてしばらく右往左往している筈。
    そもそも魔法少女の才能がない場合結界内で意識を保つ事が難しい」

シャル「なのに今入ってきた二人は迷わず、真っ直ぐ進んでる……私達の方に……」

ほむら「真っ直ぐという事は……シャルロッテさん目当ての人達?」

ほむら「だとすると、まさか!?」

さやか「え?」

シャル「不味い! もの凄い速さでこっちに来てる!」

シャル「もう間違いない! 侵入者は――――魔法少女よ!」



――――シャルロッテさんのその叫びと共に、この空間にあった扉の一つが勢いよく開けられました。

私も、美樹さんも、シャルロッテさんも、開けられた扉を見ます。表情は……私達とシャルロッテさんでは、大分違うものでしたが。

私達が見た先に居たのは、二人の女の子。

どんな人たちか? ……形容する必要はありませんでした。

何故なら彼女たちは、私達が知っている人――――


ほむら「鹿目さん……」

さやか「と、巴先輩……?」


――――同級生と、その先輩だったのですから。



今回はここまで!

すでに本来の『まどかマギカ』と大分異なる展開となっていますが、このズレ、今後どんどん大きくなります。
クロスオーバーだから仕方ないね。妖精さんだからしょうがないね。

次回も早めに投稿する予定。
サラバダー!

おつー
>>1は叛逆見てないのか


魔女結界の中なら妖精さんも活動できるのか

妖精さん「ゆめもきぼーもありますゆえ?」

頼もしいぞwwwwwwwwwwwwwwww

なるほどワルプルさんに文明まるっと洗い流されて妖精さんの天下が始まると(酷

ヒャーッ! 初めてのレス返しだーっ!

>>41
暇と資金ができた頃には終わっていたのです……

>>46
電波さえなければどこでも大丈夫なのが妖精さんの素敵なところ

>>49
むしろ夢と希望しかない

>>51
襲いかかる嵐! 戦う魔法少女! 吹っ飛ばされるビルと妖精さん!
だけど誰も死なない。たぶんワルプルさんも死なない。



見てくれている人の多さに画面の前でにやにやが止まらない(野郎の以下略)ぐらいうれしくなりつつ、
今日も投下していきます。



えぴそーど さん 【妖精さんと、まほうしょうじょさんたち】



――――シャルロッテさんの結界内に現れたのは、鹿目さんと、巴先輩でした。

いえ、断言するのは少々躊躇ってしまいます。

彼女たちの服装は、私やさやかさんのような、見滝原中学校の制服ではありません。
巴さんはなんだかスタイルを強調するような大人っぽさ溢れるもので、
鹿目さんは逆にスカートにフリルが付いた、とても愛らしい……だけど、普段着として着るのはちょっと恥ずかしい服。

鹿目さん達も、私達との遭遇は予想外だったのでしょう。
二人は妙にそわそわした様子です。

そしてシャルロッテさんは……まるで、苦虫を噛み潰したかのような顔になっています。

一体どういう事なのでしょうか。二人もこの結界に迷い込んだのでしょうか。

――――いえ、あの服装を見れば簡単に予測できます。

だってあの二人の恰好は、まるで魔法少女のようではないですか。

つまりあの二人の目的は――――



ほむら「ドキっ! 女だらけのコスプレ大会への出場ですね!」

さやこ「ずこーっ!?」

まどマミ「え? え、ええ?」

さやか「お前はアホなのか? アホなんだな?!」

ほむら「あ、アホって……」

さやか「どう見てもあの二人魔法少女じゃん!」

まどマミ(えっ!? なんで知ってるの!?)

さやか「絶対あの二人の目的はシャルちゃん退治だよ!」

さやか「つーかシャルちゃんが今魔法少女が来るって言ったじゃん! なんでコスプレ大会なんて発想になるんだよ!」

ほむら「……さやかさん。よく考えてみてください」

さやか「なんだよ」

ほむら「魔女との戦いは命懸けなんですよ? だったらあんな動き辛い恰好な訳ないでしょう」

ほむら「防弾ジョッキだとか、目を守るためのゴーグルを装備すべきです」

ほむら「あんな見た目重視の恰好で命懸けの戦いをするなんて、ただの馬鹿じゃないですか」

まどマミ(ば、馬鹿!?)

ほむら「それに何処に魔女が居るか分からないのに、あまりにも警戒心がない」

ほむら「扉を開けるのも無警戒でしたし……罠があったらどうするつもりだったのやら」

ほむら「ただのトーシローです。間違いありません」

さやか「で、でもさ、私達を助けるためかも知れないし……」

ほむら「ですから、私達そのものが罠だという可能性を考慮していないんです」

ほむら「人質を餌に罠を仕掛ける。卑劣な手ですが、中々効果的だと私は思います。私なら躊躇わずにやります」

さやか「内心のどす黒さを吐露すんなよ……」

ほむら「命のやり取りに正義も黒さもないでしょう。まぁ、兎も角」

ほむら「要するに、命知らずにもほどがあるんですよ、あの二人」

ほむら「あんな体たらくじゃ、命懸けの闘いを生き残るなんて無理です。
    あの二人が命懸けの闘いをしているとしたらとうの昔に死んでいないと可笑しい」

ほむら「よって魔女と命懸けで戦う魔法少女ではあり得ない。だからコスプレイヤーに違いない」

ほむら「これにて証明完了です」

ほむら「そうですよね! お二人とも!」

まどマミ「……わ……私たちは……」

まどマミ「魔法少女、です……」

ほむら「なっ!? ばんなそかな!?」

さやか「どうすんだよ!? 自分の推理を語るという形で思いっきり貶してたよ!?」



ほむら「だっ、だって本当にそう思ったんですよ!? 間抜け過ぎるって!」

ほむら「妖精さんの道具みたいなはちゃめちゃ仕様なら兎も角、高々魔法を使えるってだけで
    一体何を思い上がってんだって話じゃないですか!」

まどマミ「ぐはぁっ!?」

さやか「現在進行形で場の空気を乱すなーーーーーーーっ!?」

シャル「えーっと……どうしようかなぁ……」

ほむら「ああ! そう言えばシャルロッテさんが危ない! 忘れてた!」

さやか「忘れんなよ!? つーかさっきからアンタふざけてんのか!」

ほむら「妖精さんの仕業かもしれません(キリッ」

さやか「よーしふざけてるなその綺麗な顔ぶん殴ってホームベースみたいにしてやるから覚悟しろ」

ほむら「あ、ま、待ってください!? 今のはジョークでもなんでもなくて、妖精さんがいると
    それだけで殺伐とした世界が優しさと不条理で満ちたものに変わりまして」

さやか「言い訳はいいわけーっ!」

ほむら「きゃぴんっ!?」

シャル「うーん、結界解除しちゃおうかなぁ……でも何処に出るか分からないし……」

まどマミ「………………」

マミ「はっ!?」



マミ「そ、そうだわ。こんなところでぼーっとしてる場合じゃなかった」

マミ「あの人たちは、多分結界に巻き込まれた人ね。意識を保っているあたり、魔法少女の才能があるみたい」

マミ「今は彼女達を助け出すのを優先するわよ」

まどか「そ、そうですね!」

まどか(と言うか、ほむらちゃんが二人居るのはなんで……双子?)

まどか(ま、まぁ、後で聞けばいいか。うん)

まどか「みなさん、こっちへ!」

ほむら「あー……なんと言いましょうか……」

さやか「慌ててるところ申し訳ないけど」

シャル「お構いなく?」

まどか「何が起きているか分からないと思うけど、此処は危ない場所なの」

まどか「お願い、私を信じて!」

ほむら(信じて、と言われても……)

シャル(今さっき最大の危機が排除された訳で……)

さやか「あれ? そういえば妖精さんたちは?」

さやか「姿が見えないけど……」

ほむら「妖精さんは人間が大好きなのですが、好き過ぎて姿を見せるのを恥ずかしがるのです」

ほむら「今ごろ物陰に隠れて、こちらをそっと窺っていると思いますよ」

ほむら「まぁ、さっき何人か私の頭の中に戻って来たので、いざとなったら呼び出しましょう」

さやか「ふーん」

さやか「……って、なんであたしは今のほむらの言葉に納得してんだ!?」

まどか「あ、あの、さやかちゃん……?」

シャル(……私が魔女って、あの二人気付いてないわよね……?)

シャル(今のうちにこっそり結界を解除しちゃえば……)





??「待つんだまどか、マミ。油断してはいけないよ」





ほむら(誰の声?)

さやか(なんか、頭に直接……)

シャル「この声は……!」

マミ「キュゥべえ?」

QB「戦闘が始まらないから不思議に思って来てみたけど、成程、こういう状況なら仕方ないね」

ほむら(!? 何時の間に……!)

さやか(何アレ……猫、みたいな……?)

シャル「……よくも私の前に姿を出せたものね」

シャル「キュゥべえ」

QB「やれやれ……敵意を向けられる可能性は考慮していたけど、予想以上だね」

マミ「キュゥべえ? あの、あの人の事何か知ってるの?」

シャル「知ってるも何もコイツは―――」

QB「マミ、まどか。アイツは魔女だ」

五人「!?」

シャル(ちっ! 先手を打たれた!)

ほむら(先程のシャルロッテさんの話から考えるに、魔法少女は魔女の事を絶対的な悪だと吹き込まれている)

ほむら(だとすれば、鹿目さん達はシャルロッテさんの言葉をもう受け止めてくれない!)

さやか(え、えーっと、つまりどういう事だってばよ!?)

マミ「それは本当なの? キュゥべえ」

QB「ああ、間違いない。彼女は魔女だ」

QB「何故人間の姿なのか、何故言葉が話せるかは分からない」

QB「だけど彼女の言葉には、耳を貸さない方が得策じゃないかな。魔法で洗脳してこないとも限らないしね」



シャル「ま、待って! 私の話を聞いて!」

マミ「……………」

ほむら(巴先輩の目付きが変わった……ああ、どう見ても敵意ですね、あの目付き)

ほむら(キュゥべえさんの言い分は知っている側から聞くと胡散臭い事この上ないですが、
    魔女退治を正義と信じていれば疑う余地はない)

ほむら(ましてや、てんでなってないとはいえ命懸けの戦いに身を置いている。
    洗脳魔法の存在を臭わされたら、そりゃあ信じられなくもなります)

ほむら(万が一魔女が正気を保って真実を伝えようとしても、簡単に真実を隠蔽出来ると)

ほむら(……もしかすると隠蔽しているという認識すらないかも。唆し方に悪意を感じられなかったし)

ほむら(中々厄介な相手のようですが……)

ほむら(とりあえず、今は静観しているとしましょう)

ほむら(情報も欲しいですし、”最悪”なんて、妖精さんがいる限りあり得ませんからね)

シャル「お、お願い……私の話を聞いて! 二人はキュゥべえに騙されているの!」

マミ「黙りなさい。一般人だと思ってたけど、魔女なら話は違うわ」

マミ「鹿目さん。人型だからって、手加減は駄目よ」

まどか「分かってます。私も魔法少女だから……戦います」

さやか「ちょちょちょ、ちょっと待って!」

まどか「さ、さやかちゃん!?」

ほむら(あ、美樹さんがシャルロッテさんの前に出た)

ほむら(巴先輩と鹿目さんが戸惑ってる……うーん、美樹さんの方が正義の味方って感じ)

まどか「さやかちゃん! 早くその人の前から退いて! 危ないから!」

さやか「危なくない! いや、確かにちょっと危ない時もあったけど!」

さやか「でも今はもう危なくないんだ!」

シャル「さ、さやか……」

マミ「何があったかは知らないし、あなたもなにが起きているか分からないでしょう」

マミ「でもね、そいつは呪いと絶望を振りまくの。だから倒さないといけない存在なのよ」

さやか「違う! シャルちゃんは優しい魔女になったんだ!」

QB「そんな魔女はあり得ないね。全ての魔女は、絶望から生まれるんだから」

さやか「お前は黙ってろ!」

まどか「……さやかちゃん」

まどか「さやかちゃんがその子に、何を言われたのかは分からない」

まどか「だけど、その子が魔女である以上今までにたくさんの人を襲った筈。たくさんの人を絶望させた存在なの」

まどか「私は魔法少女だから、そんな悪い魔女は倒さないといけない」

まどか「お願いさやかちゃん。魔女の前から退いて。手遅れになる前に」

さやか「なんだよ……なんで、なんでそんな酷い事が言えるんだよ!」




さやか「どーせ二人も魔女になるのに、なんで仲良く出来ないんだよ!?」



まどマミ「……え?」

QB「なっ!?」

シャル「さささささささやかーっ!?」
ほむら「美樹さーーーんっ!?」

さやか「え、何? 何?」

シャル「この馬鹿! 私がキュゥべえに騙されて魔法少女になったって教えたじゃん!」

シャル「だったらあの二人が魔女化について知ってる訳ないでしょーが!」

さやか「え? あ、そ、そうだっけ?」

さやか「いや、でも何時か知る事だし」

ほむら「絶望したら魔女になってしまうと聞きましたよね? 私と一緒に聞きましたよね?」

ほむら「自分達が今まで倒してきた怪物が、元々自分達の仲間だって知って絶望しない人が居ますか!?」

ほむら「と言うか、やってる事は人助けと称した殺人ですよ? 自殺もんですよ自殺もん」

さやか「あ、えと、それは」

シャル「しかも先の言動から察するに、二人とも魔法少女は正義の味方だって認識している感じでしょ!」

ほむら「転げ落ちる時、高い場所から落ちた方がダメージが大きい事を美樹さんはご存じないのでしょうか?」

さやか「……………」

さやか「す、すみませんっしたーっ!?」

シャル「今更謝っても遅いわよ! どーすんのよ! 絶望コースまっしぐらよ!」

ほむら「正直心臓が止まる想いでしたよ! まぁ妖精さんが居るから大丈夫だと思いますけど!」

シャル「そうね妖精さんが居るから大丈夫よね! でもアンタは反省しなさい!」

さやか「すみませんすみません! もうしません! 私は会話に参加しません!」

マミ「……そう、そういう事ね……」

シャル「ヤバい!? このままじゃ――――」



マミ「あなた達、やはり魔女に操られているわね!」

まどか「こんなのってあんまりだよ!」



ほむさやシャ「……………」

ほむさやシャ(あ、そういう発想に行くんだ……)

ほむら「……えーっと……(思った以上になんて声をかけたらいいのか分からない)」

シャル(肯定したら私悪者だし、否定したらあの子たち魔女化コースだし、そもそも信じるか怪しいし)

さやか(アーアーワタシハナニモイワナイキコエナーイ)

マミ「やっぱり魔女を倒すしかない」

マミ「丁度いい時に鹿目さんのクラスメートが射線から退いたしね! 鹿目さん!」

まどか「分かってます!」

シャル(弓と銃を構えた!? 仕方ない、あの子たちの狙いは私だから此処から離れれば――――)

ほむら「妖精さん! なんとかしてください!」

妖精さんA「はっははーい」

さやか「うわ。本当に耳から出てきた……見るの二度目だけど」

マミ「っ!? 新手の使い魔!?」

まどか「なんでほむらちゃんの身体から使い魔が……!?」

ほむら「それで、どうすればいいでしょうか?」

妖精さんA「このおまもりをみにつけてくだされ」

ほむら(首飾り、みたいですね……)

ほむら「なんの疑問も持たずに装着!」

妖精さんA「まじょさんにもどーぞです」

シャル「あ、ども……いやいや!? こんなの付けてどうなるの!?」

さやか(でもちゃんと付けてる……)

マミ「隙ありね!」

シャル「っ!? 不味―――――」

さやか「ああ!? シャルちゃんがリボンでがんじがらめに!?」

マミ「止めよ! ティロ・フィナーレ!」

シャル「そんな、う、うわああああああああああああっ!?」


シャル「……あれ?」

マミ「撃った弾丸が……逸れた……? まさか、魔女の力!?」

シャル「え? いや、あの、何もしてな」

まどか「私もやります! えいっ!」

まどか「……! だ、駄目! 全然当たりません!」

ほむら(たくさんの光の矢がシャルロッテさんに……でも、全部不自然な軌道で逸れていく……)

ほむら「妖精さん。この首飾りは一体?」

妖精さんA「くうかんをまげまげしてます」
妖精さんA「とびどーぐはつうじませぬ。みんなまがるです」
妖精さんA「いきものにはやさしくせっていしてるので、にちじょうせいかつにはししょうなし?」
妖精さんA「でもどっじぼーるでぶつけてもらえなくなるのー」
妖精さんA「きゃっちゃーふらいもとれませぬ」
妖精さんA「きゅーぎにはちめいてきかと?」

ほむら(成程。近くの空間を歪める事で、どんな飛び道具も通用しなくなると……)

ほむら(にも拘らず日常生活に支障が出ない。うん、相変わらずの出鱈目っぷり)

シャル「……とりあえず、安全は確保出来たけど……」

マミ「くっ! どうすればいいの!」

まどか「そ、そうだ! 近付いて叩けば……」

マミ「駄目よ、私達の力じゃ魔女に打撃を与えるのは難しいわ」

まどか「そんな!」

シャル「……あの子たち、全然諦めてくれそうにないわぁ……」

ほむら「ふむ。では無理やり諦めてもらいましょう」

ほむら「妖精さん。あちらの方々に、穏便にお引き取り願いたいのですが」

妖精さんA「りょうかいしまっせ」
妖精さんA「では、このべるをならしてー」

ほむら「べる? ……というより、鈴っぽいですね。サイズ的に」

妖精さんA「ばいばいべるー」
妖精さんA「ばいばいっておねがいしながらならすのー」
妖精さんA「それでなんでもばいばいできます」

ほむら「成程。相変わらずどういう原理なのか、何が起こるのかさっぱりな道具ですね」

ほむら「それでも容赦なく使ってしまう私。みんな、ばいばーい」リンリーン

マミ「……あ、コンロの火ってちゃんと消したっけ? 帰って確かめないと……」

まどか「……もう五時だ……帰らないと……」

QB「あれ? 今日って定時報告の日じゃ……母星に帰らないと……」

マミ「帰らないと」

まどか「帰らないと」

QB「帰らないと」

三人「帰らないと 帰らないと 帰らないと」

さやか「……帰っていった」



ほむら「流石です。ご褒美にたっぷりとお菓子をあげましょう――――シャルロッテさんが」

シャル「私がかい!?」

ほむら「魔女の時の力は使えますよね? ほら、妖精さんがごほーび欲しがってますよ!」

妖精さんA「………………」

シャル「うっ!?」

さやか(無言でじっとシャルちゃんを見つめてる……かわいい)

シャル「わ、わーったわよ……ほらほらいくらでも食ってけーっ!」

妖精さんA「ぴーーーーーーーーーーっ!」







――――この後、私達はシャルロッテさんと一緒にお菓子パーティをしました。


妖精さんもたくさん増えて、お約束のように大暴走。慣れている私でも戸惑う事が起きたり、

つられてシャルロッテさんが暴走したり、ついでに美樹さんも諦めて暴走したり……そして私も乗じて暴走したり。


私達はたくさん笑いました。シャルロッテさんは特に笑っていました。
まるで、今までの分を取り戻そうとしているかのように。


問題は山積みです。人間に戻ったシャルロッテさんはどうやって生きていくのか。

キュゥべえと魔法少女を知って、どうしていくか。

それに巴さんという方は私やシャルロッテさんを敵だと思っているようです。

きっと、次にまた出会った時も攻撃してくるでしょう。


その時は多分、鹿目さんも一緒に。


だけど私は不安になりません。絶望なんてしません。


だって妖精さんがいるから。

どれだけ世界が残酷でも、楽しさで塗り潰してくれる妖精さんが傍に居るのだから……





今日はここまで!

さっき初めてのレス返しと言ったが、初投稿した日にすでにやっていた事に今気づく。
自分の記憶力の無さに愕然としつつ、サラバデス!

実にほのぼの感が人衰でいいな
あと、このほむらちゃんはコマンドーのステマしてきそう
ステマというかダイレクトマーケティングだけども

乙乙


ここのほむらさんは良くも悪くも手遅れなんだな……

それと>>1は「叛逆 百江なぎさ」は検索するなよ、絶対検索するなよ?

美樹さんさやかさんと
呼び方が安定しないな

乙!
わたしちゃんよりもアグレッシブに妖精さんと大騒ぎしてるのがいいなwww
特に立場とかルールとか無く、ほんとにただのお友達だからこそここまで自由気ままに関われるんだろうか

妖精さん「えんとろぴーほしいです?」

妖精さん「ごちゃごちゃしますゆえ」

妖精さん「ぼくらはたのしい」

期待しかない……


おはよーございまーす! 今朝も元気に投下投下。
書き貯めがあるので、もうちっとだけこのペースが続くんじゃ


>>70
自分がコマンドー見てないので残念ながら……今度レンタルで借りよう

>>75
某三人組み漫才じゃないので検索しないからな!
……叛逆のレンタル開始はよぅ

>>76
私の脳内が不安定なことによる弊害です。
徐々に呼び方が親しくなるように書きたかったので……仲良くなったので、今回からさやかさんに統一されている……はず。

>>77
むしろわたしちゃんは立場的に妖精さんを抑えないといけない側の人間ですしね。
常時漂流生活絶頂期状態わたしちゃんがこのSSでのほむらさんのイメージ。


反応の多さで膝がガクブルなる際のエネルギーを創作意欲に変換しつつ、
第四話いってみよー



えぴそーど よん 【ほむらさん達と、まほうしょうじょさんたち】



窓から差し込む朝日――――それが私の目覚まし。
季節によって起こしてくれる時間はまちまちだけど、この時期は大体朝六時には起こしてくれる。

「ん……」

布団の中で身体を捩り、そのまま伸びを一回。解れた身体を起こし、ベッドから窓の外を眺める。

眼下に広がる見滝原の町並み。私が守っている世界。
高層マンションからの眺めは悪くないし、普段は、この街並みを見ていると気が引き締まる。

だって私は魔法少女だから。

悪い魔女から人々を守る、正義の味方だから。


なのに。

「……っ」

昨日の事を思い出し、唇を噛んでしまう。

分からない。

何故私はあの時、魔女を前にして家に帰ってしまったのか。

原因は分かる。
暁美ほむら(鹿目さんが名前を教えてくれた)が使ったあのベル、ひいてはそれを渡した小さな使い魔の仕業だ。
鹿目さんの友達である美樹さんは……何もしていなかったような気がするので無視しよう。うん。

だけど、だけど一体どういう事?

精神に干渉する魔女は確かに存在する。噂で聞いた事もあるし、実際に戦った事もある。

でも、それは人のトラウマを抉ったり、幻覚を見せたりする能力。
あんな風に思考を完全に、しかも一瞬で塗り替えてしまうなんて、それこそ最強の魔女ではないか。

何より一番不可解なのは、魔女が私達を殺さずに結界の外へと追い払った事。

それに今考えると暁美ほむらと美樹さんが、操られているように見えなかったのも不自然。

分からない。あの魔女が分からない。使い魔も、暁美ほむらと美樹さんが何を考えているのかも……

そして、あの言葉も――――



QB「おはよう、マミ」

マミ「……おはよう、キュゥべえ」

QB「昨日は大変だったね」

マミ「……そうね」

マミ(そう……昨日私は、魔女を見逃してしまった)

マミ(いえ、見逃された、と言うべきかしら)

マミ「……何故あの魔女は、私達を生かしておいたのかしら」

QB「分からない。僕達を利用しようと考えているのかも知れないけど……」

QB「もしかすると、魔女もまた操られているかも知れないね」

マミ「魔女が?」

QB「以前僕が契約した魔法少女の中に、魔女を操れる子が存在していた」

QB「暁美ほむらや美樹さやかは魔法少女じゃないけど……」

QB「実例があるんだから、なんらかの方法で魔女をコントロールしていても不思議はないね」

マミ「……そうね」

マミ「そう言えば、暁美ほむらの、その……耳から出てきたのは、使い魔だったのかしら?」

QB「?」



QB「マミ、それは一体なんの話だい?」

マミ「え? なんのって……暁美ほむらの耳から、なんか出てきたじゃない」

マミ「それが変なベルを取り出して、暁美ほむらが鳴らした途端私達は帰りたくなったのよ?」

QB「待ってくれ。そんな事態は確認していない」

QB「一体どんな存在が現れたんだい?」

マミ「え!? えーっと……(いざ説明するとなると、なんと言えばいいのか分からない……)」

マミ「つ、使い魔にしては、可愛かった……小人? かしら? 十センチぐらいの……」

QB「ふむ……やはり、そんな存在は確認できていない。どうやら僕には見えない存在らしいね」

マミ「そんな……そんな使い魔がいるの?」

QB「前例はないね」

QB「やっぱり、暁美ほむら達は信頼すべきじゃないと思うな」

QB「何をしてくるか、何を企んでいるか、僕にはまるで見当が付かない。何かあってもサポートが出来ないよ」

マミ「え、ええ……」

QB「彼女達については、僕も調べてみるとしよう」

QB「マミは彼女達が何か仕掛けてきても対策出来るよう、気を引き締めてほしい」

マミ「わかったわ。そっちも気を付けてね」

QB「ああ、そうするよ」

QB「ところで、マミはそろそろ学校に行く支度をした方がいいんじゃないかな?」

マミ「あ、そ、そうね……!」



~魔法少女支度中~



マミ「それじゃ、行ってくるわね」

QB「いってらっしゃい、マミ」

QB「学校だからって油断しない方がいいよ」

マミ「……ええ。そうよね」

マミ(考えたくないけど……魔女を操っているかも知れない子だもんね。何をしてきても可笑しくない)

マミ(みんなの事は、私が守る!)

マミ(だって私は正義の魔法少女――――)

マミ「……………」

QB「? どうかしたかい?」

マミ「キュゥべえ……あの、一つ聞きたいけど……」

QB「僕で答えられる事なら」

マミ「あのね、えっと……」



マミ「私達魔法少女が魔女になるって話は……本当、なの?」



QB「……」

QB「はぁ。マミ、いくつか思い出してほしい。一つ。それは誰の口から聞いたのか」

マミ「それ、は……」

QB「そう、元々魔女だった者と、彼女に操られている、或いは操っているかも知れない者達だ」

QB「そんな人物の言った情報なんて、全く信憑性がないじゃないか」

マミ「……」

QB「それに魔女は人を誑かす。魔女と僕の話、マミは一体どちらを信じるんだい?」

マミ「……そう、よね」

マミ「ごめんなさい。学校行ってくるわね」

QB「いってらっしゃい」

キー、バタン

QB「…………」



QB「ああ、そう言えば質問に答えていなかったね。そうさ、魔法少女は魔女になる」

QB「マミはどうやら事実を誤認したようだけど……いざ魔女になる時、うらぎられたと
   『勝手に』思って、より深く絶望してくれるかも知れない」

QB「なら、わざわざ訂正する必要はないね」

QB「……当面の問題は、暁美ほむらと美樹さやか、そして自我を取り戻した魔女か」

QB(ほむら達が魔女の真実を知っていたのは、魔女から直接聞いたのだとすれば別段可笑しくはない。
   元魔法少女である魔女がその事実を知っているのは、当然の事だからね)

QB(しかし……魔女のあの姿はどういう事なんだろう?)

QB(魔女を人間に戻すなんて、僕たちの科学でも出来ない。それこそ魔法少女の祈りでもなければ不可能だ)

QB(それを成し遂げた者があの三人の中に居るのなら、恐らくは暁美ほむら、か)

QB(そしてマミが見たという、謎の種族)

QB(……精神汚染に耐性があるこの身体さえ支配し、別惑星にいる僕の本体の精神をも操る科学力)

QB(そして地球全土を有史以前から観測している僕らが、未だ察知出来ないほどの隠匿能力……)

QB(……調査が必要だ)

QB(結果次第では、彼女たちには退場してもらう必要がありそうだね……)

QB(……………)


QB(ああー、どうしよう……昨日母星に帰るのにエネルギーを使いすぎて、今月の配給分殆ど使い果たしちゃったよ……とほほ)




~通学路~


マミ「あ……鹿目さん」

まどか「あ、マミさん……お、おはようございます」

マミ「おはよう」

まどか「……………」

マミ「……………」

マミ「ねぇ、あの後その……お友達と連絡は出来たの?」

まどか「……ほむらちゃんは電話番号もアドレスも知らないので、出来ませんでした」

まどか「さやかちゃんとは話が出来ましたけど、自分は迂闊な事を言えないからほむらちゃんに聞けの一点張り」

まどか「何時ものさやかちゃんと全然違う。普通じゃ、ありませんでした」

マミ「そう……やはり、魔女に操られていると考えるべきね」

マミ「或いは、暁美ほむらが裏で糸を引いているのかも」

まどか「……そんな」

まどか「で、でも、ほむらちゃんは魔法少女じゃ……」

マミ「確かに暁美ほむらは魔法少女じゃないってキュゥべえも言っていたわ」

マミ「でも、何らかの手段で魔女を操っている可能性もあるの」

マミ「彼女が何を企んでいるかは分からないけど……少なくとも、ろくな事ではないわね」

マミ「そして彼女が悪事を働いた時、止められるのは私達だけよ」

マミ「鹿目さん、辛いかも知れないけど、私達は魔法少女として戦わないといけな」



さやか「あれ? まどかと巴先輩じゃん。おっはよー!」



まどマミ「っ!?」ビクン

まどか「さ、さささささささやかちゃん!?」

マミ「ああ、あああ、あら、現れたわね!」

さやか「? 二人とも、どうしたの?」

まどか「ど、どうしたのって……昨日の事、覚えてない、の?」

さやか「何言ってんの。友達が魔法少女って知った日の事忘れる訳ないじゃん」

まどか「だったら……なんで……」

さやか「? なんでって、何?」

まどか「えっと……(何って訊かれると……)」

さやか「っと、そーいやまだかなぁ。ここで待ち合わせなんだけど」

さやか「つーか遅刻したと思って急いできたのに居ないとか……」

まどか「……? あの、誰かと待ち合わせしてるの……?」

さやか「誰かも何も――――お。噂をすれば」



ほむら「すみ、ま、せーん……遅くなりましたぁー……!」



さやか「やっときたよー」

マミ(なっ……暁美ほむら!?)

まどか(ほむらちゃん!?)

まどか(――――だけじゃない! ほむらちゃんが連れているのは……)



シャル「はーーーーなーーーーせぇーーーー!」



まどか(あの時の、魔女!?)

マミ(ま、魔女が首根っこ掴まれて引きずられている……やはり、あの子が魔女を操って……)

マミ(と言うか、なんで魔女が結界の外に!?)



さやか「遅いよ全く」

ほむら「すみません。シャルロッテさんが愚図って、全然家から出ようとしてくれなくて……」

シャル「愚図るもなにもあんたが無理やり……!」

さやか「なに? ほむら、シャルちゃんを襲ったの? 性的に?」

ほむら「流石に、自分の肢体に欲情するような変態ではありませんよ。さやかさんになら兎も角」

さやか「え? あたし襲われる候補なの?」

ほむら「襲われない候補だと思っていたのですか?」

さやか「え……え?」

まどか「……あ、あの、ほむらちゃん?」

ほむら「あ、鹿目さん。おはようございます」

まどか「お、おはよう……じゃなくて!」

まどか「なんで魔女と一緒にいるの!?」

ほむら「ああ、そういえば鹿目さん達は(妖精さんの道具によって)帰ってしまったから知りませんよね」

ほむら「シャルロッテさんは今、私の家で一緒に暮らしています」

マミ「ま、魔女と一緒に暮らしているですって?!」

ほむら「あれ? あなたは……誰、でしたっけ?」

マミ「巴です! 巴マミ! 昨日そこの魔女を狩ろうとした魔法少女!」

ほむら「ああ、そういえば……すみません。クラスメートでもない人の事なので、あまり覚えていなくて」

マミ「むっきー!」

まどか「マミさん落ち着いて!?」

まどか「そ、それより、なんで魔女と一緒に暮らしているの!?」

ほむら「? では逆に訊きますが……」

ほむら「鹿目さんは、中学生ぐらいの女の子が一人野宿をしようとしているのを無視出来ますか?」

まどか「む、無視は、出来ない、けど……」

ほむら「つまりそういう事です。彼女はうちで保護しているだけですよ」

ほむら「今、私が一人暮らしをしているからってのもありますけどね」

まどか「でも、ならなんで外に連れ出して……」

ほむら「学校に通うためですよ?」

まどマミ「!?」



さやか「え……え……?」

ほむら「さやかさん。いい加減正気に戻ってください。襲いませんから」

さやか「え、あ、ああ! なーんだ、そうだよね! はっはっはっ!」

さやか「で、えーっと……」

ほむら「シャルロッテさんを学校に通わせようという話をしていました」

さやか「そ、そうか。うん。いいじゃない。シャルちゃんも学校行きたいんだね」

シャル「行きたかないわよ! コイツに無理やり連れてこられただけ!」

シャル「さやかからも言ってよ! 私は人間じゃないんだから学校なんて行かなくて良いって!」

ほむら「駄目です! いくら魔女でもあなたは学生なんですよ! 学校に通わせるのは保護者の義務です!」

シャル「誰が保護」

ほむら「一人の夜は寂しいと言って私の家に泊まった挙句一緒にお風呂に入ったり一緒の布団で寝たり
    果ては私の手料理を食べた途端おかーさんおかーさん言いながら泣き出したのは誰でしょうかね」

シャル「ぎゃあああああああ!? 言うな言うな言うな!? それ以上言うなああああああああああああっ!?」

さやか「それ以上って、まだなんかあんのかよ」

ほむら「ええ。例えばテレビを見て」

シャル「やーーーーーーーーめーーーーーーーろーーーーーーーーーーーー!!」

ほむら「ぐえ!? く、首絞めはひど、酷、うぶぶぶぶーっ!?」

シャル「死ね! 死んで詫びなさい! そんで後から私も死ぬ!」

さやか「今のって告白じゃね?」

シャル「さやか! 聞いたからにはアンタも殺す!」

さやか「理不尽だ!?」

ギャーワーギャーギャーテーギャーテー

まどか「……………」

マミ「……………」

まどマミ「はっ!?」

まどか「ま、マミさんどうしましょう!? ほ、ほむらちゃん、魔女を学校に連れていくつもりのようですよ!?」

マミ「そ、そんな事させる訳にはいかないわ!」

マミ「何を企んでいるかは知らないけど……今度こそあの魔女を仕留める!」変身!

まどか「はい!」変身!

さやか「ん? うわ!? ふ、二人が魔法少女に……!?」

ほむら「ぜー、ぜー……あ、本当です。でも、変身は人に見られちゃいけないのがお約束では?」

シャル「お約束だけど、別にそんなルールはないからね。見世物になりたくないから普通は秘密にするけど」

シャル「余程私を倒したいと見えるわ」



マミ「結界の外に出てきた魔女がいるのよ? 多少のリスクは仕方ないわ」

マミ「さて、私達は戦う準備が出来たけど……」

マミ「あなたはどうするのかしら……暁美ほむら?」

ほむら「あ、もしもし……はい、はい、えっと」

さやか「……ほむら。今ぐらいはケータイは置いといて、真面目にあの人の話聞いてあげようよ」

さやか「流石に可哀想だよ。ほら、巴先輩ちょっと涙目じゃん」

マミ「ちょ、泣いてないから!?」

ほむら「いえ、今のうちに電話をしときたい場所がありまして……あ、すみません。えっと、今ですね……」

マミ「……………ぐすん」

まどか「ま、マミさん……」

さやか「……えーっと、ほむらの代わりに私が」

さやか「まずは冷静になりましょう? 魔法少女の変身も解いてくださいよ」

マミ「そ、それは出来ない相談ね」

マミ「何時その魔女が私達に襲い掛かってくるか分からない。警戒しておくのは当然じゃなくて?」

シャル「要はこっちを信じてないって事ね。ま、無理ないと思うけど」

さやか「じゃあ、そのままでいいです」

さやか「でも、銃は下ろしてください。怖くてうかうか話し合いも出来ないですよ」

マミ「あなた、何か勘違いしているわね?」

マミ「私達は最初から、そこの魔女を見逃してあげるつもりはない。交渉なんてする必要もないの」

マミ「私達が死ぬか、魔女が死ぬか……その二択しかないのよ」

さやか(勘違いしてるのはあなたですって言いたい)

さやか「で、でも、えーっと」

さやか「そ、そうだ! 魔女の結界なら兎も角、こんな道端で死闘なんてしたら犠牲者が出るかも知れませんよ!」

さやか「ここはお互い退いた方が得ではないかと思うのですがー……」



マミ「魔女を野放しにすれば、ここでの死闘で巻き添えになる人よりも多くの人が死ぬでしょうね」

マミ「勿論犠牲者を出すつもりなんてないけど……今以上の被害が出るのなら、退く訳にはいかない」

マミ「第一、悪者との取引に応じる正義の味方なんて居る訳ないでしょう?」

さやか「うぎぎぎぎ……じ、自分こそ正義って思う奴ほど性質が悪いって本当ね……!」

シャル「何故かしら。今すっごくアンタが言うなって気持ちになったわ」

さやか「うっさい!」

さやか(でも本当にどうすりゃいいの?!)

さやか(このままじゃあ……)

ほむら「……一つ、よろしいでしょうか?」

さやか「ほむら!? で、電話の方は……」

ほむら「あ、そちらは終わりました。もう平気です」

ほむら「それよりも先輩。鹿目さん」

マミ「……………何かしら?」

ほむら「私としては穏便に事を済ませたいのです」

ほむら「シャルロッテさんはもう人間を襲わない……と思いますし、例外って事で見逃してはくれませんかね?」

マミ「襲わないと思うなんて、そんな曖昧な言葉をどう信じればいいのかしら?」

ほむら「普通の人間が人間を襲う事だって珍しくないんですから、断言なんて出来ませんよ」

ほむら「あなただって、傍から見れば『人間』を襲おうとしている物騒な人ですよ」

マミ「言葉で惑わすつもり? 言っとくけど、そんな事で私を操れると思わない事ね」

ほむら(昨日のキュゥべえさんとの会話を聞いた限りまんまブーメランじゃん、とか言っちゃ駄目かなぁ)

ほむら「……じゃあ今回、”あなた”はそれで構いません。戦いは避けられない。そういう事ですね」

ほむら「では、鹿目さん」

まどか「え?」

ほむら「鹿目さんも、私達と戦うつもりですか?」



まどか「わ、わたしは……」

マミ「鹿目さん。覚悟を決めて……」

ほむら「あなた、黙ってくれませんか? 私は鹿目さんに訊いているんです」

マミ「なっ……何? やっぱり言葉で惑わすから横からちゃちゃを入れられると困ると」

ほむら「唆しているのはあなたでしょう? 誰かが説得しようとしている時横やりをいれる……」

ほむら「それ、唆している側がする事じゃないですか。自称正義の味方なら、自分を客観視してほしいものですね」

マミ「っ!」

さやか(う、うわぁ……)

シャル(何この子……確かに時々口が悪いって思うことはあったけど……)

シャル(これじゃまるで挑発じゃない……怒らせて戦闘になったらどうする気よ)

マミ「……ふん……良いわ。そこまで言うのなら、言わせてあげる」

ほむら「ふぅ。これでようやくまともにお話が出来そうです」

ほむら「それで? 鹿目さん?」

まどか「わ、私は……私は……」

まどか「ま、魔法少女だから、魔女は倒さないといけなくて……だ、だから……」

まどか「だから、あの、ほむらちゃんと戦わないといけないと、思う、から……」

ほむら「つまり本当は戦いたくないけど、使命だから私達を倒すと?」

まどか「うん……」

ほむら「……面白くない答え」

まどか「え?」

ほむら「面白くないと言ったんです」

ほむら「鹿目さんは私達と戦いたくないんですよね? 戦うのが嫌なんですよね?」

ほむら「なんで嫌な事を我慢しているのですか? なんで嫌な事を変えようと思わないのですか?」

ほむら「確かに、我慢してやらないといけない嫌な事はあります」

ほむら「でも幸せそうに生きている『人』を始末するのって、我慢してでもやらなくちゃいけない事なんですか?」

まどか「だ、だって、だってそれは……」

ほむら「ああもう分かりました。魔法少女の使命だからですね。はいはい」

ほむら「ああ、つまらない。自分の考えがないなんて、本当につまらない」

さやか「ほ、ほむら、アンタ何を言って……」



ほむら「ま、どーでもいいですね。こんな話は」



さやか「ヴぇ―――――――――っ!?」

さやか「オイ!? どーでもいいんかよ!?」

ほむら「説得とか苦手なんですよー。昔から我慢は出来ない、面倒も嫌いってタイプなんで」

ほむら「宿題とかもけっこー妖精さんアイテムに頼って片付けちゃいますからー」

さやか「台無しだ! さっきの長台詞全部台無しだよ! ちょっぴり感動したあたしが馬鹿だった!」

ほむら「あたしって、ほんと馬鹿?」

さやか「その台詞を言うな! 何故かアイデンティティを奪われた気がするから!」

シャル「まぁまぁ、落ち着きなよさやか」

さやか「シャルちゃん! でも、でもあたしのアイデンティティが……」

シャル「え? 大事なのそこなの?」

さやか「あたしの個性が危機なんだよ!? 大事に決まってるでしょ!」

シャル「いや、なんでアンタがそこまでその台詞に固執するかは知らんし、割とどーでもいいから」

シャル「それよりも、ほら」


マミ「……」ピクピク

まどか「……」ピクピク


シャル「魔法少女組が眉間をピクピクさせてる。多分、さやかみたいに若干心打たれたのに、それが茶番だって知ったからかと」

さやか「……」

ほむら「……」

ほむさや(ですよねー……)

マミ「ふ、ふふ……随分とおちょくられたものね……」

まどか「ほむらちゃん、真面目にやってよ……それとも、ほむらちゃんにとって魔女を操る事ってその程度の事なの……?」

さやか「おい、なんか物凄く状況悪化してるぞ!? どーすんだよ元凶!」

ほむら「どうしましょう?」

シャル「ちょっ、コイツ何も考えずに挑発してたのか!?」

さやか「馬鹿だっ! コイツあたしを遥かに凌駕する馬鹿だ!」

ほむら「いやぁ、なんか盛り上がっちゃって。てへ♪」

さやか「かわいこぶってる場合かぁぁぁぁぁぁぁ!?」

ほむら「うーん。あと少し時間稼ぎが必要なんですが……」

さやか「はぁ!? ……時間稼ぎ?」



ほむら「うん。先輩が今にも攻撃してきそうですし。早速一手打たせてもらいましょう」

ほむら「その名も――――さやガード」

さやか「え?」

シャル「んぁ?」

まどか「ああ!? ほ、ほむらちゃんがさやかちゃんを引っ張って、魔女の前に連れてきた!?」

マミ「くっ! まさかそんな姑息な手を使うなんて……!」

さやか「……ああ、成程。あたしの後ろに隠れれば、正義の味方である二人はシャルちゃんを攻撃出来ないと」

ほむら「はい! このままシャルロッテさんが一方的に攻撃すれば私達の勝利です!」

シャル「うわ、えげつな」

ほむら「勝てば官軍負ければ賊軍。歴史は勝者によって作られるのです」

シャル「その台詞は死亡フラグ以外の何物でもないように聞こえるけどなぁー」

シャル「あと、私は戦うつもりなんて全然ないんだけど」

ほむら「えー、つまんなーい」

シャル「つまるつまらないの問題じゃないでしょうが」

ほむら「問題です! 楽しさは何に置いても優先されるべきなのです!」

シャル「アンタの優先順位ってどーなってんのよ」

さやか「あのー……ところで、盾にされたあたしの安全は? あたしの優先順位は?」

ほむら「鹿目さん達次第ですね」

さやか「次第!? 次第なのかよ!?」

ほむら「大丈夫ですよー、鹿目さんと美樹さんは友達なんでしょ? 撃ちませんって、きっと」

さやか「巴先輩の方は分かんないじゃん!」

マミ「わ、私だって撃たないわよ!?」

ほむら「でも、カッコ良くないですか? 人をやむを得ない理由で殺めてしまい、かつての味方からも
    追われるようになった孤高の魔法少女って」

マミ「え?」

さやか「揺らいだ! 今あの人の心絶対ぐらって揺らいだ! あたしを殺す気になってたよ!」

さやか「って言うかなんで撃つように誘導したよ今!?」

ほむら「そうですねぇ……強いて言えば、時間稼ぎのためでしょうか?」

マミ「時間稼ぎ……? なんかさっきもそんな事を言っていたけど、一体何を企んで」


ポンポン


マミ(!? 肩を叩かれた!?)

マミ「だ、誰!?」バッ

制服姿の男性「どうも、警察です」

マミ「え?」

まどか「け、警察……?」



警察官「先程、コスプレ姿の女二人に因縁を付けられているという通報が……」

ほむら「きゃーっ! 助けてお巡りさーんっ!」

まどマミ「え!?」

ほむら「その二人がさっきから私達を脅してきて……」

まどマミ「アイエエエエエエ!?」

ほむら「し、しかもその銃と弓を向けてきて……私、怖くて、怖くて……!」

まどマミ「じぇじぇじぇーーーーーっ!?」

さやか(ああ、さっきの携帯って、そういう事ね)

シャル(自称正義の味方なんだから、善良な警官に怪我をさせるような真似はしない。
    で、警察に補導されるという正義にあるまじき汚点が付く、と)

さやか(だとすると、さっき巴先輩とまどかにしていた挑発もそういう意図かなぁ。
    怒らせて、この場から逃げないよう足止めするためだけの……)

さやシャル(……やり方が黒い)

警察官「……念のために訊くが……その銃は、偽物だよな?」

マミ「ああああの、そのえっとここここれは」

警察官「二人とも動くな!」

まどマミ「ひゃんっ!?」

ほむら(おー、素早く短銃を構えた……やっぱりプロの動きは違うなぁ)

さやか(そしてこの子は警官の姿を煌めく眼で見つめるというね)

シャル(ひょっとして、制服マニア……いや、目線が銃に向いてるから武器マニアか)

マミ「あの、あの、これは」

警官「……銃らしき物を持った不審者と遭遇。応援をお願いします」ムセンキ

まどマミ(めっちゃ大事になってきてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?)

まどか「ごめんなさいごめんなさい! あの、これには事情と言いますかやむを得ないと言いますか」

警官B「応援に来たぞ!」
警官C「挟みうちだ!」

まどマミ「なんでもう来てるのおおおおおおおっ!?」

ほむら(偶々近くを巡回していたのかなぁ? ま、ラッキーって事で)

警官A「いいか……武器を捨てろ」

まどか「は、はいぃぃぃ!?」

マミ「捨てます! 捨てますから! はい捨てました! だから今回は見逃」

警官B「確保おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

警官×3「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

まどマミ「きゃあああああああああああああああああ!?」



\ジュウ、カクホーッ!/
\トリアエズ、コウムシッコウボウガイダー!/
\トリアエズッテナニヨーッ!?/


ほむら「さて、今日の学校はお休みしないといけませんかね。事情聴取があるでしょうから」

さやか「え? あたしらも受けるの?」

シャル「一応通報者兼被害者なんだから、そりゃ受けない訳にはいかんでしょ。騒動に乗じて逃げるのも出来そうだけど」

シャル「で、どうする? 今から口裏合わせとく? それとも逃げる?」

ほむら「いえ、どちらも特に必要ないでしょう」

ほむら「あの二人に武器を向けられた。殺すと脅された。それを聞いた私達は怖く思った」

ほむら「私が通報した内容は主にこの三点です。この三点が食い違わなければ、特に問題はないでしょう」

ほむら「まぁ、相手の一人がクラスメートなのが気になるかも知れませんが……」

ほむら「通報したのは転校生である私ですから、顔を覚えていないでなんとか通せるでしょう」

ほむら「それに襲われかけたのは間違いないんですから、そのぐらいは些細な事ですよ」

シャル「えぐい事平気でやる癖に、詰めは大味なのねアンタ……」

ほむら「基本、ノリで生きてますので。妖精さんみたく」

さやか「はぁ……仁美にメールしとこ」




……………
………






~お昼休み 見滝原中学校~


ほむら「おはようございますぅー……」

さやか「おっはー……」

仁美「さやかさん! それに、暁美さんも!」

仁美「一体何があったのですか? なにか、警察の方のお世話になったとの噂が……」

さやか(もう広まってんのかよ……)

ほむら「まぁ、色々ありまして。事情聴取のようなものを受けないといけなくなったんですよ」

ほむら「思っていたよりも早く終わり、私達はなんとか学校に来れましたが……」

ほむら「鹿目さんも一緒だったんですが、彼女は事件……というほどではありませんが、
    私達よりも深く関わってしまいましたので、より細かな聴取を受けているようです」

ほむら「もしかすると今日は学校に来れないかも知れません」

さやか(何しろ犯人だもんね……黒幕はほむらの方だけど)

仁美「そうですの……心配ですわね。あまり長時間の聴取が続くようなら、体調を崩したりしないか……」

ほむら「なら、明日みんなで美味しいものでも食べに行きましょう」

ほむら「名付けて出所祝い」

仁美「あら、いいですわね。出所祝い!」

さやか(本当に事情を聞かれるだけなら、そのネーミングでも笑えるだろうに……哀れなまどか)

さやか(だけど襲われた事は変わりないので、同情しないさやかちゃんなのでした)

仁美「ああ、そう言えば……ひとつ気になっている事が」

ほむら「なんでしょうか?」

仁美「いえ、その……」

仁美「暁美さんの後ろに、隠れるように身を縮こまらせている……」



シャル「……………」



仁美「暁美さんに瓜二つなその方は?」

ほむら「私の双子の妹です」

仁美「え?」

シャル「ちょ、何を言」

ほむら「ジョークです」

仁美「ツッコミが来る前に速攻で発言を撤回しましたわね……」

ほむら「彼女の名前はシャルロッテと言います」

ほむら「それでですね」

ほむら「あ、その前に……よいしょ」

さやか(? ほむらが何処からともかくメガホンを取り出した……?)

シャル(一体何処から、なんてツッコミは野暮かしら)



ほむら「実はこの子は!」

さやか「ひゃあ!?」

シャル「い、いきなり大声出してどうしたの!?」

ほむら「魔女と呼ばれる怪物なのでーす!」

さやシャル「!?」

さやか(な、何を言いだしてんだ!?)

シャル(そんな事を言って誰が信じると)

クラスメート達「な、なんだって――――――――!?」

さやシャル「信じたああああああああああああっ!?」

ほむら「昔は悪い事もしたかも知れませんが、今は改心してすっかり良い子!」

ほむら「勿論人じゃないので、普通の学生生活は送れない……」

ほむら「でも私は! 彼女にも中学生としての幸せを味わってほしいと思ったのです!」

クラスメート達「な、成程――――――!!」

ほむら「だから!」

ほむら「今日から私とこの子は一緒に授業を受けます!」

ほむら「教室内に私が二人居ても気にしないでくださーい!」

クラスメート達「分かった―――――――!!」

ほむら「以上です」

仁美「そんな事情があったなんて……分かりました。私も微力ながらシャルロッテさんにお力添えしたいと思います」

仁美「何かありましたら、遠慮なく話してください。力になりますわ」

シャル「え、あ、はい。分かりました、はい」

仁美「ではではー」

シャル「で、でわでわー」

さやか「……ほむら、何かした?」

ほむら「はい!」




ほむら「これは妖精さんアイテム『信じてメガホン』の効果です」

ほむら「メガホンを通じ、信じてーと願う気持ちを声と一緒に増幅」

ほむら「荒唐無稽なほら話でも信じさせるという代物です」

ほむら「メガホンを通して言わないといけないのと、より信じてもらうにはメガホンの出力を上げて
    大声にしないといけないのが難点ですかね」

ほむら「多分妖精さん的美学で、信頼度に応じて声も大きくならないと面白くなかったのでしょう」

シャル「相変わらず意味不明な原理の道具ね……しかも、見た目にはふつーのメガホンなのに」

ほむら「そりゃあ、素材はふつーのメガホンですもん」

シャル「え?」

ほむら「妖精さんの科学力で一番すごいのは、その辺の物で道具を作ってしまう事ですね」

ほむら「このメガホンは捨てられていたメガホンと瓶の王冠、それから輪ゴムで出来ているそうです」

さやか「輪ゴムって……」

ほむら「あ、輪ゴムを舐めてはいけませんよ?」

ほむら「妖精さん的に輪ゴムは最強の動力です。以前作ってくれた宇宙船も輪ゴムが動力でしたし」

シャル「どんな理論よそれ……」

ほむら「さぁ? 以前妖精さんに聞いた時には、がんばってもらう、とのお答えを頂きましたが……」

さやシャル(輪ゴムって頑張れば宇宙まで行けるんだ……)

ほむら「さて、シャルロッテさんもクラスメートの一員になりましたし」

シャル「え? ……………あああああああっ!? そ、そういやそうじゃん!?」

シャル「ちょっと困るわよ! だから私は学校なんて」

ほむら「シャルロッテさん」

シャル「な、何、よ」



ほむら「本当に嫌なら通わなくて結構です。酷な言い方ですが、私とあなたは赤の他人……その生き方に口出しは出来ません」

ほむら「今日は無理やり連れてきてしまいましたが、明日からはもうしません」

ほむら「でもこれで、あなたは学生としてこの学校に通えます」

ほむら「あなたはクラスメートに、友人として受け入れてもらえます」

ほむら「先生だって、このメガホンを使えばきっと説得出来ます。出来なかったら、別の道具を使って洗脳したっていい」

ほむら「戸籍だとか在学の書類だとか、そんな面倒臭いものも全部妖精さんパワーで片付けます」

ほむら「だから魔女だとか、人間じゃないとか……どうでもいいじゃないですか」

ほむら「あなたは、学校に通いたくないのですか?」

ほむら「日常に、戻りたくありませんか?」

シャル「……わ、私は……」

ほむら「”そこ”は楽しいですか?」

シャル「え?」

ほむら「”そこ”が楽しいなら、しがみついてください。決して離さないでください。守り切ってください」

ほむら「だけど楽しくないのなら……私達の居場所に飛び込んでください」

ほむら「”此処”は楽しい場所ですから、ね?」





さやか「……シャルちゃん、教室から出て行っちゃったね」

ほむら「仕方ありません」

ほむら「今まで魔女として人を襲っていたのに、いきなり人間に戻ったら、誰だって戸惑うでしょう。早々日常には戻れませんよ」

ほむら「それに私達と出会った時は人に戻れた嬉しさの方が勝っていたとしても、人間になったと実感している内に」

ほむら「やがて罪悪感を抱くでしょう。たくさんの命を奪った自分が幸せになっていいのか、そんな具合に」

さやか「罪悪感って……でも、それはキュゥべえって奴の所為で」

ほむら「シャルロッテさんが本当に無罪放免なのかは、言えません……子供である私には、分かりませんから」

ほむら「だけど私は、シャルロッテさんを助けたいと思いました。友達になりたいと思いました」

ほむら「例え、彼女が何百の屍を築いていたとしても」

さむら「……ほむら」

ほむら「さやかさん。私――――」

さやか「あたしってさ、けっこう潔癖症みたいでさ」

ほむら「え、はい?」

さやか「なんつーのかなー。完璧じゃないと駄目って言うか、中途半端なのは見過ごせないって言うか」

さやか「シャルちゃん以外にも魔女がいるって聞かされてるのに、今までどおりには過ごせないよねー」

ほむら「!」

さやか「他の魔女も助けたいんだろ?」

さやか「アンタに頑張れって言うだけじゃ物足りない。誰かが絶望しているって聞いて、無視なんて出来ない」

さやか「だからさ、アンタの手伝いぐらいはさせてよ?」

ほむら「――――はい! お願いします!」

さやか「ま、あんたと妖精さんの力があれば、あたしなんていらない子でしょうけど」

ほむら「そんな事はありません! 美樹さんは……その、ヒロイン枠ですから」

さやか「今一瞬迷ったよな? それにヒロイン枠って、誘拐されたり人質にされたり、実質役立たずじゃないか!?」

ほむら「ちっ」

さやか「なんだ今の舌打ち!? こんにゃろう!」

ほむら「ひゃあ!? さやかさんが怒ったーっ!?」

さやか「怒るに決まってんだろうがああああああああああああっ!」



ほむら(そうだ……魔法少女が『魔法少女』を、人間が人間を殺すなんて……)

ほむら(そんなつまらない結末は絶対に認めない)

ほむら(もしそれがキュゥべえによって創られた運命だって言うのなら、私が壊してやる)

ほむら(私と妖精さんの力で、壊して、新しい未来を創ってやる)



ほむら(魔女も魔法少女も人間も、誰もが幸福になれる――――楽しい未来を!)



~その頃~




警察官「大体君達は学生だろ。朝っぱらからコスプレをして、しかも同級生を脅すなんて正気の沙汰じゃ」ガミガミ

マミ(鹿目さん……この説教、何時になったら終わるのかしら……)テレパシー

まどか(知りませんよそんなの)テレパシー

まどか(と言うか、私この後パパを呼ばれるんですよ……死にたい。今もーれつに死にたい)テレパシー

マミ(……私、迎えに来てくれる人居ない……)テレパシー

まどか(ぁ……)テレパシー

警察官「おい、ちゃんと話聞いてるのか!?」

マミまど「はい……聞いてます……ごめんなさい……」

マミまど(……濁る……)


今日はここまで!
ちょっと真面目なお話を書こうとしたらこうなった。これは……シリアスと呼んでいいのだろうか?


そしてさやかさんで統一すると言いながらまた美樹さんとうっかり書いてしまった事に愕然としつつ、
マタアオウー!

聖杯戦争でさえ平和に終わったからな


ここのほむらさんに屠殺工場とかを見学させたら大変なことになるな

>>シリアスと呼んでいいのだろうか?
シリアルじゃね?


なるほど、シリアスではなくコーンフレークか…


まぁまともな神経があったら
大勢殺しておきながら学校なんてな

乙乙
困ったことがあったら何でもかんででも妖精さんが解決してくれただけに
ちょっと傲慢気味のほむほむか。続きに期待

タイトルに引かれて読んでみたら面白いこと面白いこと

シリアスかと思いきや、おとぼけ和み空間とか最高じゃない


クロスネタの人類は衰退しました買っちまったじゃないかありがとう



のんびりやってくれい
あとトリップ付けたら?

めがほむ妖精さんのノリに染まり過ぎワロス
ここまで馴染んじゃってると正直現代人としてはちょっとアレな存在だよねww

あとお菓子は作れるけどチーズだけは作れないシャルとなんでも作れるけどお菓子だけは作れない妖精さんの相性抜群だな

おはよーございますーす! なんかもうご感想いっぱいきていて日々ヒャッハーしてます。
世紀末のモヒカン並みに喜んでおります。
ありがとう、ありがとう……!


>>111
妖精さんがセイバーとして召喚されるやつの事でしたら私も読みましたよ!
いやぁ、誰も死なずに終わってよかったよね!(ぇ

>>112  >>114
妖精さん「あまーいあまーいみるくとあうです?」
ほむら「むしろ練乳をかけているようなものかと」

>>115
それでも未練たらたらで学校に残ってしまうシャルちゃんがかわいいと思います!

>>116
いや、ちょっとどころでは……

>>117
人退は当SSの面白さが農民レベルだとすれば、宇宙の帝王クラスの面白さかと思いますので、ぜひ全巻購入を(黒い笑み
そしてトリップですが……すみません。SS初心者なもので、調べてみたけどトリップなるものがどういうものかよくわからず……
誰か教えてくだされorz

>>119
まぁ、周回重ねたほむほむも似たようなものという事で(汗
実は当SSのめがほむさんはお菓子作りが得意という設定があるのですが、シャルの存在によってまるで披露できないw


期待されすぎてネズミ退治を任された仗助のごとくプレッシャーと戦いつつ、
ベアリング弾とともに今日もSSを撃つぜ!



えぴそーど ごー 【ほむらさん達の、ちていだいぼうけん そのいち】



シャルロッテさんと出会ったあの日、私とさやかさんは魔法少女と呼ばれる存在を知りました。

それは祈りによって生まれる少女。願いの代償として命を捧げる戦士。

だけどその末路には悲惨な死しかない。

魔女に殺されてこの世から消えるか、それとも……今まで討ち取っていた魔女になるか。
同胞の命によってなんとか生き長らえているだけの怪物。


それが奇跡の代償だと言われたら、私には否定出来ません。


確かに全ては知らされなくとも、その対価に命を支払わされる事は事前に聞かされているのだから。

支払い方がどんなに残忍で悲惨だとしても、それは知ろうとしなかった者の責任だから。

つまらない、とてもつまらない、当たり前の悲劇。


でも、私はそれが気に入らない。


祈りを捧げ、命を賭け、最後は呪いを振りまく……こんな悲しいお話は嫌い。
嫌いだからもっと良くしてやる。お話の最後が呪いと絶望だと言うのなら、私はその続編を書いてやる。


だって世界は楽しいのだから。

だって世界には妖精さんが満ちているのだから。


さぁ、世界を変えてやろう。


妖精さんの楽しいパワーと人間のいじめっこパワー――――運命すらもいじめてやる気持ちが合わされば……!




