テラフォーマー「じょじょの奇妙な冒険」 (504)

A・Eウィルスのワクチンを作り出すことを目的とする計画が、この度の『アネックス計画』である。

その為に集められたのは 『M.O.手術』を施した超人たち…… 『ではなく』


600年以上前の過去からやってきたという、『スタンド使い』という名の超能力者たちだった。




西暦2620年1月11日。

宿敵。親友。ボスと部下。父と息子。母と息子。兄と弟。犬と鳥。etc、etc ……



クルー(乗組員)  64名(匹)

オフィサー(幹部乗組員)  5名

キャプテン(艦長)  ジョセフ=ジョースター



宇宙艦『アネックス1号』が70名(匹)の『スタンド使い』を乗せ、地球を発った。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377749947


――アネックス1号内



『え~……艦長のジョセフじゃ。乗組員諸君、シートベルトを外してくれ』

『本艦は無事、地球の重力圏を離脱した』

『あとは火星に着くまで、そちらの居住エリアで過ごしてもらう』


未起隆「おお……居住エリアには重力がありますね」

康一「人工的に作り出しているらしいよ」

由花子「すごいわね、どうやっているのかしら?」


『幹部エリアは原則立ち入り禁止じゃ、困ったことがあれば内線で知らせてくれ』

『……それともう一度、今回の目的を確認しておく』

『今回の目的は、「A・Eウイルス」のワクチン開発の為の「サンプル」を集めること』

『火星の空気や砂、水、一面に茂っている藻類……そして「テラフォーマー」』

『全て調べてウィルスの有無と種類を見、必要とあらば地球に持ち帰る』


吉良「…………」 ディアボロ「…………」


『これだけの数の「スタンド使い」がいれば、難しい任務ではないじゃろう』

『地球人類の為に、互いに力を合わせていこう』

『では……各自火星到着まで、訓練を怠ることのないように』


DIO「…………」 プッチ「…………」

――地球出発から19日経過 艦長室



承太郎「じじい、訓練に行くぞ」

ジョセフ「訓練なんてもうせんでええじゃあないかッ!」

ジョセフ「わしは子供の頃から『努力』とか『ガンバル』ってのが大っ嫌いなんじゃよおォォ~~~」

徐倫「…………そんなにイヤなの?ステキな肉体してるのになァーー」

ジョセフ「そ、そうか?徐倫にそう言われると……」 ニヤッ

承太郎「やれやれ……」

徐倫「うわっ、この椅子フカフカだわ……600年後の人たちも腰痛で悩んでるんでしょうねェ~~」


フカフカ…


徐倫「ねぇ……良い椅子と悪い椅子の『見分け方』…………知ってる?」

承太郎「いや……知らないな」

ジョセフ「ううむ、わしも知らんなァ」

徐倫「『強い圧』を返してくる椅子が良い椅子なのよ、身体にとってはね」

徐倫「人間もそうじゃない?大きな苦境や試練を経験し、それを乗り越えた人間はより『強い』」

ジョセフ「…………」

承太郎「…………」

徐倫「というわけで……訓練あるのみよッ!苦境から逃げるな!!」

ジョセフ「オー!ノーッ!なんてスパルタなひ孫じゃあ~~~ッ!!」

……


ナランチャ「こっちは『スミスさん』が乗ってんだぞッ!」

億泰「だが兄貴のアパッチの方がカッコイイぜ!4機もいるしなァ~~!!」

ナランチャ「いいやオレだ!」

億泰「いや兄貴だ!」

ナランチャ「オレだ!オレなんだッ!!」

億泰「兄貴だッ!!」

形兆(どっちのスタンド戦闘機がカッコイイかなんて、どうでもいいんだがな……)


康一「みんな、他班の人とも打ち解けてきましたね」

露伴「康一くんが第三班のジョルノたちと交流を図ってくれたおかげだよ」

音石「噴上、どうした?」

噴上(む……こ、この酸っぱい臭いは……) クンクン


ミスタ「ん?」

ミスタ(なんだ?あの日本人……確か噴上裕也だ。俺をチラチラと横目で見てくるが…………まぁいいかァ~~)

ミスタ「そういやよォ~~どうやって班のメンバーを決めたんだ?これは偶然じゃあねーだろ?」

ミスタ「慣れ親しんだメンバーが揃ってるってのはよォ~~~」

フーゴ「メンバーについては……ブチャラティたち幹部陣が、話し合いの末決めたと聞きましたよ」

ミスタ「その『幹部』はどうやって決めたんだ?」

ジョルノ「ランキングと同様、『独断』で決められたはずです」

ミスタ「ランキングかァ……オレ『4』の倍数じゃないかと、不安で聞いてねェんだよなァ~~」

トリッシュ「安心して、ミスタは61位よ」

ミスタ「おッ!そうかよォ~~……って61位!?そ、そんなに低いのか……」

ミスタ「……ちなみにトリッシュは何位なんだ?」

トリッシュ「あたしは18位」

ミスタ「ぬぐぐ……」

アバッキオ「気にするな。ランキングは対ゴキブリの『制圧力や生存力』が指標だからな」

アバッキオ「近距離パワー型、更にスピードもあるタイプが上位になりやすいだけの話だ」

サーレー(フフフ…………16位かァ~~) ニヤリ

ミスタ(こ、この野郎!上位なのか?得意顔になってやがる……!!)

プッチ「ヴァニラアイス」

ヴァニラアイス「ハッ……プッチ様」

プッチ「君は『吸血鬼』の身体だったな?」

ヴァニラアイス「その通りでございます」

プッチ「火星には成層圏もオゾン層もなく、晴れた日には強烈な『紫外線』が降り注ぐ」

プッチ「大気中の塵や霧で、紫外線の照射は大幅に緩和はされているが……」

プッチ「最新の宇宙服といえど、吸血鬼の身体には有毒かもしれない。君やDIOはどうするんだ?」

ヴァニラアイス「そうですね……そもそも、降り注ぐ紫外線量に問題はないかと思われます」

ヴァニラアイス「テラフォーマーが活動しているのが、その『根拠』です」

プッチ「……なるほど、確かにそうだな」

ヴァニラアイス「それにいざとなれば、わたしは暗黒空間へ隠れることもできます。問題はありません」

プッチ「そうか……頼りにしているぞ」

エンポリオ「エルメェスは、ゴキブリ嫌い?」

エルメェス「だいっっっ~~~~~~きらい、だ!!」

エンポリオ「そ、そう……ねぇでも知ってる?イギリスのある地方では、家の守護神として扱われてるって」

エルメェス「ゴキブリが家の守護神!?」

ポルナレフ「それ、オレも聞いたことあるぜ。引っ越しの時に数匹連れていくこともあるとか」

ウェザー「ペットみたいにか?スゴイ地方もあるものだ」

アヴドゥル「ちなみにタイや中国の一部地域では、フライにして食べることもあるそうだぞ」

アナスイ「意外と栄養価が高いらしいな。エネルギーの変換効率が非常に優秀なようだが……」

エルメェス「オーマイガッ!!し、信じられん……」

F・F「全人類がゴキブリを嫌悪していると思ったが、そういうわけでもないんだな」


イギー(Zzz……) スヤスヤ…

吉良「…………わたしにか?」

吉良「…………あぁ、ありがとう」

仗助(独り言かァ~~?ま、まさか!?誰かの『手』を……)

仗助(い、いやそんなわけねーか。とりあえず同じ班だし、こいつとも仲良くやんなきゃなァー)

仗助「ああ~~~……よろしく頼むぜ、吉良吉影」

吉良「フン、今更か?それによろしくと言いながらも『握手』を避けるとは……」

吉良「『爆弾』にされるとでも思っているのか?」

仗助「…………おい、単刀直入に聞くからよォ~~~、その調子ではっきり答えな」


仗助「おめーオレたちに『復讐』しようと考えてんのか?」


吉良「…………復讐、か」

仗助「…………」

吉良「いや、そういった考えはない」

吉良「わたしには『目的』がある。おまえたちと争うつもりはない」

仗助(…………『目的』だと?)

――地球 某会議室



室内には、四ヶ国の首相が集まっている。中国、ロシア、ドイツ、ローマ連邦。


ローマ首相「重力は軽いが、アンデス山頂のような環境下だ。M.O.手術者のようにはいかんだろうなぁ」

中国首相「いくら様々な特殊能力があろうが、基礎能力が違いますからね」

ドイツ首相「それもありパワーB、スピードB以上でないと、ゴキブリの速さに立ちうちできないようですね」

ローマ首相「それってつまり……40位くらいまでしか、ゴキブリに歯が立たないってことだよな?」

ロシア首相「だろうな。だからこその『装置』というわけか」

中国首相(装置か……その発見は盲点だった。さすがは世界最大の研究機関)

ドイツ首相「もしその装置が効かない個体が出てきた場合は?」

ロシア首相「…………40位以上で、何とかするんだろう」

ドイツ首相「では、なぜあのメンバーだけで火星に?M.O.手術者も連れていけばいいものを」

ドイツ首相「そもそも『遣り用』だけならいくらでもあるはず……」

中国首相「ハハハハ、それを言ったらおしまいだ。手術の口実がなくなります」

中国首相「……何にせよ、また20日後です。どの道ファーストもセカンドも、まだ火星には飛ばない」

ロシア首相「そうだな。我々には我々の準備がある」

ローマ首相「…………」

ローマ首相(やはり、こいつらは『スタンド使い』にはそれ程関心を持っていない)

ローマ首相(まぁ、見えない幽霊を戦力にしたいとは中々思わんか…………フフフ)



中国首相「ではまた20日後に――」

――地球出発から39日経過 艦長室



ジョセフ「こちら艦長室。間もなく火星の大気圏に入る」

ジョセフ「2時間後、各員はAエリアに集合すること。火星への着陸ミッションを開始する――」


ジョセフ「…………ふぅ」

ジョセフ「…………」

ジョセフ「…………」

承太郎「どうしたじじい?窓の外より、2600年製のコミック本でも読んでたらどうだ?」

ジョセフ「ン?あぁ…………そうじゃな」

承太郎「…………やはり、気になるのか」

ジョセフ「ああ。そう考えると『辻褄』が合うからな」

承太郎「……まずは『確認』が必要だ」

承太郎「オレの班の『あいつ』も協力してくれる。その時はその時だ、なんとかなるだろう」

承太郎「それよりも『DIO』だ。直接拳を交えた身からすれば、今のあいつは不気味でしょうがない」

ジョセフ「そうじゃろうな。だが…………ん?」


ジョセフ「DエリアとSエリアの監視カメラの映像が、停止している……?」

シャーッ


シャワー室からは水のはねる音が聞こえ、ほのかに甘い香りも漂っている。

マライアがこのシャワー室に入り、長い時間が経過していた。


億泰「そういや未起隆ってよ、最初に会った時……職業は『宇宙船のパイロット』って言ってたよなァ?」

仗助「ン、そうだっけか?おめーよくそんなこと憶えてんなァー」


シャーッ


億泰「…………」

仗助「…………」

億泰「なぁ、もうすぐよ……『集合』の時間、だよな?」

仗助「あぁ……そうだな、もうすぐだ」


シャーッ


億泰「だけどよォ、あそこ……けっこう『長い』よなァ?」

仗助「……あぁ、かなり『長い』な」

重ちー「長い?なんのことを言っているんだど?」

億泰「おお!?し、重ちーかよ!驚かすんじゃあねぇぜェ~~っ」

シャーッ


仗助「いいか重ちー……オレたちはこれから『人助け』をする」

重ちー「おお!それは良いことだど!」

仗助「実はな、あそこのシャワー室に女性が入っていったんだが……もう随分出てこない」

仗助「もしかすると何かしらの『トラブル』があったのかもしれん」

億泰「トラブル!それはイカんなッ!!」

重ちー「?」

仗助「つまり!女性の心配をし!トラブルがあったかどうか確認する為……」

仗助「シャワー室の隙間に目を近づけるのは!いけないことでしょおーーーか~~~~!?」

重ちー「な!?そ、それは『覗き』っていうんだどーーーッ!!?」


スッ、スッ


マライア「…………」

仗助「あ……」 億泰「あ……」


シャワー室の隙間から覗いた仗助たちの目と、中にいたマライアの目が合った。

マライア「…………」


億泰「つ、つい出来心でよォ~~~すみませんでしたッ!」

仗助「じじいや承太郎さんには言わないで……」


土下座する二人。

ガチャ… バン!

シャワー室の扉が開いた。そこから姿を現したのは……




首をもがれたマライアと、マライアの頭部を手にしたテラフォーマーだった。




重ちー「な……!?や、やばい!二人共逃げろォーーーッ!!」

億泰「? どうした重ち」  ザンッ!!



億泰は首を切断された。

重ちー「お、億泰ゥゥゥゥーーーーッ!!?」

仗助「『クレイジーダイヤモンド』!!」


クレイジーダイヤモンドが億泰に触れ、億泰の離れた頭部と身体が元に戻る。


億泰「う、うおお!?す…すまねぇ仗助!!」

仗助「ゴキ野郎……!まだ火星に着いてねェのに!ドララララァァーーーーッ!!!」


ドゴオォォンッ!!

クレイジーダイヤモンドの渾身のラッシュがテラフォーマーに直撃、頭部を吹き飛ばした。


TF「じょ……」 ドサッ

首から下だけの姿になったテラフォーマーは、その場に倒れ込んだ。

億泰「仗助!そっちの姉さんは無事か!?」

仗助「いま治してるぜ!!」

しかしマライアは既に絶命しており、蘇生することまでは叶わない。

仗助「……ダメだ、ちくしょう!!」



『緊急事態じゃ、艦内にテラフォーマーが侵入した』



仗助「!?」

重ちー「し、侵入!?宇宙にいるのに!?」

億泰「一体どうなってやがる!?」

仗助、億泰、重ちーの三人は艦内放送の流れるスピーカーに目を向ける。



その時、倒れた首無しのテラフォーマーが起き上がりつつあったことに、三人は気付いていなかった。

――倉庫



花京院「『装置』は既に全て破壊された後か!?ならば……」

花京院「エメラルドスプラッシュ!!」


液状の破壊エネルギーを宝石型に変えて放つ、ハイエロファントグリーンの必殺技。

その直撃を受けた二体のテラフォーマーであったが、まるで事も無げにしている。


TF「じょうじょ」 TF「じょじょう」


花京院「!?こ、このテラフォーマーはタダ者じゃあない!?妙に『ガタイ』もいいし……」

花京院(二匹共『縄』を腕に三本ずつ巻いているが……これは何か意味があるのか?)

TF「じょじょ」 TF「じょじょうじょ」

花京院「うう……ど、どうする!?」


イルーゾォ「花京院とハイエロファントグリーンだけ『許可』する!!」


ズギャアーッ


花京院は、鏡の中の世界に引き込まれた。

花京院「こ、これは……!?」

イルーゾォ「安心しな、ここはオレの許可なく入ることはできない『鏡の中の世界』」

イルーゾォ「別次元のシェルターみたいなもんだ。奴らに襲われる心配はない」

花京院「そ、そうか…………すまない」

花京院(鏡の中の世界を作るスタンドか。まさかこんな能力があったなんて…………あっ)



『鏡に「中の世界」なんてありませんよ……ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから』



花京院(あぁ~~~……へ、変な台詞を思い出してしまった…………)

花京院(…………まぁ、『スタンド』自体がファンタジーやメルヘンじみているし、ね?)

花京院(…………)

花京院(すまない、ポルナレフ……)

イルーゾォ「?」

――Dエリア



『侵入したテラフォーマーの数は7匹じゃ』

『ランキング40位以上のスタンド使いが対処してくれ』


床にはテラフォーマーの襲撃を受け、死亡したヴェルサスが横たわっている。


ウンガロ「クソが……!!」

露伴「戦闘は避けたいが、こうなれば仕方ない!『ヘブンズドアー』!!」


バラバラバラ!

露伴はヘブンズドアーによりテラフォーマーを『本』にした。

そしてそこに書かれていたのは……露伴にとっては未知の文字。


露伴(よ、良かった。犬や猫は本にできたことがあるが、テラフォーマーもできるとは……)

露伴「!?」

露伴「な、なんだこの文字は?」 パラ

露伴「…………ダメだ、解読できない。それに文字自体が少な過ぎる」 パラ

露伴( 『ξο』 という文字が多いようだが……)

ウンガロ「ん?その文字は……」


メギャアッ!!


露伴「!?」

ウンガロ「ぐぎゃああああああ!!?」

もう一匹いたテラフォーマーにより、露伴の背後にいたウンガロの胴体は真っ二つに折られた。


TF「じょうじょ」

露伴「し、しまった!?もう一匹いたのか!?」

テラフォーマーが露伴の首をつかみ、身体を持ち上げる。

露伴「ぐ……!?」

露伴(く、くそ……『本』に…しな…けれ……ば…………)


ダラン…

突如、目の前のテラフォーマーは掴んだ手の握力を『緩め』、だらしなく腕を振り下ろした。


ドサッ!

その結果、露伴の身体が地面に落ちる。

露伴「ぐ…ゴホ!ゴホッ!……ど、どうしたというんだ!?」

露伴(な…『何か』がテラフォーマーの周囲を飛んでいる……!?)



「人が『怒る』のは、理性に負けたものを埋め合わせる為だ……」

「だが、オレは今『負けて』も構わねェ……」

露伴「あ、あれは……!?」



リキエル「よくも……よくもヴェルサスとウンガロをッ!!!」

リキエルがその『スタンド能力』により、地球から連れてきた生物の名は『ロッズ』。


ロッズはテラフォーマー胸部の『食道下神経節』周辺の『体温』を奪っていた。

これにより、テラフォーマーは体のバランスを崩したのだ。

しかしバランスを崩しただけであって、生体活動を停止させるまでには至っていない。


リキエル「倒すことまではできないか!?早く離れろ!!」

露伴「あ、あぁ!」


露伴が立ち上がる。

しかし先程まで本にされていたもう一体のテラフォーマーが、露伴の目の前に立ちふさがった。

ロッズがこのテラフォーマーにも襲い掛かるが、体温を奪いきれない。


リキエル「『一点』!正確に狙えているのに……!?」

リキエル「ちくしょう!オレにはこの程度の足止めもできない…………!!」

リキエル「オレは……オレは……こんなにも『無力』なのかッ!!?」



「いいや『十分』だ。よくやってくれた」

リキエル「え!?」


リキエルの背後から声が聞こえた。次の瞬間――



バゴ!ドグォンッ!!  ドゴ!ドグシャア!!



二体のテラフォーマーが『複数』の打撃を受け、その身を四散させた。

まるで『時が止まり』一斉に攻撃を加えられたかのような――


寸分たがわぬ『同時攻撃』


リキエル「こ、これは……!?」

露伴「た、助かった……」

安堵から、露伴はその場に思わずへたり込む。




承太郎「やれやれだぜ」




氏名:空条承太郎  年齢:41歳

マーズランキング:5位(アネックス1号副艦長 兼 第二班班長)

スタンド名『スタープラチナ』 近距離・時空間干渉・直接攻撃型

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。

――倉庫



イルーゾォと花京院は、鏡の中から二匹のテラフォーマーの行動を観ていた。

倉庫内をあらかた荒らし尽くした後も、まるで『何かを探す』ように周囲をうろついている。


イルーゾォ「クソ……これでテラフォーマーには『スタンド』で立ち向かうしかないな」

イルーゾォ「厄介なことになってきた……」

花京院「…………」

花京院(……そういえば、先程もそうだ。テラフォーマーたちは『ぼく』を狙っていたわけではなかった)


『装置』を破壊しに来たのか?

『何か』を探しに来たのか?

だとすればそれは一体『何』だ?

例の『20年前』の時と同じ個体なのか?

こいつらの屈強な体格を作った要因は何だ?…………バグズ2号で飼育していた『カイコガ』か?

そもそも、いつから居た?

どうやって入った?


頭の中では様々な疑問が浮かんでは消えずに溢れ返っていたが、

花京院が最初に呟いた一つの疑問は、意外にも核心を突いていた。



花京院「こいつらは、何の命令で動いているんだ……?」

ガチャッ


花京院「!? 誰か部屋に入ってきたのか!?このテラフォーマー二匹相手では危険だ!」

花京院「イルーゾォ、誰が部屋の中に入ってきたかわかるか!?」

イルーゾォ「…………大丈夫だ花京院」

イルーゾォ「この『二人』なら問題はないだろうよ……!」


イルーゾォの言葉通りだった。

鏡の外では、その『二人』の手によって既にテラフォーマーが始末されていた。


ドサ、ドサッ…


プッチ「……やはりゴキブリ相手では、攻撃力に若干の難があるか」

DIO「謙遜するなよプッチ。瞬く間に始末したではないか」

プッチ「フフ、それはこっちの台詞だ。君は時を止めてさえいないだろう?」


プッチ(……さすがは『最強』のスタンド、『ザ・ワールド』だ)

DIO(……さすがは『最強』の称号を持つスタンド、『メイドインヘブン』だ)

『M.O.手術者』のランキング15位以内の者の中には、

『己の技術』か『己の能力を最大限に活かす』という条件付きで、『武器』の携帯が許可されている者がいた。


今回のスタンド使いたちの中にも、同様に『専用の武器』を携帯する者たちが何人か存在する。


イルーゾォの『鏡』や、ミスタやジョンガリAの『音声認識銃』、等がそうである。

ランキングの縛りはなく、ミスタのように下位ランクであろうと、専用武器を所持している者もいる。

その中に一つ、異色の武器が存在する。



『なんでも食べる――』

ゴキブリの雑食性についてはもはや新たに語る必要はない程、広く認知されているが、

その中で彼らが特に好む物がある。澱粉、油脂、肉、チーズ等がそうだ。

それらを混合し作られた、テラフォーマーの『食欲』を強く刺激する為だけの――



            『団子』



このテラフォーマー用のただの『食糧』も、専用武器の一つである。

――通路



『ある所にとても仲のいい兄弟がいました』

『兄弟は火星への着陸を目前にして……』



『怪物に追われてしまいます』



『兄弟は大アワテ!でも落ち着いて床を見て……』

『「団子」が落ちてる方向へ逃げましょう』


オインゴ「あれはデーボ!?おまえさんも逃げた方がいいぜェーーーッ!!」

デーボ「…………あぁ」

TF「じょじょじょう」

オインゴ「う、うおおおお!!?こっちに来やがった!あ、あれはッ……『団子』か!!」

ボインゴ「こっちだよ兄ちゃん!」

オインゴ「おいボインゴ!次の予知はまだか!?」


TF「じょうじょ」 ヒョイッ パク


オインゴ「だああああ!!逃げきれねェーーーッ!?」

ボインゴ「で、出たよ!予知が!こ、これは……!!」

『その怪物を……』

『オインゴたちの仲間が、一撃で「爆破」します』

『ラッキー!労せず撃破だァーーーッ!!』



カチッ――  バグォオンッ!!



オインゴ「おおおお!!!」

オインゴ(あ、あれ……?あの男の宇宙服、あんな『デザイン』だったか……?)

ボインゴ「た、助かったね兄ちゃんッ!!」



吉良「……残念だったなゴキブリ、ここは貴様の食卓ではない」




氏名:吉良吉影  年齢:33歳

マーズランキング:21位(第二班) 専用武器:テラフォーマー用『団子』

スタンド名『キラークイーン』 近距離・特殊攻撃型

――シャワー室前



仗助だけが言いようのない空気を感じ、後ろを振り向いた。

背後に迫る首無しテラフォーマーの姿が、目に映る。


仗助「……な!!?」

仗助(首がなくても動き続けている……だと!?)


仗助めがけ、テラフォーマーの腕が振り下ろされる。

やばい―― 仗助にその腕が直撃するよりも早く……



テラフォーマーはバラバラになった。



仗助「!!?」

バラバラになったテラフォーマーの背後には……

兜を目深に被った人型のスタンドと、おかっぱ頭の男性が立っている。



ブチャラティ「月夜に釜を抜かれたか?油断するなよ、仗助」




氏名:ブローノ=ブチャラティ  年齢:20歳

マーズランキング:14位(第四班、班長)

スタンド名『スティッキィ・フィンガーズ』 近距離・特殊攻撃型

ブチャラティ「憶えておくといい」

ブチャラティ「テラフォーマーどもは、胴体のコントロールを頭部ではなく……」

ブチャラティ「胸部の『食道下神経節』に任せている」

ブチャラティ「故に、首が切り離されても身体だけで活動を続ける事がある」

ブチャラティ「『食道下神経節』が無事で、テラフォーマーが持つ肺の入り口が開いている限りはな」


なお地球のゴキブリも、頭を切り落としてもしばらくの間は生き続けることがある。

その期間は9日だったり、1~2週間だったり、または27日だったりと、

学者によって生存期間の主張には差異がある。


ブチャラティ「だから……頭部ではなく『喉』を潰せ」

ブチャラティ「テラフォーマーは酸素取り込みの大部分を、『肺』に頼っているからな」

仗助「なるほど……喉ですね。了解っス!」

ブチャラティ「……他にテラフォーマーを見てはいないか?」

億泰「他には見てな」




         ドオオオン!!!!

突然発生した爆音と、艦体を激しく揺さぶる衝撃。


億泰「いいいいィィィイイ!!?」

重ちー「おぁあああああ!!?」

仗助「い、今の衝撃は!?」

ブチャラティ「艦体にこれ程の衝撃が走るとは…………」

ブチャラティ「考えられるのは……エンジントラブルか!?」



『――通達じゃ』

『現在メインのエンジンに支障をきたし、本艦は徐々に火星地表へと下降している』

『本艦での安全な着陸は困難となった為……』



『これからプランε(エプシロン)へ移行する』

『「護衛班」を除く各員は、ただちに脱出機格納エリアへ移動せよ』


ディアボロ(『プランε』だと?安全な着陸は可能なはずだろう?なぜ『困難』と言った?)

ディアボロ(……『危険』があるとでもいうのか?)

ディアボロ(ジョセフだけが知っている『何かの危険』が……)

ディアボロ(…………)

ディアボロ(いまいち腑に落ちない判断だが、まぁいい)

ディアボロ(わたしにとっては好都合だからな)



『プランε』とは、7つの班に分かれ、アネックス護衛班を除く6班が高速艇で脱出を図る作戦である。

『プランδ(デルタ)』同様、非常時のプランであり、脱出した6班は後にアネックスへ集合する。


今回新たに追加された『全滅を避ける為』のプランである。

ゴゴゴ…ゴゴゴ……!!


F・F「プランεか、慌ただしくなってきたぜ!」

徐倫「エンポリオ、気を付けてね」

エンポリオ「うん、お姉ちゃんこそ……」

エンポリオ「ウェザー、アナスイ。お姉ちゃんと合流することがあったら……」

アナスイ「わかっている。今度こそ…………徐倫を守り通すさ」

ウェザー「ん、あれは…………」

エルメェス「もう時間がない!格納庫へ急ぐぞ!」


DIO「ファッツ、ケニーG」

アラビアファッツ「ハッ!」 ケニーG「ハッ、DIO様!」

DIO「信念さえあれば、人間に不可能はない」

DIO「我々の帰る場所を……守ってくれよ」

アラビアファッツ「!?」 ケニーG「!?」

アラビアファッツ「ハ、ハイ!この命に代えましても!」

ケニーG「かしこまりました!必ずやDIO様の期待に応えてみせます!」

エンヤ「…………」

プッチ(わたしの能力が、単に『自身の動きだけを加速する能力』になっている)

プッチ(この『世界』を加速させたり『一巡』させることができないのは……なぜだ?)

プッチ(召喚された『目的』を……果たす必要があるのか?)

ウェザー「…………プッチ」

プッチ「ウェザーリポート、か……」

ウェザー「この世界は、おまえが生み出したものか?」

プッチ「いや……『わからない』。だがわたしの能力の影響による可能性もある」

ウェザー「…………」

プッチ「しかし、そんなことはそれ程重要ではない。600年後のこの世界に『スタンド使い』は一人もいない……」

プッチ「我々は何かの『必要性』があって、この世界に召喚されたとわたしは考えている」

プッチ「我々全員が、召喚された場所や条件が『同じ』という点は…………ただの偶然ではないだろう」

ウェザー「……おまえは、『味方』だと考えていいんだな?」

プッチ「当然だ。わたしは人類の平和を考えている聖職者。世界が変わろうと、その理念は変わらない」


アナスイ「何をやっているウェザー!てめーもだプッチ!行くぞッ!!」

ウェザー「…………あぁ、今行く」

プッチ「…………」

>>76
ここは基本的に支援は要らないぜ?
連投規制はほとんど起こりえないからな

>>77
ところが、現状連投規制にひっかかっております。
これには私も驚きました……

ちなみに別スレにてわたしが支援を依頼し、今助けて頂いているところなんです。

DIO「? ダンとデーボはどうした?」

カメオ「あ……デーボは来ました!おいデーボッ!!ダンはどうした?一緒じゃないのか?」

デーボ「…………ダンは、殺されまた」

グレーフライ(!? おいおいおい!『殺されました』、だろうがァ~~!)

ラバーソール(こ、こんな時に噛むんじゃあねーよ……!デーボってこんなキャラだったのか?)

テニール「そ、それとご子息のお二人。ヴェルサス様とウンガロ様も……こ、殺されました…………」

DIO「なに!!?」

DIO「…………そうか、ダン、そしてヴェルサスとウンガロが……」



第一班、班長:ジョセフ=ジョースター 計10名(匹)
※ヴェルサス死亡、ウンガロ死亡

第二班、班長:空条承太郎 計12名

第三班、班長:ディアボロ 計8名

第四班、班長:ブローノ=ブチャラティ 計8名

第五班、班長:DIO 計9名
※ダン死亡

第六班、班長:エンリコ=プッチ 計9名(羽)
※マライア死亡

アネックス護衛班、班長:プロシュート 計10名



ジョセフ「……全員、準備はできたな?」

ジョセフ「同時に迎撃されるのを防ぐ為、6方向に高速艇は射出される」

ジョセフ「着陸後は無線で連絡を取り合い、本艦へ集合する。いいな?」


承太郎「了解」 ディアボロ「ああ」 ブチャラティ「了解です」 DIO「……ああ」 プッチ「わかった」

ディアボロ(『今』ここでやるか?…………いや、やはり『個別』にだ)

ディアボロ(これだけの数の能力者がいれば、想定外の事態になるかもしれん)

ディアボロ(……せっかくのプランε、せいぜい利用させてもらうぞ)

ブチャラティ「…………」

ブチャラティ(ディアボロ、何か企んでいるのか……?)


