女騎士「私の事を好きにならない人間は邪魔なんだよ」煮込み6杯目 (999)

≪過去スレ≫
女騎士「いやだ!死にたくない、仲間の居場所でも何でも話すから!」 女騎士「いやだ!死にたくない、仲間の居場所でも何でも話すから!」 - SSまとめ速報
(http://www.logsoku.com/r/news4vip/1374167969/)
女騎士「絶対に死んでたまるか!!絶対にだ!!」 女騎士「絶対に死んでたまるか!!絶対にだ!!」 - SSまとめ速報
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女騎士「いやだ!死にたくない、仲間の居場所でも何でも話すから!」女騎士「いやだ!死にたくない、仲間の居場所でも何でも話すから!」 - SSまとめ速報
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女騎士「近くにいたお前が悪い」女騎士「近くにいたお前が悪い」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375900319/)

≪あらすじ≫
キュートでファンシー、ビビッドなお茶目さが魅力でお馴染みの女騎士ちゃんがめっちゃ活躍した。
女騎士ちゃんは果たして薄汚い魔物どもを一匹残らず根絶やしにする事ができるのか。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375900319

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377080897

女騎士「……腰、揉んでいただける?」

息子「はっ、はいっ!!」

娘「あ……」

女騎士「そっちは……まあ、好きなようにしちゃって。私でも、こっちでも」

エルフ三男「(メンドくせーからホントに名前じゃ呼ばないんだな……そっちだのあっちだのって。
名付け親は夫だって言うし……ドラゴンの個体名は、人間には発音がそもそもできないって聞くしな……)」

娘「……」

女騎士「おああ……負けるぅ……ハンモックに負けちゃうぅ……うへへぇwwwwwwwwwwwwww苦しゅうないwwwwww」

娘「お兄ちゃん……お兄ちゃん……!!」

息子「ね、ねえ……当た、当たってる……よ……?」

娘「うふふ……」

息子「む、むね……いいの?」

娘「いいの」

女騎士「(ククク……満更でもないな、この私の生き写しを侍らせるのはそう悪くない……
出自こそ屈辱モンだが……あの旦那サマにはまだまだ働いてもらえる事だしな……)」

エルフ三男「(これぁ抜けますわ……全ての水着回を過去にしますわ……光が仕事しますわ……)」

女騎士「いやぁ……私の寛大さは本当に三千世界に響き渡るなぁ……なぁ!?」

エルフ三男「あっすいません聞いてませんでした」

第6,5部 絶対ハンモックになんか負けたりしない!編

                ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                 d⌒) ./| _ノ  __ノ 

第7部 んほぉぉぉぉハンモックゆさゆさぎもぢぃぃのぉぉ編へ

                                       ー- 、 ー-、``/  
                                      _, '  ._, '  \  
                                    -------------------
                                     制作・著作 NHK

>>131
どこか違うんですか?
字が似てるからいいかなって思い
そう書いてしまったんですけど

>>133
ライフリングがないから「銃腔」が「滑らか」って字を当てて
「滑腔砲」って名前なんじゃないの?

だいたい滑空じゃどの大砲でも発射から着弾まで弾が滑空しとるがな
間違えやすいなら「かっくうほう」より「かっこうほう」の読みで
覚えた方がいいと思う

>>156
もちろん某優しい神父様だわ
それで思い出したけど>>1があの漫画のネタを仕込んでたのは俺得だった

>>157
魔王と勇者を共和国で追い詰める前後はまさにヘルシング彷彿させるとっ散らかりぶりだったんで…
あの辺から竜騎兵拷問とかの胸糞で人を選ぶ場面増えたけど、松田ぁぁとかエルフ造反は熱い

ほの字演説効果でドラグーンの恩はあっても、魔王軍と北西諸島はほとんど冷戦状態なわけだよな
今度は連合+魔王軍vs北西諸島+女騎士で帝国領土の取り合いか

プライベートルームで女騎士ちゃんやほの字に腹筋見せつけられて脳みそとろけちゃう息子きゅんのえっちな画像ください

>>1ちゃんが寝てる間にまおゆう予習しとくべきか
どれだけ意識してるかわからんけど

正義の味方(女騎士ちゃん)が悪(魔王軍)を駆逐する勧善懲悪
なんだ王道じゃないか(棒)

なんかネオリベとか啓蒙主義とかよくわかんないから女騎士ちゃんと愉快な仲間達に例えてよエロい人

おなかぷよんぷよんじゃないですかーやったー
なお息子きゅんの眼中には入らない模様

読むものだったり書くものだったりに追われてもうちょっと遅れるで
スレだけさっさと立てちまった早漏で申し訳、今しばらく女騎士ちゃんでお楽しみください

敵兵「俺は・・・俺は嫌だ!!」

エルフ三男「何という見苦しさ・・・」

(敵兵の怯える声)

秘書「本当なんです、信じてください!!信じてェェ!!」

警察官「あーはいはい、わかったから落ち着いて」

秘書「そこもそこもそこも、そこも施錠してください!!お願いよォ、早くしてえ!!」

班長「またその子か」

警察官「そうなんですよ、住所だとかが割れてるのが救いですね」

班長「首都で政治家の腰巾着やってたエリートが可哀想なもんだな……」

警察官「今日もやっぱり勝手に家の敷地から出てきちゃったらしいですからね」



母親「ああもうこの子は……すいません皆さん、申し訳ございません」

秘書「嫌ァァ、離してェ、あの家はダメよ、見られてる!!監視されてるのぉぉ!!」

警察官「……」

母親「この子ったら、仕事にあぶれて帰ってきたと思えばこんな調子で……誰に似たのかしら、ほほほ」

警察官「は、ははは……」

秘書「……北西の……黒幕が……スパイが……」

班長「早く良くなると良いですな……」

母親「本当にもう……」

秘書「……」



警察官「誰に迷惑かけるわけじゃないんで、まだいいんですがねぇ」

班長「あそこの党は嫌いじゃないかったんだけどな、こええこええ」

警察官「連合の宗教か何かに毒されちまったとか?」

班長「……気の毒に」

母親「大丈夫だった?どこか怪我だとかもしてないかしら?」

秘書「そんな事どうだっていい!!嫌、嫌!!あそこには、あそこには帰りたくないのお!!」

母親「そんな事って……お願いよ、そんな事は言わないの」

秘書「助っ、助けて……助け……」

母親「今朝にはせっかくあなたを党の方が訪ねて来てくださったのに……」

秘書「党……誰、誰の事……?」

母親「小さな女の子を連れた女性の方よ。あなたがお手伝いしていた方の後任……じゃないかしら?」

秘書「後……任……お嬢さんの後任……」

母親「ブルネットで色白の……たぶん、外国の人だわ。とても礼儀正しくて人当たりの良い……」

秘書「……ひ……」

騎士ほ「お久しぶり……フクク……」

秘書「」

ほ子「……こんにちは」

騎士ほ「ハイ……よくご挨拶できました……いい子ね……」

ほ子「……」

騎士ほ「……とは言っても、そんな何か月も経ってないのだけど。どうかしら……元気してた?」

秘書「嫌ぁぁぁぁぁッ、やめてえええええ、嫌ぁぁぁぁ!!」

騎士ほ「うるさいわ……もう少し落ち着きなさいな。自分の家のリビングに脳ミソぶちまけたくないでしょう」

秘書「ひ……いや……やだ……こ、ころさないで……」

ほ子「母上……」

騎士ほ「そうね……情けない女だわね……あなたはこうなってはいけないわ、ああいう女は反面教師になさい」

ほ子「はい……母上」

騎士「……別に、殺す気だったらこうしてわざわざ顔合わせなんかしませんわ……家ごと蜂の巣にいたします」

秘書「……」

騎士ほ「あなた……なかなかいい経歴の持ち主ではないですか。人間性は置いておいて」

秘書「……」

騎士ほ「大学なんて、北西諸島に出向いて4年も留学なさっている……勉強が本当に身になっているかはさておき」

秘書「……ひぅ」

騎士ほ「まあ……ギリッギリで足切り免除という事にいたしましたわ……それなりに使えそうですし……」

秘書「つ、使え……る……?」

騎士ほ「あなた……上手い事、心神耗弱を盾に刑事追求をあの女におっかぶせて逃げ切りましたわねぇ」

秘書「わ、わたしは……そんな、して、ません……うぅ……」

騎士ほ「この卑怯者、人間のクズね……フクク……」

秘書「……」

騎士ほ「そんな……大便製造機のあなたを……とりあえずは小間使いとして採用してやろうと言っているんです……」

秘書「採……用……?」

騎士ほ「ええ……今、あなた無職でしょう?それ以下ですわよね?キの字を装ってぶらぶら街を練り歩いている……
Not in Education, Employment or Training……労働もせず学校にも行かず職業訓練も受けないクズ……」

秘書「……」

騎士ほ「フクク……人類に、あなたほど名誉ある人間はいたかしら……いえ、きっといませんわ……いるわけありませんもの。
ああ、羨ましい……妬ましい……今のこのポストが無ければ、あなたの代わりに私がそこに就いていますのに……」

秘書「な、何……な、な、何……ですか……」

騎士ほ「元エリートの、情報だけは持っているであろうクズを……お姉様の側近にしてやると……そういう事ですの……フクク……」

秘書「採用……そ、側近……?」

騎士ほ「明後日の便で帝国西部へ……そこを経由してエルフ勢力国家……アルヴライヒで別命あるまで待機なさい……」

秘書「ちょ、ちょっと……」

騎士ほ「二日後……ああ、待ってました……待望の御対面……お姉様と合流の日……」

秘書「あの……わ、私は……」

騎士ほ「詳しい事は……軍属のエルフに聞けばいいですわね……もう二十過ぎたいい大人ですからね……」

秘書「……」

騎士ほ「あら……不満そうな顔……嫌なのかしら……何が嫌なのかしら……ちょっとわからないですわね……」

秘書「あ、安全……なんですか、大丈夫なんですか……死んだりしないですか、変な事には……」

騎士ほ「多分……あなたがヘンな事しなければ……きっと大丈夫……」

秘書「……」

騎士ほ「選択肢、あなたにあるんでしょうか……このまま親の遺産を食いつぶすゴクツブシ……
あなたが職を探そうがどうしようが……まあ、この先きっといい結果は訪れないでしょう……あなた、クズですもの。
不思議な横槍だとか、不思議な言いがかりだとか……不思議な圧力があなたを襲うでしょうねぇ……」

秘書「何よ、それぇ……」

騎士ほ「おいしい職場を追われた不幸な末路ですわね……フクク……」

騎士ほ「断ったらどうなってしまうのかしら……ああ、怖いですわ怖いですわ……」

秘書「……」

騎士ほ「きっと……あなたが考えている事が全部まるごと……現実になってしまうのでしょうね……」

秘書「……」

騎士ほ「フクク……捨てる神あれば……拾う神あり……いいではありませんか、当面は生活の保障も私がいたします。
それでそれなりの収入があるなら、万々歳ではありませんか……ああ、みんな幸せ……」

秘書「……うう」

騎士ほ「ほら……御覧なさいな……あらあらあらあら、こんなおなかになるまで怠惰にだらだらして……
無駄な脂肪がふっくらついて、不健康に肥えた自分の肢体……だらしがないですわ、どうしようもありません……」

秘書「やめて……」

騎士ほ「お仕事がないと……人間、こうして堕ちていくのですね……衣食住が例え保障されていても……フククク!」

モルドレッド「どうだった?オッケーしてくれた?」

騎士ほ「ええ、それはもう……二つ返事で快く受けて頂きましたわ」

ほ子「……」

モルドレッド「キミもお母様のお手伝い、ご苦労だったね」

ほ子「……ありがとう、ございます」

騎士ほ「フクク……この子、相変わらず私と卿以外には目も合わせませんのよ……」

モルドレッド「慎重で繊細なのさ」

ほ子「……」

騎士ほ「それで、卿の用事は済みまして?」

モルドレッド「まあ、上々だね。ケイ卿にヒモでつながる共産主義者……おおよその質と数は掴めた。
ここ共同体領内、連合と地続きな事もあって思想汚染が著しい……おぞましい事だ」

騎士ほ「思想の汚染とは、よく言ったものですわね……かの魔王軍のお家芸……フクク」

モルドレッド「似た者同士……6年前の事件、やはりあれは連合と魔王軍が共謀して実行したと、キミも思うのかい」

騎士ほ「さあ、どうでしょう……」

モルドレッド「ぶくぶくと肥大を未だに続ける連合、歪な啓蒙主義を掲げる魔王軍……
神が与えたもうた、我々が越えるべき障害としてはあまりに醜悪だ。吐き気がする」

騎士ほ「(青くせえ円卓のクソのうちの一人がいけしゃあしゃあと言う……)」

騎士ほ「西部諸国同士の命綱の改定、その下準備に、こんなに骨が折れるとは思いませんでしたわね」

モルドレッド「連盟会議までの時間はまだ一年……なに、その内にこちら側の連合支持者は一掃できるだろうね」

騎士ほ「(欧州連盟会議……北西諸島や共同体の議題の中心となるのは、恐らく分割された帝国の統治……
税率制定、帝国領内における派兵、帝国技術省の保持するパテントの扱い……そして、連合への反抗の意思確認……
ここぞとばかりに帝国を食い物にする気なのは明白だな、これまでの6年は連合を刺激しない為の仕込み……)」

モルドレッド「魔王軍や連合が、どこまで会議に噛んでくるのかは予想できないな。円卓の側でも圧はかけているが」

騎士ほ「まともに自軍の維持もできない魔物どもなど、出席したとて会議の内容がわからないのでなくて?」

モルドレッド「違いない、連中の頭にはやはりクソが詰まっているに違いあるまい。
聞いたかい、先月もまた南部王国で決起があったそうだ。統一運動にかこつけ、いたずらに戦乱に火を注ぐ……」

騎士ほ「(南部王国……帝国にことごとく統一の芽を潰されてきた過去を持っている野蛮人どもの吹き溜まりだな。
ここで纏めて滅んでもらっても構わんが……焼き払うには、一度大きく膨れてもらった方が何かとラクか……
完全な統一など、お姉様の君臨以外にあるものかよ……魔物に与する存在など、マフィアにも劣るネズミのクソだ)」

モルドレッド「僕は明日の便で本国に戻るが……キミ達はどうする」

騎士ほ「私は……そうですわね。しばらく半島から共和国まで回ってみようかと思っておりますの」

モルドレッド「なるほど、その為の休暇申請か。初めての母娘旅行だものね」

ほ子「……」

騎士ほ「この子には、なるべく色々と……それはもう、色々と見て育ってほしいもので」

モルドレッド「わかった。団長には僕から口添えをしておく、時間がかかりそうだと」

騎士ほ「……ありがとう、ございます」

ほ子「ありがとーございます」

モルドレッド「(……母娘旅行、ねえ。共和国へ、海輸で自分の騎竜を周到に用意して……楽しい旅行だこと)」

騎士ほ「(何が会議……連盟だ。身を割かれ、地に伏した帝国の遺骸にたかるハゲタカ……蛆……蝿……!!
所詮は北西諸島も、共和国も、共同体も……すべて一様に滅ぶべき掃き溜めでしかない。
その為にも……何としても、帝国の半身に息を吹き返して貰わねばなるまい……お姉様の息吹によってなあ!)」

秘書「……」

エルフ三男「騎士様、騎士様、ハンモックからお降りくださいまし」

女騎士「無理に゛ゃのぉぉぉぉ、ハンモックなしじゃ生きていけないのぉぉぉ」

エルフ三男「新しいオモt……パシr……側近の人間の調達ができましたよ」

秘書「(綺麗な人……だけど、ハンモックで丸まって何やってんだろ……)」

エルフ三男「起床は5時、細かい業務はそこらの人に聞いてください。じゃあ、よろしく」

秘書「ごっ、5時!?そこらの人って……」

エルフ近衛兵「……」

エルフ騎兵「……」

秘書「(やだ……カッコいい……イケメン揃いだわ……)」

エルフ近衛兵「閣下!何ですかこのデブは!」

エルフ騎兵「こんな豚と同じ職場になりたくありません!」

秘書「」

エルフ三男「おやめなさい!閣下パワハラは許しませんよ!!」

エルフ騎兵「そんな事言って自分だけ騎士様と遊んでるんでしょう!」

エルフ三男「何が悪い!!」

ボルガ博士、即興お許しください!
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敵兵「えっ、今日は三食全部食っていいのですか!」

料理長「ああ……しっかり食え」

ゴブリン「おかわりもあるぞ!!」

敵兵「……」

給仕「さ、差し入れでございます、勇者様から……」

敵兵「ふおっ!!キ、キンッキンに冷えてやがる……あ、あ、ありがてえ!!」

料理長「すげえ食いっぷりだ……」

ゴブリン「今まで何を食べて生きてきたというのだ、この人は……」

敵兵「涙が出るっ……犯罪的だァ……ぅうますぎる……!!
ストレスによる関節痛と不衛生な倉庫生活での息苦しい体に、半年ぶりの黒ビールっ……
しみ込んできやがる……身体に!!と、溶けそうだ!!うう、あああっ!!」