ほむら「さあ、そんな訳でやってきました廃工場!」

さやか「はいやってきました廃工場!」

シャル「なんでアンタらそんなにテンション高いのよ……」

シャル「放課後になって教室に来てみればいきなり攫われたし……」

ほむら「おほん。実はさやかさんと話し合ったのですが」

ほむら「これから放課後には、魔女さんの結界を探し回る事にしたのです」

シャル「? 探してどうするのよ」

ほむら「魔女さんとお友達になります!」

シャル「は、はぁ? 友達って……」

ほむら「そして、人間に戻りたい方達に人の身体を与えたいのです」

シャル「……!」

ほむら「勿論強制するつもりはありません。魔女さんにも各々考え方はあるでしょうし」

ほむら「でも、せめて苦しみからは解放したいんです」

ほむら「誰かを呪い続ける事の苦しさは、シャルロッテさんなら知っていますよね?」

シャル「……それで、全ての魔女を救うつもり?」

ほむら「出来る事なら、全て救いたいです」

シャル「無理ね」

さやか「ちょ、シャルちゃん?!」

シャル「キュゥべえがどんな目的で魔法少女を、魔女を作っているのかは知らない」

シャル「だけど、アイツがこの町だけで活動しているとは限らない」

シャル「ううん。他の街にも魔法少女は居るみたいだから、きっと活動の規模は私が知っているよりもずっと広い」

シャル「多分だけど、それなりの数の仲間が居る筈」

シャル「もしかするとこの国だけじゃなくて、世界中で奴等は活動しているかも知れない」

シャル「世界中の魔女を救うなんて、それこそ神様じゃないと出来ないわ」



ほむら「でも、そんなのはやらない理由にはなりませんよ?」

ほむら「やれば助けられた命を、全部救えないから無視した」

ほむら「こんなの、言い訳にしたってろくなもんじゃありません」

ほむら「助けられなかった命に恨まれるのを怖がる、臆病者の台詞です」

シャル「……」

ほむら「確かに私のしようとしている事は偽善かも知れません。
    もしかすると、その所為で何かとんでもない事が起きてしまうかも知れません」

ほむら「でも何もしなければ何も変わらない。悲しい事が悲しいままになってしまう」

ほむら「だったら私は、何かしたいんです」

シャル「……そう……」

ほむら「それにほら、楽しそうじゃないですか!」

シャル「へ?」

ほむら「悪者によって魔物に変えられた人々を救い出す……正にヒーローです! 非日常です!」

ほむら「こんな面白そうな事ほっとくなんて、とんでもないですよ!」

さやか「アンタ、そこは心のうちに隠しとけよ……」

ほむら「思った事はやましくない限り口にする。私はそういう人間になりたい」

シャル「ならんでよろしい」

ほむら「ま、そんな難しい事はどーでもいいじゃないですか!」

ほむら「人助けしつつ友達百人作りましょー!」

さやか「やれやれ」

シャル「本当にやれやれよ……」

シャル「でも……ありが……」

さやか「ん? なんか言った?」

シャル「……なんでもない」

シャル「それより、魔女を探すってどうやるつもりなのかしら?」

ほむら「シャルロッテさんに案内をお願いしたいと思います! 元魔女だし、気配とか分かりますよね?」

シャル「だと思った……いいわ。案内してあげる。丁度近くに結界があるみたいだしね」

ほむら「はい! ありがとうございます!」

さやか「そんじゃ、早速行こうか!」

シャル「ふふ……本当にしょうがない連中ね」



………
……



シャル「さて、早速結界に辿り着いたけど……」

さやか「なんか壁に落書きがあるなぁー。あ、シャルちゃん。ガム食べる?」

シャル「アンタ完全にピクニックと勘違いしてるでしょ。ガムは頂くけど」

さやか「前々から思っていたけど、シャルちゃんって甘党だよね。はい、どーぞ」

シャル「昔から好きなのよ。一番好きなのはチーズだけど……うっ!? 生臭っ!?」

さやか「うわ、吐き出したよ……ちゃんと紙に包もうよ」

シャル「不味すぎて吃驚したんだから仕方ないでしょ……何このガム……鯖味? なんでこんなの買ったのよ」

さやか「ネタ的に美味しそうだから」

シャル「……まぁ、ネタ的には美味しかったけどさ」

さやか「さて、魔女は何処かなー」

シャル「あー、それだけど……多分、この結界に魔女はいないわ」

さやか「はい?」

シャル「どうやら此処は魔女じゃなくて、使い魔の結界みたいなのよ」

さやか「使い魔?」

シャル「魔女から生まれる、手下みたいなものよ」

シャル「基本的には魔女よりずっと弱いけど、その代り数が多い」

シャル「それにグリーフシードも落とさないから、戦うだけ無駄な相手ね」

さやか「えーっと、グリーフシードって確か……魔法少女が魔女にならないためのアイテム、だったよね?」

シャル「その場凌ぎの、ね」

シャル「でも使い魔は人間を襲い、ある程度餌にすると親元と同じ性質の魔女に育つの」

シャル「そうなればグリーフシードを持つようになるから、魔法少女の中には使い魔を”養殖”する子も居るわ」

さやか「うーん……本当ならふざけるなって言いたいけど……」

さやか「でも魔女を狩らないと人間でいられないのなら、止めるのも気が引けるなぁ……」

シャル「私なんかそれが出来なかったから魔女になったしね」

シャル「元々人を食っているようなものだったのに、何を気にしていたんだか……」

さやか「シャルちゃん……」

シャル「ま、昔の話よ。気にしないで」



シャル「それより、私が言いたいのは、使い魔でも注意を怠ったらダメって事」

シャル「具体的には」



ほむら「あははは~♪ 捕まえてごらんなさ~い♪」

使い魔「ふひゃ、ふひゃひゃ、ひゃばぶひゃひゃひゃー!」



シャル「いくら笑顔で接してきたからって、海辺の恋人ごっこを楽しむような相手じゃないって事ね」

さやか「ほむらあああああああああ!? 何してんのおおおおおおおお!?」

ほむら「あ、さやかさん!」

ほむら「こちらの方は魔女さんの使い魔さんだそうです! 人殺しが趣味だそうで」

ほむら「で、人をボールにして遊ぶのが好きなんですって」

ほむら「なので捕まったらボールにされる駆けっこで遊んでいました!」

さやか「何もかも知った上でなんでそんな無駄にスリリングな遊びに興じてんだよアンタああああああ!?」

ほむら「でも悪い子じゃなさそうですよ? 魔人ブウみたいな感じで」

シャル「無駄に適切な例えね……」

ほむら「ちなみに何人かの妖精さんたちは既にボールにされており」

妖精さんA「へいぱーす」
妖精さんB「だんくしゅー」
妖精さんC「きゃっちゃーふらーい」
妖精さんD「かざむきにきをつけろー」
妖精さんE「ちゅうしんからすこしずれたです」
妖精さんF「もっとけってー」
妖精さんG「けられるのがともだちです?」

ほむら「他の妖精さんの玩具になって楽しんでいるようです」

さやか「奴等はMなのか。その手の性癖があるのか?」

ほむら「基本的に構ってちゃんですからね。一番堪えるのはスルーされる事だそうで」

シャル「レベルの高いMね」



ほむら「それにほら、ボールになっても自力で解除出来ていますし」

さやか「自由過ぎるだろ……」

使い魔「ひゃげ!?」

さやか「あ、使い魔がなんか驚いてるっぽい」

シャル「自分の力が無力化されて吃驚したのね。私も今の発言に吃驚したけど」

ほむら「私の方も妖精さんに頼めば解除してくれるでしょう。問題なしです」

シャル(つーか、ボールの状態になっても意思の疎通が出来る前提なのね……出来そうだけど。妖精さんだし)

使い魔「ひ、ひ、ひゃばぶぅぅぅぅぅぅ!?」

ほむら「え? あれ!?」

さやか「なんか、悲鳴混じりに使い魔が逃げていく……」

さやか「どゆこと?」

ほむら「えっと、『ぼくの力が解除されるなんて! こんな場所に居られるか! 
    ぼくは自室に一人で籠っているぞ!』と言いながら帰ってしまいました」

さやか「それ、もろフラグじゃん」

ほむら「ええ、フラグなので心配です……」

ほむら「妖精さんのいるところでフラグを立てたら……」

シャル「? 立てたらどうなるの?」

ほむら「回収します」

シャル「は?」

ほむら「回収します……ほぼ確実に」




<ヒャバブゥゥゥゥゥゥゥゥ……!

さやか「ひ、悲鳴!?」

ほむら「ああ……回収してしまいましたか……」

シャル「つー事は……やられたか」

さやか「え? でも、結界はまだ解けてないよ?」

シャル「私から漏れ出ている魔力で辛うじて残っているんでしょう。その内自然に崩れる筈よ」

シャル「それより問題は、誰が使い魔を倒したって事」

シャル「一般人に倒せないとは言わないけど、まぁ、そんな楽観的な展開はないわよね」

さやか「あー、そうだ……そんでその悲鳴を聞いてしまったという事は……」

ほむら「ええ。私達もフラグを回収しないといけません」

ほむら「それに目的を邪魔する敵キャラの登場はお約束ですし、ね」



マミ「うふ、うふふふふふふふふふふふ。ようやく見つけたわ……暁美ほむらああああああああ……」



さやか「ひぃ!?」

シャル「うわ、まるで般若みたいな顔になってる……そりゃなるか。あんだけの事をすれば」

まどか「あのー、私もいますよー……?」

ほむら「やっぱり来ましたか、えっと……友枝真美子さん?」

マミまど「ずこーーーーーーーーーっ!?」

さやか「これは酷い」

シャル「すごく酷い」

マミ「なんで名字と名前に律儀に余計な一文字付けてんのよ!? 巴マミ! 姓は巴で名前がマミ! はい三唱しなさい!」

まどか「ま、まま、マミさん落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!?」

ほむら「あ、鹿目さんも居たんですね。今日はもう会わないと思っていましたが……警察の方はどうでしたか?」

まどか「……お陰さまで、魔法で色々な事をもみ消す事になったよ……パパの記憶とか」

ほむら「あら、悪い子ですねー。魔法を私利私欲で使っちゃうなんて」

さやか(魔法よりヤバい妖精さんをガンガン私利私欲で使っているお前が言うな)

さやか(そう思いながらも、妖精さんに助けられた事があるので言葉にしないさやかちゃんでした)

シャル「いや、お前が言うなでしょ、それ」

ほむら「私はいいんです。妖精さんパワーは楽しい事にしか使っていませんから」

さやか(そしてこの開き直りである)



ほむら「それよりも、です」

ほむら「さっきの使い魔さん……もしかしなくても、倒してしまいましたか?」

マミ「と、当然じゃない。使い魔は人間を襲うのだから退治しないとね」

ほむら「そうですか……残念です。仲良くなれそうだったのに」

さやシャル「そうかぁ?」

ほむら「……なれそうだったんです。なれませんでしたけど」

ほむら「ま、ここまでの縁って事で、あの方の事は心の奥底にしまっておきましょう」

さやか(忘れる気満々だなコイツ)

シャル(まぁ、使い魔は元人間って訳じゃないしね……ほむらったらちょークール)

ほむら「一応尋ねますけど、もしかしなくてもシャルロッテさんをまだ狙っているのですか?」

マミ「当然よ。今日学校では何もしなかったみたいだけど、何時人を襲うか分からないでしょ」

ほむら「あー、この問答はもう面倒なので全面カットで」

マミ「ちょ!? い、いえ、つまり戦うつもりなのね」

ほむら「何を馬鹿な」

ほむら「使い魔さんが亡き者とされた今、私達にあなたと戦うメリットはありません」

ほむら「ですから、」

まどか(あ、ほむらちゃんが背を向け)

ほむら「逃げるんだよォ―――――――ッ!!」

マまさシャ「……………」

マミまど「に、逃げたあああああああああああああ!?」

さやシャル「置いてかれたああああああああああああ!?」

シャル「ちょ、ま、待ってよほむら!?」

さやか「なんでお前が真っ先に逃げてんだよぉ!?」

マミ「……はっ!? 唐突な事に驚いて意識が飛んでいたわ!?」

マミ「追い駆けないと、きゃっ!?」

まどか「ま、マミさん!? なんで転んで……」

マミ「いたた……な、なんか足が地面に張り付いて……」

マミ「靴裏にガムが付いてるじゃない!? これの所為ね!」

マミ「ああもう! 誰がこんなところにガムを……」

マミ「って、結界内なんだからアイツ等しかいないじゃん! むきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

まどか「マミさん落ち着いてええええええええ!?」



<ムキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!


シャル「うわ。なんか嫌な叫びが聞こえた……私は悪くないぞーっと」

さやか「それより、やっと追いついた……」

ほむら「ひゅー……ひゅー……!」

さやか「……まぁ、今にも死にそうな奴に追いつけない方がどうかと思うけど」

シャル「体力無いわねぇ」

ほむら「し、仕方、ないじゃ、ない、ひゅー、ですか……私、基本、病弱、なん、ぜー……です、ぜー……から……」

さやか「よし、まずは落ち着け……と、景色が元に戻った? 此処は、まだ廃工場の中みたいだね」

シャル「よーやく魔力が切れたみたいね」

ほむら「け、結界が消滅したっ!? こんなに早く!? ごほっ、げほげほげほ!?」

シャル「ああ、もう何やってんだか……何をそんなに慌ててるの?」

さやか「そうだよ。妖精さんパワーがあれば、巴先輩の追撃なんて怖くないって」

ほむら「妖精さんは電波が駄目なんですよ!」

さやシャル「……はい?」

ほむら「だから、電波を浴びると駄目になっちゃうんです!」

ほむら「携帯電話程度の電波でもうへなへなになって、鬱になって、最終的に消えちゃうんですよ!」

ほむら「今のままだと妖精さんパワーが自由に使えないんです! だから今のうちに出来るだけ遠くに逃げたかったんです!」

さやか「え、ええー……じゃあどうすんのよ……?」

ほむら「妖精さんアイテムまでも効力を失う訳じゃないので、完全に手詰まりでもないんですけど……」

シャル「なら、私が結界を展開しようか?」

シャル「そこでなら妖精さんもパワー全開なんでしょ?」

ほむら「それでもいいんですが……」

ほむら「……今回は、折角仲良く出来そうだった使い魔さんを倒されてしまいましたからね……」

さやか(まだ言ってるよ……)

ほむら「ちょいと壮大に痛い目を見てもらうために、これを使うとしましょう」

さやか(? ほむらの奴、ポケットから瓶みたいの取り出した……?)

ほむら「本当はあまりコレには頼りたくないんですけどねぇ……自爆みたいなものですし……」

ほむら「ま、死なないから気にしない気にしない。ぐいっと! ――――げふぅ」



シャル「アンタ何飲んだの?」

さやか「妖精さん製の栄養剤とかか?」

ほむら「いえ、妖精さんを溶かした蜂蜜です」

さやシャル「……はい?」

ほむら「ですから、妖精さんを溶かした蜂蜜です」

さやか「い、いやいやいやいやいや? 意味が分からない?」

さやか「と言うか溶かしたってどういう事よ!?」

ほむら「簡単に言うと、妖精さんは蜂蜜とかに浸けると溶けて一体化するのです」

ほむら「その液体を振りかけると機械が生き物になったり、新生物が誕生したりするのですが……」

ほむら「人間が一口飲めば、短時間ですが電波環境でも凡そ100fぐらいの加護を得られるのです」

ほむら「今回は一瓶飲んだから、500fぐらいかな。ま、ここまで大量だとあまり意味のない数字ですけど」

ほむら「ああ、妖精さんの加護については話すと長くなるので今は省きます。また今度暇な時にでも」

ほむら「一つ言うなら」

さやか「……言うなら?」

ほむら「今の私には近付かない方がいい」

さやシャル「……」

ほむら「私はあっちに逃げます。さやかさんとシャルロッテさんは、適当な物陰に身を隠してください」

ほむら「酷い目に遭うのは、私と……友枝さん達だけで十分です」

ほむら「うふ、うふふ。いい加減しつこいと思っていましたからねぇ……」

ほむら「耐えられるかなぁ? 私でさえ、慣れるのに三年はかかりましたからねぇ……うふふふふふふふふふ」

さやか「その台詞、どう聞いても悪人のそれだぞ」

シャル「もろ悪人面だしね……つーかいい加減名前を憶えてやりなさいよ」

ほむら「愛称ですよ愛称」



ほむら「さあ! ここは私が引き受けます!」

ほむら「二人は早く逃げて!」

さやシャル「なんでフラグ立てるのかなぁ?」ソソクサ

ほむら(……さて、と)

マミ「見つけ、たわああああああああああ……!」

まどか「み、見つけたよ!」

ほむら「ようやく来ましたか。遅かったですね」

マミ「ぜー、ぜー……ふ、ふふ……相変わらずの減らず口ね……」

マミ「思ったよりも逃げ足が速いから、追いつくのに、じ、時間が、掛かったわ……ぜー、はー」

まどか(靴裏に付いたガムを必死に取っていたら見失った、なんて言えない……)

マミ「と、兎に角!」

マミ「追い詰めたわ! なんで魔女が傍に居ないのかは分からないけど、魔女さえ居なければあなたに戦う力はない!」

マミ「大人しくお縄につきなさい!」

ほむら「やなこったです。大体お縄についた私をどーするつもりですか?」

ほむら「はっ!? さてはエロ同人みたく乱暴をする気で」

マミ「せいっ!」

ほむら「きゃっ!?(地面からリボンが伸びてきた!?)」

マミ「よし! 捕縛したわ!」

マミ「ふふ……所詮ただの人間ね。魔女と使い魔がいなければ、こんなにあっさり捕まえられる」

まどか(うわぁ、マミさん悪役っぽい……う、ううん! そんな事思っちゃ駄目! マミさんは正義の魔法少女なんだから!)

ほむら「うぐ、き、キツいです……あの、もう少し緩めてくれませんか……?」

マミ「そうね……魔女の居場所を教えてくれたら、緩めてあげてもいいわよ」

ほむら「それは……出来ませんねぇ(何処に隠れたかは見てないし)」

マミ「なら、魔法で答えを聞き出そうかしら?」

マミ「あまり無理強いはしたくないんだけど……」

ほむら「……そろそろ、かな」

まどか「? そろそろ……?」

マミ「また警察でも呼んだの? 言っとくけど、同じ手は何度も食らわないわよ?」

マミ「あまり得意じゃないけど……記憶の改ざんや、意識を奪う事だって私達の魔法で出来るの」

マミ「今度は警察の人が来ても、魔法で眠らせる。もうあなたの好きにはさせないわ」

ほむら「いえ、そうではなくてですね……」

ほむら「そろそろ『アレ』が身体に馴染む頃だと思いまして」

ほむら「なので言っておきます」

ほむら「私に近付かない方がいい。自分でも制御できないぐらい、今の私は無敵ですからね」



マミ「……とんだ虚勢ね」

マミ「いいわ。本当はやりたくないけど、魔法で」

――――ベキ

まどか「? 何、今の音……」

マミ「鹿目さん、余所見しちゃ駄目よ。暁美ほむらが何をしてくるか分からないのだから、彼女から気を逸らしたら駄」

――――ベキベキベキベキベキ!

マミ「……え?」

まどか「な、なんか天井から物凄い音がし」

まどか「って、なんか天井が落ちてきたあああああああああ!?」

マミ「えええええええええええ!? ああああ、えとえと逃げ」

まどマミ「ごしゃっぺ!?」

ほむら「あら、二人の上に崩落してきた天井の瓦礫が……うわぁ、生き埋めですねぇ……」

ほむら(あれ? でも落石って確か……)

ほむら「……魔女も人間の範疇って事で。うん」

ほむら「おっと、友枝さんが気絶したのか、リボンがボロボロと崩れていきますね。これはラッキー」

ほむら「それでは、すたこらさっさと逃げさせていただきまーす」



シャル「……なんか、とんでもない茶番を見た気がするわ」

さやか「うわぁ……まどか達生きてるかなぁ……」

シャル「魔法少女はあのぐらいじゃ死なないわよ。肉体は頑丈だし」

シャル「それにソウルジェムっていうやつに魂を移されてるからね。それさえ無事なら、心臓をぶっ潰されても死なないわ」

さやか「なにそれ怖い」

シャル「本当に、怖いわねー」

さやか「おっと。それより、ほむらの後を追わないと!」

シャル「近付くなって言われてなかったっけ?」

さやか「だからだよ。心配じゃん」

シャル「おーおー、優しいこって」

シャル「うんじゃあ、ま、こっそりと尾行しますかね」



ほむら「ごひゅー……ごひゅー……も、もう、駄目……」

ほむら「立てない……げほっ、げほっ……み、みずぅ……」

さやか(ほんの三十メートル走っただけでばててるし。工場から出てすらいねぇ)

シャル(あの体力こそ妖精さんアイテムでなんとかしなさいよ)

マミ「お、追いついたわよ!」

まどか「マミ、さん……待って、くださ、うう……」

さやか(あ、追いつかれた……うわ。巴先輩、頭に釘刺さってるよ。気付いてないのか、アレ?)

シャル(まどかはまどかで鉄の棒を杖代わりにしてるし……そりゃ、いくら不死身でもノーダメって訳じゃないしねぇ)

ほむら「た、タンマ、です……もうほんと、走れない……ぜー、ぜー……」

マミ「走ったのはあなたが勝手にした事でしょうが!」

マミ「それに天井の崩落……何か細工したわね!」

ほむら「してませんよ……あんな、一歩間違えたら巻き込まれるような細工なんかしませんって」

ほむら「どーせするなら、落とし穴みたいに、正確に位置を確認出来る罠にしておきます」

さやシャル(うん。アンタはそういう奴だよね)

ほむら「ふぅ……ようやく息も整ってきました……ふぅ」

ほむら「先程も言いましたが、ちょっとしたチートのお陰で今の私は無敵状態です」

ほむら「代償として面倒事に巻き込まれますが、あなた達が今すぐにでも退いてくれた場合、被害は私だけで済みます」

ほむら「正義の味方のメンツもあるかと思いますが、あなた達の精神衛生上のためにも撤退した方が得ですよ?」

マミ「ふん。そんな戯言に耳を貸すと思う?」

さやか(貸さなかった結果何度ボコボコにされたよアンタ)

シャル(とか思ってんだろうなー、さやかの奴)



ほむら「いや、本当に退いてくれませんかね?」

ほむら「正直私も勘弁してほしいんですよ。彼等とは友人ですけど、流石に500fクラスの出来事になると」

ほむら「護身のためとはいえ、人を巻き込むのは本当に申し訳なくて……」

マミ「人を巻き込む? あなた……一体何を企んで」

――――ベゴンっ!

マミ「……………」

マミ「鹿目さん?」

まどか「はい」

マミ「今の音、何かしら?」

まどか「多分、床が抜けた音だと思います。ほら、床が無くなってますよ」

マミ「あら、本当ね」

マミ「ところで鹿目さん?」

まどか「はい」

マミ「床が抜けただけなのに、なんで私達の足元には大穴が開いているのかしら?」

まどか「それは私にも分かりません。廃坑の跡、とかかも」

マミ「ああ、成程。テレビとかで偶にそういうの見るわね」

マミ「そういえば鹿目さん?」

まどか「はい」

マミ「さっきまで私達は廃工場にいた筈なのに、何時の間にか周りが土だらけの景色になっているのはどういう事かしら?」

まどか「私達が、穴に落ちたからですよ」

マミ「ああ、そうなの。流石鹿目さんね」

まどマミ「………」

マミ「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」
まどか「落ちてる落ちてる落ちてるうううううううううううううううううう!?」

ほむら「ああ……今回は地底探検ですか……はぁ」



さやか「ああ!? ほむら達が落ちた!?」

シャル「なんで見滝原にこんな大穴があんのよ!? 可笑しいでしょ!?」

さやか「な、なんとか降りられない!?」

シャル「魔法を使えば少しずつなら降りられるけど……」

シャル「で、でも、落ちて行ったほむらに追いつくのは無茶よ! 自殺行為だわ!」

さやか「そんな……!」

シャル「……仕方ない。とりあえず私だけで行くから、さやかはそこで待ってて」

――――ボゴンっ!

さやか「あら?」

シャル「おりょ?」

さやシャル「……………」

さやシャル「ふ、縁が崩れたあああああああああああああああれえええええええええええええええええええっ!?」



―???―

マミ「きゃああああああああああああああああああああっ!?」

まどか「いやあああああああああああああああああああっ!?」

ほむら「二人とも、五月蝿いですよ」

マミ「スカイダイビングでもないのにこの状況なら叫ぶぐらい普通でしょ!?」

マミ「逆になんでアンタはそんなに冷静なのよ!?」

まどか「こ、こんな高さから落ちたら死んじゃうよ!?」

ほむら「いえ、高層ビルから落ちても生存確率は極めて高ですから」

マミ「はあ!? 何を言って……」

さやか「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

シャル「ぬぅうううううううううっ!?」

まどか「さ、さやかちゃん!?」

ほむら「あら、さやかさんにシャルロッテさん。どうしてこんなところに?」

シャル「足場が崩れて落ちたのよ!」

ほむら「あらあら。だから近付くなって言ったのに……」

さやか「嫌だああああああああああ! 死にたくないぃぃぃ! 死にたくないぃいいいいいいぃいいいっ!!」

ほむら「もー、さやかさんは大袈裟ですねー」

シャル「何が大袈裟よ!? もう十分即死出来るだけの高さ落ちてるわよ!?」

シャル「つーかこの穴どこまで続いてんの!?」

ほむら「さぁ? でも、そろそろかと思いますよ」

シャル「そろそろって何が――――うっ!?」

マミ「な、何!? 突然光が―――――」

さやか「ヤメロオオオオオオオオシニタクナイシニタクナァァァァァァァイ!」

まどか「う、うう……何が起きて……」



まどか「って、えええええええええええええ!?」

マミ「な、なんで……なんで地下に、大自然が広がっているの!?」

マミ「というか地平線が視えるって、一体どれだけ大きな空洞なのよ!?」

シャル「ほむら! 此処は一体!?」

シャル「太陽がないのに周りは明るいし、地下なのに森が地平線まで続いているし……」

ほむら「さぁ? 地球には不思議がいっぱいって事なんでしょう」

ほむら「でも良かったぁ。森があるって事は、大きい動物も住んでいるでしょうからね」

ほむら「……お。噂をすれば早速」

シャル「――――! 何……空から何かが飛んできて……!?」

シャル「お、大きい鷹……違う、翼を持った怪物……グリフォン!? 三頭も来てる!」

シャル「なんでそんな不思議生物が!?」

ほむら「さあ、覚悟はいいですか?」

ほむら「大冒険の始まりですよ!」

シャル「うわっ!? ……ぐ、グリフォンたちが私達を背に乗せた……助けてくれたの?」

さやか「シニタクナイシニタクナイシニタクナイ」

ほむら「さやかさーん、もう助かってますよー」

シャル「本当に、間一髪ね……あれ?」

ほむら「どうしましたか?」

シャル「……いや、グリフォンが三頭しかいないなぁって思って」

\コンノー! オボエテナサーイ!/

\ダレカタスケテェーッ!/

シャル「……………」

ほむら「ま、多分死にはしないでしょう。魔法使えるんですし。無視無視」

シャル「ほむらったら、本当にちょークール」



ほむら「問題はこれからです」

ほむら「多分、展開的にこのグリフォン達の連れていく先には村があって、そこで地底人と交流をするでしょう。何故か日本語で」

ほむら「そんでもって魔王を倒してくれって頼まれるんですよ、多分」

シャル「アンタ、ゲームやり過ぎよ」


~五十分後~


村人D「どうか、どうか魔王を……!」

ほむら「ま、妖精さんパワーがあれば大丈夫でしょう。引き受けます」

シャル「はっ!?」

シャル「え、あれ? なんで……」

シャル「何故私達はグリフォン達に連れてこられた村で、魔王退治を引き受けてんの!?」

さやか「シャルちゃん何してんの? ほら、シャルちゃんの装備もらったよ」

シャル「なんでさやかは既に順応済みなのよ!? 可笑しいでしょこの展開!」

さやか「いや、私も正直訳が分かんないけど……」

さやか「なんというか、慣れた。もしくは諦めた」

シャル「……………そう」

さやか「まぁ、要するに魔王を倒せば地上に戻れるって話だからさ。協力する事になったんだよ」

さやか「はい、シャルちゃんの装備。魔法使いだって」

シャル「一体どんな皮肉よそれ……ちなみにさやかは?」

さやか「僧侶。回復魔法の使い手らしいよ……使い方知らないけど」

シャル「私だってこんな装備なくても魔法なら使えるんだけど」

シャル「ちなみに、ほむらは何?」

さやか「遊び人」

シャル「……納得ね。戦力にはなるけど」

ほむら「みなさーん! そろそろ出発しましょー!」

シャル「やれやれ……今日中に魔王を倒せるといいわねぇ」

さやか「チート使えば余裕っしょ」



――――そんなこんなで始まりました、地底大冒険。

本当は私だけでする筈でしたが……やはり妖精さんのコントロールは難しいです。

ですが、今更考えても仕方ありません。



こうなった以上――――思いっきり楽しまないと、損ですよね♪




今日はここまで!
次回はほぼまどマギ要素なしの、クロスオーバーでやる意味あんの? と言わんばかりのお話です。
じゃあ人退回かと言われると……あの独特の雰囲気を再現するのは大変ですわー(遠い目

そして書き貯め終了のお知らせ。正確にはまだまだ貯まってはいるけど、
一話完結してから投下したい関係上、まだ続きは投下できません。要するに未完成のお話を複数抱えている状態です。

気長にお待ちいただけたら幸いと言い訳しながらサイ・ナラ!

トリップは名前欄に
#の後に適当に文字を入れればOK
自分のは今「#友枝真美子」と入れてる

ひらがなでもオーケーよ?

おれのは
#うららか
っていれてる

トリップばれもあるからわかりにくいやつオススメ

「読者#123」でこんな感じ
#の前が変化しない文字列、#の後がトリップの文字列になる
要はマネ出来ないコテハンが付けられるので成りすまし対策にもなるし、別なスレを立てた時に読者が追い掛けやすくなる


しかし、500fかぁ………どんだけ楽しい事態なのやらww


地球に住んでれば突然開いた穴に落ちて異世界へ行くこともたまにあるよね?

おはようございます。一週間経つ前に戻ってきた>>1でありんす。
>>148 >>149 >>150
の方々が親切に教えてくれたので、今回からトリップを使ってみます。ちゃんと出来ている……はず。うん。

>>153
妖精さん「よくあるよくあるー」
妖精さん「ないことのほうがめずらしかと」
妖精さん「いつでもだいぼうけんです?」

それでは えぴそーど ろく です。
ごーごー



えぴそーど ろく 【ほむらさん達の、ちていだいぼうけん そのに】

 



ほむら「どうもこんにちは。暁美ほむらです」

ほむら「私達は今、見滝原の地下に広がる巨大な地底世界を冒険しています」

ほむら「目標は今日中の帰還。そのためにも地底世界を脅かしているという魔王さんの撃破をしなくてはならなくて……」

シャル「アンタ、誰に言ってんの?」

ほむら「いえ、なんか頭の中の妖精さんがあらすじをご所望したので……あまり気にしないでくださいな」

シャル「ふーん」

シャル(……頭の中の妖精さんという文脈を、ふーんの一言で流せるようになった自分に軽くショックを受ける……)

ほむら「さてさて。そんな訳で私達はお世話になった村を出て、魔王さんの城を目指す訳ですが……」

ほむら「どこに魔王さんの城があるのか、聞いてませんでしたね♪」

さやか「割と根本的なところ放置してるというね」

シャル「んで、どうすんの? 村に戻る?」

ほむら「いえ、ここは妖精さんパワーに頼ります」

さやか「ここはも何も、アンタ全部妖精さん頼りだろ」

ほむら「いいんですよ。頼れるんですから」



ほむら「ではでは。妖精さん、かむひやーっ!」


妖精さん「よばれたー?」


シャル「おぅ!? 草むらから妖精さんが……」

さやか「地底にも住み着いているのか……流石妖精さん」

ほむら「妖精さん妖精さん。私達と一緒に旅をしませんか?」

妖精さん「たびー?」
妖精さん「なさけとか、かけてくれます?」

ほむら「掛けますよー」

ほむら「それから、御供にはきび団子を差し上げます」

シャル(通学鞄からきび団子取り出したよ……何時も持ってんのか? こういう時のために?)

妖精さんA「なんとーっ!?」
妖精さんB「おともさせてー」
妖精さんC「みがわりにしてもいいのよ?」

さやか(あ、増えた)

さやか(……増えたぐらいじゃ違和感を覚えなくなった自分に、なんとも言えない虚しさを感じる……)

シャル「それで、どうするの? 地上に戻る道具でも作ってもらう?」

ほむら「そうですねぇ。頼めばすぐにでも帰れるでしょうが、その選択肢は最後までとっておきましょう」

ほむら「一応魔王さんを倒すって約束しちゃいましたし……それに、まだ地底を満喫していません」

ほむら「帰るのは遊びつくしてから! これ、楽しい事に対するマナーです!」

さやか「つまりアンタが遊び足りないだけじゃん」

シャル「予想通りの答えね」

シャル「……でもまぁ、一理ある」

シャル「確かに未開の地を大冒険なんて面白そうな事、楽しまなきゃ損よね」

さやか「おやおや? アンタ、随分ほむらに毒されたみたいだねぇ?」

シャル「アンタだって、顔がにやけてるわよ?」

ほむら「ふふっ。みんなで楽しめば、楽しさは倍になると言います!」

ほむら「みんなで楽しく、地底を冒険しましょう!」




ほむら「さあ! 私の後に続くのです!」

さやか「ああ、もう。ほむらったら、あたしらを置いてくなって」

シャル「だーかーらー、魔王の城が何処にあるか知らないんだからまずはそれを……」


――――ガサガサ


三人「!」

ほむら「……草むらに、何かいますね」

シャル「揺れ方からして、あまり大きな動物ではないみたいだけど……」

さやか「やっぱりお約束としては――――」


――――ガサッ!


???【げるげるげーっ!】


ほむら(草むらから何か飛び出してきた! あれは……軟体動物……じゃない!)

ほむら(軟体どころかゲル状の身体、向こう側が透けて見える肉質……)

ほむら(尚且つ大冒険序盤の敵性生物と言えば――――)

さやか「スライム!」

シャル「RPGのお約束! まさか本当に出てくるとはね!」

シャル「それで……リーダー、どうする?」

ほむら「え? リーダーって……」

さやか「ま、ここはアンタが妥当でしょ。場馴れしているみたいだし」

さやか「それに……やっぱリーダーは、チームのムードメーカーにもなってくれないとね!」

ほむら「――――分かりました!」

ほむら「相手の実力は未知数ですが、数的有利はこちらにあります!」

ほむら「全員で一気にかかり早期決着を狙いますよ!」

さやシャル「了解!」

三人「やああああああああああっ!」

スライム【げるるるるるるるるっ!】




………
……



さやか「で、だ」

さやか「コテンパンにやられた挙句、仲間を呼ばれ、分裂した小スライムに縛られ、
    私らは恐らくは巣だと思われる場所に連れ去られている訳だが?」

ほむら「いやぁ、スライムは強敵でしたねぇ」

シャル「殴っても全く効かないしねー」

ほむら「シャルさんの魔法も、全然効果ないですし」

シャル「仕方ないじゃん。魔法少女の頃は肉体操作と回復系が得意で、魔女になってもそれで戦ってたんだし」

ほむら「スライム相手には相性最悪、と」

ほむら「てんで役立たずとは、それでもかつて世界を焼き払った一族の末裔ですか!」

シャル「私は普通のサラリーマン家庭の生まれだっつーの」

シャル「大体役立たずだなんだと言ってるけど、アンタが一番役立ってなかったじゃん」

シャル「さやかはちゃんと殴ってたけど、アンタの攻撃は全部かわされてたでしょ」

ほむら「あら、私はスライムの体力を削るのが目的ですよ? 無駄な動きで疲れさせる……最初から計画通りです」

シャル「スライムよりアンタの方が先にばてたけどね」

ほむら「自分の体力を考慮するのを忘れていました」

ほむむ「はっはっはっはっはーっ!」

さやか「笑ってる場合かあああああああああ!?」

ほむら「えー……さやかさん、言ってたじゃないですかー。リーダーはムードメーカーもしないとって」

ほむら「だからこの絶望的な状況でも、ひとつ失敗談を語って笑いを起こそうと」

さやか「時と場合と必要なムードを考えろ! あと失敗談もなにもこうなった原因で誰が笑えるか!」

シャル「まぁまぁ、落ち着きなさいって。どーせなんとでもなるでしょ」

シャル「幸い妖精さんも一緒に拉致られているしさ」

妖精さんA「つかまた」
妖精さんB「たべられるー?」
妖精さんC「にたりやかれたり?」
妖精さんD「おろしてもおいしくいただけます?」
妖精さんE「おどりぐいがおすすめですな」
妖精さんF「かこうされたらひょうじぎむなしです?」
妖精さんG「おさとうづけだとしあわせー」

さやか(この状況で何故また増える……)



シャル「んで? 妖精さんのブレインさんはどうするおつもりで?」

ほむら「そうですねぇ……妖精さんと違い、私達は食べられたらお終いですし」

さやシャル(妖精さんは食べられても終わらないんか……)

ほむら「ですが、よくよく考えると生き物を殺すのはちょっと性分に合いません」

ほむら「なので、スライムさんの方から逃げてくれる状況を作りたいですね」

シャル「具体的には?」

ほむら「無策です」

シャル「おい」

ほむら「いや、希望を訊かれたので答えたまででして……さてはてどうしたものかと」

さやか「なら滅茶苦茶強くなるとかどうよ?」

ほむら「と、言いますと?」

さやか「漫画とかだとさ、そのキャラがものすごーく強いって表現するのに、周囲の動物が逃げるってのがあるでしょ?」

さやか「妖精さんなら、あたしらをそれぐらい強くするのって出来そうじゃない?」

シャル「成程ね。私はいいと思うわ」

ほむら「あー……それは……」

シャル「? どうしたの? もしかして、出来ない事なの?」

ほむら「いえ、なんの問題もなく出来ると思いますよ?」

ほむら「思いますけど……その願いは問題なく叶えられてしまうと不味い予感が……」

さやか「? 別にいいじゃん。強くなるぐらい」

さやか「難なら、あたしがその役やろうか? なんつってー」

ほむら「あ」

さやか「え?」



妖精さんA「いま、おーだーきた?」
妖精さんB「きたきた」
妖精さんC「しかもはじめてのにんげんさんから」
妖精さんD「ぼくらがんばらねば?」
妖精さんE「ごきたいされまくり?」
妖精さんF「こたえねば、ぼくらいらないこになるです?」

さやか「……え?」

妖精さんG「つよくなりたいとのごきぼう」
妖精さんH「ならばちきゅうさいきょーにせねば」
妖精さんI「さいきょーのふうかくほしいね」
妖精さんJ「かぶとむしぐらいかっこよく?」
妖精さんK「かなぶんのぼうぎょをつければむてきでは?」
妖精さんL「むてきすぎるー」

さやか「え? ……ええ?!」

妖精さんM「そのちからはどこからー?」
妖精さんN「どこからでもよいかと?」
妖精さんO「たのめばよかです」
妖精さんP「いくらでもありますしなー」
妖精さんQ「ではたいきちゅうからをきゅーしゅーして」
妖精さんR「どんどんおおきくしていくです?」

さやか「ちょ、ちょーっ!? なんかどんどん増えてる!? すっごい増えてるぅーっ!?」

妖精さんS「ではそのほうしんでー」
妖精さんT「にんげんさんをかいぞうしまうまー」
妖精さんU「いたくはないです?」
妖精さんV「むしろきもちーかもー」
妖精さんW「ちからにおぼれるのもおやくそくかと」
妖精さんX「ならやっちゃう?」
妖精さんY「さっそくやっちゃう?」

さやか「ひぃ!? ち、違うから! 今の違――――」

妖精さんZ「そういん、かいしー!」
妖精さん達「ぴ―――――――――――――!!」

ほむら「……妖精さん、散っちゃいましたね。縛られていた方たちも平然と抜け出しましたし」

シャル「……そして戻って来たわね……怪しい野菜を携えて」



さやか「な、何、それ……?」

妖精さんV「きんにんにーく」

ほむら「金色に輝くニンニク、金ニンニクですか……」

シャル「某漫画に出てきそうな食べ物ね」

妖精さんC「たべればよいかと?」
妖精さんQ「かなぶんいちおくにせんまんびきぶんのぱわーもつです」
妖精さんT「まるかじりしてー」

さやか「えーっと……つ、つまり、これを食べたら強くなれる、と」

ほむら「そうですね。多分、地球最強クラスの強さに」

さやか「い、いやぁ……」

さやか「さっきはああ言ったけど、ちょっと怖いから今回は遠慮する方に――――」

――――ぐらり

シャル「うわっ!?」

ほむら「こんな時に突然、地面のデコボコによるともの思われる揺れに襲われましたー(棒読み)」

妖精さんF「わー?」

さやか(ちょ、妖精さんが揺れでニンニクを手放して……)

さやか(なんでそのニンニクがあたしの顔面目掛けて飛んでくんのーっ!?)

さやか(い、いや! 落ち着くんだ美樹さやか!)

さやか(例え顔に飛んできたとしても、それが一体なんだと言うの?)

さやか(要は食べなきゃいい! 口さえ閉じていればいい!)

さやか(なんの問題もない!)

さやか「……………」

さやか(まぁ、そんな事長々と考えているうちに、ニンニクはとうの昔にあたしの口にinしていたけどー)

さやか(よーし、落ち着こう。まだ口に入っただけだ。落ち着いて吐き出せばまだ間に合う)

――――がたんっ!

さやか(そしてその直後再度襲い掛かる振動で思いっきり噛んでしまい、)

――――ごくんっ!

さやか(ニンニクなのにまさかのイチゴ味という事に吃驚し、思わず飲み込んでしまうさやかちゃんでした)

シャル「……流れるような勢いで、とんでもない茶番を見たわ。本日二度目の」

ほむら「まぁ、妖精さんがこれだけいれば不条理の連鎖が起こるのはむしろ自然かと」



さやか「ど、どど、どうしよう!? 食べちゃったよ!?」

ほむら「諦めましょう」

シャル「決断早っ!?」

さやか「で、でも、でも……!」

ほむら「妖精さん密度F。妖精さんだらけ、妖精さんまみれ、妖精さん濁の状態」

ほむら「あなたは酷い目に遭うでしょう。でもまず死ぬ事はありませんからご安心を」

シャル「……何それ?」

ほむら「うちの蔵に眠っていた、妖精さんの説明書に書かれていた一文です」

ほむら「妖精さんがたくさんいれば、それだけで世界は面白可笑しくなるんです。理屈抜きに」

ほむら「それは馬鹿げた事態……例えばこのような地底大冒険すらも起こす、とんでも現象です」

ほむら「でも死ぬ事だけはないので、ま、楽しんだもの勝ちですよ?」

シャル「納得すればいいのか、戸惑えばいいのか、分からない話ね……」

さやか「でも酷い目に遭うんでしょ!? 一体何がどうな――――」

シャル「……さやか? どうかした?」

さやか「いや、どうかというか……」

さやか「なんか、縄? スライム? まぁ、あたしを縛っているやつが急にキツくなってきた……」

ほむら「? そうなんですか?」

シャル「まぁ、私らを縛っているこれもスライムだし、伸縮自在だろうから急にキツくなる事もあるかもだけど……」

シャル「でも私らのは特に変わってないみたいだから、気の所為じゃない?」

さやか「い、いや、絶対これキツくなってる! めっちゃなってる!」

さやか(う、嘘……なんで、なんであたしだけこんなキツく縛るの!?)

さやか(まさか、このままあたしの身体を引き千切る気……!?)

さやか「や、やだあああああっ!? やだ、やだあ!」

シャル「ちょ、落ち着きなさい!? 大丈夫、大丈夫だから!」

ほむら「……………」

シャル「ほむらもぼけっとしてないで何か言いなさいよ!」

ほむら「……いえ、その……」

ほむら「……さやかさん、大きくなったなぁと思いまして」

シャル「はあっ!? アンタこんな時に何を――――」

シャル「……………」

シャル「……そうね、確かに大きくなったわね」

シャル「目測……身長百七十センチぐらいかしら?」

さやか「え?」

さやか「……確かに、あたしこんなに大きくなかったなぁ」

さやか「……もしかしなくても、”そういう事”ですかね?」

ほむら「そういう事なんでしょうねぇ……」

シャル「そういう事なんだろうなぁ……」



さやか「そ、それはそれで嫌ああああああああああああああああ!?」

ほむら「ああ……」

シャル「叫び声に合わせるようにさやかがどんどん巨大化して……」

――――ブチっ!

シャル「ついにはスライム縄も千切れたけど、まだまだ大きくなって……」

巨大さやか『なんじゃこりゃああああああああああああああ!?』

シャル「……時代遅れのギャグでもなんでもなく、でっかくなっちゃったわね」

ほむら「なっちゃいましたねぇ」

シャル「全長100メートルはありそうね」

ほむら「ありそうですねぇ」

シャル「ついでに肌がなんか黒光りしていて、角とか翅とか生えてるけど……」

ほむら「モチーフがカブトムシなんじゃないでしょうか」

シャル「妖精さんったらおとこのこー」

スライムA【げ、げるるるる!?】

スライムB【げるえええええ!?】

シャル「あ、スライムが逃げてく」

ほむら「そりゃ逃げますよね。食べられちゃうかも知れないですし」

シャル「それにこのサイズ……確かに地球最強のパワーを持っていそうね」

巨大さやか『いやいやいや!? そんな、のーてんきに言ってる場合じゃないよ!?』

巨大さやか『そりゃ、これは最強かも知れないけど……』

ほむら「あ、そうだ! さやかさん! 腕をバッテンの形にしてみてください!」

巨大さやか『んあ? いきなりなんだよ。バッテンにしたところでビームが出る訳でもあるまいし』

シャル(でも律儀に組む、と)

シャル(……ん? なんか、さやかの腕が光って)

ピィィィィィィィィィィィィィィィイ!(光線)

ちゅどーーーーーーーーーーーーんっ!(核爆)

巨大さやか『』

シャル「」

ほむら「うわー♪ 派手な花火が上がりましたねーっ♪」

妖精さんA「はなびというよりきのこぐもでは?」

巨大さやか『妖精さんに的確なツッコミ入れられるようなボケすんなああああああああああああああっ!?』

シャル「ほ、本当に腕から光線が出たよ……こりゃ魔王の一体二体余裕だわ」



シャル「……うん。とりあえず、魔王を倒す算段は出来たとして」

巨大さやか『ちょ、シャルちゃん? もしかして考える事を放棄してない?』

シャル「放棄なんてしてないわよ」

シャル「ただ、考えるだけ無駄だと思い出しただけよ」

巨大さやか『なお性質悪いよぅ』

ほむら「まぁ、妖精さんの事ですから役立つものから役立たないものまで様々な機能が付いているようでしょうし」

ほむら「多分、頑張れば小さくなれると思いますよ?」

巨大さやか『え? そうなの?』

ほむら「なれますよね? 妖精さん」

妖精さんA「なれますが……」

ほむら「なれますが?」

妖精さんA「ますますつよくなりますが?」

ほむさやシャ「……………」

ほむら「まぁ……大きい奴が小さくなるのは強化フラグですよね」

シャル「宇宙の帝王とか代表格よね」

巨大さやか『正直今の段階で十分過ぎるほど自分の力がおっそろしいんだけど……』

ほむら「じゃ、今は我慢しましょう」

ほむら「地上に出たら力をセーブ出来るような指輪を妖精さんに作ってもらいますので、それまで辛抱してください」

シャル(今と言わないあたり、魔王を倒すのに使う気満々なのね……私もそのつもり満々だけど)



ほむら「それより。さやかさん、周りを見渡してくれませんか?」

ほむら「私達は木々に阻まれて周りが見えませんが、さやかさんの視点なら地平線まで見渡せるはずです」

ほむら「もしかしたら、魔王さんの城が見えるかもですよ!」

巨大さやか『うー……なんか納得出来ないけど……まぁ、今更か……』

巨大さやか『もうやけだ! ビッグさやかちゃんの力を見せてやるぜ!』

巨大さやか『どこだー? 魔王の城、魔王の城……』

巨大さやか『むむむ?』

シャル「なんか見つかったー?」

巨大さやか『遠くてよく分かんないけど……あ、見たいって思ったら見えるようになった。この身体すっげー便利』

巨大さやか『あったあった。如何にも中世ヨーロッパって感じで、尚且つ色合いが邪悪なお城が』

シャル「お約束ねぇ」

シャル「そいでほむらさんや? 当然そのお城を目指すのよね?」

ほむら「言わずもがな、です」

ほむら「そんな訳でさやかさん」

巨大さやか『それも言わずもがな、だよ』

巨大さやか『肩に乗せて、そこまで運んであげるよ!』



………
……



巨大さやか『うっひょー!』

巨大さやか『身体が大きくなったから、一歩ですっごい速く動ける!』

巨大さやか『しかも身体が軽い! 大きくなる前より速く動けてる感じだよ!』

巨大さやか『風も気持ちいいし……こりゃ最高だね!』



シャル「こりゃ最高だね! じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

シャル「揺れが! 暴風が! 揺れがあああああ!?」

ほむら「今のさやかさんは元の六、七十倍近いサイズですからね……」

ほむら「単純に考え、走った時の振動も六十倍以上に増幅」

ほむら「ましてや昨今のロボットアニメもびっくりな機動力で動いてますし、そりゃあ大惨事レベルの揺れに襲われますよー」

シャル「そこまで分かっていてなんでさやかの肩に乗ったのよ!?」

シャル「てか、なんでそんな余裕な訳!?」

ほむら「そりゃあ、妖精さんアイテムでなんとかしていますから」

シャル「納得いかねぇぇぇ!?」

シャル「大体なんでさやかは止まってくれないのよ!? さっきからこんなに叫んでるのに!」

ほむら「風が気持ちいいと言ってましたし、多分、風の音で聞こえないんでしょうね」

シャル「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

ほむら「そんなに大変なら、妖精さんアイテムを一つお貸ししましょうか? あまりオススメは出来ませんけど……」

シャル「この揺れが治まるならなんだっていいわよ!」

ほむら「では……このジュースとかどうでしょう。副作用として」

シャル「早くちょうだい!」

ほむら(ああ、奪い取られてしまいました……説明する前に)

シャル「んっ……んっ……ぶはぁ!」

シャル「……何故か甘じょっぱかったわ」

ほむら「妖精さんの作った甘味に美味しさを求めるのは止めた方がいいですよ?」

ほむら(まぁ、ビフテキとか満貫全席はふつーに美味しいのを作れるんですけどね……)




ほむら「それより、揺れはどうですか?」

シャル「ん? あ……全然感じなくなった!」

シャル「流石妖精さんアイテムね!」

ほむら「それはなによりです」

シャル「もー。ほむらったら、こんな便利なアイテムがあるなら独り占めしないで早く渡してよー」ムクムク

シャル「でもま、今回は許してしんぜよう。揺れを感じなくなったら風がすっごい気持ちよくて気分がいいし♪」ムキムキ

ほむら(……シャルロッテさんがどんどん筋肉質な身体になっていく……)

ほむら(シャルロッテさんに渡したのは『揺れればダイエットジュース』)

ほむら(振動のエネルギーを筋肉に変換し、ぶよんぶよんな身体を三十秒でボディービルダー体型に変えてしまう)

ほむら(通販で売られている怪しいダイエットグッズ真っ青な超絶ダイエットアイテム……)

ほむら(効果が絶大過ぎるかつ無制限なので、使いたくなかった一品です)

ほむら(ああ、そうこうしている内にシャルロッテさんが……)

ほむら(シャルロッテさんの原型がないぐらい……筋肉ダルマというより筋肉って感じの姿に……)

ほむら(……私の使っている揺れ対策が、揺れを携帯電話の『頑張って動いてくれる』パワーに変換する道具だというのは黙っておこう)

マチョロッテ「どうかした? ほむら?」←イケボ

ほむら「いえ、なんでもありません」

ほむら(ばれた瞬間すっごい怒るだろうから、今は黙っておいて、隙を見て妖精さんに治してもらおう)

ほむら「それよりも、ほら! お城が見えてきましたよ!」

マチョロッテ「お。本当だ」

マチョロッテ「成程。さやかが言っていたように、趣味の悪い西洋風の城ね」

ほむら「あれだけ豪勢なら、多分魔王さんの城で間違いないでしょう」

ほむら「というか、真偽を確かめるためにはどの道行かないといけませんし」

ほむら「ではさやかさん。ごーごーです♪」

巨大さやか『合点承知ぃ!』



………
……



ほむら「さてさて。魔王さん城(候補)の前まで来ました」

ほむら「門番らしき魔物さんはさやかさんの姿を見た途端逃げ出したので、戦闘は回避出来そうですね」

巨大さやか『……ヒーローとは、悲しいものだ』

マチョロッテ「戦わずに済むならその方がいいわ」

マチョロッテ「それより、さやかはどうする?」

ほむら「このサイズではお城に入れませんからね……魔王さんの本拠地と決まった訳じゃないので壊す訳にもいかないですし」

ほむら「とりあえず、戦闘になるまでは外に居てもらう事としましょう」

ほむら「ああ、それから攻撃を始めるのは私達がさやかさんの肩に乗ってからにしてくれますか?」

巨大さやか『OK、OK。分かった』

巨大さやか『大きくなり過ぎた所為か二人の姿が豆粒ぐらいにしか見えないからね……うっかり踏み潰さないとも限らないし』

ほむら(ああ、だからシャルロッテさんの変化に気付かないと……)

ほむら「とりあえず、合図は妖精さんを通じて行います」

マチョロッテ「何? 妖精さんがテレパシーでも送るの?」

ほむら「いえ、私の頭の中にいる妖精さんが記憶を経由し、さやかさんの記憶へと移動。外に出た後口頭で伝えます」

マチョロッテ「想像以上に意味不明な方法だったわ」

巨大さやか『記憶って経由できんだな……』

ほむら「昔どっかの精神科医が言ってましたからね。神話は人類が共有する精神である、みたいな感じの事を」

ほむら「多分そこを通ってんじゃないでしょうか?」

巨大さやか『そこって何処だよ』

マチョロッテ「ま、まぁ……そんじゃ、早速私達は中に入るとしましょうか」

ほむら「あ、待ってください」

ほむら「流石に施錠されていると思うので、妖精さんアイテム『プライバシーなんてないさ針金』で鍵を開け」

――――ペキンッ!

ほむら「……はぇ?」

マチョロッテ「鍵は掛けてないみたいね……いくら魔王とはいえ、不用心ねー」

ほむら(鍵の存在に気付かないぐらい、パワーアップしてる……)

ほむら(あ、ヤバい。これマッチョ化がばれたら絶対ヤバいです)

マチョロッテ「どうかした、ほむら?」

ほむら「いえ、なんでもないです。本当に」

マチョロッテ「それならいいけど」

マチョロッテ「一応敵のアジトかも知れないんだから、気を引き締めときなさいよ?」

ほむら「そーですねー。(あなたの)矛先が自分に向かないよう注意しておきます」

マチョロッテ「相変わらず自分本位な奴ねぇ……ま、アンタ自身に戦う力はないし、それでいっか」

マチョロッテ「んじゃ、突撃ーっ!」

ほむら「とつげきー」ウワノソラ



~魔王城(仮)内部~


魔物A「ぎゃああああああああ!?」

魔物B「ば、化け物だあああああああああ!?」

マチョロッテ「……さっきから何故か魔物が逃げていくわね」

ほむら「ほんと、なんででしょうねー」目線逸らし

マチョロッテ「ま、お陰で楽々と探索出来るけど」

ほむら「ほんと、よかったですねー」目線逸らし

マチョロッテ「……アンタさぁ、さっきから上の空だけど」

マチョロッテ「一応此処、敵陣かも知れないのよ? 緊張感持ちなさいよ」

ほむら「あ、失礼ですねー」

ほむら「鹿目さんや友枝さんと違って、私はちゃんと警戒はしています」

ほむら「ただ、妖精さん濁の状態では警戒すべきものが特異なので」

マチョロッテ「さいで」

マチョロッテ「……つまり、いよいよ見えてきたあの如何にもって雰囲気の扉を開けるのは私って事?」

ほむら「勿論。私は無力な人間ですもん」

マチョロッテ「私だって今はそうよ」

ほむら(いや、今は違う……と言いたいです……言いませんけど)

マチョロッテ「ま、いいや」

マチョロッテ「んじゃ、おじゃましまーす」

ほむら「おじゃましまーす」

ほむら(おっと。扉の向こうは中々広い空間ですね……ぶら下がっているシャンデリアとか床の絨毯とか、中々豪勢な雰囲気)

ほむら(そしてお約束のように、部屋の最奥のご立派な椅子にふんぞり返っている御仁が一人居ますね)

ほむら(姿は人間そっくり。だけど肌は紫、頭には三本の角、それから趣味の悪い貴族風の恰好……)

ほむら(ザ・魔王に相応しいお姿の方ですね)

ほむら(これからお食事をするのか、部屋の隅には人が十人ぐらい入れそうなぐらい大きなお鍋があって)

ほむら(そのお鍋の上には、生け贄らしき、ロープで縛られた金髪と桃色の髪の女の人二人が……)

ほむら「ん?」



マチョロッテ「あ、気付いた?」

マチョロッテ「アレって……アイツら、よねぇ?」

ほむら「お鍋から立ち上る湯気の所為で姿はよく見えませんけど……」

??「そ、その声は暁美ほむら!? 暁美ほむらね!」

??「こんな目に遭わせて、無事に帰れると思わない事ね!」

???「ちょ、なんで挑発してるんですかー!?」

???「今の状態じゃ敵対する以前の問題ですよぉ!?」

ほむら「最近すっかり聞き慣れたあの声からハッキリと分かります」

マチョロッテ「やっぱりあそこにいるのは……」

マチョロッテ「鹿目さんと」

ほむら「友枝さん!」

友枝?「何時まで引っ張んのよそのネタ!?」

マミ「とーーーーーーーーもーーーーーーーーえーーーーーーーーーーーーーって何回も言ってんでしょぉ!?」

ほむら「やだなぁ。わざとですよ、わ・ざ・と♪」

マミ「むきいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

まどか「マミさん落ち着いてよぉ!?」

まどか「イライラしちゃう気持ちは分かりますけど、私達今ロープで縛られて」

まどか「ソウルジェムは没収されたから魔法は使えず、沸騰するお鍋に今にも落とされそうなんですよ!?」

まどか「ここは一時休戦してでも助けてもらわないと……」

マミ「鹿目さん」

まどか「は、はい?」

マミ「正義っていうのはね、妥協したらその時に終わるの」

マミ「私達は高潔な、正義の魔法少女! 悪とはどんな形であれ借りを作る訳にはいかないのよ!」

まどか「えぇー……」

ほむら「友枝さんって、面倒見が良いだけでリーダーには向かないタイプだと思います」

マチョロッテ「降伏するぐらいなら死を選ぶとか言い出しそうよねー。プレッシャーにも弱そうだし」



マチョロッテ「つーか、アンタらなんでこんな場所に居んのよ。魔王に雇われたの?」

マミ「拘束された姿を見てなんでそんな答えに至るのよ!?」

マミ「あなた達だけが変な動物に助けられた後、私達底なし沼に頭から落ちたのよ!」

マミ「私がリボンの魔法を使えたから助かったけど、そうじゃなかったら死んでいたわ!」

ほむら(いや、それはむしろ底なし沼に落ちてラッキーだったんじゃないでしょうか……)

マチョロッテ(地面だったらぺっちゃんこだよね……)

マミ「しかも、なんとか脱出出来たけど体力の消耗が激しくて……」

マミ「運悪くオークとかいう化け物に見つかり、戦う事も出来ずに捕まり!」

マミ「貢物って事でこの魔王城に連れてこられたのよ!」

ほむら「あー……それは、」

ほむら「ラッキーでしたね。捕らわれなかったら私に会えず、地上に帰れませんでしたよ?」

マミ「ふしゃあああああああああああ!!」

マチョロッテ「そこは少しで良いから気遣いなさいよ……巴さん、威嚇する猫みたいな声上げてるわよ」

マチョロッテ「あとさー、さっきから魔王らしき人が私達にぽかんとした表情を向けているけど……」

魔王「あ、やっと気付いてくれた」

魔王「……おほん……ふん。地上人が、地底の魔王たる私に何の用だ?」

ほむら「あ、魔王さんと名乗ってくれましたよ!」

ほむら「わざわざ目標を探す手間が省けました!」

マチョロッテ「そうね」

魔王「――――ほう、成程な」

魔王「大方我を倒そうとやってきたのだろうが……なんとも愚かしい」

魔王「いいだろう! 知識と恥を持たぬ地上人に我の力を見せほむら「妖精さんアイテム『性格やや反転光線銃』~」

魔王「え、しばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばーっ!?」

マチョロッテ「うわ、コイツ不意を突きやがった。しかも光線銃で魔王を攻撃って……」

ほむら「生きるか死ぬかの戦いをしようとしているくせに、長々と話しちゃってる方が悪いんです」

ほむら「それにほら、別に殺した訳じゃありませんし」

ほむら「今の光線銃は、名前の通り性格をやや反転させるものです。ややですので、二回当てても元の性格に戻れないのが要注意」

ほむら「で、あの魔王さんが悪者だって言うのなら今頃」

魔王「おお……私は、今までなんと非道な事をしていたんだ……!」

ほむら「いい人になりましたね♪ これにて一件落着です!」

マチョロッテ「なんとてきとーな……」



巨大さやか『ちょっと待てええええええええっ!?』




ほむら「きゃっ!?」

マチョロッテ「うわっ」

マミ「どぅえええええええええええええええええええええええっ!?」

まどか「なんか黒光りしているさやかちゃんの顔をしたでっかいお化けが、お城の壁を壊して中に入ってきたああああああああああ!?」

ほむら「なんだ、さやかさんじゃないですか……驚かさないでくださいよ」

まどか「え゛!? アレさやかちゃんなの!?」

巨大さやか『なんだじゃないよ!?』

巨大さやか『100メートル近いサイズになった私の力は何処で披露すればいいの!?』

巨大さやか『魔王を倒すしか価値のなくなったあたしの出番はどうなったんだ!?』

ほむら「さぁ?」

巨大さやか『ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

マチョロッテ「ねぇ、反省会は後にしてさぁ」

巨大さやか『おい!? おーいっ!?』

マチョロッテ「早いとこ、あの二人を助けてあげましょうよ」

マチョロッテ「あのままにしてたら薫製になっちゃうわよ?」

ほむら「あー、確かにそうですねー……」

マミ「あ、あなた達の助けなんて、要らないんだからねっ!」

まどか「マミさん、それ案外直球で助けを求めているようなものですよ」

マミ「え?」

ほむら「……どの道放置は出来ません(自力で地上に戻れるとは思えませんし)」

ほむら「しょーがないから、助けるとしましょう」

マチョロッテ「そうねー。仕方ないから助けましょうか」

マミ「う、ううううううううっ!」

巨大さやか(あ、巴先輩涙目でぷるぷる震えてる……かわいい)



ほむら「じゃ、私が友枝さんの縄を解くとしましょう」

ほむら「動かないでくださいねー、友枝さん」

マミ「くっ……こんなの、屈辱だわ……!」

マミ「しかも、あの人が魔王だとしても……性格を変える、つまり洗脳する魔法を躊躇わず使うなんて……」

ほむら「もー。魔法なんかじゃありません。科学です!」

ほむら「ね! 妖精さん!」

妖精さんA「そのとおりですな」
妖精さんB「まほうなんて、ひかがくてきすぎ?」
妖精さんC「じだいおくれよねー」
妖精さんD「まほーがゆるされるのはちゅーせーまでです?」
妖精さんE「きゃははとわらうべきでは?」

マミ「っ!?」

マチョロッテ(ほむらの髪の中から出てきた妖精さんに驚いたみたいね……何時の間に潜んでた、と訊くのは野暮かしら)