プッチ「DIO、どうか無事で」

DIO「君の方こそ。ヴァニラアイスたちは頼りになる部下だ、よろしく頼む」


承太郎「じじい。何かわかればすぐに知らせろよ」

ジョセフ「おまえこそな…………死ぬなよ、承太郎」



承太郎「また、地上で会おう」




護衛班の10名を降下中のアネックスに残し、6つの高速艇が火星の空へ射出された。

――こちらは、現在降下中のアネックス1号。あと1分後には、火星地表に墜落する。



ミューミュー「うげッ……!見ろよ、艦の窓にへばりついてるあのゴキブリどもを!!」

未起隆「熱烈ですね。マゼラン星では、アイドルに群がるファンは大体あんな感じですよ」

ミューミュー「? 何言ってんだおまえ……?」

エンポリオ「ちょっと二人共!今けっこう危機なんだから、余計な話は控えてよ!!」

艦の姿勢制御を一手に任されたエンポリオが、パネルスイッチを叩きながら叫んだ。


トリッシュ「プロシュート!射程内の箇所は大体『柔らかく』し終わったわ!」

プロシュート「よし……間もなく地表だ、頼むぞエンポリオ。総員対ショック姿勢!!」



元々アネックス1号は、墜落しても大破しない程度の頑強さは持っている。

しかし航行ができない程の損傷を被る可能性は十分にあり、墜落の被害を軽減するにこしたことはない。


そこで『スパイスガール』で船底を『柔らかく』し、墜落の衝撃を可能な限り緩和するのだ。



残り3秒…2秒…1秒…  アネックス1号、火星地表へ――




           墜落

        ズズ……ン!!!!!


『スパイスガール』による防柔策は、墜落の衝撃を予想以上に和らげた。


エンポリオ「ふぅ……な、なん…とか…………」

ポルポ「柔らかいという事は、ダイヤモンドよりも壊れない……ってことかな?ブフゥ~~~~」

プロシュート「……全員無事だな?これより、アネックス1号の護衛任務に移行する」


プロシュート「まずは周囲にいるテラフォーマーを、全て片づけるぞ」




TF「じょ……」 TF「じょうじょ……」 TF「じょじょじょ……」


宇宙船の外壁にへばりついていたテラフォーマーも、それを周囲から見ていたテラフォーマーも……

周辺にいる100を超える全てのテラフォーマーが、足取りを緩め、また、止め始めた。

宇宙船が無事着地したことに驚いている…………わけではない。


自分たちに『ある変化』が起こり始めたことにより、歩みを止めたのだ。

TF「じょうじょじょ……」


テラフォーマーたちに痛覚は存在しない。

つまり、『痛い』だとか『苦しい』という事を感じないのである。

仮に彼らに痛覚が『あったとしたなら』、このような感情を共有しているはずだろう。



          『苦しい』、と。



宇宙船の頭上には、周囲を明るく照らす『それ』がある。


アラビアファッツ「太陽のような『それ』を、スタンド使いでないおまえらは視ることができん」

アラビアファッツ「…………だが、『サン』は動かない」


紫外線を放出しない『疑似太陽』のスタンドにより、周辺の外気は摂氏『70℃』に上っていた。




ゴキブリは『変温動物』である。

暑さには案外弱く、気温が45℃以上になると死ぬ個体も出てくる程だ。

しかしこれは地球にいるゴキブリの話である。

火星のマイナス50℃という寒さに適応したテラフォーマーたちはどうか。


この程度の温度に、根をあげることは『ありえない』だろう。

白煙が辺りを包む。



全身に大きな目がある、亜人型のスタンド。

そのスタンドから『白煙』がこんこんと噴き出ている。

射程範囲内のあらゆる生物を無差別に『老化』させる能力。


変温性により体温の上昇したテラフォーマーは『より早く』、その老化の能力に身体を蝕まれる。


宇宙船の周辺にいたテラフォーマーが老衰により朽ち果てていく。

TF「じょ……」 TF「じょうじょ……」 TF「じょう……」 TF「じょじょう……」


ドサドサ、ドサドサッ……


一匹、また一匹。その命が尽き、火星の地に黒い塊が次々と倒れ込む。



そして……

レーダーに映る生体反応の数は、瞬く間にゼロとなっていた。

100を超える数のテラフォーマーの『屍』が、出来上がったのだ。



プロシュート「ベネ(良し)、周囲のゴキブリどもは掃滅した」




氏名:プロシュート

マーズランキング:11位(プランεアネックス護衛班、班長) 専用武器:小型冷却剤

スタンド名『ザ・グレイトフル・デッド』 近距離・特殊攻撃型

ID:v1SLcSUro 様 をはじめ、
支援レスを頂いた皆様、本当にありがとうございました!
おかげ様で予定分投稿が終了しました、助かりました。

ちなみに過去何度かSSを投稿したことがあるのですが、
規制にひっかかったのは今回が初めてです。なので非常に焦りました……
(以前はイーモバでも大丈夫だったのですが……)


ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。

ケニーG「す、すげェ!!2600年製の蚊取り線香だってこう上手くはいかねーだろう……!」

ペッシ「さすが兄貴はスゲェーやッ!!」

アラビアファッツ「!? い、いや!まだだッ!!」


艦内にいるプロシュートの背後に、1匹のテラフォーマーが忍び寄っていた。

グレイトフルデッドにより若干老いてきているとはいえ、艦内は空調が効き涼しい。

人間を殺すのに充分なスピードを、このテラフォーマーはまだ有している。


ペッシ「やべえ!?ビーチボー……」


しかし老化がなく万全の状態であろうと、テラフォーマーのスピードでは決して勝てない相手がこの艦にはいる。

そう、『クレイジーダイヤモンド』をもスピードで上回る、あのスタンドが……


「スロー過ぎる!いきなりマックスだぜッ!!」

ズドッ! ズドォンッ!

『レッドホットチリペッパー』の強烈な拳撃が、テラフォーマーに直撃した。


TF「じょ……」

音石「トリッシュ!『網』だッ!!」

トリッシュ「わかってる!」 ドパァッ!


トリッシュが銃の引き金を引くと、銃口から網が飛び出した。

チリペッパーの打撃を受け怯んだテラフォーマーは、網により容易く捕獲された。


トリッシュ「ふぅ……まずは一匹、捕まえたわ」

プロシュート(音石、そしてトリッシュ……この二人の能力と判断力は……)

プロシュート「…………二人共さすがだ、皆もよくやってくれた」



<アネックス護衛班>

プロシュート、ペッシ、ポルポ、トリッシュ=ウナ、エンポリオ=アルニーニョ、

ミュッチャー=ミューラー、ケニーG、アラビア=ファッツ、支倉未起隆、音石明、計10名。



プロシュート「アネックスの護衛を第一に、サンプル確保の任務を続行する」

『奇妙(ワカン)』 『大いなる(タンカ)』


『我らの <詩> が響く時』



<この大地は先祖からの贈り物ではなく、子孫からの預かり物>



『77の英霊達をこの地へ導く……召喚が起こった』



『捧げよ(オファー)』


『与えよ(ギブアウェイ)』


『すべての存在と繋がっている』


『だが、英霊達が何を為そうと……』


『この第4の世界の滅亡は……』



『避けられない』

……


第二班の高速艇はパラシュートを開き、機体を停止させた。


花京院「ふぅ……いきなり囲まれるということにはならなかったか……」

噴上「だが、三匹程テラフォーマーがいるな」


TF「…………」 TF「…………」 TF「…………」


露伴「監視か?警戒しているのか?いきなり襲ってくる様子はないが……」

徐倫「ゴキブリに見られてるのは、気分が良いものじゃあないわね」

形兆「あの三匹は……手足をもいで、捕獲しよう」


形兆がそう言い、高速艇の中から『バッドカンパニー』を繰り出した。


億泰「兄貴、気を付けて……!」

形兆「大丈夫だ、そもそも奴らは『スタンド』に触れることができん」

承太郎「頼んだぞ、形兆。オレは他班と連絡を取る」



承太郎「こちらは第二班、空条承太郎。各班着陸成功の旨、連絡せよ」

……


『――空条承太郎。各班着陸成功の旨、連絡せよ』


プッチ「早いな。我々もそろそろ着陸を………………なに!!?」


プッチの目の前には、高速艇を捕獲する為の大型の『網』が張られていた。

網の先端には巨石がいくつも付けられており、絡めとられれば自由には動けないだろう。


プッチ「う、おおおおお!!?」


ズザザザザ……!!!


高速艇は……網によって捕えられ、不時着した。

辺りには、300を超える数のテラフォーマーの姿が見える。


ホルホース「おいおい……随分とお熱い歓迎じゃあねーか」

アレッシー「……ぜんっぜんエラくないぜッ!」

ペットショップ「…………」

プッチ(ゴキブリが『網』を使う……か)

プッチ(20年前にも『知能の高い個体』がいたと聞いていたが……)

プッチ「我々がハズレを引いたとでも思っているのか?」



プッチ「残念だが…………ハズレを引いたのはゴキブリども、おまえらの方だ」

ヴァニラアイス「プッチ様。御指示をお願い致します」

プッチ「ンドゥールは索敵、ホルホースとアレッシーは高速艇内で防衛だ」

プッチ「わたしとヴァニラアイス、ペットショップで奴らを殲滅する」

プッチ「チャカは……テラフォーマーの動きにはついていけるか?」

チャカ「はい。そして、奴らを簡単に倒せる『策』も、一つ考えてあります」

プッチ「『策』だと?」



オインゴ「……やはりオレたちは戦力外みたいだな」

ボインゴ「当然でしょ。お、新しいページが…………あらわれたゾ」 ペラ

ボインゴ「え……!!?」

ボインゴ「に、兄ちゃん!!大変だ!!!こ、これッ!!!」

オインゴ「? どうしたボインゴ?そんなに慌てて……」


オインゴ「……な、なに!!?この『予知』は…………馬鹿なッ!!?」



『ボインゴたちはテラフォーマーたちに囲まれてしまいました』

『みんなは必死に戦います』

『SOSも発信しました』


『だけど、現実は非常だよね』

『ボインゴもオインゴも全身バラバラ!』






『第六班はここで全滅だァーーーッ!!!』

……


チョコラータ「…………とりあえず、いきなり囲まれなくてよかったな」

ホルマジオ「囲まれてはいないが……三匹のテラフォーマーが見えるぞ」

ディアボロ「三匹か。……ギアッチョ、全て捕獲してこい」

ギアッチョ「OK、ボス」

リゾット「メローネ、『追跡』はできているな?」

メローネ「あぁ……既に追跡は始まっている。ベイビィフェイス、今はどこにいる?」


『今は高速艇内の物質に化けています、まだ着陸しておらず、現在は移動中です』


リゾット「わかった。情報は逐一報告してくれ」

ディアボロ「……さて、お待ちかねの時間はもうすぐだ」

ディアボロ「セッコ、ホルマジオ、『準備』を始めろ」

ディアボロ「イルーゾォ、『スクアーロとティッツアーノ』に連絡を繋げ」

――アネックス1号内 ディアボロの部屋



ホルマジオが『小さく』し、この部屋に持ち込んだものがある。

それは『亀』。亀が持ち込まれたことを、第三班以外のメンバーは誰も知らない。


スクアーロ「この『亀』の中、けっこう居心地は良いが……」

スクアーロ「さすがに40日間も同じ景色というのは、退屈なものだ」

ティッツアーノ「スクアーロ、ボスから指令だ」

スクアーロ「きたか、どれどれ……」



         『今夜、決行せよ』



スクアーロ「……了解だ。ポルポも始末するんだったな?」

ティッツアーノ「あぁ。自殺し……かつそれを言い訳するような脆弱な男だ、必要ないということだろう」

スクアーロ「よし、今は護衛班しか艦内にいない。まずはプロシュートとペッシと協力し…………」


スクアーロ「アネックス1号を乗っ取る」

……


ミスタ「そもそもよォ~~……なんでオレが『四班』なんだよ」 ブツブツ…

アバッキオ「……今更文句を言ってもしょうがねェだろうが」

ジョルノ「ミスタの運が良い悪いは知りませんが……着陸地点に一匹もゴキブリがいないのは幸いでしたね」

ブチャラティ「そうだな、他班も無事だといいが……」

ナランチャ「なぁフーゴォ~~、なんで奴らは人間みてーな見た目をしてるんだ?」

ナランチャ「それによ、あんな小さいゴキブリが、あんなでっかくなれるもんなのか?」

ナランチャ「それによ、あんな……」

フーゴ「ナランチャ、質問は一つずつにしてください」

ナランチャ「そ、そうか。わりィ…………」

フーゴ「いいですかナランチャ。その二つの質問には、明確な答えを出せません」

フーゴ「……これからぼくが言う話は、全て想像の話になります」


フーゴ「まず仮説①。『何者』かがゴキブリの進化を促したという説」

フーゴ「次に仮説②。『何か』がゴキブリの進化を促したという説」


ナランチャ「ンン?『何者』って誰だよ?『何か』って何だよ?」

ジョルノ「興味深いですね。『何か』というのは例えば……『ナノマシン』とか?」

ブチャラティ「では『何者』かというのは……宇宙人かな?」

ミスタ「? なんでゴキブリが勝手に進化したって考えはないんだ?」

フーゴ「自然の中の進化では、絶対にあんな筋骨隆々に進化することはないんです」

フーゴ「特に、ゴキブリが火星に放れたのは2077年。まだ500年ちょっとしか経っていない」

フーゴ「にも関わらず、高い学習能力、人間への攻撃性、そして敏捷性や戦闘力を持つ。これは……」


フーゴ「明らかに『人為的』な変化が加わっている」

……


ジョセフ「……テラフォーミング計画により、火星は飛躍的に暖まった」

ジョセフ「が、それでも現状はアンデス山頂程度の酸素濃度しかない」

ジョセフ「何度も言ったように、この環境下での作業は体への負担が大きいわけじゃ。重力も地球と違うしな」

ジョセフ「……もし宇宙服を損傷した場合の活動限界時間は3時間じゃ」

ジョセフ「それを過ぎる前に、必ず高速艇に戻ること」

ジョセフ「まぁ……そんなに長くテラフォーマーと交戦することもないだろうがなァ~~」


イギー「!」

ポルナレフ「ジョースターさん……あ、あれを!!」

ジョセフ「ん?おお……」



ビュオオオオオオ……



巨大な『建造物』の横を風が滑りぬける。


第一班の前にあるその建造物は…………二つの『ピラミッド』。

エルメェス「うおお……ホントにあったな!!」

ウェザー「レーダーに反応は無し。ゴキブリがこの場所に屯してないのは意外だが……」

ポルナレフ「まぁ、いないならそれにこしたことはないな」

イギー「!? ウゥ……ワン!ワンッ!!」

F・F「?」

アヴドゥル「どうしたイギー?辺りにテラフォーマーはいないが……」

リキエル「いや、あそこに一匹いるぞ!!」


TF「…………」


ジョンガリA(…………いつの間に?一瞬でそこに現れたようだった)

アヴドゥル「あのゴキブリが腕に巻いているのは……『縄』か?」

ジョセフ「よし、一匹なら問題はないじゃろう。『捕獲』に移る」


ジョセフをはじめ、第一班全員がテラフォーマーと相対する。

ジョンガリA(…………)

ジョンガリA(DIO様に仇なすジョースター。このゴキブリよりも憎むべき存在『だった』が……)

ジョンガリA(DIO様は『恨みはもうない』と……)

ジョンガリA(そして、こうもおっしゃっていた)


『こんな誰とも知らん人間共の為に?そうだな、ジョンガリA…………君の言うこともわかる。だが……』

『知らない人間たちだろうが、わたしには「戦う理由」がある』


ジョンガリA(…………ならば、私も一切の怨恨を拭い捨て、『DIO様の為』に……)

ジョンガリA(そして『人類の為』に、己の力を使おう)

ジョセフ「ジョンガリA、『網』を使わせれば君が一番だ。任せて…………いいな?」



ジョンガリA「……あぁ、任せてもらおう」




氏名:ジョンガリ=A

マーズランキング:70位(第一班) 専用武器:音声認識銃

スタンド名『マンハッタン・トランスファー』 遠距離・物質操作攻撃型

テラフォーマーが、ジョンガリAにゆっくりと近付く。


ジョンガリA「『対テラフォーマー発射式蟲獲り網』…………照準、固定」


ゴキブリは『赤色』を認識できない。

夜間活動中のゴキブリに光を赤くした懐中電灯を照らしても、ゴキブリは逃げない。

光がないのと同様だからだ。

そこで網を放つ『筒』の照準器には、『赤色』のセンサーが使われている。


ジョンガリA「ターゲット、捕獲」


そう言いジョンガリAが引き金を引く前に、

超加速をしたテラフォーマーが、ジョンガリAの頭部を――




もぎ取った。




ポルナレフ「な……なにィ!!?」

アヴドゥル「こ、この『ジェット噴射』のような爆発的なスピードは!!?」

ジョセフ「まさか『技術(バグズ手術)』を…………」


ジョセフ「『盗み(うばい)』……おったのか!!?」

TF「じょうじょ……じょじょじょ」


テラフォーマーはジョンガリAの頭部を投げ捨て、今度はジョセフに視線を向けた。


エルメェス「ジョースターさん!下がってッ!!」

TF「…………!」 ピクッ

ジョセフ「わしを狙っておるようじゃ、その必要はない」

アナスイ「何を言ってる!あんたのスタンドは『ただの茨』だろう!!?」

アナスイ「ランキングも『60位代』だ!!殺され……」


このテラフォーマーの高速移動術は、20年前の『バグズ2号』の遺品。

バグズ手術、『メダカハネカクシ』の能力である。


アナスイが叫ぶ最中、テラフォーマーが超加速をし、ジョセフにその腕部を……




叩きこんだ。




エルメェス「ジョースターさん!!?」

ウェザー「い、いやこれはッ!?」

――地球 某会議室



室内には、各国の首相が集まっている。米国、中国、日本、ロシア、ドイツ、ローマ連邦。


米国首相「さて、『プランε(エプシロン)』だそうで……」

ローマ首相「倉庫の『装置』が全て破壊されたそうですからね。全滅を恐れたのでしょうが……」

ドイツ首相「そもそも、なぜテラフォーマーが艦内に侵入できたんでしょうね?」

中国首相「…………まぁ、ゴキブリはどこにでも入り込んできますから」

米国首相「宇宙空間のアネックスまで飛来してくるとは……我々も想定外でしたが」

ロシア首相「想定外といえば、墜落したアネックス1号が無事と聞いた時は驚きました」

中国首相「そうですね、わたしもスタンド能力の『有益性』を再認識しましたよ」

ローマ首相(…………それはまずい傾向だな)

日本首相「…………」



「首相の皆様、財団の代表者が間もなく到着致します――」

米国首相(…………来たか。財団がウィルス研究の助力という立場から……)

米国首相(まさかこうまで圧力をかけ、計画を主導するまでに至るとはな)


中国首相(我々がゴキブリどもに『情報』を流していたことは、推測はできても確証は持てんはずだ)


ローマ首相(他国がスタンド使いへの欲を出さない程度に、情報を聞き出させてもらうとするか)


日本首相(2年かけるはずの計画を、半年しか費やせず実践に駆り出されるところだった)

日本首相(その点に関しては…………財団に感謝せねば)


ドイツ首相(さて、聞かせてもらいましょうか)


ロシア首相(今回の財団の『目的』を……)


カツカツカツ…


会議列席者『最後の一人』が二人の男性側近と共に現れ、円卓テーブルの一つの席に腰を下ろした。

彼こそが、財団の代表者である。

そして彼が発した『名前』に、各国首相は吃驚する。



スピードワゴン「初めまして。668年後の世界の友人たちよ」

スピードワゴン「わたしの名は、『ロバート=E=O=スピードワゴン』」

本日はここまでです。
支援レスを頂いた皆様、本当にありがとうございました。

次回投下スケジュールが決まりましたら、改めてこちらで告知いたします。
それでは、またよろしくお願いいたします。

ここまでご覧頂きありがとうございました。

ジョセフ「次にお前は『じょじょうじょうじょうじょじょうじょ、じょうじ』と言う」

TF「 じょじょうじょうじょうじょじょうじょ、じょうじ」

TF「はっ!?」

財団の本来の代表者はただの研究者である。

策謀の世界で騙し合う(たたかう)政治家と違い、はっきり言えば……『愚直』

首相たちはそう見下していた。


しかし、この老紳士が纏う空気、眼差し、そして『嗅覚』は…………まさしく『歴戦の勇士(せいじか)』同様。


ローマ首相「…………は?」

ローマ首相(お…おいおいおい!!この空気感……モノホンの『創設者』までいるのか!!?)

ドイツ首相「冗談ではない…………ようですね」

スピードワゴン「ええ、このような場でいきなり戯言は言いませんよ」

米国首相「お会いできて光栄です。ミスタースピードワゴン」

日本首相「…………」

中国首相「……あなたも『スタンド使い』の一人なのですか?」

スピードワゴン「いいえ、わたしは違います」

スピードワゴン「わたしは召喚された者たちの中で、唯一スタンド使いではなかった者です」

側近A「…………」 側近B「…………」


スピードワゴン「……まずはわたしから話をさせて頂きましょう」

スピードワゴン「今回、『スピードワゴン財団』が計画に多額の資金を提供し、計画の主権を担った経緯……」

スピードワゴン「そしてその理由についてを」

スピードワゴン「わたしや、アネックス1号に乗り込んだメンバーたちは皆……」

スピードワゴン「ある部族の集落で、600年以上前の過去から『召喚』されました」

ローマ首相「部族……?」

スピードワゴン「ええ。その部族の名は、アメリカインディアン『ホピ族』」


ホピとは、彼らの言葉で『平和の民』という意味である。

マヤ文明の末裔と言われ、多くの『予言』を的中させてきた部族として知られている。


米国首相(『予言』の彼らか……)

スピードワゴン「彼らが一つの『詩』を歌った時に、我々が召喚されたのです」

スピードワゴン「その『詩』は……」



<この大地は先祖からの贈り物ではなく、子孫からの預かり物>



スピードワゴン「……こういうものです」

スピードワゴン「我々も、どういう方法で、どういう理由でこの世界に来たのかはわからない」

スピードワゴン「だがこの現象を鑑みるに『理由』については推測できる。それは……」


『欲しい』――


中国首相「『あなたたちがウィルスやテラフォーマーと戦う為に、召喚された』」

中国首相「…………というわけですか?」


『欲しい』――


スピードワゴン「……そうです。そう考えています」

中国首相「確かに、我々の先祖であるあなた達が火星にゴキブリを放った  『  せ  い  で  』  」

中国首相「あなた達の子孫であるわたしたちは、現状未知のウィルスに蝕まれて……いますからねェ」

ローマ首相(こいつ……『噛み付き』やがった!?世界中に影響力を持つ、財団を相手に…………!!)

中国首相(『欲しい』―― ファーストもセカンドも、そして……)



中国首相(『スタンド使い』たちも)

日本首相「…………」

中国首相「我々からの『預かり物』を綺麗にして頂く、と。なるほど…………こういう理由でしたかァ」

ローマ首相(……いや待てよ、それは違うだろう!?)

スピードワゴン「…………」


……が、咬み付いたかに見えた牙は、的を『外していた』。


おまえらのせいで、未来の地球は大変だ。ウィルスに、殺人ゴキブリ。

ケツは自分で拭け。責任をとれ。責任をとれ。しかし……


ジョセフたちにこの『責務』はあるはずがない。それは単純な理由。『時代』が、違う。


米国首相(……財団に難癖をつけ牽制しておきたいのだろうが、それは的外れだ)

日本首相(記録によると、スピードワゴンが1952年没、空条承太郎らが2012年没)

日本首相(その考えだと、『60~120年程の誤差』がある。ゴキブリが火星に放たれたのは、2077年だ)


日本首相(彼らとテラフォーミング計画は『関係ない』。だが……)



だが、それでも…………  『違和感』があった。



ロシア首相(……しかし、引っ掛かるのはスピードワゴンの反応だ)

ロシア首相(『ウィルスやテラフォーマーと戦う為に、召喚された』、この理由を認めている)

ロシア首相「スピードワゴンさん……」

ロシア首相「あなたのその強い責任感……いや、『使命感』という言葉の方が適切でしょうか」


ロシア首相「その使命感からの行動に……そして、財団の『対応』に、疑問を感じます」

『何か変だ』。


ドイツ首相「確かに……『多額の資金』を投じ、召喚されたスタンド使いという『希少な人材』を火星に送り込む」

ドイツ首相「元々、財団はウィルス研究を手伝っていただけです。ここまでする『必要』があるのか?」

ドイツ首相「投じた資金も安いものではない。少なくとも『今の』代表者は、反対しそうな気がするのですが……」


『変だ』。


スピードワゴン「…………『人類の為』ですからね、今の代表も快諾してくれましたよ」

中国首相「素晴らしい精神です」

日本首相「…………」

ドイツ首相(…………本当にそうなのか?ウィルスの脅威から守る為『だけ』に、ここまでするものか?)

ロシア首相(いや、そんなはずはない。スピードワゴン、何を隠している……?)


ローマ首相「……話を変えましょうか。なぜ、ランキング60位代の老人を艦長に指定したのですか?」

ローマ首相「ランキング上位の時空間系能力者をはじめ、他に有能な人材はいくらでもいそうなものですが……」

スピードワゴン「それは……わたしが彼に信頼を置いているというのもそうですが」

スピードワゴン「テラフォーマーの持つ『ある特性』も、選出理由の一つです」

ローマ首相「……その特性とは?」

スピードワゴン「皆さんももうご存知の特性ですよ。テラフォーマーは……」



スピードワゴン「『太陽の光』に弱い」

まさかとおもうけど
こっちがレスしなかったら投下しない気?

>>167
お手数おかけしますが、そうなります。
イーモバイルの連投規制の為、いくら時間が経とうと連続でレスができません。
私がレスするには、誰かに一度書き込んで頂く必要があるんです。

日によってはイーモバイルでも連投できる日もあるようなのですが……
そういった日に投下するようにした方がいいですかね。



SS製作者総合スレ34
SS製作者総合スレ34 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1376873967/)
より該当文を抜粋しました。

「e-mobile」ではスレ立て不可、連投もできません。
SSでスレを立てるならスレ立て代行をしてもらい、一レスごとに誰かに書き込んでもらう必要があります。
規制の理由は以下、e-mobileの人はこのスレで代行と支援を頼めば誰かやってくれるはず。

219 名前:lain. ★[sage] 投稿日:2010/11/09(火) 23:13:16.37 ID:???
e-mobileの荒らしがいたので現在規制を行っております。
再犯のため、プロバイダへの通報で対処致しますのでしばらくお待ちください。

……


ドロォ… シューシュー ボシューッ…


テラフォーマーの腕が、上半身が、そして身体全身が……次々と『溶け出した』。

身もだえしながら、しかし何もできずに蒸発していく。

一方ジョセフは、テラフォーマーの打撃によるダメージを全く受けていない。


リキエル「な、何があったんだ……?『紫外線照射装置』は倉庫内で全て破壊されたはずじゃあ……」

F・F「『ハーミットパープル』を身体に巻き付けている……のか?」

ジョセフ「そう。連続して『波紋』を流し、ガードしていたんじゃ」

エルメェス「はも……ん?ジョースターさん、あなたは一体……」

アヴドゥル「フフフ……」

ポルナレフ「ヘヘ、オレたちの艦長をナメちゃあいけねェ」

ジョセフ「フン、何を言っとる。わしはあくまでランキング下位、ただの……」



ジョセフ「『波紋戦士』じゃよ」




氏名:ジョセフ=ジョースター  年齢:69歳

マーズランキング:63位(火星探索チーム総隊長及びアネックス1号艦長 兼 第一班班長)

スタンド名『ハーミット・パープル』 中距離・索敵探査・直接攻撃型





ジョンガリAの遺体を、高速艇に搭載し終えたジョセフ一行は……


ジョセフ「…………」

ジョセフ(わしの判断ミスじゃ……。すまない、ジョンガリA…………)

ウェザー「……この後はどうする?」

ジョセフ「この後は、あのピラミッドの内部調査を行う」

ジョセフ「だが…………『やり忘れたこと』があってな、ちょっと待っとってくれ」

ポルナレフ「やり忘れ?おいおい、ボケるには早いぜェ~~」


ジョセフは高速艇へ戻ると、モニターに『ハーミットパープル』を忍ばせた。


ジョセフ(……わからんのは『監視カメラ』じゃ)

ジョセフ(テラフォーマーの侵入前か侵入後かはわからんが……監視カメラが切れておった)



ジョセフ(偶然切れていたのか?それとも…………『何者か』が切ったのか?)

ジョセフ「……墜落時は確認の時間がなかった。今、ここで確かめる。『念聴』じゃ」


バシ バシィッ


モニターが過去の映像、現在の映像をランダムに映し始める。

そしてその音を繋ぎ合わせ、メッセージを作り始めた。


ジョセフ「さぁ、監視カメラはどうして切れた…………んん?」



【われわれの中に――】





【テラふぉーマーガいル】  【ダい五はんにキをツケろ】





ジョセフ「な…なんじゃと!!?」

……


ミドラー「だらしないねェ!!」 ザシュッ!

Jガイル「よし……死ね!!」 ズバズバッ!