勇者「……」

将軍甲「あの女の側近……亡命者ってところか」

勇者「常に見張りを二人以上張らせている、文句はないだろう」

将軍甲「俺は別に、悪態突きに来たわけじゃあないぜ」

勇者「わかってる。牽制であり護衛だ、彼にとってもぼく達にとっても利のある事だ。それに……」

将軍甲「……」

勇者「アジ・ダハーカに過敏になっているのは、あなただけじゃあない。慎重になるに越したことはない」

将軍甲「(……ふん、一切は杞憂だったわけだ。ずいぶん頼れそうな風格が出てきたな、このガキは)」

勇者「ずいぶん血色が良くなってきましたね。お加減はどうですか」

敵兵「いや、あの……おかげさまで。その、ほんとにオレ、カネ持ってないのにいいんですか、こんなに良くして貰って」

勇者「人一人養えない程、ぼく達は逼迫していません。今日の午後には自由行動の許可も下りるでしょう、城塞を案内しますよ」

敵兵「かたじけない……」

勇者「そう卑屈にならないで。あなたはぼくや彼女……魔王の恩人なのです、胸を張って頂きたい」

敵兵「……」

勇者「あなたが正しいと思ってやった行為が、ぼく達の現在へと繋がっていた。この絆に恩を感じぬ人間などおりましょうか」

敵兵「うう……ああ……ま、まともな返答がかえってくる……」

勇者「……はあ」

敵兵「も、もっと話をしてください、お願いします……人と会話がしたい……!!」

ゴブリン「(どうしてこうなってる)」

料理長「(城塞にいる純粋な猿人なんか数えるくらいなんだがなあ……)」

敵兵「オレなんかに……勇者のあなたがくっついてていいんですか、いい顔しない人もいるでしょうに」

勇者「問題ありません。この白の城塞、元来は旧魔王軍時代に絶壁を拓いて建造されたもの……
帝国南部と火薬庫の南部王国内海に面するこんな場所に、そうあなたに過敏に反応する連中はいません」

敵兵「はあ……」

勇者「ぼくは……正確には勇者ではありませんから」

敵兵「はい?」

勇者「勇者信仰における『勇者』という称号を持つ人間は、ぼくの遠い先祖……そのただ一人です」

敵兵「……そんな。勇者の末裔なんですから、勇者には違いないじゃないですか。聖人ですよ、聖人」

勇者「生ける人間は、聖人たりえませんよ。ぼくは単なる勇者の末裔。共和国や帝国領を探せば、100人程度は見つかるうちの一人です」

敵兵「ご謙遜を」

勇者「いえ……そうだ、勇者信仰については、どの程度御存知ですか?」

敵兵「え。そりゃあ……共和国に生を受けた勇者が、天使の神託に基づいて魔族相手に大立ち回り……ですとか」

勇者「国から国へ、時には海を越えての大冒険……魔王の住まう城塞目指しての英雄譚」

敵兵「……実際に、オレがその魔王の末裔にもお会いできるとは思ってませんでした」

勇者「そう囃さないで……彼女たちも、我々猿人と同じく理性ある存在であると同時に、偉大なるカミなどではないのですから」

敵兵「はい……」

勇者「……それでは、その英雄譚の救世主が魔王を討伐してから……そこから先については御存知ですか?」

敵兵「そこから先ってそりゃあ、魔族の王を屈服させて万々歳……あの、こんな話ここでしていいんですかね」

ゴブリン「いいんじゃないっすかね」

料理長「過去は顧みぬ主義だ、そこまで興味もないしな」

勇者「だそうです」

敵兵「ふぐうううううううういい人たちだああああああああああ」

勇者「現共和国領にかつて存在した小国に産まれた『ガリア・ベルギガの勇者』……他の歴史的事象と同じように、
決してその英雄譚は華々しいだけのものではなかったようなのです。むしろ、類を見ない程に質が悪く血腥い」

敵兵「(ガリア・ベルギガ……確か、6年前の演説やテロ事件が起こった地区からそこまで離れてないんだったか)」

勇者「帝国主導のレコンキスタを始めとする国教戦力と魔族の衝突や、新旧教同士の宗教対立……東西の摩擦など、
人魔の諍いを差し引いても、中世の歴史は血と暴力に覆い尽くされていた。勇者の故郷であるガリアも同様、諸国の緊張に引きずられていたに違いありません」

敵兵「……」

勇者「当時のガリアは、その立地から常に二大強国である帝国と現共和国の脅威に晒されていました。
度重なる継承戦争によって、月単位で使用する金銭や言語が変化していたとも聞きます」

敵兵「継承戦争なんて……やっぱり、十中八九そりゃ帝国がふっかけていたんじゃ」

勇者「ええ、持参金未払いを口実に隣国へ攻め込みたい……そんな腹積もりがどこからも見え見えだったのではないでしょうか。
ガリアは、言うなれば大規模な消耗を伴う全面戦争……会戦を回避する為の係争地にされていたのです」

敵兵「……」

勇者「やがて南方から魔王軍が北部への侵攻を強めていくと……徐々に帝国も、西部へ割く手勢が衰えてきます。
そうなると、ガリアの土地を欲しがるのは共和国……便宜的に、ここでは第一共和制と呼称しましょうか」

敵兵「大規模な革命前の共和国って事ですか」

勇者「はい。第一共和制は、かなり隣国である帝国の封建制を意識した改革を施していました、
自国にかつて存在していた第一帝政を貶め、国民の信頼を共和政府に集約しようと躍起になっていたわけですよ」

敵兵「のちにそれが仇になって第二帝政に……でしたか」

勇者「その通り……ですが、今はスポットを勇者に置きましょうか」

敵兵「天恵の祝福を受けた勇者……連合でも聖人扱いですからね」

勇者「実のところは、帝国体制に包囲された小国の悪あがきだったようです。魔物相手に神経をとがらせる大国への煽りと言いますか」

敵兵「何それ怖い」

勇者「あまり褒められた政策とは言えないでしょうね……とはいえ、当時のガリアの政治事情を鑑みればわからなくもないですが。
『ガリア王国』を存続させる為に、新教の勢力が旧教にアドバンテージを握る為に行われた、王族ぐるみのヤラセと言いましょうか」

敵兵「ヤ、ヤラセ……?」

勇者「第一共和政への併合を何よりも恐れるガリアには、威信をかけて『実在する聖人』を作らねばならない立場にあったわけです」

敵兵「……」

勇者「貴族や王族が莫大な宣伝費をかけて、勇者誕生を国民に知らしめました。唯一神の使役する天使からの祝福を受けた幼子ですとか、
聖痕を持つメシアの生まれ変わりですとか……もっとも、当時の書類が現存するほどの力の入れようだったにもかかわらず、
諸国へのロビー活動は、北西諸島などの強国には『小国のイカれた高揚政策』としか見てもらえなかったそうです」

敵兵「そりゃあなぁ……実際、当時の人にしたら勇者って何だよって話ですもんね」

勇者「当の勇者というのは……辺境のある貴族の子の一人。領民総出で出産が悦ばれたそうですが……
こうして今考えると都合のいい神輿……国威高揚の為のイケニエと言っても過言ではないでしょう」

敵兵「えげつねえ……」

勇者「十数年後の旅立ちこそ、それはそれは盛大だった。仲間を連れて、行く先々で持て囃された。
勇者一行が魔物を追い払ってくださる……事実、ガリアほどの辺境に生息する魔物などたかが知れています。
まだクマやジャッカル、キツネの方が危険なくらいだったと聞きます」

敵兵「ああ、何だかコミカルなモンスター君たちが浮かぶ……」

勇者「そんな勇者一行も、ガリア国境から一歩踏み出してから……大陸の現実を思い知らされる羽目になります。
蔓延する疫病、枯れ切った土壌、死体だけがなお残る村落……また、ここから徐々に本国の支援がおざなりになってきます。
当然です、一過性の高揚策の寿命などたかが知れている……自国から勇者が旅立ったという事実さえあれば十分ですから」

敵兵「うええ……」

勇者「勇者、魔術師、戦士、賢者。四人の旅路は、日を重ねるにつれて過酷なものになっていきました。
元々のガリア通貨の価格下落に加え、諸外国の戦時価格統制……ガリアから離れるに従い、路銀に困るようになってくるわけです」

敵兵「衣食住くらいは、本国がもってやってもいいんじゃあ……」

勇者「体面だけの金銭的支援は行われていたようですが……ガリアは当時、恐慌寸前のデフレに見舞われていました。
挙句、彼らの手に実際に渡るまでに中継地点である銀行機関によってピンハネされていたようですので……」

敵兵「サイフに入る額は……ガキの小遣い程度にしかならないってわけですか」

勇者「現存する手記にも、旅立ってから三ヶ月経たずに賢者どのが軽度の栄養失調で倒れたと記されています。
また、戦士どのが発熱した際にも自然回復を待っていた事から、現地の教会による支援も滞っていたと考えられます」

敵兵「……」

勇者「地獄の沙汰も金次第とはよく言ったものです。救世主と囃し立てたのは、ほんの最初だけだったわけです」

勇者「しかし妙です。ろくな支援も受けられない、小隊以下の四人組がなぜ鬼神……聖人たりえる存在となったのか」

敵兵「……そ、そうですね。昔の事だからって……魔法だかが本当にあったからとか、ですか?」

勇者「当たらずとも遠からず……でしょうか。勇者一行を構成するメンバーには、特別な資質があった。
それは、他の命を屠るたび際限なく身体能力が向上するという資質。資質というよりも……ライセンスと言いましょうか」

敵兵「ラ、ライセンス……!?」

勇者「こればかりは、ぼく達では説明のしようも……御しようもない現象です。
高次元の存在が勇者たちに与えたるライセンス……見えざるカミが介在した突然変異と称する者もいます」

敵兵「(ついてけねえ……)」

勇者「だからこそ、巨木のような大きさの魔族にも立ち向かって行けたのです。
だからこそ、極限状況にあっても尚、強靭な自我で窮地を耐える事が出来たのです」

敵兵「うへぇ」

勇者「仮想敵も同然の帝国や第一共和政の領内で生き延びる事ができたのは、その特質のお蔭でしょう。
前線へ進むに従って強力になっていく魔王の軍勢と渡り合う事ができたのも……」

敵兵「……」

勇者「やがてガリアから旅立って二年……ついに、デュランダルを携えた勇者は魔王を討ち取ります。
魔族の軍をたった数人で押しのけ、城塞すら陥落させるに至った一行は、ここから信仰される事となる……」

敵兵「はずですよね……?」

勇者「……当初は、前線の兵士たちの歓声を浴びる事が出来ました。それだけです。ただの、それだけ。
戦場から離れれば、勇者たちのような異物は魔族と変わりありません、そんな事は誰だって分かる事。
それでも、彼らは故郷であるガリアを目指した。白眼を向けられながら、険しい道のりを北上します」

敵兵「……」

勇者「その最中。立ち寄った帝国のとある都市で彼らは身柄を拘束され、ほうぼうに軟禁される事となります。
国教会の墨付きの判書を携えた憲兵によって、四人が再び出会う事が無いように……」

勇者「天使から授かり、ドワーフから託されたデュランダルすら、人々にとっては忌むべき魔剣でしかありません。
人の姿をした人外の恐怖は、ガリアの宣伝より円滑に……深々と蔓延していきました」

敵兵「救われねえ……」

勇者「それでは、ガリアはどうなったのか……おおよその予想はつきましょう、旅立ってから1年ほどでガリアは消えてなくなりました。
第一共和制と帝国に割かれ、独立はおろか現状維持すらままならなかった……小国の哀れな末路です。
王自ら粗悪銀貨の回収などしなければ、最悪の事態は避けられたとの声もあったようですが……後の祭りですね」

敵兵「」

勇者「さて、当の勇者はと言うと……結果的には、ガリアの想定していた筋書きにほど近い英雄譚が国教会によって広められました」

敵兵「それが、大陸に広まる現在の勇者像……」

勇者「亡国の英雄、大陸に覆う暗雲を祓い救世を為す……過剰なほどヒロイックな要素が封建国には受けたのでしょう。
帝国側がこの勇者を……勇者の血を欲しがりました」

敵兵「うわ……」

勇者「察しの通り……救世の英雄の血脈を巡って、諸国は魔族抜きでの緊張状態へ突入したわけです。
やがて、勇者たちも悟りはじめます。勇者という存在は、世界にとっての劇薬でしかない事を。
勇者がヒトの子に戻る事などできない、勇者は君臨する事しか許されないのです。武器なき世界では、覇王になるしかありません」

敵兵「」

勇者「……頭の中は、付け焼刃の知識しかなかったでしょうからね。勇者といえど……いわゆる『田舎者』なわけです。
国教会に持て囃される救世主というメッキをはがせば、一介の少年少女でしかありません」

敵兵「それじゃあ……もう……」

勇者「もう、飼い殺されるほか選択肢がない。血は薄まって行けども、戦禍は尚も広がり続ける……
中世期の戦乱は、勇者の血の争奪戦でもあったという事ですね……」

敵兵「あなたも、その遠い血族に……」

勇者「ぼくの家系を辿ると……幸か不幸か、ベルギガの貴族に行きつくようです。
比較的、帝国や北方に散った他の血族に比べて勇者の血は濃いようですけど……」

敵兵「(初代勇者は種馬ってわけかよ……)」

勇者「……ぼくがこうして魔族と共に歩んでいる理由も、そこにあります」

敵兵「魔族における革命の機会を与えた血脈だから……ですかね」

勇者「ええ。表沙汰にはなっていませんが、ぼくの暮らしていた片田舎では、魔王軍の部隊が長期間駐屯していましたしね」

敵兵「……」

勇者「出来る事なら……ぼくの故郷の風景が大陸全土に広まればいいと、そう考えています。出来る事ならね」

敵兵「その一歩が、魔王軍による啓蒙……」

勇者「もっとも、今は停滞していますがね。幸いにも、連合……帝国東部側とは穏便な関係が結べていますが」

敵兵「東部側……」

勇者「『勇者の血脈』においては、勇者本人のスペックが分散して広まっている……そう魔族は分析しています」

敵兵「スペックの分散……?」

勇者「識者の発表ですので、具体例などはあいまいなままにされていますがね。戦闘能力や、当事者の持つ影響力……
『聖人』としての勇者の持つチカラが、血縁にある人間には多かれ少なかれ備わっている、との事です」

敵兵「じゃあ……あなたなんか、本当に生き写しじゃあないですか。ドラグーンとも剣で渡り合う上に、カリスマだって!」

勇者「おだてても、何も出ませんよ。ぼく一人だけが勝ち星を挙げても、何の意味もありません」

敵兵「……でも、あの魔王がいるんだったら」

勇者「共に歩んで……その結果がこのザマです。いやはや、お恥ずかしい……」

敵兵「(6年前……6年前……あの6年前、あのクソ野郎……全部あいつのせいだ……!!)」

勇者「……」

勇者「恩人である、あなたにだけは言っておきます」

敵兵「は、はあ」

勇者「アジ・ダハーカ……あの女を殺さなければ、ぼくらに未来はありません。
ぼくは、あの女を殺します。何があろうと、何を言われようと、この方針を変える気はありません」

敵兵「……!!」

勇者「ふふ、聖人らしからぬ発言でしたか?」

敵兵「いや、そんな……」

勇者「魔王軍の主張と矛盾している……そう蔑まれても構わない、むしろぼくがそう後ろ指を指されるだけなら結構」

敵兵「う……」

勇者「矛盾……望むところだ。あの女を殺す為なら、ぼくは『飢えて』みせましょう。
あの女が何もかもを脱ぎ捨てて逃げる事ができるなら、ぼくはその首を叩き折れるほど近づく事ができなければならない」

敵兵「……」

勇者「6年前の二の舞には、絶対になりません。『優先順位』を手に入れたぼくに、敗北は許されない。
必ず、あの騎士を殺します。活かしていただいたあなたに誓って、ぼくは絶対に奴を、この大陸から消してみせる」