マミ「な、何よ……使い魔が生み出した道具なんでしょ? だったら魔法でしょ」

ほむら「あれ? そういえば言ってませんでしたっけ?」

ほむら「彼等は妖精さん。使い魔ではありませんよ」

マミ「嘘おっしゃい! 使い魔じゃなかったら、一体何なのよ!?」

ほむら「何って、妖精さんは妖精さんだと思いますけど……」

マミ「ふん! 説明出来ないじゃない!」

マミ「やっぱりそいつらは使い魔なのね! 懐柔しようってつもりなんでしょうけどそうはいかないわ!
   あなたの力なんて借りなくても――――」

ほむら「え、わ、ちょ!? 縄緩めている時に暴れたら」



――――しゅるり

ほむら「あ」

マミ「へ?」

マチョロッテ(あ、縄が解けちゃった)

マチョロッテ(で、その時不思議な事が――――起こらず、巴さん、重力に従ってまっさかさま)

マミ「あっちゃあああああああああああああああああああああああ!?」

マチョロッテ(見事熱湯風呂にダイブ、と)

まどか「マミさあああああああああああああああああああああああん!?」

マミ「あちゃ!? あちゃ、ほあっちゃあ!?」

ほむら「大変です!」

ほむら「妖精さん! 友枝さんの火傷を冷やしたいので、氷を用意してくださいな!」

妖精さんB「すこしまってくださればー」

ほむら(よし、妖精さんが散っていった……)

妖精さんD「ごよういできたー」

ほむら「ありがとうございます! ……注文したのは氷なのに、なんで届いたのは氷風呂なんでしょうね……」

ほむら「ま、いいや! さあ友枝さん! こっちの氷風呂に浸かって身体を冷ましましょう!」

マミ「あひ、あひぃ……!」

マミ「ああ……冷たい……生き返るぅ……」

ほむら「えー、熱湯に浸かっていた時間は十秒でしたので……」

ほむら「十秒の宣伝時間が与えられます! さぁ、どうぞ!」

マミ「あ、えっと今度CD出す事になりました! その名もティロ・フィナーレ音頭」

マミ「って、何を言わせんのよ!? というか何言ってんのよ私!?」

ほむら(どうやらあの氷風呂には、熱湯に浸かった後入ると思わず宣伝したくなる効果が付加されていたようですね)

ほむら(……巴さんに傷が見られないあたり、治癒効果も付いている、と)

ほむら(面白さは忘れず、しっかりとオーダーをこなす。流石妖精さんです)

まどか「マミさん、CD出すんですか?」

マミ「なんでちょっぴり信じているの鹿目さん!? 出さないから!」



マミ「ああもう! こんな時にもふざけて……!」

マミ「やっぱりあなた達と一緒になんて居たくない! 私達だけで帰るわ!」

ほむら「あらら、走って部屋の外に向っちゃいましたか……」

まどか「ま、マミさん置いてかないでぇ……」

マミ「うっ!?」パタリ

ほむら「……あれ?」

ほむら「友枝さん、急に倒れて……動かなくなりましたね?」

まどか「え!? ま、マミさん!? どうしたの!?」

まどか「まさか、さっきお鍋に落ちちゃった時の火傷が!?」

マチョロッテ「いや、単にソウルジェムから離れすぎただけでしょ。没収されたって言ってたし」

ほむら「と、言いますと?」

マチョロッテ「ああ、そういやアンタには話してなかったわね」

マチョロッテ「魔法少女って、キュゥべえと契約する時魂をソウルジェムに封じてんのよ」

マチョロッテ「つまり身体はただの入れ物というか、乗り物みたいなもので、ソウルジェムが本体なの」

マチョロッテ「で、乗り物が本体からそう遠くまで離れられる訳ないでしょ?」

マチョロッテ「ソウルジェムから大体100メートル以上離れると、あんな感じにぶっ倒れちゃうのよ。要は死体になるのね」

マチョロッテ「ソウルジェムを手元に戻してあげれば回復するけど、早くしないと腐っちゃうわ」

ほむら「へー」

まどか「何それ」

ほむら「え?」

マチョロッテ「え?」

まどか「私……そんなの聞かされてないけど……」

マチョロッテ「え」

ほむら「え?」

マチョロッテ「……………」


マチョロッテ「あ、やべ。これ昔キュゥべえを問い質した時に聞いた話だった」




まどか「ちょっ……ええええええっ?!」

まどか「それってどういう事!? わ、私達の本体がソウルジェムって……」

巨大さやか『あ、あたしもそれシャルちゃんから聞いたよー』

まどか「なんで極々普通の中学生に過ぎない筈のさやかちゃんまで知ってんのっ!?」

マチョロッテ「あ、あー、えっと、今のはオフレコです。報道したらその新聞社終わりだから?」

まどか「私新聞記者じゃないから!?」

マチョロッテ「じゃ、じゃあアレだ! 悪者が精神ダメージを期待して言うアレ! どう!?」

まどか「どう、じゃないよぉ!? 相談するならせめてほむらちゃんにしてよ!?」

ほむら「さてと。魔王を倒しましたし、そろそろ帰るとしますかねー。あ、村に報告しないといけませんか」

まどか「ほむらちゃんなんでそんなすっごい無関心なの!?」

まどか「今の話ものすっごく重要だよね!? アニメだったら三話か四話ぐらい引っ張れる話題だよ!? 少女漫画なら五巻は引っ張るよ!」

まどか「そんでもって私はゾンビにされたんだって言って、好きな男の子を諦めちゃうようなイベントが発生する事態だよぉ!?」

ほむら「だからですよ。そのイベント、暗い話しかなさそうじゃないですかー」

ほむら「私、そういう話好きじゃないんです。愛と正義が勝つ、シンプルで楽しいストーリーが好きなんです」

ほむら「最近はなんか小難しくて灰色な話が多過ぎると思うんですよ。シンプルはシンプルなりに需要があると」

まどか「話逸らさないでよ! どこまで興味ないの!?」

マチョロッテ「あー、ほら、あれだ」

マチョロッテ「本体がソウルジェムだから、身体はいくら傷付いても平気だから」

マチョロッテ「不死身の魔法少女。ちょっとカッコ良くない?」

まどか「引き攣った笑顔でメリット言われても全然喜べないから!」

ほむら「いや、どうなんでしょーね? 弱点剥き出しで、しかも詳細を本人に伝えないって……」

ほむら「私には万一謀反を起こされても簡単に制圧出来るようにするための、保険にしか思えないのですが」

まどか「そしてほむらちゃんはなんでテンション落ちる事言うのぉ――――――――!?」



………
……



ほむら「さてさて。魔王さんを(形式的に)倒したので、さやかさんの肩に乗って村まで戻ってきましたー」

ほむら「魔王さんが村人さん達と和解したいと言った時はどうなる事かと思いましたが」

ほむら「村人さん達に犠牲者がなかったお陰で、案外すんなりと仲良くなってましたねー♪」

マチョロッテ「その記念の晩餐ってのに誘われて、お腹もいっぱいになったしね。いやぁ、幸せだわー」

ほむら「辺りが暗くなるまで楽しんでしまいましたよ♪」

ほむら「妖精さん達も、あまーい角砂糖をたくさんもらって良かったですね!」

妖精さんA「しあわせのしろいこなー!」
妖精さんB「なくてはいきていけぬ」
妖精さんC「ころしてでもうばいとるものでは?」
妖精さんD「きれるとゆめにでるです」
妖精さんE「じょーちょもふあんていになるかと?」
妖精さんF「きせいされぬのがふしぎなおいしさ」

マチョロッテ「砂糖をもらった感想とは思えないぐらい物騒なんだけど」

ほむら「妖精さんにとってはそれぐらい大切なものなんですよ」

巨大さやか『いいなぁ……あたしは村に入れなかったからなぁ……大き過ぎて』

ほむら「さやかさんは自業自得です。妖精さんの前で迂闊な発言をするのは社会的に自殺行為なんですから」

巨大さやか『何時も自由気儘なお前が言うか?』

ほむら「これでも言動には気を付けているんですよ? 焚き付け方にはちょっとしたコツがあるので」

ほむら「……ところで、何故あなた達は晩餐に参加しなかったのですか?」

ほむら「鹿目さんに、友枝さん」



マミ「……ふん」

マミ「助けた事で、気を許すと思ったら間違いよ」

マミ「私達は魔女を狩る者なの。魔女を守ろうとするあなたとは決して相容れない」

マミ「それに、私があなた達から離れようとした時なんらかの魔法で私を攻撃したわよね? 随分と乱暴なのね」

ほむら(攻撃? ……ああ、ソウルジェムから離れすぎた時の事ですか)

ほむら(それはあなたの自爆です、とは言えませんねぇ……)

マミ「そんなあなたと一緒に食事なんて、願い下げだわ。それに魔王を洗脳したように、村人を洗脳していないとも限らないしね」

ほむら「やれやれ……もう少し歩み寄る努力をしてくれないものですかね?」

ほむら「あなた方魔法少女が何人敵になろうと妖精さんパワーの前じゃ塵芥に等しいんですから、諦めて和解しましょうよー」

巨大さやか『それを言っちゃうから歩み寄れなくなるんじゃないかなぁ』

マチョロッテ「上に同意」

ほむら「えー?」

マミ「……ふんっ」

ほむら「やれやれ……これは先が思いやられます」

さやシャル(こっちの台詞だっつーの)

ほむら「……っと、楽しみ過ぎてすっかり忘れていましたが」

ほむら「辺りがすっかり暗いという事は、恐らく夜を迎えたと思われます」

ほむら「携帯の時刻が七時を越えましたので、地上と昼夜のサイクルは同期しているとみて間違いはないでしょう」

ほむら「なら、今頃地上はいい感じに夜の筈です」

ほむら「私は平気ですけど、さやかさんは、流石にもうお家に帰らないとご両親に怒られますよね?」

巨大さやか『あ、そうじゃん!? 忘れてた!』

マミ「ふん。簡単に言うけど、どうやって地上に帰るつもり?」

マミ「私達が落ちてきた穴の場所は分からない。そもそも、ここが地下何メートルかも分からない」

マミ「いえ、あの時の感覚から言えば、地下1000メートルはありそうね」

マミ「そんな深さからどうやって脱出する気で――――」

ほむら「妖精さん妖精さん。そろそろ地上に帰りたいのですが」

妖精さんA「では、かえりみちをつくりまっせ」

マミ「なっ……何を言っているのかしら?」

まどか「どうやって帰り道を作るの?」




ほむら「あ、そういえばお二人は妖精さんの発明をあまり見ていませんでしたね」

ほむら「さやかさん達も、本格的な発明を見るのは始めての筈です」

巨大さやか『え? 本格的って……』

ほむら「論より証拠。百聞は一見にしかず」

ほむら「妖精さん。お願いしますね」

妖精さんA「りょーかいしたー」

ほむら「さぁ、作り始めますよ」

マチョまどか巨大マミ「!?」

マチョロッテ(な、何!? 妖精さん達がものすごい速さで動いてる!?)

巨大さやか(眼にも止まらぬ速さだ……)

まどか(そ、それで、何かがすごい勢いで建っていく!?)

マミ(ああ……こ、これは……!)

妖精さんC「かんせいしたです?」

ほむら「おお、これは中々……」

マチョロッテ「中々ご立派な……洗面所、よね?」

巨大さやか『洗面所に見えるけど……』

まどか「……洗面所?」

マミ「……暁美ほむら。ふざけているのかしら?」

マミ「洗面所で一体どうやって帰るのよ!?」

ほむら「さぁ? 作ったのは妖精さんですから、私も説明を聞かない事にはなんとも」



ほむら「妖精さん。これをどう使えば地上に帰れるのですか?」

妖精さんD「てをあらうとながされてー」
妖精さんE「いきたいばしょにいけます?」

ほむら「ほほう。流されると行きたい場所、つまり地上に帰れると」

ほむら「……水は下へと流れる構造なのに?」

妖精さんC「そこがおもしろいかと?」
妖精さんD「したへいくのにうえにいく」
妖精さんE「だましえてきなおもしろさ」

ほむら「成程。確かに面白いですね」

マミ「なんで納得してんのよおおおおおおお!?」

巨大さやか『巴先輩。あまりムキにならない方がいいっすよ』

巨大さやか『考えるだけ無駄ですから』

マミ「え、えぇー……」

まどか(なんか、さやかちゃんが精神的にすごく逞しくなってる気がする……)

ほむら「とりあえず私から地上に帰るとしましょう」

ほむら「多分私からじゃないと、絶対に触ってくれそうにない方が二人居るので」

マミ「と、当然ね」

ほむら「じゃ、早速」

ほむら「蛇口をひねってー、出てきた水で手を洗シュンッ!!

まどマミ「!?」

巨大さやか『あ、ほむらが消えた』

マチョロッテ「おー、すっごい……流石妖精さんの発明品。こんな形でも効果はしっかり発揮すると」

マチョロッテ「あ、捻った蛇口が勝手に動いて、水を止めたわ」

妖精さんE「かんきょーにやさしいせっけいですからなー」



巨大さやか『いやはや、何度も妖精さんアイテムを見てきたけど、これは凄いや』

巨大さやか『ところでこれってどんな仕組みなの? 流されたほむらはどうなる訳?』

妖精さんA「もこもこにかわります」

四人「……はい?」

妖精さんA「もこもこじゃないといけないくうかんとおるです」
妖精さんB「そのままだとそりゅーしれべるでばーらばら」
妖精さんC「ぼくらはへいきだけど、にんげんさんはもこもこだめだからー」
妖精さんD「とけて、おおきなもこもこのなかまいり」
妖精さんE「もやもやはなんとかなるけどねー」
妖精さんF「でてくるときに、もどるしようです?」

マミ「も、もこもことかもやもやって何……?」

マチョロッテ「……さぁ? どうやら特殊な空間を経由して地上にワープするみたいだけど……」

マチョロッテ「なんかすっごい難しい手法使ってない? それともこれが一番簡単なの?」

妖精さんB「なんいどはそんなに」
妖精さんA「でも、そこそこやりごたえはあるかと」
妖精さんD「くうかんつなげればすみますが」
妖精さんE「かんたんすぎるので」
妖精さんC「ぬるげーはきらわれるです?」
妖精さんF「おもしろみがないなー」

巨大さやか『空間つなげるのって簡単なんだ……』

マチョロッテ「何はともあれ面白さ重視なのね……」

マチョロッテ「ま、ほむらは無事に帰還したでしょうから、次は私が行こう」

マチョロッテ「手を洗ってーシュンッ!!

巨大さやか『じゃ、次はあたしが』

巨大さやか『手を洗いーのシュンッ!!

まどか「ああ、さやかちゃんも消えた……あんなに巨大でもワープ出来るんだ……」

まどか「……残ったの、私たちだけになっちゃいましたね」

マミ「……なっちゃったわね」

マミ「……使い魔の作った道具なんて、できれば触りたくないけど――――」

妖精さんA「おきにめしませぬか?」
妖精さんC「ぼくら、やくたたず?」
妖精さんR「いらんこ?」

マミ「うっ!?(つぶらな瞳で見つめてきている……正直、可愛い)」



マミ「ええい! 女は度胸よ!」

マミ「手を洗ってシュンッ!!

まどか「マミさんが消えた……こ、怖いから目を瞑りながら……私も洗うっ!」

まどか「……………」

まどか「あれ? 何も起きてない……」

まどか「!?」

ほむら「あ、鹿目さん。おかえりなさーい」

まどか(ほ、ほむらちゃん!? という事は……)

まどか「こ、此処、私達が地下に落ちる事になった穴があった……廃工場?」

まどか「って事は、地上に帰れたんだ!?」

ほむら「ええ、その通りです。友枝さんも無事ですよー」

マミ「鹿目さん! 大丈夫? なんともない?」

まどか「え、ええ……なんとか……」

まどか(それにしても、こんな長距離の瞬間移動を本当に実現するなんて……)

まどか(使い魔の力とは思えない。ううん、今まで戦ったどんな魔女よりも凄い力がないと多分実現出来ない……)

まどか(そもそも、『魔女』にこんな事って出来るの?)

まどか(もしかして、本当に妖精さんは『妖精さん』……?)

ほむら「さて、それより……どうしましょうかね」

マチョロッテ「どうしたものかしらね……」

マミ「そうね……流石にこれは、どうしたものかしらね……」

まどか(? みんな、何を見て……)


巨大さやか『……………』


まどか「……あー」

巨大さやか『あー、じゃないよまどかぁ!?』



巨大さやか『私大きいままなんですけど!? これじゃ家に帰れないんですけど?!』

巨大さやか『小さくなろうとしたらなんか邪念みたいのが込み上がってきて怖くて出来ないし!』

ほむら「ふーむ。小さくなると悪に目覚めて暴れ回る、と……王道ですね」

マチョロッテ「まぁ、大きい奴が小さくなってパワーアップの流れって、悪役のやつだもんね」

巨大さやか『どうすんの!? どうすりゃいいのぉ!?』

ほむら「まぁまぁ。落ち着いてくださいな」

ほむら「妖精さんに頼んで、正義の心を失わずに小さくなれる道具を作ってもらいます」

ほむら「ただ地上には電波があるので、まずは私の家に帰り、そこで作ってもらう事となります」

ほむら「直せるのは私が帰宅してから。なのでざっと一時間後ってところでしょう。
    明日の学校には問題なく通えるかと……って、明日は休日でしたか」

巨大さやか『で、でも、お母さん達は……』

ほむら「『信じてメガホン』を使って、親元を離れて暮らしている私の手伝いをしてくれている、とでも説明しておきます」

ほむら「あれ、電話越しでも効果がありますからね。説得は容易ですよ」

マミ「……何を言っているのかよく分からないけど、それ、洗脳じゃないかしら?」

ほむら「どちらも元々あった意思を捻じ曲げるという点では同じです。大差ない大差ない」

マミ「全然違うわよ! 一般人を洗脳なんて断固として認められない――――」

ほむら「非難するのは勝手ですけど、その前に代案を提示してほしいですね」

ほむら「策もなしに現行案を否定するのは、何もせずぼうっとしているのと変わりません」

ほむら「まっとうな手法ではどう考えても対処不可能なんですから、多少非人道的な道に突っ走るのは仕方ないと思いますよ?」

マミ「う、うう、うぐぐぐぐ……!」

ほむら「さ、反論も出なくなりましたね」



ほむら「とはいえ私が戻るまでの一時間、さやかさんをこのまま置いておく訳にもいきません」

ほむら「いくら此処が人気の無い廃工場と言っても、全長100メートルの人影は目立ちますからね」

ほむら「なんとか隠さないと、ツイッターやらなんやらに写真が載ってしまいます」

巨大さやか『隠すったって、何処にだよ?』

ほむら「海です」

巨大さやか『……海?』

ほむら「はい。幸いこの工場は海の近くに建っているようですから、そのまま海にダイブ出来ます」

巨大さやか『いやいや。それってつまり潜って隠れろって事でしょ!? 無理だからそんなの――――』

ほむら「多分大丈夫ですって! ほら、やってみなきゃ分かんない!」

巨大さやか『……確かにやってみなきゃ分かんないね。妖精さんだもんね』

巨大さやか『ああもう! やってやるよ!』

マチョロッテ(ああ、さやかが海に入って行く……)

マチョロッテ(……さやかだと思おうとしているが、ぶっちゃけ黒光りした巨人なので)

マチョロッテ(怪獣映画のワンシーンに見えるなぁ)

巨大さやか『……顔まで浸かってみた結果、普通に呼吸出来る事が判明した』

ほむら「これでとりあえず問題は解決です!」

マチョロッテ「あっさりー」

巨大さやか『うう……早くしてよー』

ほむら「そうですねぇ……友枝先輩が邪魔してこなければすぐにでも」

マミ「……このまま魔女を見逃すのは癪だけど、美樹さんを戻せるのは、悔しいけどあなただけみたいだしね」

マミ「今日は休戦としましょう」

ほむら「ご英断感謝します」



ほむら「さて、これで一通り問題は解決。あとは後片付けだけ」

ほむら「ようやく大冒険も終わりですね」

マチョロッテ「あー……その言葉を聞いたらどっと疲れたわ」

マチョロッテ「つーか今更だけど地底冒険って……あれがなんか言ってた500fってやつの所為なの?」

ほむら「そうですよ。あれはまだマシな部類ですけどね」

マチョロッテ「マシって……」

ほむら「そうですねぇ、詳しく話しますと――――ん?」

まどか(? ほむらちゃん、工場の窓から空を見上げて……?)

ほむら「……また今度にするとしましょう。話すと長くなるのと、覗き見するような不届き者に聞かせるのは勿体無いので」

マチョロッテ「覗き見? ……よく分かんないけど、まぁ、アンタがそういうならそれでいいわ」

マチョロッテ「んじゃ、さっさと家に帰ってさやかを元に戻してやるか。それで後片付けは終わりなのよね?」

ほむら「ええ。それで全部終わり……」

マチョロッテ「……………」

ほむら「……………」

マチョロッテ「……なんで私の事じっと見つめているの?」

ほむら「……あ、そーだ。シャルロッテさん。今日の夕飯の買い物をしないといけないんでしたー」

ほむら「私はさやかさんを元に戻すため急ぎ家に帰らないといけないので、お使いを頼んでいいでしょうか?」

ほむら「今日の晩ご飯はカレーの予定ですので、カレールー以外の材料を一通り買ってきてください」

マチョロッテ「別にいいけど……」

ほむら「では財布はお渡しします。じゃ、私はこれにて!」

マチョロッテ「え、あ、ちょっと……」

マチョロッテ「……走って行っちゃった。何をそんなに慌てているのかしら」

マチョロッテ「ねぇ? あなた達もそう思わない?」

マミ「」

まどか「」

マチョロッテ「……なんでバイオテクノロジーによって復活したティラノサウルスと遭遇した一般人みたいな顔してんのよ」



マミ「えっと、あの……今まで、なんとなくそーなのかなーと思わなくもなかったのですけど……」

まどか「なんというか触れちゃいけない事なのかなーとも思って……」

マミ「で、でもいよいよ触れないといけない気がしたのでー……失礼を承知ながら訊きますけど……」

まどか「聞きたいのですけど……」

マチョロッテ「なんで敬語?」

マミ「ま、魔女……なのでしょーか?」

まどか「ほむらちゃんと仲良くしている魔女、でしょうか?」

マチョロッテ「……ちょっと待ちなさい」

マチョロッテ「なんでそんな初対面みたいな反応なのよ?」

マチョロッテ「言っとくけど私はさやかみたいに妖精さんに改造なんてされてな――――」

マチョロッテ「……………」

マチョロッテ「……………」←ほむらが走っていった先を見つめている

マチョロッテ「……鏡、魔法で作ってくれない?」

マミ「え」

マチョロッテ「鏡、魔法で作ってくれない……?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

マミ「ア、ハイ。タダイマ」

マチョロッテ「……」

まどか(ああ……鏡を凝視してる……お面でも付けているかの如く無表情で……)

マチョロッテ「……あの薬、の所為か」

まどか(あ、なんだろう。すごく安らかな笑みを浮かべ)




マチョロッテ「あんにゃろうぶっ殺してやるああああああああああああああああああ!!!!!」




マミ「……暁美さんの逃げた方に走っていったわね」

まどか「……ほむらちゃんの逃げた方に走っていきましたね」

マミ「……帰りましょうか……」

まどか「……帰りますか……」



――見滝原上空――


「いやはや、流石にさっきは驚いたね。まさか、この距離で観察していたのが発覚するとは……妖精の道具によって知ったのかな?」

「マミ達が穴に落ちた後は、僕らの観測範囲から出てしまったので何が起きたかは分からないけど」

「それはつまり、あの穴は”僕らですら知らない”場所に繋がっていたと考えるべきだろう」

「そして、突如として地上に暁美ほむら達が戻ってきた現象」

「僕らが使用している空間転移とは明らかに異なる、解析すら出来ない事象」

「興味深い。けれども――――僕らの役目を知った以上、協力してくれそうにはないからね」


\マテヤゴルアアアアアアア!!/
\ヒェェェェェェ!?/


「さてと。どうやって彼女達を排除したものかな……」

「高々原住生物二種を始末するだけなんだから、出来るだけ節約しないとね」




今回はここまで!

ついに明かされましたソウルジェムの秘密。しかも謎の宇宙人がほむらと妖精さんを狙っているようです。
ほむらと妖精さんの運命や如何に(棒読み)

そういえば、ほむらさんが転校してきたまだ二日目なのよねこの話……
既にまどマギがハッピーエンドになるために解決しないといけない問題の半分は片付いた気がする。
いえ、正直妖精さんとか抜きに、アニメでもめがほむがもう少し頑張ればけっこー悪くない
結末に落ち着いた気がするんですよね。その思いがこのSSの原点だったりする。

それではまた次週投稿を目安に、アディオス!

どうせストーリーをなぞりつつ悲劇を回避するパターンだろと思ってたけど、これは凄いw
展開もキャラの配置も何もかもが斬新すぎるw
妖精さんに振り回されるまどかとマミさんの反応が面白くていいw

しかし、あれだな…
最初にあった時の「魔女に操られている」ってのはどこへやらだなww

そういや今のシャルの姿ってメガほむなの?それともループ時の姿?

筋肉達磨と化したほむらのようなナニかなんだろうな、今のシャルロッテ
しかし妖精さんをもたかだか原生生物と言い切ったQB……自分たちを凌駕する存在だと理解した時どれだけ狼狽えるか見物だwww

だいじょうぶ
きっと最後まで理解できない

節約どころか総員使っても妖精さんには勝てないのにQBおめでたい頭してるなあww


こにょにょちわー。一週間とちょっとで戻ってきた奴です。目標達成ならず。
私の書いたことで場が荒んでしまい申し訳ない。

>>197
これから益々まどマギの本編の原型が崩壊していきます(目を逸らす

>>200
魔女に操られている→魔女を操っている→魔女と仲良くしている
                    ↑今ココ
実はほむら達が思っているよりも関係は改善されていたり

>>202
一応ループ時の姿です。が、本人が明るく元気な性格なので見た目の印象は全然違います。
笑顔の女の子は無条件に可愛い(持論)

>>207 >>208 >>209
脅威だと認識するには多少なりと相手を理解しないといけません。
そして妖精さんを彼らが理解出来るかは……


それでは今週の投下……
あ、今回インキュベーター一族に対し、ありえない量の自己解釈が入ります。
何分本編じゃ宇宙人ぐらいしかはっきりした情報が無かったので……
ご注意を(色々手遅れ)



えぴそーど なな 【インキュベーターさんの、じみちなかつどう】




――――暁美ほむら。

年齢十四歳。種族・人間。
幼少期から心臓が弱く、最近になって手術を受ける。その影響からか体力が非常に乏しく、戦闘能力は皆無。

魔法少女としての素質を持つが、こちらも期待エネルギー摂取値は22300程度と平均の七割程度であり、
利用価値は低いと評価される。

しかしながら彼女は『妖精』と呼ばれる種族と協力関係にあるらしく、『廃棄物』を人間に戻すという行為を実行。

結果、一つの廃棄物を人間へと戻す事に成功した。


状況から判断し、廃棄物が元々人間であると知っている事は確実。
現在までに確認された言動からも我々に敵意を持っているのは明白であり、我々の目的を知った場合、
敵対的行動――――我々に対し攻撃を行う可能性が極めて高い。


妖精達の科学力は少なくとも人間の水準を超えており、敵対行動に移った場合、エネルギー回収効率の低下は否めない。

また、なんらかの方法で我々の存在を人間社会に公表された場合、エネルギー回収計画そのものの維持・運用が
不可能になる事も可能性として十分にあり得る。

よって暁美ほむら及び妖精の速やかな排除を申請。

そのための情報収集を行うべく、追加のエネルギー予算を申請する――――




――AM10:02 巴マミ自宅――


QB「……ふぅ。文面は、こんな感じでいいかな?」

QB「妖精達の仕業で本星に帰る羽目になり、エネルギー予算が尽きたからね……やれやれ。追加しないといけないとは」

QB(ちょっとこの星の生物を甘く見ていた、という事なのかな?)

QB(いくらセキュリティは必要最低限とはいえ、まさか本星にある僕の精神本体に干渉するとは思わなかったよ)

QB(尤も、所詮その程度だ)

             この身体
QB(セキュリティの低い 端  末 を通じ、別惑星に存在する本体の精神に干渉するなんて、
   少し文明が発達した星なら簡単に出来る)

QB(基本性能の低いこのボディでは認識出来ない生命体も、宇宙にはいくらでも存在する。
   迷彩機能を持つ原生生物なんて珍しくもない)

QB(先日確認された未確認の転移技術も、ま、宇宙は広い。僕らの知らない転送方法があるのは、むしろ自然だ)

QB(それをこんな一辺境、まだまだ幼いこの惑星の生物が持っていた事には少し驚いたけどね。
   事前調査で生物進化が遅れているからって、精密調査のコストを減らしたのは失敗だったかな)

QB(早く生態を調査し、駆除していくとしよう)

QB(いや、妖精がそれなりに知性に優れる生命なら、この惑星の管理を任せるのもいいかも知れない)

QB(この星の原生生物なら僕らよりも人間の御し方を心得ているだろうしね。契約作業もスムーズにいくだろう)

QB(その場合僕らが認める”人類”は人間ではなく妖精達になるのかな?)

QB(ああ、そうなったら人間を知的生物と認める必要はなくなる。契約なんてせず、
   強制的にエネルギーへと変える初期の計画に戻るかも知れない)

QB(……ま、これは上層部が判断する事か)

QB(――――よし。エネルギーの追加申請が通った。コンピューターによる合否判定は結果の可否が早くていいね)

QB(それじゃあ、情報収集に行くとしよう)

QB(暁美ほむら)

QB(妖精達の力を過信しているようだけど、あまり僕らの力を見くびらない方が良いよ――――)



―AM10:47 暁美ほむら自宅前―


さやか(さてさて。休日を迎えました今日この頃)

さやか(ほむらからお茶会に誘われたので、ほいほいやってきたさやかちゃんです)

さやか「ふふふ。ほむらとシャルちゃん、驚くかなぁ?」

さやか「見滝原七大スイーツの一つ『ボン・スィート』のチョコレートケーキ!」

さやか「二人の吃驚する姿を見たいがために、二ヶ月分のお小遣いを奮発して買っちゃったのだーっ!」

さやか「っと、何時ものテンションで両腕広げちゃったけど、あまり大袈裟に動いちゃ駄目だな」

さやか(ケーキが潰れちゃうかもしれないし……)

さやか(何より、あたしが『人間サイズ』でいられるのって昨日ほむらが渡してくれた指輪のお陰だからね)

さやか(うっかり指輪を落としたり壊したりしたら、住宅地のど真ん中に100メートル級の巨人が出現)

さやか(自衛隊とかの攻撃目標になりそうです。そんな展開ごめんなのです)

さやか(故に今日からあたしは淑女になるのだぁ~……ならざるを得ないと言うべきか)

さやか(さて、そんなこんなでほむらの家の前まで来ました)

さやか(……親元を離れて一人暮らしと聞いていたから、てっきりアパートとかで暮らしているかと思っていたけど)

さやか(見事な一軒家でした。下手をするとあたしの家よりでかいかも)

さやか(これはほむらの家がお金持ちと考えるべきか、或いは妖精さんパワーの仕業なのか)

さやか(……妖精さんパワーだな。十中八九)

さやか「ま、どんな家に住もうとほむらの勝手っとね」

さやか「そんな訳でインターホンをぽちっとな」

――――ピンポーン

ほむら『はーい……あ、さやかさん。お待ちしていましたー。今扉を開けますのでちょっと待っててください』

さやか「あいあーい(カメラ付きのインターホンか……いや、妖精さんアイテムか? 判断に困る)」

ほむら「こんにちはー。早かったですね」

さやか「お菓子買ってたんだけど、思っていたよりスムーズにいけてね。ちょっと早く来過ぎちゃったかな?」

ほむら「そんな……気を遣わなくても良かったのに」

さやか「いやいや。流石にごちになるだけってのはね」

ほむら「ふふ……ありがとうございます」

ほむら「さ。立ち話も難ですから中へ」

さやか「じゃ、お邪魔しまーす」

ほむら「あ、そうだ。さやかさんの性格上やりそうなので伝えておきますけど……」

ほむら「うちの中を勝手に散策しない方が、身の為ですよ?」

さやか「……あ、うん。成程、そういう事ね」

ほむら「そういう事です」

――――バタンッ



QB(……ふむ。二人共そのまま家の中に入っていったか)

QB(今回は僕の存在に気付かなかったのかな。或いは、気付いた上で放置したか)

QB(後者だとすれば何かしらの罠を仕掛けている筈だけど……)

QB(低スペックとはいえ、このボディのサーチ機能に引っ掛かるトラップ及びエネルギー反応は確認出来ない)

QB(勿論シールドなんて大層な物は存在せず、電子機器反応は一般的な日本国民の家にあるものと同程度。空間異常も検知されていない)

QB(そして、内部には生命反応が三つ確認出来る)

QB(個体情報は暁美ほむら。先程家に入った美樹さやか。そして元魔女の……人間だった頃はなんて名前だったかな? ま、いいか)

QB(暁美ほむらと元魔女の二人は共に暮らしているとして、美樹さやかがこの家に来たのは何故だろう)

QB(もしかすると、今後どう行動しようか作戦会議でもしているのかな? だとしたら好都合なんだけど)

QB(ま、優先目的は妖精の生態調査だ)

QB(……扉に鍵はかかってない、か)

QB(妖精の力を過信しているからかは分からないけど、実に無防備だね)

QB(それじゃあ、ま、堂々と扉から侵入させてもらうとしよう。身体はこんなのだけど、ドアを開けるぐらいは出来るからね)

QB「よいしょっと」

QB(さてと、内部に潜入したしまずは何処から――――)

QB「……………」

QB「まぁなんという事でしょう」

QB「扉を開けてみたら、中はとんでもない大草原ではありませんか」

QB「空に輝く太陽……地平線から昇っているから朝日でしょうか? それが実に眩しくて温かですねぇ」

QB「風と共に感じ取れる草の香りは、とても心地いいです」

QB「――――って、僕は何を言っているんだ?」

QB「と言うかなんなんだいこれは?」

QB「いやいや。まずは落ち着こう。僕は感情がないんだから、クールになるのなんて余裕さ」

QB「ここに入った扉からもう一度外に出ればいいだけの話じゃないか。うん。それからゆっくりと、この事態を分析しよう」

QB「……言った傍から、僕がここに来るために通った扉が消失していた」

QB「……」

QB「なんじゃこりゃ」



QB「いやいやいや。なんだいこれは」

QB「空間転移反応を一切感じさせず、何時の間にやら大草原? 出口も消失?」

QB「いくらこのボディのスペックが低いからって、気付かれずにこんな事が可能とは……」

QB「想像していたよりも妖精達の科学力は優れているのかな」

QB「……これは、正確な調査が必要と考えるべきか」

QB「よし。妖精達の科学力を調べる上では好都合だと思って、出口を探しながらこの空間の調査を進めよう」

QB「最悪このボディを破棄して、新規ボディを見滝原に転送すればいいだけだしね」

QB「まずは東に行ってみようかな」

QB「省コストのボディとはいえ、衛星測位システムぐらいは搭載しているからね。マッピングも楽々と――――」

QB「……」

QB「あれ? 衛星データが受信できない?」

QB(どういう事だ? ボディに異常は見られない)

QB(地球に配備してある衛星に不具合が生じたという通達も来ていない。そもそも、一部とはいえ
   機能停止するほど重大なエラーなんてここ数百年は検出されていない筈)

QB(だとすれば、此処が僕らの衛星システムでも検知出来ない”場所”と考えるのが妥当か)

QB(成程。先日の空間転移と言い、妖精達は空間関係のテクノロジーに優れているようだね)

QB(仕方ない。地道に歩いて調べるしかないな)

QB(幸い太陽があるから方角は困らないし)

太陽『あったらしい朝が来た~』

太陽『きっぼうの朝が来た~』

QB「……………」

QB「太陽が歌うなんて、訳が分からないよ」



……………
………



QB(さて、歩き始めてから彼是二十分は経ったかな?)

QB(ようやくこの空間で僕以外の生物を見つけた)

妖精さんA「なにしませうー」
妖精さんB「なにしましょーなー」
妖精さんC「なになにします?」

QB(体長は十センチぐらい。人間から見れば小さい僕よりも、大分小さな生き物だ。今は三体ほどが群れているね)

QB(そして、人型。小人という呼び方が相応しい外見)

QB(マミが言っていた未確認の使い魔の特徴と合致する)

QB(恐らく彼らが妖精という種族だろう)

QB(……喜怒哀楽という言葉の真ん中二文字が抜けたような顔は、感情を持たない僕ですら『間抜け』と判断出来る見た目だね)

QB(ま、あれほどの科学力を持つ存在だ。外観はあんなのでも、それなりに知的な会話が可能だろう)

QB(何故結界内では姿を見られなかったのに、此処では見えているのかは分からないけど、これは好都合)

QB(早速対話に持ち込み、出来る限り情報を集めてみる事にしよう)

QB「やあ、はじめまして」

妖精さんA「はじめましてー」
妖精さんB「あいさつしましたな」
妖精さんC「けれどもどちらさん?」

QB「僕はキュゥべえ。よろしく」

QB「君達は……妖精、かな?」

妖精さん×3「さー」

QB「え」

QB「……えーっと、妖精ではない、という事かい?」

妖精さん×3「さー」

QB(……想像以上に知能の低い生物だった)

QB(どうやら彼等は妖精ではないみたいだね。なら、あまり長話をしても情報は得られそうに――――)

妖精さんB「しかしにんげんさんには、ようせいさんといわれてますなー」
妖精さんA「そーいえばそうだったきが」
妖精さんC「なら、ぼくらようせいなのでは?」

QB(……誰かに言われたから妖精って……アイデンティティに乏しい種族なのかな?)

QB(いや、自身の種族を確立させるのは知的生命体における本能みたいなものの筈だけど……)

QB(ま、まぁ、イレギュラーな種族だからね。多少の予想外は仕方ない)

QB「えっと、幾つか聞きたい事があるんだけど、いいかい?」

妖精さんA「ぼくらでこたえられることなら?」

QB「それでいいよ」



QB「それじゃあ……この空間について聞こうか」

QB「実は、ちょっと迷い込んでしまってね。出口が分からないんだ」

QB「だからこの空間がどんな場所か教えてくれないかい?」

QB(上手く利用すれば、邪魔者をこの空間に閉じ込める事も出来そうだからね)

妖精さんA「ここ、じかんのないくうかんです?」

QB「……はい?」

妖精さんB「ここ、じかんながれませぬ」
妖精さんC「ふほーしんにゅーしゃをもてなすためですので」
妖精さんD「にんげんさんのきちょうなおじかん、むだづかいせぬように」
妖精さんA「じかんなくしときました」

QB「時間を……無くす?」

妖精さんD「あとここ、そうるてきなものこてーするです」
妖精さんA「こころとぶんりしてるとちぐはぐなので」
妖精さんC「こっちもってくるです」
妖精さんB「これでずれないです」

QB「……?」

QB(……どういう事だ?)

QB(話し方が独特な所為でいまいち理解出来ないが……)

QB(それでも言葉通りに解釈するなら、この空間から時間という概念を抜き取った、と言いたいのか?)

QB(馬鹿な。あり得ない)

QB(時間の存在しない世界では、どんな物体も動けないしエネルギーを持てない)

QB(僕が今こうして思考する事すら不可能だ)

QB(時間停止や時間遡行なら科学的に可能だと証明されているけど、時間その物を消すのは不可能だ。論理的に説明されている)

QB(しかも本星にある魂をこっちに持ってきた? ハッタリもいいところだよ)

QB(……何時の間にかもう一体居るのはどういう事なのかな。動体センサーに反応はなかったけど)

QB(ま、どうでもいいか。知能の低さは明白だし、とても高度な科学力を持っているとは思えない)

QB(彼等は労働階級か、端末と言ったところなのかな?)

QB(調査を進めるにしろ、処分するにしろ、もう彼らは用済みだね)

QB「分かった。もういいよ」



妖精さんA「ぼくらのこと、もうしりたくなし?」
妖精さんB「もっとしらべていいのよ?」
妖精さんD「でもじっとみられるのおはずかし」
妖精さんC「かいぼーされるのもいいたいけんになりますな」

QB「……!」

QB(なんだ……今の言葉……)

QB(まるで、僕が君達の事を調べようとしていたのを知っていたかのような台詞……)

QB(しかもずっと見ていた……観測していたのが僕らだと気付いていたのか?)

QB(その上で解剖されるのを望むような、こちらからすれば挑発に取れる発言)

QB(深読みし過ぎか? しかし……万一知っていたのだとすれば……調べない訳にもいかない、か)

QB「そうだね……今ので、少し興味が出てきたかな」

妖精さんE「きゅーべーさん、ぼくらのことしりたい?」
妖精さんD「せつめーしょごよういします?」
妖精さんC「しかしにんげんさんに、ぼくらせつめーへたといわれた」
妖精さんB「のうにいんすとーるはおーけーでしたか?」
妖精さんA「のーのよかん」
妖精さんE「のうですからなー」

QB(……堂々と相談? いや、こちらを混乱させるためのフェイクという可能性も……)



妖精さんC「なら、のうにはいればよいのでは?」



QB(……ん?)

QB(なんだ、今、何かとんでもない言葉が聞えたような……)

妖精さんA「ないすあいであ」
妖精さんB「ぎゃくてんのはっそう」
妖精さんD「だれがいくので?」
妖精さんE「いいだしっぺのほーそく」
妖精さんC「ではぼくでは?」
妖精さんA「きみのよーなきがしますなー」
妖精さんB「どうぞどうぞ」

QB「ま、待ってくれ。君達は一体何を言って――――」

妖精さんC「きゅーべーさん」

妖精さんC「おそばにー」

QB「っ!?(なんだ、視界が白くなって――――!?)」






QB「はっ!?」

QB(なんだ……何が起きた……?)

QB(搭載時計と認識時計にずれはない……データ上僕の意識は途切れていない、
   或いは自動誤差修正によってログが残らない程度のごく短時間だ)

QB(だが、なんだ……何かあったような……)

QB(そもそも僕はここで……何をしていたんだっけ?)

QB(何かと話していたような……というか、話していないと数分間この場に突っ立っていた事に……)

QB(これは記憶が改ざんされたのかな? いや、しかしその割には大雑把というか、思い出せそうなのに判然としないだけというか)

QB(駄目だ。考えるほど混乱してくる)

QB(一先ず本来の目的……妖精の調査を進めるとしよう)

QB(……やれやれ。簡単に片付く案件だと思っていたんだけどね)

QB(面倒だなぁ)



……………
………




QB(当てもなく歩いていたら、平原のど真ん中に建つ一軒家を見つけてしまった)

QB(いや、建物というよりほったて小屋かな? 人間的な表現をするなら『素朴』と『粗雑』の中間ぐらいの出来だし)

QB(ま、建物は建物だ。調べれば、何かしらの情報を得られるかも知れない)

QB(無論、何もないただっ広いこの空間にぽつんと建つ一軒家を見つけられる可能性は、限りなく低い)

QB(だとすれば、この発見は偶然ではなく必然)

QB(恐らく何かしらの罠があの建物には仕掛けられているだろう)

QB(しかし調査しない訳にはいかない)

QB(それに危険があったところでこのボディは使い捨てだ。躊躇う理由はないね)

QB「一応周囲を観測……うん。予想通り、罠は確認出来ない。出来ないだけだろうけど」

QB「とりあえず、ドアから進入させてもらうとしよう。鍵は掛かっていないようだし」

QB(さて、一体どんな罠が飛び出してくるか――――)



「いらっしゃいませ、ご主人様」



QB(……これは……?)

QB(出迎えたのは人間の若い、二十歳ぐらいの女性かな? 一般的に、美女と呼ばれる類の容姿をしている)

QB(いや、人間の反応がないな。ロボット? 外見上区別出来ないほど精巧となると、これも妖精の発明品か)

QB(……どういう訳か体表から『紙』の反応がするのは何故なんだろう? 紙装甲? そんな訳ないか)

QB(それより、いや、保留している問題がいい加減山積みになっているけど、兎に角それより)

メイドロボ「まぁまぁ、お身体が汚れているではありませんか」

QB(何故かメイドロボに捕まり、何処かに連れ去られている事だ)

QB(余程高性能のセンサーを搭載していなければ僕の姿は見えないのに、あっさり見つかってしまったよ)

QB「あの、僕はご主人様じゃないんだけど」

メイドロボ「この家に来た方は、全て等しくご主人様です」

QB(……交渉は出来そうにない、か)

QB(仕方ない。しばらく様子見といこう)

QB(それにしても、僕を何処に連れ去ろうと言うんだろうか――――)

メイドロボ「さあ、ここでお身体を洗いましょう」

QB(……浴室につれて来られた。本当に身体を洗うつもりなのかな?)

QB(いや、恐らくこれは対象の分析が目的か)

QB(このボディに接触する事で、僕らの情報を直接読み込もうとしているのだろう)

QB(敵を知るために情報収集……悪くない判断と言いたいけど、生憎それは叶わない)

QB(所詮このボディは下位端末。メインコンピューターどころか、サブコンピューターへのアクセス権限すら持たない)

QB(仮に侵入に成功したとして、僕らの情報処理技術はこの星より数千万年ほど進んでいる)

QB(妖精がどれほど高度な科学を持っていようと、サブコンピューターの第一防壁すら破る事は出来ないよ)

QB(それも予想外に突破出来たとしても、今度はマザーコンピューターが全回線を遮断し、外部アクセスを物理的に排除するんだ)

QB(暁美ほむら。恐らくこの作戦を立てたのは君だろうが、君が欲している情報は決して手に入らないよ――――)



メイドロボ「では身体を洗いましょう」

メイドロボ「まずはお湯で――――汚れをふやかします」

QB「え?(なんか持ち上げられて、湯船の上に運ばれ)」

メイドロボ「そいっ」

QB「がぼぼぼぼぼぼぼーっ!?(そんで沈められたーっ!?)」

QB(え、ちょ、なにこれいきなり拷問?)

QB(というかなんで息苦しさを感じているんだ? だってこのボディは使い捨てで、痛覚なんて搭載していな)


――――警告


QB(え……ボディシステムからの警告……?)


――――現在本ボディには操縦者の魂及び精神が完全に移転しています

――――このままボディが破壊された場合、操縦者は死亡する可能性が極めて高いです

――――ただちに本ボディから魂及び精神を離脱させるか、危機回避行動を取ってください


QB(……ああ、成程。魂と精神が本星からこっちに移ったから、五感機能が起動した訳だ)

QB(そう言えばそんな事言われていたね。誰から聞いたかは覚えてないけど)

QB(……つまりこのままだと窒息死?)

QB「ぎゃぼぼぼぼっ!? た、助け……助け……ごぼぼぼぼぼっ!」

メイドロボ「汚れがふやけたところで、はい、ゴシゴシ」

QB「ちょ、それタワシじゃ、あだだだだだだだだっ!?」

QB「痛い! すっごい痛い! 痛覚セーブぐらいは機能してよ!?」

メイドロボ「さあ、綺麗になりましたね。次はお食事です」

QB「ぐはぁっ! や、やっと終わった……」

QB(しかしボディの体表部分がうっすらと削られた)

QB(このまま此処に居るのは危険だ……なんとか、なんとか離脱しないと……)



QB「……ところで、君は僕を何処に連れていくつもりなんだい?」

メイドロボ「先程言いましたとおり、お食事を用意してあります」

メイドロボ「ですから、食堂へとお連れするのです」

QB「いや、お連れするのですって敬語として可笑しい……」

QB「そもそもこのほったて小屋みたいな場所に食堂なんてある訳が」

メイドロボ「こちらが食堂です」

QB「……………」

QB「まぁ、なんという事でしょう。ドアの向こうはまるで西洋の貴族が使ったかのような、豪勢な食堂ではありませんか」

QB「……衝撃のあまり、思った事をそのまま呟いてしまったよ」

QB(テーブルには何時の間にか料理が用意されている……見た目から判別するとフランス料理、かな)

QB(前菜からデザートまで全部テーブルに並んでいるから、正しい様式ではないようだけど)

メイドロボ「さあ、ご主人様。こちらの席におかけください」

QB「えーっと、席に座るのはいいけど」

QB「でも僕、食事なんていらないんだけど。そもそも手が使えないからこういう料理は……」

メイドロボ「はい、あーん」

QB「……まぁ、マミがよくその手法で僕に食事をさせたから、予想はしていたけどね」

QB(……何かされる前に大人しく食事を貰う方が得策、かな)

QB(それにこの空間に何時まで滞在するか分からない以上、エネルギーの補給をしといて損はない)

QB(どうせこのボディには毒なんて効かないし)

メイドロボ「ご主人様?」

QB「ああ、なんでもないよ」

QB「じゃ、いただくとしよう」

メイドロボ「では――――はい、あーん」

QB「あーん」

QB(……むっ!!)モグモグ

QB(独特の歯応え、鼻を突きぬける匂い、何より大胆不敵としか言えない未体験の味――――)

QB(これは、これは――――!!)



QB「まっずぅあああああああああああああ!?」




メイドロボ「あらあらあらあら?」

QB「なんじゃこりゃあああああ!?」

QB「不味いと叫んだけどこれは不味いってレベルじゃないよ!? 劇物指定の薬品を口に含んだみたいな味だったよ!」

QB「というかこのボディには味覚センサー搭載してないんだよ!?」

QB「つまりこれは味覚じゃなくて単純な生命の危機を示している信号だよ! 下手したら死ぬところだったんだよ!?」

QB「代わりはいくらでもいるけど今だけは死ぬ訳にはいかないんだよ!」

メイドロボ「まだお食事は残っています」

QB「僕の話を聞けええええええええええええええええ!」

メイドロボ「さあ、ご主人様。あーん♪」

QB「ぎゅぷっ!?(あ、開けた口に無理やり押し込まれ……!?)」

QB(うごおおおおおお!? 口の中に満ちるどうしても表現出来ない味覚は……)

QB(ぐごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!)

QB(不味い! いや味覚的な意味じゃなくて状況的に!)

QB(このままだと本当に死ぬ! 機体破棄のシステムを作動して魂と精神を本星に戻し――――)


――――エラーコード検出


QB(……はい?)


――――解析不能の刺激がボディに加わり、処理しきれない情報の影響でプログラムの一部が破損

――――フォロープログラムが作動しましたが、ボディ機能の一部が使用不能になっています

――――ただちに本星へエラー報告し、新規ボディに移行してください


QB(解析不能の刺激?)

QB(……あ、さっきの激マズ料理の事かな。そりゃあ解析不能だよね。だって味覚センサーがなくても不味いって分かるぐらいだし)

QB(……………)

QB(つまりアレか。今は離脱出来ないと)

QB(……………)

QB「た、助けてくれええええええええええええええええええっ!?」



メイドロボ「ああ、ご主人様。一体どちらに?」

QB「どちらじゃない! 逃げるんだよおおおおおおおおっ!」

QB(扉が少し開いてる! このまま隙間に入り込んで部屋から脱出だ!)

QB(――――よし! 無事に脱出出来――――)

QB「……え……?」

QB(扉を潜ったら、廊下ではなくて……怪しい研究施設のような場所に出た)

QB(いや、扉を潜ったら別世界はもう体験済みだ。そこは、妖精達の仕業という事でいいとしよう)

QB(問題は……なんでこの部屋にはメイド服姿の人間? が入っているガラス容器がずらりと並んでいるか、だ)

QB(メイドの数はざっと百体、かな?)

QB(まるで人間が好む、バイオでハザードな研究所で見られそうな光景だね)

QB(しかもどれも生命反応がある。人工的に作った生命体だとすれば、中々の科学力だ)

QB(恐らく此処は妖精達の研究施設なんだろう)

QB(……)

QB(まさか彼女達が一斉に起きて僕を狙う、なんて展開はないよね?)

QB「いやいや。僕は何を考えているんだ。そんな非論理的な事が起きる訳」

ガラスの中のメイド『ゴ、シュジン、サマ』

QB「」

ガラスの中のメイドA『ゴシュジン、サマ』
ガラスの中のメイドB『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイドC『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイド達『ゴシュジンサマ』
ガラスの中のメイド達『ゴシュジンサマ』

QB「いや、あの、僕はご主人様ではありませ」

ガラスの中のメイド『ゴシュジンサマ!』ガシャーン!

QB「ひぃっ!? ガラス容器を破ってメイドが出てきたぁ!?」

――――ガシャーンッ!
――――ガシャーンッ!

QB「つ、次々に出てきて……」

QB「ひいいいいいいいいいっ!?」

メイド「ゴシュジンサマ、ゴホウシ、イタシマス」

QB「いらない! 奉仕なんか必要ない!」

メイド「ゴメイレイ、ヲ」

QB「僕の傍に近寄るなあああああああああああああああああああっ!!」



QB(は、早く此処から脱出しなければ!)

QB(こ、この扉は……鍵がかかってない!)

QB(何処に出るかは分からないけど今は此処から脱出するのが優先だ!)

QB「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

QB「よし! 無事に抜けた……!」

QB(周囲は……ビル街、東京の繁華街を思わせるごちゃごちゃとした場所だ)

QB(ついてる! 逃げるだけならこれほど好都合な場所はない!)

QB(それに一般人らしき人間が大量に居る。彼らの間を縫うように進めば、あのメイド達を振りきれるかも知れない)

QB(そうと決まれば早速人ごみに――――)


――――ゴシュジンサマ


QB「ひっ!?」

QB(お、追ってきたのか!?)

QB(いや、冷静に考えれば扉を通れば此処に来るんだから、追ってこれるに決まってるじゃないか!)

QB(落ち着け。落ち着いて逃げるんだ……)


――――ゴシュジンサマ


QB(声が何処から聞こえてくるか分析するんだ。何処にメイド達が潜んでいるか、把握するんだ)


――――ゴシュジンサマ


QB(声は、声は……)

QB(真上、から?)

メイド「ゴシュジンサマ、ミィーツケタァー……」

QB「う、うわああああああああああああああっ!?」

QB(こ、こんな近くにまでメイドがっ!?)

QB(逃げないと……人ごみに……)

メイド「ゴシュジンサマ、ドコニ」

メイド「ゴシュジンサマ、イズコ」

メイド「ゴシュジンサマ、ハンノウアリ」

QB「ひぃぃぃっ!? ひ、人ごみが何時の間にか、全員メイドに……!」

QB「今まで擬態していたのか!?」



QB「そ、それより今は逃げないと……メイドが来られない場所に……」

メイド「ゴシュジンサマ!」

QB「う、うわあっ!?」

QB「あっ……!?(後退りした場所に、蓋の外れたマンホールが……)」

QB「うわああぁぁぁぁ……………!!」

――――ばしゃーんっ

QB「ぶはっ! げ、下水道に落ちたのか……!」

QB「ま、まずは這い上がって……」

――――ばしゃーんっ!!

QB「!?」

メイド「ゴシュジンサマ、ドチラニ」

QB「お、追ってきた……はっ!?」

QB(壁に亀裂が……僕でも通れるかギリギリの隙間だけど……)

QB(でも通れたなら、人間サイズであるメイドは追って来れない!)

QB「うおおおおおおおおおおおおっ……!」

メイド「ゴシュジンサマ!」

QB(せ、せまい……だが通れる!)

QB(なんとか通り抜け……)

QB「られた!」

QB(しかも運のいい事に、亀裂の先の空洞も大して広くない! さっきみたいに、メイドがこの場に突然現れる事は絶対にない!)

QB(だけど念のため後ろを振り返って――――)

メイド「ゴシュ、ジン、サマ……」

QB(亀裂に腕を突っ込んで、こっちに伸ばしている……なんて執念だ)

QB「だけど通れはしないみたいだね……やれやれ、ようやく一休み出来るよ……」



?「チュー」

QB「うわっ!?」

ネズミ「チュチュチュン」

QB「って、ね、ネズミか……下水道だから、ネズミが棲みついてても可笑しくはないか」

QB「やれやれ……こんな下等な小動物に驚くなんて……精神疾患でも患ったかな……」

ネズミ「チュチュチュンチュ」

QB「ああ、もう。チューチュー五月蝿いね」

QB「しかも僕の近くから離れないし……餌はあげないよ」

ネズミ「チュチュチュンチュチュ」

QB「だから五月蝿いって」

QB「というか、なんで逃げないんだ? 体格差で言えば、文字通り猫とネズミほどの差がある相手を目の当たりにして……」

QB「……いや、待て」

QB「そもそもなんでネズミに僕の姿が見えて……」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「……ん?」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「なんだ……」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「いや、そんな筈はない」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「このボディは、あくまで対人間用だ。ネズミの相手なんて想定されていない」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「だ、だから、分かる訳がないんだ」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「ネズミの言葉なんて」


ネズミ「チュチュチュンチュチュ」


QB「分かる、筈が―――――」






           ご  しゅ  じ  ん  さ  ま
          チュ チュ チュ ン チュ チュ









QB「う、うわああああああああああああああああああああっ!?」

ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」
ネズミ「チュチュチュンチュチュ」

QB「ひぃっ?! ね、ネズミが、ネズミがたくさん……!!」

QB「違うんだ! 僕はご主人様なんかじゃないんだ!」

ネズミ「チュチュチュンチュチュ」

QB「チーズを持ってくるなああああああああああああああああああああああああああああ!!」

QB(こ、此処も駄目だ! もっと、もっと遠くに逃げなくては!)

QB(そうだ! ここから逃げ出すには、この家から逃げなくては……)

QB(いや、待て……)

QB(そもそも僕は、暁美ほむらの家に入ったつもりでこの空間に来た訳で)

QB(だけど外に出る扉は消えていて)

QB(僕は、妖精と暁美ほむらの目的が僕達の情報を収集する事だと思っていたけど……)

QB(最初からそんなものには興味がなくて)

QB(最初から僕をここから出さないつもりなのだとしたら――――!?)

QB「ひいぅあああああああああぁああぁあああっ!?」

QB「あ、あ、うあぁああああ、ああああああああああっ!!!」

QB「誰か助けてくれええええええええええええええええ!!」

QB「僕をここから出してくれえええええええええええええっ!!」



――――それから僕は走り続けた。

――――何処までも何処までも、何処かも分からなくなるまで走り続けた。

――――走り、扉を、隙間を抜ける度に景色は変わった。

――――だけど何度景色が変わっても、そこは僕の見慣れた世界ではなかった。

――――何度景色が変わろうと、メイド達の奉仕は続いた。

――――そして――――



QB(も、もう駄目だ……走れない……エネルギー切れだ……)

QB(延々と砂漠だけが広がるこの世界に来てからメイドの追撃が止んだのはいいけど)

QB(代わりに、エネルギー補給に使えそうな物質が確認出来ない)

QB(まさか最後が飢え死になんてね……)

QB(いや、飢え死にでいい……)

QB(このまま僕は、土に還ろう)

QB(このまま、静かに……)

「猫さん。どうしたの? 怪我しているの?」

QB「ひっ!?」

QB(こ、今度は幼い女の子……ろ、六歳ぐらいか……!?)

QB(いや、外見は関係ない!)

QB(この空間に居る者は全員……僕をもてなそうとする!)

QB「君も、君も僕を、僕をああああああああああっ!?」

幼女「あ、あばれちゃダメ!」

幼女「だいじょうぶっ」

QB「ぁ――――」

QB(な、んだ……彼女に抱きしめられてたら、急に冷静さが戻ってきた……)

QB(いや……冷静さだけじゃない)

QB(胸の奥が熱くなる、この衝動は――――)

幼女「こわくないよ。あんしんして」

QB「き、君は……」

QB「僕を助けてくれるのかい……?」

幼女「何かにおわれているの?」

幼女「だったらだいじょうぶ! わたし、これでもすっごくつよいんだから!」

幼女「だから、どんな人がきてもあなたをまもってあげるよ!」

QB「……ありがとう、ありがとう……!」

幼女「おうちまでつれていってあげるね」

QB(……なんて、なんて暖かいんだ……)

QB(――――ああ、僕は、僕は何を想っているのだろう)

QB(彼女から離れたくないと、執着心としか言えない想いを抱いている)

QB(これは一体……)

QB(いや、今はもう何も考えたくない)

QB(このまま彼女と、静かな日々を過したい……)



幼女「あそこが私のうちだよ」

QB(ああ、気が付けば、砂漠から草原に来ていたか)

QB(最早一瞬で地形が変わる事に、なんら驚きはしない)

QB(もういい。何もかも、宇宙の寿命すらどうでもいい)

QB(今日から彼女と静かに暮らそう)

QB(草原の真ん中にぽつんと立つ、あの小さな家で――――)



QB「――――い、いや、待ってくれ」



QB「あの、あの家は」







QB「あの家は、この空間に来て最初に見つけたほったて小屋じゃないか――――」








「ひどいなぁ。あそこが私の家だよ?」

QB(あそこが彼女の家? だとしたら、だとしたらあのメイドとまた……!?)

QB「うわああああああああああああああああっ!?」

「あ、こら、逃げちゃ駄目だよ」

QB「嫌だああああああああっ! あそこには、あそこだけは止めてくれええええええええっ!!!」

「もう、何言ってるの? 今日からあそこがあなたの家になるのよ?」

QB「僕には帰る家があるんだ!」

QB「マミ、マミの家……! マミの家に帰してくれ! お願いだから!」

「駄目だよ。だって――――」



メイドロボ「あなたは、私のご主人様じゃないですか」



QB「え……」

QB「ぼ、僕は、僕はあの小さな子に連れてこられ……」

QB「いや、最初から僕は、君に……?」

メイドロボ「今度は逃がしませんよ」

QB「うぁ、あ、ぁあ……」

メイドロボ「さ、これからずっと暮らしましょうね」

QB「ドアを、通ってしまった……」

QB「離して……離してくれ……」

QB「嫌、だ……嫌だ、嫌だぁぁぁぁ……」

QB「僕は、外に……」

QB「あの扉から外に出て……」

――――ギィ……

QB「扉が、独りでにしまって……」

QB「……助けて……」

QB「助け、て……」

――――ギィィィィィィィ……

QB「誰か、助、け……」









――――バタンッ



































「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」









QB「はっ!?」

QB「此処は……暁美ほむらの家の前……?」

QB「じ、時間は……っ!?」

QB「そんな馬鹿な?!」

QB「なんで、僕が暁美ほむらの家に侵入を試みた時刻から一秒も経っていないんだ!?」

QB(今のは幻覚……いや、内蔵されている時刻システムと衛星内臓の時刻システムとの間に三時間以上のずれがある)

QB(まさか衛星の時刻システムがずれているとは思えない)

QB(だとすれば、僕だけが一方的に時間を経過した事になる)

QB(時間操作――――僕らでも大規模な施設と膨大なエネルギーを必要とする現象)

QB(魔法少女のように感情の相転移から莫大なエネルギーを産み出せる存在なら兎も角、
   こんな一軒家に用意出来るような小型施設じゃ僕らでも実現不可能……)

QB(……ん? なんだろう……僕は本当の答えを知っているような……)

QB(いや、そんな事より……)

QB「おのれ暁美ほむらぁぁぁぁ……!」

QB「無傷で外にほっぽりだすとは、情けを掛けたつもりか!」

QB「あんな下等生物に情けを掛けられるなんて冗談じゃない!」

QB「感情はないけどプライドはあるんだ! 下等生物如きに負ける訳には――――」

QB「って、本星から通信!? なんだよ、忙しいのに……」



――――緊急通達

――――個体番号×××-××××-××××は現在、精神疾患を発症していると判定された


QB「……what?」


――――本星で肉体の確保は完了済みであるが、×××-××××-××××の魂と精神は地球にある事が判明している

――――精神疾患個体である×××-××××-××××は周囲の個体に危害を加える可能性が極めて高く、

――――また、人間に対し親近感と呼ばれる感情を持ち、当方の情報を漏らす事も想定される

――――それは我々の今後の活動を妨げるものであり、放置する事は出来ない

――――よって×××-××××-××××は速やかに処分する


QB「……処分?」

QB「……×××-××××-××××って、僕だよね?」

QB「僕が感情に目覚めた? はは、ご冗談を」

QB「……………」

QB「いや、思い当たる節結構あるかも?」

QB「……………」

QB「やっべぇぇぇぇぇぇぇ……!」

QB「こ、このままじゃ良くて本星に強制送還された挙句貴重な感情保有個体として”農場”行き! 最悪処分されてエネルギー炉行きだ!」

QB「何処かに身を隠さなければ……しかしこのボディには位置情報が……でも、でも……」

QB「……これも全部、暁美ほむらの所為だ……」

QB「おのれ……おのれ……暁美ほむらぁ……!」



QB「何時か必ず復讐してやるからなァ―――――――――ッ!!」





今回はここまで!

