よう「かなーん!勝負しろー!」かなん「まーた、負けにきたのかなーん?」 (34)

こいつは「よう」幼稚園でちかと同じクラスの女の子

よう「見ててねちかちゃん!今日こそかなんを倒してやるんだから」

ちか「それ昨日も聞いたー」

たぶんちかの事を好きで私に対抗意識を持ってる

よう「うう...でも今日こそは」

かなん「それで、今日は何で戦うのかなー?」

まあ、こんな子内浦最強の私の相手じゃないんだけど

よう「今日はかけっこで勝負だー!!」

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よう「くうー...また負けたー!」

ちか「かなんちゃんすごーい!」

かなん「まっ、こんなもんかなーん?」

よう「明日こそ!絶対絶対倒すからなー!」

かなん「いつでも相手になるよ、まあ、私が負ける事はないけどね」

ちか「カッコイイー!!」

よう「くそー!」

そんなちっぽけなことが始まりだった

よう「勝負だかなーん!」
こいつはまた来た


よう「今日こそは勝つぞー!」
毎日来た


よう「今日は負けないからなー!」
いくら負かしても来た


他の子は一回コテンパンにしたらもう向かって来ないのに、ようはいつも私に勝ちに来た

なんかムカつくから、ようだけ仲間外れにしてやった

ちか「わー!かなんちゃんのハグだー!」

よう「むー....ずるい」

かなん「他の子にはしてあげるけど、ようにだけはしてやんなーい」

よう「ちかちゃん...」

かなん「・・・」

なんか、ますますムカついた

みんな可愛い

そんな事があってからか、私はようには負けないと意固地になって練習した

ドッチも

かけっこも

鬼ごっこも

誰にも負けないぐらいに...

ただ、ただようはそんな私を嘲笑うかのように、一番自信のあるものでみんなの度肝を抜かす

かなん「あれ?ちかのクラスはプールなんだ」

ちか「うん!これからようちゃんの番だよ!」

かなん「ふーん、それじゃあ実力?ってやつを見ておこうかなーん」

かなん「まっ、なんだろうとわたしに勝てる奴はいないだろうけど

「そーだよ、かなんちゃんは最強だからね」「かなんは負けたりしないんだ」

かなん(それに、泳ぎはパパやおじーちゃんに教えてもらって一番自信があるんだから)

ちか「あっ、始まるよ!」

結果は、想像もつかないものだった

周りの子らも海の近くで暮らしてるだけあってその年しては良い動きに思えた

だけど、一人だけレベルが違う

なんかこう、なんていうか、色々感情はあったんだけど一番に来るのは

「カッコイイ」だとか「綺麗」とか

とにかくスゴイって気持ち

そうして見惚れている間にヒーローはこっちに駆け寄って来た

よう「ちかちゃーん、どうだったー?」

ちか「よ...」

よう「え?」

ちか「ようちゃん凄いよ!!なんであんな風に泳げるの!?」

「すごいよ!オリンピック選手になれるんじゃない!?」「どうやるの!?ねえ!」

よう「え?え!?」

ざわざわとうるさい中で私は呟く

かなん「まっ、私の方が上手く凄いけどねー」

私の声は周りの音でかき消された


その時に初めて私はようの正体に気が付いた

ずっと雑魚だと思ってた、私に一度も勝てたことのない

ただ、周りのみんなは相手にもならないのに私に付いてくる

それどころか同じ年だったら私はように勝てるのか?

その時私の中に焦りと恐怖って感情が生まれた


そうして私の秘密の特訓の量が増えていく

それからも私は勝ち続けた

いや、勝ち続けなければならなかったんだ

私はこの立ち位置を奪われるのが怖かったんだ

ただ、それにも限界が来た

その日はちかは家の都合でいなかった

かなん「今日はかけっこかなん?」

よう「うん、ドッチは昨日やっちゃったしね」

かなん(良かった、かけっこなら自信がある)ホッ

よう「それじゃあ、位置についてー」

かなん「ふふん、何度やっても同じだよ」

よう「よーい」

「「どん!!」」

かなん(大丈夫、今日も勝てる、負けるわけがない)ハアハアハア

よう「ハアっ...ハアッ」タタタタ

かなん(なんでこんなに速いの!?)