敵兵「」


敵兵「よろしくおねがいしまあああああああああああああああああああす!!!1!!!111」

幼女「うるさいのう!大声だすでない、クソガキ!」

敵兵「わ!!」

勇者「なに……!?」

幼女「ゆっくり美声を耳にまどろんでいたところを……だみ声を出すな、迷惑な奴!」

敵兵「(な、何……誰!? 誰この子!? 魔族!? すげえ可愛いけど……と、東洋人……!?)」

勇者「……」

幼女「ふん……『誰だ?』って聞きたそうな顔しても無駄じゃぞぉ、儂はおせっかい焼きじゃないからの」

勇者「どこから何をしにここへ来たのか、簡単に教えてはくれないかな」

敵兵「(すげえキモ座ってる……さすが勇者様)」

幼女「そのガキにの、髪の一本を潜り込ませて来ただけじゃ。なあんもする気はないぞお」

敵兵「か、髪の毛?」

勇者「……彼を尾けてきたというのか?」

敵兵「げえッ!?」

幼女「んー。どうじゃろなぁ、そうかもしれんなぁ」

敵兵「(ウソだろ…ウソだウソだウソだ、やめてくれ……やめろ……!!)」

幼女「オモチロイ顔するのう、土気色が緑色になったり、忙しい顔色だのう」

勇者「どうなんだい、場合によっては……」

料理長「……」

ゴブリン「……」

勇者「ぼくが相手をする事になるが」

料理長「イヨッ!!勇者さん!!」

ゴブリン「さっすが勇者さん!!」

幼女「物騒な小僧じゃ、美人が台無しじゃ。そう眉間に皺を寄せるでない。悶着を起こす気などないでな、もっと年寄は労われい」

敵兵「な、何なんだよ……お前は」

幼女「んふー、最も、貴様ら小僧どもと闘りあっても、少なくとも負ける気はせんでな」

勇者「……」

幼女「そこの童相手なら、割かし楽しめそうじゃなあ」

敵兵「(勘弁してください変な事しないでくださいやめてお願いします)」

幼女「怯えるでないぞぉ。脅かしすぎてしまったかの……心配せずとも、儂は嘘は言わん……言えんのじゃぞ、機嫌なおせ。な?」

敵兵「え……」

幼女「ほら、アメちゃんじゃ。舐めて機嫌治せ」

敵兵「……」

幼女「うむうむ! いい子じゃな、泣きやんだの! 強い男(おのこ)じゃな!」

勇者「何を……」

幼女「何じゃあ? 貴様もアメちゃん欲しいのか? 儂のアメちゃん欲しいのか? このイヤしんぼめ!」

幼女「だからそうやって睨まんでな。本当に単なる興味本位じゃて。魔王軍と勇者、誰だって見たいじゃろ?」

勇者「……ここへは入って来られたくなかったんだけどね」

幼女「何じゃあ? 壁に耳あり障子に目ありじゃぞ、隠し事なんかするものでない、何事も正直者が一番じゃ」

勇者「……」

幼女「カカカ……おすまし顔も綺麗なものじゃな! 西洋人は天狗のような顔ばかりと聞いていたが、可愛げがあるのう!」

敵兵「ば、幕府の……松山機構だかの奴か」

幼女「そいやァ、近々そんなのができたらしいのう。最近は丹波から出る事も少なかったもので、流行には疎いでな」

勇者「……本当に、目的は散歩……単なる散策……なのか?」

幼女「しつっこいのう。そうじゃと言うておろうに、疑り深いガキじゃのう」

敵兵「……」

勇者「出身はどこだ」

幼女「丹波国は伊吹のお山じゃ。だいたい儂はおるでな、茶くらいは出してやらんでもない」

勇者「名前は。真名が言えるか」

幼女「伊吹朱天の名で奉られておる。こーやって、いつもは御簾の奥で能面かぶっておるぞぉ」

敵兵「イブキシュテン……?」

勇者「本当に……ウソを言っていないのか……?」

勇者「名のある精霊なのか」

幼女「大陸人の指すセイレイが何かは分かりかねるが……帝の御前には常に控えさせていただいておるぞ」

勇者「他に随行している者は……」

幼女「儂がくっついてきただけじゃ。大獄と茨木にだけ諸国漫遊を満喫されるのもシャクだしの」

敵兵「オオタケに……イバラキ……!!」

勇者「……どういたしましたか」

敵兵「マジに……マジに、ウソを言ってない……ほ、本当に……極東の魔族……!!」

幼女「髪の一本でも媒介があれば、目にも耳にも鼻にもなる。ちょいと貴様には運び役になってもらっただけじゃ、他意などない。
あじだはーかに報告する気もないでな、好きにするとよいぞ」

敵兵「まじでかやったー」

勇者「……」

幼女「姑息なマネなどせずでも、喧嘩で負ける気などせんしのう。ま、喧嘩すると決まったわけではないが」

勇者「ここで切り伏せたとて、本体にはなんのダメージもないと?」

幼女「クカカ……江戸っ子のようにカッカするでない、小僧。こちとら毛一本とて、童なんぞに勝ちはくれてやらんぞ?」

勇者「試してみるか? ヴォーパル鋼について、知らないわけではあるまいに」

幼女「うんにゃ、わざわざ持ってこさせるのも煩わしいしのう。またの機会にお願いしたい。それよか……」

勇者「……?」

幼女「もっとその童貞に話はせんのか? 目覚ましついでに儂も聞いていってやろう」

敵兵「……」

幼女「そうじゃな……たとえば、来年の連盟会議に向けての活動とかが望ましいんじゃが」

敵兵「や、やっぱりあのクズと内通してんじゃ……!!」

幼女「知的好奇心じゃ。ひねくれたガキじゃな、何度も言わせるでない」

敵兵「(ガキって……こいつ何歳だよ……)」

勇者「得体の知れない者相手に、そういった案件をべらべら喋れるほど無神経じゃない」

幼女「ケツの穴が小さいのう。旧帝国領土の量り売り……その中で上手い事売り込んで回りますよ、
そう言えば済む事じゃろ。ちいとばかし細かい事を肉付けしてくれりゃあいい」

勇者「……」

幼女「貴様らが担いでる魔王とやらが傀儡なのは、後発の儂でもわかるくらいじゃぞ?
実質的に動いているのは頭取じゃあない……そんな事は百も承知じゃ」

勇者「それで結構。彼女は居てくれるだけで価値がある。彼女が居るだけで、ぼく達は戦う事ができる」

幼女「素敵な心がけじゃの。感動的じゃの。だが無意味じゃけぇのう」

勇者「……」

幼女「虚言に含みを持たせたとて、そんなものが実へ昇華する由もない。正直が一番だと言った筈じゃぞ。
虚構と虚勢が張り巡らされた貴様の主張……本当に悲願がかなうものかのう」

勇者「なに……?」

幼女「小童がわかったような事ばかり並べよって、虫唾が走るわ。なぁにが優先順位かね、片腹痛いわ。
たかだか盥の湯に生れ落ちて十数年のひよっ子が、他人様を騙しとおせるウソなんぞつけるものかよ。
無駄に力だけを蓄えた、頭でっかちのクソガキが、自分が井の中の蛙と気づくのにはあと何百年必要かね」

敵兵「(あーこれあれだわ、どっかの誰かと同じように口喧嘩しちゃいけないパターンだわ)」

幼女「ウソは嫌いじゃ。情報の伝達を妨げる忌み深き業じゃ。今生の理になんの益ももたらさぬ」

勇者「どうかな」

幼女「もたらすものかい。開戦が遅れでもしたらどう責任を取るつもりじゃ」

敵兵「……は?」

幼女「情報伝達の齟齬で、楽しみにしておる真打が遅れては困るでな。余興は余興でサッサと終わらせてくれんと」

敵兵「開戦って……何ですかね」

勇者「この女……コイツの言葉に耳を貸してはいけません」

幼女「儂は鬼じゃぞ? 戦乱を、戦争を、戦禍を、人の世の災いを楽しみにして何が悪い、何がおかしい?」

勇者「……ここで全部聞いたら、楽しみがなくなるぞ。いいのか」

幼女「……んふー? それも、そうじゃなぁ……ん? そうか? そうなのか?」

敵兵「(頭いいんだか悪いんだかわかんねえな……)」

幼女「んふー……うんにゃあ、やっぱり待ちきれんのう。勇者とやらの血脈がどうなるか、それだけは本当に楽しみじゃあ」

敵兵「血脈……?」

幼女「んふふwwwwwwwwwwwwwwwwwクカカカカwwwwwwwwwwwwww」

敵兵「……」

敵兵「ああ……ベッドも布団もフッカフカだあ……」

敵兵「身体が臭くない……石鹸のにおいがする……」

敵兵「あったけえ……」


敵兵「……けど、寝れないな」

敵兵「あの……イブキシュテンだとかいう奴が言ってた……」

敵兵「勇者の血脈がどうとか……どういう事なんだよ……」

敵兵「……」


敵兵「……確か……勇者の血脈を巡っての争いもあったって言ってたな……」

敵兵「帝国が一番に勇者のチカラを欲しがって……」

敵兵「ドが付くほどの封建国家の帝国が、勇者の血を……」

敵兵「貴族かどこかが、勇者の血……を……」



『そもそもお前ら一体何者なんだよ……お前みたいなのが少佐相当官だったり……』

『お分かりの通り、貴族様だ。崇めろ』

『私の家系はいわゆる譜代、中央議会と各軍幕僚に対し優越権を有している由緒ある貴族だ。
地方部の公安活動は、我々と情報部、その下の警察で真面目に頑張ってきたんだからな』

『情報部が警察活動に足を突っ込んでるのはお察しの通り、組織的・結社活動を封殺する事にある。領地にお前らを呼び寄せたかなかったからな』



敵兵「」

敵兵「いやwwwwwwwそれはねーよwwwwwwwwwwまさかなwwwwwwwww」

敵兵「まさかなwwwwwwwwwwwwwまさかな……」

敵兵「……」

アスモデウス「グレンデル王がやられたようだな」

ティタニア「あのヤリチン、性欲で言えばアテクシたちの中では最強……」

ジャヒー「人間風情にやられるとは、我ら魔族の面汚しよ」

レギンレイヴ「ウッソまじー? まじご冥福ー」

デュラハン「口を開けば『俺の首をカッ切ってみろ』とか抜かしてた、あのグレンデル王が……」

ケルベルス「バカだからな」

レギンレイヴ「巨人なんかがアタシ達のリネージに所属してる時点で胡散臭かったしィー、アタシらからすればせいせいしたっつぅかァ」

セベク「……」

敵兵「(何この人たち怖い)」

セベク「命の生き死にを茶化すものでない、貴様とて死神ワルキューレの一柱だろうに」

レギンレイヴ「なンだぁ、ドラグーンどものワニ革サイフがアタシに話しかけてんじゃねーぞ。今のアタシに言ったんだよなあ?」

セベク「……ゲス女が。北部神族の威光もここまで落ちたか」

レギンレイヴ「お、やんのか? やんのかクソワニ、まじで皮剥いで東洋の土人どもに叩き売んぞ?」

ティタニア「ケンカはやめてぇ~wwwww二人を止めてぇ~wwwwwwwwww」

ケルベルス「ほっとけ、バカどもだ」

敵兵「(濃いなぁ……)」

勇者「(……どうしました、傍聴席はまだ空いていますよ)」

敵兵「(ここ、この人……人達も、魔王軍の……)」

勇者「(正確には、先々代の魔王を中心に構築された共同体に所属する氏族の代表……言うなれば、魔界の有力者たちでしょう)」

敵兵「(すげえプレッシャーなんですけど……頭がワニだったり……でけえ犬そのまんまだったりも……)」

勇者「(鰐頭の彼は……北西諸島の侵略により植民地化の危機にある、『申命の園』のセベク。
そして、あの白銀の巨大な犬の彼はケルベルス。ケンタウリに属さない有脊椎動物の長、その秘書官)」

敵兵「(……じゃあ、あのスッゲーガラの悪い女性二人は)」

勇者「(『妖精』……身の丈50㎝に満たぬ彼女ティタニアは、『エルフよりもカミの側に傾いた』存在である妖精の女帝)」

敵兵「(あの……身なりはしっかりしてるのに、めちゃ口悪い美人は……?)」

勇者「(レギンレイヴ……流氷の地、現在の北方半島の地に属する神族の使い走りです。
国教会の布教以前の影響力は、現在の魔王の血脈に勝るとも劣らぬものであったと聞きます)」

敵兵「(クビがトんでるのもいますが……)」

勇者「(デュラハン。実体を持たぬが故、主に被造物に憑依して活動する……まあ、ゴーストともエーテルとも呼称されます)」

敵兵「(ついに幽霊まで出て来ちゃったかー、そうだよなー、ここ魔王軍のド真ん中だもんなー)」


ティタニア「勇者様? 召集の理由は、やっぱりあのグレンデルの長の殺害……さしずめ、その犯人探しと言ったところなのかしら?」

勇者「……さてね」

ケルベルス「犯人探し、なあ」

敵兵「(ちょっと待って、誰が誰だかまだよくわかんないですけど)」

勇者「(大丈夫、なんとなく聞き流していればいいですから)」

敵兵「(ふぇぇ)」

ティタニア「(グレンデル……大陸の巨人族を統べる血族の頂点に君臨する王(アウルゲルミル)……)」

レギンレイヴ「ンなもん決まってんじゃん、あのバカどもついに革命やりゃあがったんだ。くそ人間のマネでもしたんだよ」

デュラハン「革命……?」

ケルベルス「貴様のように一概に革命などと決めつける気もないが……
あの巨人の王を討つとなると、生半可な手段では返り討ちにされるのが落ち。となれば、巨人どもの中に内部犯がいるとも考えられるか」

レギンレイヴ「図体の割に脳みそちっせーから、王様の死体もその辺に転がすだけだったとか……巨人ってなほんと惨めな頭してるわよねえ!」

セベク「何にせよ、穏やかではないな。6年前の氏族合意からの共存公約、それに反発する者の犯行か……」

ティタニア「(その線も考えられなくもない……オーガ・トロール・グレンデル族の全体的な思想形態は『反体制』……
基本的に、魔王軍の意向や連合の融和姿勢に対し強気に好戦を匂わせる主戦派……)」

レギンレイヴ「いいんじゃないのぉ? でけぇうぜぇくせぇの三拍子揃ったクソ巨人いなくなってさァ。
代表会談に誰も差し向けやしねえ、どうしょもない部族だわね。いっその事、魔王サマも軍門から外しちまいや……」

デュラハン「いけません。人魔共栄を前に、どうしてそんな事ができましょうか……」

ケルベルス「……たかがワルキューレが、随分偉くなったものだなあ。このクソアマ、胸糞悪ィから黙れよ」

レギンレイヴ「クク……」

ティタニア「(北部神族……オーディン王が公の場に姿を現したのも数百年前……
お使いに参上するのがこんな小娘では、協調において彼らを当てにするのも期待できないか)」

敵兵「……」

勇者「(とりあえずは……魔王軍、いわゆる魔族は多種多様のクランによって構成されている事は……
まあ、何となくは把握できると思う。この場に集った彼らは、魔王軍の中でも大規模な氏族集団、そのトップに君臨する者達だ)」

敵兵「(まさしく各国首脳会議……ですかね)」

勇者「(ぼく達人間とさして変わらないでしょう)」

敵兵「(一枚岩じゃない所まで変わらないってか……)」

勇者「(正式氏族〈オフィシャルクラン>は『妖精族』『巨人族』『幻獣族』『申命の園』『北部神族』『モルダヴィアの墓標』
そして魔王の属するリネージである『拝火』が存在する……ああ、覚えなくていいですよ、楽にしていいです)」

敵兵「(はあ)」

勇者「(その中でも、殺害されたグレンデル王の統べる巨人族や北部神族は保守派……
旧魔王軍のプライドを捨てきれずにいる主戦派として活動していました。すなわち……ぼくやあなたを憎く思っている派閥ですね)」

敵兵「(それじゃあ、他の派閥は……)」

勇者「(魔王支持者……とは、一概には断ずることはできません。『モルダヴィア』や『幻獣族』は現在の方針を迎合していますが、
例えば幻獣族などは北部神族と共に、国教会によって排斥、零落させされた過去を持つ事から……)」

敵兵「(えっと……とにかく、全集団仲良しってわけじゃあないんですね)」

勇者「(……はい。特に、巨人族がこうしたショッキングな案件で取りざたされる事は……少し、まずいかもしれませんね)」

敵兵「(……)」

勇者「(かつての勇者による『叡智の教義』がもたらされた事で、魔物に理性が芽生えた。大陸フォークロアのどこにでも存在するストーリーです。
当時の『魔物』とは、それはもうピンからキリ。猿人やケンタウリを凌駕する頭脳を持つ者もいれば、
家畜以下……生殖本能のみで活動したり、または生理現象で人間を捕食する植物までも魔物にカウントされていました)」

敵兵「(ふむ……)」

勇者「(巨人族や北部神族、妖精族などは、言うなれば『ピン』。コミュニティを構築し、他族間との交流によって繁栄していく事のできる種族)」

敵兵「(もしかして、人間と交配できるか否か……なんて事は)」

勇者「(対して、死霊や幻獣の場合は純然たる『魔物』と言ってもいい。コミュニケーションすらとれなかった彼らを、
勇者は同じテーブルに着かせる事に成功した。これが『魔物』を『魔族』に昇華させた、革命と呼ばれる所以だ)」

敵兵「(スルーですか……さいですか)」

勇者「(さて、そこでちょっぴり軋轢が生じる。今まで格下に見ていた死霊や獣が、対等に言葉を理解するようになった。
数百年前の昔話、それだけならまだしも、更に現代の魔王ときたら近代化政策に人権確立を掲げて動き始めたではないか)」

敵兵「(……)」

勇者「(面白くないのは、先ほどの『ピン』部族のどれか……そう、巨人族が保守体制を強め始めた)」

敵兵「(うわぁ……)」

勇者「(帝国や北方共同体でのケンタウリによる権利回復運動などによって、形態が猿人に酷似しているオーガなどが
そのままクランを抜けて帰化していくケースが増加してきた。王やその側近たちは、こうした状況を押さえつける為に、協調に反対していたのだと思われます)」

敵兵「(それじゃあ、巨人のグレンデルの王様が殺されたっていうのは……)」

勇者「(かなり端折って説明いたしましたが……諸々の状況から推察して、ぼくは内部分裂説を支持します)」

敵兵「(……やっぱりかぁ)」

ティタニア「あらあらあらあらぁ、勇者様。魔王サマがいらっしゃる前からヒソヒソ? アテクシも混ぜてえ」

勇者「大した事じゃあない、彼に状況をかみ砕いて話していただけだ」

敵兵「(ち、ちっせえ……妖精、まじもんの妖精だ……!〉」

ティタニア「あらぁ、ごきげんよう。仲良くしてくださいまし」

敵兵「ど、どうも」

ティタニア「ねーえ、アナタはどう思われますぅ? カワイソーな王様の事」

敵兵「え、あ、オレ?」

ティタニア「はあい。あのグレンデル王、やっぱりヤったのは自分が治める種族のうちの誰かかしら?」

敵兵「い、いや……オレなんかは、まだまだ疎いんで。でもやっぱり、聞いた話から考えるとやっぱり……」

ティタニア「ふうん……そう、そっかあ。じゃあやっぱり悲惨だわねえ、アテクシだったら泣いちゃうわあ」

敵兵「(チョロチョロちかちかして鬱陶しいな……目が……)」



ティタニア「(そっかそっか……彼に情報を伝えた『勇者』は、そう伝えたわけだ)」

勇者「……」

ティタニア「(時代遅れの脳筋種族……アテクシからすれば、魔王軍の膿……癌……足枷……
旧魔王軍時代の功績を振りかざし、無所属の魔族を煽って足並みを乱れさせる……)」