本当はもっと理不尽な感じになる予定だったのに何故かホラー系になってしまった。
いや、ホラーになりきれてないですけど。

そしてキュゥべえいじめと思わせて、実はキュゥべえにもハッピーエンドフラグが立っている仕様です。
妖精さんは誰彼かまわず幸せにするぜフゥハハフゥーッ!

それでは、次回もまた来週かな? と言いながら
ばいちゃっ!


ボ、ボクは、何回メイドに会うんだ!? 
次はど……どこから……い…いつ「襲って」くるんだ!? 
ボクは! ボクはッ!


ボクのそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ


このQBもう魔法少女は作れない?
そして魔法少女と候補以外からは見えない?

おつ

随所に匠の粋な心遣いが光ってて面白かった
オリジナルな話中心で着地点が全然想像できないな


ロミオブラックな感じが出ててクソワロタwwwwww

妖精さんの技術って結構怖いからな・・・

ハッピーエンドフラグ(遠い目)
感情豊かになったQBとそれを見て喜ぶマミさん
二人の復讐劇(喜劇)がはっじまるよー



おいーっす! てな感じで現れました>>1です。
感想をたくさん頂けて日々有頂天状態。筆を執る手が調子に乗っております(手かよ


>>256
最初はそのオチで行こうかと思っていました、が、ちょっとギャグっぽくなるので別のオチに。
……って、ホラーにする気満々だったじゃねぇか!

>>258
作ろうと思えば作れるでしょう。
しかしインキュベーターが魔法少女の数を把握していないとは考えづらく、
という事は魔法少女を作って護衛にしても……てな感じ。
頼れるのは今や己のみです。

>>260
ありがとうございます! 読んで少しでも楽しんでもらえたらと思いながら書いただけに、とても嬉しいお言葉です。
着地点は考えてあり、あとは書き続けるのみ。
とりあえず1スレで収まる、かな?

>>261
当SSは常に人退的黒さを出るよう頑張っております。
ブラックな感じが出ていたのなら安心して暴走を続けられますなっ!(ぇ

>>262
『じかんかつようじゅつ』『いちにちいちじかん』『じゃくにくきょうしょく』辺りのお話は書き方次第で
マジモンのホラーになりますよね……



まどマギ要素が話を重ねる毎に薄くなっているけれど、そういうのは他の人のSSに任せて
私は我が道を往く作品を書き続けますと宣誓しつつ、えぴそーどはちだぜー



えぴそーど はち 【ほむらさん達の、おなやみそうだんしつ】



時は前回から遡る事―――― 一分ぐらい前。


―AM10:47 暁美ほむら自宅前―


さやか(さてさて。休日を迎えました今日この頃)

さやか(ほむらからお茶会に誘われたので、ほいほいやってきたさやかちゃんです)

さやか「ふふふ。ほむらとシャルちゃん、驚くかなぁ?」

さやか「見滝原七大スイーツの一つ『ボン・スィート』のチョコレートケーキ!」

さやか「二人の吃驚する姿を見たいがために、二ヶ月分のお小遣いを奮発して買っちゃったのだーっ!」

さやか「っと、何時ものテンションで両腕広げちゃったけど、あまり大袈裟に動いちゃ駄目だな」

さやか(だって、あたしが『人間サイズ』でいられるのって……昨日ほむらが渡してくれた指輪のお陰だし)

さやか(うっかり指輪を落としたり壊したりしたら、住宅地のど真ん中に100メートル級の巨人が出現)

さやか(自衛隊とかの攻撃目標になりそうです。そんな展開ごめんなのです)

さやか(故に今日からあたしは淑女になるのだぁ~……ならざるを得ないと言うべきか)

さやか(さて、そんなこんなでほむらの家の前まで来ました)

さやか(……親元を離れて一人暮らしと聞いていたから、てっきりアパートとかで暮らしているかと思っていたけど)

さやか(見事な一軒家でした。下手をするとあたしの家よりでかいかも)

さやか(これはほむらの家がお金持ちと考えるべきか、或いは妖精さんパワーの仕業なのか)

さやか(……妖精さんパワーだな。十中八九)

さやか「ま、どんな家に住もうとほむらの勝手っとね」

さやか「そんな訳でインターホンをぽちっとな」

――――ピンポーン

ほむら『はーい……あ、さやかさん。お待ちしていましたー。今扉を開けますのでちょっと待っててください』

さやか「あいあーい(カメラ付きのインターホンか……いや、妖精さんアイテムか? 判断に困る)」

ほむら「こんにちはー。早かったですね」

さやか「お菓子買ってたんだけど、思っていたよりスムーズにいけてね。ちょっと早く来過ぎちゃったかな?」

ほむら「そんな……そんな気を遣わなくても良かったのに」

さやか「いやいや。流石にごちになるだけってのはね」

ほむら「ふふ……ありがとうございます」

ほむら「さ。立ち話も難ですから中へ」

さやか「じゃ、お邪魔しまーす」

ほむら「あ、そうだ。さやかさんの性格上やりそうなので伝えておきますけど……」

ほむら「うちの中を勝手に散策しない方が、身の為ですよ?」

さやか「……あ、うん。成程、そういう事ね」

ほむら「そういう事です」

――――バタンッ



さやか「おー、結構普通の家だねー」

さやか「ほむらの家だからもっと不思議ワールドが展開しているかと思ったけどなー」

ほむら「それはそうですよ。妖精さんが改造しただけで、見た目は変わらないんですから」

さやか「いや、やっぱ普通じゃないわ。うん」

ほむら「むぅ……まぁ、普通じゃないですけど」

さやか「ああ、自覚はあるんだ」

ほむら「さやかさんは私をなんだと思ってるんですか……」

さやか「天然腹黒のーてんき女」

ほむら「……昔、友人に同じ事を言われた事があります」

さやか「昔からなのかよ」

\イツカフクシュウシテヤルカラナァー!!/

さやか「? ……なんか、聞こえた?」

ほむら「え? そうですか? ……気のせいじゃないですか?」

さやか「んー。多分そだね」

ほむら「では、そろそろ行きますよ」

ほむら「私から離れないでくださいね」

さやか「心得てるさ」

さやか「で、興味本位で聞くけど、万一この家をうろちょろしたらどうなるの?」

ほむら「遭難します」

さやか「……はい?」

ほむら「妖精さんによってこの家は改造されていまして」

ほむら「特定の行動を取らないと、扉の向こうが大平原とか大海原になってしまうんです」

ほむら「しかもうっかり中に入っちゃうと、扉が消えてなくなるのですぐには出られないんですよー」

ほむら「ちなみに玄関は外から入る場合、妖精さんが作ってくれたこの鍵を使うか、三回ノックし、
    開けゴマと言った後に自分で扉を開けないと大草原に繋がります」

さやか「自分で開けたら呪文の意味ないじゃん……つーか、なんでそんな事になってんだよ」

ほむら「泥棒対策をしてくださいと妖精さんに頼んだのですが……ちょっと目を離した隙にこんな事になっていまして」

さやか「あー、まぁ、うん。妖精さんなら仕方ないね」

ほむら「で、どうせなら徹底的にやっちゃおうと私が唆したり囃し立てたりしました」

さやか「お前の所為じゃねぇか!」

ほむら「何時もの事ですよー」

さやか「まかり間違ってもそれはアンタの台詞じゃない」



ほむら「ま、そんな事情から、一部私にも何処に繋がって何が起きるか分からない部屋があります」

ほむら「死にはしませんけど、気を付けてください」

さやか「たく……とりあえず、りょーかい」

さやか「念のために聞くけど迷い込んだ場合は?」

ほむら「迷い込んだ部屋の中で、一時間ほど身動き一つ取らないでください」

ほむら「猛獣に襲われる事もあるかも知れませんが、全部妖精さん開発の人工生命体ですから食べられはしません」

ほむら「兎も角動かなければ、一時間で自動的に外へと放り出されます。これが一番確実な脱出方法です」

ほむら「まぁ、歩き回って色々なアクションを起こしていれば、家の何処かに出られるかも知れませんが」

さやか「……なんで一時間じっとしていると外に出られる事に?」

ほむら「そこは私からのオーダーでして」

ほむら「へとへとになるまで歩き続け、故郷を思い返して泣き喚き、知らぬが故に死の恐怖に震え」

ほむら「最後は気絶なり飢餓なり渇きなりで身動きが取れなくなってから、お帰りいただく仕様です♪」

さやか「えげつねー」

ほむら「ああ、あと迷い込んだ空間と外部では時間の流れが異なりますから、私が救助に向かう事はあり得ませんからね」

ほむら「妖精さん曰く、用意された空間には『時間が存在しない』そうなので、内部で何十年暮らそうと外では一秒すら経っていないので」

さやか「……ほぼホラーだな」



――AM10:50 ほむら宅――


ほむら「ここの戸は『ふっとんがふっとんだー』等のダジャレを言った後に開けると中に入れます」

ほむら「そしてようやくリビングです」

さやか「……リビングに入るまでに三分かかったんだけど」

ほむら「本来はこの鍵を使って通るので、そんなに時間はかからないんですけどねー。ま、説明回って事で」

ほむら「どうです? 我が家のセキュリティは万全でしょう?」

さやか「お前は一体何と戦ってるんだという感想しかないんだけど」

ほむら「なんでしょう……運命、とか?」

さやか(何故か冗談に聞こえない不思議)

さやか(……見た目普通のリビングだけど、迂闊に触らないようにしとこう。うん)

さやか(ま、シャルちゃんがソファに寄り掛かりながらふつーに雑誌読んでるから、そう警戒しなくても良さそうだけど)

さやか「やあやあシャルちゃん。うぃーっす」

シャル「うぃーっす。早かったわね」

さやか「シャルちゃんとほむらへのお土産がスムーズに買えたからね。ほれ」

ほむら「あ。ありがとうございます……ん? この包装は……何処かで見た覚えが……」

シャル「くんくん……こ、この匂いはまさか!?」

シャル「見滝原七大スイーツの一つ『ボン・スィート』のケーキ!?」

さやか「匂いで分かるって犬かよ……」

妖精さんA「けーき?」
妖精さんB「けーきのにおい、するです」
妖精さんC「なにはともあれおかしたべたし」

さやか「そして妖精さんが当然のように湧くという」

ほむら「もう慣れた光景でしょう?」

ほむら「そんな訳で、リビングは妖精さんエリアとなっています。電波は完全遮断。携帯は使えませんのでご注意を」

さやか「了解~」



妖精さんA「けーきっ。けーき!」
妖精さんB「…………」←嬉しさで失神している
妖精さんC「ピ――――――――――――!!」

ほむら「さて、妖精さんが本能タイムになってますので、さっさと切り分けるとしましょう」

ほむら「ジュースも持ってきますから、ちょっと待ってくださいね」

シャル「あ、ジュースならもう私が出しておいた」

ほむら「あら、すみません。手伝えなくて」

シャル「何今更畏まってんのよ。私ら……同居人なんだからさ」

さやか(ああ、あの言いよどみ方)

さやか(少なくともシャルちゃんの中では同居人以上の関係になりつつあるのですね)

さやか(だけど指摘したら顔を真っ赤にして怒るに決まっているので、生暖かい眼差しを送るさやかちゃんでした)

シャル「……なんかさやかが癪に障る目線を向けてんだけど殺していい?」

さやか「段階飛ばし過ぎだから?! せめてぶっていいと聞こうよ!?」

シャル「ぶっていい?」

さやか「いい訳あるかっ!」

ほむら「ほらー、二人ともお静かにー」

ほむら「ケーキを切り分けてきますから、しばしの間、妖精さんが暴走しないように見張っててくださーい」

シャル「あいあーい」

さやか「もー……つーか妖精さんが暴走しないようにって、ほむらが戻るまでの一分二分で暴走すんのかね?」

妖精さんA「あんなすばらしいけーきもらえるとは」
妖精さんB「ぼくらしあわせすぎ?」
妖精さんC「なにかおれいせねば」
妖精さんD「おれいといえば?」
妖精さんE「きんぎんざいほー?」
妖精さんF「こうみゃくつくります?」
妖精さんG「せきゆもよろこばれるかと」
妖精さんH「わいてわいて!」

さやシャル「……………」

さやシャル(あ、ヤバい。これ爆発寸前じゃん)

シャル「さやか! 止めるわよ!」

さやか「おうっ!」

さやシャル(止め方知らないけどね!!)



……………

………




シャル「ん~♪ やっぱりボン・スィートのケーキは格別ねっ!」

ほむら「こんなに美味しいケーキは初めてです!」

さやか「はっはっはっ。喜んでくれたようで何より」

妖精さんA「」←失神している
妖精さんB「」←失神している
妖精さんC「」←失神している

さやか「……あれも一応喜んでくれたのかな?」

ほむら「とても喜んでいますよ。私が作ったお菓子では、あんなに喜んではくれませんもの」

さやか「ん? ほむらってお菓子作れるの?」

ほむら「妖精さんと知り合って長いですからね。ケーキぐらいならなんとか作れますよ」

ほむら「まぁ、最近はシャルロッテさんにお株を奪われてしまいましたが」

シャル「んー。そうかもだけど、私のお菓子って人工物っぽい味だし」

シャル「ほむらのケーキは手作りって感じで、味わい深さが私とは段違い。凄く美味しいわよ?」

さやか「へー。そりゃ何時か食べてみたいね」

ほむら「ふふっ。ご要望があれば、何時でもお作りしますよ♪」

ワイワイキャッキャ

ほむら「……さて、お茶会もいい感じに盛り上がってきたところで本題と移りましょう」

さやか「本題?」

シャル「何それ。聞いてないんだけど」

ほむら「言ってませんからね」

ほむら「その名もズバリ、『キュゥべえさんの目的を推理しよう』大会~♪」

シャル「……アイツの、目的?」

ほむら「ま、表題こそふざけていますけど内容は真面目に」

ほむら「全ての魔女さんを助け出すには、まずはその供給を絶たねばなりません」

ほむら「即ちキュゥべえさんが何故魔女さんを、ひいては魔法少女を作りだすのか」

ほむら「その目的を知り、どのように邪魔すればいいのかを考えねばならない訳です」

さやか「なるへそ」

シャル「つーてもねぇ……私ですらアイツの事全然知らないんだけど」



ほむら「あ、やっぱりそうなんですか?」

シャル「今になって思えば、吃驚するほどアイツは自身の情報を話さなかった」

シャル「聞けば答えたかも知れないけど、真実を知れば知るほど自分の事で手一杯になる」

シャル「最後らへんはもう、アイツの事なんて頭から抜け落ちていたわ。元凶なのに、ね」

ほむら「むむむ……シャルさんから新たな情報は期待出来ませんか」

ほむら「しかしそうなると推理に発展出来るだけの情報がない事に……」

さやか「いきなり計画が頓挫してどうする」

ほむら「では企画を変更」

ほむら「『キュゥべえさんの企みを暴こう』大会~♪」

さやか「いやいや、推理が出来ないのに暴くも何も……」

さやか「……いや、暴くのなら出来るのか?」

シャル「出来るんじゃない? 妖精さんがいるし」

ほむら「出来るんですね~」

ほむら「それでは本日の妖精さんアイテム、『なんでも大百科』です!」

さやか「某青狸に通じるものがあるアイテムだな」

ほむら「むっ。今のは聞き捨てなりません」

ほむら「妖精さんアイテムは実用性より面白さ重視! 効用も大事だけど使って楽しいのが一番!」

ほむら「あんな便利なだけ、実用一辺倒な道具しか出さない奴と妖精さんを一緒にしないでください!」

さやか(あ、そこ気にすんだ……)

シャル(ぶっちゃけ青狸が実用的なんじゃなくて、妖精さんアイテムがジョークの塊って話なんじゃ……ま、いいけど)



シャル「それで? その辞典にはどれぐらい詳しくアイツについて載ってんの?」

ほむら「えっと、キュゥべえさんキュゥべえさん……あ、この項目ですね」

ほむら「『キュゥべえ。正式名称インキュベーター』」

ほむら「『インキュベーターとは、地球から約1億光年離れた位置にある惑星で発生した知的生命体の役職名である』」

ほむら「『彼等の社会体制は階級制であり、インキュベーターは地球で』」

さやか「ちょ、ちょっと待って!?」

ほむら「はい、なんでしょうか?」

さやか「いや、あの……色々とツッコミどころが……」

シャル「そうね……正直、私も理解が追い付かないけど」

シャル「つまり何? アイツは宇宙人だったの?」

ほむら「そのようですね」

シャル「なんて事……そりゃ、魔法の国の妖精なんて思わなかったけど、まさか宇宙人だなんて……」

さやか「つーかそれって信じていいの? どうやって書き込んだ訳?」

ほむら「これを貰った時に妖精さんから聞いた話だと、なんでも『ものごと』と『できごと』の方から書き込んでくれるそうです」

さやシャル「……はい?」

ほむら「ですから、『ものごと』と『できごと』の方から書き込んでくれるんです」

さやか「ものごと、できごとって……何?」

ほむら「さあ? ものごとはものごとで、できごとはできごとなんじゃないですか?」

ほむら「兎も角、ご本人……ご本事? ま、それら自身が書き込むんですから、間違いはないでしょう」

さやか「今更だけど、妖精さんテクノロジーは説明を聞いても理解出来なさすぎる」

シャル「そもそも本当にテクノロジーの範疇なのかも疑わしい理論よね。今更だけど」

ほむら「今更な話を続けても時間の無駄です。なのでそろそろ本題に戻りましょう」

ほむら「尤も社会体系とかは読んでも仕方ないので要点だけを」



ほむら「『インキュベーターの役目はエネルギーの回収である』」

ほむら「『彼等の文明はエネルギーを大量消費しており、このままでは宇宙の寿命を削る事に気付いていた』」

ほむら「『しかし自らの文明規模を、テクノロジー水準を衰退させたくもない』」

ほむら「『彼等はエントロピーに縛られない、新たなエネルギーを求めていた』」

ほむら「『その中で生み出されたのが感情をエネルギーに変えるテクノロジーだったが、
     彼等自身は利用出来るような感情を持ち合わせていなかった』」

ほむら「『そこで彼等は今から凡そ十三万年前に発見した地球人に目を付けた』」

ほむら「『人間が持つ感情、中でも希望から絶望に転じる際のエネルギーはエントロピーを覆すほどに膨大なものであったのである』」

ほむら「……なるほど。魔法少女とは、要はエネルギーを生み出すための生贄という訳ですか」

さやか「つ、つまり何? アイツ等、自分達の燃料にするためにシャルちゃんやまどかを魔法少女にしたって言うの!?」

さやか「自分たちが楽な暮らしを手放したくないから!? そんな理由で、人間を殺していたの……!?」

シャル「分かりやすい悪役で良かったわ。変に葛藤なんかせず、真っ直ぐアイツを怨める」

ほむら「ええ……これ以上は読む必要もないでしょう」

ほむら「彼等は私達人類にとって敵です。人様の星に許可なく侵入した挙句、私達を燃料にするような奴等に遠慮なんてしません」

ほむら「私は――――インキュベーターをこの星から追い出したい」

ほむら「もちろん簡単には帰ってくれないでしょうけど……なら、徹底抗戦するまでです」

シャル「ふん。そうこなくちゃ面白くないわ」

さやか「で、でも、宇宙人なんだよね? 十三万年も前から、その、宇宙を自由に行き来するような科学力を持ってんだよね?」

さやか「妖精さんの力は凄いけど……そんなの相手にして本当に勝てるの?」

ほむら「問題ありません」

ほむら「辞書を見る限り、インキュベーターはエントロピーをどうにかこうにか凌駕しただけの模様」

ほむら「しかも昔から魔法少女を産み出していたようであり、それはつまり、彼らの技術がそこで停滞している事を意味します」

ほむら「恐らく、彼らの技術力ではエントロピーを凌駕するだけでやっとだったのでしょう」

ほむら「電気代節約したいなーって私が呟いたという理由だけで、
    我が家のテレビに輪ゴムを用いた第一種永久機関を搭載した妖精さんの敵ではありません」

シャル「テレビに何とんでもないもの搭載してんのよ……」

さやか「永久機関って輪ゴムで作れるんだ……」

さやか「つーか、無から有が作れるなら輪ゴムとかにこだわらなくても……」

ほむら「妖精さん曰く、無から有を創り出しても面白味が足りないそうで」

さやか「……うん。何も言うまい」



ほむら「それに、いざとなったらこの辞書で葬りましょう」

さやか「この辞書でって、どういう事?」

ほむら「この辞書のページを破くとですね、そのページに掛かれている『できごと』が――――過去まで遡り、無かった事になります」

ほむら「まぁ、破壊には目標を実際に破壊するのと同量のエネルギーが必要ですけど、
    妖精さんアイテム『ばらばらアンテナ』を使えば余裕ですよ」

さやか「……………すごくとんでもない話の予感がしますが、どういう事か解説おねげーします」

ほむら「では遠慮なく」

ほむら「恐らく妖精さん的な哲学により、辞書と現実がリンクしていた方が面白いと思ったのでしょう」

ほむら「尤も、そのための破壊には現実と同程度のエネルギーが必要でないとジョークになりません」

ほむら「そして同量のエネルギーを用いて破壊したなら、それは『できごと』自体を破壊するのと同じであるべきです」

ほむら「だったら辞書のページを破壊したら……過去に遡り、それらによって起こされた『できごと』を無かった事にする方が面白い」

ほむら「大方こんな理由でそんな機能が付けられたと思います。ま、私の推測ですけどね」

シャル「さ、流石にそれは……」

さやか「あたしの脳では理解出来ないので三行で説明をば」

ほむら「妖精さんのジョークで、
    宇宙の歴史を改変。
    おもろー」

さやか「よし、妖精さんならインキュベーターなんかけっちょんけちょんだな」

シャル「あ、ああ、うん。そうね。そうでしょうね」

さやシャル「妖精さんなら仕方ないね!」

ほむら「二人共妖精さんに随分と慣れてきましたねー」

さやか「諦めた、と言い直した方が多分適切だよ」

シャル「優れ過ぎた科学はジョークと見分けが付かないと、今になって思い知らされたわ」

ほむら「むしろジョークにしか見えないと思いますけどね」



ほむら「尤も、これは最後の一手です」

ほむら「何分過去まで遡って無かった事にしますからね……人類にどんな影響が出るか分かったものじゃありません」

ほむら「或いは魔法少女の仕組みだけ破壊するのもありかも知れませんが、そうなったら代替案が使われた歴史に改編されるだけでしょう」

ほむら「それに、十三万年って歴史から考えると……」

さやか「考えると?」

ほむら「……ま、これは半ば妄想みたいなものですので置いておいて」

ほむら「いくら侵略者とはいえ根絶やしにするのは、個人的に嫌なんですよねー」

ほむら「もっと穏便に、かつ大胆――――そして面白おかしく解決しなければ」

さやか「あー、まぁ、邪魔だから全て殺すってんじゃ、私らを燃料にしているインキュベーターと大差ないか」

シャル「私としては根絶やしがいいけど、ま、ほむらに任せるわ」

ほむら「ええ、任せてください」

ほむら「丁度この辞書を読んでいて一つの策が思いつきましたからね」

さやか「ほほう?」

ほむら「インキュベーターの勢力はかなり広範囲で、故郷の銀河にある惑星の四割には何かしらの施設があるそうです」

ほむら「しかしそれは主に地球型惑星や衛星で、木星のようなガス惑星には建設されていないとか」

ほむら「それが彼らの技術的、或いはコスト的な限界なのでしょう」

ほむら「だから――――」

さやか「だから?」

ほむら「……此処から先は完成してからのお楽しみです♪」

さやか「ちぇー」

シャル「……………」

ほむら「ま、今夜あたり妖精さんにお願いしてみるつもりです」

ほむら「懸案は片付きましたから、あとはお茶会を楽しむとしましょう」

さやか「そーすっか」

シャル「……そーね」



……………

………




――PM7:11 暁美家リビング――


さやか「えー、ほむらとシャルちゃんとのお茶会を満喫しまくったさやかちゃんです」

さやか「現在午後七時過ぎ」

さやか「はい。満喫し過ぎました。思いっきり門限過ぎたの気付きませんでした」

さやか「うちは門限に厳しいので、帰りが遅くなる旨を伝えずに帰るとものすっごく怒られます」

さやか「いや、これはもう今日帰るとお尻百叩きの刑が待っていまして」

シャル「くどい。三行で説明なさい」

さやか「言い訳しないとあたしのケツがヤヴァイ。
    だから今日は泊めてください」ドゲザー

ほむら「二行で終わりましたね」

シャル「やっすい土下座ねぇ」

シャル「で、どうしますか家主さん?」

ほむら「正直さやかさんがご両親に叱られようと私にはどーでもいいです」

さやか「酷っ!? 事実だけど心にぐさりとくる酷さだよ今の!」

ほむら「しかしまぁ、『ボン・スィート』のケーキを頂きましたし」

ほむら「明日も学校は休みですからね」

さやか「な、なら……」

ほむら「ゆとり教育に感謝してくださいね? 明日も休みじゃなかったら流石にお断りしてましたよ」

さやか「ほむら様ァ――――!!」

シャル「やれやれ……」

ほむら「うーん。だけどそうなるとお料理の方が少し大変ですね。二人分の料理を作るのもまだ慣れてないのに三人分は……」

さやか「あ、あたし手伝うよ! ほむら様のお手伝いするよ!」

ほむら「いえ、足手まといになりそうですから遠慮しておきます」

さやか「酷い! 何度あたしの心を抉れば気が済むんだアンタは!?」

シャル「大体何時もの事じゃない」

シャル「でもまぁ、足手まといって事に関してはその通りでしょうよ」

さやか「シャルちゃんまであたしを貶しますか……」

シャル「いや、アンタが料理下手そうとかそういう問題じゃなくて」

シャル「ほむらがめっちゃ料理上手いから、私らみたいな素人だと手を出す隙がないのよ」

さやか「……え? そういうレベルの話? 飲茶的な?」

シャル「飲茶的な」

ほむら「自慢じゃないですけど、ま、そんな感じになりますよ」



ほむら「ですから今回は特別なお手伝いさんを呼ぶとしましょう」

さやか「特別なお手伝いさん?」

シャル「そんなの居るの? 私も初耳なんだけど」

ほむら「はい。この壁にある蓋を開けるとですね……呼び鈴が出てきます」

さやか(何故壁に呼び鈴を仕込んである……)

ほむら「そんでもってポチっとな」

――――げーとおーぷん

――――げーとおーぷん

さやか「あ、妖精さんの声で放送が掛かった」

シャル「警報なのに警戒心薄れるわね」

シャル「っと、なんか床が自動的に開いたわね……如何にもロボが出てきそうな感じに」

さやか「ドライアイスでも置いてんのか、無駄に白い湯気が出てきてるし」

さやか(ん……開いた床から誰か出てきた……)

さやか(歳は、二十歳ぐらい? 私らより年上なのは間違いないか)

さやか(メイド服を着ているから給仕さんなのかな?)

さやか(胸は大きいし、腰の括れはすごいし……何よりすっごい美人)

さやか(……で、だ)

さやか「こちらの方はどちら様で?」

ほむら「妖精さん製自立行動型ペーパークラフト『お手伝いお姉さん』です」

さやか「うん。知っていたけど、早速ツッコミを入れさせてもらおう」

さやか「ペーパークラフトってどういう事よ!?」

ほむら「文字通りの意味です」

ほむら「こちらのお手伝いお姉さんは紙で出来ております。ちなみに動力は輪ゴムです」

シャル「輪ゴムって凄いわね」

さやか「で、でもどう見ても紙には……」

ほむら「なら、触ってみるとよいでしょう」

さやか「え、い、良いの?」

お手伝いお姉さん(以下お姉さん)「はい。お嬢様の許可は出ましたので、どうぞ」

さやか(普通に喋った……益々ペーパークラフトには思えない)

さやか(でも……まぁ、妖精さんだしなぁ)



シャル「紙と輪ゴムでロボットって、世界中の科学者が発狂しかねないわ」

ほむら「正確にはロボットではなく人工生命体ですけどね」

さやシャル「……え?」

ほむら「ですから人工生命体です」

ほむら「息をしていますし、眠りにもつきます」

ほむら「なので、一人の人間として扱ってあげてくださいね?」

さやか「お、おう」

シャル「ぶっとんでるー」

ほむら「ああ、そう言えば姉さんにはまだお二人を紹介していませんでしたね」

ほむら「あちらの私と同じ姿をしている方はシャルロッテさん。訳あって、今は同居人として暮らしています」

ほむら「そして余りがさやかさん。訳あって、渋々ですがうちに泊めてあげる事となりました」

さやか「なぁ、迷惑だったのか? あたしが泊まるのそんなに嫌だったのか?」

お姉さん「了解。お二人の事は記憶しました。それで、今回はどのようなご用件でお呼びに?」

ほむら「えっとですね、ちょっとお手伝いをしてほしいと思いまして」

ほむら「私は今から料理を作りますから、テーブルの方の片付けをお願いできますか?」

お姉さん「了解しました」

さやか「おお、早速仕事を始め――――って、早!? 残像見える早さで片付けしてる!?」

ほむら「さ、私もちゃっちゃと料理を作るとしましょう」

さやか(ほむらも支度を始めた……台所の方に行ったね。リビングからキッチンが視えるから、どう動くのか全部見えるや)

さやか(って、うおっ?! な、なんか物凄い早さで冷蔵庫から食材を取り出して……)

さやか(凄い! びっくりするほど手際よく食材を洗ってる!?)

お姉さん「テーブルの片付けは終わりました。次の指示を」

ほむら「あ、では次は食器の方を用意してくれますか?」

ほむら「今日はクリームシチューを作りますので、それ用の食器でお願いしますね」

お姉さん「了解しました」



さやか(お手伝いさんに指示を出してる間も手は止まらない……あ、もう洗い終わったみたい)

さやか(食材を切り始めた……って、これも速いなぁ)

さやか(まるでテレビに出てくる有名な料理人みたいだよ。そりゃ、あたしら素人じゃ足手まといだわな)

さやか「……ほむらー。今話しかけても大丈夫ー?」

ほむら「ええ、大丈夫ですよ」

さやか「いやぁ、随分と料理が上手いようで……さやかちゃんは感心しましたよ」

さやか「しかし同時に、どうしてそんなに上手いのかと不思議に思う訳ですが?」

ほむら「調理はサバイバルの基本ですからね。慣れました」

ほむら「他にも裁縫とか、食べられる野草とキノコの鑑定。それから簡単な工作技術」

ほむら「妖精さんのトラブルに何度も巻き込まれると、そーいう技術とか知識が格段にスキルアップするんですよ」

さやか「……逆に、そんな体験を何度もしといて何故体力がないんだ」

ほむら「昔は少しはあったんです。最近は病院生活が長くて、ちょっと体力が落ちちゃっただけでして」

さやか「ちょっとかぁ?」

ほむら「ちょっとです。昔は百メートルを完走するだけの体力はあったんですから」

さやか「元々皆無だったんじゃん」

ほむら「それに死にはしませんからねー……楽しめればそれでOKってやつで」

ほむら「サバイバル技術も、より楽しむためのものです。体力がなくても問題ありませんよ」

さやか「そーいうもんなのかねぇ……」

ほむら「あ、話は逸れますけど、シャルロッテさんにもうすぐご飯ですからお菓子は食べないようにと伝えてくださいね」

シャル「ギクッ!?」

さやか「……ご飯前に、よく苺クレープなんて食えるね」




……………

………




さやシャル「ごちそーさまでしたー」

ほむら「おそまつさまでしたー」

さやか「いやあ、想像以上に美味かったよ。こりゃ、うちのシチューじゃもう満足できないね!」

ほむら「そんなに褒めてもデザートは出ませんよ」

さやか「お世辞じゃないってばー」

シャル「フフン」

さやか(何故アンタが自慢げなんだ、というツッコミは野暮かな?)

ほむら「ふふっ。では、素直に受け取るとしましょう」

お姉さん「洗い物はやっておきますね」

さやか「あ、すみません。お願いしま」

ほむら「ちょ、姉さん何を言ってるのですか!?」

ほむら「姉さんは紙なんだから濡れたら破れちゃうでしょ!?」

お姉さん「いえ、前にも言いましたが防水性には優れていますし、仮に破れても修復は容易で……」

ほむら「洗い物は私がしますから、姉さんはもう部屋に戻っていてください!」

お姉さん「ああ、お嬢様ご無体な……」

お姉さん「私としては働くのが生き甲斐な訳でして……」

ほむら「なら今度買い物に行く時についてきてもらうので、姉さんはその時まで休んでいてください!」

お姉さん「むぅー……」

さやか「……なんか、ほむらの様子変じゃない?」

シャル「確かに、ちょっと妙ね」

シャル「なんか焦ってるような……ん?」

シャル「ふと思ったけど……ほむらって、お手伝いさんを『姉さん』って呼ぶのね」

ほむら「……………え?」

シャル「いや、だから姉さんって……」

さやか(あ、なんかほむらの顔が真っ赤になってる……目も見開いて……)

さやか(……ははーん。さやかちゃんも気付いちゃいましたよ)




さやか「あれか。幼い頃から家族みたいに接してきたから実の姉みたいに想ってるとか、そういうパターンか?」

ほむら「ぶぁ!?」

ほむら「ば、ばばばば馬鹿な事を言わないでください!? 私が、そんな、」

お姉さん「確かに私はお嬢様が幼少期の頃から一緒に過ごしています」

お姉さん「ここ数日呼ばれなかったので寂しかったのですが……成程成程」

お姉さん「同居人の方に恥ずかしい姿を見られたくなかったと」

お姉さん「ほら、何時もみたいに胸に飛び込んですりすりしても良いんですよ?」ニヤニヤ

ほむら「姉さんも何言ってんの馬鹿ァ―――――!?」

さやか(おおう、こんなに取り乱すほむらは初めてだ)

さやか(そんでもってお手伝いさん、すっごい生き生きとした笑みを浮かべてるわぁ)

シャル(成程。ありゃロボじゃなくて人工生命体だわ)

さやシャル「いやぁ、いいものを見せてもらった」ニヤニヤ

ほむら「」ブチッ

ほむら「……妖精さんアイテム、『記憶ホームランバット』……」

さやか「え、ほむらが何処からともなく金属バットを取りだし」

ほむら「脳髄と一緒に飛んでけえええええええええええええっ!!」

さやか「ぎゃわらば!?」ブシャー

シャル「ぶふぅーっ!? ほむらが金属バットでさやかの頭を殴って……」

シャル「なんかさやかの頭から出てきちゃいけないグロテスクな物体が出てきてるけど!?」

ほむら「演出です!」

ほむら「記憶が吹っ飛ぶついでに中身的なやつも一緒に吹っ飛ぶだけです! 三分で治ります!」

ほむら「そしてシャルロッテさんもです!」

シャル「あ、お願い待」ブシャー



――数分後――


さやか「……シャルちゃん。一つ訊いていい?」

シャル「ええ、いいわ」

さやか「あたし達って今お風呂場で湯船に浸かっている訳だけど、何時お風呂に来たか覚えてる?」

シャル「奇遇ね。私も同じ事を訊こうと思っていたの」

さやか「それからさ、なんか頭がぼーっとして……なんかこう、大切なものを無くした気がすんだよね」

シャル「私も今、そんな気持ちよ。しかも物理的に無くした気がすんのよね」

さやか「……なんだろうね」

シャル「忘れるって事は大した事じゃないか、忘れた方がいいって事よ」

さやか「……そだね」

さやか「ああ、それからもう一つ訊いていい?」

シャル「どうぞ」



さやか「この家のお風呂どんだけ広いんじゃあああああああーっ!」



\ヒロインジャーッ!/


\ヒロインジャー/


\ヒロイ…/



シャル「おお、見事な反響音」

さやか「声が三回も反響して聞こえてくるって広過ぎでしょ……」

さやか「目測だけど、外から見たこの家のサイズよりでかく見えるんだけど?」

シャル「なんかほむらから聞いた話だと、実際のサイズはふつーのお風呂場程度らしいわよ」

シャル「ただ妖精さんが描いた『騙し絵』で、こんなに広く感じるのだとか」

さやか「なんでも妖精さんと言えば許される風潮はどうかと思う」

ほむら「もー、さやかさん。お風呂は静かに入ってください」

さやか「ああ、ほむら……居たのか」

ほむら「居ましたよ。シャルロッテさんがいるのですから、当たり前でしょう?」



ほむら「それより、お風呂は身体と心の洗濯なんです。静かに、落ち着いた気持ちで行うべき習慣ですよ」

さやか「でもさ、女三人裸の付き合いしている時点で静かにしろというのも無理な話で……」

さやか「……」ジー

ほむら「……なんですか? 人の身体をじろじろと……」

さやか「……ほむらってさ、よく見ると美少女だよね」

ほむら「ぶっ!? ちょ、何を言って……!?」

さやか「いや、髪を下ろして、眼鏡を外したその佇まい……スレンダーでくすみ一つない身体……」

さやか「さやかちゃんの『嫁センサー』が、まどか以上の反応を示しているのだ!」

シャル「なによその心底どーでもいいセンサー」

さやか「惜しむらくは胸部が少々乏し過ぎる点だが案ずる事はない……まどかはあたしが育てた」

ほむら「意味が分かりませんから!? 両手をわきわきしながら近付かないでください!」

ほむら「はっ!? まさか、さ、さやかさんってそっち系の人なんですか!?」

ほむら「いけませんいけません! いえ、そういう恋愛がダメという訳ではなく、あわわわわわ……」

シャル(お、顔を真っ赤にしてる。そういう話題苦手なのね)

シャル(しかしこれは相手の加虐心を煽るだけになりそうで)

さやか「あたし割とどっちもいける口だと思うんだよねー」

ほむシャル「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

さやか「……いや、冗談だから。ほむらは兎も角シャルちゃんまで逃げないでよ」

シャル「い、いや、冗談に聞こえなくて」

さやか「え? もしかしてあたし本当にそういう扱いだったの?」

ほむら「はー……怖かったです」

さやか「いや、だからあたしの扱いって」

シャル「なんかどっと疲れたわね。身体洗って、さっさと上がりましょ」

さやか「あの、あたしちゃんと好きな男子が居て」

ほむら「あ、また髪洗わないつもりでしょう!? ちゃんと手入れしないと髪が痛みますよ?」

シャル「別にいいじゃん……誰にモテたいとも思わんし」

ほむら「駄目です。女の子は綺麗で可愛くあるべきです」

ほむら「ほら、洗ってあげますからこっちにきてくださいっ」

シャル「あー、もう……お風呂なんてお湯でざぶーっと洗えばいいじゃん……石鹸使うと環境汚染になるよー?」

ほむら「美容は地球よりも大切なんです!」

――――ワイワイキャッキャ


さやか「……あれー?」



……………
………



シャル「あー、いい湯だった」

ほむら「うちでの生活にはもうすっかり慣れたようですね」

シャル「まーねー」

さやか「何故か風呂上がりの後、二人の着替えが終わるまで目隠しされた。解せぬ」

ほむら「いえ、ジョークをやるなら徹底的にが私のモットーですので」

さやか「そんなモットー捨てちまえ」

シャル「私はまだ信じてないよ」

さやか「信じてないの!?」

シャル「ジョークよ、ジョーク」

さやか「笑えねぇー……」

ほむら「さてと。お風呂もあがりましたし、あとは寝るだけですかねー」

さやか「え? もう寝るの? まだ九時前だよ?」

ほむら「夜更かしは美容の天敵です。それにたっぷり寝た上での早起きは気分がいいですよ?」

さやか「そーいうもんかねー?」

ほむら「そーいうものです」

ほむら「それに、どーせ布団に入ってもすぐには寝ないでしょう?」

さやか「うん。そのつもり」

シャル「はい、それじゃあ布団敷くから二人とも手伝ってー」

さやか「あいよー」

ほむら「あ、そうだ……」



ほむら「すみません。私はこれから妖精さんに一つお願いをしようと思うので、ちょっとこれから自室に行こうと思います」

ほむら「少々時間はかかると思いますが、布団を敷くのはその後からでも……」

シャル「お願い? って、あれか。対インキュベーター対策のやつ?」

ほむら「ええ。規模が規模だけに、妖精さんにちゃんと説明しないといけないと思いますので」

シャル「あいよ了解」

シャル「布団の方は私らでやっとくから、ゆっくり話し合うといいわ」

さやか「うん。あたし達で済ませちゃうよ」

ほむら「え、でも……」

シャル「布団の場所ぐらいもう覚えたわよ。さやかに手伝わせればすぐに終わるわ」

シャル「それに私らじゃ魔法少女には何もしてやれないんだからさ、こーいう事ぐらいは任せてよ」

ほむら「ぁ……」

ほむら「……………分かりました。お布団の方は、お二人に任せますね」

シャル「任された。それじゃ、行こうか」

さやか「いえっさー」

ほむら(お二人は寝室へと向かいましたね……)

ほむら(私も、自室に行くとしましょう)



――PM8:55 ほむら自室――


ほむら「――――という訳なんですけど、作れますか?」

妖精さんA「やってみましょう」
妖精さんB「しかしおおきいですからなー」
妖精さんC「ながびくのはかくじつかと?」

ほむら「どれぐらい掛かりそうですか?」

妖精さんB「どれぐらい?」
妖精さんA「じかんなどいしきしませなんだなー」
妖精さんC「ざっとひとつきでは?」
妖精さんA「ながすぎ?」
妖精さんB「こーきちぢめるろぼをつくるべき?」
妖精さんD「ぼくら、とちゅうでわすれるかも?」

ほむら「あら、不安になるような事言っちゃう悪い子は、お腹くすぐりの刑ですよー」

妖精さんD「きゃっ、きゃは! きゃはははっ!」
妖精さんD「はひー……いっそころしてー……」

ほむら「殺しませんよ。大体死なないでしょ、あなた達」

ほむら「ま、忘れてしまう事は想定しています。定期的に思い出させるのと、モチベーション維持のためのお菓子を差し入れますよ」

妖精さん達「おかしーっ!」ぽぽぽぽーんっ

ほむら「わぁ。一気に三十人ぐらい増えましたね……相変わらず現糖な人達です」

妖精さんE「しろいこなのぱわーでげんきひゃくばい」

ほむら「それ、偽りの元気ですよ?」

妖精さんE「いつわれるものがあるだけましでは?」

ほむら「それもそうですね」

ほむら「……うん。大丈夫。これだけ妖精さんがいれば、酷い事にはならない」

ほむら「……私が何をしても」



妖精さんA「おなやみですか?」

ほむら「……そうですね。ちょっと、自分の行動に悩んでいます」

ほむら「あなた達に今お願いした発明を――――本当に作ってもらっていいのか」

ほむら「今までは、まぁ、これからもですけど、私は自分の思うがままに生きてきたつもりです」

ほむら「妖精さんの超パワーも躊躇わずに使いました。その方が楽しくなりますからね」

ほむら「でも今回の頼み事は今までと規模が違う」

ほむら「全ての魔女を救う事は、世界の全てを巻き込む事です。私の周りだけを面白おかしくするのとは違います」

ほむら「私が頼んだ事で何かが起きるかも知れない。どうしようもなく、救えない事が起きるかも知れない」

ほむら「そして、インキュベーターはもしかすると、私達の……」

ほむら「……これは私の想像です。確証のない、妄想です」

ほむら「だけど本当だったら、私は人類にとって最悪の事をしでかすかも知れない」

ほむら「その最悪の責任を負う事が……怖いんです」

ほむら「妖精さんがいるのに、一体何を怖がっているんだって感じですけどね」

妖精さんA「ぼくらになにかできます?」

ほむら「うーん。こういう気持ちは誰かに吐露しちゃうと覚悟が決まるものですけど……あなた達は相談役は向いてませんからね」

ほむら「明日さやかさんかシャルロッテさん、あと……姉さんに相談してみますよ」

妖精さんA「さよかー」

ほむら「さて、と。それじゃあ私はそろそろ寝ますね」

ほむら「おやすみなさい、妖精さん」

妖精さんA「いってらっしゃいです?」

ほむら「夢に旅立つという点ではその通りですけどねー……ん?」

ほむら「……………」

ほむら「ま、いいか。ちょっと大冒険したい気分ですし」

ほむら「じゃ、いってきます」



……………

………




ほむら「ん、んんーっ……ふぁぁ……よく寝ましたぁ……」

ほむら「昨日は楽しかったですねぇ……さやかさんが始めた枕投げ♪ まぁ、私は真っ先に陥落しましたけど」

ほむら「さて、あまり布団の中でモゴモゴしていられません。そろそろ起きて朝ご飯の支度を――――」

ほむら「……あら?」

ほむら「布団を掛けてない……服装もパジャマから私服になってます……髪は下ろしたままですけど」

ほむら(周囲が白一色の……空間でしょうか? 壁があるかも分からない事になっていますね)

ほむら(地面はあるので浮遊感がないのは良いのですが……ふむ)

ほむら(どう考えてもこれは妖精さんの仕業ですね。寝る前にフラグは立っていましたし、OK出しましたけど)

ほむら「っと、さやかさんとシャルロッテさんも居るじゃないですか。まだ寝ているようですが」

ほむら「とりあえず起こすとしましょう」

ほむら「さやかさーん、朝ですよー」ユサユサ

さやか「ん、んん……もう食べられない……」

ほむら「ならさやかさんの朝ご飯は抜きです」

さやか「そ、それは困るぅ!」

さやか「……おや?」

ほむら「おはようございます、さやかさん」

さやか「あ、ああ、ほむら。おはよう」

さやか「……おや?」

ほむら「私の家にお泊り。妖精さん。何時もの事。OK?」

さやか「お、OK」



ほむら「物分りのいい人は好きです。ではシャルロッテさんも」

ほむら「シャルロッテさーん。起きてくださーい」

シャル「んっ……やだ……ままぁ……」

さやか「……とても素敵な言葉を聞いてしまった」

ほむら「ほら、早く起きないとホットケーキを焼いてあげませんよ?」

シャル「……じゃあ……おきる……」

シャル「……………」

ほむら「おはようございます」

シャル「……おはよう」

さやか「お、おは」

シャル「死ねえええええええええええええええええっ!!」

さやか「有無を言わさぬ猛スピードでの顔面パンチは厳しぶごっぱぁ!?」

ほむら「おお。ストレートで決まりましたね」

シャル「ああもう! さやかが泊まってるんだった! 忘れてたわ!」

シャル「って、なんか周りがすんごい事になってない!?」

ほむら「妖精さん。OK?」

シャル「お、おけ」

さやか「……………」ピクピク

ほむら「さやかさん、また寝ちゃいましたね」

シャル「そのまま寝かしとけっ!」


――少女起床中……――


さやか「うう……まだ顔がひりひりする……」

シャル「自業自得よ」

さやか「いや、あたし何もしてないと思うのですけど?」

ほむら「何時ものコントはそれぐらいにしときましょう」

さやか「いや、何時もので流さないでくださいよ? というか今後もあたしこんな役回りなの?」

ほむら「こんな不可思議空間は間違いなく妖精さんの仕業でしょう」

さやか「なーがさーれたー……しくしく」

ほむら「問題は彼等がどんな意図でこのような空間を用意したか、です」

ほむら「大方昨晩の私が原因でしょうけど……」

シャル「アンタが元凶かい」



ほむら「しかしそうだとすると腑に落ちない点が一つ」

シャル「腑に落ちない?」

ほむら「面白さがないんです。この空間には」

さやシャル「……………あー」

さやシャル(なんとなく納得出来てしまった……)

ほむら「こういう場合、何かしらの仕掛けとかが用意されている筈なんですけどね……」

シャル「仕掛け人に直接聞いた方が早くない?」

ほむら「妖精さんにですか? 確かに呼べば出てくると思いますけど」

ほむら「こういうのは自力である程度探索してから聞いた方が面白いですので、お手上げになってからで」

さやか「相変わらずの面白さ重視だな」

シャル「でも方針に反対はしないのよね?」

さやか「巻き込まれた以上楽しむしかないって知ってるからねー……」

ほむら「とりあえず……あっちに進んでみるとしましょう。特に理由はないですけど」

シャル「立ち止まっていても仕方ないものね」

さやか「……いや、その必要はないんじゃないかな?」

ほむら「と、言いますと?」

さやか「今から向かおうとした先から誰か来てる」

シャル「え? ……あら、本当。誰かこっちに来てるわね」

シャル「黒くて髪の長い……女の人かしら」

ほむら「……いえ、女の人というよりアレは……」



――――それは見覚えのある人でした。

―――― 一歩進む度にたなびく美しい黒髪は、貴族の令嬢のような雰囲気を醸し出しています。

――――華奢な身体つきは突けば倒れてしまいそうで、しかし鋭い眼差しは力強さで溢れていました。

――――服装はどこかの学校の制服として使われていそうなものです。盾は……ファッションでしょうか。

――――だけどその手にある宝石が彼女の『魂』なのだとしたら――――彼女の服は制服などではないのでしょう。

――――いえ、そんな事よりも気になる事が一点。

――――表情の違い、髪型の違い、服装の違い、『種族』の違い……違いは色々あれど、見間違う訳がありません。



――――だって、やってきたのは



さやシャル「ほ、ほむら……?」



――――私だったのですから。



今回はここまで!
まどマギ要素がここ数話全くありませんが、まだまだない状態で続きます。
あ、あと二話ほど進んだら杏子ちゃん出てくるから……(ネタバレ

ちなみに私は百合が大好きです。そんなどーでもいい情報を残しつつ
サーヨォーナァーラッ!


今回の更新終わったら
「ここに普通のほむらぶち込んだら面白いことになりそうだな」と書き込むつもりだったのに
先に書かれてしまった…


>>まだまだない状態で続きます
えっ、虚淵要素ある状態が来るの!?(驚愕)

>>304
まず近所に銭湯が無いわ

>>1さんに質問
マチョロッテからどうやってシャルロッテにもどったんですか?
(かいしゅーのひつよーあるかとおもてききましたー)


このSSのインキュベーター宇宙の為じゃなくて私利私欲かよww
最低だな

QB共は合理主義だからなぁ

(自分たちの識別できる範囲内の)全宇宙(に広がった自分たち)のため

言ってない事があるだけで何の嘘も吐いてない(白目

そういえば後二ヶ月で叛逆DVDリリースですが、>>1はレンタルだけ?
店舗毎に購入特典(一部予約)あったりするっぽいですが


こんちわーっす。速報復活おめでとう……お疲れ様? まぁ目出度いってことで(適当


>>305
危なかったぜ……今後もコメで書かれる前に投稿出来るよう精進せねば。

>>306
ま、魔法少女の真実とか……

>>311
妖精さん「もみもみして、ろうはいぶつといっしょにおさらばです?」
ほむら「マッサージによってどうにかしたようですが、詳細は不明です」

>>313
大凡>>314の言っている通りです。なんで宇宙を延命する必要があるの? と聞けば、
多分(君たちにとっても得だ云々言って、それでも問い詰めてようやく)自分たちのためと答えるんじゃないかなーっと。
それに感情を持たない虫や細菌だって、生き方は利己的ですし。
そのあたりの設定という名の妄想は今後のお話で……

>>315
特典情報見ていたらほしくなったじゃないか! どうしてくれる!


それでは久々の投下です。
ちょっと難産だったのと、個人的解釈入れまくりの内容なので、生暖かい眼差しで見下してね!!



えぴそーど きゅー 【ほむらさんだらけの、おなやみそうだんしつ】



――――繰り返す。

――――何度でも繰り返す。

――――私はあの子を救う。

――――そのためなら、何度でも過去へと戻り、何度でも絶望に抗ってやる。

――――そのためなら、例え他の全てを犠牲にしても構わない。

――――今度こそ、あの子を絶望から――――




原作ループ済みほむら(以下原ほむ)「――――っ!」

原ほむ(戻った……始まりの時間に)

原ほむ(またあの子を救えなかった……だけど後悔している暇はない)

原ほむ(早く起きて、あの子を助けるために行動をしないと――――)

原ほむ「っ!?」

原ほむ(ど、どういう事……!?)

原ほむ(此処、私が入院していた病院じゃない!)

原ほむ(真っ白で何もない……いえ、地面はあるみたいだけど、それ以外何もないように見える……)

原ほむ(部屋、というよりも、空間かしら……)

原ほむ(魔女の結界……ではないみたいね。ソウルジェムが反応しない)

原ほむ(これは一体どういう事?)

原ほむ(時間遡行になんらかの問題が生じた? それとも何者かに閉じ込められた時間軸?)

原ほむ(今までもイレギュラーが発生する時間軸は幾つもあったけど、今回はとびきりの事態ね……)

原ほむ(兎に角、立ち止まっていても仕方ないわ)

原ほむ(他に誰かいないか調べるとしましょう)

原ほむ(念のため魔法少女に変身して……)変身っ

原ほむ(……こういう時、地味な格好で助かるわ)

原ほむ(まどかや巴マミのような格好だと、運良く誰かと遭遇しても警戒されないとも限らないし)

原ほむ(……盾だけは如何ともし難いけど、これぐらいは仕方ないわね)

原ほむ「一応此処で目覚めたっていう目印を付けておこうかしら。何もない空間だし」

原ほむ「盾から適当な小物を取り出して……盾にしまっておいた物は一緒にループ出来て助かったわ」

原ほむ「……よし。これで万一迷った挙句此処に戻ってきても、すぐに気付ける」

原ほむ「それじゃ、探索よ」


……………

………





原ほむ(何処まで歩いても、延々と白い空間だけが続く……)

原ほむ(かれこれ、五分ぐらい歩いたかしら)

原ほむ(やはり、部屋というより空間ね。こんなにも広い、単色の部屋があるとは思えないし)

原ほむ(だとしても、まぁ、おかしい事に変わりはないけど)

原ほむ(……魔女の反応がないから結界ではないと思うのだけど、果たして本当にそうなのかしら)

原ほむ(ソウルジェムに反応しない魔女……聞いた事はないけど、居ないとも聞いていない)

原ほむ(仮に魔女の結界じゃないとしたら、ここは一体なんだと言うのかしら)

原ほむ(そろそろ何かヒントになるような物を見つけたいのだけど……)

原ほむ(ん? 人影が……三つあるわね)

原ほむ(とりあえず、近付いてみるとしましょう)

原ほむ(話が聞ければよし。襲われたら、敵って事で始末すればいい)

原ほむ(そうね。敵だったら多分この空間に私を閉じ込めた張本人でしょうし、そっちの方が面倒がなくていいかもね)

原ほむ(……ん?)

原ほむ(何かしら、なんか見覚えのあるような……)

原ほむ(ああ、一人は美樹さやかみたいね。面倒な奴に遭遇してしまったわ)

原ほむ(それから残り二人は……)






原ほむ(……わたし?)




――――前回のあらすじ。見知らぬ空間で出会ったのは私でした。終わり。


ほむら「……まぁ、なんと言いましょうか」

さやか「えっと、ほむらが二人……三人?」

シャル「いや、私は頭数に入れんでいいでしょ。形が似ているだけなんだから」

現れたほむら(原ほむ)「……あなた達は、何者かしら?」

ほむら(区別のため、当SSのほむらさんは以下妖精ほむら、略して妖ほむ)「あ、これはこれは……私は暁美ほむらと申します」

妖ほむ「そういうあなたも暁美ほむらでは?」

原ほむ「……ええ、そうよ」ファサー

さやか「おお、髪の毛かき上げた……なんかクールな感じでカッコいいほむらだなぁ」

妖ほむ「ま、負けるかぁーっ!」ファサー

さやか「なんで張り合ってんだお前は」

原ほむ「……ひょっとしなくても、そこにいるもう一人も暁美ほむらなのよね」

シャル「え? あ、私は違うよ?」

原ほむ「え?」

シャル「私はシャルロッテ。この見た目は、まぁ、色々事情があってね」

シャル「んで、アンタ多分魔法少女みたいだから言っちゃうけど、私は魔女なんだわ。元だけど」

原ほむ(なっ……魔女ですって!?)

原ほむ(ソウルジェムが反応しないからって油断した!)

原ほむ「くっ!」

さやか「うおっ。盾から銃を取り出して構えたよコイツ」

シャル「魔法少女としては正しい対応ね」

さやシャル(まぁ、妖精さんからもらった弾避けのお守りがあるので銃なんか効かないけどー)

妖ほむ「このこのこのこのーっ!」ファササササー

さやか「……アンタは何時までそれをやるんだ」

妖ほむ「いえ、なんか上手く靡かなくて……」

妖ほむ「結構難しいです、これ」

さやか「……」

さやか「あたしも真似してみる」ファサ



さやか「あれ? なんか違う?」

妖ほむ「もっとこう、一旦貯めてから勢いをつけてやると似た感じにはなりますよ」

さやか「どれ……」ファサー

さやか「んー、似た感じにはなったけどなんか違う」

妖ほむ「ええ。なんか違うんです。いい感じにふぁさーってならないんです」

妖ほむ「これは、かなり練習しないと成しえない技ですね」

さやか「ああ、そうだね。相当練習したに違いない!」

原ほむ(……な、なんか急に恥ずかしくなってきた……///)

シャル「そこの二人。遊んでないで真面目に取り合いなさいよ」

シャル「一応私、銃を突き付けられてんだから」

妖ほさや「えー……」

シャル「なんとまぁ、やる気のない返事」

妖ほむ「騒乱の原因はシャルロッテさんじゃないですか。自分で片してくださいよぅ」

さやか「下手に関わるとまた怒られそうなので放置」

シャル「薄情者共めー」

原ほむ(な、なんなのこれは……)

原ほむ(魔女と仲良くしている……美樹さやかが、私と打ち解けている……?)

原ほむ(というか、銃を突きつけられて何故平然として……いや、そもそも……)

原ほむ「……あなた達、やけに冷静ね?」

原ほむ「もしかして事情を知っているの?」

原ほむ(或いは、)

妖ほむ「知っているもなにも、私が騒動の原因ですからね」

原ほむ(彼女達がこのイレギュラーの原因――――)

原ほむ「……………あれ?」




妖ほむ「ふむ、事情を呑み込めていないあたり、過去の私という可能性は薄いですね」

妖ほむ「大方この方は並行世界の、魔法少女になってしまった私という感じじゃないでしょうか」

シャル「いや、もしかすると記憶を失った未来のほむらという可能性も」

さやか「じゃあ、あたしは何者かが作ったほむらのクローンって説を一つ」

シャル「ちょっとちょっとー、それだと私とキャラ被るじゃない」

妖ほむ「シャルロッテさんは入れ物がクローンってだけですけどね」

原ほむ「ちょ、ちょっと待って!」

原ほむ「あの、出来ればちゃんとした説明を……」

妖ほむ「そーですねー。答え合わせもしたいですし」

妖ほむ「適当な壁とか……あ、地面があるか」

妖ほむ「よっうせいさーん。おっりまっすかー?」コンコン

妖精さん「およばれー?」

原ほむ「!?(床がぱかりと開いて中からなんか出てきた!? 小人……いえ、使い魔?!)」

妖ほむ「こんにちは、妖精さん」

原ほむ「よ、妖精さん?」

原ほむ「あの、どういう事かしら……コイツは、使い魔じゃないの?」

妖ほむ「妖精さんは妖精さんです。友枝先輩と同じネタ振らないでくださいよ」

原ほむ「そ、そう……(友枝先輩って誰?)」

妖ほむ「さてさて。妖精さん。ご質問してよろしいですか?」

妖精さん「かもしれませんなー」

妖ほむ「それでは早速。此処は一体どんな空間ですか?」

妖精さん「ここ、かさなってます」

妖ほむ「重なっている?」

妖精さん「おとなりのにんげんさんよびますです」
妖精さん「ひとりここにいるとみんなくるです」
妖精さん「ふえるです」
妖精さん「ごそうだんするがよろしい?」

原ほむ「……意味が分からないけど」

妖ほむ「成程。つまり並行世界にいる私をこの世界に呼び込んだという訳ですねー」

さやシャル「あー、ほむらが正解かー」

原ほむ「ちょっ……今の説明でなんで分かるのよ!?」

原ほむ「というか並行世界の私を呼び込むって……」

妖ほむ「妖精さんの超絶科学力ならお茶の子さいさいですよ」

さやか「なんら驚きもしないな」

シャル「今更よね」

原ほむ「……ああもう。いいわ、可能って事で話を進めるから」



原ほむ「なら、その目的は一体何? 並行世界の私を集めて……彼等は何を企んでいるの?」

妖ほむ「どうやら、私が悩んでいたのでその相談相手を集めてくれたようです」

原ほむ「……は?」

妖ほむ「ですから私の相談相手を集めてくれたんです。まぁ、結局私自身な訳ですけど」

原ほむ「いや、ちょ……え?」

さやか「何? ほむら、悩みがあったの?」

ほむら「ええ。明日……今日でしょうか? まぁ、お二人に話してみようと思っていたのですが、
    妖精さんがお膳立てしてくれたようで」

シャル「お膳立てもなにもねぇ……自分を集めても仕方ないでしょうに」

妖精さん「さんにんよればもんじゅのちえではー?」

さやか「いや、同じ人間が集まっても烏合の衆でしょ」

シャル「或いは船頭多くして船山に登る、かしら」

原ほむ「ま、待ちなさい!」

原ほむ「その程度の理由で彼等はこんな、並行世界を跨ぐような真似をやったというの!?」

妖ほむ「妖精さんですからねー」

妖ほむ「ケーキをたくさん食べたいって理由で時間を何度も巻き戻した事もありましたから、
    それと比べれば大したものではありませんよ」

原ほむ「時間遡行をそんな理由で……」

原ほむ「み、美樹さやかと魔女はどうなの!? 今の説明で納得出来るの!?」

さやか「あれ? あたし名乗ったっけ?」

シャル「並行世界のほむらみたいだし、並行世界のアンタと面識あんじゃない?」

原ほむ「……そんなところよ。それで、どうなの?」

さやか「いや、さっきから何度も言ってるけど、正直今更なんだよね」

さやか「妖精さんなら何をしても不思議じゃないし、何が出来ても可笑しくないし」

シャル「むしろ出来ない事を知りたいぐらいね」



原ほむ「……滅茶苦茶過ぎる……インキュベーターとどっこいどっこいね」

妖ほむ「エントロピー一つろくに覆せないようなへっぽこ宇宙人とどっこいな訳ないじゃないですかー」

原ほむ「っ……あなた、インキュベーターの事を知っているの!?」

妖ほむ「ええ。辞書に載っていたので」

原ほむ「じ、辞書? いえ、そんな事はどうでもいいわ」

原ほむ「一つ聞かせて。あなたの世界では……鹿目まどかは、魔法少女になっているの?」

妖ほむ「鹿目さんですか? ええ、なっていますよ」

原ほむ「……そう」

原ほむ(並行世界……私とは関係ない世界のまどかとはいえ、救えないと聞かされるのは……辛いわね)

さやか(おや、平行世界のほむらの表情が曇った……並行世界のまどかに何かあったのか?)

