戦士「勇者が甘っちょろすぎてみていられない」 (21)

初勇者ssです。

良かったら見てってください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1600419730

旅人「みなさん、よく聞いてください。おそらく今夜、この村は盗賊に襲われます。今夜は家のしっかり戸締りをして外に出ないようにお願いします。」

酒場でそうアナウンスしていた旅人が酔っ払った傭兵数人に絡まれている。
どうやら盗賊たちはこの旅人と、彼が護衛していた商人たちを追ってきたらしい。

傭兵たち「何盗賊なんて連れてきてんだよ。俺たちにただ働きさせる気か?あ?」

旅人は申し訳なさそうではあるものの、落ち着いて対応していた。

旅人「安心してください。盗賊たちは僕が何とかしますから。あなたたちは被害に合わないように隠れていてください。」

傭兵たち「てめえなんか信用できるか。それなら最初からこの村に逃げてくるんじゃねえよ。」

戦士「それくらいにしとけよ。いいじゃねえか、降りかかった火の粉を払うくらい。もうひと暴れしていこうぜ。」

その傭兵たちは今日同じ戦場から帰ってきた顔なじみだったため、面倒だが仲裁に入った。

傭兵たち「お前か・・・邪魔すんなよ、もう少しで商談が成立しそうなんだからよ。」

要するに盗賊を追い払うのを手伝う代わりに金をよこせ、ということらしい。
旅人もそこでこいつらが言おうとしていることに気付いたようだ。

旅人「あ、そういうことでしたか。それなら皆さんには村人たちの護衛をお願いします。依頼料はどれくらいでしょうか。」

傭兵たち「おお、なんだ話が分かるじゃねえか。」

打って変わって笑顔になり、金のやり取りを始めた。全く、最初からそう言えばいいものを。一度難癖をつけて相手に頭を下げさせなければ交渉を始められないのだろうか。

旅人「あなたも協力していただけますか。」

金を用意して旅人が俺にも声をかけてきた。

戦士「村人の護衛なんてやりたくねえよ。つまらねえ。その盗賊の始末ならやってやるよ。」

旅人「分かりました。それではあなたには戦闘を手伝っていただきます。料金は護衛の方の何倍になるのでしょうか。」

戦士「同じでいい。めんどくせえ。」

旅人「しかし、それでは・・・」

戦士「なら、ここの酒代を奢ってくれ。それでいい。」

旅人「分かりました。ありがとうございます。」

そう言うと旅人は自分も酒を一杯頼み、俺の隣の席に座った。

今夜、背中を預けることになるかもしれない相手だ。どういう人間か知っておこうと思ったのだろう。まあ少しくらいなら付き合ってやってもいいか。

戦士「真面目そうな顔してるくせに、真昼間から酒を飲むんだな。」
と茶化すように言った。

旅人「ええ、まあ、一杯だけですけど。」

旅人が照れたように笑う。人懐こそうな笑顔だな、と思った。

旅人「さっきはありがとうございました。荒事になりそうな所を仲裁していただいて。」

戦士「ああ構わねえよ、別に。というかその口調辞めてくれよ。年はそんなに変わらねえだろ。」

旅人「そう、かな。うん、そうだね。ありがとう。」

戦士「ああ、それでいい。ところで、盗賊は何人ぐらいなんだ?どうして追われてる?」

旅人「数は多分十数人だよ。実は、前の町で商人さんの娘さんが盗賊に目を付けられてしまったみたいなんだ。」

戦士「は?女一人を狙って大勢ではるばる追ってきたってのか?」

旅人「狙われた理由はそうだろうけど、追ってきたのは女一人のためじゃない。商人の他の娘や息子もいるし、従者だってまだ若い。馬や馬車も、結構上物だと思う。」

戦士「・・・人さらいか。」

旅人「そうみたいだ。話では結構悪質な盗賊らしい。」

戦士「良質な盗賊なんて見たことないけどな。」

そういうと旅人は「確かに」と言って少し笑った。
年の割に無邪気な笑い方をするやつだな、と思う。

戦士「お前はどう見ても傭兵じゃないよな?何で商人の護衛なんかしてるんだ?」

旅人「僕は魔王を倒すために旅をしてるんだ。これはそのための資金調達だよ。」

戦士「お前勇者だったのかよ!」

各王国が魔王討伐のために送り出した選ばれし者たち。もっと勇敢で正義感に溢れて堂々としたやつだと思っていた。

戦士「・・・そんなに強そうじゃねえな。」

勇者「そうだね。君の方がよっぽど強そうだ。」

俺の無遠慮な物言いを意に介さず、素直に認めて笑っている。
最初から変な雰囲気の男だと思っていたが、勇者だと知るとますます奇妙に感じた。

戦士「まあ、俺は正直傭兵の中でも飛びぬけて強いからな。当たり前だろ。」