ティタニア「(とはいえ、北方共同体のオーガとの繋がりはバカにできたものではない……
表立って批判するには要素が今一つ足りない上、どの陣営にとってもリスクに見合わない……)」

ティタニア「(東西戦争停戦の際、魔王軍もまたテロの件を揉み消すために、不可侵の意を国際的に明示した。
恣意的な手の施された、明らかなるカピチュレーション……国際社会に魔王ありと主張するには、受け入れざるを得ない条約をも許容した)」

ティタニア「(この連合への形式的勝利……共同体の反連合意識もあり、巨人族内で反クラン・リネージ気風が高まっていた、
今回の事件もその延長……そう、そう考える事もできよう。そう片づけるのが妥当……)」

ティタニア「(だが……)」


ティタニア「本当にそうだと思いますかぁ? どうなんですかねぇ」

勇者「ぼくも、早急に犯人が確保されるのを願っているよ」

ティタニア「それはアテクシも同感にございますが……」

勇者「……」

ティタニア「(アテクシがイの一番に疑ったのは……アナタの事なんですよねェ、勇者様)」

第7部 帝国奪還編 序

                ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                 d⌒) ./| _ノ  __ノ 

第7部 帝国奪還編 破へ

                                       ー- 、 ー-、``/  
                                      _, '  ._, '  \  
                                    -------------------
                                     制作・著作 NHK

勇者「連合との、いわば窓口となっているあなたに聞きたい」

姪「……」

勇者「アジ・ダハーカの正体、彼女をどう思うか……」

姪「こいつはどういった趣向だね、ええ?」

アラクネー「ふええ」

将軍乙「……」

姪「あばずれの有力な情報を掴んだと聞いて来てみれば……私もなめられたものだな」

将軍乙「確かな筋からの情報よ。現にあの女の下から救出された彼から……」

敵兵「……」

姪「鵜呑みにするものかね。そんな所から湧き出た手掛かりで身内を……自分の叔母を疑えと言うのか?」

敵兵「物的な証拠はない、しかしあの女をオレは、一度は捕らえた!その時の調書だって……」

姪「図に乗るなよ、東方人の分際で。そもそも、貴様のように出自のおぼつかない人間が何故ここにいる」

将軍乙「熱くなりすぎよ。私達との協調を持ちかけたのは貴女の方、少しばかり落ち着いてくれないかしら」

姪「アジ・ダハーカの始末は急務だが、素性のわからん不安要素を抱え込む気はない。おまけに茶番に付き合わされては……」

敵兵「(言っちゃ失礼だけど、どことなく似てるかもしれねえ……)」

姪「……」

敵兵「(やっぱり、身内って事が引っかかるのか……)」

姪「ふん、よかろう。ならば裏付けを取る、そこのみすぼらしい男なんぞに、我が血統を疑われては困るからな」

敵兵「はあ……」

姪「万一、叔母様がアジ・ダハーカだった場合……そうだな。その場で殺しても構わんのだろ?」

敵兵「」

将軍乙「待って。彼女は生かして拘束するべきだわ、まだエルフどもと繋がりがあるなら……」

姪「なら、邪魔をするエルフはまとめて殺してしまえばいい。彼奴らほど胡散臭い俗物もおるまいに」

将軍乙「殺すって……あなた、エルフは連合や東帝の……」

姪「悪には罰が必要だ。アジ・ダハーカや、エルフが仮に奴に与していたのなら、悪と呼ぶほかない。
遅かれ早かれ、奴らには罰が下される。魔王サマも、平静を繕ってはいるがそのつもりだろ?」

勇者「……わかった。ぼくから常任理事には伝えておく」

将軍乙「ちょ……勇者くん!」

勇者「ただし、君の中での確証が掴めたら……ぼくに直接知らせてほしい」

姪「あなたにか?」

勇者「ああ。約束してほしい、君の邪魔になるような事はしない。彼女に誓って」

姪「……とんだ魔王シンパの勇者サマだな。不愉快だ」

勇者「彼女ほど、今の世界に憂いている人はいない。ぼくは、彼女の希望に全てを賭けたんだ」

姪「とんでもない博打だな。奇妙なものだ、魔王軍とやらは。へどが出る」

敵兵「(間違いねえ……やっぱこの人、あのクソ女の遠縁だ……)」

敵兵「フォァーーー、自由だぁぁぁぁ、自由って素晴らしい!! 陽の光がこんなに心地よい!!」

ティタニア「あれまあ、お元気です事。曇り空でこんなに元気になってしまわれるなんて、どんな生活をしてきたのでしょう」

敵兵「空気がおいしい!おいしい!!」

ティタニア「煤塵と下水の腐臭がどことなーく漂う、気持ちのいいこの空気!」

敵兵「……」

ティタニア「散歩歩けば浮浪者にぶちあたる……あら、どうかいたしましたか、少尉どの。アテクシ何か言いましたか?」

敵兵「……沈んだ気分がもっと沈むからやめていただきたいです」

ティタニア「あらぁ、ゴメンあそばせ少尉どの」

敵兵「ち、中尉です……

ティタニア「あらぁ、そうだったかしらぁ。でも、正直なんでも良かったでしょ? ようやっとマトモな職にありつけたんだから」

敵兵「(まさか、魔王軍の下っ端になっちまうとは夢にも思わなかった……)」

ティタニア「一応は志願兵の立場ではあるけど……アテクシとその護衛が直々に監視についてやっているのです、謹んでお散歩なさいな」

敵兵「はい!! ありがたき幸せにございます!!」

ティタニア「そうでしょう、ありがたいでしょう!」

敵兵「自由時間が日に三度もあるだなんて幸せだ!!生きてて良かった!!もう食事に見た事ない植物が混じってる何て事も無い!!
ベッドもフカフカ!!給料も出るし部屋もある!!魔王軍は最高です!!」

ティタニア「」

ブラウニー「やだ……ブラックからいらした人だわ」

ピクシー「恐ろしや……まだ洗脳が抜けきってないのね」

敵兵「せ、洗脳されてないです……平気です、大丈夫ですから」

ティタニア「アテクシの部下に妙な毒電波撒かないでくださません?」

ブラウニー「きっと泣いたり笑ったりできなくされるのよ……」

ピクシー「両生類のクソをかき集めた価値しかなくなってしまうのよ……」

敵兵「ひどい言われようァ!!」

ティタニア「ほほほ! 仲のよろしい事で!」

ティタニア「そういえば……あなた、アジ・ダハーカの戦力としても使われたんですってね?」

敵兵「え、ええ……まあ……」

ティタニア「少しは見覚え、あるんでなくて? この西帝の雰囲気」

敵兵「(以前、幕府のどうぶつ奇想天外と一緒に奇襲をかけた土地……か)」

ティタニア「アテクシ、南に足を延ばしていたからその場には居なかったのだけれど……
どこぞのお馬鹿が、有毒ガスをドワーフの居住地を中心に散布しただとか」

敵兵「……オレも、その件については知りませんでした。そんな劇薬を手札として持っているなら、
わざわざ連合の庁舎や魔王軍に正面切って挑まないでしょうし」

ティタニア「公式発表では、かなり表現がぼかされていたわねぇ……付近の工場で行われた、ちょっとしたミスだとか」

敵兵「……」

ティタニア「……しかし、向こうの東側では少しだけ事情が違う。
西側と違って、北西諸島や共和国の介入を匂わせる表現を記す新聞社がぽつぽつ存在している」

敵兵「それって……!?」

ティタニア「連合からの思想流入が、いよいよ顕著になってきているって事じゃあないかしらぁ?
来年の連盟会議、連合もぼつぼつ本気で帝国の片一方をブン取る腹積もりなのかもしれないわねぇ」

敵兵「……複雑な気分です」

ティタニア「そりゃあねえ、祖国だものねえ。
ほら、鉄条網とコンクリの壁を登ればすぐ祖国の兵隊さんがいらっしゃるわ。乗り越えた途端に蜂の巣でしょうが」

敵兵「……」

ティタニア「地に足ついた生物にとっての鉄条網っていうのは、それは効果的でしょうねぇ
帝国陥落から数年もしないで、連合や北西のあらゆる施設の周囲……または国境線上に張り巡らされましたもの」

敵兵「……民衆の心理に与える影響も小さくないでしょうからね」

ティタニア「コストパフォーマンスも高いうえ、ひと工夫すれば帝国主力戦車もこれで足止めができちゃう……
残党軍がうかつに決起もできないのは、これと駐留している北西諸島や連合の目が光っているからだわね」

敵兵「……」

ティタニア「だからこそ……先のドラグーンを用いた電撃戦には致命的に弱かった。
収容所やゲットーという被差別区域を明確にする事には重宝したけれど、連合側は対ドラグーン戦術を未だに打ち出せていない……」

敵兵「(あのお爺ちゃんや騎士ども……そこまで見据えてドラグーンの育成をしてたってのか……?)」

ティタニア「本国からの査察や常備軍拡充が行われている最中だけど、軍備が整うのは再来月……連合ったら仕事が遅いったらないわぁ」

敵兵「モタモタしてると、またドラグーン部隊が……」

ティタニア「承知しているわぁ。アテクシ達やモルダヴィアの首なしどもは、あなたの警告に耳を傾けたけれど……
でも、北西諸島に手綱を握られている申命の園や幻獣はどうかしらねぇ……」

敵兵「やっぱり、巨人の王様が殺された事が……」

ティタニア「どこの誰がやったかは知らないけど……アテクシ達オフィシャルクランっていうのは、規模が大きくなるにつれて臆病になるものなのよぉ。
おおかた例外なく、慎重になりすぎる……今回の場合、代理人でなく首長本人が殺られちゃあ、警戒もするってものよぉ」

敵兵「……」

ティタニア「もっとも、ハナっから手を貸す気のない連中もいるんだけどねぇ……」

ティタニア「おまけに、食料を始めとする各種支援は東西同士のプライドのおかげで滞っちゃう始末。
結構な額の投資をした筈なんだけど、周りを見ればご覧の有様。かつての帝国の栄華はどこへやらよねぇ」

敵兵「中央から少しでも外れると、こうも荒れてしまうか……」

ティタニア「帝都の周りは、貴族や領主がメッタメタに暴れ回った土地ばっかりだから、それが停戦を機に更に悪化。
賠償金支払いも相まって、そのツケは全部国民に。悲惨なものねえ。頭がすげ替わっても、そう簡単には変わらないもんね」

敵兵「治安も……もはや最低と言ってもいい状況かあ」

ティタニア「皇族への信仰心が根強く残っている地域もあってか、東西間の亡命も一時期は盛んだったわねぇ。
壁を乗り越えて、敬愛する皇帝陛下や皇女殿下の軟禁されている地へ。もしくは、共和国への帰化か……」

敵兵「何も変わってないのかなぁ……オレ達が攻め込んだ時と……」

ティタニア「……さあ、ンな事は住んでる当人達しかわかんない事よぉ。アテクシ達が分かる筈もない」

敵兵「……」

ティタニア「ほら、見なさいな。あの人の列。あらあら、今日は随分盛況なのねえ」

敵兵「はい?」

ティタニア「アテクシ達が連合に掛け合って許可させた努力のたまものでしてよ。御覧なさい、立ちあがった民衆を!」

敵兵「あれは……デモ隊の行進かな。なるほど、ああしてメインストリートや列の横に魔王軍の人材を並べておけば……
平たく言えば、恩を売れると同時に、魔族への抵抗も緩和できるって所か」

ティタニア「毎月一度、税率や通行規制緩和、配給の質の向上……権利回復を求めるデモが行われているわぁ」

敵兵「……」

ティタニア「あらぁ……浮かない顔ねえ」

敵兵「いや、その……危なくないのかなって。エスカレートして暴力沙汰になったら本末転倒じゃないかな、と」

ティタニア「確かに、どこからか湧いてきたダークエルフの違法デモ隊だかと衝突するケースも過去に数回起こったけれど……
今の所、人死にが出るような事は皆無よぉ。アテクシ達がかなり人手を割いているってのも理由だろうけど」

敵兵「……たとえば、ワザと魔族の警備にケンカを売って、傷害沙汰に発展させるとか」

ティタニア「はあ?」

敵兵「それで、デモ隊と警備が衝突……とにかく際限なく暴力が広がって……」

ティタニア「あなた、本当に大丈夫……? どこのキ印がそんな無意味な事をするって言うのかしら。
アテクシ達、少なくとも帝国領内ではケンカ売られるような事は……そうね、アテクシ達やモルダヴィアはしてないわぁ」

敵兵「は、ははは。そう、そうですよねえ。考えすぎですよねえ。そんな無意味に憎悪の撒き散らすアホはいないですよねえ……」

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『な、何ぁんだァァァーッ、今の音はァァーッ!!』

敵兵「」

『じゅ、銃声だァァーッ!!誰が撃たれたァァーッ!?』

『ああああーッ、お、おれっちの、ダチが動かねええええーッ!!しっかりしろォォーッ』

敵兵「」

『医者だ医者ッ、医者を呼べェェーッ!!』

『おいッ、後ろの方は何騒いでんだ?』

ティタニア「ちょっと……何よ……」

『誰かがオレ達を狙っているゥゥーッ!!』

『伏せろォーッ!!殺されるぞォォ!!』

ティタニア「……行くわよ、あなたもついてらっしゃいな」

敵兵「」

ブラウニー「まずいですよピクシーちゃん、今回もまたデモ派閥同士の事件かしら」

ピクシー「まったくダークエルフの連中ったら……自分達の都合のいい事しか主張しないんですから」

ティタニア「(ち……ただでさえガス流出事件でピリピリしているこの時期に……!!)」

オーク騎兵「落ち着けッ、落ち着くんだッ!!」

ゴブリン騎兵「ち、ちくしょう……どこのバカだ!? 火薬かなんかのイタズラじゃあねえのかッ!?」

ゴーストアーマー「参加者の所持品検査を行った責任者はどいつだ、リストを持って来させろッ!!」

オーク騎兵「は!」


ティタニア「回を重ねる毎に参加人数を増やしていくデモ隊……今回では、ここ以外の場所含め5万人はくだらない……」

ピクシー「ふぁっく!! 本当に銃声だったの?」

ブラウニー「ミセス・ティタニア! 我々はオーク警備兵と共に周辺のアパートメント等の警戒にあたります!」

ティタニア「了解。今日は厄日だわぁ!!」

敵兵「……」

ティタニア「あなたも、そんな変な顔色してないでぇ!」

『ここから出せェェーッ!!』

『殺されるゥゥーッ!! 列の中にいたら殺されちまうゥゥーッ!!』

『誰が撃ったんだ!? 何が起こっているッ』

ティタニア「列が乱れる……この人数を、何とかして統制しなくてはッ……!」

     ,.へ. ,.--、ノL
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『ギャアアアーッ!!』

『ま、まただァーッ!! 二人目だァーッ!!』

オーク騎兵「こ、こらッ!!やめろッ、大人しくするんだッ!!いま、何が起こっているか捜査を……」

『うるせェェーッ、魔王軍の豚野郎が調子こいてんじゃあねーぞッ!!』

『状況見てもの話せよこの野郎ッ!!』

ゴーストアーマー「痛い、あ痛、いたい、あいて!」

敵兵「(やっぱりだ……明確な利益になるようなモノを与えなきゃあ、これだけ多くの人間の心なんか動かせない……)」

『くそ魔族がよォー! オメェらちゃんと警備してたのかよォーッ!!』

敵兵「(デモ行進の権利……西側の共和政庁からそれを勝ち取ったのは確かに帝国民にとってプラス……しかし……!)」


      / ̄ ̄\ 
    /   _ノ  \  <落ち着けって! 不安なのは彼らの方なんだぜ? とにかくオレ達は上の指示を待つしかねえ……
    | u   ( ●)(●)   ____
.    |     (__人__)  /:::::::::  u\
     |     ` ⌒´ノ/ノ└ \,三_ノ\    ,∩__
.     |        /::::::⌒( ●)三(●)\ fつuu <ちくしょう!オレ達がどんだけ苦労して警備してると思ってるんだお!!
.     ヽ       |:::::::::::::::::⌒(__人__)⌒ |  |   |
      ヽ      \::::::::::   ` ⌒´   ,/ _ |   |
    /  ̄\   /⌒ .ヽ          i    丿
    |  ヽ、 \/   /(⌒)       ξ) ̄ ̄´
        \ ./   / /         |





   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |   ( ●)(●)  <ちゃあんと職務をまっとうしていりゃあ、悪い事も起きやしねえよ。落ち着こうぜ

. |     (__人__)____
  |     ` ⌒/ ─' 'ー\
.  |       /( ○)  (○)\
.  ヽ     /  ⌒(n_人__)⌒ \
   ヽ   |、    (  ヨ    | 
   /    `ー─-  厂   /
   |   、 _   __,,/     \