さやか(って、魔法少女って事は、そういう事かー……)

さやか(妖精さんがいなけりゃ、滅茶苦茶悲痛な話だもんなー)

さやか(……むしろ、悲痛な話だと今まであまり自覚させない妖精さんパワーが特別なのか)

妖ほむ「……ああ、魔法少女が魔女になるから鹿目さんがご心配なんですか?」

原ほむ「それも知っていたのね。インキュベーターの事を知っていたから当然でしょうけど」

妖ほむ「でしたらご安心を。こちらの鹿目さんに関しては妖精さんパワーで人間に戻せますからね」

原ほむ「!?」

原ほむ「ちょっと、どういう事!? 人間に……」

原ほむ(そんなのあり得ない……)

原ほむ(い、いえ! もし今目の前にいる私モドキが魔女から人間に戻った存在だとしたら……)

妖ほむ「その話はまた後ほど」

妖ほむ「とりあえず今は、この辺りの状況を調べるとしましょう」

原ほむ「後ほどじゃない!」

原ほむ(もし魔法少女を人間に戻す方法があるのなら、まどかを確実に救い出せる!)

原ほむ(いえ、それどころか、魔法少女になったまどかと一緒ならワルプルギスの夜をも容易く越えられる!)

原ほむ(私の勝利が確定したも同然になる!)

原ほむ(なんとしても聞かせてもらう……いいえ)

原ほむ「今教えないのなら、力尽くで聞かせてもらうわ!」

妖ほむ「わっ……銃を向けないでくださいよ……」

妖ほむ(妖精さんのお守りがあるので飛び道具は効きませんけど)

さやか(本来ならガクガク震えるような場面なのにまるで物怖じしないあたしらである)

シャル(しっかしまぁ、随分と必死ねぇ。鹿目さんがそんなに大事なのかしら?)

妖ほさやシャル(……私達が何度か彼女を酷い目に遭わせている事は秘密にしておこう)



妖ほむ「まぁまぁ、落ち着いてください」

妖ほむ「教えてもいいですけど、ちょっとした裏技みたいなものなので、あなたには使えないと思いますよ?」

原ほむ「それは私が判断するわ」

妖ほむ「時間の無駄なのにー」

原ほむ「……」カチン

妖ほむ「ああ、もう。分かりました。教えます。教えますから銃のセーフティは解除しないでください」

妖ほむ「簡単に言いますと、こちらに居ります妖精さんの力を借ります」

妖ほむ「妖精さんの超絶科学力によって、魔女さんから魂を抽出。ついでにほいほいっと空っぽな肉体を用意」

妖ほむ「そしてニューボディに魂を放り込めば、人間に戻れるって寸法です」

原ほむ「……………はぁ?」

妖ほむ「言っときますけど、これ以上の説明を求められても私には答えられません」

妖ほむ「妖精さんならお茶の子さいさいでも、私達人間には到底理解の及ばない超絶テクノロジーの産物なんです」

妖ほむ「妖精さんを知らないあなたに、私の方法は意味を成しませんよ」

原ほむ(……確かに、彼女の言う通りか)

原ほむ(よく考えれば、彼女は最初から妖精の力によって魔女から人間に戻すと言っていた)

原ほむ(彼女を追及しても、その方法を正しく理解出来るとは限らない)

原ほむ(仮に妖精を拉致したとしても、協力してくれるとは限らないし、研究施設も存在しないこちらでは無意味か)

原ほむ(くっ……やはり、そう簡単にまどかは救えない……)

妖ほむ「ふぅ。気が済んだようで何より」

妖ほむ「まぁ、そんな落ち込まないでくださいよ。笑顔でいないと、幸せが逃げちゃいますよ?」

原ほむ「慰めはいらないわ……そうよ。もう誰にも頼らないって決めたのだから……」

妖ほむ(あ、この私、お一人様をすっごく拗らせた感じがします)

妖ほむ(こういう人は何を言っても聞いてくれないんですよねぇ……”自分”の事ながらちょっと面倒臭い)

妖ほむ(文字通り自分の事と思って、戒めとしときましょう。うん)

さやか「あー、言いたい事は済んだかー?」

原ほむ「……ええ。もういいわ」

妖ほむ「ふー……やれやれです」

妖ほむ「さて、一段落ついたところでこれからどうしたものでしょうか」

原ほむ「どうしたもこうしたもないわ。出口を探すだけ」

原ほむ「何時までもこんな場所に居る訳には――――」



妖精さん「でぐち、ないです?」

原ほむ「え?」



妖ほむ「出口、無いんですか?」

妖精さん「ありませんなー」
妖精さん「そーてーしておりませんもので」

さやか「出口を想定しない部屋ってなんだよ」

妖精さん「……おきにいりのへやとか」

シャル「いや、お気に入りでも出口は必要でしょ……」

妖精さん「ぼくら、かべぬけとくいですし?」

妖ほむ「あー、確かによく抜けてますよね」

さやシャル(よく抜けるんだ……)

原ほむ「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

原ほむ「出口がないなら、どうやって私は元の世界に帰ればいいのよ!?」

妖ほむ(あ、並行世界の私が妖精さんを捕まえた……結構すばしっこいのに、流石魔法少女ですね)

妖精さん「あー、つかまた」

原ほむ「今すぐこの世界から出しなさい。でないと……」

原ほむ「このまま握り潰すわよ」

妖精さん「ぼく、つぶされます?」

原ほむ「言っておくけど、冗談じゃないわよ」ギリギリ

妖精さん「あー……しぼられますー……」

シャル「な、何してるの!?」

原ほむ「言った通りよ。今すぐこの世界から出さないのなら、コイツに用はない」

原ほむ「握り潰しても、私は困らないわ」

さやか「ちょっ!? ほ、ほむら、妖精さんが……!」

妖ほむ「あー、あれぐらいなら平気ですよ」

原ほむ「その余裕は、私が並行世界の自分だから彼等に手を下さないという甘い考えから生まれるのかしら?」

原ほむ「だったら間違いよ。私は、目的のためなら命を奪う事も躊躇わない」

原ほむ「仲間の妖精が見ているのなら、すぐに私を元の世界に戻しなさい。そうすればこの子は解放してあげる」

原ほむ「だけどそうしないのならこの子を握り潰し、他の妖精も一人ずつ――――」

原ほむ「……………」

原ほむ(手からほんの数秒目を離したら、何時の間にか妖精が消えていた……)

原ほむ(手の中に残っているのは一本の……枯草? みたいなものだけ……)

原ほむ(え? どういう事?)



妖ほむ「私もあれはよくやりますもん。ぺっちゃんこにしちゃえばかさ張らないので、持ち運びに便利なんですよー」

さやか「かさ張るって理由だけで潰すんかい!? というか潰して平気なのかよ! そしてあんな簡単に潰れるのかよ!」

シャル「つーか常日頃持ち運んでるの? そのままだとかさ張るほどの数の妖精さんを」

妖ほむ「ざっと一万人ぐらいですかね、持ち歩いている数としては」

さやシャル「お前は神にでもなるつもりか!」

妖ほむ「なろうと思えばなれるんですけどねー、割とお手軽に」

原ほむ(え? 神様ってお手軽になれるものなの? そしてさっきから何言ってんの?)

妖ほむ「そんな事よりも、折角見つけた妖精さんが干物です」

妖ほむ「水をかければ元に戻りますけど、生憎この場に水はないですし」

さやか「水で戻るってクマムシ並の生命力なのか、妖精さんは」

妖ほむ「ま、この空間の建設理由は分かりましたし、脱出方法の見当は付きました。多分すぐに帰れますよ」

原ほむ「だ、脱出出来るの!?」

妖ほさやシャル「……………」ジー

原ほむ(うっ……なんというか、三人から『え? アンタがそれ訊いちゃうの?』と言いたげな視線を感じる……)

原ほむ(た、確かに、よく考えると妖精をいきなり握り潰そうとするのは何と言うかアレな感じがする)

原ほむ(というか、そもそも妖精に出してもらうのが一番の早道で、その妖精を見失う結果を作ったのも私で)

原ほむ(要するに、全ての元凶が素知らぬ顔で仲間に入ろうとしている訳で)

原ほむ(……あ、これちゃんと謝らないとシカトされるわ。十七回目のループで体感したもの)

原ほむ「わ、悪かったわよ……その、いきなり脅そうとして……」

原ほむ「出られないと聞かされて、焦って、その……(ああ、上手く謝れない……というか謝れたら
    十七回目のループを失敗してないし!)」

さやか「ああ、そんなに謝らないでよ。あたしだってアンタの立場なら同じ事をしたかも知れないしさ」

原ほむ(!? 美樹さやかに、許してもらえた……?)

シャル「私も同意見ね。私らはちょっと毒され過ぎて気付けなかったけど、知らない人からしたらホラー体験そのものだしコレ」

シャル「取り乱すのも当然よ」

原ほむ(魔女にも、許してもらえた……)

シャル「ほむらはどう?」

妖ほむ「あー、まぁ、いいんじゃないですか?」

原ほむ「なんかあなただけすっごく雑な許し方してない!?」

さやか「お前もう少し真面目に受け取ってやろうよ。あのほむら、多分すっごい頑張って謝ってるぞ?」

妖ほむ「いやぁ、私ってコミュニケーション不足なもので、そういう人の感情の機微とかに疎いですから」

さやか「それ、自分で言っちゃいけない事だろ」




妖ほむ「さて、そんな事よりも本題です」

妖ほむ「妖精さんはこの空間を、悩んでいる私のために用意したと言っていました」

妖ほむ「ですから悩み事を皆さんに相談すれば、この空間から出られるものと思われます」

原ほむ「……いや、意味が分からな」

さやシャル「なるほどー」

原ほむ(……考えるだけ無駄なのかしら)

妖ほむ「それでは始めるとしましょう」

妖ほむ「お悩み相談室の開催です♪」



……………

………





原ほむ(そんな訳で始まってしまったお悩み相談室)

原ほむ(並行世界の私が始めると言った途端、何処からともなくテーブルと椅子が落ちてきて、今、私達は席についている状態)

原ほむ(……なんだか分からないけど、向こうのペースに乗せられていると考えるべきね)

原ほむ(悪意は感じないけど、並行世界をつなげるほどの力を持っている相手)

原ほむ(油断はしないように――――)

妖ほむ「はふぅー……紅茶、美味しいです♪」

シャル「ほんとねー」

さやか「ケーキうまー」

原ほむ(……向こうにはもっとこう、緊張感というものは無いのかしら)

妖ほむ「さてさて、気持ちも落ち着いたところで、お悩み相談を始めるとしましょう」

シャル「つーてもねぇ……誰から始めるの?」

妖ほむ「じゃあ、言い出しっぺのシャルロッテさんから」

シャル「いや、言い出しっぺって……まぁ、いいけど」

シャル「丁度悩みというか、皆に訊きたい事があったし」

原ほむ(魔女の悩み……精神的な弱点を聞いておくのは、戦略を練る上で役立つかもしれない)

原ほむ(聞いておいて損はないわね……)

シャル「あのね……」

シャル「みんな、体型維持ってどうやってるの?」

原ほむ「……は?」



シャル「いや、私ってお菓子を魔法で生み出せるでしょ?」

シャル「お陰で食べたい時何時でもお菓子を出せちゃうんだけど……」

シャル「今の私は少なくともボディは人間。肉体的には魔女じゃない訳で」

シャル「という事は……このままの食生活を続けたら太るって事よ!?」

シャル「これは一大事よ! いくら魔女でも女は女よ!? デブは嫌よ!」

シャル「という訳で体型維持方法を教えてくださいー」

さやか「あー、まぁ、気持ちは分かるが」

さやか「でもその前に、食事前の間食を止めるように努力しろよ……流石に晩ご飯前のクレープはどうかと思うよ」

シャル「一度転がり落ちると這い上がるのは大変なの」

さやか「格言っぽく言ってるけど、つまり止められない止まらないって事かい」

シャル「ふんっ。さやかには最初から期待してないわよ。維持しているようには見えないし」

さやか「え」

シャル「本命はほむらよ、ほむら!」

妖ほむ「私ですか?」

さやか「……維持しているように、見えない?」

シャル「そのスレンダーな身体付き、何か秘策があると見たわ」

シャル「この三日間の同居生活じゃ分からなかったけど、何か秘密があるのよね?」

さやか「あたし、太ってるのか……?」

妖ほむ「期待するのは勝手ですけど、私、特に何もしていませんよ」

妖ほむ「元々食は細い方ですし……何より、いくら食べても太らない体質なんです」

妖ほむ「むしろ健康上もう少し体脂肪を付けた方が良いぐらいなんですが」

シャル「……つまり?」

妖ほむ「私が痩せているのは努力の賜物ではなく、単なる体質です」

シャル「こ・ん・ち・く・しょーっ!」

妖ほむ「はい、それでは少しずつでも一日に食べるお菓子の量を減らしていくとしましょう」

妖ほむ「とりあえず、明日から朝ご飯はホットケーキではなく和食ですね」



妖ほむ「これにてシャルロッテさんのお悩みは解決です」

シャル「してないだろ! てきとーに付けんなーっ!」

妖ほむ「……ところで」

さやか「」チーン
原ほむ「」チーン

妖ほむ「そこのお二人は、何故真っ白に燃え尽きているのですか?」

さやか「あたしはデブじゃないあたしはデブじゃないあたしはデブじゃない……」

妖ほむ「……意味が分かりません」

妖ほむ「えっと、それでもう一人の私はどうしたんですか?」

原ほむ「……なんでも、ないわ」

原ほむ(魔女の弱点を探るどころか、むしろ元々普通の女の子だという事実を改めて突き付けられて意気消沈……なんて言えないわ)

妖ほむ「そうですか。では、早速次の悩み相談といきましょう」

妖ほむ「はい、それでは次はさやかさんの番ですよー」

さやか「はっ!? あたしは一体何を――――」

妖ほむ「もう、次は自分の番って聞いて意気込むのはいいですけど、我を忘れるほど考え込んでどうするんですか」

さやか「あ、あれ? そういう話だったっけ?」

妖ほむ「そーいう話でしたよー」

原ほむ(息のように嘘を吐くわね……美樹さやかは嘘や隠し事が嫌いな筈なのに、どうして仲良くなれたのかしら?)

さやか「そ、そうか……いや、でもあたし悩みなんてないしなぁ……」

シャル「……本当に無いの?」

さやか「……何故ニヤニヤしながら訊いてくるのか不思議だけど、ないよ」

シャル「ふーん」

さやか「なんだよ。何か言いたい事でもあるのかよ」

シャル「いや、別にぃ。ただ――――」

シャル「好きな男の事を相談しなくていいのかなぁって」

さやか「え? な、え? うええええええええええええっ!?」



さやか「な、なな、なんでシャルちゃんがそんな」

シャル「昨日一緒にお風呂に入った時言ってたじゃない」

さやか「ちゃんと聞いてたのかよ!?」

シャル「それで? 誰なの? ん?」

さやか「だ、誰とかなんとかいう、あれはその、疑惑が出てきたから反論として言っただけで!」

さやか「べ、別に恭介の事が好きとかそんなのはないし!」

シャル「へぇ、恭介って言うんだ?」

さやか「おぅふッ!?」

シャル「しかも呼び捨てする間柄って事は、クラスメートとかじゃないわね。幼馴染かしら?」

さやか「お、おんどりゃあ……! 言わせておけば……」

妖ほむ「さやかさん!」

さやか「うわ!? な、何……?」

妖ほむ「そ、そんな、す、す、好きな男の子なんて……」

妖ほむ「不潔です! 不純異性交遊は駄目なんです! 破廉恥ですぅ!」

さやか「……流石にその反応は潔癖過ぎるだろー」

シャル「いや、これは逆に興味津々過ぎてR-18レベルまで妄想していると見たわ」

さやか「……今度、あたしの持ってる少女漫画でも貸してやるか」

シャル「ああ、いいかもね。少女漫画」

シャル「最近のは過激って聞くからねぇ……昔のなんて知らないけど」

妖ほむ「ああもう! この相談は終わりです! 駄目絶対です!」

シャル「恋は麻薬ってか」

さやか「座布団没収するぞ」

妖ほむ「終わりですったら終わりですーっ!」

シャル「ま、聞きたい事は聞けたから異議なーし」

さやか「……終わるなら、まぁ、異議なしで」

妖ほむ「あああああもう……嘆かわしい、嘆かわしいです……!」



妖ほむ「はい、次は魔法少女の私!」

原ほむ「え? 私?」

妖ほむ「そうです!」

妖ほむ「……すみません。ちょっと冷静になりますので……ふー……」

妖ほむ「すみませんでした。本題に戻りましょう」

さやか「相変わらず切り替え早いなー」

妖ほむ「いいじゃないですか。何時までもウジウジしているよりかは」

妖ほむ「それで、どうですか? 悩みありませんか?」

原ほむ「……………悪いけど、私はあなた達に相談するつもりなんてないわ」

妖ほむ(ふむ。する気はない、と……悩みがあると認めているようなものですねぇ)

妖ほむ(ま、そこが逆鱗なのは容易に想像が付くので、少し遠くからつつくとしましょう)

妖ほむ「えー? なんでですか?」

妖ほむ「思い悩むと視野が狭くなりがちです。第三者の意見を取り入れると、案外すんなりと解決するかも知れませんよ?」

原ほむ「あなたには分からないでしょうね。妖精という、超常の存在の力を借りられるのだから」

原ほむ「でもね、私に頼れるものは何もない」

原ほむ「誰かに期待なんてするだけ無駄。奇跡を期待するのも無駄」

原ほむ「相談なんかしても何も変わらない」

原ほむ「だから私は、もう誰にも頼らない――――」




???「きゃああああああああああああああ」




原ほむ「っ!?(悲鳴!? 一体何処から……)」

原ほむ(……なんか上から聞こえたような気がし)

???「あああああああああああああああああああっ!?」

原ほむ「って、上から誰かが落ちてきてぶしゃっ!?」

――――ドンガラガッシャーン

さやか「ほ、ほむらァ――――!?」

妖ほむ「あらあら。並行世界の私の上に誰か落ちてきましたね」

シャル「だ、大丈夫……?」

原ほむ「わ、私は大丈夫……ソウルジェムが砕けてなければ……」

原ほむ「それより、一体誰が落ちてきて……」

眼鏡を掛けた三つ編みほむら(以下めがほむ)「うきゅ~~~~……」←目を回している

妖ほむ「……………三人目、来ましたね」

さやか「三人目、来たな」

シャル「三人目、来たわね」

原ほむ「三人目、来ちゃったわね」

原ほむ(恐らく彼女もまた何処かの並行世界から連れて来られた私)

原ほむ(私服姿で、眼鏡を掛けている)

原ほむ(雰囲気的には向こうの、並行世界の私と近いけど……)

原ほむ(いえ、むしろ……昔の私と近いような気がする)

原ほむ「……それで、どうするの?」

妖ほむ「来てしまったものは仕方ありません。巻き込むとしましょう」

シャル「ああ、やっぱり巻き込むのね……」

原ほむ(巻き込むって、そういう使い方の言葉だったかしら……)



めがほむ「う、うーん……此処は……?」

めがほむ「ひっ!? な、なんで……なんで私がたくさん……!?」

原ほむ「……落ち着いて。今から説明してあげ」

妖ほむ「これは夢ですよー」

原ほさやシャル「え?」

めがほむ「あ、そっか。夢ですかー」

めがほむ「そーですよねー。私がたくさんいるなんて、夢じゃなかったら変ですよねー」

妖ほむ「そーそー。でも夢は夢でも、これはあなたの潜在意識ですから、私達からの忠言は覚えておくようにしてくださいねー」

めがほむ「成程! 自分の知らない自分ってやつですね! 入院中に読んだ本に書いてありました! 確か……ぺ、ペンタゴン?」

妖ほむ「ペルソナですかねー。文字数どころか意味すら合ってませんけど」

めがほむ「ああ、それです! 多分それです!」

ほむほむ「あっはっはっはっはー♪」

さやか「……そっこーで打ち解けたな」

シャル「ごり押しで人間関係って深まるものなのね。勉強になったわ」

原ほむ(馬鹿でドジで間抜けなのは知っていたけどあっさり陥落し過ぎよ過去の私ィ――――!!)

妖ほむ「ああ、そうそう。それでですねー、これは夢な訳ですけど、実はお悩み相談をやっておりまして」

妖ほむ「何か悩みとかありませんか?」

めがほむ「悩みですか? ……私の別人格なのに、私の悩みが分からないのでしょうか?」

妖ほむ「そこはほら……別人格ですから。あなたとは別人ですもん」

めがほむ「なるほどー」

めがほむ「えっと、では相談したいのですけど……」

めがほむ「私……心臓病で入院してて……入院生活が長かったから、運動も勉強もダメダメで……」

めがほむ「それに、引っ込み思案で臆病で、なにをやっても駄目で……」

めがほむ「今日は転校初日だったのに、自己紹介も上手く出来なくて……」

めがほむ「こんな自分を変えたいのですけど……ど、どうすればいいのでしょうか?」



妖ほむ「ふむ、自分を変えたいと」

妖ほむ「性格を変えるには、何か衝撃的な体験が一番手っ取り早いでしょう」

原ほむ(衝撃的、ね……確かにそうね)

原ほむ(私も、魔女化の真実を知り、過去に戻って自分を助けてとまどかに言われてから、こんな性格になった)

原ほむ(美樹さやかも、まどかも、巴マミも……残酷な体験をしなければ現実を受け入れてくれない。
    私が何を言っても信じてくれない)

原ほむ(人が変わるには、残酷な事実以外に方法はないのよ――――)

妖ほむ「じゃあ、アイドルデビューしましょう」

原ほさやシャル「はい?」

原ほむ「あの、あなたは一体何を言っているの?」

妖ほむ「何って、衝撃的な体験をする方法?」

原ほむ「あたかも私当然の事言ってますよ、みたいな感じの態度で断言された!?」

さやか「そりゃ衝撃的だろうよ、アイドルデビューは」

シャル「無責任極まりない解答ねぇ……」

めがほむ「あ、あの……いくら別人格からのアドバイスでも、アイドルというのは……」

めがほむ「それに、あの、私そんなに可愛くないですし……」

妖ほむ「何を言っているんですか! あなたは私なんですよ!? 可愛いに決まっています!」

原ほむ(超ストレートに自画自賛しやがったわコイツ!)

めがほむ「でも、でも、私、人見知りが激しくて、アイドルって、たくさんの人の前で歌ったり、すると思うし……」

妖ほむ「じゃあ此処で慣れましょう」

妖ほむ「はい、マイクです」

めがほむ「え、あ、ども……え?」

妖ほむ「こんな事もあろうかと用意しておいたカラオケ機器の数々!」

原ほむ(どんな事があると思って用意していたのよ!?)



妖ほむ「そんでもって、ギャラリーかもーん!」

妖精さん×30「よばれた?」「ばればれかも」「あつまってはみたけれど」「なにかはじまる?」「にんげんさんのだしものはさいこうねー」「みせてもらえるなんて」「なにかおれいひつよう?」「だまってみるのがれいぎかと?」「かもくにてっするべきでは?」「ぼっくすひつようかも」「からおけおっけー」「おけおっけー」

原ほむ「ひっ!?(どっかから湧いてきた!?)」

めがほむ「あの、こちらの方々は?」

妖ほむ「あなたが描いた観客のイメージです」

妖精さんA「そーなの?」
妖精さんB「そーいうやくまわりか」
妖精さんC「はいやくはだいじ」
妖精さんD「ぼくら、あどりぶへたですし」
妖精さんE「ではぼくらききにてっします」
妖精さんF「おきかせくだされー」

めがほむ「なるほどー」

原ほむ(なんでさっきから無抵抗に納得してんのよ私ぃぃぃぃぃぃ!)

さやか「なんでさっきからあのほむら、逐一悔しそうなんだ?」

シャル「私が知る訳ないでしょ」

めがほむ「では私、歌います! 選曲は……」

妖ほむ「鋼のレジスタンスとか未来への咆哮、それからGONG辺りを聴きたいですねー」

さやか「何故JAMプロ推しなんだ」

シャル「いい曲だけどね。うん」

原ほむ(え? 今の選曲って有名なの?)

めがほむ「では、未来への咆哮で!」

原ほむ(え? あの私も知ってるの?)

めがほむ「それでは、う、歌います!」



~~~♪

めがほむ「たーちあがーれ、けーだかくまえ、さーだめを受けたせーんしよーっ!」

めがほむ「せーんの覚悟身に纏い! 君よ! 雄々しく、はーばーたーけー!」

さやシャル(まさかの圧倒的な声量と完璧な音程で圧倒される私達であった)

原ほむ(……………)

原ほむ(はっ!? 歌に魅了され、唖然としてしまった!)

原ほむ(……こ、今度、CD買いに行こう)

~~~♪



めがほむ「とーきを越えその名前を! 胸に、刻もう! Just Forever~!!」

めがほむ「……ふぅ……」

妖ほさやシャル「わーっ!」パチパチパチパチ

妖精さん×1500「わー!」パチパチパチパチ

原ほむ(……い、何時の間にか、妖精の数がとんでもない事に……一体何処から湧いたの!?)

妖ほむ「はい、コンサートは終わりです」

妖ほむ「妖精さん達はてきとーに散ってくださいねー」

妖精さん×1500「はーい」

妖ほむ「……とりあえず、これで今すぐ童話災害には襲われない、筈っと」

めがほむ「ああ……気持ちいい……!」

めがほむ「人の前で歌うのって、こんなに気持ちいいんですね……!」

妖ほむ「それは何より」

妖ほむ「だけど、満員のドームで歌う気持ち良さは、こんなものじゃないと思いますよ?」

妖ほむ「全国ツアーとかやって、何万人のファンがあなたを応援してくれるんですよ」

めがほむ「……!」ゾクゾク

めがほむ「満員の、ドーム……全国百万人のファン……私に向けられる歓声……」

めがほむ「なんて……素敵……!!」

さやか「……なぁ。あれ、なんか目覚める方向間違ってないか?」

さやか「なんか世界を滅ぼそうとしている悪役のような、不気味で光悦とした笑み浮かべてんだけど」

シャル「まぁ、そういう需要がない事もないし、社交的になったという意味では性格が改善してるし」

シャル「ぶっちゃけめんどくなってきたので、ノータッチで」

さやか「シャルロッテさんったら物臭ですわー」

原ほむ(見ていて色々複雑な気持ちになったのは私だけなのかしら……私だけよね、多分)

妖ほむ「さて、こちらの私のお悩みも解決ですね」



妖ほむ「取りは全ての元凶である私として……」

妖ほむ「またしても残るはあなただけですよ――――並行世界の私」

原ほむ「……何度も言わせないで」

原ほむ「私の悩みは、誰かに言って解決するようなものじゃない。誰かに言って変わるものじゃない」

原ほむ「誰かに頼っても無駄。自分でなんとかするしかない」

原ほむ「何度やっても駄目だったのに、ぽっと出のあなたにどうにか出来るなんて……」

原ほむ「思い上がりもいいところだわ」

妖ほむ「……ふむ。成程」

妖ほむ「今ので大体分かりましたよ、あなたの悩み」

原ほむ「……ハッタリのつもり? なら、是非とも教えてほしいものね」

原ほむ(分かる訳がない……本当の事を話しても、誰も信じなかったのに)

妖ほむ「そうですねぇ……じゃあ、言わせてもらうとしましよう」

妖ほむ「並行世界の魔法少女が私達のいう魔法少女と同じかは分かりませんが……
    基本的なルールである、魔女化の真実があるので同じと仮定します」

妖ほむ「という事は、あなたは魔法少女の契約をキュゥべえさんと結んだ」

妖ほむ「即ち願いがあったという事になります」

妖ほむ「そして、その願いはまだ叶っていないのではないですか?」

妖ほむ「例えば……誰かを守りたいと願ったのに、未だに守れていない」



妖ほむ「『何度も時間を繰り返したのに、鹿目さんを守れていない』、とか」




原ほむ「っ……!?」

妖ほむ「ふむ。どうやら当たったみたいですね」

さやか「え、ど、どういう事?」

シャル「時間を繰り返した……?」

妖ほむ「あの私が鹿目さんに対し、ただならぬ執着があるのは先の会話で皆さん分かっていたと思います」

妖ほむ「その時点で、彼女の願い事が鹿目さんの類なのは容易に想像出来ました」

妖ほむ「そして私に対し、あなたの世界での鹿目まどかは魔法少女になっていないか、とも尋ねてきました」

妖ほむ「あちらの世界でも、きっと鹿目さんは魔法少女になっていた。或いは、ある時契約してしまった」

妖ほむ「いえ、魔女化の真実を知っていた事、そして魔女を人間に戻せるという言葉への反応を吟味すれば……」

妖ほむ「鹿目さんが魔女になったところを見たのかも知れない」

原ほむ(な、なんで……!?)

妖ほむ「そんでもってさっきの、何度やっても発言が決定的です」

妖ほむ「つまり、目の前の私は何度もやっているんです。鹿目さんが魔女にならないようにする挑戦を」

妖ほむ「他にも時間遡行という珍しい言葉を使ったり、何もかも諦めた態度だったり、ヒントは山ほどありましたね」

妖ほむ「……むしろこれだけヒントがあって、寸分もこの可能性が頭を過ぎらないと言うのは……」

さやか「う、うっさいなぁ……いくらとんでも事態には慣れてきても、アンタほど経験は積んでないんだから」

シャル「なんだかんだ、私らもほむらと比べたら常識人って事ねー……良かった良かった」

めがほむ「???」←話についていけてない

妖ほむ「むー、なんですかその物言いは。人を非常識の塊か何かと思わないでくださいよ!」

さやシャル「塊どころか濃縮圧縮レベルだろ」

\ワイワイキャッキャ/






原ほむ「……なんでよ……」





妖ほむ「……なんですか? 意見があるなら、ハッキリ言った方がいいと思いますよ? 勿論相談も受け付けます」

妖ほむ「ここにいる者の半分は自分なんですから、吐いてすっきりしちゃいましょうよ。ね?」

原ほむ「……なんでよ……」

原ほむ「なんでそこまで分かって、相談しろって言うのよ……!」

原ほむ「ええそうよ! 私は何度も時間を戻って、何度もまどかを助けようとした!」

原ほむ「だって私の願いは、まどかを守る事なのだから!」

原ほむ「だけど結果は何時も失敗!」

原ほむ「魔法少女の真実を話せば仲間割れが起きてみんな死ぬ!」

原ほむ「真実を隠せば誰も私を信じてくれず、協力してくれない!」

原ほむ「それでもなんとか仲間を加えても、ワルプルギスの夜が越えられない!」

原ほむ「そしてワルプルギスの夜が倒せないと……まどかが契約してしまう!」

原ほむ「どうしろって言うの! どうすればいいの!?」

原ほむ「どうすればまどかを……あの子を助けられるのよ……!!」

さやか「……ほむら、あの」

シャル「さやか……今は……」

さやか「……うん。”ほむら”に任せる」

妖ほむ「……それがあなたの悩みですか?」

原ほむ「……ええ、そうよ」

原ほむ「それが私の悩み……まどかを救うために、どうすれば――――」



妖ほむ「ああ、もう。面倒臭いですねぇ」



原ほむ「――――え?」

妖ほむ「面倒臭いと言ったんです。あなたの悩みというか願い事」

妖ほむ「ああ、そもそもの問題は、願いと悩みが一緒くたになっている点ですかね」

原ほむ「な、何を、言ってるの!?」

原ほむ「私の願いが面倒臭いですって!?」

妖ほむ「だって面倒ですもん」

妖ほむ「あなた、自分の願いの本質を見失ってますよ?」

妖ほむ「誰かを守りたいなんて――――そんな願い、ある訳ないじゃないですか」



原ほむ「なっ……さっきから聞いていれば勝手な事ばかり……!」

原ほむ「私はまどかを守りたい! それが私の願いであり目的よ!」

妖ほむ「じゃあ聞きますけど、あなた、どうして鹿目さんを守りたいんですか?」

原ほむ「ど、どうして……?」

原ほむ「それは――――か、彼女が私の、一番の友達だったから……」

原ほむ「と、友達を守りたいと思うのは可笑しい事なの!?」

妖ほむ「可笑しくはないですよ。だからあなたは本質を見失っていると言っているんです」

妖ほむ「友達だから守りたいなんて、そんな上っ面の言葉なんかいりません」

妖ほむ「……そもそも、友達だから守りたいなんて建前でしょう?」

原ほむ「っ!? どういう意味……!」

妖ほむ「どういうも何も、本当は知っている癖に」



妖ほむ「あなたの本当の願いは――――人に認めてもらう事でしょう?」



原ほむ「――――?!」

妖ほむ「認めちゃいましょうよ。自分が劣等感の塊である事を」

原ほむ「ちが……!」

妖ほむ「何も違いませんよ」

妖ほむ「私はあなた。あなたは私。あなたの事はなんでも知っている」

妖ほむ「何も出来ない自分への劣等感で、何時も何時も卑屈になっていたでしょう?」

妖ほむ「そんな自分が嫌で嫌で堪らなかったでしょう?」

妖ほむ「だから力を手に入れて、それを誇りたいのでしょう?」

妖ほむ「鹿目さんから、尊敬や嘱望の眼差しを受けたいのでしょう?」

妖ほむ「魔法少女の鹿目さんより、上に立って見下ろしたいのでしょう?」

原ほむ「違う、違う違う違う!」

妖ほむ「何が違うのですか? 守ってやるなんて上から目線で言っときながら、何が違うのですか?」

妖ほむ「ああ、それともこれじゃまだまだ生温いとか?」

妖ほむ「鹿目さんだけじゃなくて、さやかさんとか巴先輩からも崇められたいと?」

妖ほむ「それともワルなんとかとやらを倒して、自分の名声を世に広めたいとか?」

妖ほむ「もしくは、さやかさんも鹿目さんも踏み台程度の認識で――――」

原ほむ「違う!」




原ほむ「私は、私は尊敬とかそんなのはいらない!」

原ほむ「戦いだってしたくない! 誰も踏み台だなんて思ってない!」

原ほむ「私は、私はただ……」



原ほむ「私はまどかが、みんなが死んでほしくないだけなの!!」



妖ほむ「……ふー。やっと本音を言ってくれましたか」

原ほむ「えっ……?」

妖ほむ「ですから、それが本音ですよね?」

妖ほむ「誰かを守りたい。まぁ、立派なご意見だとは思いますけど」

妖ほむ「自分の願い事なのに他人が前面に出てくるなんて、そんなの願いじゃありません」

妖ほむ「勿論守りたいと思う事は結構です。人として大切な気持ちでしょう」

妖ほむ「ですが『何故』が抜け落ちていては、そんなのは耳触りのいい言葉でしかありません」

原ほむ「それ、は……」

妖ほむ「ほら、思い出して」

妖ほむ「あなたは何を願って魔法少女になったのか……ちゃんと思い出して」

原ほむ「……そうだ……私の願いは、まどかを守るじゃない……」

原ほむ「まどかを守れる私になりたい……」

原ほむ「まどかと『同じ場所』に居る事……生きて、一緒に居る事……それが願いだった……」

原ほむ「なのに、なのに私……!」

原ほむ「忘れてた……私が何を求めていたのか……忘れて……!」

妖ほむ「……何度も過去に戻る事が大変なのは分かります。周りにとってはゼロの時間も、
    あなたにとっては永遠の監獄だったでしょう」

妖ほむ「最初に決めた道しるべが分からなくなっても仕方ないと思います。迷ってしまうのも当然だと思います」

原ほむ「で、でも……私、忘れちゃってて……」

妖ほむ「誰だって物忘れの一つ二つはありますよ」

妖ほむ「大切なのは繰り返さない事。もう忘れない事」

妖ほむ「そして――――自分の想いに、正直になる事」

原ほむ「自分の、想いに……?」

妖ほむ「そうです」

妖ほむ「空っぽな人間に力はない。力を持つのは、何時だって信念を持つ人間です」

妖ほむ「だから自分のやりたい事をやりましょう」

妖ほむ「そうすれば……」

原ほむ「……?」



原ほむ「……そうすれば、何?」

妖ほむ「……そうすれば、人は全力を出せる」

妖ほむ「全力を出せれば、人間は世界を変えられる!」

妖ほむ「だからあなたは自分のために――――自分の願いのために、堂々と他人を利用すればいいんです!」

妖ほむ「あなたは正しいのだから、迷わなくていいんです!」

妖ほむ「容赦なく、徹底的に、何処までも!」

妖ほむ「みんなを幸せにしちゃえばいいんですよ!」

原ほむ「……そう、ね……そうよね……」

原ほむ「まどかを契約させない……そんなの、私の願いじゃない」

原ほむ「まどかだけじゃない。巴さんも、さやかも、杏子も――――全員幸せにする」

原ほむ「ええ、そうよ。まどかだけ幸せにするなんて、そんな謙虚ではいられない」

原ほむ「何処までも、何処までも欲張ってやる……」

原ほむ「私の幸せのために、全員を幸せにしてやる!!」

原ほむ「それが私の、本当の願いよ!」

妖ほむ「ふふ……もう大丈夫ですね」

原ほむ「ええ」

原ほむ「もう運命になんて屈しない……ううん、今までは勝負すらしていなかった」

原ほむ「建前をかざして本当の願いを誤魔化していた。叶えられそうにない夢から逃げていた」

原ほむ「もう、私は逃げない」

原ほむ「逃げないから……全力で挑めるわ」

妖ほむ「それは何よりです♪」

さやか「どうやら終わったようだね」

原ほむ「ええ。お陰さまで」

シャル「表情も軟らかくなったね。そっちの方が可愛いよ」

原ほむ「ありがとう。褒められるのは、気分がいいわね」

めがほむ「えーっと……つまりどういう事ですか?」

原ほむ「うん。面倒臭いしあなたには無関係だから説明はなしで」

原ほむ「……さて、それじゃあいよいよ”トリ”の出番ね」

妖ほむ「とり? ……ああ、そうですね」



原ほむ「あなたはどんな悩みをぶつけてくれるのかしら?」

さやか「あ、それちょっと楽しみだったんだよね」

シャル「普段弱みなんて見せないからねー。つーかメンタル面ではうちらの中じゃ最強っぽいし」

シャル「まぁ、だから平然と相談したい事があるとか言えたんだろうけど」

めがほむ「私の別人格の持つ悩み……自分でも知らない悩みが今明かされるのですね……!」

妖ほむ「あー……それなんですけど」

妖ほむ「さっきの説教しているうちに自己解決しました。はい」

原作めがさやシャル「ええーっ!?」

妖ほむ「いや、そう露骨にガッカリしなくても……」

さやか「だってだってだって~」

原ほむ「私達だけ精神的弱点を見せるなんて不公平よ」

シャル「そーだそーだ」

めがほむ「そーだそーだ!」←周りに合わせているだけ

妖ほむ「ですから、解決したというだけで話さないとは言ってませんよ」

妖ほむ「そもそも私が相談という形で悩みを打ち明けないとこの空間からは出られそうにないですし」

妖ほむ「アドバイスがいらないというだけで、ちゃんと悩みはお伝えしますから――――」



???「うわあああああああああああああああああああああああ!?」



原ほむ「ちょ……また悲鳴!?」



妖ほむ「四人目の私って……流石に追加が多過ぎますねぇ……」

シャル「そんな事より、誰か受け止めてあげなさいよ! 声、また上から聞こえてきているし!」

さやか「よーし、さやかちゃんが見事にキャッチして」

???「どべちっ!?」ビタンッ!

シャル「……見事にキャッチ失敗したわね」

さやか「……面目ないです」

めがほむ「そ、それより大丈夫なんですかその人!?」

妖ほむ「妖精さん空間ですから、致命的なダメージはないと思いますけど」

原ほむ「……みたいね。自力で起き上がって――――」


魔法少女姿のさやか(以下魔さや)「……………」


さやか「……あれ? あたし?」

シャル「……少なくとも、ほむらじゃないわね」

原ほむ「ちょ、ちょっと、どういう事!?」

原ほむ「この空間に集まるのは私だけじゃないの!?」

妖ほむ「あ、あれー? えーっと……」

妖ほむ「……………あ」

シャル「……何?」

妖ほむ「……思い返してみると、妖精さん、誰が集まるとは言ってませんでした」

妖ほむ「ただ、この空間に居ると並行世界の自分が集まると言っていただけです」

さやか「つ、つまりあれか? あのあたしは、並行世界のあたしって訳か?」

妖ほむ「そうなりますね」

妖ほむ「まぁ、並行世界のさやかさんですからね。事情を話せばツッコミ役としての役回りは出来るかと思いますし」

原ほむ「……残念だけど、そうはいかないと思うわ」

妖ほむ「と、言いますと?」

原ほむ「……」←並行世界のさやかを指さす

妖ほむ「?」



魔さや「……ああ、分かった。そういう事か……」

魔さや「あたしをこんな場所に閉じ込めて始末するつもりだな、転校生……!」



妖ほむ「あら?」

さやか「なんかあのあたし……すっげー臨戦態勢じゃない?」

シャル「……並行世界のほむらさん。あなた、説明出来ますかしら?」

原ほむ「……正義の魔法少女さやか。誤解に誤解が積み重なって、私の陰謀で彼女の師匠である巴マミが死亡したという事に」

原ほむ「多分そんな感じの事があったのかなーっと。過去のループで何度かやっちゃったパターンね」

さやか「わーお」

シャル「見事なまでの修羅場ね」

魔さや「……よく見たら、転校生が四人も居る……それに、あたしの姿も……」

魔さや「成程ね。杏子ってやつの魔法で作った幻影か……やっぱりアンタ達グルだったんだね……!」

さやか「なんか猛烈な勢いで間違った推理を展開してんだけど。つか、きょーこって誰?」

シャル「なんとか誤解を解きなさいよ。アンタでしょ、アレ」

さやか「いやいやいやいや。無理無理無理無理」

さやか「だってあれ刃物持ってんだよ? 目とか逝っちゃってるじゃん」

さやか「あれだよ。友好的に接しようと伸ばした手を切り落とされちゃうパターンだよ」

シャル「いや、つーてもこの状況でまともに話が出来そうなのってアンタぐらいしかいないし」

原ほむ「同意見、と言いたいけど……あの状態になったさやかは、親友であるまどかの話も訊かないし……」

さやか「でしょ? 自分の事だもん。よく分かるもん」

シャル「それ、認めていて悲しくない?」

原ほむ「とにかく刺激しないようにしないと。声を掛けただけで敵認定されかねないわ」

妖ほむ「えー、私が全ての元凶ですから、聞きたい事があれば私にどーぞ」

原ほさやシャル「何言ってんのアンタああああああああああああああっ!?」



妖ほむ「いえ、だってなんか面倒で……」

妖ほむ「誰が悪い奴かハッキリさせるのが一番話がスムーズに進むかなーっと」

シャル「そりゃスムーズに進むでしょうよ! 最悪な形で!」

さやか「アンタは相変わらず自分のやりたいようにやるな!? 巻き込まれるこっちの身にもなれよ!」

原ほむ「そうよ! それに万一魔法少女である彼女に襲われたら……」

魔さや「そうか……アンタが元凶か……」

魔さや「だったらアンタを倒せばそれで終わりだ!」

原ほむ「ほらほらほらほらほらぁ!?」

妖ほむ「あー、まぁ、なんとかなるでしょう。多分」

原ほむ「なんとかって一体どうするつもりよ!? 戦いになって勝てる算段でもあるの!?」

原ほむ「もう一人の私も何か言いなさいよ!」

めがほむ「戦いなんてくだらない! 私の歌を聴けーっ!!」

原ほむ「違うでしょ!? あなたのキャラとして言うべき台詞はそれじゃないでしょ?!」

魔さや「隙ありだっ!」

原ほむ(! しまっ……さやかが突っ込んできて……!?)

魔さや「喰ら【ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!】?!」

原ほむ(な、何か巨大な物体が魔法少女のさやかに襲い掛かった!? さやかは辛うじてかわしたけど……)

原ほむ(い、いえ、これは……)

魔女シャルロッテ(以下魔女シャル)【ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!】

シャル「あ、私だアレ」

さやか「なっつかしー」

原ほむ(並行世界の魔女まで来たあああああああああああああ!?)



魔さや「くっ……魔女を飼っていたのか……!」

原ほむ「いや、違います。誤解です」

魔さや「じゃあこの魔女はなんだ!? いや……」

魔さや「アンタの肩に乗っている使い魔は!」

原ほむ「え? 肩って……」

妖精さん「どもです?」

原ほむ「……なんで私の肩に乗っているのかしら」

妖精さん「かくれんぼしてて、ここまできましたので」

原ほむ「隠れてないわよ、あなた」

妖精さん「みつけてもらえないほうがさみしい」

原ほむ「ぐふっ……嫌な事思い出した……じゃなくて!」

原ほむ「ち、違うの! この子は使い魔じゃなくて……」

魔さや「使い魔じゃないなら一体なんなんだ!」

原ほむ「え、えっと……よ、よ……」

魔さや「よ?」

原ほむ「よ……妖精、さん……///」

魔さや「……………」

原ほむ「……………」

魔さや「そうやって誤魔化すつもりか! そうはいかないんだから!」

原ほむ「あああああああもう! 当然の反応なのにすっごいムカつくーっ!!」

魔さや「待ってろ! この魔女を倒したらすぐにでもアンタを」

赤髪碧眼の少女「ちょっと待ったーっ!」

魔さや「!?」

原ほむ「誰!?」

シャル「展開的に、魔法少女だった頃の私じゃない? 自分の元の姿とか全然覚えてないけど」

さやか「へー、普通に可愛いじゃん」

原ほむ「いやいやいや!? そんな和んでる場合じゃないから!?」

魔さや「ここで別の魔法少女……? さてはお前もほむらの仲間か!」

赤髪碧眼の少女(以下人シャル)「はぁ? いや、私はこの空間についての情報交換をしたくてアンタに接触しただけで」

人シャル「んで、ついでだから一緒に魔女を倒してグリーフシードのおこぼれをもらおうかなーっと」

魔さや「やっぱりグリーフシード目当ての、悪い魔法少女なんだな……」

人シャル「いやいや、グリーフシードが欲しいのはどんな魔法少女だって同じでしょ?」

魔さや「あたしはそんな魔法少女にならないって決めたんだっ!!」

人シャル「ちょ!? い、いきなり切りかかってきたーっ!?」

魔シャル【ギャアアアス!】

人シャル「ああもう! 助けにきたのになんで襲われるのーっ!?」




空手着姿のほむら(以下空手ほむ)「助太刀する!」

人シャル「え? え、ああ、ども……え? 誰?」

空手ほむ「詳しく語ると長くなるが、要約すると気が付けばこんな空間にいたのだ」

空手ほむ「そして争いの音が聞こえたので駆け寄った次第」

空手ほむ「ちなみにこちらは私の強敵<とも>達である」

空手さや「うすっ」

空手シャル「ちーっす」

人シャル「あれ? 私が居て……え?」

空手ほむ「此度の闘い、どうやらそなたにとって不本意と見た」

空手ほむ「それに先から話を聞いていれば……」

空手ほむ「自らの思い込みを振りかざし、相手の話を聞かぬ身勝手ぶり」

空手ほむ「協力して怪物を倒さねばならぬ時に、己が妄想に支配されるとは笑止千万!」

空手ほむ「さやか! 同じ顔の者が相手で辛かろうが……」

空手さや「問題ない。むしろ昂ぶっている」

空手さや「自分を相手に戦う……これ以上の鍛錬はなし!」

空手ほむ「その意気やよし!」

空手シャル「私は、ま、二人が戦うからねー。力添えでやんすよ」

人シャル「そ、そう……」

モヒカン頭のさやか(モヒさや)「ひゃっはー! じゃああたしはこっちの味方するぜー!」

魔さや「はあ!? あんた一体何なの!?」

モヒさや「あたしが誰かなんてどーでもいいだろーが!」

モヒさや「面白そうだから弱そうなテメェに協力すんだよ!」

魔さや「こ、この……!」

ホムリリィ【クルルルルルル】

オクタヴィア【コオオオオオオ】

魔女シャル【ギャス?】

ホムリリィ【クル、クルルルルル】

オクタヴィアA【コオオオオオ、コオオオオオオオオ!】

オクタヴィアB【オオオオオオ!】

オクタヴィアC【オオ、コオオオオオオオ!】

オクタヴィアD【コオオオオオオオオオオ!】

魔女シャル【ギィシャアアアアアアアアアアアア!】

魔女s【――――――!!】←声にならない叫び



魔法さや「ま、魔女の大群!?」

モヒほむ「ひゃっはー!」

モヒシャル「汚物は消毒だー!!」

ウェディング服姿のほむら「きゃっ! ……こ、此処はどこ……?」

半透明なシャル『寂しい、寂しい、寂しい……』

セーラー服姿のシャル「こ、これは夢、悪い夢、悪い夢なのよ……!!」



さやか「……なんというか、あれだな」

シャル「……なんというか、あれね」

原ほむ「なんか、どんどんメンバー増えてない? それも加速度的に」

シャル「増えてるわねー、加速度的に」

さやか「つーかさ、黒い魔女は色彩的にほむらが魔女化した姿だとして」

さやか「あの青い怪物って多分あたしが魔女化した姿だよね? なんか多くね? 四体も居るんだけど」

シャル「あれじゃない? どの並行世界でも唆されるがままほいほい契約して、そっこーで魔女化してんじゃない?」

さやか「笑えないっす……割とマジで」

シャル「まぁ、ほむらが居なかったら魔法少女の真実なんて知り様がなかっただろうし、知ったところでどうにもならないしねー」

さやか「あたしって、ほんとラッキー」

原ほむ「……さて、と。現実逃避はこれぐらいにして」

原ほむ「これはどういう事かしら? 恐らく理由を知っているであろう――――私?」

妖ほむ「えー、このカオスっぷりは間違いなくアレですね」

妖ほむ「童話災害末期の様相です」

シャル「童話災害?」

妖ほむ「簡単に言うと妖精さんによって引き起こされた、諸々の非常識に対する呼称でして」

妖ほむ「災害クラスの大迷惑を被りつつも、童話みたいに誰一人犠牲者が出ない素敵な時間です」

さやか「素敵なのか? それ」

原ほむ「童話みたいに死者は出ないけど災害クラスの迷惑を被る、って言った方が正しいんじゃないかしら……」




原ほむ「それで? 末期というからには、もうすぐこの茶番は終わるという事かしら?」

妖ほむ「終わりますねー……それも、皆さんが想像しているよりもあっさりと」

シャル「あっさり終わるならいいじゃない。グデグデよりかはマシよ」

妖ほむ「個人的にはグデグデの方がいいんですけどね……逃げる時間がある分」

――――ピシリッ

シャル「? なんか、音がしなかった?」

さやか「聞こえたね。ひび割れみたいな音だった」

原ほむ「私も聞いたけど、でも、なんの音かしら?」

――――ピシピシピシ

シャル「ほら、またよ。何処から鳴ってんのかしら」

さやか「上から聞こえなかった?」

原ほむ「上?」

原作さやシャル「……………」

シャル「……私の目が可笑しいのかしら」

さやか「いやー、あたしにも見えてるよ。多分」

原ほむ「奇遇ね。私もよ」

原ほむ「ねぇ、私」

妖ほむ「はい」

原ほむ「……空に大きなひび割れが生じているように見えるのだけど、どういう事かしら?」

妖ほむ「困った時の妖精さーん」

妖精さん「はーい」

妖ほむ「空に大きなひび割れがありますが、どういう事でしょうか?」

妖精さん「てーいんおーばーでは?」

妖ほむ「定員?」



妖精さん「このくうかん、はちにんようですゆえ」

妖ほむ「へー。八人までしか入らない空間なんですか」

妖ほむ「で、八人以上来たらどうなるのですか?」

妖精さん「こわれますが?」

妖ほむ「壊れるのですか?」

妖精さん「ばりーんとなりますなー」

妖ほむ「ばりーんと壊れるんですかー」

妖ほむ「じゃあ、あのひび割れは空間崩壊の予兆という訳ですね」

妖ほむ「……という事だそうです」

原ほむ「という事じゃないわよおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

さやか「空間崩壊って名前からしてヤバいじゃないか! 何そんなのほほんとしてんだよ!?」

妖ほむ「まぁ、妖精さんがいますから」

さやか「ああそうだな! 死にはしないな! 心休まるよこんちくしょう!」

シャル「つーか定員八人ならちゃんとセーブしてよ!? なんで八人以上空間に招いてんの!?」

妖精さん「ぼうそうは、ろまんですから」

シャル「浪漫は永遠に浪漫のまま胸に秘めてなさい!」

――――ビシ、ビシビシビシビシ!

さやか「――――あ。これあかん音だ。もう時間ない時の音だ」

シャル「あー、今回も駄目だったわ」

原ほむ「ちょ、急に達観してないで逃げなさいよ!? 何処に逃げればいいか分からないけど兎に角どっかに」

魔女シャル【ギシャアアアアアアアアアアアアアアア!】

魔さや「喰らえっ!」

空手ほむ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」

原ほむ「あなた達お願いだから暴れないで!? こんなボロボロ空間で暴れたら――――」

妖ほむ「手遅れみたいですね」

原ほむ「え」



――――バギャン!






――――その音が聞えた瞬間、私達のいた空間の全てが一瞬で瓦解しました。

私達は時空の外側に放り出された訳ですが、まぁ、そこは妖精さんによる童話災害。
特に息苦しさもなく、眠るように意識が遠退きました。

そして――――




目を覚ました時、私は自室の布団で寝ていました。

さやかさんとシャルロッテさんも、私の布団の中で一緒に寝ていました。

ほむら「……時間は……朝の六時……」

ほむら(……ま、今回の童話災害は軽い方でしたかね)

さやか「ん、んん……」

ほむら「あ、さやかさん。おはようございます」

さやか「……おはよう」

さやか「……一つ聞きたいんだけど……」

ほむら「夢みたいな現実です」

さやか「おーけー」

シャル「……」ムクリ

ほむら「おはようございます」

シャル「……おは」

シャル「……一つ聞いていいか?」

ほむら「今日から朝ご飯はホットケーキではなく、和食にしますね」

シャル「あいわかった」

ほむら「それでは皆さん起きましたし、朝食の準備と……あ、そうだ」

ほむら「そう言えば私の悩んでいた事をまだ話していませんでしたね」

さやか「あ? あー、そういやそうだったな」

シャル「なんか今更のような気がするのよね。もう解決しちゃったんでしょ?」

ほむら「そうですけど、ほら、こういうのって仲間に決意を聞いてもらうのがお約束じゃないですか」

ほむら「新章突入って事で、一つ聞いてくださいよー」

さやか「それ、自分で言うかねぇ……あたしは別にいいけど」

シャル「ま、聞くだけならタダだしね。私もいいわよ」

ほむら「それでは、言います――――」



ほむら「インキュベーターの手は、それこそ世界を覆うほど、この世界の隅々まで伸びている事でしょう」


ほむら「そして遥か昔から、人類に干渉してきた事も分かっています」


ほむら「そんな彼等を地球から追放したらどうなるか? もしかしたら、とても酷い事が起きるのでは?」


ほむら「私は……その責任を負う事が、怖くて堪りませんでした。見知らぬ誰かに責められる事に怯えていました」


ほむら「ですが思い出しました」


ほむら「私は今まで、そしてこれからも! のんべんだらり! 自由気儘! 明るく楽しく生きていたい!」


ほむら「なのに傍でめそめそ泣いている人が居たら、心から笑えないじゃないですか!」


ほむら「誰かの迷惑なんてどーでもいい! 私は! 私の幸せのためだけに生きている!」


ほむら「世界が滅びたってかまいやしません! こんなつまらない世界、むしろぶっ壊してやります!」


ほむら「だから私は!」


ほむら「これから『本気』で地球を――――明るく楽しくしてやる!」


ほむら「全ての魔女を救い!」


ほむら「インキュベーターを、地球から追い出してやります!!」



ほむら「――――ふぅ。すっきりしました」

ほむら「やっぱり自分の中で完結するより、誰かに聞かせる方が気分がいいです」

さやか「そりゃ何より」

シャル「少しはアンタの役に立てたのなら、ま、良かったわ」

ほむら「……別に非難されたい訳じゃないですけど、何か言わないんですか?」

ほむら「今言った事、正直邪悪そのものじゃないですか」

さやか「何を今更。大体何時ものアンタだったじゃん」

さやか「ぶっちゃけアンタ、普段から正義っつーよりも悪だし」

シャル「そーよねぇ。何時も自分勝手。何時も他人の迷惑なんて考えない。何時も自分の楽しさを優先」

シャル「だけど――――アンタは間違った事をしていない」

さやか「魔女を助けるのが間違っている訳ない。人をエネルギーとしか見てない奴を追い払うのが、いけない訳ないよ」

さやか「だから、迷うなっ!」

シャル「アンタはやりたいようにやりなさい」

シャル「そうすればきっと、”巻き込まれた奴”だって幸せになれるわよ」

ほむら「――――はいっ!」

ほむら「みんな、みんな幸せにしてみせます!」


ほむら「覚悟してくださいね! インキュベーター!」


―――――

―――





――何時か何処かの並行世界――


「はっ!?」


目を覚ました時、私はベッドの中に居た。


辺りを見渡せば、目に入るのは見慣れた機器の数々。

そして真っ白な壁。

此処は――――私が入院している病院で、私の『時間』が始まる場所だ。


「ゆ、め?」


今でもハッキリと思い出せる、妖精と……無数の私による、滅茶苦茶な記憶。

あの光景は現実だったのか、それとも夢だったのか……終盤のしっちゃかめっちゃかぶりを考えると、後者のような気がしてくる。


いや、夢でも構わない。


私は大切な事を思い出した。


そうだ。まどかなんてどうでもいい。


全て私のため。


全て私の幸せのため。



――――みんなの笑顔が好きだから、その笑顔を見るために、みんなを幸せにしてやる――――



とってもシンプルな目的。これ以上ない、私の本心。


だから、私はもう迷わない。


「……そう言えば、全員が幸せになれたらインキュベーターの面目丸潰れよね」


まどかを見事契約させずワルプルギスを倒したら、アイツはどんな反応をするのだろう。

誰一人魔女にならなかったら、アイツはどう思うのだろう。

負け惜しみを言うのか、それとも感情がないから何も思わないのか。

前者を想像したら……胸が急に弾みだした。これは一体?


……ああ、そうだ。この気持ちは、楽しい、楽しいだ。


こんなにも楽しい気持ちでループを始めるのは……始めて時間を戻った時以来かな。

そんなにも長い間、私は楽しさを忘れていたんだ。


楽しくない中で、私は一体どれだけ力を振り絞れたのだろう?


どれだけ本気になれたのだろう?


……忘れてしまう程度にしか、頑張らなかったみたい。これじゃ、願いが叶わなくても仕方ない。


さ、暗い話はここまで。


ここから先はハッピーエンドになるためのお話。


例え何度絶望が来ようと、私はそんな絶望を全て台無しに出来る魔法を持っている。何も恐れる必要はない


さあ。




「今度こそ、全員幸せにしてやる! 待ってなさいよ、みんな!」




「……あら? 服になんかゴミが……?」


「これ……確か妖精を握っていたら、いつの間にか持っていた枯草よね……」


「あ……風で枯草が……」


「あらら……コップの水に入っちゃったわね……」


「っ!?」


「み、水に入った枯草が急に膨れ上がって……!?」


「一体これは――――」








「ぼく、さらわれたです?」







今回はここまで!

はい、難産の理由は妖精ほむらさんの説教タイムです。そのキャラの言動を責めまくるとただの悪口だし、
当たり障りない言葉だと心変わりしてくれそうにないし……

という訳で、某ゲームのシャドウみたいな台詞回しになりました♪ ……文才のなさが露呈しましたな。
つーかあの説教はむしろ自分に言ってやりたい。もっと日々を全力で生きろよ、自分……

しかし改めて見ると長い。本当に長い。無駄に長い話。
だけど次回の話は前後編で分けないと、多分これより長くなるという。
1スレで収まりそうとか言ったけど、なんか収まりそうにない気がしてきた。杏子ちゃん紹介回だけで
2つほど話が出来そうだし……

あ、そういえば杏子ちゃんの登場は少し先送りになりました。
ストーリーの構成的に、先のお話を捻じ込まないといけないと気付いたので……

追伸、原作ほむらさんの元に一匹の妖精さんが迷い込むという設定のSSを誰か書いてください。
そんな戯言を残しつつ帰還する!