タタタタタ

かなん(嫌だ!!負けたくない!)

そう思って体重を前へ前へとかけていく

そんなことをした私は

かなん「え?」

ゴロゴロゴロ ジザザッザザザー

盛大にすっこけた

かなん「え?....え?」

最初は何があったかよくわからなかった

それから数秒冷静になって確認する



膝から出てる血

全身から酷い痛み


それを意識した瞬間、私は

かなん「ひっっぐ....うう...うぇええ」ポロポロ

泣き出してしまった

たぶん物心ついてから初めてだったんじゃないかな?

その後は我を忘れてずっと大泣きして...

それで気が付いたらさ

よう「大丈夫、大丈夫だから」ギューッ

ようの腕の中にいた

いつもならすぐに振りほどいてるんだろうけど、そういうのを意識できる状況じゃなかったし

よう「ほら、かなんの大好きなハグだよ」ギューッ

それに、その優しい声が妙に心地よくて...

帰り道はようの背中で過ごした

その時には恥ずかしさとかも湧いてくるぐらいに落ち着いてたから、そんなことも言っちゃった

かなん「絶対に、絶対にみんなには言わないでよ!!」

かなん(うう...絶対にからかわれる...)

かなん(それに、もし言わなくても負けちゃったんなら意味ないし...)ウルウル

それに対する答えは意外なものだった

よう「うん、絶対に言わないよ!かなんが嫌ならね」ニッ

かなん「っ....///」

その時に私の時別な感情は恐怖から新しいものへと変貌を遂げていたのだが

その時の私はその感情の名前を知る由もない

それから私は少しだけ変わった

前はただ馬鹿にしていただけだったおままごと、ちかに頼まれて嫌々やってたおままごと

ようと二人きりでもやるようになった。私は決まってお嫁さん役だ


でも、大部分は変わらない、私はその感情を、気恥ずかしさを隠すように

それでこんなこともあったっけ

かなん「...というわけで、海の中は凄いんだよ」

よう「すっごーい!すっごーい!」

かなん「まあ、ようには分からないと思うけどね」ニシシ

よう「私も行きたい!海の中!」

かなん「へ?」

よう「今から行こうよ!」

かなん「ええー!!?」

よう「いいじゃーん、海はかなんにとっては家みたいなもんって言ってたじゃーん!」

かなん「それは...言ったけどさぁ...」

かなん(私だって大人の人と一緒にしか潜ったことないもん...)

よう「いいでしょー?おねがーい!」

かなん「!?」

かなん(ようからお願い?私に対してお願い!!?)

かなん「ちょっと...ちょっとだけだからね///」

よう「やったー!!」

こうして、初めての子供だけのダイビングもした

かなん「い、行くよ...絶対に手を離しちゃダメだからね!」

よう「えー?泳ぎ辛いよー」

かなん「いいから!海は危ないんだからね!!」

よう「はーい...」

自分が怖いだけの癖に


でも、やっぱり私にとっては海は家のようなものだった

すぐに馴れた私は身に付けた知識を自信満々に語ってく

よう「あれって何?マグロ?」ゴボゴボ

かなん「違うよ、ハゼ」

よう「はぜーー!!」キラキラ

よう「あれはあれは!?鯉!?」ゴボゴボ

かなん「違う違う、カサゴ」

よう「カサゴーーーー!!?」キラキラ

とにかく嬉しかったし、楽しかった


その後にみんなにこっぴどく怒られたけどね フフッ

でも、次の日私は現実を思い知らされることになる

かなん(昨日は凄く喜んでたなー!!)