   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |   ( ●)(●)

. |     (__人__)____
  |     ` ⌒/     \ 
.  |       /( ○)  (○)\
.  ヽ     /  ⌒(n_人__)⌒ \  
   ヽ   |、    (  ヨ    |
   /    `ー─-  厂   /
   |   、 _   __,,/,     \ ドス
    |    /   ̄   i;;三三ラ´ |
    |    |   |    ・i;j:   |  |

ゴブリン騎兵「上からの指示はまだかよ……応援が必要だぜこりゃあ。なあ相棒……」

オーク騎兵「」

ゴブリン騎兵「相……相棒!? おい、どうした相棒……相棒ォ!!」

ゴーストアーマー「何してるッ、これ以上刺激するんじゃあない!!」

ゴブリン騎兵「う、動かねえ! 息してねェんだよ、血も出てる! さ、さ、刺されたらしいんだよォ!!」

ゴーストアーマー「バカな!?」

ティタニア「……今は列の統制に専念なさい、狼藉者の捜索はアテクシ達が請け負います」

ゴーストアーマー「ミ、ミセス・ティタニア。しかし……!」

ティタニア「オフィシャルクランの代理人の言う事が聞けなくて? 早くなさいな、お役所仕事では、大人しくなるものもなりませんよ」

ゴーストアーマー「はっ……!」



敵兵「つ、次は空から来ます……十中八九、ドラグーンが来ますよ!!」

ティタニア「こんな時に何を言っているの!? あなたも鎮圧に参加なさい!」

敵兵「こ、これだけじゃあ多分終わらないですよ!! 」

ティタニア「こちとらが対空防御を講じるには手続きが必要なの! 二人以上の現地領主と……
それに加えて、暫定政府の許可が必要なのよぉ! 少なくとも、アテクシの一存じゃあ軍の飛行戦力は出せないわ!」

敵兵「そ、そんな……」

ティタニア「コッソリ出すってわけにも行かないでしょう、一騎か二騎じゃ、あなた満足しないって顔してるわぁ!!」

敵兵「ち、ちきしょう……!!」

チビ将校「これは……な、何の騒ぎかね」

デブ富豪「おお、恐ろしい……恐ろしすぎてお小水をしてしまいそうだ」

ハゲ文官「何が起きているのか、わかってはいないのか!?」

姪「落ち着いてくださいまし。御心配には及びません、皆さまがこの場に居る限り、われわれ情報部が安全を保証いたします」

姉「……無茶はしないでねぇ、お母さんはあなたが心配よぉ」

姪「……」

チビ将校「そうだ、キミもこの庁舎に残っていなさい。肉親を一人にしては危険ではないのか」

姪「出来る事ならばそうしたいのですが……私も出なければならないでしょう。母上、それでは」

姉「……」

姪「大佐。北西諸島の駐留部隊へのドラグーン使用許可は……」

チビ将校「ああ、その事なんだが……申し訳ないが、もう暫く見送りとなってしまったのだよ」

姪「……」

ハゲ文官「住宅区域上空を飛ばれると騒音がうるさいだとか、糞を撒き散らされちゃ困るだとか……
議会じゃあクレームの嵐でねえ。君のいう事は通してやりたかったんだが、いやぁすまないすまない」

デブ富豪「もう少し、キミが媚びた格好で現れてくれれば、飛べるようにはなるかもしれませんがなあwwwwww」

姪「いや、残念。それでは、私なりに足を使って仕事をするとしましょうか」

チビ将校「本当にすまないなあ。連合からお叱りを受けたら、就職の斡旋くらいはさせていただくよ」

デブ富豪「剣じゃあなく腰を振る職場だがなあwwwwwwwwwww」

姪「それはありがたい。いよいよ跡が無くなれば、頼らせていただきますれば……」

姪「……」

アラクネー「(うう……こわい……)」

将軍乙「デモの進行順路は、さっき教えた通りよ。口頭で申し訳ないのだけど……」

姪「問題ない。帝国中央の地図はすべて頭に入っている。デモ行進も然りだ」

将軍乙「なら、いいのだけれど。あなた、大丈夫なの?」

アラクネー「(すげー機嫌悪そう……)」

姪「何も。別に何も変わらない、罰を与えるべき者が増えるのは、日常茶飯事だ」

将軍乙「……そう」

姪「それよりも、今我々がすべきは銃撃犯の確保だ。情報部の人間を出す、必ず捕まえる」

将軍乙「ええ。幻獣族の支援も受けられるよう手を回すわ」

姪「有翼の魔族を優先して採用してほしい、空から敵を捜索しろ。責任は私が取る」

アラクネー「い、いいんですかぁ。怒られちゃいますよぉ」

姪「構うものか。仮にこの騒ぎにアジ・ダハーカが一枚関与しているなら尚の事、お釣りがくるほどのリターンが期待できる」

将軍乙「選択の余地はないわね」

姪「……必ず、ブロンドクソ女を断頭台に叩き込むぞ」

姉「ふぅ……私、少し休んできますわねぇ……」

ハゲ文官「おや、大丈夫かね? おっぱい触らせてくれんかね」

デブ富豪「一人で仮眠室に行けるかね? オマンチョン触らせてくれんかね」

チビ将官「何か欲しいものはあるかね? おちんぽん触ってくれんかね」

姉「あらあらぁ……すみませぇん、ちょっと今は寝たい気分なのぉ。一人にしてぇ……」




ハゲ文官「……」

デブ富豪「……」

チビ将校「……行ったな」

デブ富豪「行ってしまったなあ」

ハゲ文官「ふむ……では、行ってくる」

チビ将校「うむ、行ってこい」

デブ富豪「あのナマイキな連合の飼い犬の妹でも孕ませてしまえ」

ハゲ文官「うはwwwwwwwwwwついに私もwwwwwwww正式な貴族にwwwwwwwww」

チビ将校「……今度こそ行ったな」

デブ富豪「行ったな、あのクソハゲ。前々から下品で臭くて目障りだったのだ」

チビ将校「ハゲに生きている価値はないものな、まっとうな帝国民とは思えん」

デブ富豪「……まっこと下劣な男であったな。正直やつと話していると反吐が出そうだった」

チビ将校「おおよそ、やつの腐って死んだ頭皮から湧き出る腐臭のせいであろうな。不愉快な男だ」

デブ富豪「しかも、事あるごとに買い取った奴隷の自慢をするものな。イカレてる」

チビ将校「人間の奴隷で一喜一憂するなど下等もいいところだなイカレてる」

デブ富豪「エルフを愛でる事以上に幸福な事などあるまいに……」

チビ将校「人間のメスなど娼館から持ち帰って、淋病でも貰っては割に合わんのになあ」



エルフ三男「ええ、まったくもってその通り。さすがはお得意様でございます、よくわかっていらっしゃる」

チビ将校「おお、あなたは。これはこれは、こちらから話を持ちかけたのにお出迎えもできませんで」

エルフ三男「いえいえ、あなた方というパイプができたというのは、我々にとっても幸運でした。
どう連合軍を出しぬいてやろうと考えていたのでね。本国からの増援が辿り着く前に、再突撃をかける事は確定していましたが」

デブ富豪「これで作戦は盤石のものとなったわけですかな?」

エルフ三男「さあ……何事も、終わってみるまでは分かりませんゆえ……クックククwwwwwwwwwwwww」

女騎士「ははははwwwwwwwひゃっひゃっひゃっひゃっひゃwwwwwwwwwwwwwwww」

おかっぱ「悪趣味な……」

女騎士「案外よぉwwwwwwww毒ガスより効果的だよなぁwwwwwwwひゃっひゃっひゃwwwwwwwww」

騎士は「警備兵の間でも、不審が募っているようです……かなり待機陣形が乱れていますわ」

女騎士「アホだwwwwwクソボケどもだぜwwwwww負け組の失業者ども相手にたじたじとかwwwwwwww」

おかっぱ「……」

女騎士「あーあー悲惨だなぁwwwww抵抗できずに警備の魔物はフルボッコwwwwwwwwwww
でも私のせいじゃねぇしなぁwwwwww手出しすんなって言われてるんだろうなぁwwwww魔王様になぁーwwwwwww」

おかっぱ「(政庁のクズどもとのコネクションを、マフィアから通じて得た途端にこれか……
反体制の代名詞とも言えるデモ隊を鉄砲玉に……そして盾として利用するか……)」

女騎士「英雄はこうやって、そりゃあもうカッコ良く屍を踏みしめて凱旋すんのがスジってもんだしなあwwwwwwww」

秘書「ふええええ、高ーい、怖ーい!! 降ろしてえええ!!」

おかっぱ「痩せろ!! 運動しろ!! 騒ぐな!!」



女騎士「勇者さまぁーwwwww魔王さまぁーwwwwwwwそれとついでに連合のゴミどもーwwwww聞いてるぅー?wwww
こっちにゃあよォー、少なくともクズニート五万人ぶんの人質がいるんスよぉwwwwwwwwwどっすかwwwどっすかこれwwwwww」

ゲス騎士キタ━━(°∀°)━━!!!
さすがのおかっぱちゃんもドン引きだな

連合の飼い犬の妹って誰だ?
まさか騎士ちゃんじゃないだろうな

>>694

      ,..-''" ̄ ̄ `'" ̄ ̄`ヽ、

      /             ヽ
   ./     ,,,... -――- ...._    ',
   |    /'´         `!  |
   |  ,ノ           |  :!   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

    |   |   ,. -==、 ,.==-、 |.  |   / 「おとなはウソつきだ」
   l:  l  ィてフ_> :i i ィてフ_> | ;'  | と思った少年少女のみなさん、
    iヘ:|         | |       |''|   | どうもすみませんでした。
    |,ハ|       r_!__ト,     /ノ   | おとなはウソつきではないのです。
    ヽ'_l、    ,___,   /'′  _ノ   まちがいをするだけなのです……。
     `l \     ―‐  ,/   ̄ ̄ヽ、_______________
   _,. -l    丶、___.. 1"i''''''―-
‐''"´ |\        /  |
    |:  \      /   |

     |     \    / _   |
    l   _,,. -へ   // \ |

ハゲ文官「も、も、もういいかね」

姉「はぁい? 何がでしょうかぁ」

ハゲ文官「それはもう素敵な事だよ、臍の下と下をこすりあわせる素敵な営みだよキミィ」

姉「はぁ」

ハゲ文官「もう、もう我慢できないぞキミィ、入ってもいいかねキミィ!!」

姉「はぁい。どうぞぅー」

ハゲ文官「(きた……決まった……このユルユル三十路に取り入れば、わたしの人生後半の幸福は確約されたも同然!!
帝国そのものなんぞはどうでもよいわ!! 連合傘下の分割領でおいしい思いができればそれで……!!)」



ハゲ文官「ま、待ちくたびれたよキミィ。このわたしを廊下で待たせるなど。さあさ、早くしたまへ……」

姪「はあ、お盛んな事で……よくいらっしゃいました」

ハゲ文官「」


バギッ

ハゲ文官「お゛ぱァァァーッ、わ、わ、わたしのゆ、指ィがァァァーッ」

姉「あらぁ……」

姪「婦女暴行……強姦の未遂、現行犯で逮捕、身柄を拘束する。以降は私の質問に答えてくれると助かる」

ハゲ文官「きき、貴様ァァ……」

姪「必要な事だけ、お前は喋る事を許される。もう一本いくか」

ハゲ文官「ひゃ……や、や、やめ……」

バギィ

ハゲ文官「!!!」

姪「あー……一つ目。公務フロアでたむろしてるチビとハゲ、あの二匹と一緒に何をたくらんでた」

ハゲ文官「しし、知らないィィ、な、何のことだかわからないィィ……」

バギィ

姪「この一大事の最中、政庁のホールで見かけん一団を目にしたという証言がある。エルフだとよ」

ハゲ文官「エ、エエ、エルフ!? し、知らん知らん知らん……わたしはエルフなんかに興味は……」

パンッ

ハゲ文官「がふっ!!」

姪「……ぺドフィリアのクソ野郎が。あたしをあんまりなめてんじゃあねーぞ。テメェにゃ逃げ場はねえんだよ。
どうせ惨めにおっ死ぬ運命にあるんだ、少しくらいはあたし相手に正直者になったらどうだ?」

ハゲ文官「は、はぇ……?」

姪「児童誘拐、売春斡旋……お前のブローカー稼業も、三十路相手のレイプ未遂で全部表沙汰になる。
くさり水を絞りきったボロ雑巾のようなテメェができる唯一の人間らしい事ってな、あたしに洗いざらい懺悔する事だけだぜ」

姉「お仕事たいへんなのねぇ、がんばってぇ」

姪「(……チビとデブ、それにエルフの一団についての情報は……本当に何も持っていないか。どうしようもないな)」

ハゲ文官「ああ゛ああッ、い、いい痛いィィーッ……き、キミィ……い、医者……医者と、それに弁護士を呼んでくれッ!!」

姉「まあ……弁護士さん?」

姪「(都市全域の駐屯部隊や警察機関に通達されている、飛行戦力の高度制限……それについてだけ聞きだせただけ御の字か)」

ハゲ文官「いいい、いいやッ、弁護士が先だァァーッ、弁護士を呼べえええッ!!
そこの女、着衣も乱れてなけりゃあ、そもそも事にも及んじゃあいない!!わたしは無実ッ、何も悪くはないぞお!!」

姪「(勇者サマからの情報によれば、あのプータローの証言にあった敵ドラグーン勢力については信じていいとの事……
すなわち、テロリストどもがドラグーンを中心に据えた戦力構成で武力侵攻してくる事は明白、コイツは利用されただけか)」

ハゲ文官「きき、キミィ!! 連合傘下のこの地では司法が全てなんだぞォ!! 情報部なんか、法廷で戦えば怖くもなんとも……」

姪「(北西諸島のドラグーンまで完全に封殺できるとは思えん……あちらさんは治外法権、このハゲの権力だけでなんとかできるかは……)」

姉「あふぅ、ねむいー」

ハゲ文官「そうさ! こういう時、スタイリッシュなわたしはこう捨て台詞を残して颯爽と去るのだ!! 諸君、法廷で」

姪「そうかい」 パンッ

ハゲ文官「あべし」

姉「まあ大変……お部屋がぐしょぐしょ」

姪「母上、ここから離れます。先ほど私が入ってきた……そう、そこの窓からです」

姉「でもぉ、どうやってぇ? お母さん、飛び降りたら死んじゃうわ」

姪「……アラクネー! 事は済んだ、逃げるぞ。糸をよこせ」



アラクネー「はいはーい!」

姉「まあまあ……クモちゃんなの? 女の子なの?」

姪「向かいのビルディングに彼女を待機させてきました。あの糸を伝って、向かいへ逃げます」

姉「まあ。お尻から出たべたべたしたものに捕まってむこうに行くのねぇ」

アラクネー「か、加工してあるもん!! 汚くないもん!!」

姪「もたもたしている時間はありません。この帝立政庁、エルフどもに掌握されるのも時間の問題です」

姉「はあい。せっかちなんだからぁ」

姪「(ち……あれほど東部への軍備増強を進言していたに関わらず……情報部の忠告を無視し続けた結果がこれだ、連合のボンクラどもが!)」

姉「まあー。その軍服、素敵だわー。金の刺繍がかっこいいわぁ」

将軍乙「あ、ありがとうございます……」

アラクネー「この人が……情報部でいちばんエライ人なのぉ?」

将軍乙「多分……」

姉「クモちゃんもありがとうねえ、ビルからビルの綱渡りなんて、二度としたくないけどぉ」

将軍乙「な、何なの、このウィスパーボイス……頭がクラクラしてくるわ……!」

姪「慣れだ、我慢してほしい。それより、状況はどうなっている」

ゴーストアーマー「正直、情報自体がかなり錯綜してしまっている。中央と、それに連なる街道に沿って並ぶすべてのデモ隊列が銃撃に晒された。
死傷者数は不明、現在は警備に当たっていた陸軍各分隊と、ミセス・ティタニア率いる近衛隊が事態の収拾に……」

姪「違法デモ隊が各方面で徒党を組んでいると先ほど聞いたが」

ゴーストアーマー「ああ……例のダークエルフどもの領有権デモ隊に加えて、余計な連中が次々湧いて出てきやがる。
先のドワーフゲットー襲撃事件に対する公式発表への不満が、ここにきて爆発したんだろうな」

姪「……」

アラクネー「あ……あれ、今光ったの……花火じゃあないですよね……どんどん被害やばくなってないですか」

ゴーストアーマー「ちっくしょう……こうしている間にも!」

姪「違法デモ隊に対しては、武力でもって対応。片っ端から身柄を拘束。抵抗する者は殺害して構わない」

アラクネー「えっ」

姪「情報部長じきじきの提言だ。叩きのめせ、法治国家に相応しくないものは全て掃いて捨てろ」

ポニテ「久方ぶりの我らが故郷だ、この日を生きて迎える事が出来たのは、ひとえに皆の尽力の賜物である。
これより、帝国首都解放戦を決行。全機動部隊で首都へと進軍……凱旋する」