勇者「そうなのか・・・君はどうして傭兵をしてるんだ?」

こいつの真っすぐな目を向けられると、どうも調子が狂う。
まるでまだ何も知らない子供に、「おじさんは何の仕事をしているの?」と尋ねられたような気分になった。

戦士「そうだな。戦うのが好きなんだよ。戦いっていうか、殺し合いだな。」

勇者「・・・[ピーーー]のが好きなのか?」

困ったような、悲しむような顔をしている。ますます子供みたいだな、と思った。

戦士「そうじゃねえよ。なんつーか・・・
そうだ、こんな話を知ってるか?俺も昔傭兵仲間から聞いたんだが、戦いの中で[ピーーー]ば魂が戦士の館とやらに招かれて、死んだ後も戦い続けられるらしい。その戦士の館はヴァルハラっていうらしいんだが。」

勇者「いや、知らない。初めて聞いた。」

戦士「そうか・・・それとな、どこかの国では格闘技は神聖視されていて、その格闘技のチャンピオンは神に近い存在だと言われてるそうだぜ。」

勇者「それも初耳だ。でもそれが傭兵をしている理由にどうつながるんだ?」

戦士「だから、要するに俺が言いたいのはな、殺し合いほど楽しいことはないってことだよ。命を懸けた戦いに、人間は熱狂する。それを神聖なものだと感じるほどに。戦いの中での死に、救いを見出すほどにな。」

勇者「・・・なるほど。そうか、そういう人たちもいるんだね。」

勇者は興味深そうに頷いている。

戦士「ああ。けど最近はつまんねえな。死なないための戦い方が発達しすぎている。
俺は塹壕を掘ったり、投石器に石を詰め込んだりするために傭兵やってんじゃねえんだ。
だから最近は、俺も冒険者になってみようか、なんて考えてるんだよ。」

勇者「戦いで死ぬ人が減るのは、いいことだと思うけど。」

戦士「うるせえな、俺はそれじゃいやなんだよ。お前はどうして勇者になったんだ?」

あまっちょろそうなこいつのことだから、どうせ薄っぺらい正義感か何かだろうと思っていたが、少し違っていた。

勇者「皆が幸せになれる方法を探したいと思ったんだ。そのために世界を見て回らないといけないと思った。」

戦士「勇者なら、魔王を倒して世界を平和にする、くらい言って見せろよな。
よくそんなんで国から勇者に認められたもんだ。」

勇者「勇者を輩出するのなんて僕の国にとっては、魔王討伐のために自分たちも何かしら努力をしているというアピールすることが目的だからね。なりたい人なんてあまりいなかったし、僕はそれなりに信用があったから簡単だった。」

「まあその分国からの援助も無いに等しいんだけど。」勇者はそう付け足して笑う。

なるほど、それで今回のように盗賊討伐の依頼を受けて日銭を稼いでいるわけか。
勇者という肩書があるだけで普通の冒険者と変わらないな、と思ったがすぐにその肩書こそが大切なのではないかと思い直す。

勇者であれば様々な依頼がうけられるだろうし、多少無茶をしても咎められないかもしれない。持ち合わせがない時でも、村人が寝床と食事を無償で提供してくれるかもしれない。冒険者になるなら勇者のパーティーに入るのが一番だろうか。

戦士「なあ、なんだったら俺が力を貸してやってもいいぜ。」

魔王を相手に殺し合いをするのも悪くないと思った。

勇者「君は強そうだし、一緒に来てくれるなら心強いよ。でも、多分無理だと思う。」

戦士「は?何でだよ。」

勇者「君の好きな殺し合いには、多分あまりならないと思う。僕にとっては敵を倒すことよりも、苦しんでいる人を助けることの方が大切だから。」

そう申し訳なさそうに言った。
確かに、例え一緒に旅をしたとしても至る所で意見が割れるのが目に見えるようだ。

戦士「・・・ああ、そうだな。俺は正義の戦いなんて柄じゃねえ。好きに依頼を受けて、気ままに暴れる方が性に合ってる。」

ただの思い付きだったのに思ったよりも残念がっている自分に気付いて驚き、それを振り払うように明るく言う。


戦士「よし、まずは今夜の盗賊退治だ。ヘマすんじゃねえぞ。」

勇者「うん、気を付けるよ。よろしく。」

この村は川と崖に囲まれていて、村に続く道は一本しかない。
盗賊もそこからやってくるだろうと考え、俺と勇者は一つしかない門の傍で待ち構えることにした。

準備を終え盗賊が来るのを待っていると、ふとある考えが浮かんだ。

戦士「なあ、お前もしかしてわざと盗賊に後をつけさせたのか?」

勇者「え?」

戦士「本当はある程度痛めつけて撤退させることも、追跡を撒くこともできたんだろ?この村に続く道は1本しかないし、曲がりくねっている。撒くことができないほど近くに盗賊が迫っていたなら、この村に向かっているとばれた時点で先回りされるはずだ。
違うか?」