『ハイプリエステス』と『ハングドマン』の能力により、3匹のテラフォーマーは傷を負った。

第五班のメンバーにとっては『傷口』を作ることこそが、最高の攻撃と評される。

……その理由は、この老婆の存在。


エンヤ「『正義(ジャスティス)』ッ!!」


生物の傷口に反応し穴を開け、そこに霧を通し『操り人形』のように操る。

『捕獲』にはうってつけのスタンド能力である。


ラバーソール「……さすがだ、エンヤ婆」

グレーフライ「傷をつける程度しかできん攻撃が、即有効打となり得るのはありがたいな」


カメオ「ん?おいデー……」

クルッ

デーボ「…………」

カメオ「お、おお……よくオレが後ろから声をかけるって気付いたな」

カメオ「おまえ、そういえば『人形』はどうしたんだ?」

デーボ「…………置いてきた」

カメオ「アネックスにか?じゃあ丸腰と変わらないな。それなら『網』はおまえが使えよ」

テニール「!? DIO様……!プッチ様の班から、『SOS』を受信しました!!」

DIO「何…………SOSだと!!?」

テニール「い、いかがいたしますか?」

DIO(…………第六班にはヴァニラアイスをはじめ、ダービー兄弟を除いた『九栄神』がいる)

DIO(それにプッチの『メイドインヘブン』、ゴキブリなんぞにそう遅れをとるとは思えんが……)

DIO「……各班の位置関係はどうなっている?」

テニール「こちらをご覧ください」



            ④   ①

          ②   ア   ⑤

            ⑥   ③



ア → アネックス   ① ~ ⑥ → 第一班 ~ 第六班



DIO「我々五班は、六班とは距離が離れているな……。まずは二班と三班と連絡をとるぞ」

テニール「そ、それが……三班はなぜか通信が繋がりません」

DIO「三班と通信が繋がらない……?では、二班はどうだ?」

テニール「大丈夫です、二班とは繋がります」

DIO「では二班に繋いでくれ」

テニール「ハッ!」

……


噴上「第六班の『SOS』…………か」

由花子「あたしたち第二班が、救援に向かうんじゃあないの?」

徐倫「第六班と距離が近いもう一つの班『第三班』と通信が繋がらないらしいわ」

徐倫「それもあって、どう動くか決めかねているみたいよ」

由花子「……じゃあとりあえずは、承太郎さんの指示待ちってことね」


康一「そういえば吉良さんの宇宙服のデザイン、ステキですね」

億泰「おッ!そういやオレらとは違うな。特注品か?」

吉良「…………別になんでもいいだろう」

露伴「そのデザインは、『ジャンフランコ・フェレ』かい?地球を発った時は、着ていなかったよな」

吉良「まぁ……そうだな」

承太郎(……最初は懸念していたが、皆あの吉良吉影とよくコミュニケーションをとってくれているな)

承太郎(康一くんは、こういう事が本当にうまい。頼りになるぜ)


花京院「!! 承太郎ッ!第五班……DIOから通信だ!」


承太郎「DIOか……わかった、今行く」

承太郎(…………六班のSOSについてか?)

『承太郎、六班のSOSの件で連絡をした』

承太郎「あぁ、だろうと思った」

『結論から言おう、おまえたちに六班の安否確認に向かって欲しい』

『我々は距離があり、六班の元へすぐに向かうことができない』

『さらに三班の通信が途絶えており、まず我々五班は三班の安否確認に向かおうと考えている』

承太郎「……そうか、ではオレたちは第六班の確認に向かう」

承太郎「第三班は頼んだぜ」

『あぁ。ではまた何かわかり次第連絡する』 ブツッ


承太郎「…………」

承太郎「花京院、どう思う?」

花京院「DIOのことか?…………そうだな、まるで『別人』のようだ」

花京院「誤解はしないで欲しいが、今のも『仲間』との普通のやり取り……といった感じだった」

花京院「ぼくを殺した張本人、憎くて仕方がないはずなのに……な」

承太郎(……じじいから先程あった通信に、『第五班』にテラフォーマーがいるかもしれないという話もあった)


承太郎(より警戒を強めなきゃあいけねーようだな…………ん?)



重ちー「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……う、うぅ……」

仗助「お、おい重ちー!大丈夫かよ!!?」

徐倫「す、すごい熱……!?仗助、何とかできないの?」

仗助「治してやりてーのは勿論だが、オレのクレイジーダイヤモンドは『病気』は治せねェーんだ」

噴上「辛そうだな重ちー、その専用武器が入った荷物貸せってよォ~~」 グイッ……ズシィッ!

噴上(ゲッ!?い、意外と重い……ビールの樽くらいあるんじゃあねーか?)

重ちー「で、でも何がある…か……」

仗助「そんなんじゃあスタンドもろくに操れねーだろうがよォ~~~」

億泰「中坊の身体なんだしよォー、あんま無理すんじゃあねーよ」


スッ


徐倫「そうよ、無理はダメ」

噴上「!?」

噴上(あ、あの野郎ォォォォ……!!徐倫に『ひざまくら』してもらってやがる……!!)

仗助(ん?うーむ…………噴上が若干嫉妬しているな。あいつヤンキー系の子が好きだからな……)


重ちー「はぁ…はぁ……。あ…ありがと……だど、ママ……」

徐倫「クスクス。あたしはお母さんじゃあないわよ?しょうがない子、よしよし」 ナデナデ

噴上「!!?」


承太郎(…………アナスイがこの場にいなくて良かったぜ)

……


イギー「…………」 クンクン… クルッ

イギー「……?」

アヴドゥル「炎の探知機にも、異常はない」

ジョセフ「よし、まずはこちらのピラミッドから調査する」

アナスイ(徐倫は無事だろうか?まぁ……承太郎さんたちもいるし、心配は無用か)

アナスイ(それよりもどこぞの馬の骨が、徐倫に手を出していないか……これが一番危惧することだぜ)



リキエル「はぁ…はぁ……」

ジョセフ「リキエル、大丈夫か?瞼が閉じてきているようだが……」

リキエル「はぁ…はぁ……。だ、大丈夫です」

リキエル「少しだけ、悪寒が……」

ジョセフ「無理はせんでいい。よし、すぐそこに小部屋が見えるな。そこで休憩をとろう」



リキエル(……不思議な感覚だ、ジョセフ=ジョースター)

リキエル(優しさにほだされたわけじゃあない。ずっと感じていることだ)


リキエル(彼についていけば……オレを『正しい道』へと導いてくれる気がする)

……


ゴキブリには―― 八角形のレンズの集まった『複眼』がある。


その数およそ2000。


光と闇を区別することができる単眼もある。

近辺の様子を知る時は眼よりも触覚を用いるが、外部の情報を収集するには視覚に頼る部分が多い。



その視覚を狂わすことができるのが、彼の『能力』。



ケニーG「いくぜ……『ティナーサックス』」


アネックス1号の内装は永遠に続くような長い廊下や、入り組んだ迷路へと姿を変えた。



           『幻』である。



DIOの館でそうしていたように、彼が『幻覚』を創り出したのだ。

ケニーG「幻覚オッケー!!」

ミューミュー「アネックスの壁面に『ジェイルハウスロック』も潜ませているわ」

アラビアファッツ「『地雷』は設置しなくていいのか?」

プロシュート「もうすぐ夜になる。地雷は設置するにしても明日だな」

プロシュート「夜襲には十分気を付けるが、これからは交代で休息をとるぞ」

ペッシ「了解です、兄貴ィ!!」



ポルポ「ブフゥ~~~。舌がまだヒリヒリするな…………んん!?」

その時、レーダー及び望遠型監視カメラを見ていたポルポの表情が曇った。

ポルポ「…………なぜ『大勢』なんだ?」

ポルポ(!!? い、今なんて呟いた……!?)



ティッツアーノ(既に『トーキング・ヘッド』を……ポルポの舌に仕込んである)

スクアーロ(一人ずつ、一人ずつだ。確実に全滅に追い込んでくれる)



そして――





火星に、夜が訪れる。

――地球 某会議室



『敵か、味方か』


スピードワゴンがこの会議に参加した『理由』。

それは、各国との信頼関係の構築及び……その『見極め』である。


スピードワゴン「…………ところで、わたしはこの世界に来てまだ3ヶ月程度」

スピードワゴン「元々の計画に携わっていた皆様方の真意が気になりましてね……いくつか質問をさせて頂きたい」

スピードワゴン「失礼ながら、単刀直入に伺いたいのですが、よろしいですか?」

中国首相「ハハハ…………大いに結構です」

米国首相「我々は同志です、意見があればどんどんおっしゃってください」

スピードワゴン「ありがとうございます。では早速……」

スピードワゴン「宇宙空間にいたアネックスが、テラフォーマーに襲撃されました」



――それはまさに、『直球』。



スピードワゴン「テラフォーマーに情報を流した『国』があるのではと疑っています、心当たりはありませんか?」

……無論、首相たちの返事は、表面上全て『NO』である。


「ない」 「ない」 「ハハ、あるはずがない」

「ありませんね」 「わたしもありません」 「当然うちも」


しかし、それでもスピードワゴンは投げ続ける。


スピードワゴン「もしくは……特定の班と『取引』をした国はありますか?」

スピードワゴン「一班、二班、三班、四班、五班、六班、いや……特定のメンバーだといかがですか?」

スピードワゴン「『裏切り』の幇助をされていたりは……」


『NO』、『NO』、『NO』、『NO』、『NO』、『NO?』……


「それもない」 「ない」 「ありませんよ」

「ありませんね」 「わたしもありませんよ」 「ない」


スピードワゴン(…………臭う。他人を利用することしか考えていない……)

スピードワゴン(掃き溜め以下の『ニオイ』がプンプンとな…………!)

側近A「…………」 側近B「…………なるほど」



――そして会議は閉幕した。


この後スピードワゴンらは、一つの策を思案。第一、第二、第四、第五班に、『策』を記した『通達』を送った。

……


ゴロゴロゴロ… ザアアアァァァ…


噴上「…………雨、か」

徐倫「火星でも、こんなにしっかり降るのね」

仗助「雨、それに夜か。トラブルのニオイがプンプンするぜ。何事もなきゃあいいが……」

由花子「承太郎さん!第五班のDIOから通信よ!」

承太郎「……あぁ、わかった」

康一「仗助くんが『トラブルのニオイが~~』だなんて言ったそばから通信が……」

仗助「や、やめろよ康一ィ~~、何かあってもオレは関係ねぇからなァーーッ」


『こちら第五班班長、DIOだ』

承太郎「どうした?何かあったのか?」

『昼間に話していた三班の件で確認がとれた。三班は…………』




『すでに、全滅していた』

承太郎「…………全滅、だと!!?」

『あぁ……だが不審な点がある』

『判別不能の死体が8体。バッジやIDタグは三班のものだが……本人のものとは断定できん』

承太郎「……死体の状態はどうなっている?」

『ぐちゃぐちゃに溶解されたり、顔が判別できないよう激しく殴打されたりしている』

『しかし周辺には、三班と何者かが争った形跡は残っていない』

『つまりこれは、テラフォーマーの仕業ではないと考えられる。我々の中の「裏切り者」か……』

承太郎(若しくは……)

『若しくは、全滅自体が「ダミー」か。…………わたしの推測では、後者だ』

『三班が、我々の六つの班の中で「最も」戦闘力が高い』

承太郎「7位のギアッチョ、9位のチョコラータ、12位のセッコと、確かに班員も抜きん出て強い」

『……それにランキングの話だけではない、彼らは「人を殺すプロ」だ』

『その三班を一方的に全滅に追い込める班は、中々ないだろう』

『ましてや、テラフォーマーの中にはな……』

承太郎(そう、『普通』ならばそう考えて当然だ。だが、もしかすると……)



ブツンッ



承太郎「!? ……DIO?どうしたDIO、応答しろッ!!」


突如第五班との通信が途絶えた。その直後、今度は『SOS』のサインが鳴り響く。

SOSの発信元は……




           『アネックス護衛班』




承太郎「どういうことだ!!?一体何が起きている……!?」

本日はここまでです。
支援レスを頂いた皆様、毎度すみません。本当にありがとうございました。

次回投下スケジュールが決まりましたら、改めてこちらで告知いたします。
目安としては来週中頃になりそうです。 またよろしくお願いいたします。

ここまでご覧頂きありがとうございました。

簡単にですが、ここまでの各班の状況をまとめてみました。

下記がアネックス計画の『正規参加メンバー』70名です。

スクアーロ、ティッツアーノ、亀(ココ=ジャンボ)、スピードワゴンは70名の人数に加わっておりません。


第一班(12名→9名) 班長:ジョセフ  ※ピラミッド内部を調査中

アヴドゥル、ポルナレフ、イギー、エルメェス、アナスイ、ウェザー、F・F、リキエル
ヴェルサス(死亡)、ウンガロ(死亡)、ジョンガリA(死亡)


第二班(12名) 班長:承太郎  ※第六班の安否を確認しに進行中

徐倫、花京院、仗助、億泰、形兆、康一、由花子、露伴、重ちー、噴上、吉良


第三班(8名→?) 班長:ディアボロ  ※第五班からの通信によると、全滅しているらしい?

リゾット、ギアッチョ、イルーゾォ、ホルマジオ、メローネ、チョコラータ、セッコ


第四班(8名) 班長:ブチャラティ  ※アネックスへ帰還中

ジョルノ、ミスタ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、サーレー、ズッケェロ


第五班(10名→9名) 班長:DIO  ※第二班と交信中、突如通信が途切れる

エンヤ婆、ラバーソール、ミドラー、デーボ、Jガイル、グレーフライ、カメオ、テニール
ダン(死亡)


第六班(10名→9名→?) 班長:プッチ  ※SOSを発信。安否不明

ヴァニラアイス、ホルホース、ペットショップ、チャカ、アレッシー、ンドゥール、オインゴ、ボインゴ
マライア(死亡)


アネックス護衛班(10名→?) 班長:プロシュート  ※SOSを発信。安否不明

ペッシ、ポルポ、トリッシュ、音石、未起隆、ミューミュー、エンポリオ、ケニーG、アラビアファッツ

1です。連投ができそうなので、これから投下を行います。


テストスレで連投が可能か試してみました。その結果イーモバイルでも連投できるケースがあるようです。
日時なのか、たまたまなのか、条件はまだわかっていませんが、
今は連投が可能なようですので、このまま投下に移ります。

本日の投下予定本文数は『12』です。



――

―――



話は一度、スピードワゴンが召喚された3ヶ月前に遡る。





――アメリカインディアン、ホピ族の集落


スピードワゴン「…………こ、ここは……?」

ホピ族「おお……人間だ、人間が現れたぞ!!?」

ホピ族「族長だ、族長をお呼びしろ!!」

スピードワゴン(わたしは確か『心臓発作』で…………だが……)


ドクン…ドクン…

止まったはずの鼓動が、脈動している。


スピードワゴン(生きている……わたしは生きている……)

スピードワゴン(なぜだ?そしてここは一体…………)


スピードワゴン(『どこ』……なんだ?)



最初の召喚で現れたのは、スピードワゴンただ一人だった。

スピードワゴンはホピ族の族長からいくつかの話を聞いた。

ホピ族のこと。現在は西暦2619年だということ。さらに……

人口の激増、そして環境破壊やエネルギー問題によって地球はパンクしてしまうかもしれないということ。


スピードワゴン「世界がそのようになっていようとは……」

スピードワゴン「ん?あの壁に書いてあるものは……?」

族長「あれは『世界が滅びる予兆』です」

スピードワゴン「世界が、滅びる……?」

族長「ええ。あの出来事が起こる時、『世界は滅びる』と言われています」

族長「『予言』が、間違っていなければ……ですがね」

スピードワゴン(…………)

スピードワゴン(予言、か……)



    『あなたは天の住居のことを耳にするだろう。それは大音響とともに落ちてくる』

   『それは青い星のようにみえるだろう。これが落ちてまもなくわが民の儀式は終わる』



スピードワゴン(『わが民の儀式は終わる』の部分が滅びることだとすれば)

スピードワゴン(天の住居、大音響、そして青い星とは…………何だ?)

スピードワゴンはホピ族の集落を後にし、自身の設立したスピードワゴン財団を訪れる。

代表から職員、全ての人間がスピードワゴンの来訪を歓迎した(勿論、最初はその姿を見て吃驚仰天していたが)


そこで1週間が経ったある日……



スピードワゴン(わたしはなぜこの600年後の世界に現れたんだ……?)

スピードワゴン(何か理由があるのか?為すべきことがあるのか?)

スピードワゴン(財団の超常現象部門によると、『スタンド使い』は何百年も前に姿を消したらしいが……)


『それでは番組もいよいよ終わりです、最後の都市伝説にまいりましょう!!』

『なぜ我々は21世紀以来火星に行ってない事にされているのか――』

『それは今までの調査隊も無人機も全て、火星の他の生物によって撃墜されてしまったからなのです!!』

『え~~~~っ!?』

『それはいくら何でも都市伝説すぎるよ~~~~っ!』


スピードワゴン(テラフォーマー、A・Eウィルス、そしてアネックス計画、か……)

スピードワゴン(財団がウィルス研究に関与していなければ、わたしも一般人同様知り得なかったことだ)

スピードワゴン(…………)

スピードワゴン(宇宙空間へ放出された『奴』が、もしも火星に漂着し……)

スピードワゴン(無人機を撃墜、それを用い、再び地球に舞い戻ってきたとしたら……)

スピードワゴン(人類は……世界は…………)

職員「あの……スピードワゴンさん、今よろしいですか?」

スピードワゴン「……ん?あぁ、大丈夫だ。何か用かな?」

職員「財団の代表と話をしたいという電話が入っていまして……」

職員「このまま取次ぎますので、話をしてもらえませんか?」

スピードワゴン「? なぜわたしにそれを言う?その代表は『今の』代表のことだろう?」

職員「それが……『奇妙』なことに、相手がこう名乗ったそうなんです」



職員「『ジョセフ=ジョースター』、と」

スピードワゴン「ジョセフ……」


ここでスピードワゴンは悟った。

自身と同じように、ジョジョもこの世界に召喚されたに違いない、と。



スピードワゴン「電話を代わった…………ジョジョ、なのか……?」

『!!? そ、その声は……スピードワゴンの…………じいさんか!!?』

スピードワゴン「!!? ま、まさか……」

スピードワゴン「フ…フフフフ、その声……おまえこそ『爺』じゃあないか……ッ!!」

『フフ……わしも年を食ったからのう……』

スピードワゴン「まさか……まさかまた再会できるとは、ジョジョ…………」



ジョセフ=ジョースター、花京院典明、J=ピエール=ポルナレフ、モハメド=アヴドゥル、イギー



二度目の召喚で現れたメンバーである。

5人と1匹は、再びホピ族の集落を訪れた。

そこで彼らが目にしたものは、噴火寸前のマグマのような……累卵の危うき場面。

『亀』を除く70のスタンド使いたちが、それぞれ争いの火蓋を切ろうとしていた。


ホルホース「帽子でも被って隠した方がいいぜェー、その……頭」

仗助「今オレのこの頭のことなんつったァーーーッ!!?」

康一「ちょ、ちょっと仗助くん!?仗助くんを止めるんだ、ACT3ッ!!」 ズンッ!!

仗助「!!?」


ディアボロ「『矢』を売ってやった恩を忘失し、このわたしに立て付くのか?」

エンヤ「貴様……!!」

DIO「やめろエンヤ、蝸牛角上の争いをしている場合ではない」


吉良「わたしは争いを好まない。が…………たかるハエをはらう位のことはする」

吉良「『爆破』されたいのか、『閉じ込められたい』のか、好きな方を選ぶがいい」

イルーゾォ(こいつ……どういう能力なんだ!?)


スピードワゴン「待てッ!!!」


スピードワゴン「君たちは……皆『スタンド使い』だな?」

スピードワゴン「わたしはスピードワゴン財団創立者、ロバート=E=O=スピードワゴン」

スピードワゴン「わたしが今回の『召喚』の、事の顛末を話そう」

スピードワゴンは財団の超常現象部門から、『スタンド使い』の歴史を教えてもらっていた。

そしてジョジョやアヴドゥルたち、スタンド使いという存在を目の当たりにしていた。

その時からスピードワゴンは予想していた。

他にも召喚が起こっているであろう可能性、そして……


『能力』のないわたしに役目があるとするならば、それは『この場面』しかない。

『虚偽』を用い、彼らを一つにまとめ、そして……アネックス計画へ参加させる。

火星に『奴』がいた場合、それを消滅させる為に……



スピードワゴン「……君たちは一度死んだ。だが今の状況は、生き返ったわけでは『ない』」

ウェザー「なんだと……?」

スピードワゴン「これは『スタンド能力』によるものだ。スタンド能力で、仮の生を与えられているだけだ」

スピードワゴン「この地で再び本当の『生』を受けたいのであれば……」


スピードワゴン「アネックス計画に参加してもらう」


億泰「……なに計画だって?」

形兆「なんだ?そのアネックス計画というのは?」

露伴「具体的に何をする計画なんだ?」

プッチ「……大事なことはそこじゃあない」

リゾット「その通りだ、完全に……生き返ることができるというのか」

ディアボロ「おい……『生き返る』ことができるというのは、嘘ではないだろうな?」

スピードワゴン「…………あぁ、嘘ではない。そしてアネックス計画とは……」



スピードワゴン「火星へ行き、『ゴキブリたち』を駆除する計画だ」

スピードワゴンは財団から得ていた三つの情報を、この場の全員に話した。

①テラフォーミング計画と、それにより生まれた『テラフォーマー』の存在

②新種のDNAウィルス『A・Eウィルス』の存在

③そして、この世界に『スタンド使い』は一人もいないということ


スピードワゴン「我が財団がアネックス計画を主導する。その計画に参加し、目的を達成できなければ……」

スピードワゴン「君たちは生き返ることができない」

スピードワゴン「つまり君たちが争うならそうすればいい。わたしの許可がなければ……」

スピードワゴン「君たちは自動的に、三途の川へ逆戻りするというだけの話だ」


ナランチャ「ほ、本当かよ!?」

フーゴ「嘘にも見えますが…………スピードワゴンが嘘をつく理由が、そもそもわかりません」

ジョルノ「2600年の兵器で太刀打ちできないとでも?……それ程の存在なのか?テラフォーマーは」

ミスタ「どのみち、やるしかないんじゃあねーの?ゴキブリ駆除をよ」


DIO(人類への『脅威』、テラフォーマーにウィルスか……)

ダービー兄「……確かに脅威だ」

ダービー兄「だが……生き返るという話は、『嘘臭い』な」

ダービー弟「兄の言う通りです。あれは『嘘』でございます、DIO様」

ダービー弟「計画に参加しても、生き返れるわけではありません」

DIO「…………わかった。だがダービー……」

DIO「その事は伏せていろ、決して他言するんじゃあない」

ダービー弟「え?…………は、はい」

ダービー兄「か、かしこまりました……」



DIO「…………そのスピードワゴンの話は、『本当』だ」

ダービー兄「!!?」 ダービー弟「!!?」 スピードワゴン「!?」

DIO「ここにいる二人、ダービー兄弟の能力をもってすれば『嘘』を見抜くことができる」

DIO「……その上で断言しよう」

DIO「スピードワゴンは、我々が生き返る為の情報を持っている」


ポルナレフ「!!?」

ウンガロ「ほ、本当か……!!?」

ヴェルサス(ならば……今度こそオレは幸せになってやるぞ……!!)

ディアボロ「…………」

承太郎(何を考えている、DIO……?)

スピードワゴン(なぜだ……?わたしを庇ったこともそうだが……)

スピードワゴン(なぜDIOの『ニオイ』が、これ程までに違っているんだ!!?)

スピードワゴン(このニオイはまるで、わたしが惚れ込んだ『あの人』の…………)


DIO「…………」

ダービー弟(DIO様、何か考えあってのことだろうか?)

ダービー兄(いや、それとも……)


結果、この場の全員の火蓋が切られることはなかった。そして……


ディアボロ「…………そういうことならば」

吉良「わたしもその計画に参加させてもらおう」

プッチ「DIO、わたしは君と共に必ず生を掴んでみせる」


……『スタンド使いたち』はアネックス計画への参画を決めた。

召喚された者の中で、70名(匹)が火星へ発つこととなった。



さらにスピードワゴンは大きく動く。

この後、世界中に影響力を持つ財団の力を使い、強引にアネックス計画を主導する。

・プランαに始まる、各計画

・火星環境下における、『スタンド』によるテラフォーマー制圧能力・及び生存力のランキング

・宇宙艦はアネックス1号を使用する

アネックス計画を継承するにあたり、こういったいくつかの制度等も引き継がれることとなった。


ファーストやセカンド程ではないが、他国が『スタンド使い』というものに多少の関心を持っていたからである。

彼らの動向を把握したかったのだ。

(もっとも、ローマ連邦が特にプッシュする以外、他国はそこまでの興味はなかったようではあるが……)




スピードワゴンの持つ懸念は……

①火星の『テラフォーマー』の存在。

②この世界に『スタンド使いがいない』という点。

③『スピードワゴン』までもが召喚対象になった点。


そして……

④召喚されたスタンド使いは、スタンド使いとして『全盛期』の頃の肉体で召喚されている点。

もしわたしたちが召喚されたことに『意味』があったとしたなら――

『脅威』に対する『抑止力』として、召喚された可能性がある。

2600年の兵器や技術をもってしても、人類の脅威になり得る存在とは果たして……



その候補は、スピードワゴンが知る限りは『一人』しかいない。


『究極生命体カーズ』

M.O.手術者では到底敵わない戦闘力。もしもカーズが火星に漂着していたとしたら……


しかしこの時、スピードワゴンはカーズ『だけ』を警戒していた。




……知識を撫でただけのスピードワゴンは知らなかったのだ。

非スタンド使いのスピードワゴンは、知る由もなかったのだ。


『スタンド使いは、スタンド使いにしか倒せない』という事実と、

そして……変えることのできない、スタンド使いたちの『宿命』――




   『スタンド使いは互いに引かれ合う』という『引力』を

―――

――





DIO「!? 承太郎ッ!?なぜ通信が途切れ…………ハッ!!?」


背後に迫ったデーボが、その腕を振り払い――




DIOの胴体を真っ二つに引き裂いた。




DIO「ぐ…何イイイィィィィ!!?」


Jガイル「な、なんだこのデーボの『パワー』は!!?」

カメオ「貴様アアアァァァーーーッ!!」

ラバーソール「血迷ったか!!?ジャムにしてくれるッ!!」


カメオがロボット風の人型スタンド『ジャッジメント』を繰り出す。

ラバーソールが『イエローテンパランス』の肉片をデーボに向かって飛ばす。


シュッ…ガシィッ!


デーボは素早い動きで肉片を避け、カメオの顔をその手で掴んだ。

カメオ「な!?」


そしてもう片手で、懐から『スプレー缶』を取り出すと――

カメオ「…………!!」


ドシュウウウウゥゥゥ!

スプレーから噴き出た『肉』がラバーソールを襲う。


ラバーソール「ナメてんのか田ゴ作がッ!!『イエローテンパランス』!!」

しかし、『イエローテンパランス』がそれを吸収した。

噴出された『肉』を受け止め、自身に取り込んだのだ。


ラバーソール「何だそのスプレーは?『肉』を飛ばして…………な!?」

Jガイル「なにィィィィッ!!?」


『肉』を取り込んだラバーソールたちが目にしたものは……




顔面の『肉』を噴出され、首無し死体と変わり果てたカメオの姿だった。




デーボ「…………『クリームスターター』」

本日はここまでです。

今回のように連投規制の影響がなさそうなタイミングがあれば、そこで投下していくようにします。
それができないようであれば、また支援レスをお願いしたいと思います。

ここまでご覧頂きありがとうございました。

デーボが呟いたその言葉を聞き取ったのは、ラバーソールだけだった。

しかしラバーソールはその言葉以上に、自身の感じる『違和感』に気を取られていた。


ラバーソール(お…おかしい!?『消化』吸収できていない!!?)


イエローテンパランスは、酸のように物体を溶かし、自身の肉に消化吸収することができる。

しかし今取り込んだ『肉』は、消化が『できていない』。それはつまり……


ラバーソール「オレの身体に一体化『された』ということか……!!?」




ドパァッ!!




ラバーソールの頭部が、爆発し四散した。

一体化した肉が急速に膨張し、破裂したのだ。


エンヤ「!!?」

グレーフライ「お、おのれえええェェェーーーッ!!!」

ズドッ! ズドァ!


グレーフライ「よし!『傷』をつけたッ!エンヤ!!」

エンヤ「操れッ!『ジャスティス』!!」

タワーオブグレーが伸縮自在の触手『塔針(タワーニードル)』でデーボの両脚に傷をつけ、

すかさずジャスティスが『霧』をその傷口に通す。これでデーボを操ることに成功……




しなかった。




ドシュウウウウゥゥゥ!