おかっぱ「(……すさまじい士気……そして覇気だ。いつぞやの尊皇派との抗争を思い出すな)」

ポニテ「我々の大義にあだなす敵は、全て砕いて排除せよ。これが最後の闘いだ」

金長狸「お、おーっ」

真神「……」

金長狸「な、何か言えよう……」

真神「……うるさい……周りがざわついていると、落ち着かんのだ……ああ、おなかがいたい」

ポニテ「連合軍臨時政庁において幽閉されている皇女殿下の救出。作戦の成否は、この一点にかかっている。
既に小規模のエルフ分隊が潜入しているが、それも我々飛行隊への期待あっての決死行だ。彼らを裏切るようなマネだけはするな」

騎士は「ふふ……あったまってきましたわ」

騎士ち「見ていらっしゃい、魔物ども……私達の凱旋を、指咥えてねえ」

ダークエルフ騎兵「こちとらガキの時分からここで暮らしてたんだ、負けやしねえ!」

ポニテ「勝って、必ず帰還しろ。以上だ」

娘「お母様の園を取り戻す! 行こう、お兄ちゃん!」

息子「駆け抜けるぞ! 足を止めるな!」

女騎士「全騎作戦行動開始、これより帝国を奪還する! 遠慮はいらない、敵を残らず叩き潰せ!!」

女騎士「ひゃっひゃっひゃーwwwwwwwwwwwwwwwwww」

『あべし』

『ひでぶ』



息子「道を開けろ、このよそ者どもが!!」

娘「テメェらゴキブリどもの繁殖していい場所じゃあねェーンだよッ、死にやがれ!!」



女騎士「無駄無駄無駄ァァwwwwwばーんwwwばーんwwwwww」


ポニテ「地上戦力の駐屯地到達を確認……よし、援護するぞ! 私に続け!!」

ダークエルフ騎兵「俺たちの祖国に……お前らの基地なんかいらねえんだよお!!」


女騎士「当たんねーwwwwこの銃ポンコツだろwwwww擲弾持ってこいよ擲弾wwwww」

秘書「デ、デモ隊相手に発砲しかしてないじゃないですかー! 何やってんですかー!」

女騎士「だってよー、前線で頑張るのとか私ガラじゃないやん? 汗水たらして働くアピールは目上の人がいなけりゃ無意味やん」

秘書「」

女騎士「それにさーwwww生きててもしょうがねぇクズどもを楽にしてやってるんだぜwwwwこの慈悲深い私による慈善事業よwwwww」

秘書「ふぇぇぇ」

アラクネー「制約ぶっちして出撃した航空戦力もあるにはあるみたいですけど……それでも、多分かないませんよぉ」

将軍乙「まずいわね……オフィシャルクラン内での思想対立がこんな形で……」

姪「幻獣族のハーピィ、キマイラ達は動けないのか」

将軍乙「順次要請をかけてはいるけど……強力な戦力を持つ申命の園や北部神族は、今のところ出し渋っているわね」

姪「北部のカラドリウス、ワルキューレ隊……南はホルス率いる飛行隊もダメ、か。絶望的だな」

姉「大変ねぇー」

姪「勇者どもの一行の到着は?」

アラクネー「早くて、あと40分ほど……しかし、先のガルーダについての十分な釈明が無かった事を咎められた場合……」

姪「まったく、何から何までしがらみだらけだな、そちらは」

アラクネー「ふぇぇ」

姪「……あの神鳥ガルーダを落とすほどの戦力を、あの女は持っているという事。ゆゆしき事態だな、どうしようもないかもしれん」

姉「そうねぇー」

アラクネー「(この人なんなの!? すっげーいらいらする!!)」

姪「ふむ……ドラグーン隊の進軍角度はこう、デモ隊への発砲があった地点はここ」

アラクネー「……」

姪「となれば、ここへは地上部隊を向かわせ、時間差で飛行隊を差し向ける……か。狙いは十中八九、連合暫定政庁だな」

将軍乙「やはり、目的は皇族の奪取……!」

姪「テロリストどものやりそうな、底の浅い行動だな。恐らく、前線には愛国心で動くデク人形どもを採用してるんだろうよ」

アラクネー「デク人形……?」

姪「諸国に点在する極右組織だかから人材でも募ったか……まあ、真相はどうだかわからないが。
まあ、相手がそれならそれで取り入る隙はあろう。愛国心があれば……まあ、負ける事はないだろう」

将軍乙「……何をする気?」

姪「こうする気だ」

ダークエルフ騎兵「政庁敷地に地上部隊が突入! 我々は引き続き敵性勢力の掃討に向かいます!」

ポニテ「よろしく頼む! ここからが正念場だ、閣下に余計な負担をかけさせるな!」

ダークエルフ騎兵「大尉も、御武運を!」

おかっぱ「……さて、我々はどうする。政庁周辺を警戒するか?」

ポニテ「……」

おかっぱ「郷愁に浸っている暇はないぞ。、まだまだ『凱旋』とやらは迎えられておらん」

ポニテ「ええ……」

真神「……おい、おいマナ板よ!!」

おかっぱ「殺すぞ糞犬」

真神「あの、あそこの部隊……あれを見よ、何に足止めされているのだ?」

ポニテ「……あれは……魔王軍か? 非武装の女性を連れている……」



姪「何度も言わせるな、グズどもが。お前達の首魁に会わせろと言っているんだよ」

エルフ騎兵「ク……」

ダークエルフ騎兵「ど、どうしましょう……これがハッタリじゃなかったら……」

エルフ騎兵「オレに聞かれてもなあ……」

姉「あらぁ。あらあらぁ」

姪「この女……情報部長の命が惜しかったら、アジ・ダハーカを出せ。話をさせろ」

ダークエルフ騎兵「卑怯な……ッ」

姪「テメェらみてえな腐ったテロリストどもがそれを言うかね。恥というものがないのか? 
当然か、秩序に基づく自己主張ができない欠陥だらけのポンコツ野郎どもばかりだものなあ。だが、私のいう事くらいはわかるだろ?」

姉「あら……痛っ、痛いわぁ」

姪「くそダークエルフ。愛するお国の愛する貴族様の頭が吹き飛ぶぜ。言う通りにしろよな?」

秘書「ってな事が起こっているらしいのですが」

女騎士「情報部長……って誰? 誰だっけ」

エルフ騎兵「えっ」

秘書「えっ」

女騎士「……?」

エルフ騎兵「ブロンドで頭の悪そうなババアだそうです。連れてた女は、これまたブロンドで頭の悪そうな小娘で」

女騎士「あー、カワイソーに。デモ隊のアピールで頭やられちゃったバカ姉妹だろ」

秘書「えっと……そうなんですか?」

女騎士「だって知らねーもん、情報部長なんか私の覚えてる範囲ではいけ好かねーオッサンしか知らねえもん」

エルフ騎兵「では……どう返しましょうか」

女騎士「ほっとけよ、キ印相手にしてちゃ日が暮れちゃう。パッパとぶっ殺しちゃえ」

エルフ騎兵「」

ポニテ「やはり単なるブラフか」

おかっぱ「(どうだかなあ……あの女なら、例えあちらの主張が真実でも人質なんぞ見捨てると思うが……)」

ポニテ「しかし、用心するに越した事はありません。錯乱しているのなら保護しなければ」

金長狸「(この人もこの人でクッソ真面目ですよねえ……)」

おかっぱ「とにかく、下の部隊には指示に従うよう条件を呑ませてはどうか。適当な場所に誘導して始末してしまえばいい」

ポニテ「……そうですね」

おかっぱ「(と、あの女ならそう言うだろうがな。どちらだろうが、在ダークエルフの戦力に与える影響は少なくはなかろう……
この場で単なるイカレポンチと断ずるのはやはり危険か。この連中の統制がつかなくなれば、不利になるのは我々だ)」

ポニテ「……」

金長狸「(や、やっぱりこの人も気にしてるしなあ)」

おかっぱ「いいだろう、私が話し相手になる。降下するぞ」

ポニテ「あ、あなたが!?」

おかっぱ「皇族を押さえるまでの時間が稼げればいいんだろう? 任せておけよ」

ポニテ「マナ板さん……」

おかっぱ「乳削ぐぞ」


エルフ三男「情報部長が人質にとられた、ねえ……」

エルフ近衛兵「魔王軍の差し金……でしょうか」

エルフ三男「そこまで露骨なイヤガラセをしてくるところを見ると……
こっちの戦力の中心が帝国への愛国精神で保たれてるって事実を把握してる勢力による仕業、かな」

エルフ近衛兵「そうなると……やはり、あの勇者一派の入れ知恵か!」

エルフ三男「断定はできない。しかし、あのダークエルフ達の士気を乱されては、正直言ってたまらないな。
貴族や皇族に対する忠誠、依存度は常備軍のそれより上回る。それが強みであり、致命的なウィークポイントだ。
こちらが貴族を見捨てる姿勢を取れば、それはたちまちこちらのフラッグである騎士様への不審に転ずる」

エルフ近衛兵「確証が得られるまで、時間を稼ぐほかないと?」

エルフ三男「そうだね……幕府のあの小娘が対応してるんだって?」

エルフ近衛兵「その通りで」

エルフ三男「……当面は、泳がせておいても問題はないか。わかった、そっちに任せるとしようか」

エルフ近衛兵「御意に」

エルフ三男「(何を考えているのかは知らない……知った事ではない。極東の黄猿の企みなんぞ興味はない。
向こうでどんな諍いがあったとしても……好き勝手やっていればいいさ。何が帝だ、何が幕府だよ……!)」


姪「(予想通りだ。雑兵……末端兵である愛国者、ダークエルフどもの足並みは止まった。次は……)」

ダークエルフ騎兵「ま、待っていろ! 早まるんじゃあないぞ!!」

おかっぱ「だ、そうデス。まあまあ、お気を確かに持って……穏やか~に、参りマショ!」

姪「いやあ、私は気が短い。早急にお前達のリーダーに会いたくて仕方がないんだ」

おかっぱ「何の御用かわかりマセンが……しばらくお話しにお付き合いいたしマス!」

姪「(……この『貴族の人質』という篩にかからない部隊こそが、真に討つべき敵だ。しっかり受け止めろよ、魔王軍よ!)」




将軍甲「して、『貴族の篩』にかからなかったのがテメェらって事だな? エルフども」

勇者「……」

賢者「逃がさないわ、ここでまとめて……!」

エルフ三男「僕ら、篩にかけられて……突出したところを捕まえられちゃった、ってところか」

エルフ騎兵「殺気立ってますね、殺る気満々ですよアレ。6年前に盛大にケンカ売ってますからねー」

エルフ三男「あっはっは、なかなか根に持つタイプだなあ、魔王軍は。あっはっは」

エルフ騎兵「……」

エルフ三男「あっはっはwwwwっはっはっはっはwwwwっひゃっひゃっひゃwwwwwwwwwww」

エルフ騎兵「もう笑うしかないよ!」

      ,..-''" ̄ ̄ `'" ̄ ̄`ヽ、

      /             ヽ
   ./     ,,,... -――- ...._    ',
   |    /'´         `!  |
   |  ,ノ           |  :!   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

    |   |   ,. -==、 ,.==-、 |.  |   / 「おとなはウソつきだ」
   l:  l  ィてフ_> :i i ィてフ_> | ;'  | と思った少年少女のみなさん、
    iヘ:|         | |       |''|   | どうもすみませんでした。
    |,ハ|       r_!__ト,     /ノ   | おとなはウソつきではないのです。将軍乙は死んでいます
    ヽ'_l、    ,___,   /'′  _ノ   一連の乙は丙とまちがえただけなのです、単なる過失なのです……
     `l \     ―‐  ,/   ̄ ̄ヽ、_______________
   _,. -l    丶、___.. 1"i''''''―-
‐''"´ |\        /  |
    |:  \      /   |

     |     \    / _   |
    l   _,,. -へ   // \ |

ガチ考察の流れ…だと…


おかっぱ「絶対バニーになんかなったりしない!」

乳よりハラの方が出てるイカ腹ロリのおかっぱさんがなんだって?

おかっぱ「ヘイ!!ヘイ勇者、びびってんのかー?その剣抜いてかかってこいよヘイ!!(チラッ」

鬼と手を組むエルフってすごい字面だな

果たして魔王ちゃん本人に戦闘能力はあるのか

魔王ちゃんまで巨乳になったらいよいよおかっぱちゃんが聖域になっちゃう

勢力とか位置とかよくわかんねーよカスって言われてたみたいなんで描いた
基本的にテキトーに位置関係は変化する場合があるんで鵜呑みにしないで欲しいんやで
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ベルセルクといえば女騎士ちゃんがベヘリットを手に入れたとして・・・げる時は何を捧げるのだろうか

>>851
捨てる事によって「心に亀裂」を入れる事が必要だから
ガキ共や敵兵ちゃんは不可

自己愛の権化だし
「若さ」や「美貌」を捧げれは多分転生出来ると思う

エルフ三男「(……勇者の装備……なんだ、あれは? 虎の子は悪趣味なデュランダルとやらだけではないのか?)」

エルフ近衛兵「閣下……」

エルフ三男「(腰部から背部にかけ、ハーネスで取り付けられたわけでもなし……鎧ではなかろうに、
それでは肉体欠損を念頭に置いたリアクティブアーマー……違う、かたちが歪すぎる。武器かどうかも見当が……)」

エルフ近衛兵「あれが叡智の教義のチカラ……なんですかね」

エルフ三男「見た事もない僕がわかるわけなかろうに。ただ、魔術とらやら準じたシロモノだと言う事は確からしい」

エルフ近衛兵「では……」

エルフ三男「部下をわけのわからんバケモノ相手に吶喊させるほど、僕は耄碌しちゃいない」



勇者「武器を捨て、投降してください。今なら命までは取りません」

賢者「共和国司法での申し開きも許可されましょう、投降してください!」


エルフ近衛兵「……閣下」

エルフ三男「投降だぁあ? 聞いたかい、どの口がそんな事を言うんだろうな。なあ?」

エルフ近衛兵「……」

エルフ三男「ここまでカネと労力をかけて、誰が進んで焚火の中に飛び込む羽虫になるよ? ケンカ売ってんのか?」

エルフ近衛兵「……」

エルフ三男「別命あるまで待機。僕がナシつけてこよう」

エルフ近衛兵「了解いたしました」

エルフ三男「こんにちは、みなさま方。ごきげんいかがでしょう」

勇者「……」

賢者「(やだ……クッソいい男……っていうか美少年じゃない……)」

将軍甲「(いけ好かねえ……エルフってな昔っから……)」

エルフ三男「おや、あなた今……いけ好かねえエルフが手間かけさせやがって。そう思われました?」

将軍甲「……」

エルフ三男「申し訳ございませんね、こればかりは性分でして。でもまあ、これは僕個人の意向です。エルフそのものを嫌わないでくださいネ」

勇者「武器を捨ててください」

エルフ三男「……はい。はいはい、これとこれと……このP08も置かないとだめですか? だめですよね……盗らないでくださいよ」

将軍甲「……勇者ッ、油断するんじゃあねーぞ」

勇者「わかっている」

エルフ三男「にしても、あなた方物騒ですね。僕がこうしてテーブルについてやったのに、フェアじゃあないじゃないですか」

将軍甲「身の程を弁えやがれ、テロリストがヌケヌケと!」

勇者「いい、僕が話し相手になろう。距離を空けてほしい」

将軍甲「し、しかしよ……」

勇者「……彼は今や、アルヴライヒの首長だ。その場の判断で首を取るわけにもいくまい。それに、あの女の情報も欲しい」

賢者「(めっさイケメンやわ……お話ししたいわ……)」

エルフ三男「(一瞬にしての霧消……あの正体不明の武装、やはり魔術兵装か。ますます気味が悪い連中だ)」

勇者「これでいいでしょう。さあ、申し開きがあるならば、どうぞ」

エルフ三男「(篩を使っての時間稼ぎか……連合からの援軍を待っているのだろうが、好きにさせてたまるか)」

勇者「……」

エルフ三男「(勇者……勇者……くそ勇者! どいつもこいつも勇者!! ふざけるな、衆愚に染まったバカどもが。
どうしてこんないかがわしい……胡散臭い存在を認め許容する。なぜだ……? 苛々させる)」

勇者「どうか、いたしましたか?」

エルフ三男「ええとですねえ。率直に申し上げます。そこ、どいてくださいませんか?」

勇者「……目的を述べて頂きたい。まさか、後宮の観覧などと言う訳ではないでしょう」

エルフ三男「うーん……あのう、今は僕が質問しましたよね。疑問文には疑問文で返すように学校で教えているんですか?
僕は、『どいていただけますか?』と聞いたんです。イエスかノーかで答えるのが筋でしょ、ね?」

将軍甲「あの野郎……!」

勇者「……ノーです。退くわけにはいきません」

エルフ三男「どうして?」

勇者「無用の混乱をもたらすあなた達を、通すわけにはいきませんので」

エルフ三男「無用の混乱……はて、一体何のことやら。6年前もそうですね、あなた達魔王に与する連中は。
そうやって濡れ衣を邪魔者に着せ、ある事ない事を全部おっかぶせる……」

勇者「あまりふざけた事を言っているんじゃあないぞ、ゲス野郎。アジ・ダハーカの腰巾着が」

賢者「(うわ言っちった。言っちった!)」

勇者「野心を持つのも大概にしろ。ここらでピリオドを打てと言ってるんだよ」

エルフ三男「……」

勇者「罪もない人々を蔑ろにして……食い物にして。一体何様のつもりだ、まるで肥ったノミじゃないか」

エルフ三男「まあ、ひどい……」

勇者「6年前の戦争も、お前達が……お前達なんかがいなければ、ここまでにはならなかっただろうさ。
一体……一体、何が目的だ? これ以上、何が欲しいんだ。まだ殺し足りないのか?」