妖精さんを平行世界に持ち出せるのもテクノロジーなのか



どーもどーも、書き貯めがあるので少し早めに戻ってきた>>1でやんす。


>>369
いえ、この妖精さんは単なる迷子です
妖精さんだもん。生身で平行世界を跨いでも多分平気(オイ


さあ、今回はまどマギで解決せねばならぬ難問の一つ、上条くんの怪我のお話。

ではでは、はじまりー



えぴそーど とー 【上条さんの、かいぞうけいかく ぜんぺん】



――――あたしとアイツが知り合って、さて、一体どれだけの月日が流れたんだろう。


自分でも思い出せないが、幼稚園の頃から遊んでいたような気がするので彼是十年の付き合いだろうか。

大人からしたら大した事無いかもだけど、中学生のあたし達からすれば、それはそれは長い年月。

あたしが、アイツの事ならなんでも知っていると思いあがらせるには十分な月日。



だけどあたしは今日、初めて知る。



今まで知らずにいた事の幸福を。


自分がどれだけ無力な存在なのかを。




そして――――アイツの絶望を。



――見滝原総合病院・玄関前――


さやか「今日も元気なさやかちゃんですよ~っと」

さやか「ほむらとシャルちゃんは今日学校をお休み」

さやか「まどかとは一方的にギクシャクされてるし、仁美は今日もお稽古」

さやか「今日は久々の一人ぼっち」

さやか「という訳で! 普段は多忙なさやかちゃんが、今日は恭介のお見舞いにきてやったぜ!」

さやか「平日でも学校が終わったら来てくれる、あたしみたいな幼馴染をもって恭介は幸せ者だねぇ♪」

さやか(……思えば、ほむらと出会ってからお見舞いに来てないんだよな……)

さやか(出会った初日は蛇の怪物と魔法少女に遭遇し)

さやか(翌日は魔女の結界探しをしていたら地底探検になって)

さやか(その翌日はほむらの家にお泊り&異空間で悩み相談)

さやか(その次の日は悩み相談の疲れもあったので、ほむらの家でまったりお茶会)

さやか(……体験してきた身なのに、自分でも何を言ってるのか分からんぐらいのカオスだなぁ)

さやか(たった五日間の出来事なのに、一生分の面白体験をしたような気がする)

さやか(……今日は、話したい事がたくさんあるな……)




――好きな男の事は相談しなくていいのかなぁって――




さやか「!」ボッ

さやか(う、うわーっ! うわわわわーっ! なんか急に顔が熱くなってきたーっ!?)

さやか(いや、そもそもなんで顔が熱くなってんだよあたし!? そして何故不意にシャルちゃんの言葉を思い出した?!)

さやか(別に恭介は幼馴染で、好きな男って訳じゃ……)

さやか(訳じゃ……)

さやか「……………」

さやか(つーかあたし、なんであの時好きな男がいるって言っちゃったんだ?)

さやか(……それじゃまるで、本当に恭介の事……)

さやか(……もしかして、あたし、恭介の事好きなのか?)

さやか(恭介の事が好きか嫌いかで言えば、勿論好きだ。幼馴染だし、仲は良いんだから、当たり前の事)

さやか(恥ずべき事じゃない。むしろ胸を張っていえる事実の筈)

さやか(だけど、それを誰かに言うのは……考えるだけでも凄く恥ずかしい)

さやか(そりゃ、まどかやほむら、シャルちゃんに面と向かって好きって言うのも恥ずかしいけど……)

さやか(恭介の事を好きって言うのは、それとは全然違う恥ずかしさだな……)

さやか(そういや昨日ほむらの家で読んだ漫画に書いてあったな。恋ってのは、他とは違う好きだって)

さやか(……あたしが恭介に対し感じている”好き”は、ほむら達とは違う?)

さやか(……違う気がする)

さやか(って、事は……)



さやか「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」



通行人「!?」

さやか「あ、すいません。ちょっと青春してただけっす。はい」



さやか(ヤバい、ヤバいヤバいヤバい!)

さやか(もももももももももしかしなくてもあたし、恭介の事好きなのか!? 好きだったのか!? あい・らぶ・ゆーっ!?)

さやか(いやいやいや、そう結論付けるのはまだ早い! クールになれ!)

さやか(そうだ! 恋人同士になった時の事を想像してみよう! そしてそれで自分がどう思うか冷静に判断しよう!)

さやか(恋人同士でする事……)

さやか(キス、とか?)



さやか「うおおああああああああああああああああああああああああああ!!!」



通行人B「!?」

さやか「あ、ごめんなさい。リビドーを抑えきれず、はい」

さやか(やばばばばはば゛ばばばばばばばば゛あばばばばばばばばばばはば゛ばばば゛ばばば゛ばはば゛ばはば゛)

さやか(イイ! 凄くイイ!)

さやか(言葉には出来ない高揚感! 幸福感! 絶頂感!)

さやか(ただの妄想なのに、かつてないほど心がヒートアップしている!)

さやか(間違いない! 確信した!)

さやか(あたし……恭介が好きだ!!)

さやか(大好きだったんだ!!)

さやか(…………なんだろ。そしたら急にアイツがあたしの事どう思ってんのか気になってきた)

さやか(幼馴染? クラスメート?)

さやか(……可愛い女の子って、思ってくれたら嬉しいかな……)

さやか「――――!」ブンブンッ

さやか「こ、こんな事考えてる場合じゃないな! うん、今頃恭介が寂しがってるだろうし!」

さやか「つーか玄関前でにやにやしてたら、ただの不審人物じゃん!」

さやか「さっさと行こう!」

さやか(べ、別に、恭介の顔が一刻も早く見たいって訳じゃないんだからねっ!)


……………

………





――見滝原総合病院・入院患者棟――


さやか「さて、面会の許可も出たし……えーっと、恭介の病室は……」

さやか「っと、此処だ此処」

さやか(……そういや看護師さんに、恭介の事元気付けてほしいって頼まれたなぁ)

さやか(確かに、恭介が怪我してもう大分経つ。気が滅入るのも当然だよね)

さやか(いや、でもあの看護師さんの表情は、そんな軽い話っぽくなかったような……)

さやか「まぁ、考えてもよく分からないし、何時も通りに接するとしますかね」

さやか「……むしろ何時も通りに接する事が出来るか心配だったり」

さやか(う……なんか急に会うのが恥ずかしく思えて……)

さやか(か、髪とか変じゃないよね!? 表情強張ってないよね!?)

さやか(お弁当のカスが歯についていたり、服装がたらしなくなったりしてないよね!?)

さやか(ふおおおおおおっ! な、なんか急にあらゆる事が気になって……)

さやか(会えない! 会いたいのに会いたくない!)

さやか(こ、これが恋の悩みだと言うのかあああああああああああっ!)頭抱えて悶絶中



通りすがり看護師A「青春、かしらね。微笑ましいわね」

通りすがり看護師B「青春、しているわね。微笑ましいわ」

通りすがり看護師C「青春、しているのか。妬ましい」



さやか「……この恥ずかしさは、恋の恥ずかしさじゃないな。うん」



さやか「こほん……ま、まぁ、此処で立ち止まる訳にもいかないし」

さやか「の、ノックしてもしも~し……」コンコン

さやか「き、今日も元気なさやかちゃんがお見舞いにきたぞーっ!♪」バンッ

さやか(ヤバ……強くドアを開けすぎた……)

恭介「……ああ、さやかか」

さやか(よ、よかった……恭介は驚いた様子はないね……ほっ……)

さやか(えーっと、何時も通り。何時も通りのあたしを心掛けて……)

さやか「さ、さやかか、とは失礼だなー。お見舞いにきてやった者に対し無礼じゃぞー」

さやか「おや? それとも久しぶりのお見舞いで、今まで寂しかったのかい?」

恭介「……………」

さやか「さて、そんな寂しい恭介くんにお土産だぞ。今日のお見舞いCDはね……これ!」

恭介「……『亜麻色の髪の乙女』」

さやか「いやぁ、恭介へのCDを買っているうちに、あたしも大分クラシックとかに詳しくなってねー」

さやか「あたしってこんなのだからクラシックとか似合わないっしょ? だからみんなからけっこー意外に思われて」

さやか「そんで尊敬までされちゃったりでー」

さやか「いやぁ、恭介のお陰であたしの学生生活はバラ色に」

恭介「さやかは、さ」

さやか「ん?」



恭介「僕をいじめているのかい?」




さやか「……え?」

さやか(いじめているって……え?)

さやか(どういう事? あたし、何かしちゃった……? いや、でもCDを渡そうとしただけだし……)

さやか(お見舞いに来てやったぞって言い方が、ちょっと無神経過ぎた? 寂しかったかいっておちょくったのが不味かった?)

さやか(でもこれぐらい、何時もの事で……何時もなら、平気で……)

さやか「え……ど、どういう、事……?」

恭介「……さやかは、なんでCDを僕に渡すんだい? なんで、僕に音楽を聞かせるんだい?」

さやか「そ、それ、は……恭介が、音楽、好きだから……」

恭介「もう聞きたくなんかないんだよ!」

さやか「ひっ!?」

恭介「自分で弾けもしない曲なんて、聞きたくない!」

恭介「こんな手じゃ、もうバイオリンは引けないんだ!」

さやか「あ、諦めないでよ!」

さやか「ちゃんと治療を受けて、リハビリを続ければ……」

恭介「……諦めろって言われたんだ……」

さやか「あ、諦めろ……?」

恭介「病院の先生たちにだよ」

恭介「僕の手は、現代の医学じゃ治せないって」

恭介「だったらこんな手――――いらないじゃないかっ!」ガシャンッ!

さやか(し、CDプレイヤーに手を叩きつけて……!? ち、血が……!)

さやか「止めて! お願い、そんな事しないで!」

恭介「もう放っておいてくれよ! もうなんの希望も無いんだ!」ドンッ

さやか「きゃっ!?(つ、突き飛ばされた……)」

恭介「こんな手なんか、こんな手なんか!」ガシャン! ガシャン!

さやか「あ、ああ……手が、血塗れに……」

さやか「お願い、お願いだから……止めてぇ……!」

恭介「さやかには分からないだろうね! 僕の苦しみは!」

恭介「全てを失った絶望が!」

恭介「魔法や奇跡がない限り、僕の手は――――」



「さやかさん! どうかしましたか!?」



さやか「え……(この声って――――)」



……遡る事、数分前の見滝原病院……


ほむら「はぁ……ようやく終わりました」

シャル「お疲れー」

ほむら「すみません。待たせてしまいましたね……ただの付き添いでしたのに、こんなに待たせてしまって」

シャル「朝から夕方まで検査だもんねー。ま、する事なんて無いからいいんだけど」

シャル「つーか、学校休んでまで何をそんなに調べてんの?」

ほむら「……本当は土日のうちに行かなければならない検査だったですが、ついサボってしまい」

ほむら「命に係わるから、明日、つまり今日は学校休んででも絶対に来いって言われてしまったのです」

シャル「あー、そういや昨日の夜、電話があったわね。あれ、病院からだったのね」

ほむら「はい……そんな訳で今日、学校を休んでこの検査を受ける事になりました」

ほむら「別に一回ぐらいサボってもまず死なないのに……」

シャル「いや、流石に同意出来ないから。自業自得でしょ」

ほむら「ええ、まぁ……私が悪いとは思いますけど」

ほむら「でもこんなに束縛されるのはどうかと思います」

ほむら「検査自体は午前中に終わり、午後は結果が出るのを待っていただけなんですよ?」

ほむら「別に郵送で送ってくれてもいいのに……なんでわざわざ病院で結果を聞かないといけないのやら……」

シャル「万一異常があったら緊急入院させるためじゃない? よー知らんけど」

シャル「それで? もう家に帰れるの?」

ほむら「いえ、この後薬も貰わないといけないので、処方箋を受けとりに行かないと」

シャル「大変ねぇ」

ほむら「大変ですよ、ほんとに。サボりたくなる気持ちも分かるでしょう?」

シャル「いや、死にたくないからその気持ちは分からん」

ほむら「むぅー」



ほむら「……ん?」

シャル「? どうした?」

ほむら「いえ……今、さやかさんが居たような……」

シャル「さやか? 何処よ」

ほむら「あっ、居ました! ほら、あそこです!」

シャル「どれ……ああ、ほんとね。ありゃ、さやかだわ」

シャル「しかしなんで居るのかしら? 診察……じゃないわよね。入院患者の病棟に入っていったし」

ほむら「という事は、誰かのお見舞いでしょうね」

シャル「……ちょいと見に行くとしますかね」

ほむら「え? 見に行くって……誰のお見舞いをしているのか確かめる、という事ですか?」

ほむら「それはちょっと、流石に無神経過ぎません?」

シャル「別に、病室に顔出すって訳じゃないわよ」

シャル「入って行った病室を確認して、冷やかすだけ」

ほむら「冷やかす?」

シャル「花の中学生が、放課後病院にお見舞いなんてよっぽどよ」

シャル「入院相手は肉親か……そうじゃなかったら、好きな男に決まってるわ」

シャル「うしししし……鉢合わせたら、絶対アイツ顔を赤くするわよぉ」

ほむら「……無神経じゃなくて、悪趣味の方でしたか」

シャル「そりゃあ、魔女だもん。悪趣味に決まってるでしょ」

シャル「ほら、置いてくわよー」

ほむら「ああ、もう……私は人のプライベートを暴くような悪ふざけは好かないんですけどねぇ」

ほむら「かと言ってシャルロッテさんも無視出来ませんか……」

ほむら「待ってくださいよー」


……………

………





シャル「……見失ったわ」

ほむら「入院病棟、結構作りが複雑ですからね」

ほむら「まぁ、見失って良かったじゃないですか。万一さやかさんにバレたら、軽蔑されたと思いますよ?」

シャル「そんときゃ、ほむらの所為にするから大丈夫」

ほむら「信じてもらえると?」

シャル「その言葉、そっくりそのままお返しするわ」

シャル「ま、見失ったもんはしょうがない。諦めて帰るとするかね」

ほむら「そうすべきです……ん?」

シャル「どしたの? 今度は巴さんあたりでも見つけたのかしら?」

ほむら「いえ、そうではなくて……何か、物音が聞えませんでしたか?」

シャル「物音?」

――――カシャン

ほむら「あ、ほら。また聞こえてきましたよ!」

シャル「確かに……何か、割れるような音かしら」

シャル「病院で割れるような音……ねぇ……」

シャル「これはちょっと、無視出来ないか」

ほむら「ですね。様子を見に行くとしましょう」

ほむら「音が聞えたのはあっちですね……」

――――モウホウッテオイテクレヨ!
――――キャッ!

シャル「! ほむら!」

ほむら「ええ、今のはほぼ間違いなく揉めている時の声ですね」

ほむら(相手は男性と女性……それも、男性の声の方が荒々しく聞こえました)

ほむら(女性の声は悲鳴っぽかったですし……乱暴を受けているとしたら……)

ほむら(……これは、あまり悠長にはしていられませんね……)

ほむら「急ぎましょう! 声がしているのは……………」


??「こんな手なんか、こんな手なんか!」ガシャン! ガシャン!


ほむら「――――この部屋ですね」



ほむら(患者の名前は……上条恭介。男性ですね)

??「お願い、お願いだから……止めてぇ……!」

ほむら(そして見舞いに来ている人は女性――――)

ほむら「って、この声……」

シャル「さやか!?」

ほむら「ああもう! 中がどうなっているのか分かりませんけど……」

ほむら「さやかさんが居ると分かった以上のんびりはしていられません! 突入しますよ!」

シャル「当然!」

ほむら「さやかさん! どうかしましたか!?」バンッ!

さやか「えっ……」

さやか「ほ、ほむら!? それにシャルちゃん……どうして此処に……!?」

ほむら「ちょっと騒がしかったので、失礼ながら無断で部屋に入った次第です」

シャル「私はその付き添いね」

ほむら「それより……」

同年代ぐらいの男子(恭介)「う……な、なんだい……」

ほむら(ふむ。この人が上条さんですか)

ほむら(……この目付き、態度、部屋の荒れ方……ふむ)

ほむら(何があったかは大体見当が付きました。なら、聞くべき事は一つ)

ほむら「失礼ながらあなた……上条さん、ですよね?」

恭介「あ、ああ……なんだい?」

ほむら「これだけ聞かせてもらえれば一先ず部屋から出ますので、お答えください」

ほむら「まさかとは思いますけど、あなた……さやかさんに暴力とか振るってませんよね?」

恭介「っ! ど……どういう意味だい?」

ほむら「どういうも何も、そのままの意味です」

ほむら「先程悲鳴のような声が聞えたので、もしやと思って尋ねただけです」

ほむら「それで、どうなんですか? 暴力なんて振るってませんよね?」

恭介「そ、れは……」

さやか「きょ、恭介は暴力なんて振るってないよ!」

恭介「!? さやか……?」

ほむら(……あー……さやかさん。その言い方はハッキリと真実を物語ってますよ。上条さんも戸惑っていますし)

ほむら(まぁ、顔に殴られたような跡は見られず、着衣に大きな乱れもなし。そして現在上条さんの腕にしがみつくさやかさん)

ほむら(大方突き飛ばされた、或いは振り払われたといったところでしょうか)



ほむら「……分かりました。とりあえず、今はそういう話で良しとしましょう」

シャル「ちょ、ほむら……良いの? だってあれ……」

ほむら「『万一』さやかさんが被害者だったとして、本人が訴えない以上こちらに手だしする権限はありませんよ」

ほむら「手だししないであげる義理もありませんが、ま、それは追々」

ほむら「大方の事情は把握しましたし、あの態度からして『ちゃんとした』お答えをいただけるとも思えません」

シャル「で、でも……」

ほむら「それに今はそんな問答をするより、お医者様を呼ぶべきですよ」

ほむら「出血が酷いようですからね。傷口から細菌が入らないとも限りません」

ほむら「急いで治療しないと、取り返しのつかない事態になりかねな――――」

さやか「ほむら!」

ほむら「っ……ちょっと、さやかさん? あの、なんで私の腕を掴んで」

さやか「ちょっとこっちにきて!」

ほむら「え? あの、さやかさ――――え、どういう」

さやか「恭介!」

恭介「っ……な、なんだい……?」


さやか「恭介の手は絶対に治すから、だから、諦めないで!」


恭介「え……」

さやか「さ、ほむら! こっちに!」

ほむら「いや、こっちって病室の外で、あの、せめてナースコールを」

ほむら「え、えええええええええええ……!?」

シャル「……さやかにほむらが拉致られた……」

恭介「……」

シャル「……あ、あー、その、なんだ……」

シャル「と、とりあえず五分待って」

シャル「ちょっとさやかーっ!?」

――――バタン

恭介「……一体何だったんだ?」

恭介「僕の手を治す……諦めるな?」

恭介「現代の医学じゃ無理なんだぞ……精神論でどうにかなったら苦労は……」

恭介「……ん?」

恭介「なんだ? これ……?」



――上条恭介・病室前廊下――


シャル「もう、さやか! 何勝手にほむらを連れ去ってんのよ!」

さやか「ごめん……でも、あそこで話す事じゃないと思って……」

さやか「あの、それで、ほむら……」

ほむら「いえ、わざわざ話さなくとも大丈夫です。先の言葉で推測が確信に変わりました」

ほむら「上条さんは、事故か病気で手が動かなくなった」

ほむら「そして、医者に現代の医学では治せないとかなんとか言われ」

ほむら「その事に深く絶望し荒れていた、というところなんでしょう?」

さやか「う、うん……よく分かったね」

ほむら「私だって元々は心臓病で入院していた身です。上条さんと似たような境遇の方は相応に見てきたつもりです」

ほむら「上条さんが特別荒れているとも思いませんね。あれぐらいなら普通ですよ」

シャル「でも女に手を上げるのはどうなのかしらね」

さやか「だ、だから恭介はそんな事してなくて……」

シャル「いや、アンタの態度は振るわれたって言ってるも同然だから」

シャル「別に警察に突き出すって訳じゃないんだから、認めちゃいなさいよ」

さやか「だから……」

ほむら「まぁまぁ。今はそんな話をしている場合ではありません」

ほむら「彼、そのままにしていたら最悪自殺しますよ」



さやか「じっ……!? 嘘、そんなの!?」

ほむら「先程言った通り、病院暮らしが長いと上条さんのような境遇の方とは少なからず付き合いがあったりするもので」

ほむら「妖精さんが活動出来ない、この辛く厳しい現実では、それなりの頻度で”そういう”方が出てしまうのです」

ほむら「人間って、思っている以上にあっさりと自分の命を捨てちゃうものですよ?」

さやか「そんな……」

ほむら「あくまで最悪ですが、起こり得る最悪ですからね」

ほむら「さやかさんの知り合いが死ぬのは目覚めが悪くなりそうですし、何かしらの手を打たねばならないでしょう」

シャル「何かしらの手? って、事は……」

さやか「も、もしかして!?」

ほむら「妖精さんに上条さんの手を治してほしい」

ほむら「大方、そんな感じの事をさやかさんは言おうとしていたのではありませんか?」

ほむら「さやかさんからのお願いとなれば断れませんね」

さやか「ほむら……!」

ほむら「今は諸事情で人員が足りませんが、まぁ、一晩あれば手ぐらいは治せるでしょう」

ほむら「ただし、治療は上条さんにちゃんと説明してからですよ」

さやか「え? きょ、恭介に?」

ほむら「治療とはいえ、面白さ重視の妖精さんが普通に治してくれるとも思えません」

ほむら「私も一応監修しますが、妖精さんの治療は素早いですし、些細な事で方向がずれるなんて何時もの事です」

ほむら「正直、手を治してくれと伝えたのに超合金ロボットが出来ても不思議はありません」

ほむら「いくら人助けとはいえ、これを本人の了承なしにやってしまう訳にもいきません」

ほむら「上条さんにはそのリスクを把握し、覚悟を持って承諾してもらう」

ほむら「医者の真似事をやる以上、これが出来なければ私は力を貸せませんよ?」



さやか「そ、それでいい! それでいい!」

さやか「ありがとう……ありがとう……!!」

ほむら「お礼を言うのは上条さんを説得してからにしてください」

ほむら「……ああ、そうだ。私は今から薬を飲まないといけないので、少し席を外します」

ほむら「今のうちに説得するといいですよ?」

さやか「うん、そうする」

さやか「……本当に、ありがとう」

ほむら「ですから、お礼は後でいいと」ガサゴソ

ほむら「……あれ?」

シャル「? どうした?」

ほむら「いや、あの……え? あれ?」ガサゴソガサゴソ

ほむら「ちょ、なんでこんな時に!?」ゴソゴソゴソゴソ

ほむら「……ヤバいです……」

シャル「何が?」




ほむら「妖精さんを詰めておいた薬のカプセルを、紛失しました……」





さやか「妖精さんを詰めたカプセル?」

シャル「随分とけったいなものを持ってるわね、アンタ」

さやシャル「……………」

さやシャル「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

ほむら「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいマジでヤバいです……」

ほむら「ど、どど、どうしましょう……?」

シャル「ど、どうするって、どうしたらいいのよ!?」

さやか「お、落ち着こう!」

さやか「その、カプセルに妖精さんを詰めただけだろ!? 妖精さんは電波に弱いんだから、その辺に落としただけなら……」

ほむら「万一あのカプセルを誰かが飲んでしまうような事があれば、以前私が飲んだ時と同様の効果が表れます」

ほむら「カプセル一つで100f相当の事態が起きるでしょう」

ほむら「最悪、見滝原が地図から愉快に消え去る事に……」

シャル「都市が愉快に消え去るってどんな状況よ!?」

さやか「やっぱり駄目だこりゃ! えーらいこっちゃえーらいこっちゃ!」

白衣姿の老人「君達! 何を騒いでいるんだ!」

三人「ビクッ!?」

ほむら「す、すみませ……あ、先生……?」

医師「む? 君は、暁美くんではないか。近くにいるのは友人……かね?」

シャル「あ、その……は、はい。と、友達、です」

さやか「こ、こ、コイツは、よく、あの……」

医師「いや、それ以上は結構。今は深く話を聞いている場合ではない」

医師「君達、この部屋から何か物音を聞かなかったかね?」

医師「何やら物が壊れるような音がしたと、他の患者から知らせが入ったのだが」

さやか「物音……! そ、そうだ!」



さやか「先生! 恭介……この部屋の患者が暴れて、その、手に怪我を……」

医師「暴れた……そうか。危惧していた結果になってしまったか……」

医師「失礼する」

ほむら(先生、上条さんの病室に入っていきましたね……)

シャル「ほむら、今の人って知り合い?」

ほむら「ええ。私の心臓手術をしてくれた先生です」

ほむら「上条さんの手術も担当していましたか……」

ほむら「先生の技術で無理だったとなれば、やはり現代医学では治せない怪我なんでしょうね」

さやか「そ、それで、これからどうするんだ?」

シャル「自殺しそうな奴の説得から済ませとく?」

ほむら「うーん……上条さんは先生がしばらく見てくれると思いますし、私達は先に妖精さんカプセルの捜索を――――」

医師「あ、暁美君!」

ほむら「ひゃあっ?!」

ほむら「せ、先生!? 驚かさないでくださいよ! 自分で治した心臓を止める気ですか!」

医師「それはすまない。だが、一刻を争う時だ」

ほむら「一刻を争う?」




医師「上条くんが病室から失踪している。彼が病室から出た瞬間を見ていないか?」





ほむさやシャル「!?」

医師「窓が開いていたのでもしやと思い下を覗いたが、幸い……ああ、幸い彼の姿はなかった」

医師「だが、だとすると彼がこの部屋から出るには、君達が陣取っていたこの扉から出るしかない」

医師「どうなんだ? 出た瞬間を見ていないか?」

ほむら「……いえ、見ていません」

医師「何? しかし暴れたところは……」

ほむら「確かに私達はこの病室の患者と会いました」

ほむら「ですが、外に出る瞬間は見ていません。私達があの病室から出た時、彼はベッドで寝ていました」

医師「……そうか。分かった」

医師「だとすると、一体どうやって……いや、それは見つけてからだな」

医師「とりあえず、彼を見つけたらすぐに教えてほしい」

医師「私は今から彼を探しに行く!」

シャル「……走って行ったわね」

ほむら「患者が行方不明なんです。必死にもなりますよ」

さやか「そ、それよりどういう事なの?!」

さやか「恭介は、恭介は何処に……?!」

ほむら「……」

シャル(ほむらの奴、病室に入っていった……?)

さやか「どうしたの? ほむら」

ほむら「……中身は空っぽ、だけど水滴塗れのコップ」

さやか「え?」

ほむら「荒々しく布団がめくれ、窓も全開……随分とはっちゃけたものですねぇ……」

ほむら「ま、100f相当の事態でこの程度の荒れ方ならまだマシですかね」

さやか「一体どういう事?」

シャル「……まさか」

ほむら「そのまさかですよ。自殺するよりかはマシだとは思いますが……」

ほむら「……仕方ありません。今回は私のミスが原因ですからね」

ほむら「ちょっと本腰を入れて事態の収拾に乗り出すとしましょう」


……………

………





――見滝原、その辺の路地裏――


さやか「……今は、午後六時丁度か」

さやか「恭介を探すって名目で夜の外出が認められたけど、それでもあたしは十時までには家に帰らないといけない」

さやか「それまでに、恭介を見つけられるかな……」

シャル「どうかな……目撃証言も特にないみたいだし」

ほむら「正直なところ、難しいと思います」

ほむら「私の推測が正しければ、上条さんは私が落としてしまった妖精さん入りカプセルを何故か服用」

ほむら「その結果100f相当の事態に直面してしまった」

ほむら「その事態によって外に連れ去られたのか、或いは自力で外に出たのか……」

ほむら「目的や理由は分かりませんが、街に出てしまったものと思われます」

ほむら「……問題は、何処まで行ってしまったか、です」

ほむら「『探し物アンテナ』で方角と距離は確かめましたが、あれは大き過ぎて家から動かせませんし、
    上条さんが動き回っていたらどうにもなりません」

ほむら「事実、アンテナが示した場所に私たちは今居る訳ですが、彼の姿は何処にもありません」

ほむら「さて、一体何処に行ってしまったのか……」

シャル「見滝原を動き回っているだけならまだマシなんだけどね。風見野とかに行かれると厄介だわ」

シャル「この町で巴さんとか鹿目さんと遭遇する分には、まだいいけど……」

シャル「万一風見野の魔法少女と鉢合わせて、交戦って事態になったら色々と面倒よ」

ほむら「確かに。見滝原からきた何者かに魔法少女が”襲われた”という風評が立つのは」

ほむら「私の目的的にも、あまり好ましくないですねぇ……面倒な事案は抱えたくないものです」

さやか「恭介はそんな事しない、って言いたいけど……」

さやか「何が起きてるか分からない以上、警戒しないと駄目か……」



さやか「つーかさ、恭介をここに呼び寄せる道具とかないの?」

ほむら「作ってもらう事は可能でしょう」

ほむら「ですが今、私の知り合いである妖精さんの殆どには、ある場所での作業に従事してもらっています」

ほむら「お菓子をあげれば増えますけど、そちらもモチベ維持のため、作業中の妖精さんに分配していまして」

ほむら「こちらに残っている数少ない妖精さんも、多くはカプセルや紙縒りで休眠状態」

ほむら「それらも”万一”を想定し温存しているのが現状でして……」

ほむら「残念ながら現在、新たな道具を作ってくれる人員はおりません」

ほむら「手持ちの妖精さんアイテムでどうにかする以外にないですね」

シャル「随分とカツカツねぇ……その作業ってやっぱりアレ? アンタが前言ってた策ってやつ?」

ほむら「ええ。詳細は……ま、秘密は何処から漏れるか分かりませんので、ここでは言えません」

ほむら「そうですねぇ。話せるのは、総勢五十万人の妖精さんを集結させても、完成に一月を要する大作という事ぐらいでしょうかね」

シャル「ごじゅ……!?」

さやか「い、一体どんなものを作って……」

ほむら「まぁ、実際には九割九分九厘の妖精さんが指示を忘れたり、脇道に逸れた作業をしたりで、実働五千人未満ですけどね」

さやシャル「ずこーっ!?」

さやか「い、いや、十分凄いけど……うん」

シャル「百人ぐらい引っこ抜いても平気じゃない? それ?」

ほむら「なんか、みんなで作業してみたーいとか言っていたので……現場の要望には出来るだけ応える方向です」

ほむら「それに魔法少女による魔女討伐は待ったなしです。少しでも早くその秘策を完成させねばなりませんので、
    たった一名でも人員は減らしたくないんですよ」

さやか「いや、でもさぁ……」



ほむら「それに、無策という訳ではありませんよ?」

ほむら「戦力が足りないのなら足せばいいのです」

ほむら「一応コネはありますし、言い包めるのも簡単でしょうからね」

ほむら「自称正義の味方ほど、利用しやすいものもありません」

シャル「自称正義の味方……って、アンタまさか!?」

ほむら「噂をすればなんとやら、ですね」



ほむら「こんばんは――――鹿目さん、巴先輩」



まどか「ほむらちゃん……」

マミ「……ようやく、名前を憶えてくれたようね」

さやか(まどかに、巴先輩……二人とも、私服か……魔法少女じゃないなら少しは安心、かな?)

ほむら「あ、巴先輩は以降タヌキ先輩と呼びますので」

マミ「ぶふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

まどか「ほむらちゃん!?」

シャル「いきなりの関係悪化である」

さやか「え? なんでそー呼ぶの?」

ほむら「昔はタヌキの事をマミと呼んでいたからですよ」

さやか「へー」

さやか「それで、タヌキ先輩とまどかを此処に呼んでどうすんの?」

マミ「ごっぱあっ!?」

まどか「さやかちゃんまで?!」



ほむら「無論協力してもらう腹積もりです」

マミ「げほっ、げほっ……きょ、協力……?」

マミ「ふん……地底探検で親密になれたつもりなのかしら?」

まどか(なんだろう。地底探検……数日前の出来事なのに、なんかものすごく久しい出来事に聞こえる……)

ほむら「まぁ、多少は仲良くなれたと思っています」

ほむら「現にあなた達は私の呼び出しに応え、しかも私服姿で来たじゃないですか」

ほむら「こちらを信用していないのなら此処に来ないか、魔法少女の姿で来ているでしょう?」

マミ「……好きに解釈なさい」

マミ「それで? 何を頼むつもりなの?」

ほむら「簡単に言えば人探しをお願いしたいのです」

マミ「人探し?」

ほむら「さやかさんの幼馴染が現在、行方不明になっています」

まどか「幼馴染って、上条くん!?」

まどか「そんな、どうして?!」

ほむら「行方不明になった理由は分かりません」

ほむら「しかし病院から姿を晦ましたのは事実です。疑うのでしたら、病院のナースさんに訊けばいいと思います」

ほむら「箝口令は出ているでしょうけど、人の口に戸は立てられませんからね。ボロボロ漏れてくると思いますよ?」

まどか「で、でも、上条くんは怪我をしていて……」

ほむら「まぁ、原因に心当たりはなくもないのですが……」

マミ「心当たり?」

ほむら「説明しない訳にもいかないので言っちゃいますけど」

ほむら「彼は今、私の友人である妖精さんの影響で行方不明になったと思われます」

マミ「!?」

まどか(妖精……地底から地上までを一瞬で移動させるほどの、すごい力を持った使い魔……)

まどか(あの子達の所為で、上条くんが……?!)



マミ「あなた、一体どんな目的で彼を攫ったの!?」

ほむら「攫ってはいませんよ。あくまで妖精さんパワーの影響です」

ほむら「簡単に言えば事故でして……本来自分が服用するために用意した薬をうっかり落としてしまったんですよ」

ほむら「それで一体何を思ったのか、彼は私の落とした薬を飲んでしまったようでして」

ほむら「本来は私の心臓が危ない時に飲んで、危機を避けるのが目的のものでしたが……よもやこうなるとは」

シャル(ああ、そういう理由で持参していたのね)

さやか(確かに下手なやつより効きそうだわ。妖精さん入りの薬って)

マミ「ふん。自分の失敗の穴埋めを他人に手伝わせるなんてね」

ほむら「真に最悪なのは失敗を隠す事。失敗を揉み消そうとする事。そうではありませんか?」

ほむら(ま、正確には”中途半端に”と頭に付きますけどね……情報操作万歳♪)

マミ「……いいわ。あの使い魔の被害者を放置するのは気が気じゃない」

マミ「今回は手を組みましょう」

マミ「鹿目さんも、異論はないわよね?」

まどか「は、はい! 上条くんを放ってはおけません!」

ほむら「物分りのいい方で助かりました」

ほむら「さて、それでは友好の印及び護身のために、あなた達にも妖精さんアイテムをお配りしましょう」

さやシャル「えっ!?」

まどか「妖精さんアイテム?」

ほむら「地底探検の際に使った、あの洗面台と同種の代物と思ってくれれば良いです」

ほむら「今はあまり品揃えがよくありませんけど、何かの役に……立ったらいいなーと」

マミ「……なんでそんな自信なさげなのよ」



ほむら「何分妖精さんのアイテムですからね……ちゃんと使っても役立つか怪しく、てきとーに使っても役立たず」

ほむら「悪用しようとしたら自分が破滅し、正義の心で使うと辺りに迷惑を振りまく……まぁ、そんな代物です」

マミ「全然ダメじゃない!?」

ほむら「でも妖精さんパワーが発動した事案には、同じく妖精さんパワーに頼るしかないと思いますよ?」

マミ「……………」

マミ(あの使い魔の力に頼るというのは癪。正義の魔法少女として、正しいとも思えない)

マミ(でも、もしあの使い魔が上条くんの傍に居たら、私達の力では勝てそうにないのも事実)

マミ(その道具とやらに罠がないとも限らないけど……)

マミ(妖精の力を思えば、多少のリスクは仕方ないわね)

マミ(それに道具自体を解体し、調べれば、使い魔に対する情報を得られるかも知れない)

マミ(……こんな時にキュゥべえが居てくれたら相談出来るのに……最近帰ってこないのよね……)

マミ(まぁ、時々居なくなる子だから、あまり心配していないけど)

マミ「……そうね。お言葉に甘えて、一つ借りようかしら」

まどか「あ、じゃあ私」

マミ(鹿目さん)テレパシー

まどか(えっ、あ、はい)テレパシー

マミ(あなたは道具を借りないようにして。”万一”の事を考えて、ね)テレパシー

まどか(……分かりました)テレパシー

まどか「……私は、遠慮しておくね。ちょっと怖い、から」

ほむら「そうですか? 伏線効果を狙っててきとーでもいいから借りておくべきだと思いますが……」

ほむら「まぁ、無理強いはしません」

ほむら「さやかさんとシャルロッテさんは?」

さやか「あー……じゃあ、まぁ、使わせてもらうか」

シャル「どーせ使っても使わなくてもねぇ……ま、持っていくとしましょう」



ほむら「それではそれでは~この『なんでもはいるバック』に入れておいた道具を取り出すとしましょう」

さやか「なんでもはいるバック?」

ほむら「いくらでも物が入る素敵なバックです。しかもいくら詰め込んでもバックの重さは変わりません」

まどか「それって四次元ポケット的な?(そうだとしたら、やっぱり凄い力……)」

シャル「いや、妖精さんアイテムがそんな単純な使用な訳ないわ」

ほむら「ええ……」

ほむら「実は詰め込んだ物の”質量”が……入れた人間の”重量”に移る使用でして……」

まどマミ「!?」

ほむら「このバックには四キロほどの物しか……入れられませんでした……」

ほむら「バックから取り出せば、体重は元に戻るのに……」

マミ「そ、それは仕方ない、わね……」

まどか「うん。それは仕方ない、よ……」

シャル(アイツ、この前はちょっと太りたいとか言ってたじゃない)

さやか(ぶっちゃけ体重変化とか気にするタマじゃないよね)

ほむら(ぶっちゃけ気にしてませんけどね。同情を誘ってみただけです。ぐふふ)

ほむら(そもそも増えるのはあくまで重量で、外見上の変化はないんですよね)

ほむら(多分入れた対象の重力やらなんやらを変化させて、質量はそのままで”重量”だけを増加させるのでしょう)

ほむら(減った分の重量は、どっかで帳尻合わせをした方が面白いとかいう理由で)

ほむら(無駄に高度なテクノロジーを無駄な方向に使う。実に妖精さんらしいアイテムです)

ほむら「ま、そんな事はさておくとして」

ほむら「妖精さんアイテムのお披露目でーす♪」



マミ「こ……これは……!」

まどか「……これは、一体?」

マミ「ガラクタにしか見えないけど……」

ほむら「パッと見効果が分からないと思うので、気になるものから説明しますよ?」

マミ「えっと、じゃあ……この時計は?」

ほむら「それは『万能時計』」

ほむら「スイッチを押せばこの宇宙の時を止める事が出来ます」

ほむら「更に時計の針を戻せば過去に、進ませれば未来へと移動可能」

ほむら「針の速度を遅くすれば時間をゆっくりに出来、加速させればその分加速します」

ほむら「設定を弄れば特定範囲内の時間だけを操作する事も可能。タイムパラドックスも自動で解消」

ほむら「この時計一つで世界の時はあなたの手中に収まるのです!」

マミ「なっ!?(時間操作!? とんでもないアイテムじゃない!)」

ほむら「ただし……」

まどか「た、ただし……?」

ほむら「使うにはギャグを言う必要があります」

まどマミ「……え?」

ほむら「時を止めるには凍えるほど寒いダジャレを」

ほむら「過去に戻るには昔流行った一発屋の芸を、未来へ行くには時事ネタでショートコントを」

ほむら「遅くするにはサイレント(無音)系のネタ、加速するにはモノマネをする必要があります」

ほむら「ギャグのパワーは時空を超える、と、妖精さんは言っていました。この時計はそのパワーを動力にしているそうです」

ほむら「ちなみにギャグの質は厳正に審査され、最高評価のSランクを取れば十秒の効果が」

マミ「いらない」

ほむら「ですよねー」



まどか「え、えっと……じゃあこのホイッスルは?」

ほむら「そちらは『集まれホイッスル』」

ほむら「一吹きすれば超広範囲……大体見滝原全域にいる犬猫鳥等々、諸々の動物を集めます」

ほむら「そして吹いた人間の虜にしてしまう効果を持つのです」

マミ(動物とはいえ精神操作……それも見滝原全域とは……凄まじいわね……)

ほむら「問題は好かれ過ぎて、動物なのにみんなヤンデレ化してしまう事で」

マミ「却下で」

ほむら「ですよねー」

マミ「もうちょっとまともなのは無いのかしら……ん?」

マミ「この剣とかまともそうね。武器として使えるかしら?」

ほむら「そちらは『呪い剣』と言いまして」

マミ「止めておくわ」

ほむら「賢明です。まぁ、呪いと言っても可愛いものですけどね」

マミ「じゃあこのお面」

ほむら「『気持ちダダ漏れお面』と言いまして」

マミ「このサッカーボールっぽいやつ」

ほむら「『遥か彼方へボール』」

マミ「この知恵の輪」

ほむら「『解けない知恵の輪』」

マミ「この小箱」

ほむら「『何処までもドア』」

マミ「この下駄」

ほむら「『お天気従わせる下駄』」

マミ「このお揃いデザインのイヤリング」

ほむら「『死が二人を別つまで』」

マミ「このバットを持った手乗り人形」

ほむら「『一人用バッターさん』」

マミ「このねばねばした物が先に着いている棒」

ほむら「『スーパートリモチMark2』」


……………

………





マミ「まともなの一つもないじゃない!」

ほむら「最初からそう言っていたと思いますけど?」

さやか「まぁ、あたしらは最初から期待はしていなかったけどな」

シャル「あの二人はまだそれほど慣れてないだろうからねぇ……」

まどか(なんでさやかちゃんと魔女は遠い目しているの?)

マミ「だとしても、もう少し実戦的なものは……あら?」

マミ「これは、銃弾かしら?」

ほむら「え? あら……それは入れた覚えがないのに……」

マミ「入れた覚えがない?」

ほむら「ええ。他の道具に輪をかけて使えない仕様なので、別のにした方がいいと思いますよ?」

マミ(……妙ね)

マミ(他の道具は勧めてきた癖に、これは使わないように勧める)

マミ(入れた覚えがない、つまり入れるつもりがなかったと言ってるし……)

マミ(もしかすると、何か重要な秘密が?)

マミ「……いえ、これにするわ」

ほむら「え? ですが……」

マミ「私は銃使いよ。弾丸なら使い勝手がいいわ」

ほむら「まぁ、そうまで言うなら構いませんけど……」

ほむら「それじゃ、次はさやかさんとシャルロッテさんがお選びください」

シャル「つーてもねぇ……じゃ、この『何処までもドア』を」

さやか「あたしはこの『スーパートリモチMark2』で」



ほむら「はい。では残りはバックに戻して……」

マミ「それじゃあ、そろそろ行こうかしら」

ほむら「いえ、その前に『探し物何処ダーツ』で上条さんがいるであろう方向を確認しましょう」

マミ「? ダーツの矢? そんなの、さっき紹介された中には無かったけど」

ほむら「これは今使おうと思っていたので、除外しておいたんです」

ほむら「で、これは投げると探し物のある方向へ自動的に進むダーツとなっています」

まどか「そんな便利なものがあるなら、すぐに上条くんの居場所が分かるんじゃないの?」

ほむら「便利ですけど、結構危ないんですよね……」

まどか「え?」

ほむら「ま、投げれば分かりますよ――――っと」

――――ヒュッ!

さやか「ん?(何か横切った?)」

――――ゴオオオオオオッ!

さやか「え、何これ衝撃波あああああああああああああああああああああ!?」

シャル「ああ!? さやかが空の彼方へと吹っ飛ばされた!?」

シャル「つーかさやかの後ろにあったビルに大穴が開いてるんだけど!?」

ほむら「どんな物の在り処でも正確に指し示すためには、目標が動く前にダーツが方向を示さなければなりません」

ほむら「一番簡単なのは超速度で飛行する事ですが、妖精さんはそれでは満足しなかったようで」

ほむら「なんでも投げた瞬間、時空を改変しながら飛行するように改造」

ほむら「理論上はワープどころか時間停止よりも”早く”探し物に到達する……という仕様らしいです」

ほむら「まぁ、ダーツの素材がただのプラスチックですので、五メートルほど進んだ辺りで自壊してしまいますけどね」

まどか「滅茶苦茶過ぎるよそれえええええええええ!?」

マミ「むしろなんで五メートルも進めるの!?」

ほむら「曰く、空間にちょっとの間だけ優しくしてもらうとか」

まどマミ「意味分かんない!?」

シャル「あー、優しくしてもらうのかー。流石妖精さん」

まどか「なんであなたはツッコミを放棄してるの!? こんなの絶対おかしいでしょ!?」



ほむら「とりあえず、方向は分かりました。あちらに上条さんが居るのは間違いありません」

ほむら「まぁ、移動しているでしょうから、結局手分けする事にはなると思いますが」

ほむら「ああ、そうそう。上条さんを見つけたら携帯で私に連絡をください」

ほむら「直に飲んでしまった以上、恐らく彼を取り巻く力は想像を絶するものとなっているでしょう」

ほむら「まぁ、その力がどんな方向かはさて置くとして……」

ほむら「妖精さんの力に敵うのは妖精さんだけです」

ほむら「つまり現状上条さんと対抗出来るのは妖精さんパワーをフルに借りられる私だけですので」

ほむら「タヌキ先輩と鹿目さんは意地なんか張らず、私に連絡してくださいね?」

マミ「だからタヌキって言うなーっ!」

シャル「つーか、さやかが空に飛んだきり落ちてこないんだけど……」

まどか「え? ちょ、えええええええっ!?」

まどか「さやかちゃん、何処まで飛んでいっちゃったの!?」

ほむら「あー、まぁ、平気じゃないですかね? 妖精さんアイテムで吹き飛ばされた訳ですし」

ほむら「いざとなったら巨大化出来ますから、なんとでもなるでしょう」

まどか「えええええええ……」

シャル「コイツ、絶対面倒だから無視したな……」

シャル「ああ、飛行機飛んでるし……明日のニュースで『フライングヒューマノイド現る!』とかやらなきゃいいけど」

ほむら「九割以上の人が信じないオカルト話なんてどーでもいいじゃないですか」

ほむら「それよりも上条さんの方が大切です」

まどか「あの、今はさやかちゃんの方が大切じゃ」

ほむら「さ、捜索開始です!」

まどか「無視しないでよぉーっ!?」


……………

………





ほむら「ふむ……ここまでのルートでは特に痕跡は見当たりませんでしたね」

マミ「ソウルジェムにも反応はないわね……」

ほむら「もー、だから妖精さんは使い魔なんかじゃなくて、妖精さんって言ってるじゃないですかー」

ほむら「というか自分の魂で索敵って……安全管理的に問題があるんじゃないですかね……」

マミ「? 魂?」

まどか「わああああっ!? わあああああああああああっ!!」

マミ「ど、どうしたの鹿目さん!?」

まどか「な、なな、なんでもないですよ!」

まどか「そ、それより、全然手がかりが見つからないね! どうしようか!」

シャル(……あー、巴先輩にまだソウルジェムの秘密を話してないのか)

シャル(今その話を追及されると色々面倒そうだし……合わせてやるとしましょう)

シャル「確かに、そろそろ手がかりの一つぐらいはほしいわね」

シャル「丁度分かれ道に出たし、手分けして探さない?」

ほむら「そうですね。いいと思います」

ほむら「そちらに何か意見はありますか?」

マミ「特にないわ」

まどか「わ、私も、特には……」

ほむら「では私達はあちら側を探しますので」

マミ「反対側は任せなさい」

まどか「で、では……」

シャル「……行ったわね」

シャル「ああ、そうだ。ほむらに一つ聞きたかったんだけど」

ほむら「私にですか?」

シャル「あの子たちさ、どう思う?」

ほむら「? どう、とは?」

シャル「あの子たちが私達に素直に協力してくれるかって事よ」



シャル「一時に比べれば問答無用で攻撃しない分、和解したと言えなくもないけど」

シャル「私は魔女であの子たちは魔法少女。殺し合う立場が変わった訳じゃないわ」

シャル「あの二人がこのまま素直にほむらの言う事を聞くとも思えないんだけど」

ほむら「まぁ、人間のやる事ですから断言は出来ませんけど……多分大丈夫でしょう」

ほむら「彼女達は生粋の善人。損得の有無に関わらず、常に正しくあろうとする人達です」

ほむら「それにお願いしたのは行方不明者の捜索ですし、何より目標はさやかさんの幼馴染ですからね」

ほむら「鹿目さんは真剣に、タヌキ先輩もそこそこ真面目にやってくれるでしょう」

シャル「……意外ね。寝首を掛かれても妖精さんパワーがあるから問題無い、とか言うと思っていたのに」

ほむら「意見のぶつかり合いとか戦闘とかありましたけど、私、結構あの人達の事信用しているんですよ?」

シャル「信用してんならいい加減巴先輩の事名前で呼んであげなさいよ」

ほむら「それは仲直りした時までとっておきたいです」

ほむら「っと、歩いていたらまた分かれ道ですね……」

シャル「どうする? また手分けする?」

ほむら「そうですねぇ、そうした方が――――」

――――ボーン……

ほむら「? 水音……」

シャル「というより、爆音?」

シャル「音は海辺の方から聞こえてきたわね……何かあったのかしら」

ほむら「……ここは用心して、一緒に行くとしましょう」

シャル「合点」



――――その頃――――


マミ「どう? 鹿目さん」

まどか「……駄目です。やっぱり、ソウルジェムに反応はありません」

マミ「そう……思い返せば、地底の時も魔女の反応は得られなかったから、反応がなくても当然か」

マミ「暁美ほむらが妖精は使い魔じゃないと言っていたのは、真実なのかもしれないわね」

マミ「……そうだとしたら、妖精の力で魔女と打ち解けたとでもいうのかしら」

マミ「いえ、そんな筈ない。どんな魔女でも呪いと絶望を振りまく存在には変わりない」

マミ「まして……」

まどか「マミさん……」

マミ「……ごめんなさい。今はこんな事考えている場合じゃないわね」

マミ「あなたの親友である美樹さんの幼馴染。彼をちゃんと保護しないと」

まどか「は、はい!」

まどか「あっ、分かれ道、ですね」

マミ「そうね。時間も惜しいし、分かれて探しましょう」

マミ「幸い鹿目さんが上条くんの写真を携帯で撮っていたから、容姿は分かるしね」

まどか「正確にはさやかちゃん経由なんですけどね」

マミ「それじゃあ、私はあっちを探すわね」

まどか「はい。では、見つけたらテレパシーで連絡しますね!」

マミ「……さて、と」

マミ(グリーフシードのストックは一つだけ。最近はあの魔女ばかり追い駆けていたから、魔女退治を全然していなかったのよね)

マミ(今後の事を考えると、このストックを使うのは可能な限り避けたい)

マミ(魔法を使っての捜索は却下。自分の脚で探さないと)

マミ(とは言え、手掛かりもないのに探すのは中々大変――――)

マミ「――――!」



マミ「……何者かしら。私の事を覗き見しているのは」

マミ「出てきなさい」

マミ(……建物の影から、出てきたわね)

マミ(数は一。全身を黒いロープで覆った、怪しい奴ね……)

マミ(まさか、アイツが上条くんを?)

マミ(暁美ほむらの言っていた妖精云々はあくまで推測。アイツが上条くん失踪に関わっていないとも限らない)

マミ(私を監視していた理由も気になるし、問い詰めないとね)

マミ「レディを尾行なんて、どういうつもりかしら?」

黒ロープ「……………」

マミ「口が利けないのかしら? それとも、私なんかと話す事はないと?」

マミ「あまり、嘗めないでほしいのだけど」変身!

黒ロープ「……」

マミ(変身するところを見ても身動ぎ一つしない……)

マミ(私が魔法少女だと知っている? もしくは、魔法少女という存在自体を知っている?)

マミ(いずれにせよ、只者ではないわね)

マミ「このマスケット銃が玩具と思ったら間違いよ?」

マミ「何なら、威嚇射撃でもして――――」

黒ロープ「――――!」

マミ「!?」

マミ(く、黒ロープがこっちに突撃……!)

マミ(速い!)



マミ「くっ!」シュッ!

黒ロープ「――――……」

黒ロープ「……」

マミ(不味いわね。さっきの攻撃、あまりにも速くて避けきれず、腕を少し切られた……)

マミ(少なくとも速さに関しては私より格段に上。そして人を簡単に切り裂けるだけの攻撃力もある)

マミ(リボンで拘束出来ればいいけど、あの素早さだと隙を突かないと捕縛は無理ね)

マミ(鹿目さんと別れなければ……いえ、二人になったからと言ってどうにか出来るものじゃない)

マミ(あの速さに追随出来る人が足止めしてくれない事にはどうにもならないわ)

マミ(……佐倉さんが居てくれたら……)

マミ(ううん、あの子とは決別したのよ。ここはなんとか自力でやらないと)

マミ(……そうだ)

マミ(暁美ほむらからもらった、あの弾丸を試してみましょう)

マミ(どんな効果があるかは分からないけど、物は試しってね)

マミ(魔法で作った銃に装填して……)

マミ「……先に攻撃してきたのはそっちだから、悪く思わないでね!」

マミ(アイツの足の周り目掛けて、全弾一気に撃つ!)パパパパパンッ



黒ロープC「――――!」

マミ(動いた! やっぱり避けられ――――)

マミ(!?)

マミ(じゅ、銃弾が黒ロープを追跡している!? 追尾弾だったの!?)

――――バスッ バスッ バスッ バスッ バスッ

黒ロープ「――――!?」

マミ(ああ、ついに命中した!)

マミ(だけど胴体に当たったわ……不味い、治療しないと致命傷かもしれない……)

黒ロープ「……! ……!!」

マミ(黒ロープが痙攣している……やっぱり、致命傷なの!?)

マミ(くっ! まさかあんな機能があったなんて――――兎に角今は治療を――――)

黒ロープ「」バキンッ

マミ「え? 何の音……」

黒ロープ「」バキ、ベキベキ

黒ロープだった者「」メキメキメキ、ピキ、ベキ、ボキッ、ゴキンッ

マミ「あ、あら? な、なんか、黒ロープの姿が変わって……」

黒ロープ→筋肉隆々の怪物「……フシュゥゥゥゥゥ……」

マミ「……何、これ?」

―――――――――――

シャル「ところでさ、巴さんが持っていった弾丸ってどんな道具なの?」

ほむら「あれは『人生ハードモード弾丸』と言いまして」

ほむら「撃ち込んだ敵の全パラメーターを二倍にするという」

ほむら「冒険に刺激が足りない、敵が弱すぎて話にならない」

ほむら「そんな方々の欲求不満に応える、平穏を愛する私には全く役に立たないアイテムです」

ほむら「タヌキ先輩は確か五発分持っていったので、万一全弾当てた場合敵の強化率は三十二倍となります」

ほむら「ちなみに弾丸は自動的に『敵』へと命中するので、自分に撃って強化という手法は出来ませんのであしからず」

シャル「……それは何が何でも説明してあげなきゃダメじゃなかったのかしら」

ほむら「どーせ死にはしませんから気にしない気にしない」

ほむら「精々後処理をする私達が面倒を背負うだけですよ」

シャル「……あの人、撃ってないといいわね」

ほむら「撃ってないといいですけど、妖精さんアイテムですからね。多分使っちゃってますよ?」

―――――――――――

怪物「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

マミ「きゃあああああああああああああああああ!?」

マミ(なんなのよアレ!? なんかすっごいパワーアップしてない?! 元の強さを知らないけど!)

マミ(え!? つまり何!? あの弾丸ってそういう類のやつなの?!)

マミ「最初に説明しなさいよーっ!?」



怪物「シャア!」

マミ「ひっ」

――――ビュウウウンッ!

マミ(と、突進された……?)

マミ(慌てて身を捩ったお陰かダメージはないけど……)

マミ(でも今の動き、全く見えなかった!)

マミ(パワーアップさせるにしても、もっとこう、徐々に強くしなさいよぉ!?)

怪物「? …………?」

マミ(幸いなのは怪物自身、自分のパワーアップについていけてない事ね……私の横を通り過ぎた事に気付いてない)

マミ(どうやら私一人では本格的にどうにも出来ないわね)

マミ(癪だけど、鹿目さんだけでなく魔女と暁美ほむらにも助力を願わないと……)

怪物「――――」

マミ「……まぁ、そんな時間をくれるとも思えないけどね」

マミ(なんとか翻弄して逃げないと……)

怪物「……」

マミ(来る――――)









「とおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうっ!」








マミ「?!」

怪物「ギッ!?」バキッ!

マミ「なっ!?(空から誰か降ってきて、怪物に蹴りを食らわせた!?)」

マミ(蹴りを食らった怪物は……あ、なんか頭が変な方に曲がってる……死んだ、のかしら?)

マミ(助かったけど、あの人は一体……)

マミ(……全身タイツというか、戦隊ヒーローのスーツみたいな恰好は、ある意味一般人に見えないんだけど……)

??「君。もう大丈夫だよ」

マミ「は、はぁ……(あ、こっちを振り向いた。顔は剥き出しなのね)」

マミ(ふむ。どうやら男の人、それも私と同年代っぽいわね)

マミ(あら? なんか、見覚えがあるような……)

??「ん? 僕の顔に何か付いているかい?」

マミ「あ、いえ……そういう訳では……」

マミ「えっと、助かりました。ありがとうございます」

??「いやいや、気にしないで」

??「人助けは当然の事さ」

マミ(……悪い人、ではなさそうね)

マミ(だけど気になる……どうにも見覚えがある……)

マミ(名前を聞けば思い出せるかしら?)

マミ「……あの、お名前を聞いてもよろしいでしょうか……?」

??「僕かい? 僕の名前は」





恭介「上条恭介と言うんだ」





今回はここまで!
分かると思いますが、まどマギ的鬱要素は因果地平の彼方に消え去りました。
上条くん、既に二本足でしっかり立ってるし。

ぶっちゃけ自分には鬱要素なんて書けないです。
恭介がさやかに当たり散らす程度のシーンでも割としんどかったり。どんだけメンタル弱いんだ、自分。
でもバットエンド自体は嫌いじゃなかったり(ぇ

そしてさやかちゃんは何処に行っちゃったんでしょうねぇ……

それでは次回は来週を予定。
ぐぶりーさびらー



(そのダーツって本当は射程距離5mの必殺兵器なんじゃ…
いや…もう少し様子を見よう、俺の予感だけで皆を混乱させたくない)

たぬき=マミ

最近は某幻想郷の奴だけど自分は金田一の小説で知ったな


縄で全身を覆うって結構難しいと思った(こなみ)

>>427
よく見たらローブじゃなくてロープだこれー!?

脳内変換ってスゴい

乙!
久し振りに来たら速報復活してるし2話も来てた!もうなにも怖くない!

ほむらは太りにくい体質だったのか。だから胸が貧……
おや、誰か来たようだ

このかみじょうさんならそげぶできそうです?

>>367
>追伸、原作ほむらさんの元に一匹の妖精さんが迷い込むという設定のSSを誰か書いてください。
いいだしっぺのほうそくー

早くも次回作が決定したな!

われらのみほしたひとさいきょうになるですー?

>>431
原作ほむは食自体細そうなイメージ
10秒チャージとかカロリーメイトもさもさ食って終わり、みたいな
逆にこっちのメガほむはどんな体質でも違和感ないわ

>>436
わかる。原作ほむらはコンビニの3つ入りサンドイッチとか残しそうなイメージだよな

一方こっちの妖精ほむらさんは…好き嫌いしないで何でも食べそう



おはよーございまーす。朝からうっとおしい>>1です。


>>423
原作のバラバラアンテナに比べれば安全(震え声

>>424
自分は某幻想郷で知った奴です。

>>427 >>429
…………………………。
ぎゃあーっ!? 服はロープじゃなくてローブじゃねぇかっ!?
はい、素で間違えていました。布団を引くのと同じレベルで間違えていました。
申し訳ありませんがロープの部分はローブと脳内補完してください……
恥ずかしい、エタりたい……しないけど

>>431
成程、つまり大きいマミさんは太
ん? 誰か来たようだな

>>432 >>433
次回作はまどマギと地球防衛軍のクロスの予定ですので……もしくはアストロノーカ(ぇ

>>435
むしろ無敵。

>>436 >>438
自分もそんなイメージです。というか、原作アニメでクールほむらだけ食べているシーンがなかった気がする。
そして当SSほむらさんは、ほら……なんでも食べるのはサバイバルの基本だから……


さあ、今回は初めてのガチ戦闘ありのお話。
むしろまどマギなのに今までガチ戦闘なしってどういう事なんでしょうね?




えぴそーど じゅーいち 【上条さんの、かいぞうけいかく こうへん】




マミ(私は、ついさっきまで怪物に襲われていた)

マミ(その怪物はとても一人じゃ倒せそうにないぐらい強そうだったんだけど……)

マミ(それを倒してくれたのが――――今、私の目の前にいる人)

マミ(上条恭介……行方不明になったという、鹿目さんの親友の幼馴染……!)

マミ(まさかこんなところで出会うとは……)

恭介「ふぅ……また一体成敗したな……あと何人かな……」

マミ(なんで全身タイツみたいな恰好なのか、事故の怪我で入院していた筈なのにしっかり立っているとか)

マミ(ツッコミどころは山ほどあるけど、一応無事なようだし……)

マミ(念のため、本人確認だけはしておきましょう)

マミ「あ、あの、あなたは……美樹さやかさんの幼馴染の、上条くんでしょうか?」

恭介「え? えーっと、まぁ、そうですけど……あなたはさやかの知り合いなんですか?」

マミ「ええ。私は巴マミ。あなたと同じ見滝原中学校に通う、三年生よ」

マミ「病院から行方不明になったと聞かされ、みんなで探していたの」

恭介「みんなでって……いや、よく考えたら、今の僕は行方不明扱いされて当然か……そうか……」

マミ「とりあえず、病院に戻りましょう?」

マミ「何があったかは分からないけど、怪我をしていないとも限らないからね」

マミ「鹿目さんや美樹さんには私から連絡を入れておくから、あなたは病院に戻って――――」

恭介「それには及びません」

マミ「? 自力で戻る、という事かしら?」

マミ「ダメよ。確かに今は元気そうだけど、あなたは本来入院していないといけない身なのだから安静に」


恭介「病院には戻らない、と言っているんです」



マミ「……どういう事かしら?」

恭介「そのままの意味です」

恭介「僕には成すべき事がある。病院で寝ているだけでは、決して成し遂げられない目的がある」

恭介「そのためにも、病院に戻る訳にはいかない」

恭介「見逃してはくれませんかね?」

マミ「……あなたが何をしたいのかは知らない」

マミ「だけど、あなたが行方不明になって心配している人がいる以上……」

マミ「あなたを見逃す訳にはいかないわ」

恭介「……残念です」

恭介「なんともフリーダムな格好をしているから、説得出来るかもと思っていたんですけどね」

マミ「うん。服装云々であなたに言われたくないから」

マミ「……おほん。まぁ、説得は無意味なようだし」

マミ「とりあえず、ちょっとの間気絶してもらおうかしらね?」

恭介「そうきますか。お淑やかそうなのに、意外と好戦的ですね」

マミ「こう見えて面倒は嫌いなの」

恭介「成程……では僕も面倒な理屈は抜きに」

恭介「あなたを倒し、先に進むとしましょう」

マミ「あら。簡単にいくと思わないでよ?」

マミ(とは言え……この展開、不利なのは私の方かしら)

マミ(不意打ちとはいえ、あの怪物を一撃で倒す攻撃力……とてもただの人間とは思えない)

マミ(妖精達の手によってなんらかの力が与えられた? それとも、元々ただの人間ではなかった?)