かなん(またようにだけ秘密で連れてってやろー)ニシシ

よう「あっ、かなーん、おはよー!!」

ちか「おはよう!かなんちゃん!」

かなん「おはよっ、ちか!」

かなん「あと...おまけによう」ニシシ

よう「なんだとー!!」

ちか「それで、聞いたよ!?二人で海に潜ったんだって!?」


かなん「・・・」

かなん「え?」

よう「すごい綺麗だったんだからー!」

ちか「いいなー!ちかも行きたーい!」

よう「私に言っても無理だよ、かなんにお願いしないと」

ちか「かなんちゃんおねがーい!」

かなん「なん...で....秘密って言ったのに」

よう「うん!だから」

よう「私とちかちゃんとかなん、三人の秘密!!」

その時、なんで私はように負けたくないのか気が付いた

かなん(ようはちかが好きだったんだ)

(最初から気が付いてたはずなのに)

(私は...馬鹿だ...)

それから、色々考えたよ

しまいにはようとちか、どっちが大事なのか?とかさ

それで、出した答えが...それだったんだ

ちか「えー!?かなんちゃんもうおままごとしないの!?」

かなん「まあね、小学校に行ったらみんなそんな事してないんだぞー!」

ちか「それじゃあ、小学校に行かないでよー」

かなん「それは無理かなーん....」

かなん「・・・」

かなん「ねえ、よう」

よう「なに?」

かなん「私の代わりに....ちかのカッコイイお婿さんになってね」

よう「当たり前だよ!!」ニシシ

それからは逃げるように小学校の友達と遊んだ

気が合う友達もできたし

みんなを引っ張りまわして怒られて


それで、久々に会った日の事...

たぶん、曜はあんなちっちゃな事忘れちゃったよね...

でも私は、ずっとあの日を忘れられないんだ...

コンビニ前

果南(中学生)「ひさしぶりー」

千歌(中学生)「あー!果南ちゃーん!」フリフリ

果南「最近めっきり会わなくなったねー、こんなに家も近いのに」

千歌「そうだねー、会おうと思ってなくちゃこんなものなのかなー?」

果南「そういえば、一人?」キョロキョロ

千歌「曜ちゃん?まだ中にいるよ」

果南「最近飛び込み頑張ってるみたいだし、発破かけてやろうかなーん」

千歌「曜ちゃんも喜ぶよ」

ウィーン

果南(きたきた)

果南「最近飛び込み頑張ってるみたいだねー」ニヤニヤ

曜(中学生)「あれ?ひっさぶりー」

「果南『ちゃん』」

果南「...え?」

曜「すっごい偶然だねー!」

千歌「ほんとほんと、最近はお店にも顔出してなかったもん」

曜「そんな事言ってたら行きたくなって来たー!!」

それから、話は頭に入ってこなかった

それから結構会う回数も増えたしたぶんそういう話だったのだろう...

取りあえず私が覚えてるのは


千歌「じゃあねー!」

曜「またねー!」

果南「じゃあねー、千歌」

「曜...『ちゃん』」

そう...呼んでしまったことだけだった

部室

千歌(高校生)「そんなことが...」

果南(高校生)「まっ、今となってはただの思い出だよ」

千歌「でも、果南ちゃん最近曜ちゃんを呼び捨てに...」

果南「さーてねっ、私はもう帰るよ」

千歌「それじゃあ私も」

果南「千歌は曜を待ってなよ、それとも一人で帰らすつもり?」

千歌「・・・」

果南「それじゃ、バイバイ」

バタンッ

下校中

曜「それでさー」

千歌「へー」

ありふれた下校風景

少し違うのは私は怒っていることである

それは何かって?

幼馴染のお姉さんが勝手に他の幼馴染とくっ付けようとしたこと?

ノンノンノン

それはこの目の前にいる鈍感ヨーソローに

だからこれは、ある種の爆弾である

キューピットちかっちからの恋の時限爆弾

「曜ちゃんって昔、果南ちゃんのこと呼び捨てだったよね」

「そういえば」


終わり

前日譚だったか

この設定かなり好き

いいゾ~これ

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