将軍甲「(ンギモッヂイイ!! もっと言え勇者、言ったれ!!)」

勇者「おかしな女に誑かされたのは気の毒には思うが……手を切らないなら、僕たちは容赦しない。
これ以上、戦乱を無用に広げる気ならば、このままの武力行使も辞さない」

エルフ三男「……」

勇者「邪魔なんだよ……あなた達みたいな、言葉も思想も通じない連中は本当にさあ!!」

エルフ三男「乳臭ェ若造が、知ったような口利いてんじゃねェぞこの野郎、ぶち殺すぞコラ」

勇者「っ……!?」

エルフ三男「言葉も思想も通じねえだあ? 誰の事言ってんだか知らねェが、そりゃまさしくテメェらが言うなってやつだぜ」

勇者「何を言って……」

エルフ三男「やっぱりテメェらァ、ある事ない事並べ立てるキの字の集まりだ。違いない。お笑いだ、困ったね。
昔っから、そりゃあ昔っから変わってねェ。魔王軍ってな、依然として変わりない。野蛮で愚劣で卑怯な魔物の集まりだ」

エルフ三男「ああ、嫌だ嫌だ……魔物どもに毛も生え揃わねえ頃から毒されちまった人間ってのは手に負えねえ。
こうして……オレらみてぇな年長者の忠告も馬耳東風、ろくに話も聞きゃしねェ。若い男ってなァどうしようもねェ生き物だよ」

勇者「生憎だが、あなた達のような連中から学ぶ事などは……」

エルフ三男「ハァ? ハナッから聞く気もねえくせによく言う……頭ワリィと相手の主張を理解すんのに苦労すんなあ?」

賢者「(あれ、勇者くんどうしたん……言い返せ!)」

エルフ三男「……オレらにどうして欲しいんだ? テメェらがしたい事が、今一つ理解できねぇんだわ」

勇者「……今は、僕たちに進んで協力しろとは言わない。これ以上の非道をやめてくれ、戦いを……」

エルフ三男「ケンカ売ってきてんのはテメェらだろうが、くそ魔王軍がよお。おい勇者サマ、もちっと歴史のお勉強が必要か?
何でオレらエルフが、テメェら行き倒れにタカるウジにも劣るゴミどもと仲良しになんなきゃなんねぇんだよ」

勇者「な……」

エルフ三男「よう勇者サマ。勇者サマは勇者サマだから、抜き身の刃物とセイフティの外れた銃を両手に持った浮浪者ともお友達になれんのか?
頭からは土壌を腐らせるフケを撒き散らし、アカまみれの身体からは疫病を流行らせ、くっせえ口からトチ狂った経文を吐いて回るんだ。
オレらぁ、そういう妙なのに散々迷惑かけられてよお。今んなって、そのポンコツが形だけ整えて、『服役してきました。さあ一緒に暮らしましょう』。
ふっざけんじゃねえよなあ、無理だわそんなん。わかるか? 勇者サマ、言ってる事理解できてんのか?」

勇者「少なくとも、あの女……アジ・ダハーカよりかは狂っちゃいない。その例えは正しくないな、魔王は……」

エルフ三男「少なくともだってよ。ほんっとに見聞が足りねえんだなあ……しょうがねえやな、勇者サマなんだから」

勇者「エルヴライヒが魔王軍を嫌悪する理由は……把握しているつもりだ。しかし、なぜよりによってあの女に!!」

エルフ三男「一目惚れに理由を求めるなんて、無粋なクソガキだ。おまけに、あの女呼ばわりと来た」

勇者「一目……惚れ……!?」

エルフ三男「身の程弁えんのはテメェの方だぜ、つまんねえ啓蒙主義に目覚めた魔物どもに毒されちまった勇者サマ……
テメェみてぇなどうしようもねえ空想ゆんゆん電波ビュンビュンお花畑男よりかはずっとずっとずっとずっとずっとずっとましなんだよ」

エルフ三男「ましなんてもんじゃあない。それこそ雲泥の差、比べるまでもない……」

勇者「比べられてたまるものかよ、ブロンドの悪魔なんかと……!」

エルフ三男「いちいち人をイラつかせる野郎だな、ちっとは他人を思いやる言動はできねェのか?」

勇者「あなた達には言われたくないな。虚言で巧みに周囲を躍らせるのはそちらの十八番だろ、思いやりなどと……」

エルフ三男「……もうさぁ、顔も見たくねえのよ、魔物の顔なんかさあ」

勇者「……」

エルフ三男「要は『勇者サマ』の仮想敵だろ。そんなんに振り回されんのはウンザリなんだよ……やってらんねぇ。
飽きもしねえで、アタマのわりい人間相手に勇者サマ魔王サマ神サマっつってさ、勘弁してくれよ。何年続ける気だ、ボケ。
どっかとどっかで物言いが起こるたび、迷惑被るのはエルフ。エルフエルフエルフ! そうだよな、いっちばんちょろい相手だもんなあ。 
その上テメェらで勝手に『気難しい、気まぐれ、恩知らず』みてえなレッテル貼りやがって。おお、怖い怖い。イジメっ子の思想だぜ」

将軍甲「(妙な事並べ立てやがって……!)」

エルフ三男「そりゃあ、最初のうちはイイ顔もしてやってたさ? テメェらと違ってマトモな思考回路持ってるわけだからなあ。
勇者の末裔、英雄の再臨だとか祀り上げられたボンクラの相手も何度か……オレが役職に就いてから、何度かあったさ。
それが、フタをあけてみりゃあどうだ? 敬語もろくに使えねえ、小生意気な学生に毛が生えた程度…
それ以下だな、いかれた妄想にまみれたカワイソーなアホが、信者と一緒にぞろぞろオレらを冷やかしに来るんだ。
やれ協調政策を取れ、やれ農地改革に協力しろ、やれ上下水道の重要性を理解すべきだ、エトセトラエトセトラ……」

勇者「……」

エルフ三男「いくつかは興味深い案件を持ってきた奴もいた事ァいた。だが、九割がたは思い上がりも甚だしいクソガキだったな。
東洋の輪廻の思想まで持ち出してきたアホもいた。こことは違う世界から来ました。内政に参加させてください、力になりますってな。
親父や兄貴なんかは、暇つぶしにはした金持たせて遊んでたが……正気か? って聞きたくなるってもんだ。横で聞いてて胃が痛くなる。
だってそうだろ? 国庫から決して安くないカネをドブに捨てるのを、指咥えて見てるわけだ。死にたくなるね、倉庫番としてはさあ」

賢者「(輪廻……転生思想の事……?)」

エルフ三男「ビックリしたのはアレだな……共産主義の向こう側、社会主義について、かなり見聞があるような事を話したあいつだ。
そいつもつまんねえクソガキだったが、国民全員が公務員に……だとかいう例えは面白かった、覚えてるよ。
カワイソーなそいつの妄想によりゃ、ソヴィエトとかいう国が実際に施行して盛大に自壊したって話だ。やたらディティールの凝った作り話だってさあ」

賢者「(さすが国家元首……かなり込み入った事実を持っている……!)」

エルフ三男「一大勢力ソヴィエトと、世界を相手にした対立構造……まるで、今のこの大陸のそれと同じじゃねえか。
面白い事を言うアンポンタンもいたもんだと感心したよ……もっとも、そいつは専門じゃないからか……それとも単なるボンクラだからか知らんが、
それ以上詳しい事は聞けなかった。それとも、それ以上の事は『設定』を考えてなかったからなのかね? ククク……」

勇者「それで……かつて持て囃された勇者たちが気に入らない、それだけの理由で僕たちに弓引くのか」

エルフ三男「それだけで十二分に勇者サマがムカつくってのもある。あるが……」

勇者「……」

エルフ三男「テメェら一辺の慈悲も持たねえクズどもにひれ伏すのだけは絶対にゴメンだって事だなあ」

エルフ三男「平等、人魔共存、奴隷解放……ああ、聞こえはいいよな、聞こえは。貧乏人にゃあこれ以上にキくものはない。
でもさあ、それってもうぶっちゃけ、耳にタコってレベルじゃないのよ。聞き飽きたわけ。何回同じ事やってんの?」

勇者「同じ事……!?」

エルフ三男「おたくら魔王軍に『叡智の教義』をもたらした勇者の世代……
さすがにそんな大昔の事は知らねえが、それ以降の『自称英雄』どもも、こぞって似たような事言っててよお。
中には……まあ、ほんの一部の地域で目的を成し遂げた英雄さんもいたさ。綺麗事を実現するってのは、そりゃあ尊敬されるべき偉業だよ。
それが今の世まで続くかって事ぁ置いといてさあ。自由主義だとか、人権尊重もいいんだけどさあ。
帝国領のはずれ、冬を越すのも一苦労な農民に、身に余る自由をくれてやって喜ぶと思うか?」

勇者「……何が言いたい」

エルフ三男「だからさあ。お前らがやりたいのは、普遍的な個々の権利の擁立・憲章の発行なわけだろ。
『さあ、解放してやりましたよ奴隷ども。自由に生きて御覧なさい』。ピーッとお前らはスタートのテープを引く。
大陸の理性ある者たちを一列に並べて……よーいドン! はやいはやい、ウサギさんはどんどん先にリードしていくぞー!」

勇者「……」

エルフ三男「……どれだけのカメさんが、最初の方でドンづまって干からびるんだろうなあ?」

エルフ三男「……見解の相違って言っちまえばそれまでだな、オレはカメがウサギさんを乗っけて歩いて行く方がマシだと思ってる。
全員がウサギさんになるには、一体どうすりゃあいいのかなっと……ま、ウサギさんはカメの事なんか考えないからウサギさんなんだけどさあ」

勇者「『女騎士さん』は、ウサギの脚を普遍のものにする気はあるのかい」

エルフ三男「まさかだろ。ビョーキ持ちのカメなんかそのままおっ死ね、その分ボコボコ産まれんだからさあ」

勇者「……そうか」

エルフ三男「……」

勇者「残念だ。あなたを生かしておくわけにはいかなくなった」

エルフ三男「怖い怖い……一緒にお遊戯踊れない子ははじき出されちゃうか」

勇者「そうとも。言っても聞かない、言い聞かせても無駄。それなら、内々に『いなくなってもらうしかない』」

エルフ三男「クク……武装解除した『僕』を前に、おっかない事を言う。さ、捕虜にでも何でもなってあげます。どうぞ、手枷を」

勇者「……」

賢者「(投降……した……?)」

将軍甲「(ざまあみやがれ……御託並べたって、所詮はエルフどもの卑劣な悪知恵。耳を傾ける事もなかったんだ……!)」

女騎士「おいおいおいおい、どーーなってやがる!! 意味わかんねー!! 何やってんだ、ダークエルフどもは!!」

エルフ騎兵「ですから、連中をこれからも扱う為には人質を確保した相手にも再三の注意を払わねば……」

女騎士「ンな事ァわかってんだよボケ!! 何様だクソガキが!!」

エルフ騎兵「ご、ごめんなしゃいいいいいいいいい」

秘書「(マ、マゾヒストばっかりじゃない、エルフって……!)」

女騎士「(ち……貴族を盾に314連隊……金魚のフンどもを封じやがった。よほどの事がなけりゃあ、この戦場での再起は難しいか)」

秘書「あ、あの……もういいでしょ、今のうちにごめんなさいすれば」

女騎士「(ダメだこいつ、頭が悪すぎる。私より一般教養ないんじゃねえか?)」

秘書「ほら、共和国の裁判所で情状酌量を……」

女騎士「私が悪い事でもしてるってーのか!? ざっけんな!! 幸福追求の権利を全力で行使して何が悪い、このバカチンが!!」

秘書「ふぐうううううう」

女騎士「このクソデブが!! このプ二腹マフィントップだって元はと言や私らの稼ぎだろうが!! 今さら抜け駆けなんかさせねえからな!!」

秘書「嫌ですう!! ぜ、絶対死にたくないです!! しし、死ぬのなんてごめんですう!!」

女騎士「まだ動けるエルフ騎兵は……ふん、あの少将閣下の分隊を除いてもまだいるじゃないか」

エルフ騎兵「今の所、進軍は順調に進んでいますね。ただ、これ以上刺激しすぎると人質が……」

女騎士「ハッ、連中だってこっちがデモ隊っつー人質を握ってる事は百も承知だろうがよ。
そもそもこの五万人、共和国や連合にとっちゃお荷物の失業者どもだ。二、三十人くたばったとしても……
その皇族を人質に取ったアホポン、トチ狂ってぶち殺す事はないだろ。多分」

エルフ騎兵「問題は、そのアホポンの扇動……やはり、314に与える影響でしょう」

女騎士「あーもう、ウッゼーな……ダークエルフみんな死なねーかな、『私の』お国の為に死んじまえ」

秘書「そんなひどい!!」

エルフ弓兵「騎士様、ご報告がございます!!」

女騎士「何よァ!!」

エルフ弓兵「ド、ドラグーン三騎がげ、撃墜!! 敵性体、圧倒的な速力で北上……政庁方面へ向かっております!!」

女騎士「敵性体って……何、部隊じゃないの? 一騎? 一匹? 一人? 何やってんのあんたら」

エルフ弓兵「は……それが、飛竜を駆っているようでもなく、魔族の飛行隊といったものでもないと」

女騎士「じゃ何なんだよ……連合のスーパー戦車でも攻めてきましたってか? トリモチでも主砲に詰めたれwwwww」

エルフ弓兵「……目撃者によれば、魔王が……あの女が単独で現れたと聞いております」

女騎士「」

女騎士「はぁ……魔王、ねえ」

エルフ弓兵「……例の勇者どものような身体能力……そして、ただの一撃の掌底でドラグーンが落ちたと」

女騎士「」

秘書「あのう、魔王ってあのちっちゃい女の子ですよね。それとも、魔王って言うくらいだからそりゃもうすごい……」

エルフ騎兵「魔術を行使している……か?」

エルフ弓兵「我々の文化圏では見慣れぬ装備に身を固めていたとの事。恐らくは、ヴォーパル鋼にまつわる逸物かと」

女騎士「アホか!! あのガキがそんな強え筈ないだろうが、バカ言ってんじゃねえ!! さっさとドラグーンで叩き潰せ!!」

エルフ弓兵「ま、間もなく若様とお嬢様が交戦いたします、政庁に向かわれる前に押さえられれば……!!」

女騎士「ったく……私の遺伝子がやっぱり最後には役に立つわけだからなー……さすが私、そしてさすが私の卵子だわ」

魔王「やめてくれ……銃を下ろしてくれ」

娘「どの口がンな事抜かしやがる……バラッバラにしてやらァ、そこに直れ豚女! その角ブチ折らせな!!」

魔王「……私に害意はない、現にそこの……そなたの兄に外傷は与えていない。騎竜も同然にな」

娘「だからァ? だから何ですかァ? 何が言いたいンですかァ!? テメェを逃がす理由にはなンないンですがァ?」

魔王「……」

息子「き、みは……逃げろ、お母様の……ところに……!」

娘「でも……でも、こんな女に、魔物なんかに舐められる訳にはいかない、殺さなきゃ!!」

魔王「まだ眠っておらんか、気丈なものだ……いかんな、少し肩を怪我している。化膿すると良くないぞ」

娘「……触ンなあ、触ってンじゃあねえッ、他人の実の兄貴に、勝手にさわンなあ!!」

魔王「……通してほしい、お願いだ」

娘「(このクソ女……こいつのてのひらに触れられた途端、ドラグーンが昏睡に陥った……!
騎竜そのものに至っては、一睨みで地べたにおねんねか……上等だ、チビガキのくせに調子こきやがって……!!)」

息子「お母様を……守……」

魔王「……今しばらく、眠っておれ。そう、そうだ……目が覚めれば、きっとすべて終わっておる」

娘「離れろって言ってンですよォ、クソビッチがよォ……何様のつもりなンですかねェ、なあ、おい!!」

魔王「私は……」

娘「……」

魔王「私はエレシュキガル。かつて地上の魔族を束ねた偉大なる為政者マルドゥークの実の孫にして、
アフラマズダーの加護の下に、人魔の統一を神々より仰せつかった『魔王』だ」

姪「(……頃合いか)」

おかっぱ「それにしたって、この帝国のガス灯の普及は目を見張るものがありマス! 美観への文化的なケアが……」

姪「(このマメタンクの相手は任せる。ダークエルフどもの足止め、よろしく頼む)」

将軍丙「は、はい?」

おかっぱ「(……何だ? ブロンドの代わりに、今度は魔族の女……何を企んでる……?)」

将軍丙「……さ、さあ。続きをしましょう。私がそちらの話を聞いてあげるわ」

おかっぱ「(ク、クソ……屈辱だ! こんな位の高そうな女にもバカそうなオノボリさんを演じねばならんとは!!)」




アラクネー「あのあのあのあの、どうする気ですかあ!? あ、あれで犯人あぶり出せるじゃないですか!!」

姪「……」

アラクネー「アジ・ダハーカだって、あの人達の話から聞きだせば……」

姪「あなた方魔王軍が拷問という手段を取らない限り、無理だろうな。恐らく口は割らない。在帝ダークエルフの事は多少なりとも把握している」

アラクネー「そ、そんなあ……」

姪「そう、口は決して割らない。あのマメチビ以外にも先ほど鎌をかけてみたが、まったくの無駄」

アラクネー「じゃあ、どうすればいいんですかぁ」

姪「となると、そんな愛国心のカタマリである奴らが全力で守りたがる存在……あの私の母親と同じような貴族、もしくは皇族とは考えられんか?」

アラクネー「あ……」

姪「アジ・ダハーカは貴族、それも帝国でかなり高いポストにいた。そこまで絞る事ができよう」

アラクネー「な、なるほどなー」

姪「更に、ドワーフゲットーでの毒ガス事件……その首謀者がかつて所属していたのは国教騎士団だ。
そう仮定すれば、なるほど納得だ。国教騎士団ほどの権力を持つ組織の生き残りが再起をかけ、ダークエルフを煽ったってわけだ」