マミ(いずれにせよ……)

マミ(……鹿目さん、聞こえる?)テレパシー

まどか(はい、マミさん。どうかしましたか?)テレパシー

マミ(上条くんを見つけたわ)テレパシー

まどか(ほ、本当ですか!?)テレパシー

マミ(ええ。だけど、ちょっと問題が生じていてね……)テレパシー

マミ(上条くんと交戦する事態になったわ)テレパシー



まどか(そ、そんな!? なんで!?)テレパシー

まどか(そもそも上条くんは事故で怪我してて……)テレパシー

マミ(理由は分からないけど、完治しているみたいね)

マミ(しかも上条くんの強さは、私と同等以上……いえ、見栄を張ったわね)テレパシー

マミ(私よりも格段に上の力を持っているとみて間違いない)テレパシー

まどか(嘘……)テレパシー

マミ(だから、一つお願い)テレパシー

マミ(暁美ほむらと魔女に、私が上条くんと交戦状態にある旨を伝えてほしいの)テレパシー

マミ(そして、出来たら合流したいと伝えて)テレパシー

まどか(分かりました!)テレパシー

マミ(……これでよし)

マミ(……向こうは油断しているのか、あるいは様子見か、中々攻撃を仕掛けてこない)

マミ(なら、遠慮なく)

マミ「先手を打たせてもらうわね!」

恭介「なっ……!?」

マミ(良し! 彼の足元からリボンを生成して、捕縛に成功したわ!)

マミ(腕も上手い事後ろ手で縛れたし、これなら多少相手の力が強くても簡単には)

恭介「ふん」バリバリバリー

マミ「……………」

マミ「簡単には破られないと思っていたリボンが、時間稼ぎすら出来ずに粉砕された」

マミ「何を言っているか分からないと思うけど、私にも何が起きたか分からな」

恭介「今のはなんですか? もし先制攻撃だとしたら……次は僕の番ですよね?」

マミ(あ、これヤバいわ)



マミ(真っ向から戦ったら雑魚敵Aみたいな感じに吹っ飛ばされる未来しか思い浮かばないもの)

マミ(ライオンに戦いを挑むネズミの心境かしら? いえ、ネズミならまだ一矢報いる事も出来そうだし、蟻とか?)

マミ(私でどうこう出来る相手じゃないわね……)

マミ(かと言って鹿目さんと協力しても、蟻が二匹になるだけ)

マミ(ライオンに勝てるとすれば、同じライオンか、ライオンより巨大な像か)

マミ(ライオンを殺す道具を作れる人間だけ……)

マミ(癪だけど……本当に癪だけど、暁美ほむら達に助けを求めるしか、彼を止められそうにない)

マミ(つまり、私がすべき事は――――)

恭介「大丈夫です、怪我はさせませ」

マミ(魔法で作りだした大型大砲を)

恭介「!? いきなり大砲が……!」

マミ(”自分の足元”に撃ちこみ!)

――――ドンッ!

恭介「ぼふっ!……ふ、粉塵が舞い上がって……煙幕か!?」

マミ(そしてこの隙に、逃げる事――――)

――――ヒュッ

マミ「え――――ぐぇっ!?(の、喉を掴まれ……!?)」

恭介「残念でしたね」

恭介「煙幕を張った直後ならまだ逃げていないと踏んで、急いで腕を伸ばした次第ですが……」

恭介「予想通り、まだ此処に居てくれましたね」

マミ(くっ……まさか、逃げる前に捕まるなんて……)

マミ(パワーだけじゃない。スピードや反応速度も人間以上!)

マミ(このままでは……)

恭介「おっと、いくらもがいても無駄ですよ?」

マミ「ぐっ! く、ぁ、かっ……!?」

マミ(だ、ダメ……身体強化魔法をいくらかけても、全然引きはがせない……!)

マミ(叩いても、引っ掻いても、びくともしない!)

マミ(確かに身体強化は得意ではないけど、それでも並の大人数人分の力はある筈なのよ!?)

マミ(まさか、此処まで強くなってるなんて……!)

恭介「ふむ。中々しぶとい」

恭介「でもこのまま首を圧迫していればそのうち気を失うかな」

マミ(不味……!)



恭介「ん?」

恭介「――――ちっ」

マミ「くはっ……え、なんで首から手を離し……」

マミ(! 上条くんが飛び退くように離れて……)

マミ(上条くんのいた場所に、”桃色の矢”が通った!)

マミ(矢の色、そして感じられた魔力の気配……間違いない!)

マミ(今の攻撃は……)

マミ「か、鹿目さん!?」

まどか「良かった! 間に合って!」

マミ「一体どうして……暁美ほむらへの連絡は!?」

まどか「携帯でもう済ませてあります。私は偶々近くにいて、爆発みたいな音を聞いて駆け付けたんです」

マミ「爆発……煙幕を展開した時の音かしらね」

まどか「……それより……」

まどか「……上条くん」

恭介「……やぁ、鹿目さん。久しぶり」

恭介「今日は随分と可愛らしい服装だね。よく似合っているよ」

まどか「そんな事言って誤魔化さないで」

まどか「どうしてマミさんに酷い事をしていたの?」

まどか「答え次第では、いくら上条くんでも許さないよ」

恭介「酷いも何も……最初に手を上げたのはそっちなんだけどね」

恭介「僕は病院に戻りたくないのに、無理やり連れて行こうとするのは酷くないのかな?」

まどか「それは……だって、上条くんは今まで入院していたんだよ! 連れ戻そうとするのは当然でしょ!?」

恭介「だーかーら。僕は見ての通り、もう完治している訳」

恭介「そしてやりたい事がある」

恭介「その邪魔をするのなら、いくらさやかの親友である鹿目さんでも容赦しないよ?」

まどか「そんな……おかしいよ……そんなの、絶対におかしい!」

まどか「私達を、マミさんを倒してまで成し遂げたい事ってなんなの!?」

恭介「……鹿目さんに言っても仕方ない事さ」

恭介「それに言葉をぶつけたところで、君は自分の意見を曲げる気はないんだろ?」

恭介「僕だって曲げる気はないんだ。だったら言葉を交わすのなんて時間の無駄だよ」

恭介「僕を止めたいのなら、力尽くで止める事だね」

まどか「そ、んな……なんで、なんでこんな……!」

まどか「なんでクラスメートと、さやかちゃんの幼馴染と戦う事に……」


――――ピロピロピーロ~♪――――



恭介「? この音は……携帯の着信音?」

まどか「あ、これ私の携帯……!」

まどか(ほむらちゃんからだ!)

まどか「……」

恭介「ああ、いいよ。出なよ」

恭介「その隙に攻撃しようなんて思ってないよ」

恭介「別に、僕達は”敵”って訳じゃないんだからさ」

まどか「……分かった」ピッ

まどか「もしもし、ほむらちゃん?」

ほむら『あ、もしもし? 鹿目さん、今お電話平気でしょうか?』

まどか「えと……(許可は出たけど、これから戦おうって相手が目の前にいるんだよね……)」

ほむら『まぁ、私には関係無い事ですので気にせず要件言っちゃいますね』

まどか「いや、そこは気にしようよ!?」

ほむら『先程タヌキ先輩と上条さんが交戦状態にあるとの連絡について、少々お話したい事がありまして』

まどか「無視されたーっ!?」

ほむら『どんな展開で戦う事になったかは分かりませんが、恐らく苦戦は必須の状況となっているでしょう』

ほむら『多分、鹿目さんは巴さんと協力して上条さんと戦う事になるかと思いますが』

ほむら『妖精さんパワーに対抗出来るのは妖精さんパワー以外にありません』

ほむら『そして現状、妖精さんパワーをほぼ自在に扱えるのは私だけ』

ほむら『そもそもあなた達に妖精さんの知識はありませんので、対処方法のノウハウを持っていない』

ほむら『つまりあなた達では役者不足。上条さんを大人しくするには、私と合流する以外にないという事です』

まどか(うう……ハッキリ言われた……)

ほむら『とはいえ今日持ってきた道具で真っ向勝負を挑めるようなものはないので』

ほむら『私は此処で少々準備というか、作戦を練っておきます』

ほむら『なので私達の方からそちらへと向かう事は出来ません』

ほむら『出来れば上条さんを此処まで誘導してくれませんか?』

ほむら『ちなみに場所は……××港ですね。コンテナだらけの。コンテナターミナルと言うんでしたっけ?』

ほむら『そんな感じの場所ですけど、分かりますか?』

まどか「あ、うん。一応分かる」



ほむら『ではそこまで上条さんを誘導してください』

ほむら『彼がいくら妖精さんパワーを受けたとしても、所詮トーシローです。妖精さんの友達である私の敵ではありません』

ほむら『ここまで来てもらえれば、勝ちは確定ですよ』

まどか「でも……そんな、どうすれば……」

ほむら『まぁ、殴り合いながら連れてくるのはしんどいでしょうし、
    無理やり引っ張れるようならそもそも私の力は必要ないですからね』

ほむら『かと言って、説得でここまで来てもらう事も恐らく無理でしょう』

ほむら『ですから、私から一つ言葉を送らせていただきます』

まどか「言葉?」

ほむら『死ぬ気で頑張れ♪』

――――ぷつっ

まどか「あ、切れた……」

まどか「……………」

まどか「ただの精神論じゃん?!」

マミ(鹿目さん、暁美ほむらはなんて?)テレパシー

まどか(……死んででも××港まで上条くんを連れてこいと)テレパシー

マミ(簡単に言ってくれるわね。此処からだと、直線距離でも五百メートルぐらいはあるわよ)テレパシー

マミ(で? それで勝てるって?)テレパシー

まどか(私の敵じゃない、と言っていました)テレパシー

マミ(それは心強い)テレパシー

マミ(……つまり、私達は彼をどうにか××港まで連れて行かないといけないと)テレパシー

マミ(暁美ほむらに従うのは癪だけど……彼の実力を考えると、今回ばかりは仕方ないわね)テレパシー

マミ(それに)テレパシー

まどか(それに?)テレパシー

マミ(初めて出会った時から思っていたんだけど、暁美ほむらは私達魔法少女の扱いがぞんざい過ぎるわ!)テレパシー

マミ(ここは華麗にミッションコンプリートして、ちょっとは私達の凄さを思い知らせてやらないと!)テレパシー

まどか「……」

まどか(マミさんが日に日に小物化している気がする……)

恭介「ねぇ。さっきから棒立ちしているけど、もう話を進めてもいいかな?」

まどか「……うん」

まどか「念のためもう一度訊くけど……」

まどか「大人しく、病院に戻ってくれるつもりは?」

恭介「ない」

まどか「……なら、戦って従わせるしかないよね」

まどか「本当はこんな事したくないけど……でも、上条くんのためだから!」

恭介「鹿目さんはさぁ……」

恭介「僕の事、嘗めているのかい?」

まどか「え……?」



恭介「戦って従わせる、こんな事はしたくない」

恭介「それって、勝てるつもりだから言える事だよね?」

恭介「鹿目さん達がどんな力を持っているかは知れないけど……」

恭介「今の僕を甘く見ないでほしいな」ゴオォォォォォォォ・・・・・・!

まどか「!?」

まどか(な、なに……? 凄い威圧感が……!)

マミ「予想していたけど、どうやら全然本気を出していなかったみたいね」

マミ「鹿目さん、手加減しちゃ駄目よ」

マミ「彼は――――私達が今まで戦ってきた、どんな魔女よりも格段に強い」

マミ「怪我は治癒魔法でどうにか出来るから、本気で挑まないと……」

マミ「勝てないわよ」

まどか「は、はい!」

まどか(で、でもやっぱり大怪我をさせちゃ不味いだろうから、矢の威力は低めに――――)

恭介「おいおい鹿目さん。先輩に手加減するなって言った傍からかい?」

まどか「?!(え……き、気付かれ……)」

恭介「ダメだよ、油断していると」



恭介「ほら、こんな風に フッ



まどか「え……(上条くんの姿が消え……)」

マミ「か、鹿目さん!? うし――――」

恭介「僕を見失ってしまうよ?」

まどか「ぐっ!?(う、後ろから殴られ――――)」

まどか「きゃああああああああああっ!?」

マミ「鹿目さんが殴り飛ばされた!? 何メートルも飛んで……」

恭介「おっと、すまない」

恭介「あまりにも弱すぎて、加減したのに意味がなかったみたいだね」

マミ「こ、この!」

――――パパパパパパパパパパンッ!!

恭介「遅い」

マミ(なっ……し、至近距離で銃を10丁も生み出して撃ったのに)

マミ(全弾回避された!?)

――――ヒュン!

恭介「おっと?」

マミ(桃色の矢が飛んできた……鹿目さん、無事みたいね)

マミ(でも、ああ、やはり躱された!)



恭介「いやぁ、今のは危なかった。死角からの攻撃は気配を察しないといけないけど」

恭介「攻撃が弱過ぎると、察すべき気配すら弱いからね。はっはっはっ」

マミ「ぐっ……何処までもおちょくって……!」

マミ(でも、その実力が圧倒的なのは間違いない)

マミ(魔法少女でも視認できないほどのスピード)

マミ(魔法少女を容易く吹き飛ばすほどのパワー)

マミ(特殊な力を使っている様子はない。シンプルに、純粋に強い。強過ぎる)

マミ(一体何があればこんな力を持てるのよ! こっちは奇跡の対価として与えられた力なのに!)

マミ(だけど全ての攻撃を回避しているって事は……)

マミ「だったらこれは!」

恭介「ん? これはリボン?」

恭介「また拘束かい? 無駄な事が好きだねぇ」

マミ「鹿目さん!」

恭介「おいおい、さっき攻撃したばかりなのに、そう連射は……!?」

まどか「お生憎さま、私の弓は魔法だから……」

まどか「普通の弓とは性能が違うの!」バシュッ!

恭介「! 桃色の矢が五本同時に……」

恭介「ちっ!」

――――ボンッ! ボボボンッ! ボンッ!

マミ「良し、直撃!」

マミ(今まで回避行動を取っていたという事は、防御には自信がないという事!)

マミ(多少怪我をさせてしまっても、回復魔法で治療出来る)

マミ(ちょっと強引だけど、これが一番彼の負担にならない選択の筈――――)

恭介「……なんちゃって」

マミ「なっ!?(無傷!?)」



恭介「大方、回避に専念しているから防御が手薄って思ったんだろうけど」

恭介「これだけ強大なパワーを、軟弱な肉体で制御できると思っていたのかい?」

恭介「この程度のパワーじゃ、傷一つ付けられないよっ!」バツッ!

マミ(くっ、リボンが破られ――――)

恭介「だから」ヒュッ

マミ「うあっ!?」

まどか「マミさ――――(キックで吹き飛ばされ)」

恭介「遅いんだってば」ヒュンッ

まどか「うっ!?(い、何時の間にか接近され……!)」

――――ドオオオンッ……

恭介「……ああ、やり過ぎちゃったかなぁ」

恭介「二人を叩きつけたビルの壁が崩れてる……死んでないといいけど」

恭介「でもまぁ、人に銃とか矢を撃ってきたし、正当防衛って事で」

恭介「悪く思わないでほしい――――ん?」

まどか「……はぁ、はぁ……!」

マミ「う、く……!」

恭介「……へぇ、予想していたよりも凄いじゃないか」

恭介「てっきり立てないぐらいのダメージは与えたと思っていたんだけどなぁ」

恭介「それにここまでコテンパンにやられて、まだ立つ気力があるなんてね」

まどか「あなたほどじゃないけど、私達も丈夫さには自信があるの」

マミ「それにね……こちらは”個人的な理由”で、フルパワーで戦うのは難しいの」

マミ「今のが私達の全力だと思わないで欲しいわ」

恭介「ふーん……言い訳にしたって、もう少しマシなのは出来なかったのかな?」

マミ「なら、今ここで証明しようかしら」

マミ(さて、どうしたものかしらね)

マミ(”全力”を出していないのは本当。負け惜しみじゃない)

マミ(だけど全力で魔力を使えば、ソウルジェムが大きく濁ってしまう)

マミ(私が予備で持っているグリーフシードの数は一個)

マミ(ソウルジェムが濁りきってしまうと、魔法少女として再起不能になる)

マミ(確かキュゥべえはそんな感じの事を言ってたし……)

マミ(どうにかして避けたいのが本音)

マミ(でも……)



まどか(マミさん)テレパシー

マミ(鹿目さん……)テレパシー

まどか(全力、出しましょう)テレパシー

まどか(ここでソウルジェムが濁りきって、魔法少女として再起不能になったとしても……)テレパシー

まどか(それで上条くんが助けられるのなら、構いません)テレパシー

マミ(……そうね)テレパシー

マミ(力を出し惜しみして人を助けられなかったなんて、正義の魔法少女の名折れよね)テレパシー

マミ(分かったわ。幸い、グリーフシードの予備が一つだけある)テレパシー

マミ(全力全開、一気にソウルジェムが真っ黒になるぐらい)テレパシー

マミ「本気を出すわよ!」

まどか「はい!」

恭介「おいおい、あまり調子に乗り過ぎないでほしい――――」

マミ「それは、こっちの台詞!」ドンッ!

恭介「!(先輩が地面を叩いた瞬間、大量のリボンが地面から……さっきまでの比じゃない数、何百本あるんだ!?)」

恭介(成程、本気じゃないって言葉は嘘じゃなかったという訳か!)

恭介(けど、どうやら無茶をしているのも間違いない! 動きが単純だ!)

恭介「なまっちょろい! この程度で僕を捉えきれると思うな!」

マミ(なっ……展開したリボンの隙間を残像が見えるほどの速さで潜り抜けてる!?)

マミ(まさかここまで機動力に長けているなんて!)

まどか「なら、弓矢とのコラボはどうかな!?」バシュッ!

恭介「っ!?(視界を埋め尽くすほどの矢だって!? 鹿目さんもこれほどの力を隠していたのか!)」

恭介(リボンと矢の同時攻撃を避けきるのは、流石に無理か!)

恭介(いや、そもそもあの矢……こっちに吸い寄せられるように来てないか?)

恭介「追尾式かよ!? ――――くっ!」バチッ

まどか(やった! 命中……!?)



恭介「全くっ」バチッ

恭介「こんな」バチッ

恭介「小細工でっ!」バチンッ!

まどか(ち、違う! 命中したんじゃない!)

まどか(マミさんの展開したリボンを盾代わりにして、攻撃を防いでいる!)

まどか(なんて動体視力と判断能力なの……!)

まどか「だったらこれはどう!?」バシュンッ!

恭介「空に向けて矢を……?! そういう事か!」

恭介「やはり、打ち上げられた矢がこっちに飛んでくる!」

まどか「水平方向では防がれても、上からの隙間ない一斉掃射には逃げ場なんてない!」

まどか「これは避けられないよ!」

恭介「ふんっ! いくら隙間が無くても……」

恭介「こんな軟弱な攻撃は――――通じない!」

まどか(うっ……矢を直に受けても平然としている!)

まどか(だけど、撃ち続けるしかない!)バシュバシュバシュ!

恭介「通じない通じない通じない!」

恭介「この程度でどうにか出来ると思うなああああああああああっ!」

まどか(やっぱり私の攻撃力じゃダメージを与えられない……)

まどか「でも! 足は止まった!」

まどか「マミさん!」

マミ「ええ!」

マミ「こっちはもう十分に、魔力をチャージ出来たわ!」



恭介(何……?)

恭介(なんだ? あの巨大な銃……いや、大砲!?)

恭介(全長十メートルはあるぞ!? デカ過ぎるだろオイっ!?)

マミ「気付いてなかったのかしら? リボンによる攻撃が単調である事に」

マミ「もしくは気付いても、こう思っていた? コントロールしきれていないって」

マミ「残念はずれ。正解は――――魔力をこの銃に注ぐのに集中していたから」

マミ「お陰でソウルジェムが殆ど真っ黒になってしまったけど……」

マミ「その分、強力な一撃よ?」

恭介「しまっ……!」

マミ「久しぶりに決めるわよ! 最大火力の……」



マミ「ティロ・フィナーレ!」



まどか(よし! 上条くんは今、攻撃の真っただ中にいて自由に動けない!)

まどか(そして今放ったティロ・フィナーレは拡散型……広範囲に魔力を散らしている!)

まどか(これは絶対に避けられ――――)



恭介「……ふふ」



まどか(え? 今、上条くん笑って……)

恭介「逃げ場ならあるんだよ――――上にねっ!」

――――バゴンッ!!!

まどか「う、嘘!?」

まどか「上条くんが、空を飛んだ!?」

まどか(ち、違う! 飛んだんじゃなくて……跳んだんだ!)

まどか(地面にクレーターみたいな穴が出来るぐらい強力な脚力で、私の放った弓を全て吹き飛ばすぐらいの衝撃と共に!)

まどか(滅茶苦茶だよこんなの!)

まどか(ああ……ティロ・フィナーレは私の矢と違って、撃った後のコントロールは利かない……)

まどか(上条くんがもう居ない場所を通って……)

まどか(……外れた……!!)



恭介「ふ、ふはは、ふはははははははははははははははははははっ!」

恭介「甘い甘い甘い甘い甘い甘いっ! この程度で僕の動きを封じたつもりか!」

恭介「もう僕は昔の僕じゃない! 怪我でろくに歩けなかった、あの貧弱な僕じゃない!」

恭介「お前達如きに負ける事はないんだっ!! 誰にも、僕は負けないんだ!」

恭介「ふっははははは、あーはっはははははははははははは!!」

まどか「そんな……こんなのって……!」

マミ「……随分、高くまで跳んだわね」

恭介「――――?」

まどか「マミ、さん……?」

マミ「鹿目さんの放った矢を吹き飛ばすにはそれだけのパワーが必要だったという事なんでしょうけど」

マミ「何とかと煙は高いところが好きって、よく言ったものだわ」

恭介(……なんだ?)

恭介(負け惜しみ、じゃない……先輩の浮かべているあの笑みは、ハッタリでも狂った訳でもない……)

恭介(勝利を確信した、笑み……?)

マミ「……確かにあなたの身体能力は高いわ。私達ではとても敵わないぐらい」

マミ「避けられてしまう事は想定済みよ」

――――ボコッ

まどか「え……?(道路が盛り上がって……)」

恭介(おい、まさか――――)

マミ「だから――――保険を用意しておいたの」

マミ「地中に、ね」

恭介(なっ……ど、道路からさっきの大砲が!? 一体何時の間に――――)



            ―――― マミ「それは、こっちの台詞!」ドンッ! ――――


      ――――恭介「!(先輩が地面を叩いた瞬間、大量のリボンが地面から…… ――――



恭介(あの時か!? あの時に、こうなる事を予見して……!?)

マミ「あなたの肉体は強力。攻撃を当てるのも一苦労だわ」

マミ「でも、あなたは空を飛べる訳じゃない。今の状態もただジャンプして、ただ落ちているだけ。」

マミ「さて……空中にいるあなたは、どうやって私の一撃をかわすのかしら?」

恭介「お、い……オイオイオイオイオイ……!?」

マミ「さあ、覚悟しなさい!」

マミ「本日二度目、最大最強の――――」







マミ「ティロ・フィナーレ!!!」







まどか(撃たれた……さっきより魔力が大きい!)

まどか(しかもあれは魔力一点集中型……さっきの拡散型と同じ量の魔力を使いながらも、攻撃範囲が狭いから当てにくく……)

まどか(だけど威力は、何十倍にもなっている一撃!)

恭介「う、ごあああああああああああああああああああああっ!!!?」

まどか「やった! 当たった……!」

恭介「こ、の……クソアマがあああああああああああああああああああああああああっ!!!」

まどか(!? そ、そんな……)

まどか(あの一撃を受けて平然としてる!?)

まどか(威力が凄いから、上条くんは何百メートルも彼方に吹き飛ばされたけど……)

まどか(で、でも、ティロ・フィナーレを受けて平然としているのなら、落下でもダメージを受けるとは考え辛い)

まどか「ま、マミさん、どうしよう! あれでも上条くん、全然平気で……」

マミ「落ち着いて鹿目さん……くっ……!」

まどか「!? ま、マミさん!?」

マミ「大丈夫……ちょっと、力を使い過ぎただけ……とっておいたグリーフシードで回復するわ」

マミ「鹿目さんも、ソウルジェムを貸して。今のうちに回復させるわよ」

まどか「は、はい……でも、あの、これからどうすれば……」

マミ「……鹿目さん。だから落ち着いて」

マミ「私達の目的はなんだったかしら?」

まどか「それは、上条くんを連れ戻す事で……」

マミ「ほら、忘れてる」

マミ「そんなんじゃ、まだまだ魔法少女としては半人前よ?」

まどか「え? えーっと……」

まどか「あっ!?」

マミ「そうよ。私達の目的は……」



―― ??? ――


恭介「ぐっ……直撃を受けたかっ」

恭介(さっきの一撃は危なかった……咄嗟に両腕でガードしなければ、ノーダメージとはいかなかっただろう)

恭介(だけど、あれが最強最大の一撃だと分かったのは収穫だ)

恭介(やはり彼女達では僕を倒せない!)

恭介(それに同じ手はもう食らわない! 着地次第、すぐにケリを着けてやる!)

恭介「ふっ――――とっ、とっ……ふぅ」

恭介「って、おいおい。一体何百メートル飛ばされたんだ……あの二人とかなり離れちゃったよ」

恭介「そもそも、えーっと、此処は……」

恭介「コンテナだらけだな。という事は――――」



「××港。私達があなたを待っていた場所です」



恭介「――――君達は、確か……病院で出会った」

恭介「暁美さん、だったかな?」

ほむら「おや、覚えていましたか」

シャル「てっきり忘れられているかと思っていたんだけどね」

恭介「結構強烈な出会いだったからね。流石に忘れはしないよ」

ほむら「出会い云々で言えば、今のも中々刺激的でしたけどね。空から男の子が! って感じでしたし」

恭介「ははっ。確かに」

恭介「……ん?」

シャル「どうした?」

恭介「いや、まぁ、なんだろう……別にそういう決まりはないと思うけど、お約束というか……」

恭介「さやかは居ないのかい?」

ほむシャル「……あー……」

恭介「……何故二人が空を見上げるのかは分からないけど、居ないという事は分かったからもういいよ」

マミ「どうにか、この場所まで”誘導”出来たわね……」

まどか「ほむらちゃん……」

恭介「ふむ。あの二人が此処に来たという事は……僕はここに誘導されたのか」

恭介「そして君も、彼女達と同じく僕を病院に連れ戻そうとしているのかな?」

ほむら「そうですねぇ。それが一応目的ではありますが」

ほむら「しかしまぁ、あなたの目的如何では、見逃すのも吝かではありません」

まどか「えっ!?」



ほむら「正直なところ古傷やらなんやらが原因であなたが死んだとしても、私個人はどうでもいいんです」

ほむら「精々あなたが死ぬとさやかさん悲しむだろうなーっと思うだけ」

ほむら「何しろ、私とあなたは今日出会ったばかりの他人ですからね」

ほむら「さやかさんには申し訳ないですけど、正当な理由があるのなら、私はあなたを見逃してもいいと思っているのです」

まどか「ほ、ほむらちゃん!? 何を言って……」

マミ「そうよ! もし本当に彼の身に何かあったら……!」

シャル「まぁまぁ。二人とも落ち着いて」

マミ「っ!? ま、魔女……!」

まどか「あ、あなたも、やっぱり上条くんの事なんてどうでもいいと……」

シャル「あー、いや、そういう訳じゃないわよ?」

シャル「ほら、見た感じ怪我とかしていないみたいじゃん。手足なんて完治してるっぽいし」

シャル「そっちは納得しないだろうけど、妖精さんが関わってんなら酷い事にはならないだろうしね」

シャル「ほったらかしでも問題がなさそうなら、本人の好きにやらせればいいんじゃないかしら?」

シャル「まぁ、あとでさやかにはたっぷり怒られるでしょうけどね」

まどか「で、でも……」

シャル「それに結局のところ話を聞かない事にはどうするのがいいか分かんないし」

シャル「アイツ曰く、”話してくれないのなら、話すまで追い詰めるか、話した方が得だと思わせればいい”」

シャル「んで、思惑通り……話してくれるみたいね」

恭介「そうだね……戦わずに済むなら、まぁ、話すのは構わない」

恭介「まず、僕がどうしてこんな力を持つに至ったかを話そうか」

ほむら「あなたの力……ああ、まぁ、確かに不思議ですね」

ほむら「空の彼方から吹っ飛んできて、平然と着地する」

ほむら「私達はそれぐらいしか見ていませんけど、あなたが出鱈目な身体能力を持っている事は分かります」

ほむら「そうですね。それについても知りたいですし、是非お願いします」

恭介「……あれは君達が僕の病室から出て、すぐの事だった」

恭介「窓から、怪しい連中が現れたのさ」



シャル「怪しい連中?」

恭介「真っ黒な……クローク? ローブ? まぁ、そんな感じの服装の連中だった」

恭介「奴等は何も言わず僕に近付いて、無理やり外へと連れ出した」

恭介「その際薬を嗅がされたみたいでね。連れ去られた間は意識が途絶えていて、何があったかは分からないけど……」

恭介「ただ、僕はそこで改造手術を受けた」

まどか「か、改造手術!?」

まどか「それって、あの、特撮ものとかでよく出てくるような……?」

恭介「正にその通り。所謂悪の秘密結社が行う、改造人間の作製だ」

恭介「そこでは僕のように改造された怪人が何人もいてね……彼等は脳を弄られ、組織に忠誠を誓わされていた」

恭介「脳の改造を施される前に脱出出来たから良かったものの」

恭介「下手をすれば、僕もその秘密結社の一員となっていただろうね」

マミ「なんて事……人間を改造するなんて……!」

まどか「ひ、酷いよ、そんなの……!」

シャル「安定のザル警備、とか言っちゃ駄目なのかしら」

ほむら「そもそも脳の改造手術は真っ先にすべきですよね」

恭介「……鹿目さん達と暁美さん達の温度差が凄まじいけど、置いておくとして」



恭介「で、僕は手に入れた力を使いこうして逃げ延びた、という訳さ」

まどか「そんな事があったの……」

マミ「成程……あなたが病院に戻らないのは、その秘密結社の手が周りの人に及ぶのを避けるため」

マミ「そんな事情があったのに、無理やり連れ戻そうとしていたなんて……」

マミ「ごめんなさい、私……」

ほむら「ちなみにその秘密結社はどうなりました?」

恭介「脱出の際思いっきり基地を破壊してやったからね」

恭介「科学者連中は瓦礫の下敷で、残ったのは運の良かった数体の怪人ぐらいじゃないかな?」

恭介「その数体も、なんやかんや襲いかかってきたから全部倒しちゃった気がするし」

まどマミ「え?」

ほむら「ま、そんな事だと思っていました」

ほむら「妖精さんが関与した事案です。長続きする訳ありませんからね」

ほむら「予想通り、既に秘密結社は壊滅していましたか」

まどか「いや、あの、意味がよく分からないのだけど……」

まどか「そもそも妖精は何処にも関与していないような……」

ほむら「その確信を得るために、一つ、質問させてください」

ほむら「上条さん。あなた、あの病室で私が落とした錠剤を飲みましたね?」

恭介「錠剤? ……ああ、飲んだね。君が落とした物かは分からないけど」

恭介「あの時は色々と自暴自棄だった。正直、死にたかったんだ」

恭介「だからあの訳の分からない薬を飲んだら死ねるかと思って、ま、勢いで飲んでしまったよ」

恭介「君の薬だったのなら、申し訳ない事をしたね」

ほむら「いえ、それは別にいいんですけどね」

ほむら「とりあえず妖精さんの仕業で確定っと」

シャル「確定ね」

まどか「なんで!?」

ほむら「考えたら負けです。妖精さんだもの」

シャル「んで? 改造された経緯は納得がいくとして」

まどか「どこが!?」

シャル「細かい事は気にしない方がいいわ。妖精さんだもん」



シャル「それより、じゃあアンタはなんで病院に戻ろうとしないの?」

シャル「秘密組織は壊滅。怪人も残るは僅かな残党、もしくは殲滅済み。手足の怪我は完治」

シャル「そして鹿目さん達と戦った事から、アンタは知人の身を案じているようにも思えない」

シャル「アンタはどんな目的で行動しているの?」

まどか(! た、確かに……)

まどか(組織が壊滅した以上、身の回りの人を守る必要はない筈)

まどか(なら、一体……)

恭介「……僕がなんで入院していたのかは、知っているかい?」

ほむら「? いいえ。さやかさんからも聞いていませんし……」

ほむら「鹿目さんはどうですか?」

まどか「え? えーっと、確か交通事故って……」

恭介「そう。交通事故」

恭介「あの事故によって僕は指が動かなくなった。バイオリンを弾けなくなった」

恭介「もし、あの秘密結社に攫われなければ、僕の怪我は決して治らなかっただろう」

恭介「つまりアイツは……僕を轢いたあの運転手は、僕からバイオリンを奪ったも同然なんだ……!」

ほむら「……成程。大体の事情は分かりました」

ほむら「あなたの目的は復讐ですね。その運転手に対する」



恭介「ああ、そうだ! アイツに復讐するのが、僕の目的さ!」

マミ「なんて事……!」

ほむら「実にお約束な目的でしたねぇ」

ほむら「しかし誰に復讐すべきか分かっているという事は、少なくともその運転手は逮捕されているのでは?」

恭介「……そうだね。確かに逮捕されたよ」

ほむら「なら、その方への罰は法律と裁判によって定められるべきです」

ほむら「あなたの怒りはご尤もだとは思いますが……」

恭介「いいや、納得出来ない! アイツの手を、この僕みたいに動けなくしてやらなきゃ気が済まない!」

恭介「僕を轢くような運転をしたあの手を、捩じ切ってやる……ギリギリギリギリ捩じって引き千切ってやる……!!」

シャル「……アイツ、本当に脳の改造をされてないのかしら? まるっきりバーサーカーよ?」

まどか「わ、分かんない……上条くん、あんな事言う人じゃ……」

ほむら「古今東西、復讐は人を狂わせるものですよ」

まどか「そんな……」

ほむら「さて、理由は聞き出せました。その上で私の意見を言わせていただくなら」

ほむら「実に、つまらない」

恭介「……何?」

ほむら「つまらない。ああ、つまらない」

ほむら「折角手に入れた妖精さんパワーを復讐に使う? あなたは何も分かっていませんね」

ほむら「彼等の力は世界を楽しくする力です。面白おかしく使う以外には全く役立たない……最高の力です」

ほむら「あなたの方法じゃ妖精さんは活かせない。あなたは上っ面の力で満足しているだけです」

ほむら「だから、私が妖精さんの力の本質を、ほんの少しだけあなたの身体に刻み付けてあげます」

ほむら「まぁ……そのほんの少しすら、あなたには耐えられないでしょうけどね」

まどか「ほ、ほむらちゃん……?」

まどか(ほむらちゃん、なんか、凄く怖い……!)

まどか(あの歪な笑顔……何を考えているの……?)

マミ(妖精の力の本質……一体、上条くんに何をする気……!?)

シャル(つーか、今の台詞と不気味な笑みを見ていると)

シャル(上条とほむらのどっちが悪者か分かんないわね、これ)



恭介「……いいだろう。妖精というのが何なのかは分からないけど」

恭介「僕が得た力の前に屈するのは君の方だと言わせてもら」

ほむら「妖精さんアイテム『遥か彼方へボール』~♪」

恭介「え、ちょ、口上ぐらいは言わせ」

――――ズギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンッ!

恭介「うおおうっ!?」

恭介(な、なんだ今のは……ボールが凄まじい速さで飛んでいったのか!?)

恭介(暁美さんの蹴る動作で嫌な予感がして身体を逸らしたから躱せたけど……)

恭介(ボール自体は全く見えなかったぞ!?)

ほむら「このボールは軽く蹴るだけで亜光速まで加速し、大気圏を突破して遥か彼方へと飛んでいきます」

ほむら「昔、サッカーで男の子をぎゃふんと言わせたいと妖精さんに頼んだところ作ってくれたアイテムです」

ほむら「……ネットが破けるどころか余波でゴールポストが塵になりましたので、お蔵入りにしましたけどね」

恭介「あのー、亜光速って当たったら死ぬんじゃ……」

ほむら「死ぬでしょうねー、いくらあなたが頑丈でも」

恭介「ちょ」

シャル「……それで?」

シャル「ボール、彼方に飛んで行っちゃったけど、どうすんの?」

ほむら「そんな時のための『死が二人を別つまで』」

ほむら「『遥か彼方へボール』には既にこのイヤリングの片方をぷすっと刺しておきました」

ほむら「これも名前の通り――――死ぬまで、イヤリングを付けた相手と離れられなくなるアイテムです」

ほむら「で、予め対戦相手を上条さんに設定しておいた『一人用バッターさん』の耳に着けてあげて……」

ほむら「はい! 離れて!」

シャル「お、おう」

―――――……ゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!

恭介「ひゃあっ!?(は、背後からボールが!?)」

恭介(そ、そしてボールがバットを持った人形の元に向って)

―――――カッキーン!

恭介(あ、打った)

恭介「そんでもってあの人形が打ったボールが飛んできひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」



まどか「か、上条くん、打たれたボールは躱したみたいだけど……」



恭介「ふぁっ!?」ギューン
恭介「ふぃっ!?」カキーン
恭介「ふぅっ!?」ギューン
恭介「ふぇっ!?」カキーン
恭介「ふぉっ!?」ギューン



まどか「……打たれたボールが亜光速で飛んでいって、」

まどか「飛んでいったボールは猛烈なスピードでバッターさんの人形に戻る」

まどか「その軌道の真ん中に立つ上条くんは当然前後から飛んでくるボールを回避しないといけない訳で」

まどか「弾道と弾丸は一つずつなのに、上条くん、戦場の真ん中なのかってぐらいの猛攻を受けてる……のかな?」

ほむら「あとは上条さんが疲労困憊になるまで待つとしましょう」

まどか「……あの攻撃って、当たったら死ぬボールに命中するまで終わらないんじゃ……」

ほむら「実際には命中した後も続きますけどね。二・三発多く撃ちこむのは誤射のうち」

ほむら「それにさっきは当たったら死ぬと言いましたけど、妖精さんアイテムです。当たり所が良くて助かる事になる」

ほむら「……筈」

まどか「今筈って言った? 筈って言ったよね?」

ほむら「何分妖精さんが近くに居ないので、事故が起きないとも限らないんですよねぇ」

ほむら「まぁ、万一が起きても大丈夫ですよ」

ほむら「死者蘇生は妖精さんパワーでも無理ですけど、死んでさえいなければなんとかなりますからね」

ほむら「運悪く頭がぽーんっと吹き飛んでも、心臓が動いている間は生きてる範疇です」

ほむら「『万能時計』で時を止めつつ、家に持ち帰れば治療可能ですよ」

ほむら「……最悪死んでも、記憶を再現した”模造品”なら作れますし、安心安心」

まどか「怖いから!? 色々と怖いからそれ! そして何一つ安心出来ないから!?」

ほむら「個人を確定するものは、魂でも肉体でもなく、その人の考え方である。私はそう思います」

まどか「そういう哲学的な話じゃないよねコレ!?」

マミ「あの、それより……上条くんが……」

まどか「え?」




恭介「はっ!」
恭介「ふっ!」
恭介「ほっ!」



まどか「今も必死に避けてるだけにしか見えませんけど……」

ほむら「……ん? あれは……」

シャル「ああ、成程……これは……」

マミ「……あなた達は気付けたみたいね」

まどか「え?」

マミ「ほら、よく見て」

マミ「上条くん……さっきと違って、声と表情に余裕が戻っているわ」

まどか「え、えっ?」

ほむら「これは……不味いですね……」

ほむら「恐らく上条さんは、バッターさんの動きを見切っています」

まどか「ど、どういう事?」

ほむら「確かにバッターさんは素晴らしいバッターですが、基本的には単純な打ち返ししかしません」

ほむら「そして戻ってくる『遥か彼方へボール』は、イヤリングの効果で最短距離……つまり直線でしか動けない」

ほむら「それら全てを把握したなら、例え光の速度の攻撃でも弾道が読めるという訳です」

ほむら「無論常人にはそんな事が分かったところでどうにも出来ませんが」

ほむら「しかし超人と化した上条さんには、それらを同時に把握する事も可能なのでしょう」

ほむら「どうやら……速いだけの攻撃では、彼を止められないようですね」

恭介「そういう事、だっ!」

まどか「ああっ!? バッターさんが壊され……」

――――ギュウウウウウウウウウウウウウン!

恭介「これで終わり、と」

マミ「背後からのボールも躱された……!」

恭介「さあ、次は僕の番だね」

恭介「生身だから手加減はしてあげるけど――――」

恭介「多少の怪我は許してくれよ?」

まどか(! か、上条くんがこっちにきて――――)

ほむら「シャルロッテさん、『何処までもドア』を開けてください」

シャル「え? ああ、この小箱だっけ?」

シャル「えーっと、開けるとどうなるの?」パカ



――――ズ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

シャル「ちょ、なんか吸い込まれ……」

――――ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

シャル「吸いこ、ま、まままままままっ!?」

シャル「まああああああああああああああああああああああああああああっ!?」シュポンッ

まどか「ああ!? ま、魔女が小箱に吸い込まれ……?!」

マミ「え、何? 何?」

恭介「な、なんか風とかそんなんじゃなくて身体が吸い込まれる……!?」

まどか「というか吸引力強過ぎない!? 身体が浮くんだけど!?」

マミ「きゃあああああああああっ!? きゃ、きゃああああああああああああっ!?」←リボンで身体を固定している

恭介「なんじゃこりゃああああああああああああ!?」

ほむら「『何処までもドア』。開けると物体をなんでもかんでも吸い込み、内部に取り込む小箱」

ほむら「内部は無数のドアがひしめくだけの世界となっています」

ほむら「そしてドアの向こうもまた、同じくドアだけの世界」

ほむら「外から干渉する術はないので、中に吸い込まれた物は永遠に出てこれません」

ほむら「妖精さんも自分達の技術で脱出出来たら面白くないので、そこは徹底してあります」

ほむら「要注意♪」←ちなみにしっかり物陰に退避している

マミ「要注意じゃないわよ! 物騒過ぎるでしょそれ!?」

マミ「というか今魔女吸い込まれたわよ!? 自分の味方も吸い込まれてるんだけど!?」

恭介「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」

まどか「嫌ああああああああああああああ! 死にたくないいいいいいいいいいいいいいいいい!」

ほむら「あ、大丈夫ですよ。中は時間が止まっているので、何があろうと死にませんし、自殺も出来ませんから」

恭介「最悪じゃねえか!?」

マミ「よ、よわーく、よわーく銃を生成して……壊れたら何が起きるか分からないから兎に角よわーくして……」

マミ「発射っ!」パンッ バチンッ!

ほむら「あら、タヌキ先輩が小箱の蓋に攻撃を当てて、閉じてしまいましたか……」

マミ「片付けなさい! すぐに片付けなさい! 今すぐ片付けなさあああああああああああああああいっ!」

ほむら「むぅ。分かりましたよぅ……」

ほむら「実際には過去に戻ってこの出来事を無かった事にすれば救出可能なのに……」

マミ「意味分からないから!?」

恭介「い、今のは本気で死ぬかと思った……」



恭介「で、でもそれが使えない以上、やはり僕の勝機は揺らがない!」

恭介「次こそは君に打撃を与え」

ほむら「『お天気従わせる下駄』~♪」

恭介「まだあるの!?」

ほむら「えー、下駄を履いて」

ほむら「あーした天気になーれ♪」

まどか(? あれって下駄占い?)

まどか(あ、下駄が落ちた……って、なんか踵の部分で立ってるし。ちょっとそれは不自然過ぎる立ち方じゃ)

――――ピシャアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

恭介「あびばばばばばばばーっ!?」

まどか「か、上条くんに落雷がああああああああああああっ!?」

ほむら「いえーい♪ 運よく一発で雷になりましたーっ♪」

マミ「ど、どういう事?」

ほむら「この下駄はお天気を操作してくれるアイテムです」

ほむら「使い方は普通の下駄占いと同じく、履いた奴をぽんっと投げてやるものでして」

ほむら「表向きなら灼熱地獄級の晴れ、裏向きならゲリラ豪雨並の大雨」

ほむら「表が右を向く横向きは首都機能停止レベルの大雪、左を向くと視程一メートル未満の濃霧」

ほむら「そして踵で立てば落雷、つま先部分で立てば竜巻が発生するのです。
    踵とつま先と横向きは妖精さん的オリジナル要素ですね」

ほむら「妖精さんの科学力なら天気を当てるぐらいお茶の子さいさいですけど」

ほむら「必ずお天気を当てるのではなく、出た結果にお天気を従わせる」

ほむら「その方が面白いので、そういう機能を付けたそうですよ」

マミ「て、天候操作……なんて力なの……!」

マミ「というかなんかどれが当たっても災害レベルじゃない!?」

ほむら「だって普通に晴れても面白くないですし……」

マミ「面白いかどうかで災害を起こさないでよ!?」

ほむら「長続きしませんから死人は出ませんよ。それより……」

恭介「けふけふけふ……」

ほむら「上条さんはもう大分へたれた様子」

ほむら「止めのもういっぱーつ♪」

まどか「……あ、下駄が裏返しに落ちた」

――――ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

マミ「……ゲリラ豪雨並の大雨ね」

マミ「私達も巻き込まれるぐらい広範囲に降り注ぐ」



ほむら「まぁ、一応占いですからね……毎度毎度雷は出ませんよ」

まどか「あの、だったら下駄を踵で立たせればいいんじゃ……」

ほむら「そんなの面白くないでしょう」

ほむら「ちゃんと下駄占いをしないと機能しないように出来ているんですから」

まどか「えー……というか、蹴り上げた下駄が踵で止まるって滅多にないような」

ほむら「まぁ、そこはちゃんと占いとしての機能を持たせるべく」

ほむら「確率はきっちり六等分。不思議な止まり方もサイコロよろしく確率通りに出ますので安心を」

まどか(それって竜巻とか灼熱地獄も六分の一の確率で起こるって事じゃ……)

ほむら「そーれもういっぱーつ♪」

まどか(と、兎に角、今度こそ……!)

まどか(やった! 踵で止まった!)

まどか(今度こそ落雷で上条くんを止められ)

――――ピシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

マミ「げろっぱああああああああああああああああっ!?」

まどか「って、マミさんに命中したああああああああああああああああああ!?」

ほむら「雷ですからねぇ……何処に落ちるか分かりませんし」

マミ「」プスプス

まどか「あああ……ま、マミさんが戦闘不能に……」

まどか「ぼ、ぼぼぼ、没収ーっ!」

ほむら「あらららら……」

まどか「つ、次いこ次!」

まどか「上条くんはまだ口から煙を吐いてるし、ここは一気に畳み掛けて」

ほむら「もう無いです」

まどか「……え?」

ほむら「ですから、もう攻撃に使えそうなアイテムは無いんですよ」

ほむら「流石に知恵の輪とお面ではどうにも出来ませんし、ホイッスルは私の身が危険ですし……」

まどか「え、ええええええええええええええええええっ!?」

まどか「どうすんの!? どうすんの本当に!」

まどか「このままじゃ――――」



恭介「このままじゃ上条くんが回復しちゃう、かな?」




まどか「なっ……嘘、もう……?!」

ほむら「流石改造人間。落雷一発程度のダメージは即座に回復しますか」

恭介「いや、まだダメージはかなり残っているさ……でも、君達を倒すには十分だ」

恭介「どうやらあの不思議な力はもう使えないみたいだからね……」

恭介「今度こそ、勝たせてもらうよ」

まどか「くっ……!」

恭介「鹿目さん……無駄な事は止めないか?」

恭介「君の攻撃力じゃ僕には傷一つ付かない。つまり、僕がいくら消耗していても君に僕を倒せる道理はないんだよ」

まどか「それでも、それでも私は……!」

ほむら「はいはーい。隙あらばシリアスを挿もうとしないでくださーい」

まどか「ほ、ほむらちゃん……何時までもふざけてないで……」

ほむら「今ふざけないで何時ふざけるんですか」

ほむら「それに――――今度こそ妖精さんパワーを最大限発揮出来るんですよ」

まどか「え……?」

恭介「何?」

ほむら「妖精さんパワーは何も発明品だけではありません」

ほむら「むしろその神髄は、世界が愉快になる事。お伽噺のように楽しく、漫画のように激しく現実を変えてしまう」

ほむら「つまり、フラグの回収です」

ほむら「道具は使い果たしました。タヌキ先輩は倒れ、シャルロッテさんは小箱に閉じ込められてしまいました」

まどか「あの、それ全部ほむらちゃんの所為じゃ」

ほむら「今や私は一人。そして戦う力は残っていません」

まどか「また無視された!? というか私戦力外扱いなの?!」

ほむら「ですが、それがいい」

ほむら「”さやかさんが何処かに行っている状態で”こうなっているのが良い!」

ほむら「”ピンチの時に颯爽と助っ人が来る”のにこれほどいいタイミングはありません!」

恭介「さっきから一体何を言って――――」


―――― ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ……


恭介「? なんだ、この地鳴りのような……」

恭介「海から聞こえてくる……っ!?」

まどか「何、何なの……!?」

ほむら「うふふ。やはりさやかさん行方不明イベント、そしてあの時聞いた”怪しい爆音”はフラグでしたねぇ」

ほむら「思わせぶりなハッタリを言った途端これ」

ほむら「これです。これでこそ妖精さん。これでこそ――――100fの出来事ですよ」

恭介「どういう事だ!? 100fってなんの事……」

恭介「い、いや!? それよりも、う、海が盛り上がって」

恭介「何か、出る!?」






巨大さやか『ふん、ぬっ、ばああああっ!』






恭介「な、なんだコイツ!? 海から怪獣が現れ――――」

ほむら「どーも、さやかさん」

まどか「さ、さやかちゃんっ!?」

恭介「えええええええええええええええええええええええええええっ!?」

恭介「あれがさやか!? いくらなんでもデカ過ぎないか!?」

恭介「そりゃ面影がないとは言えないけどやっぱりデカいし、色もなんか黒光りしてて正直キモ」

巨大さやか『よっこら』

恭介「あれ、なんでさやかの右手が僕に迫って」

巨大さやか『しょ』

恭介「ぷっちーん!?」ズシンッ!

ほむら「まるで地べたを這いずる虫のように、上陸するため付いたさやかさんの手に運悪く叩き潰されてしまいましたね」

ほむら「というか、さやかさん。なんで海から現れたんですか?」

巨大さやか『好きで海から来たんじゃないから!!』

巨大さやか『ほむらが投げたダーツで吹き飛ばされた後、あたしは空の彼方まで飛んでいき……』

巨大さやか『偶々近くを通りかかった飛行機に、持っていた妖精さんアイテムのトリモチが付着』

巨大さやか『しかもうっかり手にトリモチを着けちゃったばかりに』

巨大さやか『時速1000キロの突風を浴びても飛行機から振り落とされず!』

巨大さやか『寒いわ痛いわ息出来ないわ! 危うく死ぬところだったんだよ!?』

巨大さやか『そんでもって猛風の中で指輪が外れてあたしは巨大化』

巨大さやか『トリモチも流石に支えきれなくて飛行機から剥がれ、そのまま海に落下だよ!』

巨大さやか『高度一キロ近い場所から落ちたよ! 生身だったら死んでたよ!』

ほむら(ああ、あの爆音はさやかさんが海に落ちた音でしたか)

巨大さやか『んでもって泳いでここまで来たんだよ!』バン!

まどか「うひゃあ!?(じ、地面を叩いただけで地震が……!?)」

ほむら「それはまた……面白い経験をしましたね♪」

巨大さやか『お・も・し・ろ・く・ないわーっ!』バンバンバンバンッ!

まどか「さ、さや、かちゃ、地面を叩くと、じ、地震がーっ!?」

ほむら「ちなみに私は妖精さんアイテムがあるので、地震は全然平気ですよー」

まどか「ズルい! もう何もかもがズルい!」



ほむら「それはさておき、一つ質問してもよろしいでしょうか?」

巨大さやか『何!?』

ほむら「トリモチがくっついた方の手って、右手じゃありませんか?」

巨大さやか『あん? ……よく覚えてないけど、それが何?』

ほむら「右手を見れば分かるかと」

巨大さやか『右手って、一体何が……』



恭介「」ピクピク



巨大さやか『きょ、恭介ええええええええええええええええええええええええええっ!?』

ほむら「トリモチが残っていた方の手で叩かれて、上条さんくっついちゃったみたいですね」

ほむら「で、それに気付かず何回も右手を地面に叩きつけてしまった、と」

ほむら「……死んではいないでしょうけど、全身複雑骨折程度で済んでいるといいですねぇ……」

まどか「……あのー……というかこれって、解決したって言うのかな?」

まどか「なんというかシリアスは何処に」

ほむら「考えるな、感じろ!」

まどか「……あともう一つ」

まどか「さやかちゃん登場であっさり解決って事は、私達と上条くんの戦いって」

ほむら「大変だったでしょう。得る物は多かったでしょう。失った物も多かったでしょう」

ほむら「だが無意味です」

まどか「」パタリ

ほむら「あ、鹿目さん倒れちゃった」

巨大さやか『きょおおおおおおおおうすけええええええええええええええええええええええっ!!!?』

ほむら「さやかさーん、いい加減五月蝿いですよー」



――――こうして、上条さん行方不明騒動は幕を閉じました。


病院に連行した時、上条さんは全身複雑骨折+内臓破裂+皮下出血多数という素敵な状態でしたが、そこは改造人間。

たった一晩で全ての怪我から回復し、二・三日後には学校に通える事となりました。

上条さんの怪我を診察した先生は「奇跡や魔法じゃなくて、ジョークを見ているようだった」と言っており、

細胞サンプルが取りたいと言っていました。……第二第三の上条さんが現れない事を祈るばかりです。


まぁ、結果的に上条さんの怪我は治った訳ですので一件落着。

真面目だったり辛気臭かったりもしましたが、最後はそこそこ楽しめました。


――――明日は、どんな楽しい日になるでしょうかね……。




追記

家に帰った後シャルロッテさんを『何処までもドア』から救出したら、マジ泣きしながら叩かれました。
痛かったけど、可愛かったです。









































        ―――― 時は少し遡り、上条恭介が戦闘不能に陥ってから五分後 ――――


               ―――― 見滝原電波塔 先端部分 ――――




赤い髪の少女「……………」

QB「やあ、佐倉杏子。待たせてしまったかい?」

赤い髪の少女(杏子)「おっせーよ。そっちから呼び出したくせに」

QB「すまない。緊急で観測しておかなくちゃいけない事例が発生してね」

QB「お詫びとして、グリーフシードを一つ君に渡そう」

杏子「何? なんでお前がグリーフシードを持って……」

QB「最近死んでしまった魔法少女がいてね。勿体無いから回収しておいたんだ」

杏子「……どういう風の吹き回し? 何を企んでいるのさ?」

QB「別に企んではいないよ。あくまでお詫びさ」

QB「それに、君に頼みたい事があるからね」

QB「僕らに対価の前払いという文化はないけど……君達人間は、それが好ましい事だと思っているんだろう?」

杏子「時と場合と相手と頼む内容による」

QB「そういうものなのか。覚えておこう」

QB「話が逸れたね。本題に移ろう……とは言っても、そう難しい話じゃない」

QB「君にはこの街の魔法少女と協力し、ある魔女とイレギュラーの排除を頼みたい」

杏子「……何?」

QB「この街の魔法少女はここ数日間特定の魔女と戦っているんだけど、未だ撃破には至ってない」

QB「その原因は魔女自身ではなく、魔女と行動を共にしている一人の人間によるものなんだ」

杏子「人間が魔女と行動を? 意味分かんないんだけど」

QB「僕にも詳細は分からない。ただ、その人間は魔女や使い魔を保護するような行動を見せている」

QB「もしかすると、君が放置しておいた魔女も保護してしまうかも知れない」



QB「そうなるとグリーフシードの入手は困難になるだろう。僕にとっても、魔女が倒されないのは都合が悪い」

QB「この街の魔法少女は魔女と使い魔の両方を狩るから、君の方針とは反するだろうけど……」

QB「今回の状況を加味すれば、協力体制を築くのは不可能ではない筈だ」

QB「君がYESと答えてくれれば、僕がこの街の魔法少女との仲介役を担う」

QB「だからこの街の魔法少女二人と協力し、イレギュラーの排除を行ってくれないかな?」

QB「難なら僕からの報酬としてグリーフシードを、そうだね、二つあげようか」

QB「どうかな? 協力してくれないかい?」

杏子「……やけに積極的じゃないか。普段はグリーフシードの回収と勧誘の時ぐらいしか顔を見せない癖に」

杏子「しかもグリーフシードを付ける? 今まで駄目元で頼んでもくれた事なんてないのに」

QB「それだけ今回の事態がイレギュラーであり、解決しなければならない案件という事さ」

杏子「あともう一つ質問だ」

杏子「テメェ――――”あたしの知っている”キュゥべえか?」

QB「……質問の意図がよく分からないのだけど?」

杏子「惚けるな」

杏子「この街にいる二人の魔法少女のうち、少なくとも一人はあたしの知り合いだ」

杏子「そしてそいつはもう三年も魔法少女をやっているベテラン中のベテラン」

杏子「なのにテメェはさっきからこの街の魔法少女としか言わない。巴マミ、という名前を一度も出さない」

杏子「あたしとマミが知り合いだって知っていれば、出さない訳がねぇ」

QB「……ふむ。データ通り、中々の洞察力を持っているようだね」

杏子「何?」

QB「君の予想通りだ。確かに僕個人と君、そして僕とこの街の魔法少女には面識がない」

QB「僕も”キュゥべえ”ではあるけど、君と契約した個体ではないのさ」

QB「実を言えばこの辺りの区画を担当していた”前任者”が訳あって解任されてね」

QB「僕は君達人間の言葉で言えば、最近になって配属された新人なんだよ」



杏子「なんで今まで黙っていた?」

QB「……別に、言っても言わなくても問題はないと思ったからね」

QB「君達魔法少女の情報の引き継ぎは行えたし、人間に対する学習も済ませている」

QB「日常のコミュニケーションに多少の齟齬が生じる事は否定出来ないけど……」

QB「君達のフォローは今までどおりに行えるのだから、僕が以前と同じキュゥべえかどうかなんて些末な問題だろう?」

杏子「……………」

杏子「やっぱりテメェは信用出来ないな。手を組むのはなしだ。グリーフシードも、今はいらない」

QB「そうかい。それは残念だね」

杏子「だけど」

杏子「そいつがあたしの縄張りに入るのは、ちょいとウザいねぇ」

QB「……ま、僕は基本的に魔法少女の活動には関与しないからね。好きにすればいいよ」

杏子「ふふん。マミは甘っちょろいからね……この街では好き勝手出来ているかもだけど」

杏子「もしあたしの縄張りでも同じ事をしようとしたらどうなるか」





杏子「かるーくぶっ潰して、思い知らせてやらないとね?」






今日はここまで!

魔法少女VS上条のシーンがシリアス風味なのは、現在妖精さん密度が著しく低下気味のため。
上条の目的がダークな感じなのも、f値が高いだけで妖精さんが居ないから(仮面ライダー状態)。
QBがほむら達の排除にやや真剣に乗り出したのも妖精さん密度の低下が原因。

全ては、ほむらと仲良しの妖精さんがある場所に総出で出掛けているがための出来事なのです。
ほむらは妖精さんが少ないこの状況で無事ハッピーエンドを迎えられるのか!?

たった15人で飽和点であるFになるとか、そもそもfはその場の妖精さん密度じゃなくて
近隣で一番妖精さんと親しい人が一日に出会う人数って事は言っちゃダメよ?


それにしても、恭介くんちょっと凶悪に書きすぎたかな……筆が乗るとキャラの口が悪くなるのは自分だけでしょうか?
まぁ、改造されてちょっとハイになっていたって事で一つ。
あと、マミさんが少しでもかっこよく書けていたら幸い。


さて、かしこかわいい杏子ちゃんがついに次回より参戦!

……ぶっ潰されるのは誰なんでしょうねぇ……(遠い目


新参が妖精さんに弄ばれるのはこのSSではテンプレ展開。
次回の顛末が分かる一言を残しつつ、逃げるんだよォ―――――――!!

それにしても、杏子が翻弄された際のリアクションが凄く楽しみだ
でも弄りすぎると泣きそう

この世界のほむらはまどかに思い入れ無さそうだし

どっちかて言うとジークブリーカーじゃない(お笑い狙いで)

妖精メガほむはさやかくらいしか関わってないし友情までだろう
妖精さんが紛れ込んだ世界のほむらその後とかおまけであったら
面白カオスな事態の果てにまどっちと朝チュンするかもしれないけど

衰退さやか最強



待たせたな……
という感じに参上しました、私です!
今回と次回は何時もに増して暴走する予定なので、覚悟して読めよ!



>>481
泣くだけの余裕があればいいなァ!

>>490
まどか「ほむらちゃん!愛し」 ほむら「死ねぇ!」 まどか「ぎゃあっ」
こうですね、分かりました(ぇ

>>491
おまけ……ふむ

>>495
実際最強です。ワルプルさんもグーで勝てます。本編ならこれでハッピー確定。
まぁ、それだと面白味がないのでゴニョゴニョしますがね……(黒い笑み



ではではすたーとです?