Jガイル「こ、こいつ!?自分の身体に『肉スプレー』を噴きかけ……」

テニール「『傷』の痕を埋めやがった!?」


DIO「驚くのはそんなところではない」

DIO「これで確定した、こいつはデーボではなく……」


『デーボに化けた者』は今、両脚から『赤い血』を流さなかった。

代わって流れ出たのは、『白い脂肪体』だった。つまり、こいつは……




DIO「『テラフォーマー』だッ!!!」

――ピラミッド内



アヴドゥル「これは……」

アナスイ「な、なんだこの『絵』や『文字』は……」


大部屋の壁面には、様々な『絵』や『文字』が描かれていた。上から……




『ケンタウロスのような絵』

『矢の絵』、『褌の絵』、その真横には『1個の丸』

『矢の絵』、『輪の絵』、その真横には『3個の丸』

『縄の絵』、その真横には『40個の丸』


『何かが溶けたような絵』、『ξοξο』、『ξοστερ』、『糞のような絵』




ポルナレフ「ま、全くわからねぇ……」

ウェザー「ゴキブリどもが、これらを描いたとでもいうのか……?」

F・F「おい!こっちの部屋も見てみろ!!スゲーもんが置いてあるぜ!!」

ジョセフ「これは……最初に通信が途絶えた無人機、グレイトカープ三號というやつか」

エルメェス「い、いやそれよりもこっちの『布』だ!!こ、これは……!?」


布に書かれていたのは……

アネックス1号の外面図。高速艇の操作方法。プランδ(デルタ)時の、高速艇の射出方向と着陸位置。

人為変態に薬が必要だということ。人為変態を可能にする『薬』の保管してある倉庫の位置図。


などが……テラフォーマーが理解できるよう、『絵図』で描かれている。


リキエル「あれは……高速艇四号機だけ、嘘の着陸位置が書かれている!?」

ポルナレフ「四号機となると……おれたちの前身の計画では『中国・アジア班』が使う予定のものだな」

アナスイ「まさか中国が……ゴキブリどもに情報を流していたのか?」

ジョセフ「……何にせよ、この布にある情報を元に、奴らはアネックスまで飛来してきたわけじゃな」

アヴドゥル「倉庫が狙われたのも、紫外線照射装置ではなく……人為変態用の薬を狙っていたんでしょうね」


ジョセフ(中々、一枚岩でというわけには……いかんか)

……脳細胞の移植に関しての、一つの事例がある。


温厚なAという青年の脳に、好戦的なBという青年の脳細胞の『一部』を移植した。

結果、温厚だったAの性格が徐々に好戦的になっていき、ついには殺人事件を起こしてしまった。

裁判所は判決に困った。なぜか?


このAの意識は『誰か』ということを、結論付けられなかったからである。


Bの意識がAの身体を乗っ取ったのか?ではAは無罪ではないか?

Aがそのまま凶暴になってしまったのか?ではAの責任でいいのではないか?

裁判が長引くまま……


Aは判決前に死んでしまった。


この事例は、『徐々に』意識が変化していった例である。




頭部の『脳』か、肉体の『魂』か。一体何が『意識』を生み出すのか?




DIOの首から下は、かつて『ジョナサン=ジョースター』のものだった。

もしも本当に……肉体に『魂』という存在があったとしたなら。


そして『召喚』により、その魂が呼び起こされていたとしたなら――

……


エンヤは考える。

DIO様は、たまたまわたしだけに『この事実』を話してくれた。


この600年後の世界に召喚されてから……



『時を止めることができない』  と。



その理由を、エンヤは既に推測できている。

『歯車』が狂ったのだろう。

召喚による影響だとは考えていたが、確信は未だ持てない。


だが、この『表情』を見て……『やはり、そうなのだろうな』とエンヤは思った。



DIO「……いいか、よく聞けゴキブリ。本来の我々の任務は貴様らを『捕獲』すること」

DIO「だが『紳士』として恥ずべきことだが、このDIOは『恨み』を晴らすために……」


肉体の再生を終えたDIOが、咆哮を上げた。



DIO「これから貴様を殺すのだッ!!!」




氏名:DIO  年齢:120歳

マーズランキング:4位(第五班、班長)

スタンド名『ザ・ワールド』 近距離・時空間干渉・直接攻撃型

DIO「『ザ・ワールド』!!」


DIOは自身のスタンドを発現させた。この『ビジョン』を見て、偽デーボは警戒の色を強める。

『スタンド』は『スタンド使い』にしか見ることはできない。

つまりそれは……


このデーボに化けたテラフォーマーが『スタンド使い』だという事実を表していた。



『時を止めることが、できない』

この状態では、あの『肉スプレー』のスタンドと真っ向から渡り合うのは危険かもしれない。


DIOはミドラーへ視線を送った。そして、一瞬地面へとその視線を移した。

DIOは怒りに打ち震えながらも、冷静に『指示』を送っていたのだ。



火星には『Red Planet(赤い惑星)』という通称がある。

地表の色、つまり土の色が酸化鉄(赤サビ)や水酸化鉄(ゲーサイト)によって

『赤くなっている』為、そう呼ばれているのだ。


その赤く広がる大地が、偽デーボ周辺のものだけ若干変色した。

次の瞬間。


変色した部分の地面が、『巨大な顔面』へと姿を変え、偽デーボを飲み込んだ。

偽デーボの目の前に、『舌』とダイヤモンド並の硬度を持つ『歯』が迫る。



ミドラー「このままつぶし殺すッ!!!」

一度!二度!!三度……!!!

その後幾度となく、その強固な『歯』が、偽デーボを潰した。


DIO「よくやった……もう十分だろう。テラフォーマーを吐き出してみろ」

ミドラー「はい、了解しました」


吐き出されたテラフォーマーは、身に纏っていた『肉』も剥ぎ取られ、

原型を留めない姿になっていた。無論、とっくに死亡している。


チャリン


テニール(あれは……大分変型しているが……『ピアス』?)

テニール(随分大きいな。このテラフォーマーがつけていたものか……?)

エンヤ「あの『肉スプレー』を使い、アネックス1号へ侵入」

エンヤ「そこで遭遇したデーボを殺し、化けて成り代わっていた、といったところかのう……」

グレーフライ(……そういえばアネックスから高速艇で脱出する際)

グレーフライ(デーボは『殺されまた』と、拙い言葉を使っていたな)

グレーフライ(あの時点で、怪しいと気付いていれば……)


DIO「……テラフォーマーの中に、『スタンド』を使う個体がいるという点」

DIO「そして我々と同じ『言語』を扱える個体がいるという点は、無視できん問題だ」

DIO「他班にも、この情報を伝え…………ん?」

DIO「いつの間にか『スピードワゴン』から通達がきていたのか」



DIO「…………第一班と『合流』しろだと?」

……


康一「承太郎さん!『スピードワゴン』さんから通達がきていたみたいですよ」

康一「内容は、第四班のブチャラティさんたちと……」

承太郎「康一くん、悪いがそれは後回しだ」

康一「え?…………げッ!!?」


第二班の高速艇を、300を超えるテラフォーマーの大群が取り囲んでいる。

雨が降り注ぎ視界が悪いが、周囲にはまだこの数を上回るテラフォーマーが潜んでいるかもしれない。


花京院「見事に…………囲まれたな。どうする、承太郎?」

承太郎(『夜』、そして『雨』で視界が悪いな。全員を駆り出すと、危険に曝されるかもしれん)

承太郎「よし……オレ、徐倫、花京院、億泰、康一くんで防衛ラインを張る」

承太郎「形兆、噴上は高速艇の中から『遠隔操作』で援護をしてくれ」

承太郎「仗助、吉良吉影、露伴、由花子はテラフォーマーの奇襲に備え、高速艇で待機だ。重ちーも看ていてくれ」

承太郎、徐倫、花京院、億泰、康一の五人は高速艇の外に姿を現した。

固まって陣形を固め、敵の襲撃に備える。


TF「じょじょじょじょうじょじょ」 バッ

『縄』を両腕に3本ずつ結んだ個体が、合図を送った。

それによりテラフォーマーが一斉に……



銃火器の引き金を引いた。



徐倫「え……!?」

承太郎「『スタープラチナ・ザ・ワールド』!!」



――時は止まった。



バグズ1号及び2号内に管理されていた『火器兵器』。

600年前の拳銃ならばいざ知らず。

近代の火器兵器の銃弾は、近距離パワー型のスタンドでさえ、その防御は容易ではない。


承太郎は止まった時の中、突出した三人の位置をずらし銃弾の回避に努めた。



承太郎(あの銃火器はバグズ1号、2号のものか)

承太郎「…………時は動き始める」

ドン! ドン! ドガガ! ドガ!


全ての銃弾は地表に当たった。各テラフォーマーは次弾を装填。

しかし……そのわずかな隙を逃す第二班の面々ではない。

形兆の「銃火器を狙うぞ!」という号令と共に……


『バッドカンパニー』の60体の歩兵と7台の戦車、4機のアパッチが銃火器に攻撃を加え、破壊した。

『ハイウェイスター』は銃火器をそのまま強奪した。



『スタンド』の見えないテラフォーマーに為す術はない。

近代兵器を所有したテラフォーマーは十数体。その全てを、あっという間に無力化した。



徐倫「さすがね。……これで銃火器は終わりかしら?」

承太郎「次は『投石』の準備に入ったようだ、油断はするな」

億泰「よっしゃあああぁぁ!!その程度ならよォ、叩き落としてやる!かかってきなッ!!」

『ザ・ハンド』のビジョンが、防御の構えをとる。


ユラリ…


その時、億泰の背後に一匹のテラフォーマーが迫っていた。

『ニジイロクワガタ』のバグズ能力を持つ個体である。

億泰目がけ腕を振り下ろす直前。その存在に、形兆だけが気付いた。


形兆「あ、あれは……!!?」



そしてテラフォーマーが億泰を――

……虹村刑兆は思い出す。自身が『死んだ』日のことを。


当時、頭の中で言い聞かせていた。オレは『億泰』のことを既に『弟と思っちゃあいない』、と。

弟と思っていないから、非情な判断ができる。

目的の為なら、オレは『弟さえ殺せる』奴だ。そう思っていた。


しかしそれは『非情』とは真逆の反応だった。レッドホットチリペッパーが億泰に迫った時、形兆は……




                『弟を守らなければならない』、と思った。





――バグォンッ!!


バッドカンパニーの『斉射』が、億泰に迫るテラフォーマーに直撃した。

クワガタテラフォーマーの硬い甲皮をも貫通する、圧倒的な破壊力。

テラフォーマーは億泰に攻撃を命中させるすんでの所で、上半身を粉々に破壊され、絶命した。



億泰「あ…兄貴ッ!!?」

形兆「安心しな……てめーはオレが『守る』ぜ、億泰」




氏名:虹村刑兆  年齢:18歳

マーズランキング:19位(第二班)

スタンド名『バッドカンパニー』 遠距離・群体・射撃型

瞬間的な破壊力をはじめ、攻撃力に秀でる『ザ・ハンド』。その弱点は防御といえる。

しかし、その防御をこの『鉄壁』のスタンドが担えば――


億泰「その喉元をッ!削り取ってやるぜェーーーッ!!」 ガオンッ!!

形兆「オレに必要な鎧は『距離』だけだ。距離さえあれば……」

形兆「死角からの投擲攻撃、奇襲は全てッ!バッドカンパニーが対処してやる!!」


虹村兄弟の奮戦ぶりは、さながら強大な矛と盾を備えた、一騎当千の戦士のようだった。





一方で――



ザンッ!!


承太郎「な、なに……!!?」




降りしきる雨の中、宙に浮かぶ『手』によって……


承太郎の左腕が切断された。

仗助「じょ…承太郎さんッ!!?」

吉良「何が起こった……!?」

由花子「まずい……!!仗助!吉良!早く承太郎さんを援護しに……」


承太郎「待て!!!」


仗助「!?」 由花子「!?」 吉良「!?」

承太郎「……今、オレの腕を斬り落とした『手』の正体がまだ掴めていない」

承太郎「そんな中、おまえたちが高速艇の外に出るのは危険だ」


承太郎「自分の『役目』を、忘れるな……!!」


吉良「…………」

仗助「だ、だが……その出血量じゃあ長い時間は……!!」


ピピッ ピー


露伴「!! 第五班からの通達か…………え!?」

露伴「な、なんだって!!?」



『通達だ。二つ報告することがある』


『一つは、我々と同様の言語を操るテラフォーマーがいるということ』

『もう一つは、スタンド能力を扱うテラフォーマーがいるということだ、交戦の際は用心しろ』




……『雨』が止む気配は、まだない。

露伴「ス…スタンド使いだ!テラフォーマーの中に、スタンド使いがいる可能性があるッ!!」


花京院「!!?」 康一「スタンド使いだって!!?」

康一は咄嗟に、周囲のテラフォーマーの大まかな数を数えた。

康一(……もしも、もしもの話だ)


TF「じょじょう」 TF「じょじょう」 TF「じょうじょ」 TF「じょじょじょう」


康一(もし……今ここにいる300のテラフォーマー『全員』が、スタンド能力を持っていたら…………)


ゴクリ…


康一「『エコーズACT2』!!」 花京院「ぼくも行く!ハイエロファントグリーン!!」

花京院「……確かめなければ、ならない。奴らの『動き』を、細かく!!」


康一たちはエコーズとハイエロファントグリーンを上空に飛ばし、上からテラフォーマーの動きを観察した。


康一(目立って変わった動きをする個体はいない。あの縄を巻いた個体くらいだ。そして……)

花京院(思った以上に『統率』がとれてい……)




ボッ ブシュ ブシュ ブシュッ!




康一「え……?」 花京院「な、なに!!?」

噴上「こ…康一!!? 花京院!!?」


康一と花京院の全身に、突如小さい『穴』が開いた。

本体が、何かの攻撃を受けたのではない。

『上空』でエコーズとハイエロファントグリーンが、『スタンド』による攻撃を受けたのだ。



花京院「!? う……上ッ!!?」

噴上「あ、あれは……」


固定した雨粒を『足場』にし、テラフォーマーが上空に立っていた。

大きなピアスを口元に付けているそのテラフォーマーは、

流れる雨水に溶け込んだように、自由に上空を移動している。


『雨水』に溶け込んだり、固定する『スタンド能力』。

承太郎を攻撃したのはこの能力だ。雨水に溶け込ませ分離させた『手』で、遠隔から攻撃を仕掛け、

また康一たちには、固定したいくつもの雨粒で、スタンド全身に穴を開けたのだ。


吉良「…………あの雨粒。固定されれば『防御壁』として使われる可能性もあるな」

形兆「あぁ。そしてこの能力最大の問題は……」



形兆「こちらからの攻撃が『できない』という点だ」



『上空』へ遠隔操作し『攻撃』できるスタンドは限られている。

形兆「ハイエロファントグリーン、エコーズAct2、そして……」

形兆「オレのバッドカンパニーの4機の『アパッチ』。攻撃可能なスタンドはこれだけだ」

形兆「康一と花京院はダウン。やれるのはオレだけ。だがアパッチで奴を倒すことは……」


それは、単純な『火力不足』



形兆「…………不可能だ」

『特攻』

爆弾を搭載した航空機にて、目標に対し捨て身による体当たり・自爆攻撃を行う戦法である。



形兆「……『特攻』という手段を除いてはなァッ!!」


四機のアパッチが、上空のテラフォーマーに近付く。

その存在にテラフォーマーが気付いた瞬間、二機のアパッチが突撃を開始した。


……が、固定された雨粒は形兆の予想以上に『鋭利』だった。

先行した二機はトンネルのように機体に穴を開けられ……



カッ―― ドグオオオォォォン!!



爆発した。

形兆「ぐッ!?……しかし予想通り、本命はこっちだッ!!」


しかし、これは形兆の『作戦』の内だった。

確実に、テラフォーマーの喉元に特攻させる為の…… 『策』


爆散した二機と同じルートで、直ぐに残りの二機のアパッチをミサイルと共に突っ込ませる。

その進行路に、雨粒の『防御壁』はもうないからだ。


形兆「『水蒸気』になったぜ、既にッ!てめーの雨粒壁はよオオオォォォォ!!!」

形兆は直撃を確信する。だが……




ガシィッ!!




形兆「……な!!?」


形兆の『策』は通用しなかった。

雨に紛れたテラフォーマーの『両手』により、アパッチが掴みとられのだ。

纏衣装着型のスタンド。

ホワイトアルバムやオアシス。そしてこのテラフォーマーの『キャッチ・ザ・レインボー』がそうである。

スタンドはスタンドであれば触れることができる。アパッチは逃げることができない。


形兆「ほ、捕獲…………された!!?」

噴上「まずい!?これであの上空のテラフォーマーを倒すことは、かなわない……」

露伴「このままではジリ貧だ……!?」


『射程距離外』

この際立った劣勢の事実に、形兆は身震いしていた。


これから行われるのは、あの雨粒を操るテラフォーマーの『一方的な蹂躙』。

高速艇の『ホロ』が破られるようなことがあれば、あの雨粒や『手』で第二班全員が……




                一方的に殺される。




形兆「オ、オレの責任だ。オレがもっと上手くやっていれば……」

形兆を後悔の念が襲う。


しかし形兆が行った特攻は、このテラフォーマーを倒す要因の一つとなる。


ドルン ドルルン…


ゴキブリの『尻』には、『空気の流れ』を感知する器官が備わっている。

地球のゴキブリも、背後からではなく前方から叩こうとしないと、簡単に逃げられる。

この雨は、その器官の働きを鈍らせていた。

故に、前方のアパッチに意識がいっていたテラフォーマーは…… 背後の存在に『気付いていなかった』。


形兆「!!」

形兆「……フン。確かに…………」


ドルル ドルルン…


その『スタンド戦闘機』の存在に。


形兆「…………カッコイイぜ」




ナランチャ「合流完了だ!援護を開始するぜッ!!」

ドガガガガガ!!


テラフォーマー「…………!!?」


背後からエアロスミスの機銃で胴体に穴を開けられたテラフォーマーは、

雨に全身各部の分離と結合を繰り返し、空中を馬以上の速度で逃げ回る。


ナランチャ「判断が早ェな。だが……」


だが……エアロスミスの機銃や爆弾で対象に傷をつけると、そこから『スタンド硝煙』が出続ける。

このスタンド硝煙は雨で流れ落ちることはなく、

エアロスミスのレーダーで追跡するができる。よって……


射程範囲内のエアロスミスから、逃げきることはできない。



ナランチャ「捉えたぜッ……!ボラボラボラボラボラボラボラボラ……!!!」



機銃の乱射がテラフォーマーの身体の風通しを『良く』していく。

そして、『とどめ』とばかりに『爆弾』が投下され、それがテラフォーマーに直撃した。

ナランチャ「……ボラーレ・ヴィーア(飛んで行きな)」



ドグシャアッ! ピク…ピク……

落下し地面に叩きつけられたテラフォーマーは、身体をピクピクと痙攣させたのち、やがて絶命した。


ジョルノ「……さすがはナランチャ。既に一匹始末したようです」

ズッケェロ「なんだあのピアス付きテラフォーマーは!?他にもいるのか?ぶっ殺してやるぜ!!」

サーレー「殺すんじゃあねぇ。捕獲するんだ……なるべくな」

ミスタ「二班+四班でよォ~~、六的な感じで『縁起』良くなんねェかな~~~?」

アバッキオ「……まだ言ってんのか」

フーゴ「まぁ何にせよ、です。ぼくたち第四班が駆け付けたからには……」


ブチャラティ「『サンプルを集める』、『仲間も守る』」

ブチャラティ「おまえらゴキブリごときに『両方やる』というのは…………」



<第四班>

ブローノ=ブチャラティ、ジョルノ=ジョバァーナ、グイード=ミスタ、レオーネ=アバッキオ

ナランチャ=ギルガ、パンナコッタ=フーゴ、サーレー、マリオ=ズッケェロ、計8名。



ブチャラティ「そうムズかしい事じゃあないな」

本日はここまでです。
続きは日を改めて書かせて頂きます。

ここまでご覧頂きありがとうございました。
拙い文章ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

それではまた。

花京院「あれは……第四班!!?」

由花子「た、助けに来てくれたのね……!」


ミスタ「音声認識銃のお披露目といこうかァーーッ!!」

ジョルノ「……いや、待ってくださいミスタ。テラフォーマーたちの様子がおかしい」

ミスタ「ンン?」

アバッキオ「一斉に…………逃げていくだと?」


テラフォーマーたちは打ち寄せた波が引くように、一斉にその場を後にしだした。

逃げ時を心得てるでも、怖気づいたでもない。それは……


ナランチャ「オレたちにビビったのかァ~~?」

フーゴ「そういう風には見えませんが……」

ブチャラティ(……ナランチャが倒した個体が、『指揮官』だったとでもいうのか?)



『戦略的』な撤退だった。





仗助「よし、康一と花京院さんは治した。承太郎さん!腕、大丈夫っスか?」

承太郎「あぁ。これで鼠の時、ムカデ屋の時に次いで三度目だな、おめーの世話になるのは」

ナランチャ「形兆、オレになんかゆーことあるんじゃあないのォ~~~?」 ニヤニヤ

形兆「…………オレのアパッチの方がカッコイイ」

ナランチャ「!?」


徐倫「あなたたち第四班は、なぜわたしたちの救援に来てくれたの?」

アバッキオ「? おまえら、スピードワゴンさんからの『通達』を見ていないのか?」

露伴「スピードワゴンさんからの通達は……まだ見ていないな」

康一「あ…………」

康一(ぼくだけは見たけど、戦闘になってすっかり忘れちゃってたな……)

ブチャラティ「ならばそれも含めて、現状オレたちが得ている情報を共有させてもらおう」


ブチャラティ「まず通達の内容だが、君たち第二班と『合流』してくれ、というものだ」

ブチャラティ「そして合流する理由は……」



ブチャラティ「ディアボロたち『第三班の裏切り』が発覚したからだ」

徐倫「裏切り……!!?」

ブチャラティ「第三班は、自分たち以外のメンバー全員を『暗殺』するつもりらしい」

康一「そ、そんなことって!?どうして……」

噴上「ん?…………ちょっと待った。なんで『裏切り』がわかったんだ?」

噴上「まさか第三班が、『オレたち裏切りました、おまえらを暗殺します』とでも言ったのか?」

フーゴ「いえ、スピードワゴンさんたちが、裏切りの事実を突き止めたんです」

フーゴ「『ローマ連邦』が第三班の裏切りを嚮導しており、それが会議中に発覚しました」

由花子「他国も参加している会議中に?ローマの首相は、とんだマヌケ野郎ね」

花京院「他国は裏切りの話を聞いて、どういう意見を?」

ブチャラティ「……いや、他国はどこもこの事実には気付いていない」

ブチャラティ「スピードワゴンさんたち『だけ』が、その情報を知り得たそうだ」

露伴「? どういうことだ?ローマ首相本人を含めた他の首相には一切気付かれることなく……」

露伴「裏切るという事実『だけ』を、見抜いたということか?」

ブチャラティ「そういうことらしい」

ブチャラティ「『真実』の言葉を見抜ける。そういうスペシャリストがいるそうだ」

ブチャラティ「召喚された時に、DIOが話していた嘘を見抜ける『兄弟』のことだと思うが……」


承太郎「…………『奴ら』か」

――地球



既に会議は閉会している。

ロバート=E=O=スピードワゴンと、側近の二人は、帰路についていた。


側近A「全く……きな臭い連中だった」

側近B「兄の意見に同意です。しかし、まさか『嘘』がバレているとは思ってもいないでしょう」

側近A「おまえのことを『600年前のバトラーか、ハハハ』とか見下していた奴もいたな。笑える話だ」


スピードワゴン「……君たち兄弟に、地球に残ってもらって良かった」

スピードワゴン「おかげで確実な情報が得られ、『合流策』を図ることができた」

側近B「第一班と第五班が、そして第二班と第四班が『合流する』策……でしたよね」



『中国』が、テラフォーマーに『情報』を流していたこと。

『ローマ連邦』が、第三班に『裏切り』の手引きをしていたこと。

側近二人が、当事者たちにわからない形で、この『目論見』を暴くことに成功していたのだ。




『経験と能力』から、あらゆる嘘を見抜く…………スペシャリストの二人。

その名は、ダニエル=J=ダービー。そしてテレンス=T=ダービー。




ダービー兄「600年後の後輩たちは、嘘をつく事が下手なようだ」

ダービー弟「我々兄弟に『イカサマや嘘』をつくのは……もう600年、早いということです」

ファーストやセカンドの奪取策に中国等は奔走していたが、ローマ連邦だけは違った。

スタンド使いという超能力者たちのことを、『最初から』高く評価していたのだ。


なぜなら、2000年代に存在したイタリアマフィア『パッショーネ』の歴史を知っていたから。



『ローマ連邦』から第三班に打診があったのは、火星へ発つ一週間前のことだった。


話の内容は主に三つ。

①『サンプル』を我が国が独占したい  ②それが叶えば、君たち第三班に出来得る限りの報酬を与える

③さらに、ローマ連邦での永住権と国家の役職をそれぞれに与える(ローマ連邦の力となれ)


班長のディアボロは、この打診に即答した。そして、一つの『条件』を付けた。


我々は600年前に、様々な理由で『死んで』いる。

しかし何かの力により、この世界に召喚された。

もしも『目的』を達した場合、我々はこの世界から消えてしまうかもしれない。

それは永遠の死である。生き返ると言ったスピードワゴンの言葉も信用してはいない。


だがもし『この世界』に残ることができたら?第二の人生を歩めたら?

この中の『誰か』がこの世界へ召喚した張本人かもしれない。三班の班員は違う。違う班の誰か……

その張本人が死ねば、この世界に残ることができるのではないか?そう結論付けた。




…………ならば『皆殺し』だ。




ディアボロは言った。

「ローマ連邦よ、協力しろ。他班の『皆殺し』を手伝う―― それが『条件』だ」


こうしてローマ連邦の協力の元、第三班は『偽装用の死体』を手に入れていたのだ。

その死体はホルマジオによって密かに持ち込まれ、セッコにより身元不明死体へと変容されていた。

……


徐倫「わたしたち以外の班に、あなたたちはもう接触したの?」

ブチャラティ「いや、まだだ。アネックスに戻る予定を途中で変更し、君たちに合流したからな」

徐倫「じゃあ第六班もアネックス護衛班も、未だ安否がわからない状態なわけね……」

ジョルノ「ええ。危険な状態……もしくは、最悪の場合全滅しているかもしれない」


花京院(第六班にはプッチ以外にも、ヴァニラアイスやペットショップ、チャカもいる)

花京院(そう易々とやられるとは思えないが……)

花京院(だが、それなら護衛班も同様だ。瞬間的な近接戦闘力では最強クラス、10位の音石明に……)

花京院(広域殲滅が可能な護衛班班長プロシュート。それを補佐できるスタンド使いも揃っている)

花京院(…………)

花京院(プロシュートもペッシも、元々は第三班所属だ)

花京院(第三班が第六班や護衛班を襲撃したのか?)

花京院(いや…………第六班に関しては、それはないな)

花京院(高速艇の着陸後、間もなくSOSが発信された。第三班が他班をすぐに襲撃することはできない)

花京院(ならば…………テラフォーマーに、強力なスタンド能力を持つ個体でもいるのか……?)


承太郎「どのみち、両班共に安否を確認しなければならない」

仗助「まずは第六班っスかね?位置的にも近いし」

アバッキオ「それがいいだろうな」



承太郎(第六班、アネックス護衛班、そして……)

承太郎(じじいたちとも連絡がとれない。今どこで、何をしているんだ……?)

――ピラミッド内



イギー「…………」 クンクン… クルッ

イギー「?」

アヴドゥル「ずっと、だな……」

ポルナレフ「ああ。ピラミッドの中に入ってから、一匹もゴキブリを見ていない」

アナスイ「このピラミッドは、対して重要な場所ではないのか?」

エルメェス「む……この部屋は?」


ジョセフたちが訪れたこの小部屋の『黒板のような』壁面には、以下のものが書かれていた。




『8』、『5』、『3』、『2』、『1』、『1』

『1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144……』


『♍』と、神殿の絵。

『△』と、ピラミッドの絵。


『1.6180339887』

F・F「これは……何の部屋だ?先程の大部屋と比べると、かなり小さい」

リキエル「……何かを『計算』しているように見えるな」

ウェザー「オレにもそう見える。が、あの神殿とピラミッドの絵はなんだ?上手い絵だが」

ジョセフ「あの神殿はどこかで見た気もするが……」

アヴドゥル(パルテノン神殿に似ている……いや、パルテノン神殿そのものか?)

ポルナレフ「う~む……なんか『学校』みてーな雰囲気だな。ゴキブリどもは夏休み中ってか?」

エルメェス「学校というか……勉強部屋って感じじゃないか?」

エルメェス「椅子みてーなものが大きいのが1つ、小さいのが『5つ』ある」

アナスイ「そうだな。先程の大部屋の方が、『大勢向けの学び舎』のような雰囲気をしていた」

ジョセフ「…………」

ジョセフ(それにしても、あの『縄』付きのテラフォーマー以外、ただの一体も遭遇しないのはおかしい)

ジョセフ(先程の大部屋も、この小部屋も、テラフォーマーが立ち入りしている痕跡はあるが……)

ジョセフ(…………アナスイの言うように、このピラミッドは重要でない場所なのか?それとも……)



ジョセフ(テラフォーマーが『普段は立ち入らない場所』なのか?)

……


メローネ「ボス、『ベイビィフェイス』からの新しい報告です」


『ピラミッドや神殿の絵、それに多くの数字が描かれています』

『描かれている数字の詳細はこちらをご覧ください』


チョコラータ(あの数字は、確か『黄金比』の……)

ディアボロ「…………リゾット」

ディアボロ「プロシュートやスクアーロとはまだ連絡がとれないのか?」

リゾット「まだとれていない。アネックスからの『SOS』を受信してからは、一度も……」

ディアボロ「……アネックスに何があったというのだ」

ホルマジオ(いやいやいやボス!!何を悠長に悩んでんだ!!?)

ホルマジオ(この目の前のゴキブリどもを先に何とかしてくださいよォーーッ!!)

ホルマジオ(……って言えたらなァ~~~!!)


第三班は、300を超えるテラフォーマーたちに囲まれていた。



チョコラータ「何だ、あれは……?」

『カイコガ』

カイコはチョウ目・カイコガ科に属する昆虫の一種。カイコガは正式和名である。

絹糸や貴重な動物性タンパク質を得られる食料として、バグズ2号に積み込まれていた。



そのカイコガが、ピアスを付けたテラフォーマーの手から放たれ、

第三班の前まで浮遊してきている。その数は十匹程度。


ヒラヒラ…ヒラヒラ…


チョコラータ「……ゴキブリどもが飼育し、繁殖させたのか?」

リゾット「だろうな。バグズ2号に積み込まれていたものだろう」

セッコ「何匹か捕まえてみるか」


そう言ってセッコが手を伸ばそうとするのを、ディアボロが制した。

ディアボロ「やめろセッコ……」


ディアボロ「そのカイコガには『触れるな』」



キングクリムゾンの『エピタフ』には、

カイコガとの接触を、『逃げるように』避けているメンバーの姿が投影されていた。


スッ

ディアボロは足元に転がる石を二つ、カイコガに投げ当てた。するとその石が……




ザクザク! ザクザクッ!