アラクネー「はあ……わたし、6年前はほんとに下っ端だったんで、よくわかんないですけど」

姪「元からロクな組織ではないと聞いているからな。帝国内における組織犯罪のほとんどに加担していた、ガン細胞のような存在だ」

アラクネー「ひでえ」

姪「……あながち、間違った比喩ではないと思うがな。諸国に自分の思想を転移させ、じわじわと外堀から再び人々を蝕んでいく」

アラクネー「うう……」

姪「このまま好きにさせてたまるか、アジ・ダハーカ……殺してやる、必ず報いを受けさせてやる……!!」

アラクネー「(こわい……早く前線から離れたいぃ……)」

姪「待っていろ……罰を……」

アラクネー「あのうっ、それで今、どこに向かってるんですかあ!?」

姪「確証を得なければならないだろ、アジ・ダハーカの正体を!」

アラクネー「そ、そうですけどぉ……」

姪「思えば、今日に限っての飛行隊への規制も恣意的なものを感じた! 単なる気まぐれとも思えん、
十中八九連中の奇襲に合わせての密約があったはずだ。なら、あのクソ高官どもはどのパイプを通じてアジ・ダハーカと繋がったのだ?」

アラクネー「それは……」

姪「この帝国首都、連合のごく一部と魔王軍駐屯部隊……他にどちらさんがいらっしゃる!」

アラクネー「北西諸島……連合王国軍……!?」

姪「御明察。さすがは叩き上げ、中の下くらいの頭は持っているな」

アラクネー「ど、どうも……」

姪「この先の廃会館……北西諸島が間借りしている駐屯敷地に用がある。そこへの侵入についてきてもらったというわけだ」

アラクネー「ででで、でもそれって不法侵入……あそこは治外法権ですよ、射殺やむなしですよぉ」

姪「今ここにいたとて、アジ・ダハーカの手の者に八つ裂きにされない保証などない。それより先に奴の手掛かりを手に入れる」

アラクネー「……ふええ」

姪「建屋内について来いとは言わない。先ほどと同じく、隣接するビルからの潜入を手助けしてくれればいいだけだ。
出る時は……自分で何とかしてみせる、私が潜入したらさっさと逃げろ。この有事に魔王軍の兵が敷地に潜り込んだとなれば、さらに騒ぎが大きくなるぞ」

アラクネー「でも……ひ、一人で本当に大丈夫ですか、心配ですよぉ」

姪「これはおかしな事を言う魔族だ。気持ちだけ受け取っておくとするかね……」

アラクネー「(こ、この人イカレてる……まじで変な人だよう)」

姪「……」

アラクネー『聞こえますかあ、どーぞ。大丈夫ですかあー』

姪「……」

アラクネー『ああ、良かった……乗り込んですぐアウトって事にはなってないみたいですね』

姪「(文字通り、耳に糸を付けて糸電話か。こちらから迂闊に声は出せんものの、外部の状況がわかるのは好都合だな)」

アラクネー『いいですかあ、さっき言った通り……指で糸を一回チョンが肯定、二回チョチョンが否定ですよお。』

姪「……」

アラクネー『はい、よくできました!! それじゃあ、見当を祈ります! がんばって!』

姪「(なけるぜ)」



姪「……」

アラクネー『ううー、さむい……』

姪「……」

アラクネー『厚着してくればよかったなあ……そのトレンチコート、どちらで買ったんですかあ?』

姪「(鬱陶しい……)」

アラクネー『帝国領がこんなに寒いなんて思いませんでした……北方領なんてどれだけ寒いんですかねー……:』

姪「……」

アラクネー『……』

姪「……」

アラクネー『へーちょ』

姪「!?」

姪「(執務室から洗ってみたが、収穫はなし……現地司令は何も知らされていない可能性が高いか……
それとも、計画そのものが突発的に……この駐屯地は、平時から中継地として用いられていない……
もしくは、北西諸島が絡んでいるという推理そのものが間違っているか……いや、よそう。今は捜索を続けるのみ)」

アラクネー『へぶしっ』

姪「……」




姪「……」

アラクネー『な、なんですか今の……今の銃声ですか!? 大丈夫ですか!?』

姪「……」

アラクネー『ああ、良かった……心臓ばっくばくいってますよ、もう……』

姪「(資料室に入るまで二人……まあいい、どうせ殺しの疑いをおッ被るのは連合の対外情報庁だ。かまうものか)」

アラクネー『へっくふぃ』

姪「……」

アラクネー『へーちょ』

姪「!?」

7月25日
帝国標準時午前三時二十二分

湾岸沿いでドラグーン隊竜騎士部隊、謎のエルフ勢力と交戦。
双方ともに大きな被害は発生しなかったものの、未だに戦闘が勃発した理由は不明。
本国外務省からの報告が待たれる。

尚、今回の戦闘で、臨時部隊員が保護した帝国人女性一名が行方不明となった。
戦闘の最中に翼竜の背から誤って落下したしたと思われ、現在でも連合王国、共和国共同で河川を中心に捜索が続けられている。


アルヴライヒ陸軍大将…共和国中央地域のブドウ畑で変死体で発見
アルヴライヒ陸軍中将…共和国東部の納屋にて変死体で発見
アルヴライヒ陸軍少将…上気の戦闘との関係が疑われるも、証拠不十分で釈放
××××連合軍大尉…本国より重要参考人への傷害容疑で指名手配。行方不明
××××連合軍中佐…部隊の私的利用などが上層部に発覚、非人道的行為が表沙汰になり処刑
勇者××××…共和国内にて保護
魔術師××××…消息不明。魔王軍側でも捜索打ち切りが決定
魔王…共和国内にて保護
将軍甲…共和国内にて身柄拘束。以後の処遇が待たれる
将軍丙…同上
将軍乙…変死体として発見。遺体は本軍情報部が回収


○共和国司法において有罪確定。以下の者を戦犯者として取り扱うものとする

騎士い…戦時中、帝国内のオーク居住地での放火、殺人で起訴、刑死
騎士ろ…エルフ勢力国内にて療養中
騎士は…共和国テロに参加、デマを扇動するもその後の行方は不明
騎士に…エルフ勢力国内にて療養中
騎士ほ…詳細不明。連合軍との交戦で死亡したものと思われる
騎士へ…『い』と同罪、刑死
騎士と…北方共同体へ亡命。その後の所在は不明
騎士ち…共和国テロに参加、デマを扇動するもその後の行方は不明
騎士り…『い』と同罪。刑死

女騎士××××…開戦時、上記戦犯者らにより拉致、監禁。その後の所在は不明

姪「(日付は6年前、あのテロ事件についての走り書きか。読めん事も無いが……)」

アラクネー『ど、どおですか? 何か見つかりましたか?』

姪「……」

アラクネー『ほ、ほんとですか!! じゃ、じゃあさっさと逃げましょう、待ってますからね! 急いでくださいね!』

姪「……」



姪「(ふ……なるほどな、連合にはほとんど事実が流れてこなかったわけだ。
北西諸島の側でテロ事件の事実がせき止められてたと言うべきか。島国育ちどもめ……)」」

姪「(書類のみを見る限り、在帝ダークエルフを始めとする部隊は首都陥落と同時に連合の傘下に入っている……
この当時は、アジ・ダハーカの下には集っていなかったわけだ。さて、肝心のアジ・ダハーカはといえば……
『い』、『へ』、『り』は除外。当時の議事録が残っている。オーク焼き討ち……重要判例として何度も目にした記憶がある。
『ろ』、『に』も除外。戦後の所在はこちらで掴んでいる……現在は共和国の病院に移送されていた筈だ。
『と』も除外できる。今や帝国東部……連合の手の下、処刑を待つ身だ。ここまで大規模なテロは起こせまい)」

姪「(残るは『は』、『ち』、『ほ』……そして、叔母様。:三名とも戦時中に消息を絶っており、いずれも生死不明……)」

姪「騎士『ほ』……仲間である『と』を連合に売渡し、自らは北西諸島でのポストを確立していたように見えた……
戦後に死を装い、北西諸島で地位を手に入れ、帝国の幹部をパイプに再起を図った、そんなところか……・。
共同体、そしてガス騒動の際に二度顔を合わせたが……間違いない、この女……先の戦争でオークを人質に皇宮を開城させた張本人。
あんなゴミ同然のカス文官などを使わなければ、こうして私に嗅ぎ付けられなかったものを……真実は自分の口から語らせてやる……!!)」







騎士ほ「次のあなたの台詞は……『騎士ほ。貴様の不義に罰を与えてやる、アジ・ダハーカ』ですわよねえ……フククククwwwwwwwwwwwwwwww」

姪「なッ!?」

騎士ほ「惜しい惜しい……惜しかった惜しかった……頑張りましたねえ……ここまで辿り着けましたわねえ……」

姪「ここに貴様がいるという事は……!」

騎士ほ「あなたの答え……アジ・ダハーカはこのわたくし……ああ、惜しい……敢闘賞をさしあげましょうねぇ……」

姪「(どういう事だ……こいつの他にアジ・ダハーカがいる!? 黒幕は……どこの誰だ!?)」

騎士ほ「フククククwwwwwwwwwwwフククククwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

騎士ほ「でも、お行儀は相変わらず……窓を叩き割るだなんて、弁償しなきゃあいけませんわね……ねえっ?」

姪「がうっ!?」

騎士ほ「北風に吹かれて風邪をひいては事です……ごめんなさいを聞いてませんわ、ねえ?」

姪「(足……脛を……折られた……・!? う、後ろから……踏み砕かれたのか……!?)」

騎士ほ「フクク……いつもの威勢はどうしたんですか……痩せ犬みたいに吠えてごらんなさいな」

姪「ぐ……が……」

騎士ほ「左脛骨複雑骨折、前脛骨筋を始めとする周辺筋損傷著しく、完治にはまさしくホネが折れそう……」

アラクネー『もしもしー、大丈夫ですかあ? そろそろ戻った方がいいですよ、もしもしもしもし?』

姪「(無理……だ……立てん……!!)」

騎士ほ「最終問題ミスっちゃっちゃ、目も当てられませんわね……でも、ちょっと難しすぎましたかしら……
フクク……お姉様にも知らせず計画を進めて、今日ほど良かったと思う日はありませんわね……フククククwwwwww」

姪「地獄に……堕ちろ……ゲスめ!!」

騎士ほ「ゴキブリみたくこそこそ嗅ぎまわるから……まったく、最高の血筋にいながらどうしてこうもナマイキなのでしょうねぇ……」

アラクネー『もしもし……もしもし!? あのう、生きてます!? もしもし!?』

姪「(アジ・ダハーカ……クソが……こいつでなければ……『は』、『ち』……そして叔母様……!!)」

騎士ほ「言葉遣いもダメ、頭も悪い……そうですわ、私がきちんとレディとして教育してさしあげましょうか……」

姪「……」

騎士ほ「貴女の叔母様みたいに……立派な女性になれますわ……フククク……」

姪「叔母……様……!?」

騎士ほ「そう、お姉様のように……ね」

姪「……」


アラクネー『……し、死して屍拾う者あり。骨は拾ってあげます! 糸、戻しますよお! 強度を高めて回収します!』

姪「……!?」

騎士ほ「まだ動ける……!? いえ、あれは……ヒモ? 糸……!?」

アラクネー『い、生きてます!? まだ生きてらっしゃいますね! 怪我とかしてませんか、大丈夫ですか!?』

姪「(痛くて意識が飛ぶ寸前だ……)」

アラクネー『わ、わかりました! 命綱としてしっかりお仕事させていただきます!』

騎士ほ「……」




竜騎兵「大尉、今の物音は一体……まさか、表のデモ隊のクズどもが!?」

騎士ほ「ああ、そう! そうですわ。向こうの窓が割られてしまいましたのよ、怖いですわね……」

竜騎兵「マジかよ……最悪だな、帝国民ってのは。さっさと本国に帰りたいっすねぇ」

騎士ほ「そういう事を言うものではありません……思っていても心に秘めておくものですわ……」

竜騎兵「は……申し訳ありません」

騎士ほ「(フクク……表じゃあ、ぐだぐだ膠着が続いているようだけれど……
薄汚れた魔物どもが、勝てると思っているのかしら……バカバカしいわ……愚かだわ……)」

竜騎兵「(すげえ綺麗な人ではあるんだけど……人を選ぶ美人だよなあ、この人)」

騎士ほ「……私のペンドラゴンは用意できていて?」

竜騎兵「は、はい。キャメロットの血統書付ペンドラゴンなんて……初めて見ました。大尉もデモの鎮圧に?」

騎士ほ「ええ……こんなバカげた争い……テロだなんて、終わりにしなければいけませんもの……」

≪幕間≫

――撮影を終えての感想をお聞かせください

姪「えー、こんばんは、ごきげんよう、初めまして。疲れました。すっごく」

騎士ほ「只今……夜の三時でございます。はい、別撮りです」

姪「いや、増えましたねー。屋内で特効使うのなんて、ほの字ちゃん絡みくらいですし……」

騎士ほ「居残りです(笑)。勇者さまもエルフさまも、もうさっさと帰られました」

――やはり、日々の屋外ロケはハード?

姪「一年で体重7キロ増えるほどには(笑)。プライベートで穿けるスラックスが……」

騎士ほ「筋肉(笑)。一日じゅう走りっぱなしだったよねえ」

姪「いっぱいリテイク食らいました(笑)。今日もかなり走りましたし」

騎士ほ「あの走り方カッコいいんだよね、脇を締めずに全力疾走。あれよ、ヒーロー走り!」

姪「ぶっちゃけあれだと遅い(笑)。日曜朝のヒーローとかはそれでも速いんでしょうが」

――日曜もしっかり起きている?

騎士ほ「『クウガ』からずっと起きてます(笑)」

姪「……仮面ライダーはバイクですよね? 走るんですか、わざわざ。腋上げてこうやってモタモタ……(笑)」

騎士ほ「どっちかと言えば『ダイナ』とか『コスモス』で増えたよね、そういう演出。」

姪「ん? ん……(笑)、何ですって?」

騎士ほ「やめて(笑)、私一人で必死な人みたいじゃん。いいの、カッコよければいいの」

――これから真っすぐ帰る?

騎士ほ「二郎寄って真っすぐ帰る(笑)」

姪「消費カロリーを補充して帰ります……後はアテレコだけですし。はーい、おやすみなさーい……」


糸冬

                      -――-  _

                 ,, '"´         \ `ヽ、
                 /          ∧     ヽ  ヽ
                  . '         / ‘.       :,
               /         、____,   :,     、
            /     ノ  / /   ‘        :,     ヽ
            .′  i / .///  .斗==オ     .i-ヘ   :,
           .′ . イ / /    '″ _r心'”,     | ‘.   {
           .′   .斗=''"芯        . : :|     |  .}    、
            i     |`、 ゞ'’ /       |     |_,ノ       、   俺達の闘いはこれからだ!
            |      |,: :     `      , -┐|      |    i     、
            |      | ,      ___. - ニ ',_ノ|    .′         丶
    ./>''"⌒ヽ .l      |.‘.    └―='"´   |     ′   ′       ヽ
   [,,'"    ‘.∧    Ⅵ ヽ、          |    ′   '       /
   〈  ,,'"   .l.∧.    ‘.  ≧=- .. __ イ´  |   ′  /     ./
   }Y / _,   l ∧    ‘.      _ -}  ′ ./-、  /     /
   '.ヽ.L__ワ   ノ  ∧    ‘.≦心r=ニ  / r ァ   /≦∧/    /
    ー{    {-、 斗、.   ‘.二ニ!   ノ l/   イ二二ハ≦二>x、
     「ヽ   ノ /V.ニニ\  ‘. -┴―< /  /二二二,二二二二心
      ‘.` 二 イ  ‘.>''" \ ‘.       / ./、二二二ア二二二二二ハ.
   | ̄厶        .l孑'"イニ\',二ニ>.//   寸ニア二二二二二二ニ.
二二二>'ヽ     ノ、/二二二二>'ィ'イ二心、 ヽ二二二二二二二二l

   `┬イ⌒ー‐=''"  〈二二二ア/二二二二心 ∨二二二二二二二.ト .,
二⌒7二ノ-‐‐ヘ      〈二二{ {二二二二二二ハ .|二≧=-二二二ニ=≦ニ

 / /  |  ‘.       〈二ニ} }二二二二二二ニⅥ二ニ二二二二二二二
./ /   .|     ‘、       くニ{ {二二二二二二二二二二二≧=----二≦
' /rへ  |      ‘、       `'<}二二二二二二ニl二ニ二二二二二二二二

女騎士「そうなったのは私のせいじゃないから謝らない」煮込み7杯目 - SSまとめ速報
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