えぴそーど じゅーに 【ほむらさんの、ひがえりけっかいめぐりのたび】



―― PM12:30  見滝原中学校 二年生教室 ――




ほむら「なんやかんや、私達って全然魔女さんと会ってないと思いませんか?」




さやか「……え?」

シャル「はい?」

ほむら「ですから、シャルロッテさん以外の魔女さんと会ってないと言ったんです」

ほむら「確か当初は色々な魔女さんと出会い、そして絶望から救い出す事が目的だった筈」

ほむら「なのに私達はこの一週間近い間、ずっと遊んでいたではありませんか!」

さやか「……あー、まぁ、そういやそうだけど……」

シャル「大体アンタの所為じゃない? 地底探検にしろお悩み相談にしろ上条行方不明騒動にしろ」

シャル「そーいや上条の奴はまだ休みなのね」

さやか「うん。でもまぁ、色々あったけど元気になったみたいだし」

さやか「今週中にはまた登校出来るみたい」



さやか「……えへへ。また一緒に学校に来れる……♪」

シャル「おや? 恋する乙女の笑いですかな今のはぁ?」

さやか「あ、分かる?」

シャル「うわ、コイツもう隠そうともしないわ……面白くない」

さやか「面白くなくて結構。アイツを好きだって言える事を、あたしは誇りに思うね」

シャル「うわぁ、駄目。口の中が甘ったるくなってきた……口直しにほむらのお弁当のおかず、一つ貰うわね」

ほむら「ちょ、私の唐揚げ取らないでくださいよ!?」

ほむら「というかシャルロッテさんのお弁当はちゃんと作ってあげたじゃないですか! そっちを食べてくださいっ!」

シャル「それはもう食べちゃった。アンタ達がお昼前の授業に勤しんでいる間に」

シャル「でもほむらのお弁当って美味しいからあれだけじゃ足りないのよねぇ……卵焼きもいただきっと」

ほむら「あーっ!?」

さやか「つーか、シャルちゃんなんで学校に来てんの?」

さやか「魔女たる私は授業なんか受けないって言ってたくせに」

シャル「そ、それは……ほら、あれよ、その……」

シャル「一人で留守番とか退屈だし、魔法少女に襲われないとも限らないし」

シャル「だから、昼休みとかはアンタ達と一緒に過ごそうってだけ。それだけよ……うん」

さやか「ほほーう?」

ほむら「もー、本題から逸れてますよ! あとシャルロッテさんはこれ以上私のお弁当を盗らないでください!」

シャル「つーん」

さやか「ああ、悪い悪い」

さやか「で、まぁ、あれだ。つまりこの前みたいに今日は放課後魔女の結界探しをするって事?」

ほむら「……ええ。お二人とも、特にご予定がないのなら一緒にどうでしょう?」

シャル「私に予定なんてある訳ないでしょ。そもそも私が居ないとアンタ達に結界の探知は出来ないでしょーが」

さやか「あたしも今日は特に予定なし。恭介のお見舞いも必要なくなったし」

ほむら「では、放課後は早速魔女さん捜索と行きましょう」

ほむさや「おーっ♪」

シャル「ブロッコリーいただき」

ほむら「あーっ?!」

さやか「……流石にもう勘弁してやれよ」

\ワイワイキャッキャ/



まどか「……………」




まどか(魔女が普通に学校に来ている……)

まどか(クラスのみんなと打ち解けているのは……まぁ、もうこの際どうでもいいとして……)

まどか(暴れる訳でもなく、かと言ってほむらちゃんに従属している風でもない)

まどか(対等に、普通のお喋りを楽しんでいる感じ……)

まどか(それこそ、友達みたい)

まどか(……キュゥべえは、魔女は呪いを振りまく存在だって言ってた。人の危害を加える、悪い奴だって)

まどか(でも、あの魔女は……もう悪者には、見えない)

まどか(今までも、彼女は私達と戦おうとしていない。むしろ私達を助けてくれる事もあった)

まどか(上条くんだって助けてくれた。ほむらちゃんと私達の間を取り持つ事もあった)

まどか(あれは全部演技なの? それとも本当は、魔女と人間は分かり合える関係だったの?)

まどか(もしかして――――)



            ――― どうせ二人とも××になるんだから ―――――



まどか「――――っ!」

仁美「あら? ……ま、まどかさん?!」

仁美「どうしたんですの? 顔が真っ青に……」

まどか「仁美、ちゃん……あの、ちょっと体調が悪くて……吐き気がしただけで……」

仁美「大変! 保健室に行きましょう。わたくしが肩を貸しますから」

まどか「へ、平気だよ……大丈夫……自分で行けるから……」

仁美「ですが……」

まどか「このぐらいなら、ちょっと横になれば平気……うん、平気」

まどか「保健室ぐらいなら一人で行ける」

まどか「それより仁美ちゃんは、さやかちゃん達のとこに行きなよ。あっち、かなり盛り上がってるよ」

仁美「……いえ、やはり一緒に」

まどか「大丈夫だから!」

仁美「っ!?」

まどか「あ……ご、ごめん……あの……」

仁美「……すみません。何度もしつこく言ってしまい……」

まどか「ち、ちが……そうじゃなくて……」

仁美「あの、わたくし……あちらに行きますわね……その、お大事に……」

まどか「あ……」

まどか「……」

まどか「保健室、行って……寝よう……」

まどか「……一人、で……」



              ―― 時は流れて、放課後 ――

               ―― 見滝原 路地裏 ――



ほむら「はい! そんな訳でやってきました路地裏!」

さやか「はい! そんな訳でやってきたぜ路地裏!」

シャル「やってきちゃったわねぇ、路地裏」

ほむら「もー、シャルロッテさんったらテンション低いですよ?」

ほむら「もっと明るく楽しくやっていきましょうよー」

シャル「魔女の結界って、そんな楽しげハイテンションで行くもんじゃないんだけど」

さやか「どの道楽しくなる以外の展開はないだろうから、そこそこ上げといた方がいいとあたしは思うけど」

シャル「……うん、まぁ、うん。そうね。今更だったわね」

ほむら「さやかさんの言うとおりですよー」

ほむら「さて、昨日は妖精さんアイテムが少なくてちょっと苦戦を強いられました」

さやシャル(お前は何一つ苦労してないだろ……)

ほむら「という訳で、今回は妖精さんアイテムがすぐに使えるよう準備として……」

ほむら「こちらの『つながり袋』で、我が家にあります妖精さんアイテムの保管庫と次元連結」

ほむら「無尽蔵に妖精さんアイテムを使えるようにしてあります」

ほむら「ま、妖精さんがいる時点で杞憂だとは思いますが、念のためって事で」

さやか「ほむらってばちょー頼もしい」

シャル「本当に頼もしいわねぇ……巻き込まれなければ、だけど」

ほむら「まぁ、肝心な時に限って役立たないと思いますけどね」

さやか「へ?」

ほむら「こちらの話です。その時が来たらお話しますよ」

シャル「……そろそろ本題にいこうかしら」

シャル「あちらにある不思議な歪みが見えるかしら?」



ほむら「見えますね。なんか水あめでも流したみたいにぐにゃぐにゃしてます」

さやか「あるって言われてから凝視して、ようやく見える薄さだけどね」

シャル「あれが魔女の結界よ。魔法少女の素質があっても、見え方としては大体そんなものね」

シャル「本来はソウルジェムで探知するから、ハッキリ見えなくても問題はないんだけど」

シャル「で、どうなの? 早速突入しちゃう?」

ほむら「しちゃいましょー」テクテク

さやか「そしてなんの躊躇いなく突入するほむらであった」

シャル「アンタ、誰に言ってんの?」


――――グニャアアアアア……


ほむら「おお、景色が変わりました。これは……薔薇、でしょうか?」

シャル「薔薇好きの魔女の結界かもね。だとしても、ちょっと多過ぎる気もするけど」

さやか「だねー。かなり歩き辛い」

さやか「ん?」

ほむら「おや、薔薇の隙間から髭を生やした奇抜な原住民さんが……」

シャル「この結界の魔女の使い魔ね」

アントニーA「ヤー! サー! ヤー!」

アントニーB「ヤー!」

ほむら「なんか薔薇の肥料にしてやるからお前ら殺すって言ってますね」

さやか「お、久々に活躍したね。翻訳眼鏡」

シャル「……鋏をシャキシャキ鳴らしながら接近中のバケモノを前に、滅茶苦茶冷静よね。私達」

さやか「地底の魔王とか空間崩壊に比べりゃ温い温い」



ほむら「さてと。では、妖精さんかもーん」

妖精さんA「はいほー」
妖精さんB「おっはー」
妖精さんC「よびりーん」

さやか「お約束のように、ほむらの耳から妖精さんが出てきたね」

シャル「今日はちゃんと連れてきたのね」

ほむら「ええ。作業からあぶれて退屈していた妖精さんを三人頭の中に入れておきました」

ほむら「……私の思い出が余程愉快だったのか、なんか数百人ぐらいまで増えてますけど」

さやか「最早何も怖くない」

シャル「むしろほむらが怖いわね。大変な事にならなきゃいいけど」

ほむら「それは保障出来ませんので、何かが起こる前に事を済ませるとしましょう」

ほむら「えー、使い魔さん。魔女さんの元に連れて行ってくれませんかね? ちょっとお話がしたいのですが」

アントニーA「ヤー!」

ほむら「いや、殺すじゃなくて」

アントニーB「ヤー!」

ほむら「死ねと言われて死ぬ人はそういませんから」

アントニーC「ヤー!」

ほむら「……妖精さんアイテム『執事化光線銃』~」シビビビビビビ

アントニーA・B・C「ヤッバーダーッ!」

さやか「いきなりの光線銃シリーズである」

シャル「話し合いと言って十秒と経たないうちにこれよ……」

シャル「……で、だ」

アントニーA「失礼しました、お客さま」

アントニーB「お嬢様との面会ですね」

アントニーC「只今よりお嬢様に確認してまいります」

シャル「……なんかお髭使い魔が、スーツ姿の美形男子になったんだけど」

さやか「あ。あの子、成○くんに似てる。あっちはジャニーズの櫻○くん似だー」



ほむら「これは撃たれた生き物を紳士的な外見と性格にしてしまう、なんとも恐ろしい兵器なのです」

シャル「確かに恐ろしいわね。色々な意味で」

シャル「つーか、何? あんたけっこーな面食いだったりするの?」

ほむら「別にそんな事はないと思いますけど」

ほむら「そもそもこの銃、私が作ってくれって頼んだ訳ではありませんし」

シャル「ん? 妖精さんが勝手に作ったって事?」

ほむら「いえ、姉さんが妖精さんに頼んだようです」

シャル「……あのお手伝いさんが?」

ほむら「はい。普段は姉さんが大事に持っているんですけど、今日はなんかテーブルに置いてあって」

ほむら「色々便利なのは間違いないので、勝手に拝借しちゃいました♪」

シャル「……さいですか」

アントニーC「面会の意思を確認しました。どうぞ、こちらに」

ほむら「では、お邪魔しまーす」

さやか「お邪魔しまーす」

シャル「あー、平和だわー」


……………

………





アントニーA「こちらがお嬢様の部屋となっております」

ほむら「はい、ありがとうございます♪」

ほむら(部屋と言っても、単に空間の境目のようにしか見えませんけどね……)

アントニーB「では、ごゆるりと……」

ほむら「案内ご苦労さまです」

ほむら「さて。それでは魔女さんを絶望の中から救出しましょー」

さやか「おーっ!」

シャル「そういやさ、どうやって魔女の絶望を打ち消すの?」

シャル「正直、私自身どうして今みたいに穏やかな気持ちになったのか分かんないんだけど」

さやか「え、そうなの?」

シャル「なんつーのかなぁ……しらけるというか、飽きるというか」

シャル「一気に、だけど気付かないぐらい自然に冷静さが戻っていたのよねぇ」

シャル「でも、あん時のアンタら特に道具とか使ってないわよね? だからどうしてなのかなーって思って」

シャル「それともこっそりなんか使っていたの?」

ほむら「いえ、私は特に何もしていませんよ?」

ほむら「妖精さんはどうですか?」

妖精さん「それ、たぶんぼくらでは?」

ほむら「おや、妖精さんが何かしていたのですか」

妖精さん「ぼくらいると、ぜつぼーにげにげしてしまうのでー」

ほむら「絶望が逃げるのですか?」

妖精さん「だからぼくら、ぜつぼーてきなものつくれませぬ」
妖精さん「ざいりょーないと、むのーです」
妖精さん「……みすてます?」

ほむら「あら。そんな事しませんよ? 例え無能でもちゃんと構ってあげますから」

ほむら「ほら、お腹こちょこちょ~♪」

妖精さん「あ、ひゃ、あひひひひーっ!」

シャル「……楽しんでいるところ申し訳ないが、何を言ってるのかサッパリ分かんないわ」

さやか「あたしは最近少しだけ分かるようになってきたよ」

シャル「マジで!?」

さやか「うん。フィーリングとノリで」

ほむら「はいはい。お二人とも、立ち話はそれぐらいにしましょう」

ほむら「折角お招きいただいたのですから、お嬢様を待たせてはいけませんよ?」

さやシャル「ほーい」



ほむら「あ、そうだ。皆さんに翻訳眼鏡をお渡ししておきますね」

さやか「あいよー」

シャル「なにこれ? 掛ければいいの?」

ほむら「それで大丈夫です」

ほむら「では、今度こそお邪魔しまーす」


――――グニャアアアア……


ほむら「んーっと、何処に……あ、いましたいました」

ほむら「なんか頭の部分がドロドロしていて、背中に蝶の翅が生えている……」

ほむら「変わった姿の方ですね」

シャル「魔女は大体あんなもんよ。自分で言うのも難だけど、私の姿ってけっこーマシな部類だから」

さやか「へー」

魔女【あ、あの、どちら様でしょうか……?】

シャル「うおっ!? な、なんか台詞が眼鏡の下に字幕で現れてる……これが翻訳かぁ……」

ほむら「どうもこんにちはー。私は暁美ほむらと申します」

ほむら「あなたのお名前を聞いてもよろしいですか?」

魔女【え、えっと……げ、ゲルトルートと言います……】

魔女(ゲルト)【あれ? なんで普通に会話……あれ? ええっ?】

ほむら「ゲルトルートさん。カッコいい名前ですね」

ほむら「えー、今日こちらを尋ねたのは色々とお話ししたい事がありまして」

ゲルト【お、お話、ですか?】

ほむら「とはいえ時間もあまりないので手短に言いますと」


――― かくかくしかじか ――――


ほむら「という訳なのですが、どうでしょう?」

ゲルト【そんな……人間に戻れるなんて……!】

ゲルト【ほ、本当なのですか!?】



シャル「証拠は一応この私。魔力の形で信じてもらえないかしら?」

ゲルト【! た、確かに……あなたの魔力は、魔女のそれ……】

ゲルト【あなた達は、一体……】

ほむら「凄いのは私達ではなく、彼等ですよ」

妖精さんA「いま、ほめられた?」
妖精さんB「でもまだなにもしてないのでは?」
妖精さんC「おもいあたるふしなし」
妖精さんD「きおくにございませぬ」

ゲルト【そ、そうなの……】

ゲルト【あの、疑う訳じゃないけど……本当に彼等があなたを……?】

シャル「姿はあんなだけど、実力は本物よ」

ゲルト【はぁ……】

ほむら「それで、どうします? 人間に戻りたいですか?」

ほむら「戻りたい場合、ボディは私を素体にしたクローン、さやかさんを素体にしたクローン」

ほむら「そして自分でも把握出来ないぐらい深層の記憶からプリントアウトした、本来の姿のどれかで選べますけど」

さやか(あれ? 今あたしの名前……)

ほむら「それでどうします? どれを選んでも妖精さんがすぐにやってくれますよ」

ゲルト【……少し、考えさせてください】

ゲルト【いきなり戻れると言われても、その、どうしたらいいのか分からないですし……元の姿、覚えてませんし……】

ゲルト【た、魂を弄られるのは、ちょっと怖いと言いますか……】

シャル「あー、まぁ、ほいほいとは決断出来ないわよね」

さやか「シャルちゃんはほいほい決断したと思うけど」

シャル「私、昔から思い切りだけはいい方だから」

ほむら「そういう事なら無理にとは言いませんよ。何時でも出来ますし、一生に関わる事です」

ほむら「それに、一度キュゥべえに騙された訳ですしね。慎重になるのは良い事ですよ」

ほむら「決意した時、改めて言ってくださいね」

ゲルト【はい……】



ほむら「それでは次の結界に行くとしましょう」

ほむら「一人でも多くの魔女さんをお助けしないといけませんからね!」

ゲルト【えっと……が、頑張ってください】

ゲルト【私はここで待っていますから、その……また来てください……】

ほむら「? 何を言っているのですか?」

ほむら「あなたも一緒に行くんですよ」

さやシャゲル「え?】

ほむら「いや、だって結界にいたら魔法少女に襲われるかも知れないじゃないですか」

ほむら「それに何時人間に戻りたくなるか分かりませんし」

ほむら「だったら家に居候してもらった方が何かと都合がいいでしょう?」

ゲルト【ええええええ!?】

ゲルト【でも、でも、その、結界から出るのはちょっと、人の目とか、いえ一般人には見えませんけど、でも】

ほむら「ま、どれだけ渋ろうと無駄ですけどねー」

ほむら「妖精さんアイテム『ハンドパワー手袋』~」

ほむら「これを嵌めて……念力発動」

――――ぱりーん

さやか「あ、結界が割れた」

シャル「念力って便利ねー」

ゲルト【ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?】

アントニーA「お嬢様! 大丈夫ですか!?」

アントニーC「お怪我は?!」

ゲルト【う、うん。平気……あなた達も外に出てきたのね……】

ゲルト【というか今更だけど彼等を人間に変えたのって……】

ほむら「はい、妖精さんです」

さやか「妖精さんだよ」

シャル「正確には妖精さんアイテムを使ったほむらだけどね」

ゲルト【信じてない訳じゃないけど、本当だったんだ……】

ほむら「さてと、それでは街に行くとしましょう」

ゲルト【え? えーっと、その、やっぱりまだ覚悟が出来】

ほむら「念力~」

ゲルト【ちょ、か、身体が浮いて】

ほむら「さあ、街へれっつごーでーす♪」

ゲルト【あ、あーーーーーーーーーーーれーーーーーーーーーーーーーー!?】


……………

………





杏子(久しぶりの見滝原だな……)

杏子(けっこう離れていた気がするけど、あんまり街並みは変わってないか)

杏子(……あの店潰れてないな。あとで飯でも”もらおう”かね)

杏子(ま、今は腹減ってねぇからいいけど)

杏子(さて……魔女と協力してるって人間はどいつの事かねぇ……)

杏子(キュゥべえの奴から写真は貰ったけど、黒髪眼鏡の中学生なんていくらでもいるだろうし)

杏子(……つーか、マミと顔合わせるのも不味いんだよなぁ。立場とかやってきた事とか考えると)

杏子(あー、どうしたもんかなぁ)

杏子(魔女が仲間ってんなら結界を虱潰しに探せば何時か見つかるか?)

杏子(いや、マミと遭遇する可能性も高くなるし、この方法は止めといた方がいいか)

杏子(そもそも見滝原は風見野とかと比べて魔女が多過ぎだし)

杏子(そいつが魔女とか使い魔を連れてその辺フラフラしてりゃ分かりやすいけど、そんな事ある訳が)



ほむら「あ! 見てください! あそこで福引やってますよ!」

ゲルト【ゲル!? ゲルルルルルッ!?】

さやか「ちょ、ほむら走るなって! げるげるが振り回されてるから!」

さやか「というかいい加減念力解除しろよ!」

ほむら「あ、忘れてました」

ゲルト【ゲルゥ……ゲルルゥ……】

さやか「あー、よしよし。怖かったなー」

さやか「使い魔たちはほむらの家に行ってもらってるから、あんたは今一人ぼっちだもんねー」

さやか「大丈夫。あたしが傍にいるから。ね?」

ゲルト【ゲルゥ……】

シャル「つーかアンタ福引の券なんか持ってるの?」

ほむら「持ってませんけど、景品とか見るだけでもワクワクしません?」

シャル「分からんでもないけど、真面目に結界探せよ」

ほむら「それはシャルロッテさんの役目です」

シャル「おい」



杏子「……………」

杏子(ま、魔女だあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?)




杏子(え、何アレ? なんで魔女が結界の外に出てきてんの? つーか出ちゃって平気なもんなの?)

杏子(しかもなんかアイツらふつーに会話してるっぽいんだけど!? 魔女って喋れたのかよ!?)

杏子(というかなんでアイツ等結界の外に魔女を連れ出し……)

杏子(だ、ダメだ……ツッコミと理解が追い付かねぇ!)

杏子(いや、ほんとどうしよう……あまりにも常識はずれ過ぎてどうすりゃいいのかサッパリ分からん……)

杏子(あ、なんか脇道に入って行った……)

杏子(……うん。今回は見なかった事にして、もうちょっと普通な時に接触し――――ん?)



マミ「あの子たち、何処に行くのかしら……」

まどか「というか、魔女が露骨に結界の外に出てきてますけど」

マミ「今更感が否めないけど、大問題よね……」

マミ「……とりあえず尾行しましょうか」

マミ「あの魔女が……あの姿を見ているとそんな心配はない気がするけど、人を襲わないとも限らないからね」

まどか「……そう、ですよね……」

まどか「悪い魔女だったら、倒さないと……」

まどか「だって、それが……」

マミ「……鹿目さん?」

まどか「……大丈夫です。追いましょう」

マミ「え、ええ……?」



杏子「……………」

杏子(ま、マミぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?)



杏子(おいおいおい、なんでこんなタイミングで……)

杏子(いや、そういやキュゥべえも言ってたな。マミがある魔女とここ数日ずっと戦っているって)

杏子(一緒に居たピンク頭は仲間かね。なんか根暗そうな奴だったな)

杏子(で、その戦っている魔女ってのがさっき暁美ほむらが連れてた奴か? そんな強そうには見えなかったけど……)

杏子(いや、一匹の魔女と仲良くなれるのなら、他の魔女とも仲良く出来ても可笑しくない)

杏子(だとすると、暁美ほむらは他に何体もの魔女と協力しているのか?)

杏子(キュゥべえはそんな事言ってなかったが……アイツは信用出来ないし)

杏子(……やっぱり追い駆けるか)

杏子(どうやら思っていたよりもずっと手強そうな相手だ。情報を仕入れねぇとな)

杏子(それにマミ達と戦闘になれば、相手の戦力がどの程度か分かる)

杏子(あと双方弱ったところを漁夫の利、つーのもアリか)

杏子(ま、欲を出したらやられかねないから、こっちはあったらいいなぐらいで)

杏子(慎重に、追跡させてもらうとしようかね……)


……………

………





              ―― 見滝原某廃工場周辺 ――


ほむら「ここに魔女の結界があるのですか?」

シャル「気配は感じる。多分あの廃工場にいると思うんだけど……」

シャル「直線距離ではそう遠くないけど、道は入り組んでるし」

シャル「真っ直ぐ行けそうな道は段ボールとか冷蔵庫とかで塞がってたりするし……誰よこんな所に不法投棄したやつ」

さやか「いやはや見滝原の住人としてお恥ずかしい限りです……」

ほむら「まぁ、面倒でも無視は出来ませんし、遠回りするなり脇道を探すなりしませんとね」

さやか「だねー」

ゲルト【あの、美樹さん……少しよろしいでしょうか】

さやか「ん? げるげる、どうした?」

ゲルト【あちらに工場へと続く脇道があるようなのですが……】

さやか「お? おお、確かに」

さやか「ねー、みんなーっ。げるげるがあっちに行けそうな道を見つけたよー」

シャル「え? あ、ほんとだ。柱の陰に隠れてて見えなかったわ」

シャル「……うん、間違いない。あの先の廃工場に魔女がいる」

ゲルト【私も感じます】

さやか「なら、突入だな」

ほむら「総員、突撃ーっ!」

シャル「戦うつもりなんて微塵もない癖に勇ましい事で……」

さやか「いや、ここは乗っかるべきシチュとみたね」

さやか「突撃じゃーっ!」

シャル「ああ、もう。さやかまで……」

シャル「……私らはゆっくり行こうか」

ゲルト【あ、はい】



            ――― 廃工場内 ―――


シャル「んー……あのテレビの山の向こうが結界みたい。というか、テレビ自体が結界の境目ね」

さやか「今回は随分と分かりやすいね」

ゲルト【ですねー。ああもハッキリと境目が分かるのは、珍しいかも知れません】

ほむら「では、早速お邪魔するとしましょう。もしもーし」

使い魔【……】ニュゥ

ほむら「おお。結界から変な人形が出てきて――――きゃっ!?」

ゲルト【あ、暁美さん!?】

シャル「あー、連れ去られたか……まぁ、まだこっちは現実側で、電波の所為で妖精さんを出せなかったからね」

シャル「多少乱暴な結果は仕方ないか」

さやか「んじゃ、あたしらも向こうに行こうか」

シャル「行きましょーかね」

ゲルト【ま、待ってください!】

ゲルト【その、電波がどうとかはよく分かりませんけど……ちゃんと準備した方が……】

ゲルト【あなたも元魔法少女なら、結界内がどれだけ危険か分かって……】

シャル「いや、妖精さんがいるからね。外より結界内の方が却って安全だから」

さやか「どんな不条理でも起こるからなー」

ゲルト【ど、どういう事ですか?】

シャル「論より証拠。百聞は一見にしかず」

さやか「話すより見た方が早いよ」

さやか「ほら、行こう。おじゃましまーす」

ゲルト【は、はぁ……では、おじゃまします……】

――――ずるり

ゲルト【ずるり?】



ゲルト【……………】

ゲルト【ちょ、なんか此処足場がなくて下に落ちるぅぅぅうううううううううっ!?】

さやか「あー、またこの展開かよ……」

シャル「これで何度目よ、全く」

ゲルト【なんでお二人はそんな冷静なんですかぁ!?】

ゲルト【あぶっ!?】

さやか「あだっ!」

シャル「いでっ」

ゲルト【うう……なんか下が柔らかなクッションで助かりました……高さも大してなかったし……】

ゲルト【って、あれは暁美さんでは!?】

シャル「ん?」

ほむら「……………」

女の子?【……………】

人形【……………】

さやか(おお、確かにほむらだ。傍には……女の子? 多分魔女と、さっきの人形モドキがいる)

さやか(あれ? なんか足元に散らばってんな。機械の部品……?)

ゲルト【あ、暁美さん! 無事で――――】


箱の魔女(エリー)【びええええええええええええええええええええっ!】

使い魔たち【……………】オロオロ


ゲルト【……え? なにこれ?】



ほむら「あ、皆さん……」

シャル「何? どったの?」

ほむら「えーっと、私、先程無理やり結界内に引き込まれましたよね?」

さやか「うん」

ほむら「それでまぁ、使い魔さんが私を魔女さんの元まで連れてきたのはいいんですけど……」

ほむら「本来そこで魔女さんがトラウマの記憶を見せるそうなのですが」

ほむら「なんか私に全然トラウマがなくて、魔法が全く通じなかったとか」

さやシャル「……………あー」

ゲルト【え!? 納得するのですか!?】

ほむら「本題はここからで、その魔法って演出の都合憐れな犠牲者を上から落とし、宙に浮いた状態にして発動するそうで」

ほむら「でも私は魔法が効かなかったので、そのまま高所から落下」

ほむら「で、運悪くエリーさん……あたらの魔女さんの真上に着地」

ほむら「それだけならまだいいんですけど、その衝撃でお部屋兼パソコン器材である箱が壊れてしまったらしく」

ほむら「……まぁ、HDD物理的に破損と言いますか」

シャル「死んで詫びろ」

ほむら「酷い!?」

さやか「不可抗力なのは分かるけど、それは流石に……」

ほむら「私一応被害者なんですよ? 襲われたんですよ?」

ほむら「慰める訳でも励ます訳でもなく貶すだなんて、お二人の人格を疑います!」

さやシャル(どーせ微塵も恐怖なぞ感じてない癖によく言うわ……)

ほむら「そこ! 怖いなんて欠片も思ってない癖にと言いたげな顔してますよ!」

ほむら「確かに全然怖くなかったですけど、襲われたという事実が大事なんですから!」

さやシャル(それを言っちゃダメだろ……)



ゲルト【ええっと、その……ほ、ほら、泣き止んで。ね?】

エリー【えぐっ、えぐっ……だ、だって、だって……】

ゲルト【新しいパソコンは、その……わ、私が買ってあげるから!】

エリー【だって……】

エリー【あのパソコンには……パパとママの、写真データが……】

さやシャゲル「……うわぁ】

ほむら「ちょ、ゲルトルートさんまで敵に回らないでくださいよ!?」

ゲルト【いえ、その……命の恩人にこう言うのもアレですけど……これは……】

ほむら「ああもう! 分かりました! 直せばいいんでしょう!」

ほむら「という訳で妖精さんかまーん!」

妖精さん×4「はいほーい」

ほむら「妖精さん。こちらのパソコンが壊れてしまったのですが」

ほむら「内部のデータ諸々も含めてどうにか直せませんかね?」

妖精さんA「らくしょーですな」
妖精さんB「あふたーけあつけます?」
妖精さんC「おもいでたいせつですから」
妖精さんD「にどとこわれぬように?」

ほむら「あー、もうどんどんやっちゃってください。妖精さんにオールお任せしちゃいますから」

さやか「ちょ、おま」

シャル「何言ってんの? 何投げっぱなしなの?」

ほむら「皆さんが私が悪いって言ったんでしょー」

ほむら「だったら誠心誠意、全力でお答えするだけですよーだ」

シャル「コイツ拗ねやがった!?」

さやか「え、えらいこっちゃ……」

ゲルト【あの……どういう……】



ほむら「それでは作業開始してくださーい」

妖精さん×50「はーい!」

ゲルト【あ、妖精さんが動きだし……って、なんか増えてませんか!?】

ほむら「そりゃ増えますよ。妖精さんですもの」

ゲルト【妖精って増えるものじゃないでしょう!?】

エリー【あ、ああ……!?】

ゲルト【? あの、どうし……!?】

ゲルト【こ、壊れていたパソコンが、どんどん直っていく!? 凄いスピードで……】

ゲルト【凄い! もう直ってしまいましたよ!?】

エリー【嘘……ほ、本当に直った……!?】

妖精さんE「なかのでーたも、もとどーりにしてありますが?」

エリー【本当に!?】

エリー【良かった……良かった……】

エリー【これで、パパとママの事、ずっと忘れないでいられる……!】

ゲルト【……あなた……】

シャル「あー、その、なんだ。感動的な場面のとこ悪いけど……」

シャル「あれ、そろそろ止めた方がいいと思うんだけど」

エリゲル【え?】

――――トテトテカンカンドカカカンギュリリリリリンッ!

エリー【ちょ……なんか私のパソコンめっちゃ大きくなってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?】

ゲルト【というか形が既にパソコンのそれじゃないんですけど!? なんか球体みたいなのなんですけど!?】



ゲルト【すとーっぷ! 妖精さんストーップ!!?】

ほむら「もう手遅れですよ。そろそろ完成します」

ゲルト【感動に浸っていた時間十秒となかったですよ!? 時間制限厳し過ぎですからーっ!?】

エリー【あ、ああ……そうこうしている内に、わ、私のパソコンが……】

エリー【直径500メートルはありそうな、巨大なミラーボール型機械に……】

ゲルト【何処からこれだけの材料が!?】

さやか「なんつーかアレだな……マザーシップと呼びたくなる形してるね、これ」

シャル「ああ、確かに。この形はマザーシップよね」

エリー【なんで母船って呼称すんのよ!? 確かにしっくりきたけど!】

妖精さんE「そーすうにひゃくのほうだいに、ぼうぎょすくりーんもてんかい」
妖精さんE「したから、まちひとつやけるたいほーつけました」
妖精さんE「ひこうどろーんや、よつあしようさいもとうかできまっせ」
妖精さんE「いまならおまけで、もうきゅうきつけますが?」

エリー【要らないから!? 魔法少女と戦うにしたってそこまでの防衛機能は要らないから!?】

エリー【ていうかあと九機も作ってあんの?!】

シャル「逆に何を相手にしたら対等なのか気になるわ」

さやか「地球ぐらいなら楽々と侵略出来そうだよね」

ほむら「どーせ死人は出ないでしょうけど」

ゲルト【いやいや出ますよね!? 町一つ焼いたら何万と死にますから!?】

ほむさやシャル「いや、無いから」

ゲルト【なんでハモるんですかぁ!?】



エリー【と、兎に角! 元の普通のパソコンに戻してよ!】

妖精さんF「こうげききのう、いりませんか?」

エリー【要りません!】

妖精さんG「けいの、じゅっちょうばいのけいさんのうりょく、いりませんか?」

エリー【要りませ……ん?】

妖精さんH「きばんにおべんきょうおしえたです」
妖精さんI「やればできるこです」
妖精さんJ「けいなんて、ゆとりですし」
妖精さんK「へいれつけいさんしかできませんもん」

エリー【……え、けいって……スーパーコンピューターの『京』?】

妖精さんK「そー」

エリー【……今の私のパソコン、メモリってどれぐらい?】

妖精さんL「どーだっけ?」
妖精さんM「よたからさきは、しりませんもので」

エリー【よた……ヨタ……】

エリー【……ふひっ】

ゲルト【え? あの、エリーさん……?】

エリー【ふひひ】

エリー【ふははははははははははははははははははははははっ!】

エリー【気に入った! このパソコン気に入ったわ!】

エリー【是非とも使わせてもらうわよ!】

妖精さんN「まじょさんによろこんでもらえたー」
妖精さんO「がんばたかい、ありましたなー」

エリー【ふっはははははははははははははははははははははは!!!】

シャル「……あれ、絶対悪い事に使うわよね」

さやか「ペンタゴンとかにハッキングしそうだよね」

ほむら「ま、妖精さんの発明品ですから本当に悪い事にはならないでしょう」

ゲルト【いやいやいやいや!? 駄目ですから! ハッキングとかいけませんから!?】

エリー【とうっ!】

ゲルト【ああ!? あの人がダイナミックにジャンプしてパソコンの上まで跳んで……】

エリー【ドッキング!!】ガキーン!

ゲルト【合体したああああああああああああああああ!?】

ほむら「流石妖精さん。遊び心は忘れていませんね」



エリー【おおおおお……パソコンを、自分の思うがままに動かせる……!】

エリー【私は! 究極のパワーを手に入れた! もうモヤシだの引き籠りだの言わせない!】

エリー【じゃ、早速マイクラ起動しながらネットサーフィンでも……】

シャル「いきなり引き籠ってんじゃん」

さやか「気に入ったみたいで何より」

ほむら「流石にあのパソコンを外に出すのは問題ありそうなので、外には連れ出せませんねー」

ほむら「ま、あれがあれば魔法少女に負ける事もないでしょうし、絶望漬けからも解放出来たようですし」

ほむら「今日はこのぐらいで帰るとしましょう」

ゲルト【えっ!?】

エリー【うん! ありがと! 今度一緒にオンラインでゲームしよーねー♪】

シャル「ん、しようね」

さやか「じゃ、ばいばーい」

ゲルト【ええええええええっ!? 投げっぱなしなの!? あの状態のままでいいの!?】

シャル「まぁ、大体何時もの事よ。慣れなさい」

ゲルト【えええぇえええええええ……】


……………

………





ほむら「さて、結界から出ましたし、次の魔女さんを探しに行くとしましょうか」

さやか「だねー」

ゲルト【ほ、本当に良いのでしょうか? あれで……】

シャル「不可抗力以外で人を傷付けたらパソコン没収って言っといたし」

シャル「あれはあれで、本人は幸せそうだからいいんじゃない?」

ゲルト【はぁ……まぁ、私は皆さんに助けてもらった身ですし、何も知らないのであまり言えませんけど……】

ゲルト【――――っ!?】

ほむら「おや? どうしましたか?」

シャル「ああ、この気配……何時もの二人組が来たみたい」

さやか「ふーん」

ゲルト【お、落ち着いている場合じゃないです!】

ゲルト【魔法少女が……私達を狩る者が――――来ます!】



マミ「よ、ようやく見つけたわ……」ボロッ

まどか「ようやく、見つけたよ……」ボロッ



ほむら「……………」

さやか「……………」

シャル「……………」

ゲルト【……………】

ゲルト【あれ?】



ほむら「どういう訳かお二人ともボロボロですね?」

マミ「う、うふふ……いけしゃあしゃあとまぁ……」

マミ「あなた達を尾行してこの廃工場まで来たはいいけれど」

マミ「その後思いっきり道に迷って」

マミ「鹿目さんとは離ればなれになるし、開けっ放しのマンホールから下水に落ちるし」

マミ「グリーフシードのストックがないから魔法少女の力も迂闊に使えず」

マミ「ネズミとかGの大群に襲われて」

マミ「どうにかあなた達を見つけたら、今度は段差で蹴躓いて!」

マミ「こんな不運の連続、あなた達が関与してなきゃ可笑しいわ!」

ほむら(……否定は出来ませんねぇ)

ほむら(私達を尾行してきたようですが、トラブルの所為で魔女の結界に中々入ってこれず)

ほむら(お陰でエリーさんとまったりお話出来た訳ですから、妖精さん的ご都合主義じゃないとは言えません)

ほむら(とはいえ、証拠がある訳無いので)

ほむら「何をおっしゃいます。全部偶然でしょう」

マミ「むっきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

さやシャル(いけしゃあしゃあとまぁ……)



ほむら「それで? 私達を尾行してきて、何かご用ですか?」

ほむら「よもやゲルトルートさんを退治しようなんて思ってませんよね?」

マミ「……ゲルトルートというのが、その魔女の事だと言うのなら……もしそうだとしたら?」

ゲルト【っ……!】

ほむら「彼女とも既に友達になっていますからね。はい分かりましたで引き渡す訳にもいきません」

ほむら「妖精さんアイテムを使い、あなた達を潰させていただきましょう」

ゲルト【あ、暁美さん……】

マミ「……冗談よ」

まどか「えっ?」

ほむら「おや? これは予想外の反応ですね……何か悪い物でも食べましたか?」

マミ「……本当は、最初から分かっていたのかもね。あなたが悪い人じゃないって。ちょっと……ええ、
   ちょっとだけいたずらっ子なだけって」

さやシャル(ちょっとじゃないよなぁ……)

マミ「とにかく、あなたは悪い人じゃない」

マミ「そしてあなたは、魔女と和解する力がある。そうなのよね?」

ほむら「んー、和解と言うより本心を呼び戻すという感じですし、そもそも私の力ではないのですが……」

ほむら「大方その認識で問題はないかと」

マミ「……私だって、別に魔女は存在そのものが悪だなんて思ってないわ」

マミ「人を襲う魔女は当然放ってはおけないし、分かり合えない以上戦うしかないのは今も変わらないけど……」

マミ「だけど魔女と分かり合えるのなら……私はその方がいいと思うの」

マミ「……私からこんな事を言うのは図々しいって、十分に承知している。なんて恥知らずだって思うかも知れない」

マミ「でも……お願い」

マミ「私達と、仲直りはしてもらえないかしら……?」

ほむら「ほう」



ほむら(昨日の段階で敵意はあまり無いように感じていましたが……いや、これは嬉しい誤算です)

ほむら(まさかここまで関係が改善していたとは)

ほむら(この様子ですと、今後巴先輩たちが魔女退治を行うとは思えません。むしろ私達に協力してくれるでしょう)

ほむら(絶望漬けの魔女さんは人を襲うのでのんびりはしていられませんが……)

ほむら(一先ず、見滝原の魔女さんに救いの手が間に合わないという事は無くなります)

ほむら(それにメンツが多くなれば楽しさも倍増ですし♪)

ほむら「恥知らずだなんてとんでもない。自分から歩み寄ってきた人を、一体何故貶せると言うのですか」

マミ「! な、なら――――」

ほむら「こちらの答えは決まっています」

ほむら「是非ともこれからは私達とお友達に――――」




「こんなの、可笑しいよ」



マミ「……?」

シャル「な、に……?」

さやか「えっ?」

ゲルト【? ???】

ほむら「……何か言いたい事があるのですか?」

ほむら「――――鹿目さん」

まどか「……言いたい事も何も、可笑しいから、可笑しいって言ったんだよ」

マミ「か、鹿目さん? あの、どういう……」

まどか「マミさん。私達は、魔法少女ですよね?」

まどか「だったら、なんで魔女と和解するんですか?」

まどか「魔女を退治するのが、魔法少女の使命じゃないですか」

マミ「そ、それは、確かにそうだけど……」

マミ「でも、戦いだけが全てじゃないでしょ?」

マミ「確かに私たちの勘違いで戦いになってしまったけど、でも、平和的に解決出来るのならその方が」

まどか「じゃあ私達が倒してきた魔女は?!」

まどか「仕方なかったって言うつもりですか!?」

マミ「っ……!?」

まどか「違う、違う、違う違う違う違う。騙されない、私は騙されない……」

まどか「魔女と和解なんて出来ない、魔女は悪い奴……」

まどか「魔女を倒す魔法少女は正義の味方なの……悪い魔女を倒して、みんなを守る、正しい事なの……」

まどか「だから魔法少女は、魔女にならない……」





まどか「私は……誰も殺して、いない……!!」





ほむさやシャル「!?」

ほむら(まさか、このタイミングで……!?)

マミ「鹿目さん、落ち着いて!」

マミ「確かに、私達が今まで倒してしまった魔女を犠牲として割り切るのは難しいと思うし、しちゃいけないと思うわ」

マミ「だけど……」

まどか「……そうですか……そうなんですね……」

まどか「マミさんも、ほむらちゃん側の人だったんだ」

マミ「え?」

まどか「私は騙されない! 魔法少女が魔女になるなんて嘘には騙されない!」

まどか「うん、そうだ。きっとほむらちゃんもマミさんも、あの妖精って使い魔に操られているんだ」

まどか「魔女を操っているんじゃなくて、使い魔に操られてそう言わされているんだ」

まどか「だから全部、嘘。悪い魔女と悪い使い魔が言う事は全部嘘。全部全部ぜーんぶ嘘ッ!!」

まどか「……そうだ。私が、魔女と使い魔を全部倒せばいいんだ」

まどか「そうすれば、みんな居なくなれば、ほむらちゃんもマミさんも正気に戻って」

まどか「――――あは」

まどか「あ、あははははははははは、あはは、あはははははははははははははははははっ!!!」

――――シャキンッ!!

さやか(!? へ、変身した……まさか戦うつもり!?)

ほむら「ちっ! 妖精さんアイテム――――」



まどか「まずはそこの魔女から!!」

ほむら「『あっちいってホイ』!!」



――――バシュンッ!

さやか「う、うわあっ!?」

シャル「躊躇いなく大量の矢を撃ってきたわね! ほむらの使った道具のお陰で、全部変な方に飛んでいっちゃったけど!」



まどか「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!?」



マミ「って、ついでに鹿目さんも吹っ飛んでるわよ!?」

ほむら「そんな厳密な選択性のある道具じゃないですからねコレ。仕方ありません」



ほむら「でも……あー……屋根を突き破って空の彼方に……見えなくなっちゃいましたか」

ほむら「その場しのぎの対応とはいえ、ちょっと好ましくないかも知れません……」

マミ「ど、どうするのよ!?」

マミ「いえ、そもそも鹿目さんは一体どうしてあんな……」

ほむら「どうしても何も……普通は、誰だって殺人鬼にはなりたくないでしょう?」

マミ「さ、殺人鬼!?」

ほむら「よもや忘れてはいませんよね? 魔法少女が魔女になるってお話。鹿目さんもさっき言ってましたし」

マミ「わ、忘れるも何も……そんな事、ある訳無いじゃない!」

マミ「キュゥべえだって、そんな事はないって言っていたわよ!」

ほむら「それ、嘘ですよ?」

ほむら「或いはハッキリ断言された訳ではないんじゃないですか?」

ほむら「例えば『暁美ほむらや魔女の言葉をどうして信じるんだい?』みたいな事を言われたとか」

マミ「それ、は……!」

ほむら「どうやら後者のようですね」

ほむら「ま、信用している相手にそう言われたら、都合よく解釈してしまうのも無理ないでしょうけど」

ほむら「ソウルジェムの秘密を知っていればまだ……ああ、そういえば巴先輩は知りませんでしたか」

ほむら「成程。あなたはキュゥべえさんを信用出来ても、鹿目さんには信用出来なかった、という事なのでしょう」

ほむら「かと言って自分が無自覚に何人も殺してきたなんて、到底受け入れられない」

ほむら「どちらも信じられない。だけどどちらかを信じなければならない」

ほむら「だったら『正しさ』に酔いしれよう……迷惑極まりないですけど、個人的には同情の余地はあると思いますね」

マミ「そんな……そんな事……!?」



ほむら「……すんなり受け入れてくれるとは思っていません」

ほむら「本来は、ええ本来は……もう少し時間をかけて伝えるべきだったのでしょうけど……」

ほむら「あなた達と初めて出会ったあの日に、さやかさんがぶちまけてしまうですもん。どうにもなりませんよぅ」

シャル「つまり大体アンタの所為って事よ! このこのこのこのっ!」バシバシバシバシ!

さやか「ご、ごめんなさぴぃっ!? 反省してまぶっ! 反省しがっ、お尻ぺんぺんは止めぎゃひっ!?」

ゲルト【……】

マミ「……」

ほむら「まぁ、後でさやかさんには私からの罰も受けてもらうとして」

さやか「え!? お尻ぺんぺんだけじゃ許してもらえなぎゃひぃ!?」

ほむら「それより、あなたはどうです? この話、信じてもらえませんか?」

マミ「そんなの……そんなの、信じられる訳が……ないじゃない!」

マミ「魔法少女が魔女になるなんて、魔女が、人間だったなんて……」

マミ「み、美樹さんが言ったのは、その場しのぎで……」

ほむら「否定するのは自由です。私を嘘吐き呼ばわりするとしても、あなたの事をどうこう言う気はありません」

ほむら「例えそれが真実を知ろうと立ち向かった結果であれ、楽な方へ逃げた結果であれ、
    魔法少女の成り立ちを思えば私如きにあなたを非難する資格などないでしょうから」

ほむら「ですが、立ち向かった結果ではなく、逃げるために否定するのなら」

ほむら「あなたはいずれ真実に取り囲まれ、獄中の如く苦悶を味わいますよ?」

マミ「あ……ぁ、あ……!?」

マミ「っ!!」

ほむら「……逃げてしまいましたか」

ほむら(予測していた反応とはいえ、やれやれ……後でフォローの一つでも入れないといけませんかね)



ほむら(出来ればこの状況は妖精さん濁に出来る結界内で済ませたかったのですが……)

ほむら(ま、起きてしまったものは仕方ありません。切り替え切り替えっと)

ほむら「シャルロッテさん、ゲルトルートさん。今更ですが、先の鹿目さんの攻撃でお怪我はありませんか?」

ゲルト【え、ええ……私は、大丈夫です】

シャル「こっちも問題ないわ」

さやか「」チーン

ほむら(さやかさんのお尻が、某国民的永遠の五歳児のように腫れ上がっている……)

ほむら「えー、全員無事なようですので、このまま話を続けましょう」

ゲルト【え。あの、美樹さんは……?】

シャル「死んでなきゃ無事でいいのよ」

シャル「……問題は鹿目さんね」

ほむら「ですね」

ほむら「このまま放っておけば、鹿目さんは魔女さんを退治してしまうかも知れません」

ほむら「今の心的状態で魔女さんを倒してしまったら、恐らく鹿目さんの心は二度と元には戻らないでしょう」

ほむら「なんとかその前に、彼女を止めねばなりません」

ゲルト【で、でも、巴さんでしたっけ? あの人の事も……】

ほむら「あちらは大丈夫でしょう」

ほむら「動揺はしていましたし、否定もしていましたが、私の問いかけに逃げました」

ほむら「先程は逃げたら余計苦しくなるといいましたけど、逃げているのなら時間的猶予はあります」

ほむら「何時までもほったらかしには出来ませんけど、今すぐどうなる事もないでしょう」

ほむら「それに、悩んでいるうちは魔女退治もしないでしょうからね。優先度は鹿目さんより大分下です」

ほむら「今はさっさと鹿目さんを見つけて、さっさと落ち着いてもらうとしましょう」

ゲルト【……そう、ですね】

ゲルト【それに、あの様子ですと何時魔女化しても可笑しくありません】

ゲルト【その前になんとしても助けましょう!】

ほむら「いえ、それはさっさと魔女化してくれた方が都合がいいかと」

ゲルト【ふぇっ!?】



ほむら「どうせ元に戻せるんです。それに否応なく魔女の真実を突き付ける事が出来ますし」

ほむら「だったら魔女になってもらって、誰かを襲う前に戻しちゃえば色々楽じゃないですかー」

ほむら「ま、絶望浸けの状態になるのは可哀想ですから、なる前に助けようとは思いますけど」

ゲルト【えぇー……】

シャル「覚えておきなさい。ほむらってあーいう奴よ」

ほむら「さて、それでは『お探し人諸々呼び寄せインターホン』を『つながり袋』から出しましょう」

ほむら「あのインターホンがあれば、鹿目さんとその周りにある諸々の物をこちらに転送出来ますからね」

シャル「このシリアスの中その便利さはどうなのかしら……」

ほむら「便利ならいいじゃないですか」ゴソゴソ

ほむら「……ん?」ゴソゴソ

シャル「どしたの?」

ほむら「……こんな時に限って紛失、というのも実に妖精さんらしい」

シャル「は? 紛失って……」

ほむら「妖精さんアイテムってどれだけ厳重に保管しても、何故かある時ふっと無くなってしまうんですよ」

ほむら「例え分厚い金庫にしまおうと、毎日無くなっていないか確認してもです」

ほむら「ですから欲しいものが無くなるなんてしょっちゅう」

ほむら「そんな訳で『お探し人諸々呼び寄せインターホン』は紛失。また新たに作ってもらうまで使えません」

ほむら「つまり、昨日同様足で探すしかありませんね」

シャル「な、何それ!?」

ほむら「ただまぁ、昨日と違い魔女が目的なのは分かっています」

ほむら「結界を探していけば、そのうち見つかるでしょう」

ゲルト【で、では急ぎましょう!】

シャル「ああもう、しょうがないわね……」

シャル「さやか! さっさと起きなさいっ!」

さやか「ぎゃ!? お、お尻を蹴らないで……」

ほむら「さやかさんも起きましたね」

ほむら「それでは鹿目さんが飛んでいったであろうあちらから探すとしましょう」

ほむら「まったく……レッツゴー、です」







杏子「……なんだったんだ、一体」



杏子(工場地帯でマミ達を見失い、さっきようやくマミを見つけたけど……)

杏子(アイツ、なんで泣きながら走っていったんだ?)

杏子(見たのが途中からだから話が分かんないな……今更追い駆けようにも、なんか事情が呑み込めないし)

杏子(それにちょいと腹も減ってきたし)

杏子(アイツが何体もの魔女と協力している可能性があるって分かっただけでも収穫だ)

杏子(今日の調査はこのぐらいで打ち切りとしようかね)

杏子(そうと決まりゃあ早速商店街の方に――――)

杏子(……そういや、此処から魔女の気配がするな)

杏子(大して魔力は感じねぇ。どうやらあまり強くない魔女みたいだ)

杏子(……………)

杏子「やっぱり飯は、腹ペコの時の方が美味いよね」

杏子「つー訳で、ちょいと運動がてら”つまみ食い”していこうかね」


……………

………





―― 見滝原 某所 ――


まどか「う、うぅ……!」

まどか(攻撃したら、簡単に吹き飛ばされちゃった……)

まどか(どうにか怪我なく着地出来たけど……)

まどか(今のままじゃ、ほむらちゃん達には……ほむらちゃんの連れている妖精には勝てない……)

まどか(ううん。それどころか、他の魔女を倒そうとしても、ほむらちゃん達は多分邪魔しに現れる)

まどか(どうすればいいどうすればいいのかな……このままじゃ……)

まどか(ううん。大丈夫、私は間違ってない、何も間違ってない)

まどか(私は正義の魔法少女だから、だから、最後は必ず勝つんだから)

まどか(勝てない正義なんていない、勝たなきゃ正義じゃない)

まどか(私は勝たなきゃいけない。勝たなきゃ)

まどか(勝たなきゃ、勝たなきゃ、勝たなきゃ、勝たなきゃ)

まどか(勝たなきゃ勝たなきゃ勝たなきゃ勝たなきゃ勝たなきゃ)

まどか(勝たなきゃ勝たなきゃ勝たなきゃ勝たなきゃ勝たなきゃ)



「やあ、鹿目まどか。どうしたんだい?」



まどか「……キュゥべえ。久しぶりだね」

QB「ん? そうかい? 僕はそうは思わないけど……」

QB「まぁ、そんな話はどうでもいいね」

QB「何か悩んでいる様子だけど、どうしたんだい?」



まどか「……………」

QB「まどか?」

まどか「……私、どうすればほむらちゃん達に勝てるのかな」

QB「?」

まどか「どうやっても、私じゃほむらちゃん達には勝てない。ほむらちゃんを操っている使い魔を倒せない」

まどか「ねぇ、魔法少女は正義の味方なんだよね? 魔女を退治する、大切な使命を持っているんだよね?」

QB「そうだね。君達魔法少女は人間を守る、所謂正義の味方だ」

QB「そして魔女退治は魔法少女の使命。他の人間には到底出来ない事だよ」

まどか「だったら、なんで……」

QB「まどかは、力が欲しいのかい?」

まどか「……うん」

まどか「みんなを守れる力を……魔女なんか、みんな倒せちゃう力がほしい……」

QB「ふむ。成程ね」

QB「君が望むなら――――その力、僕が与えるよ」

まどか「えっ?」



QB「本来、特定の魔法少女に肩入れするような真似はしないのだけど」

QB「暁美ほむら、ひいては彼女が従えている妖精と呼ばれる存在は、僕達にとっても都合が悪くてね」

QB「君にその気があるのなら、僕達が君のパワーアップに協力しよう」

まどか「……その力があれば、どんな魔女も倒せるの……?」

QB「流石にそこまでは保障できないね。何分、妖精の力がどれほどのものか分からないから」

QB「だけど今のままでは勝てないのなら」

QB「例え確証はなくとも、やれる事は何でもやるべきなんじゃないかな?」

まどか「……そう、だね」

まどか「分かったよ、キュゥべえ」

まどか「私……もっと、力が欲しい」

まどか「どんな魔女も使い魔も倒せるぐらい、強い力が欲しい!!」

QB「分かった」

QB「まどか、ソウルジェムを出してくれ」

まどか「……うん」

QB「はい、受け取ったよ……おや、随分と濁っているね。殆ど元の色が視えないじゃないか」

QB「浄化はしないのかい?」

まどか「グリーフシードのストックが無いから……」

QB「そういう事か。なら、仕方ないね」

QB「さて、ちょっと痛みがあるかも知れないけど、我慢してくれ――――よっ」

まどか「くっ!? う、あ、あぁ……」

まどか「あぁああぁあああ……!?」

まどか「あああああああああああああぁああぁあああああっ……!!」

QB「……こんなもの、かな」

QB「おめでとう、まどか。これで君の力は、以前とは比べ物にならなくなったよ」

まどか「はぁ、はぁ……はぁ……ほ、本当に……?」

QB「ああ。その証拠に……ソウルジェムを見てごらん」

まどか「!?」

まどか「嘘……あんなに濁っていたのに……」

まどか「今じゃ、点みたいなのが一個あるだけ!?」



QB「君のソウルジェムの持つ魔力量が増大した結果さ」

QB「今までと同程度の魔法だったら、どれだけ使っても見た目上濁りが増えたようには感じられないんじゃないかな?」

QB「多分今の君なら、最強の魔女と伝えられているワルプルギスの夜も一撃だろうね」

まどか「凄い……これなら……!」

まどか「ありがとうキュゥべえ」

まどか「これで……みんなを助けられる」

まどか「私が正しいって、みんな分かってくれる」

まどか「悪い魔女を倒して、私が正義の魔法少女になるの」

まどか「うふ、うふふふ」

まどか「あっははははははは、あははははははははははははははははははははははははははははは!!」

まどか「あーははははははは、あ、そうだ」

まどか「だったらさっさとほむらちゃん達を正気に戻さないと」

まどか「待っててねほむらちゃん、マミさん、さやかちゃん」

まどか「私がみんなを――――助けてあげる!」

――――ドンッ!!!

QB「……………空を自在に飛ぶか。惜しみなく魔力を使うね。ま、その方が都合がいいけど」

QB「さて、僕も行動を始めよう」

QB「ちゃんと観測しないと、折角鹿目まどかのソウルジェムを強化した意味がないからね」


……………

………





ほむら「それで、どうですか? 魔女の気配はしませんか?」

シャル「あのねぇ……確かに見滝原は魔女が多いけど、そうほいほい見つかるほどそこらに居るもんでもないの」

シャル「それにけっこー遠くまで飛んでいっちゃったみたいだし……」

ゲルト【ど、どうしましょう……他の魔女の事も心配ですけど、鹿目さんでしたっけ……彼女も無事でしょうか……】

ほむら「妖精さんアイテムで吹っ飛ばしたから、それは平気でしょう」

さやか「うう……ごめんなさい……あたしがあの時口走ったばかりに……」

シャル「あー、もういいって。十分怒ったから」

ほむら「ええ。後で十分怒るので、今は気にしないでください」

さやか「ヴぇっ!?」

ゲルト【……あら?】

シャル「? どうかし――――ん?」

ほむら「お二人とも、どうしましたか?」

シャル「なんだろ……これ……鹿目さんの魔力?」

ゲルト【鹿目さんの魔力っぽいですけど……】

ほむら「おお? 見つけましたか?」

シャル「いや、なんだこれ……本当に鹿目さん……?」

シャル「ちょ、なにこれ……!?」

シャル「どんどん力が大きくなってる!? 嘘、嘘よこんな……!?」

ほむら「シャルロッテさん? 一体どうし――――」

シャル「っ!? こ、こっちに来て――――」


――――ドンッ!!!!


まどか「――――見つけたァ……♪」

ほむら(空から鹿目さんが下りてきた!? いえ、それより……)

ほむら(これは……ええ、魔法少女ではない私でも分かります)

ほむら(分かってしまうぐらい、今の鹿目さんは危ない!)



まどか「今すぐそこの魔女を倒して、妖精も根絶やしにして」

まどか「みんな――――助けてあげる♪」

――――ズオオオオオオオオオオ……!!

ほむら(いきなり弓を構えた!? どういう――――)

シャル「な、何あの魔力!?」

シャル「あんなの撃ったら、町一つ消し飛びかねないわよ!?」

さやか「んなっ!? ま、まどか……!?」

まどか「大丈夫だよさやかちゃん」

まどか「ちゃんと魔力を集束して……爆発なんて起こらないようにしてあるから、ね!!」バシュッ!!

さやか「う、撃ち……」



ほむら「妖精さんアイテム――――『あべこべバリアー』!」



さやか「! ほ、ほむらが何かガラスみたいなのを投げ――――うわっ!?」

ゲルト【ガラスからバリアーが展開された!?】

シャル「矢は防げたみたいね……助かった……」

まどか「……ふふ。そうこなくちゃ、倒し甲斐がないよね」

まどか「でもね、今のは小手調べ……」

まどか「ここからが本当の勝負だよ!!」ゴゴゴゴゴゴゴ……!!

さやか「ひっ!? まどかの周りにたくさんの光の矢が……」

ゲルト【あ、あああぁ……!?】

シャル「しかもさっきより一本一本の威力が桁違いに高い!? こんなの撃たれたら……」

ほむら「それに関しては大丈夫です」

ほむら「あのバリアーは攻撃の威力が上がれば上がるほど、どんどん強固になるものでして」

ほむら「単純な打撃だけでは絶対に破れない、無敵のバリアーなのです」


――――ズガガガガガガガガガガガガッ!!


さやか「ほ、本当だ……まどかの攻撃、全部防げてる……」

さやか「光やら土埃やらでまどかの姿が見えなくなるぐらいの猛攻なのに」

さやか「バリアー自体にヒビは入ってない!」

ゲルト【凄い……】

ほむら(ま、『あべこべ』という名前の通り威力が弱い攻撃、デコピンとかだとあっさり壊れてしまう使用ですが)

ほむら(あのバーサーカー状態の鹿目さんが気付くとも思えませんからね。好きにやらせとくとしましょう)



ほむら(それより……)

ほむら「どういう事です? 先程矢一本で町が消し飛ぶとか言っていましたけど」

ほむら「魔法少女って、そんなチート級に強いものだったんですか?」

シャル「んな訳ないでしょ! 大抵は銃を持ってる人が何人かいれば対抗出来る程度よ!」

シャル「あんな馬鹿げた魔力、絶対あり得ない!」

ほむら「なら、通常ではあり得ない何かがあったのでしょう」

ほむら「ま、見当は付いていますけどね」

さやか「見当……?」

ほむら「……こそこそしてないで出てきたらどうですか」

ほむら「どーせその身体、端末とかそんなやつで、潰されてもあなた自身には被害なんてないのでしょう」

ほむら「難なら無理やり引きずり出してもいいんですよ?」

ほむら「――――インキュベーター」










QB「――――これは予想外だね」




シャル「っ……キュゥべえ……!!」

ゲルト【あ、あなた……!?】

QB「気配は消していたつもりだけど、どうして僕が近くにいると分かったんだい?」

ほむら「あなた、私を馬鹿にしているのですか?」

ほむら「魔法少女を産み出しているのはあなた自身。つまりあなたには、魔法少女をいじくるだけのノウハウがある」

ほむら「だったら鹿目さんに力を与えたのはあなたしかいない」

ほむら「そして力を与えた理由なんて、大方私達を排除したいとか、そんなありきたりなものでしょう?」

ほむら「なら、私達がちゃんと排除されたか確かめねばならない」

ほむら「万一、或いは予想通り鹿目さんが倒された場合も考えると、妖精さんの観測もしておきたい」

ほむら「そして後者をするのなら、衛星のような遠距離よりも、近距離で、正確な分析が必要となる」

ほむら「あなたが近くにいるのは、簡単に導き出せる事でしょう?」

QB「……ふむ。君への認識を改める必要がありそうだ」

ほむら「あら、残念。見くびったままでいてくれた方が色々やり易かったのですが」

QB「その言葉、僕は言わずに済ませたいね」

ほむら「大丈夫です。言える時なんて永遠に来ませんから」

QB「そうだね。きっと、永遠に言う事はないだろうね」

ほむQ「ふふふふふふふふふ」

さやシャゲル(こ、怖い……)



ほむら「それで? まさかこれであなたの謀略は終わり、なんて言いませんよね?」

QB「ああ、勿論。むしろこれからが始まりさ」

QB「確かに鹿目まどかのソウルジェムは大きく強化された。今の彼女は、間違いなく最強の魔法少女だ」

QB「だけどね、ソウルジェムの魔力量、即ち魂の容量が増えるという事は」

QB「即ち内部に貯め込める穢れの量も増えるという事になる」

QB「なら、それが一挙に解放されたら?」

ほむら「――――まさか……」

さやか「ほ、ほむら、攻撃が止んだよ!」

ほむら「!」

シャル「流石妖精さん製のバリアーね。結局、ヒビなんて一つも入らなかったわ」

さやか「煙が晴れて……まどかの姿が見えるようになった……!」

まどか「……………」

さやか「あ、あの、まどか。大丈夫……疲れたんじゃない?」

さやか「まずは落ち着いて、ね? 話し合おう。うん、そうしよう」

まどか「大丈夫だよ、さやかちゃん」

まどか「私ね、全然疲れてないの。それどころか力が溢れてくる感じ」

まどか「力を使えば使うほど、どんどん力が溢れてくるの! ずっと