奇妙な音を立てながら、内部から破壊された。

イルーゾォ「な!?い、石が……」

リゾット「『切り裂かれた』!?」



ディアボロ「このカイコガは……『罠』だ」

ディアボロ「あのカイコガに触れてしまえば……」

ディアボロ「ギアッチョやセッコでさえ、同じように『切り裂かれる』かもしれん。用心しろよ」

セッコ「マ、マジかよォ~~~」

メローネ「げ……あ、危ねェッ!!」 バッ

リゾット「これであのテラフォーマーが何らかの『能力』を持っていることがわかったな」

チョコラータ(そもそも……カイコガは普通『飛ばない』。これも能力によるものなのか、それとも……)

ホルマジオ「!? 何か出してきたぜ!」


ピアスをつけたテラフォーマーの身体から、

インディアンのような装飾を纏った人型のビジョンが浮き出た。


リゾット「……あれは『スタンド』だな」

メローネ「まさかゴキブリも『スタンド能力』を持っているとは……!!」

ディアボロ「フン、予想範囲内だ。そして……これを待っていた」

ディアボロ「リゾット、イルーゾォ、貴様らで始末してこい」

リゾット「了解した」 イルーゾォ「了解!」



ディアボロ「セッコ、チョコラータ、ギアッチョ、陣形を組むぞ」

ディアボロ「『グリーンディ』……解禁だ」

このテラフォーマーのスタンド名は『イン・ア・サイレント・ウェイ』


能力は―― 音を形にし、それに触れたものに音の表す物理的効果を与えるというもの。

カイコガは『ザクザク』という音を纏っていた。



イルーゾォ「リゾットとメタリカ、ピアスのテラフォーマーだけ『許可』するッ!!」


ズギャアーッ!




――鏡の中の世界


イルーゾォ「よし、これで奴はスタンドと隔離された」

TF「…………なんだ、ここは」

リゾット「!?」 イルーゾォ「!?」

イルーゾォ「しゃ…喋った!!?あのゴキブリ確かに今、喋ったぞッ!!」

リゾット(……そこまでの知能があるのか。油断はならないな)

リゾット「しかしここからは……」



リゾット「オレたちはおまえに『近付かない』」 スーッ…



『メタリカ』による保護色同化。全身に『鉄粉』を付着させ、姿を消すことができる。

イルーゾォも同様に姿を眩ませており、テラフォーマー相手にもその効果は高い。


TF「…………消えた」


リゾット「おまえらゴキブリが『視覚』に頼っていることは知っている」

リゾット「スタンドを使うテラフォーマーよ……」

リゾット「言語を理解できる知能があったことは、おまえの人生最大の不幸だ」



リゾット「おまえはこれから死ぬまで、オレに『拷問』され続けるわけだからな」

……


チョコラータ「これだけの数を捕獲できれば、余ったテラフォーマーで実験して……」

チョコラータ「『死の雄叫び』や『その表情』を観察する、なんてこともできたのになァアア~~~」

メローネ(……こ、こいつは『好奇心』でしか行動してないのか!?)

ディアボロ「他の班も多少はゴキブリを捕獲しているはずだ。それを奪うぞ」

ギアッチョ「……ワクチンの為のサンプルは、律儀に集めるんですね」

ディアボロ「当然だ。我々としてもウィルスで死にたくはない」

ディアボロ「イルーゾォも、『ウィルス』でもう一度死ぬことだけは願い下げだろうしな」


セッコがオアシスを発動、範囲内の地面は全て『ドロ』と化した。

ギアッチョがホワイトアルバムで、メンバー周辺の地面を凍らせ『足場』を作った。

チョコラータがグリーンディで、ドロにはまるテラフォーマーと、

空から飛来するテラフォーマーをことごとくカビらせ、その全てを始末した。



現状、周囲を囲んでいたテラフォ―マーの数は300から100程に減っている。

チョコラータ「あとは勝手に、カビがゴキブリどもの死体から広がり……」

チョコラータ「他班をも巻き込んでくれれば楽なんだがな」



その時、ピアスのテラフォーマーの死骸が泥沼の上に、

リゾットとイルーゾォが『足場』の上に、それぞれ姿を現した。



リゾット「……報告だ。あのピアスをつけた個体には知能があり、我々と同じ『言語』を発していた」

リゾット「しかし拷問にも口を割らず、得られた情報はない」

ディアボロ「…………そうか」

ディアボロ(そこまで知能の高い個体がいるとはな……『スタンド』だけで十分驚いたものだが)

ディアボロ(…………)

ディアボロ(プランε移行時に感じた、ジョセフの不自然な点)


ディアボロ(奴は『何かの危険』を案じていた。これらの特殊な個体がいる事を予想していたのか?)

TF「じょじょ……じょうじょ」


ホルマジオ「!? テラフォーマーたちが後退を始めたぞ!?」

チョコラータ(ピアスを付けた個体を見た途端にだ。……指揮官が敗れたのを見て、撤退を始めたのか?)


セッコ「ジョジョジョジョ……さっきからうるせーぞこのゴキがッ!!」 ドゴォッ!

TF「…………!」

セッコ「ジョセフ=ジョースターかよ!!クソがッ!!」 ドロドゴドロォ!

TF「…………!!!」




ブリュ…




セッコがオアシスを纏った乱打を叩きつけ、泥化させながらテラフォーマーを仕留めた。


また、その際にテラフォーマーが『脱糞』をした。





テラフォーマーたちは後退するも撤退することまではせず、一定の距離を保っている。

時間が経過するにつれ、テラフォーマーたちは徐々にその数を増していく。


ギアッチョ「……なんだ?逃げ出したと思えば、今度は距離を保って留まりだしたぞ」

チョコラータ「案外、学習したのかもな。近寄るとドロ沼にはまり……カビてしまうと」

セッコ「で……どうすんだ?何か動かねーのか?」

ホルマジオ「このまま、こうして待っているだけでいいんじゃあないか?」

ホルマジオ「チョコラータの言うように、カビが範囲を広げ勝手に殲滅していくし……」

リゾット「それにボスの予知、イルーゾォのマンインザミラーがあれば、トラブルにも対処できる」

ディアボロ「そういうことだ。奴らの出方をまずは伺う」



しかしこの時、第三班の誰もが気付いていなかった。


テラフォーマーの残した『糞』が、かつてない『脅威』を呼び寄せていることに……

――ピラミッド内



イギー(もよおしてきやがったぜ……しょうがねェ、やるか)

ポルナレフ「お、イギー小便か?」

アヴドゥル「何が潜んでいるかわからん、気を付けろよ」


スタスタスタ…


シ~ッ…


イギー「…………」

イギー「ふぅ、スッキリしたぜ」

「て…てめェ……オレの顔によくもッ!!」

イギー「ん?」

「犬のションベンが……なんでオレがこんな目に遭わなきゃならねェッ!?」

「……るせーぞメローネ!この犬はここで殺すッ!!」

イギー「こ……こいつはッ!?」


ピラミッドの『壁』から、殺意を放ちながらその『スタンド』が姿を現した。

『ならば他の仲間には気付かれないよう、すぐに殺せ!』

ベイビィフェイス「当然だ……!!」

イギー「こいつは……何かヤバいッ!?」 ダッ!


シパアァーーン!


イギー「!?」

ベイビィフェイス「……さすが犬コロ、『野生の勘』か?よく避けられたな」

イギー「か、『壁』が抉りとられている!?」

イギー「あんなの生身で喰らうわけにはいかねェ……『ザ・フール』!!」


ズザザザザザザ……!


イギー「かまくらを作った!!これで簡単に攻撃は通せないはずだ、今の内にジョースターたちを……」

ベイビィフェイス「ワンワン何言ってるかわからねーが……」

ベイビィフェイス「次に抉るのはその砂のスタンド、そして……」

スパン!シパッ!

イギー「!? ま、まさか!?砂の壁までも簡単に抉りとられ……」


シパアァーーン!


イギー「がッ!?」

ベイビィフェイス「……てめーの『喉元』だ」




氏名:メローネ

マーズランキング:43位(第三班)

スタンド名『ベイビィ・フェイス』 遠隔自動操縦・思考分離・特殊攻撃型

ベイビィフェイス「メローネ、イギーを始末しました」

『よくやった!だが確実に始末しろ、呼吸はもうできないだろうが、確実にな』

ベイビィフェイス「りょうか…………ん?」


シーン…


ベイビィフェイス「…………あれ?」

ベイビィフェイス「どこに行った?呼吸も乱れているはず、遠くに行けるはずは…………ハッ!?」


そういえば抉り取った後、イギーから『血』が出ていなかった……!?

そ、それはつまり、さっきの奴は……


イギー「……砂の『偽物』ってことだぜ」 ドガァッ!


ベイビィフェイス「!? ぐあああッ!?」

イギー「ヘヘ、油断し過ぎだぜおまえ」

ベイビィフェイス「おのれ……!?だ、だが直接攻撃のザ・フールでは!壁に隠れるオレを倒せは……」

イギー「オイ、忠告だ。おれより『あっち』を気にした方がいいぜ?」

ベイビィフェイス「何を吠えてやが…………ハッ!!? や、やめっ」



アヴドゥル「クロスファイヤーハリケーン!!」 ゴオアァァオッ!!



ベイビィフェイス「ぎ、ぎゃあああああ!!?」

『ベ、ベイビィフェイス!!?応答しろ!……クソ!信じられん、連絡が途絶えた!!』


ポルナレフ「イギー、無事か!?」

F・F「どこか怪我したんなら、プランクトンを詰めてやるぜ」

ジョセフ「イギー、アブドゥルよくやったぞ。そいつはおそらくメローネのスタンドじゃな」

アナスイ「メローネ……第三班の奴か。第三班が、オレたちの動向を探るっつーことは……」

ウェザー「裏切りか?……なんにせよ、よからぬ考えは持ってなさそうだな」

アヴドゥル「なかなか良い芝居だったぞイギー」

ポルナレフ「あぁ、さすがに良い勘してるぜ。よく釣り出したもんだ」

イギー「ワン(当然だ)!」

リキエル(…………犬と会話をしてる……のか?すごいな、通じ合っているように見える……)

エルメェス「いずれにせよ、一度高速艇に戻って他の班と連絡をとろう」

ジョセフ「そうじゃな、よし行くぞ」


スタスタスタスタ…

スタスタスタスタ…


アヴドゥル「……そろそろ、出口だ」

ウェザー「ん?……ジョースターさん、ちょっと待ってくれ」

ジョセフ「どうした?」

ウェザー「あそこの壁から、微妙な空気の流れを感る。隠し部屋があるかもしれない……」

ポルナレフ「隠し部屋ァ?そんなTVゲームみたいな……」


ガコォン!

ポルナレフ「う、うおお!!?」

ポルナレフが触れた石壁の一部が動き、壁面が回転し始めた。


リキエル「…………部屋だ」

ポルナレフ「な、なんでゴキブリどもがこんな細工するんだ!?」

ウェザー「とにかく入ってみよう」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ……



アナスイ「な、なんだこの不気味な柱と仮面は……」

イギー「…………!」

ジョセフ「これで……『確定』じゃ…………!!!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ……



ジョセフたちが目にしたものは、『巨大な柱』と、その柱に飾られた無数の……





                『石仮面』だった。


……


メローネ(クソ!再度ベイビィフェイスを生産するには、女が必要だ……!!)

ホルマジオ「それにしても、一向に襲ってこない……どうしたんだ?」

イルーゾォ「『応援』の数も揃ってきている、数も400匹を超えたな」

ギアッチョ(『応援』…………ハッ!!?)

ギアッチョ「『チアリーダー』って言葉のよ……チアってのは、わかる。スゲーよくわかる」

ギアッチョ「チアは『応援する』って意味だからな。だがリーダーって部分はどういうことだああ~~っ!?」

ギアッチョ「なんで応援する奴全員が『リーダー』なんだよッ!」

ギアッチョ「リーダーは統率者、何人もいねーだろうがッ!どういう事だ!どういう事だよッ!!」

ギアッチョ「クソッ!『チアリーダー』って、どういう事だッ!ナメやがって、クソッ!クソッ!!」

チョコラータ「……そのリーダーは導くという意味の『lead』からきている」

リゾット「そう。観客の応援を導くことから、チアリーダーと呼ばれているんだ」

セッコ「英語の教師か、オメーらはよォォォォ」


イルーゾォ「『鏡の中』でやり過ごすか?これ以上増えられると……」

ホルマジオ「おめーのスタンドパワーが無限に続くなら、それも『アリ』だがなァ~~」

ディアボロ「数はそこまで問題ではない。この陣形を崩さ…………ん?」

リゾット「なんだあのテラフォーマーは?…………角に、髪の毛?」



頭部に三本の角。

長い髪。

股下には褌。

人間のような風貌をしており、ギリシアの彫刻のように『美しい』。


1900年代、当時ジョセフ=ジョースターの機転により地球を追放され、宇宙を漂っていた……





                  『究極の生命体』





カーズ「『波紋の戦士』は…………どこにいる?」

セッコ(な、なんだこいつの放つ威圧感は……!?)

セッコ(オレたちのことを、まるで地面を這う『蟻』でも見るかのように眺めてやがる……!!)

チョコラータ「『波紋の戦士』?何だそれは?」


カーズ「ゴキブリを溶かした奴がいるだろう。そいつのことだ」


チョコラータ(『ゴキブリ』?こいつは……テラフォーマーではないのか?)

ホルマジオ「『溶かす』と言ったら……」

セッコ「オレのことか?」

ディアボロ「!!?」

ディアボロ「避けろセッコォォォォォーーーーッ!!!」



ザンッ!!



セッコ「……!!?」

高速で接近したカーズが、セッコの胴体を真っ二つに切断した。


カーズ「……波紋の戦士ではないようだな、何かの『能力者』だったのか?」

カーズ「まぁいい次の質問だ。『ジョースター』の一族は、どいつだ?」

チョコラータ「セ、セッコが……!!?おおおおおッ!!」

チョコラータ「『グリーン・ディ』!!」


ドババババッ!


チョコラータ「ラ、ラッシュが避けられた!!?」

カーズ「もう一度聞こう、『ジョースター』の一族がいるだろう?」

カーズ「それはどいつだ」

イルーゾォ「な、なぜだ!?」

イルーゾォ「なぜテラフォーマーが『ジョセフ』のことを知っているんだ!?」

カーズ「!!」

カーズ「貴様……今『ジョセフ』と言ったな?」

カーズ「ジョセフ=ジョースターについて、何を知っている?」

イルーゾォ「知っているも何も、あいつは……」

ディアボロ「待てッ!!イルーゾォ!」

イルーゾォ「!?」

カーズ「…………おい、話を区切るんじゃあない」

ディアボロ(見えてきたぞ……こいつはゴキブリではない)

ディアボロ(ジョセフが『危険視』していたのは、おそらくコイツのことだ)

ディアボロ(だとすれば、コイツは『スタンド使い全員』を相手にできる力があるかもしれん)

ディアボロ(そうでなければ、アネックス墜落時に『プランε』を選択する必要がないからな……!!)

ディアボロ「貴様は一体……何者だ?」

カーズ「フン。下等生物の疑問に答えてやることで、わたしに何か『得』があるのか?」

ディアボロ「…………まるで自分が上等な生物のような発言だな」

カーズ「上等ではない。『神』なのだ」

ディアボロ「…………」

ディアボロ「リゾット。鏡の中に入り、全員で廃棄した高速艇へ向かえ。そして……第一班と連絡をとるんだ」

ディアボロ「この『化け物』についての情報を教えてやれ」

リゾット「…………了解した」

イルーゾォ「だ、だがボスは……」


ディアボロ「わたしはここでこいつを始末する」

カーズ「ほう……?」



ディアボロ「『神』が相手だろうと、『帝王』に後退はない」




氏名:ディアボロ  年齢:33歳

マーズランキング:2位(第三班、班長)

スタンド名『キング・クリムゾン』 近距離・時空間干渉・直接攻撃型

本日はここまでです。
続きは日を改めて書かせて頂きます。

ここまでご覧頂きありがとうございました。


また参考までに、現状判明しているマーズランキングを記載しました。


2位 ディアボロ
4位 DIO
5位 承太郎
7位 ギアッチョ
9位 チョコラータ
10位 音石明
11位 プロシュート
12位 セッコ
14位 ブチャラティ
16位 サーレー
18位 トリッシュ
19位 虹村刑兆
21位 吉良吉影
43位 メローネ
61位 ミスタ
63位 ジョセフ
70位 ジョンガリA


拙い文章ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

それではまた。

カーズ「……自信は大いに結構。だがわたしという存在を知らぬだけで、吠えるだけの愚蒙な犬に見えるぞ」

ディアボロ「…………」

カーズ「まずはリクエストに応えよう、貴様からだ。どこからでもかかってくるがいい」



ディアボロは理解している。カーズの『驕り』を。


絶壁の崖近くの道では、意外と事故が少ない。

危険だとわかりきっているから、注意深くなるのが要因だ。


カーズはこの時、その驕りから注意深さを一切持ち合わせていなかった。

ディアボロが狙うのは、その驕心に乗じた初撃――



ディアボロ「『キングクリムゾン』!!我以外の全ての時間は消し飛ぶッ!!」

支援、いる?

ディアボロ「……『見える』、こいつの動きがッ!『予測』できるぞ!!」

ディアボロ「パワーはあるのだろうが、だが『それだけ』だ」

ディアボロ「ギリギリで奴の攻撃はかわせる……時は再び刻み始めるッ!!」


ドガ! ドゴォッ!!


カーズ「!?」

カーズ「…………『当てられた』だと?」

ディアボロ「!!? 馬鹿な……まるで堪えていない!?」

ディアボロ(『キングクリムゾン』の破壊力をもってして、この有様とは……!!)

ディアボロ(何か、何か手を考えねば……)

カーズ「フン。『逃げる』ことに関しては超一流のよう……」



『――息が止まるまでとことんやるぜ、逃げるんだよォォォォーーーーーッッ』



カーズ(ちっ…………忌々しい、あの『逃走劇』からだ)

カーズ「貴様もやはり不愉快な存在だ。後悔の悲鳴を吐き出させてくれるッ!!」

ディアボロ「こ、この『予知』は……!?」

>>300
ありがとうございます。支援なしで大丈夫そうです

カーズ「…………ムゥ!?く、口から!?」

カーズ「お…おえええええッ!!?」


ゴボガボゴボ!


カーズ「なにィィィィ!!?こ、これは!?」

「吐き出したのは悲鳴ではなく……『カミソリ』だったようだな」

カーズ「!?」

カーズ「背景に溶け込んだその姿……貴様も能力者か!?」



リゾット「いくぞボス、援護する」




氏名:リゾット=ネエロ  年齢:28歳

マーズランキング:42位(第三班)

スタンド名『メタリカ』 近距離・群体・物質操作攻撃型

ディアボロ「……他のメンバーはどうした?なぜここに来た?」

リゾット「皆、オレ以外は乗り捨てた高速艇へ向かっている」

リゾット「『メタリカ』ならば、援護に向いている……だから来たまでだ」

ディアボロ「…………フン」

ディアボロ「いいかリゾット。奴の皮膚は異様に硬い、内側から攻撃しろ。勝機はそれしかない」

リゾット「了解した…………が、内側からの攻撃は、もうできない」

ディアボロ「……なに?なぜだ?」

リゾット「奴の体内の鉄分が少な過ぎる。ゴキブリではなく人間に近い体質だと思っていたが、そうではないようだ」

リゾット(ジョセフが知っているであろうこの化け物は何者なのか、そこまでは現時点ではわからない……)

リゾット(だが……)

リゾット「人間を、嘗めるなよ」



ズズズズ…… ズラアアアァァァ



無数のナイフを地表の鉄から生成し、それらがカーズを取り囲んだ。


『鉄』という元素そのものは、恒星の核融合の最終生成物であり、

地球だけでなくこの広大な宇宙空間に、広く行き渡っている存在である。

当然、この『火星』にも……


カーズ(なるほど、『鉄』を操るのか。これ程の数の刃物を作れるとは……『狙い』はわたしの体内か?)

カキン! カキン!


ナイフが一斉にカーズに打ち当たった。

それらは決してカーズの外皮に刺さることはなく、カキンという音を立て地面に落ちていく。

リゾット「ちッ!ならばこれはどうだ!?身体の関節部分、隙間を狙うッ!!」


カキンカキン! カキンカキン!


カーズ「…………」

リゾット「……!?」

リゾット(なぜ……口を『開けない』!?)

リゾット(ナイフを口にぶち込み、そこから鉄を変異させ体内から攻撃を仕掛けようと考えていたが……)

リゾット(その作戦が読まれているとでもいうのか!!?)

ディアボロ(まずい……!リゾットが奴の体内から攻撃をできないとなると、決定打が作れん……!!)


ディアボロの打撃攻撃。背景同化し隠れたリゾットのナイフ攻撃。

そして体内でカミソリ等の凶器を生成する、内部からの攻撃。

再生ができるカーズにとっては、そのどれもが実害をなさなかった。

カーズはこの時……



人間が、『たかるハエに示す嫌悪の気持ち』を理解した。



カーズ「……そろそろ目障りだな。『反響定位(echolocation)』」

『エコロケーション』

日本語で『反響定位』と言う。動物が自ら音を出し、その音の反響によって定位を行うことをいう。

ソナーやレーダーと同じ原理である。


カーズ「…………!!!」 キン…!!


ディアボロ「これ…は……!?」 ビリビリ

リゾット「も、もしやソナーのようにッ!『位置』を探り当てているのか!?」 ビリビリ


これにより『鉄粉』を纏い背景に同化していたリゾットの位置は、カーズに漏洩してしまう。


カーズ「フフフ……」



しかし、この時ディアボロが見ていたエピタフの『予知』は、

隠れ場所が見つかり攻撃されるリゾットの姿ではなかった。


ディアボロ「い、一体……どういうことだ!!?」

全く理解ができない。エピタフに映った未来の映像、それは……




『燃え盛る火炎に囲まれた、自身の姿』 だった。




……エコロケーションの話に、続きがある。


声帯のないイルカは、水中でのコミュニケーションが困難である。

そこで声の代わりに『メロン部』で共鳴、増幅された音を用い……



『仲間』とのコミュニケーションをとっている。

ディアボロが気付いたのは、『それ』が上空でテラフォーマーたちの手を離れた後だった。



『燃料気化爆弾(Fuel-Air Explosive Bomb)』



ディアボロ「爆弾……!!? 馬鹿な!?貴様も無事では……」

カーズ「わたしは逃げるよ、空にな」


ブワサァッ!


ディアボロ「!!?」

カーズはそう言うと、腕を羽のように変形させ空へ飛び立っていってしまった。


この爆弾は無人探査機の材料を用い、カーズが精製したものである。

爆風による衝撃波、そして爆発後の激しい延焼。二人が生き残れる可能性は、皆無であった。



リゾット「こ、こんな知能が……」

ディアボロ「馬鹿な…………!!」



液体燃料が高速で噴出する。

その液体燃料が蒸発して蒸気雲が形成されると、これに着火し――




   ドドオオオオオオォォォォーーーーーーーンンンンッッ!!!!!!!!




            ――大規模な爆発を起こす

……


外の世界で『起こった』現象は、『マンインザミラー』の世界でも同じく起こる。

岩が破壊されれば、鏡の中でもその岩は破壊される。


メローネ「い、岩が……!!?」

ホルマジオ「何があった!?外の世界はどうなっている!?」

イルーゾォ「ば、爆弾だ……!!?」

チョコラータ「爆弾だと!?」

チョコラータ「…………もしその爆弾が、ボスやリゾットを狙ったものだとすれば……」

チョコラータ「この範囲にこれだけの威力ある爆風を運べるものを……あの化け物が精製したのか!?」

ホルマジオ「『爆圧』も『火炎』もこの世界には存在しない、鏡の中でなければオレたちも死んでいただろう……」

ギアッチョ「オ、オイ。この後はどうする?置いてきた高速艇に戻るか?それともボスたちの……」

チョコラータ「…………」

チョコラータ「いや、高速艇に戻り……アネックスへ帰還するぞ」

チョコラータ「現状のメンツでは、通常のテラフォーマーにさえ遅れをとりかねん」

チョコラータ(…………まさか、これ程の知能を持つ化け物だとは……!)

……


『キング・クリムゾン』

エアロスミスの弾丸を回避した時のように、ディアボロは時間を消し飛ばしていた。

爆圧を受けるという『過程』を消し飛ばし、回避したという『結果』だけが残ったのだ。


燃料気化爆弾の最も危険な点はその『爆圧』にあり、

その威力は単距離小型核爆弾の爆圧にほぼ等しいと言われている。

ディアボロだけはそれを回避した。

しかしそれでもリゾット同様……『死』という運命から逃れることはできないだろう。


辺りでは、急激に酸素が減少していた。激しい延焼が原因である。

高音の炎と窒息効果により、宇宙服を着たディアボロも意識が朦朧としてきている。


ディアボロ(リゾット…………!)

ガシィッ!

ディアボロ「!!? ぐ…が……ッ」

カーズ「帝王様も、虫の息だな」



カーズが舞い戻り、ディアボロの首を掴み、その身体を持ち上げた。

カーズ「聞いてやるぞ遺言を。何か言い残したいことはあるか?」

ディアボロ「ぐ……」

カーズ「どうした?わたしに攻撃を当てた貴様に、敬意を払ってやるのだ」

ディアボロ「お、教え……て…………やる」

カーズ「?」

ディアボロ「わたし…が、貴様に……『先輩』と…して、教えて……………やる……」

カーズ「……ほう。この『究極の生命体』であるわたしにか、何だ?言ってみろ」



この時、ディアボロの脳裏には過去の思い出がよぎっていた。

サルディニア島で育った19年間、『弓と矢』の発見、パッショーネの設立。

幾度となくあった策謀、戦い。そして――




――永遠に『死に続ける』という地獄を味わったこと




ディアボロ「きさ…まも……いずれ知る。『死ぬ』ことは……恐ろし…い……ことだ…………」

ある学者は言う。

人間の脳は、無意識に『死』の恐怖や痛みにストップをかけていると。

そうでないと、すぐにショック死してしまうからだ。


ある宗教家は言う。

人間社会に『天国』の概念があるのは、人間が最期に得る『死の恐怖』に立ち向かう為だと。




ディアボロ「よ、よく…覚えて…………おく…んだな……。どうせきさ…ま……も……………」




ザンッ!!




……ディアボロの首が、真っ二つに切断された。


カーズ「このわたしが『死ぬ』とでも?…………フン」


カーズ「さて、話から推測するに……『ジョセフ=ジョースター』がいるようだな」

カーズ「そしてジョジョは、このわたしが火星にいることを『予想』していた節がある」

カーズ「つまり同性同名ではなく、『あの』ジョジョがいるようだ」

カーズ「……なぜこの時代にいるのかはわからんがな」

カーズ「案外、石仮面でも使ったか?フフフ……まぁいい、再会が楽しみだ」

……


ミスタ「こ、これは……」

由花子「ひ、ひどい……」

康一「由花子さん、あまり見ない方が……」

承太郎「やれやれ、女の子にゃあこの惨劇はきつすぎる」


第二・四合同班が目にしているのは……

第六班の高速艇と、『7人と1羽』の首無し惨殺死体である。


フーゴ「IDタグもない……これでは、誰が誰かわかりませんね」

アバッキオ「体格的に一人はボインゴとわかるが……それ以外の6人はわからないな」

ブチャラティ「…………おかしい、一人分『足りない』」

億泰「何だって?」

ジョルノ「ブチャラティの言う通りです。『誰か』の死体がない」

ナランチャ「まさか……ゴキブリが人間を喰ったのか!?」

ミスタ「人間を喰ったりはさすがにしねぇだろ、『マズイ』だろうしな」

露伴「それに……『一人だけ』というのは不自然だ」

アバッキオ「……とりあえず『リプレイ』するか?」

ブチャラティ「そうだな、頼んだぞアバッキオ」

承太郎「…………」

徐倫「……父さん?」


承太郎(…………もしもだ)

承太郎(喰われたのが『人間』ではなく……)

承太郎(『吸血鬼』だとしたら?)



ミスタ(ん?そういえばチャカの『剣』もないな……?ゴキブリが持っていったのか?)

カーズの好物は……『吸血鬼と化した人間』である。

吸血鬼を捕食することによって、得られるエネルギーは多い。


ゴキブリはエネルギーの変換効率が非常に優秀である。

人間大のテラフォーマーが、もしも吸血鬼と化せば……

カーズはそう思い石仮面を作った。


ワムウ決戦時に用いられた『吸血馬』ならぬ……『吸血ゴキブリ』である。


結果、再生能力までは持ち合わせなかったが、高い戦闘力と、

波紋という『弱点』、そして高エネルギー、この三つの特性をテラフォーマーは得た。




カーズにとって、テラフォーマーは食糧であり、駒であり、ただの実験台に過ぎない。


しかし彼らは、カーズのことを『神』の如く崇拝していた。

放たれたるは、極寒の地。

元より寒さ暑さに弱く、多くの同胞が死の淵へ追いやられた。


徐々に、徐々に適応する。徐々に、徐々に数を増やす。


我らの祖先も、そのまた祖先も、そのまた祖先も……もはやこの地以外は知らぬ。


『初めに、神は天地を創造された』


『神は言われた。「光あれ」』

『神は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ」』

『神は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ」』


徐々に数を増やす。増やす。

我らは屈強な体格へと成長した。以前の何十倍もの大きさとなった。神は我らの前にその御姿を現した。


『神は御自分にかたどって我らを創造された。神にかたどって創造された』

『神は我らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ」』


我らは仮面を被った。

矢で射られた同胞も数多くいた。が、「5体」を残し…………皆死んでしまった。


我らの「知」と「力」全てを、神に捧げる。


『神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった』


幾度も幾度も幾度も……朝があった。


増やす。増やす。増やす。増やす。増やす。増やす。増やす。増やす。増やす。増やす。

全ては、神の為に。



――『創世記』より抜粋

『運命』は、偶然ではない。



『ゴキブリ』は3億年以上も前から地球に存在している。

人類が誕生したのは700万年前。遅まきながら地球に立った人類ではあったが……

現状、地球の食物連鎖の頂点は『人間』である。


『柱の男』と呼ばれる一族がいた。

他の生物のエネルギーを吸い取ることで何万年も生きながらえる、食物連鎖の頂点『だった』存在。

現状、地球の食物連鎖の頂点は『人間』である。



『ゴキブリ』と『柱の男』を、『運命』は導き合わせた。

両者は今この火星で何を思い、何を為そうというのか。



……『運命』は、両者に一足早い『復讐』の機会を与えた。



カーズ「『ナイルの水を飲んだ者は、ナイルに還る』」

カーズ「いずれは、あの美しい星へと舞い戻り」

カーズ「今度こそ、その全てを手中に収めようと思っていたが……」


カーズの目線の先には、第二・第四合同班の姿があった。


カーズ「……見つけたぞ、人間共」

カーズ「あの中に『ジョジョ』はいるのか?」

『完全生物』とはッ!!!