勇者「違うよ。何言ってるのさ。」

勇者は困ったように笑った。

勇者「元々のルートは待ち伏せされてる可能性があったから、急遽この村に逃げ込んだんだ。」

確かに、ありえなくはない。

戦士「まあ、どうでもいいか。変なこと聞いて悪かったな。」

そこからしばらく二人とも無言だった。
遠くに松明の明りが見え始める。

勇者「来たみたいだね。」

戦士「ああ。」

門の近くの茂みに身を隠し、盗賊たちが村に入るのを待つ。
全員が入ったのを確認して、あらかじめ地面に撒いておいた油に火を着けた。
盗賊「何!?」

自分たちと盗賊たちを炎が取り囲み、盗賊たちの姿があらわになった。人数は12人。どいつもこいつ大して強そうではない。これじゃ一人で全員を相手に戦ってもあまり面白くなさそうだな、とがっかりする。

戦士「おい、勇者!お前は村の外に狙撃手が隠れてないか探してこい!」

勇者「でもそれじゃ君が」

戦士「俺は大丈夫だっつーの。こいつらを一網打尽にするためにこの村に誘い込んだんだろうが。さっさと行け!」

勇者「・・・分かった。ありがとう!」

勇者が魔法で炎の包囲の一部を切り裂き、村の外に出て行った。

盗賊「なめやがって!」

盗賊の一人が切りかかってくるのを剣で防ぎ、胴体に蹴りを入れてふっ飛ばす。
集中する。体が熱くなってくるのを感じた。これだ。

もう一人の攻撃を躱し、首を撥ねる。

楽しい。やっぱり殺し合いほど楽しいことはない。

次々と襲い掛かってくる盗賊と全身全霊で戦い、死体の山を作り上げていった。

最後の一人を倒し、まだ息のあるやつが残っていないか確認する。どうやら終わってしまったらしい。

勇者は無事だろうか、と村の外に目をやると勇者が一人の盗賊の死体を持って村に戻ってくるのが見えた。

戦士「ああ、やっぱり一人は離れた所にいたんだな。」

勇者「そうだね。[ピーーー]つもりはなかったけれど、生きて捕らえることはできなかった。」

そう言って勇者は盗賊の死体を地面に下ろすと、死体に向かって手を合わせた。

戦士「何つまらねーことしてんだ。」

その偽善的な行為に嫌気がさし、吐き捨てるように言う。

勇者「君の言う通りだよ。」

戦士「何がだ?」

勇者「僕はわざとここに盗賊を連れてきたんだ。彼らを・・・あのままにしておいてはいけないと思ったから。」

敵を倒すより弱い人を守る方が大切だと思っているにもかかわらず、村人が襲われる危険を冒して盗賊を皆殺しにしたことが正しかったのか自信を持てないのだろうか。勇者は暗いトーンでそう言った。

戦士「それは別に間違ってねえだろ。全員始末できて良かったじゃねえか。」

勇者「・・・ねえ、イチジクコバチって知ってる?」

戦士「は?何の話だよ。知らねーよ、そんなの。」

勇者「この人達の話だよ。」

勇者は地面に転がっている盗賊の死体に、憐みの目を向けていった。

勇者「イチジクコバチとイチジクはね、共生関係にあるんだ。イチジクの中身って小さな粒粒になってるだろ?実は、あの粒粒一つ一つがイチジクの花なんだ。イチジクコバチはイチジクの中に入ると、花のいくつかに卵を産み付け、その他の花を受粉させる。そして卵から帰った幼虫は自分の周りの花をいくつか食べて成長する。」

「でも、時々欲張りなイチジクコバチがいてね。イチジクの花をほとんど受粉させずに、逆にイチジクを食べつくすほど大量の卵を産み付けてしまうんだ。どうなると思う?」

戦士「そりゃあ、イチジクは種子を作れないだろうな。」

勇者「そうだね。でもそれだけで終わらないんだよ。もし、その欲張りなイチジクコバチの卵が何の問題もなく孵化してしまったら、その欲張りなイチジクコバチの子供がどんどん増えていってしまう。でも、実際はそうなっていない。なぜなら」