一つ、無敵なり。

二つ、決して老いたりせず。

三つ、決して死ぬことはない。

四つ、あらゆる生物の能力を兼ね備え、しかもその能力を上回る。

そしてその形は、ギリシャの彫刻のように『美しさ』を基本形とする。



生物としての目的:他の生物でいえば『種』を残していくこと。

だが『彼』の場合は、自分の思うがままの『世界』を創造してゆくことにある。



そして、今はその生物としての目的に『新たな目的』が一つ加わった。




                それは――




承太郎「!!? アバッキオ、リプレイは中断しろ。吉良、第一班へ通達だ」

アバッキオ「え?あ、あれは……」

吉良「…………あれが!!?」

徐倫「飛んでる?羽じゃあなく『翼』で……?」

仗助「なんだあのテラフォーマーはよォ~~?」

承太郎「……みんなよく聞け。奴はテラフォーマーではない」

承太郎「奴は……」


承太郎「究極の生命体『カーズ』だ……!!!」





          ――血脈に刻まれた『因縁』との決着

本日はここまでです。
ここまでご覧頂きありがとうございました。

>>300様、お心遣いありがとうございました。
近頃は連投規制のないタイミングで投下できています。
支援レスなしで、もう大丈夫そうです。
(テストスレで連投規制に引っ掛かってないか確認してから、投下しています)

続きは日を改めて書かせて頂きます。
それではまた。

……


ジョセフは『石仮面』を目の当りにしたことで、『カーズ』の存在を確信した。


ジョセフ(まさか、まさか本当にカーズがいるとは……)

ジョセフ(……こうなっては、皆に伝えなければなるまい)

高速艇へ戻りながら、ジョセフは自身の知る情報を全て班員に話していた。


カーズという柱の男と戦った時の話。

カーズが究極の生命体であり、あらゆる生物の頂点に立つ能力を有するという話。

カーズの存在予測は、スピードワゴンと承太郎と吉良吉影とのみ共有していたということ。

テラフォーマーは、石仮面により強化されたゴキブリの姿であろうこと。


リキエル「カーズという生物が火星に辿り着き、ゴキブリを進化させた……か」

F・F「いや、カーズがゴキブリを『進化』させたかまではわからねーだろ?」

アナスイ「柱の男、そんな闇の一族がいたとは……」

アヴドゥル「カーズの情報は特にだ、早く他班とも共有しなければ」

ポルナレフ「おし!ようやく高速艇が見えてきたな!!」

イギー「!」 ピクッ

ウェザー「待てポルナレフ…………誰かいるぞ」

ジョセフ「あれは……第五班か?」



DIO「待っていたぞ、ジョセフ。よく無事だった」





第五班と合流したジョセフは、まずスピードワゴンと連絡をとっていた。

カーズの存在に確信が持てた為、その報告をしているのだ。


アヴドゥル「……なるほど、第三班の裏切りか」

アナスイ「メローネがオレたちを尾行していた話とも、辻褄が合うな」

ポルナレフ(ディアボロ、奴ならあり得る話だ……)

DIO「それにより我々五班は一班と、二班は四班と合流するという策が、図られたのだ」



ジョセフ「……なんじゃと!!?」

『どうした?何かあったのか?』

ジョセフ「承太郎とブチャラティたちが、カーズと接触をしたらしい……!!」

『!!?』

ジョセフ「こうしちゃおれん、すぐにわしらも向かう!!」

『それと依然、第三班、アネックス護衛班とは連絡がとれていない』

『もしかすると、既にカーズに襲撃されたのかもしれんが……』


『…………死ぬなよ、ジョジョ』



アナスイ「ジョースターさん、第二班と第四班は大丈夫でしょうか?」

アナスイ「承太郎さんのスタープラチナでも、再生ができるカーズは倒せないんじゃあ……」

ジョセフ「……そうじゃな。スタープラチナではカーズに決定打を与えることはできんじゃろう」

ジョセフ「だが第二班には……『対カーズ用』のあの男がいる」

ジョセフ「わしと承太郎以外で唯一、カーズ存在の可能性を伝えた男……」



ジョセフ「『吉良吉影』、がな」

……


カーズ「わたしの名を知っているとは……『先程の奴ら』とは違うのか?」

承太郎「!?」

承太郎「……カーズ、おまえ誰と会ったんだ?名前は憶えているか?」

カーズ「名前?……ボスやリゾットと言ったかな?イマイチ記憶に自信がないが……」

カーズ「貴様ら人間も、踏み潰した蟻のことなど、いちいち気にも留めないだろう?」

ブチャラティ「!?」 ジョルノ「!?」

カーズ「わたしが探しているのはジョセフ=ジョースターだけだが、この中にはいないようだな」




カシャンッ  ジィーッ




カーズ「? なんだ?わたしに向かって……何かしたのか?そのレンズは?」

吉良「……『カメラ』の歴史は古い」


アラブの科学者『イブン=アル=ハイサム』の『光学の書』には……

レンズでイメージスクリーンの上へ外の風景を投影する装置『カメラ・オブスクラ』の記述がある。

これはなんと、1021年の話だ。

そして1685年、写真技術が発明されるほぼ150年前には、コンパクトカメラが造られている。


吉良「その後様々な経緯を経て……」

吉良「カメラは大衆に好まれる写真撮影の道具として、今日まで愛され続けている」

カーズ「…………」

吉良「しかし貴様は2000年周期で眠りにつく、『カメラ』をまだ知らないようだな」

吉良「前に目覚めた時には、カメラに興味は湧かなかったのか?」

カーズ「…………フン、ゴチャゴチャと耳障りな奴だ。貴様から死ねッ!!」

ブチャラティ「!? くるぞ吉良ッ!!」




ドオォン!!




カーズ「!!?」

カーズ「な、何……!? 何かにぶつかったが……なんだ?」 スッスッ


カーズ「『壁』……!!? 見えない……壁か!!?」


吉良「良い記念撮影だったろう?先手必勝というやつだ」

カーズ「な、何を言っている!!?」

承太郎「IQ400でもわからないか?カーズ。おまえはたった今…………」



承太郎「捕えられたんだぜ」



――

――― アネックス1号が地球を発つ、一週間程前



承太郎「…………」

ジョセフ「テラフォーマーが太陽に弱いと発見したのはスピードワゴン財団じゃったな?」

スピードワゴン「あ、あぁ……そうだ」

スピードワゴン(あのジョジョが老人の姿になっているとは、未だに違和感を禁じえんが……まぁいいか)

ジョセフ「テラフォーマーは『石仮面』を被った…………」

ジョセフ「こうは考えられんか?」

スピードワゴン「!!?」 承太郎「?」

スピードワゴン「では、その石仮面を作ったのは……」


ジョセフ「そう、カーズじゃ。カーズが火星にいる可能性がある」


スピードワゴン「…………わたしも、わたしもその可能性を考えていたが……」

承太郎「どういうことだ?説明してくれ」


ジョセフとスピードワゴンは、承太郎に『カーズ』の情報を伝える。



承太郎「……なるほどな。だがまずは『確認』が必要だ。本当にそのカーズがいるのかどうか」

ジョセフ「その通りじゃ、まだわしらの想像の域を出ておらん」

スピードワゴン「想像だろうと、もし仮にカーズがいた場合の対策を考えておかなければならない」

スピードワゴン「カーズと遭遇し、封殺できるスタンド使いというのは……」

ジョセフ「まぁそうはいないだろう。ましてや、この情報を他言しない信用のおける者なぞ……」

承太郎「一人…………いや二人か。適役がいる」

ジョセフ「なんじゃと?誰だ?」



承太郎「……『吉良吉影』、そしてその父親だ」

――吉良吉影は、争いを好まない。



なぜなら、『平穏』だとか『安心』だとか、『植物の心のような生活』を送る事こそが彼の理想だからだ。

闘争はその考えに相反する。向かってさえこなければ、争いを起こす人間ではない。

そして孤高の一匹狼である吉良は、仲間を集め造反を起こすタイプでもない。


『だから』―― 承太郎はこの男にカーズの可能性を話そうと、ジョセフに進言した。

ジョセフたちがカーズの可能性を調べられる『仲間』に求めた条件は三つ。


①情報を他言せず、またカーズに味方しないであろう者

②ジョセフ若しくは承太郎の班員で不自然ではない者


そして……


③カーズと相対した際に、『勝てる』者



この③の条件を満たすのは、吉良吉影の父『吉良吉廣』の存在である。

『アトムハートファーザー』の力をもってすれば、カーズを絶対壊れない牢獄に収監できるのだ。


こうして吉良吉廣は『一つの条件』を引き合いに、息子である吉影の助力を担うこととなった。


カーズが存在した際に、確実に始末する為に……

―――

――





億泰「あ、あれは……!?」

仗助「写真のオヤジかッ!!?」


吉廣「……その見えない壁は『写真のワク』。決して壊すことはできん」

吉廣「わしの写っている写真の空間を支配できる。それがアトムハートファーザーの『能力』」


カーズ「なるほど……わたしは今『写真の中』にいるということか」

カーズ「だが、それでわたしを倒せることにはならんぞ?」

カーズ「この壁がある限り、貴様らもわたしを攻撃できんのだからな」


吉廣「そうでもないんじゃなァ~~~、億泰ッ!!」

億泰「ン?……オレか?」

吉廣「あぁ。おまえさんの『ザ・ハンド』で、写真に写るカーズだけを……」

吉廣「『削り取る』んじゃ!」

億泰「!!」

億泰「あぁ……わかったぜッ!!」 ダッ

カーズ「フン、この能力を解除させる方法があることも忘れていないか?」

カーズ「写真内にいる禿こけた爺…………貴様を殺すことをッ!!」


ブオンッ!


カーズ「!!?」

カーズ「……透ける。触れることが……『できない』!?」

吉廣「はっはっは、わしはあくまで『幽霊』。写真もろとも破壊しない限り、わしは倒せん」

承太郎「オレたちの時はカメラで再度、吉良吉廣を『撮り直す』ことでその攻撃を避けられた」

吉廣「だが今回は違う。カーズと一緒に写っているのは火星の風景のみ!」

吉廣「カメラがその空間になければ撮り直しはできん」



吉廣「貴様は将棋でいう『詰み』にはまったのだッ!!」

……


DIO「……なるほどな。究極の生命体カーズ、か」

ミドラー「ま、まさか……吸血鬼を食糧にする存在だとは……」

DIO「こちらからの情報としては、『スタンド使い』の存在だな」

DIO「『ピアス』を付けた個体が、能力者だと推測している」

エンヤ「この火星にも、『弓と矢』と同様の鉱物が存在するかもしれんな……」

ジョセフ「ピアス、弓と矢、そしてスタンド能力者か……」

ジョセフは推察する。



最初に見た壁画には、

『ケンタウロスのような絵』

『矢の絵』、『褌の絵』、その真横には『1個の丸』

『矢の絵』、『輪の絵』、その真横には『3個の丸』

『縄の絵』、その真横には『40個の丸』

と書いてあった。


『矢の絵』がスタンド能力者、丸はその『個体数』。『輪の絵』がテラフォーマーのつけていた『ピアス』。

『縄の絵』はバグズ手術等の、戦闘力の高い個体。『褌の絵』は……おそらく、さらに戦闘力の高い個体。

こう考えられるのではないか?



ジョセフ(存在するスタンド能力持ちテラフォーマーは4体か?)

ジョセフ(……だがその場合、『ケンタウロスの絵』は一体何だ?)

ジョセフ(この並び順がもし『階級』を表しているなら……)


ジョセフ(ケンタウロスは、『カーズ自身』ということになるのか?)

……


カーズ「貴様らの言う『スタンド』であれば、貴様に触れることはできるのか?」

吉廣「スタンドであろうと、わしに触れることはできん。わしは『幽霊』だからな」

吉廣「そもそも存在する次元が違う。何をしようと無駄じゃ」

カーズ「そうか、『次元』が違うか。ならば…………」





              カーズ「『無限の回転』を使おう」





ド!……パアアァァァァンッ


億泰「え……?」

吉良「ば、馬鹿な!!?」

ナランチャ「カーズが……カーズの下半身が突如『馬』に変わって……」

ミスタ「奴が爪から撃った『弾丸』で、写真のオヤジが消滅した!!?」

徐倫「い、今の『回転』は……!!?」

承太郎「野郎……!!」


カーズが『天才』と呼ばれる所以は、ここにある。

それは『探究』を決してやめないこと。黄金長方形の力、回転の力……

『8』、『5』、『3』、『2』、『1』、『1』

『1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144……』


『♍』と、神殿の絵。

『△』と、ピラミッドの絵。


『1.6180339887……』――





――『ピラミッド』の壁面にあったこの計算式がその探究の一つ。黄金長方形の比率。

『黄金比』という用語が地球に誕生したのは1830年頃と言われている。

カーズが黄金長方形の形で走る馬の力を、自身の『能力』の回転に利用するアイデアに至った経緯は不明である。

それはIQ400のカーズだけが持ちうる、人間には到底理解できない『閃き』。


フーゴ「そ、その力は何だ!?おまえもスタンド使いだというのか!!?」

カーズ「『スタンド』、そう……貴様らの言葉を借りるならば、そう言うのだろう」

カーズ「だが、わたしはこの『力』を…………」





              カーズ「『タスク(牙)』と呼んでいる」

本日はここまでです。
ご覧頂きありがとうございました。

大分長くなってしまいましたが……あと5回程の投下で終了予定です。
最後までお付き合い頂ければ幸い。

続きは日を改めて書かせて頂きます。
それではまた。

……


ジョセフ「!!? くそ……早く承太郎たちと合流せにゃならんのに……!!」

エルメェス「300はいるか?これだけの数のテラフォーマーに囲まれるとは……」

アヴドゥル「任せてくださいジョースターさん。多数が相手であれば……」

ウェザー「オレたちの出番だ」


アヴドゥル「『マジシャンズ・レッド』!!」  ウェザー「『ウェザー・リポート』」

一方には大量の火柱が、一方には雷雨と竜巻が突如出現した。


マーズランキング上位の多くは、時空間操作系の能力者である。

その中でこの二人の持つ、対多数での殲滅力は…… 群を抜いている。



アヴドゥル「火のないところに煙は立たないが……我が『炎』は場所を選ばずに立つ」

ウェザー「好天気も悪天気もない。ただあるのは、天気に生を左右されるおまえたちだけだ」




氏名:モハメド=アヴドゥル

マーズランキング:6位(第一班)

スタンド名『マジシャンズ・レッド』 近距離・直間両攻撃型



氏名:ウェザー=リポート  年齢:39歳

マーズランキング:3位(第一班)

スタンド名『ウェザー・リポート』 近距離・環境変化・直間両攻撃型

……


カーズ「その『カメラ』とやらに興味はあるが……その前に貴様だ」

カーズ「貴様は『削り取る』能力を持っているらしいな?」

億泰「!?」

カーズ「仮に、このカーズの全身を削り取れる能力だった場合…………貴様の存在は脅威となる」

カーズ「ではその脅威を排除するのは、いつが最善か?」

カーズ「…………今に決まっている」

億泰「う、うう……」


形兆「撃てェーーーーッ(ファイヤァァーーーーッ)!!」


ドババババ! ドグシャアァァッ!!!


形兆「バッドカンパニーの一斉発射だ!畳み込め…………な!!?」

カーズ「『輝彩滑刀』……弾丸は全て斬り伏せた。そして……」 ドンドンドン!!

形兆「う、うおお!!?」 ドド!ド!


近距離は光の流法『輝彩滑刀』を、中距離以上はスタンド能力『タスク』を使い分ける。

グリーンベレーが3体、タスクにより消滅させられた。


カーズ「む……数体倒した程度では、効果はないのか。本体を狙う必要があるな」

フーゴ「全員離れろッ!カプセルを射出する……『パープルヘイズ』!!」

ブチャラティ「行くぞサーレー!開けジッパーッ!!」 ジイィィィィッ!


バシィッ! ブシゥゥゥ~~ッ……


カーズ「これは……『ウィルス』か!?」

フーゴ「そのウィルスに感染した者は、肉体の代謝機能を破壊される」

フーゴ「おまえの再生スピードかウィルスの進化か、どちらが早いか試してみるがいい!!」

モコモコ… モコモコッ…


アバッキオ「な、なんだ!?」

ジョルノ「カーズの両手が……」

ナランチャ「二匹の『リス』になった!!?」


ドスッ! ドギャアアァァン


康一「ああ!? リスを自分の剣で刺して……す、吸い取っている!!?」

カーズ「『血清』だよ。ウィルスに対する即効性が高い治療には、血清が必要だからな」

カーズ「ウィルスの環境下で生まれたリスには『抗体』がある。それを利用したのだ」

ジョルノ「!?」 フーゴ「!?」

カーズ「そしてもう一匹は……サービスだ。受け取るがいい」



ダッ! ドボアァッ!!



形兆「ぐ、ぐあ!!?」

カーズの産み出したリスが、形兆の腹部を貫いた。

さらには……


フーゴ「う、うああああ!!?」 バリバリ!バリバリバリ!


フーゴの胸部から頭部にかけてを、噛みちぎっていく。


バッ!


康一「仗助くん!? リスがそっちに!!」

仗助「ランキング17位をナメんじゃあねーぜッ!!クレイジーダイヤモンド!!」


ドゴォッ!!


仗助「このリスを元通りに『直す』」

仗助「てめーの手に戻っていくぜ、生命を産み出そうが……オレには通用しねェ!!」


カーズ「ほう……『直す』能力か、これだけの数がいると実に多種多様な能力があるな、面白い」

カーズ「だが……」


仗助「二人も急いで治さねェと……!!」

カーズ「……邪魔をするな、次は貴様だ」

仗助「は、はやい!!? し、しま」




ドガッ!ドゴォンッ!!




仗助「った!?…………って、あ、あれ!?」

カーズ「ヌウ……!? なんだ?」

カーズ(何発も『同時に』殴られたぞ、これは……)

カーズ「なるほど……急接近してきた、貴様の仕業か」 ニヤッ

承太郎「!!?」

承太郎「下がれ仗助!!こいつはオレが相」



ザァンッ!! バシィ!



承太郎が首を斬られたと同時に、カーズの足元に『一撃』が加わった。

……こいつ、東洋人ではあるがジョジョの面影があるな。

もしやジョースターの血統か?あのおかっぱ男が『承太郎』と呼んでいたが……

まぁいい、奴の首は刎ねてやった。


さぁ、次は誰にするか?

ん……?声が出ていないな。


いや……

声だけではない……。体自体が……動いていない!?

ど、どういうことだ!?


な、何が起こった!!?



仗助「……承太郎さんッ!!」 ズキュゥゥン!

承太郎「う……仗助…………」

徐倫(よ、良かった……間に合ったみたい)

仗助「急がねーと!!次はどっちを……」


形兆「…………」 フーゴ「…………」


ジョルノ「…………ダメだ、二人共もう死んでしまっている」

仗助「!!?」 アバッキオ「!!?」 ナランチャ「!!?」

億泰「う、嘘だろ…………」

仗助「ッッ!!!」

康一「億泰くんッ!気持ちはわかるけど悲しんでる場合じゃあない!!カーズはまだ……」

ミスタ「……いや、大丈夫だ康一。既にオレたちは『勝っている』」

ズッケェロ「その通りだ。地面に『ジッパー』がついているからな」

仗助「ど、どういうことだ!?」



ジイイィィィ……



地面からジッパーが開き、二人の男が顔を出した。


ブチャラティ「ふぅ……、よく地中から『当てて』くれたな」

サーレー「油断したアホに拳を当てることなんざ、そうムズかしい事じゃあない」

承太郎(なるほど。地中から近付き、クラフトワークで『固定』したのか……)

承太郎(さすがは第四班、ブチャラティを中心によくまとまっている)


億泰「……兄貴は几帳面な人だ。雨粒を操るゴキブリと戦った時も、オレを『守る』と言ってくれた」

億泰「言ったことは忘れないし、必ずやり遂げる。だから最期まで…………オレを『守ってくれた』」

億泰「そういう人なんだ…………」


ナランチャ「フ、フーゴォォォォ…………!!」

ブチャラティ「…………」


アバッキオ「…………チッ!それでこの化け物はどうするんだ?誰が始末する?」

吉良「…………」

億泰「オレに……オレにやらせてくれ」

仗助(億泰…………)

億泰「ウダウダ考えんのはメンドくせェ。オレがこいつを…………始末する」


カーズ「…………」

億泰「呆気なかったな究極生物。固定されたらどうにもならねーだろう」

億泰「……てめーにはこのまま消え去ってもらうぜ」



ユラ…ユラ……



露伴「ん……?」

花京院「なんだ?星の光程度の明かりでは、見えづらいな……」

ジョルノ「あれは…………『羽根』、か?」




ガッシイイィィィッ!

億泰「う…うげッ!!?」

ドシュン!


ミスタ「何ィ!!?」

ブチャラティ「羽根からワイアーが億泰に伸びて……捕まった億泰が『消えた』!?」

承太郎「新手の『スタンド使い』か!?」


羽根から垂れ下がったのは『ワイアーウインチ』。

このスタンドの本体であるテラフォーマーは300m程離れた位置におり、『援護』に徹している。

カーズが予め編成していた、テラフォーマーの本隊は『別』だ。



ゴキブリの中には、土中性の仲間も存在する。

モグラのように穴を掘り、土中の生物や落ち葉を食べて生活する種類だ。


これらの種類は非情に大型のものもおり、また外骨格が非常に硬い。

つまりこの種類がテラフォーマー化していた場合…… その戦闘力は高いと予測できる。



ボゴ! ボゴ ボコ ボゴ ボコ ボコ ボコ ボゴォッ!!

サーレー「うおッ!?ち、地中から……!?」

噴上「サーレー!後ろだッ!!」

サーレー「!!?」


ザンッ!! …グシャアッ!!

サーレーはテラフォーマーに強襲され頭部を切断された。

そして地に転がった頭部と近くに落ちていた『カメラ』が、一緒に踏み潰された。


TF「じょうじょ」 TF「じょじょ」 TF「じょじょう」 TF「じょうじょ」 TF「じょじょじょう」


カーズ「カメラまで破壊してしまうとは…………しょうがない奴らだ」

カーズ「だが、わたしを固定していた能力者は死んだようだな。身体が自由になったぞ」


縄を両腕に3本ずつ結んだもの、縄を左腕に3本結んだもの、縄を両腕に1本ずつ結んだものなど。

出現したテラフォーマーの数はおよそ……  『1500』



この星にいる敵はカーズだけではない。

敵は……最強の個である『カーズ』と、数の『テラフォーマー』。



カーズ「さぁ……役者は揃ったぞ、第二ラウンドだ」

ドン!!


ズッケェロ「が……!!?」

アバッキオ「ズッケェロ!!? これは……バグズ手術か!?」


ズッケェロの喉元を貫いたのは……

超高温の『ガス』。過酸化水素と、ハイドロキノン。



蟷螂TF「じょじょう」 ザンッ!!

由花子「あ、あたしの髪の毛を切りやがった……!? このヘナチン野郎がァーーーッ!!!」


花京院「縄を巻いた個体は戦闘力が高い!油断するなッ!!」



承太郎「ちィッ!『ザ・ハンド』はカーズを倒せる可能性を持つスタンドだ、何とか億泰を救出したいが……」

承太郎(だが、どこにいるかもわからない。それに、既に殺されているやもしれん……!)

ジョルノ「『ゴールドエクスペリエンス』!!」

承太郎「!!」

ジョルノ「……億泰の靴を『ハエ』に変えた」

ジョルノ「ハエは主人である億泰のところに戻っていく、その道筋は一直線だ。つまり……」

ジョルノ「億泰はまだ死んではいない!!」

徐倫「やれやれって感じだわ。ならば……」


徐倫「あたしとジョルノが億泰を助け出すッ!!」

一方高熱により寝込んでいた重ちーは、高速艇から戦況を見つめていた。

形兆が、フーゴが、サーレーが、ズッケェロが…………死んだ。

カーズもいる、たくさんのたくさんのテラフォーマーもいる。

きっとこれから……これからもっと……




            『仲間が死ぬ』




重ちー「…………イヤだ」

重ちー「こ、こんな体調なんて、かんけェー……ね、ねェ」


重ちー「おらが……おらがみんな…を…………『守る』ど」

吉良「『第一の爆弾』ッ!!」 ドグォォォンッ!

吉良「ちッ……数が多過ぎる。一匹ずつでは…………ハッ!?」

TF「じょうじょ」


――油断、ではない。

現在この場で交戦中の第二・四合同班のメンバーは、重ちーを除くと計14名。

それに対し、テラフォーマーの数は約1500。

圧倒的な物量を前に、人が気を配れる周囲の様子には限界があった。


吉良「衆寡敵せず…………ここまで、か」

背後のテラフォーマーの腕が身体を引き裂こうとする寸前、吉良は驚く程冷静だった。しかし……




ドロォッ!




吉良「!!?」

吉良「な……何ッ!? 溶けた!?」

吉良吉影の目の前のテラフォーマーが、突如『溶け』始めた。

いや、目の前の一匹だけではない。何十……いや、百を超える数のテラフォーマーが、

『ほぼ同時に』溶け始めたのだ。



そのスタンドはランキングこそ低いものの、『専用武器』を用いることで、

『対多数のテラフォーマーの殲滅力』に関して言えば間違いなく…………




              『最強』




スタンドの額の穴から注射針を出し、対象に『液体』を注入する。

これだけでテラフォーマーを撃破することができる。



「お、おい……吉良吉影。なにを……諦めてんだど?」

吉良「この『スタンド』は……!!」



重ちー「『熟睡』には…………ま、まだ早いど、コラ」




氏名:矢安宮重清  年齢:14歳

マーズランキング:45位(第二班) 専用武器:紫外線混入液

スタンド名『ハーヴェスト』 遠距離・群体・直接攻撃型

以前ハーヴェストは、仗助や億泰の血管に『酒』を入れたことがある。

同様の手口で、SPW財団が開発した『紫外線』成分を含んだ液体を、テラフォーマーに流し込んでいたのだ。


由花子「重ちー、そんな無茶を……!?」

仗助「だが……やはりな。あいつのハーヴェストに勝てる奴なんざ、そういねーんだよ」


徐倫「重ちーのおかげで、邪魔なゴキブリたちが減ったわ!!」

ジョルノ「急ごう、徐倫!!」


ハーヴェストが次々にテラフォーマーを撃破し、徐々に劣勢を跳ね返していく。


カーズ「……中々面白い能力者がいるな。500近くのビジョンを操るのか」

カーズ「どれ、わたしがあの小僧を……」


……その時、強烈な衝撃がカーズを襲った。




ドゴオオォンッ!!!




カーズ「ぐ……!? 何ィ!!?」

カーズ「火山噴火の岩盤にすら痛みを感じなかったこのカーズが……」

カーズ「殴られただけで……『痛い』だと!!? い、今の『一撃』はまさか……」

承太郎「…………第二ラウンドだろう?」

カーズ「!?」



承太郎「てめーの相手は、このオレだ」

カーズ「承太郎…………!!」

本日はここまでです。
ご覧頂きありがとうございました。
展開予想ですとか、カーズ様どうやって倒すんだ?といった話し合い等、色々なコメントを見ると嬉しいです。
見て頂いている皆様、コメントを頂く皆様に、感謝しています。ありがとうございます。

今月内の完結を目標にやっていきます。
それではまた。

……


ジョルノ「……徐倫、『羽根』だ。羽根に注意するんだ」

ジョルノ「おそらくは、そこからワイアーが飛び出してくる」

徐倫「わかったわ、夜とはいえ星の光もありそれなりに明るい。注意して目を凝らしていれば……」

徐倫「!!」 ジョルノ「!!」

ジョルノ「……いた。億泰と……テラフォーマーだ!!」

徐倫「テラフォーマーは二匹だけみたいね」


体毛TF「…………」 力士TF「…………」


ジョルノ「だが一匹は屈強な体格に、縄を腕に計7本。もう一匹は体毛が生え、さらに褌を付けている」

ジョルノ「おそらく二匹共通常のテラフォーマーとは違う、戦闘力の高い個体なはずだ」

徐倫「わかっているわ、油断はしない。どちらかがワイアーの『スタンド使い』だろうしね」

ジョルノ(それにしても……なぜ億泰を殺さない?人質だとでもいうのか?)



その時――  ズドオォンッ!!!!

徐倫「あ、あの大きい方の個体……!!」

ジョルノ「地面を殴っ……!!?」



ビキィ…! バコオオオオオォォォォォン!!!!



力士のようなテラフォーマーが地面を殴り、地盤が崩れた。

巨大な落とし穴に二人は誘い込まれていたのだ。


ガラガラガラ……



ジョルノ(地盤が弱まっていたわけじゃあない、予め掘っていたのか……!?)

ジョルノ「だが、そんなことよりもこの地底では……」

徐倫「田舎の畑道ってレベルじゃあない……!? この『暗闇』では何も……」


徐倫「『見えない』!!?」



この暗闇の底では、『シャコ』の視力でもなければ辺りを『視る』ことはできないだろう。

当然、ジョルノと徐倫はそのような視力を持ち合わせていない。


ザッザッザッ……


闇の中を『クロカタゾウムシ』の力士型テラフォーマーが、静かに忍び寄っていた。

徐倫「ま、まずい!!?」

徐倫(糸を張り巡らせば、まだ戦えるか?い、いや……そんな苦肉の策がテラフォーマーに……)

ジョルノ「大丈夫です徐倫、『ゴールドエクスペリエンス』!!」


ジョルノはスカーフを取り出した。

それをビリビリに破き、宙に放り投げると――



ポッポッ…ポポッポポポ……



――周囲に明かりが灯った。



『ゲンジホタル』

発光生物は他にオワンクラゲ、ホタルイカ、ウミホタル等が存在する。

その中で最も強い光を発するのが、このゲンジホタルである。



徐倫「ホ…ホタルゥ~~~?……随分と、ロマンチックなことするのね」

ジョルノ「これでテラフォーマーの姿も見える」

億泰もジョルノたちと同時に地底へ落下したが、テラフォーマーの糸に支えられており無事だった。

一本の糸に、億泰は垂れ下がっている。


ジョルノ「……周囲に羽根はないな」

ジョルノ(それと、毛で覆われたもう一匹のテラフォーマーがいない……)

ジョルノ(糸は上から垂れている、上にいるのか?)


億泰「…………」


ジョルノ「億泰、気絶しているようだが…………」 スッ

周囲に羽根がないことを確認し、億泰に手を伸ばすジョルノ。


しかし、テラフォーマーの『策』は――



ガッシイイィィィッ!


徐倫「ジョ、ジョルノ!!?」

ジョルノ「ワ、ワイアーが億泰から!?」



――二つだった。

テラフォーマーの『策』は――

一つは暗闇の地中へ誘導すること。そしてもう一つは……その戦力を『分断』すること。


『ワイアード』により釣り上げられたジョルノは、地底から地上に移された。

徐倫は地底に一人残され、自身は体毛のテラフォーマーに囚われてしまったのである。


ジョルノ「し、しまった!? 億泰は人質じゃあなかった……!!」

ジョルノ「『餌』……だったんだ!『釣り上げる』為の!!」

体毛TF「……『オクヤス』というのか?こいつの名前は?」

ジョルノ「!!?」

ジョルノ「まさか……本当にぼくたちと同じ言語を扱うとは…………!!」

体毛TF「なぁ、質問に答えろよ。ついでに君の名前も教えてくれ」

ジョルノ「名前…………なぜ名前を知りたいんだ?」


ザンッ!!


ジョルノ「!!? ぐ、ぐあああああ!? う、腕が……」

容赦のない一閃により、ジョルノの腕が切り落とされた。


体毛TF「一本、腕を切り落とした。…………君は今わたしに囚われている」

体毛TF「立場は理解しているだろう?いいか……」



体毛TF「次は質問に答えろよ、この『害人』が」

2000年を過ぎた頃。米国、デトロイト生体科学研究所にてある研究が行われた。

驚くべきことにその研究で、ゴキブリは危険を感知するとIQが『340』まで上昇するという結果が導き出されたのだ。


信憑性については疑問が残るが、ゴキブリの知能は高いであろうことが予測できる。

もしも『人間大』に進化したテラフォーマーに、カーズによる『教育』が施された場合は……


ジョルノ(……下手に刺激するのは、得策ではないな)

ジョルノ「…………その男の名は、億泰という」

ジョルノ「そしてぼくはジョルノ、ジョルノ=ジョバァーナだ」

体毛TF「なるほど、『ジョジョ』か。では君がカーズ様の求めていた、ジョースターの一族だったわけだ」

ジョルノ「ジョースター?」

ジョルノ「どういうことだ、ぼくは別にジョースターの一族ではないが……」

体毛TF「何……?波紋使いではないのか?」

ジョルノ「はも……ん?」

体毛TF「…………」

体毛TF(波紋を知らないとはな。糞の集合フェロモンによる、カーズ様への『通達』任務……)


『(波紋により)溶ける、ジョジョ(ξοξο)、ジョースター(ξοστερ)』


体毛TF(この三つが揃い、一度集合フェロモンも撒かれたが……それも確実性は薄かったということか)

体毛TF(まぁ……わたし以外の同胞に、まともな判断ができるはずはない……)



体毛(あの『成り損ない』以外、馬鹿ばかりだ)



体毛TF「…………次の質問だ」

体毛TF「君たちは、なぜ我らの祖先をこの星に追いやった?」

ジョルノ「この星……火星をゴキブリと苔で暖め、人が住めるようにする為だ」

体毛TF「なぜ我らが選ばれた?」

ジョルノ「環境への適応力、太陽の光を集める身の黒さ、そして繁殖力の高さ等が理由だ」

体毛TF「なるほどな……」

ジョルノ「……ぼくからも一つ質問をしていいか?」

体毛TF「いいだろう、一つだけならば許可しよう」

ジョルノ「君ほどの力があり、知能がある個体が、なぜカーズの命令を聞いている?」

ジョルノ「君が他の仲間たちを率いても、いいように思うんだが……」

ジョルノ(『厄介』なのは……、最強の個であるカーズと数で勝るテラフォーマーが手を組んでいることだ)

ジョルノ(見極めろ、瓦解できる隙間があるのかを……!!)


しかし、彼らは『一枚岩』だった。


体毛TF「ジョルノ=ジョバァーナ、君は神に逆らったことがあるのか?」

体毛TF「神への感謝の気持ち、そして服従の気持ちは色あせることはない……決してな」

体毛TF「そして我らは神であるカーズ様と共に、いずれ地球へ舞い戻る」

体毛TF「その時は君たち害人を、必ず絶滅に追い込んでくれよう」

ジョルノ「…………」

体毛TF「では、最後の質問…………というより確認だ」

体毛TF「先程絶滅に追い込むと言ったが、それは神が地球の『頂点』に立つ為だ」


体毛TF「地球の食物連鎖の頂点の生物は、今でも君たち『人間』なのか?」

ジョルノ「君は…………『賢い』奴だな」

体毛TF「……質問に対し、回答以外の返事は許可していないぞ」

ジョルノ「いや、本当に畏れ入ったよ。理性的っていうのかな」

ジョルノ「脅しかける際の冷酷さは、ギャングのぼくから見ても凄味を感じた程だ」

体毛TF「…………質問に答えろ、ジョルノ=ジョバァー」


ポトッ


ジョルノ「…………」

体毛TF「!? な、なんだそれは……!!?」

ジョルノ「水と苔位しか食べたことがないんだろう?召し上がりなよ、特製の『団子』を……」

体毛TF「む……おおおおッ!!」 ヒョイッ、パク

ジョルノ「知性高い君ですら我を忘れた、それは当然なんだ。君は生まれて初めて食への『欲』を持った」

ジョルノ「食べたいと思ったものを食べる」

ジョルノ「それは邪なものではない、生物としてごく当たり前の……」



ジョルノ「『本能』だ」

体毛TF「お、思わず食べてしまった…………だが、美味い……!!」

ジョルノ「そして『ゴールドエクスペリエンス』は今…………発現する」 パチィン!


体毛TF「ぐうッ!!?」 

ジョルノ「団子はすでに違う『生物』となっている。君の身体の中に侵入し……」

ジョルノ「喉元目がけて喰い進む…………ご存知かな?『ピラニア』を」


体毛TF「ギ…ギイイィィィィィッ!!?」 ドパアァァァーッ!!



氏名:ジョルノ=ジョバァーナ  年齢:15歳

マーズランキング:28位(第四班) 専用武器:テラフォーマー用『団子』

スタンド名『ゴールド・エクスペリエンス』 近距離・直接攻撃型



ジョルノ「……知性があろうと、本能をなだめることはできなかったようだな」

体毛TF「フ…フフフ……ジョルノ=ジョバァーナ…………君の勝ちだ」

体毛TF「最期に聞きたい……。地底に落ちたあの女……どんな能力を持っているんだ?」

体毛TF「まさか、『打撃系の能力』……だったりするのか?」

ジョルノ「……だとしたら、何か問題があるのか?」

体毛TF「あぁ……もしそうなら、あの女はもうダメだ。既に殺されていることだろう」

ジョルノ「なに……!!?」

体毛TF「カーズ様の打撃を受けても耐えられる『甲皮』。カイコガの栄養より得た『腕力』」


体毛TF「『能力』はないが……単純な肉体だけの戦闘力だけなら、あいつが我々のナンバー1だからな」

体毛TF(フフ、他に『運の良さ』だけならナンバー1の『成り損ない』もいたな……)

体毛TF「フ…フフ……フフ…………」 ガクッ


徐倫の能力は糸の集合体である『ストーンフリー』。

……打撃型の能力だ。


『クロカタゾウムシ』は最も『硬い』昆虫の一つとしてその名を知られている。

ストーンフリーが通用するのか?カーズの打撃にも耐えられるテラフォーマーに……



ジョルノ「まさか……嫌な予感がする…………!!」 ダッ



地底を覗くジョルノ。ホタルの灯りにより、徐倫とテラフォーマーの様子が見てとれる。

そこで見たものは……


ジョルノ「こ、これは…………徐倫ッ!!」

氏名:空条徐倫  年齢:19歳

マーズランキング:23位(第二班)

スタンド名『ストーン・フリー』 遠近両用・直接攻撃型




             『圧倒的武力制圧』




徐倫「ジョルノ?無事だったのね。こっちもちょうど倒し終わったところよ」

力士TF「…………」 ピクッピク…

徐倫「随分硬い甲皮だったけど……しこたまブチかましてやったわ」

ジョルノ「あ、あぁ…………よ、良かった」 ホッ

ジョルノ(まさか……既に倒しているとは……)

徐倫「ところで、億泰の行方は知ってる?」

ジョルノ「……えぇ、ここに一緒にいますよ。気絶していますが、無事です」

徐倫「そう。じゃあ糸を飛ばすから、わたしも引き上げてくれない?NGワードはわかってるわね?」

ジョルノ「かしこまりました。さぁ、飛ばしてください」

徐倫「ストーンフリーッ!」

ジョルノ「…………」 ガシッ

ジョルノ(ストーンフリーのパワーはAランク、だが……)

ジョルノ(まさか、クロカタゾウムシの甲皮をも打ち破るとは……)


徐倫(あたしの『未完成の回転』でも、これだけの威力を発揮できた)

徐倫(父さんなら……『精密』な動きのできる父さんの『スタープラチナ』ならきっと……)

……


カーズ「『タスク』ッ!!」 ドン!ドンッ!!

承太郎(きたか……!!) バッ


カーズの放つ『爪弾』は、馬の下半身から得る『黄金長方形の走りの力』を融合し、

『無限の回転』を可能にしている。これに触れたものはただ――


TF「じょ……」




ド!……パアアァァァァンッ




――『消滅』するのみ。


承太郎「流れ弾がテラフォーマーに……!」

カーズ「わたしの『タスク』は一撃必殺、貴様は『時を止めて』避けるつもりかもしれんが……」

カーズ「連続で回避できるのか?」

カーズ「それに逃げているだけでは、当然このカーズを倒すことは叶わんぞ」

承太郎「理解していたのか、オレの能力を…………ならば話は早い」

承太郎「あとはオレのスタープラチナを、しこたまブチかますだけだ」


承太郎「『スタープラチナ・ザ・ワールド』!!」

――時は止まった。



承太郎が狙っているのは、あのタスクを『カーズ自身』に当てること。

先程、カーズが放ったタスクは二発。

一発はテラフォーマーに当たり、もう一発は旋回し、承太郎に向かってきている。

この二発目を『カーズに当てる』。


どうするか?簡単だ……




               『着弾点まで、殴って吹っ飛ばす』




……しかし『ただの打撃』では、カーズには通用しないだろう。

キングクリムゾンも、スタープラチナの攻撃も、カーズを怯ませることすらできなかった。

だが、カーズを『痛がらせた』あの一撃であれば……



あの『一撃』を、今度はラッシュで叩き込む。

『コークスクリュー・ブロー』

主にプロボクシングで用いられるパンチの一種で、

パンチが当る瞬間に手首を内側に『捻り込む』ことで相手に与えるダメージを大きくする。


承太郎「確か『ホセ・メンドーサ』だったかな……昔読んだ漫画の知識も、案外役に立つものだ」

承太郎「……最初の一撃、はじめてにしては上手くいった」

承太郎「カーズが『痛がって』いたからな」


承太郎「……この捻りを、正確に『回転』させる」

承太郎「上手くいけば……その衝撃は『無限の回転』の軌跡を描き、破壊力を倍加させるはずだ」


ワムウの『神砂嵐』も回転を利用し、超絶的な破壊力を誇っていた。

自然界で言えば、ただの風でさえ『円の軌跡』を描くことで『竜巻』となる。



『回転』には、無限の可能性が秘められている。



承太郎「いくぜ……」




      承太郎「黄金長方形回転のラッシュだ……!!!」




承太郎「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……!!!」


  ドゴドゴドゴドガドガバゴドギャバギバキィドゴッドゴォオンッ!!!!!

本日はここまでです。
ご覧頂きありがとうございました。

次回、VSカーズ決着です。

続きは日を改めて書かせて頂きます。
それではまた。

――時は動き出す。



カーズ「ぐ…う、うおおおおおおおおおおッ!!?」

仗助「や、やった!! 承太郎さんの攻撃が効いてる!カーズが吹っ飛んだぞッ!!」

仗助「やっぱり最強は『スタープラチナ』だぜ!!」

承太郎「この可能性に気付けたヒントは……カーズ、おまえ自身だ」

カーズ「ま、まさか……『黄金長方形の回転』で、パンチを打ち込んだのか!!?」

承太郎「そう。スタープラチナは弾丸を掴み、ハエを正確にスケッチできる程の精密な動きが可能だ」

承太郎「正確な回転の衝撃で殴るのは中々にへヴィだったが…………やれやれ、どうにか完成できた」


カーズ「う、嘘だ……そ、そんなこのカーズが…………」


承太郎「さて、おまえの吹っ飛ばされた先に何があるかわかるか?」

承太郎「おまえの放った……『爪弾』だ」


カーズ「このカーズが……ただの人間にやられるわけが…………」

カーズ「く、くそォォォォォォォ……!!!」























カーズ「…………なんてなァ」 ニヤリ

カーズ「フン、当たるものか」 スッ

カーズは姿勢を制御し、爪弾の直撃を避けた。その爪弾はそのまま承太郎に向かい……


承太郎「!!?」

康一「承太郎さんッ!!足元だァーーーーッ!!!」


ドッ!…


タスクの爪弾が地面を這い、承太郎の脚に直撃した。

ブチャラティ「スティッキーフィンガーズ!!」 スパアァンッ!


…パアアァァァァンッ


スティッキーフィンガーズが間一髪、承太郎の左脚をジッパーで切断。

左脚はタスクにより消滅してしまった。


承太郎「ぐ……た、助かったぜブチャラティ……!!」

カーズ「クク…ククク……クククハハハハハハッ!!!」

カーズ「承太郎ォォォ~~~、よく考えろ……」

カーズ「このカーズに、二度も『同じ攻撃』が通用すると思うか?」

先程は痛がったカーズに攻撃が通用しなかったのは、ただこれだけの理由。

カーズは『進化』した。硬皮は『より硬く』……進化したのだ。



カーズ「……貴様らとは、生物としての適応力が違うというわけだ」

由花子「あ、あああ…………」

ブチャラティ「クッ……!!」

仗助「承太郎さん、その脚……いま治すぜッ!!」 ズキュゥゥン!

仗助「え……?な、治らないッ!?」

カーズ「フフ……貴様の能力でも、『消滅』したものは元に戻らないようだな」

仗助「グ、グレート……!!」


カーズ「さて……中々に楽しい時間だったぞ」

カーズ「ジョセフを探しに出たいのでな、そろそろ外野共も死ぬがよい」 ドン!ドン!ドドンドンッ!


カーズの放った五発のタスクが……

ミスタ「げッ……や、やっぱり縁起が良くねェのか……!!?」

ナランチャ「ダ、ダメだ!!?」

アバッキオ「カーヴォロ(畜生)!! オレも……これまでか……」

重ちー「お、おらも避けらんねェ。ならせめて……」

花京院「ク、クソ……!!?…………え!?」



重ちー「あの『弾丸』…………全部『収穫して(とって)』こい、ハーヴェスト」



バッ!バババッ!

花京院「こ、これは……!!」 ナランチャ「!?」 ミスタ「!?」 アバッキオ「ハーヴェスト!?」

重ちー「おらはケチなんだ、『独り占め』……させてもらうど。そして……」


重ちー「あとは頼んだど、みんな…………」




ドドドド!ドッ!!……パアアァァァァンッ




仗助「し…重ちィィィィィィィッ!!!」

吉良「…………!!」

カーズ「ンッン~~~、煩わしい能力者だったな。で……」

カーズ「…………次は誰かな?タスク(牙)に噛み切られる奴は……」


康一(act2の『ピタッ』の文字を触れさせることができれば……)

康一(もう一度『固定』することができれば……カーズを倒せるかもしれない……!)

康一(ぼく自身に文字を貼り付け、挑発するか?…………いや、ダメだ。接近してくれるとは限らない)

康一(今みたいにあの『爪弾』で殺されるだけ。どうする、どうすれば…………!?)

康一(早く何とかしないと……みんな、みんな殺されてしまう……!!)

由花子「康一くん……」

康一「? 由花子さん、どうし」



チュッ



由花子「…………愛してる」

仗助「!!?」

露伴「な……何をやってんだァーーーッ!!? あの自分勝手なクソアマは!!?」


康一「え……」

康一「ゆ、由花子さん…泣いて……」


ポタ…ポタ…


由花子「もう…………カーズには勝てないわ、皆ここで死ぬ。死んでしまう……」

由花子「だったら、あたしは康一くんとの思い出を……」

康一「…………」

康一「…………大丈夫、大丈夫だよ」

由花子「え?」

康一「由花子さん、ぼくが君を守る。任せて…………ね?」

由花子「康一くん……」

カーズ「中々ロマンに浸っているなァ、何か秘策でも思い付いたか?」

カーズ「いや……その女にほだされて、自己犠牲の精神でも芽生えたってとこだろうなァ~~」

カーズ「他人の為に死ぬだけだろうに……罪な女だ!!ハハハハハハ!!」

康一「そのどちらでも……ないよ」

カーズ「……なに?」

康一「おまえに立ち向かうのは、ぼくの『気持ち』がそうさせるからだ」

カーズ「…………」

康一「今、ぼくに沸々と湧き上がるこの気持ちは……」

康一「ゲス野郎にだけは決して屈したくないという――」



康一「人間の、『意地』だ」




氏名:広瀬康一  年齢:15歳

マーズランキング:35位(第二班)

スタンド名『エコーズ』 遠近両用・精神攻撃・特殊攻撃型

康一「『エコーズact2』」

カーズ「なんだ?そのチンケなビジョンは……」

康一(カーズにact3を使うにはリスクがある。射程5mまで近付くと、逆に瞬殺される危険性が高いからだ)

康一(このact2で、どうにか奴に攻撃を……)

仗助「…………よく言ったぜ康一、その通りだ」


ギュッ


仗助が康一の手を握りしめる。

康一「こ、これは…………!!?」

由花子「え……!?」


フワンッ


カーズ「ンン?」

仗助「元通りに…………『直す』」


仗助の手から一つの『部品』が浮き上がり、移動を始めた。その直りだした物は……『カメラ』。

カーズの近くに転がっていた、吉良吉廣が使用していたポラロイドカメラが……修復されたのだ。


カーズ「カメラを直した……? なにかあるのか?」 スッ

仗助「…………カーズ、てめーも『変えられねェ』だろ?」

カーズ(変えられない……?何の話だ?)


『天才』のカーズは、探究を決してやめない。

『石仮面』、『苦しまずに死ねる毒薬』、『燃料気化爆弾』、『無限の回転』……


カメラ自体に興味を持っていた。

そして今、そのカメラを『なぜか』仗助が『直した』。

あの写真の幽霊のスタンド使いはいないのに、『なぜ』?


最強が最強であるがゆえの、果てなき『好奇心』。

しかし、それが自身の命運を左右した。

カーズはカメラを手に取ったことをここで初めて――




             『後悔』した。




カーズ(こ、このカメラについた『文字』は……!!?)

仗助「変えられない?何の話だ?って顔してんな。…………いいぜ、教えてやるよ」

仗助「てめーのその……」



         仗助「『習性(いきかた)』の話だ」

仗助がカメラを直す際に、康一は一緒にカメラの部品に触れていた。

『ピタッ』の文字を貼り付ける為に……


仗助「元に戻るカメラに康一が貼りつけたんだ、『文字』をな」

康一「…………」

仗助「おめーよ、探究するタイプだよな。謎とかをよォ~~~」

仗助「こいつなんで直したんだ? この『カメラ』ってのに何かあるのか?」

仗助「そう思ったろ?」

仗助「警戒心よりも、好奇心が勝ったみてーだな。だがその結果……」


仗助「てめーは『敗れた』」

カーズ(な、なんだとォォォォォーーーッ!!?)


スッ…


吉良「そしてキラークイーンが今、貴様に触れ……」

吉良「『爆弾』に変えた」

吉良「髪の毛一つ残さず『消滅』させる爆破だ。固定され、『再生もできない』状態で果たして……」


吉良「滅びずにいられるかな?カーズ」

カーズ(ま、まずい!!? この固定された状態では、再生できん……!!?)

カーズ(『ワイアード』は何をやっている!!? ほ、他のゴキブリは……)


アバッキオ「非力なオレたちだが……」

噴上「足止めくらいはなァ!!ハイウェイスター!!」

ブチャラティ「どのゴキブリも、てめーには近付けさせん。アリアリアリアリアリアリアリアリ……!!!」


カーズ(ダ、ダメか!!? 完全に足止めされてしまっている……あのクズ共がァァァァーーーッ!!!)

吉良「……覚悟は、いいか?」

カーズ(ま、まさかこのカーズが……)

カーズ(このまま『死ぬ』のか!!?)

カーズ(全てを超越したわたしが……)

カーズ(究極の生命体のわたしが……)


カーズ(『死ぬ』というのか!!!?)




「きさ…まも……いずれ知る。『死ぬ』ことは……恐ろし…い……ことだ…………」

「よ、よく…覚えて…………おく…んだな……。どうせきさ…ま……も……………」




カーズ(あ……悪魔(ディアボロ)の囁きが聞こえる……!!?)


吉良「……わたしは別に『勝ち負け』にこだわったりはしない」

吉良「だが、これだけは言わせてもらおう」


吉良「父の……『遺志(かたき)』、とらせてもらう」

グッ…


カーズ(や…やめろ!!! 押すんじゃあないッ!!?)

カーズ(まさか……このカーズが、このカーズが…………)

カーズ(お…おのれェェェェェーーーーーーッッッ!!!!!)




               カチッ

           ドグオオオォォォォン!!!!!




シューシュー…

シュー……



カーズは、消滅した。



康一「や、やった……!!」

花京院「!? 見ろ、ゴキブリたちも皆どこかへ逃げていくぞ……!!」

露伴「カーズが死んだことで、統率を失ったんだろう」

吉良「…………ふぅ」 ドサッ

仗助「重ちー…………終わったぜ」

ナランチャ「勝った!オレたちが勝ったんだぜェェェーーーーッ!!!」

アバッキオ(フーゴ、サーレー、ズッケェロ…………仲間たちが、仇をとったぜ)


クンクン…


噴上「この匂いは……あ、あれは!? 億泰、徐倫、ジョルノの三人も戻ってくるぞ!!」

ミスタ「ジョルノがやったか!?さすがだぜあいつはよォ~~ッ!」


ジョルノ「決着は既についていたのか……」

億泰「ってことは、オレたちの出番はもうねぇわけかァ~~~」

徐倫「……倒したのは一体誰かしら?」


由花子(!!? あ……あ、あたしッ!!康一くんにな、なんてことを…………) ポッ

康一(…………き、気まずい……)

ジョルノ「康一くん」 スッ

康一「ああ……ジョルノ」 スッ… ガシィッ


億泰「」 ナランチャ「」 ピシガシグッグッ


ブチャラティ「承太郎…………」 スッ

承太郎「ブチャラティ…………」 スッ… ガシィッ


多くのメンバーが喜び合い、そして握手を交わす中……



仗助「…………」

吉良「…………何の用だ」

仗助「何を座り込んでんだ…………立てよ、吉良吉影」 スッ

吉良「少し疲れただけだ。手を差し伸べなくても一人で立て…………」


この時、吉良は一つのやり取りを思い出した。



「フン、今更か?それによろしくと言いながらも『握手』を避けるとは……」

「『爆弾』にされるとでも思っているのか?」



火星へ向かう途中、仗助はわたしを警戒していた。しかし今のこの行動は……



吉良「…………」

仗助「何度も言わせんな、ホレ……『立てよ』」

吉良「…………」

吉良「…………フフ」


吉良「では……遠慮なく『その手』を借りるぞ、東方仗助…………」 スッ




               ガシィッ!





露伴「吉良、最後『父のかたき』と言っていたが……」

吉良「…………あぁ」

吉良「『ジャンフランコ・フェレ』で……当たりだ、露伴」

露伴「ん?その宇宙服のデザインのことか、あぁ……そんなこと言ったかな」

吉良「わたしの好きなブランドなんだ」

吉良「1月30日、わたしの誕生日に…………父がこの宇宙服をプレゼントしてくれた」

仗助「!!」 億泰「!!」 康一「!!」




『吉影、誕生日おめでとう。おまえ専用の宇宙服じゃ』

「……わたしにか?」

『当たり前じゃ。好きなブランドだったろう?財団経由で注文した、特注品ってやつだ』

『まぁ気に入らなければ着る必要はないが、少しでも任務のストレスが和らげばと思ってな』

「……あぁ、ありがとう」




吉良「……スピードワゴンに頼んでいたらしい。この計画に参加する為の『条件』だとな」

吉良「父はただ、わたしに『幸せ』になって欲しかったのだろう」

露伴「…………」

仗助「…………」

吉良「…………フン、『闘争』は……やはりストレスがたまる…………たまったよ」






第二・第四合同班

承太郎、徐倫、仗助、吉良、億泰、由花子、康一、花京院、露伴、噴上

ブチャラティ、ジョルノ、ナランチャ、アバッキオ、ミスタ

計15名、生存。



ミスタ、高熱を発症。安静状態へ。

ミスタ「や、やっぱり……『四』班なんてのは縁起が悪ィ…………」


承太郎、第一・五班へ通信。

ジョセフ、DIOらにカーズの消滅を報告。



第六班の生存者探索後、アネックス1号にて合流を予定――

この物語を一言で言い表すのならば……それは『戦い』の物語だ。


かつて人類相手に生存競争で敗れた『ゴキブリ』と『柱の男』。

両者は手を結ぶも……ここでもまた『人間』に敗れた。



では、戦いはここで終わるのか?

――否。



戦いは起こり続ける。



『今』で言えば――

地球で起こっている、ファーストやセカンドを巡る各国の『策謀の嵐』もそうだし……



         火星で起こっている『反逆の波』も、そうだ。

――アネックス1号内



イルーゾォ「な…なんだこれは……!!?」

メローネ「プロシュート、ペッシ……し、死んでいる……!?」

チョコラータ「スクアーロとティッツアーノの死体もあるな……」

ホルマジオ「護衛班共々、全滅していたのか……!!?」

ギアッチョ「ゴキブリの大群でも押し寄せてきたのか?にしては、ゴキブリの死骸が中には一つも……」


ザン!ザザンッ!ザン!!


メローネ「ば……」

イルーゾォ「あ…が……」

チョコラータ「な……こ、このわたし…が…………」

ホルマジオ「に、逃げろ……ギアッ…………」

ドサドサ、ドサドサッ…


ギアッチョ「お、おまえら!!?」

ギアッチョ「!!?……き、貴様はァァァーーーッ!!」

ギアッチョ「『ホワイトアルバム』!! 貴様の『打撃』等、この氷の装甲の前には……」



ザンッ!!



ギアッチョ「え……?」

ギアッチョ「ば…馬鹿な!!? ホワイトアルバムの……そ、装甲……が…………」


ドサッ…

……


ジョセフ「……おそらくわしらがこの世界に召喚されたのも、カーズとの決着をつける為だったのだろう」

アヴドゥル「確かにそんな究極生物、核以外なら特殊なスタンド使いでないと倒せませんね」

Jガイル「いや、核でも果たして倒せるかどうか……」


DIO「見えてきたな、アネックスが……」

エンヤ「長い一日でしたわい」

ミドラー「そうか、まだ一日目だったわね……」

エルメェス「よし!あたしが宇宙船に一番乗りだぜェーーーッ!!」 ダッ!

ウェザー「あ、待てエルメェス!!」

アナスイ(……エンポリオが無事かどうか、一刻も早く確認したいんだろうな)

ポルナレフ「あいつ、アネックスにまだ何かが潜んでいるって可能性考えてないんじゃあねーか?」

アブドゥル「まぁランキングも15位だし、カーズももういない。大丈夫だろう」


リキエル「多くの犠牲は出したが、これでオレたちの旅はひとまず目的を終えたんですね」

ジョセフ「何を言っとる。地球に帰り、ワクチンを作るまでが任務じゃぞ、リキエル」

アヴドゥル「なんかそれって……『家に帰るまでが遠足』に似てますね」

ジョセフ「やれやれ……全員気が緩み過ぎじゃ。サンプルを集めることと……」

ジョセフ「それにまだゴキブリ共がいるってこと、忘れておらんかのォ~~?」


イギー「…………!?」 ピクッ

その時、エルメェスの足元で『何か』が反応した。



ピン…


エルメェス「え?」


カッ――




       ドオオオォォォォンンンンッ!!!!!!!!