戦士「『節度を守りましょう』って他のイチジクコバチが注意でもするのか?」

勇者「それも一つの方法かもしれないね」

俺は茶化すように言ったが、勇者はまじめな顔でそう頷いた。

うわ
ピーーー入った

なるほどNGワードだったのか

勇者「でも、この場合はそうじゃない。欲張りなイチジクコバチに卵を産み付けられたイチジクは、早い段階でその実への栄養の供給を止めるんだ。そうするとその実の成長はとまり、中のイチジクコバチは全滅する。」

戦士「なるほど、うまくできてるんだな。」

多少、本気で感心しながら言った。

勇者「もし、欲張りなイチジクコバチへの対策ができていなかったらどうなると思う?」

戦士「そりゃあ・・・強欲さはどんどんエスカレートしていくだろうな。最初は他の奴に比べて少し欲張りなだけかも知れないが、生き残るのに有利な性質はどんどん発達していく。イチジクが種子を作れるように、なんて遠慮しているヤツは世代を経るごとに減っていくだろう。最終的には、自分の子供が飢えないギリギリまで卵を産み付けるヤツばかりになる。」

勇者「僕もそう思うよ。そしてイチジクは子孫を残せずに絶滅し、イチジクコバチも卵を産み付ける相手がなくなる。」

戦士「お前は、何が言いたいんだ。」

勇者「きっと、イチジクとイチジクコバチのような共生関係を結べるのは稀なことだよ。多くの場合はこの仮定のように、生き残るための行動がエスカレートしていく。淘汰に有利に働く性質は、際限なく強くなっていくからね。相手を食い尽くして、自分も滅びる。もしくは他の獲物を見つけて、同じことを繰り返すんだ。これは、一体だれの責任なんだろうね。」

戦士「・・・何?」

勇者「イチジクコバチだって、ただ生き延びるために必死だっただけなのに。」

勇者はまた盗賊たちに目を向け、呟くように言った。

戦士「この盗賊たちも同じだって言いてえのか?」

村を襲って、兵士を殺して金目のものだけ奪っていくような奴らは直ぐに手配書が出回り捕まるだろう。殺しても何の得もないような子供まで皆殺しにするようなやつらの方が、目撃情報も残らないうえに犯行の発覚も遅れて捕まりにくいはずだ。
『淘汰に有利に働く性質は、際限なく強くなっていく。』
確かに盗賊という生き方をする人間では、残虐なものほど生き残りやすいかもしれない。

しかし・・・

戦士「だから、こいつらがこうなったのも仕方ないって言うのかよ。」

足元の盗賊団の死体を蹴り上げながら、怒鳴った。

勇者「仕方ない、か。そうだね、仕方ないかもしれない。そしてここで、僕たちに殺されたのも仕方ないことなのかもしれない。でもどうしても・・・可哀想だと、思ってしまうんだ。」

途方に暮れたように言ったその表情が印象的だった。しかし俺はその様子に強い苛立ちを覚える。気に入らなかった。
確かにこいつの言う通りでもあるかもしれない。
人間が特別だ、なんて思っちゃいない。
人間も虫けらも変わらない。自然の摂理からは逃れられないんだろう。
しかし、それでも・・・

戦士「勝手に憐れんでんじゃねえよ。」

勇者を睨みつけるように見ながら言った。

戦士「確かにお前みたいなやつから見れば、価値のない人生に見えたかもしれねえけどな。お前が決めることじゃねえだろ。俺もどうせろくな死に方はしねえよ。戦いだけが生きがいで、戦場でしか生きられねえんだからな。でもな、俺はこの生き方でいいんだよ。家庭もって年食って、ベッドの上で大往生なんてまっぴらだ。戦いに生きて、戦いに死ぬ。それが例え何かに定められたものだったとしても、それが俺の選んだ人生だ。」

勇者は驚いたように俺を見ていた。

勇者「そうか・・・。ごめん、悪かったよ。」

困ったように笑う勇者の顔を改めて眺めた。甘ったれた顔をしている。
この世界で、敵の命すら迷わず奪えない。それどころか、いちいち相手の人生すら気にかけている。そんな奴が魔王を倒すために旅をしてるとは、まるで信じられなかった。

戦士「よし、やっぱりお前の旅に俺も付いて行ってやるよ。こういう人間もいるんだって教えてやる。魔王相手に戦うのも面白そうだしな。」

こんなやつに魔王が倒せる訳がない。それどころか、明日にだって死んでもおかしくないはずだ。世間知らずのまま、きれいなまま死んでいかれるのも面白くない。ただ、それだけだ。

勇者は最初訝しむように俺を見て、それから少し悩んでから言った。

勇者「ありがとう、助かるよ。」

気に入らない、と思っていたが今にして思えばこの時にはもう、俺はこいつに惹かれていたのかもしれない。今ではそう思っている。

終わりです。

一から展開考えるのって難しいな。

一応2話まで出来てるけど、戦士と勇者の名前が決まらない・・・

おつ

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