アナスイ「エ……」


パラパラパラ…

『地雷』により、粉々に砕け散ったエルメェスの肉片が辺りに降り注ぐ。


ウェザー「エルメェェェェェェスッッッ!!!?」

本日はここまでです。
ご覧頂きありがとうございました。

次回は25日投下予定です。
それではまた。

明日投下予定でしたが、本日時間ができましたので、今から投下致します。

その場の全員の思考が瞬間、停止した。

これは2600年製の地雷だ。だが…………『一体なぜ地雷が?』


ウェザーの絶叫がこだまする中、アナスイだけは一つの――



アナスイ「妙だ……」



――『違和感』を感じていた。それは、戦った『経験』があったからかもしれない。


今の地雷はテラフォーマーや人間を『捕獲する為』の威力でもなければ、『殺す為』の威力でもない。

ただ殺すだけならば、もっと低火力でいい。

しかし……破壊力が『意図的』に上乗せされている。この爆音と爆風が証拠だ。



ま、まさか!!? これは――



アナスイ「これは視線誘導だッ!!周囲を見ろ!『くる』ぞォォォォーーーッッ!!!」

グレーフライ「ん?何か動い……」

エンヤ「!?」 アヴドゥル「み」 ジョセフ「見え……」


アナスイ「!? ダイバーダ」



ザンッ!!



アナスイ「ウ……ン…………!!?」


アナスイ「き、きさ……ま…………」 ドサッ

ウェザー「アナスイ!!?」

ミドラー「あ、ああ…………」

DIO「一体どういうつもりだ……!!?」


目に止まらぬ速さで、『彼』がアナスイを斬った。

加速したそのスピードは、全スタンド中『最速』にして――




プッチ「一人ずつだ。その命…………貰い受ける」




氏名:エンリコ=プッチ  年齢:39歳

マーズランキング:1位(第六班、班長)

スタンド名『メイド・イン・ヘブン』 近距離・時空間干渉・直接攻撃型




         ――『最強』である。

F・F「アナスイ……!アナスイッ!!」

アナスイ「…………」

ジョセフ「ダメじゃ、アナスイはもう既に……」

F・F「ば…馬鹿な……か…簡単すぎる……あっけなさ過ぎる!!?」


ポルナレフ「!!?」

ポルナレフ「プッチの持っている『剣』、あれはまさか……!?」

DIO「……貴様らに教えておく。プッチの能力は『時を加速させる』こと」

DIO「そしてそのプッチを『操っている』のは……」


DIO「『剣』のスタンド、『アヌビス神』だ……!!」


Jガイル「なぜだ……なぜDIO様に逆らう!!?」

エンヤ「気でも違ったか!!? アヌビス神ッ!!」


プッチ「…………簡単な話だ」

プッチ「DIOのスタンド『ザ・ワールド』はあまりにも強く、おれにはとても敵わぬスタンド……」



プッチ「『だった』」



――

――― 話は一度……第六班が全滅する頃(>>124)まで遡る



ヴァニラアイス「プッチ様。御指示をお願い致します」

プッチ「ンドゥールは索敵、ホルホースとアレッシーは高速艇内で防衛だ」

プッチ「わたしとヴァニラアイス、ペットショップで奴らを殲滅する」

プッチ「チャカは……テラフォーマーの動きにはついていけるか?」

チャカ「はい。そして、奴らを簡単に倒せる『策』も、一つ考えてあります」

プッチ「『策』だと?」


チャカ「はい、といっても特別難しいものではありません」

チャカ「おれのスタンド『アヌビス神』をプッチ様に使って頂く、それだけです」

チャカ「プッチ様はおっしゃっていましたね、メイドインヘブンは攻撃力に多少難があると」

チャカ「この刀ならば、ゴキブリどもを簡単に惨殺できます。ただ振り回すだけで十分です」

プッチ「…………なるほどな。これだけの数を相手にするには、そうさせてもらうのが得策か……」

プッチ「……よし、君の刀を貸してくれ」

チャカ「ええ、喜んで」 スッ

チャカ(ただし……)



パシィッ



プッチ「……憑依する(かしてもらう)のは、おまえの『メイドインヘブン』だ」

各班長は、スタンド使い全員の能力についてある程度の情報を持っている。

しかしプッチは、アヌビス神を『敵の攻撃パターンを学習する能力』としか把握していなかった。

『刀に触れた者を操る』とは……想像だにしていなかったのだ。



ザンッ!! ズバァッ!


ヴァニラアイス「がァッ!!?」

プッチ「サプライズは好きか?…………ああ、返答は要らないがな、死ねヴァニラアイス」


グシャアアアッ!!


頭部が斬り取られたヴァニラアイスは、続いて頭部を破壊され死没した。

ンドゥール「!?」 ペットショップ「!?」 アレッシー「な……!?」

ホルホース「エ、エンペラァァァァァーーーッ!!!」



『世界』が違った。

あまりの速さに、気が狂ったような感覚に陥る。

素晴らしい……素晴らしいぞ、圧倒的なこの『力』……

高揚したアヌビス神が漏らした感想は……ただの一言。




プッチ「…………遅い」





ザン! ザザンッ!! ザァン!

プッチ「フフ、フフフ…………もう誰もおれには追いつけなァーーーいッ!!!」

プッチ「8位のヴァニラアイスだろうと歯牙にもかけん……おれは最強だ!!!」


ボインゴ「あ、あああ…………」

チャカ「え、え……?こ、これは……?」


プッチ「……あとはオインゴ兄弟に、チャカか。一瞬で始末してくれる」


ボインゴ「に…に……兄ちゃん…………」

オインゴ「だ、大丈夫だぜボインゴ!! SOSは押した!きっと……」


オインゴ「きっとDIO様が助けに…………」




ザン!ザァン!!ザンッ!!




プッチ「この世にディオ(神)などいない」

プッチ「……この『1位』のメイドインヘブンならば、4位のザ・ワールドなぞ恐るるに足らず」


プッチ「皆殺しだ……!!」

―――

――





プッチ「……『ランキング』の存在はありがたかった、DIOがチンケな存在だと理解できたからな」

プッチ「第六班も、アネックス護衛班も、そのほとんどをオレが仕留めてやった……」

プッチ「そして……次は貴様らだ」


DIO「…………」

エンヤ「図に乗りおって……!!」


プッチ「『ザ・ワールド』の射程範囲、そして9秒の停止時間は把握している」

プッチ「一人一人殺してやるぞ、この速さならば…………ン?」



ドザアアアアァァァァッ!!



Jガイル「こ、この辺り一面の土砂降りは……!?」

ウェザー「……『ウェザーリポート』」

ポルナレフ「なるほど……!! 水を弾かせることで、奴の移動方向をわかりやすくしたわけか!?」

ジョセフ「DIOッ!おまえだけが頼りじゃ!!時を止める『ザ・ワールド』ならば奴に対抗できるはず!」

DIO「…………いや、それはできない」

アヴドゥル「!? な、なんだと!? まさか貴様……裏切ろうというのか!?マジシャンズ……」

DIO「勘違いするなアヴドゥル。裏切ろう等という気はない」

DIO「これは冗談でも、策でも何でもない。ただの『事実』だ。今のわたしは……」



DIO「時を止めることができんのだ」

リキエル「え……!?」 グレーフライ「!?」 イギー「!?」

エンヤ(…………DIO様)

ジョセフ(!!?)

ジョセフ(DIOに感じていた違和感の代償がこれか……!? おそらくDIOの精神状態は今……)



ジョセフ(祖父である『ジョナサン』に近いのだろう……!)



ジョセフ(頭部だけのDIOに対し、首から下は全てジョナサンのもの)

ジョセフ(召喚されたことによって、意識バランスが崩れた……といったところか)

ジョセフ(だがそうなると、非常にまずい……!)

ポルナレフ「あの超スピードにどう対抗する?オレのチャリオッツでも、とても……」


プッチ「確か『ザ・ワールド』はスタープラチナと同等の性能を持っていたな?」

プッチ「スタープラチナのパワーとスピードを『憶えた』おれからすれば……」


プッチ「時を止められないDIOなぞ……ただの吸血鬼、『ヌケサク』同然ってわけだ」



ドシュンッ!



降り注ぐ『雨』に光速で連続反射し、プッチの背後には『ハングドマン』が迫っていた。

Jガイル(『間抜け野郎(ヌケサク)』はてめーの方だ……!!)

さらに……

ミドラー「ハイプリエステスで防御壁を作る!!」


ボコボコボコッ!!


ミドラーが味方周囲を『壁』で囲う。

雨の中を光速で動くハングドマンは、加速したプッチでさえ捉えることはできない。

そしてJガイル自身は囲まれた壁により守られた。


Jガイル(これでプッチがオレを倒すことはできない……!)

Jガイル(このまま頸動脈を掻っ切るぜ、勝ったッ!!)




ザンッ!!ザンッ!!




Jガイル(な……き、消えた!!?…………ハッ!?)

ミドラー「あ……あぁ…………」

テニール「そ、そんな馬鹿な…………」


そこには傷一つない壁と、斬り捨てられたミドラーとテニールの姿があった。

プッチ「壁?『氷スーツ』のギアッチョの時と同様…………この剣の前には無意味だ」

プッチ「アヌビス神は、物体を『通り抜けて』斬ることができる」


そして……

Jガイル「お……追いきれない!!?」

Jガイル「ハングドマンは光の速さで移動できるが、あくまで攻撃判断はオレが基準……!!」

Jガイル「オレがプッチの姿を追うことができなければ……」

プッチ「そう、それも無意味だ」

Jガイル「!!?」


ザンッ!!


Jガイル「ぐ、ぐあああああ!!?」

エンヤ「ジェ……Jガイルゥゥゥゥーーーッ!!?」

F・F「この土砂降り……『水』がこれだけある……!!」

F・F「すでにッ!水たまり全てが『あたし』だッ!! 嘗めんじゃあねェェェェェッ!!!」


ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ……!!!


雨の水分をエネルギー源に、分裂と増殖を繰り返すフーファイターズ。

アヴドゥル「こ、これだけの数であれば……!!」


だが、それさえも……

プッチ「無意味…………『無駄』だ」



プッチ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……!!!」

『見よ、わたしの手にある杖でナイル川の水を打つと、水は血に変わる』

『川の魚は死に、川は悪臭を放つ』


ジョセフ「だ…ダメじゃ!! F・Fの増殖スピードをも上回っている!?」

F・F「き、斬られる……!!フーファイターズが産まれたそばから!!?」


『杖を取り、エジプトの水という水の上、河川、水路、池、水たまりの上に手を伸ばし、血に変えなさい』


プッチ「だが、中々にしぶとい。順番が違ったか」

プッチ「まずは…………ウェザーリポート」

ウェザー「!!?」


ザンッ!!

『彼は杖を振り上げて、ファラオとその家臣の前でナイル川の水を打った』


ウェザー「が……!!?」

雨は、止んだ。


『川の水はことごとく血に変わり、川の魚は死に、川は悪臭を放ち』


『エジプト人はナイル川の水を飲めなくなった』


プッチ「次に貴様だ。もう水を得ることも、無限に増えることもできまい。死滅しろ」

F・F「う、うあああああああッ!!!?」



ザン!ザザン!ズバッ!ザァン!ザン!ザザァン!!ザンッ!!!



『こうして、エジプトの国中が血に浸った』



――『出エジプト記』より抜粋




                 これが…………『1位』

ご覧頂きありがとうございます。
本日はここまでです。聖書無双、やってみたかったw

次回で完結予定です。
最後までお付き合い頂ければ幸い。

それではまた。

プッチ「あとは……7人と1匹か」


グレーフライ「ス、スピードの次元が違う……!?」

エンヤ「おのれ……!!」

リキエル「クソ!仕えた主に背くような、こんなゲス野郎に……!!」

アヴドゥル「敗北の未来しか見えなかろうが……」

ポルナレフ「だが……やるしかねェ、アーマーテイクオフ」 ボンボン!ボッショオ!

イギー「ワン……!!(おれも覚悟はできてるぜ……!!)」


プッチ「さぁ……貴様らの悲鳴で、終曲を飾ってもらおうか」


DIO「ジョセフ、わたしに『波紋』を流せ」

ジョセフ「!? な、なぜそんなことを…………ハッ!?」

ジョセフ「ま、まさかDIO……!!?」

DIO「このままでは全滅だ。ならば……死に瀕した際の奇跡に賭けたい」

DIO「『生きようとする意志』、そして……『勇気』に、な」



『「恐怖」を克服することが「生きる」ことだ』と……以前、DIOは語ったことがある。



ジョセフ「…………わかった、最高の波紋を練ろう。いくぞ……」


     ジョセフ「『波紋疾走(オーバードライブ)』!!」



自身を『殺す』威力を帯びた波紋。その波紋疾走が体内に流れる刹那……



……DIOは『幻覚(ゆめ)』を見た。

それは瞬間的な走馬灯のような、『幻覚(ゆめ)』だった――

ギ…


『目覚めろ、ディオ』

「…………」

『ぼくの声が聞こえているだろう?目覚めるんだ』

「…………とうとう、このおれにすがってきたな」

「今や血は貴様のもの。自分でなんとかすればいいだろう、ジョジョ」

『いや、血はぼくのものではない』

『あくまでぼくら二人のもの。今の状況を打破しなければ、君も困るはずだ』

「フン……おれに意識を返すなら、考えてやってもいいがな」


ギ…


『あぁ、返そう』

「なに……!?」

『いや……返すという言葉は適切な表現ではないな。なぜなら今の状況は……』



『君が勝手に逃げていただけなのだから』

『君は自身の死を愧じていた。承太郎に負けたことを愧じていた』

「…………」

『ポルナレフに人生論を語っていたが、君が一番……安心を求めていたんだ』

『そうやって意識を奥に置き、籠っているのは安心だろう?』

『だが、安心と共に誇りをも放棄している。誇りのない君は……』


『君であって君じゃあない』


ギ…


『なぜぼくがジョセフの波紋を受けようとしたか、わかるかい?』

「…………」

『ただ意識を返すだけでは、君は時を止められないと思ったんだ』

『誇り高き君でないと、時は止められないと思ったんだ』

『……思い出して欲しかった。形は違えど、君も持っていたはずだ』

『怖さを知ること。恐怖を我が物とすること。すなわち……』



『……ノミやゴキブリには持ちえない、人間だけが持つ「勇気」を』

ギ…


「波紋という恐怖を与え、それを乗り越える勇気をおれが持てるかどうか……」

「このディオを試すとはな、ジョジョ」

『試したわけじゃあない。賭けたんだ』



『「誇り高き」君が、戻ってくることに……』



「…………」

『だけど賭けにもならなかったな。君は戻ってくると……ぼくはわかっていた』

「…………なぜだ?」

『奇妙なんだ、ぼくらは……元々ね』

『忘れたかい?君自身が言っていた言葉を……』

『ぼくたちはふたりで…………』

「…………」

『……敵はただ一つ、アヌビス神だ』

『あの剣を破壊しよう』

ギ…


『さぁ、行こう』

「フン…………まぁ、貴様の出番はないがな」


『……既にぼくたちはわかっている』

「あぁ、わかっている」

『どうするべきかを』 「どうするべきかを」

『そして……ぼくと君の対話の時間は、この幻覚(ゆめ)ももう終わりだ』

「…………あぁ、それも……わかっている」

『夢のような時間だった。だがこれで……サヨナラだ』


ギイィ…


『……行くぞディオ』 「……行くぞジョジョ」


『ぼくたちは…………』 「おれたちは…………」





       「ふたりでひとりだった』



       ギイィ………… ガッシィ!!










『時の歯車が「ザ・ワールド」と再びかみ合った』

DIO「『ザ・ワールド』!!!わたしだけの時間だ」



――時は止まった。



1秒…2秒…


DIO「ジョセフ=ジョースター…………フン」


3秒…4秒…


DIOは眼前にある波紋を躱し、アヌビスの剣戟をすり抜けた。


5秒…6秒…


目の前にはアヌビス神を構えたプッチがいる。

時の間隙(すき)を突く『ザ・ワールド』の拳撃が……


DIO「アヌビス神……」


7秒…





DIO「……貴様は『わたしたち』を怒らせた」

バギャッ!バゴッ!バゴバゴバゴ!バゴォッ!ドゴバゴバゴバゴ!!!



8秒…


……アヌビス神の刀身と柄を、砕ききった。

時は完全に止まっていた。貫いた信念(おもい)が、時を止めたのだ。



DIO「…………9秒。そして時は動き出す」



ポルナレフ「…………え!!?」

リキエル「な、何が起こった!!?」

エンヤ「ま、まさか……!!?」


バラバラバラ……

砕けたアヌビス神が、赤い血の流れのように、こんこんと大地に降り注ぐ。


DIO「……わたしが時を止めた。そしてアヌビス神を破壊した。戦いは……」

DIO「『終わり』だ。これで、全て…………な」


プッチ「う……DIO?これは一体……」



……時間という概念の中では、決着がついたのは一瞬だ。

その一瞬の間に、DIOの様子が今までのものとは変わっていた。



この世界で再び刻まれていたジョナサンの意識は、なくなっていた。





アヌビス神を破壊した第一・五合同班は、アネックス内部を探索した。


そこで一つ、嬉しい誤算があった。

プッチ(アヌビス神)により全滅したと思われていたアネックス護衛班だったが……



エンポリオ「……プロシュートとペッシが、ぼくたちを逃がしてくれたんだ」

トリッシュ「そして未起隆の機転で、彼が居住区の『クローゼット』に化けて……」

トリッシュ「あたしとエンポリオをずっとかくまってくれていたの」

未起隆「ぼくだって少しはやるんです、ちょっとは見直しました?」



……三人、生存者がいた。




第一・五・六班 8名+1匹

第二・四班 15名

第三班 全滅

アネックス護衛班 3名


生存乗組員合計26名+1匹は、アネックス1号にて合流を果たした。

アバッキオ「ムーディブルースのリプレイによると……」

アバッキオ「第三班を全滅に追い込んだのは、カーズとアヌビス神だ」

承太郎「ディアボロはカーズの危険性について察していたように伺えるが……」

ジョセフ「それでも逃げることだけはしなかった」

ブチャラティ「『帝王』のプライドなのか……」

ジョルノ「それとも、人間の『誇り』なのか……」

DIO(ここでこいつらを皆殺しにしてもいいが……)

DIO(だが『誇り』あっての我が生だ。そうだろう…………ジョジョ)

プッチ(DIOの様子が……元に戻った……のか?)


徐倫「さぁ、帰りましょう……」

吉良「…………あぁ」

承太郎「ハードな旅だった、地球へ戻ったらゆっくり休ませてもらうとするか」

ナランチャ「あぁ……故郷のマルガリータ食いてェ……」

仗助「オレは……まずは美容院に行きてーなァ」

ジョセフ「そういえば髪が伸びて随分『でかい頭』になったなァ、切りごたえがありそうじゃ」

仗助「」 ピクッ

康一「あ…………」

承太郎「じじい……」


仗助「」 プルプル…

ジョセフ「え……? な、なんかわし変なこと……」


仗助「今おれのこの頭のことなんつったァーーーッ!!!?」


ジョセフ「HOLY SHIT!!?」

ジョセフ「や、やめろ仗助!! そういうつもりじゃあ……」





ジョセフ「OH MY GOD!!!」





……彼らは残39日間の調査期間中に、苔や砂、水、テラフォーマー等からウィルスのサンプルを入手した。


そして火星での40日間の任務を終え、地球へと帰還していった――

――アネックス1号内



カーズを倒し、サンプルを集め、当初の目的を果たしたジョセフは……内心で気付いていた。


召喚された我々が、もうすぐ『還る』であろうことに。


これでおそらくワクチンもできる。この世界の平和は、『ひとまず』守られた。

しかし、『戦い』が終わることは決してないだろう。ならば……




              『祈ろう』




この『世界の幸せ』を……祈ろう。

どういう形が幸せなのかはわからないが、それでいい。ただ、祈りを捧げよう……



承太郎「? どうした、じじい」

ジョセフ「祈って……おるんじゃよ」

ジョセフ「地球までの航宙の無事と、そして……」




ジョセフは両の手を合わせ、もう一度この世界の幸せを『祈った』。


もうすぐ還りゆく我々には、それしかできないのだから――

エピローグ  ――『9つ目の前兆』――





『運が良かった』


それだけ。ただ……それだけの理由である。




カーズがスタンド能力『タスク』を身に着けたのは、偶然だった。

導かれるように触れた一つの鋭角な『岩石』。カーズはその石で指を傷つけた。

それから間もなくして、『爪』の能力が発現した。


カーズはこの石を、『矢』の形に加工した。

そして矢で何匹ものテラフォーマーを貫いた。謎の高温を放ち、死滅する個体がほとんどだった。

その中で4匹が、カーズと同様に『能力』を覚醒させた。

しかし、矢に刺され生き残ったテラフォーマーの数は4匹ではなく……



               『5匹』だった。



カーズは能力を覚醒しない残り1匹のテラフォーマーに疑問を感じつつも、

この5匹に『教育』を施した。さらに、能力が覚醒した4匹に階級を与えた。


カーズは使用した『矢』と一つの石仮面をピラミッド最深部に保管した。

この5匹目のテラフォーマーは、その最深部に辿り着いていた。


彼は『能力者』であるが、カーズも、仲間のテラフォーマーもその事実に気付いていない。

本人その事実を伏せていたからだ。

彼にはプライドがあった。この『ささやくだけ』の能力を、恥じていた。


彼は……周りの仲間からはスタンド使いの『成り損ない』だと、思われていた。




           ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……




         「ワタシが生き残ることができたのは……」


             「『運が良かった』のだ」


         『そうだ。オマエはラッキー・ガイだぜ!』

――地球



先生「……世界は『三度滅んだ』」

先生「ホピ族の人たちはそう考えています」

先生「そして彼らの予言によると、今の四度目の世界も……」

先生「いずれ必ず『滅ぶ』と、言われています」

「ええ~~!?それっていつの話だよ!?」

「おれが生きている間だけは、滅びて欲しくねーんだけど!」

先生「この予言がいつ達するのか、それはわかりません」

先生「実はホピの言語には、我々で言う『時間』という概念もありませんしね」



先生「ただ……世界が滅びる前には『9つの前兆』が起こると言われています」



<ホピ族の予言>

現在の第4の世界が滅ぶ『9つの前兆』


1.白い肌の者たちが大陸にやってきて、雷で敵を打つ

2.声で一杯になった木の糸車の到来

3.「バッファローに似た、角の長く大きい獣」の登場

4.鉄の蛇が平原を通る

5.巨大な蜘蛛の巣が地上をおおう

6.大地に石の川が交差する

7.海が黒く変色して、それによって沢山の生物が死ぬ

8.ロングヘアーの若者が部族国家に加わり、インディアンの生き方と知恵を学ぶ



9.あなたは天の住居のことを耳にするだろう。それは『大音響』とともに落ちてくる

それは『青い星』のようにみえるだろう。これが落ちてまもなくわが民の儀式は終わる

先生「1~8については、すでに『起こったこと』であると解釈されています」

先生「例えば1は白人の侵略、2は幌馬車の到来、3は白人が連れてきた牛」

先生「4は鉄道、5は電線、6はハイウェイ、7は石油事故、8はヒッピー文化といったようにですね」

「え……じゃああと『9の予言』を示す事態が起きたら、人類は滅亡するってことですよね?」

先生「ええ、そういう風に解釈されています」

「うわぁ……もうダメじゃん、あと一つだなんて…………」

先生「ははは……安心してください。2000年頃の時点で、8つ目までの前兆は既に起きたと言われています」

先生「ですが2620年までの600年間、一度も9つ目の前兆は起きていません」

「……なぁ~~~んだ、じゃあすぐにってわけじゃないし、何千年や何万年も先の可能性もあるわけね」

「そもそも、予言が当たってるかもわからないし……」

「ねぇ、9つ目の前兆にある『青い星』って、何を指しているんだろう?」

「大音響とともに落ちてくるっていうし、人工衛星のことじゃない?」

「人工衛星?全然青くないし、星でもないじゃん?」

「う~~ん、そうかぁ……」

「あんたはどう思う?」

「おれ?うーん……」



「案外『火星』のことじゃあ……ないのかな」



「火星?あぁ~~~……テラフォーミングが『終わって』、水も緑もある『青い星』になったらってこと?」

「でも火星からどんな音が届くっていうのよ?」

「…………『声』、とか?」

「アハハハハ、あんたはいつも適当ね。火星にいるのは苔とゴキブリだけでしょ?」



「ゴキブリが『声』なんて、出すわけないじゃない」

――火星  ピラミッド内



「ワタシたちは『運良く』生き延びたが…………」

「だが神は……カーズ様は、地球の害人共に敗れた」



「その害人の名は…………『ジョジョ』」



「この名を忘れてはならない」

「じょじょ!」 「じょじょ!」 「じょじょ!」


「血脈に刻み込め、因縁を。いつか地球へ届けるのだ……」



        「『怨嗟の声』を」



「じょじょ!」 「じょじょ!」 「じょじょ!」



「神はその為に様々なものを残してくれた」

「『知恵・知識』、『石仮面』、そして…………」





          「『矢』」





「復讐とは、自分の運命への決着をつける為にある」

「必ず……いつか必ず復讐してやるぞ…………」


「ジョジョォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」

「じょじょ!!」 「じょじょ!!」 「じょじょ!!」

「じょじょ!!」 「じょじょ!!」 「じょじょ!!」

「じょじょ!!」 「じょじょ!!」 「じょじょ!!」




火星のテラフォーミング計画、『完了』まで…………


        およそあと『500年』――




≪テラフォーマー「じょじょの奇妙な冒険」 -完-≫

最後までご覧頂きありがとうございました。これにて完結です。

コメントを拝見していると、もう少しSBRのスタンドを出せば良かったかなとも思いましたが……
中だるみしそうだったので、SBRのスタンドはタスクを合わせて6つのみの登場とさせて頂きました。
大統領好きの皆様、すみません。

拙い文章の為、わかりづらい点や意味不明な箇所等多々あったかと思います。
ご質問等ございましたら、書き込んで頂ければ回答させて頂きます。


繰り返しになりますが、最後までご覧頂きありがとうございました。
それではまた。

乙です

結局何でジョジョたちは召喚されたんだろうか?

>>484
一言で言えばカーズを倒す為、です。
打倒カーズを為し得るのは、特殊なスタンド能力でないと難しいので……。


読み返してみると、色々と説明が不足している部分が……本文で書けずすみません。
いくつかこのSSの設定を書かせて頂きます。ご参考にして頂ければ幸いです。


※テラフォーマーはなぜ「じょうじ」と言わないのか?
このSSの中では、テラフォーマーは一度も『じょうじ』とは言っていません。
これはカーズが『ジョジョ(ξοξο)』という言葉をテラフォーマーたちに教えた為です。

※ヘブンズドアーの本(>>18)や、ピラミッドの壁画にあった『ξοξο』(>>242)は何語か?
古典ギリシア語です。
ジョジョ(jojo)→ξοξο ジョースター(joster)→ξοστερ

※『♍』と、神殿の絵。『△』と、ピラミッドの絵(>>273)は何か?
パルテノン神殿とピラミッドは『黄金比』に基づいた建築物で、その二つを表しています。
パルテノンの名称はギリシア語の『παρθενών(処女宮)』からきており、
処女宮のアストロロジカルシンボルが『♍』です。
『△』はピラミッドを簡素化した記号として書かれていました。

※生き残ったテラフォーマーについて
ポコロコのスタンド『ヘイ・ヤー』を発現させております。
幸運を与える能力だと思ってたら、ささやくだけだなんて……

※77の英霊達について(>>118)
これはこの世界に召喚された者の数を表していました。
火星へ発った70名(匹)と、吉良吉廣、ティッツアーノ、スクアーロ、ココジャンボ、
ダービー兄、ダービー弟、そしてスピードワゴンで、計77になります。

※ホピ族って何?
実在するアメリカインディアンです。
『世界は今物質への強欲のためにバランスを失っており、このままでは世界は終わる』という警告をしています。
彼らの考えや予言には、色々と考えさせられるものがあります。

※マーズランキングについて
『スタンドによる』、テラフォーマーの制圧力及び、戦闘時の生存力を指標にしたランキングです。
ポイントは、肉体や専用武器を考慮せず、『スタンドのみ』の力で位を判断した点です。
専用武器が強力な重ちーや、波紋を使えるジョセフが低い順位にいるのは、これが理由です。

また吉良吉影のキラークイーンのランキングに関しては、
スピードがBランク(JOJO A-GO!GO!を参照)という点がマイナス評価になり、21位となっております。

このランキングが存在したことで、
アヌビス神はDIO(4位)のことを『敵わない相手ではない』と思うようになり、それが裏切りの要因となりました。


判明したマーズランキング

1プッチ
2ディアボロ
3ウェザーリポート
4DIO
5承太郎
6アヴドゥル
7ギアッチョ
8ヴァニラアイス
9チョコラータ
10音石明
11プロシュート
12セッコ
13
14ブチャラティ
15エルメェス
16サーレー
17仗助
18トリッシュ
19虹村形兆
20

21吉良吉影、23徐倫、28ジョルノ、35康一、42リゾット
43メローネ、45重ちー、61ミスタ、63ジョセフ、70ジョンガリA


補足はこんなところでしょうか。
長々と乱文失礼致しました。

仗助のランクが気になる

>>492
仗助は17位ですね。該当箇所は>>356です

ちなみに13位はアナスイ、20位はラバーソールで考えていました。
アナスイはダイバーダウンの基礎能力(破壊力スピード共にA)と、分解し組み替えるという能力の殲滅力が。
ラバーソールは通常のテラフォーマー相手にはまず殺されないであろうという点が、この高順位の理由です。

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